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【旅SS】女「ポケモン達とぶらり旅」

 ▼ 1 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/13 19:50:23 ID:WB.XOoew NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
『さぁてスタートラインにならぶはそうそうたる面々。皆様レースへの意気込みがうかがい知れるというものです』
 
 
 
女(初めて参加する私にもわかる。ここにいる人たちの覚悟は、生半可なものじゃない)
 
女(でも、私がそれに負けているか、と聞かれれば、違うと言える)
 
女(そうだ、この日のためにリサーチを重ねたのだから)
 
女(選手達のコンディション、例年の記録、あらゆる場面での立ち回り。果ては日常のなかのささいなクセまでをも調べあげた)
 
女(すこしたりとも研究を怠るようなマネはしなかった)
 
 
 
『今年は例年よりも参加人数が多く、白熱の戦いが予想されます!』

 

女(ライバルがいくら多かろうと関係ない。私は私の持てる限りを尽くし、この戦いに勝利する)
 
 
 
『みなさんお待ちかね、ポケモン水上レースは間もなくスタートですよー!』

『栄えあるアルトマーレグラスの優勝メダルは誰の手に?』

 
 
女(優勝賞品がなにかなんてことはどうだっていい。私の目的はそんなところにあるのではないのだから)
 
女(メダルやトロフィー、杯よりも重要なものが、このレースの果てにはある) 
 
 
 
 
ネイティ「ポゥ」

ネイティ「ポゥ」
 
ネイティ「ポゥ」
 
ネイティ「ポゥ」
 
ネイティ「ヨォー!」
 


───水しぶきを上げ、水上レース参加者たちが飛び出していく。
 
 

こわもての男「始まったな」

こわもての男「アルトマーレ、ポケモン水上レースが!」

 ▼ 117 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/11/14 21:19:15 ID:DYiiEyI. [1/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「」ギュッ
 
女(手、握ってきた)
 
「」ジッ
 
女「………っ」
 
女(………見透かされてるんだな。さすがエスパータイプ)

女「…………うん」
 
「」ソレデ?
 
女「……おととい、アイス屋さんで会った夫婦がいたでしょ」
 
女「あの人たちがね、私を養子に迎えたいって」
 
「……」
 
女「私、親がいないんだ。一時保護者ならいるんだけど」
 
女「2人は私のことを、本気で心配して……かわいがってくれて……気にかけてくれてる」
 
女「それがすごく嬉しい」
 
女「……でも、2人はまだ若くて、まだ全然、これからの人たちで」
 
女「私、もうすぐ13になるからさ。やっぱりその……ティーンエイジャーが若い2人にって……きっと、重いだろうなって」
 
女「2人は絶対そんなこと言いはしないだろうけど………でも、事実としてそうなわけで。超負担かけるよね」
 
「」ソウナノ?
 
女「そりゃそうだよ。どう考えたって、そう」
 
女「………それに、2人の子どもになったら、たぶん、いつか再開する、とかはおいといて……旅をやめることになる」
 
女「私は……それがいやだ」


 
───それはあんまりにもメチャクチャな言い分だ───
 
 
 
女「わかってる。わかってるんだけど!」
 
女「……私ね。そう遠くない明日に、きっと自分は死ぬんだろうなって思ってた」
 
女「もしもその時、何かの途中だったら、ここで終わりたくないって思いながら、きっと、地獄のように苦しい思いで死んでいく」
 
女「だから、できる限り何も持たないようにしようって」
 
女「私が死ぬときはたったひとり、何も持たずに、楽しく暇潰しをしながら生きたな≠チて思いながら……って」
 
女「そんな風に考えてた」

女「……でも、もうそうなることはできない」
 ▼ 118 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/11/14 21:22:28 ID:DYiiEyI. [2/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女「私はこんなに仲間を得て───色んなものを手にしてしまっている。もうひとりで逝くことなんて、できない」
 
女「それに加えて、いつか、誰かさんに時間までもらっていた」
 
女「だから、今まで、大した目的もなくやってたことに、意味を見出だせるんじゃないかって……そう、思ったの」
 
女「今まで余生みたいなもの、ボーナスステージみたいなものだって思ってた期間が……そうじゃなくて」
 
女「私が、将来♂スかをするための準備期間なんじゃないか、って」
 
女「私がいつか、これ≠したいって───それ≠ノ全身全霊を捧げたいって思うような、何かを見つけるための時間をもらったんじゃないか───って」
 
女「旅をしていれば……自分のできることを精一杯にやっていれば、それが見つかるかもって、いつからか……」
 
女「自分のことを諦めないでいいかもしれないって、そう、思うようになったから」
 
女「旅を続けたいの」
 
女「色んな考え方をする人や、色んな場所で生きてるポケモンたちに会った」
 
女「まだ、まだ、まだ、まだ、たくさん、会ってみたい」
 
女「……だって、またこんなことがあるかもしれない」
 
「?」
 
女「ひょっとしたら、今までにもあったのかもしれない。私が間抜けだから見逃したりしただけで」
 
女「でも、今、こんな風にしてるみたいに」
 
女「こうして、あなたに出会ったみたいに、またステキなことに出会うかもしれない」
 
「………」
 
女「旅を続けたい。そして、あなたさえよかったら、私………あなたと」



ざざ……ん。
 
 

「?」クルッ
 
女「……ゴンドラ?」
 

 
───見覚えのあるゴンドラだった。
 
しかし、自分が利用したものではない。
 
たしか……見たのは3日前。
 



 
女(溺れてた男の子を助ける直前──)
 ▼ 119 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/11/14 21:23:57 ID:DYiiEyI. [3/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
船頭「いけ」ポン
 
?「ムッシャア!」バッ
 
女「───!!!」
 
女(何、このポケモン!?)
 
船頭「であいがしら」
 

 
───瞬間のことだった。
 
無防備な2人に迫る未知のポケモンと、それに割って入るように跳んできたシザリガー。
 
ボールから出っぱなしだったシザリガーは、水路でたゆたいながらついてきていたのだ。
 
このときは、からくもそれに救われた。
 
シザリガーの捨て身の防御のおかげで。
 
 
 
がつん!!
 
 
女「シザリガー!」
 


───こうかはばつぐんだ!
 
道路脇の壁に力なく叩きつけられるシザリガーの痛ましさに、思わず名を呼ぶ───も、ハッと我に返ってモンスターボールに手をかける。

 
 
女「オノノクス!」ポン
 
オノノクス「シュウバッ!」ドシン
 
 
 
───不意討ちしてきた敵が追撃に来ればひとたまりもない。
 
なんとなくみずタイプっぽい≠ニ暫定的に仮定し、オノノクスをくりだす。
 

 
船頭「……よし」

女「ダブルチョップ!」

船頭「ふいうち」
 
?「シャァアッ!」バッ
 
オノノクス「ッ……!」ゴッ
 
女(先手を取られた! でも軽め)
 ▼ 120 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/11/14 21:26:22 ID:DYiiEyI. [4/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
───ビジュアルからみずタイプっぽい、と思ったが、はがねらしさ、かくとうらしさ、むしらしさも感じる。
 
シザリガーを攻撃した技はこうかがばつぐんだった。
 
なら、むしかかくとう、が妥当なところだろうか。
 
考える。
 
考える。
 
どうしていきなり攻撃されている?
  
なぜあのゴンドラ?
 
このポケモンはなんだ?
 
そういった考えをなんとか頭のすみに追いやりながら────優先順位を整理しながら───追いやろうとしていて。
 
オノノクスが殴り付けた敵のポケモンが突然、ボールに戻った。


 
女「?!」
 
船頭「いけ」
 
メタグロス「メッタァ!」ドシン
 

 
───トレーナーのアクションはなかった。
 
なのになぜ、突然入れ替わった?
 
未知のとくせい?

未知のどうぐ?
 
もしくは未知のわざ?
 
いったいどんなポケモンだったんだ。
 
メタグロス、たしかホウエンチャンピオンも使っている。
 
じしんを撃てば抜群だが、しかしここでそれはまずい。
 
道路自体がそんなに広くないし、下手をすれば近所の家に被害が出てしまう。
 
今いるのは人目のない場所だが、壁一枚を隔てた向こうには家があって、そこに暮らす人がいる。
 
誰かの暮らしが息づいているのだ。
 
安直に強力なわざを撃つことはできない。
 
この男の正体は?
 
目的は?
 
と、そんな風に。
 ▼ 121 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/11/14 21:28:06 ID:DYiiEyI. [5/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
すみに追いやろうとした考えは、突然の事態への対応とぶつかり合って、頭のなかでメチャメチャにとっちらかってしまった。
 
現実時間にしておよそ2秒ほどの停止。
 
致命的だった。
 
 
 
船頭「コメットパンチ」
 
メタグロス「メッ───タァ!!!」
 
オノノクス「ガフッ……」
 
女「……!」
 
 
 
───殴り飛ばされたオノノクスは、その軌道上で頭が真っ白になっていた※※※※※を巻き込み、もつれるように水路に落ちた。
 

 
女「あがっ……ごぼっ」


───オノノクスがぶつかるときにうまくやってくれたおかげか、はたまたパニックによるものか、その時点では強烈な痛みなどはなかった。

しかし、彼にのしかかられるような形で川に落ちてしまった。
 
身動きできない。
 
ろくに息を吸う間もなかったこともある。
 
彼女の意識は、そう長くは持たないだろう。
 
途切れるまでのわずかな時間。
 
オノノクスの背中越しに見えた光景。
 
何かで打ち据えられたように全身をびくり、と震わせ倒れる自分≠フすがた。
 
そうか、あの男の目的は最初から……。
 
 
 
女(待っ………て………)

女(ラティ………ア………)



───ごぼ、と、水を大量に飲み込んだのを最後に、彼女の意識は水の底へと落ちていった。
 

 
 ▼ 122 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/11/14 21:29:16 ID:DYiiEyI. [6/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



つづく。
 ▼ 123 ケンカニ@ジュペッタナイト 17/11/14 22:45:37 ID:KBh/sv6M NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
待ってました!続きも楽しみにしてます
(,,°^°,,* )
 ▼ 124 ーケン@むげんのふえ 17/11/23 19:20:39 ID:01sfepNQ NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
あげ
 ▼ 125 ズゴロウ@スペシャルアップ 17/11/23 23:55:16 ID:eZKfmDZc NGネーム登録 NGID登録 報告
大支援
 ▼ 126 ルミル@ありふれたいし 17/11/28 10:59:28 ID:TlascxM2 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援です
 ▼ 127 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/11/30 15:29:48 ID:UOXsFT12 [1/6] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
たんぱんこぞう「ストライク! いあいぎり!」
 
ストライク「しやぁ!」
 
コータス「イテッ」
 
女「コータス、ストーンエッジ」
 
コータス「………ふわぁ」
 
ストライク「フワァ」
 
女「えっ」
 
ムックル「?」
 
たんぱんこぞう「なんだ、言うこと聞かねえんじゃん!」
 
たんぱんこぞう「ストライク!シザークロスだ!」
 
女「こうかはいまひとつ=vボソッ
 
女「コータス、かえんほうしゃ」
 
コータス「───こぉ」ボボッ
 
ストライク「」ワタワタ
 
たんぱんこぞう「ひ、ひのこじゃんか……」
 
たんぱんこぞう「いあいぎりだ!」
 
ストライク「ストラィ───?」フラッ
 
ストライク「」コテン
 
たんぱんこぞう「ストライク!? どうしたんだ?」
 
ストライク「zzz……」
 
たんぱんこぞう「ね、ねてる……なんで……?」
 
女「……」
 
女「コータス、かえんほうしゃ」
 
コータス「こぉー」ボボボボボボボボボボボボボボ
 
ストライク「」死ーん

女「」
 
ムックル「」ムッ






 
 ▼ 128 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/11/30 15:31:18 ID:UOXsFT12 [2/6] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
女「ここは……」
 
コータス「道がふたつに別れてるね」
 
女「右も左も、同じような道」ボソッ
 
女「看板もないから、運に任せるしかないのかな。それとも、他の人が通るのを待って聞いてみるか……」
 
女「方向的には、どっちも目的地にまっすぐすすんでるわけじゃなさそう。どっかで曲がってる……か」
 
コータス「どん詰まってるかもねぇ」ノソノソ
 
女「なんで、そっちに行くの?」
 
コータス「経験則〜」
 
女「」
 
女「行くしかないか」
 
 
 
女「」ボロッ
 
女「いつまでも目的の方向に向かわない……ハズレだこれ」
 
女「ここらで野宿の準備しよう」ハァ
 
コータス「〜」ノソノソ
 
ムックル「」ムッ
 

 
女「点かない……」
 
コータス「たかが火を起こすくらいで、なに手間取ってんのさぁ」
 
女「そんなこと言ったって、燃料チップが湿気ってるんだから……」
 
コータス「」ボッ
 
女「」ボンッ
 
コータス「これでいい?」
 
女「こふっ」マックロクロスケー
 
焚き火「」パチパチパチッ
 
女「………いいです」
 
ムックル「」ムカムカムカッ



 ▼ 129 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/11/30 15:33:08 ID:UOXsFT12 [3/6] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告

 
 
女「………zzz」
 

 
ムックル「」ベシッ
 
コータス「?」
 
ムックル「ぴぃ」
 
コータス「はぁ?ツラ貸せ=H」
 

 



コータス「なぁに? ぼく、眠いんだけどぉ」
 
ムックル「お前、黙って見ていりゃ何だ?」
 
ムックル「バトルは適当、というか今日なんかは陰湿ななぶり殺しみたいなことをしやがる」
 
ムックル「前はバトル始まった瞬間、指示も無視してストーンエッジぶっぱなしてやがったな」
 
コータス「勝ってんだからいいじゃん」
 
ムックル「分かれ道で根拠もなく道を選んだかと思いきや、間違ってたら悪びれる様子もねぇ」
 
ムックル「火を起こすときだって、無駄にデカイ炎であいつを黒焦げにしやがった」
 
コータス「調節しくじっただけだよぉ」
 
ムックル「火の粉出してたじゃねぇか」
 
ムックル「───お前らの旅に付き合いはじめてからそんなのばっかだ」
 
ムックル「あいつもお前に何か言うかと思ったが、全然だしよ」
 
コータス「……」
 
ムックル「何のつもりのあてこすりか知らねぇが、パートナーなんだったらそれ、やめろ」
 
ムックル「旅が続かねえぞ」
 
コータス「どうしようと僕の勝手でしょ」
 
ムックル「なに?」
 
コータス「僕は、この旅に付き合ってやってるだけだからさぁ」
 
コータス「別に、パートナーって感じじゃないし」
 
コータス「そういうのは、君がやればいいんじゃん?」

 ▼ 130 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/11/30 15:34:56 ID:UOXsFT12 [4/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ムックル「」ビキビキ
 
ムックル「知らねぇようだから教えてやるがな」
 
ムックル「俺ぁテメェのようなやつは気に入らねえんだよッ!」バッ
 
コータス「こー」ボォッ
 
ムックル「んぐっ……」
 
ムックル「ぐぅっ……このっ……」パタパタパタッ
 
コータス「こっ」ボォォオオ
 
ムックル「むぎゅう」ベシャ
 
 
 
コータス「大して強くもないのに、無理しない方がいいよ」
 
ムックル「」キッ 
 
ムックル「!!」バッ
 
コータス「」ガキンッ
 
ムックル「!!??!!」ゴッ
 
ムックル「」ベシャ
 
ムックル「」死ーん
 
コータス「〜♪」ノソノソ
 
 

───翌日。


 
ムックル「」ドン☆
 
コータス「………なに?」
 
ムックル「昨日の続きと行こうや」パタパタッ
 
コータス「」ガキンッ
 
ムックル「!!」ガッ
 
コータス「〜……」ヤレヤレ
 
ムックル「ピィイ!」バッ
 
コータス「!」
 
ムックル「その顔蜂の巣にしてくれるッ!!」ツツクッ
 ▼ 131 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/11/30 15:36:05 ID:UOXsFT12 [5/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
コータス「」ボッ
 
ムックル「ぶっ……」
 
コータス「」ボォォオオオオオオオオ
 
ムックル「〜…ッ」ポテッ
 
ムックル「」死ーん
 
コータス「」フゥ
 

 
ムックル「!!」バッ
 
コータス「は?」
 
ムックル「!!」ツンツンツンツンツン
 
コータス「痛ででででででで」
 
ムックル「ぴぃいいい!!」ベシッベシッ
 
コータス「」ムカッ
 
コータス「!!」ゴッ
 
ムックル「ぎゃふんっ」ゴチンッ
 
ムックル「ずつき……だとう……」死ーん
 
コータス「……何なの、こいつぅ」ゲンナリ
 

 
───ムックルの夜襲は連日に及んだ。
 
どうにもこうにもコータスの日中のふるまいが気に入らないらしく、夜になってはケンカをふっかけてくるのだ。
 
コータスからすれば大したことのない相手なのだが、なにしろしつこい。
 
彼の人生上、ここまでしつこく食い下がる敵には会ったことがなかった。
 
だいたいは1回殴ってしまえば尻尾を巻いて逃げ出すか、ノックアウトできてしまう。
 
それが2、3回は殴らないと気絶しない上、最近では必ずこちらに攻撃を通すようになってきた。
 
それも、飛び回れるのをいいことに数回は、つついたりはたいたりをくりだしてくる。
 
たいしたダメージではないが、うっとうしいことこの上ない。
 
そのうち諦めるだろう、と踏んでいたが、そうこうしているうちに、事態は(彼にとって)まさかの展開を迎えた。
 

 
女「コータスって、ちょっと自分勝手すぎると思うの」
 
コータス「」
 ▼ 132 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/11/30 15:39:39 ID:UOXsFT12 [6/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女「今までコータスと2人きりだったし、パートナーとしてあなたしか知らなかったからわかってなかったけど」
 
女「ムックルはだいたい言うこときくし、変なイタズラしないし、旅の妨げになるようなことしないし、バトルの時もまじめにやってる」
 
女「ていうか、最近毎朝ムックルボロボロだけど」
 
女「コータス、いじめたりしてないよね?」
 
コータス「はぁあ?」
 
女「あんまりコータスがふまじめすぎると、こっちも相応の対応するからね」ムスッ
 
コータス「えぇ……」
 
 
 
───自己中心的にふるまっていると、自然とそのむくいを受けることになるらしい。
 
コータスはすこしおとなになった。


コータス(この僕に、忠実なペットになれってか)ゲンナリ
 
 
 
───しもべのように、と協調的に、とは別のことなのだが、それを理解するのも、間をとれるようになるのも、もう少しだけ先のことになるのだった。
 
 



 
ムクバード「ぴぴるぴ(おら、今日もやんぞ)」
 
コータス「それでも君は来るんだねぇ」ケッ
 ▼ 133 キノオー@しろいビードロ 17/11/30 22:37:21 ID:74z4eT52 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
楽しみにしてました!
 ▼ 134 ルガモス@グラウンドメモリ 17/12/01 21:59:11 ID:/KdTbw0w NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
(支援…っ)
 ▼ 135 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/08 11:46:03 ID:8ehk2lp2 [1/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女「」
 

 
───見知らぬ天井を見上げていたのは、これで4回目だ。
 
ひどく、体が重い。
 

 
女「……なんで」
 
 
 
───こんな風にしているんだったか。
 
それを考えた瞬間、頭の中を閃光が弾けるように、意識が途絶える直前までの記憶が駆け抜けて。

力なく倒れる自分≠フ姿を思い出して。
  

 
女「……なにしてんだ」
 

 
───他の誰でもない。
 
自分に向けて吐き捨てた言葉だった。
 
 
 
目が覚めて10分ほどした頃だろうか。
 
ジョーイが彼女の元を訪れた。
 
ジュンサーをともなって。

体の状態を説明されたうえで、命に別状はないこと、今日いっぱいは安静にしているよう言い含められた。
 
10分だけですからね、と連れに釘を刺して、ジョーイは席を譲った。 
  
 
 
ジュンサー「こんにちは、はじめまして」
 
女「こんにちは」
 
ジュンサー「心苦しいかもしれないけど、あなたが溺れる前のことを、聞かせてもらえるかしら」
 
女「どうして」
 
女「いったい、何が」
 
ジュンサー「そうね、まずはことのあらましを説明しましょうか」
 
ジュンサー「あなたたちは、ポケモンハンターに襲われたのよ」
 
ジュンサー「奴はあなたを水路に突き落とし、ラティアスを捕まえ、そして連れ去った」
 ▼ 136 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/08 11:47:08 ID:8ehk2lp2 [2/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ジュンサー「現段階では、これだけ」
 
ジュンサー「これだけしか、わかっていないの」
 
ジュンサー「だから、あなたの証言がわたしたちにとっては頼みの綱」
 
ジュンサー「だから、教えて」
 
ジュンサー「あなたを襲ったハンターについて。その状況について」
 
ジュンサー「できるだけ、細かに」
 

 
───ジュンサーは、端的に、ゆっくりと、こちらが理解できるよう注意して言ってくれたようだった。
 
あの、ゴンドラ船頭の男。
 
あの男がハンターで、ラティアスを連れ去った。
 
それを聞いた瞬間、頭の中で散らかっていた情報がするするとまとまって。
 
自分に起きたことのいきさつを、彼女は理解するに至った。
 
そして、彼女は自分のおろかさを思い知った。



ジュンサー「……なるほどね」カチッ
 
ジュンサー「ありがとう。これで捜査に進展が望める」
 
ジュンサー「ゆっくり、休んでね」スック
 
女「……あの」
 
ジュンサー「?」
 
女「ラティアスのこと……知ってるんですか?」

ジュンサー「もちろん。アルトマーレの守り神だもの」
 
ジュンサー「みんな知っているわ」
 
ジュンサー「公然の秘密ってやつ」ウィンク
 
女「」
 
ジュンサー「だから、待ってて」
 
ジュンサー「ラティアスは、わたしたちが絶対に救い出してみせるから」
 
 
 
───ジュンサーは、口をきつくむすんで、足早に病室を出ていった。
 ▼ 137 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/08 11:51:02 ID:8ehk2lp2 [3/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
4日前。
 
溺れた少年を助けた時。
 
あのときから、異常は始まっていたのだ。
 
あの時近くにはゴンドラ船が一隻いた。
 
普通のゴンドラ船だったなら、普通の船頭であったなら、少年の一大事に気づき、たすけ船をよこしていたに決まっている。
 
だのに、少年を助けたのは自分とラプラスだけで。
 
救出が終わったとき、いたはずのゴンドラ船は、影も形もなくなっていた。
 
思うに、あれはほかならぬハンターの擬装船で、アルトマーレの景観にとけこんで自分達を見張っていたのだ。
 
間の悪いことに子どもが溺れているところにはちあわせてしまったものだから、慌てて別の水路に退散したのだろう。
 
そして、不自然だったことは他にもある。
 
ここ数日、やたらとバトルを挑まれたことだ。
 
最初はそういう日もあるか、と割り切っていたが、不自然だ、と思うに足る根拠はあった。
 
バトルした青年が言っていた言葉。
 
『俺なら勝てる、と思っていたんだが………』
 
その場ではなんとなく流してしまっていたが、考えてみれば、他の対戦相手にもそんなことを言っていた人がいた。
 
自分のことを誰かに聞いた、という様子の人が。
 
おそらく、ハンターの男が自分のことを吹聴して広めていたのだ。
 
凄腕のトレーナーがいる、とか適当なことを言いふらして、アルトマーレのトレーナー達を誘導した、という運びだろう。
 
なぜか?
 
決まっている。戦力分析のためだ。
 
ラティアスといつも一緒にいるトレーナーが、どの程度腕が立つのか
 
それを観察されていたのだ。
 
しかし、あの男の姿には、ゴンドラ船頭以外では見覚えがない。
 
ならば、どうやってこちらを監視していたのか?

バトルをしていたのは、ゴンドラが進入できるような水路沿いばかりではない。
 
中には、周囲を完全に建物で囲まれたエリアでのバトルもあった。
 
場所を問わず、対象を監視できるような手段。

この街では何度も見た。
 
ドローンだ。
 
すっかりおとなりさんのものだと思っていたドローンだが、自分の近くを飛んでいたのは、ハンターのものだったのだろう。
 ▼ 138 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/08 11:53:26 ID:8ehk2lp2 [4/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ドローンを使い、擬装船を使い、こちらの戦力分析を済ませたハンターは期を窺い、絶好のタイミングで襲撃をしかけてきたのだ。
 
能天気に数回バトルをして、疲労していた自分たちを。
 
予兆はあった。
 
不自然だ、と考えるに足る材料もあった。
 
だのに、まったく備えられず、予想すらできず、敵の予定通りに打ち負かされて、大事なものを奪われた。
 
ラティアスを、連れ去られてしまった。
 
満たされた日々にかまけて、普段当たり前にしていた警戒をおろそかにした。
 
なんて、役立たずで、おろかで、怠惰で、間抜けで、お花畑で、イタい奴なのだろう。

こんなにも、後悔と自己嫌悪にさいなまれたのは、生まれて初めてだった。
 
重い体が、能天気な自分自身が、このていたらくが。
 
憎たらしかった。
 
 
 
 
───再び、来客があった。
 
 
 
「こんにちは」ペコリ
 
女「こんにちは」

「私はボンゴレといいます」

女「博物館のガイドさん……ですよね」
 
ボンゴレ「ん、ご案内したことがありましたかな?」
 
女「いえ、でも前行ったとき、お見かけしたので」

ボンゴレ「そうでしたか。いかにも、普段は博物館のガイドと、ゴンドラ船の修理工をやっております」

ボンゴレ「……だが、今日ここに来た私の立場は、そうではないんだ」
 
ボンゴレ「私の一族は、アルトマーレでのラティアス達の保護区域の管理もしている」

女「保護区域……あの庭≠ナすか?」

ボンゴレ「ああ、君も入ったのだったね」
 
女「すみません、勝手に入ってしまって」
 
ボンゴレ「別にいいんだよ。あそこは秘密の園だが、ラティアスやラティオスが気に入った人間を連れてくることもある」
 
ボンゴレ「彼らの案内なしに、秘密の園にはいることはできないからね」

ボンゴレ「そこは、ラティアス達の良心に任せている。悪しきものが入り込むことなど、滅多にない」

女「」キョトン
 ▼ 139 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/08 11:55:43 ID:8ehk2lp2 [5/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ボンゴレ「つまり君は、お客様だ。気にしないでくれていいんじゃ」
 
女「……ありがとうございます」
 
ボンゴレ「では、本題に入らせてもらおうか」
 
ボンゴレ「私は、君に謝罪するために来た」

女「……………………………はい?」
 
 
 
───謝罪?
 
何のこと?
 
何についてのこと?
 
 
 
ボンゴレ「………いち観光客であり、街の事情に無関係の君を、トラブルに巻き込んでしまった」
 
ボンゴレ「トラブルの予防に、人事を尽くせていなかった我々の落ち度だ」

女「はい………?」
 
ボンゴレ「たいへん申し訳ない」
 
女「───」
 
女(なんで、頭下げて……しゃざい……謝罪?)
 
女「やめ、て……ください」
 
女「頭なんか、下げないで……」

ボンゴレ「君をあやうく、死なせてしまうところだった」

 

───何を言っている。 
 
 
  
ボンゴレ「管理者として、できるだけの償いはする」
 
女「だから、だから……ッ!」

ボンゴレ「私達は、君を傷つけ、不快な思いをさせてしまったことを、重く考えている」
 
ボンゴレ「これは我々の落ち度なのじゃ」
 
ボンゴレ「決して、決して、」
 
ボンゴレ「どうか、ラティアスやこの街を、恨まないでほ──」
 
女「私なんかに、頭を下げないでください!」
 ▼ 140 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/08 11:57:42 ID:8ehk2lp2 [6/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 
 
 
 

 
女「……違い、ます」 
 
女「違う……違う、違います、違うんです」

女「巻き込まれたとか、そんなんじゃ………私が好きで一緒にいたんです」

女「それが楽しかったから……楽しくて、楽しくて……一緒にいたのに」
 
女「一緒にいた私だから、できたはずのことだったのに、考えるのを怠ったから……ラティアスはっ」ボロボロ

女「誰も………誰もッ!」ヒグッ
 
女「悪くないんです……私が……私の、せい……」グスッ

女「ごめん……なさい」
 
女「私のせいで……ラティアス、が……っ」

ボンゴレ「」
 
ボンゴレ「……そうか、それは……すまなかった……てっきり私たちは」

ボンゴレ「……君は、ラティアスを好いてくれているのだね」
 
ボンゴレ「ありがとう」グッ…

 

───ラティアスやラティオスについての話。
 
アルトマーレと彼らの縁。
 
秘密の庭に安置されていたもの。
 
そんな、部外者になど話せないようなことを、ボンゴレ氏は不思議とあっさり語ってくれた。
 
ありがたく、そして、申し訳なくて、消えてしまいたかった。



女「……何を思い上がっていたんだろう」

女「ハンターが現れたとき、私なら、私なら守ることができるかもしれない、だなんて、あのとき、確かにそう思っていた」

女「とっくのとうに、敵の手のひらの上だったのに」
 
女「それで……………それで、このザマだ」

女(やっぱり、私なんかじゃ、ダメだ)

女(私なんかに、あの子は助けられない)

女(私、なんかに……)ジワ
 ▼ 141 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/08 11:58:57 ID:8ehk2lp2 [7/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
───一度は信じかけた自分自身は、やはり信じるに値しない、と思うしかなかった。

事実が、現実が、現状が、この様を物語っていた。
  
絶望して、無力さにうちひしがれて、力なく泣いた。

泣いて泣いて、泣き果てて。
 
涙を出し尽くした彼女が最初に思ったのは、宿に連絡しなければ≠セった。
 
 
 

























 
ムクホーク『………………』
 
ムクホーク『』ム カ
 ▼ 142 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/08 12:00:23 ID:8ehk2lp2 [8/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



女「ポケナビ、水没して壊れたから、電話」テク、テク…
 
女「公衆電話、探さなくちゃ」
 
女(丸一日部屋を空けてしまった)

女(宿代、もったいないなぁ)
 
女(そろそろ、チェックアウトしなきゃ)
 
女(これ以上、私がここにいても、なんにもならない)
 
女(どうしようもない)
 
女(どうしようもないことは……)
 
「わ」クワッ
 
女「?」
 
「わっ……うわっ……おか、おかおかおかっ」
 
女(小さい子にまでビビられるほど、ひどい顔をしているんだろうか)
 
少年「おかあさん!」
 
女(泣いて逃げられるまでフルコン……あれ)
 
女(この子、どっかで………)
 
 
 
少年「おかあさん! この姉ちゃん!」
 
少年「ラプラスの姉ちゃん!!!」
 
 
 
 
女「…あ」
 
 
 
───4日前、溺れていたところを助けた少年だった。
 ▼ 143 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/08 12:02:29 ID:8ehk2lp2 [9/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
母「その節は、本当にありがとうございました」ペコリ
 
女「いえ、私は、その………当然のことをしただけ…なので、そんな」
 
少年「ラプラスはいないの?」
 
女「え、う、いる」
 
 
 
───中庭に出て、ラプラスを見せてあげた。
 
 
 
少年「ありがとうラプラス、命の恩人感謝永遠に!」
 
ラプラス「(困惑)」
 
母「ごめんなさいね、あの子すっかり、ラプラスが好きになってしまって」
 
女「いえ、ラプラスも子どもは好きですし」
 
女「好きなだけかまってあげてください」
 
母「……あなた」
 
女「?」
 
母「何かあったの? 入院もそうだけど、目の腫れがひどいわ」
 
母「怪我だってしているんでしょう?」
 
女「」ヒタ
 

 
───頬を押さえていた。
 
右側の頬と、胸、そしてももに青アザがある。
 
オノノクスとぶつかったときのものだ。
 
胸部のアザはやや外側で、これがもっと中心に寄っていたらショック死していた可能性もあったらしい。
 
今回は運よくそういった即死に至るような事故にならず、骨折もなかった。
 
オノノクスの機転と、幸運の証。
 
そして、自分の不手際のむくい。
 
それはまだヒリヒリと痛み、心をさいなんでいた。
 
目の腫れは、溢れてしまった後悔の残滓だ。



女「ただの、自業自得……なので」
 
母「……どうか、元気を出して」
 ▼ 144 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/08 12:05:02 ID:8ehk2lp2 [10/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
母「あの子に笑ってあげてくださいな」
 
母「あなたたちは、私たちのヒーローなのよ?」
 
女「私は、そんな大した人間じゃありません」
 
女「居合わせただけ」
 
女「私がいなくても、誰かが助けてた」
 
女「たまたまなんです。たまたま助けられた」
 
女「水がもう少し浅かったら、ラプラスじゃ掬い上げられなかった」
 
女「シザリガーを行かせたら、力加減を失敗して大怪我をさせてしまうかもしれなかった」
 
女「たまたまあそこで居合わせたから、つれていたポケモンがあの状況に即してたから、私は彼を助けられた」
 
女「そもそも、私個人には………誰かを助けられる力なんて、ないですから」
 
母「だから何?」
 
女「?」
 
母「あの子を助けたのは、あなた」
 
母「他の誰でもない、あなた」
 
母「あなた以外の誰も、息子を助けてはくれなかった」
 
女「でも、あの場に居合わせていたなら、誰だって……」
 
母「ちがう」
 
母「だって、いたのがあなたじゃなかったら、息子は助けられなかったかもしれない」
 
母「息子は、当然のように′ゥ捨てられていたかもしれない」
 
母「いたのはあなた。あなただから、助かったの。あなたじゃなかったら、息子は助かってなかった」
 
女「」
 
母「そんな風に、自分を傷つけないで」

母「何があったのか知らないけれど、何が、あなたの心を折ってしまったのか、わたしにはわからないけれど」

母「どうかお願い」
 
母「胸を張って」
 
母「あなたは、立派よ」
 
 
 
───親子は帰っていった。
 
今日が退院日だったらしい。

それ以外に持ち合わせがなかったからだろう、ひどく申し訳なさそうに、えびせんと板チョコを残して。
 ▼ 145 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/08 12:07:09 ID:8ehk2lp2 [11/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
今度会ったらごちそうするから、と言って。
 
少年はそんな菓子類などまったく持っていなかった(し、彼女ももらおうだなんて思っていなかった)が、手作りのメッセージカードをくれた。

会えたら渡そう、と用意していたそうだ。
 
帽子をかぶった人間とラプラスの絵の下に、デカデカと『ありがとう ラプラスのねえちゃん』と書いてある。
 

 
女「……かさばる」
 
女(申し訳ないな……こんなもの、私には)

女「……あ」
 
女「電話」 
 
 
 

 
───公衆電話のある場所に来た。
 
宿に電話を、と受話器に手をかけてそのまま、固まった。
 
この状況をどう説明したらいいのだろう。
 
一緒にいたラティアスがハンターに連れ去られ、自分はその際に溺れて、今までベッドの上だった。
 
これを説明するためには、妹だと言っていた少女がポケモンだった、と真実を明かす必要がある。
 
つまり、自分がついた嘘の、謝罪をしなければならない。
 
それは同時に、自分が宿の人々との間にしていた線引きの告白ともなってしまう。
 
ラティアスのことを知った客たち、あるいは宿屋さんやバイトのおねえさんが、自身の利益のためにラティアスの害になるような何か≠するかもしれない。
 
はじめの頃に抱いていた、そういう悪意ある人間かもしれない=Aという警戒心の告白を。
 
それを、彼女は躊躇していた。
 
そうやって警戒していた人達と、この数日間で築いた信頼があるばかりに。
 
彼らからの信頼を───情を裏切るのが、怖かったのだ。
 
 
 
女「……自分のせい、なのにね」

コータス「」
 
女「こんなに苦しいのも、こんなに後悔してるのも、全部、全部……」
 
女「私が失敗したから」
 
女「私が、お門違いの考えで、間違った方を選んだから」
 
女「私なんかが……」ポンッ
 ▼ 146 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/08 12:09:31 ID:8ehk2lp2 [12/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女「───え」
 
ムクホーク「」バッ
 

ばっしぃい!!
 
 
女「───ッ」ドタッ
 
女「!????!??」
 

 
───ひっぱたかれた。
 
 
 
ムクホーク「ケーーーーンッ!!!」
 
女「」ボウゼン

コータス「何してんの? 立てるんでしょ?」

コータス「折れてるヒマ、あるの?」

女「ヒマ……て」
 
コータス「ラティアスのこと。このままでいいの?」
 
女「……ジュンサーさん達がもう探し始めてるよ」

女「私が動いても、足を引っ張るだけだよ」

女「警察はこの道のプロなんだから」

女「私なんか邪魔になるよ」

ムクホーク「ケーーーーンッ!!!」

ムクホーク「」ガツン

女「痛でっ」ズテッ

コータス「気持ちがわかる薬なんてなくても、わかるでしょ?」

コータス「いじけてんな。立て」

女「………」
 
女「……わかってるよ……こんな風にしてるのなんて、時間の無駄でしかないこと、くらい」ヨタ……ッ
 
女「でも、動けない……動けないんだ」
 
女「失敗するのが怖い。私が動いたせいで、もっと悪くなるんじゃないかって、もっと酷いことになるんじゃないかって、もっと、取り返しのつかないことになるんじゃないか………って」

女「……私には、そうなっても責任をとることができないから」

女「私の考えが、うまくいくだろう、なんて、能天気に………考えられない」
 ▼ 147 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/08 12:12:51 ID:8ehk2lp2 [13/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
コータス「……たしかに、君は考えすぎるせいで、空回りしちゃうこととか、しょっちゅうだよねぇ」
 

コータス「今はそれも最悪にぐるぐるしてるし」
 

女「ッ……」ズキッ
 

コータス「でも、君が思ったままにやったことってさぁ」

 
コータス「案外、うまくいったりしてるよ」
 

女「うまくいってるときを、自覚してないだけってこと……?」

 
コータス「ちがうよ」

 
コータス「君が、こうする方がいい、とか、こうするべきって、考えた時じゃなくて、こうしたい≠チて思った時のことさ」
 

コータス「たとえば、ほら」
 

コータス「飛んでった風船、女の子に返してあげたよね」


女「……この前の?」

 
コータス「そのときの。」

 







  
コータス「ラティアスは、あの時の君を気に入ったんだよ」


コータス「だから、次の日は君のところへ来たんだ」
 

女「───」
 
  



 


 ▼ 148 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/08 12:15:34 ID:8ehk2lp2 [14/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女「………………なん、で」
 
コータス「だって、あの子はそういう子でしょお」
 
女「そっ、そういうことじゃなくて……ッ」
 
女「なんで、コータスがそんなこと知ってるの?」
 
コータス「話したからねぇ」
 
女「えっ」

コータス「んで、さっきの溺れた子」
 
女「も?」
 
コータス「彼をとっさに助けにいった君を見たとき、ますます好きになっちゃった≠チて、それに」

コータス「このところの散歩は、君もあの子も楽しそうにしてたよねぇ」
 
コータス「心が通じてるのがわかって、嬉しかった≠チて」
 
コータス「そう言ってたよ」

女「」ポロッ
 
コータス「君がやったことは、多かれ少なかれ、誰かを救って、誰かの心に残ってるよ」

コータス「それは、君自身の救いになってるだろ」
 
女「」
 

 
───手書きのメッセージカード。
 
かさばる、などと呟いたが、もらったとき、本当は嬉しくてたまらなかった。
 
自分が何をやっているのかがわからない真っ暗闇のなかで、手を握ってもらえたような。
 
自分でも半信半疑だったことを、それでいいんだ≠ニ肯定してもらえたような。
 
救われたような、気がして。



コータス「それを忘れるなよ」
 
コータス「たった何回かの失敗で、かすんじゃうようなものじゃあないだろ」

女「……」コクン
  
コータス「それにさぁ」

コータス「そんな風に、下を向いて」

コータス「君は彼≠ノ、胸を張れるの?」

女「!!!!」
 ▼ 149 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/08 12:17:12 ID:8ehk2lp2 [15/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女「」カタカタカタカタ
 
女「」プルルルル
 
女「………あ、もし、もし」
 
 
 
───意を決してコールボタンを押した彼女はしかし、声の震えを隠せないでいた。
 
どんな風に覚悟を決めても、それでも、これから行う、自分がついた嘘の告白が、怖くて怖くてたまらなかったのだ。


 ▼ 150 ズレイド@いんせきのかけら 17/12/09 10:21:22 ID:6zK5H6Oo NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援です
 ▼ 151 ンド@きいろいバンダナ 17/12/09 12:14:57 ID:KibrHpls NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 152 キメノコ@あやしいおこう 17/12/09 20:49:25 ID:wGFeAKzk NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 153 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/10 19:09:24 ID:7q.AajNM [1/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
『はい、お電話ありがとうございます。宿屋ペリッパーのクチバシです』
 
 
『! ※※※※※さん!』
 
 
『無事だったんですね! ……え、お宿代……延長の分……?』
 
 
『そんなこと……! 気にしなくていいんですよ』
 
 
『君が無事だということがわかったんです。みんな喜びます』
 
 
『……はい。はい。えぇ、大変でしたね』
 
 
『大丈夫ですよ。案じこそすれ、君に怒っている方はいません』
 
 
『わたしも安心しました』
 
 
『……はい……おふたりに? ……はい、はい。かしこまりました。少々お待ちを』
 

 
 
 
 
『もしもし』

 
『※※※※※ちゃん?』
 
 
『……宿屋さんに聞いたわ、今、病院なんでしょう?』
 
 
『本当によかった……命あっての物種だもの』
 
 
『わたしたち、お迎えにいこうか? 妹さんは、大丈夫?』
 
 
『………どうかしたの?』
 
 
『……大丈夫、焦らないで』
 
 
『整理ができたら話すで、いいからね?』
 

 
女「……ごめんなさい」


女「私、嘘をついていました」
 ▼ 154 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/10 19:11:08 ID:7q.AajNM [2/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


 
女「あの子は、妹じゃないんです」
 
女「信じてもらえないかもしれないけど、あの子は、ラティアスで」
 
女「私に、化けて……ただけ」
 
女「私、は、ラティアスのこと、を言って、広めてしまったら……そのっ……あのっ……」
 
女「ラティアスが、トラブルに巻き込まれるかもしれない……っておもってっ……思い、ました」
 
女「だから、妹だ……って、嘘を」

女「みんなを、だまそうとか思ったんじゃ、ないんです……ただ、言わない方がいい、って、思って」
 
女「そう思って……嘘をつきました」
 
女「……ごめん、なさい」
 
 
 
『そっか……』
 
 
『不思議ね……なんだか、納得しちゃった』
 
 
『あの子がポケモンだった……うん』
 
 
『言われてみたらそうね』フフッ
 
 
『人見知り、とも、なにか違ったもの』
 
 
『すっかりだまされちゃった』
 
 
『……でも、だからって、あなたに失望とかがっかりなんてしないわ』

 
『あなたは、当たり前のことをしただけ』

  
『悪気がないことくらい、わかっているわ』
 
 
『ありがとう、本当のことを教えてくれて』
 

 
女「〜……っ」グスッ…ヒック…ズビ…
 ▼ 155 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/10 19:12:41 ID:7q.AajNM [3/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 

───自分たちを襲ったのが何者か。
 
どうして襲ってきたのか。
 
その結果、自分がどうなって。
 
ラティアスがどうなったのか。
 
すべて、語った。
 
その語り口に何を感じたのか。
 
返ってきたのは、問いだった。
 
 
 
『……警察に、任せるんだよね?』
 
女「……」

『君はこれからここに戻ってくる』
 
『それで、わたしたちと、警察の知らせを待つ』
 
『そう、だよね?』
 
『これはその連絡、なんだよね?』
 
女「……ッ」ギュッ

『相手は手強くてずる賢い、大人なんでしょ?』
 
『悪いやつだからって、君が責任を感じているからといったって』
 
『わたしたちは、いってこい、なんて言えない』
 
『言いたくないよ』
 
『だって、万が一、それで、君と会えなくなってしまったら』
 
『わたしたちは、言わなければよかったって、絶対、一生、後悔する』

『お願い』
 
『帰ってきて』
 

 
女「……だと、しても」
 
女「私は、あの子を助けたい」
 
女「あの子と一緒に、あなたたちのところに帰りたい」
 
女「私ひとりで、あなたたちのところに帰るのを、私の仲間たちは許してくれない」

女「私自身がそれを望んでいないのを、みんな……わかっているんです」
 ▼ 156 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/10 19:15:33 ID:7q.AajNM [4/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ムクホーク「」キッ

女「」
   
女「ありがとうございます」
 
女「ごめんなさい」
 
女「いってきます」
 
 
 
───返答を待たず、受話器を置く。
 
勢いにでも任せないと、そのまま受話器を握りっぱなしになってしまいそうだったからだ。
 
早く行かなければ、と、その思いだけに集中して、それ以外を頭から叩き出して、受話器を置こうとした。
 
通話が切れるまでの、そのわずかな一瞬。
 
その声は、受話器が耳から遠ざかっていても、はっきりと聞こえた。
 
 
 
「「いってらっしゃい」」
 
 
 
女「」ガチャン
 
女「………ッ」
 
女(ふたりとも、涙声だった)
 
女「……いこう」

ムクホーク「ぴぃ」
 
 
 
 
女(まだ、警察に話せていないことがある)

女(考え直して、検討した推測)
 
女(ハンターの潜伏場所)
 
女(その候補)

女(───いた!)
 

 
───警察署にやってきてすぐ、受付で呼び止められたので、自分の聴取をしたジュンサーの名前を出して通り抜けた。
 
所属を聞いて、そこに向かっている次第だったが、件のジュンサーはあっさりと見つかった。
 
 
 
女「ジュンサーさん!」
 ▼ 157 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/10 19:17:38 ID:7q.AajNM [5/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ジュンサー「あら、あなたは!」

ジュンサー「今日1日、絶対安静じゃなかったの?」
 
女「それは大丈夫です。回復しました」キッパリ
 
ジュンサー「そ、そう」
 
女「それで、実はまだ言っていないことがあって……」
 
ジュンサー「大丈夫よ。事件はもう解決したも同然だから」
 
女「え、それは……どういうことですか?」
 
ジュンサー「ハンターの足取りがつかめたの。目撃者から通報があってね」
 
ジュンサー「実動班がもう向かったから、じきにハンターは捕まるわ」
 
女「そう……ですか」
 
ジュンサー「わたしも実動班に参加したかったんだけど、残されてしまって」
 
ジュンサー「でも大丈夫よ。辛抱して待ちましょう?」
 
女(なんだ)
 
女(なんだ?)
 
女(ひっかかる……何が?)
 
女(何≠ェ、引っかかってる?)
 
女(……嫌な予感がする)
 
女「あの」
 
ジュンサー「なにかしら」
 
女「実動班が向かった場所って……」パタパタパタ
 
ジュンサー(アルトマーレの地図)
 
女「ここと、ここと、ここ」
 
女「……の、どれかですか?」
 
ジュンサー「……えっ」

ジュンサー「ど、どうしてそれを知っているの?」
 
ジュンサー「通報された場所とまったく同じ……あっ」ウグッ
 
ジュンサー(しまった)
 
女「実動班は分かれてこの3ヵ所に同時に向かった……そうですね」パタパタパタッ

ジュンサー「えぇ、そんなところね」
 
ジュンサー(ほんとはあともう2ヵ所ある……けれど、これを言うわけには)
 ▼ 158 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/10 19:18:51 ID:7q.AajNM [6/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女「」ダッ

ジュンサー「あっ、ちょっと!」
 
ジュンサー(まずい!)

ジュンサー(なぜこの子がハンターの潜伏場所を突き止めているのかわからないけれど、このままほうっておいたら)
 
ジュンサー(間違いなく、今指し示したどこかに行く!)

ジュンサー「待ちなさい!」ダッ
 
 
 
















 ▼ 159 ルマユ@ディフェンダー 17/12/10 22:19:25 ID:Z0yZQRcA NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 160 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/14 16:27:39 ID:cMixt.5s [1/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「……っぐ」
 
「うぅっ……」
 
 
 
───倒れ伏す仲間たち。

そばでは、それぞれのパートナーポケモン達まで、力なく横たわっている。
 
死屍累々。
 
自分もそのひとつ。
 
完全なる敗北だった。
 
 
 
(……どうして、こんなことに)
 

 
───ざらざらと吹き荒ぶ砂嵐。
 
力を振り絞って首を上げると、砂の幕の向こうに辛うじて見えるのは、この状況を作り上げた張本人たち。
 
よろいポケモン・バンギラス。
 
キバさそりポケモン・グライオン。
 
そして、その奥には、奴が立っているのだろう。
 
守り神・ラティアスを連れ去った、ポケモンハンターの男が。
 
 

(戦力が下がっているにしても、実動班の俺たちが、こんなに、一方的にやられるなんて……)
 
 
 
───グライオンの姿がかすんで視界から消える。
 
天候すなあらしの際に発揮される特性・すながくれ。
 
その特性を生かして死角をとり続け、グライオンはパートナーポケモンはおろか、警察官たちをも打ちのめしてしまった。

グライオンが十全に動けるよう、この場所≠砂嵐でおおってしまったのは、バンギラスの特性・すなおこしだ。
 
バンギラスはただのすなおこし要員にとどまらず、こちらがグライオンを注視出来なくなるほどの大暴れを見せた。
 
蹂躙に次ぐ蹂躙。
 
決して油断はしていなかったが、それでもなお、先を行かれ、敗北を喫した。
 

 
(くそっ……こんなはずじゃ……)
 
(俺たちが、ラティアスを救い出さなくて、誰が救い出すんだ)ギリッ
 ▼ 161 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/14 16:30:13 ID:cMixt.5s [2/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
───幼い頃、彼は守り神に助けられたことがあった。
 
いつか、その恩を返せるように、とひたむきに生きてきて、その果てがこれか。
 
情けなくて、悔しくて、涙がこぼれた。
 
 
 
(あのときの救いの手に、俺は報いることができないのか……ッ!)
 
 
 
───風の音が止む。
 
体に覆い被さる砂が、四肢の痛みにのしかかる。
 
逃げられてしまう、連れ去られてしまう。
 
みんなの大事にしているものが。
 
尊んでいるものが。
 
心の拠り所となっているものが。
 

 
「まて……まてよ……っ」
 
 
 
───砂でざらつく口は、がらがらに乾いたのどは、思った通りにしゃべってくれすらしない。
 
ハンターが立ち去ろうと、ポケモンをボールに戻そうとして───
 

 
「コータス! だいもんじ!!」
 

 
───大≠フ字の豪炎が、ハンターに迫る。
 

 
ハンター「バンギラス、盾になれ!!」
 
バンギラス「バッ……ギラス!!」バッ
 
グライオン「」ソソクサッ
 

ど、ぉん!!
 
 
ハンター「………」
 
(コータス……と、女の子……!?)
 
ハンター「……あのガキか」
 ▼ 162 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/14 16:33:13 ID:cMixt.5s [3/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 
女「どうしてここにいるんだ、って顔をしてますね」
 
ハンター「………」
 
女「……」
 
女「あなたが私達を監視してるのと同じ時間、私はずーっと、ラティアスと遊び回ってましたから」

女「水路も、裏道も、抜け道も、近道も、隠れるのに都合良さそうな建物も」

女「全部覚えてるんです」

ハンター「」ピクッ
 
(な、なに、得意気に語ってるんだ……)

女「どうしてあなたの居場所に目星をつけられたのか、不思議ですよね?」
 
ハンター「………」
 
女「あなたが私達を襲ったあのとき、私はオノノクスごと川に落とされた」
 
女「人情的に考えるならば、その近くをわざわざ通っていくとは考えにくい」
 
女「なら自然と、あなたはゴンドラを、私から逃げるように向けるはず……」
 
ハンター「ストーンエッジ」
 
グライオン「ッライォオン!」ガコンッ
 
バンギラス「ギラス!!」ガコンッ
 
 
がががちん!!
 
 
(あのコータス……バンギラスとグライオンのストーンエッジを、ストーンエッジで撃ち落とした……!)
 
女「……なら、そこから繋がる潜伏場所′きの建物をしぼりこめばいい」ニヤリ
 
女「ここみたいに、廃屋になっている舟屋なら、船の乗り降りもたやすい上、ゴンドラからすぐにボートに乗り換えて、そのまま逃げることができる」
 
女「おあつらえ向きですよね」
 
ハンター「」ムカ
 
(たとえ……場所がわかったからって、単身で乗り込んでくるなんて)
 
(どうして、そんなおろかなことを!)
 
(って、そうか! ラティアスと一緒にいたっていう女の子!)
 
(仇討ちに来て……しまった、のか!)
 
ハンター「バンギラス、グライオン。ストーンエッジでトレーナーごと……」

ムクホーク「ケーーーーンッ!!!」
 ▼ 163 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/14 16:35:09 ID:cMixt.5s [4/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
バンギラス「〜ッ!?」バキッ
  
ハンター「何っ!?」

ムクホーク「ぴいっ!」ゲシッ
 
バンギラス「ばおぉっ!」
 
ムクホーク「ぴぴるるる!」ゴッ
 
バンギラス「ーッ!」ヨタッ
 
(インファイト!!)
 
ハンター「おぼえねえくせに不意討ちとはやってくれる……」
 
ハンター「バンギラスなにしてる! そんなもんさっさと引き剥がせ!」
 
ハンター「グライオン! コータスをやれ!」
 
 
 
グライオン「グライオォン!!」バッ
 
コータス「ふわぁ」
 
 
 
バンギラス「バンッ、ギッ!!」ブンッブンッ
 
ムクホーク「ぴぴっ!」バサッバサッ
 
ハンター「かみくだけ!」
 
(あぶないっ!)
 
ムクホーク「」ギラッ
 
ムクホーク「!!!」ッッッッゴッ
 
バンギラス「むぎゅう」ミシッ
 

 
(な、なんとか、渡り合えている………)ホッ
 
(彼女、結果的には俺たちの助けになっているが……しかし、やはりどこかギリギリの綱渡りに見える)
 
(彼女が足止めできているうちに、応援が間に合えば……あるいは!)
 
 
 
───ここにハンターがいた以上、別れた他の班が訪れた目撃箇所は、ハズレ。
 
ならば、彼らがこちらの通信が途絶えていることに気づいて応援に来てくれる可能性がある。
 
情けないことだったが、少女の時間稼ぎが、彼にとって、頼みの綱だった。
 ▼ 164 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/14 16:37:41 ID:cMixt.5s [5/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
バンギラス「!!!」ガブッ
 
ムクホーク「ぴぃいいい!!」ゴスッバシッゲシゲシッ
 
(噛まれながら、ボコボコに殴り返している……)

ムクホーク「」ギンッ

バンギラス「っ……」タジッ
 
バンギラス「〜!!!」ギギギギ
 
ハンター「チ、いかくでブルっていやがるのか」
 
ハンター「グライオン! いつまでそっちに手間取って」
 
グライオン「ぐうすかぴぃ……」
 
ハンター「……この間抜けが」
 
(い、いつの間に眠らせたんだ……)
 
ハンター「バンギラス! ムクホークをくわえたままでいい! やつらのところに突っ込め!」
 
バンギラス「〜ッ!」ドシン、ドシン、ドシン…… 
 
(グライオンごと轢くつもりか!?)
 
女「」スッ
 
バンギラス「!!」ドシンドシンドシン
 

がしっ!!
 
 
バンギラス「!?」
 
オノノクス「バオォォン!!」
 
ハンター「オノノクス……3体目を出しやがったか」
 
ハンター「なら、こっちも……」スッ
 
女「」ポポン!
 
ドリュウズ「ッリュウズ!」
 
シザリガー「アィワズバァーック」ノッシッ
 

ハンター「……ふん」ポポポポン

サザンドラ「ォオオオオン!」
 
グソクムシャ「むむっしゃ!」
 
ヒヒダルマ「ワッシャオイ!!」
 
メタグロス「メッタァ!!」
 ▼ 165 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/14 16:39:08 ID:cMixt.5s [6/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女「これで、全部」ボソッ
 
(……まだ、こんなに持っていたのか……ッ)
 
(数を出して状況打開どころか、上回られてピンチになってるじゃないか!)
 
(クソッ、応援はまだか!!)
 
ハンター「お前ら、かかれ」
 
女「………」
 
 
 
女「」スゥ……
 
女「コータス、じわれ!!」
 
コータス「こぉっ!」 ズドン
 
ハンター「何っ!?」
 
ハンター「おまえら、下がれ!」
 
女「シザリガー、アクアジェットでムクホークを助けて!」
 
シザリガー「ザリィッ!」パァン!
 
バンギラス「ッ!」パッ
 
ハンター「チッ」
 
(じわれに気をとられて出遅れた!)
 
ムクホーク「ぴいっ!」バサバサッ
 
シザリガー「〜♪」ドヤァ
 
ハンター「グソクムシャ、シザリガーにであいがしらだ!」
 
女「食らってもいい! ハサミギロチン!」
 
グソクムシャ「」ギョッ
 
グソクムシャ「ムッシャッ!」スカッ
 
 
がちぃんっ!!
 
 
シザリガー「いでぇっ」ベシッ
 
(浅い)ホッ
 
ハンター「一撃技ばかり……ヤケクソしやがって」イラッ
 
女「ドリュウズ潜って! ムクホーク、サザンドラにブレイブバード!」
 
ハンター「りゅうのはどうでつぶせ!」
 ▼ 166 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/14 16:40:11 ID:cMixt.5s [7/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女「ギリ≠ナ!! ドリュウズ! つのドリル! コータス、エッジ! オノノクスは正面ハサミギロチン!」
 
バンギラス「!」ギョッ
 
オノノクス「」スカッ
 
 
がちんっ!
 
 

バンギラス「バン、ギッ……」タジッ
 
 
ドリュウズ「ドリューッ!」ギュリリリリリリ

ヒヒダルマ「しゃあい!?」ヒョイッ
  
ハンター「ヒヒダルマ! 足元からくるんだ! アームハンマーかまえとけ!」
 
女「コータス、シザリガー! メタグロスにだいもんじ! はたきおとす!」
 
女「ムクホークはヒヒダルマにインファイト! ドリュウズ! 合図したらつのドリル!」
 
ハンター「メタグロス、サイコキネシスで動き止めろ!」
 
メタグロス「メェッ……タッ」キィィィン
 
シザリガー「」ケロッ
 
シザリガー「シニサラッセャァ!!」バチコーン
 
メタグロス「※○△≦ッ!」
 
グライオン「……ぐらぁい?」ムクッ
 
ハンター「お前もはやくいけ!」
 
女「ドリュウズ、今!」 
 
ハンター「うおっ」
 
ヒヒダルマ「しゃお……」ボロッ
 
ムクホーク「」ガシッ
 
ドリュウズ「」ギュルルルルルル!!!
 

ばこんっ!!
 

ヒヒダルマ「だっ……るぅ……」バタッ
 
(連携して、つのドリルを当てにいった!)
 
ハンター「グソクムシャ…」
 
女「コータス、じわれ! オノノクスはサザンドラに! シザリガー、バンギラスにクラブハンマー!」
 ▼ 167 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/14 16:42:21 ID:cMixt.5s [8/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ハンター「メタグロス、オノノクスを……いや、シザリガーに、いやオノノクスにいけ!」
 
女「コータス、だいもんじ! ムクホーク! グソクムシャにブレイブバード!」
 
ハンター「サザンドラ! りゅうのはどうだ!」
 
女「ドリュウズ、バンギラスにアイアンヘッド! コータスそのまま燃して! シザリガーはハサミギロチン!」
 
ハンター「何してるグライオン! コータスを狙え! じしん!」
 
女「ドリュウズ、サザンドラをお願い、アイアンヘッド! ムクホーク、ブレバしたらそのままサザンドラにインファイト! シザリガー、はたきおとす! アクアジェットでグライオン叩いてそのままクラハン! オノノクス、ダブルチョップ!! コータス、サザンドラにストーンエッジ! ムクホーク! グライオンにすてみタックル! シザリガー、オノノクスに合流! ふたりともハサミギロチン! ドリュウズ! つのドリルし続けて! コータス、グライオンにだいもんじ! ムクホーク、離脱してメタグロスにインファイト!」
 
ハンター「……グライオンッ、サザンドラ……つばめがえし、じゃなくて、あくのはどう! メタグロスは……!」
 
(なんだ……なんだ……ッ?)
 
(何が起きてるんだ……???)
 
 
 
───どこからどう見ても手がつけられないくらいの乱戦。
 
ハンターも、そのポケモンも、状況に対応しきれなくなっている。
 
なのに、なんだ。
 
なんだ、あの少女は?
 
 
 
(指示が止まらない)
 
(ずっと、ずっと、指示をし続けている……?)
 
(こんなメチャクチャな状況で……この状況を、把握しているのか……?)
 
(いや、これは、もはや……) 
 

 
女「オノノクス、ダブルチョップ!」
 
オノノクス「」ドカッ、バキッ

グライオン「〜………」フラッ
 
 

ハンター「付き合いきれねぇ」ギリッ
 
ハンター「逃げるッ!!」ダッ
 

(あっ! モーターボートで逃げてしまう……!)
 
 
女「ポケモンを置いていくなんて……!」
 
ハンター「好きなだけバトルしていろっ!」
 ▼ 168 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/14 16:45:23 ID:cMixt.5s [9/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
───ハンターが飛び乗ったモーターボートは、まっすぐ飛び出す。



ハンター(補修の際邪魔だからとラティアスをゴンドラに残したままの上、レンタルのポケモンもおいてけぼり)
 
ハンター(8ヵ月粘ってこのザマとは、とんだ骨折り損だ)
 
ハンター(しかし、ここまでの騒ぎになっては、アルトマーレじゃもう仕事はできん。出るしかねぇ)
 
ハンター(さて、どこに高飛び……飛んで……)
 
ハンター「え………?」
 
 
 
───飛んでいた。

ボートもろとも、ふんわりと。
 
舟屋から飛び出したボートはそのまま、見えない何かに衝突してつんのめり、ひっくり返った。
 
勢いは止まず、ボートは宙を舞い───
 
ハンターはその際にボートから投げ出され、同じように飛んでいた。
 
永遠に続くかと思うほど減速した感覚で浮遊感をめいっぱいあじわったのち、ハンターとボートは向かいの舟屋までふっとび、石畳に叩きつけられた。
 
 
 
ハンター「がっ……」
 
ハンター(……………寒、い?????)
 
ラプラス「ぷらら……」プカプカ
 
 
 
女「……ふぅ」
 
女「時間稼ぎ、間に合った……」
 
女「ありがとう……ラプラス」
 
 
 
ジュンサー「水路の凍結、間に合ったのね」ホッ
 
おまわりさん「君、どうして……」

おまわりさん「署で、待機のはずじゃ……」
 
ジュンサー「彼女が強情でね……押し切られちゃったのよ」ヨッコラセッ

 
 


 ▼ 169 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/14 16:47:48 ID:cMixt.5s [10/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
───時間は少しさかのぼって。
 
ジュンサーを尻目に警察署を飛び出したものの、彼女は追いかけてきたジュンサーにあっさり捕まった。
 

 
ジュンサー「君が行って何になるっていうの! 警察に任せなさいっていってるでしょう!」 
 
女(やっぱり、逃げ切れないッ)
 
女(振り切ることができない以上、やっぱりこの人に協力してもらうしかない……けど)
 
女(何をするのに? どうやって?)
 

 
───ハンターの居場所の通報に、違和感を感じたものの、彼女はその理屈を説明できるほど、推測をまとめられていなかった。
 
辿り着くまでの道すがら考えよう、と思っていたが、こうなってはそうもいかない。
 

 
女(覚悟を決めなきゃ)
 
女(ここで、この人を納得させられるよう、考えをまとめる)
 
女(せめて、この人にとって一考の余地がある<激xルにしあげる!)
 
 
 
女「……さっきの通報の話、おかしいと思ったんです」
 
ジュンサー「おかしい?」
 
ジュンサー「わたしが嘘を言っている、とでも?」

女「違います、そうじゃなくて」
 
女「あのハンターは、とても慎重で、用意周到でした。私にストーキングがばれないように、自分はゴンドラ船頭になりきって、私が水路を離れたら、ドローンを使って死角から追跡するほどです」
 
女「事実、私は昨日まで、自分達が狙われていることに、まったく気づくことができませんでした」ギリッ
 
女「……だから、あんな通報があること自体がおかしい、と思ったんです」

女「私を水に沈めて、ラティアスを連れ去ったあの男が、浮かれて正体を露呈するなんて考えられません」

女「通りすがりの人がちらっと見ただけで怪しい≠ニ思うようなそぶりなんて、しないはずなんです」
 
ジュンサー「!」
 
ジュンサー「つまり、通報はハンターの自演、ということ?」
 
ジュンサー「目撃箇所を増やすことによって、突入してくるかもしれない戦力の分散を狙った……?」
 
ジュンサー「いえ、いえ。でも、違うわね」

女「」ドキッ
 
ジュンサー「それほどに用意周到ならば、そもそも警察が嗅ぎつける前に%ヲげようとするはず」
 ▼ 170 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/14 16:49:56 ID:cMixt.5s [11/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ジュンサー「わざわざ自分の居場所をしぼりこませるようなマネをするなんて、それこそありえないんじゃないかしら」

女「はい。だから、ハンターはそうせざるを得ないような状況になったんじゃないでしょうか」
 
女「警察が来るまでに逃げられそうにない、そんな状況に」
 
ジュンサー「それは少し、あなたの考えにとって都合がいい発想じゃないかしら」
 
女「はい、ですから、間違っている可能性もあります。ただその場合、そんなアクシデントもないハンターは、とっくに逃げているでしょうね」
 
ジュンサー「それは……あまり、考えたくない展開ね」
 
女「そして、同時にもっとひどい展開は、私の推測が現実のもので、戦力が分散した実動班が、ハンターと交戦することになってしまったら、ということです」
 
ジュンサー「実動班が、たかがハンターに負けるとでも?」
 
女「たかがじゃ、ありません。未知のポケモンと、メタグロスをつれたハンターです」
 
女「私の知らないそのポケモンは、シザリガーとオノノクスに痛手を負わせるほどのパワーと、タフさを持ち合わせていました」
 
ジュンサー「他にポケモンを持っていないかもしれない。分散しているとはいえ、実動班も数がいるわ」
 
ジュンサー「そもそも、たとえハンターにアクシデントが起きていなかったとして、それでも、わたしは私たちが遅れをとるとは思わない」
 
ジュンサー「彼らは間に合う」
 
ジュンサー「ラティアスを救い出す」
 
女「」
 
女(この人の思いは本物だ)
 
女(仲間を本当に信じてる)
 
女(自分の帰属する組織を、警察を信じてる)
 
女(私が私の仲間を信じているのと、おんなじように)



女「……私は、警察を疑っているわけじゃありません」
 
女「ハンターの手持ちがその2匹だけ、というのは、それこそ虫のいい展望ではないでしょうか」
 
女「もしも、メタグロスや、あの未知のポケモンのような、大型のポケモンをハンターが連れていたら」
 
ジュンサー「それでも、彼らは負けない」
 
女「分散した戦力で?」
 
ジュンサー「負け、ないわ」
 
女「……」
 
女(ごめんなさい)
 
女(今、この瞬間だけ、私はあなたを脅します)
 
女「少しだけでいいんです、考えてください」
 ▼ 171 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/14 16:54:01 ID:cMixt.5s [12/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ジュンサー「……」
 
女「あなたがここで、私を止めた場合の結末は3パターン」
 
女「1、警察の勝利。ハンターは捕まり、ラティアスも帰ってきて大団円」
 
女「2、警察の敗北。到着は間に合わず、ハンターに逃げられ、ラティアスが闇に消える」
 
女「3、警察の大敗北。戦力ダウンした状態でハンターと交戦したため、実動班も怪我人、ポケモンの負傷が出る」
 
ジュンサー「敗北のパターンを細かに挙げているだけね。あなたの推測ありきなところもあるわ」
 
ジュンサー「そんなに、わたしたちのことを信じられないのかしら」ムッ
 
女「そして、あなたが私とハンターの潜伏先に向かった場合のパターンも3つ」
 
女「1、警察の勝利。私たちの行動は無駄に終わる」
 
女「2、警察敗北。ハンターに逃げられ、警察に被害らしい被害は出ない。ラティアスは連れ去られる。私たちの行動は無駄に終わる」
 
女「3、警察大敗北──のところを、私たちが居合わせることによって軽減」
 
ジュンサー「……それは、つまり」
  
女「必要ならばジュンサーさんが応援を呼び、私たちふたりで、それが来るまでの時間稼ぎができる」
 
女「大方の結末に、私たちは必要ありません。徒労になるだけですし、こっそり帰ってくるだけ」
 
女「大人数を引き連れていけるほど、私の推測は確度の高い根拠を持っていません。徒労になった場合のリスクが大きいからです」
 
女「でも」
 
女「あなたひとりだけが付いてきてくれるという状況になったなら───私とジュンサーさんだけで、ハンターの元に行くことになったなら」
 
女「私たちの存在は、保険になるんです」
 
ジュンサー「!!」
 
ジュンサー「だとしても」
 
ジュンサー「私は仲間を信じる」
 
女「……ッ」ブルッ
 
女「……信じて行かない、のは、怠慢です」
 
ジュンサー「なんですって?」
 
女「私は、万が一の保険になるのなら、たとえ無駄だったとしても……行きます」フルフル
 
女「その無駄をしなかったばかりに、取り返しのつかない万が一が起きてしまったら、私は私を恨む」
 
女「信じることにかまけた、怠惰な自分を、一生恨む」

女「ジュンサーさんは、どうですか?」

ジュンサー「」タジッ
 
女「ジュンサーさんはそうなったら、しかたがなかった。こちらの手落ちだった≠チて」
 ▼ 172 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/14 16:55:52 ID:cMixt.5s [13/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女「納得するんですか」
 
女「自分の怠慢を、棚上げできますか?」
 
ジュンサー「……ッ」
 
ジュンサー(……嗚呼)
  
 
 
───彼女は気づいた。
 
この少女は、自分達を信用できない、と言っているのではない。
 
今、自分は真摯に問いかけられているのだ。
 
その選択をして、あなたは絶対に後悔しないのか?≠ニ。
 

 
ジュンサー(今、ここで立ち止まって、この子の言う万が一≠ェ起きたなら)
 
ジュンサー(わたしはきっと、この子を止めた自分を呪うだろうな)
 
  
 
女「お願いします、行かせてください」
 
女「もしこの推測がハズレだったなら、それはそれでいいんです。実動班のおまわりさんたちがハンターを捕まえていれば、それですべて解決なんです」
 
ジュンサー「……」

女「でも、もしそうならなかったら、それを考えたら、いても立ってもいられないんです」
 
女「お願いします」
 
女「私を行かせてください」
 
女「私ひとりで行かせられないならば、ジュンサーさんも一緒に来てください」
 
女「万が一の場合、すぐに応援を呼べるのは、ジュンサーさんにしかできません」
 
女「私が精一杯抵抗しても、きっと時間稼ぎが関の山だと思います」

女「だから、どうか……」ペコリ
 
女「行かせてください」
 
ジュンサー「……」フー










 ▼ 173 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/14 16:56:52 ID:cMixt.5s [14/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



ジュンサー「……3箇所、全部を回る気?」
 
女「いえ、その……」パタパタッ

女「まず、ここに行こうかと」
  
女「私は、ハンターがここにいるって考えています」ピトッ
 
ジュンサー「どうして?」
 
女「……………………………………………………………………………………」
 
女「───ごめんなさい」
 
女「これだけが、どうしても説明をつけられなくて」

女「ただ、間違いないって、思うんです」
 
女「ラティアスが、ここに、いる……って」

ジュンサー「」
 
ジュンサー「」ヤレヤレ
 
ジュンサー「わかったわ。行きましょう」

女「!!」
 
ジュンサー「警察の勝利を見届けに、ね」
 
女「ッ……ありがとうございます」ペコリ
 
ジュンサー「……おまわりさんは───正義の味方は、負けないんだから」スタスタ
 
 

 
───そうしてたどり着いた舟屋では。
 
警察が負けていた。

砂嵐が吹き荒れる廃屋で、おまわりさんは誰ひとりとして、立ち上がってはいなかった。 

目の前の事実に打ちのめされるも、絶望してはいられなかった。
 
隙をみて覗いた舟屋には、ゴンドラと並んでモーターボートがあった。
 
このままでは逃げられてしまう。
 
そう自分が頭を働かせ始めたとき、少女が口を開いた。
 
応援を呼んでほしい、私が先に時間を稼ぐ、と。
 
合点がいった。
 
彼女が時間稼ぎとなっている間に、自分が応援を呼べば、たとえ力及ばず敗北しても、続けて自分が出ていって時間を稼ぐことができる。
 ▼ 174 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/14 16:58:50 ID:cMixt.5s [15/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
だが、自分の中の矜持が、それを看過しなかった。
 
大人が───ましてやおまわりさんの自分が、子どもを囮にする、などと。
 
そのジュンサーにしかし、彼女は冷静に説明する。
 
一度負けた自分が、調子に乗った体で出ていけば、きっとハンターは油断するだろう、と。
 
ジュンサーさんが出ていけば、ハンターはすぐにでも逃げてしまうかもしれない、と。
 
しかし、と食い下がった自分に、少女はとっておきの策を告げた。
 
ラプラスのこおり技で水路を凍結させる、という策を。
 
その策が通ってしまえば、ハンターはもはや逃げることができなくなる。
 
ラプラスが頑張っている間はハンターの意識を自分から離させないよう立ち回る、と。
 
自分が手も足もでなくなったなら、そのとき、満を持して登場してください、と。
 
お願いされてしまった。
 
そしてその段取りを納得して、了承してしまった。

少女は砂嵐が晴れたタイミングを見計らって、舟屋に飛び込んでいった。
 
結局、自分に出番が回ってくることはなかった。
 
 
 
 
 
ジュンサー「遅くなって、ごめんなさい」
 
ジュンサー「みんな、来たわ」
 
 
 
───駆けつけたおまわりさんたちが、向かいの舟屋でのびているハンターの周りに集まっていく。
 
こちらの舟屋にも、別れていた実動班のメンバーが入ってきた。
 
サイレンの音がする。
 
じきに救急車も来るだろう。
 


ジュンサー(なさけない)
 
 
 
───事件解決、と安心してから真っ先に抱いたのは、その感情だった。
 
倒れ伏す仲間たちと、ひとり立ち向かう少女。
 
そして、終始舟屋の外から様子をうかがうだけだった自分。
 
今回の警察のはたらきなど、およそ誉められたようなものではない。
 ▼ 175 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/14 17:01:26 ID:cMixt.5s [16/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
悔しかった。
 
 
 
ジュンサー(あの時と、何ら変わりやしないじゃないか)



───自分がまだ学生だった頃、カントーのとある大手企業がポケモンマフィアに占拠される、という事件があった。
 
結果として、それが解決されたのは警察によってではなく、ひとりのポケモントレーナーの手によるものだったという。
 
あまつさえ、事態を警察が把握したのも、彼がその会社に単身で乗り込んだ後のことだったというから、当時はあきれたものだ。
 
国家の守り手が重篤な犯罪を察知できないどころか、ただのトレーナーに先を越され事件解決をかっさらわれるとは何事か、と。
 
その頃すでに警察官を目指していた彼女にとっては、決して、そんな甘い警察官になどなりはしない≠ニ息巻いたものだったのだが。
 
今のこの体たらくと言ったらどうだ。

旅のトレーナーが、自分たちよりもよっぽど実情を把握していて、事件を解決してしまう、などと。
 
当時、自分が見下していた、なさけない姿そのままではあるまいか。
 

 
ジュンサー(絶対、このままでなんてイヤ)
 
ジュンサー(必ず、絶対、頼れるおまわりさんになってやるんだから……)ギリッ



女「ラティアスっ!」ギギギッ
 
ラティアス「」グウ…スウ…
 
女「よかった……」ホッ
 

 
───ゴンドラの床下に、ラティアスは押し込まれるようにして横たえられていた。
 
オノノクスとひん曲げるようにして床板を開けたとき、すやすやと寝息を立てている姿を目にして、腰が抜けたようにへたりこんでしまった。
 
ラティアスはもちろん人間の姿ではなく、オリジナルの姿。
 
思えば、人の姿になっていないところを見るのは、これが初めてだった。
 
───ので、つい、見とれてしまった。
 
ガラス繊維のように透き通った毛並みと、ジェット機のような翼。
 
ポケモンでいながら、童女のそれを思わせるあどけない顔立ちで、細い腕には機能美を感じさせる独特の色気があった。
 


女(……何を血迷った考えをしてんだろ)


 ▼ 176 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/14 17:03:03 ID:cMixt.5s [17/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女「ラティアス、ラティアス」
 
ラティアス「」ノソリ
 
ラティアス「」パ チ パ チ
 
ラティアス「ひゅあん?」キョトン
 
女「ッ……!!」ブワッ
 
女「ラティアス!!」ダキッ
 
ラティアス「!?」
 
女「私……私ッ……ごめん、ごめんなさい……怖い思いさせて、ごめんね」
 
女「助けられて、よかった……」フルフル
 
ラティアス「」
 
ラティアス「〜……」ギュッ
 
女(よかった……)
 
女「よかった……」ギュッ
 
女(……ありがとう、おにいさん)
 

 
───そんな風に、自分を諦めないで───
 
 

女(そう言ってくれたあなたのおかげで、私は、この子を救うことができました)
 
女(あなたの言葉が、私の救いになりました)
 
女(これで、少しは、私も……)
 
女「ラティアス、あのね、私、あなたさえよければ……」



───閉じていた目を開いて、その視線の先にあったのは。
 
羽根の折れたドローンだった。
 
 
 
女(これ……ハンターが私たちを監視するのに使っていたやつか)
 
女(ブロック型のカメラユニットの上部に2層式プロペラがひとつ、下部に歩行用の足が2対……)
 
女「……」クワ
 
女「」バ
 ▼ 177 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/14 17:05:04 ID:cMixt.5s [18/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 

 
───思わず見ていたのは、水路をはさんで向かい。

さほど離れていない、ハンターの飛び込んだ舟屋だ。
 
ちょうど、おまわりさん達に肩を支えられて、ハンターは力なく歩いていこうとしているところだった。
 

 
ハンター「」ボソボソッ
 
女「……ッ」ゾワッ
 
女(今、なんて、言った……?)
 

 
───ぐったりとして、足取りもおぼつかないようだったが、朦朧とした意識で悪態をついたようだった。
 
ハンターは、こう言っているように見えた。
 
「ボートが壊れてなけりゃ、すぐに逃げられたのに」
 
と。
 
 
 
女「ありえない」
 

 
───アクシデントはどうやら本当にあったらしい。
 
ジュンサーにそう説明していたものの、すでに彼女は、その線は薄い、と思っていた。
 
やはり、ンターの慎重さ、用意周到さが、どうにも焼き付いていたからだ。
 
だから、あれほど慎重に徹していたハンターが、モーターボートのトラブルで逃げ遅れた、という事実に直面して。
 
ありえない、とつぶやいていた。
 
 
 
女(このドローン)バッ
 
女(見覚えがない……いや、違う、そうじゃない)
 
女(私が見ていたドローンは?)
 
女(そうだ、最初私は、あれを隣室のおにいさんのドローンの調整が進んでいるもの、と思った)
 
女(ハンターの襲撃から、それが勘違いで、あのドローンこそがハンターの斥候なんだと思った) 

女(でも、違った)
 
女(じゃあ、あのドローンは何? どう考えても、こちらを見ていた)
 ▼ 178 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/14 17:17:56 ID:cMixt.5s [19/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女(そもそも、モーターボートのトラブルはなぜ起こった。ハンターの不備じゃなければ何だ?)
 
女(何が起こした?)
 
女「そうだ、ハンターの潜伏先の通報も、まさか、別の?」ボソッ
 
女(別の───誰≠ゥが?)
 
女「!!!!!」ハッ
 
ラティアス「ひゅうん?」
 
女「ジュ、ジュンサーさん……ジュンサーさん!!」バッ
 
ジュンサー「?」クルッ
 
 
 
───もしかして≠ェ具体的な像を結んだその瞬間、彼女はここまで同行のジュンサーの名を叫んでいた。
 
そして、ジュンサーが振り向いたタイミングはちょうど、最後のパトカーが走り去っていったところだった。
 
 
 
───新たに浮かび上がってきた推測を話すと、ジュンサーは二つ返事で同行を承諾してくれた。
 
少し前に語った万が一≠ェ現実になった、という事実が効を奏したのかもしれない。
 
誰が、の見当がついて。
 
何のために、の見当はついていない。
 
だから、思いつく限りで最悪の展開に焦点を当てて、この結論に達した。
 
気分は最悪だった。
 
この結論が当たりだったら、もう一刻の猶予もない。
 
つまり、応援を呼んでいるひまはないし。
 
そして、なによりも、心の中でその結論を信じたくない、と叫ぶ自分自身の声が、延々と反響していたからだ。
 
ラティアスに道案内を頼み、一行は急ぎ向かった。
 
あの、秘密の庭に。














 ▼ 179 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/15 17:32:18 ID:WqZ3P8xk [1/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ラティアス「ひゅあん」
 
女「───はっ」
 
ジュンサー「あっ、出た……」
 
ジュンサー「!! あの噴水のところ!」
 
女「ッ………………そん、な」
 
女(どうか、どうか、間違っていてと何度も思った……なのに、なんで)
 
女「どうして……」
 
女「なんで……っ」
 
女「どうして、ですか……ッ」
 
女「なんで、こんなところにいるんですかッ!?」
 
 
 
「あなたこそ、なんで……ここにいるのかしら?」
 

 
───この6日間、この人と顔を合わせない日はなかった。
 
宿・ペリッパーのクチバシにチェックインしたとき、初めて会ったのが彼女だった。
 
食事の時間には必ず、料理を並べる手伝いをしていた。
 
つい昨日には、宿の廊下で正面衝突をした。
 
仕事の合間に交わしたわずかなやりとりの中で、変な人だ、と思いはしたものの。
 
そんな感情をさておいて、彼女をきっと好い人なんだろう≠ニ信じたかった自分がいたのだ。
 
だから、ここにいるのが予想していた通りだったとしても、その顔を見た瞬間なぜ≠ニ問いかけずにはいられなかった。
 
噴水の脇の影はふたつ。
 
影のひとつ、本来であれば、守り神の1柱とされるそのポケモン───尋常ならざる雰囲気をかもしだす、敵意に満ち満ちたラティオスに寄り添っていたのは、宿で働いていた女だった。
 
 

おねえさん「おかしいなぁ。なんで来ちゃったのかしら?」

おねえさん「ねぇー」
 
ラティオス「」ギンッ
 
女「」タジッ
 
女「……ハンターの居場所を通報して、時間稼ぎをしたかったのは、ほかならぬあなただったんですね」キッ
 
女「警察とハンターがすったもんだしてるうちに、ことを済ませようとした」
 
おねえさん「はぁい。せいかーい」スッ
 ▼ 180 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/15 17:34:30 ID:WqZ3P8xk [2/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ジュンサー「……宝石?」
 
女「こころのしずく=c…ッ」
 

 
───以前ここに来たとき、庭を散策した彼女は、それを見つけていた。
 
水がたたえられた深い杯の中、細身の陶器にはめこまれるようにして、宝石は鎮座していた。
 
あの気ままなラティアスが、神妙な表情で見つめていたこともあり、直感的にただの宝石ではない、と察して、その時はそれ以上近付かなかった。
 
だが、その事はどうしても気になってしまっていて、病院にいたとき訪ねてきた庭園の管理人を名乗るボンゴレ氏に、彼女は思わず訊ねてしまっていた。
 
あれはいったい何なのか。
 
 
 
ボンゴレ『あれは元々、はるか昔に、我らの先祖が守り神から授かったもの』
 
ボンゴレ『その内に、大きな力を秘めている。使い方を誤れば身を滅ぼす、非常に強大な力を』
 
ボンゴレ『我々一族は、先祖代々守り続けてきたが、数年前に、こころのしずくは失われてしまった』
 
ボンゴレ『今あるこころのしずくは、その時に起きた災いからアルトマーレを守り、命を散らしたとあるラティオスに授かったものだ』
 
ボンゴレ『その成り立ちゆえに、今は我々一族だけでなく、あらゆるラティオス、ラティアスが、大事に守っている』
 
ボンゴレ『以来、庭には守り神を伴っていなければ人間は入れなくなったほどだ』
 
 
 
───セキュリティレベルが上がった、という話だったが、まさか。
 
侵入者がそれをクリアしているとは。
 
しかも、こころのしずくをもう手に入れてしまっている。
 
しかし、それをさておいて何よりも、気になっていたことがあった。
 
 
 
女「私たちを、ドローンで監視していましたね」
 
おねえさん「ええ。時々ね?」
 
女「……あの人≠ヘ、今作っているものは完成までもう少しかかるって言っていました」

女「でも、私を監視していたドローンは、間違いなくあの人のものでした」
 
女「あなたが使っていたドローンは」
 
女「紛失した完成品=v
 
女「なくしたんじゃない……あなたが盗んだんだ」キッ
 
おねえさん「まぁ……そんなことまで気付いちゃったのねぇ」
 
女「ハンターをダシにしての時間稼ぎをかんがみるに、半年間の潜伏で手を回していたのは、それだけじゃない」
 ▼ 181 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/15 17:36:49 ID:WqZ3P8xk [3/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女「ハンターの潜伏先や移動手段、ストーキングの方法も、あなたは全部把握してたんじゃないですか?」
 
おねえさん「……」ニコニコ

女(この沈黙は肯定だ)
 
女「どうして、こんなことを?」
 
女「宿屋さんの信頼も、あの人の思いも踏みにじるようなことをして、ラティアスや警察の人を危険な目に遭わせて」
 
女「そこまでして、こころのしずくが欲しかったんですか?」

おねえさん「えぇ、そうよ」
 
女「」アゼン
 
おねえさん「そのためにぃ、アルトマーレくんだりに来たんだもの」
 
おねえさん「今更、そんなことでやめられるわけないでしょう?」
 
女「そんなこと=c…ッ?」ギリッ
 
女「あなたは知ってたはずだ」
 
女「あの人たちの思いも、それがどれだけ深いかも……ッ」

女「そんな大事な思いを踏みにじるようなことをして……なんとも思わないんですかッ?」
 
おねえさん「別にぃ?」
 
おねえさん「だって、私にとってはあたりまえのことだもの」
 
おねえさん「差し出される善意も、捧げられる好意も、私にとっては当然のものだもの」
 
おねえさん「富豪の娘が引き出しを開けたら、お金が入っているようなものよ」
 
おねえさん「使い減りしないお金なら、使えるだけ使うでしょう?」 
 
女「自制心はないんですか?」
 
おねえさん「自制心はあるわ」
 
おねえさん「利かせる必要がないだけ。無くて困ったことぉ、ないんですもの」フフッ
 
女「!!」プッツーン

女「……あなたがそうやって、おやつ感覚で他人の思いを食い物にしているのは、よくわかりました」
 
おねえさん「」フーム
 
女「なんでこんなことをしているのかなんて知らない」
 
女「知ったことじゃない」
  
女「あなたの自分勝手で、色んな人が、負う必要のない傷を負った」

女「その人たちの前に、あなたを引きずり出す」キッ
 
女「まず、こころのしずくを、返してもらう」
 ▼ 182 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/15 17:38:08 ID:WqZ3P8xk [4/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
おねえさん「はぁい、どーぞ」ホイッ
 
ラティオス「」パシッ
 
女「!?」
 
ラティオス「フオォォン……」ミチッ
 
おねえさん「悪いけど、あなた達につきあってるほど、ひまじゃないのよねぇ」
 
女「!!」ポポポポポポン!
 
ジュンサー「ガラガラ!」ポン!
 
ラティアス「ひゅあぁん!」キッ
 
おねえさん「まぁ、壮観ですねぇ」
 
おねえさん「でも、この子はとーっても強いのよ?」
 
おねえさん「そしてぇ、こころのしずくも手に入れた」
 
女「!」
 
女(こころのしずくは、強大な力を秘めている=c…!)
 
おねえさん「ラティオスの中でも、この子はキワモノよ」
 
おねえさん「強さだけを追求し続けて、勝利に渇望し続けて、闘争の中に身を置き続けた」
 
おねえさん「そしてこの子は今ぁ……無敵」ウットリ
 
ラティオス「!」ゴオッ
 
ジュンサー「ガラガラ!」
 

 
───ざわり、と背筋の凍るような風が駆け抜けた、と思った瞬間、ジュンサーの金切り声が聞こえた。
 
そして、膝を折るガラガラの姿が目に入った。
 

 
女「ムクホーク!」バッ
 
ムクホーク「ケーーーンッ!!!」バサッ
 
女(何≠されたのか、まったくわからなかった!)
 
女「コータス、あくび! ラプラス、れいとうビーム!」
 
コータス「ふわぁ…」
 
ラプラス「らぁぷ、らっ!!」キィィインッ
 
ラティオス「ーッ!」ゴォォッ
 
女(かすりもしない!)
 ▼ 183 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/15 17:39:14 ID:WqZ3P8xk [5/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
おねえさん「受けてあげるわけないじゃない、そんなもの」フフッ
 
女「コータス、ラプラス、引き続き狙って!」
 
女(ムクホークは……)
 

 
ムクホーク「───ッ」ビュオオオオ 

ラティオス「」ゴォォッ
 
ラティオス「」フッ
 
ラティオス「!」ボッ
 

 
───ムクホークは懸命に追いすがるが、ラティオスはさらに加速。
 
みるみる離されていく。
 


ジュンサー「雲を───引いてる」
 

 
ムクホーク「」キッ
 
ムクホーク「!!」バォッ
 
ラティオス「」ニイッ
 
 
 
女「ムクホーク! ダメ!」
 

 
───ブレイブバードをまとい、スピードを高めたムクホークを見た瞬間、ラティオスは反転。
 
恐ろしいブレーキングを見せながら両腕にオーラをまとう。
 
 
 
女「ドラゴンクロー──」
 
 
 
───すさまじい相対速度に乗せて、ラティオスはムクホークを撃ち据えた。
 
 
 
女「ムクホーク!!」
 
 
 
ムクホーク「───」
 ▼ 184 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/15 17:41:00 ID:WqZ3P8xk [6/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ラティアス「!!」ヒュゥッ
 
 
ばさり。
 
 
───きりもみしながら落ちてくるムクホークをキャッチしたのは、ラティアスだった。
 
 

女「」ホッ

ジュンサー「来るわよ!!」
 
女「ラティアス、りゅうのいぶきお願い!」
 

ラティアス「ひゅああああ───」ボボボボボ
 
ラティオス「」チッ
 
ラティオス「」アトズサリ
 
女「コータス、ストーンエッジ! ラプラス、れいとうビーム!」
 
ラティオス「ーッ!」スカッ、スカッ
 
 
ラティアス「」フワリ
 
ムクホーク「ぴぃ……ぴるる……」
 
ラティアス「ひゅうあん」コクン
 
女「ムクホーク、よかった……」
 
女(ハンターとのバトルで、ムクホークには遊撃手をやってもらっていた)
 
女(その分、スリップダメージも技の反動も多かった。みんなと比べ物にならないくらいに消耗してる)
 
女「休んでて」ダキッ
 
ムクホーク「……ぴぃ」
 

コータス「こぉっ」ガキンッ
 
ラティアス「」ボボボボボ
 
ラプラス「ぷらぁああッ」ビィィィィ
 
女(速い上に位置も高いから当たらない)

女(そして、こちらの間隙にそのスピードで接近、すれ違いざまにドラゴンクロー)
 
女(速さが乗ってるぶん、重い)
 
コータス「……っぐ」ギギギギッ

女「コータス!?」
 ▼ 185 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/15 17:42:06 ID:WqZ3P8xk [7/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
コータス「〜……!」ブンブンッ
 
コータス「こぉ」キッ
 
女「攻撃されたの!?」
 
女(そうか、エスパータイプ)
 
女(余裕を与えたら、距離があってもサイコキネシスで攻撃してくる)
 
女(それも重い。こころのしずくの力か……)
 
女(足を止めつつ、距離も詰めるなんて、私の手持ちじゃ誰もできない)
 
女「ドリュウズ、穴! 掘れる限り掘って!」
 
女「ラティアス。りゅうのいぶき続けて! ラティオス、結構イヤそうにしてる」
 
ジュンサー(あのラティオスと、なんとか渡り合っている)
 
ジュンサー(ハンターとのバトルといい、大したプレイメーカーだわ)
 
ガラガラ「ガゥラッ……」
 
ジュンサー「待ちなさい。もう少し、もう少しよ」ボソッ
 
ジュンサー(それにしても、あの女)
 
ジュンサー(ラティオスだけ戦わせて、自分は指示もなにもしていない)
 
ジュンサー(不気味ね……)


 
ラティオス「」キッ
 
ラプラス「くぅん……っ」ギギギギッ
 
ラティアス「ひゅあぁん!」ボボボボ
 
ラティオス「」バッ
 
ラティオス「しゅ、わーん!!」ギュンッ
 
 
女「なんで……」
 
女「なんで……!」
 
 
ラティオス「!!!」ニィッ
 
 
女「楽しそうにしてるんだ……ッ?」

女「」ハッ
 
女(学芸員のお兄さんが言ってた、危険な守り神のうわさ……!)
 
女(このラティオスのこと!?)
 ▼ 186 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/15 17:43:06 ID:WqZ3P8xk [8/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ドリュウズ「リュウズ!」ボコン
 
女(終わった!)
 
女「ありがとう」
 
女「」チラッ
 
コータス「」チラッ
 
オノノクス「」コクン



ラティオス「!!」ゴオッ
 

女「来た!」
 
女「コータス!」
 
ドリュウズ「どりゅっりゅっ……」オタオタ
 
コータス「〜…!!」プクゥゥ
 
女「だいもんじ!!」
 
コータス「こおおおおおお!!」 ボオオオオオオオ!!
 
 

ラティオス「!?」
 
 
 
───コータスが足元に向かって業火を吐いた、と思った直後。
 
シザリガーめがけ飛来していたラティオスの周囲の足元から、無数の火柱が上がった。
 
こうかはいまひとつ、とはいえ、突然のことにたじろぐラティオス。
 
 
 
おねえさん「ドリュウズの掘った穴……かぁ」スッ
 

 
───そして、火柱の向こうから顔を出したのは、オノノクスだった。
 
両手は手刀で、上段と中段にかまえている。
 

 
女(誘い込み、成功───から)
 
女「ダブルチョップ!───」
 
オノノクス「バオォン!!」
 
おねえさん「ふいうち」
 ▼ 187 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/15 17:45:06 ID:WqZ3P8xk [9/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
レパルダス「みゃあ、んっ!!」ガッ
 
オノノクス「ォオン!?」グラッ
 


───いつの間に繰り出されていたのか。
 
絶好のタイミング、とラティオスに飛びかかったオノノクスの不意をつき、レパルダスが横っ面を跳ね飛ばしていた。
 
体勢を崩されたオノノクスの二段攻撃は、1発がかするのみとなってしまった。


 
おねえさん「」ニィ
 
女「りゅうのはどう」
 
 
 
───難を逃れた、と一息ついたラティオスの横っ面を、不意の一撃が襲う。
 
たたらをふみながら、憎々しげに視線をやった先にいたのは、ラティアスだった。
 
 

ジュンサー(良いの入った!)
 
女(私の手持ちじゃ、ひとりでこんなラティオスを相手取れるのなんていない)
 
女(でも、みんなで連携すれば、なんとかできる!)
 
 
ラティオス「ッ…!!!!」ビキビキ
 
 
おねえさん「あーあ、怒らせちゃったぁ」ニヤニヤ

 
ラティオス「しゅっ」アーン

ラティオス「ワァォォォン!!!」ボンッ
 
 
ジュンサー「空に向かって……何か」
 
女「吐き、出した……」
 
 

───発射された光体はしゅるるる、と空を昇っていき。
 
花火のように弾けた。
 
 
 
女「りゅう……せいぐん!!!」ハッ
 
女「みんな! 逃げて───」
 ▼ 188 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/15 17:50:04 ID:WqZ3P8xk [10/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
どどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどζどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどとどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどぞどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどど!!!!!!!!!
 ▼ 189 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/15 17:51:21 ID:WqZ3P8xk [11/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
───りゅうせいぐんが降り注ぐ直前、彼女は何者かに掴まれ、後ろに引き倒された。
 
ころぶ、と衝撃を覚悟したが、彼女は思っていたよりもすべるように落下して、見覚えのない暗所で止まった。
 

 
女「熱ちっ……アチチチ」ワタワタ
 
女(ドリュウズの掘った穴……じゃあっ)
 
ドリュウズ「りゅう」
 
ラティアス「ひゅぅん……」
 
女「みんなは!?」
 
ドリュウズ「」フリフリ
 
 
 
───ムクホークは、穴に引き込まれる前から抱きかかえていた。
 
じっとしてくれている。
  
 
 
女「私と、君たちだけ……」
 
ドドドドド………
 
女(今まさに、りゅうせいぐんが降り注いでるのか)
 
女(みんな、どうか……私たちと同じように、逃げ延びていて)
 

 
────地面越しに伝わってくる断続的な衝撃。
 
みんなが逃げおおせている、と信じたい。
 
しかし、コータスやラプラスは機敏には動けない。
 
ジュンサーさんとガラガラも無事だろうか。
 
それを思うと気が気でなく、はやく、はやく終わってくれ、とじれったくてたまらなかった。
 
そのせいもあってか、りゅうせいぐんは永遠に続くかのように思われたが、実際の時間は10秒にも満たなかっただろう。
 
しかしそんなことを気に留めている余裕はなく、音が止むやいなや、彼女とドリュウズたちは穴を飛び出していた。
 
飛び出す、というよりは、這うように上がる、といった風合いになってしまったが。
 
 
 
女(こんの、ぐずな体ッ)
 
女「………出たっ」ガバッ
 
女「───」
 ▼ 190 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/15 17:52:32 ID:WqZ3P8xk [12/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
───周囲の様子を、と顔をあげて、彼女は絶句した。
 
目の前に、ラプラスが力なく横たわっていたからだ。
 

 
女「………ごめん」シュポン
 
女「 みんなは……」
 

 
───全員の状態確認は間もなく完了することとなる。
 
ジュンサーとガラガラが穴から顔を出し。
 
シザリガーも別の穴から顔を出し。
 
オノノクスは穴に入れなかったのか、地上で回避に専念していたようだ───満身創痍の体だが、なんとか立っている。
 
 
 

 
女「コータス───」
 
 
 
───きっと、動くことができなかったのだろう。
 
全身にりゅうせいぐんの衝撃を受けた痕跡があった。
 
立つのもやっとな状態で、しかし、か
のポケモンを見据えていた。
 
こころのしずく持つ、ラティオスを。
 
 
 
コータス「効いたよ……少しだけ、ねぇ……」ボソリ
 
女「負け惜しみ言ってる場合じゃないでしょ!!」
 

 
───ツッコミを入れて即、状況整理。
 
まだ戦闘可能なのはドリュウズとシザリガー、ラティアスだ。
 
コータスは言うまでもなく、オノノクス、ムクホークもせいぜいがあと一回殴りかかるのが関の山だろう。
 
ジュンサーとガラガラは何かを狙っている様子だが、なにせ手痛い初撃をもらってしまっている。
 
戦力に組み込んで考えるのは、やめておいた方がいいだろう。
 


女(タイプ相性的にも、シザリガーとドリュウズが対ラティオスの主軸になるのが現実的なライン……だけど)
 
女(ラティオスは飛行能力と機動性を生かしてヒット&アウェイで立ち回れる)
 ▼ 191 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/15 17:54:36 ID:WqZ3P8xk [13/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女(レパルダスも無視できない)
 
女「!」ハッ
 
女(いくらか機動力を確保できるシザリガーをラティアスと共同でラティオスに)
 
女(ドリュウズにはレパルダスを……いや)
 
女(機動力を確保できるからこそ、シザリガーにはレパルダスを……しかし、ドリュウズじゃ、ラティオスへの有効打がつのドリルの牽制くらいしか……)
 
女「………足り、ないッ」グッ
 
女(あとひとつ。あとひとつだけでいいんだ……何か、何か、何か……ッ!)
 
女(何か、もうひと押しになるものが、あれば───)
 
 
 
───あるよ。
 
 
 
女「!」
 
女「」クルッ
 
ラティアス「」
 
ラティアス「ひゅあぁん」コクン
 
女「………あるよ。やろう=H」
 
女「───そう、か」
 
 
 
───今、ラティアスとの間に感じている奇妙なつながり。
 
なぜ、ハンターの潜伏先3つの候補の中からひとつ、あの舟屋が本丸だ、と確信していたのか。
 
ここにラティアスがいる≠ニわかった理由。
 
きっと、そういうことだったのだ。
 
以前、プラターヌ博士からおみやげ代わりにもらったあの石。
 
自分には不要なものだと思ってその石をラティアスにあげたのは、実のところ、無意味ではなかった。

その行為は必要なことだったのだ。
 
コータスにお財布事情が絡んでいないみたい≠ニ言われた運命感はきっと、間違いではなかった。
 

 
女「そうだね。やろう、ラティアス」スッ
 
ラティアス「ひゅあああん!」キラーン
 
女「」バチバチバチッ
 ▼ 192 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/15 17:57:54 ID:WqZ3P8xk [14/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
おねえさん「!!」
 
おねえさん「させるわけないでしょう」
 
ラティオス「!!!」ゴォオッ
 
 
 
ジュンサー「今よ!!」
 
ガラガラ「ガッゥラァ!!」ブンッ
 
 
ガラガラは ふといホネをなげつけた!!
 
 
ラティオス「!!??!!」ガツンッ
 
ラティオス「しゅ、うぅ───」クラッ
 

 
おねえさん「レパルダス!」
 
レパルダス「ニャァオッ!」
 
ドリュウズ「ドッ、リュウズ!!」ズドン
 
レパルダス「ニ゙ャ゙オ゙ッ゙」ガツン

おねえさん「ッ、ラティオス!」
 
 
 
 
 
 
女「メガシンカ」
 
 

ラティアス「───」バォォォォン!!
 

 
Mラティアス「ヒュオォーーン!!」
 
 
 
ラティオス「シュオーッ!」
 
ジュンサー(ラティアスが、メガシンカした……)
 
 
 
女「ありがとう」
 

 
女「ラティアス───ラティオスをお願い」
 ▼ 193 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/15 18:00:01 ID:WqZ3P8xk [15/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
Mラティアス「ひゅおおん!」ボボボボボ
 
ラティオス「!!」ボオッ
 

 
───ラティアスの放ったりゅうのいぶきを紙一重でかわし、ドラゴンクローで斬りかかるラティオスだったが。
 
ラティアスは回避行動をとったラティオスに対応し、りゅうのいぶきの射線を変更。
 
回避の動きそのままにりゅうのいぶきに煽られ、ラティオスは押し戻されることになった。
 
 
 
ラティオス「しゅおお……ッ!」
 
ラティオス「おおおん!!」ドォォオ
 
 
 
───苦々しい表情でラティアスをにらみつけ、りゅうのはどうを放つラティオス。
 

 
女「りゅうのはどう」
 
Mラティアス「ひゅおおん!」ドォォォォ
 
 
 
───相撃つりゅうのはどうはぶつかりあい、意外にも、そのまま拮抗状態となった。
 
 
 
女(そうか、りゅうせいぐんの反動で、ラティオスは消耗してる)

 
 
───それに気づいて思い返してみれば、火柱への誘い込みや、れいとうビームやストーンエッジ、デバフ狙いのあくびといった弾幕の回避と、ラティオスにとってこの戦闘での緊張感はただならぬものだったはずだ。
 
スリップダメージも負っているだろうし、先ほどガラガラのなげつける≠ナ痛烈な一撃ももらってしまっている。
 
こころのしずくの火力補填があるとはいえ多勢に無勢、長期戦になればなるほど苦しくなるのはあちらの方だ。
 

 
 
女(おねえさんだって、一刻もはやく私たちを追い払って、この場を去りたいはず)

女(想定以上に私たちが食い下がっていることが、あちらにとって苦しいのなら)
 
女(やっぱり、今がチャンスだ)
 
女(ラティアスひとりでラティオスの対応は追い付く……それならば)
 
女「シザリガー、ドリュウズと一緒に、レパルダスを相手して」
 
女「ラティアスに近づけさせないで」

女「ラティオスは、ラティアスだけでじゅうぶん」
 ▼ 194 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/15 18:01:43 ID:WqZ3P8xk [16/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ラティオス「」プッツーン
 
ラティオス「しゅおぉぉおおん!!」
 

 
───この俺を、そいつひとりでじゅうぶん、だと?
 
雄叫びを上げ、りゅうせいぐんの構えを取るラティオスの姿に、その激情が見えた気がした。
 
こんなにもあっさりと乗ってくれるのなら、声を大にして挑発した意味もあったというものだ。
 
 
 
女「りゅうの───」
 
Mラティアス「ひゅおん!」ボボボボボ
 
 
 
───いぶき。
 
隙だらけになっていたラティオスはもろにそれを浴びて、しびれた。
 
しびれて、体が動きにくくなった。
 
それでも、意地で動いたか、ラティオスはその体勢を維持。
 
ただ眼前の敵───ラティアスだけに向けて、もてうる限りの全力で、りゅうせいぐんを放った。
 
 
 
女「りゅうの───」
 
Mラティアス「ひゅおおおおおん!!」ドォォォォオオオオ!!
 
 
 
───自分だけに向けられたりゅうせいぐんに対し、りゅうのはどうで迎え撃つラティアス。
 
辛うじて拮抗するもしかし、ぼろり、ぼろり、と、りゅうのはどうは勢いを殺され、少しずつ押し負けていく。
 

 
ラティオス「!!」ニィッ
 
Mラティアス「〜…ッ」
 
女「───強い」
 
 
 
───こんなに消耗して、麻痺で身体中言うことを聞かないはずなのに、それでもなお、これほどの大技で、こちらを圧倒してくるとは。
 
あの女が語った、ラティオスの強さへの執着≠ェ見せたきらめきは、どこか壮麗ですらあった。
 
ラティアスが押し負ける。
 ▼ 195 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/15 18:03:06 ID:WqZ3P8xk [17/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女「ラティアスだけじゃ───やっぱり、あなたには勝てない」
 
 
 
───悔しいが、悔しくてたまらないが、メガシンカしたところで、対応はできても超越することはできない。
 
ラティアスはそもそもバトルをするようなタイプではないからだ。
 
メガシンカの力がどれほどのものかはわからないが、実戦経験の差を完全に埋められるほど、虫のいいものではあるまい。
 
自分が掴んだ運命の巡り合わせ、その奇跡はここまでだ。
 
ここまで、つないでくれた。
 
 
 
女「勝った、と思ったその瞬間が最大の隙」
 

 
オノノクス「バォオオオン!!」バッ
 
ラティオス「!?」ギョッ
 
女「ダブルチョップ」
 
オノノクス「───!!」ブンッ
 
 
 
しかし オノノクスの こうげきは  はずれた!!
 
 
 
女「な───!!」



ラティオス「ーッ!」キッ
 
オノノクス「ガオッ……オンッ……」ビキッ
 
ラティオス「」ボッ
 

 
───満身創痍のオノノクスは、ダブルチョップを振り抜いたそのまま、動くことができなかった。
 
もう、手足が言うことを聞かないのだ。
 
このダブルチョップは正真正銘、最後の一撃だった。
 
それを、はずしてしまった。
 
ラティアスはりゅうせいぐんで吹き飛ばされ。
 
ドリュウズとシザリガーはレパルダスの牽制に徹している。
 
オノノクスは、ラティオスのドラゴンクローを食らうのを、待つばかりとなってしまった。
 ▼ 196 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/15 18:04:31 ID:WqZ3P8xk [18/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女「オノノクス───」ダッ
 
女「ゔっ」ズテッ

 
 
───足がもつれて、ころんだ。
 
なんで、と思うも足に力が入らない。
 
絶対安静、と言われたにも関わらず病院を抜け出した、そのツケだった。
 
彼女の貧弱な体力の、ほんとうの限界だった。 
 
 
 
女(なんで、こんなっ……こんなことで……!!)
 
女「誰か、オノノクスを───ッ」
 
 
 
ラティオス「ぐぎゅぅっ」メキッ
 
コータス「つ───ッ!」
 

 
───のしかかるようにして、コータスがラティオスに衝突していた。
 

 
女「!?」
 
 
 
ジュンサー(だいもんじを撃った反作用で、自分の体を吹っ飛ばした!)
 
 

コータス「ふんばりきかないからさぁ」
 
コータス「ザリ君の真似しちゃった───」ヘヘッ
 
 

───コータスにぶつかられたラティオスは、身をよじるようにしてコータスを突き落とした。
 
真下の水路めがけて。
 
アルトマーレの街を縫うようにして延びている大小様々な水の通り道。
 
この秘密の庭においても、それは例に漏れず存在していたのだ。 
 
ざぱぁん、と、大きな音を立てて、コータスは水路に落ちた。

じゅう、という音と、コータスが落ちた場所から立ち上る猛烈な水蒸気を見た瞬間、心が凍りついた。
 
あの昇っていくしろいけむりが、彼の命そのもののような気がして。
 ▼ 197 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/15 18:05:34 ID:WqZ3P8xk [19/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女「───────ムクホーク!!」
 
 
 
ばさっ。
 
 
 
女「ッ!!!!」
 
女「ブレイブバード!!」
 

 
ムクホーク「ケーーーーーンッ!!」
 
ラティオス「ーーーーーッ!!!!!!」メキィイイッ
 
 
 
───乾坤一擲。
 
ムクホークの最後の一撃はラティオスに突き刺さり、ラティオスはムクホークに押し付けられるようにして、地に落ちた。
 
コータスの産んだ隙は、ラティオスを打倒するに至った。
 
 
 
女「───シザリガー!!!」
 
女「コータスを!!! 助けてッッッッ!!!!」
 
 

───もはや金切り声に近い叫びを聞くやいなや、シザリガーは水路にアクアジェットで飛び込んでいた。
 
ドリュウズはまだレパルダスと取っ組み合っている。
 
それを確認した瞬間、真っ先に動いたのはジュンサーだった。
 
噴水の縁にたたずんでいた女に駆け寄り、押し倒す。
 

 
ジュンサー「窃盗、および、ポケモンの違法捕獲幇助、および、公務執行妨害の容疑で、逮捕します」
 
おねえさん「……」ハァー
 
おねえさん「……そうよね」ボソリ










ざぱん。
 ▼ 198 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/15 18:06:41 ID:WqZ3P8xk [20/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
シザリガー「ざり……」
 
女「コータス!」

女「コータス! コータス! コータス!!!」ユサユサ
 
女「起きてよ!! ねぇ、コータス、コータス!!」
 
コータス「」
 
女「冷たっ……息は………あ」
 
女(して……ない……?)
 
女「コ、コータス……こんなとき、に、ふふざけるのやめてよ」フルフル
 
女「どうせ、私のこ、こと、おどかそそ、うとしてるん、で、ししょ?」ガタガタ
 
女「ほら、はやく、ポ、ポケモンセンター、いか、なきゃ……」ガサ、ゴソゴソ
 
女「モンスターボール、入っ……て?」カタカタ
 
女「い、今さら、嫌だ、なんて、言わっ、ないよね……?」
 
女「ハイパーボールに入りたい、って、言ったの……コータスじゃん、ほら……」コツン
 
女「入っ……てよ………」
 
 
 
 
「あのさぁ」
 
「僕はぁ、ハイパーボールなら入ってやってもいい≠チて言っただけなんだけどぉ」
 
「※※※※※ちゃんともあろうものが、まさか、忘れたの?」
 
 
オノノクス「!?」
 
シザリガー「!?」

ムクホーク「ッ……」
  
ラティアス「!!」
 
女「」ビクッ
 
女「コータス!?」
 
コータス「」
 
女「……えっ」
 
 
 
女「や、やっぱり、まだ、ちゃんと意識あるんじゃない。もう、ほら……ボール、入ってよ」ワナワナ
 
女「今すぐ、ポケモンセンターに連れていくから……ほら、はやく……ッ」
 ▼ 199 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/15 18:08:16 ID:WqZ3P8xk [21/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「おちつけよ」
 
「あと、もう無理」
 
 
 
女「」
 
 
 
「ひょっとしたら、君は、こうなったのは私のせい、とか考えるかもしんないから、先に言っとくねぇ」
 
「僕がこうなったのは、僕がこうなるような生き方をしたからだ」

女「そんな、こと───」
  
「君は、僕を助ける方を見送って、僕のタスキを掴む方を選んだね」
 
「僕、君がそうするって信じてたよ」
 
女「」ツゥ…

「君は、なりふりかまわないくらいでちょうどいいんだよ」

「君が、僕らのことを大事に思ってるのは、とっくにわかってるしさぁ」
 
「……遅かれ早かれ、僕は逝く予定だった」
 
「それが今日だったってだけだよ」
 
女「……」ポロポロ
 
「僕は、僕のやりたいようにやった」
 
「信じたいものを信じた」
 
「それだけだよ」
 
女「……でもッ、でも……!!」
 
「いひひ……だよなぁ……君は、それでも、って、考えてしまう」
 
「どうにもならなかった、と諦めることが、もうできない」
 
「やったぜ」ヘヘッ
 
女「何、笑ってんの……ッ」
 
ラティアス「……!」ハッ
 
「君たちは、気を抜くとすぅぐ、満足する。今はコレでいい、今はコレがあるから幸せ。ずっとこのままでいい───って」

「ずぅっと、このままでなんていられないし、今あるものはいつか無くなるものなのにさぁ」

「無くなってから気付くんじゃ、遅いのにねぇ」
 
「だからさぁ、君が1歩踏み出したのを見ることができたあとでよかったよ」

「これで、思い残すことなく逝くことができる」
 ▼ 200 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/15 18:09:55 ID:WqZ3P8xk [22/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女「待って……待ってよ、まだ……」
 
「それじゃ、ばいばーい」
 
「止まらないでねぇ」
 
 
 
───声が聞こえなくなると同時に。
 
コータスが消えていた。
 
目の前にいたのに。
 
ぐったりとして、力なく倒れていたはずなのに。
 
影も形もなかった。
 
まるで、最初から何もなかったかのように。
 

 

女「」
 
女「」カチッ
 
女「出てきてよ」カチッ
 
女「出てきて」カチッ
 
女「ボールに入っただけなんでしょ? ねぇ」カチッカチッ
 
女「コータス!!」カチッカチッカチッカチッ…
 
女「笑えないしタチが悪いよ、やめてよ!!」バッ
 
女「ねぇいるんでしょ!? いつもみたいににやにや笑ってるんでしょ!? ねぇコータス! コータス!!」ヨタッ

女「うっ」ズテッ
 
シザリガー「……おき。」スッ

女「………おかしいじゃん」
 
女「おかしいじゃん……なんで、なんで今なの……」
 
女「いつかなら、明日でいいじゃん!」

女「何で今日なの!?」
 
女「もっとあとでいいじゃん……ッ。これからなのにッ。これから……これからが楽しいのにッ!」

女「これからって時だったのに……なのに、コータスがいないんじゃ……」


 
───私は、コータス達と旅して、おいしいもの食べて、ちょっと物珍しいことにでも遭遇できれば充分なんで───

───それが幸せなので───
 ▼ 201 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/15 18:11:26 ID:WqZ3P8xk [23/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女「コータスがいないんじゃ、何をしたって、何に挑んだって……何を得たって……満たされないよ」ボロボロ
 
女「私は……みんなでいるから、幸せだったのに……ッ」
 
女「みんながいるから、頑張っていこうって……決められたのにッ……」グズグズ

オノノクス「オォン」ズッ
 
ムクホーク「ぴぃ」

ドリュウズ「……りゅうず」
 
女「わかってる……」
 
女「動かなきゃいけないのに、立たなきゃいけないのに、止まっちゃいけないのに……でも、ごめん、わからない、こわい」

女「動けないの……そのくせ、これ、止まらない……なんで、なんで……ごめん……助けて」ボタボタ
 
シザリガー「ざり」ヨッコラセ
 

 
ジュンサー「来なさい」
 
おねえさん「」フラッ
 
おねえさん「───あーあ」ボソリ
 
おねえさん「あなたたちのせいで、ぜぇ……んぶ、オシャカになっちゃった」ボソリ
 

 
───女の呟きは、静まり返った庭によく響いて。
 
シザリガーに掬い上げられた彼女の耳にも届いた。
 
 
 
女「───お前が」メラッ
 
ドリュウズ「」ビクッ
 
女「お前がそれを言うな……ッ」
 
女「ぜんぶ知ってて、知ってたくせに誰にも言わないで放っておいたから」

女「そのせいで、みんな、みんな───傷ついて」
 
女「コータスが───ッ」
 
女「自己中心で動いたお前が、自分の失敗を他人のせいにするなッ」
 
女「全部めちゃくちゃにするようなことばかりして、丸く収まるようになんてちっともしなかったくせに」



 
 
おねえさん「……欲しかったんだもの」
 ▼ 202 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/15 18:12:17 ID:WqZ3P8xk [24/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女「すぐに手に入っても、力がなければ奪われる」
 
おねえさん「一方的に奪われないで済むような、力が」
 
おねえさん「ラティオスなら、それを手に入れられるって、思ったんだもの」
 
女「そんなもの……ッ。あなたがもらった温情に比べたら───」
 
おねえさん「すぐに手に入るようなものなんて、いらない」
 
女「!!!!!!!」ブツン
 
女「───」ギリッ

女「───っ」ダラリ
  
女(この人は───救いようがない)
 
女(きっと、どんな風に言葉を尽くしても、情を傾けても、思いやりをわけても、この人は)
 
女(それを当たり前としか思うことができない)
 
女「───かわいそうな人」
 

 
───富豪の娘は金を惜しいとは思わない、と、あの女はそんなことを言っていたか。
 
金を持つものは、その価値が、その重みが、大切さがわからない。
 
実感することができない。
 
満たされている者にはわからぬ価値。
 
悲しいことだったが、目の前の人間はまさにそうだ。
 
他人の思いの尊さが、きっと実感できないのだ。
 
そんな事実を、彼女は苦虫のように噛みしめるばかりだった。
 
そして、一行は帰りゆく。
 
大いなる1歩を踏み出しつつも、取り返しのつかない影を、背中に落として。



 ▼ 203 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/15 18:13:00 ID:WqZ3P8xk [25/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



つづく。
 ▼ 204 ゴラス@バンジのみ 17/12/15 20:07:22 ID:iTVL.7Gs NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
……。
 ▼ 205 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/15 21:38:48 ID:WqZ3P8xk [26/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



───バイトの女は、半年ほど前からアルトマーレで潜伏を開始した。
 
こころのしずくを手に入れるために。
 
ラティオスを連れ立って、一度は秘密の庭に入り込むも、管理者であるボンゴレ氏に接触され、無計画での奪取は断念。
 
そもそも、女と協力関係になるより以前、ラティオスが身ひとつでこころのしずくを持ち出そうとした前科があったところも大きい。
 
彼らは、アルトマーレに来訪した時点で、庭の管理者と他の守り神───ラティアスやラティオスに目をつけられていたのだ。
 
加えて、公にはなっていないが、過去にアルトマーレで起きたラティオスがらみの大事件のこともあり、アルトマーレのおまわりさんたちは、こと守り神に関わる事件への意識が非常に高くなっていた。
 
そんな状況でノコノコこころのしずくを盗みにいけば、管理者と守り神にあっさりとマークされ、警察のお縄につくことになるのは明白だった。
 
だから、機会を待った。
 
入れ替わり立ち替わりでアルトマーレを出入りする守り神たちが一番少なくなるタイミングと。
 
警察が、ほかならぬ守り神の案件に集中し、それ以外が手薄になるタイミングとを。
 
運のいいことに、アルトマーレには守り神の密漁を狙うハンターが潜り込んでいた。
 
ラティオスを使ってハンターの注意を引き滞在を長引かせるとともに、宿の客から手に入れたドローンを使い、彼女は機をうかがった。
 
ラティオスのフラストレーションを、夜中にバトルさせることで騙し騙し発散させつつ、自分は普段、懸命に日々を生きるけなげな若者に徹しつつ。
 
こころのしずくを手に入れる絶好の機会を、待ち続けた。
 
そうして迎えたのが、あの日だったのだ。
 
女とラティオスは行動を起こしたが、しかし。
 
あと1歩のところで及ばず、こころのしずくをその手に収めることは叶わなかった。
 
他ならぬ、利用した少女に、自らの行動を看破されてしまったために。
 

 
ジュンサー「あなたがいなかったら、私たちはあの女の行動に気づくこともできず、悪魔の誕生を許してしまうところだった」
 
ジュンサー「あなたの尽力のおかげで、私たちは大事なものを取りこぼさずにすんだ」
 
ジュンサー「ありがとう」
 
ジュンサー「だから、どうか、自分を責めないで」
 
女「……はい」
 
 
 
───昏倒したラティオスからもぎ取るようにして、ムクホークはこころのしずくを握りしめていた。

それをあの水槽に戻し、最終的にはことなきを得た。
 
そのために、色々なものを代償にして。
 
ムクホーク、オノノクス、ラプラス、シザリガー、ドリュウズの入院と、彼女自身は再入院。
 ▼ 206 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/15 21:41:10 ID:WqZ3P8xk [27/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
病院をぬけ出したことをジュンサーにもジョーイにもこっぴどくしかられた。
 
また、ハンターとの戦いで半壊させた舟屋の土地所有者からは賠償請求が来て。
 
ラティオスとの戦いで地面が穴だらけの焼け野原になった、秘密の庭の補修工費の請求も来た。
 
その被害総額はざっと見積もっても3000万円を下らない、と言われ、彼女は本当に目玉が飛び出そうになった。
 
が、幸い、今回の事件の功労者、ということでそのほとんどが免除。
 
彼女に請求された額は20万円ほどに収まった。
 
ボンゴレ氏も働きかけてくれた結果のことらしい。
 
とはいえギリギリびんぼー生活を送っていた彼女にとって痛手に変わりなく、そういった保険に加入もしていなかったため、結局は借金を背負うこととなってしまった。
 
そしてなにより、コータスを死なせてしまったこと。
 
借金を背負おうが、入院しようが、悪魔に魂を売ろうが、たとえどんな代償を誰に支払ったとしても、それだけはどうしようもなかった。
 
どうしようもない喪失だった。
 
ハンターはレンタルしていたポケモンもろとも厳重に拘束されている。
 
こころのしずくを盗み損なった女は逮捕され、ラティオスも厳戒体勢で監視されている。

こころのしずくも元の場所に安置されている。
  
ラティアスは無事で、今も隣にいる。
 
しかして、懸命に動いて守り抜いたものと、その過程で取りこぼしてしまったものは、果たして釣り合うのか。
 
彼女にはわからなかった。
 
 
 
 
おくさん「たった一日で、いろんなことがあったんだね」

女「……はい」
 
 
 
───再入院した翌日のことだった。
 
宿の夫婦がお見舞いに来た。
 
ふたりは※※※※※とラティアスが無事であったことをまず、なによりも喜んだ。
 
彼女としても、それが嬉しい限りではあったが、気楽に構えてはいられなかった。

なにせ、ふたりの制止をふりきって、事件の渦中に身を投じたのだ。
  
ことのあらましを、ふたりに説明する必要があった。
 
心苦しかったが、コータスのことも、バイトの女性の正体についても、彼女は語った。
 
彼女の件は驚くにとどまるも、コータスの死に関しては、ふたりとも絶句して、安易に言葉を紡げないようだった。

 ▼ 207 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/15 21:42:45 ID:WqZ3P8xk [28/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
だんなさん「───少し、整理してくるから、待っていてほしい」
 
 
 
───話を終えたのち、そう言い残して、一度ふたりは部屋を出ていった。
 
なんとなく、だが。
 
この前電話で話したときのように、自分が打ち明けようとしていることも、うすうす察しているのではないか、という気がする。
 
 
 
女「?」
 
ラティアス「〜……?」
 

 
───ラティアスは今、自分の姿に化けている。
 
そして、不安げな表情でこちらを見やっていた。
 
 
 
女(コータスがいれば……)
 
女(……いや、これくらいわかるだろ)
 
女「心配してくれてるんだね」
 
女「ありがとう。でも、大丈夫」
 
女「ちゃんと言えるから」
 
 
 
───ふたりが戻ってきた。



だんなさん「待たせたね」
 
女「おかえりなさい」
 
おくさん「……あなたは、これからどうしようと思ってるの?」
 
 
 
───単刀直入。
 
ならば自分も、まっすぐ答えねばなるまい。
 
 
 
女「」スゥ
 


女「……私は、旅を続けたいです」
 ▼ 208 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/15 21:44:42 ID:WqZ3P8xk [29/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女「私はようやく、旅をしていることに意味を見いだせるかもしれないって思った」
 
女「だから、旅を続けたいって思っていました」
 
女「でも、少し、変わった」
 
女「……言われたんです」
 
女「止まるな≠チて」
 
女「だから、私は旅を続けなくちゃならない」
 
女「意味を、見つけなければいけないんです」

女「ふたりの子どもになるのが嫌だってわけじゃないんです」
 
女「ただ、私がそうしたい、そうしなければならないっていうだけ」
 
おくさん「……」
 
おくさん「そんな風に言葉にできるほど、あなたはもう割り切れているの?」
 
おくさん「気持ちに、整理をつけられたの?」
 
女「それは……」
 
おくさん「だってあなたは、コータスを失ったばかりなんだよ」
 
おくさん「大切なポケモンだったんでしょう?」
 
おくさん「旅を続けること、反対するつもりなんてないけど……」
 
おくさん「それは、今すぐじゃなきゃだめ?」
 
おくさん「気持ちに整理がつくまで、わたしたちと暮らしたっていいんじゃないかな?」
 
女「〜…ッ!」ギュウッ
 

 
───落ち着くまででもいいから、と。
 
その提言に、溢れんばかりの優しさに、ひどく心を揺さぶられた。

そうしたかった。
 
家族を得て、たったひとときでも、安住の地を得て───
 
止まって、しまいたかった。
 
 
 
女「」ジワ…
 
女「きっと、そうした方が、私は安寧を得られる、のだと、思います」
 
女「気持ちに整理をつけて、歩き出すことができる」

おくさん「だったら!」
 ▼ 209 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/15 21:46:06 ID:WqZ3P8xk [30/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
おくさん「だったら!」
 
女「でも……っ」
 
女「私は、強くないから……ッ」
 
女「弱い人間だから……ッ」
 
女「ふたりと暮らす中に、幸せを見いだして、ふたりのいる世界に、自分の行きたい道を見つけてしまう」
 
女「そちらに歩き出してしまうかもしれない」
 
女「旅に、出られなくなる」
 
だんなさん「……今の君にとって、それは、逃げになってしまうのかい?」

女「はい」
 
女「一度この足を止めてしまったらきっと、私はもう、こちらに戻ってこられない」
 
女「コータスを裏切ることになる」
 
女「それが、嫌なんです……ッ!!」


 
 
おくさん「………そっか」ツゥ…
 
だんなさん「それが、君の覚悟なんだな」
 
女「……はい」キッ
 
だんなさん「……」
 
だんなさん「なら、気のすむまで、好きにすればいい」
 
だんなさん「ぼくらは、それを応援する」
 
女「……え」
 
だんなさん「さーちゃん」
 
おくさん「───うん」グシグシ
 
おくさん「あなたはきっとそう言うだろうなって、思ってた」
 
だんなさん「気のすむまでやって、それでも動けなくなったら、帰ってくるんだよ」
 
女「……私を、待ってくれるんですか」
 
女「ふたりの好意を、裏切るような真似をしてるのに……」
 
だんなさん「当然だろ」

だんなさん「家族なんだから」
 
女「」
 
だんなさん「家族の形なんて、その数だけ個性がある」
 ▼ 210 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/15 21:47:21 ID:WqZ3P8xk [31/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
だんなさん「独身男性と犬1匹とふたご、なんてのもいれば」
 
だんなさん「年に数えるほどしか帰ってこない放蕩息子のいるご家庭だってある」
 
だんなさん「僕たちは血が繋がってなくて、手続きを保留にしてて、かわいい娘を旅に出してる家族」
 
だんなさん「それだけのことさ」ニッ
 

 
おくさん「がんばってね」ニッコリ
 
女「───」ウルッ
 
女「はい……っ」
 
ラティアス「〜…」
 
 
 
 


































 
 
───アルトマーレを立つ日が来た。

別に今日でなければならない理由はないのだが、この辺りで踏ん切りをつけよう、とそう決めていたのだ。
 ▼ 211 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/15 21:49:16 ID:WqZ3P8xk [32/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女「ポケナビも直ったからね」
 

 
───すっかり元通りになったポケナビには、新しい連絡先が増えていた。
 
ふたりの電話番号だ。
 
「何かあったら電話してね」
 
「何もなくても、電話してほしい」
 
と、もらったアドレス。
 
ページを切り替えれば、写真もある。
 
出掛け前、宿のみんなと撮った写真。
 
ギャンブラーとセーラー服のふたり、手を繋いだ照れくさそうなツーショット。
 
宿屋さんの少しくたびれた笑顔の写真。
 
家族3人で、並んで撮った写真。
 
そして、ポケモンたちも交えて撮った集合写真。
 


女(おとなりさんは、バイトさんのところに面会に行っていて、会うことができなかった)
 
女(あの人の思いが、彼女の心に響いたらいいな……)
 
 
 
───少しくらい希望があるのでは、と思ってしまうのだ。
 
自分とラティアスがハンターに襲われた日。
 
水没した自分を助けてくれたのは、恐らく彼女だ。
 
あのとき通りに人通りはなく、あのままだったら、誰に気づかれることもないまま、間違いなく自分は溺死していただろう。
 
しかしどういうわけか、目を覚ましたのは病院のベッドの上だった。
 
考えられるのはひとつ。
 
警察が守り神が連れ去られた事実≠把握していたことからも、あの女が通報していたのは間違いない。
 
おおかた、怪しい男が女の子を川に突き落とし、ラティアスを連れ去った≠ニ通報したのち、間を置いてからハンターの居場所についての通報をしたのだ。
 
そして、あの女からすれば突き落とされた女の子≠フ情報を明かす必要はこれっぽっちもない。
 
どんなに頭を捻っても、それを付け加えたことに、合理性を感じられないのだ。
 
そして、自分が彼女をただの変な人、と思いたかった何よりの理由。
 
それは、彼女が朝の、おとなりさんとのデートから戻ってきたときに浮かべていた笑顔。
 
喜びをこらえられない、という様子のあの笑顔が、演技とは思えないことに、ほかならなかった。
 ▼ 212 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/15 21:51:11 ID:WqZ3P8xk [33/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女(───そういえば、どうして、今までかたくなに写真を撮らなかったんだろう)
 
女(データがかさばるから、と言って、ポケナビでの写真撮影すら渋ってた)
 
女「!」
 
女「」ゴソゴソ
 
女「……あった」
 
 
 
───いつか撮った写真。
 
データではなく、フィルムカメラで撮影し、現像して出してもらったものだ。
 
その時の手持ちみんなと写っている。
 
もちろんそこには、コータスもいて、適当なことを考えてそうな、はたまた何も考えていなさそうな顔をしている。
 
実は、ここからも消えてはいまいか、と不安になって、慌てて探したのだが、そんなことはなかったようで、安心した。

 
 
 
女(撮っておいてよかった)
 
ラティアス「ひゅあぁん?」
 
女「前に撮った写真なんだ」
 
女「……もっと、ちゃんと撮ればよかったな」ポツリ
 


───コータスが消えたことによって起きたイレギュラーがひとつ、あった。
 
他ならぬ、彼自身が入っていたハイパーボール。
 
それがまったく動かなくなったのだ。
 
開くことはおろか、パソコンのどうぐあずかりにも入れられず、投げても転がしてもうんともすんとも言わない。
 
システム上は、彼女のつれているポケモンは5匹と、正しい状態にはなっている。
 
つまるところ、持っていても何の意味もない、ハイパーボール型のストラップと化しているのだ。
 
 
 
女(コータス、わかっててやったのかな)



───たとえ旅路においては邪魔でしかない無用の長物であっても、それを手放すつもりはなかった。
 
もうすっかり、私は強欲なのだ。
 ▼ 213 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/15 21:52:39 ID:WqZ3P8xk [34/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女「」フゥ
 
ラティアス「……」
 

 
───大切そうに写真を手にしている彼女を見て、ラティアスは少し前に交わしたおしゃべりを思い出していた。
 
けんけんぱに夢中になっていた、あの日。
 
コータスとした、おしゃべり。
 
 
 
コータス『ゲームはさておき、運動がちょっとでも絡むとてんでダメなんだから……』ボソッ
 
ラティアス『でも、たのしそうだよ?』
 
コータス『そりゃそうだよぉ』
 
コータス『人間って新しいことに挑むときが一番楽しいもんだからねぇ』
 
コータス『……やっぱあの子もそうなんだな』

ラティアス『なんでそんなこと思うの? まるでそうじゃなかったみたいだね』
 
コータス『まぁねぇ。最近、ようやくマシになってきたんだ』

コータス『だってあの子は当たり前にいるこどもなんだからさぁ』
 
コータス『何するにも無感動じゃ、気持ちわるいよ』

コータス『それに、才能皆無でも練習すりゃ少しはマシになるからねぇ』
 
ラティアス『なかなかそうはならなかったんだ……よかったね』
 
コータス『無用な面倒をいっぱい負った分、より真っ当になってくれるなら万々歳だよ』
 
ラティアス『あなた達、みんな好き合ってるんだね。いいなぁ、しあわせね』フリフリ
 
コータス『……そりゃあね』

 
 
 
女「……ラティアス」
 
ラティアス「?」ハッ
 
女「私たちと一緒に来ない?」
 
ラティアス「」
 
ラティアス「」ニコッ
 
女「?」
 
ラティアス「」スッ
 
女「……あ、メガストーン」
 ▼ 214 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/15 21:54:28 ID:WqZ3P8xk [35/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ラティアス「〜…」ギュ
 
ラティアス「」パク、パク、パク、パク、パク

女「───よ、ろ、こ、ん、で」
 
ラティアス「」ダキッ
 
女「むぎゅう」
 
ラティアス「〜♪」スリスリ
 
女「あははっ」
 
女「ありがとう」ジワ
 
女「これからも、よろしくね」

女(アルトマーレ、こんなに長く居ることになるなんて思わなかったな) 
 
 
 
 
───色々なことがあった。
 
楽しいことも、恥ずかしいことも、嬉しいことも、悲しいことも。
 
自分が出来る限りのことをやったつもりではある。
 
最善を尽くして、真心を尽くして、そうしてここに立っている。
 
だとしても=B
 
納得のいっていないことがある。
 
整理のついていない気持ちがある。
 
もっとうまくやれたのではないか?と、問いかけてくる自分がいる。
 
だから、彼女は進むことにした。
 
止まらないで歩き続けよう、と決めた。
 
大事な恩人が───仲間が、死の間際に言い遺したのだ。
 
止まるな、と。
 
 
 
女(死にゆく者の遺す言葉は呪いにも等しい=j
 
女(でも、呪いだからってかまうもんか)
 
女(他の誰でもない、コータスの言葉なんだから)





 ▼ 215 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/15 21:56:12 ID:WqZ3P8xk [36/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告






 
女「───行こう」
 
ラティアス「〜?」
 
女「」クルッ
 
ラティアス「ひゅあぁん?」
 
女「そうしよっか」
 ▼ 216 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/15 21:57:25 ID:WqZ3P8xk [37/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



もう少しだけ続く。
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