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【ポケダン風味SS】天と地の旅物語

 ▼ 1 去ログのSSを修正します 17/03/21 15:43:55 ID:C7fs05E2 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


太陽と月は輝きを増す


偽りの世界においても、天地は開ける──

 ▼ 164 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 19:43:43 ID:Ish0PJRg [1/99] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
マフォクシー「さよならだ、ドーブル。来世があるとしたら…次は、異なる形で巡り会えればいいな」

ドーブル「私は……絵描きという仕事に誇りを持っています。あなたもそうだったはずです……“生きた証”を永遠に残そうという、同士としてですね」

マフォクシー「……さらばだ」

ドーブル(……マコ)


ボ オ ォ ォ ォ ォ … 。


マフォクシーのだいもんじが、ドーブルを包み込んだ。

ニンフィア「ド、ドーブル……。……ドーブルウゥゥゥゥ〜ッ!!!」

ゴーリキー「クッ……。俺たちが、不甲斐ないばかりに……」

マフォクシー「安らかに、眠れ──」

炎が、消失していく。

──だが。

マフォクシー「……!」

ピカチュウ「なっ……。ド、ドーブルの……」


跡地に、ドーブルの身体は存在しなかったのである。
 ▼ 165 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 19:44:26 ID:Ish0PJRg [2/99] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ドーブル「……フフ」


ドーブルは、生きていた。
……彼女の身体は、清廉潔白の如く透き通っていたのだ。


マフォクシー「お前自身が……。……“水”になることで…炎を耐え抜いた……。しかし、そんなこと、お前の技術では不可能だったハズだ!!」

ドーブル「私は、天に祈った。……自分の冥福ではなく、彼女の目が覚めることを。彼女の悪夢が、晴れることを。……その瞬間、私の身体は変幻していたのです」

ドーブル(そして、正真正銘この攻撃こそが、私の全てを傾けた総攻撃になるでしょう)

ピカチュウ「ドーブル……よかった……だが、なにをする気だ?」

ドーブル「…ふんっ!!」トピュッ


ドーブルは、巨大な水塊へと姿を変貌させた。


ドーブル「この攻撃……通用するともそうでなくとも……。これで、勝負が決まる……!!」

マフォクシー(ドーブル……)

マフォクシーは、自身の周囲に炎のバリアーを生み出す。

ドーブル「う、うおぉぉっ!!」バッ


そしてドーブルは空中に舞い、狙いを……マフォクシーに定めた。
 ▼ 166 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 19:45:04 ID:Ish0PJRg [3/99] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ドオォォ…。


ドーブルの身体は急加速し、その姿は一筋の光となる。


ピカチュウ「ド、ドーブル……。マフォクシーに突撃し、全てを終わらせるつもりだ……」

ゴーリキー「この勝負……。どちらが勝つんだあっ!?」



ボ ゴ オ ォ ォ ォ ォ ン … 。



炎と水。 

それらが、互いに衝突し合うのだ。


ピカチュウ「う、うわあぁぁぁっ!!」ドサァッ


その衝撃により、一同は吹き飛ばされてしまう。


ピカチュウ「うぅ……た、立っているのは……」


……立って、いたのは。
 ▼ 167 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 19:45:42 ID:Ish0PJRg [4/99] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
マフォクシー「……」

ニンフィア「マフォクシーが……立って……」


ドサァ…。


ニンフィア「……え?」


マフォクシーは、そのまま倒れ込んでしまった。


ドーブル「……」ハァ、ハァ


一方、ドーブルは重症を負いながらも……。
マフォクシーの前へと、立ち尽くしていた。


渦巻いていた炎は消えてしまっている。



ドーブルはどうやら、“勝利”、したのだ。
 ▼ 168 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 19:46:27 ID:Ish0PJRg [5/99] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
マフォクシー「……ルト」


ピカチュウ「る、ると……?」

ドーブル「マ、マコ……。今、確かに……私の、名前を……?」

マフォクシー「う、うわぁぁぁぁぁぁん! 自分、馬鹿だから…それで、ちょっと言葉知ってるから……。似合わない気取った口調なんて、しちゃったりして……!!」

ドーブル「……マコ!」

ピカチュウ「ハ、ハァ……。これが、コイツの本当の喋り方なのか……?」

マフォクシー「うん、私……わかってたのっ! 自分が名声とお金に溺れて……どんどん駄目になっていっちゃったって!! 好きだった漫画も、心から愛することができなくなっちゃったんだって!!!」

ドーブル「……あなた、本当は……」

マフォクシー「あなたからコンビ解消の話をされて、私……もうどうでもよくなっちゃった! でもって、この世界に来た後……ATZって言うおかしな集団に入って悪いこといっぱいすれば……自分のことを捨てられるって思ったのっ!!」

ゴーリキー「でも、実際は……そうではなかったと言うわけだな」

ドーブル「……悪行を心から楽しむことができるのは、それこそ一部の本当に性根の腐った、救いようのないどうしようもない輩だけです。大抵は、その後強烈な懺悔感に苛まれることになる」

マフォクシー「いつの間にか、“炎司”なんて呼ばれちゃってて……慕ってくれるポケモンたちも増えちゃって……。もう、引き返せなかったの……」

ドーブル「そう、あなたは優しすぎた。それが、あなた自身を苦しめることになったのでしょう」

ニンフィア「なぜ、マフォクシーさんはグラグラレスに来たの?」
 ▼ 169 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 19:46:59 ID:Ish0PJRg [6/99] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
マフォクシー「ATZの最高権力者……。“水司”にして…“創蛙”である、あのポケモンが……。『次にあのポケモンたちはマグマランドに向かう、因縁のあるお前が片付けろ』って言うから……」

俺「創蛙……」

マフォクシー「……そこで、私……少し“期待”してたの」

ニンフィア「期待……?」

マフォクシー「ルト。あなたなら、あなただったら……こんなダメダメな私を倒して終止符を打ってくれるって……。そして、そんな私を見事に打ち砕いてくれた……ルトの、バカバカァ〜ッ!!」ポコポコ

ドーブル「ちょっ、マコ……痛いっ………痛いって!!」

ピカチュウ「おいおい、負けた側に怒られてるぞ」

マフォクシー「私はもう……ATZを脱退する。真っ向な方法でこの世界から帰還を図る。……ルト、私……稼いだお金……一体何に使ってたと思う?」

ドーブル「え、な、なにって……」

マフォクシー「……漫画専門学校への、資金援助よ」

ドーブル「!」

マフォクシー「私はもう無理かもしれないけど、これからの漫画界……後進の育成のために、私が力になれたらって……」

ドーブル「い、いや、マコ。無理じゃない、無理じゃないんだ!!」

マフォクシー「え……?」
 ▼ 170 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 19:47:45 ID:Ish0PJRg [7/99] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ドーブル「その思いがあれば、まだ引き返せる……取り戻せるっ! マコ、また二人で…、『ナナホシー』…組まない? マコとルト、二人で一人なんだから……」

マフォクシー「ルト、あなた……。こんな私に、堕落した私に……もう一度、チャンスをくれるというの……?」

ニンフィア「私も、またナナホシーの漫画読みたいしね。読者として、応援してるよっ!!」

マフォクシー「み、皆……。こんなに酷いこと、したのに……本当に、ありがとう……」


“炎司”マフォクシー 〜和解〜
 ▼ 171 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 19:48:24 ID:Ish0PJRg [8/99] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「…ガッカリ、でござるな」


マフォクシー「!」


突如、一同の前に謎の声が響き渡る。


ピカチュウ「だ、誰だ……お前はっ!?」


「“炎司”ともあろうものが…かつての盟友に情けでもかけたつもりでござるか? そしてお前たち……今まで散々、我がATZの邪魔をしてくれたでござるな」


ゴーリキー「お、お前……。……もしやっ!!」


「そうだ、裏切り者の“闘司”君。同じく、たった今裏切り者に成り果てた“炎司”よ。……そうだ、拙者が──」



──“創蛙”、だ。
 ▼ 172 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 19:48:59 ID:Ish0PJRg [9/99] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
一同「!」


煙が上がり、そこより、とあるポケモンが姿を現した。


ニンフィア「こ、このポケモンは……ゲッコウガ! ええと、ポケモンタウンでハリテヤマさんを襲撃して……でもって、サザンドラの仲間で……。で、“水司”で“創蛙”なポケモンだっ!!」

ゲッコウガ「お前たちの前に姿を現すのは、これが初めてでござるな。……戦闘の基本は弱者から狙うべし。まずは……」シュタッ

ドーブル「ぐ、ぐぅっ……」

マフォクシー「!」

“創蛙”は、動けぬドーブルの身体を狙った。

マフォクシー「……だいもんじっ!!」ボオォッ

しかしマフォクシーのだいもんじが、“創蛙”の身体を包み込む。

ピカチュウ「おぉ、これは…決まったか?」


ポポポポン。


マフォクシー「!」

ゲッコウガ「“炎司”、貴様の実力はよく知っている。だが、貴様は炎……拙者は水だ。相性上不利なことも、よくわかるだろう?」

ゴーリキー「奴はあわを吐き出し、自身の周囲を防御したんだ! だから、だいもんじが消失したっ!!」
 ▼ 173 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 19:49:32 ID:Ish0PJRg [10/99] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ニンフィア「そんな……! たかがあわ如きが、なんて防御性能なの……!?」

ピカチュウ「これが、伝説に謳われた……。“創蛙”の実力って奴なのか……?」

ゲッコウガ「お主ら……何故拙者が“創蛙”と語られるかおわかりか?」

ピカチュウ「な、なんだと……?」

ニンフィア「なにかを“創”る、“蛙”だから……?」

ゲッコウガ「…まぁ、そんなところかな。では、とくとご覧に頂こう。この拙者の創作術…、水芸の嵐をっ!!」バシュシュ

ピカチュウ「うぉ、これは……!?」


“創蛙”は、水の手裏剣を生み出した。


ゲッコウガ「……ふんっ!!」ドシュシュシュッ

ピカチュウ「ぐ、くらあぁっ!?」

ニンフィア「きゃんっ……」

ゴーリキー「リキィッ!?」

ピカチュウたちは、“みずしゅりけん”をまともに喰らってしまうことになる。

ゲッコウガ「……他愛もない。まぁ、炎司……お主だけは咄嗟に防御したようでござるが」

マフォクシー「“創蛙”……たとえあなたがATZのボスであろうとも……。このポケモンたちには手出しはさせないっ!!」
 ▼ 174 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 19:50:06 ID:Ish0PJRg [11/99] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ゲッコウガ「フフ、炎司よ……お主は確かに強いが、それでも拙者は負ける気はしないでござるな。裏切り者の成敗は、ATZの首領の拙者が致そう……『毒舌』ッ!!」ベロ~ン

ニンフィア「…うわっ、汚いっ! 自分の舌を伸ばすなんて……」

ゲッコウガ「戦闘に“キタナイ”という言葉は存在しないでござるな。……さて、これでもうその戦闘は終わったわけでござるが」

ピカチュウ「は?」

マフォクシー「それは、どう……いう──」クラッ

ピカチュウ「お、おい、どうした……マフォクシー!?」


ドサッ…。


マフォクシーは、地面に倒れ込んでしまった。


ドーブル「マ、マコ……。あ、あなた…その“舌”、一体……なんなのですか……?」

ゲッコウガ「創蛙たるもの、忍者たるもの、毒の扱いにも長けていなくてはならない……この舌は、正真正銘の『毒舌』なのだ」

一同「!!?」

ゲッコウガ「拙者は体内に毒を秘めている。その毒は、あらゆる体内器官から放出することができることができるのでござるよ」

ニンフィア(おしっこする時大変そう)

“創蛙”は、毒を帯びた舌をマフォクシーに突き刺したのだ。
 ▼ 175 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 19:50:50 ID:Ish0PJRg [12/99] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ゴーリキー「……この“創蛙”の実力はATZの中でも一番だ。ドーブルが苦戦したマフォクシーをも、たった一撃で仕留めるとは!!」

ニンフィア「に、逃げるしか、ないの……?」

ピカチュウ「俺は、嫌だぜ。こんな奴から……逃げるなんてなぁっ!! ……“10万ボルト”ォッ!!」バリバリ

ゴーリキー「おぉっ、見事に“創蛙”にヒットッ! 奴は水タイプ。電気タイプの技は効果抜群──」

ゲッコウガ「……とでも、思ったのでござるか?」

ゴーリキー「なっ……!?」


“創蛙”は、ピンピンしていたのだ。


ピカチュウ「そ、そんな……馬鹿な……?」

ゲッコウガ「……忍法、分身の術。まぁ、『かげぶんしん』でござるな。今のは残像でござる。……ふんっ!!」ベロ~ン

ピカチュウ「おわっ……」


──絶体絶命、に思えたが。


ニンフィア「ピカチュウ……危ないっ!!」ババッ

ピカチュウ「二、ニンフィア……!?」
 ▼ 176 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 19:53:08 ID:Ish0PJRg [13/99] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ベチャッ……。


ニンフィアは、ピカチュウを庇って舌攻撃を代わりに受けたのだ。

ピカチュウ「ニンフィア…なんて馬鹿な真似をっ!!」

ゲッコウガ「まぁ、死ぬ順序が少々変わっただけで候。これで一匹撃破。次こそ仕留めるでござる」

………。

ニンフィア「……あれ?」

ピカチュウ「……え?」

ゲッコウガ「…………え゛? お、お主、なんで……。拙者の毒を喰らいながら、立っていられるのでござるかっ!?」

ニンフィア(…! 確か、デザートサンでも……)

そう。彼女は以前にも毒を喰らいながら、あまり身体に毒は回っていなかったのだ。

ゲッコウガ「お……お主、思い出したぞっ! “あの時”の!?」


……その時であった。


???「ピカチュウさんたち…助けに参りましたっ!!」

ピカチュウ「そ……その声はっ!?」
 ▼ 177 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 19:54:41 ID:Ish0PJRg [14/99] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
タウンで彼らが出会った、個人探偵のオノノクスであった。

オノノクス「私が来たからには、もう安心です。……そうですか。あなたが“創蛙”ですか。………そうですか」

ゲッコウガ「お主、何奴か……? ああそうでごさる。お主も見たでござろう。拙者は水を様々な形に創り変えることができる。……これこそ、拙者が“創蛙”なる証っ、所以っ!!」

オノノクス「……」

ニンフィア「オノノクスさん……助けに来てくれたんだね」

ゲッコウガ「お主、中々の実力者と見た。殺り合えば、苦戦は必須……でござるか。……良いでござろう。拙者はここを引き上げるでござる」ドロロンッ

“創蛙”は、煙を立てて消えていった。

ニンフィア(た、助かった……)

ゴーリキー「オノノクスさんよ、ありがとうな。あのままだと、俺たちは間違いなくやられていた」

オノノクス「いえいえ、礼には及びません。……それよりあなたたち……。あのサザンドラと、出会いましたか?」

ピカチュウ「……あぁ。あれから、アイスロックの遺跡で一度な。アイツ、レジアイスを倒して俺たちに『雪のオルゴール』をくれたんだ」

オノノクス「……そうですか。他に、変わったようなことは?」

ニンフィア「確か、古いモンスターボールを持ってたよ。なにか思い当たることでもあります?」

オノノクス「……。いえ、なにもありません。私の目的は、ただ一つ。“創蛙”とサザンドラを捕らえることです。……くそっ、“創蛙”を逃してしまうとは……」

ニンフィア「でも、オノノクスさんは私たちを助けてくれた。それだけでも、十分凄いよ」

オノノクス「ポケモンを助けることは、私の努めですから。……あなたたち、“火山”へと向かいなさい」
 ▼ 178 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 20:05:14 ID:Ish0PJRg [15/99] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ピカチュウ「火山?」

オノノクス「私の調査では、そこに『焔』のオルゴールがあるはずです。あなたがたは、『砂』『雪』と二つのオルゴールを入手している。『草』は“創蛙”、そして最後の一つ……」

ゴーリキー「『闇』のオルゴールだな。それは、既にATZが入手している。……苦天で競り落として」

ニンフィア「やっぱり苦天凄いね」

ゴーリキー「五つのオルゴールを“暗黒の地”に捧げるべき。さすれば、閉じられた世界は再び開かれん。それが、この世界に残る伝承──」

オノノクス「その暗黒の地と言うのは、恐らく、ATZの居住地である『アンホワイト』。しかし、そこに続くトンネル内には厳重に封印が施されており、一部の限られたATZ以外は通ることはできない」

ゴーリキー「しかし、今なら……」

マフォクシー「はい……私がいます。鍵を持っていますから、封印を解くことが、できます」

オノノクス「私は、このお嬢さん方を連れてタウンへと戻ります。残った皆さんは、火山へと向かってください、健闘を祈ります!」

ドーブル「み、皆……頑張って……」

ピカチュウ「恩に切る……それじゃあ」

ニンフィア「う、うん、ピカチュウ。……張り切っていきましょっ!!」

ピカチュウ「クイズ番組の司会みたいだな」

ゴーリキー「リキリキィッ! 火山に負けないぐらい、燃え上がって行こうぜっ!!」


ピカチュウたちはオルゴールを入手するため、火山へと向かうのだ。
 ▼ 179 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 20:05:56 ID:Ish0PJRg [16/99] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
〜道中〜

ニンフィア「『T-5』……オルゴールを集める旅も、思えば色々あったよねぇ。私、友だち少なかったから……こんなに友だちと一緒に活動できたの初めてのことだから……」

ピカチュウ「色々楽しかったな、そう言えば」

ニンフィア「前にドーブルが言ってたの。『始まりがあるから終わりがある』って」

ゴーリキー「筋トレだって延々と続けるわけにはいかないからな。人間世界に帰れたら、また一緒に集まれればいいな」

ナエトル(僕、空気)

ニンフィア「あ、いたんだ君」

ナエトル(喋らないだけで存在感ってここまで薄くなるものなんですね)


ピカチュウたち(+ナエトル)は、火山の頂上へと辿り着く。
 ▼ 180 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 20:06:54 ID:Ish0PJRg [17/99] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
〜火山 頂上〜

ピカチュウ「10まんボルトッ!!!」


レジスチル『スチ〜〜〜ッ!!!』ドサッ


長き戦いの末、ピカチュウたちは護り主を撃破した。


ピカチュウ「……遂に戦闘描写すら面倒臭くなったか」

ニンフィア「もう精神的に色々辛いのよ、きっと」

ゴーリキー「うん……? レジスチルの身体に、『003‐Regi』って掘られてるぞ。なんなんだ、これ」

ピカチュウ「俺たちの知っちゃこっちゃねぇな。さぁ、タウンに戻ろうか」

ナエトル「なぜかオルゴールを持つのは僕なんですね。……重い……」ズッシリ


こうして、ピカチュウたちはアロガントタウンへと帰還した。
 ▼ 181 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 20:08:47 ID:Ish0PJRg [18/99] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ニンフィアへの進化、マフォクシーとの和解、ブリガロンの義兄弟ナエトルの合流。

“創蛙”との対峙、オノノクスの助け。

──マグマランドでの旅路も、様々なことが起きた。



いよいよこの長き旅も、終盤に差し掛かろうとしている。

旅の果て……ピカチュウたちは一体なにを知るのだろうか。


………
……
 ▼ 182 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 20:09:45 ID:Ish0PJRg [19/99] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
〜ポケモンタウン〜

ピカチュウ「なあ、サンドパン。“創蛙”はここには来なかったのか?」

サンドパン「あぁ、来なかった。正直ここまで出番がないとわかっていれば、俺も行けばよかったよ」

ゴーリキー「ドーブルとマフォクシーは病院か。アンホワイトまでは行けそうもないかもな」

ニンフィア「ところで、あの、オノノクスさんは?」

サンドパン「あぁ、彼なら……。『ヤボ用ができました』とか言って彼女らを病院へ送り届けた後、単身どこかへ行ってしまったよ」

ゴーリキー「個人探偵さんは大変なんだな」

ニンフィア「そうだ。ハリテヤマさんはあの後どうなったかな。……ちょ〜っと、様子見に行こうか」


ピカチュウたちは道草気分で、ハリテヤマの店へと向かう。
 ▼ 183 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 20:10:30 ID:Ish0PJRg [20/99] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
〜ハリテヤマのちゃんこ鍋〜

ニンフィア「……今度はオクタンさんが?」

ハリテヤマ「あぁ。どこかへふらっと出かけたきり、戻って来ない。給料も渡し損ねてしまったよ」

ピカチュウ「なにが、あったんだろうな?」

ハリテヤマ「という訳で人手不足だ。もしよかったら」

サンドパン「いや、こっちもこっちで大変なんでな。すまないが、バイトにつくことはできない」

ハリテヤマ(……読まれた)

ニンフィア「でも、心配だね……」

ピカチュウ(……あのオクタン。この前)


『創蛙を──』


ピカチュウ(あの時だけ、口調が変だった気がするぞ。それに、よくわからないことを喋っていたような)

ニンフィア「じゃ、ピカチュウ。次は病院に行くよ。ドーブルたちの様子を見に行かなきゃっ!!」

ピカチュウ「あ、あぁ……」
 ▼ 184 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 20:11:28 ID:Ish0PJRg [21/99] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
〜ポケモンタウン 病院〜

ドーブル「遂に、アンブラックへと行くのですね」

ピカチュウ「残党狩り、だな。ATZとの決着を付けてやる」

ニンフィア「……お腹、お腹が……お腹がぁ、痛くなってきちゃった……」

ゴーリキー「大丈夫だ。お前は今朝から何も食ってない」

ニンフィア「そーいうこと女の子の前で言うの、でりかしーに欠けると思うなぁ」

ドーブル「ピカチュウたち。私とマコはこのような状態のため一緒に行くことはできませんが。……せめて、“これ”を持っていって下さい」

ピカチュウ「筆……。お前の大切なものなんだろ……いいのか?」

ドーブル「あなたたちだからこそ、預けられるのです。私以外でもこの筆は使えるはずです。……画力があれば」

ピカチュウ「まぁ、この前のような出来ぐらいなら」

そしてピカチュウは、筆を受け取った。

マフォクシー「私もこの鍵を預けます。これでアンブラックに続くダイヤード・マウンテン内の封印が解けるはずです」

ドーブル「私たちの持つ『砂』『雪』『焔』。ATZの所有する『草』『闇』のオルゴール」

ゴーリキー「勝った方が、全て揃えることができるというわけか。……面白い。俄然燃えてきたぜっ!!」
 ▼ 185 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 20:12:05 ID:Ish0PJRg [22/99] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
〜ブラック・タワー〜

一同の眼前にどっしりと構えるそのタワー。

かなり年季の入った建物なのだろう。歴史を物語る無数のヒビがそこには刻まれている。

黒塗りの、正にATZなる集団を象徴するかのような配色。

天に届くかとばかりに高く高く聳え立つ。


……ここに、残りのATZが待ち構えているのである。


ピカチュウ「……行くぞっ!!」


ダダッ……。


ピカチュウたちは、突入した。
 ▼ 186 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 20:13:45 ID:Ish0PJRg [23/99] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
《一階》 “龍司”ボーマンダ

     “雷司”サンダース

     “岩司”ウソッキー


《二階》 “虫司”カイロス


《三階》 “草司”ブリガロン
 ▼ 187 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 20:14:23 ID:Ish0PJRg [24/99] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
〜ブラックタワー 一階〜

ボーマンダ「んんwww 我は、“龍司”ボーマンダですぞwww 攻めて攻めて倒す以外ありえないwww」

サンダース「私は“雷司”サンダース。好きな食べ物は甘納豆だ。まぁ、勝負は甘くはしないがな」

ウソッキー「お前たち、デザートサン以来だな。じわりじわりと嬲り殺してやるよ」

ニンフィア「これはまぁ……個性豊かなポケモンさんたちがお揃いだね」

ゴーリキー「どうする? まさか三匹同時に相手をすることになるとは」

ピカチュウ「決まってる、こっちも三匹だ。各々相手をするしかしょうがないじゃないか」

ナエトル(あ。僕、戦力に含まれてないんだ……)
 ▼ 188 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 20:15:07 ID:Ish0PJRg [25/99] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
──その時。


???「おぉっと、アンタらの出る幕じゃないぜっ!!」


ドガッ。


ピカチュウ「!」

ボーマンダ「んんっ、痛いんですなwww
何奴ですかなwww」

サンダース「ATZに逆らおうとは。なんとも身の程知らずなポケモンたちよ」

ウソッキー「どうやら……。先に死にてぇのは、テメエたちらしいなぁっ!!」


ピカチュウ「お、お前……。いや、お前たちは……!!」
 ▼ 189 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 20:16:13 ID:Ish0PJRg [26/99] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
グランブル「ニンフィアよぉ、助けに来てやったぜっ!!」

ニンフィア「グ、グランブル!」

シェイミ(長老)「年寄りとて馬鹿にするなよ。奥義『シード・フレア』……見せてやるわいっ!!」

ゴーリキー「あの時の長老っ!」

ハリテヤマ「へへっ。お前たちばかり、いい目に合わせるかよっ!!」

デスカーン「宿に泊まってくれた客人に無礼は許さんぞっ! ゲーチス様に栄光あれっ!!」

フタチマル「そうでフタっ! ラフレシア、頑張るでフタッ!!」ジャババ~

ラフレシア「あぁ、今日も君の水は、最高さ……」

ハリテヤマ「こんな序盤から体力を消耗している場合ではないだろう? ここは俺たちが引き受けるから、お前たちは先へと進むんだっ!!」

ボーマンダ「んんwww」

サンダース「本気で……」

ウソッキー「俺たちに敵うと、思ってんのかぁっ!?」

グランブル「あぁ、敵うさ。少々敵を残し過ぎてしまったようだ。雑魚共の相手など、我らで十分っ!!」

ハリテヤマ「さあ、行けっ!!」

ニンフィア「本当に、ありがとうね皆ぁっ! じゃあ、私たち行くからねぇっ!!」ダダッ

ハリテヤマ「あぁ、フンドシをしっかり引き締めていけよっ!!」
 ▼ 190 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 20:17:51 ID:Ish0PJRg [27/99] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
〜ブラックタワー 二階〜

ピカチュウとサンドパンは二階に残り、他のポケモンたちが三階にてブリガロンの相手をすることになった。

カイロス「よくぞ来た。私は“虫司”カイロス。見ての通りの、クワガタポケモンだ」

サンドパン「しょうがない。虫司、お前を倒しここを通らせてもらうぞ」

カイロス「そう焦るな。まず言っておこう。……お前たちは、強い。まともにやりあえば、私に勝機はないだろう」

ピカチュウ「……なんだと?」

カイロス「だから……。『ム○キング』で、勝負をすることにしよう!」

ピカチュウ「ム……」

サンドパン「ム○キング……!!」

主に幼い男児を中心にヒットし、大ブームを巻き起こした…カブトムシやクワガタムシといった昆虫をじゃんけんで戦わせるアーケードゲームである。

ピカチュウ(ポケモンを知る以前、2005年辺りから約三年間ぐらいまで、本当によくハマっていた。正に生き甲斐だった。映画も見たし、漫画も集めた。一プレイ100円なんだが、10万円以上は注ぎ込んだかもしれない)

サンドパン「しかし、その後急速にブームは廃れ、ム○キングは姿を消してしまうことになる。今は、新ム○キングなるものが登場しているらしいが」

ピカチュウ「かつての思い出が一つ失われてしまうようで、本当に寂しかった。今でも気が向いたらやってるぜ。『グ○イテストチ○ンピオンへの道』ってゲームなんだが」

カイロス「なるほど、よく知っているではないか」

ピカチュウ「しかし、それはたかがゲームだ。そんな馬鹿馬鹿しい遊び、付き合ってやる必要が──」ガシャンッ

ピカチュウ「……な、なんだぁっ!?」
 ▼ 191 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 20:19:04 ID:Ish0PJRg [28/99] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
突如、ピカチュウたちの前に巨大な檻が降り注いだ。

カイロス「……わかるな? もう、これは『遊び』ではないのだ。れっきとした『戦闘』なのだよ」

ピカチュウ「そんなコケ脅しで俺たちをビビらせるつもりか? お前を殺した後、ここを出れば良いだけだ」

カイロス「それは、不可能なのだよ」

ピカチュウ「なに?」

カイロス「この檻は、私の『参った』という言葉に唯一反応して開かれるのだ。つまり、私を殺せば……」

サンドパン「私たちは、永久にこの檻に閉じ込められるということか。どこかのホ○ビみたいだが」

ピカチュウ「だったら、どうすればいいんだっ!!」

カイロス「わからん奴だな。だから、『ム○キング』で雌雄を決そうと言っているではないか」

ピカチュウ「……馬鹿げている……」

サンドパン「虫司め……。自分の得意なジャンルで俺たちを翻弄しようとしてやがる」

カイロス「この勝負で私が敗北すれば、この檻から出してやろう。さぁ、これを見ろ」ドンッ

ピカチュウ「こ、これは……。ム○キングの、機体……!!」
 ▼ 192 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 20:19:55 ID:Ish0PJRg [29/99] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
カイロス「お馬鹿な諸君にもわかりやすいように、少々改造を施してあるがな……さて、最初に誰が挑む? お好きなように決めていただいて結構だよ」

サンドパン「どうする、ピカチュウ?」

ピカチュウ「そうだな……じゃあ、じゃんけんで決めよう」

ジャーンケーン

ーーー

サンドパン「よし、俺だ。ちゃっちゃと片付けてやる」

ピカチュウ「……ちぇっ」

カイロス「…言ってくれるではないか。私が、果たして何年ム○キングをやってきたと思っている? 稼働当初から稼働終了まで、休日の全てをム○キングに費やしてきたのだぞ」

ピカチュウ「それはどうかと思うけどな……」

サンドパン「脅しと、そう受け取っていいのか?」

カイロス「自由に解釈してよろしい。さぁ、好きなカードを選ぶといい」
 ▼ 193 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 20:21:07 ID:Ish0PJRg [30/99] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ピカチュウ「ム○キングは虫カード一枚と技カード三枚を選びスキャンしてプレイするゲームだ。まぁ、詳しいことは(http://megalodon.jp/2016-0319-1340-30/www26.atwiki.jp/gcmatome/pages/861.html?pc_mode=1)を見てくれ」

サンドパン「丸投げだな」

ピカチュウ「ほっとけ」

サンドパン「虫か……。なんの虫を選ぼうか」

ピカチュウ「そうだな……俺の相棒はアクティオンゾウカブトだった。初めて当った強さ200だったから、凄い嬉しくてな」

サンドパン「なんだ、強さ200って?」

ピカチュウ「虫の強さは100、120、140、160、180、200と六つに分かれていて、強さ200が一番出にくいレアなカードなんだ」

サンドパン「なるほど、じゃあそのアクマオウゾウオカブートとやらを選ぼうか」

ピカチュウ「おい、名前が違うぞ」

カイロス「まぁ、私は全てのカードを所有しているからな。アクティオンか、いいだろう」

サンドパンは、アクティオンゾウカブトのカードを受け取った。
 ▼ 194 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 20:22:28 ID:Ish0PJRg [31/99] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
カイロス「次は、技カード三枚だ」

ピカチュウ「……ちょっと待て、サンドパン」

サンドパン「?」

カイロス「……作戦会議でもしようというのか?」

ピカチュウ「まぁ、そんなところだ。あと、頼みがあるんだが……」

カイロス「なんだ?」

ピカチュウ「俺たちがなんのカードを選んだか、アンタは見ないでくれ」

カイロス「……別に構わんが、画面を見ればどの技を選んだのかはわかってしまうのだぞ?」

サンドパン「おいピカチュウ、なにをしようと?」

ピカチュウ「いいか……」ゴニョゴニョ

カイロス「……?」

………
……
 ▼ 195 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 20:23:04 ID:Ish0PJRg [32/99] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
サンドパンのカード
 アクティオンゾウカブト(強さ200)

技 【グー】サマーソルトプレス(必殺技)

《相手を後方に弾き飛ばした後、相手に向かって迅速に突進して踏み台のようにして跳ね上がり、一回転後方宙返りしながら落下し、踏みつぶす》

  【チョキ】ブルロック

《相手の突進を肩をつかみながら横にまわりこんでかわし、そこから闘犬のようにはさみつけ振り回しながら締め付け投げすてる》

  【パー】ばいがえし

《相手に負けた後のじゃんけんで勝つと発動し、アカスジギンカメムシを呼んでこちらの攻撃後、毒ガスを見舞って貰う。こちらが連続で負ければ負けるほど毒ガスの威力は高まる。あいこになるとその後勝っても発動できない》

カイロスのカード
 ヘルクレスリッキーブルー(強さ200)


技 【グー】ガンガンスマッシュ

《相手をつかみあげて左右に叩きつける》

  【チョキ】クロスダイブ

《相手の攻撃をかわし横からはさみ上げ、左右に体をひねって振りかぶった後上空に投げ上げ、落ちてくるところを回転しながらダイブし、地面に押さえこみながら引きずる》

  【パー】アースクエイクスロー(必殺技)

《地面にねらいを定めてから、思いきりツノをたたきつけ、その衝撃で吹き飛んでこちらにきた相手をつかまえ遠くに投げ返す》
 ▼ 196 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 20:24:53 ID:Ish0PJRg [33/99] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ピカチュウ「こっちはグーが必殺技、相手はパーが必殺技、か。これは、少々厄介だな」

サンドパン「む、なにが厄介なんだ?」

ピカチュウ「必殺技はより多くのダメージを与えることができる。例えば互いに必殺技を繰り出そうとした際、じゃんけんの相性に打ち負けてるとどうなると思う?」

サンドパン「なるほど、そういうことか。相手の必殺技を喰らうわけにはいかないし、だからといい、こっちの必殺技も出したいわけだ」

カイロス「さぁ、この席に座れ」


《100円入れてね。カードがもらえるよ》


ピカチュウ「うっわ、懐かしい声」

カイロス「私が入れてやろう。カードは排出されないがな」


チャリン……。


カイロスは、硬貨を投入した。
 ▼ 197 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 20:25:29 ID:Ish0PJRg [34/99] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
《僕は森の妖精ポ○。僕らの森が大変なんだ! 皆、僕たちを助けて!!》


カイロス「対戦は、一匹対一匹だ。一匹が負けたらそこで終了だ」


《さあ、君のカードをスキャンしてね》


ピカチュウ「あぁ、覚えてる覚えてる。カードをスキャンするんだな。昔はこのやり方すらわからなかった」


スキャッ。


カイロス「さて、私もスキャンするとしよう」


スキャッ。


サンドパン「……」

サンドパン(『スキャッ』って擬音に、誰か突っ込まないのか……?)
 ▼ 198 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 20:26:28 ID:Ish0PJRg [35/99] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ポ○「ア○ー! 虫の改造なんてやめるんだっ!!」

ア○ー「フハハハ、ポ○め! 今日こそお前の命日だ!!」

ピカチュウ「この二人、五年間近くこんなことやり続けてたんだよな」


《すごいぞー、アクティオンゾウカブトだー。》パアァン

《すごいぞー、ヘルクレスリッキーブルーだー。》パアァン


サンドパン「なにが、どう『すごいぞー』なんだ?」

ピカチュウ「多分、強さ200が出るまで金銭を注ぎ込むなんてっていうことなんだろう」


そして、二人の勝負が始まる。


カイロス「10カウント内に、出す技を選べ」

《10……》

《9……》

サンドパン「よし、ぼちぼちいかせてもらおう」
 ▼ 199 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 20:27:08 ID:Ish0PJRg [36/99] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
《8……》

《7……》

カイロス「ああ、一つ言い忘れていた。互いの体力は、解りやすく『10』とした。通常の攻撃は『1』、攻撃技は『2』。必殺技はその2倍の『4』ダメージを被る」

《6……》

サンドパン「勝負の開始後に今更そんなことを言うのか。私の動揺を誘っているつもりか?」

カイロス「ハハ、まさか」

《5……》

《4……》

サンドパン(なにせ…奴の必殺技が『怖い』)

ピカチュウ(多分サンドパンは『グー』は出せない。カイロスが短期決戦を狙い、いきなり必殺技の『パー』を出してくるかもしれないしな。飽くまでそれは、可能性止まりだが)

ピカチュウ(となるとサンドパンが出すのは、『チョキ』か『パー』。どっちを出すのかな、サンドパンは)
 ▼ 200 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 20:27:44 ID:Ish0PJRg [37/99] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
サンドパン(俺が出すべきは……。奴も読めてはいるはずだ。俺が奴の『パー』を警戒していることは)

《3……》

サンドパン(ならば、ならばだが……奴は『パー』を『出さない』。いや、『『出せない』』。)

《2……》

サンドパン(となると、奴の残りは『グー』か『チョキ』。さすがに、こっちの必殺技の『グー』に負ける『チョキ』を出すとは考え難い)

サンドパン(ならば……)

《1……》

サンドパン(……これしかないっ!)


ポチッ。


そして、互いの出す技は選ばれた。

ピカチュウ「なるほど……『パー』を出したか。……なっ……」

サンドパン「……!」

カイロス「弱者が弱者なりに必死に知恵を巡らせたようだ。だが、所詮は……君の考えていることなど、私には丸わかりなのだよ」
 ▼ 201 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 20:28:42 ID:Ish0PJRg [38/99] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
カイロスは、『チョキ』を選んでいたのだ。


《ヘルクレス「ブオォォーッ……」ギリギリ》

クロスダイブが、アクティオンに炸裂する。

カイロス「大方、『グー』に負ける『チョキ』は出せまいと考えたのだろう。フフ、それは実に浅はかな考えだ」

サンドパン「……」

カイロス「君が私の『パー』を恐れて『グー』は出せないのなら、君は『チョキ』か『パー』しか出すことができないということになる」

サンドパン「ならば、お前が『チョキ』を選んでいたら、少なくともお前はあいこには持ち込めた。……私が『グー』を出せないと、踏んでいたのか」

カイロス「だって君、『石橋を叩いて渡る』タイプだろ? むしろ、叩き過ぎて壊してしまうような。そんな奴が、いきなり打ち負けている技を出すわけがない。私は、そう判断したのだ」

サンドパン「出だしで躓いたか、最悪だな。だが、まだ勝負は始まったばかりだ。図に乗るな」

カイロス「そうそう、始まったばかりだから……。気楽にいこうじゃないか。気楽にね」

【アクティオンの体力 8/10】
【ヘルクレスの体力 10/10】
 ▼ 202 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 20:29:22 ID:Ish0PJRg [39/99] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ピカチュウ「奴のヘルクレス……フルアタだな。ああ、フルアタとは、ポケモンでいうところの、技が全部攻撃技の構成のことだ」

サンドパン「ああ、奴は特殊技を一切入れていない。つまり……」

ピカチュウ「特殊技などに頼わなくとも、勝てる。そう慢心できるほど、読み合いに自信があるということか。手強い」

サンドパン「いや、案外……そこに付け入る隙があるのかもしれない」

ピカチュウ「?」

サンドパン「まぁ、そんな隙など、敵さんは出してくれないかもしれないがな」


そして、再びカウントが始まる。


《10……》

サンドパン(子供の発想だが、奴は『同じ手は再び使わないだろう』と考えているのではないだろうか)

カイロス(さぁ、悩め、藻掻け、苦しめ。果たして私の選ぶ手は、グーか、チョキか……パーか? たった三手の出し合いの単純なゲームですら、真剣勝負になり得るのだ。面白いだろう?)

《9……》

サンドパン「……私は、これだ」ポチッ
 ▼ 203 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 20:30:24 ID:Ish0PJRg [40/99] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
カイロス「今回は、選ぶのが早かったな」

サンドパン「余計なお世話だと言っておこうか。それより、貴様も早いところボタンを押したらどうだ」

カイロス「待て待て、じっくりと考えさせてはくれないか。あぁ、言っておくが手の動きを見るとかいったコスいことはしていないからな。安心してくれ」

サンドパン「そんなことをしていたら、真っ先に貴様の両手を圧し折る」

カイロス「ハハ、怖い怖い。では……私はこれだ」ポチッ


【サンドパン『パー』 『パー』カイロス】


ドゴォ……。


ピカチュウ「あいこ、か……。野郎、必殺技を出しやがった。グーを出していれば大打撃だった」

サンドパン「……私が必殺技を出すとでも、予測したのか?」

カイロス「必殺技を出していれば良し、こちらの必殺技に対しあいこを狙ってくるならそれでも良し。まぁ、狙いは……もっと“別”のところにあったわけだが」

サンドパン(別……?)
 ▼ 204 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 20:31:00 ID:Ish0PJRg [41/99] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
サンドパン(なるほど、“そういう”ことか。奴は、俺の性格を見極めていた。同じ手を二回続けて出す程の、狡猾な性格なのかどうか)

ピカチュウ(念には念を、ということか。つまり今のは捨ての一手。敢えて今は負けてもいい、そう判断したのだろう)

サンドパン(これで奴も考えるはずだ。また俺が続けてパーを出すのか、それとも……と)

ピカチュウ「……外野だが俄然燃えてきた。これがム○キングの醍醐味。読み合いに読み合いを重ね、それでも勝利するのはたったの一匹。あの頃を、思い出すな」

サンドパン(しかしこれは、たががじゃんけんのような……)

ピカチュウ(メラメラ)

カイロス「さて、次はどうするかね?」

【アクティオンの体力 7/10】
【ヘルクレスの体力 9/10】
 ▼ 205 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 20:32:39 ID:Ish0PJRg [42/99] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
サンドパン(奴は今、必殺技『パー』を出した。私が必殺技を出せないのをいいことにか?)

カイロス(私が『パー』を出したことを、どう受け止めるだろうか? 『グー』は出すべきではないという、牽制だと捉えるか?)

《10……》

サンドパン(私が警戒すると考えて、まさか……もう一度、『パー』は出してこないとは思うが……)

カイロス(相当迷っているらしい。私が『パー』を出すか、否か? 先刻のお前と同様のことをしてくるか、あえて?)

《9……》

《8……》

サンドパン(となると『グー』か『チョキ』。もう、受け身はやめることにする。このままでは埒が明かないからな。奴が『チョキ』を選ぶことを祈ろう)

カイロス(私の出すべき手は……)ポチッ

《7……》

サンドパン(『グー』を出す。そうだ、出すのだ。これは、『勇気』の『一撃』……!!)ポチッ
 ▼ 206 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 20:38:19 ID:Ish0PJRg [43/99] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
カイロス「……」ニヤッ

サンドパン(な、なんだ……笑った──?)

ピカチュウ「あっ……あぁっ!!」


【サンドパン『グー』 『パー』カイロス】


ピカチュウ「二匹とも、必殺技を……!!」


《やったぁー、ちょーひっさつわざだぁー》

ヘルクレス『グルルル……』ズガァン


超必殺技『アースクエイクスロー』を、まともに喰らってしまうこととなる。


サンドパン「クッ……」

カイロス「『自分と同じことをやることはないだろう』という甘い考え、加えて『必殺技を出したい』という焦り……。これらが合わさったことにより、このような結果を生み出してしまったのだ。お前自身が招いた現状だ」

ピカチュウ「アイツ……そこまで計算して……?」

【アクティオンの体力 3/10】
【ヘルクレスの体力 9/10】
 ▼ 207 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 20:38:57 ID:Ish0PJRg [44/99] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
カイロス「おやおや、さっきまでの余裕はどこに行ってしまったのかな? 冷や汗ダラダラ、表情もどことなく虚ろ……隠しても無駄だ。 君はこの私に『勝てないかも』と薄っすら考えている」

サンドパン「……言っていることがさっぱりわからない」

カイロス「そうだ、良いことを教えてあげよう。『勇気』の対義語は、『臆病』だ。君はこの私に、怯えてるんだよ」

サンドパン「勝負だと言うのに、よく喋る奴だ」

カイロス「勝負中に喋っては悪いか? むしろ、脳内が刺激され立ち回りも振る舞いも上手く行えるようになると思うがな。根拠はないが」

ピカチュウ「アイツの口を塞いだらどうなるかな」

サンドパン「多分、ケツからでも喋るんじゃないか? 根拠はないが」

サンドパン(さて……どうする)

《10……》

サンドパン(どうする……? ……どうする………?)


どうすれば、いい…?


カイロス(そう言えば、奴……。なぜだ……一つ、ほんの些細なことかもしれないが……『気にかかる』ことがある)
 ▼ 208 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 20:40:02 ID:Ish0PJRg [45/99] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
《9……》

カイロス「そうだ……。まだこのム○キングバトルで敗北した際のペナルティを、貴様らには言ってはいなかったな」

サンドパン「なに……?」

カイロス「ペナルティという言葉は難しかったかな? 解り易く言い直そう。……『罰ゲーム』だ」ポチッ

カイロスは、隠し持っていたリモコンのスイッチを押した。

……ジャララ。

サンドパン「!」

ピカチュウ「なっ、おい、これは……。どういうことだ虫野郎ッ!?」


サンドパンの両足が、床より這い上がってきた鎖により封じられたのだ。


カイロス「もし君が敗北したとして、素直に他と交代させると思うか? たかがゲーム、されどゲーム……負けたならば、それなりの罰が必要だと私は考えるんだ。よし、出てこい、お前たちっ!!」


『『グオオオォォーーッ!!!!』』ワササッ


ピカチュウ(え、な、なんだ……? あ、あれは、天井裏に今まで……潜んでいたというのか!?)


ピカチュウたちが目撃したのは、天井へと大量にしがみついている、虫ポケモンの集団であったのだ。
 ▼ 209 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 20:40:38 ID:Ish0PJRg [46/99] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
カイロス「この虫ポケモンたちは私の可愛いペットだ。数多の虫ポケモンを従え操る…それが私が“虫司”と称される所以なのだよ」

ピカチュウ「わかったぞ。貴様が俺たちに……“なに”をしようとしているのか!!」

虫ポケモンたち『あぁ〜、喰いてぇ、喰いてぇよぉ……。旨そうなポケモンが三匹も……バヒュヒュヒュヒュッ!!』

カイロス「この虫ポケモンたちは、『ポケモンの肉』しか受け付けぬように私が調教したのだ。加えて数日前から食事を抜かしてある。もう……『どういうことか』お察しかな?」

サンドパン「精神的動揺を誘っているつもりか? それは飽くまで私の敗北前提で話を進めている。……私は『勝』つつもりでいるからな」

カイロス「言い方は悪いが、この絶体絶命の状況で未だに希望を捨て切れずにいるのか? 対した根性だが、私には到底不可能なことに思えるがね」

サンドパン(……)

カイロス「さぁ、それでは手を選ぶがいい。一歩一歩破滅へと導く、“キボウ”の手をな」

《4……》

サンドパン(この鎖……並の力では千切れないな。もっとも、逃げるつもりはない。負けるつもりも。私がこの勝負に勝たなければ、私だけではない……ピカチュウにまで被害が及ぶ)

ピカチュウ(奴は、相手の思考を読み取ることにかけては天才的だ。長年ム○キングを遊んできたというのは伊達ではないか)

カイロス「考え込むのは良い。とても良いことだ。だが……カウントは刻一刻と迫っているぞぉ?」

サンドパン「集中が途切れてしまう。汚らわしい声でほざかないでくれないか」

《3……》

サンドパン(縛り付ける鎖、放たれる虫ポケモン)

カイロス「クッククク……」
 ▼ 210 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 20:41:32 ID:Ish0PJRg [47/99] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
カイロス(どうだぁ〜、地司。極限まで、相手を! 精神的に、追い詰めて追い詰めて……追い詰めて!! ……殺る。これが俺のやり方だ)


──ム○キングを長らくプレイしている内に、俺はある“快楽”を得るようになった。


カイロス(『やれるかも、勝てるかも!』と慢心している輩を、還付なきまでにズタボロにしてやることだ!!)


『あらら、失敗しちゃったか』→『あれ、なんで、どうして?』→『私、なにやってんだろ……』


人はたった一つ“失敗”をしたとしても、心に負った“キズ”は時間を経るにつれ回復するだろう。

だが、その失敗が立て続けに起こったとしたら?
キズが回復する暇も与えてもらえなかったとしたら?


その点、ム○キングは実に理想的なゲームだった。


カイロス(対戦相手の心と表情が崩れていく過程が……本当に楽しかった。人は心にどれだけのキズが蓄積すれば壊れるんだろうって、子どもの頃、それを自由研究の題材にしようとまで真剣に考えた程だ)

《2……》

カイロス(わかっている、お前は次に『グー』を出そうとしているな? まず『パー』は出さない。確信こそないが、長年積み重ねてきた“勘”がそう告げている。『必殺技を一回も成功させていない』という焦燥もあることだろうしな)

サンドパン「……」

カイロス「さぁ、これでゲームエンドだ」
 ▼ 211 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 20:42:46 ID:Ish0PJRg [48/99] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
《1……》

カイロス(あぁ、早くお前の絶望に浸った表情を見たい。ムラムラしてきた。よぉ〜し、押すぞぉ〜……『パー』を押すぞぉ〜っ!!)

サンドパン「おっと、手が滑った」ヒョイッ

カイロス「え」ビシャッ

サンドパンは、懐に忍ばせていた“なにか”入りの瓶を、カイロスに投げつけた。

カイロス「なっ、あ……甘い……。こ、これは……ハチミツウゥッ!?」

ピカチュウ「あ、この前ハリテヤマにもらったやつだ。スイーツ感覚で楽しめるコンセプトで考えた『ハチミツ鍋』が盛大にコケて、大量にハチミツが余ったからって」

虫ポケモンたち『ウオォッ、ハチミツのいい匂いだぁ〜。しかもこれは……ミツハニーが集めた極上品だな』


『『あぁっ、もう…我慢できねぇぇぇぇっ!!』』


虫ポケモンたちは、主人であるはずのカイロスの身体へと群がったのだ。


ピカチュウ「……うわぁ、悍ましい光景だ」

カイロス「え、お、おい、お前たち、…なぜ私に群がるっ!? も、戻れ……元の配置へと戻らんかぁっ!!」
 ▼ 212 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 20:43:38 ID:Ish0PJRg [49/99] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
《0……》

カイロス「あっ……」

カイロスがなにも押さぬまま、カウントは終了した。

ピカチュウ「あ、この場合って、ボタンを押さなかった時って、コンピューターが勝手に手を選ぶんだったっけ。確か……『相手側の手に負けるもの』が選ばれたよーな」

そして、サンドパンの選んだ手は、必殺技のグー……『サマーソルトプレス』だ。

カイロス「あ、あぁっ、あぁぁっ……。ま、待て……卑怯だ、インチキだ、策略だっ!!」

ピカチュウ「へぇ、じゃあ一つ聞くぜ。アンタの戦略は、たかがハチミツ一つで左右されるような脆いものなのか?」

カイロス「な、なにっ……」

ピカチュウ「サンドパンは言ったぜ、『手が滑った』と。それに、虫を用意したのはそちらさんだ。こちら側もウッカリしていたが、そちらさんの“過失”ということで許してくれ」

カイロス「ふ……ふざけるなっ!!」

ピカチュウ「段々と、硬い外殻が剥がれてきたようだな。薄ら汚いお前の本性が薄っすらと表れつつある。そして、俺は一つ気になることがあるんだ」

カイロス「な、なんだというんだ、それはっ!?」

ピカチュウ「さっき、お前の虫ポケモンたちがこう言っていた。“旨そうなポケモンが三匹も”と。……おかしいよな。俺たちは、『ニ匹』だぞ?」

カイロス「えっ?」

ピカチュウ「俺も随分前にクワガタを飼っていたんだ。すぐに死んじまったけどな。ある日そのクワガタに、指を噛まれたことがあったんだ。原因はなんだと思う?」

カイロス「ま、まさか……?」
 ▼ 213 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 20:44:33 ID:Ish0PJRg [50/99] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ピカチュウ「…ほんの少し餌をやることを忘れ、クワガタの気性が荒くなっていたからだ。大方、俺の指を餌だと思い込んでしまったんだろう」

カイロス「ってことは──」

サンドパン「この虫ポケモンたちは腹が減り過ぎて、主人すら喰っちまうかもってわけか」

ピカチュウ「お前、虫司とか名乗っておきながら……その実、現実で虫を飼ったことがないな? 虫が出てくるゲームだけ遊んで、それで虫そのものを解ったつもりでいたな?」

《やったー、ちょーひっさつわざだー》

カイロス「えっ、えっ……えっ?」

ピカチュウ「つまり、『現実とゲームをごっちゃにするなバカヤロウ』ってことなんだ」

カイロス「ばぎゃるあぁぁぁぁっ!!?」ズガァン

『サマーソルトプレス』が、ヘルクレスに炸裂した。

カイロス「えぇい、失せろ失せんかぁっ! 後で旨い餌をやるから、私の身体から離れんかぁっ!!」

『『グルルル……』』バササッ

ピカチュウ「人望……てか虫望ないな、お前」

カイロス「えぇい、こんなの認められるか……反則だっ! 虫ポケモンたちよ、今すぐコイツラに……」ペチャッ

カイロス「モゴッ……」

ピカチュウ「うるさいから、すごく粘度の高いガムテープで口を塞がせてもらった。あと、これも」ジャララッ

カイロス「うぉ、お、あぁっ、貴様ら……貴様らぁっ!?」
 ▼ 214 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 20:45:41 ID:Ish0PJRg [51/99] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ピカチュウは鎖でカイロスをがんじがらめにし、見動きを封じたのだ。

ピカチュウ「なんかボーッとしてたから、隙はたくさんあった。ドーブルの筆で鎖を創ったんだ。ドーブルのように上手く具現化はできないがな」

サンドパン「ただ、一つ封じていない箇所はある。……お前の『片腕』さ。勝負はまだ、続行できるだろう?そして、俺の鎖は既に解かせてもらった」

ピカチュウ「あ。あとこれは、ダメ押しって奴なのかな」

《カメムシ『やあ』》

ゲーム画面内に、カメムシが現れた。

《カメムシ『じゃ、いくよー』プゥゥッ》

カイロス「……!」

ピカチュウ「『ばいがえし』だ。さっきお前に痛いのを喰らったからな」

サンドパン「見動き取れず、頼りの虫には狙われ、俺たちの慈悲によってお前は生かされている。気分はどうだ? 殺してやっても良いが、ここから出れなくなるからな」

ピカチュウ「あと、1つ言っておく。俺たちは別に、こんなゲームなんて本当はどうでもいいんだ。純粋に100円払ってプレイする分ならこんなことはしない。ただ……今回の勝負の先には、俺たち共通の目的がある」

サンドパン「『おまえたちATZを倒して、本当の世界へと戻る。』そのためなら、俺たちは、『T-5』は……どんなことだってやるさ」

ピカチュウ「お前が持ちかけた勝負だ。せめてもの礼儀として、このム○キングバトルを形式だけでも終えてやる。……お前の敗北という形でだが」

【アクティオンの体力 3/10】
【ヘルクレスの体力 4/10】
 ▼ 215 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 20:46:20 ID:Ish0PJRg [52/99] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
カイロス(な、なにか押さなきゃ……)

《8……》

カイロス(カウントが終わる……終わったら敗北(まけ)る……。まけ……まけ………まけ………このわたしが…おれが)


うそだ……。

あろうことか、ム○キングで……ム○キングで………!?


カイロス(そ、そーだー、ひっさつわざだぁっ……。ひっさつわざさえ……だせば……かてる、かてるんだ……。うひゃひゃひゃ………ひゃっひゃーひゃぁっひゃっーっ!!)

カイロス「ぐびびっ、ぐびびびびっ」

ピカチュウ「……壊れたか。自分の大好きなゲームのせいで、ゲームではなく、自分の精神がな」

カイロス「もごごごご」ポチッ

サンドパン「それでもボタンを押すことは可能、と。見上げたゲーマー魂だ」

ピカチュウ「あぁ、できればブーム絶頂時に出会いたかったな。さぞかし良い好敵手になっただろうに」

カイロス(うひゃひゃ、さあっ、なにをだすんだっ!? こいつは、なにをだすんだあっっ!?)

------------------------

【サンドパン『パー』 『パー』カイロス】
 ▼ 216 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 20:46:58 ID:Ish0PJRg [53/99] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ピカチュウ「……あいこだぜ。だが、ヤバい。アクティオンの体力は…残り『2』。これでサンドパンは、一度足りともじゃんけんで負ける訳にはいかなくなった」

カイロス(かてるっ、かてるっ! あといっかいだ。たったいっかいでぇ……かてるんだあぁぁ〜っ!!)

【アクティオンの体力 2/10】
【ヘルクレスの体力 3/10】

サンドパン「……」ポチッ

カイロス(ずっと、きになってた。なんでださないんだろって、ずっ〜と。アイツ、なんで、なんで……)


なんで……『チョキ』をださないんだっ!?!?


サンドパン「……なんでだろうな」

カイロス(……!)

ピカチュウ「うん。てか、もういいか。こうすればいいんかな……それっ!」ボワアンッ

カイロス(え、な……なんだっ………!?)

ピカチュウが筆を用い施していた“細工”。
その化けの皮が剥がされたのだ。


《テントウムシ『アクティオンはん、ワイらが掩護しますさかい。存分にその力を奮って下せえ』》ワシャシャ


カイロス「!?」
 ▼ 217 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 20:47:35 ID:Ish0PJRg [54/99] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
カイロス(…アクティオンの傍らに、テントウムシ……。これは、これはっ……『あいこボーナス』ッ!?)


【チョキ】あいこボーナス

《あいこになるとこちらにナナホシテントウが一匹現れ、連続であいこになることで一匹ずつ増えていく。その後じゃんけんに勝つと、集まった分のナナホシテントウが攻撃に加わってくれる》


ピカチュウ「立ち直りの早さもピカイチ。凄いぜ、お前」

サンドパン「さぁ、選び放題だ。お前の大好きな『三択』だぞ?」

『あいこボーナス』は与えるハズのダメージ量に、直前のあいこの数の分もダメージが上乗せされる。

つまりは、このターンをサンドパンが制せば、与えられるダメージは『3』。あいこにならぬ限り、どちらが打ち勝とうとも勝敗は決するのだ。

カイロス(あの妙な筆でゲーム画面に細工を施し、テントウムシの存在をひた隠していた……! クロスダイブは特殊技はなしと安堵させるためのフェイク。だから、チョキを出すわけにはいかなかった……!!)

サンドパン「あぁ、せっかくだ。野球でも、こういうのはあるだろ? 私は今から、『押手予告』をする」

カイロス「!?」

サンドパン「私は次のターン……。『チョキ』を出す!」


カイロス「「!?!?!?」」
 ▼ 218 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 20:48:44 ID:Ish0PJRg [55/99] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
カイロス(チ…チョキを……? ……チョキをぉっ!?)

サンドパン「だから、俺はチョキを出すと言ったんだ。今まで『なんとなく』出していなかったしな、そろそろ押してみたくなったんだ」

ピカチュウ「そうだな、『なんとなく』チョキを押すんだよな。『なんとなく』、『なんとなく』……」

カイロス(ぬ、抜けぬけとぉ……)


サンドパンがチョキを選出しなかったのは、本来セットしていた技『あいこボーナス』を悟られぬためであった。

──『あいこボーナス』こそは単なる保険に過ぎない。

だが、敵の手を数多の経験を元に難なく予測するカイロス。
そのカイロスに対し予測外の手を隠し貫き、ここぞという局面で披露することが一筋の勝機に繋がるのではないのかと二匹は考え出した。

さて、ここに来てその作戦は、副次的な効果を生じさせる。


カイロス「コイツ、本当に、本当に……。チョキを出すのか!?」


サンドパンがチョキをこれまで出さなかったのは『あいこボーナス』のため。
……普通に考えればその通りである。


カイロス(だけど、コイツは……! いや、コイツらは……!!)

この瞬間をっ……俺がっっ、疑うのをっっっ!!!
このため、だけにっっっっ!!!?
 ▼ 219 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 20:49:44 ID:Ish0PJRg [56/99] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
普通に考えてコイツはチョキを出すわけがいやそれも作戦の内かもでもコイツなんか嘘は付かなさそうだしそんな見た目だしいや待て敵を容姿で判断するなどもってのほかだぞそれで痛い目に合った奴は大勢見てきたしくそあいこボーナスさえなければ一回喰らってもギリギリ耐えるおいなんで俺敵の技を受ける前提なんだてか俺追い詰められてるのかそんなまさかさっきさっきさっきさっきそうださっきたった一回必殺技を喰らったばっかりにこんなことに畜生そもそも俺本当に虫が好きなのかなんだよ虫司ってATZに入る時にあっ僕虫好きなんでム○キングやってたんであとカイロスなんで本当はヘラクロスとかがよかったけどハハハハなんて口走ったばっかりにこの虫ポケモンたちもてんで俺に懐かないしよお餌を抜いたら俺を血走った眼で睨んできたからもしやと思ったがまさか俺に襲いかかるなんてくそ脱線したさてコイツはなに出すんだミスったら負けるぞそんなのやだぞチョキかチョキ出すのか宣言通りチョキ出すのかいやここは綺麗に勝つために必殺技のグーか待てそんな裏を付いてパーなのかもなんだなんだなに押すんだ教えてくれ答えてくれうわうわうわうわ



カイロス(わあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!)


──ポチッ。

------------------------

【サンドパン『チョキ』 『パー』カイロス】

カイロス(あっ、あはっ……。あはははばばばば馬婆場嘛化碼BaVaBASヴァ♪)

サンドパン「だから、チョキを出すとあれ程言ったのに。人を信用できない奴は、気苦労が多いぞ?」

ピカチュウ「色々錯誤することが必ずしも良いわけじゃないな、アホが」


【アクティオンの体力 2/10】
【ヘルクレスの体力 0/10】


《遊んでくれてありがとう。
 またプレイしてね!!》


攻撃を受けたヘルクレスが倒れ、ム○キング勝負はサンドパン側の勝利で幕を下ろした。
 ▼ 220 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 20:50:39 ID:Ish0PJRg [57/99] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
カイロス「いてぇっ!」ビリリッ

サンドパン「ガムテープを剥がした。これで大好きなお喋りがまたいっぱいできるな」

カイロス「き、貴様らぁっ、こんな……こんなのインチキにインチキを塗り重ねた正にインチキ極まりないそんなドインチキコンビめぇぇぇっ!!」ガチャガチャ

サンドパン「おっと。俺たちお前と違って馬鹿の集まりだからさ。とっても大事なこと、忘れてしまったんだ」

カイロス「なんだ、それはっ!?」

ピカチュウ「この檻から脱出する手段さ。ここを出るには、どうしたら良いんだっけ?」

カイロス「ハハッハー、気が変わった。お前たちなんて、もうここから死ぬまで出さねぇよっ! てか出れねぇんだよぉ、俺が『参った』と言わない限り……テメェらは俺を殺すこともできねぇんだからなぁっ!!」


ガチャ。


一同「……」

カイロス「……」


ーーー


カイロス「あ。」
 ▼ 221 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 20:51:18 ID:Ish0PJRg [58/99] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ピカチュウ「さ、ここを出よう」スタタ

ニンフィア「そうだな、もう虫なんて見たくはない」スタタ

カイロス「ちょっ、ちょっと待った! 今の、今の、そ、そう、ノーカン、ノーカンだっ!! ノーカンッ……ノーカンッ……ノーカンッ……!!!」

サンドパン「こんな初歩的な誘導に引っ掛かること自体が驚きだが……。やっぱりバカだ、お前」

虫ポケモンたち『おいおい、コイツ負けちまったぞ』

虫ポケモン『やっぱ見限るべきかな、コイツ。餌は抜くし、馬鹿だし、勝負には負けるし……』

虫ポケモン『さて、腹が減ったな。とりあえず、コイツ…食べちゃおうか』


『『よし、食べちゃおう♪』』


カイロス「ボロロロロロロロロロロロウゥッ!?!?」


俺「良い感じに最後に鳴いたな。『なんとなく』って奴だ」
 ▼ 222 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 20:51:53 ID:Ish0PJRg [59/99] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
グチュドビャヌルズプビチドバババッ!!

カイロス「もろろあぁぁぁぁ〜っ!!」

ピカチュウ「大好きな虫だろ、た〜んと喰らいな。実際にお前を喰らうのはその虫たちだがな」

サンドパン「ピカチュウ、元の世界に戻ったら皆で新しいム○キングとやらをしないか? この一件でハマってしまったかもしれないんだ」

ピカチュウ「あぁ、近くに設置してあればいいな。俺の知ってる限りでは昔ロ○ソンにまで置いてあったぐらいだからな、大丈夫だろう」

サンドパン「さて……三階に向かおう」




先ほどカイロスの居た辺りでけたたましい断末魔が聞こえ、そしてドシャッとなにかが倒れ込む音が響いたが…もはや一同の知る由ではなかった。



“虫司”カイロス 〜撃破〜
 ▼ 223 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 20:56:37 ID:Ish0PJRg [60/99] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
〜ブラックタワー三階〜

ニンフィア(ピカチュウとサンドパン。大丈夫かなぁ)

ブリガロン「……さて……私は……“創蛙”から……『草』と『闇』のオルゴールを……預かっている……」

ゴーリキー「そう、つまりお前を倒せばオルゴールは全部揃うってわけだ。だからこそ、二階で変なクワガタの相手を同士に頼み、俺らはさっさとここに来た」

ブリガロン「……一つ……問いたい……。見たところ……お前は……オルゴールを……持っていない……な……?」

ゴーリキー「あ、あぁ、そうだが?」

ブリガロン「……そう……か……」

ゴーリキーが応じた、次の瞬間。


……シュッ。


ナエトル「!」

ゴーリキー(……え……なっ……えっ……? ブ、ブリガロンが……)


ブリガロンが彼らの前から、その姿を颯爽とくらまし。

…そして。


──タンッ。
 ▼ 224 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 20:59:10 ID:Ish0PJRg [61/99] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ゴーリキー「うっ」ドサァッ

ブリガロン「……」

ブリガロンはゴーリキーの背後へと回り。
そしてそのまま、彼に当て身を食らわしたのだ。

ゴーリキー「」ピクピク

ニンフィア「ゴーリキッ!?」

ナエトル「……!!」


巨体ながら、なんという速さっ!
加えてこの卓越した活殺術っ!!

無理だ……。
僕なんかじゃ……絶対に倒せないっ!!!


ブリガロン「……ナエトル」

ナエトル「ひっ……」

そ、そうだ、下からピカチュウさんたちが来たら……。
あ、あるいは……。

ブリガロン「……お前……頼る……のか?」

ナエトル「えっ……」
 ▼ 225 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 20:59:43 ID:Ish0PJRg [62/99] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ブリガロン「……私に……頼って……このポケモンたちにも……助けられて……お前は……お前自身は……どうなんだ……?」

ナエトル「僕……自身……」

ブリガロン「……お前……なにか……“最終手段”を……。……持って……いる……な……?」

ナエトル「!」

ブリガロン「……図星……だ……な。……では……それをなぜ……私に使わない……? ……いや……“使えない”……の……か……?」

ナエトル「い、いや、僕は──」

ブリガロン「……今の……たった一回……一連の私の動きを見て……。『勝てない』だとか……『無理だ』とか……。そう……考えてしまっている……だろう……?」

ナエトル「うぅ」

ブリガロン「……駄目元でも……いいん……だ。……私は……お前自身の……本気が……力が……見たい。……その……最終手段を……最後の砦として……私に……挑んでみろ……」

ナエトル「で、でも……!」


ビシュッ。


ナエトル「つっ……」

ブリガロンの素早い手刀が、ナエトルの頬をかすめた。

ブリガロン「わかるか……私が本気を出していれば……今……お前は……死んでいた。なにもしなくても……死ぬんだ……」

ナエトル「くぅっ………」
 ▼ 226 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 21:00:20 ID:Ish0PJRg [63/99] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ブリガロン「だったら……どうせなら……。あがいて……死ぬ方が……格好が……つくだろ……?」

ナエトル「でも、だって……どうせ、僕なんか……」


ブリガロン「「……ナエトルッ!!」」


ナエトル「!!」ビクッ

ブリガロン「……やってみるんだ……己自身で……己のやり方で……。無抵抗で殺されるのが……一番……男としてみっともない……。そこの助けは……待つな……自分で……切り拓け……」

ニンフィア(私、蚊帳の外。でも、黙ってた方が良さそう……)

ナエトル「ブリガロン……」

ブリガロン「さぁ……かかってくるんだ……ナエトルッ!!」


ナエトル「う……うおぉぉぉぉぉぉっ!!」ドッ


覚悟を決し、ナエトルは果敢にもブリガロンへと向かう。

ブリガロン「そうだ……それで……いいんだ……」

ナエトル「……ブリガロンッ、いくよっ! “いたみわけ”っ!!」ガガガガ
 ▼ 227 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 21:00:50 ID:Ish0PJRg [64/99] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
その様子を、ニンフィアが一匹見守る。

ニンフィア(ゴーリキー……泡吹いてるけど大丈夫かなぁ。“いたみわけ”……ナエトルとブリガロンには決定的な体力の差がある。そこをあの子は、逆に利用した)

ナエトル「まだまだだっ……すいへいぎりっ!!」スパパンッ

ブリガロン「ほう……」バッバッ

ナエトルの剣捌きをブリガロンは一つひとつ見極め、全てカットしていった。

ニンフィア(だけど、ナエトルは通常いたみわけもすいへいぎりも覚えないはず。どうしてあの子が……)

ブリガロン「……ナエトル……お前」

ナエトル「あぁ、ブリガロン。あなたには……二つ謝らなければならないことがある」

ニンフィア(……?)

ナエトル「僕はこの“手段”に踏み入ることを、恥ずかしながらあなたに活を入れられるまで躊躇してしまっていた。そしてもう一つ。僕はまた、頼ってしまった」

ブリガロン「……やはり……か……」

ナエトル「そうだよ、ブリガロン……。“これ”、さ」サッ


──ナエトルがブリガロンへと示したものとは。


ナエトル「……ゲフッ」

ニンフィア(プ……『プラズマリプレイ』ッ!!)
 ▼ 228 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 21:05:15 ID:Ish0PJRg [65/99] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
Word:【プラズマリプレイ】

現実世界において某会社が製造販売を行っている、コンピューターゲーム上の“改造ツール”である。

このようなツールは当然ながらゲーム元の許可を得てはいないが、流出数があまりにも多いため、半ば黙認せざるを得ない形となっている。

“改造コード”と呼称されるチートを用い、『所持金最大』や『キャラクターのステータス改竄』、『所有アイテム数の変更』といったことが手軽に行える。

その性質上、主に余暇時間をゲームに費やす小中学生に人気が高い。
 ▼ 229 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 21:05:49 ID:Ish0PJRg [66/99] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ナエトル「……フフッ、そうだよブリガロン。僕はこれを使って…ポケモンを、自分自身を改竄した」

ナエトル(また頼ってしまったけど…“自分自身”であなたを倒すには、借り物の力に頼る他になかったんだ……)

ブリガロン「……確かに。……お前の……既存の技は……私がお前に……教えたもの……だ……。だから……私の知らぬ技を……繰り出せば……戸惑う筈と……」

ナエトル「あぁ、そうさ」

ブリガロン「……ただ……一つ……致命的な欠点が……それには……あると……見た……」

ナエトル「……へへっ、凄いねブリガロン。お見通しか」


プラズマリプレイを用いた状態で活動を続けることにより、その身体には凄まじい負荷がかかる。

……100%オイシイ話など、あるわけがない。


ナエトル「……僕が身体に施したチートは、『身体能力の底上げ』と『通常会得しない技の習得』。これ以上は僕の身体が保たなく、今だってギリギリだ」

ブリガロン「ナエトル……」

ナエトル「まだまだいくよっ、ブリガロンッ!……次は、この技だっ!!」ポポッ

ニンフィア(……タネばくだん。放出した種を叩きつけ攻撃を行う草の技だ。でも、この技は)

ブリガロン(プラズマリプレイで会得した技ではない)

ナエトル「あぁ、タネばくだんはあなたが僕に最初に教えてくれた攻撃技だ。『だからこそ』、あなたはなんなくこの技に対して防御体制を図ることができる)

そう、『『“だから”こそ』』……!!
 ▼ 230 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 21:06:31 ID:Ish0PJRg [67/99] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ブリガロン「くどい……ぞ。ナエトル……。矢継ぎ早の攻撃で……私を……翻弄できる……とでも……?」ガッガッ

ナエトル「くどくなんてないんだ。全ては、“このため”の下準備」

ブリガロン「な……に……?」

ナエトル(このタネばくだんの目的は、一箇所の隙を生み出すためにあった。ブリガロン、僕はあなたの癖をよく知っている。その防御体制……実は腹部のガードが甘いんだ)


──だから。



ブリガロン(!)ヨロッ

ナエトル(腹に一発、タネばくだんを。でもあなたならば瞬時に立て直す。そう、あなたの行動をただ一つ……立て直すことのみに限定させられる!!)


正真正銘僕の全てを絞り尽くし、この一撃にかけてやる。身体能力はここまでしてもなお、僕の方が劣る。

ならばこの特大級の、あなたが未知の“最終手段”を以ってして、あなたを打ち倒してみせる!!


ブリガロン「ぐっ……」


ナエトル「ばくぅ……おんぱあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
 ▼ 231 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 21:07:10 ID:Ish0PJRg [68/99] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ド オ オ オ ォ ォ ォ ォ … 。


…ナエトルの放つ凄まじき音撃が、辺り一面に響き渡る。


ニンフィア「……えっ、まっ、待って! も、もしかして、私、吹き飛……やあぁぁっ!?」ビュウン


まず壁や床に亀裂が走り、そして周囲の物が成す術なく吹き飛ばされることとなる。


ナエトル(ブリガロン……。僕は、僕は……ただ、ただ……あなたをっ……)


……あなたをっっ……!!!!



ズ ゴ ガ ア ァ ァ ァ ァ … … 。
 ▼ 232 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 21:07:55 ID:Ish0PJRg [69/99] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
──やがて。


ゴ ツ ン ッ 。


ニンフィア「痛っ!?」

ニンフィア(……本当に、凄い衝撃だったけど……。ブ、ブリガロンは……後、あの子は……ナエトル……は………?)


「「ニンフィアさん…。」」


ニンフィア「え……」

ーーー

ニンフィア「……あ、ま、まさか……。まさか……?」

声の主がナエトルだと理解するには、彼女自身の頭の回らなさも合わさり、少々時間を有した。

……それ程までにその声は、か細く、掠れていたのだ。


ナエトル「…ハーッ。……ハーッ──」


“ばくおんぱ”に全精力を注ぎ込んだ結果。声は枯れ、頭の葉は窶れ、土の甲羅もヒビ割れた。
 ▼ 233 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 21:08:31 ID:Ish0PJRg [70/99] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ナエトル「……ケホッ…いいよ、ブリガロン……。なぜあなたがATZに入ったのか…なぜ僕を見放したのか…聞きたかったけど、もう……いいんだ……」

ブリガロン「……」シュッ

ナエトル(あぁ、ブリガロン……。最後にあなたと……)



……わかり合いたかった、なぁ……。


ド ス ッ 。


ナエトル「バグッ……」



──ドサッ。



ニンフィア「ナ、ナエトル…ナェ…ト…ル……? え、い、いや、やだ…そんなの……こ、この……最低、最低だっ、弟殺しぃっ!!!」

ブリガロン「……」ギリッ

ニンフィア「!」

……このままじゃ、私も殺されてしまう!

もしピカチュウたちが、ここに来なかったら……。
 ▼ 234 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 21:09:02 ID:Ish0PJRg [71/99] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ニンフィア(私が…私が…。)


ナエトル、ごめんね…。
だったら私がこのポケモンを倒さないと、オルゴールも奪われて……ここまでの旅が、皆の今までの苦労が……報われない……。


──その時。


「「弟を殺るとは、冷酷に徹したでござるな。しかも、自身の針で刺し殺すとは」」

ブリガロン「……“創蛙”……」

ニンフィア(そ…そうあっ!?)


ブリガロンの元に、あの“創蛙”が現れた。


ゲッコウガ「オルゴールは、どうしたでござるか?」

ブリガロン「…既に……コイツらから……奪った……」

ニンフィア(えっ……!?)

ブリガロン「……余計な……殺生は……したくはなくてな……。この女を……見逃してやっては……くれないか……?」

ゲッコウガ「それは追々考えるでござる。さて……これで五つの全てのオルゴールが揃い、後はこのアンホワイトの地へと捧げるのみ。さぁ……渡すでござる」

ブリガロン「……あぁ……今。……渡して……やる……」
 ▼ 235 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 21:09:39 ID:Ish0PJRg [72/99] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
──貴様に、引導をな。


……ザクッ。


ニンフィア「えっ。」

ゲッコウガ「ぬ……ぬばがぁぁあっあーあ゛ぁァッ!!! 草司…草司ィィ……お主ッ、血迷ったかぁッ!!?」

ブリガロン「もう……草司だの……ATZだの……。お前のこしらえたくだらない肩書きは……散々だ」

ブリガロンは反旗を翻し、“創蛙”の身体を刺したのだ。

ナエトル「う……うぅ……」

ニンフィア「あっ、ナエトル……あなた、無事なの……?」

ブリガロン「……私は……お前の疲労回復のツボを刺した……。だから……先ほどのダメージも…なんとか騙せるだろう……。ナエトル……今まで本当に……すまな…かった……」

ナエトル「ブリガロン……ありがとうと、そう言えばいいの? でも、よりによってなんで今……。僕を助けて……せっかく入ったATZを裏切るの……?」

ブリガロン「違うんだ……ナエトル……。私は……“このため”だけに……ATZに潜り込んだのだ……」

ナエトル「…それって、どういう……」

ブリガロン「……これ、だ」ポロッ

ニンフィア「あぁっ……これは、『草』のオルゴールッ!!」

ブリガロンは、“創蛙”からオルゴールを掠め取っていたのだ。
 ▼ 236 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 21:10:34 ID:Ish0PJRg [73/99] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ブリガロン「……ナエトル……話せば……長くなる。……案外短くなるかも……しれないが」

------------------------

ナエトル。お前と最初に出会った時、私はこう思ったのだ。
『なんと弱い存在だろうか』、と。

だが、そんなお前が……。

私の、この世界での、初めての『友だち』となるとは……あの頃は思いもしていなかった。

私は不器用だ。
これまで生き長らえてきた中で、十分理解している。


『『ねぇ、あのポケモン……なんか怖くない?』』

『『本当だな。顔も厳ついし殺気立ってるし……下手に近づいたら殺されるぞありゃあ……』』

ブリガロン『あの……』

『『ひぃっ! す……すみませんっ、殺さないで……犯さないでぇ〜っ!!』』

ブリガロン『……』

ただ、食料を買いに来ただけなのに……。
いつもよりにこやかにしていたつもりだったのに………。


やはり生き物は、まず見た目で他を判断するらしい。
 ▼ 237 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 21:11:08 ID:Ish0PJRg [74/99] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ブリガロン『ハァ……』


この世界に来てからどれだけ経ったのだろうか。

もっと愛嬌のあるポケモンになっていれば、少しはこの生活も変わっていたのだろうか。


ブリガロン(……)

そんなこんなで買った食べ物を、人目の付かない穴倉まで運び入れる。

今日はシチューにしよう。……それしか作れない。

ブリガロン『……ん?』

ナエトル『……あ』


そして、ナエトル……お前と出会ったんだ。


ナエトル『わぁっ、す、すみませんっ! 僕、ただ誰かいるのかな〜って、そんな興味本位でこの穴倉を覗いてただけでっ!!』

ブリガロン『むぅ』

ナエトル『だ、だから、食べ物を盗ろうとか、そ、そんな悪いことなんてっ、僕…なにも思ってなくてっ!! ……確かに、食べ物は摂りたいんですけど……』グウゥゥ

ナエトル『あ。』
 ▼ 238 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 21:11:39 ID:Ish0PJRg [75/99] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ブリガロン『……お前。……腹が……空いて……?』

ナエトル『……はひ、す、すみません、そうです……』

僕、この世界に来てから間もなく。
弱いからダンジョンでモノもお金も調達できなくて……どうしようもなくて……。

……正直、途方に暮れているんです……。

ブリガロン『……確かに……。その頭の葉も萎えてしまっている……な……』

ナエトル『すみません……だから僕、独りなんです。……初対面のポケモンさんについこんなことを打ち明けてしまったけど……困惑……しましたよね……?』

ブリガロン『……そうか、お前も……。独りなのか……』

ナエトル『は、はい……?』

ブリガロン『……私だって……お前と同じだ』

ーーー

人間の頃から途轍もない強面で、それでいて人見知り。少年時代も虐められることはなく、それどころか逆に虐められると周囲は怯えているように見えた。

専門の学校を卒業後、憧れていた鍼灸整体師の職に就いた時も、そのままの顔では患者が怯えてしまうだろうと忠告され、顔をサングラスやマスクで覆い隠した。

顔知れずだが、腕は確かだと結果的に名は売れた。
最初は整形も考えた……だが悟った。整形などしてしまったら、偽ってしまうことになると。

今まで共に付き合ってきた顔を、自分自身を偽り、そして偽りの顔で、これからの人生を育む。

……たったそれだけの、誰もが行っていることを。私の中の惚けた正義感とやらが、許さなかった。
 ▼ 240 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 21:12:48 ID:Ish0PJRg [76/99] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ブリガロン『い、いや……。やっぱり私は、その、ルーを買いに……』

ナエトル『さぁっ、行きましょうっ、ブリガロンさんっ! 貰いにっ、鍋をっっ、ちゃんこ屋からっっっ!!』ドスドス

ブリガロン『お、おい……。ちょっと……お前……』

こうして半ば無理やりに、私はそのちゃんこ屋に行くことになったのだ。

------------------------

──ガララッ。

オクタン『いらっしゃいぃん。……おや、えぇと、あぁそうだぁぁん……アンタ、ナエトルじゃないかぁぁん。この前無銭飲食したばっかりのぉぉぉん』

ナエトル『あ、あはは……。その、もう詫びの掃除も洗い物も終わったことですし……』

オクタン『で、なんだいぃぃん。今度こそウチの鍋料理を食べに来たってのかいぃぃぃぃん』

ナエトル『あ、いえ、実はですね……』

ナエトル(ブリガロンさん……どうしてそんな格好なんかしてるんですか?)

ブリガロン(ちょっと……事情……がな。しかし……鍋をタダで貰おうなど……虫が良すぎるだろう……)

オクタン『おや……アンタァン』

ブリガロン『うむ?』
 ▼ 241 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 21:13:29 ID:Ish0PJRg [77/99] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
オクタン『そうん、そこのサングラスにマスクのいで立ちのお、いかにも不審者っぽいアンタだよぉぉぉんぅぅ』

ナエトル『あ、このポケモンですか? えぇと、成り行き上なんですけど、このポケモン、ブリガロンさん……鍋料理をしようとしたんですけど……』

ブリガロン(も、もういい、ナエトル……。恥ずかしいから……鍋は他のところで……)

『あぁ、お客さんが来てるのかい。』ガチャッ

オクタン『おや、ネーリドミの探索はもう終わったのかいぃぃん?』

どうやら、店の主人のハリテヤマが帰って来たようだ。

ハリテヤマ『…最近は森で採れる物資も減っちまったよ。Aなんちゃらとかいう集団が、至るところのダンジョンにはばかってやがるもんでな』

ブリガロン『……ATZのこと……か』

ナエトル『え、えーてぃーぜっと?』

ブリガロン『…ポケモンのタイプごと……計18名のメンバーから成り立つならず者たちの集団だ……。詳しいことは俺もよく知らないが……ダンジョンの物資を独占したりと……あまり良い噂は聞かないな』

ハリテヤマ『ハハ、そこまで知っていれば十分だな。そして関係ないが様子を見るところ、鍋がほしいそうだ。ここに使い古しの鍋がある。……持って行け』

ブリガロン『あ、あぁ……。い、良いのか……そんな気前良く……』

ハリテヤマ『丁度この鍋は捨てようと思ってたしな。それに、鍋好きが増えるのはいいことだ』

ナエトル『あ、ありがとうございますっ!!』



オクタン(……)
 ▼ 242 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 21:14:05 ID:Ish0PJRg [78/99] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
〜スーパーマーケット 黄金屋ショップ〜

ブリガロン『……なぜ、お前まで同行するのだ』

ナエトル『ブリガロンさん、鍋とかしたことないでしょう? さっきの素振りでなんとなくわかりましたよ』

ブリガロン『……それが……どうしたと……』

ナエトル『だから、一緒に具材買いましょうっ! 僕、なんどもしたことありますしっ!!』

ブリガロン『確かに、したな……無銭飲食を』

ナエトル『あっ、いえっ! 僕あの時ホント来たばっかりで、鍋の匂いに誘われて……後からその……お金を持ってないんだってこと、気づいて……』

ブリガロン『…お前のことを一つ理解した。『抜けてる』、と……』

ナエトル『さ、色々買いましょうっ! 鍋って具材を選んでる時が一番楽しい気がしますっ!!』

ブリガロン『……お前が……代金を払ってくれるのか?』

ナエトル『あっ! い、あ、その、僕、お金、だから……なくて……』

ブリガロン『……まぁ、金はあるから……具材選びを手伝って貰おうか……』

ナエトル『はいっ、任せてくださいっ!! えぇと、シイタケ白菜モヤシに豆腐……そうだ、シメに鍋用の中華麺を……』
 ▼ 243 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 21:15:10 ID:Ish0PJRg [79/99] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ブリガロン『俺はどちらかというと、雑炊の方が良い……』

ナエトル『雑炊ですか……あんまりしないなぁ。じゃっ、間を取ってうどんはどうです?』

ブリガロン『……なんでそうなる』

ナエトル『えー、じゃあこの際全部ブチ込みますっ? 色んな味楽しめそう、炭水化物ばっかだけど』

ブリガロン『それはまぁ……買い物の締めにしておこう』

ナエトル『…あ、そうだ、この長ネギも……』

ブリガロン『すまないが……俺はネギが嫌いなんだ……』

ナエトル『あっ、そうなんですかっ!?』

ブリガロン『ネギも、タマネギも…特にタマネギだが……。味とかじゃなく……あの噛み締めた食感と後々まで残る風味。……こんな大の男が情けないが……ダメなんだ』

ナエトル『へぇ〜、意外だなぁ。……僕も嫌いなんですっ、ネギッ、大嫌いなんですっ!!』

ブリガロン『……え。じゃあどうして、ネギを……』

ナエトル『答えになってませんけど。ブリガロンさん、ネギをなんだか怪訝そうに見つめた気がしたから』

ブリガロン(……そう、見られていたのか。意識はしていなかったが……)

ブリガロン『……だ、だが。俺は……サングラスを……』

ナエトル『はい、だからちゃんとした確証もなくて、結局は“そんな気”止まりだったんです。だからちょっと、はっぱをかけたというか。エヘヘ……。草ポケモンだけに……』

ブリガロン『……参ったな……。まさか、考えを見透かされるとは……』
 ▼ 244 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 21:15:45 ID:Ish0PJRg [80/99] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ナエトル『何かが嫌いって、別に恥ずかしいことじゃないと思うんです。ネギ抜きの鍋、いいじゃないですか! サビ抜きの寿司、ピクルス抜きのハンバーガー、福神漬け無しのカレー。僕は大好きですっ!!』

ブリガロン『……ハハハ。確かに……ポケモンそれぞれ…そうなのかもな……』

ナエトル『あ、今笑った……ブリガロンさんっ!!』

ブリガロン『え……?』

ナエトル『ブリガロンさん、全然笑わないからさ。根暗なポケモンなのかな〜って、勝手に思っちゃってて。でも、笑えるんですね。しかも、とっても良い笑顔っ!!』

ブリガロン『笑う……』

ナエトル『ええ、笑ってますよ! そうだ……もうそのサングラスとマスク、取りましょう!!』

ブリガロン『な……。それはちょっと…恥ず──』

ナエトル『風邪も引いてないのに、目に障がいもないのに、そんな格好はやっぱ変ですから! 取りましょう、取っちゃいましょうっ!!』

ブリガロン『ま、待て……。そんな、強引に』


──ババッ。


そして俺は、素顔をナエトルに晒すことになる。
 ▼ 245 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 21:16:18 ID:Ish0PJRg [81/99] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ナエトル『あ。ブリガロンさん、あなたの顔……』

ブリガロン(……コイツも。俺の顔を見て、げんなりしたのだろうな)

ナエトル『……すごく、男前じゃないですか!』

ブリガロン『え。』

ナエトル『あ、気になります? はい、ここに手鏡ありますからっ!!』

ブリガロン『……』ジロッ


俺の、今の顔…。
…朗らかになっている…?


ブリガロン(今、笑ったからか……? 俺、こんな顔も…できたのか……?)

ナエトル『ど、どうしました……ヒビでも入ってましたか?』

ブリガロン『……なんでもないんだ……ナエトル』


俺は……もしかしたら少し。

ほんのちょっぴりだけど……変われる、か………?
 ▼ 246 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 21:16:48 ID:Ish0PJRg [82/99] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
──その僅か数秒後。


『『なんだぁ〜、オメェ。ふざけるんじゃないぜっ!!』』


店員『ひっ……』

ナエトル『な、なに……?』

客が店員に対し、いちゃもんをつけているようだ。

ウツドン『おいは菜食主義者で、ここの野菜の品質を大いに評価しているんだ。だからこのダイコンを買ったわけ。それがおい……この葉の部分に虫食いがあるじゃねーか!!』

ナエトル(そもそもウツドンって虫を食べるポケモンだったような。)

店員『す、すみませんお客様、今すぐお取替えます……』

ウツドン『いーや、おいは精神的に苦痛を負った。知ってるよな、ATZ。その恐ろしさも。……おいはATZの“草司”だぞぉ〜っ!?』

店員『A……ATZ。……あ、あの……有名な……!?』


ザワ・・・ ザワ・・・


ブリガロン『まずいぞ……客たちがざわついてる。……アイツを追い出さなければ、買い物もできない』
 ▼ 247 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 21:17:26 ID:Ish0PJRg [83/99] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ウツドン『ん? ……なんだぁ〜、オメーら!!』

そのATZのウツドンは、こちら側を睨みつけ怒声を浴びせかける。

ナエトル『え……? オメーらって……』

ウツドン『なにとぼけてるんだぁっ! オメーらだ、そこのオ・メ・ー・らっ!! オイに……ガンを飛ばしやがったなぁっ!!?』

ナエトル『なにっ……?』

ブリガロン(……先に仕掛けてきたという既成事実……正当防衛になるか……)

ウツドン『ちょうど良い……オメーら二匹共草ポケモンか。このダイコンの代わりにオメーらを喰ってやるから、覚悟しとぉやーーっ!!!』ドビュッ

ウツドンはこちら側に対し、口を拡げ襲いかかって来た。

ブリガロン『……ふぅ──』

ウツドン『まずはオメーからやぁっ! ……往生せいやぁっ!!』ドボシュ


──グシャッ。


ナエトル『わぁ……』

ウツドン『ながっ……オ……オ…メ……ェ………』


ブリガロンはウツドンの口腔内へ、巨大な針の盾をブチかましたのだ。
 ▼ 248 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 21:18:03 ID:Ish0PJRg [84/99] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ブリガロン『……ニードルガードは、なにも…防御だけに用いる技ではない……』

ウツドン『のぶがら……』フラッ


……ドドォン……。


ナエトル(あ、圧倒……的……。す、凄い……強いっ……!!)

周りのポケモン皆、言葉を失っていた。

ブリガロン『……さて、誰か……通報してくれ……。買い物を続けたいんだ』
↓返信


──その時。


『『おやおや、草司さん。ATZともあろう方が…なんという体たらくでしょうか』』


ブリガロン(!)


…ボワンッ。


ナエトル『なっ……なんだ……? お前っ!?』
 ▼ 249 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 21:18:39 ID:Ish0PJRg [85/99] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
カラマネロ『おっと、自己紹介が送れました。私はカラマネロ。ATZがひとり、“超司”と呼ばれるものでございます』

ウツドン『お、おぉっ、超司……良い所に……』

カラマネロ『…お黙りなさい、この……雑草風情が』

店員『……え? 身体が、勝手に──』

ウツドン『ちょっ、おい、ま、嘘だろ(ボビュッ


ウツドン『  ぐ  べ  』


ドシャッ。


ナエトル『なっ……』


店員の身体がぎこちなく動き出し、持っていた包丁で、ウツドンの身体を真っ二つとしたのだ。


客『『きゃ……きゃあ〜っ!!??』』

しんと静まり返っていた空間が、再び彩られた。

カラマネロ『敗者など、我が組織には不要。こう償う他に、仕様がないでしょう』

ナエトル『お、お前……。店員を操って……? ウツドンは、お前たちの仲間なのに……』
 ▼ 250 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 21:19:13 ID:Ish0PJRg [86/99] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
カラマネロ『……フフ、仲間、ですか……。本当に、便利ですよね』

ナエトル『……?』

カラマネロ『“ナカマ”、“トモダチ”、とかね。育った環境、培った性格、好きな俳優、嫌いな食べ物。個々によって全然違う癖して、そしてなぜかそんな者たちほど、そういった言葉で結束したがるのです』

ブリガロン『……確かにお前の言うことも一理ある。『友だちだから一緒にやろうぜ』とか……『仲間だろ、助けてくれよ』とか……その言葉の意味が安っぽいものになっているということは、否定はできない……』

カラマネロ『カラカラ、わかっているではありませんか。そう……私は私の所属組織においても、ナカマだからといって心を許した相手など誰一匹とていませんよ』

ブリガロン『……だから、制裁を加えることにも…躊躇はしない……か』

カラマネロ『……それより、そこの薄ら汚い死体の分。ATZ内に欠番が出てしまいましたねぇ』

ナエトル『な、なんだ……僕たちを恨んでいるのか!? 殺したのはお前自身だぞ!?』

カラマネロ『いや、そういう意味ではなく……。いますね、草ポケモン。新たな“草司”として適任が』チラッ

ナエトル『え、ま、まさか……!? でも、僕……弱』

カラマネロ『そう、あなたですっ!! そこの……イガグリニードルスキンヘッドさんっ!!』ビシッ

ナエトル『え。』

ブリガロン『……俺の、ことか……』
 ▼ 251 ュウ@メガバングル 17/03/28 21:19:16 ID:NpRDE51E NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ちょっと追いつかないからゆっくり更新しても大丈夫ですよ
 ▼ 252 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 21:19:45 ID:Ish0PJRg [87/99] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
カラマネロ『先程拝見したあなたの戦闘能力。その抜きん出た能力があれば、ATZ内においても相当の地位に登り詰めることが可能でしょう』

ブリガロン『俺は……自ら悪党に成り果てようと思わない』

カラマネロ『そうでしょうね。そうおっしゃられるかなとは思ってました。……ちょっと、失礼』カキカキ

ナエトル(なんだ……?)

カラマネロは懐から紙とペンを取り出し、なにかを書き始めたようだ。

カラマネロ『えぇと、こんな文面でいいかな。差し上げますよ。読み終わりましたら、ツルを折るなりケツを拭くなりなんなりとご自由に』サッ

ブリガロン『……』

ブリガロンは、カラマネロから文書を受け取った。

カラマネロ『では、私はこれで。警察なり救急隊員なり訪れるでしょうから。いいお返事を、期待しています。明記してある私のアドレスにメール下さいね』


──シュッ…。


カラマネロの姿が、たちどころに消え去った。


ブリガロン『……ナエトル。面倒ごとになる前に……ここを出よう。別の所で買い物し直しだ』

ナエトル『あっ、うん……』


ナエトル(今の手紙のこと、なにも、言ってくれない……)
 ▼ 253 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 21:20:16 ID:Ish0PJRg [88/99] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
……それから、ブリガロンと僕の共同生活が始まった。

“共存”だったのかもしれない、あるいは。


ナエトル『ブリガロンー、卵焼きできたよー』

ブリガロン『…凄いな、ナエトル。俺も……作ったのだが』

ナエトル『へぇ、スクランブルエッグだ! ……こんな緑っぽい料理だったっけ。』


僕はブリガロンに、知っている限りの知識を教え。


ナエトル『僕は……ナエトルだあぁぁっ!!』ビリリリ

ブリガロン『朝っぱらから……うるさいぞ。なにをやってるんだ?』

ナエトル『僕、弱いからさ。せめて、声を大きくして相手を威圧しようと』

ブリガロン『……今度、俺が色々技を教えてやる。そういえば、今日もタウンに新参がやって来た。女の子のイーブイだったのだが──』


彼からは、生き延びるための数々の体技を教わった。
 ▼ 254 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 21:20:52 ID:Ish0PJRg [89/99] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
〜ある日〜

ブリガロン『……ナエトル…お前は、まだまだ弱いな』

ナエトル『え……酷いよ、ブリガロン! 僕だって、あれからいっぱい力をつけたんだからさっ!!』

ブリガロン『わかってる、わかってるよ』

ナエトル(ゼッタイわかってない)

ブリガロン『……ナエトル。いつか、絶対に、還ろうな』

ナエトル『ん?』


僕の覚えてる限りでは、それがブリガロンとの最後の言葉。
その後、僕一匹となった家にあの手紙が残された。

──そして、今。


------------------------

ニンフィア「えっ……」

ブリガロン「……。悪手……だったと……」フラッ

ナエトル「ブリガロンッ!!」


ブリガロンが刺した“創蛙”は、人形であったのだ。
 ▼ 255 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 21:22:23 ID:Ish0PJRg [90/99] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
>>251
書き溜めを一気に投下しようとしたので、すみません


「「クッククックー。アテが……外れたでござるなぁ……」」


ニンフィア「……その馬鹿みたいな笑い声!?」

一同の周辺に、“創蛙”の声が響き渡った。

ゲッコウガ「……よもや拙者が忍者だということを……忘れたわけではあるまいな? 万一を想定し、忍法『みがわり』の術にて拙者の影武者を創り出しておったのだよ」

ブリガロン「……さすがは、“創”蛙。……つまり、“これ”は……そう……いう……」ドサッ


ブリガロンが盗み取ったのは、“創蛙”が創り出した偽の“毒”のオルゴールだったのである。結果、ブリガロンの体内へ毒が溶け込み侵入。

屈強なポケモンであれど、“内臓”まで鍛えることは不可能なのだ。


ゲッコウガ『……残すはお主らでござるな。早く、オルゴールをよこすでござるぅ……』

ナエトル『あわわ……』

ニンフィア「もう……ダメ、なの……?」


──その時。
 ▼ 256 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 21:42:36 ID:Ish0PJRg [91/99] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
──プシャアァァァァッ!!(ガンッ


ゲッコウガ『!?』


「「痛いっ!?」」


ニンフィア「そ、その声、は……」

階下より水しぶきが吹き上がり、床穴から三匹のポケモンを押し上げたのだ。

……約一匹、勢い余って天井に頭を打ち付けた。

ピカチュウ「や、やぁ……」フラフラ

サンドパン「水、嫌いなのに」

ドーブル「私も合流しました。万全とは行きませんが、戦陣に加わります」

ニンフィア「みんなっ!!」

ゴーリキー「全員集合したな、久しぶりに」

ニンフィア「あっ、起きてたんだ。……えっ」(/ω・\)チラッ


──ゴーリキーは、全裸体であった。
 ▼ 257 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 21:44:46 ID:Ish0PJRg [92/99] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ニンフィア「……なんで、脱いでる……の?」キョトン

ドーブル「一回見たことはあるので、今更どうこう言うつもりはないですが……」

別にゴーリキーは勇者ではないので、赤面はしなかった。

ゴーリキー「この脱いだパンツは、纏う者の力を抑制する能力を持つんだ。つまりは力を身体周辺へと留め置く。俺は奴(ブリガロン)にヤられる瞬間にパンツを脱ぎ放ち込められていた力を局地的に開放防御することにより気絶した振りをして機を伺っていたんだ」

ピカチュウ「長ったるいけど、つまりパンツで防御したと。まぁ、後は、フザケた“創蛙”を倒して万々歳ってことだ。ここまで来るの長かったんだからな。直に終わらせる!!」

ゲッコウガ「フ、フザケたとはどういうことでござるかっ!? 第一拙者が果たしてどこに潜んでいるのか、お主らにはわからないクセにッ!!」

ピカチュウ「……対策があるぞって顔してるけど。なんかしたのか? アンタ」

ブリガロン「……。う……あぁ、そうだ」

ゲッコウガ「?」

ブリガロンは針整体師。
職業柄、相手のツボを見図ることに長けている。

尚且つポケモン世界にて戦闘を繰り広げた経験から、治癒目的以外のツボだろうと計り知ることが可能となったのだ。

ブリガロン(“創蛙”は姑息で用心深い性格。そう離れた位置には奴はいない。……実際、いな“かった”)

ゲッコウガ「ぐ……ぐがぁばっ!?」バキャッ

ニンフィア「あ。」


“創蛙”が、天井を突き破り落下した。
 ▼ 258 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 22:50:30 ID:Ish0PJRg [93/99] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ゲッコウガ「なぜ……」

ブリガロン「お前……先ほど……身代りを解除する前……。舌で……俺のジュエルを……回収したよ……な。その時に……それ、だ……」

……ATZ内に信頼など無きことは、彼自身もまた良く理解していたのだ。
前任のATZメンバーを容赦なく切り捨てた、あの時から。

ゲッコウガ「……なるほど。身代りの動きを封じ込まれたら、拙者はジュエルを奪えなくなる。それで……この“紐付き”の針を我が舌へと差し込んだか」

ドーブル「その紐を辿って行けば、彼の位置が把握できるというわけですね。さぁ……ピカチュウ」

ピカチュウ「あぁ……この紐を手繰り寄せてやれば……」

ピカチュウ(……疑問が──)

ゲッコウガ「……フン」

ニンフィア「え?」

ゲッコウガ「だったらもうこんな舌。最早無用の長物でござるな。舌っ足らずになろうとも仕方がない。……フンゥウッ!!」ブチッ

ニンフィア「!?」

ゴーリキー「わっ…なんだぁっ!?」


“創蛙”は自身の舌を、あろうことか、噛み千切ってしまったのだ。
 ▼ 259 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 22:51:09 ID:Ish0PJRg [94/99] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ピカチュウ(確信に変わったぞ、疑問がな……ドーブル、あの鏡をッ!!)

ドーブル(えぇ、相変わらずゲームが違いますが……)

ゲッコウガ「クッククククー……」

ゲッコウガ(その舌を動かせ……同胞)

???(はぃいぃ……)


ピカチュウ「「……ラ○の鑑ッ!!」」ピカァッ


ゲッコウガ「!!?」


------------------------


「は……はわわわぁ……」


ゴーリキー「コ、コイツは驚いた──」


メタモン「ひぃぃ、す、すみませっへぇぇぇ〜〜んっ!!」


“創蛙”の正体は、複数のメタモンの集合体であったのだ。
 ▼ 260 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 22:52:08 ID:Ish0PJRg [95/99] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ニンフィア「ど、どういうこと……」

ピカチュウ「何がなんだかわからないって顔してるんで、全部説明してやる」

------------------------

『“創蛙”なんてヤツが、顔を見られるなんて』

あの時の疑問は、『奴が自由自在に姿を変えられるとしたら?』という疑問に発展した。

『ゲッコウガ』という偽りの姿に自分を変幻させ、手配書もその姿で固定させておけば、水面下での活動が、かえって行いやすくなる。

別のポケモンに姿を変えるだけでいいんだからな。“創”とは、お前の場合、そういう意味だった。

……後は変身を解く道具を具現化し、お前に浴びせることが、答え合わせ。

大方変身したアーボックかなんかを身体に忍ばせておけば、毒を創り出すことも可能。舌もそういうことだろう。

ーーー

オノノクス「よくぞ、そこまで辿り着きましたね」ザッ

ピカチュウ「……オノノクスさん」

下の階より、あのオノノクスが現れたのだ。

オノノクス「私とまったくもって一緒の解です。よもや“ソウア”の名を用いるとは。……ここまで、汚して下さるとは」

メタモン「……あわわわ」

ピカチュウ(名前を、汚す──?)
 ▼ 261 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 22:53:30 ID:Ish0PJRg [96/99] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
オノノクス「……“魂喰”ッ!!」シュゴォ

メタモン「あぐぁぐっ!?」


なんとオノノクスは、メタモンの身体を鷲掴み、そこよりメタモンの生気を吸い取っているのだ。


メタモン「ほわぁ……」ドサッ

ミイラ体となったメタモンが、崩れ落ちた。

ニンフィア「オノノクス……さん……?」

オノノクス「一つ、良いことを教えておきましょう」



オノノクス「「……私が、“創亜”だ」」



一同「!!?」


──その時。


「「久しぶりだな。“スノ”よ。俺のことを、覚えているか?」」

ピカチュウ「そ、その声はッ!?」
 ▼ 262 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 22:58:18 ID:Ish0PJRg [97/99] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
サザンドラ「……」

ニンフィア「サザンドラッ!?」

サザンドラ「貴様の所為だ。このインチキミイラと俺が仲間だという記事をでっち上げ、俺を追い込んだのはな」

オノノクス「……“サド”、遂に──ここまで」

ニンフィア「サドと……スノ。……!」


次の瞬間、ニンフィアの脳裏に、再びとある記憶がフラッシュバックする。


オノノクス「ここまで付き合ってくれたお前たちにも、この女が感じているエピソード。……語っておこうか」

ピカチュウ「どういう……こと……」

------------------------

………
……
 ▼ 263 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 22:59:46 ID:Ish0PJRg [98/99] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
〜数年前 イッシュ地方〜

サド(サザンドラ)『……ポケモンだけの、楽園を?』

スノ(オノノクス)『そうだ、相棒。真にポケモンが好きなトレーナーを、、ヴァーチャルの世界へと来迎する。そして、理想郷を創り上げるんだ』

サド『そんなことが、できるのか?』


このスノという男は、俺、サドの、トレーナーとして相棒だった男だ。

……しかし。とあるトレーナーに敗北し、ポケモンを失い、トレーナーであることを放棄した。
思えばそんなことがきっかけで、スノは変わってしまった。


スノ『空間研究所のとある研究員に、夢の狭間で用いているものを応用した技術を提供してもらえることになったんだ。管理者は俺だ。お前にも来てほしいのだ』

サド『……あ、あぁ』


要するに、人工的に創り出した空間に、希望者を募りポケモンへ転身してもらい、永住してもらう。
『ポケモンパラダイス』プロジェクトだ。

今思い返せば、下らないにも程があった。偽りの世界に人々を閉じ込め、なんとなる。後遺症として、元の世界の記憶も徐々に失われていくというのに。


……この時、コイツを止めることができなかったことが、俺の最大の罪だ。
 ▼ 264 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 23:00:26 ID:Ish0PJRg [99/99] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
〜旧アンホワイト(後のアロガントタウン)〜

サザンドラ『……』

俺はサザンドラとなりて、『パラダイス』に加わった。
しかし、そこで俺が見たものは。


ポケモンたち『おい、ここはどこなんだ!!』

ポケモンたち『気づいたら、この世界に──』

ポケモンたち『お前も、あの“声”を!?』


サザンドラ(話が、違うじゃないか……)


スノが管理者の権限を乱用し、あちらこちらのポケモントレーナーに呼びかけ、プロジェクトに勝手に引きずり込ませていた、おぞましき光景であった。

……そして。


ニンフィア『あ、スノさん……これは一体ッ!?』

サザンドラ『……お前まで……』


このニンフィアは、イブ。俺のイトコの女の子。

つまりは、俺の身内までもが、スノに────
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