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【SS】キョウヘイ「俺、一人暮らし止めるってよ」【キョウヘイ×トウコ】

 ▼ 1 黒羽真◆Ju6JKuHffQ 16/07/26 18:19:20 ID:XEfeAmrE NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
http://pokemonbbs.com/post/read.cgi?no=282107
↑の建て直しです
長い間時間を空けて申し訳ないです
コテ、酉が微妙に違いますが本人です
あと、もう一つ同じ題名のがありますが、そちらはssタグをつけ忘れてしまったやつです
計3つもスレ建ててしまって紛らわしくて済みません
短いので一応初めからコピペはします
 ▼ 861 黒羽真◆Ju6JKuHffQ 16/12/24 19:47:24 ID:gFAEoZH6 [1/26] NGネーム登録 NGID登録 報告
そのせいでグッと顔の距離が近づく。

顔を真っ赤にしながらもしっかりと抱きついてくるメイは、いつもの快活さとは真逆でとてもしずしずとしていた。

言ったら本人に怒られるだろうが、女の子らしいメイは新鮮だった。

メイ「や、やっぱ下ろして……!」

ギブギブ、とばかりメイは俺の首筋を軽く叩く。

キョウヘイ「え? わ、分かった」

俺はゆっくりと膝を折り、メイを床に横たえてから手を抜き取った。
 ▼ 862 黒羽真◆Ju6JKuHffQ 16/12/24 19:48:03 ID:gFAEoZH6 [2/26] NGネーム登録 NGID登録 報告
ルリ「えー、メイがさっきのでダウンしちゃったから、ラスト1戦は私が仕切るね」

メイはこたつに足を突っ込んで、自分を抱く格好で寝転んでいる。

顔は未だに真っ赤で、目の焦点が合っていない。

キョウヘイ「あれ、熱出てるとかじゃないよね?」

ルリ「そんなわけないでしょ? 好きな人にお姫様抱っこなんかされたら誰だってこうなるって」

キョウヘイ「…………?」

そんなわけで、ルリは割り箸を一本減らして3本握った。

ルリ「じゃあ、いくよー? 王様だーれだ!」

手元を見ると、またもや2番だ。

ルリ「はい私でしたー」

ルリは『王』と書かれた割り箸を高々と掲げてみせる。

トウコ「ま、また!?」
 ▼ 863 黒羽真◆Ju6JKuHffQ 16/12/24 19:48:51 ID:gFAEoZH6 [3/26] NGネーム登録 NGID登録 報告
トウコが驚きの声を上げると、ルリはおどけたような顔をして見せた。

ルリ「最終戦だから言っちゃお。実はね、ここ見てみて?」

ルリは割り箸の中ほどを指差す。

キョウヘイ「はぁ? …………あっ!?」

俺の割り箸に、線が2本刻まれていた。

そして、俺の割り箸に書いてあるのも、2だ。

つまり番号の数だけ線を刻んでおいたのだろう。

その証拠に、トウコの割り箸には、線が一本だ。

3本なので、1と2と王しかないのだから、必然的にトウコは1となる。

トウコ「い、イカサマ……っ?」

キョウヘイ「だから俺の番号が当てられたのか……!」

2人は賭けに出ていたのではなかったらしい。
 ▼ 864 黒羽真◆Ju6JKuHffQ 16/12/24 19:49:27 ID:gFAEoZH6 [4/26] NGネーム登録 NGID登録 報告
ルリはぺろっと舌を出してみせる。

ルリ「そうだよー。ごめんね? ちょっと計画があってさ」

その仕草も、ルリがやると妙に様になっているから困る。

キョウヘイ「別にイカサマはいいけど、計画って?」

聞くと、ルリはメイを揺すった。

ルリ「メイー! そろそろ起きて! あれやるよ!」

メイ「はっ! り、りょーかい!」

虚ろに寝転んでいたメイが一気に飛び起きる。

ルリ「今から言う命令が私たちからのプレゼントだからね?」

キョウヘイ「……ん?」

命令がプレゼントとは、どう言う意味なのか。

ルリ&メイ「「1番と2番は今すぐ一緒にお風呂に入ってくること!!!!」
 ▼ 865 黒羽真◆Ju6JKuHffQ 16/12/24 19:50:09 ID:gFAEoZH6 [5/26] NGネーム登録 NGID登録 報告
キョウヘイ&トウコ「………………はぁ?」

何を言っているのか、理解できなかった。

メイ「だーかーらー!」

ルリ「1番と2番は今すぐ一緒にお風呂に入ってくること!」

キョウヘイ「は、はぁぁあああ!?」

メイ「どうせ一回も一緒にお風呂入ったりとかしてないんでしょー?」

トウコ「そ、そりゃそうでしょ!!」

メイ「ほらやっぱり。そーゆーの、ヘタレって言うんだよ?」

トウコ「ち、違うよ!」

ルリ「せっかく一緒に住むとかいう環境揃ってるのに、もったいなさすぎでしょ」

キョウヘイ「いや、そういう問題じゃねえし!」

ルリ「ってわけでー? ほら、さっさと入ってきて! 王様の命令だぞ〜?」
 ▼ 866 黒羽真◆Ju6JKuHffQ 16/12/24 19:50:56 ID:gFAEoZH6 [6/26] NGネーム登録 NGID登録 報告
キョウヘイ「ちょっと……? え、えぇ……?」

トウコ「ほ、本当にやるの……?」

メイ「あったりまえじゃーん! なんのための王様ゲームだと思ってるのよー」

グイグイと俺たちは背中を押され、風呂場に連れてこられた。

ルリがバスタオルを出し、手渡してくる。

ルリ「別にバスタオル巻くななんて言ってないからいいでしょ? 裸じゃないもん」

トウコ「タオルあったらいいってもんじゃないよー……!」

トウコが涙目になって2人に訴えた。

メイ「あれー? キョウヘイと入りたくないの? キョウヘイのこと、嫌い?」

トウコ「う……そんなこと、ないけどさ……」

メイが意地悪く煽り、トウコも反論できなくなってしまう。

ルリ「じゃ、頑張ってねー! 折角機会作ってあげたんだから、有効に使ってよ!」

メイ「あ、私たち、まだここにいるから逃げるのは無理だからねー!」

バタン! と、無慈悲にも脱衣所の扉は閉められた。
 ▼ 867 黒羽真◆Ju6JKuHffQ 16/12/24 19:51:57 ID:gFAEoZH6 [7/26] NGネーム登録 NGID登録 報告
トウコ「ど、どうしよっか……?」

聞いてくるトウコの顔はいちごのように真っ赤だ。

キョウヘイ「……多分もう無理だよ。絶対下がらんと思う」

トウコ「や、やっぱり……?」

それで諦めてしまったのか、トウコは服に手をかけ始めた。

トウコ「あ、あっち向いててよ……?」

言われるがままに、俺は体を反転させる。

後ろから聞こえてくる衣擦れの小さな音が、妙に耳に残る。

トウコ「じゃあ、先に入ってるからね?」

着替えが終わったらしいトウコは風呂に入って行った。

仕方がないので俺も無言で服を脱ぎ、手元のタオルを腰に巻きつける。

そして、風呂の扉を開いた。
 ▼ 868 黒羽真◆Ju6JKuHffQ 16/12/24 19:52:45 ID:gFAEoZH6 [8/26] NGネーム登録 NGID登録 報告
中はもう湯けむりで満たされていた。

その真ん中で、トウコは髪を洗っている。

身につけているものがバスタオルのみなので、トウコのスレンダーなボディーラインがとても強調されている。

そして、手を上にあげているせいで見えてしまう腋が妙に艶めかしかった。

キョウヘイ(っと……俺は何考えてんだよ)

なるべく目を逸らしながら、俺はシャワーを手に取り、髪を濡らす。

トウコ「……キョウヘイ、髪濡らすとすごいイメージ変わるね」

キョウヘイ「そ、そうなの?」

トウコ「うん……かっこいいよ」

髪を洗いながら、俺はトウコの方を見る。

いつものポニテではなく髪を下ろしているトウコは、いつもより大人びた魅力があった。

こちらもこちらで、とても可愛い。

しかし、それを口に出す度胸は俺にはなかった。
 ▼ 869 黒羽真◆Ju6JKuHffQ 16/12/24 19:53:31 ID:gFAEoZH6 [9/26] NGネーム登録 NGID登録 報告
と、ここで問題が発生する。

トウコ「…………ねえ、体、どうやって洗おう……?」

キョウヘイ「え? ……あっ」

トウコは体のほとんどをバスタオルで隠しているため、頭は洗えても体を洗いようがないのだ。

トウコ「えと、み、見ないでね……?」

トウコが俺に背を向け、タオルを外し始めた。

慌てて俺も向きを変える。

トウコ「ね、ねぇ……せ、背中、洗ってくれない?」

キョウヘイ「俺が……?」

突然のお願いに、思わず素で返してしまう。

流石に見ないで背中を洗うなんてのは無理だ。

背中だから大丈夫、とかそんな問題でもないだろう。
 ▼ 870 黒羽真◆Ju6JKuHffQ 16/12/24 19:54:15 ID:gFAEoZH6 [10/26] NGネーム登録 NGID登録 報告
トウコ「ほ、他に誰がいるのよ」

キョウヘイ「……わ、分かった」

恐らく隠しているであろうと割り切って、俺はトウコの方へ向く。

トウコは上半身は前だけにバスタオルを当て、手で押さえていた。

確かにこれならば背中は洗える。

キョウヘイ「じゃあ、やるぞ……?」

トウコ「う、うん……」

手にボディソープをつけ、トウコの背中につけた。

華奢な背中はガラス細工のような儚さを孕んでいて無意識に手つきが慎重になる。

それでも、トウコの背中が意外と小さくてすぐに終わってしまった。

キョウヘイ「よし、終わり」

手を離すと、トウコは体を捻ってこちらを見る。

トウコ「じゃあ次は私の番だね。ほら、あっち向いて」
 ▼ 871 黒羽真◆Ju6JKuHffQ 16/12/24 19:55:04 ID:gFAEoZH6 [11/26] NGネーム登録 NGID登録 報告
キョウヘイ「え? 俺もやってもらうの?」

トウコ「……やだ?」

キョウヘイ「いや、それはないけど……」

決して嫌な訳ではないので、ここは素直にやってもらうことにした。

後ろを向くと、少し間が空いてからーー多分タオルを付け直していたのだろう。ーー柔らかい手が俺の背中に触れる。

トウコ「キョウヘイの背中、意外と広いね……」

キョウヘイ「そ、そう?」

背中がシャワーで洗い流されたので立とうとしたその時。

背中に、手の感触とは異なる柔らかさがもう1つ。

キョウヘイ「どうした……?」

トウコ「あ、いや、なんとなく」

トウコが俺の背中に顔を横にして押し当てていた。

トウコ「なんか……安心する。しばらくこのままいても、いい?」

キョウヘイ「うん、別にいいよ」

体が冷えるのも構わず、俺たちはしばらく湯けむりに包まれていた。
 ▼ 872 黒羽真◆Ju6JKuHffQ 16/12/24 19:55:49 ID:gFAEoZH6 [12/26] NGネーム登録 NGID登録 報告
トウコが離れてから俺たちは背中合わせで湯船に入った。

並んで入れるほど湯船は広くなく、向かい合って入るのは流石に気恥ずかしかった、という理由あってのことである。

トウコ「あったかいねー」

キョウヘイ「そりゃさっきまで冷えてたからな」

トウコ「ご、ごめんね……」

キョウヘイ「いや、全然いいよ。俺も、ちょっと嬉しかったし」

トウコ「そうなの?」

キョウヘイ「まあ、やっぱりね」

話していると突然、扉が勢いよく開いた。

メイ「おーおー! あっつあつじゃないですかー!」

ルリ「背中そんなにくっつけてー! ひゅーひゅー!」

メイとルリが乱入してきたらしい。
 ▼ 873 黒羽真◆Ju6JKuHffQ 16/12/24 19:56:45 ID:gFAEoZH6 [13/26] NGネーム登録 NGID登録 報告
キョウヘイ「あのなぁ……」

トウコ「もともと2人の命令じゃん!」

メイ「細かいこと気にしないの! こうでもしなかったらこんなことなかったでしょー?」

ルリ「ということで、もう出てもいいよー!」

メイ「ただし、全国バージョンのポケモン図鑑の1番から100番までのポケモン数えたらね」

100数えてから、なんていうのよりよっぽど時間がかかる難題を押し付けて、2人は去っていった。

トウコ「え、えぇ……?」

キョウヘイ「フシギダネフシギソウフシギバナヒトカゲリザードリザードンゼニガメカメールカメックスで9だろ? そんで……」

トウコ「キャタピートランセルバタフリー、ビードルコクーンスピアー……次は?」

キョウヘイ「えーっと……ポッポだ!」



途中思い出すのに時間がかかったりして、結局10分くらいはかかった。

実に本来の6倍である。
 ▼ 874 黒羽真◆Ju6JKuHffQ 16/12/24 19:57:45 ID:gFAEoZH6 [14/26] NGネーム登録 NGID登録 報告
ルリ「はいはいー、お疲れー!」

メイ「のぼせなかった?」

キョウヘイ「おかげでのぼせかけはしたけどな!」

俺たちが風呂から出ると、2人はコタツで寛いでいた。

2人同時にすくっと立ち上がってこちらを凝視してくる。

メイ「あ、ちょっとそのまま止まっててねー」

キョウヘイ「はぁ……?」

すると、2つの携帯のレンズが俺を捉えた。

かしゃ、かしゃかしゃ、と携帯からシャッター音が発せられる。

キョウヘイ「な、何撮ってんの?」

ルリ「キョウヘイお風呂上がりver.」

メイ「ロック画面の壁紙にしちゃうもんねー!」

キョウヘイ「や、やめろ!」
 ▼ 875 黒羽真◆Ju6JKuHffQ 16/12/24 19:58:35 ID:gFAEoZH6 [15/26] NGネーム登録 NGID登録 報告
トウコ「あ、私も!」

トウコが携帯を取り出してきた。

その携帯をルリが即ひったくる。

トウコ「な、なに……!?」

ルリ「命令! キョウヘイと腕組んできて! 撮ったげる」

メイ「いいねそれ! 大丈夫、私たちは撮らないよ」

と言いつつ、メイは携帯を取り出した。

キョウヘイ「おい撮ろうとし……それ俺の携帯!」

ルリ「早くやってよー! ヘタレー」

メイ「ヘタレー」

トウコ「むー……で、できるもん」

頭に血が上ったのか、つかつかと俺のところへ歩いてきてトウコは俺の腕を取る。
 ▼ 876 黒羽真◆Ju6JKuHffQ 16/12/24 19:59:13 ID:gFAEoZH6 [16/26] NGネーム登録 NGID登録 報告
トウコ「こ、これでいいでしょ……?」

瞬間、シャッター音の嵐が俺たちを襲った。

メイ「おー! いいねいいねー!」

ルリ「軽く上から脱いでみようかー?」

キョウヘイ「誰が脱ぐか!」

2人はどんどん位置を変えながら写真を撮っていく。

ルリ「うん、満足!」

メイ「私もこんなもんでいいや」

はい、とメイに携帯を手渡された。

メイ「後で見といてね?」

キョウヘイ「……わかった」
 ▼ 877 黒羽真◆Ju6JKuHffQ 16/12/24 19:59:51 ID:gFAEoZH6 [17/26] NGネーム登録 NGID登録 報告
俺が携帯をしまう間に、ルリとメイは帰る準備をしていた。

ルリ「じゃあ、そろそろ帰りますか」

メイ「そだねー。時間も時間だし」

2人はリビングを去って行く。

俺たちも見送りのために玄関へ出た。

ルリ「ごめんねー、邪魔して」

メイ「寝るまで時間あるだろうし、お幸せにー」

キョウヘイ「はいはい、また来いよ」
 ▼ 878 黒羽真◆Ju6JKuHffQ 16/12/24 20:00:37 ID:gFAEoZH6 [18/26] NGネーム登録 NGID登録 報告
トウコ「パーティ、楽しかったからまたやろうね!」

キョウヘイ「王様ゲームは抜きで」

しっかり釘を刺しておかないと大変なことになるのは今回でしっかり学習する。

すると、ルリが不満そうに唇を尖らせた。

ルリ「えー、楽しかったじゃん」

キョウヘイ「イカサマすんなよ!?」

メイ「そうしないとキョウヘイに色々できないじゃん」

キョウヘイ「すんじゃねえよ!」

こいつらといるとツッコミの連続で意外と精神的に消耗するのだ。
 ▼ 879 黒羽真◆Ju6JKuHffQ 16/12/24 20:01:27 ID:gFAEoZH6 [19/26] NGネーム登録 NGID登録 報告
ルリ「あ、まだやっとくことあったじゃん」

メイ「おー、そうだった」

扉に手をかけたところで、ルリがこちらに振り向いた。

メイも一緒にこちらを見つめる。

キョウヘイ「どうした? まだあんのか」

ルリは俺に手招きをする。

ルリ「うん。ちょっと、こっち来てくれない?」

キョウヘイ「? わかった」

玄関ギリギリのところへ行ってもまだルリは手招きを続けた。

俺は靴を履いて扉の前まで下りる。

その瞬間、頬の両側でとても柔らかく、少し湿った感触が弾けた。

メイ「これが、私たちの2つ目のプレゼント」

ルリ「もう用はないや。じゃねー!」

2人は風のように家を出て行った。
 ▼ 880 黒羽真◆Ju6JKuHffQ 16/12/24 20:02:41 ID:gFAEoZH6 [20/26] NGネーム登録 NGID登録 報告
風呂も入ってしまったので、俺たちはそのまま寝ることにした。

布団はあれからずっと一枚だけ。

いつもは背中合わせで寝ているのだが、今回は少し違う。

トウコが向かい合わせで寝ようと言い出したのだ。

トウコ「顔見ながら寝られるの、いいね」

キョウヘイ「ん、そうだな」

頭上からは月明かりが差し込んでいる。

目線を上にして見ると、夜空がキラキラ光っているのが窓越しに見えた。

キョウヘイ「なあ、ちょっとベランダ出てみないか?」

トウコ「ん、いいよ。外綺麗だし」

布団から出て、窓を開ける。

吹き込んで来る風は少し冷たかった。
 ▼ 881 黒羽真◆Ju6JKuHffQ 16/12/24 20:03:33 ID:gFAEoZH6 [21/26] NGネーム登録 NGID登録 報告
しかし、2人で布団の中に入っていて少し暑かったのでそれも逆に心地良い。

手すりに肘をついて俺は夜空を見上げた。

と、背中に何かがかけられる。

トウコ「寒いからそのまま出ちゃダメだよ」

トウコが羽織るものを持ってきてくれたらしい。

キョウヘイ「あ、ごめん。ありがとう」

俺の横にトウコも並んだ。

星座なんかはよく分からなかったが、空気が澄んでいて星の1つ1つがとても綺麗だった。

宝石箱をひっくり返したような、という表現も頷ける光景だ。

しばらく無言で夜空を眺めていると、手の甲に冷たい感触が溶けていった。

キョウヘイ「……? なんだ?」

手に残っているのは、水の雫だった。

トウコ「あれ? 雪降ってる……?」

すると、視界にちらほら白いものが舞い始める。
 ▼ 882 黒羽真◆Ju6JKuHffQ 16/12/24 20:04:32 ID:gFAEoZH6 [22/26] NGネーム登録 NGID登録 報告
しかし、さっきから見上げている通り空は雲のかけらもない。

キョウヘイ「どうなってんだ……?」

天気雨の雪バージョンのようなものだろうか。

俺が首を捻っていると、トウコが肩を叩いてきた。

トウコ「なんでもいいじゃん。だって、星空のクリスマスイブと、ホワイトクリスマスが同時に見れるんだもん」

空を見上げれば、月と星が光るステージの中で雪が踊り狂っている。

とても幻想的で、ロマンチックでもあった。

ふと目線を感じて、横を向く。

やはりトウコがこちらを見ていた。

キョウヘイ「………………ど、どうした? 俺のこと見て」

トウコ「そ、そういうキョウヘイだって……私のこと、ずっと見てる」

煌めく星々も華麗に舞う雪たちも無視して、見つめ合う。
 ▼ 883 黒羽真◆Ju6JKuHffQ 16/12/24 20:05:40 ID:gFAEoZH6 [23/26] NGネーム登録 NGID登録 報告
元々隣だったのもあって、トウコの顔は目と鼻の先。

吸い込まれるように俺はトウコへ顔を近づけた。

トウコが目を閉じる。



そして、唇に熱くて柔らかいものが触れた。



トウコと自分の境目が混じり合ってはっきりとしなくなる。

お互いに抱き合っていると、外の寒さも気にならない。

誰にも邪魔されることなく、2人だけの夜は更けていった。
 ▼ 884 黒羽真◆Ju6JKuHffQ 16/12/24 20:08:33 ID:gFAEoZH6 [24/26] NGネーム登録 NGID登録 報告
メリークリスマース!
クリスマススペシャル、どうでしたか?
今回もまた妄想の塊で申し訳ないです
楽しんでいただけたならいいのですが
星空と雪の共存を思いついた時は自分のこと天才だと思った(笑)
画像、全部貼りましたよ!
足りなくなってメイとルリとクロバとサナ貼りましたが(笑)
見てて思ったんですけど、途中で貼っちゃったらテンポ悪くなっちゃいましたかね……すいません
ではでは、おやすみなさい(これ言うの懐かしい)
いい夢(誰も邪な空想とは言ってない)見てくださいね

バレンタインは流石に無理かな(笑)
 ▼ 885 RIVER◆zFLCCAWaiw 16/12/24 20:11:48 ID:yS4ipWrU NGネーム登録 NGID登録 報告
乙です

……バレンタインまで保守すればワンチャン?
 ▼ 886 黒羽真◆Ju6JKuHffQ 16/12/24 20:14:51 ID:gFAEoZH6 [25/26] NGネーム登録 NGID登録 報告
>>885
その熱意、受け取ったぜ!
2月入って残ってたら書きましょう
ただし僕はあげません
あ、新スレは勝手に建てちゃっていいっすよ
こっちにURL貼ってさえくれれば
 ▼ 887 黒羽真◆Ju6JKuHffQ 16/12/24 20:17:53 ID:gFAEoZH6 [26/26] NGネーム登録 NGID登録 報告
……新スレ建てておkとか言ったら書くことになりそう……
ちょっと疲れが残ってるんよな
いや、2ヶ月経てば完全復活してむしろ書く気になるか……?
妄想の捌け口でもあるしな
バレンタインスペシャルが書くか否か、皆さんに任せますぜ
僕のことは気にせず、欲しかったら遠慮なく残しちゃってください

関係ないけど、コトネssが1000レス埋まってた時の驚きったらなかったなぁ
 ▼ 888 ミニリュウ@きんりょくのハネ 16/12/24 20:38:39 ID:RCaGeA4Q NGネーム登録 NGID登録 報告
面白かったです!
 ▼ 889 ニョロモ@タマゴけん 16/12/25 02:16:21 ID:U7C530PA NGネーム登録 NGID登録 報告
>>887
BBSwikiから読んだよ

SS自体の長さに対して埋めが多くて笑った
 ▼ 890 黒羽真◆Ju6JKuHffQ 16/12/25 07:10:44 ID:uU7pqwtk NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
>>889
BBSwikiってつぶれたんじゃないんすか?
何であれ埋まったんだろ……?
いや嬉しいけど

(これは僕からの試練だ僕のコメはみんなsageてやるー!)
 ▼ 891 黒羽真◆Ju6JKuHffQ 16/12/25 20:38:03 ID:alsI3Kh6 NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
BBS復活してるんだ
って思って見てたら衝撃の事実発覚
カオスタと同じ誕生日だったんだが
 ▼ 892 ミュウツー@ヤタピのみ 16/12/27 12:39:16 ID:TUEl2Gcw NGネーム登録 NGID登録 報告
SS完結してるのに伸びててすご
 ▼ 893 パンプジン@コオリZ 16/12/28 21:40:57 ID:BFF3IYc2 NGネーム登録 NGID登録 報告
バレンタインまで落とさない
 ▼ 894 エンテイ@どくバリ 16/12/29 22:12:40 ID:pLzE3Wvw NGネーム登録 NGID登録 報告
イッシュ組好きな同志おらんの?
 ▼ 895 色ロコン◆0nSPwqGIvk 17/01/01 01:49:02 ID:RD52zj/o NGネーム登録 NGID登録 報告
うめ
 ▼ 896 ムチュール@じめじめこやし 17/01/01 08:32:26 ID:HYrDCeFg NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
>>895
名前欄に色が出るの知らんかったわ
 ▼ 897 ヤンヤンマ@ぎんいろのはね 17/01/02 23:52:04 ID:XylJpY66 NGネーム登録 NGID登録 報告
落とさせないぜ?
 ▼ 898 エレキッド@リュガのみ 17/01/03 16:27:42 ID:ko/Xcawc NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
廃人ssよりこっちのほうがw
 ▼ 899 エリキテル@ねばりのかぎづめ 17/01/08 23:53:42 ID:2JIfIWo2 NGネーム登録 NGID登録 報告
好きですねー
 ▼ 900 ウインディ@きのみジュース 17/01/09 10:57:19 ID:2sH5UmPU NGネーム登録 NGID登録 報告
9 0 0 突 入
 ▼ 901 フワンテ@ボーマンダナイト 17/01/11 15:39:39 ID:Fg4zwSB. NGネーム登録 NGID登録 報告
900!
 ▼ 902 マフォクシー@バトルレコーダー 17/01/12 17:27:14 ID:rTZ14TAs NGネーム登録 NGID登録 報告
あげすぎてSS分入らなくならないだろうか
 ▼ 903 黒羽真◆Ju6JKuHffQ 17/01/12 17:39:14 ID:xWTEVOFs NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
>>902
次スレは立てるから大丈夫やで!
というか本当に書くことになりそやな……
(sageつつ)
 ▼ 904 フシデ@ヤドランナイト 17/01/17 23:30:43 ID:amFiOaT2 NGネーム登録 NGID登録 報告
あげ
 ▼ 905 メタモン@ひかりのこな 17/01/19 22:17:33 ID:HVCoXKlU NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
あげ!
 ▼ 906 タッツー@りゅうのウロコ 17/01/22 16:39:26 ID:33mdzDao NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
あげあげ
 ▼ 907 ソーナンス@ウブのみ 17/01/23 22:15:02 ID:JHi9t.mU NGネーム登録 NGID登録 報告
ぶちあげ
 ▼ 908 オシャマリ@トライパス 17/01/24 13:10:02 ID:XDJa.lwc NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 909 メガチルタリス@ながながこやし 17/01/29 22:45:21 ID:IKKQ5YUg NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
あご
 ▼ 910 黒羽真◆Ju6JKuHffQ 17/01/31 06:07:56 ID:7QG7ib6c NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
もうこれどう考えても今日中に落ちたりしませんよね
ってことで本当に残っちゃったんで書きます
2/14に落とせるように頑張るんで、乞うご期待!
誰もあげなくてもここからは僕が毎日あげるので落ちる心配は多分ないです
 ▼ 911 めざめるパワー a 17/01/31 23:08:15 ID:Z.26RaYU NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
>>910
いえい
 ▼ 912 黒羽真◆Ju6JKuHffQ 17/02/02 17:01:12 ID:jQ0QWByg NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
あげ
 ▼ 913 オニドリル@さらさらいわ 17/02/03 11:55:01 ID:VX03q1qI NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
>>910
キター!
 ▼ 914 黒羽真◆Ju6JKuHffQ 17/02/03 16:27:09 ID:t13rB7mQ [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
そうだそうだ
なんかシーンのリクエストとかあったりします?
あったら入れますけども(誰と何を的な感じで教えていただけると)
ないならないでそのままやるんでいいです
 ▼ 915 【195えん】 ひろった! 17/02/03 19:31:29 ID:OgPh8GIs NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
そのままが良いです!
 ▼ 916 黒羽真◆Ju6JKuHffQ 17/02/03 20:04:53 ID:t13rB7mQ [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
>>915
いや、まだ書いてないんで……
ちょっとしたシーン挟むだけってのを聞こうかと
大筋は変わらんですよ
なるべくたくさんつっこみたいのでみなさんに願望を……と少し思った次第で
というか、色々ネタが欲しい(妄想のとは誰も言ってないぞ)
 ▼ 917 ジヘッド@カシブのみ 17/02/04 18:26:16 ID:6OK1Bfoc NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
>>916
微エロオナシャス
 ▼ 918 黒羽真◆Ju6JKuHffQ 17/02/04 19:10:39 ID:eIkmoj1A NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
>>917
なぬっ!?
OK深夜テンションで入れたろうじゃないの
誰がいい?(3人とかは流石に持たない)
どこまでが微なんだろう……
 ▼ 919 ミネズミ@ディアンシナイト 17/02/05 17:51:01 ID:O8vZNCe6 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
>>918
普通にキョウヘイトウコ
男女としての関係をもう一歩進めてほしい
 ▼ 920 黒羽真◆Ju6JKuHffQ 17/02/05 17:55:35 ID:QRB3qnAs NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
>>919
ほうほう……
一線は絶対に超えないってことでよろしいんであればですがね
 ▼ 921 マグマッグ@スーパーボール 17/02/06 06:01:52 ID:ix1CtTsA NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
>>920
よろしくお願いします。
 ▼ 922 黒羽真◆Ju6JKuHffQ 17/02/07 11:44:05 ID:pBOFS/J2 [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
書いててポケモン全然出てないしこれぽかんむなるくね? とふと思った
 ▼ 923 ギアル@タンガのみ 17/02/07 16:48:04 ID:nYY6Iiu6 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
>>922
クロバットとサ−ナイトで何とかなりませんか
 ▼ 924 バルチャイ@メガバングル 17/02/07 16:54:26 ID:aeBXiFxo NGネーム登録 NGID登録 報告
>>922
需要あるからせーふ
 ▼ 925 黒羽真◆Ju6JKuHffQ 17/02/07 17:09:29 ID:pBOFS/J2 [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
>>923
ならんこともない、というかあるけども
それが今回書いてるやつの核にはならんもんで

>>924
ありがとうございます!

というわけでぽかんむは気にせずそのまま続行します
 ▼ 926 黒羽真◆Ju6JKuHffQ 17/02/10 17:20:49 ID:N2nm/1hY NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
あげ
 ▼ 927 メガバクーダ@びっくりこやし 17/02/11 14:41:50 ID:lXX8FnoE [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
うめ
 ▼ 928 リグレー@ハイパーボール 17/02/11 14:46:51 ID:lXX8FnoE [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
FM-Kだけど、カノコ〜ヒオウギまでで3時間ってさ、夏の函館〜札幌くらいだよw
 ▼ 929 黒羽真◆Ju6JKuHffQ 17/02/11 16:27:02 ID:TDRUkc3M NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
>>928
ガチですか
まあ地球一周を機械使わず16時間でできる世界ですし(カイリュー)その辺はツッコミなしでw
 ▼ 930 黒羽真◆Ju6JKuHffQ 17/02/12 10:43:23 ID:.FuVqGiY NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
さて
昨日の夜の深夜テンションもあって書き終えたわけだが
早いですけど明日投下しますね
……今日がいいですか?
 ▼ 931 黒羽真◆Ju6JKuHffQ 17/02/13 16:26:38 ID:HzryHlD. [1/30] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
それでは投下していきます
 ▼ 932 黒羽真◆Ju6JKuHffQ 17/02/13 16:27:14 ID:HzryHlD. [2/30] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
2月14日。バレンタイン。

由来的には3世紀ごろに聖バレンタインなるキリスト教徒が殉教したとか言われているが、そんなもん青春真っ盛りの学生たちには関係ないのである。

ショートホームルームが終わって放課後に突入した教室はそれはもう喧騒に満ちていた。

「お前、何個もらったよ?」「い、今からが本番だし!」などと言った会話がクラスのあちらこちらで、というか全域で行われている。

そんな中俺は、というと、誰の目にも留まることなくこっそりと教室を抜け出すのだった。

早足に廊下を歩きながら、俺は昨日の夜、突然起こった出来事を回顧する。
 ▼ 933 黒羽真◆Ju6JKuHffQ 17/02/13 16:27:44 ID:HzryHlD. [3/30] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

昨晩、借りてきたDVDの映画をトウコと暇つぶしに見ていた俺の元に来客があったのだった。

ーーガチャリ。

「「おっじゃまっしまーす!!」

…………訂正のお知らせ。来客ではなく、侵入者である。

キョウヘイ「おいなんで鍵持ってんだよ!? ルリが持ってた鍵は返して貰ったろ?」

メイ「ルリのは、ね。いつから私がキョウヘイんちの鍵を持っていないと錯覚していたぁーッ!」

芝居掛かった調子で腕を広げるメイの頭をパシッと一喝。

メイ「キャーッチ!」

すると、広げていた腕を突然閉じて、メイは俺に抱きついた。
 ▼ 934 黒羽真◆Ju6JKuHffQ 17/02/13 16:28:17 ID:HzryHlD. [4/30] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
キョウヘイ「ちょっ、離れろって!」

トウコ「そ、そうだよ! キョウヘイから離れて!」

ルリ「抜けがけ禁止!」

3人がかりでなんとか引き剥がすと、メイは不満そうに唇を尖らせる。

メイ「えー? ダメ? なんでー!?」

トウコ「ダメに決まってるじゃん!」

ルリ「ひとりだけずるいし!」

メイ「じゃあ、3人一緒にならいいの?」

メイの提案にトウコとルリはたじろぐように目を瞬かせた。

ルリ「えっ……? ……ま、まあ、それなら」

トウコ「えっと……うん、いいと、思う……」

メイに上手く丸め込まれるトウコとルリ。

俺は慌てて止めにかかる。

キョウヘイ「べ、別に、それやらなくても良くない?」
 ▼ 935 黒羽真◆Ju6JKuHffQ 17/02/13 16:28:50 ID:HzryHlD. [5/30] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
3人「「「やるのっっっ!!!」」」

全力で即答されて次なる手を俺が考えているうちにーー

むぎゅっ、と。

お腹と両腕に、柔らかい感触が発生した。

キョウヘイ「…………なっ!? ちょっ……!!」

咎めようとするも、唐突すぎる出来事に脳が付いて行かず、言葉が続かない。

ーー首筋に当たる、3つの温かい吐息。

ーー服を通して伝わってくる温かい体温と、3つの早鐘のような鼓動。

それらは、俺の脳が一瞬でオーバーヒートを起こすには十分すぎるような状況である。

実際がどうかは知らないが、体感的にはかなり長い時間が流れ、3人はやっと離れてくれた。

3人とも、少し顔を俯けて、無言のまま立ち尽くしている。

このままだと居づらい空気が流れることは容易に予想されたので、俺はなんとか話題提供を試みた。
 ▼ 936 黒羽真◆Ju6JKuHffQ 17/02/13 16:29:20 ID:HzryHlD. [6/30] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
キョウヘイ「……で、なんで来たんだよ。まさか……だ、抱きつきに来たわけでもないだろ?」

すると、メイとルリが思い出したように顔を上げる。

ルリ「そうそう。ちょーっと用件が、ね?」

メイ「うんうん。とゆーわけなので、キョウヘイどっかいって!」

しっしっ、とメイは手を振って俺がこの場で邪魔だと示した。

キョウヘイ「えっ? なんで俺がどかなきゃいけないんだよ」

メイとルリは呆れ返った顔で俺を見る。

ルリ「もう、それくらい察してよね」

トウコ「ちょっと3人で話したいから、2階でも行っててくれない?」

二人だけならともかく、トウコにまで言われては従うしかなかった。

キョウヘイ「分かった分かった……」

俺は渋々階段を上っていった。
 ▼ 937 黒羽真◆Ju6JKuHffQ 17/02/13 16:29:53 ID:HzryHlD. [7/30] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
トウコ「キョウヘーイ! 降りて来ていーよー!」

トウコに呼びかけられ、俺は部屋を出て階段を降りる。

下へ着くと、ルリがにっこりとこちらを見て、聞いた。

ルリ「念のため聞くけど、明日予定なんかないよね?」

キョウヘイ「そりゃあるわけないわな」

ルリ「じゃあいいの」

返答だけ聞いているとまるで俺が一人ぼっちな人に聞こえるが、明日はトウコと家で過ごすつもりなので予定がないだけである。

と、横からにゅっと紙が差し出される。
 ▼ 938 黒羽真◆Ju6JKuHffQ 17/02/13 16:32:53 ID:HzryHlD. [8/30] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
メイ「じゃあ、明日の放課後、ここ来てくれる?」

紙を開いてみると、それは学校周辺の地図だった。

学校から北に少し上がった場所に赤丸がつけられている。

キョウヘイ「……? よく分からんけど、了解」

俺に紙を渡すと、メイはもじもじとせわしなく体を揺らした。

そんなメイが何を考えているかを読み取ることは出来なかったが、それは明日になればわかる話だ、と思い直す。

ルリ「それじゃ、用も済んだし帰るね」

メイ「もうちょっといたかったけど、時間も時間だし」

パタパタと忙しく、二人は玄関を出て行った。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
 ▼ 939 黒羽真◆Ju6JKuHffQ 17/02/13 16:34:54 ID:HzryHlD. [9/30] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
と、そんなわけで回想終了。

あーうるせえ。

思い出しただけで少し耳が痛くなって来た。

もっとも、騒がしいのはどっちかと言えば好きな部類に入るのだが。

校門を出、地図を確認しながら歩くこと5分弱。

目的の場所は、小洒落たカフェだった。

一瞬間違えたかと思って地図を見直すが、丸で示されている場所は何度見てもここである。

仕方なく扉を押すとカラリンコロリン、と透き通るような音色が頭上から響くあたり、そこはかとなく高級感が感じられた。

マダム方が昼下がりにお茶をしていそうな雰囲気の内装なのだが、店内は学生と思しき少年少女が席の大半を埋め尽くしている。

なんか場違いだなー、と思いながらキョロキョロと辺りを見回すと、一番奥で手招きをしているメイたちを発見した。

メイ「こっちこっちー!」

机に近づき、トウコが自分の横の椅子を引く。
 ▼ 940 黒羽真◆Ju6JKuHffQ 17/02/13 16:35:33 ID:HzryHlD. [10/30] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
誘導に従って腰掛けると同時に、3人から声が飛んで来た。

3人「「「ハッピー・バレンタイン!!!」」」

キョウヘイ「ハッピーバレンタイン。それで、ここで何をするんだ?」

応えつつ俺が聞くと、ルリがすすすっとメニューを出し、トウコがその真ん中を指差す。

トウコ「ここね、バレンタインの一週間前後だけバレンタイン限定メニューが出てるの。それが美味しいって評判でさ」

メニュー1面にでかでかと載っているのは、チョコとフルーツの大きなパフェだった。

キョウヘイ「……高いな」

思わずそうこぼしてしまったが、しょうがないのではないだろうか。

絵の下の方にちんまりと書いてある値段は、堂々の4桁。

それも2千円台である。

メイ「まあまあ。こんな日だし、いいでしょ?」

ルリ「みんなで1つ食べるんだから割り勘だよ」
 ▼ 941 黒羽真◆Ju6JKuHffQ 17/02/13 16:37:17 ID:HzryHlD. [11/30] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
4人でパフェ1つってどうなんだ?

とは思ったが、絵を見る限りかなりの大きさっぽいし、割り勘で500円ちょっとになるんであればちょうどいいのだろうか、と考え直した。

注文をし、しばらくの雑談タイムを経て、パフェが運ばれてくる。

店員さんが不安定に片手で持っているトレーの上には、その店員さんの顔よりも大きなパフェの容器が乗っていた。

ルリ「わ、大きいね〜」

トウコ「4人じゃなかったら食べきれなさそう」

ゴトン、とパフェがテーブルの中央に置かれ、それぞれの目の前にスプーンが配置される。

メイ「食べよ食べよ!」

4人「「「「いただきまーす!」」」」

一斉に、4つのスプーンがパフェに突き立てられた。

チョコが入っているらしい生クリームと、近くにあったイチゴも巻き込んで口に入れる。

生クリームとチョコの甘さが口中に広がり、続いてイチゴの爽やかな酸味が甘ったるくなった口内に弾けた。
 ▼ 942 黒羽真◆Ju6JKuHffQ 17/02/13 16:39:24 ID:HzryHlD. [12/30] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルリ「んー! 美味しい!」

トウコ「甘〜い!」

メイ「苦いの、あんまりないね〜」

やはり甘いもの好きは女子みんな共通なのか、すごい勢いで3人はパフェを食べ進めていく。

邪魔しない程度に俺も手を出すが、それで食べる量は少しだ。

もちろん嫌いなわけではないが、食べたい人が食べるのが一番いいだろう。

と、その時、カツン、とごく小さな音がして、俺のスプーンの動きが止まった。

トウコ「あ、ごめん」

トウコの出していたスプーンとぶつかってしまったらしい。

キョウヘイ「悪い」
 ▼ 943 黒羽真◆Ju6JKuHffQ 17/02/13 16:41:11 ID:HzryHlD. [13/30] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
手刀を切って、そのまま気にせず食べようとした俺だったが。



ーーーーーー間接、キス…………?



口に入れる直前でなぜか浮かんだその言葉。

そして、接触した、お互いのスプーン。

これは、そう言えなくも……ない?

いやそれを言ってしまえば、この大きなパフェを4人でつっついているのもかなりの高確率でアウトなわけで……。

乙女かなんかか! というツッコミが同じく脳内で入れられるも、思考は止まらない。

お陰で、かなり食べにくくなってしまった。

メイ「? キョウヘイ、食べないの?」

キョウヘイ「あ、いや、た、食べるよ」

「3人とも気にしていないのに、俺だけそんなことを気にしてどうする」と俺は心を無にしてスプーンを口に入れる。
 ▼ 944 黒羽真◆Ju6JKuHffQ 17/02/13 16:42:49 ID:HzryHlD. [14/30] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
メイ「いっぱい食べたね〜」

トウコ「うんうん、美味しかったし」

結局俺はあまり食べられていないが、3人ともとても満ち足りた表情だったので、それで良かったのだろう。

ルリ「じゃ、そろそろ本題」

メイとルリが自分のバッグに手を突っ込んだ。

キョウヘイ「さっきのを食べるのが本題じゃないのか?」

そもそものここに来た理由がパフェだと思っていたのだが、違うらしい。

メイ「まっさかー」

ルリ「流石にそんなわけないよー」

トウコ「キョウヘイ、今日がなんの日かわかってる?」

3人に同時に否定されて俺は口をつぐんだ。

キョウヘイ「そ、そりゃ知ってるけどさ」
 ▼ 945 黒羽真◆Ju6JKuHffQ 17/02/13 16:45:15 ID:HzryHlD. [15/30] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルリ「はい、これ」

メイ「バレンタインなんだから、こうじゃないと」

ばつが悪くなって顔をしかめる俺の目の前に、綺麗に包装された二つの箱が差し出された。

中身は、流石に言われなくても分かる。

キョウヘイ「お、ありがとう」

受け取りながらちらっとトウコを見ると、トウコは人差し指を唇に当て、微笑む。

トウコ「私は、あとで」

キョウヘイ「じゃ、それも楽しみにしとくよ」

俺が箱をバッグに入れると同時に、ルリがワリカン分のお金をテーブルに置いて椅子から降りた。

ルリ「それじゃあ……ま、またねー!」

メイ「あ、私も! じゃ、キョウヘイ、すぐあとで!」

メイも同じようにお金を置いて、ルリと一緒にそそくさと店から出ていった。
 ▼ 946 黒羽真◆Ju6JKuHffQ 17/02/13 16:47:26 ID:HzryHlD. [16/30] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
キョウヘイ「……あいつら、どうしたんだ?」

どう考えても二人の行動はおかしい。

明日また学校があるとはいえ、それで「すぐあとで」なんて言うはずがないのだ。

それに、いつもと違ってあっさりと帰られ、肩透かしを食らったような気分である。

トウコ「どうもしてないんじゃない? チョコ渡した後そんなに長くその人の前にいないって」

キョウヘイ「そんなもん?」

トウコ「たぶんね。さ、私たちも帰ろ?」

キョウヘイ「うん、そうだな」

メイとルリの件は、はぐらかされた気がしないでもないが、とりあえず保留にしておこう。

レジで2人の置いていったのと、俺の財布から出した2人ぶんのお金を合わせてレジに出し、俺たちは店を後にした。
 ▼ 947 黒羽真◆Ju6JKuHffQ 17/02/13 16:49:47 ID:HzryHlD. [17/30] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
そう遠くもない道をゆっくりと話しながら歩いて、帰宅。

そろそろ春とはいえ風邪を引いてはいけないので、入念に手を洗いうがいをして、俺は椅子に腰を落ち着ける。

いつものように俺の真正面に座ったトウコは、すっと俺のバッグを指差した。

トウコ「もらったチョコ、早く食べないと」

キョウヘイ「早い方がいい? じゃあ食べるか」

バッグに手を突っ込み、二つの箱のうち一つを俺は取り出した。

手にあったのは、メイが渡してくれた方だ。

箱を開けると、中からはハート形のキラッキラにデコられた平らなチョコが3つ。

トウコ「わー! ストップストップ! 撮らせてー!」

いつの間に構えていたのか、手に持つ携帯をこちらに向けてカシャカシャ鳴らす。

そのままの勢いでスマホを弄り出すトウコを見つつ、俺はチョコを一口かじった。

口に広がるのは、まず甘み。

次に来ると思っていた苦味はーー全くやって来なかった。
 ▼ 948 黒羽真◆Ju6JKuHffQ 17/02/13 16:52:18 ID:HzryHlD. [18/30] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
あの苦さがあまり好きではない俺にはありがたい限りだ。

メイも俺の好みを熟知しているらしーー

キョウヘイ「ーーーーーーんっ?」

チョコの中に、何かもしゃっとした感触があった。

何事か、と口元にあったチョコを離して断面を覗き込む。

キョウヘイ「…………なんだこれ」

チョコの中に、ラップに包まれた紙が入っているのだった。

ラップから取り出して紙を開いてみると、メイの丸文字でこう書かれている。

『いつもの高台来てね』

俺は急いで他のチョコを食べ終わりーー他のチョコに紙は入っていなかったーー立ち上がった。

キョウヘイ「ちょっと、外行ってくるわ」

トウコには申し訳ないが、呼び出されて行かないなんて選択肢は存在しない。

トウコ「んー? いってらっしゃーい」

別にやましいことはしていないが、トウコが特に何も聞かなかったのはありがたかった。

上着を二枚引っ掛けて、足早に俺は家を出た。
 ▼ 949 黒羽真◆Ju6JKuHffQ 17/02/13 16:54:57 ID:HzryHlD. [19/30] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
俺がいつ食うかなんて分かるはずがないので、もしかするとメイはずっと高台で待っているのだろう。

そう考えた俺は、走りに走って高台へ。

息を整えつつ、きょろきょろとメイの影を探す。

ベンチに座るメイを発見し、俺は歩み寄った。

キョウヘイ「おーい、どうしたんだ?」

メイは振り向き、俺の姿を確認すると頬を緩めた。

メイ「あ……キョウヘイ。来てくれたんだ」

嬉しそうに微笑むメイは、さっき会った時のような快活さはなかった。

代わりにあるのは、なんというのだろうか、このしずしずとした様子は。

乙女らしい、とでも言えばいのか。

キョウヘイ「そりゃ来ないわけないだろ。でも、俺がいつチョコ食うかも分からないし、待ったらどうする気だったんだ?」

メイ「あー……ま、まあ、それはね? ……それに、キョウヘイのためだったら、いくらでも、待てるよ……?」

隣に座った俺の腕に抱きかかえるようにしてしがみつき、上目遣いに俺の目を見つめる。
 ▼ 950 黒羽真◆Ju6JKuHffQ 17/02/13 16:58:12 ID:HzryHlD. [20/30] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
不覚にもドキッとしてしまったが、努めて平静を装った。

キョウヘイ「あ、ああ。ありがとう」

見つめ合ったまま、無言の時間が過ぎる。

メイは俺から目をそらして再び前に目をやった。

メイ「…………綺麗、だね」

真っ赤に染まった太陽が、地平線に還っていく。

太陽が沈んでいく様子をしばらくぼーっと見ていたメイだったが、俺の手を両手で包み込むように握った。

メイ「……ごめんね。別に邪魔しようとしたわけじゃないんだけど……」

顔を俯けて、申し訳なさそうにメイは小声で俺に弁解する。

トウコといた俺の時間を取ってしまったことを気にしてでもいるのだろうか。

キョウヘイ「何言ってんだ。バレンタインは好きな人といる日だろ? メイが好きじゃないなんて一回も行ったことないぞ?」

俺の言葉に、メイは少し赤くなっている目を見開いた。
 ▼ 951 黒羽真◆Ju6JKuHffQ 17/02/13 16:58:45 ID:HzryHlD. [21/30] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
目元をちょんちょんと拭って、太陽に赤い光に照らされた頬をさらに赤くしながら、くすくすと笑い始める。

メイ「二股しちゃ、ダメだよ?」

キョウヘイ「あ、当たり前だろっ!?」

思わず叫ぶと、メイは更にひとしきり笑って、それから俺の肩に頭を預けた。

垂れるツインテールがさわさわと首の周りで動いて、くすぐったい。

耳元に口を寄せ、メイが柔らかい吐息を当ててくる。

メイ「ね、キョウヘイ?」

キョウヘイ「……ど、どうした?」

メイ「……アレ、私にもやってくれない?」

キョウヘイ「あ、アレって、なんだよ」

メイ「……クリスマス、ルリにやってたやつ」

キョウヘイ「…………あぁ、膝枕?」

納得して聞き返すと、メイはこくんと頷いた。

メイ「ちょっと羨ましかったんだよ? 同じの言うのもちょっとまずいかなーと思ったんからお姫様抱っこにしてもらったけどね」

キョウヘイ「そ、そうか。いいよ、寝なよ」
 ▼ 952 黒羽真◆Ju6JKuHffQ 17/02/13 17:01:10 ID:HzryHlD. [22/30] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
俺が膝をとんとんと叩くと、メイは肩から離れてその場に横たわった。

手のやり場がないのか、俺の服の裾を両手でちょこんと掴む仕草が、とても可愛い。

キョウヘイ「…………な、なんだよ。じーっとこっちを見て……?」

頬を膨らませ、メイが不満そうな声を出す。

メイ「……ルリの時は、頭撫でてた」

憮然と俺を見るメイに、苦笑を禁じ得なかった。

キョウヘイ「もちろん、メイにも」

メイの目をじっと見つめながら、俺はメイの頭に手を添えた。

縛ってある髪を解かないように注意しながら、そっと手を左右に動かす。

メイ「ひゃぁ……」

メイは一瞬体を強張らせるが、すぐに脱力した。

そのうち、脱力具合はピークに達し、規則正しく浅い呼吸音が耳に届く。

そのままでは寒いだろう、と俺は上着を一枚脱いで布団のようにメイにかけた。

吹き付ける風が体温を奪っていくが、背に腹はかえられない、というやつである。

少し震えつつ、俺はゆっくりメイの頭をなで続けた。
 ▼ 953 黒羽真◆Ju6JKuHffQ 17/02/13 17:07:41 ID:HzryHlD. [23/30] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
すぅっ、と意識が緩やかに浮上して、私は目を覚ました。

まず気づいたのは、頭に触れて優しく行ったり来たりする、暖かい感触。

その手の持ち主は、まだ私が起きたことに気づいていないらしかった。

メイ(まだなでててくれたんだ……)

それから、自分の体の上に何かが載っていることに気づく。

黒と青の、私には大きめのその上着は当然私のものではなくーー

メイ(きょ、キョウヘイの……!?)

意識した瞬間、急に体が熱くなる。

メイ(…………キョウヘイの、匂いが……)

思わず慌てると同時に、どこか落ち着ける気がした。

こういう優しいところが好きだな、と改めて思い直していると、キョウヘイが私に気づいた。

キョウヘイ「おっ、起きたか」
 ▼ 954 黒羽真◆Ju6JKuHffQ 17/02/13 17:10:05 ID:HzryHlD. [24/30] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
メイ「うん。寝ちゃってた。ごめんね」

本当は寝るつもりまではなかった、と謝ると、キョウヘイはにやっとからかうような笑みを作る。

キョウヘイ「メイの寝顔、可愛かったよ?」

メイ「…………っっ!!?」

一瞬で頬が熱を帯び、私は声にならない叫び声を上げた。

キョウヘイはなおも私を撫でるのをやめずに続ける。

キョウヘイ「冗談冗談。……でもないかな?」

どっちだよ、なんて冷静なツッコミはしていられなかった。

急いで起き上がって上着を返し、私はキョウヘイからさっと離れる。

これ以上くっついていたらおかしくなりそうだった。

不思議そうな顔をしているキョウヘイから目をそらすため、私は携帯を起動して時刻を確認する。

本来帰ろうと思っていた時刻をとっくに過ぎていた。

一体どのくらい寝てしまったのだろうか。
 ▼ 955 黒羽真◆Ju6JKuHffQ 17/02/13 17:12:34 ID:HzryHlD. [25/30] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
メイ「日も沈んじゃったし、帰るね」

キョウヘイ「そうだな。もう暗くなる」

ベンチから一緒に立ち上がって、歩き出す。

と、そこで私は、まだやってないことを思い出した。

本当にやってもいいのか、葛藤した末、呟く。

メイ「……いつもならトウコに譲ってるけど、バレンタインくらい……いいよね?」

キョウヘイ「ん? どうした?」

キョウヘイの問いには答えずに、私はキョウヘイの進路を塞ぐように目の前に躍り出た。
 ▼ 956 黒羽真◆Ju6JKuHffQ 17/02/13 17:16:53 ID:HzryHlD. [26/30] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
そのまま前に進んで、キョウヘイの肩に抱きつく。

キョウヘイ「えっ? ちょっと……?」

ここまで来たら、と躊躇を振り切って、私はキョウヘイに顔を近づけた。

……トウコの分をとっては悪いから、時間は少しだけ。

キョウヘイから離れると、キョウヘイは目を丸くして驚いている。

メイ「ふふっ。ほら、帰るよー?」

キョウヘイ「……………………あ、ああ。分かった」

なおも動揺しているキョウヘイに、してやったりと笑いかけて、私はキョウヘイの腕を取った。
 ▼ 957 黒羽真◆Ju6JKuHffQ 17/02/13 17:20:10 ID:HzryHlD. [27/30] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
辺りは少し暗くなっていたので、メイを家まで送ってから俺は家に帰った。

キョウヘイ「ただいまー……」

トウコ「あ、おかえりー! 早かったね」

キョウヘイ「早かった……かな?」

上着を脱ぎながら疑問形で呟いた俺に、トウコは腰に手を当てて近づいてくる。

その手には、俺の携帯が握られていた。

トウコ「それより! キョウヘイ、携帯置いてったでしょ?」

キョウヘイ「あ、そういえば持ってってないな」

トウコ「もう、早く電話してあげなよー?」

キョウヘイ「了解っと」

トウコから携帯を受け取って着信履歴を開くと、確かに一番上にはルリの文字。

タップして掛け直すと、ワンコールもしないうちに繋がった。
 ▼ 958 黒羽真◆Ju6JKuHffQ 17/02/13 17:22:21 ID:HzryHlD. [28/30] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
キョウヘイ「もしもし? さっき電話出られなくてごめんな。用事は?」

ルリ『………………え、えっとね……うち来て!」

ぷつん、つー、つー、つー。

慌てた調子でつっかえつっかえにそう言い残して、電話はすぐに切られてしまう。

どうしようか、とトウコを見ると、トウコは笑って首肯した。

その抱擁されるような優しい笑顔は、口に出さなくても「何も聞かないよ」と主張していた。

キョウヘイ「……悪い、もう一回行ってきていいか?」

トウコ「別にいいよー。あ、でもチョコは食べてから行きなよ?」

キョウヘイ「あ、そうか。確かに」
 ▼ 959 黒羽真◆Ju6JKuHffQ 17/02/13 17:24:11 ID:HzryHlD. [29/30] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
脱ぎかけの上着を再度着込み、俺は椅子に腰を下ろす。

バッグを手元の持って来て、その中からもう一つの箱を取り出した。

ラッピングを破かないように丁寧に解いて、中身を確認する。

正方形に近い箱の中には、ハート型のチョコが4つ入っていた。

ちょうど、4つ葉のクローバーのような形だ。

そのうち一つを手にとって、一口かじる。

こちらも苦味が抑えられていて、俺の好みの味だった。

直接好みなどを言ったことはないのだが、なぜこうも俺の個人的な部分が把握されているのだろうか。家の鍵とか。

なるべく早く、しかし味わいながら食べる、という結構な無理難題をクリアし、俺は再び家を出た。
 ▼ 960 黒羽真◆Ju6JKuHffQ 17/02/13 17:27:05 ID:HzryHlD. [30/30] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルリの家に到着し、インターホンに手を伸ばす。

俺がボタンを押すより早く、ドアが勝手に開いた。

家にいたのは幽霊……なんてわけもなく、普通にルリだった。

ルリ「キョウヘイがきたの見えたから先に開けちゃった」

キョウヘイ「こっから見えるか……? まあ、お出迎えありがとう」

ルリ「うん! とりあえず、上がって」

ルリに促され、俺は家へ上がる。

通された部屋は、前来た時と同じくとても片付いていた。

ルリがぺたんと床に座るので、俺もそれに習って床に手をついて腰を下ろす。

と、後ろからルリが思いっきり体重をかけて抱きついて来た。

キョウヘイ「わっ……!? い、いきなり何すんだよ!」

ルリ「何って……抱きついてる?」

キョウヘイ「いや、そうじゃなくて……」
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