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【クリスマスSS】ずっと同じ願い

 ▼ 1 滅の願い◆5oP7VYU6fg 17/12/25 16:29:23 ID:GxntVLys [1/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

─────────
始まりはあの日だ。
─────────
 ▼ 22 滅の願い◆5oP7VYU6fg 17/12/25 19:58:27 ID:GxntVLys [2/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

後から知ったのだが、その町ではその年、十才になった子どもにポケモンをプレゼントする伝統があると言う。

それが、私が捨てられたその日、クリスマスだった。


タダ「もう、大袈裟だって!」

ママ「だって、あなたがこんなに立派に……」

タダ「そんな大家さんみたいな」

ママ「忘れ物はない? 今日は待って明日の朝出ない? 夜になって誰かに襲われたりしたら……」

タダ「大丈夫よ! 私にはポケモンがいるから!」

ママ「私がポケモン貰いに行くのを遅れなければちゃんと朝に……」

タダ「もー! だから早くいかないとみんなと遅れちゃうよ!」

ママ「ごめんね……タダ」

「行ってらっしゃい」


タダ「うん! 行ってきまーす!」


タダ「……ふふっ、まだ手振ってる」

タダ「ねぇモクロー!」

モクロー「クロー?」


「よろしくね! これからはずっと一緒だよ!」
 ▼ 23 滅の願い◆5oP7VYU6fg 17/12/25 20:00:14 ID:GxntVLys [3/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


遅かった。

私が向かっていた丁度向かい側からタダは歩いてきた。新たな友達を連れて。


タダ「え……?」


今思えば、当然のものなのかもしれない。

だがその時の私にとって、信じられないと向けられた、その怪訝な視線は突き刺さるように痛かった。

ゆっくりと歩み寄るがそれに呼応するように後退り、首を横に振る。隣にいた丸いぬいぐるみのような生物が羽ばたき、私の前に立った。
 ▼ 24 滅の願い◆5oP7VYU6fg 17/12/25 20:00:42 ID:GxntVLys [4/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


今度はぬいぐるみではなく、生き物ポケモンだ。ポケモンはトレーナーの指示に従い、小さな体ながら強力な蹴りで私をつき倒した。

タダは飛んで戻ってきたポケモンを大事そうに抱え、方向転換して歩き始める。


待って、嫌だ。


ひどい呻き声をあげていた。
鋭い爪によって引き裂かれた口から綿が飛び出している。それは恐れられても仕方ないほどの醜い姿。
だが、それでも私は立ち上がり、地面を這っても少女の足にすがる。


タダ「やめてよ……来ないで!」
 ▼ 25 滅の願い◆5oP7VYU6fg 17/12/25 20:01:10 ID:GxntVLys [5/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

悲鳴を聴いて体が一瞬、止まった。


──── グルル!」

「ごめんなさい、やめて……来ないで!」

犬「グルァ!」

タダ「やだ!」ギュッ


キィィンッ!!!


犬「!?」

タダ「……?」

「あれ、居なくなった……?」

タダ「もしかして、ボーちゃんが助けてくれたの?」


── 「モクロー!!」

モクロー「クロ!!!」


重く踏みつけられ、地面に押し付けられる。

力が抜け、再び立ち上がる気力もなかった。


タダ「も、もう、着いてこないでよ……?」


念を押すように自らの靴で踏みつけ、歩いていく。
 ▼ 26 滅の願い◆5oP7VYU6fg 17/12/25 20:01:48 ID:GxntVLys [6/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


冷たい雪に伏せた灰色の捨て物。
体の中身が全部消えてしまったような喪失感が襲う。雪と見分けのつかない白のはらわたが散らばった道。


『やめてよ! 返してよ!』

『なんだこのぬいぐるみ、キモッ』

『いいじゃんか! わたしの!』


あぁ、そうか。
あの時、タダがこぼした涙の意味がわかった気がした。こう言う時に人間は“泣く”のだろう。


辛い。

タダを思うほどに、曖昧だった記憶が、鮮明に甦っていく。


 ▼ 27 滅の願い◆5oP7VYU6fg 17/12/25 20:02:08 ID:GxntVLys [7/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

── いつからだろうか。
悲しみを、淋しさを、感じるようになったのは、

いつからだろうか。
私が自分の意思で動けるようになったのは……。

それは未だに思い出せないままだ。

だがきっと、彼女と過ごした日々はぬいぐるみの私にとって、それほど大切な物だったのだろう。
 ▼ 28 滅の願い◆5oP7VYU6fg 17/12/25 20:02:56 ID:GxntVLys [8/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

雪の降るある日、町中を愉快な雰囲気が支配する。

家族で過ごす者、大切な人と過ごす者、旅立つ者、そのどれもが希望の光に満ち溢れている。

今道を歩く少女たちも、

そして……


「あ! 見て、ぬいぐるみ……」

「落とし物? ボロボロじゃん」

「誰かが落としたまま踏まれたんだよきっと……可哀想」


あぁ……


「「!?」」

「しろちゃん……いま、しゃべっ」

シロ「ま、まさか……そんなわけ」


誰か


「動いた!?」

「ゾンビみたい……」

シロ「空(クウ)! 離れた方がいいって! 帰ろ!」

空「え!? ま、まってよ!


待って……
 ▼ 29 滅の願い◆5oP7VYU6fg 17/12/25 20:03:30 ID:GxntVLys [9/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


空「……?」

シロ「クウ!? 何して……!」


空「この子、生きてる……」

シロ「え?」

空「ポケモンだよ!! 初めて見る!!」

シロ「これが……ポケモン?」

空「うん! きっとぬいぐるみみたいなポケモンなんだよ! ね?」


少女は酷い姿で這いつくばる私に、手を差し伸べた。

驚きながらなんとか掌に黒い手を届かせる。


空「ほら、ちゃんと伝わる!」

シロ「うっ、ど、どうするの? ポケモンでも凄く不気味だよ?」

空「そんなことないよ! 破けちゃってるけど、よく見れば……」

シロ「そう、かなぁ」


空「決めた!この子私のポケモンにする!」

シロ「え!?」

空「あげないよ!?」

シロ「いや、自分のポケモンにするも何もあなたあと一年で博士から貰えるじゃない」

空「今この子がいい!」

シロ「はぁ……まぁ私は関係ないからいいけどさぁ、」


空「うーん、そうだなぁ。名前は……ジュペッタ!」


空「どう?」

シロ「うん。いい名前じゃない?」

空「よろしくね! ジュペッタ!」


『よろしくね! ボーちゃん!』
 ▼ 30 滅の願い◆5oP7VYU6fg 17/12/25 20:03:49 ID:GxntVLys [10/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



怖かった。
同じ人間の少女に捨てられた、裏切られた直後だったから。


空「あ、あれ? なんだか怯えてる?」

シロ「あんたがグイグイ来るから」

空「え、そ、そうかな? ごめんなさい……」

シロ「もらうポケモンじゃなくて野生なんだから、きっともっとゆっくり懐かせるんだよ。傷だらけで何か事情がありそうだし」

空「なるほど……」

「ちょっとごめんね?」


少女は笑顔を崩さずにゆっくりと体を持ち上げた。上着を脱いで被せて優しく。


「体、すごく冷たくなってる……寒かったでしょ?」

空「家、暖まりに来る?」


首を動かそうとした瞬間、視界がぼやけ、そのまま腕の中で意識を失った。


シロ「あれ、大丈夫かな?」

空「たぶん疲れてたんだよ。でも結局返事聞けないままだね……どうしようか」

シロ「流石にそのまま置いていくわけにもいかないし、一旦は連れて帰ってあげたら?」

空「んふふっ、うん!」

 ▼ 31 滅の願い◆5oP7VYU6fg 17/12/25 20:04:55 ID:GxntVLys [11/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

──────


次に目を覚ましたそこは、最新の記憶とは対照的に暖かい空気に包まれた一室。茶色い毛布がかけられていた。


空「あ、おはよう」


ニコッとこちらを見て微笑む。
口を開こうとした時気付いた。
体の破れていた部分が元の色と同じグレーの布で縫い合わされている。


空「縫い物得意な方だから縫ってみたんだけど、どうかな?」


小さく頷くと、どうやらちゃんと解釈してくれたらしくニコニコして手術後の体を持ち上げた。


空「うん! すごく似合ってるよ!」


部屋を少し見渡すとそこかしこに可愛らしいぬいぐるみが並んでいる。中にはタダが持っていたものと同じぬいぐるみも。


空「あ、やっぱり気になる? ジュペッタぬいぐるみっぽいし」

空「どう? 好きなことかいる?」


全部大っ嫌いだ。
 ▼ 32 滅の願い◆5oP7VYU6fg 17/12/25 20:05:24 ID:GxntVLys [12/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


空「あれ? そっか……。あ、そうだ! ちょっと待っててね!」

空「水とポケモンフーズ持ってきた。……食べる?」


思えばつい最近動けるようになったばかりなのだ。そもそも私はものを食べられるのかどうか……。

口のチャックを開いておそるおそる茶色い円柱形のそれを運ぶ。


「……!」


あまりの美味に驚き、次々と皿の上の御馳走に手を伸ばす。


空「気に入ってくれたみたいでよかった。水も忘れずにね」ソワソワ


目をそらしてモジモジしている。
まぁ何となく言いたいことはわかった。
それをすぐに言わない辺り気を使ってくれているのだろう。


空「ね、ねぇ?」

「?」

空「もう少し休んでいく?」


「……」


空「え、もう帰っちゃう?」


私に帰る場所なんてなかった。
もし居場所があったとすれば、きっとあのまま雪の中に埋もれることだろう。


「じ、じゃあ……」

空「私の友達になってください……!」
 ▼ 33 滅の願い◆5oP7VYU6fg 17/12/25 20:05:39 ID:GxntVLys [13/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


不思議と迷うことは無かった。
昔はそれに疑問を覚えもしたが、今ではその理由もわかる。たしかにまた裏切られるのではないかと考えると恐ろしい。

だけど私自身、誰かを信じていたかったんだ。


涙がこぼれた気がした。



──
 ▼ 34 滅の願い◆5oP7VYU6fg 17/12/25 20:06:07 ID:GxntVLys [14/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


強く胸に抱き締めた。
何も訊かず、何も言わずただ……。

涙がこぼれた気がした。


「よろしくね!」

「これからはずっと一緒だよ!!」



安堵の表情を浮かべてニッコリと笑う。
その笑顔は、ぬいぐるみを手にして笑う少女と似ていながら、少し大人びたもの。
胸が内側に吸い込まれるような感覚になった。


空「そうだ! あなたの名前、勝手につけちゃったけどジュペッタってどうかな?」


あぁ、返事がまだっだったか。これから聞き飽きても何度も呼ばれるのだ。慎重につけなきゃいけない、変な名前で呼ばれるのはごめんだ。

まぁ、特に拒否する理由もないが。


空「よかった! じゃあこれからもそう呼ぶね」


ふと小さな違和感を覚えて口の中に手を突っ込んだ。やはり、と言うより当然だが中の綿がなくなって空っぽになっている。食べたものは一体どこにいくのだろうか。


空「そうだ! 私の自己紹介まだだったね!」

「私の名前はソラ! あだ名でクウって呼ばれてます。どっちでもいいよ、好きな食べ物はかおるキノコシチュー! あとは……これくらいかな」


……私は今までずっと人間と過ごしていたから自然と人間の言葉は理解できた。だが私の言葉は人には伝わらない。簡単な受け答えくらいなら出来るが……


空「うーん、まぁいいや。そう言うのもこれから一緒にいればすぐ!」
 ▼ 35 滅の願い◆5oP7VYU6fg 17/12/25 20:06:32 ID:GxntVLys [15/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


「ごはんできたわよー!」


空「あっ、ジュペッタ。お母さんとご飯食べるけど、来れる?」


母「あら、起きたのね」

空「うん、これから一緒に生活するんだ」

母「ちゃんとあなたが世話するのよ?」

空「もちろん!」


もぐもぐもぐもぐ


空「ジュペッタって水飲めるけど、お風呂入れるの?」

ジュペッタ「……?」

空「わかんないか、一回挑戦してみる?」

ジュペッタ「……」

 ▼ 36 滅の願い◆5oP7VYU6fg 17/12/25 20:06:50 ID:GxntVLys [16/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


ちゃぷんっ


空「ふー、あんまり水吸わなさそうだね。良かった」


風呂と言うのはきもちいい。
体が内側から温もるのを感じる。


空「さっきまではあんなに嫌がってたのに、やっぱり気持ち良いんだ?」

本能が入ったら最後、と拒絶していた。
今ならいつまででも入れる気がする…………

…………



空「まだあがらないの〜? のぼせちゃうよ……」


なんだわがままだなぁ。


 ▼ 37 滅の願い◆5oP7VYU6fg 17/12/25 20:07:37 ID:GxntVLys [17/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

── ふあ〜っ」


空「さて! そろそろ寝ようか、やっぱり疲れてるでしょ?」

ジュペッタ「……」コクコク

空「じゃあ今日はピッピ、君に決めた!」

ジュペッタ「!?」


空「え? あぁ、私寝るときはお気に入りのにぬいぐるみと一緒に寝るんだ。そうすると安心するから」

ジュペッタ「ンン……!」

空「ご、ごめん。わかった。じゃあ今日はジュペッタとね」


布団に潜り、横になった私を抱き寄せる。
こんなにくっつかれたら窮屈だし少し息が苦しい。なるほど、だからぬいぐるみか。

穏やかに眠りにつくのを邪魔するのは悪いので、その日はそのまま我慢することにした。
 ▼ 38 滅の願い◆5oP7VYU6fg 17/12/25 20:08:04 ID:GxntVLys [18/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

空「おはよう……んん〜っ!」

母「朝ごはん食べる?」

空「食べるー! ジュペッタもおいで!」


持ち上げた机の上には少し寂しく見える献立が並べられている。自分の分は人間とは違うのだろうか?


空「あれ、もしかして食べたい?」

母「珍しいわね、ポケモンは人の食事は食べないと思っていたけれど」


何を食べるかは知らないがどうにもその白い粒は食べてみたい好奇心に駆り立てられた。

うまい。


空「じゃあさ、私にもジュペッタの少しちょうだいよ」

母「え」


正気か?
人が食べるものには見えないが……


空「いいでしょ? 一回食べてみたかったんだよねぇ」


パクッ
 ▼ 39 滅の願い◆5oP7VYU6fg 17/12/25 20:08:21 ID:GxntVLys [19/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


空「うっぷ……」


ほら、言わんこっちゃない。


空「大丈夫、おいしいよ……」

今にも吐きそうな顔で言われても


母「無理に食べるとお腹壊すわよ?」

空「ジュペッタ……ゴミ箱とって……」

ジュペッタ「?」


空「早く……ッ!」

ジュペッタ「!?」

空「オプッオボロロロロロロロロロロ」


うわぁ……


母「全くもう……」


空「うぅ、もう大丈夫。朝ごはん食べないと……」


食欲がなくなった。
 ▼ 40 滅の願い◆5oP7VYU6fg 17/12/25 20:08:49 ID:GxntVLys [20/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


── いってきまーす!」


母「いってらっしゃい!」

母「ふぅ、片付けしないと……」


ジュペッタ「ンー……」


母「あら、手伝ってくれるの? じゃあお願いしようかしら」

 ▼ 41 滅の願い◆5oP7VYU6fg 17/12/25 20:09:04 ID:GxntVLys [21/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


── ただいまー!」


母「おかえりー」

ジュペッタ「ん……」


空「ただいまー! ママ、ジュペッタ!」

母「おつかれさま」

空「つかれたー! ジュペッタぁ〜!」

「!?」

空「お待たせぇ〜!」

母「遊ぶのは宿題やってからね」

空「えぇ〜!?」

 ▼ 42 滅の願い◆5oP7VYU6fg 17/12/25 20:09:21 ID:GxntVLys [22/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

──


空「あと半分……」

母「数えながらやってるから長く感じるのよ」

空「うぅ〜」

母「おやつ食べる? モモンパイ」

空「食べるー! ジュペッタもいる?」

ジュペッタ「ン」コクコク

空「んー美味しい〜! どう?」

ジュペッタ「……」


空「そうでもなさそう? じゃあ私全部もらっちゃおー!」

母「ちゃんと宿題もやりなさいよ?」

空「わかってるっても〜」

空「あ、そうだ。杉男の知りすぎた世界今日だよね。録画しとかないと……」

 ▼ 43 滅の願い◆5oP7VYU6fg 17/12/25 20:09:49 ID:GxntVLys [23/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

────


空「夜ご飯なにー?」

母「なにがいい?」


空「ハンバーグ!」

母「わかった」

空「ジュゥ〜……!」

 ▼ 44 滅の願い◆5oP7VYU6fg 17/12/25 20:10:28 ID:GxntVLys [24/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


──


母「すごい雪降ってるわねぇ、今年最後かな」

空「雪だるまつくろー!」

コロコロコロコロ

ジュペッタ「〜♪」コロコロコロコロコロコロコロコロコロ

空「わ! すごい大きい! それ下にして私の方を上にのせよう」

ジュペッタ「?」

空「そうだ! バケツとか持ってきて顔作ろう!」


「……!?」


ドササァッ


空「あれ、雪だるま崩れてる……」

空「ジュペッタ?」


「〜!!!」

空「うわっ、埋まってる! 大丈夫!?」

ジュペッタ「……ン」

空「冷たっ……ちょっと待っててね!」


ジュペッタ「ン〜?」

空「マフラー取ってきた! これ、ジュペッタにプレゼントね!」

ジュペッタ「……!!」


 ▼ 45 滅の願い◆5oP7VYU6fg 17/12/25 20:10:43 ID:GxntVLys [25/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
────



空「やだなぁ〜クラス替わりたくない〜」

母「毎年言ってるよね」


空「友達減るもん!」

母「いなくなるわけじゃないでしょ」

空「そうだけどさー」


空「ずっと一緒に居てくれるのはジュペッタだけだよ」

ジュペッタ「……」

空「あ、そうだ! 今度お花見いこうよ!」

 ▼ 46 滅の願い◆5oP7VYU6fg 17/12/25 20:11:03 ID:GxntVLys [26/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


── きれいだねー」


空「満開だ!」

母「雨降らなくて良かったわ」


広漠たる青空のもと、草むらにレジャーシートを敷いてうすピンクの花を見る。ただそれだけの風習なのだがともに過ごした物事ではかなり好きだった。

「いただきまーす!」

快活に咲く綺麗な花を見ながら手作りの弁当を食べる。私も少し手伝ったからかいつもより一段美味しく感じた。

 ▼ 47 滅の願い◆5oP7VYU6fg 17/12/25 20:11:33 ID:GxntVLys [27/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


──── 夏だ! 夏休みだー!」


空「わぁーい!!! これから遊び放題だよ!」

ジュペッタ「……」ブンブン


母「宿題は?」

空「宿題は最後の一週間にやる派なんですー! 私失敗しないので!」

母「去年できなくて居残りさせられてたのにぃ?」

空「いいのー! 沢山ある休みを満喫するの!」


────


空「シュクダイオワラナイイイイイィ!!!」


母「言わんこっちゃない、毎日のように忠告したでしょ」

空「毎日されたからやらなかったの! お母さんのせい!」

母「あら、負け犬はよく吠える」

空「なー!」

ジュペッタ「……」


母「ジュペッタちゃんはこっちで晩御飯食べましょうねー、今日は麻婆豆腐よ」

ジュペッタ「!!!」

空「いいなぁー!」


 ▼ 48 滅の願い◆5oP7VYU6fg 17/12/25 20:11:51 ID:GxntVLys [28/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

────


母「あちゃー、葉っぱ全部散っちゃってるね」

空「で、でも!地面が真っ赤な色で綺麗だよ!!!!」

母「歩きにくいだけよ」

「もー!!」

母「残念でした。紅葉は来年までお預けね」

ジュペッタ「……!」

空「ちぇーっ」

 ▼ 49 滅の願い◆5oP7VYU6fg 17/12/25 20:12:10 ID:GxntVLys [29/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

──── ぁー!」


空「きもちいー……!」

ジュペッタ「〜♪」

空「湯気でジュペッタ真っ白になってる!」

ジュペッタ「?」ゴシゴシ

空「そう言う意味じゃなくて!」

ジュペッタ「???」

空「あ、もう12月か……。もう少しでジュペッタと出会ってから一年だね」

空「私ね、よく空気が読めないって言われるんだ。たぶん、みんなとずれてるところがあるんだと思う」

ジュペッタ「ン?」

「友達が出来ても、すぐに余計なこと言って嫌われちゃうの。いくら気を付けていても……。だから本当に本音で話せる人って少なかったんだ」

空「でも、ジュペッタは違った。私がミスしたり変なこと言っても見捨てないでいてくれる。勿論気を付けてはいるけど、初めて本音を言える友達なんだ」


空「きっとこれからも迷惑かけたりするだろうけど、これからもよろしくね!!」

ジュペッタ「……!!!」


『これからもよろしくね!!』


頭が痛んだ。
 ▼ 50 滅の願い◆5oP7VYU6fg 17/12/25 20:12:36 ID:GxntVLys [30/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


── お母さん!!」

母「どうしたの?」

空「ジュペッタにクリスマスプレゼントあげたいんだけど、買い物いつ行ける?」

母「そうね……」

 ▼ 51 滅の願い◆5oP7VYU6fg 17/12/25 20:13:04 ID:GxntVLys [31/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



──── それからはすぐだった。


「もうすぐクリスマスだねー!」


その単語を聞くたびに、苦しくなった。


「空はどのポケモンがほしい?」

「うーん」


大丈夫だ。
いくらそう言い聞かせても、不安の毒は心の隙間をぬって体を侵していく。


『これからずっといっしょだよ!』

初めて出会ったあの日、少女は嘘を吐かなかった。いや、嘘吐くつもりはなかっただろう。

だがその時、私のそばに彼女はいなかった。


時の流れは残酷だ。

人の姿を変え、心すら変えてしまう。


いつも思う。その時どんな気持ちでも、
あの頃の方が良かった。
こんなことになるくらいなら、あの時の方がましだった。

今は幸せかもしれない。


だけど、明日はどうだ?
ただこの一瞬が、きっと一番なんだと。


いっそ止まってしまえば、時が止まれば、
過去も未来もない。そんな世界になればいいのにと、そう願った。


空「いよいよ明日だねー!!」






あの日私は、空の時間を止めた。
 ▼ 52 滅の願い◆5oP7VYU6fg 17/12/25 20:13:46 ID:GxntVLys [32/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



いや、止めたんじゃない。
だけどあの時は、そう思っていた。


『24日の夜、10才の少女空ちゃんが行方不明になりました』


私は家を出た。
彼女とともに、
行く当てもなく、
ただどこかへ歩き続けた。

だがすぐに気がついた。
私はこの世界の時を止めたわけではなく、空の時を奪ってしまっただけだと言うことに。

こうしてる間にも、この世界の時は動いている。彼女の体はその時の流れに抵抗することなく呑まれ、腐り、変貌していった。

嫌だ。

もう、離れたくない。


私は……


『これからはずっと一緒だよ!!』


あの顔で笑う貴方が好きだったんだ。

時間は残酷に、彼女の亡骸を蝕んでいった。


耐えられなかった。

怖かった。

また一人になるのが、
記憶の中の彼女の笑顔が崩れてしまうのが……。
 ▼ 53 滅の願い◆5oP7VYU6fg 17/12/25 20:14:13 ID:GxntVLys [33/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



雨が降るある日の夜。
強雨が地面をえぐる雑音だけが支配する森の中。


ジュペッタ「ソラ……いや、クウ」




小さな鬼火が強く照らした。



閉ざしていた口のチャックを開ける。

落ちた灰が雨に打たれないように、
泥に穢されないように、

大切に残さず口に含んだ。


「これからは、ずっと一緒だよ……」




 ▼ 54 滅の願い◆5oP7VYU6fg 17/12/25 20:14:28 ID:GxntVLys [34/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

────────
──────
────
──
 ▼ 55 滅の願い◆5oP7VYU6fg 17/12/25 20:15:51 ID:GxntVLys [35/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

───────
─エピローグ─
───────


あれから、幾千の時を経た今。
私は全てを失った。

肉体も、
力も、
信念も、
全てへし折られた。
何もない。

結局私に時を止めることはできなかった。

誰の時を奪うことも、
私には出来なかったんだ。

いや、違う。
もっと簡単なものなんだ。


ぬいぐるみじゃなければいいんだ。
私が最初からポケモンとして生まれ、ポケモンと過ごせば。きっとみんなと同じように幸せに暮らせたんだ。


永遠の存在なんて、要らないんだ。


私はただ、一人でいたくなかった。

それだけなのに……。


──── あぁ、誰かの声が聞こえる。

私を呼ぶ声が……。

まだ、私に手を差し伸べる者がいると言うのだろうか。


もし許してくれるのであれば、
私と、僕と、友達になってくれないだろうか?


「初めまして、よろしくね」

『これからはずっと一緒だよ!!』


やっぱり僕は、その言葉に弱い。



あの日から、きっと何も変わらない。

時が経っても、君と僕は……。
 ▼ 56 滅の願い◆5oP7VYU6fg 17/12/25 20:16:22 ID:GxntVLys [36/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



ずっと同じ願い ────完。


 ▼ 57 イチュウ@あかいビードロ 17/12/25 20:17:10 ID:RG5uH6rY NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 ▼ 58 滅の願い◆5oP7VYU6fg 17/12/25 20:21:27 ID:GxntVLys [37/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

読んでくださった方、ありがとうございました。

このSSはクリスマスSS企画に参加しております。
http://pokemonbbs.com/post/read.cgi?no=721326
 ▼ 59 ンボラー@ゴーストZ 17/12/26 16:37:36 ID:fO5gK5Rs NGネーム登録 NGID登録 報告
乙です
 ▼ 60 ーダイル@いんせきのかけら 17/12/26 16:41:32 ID:zHps4GOg NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
お疲れさまです
 ▼ 61 ルマユ@ゼニガメじょうろ 17/12/26 17:57:45 ID:zKD1zGxg NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
乙です
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