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【SS】ポケモン不思議のダンジョン 花の盗賊団

 ▼ 1 1◆J44kAZeDOM 17/03/27 23:18:48 ID:qk0Nxw9k NGネーム登録 NGID登録 wf 報告







プロローグ






 ▼ 229 1◆J44kAZeDOM 17/04/04 19:19:49 ID:GHkOfw2I [1/45] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ラランテス「あたいはまあ、観察力が高いんだ」

サニーゴ「ボスって、そんな口調だったんだ」

ラランテス「まあ、あれでも押さえてた方さ。少しずつ、丁寧さが抜けて、今じゃこのザマ」

バクガメス「……続けるぞ」


そのお尋ね者を捕まえて、その帰り道だよ。

こいつが急に「楽しかった」とか言いやがったのは。


カリキリ「お宝探し出すのって、すっごいワクワクする!」

バクガメス「ほう。お前なら、探検隊になれるかも……」
 ▼ 230 1◆J44kAZeDOM 17/04/04 19:20:24 ID:GHkOfw2I [2/45] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
そこまで言って、魔が差した。

こいつなら、本当に、虐げられてきたポケモンの声を代弁するものになれるのではないか?

そのためには、一度悪の道に堕ちる必要がある。

そうせざるをえなかった、強い動機を持つ。

そうしたポケモンたちを束ねるための実力と、観察眼を持つ。

パズルのピースが、ピタリとはまったんだ。


バクガメス「お前、盗賊、やらないか?」

カリキリ「盗賊ー? 何それ?」

バクガメス「お宝探したり、お前を追い出したような街のポケモンたちからメシを調達したりする。

      悪者だ。悪者だけど、お前なら、正義の盗賊になれる」

カリキリ「正義の悪者……?」

バクガメス「お前の行動が、たくさんのポケモンを救うかもしれないんだ」

カリキリ「ホント?!」

バクガメス「ああ」
 ▼ 231 1◆J44kAZeDOM 17/04/04 19:21:09 ID:GHkOfw2I [3/45] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
バクガメス「これが、俺の昔話。弱い者の声を束ねて、世間に伝えるためのシナリオだ」

ヒドイデ「……このチーム、そんな由来があったのか」

バクガメス「まあな」


コスモッグ「あれ? でも……今そういう、虐げられてきたポケモンってどのぐらいいるの?」


僕は辺りを見回す。

サニーゴ、ヒドイデは、駆け落ちの末拾われた。

コスモッグも迷子の所を拾われた。

俺は記憶喪失で行くあてのない所を拾われた。

ミミッキュは……。


ミミッキュ「あたしも違うよ?」

バクガメス「ああ、そうだ。今現在、そんなポケモンは、1匹たりともいない」

ラランテス「ここにしばらくいると、みんな、何かを掴むんだ。そして、いつの間にか、いなくなる」

バクガメス「別れは告げてるけどな」
 ▼ 232 1◆J44kAZeDOM 17/04/04 19:23:09 ID:GHkOfw2I [4/45] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
サニーゴ「みんな、何かを見付ける……」

バクガメス「ああ。俺のこの計画は、間違ってない。同じような辛い過去を持つポケモンたちの中で、みんな強くなれる」

ラランテス「来るもの拒まず去るもの追わず。この生活に、決してあたいたち、後悔はしてないよ」

イワンコ「……そういう事、だったのか。この前のデンジュモク追っかける前のあのセリフも」

バクガメス「ま、そういうこったな」

サニーゴ「凄いねヒド君……ヒド君?」

ヒドイデ「そんな、そんな目的があったとも知らず、俺、ただぼーっと、駆け落ちだなんてそんな幸せな理由で……」


ヒドイデが、泣いていた。

サニーゴが、そっと彼を支える。


バクガメス「事情を詮索すんなってのもそういう訳だ。イワンコとかは例外だったがな。

      ふん、もう上弦の月が沈んでやがるぜ。もう遅い、寝ろ。明日からまた、ウルトラビーストを捜索する。

      記憶の謎は、まだ解かれてねぇからな。それに、まだ狙いもハッキリしない。隠すのは構わんが、俺たちはゼンリョクで詮索するからな」

コスモッグ「わかってますよ」
 ▼ 233 1◆J44kAZeDOM 17/04/04 19:27:25 ID:GHkOfw2I [5/45] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ラランテス「それじゃ解散! みんな、寝るよ!」

みんな「はーい!」


と、返事して、ふと気になった。


イワンコ「サニーゴたち、いつの間に?」

ヒドイデ「ちょ、そりゃヒドイデ! バクガメスさんが話し出した辺りだよ」

ミミッキュ「まったく気付かなかった……」

サニーゴ「これでも盗賊だしね、私たち」

バクガメス「そんなんじゃつけられてるのにも気付けないぞ。お前らしっかりしやがれ」

ラランテス「気にしちゃ駄目だよ。あたいたちの話に集中してたんだし。

      ほら、速く休みな!」

みんな「はーい」
 ▼ 234 1◆J44kAZeDOM 17/04/04 19:28:28 ID:GHkOfw2I [6/45] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
3匹分の藁布団を敷き、コスモッグが帰って来たんだなぁと実感する。

コスモッグの感動はひとしおなようで、「あったかいとこで寝るの、久しぶりだなぁ」との事。

ミミッキュが、すんなりと眠ってしまう。


イワンコ「でも、どうして来た理由だけ執拗に答えてくれないんだ?」

コスモッグ「それ言っちゃったら手掛かりになるもん。それも言えない。まあ、諦めて。

      もちろん、推理で当てるのは構わないけど、答え合わせもできない。

      ただ……バクガメスさん、あれわかってないって言ってるけど、どこまで本気なのかな」

イワンコ「え?」

コスモッグ「それが正解かはともかく、少なくとも、自分の中にもう答えを持ってるみたいだけど」

イワンコ「……まあ、そうだろうね。重要なのはそれが正解なのかなんだけど」

コスモッグ「へへ。ま、せいぜい頑張って」

イワンコ「……わかった。せいぜい頑張るよ。お休み」

コスモッグ「お休み」
 ▼ 235 1◆J44kAZeDOM 17/04/04 19:29:18 ID:GHkOfw2I [7/45] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ふわふわと眠りの暗闇を彷徨う。

気付けば前脚が地面から離れ、僕は2本の足で立っていた。

何かに導かれるままに、僕は歩いて行く。

そこにいたのは――僕だ。人間の、僕だ。

僕はそれと重なり合う。途端に、僕の心は、焦りと恐怖で満たされた。


――あたしは、空っぽ。何もできないから、せめて満たしてくれる存在が欲しかった。

俺の腹部から、滴る血。

――あなたは、そうだと信じてたのに。結局、裏切るんだ。


目の前に立つ少女。俺は、彼女を知っている。


「久瀬……お前……」


久瀬はただ、僕の名前を呼んだ。
 ▼ 236 1◆J44kAZeDOM 17/04/04 19:30:09 ID:GHkOfw2I [8/45] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告








岩根君。










その声を最後に、意識が飛んで行く……。








 ▼ 237 1◆J44kAZeDOM 17/04/04 19:30:42 ID:GHkOfw2I [9/45] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
――――――――

――――――

――――

――――

――――――

――――――――
 ▼ 238 1◆J44kAZeDOM 17/04/04 19:31:17 ID:GHkOfw2I [10/45] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
イワンコ「うわあっ!」

ミミッキュ「うわっ?! どうかしたイワンコ?!」

イワンコ「あ、いや……少しだけ、思い出したかもしれない」

ミミッキュ「え?」

イワンコ「ウツロイドの話が、僕の中で、何か教えたのかもしれない。ちょっとだけ、ほんのちょっと、思い出した」

ミミッキュ「の割に、苦しそうな顔だけど」

イワンコ「……うん。苦しかった。刃物で刺されて」

ミミッキュ「刃物……。ウツロイド?」

イワンコ「いや、違う。久瀬……人間の♀だ」

ミミッキュ「久瀬……」


ミミッキュが、ポツリと呟く。
 ▼ 239 1◆J44kAZeDOM 17/04/04 19:31:50 ID:GHkOfw2I [11/45] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
僕は辺りを見回し、そしてコスモッグがいない事に気が付いた。


イワンコ「そろそろ行かないとまずくないか?」

ミミッキュ「……ん? なんか言った?」

イワンコ「行かないとマズイんじゃねぇの?」

ミミッキュ「あ、そうだ。急がないと」
 ▼ 240 メルゴン@もののけプレート 17/04/04 19:32:51 ID:GHkOfw2I [12/45] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
>>235
俺じゃなく、僕です
すいません
 ▼ 241 1◆J44kAZeDOM 17/04/04 19:33:40 ID:GHkOfw2I [13/45] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
朝ごはんの料理ができていて、僕は慌てて席に着く。

盗賊団フラワーズ。メンバー7匹。全員が揃っていた。


ヒドイデ「遅いぞイワンコ!」

イワンコ「ごめんごめん」

コスモッグ「まあ、悩む事も多いだろうしねえ」

ラランテス「ま、いいじゃないか! みんな、もう食べるよ!」

みんな「いっただっきまぁす!」


太陽の光に照らされて、どこかしら輝いて見える。

7匹が揃ったフラワーズが、ここまで心強いとは思わなかった。

先程の悪夢の闇を、眩く照らしてくれる。

僕を拾ってくれたのが、ここでよかった。

出会ったのが、ミミッキュでよかった。

心から、そう思えた。
 ▼ 242 1◆J44kAZeDOM 17/04/04 19:34:34 ID:GHkOfw2I [14/45] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
イワンコ「今日は、ジジーロンに話を聞きに行ってきます。また、何か掴んでるかもしれない」

バクガメス「ああ。ジュナイパーが掴んで来た情報も気になる所だしな。まあ、あると確定した訳じゃないが」

ミミッキュ「となると、あたしは行けないか。イワンコ、行ってらっしゃい」

イワンコ「行ってきます」


僕は、アジトを抜け、森の外れへ向け走り出した。

そして、ジジーロンの家へ辿り着く。
 ▼ 243 1◆J44kAZeDOM 17/04/04 19:35:23 ID:GHkOfw2I [15/45] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
イワンコ「お久しぶりです」

ジジーロン「おお! イワンコか! ……申し訳ないが、ワシは、何も情報を手に入れておらんよ」


入った途端に彼はそう言う。

気落ちして僕は呟く。


イワンコ「……そうですか」

ジジーロン「まあ、そう気落ちするでない! ジュナイパーも探索しておるし、リアライズとかいう探検隊も協力してくれておる」

イワンコ「ああ、そうですね……」


そんな風に話していると、不意に扉が開く音がした。
 ▼ 244 1◆J44kAZeDOM 17/04/04 19:36:00 ID:GHkOfw2I [16/45] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「ジジーロンさん」

「どうも」

ジジーロン「おお! 噂をすれば影じゃの! 探検隊リアライズじゃ」

イワンコ「あ、どうも」

チラーミィ「イワンコ! 久しぶり」

イワンコ「お久しぶりです。……こっちはいろいろ掴みましたよ」

チラーミィ「ホント? 凄い! こっちは全然だったから。停電の解決に尽力しようとしてたら、治っちゃっうなんて茶番もあったし」


あの件か。僕たちの手柄だ。

なんだか申し訳ない事をした。


ニューラ「ま、それはどうだっていい。何? ウルトラビーストに関して、何か掴んだって?」

イワンコ「はい」
 ▼ 245 1◆J44kAZeDOM 17/04/04 19:37:10 ID:GHkOfw2I [17/45] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
デンジュモクから仕入れた知識をすべて白日に曝け出す。

情報源は秘匿。どうやって仕入れたのかに関しては、適当にぼやかした。肝心なのはそこじゃない。伝えなくても問題ないのだ。

というより、伝えてしまうと面倒くさい。どんな背景があり、警察とグルだったとしても、犯罪は犯罪。

探検隊にバレて、いい事があるはずもない。


ニューラ「ふぅん。テッカグヤ、カミツルギ、アクジキング、マッシブーン……」

チラーミィ「他はともかく、アクジキングの空腹を満たすことに関して言えば協力できるかもね」

ニューラ「埋めるメリットが明確に見えるまでは避けたいけどね」

イワンコ「え、マジっすか?」

ニューラ「ええ。風の大陸、セカイツリーに伝わる黄金のリンゴ。

     どんなポケモンの空腹をも完全に満たし、なおかつお腹の許容量を物凄く増やすと言われてる」

チラーミィ「あー、あれか。水の大陸の調査団が手に入れたっていう」

イワンコ「へえ……そんな凄いものが」

チラーミィ「空腹で暴れ出す、なんて事があったらそれを対策に使えるね。

      大量の金塊と引き換えにゴールドゴージャスって店で引き換えてくれるって噂もあるし」
 ▼ 246 1◆J44kAZeDOM 17/04/04 19:37:51 ID:GHkOfw2I [18/45] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ニューラ「ま、よっぽどたくさん必要らしいけどね。当のナエトルとピカチュウのコンビに直接頼んだ方が早い」

チラーミィ「ま、そんなもんだね。僕たちから提供できる情報は」

イワンコ「そうですか。じゃあまあ、情報共有って事で。僕もまた、ウルトラビーストを捜してみます。それでは。

     ジジーロンさんも、ありがとうございました」

ジジーロン「構わんよ」


それだけ言うと、僕は彼の家を後にした。
 ▼ 247 1◆J44kAZeDOM 17/04/04 19:38:51 ID:GHkOfw2I [19/45] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


ニューラ「どうする? 本当に後をつけるの?」

チラーミィ「……仕方ないよ。だって、見ちゃったんだもん」


僕は、ため息を吐いて、ジジーロンの家を抜け出し、それからニューラと一緒にドロンのタネを頬張った。

目立たないスカーフが僕たちだけに居場所を伝える。

完全に気配を断ち、イワンコの後を追うのだ。
 ▼ 248 1◆J44kAZeDOM 17/04/04 19:39:26 ID:GHkOfw2I [20/45] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
話は数日前。街に停電が起こってしまった時の事。

ちょうど街中で見回りをしていた僕たちは、見事にその場に居合わせた。

騒ぎが起こり、僕たちが代表して発電所に向かう事になる。

ポケモン助けは大事な仕事だ。僕たちは頷いて、そちらの方へ駆けて行く。


ようやく到着した時、僕たちは発電所から脱出してくるポケモンたちを目撃した。

まず初めにイワンコの姿が見え、僕たちは声を掛けようと近寄りかけた。

と、後ろからラランテスが出てくる。そして――


ニューラ「あれ、ミミッキュ……?」

チラーミィ「え?」

ニューラ「同一個体かは知らないけど……イワンコもいるよね」

チラーミィ「うん……ねえ、もしかしてイワンコって……」

ニューラ「さあ。保障はない。けどもしかすると、あたしたち、担がれたのかもしれない」


後ろからバクガメスが彼らを追いかける。
 ▼ 249 1◆J44kAZeDOM 17/04/04 19:40:24 ID:GHkOfw2I [21/45] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ニューラ「どっちを先対処する?」

チラーミィ「それは……停電だ。イワンコなら、また会える。確かめるのはそれからで遅くない」

ニューラ「だね。とりあえず、発電所を確認して来よう」


結局、戦いの跡が見られただけで、特に何か問題があるようには見えなかった。

問題なく電気を供給できている。

少なくとも、停電の原因が彼ら、という訳ではないらしい。そもそも時間的な問題もある。

街のポケモンたちを「危ないから僕らだけで」と説得し、そして街からここまでにかかった時間を勘案するに、彼らが原因だとするとあのタイミングで脱出してくる事はあり得ない。

つまり、彼らが停電に対処した、という事だろうか。それか、何もなかったか。


ニューラ「ま、何もないならよかったじゃん。ただ何かが暴発しただけじゃない?」

チラーミィ「みたいだね……」
 ▼ 250 1◆J44kAZeDOM 17/04/04 19:40:56 ID:GHkOfw2I [22/45] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
特に問題はなかったと説明するまでもなく、皆日常に戻っていた。

まあ、盗賊を逃がした探検隊に対する扱いなんてこんなもんだ。むしろ爪弾きにされないだけありがたい。

僕らは拠点としている空き家に戻り、それから作戦を練る。


チラーミィ「ジジーロンの家の場所はわかる。そこで待ってれば、いつかはイワンコと出くわす。

      そして、その後をつけて行けば、真偽はハッキリする」

ニューラ「ま、それが一番だろうね。明日から、張り込もう」
 ▼ 251 1◆J44kAZeDOM 17/04/04 19:41:59 ID:GHkOfw2I [23/45] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
で、数日後。

どことなく晴れた表情でイワンコはジジーロンの家にやって来た。

不自然さを隠すようなタイミングで僕たちも家の中へ。

それから情報を共有し、イワンコは去って行く。

で、僕たちもジジーロンに別れを告げ、話は最初に戻る。

こっそりと、イワンコの往く道を辿る。

彼は森の奥の方へ歩いて行く。

その足取りに迷いはなく、日常的に出入りしている事が見て取れた。

チュート洞窟を迂回するルートを取り、荒れたルートを慣れた足取りで進む。

苦労しながらもなんとか見失わずに彼の後をつけ続けられた。

そして、何かの気配を感じる。テントのような、何かがある。


チラーミィ「あれ」
 ▼ 252 1◆J44kAZeDOM 17/04/04 19:43:15 ID:GHkOfw2I [24/45] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ニューラ「怪しい」

チラーミィ「だよね。イワンコはあそこに寝泊まりしてるのかな」

ニューラ「盗賊のアジト感はあるかもね。移動しやすいようにテント。見付かりにくい、こんな場所に建てるとことか」

チラーミィ「行こう」

ニューラ「だね」


僕らはそのアジトに向けて歩みを進めた。

イワンコはそこに入って行ったらしい。

そこにいたのは、ミミッキュだ。あの時の、僕たちから逃げおおせた。


チラーミィ「ビンゴ」

ニューラ「……他に誰かいるのかな」

チラーミィ「まだ透明だし、ちょっと見てみよう」
 ▼ 253 1◆J44kAZeDOM 17/04/04 19:44:03 ID:GHkOfw2I [25/45] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
テントの中を覗く事はさすがにできないが、現在イワンコ、ミミッキュの他にもう1匹の気配を感じた。

今なら、戦ってもなんとかなるかもしれない……けれど。

そこにあったガルーラ像から僕は自分たちの不思議玉を引き出した。


ニューラ「敵縛り玉……。もっとそろってからだね」

チラーミィ「うん。とりあえず離れて、逃げよ――」

イワンコ「なんか……臭いがするんだけど。たぶん……チラーミィとニューラ?!」

チラ・ニュ「なっ?!」


声は聞こえていなかったらしい。そこまで大きな声で話す程バカではない。

視認もされていないだろう。しかし、彼は気付いた。臭いという、消せないもので。


ミミッキュ「えっ、その2匹って……」

イワンコ「ミミッキュを追ってた奴だよね」

ミミッキュ「どこにいるの?!」
 ▼ 254 1◆J44kAZeDOM 17/04/04 19:44:46 ID:GHkOfw2I [26/45] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
僕たちは、そろりそろりと逃げ出そうとする。

しかし、イワンコは鼻をくんくんいわせて、正確に僕らの方へやって来た。


チラーミィ「しゃーない、やるよ」

ニューラ「だね」


僕たちは同時に、通常攻撃を繰り出した。


イワンコ「うぐうっ?!」


勢いで吹っ飛んだイワンコ。

ミミッキュが焦りの声をあげる。


ミミッキュ「イワンコっ!」


イワンコは最後の力を振り絞り、ある技を唱えた。


イワンコ「かぎ……わける……」
 ▼ 255 1◆J44kAZeDOM 17/04/04 19:46:01 ID:GHkOfw2I [27/45] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
その技の効能で僕らの姿が露わになる。


チラーミィ「あちゃー、バレちゃったか」


ミミッキュが怒りのままに攻撃をしかけてくる。ひっかくだ。


チラーミィ「でも、接近さえできればこっちのもんだ!」

ニューラ「ふん」


ニューラがつららおとしで攻撃をしかける。ミミッキュはばけのかわで攻撃を弾くが、しかし一撃でそのメッキは剥がれる。

何かに気付いたというように、サニーゴがやって来た。


チラーミィ「盗賊団はお前らだろ?! 逮捕する!」

サニーゴ「えっ?! ぽ、ポケ違いでは?!」

ニューラ「そこのミミッキュ、あたしたちを知ってるようよ」

ミミッキュ「……戦うしかないよサニーゴ! これでもくらえっ!」


ひっかく。威力のしょぼい技。逃げ足は速かったが、攻撃速度も高くない。簡単に見切れる。
 ▼ 256 1◆J44kAZeDOM 17/04/04 19:47:12 ID:GHkOfw2I [28/45] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
チラーミィ「その程度?」


僕は尾を鋼鉄化させ、飛び上がった反動でミミッキュに斬りつける。さくり、と軽い感触がして、僕は既視感を覚える。

この、中に何も入っていないような感触。いくらミミッキュと言えど、ばけのかわを剥がせば後は中身に攻撃できるはずだ。


サニーゴ「……お願いします! これ以上やめてください! ……もう、降参です」

チラーミィ「降参?」


ミミッキュに、ダメージを与えられた気がしない。皮に尾を突き差したまま、僕は辺りを見回す。

今降参されても、嫌な予感しかしないのだ。油断した不意を突いて、ミミッキュが攻撃してくるのではないか。そんな予感が。


サニーゴ「お願いします、どいてください!」

チラーミィ「……この皮に、戻って来るはずなんだ。どこだ、どこにいるミミッキュ……」


ニューラも僕も、辺りを見回す。サニーゴの言葉を、まるで無視して。

そんな最中、不意にどす黒い声が聞こえた。


「どけつってんのがわかんねぇのかあぁん?」
 ▼ 257 1◆J44kAZeDOM 17/04/04 19:48:08 ID:GHkOfw2I [29/45] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
唐突に、大地が唸り声をあげる。

尾で立っていた僕は、たまらずバランスを崩した。

大地から何かの気が溢れ出し、空気までがビリビリと震える。

とんでもない気配に振り向くと、そこにはサニーゴがいた。


サニーゴ「てめぇらポケモンが降参してるっつーのになぜ攻撃をやめない?」


思わず、震える。

どうしてだろう。先程まで物腰丁寧だった彼女に、僕は怯えを感じている。

親方様の本気と対峙した時にも似た、そんな恐怖。


チラーミィ「えっと……」

ニューラ「何これ」
 ▼ 258 1◆J44kAZeDOM 17/04/04 19:49:36 ID:GHkOfw2I [30/45] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
そういうニューラの声も震えていた。

我も忘れて……


チラーミィ「てっ、敵縛り玉!」


僕は思わずその不思議玉を投げつける。

3匹しかいない時に使いたくはなかったのだけれど、仕方ない。

根源から忍び寄る恐怖という感情に、僕は抗えなかった。

身動きをすべて拘束され、サニーゴはその体勢のままうなだれる。

イワンコは、気絶していた。ミミッキュは未だ見当たらない。

皮を手に僕は立ち上がる。

ミミッキュも恐らく、この不思議玉の作用を受けているだろう。

危険は去った。が、またやって来ないとも限らない。

何匹いるか、全貌が掴めないのだ。

ガルーラ像からもっとたくさんのアイテムを引き出し、それからイワンコを起こして言った。


チラーミィ「イワンコ、君も、盗賊だったんだ」
 ▼ 259 1◆J44kAZeDOM 17/04/04 19:50:57 ID:GHkOfw2I [31/45] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


サニーゴの動きが完全に拘束されている。

ミミッキュのばけのかわが、チラーミィの手にある。

こんな状態で、ポケモンとしての経験も浅い僕に勝機があるとは思えなかった。

降参だ。


チラーミィ「とりあえず、ミミッキュを捜してもらえない? 臭いでわかりそうだけど」

イワンコ「無理ですよ。ばけのかわの臭いしかわかんないし」

ニューラ「……ばけのかわから抜け出すタイミング、見てない。ミミッキュ、完全に消えた」

イワンコ「……え?」

チラーミィ「イワンコ、とりあえず、この盗賊団について教えて。これは命令だよ」


チラーミィとニューラが、技の構えを見せる。僕の意識を一撃で刈り取ってしまった強力な技。

敵わないのはわかっている。諦めて、話そうとした、その時だった。


バクガメス「おう、荒れてるな」

イワンコ「バクガメスさん!」
 ▼ 260 1◆J44kAZeDOM 17/04/04 19:51:36 ID:GHkOfw2I [32/45] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
チラーミィ「あっ、増えた。まずいな……」

バクガメス「さしずめ、探検隊リアライズが来た、ってとこか。

      ふん、構わん。俺たちを逮捕しろ」

ニューラ「なんとかしないと……え?」

バクガメス「ちっ、速くしやがれ。時間がないんだ」

チラーミィ「えと、逮捕してくれ? いやしますけど、なんで?」

バクガメス「いいから、連れて行け。後3匹いる。俺ら全員、しょっぴけ」

イワンコ「バクガメス……さん?」

バクガメス「おら」

チラーミィ「わ、わかった。とりあえず、ここでじっとしててください」

バクガメス「……あいつら、まだか」

サニーゴ「バクガメスさん、どういう事ですか?!」

バクガメス「黙ってろ」

サニーゴ「なんで?!」

バクガメス「……いつかは来ると思ってたんだ、こんな時が。俺の力だけじゃ、止められない物語が動き出すのがな」
 ▼ 261 ャノビー@せいれいプレート 17/04/04 19:51:45 ID:LcAj.rdI NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 262 1◆J44kAZeDOM 17/04/04 19:52:31 ID:GHkOfw2I [33/45] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
サニーゴ「でも、それじゃ……」

バクガメス「安心しろ。お前の愛しのヒドイデとは同じとこに入れてもらう。そんぐらいの融通は効く。

      それに、俺の目算だと、半月もいないぜ? 牢屋」

チラーミィ「なっ、それ……」

バクガメス「ま、俺の読みが正しけりゃな。っと、3匹のお帰りだ。そのばけのかわを置いてやれ。ミミッキュが、戻れない」

チラーミィ「あっ、はあ」


どういう事だろう。バクガメスの狙いっていうのは、一体なんなのか。

僕は首を捻った。だが、反逆できる強さを持つポケモンがラランテスとバクガメスだけ、その片方が反逆しないと言っているのだから、負けは確定だ。

つまるところ、みすみす捕まるより他にないらしい。

考えを巡らせてはみるけれど、僕は何も思い付かなかった。

バクガメスの顔は、確信に溢れている。けれど、その一端も、僕には掴めないのだ。
 ▼ 263 1◆J44kAZeDOM 17/04/04 19:53:13 ID:GHkOfw2I [34/45] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ヒドイデ「ええっ?! そりゃないっすよ?! ボス、なんとかならないんすか?!」

ラランテス「……バクガメスが何か考えてるみたいなんだ。あたいはそれを信じるよ」

コスモッグ「……なんで、どうして」

バクガメス「俺の仮説が正しけりゃ、これが最善手なんだ」

ミミッキュ「……事情は聴きました。あたしたちじゃ、無理ですか」

バクガメス「いや、お前ならできる。だからこそ、今は俺に従ってくれ」


戻って来たミミッキュも、コスモッグとヒドイデの2匹も、がっくりとうなだれる。

観念した僕らは、素直にリアライズの2匹に先導されていく。

だが、リアライズの2匹も2匹で、気味が悪そうだった。


チラーミィ「訳わかんないよ……どういう事イワンコ」

イワンコ「僕に聞かないでよ、僕にも謎なんだから」
 ▼ 264 1◆J44kAZeDOM 17/04/04 19:54:16 ID:GHkOfw2I [35/45] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
道中、僕は、包み隠さずすべてを伝えた。

と言っても、元人間がバレている以上、隠し事はすべて、フラワーズにまつわる物語のみに限定される。

ウルトラビーストとの出会い方、僕がここに入ったきっかけ、この盗賊の裏にある事情、その他もろもろ。

どうせバレたのだからと開き直った訳だ。


チラーミィ「わかった。絶対に、君の、記憶の謎も解き明かしてみせる。ウルトラビーストが目指すものも特定してみせる。

      全部、解き明かすから、安心して、罪を償って」

ニューラ「それと、本当に悪いポケモンなんて、実はどこにもいないって、あたしたちが修行したギルドの親方のセリフ」

バクガメス「ほう、プクリンのギルド出身か」

チラーミィ「星の停止事件でポケダンズに憧れたクチですからね、僕」

ニューラ「あたしは……夢特性の解除かな。それはもう、達成されちゃったけど」

ラランテス「にしてもまあ、プクリンのギルドって言ったら有名な探検隊ギルドだろう?

      そこ出身であたいたちにこんな苦戦してるようじゃまだまだだね」

チラーミィ「いや、結構巧妙に隠れてましたよ。たまたま、イワンコの謎を解くために接近したからこそです」

バクガメス「そろそろ着くんじゃねぇか? 警察署」

ニューラ「はい。……ホント、なんなんですかあなたって。盗賊のボスなら、もっと、メンバーの事を思いやるべきだ!」
 ▼ 265 1◆J44kAZeDOM 17/04/04 19:55:02 ID:GHkOfw2I [36/45] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
唐突に、ニューラが叫ぶ。


ニューラ「あたしのお母さん、MADのリーダー、マニューラ。だからこそ、あたしは、光の中を目指した。

     だけど、おかしいよっ! 闇なら闇で、もっと、自分たちの仲間内で助け合ってよっ!」

バクガメス「……あのマニューラの娘か。いい事を教えてやる」

ニューラ「え?」

バクガメス「やっちまった事からだけは、誰も逃れられない」

ニューラ「……それ、どういう……」

バクガメス「すべての行動が結果に寄与するのなら、すべてを前向きに使わないといけない。

      例え逮捕されようと、俺はそれすらも、こいつらのために活かすつもりだ」

ニューラ「はぁ……」

バクガメス「んじゃ、せめて、自首の形を取らせてくれ。ま、無意味な事だろうが、少しでも心象は上げておきたい」

チラーミィ「いいですよ」

バクガメス「それと、明日にまた、面会に来てくれ。大丈夫。俺とジバコイルは仲がいい。融通してもらうさ。

      後、ボスは俺じゃねぇ。ラランテスだ」
 ▼ 266 1◆J44kAZeDOM 17/04/04 19:55:33 ID:GHkOfw2I [37/45] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
その後、なんやらかんやらの手続きがあり、あれよあれよと言う間に僕はミミッキュ、コスモッグと共に3匹で牢屋に入っていた。

なぜ僕たち3匹なのかはわからない。バクガメスは、僕に何も伝えてくれなかった。

けれど、バクガメスの事だ。何かしら腹に一物あるのだろう。

そんな根拠のない断定が僕の中にあった。


ミミッキュ「……まあ、悪い事してたのは事実だから、いつかこうなるとは思ってたけど」

イワンコ「まさかこうなるとは思わなかったよね」


コスモッグが怒りを孕ませた口調で呟く。


コスモッグ「……なんでだよ。おかしいよ。みんな、いいポケモンじゃん。悪いポケモンじゃないじゃん……」

イワンコ「……警察ってのは、そういうもんじゃない。やった事が犯罪だったから――」

コスモッグ「犯罪?! バクガメスの話聞いといて、よくそんな事言えるね?!

      間違ってるよ、こんなの。絶対に。

      ……ここから、出られないの?」

イワンコ「出るには、時間がかかるだろうな。ポケモン世界のルールはわからないけど」

ミミッキュ「あたしも、さっぱりだ」
 ▼ 267 1◆J44kAZeDOM 17/04/04 19:56:38 ID:GHkOfw2I [38/45] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
コスモッグ「……理不尽だよっ! なんで、なんでみんなが捕まらないといけないんだ……」

イワンコ「だからそれは……」

コスモッグ「……2匹とも、行くよっ!」

イワンコ「え?」

ミミッキュ「コスモッグ、テレポートはここじゃ使えない……」

コスモッグ「2匹だけでも、ここから逃げるべきだ……」


コスモッグは、苦しげな顔をして一心不乱に何かを念じている。

僕たちは、顔を見合わせた。


イワンコ「ミミッキュ、コスモッグは、どうしたの?」

ミミッキュ「わからない、あたしもこんなコスモッグ、見た事ない……」

コスモッグ「はぁぁぁああああああっ!」


コスモッグが力を放つと、そこに何か、ひずみが現れる。


コスモッグ「2匹とも、行くよっ!」
 ▼ 268 1◆J44kAZeDOM 17/04/04 19:57:08 ID:GHkOfw2I [39/45] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
僕は、立ち竦んだ。

――このひずみを、僕は、どこかで見た事がある。

ひずみは増殖し、僕らを呑み込んだ。

それでも僕は、その強烈な既視感に、立ち竦むのみだった。
 ▼ 269 1◆J44kAZeDOM 17/04/04 19:57:51 ID:GHkOfw2I [40/45] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
幕章

「あたしを、入部させてください」

「お、ホントか?!」

「もともと、読書は好きですし。よろしくお願いします、小林先輩、岩根君」


翌日、あたしはそう持ち掛けていた。

相変わらずクラスには居場所なんてないけれど、ここならあたしは認められる。

あたしの空っぽな存在を、確かに満たしてくれるから。

だから、あたしは決めた。この同好会に入ろうと。


「久瀬、サンキューな」

「お礼言われる義理もないよー。あたしが入りたくて入ったんだし」
 ▼ 270 1◆J44kAZeDOM 17/04/04 19:58:29 ID:GHkOfw2I [41/45] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
活動内容の紹介をぼおっと聞き流しながら、あたしはポケモンというものに関して考えていた。

昨日あれから少し調べてみた。ウルトラビーストと、その他ポケモンに関して。

いろいろな知識を蓄えて、あたしはいろいろ考えた。

向こうなら、少なくともあたしの存在は満たされるだろう。きっと、ハブなんてないはずだ。

いつしかあたしは、パラレルワールドの奥にあるであろうその世界に想いを巡らせるようになっていた。

もともと、読書というのを現実逃避に位置付けていたあたしだ。それ自体はおかしくもなんともない。

けれど、心のどこかでぼんやりと、「これ以上その妄想に依存すると危険」の声が聞こえるのだ。

もちろんあたしはそんなのを鼻で笑う。もちろん、現実でない事は承知している。その上で、それを信じているのだ。


「……心ここにあらずって感じだな。そんなに、何か気になるのか?」

「え? ああいや」

「まあ、とりあえず、小説を書くために、なんだけど……特にやり方を教えたりはしない。

 ただ、出来たものを添削したりするだけだからな。ま、いろいろ読んで来たお前なら、それなりにやれそうだ」

「わかりました」
 ▼ 271 1◆J44kAZeDOM 17/04/04 19:59:05 ID:GHkOfw2I [42/45] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
そこから数日、あたしの日常は文芸同好会とポケモンに塗り潰された。

親の目を気にせず、やりたい事に没頭できるのが、この生活のメリットだ。

デメリットと釣り合いは取れていないが、少しは享受しなければもったいない。

本屋へ行き、ポケモンサンムーンの分厚い攻略本2冊を購入、そして熟読した。

虚構なのか。いいや、あたしは、確かに見た。

――あのひずみから飛び出して来る、ガラス質のクラゲを。

いや、違う。あれは、ウツロイドだ。間違いない。見れば見る程、確信は強まる。

ウツロイドが、この世界にやって来たのだ。


あたしは、どうなのだろう。その存在が、あたしの生活に、どう影響するのか。
 ▼ 272 1◆J44kAZeDOM 17/04/04 19:59:45 ID:GHkOfw2I [43/45] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
サン
なぞに つつまれた UBの いっしゅ。まちゆく ひとが きせいされ あばれだす すがたが もくげきされた。
(漢字) 謎に 包まれた UBの 一種。町ゆく 人が 寄生され 暴れだす 姿が 目撃された。
ムーン
UBの いっしゅ。 いしが あるかは ふめいだが ときおり しょうじょの ような しぐさを みせる。
(漢字) UBの 一種。 意思が あるかは 不明だが 時折 少女の ような 仕草を みせる。

あたしは、寄生されているのか、いないのか。

そんな事はどうでもいい。ただ、調べるに、このウルトラビーストは、あたしの中に眠る力を引き出してくれるという。

どうなるのか。あたしの力が引き出された時、どれだけあたしはやれるのか。

そんな妄想が、留まるところを知らない。

いじめの主犯をナイフで突き差す。

その想像が、創造へと昇華され、あたしは原稿用紙に書きなぐる。

反逆と、復讐の物語。あたしは、自らの中に溜まるストレスと欲望を、物語に変えて発散させるのだ。
 ▼ 273 1◆J44kAZeDOM 17/04/04 20:00:16 ID:GHkOfw2I [44/45] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「へぇ、これはこれは」

「まあ、鬱憤をぶつけてるだけだから、駄作だと思いますけど」

「いや、でも描写がこう、来るものがあるね。……俺、前にいじめを無視した事があったから」

「そう……なんですか」

「ある強烈な体験があって、俺は心を入れ替えた。なんだかな……上から目線に感じちまうかもしれないけど」

「まあ、そうですね」

「言葉にするのは、だから辛い。それを、物語にする事によって、表現したかったんだ」

「はぁ……」

「……まあでも、とにかくこの話、いいと思うわ。頑張れ」

「ありがとう……ございます」
 ▼ 274 1◆J44kAZeDOM 17/04/04 20:00:52 ID:GHkOfw2I [45/45] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
教室でも、相変わらず無視は続くけれど、あたしは観察する。

人の行動を、もっとリアルに。

リアリティこそが、復讐の始まりだ。

すべてを破壊するための、始まり。

敵を知らなければ、戦いにはならないのだから。
 ▼ 275 りもの湖◆1kfBK4rWHM 17/04/04 20:59:26 ID:BIzR7nAw NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 276 リージオ@のんきのおこう 17/04/05 00:06:32 ID:6grXu2Z2 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
生命の探検隊だっけ?のチラーミィとニューラなのね
 ▼ 277 1◆J44kAZeDOM 17/04/05 19:47:43 ID:.cWFKAr2 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
サーカス団編 3章
http://pokemonbbs.com/post/read.cgi?no=563304&l=76-123
76から123です
 ▼ 278 1◆J44kAZeDOM 17/04/06 20:08:00 ID:mM/kAz2c [1/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告







7章 救出のマッシブーン






 ▼ 279 1◆J44kAZeDOM 17/04/06 20:08:33 ID:mM/kAz2c [2/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
見渡す限り何も存在しない。

光どころか、闇とも呼べない何か。

混沌の中を、僕は何かと漂っていた。

世界と融け合い、僕は理解した。再構成が、始まる。

突然に世界が回り始め、僕はまた二足歩行になる。

光が窓から入り込み、そこには机がたくさんある。

教室。その単語が、ポロリと脳裏に浮かんだ。

そうだ、これは教室だ。

右後ろの座席に僕は座る。

どことなくよそよそしく感じるのはなぜだろう。間違いなく、ここは僕の席なはずなのに。

居心地が悪くなり、僕は立ち上がった。それから、惹かれるように教室の真ん中に目をやる。

久瀬の席は、確かそこだ。僕はそのままふらふらと彼女の席まで歩いて行った。

そして、その机に触れた途端、久瀬の声が響いた。


「どうしてっ?! ねえどうしてよっ?!」
 ▼ 280 1◆J44kAZeDOM 17/04/06 20:09:17 ID:mM/kAz2c [3/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「どうしてっ?! ねえどうしてよっ?! 起きてよっ!」


聴覚に訴えかけてくるその声が、久瀬のものではないと気付いた瞬間、僕は目覚めていた。


イワンコ「……ミミッキュ……?」

ミミッキュ「イワンコっ! よかった……」


その安堵の声を聞いた瞬間、僕は現実に引き戻される。

そうだ。確か逮捕されて、コスモッグがひずみを作って、それで……。


イワンコ「コスモッグはっ?!」

ミミッキュ「そこよ。でも……なんかおかしいの」


そちらに目をやると、そこに3つの雲の塊はなく、金属質の何かに囲まれた星雲の中に、眠たげな顔が浮かぶのみ。


ミミッキュ「これ……コスモウムに進化したのかな」

イワンコ「コスモウム?」
 ▼ 281 1◆J44kAZeDOM 17/04/06 20:09:47 ID:mM/kAz2c [4/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミミッキュ「なんだか、あたし、知ってるみたい。コスモッグは、コスモウムに進化して、それからソルガレオかルナアーラに進化するはず」

イワンコ「ソルガレオかルナアーラ……太陽と月の力を象徴するポケモンか」

ミミッキュ「正確には、その2匹もウルトラビースト。どちらに進化するのかは、いろいろな要因があるけど、昼か、夜かだね」

イワンコ「……そうなんだ」


コスモッグ、いや、コスモウムに関して語った所で、僕は辺りを見回す。

暗く、黒い場所。岩石なのかすら、定かではない。

その壁面に触れてみる。やはり、わからない。僕の常識では定義できない物質で構成されているようだ。
 ▼ 282 1◆J44kAZeDOM 17/04/06 20:10:34 ID:mM/kAz2c [5/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
空を見上げると、太陽はおろか、月も、星も出ていない。

ここで僕は、デンジュモクの言葉を思い出す。

――彼らの世界に、光は存在しない。


イワンコ「ここ……ウルトラビーストたちの場所だ」

ミミッキュ「……みたいね。ウルトラスペースとでもいうべきかな」


それを自覚した途端、辺りにあの独特な臭いが満ちている事に気が付いた。

ああ、人間が、完全に抜けた。夢の中で、僕は一時的に戻っているのだ。だから、すぐには気付けなかった。

コスモウムは、何一つ言葉を発しない。

僕は、ミミッキュと顔を見合わせ、言った。


イワンコ「とりあえず、進もう。3方を壁に囲まれてるんだ。行けるのは一方向だけだよ」
 ▼ 283 1◆J44kAZeDOM 17/04/06 20:11:18 ID:mM/kAz2c [6/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミミッキュ「あるいはじっとしてるか。でも……コスモウム、どう思う?」


コスモウムは、微かに体を動かして、開けた道の方を辿る。

少しずつ、彼はそちらを目指し、空を漂う。


イワンコ「正解みたいだ。行こう、ミミッキュ」

ミミッキュ「待って! アイテムも、何もないよ。だけど……向こう、たぶん不思議のダンジョン」


僕もつられてそちらを見る。

確かに、そんな気配がする。けれど、コスモウムは止まらない。ゆるゆると、確実にそちらへと歩を進める。


イワンコ「行くしかなさそうだよ」

ミミッキュ「みたいね。仕方ない。アイテム調達の手段もないし、このままじゃ飢え死にだもん」


僕たちは、そのダンジョンに足を踏み入れた。
 ▼ 284 1◆J44kAZeDOM 17/04/06 20:12:01 ID:mM/kAz2c [7/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
名前もわからないそのダンジョンの中、僕たちは先に進んで行く。

充満する臭いはウルトラビーストたちの臭いを打ち消す。

だから、僕の嗅覚で探索する事はできない。

しかも、ウルトラビーストがここに生息している事はほぼ間違いないのだ。

戦っても勝てない。わかっている。

逃げながら進むにも、場所がわからなければ限界がある。


ミミッキュ「でも、どうしよう……襲い掛かって来られたら、まず間違いなく壊滅だよ」

イワンコ「僕もミミッキュも勝てる見込みないし、コスモウムはこんな調子だし……」


迷いのない足取りのコスモウムは、どう進めば先に進めるかを熟知しているようだった。

けれど、戦えるとはとても思えない。

僕たちはその足取りを信じ、辺りを警戒しながら先に進んで行く。
 ▼ 285 1◆J44kAZeDOM 17/04/06 20:13:16 ID:mM/kAz2c [8/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミミッキュ「遅い……」

イワンコ「落ち着きなって」

ミミッキュ「……お腹空いたんだもん」


確かに、朝に食べたきりで、空腹になるのもわからなくはない。けれど、言わないで欲しかった。


イワンコ「自覚しちゃうと……辛いよ」

ミミッキュ「……どこに行き付くのかな」

コスモウム「……もう……すぐ……」


喋った。コスモウムが、喋った。


イワンコ「話せるの?」


何も語らない。必要以上の会話はしないようだ。


イワンコ「もうすぐだって」

ミミッキュ「みたいね。信じよう。コスモウム、隠し事はしても、嘘は吐かないよ」
 ▼ 286 1◆J44kAZeDOM 17/04/06 20:14:19 ID:mM/kAz2c [9/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
奇跡的に一度もウルトラビーストに出会う事なくダンジョンを攻略できた。

コスモウムが回避してくれたのか、コスモウムを避けているのか、もともとダンジョン部には生息していないのか。

とにかく、次もこう行けるとは限らない。

それと、空腹もどうにかしなければならない。

コスモウムが、何かを示した。

そこには、何か木の実のようなものがある。

コスモウムが浮き上がり、その木の実を2個、落とした。

時間のかかる動作にイライラさせられながら、僕はでもお礼を言い、それからミミッキュと見合わせる。


イワンコ「ごはん……なのかな」

ミミッキュ「あたしたちも食べられるのかわからないけど……もう我慢できないっ!」


一口ミミッキュが頬張る。
 ▼ 287 1◆J44kAZeDOM 17/04/06 20:15:12 ID:mM/kAz2c [10/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
表情が見えないが、味の程は果たして。


ミミッキュ「……びっみょー」

イワンコ「そう、なんだ」

ミミッキュ「でも、ちゃんとお腹には溜まる。栄養的には知らないけど、急場はしのげそう」

イワンコ「だね。食べるか……」


さくり。歯ざわりは悪くない。

けれど、味がしないのだ。微妙というより、気持ち悪い。

別にマズイ訳ではないのだ。ただただ違和感にむず痒くなるだけ。

コスモウムはいらないのかと思い聞いてみるが、反応がない。いらないのだろうとみなして、お腹の中に押し込んだ。

奇妙な沈黙が3匹の間に降りる。

コスモウムが、またふわふわと、先へ進み始めた。

僕とミミッキュはため息を吐いて、それに従う。
 ▼ 288 1◆J44kAZeDOM 17/04/06 20:16:07 ID:mM/kAz2c [11/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


チラーミィ「え、脱獄?」

ジバコイル「キエテシマッタンデス。アトカタモナク」

ニューラ「……バクガメスさんの面会に来たんです。もしかしたら、何か知ってるかもしれない」

ジバコイル「ワタシモツキソイマス」

チラーミィ「はい」


イワンコ、ミミッキュ、コスモッグの3匹が脱獄した。

面会に来た所、そんな事を聞かされた。

普通はそんな状態で面会なんて許されないだろう。しかし、ジバコイルは僕たちを通した。

付き添いと言う名の監視の下ではあるけれど、話す事が許されるのだ。

バクガメスとジバコイルの交流があってこその技なのだろう。
 ▼ 289 1◆J44kAZeDOM 17/04/06 20:17:03 ID:mM/kAz2c [12/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
チラーミィ「バクガメスさん、来ましたよ」

ニューラ「何ですか、要件って」


4匹全員が、向こうにいる。

サニーゴとヒドイデは、何も聞かされていないのだろうか、不安そうな顔をしている。

ラランテスとバクガメスは対照的に、どこか落ち着いていた。


バクガメス「ああ。よく来てくれた。これから俺は、俺の仮説を披露する。

      俺の言葉が確実に届けられるのはここだからな。だからワザと逮捕された」

チラーミィ「言葉を、確実に届ける……」

バクガメス「成立の事情は説明したよな。実は、あれは正確ではない。

      事を起こしさえすれば、あった事を白日の下に曝せる。

      そのための、盗賊なんだ」

ニューラ「へ?」

サニーゴ「それ、どういう事ですか……」
 ▼ 290 1◆J44kAZeDOM 17/04/06 20:17:58 ID:mM/kAz2c [13/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ラランテス「まあ、つまるところ、捕まって、その事情を説明するのがバクガメスの目的なんだよ。

      今までに、そうやってフラワーズから消えて行ったポケモンが数多くいる。

      力を付けたら、自首して、それから起こっていた事を警察に伝える。

      んで、それを解決するってのが、こいつらの目的。

      ジバコイルとバクガメスはくっついてるから、そんな荒業が可能なんだ」

ジバコイル「ユチャクトイワレルト、ソレマデダガナ……。ジジョウヲカンアンシ、ケイヲヨワメテキタ」

バクガメス「社会復帰も容易だ。どんな事をしでかそうと、罪を償い、改心さえしていれば受け入れられる。

      やってしまった事は変わらない。変わらなくても、乗り越える事ならできる」

ヒドイデ「……それが、フラワーズの、本当の狙い、か」

バクガメス「要するに、だ。

      俺の言葉を確実に伝えられるのは、やはりここ。俺の主張を公的に示すには、一度捕まる必要があったんだ。

      盗賊活動と事情の説明は、切っても切れないからな」


バクガメスは、そこでふっと一息吐き出し、それから僕たちを見据えた。


バクガメス「お前らに、聞いて欲しい。イワンコと関わりを持ち、ウルトラビーストに関して詮索を始めてる、お前らにな」
 ▼ 291 1◆J44kAZeDOM 17/04/06 20:18:57 ID:mM/kAz2c [14/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


イワンコ「ぬ、抜けたぁ」


何匹か出会ったが、必死に逃げて先に進む。

コスモウムは相変わらずののろのろだったが、それでも無事に辿り着いた。

ミミッキュは、何かを考え込むように言った。


ミミッキュ「ねえ、イワンコ。あたしがなんで盗賊団にいるのか、言ったっけ」

イワンコ「え? あ、いや記憶にないな」

ミミッキュ「……そっか。ならいいや」

イワンコ「え、なんだよ気になるだろ」

ミミッキュ「なんでも。でも、なんでバクガメスさん、あたしとイワンコだけをコスモウムと同じ檻に入れたんだろ……」

イワンコ「あー、それはそうだ。まるで、僕たちに、この世界を見せたかったみたい……」


コスモウムがこちらに来ていた。

言葉は発しないが、僕たちの会話を聞いているらしい。
 ▼ 292 1◆J44kAZeDOM 17/04/06 20:19:54 ID:mM/kAz2c [15/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミミッキュ「……記憶の手掛かりが、ここにあるかも、か。イワンコ、どう?」

イワンコ「残念ながら、全くヒットなし。でも、ウツロイドの言葉を聞いた時から、少しずつ戻って来てる」

ミミッキュ「あたしは、少しずつ、わかって来たよ。――記憶にまつわる物語、全部」

イワンコ「え?」

ミミッキュ「まだ、自信はない。でも、ぼんやりと、全体像がつかめて来た」

イワンコ「はぁ」


僕は、ミミッキュを見詰める。

ミミッキュは、上半身を横に振り、それから言う。


ミミッキュ「とりあえず、ここで寝よう。仕方ない。休まないと」
 ▼ 293 1◆J44kAZeDOM 17/04/06 20:20:54 ID:mM/kAz2c [16/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
イワンコ「そうだね。うーん、固いなぁ、床」

ミミッキュ「贅沢を言わないの。ほら、休める時に休まないと、どうなるかわからないんだから」


コスモウムが激しい音を立てて地面に落ちた。

どうやら、眠っているらしい。

信じられない音だ。どれほどの重量を持っていれば、これ程の音が鳴るのか。絶句して、ミミッキュを見やる。

ミミッキュも、相変わらずの寝つきのよさを発揮し、もう眠っていた。

仕方ない、僕だけでも警戒していよう。

誰か1匹が見張りについていないと、1回の眠りが永遠の眠りになりかねない。

それにしても、ミミッキュはどうやって、僕の記憶を解き明かしたのだろうか。

この世界に来て、彼女の何が動き始めたのか。

ここから先、僕の思考は散らばり、気付けば僕まで、眠りの世界に落ちていた。
 ▼ 294 1◆J44kAZeDOM 17/04/06 20:23:24 ID:mM/kAz2c [17/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


バクガメス「ウルトラビーストの狙いは、狙いなんてたいそれたもんじゃねぇ。ただの偵察だ。

      ただ、偵察の結果、この世界のポケモンたちに価値ないと思ったら滅ぼしてしまうぐらいの事は可能な、危険極まりない物事のための偵察」

チラーミィ「え?」

バクガメス「執拗に目的を隠すが、友好的。コスモッグはおろか、他のウルトラビーストにも等しく言えた事実だ。

      まずは、ウルトラビーストの成り立ちから語ろうか。

      この世界には、複数の領域がある。それが、平行していくつも存在しているんだ。

      現実世界、反転世界。そして、創造神の領域。

      現実は時間と空間の2本の軸によって支えられている。

      しかし、その領域は一体、どこで区切られているのか、知ってるか?」

チラーミィ「……謎の大陸にある運命の塔。あそこの途中から、現実世界を超越した所に行き付けるはず」

バクガメス「この世で最も高い場所。そここそが、創造神の領域だ。上下に仕切られている事になるな。その狭間にはしかし、明確に仕切りが敷かれている。

      運命の塔の外を飛んで昇っても、そこには何もない。その中に、不思議な何かがあるんだ。

      まあ、そっちに関しては今はどうでもいい。問題は、反転世界だ。ギラティナが司る世界」
 ▼ 295 1◆J44kAZeDOM 17/04/06 20:24:07 ID:mM/kAz2c [18/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
チラーミィ「……世界の大穴。ギラティナはそこで守護神やってるはず」

バクガメス「ああ。だが、それは現実世界だ。反転世界ではない。それじゃあ、その仕切りはどこにあるのか。

      時間と空間が、反転世界の溢れるエネルギーを抑え込み、釣り合いが保たれている。

      そのせめぎ合う箇所。時間、空間から見捨てられ、反転世界にもなれないその狭間。

      そここそが、ウルトラビーストの領域、ウルトラスペース。ある者は「なぞのばしょ」と呼んだ領域だ」

ニューラ「……聞いた事もない」

バクガメス「だろうな。文献漁って、ようやっと辿り着いた情報だ。普通のポケモンなら知り得ない。

      ま、プクリンのギルドの情報通なら小耳に挟んだ事ぐらいならあるかもしれないが」


ペラップの事だ。小うるさい口調を思い出し、僕らは見合わせ、苦笑いを浮かべた。


バクガメス「そこもまあ、アルセウスの力で維持されていた……んだが、実はとある一件以降、この世界に本物のアルセウスはいない。

      いるのはただ、アルセウスが残した力の残骸だ」
 ▼ 296 1◆J44kAZeDOM 17/04/06 20:24:56 ID:mM/kAz2c [19/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
唐突にそんな事を言われ、僕は思わず問い返す。


バクガメス「ま、訳わからんわな。俺もだ。ただ、世界創生のためにこの世界から消え、過去に遡ったらしい」

ニューラ「へぇ……」

バクガメス「そしてだ。縦になってる三角形を思い浮かべてくれ」


△?


バクガメス「その上の頂点に、おもりをぶら下げろ。

      そうしたら、どうなる? 右と左の下に、その力がかかるだろ?。

      まあ、つまるところだ。時間と空間で反転世界を抑え込む他に、上からアルセウスがそのつり合いを保っていた。

      だからこそ、三角形の内側に、隙間ができる。そこに、ウルトラスペースが存在している」
 ▼ 297 1◆J44kAZeDOM 17/04/06 20:25:38 ID:mM/kAz2c [20/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
バクガメス「そして次に、縦の直線を考えろ。そして、左右から押せ。

      隙間、あるか?」

ニューラ「ない……アルセウスが消えた事で、ウルトラスペースは消失しつつある?」

バクガメス「さすがだ嬢ちゃん、呑み込みが早い。

      それが、いつもただ侵略するだけだったウルトラビーストが、今回に限ってこう焦らすかのように現れるのかの理由だと、俺は踏んだ」

ジバコイル「ソレデ、ウルトラビーストニハナニヲスレバイインダ?」

バクガメス「まあ待て。もう少しだ。サニーゴ、ヒドイデ。お前らも付いて来られてるか?」

ヒドイデ「なんとか大丈夫っす」

サニーゴ「私も、今の所は理解できています」

バクガメス「ならいい。続けるぞ」
 ▼ 298 1◆J44kAZeDOM 17/04/06 20:26:47 ID:mM/kAz2c [21/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
バクガメス「今までは、ただ余裕のスペースを作りたかっただけなんだ。だから、侵略なんて態度を取って来た。

      けれど、今度ばかりはそうも行かない。もし追い返されれば、それで終わりだからだ。

      今までだって追い返されてきた。主に、ミリスの街から通ずる、ソルガレオとルナアーラの力によって。

      コスモッグは、そいつらの、息子なんだ。太陽の獣、月の獣、交わり新たないのち呼ぶ。

      コスモッグは、その新たな命なんだ」

チラーミィ「彼を手に入れた事が、ウルトラビーストにとって、最後の光?」

バクガメス「そうなる。ウルトラスペースを閉ざす力を持ったソルガレオとルナアーラ。

      閉ざせるなら、開く事もできるのではないか。

      その推測の結果が、あれだ。脱獄。あいつには、2つの領域を繋ぐ力がある。

      ったく、あん時のガキが、そんな凄い奴だなんて思わねぇよ。

      つくづく、俺が拾うガキは、凄い奴ばっかりだ」
 ▼ 299 1◆J44kAZeDOM 17/04/06 20:27:47 ID:mM/kAz2c [22/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ラランテス「あたいの事かい?」

バクガメス「ああそうだ」

チラーミィ「……自由に開け閉めできるようになった。目的は、ただの偵察。なるほど」

ニューラ「共存できるかを、探っているんだ」


バクガメスが、ニヤリと笑った。


バクガメス「その通りだ」
 ▼ 300 りもの湖◆1kfBK4rWHM 17/04/06 20:27:47 ID:fLxsUFj2 NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 301 1◆J44kAZeDOM 17/04/06 20:28:56 ID:mM/kAz2c [23/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


気付いた時、目の前に真っ赤な生き物がいた。

彼は、腕立て伏せでもしているのだろうか。

そこまで考えて、はたと気付く。目の前に、ウルトラビーストがいるという事実に。


イワンコ「うわあっ?!」

???「おお、起きたか少年よ!」


真っ赤な、筋肉バカ(誰も見てないのに腕立て伏せしている時点でこう断定して構わないだろう。口には出さないけれど)。

間違いない。


イワンコ「ま、マッシブーン……」

???→マッシブーン「お、我の名前を知っておるのか! コスモウムと共にある者よ!」

イワンコ「ええ、まぁ」
 ▼ 302 1◆J44kAZeDOM 17/04/06 20:29:38 ID:mM/kAz2c [24/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
マッシブーン「ほう。ところで、お主らはどうやってこちらに来たのだ?」

イワンコ「コスモッグが、ひずみを作って、気付いたらいました」

マッシブーン「なるほど……。お主らは、向こうに戻らないといけないという事か」

イワンコ「はい。でも、どうやって?」

マッシブーン「コスモウムの力を取り戻さねばならぬ。そのために、こちらに来たのではないのか?」

イワンコ「あ、いや、こいつに導かれるように来ただけです」

マッシブーン「なるほど。コスモウムはやるべき事を把握しているようだな。

       我も同行しようぞ! コスモウムを運べるのは、ウルトラスペース広しといえど、我が一族ぐらいなものだからな!」

イワンコ「あ、ありがとうございます……」


あれよあれよという間に話がまとまってしまった。

こちらの世界に関して何も知らない僕に、口を挟める要素など初めから存在していないのだけれど。
 ▼ 303 1◆J44kAZeDOM 17/04/06 20:30:17 ID:mM/kAz2c [25/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミミッキュ「……イワンコ、おはよ。って、ええっ?! マッシブーン?!」

マッシブーン「我もそろそろ向こうへ行くべきかと思っていたの出な! 同行させてもらおう!」

ミミッキュ「えっと、その……ありがとうございます」


マッシブーンは、コスモウムを手に抱えた。

無感動なコスモウムの目が、微かに揺れたような気がする。浮かんでいるのは、呆れか、驚きか。


イワンコ「ちなみに、なんで1匹で残ってたんですか?」

マッシブーン「別に1匹ではないぞ? 他にもたくさんウルトラビーストは存在しておるからな!

       ただ、我は筋肉が足りぬような気がしたのみ! 満足行く筋肉が付いたから、行っても構わないと判断したのだ!」

ミミッキュ「は、はぁ……」


何はともあれ、4匹での行動は今までの2つのダンジョンより格段に速く進めた。

マッシブーンはコスモウムをダンベル代わりに使いながら歩いている。

呆れ顔で僕とミミッキュはそれを眺めていた。
 ▼ 304 1◆J44kAZeDOM 17/04/06 20:31:18 ID:mM/kAz2c [26/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
イワンコ「コスモウム、めちゃくちゃ重いよ。あれをあんな軽々と……」

ミミッキュ「ウルトラビーストこっわいね」


小声でそんな話をする。


マッシブーン「そろそろ着くぞ!」
 ▼ 305 1◆J44kAZeDOM 17/04/06 20:32:14 ID:mM/kAz2c [27/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
イワンコ「ところでコスモウムが戻るのに必要なんだとして、マッシブーンはどうやって遅れて向こうに行くつもりだったんですか?」

マッシブーン「ん? いや、不可能ではないのだ。ただ、過度に体力を消耗してしまうからな。

       我のように、力の強い者でなければひずみを生み出せないのだ。それでも、消耗は避けられない。

       我のみならともかく、お主らもいるとなるとさすがの我での力不足だからな」

ミミッキュ「コスモウムには、それだけの力があるって事か」

マッシブーン「2つの世界を繋ぐ存在だからな」

イワンコ「……コスモウム。帰れるか?」


コスモウムは、ゆっくりと頷いた。

そして、そのままじっと、何かを念じ始める。

何かが集まって来ているのを感じた。

辺りに充満した臭いが、強烈になって行く。

コスモウムの内側に向かって、強い風が吹き始めた。
 ▼ 306 1◆J44kAZeDOM 17/04/06 20:32:49 ID:mM/kAz2c [28/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミミッキュ「何これ……」

マッシブーン「彼は力を蓄えておるのだ! この場所は、彼のエネルギーとシナジーの高いエネルギーが充満しておるからな!」


コスモウムから、何かの光が放たれる。

それに呑み込まれ、僕たち4匹は、気付けば森の中、アジトのあった場所に立っていた。
 ▼ 307 1◆J44kAZeDOM 17/04/06 20:33:55 ID:mM/kAz2c [29/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
幕章

え?

あたしは、思わず問い返す。

いつものように紙に物語を書きなぐっていると、唐突に岩根君から言われたのだ。


「インタビューって、何?」

「いや、だから……観察だけじゃなくて、もっとしっかり知らないと、表現のしようがないから。もちろん、無理強いはしない」
 ▼ 308 1◆J44kAZeDOM 17/04/06 20:34:25 ID:mM/kAz2c [30/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
あたしの信じていた何かが、脆く、砕けた気がした。

あの暖かい感情は、なんだったのか。

岩根君は、あたしを、「いじめられている悲劇のヒロイン」として、型にはめてしか見ていなかったのか。


「ごめん、ちょっと……考えさせて」


言葉をなんとか絞り出す。なぜか、酷く喉が乾いた。

カラカラなまま、あたしはまた、紙に向かった。

けれど、その日は結局、1行も書けないまま終わった。
 ▼ 309 1◆J44kAZeDOM 17/04/06 20:35:07 ID:mM/kAz2c [31/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
家に辿り着き、どうしようもない吐き気に襲われ、あたしは、トイレに向かって、何度ももどした。

岩根君は、ただの取材で、あたしに近付いていた。

居場所なんて、初めからなかったのだ。

――あたしなんて、初めからいなかった。

そう思うと、もう、何もかも、どうでもよくなった。

そうだ。あたしは全部吐き出した、あたしは、空っぽ。空っぽだから、なんでも入れられる。

あたしは、虚ろ。中身なんて、何もない。

そうだ。そうなんだ。


「あは、アハハ、アハハハハハ!」


トイレの中で、あたしは一人、高らかに、笑った。
 ▼ 310 1◆J44kAZeDOM 17/04/06 20:36:25 ID:mM/kAz2c [32/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
あたしは、再びひずみの前に立つ。

そっと呼び掛けた。


「出て来ておいで、ウツロイド。あなたの事を、守ってあげる。

 あなたの好きなだけ、寄生させてあげる。だから、あたしに力をちょうだい」


もう、わかっていた。あたしは、完全に、寄生されている。

わかってはいるけれど、もはやそれは問題ではない。どのような末路を辿る事になっても構わない。

ウツロイド。あたしの力を、引き出して。空っぽなあたしを、お願い、満たして。

あなたの毒で、あたしを――
 ▼ 311 1◆J44kAZeDOM 17/04/06 20:37:06 ID:mM/kAz2c [33/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
翌日の事。

あたしはナイフを懐に潜ませ、学校に向かった。

これからしようとしている事は犯罪だ。それはわかっている。けれど、あたしはもう、止まらなかった。

授業中、すっくと立ちあがり、無視の主犯格の方へとまっすぐに歩き始める。

先生の制止の声も、あたしには響かなかった。


「何? 久瀬」


あたしは、ナイフを懐から取り出し、そのまま彼女ののどを一突きした。


「が……は……」


彼女は、血を吐いて、倒れる。

悲鳴があがった。あたしはナイフを引き抜く。彼女ののどから血が吹き出した。

頬にかかる血。彼女のうめき声。

あたしが、これをやった。そう思うと、何かのタガが、外れた。
 ▼ 312 1◆J44kAZeDOM 17/04/06 20:37:48 ID:mM/kAz2c [34/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
それからの事は、よく覚えていない。

気付けば、クラスには、いじめに関わったクラスメイトの死体と、それから岩根君だけが残されていた。

先生や、いじめに関与していない生徒は逃げ出して、助けを呼びに行ったのか。

あたしは、竦む岩根君に、声を掛ける。


――ねえ、岩根君。

――――誰かと本気でつながりたいって思った事、ある?


岩根君は、あたしに怯えていた。

――あたしは、空っぽ。何もできないから、せめて満たしてくれる存在が欲しかった。

彼の腹部から、滴る血。

――あなたは、そうだと信じてたのに。結局、裏切るんだ。


「久瀬……お前……」

「岩根君」


そして、彼は崩れ落ちた。
 ▼ 313 1◆J44kAZeDOM 17/04/06 20:38:22 ID:mM/kAz2c [35/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
あたしはそれを抱き上げると、ウツロイドを呼んだ。

ひずみが現れ、あたしは、彼とともにその中へ飛び込んだ。


あたしの名前は、久瀬美々華。

この世界には、存在していない。

それならいっそ、人間の存在しない世界へ。

すべての記憶を失って。

あたしの名前も、あなたの記憶も失って――
 ▼ 314 りもの湖◆1kfBK4rWHM 17/04/06 21:54:03 ID:mHM36cbY NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 315 ミカラス@ピーピーリカバー 17/04/06 23:00:01 ID:fGozLbZM NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 316 1◆J44kAZeDOM 17/04/07 19:17:55 ID:RGqgKqVs [1/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告







8章 ミミッキュの激白






 ▼ 317 1◆J44kAZeDOM 17/04/07 19:18:26 ID:RGqgKqVs [2/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


バクガメス『ウルトラビーストを、だからもてなしてやるんだ。この世界は、共存に耐える。そんな世界だと教えるために』


その情報を携えて、僕らはジジーロンの家に向かった。

イワンコたちが戻って来た時、恐らくここが拠点になるだろう。

それに、まだ見ぬ協力者のジュナイパーも、ここでイワンコたちと情報を共有していたらしい。

情報を集めておくのは、だからここが最適だ。
 ▼ 318 1◆J44kAZeDOM 17/04/07 19:18:59 ID:RGqgKqVs [3/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ジジーロン「……なるほど。イワンコたちは、盗賊じゃったのか」

チラーミィ「……でも、悪いポケモンではなかった。お尋ね者だったとしても。それは、間違いない」

ジジーロン「そうじゃの。ワシも、孫を助けてもらったのじゃ」

チラーミィ「彼らは、脱獄しました。もしやって来たら、ここで匿ってやってください。もちろん、解決の暁には、何かしらのお礼をさせていただきます」

ジジーロン「お礼など構わんよ。長年生きて来たが、こんな刺激的な事件に巻き込まれる事など初めてなのじゃ。

      正直、童心を取り戻して、ワクワクしておるよ」

チラーミィ「いえ、さすがに甘えすぎだと思うので。そこらへんのけじめは付けたいから、受け取ってください」

ジジーロン「まあ、そういうのなら仕方ないの」

ニューラ「……本題に入ります。ジジーロンさん。ジュナイパーと、もし来たらイワンコたちに伝えてください」


ウルトラビーストを歓待する事で、世界の平和を保つ。

それが正解だ。

だから、リアライズは、アクジキングの空腹を満たすため、黄金のリンゴを調査団から貰って来る。

そちらで何ができるかわからないが、そちらの状況を見て、歓迎の準備だけをしておいてくれ。
 ▼ 319 1◆J44kAZeDOM 17/04/07 19:19:37 ID:RGqgKqVs [4/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
チラーミィ「覚えきれますか? なんなら、書き留めますけど」

ジジーロン「いや、任せてくれ。こう見えてワシ、記憶力には自信があるからの」

ニューラ「わかりました。行こ、チラーミィ」

チラーミィ「だね。の前に、ちょっと気合い入れよ。行くよ」

ニューラ「オーケイ」

チラーミィ「リア!」

ニューラ「ライズ!」

リアライズ「ゴー!!」


僕たちの掌が、打ち合わされて、音を奏でた。
 ▼ 320 1◆J44kAZeDOM 17/04/07 19:20:11 ID:RGqgKqVs [5/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


コスモウムはマッシブーンと共に、拘留所から4匹を助けたいと言いだし、顔が割れている僕たちは行けないからと2匹に別れを告げた。

それから、他に行くあてもなく、ジジーロンの家を目指す。


ミミッキュ「これで、本格的にお尋ね者だね。脱獄犯だもの」

イワンコ「だね。ほら、そろそろ着くよ」


辺りを見回しながら、僕はその家の扉を叩く。


イワンコ「すいませーん、ジジーロンいますか?」


ややあって、扉が開かれた。
 ▼ 321 1◆J44kAZeDOM 17/04/07 19:20:42 ID:RGqgKqVs [6/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ジジーロン「おお! イワンコに、ミミッキュ! 伝言を預かっておるぞ。そして、ジュナイパーもちょうど帰って来た所じゃ」

イワンコ「ホントですか?!」

ジジーロン「とりあえず、速く入った方がええ。指名手配犯じゃからな」

イワンコ「はい」


臭いで確かめる。確かに、ジジーロンの家の臭いと、ジュナイパーの臭いだけだ。

ジュナイパーがこのタイミングで警察に突き出すようなKYでなければ、安全と見ていいだろう。
 ▼ 322 1◆J44kAZeDOM 17/04/07 19:21:21 ID:RGqgKqVs [7/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
はたして、ジュナイパーは、少し言及しただけだった。


ジュナイパー「隠し事してるなとは思ったんだけど、盗賊だとはね。さすがに気付けなかったよ」

イワンコ「やっぱり、バレてましたよね、隠し事してる事は」

ジュナイパー「探偵を舐めないで欲しいな。で、まずは君たちから情報を聞かせてもらおう」

イワンコ「はい」


フェローチェとの戦いに関して全て隠さず語り、デンジュモクとの対決について語り、それからコスモッグについて語った。

ウルトラスペースで出会ったマッシブーンに関しても。要するに、ウルトラビーストにまつわるすべてを隠さずに伝えたのだ。

未だ、彼らの動機は把握できていない。けれど、充分に有益な情報だと思っていた。

が……。


ジュナイパー「……なるほど。それだけ?」
 ▼ 323 1◆J44kAZeDOM 17/04/07 19:21:53 ID:RGqgKqVs [8/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
イワンコ「え、ああ、まあ」

ジュナイパー「ジジーロンさん、リアライズの2匹から何か伝言預かってますよね?」

ジジーロン「おお、そうじゃそうじゃ。タイミングを見計らっておった所じゃ」


世界の平和を保つため、ウルトラビーストを歓待する。

共存に耐える世界だとアピールするため。

脳内でいろいろと繋がり、僕はあっと声をあげる。


ジュナイパー「……参ったな。僕の出番、完璧に奪われた。

       僕が掴んで来た情報も、だいたいその中に含まれる。旅に掛けた時間が長いからなあ、安楽椅子探偵には負ける。

       ただし、最高の協力を手に入れた」


なんでも、テッカグヤとカミツルギ、2匹のウルトラビーストが、既にサーカス団エクリプスと友好関係を築いていて、挙句の果てに協力してもらっているという。

エクリプスの中の旧友と再会し、ジュナイパーはエクリプスとウルトラビースト、事件の鍵を握る2つのグループから協力を取り付けたのだ。
 ▼ 324 1◆J44kAZeDOM 17/04/07 19:22:42 ID:RGqgKqVs [9/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミミッキュ「凄い……」

ジュナイパー「僕の手柄ではないけどね。アクジキングの空腹を満たすための黄金のリンゴ、か」

イワンコ「……僕たちも僕たちで、アクジキングを捜さないとですね」


僕の呟きに、ジュナイパーがフードを閉ざす。

何か、喋りかけてはいけないというような雰囲気を感じ、僕は息を呑んだ。

どうしたのだろう。


ミミッキュ「ねえ、イワンコ。……コスモウム、大丈夫なのかな」

イワンコ「え?」

ミミッキュ「コスモウム、ポケモンの事、嫌いになってたりしないよね」
 ▼ 325 1◆J44kAZeDOM 17/04/07 19:23:14 ID:RGqgKqVs [10/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
考えを巡らせる。留置所での慟哭。あの叫びに、どれほどの憎しみがこもっていたのか。

僕たちを逮捕するようなポケモンなんて、消してしまえ。そんな考えに至ったりしないか。

コスモウムは、素早さが遅い。1匹でキレられても、ポケモンが力を合わせれば抑えられるだろう。

けれど、それでいいはずもない。


イワンコ「大丈夫……だとは思うけど、わからない」

ジュナイパー「いや、君たちは、記憶を取り戻すのが先決だ」


不意にジュナイパーが言う。

驚いて振り返ると、ジュナイパーが僕らを見据えていた。
 ▼ 326 1◆J44kAZeDOM 17/04/07 19:23:58 ID:RGqgKqVs [11/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ジュナイパー「記憶の中に、何か大事な物事が隠れているかもしれない。

       ウルトラビーストに対しての、過剰な怯え。君のポケ生の中で、何があったのか」

イワンコ「記憶の中に……」

ジュナイパー「アクジキングは、僕が捜す。君たちは、ウツロイドを捜してくれ」

イワンコ「……コスモウムに関しても、心配です」

ジュナイパー「……ああ、さっきの話の中に出て来た、コスモッグの進化形か。

       ……心配って、何が?」


先程の懸念を彼に伝えた。

彼は、しばし考えを巡らせるようにうつむくと、それから言った。


ジュナイパー「仕方ない、僕がそっちに行くよ。きっと、アシレーヌたちが見付けてくれる。君たちはやっぱり、ウツロイドだ」

ミミッキュ「わかりました。他に何かありますか」
 ▼ 327 1◆J44kAZeDOM 17/04/07 21:49:55 ID:RGqgKqVs [12/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ジュナイパー「いや、これぐらいだ。君たちの拠点は……ここより、うちに来ないか? 妻のアママイコも伝達してくれるけど」

ジジーロン「いや、構わんよ。ワシも、何かしたいからの。ここまで知っておいて、何もできないのは辛いのじゃ」

ジュナイパー「そうですか。わかりました、ありがとうございます。

       よし、じゃあ行きましょう!」

みんな「おー!」
 ▼ 328 1◆J44kAZeDOM 17/04/07 21:51:09 ID:RGqgKqVs [13/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
という事で、僕らは再びアテのないウツロイド捜しに精を出す事になる。

あまり街中に出られないから、活動範囲も限定されてしまう。

それでも、捜すしかなかった。それが現状僕らに与えられた課題だから。


ミミッキュ「ねえ、イワンコ」


唐突に、彼女が口火を切る。


イワンコ「何?」

ミミッキュ「ウツロイドは、あたしが願えば、たぶん来る」

イワンコ「え、どうした急に」


しかし、それきりミミッキュは黙り込んでしまった。

訳がわからない。願えば、来る?
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