▼  |  全表示468   | << 前100 | 次100 >> |  履歴   |   スレを履歴ページに追加  | 個人設定 |   ▼   
                  スレ一覧                  
SS

【SS】ポケモン不思議のダンジョン 花の盗賊団

 ▼ 1 1◆J44kAZeDOM 17/03/27 23:18:48 ID:qk0Nxw9k NGネーム登録 NGID登録 wf 報告







プロローグ






 ▼ 329 1◆J44kAZeDOM 17/04/07 21:51:55 ID:RGqgKqVs [1/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
しかし本当に、あの臭いが接近して来た。

僕らも纏うその臭いだが、さらに強度を増したのだ。


イワンコ「ホントに来た、ウルトラビーストが……」


ミミッキュは、それでも何も言わない。

初めからわかっていたと言うように、じっとそこに佇んでいる。


イワンコ「ウツロイド? いるのか?!」


僕の呼びかけに、答えるひとつの陰。


ウツロイド「久しぶりーイワンコにミミッキュ」
 ▼ 330 1◆J44kAZeDOM 17/04/07 21:53:20 ID:RGqgKqVs [2/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
イワンコ「ホントに来たぁ?!」

ウツロイド「いやー、だって、スペースの強烈な臭いがするから、ビースト仲間いるのかなーって思ったんだもん。

      まさか、2匹だなんて思わなかったよー」

ミミッキュ「……初めから、感じてたクセに」

イワンコ「え? いや、僕もミミッキュも、最初はそんな臭いしてなかったけど」

ミミッキュ「イワンコでも感じられない程だったとしても、あたしは知ってる!

      あたしたち、初めからウルトラビーストと同じだったんだって!」

ウツロイド「……あー、もしかして、思い出したの? ミミッキュ」


この期に及んで、ようやく俺は違和感に気付く。

ミミッキュが、思い出した?


イワンコ「おま、記憶喪失だったのか?」
 ▼ 331 1◆J44kAZeDOM 17/04/07 21:54:16 ID:RGqgKqVs [3/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
僕は、ミミッキュに声を掛ける。

ミミッキュはそのばけのかわを震わせた。

ふっと短く息を吐き出すと、彼女の本物の目はウツロイドを眺め、それから覚悟を決めたような表情を浮かべた。


ミミッキュ「……あたしも、あなたと同じだった。あなたと一緒に、あたしはこっちに来ていた」

ウツロイド「……ホールを通り抜けると、こんな事が起こるなんて、あたしビックリしちゃったんだ。

      ニンゲンが、ポケモンになっちゃうなんて」

ミミッキュ「ウツロイド。あなたは、殺したって言ったよね」

ウツロイド「そだよー」

ミミッキュ「本当に、“あなたが”殺したの?」

ウツロイド「……ううん。あたしに寄生された、ニンゲンがー」

イワンコ「なっ」


絶句する僕に、彼女は鋭く言い放った。


ミミッキュ「まだ思い出せない? イワンコ、ううん……岩根広大君!」
 ▼ 332 1◆J44kAZeDOM 17/04/07 21:55:44 ID:RGqgKqVs [4/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
岩根広大。夢の中で聞いた、僕の苗字も、岩根だった。

けれど、まだだ。まだ、何も思い浮かばない。

ミミッキュが呆れたように僕を見据え、言った。
 ▼ 333 1◆J44kAZeDOM 17/04/07 21:56:29 ID:RGqgKqVs [5/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



















ミミッキュ「あたしは……久瀬。久瀬美々華よ」
 ▼ 334 1◆J44kAZeDOM 17/04/07 21:57:01 ID:RGqgKqVs [6/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
イワンコ「あ……」


その言葉を聞いた瞬間、記憶の扉の鍵が、かちゃりと音を立てて外れた気がした。


ミミッキュ「……思い出した?」

イワンコ「が……は……」


唐突な記憶の奔流に呑まれ、頭が割れそうに痛い。

うめき声が漏れる。

ああ、そうか。そうだったのか。




イワンコ「久瀬……」



ミミッキュ「久しぶり、岩根君」
 ▼ 335 1◆J44kAZeDOM 17/04/07 21:57:57 ID:RGqgKqVs [7/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
彼女は、ばけのかわを、ひっぺがした。

その中には、何も入っていなかった。

「これが、あたしだよ」と、皮から聞こえる。

――あたしはまだ、空っぽ。


ウツロイド「思い出したみたいだねー」

ミミッキュ「うん。ウツロイド、初めから、最大級のヒントをくれてたんだ」

ウツロイド「まーねー。あれは、ほとんどあなたの感想。一生忘れないって、すぐに忘れちゃってるよねー」

ミミッキュ「何か別枠でしょ、それは」

ウツロイド「うん。昔っから、ホール通ったニンゲンって、記憶なくすことが多いんだー。姿まで変わっちゃうのは想定外だったけどー」
 ▼ 336 1◆J44kAZeDOM 17/04/07 21:59:37 ID:RGqgKqVs [8/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
僕も、すべて思い出した。

久瀬の起こした乱闘。薄れゆく意識の中で、僕はひずみの中に入り込み、そして完全にすべてから解き放たれた。

再構成が始まる。僕は、人間から離れ、そして――

目が覚めたらポケモンになっていた。
 ▼ 337 1◆J44kAZeDOM 17/04/07 22:00:18 ID:RGqgKqVs [9/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミミッキュ「……ウツロイド。教えて。あなたたちの本当の狙いは、調査なんでしょ? 人間の世界に行ったのも、その調査のため。

      この世界に現れたのも、同じ」

ウツロイド「……バレちゃったかー。うん。この世界は、いいとこだよー。きっと、みんな、一緒にいてくれると思うなー」

ミミッキュ「そっか。それと……アクジキングの場所、知ってる?」

ウツロイド「あっくん? うーんと、あたしはわからないけど、でもきっと、大食いの噂を辿ったらいると思うよー」

ミミッキュ「なるほどね。ま、それはみんな思い付くかな。あたしは、コスモウムと話したい」

ウツロイド「あたしも行くー!」

ミミッキュ「行こう、イワンコ。イワンコ?」


僕は、意識を投げ出して、どさりと大地に崩れ落ちた。
 ▼ 338 1◆J44kAZeDOM 17/04/07 22:00:52 ID:RGqgKqVs [10/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


水の大陸はワイワイタウン。

その北部に拠点を構えるポケモン調査団の中で、僕たちはある2匹のポケモンと話していた。


ピカチュウ「なるほど……ウルトラビーストか。草の大陸今、大変な事になってるんだね」

ナエトル「みたいだね。それとサーカス団エクリプスか……」

ピカチュウ「あー、そういやあれか」

チラーミィ「あれって?」

ピカチュウ「いや、こっちの話。何年も前のクリスマスに、私たちの友達が、エクリプスに憧れてってサーカス団に入りに行ったんだよね」

ニューラ「まあ、それはともかくとして、お願い。黄金のリンゴを譲ってください」

ナエトル「……一応だけど、探検隊バッジを見せてくれませんか? 嘘を吐いてる可能性が0じゃない以上、確かめておきたくて」

ニューラ「なるほど。これ」

ナエトル「プクリンのギルド卒、探検隊リアライズ……」
 ▼ 339 1◆J44kAZeDOM 17/04/07 22:01:36 ID:RGqgKqVs [11/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
この発言を聞き、1匹のポケモンが声を掛けて来た。


デンリュウ「プクリンですか?」

ピカチュウ「あっ、ダンチョー! 知り合いなの?」

デンリュウ「ええ。プクリンとは、結構交流があるんですよ」

チラーミィ「へぇ、親方、調査団とも知り合いだったんだ」

デンリュウ「元ニンゲンのポケモンが他にもいるという事を聞き、時間の空いた隙を狙って話を聞きに行ったんです」


彼はここで、謎のポージングをした後、がっくり肩を落とす。


デンリュウ「……話になりませんでしたけど」
 ▼ 340 1◆J44kAZeDOM 17/04/07 22:02:29 ID:RGqgKqVs [12/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
チラーミィ「……でしょうね。ってあっ! あの時のデンリュウ!」

デンリュウ「あれ? 知り合いでしたっけ」

チラーミィ「いや、ギルドに来た時、僕たちまだいたんです」

デンリュウ「そういえば、いたようないないような……でも、プクリンのギルド卒業な以上、彼らの身分は私が保証します。

      ナエトル、ピカチュウ。協力してあげてください」

ナエ・ピカ「はい!」
 ▼ 341 1◆J44kAZeDOM 17/04/07 22:03:39 ID:RGqgKqVs [13/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
こうして、僕らは調査団の2匹の協力を得た。彼らは預かりボックスから2つのアイテムを引き出して、言う。


ピカチュウ「これが黄金のリンゴ……これ何年前からあったっけ」

ナエトル「腐ってる感じはしないし大丈夫でしょ。黄金のリンゴだよ?」

ピカチュウ「それもそうか。それとこれ」

ナエトル「満腹リングル。これを付けていると、お腹が減らなくなる。アクジキングにこれを付けさせたら、食害がでる事もなくなると思う」

チラーミィ「凄い、これ……超絶レアアイテムだよね?」

ナエトル「苦労したけど、世界のためだもん。それに、金塊積めばデスカーンが引き換えてくれるから」

ニューラ「……そのデスカーン、いったい何者?」

ピカチュウ「さー、どうやって入手してるのか、全然教えてくれないんだよね」

ナエトル「利益の問題もあるから仕方ないとは思うけど、確かに凄い。次はその謎を調査してみる?」

ピカチュウ「それもありかもね。とりあえず、リアライズさん」

チラーミィ「はい」

ピカチュウ「世界、救ってくださいね」

チラーミィ「はい!」

ニューラ「もちろんよ。プクリンのギルドの名にかけて」
 ▼ 342 1◆J44kAZeDOM 17/04/07 22:04:14 ID:RGqgKqVs [14/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ピカチュウ「ナエトル、私たちもなんかできないかな」

ナエトル「うーん……ここまで来たら僕らにできる事はないと思うよ。せいぜいが……情報を発信する事ぐらい。世界中のコネクトを駆使してね」

ピカチュウ「そっか、つながりオーブ! ウルトラビーストと仲良くしてあげてって、発信できるんだ」

ナエトル「うん。普通なら、そんな異世界からやって来た生き物なんて歓迎したくない。けど、危険な生き物じゃないんだ。

     それを正しく伝えれば、世論を味方に付けられる」

ピカチュウ「えっと……どう伝える?」

ナエトル「考えるから、ちょっと待って」

チラーミィ「いろいろありがとうございます」

ナエトル「いえいえ」

チラーミィ「じゃ、もう行きますね。肝心要のアクジキングそのものもまだ見付かってないので」

ピカチュウ「頑張ってね! バイバイ!」

チラーミィ「さようなら!」


それから再びラプラス大陸便を使用し、草の大陸へ向かう。

まずはジジーロンの家で情報を整理させてもらおう。そしてそれから、アクジキングを捜さなければ。
 ▼ 343 1◆J44kAZeDOM 17/04/07 22:06:04 ID:RGqgKqVs [15/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


イワンコ「う、うーん……」

ジジーロン「おお! 目覚めたぞ!」

ミミッキュ「イワンコ、おはよう」


ミミッキュの上半身に浮かぶ顔は心配そうで、僕はうつむいて、少し考え込む。

そして、考えても埒が明かないと顔をあげた。


イワンコ「……そうなんだよな。うん。逃げちゃ駄目だ。ミミッキュ、ごめん」

ミミッキュ「いいよ別に。もう、気にしてない」


嘘だ。彼女はまだ、満たされていない。

それとも満たされている事に気付いていないのか。

とにかく、彼女は未だ、根に持っている。だからこそ、中身が存在しないのだ。
 ▼ 344 1◆J44kAZeDOM 17/04/07 22:06:36 ID:RGqgKqVs [16/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ジジーロン「何があったのかはわからぬが、とりあえず無事でよかった。そして、これからどうするのじゃ?

      ウツロイドを見付けたのじゃろ?」

ウツロイド「あたしここにいるもんねー」

イワンコ「とりあえず……留置所だ。コスモウムと、話そう」

ミミッキュ「わかってる。行こうイワンコ。

      ジジーロンさん、ありがとうございます」

ジジーロン「構わんよ。元気出しなされ!」

イワ・ミミ「はい」

ウツロイド「ほらー、もっと元気に」

イワ・ミミ「はい!」

ウツロイド「よろしー」


元凶であるというのに、彼女の天真爛漫さはどことなく懐かしささえ感じさせる。

苦笑しながら眺めていると、ミミッキュも同じ気持ちだったようで表情を苦笑いに変えていた。


ウツロイド「じゃ、レッツゴー」
 ▼ 345 1◆J44kAZeDOM 17/04/07 22:08:05 ID:RGqgKqVs [17/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
留置所まで、気付かれないように進むのはさすがに骨が折れた。

他に気付かれないよう気を付けながらウツロイドがマッシブーンに合図を送ると、マッシブーンとジュナイパーがこちらへやって来た。


ジュナイパー「よくここまで無事に来られたね」

イワンコ「まあ、なんとか」

ジュナイパー「記憶、取り戻せた?」

イワンコ「はい。だけどたぶん、この事件そのものには関係ないかと。

     どちらかと言うと、この事件によって引き起こされた二次災害みたいなもんだったんです」

ミミッキュ「要約するとそうなりますね。手掛かりはないと見ていい」

ジュナイパー「そうか」

イワンコ「そっちの進捗は?」

ジュナイパー「さっぱりだ。コスモウムは、言葉を受け入れる気配もない」

マッシブーン「硬い殻に閉じ籠ってしまっているからな。我らの言葉さえ、今は届かないだろう」

イワンコ「……そうですか」


恐らく、そうだろうとは思っていた。彼が、今現在、一番危険なのだ。
 ▼ 346 1◆J44kAZeDOM 17/04/07 22:09:03 ID:RGqgKqVs [18/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ジュナイパー「君たちが思い出した以上、彼の説得には君らが適任だろう。

       となると、僕は、アクジキングや他のウルトラビースト……デンジュモクとフェローチェも念のために捜しておきたい」

ウツロイド「ジュモクっちはきっと、電気探してるよー」

ジュナイパー「電気……フェローチェは?」

ウツロイド「さー。でも、期限の時には、というよりフェロちゃんせっかちだから、もうそろそろミリスに着いて、どう身を隠すか悩んでるとこじゃないかなー」

ジュナイパー「集合場所は、やっぱりミリスか」

マッシブーン「あの場所が一番繋がりやすいものでな! この近辺もなかなかのものだが」

イワンコ「デンジュモクはたぶん、エレキ平原です。バクガメスが紹介してた」

ジュナイパー「了解。後は本当にアクジキングだけか……。アシレーヌたち、見付けてくれてるかな」
 ▼ 347 1◆J44kAZeDOM 17/04/07 22:10:52 ID:RGqgKqVs [19/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
マッシブーン「アクジキング殿は、隠れるのも苦手そうなのだがな」

ジュナイパー「なんでも食べる……となると、目撃証言があがっていてもおかしくはないはずなんだけど」

ミミッキュ「アクジキングって、悪食なの? この世界のおいしい食べ物を探して、物凄い美食家と化してたりしない?」

ウツロイド「どーだっけなー。マッシ君、わかるー?」

マッシブーン「そういえば、『ワシの舌を唸らせるメシがあるか、楽しみなもんじゃ!』なんて言っておったぞ!」

ジュナイパー「……なるほど。どうにかして、リアライズの2匹が持って来るであろうリンゴの存在を宣伝しないと」

イワンコ「でも、肝心の2匹がまだ……」

ジュナイパー「一旦戻ろうか。コスモウムは、まだ動く気配がない」


そう言われ、僕らはコスモウムを振り向く。彼は、じっと、そこに浮かんでいた。

確かに、一度リアライズと合流するのが得策に思える。僕は黙って頷いた。
 ▼ 348 シツブテ@イワZ 17/04/08 17:35:41 ID:reEtsVBQ NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 349 1◆J44kAZeDOM 17/04/08 22:04:19 ID:0/HvBLZc NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
サーカス団編 4章
http://pokemonbbs.com/post/read.cgi?no=563304&l=125-199
125から199までです
 ▼ 350 リ解釈あり◆J44kAZeDOM 17/04/09 10:46:15 ID:jyWOxWLU [1/78] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告







9章 コスモッグの記憶






 ▼ 351 1◆J44kAZeDOM 17/04/09 10:46:55 ID:jyWOxWLU [2/78] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
マッシブーンとウツロイドを残し、ジジーロンの家に向かう。

そこには、リアライズの2匹もいた。


ジジーロン「ついに全員集合かの」

チラーミィ「この街でウルトラビースト関連で動いてるのは、僕たち7匹ぐらいか」

イワンコ「動いてるのは……そうなりますね」

チラーミィ「とりあえず、現状報告だよ」


リアライズは、黄金のリンゴ、満腹リングルという、空腹対策2点セットを揃えていた。

譲ってもらっただけだけどね、と謙遜していたが、譲ってもらえる時点で凄い。

僕らなら、まず間違いなくアウトだろう。何せ、盗賊だもの。


チラーミィ「つながりオーブってシステムがあって、今、世界にウルトラビーストの目的を発信してる。

      ナエトルとピカチュウ……その調査団の2匹と繋がってる約780匹、伝説も含む。

      全員がそれを知っていれば、少なくとも世間が邪見に扱う事はない」

ニューラ「世間的な根回しは完了したと言っていい。ジュナイパーはサーカス団エクリプスよね」
 ▼ 352 1◆J44kAZeDOM 17/04/09 10:48:07 ID:jyWOxWLU [3/78] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ジュナイパー「うん。エクリプスは現状、ウルトラビーストの内2匹を味方に引き入れて、他のウルトラビーストに公演を見せようとしてる。

       今正体を現すと、追い返せと言われかねなかったから一時解散中。

       エクリプスの……日食の当日、ミリスの街に集まる事になってる。

       後留置所で、マッシブーンとは仲良くなれたように思う。

       アクジキングの居場所は未だ、見付からない。探すしか……」


と、扉が開いた。

鼻孔をくすぐる甘い香りに思わずうっとりしかけてそれから気付く。

ジュナイパーの驚いた表情に。


ジュナイパー「アママイコ、どうかした?」

アママイコ「ニャヒートたちから手紙!

      もう、日食まで何日もないから、再結成してミリスに向かってるって」

ジュナイパー「そうか! よかった。ありがとう、アママイコ」
 ▼ 353 1◆J44kAZeDOM 17/04/09 10:48:46 ID:jyWOxWLU [4/78] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
チラーミィ「誰?」

ジュナイパー「妻のアママイコです」

ミミッキュ「既婚者?!」

ジュナイパー「あれ、意外?」


落ち着け、ミミッキュ。聞こえないからと言って、呪詛の言葉を呟くな。

久瀬美々華はそんなキャラではなかっただろ、少なくとも。


イワンコ「と、とりあえず僕らの成果。記憶を取り戻しました。直接説得に関係するもんじゃないけど……。

     後、恐らくデンジュモクとフェローチェには、満足してもらったと思います」

ジュナイパー「アクジキングを見付けたあっ?!」


手紙を読んでいたジュナイパーが叫び声をあげる。
 ▼ 354 1◆J44kAZeDOM 17/04/09 10:49:28 ID:jyWOxWLU [5/78] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ジュナイパー「もう既にミリスの街にいて、何か食べるものをひたすらに要求し、街のポケモンたちを困らせている……」

イワンコ「……満足できるメシはなかったみたいだ。ジュナイパーさん、行ってください。エクリプスもそこにいるんでしょう?

     あなたが決着を付けるべきです」

ジュナイパー「……そうだな。リアライズの2匹さん、それからミミッキュも、反論ありますか?」

チラーミィ「異議なし!」

ニューラ「いいよ、誰でも」

ミミッキュ「あたしたちはコスモウムと話したいですし」

ジュナイパー「じゃあ、行って来る! 黄金のリンゴと満腹リングルを」

チラーミィ「はい」

ジュナイパー「ありがとう! ……イワンコ、ミミッキュ。頑張って」

イワ・ミミ「はいっ!」


そう言って、ジュナイパーは飛び去ってしまった。
 ▼ 355 1◆J44kAZeDOM 17/04/09 10:50:14 ID:jyWOxWLU [6/78] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
後に残されたアママイコは、呆れたようにため息を吐く。


アママイコ「まったく……。夫がお世話になってます。今回ばかりはあたしも行こっと。

      待ってよジュナイパー! あたしも連れてって!」

そう言って、彼女も走り去る。

後に残された5匹は、しばしその光景を眺めた後、それどころじゃないと会話を再開した。


ニューラ「あんたたちはコスモウムと話すんでしょ?

     あたしたちは……念のため、エレキ平原にデンジュモクを捜しに行くかな」

チラーミィ「コスモウムからしたら、一番憎いポケモンだろうからね、僕たち。そっちには触れられない。

      ミリスにもう、何匹か集まってるらしいしウルトラビースト」

イワンコ「たぶん、フェローチェはもういる。ウツロイドがそう言ってた。カミツルギとテッカグヤは確定させていいでしょ」

ミミッキュ「アクジキングは間違いなくいるね。ウツロイド、マッシブーンはあそこ」

チラーミィ「デンジュモクだけじゃん。よし、行こう」

イワンコ「僕たちも」

ミミッキュ「だね」
 ▼ 356 1◆J44kAZeDOM 17/04/09 10:51:49 ID:jyWOxWLU [7/78] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ジジーロン「ワシは、ここで待機しておる。実は、ワシ、預かりボックスを持っておっての」

チラーミィ「えっ?! 銀行と倉庫使い放題の?」

ジジーロン「そうじゃ。歳食って、買い物もしづらいじゃろうという息子からの贈り物じゃ」

チラーミィ「凄くありがたいです! 倉庫と接続してるから、君たちも何か引き出して行けるよ」

イワンコ「マジっすか?!」

ミミッキュ「一応、いろいろ引き出そう。復活のタネとか、復活のタネとか、リンゴとか……」

イワンコ「だね」


久しぶりに、トレジャーバックにアイテムを詰め込んだ気がする。ウルトラスペースに関してはアイテムを持っていけなかったし。

しっかりアイテムを持っている安心感と来たらなかった。


チラーミィ「それと、これは僕らからの餞別。たいようのリボンと、げっこうのリボン。

      太陽の力と、月の力を備えたリボンだよ。まあ、進化アイテムでしかないんだけど……。

      でも、ソルガレオとルナアーラは、この事件に関係している。何かしらの役に立つんじゃないかな」

ニューラ「イワンコにとっては、進化に使うでしょ。どっちかの力の影響を色濃く受けた2通りの姿があるんだから」

イワンコ「はい。ありがとうございます」
 ▼ 357 1◆J44kAZeDOM 17/04/09 10:52:32 ID:jyWOxWLU [8/78] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミミッキュ「太陽と、月か。イワンコ、どっちがいい?」

イワンコ「……こっち」


脳内でどちらにしようかなを行った所、たいようのリボンを指さしていた。

チラーミィが僕の首にそれを巻き付けてくれる。

ミミッキュはニューラに巻いてもらっていた。


チラーミィ「最後に、2匹はこのドロンのタネを食べて。透明になれるから。それじゃ、行こうみんな!」
 ▼ 358 1◆J44kAZeDOM 17/04/09 10:53:57 ID:jyWOxWLU [9/78] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
再び僕らは、留置所に舞い戻る。

他の誰にも見付からないように、隠れながら。

といっても、ドロンのタネをリアライズから貰って食べたから、警戒の必要性は薄まった。

僕らはまた、誰にも見付かる事なくコスモウムたちの所へ到達する事ができた。


イワンコ「ウツロイド」

ウツロイド「んー? イワンコー?」


僕らは透明化を解除した。


ウツロイド「ふおー、急に出て来た、凄ーい」

マッシブーン「曲者?!」

ミミッキュ「あたしたちですよ……」

マッシブーン「そうか、透明化の力を手に入れたのだな!」

イワンコ「アイテム貰っただけ……」
 ▼ 359 1◆J44kAZeDOM 17/04/09 10:54:28 ID:jyWOxWLU [10/78] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミミッキュ「コスモウムは、どんな感じですか?」

ウツロイド「うーん、あたしたちの声も届かない感じだねー。何言っても。

      ポケモンの事、どう思ってるのかもわかんないしー、そもそも期限に間に合わなそー」

マッシブーン「恐らくフェローチェが苛立っている頃だろうな! まだ日はあるというのに」


ウルトラビーストでさえ、言葉を届けられないのか。

それとも、届いていて、無視しているのか。


ミミッキュ「……コスモウム」


ミミッキュが声を掛ける。


ミミッキュ「あたし、思い出したよ。あなたが、あたしたちを逃がしてくれたお陰で。ありがとう」


コスモウムは、何も言わない。初めからわかっていたと言うように。
 ▼ 360 1◆J44kAZeDOM 17/04/09 10:55:25 ID:jyWOxWLU [11/78] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
イワンコ「力を、蓄えてるんだよね」

コスモウム「…………」

イワンコ「……大丈夫だよ。ジバコイルとバクガメス、仲いいんだよ? そんなに心配する事ないって」


それにしても、と自分の発言に首を捻らざるをえなかった。

バクガメスは、これが最善だ、と言っていた。そして、僕ら3匹だけを、別の牢獄に入れた。

僕らは脱獄犯となり、こうしてこそこそとウルトラビーストとの共存に向けて行動している。

けれど、バクガメスたちは、どうやって抜け出すつもりだったのだろう。

助ける、の中には恐らく、ラランテス、ヒドイデ、サニーゴの3匹も含まれている。

彼には、きっちりと許されるためのビジョンが見えているのだ。僕たち3匹も、まだ捕らえられている3匹も。

ウルトラビーストと共に、僕たちも、社会と共存を果たすためのビジョンが。


イワンコ「大丈夫だよ、コスモウム。バクガメスが何の考えもなく、ボスたちを牢獄に残すとは思えない」

コスモウム「…………」

イワンコ「きっと、僕たちなら助けられるんだよ」
 ▼ 361 1◆J44kAZeDOM 17/04/09 10:56:03 ID:jyWOxWLU [12/78] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミミッキュ「どうやって?」

イワンコ「わからないけど。でも、バクガメスだよ?」

ミミッキュ「……表面しか見てないクセに、あんたが言うんじゃないよ」

イワンコ「だから、僕はもう、反省したんだ。表面しか見てなかったからこそ、小説も微妙で、だからもっと表層的に、君を求めた」

ミミッキュ「ったく」


コスモウムが、大きく身震いした。まるで、喧嘩はやめろと言うように。

そう。僕は、他人の心に踏み込めなかった。

それじゃいけないのだ。全てがわかるなんて言ったら傲慢だけれど、それでも物語を創る以上、気持ちを寄せて行かないといけない。


イワンコ「とにかく、コスモウム。バクガメスの狙いを考えよう?」

コスモウム「…………」
 ▼ 362 1◆J44kAZeDOM 17/04/09 10:56:44 ID:jyWOxWLU [13/78] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミミッキュ「ねえ、期限っていつなの? いつ、集合するの?」

ウツロイド「えっと、エクリプスの1週間前ー。前後1週間が、特に繋がりやすいのー。だから、もう3日後かなー」

イワンコ「うえっ?!」

ミミッキュ「たったの……3日?」

マッシブーン「そうだ。だから、明日にはここを発つ!」

イワンコ「明日……コスモウム、間に合わなくない……?」

ウツロイド「あたしもそれが心配でさー」


ミリスの街がここからどれぐらいの距離かはわからない。ただ、間に合わないのはほぼ確実だ。


イワンコ「コスモウム……」

ミミッキュ「……イワンコ。コスモウムは、あたしたちの、最高の仲間だよ」

イワンコ「……ああ」


彼は、他のウルトラビーストよりも、フラワーズの仲間たちを選んだ。今までの物事を総合すると、そうとしか考えられない。


イワンコ「とにかく、僕らも僕らで、平穏無事に4匹を助ける方法を考えよう」
 ▼ 363 1◆J44kAZeDOM 17/04/09 10:57:36 ID:jyWOxWLU [14/78] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ウツロイド「助けるかー。でも、あんまり乱暴な事しちゃ駄目なんでしょー?」

イワンコ「ああ」

ウツロイド「うーん」

マッシブーン「留置所の壁など、あってないようなものではないか! 壊せば――」

ミミッキュ「やめて」

マッシブーン「何? 我が力を愚弄するか?!」

イワンコ「してない。乱暴しないで」

マッシブーン「ぬぅ……」

ウツロイド「あははー。さっすがマッシブーン」


ウツロイドが体を震わせた。

マッシブーンがコスモウムを持ち上げ、ダンベル代わりに上げ下げを始めてしまう。
 ▼ 364 1◆J44kAZeDOM 17/04/09 10:59:54 ID:jyWOxWLU [15/78] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
イワンコ「でも、実際破壊は駄目、かと言って助け出す方法なんて……」

ミミッキュ「ないよね。警察だもん。ジバコイルとのコネがあるから釈放されるってのも、たぶん、あたしたちの脱獄のせいで難しい」

イワンコ「――そもそも、脱獄なんてしでかしたいと思ってるはずがないんだ。あんな事を言ってる人が」

ミミッキュ「うん。あたしたちを脱獄という形にしたのはたぶん、ウルトラスペースを通らせたかったから。

      コスモッグにそれを開く力がある事も、たぶん読んでた」

イワンコ「記憶を取り戻す、トリガーか。

     バクガメスが僕らだけをコスモッグと同じ牢獄に入れてもらったのは、たぶんそうだ」

ミミッキュ「それが、バクガメスさんの言う最善手。

      あたしたちの記憶を取り戻させるには、確かにウルトラスペースの光景が必要だった。

      あたしは、それで、思い出せたから」

イワンコ「うん。「僕たちだけ」を「ウルトラスペース」に送った理由はわかったとしよう。

      警察に捕まったのは、それに加えて、情報を発信するためってのもあると思う」

ミミッキュ「ああ、なるほど」
 ▼ 365 1◆J44kAZeDOM 17/04/09 11:02:37 ID:jyWOxWLU [16/78] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ウルトラビーストとは戦うな。その情報を広げるには、捕まってしまうのが手っ取り早い。

ウルトラビーストとフラワーズの接点を語り、それを広めるためには、盗賊であるという事実がどうしても邪魔をする。

その垣根を取っ払い、全てを曝け出すには、一度罪を認めなければならない。

そして、彼らの言葉が広がった時、その動機は広く受け入れられるだろう。

けれど、もうひと押し。もっと直接的に、状況を改善すれば……


イワンコ「ああっ! わかった!」

ミミッキュ「ん? 何が?」


簡単過ぎて、これでいいのかと疑いたくなるような結論。

けれど、物事は時に、意外な程シンプルだったりする。

そして、シンプルな結論には、異論を差し挟む隙もない。シンプルというのは、強いのだ。
 ▼ 366 1◆J44kAZeDOM 17/04/09 11:03:35 ID:jyWOxWLU [17/78] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
イワンコ「間違ってるかもしれない。けど、こうじゃないかなって。

     向こうが共存を望んでいるとしても、現実にウルトラビーストが僕らを上回る力を持ってるのには変わりない。

     最悪の方向に転べば、世界を滅ぼすかもしれない訳じゃん。

     それを、食い止めた。そうなると、世論は甘くなる。

     そこを突いて、ジバコイルの手引きで釈放させるんだよ。

     バクガメスは、ジバコイルと今でも仲がいいらしい。

     今釈放が許されないのは、記憶復活のための脱獄による世論の問題。

     僕らは、食い止めないと。ウルトラビーストが、反ポケモンに転ぶなら、僕たちが伝えないといけないんだ。

     外からやって来た僕らが感じた、この世界の暖かさを。この世界の素晴らしさを」

ミミッキュ「……なるほどね。筋は通ってる。あたしたちが、やらないといけない理由も。

      でも、ウルトラビーストの怖さを、誰も知らない。

      ねえ、そう上手く転ぶかな……」
 ▼ 367 1◆J44kAZeDOM 17/04/09 11:04:24 ID:jyWOxWLU [18/78] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ウツロイド「んー? あたしたち、怖くなんてないよー? この世界気に入ったし、みんな楽しいしー」

マッシブーン「我が筋肉を受け入れてくれる素晴らしき世界、素晴らしき民がおるからな!」

イワンコ「……安泰そうだね」

ミミッキュ「2匹はね」

コスモウム「…………」


コスモウムが、いつの間にか隣に浮いていた。

そっと触れると、ほのかに温かい。


イワンコ「力を蓄えてるのか」

ミミッキュ「まだ、ね。壊しちゃいけない。けど、どうなるのか、わからない。

      コスモウムは、どっちに転ぶのか」

ウツロイド「たぶん、ほとんど聞いてないよー。諦めて、一旦寝たら? もうほとんど朝だよー」


そう言われ、気付く。もう空が白み始めている。夜になっていた事すら気付かなかった。

気付いた瞬間、もはや眠気は耐えきれない程になっていて、僕は崩れ落ちた。
 ▼ 368 マザラシ@しらたま 17/04/09 15:23:28 ID:7MB6UeR6 NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 369 1◆J44kAZeDOM 17/04/09 20:26:38 ID:jyWOxWLU [19/78] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
目を覚ますと、マッシブーンはいなかった。

もう、ミリスの街に向かったらしい。


ウツロイド「おはよー」

イワンコ「……お前さ、間に合うのか?」


眠い目を瞬(しばた)かせながらウツロイドに問うと、彼女は朗らかに笑った。


ウツロイド「コスモウムも間に合いそうにないしー。

      それならあたしが巻き込んじゃった2匹に最後まで付き合うのも面白いかなーって」

イワンコ「面白いって……」


そして、あっと気付く。これが、久瀬美々華の味わった思いか。

遠くから面白がるのは、確かに楽しい。しかし、やられた方からしてみたら


イワンコ「たまったもんじゃないよな……」
 ▼ 370 1◆J44kAZeDOM 17/04/09 20:27:13 ID:jyWOxWLU [20/78] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ウツロイド「えー、あたしがいて嫌ー?」

イワンコ「いや、ありがたい。ウツロイド、最後まで、僕たちといてくれ」


それが、僕の償いであり、久瀬美々華への許しなのだ。

彼女の存在が、僕たちを癒す。


ウツロイド「そうお? そんな事言われたら照れちゃうなー」

イワンコ「ハハ……」
 ▼ 371 1◆J44kAZeDOM 17/04/09 20:28:32 ID:jyWOxWLU [21/78] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミミッキュは、まだ眠っていた。

既に太陽は空高い。僕はかばんから大量にあるリンゴの内のひとつを手に取り、かぶりついた。


イワンコ「コスモウム、食うか? ウツロイドも」

ウツロイド「え、いいのー?」

イワンコ「数だけはたくさんあるからな。にしても、よくバレなかったな僕たち。こんなとこで寝てさ……」

ウツロイド「まー、ここ見つかりにくいからってコスモウムがいるぐらいだしねー」


リンゴを触手を用いてガラス質の頭部の中に押し込めるウツロイド。

次第に融かされて行くそのグロテスクな光景から目を背けつつ、僕は尋ねた。


イワンコ「そういや、なんでお前は、久瀬だったんだ? 他に憑りつける奴は、たくさんいたんじゃねえの?」
 ▼ 372 1◆J44kAZeDOM 17/04/09 20:29:35 ID:jyWOxWLU [22/78] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ウツロイド「え? それはー……あの子だよね、久瀬って」

イワンコ「ああ。お前が寄生した」

ウツロイド「……あの子も、あたしと同じだったからかなー。イワンコ、向こうの世界見て、どう思った?」

イワンコ「うん? えっと……何もないなって。本当に、光も、闇も」

ウツロイド「でしょー。……あの世界で、あたしは、寂しかったの。

      急に自我ができてさ、どうすればいいのかもわからないけど、世界が壊れて来ててさー。

      わけわかんないもん。怖かったもん。で、あたしは……やっぱり寂しかった。

      何も楽しい事がない世界で、あたしは、空っぽだった。満足なんて、した事がなかった」

イワンコ「……空っぽ。久瀬も、そんな事言ってた」

ウツロイド「そ。だからじゃないかなー。あたしがあの子を選んだの。あたしも、同じだったんだよねー。

      全然違うかもしれないけど、それでもおんなじ。周りに何もないと、自分まで空っぽになっちゃうもんなんだよ、きっと」

イワンコ「……そうなのか」
 ▼ 373 1◆J44kAZeDOM 17/04/09 20:31:30 ID:jyWOxWLU [23/78] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
また、ふと疑問をぶつける。


イワンコ「なんで俺たちの世界は侵略も共存もしようと思わなかったんだ?」

ウツロイド「まー、あんな世界じゃ侵略する価値もないってのがみんなの結論だったよー。暑いし、住みにくくて」


なんだか複雑だ。少なくともウルトラスペースよりかはマシだと思うのだが。


ウツロイド「あたしはごちゃごちゃしてて面白そーって思ったけどねー。

      そんな事より、コスモウムがどうなるかだと思うよー?」

イワンコ「だな」
 ▼ 374 1◆J44kAZeDOM 17/04/09 20:32:13 ID:jyWOxWLU [24/78] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
それからずっと、僕たちは、ひたすらコスモウムの傍にいた。

もう、話せる事は何もない。ただ、コスモウムが力を集め終わった時、そこにいてあげたい。

それが、たぶん僕らに残された、今できる唯一の事だ。

そして、その時にどう転ぶのか。それは、その時になるまでわからない。


ミミッキュ「ふああ、おはよ。イワンコ、どうする?」

イワンコ「どうもしない。コスモウムでいる内はもう、僕らの声は届かない。だよな、ウツロイド」

ウツロイド「たぶんねー」

ミミッキュ「そっか。いてあげる、だけか……。

      ……あたし、見てるだけなんて、嫌だ。どうにかして、コスモウムと話したい!

      ……とは言っても、無理、だよね」

イワンコ「……久瀬」

ミミッキュ「岩根君、どうしたの?」

イワンコ「ごめんな」
 ▼ 375 1◆J44kAZeDOM 17/04/09 20:34:35 ID:jyWOxWLU [25/78] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミミッキュ「ううん、あたしこそ。あなたを、ポケモンの世界まで連れて来ちゃって……」

イワンコ「お前は気にするな。操られていただけだろう? ウツロイドも、孤独だった。僕たちが、欲しかったんだ」

ミミッキュ「ううん、ウツロイドの毒はね、ただ操るんじゃない、本人の120%を引き出すだけ。あれが、あたしの本性なのっ!

      あれが、あたしの……」

イワンコ「本性なんて、そんなもんだ。誰だって、それを隠しながら生きている。

     誰かと繋がっていたい。お金を稼ぎたい。セックスしたい」

ミミッキュ「え、ちょっと!」

イワンコ「寝たい、食べたい、リア充が妬ましい! ……満たされたい、深く知りたい。

     誰だって、欲望を隠しながら、生きてる。その自制のタガが、外から取り払われたら、誰だって、ああなるよ」

ミミッキュ「でも、だけどあたしは……」


うつむくミミッキュを遮るように、ウツロイドが言葉を発した。
 ▼ 376 1◆J44kAZeDOM 17/04/09 20:35:36 ID:jyWOxWLU [26/78] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ウツロイド「ま、でもさー。あたしがやったから言うんだけど、このお陰でみんな出会えたわけじゃんかー。

      そう考えると、あたし、向こうの世界に行ってよかったなーって」

ミミッキュ「何人も、殺したけどね」

イワンコ「……その罪も、全部、許される訳はない。お前をそこまで導いた、僕もこいつも同罪だ。

     共犯3匹、仲良くやろうぜ」

ウツロイド「だねー」

ミミッキュ「岩根君、ウツロイド……」


――やっぱり、あたしは間違っていなかった。

あたしの孤独は、ウルトラホールのお陰で、埋められた。


イワンコ「ん? なんか言ったか?」

ミミッキュ「ううん、何も。コスモウム、話そうよ。今ならあたし、素直になれるから。

      そしたらきっと、ホントの友達になれると思うから」
 ▼ 377 1◆J44kAZeDOM 17/04/09 20:36:43 ID:jyWOxWLU [27/78] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
イワンコ「おいおい。お前らは正真正銘、ホントの友達だよ既に。

     僕だ。そのステップが必要なのは。

     一度だって、素直に話した事がない。腹割って、話そうぜ、コスモウム」


コスモウムは、なおも動かない。それでも構わなかった。

こんなクサい話ができる機会なんて、もうないだろう。

コスモウムが力を集め終わり、4匹でミリスに着く、その時までだ。

だから、今。僕は彼と話したかった。
 ▼ 378 1◆J44kAZeDOM 17/04/09 20:37:36 ID:jyWOxWLU [28/78] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
それからどのぐらいの時間をそうして過ごしただろうか。

3匹揃って、コスモウムを眺める。

彼はまだ、力を集めているようだった。

空が赤みを帯び、やがて闇に呑まれて行く。

リンゴをかじりながらそれを眺めていると、不意にコスモウムから、音が漏れ出た。

ゆったりとした、それでいてどこか力強さも感じさせるハミングが、コスモウムから零れ、そして、コスモウムが光に包まれる。

今は夕暮れ。

どちらだ。どちらに進化するのか。そして、コスモウムの答えはどちらなのか。それが、今、明らかになる。


ミミッキュ「来た!」

ウツロイド「どうなるのかなー」


僕は、何も言わなかった。ただ、その調べに、身を預けていた。
 ▼ 379 1◆J44kAZeDOM 17/04/09 20:38:49 ID:jyWOxWLU [29/78] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
???「イワンコ、ミミッキュ、ウツロイド……」


彼が、僕らの名を呼ぶ。

ミミッキュは、愕然としたように呟いた。


ミミッキュ「……えっ、ちょっとこれ……」

イワンコ「どうしたミミッキュ」


コスモウムが進化したそいつは、黒光りする、カクカクした体躯を持ち、腕から鋭い突起を伸ばしていた。


ミミッキュ「こんな、こんなの聞いてない、コスモウムに、こんな進化なんてないはずよ……。





      なんで、なんで……ネクロズマなの?」

ネクロズマ「…………」
 ▼ 380 1◆J44kAZeDOM 17/04/09 20:39:47 ID:jyWOxWLU [30/78] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ウツロイド「あれー、おっかしいなー。これ、どういう事なんだろ」

イワンコ「ネクロ……ソルガレオでも、ルナアーラでもなく?」

ミミッキュ「攻略本にも、こんな事書いてない……」


ネクロズマは、頭を抱えると、それから眩い光線を放った。

それが森を焼き払い、そして、炎が辺りを包んだ。


イワンコ「ネクロズマ……それが、答えなのか?」


ネクロズマは、何も語らない。ただ、頭を抱えるだけ。


ミミッキュ「ネクロズマっ! あなたは、この世界の事、駄目だった? 嫌いに、なっちゃった?」

ネクロズマ「……ああっ!」


ネクロズマはうめき声をあげて、飛び去って行く。その先にあるのは、恐らく街だ。


イワンコ「ヤバい、あいつを、街に行かせちゃ駄目だ! 行くぞミミッキュ!」

ミミッキュ「わかってるっ!」
 ▼ 381 1◆J44kAZeDOM 17/04/09 20:41:00 ID:jyWOxWLU [31/78] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
と、ウツロイドの鋭い声が聞こえた。

およそ初めて聞くような、叫び声。

間延びしない、表記するならエクスクラメーションマークを付けたくなるような、そんな声で、彼女は言う。


ウツロイド「待って! ……2匹とも、あたしの毒に侵されて」
 ▼ 382 1◆J44kAZeDOM 17/04/09 20:42:04 ID:jyWOxWLU [32/78] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
イワンコ「はぁ?!」

ウツロイド「あの力、見たでしょ。あたしでも敵わないもん。

      あたしに負ける2匹が、勝てる訳ないでしょ。

      だから、力を引き出すの。

      大丈夫、終わったらあたしが毒を抜くからさ」

イワンコ「抜けるのか?」

ウツロイド「抜けるよー。現に、ミミッキュだって、イワンコだって、もう毒ないでしょー?」

ミミッキュ「……わかった。お願いする。いいよね、イワンコ。友達だし」

イワンコ「……わかった」

ウツロイド「よーし、行くよー」


触手が、僕たちの口の中に入り込む。そして、口の中に、何か甘美な蜜が広がった。

それをごくりと呑み下す。体の中を、鋭い痛みが走り抜けた。


ウツロイド「これで、あなたたちの力を引き出しましたー。

      あたしも、後から追っかけるからねー。ネクロズマを、絶対説得してねー」
 ▼ 383 1◆J44kAZeDOM 17/04/09 20:42:49 ID:jyWOxWLU [33/78] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
イワンコ「任せてくれ」

ミミッキュ「あたしたち、やるから! あなたのために。あたしたちの、仲間のために!」


痛みが去り、どことなく、元気になったような気がする。

ある種の麻薬というかドーピングアイテムのようなものだろうか。


イワンコ「さ、今度こそ行こう、ミミッキュ。ネクロズマになら、声は届くはず。

     そして、止められるのは、僕たちだけだ」

ミミッキュ「あっちよね。急ごう!」
 ▼ 384 1◆J44kAZeDOM 17/04/09 20:43:57 ID:jyWOxWLU [34/78] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
体が飛ぶように軽い。これもウツロイドの毒のお陰か。


ミミッキュ「ウツロイドの毒。ポテンシャルを全部引き出して、

      それから思考を、いつの間にかウルトラビーストのためになるようにって改変されちゃう。

      でも、今は問題ない。初めから、あたしたちは、同じ目的で動いてる。

      ウルトラビーストのために。なら、問題ないでしょ? 毒が抜かれなくたって」

イワンコ「まあ、毒が抜かれないとそれはそれで辛いがな。そんな嘘吐くような奴と共存したくねぇ」

ミミッキュ「それもそうね。あっ、いたっ!」


黒い体躯は、夕空に紛れ、怪しく輝いていた。

街の傍に立ち、近辺の森を焼き払う。


イワンコ「ネクロズマっ!」

ミミッキュ「落ち着いてっ!」


ネクロズマがちらとこちらを見やる。

そして、それからまた飛び去って行った。
 ▼ 385 1◆J44kAZeDOM 17/04/09 20:44:43 ID:jyWOxWLU [35/78] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
町民A「あっ、あれ脱獄した……」

町民B「イワンコとミミッキュよね……」


街中を突っ切って行くのが最短距離だったが、僕たちの立場を忘れていた。

避難中の町民たちから、僕らに向かって疑惑の目を投げかける。

ええい、ままよ。後でいくらでも逮捕されてやる。今はネクロズマだ。

噂を吹っ切り、僕たちは先へ進んで行く。


ミミッキュ「このまま進むと……アジトだよ」


わかっていた。彼が目指すのは、あの場所なのだ。


イワンコ「やっぱり、ケリをつけるのは、そこになるみたいだ。

     最短ルートで向こうに行くには……」

ミミッキュ「チュート洞窟を抜けるのが一番。大丈夫、今のあたしたちなら、速攻で抜けられる」

イワンコ「だね。行こう!」
 ▼ 386 1◆J44kAZeDOM 17/04/09 20:46:18 ID:jyWOxWLU [36/78] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
最初はそれなりに苦労したあの洞窟も、今となっては慣れた道。

僕らは、全速力で洞窟を駆け抜けた。

息もあがっていない。ウツロイドの毒の効能は、やはり凄い。


ミミッキュ「見てっ! あそこにっ!」

イワンコ「いる。行こう」


僕らの、フラワーズのアジトに、彼は立っていた。
 ▼ 387 1◆J44kAZeDOM 17/04/09 20:46:51 ID:jyWOxWLU [37/78] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
必死で叫ぶ。彼に、声を届けるために。


イワンコ「ネクロズマっ! 待ってくれ!」


ネクロズマは、こちらを見下ろす。威圧感は物凄いが、どうしてか、力が湧いて来る。

怯んでしまう事なんて考えられない。


ミミッキュ「落ち着いて! こんな事したって、なんにもならない!」

ネクロズマ「こんな……こんな世界、みんなを逮捕するような、こんな世界っ!」


ネクロズマが再び頭を抱え、それから僕たちのすぐ傍を薙ぎ払う光線を吐き出す。


ネクロズマ「う……ぉあっ!」


背後で爆発音が聞こえる。もしあれが直撃していたら、どうなっていた事か。

背筋が凍る。けれど、怯んではいられない。怯んでは、いけない。


イワンコ「コスモッグ! お前は、こんな奴じゃないだろう?! 訳もなく暴れるような!」
 ▼ 388 1◆J44kAZeDOM 17/04/09 20:47:33 ID:jyWOxWLU [38/78] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ネクロズマ「訳も……」


一瞬、ネクロズマの体が震えたような気がした。


ネクロズマ「そこに、誰か……うおぁっ!」


僕たちの背後を光線が襲う。そこから、悲鳴が聞こえた。

ミミッキュが大丈夫ですかと駆けよって行く。僕は、なおもネクロズマに向けて言葉を投げかける。


イワンコ「なあ、考え直せよ。この世界の、全てが悪い訳じゃないのは、お前もわかってるんだろ?!」

ネクロズマ「あ……がぁっ……」


次の瞬間、僕とネクロズマは、我が耳を疑う事になる。


ミミッキュ「ヒドイデっ?! サニーゴもっ?! どうしてみんな?!」
 ▼ 389 1◆J44kAZeDOM 17/04/09 20:49:22 ID:jyWOxWLU [39/78] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
そこには、盗賊団のメンバー4匹、そしてジバコイル保安官がいた。


イワンコ「なっ?!」

ジバコイル「アンナチカクデアレホドノコウゲキヲサレテ、キヅクナトイウホウガムリナソウダンダ」

バクガメス「最悪のシナリオも用意してたんだが、これはまだマシな方さ」

ネクロズマ「みんな……うがあっ!」


彼は、空めがけて光線を放つ。もう完全に暗くなった空を、一筋の光が照らした。


ヒドイデ「俺たち、チームだし。無理いって、出させてもらったぜ」

サニーゴ「バクガメスさんがいたからこそ、ですね。緊急事態ですもの」

ラランテス「ま、あたいたちも、戦う訳じゃない。説得しかないよ。そしてたぶんそれは、あんたたちの仕事だ」

バクガメス「そういうこったな。イワンコ、ミミッキュ。異世界からやって来たのは、お前らも同じ。お前らの答え、聞かせてやってくれや」

イワ・ミミ「……はいっ!」


どうしてだろう。みんなの顔を見て、急に自信が湧いて来た。

行ける。そんな確信を得た僕らは、ネクロズマに向けて駆け出し、彼と向き合った。
 ▼ 390 1◆J44kAZeDOM 17/04/09 20:50:24 ID:jyWOxWLU [40/78] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミミッキュ「あたし、この世界に来て、右も左もわからないとこを、ボスに拾ってもらった。

      それから、いろいろ特訓して、盗みぐらいは働けるようになった。

      もちろんそれは許されない事。だけど、楽しかったよね、間違いなく!」

イワンコ「こっちに来て、僕は、訳もわからないままいろんな事件に巻き込まれた。

     だけど、いつだって、みんながいた。気を許せる、仲間がいた!

     この世界は、あったかい。誰かを、無視したりなんか、しないっ!」

ネクロズマ「バクガメスの、事情も考えずっ! うおぁっ!」


再び光線を放つ。

虚空を鋭く射たそれは、何の主張を込めているのか。


イワンコ「確かに、この世界も、完璧じゃない。でも、完璧な奴らなんていない!」
 ▼ 391 1◆J44kAZeDOM 17/04/09 20:51:42 ID:jyWOxWLU [41/78] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
僕らは、示し合わせたように、言葉を重ねる。


ミミッキュ「あたしは、空っぽだった。ウツロイドも、そう。周りに誰もいなくって、あたしたちまで消されて行った!」

イワンコ「僕だって、誰かを思いやる気持ちを欠いた、不完全な性格だ!」

ミミッキュ「それだけじゃない。ラランテスは、おしとやかさを欠いた不完全」

イワンコ「バクガメスは、優しさ、穏やかさが欠けていた!」

ミミッキュ「ヒドイデとサニーゴは、所構わずのろけるし!」

イワンコ「コスモッグだって、何も言えずに消えたりした!」


そこで、僕たちは一息吐いて、再び叫ぶ。


ミミッキュ「それだけじゃないっ!」

イワンコ「誰かをいじめて喜ぶ奴!」

ミミッキュ「誰かに近寄って、偽善を振りかざす奴!」

イワンコ「――復讐に、その力を振りかざす奴!」


僕たちは、互いを見合わせ、頷いた。
 ▼ 392 1◆J44kAZeDOM 17/04/09 20:52:39 ID:jyWOxWLU [42/78] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミミッキュ「あたしたちは、みんな、不完全なんだよ。社会から爪弾きにされた、なりそこないばっかり」

イワンコ「でも、弾く社会だってなりそこない。そんなポケモンに目を向けられない社会は、不完全だ」

ミミッキュ「でも、不完全だからこそ……不完全だからこそ、あたしたちは、ボスの下で、助け合えたっ!」

イワンコ「なあ、楽しかっただろ? みんな不完全でも、楽しかっただろ?

     僕たちを、事情も詮索せずに弾く社会が不完全だったとしても、壊すなんて、ない」

ネクロズマ「……うるさい、うるさいうるさいうるさいっ! 収まれ、僕の中の何か……うおぁっ!」


ネクロズマが、今度はこちらをめがけて光線を放つ。それは、今度は直撃した。

躱す間もなかった。

壮絶な痛みが僕を襲う。固く目を閉ざし、歯を食いしばる。

攻撃が去った。ウツロイドの毒のお陰か、致命傷にはならなかったらしい。辺りを見回す。森が、燃えていた。

幸い、4匹とジバコイルはかわしていたらしい。

それが、この位置から確認できた。


ラランテス「イワンコ! ミミッキュ!」

バクガメス「ちぃっ! あいつ、マジになりやがったぜ……暴走してやがる……」
 ▼ 393 1◆J44kAZeDOM 17/04/09 20:53:23 ID:jyWOxWLU [43/78] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
僕は、ミミッキュの方を見た。攻撃をばけのかわで無効化した彼女は既に、ネクロズマの方へ向かっていた。


バクガメス「こうなっちまったら、一旦あいつを倒すしか……お前、何付けてんだ?」

イワンコ「たいようのリボンですけど……ミミッキュが、げっこうのリボンをつけてます」

バクガメス「……なるほどな。お前、あいつと戦ってくれ。たぶん俺らも、あのプリズムレーザーには敵わねぇ」

サニーゴ「そんなっ?! 戦うなんてっ?!」

バクガメス「落ち着け。ネクロズマを、落ち着けないといけない。あいつに、お前らの持つ、太陽と月の力を注ぎ込め」

イワンコ「太陽と……月?」

バクガメス「あいつは、そのどちらにも属さない、お前ら風に言うならなりそこないだ。

      だから、どちらかを、あるいはどちらもを、満たしてやるんだ。お前らなら行ける。

      異世界から来た同士、そしてウツロイドの力を手に入れた、お前らにしかできない」

イワンコ「太陽……これか」


ふう、とひとつ息を吐く。

静かに、それを吸い込む。


――太陽の、力っ!
 ▼ 394 1◆J44kAZeDOM 17/04/09 20:54:41 ID:jyWOxWLU [44/78] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
僕は、光を纏って走り出す。

首に掛けたリボンから、力が伝わって来る。

太陽が、注がれて行く。そんな感覚。


「うおぉっ! ネクロズマっ!」


僕は、ふいうちを食らわせた。


ミミッキュ「イワンコっ?! イワン……コ?」

「一回、戦おう。リボンの力を、分け与えるんだ。ネクロズマに」

ミミッキュ「岩根君……ルガルガン、真昼の姿!」

ルガルガン「え?」


首元に、まだリボンを掛けた状態で僕は、進化していた。

まだ、リボンは力を放っている。というより、僕がまだ、太陽の力を纏っている。


ミミッキュ「……行こう、ルガルガン。ネクロズマを、止めなくちゃ」
 ▼ 395 1◆J44kAZeDOM 17/04/09 20:56:49 ID:jyWOxWLU [45/78] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ネクロズマは、苦しげに頭を抱えると、僕らの事を強く見据えた。

それと目が合い、僕はすっと覚悟を決める。


これが最後だ。ウルトラビーストを巡る物語の、最後の戦いだ。


僕は相手を見据え、それから素早く背後を取る。

急接近して、僕はネクロズマに向け飛び上がり、岩を纏った一撃を繰り出す。

アクセルロック。それがこの技の名前だと後から聞いた。

ネクロズマは、驚いたような顔でこちらを見やる。それから、頭を抱える。

攻撃の前触れだ。僕は、彼の手を踏み台に、さらに高くへ飛び上がった。

ミミッキュが、僕に気を取られている隙を狙ってだましうちを食らわせていた。

尾の後ろをレーザーがかすめる。それだけで、危険信号が脳にまで伝わる。

強い。わかり過ぎる程に、それがわかった。
 ▼ 396 1◆J44kAZeDOM 17/04/09 20:57:54 ID:jyWOxWLU [46/78] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルガルガン「落ち着いてくれネクロズマ! 僕たちだっ!」

ネクロズマ「う……があっ?!」


僕は、彼の後頭部、トランプのダイヤのような形をした箇所にアクセルロックをくらわせた。

太陽を纏った僕。月を身に付けたミミッキュ。恐らく、バクガメスの推測が正しいならば、これを続けていれば、彼は正気を取り戻す。

レーザーが、僕の方に照準を合わせる。

彼は、その顔を苦痛に歪め、そして言った。


ネクロズマ「イワンコ……助けて……」


僕は、それを聞き、ハッと息を呑む。

ネクロズマはそのまま、僕に向けて光線をぶっ放した。

空中に浮かんで、しかも唐突な言葉に動揺していた僕に、避ける術はない。


ミミッキュ「ルガルガンっ!」
 ▼ 397 1◆J44kAZeDOM 17/04/09 20:58:38 ID:jyWOxWLU [47/78] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
燃えるように熱い。僕はそのまま地面に叩き付けられる。

ふっと、力が湧いて来るのがわかった。

かばんの中の、ふっかつのタネだ。


ルガルガン「さ、さすがに効いたぁ……」

ミミッキュ「ルガルガン大丈夫っ?!」

ルガルガン「なんとかね……。ネクロズマ、苦しんでる。僕たちが、助けるんだ」


ネクロズマは、まだ、苦しげに頭を抱える。

それは、攻撃の合図であり、同時に苦悩の表現でもあるらしい。
 ▼ 398 1◆J44kAZeDOM 17/04/09 21:00:58 ID:jyWOxWLU [48/78] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミミッキュ「……闇雲に攻撃してても、落ち着けるなんて無理だ。もっと効率的に、このリボンをネクロズマに付けてあげないと」


上と下の境目に巻かれたげっこうのリボン。それを、直接ネクロズマに。

方法は、見当たらない。けれど、やるしかない。

僕は、必死に考えを巡らせる。こう、何か、方法はないのか。


ミミッキュ「ルガルガン危ないっ!」


え、と呟く間もなく、ネクロズマが僕の方に光線を発射してきた。

ミミッキュが、僕を庇うように、ばけのかわを広げて盾となる。
 ▼ 399 1◆J44kAZeDOM 17/04/09 21:02:22 ID:jyWOxWLU [49/78] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ばけのかわ。その中身は、存在していない。空虚だと自虐する久瀬美々華を象徴するかのような現象。

それを見ていて、ふと、天啓が降りて来た。

ミミッキュ。現状、その存在はまだ、布一枚。


ルガルガン「ばけのがわ越しに、リボンを巻き付ける!」

ミミッキュ「え?」

ルガルガン「中身がないなら、久瀬は今、布だ。それをネクロズマに……」

ミミッキュ「あたしが……」

ルガルガン「もう、それしか思いつかない。乗ってくれ」

ミミッキュ「……わかった」


僕は、ミミッキュを背中に乗せた。意外な程、ずしりと重いその感触に、少し驚く。

先程は中身に何もなかった。恐らく今もだろう。けれど、確実に、久瀬は自分を取り戻しているのだ。


ルガルガン「行くぞ」
 ▼ 400 1◆J44kAZeDOM 17/04/09 21:03:25 ID:jyWOxWLU [50/78] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
僕は、ネクロズマの周りを駆け巡る。

ネクロズマは僕を視線で追い掛ける。しかし、僕の俊足は、その程度で追い付けるものではない。

ネクロズマは巨体だ。その分、小回りを利かせた動作に対しての反応は鈍い。


ミミッキュ「でも、どうやって?」

ルガルガン「大丈夫。さっき1回やった」


ネクロズマが、頭を抱える。攻撃前のモーションだ。僕はそれを躱すと、後ろの木に飛び乗った。遠目に炎が燃えているのが見える。


ルガルガン「捕まれ! 飛ぶぞ!」


僕は、もう一度跳躍する。そして、ネクロズマの上に飛び乗った。

ミミッキュが、叫びながら自らの体をネクロズマに被せる。

小さな、小さな一角。けれど、ミミッキュは、空っぽのはずの中身で、確かに笑った。
 ▼ 401 1◆J44kAZeDOM 17/04/09 21:04:21 ID:jyWOxWLU [51/78] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミミッキュ「ネクロズマ。月よ。落ち着いて」

ネクロズマ「がぁっ……」

ルガルガン「ほら、苦しまなくていいんだ。僕たちがいる。ほら、大丈夫だから」

ネクロズマ「イワンコ……ミミッキュ……」

ミミッキュ「ネクロズマっ!」


僕の首から、たいようのリボンが滑り落ちた。僕と、ネクロズマ。2度もその力を消費し、恐らく維持できなかったのだろう。

ミミッキュが付けていた、げっこうのリボンも、淡い輝きを放って、それからほどけ、落下していく。


ミミッキュ「どうだ……」

ルガルガン「ネクロズマ」

ネクロズマ「ああっ! 僕は、何を……」


ネクロズマが、茫然自失としたかのように呟く。恐らく、我に返った。
 ▼ 402 1◆J44kAZeDOM 17/04/09 21:05:55 ID:jyWOxWLU [52/78] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
僕は、思わずミミッキュと見合わせる。


ルガルガン「ミミッキュ!」

ミミッキュ「ルガルガン! ……やったよ! あたしたち、やったよ!」


2人して、快哉をあげた。

ネクロズマが、小さく声をあげた。


――ありがとう。
 ▼ 403 1◆J44kAZeDOM 17/04/09 21:06:51 ID:jyWOxWLU [53/78] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
数分後。

ネクロズマは、燃え盛る森を見て、また違った意味で頭を抱えていた。


ネクロズマ「これを、ここまで酷い事……これを僕がやったのか……どうしよう」

ルガルガン「とりあえず、みんなのとこに行こう。話はそれからだ」

ネクロズマ「みんな、か」

ミミッキュ「とにかく、どうすればいいのか、指示を仰ぐのが先だよ」

ルガルガン「だな。僕たちは3匹とも、この世界の事がよくわからない」

ネクロズマ「……だね」


そういって、僕たちはみんなが待っているであろう場所へ到達した。
 ▼ 404 1◆J44kAZeDOM 17/04/09 21:07:26 ID:jyWOxWLU [54/78] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ラランテス「イワンコ、ミミッキュ! 無事だったかい?!」

バクガメス「俺の読み通りだったな」

ジバコイル「ネクロズマヲシズメテクレテ、カンシャスル」


3匹しかいなかった。そういえばジバコイルもいたんだったっけ。


ルガルガン「あのバカップルは?」

バクガメス「消火を命じた。あいつらだけじゃねぇ、たぶん、他の街の奴らも来る頃だぜ」

ジバコイル「ビビット、ナカマヲヨンダカラナ!」

ミミッキュ「消火……。大丈夫なの?」

ジバコイル「アア。コノケンモカンガミテ、モウトウゾクダンフラワーズハムザイホウメントツタエテアル」

ネクロズマ「それじゃあ!」

バクガメス「ああ。俺たちゃ晴れて、お天道様の下を歩けるっつー訳だ」
 ▼ 405 1◆J44kAZeDOM 17/04/09 21:08:14 ID:jyWOxWLU [55/78] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
バクガメスがにっと笑い、それからネクロズマに対し、鋭く言う。


バクガメス「その代償としてだ……消火活動に協力しろ。もう危険は去った。ジバコイルがそう伝えてくれている」

ラランテス「もうあんたを怖がる必要はないんだってね。反省の色を見せるのも、大事じゃないかい?」

ネクロズマ「言われなくても、そんな事で許されるのなら!」

ルガルガン「僕たちも……」

ミミッキュ「やろうか」

バクガメス「おっと、お前ら2匹はちょっと待て」

ルガ・ミミ「え?」


僕らを見る彼の目線は、厳しいものではない。

しかし、何を言われるのだろうか。

戦々恐々としながら構えていると、ラランテスがバクガメスをこづく。


ラランテス「ほら、速く言いな!」
 ▼ 406 1◆J44kAZeDOM 17/04/09 21:08:54 ID:jyWOxWLU [56/78] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
バクガメス「あー、その、だな。……記憶、戻ったか?」

ルガルガン「へ? ああ、まあ」

ミミッキュ「あたしの記憶も戻りました」

バクガメス「そうか。よかったな」

ラランテス「バクガメス!」

バクガメス「ちっ。あー! お前ら!

      ……ありがとうな、俺の無言の指示を、全部受け止めてくれて」

ラランテス「あたいからも言うよ。ありがとう」


2匹からの、まっすぐな感謝に、僕はふと、思い立つ。


ルガルガン「ミミッキュ」

ミミッキュ「ん? 何?」
 ▼ 407 1◆J44kAZeDOM 17/04/09 21:09:25 ID:jyWOxWLU [57/78] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告







ルガルガン「これでも、お前は空っぽか?」






 ▼ 408 1◆J44kAZeDOM 17/04/09 21:10:12 ID:jyWOxWLU [58/78] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミミッキュは、その瞳から、涙をこぼした。

ふにゃふにゃのばけのかわが、こてんと崩れる。


ミミッキュ「ううん、そんな事ない……あたし、いっぱい、あたしの事、見てくれる人がいる……」

ルガルガン「僕も……決めたから。君と、一緒にいるって。戻れるかどうかはともかく、君は戻っても、いい事なんて何もない。

      戻る気は、ないだろう?」

ミミッキュ「……うん」

ルガルガン「僕も、君といる。やっと、わかったんだ。

      久瀬、僕は、君が好きだったんだ」

ミミッキュ「ふふ……ありがと。でも、まだ駄目。今は、いい仲間で、最高の相棒でいて! 恋は、もっと後でいい」

ルガルガン「……そっか」


僕は、空を見上げる。

満点の星が、あたりに広がっていた。
 ▼ 409 1◆J44kAZeDOM 17/04/09 21:11:15 ID:jyWOxWLU [59/78] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ラランテス「おーい! 2匹とも、消化活動するよ!」

ルガ・ミミ「はーいボス!」


僕らは顔を見合わせて、走って行く。

涙は、もう流れない。笑顔でいればいい。僕らには、仲間がいるのだから。
 ▼ 410 1◆J44kAZeDOM 17/04/09 21:12:18 ID:jyWOxWLU [60/78] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


「黒光りする変なポケモンが放つレーザーに触れて森が大火事だ」

「脱獄犯のイワンコとミミッキュがそいつを追いかけて行ったらしい」


ミリスまでの道中、不安気なヒソヒソ話をチラっと聞き、それから僕らは、少し足を止め、話し始めた。


ニューラ「なんか、ヤバい事になってる感じみたいね」

デンジュモク「ネクロズマっすね。太陽も月もないタイミングでコスモウムが進化したっす。

       話聞く限りだと、あいつ、大事な何かがない感じっすよね」

チラーミィ「うん。それが?」

デンジュモク「それを満たすために、暴れてるんだと思うっす」

チラーミィ「……どうすればいい?」

デンジュモク「太陽か、月。どっちかの力を分け与えて、自分が満たされてる事に気付かせる。こうっすね」

チラーミィ「……何かの役に立つかもと思ったアイテムが、役立つ時が来たみたいだね」

ニューラ「正直、出来過ぎなぐらい。きっと、あの2匹なら大丈夫でしょ」
 ▼ 411 1◆J44kAZeDOM 17/04/09 21:13:06 ID:jyWOxWLU [61/78] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
僕らはそれから、示し合わせたように呟いた。


「消火しなきゃ」
 ▼ 412 1◆J44kAZeDOM 17/04/09 21:13:37 ID:jyWOxWLU [62/78] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ふっとデンジュモクが体をうねらせる。

そして、目なんてあるのかもわからないけれど、視線を巡らせた。

その先に、また顔なしの……。


デンジュモク「ウツロイド!」

ウツロイド「デンジュっちだ。久しぶりー」

デンジュモク「どうしたんすか? そんな慌てて」

ウツロイド「あたしねー、ネクロズマとイワンコたちを追ってるのー」

チラーミィ「奇遇だね。僕らもなんだ。行こう、ウツロイド」

ウツロイド「うん」


それから僕たちは、4匹で森の方を目指す。
 ▼ 413 1◆J44kAZeDOM 17/04/09 21:14:14 ID:jyWOxWLU [63/78] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
森の気配は騒がしく、少し遠くからでも戦闘の音が聞こえるようだった。

不意に、光線が付近の木を貫き、燃え始めた。


チラーミィ「ウツロイド、デンジュモク! 周りの木を粉々に粉砕するよ! 燃えるものがなければ火事は広がらない!」

ウツロイド「りょーかーい」

デンジュモク「了解っす!」


ニューラは、もうつららおとしの準備に入っていた。

彼女得意の大技であり、半端な火なら鎮火してしまうぐらいの威力を持つ。


ニューラ「はっ!」


空から一直線、炎に向けて落とされたそのつららは、燃えた木ごと貫き、そして炎の中でまだ融け残る。

氷は融ければ水。まだしばらくは残るだろう。そうなると、鎮火も時間の問題だ。

ウツロイドとデンジュモクが、各々の得意技で木を粉砕していく。毒で融かしてみたり、電撃で倒してみたり。

もう、危険は去ったと見ていい。


チラーミィ「行こう! みんなは向こうにいる! 火勢が強いのも、向こうだ」
 ▼ 414 1◆J44kAZeDOM 17/04/09 21:15:16 ID:jyWOxWLU [64/78] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
定期的に鎮火をしながら僕らは少しずつ、ある場所へ向かっていた。


ニューラ「アジト、か」

チラーミィ「たぶんね」


ネクロズマは、暴れていても、その場所を忘れていないという事か。

現に、まだ街に被害はない。自我が、少しは残っているのだと見て構わないだろう。

そうなると、決着を付けるにも、そこがふさわしい。

街から離れたその場所でなら、自我を乗っ取られても街に危険を及ぼす心配はない。

そんな思考の下なのか、僕らはアジトの場所に辿り着く。
 ▼ 415 1◆J44kAZeDOM 17/04/09 21:16:16 ID:jyWOxWLU [65/78] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
そして、いるはずのないポケ影を見付け、僕はえっと声を漏らした。


ラランテス「あっ! リアライズと……」


最初に気付いたラランテスに釣られ、他の2匹もこちらを振り向いた。

バクガメスと、ジバコイル保安官だ。

咄嗟に伝えるべき出来事を脳内でまとめ、それを伝えた。


チラーミィ「町民は、ちゃんと避難しています。この2匹はウツロイドとデンジュモク、ウルトラビースト。

      鎮火するのがまず第一ですよね。イワンコたちがネクロズマに対処してくれる。

      というより……なんでここにいられてるんですか?」

ジバコイル「ワタシガキョカシマシタ。ショウカガセンケツ……ドウスレバヨイノデショウ」

ニューラ「イワンコたちの控えと街との連絡手段として他3匹は残ってた方がいい」

バクガメス「ああ」

チラーミィ「燃えてる木の周りの木を切り倒してきます。僕らも」

バクガメス「頼めるか? 俺らは残ってあいつらを見ている責任がある」

リアライズ「了解!」
 ▼ 416 1◆J44kAZeDOM 17/04/09 21:16:57 ID:jyWOxWLU [66/78] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
僕らは4匹で、また燃え盛る火の方めがけて走る。

木に毒液を浴びせかけ、かばんからモモンスカーフを取り出して巻いておいた僕がそれにスイープビンタを食らわせる。

ニューラはつららで鎮火に励む。デンジュモクは電撃で木を薙ぎ払う。

ふと、水が視界の外から飛んで来て、そちらを見やるとサニーゴとヒドイデが必死に水技で鎮火していた。

ヒドイデは、技マシンでも使ったのかなみのりを。サニーゴは、しおみずを。


チラーミィ「サニーゴ! ヒドイデっ! 協力するよっ!」

ヒドイデ「お前らっ……協力、してくれるのか?」

ニューラ「火事なんて一大事に、探検隊も盗賊もない」

サニーゴ「ありがとう! 私たちは、水で鎮火します! あなたたちも、できる事をやってください! それと、後ろの……」

チラーミィ「ウルトラビースト! 2匹も協力してくれてるんだ!」

ヒドイデ「わかった。詳しい事は、消し終わった後だ! 今はこっち優先だ!」
 ▼ 417 1◆J44kAZeDOM 17/04/09 21:18:16 ID:jyWOxWLU [67/78] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
僕らは、各々の消火活動を続けた。

その甲斐あってか、少しずつ火勢は弱まって来る。

しかし、新たに燃えている場所があるらしく、僕らはそこをサニーゴたちに任せ、新たな火災現場へ駆け出し、そしてそこでも鎮火させていく。

そうしていると、街の方から何か声が聞こえた。

この声は、コイルだ。

という事はつまり、ジバコイルが危険は去ったと呼び寄せたという事。

今に、他の町民で、鎮火作業にあたれるポケモンがやって来るはず。

終わりなのか。そう思っていると、アジトの方から黒光りするポケモンがやって来た。いや、あれはポケモンではない。


ウツロイド「ネクロズマー、正気を取り戻したんだー」

ネクロズマ「おかげさまで、ね。何か、僕にできる事ない?」

デンジュモク「木を、切り倒していくっす。燃え広がらないように」

ネクロズマ「了解!」
 ▼ 418 1◆J44kAZeDOM 17/04/09 21:19:01 ID:jyWOxWLU [68/78] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
それからしばらく、盗賊の4匹がやって来て、消火を始めた。

街からも、水系のポケモンがたくさんやって来る。

ポケモンも、ウルトラビーストも。盗賊も、探検隊も、一般ポケも何もない。

ただ、みんなで協力して、森の火災を静めていた。

夜の闇を、赤く照らす炎も、次第に弱まって行く。

ふっと気付けば、下弦の月が空高く昇っている。もう朝だ。

少しずつ、少しずつ、炎は消えて行く。

そして、太陽の光が、辺りを強く照らしたその瞬間、火種は、完全に消えた。


「消えた……終わった……いぃやったぁ!」


誰からともなく喝采をあげる。皆それに追随し、たちまち辺りは歓喜の渦に包まれた。
 ▼ 419 1◆J44kAZeDOM 17/04/09 21:19:45 ID:jyWOxWLU [69/78] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
僕は、ポケ込みの中からルガルガンとミミッキュを見付け出す。

2匹は疲れ果てたような顔で、チラとこちらを見やる。


ルガルガン「やったよ……」

チラーミィ「しゃべらなくていい。夜通しバトルからの消火だ。疲れてるだろ。休んで」

ミミッキュ「ふふ、ありがとう……」


そう言って、ミミッキュはかくりとうなだれ、そのまま穏やかな寝息を立て始めた。

ルガルガンは、その顔に愛おしそうに目をやると、静かに眠りに落ちて行く。


ニューラ「……この2匹、なんかお似合いだと思わない?」

チラーミィ「ホントにねぇ。ま、一緒に危機を乗り越えた異性が、惹かれ合うってのはよくある事じゃないかい?」


そう言って僕は彼女を見詰める。彼女は呆気にとられたような顔を浮かべた後、堪え切れないといった体で噴き出した。


チラーミィ「ちょ、なんで笑うのさ!」

ニューラ「ごめんごめん、今さらってさ」

チラーミィ「え?」
 ▼ 420 1◆J44kAZeDOM 17/04/09 21:20:18 ID:jyWOxWLU [70/78] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
問い返した僕に、ニューラはこう答える。


ニューラ「なんでも……あ」


次の言葉はなんだと待っていると、ロマンのカケラもない、爆弾発言が投下された。


ニューラ「明日……だよね、ウルトラビーストの集合。こっからミリスまで、間に合わない」

チラーミィ「……あ」
 ▼ 421 1◆J44kAZeDOM 17/04/09 21:21:06 ID:jyWOxWLU [71/78] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
慌ててウルトラビーストの3匹と盗賊団フラワーズのメンバーを捜しだし、ここに呼び寄せる。

すうすうと穏やかな寝息を立てる2匹を起こさないように、3匹に伝えた。


チラーミィ「完全に遅刻だね。どうする?」

ラランテス「一日ぐらいいいじゃないのかい?」

ウツロイド「いや、フェロちゃん激おこプンプンまるだよー」

デンジュモク「こ、殺されるっす! 助けてくださいっ!」

ネクロズマ「とりあえず、急ごう。二徹覚悟で急げば、間に合う……と思いたいね」

ヒドイデ「ぷっ、にしても遅刻たぁ、お前らもあんま俺たちとかわんねぇのな」

ウツロイド「まーねー」

デンジュモク「それどころじゃないっすよー……」

ネクロズマ「よいしょっと。とりあえず、2匹は僕が運びます。みんな、行きましょう」

ウツロイド「っと、その前に、2匹を解毒しないと」


ウツロイドは、ルガルガンとミミッキュにその触手を突き差す。そして、その透明な管から、黒っぽい毒液が吸い取られて行くのが見えた。


ウツロイド「これで、全部おしまいだねー。後は、急ぐだけだよー」
 ▼ 422 1◆J44kAZeDOM 17/04/09 21:22:04 ID:jyWOxWLU [72/78] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
そこからは、特に何かを問題にする必要もなかった。

11匹パーティーなんて機動性に欠けるチームだが、各々の強さによってそれを問題にする事もなくミリスの街を目指し進む。

ヒドイデの眠たげな顔が、正しくヒドイデ、なんてつまらないジョークを飛ばし、みんな笑うぐらいには深夜のテンションだった。


ルガルガン「ハハッ、最高」

ミミッキュ「なんか、くだらなさ過ぎて笑える」



僕は、涙に滲んだ目をこすりながら、ニューラに話し掛ける。


チラーミィ「懐かしいね。この感じ」

ニューラ「本当に。ビッパさんがぼけて、あたしがツッコんで、みんな笑って。……でも、どんどん入れ替わってっちゃったなぁ。

     今じゃ、エンドレスが最古参だっけ。ペラップはノーカンで」

チラーミィ「僕たちが卒業したんだもんね。あ、でもグレッグルは……」

ニューラ「あれはなんか別枠でしょ」
 ▼ 423 1◆J44kAZeDOM 17/04/09 21:22:59 ID:jyWOxWLU [73/78] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
目を瞑れば、蘇るプクリンのギルドの思い出。

イベルタルとみんなで戦ったっけ。あの時、ブリガロンが泣きながらゼルネアスを殴ってた。

ルカリオがやって来て、そこから3匹は、ますます力を付けて行った。

僕たちの最初の後輩が、今ではあのギルドの主力メンバー。あの頃が懐かしいよ。


ニューラ「起きろ。目を閉じたら、帰って来られなくなる」

チラーミィ「はっ! ……あー、駄目。クソ眠い」

ニューラ「ま、でもさ。こんなんも、いいんじゃない? みんな繋がって。昔、わるいてぐせでいじめられてた頃からしたら考えられないよ」

チラーミィ「だね。……ねぇ、ニューラ」

ニューラ「……何」


僕は、彼女を抱き寄せた。深夜のテンションと、懐かしいノリが、僕にそうさせた。

そっと呟く。大好きだよ、僕の最高のパートナー。彼女も答える。あたしも。
 ▼ 424 1◆J44kAZeDOM 17/04/09 21:23:43 ID:jyWOxWLU [74/78] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
本当と嘘。そんな意味を持った「リアライズ」。だけど。


ルガルガン「そーいや、なんでリアライズなんですか?」

チラーミィ「あー、僕たちどっちも、昔は性別間違えられがちで。ホントと嘘。組み合わせて、リアライズ」

ミミッキュ「でも、リアライズって言えば気付くって意味だよね」

ニューラ「まあね。そっちは、あんまりかな」

ルガルガン「でもさ、もいっこ意味あったよな。なんだっけ。英語苦手でさぁ」

ミミッキュ「えっと……そうだ」


We realize our dream. 私たちは、夢を叶える。


サニーゴ「実現する、かぁ。いい名前だね」


実現する。そっちの意味は、初めて聞いた。

夢を、叶えるか。
 ▼ 425 1◆J44kAZeDOM 17/04/09 21:24:21 ID:jyWOxWLU [75/78] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルガルガン「こっちなんて、フラワーズだぞ。花でしかない」

ミミッキュ「小麦粉舐めちゃだめよ。いろんな料理に使えるんだから」

ルガルガン「いや違うだろ」

ラランテス「小麦粉? 何の事だい?」

ミミッキュ「実は小麦粉と花、どっちもフラワーなんですよ。全く同じ音」

ラランテス「ぷっ、小麦粉かい! こいつは傑作だよ。バクガメス! 知ってるかい? フラワーって……」

ヒドイデ「ひっでー。小麦粉て」

サニーゴ「でもさ、小麦粉って、なんにでも化けられる。パン、麺、お菓子。

     フラワーズの目的を考えたら、ある意味ピッタリかも」

ヒドイデ「いい事言うじゃんサニーゴちゃん!」

サニーゴ「ヒド君……」

ネクロズマ「あー、またのろけ始まっちゃったよ」

ミミッキュ「……ま、いっか」


ルガルガンが、驚いたようにミミッキュを見詰めた。2匹の目が合って、それから笑う。

もう、呪う必要もない、か。
 ▼ 426 1◆J44kAZeDOM 17/04/09 21:25:02 ID:jyWOxWLU [76/78] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ウツロイド「おーい。もうそろそろ到着だよー」

デンジュモク「まだ間に合うっす! 急ぎましょう!」

バクガメス「楽しいムードも構わんが、ウルトラビーストが結論を出すのは、この1週間だ。

      ミリスに着いたらまずはゆっくり休んで、それから万が一に備えてしっかり力を蓄えるぞ!」

ネクロズマ「それ僕らの前で言います?」

バクガメス「ああ。最悪に備えて、最高を思い描く。これが、成功の秘訣だ」

ネクロズマ「ハハ、らしいですね」

ラランテス「ま、あたいは心配してないけどね。バクガメス、警察だったから疑り深いんだよ」

デンジュモク「いやどころじゃねえっす! とりあえず走ってくださーい!」
 ▼ 427 1◆J44kAZeDOM 17/04/09 21:25:59 ID:jyWOxWLU [77/78] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミリスの街に到達した。

出迎えたのは、イライラ顔のフェローチェ。そして、呆れたような顔で1匹のポケモンが横にいた。その隣に、もう1匹。縮こまっている。

呆れているのがアマージョで、縮こまっているのがフーディンだ。


フェローチェ「遅い! 2時間37分19秒の遅刻よ!」

アマージョ「待ちくたびれてしまったわ!」

ラランテス「仕方ないだろう! 火事を止めてたんだから!」

フーディン「と、とにかく早く行きましょう!」

ウツロイド「昨日一日寝てないしー、寝かせてよフェロちゃん」

フェローチェ「ああ、こうして行く間にも2秒3秒5秒7秒……」

ウツロイド「時間に追われてると早くふけちゃうよー」

フェローチェ「なんですって?! わたくしの美貌に気付けないというのですか?!」

ウツロイド「フェロちゃんもっとゆったりしてたらかわいいのにー」

フェローチェ「きーっ!」

デンジュモク「ああ、生きた心地がしないっす……」

フーディン「俺もだ……」
 ▼ 428 1◆J44kAZeDOM 17/04/09 21:26:55 ID:jyWOxWLU [78/78] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
目の前で繰り広げられるコメディを笑いながら、僕はフーディンに問いかける。


チラーミィ「あなたは?」

フーディン「ああ、も、申し遅れました。お、俺はフーディン……エクリプスの、あがり症の団長です」

バクガメス「あがり症? サーカスなのにか?」

フーディン「ああ。でも、本番には出ないから……」

バクガメス「はあっ! とりあえず、俺らを案内してくれや。二徹だ。俺はともかく、みんなもう眠い」

フーディン「わ、わかり、わかりました……き、きき、来てください」

ウツロイド「えー、なんでそんな怒ってるのー? 綺麗な顔がもったいないよー」

フェローチェ「今度という今度はもう許さない! ウツロイド、覚悟なさい!」

デンジュモク「」

ネクロズマ「ほら、2匹の事はほっといて、行こうデンジュモク」
  ▲  |  全表示468   | << 前100 | 次100 >> |  履歴   |   スレを履歴ページに追加  | 個人設定 |  ▲      
                  スレ一覧                  
荒らしや削除されたレスには反応しないでください。
書込エラーが毎回起きる方はこちらからID発行申請をお願いします。(リンク先は初回訪問云々ありますがこの部分は無視して下さい)

. 書き込み前に、利用規約を確認して下さい。
レス番のリンクをクリックで返信が出来ます。
その他にも色々な機能があるので詳しくは、掲示板の機能を確認して下さい。
荒らしや煽りはスルーして下さい。荒らしに反応している人も荒らし同様対処します。




面白いスレはネタ投稿お願いします!
(消えた画像の復旧依頼は、問い合わせフォームからお願いします。)
スレ名とURLをコピー(クリックした時点でコピーされます。)
新着レス▼