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【SS】ママ「ほら、早く起きなさい!」【リメイク】

 ▼ 1 AYr1xkow/g 17/08/18 09:07:23 ID:z1am0BAU NGネーム登録 NGID登録 報告
こんにちは。私はスリジエ。みんなからはポケモン博士と呼ばれているわ。今日は私のネット講座を受けてくれてありがとう。楽しい時間にしましょうね。

ポケットモンスター、縮めてポケモン。この世界には、そんな不思議な生き物がたくさんいます。私たち人間は、彼らポケモンと共に生きています。一緒に遊んだり、力を合わせて仕事をしたり、そして時にはポケモン同士を戦わせてバトルをしたり……。そうやって私たちはポケモンと絆を深め合っているの。そんな彼らをよく知るために、私は研究をしています。

さて、ではそうね、今日の講座を受けてくれたあなたにも軽く自己紹介してもらおうかしら。えーっと、写真を見せてもらってもいいかしら?

ありがとう!ふんふん。あら、どこか見覚えのある顔だわ。お名前はなんていうの?

パロレくんっていうのね!素敵な名前ね。

それにしても、パロレくん……?あ!思い出したわ!

あなた、アキニレくんの弟くんね!なんだ!びっくりしちゃった。

知ってるとは思うけれど、アキニレくんは私のお手伝いをしてくれているのよ。今はちょうど出かけているけど、明日の朝早くに、出張から帰ってくるはずだわ。

……パロレくん!きっとあなたなら強いトレーナーになれるわ。そんな気がするの。ポケモンとの絆を深めて、思う存分楽しんでね!

さあ、ポケットモンスターの世界へ!
 ▼ 425 AYr1xkow/g 18/02/25 01:15:16 ID:3Ykm73iY [1/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
「ロズレイド、どくどく!」

ロズレイドが体から毒液を放出する。フラージェスの体は、もうどくに侵されてしまった。

「フラージェス、ムーンフォースです!」

フラージェスは両手を掲げた。そして、月の光を一身に纏い、ロズレイドを攻撃する。ロズレイドにはあまり効いていないようだった。

「ロズレイド、ベノムショック!」

ロズレイドは、先程とは違う毒液を出した。フラージェスの体が、再び毒に染まっていく。フラージェスは苦しそうな鳴き声を上げてのたうち回り、やがて気を失った。

「フラージェス、お疲れ様です!行け、アマージョ!」

ユーリがアマージョを繰り出した。パロレはニヤッと笑う。

「ロズレイド、もう一度どくどく!」

ロズレイドの噴出した毒液が、アマージョに降りかかった。アマージョは払いのけようとしたが、それは無駄な足掻きに終わった。アマージョもまたもうどく状態となり、苦しそうに目を伏せる。

「アマージョ、頑張ってください!とびはねる!」

アマージョは目を見開くと、ロズレイドを睨みつけた。それから、自慢の脚のばねを使って、空高く飛び上がる。パロレとロズレイドは思わず同時に空を見上げた。アマージョの元に攻撃は届きそうにない。

やがて、アマージョがものすごい勢いで降りてきた。ロズレイドの頭上までやってくると、アマージョは長い脚を振り上げる。そして、凄まじい威力のかかと落としをお見舞いしてきた。

「ローズ……」

ロズレイドは頭蓋骨が割れてしまうのではないかというくらいの衝撃を受けて、気を失って倒れた。

以前とバトルした時と同じ方法でフラージェスとアマージョを倒そうと思ったのだが、どうやら甘く見すぎていたようだった。

「ごめんよ、ロズレイド!行け!リザードン!」

パロレはロズレイドを戻すと、リザードンを繰り出した。

「リザードン、エアスラッシュ!」

リザードンが、空気の刃でアマージョの体を切り裂く。体を蝕むもうどくに必死に抵抗していたアマージョは、今度こそ耐え切れずに倒れてしまった。

「アマージョ、お疲れ様!……ガブリアス!行きますよ!」

ユーリがアマージョを戻して次のポケモン、ガブリアスを繰り出す。

「リザードン、戻れ!マリルリ、頼んだ!」

パロレがマリルリを繰り出すと、ユーリはニコッと笑った。パロレは思わず首を捻る。それから、「あっ!」と声を上げた。

「パロレ、本当にありがとう……オレも、強くなりましたよ!」

ユーリはそう言うと、肌触りの良さそうなシャツの襟元に触れた。そして、首にかけたロケットを取り出す。ロケットを開くと、そこには輝く石がはめられていた。
 ▼ 426 AYr1xkow/g 18/02/25 01:16:19 ID:3Ykm73iY [2/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
「行きますよ!」

ユーリがそう言って、石に触れる。ガブリアスのガブリアスナイトと、ユーリのメガロケットが反応した。

ガブリアスの体が光り始める。そして、ガブリアスはメガガブリアスへとメガシンカした。

「ガブリアス!アイアンテール!」

ユーリが勢いよく指示を出した。メガガブリアスは鋼のように硬い尻尾をマリルリに思いきり打ちつける。効果は抜群だ!マリルリの体は吹っ飛び、そのまま地面を転がった。

パロレは不安げに見ていたが、マリルリはやがて減速していくと、ぴょんと飛んで体勢を整えた。マリルリがまだやれることを確認すると、パロレも叫んだ。

「マリルリ、じゃれつくだ!」

マリルリはメガガブリアスの元まで向かうと、ちょこまかと周りを動き回り、それからメガガブリアスの体に貼りついて思いきりじゃれついた。メガガブリアスは鬱陶しそうにマリルリを見下ろし、体を引き剥がそうとしたが、叶わない。やがて、メガガブリアスは膝をついた。

「ガブリアス!」

ユーリが声を上げる。ガブリアスはユーリに向かって不敵な笑みを浮かべると、どうにか立ち上がった。

「ガブリアス、頑張りましょう!じしん!」

ユーリが指示を出す。ガブリアスは飛び上がった。地面に着地すると、その反動で地面が激しく揺れ始めた。マリルリがよろめく。そのまま踏ん張ろうとしたが、やがてマリルリは倒れてしまった。

「……!マリルリ、お疲れ」

パロレがマリルリをボールに戻す。それから、リザードンを繰り出した。

リザードンがやる気に溢れている様子を確認すると、パロレはメガバングルに触れた。リザードンのリザードナイトXとパロレのメガバングルが反応して、リザードンがメガリザードンXへとメガシンカする。

「手加減しないぞ!リザードン!ドラゴンクローだ!」

パロレがそう言うと、メガリザードンXは鋭く尖った爪でメガガブリアスの体を思いきり切り裂いた。メガガブリアスが痛みに叫ぶ。

メガガブリアスはふらつきながらも耐えていたが、やがて倒れてしまった。

「……お疲れ様です、ガブリアス!」
 ▼ 427 AYr1xkow/g 18/02/25 01:17:02 ID:3Ykm73iY [3/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
ユーリはメガガブリアスをボールに戻すと、最後のポケモンを繰り出した。

「エンペルト!頼みましたよ!」

エンペルトは重々しくそこに立っていた。こうていポケモンの気迫は伊達じゃない。

「リザードン!フレアドライブ!」

パロレが言うと、メガリザードンXは体に炎を纏ってエンペルトめがけて突進した。エンペルトの体が激しい炎に包まれる。しかし、エンペルトは倒れなかった。

「エンペルト、ハイドロポンプ!」

エンペルトは大きく口を開けると、勢いよく水を放射した。その凄まじい威力に、メガリザードンXは押しやられそうになる。しかし、メガリザードンXの情熱の炎が消えることはなかった。

「リザードン!もう一回、フレアドライブだ!」

メガリザードンXは再び体に炎を纏った。そして、エンペルトに向かって真正面から突っこんでいく。メガリザードンXの体とエンペルトの体がぶつかるその瞬間が、パロレになスローモーションのように見えた。

エンペルトが仰向けにどさりと倒れる。そして、そのすぐ横で、全力を出し尽くしたメガリザードンXもまた倒れた。
 ▼ 428 AYr1xkow/g 18/02/25 01:18:42 ID:lVGpxTc6 [1/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「お疲れ様です……ありがとう、エンペルト」

「リザードン、お疲れ!ゆっくり休みな!」

ライバル同士である二人は、そう言って相棒をボールに戻した。最後は相打ちとなったものの、勝利したのはパロレだ。ユーリはパロレを見て、笑顔でいつもの言葉を口にする。

「流石ですね!」

その言葉に、パロレは照れ臭そうに笑った。

「パロレは、オレの目標です」

ユーリが真面目な顔で言う。

「どうしても超えたい。あなたを見て、いつもそう思っていました」

パロレは黙って聞いている。

「でも……あなたはどんどん強くなっていっちゃいますから。オレはもしかしたら、昨日のパロレよりは強いのかもしれない。でも、今日のパロレには、まだ届かないんです」

ユーリはそう言うと、微笑んだ。

「でも、それでいいんです。いつもオレの前にいてください。パロレが、今のオレの指標です。いつか、絶対に追いついてみせますから!」

ユーリはそう言うと、拳を前に突き出した。パロレはニカッと笑って、同じように拳を突き出し、軽くユーリの拳にぶつける。

「待ってるよ!……なんてね。ぼくもうかうかしてられないな!」

「余裕なつもりでいたら、いつの間に抜かしちゃうかもしれませんよ」

ユーリはいつになく挑戦的に言った。

「うん。気を引き締めないとね。でも、ユーリがぼくを抜かしたとしても、すぐにまた追いかけるからね」

「ええ!上等です」

二人は見つめ合い、そして笑った。

「それじゃ、ぼくは行くね」

「はい!ありがとうございました!」

「こちらこそありがとう!じゃあねー!」

パロレはそう言うと、手を振ってその場から駆け出した。

「またー!」

ユーリも負けじと大きく手を振って、パロレを見送った。
 ▼ 429 AYr1xkow/g 18/02/25 23:56:05 ID:lVGpxTc6 [2/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
パロレはフォルテ城を後にすると、セールイシティへと向かった。今日はまだまだ戦える。次はマンサクさんだ!

パロレはセールイジムにたどりつき、奥までやってきた。マンサクはパロレに気がつくと、朗らかに笑う。

「お待ちしてましたぞ、パロレさん!」

パロレはマンサクの元まで近づくと、「お久しぶりです!」と挨拶した。マンサクは礼儀正しくパロレに頭を下げる。

「いやはや、またあなたと戦えるなんてワシも幸せ者ですな!」

「ぼくも楽しみにしてました!」

パロレが笑顔で言うと、マンサクはなんだか意味ありげに笑った。パロレが首をかしげる。マンサクの表情は、すぐに穏やかな笑顔に戻った。

「ほうほう、そうですか!」

マンサクはそう言って、モンスターボールを手に持つ。

「それではチャンピオン!楽しい楽しいバトルを始めましょうか」

「はい!」

パロレは頷いて自分もモンスターボールを手に取ったが、マンサクの話はここからまだ続くのだということは分かっていた。

「ワシは若い頃はとても気性が荒かったんですぞ。なんといっても、とにかく喧嘩っ早くて!いやいや、今ではもう体が持ちませんけどな!ワハハ!」

マンサクは豪快に笑っていたが、急に真面目な表情になったかと思えば、にやりと笑った。

「ですから、素早く決めてみせましょうぞ。本気のワシの力、あなたに見せましょう!」

マンサクはそう言って、モンスターボールを投げた。
 ▼ 430 AYr1xkow/g 18/02/25 23:58:09 ID:lVGpxTc6 [3/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「いってらっしゃい、コータス!」

「行け、マリルリ!」

コータスとマリルリは、好戦的な笑顔で睨み合っている。パロレは素早く指示を出した。

「マリルリ、アクアテール!」

マリルリは水を帯びた尻尾でコータスを叩きつけた。コータスはよろめいたが、耐え切った。やはりコータスの守りはかなり丈夫だ。

「コータス、にほんばれ!」

コータスが念を送ると、急に暑くなってきた。室内なので太陽はないが、かなりひざしのつよい日と同じくらいの暑さだ。

「マリルリ、もう一度アクアテール!」

マリルリが再びコータスを攻撃した。みずタイプの威力は下がってしまうはずだが、既にダメージを受けているコータスにはそれで十分だったようだ。コータスはゴツンという鈍い音を立てて倒れた。

「まだまだですぞ!さあ、キュウコン!」

マンサクは、次にキュウコンを繰り出した。

「マリルリ!行けるところまで行くぞ!」

パロレがマリルリにそう声をかけると、マリルリは、

「マリィ!」

任せて、と言わんばかりに元気よく返事をした。

「キュウコン、ソーラービーム!」

「えっ!」

思わず素っ頓狂な声を上げてしまう。キュウコンは太陽の力を浴びて、溜めることなく一気にビームを放出した。

マリルリは真正面から攻撃を受けてしまったが、一撃で倒れることはなかった。どうにか立ち上がり、キュウコンを睨めつける。

「マリルリ、アクアテールだ!」

マリルリはまたもや尻尾で攻撃をした。ひざしがつよくても関係ない。マリルリはちからもちなのだから!

キュウコンは美しい鳴き声を上げて、倒れた。

「よし、どんどん行くぞ!」

パロレは調子よく声を上げた。
 ▼ 431 AYr1xkow/g 18/02/25 23:59:10 ID:lVGpxTc6 [4/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「ワハハ!次は任せましたよ、バクガメス!」

マンサクがバクガメスを繰り出す。

「マリルリ、お疲れ!バンギラス!頼んだ!」

パロレもポケモンを入れ替えた。

「バンギラス!ストーンエッジ!」

バンギラスが鋭い岩でバクガメスの体を突き刺した。バクガメスの甲羅はかなり固そうだったが、バンギラスのストーンエッジの威力の方が強かった。

「ガメェ……」

バクガメスが倒れる。マンサクは笑顔を崩さないままバクガメスをボールに戻し、次はギャロップを繰り出した。

「ギャロップ!けたぐり!」

ギャロップはバンギラスの足を勢いよく蹴った。バンギラスはすっ転んで、どしんと重い音を立ててその場に倒れた。体の大きく体重もあるバンギラスには、かなりのダメージだ。

「バンギラス!」

パロレが声を上げる。バンギラスはギリギリのところでどうにか持ちこたえ、ゆっくりと立ち上がった。

「よし!バンギラス、あと少し頑張れ!ストーンエッジだ!」

バンギラスの渾身のストーンエッジが、ギャロップを直撃した。ギャロップは嘶いて、その場に力なく倒れる。

「火事場の馬鹿力とは、まさにこのことですな!」

マンサクはまだ笑っている。

「さあ、最後です。張り切って行きますよ、バクーダ!」

マンサクはバクーダを繰り出した。バンギラスの体力は限界に近いが、パロレは勝てる自信があった。

「バンギラス、あと少しだけ頑張れるか?」

「バンギィ!」

パロレが声をかけると、バンギラスは振り向いて頷いた。

「ありがとう、バンギラス!それじゃ、行くよ!」

パロレはそう言って、メガバングルに触れた。
 ▼ 432 AYr1xkow/g 18/02/26 00:16:01 ID:87LyqOCE [1/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
バンギラスのバンギラスナイトとパロレのメガバングルが反応し、バンギラスはメガバンギラスへとメガシンカした。

「ほれ!」

マンサクもそう言って、キーストーンを取り出した。マンサクがキーストーンを掲げる。バクーダのバクーダナイトとマンサクのキーストーンが反応し、バクーダもメガバクーダへとメガシンカした。

「バンギラス!一発で決めるぞ!ストーンエッジ!」

メガバンギラスはもう一度鋭く尖った岩を出現させると、メガバクーダめがけて思いきり突き刺した。

ストーンエッジは、メガバクーダの急所に当たった。

「バクゥ……」

メガバクーダが倒れる。マンサクはメガバクーダをボールに戻すと、「天晴れ!」と声を上げた。

「素早く決められてしまったのはワシの方でしたな。いやいや、流石パロレさん!完敗です!」

「へへっ」

パロレはすこし気恥ずかしそうに鼻を掻いた。そして、満面の笑みでを浮かべる。

「楽しい楽しいバトルを、ありがとうございました!」
 ▼ 433 AYr1xkow/g 18/02/26 17:10:35 ID:87LyqOCE [2/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
さて、パロレが次にやってきたのはブロインジムだ。

あの不気味なギミックをどうにか越えて、パロレはジムの奥までやってきた。

「こんにちは!」

パロレが元気よく挨拶をすると、ネムがこちらを見てくすりと笑う。

「あら、こんにちは……。今回も二人で来てくれたのね……」

パロレはネムの言葉を無視した。

「バトルしに来ました!」

「ええ……」

ネムは頷く。

「わたしも、そろそろあなたがそろそろ来ると思っていたの……さあ、始めましょ……」

ネムがそう言って、ボールを投げた。繰り出されたのはシャンデラだ。

「行け、マリルリ!」

パロレもマリルリを繰り出す。

「シャンデラ、おにび……」

ネムの指示で、シャンデラがぼうっと光るおにびを出す。おにびはゆらゆら揺れながらマリルリの方へと向かっていき、マリルリの体にまとわりついた。マリルリは熱そうに叫んだ。やけどしてしまったのだ。

「マリルリ、頑張れ!アクアテールだ!」

マリルリはやけどの痛みをこらえながら、尻尾を叩きつける。シャンデラはシャンデリアが崩れ落ちるかのように倒れた。

「お次はこの子……いってらっしゃい、ムウマージ……」

「マリルリ戻れ!バンギラス!行くぞ!」

ネムが次のポケモンを繰り出すと、パロレもポケモンを入れ替えた。

「ムウマージ、マジカルシャイン……」

ムウマージが、凄まじく眩い光を放った。バンギラスは眩しそうに目を閉じて、思わず退く。バンギラスは聖なる光を受けて苦しそうにしていたが、やがて立ち直った。

「バンギラス、かみくだくだ!」

バンギラスはムウマージの体にがぶりと噛みつき、歯を食いこませた。ムウマージは嬌声のような叫び声を上げてその場に落ちた。

「強いわね……行くわよ、ミミッキュ……」

ネムがミミッキュを繰り出す。パロレは心の中で来た!と声を上げた。
 ▼ 434 AYr1xkow/g 18/02/26 17:11:59 ID:87LyqOCE [3/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「ミミッキュ、ウッドハンマー」

ミミッキュが尻尾のような部分を思いきり叩きつけてバンギラスを攻撃した。バンギラスは衝撃で倒れ、そのまま気絶してしまった。

「バンギラス、お疲れ!行くぞ、ピジョット!」

ピジョットは大きく羽ばたいて返事をした。まずは一度攻撃して、ばけのかわを剥がさなければならない。

「ピジョット、はがねのつばさ!」

ピジョットは鋼のように硬い翼で思いきりミミッキュを攻撃した。ミミッキュのばけのかわが剥がれ、ぬいぐるみの首が力なくだらりと垂れ下がる。

「ミミッキュ、じゃれつく……!」

ミミッキュはピジョットの体にまとわりつくと、好き放題にじゃれつき始めた。面倒そうな反応をしているピジョットには、それほど効いてはいないようだ。

「ピジョット!もう一度はがねのつばさ!」

ピジョットは、再び硬い翼でミミッキュの体を叩きつけた。ウッドハンマーの反動でもダメージを負っていたミミッキュが倒れるまで、それほど時間はかからなかった。

「ヨノワール……いってらっしゃい……」

ネムが次のポケモンを繰り出した。

「よし、ピジョットありがとう!ジュペッタ、頼んだ!」

パロレもピジョットを戻し、ジュペッタを繰り出す。

「ジュペッタ!シャドーボール!」

ジュペッタが影の塊を作り出し、ヨノワールめがけて投げ飛ばす。シャドーボールはヨノワールの体に激突し、シャドーボールは苦しそうに手を振って暴れたが、やがて力尽きた。

「ほんと、容赦ない……」

ネムはそう言って、最後のポケモンを繰り出した。シャドーポケモンのゲンガーだ。

「行くわよ……」

ネムはどこからともなくキーストーンを取り出すと、そっと触れた。ゲンガーのゲンガナイトとネムのキーストーンが反応する。ゲンガーは、メガゲンガーへとメガシンカした。

「こっちも!」

パロレがそう言ってメガバングルのキーストーンに触れる。ジュペッタのジュペッタナイトとメガバングルが反応して、ジュペッタはメガジュペッタにメガシンカした。
 ▼ 435 AYr1xkow/g 18/02/26 17:13:44 ID:87LyqOCE [4/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「ゲンガー、シャドーボール……」

今度は、メガゲンガーがシャドーボールを作り出し、メガジュペッタめがけて投げ飛ばした。シャドーボールはメガジュペッタに直撃した。

メガジュペッタはパロレに心配をかけさせまいとしたのか、どうにかギリギリで踏みとどまった。パロレが嬉しそうに声を上げる。

「ジュペッタよくやった!ゴーストダイブだ!」

メガジュペッタが不意に姿を消す。メガゲンガーはニヤニヤ顔のまま、辺りをキョロキョロと見回した。

「今だ!」

パロレが叫ぶ。メガジュペッタは突如として姿を現わすと、メガゲンガーめがけて攻撃した。

メガゲンガーが力なく倒れる。ネムは、「あら……残念……」と声を上げた。

「相変わらず強いのね……」

「ありがとうございます!」

パロレが笑顔で礼を言うと、ネムは悪戯っぽく笑った。

「怖がりなところも、変わってないのかしら……」

パロレはその言葉を聞くなり、顔を真っ青にして、ネムに向かって叫ぶ。

「ででででは!ぼくはお、お先に失礼します!」

パロレはそう言って、素早くブロインジムを後にした。

怖い話はもう、聞きたくない!
 ▼ 436 AYr1xkow/g 18/02/27 15:14:18 ID:2FJ57vZY [1/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
翌日、パロレは12番道路を抜けて廃工場を通りすぎ、メランシティへとやってきた。もちろん、目当てはメランジムだ。

メランジムの奥までやってくると、リュウガンが待っていた。

「こんにちは、リュウさん!」

「おう、こんにちは……お疲れさん」

リュウガンはそう言ってニヤッと笑った。未だにリュウガンがメローネの子孫であるということはしっくりこない。

「まあ、御託はいらねえってこった。さっさと始めようぜ」

リュウガンはそう言うと、ボールを投げてドンカラスを繰り出した。

「行け、マリルリ!」

パロレもポケモンを繰り出す。

「ドンカラス、はがねのつばさ」

ドンカラスが、硬い翼でマリルリを攻撃する。大きな翼に叩きつけられたマリルリは吹っ飛ばされたが、自力で立ち上がった。

「マリルリ、じゃれつく!」

マリルリがドンカラスにじゃれつく。ドンカラスは翼でマリルリをはねのけようとしたが、上手く避けることができず、結局戦闘不能となってしまった。

「ほれ、ワルビアル、いってら」

「マリルリ、戻れ!行け、ロズレイド!」

パロレがポケモンを入れ替えると、リュウガンはすかさず指示を出した。

「ワルビアル、じしん」

ワルビアルは激しく地面を揺らした。ロズレイドはよろめき、まるで踊っているかのような動きをする。どうにか攻撃を耐えたロズレイドは、しっかりと立ち直した。

「ロズレイド!エナジーボールだ!」

ロズレイドはエナジーボールを作り出すと、ワルビアルめがけて放った。ワルビアルは倒れた。

「よし!」

パロレが思わず拳を握る。

「相変わらず強いねぇ、兄ちゃんは」

リュウガンはくつくつと笑ってそう言うと、ワルビアルをボールに戻し、次にダーテングを繰り出した。
 ▼ 437 AYr1xkow/g 18/02/27 15:14:57 ID:2FJ57vZY [2/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
「ロズレイド、ありがとう!ピジョット!行くぞ!」

パロレは再びポケモンを入れ替えた。それから、

「ぼうふうだ!」

ピジョットが大きく翼を広げ、羽ばたく。激しい風が起こったかと思えば、風はダーテングを巻きこんでそのまま吹き抜けていった。

ぼうふうに襲われたダーテングの体は浮かび上がり、やがて力なく床に倒れこんだ。

「早いねぇ。次、バルジーナ、いってきな」

リュウガンがバルジーナを繰り出す。パロレもポケモンを入れ替えて、バンギラスを繰り出した。

「バルジーナ、ボーンラッシュ」

バルジーナは、バンギラスめがけて骨を投げてきた。バンギラスが慌てて避けようとしたが、間に合わなかった。骨は何度か降ってきた。地面に三本ほどの骨が落ちている。何の骨なのか、パロレは深いことは考えないことにした。

「バンギラス、ストーンエッジ!」

バンギラスが鋭く尖った岩で飛んでいるバルジーナを突き刺した。バルジーナは悲鳴を上げて、床へと落ちてきた。

「それじゃー、最後ね」

リュウガンはバルジーナをボールに戻すと、次のポケモンの入ったボールを投げた。出てきたのはヘルガーだ。

リュウガンはニヤッと笑った。そして、輝く石を取り出した。

ヘルガーのヘルガナイトと、リュウガンのキーストーンが反応した。そして、ヘルガーはメガヘルガーへとメガシンカした。

バンギラスのバンギラスナイトと、パロレのメガバングルも反応し始めた。そして、バンギラスもメガバンギラスへとメガシンカした。
 ▼ 438 AYr1xkow/g 18/02/27 15:15:31 ID:2FJ57vZY [3/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
「ヘルガー、あくのはどう」

メガヘルガーは、体から悪意に満ちたオーラを放った。しかし、メガバンギラスにはあまり効いていないようだった。メガバンギラスはふてぶてしく笑ってあくのはどうを受け止める。

「バンギラス!ストーンエッジだ!」

メガバンギラスのストーンエッジは、メガヘルガーの急所に当たった。メガヘルガーはキャインと見た目にそぐわない高い鳴き声を上げ、一撃で倒れてしまった。

「おいちゃんちょっとびっくりしちゃったよ」

リュウガンはそう言いながら、メガヘルガーをボールに戻した。

「どんどん強くなってってるってわけねえ。まあ、もう心配はいらねえわな」

リュウガンは頭を掻いた。

「さすがチャンピオン……と言ったところか」

リュウガンはそう言うと、にやりと笑った。

「いつか兄ちゃんと酒飲めるの、楽しみにしてるよ」

「はい!ありがとうございました!」
 ▼ 439 AYr1xkow/g 18/02/27 22:46:09 ID:4dvlCYIw NGネーム登録 NGID登録 報告
パロレは、乗船所から船に乗り、ダ・カーポ島に上陸した。

そして、パルガンシティへと向かい、パルガンジムを目指す。

奥へとやってくると、ビロウと目が合った。

「久しいな、チャンピオン!」

ビロウが先に声をかけてくる。

「話は聞いている。君のおかげで、俺たちは更に強くなることができた……礼を言おう」

「いやぁ……」

パロレは恥ずかしそうに笑った。ジムリーダーに会うたびに礼を言われている気がするが、パロレ自身はそんなにすごいことをしたのだという風には思っていないのだ。

「だからこそ、全力で戦いたい!」

ビロウはそう言って、パロレを真っ直ぐに見つめた。

「お手合わせ願おう!アモルのチャンピオン!」

「はい!こちらこそ、望むところです!」

パロレも挑戦的にそう行った。ビロウがモンスターボールを投げる。

「行け!エアームド!」

「リザードン!一気に行くよ!かえんほうしゃ!」

パロレはリザードンを繰り出すと、間髪入れずに指示を出した。リザードンは口を大きく開いて燃え盛る炎を吐き出す。エアームドは倒れた。

「くっ……、行くぞ、キリキザン!」

ビロウがキリキザンを繰り出す。

「リザードン、かえんほうしゃ!」

リザードンが再び口から火を吐いた。キリキザンもまた、一撃で倒れてしまう。

「君のそういうところ、嫌いじゃないぞ!」

ビロウが叫んだ。

「もちろん、好きでもないがな!行くぞ、シュバルゴ!」

「リザードン、もう一回かえんほうしゃ!」

「リザァアー!」

リザードンの容赦ない攻撃によって、シュバルゴも一撃で戦闘不能になってしまった。
 ▼ 440 AYr1xkow/g 18/02/27 22:47:26 ID:lMEoAb4U [1/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「まだ俺は諦めんぞ!行け!ギルガルド!」

ビロウがそう言って、ギルガルドを繰り出した。ギルガルドは、盾でしっかりと自身の体を守っている。シールドフォルムだ。

「リザードン、何回もごめんよ。かえんほうしゃ!」

リザードンは頷いて、口から炎を吐いた。炎はギルガルドを直撃したが、盾に守られているギルガルドはまったく動じていない。

「ギルガルド、シャドーボールだ!」

ビロウが言うと、ギルガルドは構えていた盾を外し、ブレードフォルムへとフォルムチェンジした。

ギルガルドが影の塊をリザードンに放つ。シャドーボールはリザードンの腹に当たったが、リザードンは倒れなかった。

「リザードン!もう一発、かえんほうしゃだ!」

リザードンの吐いた炎は、守りを捨てて攻撃体制に入っていたギルガルドを包みこみ、一層大きく燃え上がった。そして、炎が消えたかと思えば、ギルガルドは力なく倒れてしまった。

「やはり、強いなチャンピオン!さあ、最後だ。行くぞ!ハッサム!」

ビロウがそう言ってハッサムを繰り出した。パロレはメガバングルに触れた。リザードンのリザードナイトXとメガバングルが反応し、リザードンはメガリザードンXへとメガシンカする。ビロウもキーストーンを取り出した。ハッサムのハッサムナイトと、ビロウのキーストーンが反応する。そして、ハッサムはメガハッサムへとメガシンカした。

「リザードン!最後も素早く決めるぞ!フレアドライブだ!」

メガリザードンXが、体に激しい炎を纏う。そして、メガハッサムめがけて突進した。メガハッサムの体は大きく燃え上がり、やがてメガハッサムは気を失って倒れてしまった。

「……見事だ」

メガハッサムをボールに戻したビロウが、苦々しい顔をして言う。

「ただでさえ強い君の相棒がほのおタイプとなると……俺は君に勝つためには死ぬ気で努力しなければならないようだ」

ビロウはそう言うと、少しだけ穏やかな表情になった。

「とはいえ……壁は大きれば大きいほど士気も上がるというもの。引き続き己を鍛えていくとしよう……よければ、また相手をしてくれ」

「はい!もちろんです。よかったら、今度ピザ食べに行きましょう!」

パロレがそう言うと、ビロウはぽかんとした顔を浮かべた。

「うん?君……なぜ俺がピザが好きだということを知っている?」

見ればすぐに分かることなのだが、自覚のないビロウを見て、パロレは思わず声を上げて笑ってしまった。ビロウは余計に混乱している。

「な……なぜ笑っている?何がおかしいんだ!おい!答えろ!」

訳も分からずにそう言ってパロレに激しく問いかけてくるビロウを見て、パロレはとうとうこらえきれなくなり、腹を抱えて笑いだした。
 ▼ 441 AYr1xkow/g 18/02/27 22:48:55 ID:lMEoAb4U [2/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
さあ、二度目のジムリーダーへの挑戦もこれで最後だ。パロレは、アスールジムへとやってきていた。ヒマワリの大きな船の上に乗ると、仁王立ちしていたヒマワリが振り返った。

「よお、チャンピオン!船に乗りに来たのか?それとも……」

「バトルしに来ました!」

パロレは食い気味に言った。ヒマワリがニヤリと笑う。

「……ああ、そうだよな!アタシもお前ともう一回バトルするの、ずっと楽しみにしてたんだぜ!」

ヒマワリはそう言うと、勢いよく舵を切った。船が大きく揺れる。

「行くぞ!面舵いっぱーいッ!」

ヒマワリが海上にポケモンを繰り出した。ホエルオーだ。

「ロズレイド!行くぞ」

パロレは甲板にロズレイドを繰り出すと、素早く指示を出した。

「エナジーボールだ!」

ロズレイドの放ったエナジーボールは、しっかりとホエルオーに当たり、ホエルオーは大きな体をひっくり返してそのあと動かなくなってしまった。

「次だ、次!」

ヒマワリはホエルオーを戻すと、次はママンボウを繰り出してきた。

「ロズレイド、エナジーボール!」

ロズレイドがもう一度エナジーボールを作り出し、ママンボウめがけて投げ飛ばした。ママンボウもまた、倒れてしまう。

「頑張れや!ダダリン!」

「ロズレイド、戻れ!ピジョット!行くぞ!」

パロレはポケモンを入れ替えた。そして、高らかに叫ぶ。

「ピジョット、ぼうふうだ!」

ピジョットは素早く何度も翼をはためかせて、激しい風を起こした。ダダリンは暴風に巻きこまれて、身動きが取れなくなってしまった。そして、ダダリンは力なく倒れた。

「くっそぉー、行ってこい、キングドラ!」

「ピジョット、戻れ!頼んだ、マリルリ!」
 ▼ 442 AYr1xkow/g 18/02/27 22:49:54 ID:lMEoAb4U [3/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「キングドラ、ラスターカノン!」

ヒマワリが言うと、キングドラは体中の光を一点に集め、そこに力をこめた。それから、その光をマリルリに向けて放つ。

キングドラの攻撃は効果は抜群だ。しかし、マリルリはまだ平気だった。

「マリルリ、じゃれつく!」

今度はマリルリの反撃だ。マリルリは容赦せずにひたすらキングドラにじゃれついて攻撃していた。やがて、キングドラが力つきる。マリルリの勝利だ。

「あっという間じゃねえか!ま、でも、このアタシも可愛いあいつらにかっこ悪いところは見せられねえからな、頑張るしかねえ!行くぞ、サメハダー!最後の力見せてやる!」

ヒマワリはそう言ってサメハダーを繰り出すと、キーストーンを掲げた。サメハダーのサメハダナイトと、ヒマワリのキーストーンが反応し、サメハダーはメガサメハダーへとメガシンカした。

パロレもマリルリをボールに戻すと、もう一度ロズレイドを繰り出した。メガサメハダーと相性よく戦うには、メガシンカに頼らない必要があるようだ。

「サメハダー、こおりのキバ!」

メガサメハダーは、冷気を帯びた牙でロズレイドに思いきり噛みついた。ロズレイドは痛そうな声を上げてメガサメハダーの振りほどく。それから、メガサメハダーを鋭く睨みつけた。

「ロズレイド、最後にもう一回、エナジーボールだ!」

「ロォオオ……!」

ロズレイドの放ったエナジーボールは、大きく開いていたメガサメハダーの口の中に当たり、メガサメハダーは痛みに悶えた。しかし、エナジーボールはメガサメハダーの口の中で爆発し、メガサメハダーはひっくり返って気を失ってしまった。

「つえー!」

ヒマワリはメガサメハダーをボールに戻すと、嬉しそうに叫んだ。

「アハハ!圧倒的すぎだよな!降参だー!」

ヒマワリは子供のようにはしゃいで言った。

「楽しかったぜ!ありがとな!」

「こちらこそ、楽しかったです!」

パロレは頭を下げてそう言った。これで、ジムリーダーへの再挑戦が終わった。本気のジムリーダーたちはとても強かったが、どうにか勝つことができた。やはり、メガシンカの力とは凄まじい。

パロレはヒマワリに別れを告げてアスールジムを出ると、ポケモンセンターに向かい、少し休憩することにした。

次に行く場所は、決まっている。
 ▼ 443 AYr1xkow/g 18/02/27 22:50:38 ID:lMEoAb4U [4/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
すっかり元気になったパロレとポケモンたちは、ポケモンセンターを出た。すると、ちょうどアスールジムから誰かが出てくるところが見えた。

その誰かは、こちらへと大きく手を振っていた。近づいてきたところで、ようやく誰だか分かった。クオレだ。

以前に言っていた、アスールシティに来る日はもう決めているという言葉は、こういうことだったのだ。

「おーい、パロレー!」

「クオレ!もしかして……」

パロレの言葉に、クオレはニコッと笑った。

「うん!ヒマワリさんに、勝ってきたよ!」

そして、青く光るマリンバッジを掲げる。

「これで、バッジ全部ゲットだよ!」

「わあっ……!クオレ、おめでとう!」

パロレは思わず手を叩いた。クオレが照れ臭そうに笑う。

「わたし、まだまだだけど……でも、感じるの。昨日のわたしより、今日のわたしは、絶対に強いって!」

クオレの顔は、とても輝いている。パロレは思わず目を細めた。眩しいのは、クオレの背後で日が沈みかけているからだろうか。

「立ち止まったり、振り向いたりしちゃうこともあるけど……それも悪いことじゃないもんねぇ。でも、わたしは、それだけじゃ終わらないよ!そう決めたの!」

クオレはそう言うと、ニカッと笑った。

「ね、パロレ!バトルしようよ!」

クオレの言葉に、パロレは笑顔で頷いた。

「うん!ぼくも、そう言おうと思ってたところだったんだ!」
 ▼ 444 AYr1xkow/g 18/02/28 15:07:12 ID:CP9Kpc0o [1/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「行くよっ、ライチュウ!」

「バンギラス!任せた!」

「ライチュウ、10まんボルト!」

クオレの指示に、ライチュウは強い電流を放った。しかし、バンギラスはまったく動じていない。

「バンギラス、じしんだ!」

バンギラスが激しく地面を揺らした。ライチュウはバランスを崩し、倒れてそのまま気を失った。

「まだまだっ!ライチュウ、お疲れ様!行くよ、アブリボン!」

クオレはアブリボンを繰り出した。

「バンギラス戻れ!行け、ピジョット!」

「アブリボン、マジカルシャイン!」

アブリボンが眩い光を放ち、ピジョットを攻撃する。ピジョットは光を避けて旋回すると、真っ直ぐアブリボンの方へと飛んでいった。

「ピジョット、ぼうふう!」

ピジョットが凄まじい風を起こす。アブリボンは軽く吹っ飛び、遠くまで飛んでいってしまった。

「ああっ!アブリボン、ごめんね!ウインディ、頑張るよ!」

クオレがアブリボンをボールに戻し、ウインディを繰り出す。

「ピジョット、サンキュー!行くぞ、マリルリ!」

パロレもポケモンを入れ替えた。

「ウインディ、かみなりのキバ!」

ウインディは電気をまとった牙でマリルリに噛みついた。マリルリは高い鳴き声を上げたが、まだ平気そうだ。

「マリルリ!アクアテール!」

マリルリが尻尾を思いきりウインディに叩きつける。水を帯びたその攻撃は、ウインディへの効果は抜群だ。ウインディはふらふらと倒れてしまった。

「ウインディ、ありがとう……!行くよ、ヌメルゴン!」

クオレが次のポケモンを繰り出した。
 ▼ 445 AYr1xkow/g 18/02/28 15:08:15 ID:CP9Kpc0o [2/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「ヌメルゴン、アイアンテールだよっ!」

ヌメルゴンは、鋼のように硬くした尻尾でマリルリを攻撃した。マリルリは弾みで転がったが、立ち上がって体制を整える。

「マリルリ、じゃれつくだ!」

マリルリの攻撃は、的確にヌメルゴンを捉えていた。嫌がるヌメルゴンに構わず、マリルリは思いきりヌメルゴンにじゃれついた。ヌメルゴンはマリルリを引き剥がそうとジタバタしていたが、やがて倒れてしまった。

「ヌメルゴン、お疲れ様。……ヤドラン、頑張るよっ!」

「マリルリ、戻れ!ジュペッタ、行くぞ!」

ふと、パロレとクオレの目が合った。クオレが笑う。そして、笑顔のまま鞄に手を入れて何かを取り出した。パロレの持っているものとよく似ている。そう、メガバングルだ。

「……!」

「えへ!」

パロレが目を見開くと、クオレは照れ臭そうに笑った。

「クオレもなら……ぼくも、行くよ!」

パロレはそう言って、キーストーンに触れた。

ジュペッタのジュペッタナイトとパロレのメガバングルが反応する。ジュペッタはメガジュペッタへとメガシンカした。

クオレもキーストーンに触れた。ヤドランのヤドランナイトと、クオレのメガバングルが反応し、ヤドランはメガヤドランへとメガシンカした!

「ジュペッタ!シャドーボール!」

メガジュペッタは、開いたファスナーから飛び出している指のようなもので影の塊を作り出すと、メガヤドランへと放った。シャドーボールは甲羅などお構いなしにメガヤドランの体を直撃した。メガヤドランが力なく倒れる。

「うぇえ、強いよー!」

クオレが悲鳴を上げてメガヤドランをボールに戻した。
 ▼ 446 AYr1xkow/g 18/02/28 15:09:07 ID:CP9Kpc0o [3/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「でも、最後まで諦めないもんね!行くよ、ジャローダ!」

クオレはそう言ってメガヤドランを戻すと、ジャローダを繰り出した。

「ジュペッタありがとう!リザードン!行くよ!」

パロレもポケモンを入れ替えた。

「ジャローダ、アクアテール!」

ジャローダは長い尻尾に水を纏わせて思いきりリザードンを打ちつけた。リザードンは体を震わせたが、倒れはしなかった。

「リザードン!決めるぞ!フレアドライブだ!」

全身を炎に包まれたリザードンが、ジャローダめがけて突進する。リザードンの体が触れると、ジャローダの体は大きく燃え上がった。
やがて、ジャローダは倒れた。

「お疲れ様、ジャローダ。ありがとう」

クオレはそう言って、ジャローダをボールに戻す。それから、

「パロレも、ありがとう!」

そう言ってニッコリと笑った。

「やっぱりパロレは強いねぇ。圧倒的すぎて、悔しいって気持ちもあんまり出てこないよ!」

クオレは笑ってそう言ったが、少し切なげな表情になって続けた。

「なんてね!でも……勝ちたいな」

呟くように言ったその言葉に、パロレが思わず目を見開く。

「わたしの強くなりたいって思う気持ちは……やっぱり、パロレやユーリほど大きくはないみたい。でも、最近思うんだ。ジャローダたちはどうなのかなって……」

クオレはそう言って、モンスターボールを撫でた。

「ポケモンたちの想いには、応えたいよね。まだまだ頑張らなくちゃ!」

クオレはそう締めくくると、再び笑顔になった。

「じゃあ……わたしは帰るね!またバトルしようね!」

「うん!またね!ありがとー!」
 ▼ 447 AYr1xkow/g 18/03/01 13:34:00 ID:D1vxNRLo [1/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
翌日、パロレはポケモンリーグへとやってきていた。

八人のジムリーダーを再び倒したのだから、もう一度挑戦したい。そう思ったのだ。

四天王たちも、ジムリーダーたち同様、また強くなっていた。彼らもキーストーンを手に入れていたのだ。

カメリアのメガオニゴーリにコクリコのメガハガネール、イチゴのメガデンリュウとカエデのメガクチートをどうにか打ち負かして、ここまでやってきた。

四天王とのバトルでは、絶好調だった。この先も、きっと行けるはず。そんな思いでここまでやってきた。

パロレは今、再びポケモンリーグの最奥まで向かっている。

あの、最高に熱いバトルをもう一度するために。

奥の部屋にやってくると、あの人は、太陽の光を受けてキラキラと輝くステンドグラスに照らされて、パロレを待ち構えていた。

「……やっと来た」

アルセアは、そう言ってニヤッと笑って、ブーツのヒールをコツコツと鳴らしながらこちらへと歩いてきた。

「お待たせしました……!」

パロレが真面目な表情で言うと、アルセアは可笑しそうに笑った。

「待ってたよ。早くあんたと戦いたくて仕方なかったんだ……」

アルセアはそう言って、右耳に髪の毛をかけた。キーストーンがはめこまれた、美しい耳飾りがキラリと光る。

「最近、初めて知ったんだけど」

アルセアはそう言うと、左手にモンスターボールを持った。

「私って、すごく負けず嫌いなんだよね」

チャンピオンのアルセアが勝負をしかけてきた!
 ▼ 448 AYr1xkow/g 18/03/01 13:36:28 ID:D1vxNRLo [2/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
「クレッフィ、行くよ」

アルセアがクレッフィを繰り出す。

「リザードン、行くぞ!」

パロレはリザードンを繰り出した。

「クレッフィ、でんじは」

クレッフィは軽く電気を起こすとリザードンに向けて放った。リザードンは体を痙攣させて立ち止まった。まひしてしまったのだ。

体が痺れて動けないリザードンに構わず、アルセアはクレッフィをボールに戻し、まひるのすがたのルガルガンに入れ替えた。

「リザードン戻れ!行け、ロズレイド!」

パロレも慌ててポケモンを入れ替える。アルセアは容赦なかった。

「ルガルガン、しねんのずつき」

ルガルガンは額に思念の力を集めると、ロズレイドに思いきり頭突きした。ロズレイドの頭がガンガンと揺れ、ロズレイドはしばらく目を回した後、倒れてしまった。

「ロズレイド、戻れ!マリルリ、任せたぞ!」

パロレがロズレイドを戻して、マリルリを繰り出す。

「ステルスロック」

アルセアが指示を出す。ルガルガンは尖った石をそこらじゅうにまき散らした。

「マリルリ、アクアテールだ!」

マリルリのアクアテールが、ルガルガンを襲う。ルガルガンは尻尾の水気で苦しんでいたが、やがて倒れてしまった。

「ミロカロス、行くよ」

アルセアは冷静にそう言って、ミロカロスを繰り出す。ミロカロスは美しい体躯を艶めかしくくねらせながらこちらを射抜くように見つめていた。

「マリルリ、戻れ!ジュペッタ、任せたぞ!」

パロレがポケモンを入れ替える。ジュペッタの体に、尖った岩が食いこんだ。
 ▼ 449 AYr1xkow/g 18/03/01 13:37:29 ID:D1vxNRLo [3/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
「ミロカロス、アクアリング」

ミロカロスは、水のリングを作り出し、体に纏った。アクアリングはゆっくりと回りながら、ミロカロスの体が乾かないように水滴を垂らしている。

「ジュペッタ、10まんボルト!」

ジュペッタが強い電撃を放った。ミロカロスの体は、10まんボルトを受けて強く痙攣した。しかし、ミロカロスはアクアリングで少しだけ体力を回復させると、再び力強くこちらを睨みつけてきた。

「ミロカロス、ハイドロポンプ」

ミロカロスが、口から大量の水を放出した。ジュペッタはその水の勢いに押されて吹っ飛び、壁にめりこんで気を失ってしまった。その間に、ミロカロスはアクアリングでまた体力を回復させている。

「ジュペッタ、ごめんよ。行け、ピジョット!」

パロレはピジョットを繰り出した。ピジョットの体に尖った岩が食いこむ。もうミロカロスに相性のいいポケモンはいない。どうにか勝つしかない!

「ミロカロス、おいで。行くよ、グレイシア」

パロレがせっかく気合いを入れ直したところで、アルセアはミロカロスを引っこめ、グレイシアに入れ替えてしまった。

「ピジョット!ぼうふうだ!」

ピジョットが強く翼をはためかせ、激しい風を起こす。グレイシアは踏ん張っていたが、やがて耐えきれずに吹っ飛んでしまった。

しかし、グレイシアはまだ倒れなかった。立ち上がって体制を整えると、ピジョットの方まで走ってくる。

「グレイシア、ふぶき」

グレイシアが、ふぶきを起こした。激しく吹く冷たい風が、ピジョットの体を容赦なく襲う。ピジョットはやがて、力なく床に落ちてしまった。

「ま……まずい!」

前に戦った時より、アルセアは強くなっている気がした。戦えるポケモンは、バンギラスとマリルリ、それからリザードンだけだ。

「バンギラス!任せたぞ!」

パロレはそう言ってバンギラスを繰り出した。バンギラスの体に尖った岩が食いこんだが、バンギラスはそれほど痛そうな顔はしなかった。
 ▼ 450 AYr1xkow/g 18/03/01 13:39:08 ID:D1vxNRLo [4/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
「グレイシア、ふぶき」

アルセアが指示を出す。グレイシアはもう一度ふぶきを起こそうとした。しかし、グレイシアの狙いは外れ、攻撃は当たらずに終わった。チャンスだ!

「ストーンエッジ!」

パロレが叫んだ。バンギラスが、鋭く尖った大きな岩をグレイシアに突きつける。ストーンエッジはグレイシアの急所に当たり、グレイシアは戦闘不能となってしまった。

「はい、次。ボーマンダ、行くよ」

アルセアはグレイシアをボールに戻すと、一切の焦りも見せずにボーマンダを繰り出した。アルセアのポケモンは、クレッフィとミロカロスにボーマンダ、そしてバシャーモが残っている。こちらが少し負けている。気を引き締めなければ。

「バンギラス、戻れ!マリルリ、もう一度頼むよ!」

マリルリの体にはまた岩が刺さった。あまり無理はできない。

「ボーマンダ、そらをとぶ」

ボーマンダは、空高く飛び上がった。マリルリの攻撃は届かない。マリルリはぴょんぴょんと飛び跳ねたが、無駄な足掻きに終わった。

ボーマンダが、勢いよく降下してきた。マリルリの体に思いきり攻撃してくる。マリルリはその場に倒れてしまった。かと思いきや、どうにかギリギリのところで持ちこたえてみせたのだ。

パロレはぱあっと顔を輝かせた。まだ終わっちゃいない!最後まで諦めちゃダメだ!

「マリルリ!じゃれつく!」

マリルリはボーマンダの体に引っついて、思いきりじゃれついた。ボーマンダは激しく体を揺らしてマリルリを引き離そうとしたが、根負けし、ぐらりとその場に倒れてしまった。

「……行こうか」

ボーマンダをボールに戻したアルセアが、そう呟いたのが確かに聞こえた。

「バシャーモ!あとはあんたに任せるよ!」

アルセアがそう言って、相棒のバシャーモを繰り出した。パロレは思わず唾を飲みこんだ。パロレには分かる。アルセアは、最後の切り札としてではなく、一度自分を負かしたトレーナーをボコボコにぶちのめすために最強のパートナーであるバシャーモを繰り出してきたのだ。

バシャーモは、右耳につけているピアスに触れた。バシャーモの体が眩い光に包まれていく。バシャーモのバシャーモナイトとメガピアスが反応して、バシャーモはメガバシャーモへとメガシンカした。
 ▼ 451 AYr1xkow/g 18/03/01 13:40:32 ID:PII9RpSI [1/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「バシャーモ、ストーンエッジ!」

メガバシャーモが鋭い岩をマリルリに突き刺した。マリルリより素早いメガバシャーモは、わざわざ身を守って一ターンやりすごす必要もない。呆気なく倒れたマリルリの横で、メガバシャーモは素早く足踏みをしてかそくした。

「く……っ、バンギラス、行くぞ!」

パロレはバンギラスを繰り出した。もうステルスロックを気にしている余裕さえない。

「バシャーモ、ばかぢから」

メガバシャーモは凄まじいばかぢからを発揮してバンギラスを攻撃した。バンギラスが力なくその場に倒れる。そういえば、アルセアさんのポケモンたち、前と技が変わってるなぁ……。バンギラスの体が倒れていく姿がスローモーションのように見えている間、パロレはふとそんなことを考えた。

メガバシャーモは全力を出して少し疲れたのか、荒い息をしていた。こうげきもぼうぎょも少し下がっているに違いない。この隙に決めなければ、負けてしまう。もうパロレには、リザードンしか残っていないのだ。まひしている上に、ステルスロックでまたダメージを受けてしまうけれど、前に進むしかない。

「バンギラス、お疲れ」

パロレはそう言ってバンギラスをボールに戻すと、勢いよくリザードンを繰り出した。

「リザードン!君に決めた!!」

そして、パロレはメガバングルに触れた。リザードンのリザードナイトXとメガバングルが反応し、リザードンはメガリザードンXへとメガシンカした。

負けない。負けたくない。今回も、勝ってみせる!
 ▼ 452 AYr1xkow/g 18/03/01 13:42:18 ID:PII9RpSI [2/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「バシャーモ!ストーンエッジ!」

少しくらい威力が下がっても、メガバシャーモの攻撃はとても強烈だった。鋭い岩に貫かれたメガリザードンXは、咆哮を上げてその場にのたうち回った。

しかし、メガリザードンXはパロレを悲しませまいとギリギリのところで持ちこたえていた。パロレはもう泣きそうだった。メガリザードンXは、パロレのためにここまで頑張ってくれている。一人と一匹の、深い絆のなせる技だ。

「リザードン!いいよ!かっこいいよ!」

パロレが声を張り上げる。すると、メガリザードンXは更に体を奮い立たせて、もっとパロレに褒めてもらおうと自力でまひを治してしまった。

「……!リザードン!もう、本当にお前は最高だ!」

パロレは目を輝かせて、相棒を見つめる。

アルセアのメガバシャーモを倒すことができれば、まだ希望はあるかもしれない。バトルは最後まで、何が起こるか分からないのだ。

「ぼくたちの絆を、アルセアさんに見せるぞ!リザードン!エアスラッシュだ!」

「リザァアー!」

メガリザードンXは咆哮を上げると、空をも切り裂く風の刃でメガバシャーモの体を切り裂いた。

「シャモ……ッ!」

メガバシャーモが鋭い鳴き声を上げた。メガバシャーモの体がふわりと浮き上がり、それから床に叩きつけられる。

やった!パロレは思わず拳を握った。最強の敵を倒した。あとは、もう少しだけ頑張れば……。

しかし、よく見るとアルセアは微笑んでいた。アルセアの視線は、倒れているメガバシャーモへと注がれている。

「シャ……モ……ッ!」

「え……!?」

パロレは驚きの声を上げた。メガバシャーモは、メガリザードンXのエアスラッシュを耐えきって、再び立ち上がったのだ。

「ポケモンとの絆が深いのは、あんただけじゃないってことだよ」

アルセアはそう言い放つと、悪戯っぽく笑った。

そうだ。彼女たちは、引き離され、記憶を奪われ、過酷な運命に翻弄されても、それを力を合わせて乗り越えてきた、パロレとリザードンと同じように、アルセアとバシャーモも最高のパートナーなのだ。どちらかだけがすごいなんて、そんなことはありえない。

「バシャーモ!」

「シャモッ!」

二人の呼吸は、ぴったりだった。その瞬間、パロレは生まれて初めて悟った。

自分が、負けるということを。

「ばかぢから!」

「シャーモッッッ!!!」
 ▼ 453 AYr1xkow/g 18/03/01 13:43:29 ID:PII9RpSI [3/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
渾身の力で蹴りつけてきたメガバシャーモによって、メガリザードンXの体はありえないくらい吹っ飛び、そのまま床に叩きつけられて気を失った。

「結局私が一番強くてすごいんだよね……なんちゃって」

アルセアはそう言ってパロレを見下ろした。やはり、あの厳しいコルネッホに認められ、アモルで百年ぶりにメガシンカを使うことを許されたトレーナーの力は伊達じゃない。もはやその姿は王者の貫禄さえある。

「リザードン……ごめんな。ありがとう……」

パロレはメガリザードンXをボールに戻した。その間、アルセアはメガシンカを解いてリラックスしているバシャーモの体を優しく撫でて、乱れた毛並みを整えてやっていた。アルセアは、見たことがないくらいに穏やかな表情を浮かべている。

パロレは唇を噛みしめてアルセアの元に近づく。アルセアはそれに気がつくと、バシャーモをボールに戻した。

「悔しい……」

パロレは思わず口に出して呟いていた。それを見てアルセアは微笑む。

「そう、それ。それが大事なんだよ。私も、あんたに教えてもらった」

「……はい」

パロレは唇を尖らせてそう言った。

「でもやっぱり……めちゃくちゃ楽しかったです。アルセアさんの言ってた通り、負けたことは悔しいけど、バトルに後悔なんて、ひとつもない」

パロレが俯いてそう言うと、アルセアは頷いた。

「でしょ?それを忘れないで、またここに来なよ。何度でも叩きのめしてあげるから」

パロレが思わず顔を上げて目を見開くと、アルセアはいい顔で笑っていた。どうやら、一度勝っただけだというのに、パロレは眠っていた彼女の闘争心に火をつけてしまったらしい。

「……私たち、いいライバルになれるんじゃない?」

アルセアが言う。パロレは頷いた。

「……はい。ぼくもそう思ってました!本当に、次こそ絶対に負けませんからね!」

「言うじゃん」

アルセアのその言葉に、パロレは初めてアルセアに会った時に聞いた感情のこもっていない「やるじゃん」を思い出して、思わず震え上がった。
 ▼ 454 AYr1xkow/g 18/03/01 13:44:26 ID:PII9RpSI [4/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「……ああ……ひとつ提案なんだけど……」

アルセアが思い出したように口を開く。

「今度は、バトルコロッセオで戦うってのはどう?あそこはリーグとはちょっとルールが違うし、楽しめそうだと思うんだけど」

バトルコロッセオには、まだ行ったことがない。パロレはキラキラと目を輝かせた。

「はい!ぜひ、やりたいです!」

パロレの様子を見て、アルセアはおかしそうにくすりと笑った。

「じゃ、決まり」

アルセアの顔は、嬉しそうに見える。

「明日は予定があるから……明後日。バトルコロッセオの前で集合ね」

「はい!わあ……楽しみです!ありがとうございます!」

「それはどーも」

アルセアは、すっかりいつものぶっきらぼうな様子に戻っていた。パロレは、バトルをしている時の情熱的な彼女の姿の方が好きだったが、まあそれは仕方ない。

「じゃあ……また、明後日に。今日は、ありがとうございました!」

パロレがしっかりと頭を下げると、アルセアは少しだけ笑って小さく手を振った。

「ん。バイバイ」
 ▼ 455 AYr1xkow/g 18/03/01 23:37:36 ID:CwlvJfq. [1/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
二日後、パロレはアスールジムへとやってきていた。

今回はバトルのためではない。バトルコロッセオのある、フェルマータ島に行くためだ。

ヒマワリにちょっと待ってろと言われたパロレは、船の準備が整うのを、ダ・カーポ島の美しい海を眺めながら待っていた。

アモルはいいところだ。気候は温暖で、どの街の景色も美しく、料理もとてつもなく美味しい。ついでに、綺麗な人もいっぱいいる。

「あれ……?パロレですよね」

ふと後ろから声が聞こえてきて、パロレは振り向いた。そこにはユーリが立っていた。

「あ、ユーリ!どうしたの?」

ユーリはパロレの隣にやってくると、

「バジリコさんと、バトルコロッセオでマルチバトルに挑戦しようという約束をしたんです。自分以外の人とタッグを組んで勝ち進むことって、とても難しくていい訓練になると思うので……」

真面目な声でそう言うユーリに、パロレは笑いかけた。

「そうだったんだ!ぼくも大体同じ感じだよ。アルセアさんと戦う予定。昨日はアルセアさん予定があったみたいだから今日になったんだ。こっちはシングルバトルだから、敵同士だけどね」

「そうだったんですね。バジリコさんも昨日は用事があると言ってました。……お二人、すごく仲がいいですよね」

「ん?あー、だって、幼馴染だもんね!」

よく分かっていない様子のパロレの言葉に、ユーリは曖昧に微笑んだ。

「あ!もしかして!おーい、パロレー、ユーリー!」

またも聞き覚えのある声がして、パロレとユーリは同時に振り向いた。クオレが、大きく手を振ってこちらへとやってきている。

パロレとユーリは思わず顔を見合わせて、それから笑った。
 ▼ 456 AYr1xkow/g 18/03/01 23:38:55 ID:CwlvJfq. [2/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
「おはようございます、クオレ」

「クオレは、どうしたの?」

パロレの隣にやってきたクオレは、ニコニコ笑顔で答える。

「あのね!フェルマータ島には、本土にもダ・カーポ島にもいないポケモンがいっぱいいるんだって!だからねぇ、そのポケモンたちにアキニレさんと会いに行くの!」

「えっ?ぼく、そんなの聞いてないよ!」

パロレが思わず素っ頓狂な声を上げた。

「パロレはどうせバトルに夢中でポケモンゲットは二の次だからなって、アキニレさん言ってたよ!」

クオレがからかうように言う。パロレは少し気まずそうな顔をした。確かに、ここ最近は新しくポケモンを捕まえていない。

なんだか、急に笑えてきた。

いつかはそれぞれ違う世界に行ってしまうのかもしれないけれど、ぼくたちはまだ一緒だ。結局一緒なんだ。パロレはそう思った。進む道が違くとも、パロレとクオレとユーリは仲間だ。それは、決して変わらない。

「よう、待たせたな!おっ、全員集合してんな」

そう言って、準備を終えたヒマワリが戻ってきた。

「よーし。お前ら、アタシの船に乗せてやる!未知の世界に向かう覚悟は出来てっか?」

ヒマワリの言葉に、三人は同時に頷いた。

「はいっ!!」
 ▼ 457 AYr1xkow/g 18/03/01 23:39:41 ID:CwlvJfq. [3/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
まだまだ、やりたいことはたくさんある。

まずはバトルコロッセオへの挑戦だ。

それに、落ち着いたら、またポケモンを捕まえよう。きっと、新しい発見がたくさんあるはずだ。

アルセアには、少なくとも一回……いや、二回は勝たないと気が済まない。

そして、いつかはアモル地方の外に出て、見知らぬ地方を旅してみたい。

ワクワクすることだらけだ。未来には、希望が待っている。

辛いことや苦しいことも、たくさんあるだろう。でも、ポケモンたちといれば、怖くない。大丈夫だ。

そして、いつか結婚して子供ができたら、こう言ってあげよう。ぐずぐずしていたら、冒険は始まらないのだから。

「ほら、早く起きなさい!」って。


〈了〉
 ▼ 458 ランブル@しめつけバンド 18/03/01 23:41:12 ID:c2AhdS86 NGネーム登録 NGID登録 報告

素晴らしい
オリジナル地方で1番好きだった
 ▼ 459 ースター@ヨプのみ 18/03/01 23:41:34 ID:patmvBUg NGネーム登録 NGID登録 報告
乙!
ゲームでやりたいこれ
 ▼ 460 イゼル@ミュウツナイトX 18/03/02 00:04:57 ID:eSuYYV0U NGネーム登録 NGID登録 報告
アルセアさん好き
 ▼ 461 AYr1xkow/g 18/03/02 00:15:13 ID:UJkF2XOw NGネーム登録 NGID登録 報告
読んでくださった皆様、ありがとうございました!
今回は、前に書いていたSSのリメイクを書くにあたって、殿堂入り後のストーリーも追加してみました。ちなみにこのストーリーは、パロレをジムリーダーたちと再戦させたい→それならジムリーダーもメガシンカを使った方が盛り上がるよなぁ…→でもメガシンカを使える人は今のところ一人しかいないっていうのが鍵だからどうしよう?→それじゃあみんながメガシンカを使えるようになる話を作ろう!というような経緯で出来ました。
キャラの名前や性格、ストーリーも、「本当にゲームに出てきそう!」と思えるようにしました。これらの設定を考えるのもとても楽しかったです。読んでくださった皆様にも楽しんでいただければ幸いです。
最後までお付き合いくださり、本当にありがとうございました!
 ▼ 462 タージャ@インドメタシン 18/03/02 13:41:39 ID:suSbxSeA NGネーム登録 NGID登録 報告
博士が黒幕という展開をSSで見られるとは思わなかった
 ▼ 463 クライ@エレベータのキー 18/03/14 13:27:42 ID:XggVqwDA NGネーム登録 NGID登録 報告
こういうオリジナル地方もありだな
 ▼ 464 ンジャラ@せんせいのツメ 18/03/28 10:44:16 ID:P3BCgpXc NGネーム登録 NGID登録 報告
今読み終わった…面白かった
今さらだが乙
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