▼  |  全表示272   | << 前100 | 次100 >> |  履歴   |   スレを履歴ページに追加  | 個人設定 |   ▼   
                  スレ一覧                  
SS

【地の文有りSS】バンギラス「俺って、怖いか?」 グレイシア「怖いと思うわよ?」

 ▼ 1 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/04/30 18:47:13 ID:l70cZsRY NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
曇り空を、見上げる。

さっきからの数分で急に空は圧倒的な黒雲に支配されつつあった。

気分は――最悪だ。

俺は、バンギラス。

岩タイプを含む俺は水気になかなか敏感だ。

だから、これからすぐ雨が降る、なんて予測は体が勝手にしてくれる。

ぽつり、と前に伸ばしてあった手に水が一滴。

それらはコラッタ算式、いやそれ以上のスピードで、空間を支配する。

住居である洞窟から手を伸ばしていただけの俺は手より先が濡れることはなかった。

もともと、雨くらいなら濡れても体が重くなるだけなのだが。

ザアアアアァァァァ……、と雨が打ち付ける音は、他人事のようにBGM以上のものとして耳には入ってこない。

そんなものはどうでもいいくらい俺は憂鬱だった。
 ▼ 33 驢人魚 17/05/02 06:25:53 ID:actfwnUU NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 34 GW万歳!◆Ju6JKuHffQ 17/05/03 21:57:03 ID:7tvb2Ylo [1/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「……ぬあっ!?」

突如、鼻先に冷気が咲いた。

冷たさという膨大な量の信号が脳に送られ、洪水を起こす。

矢も盾もたまらず飛び起きた俺が見たのは……。

咲き誇る青薔薇だった。

鼻先に、薔薇をかたどった氷の像が完成していたのである。

犯人など考えるまでもない。

「……どういうつもりだ?」

「お腹が減ったわ」

「ハァ?」

俺の問いに返ってきたのは、全く関係ない自分の要望。

訳が分からない。
 ▼ 35 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/05/03 21:58:40 ID:7tvb2Ylo [2/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「だから、お腹が空いたの。きのみは甘いのがいいわ」

「……それと俺の鼻に氷の花が咲いているのとなんの関係がある」

「あら、ダジャレかしら。私の吹雪よりも寒いわ。面白くないからやめた方はいいわよ」

ダジャレじゃねえよ……とこのままツッコむと一向に話が進まなくなる気がしたので我慢した。

俺がため息をつくと、グレイシアは小馬鹿にしたような笑みを一転して不満げな表情に変えた。

「……だってあなた、呼んでも起きないんだもの」

「だからってこれはやり過ぎってもんだろう」

「それは最終手段だったの。あなたの尻尾を飾りつけしても起きなかった時のね」

言われて俺は尻尾を目の前に持ってきた。

寝る前に尻尾を包んでいた氷がさらに厚くなり、ハートだの星だのイラつくくらい模様で埋め尽くされていた。

「可愛いでしょう? 感謝してくれてもいいの」

「誰が感謝なんかするか。……この薔薇は正直上手だとは思ったがな」

鼻から氷を潰さないようにゆっくり取って、手の上で転がす。
 ▼ 36 シギバナ@あまいミツ 17/05/03 22:00:16 ID:YJyzWhfY NGネーム登録 NGID登録 報告
矢も盾もたまらないって言葉好き

支援
 ▼ 37 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/05/03 22:01:14 ID:7tvb2Ylo [3/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
途中でくっついたりすることもなく何重にも花弁が重なったそれは、一種の芸術だ。

「そう? ありがとう。それで、食べ物はまだかしら?」

なんという図々しさだろうか。

いや、言っていることはそうでもないのか。

それを引き止めたのは俺で、しかもグレイシアはきのみがどこにあるかなんて知りようもない上、そもそも動いていいのかすら分からないければ、必然的に俺が動かなくてはならない。

……と、理屈では分かっているのだが、もう少し言い方なんかをどうにかできないものなのか。

「……持ってきてやるよ。何が良い? 食えるのならだいたいは揃ってる」

「んー……そうね、焼いたマゴのみかしら」

「焼くのか?」

「そうだけれど? 甘みが増して美味しいの」

そんな話を聞いて、ふと疑問が浮かぶ。

「……なんで氷タイプなのに焼くと美味しい、なんて知ってるんだ?」
 ▼ 38 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/05/03 22:01:48 ID:7tvb2Ylo [4/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ピキッ、と。

グレイシアの表情がひび割れて固まった。

なんの前触れもなく場に沈黙が横たわる。

「「……………………」」

居づらい空気が肌を逆撫でる。

こういう時は……どう話せばいいのだろう。

あまり他のポケモンとの会話をしたことのない俺にはよく分からない。

「……聞いちゃダメだったか?」

「…………別に。兄弟にブースターがいただけよ」

と、口では言うものの、放つオーラは変化しない。

「…………まぁ、なんでもいい。マゴのみだな?」

「……えぇ」

結局、俺はきのみを取りに行くことを口実に洞窟の奥へ逃げることしか出来なかった。
 ▼ 39 驢人魚 17/05/04 08:14:57 ID:opBSC46I NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 40 コン@はかせのてがみ 17/05/04 10:36:28 ID:/i.7IiKU NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 41 ーランス@タウンマップ 17/05/04 10:54:37 ID:16RCgMtw NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援ネ
 ▼ 42 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/05/04 23:00:52 ID:Busy8ck6 [1/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
洞窟の奥まで行くとまず木に炎を付けて、光源を確保した。

暗闇から浮かび上がったその光景を見て、俺は唖然とした。

丁寧に凍らせてあったはずのきのみが、辺り一面に散らばっていたのだ。

一瞬、ディグダあたりがここを掘り当ててしまったのか、なんて考えて気づいた。

犯人は俺だった。

そういえば、焦ってふっかつそうを探したあとロクに片付けもせず洞窟を出てしまったのだった。

「…………」

割りつつ探したため氷はバラバラな上ほとんど溶けている。

まずは片付けからやらなければならないようだ。

今から食べる分のマゴのみとマトマのみを横に置いておき、残りのきのみをかき集める。

ただそれだけ……なのだが、基本的にきのみは俺の手よりもずっと小さい上、俺の力が強すぎるのか迂闊にずさんな扱いをすると潰れてしまうため、とても面倒臭い。

ただただこんな作業をしていると、やはり無心にというわけにもいかず。

自然と考えてしまうのはさっきのグレイシアの態度だった。
 ▼ 43 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/05/04 23:01:05 ID:Busy8ck6 [2/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
本当にただ兄弟がいただけなら、あんな苦虫を噛み潰したようなような顔をするだろうか。

最初に怪我していたことといい、謎が多い。

別に話したくないなら無理に聞こうとは思わないが、どうも少し気になった。

「…………あっ」

手元でプチっと音がした。

見れば、手が真っ青に染まっていた。

手の下には潰れたブリーのみが地面にくっついている。

「……もったいねぇ」

下手に考え事の方に没入してしまったせいで、手の方がおろそかになってしまったらしい。

自分が悪いのだから仕方がない、とすっぱり諦めて、他のきのみを前に作った山へと重ねる。

――プチっ。

手のひらを確認すると、さっき付着した青に加えて緑色の果汁が合わさって、なんとも気持ち悪い色遣いになっていた。
 ▼ 44 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/05/04 23:01:38 ID:Busy8ck6 [3/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
今度は、リンドのみだ。

「……ごめんな」

食べもせずに潰してしまったのが申し訳なくて、俺は口の中で呟いた。

きのみはきのみであって、そこに意思なんて存在しない。

だからこんなことを思う必要もないのだが、なんというか、気分的な問題だ。

「何を独りで呟いているの?」

後ろから、風鈴のように涼やかな声が聞こえてくる。

グレイシアが、寝る前に比べるとしっかりした足取りでこちらに向かって来ていた。

「……! ……動いて大丈夫なのか?」

「少し痛むけれど、別に大丈夫よ」

「……ならいいが」
 ▼ 45 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/05/04 23:02:03 ID:Busy8ck6 [4/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
グレイシアから目を離し、俺はきのみを集める作業を再開した。

その様子をグレイシアは壁に寄りかかって見ているだけ。

「散らかってるわね」

「……あぁ。悪かったな」

「そっちの氷は、なに?」

「腐らないように冷凍保存してるわけだが」

すると、視界の端に映るグレイシアの眉間に少しシワが寄った。

「あなた、冷凍ビームでも覚えているの?」

一瞬俺の体が震えた。

「……そうだ」

冷凍ビームは、確かに便利な技だ。

重宝はしている。

だが、その理由についてはあまり思い出したくはなかった。
 ▼ 46 驢人魚 17/05/05 19:52:19 ID:DAcyba56 [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 47 トデマン@ミストシード 17/05/05 21:49:39 ID:pQ936Y3A [1/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「……そう」

――プチっ。

また一つ潰してしまった。

モモンのみが潰れて、ピンクの汁が少しだけ手についている。

今日は、調子がおかしい。

「はぁ……」

ふふっ、と可愛らしく笑う声がした。

「……何がおかしい」

「ごめんなさい、嘲笑ってはいないわ……ふふふっ……」

弁解するグレイシアだったが、口の端は吊り上がり、笑い声が漏れていた。

「…………」

「あなた、不器用ね」

「俺が一番知ってる」
 ▼ 48 47僕です◆Ju6JKuHffQ 17/05/05 21:50:29 ID:pQ936Y3A [2/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
少しふてくされたような声が出た。

グレイシアは更にくすくすと笑う。

「私も手伝うわよ?」

「……頼む」

正直きのみが潰れるのに疲れてきたところなので、助かった。

ぽいぽい、ときのみがどんどん重なっていく。

慎重にやらなければいけなかった俺に比べて、とても早い。

瞬く間に片付けは終わってしまった。

「後は凍らせるだけね?」

「あぁ。ありがとう、助かった。…………っつ!」

きのみの山を凍らせようと冷凍ビームを構えていると、急に俺の足元が凍りついた。

もちろん俺のが暴発したわけではない。

「何をするんだ……」
 ▼ 49 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/05/05 21:52:20 ID:pQ936Y3A [3/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「凍らせるなら私がやるに決まってるじゃない。私、氷タイプよ?」

足を凍らされたのが少し癪に触ったが、凍らせるなら氷タイプがいいのも事実。

ここは素直に頼んだ方がいいだろう。

「……分かった。これも頼む」

邪魔にならないように俺が後ろへ移動すると、グレイシアはすぐに冷気を形成した。

冷たい空気を当てられて、山は氷の中に閉じ込められていく。

これも、俺がやるよりずっと早かった。

「これでどう……きゃっ!?」

いきなり、視界がブラックアウトした。

「大丈夫か!?」

「えぇ。……ごめんなさいね」

どうやらグレイシアの冷気が炎にまで及んで、火が消えてしまったようだ。

暗闇の中、俺は冷静に指示を出した。
 ▼ 50 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/05/05 21:52:46 ID:pQ936Y3A [4/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「一旦少し炎出す。それで俺の場所を確認して俺の下に避難してくれ」

「わ、分かったわ」

息を大きく吸い込み、出力最低で炎を空中に繰り出す。

目の前がボッ、と赤い光に埋め尽くされる。

目だけを移動させてグレイシアが移動したのを確認してから、俺は火が消えてしまった木へもう一度炎を放った。

ボッ、と音を立てて火が燃え移ると、辺りを照らすオレンジ色の光が復活する。

「……私もあまり器用ではないみたいね」

「いや、助かった。冷凍ビーム撃つと消耗するしな」

「……そう。なら、そこの食べる分の木の実を持って早く戻りましょう」

言うが早いが、マゴのみ二つを咥えてさっさとでていこうとするグレイシア。

しかし、その足が少し震えているのに俺は気づいてしまった。

「……悪いな」
 ▼ 51 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/05/05 21:53:08 ID:pQ936Y3A [5/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「何がよ」

多分自分でも分かっているだろうに、誤魔化で発せられた問いを無視して俺は氷の一部を叩き割る。

キンっ! と鋭い音が空気を切り裂いた。

「な、何をしているの!?」

グレイシアからしてみればせっかく自分の作った氷を悪とは何事か、と思っているのだろうが。

俺はマトマのみを持っていない方の手で氷から出てきたきのみを持ち、グレイシアに見せた。

揺らめく炎に照らされるグレイシアの顔が、隠そうともせず露骨に嫌そうなものになった。

「…………ぅぇ」

「オボンのみは体力回復にいいだろう」

「でも……あの、味がいっぱい混ざっていてよく分からない味は好きになれないわ……」

余程食べたくないのか、嫌な思い出を頭から追い出すようにいやいやと首を振るグレイシア。
 ▼ 52 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/05/05 21:53:28 ID:pQ936Y3A [6/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「体にいいものは美味しくないもんだろ」

「嫌いなものは嫌いなの。それより、早くそれを元に戻して凍らせなくちゃいけないでしょう?」

「……そうだな。…………って、戻しちゃダメだろう」

一瞬乗せられて戻しかけてしまった。

慌てて手を引き戻す。

「……本当に食べなくてはダメかしら」

なんとなく疲れてきたので会話に応じるのをやめ、俺はさっさと冷凍ビームで氷を元に戻した。

「…………まあ、いいわ。…………はぁ……」

あからさまに機嫌が悪いオーラを撒き散らすグレイシアを再び無視し、俺は洞窟奥を去った。
 ▼ 53 驢人魚 17/05/05 21:58:48 ID:DAcyba56 [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 54 ィナ 17/05/05 22:31:17 ID:wH.wI.WY NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
超支援
 ▼ 55 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/05/06 21:00:16 ID:e.vCV3A. [1/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ただただ暗かった洞窟の先に、光が灯った。

それはどんどん大きくなって――

なんて、描写してはみるが結局気分はいつも過ごしている時と変わらなかった。

変わっているのは小さな足音が俺の足音の2倍して、足音の合計がいつもの3倍になっていることくらいだ。

お互いに特に喋ることもないので、こんな状況。

居辛さはバッチリ感じるのだが、怒りオーラに話しかけて更に怒りを増長させないような会話スキルが俺にあるわけでもない。

結局足音以外の音を聞かないまま、洞窟の入り口へとたどり着いた。

二人して座り込むと、淡いピンクのきのみが二つ、こちらへ飛んできた。

「じゃ、よろしくお願いするわ」

それだけ伝えて、グレイシアは自分の足の毛づくろいをし始めた。

声音に特に怒っているような色はない。

いつのまにか近づき難ったオーラも消えていて、グレイシアの表情からもあまり怒っていたことを気にしている様子はなかった。

過度に気にしていた自分がバカみたいだ。
 ▼ 56 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/05/06 21:00:58 ID:e.vCV3A. [2/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
気を取り直して、俺はグレイシアに背を向け、マゴのみを前に置く。

口に炎を生成し、出力を絞ってマゴのみを炎で炙る。

香ばしいような、甘いような、そんな気分の良くなる香りが洞窟に充満した。

数秒して表面に程よく焼き目がついたところで炎を引っ込め、俺はグレイシアの前に焼けた実を置いてやった。

「これでいいか?」

「えぇ! ……い、意外と上手じゃない」

美味しそうな香りにグレイシアは一瞬子供のように無邪気なリアクションを見せた。

しかし、その無邪気さが恥ずかしかったのだろうか。

取り繕うようにそっぽを向き、上ずり気味の声で付け足した。

「…………その前に」

座り込んでマトマのみを手から解放した俺は、もう一方の手をグレイシア目の前で開く。

「……うぅ……」

笑みを抑えきれていなかった嬉しそうな表情が、一瞬で苦いものに変わる。
 ▼ 57 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/05/06 21:01:27 ID:e.vCV3A. [3/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「……なんでこんなもの食べないといけないのよ……」

「お前、まだ体力回復してないだろう」

「……確かに、そうね」

グレイシアはオボンのみを睨み、そんな様子を俺が眺める。

しばらくして、グレイシアの目線がオボンのみからこちらに移動した。

「……なんで、ここまで私に構ってくれるのよ」

ギクっ、と悪事を暴かれかけた悪人のような反応が勝手に出た。

「…………」

「…………」

アクアマリンのような透明感のある瞳が、まっすぐこちらを見つめる。

「……途中まで看てやったんなら最後までやり通したいだけだ。なんか文句あるか」

「……そう。なら、従っておかないと失礼かしら」

渋々、といった調子でグレイシアはオボンのみをかじり始めた。
 ▼ 58 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/05/06 21:05:27 ID:e.vCV3A. [4/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
相変わらず目線を動かさずグレイシアの様子を眺める俺の心には濃くもやがかかっていた。

理由は、今グレイシアにした説明くらいしかないだろう。

とっさに思いついたことを言ってその場はやり過ごせたが、どうもその理論は心の中でしっくりこないのだった。

しかし、別の理由は、と言われると全く覚えがない。

……というか、理由なんかないような気さえするのだ。

「………………………………」

「……ねぇ、食べないの?」

「ん? あ、あぁ……」

グレイシアに言われて俺ははっと我に返った。

どうやら、ずるずると思考の沼にはまってしまっていたようだ。

一旦思考を強制的に断ち切って、足元に置いておいたマトマのみを2つ同時に口へ放り込む。
 ▼ 59 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/05/06 21:06:00 ID:e.vCV3A. [5/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
噛んだ瞬間、スパイシーな香りが口を抜けて鼻腔を刺激する。

次いで口いっぱいに広がる辛味。口から火を吹くんじゃないかと思うほど、口内が熱くなる。

この、途方も無い辛さが俺は好きなのだ。

口の端の痛みをこらえて、3つ目のマトマのみを口に入れる。

「よくそんなにマトマのみをぽいぽい食べれるわね……」

「あ? あー、好きなんだからいいだろ」

「熱いものと辛いものは好きじゃないわ……」

見れば、グレイシアは焼けたばかりでまだ熱いマゴのみを必死に冷気で冷ましている最中なのだった。

「……そうか。味覚はそれぞれだからな」

それからは、しばらく咀嚼音のみが響く無言の時間が続いた。

正直居づらい空気ではあるのだが、話題がないので打開しようもない。
 ▼ 60 驢人魚 17/05/07 05:50:03 ID:ZtyP4Zwk NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 61 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/05/07 20:23:14 ID:oV4iKWXw [1/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
最後のマトマのみを飲みくだし、ちょうど完食したその時。

さっきまでザァァァ……、と絶え間なく音を立てていた雨が急激にその音を減らした。

ヒヤップをひっくり返して絞ったような雨が、アメタマの水遊び程度の小雨に変化したのだ。

突然の変貌に驚いて俺が外の様子を見ていると、グレイシアもその目線を追って外を見た。

「あ……止んできたわね」

「そう、だな」

空模様は小雨になるだけにとどまらず、ついには止んだ。

空を覆っていた雲が撤退していくと、空の裂け目から部分的に地上にも日光が注ぐ。

それはちょうど洞窟の入り口も通って俺たちの反対側の壁を焼いた。
 ▼ 62 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/05/07 20:23:51 ID:oV4iKWXw [2/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

「……あっ、虹が出てるわよ!」

グレイシアが嬉しそうな声音で伝えてくる。

グレイシアの目線を追っていくと、そこには。

紺に染まりつつある空に、鮮やかな七色のアーチがかかっていた。

分かれ際も含めてくっきりと色が出ていて、鳥ポケモンでなくとも上を歩けそうなほどだ。

「……ここまで綺麗なのは、珍しいな」

「えぇ。私も見たことがないわ」

しばらく、また沈黙の時間が発生する。

しかし、今回は居辛さなんて全く感じなかった。

思わず、二人して見入ってしまったからだ。

沈黙は、日が沈んで虹が消えるまで続いた。
 ▼ 63 こからは◆Ju6JKuHffQ 17/05/07 20:24:27 ID:oV4iKWXw [3/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「…………」

「…………」

虹があった部分を二度、三度見て、2次を探す。

やはり、もう無かった。

淡い喪失感になんとなく体がだるくなって、俺は壁に寄りかかった。

ズン……と鈍い音が洞窟に響く。

「あなた、いつもは夜何をしているの?」

「ん? もう寝るが」

俺としては至極当たり前のことを答えたつもりだった。

しかし、グレイシアは驚愕したような表情を作る。

「……早いわね。もう少し活動しないの?」

「活動って言ったってすることもないだろう。暗い中何をするって言うんだ?」
 ▼ 64 末更新に◆Ju6JKuHffQ 17/05/07 20:24:56 ID:oV4iKWXw [4/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「散歩、とかだけれど?」

「……散歩?」

「えぇ。夜風が気持ちいいのよ」

「夜に出歩いたことなんてない俺には分からんな……」

会話も程々に、寝ようと寝転ぶ。

――すると、尻尾に冷たい吐息を当てられた。

「冷てっ!? 何するんだよ」

「散歩、行きましょ」

グレイシアを睨み付けるも、鋭い眼光で睨み返されて俺が一歩引く羽目に。

「……なんで夜に出歩かなきゃいけねえんだよ」

「メスポケモン、しかも怪我してるのに一人で歩かせるつもり?」
 ▼ 65 ります◆Ju6JKuHffQ 17/05/07 20:25:27 ID:oV4iKWXw [5/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
なんとも嫌な聞き方だ。

俺としては暗い中出歩くのはあまり好きではないのだが、かといって一人で歩かせるのは気が引ける、八方塞がり。

「行かないって選択肢はないのか」

「ないわね」

最後の希望もバッサリ切られ、俺は渋々立ち上がる。

「はぁ……行ってやるよ」

「あら、優しいのね」

せっかく行ってやると言ったのに飛んできたのは単なる皮肉。

せめてありがとうくらい言えないのか。

まぁ、無駄なトラブルになるのもなんだ。黙っておこう。

前をさっさか歩いていくグレイシアを、俺はゆっくりと追いかけた。
 ▼ 66 驢人魚 17/05/08 19:53:43 ID:Zwrzg1EE NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
しえん
 ▼ 68 シャーモ@ジメンZ 17/05/10 07:01:14 ID:hRFZl8mo NGネーム登録 NGID登録 報告
僕も某ポケモンカップリングSSを書いてます!

支援します、頑張って下さい( •̀ω•́ )و
 ▼ 69 ミカラス@きちょうなホネ 17/05/10 08:24:13 ID:2bUT62bA NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 70 ーフィア@ふといホネ 17/05/10 08:50:44 ID:Vw06RTUg NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 71 末ですね◆Ju6JKuHffQ 17/05/13 20:48:41 ID:Vkem5p4I [1/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ただひたすら、歩くだけ。

何をするでもなく、風に揺れる木々や台風一過の澄み切った星空を眺めるのだ。

最初の方はそれなりに新鮮だったが、だんだんと飽きてきた俺の目線はだんだん下がっていき、俺の斜め横を俺の半分以下の高さで歩くグレイシアだった。

まだ治りきっていない生傷が痛々しい背中を上から眺めていて、ふとまだ聞いていないことを思い出す。

「……なぁ、聞いても良いか?」

「なにかしら?」

尋ねるとグレイシアは律儀に立ち止まって俺が横に並ぶのを待ってくれた。

「お前は、俺のこと怖いと思わないのか?」

くすりと笑う声がした。

「いちいちあなたくらいで怖がってなんかいられないわよ。さっきからヤミカラスやらコラッタやらがあなたを見て逃げ出していくのには気づいたけれど、私はそんな臆病ではないわ」

「……そうか」

不思議な気分だった。

何をどう言えばいいのかは分からないが、少なくとも悪い気分では断じてない。
 ▼ 72 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/05/13 20:49:00 ID:Vkem5p4I [2/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
少しスッキリしたような心持ちで特に見るところもなく遠くの空を見ていると、下から声がした。

「そんなことより、私も気になってたことがあるのよ」

「ん? なんだ」

相変わらず目線は前に固定したまま、グレイシアは俺に聞いた。

「あなたの周りには砂嵐、吹いてないのね」

「はぁ? 砂嵐?」

いきなり、訳の分からない単語が出てきた。

「そうよ。てっきりバンギラス一族はみんな周りに砂嵐吹かせてると思ってたのに、あなたはそれがないのよ」

「……なんだそれは。少なくとも俺は砂嵐がどんなのか知らないんだが」

「私もあんまりよくは分かっていないのだけれど。あれ、痛いのよね」

正直あまりよく分からなかったが、俺は何かが珍しいのだろうか。

「知らんが、そりゃ俺でラッキーだったな」

「ほんとね。砂嵐の中には流石にいられないもの」
 ▼ 73 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/05/13 20:49:36 ID:Vkem5p4I [3/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ふともう一度空を見上げると、既に月がそれなりに高い位置まで昇っていた。

円に近い形をした物体は、周りに星々を従えて夜空を優しく照らしている。

「あら、そろそろ戻ったほうがいいのかしら」

「そうだな。ウロついてるゴースに構われないうちに戻ったほうがいい」

「あなたがいればゴースも構って来ないんじゃないかしら?」

軽口を叩きながらグレイシアはくるりとターンをし――

――そびれ、足をもつれさせて転んでしまった。

「大丈夫か!?」

「っ……ぅ……そんなに声出して、心配しなくても、大丈夫よ」

口ではそういうものの、立ち上がろうとする四肢は小刻みに震えていた。

表情も、かなり苦しげで、とても大丈夫には見えない。

さっきからずっと表情を俺に見せないようにしていたのは、これを悟られないようにするためなのだろうか。
 ▼ 74 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/05/13 20:50:08 ID:Vkem5p4I [4/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「傷、痛むんだろ?」

「っ……痛いは、痛いのだけれど…………べ、別に、動けないほどではないわ……」

遂にグレイシアは立たずにその場に座り込んでしまった。

「……やっぱり大丈夫じゃないじゃねえか」

「少し、休むだけよ……」

グレイシアの表情は険しさを増し、息も荒い。

「…………これじゃ帰れねえだろうが」

はぁ、と一つため息をついて、俺は膝をついてしゃがみこんだ。

ズズン……と重そうな音が地面を這う。

そのまま腕を地面にぴったりとつける。

「……乗れ」

「……え?」
 ▼ 75 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/05/13 20:50:34 ID:Vkem5p4I [5/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
束の間苦しい表情すらも消え失せて、グレイシアが不思議そうな表情でこちらを見上げる。

せっかく腕を出してやってるというのに一向に動きを見せないグレイシアを俺は急かした。

「早くしろ。俺ももう帰りてえんだ」

「……でも」

グレイシアは目線を右往左往させて頑なに拒む。

そんなに他のポケモンに頼るのが嫌なのか。

もしくは、俺が嫌われているだけなのか。

「……別に俺なんかに運んでもらいたくないっていうなら良い。待ってやる」

「いえ、それこそ迷惑だし。…………じゃあ、お願いするわ」

やっとグレイシアが俺の腕の上に体を乗せた。

「あぁ……。少し揺れるが、勘弁してくれ」

きのみを片付ける時よりもずっと慎重に、なるべく傷を刺激しないように俺は腕を持ち上げた。
 ▼ 76 イナン@ちからのねっこ 17/05/14 08:44:34 ID:re5JNzrc NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 77 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/05/14 21:11:30 ID:meHyxN42 [1/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
◇ ◇ ◇

高い。

いつもの2倍以上の高さから見る景色は、いつもよりもほんの少しだけ遠くまで見渡せた。

横に向けていた顔を、正面に戻す。

真下から見るバンギラスの顔は斜め下から見上げた時よりも線がなめらかな気がした。

「………………」

……はっ、と自分が呆けたようにバンギラスを見ていたことに気づいた。

「……どうした?」

少し身じろぎしたのが伝わってしまったのか、バンギラスがこちらを見た。

目がもろに合ってしまって、私は慌てて目を横の星空へずらす。

……冷静に考えれば、別に視線をずらす必要なんてなかったのに。

ずん、ずん、と規則的に重低音が揺れとなって地面を伝う音がこちらにも聞こえる。

しかし、その割には伝ってくるのは音だけで、振動なんて一切感じない。

普通は歩いていれば振動くらいあるだろうし、本人も揺れるぞと言っていたから、傷に少し響くのは覚悟していたのに。
 ▼ 78 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/05/14 21:11:52 ID:meHyxN42 [2/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
スピードからして、ゆっくり歩いているのはすぐに分かった。

それに、私の体を持っているバンギラスの手は傷に触れないように、しかし私が力を抜いていても落ちそうにはならない絶妙な位置を保っている。

おかげで私が疲れることもない。

そんなことを考えながら、私がまたバンギラスを下から眺めていると。

「……さっきから、どうした。俺を見ても楽しくはないと思うぞ」

視線に気づかれてしまった。

慌てて視線をそらし、体を少し丸め、バンギラスの方を向く。

「……い、いえ、なんでもないの」

「なんでも良いが、せっかくお前が行きたいって言ったんだ。景色見とけ」

「あ……え、えぇ」

なんて言いつつも、私は丸まったまま景色は見なかった。

なんというか、こうやってバンギラスの方を向いていると落ち着いていられるのだ。

自分でも意味が分からないが、全身の力を抜くことができた。

そうなると、次第にまぶたが下がってきて。

いつの間にか私は、眠りについていた。
 ▼ 79 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/05/14 21:12:54 ID:meHyxN42 [3/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
◇ ◇ ◇

揺らさないようにと全身に力を込めながら慎重に歩くことそれなり長い時間。

やっと寝ぐらの洞窟へ到着した。

「……寝てんじゃねえか」

いつの間に寝ていたんだろうか、気づけなかった。

ゆっくり、ゆっくりと地面に横たえる。

うつ伏せか仰向けかで一瞬迷ったが、仰向けにしたら背中の傷が痛いだろうとうつ伏せを選んだ。

やっと腰を下ろそうとする俺だったが、ふと思い至って再度立ち上がる。

洞窟から少し外に出てたところの草むらを掻き分けると、そこには、一際大きな葉っぱが月明かりに照らされて輝いていた。

そのうちの何枚かを摘んで、洞窟に戻り、グレイシアにかける。

その行動には、理由なんてなかった。

別に要らないとは分かっているし、なんでこんなことをしているのか分からないが、なんとなくそうしたほうがいい気がしただけ。

多分、自己満足に過ぎないのだろう。

「……さて、やっと寝れるか」

全身にのしかかってくる疲れを抵抗せず受け入れ、俺は壁に寄りかかって目を閉じた。
 ▼ 80 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/05/14 21:18:29 ID:meHyxN42 [4/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ここのところ少なめで申し訳ない
中間テストとかいう人類共通の敵に苦戦中とかいうしょうもない私用(あんまり面白くないですごめんなさい)と
更に悪役SS企画の方に注力してしまっていてあまりかけていない現状です
↑二つが収まれば大分量も増えてくるかと思いますのでどうぞよろしくお願いします



(悪役SS完成したら見てくださると嬉しいです! とか言ったら宣伝すんじゃねえよって荒れるかなぁ)
 ▼ 82 イル@ポケモンのふえ 17/05/19 02:06:03 ID:xVTknW7Y NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 83 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/05/20 23:14:44 ID:IxOOQ5Jo NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
悪役SSの方が期間的にピンチなんでちょっとこちら書けてないです
従って、今日の更新はなし、となります
ご了承ください
 ▼ 84 リージオ@はつでんしょキー 17/05/21 19:21:42 ID:Xcb3Zwlg NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 85 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/05/21 22:35:26 ID:ndZ4JDVA [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ふい、と意識が浮上して、俺は目覚めた。

昨日の夕日とは反対の方向から、 陽光が差し込んできている。

太陽の高さから見るに、今日は起きるのが早めだったようだ。

伸びついでに辺りを見回す。

――グレイシアが、いなくなっていた。

「――あぁ!?」

慌てて洞窟の外に飛び出る。

グレイシアは、もう遠くにいた。

地面の揺れも気にせず、俺は走った。

「なによ、うるさいわね」

グレイシアが忌々しげに振り向いた。

「お前、まだ傷治ってないだろ」

「別にこれくらい大丈夫よ」
 ▼ 86 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/05/21 22:36:16 ID:ndZ4JDVA [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「……休んで行かなくていいのか」

「大丈夫だって言ってるじゃない。…………もう2回も迷惑をかけたわ。もうこれ以上は居られない」

それは、決心を固めた顔だった。

こうなってしまっては、多分動かないだろうな、と容易に想像がつく。

だから、俺は少し卑怯な手を使った。

「迷惑をかけた、と思っているんなら、もうちょっと付き合ってくれ」

「……何をよ」

「ふっかつそう、切らしちゃたからな。取りに行かないといけない」

「……そう。それなら……し、仕方ないわね」

「あぁ。とりあえず、戻ってくれ。朝食欲しいだろ」

「……そうね。戻るわ」
 ▼ 87 プラス@マグマのしるし 17/05/22 20:20:24 ID:Gl/efKuM NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援や
 ▼ 88 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/05/28 23:15:30 ID:1/eKz8nw [1/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
朝食は適当な木の実を食べてさっさと済ませ、俺たちはすぐに出発した。

「……どこへ行くのかしら」

「山一つ越えるぞ」

そう説明すると、グレイシアの顔が少し引きつった。

「私、散歩は好きだけれど遠出は好きじゃないわ」

「まあ仕方ないな」

少し不満げなグレイシアを無視して、歩く。

「山、危なくないの?」

「絶対じゃないがな。でもあそこは管理されてるはずだ」

「……管理?」

管理、と聞くと人間が勝手に入ってきてなんやかんやしていくイメージが浮かぶが、今回は別にそういうわけではない。

「まぁ、見てみれば分かるだろ」

「……?」
 ▼ 89 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/05/28 23:15:48 ID:1/eKz8nw [2/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
俺の洞窟は山の中腹にあるためしばらく下り坂が続いでいたのだが、歩くにつれてその傾斜が緩くなってくる。

「……まだ歩くの?」

「もうすぐ着く」

道が平坦になってくれば、目的地はすぐそこだ。

突如、目の前に切り立った崖が現れた。

俺の背の数十倍はある岩の塊は、まさに壁。

「行き止まりみたいじゃ……ひゃぁっ!?」

グレイシアが小さな悲鳴をあげた。

更に、ぴと、と脚にひんやりとした感触。

何故かグレイシアが俺の脚に巻き付くように密着している。

その目線は俺の真後ろに注がれていて。

俺は後ろを振り返った。
 ▼ 90 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/05/28 23:16:04 ID:1/eKz8nw [3/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「よっ!」

という軽い挨拶が投げかけられた。

「おう。久し振りだな」

声に対して俺が答えた瞬間。

カチコチに固まっていたグレイシアの体からふっと力が抜ける。

「……知り合いかしら?」

「まぁな。友達だ」

「友達じゃなくて親友でもいいんだぜ? 俺はボスゴドラ」

ボスゴドラは視線を下に移してグレイシアに言うと、目線を再びこちらに戻した。

「……で、この娘誰? お前が1匹でいないとか何があったんだよ」

全く酷い言い様だ。

これではまるで俺はいつも孤独にいるみたいに聞こえる。
 ▼ 91 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/05/28 23:16:27 ID:1/eKz8nw [4/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「てめぇなぁ……俺がいっつも1人でいるみたいに言うなよ」

……だって事実だからな。

少し悲しくなった。

「これに限っちゃ事実じゃねえかよ。俺も人のこと言えねえけどな」

2人して乾いた笑いを浮かべていると、グレイシアが口を挟んだ。

「それで、ふっかつそうはどこにあるのかしら? こんなところにあるとも思えないのだけれど」

「あーあー、それで来たのか。それならあっちの洞窟の奥――」

「俺が知ってるからいいだろ。ほら、行くぞ」

「おい、最後まで言わせてくれよー別にいいけどさ」

自分でもボスゴドラの言葉を遮る必要があったかは分からない。

まぁ、知っている説明をわざわざもう一度聞く必要もないだろう。
 ▼ 92 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/05/28 23:16:50 ID:1/eKz8nw [5/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「じゃあな」

軽く手を振って別れようとするとボスゴドラが笑い混じりの声を出す。

「急ぐねぇ。ま、お幸せにっと」

「……んなもんじゃねえよ」「……そんなんじゃないわ」

全く同じことを思っていたらしく、返答が完全にハモった。

「何をどうしたらそう見えるんだ」

ボスゴドラがゲラゲラと笑い始めた。

「へいへい、さっさと行けよっ」

「…………チッ」

おちょくられた気がしてならなかったが、これ以上突っかかるのは墓穴を掘るだけだろう、と飲み込む。

「…………そんなんじゃ……ない……わよ、ね……」

グレイシアが何か言った気もしたが、小さすぎて俺には聞こえなかった。
 ▼ 93 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/05/28 23:17:09 ID:1/eKz8nw [6/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
突き当たりを左折してしばらく歩くと、一面岩かと思われた壁の一部にぽっかりと穴が空く。

「……ここかしら?」

「あぁ。でもここからが本番だぞ」

「本番って……何があるのよ」

並んで、2人同時に洞窟に入る。

光源がなくなって視界が真っ暗になった瞬間――

バタバタバタバタッ! と激しい空気の音が連続して耳朶を打つ。

「きゃっ!?」

ボスゴドラの時と同じように、グレイシアがこちらにすがりついてくる。

もっとも、今回は俺も少しびっくりして瞬間的に体をかがめてしまったので同じなのだが。

暗闇に目が慣れてくると、音の正体がやっと見えた。

ズバットの群れだ。

「大丈夫か? ただのズバットの群れだから気にするな」

「え、えぇ。別にこの程度……なんの問題もないわ」

さっき思いっきり問題ありそうなリアクション取ってたじゃねえか、というツッコミは胸の内にしまっておき、更に奥へと進む。
 ▼ 94 キカブリ@どくのジュエル 17/05/30 19:57:27 ID:OIen4qJ6 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 95 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/06/04 16:34:39 ID:fNvws9BI [1/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
大分更新できていなくて申し訳ないです
失踪はしていませんので
 ▼ 96 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/06/04 16:35:04 ID:fNvws9BI [2/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
洞窟の中は迷宮のように入り組んではいるが、既に何度もここに来たことのある俺にはさしたる問題ではない。



――はずだった。



「……なんで出口に出ないんだ?」

記憶の中ではここで出口に辿り着くはずなのだが、太陽の気配はまだしない。

ぐるりと一周、辺りを見回す。

そして、俺は異変に気付いた。

「――――グレイシア!?」

グレイシアが、いなくなっているのだ。

(どこかではぐれたのか? 光源もあったしそんなはずないんだが……)

とりあえず探してみよう、と俺は元来た道を戻った。
 ▼ 97 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/06/04 16:35:24 ID:fNvws9BI [3/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
(アイツ、どこ行ったのよ…………)

私は、1人暗い中迷っていた。

と言うのも、時間は少し前。

先行するバンギラスから目を離した瞬間、急に明かりが消えたのだ。

その明かりはバンギラスが持っていたのだから、もうバンギラスごとどこかに消えたとしか考えられない。

「なんで急にいなくなっちゃうのよ……」

私が曲がる場所を間違えてしまったのか。

それとも――何か良くないことでも起こっているのか。

光源のない洞窟は完全な闇の世界。

自分の足すら、顔に近づけても見えない。

下手に動くこともできず、私は壁際にへたりこんでいるしかなかった。

(……早く、戻って来てくれないかしら)

ぞわり、と背中を得体の知れない感触が走った。
 ▼ 98 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/06/04 16:36:10 ID:fNvws9BI [4/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
辺りを注意深く見回しながら、早歩きで来た道を戻る。

地面を足で踏むたび、洞窟が揺れる。

グレイシアに気づいてもらえる可能性が少しでも高くなるようにと足音はあえて落とさない。

住んでいるポケモン達には迷惑かもしれないが。

度重なる振動のせいか、天井の一部が少し欠けてポロリと落ちた。

別に、ただそれだけなら気にはしなかったのだ。

しかし、俺は異変に気づいて注目した。

何故なら、その落ちた石が何もない空中でバウンドしたから。

瞬時に状況を読み取り、最大限まで息を吸い込む。

ありったけの力を腹へ集中させて、目の前に音をぶつける。

さっきまでの振動なんて比較にならないほどの揺れが壁を伝う。

すると、さっき異変があった空間がぐにゃりと歪んだ。

松明で赤く照らされていた奥の壁に、赤以外の色が混入する。
 ▼ 99 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/06/04 16:47:59 ID:ChfFc/A2 NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 100 ガガルーラ@あやしいパッチ 17/06/04 17:10:58 ID:S8f6YFwM NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
待ってた!支援!!
 ▼ 101 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/06/04 18:06:46 ID:fNvws9BI [5/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
週末更新とか言ってますけど土曜日も忙しいことが続いてます……
というわけで最初から毎週日曜更新に変更することをあらかじめ言っておきます
 ▼ 102 ューラ@スピードボール 17/06/07 21:08:01 ID:wgotGGts NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 103 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/06/07 21:08:14 ID:Sdh2gfuY NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
中間地点あげついでに訂正

>>97
>>98
先頭に場面転換の記号が入っていなかったですね
混乱した方申し訳ないです
 ▼ 104 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/06/11 19:36:47 ID:eWKsK1vA [1/14] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「……てめぇか、ゲンガー……ッ!」

敵意がにじみ出てしまったのか、喉から出た俺の声はいつもより低かった。

こちらに近づいてくる紫のシルエットが、俺を嘲るように甲高く笑った。

「ケケケッ! 気づくのが遅かったな。みんな出てこいよ!」

ゲンガーがキーキーと叫ぶような高い声を響かせる。

途端、俺の周囲の空間が一斉にモザイクがかかるようにブレた。

陽炎のようにも見えるその現象は、さっきゲンガーが現れた時と同じ。

「クケケケッ! 今日こそお前をぶちのめしてやろうか!」

相変わらずイラっとする声には、聞き覚えがあった。

前、この場所でいたずらされたことがあったのだ。

この時は俺があっさりとゲンガーたちを撃退した。

それっきりちょっかいを出してくることもなくなっていたのだが、何故今回は出してきたのだろうか。
 ▼ 105 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/06/11 19:37:13 ID:eWKsK1vA [2/14] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「どうだろうな? タイプ相性のこと、覚えていないわけもないだろ」

ゴースト・毒タイプのゲンガーたちに、岩・悪の俺。

相手の攻撃は俺にはほとんど効かないし、こちらの攻撃の効果は抜群。

どう見てもこちらが有利なはずなのだが――

「おいおい、今回はお前さん、連れがいただろ」

「――っっ!!?」

思わず、息が詰まった。

連れなんて一匹しかいない。

グレイシアだ。

「居場所知ってんのは俺たちだけだぜ? いいのか?」

「くっ……!」

グレイシアがはぐれたのはこいつらのせいか……!

こう言われては俺から手出しはできない。
 ▼ 106 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/06/11 19:37:43 ID:eWKsK1vA [3/14] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
しかし、誰かを倒せば他に逃げられるというのであれば、全員まとめて叩きのめせばいいのだ。

そう考えて岩雪崩を準備する。

「おーっと、技打ってる暇なんてねぇぜ?」

後ろから声が投げかけられた瞬間。

パッ、とゲンガーたちの手元に光が灯った。

それが何か俺には分からなかった。

分からなかったが、何故か体の震えが止まらなかった。

それは知らないことへの恐怖ではなく、凶器を向けられたときのような死の恐怖。

「この技、知ってるか? 気合玉っていうんだけどよぉ」

ニィッ、とゲンガーが嫌な笑みを浮かべる。

「格闘タイプの技なんだよ! ケケケッ!」
 ▼ 107 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/06/11 19:38:00 ID:eWKsK1vA [4/14] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「クケッ! これだけあれば避けられねぇよなぁ?」

「しかも、ゴーストタイプだから同士討ちも期待できねぇなぁ?」

「さ〜て、どうするのかねぇ?」

四匹のゲンガーが、わざわざセリフを分割して俺を煽る。

(前はこんな技覚えていなかったはず……。どこで覚えてきたんだ……?)

「はっ、弱点だろうが、所詮お前らの攻撃。たかが知れてるだろ」

ハッ、とゲンガーたちを鼻で笑い飛ばしたが、内心では冷や汗が滝のように流れている。

「よし……発射ァ!」

ゲンガーが楽しげな声で叫ぶ。
 ▼ 108 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/06/11 19:38:27 ID:eWKsK1vA [5/14] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
同時に、いくつもの光球が同時に俺へ飛んでくる。

流石にこんなものを避けられる訳がない。

万事休す……、と身構えることしか出来なかった。

立て続けの爆発音が、俺の近くで炸裂して洞窟の壁と俺自身を揺らす。

下以外の全方位から押しつぶされるような衝撃が俺を襲う。

更に、舞い上がった粉塵のせいか、目の前が暗くなった。

叫び声を上げることすらできなかった。



――何故ならば。

(痛く、ない……?)
 ▼ 109 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/06/11 19:38:43 ID:eWKsK1vA [6/14] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
何が起こったのか、状況が飲めない。

周りからまだゲンガーたちの笑い声が聞こえることを考えると、だれかが助けにきてくれたわけでもなさそうだ。

では、何故……?

(……いや、理由なんかとりあえずどうでもいい)

のそり、と緩慢に手を挙げる。

(今はこの結果に乗せてもらえばいい……!)

その腕を、俺は力任せに一振りした。

視界を阻んでいた原因である砂埃が一瞬で霧散する。

笑っていた顔のまま驚きに固まるゲンガーたちに、叫ぶ。

「この程度……痛くも痒くもねぇんだよ!!」

そして、岩雪崩を手加減なしの最大出力で解放する。

ゲンガーたちは反応も出来ずに岩塊の下敷きになった。
 ▼ 110 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/06/11 19:39:01 ID:eWKsK1vA [7/14] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
岩を全部砕いた俺は、ろくに動けないゲンガーたちを監視しやすいように横一列に並べた。

次に、その中でさっき喋りまくっていたリーダー格ゲンガーの前に立つ。

「起きやがれ!」

短く、大きく、叫ぶ。

ゲンガーは不快そうに体を起こし、それから化け物でも見たように固まった。

「この、バケモノが……っ!」

なんのことはなく、本当に化け物を見ていたらしい。

その化け物は俺だが。

「今すぐグレイシアの場所を教えろ」

思ったよりトーンの低い自分の声を聞いて、どっちが悪役なのか分からなくなった。

「……ケッ! 俺は透明化して逃げられるんだぜ?」

言うが早いが、ゲンガーの体が地面と同化し始める。

「俺の追い討ち食らいたいか?」

対する俺はこう聞いただけ。
 ▼ 111 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/06/11 19:39:31 ID:eWKsK1vA [8/14] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ゲンガーが慌てて体を元に戻す。

「そ……それは勘弁しろ!」

「だったら早く教えろ」

睨み付けると、ゲンガーはびくりと身震いした。

「……お前、教えたら信じるのかよ」

「なら案内しろ。そうすれば騙した瞬間追い討ちできる」

「……分かったよ、案内すりゃいいんだろ?」

下手に出てもダメだと判断したのか、遂に観念したらしい。

「ああ。そうだ」

「……ハァ。お前ら、先帰っとけ」

リーダーゲンガーは気だるげな声で他のゲンガーたちに指示を出す。

その指示が意外だったのだろうか、呆然とする他のゲンガーたち。

しかし、それを気にせずリーダーゲンガーは動き出した。

ゲンガーたちを放っておいて大丈夫なのか少し気になったが、ひとまずゲンガーについていくことにした。
 ▼ 112 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/06/11 19:39:46 ID:eWKsK1vA [9/14] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 ◇ ◇ ◇

ぴちょん、と小さな音がした。

反射的に体が跳ねてから、その音がただの水音であることに気づく。

「はぁ……」

溜息という形で肺の中の空気を無理やり追い出し、体の力を抜く。

他に音が全くしないせいで、その溜息は洞窟の壁に反射して何重にも聞こえてきた。

目をきゅっと閉じて、壁に寄りかかっていた体を更に縮こめる。

更に、辺りを見回しても光は全くない。

本当に自分が辺りを見回せているのかすらも分からない暗闇だ。

細い声が私の口から漏れた。

「…………早く、しなさいよ……」

――別に、怖いとか淋しいとか心細いとか、決してそんなんじゃない。

光源を持っているのはアイツなんだから、私は動かないのが最良の選択肢のはず。

そう信じて私は体を更に小さくした。
 ▼ 113 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/06/11 19:40:08 ID:eWKsK1vA [10/14] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 ◇ ◇ ◇

ゲンガーは俺の斜め前を無音で滑るように水平に移動する。

早く解放されたいのだろうか、その速度は早歩きでないと追いつけない。

弾む息のまま、俺はゲンガーに尋ねた。

「なぁ、なんで急に、こんなこと、したんだ?」

この疑問は、ゲンガーたちの行動から感じたことだ。

グレイシアを狙っていたのなら、そもそも俺を迷わせてグレイシアの方へ向かった方がいい。

無理に俺と対面する必要なんてなかったはずだ。

「あぁ……。なんもねぇよ。ただの悪戯だ」

少しバツ悪げな表情を見せるゲンガー。

しかし、あちらを見てこちらを見てと、目の動きが少しおかしかった。

「俺は嘘くらい分かるぞ」

「……あーッ! クソ、なんで……」
 ▼ 114 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/06/11 19:41:15 ID:eWKsK1vA [11/14] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「早く本当のことを話せ」

「…………気合玉覚えたからお前にリベンジしたかっただけだ。嘘じゃねぇ」

「それなんだがよ、気合玉なんて聞いたことがねぇんだが?」

「俺もだ」

――どういう事だ。

自分で使っているのに知らなかった、というその発言の意味がわからず、俺は心の中で首をかしげた。

「ちょっと前によ、余所モンのゲンガーが来たんだよ。そいつが知らない技覚えてたから教えて貰った」

――やはり、俺の活動範囲内で見られるような技ではなかったらしい。

しかし、これからここに来る時に厄介になりそうだ……。
 ▼ 115 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/06/11 19:41:30 ID:eWKsK1vA [12/14] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
一人納得して考えていると、ゲンガーから声が飛んできた。

「おい、俺も聞くぞ」

「あ? 答えるかは種類によるぞ」

「なんであんなに気合玉を耐えやがった。あの量とタイプ相性ならレベル差って訳じゃねえだろ」

そういえば忘れていた。

というか、あれが偶然だったのバレていやがったのか。

強者を演じてみたの、めちゃめちゃ恥ずかしいじゃねえか。

「……それは俺も分からん。ただ、全く痛くなかった。

「技を弱めるなんてきのみくらいしか俺は知らねえんだがよ。どう言うことだ」

そのゲンガーの一言を聞いて、俺の中で全てが繋がった。

そう、今日の朝食だ。

「――ヨプのみか」
 ▼ 116 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/06/11 19:42:01 ID:eWKsK1vA [13/14] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
今日の朝食は特に意図もなく、適当に選んだだけ。

しかし、その中にヨプのみが入っていた気もするのだ。

「……そうかよ。そりゃ運が良かったな」

ふてくされ気味、あるいは八つ当たり気味に、ゲンガーは言い放つ。

もっとも、俺がヨプのみを食べていた理由がたまたまだったのだから、その理不尽さに憤慨する気持ちは分からないでもない。

それっきりゲンガーは黙り込んでしまう。

しばらく俺の足音だけが響く中をひたすら歩いた。

何回めかの角に差し掛かった時、ゲンガーがぴたりと止まる。

「……ここを曲がれば居るはずだ」

「あぁ、ありがとう。もう行っていいぞ」

瞬間、ゲンガーがすぅっ、と消えていく。

それをあえて確認はせず、俺は角を曲がった。
 ▼ 117 ルリル@あやしいおこう 17/06/11 19:43:25 ID:7OmEQs8s NGネーム登録 NGID登録 報告
待ってた。支援。
 ▼ 118 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/06/11 19:44:06 ID:eWKsK1vA [14/14] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
筆ならぬ指が上手く進まないし
時間ないし
……愚痴すみません

ちなみに、気合玉はレベルアップで覚えるポケモンがイベルタル(あとはドーブル)しかいないんだそうで
ちょっと驚きました
 ▼ 119 ジョフー@ウイのみ 17/06/14 06:29:06 ID:WkMKygBI NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
支援
 ▼ 120 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/06/18 21:57:26 ID:hKIWiVlk [1/11] NGネーム登録 NGID登録 報告
松明の光によって赤く染まった壁。

その中に、全く違う色が混じっていた。

顔を完全に隠して丸まっているグレイシアだ。

まだ俺のことに気づいていないらしかった 。

「おい、グレイシア」

声を察知して、グレイシアが勢いよく振り向く。

強張った表情が、少しずつ解けていく。

数秒少し潤んだ目で俺を見てから、ふいっと顔を背けた。

「遅いわ」

ちらり、とこちらを見る目は睨みつけでもするみたいに細められていた。

「……すまん。はぐれたのに気づかなかったのも、悪かったな」

ゲンガーに襲われて、と言い訳はしなかった。

特に知らせる必要も思い当たらなかったからだ。
 ▼ 121 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/06/18 21:57:49 ID:hKIWiVlk [2/11] NGネーム登録 NGID登録 報告
「べ、別に……私も、悪かったし……」

グレイシアは何故か俯いてぼそぼそと付け足した。

俺の反応が予想外だったのだろうか、少し慌て気味だ。

「……何よ」

俯いたまま、目だけをこちらに向けてグレイシアはまた睨みつけてきた。

目が合う。

「…………あ、あぁ。別に何もない」

「そう。なら早く出口に行きましょう」

言いながら、グレイシアはさっさと一人で歩き始めてしまう。

横に並ぶと、足がひんやりとした感触を纏った。

グレイシアがぴったりと俺の足にくっついていた。

はぐれないためにはこれくらいした方がいいのかもしれないが。
 ▼ 122 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/06/18 21:58:57 ID:hKIWiVlk [3/11] NGネーム登録 NGID登録 報告
二回もゲンガーに襲われる、ということは流石になかった。

松明の光だけだった洞窟に、新たな光源が生まれた。

「出口かしら?」

「あぁ。出口で合ってるはずだ」

グレイシアの足が少し早くなる。

追いかけて俺も歩幅を大きくする。

上下左右の壁が同時に消失すると、視界に眩い光が溢れた。

暗闇から通常状態へ目が適応する時間がとてももどかしい。

やっとその光に目が慣れて、景色が飛び込んで来る。

「…………綺麗ね」

グレイシアが少しうっとりとしたような声をあげた。
 ▼ 123 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/06/18 21:59:35 ID:hKIWiVlk [4/11] NGネーム登録 NGID登録 報告
向こう側の壁まで、一面に生い茂る背丈の短い草。

花があちらこちらで咲き誇っていて、木々も伸び伸びと枝を伸ばす、草原のような場所。

「ここは、どこなの?」

「ん? まだ洞窟の中だが」

「そうなの? 確かに壁はあるけれど……洞窟の中にこんなところがあるなんて思わなかったわ」

「まぁ中庭みたいなもんだろ」

まぁ、と俺が言ったあたりから既にグレイシアは俺の話も聞かずにその辺の花に仰向けで体を埋めている。

煙突のような壁を見上げるグレイシアにつられて、俺も目線を真上に向けた。

岩の最上部だけが太陽に照らされている。

「……悪いな。そのまま来てたら真上から光入って来てたんだけどな」

真上から光が差していると、柔らかい草も相まって昼寝にはちょうどいいくらいの暖かさになる。

しかし、今回はここに来るのが遅すぎたせいで太陽が上を通り過ぎてしまったのだ。

日陰になった洞窟は、やはり少し肌寒い。
 ▼ 124 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/06/18 22:01:17 ID:hKIWiVlk [5/11] NGネーム登録 NGID登録 報告
「別にいいわよ。これくらいの方が過ごしやすいもの」

氷タイプのグレイシアには、日陰がないくらいの方が良いのだろうか。

遅くなったのはもちろん予定外だったが、怪我の功名というやつだ。

「って、おい。そんなことしてる場合じゃねえだろ」

「え? あぁ、そうね。お昼ご飯がまだだわ」

「昼……? 朝と夜以外にも食うのか?」

「食べないの? お腹空くじゃない」

「少なくとも俺は昼には食わんな」

1日は2食が普通だと思っていたのだが、グレイシアの常識はそうでもないらしい。
 ▼ 125 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/06/18 22:01:46 ID:hKIWiVlk [6/11] NGネーム登録 NGID登録 報告
ちょっとしたカルチャーショックに見舞われていると、グレイシアはくすりと笑った。

「嘘よ、ふっかつそうを取りに来たことくらい分かってる」

「そうか。なら俺も急いでる訳でもないし、遊んでいってもいいぞ」

「じゃあ、そうさせてもらおうかしら」

グレイシアがまた、ふわりと微笑みをこちらに投げかけた。

花がある方向へと歩くグレイシアを見てから、俺は地面に腰を下ろす。

息を吐き出した瞬間、疲れが全身にくまなくのしかかった。

それはまぶたも例外ではなく、俺の視界はすぐに真っ暗になる。

数秒後、意識もぷつんと途切れた。
 ▼ 126 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/06/18 22:02:03 ID:hKIWiVlk [7/11] NGネーム登録 NGID登録 報告
突然に、目が覚める。

いつものうとうととした微睡みは全くなかった。

そろそろ帰ることを呼びかけるため、キョロキョロとグレイシアの姿を探す。

――いない。

(……んなわけないだろ)

自分の目を疑って、もう一度注意深く見渡す。

――やはり、見つからない。

「っ……! どこに……」

探し回るため立ち上がろうとして、俺は尻尾の違和感を察知した。

その正体を突き止めるため体を捻った俺は、驚きに思わず二度見して目を見開いた。

急にひんやりとした、しかし温かいような不思議な感触が尻尾を包む。

グレイシアが、俺の尻尾の先に絡みついていた。
 ▼ 127 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/06/18 22:02:51 ID:hKIWiVlk [8/11] NGネーム登録 NGID登録 報告
その目は閉じていて、浅めの呼吸に従って少しだけ体が上下に揺れる。

単に寝ているだけのようだ。

その寝顔は、本当に僅かなものの、穏やかな笑みをたたえている。

何となく、その表情を崩してしまうのは躊躇われた。

グレイシアを起こさないと決めると、尻尾を動かせないのでここから動けない。

暇になった俺は特に意図もなく辺りを見回す。

視界の下の方に盛り上がりが見えた。

(……ふっかつそうじゃねえか)

ふっかつそうが積み重なって、小さな山を作っていた。

グレイシアが摘んでおいてくれたのだろうか。

だとしたら、気を遣わせたのはこっちの方らしい。

少し、申し訳なかった。
 ▼ 128 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/06/18 22:03:09 ID:hKIWiVlk [9/11] NGネーム登録 NGID登録 報告
自然と、目線がグレイシアの方へ向かう。

口を小さく開けて、あどけない表情のグレイシア。

やることもないのでじっと見ていると、いつの間にか俺の手が伸びていた。

頭の上に優しく乗せて、2度、3度。

得体の知れない不思議な感覚に包まれながら、それを繰り返した。

が、突然ハッと気づいて手を離す。

(……何も考えずにやってたけど、俺何してんだよ)

冷静に考えれば、恥ずかしいというか気持ち悪い。

本人だって嫌だろう。

(……寝てるし、別に良いか? いや、バレてたら恥ずかしいしな……。)

結局、ひっそりと心の内で猛省するより他なかった。

「……何をしているの?」
 ▼ 129 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/06/18 22:03:24 ID:hKIWiVlk [10/11] NGネーム登録 NGID登録 報告
突如、下から声が飛んで来る。

俺はなるべく冷静を努めて返した。

「おい、お前起きてたのか……?」

「いえ、今起きたばかり……きゃ、ひゃっ!?」

グレイシアは、言葉を最後まで言わずに奇妙な声を出した。

眠そうに半眼だった目がいっぱいまで見開かれグレイシアの目が驚きに染まる。

さっと心地よい冷たさが尻尾を離れていく。

「わ、私……何であなたの……」

それは俺というよりは、自分に言っているように聞こえた。

「……どうした?」

グレイシアの頬が見る見る紅潮していく。

もしかしてさっきの俺の行動が嫌だったのだろうか。

内心少し怖かったがしかし、飛んできたのは批判の言葉ではなかった。

「……ごめんなさい。邪魔だったでしょう」

隠すように顔を俯けるグレイシア。
 ▼ 130 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/06/18 22:03:42 ID:hKIWiVlk [11/11] NGネーム登録 NGID登録 報告
正直、どう対応すればいいのかわからなかった。

「……俺もさっき起きたばっかだからな。邪魔も何もない」

とりあえず、迷惑じゃなかったことを伝えてみる。

しかし、グレイシアはまだ俺の答えに納得しない様子だ。

そこで、俺は斜め後ろを指差した。

「あれ、集めてくれたのお前だろ?」

「えぇ、それはそうだけれど……」

「あれが終わってるなら別に動く必要もない」

「……分かったわ」

グレイシアは一応納得した素振りを見せると、間髪入れずに帰ろうと言い出した。

俺はふっかつそうの山を抱えつつ、訊く。

「もう満足したのか?」

「えぇ、もちろん」
 ▼ 131 ワパレス@いわのジュエル 17/06/19 07:39:14 ID:/0OMPKLc NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
支援
 ▼ 132 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/06/25 22:28:26 ID:PgesFyRY NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
そういえばSS始めて2日前二周年なんですよ(ほんとは当日に言うのが良かったんだろうけど忘れてた……)
あれ、二周年であってますよね? 2015年だし
最初は読み返すと駄作の極み……
今も極めてはないと信じたいけど駄作……
どうでもいいですよね
投下していきます
  ▲  |  全表示272   | << 前100 | 次100 >> |  履歴   |   スレを履歴ページに追加  | 個人設定 |  ▲      
                  スレ一覧                  
荒らしや削除されたレスには反応しないでください。
書込エラーが毎回起きる方はこちらからID発行申請をお願いします。(リンク先は初回訪問云々ありますがこの部分は無視して下さい)

. 書き込み前に、利用規約を確認して下さい。
レス番のリンクをクリックで返信が出来ます。
その他にも色々な機能があるので詳しくは、掲示板の機能を確認して下さい。
荒らしや煽りはスルーして下さい。荒らしに反応している人も荒らし同様対処します。




面白いスレはネタ投稿お願いします!
(消えた画像の復旧依頼は、問い合わせフォームからお願いします。)
スレ名とURLをコピー(クリックした時点でコピーされます。)
新着レス▼