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【SS】ママ「ほら、早く起きなさい!」【リメイク】

 ▼ 1 AYr1xkow/g 17/08/18 09:07:23 ID:z1am0BAU NGネーム登録 NGID登録 報告
こんにちは。私はスリジエ。みんなからはポケモン博士と呼ばれているわ。今日は私のネット講座を受けてくれてありがとう。楽しい時間にしましょうね。

ポケットモンスター、縮めてポケモン。この世界には、そんな不思議な生き物がたくさんいます。私たち人間は、彼らポケモンと共に生きています。一緒に遊んだり、力を合わせて仕事をしたり、そして時にはポケモン同士を戦わせてバトルをしたり……。そうやって私たちはポケモンと絆を深め合っているの。そんな彼らをよく知るために、私は研究をしています。

さて、ではそうね、今日の講座を受けてくれたあなたにも軽く自己紹介してもらおうかしら。えーっと、写真を見せてもらってもいいかしら?

ありがとう!ふんふん。あら、どこか見覚えのある顔だわ。お名前はなんていうの?

パロレくんっていうのね!素敵な名前ね。

それにしても、パロレくん……?あ!思い出したわ!

あなた、アキニレくんの弟くんね!なんだ!びっくりしちゃった。

知ってるとは思うけれど、アキニレくんは私のお手伝いをしてくれているのよ。今はちょうど出かけているけど、明日の朝早くに、出張から帰ってくるはずだわ。

……パロレくん!きっとあなたなら強いトレーナーになれるわ。そんな気がするの。ポケモンとの絆を深めて、思う存分楽しんでね!

さあ、ポケットモンスターの世界へ!
 ▼ 324 AYr1xkow/g 17/12/01 21:07:32 ID:KxSP1YFw NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
たまにリュウさんがクチナシおじさんに似てると言われるので、ちょっとした補足です
前スレでも触れたのですが、元々リュウさんは警察官の予定でした
「正義を知るためにはまず悪を知らなければならないのだよ」と言ってあくタイプを使う、頼りにされてるちょっとお堅いキャラとして設定していたのですが、なんとなく構成を考えているうちに発売されたサンムーンであくタイプ使いの警察官キャラが出てしまい慌てて設定を変更しました
そこで、あくタイプを使うものの本人は根っからの善人として描くつもりだったリュウさんを、むしろ本人もちょっと悪い人にしちゃえと考えこのようなキャラにしました
私はクチナシおじさんはどちらかと言うと善人だと思っており、あまり似せたつもりはなかったのでちょっと意外でした 読んでくださっている皆さんの意見を聞くのは本当に面白いです
リュウさんはクチナシおじさんより陽気で飄々としていますが、クチナシおじさんほど優しくはないです
イメージとしては強いて言うならロケット団幹部のラムダをもっと渋くした感じです
蛇足だとは思いますが、裏話もしてみたかったのでこんなお話をしてみました
まだまだ続きますがどうぞよろしくお願いします!
 ▼ 325 マゾウ@ルビー 17/12/01 21:11:48 ID:u53SmuzE NGネーム登録 NGID登録 報告
>>324
モデル地方とちょい悪オヤジの肩書きからしてパンツェッタジローラモを渋くしたイメージだった
支援
 ▼ 326 AYr1xkow/g 17/12/02 19:35:48 ID:TS/qicis [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
真ん中のパネルに進んだパロレとアキニレは、出来るだけ急いで奥へと向かった。いくつかワープパネルを経由して少し広い部屋にやってくると、少し先に下っ端団員が二人待ち構えているのが見える。

「しょうがないな。……よし、パロレ!覚悟はいいか?」

「もちろん!」

アキニレの声に、パロレは頷く。二人は顔を見合わせると、奥へと踏み出した。すると、下っ端たちはパロレに気がついたようだった。

「お、お前っ!あの時のガキだな!」

下っ端のうち一人が鋭い声を上げる。

「え……誰だっけ」

パロレが言うと、下っ端はずっこけた。

「何度か戦ってるだろうが!セーニョ川で会った俺だ!」

下っ端が喚く。パロレはようやくなんとなく思い出した。「あー……」とぼんやりと声を上げる。

「ほんとに思い出してんのかお前!?……まあいい!今度こそ倒してやるぜ!」

下っ端が意気込む。もう一人の下っ端も声をあげた。

「正直状況はよく分かってないけど、侵入者には帰ってもらうわ!」

下っ端二人はそう言うと同時にモンスターボールを投げようとする。パロレとアキニレは構えた。

「んにゃろう行くぞグラエナ!」

「行くわよアブソル!」

下っ端たちがポケモンを繰り出す。

「行くぞエーフィ!」

「行け、リザードン!」

兄弟二人もポケモンを繰り出した。

「エーフィ、マジカルシャイン!」

アキニレが指示を出す。エーフィは眩ゆい光を放った。光はグラエナとアブソルの二匹に降り注ぎ、二匹は一撃で倒れてしまった。

「だからもうなんだってんだ!」

「状況がよく分からないまま負けたわ!」

あまりにも呆気ない勝負に、下っ端二人が頭を抱える。

「さすがチャンピオンの兄!」

パロレがふざけてそう言い、親指を立てる。アキニレは苦笑しつつ「こら」と優しくパロレをたしなめた。

「大したことないさ。さあ、急ごう!」

「うん!」

そう言って頷くパロレはちょっぴり新鮮な気持ちだった。兄がバトルをするところを見たのは初めてだったからだ。
 ▼ 327 AYr1xkow/g 17/12/02 19:39:35 ID:TS/qicis [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「グレイシア、サンキュ。もう大丈夫そうだね」

「ライチュウ、お疲れ様!そうですね!」

クオレとアルセアは下っ端とのバトルを何度か繰り返して確実に進んできた。廊下の先は静かだ。もうこの部屋には団員はいないだろう。

奥にワープパネルが見える。

「なんか、重要な部屋に繋がってそう!」

「とりあえず、進むしかないね」

クオレとアルセアはそんな会話を交わして、ワープパネルへと足を踏み出した。

それとほぼ同時に、もう二人のトレーナーたちも戦いを終えようとしていた。

「ブラッキー、戻れ!ユーリくん、突っ走るよ!」

「はい!コジョンド、お疲れ様です!」

追っ手の団員たちと慌ただしくバトルをしながら逃げていた二人は、ポケモンをボールに戻して走るスピードを上げる。奥にワープパネルを見つけたのだ。

いかにもな場所に配置されたワープパネルに向かって、二人は足を伸ばした。

そして、

「……」

「……」

「……」

「……」

四人が無言で顔を見合わせる。左のワープパネルに進んだクオレとアルセアは右のワープパネルの上に、右のワープパネルに進んだユーリとバジリコは左のワープパネルの上に立っている。

なんと、入口に戻ってきてしまったのだ。

アルセアが黙って肩をすくめる。クオレは頬を膨らませた。バジリコは気まずそうに頭を抱え、ユーリは腕を組む。

「……しょうがない。行くよ」

アルセアのその言葉を皮切りに、一同は心なしか疲れた様子で中央のワープパネルへと進んだのだった。
 ▼ 328 AYr1xkow/g 17/12/06 13:08:26 ID:TnYEBwsc [1/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
パロレはアキニレと共にバトルを何度か繰り返しながら進んでいった。最終的にパロレがたどりついたのは、以前リザードンを探しに来た時に訪れた最奥のスリジエの部屋とは別の部屋の前だった。そこには、アーリオが退屈そうに佇んでいる。どうやら、パロレたちが進んだのは正解ルートだったようだ。

「お……来た来た」

アーリオはパロレを見てほくそ笑む。パロレは体を強張らせた。

「マリナーラにここは通すなって言われたんだよね。まあ、君ならもう分かってるだろうけど……通りたいなら、俺とバトルしてよ」

アーリオはそう言ってモンスターボールを構える。パロレはアキニレに目配せした。アキニレは小さく頷き、数歩後ろに下がった。ここは、ぼくがやる!

「行け!ムクホーク!」

「バンギラス!頼んだよ!」

ムクホークはギラギラとした目でこちらを睨みつけてくる。

「ムクホーク、インファイト!」

ムクホークは守りを捨て、バンギラスの懐に凄まじい勢いで突撃してきた。たとえタイプは一致していないにしても、いわタイプとあくタイプであるバンギラスには効果は抜群だ。バンギラスは今にも倒れそうによろめいたが、パロレを悲しませまいとギリギリで踏みとどまった。

「バンギラス、いいぞ!ストーンエッジだ!」

「バンギィ!」

バンギラスは尖った岩をムクホークに突き刺した。バンギラスの攻撃は急所に当たり、ムクホークは叫び声を上げて床に落ちた。

「やった!バンギラス、あとはゆっくりしてていいよ。ありがとう」

相手の攻撃を持ちこたえただけでなく急所に当てて一撃で倒してくれたバンギラスに、労いの言葉をかける。しかしバンギラスは首を横に振った。

「え、まだやれる?……よし!分かった!」

パロレが頷く。アーリオは次のポケモンを繰り出してきた。ゴーレムポケモンのゴルーグだ。

「バンギラス!かみくだく!」

パロレの指示を聞いたバンギラスはゴルーグの元まで近づくと、がぶりと思いきり噛みつき強く食らいついた。ゴルーグは鈍く重々しい音を立てて倒れた。
 ▼ 329 AYr1xkow/g 17/12/06 13:09:21 ID:TnYEBwsc [2/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「さすがチャンピオンだね。次行くよ!ブロスター!」

「バンギラス、お疲れ!行け!ロズレイド!」

アーリオがブロスターを繰り出す。パロレもポケモンを入れ替えた。

「ロズレイド!エナジーボールだ!」

ロズレイドはエネルギーの塊をブロスターに放った。ブロスターは吹っ飛び、壁にぶつかってそのまま戦闘不能になってしまった。

「呆気ないなぁ。まあいいや。次だ!行け、ジャラランガ!」

アーリオが次に繰り出してきたのは、無数の鱗に覆われたドラゴンタイプのポケモン、ジャラランガだ。

「よし、ロズレイド、ありがとう!マリルリ!頼んだ!」

「マーリィ!」

パロレがポケモンを入れ替えると、マリルリは力強く鳴き声を上げた。

「ジャラランガ、アイアンテール!」

ジャラランガは、鋼のように硬くなった尻尾をマリルリに強く打ちつけた。マリルリは悲鳴を上げてその場に転がる。効果は抜群だ。しかし、マリルリはまだ大丈夫そうだ。

「マリルリ!じゃれつく!」

マリルリはジャラランガの元に走り、じゃれついた。マリルリの可愛らしい動作に惑わされたジャラランガは、そのまま倒れてしまった。

「よっしゃ!」

ここまで順調だ。パロレが思わずそう声を上げると、ジャラランガをボールに戻したアーリオはフンと鼻を鳴らして肩をすくめた。

「さすがだよ。ポケモンの力を最大限まで引き出している……君は才能あるトレーナーだね」

アーリオはそう言って目を閉じる。

「でも……」

そして、アーリオは目を開いた。先程まではどこか冷めたような表情をしていたアーリオの目は、力強くこちらを睨みつけている。

「舐められてもらっちゃ困るんだよね!行くよ!ルカリオ!」

アーリオはそう叫んでルカリオを繰り出した。

「ぼくだって!行け!リザードン!」
 ▼ 330 AYr1xkow/g 17/12/06 13:10:24 ID:TnYEBwsc [3/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アーリオは、腰につけたベルトのバックルに触れた。そう、キーストーンだ。ルカリオのルカリオナイトとアーリオのメガバックルが反応する。そしてルカリオの体からまばゆい光がほとばしり、ルカリオはメガルカリオにメガシンカした。

パロレも負けじとメガバングルに触れる。リザードンのリザードナイトXとパロレのメガバングルが反応した。リザードンの体もまた、光に包まれていく。

「リザァー!」

リザードンは、メガリザードンXにメガシンカした!

「メガシンカを扱う者同士……真剣勝負と行こうじゃないか!」

アーリオは声高らかに言い、メガルカリオに指示を出した。

「ルカリオ、りゅうのはどう!」

メガルカリオが波動を操り、大きな衝撃波を巻き起こしてメガリザードンXに攻撃した。メガシンカしてドラゴンタイプとなったメガリザードンXに効果は抜群だ。メガリザードンXはよろめいたが、体勢を整えた。

「リザードン、決めるぞ!フレアドライブだ!」

メガリザードンXが答えるように咆哮を上げる。そして、体に炎を纏ってメガルカリオに突進した。

炎に包まれたメガルカリオは苦しそうにしている。攻撃の反動でダメージを受けたメガリザードンXも、限界が近そうだ。二匹はどうにか体を起こして睨み合っていた。

「リザードン!」

パロレの声が届いたのだろうか。メガリザードンXは、顔を上げて強く頷き、持ちこたえた。それを見届けたメガルカリオは、とうとう耐えきれずに倒れてしまった。

「……っ!」

アーリオは悔しそうに歯を食いしばっていた。パロレは少し意外に感じた。彼もまた、一人のポケモントレーナーだったというわけだ。

「……しょうがない。実力差は明確なようだね」

アーリオは溜息をついてメガルカリオをボールに戻した。それから、パロレをじっと見つめる。

「君は、なかなか興味深いトレーナーだね……」

アーリオはそう言うと、にっと笑った。

「でも残念ながら、俺は負けたからと言ってここを通してあげるほど素直じゃないんだよね」

「なんだって!?」

パロレが素っ頓狂な声を上げる。

「お前!約束が違うぞ!」

アキニレも前に出てきてそう言った。

「おー、怖い怖い。君たち、バトルしか頭にないのかい?もう少しスタイリッシュに……ん?」

アーリオは肩をすくめて小馬鹿にしたようにそう言っていたが、何かを見つけて押し黙った。
 ▼ 331 AYr1xkow/g 17/12/06 13:11:23 ID:TnYEBwsc [4/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「パロレ!大丈夫?」

「お待たせしてすみません!」

背後からそんな声が聞こえてくる。パロレが振り向くと、クオレとユーリがこちらに走ってきていた。その後ろにはもちろん、アルセアとバジリコもいる。

「……」

アーリオは黙って四人を見つめていた。

「どういう状況?」

バジリコが尋ねる。

「往生際の悪い奴がいるっぽいよ」

アルセアが呆れ気味にそう言った。

「……やれやれ」

アーリオがかぶりを振る。

「六対一は、さすがに分が悪いな」

アーリオはそう言った。そして、塞いでいた部屋の扉から離れる。

「通りなよ。まあ、時間稼ぎにはなっただろうしね」

アーリオは意味ありげに言う。一同は顔を見合わせた。

「右のパネルと左のパネルには、何かあったか?」

アキニレが問う。

「何もなかった」

アルセアとバジリコが同時に言った。その声はなぜかとても疲れているように聞こえる。

「そうか……分かった」

「それじゃみんな……行くよ!」

パロレが言う。一同は頷いた。

パロレは、アーリオが阻んでいた扉をゆっくりと開けた。
 ▼ 332 AYr1xkow/g 17/12/07 16:54:58 ID:LTo9wvMg [1/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
扉を開けて部屋の中に進むと、そこにはマリナーラがいた。マリナーラはパロレたちが入ってきたことに気付き、くるりとこちらを向く。パロレたちがやってくることは予測済みだったのか、怒っている様子はない。

マリナーラの立っているその奥には、大きなカプセル型の機械があった。アジトの入口にあるアウェイクマシーンとは異なるモデルのものだ。アウェイクマシーンより更に大きく無骨なそれの中で、セレビィが眠っている。

「セレビィ!」

「はい、ストップぅ」

大声を上げて駆け出そうとしたパロレを、マリナーラが制止した。

「まだ起動してないから安心しなよぉ。つーか、うるさい」

マリナーラは余裕の笑みでそう言った。

「一緒に見よーよ」

一体どういうことだろうか。マリナーラは再び機械に向き直った。

「この機械はねー、アウェイクマシーンよりもっと前にボスが開発したやつ。ポケモンを覚醒させる技術なんてまだ持ってなかった頃に、ポケモンの力を完全に制限して人間の意思通りに動かせるようにって作ったコントロールマシーンの試作品だよぉ」

マリナーラは淡々と言ったが、その内容は恐ろしいものだった。

「今とは正反対のこと考えてたんだねぇ、あの人。結局は強大な力を自分の思い通りに使いたかったってことだよねぇ」

マリナーラは呆れ気味に言った。一同は黙って聞いている。

「ま、マリナーラもその気持ち分からんでもないけどねー。だってさーあ」

そう言うマリナーラの手は、機械に取り付けられたスイッチのようなものに吸い寄せられていく。

「セレビィを自由に操ることができるようになったらさ、いつでもどこでも!時渡りさせられるもんねぇ!」

「やめろ!」

パロレが叫んだが、遅かった。マリナーラがスイッチを入れたマシーンは仰々しい音を立てて起動してしまった。中に閉じこめられたセレビィの顔が、歪む。

「フィィイイイイイ!」

セレビィの苦しそうな声が部屋に響いた。

「セレビィ!」

パロレは慌てて駆け出し、マシーンに近づいた。どうにかして止めなければ!しかし、パロレが触れる前にマシーンは大人しくなった。セレビィの悲鳴も止み、セレビィはマシーンの中でぐったりとしている。

「……?」

「な、何が起こってるの……?」

クオレが囁く。マリナーラはマシーンを一瞥すると舌打ちした。

「結局ダメなのかよ。使えねー」

どうやら、マシーンには不備があるようだ。マリナーラの思惑通りに行かなかったことに、パロレはホッと安堵の息を漏らす。しかし、マリナーラはそんなことで諦めるような奴ではなかった。
 ▼ 333 AYr1xkow/g 17/12/07 16:56:41 ID:LTo9wvMg [2/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
「この野郎!」

マリナーラは唐突にそう叫んで、カプセルを思いきり叩いたのだ。

「!?」

一同はギョッとしてマリナーラを見つめる。

「いい加減にしろよ!言うこと聞いてさっさと過去に連れていけ!この役立たずが!」

ゴッ、ゴッ、と、鈍い音を立ててカプセルを何度も強打する。中にいるセレビィは完全に怯えていた。

「やめろ!」

パロレがマリナーラを押さえつけようとした。見ればカプセルは割れており、マリナーラの掌に破片が突き刺さって血が出ている。

「……!」

パロレが思わず息を呑む。すると、

「その辺にしときな」

ふとそんな声が聞こえ、マリナーラの動きが止まる。パロレも止まって声の主の方を見た。

「……!?リュウさん!?」

「な、なんでここに!?」

そこにはリュウガンが立っていた。スパイス団と何か関係がありそうな、ちょっぴり怪しいメランジムリーダーだ。

「……なんかごちゃごちゃやってるようだったからよ、様子を見に来たんだよ」

リュウガンはそう言って、ひらひらと手を振りながらこちらへと近づいてきた。

「リュウさん、あなた本当何者なんですか?」

アキニレが驚きを隠しきれていない声で言う。リュウガンはへらりと笑うと、

「おいちゃんはねえ、スパイス団の創立者の子孫なんだよ。だからこいつらにちょっとだけなら干渉できるってわけ」

そう言ってみせた。

「ええ!?」

一同が驚愕の声を上げた。状況を飲みこめていないアーリオにマリナーラとバジリコ、それからユーリは特に反応は示さなかった。
 ▼ 334 AYr1xkow/g 17/12/07 16:59:25 ID:LTo9wvMg [3/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
「まあ、面倒ごとは嫌いだからよ、ここんとこずっと最低限の関わりしか持たないようにしてたんだ。だからまさかバジリコが幹部になってたとか俺は全然知らなかったわけだ……ま、バジリコは俺のこと知ってたみたいだけどな」

リュウガンはあっけらかんとしてそう言うと、近くにあった椅子に勝手に腰かけた。

「アルセアちゃん、悪かったなぁ」

リュウガンがそう言ってアルセアを見上げる。

「え……いえ……」

アルセアの歯切れは悪い。そう答えることしかできないのだ。

「俺としちゃ組織は別にどうでもいいんだが、そういうわけにも行かなくてな。子孫ってだけで俺にも責任がのしかかってくるからよ……上手く立ち回ってかなきゃなんねえ」

パロレたちは緊張した面持ちでリュウガンの話を聞いていた。リュウガンの意図が読めない。一体、何のために今ここに来てこんな話をし始めたのだろうか。

「嬢ちゃん、騒ぎを起こすのも程々にしてくれよ」

リュウガンがマリナーラに鋭く言葉を投げかける。

「あの女の時は、やったことはともかく範囲は小規模だったから表に知られずに済んだんだ。そんな城のもん壊したり盗んだりなんかされたら、困っちまうよ」

「お前には関係ねーだろ」

マリナーラは手に刺さった破片を引き抜いて床に投げ捨てながら低い声で言った。パロレはその痛々しい光景を見ていられず目を逸らした。どうやら、マリナーラはリュウガンのことは信用していないらしい。

「そうかよ」

リュウガンは肩をすくめてそう言った。

「お前さんの喜びそうなことを教えてやろうと思ったんだけどな」

リュウガンのわざとらしい言い方に、マリナーラは顔を上げて眉をひそめる。

「何?」

マリナーラが素っ気なく尋ねる。リュウガンはニヤッと笑った。

「俺は、スパイス団の創立者の末裔だ」

「それさっきも聞いたし、つーか知ってるしぃ。何なの?」

マリナーラは明らかに苛立っている。

「まあまあ、急かさずに聞いてくれよ。……スパイス団は、元は王家への反乱軍だった。この辺、お前さんたちもなんとなく知ってるだろ?」

パロレたちは頷いた。

「じゃあ、一体誰が反乱を起こしたのかって話だ」

一同は、息を詰めてリュウガンを見つめ、話の続きを待っている。リュウガンはたっぷりと間を取り、やがて口を開いた。

「メローネだよ」
 ▼ 335 ミッキュ@きのみぶくろ 17/12/08 14:53:42 ID:emvqQOoM NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
個人的にこれプレイしたい
 ▼ 336 AYr1xkow/g 17/12/14 01:09:07 ID:GvNXn4sE [1/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「え!?」

「三英雄の一人のメローネが、反乱軍を設立した。つまり俺は、メローネの子孫ってこと」

一同の驚きの声を上げるのを無視して、リュウガンは淡々と続けた。リュウガンはマリナーラの方を見ると、

「三英雄の末裔の行方が気になる……とか抜かしてたみたいじゃねえか。メローネの末裔はここにいるぜ」

ニヤニヤと笑いながらそう言った。マリナーラは口を大きく開けて唖然としている。

ユーリ、アーリオ、そしてリュウガン。今ここに、三英雄エシャロット、アングリア、メローネの子孫たちが集っているというのだ。

「……まあ、俺も事実としてそのことを知ってるってだけで、詳しいことは知らん。先祖がどんな人だったのかなんて知る由もねえしな」

リュウガンはそう言って頭を掻いた。

パロレは黙って考えこんでいた。一体なぜ三英雄たちが敵対するようになったのかは分からないが、メローネが反乱軍を作ったというのなら、前にイーラ火山で見たあの過去も辻褄が合うような気がしてくる。

「マリナーラ。お前さんが疑問に思ってるように、三英雄がいつまでも仲良しこよし集団じゃなかったことは確かだ。実際にメローネはエシャロットへの反乱を起こしたわけだからな。とりあえず、その情報だけで大目に見てくれねえか?問題起こすのはもうやめてくれよ」

「……」

マリナーラは黙ってリュウガンを見つめていたが、

「……馬鹿じゃないの?おっさん、取引したことあるぅ?成立するまで自分の手札は見せちゃダメでしょ。この状況でマリナーラが断ったらおっさん損じゃん」

挑発的な口調でそう言った。

「そうだな」

リュウガンはそう言ってから、ニヤッと笑った。

「でもよ、俺の勝ちだろ?」

「……」

マリナーラは再び黙りこみ、唇を噛みしめてリュウガンを睨む。

「……いーよ、分かった。乗ってやる」

マリナーラはそう言うとぷいと背を向けた。そして、

「メローネの残したものが見つかれば、きっと真実が分かる……心当たりがないわけじゃない……」

ぶつぶつと何かを呟く。リュウガンは黙ってメローネを見つめている。

「……あは!おっさんサンキュー!」

メローネはそう言って笑うと、アーリオに向き直った。

「じゃ、マリナーラは行きまーっす。バイバーイ!アーリオ、行くよぉ」

「ハイハイ」
 ▼ 337 AYr1xkow/g 17/12/14 01:10:20 ID:GvNXn4sE [2/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「あっ!」

突然パロレが声を上げた。なんと、アーリオはパロレたちがリュウガンとマリナーラの会話に気を取られているうちにセレビィをあの檻の中へと再び閉じこめていたのだ。

モンスターボールが投げられ、バシャーモが飛び出す。アルセアが無言で繰り出したのだ。

「バシャーモ、追――」

アルセアが叫ぶが、間に合わなかった。マリナーラとアーリオは、部屋の奥に隠されていたワープパネルを踏んで部屋を出ていってしまった。

「……」

アルセアは深い溜息をつくと、バシャーモをボールに戻した。

二人がどこに行ってしまったのか、まったく分からない。闇雲に追いかけても無駄だろう。パロレたちは黙ったまま考えこんだ。

「……そういえば」

バジリコが口を開いた。一同がバジリコを見る。

「俺はこのアジトで博士にスパイス団に勧誘されたんだけど……その時あの人はここを『新しいアジト』って言ってた。前のアジトに何かあるのかもしれない」

バジリコのその言葉を聞いた瞬間、アルセアがリュウガンの方を向く。

「リュウさん、前のアジトがどこにあるのかはご存知ですよね?」

アルセアの口調は、「知らないとは言わせない」とでも言いたげだ。
リュウガンはしばらく黙っていた。やがて、やれやれと言いながら椅子から立ち上がる。

「ま、俺も一応中立的な立場にいるんでね。詳しくは教えてやれないけど……」

リュウガンは、相変わらずふてぶてしい笑みを浮かべている。

「ヒントくらいなら教えてやるよ。……前のアジトは、ここにはねえよ。この土地にはな」

リュウガンがそう言うと、あっとクオレが声を上げた。

「ダ・カーポ島だ!」

クオレのその言葉を聞いて、パロレもあることを思い出した。

「あそこ、街にもスパイス団の人がいっぱいいたよね。やっぱり関係あったんだ!」

クオレが言う。パロレはうんうんと頷いた。

「ダ・カーポ島に行って、何かないか探してみよう」

「ダ・カーポ島にある街は、スパイス団の経営する乗船所のあるリュイタウンに、それぞれジムのあるパルガンシティのアスールシティ……また三手に分かれましょうか」

ユーリがそう提案した。
 ▼ 338 AYr1xkow/g 17/12/14 01:12:35 ID:GvNXn4sE [3/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「ぼく、リュイタウンに行くよ」

パロレがそう言った。

「ちょっとだけあてがあるんだ……バジリコさん、一緒に行ってもらってもいいですか?」

「俺?なんで……」

バジリコはそこまで言うと一瞬面倒そうな顔をした。それから、

「ああ……分かった。オッケー、一緒に行こうか」

バジリコはそう言った。クオレとユーリも、こっそりパロレの顔を見て気まずそうに笑う。

三人は、仕事をサボってバジリコのことを話していたスパイス団の下っ端団員たちを思い出していた。どうやら、バジリコ本人も彼らにうんざりしていたようだ。アルセアとアキニレが不思議そうに首を傾げた。

「えっとー……、わたしパルガンシティでもいい?」

クオレがちょっぴり遠慮気味に言う。

「いいですよ。ではオレは、アスールシティに行きますね」

「クオレ、どうしたの?なんかあるの?」

クオレの様子にどことなく違和感を感じたパロレは疑問に思ってそう尋ねた。クオレはどこか決意に満ちた表情で、

「あのね、アスールシティに行く日は決まってるの」

そう言ってみせる。パロレはあまりよく分からなかったが、クオレがそう決めたのならそうなのだろう。

「アスールね……」

アルセアが呟く。

「最近はフェルマータ島に行くにも船に乗らなくなっちゃったからな。ちょっと久しぶりにあそこのジムリーダーに挨拶でもしとくべきかな。私、ユーリと一緒に行くわ」

「はい。アルセアさん、よろしくお願いします」

「よし、じゃあクオレちゃん!俺と一緒にパルガンシティだな!」

「はいっ!お願いします!」

六人が二人組を作る様子を、リュウガンは微笑ましく見つめている。

「何ですか?気持ち悪い……」

そんなリュウガンの顔を見たアルセアが気味悪そうに言った。その表情を見ただけでは、冗談なのか本気なのか分からない。

「アルセアちゃん、おいちゃんナイーブだから優しくして」
 ▼ 339 AYr1xkow/g 17/12/14 01:15:44 ID:GvNXn4sE [4/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「まあ俺の言えたことじゃねえけどよ」

リュウガンは少し真面目な顔になってそう言った。

「お前たち、覚悟はあるのか?」

リュウガンが真剣な表情でこちらを見つめてくる。

「何のためにマリナーラを追いかけるんだ?理由もなく危ない世界に突っ込んでいくのは、褒められたもんじゃねえぞ」

リュウガンの言葉にふと一同が黙ってしまったその時、

「チャンピオンとしての責任とか……まあ、そんなのは建前」

アルセアが口を開いた。

「私がアモルで唯一のメガシンカ使いだった時は、色々コルネッホさんに頼まれてた。前にスパイス団が城に来た時も助けを求められたしね。まあ、実際行ったらもう子供がスパイス団を撤退させてたわけだけど」

パロレは少し居心地の悪そうな顔をした。

「でも今回はそんな義理とかそういうのはマジでどうでもよくて……トレーナーとしてというか、もうこれは私個人の意見なんだけど」

アルセアはそこまで言って、軽く息を吸う。

「ポケモンを大事にしない人、大っ嫌いなの」

その言葉に、嘘はなかった。

「ああ……ローザさんに言った通り保護者として付き添い、ってのももちろんあるけどな。やっぱり、このままにはしておけないよな」

アキニレも頷く。

「元同僚としての責任も感じるし……許せないな、あんなの目の前で見たら」

バジリコもそう言った。

「そう!だから、わたしたちでセレビィを助けるんです!」

クオレが力強く言う。

「はい。そして真実を知り、何が正しいのかを、自分の目で見極めるんです」

ユーリも真っ直ぐに前を見つめて言った。

「ぼくたち、みんな自分で行くって決めたんです。覚悟はもうとっくにしてるんだ!」

パロレはそう言い切った。

「……野暮なこと聞いちまったみたいだな」

リュウガンはそう言って、頬を掻く。

「そんじゃ、俺の出る幕はもうないってことだ。気をつけてな」

「はい!」

それからパロレたちはリュウガンと別れ、部屋の奥のワープパネルを介してアジトの入口へと戻った。そして階段を登り、廃工場の前に出る。

アルセア、アキニレ、バジリコは、それぞれそらをとぶことができるポケモンを繰り出した。そして一同は、三手に分かれてダ・カーポ島を目指し、アモル地方の空への飛び立ったのだった。
 ▼ 340 AYr1xkow/g 17/12/14 19:47:47 ID:99jhn9HM [1/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
パルガンシティにたどりついたアキニレとクオレは、そのままパルガンジムを目指した。

「今のジムリーダーはえっと……ビロウさんだっけ?」

アキニレが問う。

「はい、そうですよ!……八年前は、違う方だったんですか?」

クオレはアキニレに質問を返した。アキニレは頷く。

「八年前は、セールイとメラン以外、ジムリーダーはみんな違かったよ。今のジムリーダーは若い人が多いよね」

「確かに……ネムさんとか、あんまり変わらないのにジムリーダーやっててすごい!です!」

クオレが言う。ブロインジムリーダーのネムは、パロレやクオレたちより二歳ほどしか変わらない。

「ああ、今のジムリーダーの中で一番新しく就任した子だよね。うん、すごいよな!ローザさんやレナさんも年下なのに、大変だよなあ」

アキニレが呟くように言った。

「あれ?えっと、モクレンさんはアキニレさんたちより年上なんですね!」

クオレが言うと、アキニレは今度は首を横に振った。

「惜しい!モクレンさんは俺たちと同い年だよ」

「あ、そうなんだぁ!」

アキニレ曰く、最近のジムリーダーや四天王はどの地方も若い人が増えてきているのだという。アモル地方も例外ではないようだ。

「アモルのリーグにも、一人俺たちより年下の男の子がいるんだ。ま、彼のことはアルセアから聞いたことあるってだけだから俺がその四天王と親しいわけじゃないけどな」

「アキニレさんたちより年下って……まだ大人になってない人がほとんどですよね。すごいなぁ……」

クオレがそう言うと、アキニレは快活な笑い声を上げた。

「何言ってるんだ!クオレちゃんだってすごいんだぞ」

「あ……」

クオレは一瞬少し困ったような表情を浮かべた。しかし、そんな表情はすぐに消え、クオレは恥ずかしそうに微笑む。今は自分に自信を持つことができるようになったのだから、情けなく思う必要なんてないのだ。

「えへ!ありがとうございます!」

やがて二人はパルガンジムに入り、奥にいるビロウの元へと向かう。

「こんにちは、ビロウさん!」

「こんにちは。俺はアキニレといいます」

挨拶をする二人を見て、いつも通りの仏頂面を浮かべていたビロウは、

「俺はパルガンジムリーダーのビロウだが……、挑戦しにきたわけではなさそうだな。何の用だろうか?」

そう答えて二人を迎え入れた。
 ▼ 341 AYr1xkow/g 17/12/14 19:49:52 ID:99jhn9HM [2/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
「スパイス団の昔のアジト?」

「はい。何か知ってますか……?」

怪訝な顔をして声を上げるビロウに、クオレはそう質問した。

「ふむ……確かにパルガンシティではスパイス団の奴らが歩いているところをよく見るな。スパイス団発祥の地らしいという噂は、聞いたことがある」

ビロウの言葉に、クオレは目を輝かせる。

「そんなに関わりが深かったんですね……!」

「しかし、アジトの存在は知らなかった」

「そっかぁ」

今度は分かりやすく落胆するクオレに、ビロウは真面目な表情のまま続ける。

「現在のパルガンシティに住んでいるスパイス団関係者はいないと思う。リュイタウンの乗船所で働いている者たちが、休暇などの際にこの街を利用しているというのが主な理由だろう」

「そうなんですね」

アキニレが相槌を打つと、ビロウは頷いた。それから、ふと何かを思い出したように「そうだ」と声を上げた。

「五年以上前のことだが……、よく14番道路方面からやってくるスパイス団員を目撃したように記憶している。もしかしたら奴らは、アスールシティに住んでいたのかもしれないな」

ビロウの言葉に、クオレとアキニレは思わず顔を見合わせた。五年以上前。バジリコがスパイス団に入る前だ。それなら、辻褄が合う。

「アスールシティにアジトがあるのかなぁ?そしたら、ユーリとアルセアさんが何か見つけてくれるかもしれませんね!」

クオレが嬉しそうに言う。

「ああ、そうだな」

アキニレも笑顔で頷いた。それから、ビロウに向き直る。

「ビロウさん!有益な情報と貴重なお時間をどうもありがとうございました」

「礼には及ばん」

ビロウは目を閉じて穏やかな表情でそう言った。

「よし、クオレちゃん!待ち合わせ場所のトリステッツァの谷に行こうか」

「はいっ!」

ジムを後にするクオレとアキニレに、ビロウは相変わらずの真顔で、

「もしアスールに行くのならほんきをだしたカビゴンより恐ろしい怪力持ちの女に気をつけろ。では、達者だな」

そう言って二人を見送った。
 ▼ 342 AYr1xkow/g 17/12/14 22:01:03 ID:GvNXn4sE [5/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アスールシティのポケモンセンター前に、ボーマンダが降り立つ。ユーリとアルセアがボーマンダから降りると、アルセアは「サンキュー」と言いながらボーマンダをボールに戻した。

「それじゃ、ジムに行こっか」

「はい」

二人は船着場になっているアスールジムへと向かう。入口のゲートをくぐり抜けたところで、一人のジムトレーナーのふなのりが二人に気付いた。

「あっ!?おい、チャンピオンが来てるぞ!」

近くの船に乗っていた他のふなのりがその言葉を聞いて二人の顔を見た。

「マジじゃねえか!……もしかして、勤務体制を視察しにきたんじゃねえか……?やべえ!」

ふなのりはそう言って顔を青くする。

「おいてめえ!」

ふなのりは更に自分の隣の船に乗っているふなのりに声をかけた。

「ハイ!」

「今すぐ姉御を連れてこい!チャンピオンが視察しに来てるって連絡しやがれ!」

「アイアイサー!」

慌てて船を動かして奥の大きな船で待機しているはずのヒマワリの元へ向かうふなのりの様子を見て、ユーリが困惑気味に口を開いた。

「別にそんなつもりじゃないのに……!」

ユーリはそう言うと、隣のアルセアを見上げた。

「アルセアさん、どうしましょう?」

そう言うユーリに、アルセアは薄く微笑んだ。

「まあちょっと申し訳ないけど、奥まで行く手間が省けてラッキー、ってことでいいんじゃない?待っとこ」

呑気にそう言うアルセアに、ユーリはそれでいいのか?と思ったが、何も言わないでおいた。
 ▼ 343 AYr1xkow/g 17/12/14 22:03:35 ID:GvNXn4sE [6/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「よお、チャンピオン!視察ってマジか!?」

大声でそう言いながら、ヒマワリがこちらへと近づいてくる。

「いや、全然違います。……というか、厳密に言うと今のチャンピオンはパロレなんですけどね」

アルセアは淡々と返した。ヒマワリは豪快に笑う。

「んな細けえこたあいいんだよ!つーか、敬語もいらねえよ。あんたはアタシのじいちゃんに勝った上に、アタシがジムリーダーになるより前にチャンピオンになったんだからな」

「そんなの関係ないですよ」

アルセアは軽く流した。もしかしたら、アルセアに心を開いてもらっていることは実はすごいことなんじゃないかと隣で聞いていたユーリはそんなことを考えた。

「おじいさん、ですか?」

「そう。八年前のアスールジムリーダーは、ヒマワリさんのお爺さんだったから」

ユーリの質問にアルセアが答える。ヒマワリも頷いた。

「パルガンジムはビロウのばあちゃんがジムリーダーやってたしな!アタシとビロウはそん頃からの付き合いなんだよ」

「へえ、そうだったんですね」

ビロウの祖母とヒマワリの祖父も、この二人のようにしょっちゅう喧嘩をしていたのかもしれないと思うと、なんだか少し面白い。

「んで、どうしたんだよ?何の用だ?」

ヒマワリが尋ねる。

「あの……唐突ですが、かつてダ・カーポ島にスパイス団のアジトがあったらしいのです。アスールシティにはスパイス団の人もよく見られるので、何かご存知じゃないかと思いお伺いしました」

「なるほどな」

ユーリが丁寧に質問すると、ヒマワリはそう返してうーんと唸った。

「ただわりいけど、正直よく知らねえな。リュイタウンの奴らが休みの日とかに来てるだけじゃねえかと思うけど……」

そう言うヒマワリに、

「そうなんですね……」

ユーリは少し残念そうに言った。

「あー、五年前とかにはもっといっぱいいたんだよ。そいつらも15番道路の方から来てたからよ、やっぱりリュイタウンか、それかパルガンシティ辺りに住んでたんじゃねえかな」

「五年前……」

アルセアが呟く。心当たりのある年数だ。やはり、バジリコがスパイス団に入ってしまう前にアジトが変わったのだ。

「リュイタウンは何もない小さな町ですが……パルガンシティに行けばもしかしたら何か手がかりが見つかるかもしれませんね」

ユーリが言う。

「そうだね」

アルセアは頷いた。
 ▼ 344 AYr1xkow/g 17/12/14 22:05:05 ID:GvNXn4sE [7/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「じゃあとりあえずトリステッツァの谷に行ってみんなに報告しようか」

アルセアがそう言うと、ユーリは頷いた。

「はい」

それからヒマワリの方を向き、

「いきなりお邪魔してすみませんでした。どうもありがとうございます」

「ありがとうございました。また何かあればよろしくお願いします」

ユーリとアルセアが礼儀正しく挨拶をすると、ヒマワリは照れ臭そうに笑った。

「堅苦しいなぁ。まあ、いいけどよ!どういたしまして!こちらこそまたよろしくな!」

ヒマワリはそう言って、大きく手を振った。

二人がアスールジムのゲートを出ようとした瞬間、背後から大きな声が響いてくる。

「もしパルガンに行くなら、メタルコートを持たせて交換したら進化しちまいそうなくらい頭のかてえ頑固な男に注意しろよ!」

ビロウとの仲は、やはり相変わらずのようだ。

「アルセアさん」

ユーリが呼ぶと、アルセアは「ん?」と振り向いた。ユーリは先程少し気になったことを、思いきって聞いてみることにした。

「あの、どうでもいい質問なんですが、アルセアさんって人見知りする方ですか?」

「え……なんで分かったの?」

アルセアは少し恥ずかしそうにそう答えた。
 ▼ 345 AYr1xkow/g 17/12/17 22:56:56 ID:QIvYUN8Y [1/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
リュイタウンにやってきたパロレとバジリコは、真っ直ぐ乗船所へと向かった。バジリコにぞっこんの女性団員たちは、バジリコに聞かれたことは何でも答えてくれるのではないか?ここを選んだのは、そう考えたからだ。

「はぁ……」

バジリコが溜息をつく。パロレは慌てて振り向いた。

「あ……バジリコさん、すみません。変なことお願いしちゃって……」

そう言うと、バジリコは苦笑いで首を横に振る。

「いや、それは全然いいよ。パロレくんは悪くない……っていうか、こういうことでしか俺は役に立てないからね」

「……前に来た時も、ここにいた奴ら、バジリコさんの話をしてました」

パロレが言うと、バジリコは顔をしかめた。

「まあ、褒められるのは悪い気しないし実際間違ってないけどさ、ちょっとしつこいよね」

バジリコは、さりげなく自分の容姿が整っているということをしっかり自覚している発言をしたが、パロレは特に嫌味には思わなかった。むしろ、あれだけの人気で自覚していない方がおかしい話である。

「ぼく、ちょっと先に行って聞いてみますね」

「分かった」

バジリコが頷いたのを確認すると、パロレは乗船所の受付にいる女性団員の元に近づいた。少し離れたところには男性の団員もいる。本当は男性のいないところで話をしたかったが、現在リュイ乗船所には二人のスパイス団員しかいなかった。仕方がない。

「あの、すみません。ちょっと聞きたいことがあるんですけど……」

「はーい。あ、次の船ならあと十分もしないくらいで来ますよー」

女性団員はやる気のなさそうな声でそう言った。

「船のことじゃないんです。……スパイス団って、五年前はどこのアジトを使ってたんですか?」

パロレがそう聞くと、

「は?」

女性団員は片方の眉を吊り下げてパロレを思いきり睨みつけてきた。

「何言ってんのこの子供……教えられませーん、お帰りくださーい」

女性団員が間延びした口調でそう言う。すると、パロレの背後から声が聞こえてきた。
 ▼ 346 AYr1xkow/g 17/12/17 22:58:11 ID:QIvYUN8Y [2/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「そこをなんとかお願いできないかな。どうしても知りたいんだ」

優しくて爽やかな声。鬱陶しそうにパロレを見つめていた女性団員の顔がぱっと輝くのが見えた。

「バジリコさん!どこ行ってたんですかー!?お久しぶりですぅー!」

先程までとは打って変わって高い声でそう言う女性団員に、パロレはこっそり笑ってしまった。女性団員の瞳は、ハートマークになっている。

「久しぶり」

「えー、もうめっちゃ会いたかったんですよ!なんでスパイス団辞めちゃったんですかー!?」

「まあ、色々あってね。元気だった?」

「あんまり元気じゃなかったんですけど、バジリコさんの顔を見たら元気になりました!」

「あは、ほんと?それじゃ、そのまま元気に仕事頑張ってね」

「はいっ」

女性団員の言葉は、語尾に毎回ハートマークがついていそうなくらいに甘い。バジリコは王子様スマイルを浮かべたまま一切表情を変えずに適当に言葉を返している。

「前髪切った?」

バジリコが言う。

「うそ!気付いてくれたんですか!?」

女性団員は悲鳴に近い声を上げた。

「分かるよ。似合ってるね。それで、さっきの質問なんだけどさ」

「あ、はい!前のアジトはですねぇ……」

「おいおい待て待て!」

バジリコのモテ男会話術を目の当たりにして圧倒されかけていたところで、男の下っ端団員が大声でそう言いながら慌てて止めに入ってきてしまった。

「バカかお前バカか!もうこの人はスパイス団辞めてんだろうが!」

男性団員が怒鳴る。

「うるっさいわねぇせっかくバジリコさんと話せたんだから邪魔しないでよ!」

「邪魔するわバカ!話しちゃダメだろうが!」

「ああーもうバカバカうるさいわね!バジリコさんのお願いはなんでも聞くんだから!」

目の前で喧嘩を始めた二人を見て、バジリコはお手上げだ、と言うように肩をすくめた。それからパロレの方を見て申し訳なさそうな顔をする。

パロレは首を横に振った。作戦はどうやら失敗のようだ。
 ▼ 347 AYr1xkow/g 17/12/17 23:02:24 ID:QIvYUN8Y [3/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「というわけで、教えられませんよ!というか、教えねえぞ!もうスパイス団じゃないあんたには敬語なんて使わねえ!」

「ちょっと!あんたもう黙ってなさいよ!」

怒鳴り散らす男性団員を、慌てて叱る女性団員。バジリコは何も気にしていないのか平然としている。

「いや、別にいいけど」

「クソッ、顔がいいだけじゃなくてこういうクールところにもなんか腹が立つーっ!」

「だからあんたはもう黙ってて!」

女性団員はそう叫んで男性団員を無理矢理押して奥に追いやると、ニコニコ笑顔に戻った。

「えっとですねー」

どうにか立て直して会話を続けようとする女性団員。奥からは「おいお前マジで言うんじゃねえぞ!」という怒りの声が聞こえてくる。

「はあ……もうマジうっさい……」

女性団員は低い声で呟いた。それから、

「……でもまあ、そうですね。ごめんなさいっ!教えられないですー……!」

「そっか、残念だな」

バジリコがそう言って眉を下げて本当に残念そうな顔をした。それを見た女性団員は泣きそうな声を上げる。

「ああーんバジリコさんかわいいー、でもごめんなさーいっ!」

パロレはもはやドン引きしており何も言えない。

「どうしても、ダメかな?」

バジリコは首を傾げた。女性団員は唇を噛みしめて必死に耐えている。

「あー、あー……、えっと、じゃあ、ヒント!ヒントだけ差し上げます!」

「やった、嬉しいな。ありがとう」

「普通入っちゃいけないところの地下にあります。私たちは地下に潜って生きる裏世界の住人ですからねー!……比喩表現とかじゃなくて、本当に地下ですよ。……新しいアジトも、地下でしたしね!」

「お前、そこまで言ったら分かっちまうだろうが……!」

女性団員の後ろから男性団員が顔をのぞかせて、歯を食いしばりながらそう言う。女性団員は無言で男性団員の胸倉を力いっぱい掴んで背後に投げやった。
 ▼ 348 AYr1xkow/g 17/12/17 23:04:40 ID:QIvYUN8Y [4/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「普段入っちゃいけないところの地下……」

パロレが呟く。

「教えてくれてありがとう。じゃあ、俺たちは行くよ」

「はーい!また来てくださいね!」

「機会があればね。じゃあね」

バジリコはそう言って、パロレに目配せする。二人は足早に乗船所を出ていった。

乗船所を出て少しリュイタウンを歩きながら、

「ごめんね、あれくらいしか聞けなかったよ」

バジリコがそう言ったので、パロレは「いえいえ!」と手と顔を大きく振った。

「全然そんなことないですよ!……それにしてもバジリコさん、すごかったです」

「別にすごくないよ」

バジリコは乾いた笑いを漏らしながら言う。

「ああいう風にやると喜ぶって分かっててやってるだけだからね……」

バジリコは半ば自分自身に呆れているかのような声音でそう言った。

「あはは!でも、アルセアさんにはあまり効かなそうですね!」

パロレの言葉にバジリコは目を見開いた。パロレくんって確か、俺たちのことよく分かってなかったよね……?と、少し前のスリジエとボンゴレを国際警察に引き渡した日を思い出しているのだろう。

「兄さんがバジリコさんみたいなことするところも想像できないし……いや、兄さんには絶対無理だな。アルセアさん、『キモい』って一発で切り捨てそう」

パロレは勝手に想像して笑っている。そんなパロレの呟きを聞いて、やはりパロレは自分たちが交際していることはよく分かっていないのだと悟ったバジリコは、少しだけ悪ふざけすることにしたようだ。

「ここだけの話だけどね、パロレくん……」

「はい?」

パロレがバジリコの顔を見る。バジリコは悪戯っぽい笑みを浮かべて、

「アルセアにも、結構効くよ」

「……えっ?」

「よし!それじゃ、トリステッツァの谷に行こうか」

「え?あ、はい!……えっ?」
 ▼ 349 AYr1xkow/g 17/12/18 00:19:36 ID:yZElbkQU [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
パロレとバジリコがトリステッツァの谷に到着する頃には、既に他の四人は集合していた。何らかの情報を得ることはできたのか、それなりに満足げな表情に見える。

「お待たせしました!」

パロレがそう言って早歩きで四人の元へ向かう。全員集合だ。

「よし!みんな、手がかりは掴めたようだね!」

アキニレが言うと、クオレとユーリが頷いた。

「どこにあるのか、大体分かりました」

ユーリが言う。

「お!幸先がいいね。それじゃ、是非報告を頼むよ!」

アキニレがそう言うと、クオレとユーリは「はい!」と返事をした。

「アスールシティに……」

「パルガンシティに……」

同時に口を開いた二人はそう言ってから、お互いの顔を見て「え!?」と声を上げる。

「え……だって、13番道路から来てた、って……」

「15番道路方面から来ていたっておっしゃってましたよね……?」

それぞれ同行していたアキニレとアルセアの顔を見上げながら混乱気味に言う二人を見て、アルセアが声を上げた。

「落ち着きなよ。それなら、13番道路と15番道路の間のどこかにあるんじゃない?」

アルセアの言葉に、二人は納得したようだった。

「あ……そっかぁ。びっくりしちゃった……」

「そ、そうですね。考えればすぐ分かるのに……取り乱してすみません」

ユーリが申し訳なさそうに言う。アキニレが首を横に振った。

「大丈夫だよ!……場所が少し絞られたね」

アキニレは顎に手を当てて考えるように言う。それからパロレの方を見た。

「パロレは、どうだった?何か聞けたか?」

「うん」

パロレは頷いた。そして、バジリコが聞き出してくれた情報を口にする。

「普段は入れないような場所の、地下にあるんだって」

「普段は入れない……」

「地下……」

一同は繰り返してそう呟いた。それから、ゆっくりと視線が動く。六人の目は、みんな同じところを向いていた。
 ▼ 350 AYr1xkow/g 17/12/18 00:20:50 ID:yZElbkQU [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
一同の視線の先にあるのは、いくつもの円柱型の柱に囲まれた神殿。トリステッツァの谷にある建造物の中で、最も保存状態が良好な古代の遺跡だ。

「偶然ここにいたからそう思っただけかもしれない……でも、条件はぴったり合うな」

アキニレが呟く。

「普段は入れないような場所って行ったらイーラ火山の禁足地とかが思い浮かぶけど、あそこは13番道路と15番道路の間じゃないしな」

バジリコもそう言って頷いた。

「見てみる価値はあるかもね……ただ」

アルセアはそう言って、意味ありげな表情で辺りを見渡す。谷は、観光に来ている客でいっぱいだ。

「その言葉の通り、普段は入ってはいけないところですからね……簡単には入れなさそうです」

ユーリがそう言った。

「夜に、また来ようか」

アキニレがそう提案した。その言葉に、五人は同意したのだった。
 ▼ 352 クスロー@つきのいし 17/12/20 17:09:11 ID:AH5PtYgk NGネーム登録 NGID登録 報告
>>351
クオレかわいい

思ってたよりアキニレ世代との推定年齢差大きいのな…
 ▼ 353 AYr1xkow/g 17/12/20 23:32:27 ID:Q3FkZgRs NGネーム登録 NGID登録 報告
最初の方にこっそり描写がありますがパロレは13歳でアキニレは8歳上の兄なのでアキニレ世代は21歳です
 ▼ 354 AYr1xkow/g 17/12/22 02:28:24 ID:tiDvhRQk [1/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
日付が変わった後に、パロレたちは再びトリステッツァの谷へと集まった。

昨日はとても大変な一日だった。クオレとオーロティラミスを食べるはずが、マリナーラを追いかけて走り回る日となってしまったのだから。

パロレはアキニレに言われ、夕方から早めに寝て夜の準備をしておいた。まだ少し眠いが、それよりも早くセレビィを助けて真実を突き止めたいという気持ちの方が強い。

月が、神殿の前に立つ六人を見下ろしている。今日は満月だった。とても美しいはずなのに、何故か不安になってくる。

辺りには誰もいなかった。一同は顔を見合わせ、ゆっくりと神殿に近づいていく。そして、普段は入ることを禁じられているその内部へと足を踏み入れた。

しばらく中を歩いていると、地下に繋がる階段が見つかった。外から見ても、柱に隠されて死角になっている場所だ。まさかこんな簡単に見つかるとは。見れば、辺りには大きな石板のようなものが大量に転がっている。この石板に覆われて、隠されていたのかもしれない。

「マリナーラが先に入ったんだ」

パロレが呟いた。当然だが、昔のアジトの場所を知っているマリナーラには先を越されている。焦りを感じると共に、パロレは少しだけほっとした。やはりここで間違いなかったのだ。

「行こう」

一同は頷いて、神殿の地下に続く階段を降りていった。

中は洞窟になっているのではないかと思っていたが、思った以上に人の手が施されていた。床や壁は地上の神殿と同じ石の素材でできており、かなりしっかりしている。まるで、地下に造られた城だ。

スパイス団の城、とでも言うべきか。それとも、メローネの城?どちらにせよ、ここに何らかのヒントがあるはずだ。階段を最後まで降りると、パロレたちは慎重に進んだ。

通りすがりに見つけた部屋の中を調べていく。何も見つからない。そのまま廊下をしばらく歩いていると、奥に繋がる長い廊下とそれぞれ左右にひとつずつ、更に地下に繋がる大きな階段が見えた。

「また、三手に分かれるか」

アキニレが言う。

六人はそれぞれ目の前にある先に向かおうとしていた。ユーリとアキニレは右側の階段、クオレとバジリコは左側の階段、そしてパロレはアルセアは奥へと続く廊下だ。

「それじゃ、また後で」

アルセアのその言葉を皮切りに、三つに分かれた二人組は先へと進んでいった。
 ▼ 355 AYr1xkow/g 17/12/22 02:31:37 ID:tiDvhRQk [2/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「何もないですね……」

「そうだな……」

ユーリとアキニレは、階段を降りた先に見つけた部屋をすべてしらみつぶしに調べていた。どの部屋にも石でできた固そうなベッドが備えつけられている。ただし、それ以外には何もない。

「元々、団員の寮として使っていたんでしょうか」

ユーリが言う。

「そんな感じっぽいね。布団とか、使えるようなものはすべて全部新しいアジトに持っていったのかもしれない……本当に何もないな」

アキニレもそう返した。

結局何も見つけられないまま、廊下の奥へと来てしまった。少し広い部屋が二つある。まずは右側の部屋に入ってみることにした。

「ここも、何もないな」

アキニレの声が、部屋に響いた。

「ここの二部屋は……もしかしたら幹部の二人が使っていたものかもしれません」

「ああ、そうだね。一応こっちも見ておこうか」

アキニレはそう言いながら部屋を出た。そして、隣の部屋の扉を開ける。

案の定、何もない。

「うん!予想通りだな」

アキニレがおどけた口調でそう言って扉を閉めようとしたその時、「あ、何か落ちてます」とユーリが声を上げた。

床に落ちていたものを確認するために二人は部屋に入った。しゃがんで見てみると、それはどうやら、写真立てのようだった。ユーリが写真立てを手に取った。中には、女性が優しい表情で小さな赤ん坊を抱きしめている写真が入っている。

「これ……」

ユーリが呟いた。

「……スリジエさんだな」

アキニレもそう言った。

写真に写っている女性は、今よりもかなり若いスリジエだった。アキニレたちと同じくらい、いや、もしかしたらそれよりも若いかもしれない。

「……スリジエさん、子供がいたのか……?」

アキニレは目を点にして驚いていた。心からの疑問を呟きながら首を傾げる。そんな話は聞いたこともなかった。それに、この赤ん坊はきっと今もまだ子供のはずだ。

「何故この写真がこの部屋にあるんでしょう?幹部の部屋だったのかと先程は思いましたが、違ったのかもしれません。でも、他には何もなさそうですね」

ユーリがそう言って、手に持っていた写真立てを床に戻した。

「ああ……そうだね。これはちょっと気になるけど……どうしようもないな。誰にも聞けないし」

アキニレはそう言って立ち上がる。

「それじゃ、戻ろうか」

「はい!」
 ▼ 356 AYr1xkow/g 17/12/22 02:34:31 ID:tiDvhRQk [3/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
一方、こちらはクオレとバジリコの進んだ左の階段の先。

この階段の先にある部屋にも、特にめぼしいものは何も見つかっていなかった。石でできた大きな机があるだけだ。

「研究とか、会議とかに使ってた部屋っぽいな……」

バジリコが呟く。

「でも、機械とかは全部新しいアジトに持っていっちゃったのかなぁ?何もないですね!」

クオレが言うと、バジリコは頷いた。

「うん……多分、そうなんじゃないかな」

何もない部屋をいくつも見ているうちに、あっという間に廊下の奥へと来てしまった。奥には、広い部屋がひとつだけある。二人は迷わず扉を開けた。

「わー!広ーい!」

クオレが、部屋をくるくる回りながら声を上げた。

「メランシティの地下のアジトの……一番奥の部屋くらい広い!」

クオレはそこまで言うと、立ち止まって少し暗い表情になる。

「もしかしたら、……スリジエ博士専用の研究室だったのかも……なんて思っちゃいました」

クオレが遠慮気味にそう言った。バジリコは天井を見上げながら部屋の中へと入っていき、「なるほどね」と言った。

「確かにそうかも。ついでに言うとここで寝てたんじゃないかな。少なくともあっちのアジトでは博士の研究室と寝泊まりする部屋は、仕切りはあったけど同じ部屋だったから」

バジリコは冷静にそう言った。

「なんか……変な感じですね。何もなくって……」

クオレは部屋を見渡してそう言った。バジリコも頷く。

「すごく……冷たい感じがするね。……戻ろうか」

「はい」

バジリコの言葉に、クオレは返事をして頷いた。それから先程六人が三手に分かれた階段の前まで戻ると、ちょうどユーリとアキニレも階段を上がってきたところだった。

「何かあったか?」

バジリコが問う。

「特に何も」

アキニレはそう言いながら首を横に振った。

「妙な写真はあったけど、関係なさそうだしな。後で話すよ」

「そうか」

バジリコがそう返す。それから、四人の視線は自然と廊下の奥の方へと向かっていった。

「確かに、いかにも何かありそうな感じではあるよな。よし!パロレとアルセアを追おう!」

「はい!」

アキニレの言葉に、クオレとユーリが返事をした。それから四人は、パロレたちの向かった廊下の奥へと進んでいった。
 ▼ 357 AYr1xkow/g 17/12/22 02:37:01 ID:tiDvhRQk [4/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「うーわ、不気味」

アルセアが呟いた。廊下を少し歩いた先には大広間があった。石でできた大きな机に、大量の椅子がある。ここで生活をしていた者たちが食事の際に使っていた部屋だろう。しかし、五年もの間誰も使っていないその大広間はかなり歪に感じられる。

「アルセアさんも、怖いのは苦手なんですか?」

パロレは思わず食いついた。

「いや、全然」

アルセアが平然として答える。パロレは拍子抜けしてしまった。せっかく仲間だと思ったのに。

「三人とも、怖いものとか未知のものとか大好きだよ。小さい頃、よく夜に家を抜け出して冒険とか言いながら一番道路の辺りを歩き回ってた……アキニレがいつもお父さんのポケモンをこっそり連れてくるの」

三人というのは、アルセアとアキニレ、バジリコのことだろう。恐らく、パロレが生まれる前の話だ。パロレは少し新鮮な気持ちで話を聞いていた。父親は現在は遠い地方に単身赴任しており、しばらく会っていない。

「で、帰ったら結局ばれてめちゃくちゃ怒られたりしてね……」

アルセアは懐かしそうに言った。

「そんな風に遊んでたんですね」

「まあね。……っていうか、さっきアルセアさん『も』とか言ってたけど、あんた怖いの苦手なの?」

アルセアの質問に、パロレはビクッと肩を震わせる。

「そ、そんなことないですよ!」

「ふーん。そう」

誤魔化そうとしてそう言うと、アルセアは興味なさそうな声で適当に返してきた。完全にばれている。パロレは少し悔しくなった。

やがて、二人が更に奥に歩いていくと、大きな扉が見えた。扉は、完全に閉めきられている。

「いかにも何かありそうな感じ」

アルセアが呟く。

パロレはとりあえず扉を押したり引いたりしてみたが、扉はぴくりとも動かない。パロレは少し遠ざかってじっくりと扉を観察してみた。扉の中央には、小さな玉がぴったりとはまりそうな形をした石が取り付けられている。

「今、多分パロレと同じこと考えてるよ」

アルセアがそう囁いた。パロレはアルセアの顔を見て頷く。

パロレは、バジリコに作ってもらったメガバングルに手を添え、ガッチリとはめられているキーストーンを力をこめて取り外した。後でまたバジリコに頼まないと、上手く戻せないかもしれない。

パロレは、外したキーストーンを扉に取り付けられた石にそっと近づけた。キーストーンは吸い寄せられるようにして石にぴったりと重なった。すると、一瞬石が光ったかと思えば、ゴゴゴゴと重々しい音を立てて扉がゆっくりと開き始めた。

「……ビンゴ」

アルセアがそう言う。そして二人は、部屋の中へと入っていった。
 ▼ 358 AYr1xkow/g 17/12/22 16:27:47 ID:269sm8R2 [1/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
部屋の中は、思ったより狭かった。

物は少ない。ただ、壁には一面に大量のポスターのようなものが貼られていた。どれも同じもので、「反乱軍万歳!」という文字と、スパイス団の団員たちの制服に付けられているマークに似たものが書かれている。

「自己主張激しすぎじゃない?」

アルセアが壁を見てそう言いながら呆れ顔を浮かべた。

ドタバタと足音が聞こえてきた。振り向くと、クオレとユーリ、アキニレとバジリコがこちらへ向かってきていた。

「何もなかった感じ?」

近づいた四人に、アルセアが尋ねる。アキニレとバジリコが頷いた。

「やっぱりね。ここに何かありそうだよ、ほら」

アルセアがそう言って、四人に部屋の中に入るように促す。それから、壁を見るように合図した。

「うおっ」

アキニレが驚いた声を上げた。他の三人も、引いているようだ。

「この部屋、閉まってたんですけど……キーストーンで開けられたんです」

パロレがそう言って、メガバングルから取り出したキーストーンを見えるように手に持った。

「それって……もしかして」

アキニレが呟くように言う。

「ここが本当にメローネの部屋だったとしたら、メローネが死んでからずっと閉まってたって可能性があるわけね……」

アルセアがアキニレに続いた。

パロレはもう一度部屋を見渡した。部屋の奥には机がある。その机の上には、小さな本があった。保存状態は極めて良好だ。やはり、この部屋はメローネが最後に鍵をかけて以来一度も開けられていないのかもしれない。

「……」

パロレは慎重に手を触れて、ぱらぱらとめくってみた。どうやら、メローネの手記のようだった。

「ここに、なんか日記みたいなのがあります!」

パロレがそう言うと、一同はパロレの元へ集まってきた。そして、小さな手記を六人で覗きこむ。

「……読んでみますね」

パロレはそう言って、メローネの手記を手に取った。
 ▼ 359 AYr1xkow/g 17/12/22 16:28:45 ID:269sm8R2 [2/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
「今朝、とうとう私たちは出発した。この旅を通して心身ともに強くなり、よりメガシンカの力を発展させることが出来るよう努めていきたい。エシャロットもアングリアもとても頼りになる友人だ。これから私は、何かひとつでも興味深いことがあればそれを記録していこうと思う。これも成長の糧として利用できるだろう」

「旅を続けて数年が過ぎた今日、私たちはアモルという荒れた地にやってきた。住民の話を聞くと、幾度となく繰り返された戦によってこの地は荒廃してしまったらしい。しかし、私たちに出来ることは何もない……。しばらく滞在したら、また出発しよう」

「私たちはアモルの人々にメガシンカを見せることにした。彼らはポケモンの姿が変わることに面白いほどに驚愕していた。……こういう時、いつもバトルするのはエシャロットとアングリアだ。まあ、私は二人ほど戦いは得意ではないことは自覚している。悔しいが、仕方がない」

「アモルの人々は優しい。心に余裕なんてないはずなのに、余所者の私たちにとても良くしてくれる。旅の最中に様々な地を訪れたが、私はこのアモルがとても気に入った。エシャロットとアングリアはどうだろうか。明日聞いてみよう」

「エシャロットとアングリアと話し合った結果、私たちはこのアモルに定住することにした。エシャロットは飯が美味いという理由ばかり挙げていたが、確かにそれも重要だ。私たちは今まで世話になった礼として、アモルの人々にメガシンカの力を分け与えることにした。アングリアのおかげでこの話し合いはすぐに終わった。有難い」

「再び戦が起きようとしている。しかし今のアモルには私たちの与えたメガシンカの力がある。エシャロットが私たちとアモルの民を率いて戦えば、負けることはないだろう」

「今日は祝いの宴があるそうだ。酒を飲んだ後では上手く記録が出来ないだろうから、先に書いておこう。私たちは戦に勝った。当然だ。私たちの力があればもう怯える必要はない。これからはアモルを復興させることに力を尽くそう。私たちのアモルを、豊かな土地にしよう」

「私たちはアモルの民から讃えられ、三英雄と呼ばれることになった。私たちと、私たちの相棒の彫刻を彫ってくれるらしい。少し恥ずかしいが、悪い気はしない」

「アモルの復興に向けて本格的に活動を始めることになったところで、驚きの提案があった。なんと、私たち三人の中からアモルの王を選出したいと言うのだ。私たちはアモルの地の生まれではないのに。私たちは話し合ったが、結果それを受けることにした。一体、三人のうち誰が王に選ばれるのだろう。……まあ、大体予想はつくが」

「エシャロットがアモルの王となった。予想通りだ。三人の中で最も強い彼は、先の戦でも一番活躍した。当然の結果だろう。アングリアはエシャロットの従者となり、政の補佐をすることとなった。三人の中で最も賢い彼なら適任だ。私メローネは、エシャロットやアングリアと、国民たちを結ぶ架け橋となる存在になろうと思う。強さも賢さも彼らには敵わない私に出来ることは、人々の心を思いやり、その力になることだけだ。アモルの人々の役に立てるよう、頑張ろう」
 ▼ 360 AYr1xkow/g 17/12/22 16:39:25 ID:269sm8R2 [3/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
「エシャロットもアングリアも大変そうだ。やはり国を治めるためにはかなりの労力を要するだろう。明日は祭日。二人も多少は羽を休めることが出来るはずだ。せっかくだから、二人が好きな料理でも作って持っていこうかしら」

「なんだか最近エシャロットの様子がおかしい。私が報告しに行った時も上の空だった。疲れが溜まっているのだろうか。それならいいのだが、それにしてもだいぶ態度が悪かった。少し嫌な気分になった……」

「エシャロットはあんなに嫌味な奴だっただろうか。アングリアもアングリアだ。知らぬふりをして無視を決めこんでいる。……弱い私には興味がないということ?今まで三人でずっと旅をしてきたというのに、何故?権力を得た二人は、変わってきてしまったのだろうか」

「どうして二人ばっかり……悔しい……羨ましい……!」

「エシャロットは今日もまた無理矢理な理由をつけて自分本位な政策を敷いている。彼はもう、権力に魅入られて変わってしまった。力に溺れるようになってしまった……。そういえば、やけにアングリアの機嫌が良かった。なんとなく、嫌な予感がする。まあ、これは私の勝手な憶測に過ぎない。……エシャロットやアングリアに関することで私の勘が外れたことはないが」

「やはりアングリアは、エシャロットを傀儡にして自分の思い通りに国を動かそうとしていたようだ。私の予感は当たっていた。エシャロットが邪悪な支配者になることを恐れて積極的に国政を担うようになった結果、自身の新しい才能に気付いてしまったらしい。エシャロットに知られてしまった今、アングリアはもう今の立場のままではいられないだろう。……アングリアは、強さを追い求めることはもうやめてしまったのだろうか。私はまだ諦めていない」

「今日、アングリアが刑に処された。国外追放だ。追放された地は……何処だっただろうか。忘れてしまった。そういえば、その国でも最近大きな戦があったようだ。なんでも、王がとんでもない兵器を使用したとか……。アングリアには、もう二度と会うことはないだろう」
 ▼ 361 AYr1xkow/g 17/12/22 16:41:27 ID:269sm8R2 [4/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
「どういうこと?信じられない……どうなっているの?怒りが収まらない。エシャロットが……エシャロットが、私たちが分け与えた国民たちすべてのキーストーンとメガストーンを取り上げた。もちろん、私の分も。本当に頭がおかしくなってしまったのか?アングリアに利用されていたことを知ってから誰も信じられなくなったとでもいうのか?このままではタブンネをメガシンカさせてあげられない。力を最大限に引き出してあげられない!許せない。許せない。許せない!」

「今日は、記念すべき日になるだろう。私はエシャロットに反旗を翻した。王に対する反乱軍を結成した。拠点はダ・カーポだ。仲間もたくさんいる。今のアモルでは、私を支持する国民が一番多い。最も身近な存在として責務を果たしていたのだから当然だ。エシャロットに、この私を除け者にしてアングリアと二人で国の頂点に登りつめたことを、後悔させてやる。……それにはまず、キーストーンとタブンネナイトを、早く取り戻さないと」

「反乱軍の仲間と共に、アモルの各地を襲撃するようになった。これが、案外楽しい。好き勝手にやれるというのは面白い。もっともっとエシャロットを困らせてやる。……かつて私はこの地を復興させるために尽力していたというのに、皮肉なものだ」

「この間、キーストーンを奪い返すことに成功した。とはいえ、タブンネナイトを取り戻すことは出来なかったので、未だタブンネをメガシンカさせてあげられない。ごめんなさい、タブンネ。あなたのために私は頑張るわ」

「今日はリザードナイトXを手に入れたが、持ち主は見つかっていない。先日の襲撃で死んでしまったのだろうか……申し訳ないことをした。リザードナイトXは、キーストーンと一緒に肌身離さずしっかり持っておこう。爆発に巻きこまれて体が木っ端微塵にでもならない限り、私の手から離れることはない」

「今日付けで私メローネは指名手配犯となってしまった。エシャロットも面白いことをするのね!この私を指名手配だなんて!……でも、逃げ切ってみせる。私にはあの計画がある。かなり危険な作戦だが、上手くいけばエシャロットに十分すぎるほどの打撃を与えることが出来るだろう。私は負けない……絶対に……」

「明日、ついに作戦を決行する。イーラ火山に赴き、火口に眠っていると言われる幻のポケモン、ボルケニオンの元へ行くのだ。そしてボルケニオンを眠りから覚まさせ、無理矢理イーラ火山を噴火させる。きっとアモルは甚大な被害を受けるだろう。そうすれば、エシャロットは各地の復興や支援のために動かざるを得ない。私を追う余裕などなくなる。その隙をついて城を襲撃するのだ!……この作戦の最大の欠点は、噴火に巻きこまれて命を落とす可能性があるということだ。かなり危険だが、タブンネの力があれば大丈夫だ。メガシンカは出来ないとはいえ、彼女はとても強い。タブンネがいてくれれば、それだけで私は大丈夫なの」
 ▼ 362 ズクモ@アクアスーツ 17/12/23 09:16:13 ID:jwZ8cZz2 NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 365 AYr1xkow/g 17/12/26 01:17:57 ID:BulInLAM [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「……」

六人は、何も言えずに黙りこくっていた。

メローネの手記は、ここで終わっている。結局、イーラ火山の噴火に巻きこまれて死亡したと見て間違いないだろう。パロレがあの時に見た過去のメローネの姿は、まさにこの最後の記録を書いた翌日にイーラ火山に赴いた時のものだったのだ。

「……そりゃ、死ぬだろ」

バジリコがボソッと呟いた。この手記を見る限り、メローネは自分は無事に帰ることができると信じきっていたようだが、そんなことはほぼ不可能だろう。そんなことも分からないくらいには、彼女も狂ってしまっていたのかもしれない。

それに、この手記に書かれていることが正しかったとしても、まだ分からないことがある。かつては友人同士であった三英雄はそれぞれ別方向に歪んでいき結果的に破滅の未来へと向かっていってしまったわけだが、それだとフォルテ城で見た過去のアモルの女王の発言と矛盾するのだ。

三英雄は、メガストーンとキーストーンをアモルの民に分け与えた。その後、王となったエシャロットはそのメガストーンとキーストーンをすべて取り上げてしまった。しかし、あの女王の発言を聞く限り、再びアモルの民はメガシンカの力を取り戻している。

メローネ亡き後、反乱軍が力を振るいすべてのメガストーンとキーストーンを取り戻したのだろうか。しかし、気にかかるのはあの女王の「三英雄の歩んだ軌跡」、「初代の王であるエシャロットがメガシンカの力を求める者たちすべてに与えることにしたその経緯」という言葉だ……。

「ね、びっくりだよねーぇ」

そんな声が聞こえ、一同は振り向いた。メローネの部屋の出入口に立っていたのは、もちろんマリナーラとアーリオだった。
 ▼ 366 AYr1xkow/g 17/12/26 01:21:18 ID:BulInLAM [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「ここの部屋はねー、ずっと開かずの部屋だったのぉ。前にアジトとして使ってた時はもちろん、マリナーラが生まれる前からずーっと開かなかったらしいよぉ。心当たりってのはここのことね。マリナーラは、ここに何か手がかりがあると思ったわけぇ」

マリナーラは機嫌が良さそうだった。にんまりと笑って続ける。

「あっは、みんな変な顔!多分、マリナーラと同じこと考えてるよねぇ。矛盾してる、って。まー、確かにまだ秘密がありそーで困っちゃうけど……」

マリナーラはそう言いながら、スタスタと歩いて部屋の中に入り、パロレたちの元へと近づいてきた。それから、パロレの手から強引にメローネの手記を奪い取る。

「あっ」

パロレが情けない声を上げた。

「でも、これで分かったことだってあるでしょぉ?」

マリナーラはそう言って、メローネの手記を軽く振ってみせる。

「三英雄は仲違いして、そのうちの一人はアモルを更に襲撃した。しかもそれがスパイス団の前身!なーんか漠然と崇め奉られてきた三英雄は、実際はろくでもない奴らだったんだねぇ」

マリナーラがそう言うと、アーリオは溜息をついてやれやれと肩をすくめた。偉大な存在だと思っていた自身の先祖は、実は王を利用したことで追放されてしまったために、彼の家系はカロスの地で育ったのだ。

「これだけでもものすごーいネタになるよねぇ」

マリナーラはそう言って舌なめずりした。その不気味な姿に、パロレはビクッと肩を震わせる。

「ということで、マリナーラたちはさっさと消えまーす!」

マリナーラは急に朗らかな口調になってそう言うと、アーリオを連れて部屋をスキップしながら出ていった。それから、くるりとパロレたちの方へと振り向く。

「フォルテ城で決着つけよーよ」

マリナーラは邪悪な微笑みを浮かべてそう言うと、その場を去った。
 ▼ 367 AYr1xkow/g 17/12/28 12:51:58 ID:jz09MQGg [1/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
>>302
修正


「三英雄にまつわる重大な何かが隠されてるってことだよねぇ!その謎がなんなのか、マリナーラが暴いてやる!」

マリナーラはそう言うと、勢いよくモンスターボールを投げた。繰り出されたのはレパルダスだ。

「レパルダス!ぶっ壊せ!」

マリナーラが指示を出す。レパルダスはマリナーラの背後に向かって駆け抜けると、展示しているキーストーンとメガストーンを保護しているガラスケースに思いきり体当たりし、ガラスを力任せに割った。

マリナーラはレパルダスを追いかけ、素早く何かを奪う。キーストーンとサーナイトナイトだ。


グラエナとレパルダスを間違えました、大変失礼いたしました
 ▼ 368 AYr1xkow/g 17/12/28 12:52:59 ID:jz09MQGg [2/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
とやかく言っている暇はなかった。一同は急いでメローネの城から出ると、アルセアたちのそらをとぶことができるポケモンでフォルテ城へと向かう。

まだ空は暗いままだ。

フォルテ城にたどりつくと、今度はコルネッホとローザがマリナーラとアーリオと対峙していた。以前とは異なり、マリナーラは怒鳴ることなく手記を掲げて余裕の面持ちで何かを話している。マリナーラはパロレたちが来たことに気付くと、にやりと笑った。そして、

「この三人も、結局ホントはしょーもない奴らだったんだよねぇ」

そう言って三英雄の彫刻を見上げる。コルネッホとローザは、息を詰めてマリナーラを見つめていた。

「三人……たった三人だけでも分かり合えないんだよ」

マリナーラは意味ありげな声音で言った。

「この日記見て分かったでしょぉ?あの女王の言葉とは矛盾してっけど、それでもこんな重大な秘密を抱えてたことは大問題だよねぇ」

マリナーラは猫撫で声でそう言うと、真面目な顔で真っ直ぐにコルネッホを見つめて冷たく言い放つ。

「知らなかったじゃ済まねえんだよ。今はもう王様でもないくせに『王家の末裔としての責務を果たす』なんて言っちゃってるなら尚更」

マリナーラはそう言って、一歩ずつゆっくりとコルネッホの方へ向かった。

「にっくいスパイス団にメガストーンとキーストーンを盗まれて、しかも自分が知りもしなかった真実を先に突き止められる気分はどお?」

マリナーラはにやりと微笑む。

「怒ってるぅ?それとも泣きそー?悔しいならかかってこいよ!」

マリナーラがそう言いながらコルネッホの顔を覗きこもうとする。ローザがマリナーラを軽くはねのけた。黙って見ていたユーリはたまらず駆け出し、二人の前へ向かった。

「あっは、王子様みたい。さっすが王家の末裔だぁ」

マリナーラはまだ笑っている。

「これ以上父上を侮辱することはこのオレが許さない!」

ユーリはそう言ってマリナーラの前に立ちはだかった。

「姉上も、父上も……王家の末裔という身分に押し潰されそうになりながら……それでも誇りを持って日々を生きておられるんだ。それはオレだって同じ……でも、オレはもう負けない!」

ユーリの大きな声が、城に響き渡る。

「姉上も父上も人間です。知らないこともあるし、勝てないことだってある。たとえ王家の末裔としてそれが許されないとしても、オレが許します!お二人が弱気になってしまった時は、オレとオレのポケモンが助ける!」

ユーリは叫んだ。コルネッホは力強く立っている息子の姿を、じっと見つめている。

「だって、大切な家族ですから。オレは、大切な仲間たちと共に、大切な人たちを守りたい!だから強くなるんです!」
 ▼ 369 AYr1xkow/g 17/12/28 13:01:45 ID:jz09MQGg [3/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ユーリの気迫に、マリナーラは思わずたじろいだ。マリナーラの泳いだ目が、クオレを捉える。しかし、マリナーラが何かを言う前にクオレが口を開いた。

「そんなに威張れることなのかなぁ?」

クオレの言葉に、マリナーラが怪訝な目を向ける。クオレは続けた。

「だって、あのメローネのお部屋はキーストーンが鍵になってたじゃないですか!」

メローネは、クオレの言いたいことがまだ分からないようだった。

「わたしたちがあの部屋を見つけた時は、パロレかアルセアさんが開けてくれてたし、実際今のアモル地方では二人しかあのお部屋の扉を自由に開け閉めできないってことだよね。……マリナーラさんのキーストーンは、盗んだものですよね?」

クオレはマリナーラを射抜くように見つめている。

「無理矢理盗んだもので見つけた情報でそんな風に上から目線で脅すなんて……何言ってるの?って感じ!理不尽だし、おかしいですよ!」

クオレはバシッと言った。マリナーラは何も言い返せず、唇を噛みしめてクオレを睨みつけている。自分が優位に立っていたと思いきや、徐々に追い詰められ始めていることにマリナーラは気付いているようだった。

「……っ、だとしても王家の末裔が秘密を抱えていたこと自体は事実だろーがよ!だって、あの日記を読んだだけじゃまだ分かんないことだってあるんだから。つーか、そんなことはどうでもいいのッ!」

マリナーラはそう叫ぶと、キッとパロレを睨んだ。

「マリナーラはね……納得が行かないんだよぉ。元はといえば、ガキンチョとイーラ火山で過去を見てから、かつては三英雄たちですらメガシンカの力を奪い合ってたってことがずっと気になって気になって仕方がなかった」

マリナーラは先程より少し大人しくなり静かに語り始めたが、その声はだんだんと興奮気味に大きくなっていく。

「メローネの口ぶりからして、仲間がいるってことも想像できた。きっとメガシンカの力を奪われた奴が他にもいっぱいいたって思った。そしてそれはやっぱり当たってた!」

そう、それはあのメローネの手記に書いてあった通りだ。

「マリナーラはねぇ!納得が行かないの!行かないんだよ!昔々はみんなが持ってたはずの力が、今マリナーラたちが持っててもおかしくない……いや、持ってたはずのメガシンカの力が、たった一人や二人の人間の手にしか渡らないこの時代が!」

マリナーラの叫びが、フォルテ城にこだまする。
 ▼ 370 AYr1xkow/g 17/12/28 13:03:13 ID:jz09MQGg [4/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「真実を突き止めたら何かが分かると思ったけど、余計に分からなくなるだけだし……何よりもクソみたいな理由でメガストーンとキーストーンは女王に奪われてた。それなら……それなら、もう力尽くで手に入れてやる!」

怒りで我を忘れているマリナーラは、腰につけたモンスターボールを乱暴に手に取った。それを見たパロレも身構えた。

「まだここに大量に残ってるメガストーンもキーストーンもぜーんぶマリナーラのものにして、この王家の末裔たちの信用もなくさせてやる!」

マリナーラはそう言うと、レパルダスを繰り出した。レパルダスは唸り声を上げてパロレたちを睨みつけ、威嚇してくる。

「そうはさせるか!」

パロレが一歩前に出る。マリナーラはハッと馬鹿にするように笑ったが、その様子に余裕はない。

「ガキンチョ……お前ならそう言って出てくると思った」

マリナーラは呟くように言う。

「結局、やっぱり一番邪魔なのはお前なんだよねぇ」

マリナーラは低い声で唸ると、目を大きく開いてパロレを睨んだ。

「……このヒーロー気取りが!今度こそマリナーラがお前をギッタギタのグッチョグチョにぶちのめしてやる!」
 ▼ 371 ソクムシ@みどぼんぐり 17/12/28 17:47:43 ID:TSxYKXko NGネーム登録 NGID登録 報告
アキニレとバジリコのお互いとアルセアに対する口調とその他の人たちに対する口調が微妙に違うところにこだわりを感じる
 ▼ 372 AYr1xkow/g 17/12/29 00:24:23 ID:WTOAZSuI [1/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「マリルリ!行くぞ!」

パロレがマリルリを繰り出すと、間髪入れずにマリナーラは指示を出した。

「レパルダス!ねこだまし!」

レパルダスは素早くマリルリに攻撃をする。マリルリはそのスピードに圧倒され、怯んでしまった。

「レパルダス!続けてダストシュート!」

「ニャアッ!」

レパルダスはどこからともなく汚れたゴミを取り出し、マリルリに勢いよく投げつけた。マリルリは悲鳴を上げる。

「マリルリ、頑張れ!じゃれつくだ!」

マリルリは体を震わせてゴミを振り払うと、覚悟を決めてレパルダスの元へと近づいた。それから、思いきり攻撃を仕掛ける。レパルダスは倒れてしまった。

「こんの……サーナイト!」

マリナーラが色違いのサーナイトを繰り出す。

「マリルリありがとう!行け!リザードン!」

パロレもポケモンを入れ替えた。

マリナーラが何をしようとしているのかは分かる。パロレは、あの後バジリコに再びバングルにはめてもらったキーストーンに触れた。リザードンのリザードナイトXとパロレのメガバングルが反応する。

「リーザァー!」

リザードンはメガリザードンXにメガシンカした。

「やってやろうじゃんッ!」

マリナーラもそう叫んで、盗んだキーストーンを掲げる。サーナイトに持たせていたサーナイトナイトとキーストーンが反応し、サーナイトの体が光を放ち始めた。

「サナァー!」

サーナイトの白いしなやかな体が、みるみるうちに黒く染め上げられていく。やがて、サーナイトは漆黒のドレスを身に纏う、闇の世界の王女のような姿に変わった。メガサーナイトにメガシンカしたのだ。

「あっはぁ……」

マリナーラは、恍惚とした表情でメガサーナイトを見つめている。認められていない自分も、とうとうメガシンカの力を使うことができたのだ。
 ▼ 373 AYr1xkow/g 17/12/29 00:25:55 ID:WTOAZSuI [2/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「リザードン!行くぞ!フレアドライブだっ!」

メガリザードンXは炎に包まれた体でメガサーナイトめがけて突進した。メガサーナイトの体が燃え上がる。しかし、メガサーナイトは一撃では倒れなかった。

「サーナイト!ムーンフォース!」

マリナーラが声高らかに叫んだ。メガリザードンXは反動でかなり体力を削られている。まずい。メガサーナイトは月の力をメガリザードンX目掛けて放った。

「リザァ!」

メガリザードンXは苦しそうな鳴き声を上げた。

「リザードン!」

パロレが思わず名前を呼ぶ。メガリザードンXは薄目を開けると、かすかに微笑んだ。それから、最後の力を振り絞って立ち上がる。パロレを悲しませまいと、ギリギリのところで耐えたのだ。

「リッ……ザァ!」

「リザードン……!よし!決めるぞ!」

マリナーラを止めよう。ぼくたちで!

「エアスラッシュだ!」

メガリザードンXは咆哮を上げて青い炎を吐き出すと、空を切り裂いた。風でできた刃がメガサーナイトを襲う。メガサーナイトは儚い鳴き声を上げてそのまま戦闘不能になってしまった。

「……っ!なんでぇ……ッ!」

マリナーラが歯を食いしばって悔しそうに唸る。パロレはそんなマリナーラの方へ向かって歩いていった。

ギリリと睨みつけてくるマリナーラを無視して、パロレは更にマリナーラの後ろへと歩いた。そして、少し驚いた表情をしているアーリオの前までやってくる。

「セレビィを放すんだ!」

パロレはそう言って、右手を突き出した。

「……」

セレビィを閉じこめた檻を持っているアーリオは、しばらく黙ってパロレを見つめていた。それから小さく息を吐き、肩をすくめる。

「しょうがないね。完敗だよ」

アーリオはそう言って、セレビィの入った檻をパロレに差し出した。パロレが檻を受け取ると、左手を出すように促す。パロレが左手を出すと、アーリオはその掌の上に檻の鍵を落とした。

パロレは急いで鍵を開けた。中でぐったりとして眠っていたセレビィは鍵の開く音で目を覚ました。

「セレビィ……遅くなってごめんね。もう大丈夫だよ。出ておいで!」

パロレが優しく語りかけると、セレビィはぱちくりと瞬きをした。それから辺りをキョロキョロと見渡す。そして、やっと状況を理解したのか、セレビィは勢いよく檻を飛び出した。
 ▼ 374 AYr1xkow/g 17/12/29 00:27:10 ID:WTOAZSuI [3/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
檻を出たセレビィはクルクルと体を回転させて飛び回りながら、一人ひとりの元へと近づいていった。まずはバジリコに近づいていく。バジリコは微笑んでセレビィの顔を撫でた。

バジリコの次はアキニレ、そしてその次はアルセア。それからクオレの元へ飛ぶと、ユーリ、ローザ、そしてコルネッホの方にも近づいていった。

セレビィとコルネッホが見つめ合う。それから、セレビィはパロレの元へと再び戻ってきた。

「フィー!」

「元気そうでよかった……もう大丈夫だなっ!」

パロレが言うと、セレビィは頷いた。そして、パロレの首の周りに体をこすりつけてきた。

「はは!くすぐったいよ!」

パロレはそう言って笑いながらセレビィを撫でた。セレビィは大きな瞳でパロレを見つめてくる。その姿を見て、パロレはセレビィは何かを伝えようとしているのではないかとふと思った。

「なんで……なんでよぉ……力を求めることの、何が悪いって言うのぉ……!」

ぶつぶつと呟くマリナーラ。どこかで聞いたことのあるような言葉だ。

セレビィはふとマリナーラの方を見て小さく鳴き声を上げた。それから、セレビィは天井高くへと飛び上がる。その瞬間、パロレたちの体がふわりと浮かび上がった。

これが最後の時渡りだ。パロレは直感でそう悟った。助けてくれたお礼として、そして何よりも、パロレに物語の最後を見せるために、セレビィはもう一度だけ過去にパロレたちを連れていこうとしている。

パロレは瞳を閉じた。やがて、体がギュッとどこかへと引っ張られるような感触がして、パロレたちは過去へと旅立った。
 ▼ 375 AYr1xkow/g 17/12/29 00:29:08 ID:WTOAZSuI [4/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
三英雄の彫刻が、美しく佇んでいる。

彫刻はかなり新しく見えた。少し周りを見てみる。まだ博物館になっていない頃だ。すると、足音が聞こえ、パロレたちは急いで物陰に隠れた。

足音の主は、三英雄の彫刻に囲まれた中心で立ち止まった。そして、三英雄の彫刻を見上げる。

「……」

その顔を見て、パロレはあっと声を上げそうになった。足音の主は、三英雄の一人であり、アモルの初代の王であるエシャロットだったのだ。

年老いたエシャロットは悲しげな表情で彫刻を見つめていた。そして、小さく息を吐く。

「アングリアもメローネも……いなくなってしまった」

エシャロットはそう呟いた。

「どうか……不甲斐ない私を許してくれ」

エシャロットはそう言って、アングリアの彫刻に触れる。

「賢いお前は、私を止めようとしてくれていたのだよな。しかし、私が愚かなばかりに、お前は狂っていってしまった」

エシャロットはそれから、メローネの彫刻にそっと触れた。

「優しいお前は、私を許せなかったのだろう。友であるからこそ、力に溺れた私を許すことができず、やがてお前も変わってしまった」

エシャロットはそう言ってメローネの彫刻から手を離すと、自分の彫刻を見上げた。

「強く、勇気に溢れ、情熱に満ちたエシャロット……そんな者はもういない。私が英雄足り得たのは、お前たちが共に戦ってくれたからだ。アングリアとメローネがいなければ、私は弱い」

エシャロットははっきりとした口調でそう言った。それから、

「すまない。すまない……私をどうか、許してくれ。孤独になってから初めて分かった。私はお前たちのことが、……大好きだった」

そう言ってエシャロットは、ズルズルと体を低くさせてやがてうずくまってしまった。

「ごめん……ごめんよ、アングリア……メローネ……全部俺のせいだ……」

エシャロットのくぐもった声が聞こえる。静かな城に、すすり泣く声だけが響いた。

「……せめてもの償いとして、このメガストーンもキーストーンも、全部またアモルの民に俺が渡すよ。三人で決めたんだもんな……約束は果たさないとだよな。俺が最後まで、やり通すよ」

エシャロットはそう言って顔を上げると立ち上がった。

「すべてを償えるとは思っていない。それでも……私にはまだやることがある。私は生きているのだから……果たすべきことを、果たすだけだ」

エシャロットは力強くそう言うと、部屋を出ていった。やがて、パロレたちの体は再びふわりと浮かび上がった。
 ▼ 376 AYr1xkow/g 17/12/30 00:41:03 ID:5aVm7FVg [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
現代に戻ってきたパロレたちは、しばらく黙りこんでいた。

メローネの手記に書かれた通り、エシャロットも、アングリアも、メローネも変わってしまった。エシャロットはアングリアをカロスに追放し、メローネはエシャロットを討とうとして命を落とした。そして、一人になってようやく、エシャロットは自らの過ちに気付いたのだ。

エシャロットはかつての友人たちに償うために自分が民から取り上げてしまったメガシンカの力を再び分け与え、アモル地方にはメガシンカを使うことのできるトレーナーがまた増えていった。そして、後世になって力を持つ国民があまりにも多いことを危惧した女王がまたメガストーンとキーストーンを奪い返し、更にはそれらが国民たちの手に渡った経緯を隠すために三英雄に関する記述のある書物をすべて破棄してしまった。

真実を知るためには、破棄されることのなかった唯一の書物であるメローネの手記を見つけることが重要だったのだ。メローネが最後に施錠して以来一度も開くことのなかった部屋に残されたメローネの手記。それを見つけるために必要な鍵は、キーストーンだった。

このアモル地方でキーストーンを自身の所持品として持っている者は、現代にはアルセアしかいなかった。アルセアに会うことが出来なかったセレビィは、もう一人その素質を持つトレーナーを見つけて託すことにしたのだろう。そのトレーナーを過去に連れていき、三英雄の真実をアモルの人々に知らせようと。そして、セレビィは、森で迷子になっているパロレを見つけた。

そういうことだったのだ。すべてが繋がった。現代に戻ってきたパロレは、目の前で楽しそうに飛び回っているセレビィを見つめて微笑んだ。

「ぼくを選んでくれて、ありがとう」

パロレがそう言うと、セレビィはこちらを向いた。セレビィは、とても穏やかな表情を浮かべている。

「今までいっぱい助けてくれたよね。本当にありがとう。……だから」

パロレは、満面の笑みを浮かべて続ける。

「だから、次はぼくから会いに行くね!」

セレビィも笑顔で頷いた。セレビィはいつもパロレの元までやってきて、何度も過去を見せては助けてくれた。今度はぼくからラランジャの森へ行こう。パロレはそう思った。その時になったら、セレビィはきっとパロレを暖かく迎えてくれるだろう。

「フィフィ!」

セレビィは可愛らしい鳴き声を上げると、クルクルと天井へと舞い上がり、それから城を出て遠くへと飛び立っていった。
 ▼ 377 AYr1xkow/g 17/12/30 00:43:25 ID:5aVm7FVg [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
再び静かになったフォルテ城で、コルネッホがふと動いた。コルネッホはマリナーラの元まで歩いていく。

「マリナーラ……と言いましたね」

コルネッホの声に、マリナーラはビクッと肩を震わせた。

「あなたのやったことをすべて認めるわけにはいきません。……ですが、あなたの言っていたことも間違いではない……あなたがいなければ、真実は今も闇の中だったのかもしれない」

冷たい口調ながら、相手を理解しようとするコルネッホのその姿勢に、マリナーラは愕然としている。当然だ。彼女の予定では、こんなはずではなかったのだから。

「マリナーラ。あなたに、そのメガストーンとキーストーンを正式に私から差し上げます」

コルネッホは毅然として言った。

「……は!?」

マリナーラは唖然としている。

「私はエシャロットの意思を継ぎます。そして、私欲のためにメガシンカの力を取り上げた女王の存在も、三英雄の歩んだ道も、……民に再び力を分け与え、友との約束を果たしたエシャロットの勇姿もすべて、アモルに住むすべての人に伝えましょう」

コルネッホはそう言って、両手を大きく広げた。マリナーラはもはや何も言えず、口を大きく開けて震えている。

アモルにおけるメガシンカの歴史が、大きく変わろうとしている瞬間だった。

「……ローザ、ユーリ。お前たちの成長も、しかと見届けました」

コルネッホはそう言って、二人の子供を見つめた。

「私は……すべてを見ようとして、結局何も見えていなかった……」

そう言って目を閉じるコルネッホに、ローザが首を横に振る。

「とんでもないですわ」

ユーリも続けて頷いた。

「そうですよ!……父上、オレ、父上にお聞かせしたいお話がたくさんあるんです。是非聞いてもらえませんか?」

ユーリの言葉に、コルネッホは頷き、そして微笑んだ。

「もちろん。すべて、聞かせてください」
 ▼ 381 ミッキュ@かるいし 17/12/30 14:52:51 ID:1LhxNKqI NGネーム登録 NGID登録 報告
>>378
やっぱりリュウさんちょいワルオヤジって感じで好き
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 ▼ 382 AYr1xkow/g 17/12/31 00:13:09 ID:zeWOovis [1/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「マリナーラ」

無言で呆けているマリナーラに、バジリコが声をかけた。

「お前がスパイス団の次のリーダーだよ」

バジリコの言葉に、マリナーラが目を剥く。

「はぁ!?無理!マリナーラにそんな大役務まる訳ないじゃん!」

「でも、アジトで俺たち侵入者を追うように指示したのはお前だろ。あいつらも従った。それは、お前を指導者だって認めてるからだ」

バジリコは冷静にそう言った。マリナーラは激しく首を横に振る。

「ちがっ……だって、マリナーラしかいないからだよ!今はマリナーラの言うことを聞くしかないから!」

「そうだよ」

バジリコは強い口調で言った。

「マリナーラしかいない。そしてあいつらは、それでいいと思ったんだ。お前の指示を聞いて、従うことを選んだ」

マリナーラは黙っている。バジリコは続けた。

「今まで自分の好き勝手にやってきただろうけど、もう少し部下たちにどう思われているのか、何を求められているのかを分かった方がいい。お前があとちょっと変われば、スパイス団はきっともっといい方向に行けるんだよ」

そこまで言うと、バジリコは少しだけ自嘲気味に笑い、

「まあ、辞めた俺の言えたことじゃないけど……。でもまあ、リュウさんも多少は手伝ってくれるだろうし。……お前はアモル地方のみんなが真実を知るために少しは貢献した。メガストーンもキーストーンも貰った。わがままで気分屋で、いつも自分勝手だったお前にしちゃ、上出来だろ」

バジリコはそう言ってニヤッと笑った。マリナーラは頬を膨らませてバジリコを睨むように見上げる。

「バジリコは?これからどうすんの?」

「俺?」

バジリコは目を瞬いた。

「俺もこれからやることは一応決まったよ。……まあ、お前になら話してやってもいいか」

バジリコはそう呟いて、頭を掻いた。

「縁あって、とあるブランドの専属モデルになることになったんだよ。有名なブランドだから多分すぐばれると思うけど」

「はぁ?マジでぇ!?……ホンット、顔が良いと女にも仕事にも困らないからいーよねぇ。どこのブランド?まさかカメリア?あそこ男物も女物も出してるちょー人気ブランドじゃん」

バジリコは無言だった。マリナーラの笑みは引きつっている。肯定の意と受け取ったようだ。

「……まー、そうだよねぇ。マリナーラの負けだよねぇ。ガキンチョに勝てないなんて分かりきってたことなのに、なんでこんなに熱くなっちゃったんだろぉ……」

マリナーラはそう寂しげに呟くと、握りしめていたキーストーンを見つめた。
 ▼ 383 AYr1xkow/g 17/12/31 00:15:37 ID:zeWOovis [2/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「マリナーラよ」

ふとコルネッホがマリナーラに声をかけた。マリナーラが顔を上げる。

「あなたには、償ってもらわなければならない罪もあります。そこで、破壊したケースやガラスケースの弁償は、あなたが率いるスパイス団に請求させていただきます」

コルネッホは有無を言わさぬ強い口調で言った。マリナーラの顔が青ざめる。

「……ですが、それだけで構いません。あなたが私を脅したことや、私の家族を危険な目に遭わせたこと……それらはすべて水に流しましょう」

コルネッホはそう言うと、背後に立っている子供たちにそっと視線をやった。

「私にも至らぬ点はたくさんあった……それに、私の家族はとても強い。あなたにはきっと、負けないでしょうから」

コルネッホはそう言うと、一瞬だけにやりと笑った。

「……俺もそれは仕方ないと思う。自業自得だ」

バジリコはマリナーラにそう言った。

「すごいものを見ちゃったね」

アーリオが小さく微笑み、首を振りながら呟く。パロレたちはアーリオの方を向いた。

「アモルの歴史が変わる、歴史的瞬間だ。……まあ、俺も思ってたのとは違かったけど、楽しかったよ。何故アングリアの子孫なのにカロス出身なのかって謎は解けたしね」

アーリオはそう言って肩をすくめた。

「このアモル地方も、なかなか面白いところがあるじゃないか。もう少しここにいようと思うよ。アモルにはバトルハウスみたいなところはあるのかな?挑戦してみるのも悪くないかもね」

アーリオは独り言のようにそう言った。それから、クオレがパロレの元へ近づいてくる。

「パロレは、ヒーロー気取りなんかじゃないよね」

「えっ?」

思わず聞き返す。

「強くって、ピンチになってもいっつも相手に勝っちゃう!そんなパロレはわたしたちにとって、本物のヒーローだよ!」

クオレは、キラキラと輝く笑顔でそう言った。
 ▼ 384 AYr1xkow/g 17/12/31 00:16:45 ID:zeWOovis [3/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「……結局、私たちはいらなかった、ってことかな」

アルセアはわざとらしく投げやりな声音で言った。

「そうだな。保護者代わりなんて、いらなかったな」

アキニレも苦笑いで続けた。

「みんな……勝手に強くなるんだよな」

バジリコも言う。

「もう、心配ないな」

「ああ。もうパロレたちは、俺たちがいなくたって大丈夫だ」

「弟の成長が寂しい?」

「そりゃ少しはな!でも、嬉しいよ。歳は結構離れてるから、ずっと小さい子供みたいに感じてたけど……そんなことはないもんな」

「……そうだね」

アルセアとアキニレとバジリコは、パロレとユーリとクオレを眺めてそんな会話を続けていた。すると、

「アルセアよ」

コルネッホがアルセアの名を呼ぶ。

「はい。何でしょう」

アルセアは返事をしてコルネッホの元へ大股で近づいた。

「相談があるのですが、よいでしょうか」

コルネッホの言葉に、アルセアは特に迷うこともなく「はい」と答えた。コルネッホの話も大体検討がついているのだろう。

窓の外から、光が射しこんでいる。

夜明けだ。
 ▼ 385 AYr1xkow/g 18/01/01 00:16:11 ID:y.msylDY [1/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
数日後、パロレはアキニレに呼ばれて研究所へとやってきていた。

この研究所は、アキニレや他にもスリジエの研究を手伝っていた者たちが共同で管理をしていくことになったようだった。今はだいぶ落ち着き、研究員たちもやっと自身の研究に専念しつつある。

パロレが研究所にやってくると、アキニレは何か作業があるらしく、少し待っててくれと言ってきた。今はアキニレのデスク付近で、アキニレが戻ってくるのを待っているところだ。

「……ん?」

アキニレのデスク上を眺めていたパロレは、ふとあることに気がついて小さく声を上げた。写真立てに入れられていた写真が、新しくなっていたのだ。

以前飾られていたのは、子供の頃のアキニレたちの写真だった。しかし、写真に写っているのは、今のアキニレたちだった。

いつもはクールな表情をしているアルセアとバジリコが、大きく口を開けて笑っている。パロレは驚いて写真立てを覗きこんだ。二人のこんな顔は見たことがない。やはり親友の前だと変わるのだろうか。パロレは少し不思議な気持ちで写真を見つめていた。

「パロレ!待たせたな」

アキニレが戻ってきた。

「ううん」

パロレが首を横に振る。

アキニレは笑顔だった。アキニレは、パロレをじっと見つめて言う。

「パロレ。兄ちゃんとバトルしよう」

その言葉を聞くなり、パロレの顔はぱっと輝いた。

「うん!バトルしよう!」

パロレが何度も頷いてそう言う。夢にまで見た、アキニレとのバトルだ。

「ははっ!いい返事だ。……準備はいいか?」

アキニレが言う。パロレはもう一度頷いた。

「もちろん!」

アキニレはパロレを見ると、ニカッと笑ってモンスターボールを構えた。

ポケモントレーナーのアキニレが、勝負をしかけてきた!
 ▼ 386 AYr1xkow/g 18/01/01 00:17:20 ID:y.msylDY [2/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
あけましておめでとうございます
まだもう少しだけ続きます。今年もどうぞお付き合いくださいませ!
 ▼ 387 ネコロロ@ぎんのはっぱ 18/01/01 00:44:40 ID:FXgMwt3. NGネーム登録 NGID登録 報告
アキニレ戦キターーーーーー
支援
 ▼ 388 AYr1xkow/g 18/01/01 17:59:40 ID:DgqkSSeA [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
念のための由来・モデル一覧
人名編C

アーリオ Aglio
ヒガンバナ科ネギ属の多年草、ニンニクのイタリア語。

エシャロット Échalote
ネギ属の多年草、エシャロットから。

アングリア Anguria
ウリ科の蔓性一年草、スイカのイタリア語。

メローネ Melone
ウリ科の植物、メロンのイタリア語。
 ▼ 389 AYr1xkow/g 18/01/01 18:03:14 ID:DgqkSSeA [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
>>388
修正

エシャロット Echalote
ネギ属の多年草、エシャロットから。

文字化けしてしまいました、失礼しました。
正確には頭文字のEの上にアキュート・アクセントが付きます
 ▼ 390 AYr1xkow/g 18/01/04 02:02:58 ID:2I4qunBg [1/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「手加減はしないぞ!行け、エーフィ!」

アキニレがそう言ってエーフィを繰り出す。

「ぼくだって!行くよ!バンギラス!」

パロレも負けじとバンギラスを繰り出した。

「エーフィ!マジカルシャインだ!」

アキニレが指示を出す。エーフィは凄まじい光を放ってバンギラスを攻撃した。バンギラスは思わずよろめいたが、どうにか耐えきった。

「バンギラス!かみくだく!」

バンギラスはエーフィの元まで向かうと、エーフィのしなやかな体にがぶりと思いきり噛みついた。エーフィが苦しそうな鳴き声を上げる。そのままエーフィは倒れた。

「エーフィ、お疲れ。……まだまだ!行くぞ、バンバドロ!」

アキニレは元気よく次のポケモンを繰り出した。

「よし、バンギラス戻れ!マリルリ!頼んだ!」

パロレもポケモンを入れ替える。それから、

「マリルリ!アクアテール!」

マリルリは尻尾を強くバンバドロに打ちつけた。効果は抜群だ。しかし、守りに優れたバンバドロはそれほどダメージを受けていないようだ。

「バンバドロ、じしん!」

バンバドロが激しく床を揺らす。マリルリはよろめき、その場で転んでしまった。

「マリルリ!」

パロレが呼びかけると、マリルリは立ち上がった。そのまま勢いよく指示を出す。

「マリルリ、もう一度アクアテール!」

マリルリが尻尾をバンバドロに叩きつけた。しかし、バンバドロはびくともしない。先程よりダメージが減っている。困惑気味のパロレを見て、アキニレはニヤッと笑った。

「バンバドロの特性はじきゅうりょく。技を受けるとぼうぎょが上がるんだ。さあ、バンバドロ、決めるぞ!じしんだ!」

「ムヒイ!」

アキニレの指示を聞いたバンバドロは、再び強く床を揺らした。マリルリはまたもやよろめいて転び、そのまま気を失ってしまった。
 ▼ 391 AYr1xkow/g 18/01/04 02:04:21 ID:2I4qunBg [2/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「マリルリありがとう。……ぼうぎょが上がる、か。それなら……!」

パロレはそう呟いてから、

「ロズレイド!任せた!」

そう言ってロズレイドを繰り出した。

「ロズレイド!エナジーボールだ!」

ロズレイドが、エナジーボールを作り出してバンバドロめがけて放出する。ぼうぎょが上がっているのなら、とくこうの高い技で攻めるしかない。

バンバドロは鳴き声を上げて倒れた。ズシンと重い音が響き渡る。

「次はこいつだ!シビルドン!」

アキニレが次に繰り出したのは、でんきうおポケモンのシビルドンだ。パロレは続けてロズレイドに頑張ってもらうことにした。

「ロズレイド、どくどく!」

ロズレイドが体から毒を放出した。紫色のどろりとした液体が、シビルドンの体に降り注ぐ。シビルドンはもうどく状態となってしまった。

「シビルドン、ほのおのパンチ!」

シビルドンは拳を握りしめて力をこめた。拳が炎に包まれる。シビルドンは、その拳をロズレイドめがけて振り下ろした。ロズレイドはなかなかのダメージを受けてしまったようだが、それでもまだ大丈夫そうだ。

シビルドンは苦しそうに体を震わせた。猛毒がシビルドンの体を蝕んでいく。チャンスだ。

「ロズレイド!ベノムショック!」

ロズレイドは先程のものとは異なる毒液をシビルドンに浴びせた。シビルドンが呻く。ベノムショックは、もうどく状態のポケモンには二倍の威力を発揮する技だ。そのダメージを受けたシビルドンは、やがて倒れてしまった。

「やるなぁ、パロレ!それじゃ、こいつはどうだ?行け、カイリュー!」

アキニレがそう言って、カイリューを繰り出した。パロレも何度か目にしているポケモンだ。カイリューはパロレを試すような瞳でじっと見つめている。

「もちろん、負けないよ!」

パロレはそう言うと、

「よし、ロズレイド戻れ!バンギラス!行くぞっ!」

ポケモンを入れ替えた。
 ▼ 392 AYr1xkow/g 18/01/04 02:06:31 ID:2I4qunBg [3/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
バンギラスとカイリュー。どちらも高い能力を持つポケモンだ。この勝負は、まさにバンギラスにとって負けられない戦いだろう。

「カイリュー、かわらわり!」

カイリューが、瓦をも割る勢いで強大な攻撃を仕掛けてきた。バンギラスの巨体が吹っ飛ばされる。バンギラスがどうにか立ち上がったのを確認すると、パロレも指示を出した。

「バンギラス、こおりのキバ!」

バンギラスは、冷気を帯びた牙でカイリューの首元に噛みついた。牙が食いこみ、カイリューが悲鳴を上げる。すると、冷気はそこから素早くカイリューの体を包んでいき、カイリューはカチコチに凍ってしまった。

「よっしゃ!いいぞバンギラス!」

パロレが喜びの声を上げる。

「続けてストーンエッジ!」

「バンギィ!」

バンギラスが、尖った岩でカイリューの体を突き刺した。その勢いは凄まじく、カイリューを包んでいた氷は割れてしまったが、カイリューは既に戦闘不能になってしまっていた。

「流石、強いな!」

アキニレがそう言ってカイリューをボールに戻す。それから、

「次はこいつの出番だ!行くぞ、ヘラクロス!」

アキニレはヘラクロスを繰り出した。

「バンギラス戻れ!リザードン、任せた!」

パロレがリザードンを繰り出すと、アキニレは意味ありげな笑顔でこちらを見つめてきた。

「……?」

パロレは思わず首を捻った。

アキニレは笑顔のまま、鞄から何かを取り出した。光り輝く石だ。アキニレは、その石を高く掲げた。

すると、ヘラクロスの体が光を放ち始める。

「え?まさか……!」

そのまさかだった。ヘラクロスの持っているヘラクロスナイトとアキニレのキーストーンが反応している。

「ヘッルァ!」

光を解き放ったヘラクロスは、メガヘラクロスへとメガシンカした。

「え……!」

驚きを隠せないパロレを、アキニレは挑戦的な目で見つめていた。メガヘラクロスも、好戦的な瞳をこちらに向けている。

「さあ、俺も本気で行くぞ!」

アキニレは気合たっぷりにそう言ってみせた。
 ▼ 393 AYr1xkow/g 18/01/06 13:54:41 ID:.9M2V.Z2 [1/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「り、リザードン!エアスラッシュだ!」

パロレは未だ動揺を隠せないままリザードンに指示を出した。とてもリザードンをメガシンカさせられるほどの集中力はない。リザードンはそんなパロレの気持ちを理解してか、こちらをちらりと見て落ち着いて、とでも言うように頷いた。

エアスラッシュはメガヘラクロスに直撃した。しかし、メガヘラクロスは攻撃を耐えてみせた。

「ヘラクロス、ストーンエッジ!」

アキニレが声高らかに叫ぶ。ヘラクロスは鋭く尖った岩を思いきりリザードンに突き刺した。リザードンは悲痛な声を上げてその場に飛び上がり、やがて床に倒れてしまった。

「つ……強い……!」

パロレは唖然としてメガヘラクロスを見つめた。メガシンカしたポケモンと戦うのはこれで三回目だったが、やはりかなり強力だ。

相棒のリザードンもやられてしまった。パロレは「ごめんなリザードン」と声をかけてリザードンをボールに戻した。

「ピジョット……行くぞっ!」

パロレはそう言ってピジョットを繰り出すと、メガバングルに触れた。

フォルテ城でマリナーラの悪事を止めたあの日、パロレはコルネッホから礼としてある物を受け取っていた。それは、バンギラス、ジュペッタ、そしてピジョットの力を最大限に引き出すことのできる特別な石だ。

ピジョットの体が光り始める。ピジョットに持たせていたピジョットナイトとパロレのメガバングルが反応しているのだ。

「ピジョオー!」

ピジョットは、メガピジョットへとメガシンカした。

「ピジョット!ぼうふう!」

パロレが指示を出す。メガピジョットは強く翼をはためかせた。やがて、嵐のように強烈な風が吹き荒れていく。風はメガヘラクロスを思いきり打ちつけた。

メガヘラクロスは踏ん張っていたが、ぼうふうの威力に耐え切れずやがて吹っ飛んでしまった。そしてメガヘラクロスは勢いよく壁にぶつかって、気を失った。
 ▼ 394 AYr1xkow/g 18/01/06 13:55:47 ID:.9M2V.Z2 [2/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「もうここまで来たのか!?やっぱり強いな!……行くぞ、ブリガロン!」

そう言ってアキニレが繰り出したのは、とげよろいポケモンのブリガロン。かつてアキニレがスリジエに貰ったハリマロンが進化した、彼の相棒だ。

パロレはニヤッと笑った。ブリガロンはくさ・かくとうタイプだ。このままメガピジョットに頑張ってもらえば、いける!

「ピジョット!もう一度、ぼうふうだ!」

「ピジョァー!」

メガピジョットは先程の勢いのまま再び大きく羽ばたいた。激しい風が起こり、やがて竜巻まで現れる。メガピジョットはブリガロンをしっかりと捉えると、ブリガロンめがけて一際大きく翼をはためかせた。

ぼうふうがブリガロンに当たる。ブリガロンは避けようとしたが、無理だった。ブリガロンは攻撃を受け、一撃でその場に倒れてしまった。

「……はは!降参だー!」

アキニレはそう言って、笑顔でブリガロンをボールに戻した。少し悔しそうだが、それでも明るく笑っている。

「流石チャンピオン!俺の弟!」

アキニレはそう言いながら、こちらへと近づいてきた。

「に……兄さん、さっきの……!」

パロレが興奮冷めやらぬ様子で話しかける。アキニレはそんなパロレを見て思わず吹き出した。

「メガシンカ、だろ?気力がいるけど……でもポケモンとの絆を感じられる、いいものだな!」

アキニレはそう言ってニカッと笑うと、パロレの頭を撫でた。

「実はあの日、あれからアルセアとコルネッホさんで話し合って、『申請した者にメガストーンとキーストーンを与える』ってことが正式に決まったんだ」

アキニレが言う。

「え……!」

パロレは目を見開いた。

「もちろん、多少の条件はあるけどな。でも、かつてはアモルの人々みんなが持っていた力なんだ。やっぱり、みんなで分け合った方がいい」

アキニレは頷きながら続ける。

「絆の力……それは特別でもなんでもない、誰だって持っているものだ。メガシンカは、誰だって使える力なんだよな」

「……うん。そうだよね!」

パロレも頷き返した。
 ▼ 395 AYr1xkow/g 18/01/06 13:56:59 ID:.9M2V.Z2 [3/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「それで……これは俺の考えなんだけどな」

先程までは真面目だったアキニレの声音が、少し明るくなった。

「きっとお前が戦ってきた人たちはみんな、ポケモンもバトルも本当に大好きな人ばかりだと思うんだ」

アキニレはそう言うと、意味ありげな笑みを浮かべる。

「だったらみんな、新しい力を得て……もう一度パロレと本気で戦いたいと思ってるんじゃないか?」

アキニレを見て、パロレは目を瞬いた。

「それって……」

パロレが言うと、アキニレは頷く。

「ジムリーダーや四天王のみんな……それに、ユーリも、クオレももしかしたら!」

嬉しそうにそう言うパロレを見て、アキニレは快活に笑った。

「ははは!そうそう!……それに、もしかしたら思いもよらない人ともバトルできるかもしれないしな」

アキニレの言葉は、パロレの耳には届いていなさそうだ。パロレはキラキラと目を輝かせている。

これからの戦いは、決して一筋縄ではいかないだろう。だけど、だからこそとても心踊る。

アキニレは穏やかな表情で弟を見つめていた。きっと、パロレはこれからももっともっと強くなるだろう。

「……ぼく、強くなりたい」

パロレはそう言って、真っ直ぐにアキニレを見つめた。

「それに、やっぱりバトルが大好きなんだ!だから今、すごく楽しみだよ!ぼく、行ってくる!」

パロレはそう言って、リュックを持ち直した。

「ああ、行ってこい!」

アキニレが笑顔で送り出す。

パロレは大きく手を振って、研究所を飛び出した。
 ▼ 396 ンド@ガブリアスナイト 18/01/11 14:10:50 ID:h.pfe3iw NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 397 AYr1xkow/g 18/01/14 23:41:08 ID:3tloRKVI [1/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
パロレはまず、真っ直ぐオーロジムへと向かった。またショッピングに行っていてジムが閉まっていたらどうしよう……そう考えていたものの、それは杞憂に終わった。ジムは開いている。

ジムの中に入り、奥まで進む。レナは前と同じように、姿見の前でどんな服を着るか悩んでいるようだった。

「こんにちは!」

パロレが挨拶をすると、レナが振り返る。

「チャオ!待ってたわよ、チャンピオン!」

レナはそう言って、ウインクしてみせる。

「その様子だと、しっかり話を聞いてるみたいね。あたしたちジムリーダー、みんなあなたともう一度バトルするの、楽しみにしてたんだから!」

レナは笑顔でそう言った。

「今回も本気の本気、更に強くなった私たちの力を見せてあげる!さあ、始めましょ!」

レナはそう言って、モンスターボールを手に取った。

「行くわよ、チラチーノ!」

レナがチラチーノを繰り出す。

「行け、マリルリ!」

パロレもポケモンを繰り出した。

「チラチーノ、おんがえし!」

レナのポケモンたちは、みんなレナに懐いている。そしてその力を最大限に発揮するこの技を使うことが得意なのだ。

チラチーノの攻撃は、マリルリに見事ヒットした。しかし、マリルリはピンピンしている。

「マリルリ!ばかぢからだ!」

マリルリは読んで字の如く、ばかぢからを発揮して凄まじい勢いでチラチーノに襲いかかった。チラチーノは一撃でやられてしまい、その場に倒れこんだ。

「まだまだ!行くわよ、ペルシアン!」

「ンナーオ」

レナがペルシアンを繰り出す。ペルシアンは機嫌の悪そうな鳴き声を上げた。
 ▼ 398 AYr1xkow/g 18/01/14 23:42:29 ID:3tloRKVI [2/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「よし、マリルリ戻れ!」

パロレはマリルリをボールに戻した。毎回レナのポケモンのおんがえしを受けると考えると、作戦を変える必要があることに気付いたのだ。

「行け!ジュペッタ!」

「ケケケ!」

パロレはジュペッタを繰り出した。

ジュペッタはゴーストタイプだ。ノーマルタイプの技を無効化してしまう。逆に、ジュペッタの得意とするゴーストタイプの技も、レナのポケモンたちには効かない。

ちらりとレナの顔を見ると、レナはニヤッと笑った。

「ペルシアン!じごくづきよ!」

ペルシアンは、ジュペッタをまさに地獄に突き落とすような勢いで突いた。攻撃はジュペッタの急所に当たり、ジュペッタはその場にへなへなと落ちてしまった。

「うわ……!」

パロレが思わず声を上げる。完全に読まれていたようだ。

「ジュペッタ、ごめん!」

パロレは慌ててジュペッタをボールに戻した。

「行け!バンギラス!」

パロレがバンギラスを繰り出す。レナは間髪入れずに指示を出してきた。

「ペルシアン!じゃれつく!」

ペルシアンはバンギラスに駆け寄り、思いきりじゃれついた。バンギラスはペルシアンの動きを鬱陶しそうな表情で受けている。やがて、バンギラスはペルシアンを振りほどいた。

「バンギラス!かみくだくだ!」

パロレが叫ぶ。バンギラスは、ペルシアンの首筋にがぶりと噛みついた。バンギラスの牙が、ペルシアンの肌に食いこむ。

「ンニャァ!」

ペルシアンはかなり痛そうな鳴き声を上げ、しばらく悶えていたかと思うとそのまま戦闘不能となった。

「次はこの子よ!行くわよ、カエンジシ!」

レナはめげずにカエンジシを繰り出した。頭部から生えた長い真紅の毛が美しく揺れている。メスのカエンジシだ。

「カエンジシ!オーバーヒート!」

カエンジシは、大きな咆哮を上げた。持てる力すべてを出したカエンジシの体から、凄まじい勢いの炎が噴出し、バンギラスの体を包んでいく。バンギラスは苦しそうに声を上げた。

効果は今ひとつではあるが、かなり威力の高い技だ。力を出し尽くしたカエンジシは、荒い息をしている。もうあれほどの威力は出せないだろう。パロレは煙の中を覗きこんだ。バンギラスは無事だろうか?
 ▼ 399 AYr1xkow/g 18/01/14 23:43:45 ID:3tloRKVI [3/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「バンギィ!」

バンギラスが鳴き声を上げる。バンギラスは攻撃を耐えきっていた。パロレの顔が、ぱあっと輝く。

「バンギラス!ストーンエッジだ!」

バンギラスは頷くと、鋭く尖った岩でカエンジシの体を突き刺した。カエンジシは体を貫かれ、一撃でその場に倒れこんだ。

「やっぱり強い!さあ、行くわよ、ムーランド!」

レナはムーランドを繰り出した。

「よし、バンギラスありがとう!マリルリ!もう一回頼んだ!」

パロレはもう一度マリルリを繰り出した。先程のばかぢからの疲れも、しばらく休憩したことで回復しただろう。

「ムーランド!ふるいたてる!」

ムーランドは体を震わせ、臨戦態勢を取った。ただでさえ高いムーランドのこうげきが更に上がってしまう。ここは、早く倒さなければかなり厄介なことになるだろう。

「マリルリ、一発で決めるぞ!ばかぢから!」

こうげきとぼうぎょが下がっていてしまったマリルリも、ボールの中でしばらく休んだことでまた力を出せるようになっていた。マリルリが、凄まじい力でムーランドを攻撃する。ムーランドはマリルリの攻撃を必死に耐えようとしていたが、やがて膝をつき、そのまま力尽きてしまった。

「いいぞ!」

パロレが思わず声を上げる。

レナは、まだ笑っていた。勝気な微笑みを浮かべて次のポケモンを繰り出す。

「さあ、勝負はまだ分からないわよ!ミミロップ!あなたに任せたわ!」

レナはそう言って、ミミロップを繰り出した。

「マリルリ、戻れ!ピジョット!行くぞ!」

パロレもポケモンを入れ替えた。

レナが、ポケットから大切そうに輝く石を取り出す。キーストーンだ。

ミミロップの持っているミミロップナイトと、レナのキーストーンが反応した。ミミロップの体はまばゆい光を放ち、メガシンカした。ミミロップはまるで破れたタイツを履いているようなセクシーな出で立ちに変わっている。

「こっちだって!」

パロレは叫んだ。そして、メガバングルにはめたキーストーンに触れる。

ピジョットのピジョットナイトと、メガバングルが反応する。ピジョットは、メガピジョットへとメガシンカした。

さあ、バトルはまだ終わらない。
 ▼ 400 AYr1xkow/g 18/01/14 23:45:15 ID:3tloRKVI [4/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「ミミロップ!かみなりパンチよ!」

メガミミロップは素早くメガピジョットに近づくと、電気を帯びた拳で思いきりメガピジョットを殴り飛ばした。メガピジョットは顔面を殴られて大きく吹っ飛んだが、翼をはためかせて体勢を整えた。

メガミミロップは、こうげきに優れている。モタモタしている暇はない。一発で決めよう!

「ピジョット!ぼうふうだ!」

メガピジョットは、翼を大きく広げて一振りした。大きな風が起こる。メガピジョットは更に翼をはためかせた。いくつもの強い風が起こり、びゅうびゅうと音を立て始める。

やがて、風はまるで狙いを定めたようにメガミミロップの方へと吹いていった。メガミミロップはノーマルタイプだけではない。かくとうタイプでもある。ぼうふうに弄ばれたメガミミロップは、上手く歩けず、やがてすっ転んだと思えば風に攫われて大きく飛んでいった。

ドン!と大きな音がしてメガミミロップは壁に打ちつけられた。

「ミミィー……」

ミミロップは力なく声を上げた。戦闘不能状態だ。

「やった!」

パロレが声を上げる。

「あーあ、やられちゃった!」

レナは残念そうに言って、ミミロップをボールに戻した。そして、パロレを見てニッコリと笑う。

「やっぱり、キミとバトルするのは楽しいな。また勉強させてもらったわよ!」

レナはそう言ってウインクした。

「もちろん、ぼくもです!」

パロレがそう言って頷く。レナは嬉しそうな顔をした。

「さすがチャンピオン……といったところかな。バトルの才能はもちろん、ポケモンとの連携もバッチリ!ほんと、妬けちゃうわ」

レナはそう言うと、返答に迷っているパロレを見て吹き出した。

「なーんてね!あたしにはまだまだ課題があって、だからキミに負けた。それだけのことよ!あたし、もっと頑張らなきゃ!」

レナはそう言うと、右手を差し出した。パロレも右手を差し出す。そして二人は握手を交わした。

「うふふ!まだキミにはたくさんやることがあるわよね。頑張って!」

レナが言う。パロレは頷いた。

「はい!ありがとうございます!」

そう言って、オーロジムを後にする。まだ、たくさんの人とのバトルがパロレを待っている。

「じゃあねー!」

レナは元気よく言って、大きく手を振った。
 ▼ 401 AYr1xkow/g 18/01/18 11:59:20 ID:kWW.nWzY NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
パロレはオーロシティを出ると1番道路に戻り、ノグレータウンの方へと向かった。

もちろんそらをとぶで移動する方が速いが、たまには歩いて行くのも悪くない。

久しぶりにノグレータウンにやってくると、パロレはゴンドラに乗って美しい街並みを眺めて楽しんでいた。すると、以前来た時に見つけた、大きな家が二軒並んでいるところに見知った姿を見つけ、パロレは目を見開いた。

「すみません!止まってもらってもいいですか?」

ゴンドリエーレに問う。ゴンドリエーレは、近くにゴンドラを停めてくれた。パロレは、自宅とクオレの家のように隣り合った二軒の家の方へ向かう。そこには、先程玄関の扉を開けて出てきた一人の男が立っていた。

「こんにちは!」

「ん?」

男が振り向く。背が高く、すらっとしたスタイルのいい体に、誰が見ても惚れ惚れしてしまう整った顔。バジリコだ。

「ああ、パロレくん」

バジリコはパロレに気付くと微笑んだ。

「ここに住んでるんですね!」

パロレが言うと、バジリコは頷く。

「隣はアルセアの家だよ」

「え!そうなんですか」

パロレが驚いた顔をする。

「ほんとに、ぼくとクオレみたい」

そう呟くパロレを見て、バジリコは複雑そうな顔をしてしばらく黙っていたが、やがて、

「クオレちゃんのこと、大事にしなね」

それだけ言った。

「……?はい」

パロレは、何のことだかよく分かっていない。

「ところで、パロレくん。実は俺、君に会いに行こうと思ってたんだ」

「えっ?なんでですか!?」

驚いて大声を上げるパロレに、バジリコは爽やかに微笑みかける。

「さあ……なんでだろう。分かる?」

そう言うバジリコの手には、モンスターボールが握られている。パロレは、ぱっと顔を輝かせた。

「分かります!もちろん!」

「はは!じゃあ、よろしくね」

バジリコは食い気味に言ったパロレを見て笑うと、モンスターボールを投げた。
 ▼ 402 AYr1xkow/g 18/01/21 16:18:11 ID:0jj1OG4s [1/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「行くよ、ブラッキー!」

「行けっ、マリルリ!」

ブラッキーとマリルリが睨み合う。

「ブラッキー、アイアンテール!」

鋼のように硬くなったブラッキーの尻尾が、マリルリを強打する。マリルリはまだまだ平気そうだ。

「マリルリ、じゃれつく!」

マリルリが思いきりブラッキーにじゃれついた。ブラッキーはマリルリの攻撃を振り払い、威嚇するように牙を剥いた。

「ブラッキー、もう一度アイアンテール!」

バジリコが指示を出す。ブラッキーは再び尻尾でマリルリを攻撃したが、決定打にはならなかった。

「マリルリ!じゃれつく!」

マリルリがブラッキーに飛びかかり、人懐っこく体を擦りつけた。ブラッキーは仰向けに倒れ、かなり嫌そうな顔でマリルリを押しのけようとしたが、敵わずやがて倒れてしまった。

「ブラッキー、お疲れ。……行け!エンニュート!」

バジリコはエンニュートを繰り出した。エンニュートは艶かしい体をくねらせている。

「エンニュート!ベノムショック!」

エンニュートが毒液を噴出させる。勢いよく毒液を受けたマリルリは、倒れてしまった。

「マリルリ戻れ!……バンギラス!行くぞっ!」

パロレがバンギラスを繰り出す。

「エンニュート、どくどく!」

エンニュートは、先程のものとは違う毒液を出した。毒液がバンギラスの体を覆っていく。バンギラスは毒液をどうにか振り払ったが、既に体内を毒が回り始めていた。

「バンギラス、頑張れ!ストーンエッジだ!」

パロレが指示を出すと、バンギラスはもうどくの苦しみに耐えながらも攻撃を仕掛けた。エンニュートは尖った岩に刺され、その場から吹っ飛び、意識を失った。

「エンニュート、ありがとう。行け!フライゴン!」

バジリコが次に繰り出したのは、せいれいポケモンのフライゴンだ。フライゴンは翼を素早くはためかせている。まるで精霊が歌っているかのような美しい音が響いた。

「フライゴン!じしん!」

フライゴンは、バジリコの指示を聞くと、突如として尻尾を地面に思いきり叩きつけた。その振動で、大きく地面が揺れ始める。バンギラスは立っていられなくなり、やがて膝をついた。
 ▼ 403 AYr1xkow/g 18/01/21 16:19:20 ID:0jj1OG4s [2/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
力尽きてしまったかと思いきや、バンギラスは攻撃を耐えきってみせた。しかし、もうどくを受けている彼は限界が近そうだった。あともう一度攻撃を受けたら、倒れてしまうだろう。

「バンギラス!頑張れ!れいとうパンチだ!」

バンギラスが、拳を握りしめる。その拳は、徐々に冷気を帯びていった。

バンギラスは思いきり拳を上げると、フライゴンの腹部めがけて振り下ろした。

「フリャ!」

フライゴンは苦しそうな鳴き声を上げて吹っ飛び、戦闘不能となった。どうやら、攻撃はきっかり急所に当たったようだった。

「フライゴン、お疲れ。頼んだよ、ユキメノコ!」

バジリコが次に繰り出したのは、ユキメノコだ。ユキメノコはクスクスと笑ってこちらを見ている。

バンギラスはもうギリギリの状態だが、タイプの相性は悪くない。もしかしたら、続けて倒すことができるかもしれない。パロレは、バンギラスにもう少しだけ頑張ってもらうことにした。

「ユキメノコ、あられ!」

ユキメノコが、頭部から不気味につながった着物の袖のような形をした両腕を祈るように掲げた。すると、やがて空は暗くなり、あられが降り始めた。

「バンギラス、めげるな!ストーンエッジだ!」

そう言うパロレの耳は赤く、息は白くなっている。

バンギラスはユキメノコに狙いを定めようとしたが、雪の中でユキメノコの姿が見えなくなってしまっていた。バジリコのユキメノコの特性は、ゆきがくれだ。

バンギラスはかすかに影が見えたところに尖った岩で突いたが、そこにユキメノコはいなかった。攻撃を外してしまったのだ。

ふらついていたバンギラスは、体の内側を屠るもうどくと、体の外側を刺すあられのダメージによってとうとう限界を迎え、重々しくその場に倒れた。

「ごめんよ、バンギラス……」

パロレはバンギラスをボールに戻した。そして、次のポケモンを繰り出す。

「ジュペッタ!ゴーストタイプ同士、行くぞ!」

ジュペッタはケタケタと気味の悪い笑い声を上げてパロレの言葉に答えた。
 ▼ 404 AYr1xkow/g 18/01/21 16:20:14 ID:0jj1OG4s [3/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「ユキメノコ!シャドーボール!」

ユキメノコは、影の塊を作り始めた。そして、球体になった影の塊を、ジュペッタめがけて投げつける。

「ジュペッタ!よけろ!」

パロレが思わず声を上げると、ジュペッタはふわりと浮かび上がってシャドーボールを見事避けてみせた。ジュペッタはパロレの方を振り返り、ニヤッと笑う。パロレはサムズアップした。

「よし、ジュペッタ決めるぞ!こっちもシャドーボールだ!」

パロレが叫ぶと、今度はジュペッタが影の塊を作っていった。ジュペッタはあられの降りしきる中、身を隠しているユキメノコを、集中して探している。やがて何か気配を感じたのか、ジュペッタの視線は動かなくなった。

ジュペッタがシャドーボールをユキメノコに向かって飛ばした。隠れていたはずだったユキメノコは、シャドーボールを真正面から受け、驚いた顔をしたかと思えばそのまま力尽きてしまった。

「ユキメノコも、お疲れ」

バジリコがそう言って、ユキメノコをボールに戻した。

「頼んだよ、メタグロス!」

バジリコは光沢のあるボディの美しい、メタグロスを繰り出した。

「よし、ジュペッタ、ありがとう!」

パロレもジュペッタを引っ込めると、

「頑張れよ!リザードン!」

そう言って相棒を繰り出した。リザードンは答えるように咆哮を上げる。

パロレとバジリコは、一瞬見つめ合った。そして、バジリコがニヤッと笑う。

バジリコは、キーストーンを取り出した。やっぱりだ!パロレも思わず笑みを浮かべる。メタグロスのメタグロスナイトと、バジリコのキーストーンが反応する。そして、メタグロスはメガメタグロスへとメガシンカした。

パロレもメガバングルに触れた。リザードンのリザードナイトXとメガバングルが反応し、リザードンはメガリザードンXへとメガシンカした。準備万端だ。
 ▼ 405 AYr1xkow/g 18/01/26 11:27:51 ID:pwiHYBoI [1/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「メタグロス!しねんのずつき!」

バジリコが叫ぶ。メガメタグロスは思念の力を額と思しき辺りに集めると、メガリザードンXへ思いきり頭突きした。メガリザードンXは思わず怯んでしまい、攻撃を仕掛けられなかった。

「メタグロス、もう一度しねんのずつき!」

バジリコが言う。メガメタグロスは先程と同じように、またメガリザードンXへ頭突きをかました。メガリザードンXはその威力に後方まで吹っ飛ばされたが、翼をはためかせて浮かび上がり、体勢を整える。

「リザードン、一気に決めるぞ!フレアドライブだ!」

パロレが溌剌と声を上げた。メガリザードンXは身体中に炎を纏い、凄まじい勢いでメガメタグロスに突進した。そのかなりの威力にメガメタグロスは地面にめりこみ気を失ってしまったが、メガリザードンXもまた、反動を受けてその場で力尽きてしまった。相討ちだ。

「メタグロス、お疲れ」

バジリコがそう言って、メガメタグロスをボールに戻した。それから、パロレに向かってニッコリと笑う。

「すごく楽しいね」

「はい!」

パロレも頷く。

「前にパロレくんとバトルした時は……あまり楽しめなかった。でも、楽しいからこそ、今回は本気で行くよ。さあ、最後だ!」

バジリコはそう言うと、最後のポケモンを繰り出した。八年前にスリジエに貰った、初めてのポケモンが二度進化を遂げてその姿となった、美しいポケモンだ。

「アシレーヌ!任せた!」

「シレーッ!」

アシレーヌは美しい鳴き声で答えた。

「リザードン、ありがとう!ロズレイド!行くよ!」

パロレはメガリザードンXをボールに戻し、ロズレイドを繰り出した。
「ロズレイド、どくどく!」

ロズレイドが体から毒液を放出した。毒液をまともに受けたアシレーヌは、苦しそうにもがいている。彼女もまた、バンギラスのようにもうどく状態になってしまった。

「アシレーヌ、れいとうビーム!」

アシレーヌはもうどくの苦しみを耐えながらも、口から冷気のビームを打ち出した。ロズレイドへの効果は抜群である。

「ロズレイド、ベノムショックだ!」

パロレが声高らかに指示を出した。ロズレイドが攻撃を仕掛ける。もうどく状態のアシレーヌには、その威力は二倍になる。これできっと勝ちだ!

しかし、アシレーヌは倒れなかった。なんと、ベノムショックを耐えたのだ。可愛らしい顔は、かなり高圧的にこちらを睨みつけている。その視線から感じるのは、激流のごとく凄まじい圧だ。

「パロレくんに、面白いものを見せてあげるよ」

バジリコはやけに自信に溢れた表情でそう言った。
 ▼ 406 AYr1xkow/g 18/01/26 11:29:18 ID:pwiHYBoI [2/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「……?なんですか?」

パロレが首を捻る。

「アシレーヌは、アローラ地方のポケモンなんだけど。前に、アキニレに貰ったんだ。アシレーヌの力を最大限に発揮できるものをね」

いまいちよく分かっていないパロレに対し、バジリコはそう説明すると、何か変わった輝く石のようなものを掲げた。

それから、不思議な動きをし始めた。まるで、水に揺蕩うポケモンたちのように、波に揺られるようなポーズを取る。すると、何故かアシレーヌの体がオーラを纏ったのだ。

瞬間、辺りは海底のような幻想的な光景へと変わった。アシレーヌがヒレのような前足を広げると、そこに凄まじい水の力が集まっていく。やがて巨大な球体が出来ると、アシレーヌはそれをロズレイドの真上へと持っていった。

バジリコが、両手を上に挙げて合図する。すると、アシレーヌは歌うように声を上げた。その瞬間、ロズレイドの上にある巨大な水の球体は爆発四散し、ロズレイドはその衝撃を真上から受け、あっという間に戦闘不能となってしまった。

雨のように水が辺りへと降り注ぐ。アシレーヌは、独唱を聴いてくれたパロレとロズレイドに敬意を表すかのようにお辞儀のような動きをした。
 ▼ 407 AYr1xkow/g 18/01/26 11:30:43 ID:pwiHYBoI [3/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「え?え……!?今のなんですか!?」

驚きで混乱しているパロレが、素っ頓狂な声を上げる。

「俺とアシレーヌの、ゼンリョクの力だよ」

バジリコは意味ありげにそう言って、ウインクしてみせる。

「パロレくんも機会があれば、使いこなせるようになるかもしれないね」

バジリコは満面の笑みで続けた。

「さあ!パロレくん、バトルはまだ終わってないよ!」

バジリコの言葉に、パロレはハッとした。そうだ、まだ終わってない。

「ロズレイド、ありがとう!……ジュペッタ!最後にもう一回頼んだよ!」

パロレはそう言って、ジュペッタを繰り出した。

「ジュペッタ!10まんボルトだ!」

ジュペッタは、強い電撃を起こしてアシレーヌを攻撃した。先程は凄まじい攻撃を見せてくれたアシレーヌだが、もうどくやベノムショックでもう限界も近い。10まんボルトを受けたアシレーヌは、やがて力尽きて倒れてしまった。

「……ありがとう」

アシレーヌをボールに戻したバジリコが、そう言ってパロレに微笑みかける。

「ずっと、パロレくんともう一度バトルをしたいと思ってたんだ。すごく楽しかったよ」

バジリコが言う。

「ぼくも、楽しかったです!」

パロレはそう言って頷いた。初めて見るものもあったのだ。本当に、とても楽しいバトルだった。

「君とアルセアは、似てるかもね」

バジリコが静かに言う。

「アルセアって『私何にも興味ないです』って感じの顔してるけど、バトルが大好きなんだよ」

バジリコは微笑んで続けた。

「俺とか……、いろんな人が時に忘れかけてしまうバトルの楽しさを、彼女は絶対に忘れない。だから強いんだ」

バジリコはそう言うと、パロレの胸の辺りを軽く叩いた。

「その情熱を、パロレくんからもひしひしと感じるんだ。だから、君も強いんだね」

バジリコはニッコリと笑った。

「これからも頑張ってね」

「はい!ありがとうございます!」
 ▼ 408 AYr1xkow/g 18/01/29 10:22:15 ID:tYOfjqKI NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
パロレは、ノグレータウンを後にしてラランジャの森へと向かった。

ラランジャの森では色々なことがあったなぁ、そんなことを考えながら歩く。今日のラランジャの森はとても静かだった。

もう迷うことはない。パロレはラランジャの森を抜けるとそのままラランジャシティまで行き、ポケモンたちを少し休ませるとすぐにラランジャジムを目指して歩いた。

大きな花の形を模したオブジェを登り、頂点にいる彼の元へ向かう。

「こんにちは!」

パロレが溌剌とした声で挨拶をすると、彼は笑顔で応えてくれた。

「こんにちは、チャンピオン!」

ラランジャジムリーダーのモクレンだ。

「先日はありがとうございました。やはり、ラランジャの森に住む幻のポケモンが襲われたのには、理由があったんですね」

モクレンは少し悲しげな顔をして言ったが、すぐにいつもの柔らかい表情に戻った。

「でも、パロレさんのご活躍のおかげで、森にまた平和が訪れました。本当に、ありがとうございます」

モクレンは深々とお辞儀した。パロレは首をブンブンと横に振り、モクレンに顔を上げるように言った。そんな大それたことはしていない。

「……いいえ、あなたには本当に感謝してもしきれません」

モクレンは、ゆっくりと顔を上げながら言う。

「あなたのおかげで、アモルの歴史が変わり、メガシンカが人々の手に渡るようになった……僕がまた更に強くなることができたのも、あなたのおかげなのですから!」

モクレンは、いつになくハイテンションでそう言った。その手には、モンスターボールが握られている。

来た!そう思ったパロレはモクレンに向かって頷くと、自身もモンスターボールを投げた。
 ▼ 409 リン@ナナのみ 18/01/30 02:30:47 ID:ObPnCGWU NGネーム登録 NGID登録 報告
俺の記憶が正しければアングリアのパートナーはルカリオ…
そしてアングリアはカロスに流された…


まさかアングリアのモデルってマスタータワーの…
 ▼ 410 ズモー@のんきのおこう 18/02/01 00:11:27 ID:W9T83EiY NGネーム登録 NGID登録 報告
アングリアのパートナーはフーディンだよ
アーリオがルカリオ使いだね
でも何か関係あるかもと自分も思った
 ▼ 411 AYr1xkow/g 18/02/02 01:43:30 ID:XBXUGqk. NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
>>409
ややこしくてすみません
アングリアのパートナーをルカリオにしてマスタータワーの創始者であるように匂わせることも考えましたが、他国で王を傀儡にして事実上のトップになろうとした男がカロスでそんな凄い人になってしまうのもどうかと思ったので辞めました
あとは、三英雄はカロスで戦争が起こった後にアモルに来たということになっているのですが、カロスで初めてメガシンカを使ったというルカリオ使いがどの時代に生きていたのか分からないので、彼とアングリアやその子孫のアーリオを関連づけることはあえてせずにぼかしています
アングリアがカロスに追放されてから改心したのかどうかはご想像にお任せします。
 ▼ 412 AYr1xkow/g 18/02/03 11:53:05 ID:YtZ3MbkM [1/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「行け、ピジョット!」

「ドレディア!頼みましたよ!」

モクレンは、美しい花の体を持つ可愛らしいポケモンを繰り出した。

「ピジョット!ぼうふう!」

パロレが鋭く指示を出した。ピジョットが、翼を強くはためかせる。ピジョットの放つ凄まじい勢いの風に、ドレディアは吹っ飛ばされて一撃で気を失った。

「まだまだ、これからですよ!」

モクレンはそう言って、次のポケモンを繰り出した。はなかまポケモンのラランテスだ。

「ピジョット、ぼうふう!」

パロレが言う。ピジョットは再び羽ばたいて風を起こした。ラランテスは踏ん張ってどうにかその場に留まっていたが、結局耐えきれず、ドレディアと同じように吹っ飛び、壁にぶつかって気絶してしまった。

「よっしゃ!」

思わずガッツポーズを決める。ピジョットも嬉しそうに、ちょっぴり自慢げな鳴き声を上げた。

「行きますよ、キノガッサ!」

モクレンが次に繰り出したのは、キノガッサだ。パロレはニヤッと笑った。このままピジョットに頑張ってもらえば、キノガッサに大ダメージを与えることができる。

「ピジョット、もう一回ぼうふう!」

パロレの指示に、ピジョットは素早く動いた。先程から繰り返している動きを、もう一度。ピジョットの起こしたぼうふうは、キノガッサを直撃した。

「ガ……ガッサァ……」

キノガッサも戦闘不能だ。

パロレは、にやにや笑いを誤魔化すために唇を噛みしめた。絶好調だ!このまま行けば、きっと楽勝だろう。

「まだまだどうなるか分かりませんよ。リーフィア!」

モクレンはそう言って、次のポケモンを繰り出した。リーフィアが可愛らしい鳴き声を上げる。

「頑張りましょうね」

モクレンが言うと、リーフィアは頷いた。
 ▼ 413 AYr1xkow/g 18/02/03 11:54:02 ID:YtZ3MbkM [2/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「ピジョット!またまたぼうふうだ!」

パロレの声を聞いたピジョットが、四度目のぼうふうを仕掛けた。そんなピジョットは、なんだか少し面倒臭そうに見える。

リーフィアは険しい表情をしてこらえていたが、結局耐えきれず、またもやピジョットの攻撃に吹っ飛ばされてそのまま気を失ってしまった。

なんと、ピジョットだけでモクレンに勝ててしまいそうだ。こりゃ、わざわざメガシンカなんてしなくても余裕かも。行ける行ける!パロレは、呑気にそんなことを考え始めた。

「油断は禁物ですよ、パロレさん」

モクレンは優しく、しかしはっきりとそう言った。

「ユキノオー!任せましたよ!」

モクレンはそう言ってユキノオーを繰り出した。それから、キーストーンを掲げる。ユキノオーのユキノオナイトとモクレンのキーストーンが反応し、ユキノオーはメガユキノオーへとメガシンカした。

「ピジョット、ぼうふう!」

これで終わりだ!パロレはそんな思いで指示を出した。

ピジョットは小慣れた様子で翼を広げ、強く羽ばたいた。しかし、メガユキノオーはびくともしない。なんと、ピジョットが余所見をしながらぼうふうを起こしたせいで、ぼうふうは脇に逸れ、メガユキノオーに当たらなかったのだ。

「ユキノオー!ふぶきです!」

モクレンが声高らかに指示を出した。メガユキノオーは、背中から飛び出している樹氷のようなものを激しく揺らした。そこから大量の氷の結晶が舞い上がり、飛んでいるピジョットの上に強く降り注いだ。

ピジョットは凄まじい勢いのふぶきに抗うことができず、どんどん高度を下げていった。そして、とうとう耐えきれなくなり、地面にベシャッと落ちて動かなくなってしまった。

「ピジョット!」

パロレが悲痛な声を上げた。ようやく自分の過ちに気がついたのだ。
 ▼ 414 AYr1xkow/g 18/02/03 11:55:34 ID:YtZ3MbkM [3/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
慢心して、ポケモンへの感謝の気持ちを忘れてしまうなんて、なんて情けないことだろうか。パロレはピジョットをボールに戻すと、

「ごめんなピジョット。ありがとう、お疲れ様」

優しくそう声をかけた。パロレが調子に乗ってしまったから、ピジョットもまた気を緩めてしまったのだ。ピジョットのトレーナーとして、もっとしっかりしなければ。

まだまだ、学ぶことはたくさんあるようだ。

「リザードン!行くよっ!」

パロレはそう言ってリザードンを繰り出した。モクレンはパロレの顔を見て、優しく頷いたかと思えば、キッと真面目な表情に戻った。気を引き締めたチャンピオンが、次からは本気で来るというのだから当たり前だ。

パロレはメガバングルに触れた。リザードンのリザードナイトXとメガバングルが反応し、リザードンはメガリザードンXにメガシンカした。

「リザードン、頼むよ!」

パロレはメガリザードンXにしっかりと声をかけると、バッとメガユキノオーを指差した。

「フレアドライブだ!」

指示を聞いた瞬間、メガリザードンXは飛び上がり、体中に灼熱の炎を纏ってメガユキノオーの真上からぶつかっていった。

「ノオー……」

地響きのような低い鳴き声を上げて、メガユキノオーは倒れた。鈍い音がして、床が揺れる。

モクレンはメガユキノオーをボールに戻した。

「流石ですね」

モクレンは微笑んでそう言った。

「いや……ぼく、調子乗っちゃったし……」

パロレはばつが悪そうに言ったが、モクレンは静かに首を横に振る。

「改めることが出来たのだから、いいのですよ。僕とのバトルを通じて何かを得てくれたのなら、僕も嬉しいです」

モクレンは穏やかな声で続けた。

「僕もまだまだ、学ぶことばかりですからね」

モクレンさんですら学ぶことばかりなのなら、ぼくなんてもっともっと……。パロレはそう考えてから、すぐにやめた。まだこの先にも、楽しいバトルがいくつも待っている、そういうことだ。

「パロレさん、頑張ってくださいね」

「はい!モクレンさんも、頑張ってください!」

パロレは満面の笑みでそう返した。
 ▼ 415 ブラーバ@ゴスのみ 18/02/06 17:09:29 ID:6EanIJzw NGネーム登録 NGID登録 報告
スリジエからもらえるのがツタージャ、ヒトカゲ、ポッチャマで
主人公(パロレ)が選んだポケモンに応じてユーリが相性の良いポケモンを、選ばなかった主人公(クオレ)が相性の悪いポケモンを選ぶ
アキニレ世代がもらってるのがハリマロン、アチャモ、アシマリで
それぞれパロレ=アルセア、ユーリ=バジリコ、クオレ=アキニレで同じタイプのポケモンを使う
スリジエは主人公が選んだポケモンに相性の良いジョウト御三家を使う(ワニノコ固定?)

長文失礼、ゲーム化したらこんな感じになるのかな?
 ▼ 416 AYr1xkow/g 18/02/06 22:00:18 ID:nMNis97Y NGネーム登録 NGID登録 報告
>>415
まさにそんな感じです!
一応、パロレとアルセアにはメガシンカできるポケモンを当てて、それぞれのキャラに合う御三家を選びつつ世代の調整をしました。
始めはクオレにはフォッコでアキニレはフシギバナとか考えていましたが、世代とタイプを被らせないようにした結果こうなりました。
ちなみに大体トレーナーと同じ性別ですが、バジリコのアシレーヌはメスです。バジリコはポケモンにもモテるのでメスしか進化しないポケモンがちらほらいます。
 ▼ 417 AYr1xkow/g 18/02/12 22:49:54 ID:ItuYvfPM [1/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
翌日、パロレはジョーヌシティのジムにやってきていた。

昨日はアキニレ、レナ、バジリコ、モクレンと戦った。今日もまた、ジムリーダーたちと本気のバトルをするためにここまで来たのだ。

パロレが奥までやってくると、ローザはパロレを見て高圧的な意地の悪い笑みを浮かべた。

「やっと来ましたのね。待ちくたびれましたわ」

「すっ、すみません……」

パロレが謝ると、ローザは呆れたように笑って、「冗談ですわ」と言った。

「以前は、協力してくださって本当にありがとうございました。感謝いたしますわ。アモルのメガシンカにまつわる秘密を知り、わたくしもとうとう力を得ることが出来ました」

ローザは淡々と言うが、その言葉の中には嬉しそうな響きがこめられている。パロレは黙ってローザを見つめた。

「父上とも、……弟ともしっかり話も出来ましたの。本当に、あなたには頭が上がりませんわ」

「いやいや!」

パロレは小っ恥ずかしく思いながらも、首を横に振った。

「……まあ、だからといって手加減はいたしませんけど。軍配が上がりますのは、わたくしの方よ!」

ローザがそう言って、持っているモンスターボールを投げた。ボールから飛び出したのは、クロバットだ。

「ぼくだって、本気で行きますよ!行け、バンギラス!」

パロレがバンギラスを繰り出す。バンギラスは咆哮を上げた。バンギラスの特性、すなおこしによって、辺りに砂嵐が発生し始めた。

「クロバット!はがねのつばさですわ!」

クロバットは、鋼のように硬くした翼でバンギラスの体を強打した。バンギラスには、思ったより効いていなさそうだ。バンギラスの瞳が、頭上を飛び回るクロバットの姿を捉える。

「バンギラス、ストーンエッジ!」

バンギラスの出した鋭く細長い岩が、クロバットの翼を突き刺した。クロバットはバランスを崩し、そのまま床に落ちて気を失ってしまった。
 ▼ 418 AYr1xkow/g 18/02/12 22:50:46 ID:ItuYvfPM [2/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「まだまだですわ。行きましょう、ニドクイン!」

ローザは、クロバットをボールに戻すと、そう叫んでニドクインを繰り出した。パロレは、バンギラスに続けて戦ってもらうことにした。

重量のある、厳つい顔をした二匹のポケモンが睨み合う。ローザが素早く指示を出した。

「ニドクイン!じしん!」

ローザが言うと、ニドクインは体が大きく動かして、床を強く揺らした。バンギラスは床の揺れに耐えきれず、そのまま倒れた。

「お疲れ、バンギラス、ありがとう。……行くよ!マリルリ!」

パロレがマリルリを繰り出した。マリルリはみず・フェアリータイプであり、どくタイプの技は苦手だ。どうにか攻撃を耐えて、一発で決めたいところである。

「ニドクイン、どくづきですわ!」

ニドクインは、毒の染みこんだ腕で、見た目より俊敏な動きでマリルリの体を突いた。マリルリは悲鳴を上げ、軽く吹っ飛んでコロコロと転がっていく。

「マリルリ!」

パロレが思わず名前を呼んだ。マリルリはどうにか立ち上がる。パロレの表情は、ぱあっと輝いた。

「マリルリ、アクアテールだ!」

マリルリが、水をまとった尻尾をニドクインの体に叩きつけた。ニドクインはマリルリより一回りほど大きな体をしているが、ちからもちであるマリルリの技には耐えきれなかったようだった。攻撃を受けた衝撃で、ニドクインはグラグラと揺れている。やがて、大きな音を立ててその場に倒れた。

ローザはニドクインをボールに戻すと、パロレをじっと見つめる。

「やはり、お強いですわね。でも、わたくしもやられてばかりじゃいられませんの!」

ローザはそう言うと、次のポケモンを繰り出した。艶めかしく黒光りする鱗に、鋭い牙が特徴的なポケモン、ハブネークだ。
 ▼ 419 AYr1xkow/g 18/02/12 22:51:24 ID:ItuYvfPM [3/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「ハブネーク、とぐろをまく!」

ローザが高らかに叫ぶ。ハブネークは長い体をくねらせ、とぐろを巻いた。ハブネークはすっかり集中して、マリルリをギラギラした目で睨みつけている。

パロレは一気に畳みかけてくると思っていたので、意外だった。マリルリはボロボロだったが、あと少しなら頑張れそうだ。

「マリルリ、アクアテール!」

マリルリが、再び尻尾を勢いよく叩きつけて攻撃する。とぐろを巻いて守りも固めていたハブネークは、どうにか耐えきった。

「ハブネーク、フェイントですわ!」

ハブネークは、真っ直ぐマリルリの元までやってくると、噛みつこうとした。マリルリがそれを避けようとハブネークの顔を見据えていると、ハブネークはその隙を見て尻尾を思いきりマリルリに叩きつけた。

マリルリは、フェイントを受けてそのまま戦闘不能となってしまった。

「マリルリ、お疲れ。行け!ジュペッタ!」

パロレは、マリルリをボールに戻すとジュペッタを繰り出した。もう、有効打を持っているポケモンはほぼいない。気を抜かないようにしなければ。パロレはそう考えて、ぎゅっと拳を握りしめた。
 ▼ 420 AYr1xkow/g 18/02/24 01:09:43 ID:M21VhvTQ [1/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「ジュペッタ!シャドークロー!」

ジュペッタの爪が突然伸びた。影でできた爪が生えたのだ。ジュペッタはその爪で、ハブネークの体を思いきり切り裂いた。

ハブネークは悲痛な叫びを上げると、完全に伸びてしまった。

「盛り上がってまいりましたわね。まだまだですわ!行きますわよ!ドラミドロ!」

ローザはそう言って、ドラミドロを繰り出した。ドラミドロは不気味にゆらゆらと揺れている。

「ジュペッタ!ゴーストダイブ!」

パロレは高らかに指示を出した。すると、ジュペッタの姿は一瞬にして消え去ってしまった。

「まあ……」

ローザは思わず口に手を当てて悔しそうに声を上げた。どうやら、ドラミドロは相手を攻撃する技しか覚えていないようだ。ドラミドロは何も出来ずにジュペッタが現れるのを待つしかなかった。

「……っ!ドラミドロ、後ろですわ!」

ローザが鋭く声を上げた。ドラミドロが慌てて振り向くが、間に合わなかった。ドラミドロが後ろを向く前に、ドラミドロの影から飛び出したジュペッタは、ドラミドロに向かって思いきり攻撃した。

ジュペッタの攻撃は、ドラミドロの急所に当たった。ドラミドロは、力なくその場に倒れた。

「なんということ!」

ローザはそう言って、ドラミドロをボールに戻した。

それから、ローザは深く息を吐く。

「……とうとうこの時が来ましたのね」

ローザはそう言うと、何かを大切そうに取り出した。虹色に光る石だ。

「わたくしが一人で続けてきた研究や鍛錬は、もしかしたら無駄となってしまったのかもしれませんわ……でも、それでも!」

ローザはそう言うと、最後のボールを投げた。飛び出してきたのは、スピアーだ。

パロレはジュペッタをボールに戻すと、リザードンに入れ替えた。ローザの青い瞳は、燃えるように輝いている。

「こうやって本気で戦えることを、わたくし誇りに思いますわ。あなたも、このわたくしと戦えることを光栄に思うことね!」

ローザは高圧的にそう言って、キーストーンを掲げた。
 ▼ 421 AYr1xkow/g 18/02/24 01:12:34 ID:M21VhvTQ [2/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
スピアーのスピアナイトと、ローザのキーストーンが反応する。

スピアーは、メガスピアーへとメガシンカした!

「こっちも!」

パロレが叫び、メガバングルにはめたキーストーンに触れる。リザードンのリザードナイトXとメガバングルが反応し、リザードンはメガリザードンXにメガシンカした。

「スピアー!どくづきですわ!」

ローザが指示を出す。メガスピアーは、毒の染みこんだ尻の大きな針をメガリザードンXの体に突き刺した。メガリザードンXが悲鳴を上げてもがく。メガスピアーは、しばらく針を離さなかった。

やがてメガスピアーの体がが離れていく。針の刺さっていた部分は大きく腫れており、メガリザードンXは鈍い動きでどうにか体を起こした。どうやら、毒が回ってしまったらしい。

メガリザードンXはよろよろと力なく立ち上がった。

「リザードン、大丈夫か!?」

パロレが慌てて声をかけると、メガリザードンXは振り向き、少し苦しそうな顔をしつつウインクしてみせた。

「よし……なら行こう。リザードン!エアスラッシュだ!」

パロレの声に合わせて、メガリザードンXは空を切った。それによって生まれた風の刃が、メガスピアーめがけて飛んでいく。メガスピアーの体は、攻撃を受けた瞬間吹っ飛んだ。

「スピ……」

メガスピアーは力なく鳴き声を上げたかと思えば、気を失った。

「あらやだ。負けてしまいましたわ」

ローザはそう言って、メガスピアーをボールに戻した。
 ▼ 422 AYr1xkow/g 18/02/24 01:13:20 ID:M21VhvTQ [3/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ローザは平静を装ってはいるものの、かなり悔しそうだ。

「仕方ありませんわね……今のわたくしの力では、あなたには勝てませんのね。努力あるのみですわ」

ローザは呟くように言って、パロレに向き直る。それからうっすらと微笑んだ。

「前にわたくしが言ったこと、覚えていて?」

ローザの言葉に、パロレは頷く。

「はい!なんか大きな力を感じるって……将来大物になりそうだって、言ってくれましたよね!」

パロレが嬉しそうに言うと、ローザは首を横に振った。それから、淡々とした口調で続ける。

「それじゃありませんわ。自分自身を活かすことが出来なければその力も無駄に終わる……わたくしはそんなようなことを言ったはずですわ」

「あ……そっちか」

パロレが分かりやすく落胆する。すると、ローザはうっすらと笑った。

「ですけれど……そんな心配は、ありませんでしたわね」
 ▼ 423 AYr1xkow/g 18/02/24 14:04:28 ID:M21VhvTQ [4/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
パロレはローザに別れを告げて5番道路を歩いていた。

だんだんフォルテ城が見えてくる。ここでもたくさん大変なことがあったものだ。パロレはつい最近のことなのに、懐かしい思いでフォルテ城の前を通った。

「……あ!パロレ!」

ふと、後ろから声が聞こえてくる。共に旅をした、大切な友達の声だ。

「ユーリ!」

パロレは立ち止まって振り向くと、大きく手を振った。ユーリは、ちょうどフォルテ城から出てきたところらしかった。パロレの顔を見てパッと笑顔になり、こちらへ駆け寄ってくる。

「こんにちは、パロレ。少しだけ、久しぶりですね!」

ユーリがそう言ってはにかむ。

「うん!あの時はずっと一緒にいたから、ちょっと会わないだけでも久しぶりな感じがするね」

パロレもうんうんと頷いた。

「あっ、そうだ!ぼく、ついさっきローザさんとバトルしてきたんだ!」

パロレが言うと、ユーリは目を丸くした。

「そうだったんですね!……変なこと言われてませんか?大丈夫ですか?」

顔を曇らせて尋ねるユーリに、パロレは思わず吹き出した。前に同じようなことを聞かれた時は思わず姉弟仲があまり良くないのかと思ってしまったが、むしろ仲がいいからこそそんな風に言えるのだろう。パロレは笑顔で首を横に振った。

「言われてないよ!大丈夫」

パロレがそう言うと、ユーリは安心したようだった。

「……では、オレもいいですか?」

ユーリが言う。何がって、そんなことは分かりきっている。

「うん!もちろん!」

ユーリの顔を見たその時から、パロレもそのつもりだった。

「いつもありがとうございます!それじゃ、行きますよ、パロレ!」

ユーリは嬉しそうにそう言うと、モンスターボールを投げてポケモンを繰り出した。
 ▼ 424 AYr1xkow/g 18/02/25 01:13:51 ID:3Ykm73iY NGネーム登録 NGID登録 報告
ユーリがまず繰り出したのは、コジョンドだ。パロレはピジョットを繰り出した。

「コジョンド、ねこだまし!」

コジョンドは素早くピジョットに攻撃する。ピジョットは怯んで思わず固まってしまった。

「コジョンド、とびひざげり!」

ピジョットが動けないでいるうちに、コジョンドは畳みかけてきた。翼を広げて間抜け顔をしているピジョットの元まで勢いよく飛び上がり、痛烈な膝蹴りを喰らわせる。ピジョットは抵抗できずに気絶してその場に落ちた。

「ピジョット、お疲れ!行け!ジュペッタ!」

ピジョットをボールに戻して、ジュペッタを繰り出す。ユーリは少し苦しそうな顔をした。

「コジョンド、アクロバット!」

コジョンドは大きく飛び上がると、浮いたまま体を何回も前転させてくるくる回り、実に軽やかな動きでジュペッタの元までやっていき、見事な蹴りをお見舞いした。

「ケッ……」

道具を持っていないコジョンドの攻撃は軽やかなのにかなり強い。ジュペッタはよろめいたが、どうにか持ちこたえた。

「ジュペッタ、サイコキネシス!」

パロレが叫ぶ。ジュペッタはコジョンドを真っ直ぐに見据えると、コジョンドの脳内に直接強い念力を送りこんだ。

コジョンドは頭を抱え、苦しそうに呻いていたが、やがて倒れてしまった。

「コジョンド、お疲れ様です。フワライド!」

ユーリはコジョンドを戻してフワライドを繰り出した。パロレもジュペッタをボールに戻した。

「よし!任せた、バンギラス!」

バンギラスは力強い雄叫びを上げた。

「フワライド、でんげきは!」

フワライドは素早く電撃を放った。バンギラスは避けることはできなかったが、びくともしていない。

「バンギラス、ストーンエッジ!」

バンギラスは鋭い岩でフワライドの体を突き刺した。フワライドは不思議な鳴き声を上げて、シュルシュルと萎んでいってしまった。

バンギラスが思わずよろめく。ゆうばくでダメージを受けたのだ。

「フワライド、ありがとう。フラージェス!行きますよ!」

ユーリがフラージェスを繰り出した。

「バンギラス、サンキュー!ロズレイド!行くぞ!」

パロレはバンギラスを戻して、ロズレイドに入れ替える。パロレは続けて指示を出した。
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