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【SS】ユリーカ「んっ……/// もう、そんなに激しくしたらみんなが起きちゃうよ……?///」【R18】

 ▼ 1 サワムラー@クラボのみ 18/05/30 00:09:40 ID:jNeQ9Axk NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 それはまだ僕がサトシたちと冒険していた頃の話……

 ある日僕たちは次の街へ向かう途中にあった森の中でテントを張って一夜を明かそうとしていました。
 夜も更け、野生ポケモンたちも皆寝静まっているような深夜に何の因果か僕は目が覚めてしまいました。そしてふと横を見ると、寝ているはずのサトシの姿がありません。
 まあ、サトシのことですしちょっとその辺におしっこでもしに行ったのでしょう
 なんて楽観的に考えてまた僕はまた眠りにつこうとした……その時でした。テントの外から何か話し声?というか物音というか何かしらの音が聞こえた気がしました。
 何の音か気になった僕は眼鏡をかけて、恐る恐るテントの外を覗いてみました。

 ……僕はそこで見た光景を一生忘れることは無いでしょう。

「んっ……♡ もう、そんなに激しくしたらみんなが起きちゃうよ……?♡」

 そこではユリーカとサトシがセックスをしていました。
 ……いいえ、セックスなんて生易しいものではないですね。雄と雌がお互いを求めあい、貪りあう……それはまさしく本能的な''交尾''でした。

 サトシが一回り体の小さいユリーカに覆い被さるように後背位で欲望を打ち付けるように一心不乱に腰を振っている……
 ユリーカの体が壊れてしまうんじゃ無いかと思えるほどの男性器を、僕のなんかよりもずっと大きい男性器を、ユリーカの膣へと何度も何度も突き刺している……
 だけど、ユリーカの表情には痛みとかの負の感情を一切見受けられなくて……涎をだらしなく垂らして、快楽のみを受け入れ、悦んでいるその様はただの発情した雌でした。
 月明かりに照らされながら交わり合うその姿はとても扇情的で、幻想的で、いつの間にか僕自身もズボンの中で痛いほどに勃起してしまっていました。

 二人はいつからこんな関係なのか、とか
 この事をセレナは知っているのか、とか
 とにかくこんなことは止めさせないといけない、とか

 おもちゃ箱をひっくり返したように色んな感情で頭の中がごっちゃになっているのに、僕は何故だかひたすらいきり立った自分の男性器を扱くことに夢中になっていました。
 これは夢だ……夢の中の出来事なんだ……と何度も反芻しながら……
 ▼ 202 アブリボン@ジメンZ 18/10/24 20:26:28 ID:nbjcyoPg NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 203 ナゲキ@ピーピーエイド 18/10/25 00:51:41 ID:w5Gkitpk NGネーム登録 NGID登録 報告
素晴らしい支援
 ▼ 204 コイキング@リリバのみ 18/10/25 01:08:49 ID:PQ1I6Jlw NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
こんなスレあったのか
支援
 ▼ 205 キバニア@たつじんのおび 18/10/27 17:54:41 ID:0MQ.kRCA NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 206 ピジョット@こうらのカセキ 18/10/27 18:03:44 ID:aanAGoXQ NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援ぅっ!!
 ▼ 207 ドーブル@ロックメモリ 18/10/27 18:16:04 ID:zURUla82 NGネーム登録 NGID登録 報告
支援!
 ▼ 208 メガミミロップ@こだわりハチマキ 18/10/27 23:43:28 ID:VIAgSGic NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 209 フラベベ@すいせいのかけら 18/10/28 01:01:00 ID:102Yi6D. [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 「……えへへ。お兄ちゃんの……濃いね」

 ユリーカを見つめる僕と視線が合い、ユリーカが目を細める。僕は気恥ずかしさと、いたたまれなさで、思わず飛び起きました。手近にあったティッシュボックスの紙を乱暴に引っ張り出し、ユリーカの汚れた手に押し付けました。

 「え? 拭いちゃうの?」

 ユリーカが思いもしなかったかのように、きょとんとした顔をする。さも僕の行動がおかしいかのような発言に、苛立ちが走りました。

 ―――そんな汚い物を、どうしようというのですか。

 心の中で悪態をつきつつも、答えははっきりと分かっていました。ユリーカがいつも、サトシのそれをどうしていたのか、毎晩見ていたのですから。

 ですが、僕はそれをさせる気になりませんでした。やにわに噴き出してきた感情に突き動かされ、ユリーカの手に溜まった唾液と精液を、わずかな粘り気も残さず拭き取りました。
 ▼ 210 ツチニン@やけどなおし 18/10/28 01:01:50 ID:102Yi6D. [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 ―――最低だ……。

 ユリーカの手のひらを紙でこすりながら、僕は自分を呪わずにはいられませんでした。激しい自己嫌悪が、腹の中で渦巻き、脳を焦がすかのようでした。

 どうして今更になって、こんな気持ちが沸いてくるのか。後悔なんて、全てが終わった後では何の意味もありません。
 なんでもっと早く出て来ないのか。訳が分からず、ただただ目頭が熱くなるばかりでした。

 「……ごめんなさい……」

 「えっ?」

 僕の声がよく聞こえなかったのか、ユリーカが聞き返してきました。僕は顔を伏せ、ユリーカの手に目を落としていました。ユリーカの顔を見る勇気はありませんでした。

 「ごめんなさい……僕は……僕は、こんなつもりじゃ……」

 「どうしたの、お兄ちゃん? 急に―――」

 ―――変になっちゃって。

 ユリーカの裏表のない言葉が、ずしんと大きな錘になって胸に落ちる。今のユリーカに、僕の混沌とした気持ちなど分かるはずもありません。


 ―――近親相姦。この行為の罪深さが、幼いユリーカにはきっとまだ分からないのです。


 百歩譲って、サトシと付き合う事は良しとできるでしょう。身を委ね合うにはまだ早すぎるといっても、二人は他人。旅の中で恋愛に発展したとしても、それほど不思議ではないのです。
 しかし、兄と妹では話が別です。まして肉体関係を持つなど、許される事ではありません。

 そう―――許されない事を、僕たちはしてしまったのです。
 ▼ 211 タマゲタケ@つきのふえ 18/10/29 01:04:02 ID:SEUIanLQ NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
支援
 ▼ 212 チリーン@ムーンボール 18/11/06 00:34:07 ID:C5XsEzak NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 214 ブースター@パイルのみ 18/11/07 00:01:53 ID:DNBQwz72 [1/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




 「ユリーカ……もうやめましょう」

 長い間の末に、僕は思い切って口を開きました。これ以上、ユリーカの将来に、汚点をつける訳には行きません。

 「ええっ、なんで? お兄ちゃん、気持ちよくなかった?」

 ユリーカが慌てたように聞き返してきました。僕の腕を掴み、顔を覗き込んでくる。僕は目を横に逸らしました。そういう問題ではありません。

 「……ユリーカは、どうしてそんなに僕とやりたいんですか?」

 僕は、この状況を切り抜ける糸口を探していました。濁しもしない言葉で、ユリーカを問い詰める。ちらりと視線を向けると、ユリーカは不安そうな色を浮かべていました。青い瞳が、困惑に揺れていました。

 「なんでって……さっきも言ったよ。ユリーカ、淋しいの」

 ―――ずっと構って貰えなかったから。確かにさっき、ユリーカはそう言いました。そして僕は、そこに後ろめたさを覚えて、ユリーカの勢いに抵抗できなかったのです。しかし…………

 「……本当に、それだけですか?」

 今の僕は、その言葉を鵜呑みに出来ませんでした。まるで疑心暗鬼に取りつかれたかのように、冷たい、突き放したような返し方をしました。
 何が僕にそうさせるのか、自分でも分からないまま……。



 「本当は……」



 ―――次の言葉は、普段ならあり得ない。愛情の欠片も無い、侮辱とさえ取れるもの。
 けれども僕は、何かが外れたままなのに任せて、それを叩きつけるように言いました。



 「本当は、誰とでもいいんじゃないですか?」
 ▼ 215 ハリボーグ@ボーマンダナイト 18/11/07 00:04:59 ID:DNBQwz72 [2/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 ―――遠くから聞こえていた、スズムシの鳴き声。それが一瞬にして、止んでしまいました。
 いえ、止んだのではありません。掻き消されて、聞こえなくなってしまったのです。部屋に渦巻いた、重苦しい静寂に。

 ユリーカの反応がありませんでした。僕の腕を掴む手も、そのままに。まるで凍り付いたかのように。
 予想と外れた状況に、僕は不安を覚えて。恐る恐るユリーカの顔を見ました。するとそこには―――




 ―――我を失ったかのように、真っ白な表情を浮かべるユリーカがいました。


 「…………どうして…………」


 かすれた声が、ユリーカの口から洩れる。信じられないという思いが、ぎゅっと詰まったような声音でした。

 「どうして、そんな、事言うの? お兄ちゃん……」

 声が、不安定な響きを纏う。僕の腕を掴む手が、小刻みに震え出しました。

 ユリーカは、それだけを言うと、唇をきつく結びました。何かを堪えるかのように。けれども、溢れ出るものを堪えられないのが、目を見て分かりました。
 潤んでゆく瞳が、悲しみと、非難を訴えていました。

 僕は、ばつが悪くなって、再び目を逸らしました。状況が良くないのは一目瞭然でした。


 どうしてなのでしょうか……? 正しい方向に持っていこうとしてるのに……そうしたいのに……。

 何もかも、悪化の一途をたどるばかりじゃないですか……。
 ▼ 216 ラッタ@カビチュウ 18/11/07 00:11:01 ID:DNBQwz72 [3/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 「ねえ、なんで? なんでなの……お兄ちゃんッ……!」

 ユリーカが、黙って俯く僕の腕を揺さぶる。声はもう、今にもしゃくりあげそうな調子でした。

 全て自分が悪いのでしょうか……? いえ、そんなはずはありません。
 そもそもこの状況自体、僕の望んだ事ではないのです。ユリーカが―――


 ―――ユリーカが、責任を取ってなどと、僕を誘惑するから……。


 腹の底で、くすぶる思いが立ち込めていました。僕だけが責められるいわれは無いという声が、耳の奥で木霊しています。段々と、分かってくれないユリーカの態度が、苛立たしいと感じられてきました。

 「……いい加減にして下さい。こんな事しちゃいけないって、分からないんですか? ちゃんと考えてください。もう……子供じゃないんですから」

 完全に拒むように、一気にまくし立てました。自分の言葉とは思えないほど、冷淡でした。

 正直、ヤケクソに近い思いでした。何が「子供じゃない」というのでしょうか。自分のポケモンを持てる年齢にすらなっていないユリーカを相手に……。

 けれども、今はそんな言葉しか出てきてくれませんでした。

 そして……それを口にした時でした。



 ユリーカの拳が、胸に叩きつけられました。



 「もうやめて!!」

 ユリーカが、金切り声を上げながら、もう一つの手を振り上げる。

 「お兄ちゃんは、そんな事アタシに言わない! 言わないよ!」

 爆発したように、感情を込めて、ユリーカは再び拳を打ちました。

 「こんなの、お兄ちゃんじゃない!!」
 ▼ 217 ダンゴロ@まんぷくおこう 18/11/07 00:13:12 ID:DNBQwz72 [4/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 叫びとともに、何度も何度も、ユリーカは拳を打ちつけました。痛くもない、弱々しい力で。けれども、とても重い拳でした。

 僕は、黙っていられませんでした。ユリーカの両手首を掴み、力ずくで抑えました。ユリーカの言い分は、とても好き勝手に思えたのです。

 ―――こんなの違うというのは、僕の台詞です。

 性の虜になって、毎晩のように淫らな行為に走り……。
 あまつさえ兄にまで色気を出して、欲情を誘うなんて……

 ―――こんなの、ユリーカじゃない!

 「だっておかしいじゃないですか!!」

 まるでユリーカに当てられたかのように、僕も興奮し、意図しない強い口調で言い放ちました。どうしても言い出せなかった思いが、抑圧から逃れたように、ぽろぽろとこぼれ出していきました。

 「一昨日まで、何ともなかったのに! どうしてサトシが電話した瞬間、こんな風になるんですか!!」

 「なんで!? サトシは関係ないよ! アタシは……!!」

 「関係ない訳ないじゃないですか! だって、ユリーカは…………!!」












 「毎晩サトシとやってたじゃないですか!!」


 ▼ 218 ネマシュ@こおりなおし 18/11/07 00:13:39 ID:DNBQwz72 [5/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告






 ―――それが、とどめでした。



 「……うっ…………うぅ……………………」


 横に引きつった口から、苦痛に歪んだうめき声が洩れ―――


 「ううぅぅ〜〜〜〜っ〜〜〜〜〜…………………………」


 細めた目の端に、大粒の涙を浮かべ―――



 「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああんッ!!! あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!!!」



 ―――ユリーカは、号泣しました。
 ▼ 219 アーボック@もえぎいろのたま 18/11/07 00:15:12 ID:iN5Yf.82 [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
シトロン
 ▼ 220 マギアナ@レンズケース 18/11/07 00:16:23 ID:iN5Yf.82 [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
>>219途中送信
シトロンらしさが伝わる有能スレだあ…
支援
 ▼ 221 スピアー@チイラのみ 18/11/07 02:08:30 ID:Eq4kNAoI NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 222 エルフーン@きぼんぐり 18/11/09 21:58:22 ID:y6BIyL5o NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 223 ハクリュー@がくしゅうそうち 18/11/14 14:02:34 ID:gdb.zA0E NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 224 ガメノデス@ピーピーマックス 18/11/16 01:12:47 ID:rL5EmqWA NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 ―――その後はもう、どうする事も出来ませんでした。

 堰を切ったように泣き出したユリーカを、なだめる術はありませんでした。

 言葉をかけても一層泣き声を強め、僕が手を差し出しても、両腕をがむしゃらに振り回して一切の接触を拒むのでした。

 とめどなく溢れるユリーカの涙と、止まない嗚咽の声。それを見せつけられるうちに、僕の奇妙な興奮は次第にやんでいきました。心には、ただただ悔恨の念が渦巻くだけでした。

 ―――本当に、間違ってしまった……。

 ユリーカを泣かせてしまった。何よりも避けたかった現実を、招き寄せてしまったのです。

 僕は、ユリーカを守りたいんじゃなかったのか……自分の愚かさを呪わずにはいられませんでした。

 悔しくて……不甲斐なくて……僕は、眼が焦げそうになる想いでした。閉じた瞼の隙間から、雫がこぼれ、頬を濡らしました。

 僕は、よろよろとベッドから降りると、まだ泣きじゃくるユリーカを残して、部屋を後にしました。
 ユリーカをそっとしておきたかったのと……僕自身が、独りになりたかったのです。


 僕は自分の部屋に戻ると、眼鏡を放り捨て、自分のベッドに飛び込み―――


 枕に顔をうずめ、歯を食いしばりながら―――


 ―――枯れるまで、涙を流し続けました。
 ▼ 225 グライガー@こおりなおし 18/11/16 01:16:44 ID:T.5w7XjA NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
えち
 ▼ 226 ダゲキ@こだいのツボ 18/11/16 02:58:20 ID:F4T2O8XY NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 227 タマンタ@ヤミラミナイト 18/11/17 23:33:34 ID:VpLM8BK. NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 228 ポリゴンZ@まんまるいし 18/11/17 23:34:42 ID:Trnkcppc NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
まだあったのか
 ▼ 229 ノコッチ@アンノーンノート 18/11/17 23:59:35 ID:anxca6w. NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
よく見たら半年経ってんのな
 ▼ 230 オノノクス@ソクノのみ 18/11/18 01:25:00 ID:WcWI8e32 NGネーム登録 NGID登録 報告
サトシはまだ来ないのか?
支援
 ▼ 231 サザンドラ@こうてつプレート 18/11/20 00:05:29 ID:m1.wQy7. [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
気付いた時には、翌朝を迎えていました。

 昨晩は結局夕飯をすっぽかしてしまい、お腹はぺこぺこでした。空腹感に起こされたような格好です。
 いつもの場所に置かれていなかった眼鏡を手探りで見つけ出し、僕は毎朝の習慣にとりかかりました。

 始めはクラクラした感覚も、体を動かすうちにすっかり抜けていき―――代わりにやってきたのは、期待感でした。
 ごく普通の日常。何気ない家族の光景。その時間がまた来るのです。昨日は悲しい形で幕を閉じましたが、一晩泣き晴らした僕は(自分でも驚くほどに)すっきりとした心持ちをしていました。きっとユリーカも、昨日よりは落ち着いてくれているに違いありません。

 昨日の朝、何事も無かったように「おはよう」と言ってくれたユリーカの姿が思い浮かぶ。チゴラスのパジャマ姿で寝ぼけ眼をこする様は、思わず吹き出しそうになるほどのチグハグ感があり、また可愛らしくもありました。
 そう言えば、昨日の朝食はさっぱりとしているという感想を漏らしていました。今日のは、もう少し手間暇をかけたものを作りましょう。幸い昨日よりも早く目覚めたので、時間はたっぷりあります。

 ―――仲直りの印、の意味もこめて。

 陽気なハネッコのように、心を弾ませながら、僕は滅多にやらない贅沢な調理を始めました。ユリーカの機嫌が直るのを願って。ユリーカの喜ぶ顔が見たくて―――



 ―――けれど、いつまで経っても、ユリーカは起きてきませんでした。
 ▼ 232 ドテッコツ@どくけし 18/11/20 00:24:15 ID:m1.wQy7. [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 …………どうかしたのでしょうか?

 椅子に座り、リビングのドアと時計の針を交互に見やりながら、僕はユリーカがやってくるのを待っていました。目の前には、やり過ぎなほど豪華な朝食が並んでいます。お腹が耐えかねるように唸り声を上げていましたが、ユリーカと共に過ごす時間が恋しくて、僕はひたすら無視するのでした。

 しかし、じりじりと過ぎていく時間。冷めていく料理。不安がよぎり始め、踊るようだった心も、次第に地団駄を踏むがごとき様相に変わっていきました。
 辛抱つきて、僕はユリーカを呼びに行く事にしました。出来れば近づきたくなかった、ユリーカの部屋に……。


 ユリーカの部屋の前に立つと、僕はノックをする前に、深呼吸をして、聞き耳を立ててみました。
 部屋の中は、しんと静まり返り、わずかな動きの気配さえしません。誰も中にはいないと思えるほど、音という音が行方知らずでした。

 僕は、気まずさが募るのを感じながらも、ドアをノックし、部屋の向こうに呼びかけました。

 「ユリーカ……? 起きているかい……?」

 慎重に、おどかさないようにゆっくりとしたノック。穏やかな口調。けれども、反応はなし。

 まさか、本当にいないのか……胸騒ぎがして、僕は意を決して、ドアノブに手をかけました。

 「入るよ」

 断りとともに、重い空気を纏うドアを押し開けて、僕は嫌な思い出を作った部屋へと踏み入りました。
 ▼ 234 ソーナノ@はがねのジュエル 18/11/20 22:56:28 ID:6oLEbsKM NGネーム登録 NGID登録 報告
続いてたのね、支援
 ▼ 235 モルフォン@Zパワーリング 18/11/20 23:12:47 ID:1kGsfpOY NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 236 サメハダー@とけないこおり 18/11/21 05:18:33 ID:6pw64Hp. NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 237 ニドキング@ハバンのみ 18/11/25 01:02:54 ID:1866c4uo NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 238 メテノ@こうてつプレート 18/11/27 00:15:44 ID:gSRg96js [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


「…………」

 部屋に踏み入った僕は、まるで時渡りでもしたかのような錯覚に襲われました。

 重たい空気……脱ぎ捨てられた着ぐるみ……床に放り投げられたティッシュ……。昨日の夜、最後に見た光景が、そのまま残っていました。あの時間から、時が進んでいないかのようでした。
 ただ一つ違うのは―――


 ベッドの上で毛布にくるまり、眠る妹の姿だけです。


 ―――なんだ、いるじゃないですか。

 一瞬前の不安が杞憂で終わった事に、胸をなでおろします。もしや、家出をしてしまったのではないかと、本当に想像してしまっていたのです。昨日の今日とあって、自分も少し考え過ぎな所があったようです。

 ユリーカは、僕に背を向ける形で横になっていました。寝顔は見えません。毛布に覆われていない後ろ髪だけが、そこにいる事の証でした。
 僕はふと、ユリーカがいつも着るチゴラスのパジャマを思い出しました。あれを着て寝ているなら、後ろ髪は見えないはず。とすると……。

 ―――ユリーカは、昨日のあの服を着たまま……。

 昨日の、ユリーカの姿がフラッシュバックする。可愛くもどこか大人びた趣を醸し出す、純白のペチコート。優しそうで、とてもずるい心を映した笑顔。そして、想像もしなかった真実を秘めた、スカートの内側……。

 ―――駄目だ駄目だ、何を考えているんだ、僕は……。

 頭を振って思考を遮断する。予期していましたが、やはりこの部屋に来て、昨日の事がまざまざと思い出されてきました。またおかしな感情が芽生えないうちに、ここへ来た目的を遂げてしまいましょう。

 「ユリーカ。起きて下さい。もうとっくに朝ですよ」

 声をかけるも、ユリーカはピクリとも反応しませんでした。相当深く寝入っているのでしょうか……?


 近くまで行って、肩を揺すろうか―――そう思った僕は、しかし、すぐに違うと気付きました。

 「…………ユリーカ、起きてますよね?」

 ▼ 239 メブキジカ@チャーレムナイト 18/11/27 00:16:33 ID:gSRg96js [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 何故だかは分かりませんでした。何の根拠もなく……ただ直感的に……ユリーカは起きていると感じたのです。

 強いて言うならば、雰囲気でしょうか。すやすやと穏やかに寝ている……という雰囲気ではなかったのです。

 僕は、何故かだんまりを決め込むユリーカの傍まで近寄り、顔を覗き込みました。……冷めた目で壁を見つめるユリーカの顔が、そこにありました。

 「……ユリーカ。起きているなら、返事ぐらいして下さい」

 「…………」

 不平をこぼしてみても、ユリーカの知らぬ顔は変わりません。僕に構うつもりなど、さらさらないと言わんばかりです。

 「起きない気ですか? ……今日は、とっても豪華な朝食を用意したんだけどな〜……」

 「一人で食べればいいじゃない」

 ようやく口を開いてくれたかと思いきや、出た言葉はにべもない。あっちへ行けと言われたも同じで、物悲しさを禁じ得ませんでした。こんなあからさまな態度を示すユリーカを、僕はよく知っています。

 ―――すっかり拗ねてしまったようですね……。

 心の中で、溜息をもらす。時々ですが―――旅の中でも起きた事ですが―――僕が、ユリーカを心配する余りきつく言ってしまった時などに、ユリーカはこうなってしまうのです。
 普段は、とても素直で、物分かりの良い妹ではあるのですが……一旦我慢を過ぎると、なかなか許してはくれません。

 思えば、今回も全く同じでした。僕がユリーカの行いを正そうとして、きつい言い方をしてしまった……。

 ……いえ、昨日はいつもよりよっぽど酷い言い方をしてしまったと思います。今振り返ると、あの時の僕は、どうかしていました。ユリーカの心を、深く抉るような事ばかり言っていたのです。それも全て、ユリーカの為などではなく、ただ僕がその場から逃げたいが為だけに……。

 ―――嫌われて、当然ですよね……。

 ▼ 240 フレフワン@みかづきのはね 18/11/27 04:32:11 ID:3iXo8zi6 NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 241 バクフーン@ブーカのみ 18/11/27 18:54:49 ID:uSckNVn2 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援おおおおお
 ▼ 242 ランターン@プラスパワー 18/11/28 02:37:50 ID:fYhYLl2M [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 胸が、締め付けられるような感覚がしました。朝の清々しさが、乾いた風に吹かれてどこかへ消えていってしまい、空しさだけが残りました。自業自得とは、この事です。

 ―――けれど、せめて本心だけは伝えたい……。

 「ユリーカ……………………昨日は、ごめんよ」

 未だ目も合わせてくれない妹に、僕は謝罪の言葉をかけました。ユリーカを傷つけたかったんじゃない事。ユリーカの気持ちを蔑ろにしてしまい、心の底からすまなかったと思っている事。

 そして何より、ユリーカを妹として大切に想っている。それだけは変わらない事……。

 偽りない本音を述べると、僕は唇を強く結び、ユリーカの反応を待ちました。許してくれなくてもいい。せめて、気持ちだけは受け止めて欲しい。そう願って。

 長い沈黙が二人の間を流れました。重たい空気に息苦しさを感じ始めた頃、ようやくユリーカは返事をしてくれました。

 「お兄ちゃん、本当に悪いって思ってるの?」

 顔をそむけたまま、問い詰めるユリーカ。僕は迷うことなく「はい」と答えました。

 「それじゃあ……」

 わずかに首を動かし、横目で僕を見つめるユリーカ。刺すような、疑り深い眼差しでした。

 「お兄ちゃんは私の事、愛してくれる?」

 「それは……」

 僕は、これには言葉を詰まらせました。ユリーカが言っているのは紛れもなく、家族愛ではなく、男女としての愛だと分かったからです。そしてもちろん、ドラマのような純愛などではなく……本能をむき出しにした肉体の交わりに違いありません。
 

 ―――僕は……どうしたらいいんですか……?

 ▼ 243 ペロッパフ@スチールメモリ 18/11/28 02:40:27 ID:fYhYLl2M [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 ユリーカの気持ち。それがもし、本当に本当なら、僕は応えるべきなのでしょうか……?

 許されるなら、そうしてもいい。けど、本当にそれは正しい答えなのでしょうか……?

 僕は……兄ではなく、一人の男性として、ユリーカを幸せに出来るのでしょうか……?


 どんなプログラミングよりも難しい、ユリーカの問い。0か1かで答えられるほど単純ではなく、軽くもない。けれど、どちらかしか選べない問い。

 僕が回答に迷った事で、ユリーカはもう察したかのように、また顔を背けてしまいました。

 「やっぱり。お兄ちゃんは私に悪い事したなんて思ってない」

 「そ、そんな事は……」




 「もう知らない! お兄ちゃんなんか、大っキライ!」




 それ以上は話もしたくないとでも言うように、ユリーカは毛布を頭まで被り、完全に会話を断ち切ってしまいました。弁解の余地さえも、もうありません。



 ―――これが、現実ですか……。



 やるせない。ただただやるせなさだけが、胸を埋め尽くしました。


 気持ちだけでも伝わって欲しかった。けれども、それすらも届かない。僕とユリーカの間には、大きすぎる溝が広がっていました。
 ▼ 245 デンジュモク@すいせいのかけら 18/11/28 16:55:42 ID:sw2wa6kg NGネーム登録 NGID登録 報告
全部読んだけど書き方上手くてすげえ読みやすい!!
 ▼ 246 トルネロス@カメックスナイト 18/11/28 17:28:23 ID:yl4IVSSo NGネーム登録 NGID登録 報告
>>245
途中で何回か作者変わってるぞ
 ▼ 247 ミミロップ@PPかいふくポン 18/11/30 23:32:45 ID:oKaQNRyI NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
>>246
マジか
みんな凄すぎやろ
 ▼ 248 コクーン@シールぶくろ 18/12/01 01:01:34 ID:wrAcbswU NGネーム登録 NGID登録 報告
イッチ最初だけ書いてもう書かないとか言っておきながらここまで続けてくれて嬉しいわ
支援
 ▼ 249 グライオン@ぼうごパッド 18/12/02 00:02:06 ID:cMC.ruh. [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 『ポッポー ポッポー』

 カチカチと音を鳴らしていた時計から、鳥ポケモンの人形が飛び出して、人工的な鳴き声を上げる。もうジムを開く時刻がやってきました。
 僕は、わだかまりを抱えつつも、ユリーカの部屋を後にしました。今はそっとしておくしかありません。僕自身にも、考える時間が必要でした。

 ユリーカと、どう向き合っていけばいいのか……。

 一時の気の迷いとはいえ、僕とユリーカは昨日、明確に兄妹の一線を越えてしまいました。決定的なあの行為にまでは及ばなかったとはいえ、もう以前の関係は破綻したと言っていいでしょう。ユリーカのストレートすぎる求愛が、それを物語っています。

 一つだけ気がかりなのが、ユリーカの気持ちは本物かどうかという事です。正直なところ、僕はユリーカの気持ちが本物だとは思えませんでした。一種の衝動……サトシと電話で話をして、性欲が呼び起されたとしか思えないのです。だから、その性欲を満たす為だけに、傍にいる僕を求めているのならば……決して応じてはいけないはずです。むしろ、是正させる事が兄としての務めでしょう。

 けれど、もし今、はっきりとノーと言ってしまったら……。

 ユリーカはもしかしたら、僕を嫌いになってしまうかもしれません(さっき既に言われてますが……)。
 いえ、ユリーカを間違った道から引き戻せるのなら、嫌われるくらい安いものでしょう。それよりも怖いのは、僕を置いて、どこかへ行ってしまう事です。性欲を満たしてくれるような相手を探しに…………。

 ……そう、サトシの許へ……。



 それは……そんな事は……堪えられない事でした。
 ▼ 250 レディバ@グラスシード 18/12/02 00:05:03 ID:cMC.ruh. [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 ユリーカはまだ幼い少女です。そんな駆け落ちみたいな事、認められるはずがありません。
 いえ、それ以上に、僕がユリーカと離れ離れになるのが嫌なのです。ユリーカとはこれまでずっと一緒に過ごしてきた。離れて過ごした事など、殆どありません。
 旅の最中、サトシとのジム戦に備えて、一足先にミアレジムへと戻った時ぐらいです。

 ―――こんな理由で喧嘩別れなんて、あんまりじゃないですか。

 けれど、ではどうすればいいと言うのか。全く思いつきもしません。

 ユリーカともっと話し合わなければならない……けれど、今のユリーカは、僕の話になど聞く耳持たないでしょう。のんびり落ち着くのを待っていたら、サトシが来る日を迎えてしまうかもしれない。
 いっそユリーカの気持ちに応えてしまうのは……いやしかし……。

 「はあ……これでは堂々巡りですね」

 溜息をこぼす。どうやら、今の僕には、自分だけで解答を出す事は困難のようです。

 「シトロイド……聞こえるかい」

 僕は、ポケットに入れていた小さな通信機を取りだし、話しかけました。人の声を模した電子的な声が返ってきました。

 「声紋認証ヲ確認シマシタ。シトロン様、オハヨウゴザイマス」

 「おはよう。悪いけど、少しの間、ジムを任せてもいいかい?」

 「了解シマシタ。ジムリーダー代行モードヘ移行シマス」

 シトロイドは、僕の手で作り出した、人工知能搭載の人型アンドロイドです。料理から、ポケモンバトルまで、様々な仕事をこなせる自慢の発明品。僕たちがサトシらと一緒に旅をしていた時も、ジムの運営を一手に引き受けてくれていました。
 旅を終えてからはずっと僕がジムリーダーとして勤めていましたが、今日は久々に稼働して貰う事にしました。……ある事をする為に。

 僕は自分の部屋に戻ると、デスクのパソコンを起動しました。メッセージツールを立ち上げ、連絡先リストを開く。さほど多くないリストの中の、ある人物を指定する。

 ―――自分で答えが出せないならば、他人に相談するしかありません。

 苦渋の決断ですが、今はそうするしかないと思いました。このままでいいはずがないのですから。

 けれど、デリケートな問題ゆえに、それが出来る相手は限られます。父さんには伝えたくはありません。出来れば身内には、この事を知られたくありませんでした。何より、僕には信頼できる人がいます。

 その人になら、打ち明けてもいい。いえ、その人以外にはいないと確信していました。僕とユリーカの問題に、踏み入る事を許せる人物。誰よりもユリーカの傍にいてくれた、あの子なら……。





 宛先―――――――《セレナ》。
 ▼ 251 ジバコイル@ポロックキット 18/12/02 00:09:07 ID:4/O6MD8k NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
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 ▼ 252 ギギギアル@セシナのみ 18/12/02 00:18:59 ID:2HX6Icrw NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
セレナネキkrkr
 ▼ 254 カプ・コケコ@やすうりポン 18/12/02 21:57:38 ID:b7tI5OYI NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 255 メガアブソル@ムシZ 18/12/03 00:37:00 ID:wUFYgGPY NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
セレナきた!これで勝つる!
支援
 ▼ 256 ホウオウ@むらさきはなびら 18/12/06 00:54:03 ID:PVFAs/G2 [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 『拝啓。お元気ですか?』

 かつて共に旅をした少女にメッセージを送る。内容はシンプルに、大事な話があるので早急に(出来れば今日中に)連絡が欲しい、というもの。いつでも待っていると添えて、送信しました。

 セレナは僕やサトシと同年齢の女の子ながら、ユリーカとも気心の知れた仲です。とても責任感が強く、旅の間は常にユリーカの傍らに立ち、守ってくれていました。同じ女の子同士という事もあって、ユリーカにとっても良き相談者、理解者となって、僕とはまた違う親密な関係を築いてきました。だからこそ、僕も信頼を寄せています。


 ―――セレナなら、きっと力になってくれます―――


 セレナは、カロスの旅が終わった後、夢を叶える為の修業として、一人ホウエン地方へと旅立っていきました。別れてからもユリーカとはまめに連絡を取り続けていますが、僕とは時々しか直接のやり取りはしていません。彼女の近況は、ユリーカから聞かされてばかりでした。


 ―――早めに都合がつくといいのですが……。


 メッセージツールを使えば、いつでもセレナのデバイスに伝言を送れます。しかしポケギアを持たない彼女と通話をするには、主にポケモンセンターの専用機を使わなければなりません。セレナがその近くにいればいいのですが、旅がてら、それが出来ないケースもあるでしょう。

 僕は、文章のやり取りではなく、直に話がしたかったのです。


 とりあえず昼まで待とうと思い、椅子から立ち上がった時でした。ピコンという電子音と共に、メッセージツールに通知有りのアイコンが浮かびました。セレナからの返信です。

 届いたメッセージを開き、そこに書かれたたった一つの文に目を通した僕は、思わず目を皿にしました。

 『今ポケモンセンターにいる。すぐに通話できるけど、大丈夫?』

 ……渡りに船とは、この事だと思いました。
 ▼ 257 メガバンギラス@どくけしのみ 18/12/06 00:57:01 ID:PVFAs/G2 [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


 「シトロン、久しぶり! 元気だった?」


 「はい。セレナも元気そうで、何よりです」


 久方ぶりに話す、かつての旅仲間。嬉しい気持ちを隠しきれないような、セレナの屈託ない笑顔に、僕も思わず笑みがこぼれました。彼女の笑顔には、人を安心させる不思議な力が秘められています。


 「まさか、今ポケモンセンターにいるなんて思いもしませんでした。てっきり、旅の道程の途中かと」


 「うーん、朝の特訓で、結構みんな疲れちゃったから、休んでたの。バトルってすごく大変。今しみじみと思ってるわ」


 セレナは、ホウエン地方でポケモンコンテストに挑戦しています。ポケモンの美しさを競うという、カロス地方のトライポカロンによく似た競技ですが、セレナによると、その趣は全く別物だと言って差し支えないという事でした。
 ポケモンとトレーナーの共演が主流のトライポカロンとは違い、コンテストではよりポケモンに主眼を置いた審査基準となっていて、ポケモンと技への理解がもっと重要になっている。そして一番の違いは、バトルの腕前も試されるという事でした。


 「サトシのバトルをずっと見てきたから、少しは自信があったんだけど……闇雲に攻撃してるだけだと、かえって不利になっちゃうのよね」


 セレナはそのルールの違いに戸惑い、まだコンテストリボンを獲得するに至っていないようでした。けれど、彼女の表情には、憂いや焦りの様子は見られません。


 「自分に足りないものは何なのか、少しずつ見えてきた気がするの。テールナー達もついて来てくれている。次は絶対に優勝を決めて見せるわ」


 ―――あるのは、溢れんばかりの自信と強い志。彼女の瞳を見ていると、初めて会ったあの日から、本当にすごく成長したのだと切に感じられました。


 「…………それで」


 そんな彼女の目の灯が、不意に真面目な色を帯びる。


 「…………大事な話って、何?」


 「…………はい。実は…………」


 僕も、和んだ空気を払いのけ、重たい口調で切り出します。


 「……その前に、近くに人はいませんか? 出来れば、内密にしたい話なので」


 「安心して。そうだと思って、個室のモニターを使ってるわ……“大事な話”って、そういうものでしょ?」


 さすがの気配りに、頭が下がる思いでした。
 ▼ 259 ペルシアン@かたいいし 18/12/09 00:45:43 ID:UGg2F.b6 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
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 ▼ 260 ドサイドン@ポイズンメモリ 18/12/12 00:02:45 ID:3HkwgpIU [1/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 「……そう、ユリーカが……」

 「はい……」

 僕は、これまでの経緯を大まかに説明しました。ユリーカが僕に性行為を求めるようになったこと。僕が……欲にかられて、危うく応じてしまいそうになった事。そして僕がユリーカを拒んだ事で、ユリーカがすごく機嫌を損ねてしまっている事まで。

 ……さすがに、お互いの性器を舐め合ったなど、細かい所は伏せましたが。

 「それで、シトロンは仲直りしたいのね?」

 真剣な面持ちで聞きに徹してくれていたセレナが、おもむろに問い質します。

 「はい。ユリーカは今、僕の話を聞いてくれそうにない状態で……だから、セレナに間に入って貰えないかと思って……」

 「一つだけ、気になる事があるんだけど……」

 セレナが、僕を真っ直ぐに見据えて言いました。

 「どうしてユリーカはそんな行動に出たの?」

 セレナの問いに、僕は胸を詰まらせました。彼女が聞いているのは、ユリーカが僕を誘惑するようになった、そのきっかけの事です。

 当然と言えば当然の疑問です。何の理由もなくユリーカが急変する訳がありません。
 元はと言えば、サトシからの電話が起因です。しかし、それを言ってしまっては、何故サトシからの電話でユリーカの性欲が誘発されるのか、説明が必要になります。

 ……セレナの気持ちを知っていれば、サトシとユリーカの関係を明かす事は、躊躇われる事でした。

 「……さ、さあ……僕にも、心当たりがさっぱり……」

 もしセレナが二人の秘密を知らなければ、その真実は間違いなく彼女の心を傷つける。そう思ってぼかそうと思った僕は―――


 「シトロン、誤魔化さないで」


 ―――あっさりと嘘を見破られてしまいました。
 ▼ 261 レジロック@あかぼんぐり 18/12/12 00:03:44 ID:3HkwgpIU [2/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 「……シトロンは、相変わらず、中身が顔に出やすいんだから」

 やや呆れたように、苦笑気味に言うセレナ。僕は申し訳なさに、顔を俯かせるしかありませんでした。

 「何があったのか……本当の事を知らないと、ちゃんとした助言は出来ないと思うわ」

 「……そう、ですよね……やっぱり……」

 セレナの言う事はもっともでした。しかし、やはり僕はまだ心を決めきれないままでした。

 ―――本当に伝えてしまっていいのでしょうか? セレナはまだ、サトシの事を想っているはず……。

 逡巡とする心を持て余して、ただ黙ったままの時間が過ぎていく。ややの沈黙の後に、やがて口火を切ったのはセレナでした。

 「…………ねえ、シトロン」

 僕がちらりと上目遣いに見ると―――

 ―――セレナは、目を伏せたようにうつむき、こぼすような静かな声音で続けました。

 「ひょっとして…………サトシが、関わってたりする?」



 ―――言葉が、脳にこだましました。
 ▼ 262 クズモー@うしおのおこう 18/12/12 00:06:56 ID:3HkwgpIU [3/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 ―――知っていたのですか? セレナ……。


 僕は、信じられない思いでセレナを見つめました。セレナがサトシとユリーカの関係を知っていたなんて、とても考えられなかったのです。そんな節は一度も見せた事はありませんでした。

 ―――もし知っていたのなら…………一体、どんな気持ちで旅を共にしていたのですか……?

 「…………もう。やめてよ、シトロン」

 僕が顔が固まるほどに驚いているのを見て、セレナは吹き出すように笑いました。

 「中身が顔に出やすいって、さっき言ったばかりじゃない。……その様子だと、図星みたいね」

 「な、なんで分かったんですか……!? 知ってたんですか……!?」

 「女の勘よ。何も知らないわ。知ってたって、何の話?」

 けろりと言い切るセレナに、僕は空恐ろしいものを感じました。僕をまじまじと見つめ返すセレナの目からは、全く本心が読めませんでした。

 僕だけが一方的に心の内を見透かされる事に、やや不満を感じつつも、こうなっては隠す意味もないように思えました。一応は背中を後押ししてくれたのだと思って、僕は意を決します。

 胸の詰まりを吐き出すように、大きく深呼吸をして―――

 「……そうです。サトシから、電話があったからです」

 ―――僕は、僕たちの旅の裏の側面―――サトシとユリーカの情事を―――粛々と話し始めました。
 ▼ 263 バニリッチ@タラプのみ 18/12/12 00:19:05 ID:hg.kT/I. NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
セレナすこ
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 ▼ 264 ルナトーン@ながながこやし 18/12/12 00:26:32 ID:3HkwgpIU [4/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 全てを打ち明けるのは、とても辛いでした。
 いつの間にか形成されていた、サトシとユリーカのセックスの習慣。猛獣のような荒々しさで繰り広げられた、雄と雌の交尾。普段の二人からは考えられない、考えたくもない姿。
 それを見ていながら……妹が凌辱される姿を目の当たりにしていながら……止めに入る事が出来なかった自分。その結果、ユリーカが性の奴隷に落ちぶれてしまうのを、許してしまった。

 そして……セレナの気持ちを知りながら、今の今まで一言も言わなかった事。自分が困った時になって、ようやく真実を話した事。

 後ろめたさで吐き気が込み上げてきました。セレナは今、僕をどう思っているのでしょうか?

 真摯に話に耳を傾けてくれている裏で、腹の底ではどんな感情が渦巻いているのでしょうか?


 僕は……この期に及んで、一つだけ嘘をつきました。
 サトシとユリーカのセックスを止めなかった理由を、4人の関係が壊れるのを恐れたからだと、でっち上げたのです。

 ……いえ、半分は嘘ではありません。僕が見て見ぬふりをしていれば、みんなこれまで通りに過ごせる……そう思ったのは確かです。
 けれど……その一方で、サトシとユリーカのセックスを観賞しながら抜いていたという事は、伏せたのです。ユリーカが快楽に喘ぐ姿に興奮させられていた事は、決して言い出せませんでした。

 奇しくも、セレナがその話を不審がる様子はありませんでした。先ほどはすぐに嘘を見抜いていただけに、内心ほっとします。

 けれど……僕が妹を守れなかった無様な兄なのだけは、揺るぎない事実です。セレナが僕を軽蔑するには十分でしょう。

 一方で、サトシの事は、どう思ったのでしょうか……? 好きな人が、自分以外の……それも未成熟な少女を乱暴に犯していたなんて、とても受け入れられない話でしょう。

 そんな話はデタラメだ、と思われてもしょうがないくらいです。セレナはサトシをとても慕っていました。サトシへの信頼も人一倍のはずで、僕の話を信じられなくても不思議ではないのです。

 それもあって、サトシの裏の顔を伝える事は気が引けたのです。もし僕の話を信じて貰えず、嘘つきのレッテルを貼られてしまったら、セレナの協力は得られなくなってしまうかもしれないからです。

 ―――セレナ……どうか、信じて下さい……。
 ▼ 266 ミツハニー@ヘラクロスナイト 18/12/12 00:33:44 ID:3HkwgpIU [5/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 「シトロン……」

 ややあって、セレナが固そうな唇を動かしました。視線は僕の瞳に向けられていて、真実を探るかのようです。
 果たして彼女の口から飛び出た言葉は、僕の想像通りでした。

 「今までの話……全部嘘じゃないって、断言できるのよね……?」

 ―――やはり、疑われてしまいますか……。

 恐れていた展開……セレナが味方になってくれないかもしれない事態に、僕は冷や汗が頬をつたうのを覚えました。
 しかし、ここで引いてしまっては、本当に信用を得られなくなってしまいます。僕とユリーカのこじれた関係を修復するには、どうしてもセレナの助力が必要です。


 僕は拳を握りしめて、真っ直ぐにセレナを見つめ返しながら、答えました。


 「……全部本当です。断言します」



 そしてセレナは―――



 「そう……………………分かったわ、シトロン。信じる」



 ―――全ての不安を拭い去ってくれるような、曇りない笑顔を見せてくれました。

 ▼ 267 ゴルバット@きれいなウロコ 18/12/12 01:02:48 ID:S1MMT8J. NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
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 ▼ 268 ナゾノクサ@シルクのスカーフ 18/12/12 01:11:32 ID:NArQm88Q NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
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 ▼ 269 オシャマリ@カイスのみ 18/12/12 04:31:26 ID:iSrsZnMM NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
後ろにBGM欲しいと思った

支援
 ▼ 271 エレキブル@リピートボール 18/12/17 00:44:04 ID:IseoXocM [1/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 「ほ、本当に信じてくれるのですか……?」

 「当たり前じゃない。シトロンがユリーカの事でおかしな事を言うはず、ないもの」

 「あ…ありがとうございます…!」

 セレナの言葉が、胸に風を吹かせるかのようでした。一瞬前の不安を全て吹き飛ばしてくれて、感謝の想いだけが残りました。

 「それじゃあ……」

 セレナはにこりと笑うと、画面の端で何か手を動かしながら、今後の事について話し始めました。

 「今心配なのは、サトシが来たら、またユリーカに手を出しちゃわないかという事ね」

 「そう、ですね……ただサトシが来るのは明後日なので、僕としては、まずはユリーカを宥めて、話し合いが出来ればと思うんですけど……」

 「分かってるわ。ユリーカにもちゃんとシトロンの気持ちを分かって貰う必要がある。でも、今すぐには無理だと思うわ」

 「ど、どうしてですか……?」

 「ユリーカはただ拗ねてるだけじゃないのよ。立ち直るだけでも、かなりの時間がかかると思う」

 ―――拗ねているだけじゃない……? 一体どういう意味なのですか?
 訳が分からず、きょとんとしてしまった僕は、即座にセレナに心の内を見抜かれました。

 「シトロン……もし私がユリーカの立場なら、きっと同じようにガッカリしてるわ」

 「ええ!? ぼ、僕、そんなにまずいんですか……!?」

 「はあ……ユリーカが心配してお嫁さん探しをしちゃうのも、頷けるわ」

 ほとほと呆れ果てたと言わんばかりのセレナ。僕は混乱したまま何も言い返せず、ただ縮こまるしかありませんでした。

 「いい? シトロン。ユリーカが落ち込んでるのはね…………」

 本当はこういうの、口に出さず察してあげるべきなんだけど……と、断りをいれるセレナ。画面に顔を近づけ、誰もいないのに内緒話でもするように手を口の横に持ち上げまして言いました。

 「失恋のショックで落ち込んでるのよ」

 ……………………………………………………………………はい?
 ▼ 272 スバメ@ミストシード 18/12/17 00:50:36 ID:IseoXocM [2/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 「しつ、れん……?」

 「そう」

 大真面目な顔で、セレナは言い切りました。
 僕はと言うと、目を丸くし、開いた口が塞がらなくなってしまいました。

 ―――セレナの言っている事は、つまり……ユリーカは僕の事を……。

 「そこまで落ち込むなんて、そうとしか思えないじゃない」

 「い、いえ……落ち込んでいるというか、あれはへそ曲げてるというか……」

 あまりに突拍子もない話に、狼狽えるしかありませんでした。僕はずっと、ユリーカはただ本能的なセックスを求めているだけだと思っていました。つまり、そこに人としての恋愛感情はあるはずが無いと考えていたのです。
 けれど、セレナはどうやら、全く違う観点から問題を見ているようでした。ユリーカの気持ちが本物だからこそ、この現状に至ったのだと主張しているのです。

 「もちろん、気持ちの伝え方として正しい訳じゃないわ。そこはサトシとの経験がユリーカにそうさせてしまったのだと思う」

 「けど……どっちにしろ、僕はそれに応えられないですよ。兄妹なんですから」

 急に恋の話になって、少々むず痒さを覚えつつ、どうにか答える僕。

 「分かってるわ。あくまで応じないというのは、間違ってない。ただ……フラれる側は、そう簡単に割り切れるものじゃないから……」

 そう言うセレナの目は、どこか哀愁を帯びているように感じられました。まるで同じ思いを経験してきたかのようです。

 ―――フラれる側……。

 ひょっとしてセレナは、既にサトシに想いを告げていたのでしょうか……?
 僕が知らなかっただけで、セレナの恋は決着がついていたのでしょうか……?

 分かりません。セレナもサトシも、最後まで何も言わなかった。
 いえ、サトシはともかく、セレナは仕方ないのかもしれません。もしそうだとして……失恋の苦い思い出なんて、とても口に出来るものではないでしょう。

 ―――ああ、だから……。

 だからセレナは呆れたんですね。僕が、ユリーカの気持ちに気付いてない事に……。

 ―――口にすべきではない。けれど、察してあげなければならないと言った意味が、今ようやく分かりました。

 「……僕は、駄目な兄ですね」

 「どうしたの、急に?」

 「……いえ、なんでも」

 「シトロンは間違った事はしてないって言ったじゃない。自信をもって」

 にこりと笑ってフォローしてくれる。内に潜めた想いを感じさせない振る舞いに、いじらしささえ感じられました。
 しかし……言葉が少し胸を抉るようでもありました。セレナが思っているほどに、僕は潔癖ではありません。間違いを犯した事実を、隠しているのですから。
 ▼ 273 ピジョット@パイルのみ 18/12/17 00:53:10 ID:IseoXocM [3/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 「それで……僕はどうすればいいのでしょうか?」

 「シトロンはこれまで通りにしてて。変に突き放したり、機嫌を取るような事はしなくていいわ。ありのままに……でも、放っておくような事は絶対ダメよ」

 「わ、分かりました……」

 聞いていて非常に微妙なラインだと思いました。正確に実行できるか、自信が湧きません。

 「それから……」

 セレナは、一呼吸おいてから、続けました。



 「サトシについては、私が話をつけるわ」



 「え?」


 聞き間違いかと思うような発言に、僕は思わず聞き返してしまいました。
 ―――話をつけるって……セレナが?

 「だから、そう言ったの」

 セレナは至って真剣な顔で答えました。まさに寝耳に水の展開に、僕は慌てて手を振ります。

 「い、いや、そこまでしてくれなくても……第一、どうやって?」

 「もちろん、直接会って話をするに決まってるじゃない」

 「だって、来るのは明後日ですよ? 今セレナは、ホウエン地方にいるはずじゃあ……」

 「うん。だけど、大丈夫。ギリギリ間に合うと思うわ」

 セレナはそう言って、自分のガイド用端末を画面にかざす。ホウエン地方のマップが表示されていました。

 「今キンセツシティにいるの。この間は……ここ、シダケタウンでコンテストの大会をやって……次はこっち、カイナシティに行く予定だったの。そのカイナシティから船が出てて、すぐに空港まで行けるようになってるの」

 順番に町を指で指し示す。コンテストの大会をしたという町にはマーキングがされており、それと同じマーキングが、目的の町にも記されていました。
 僕は、その意味をすぐに理解しました。

 「セレナ……もしかして、次の大会が開かれるのって、そこじゃないんですか?」

 「……うん、実はそうなの。でも、気にしないで。コンテストは、またあるから」

 セレナはそう言って笑顔を作る。しかし、ポケモンコンテストでは本選出場に五つものリボンを集める必要がある事を、僕は知っています。

 ―――まだリボンを獲得できていないセレナが、そんなに楽観視していられるはずがありません。

 「駄目ですよ、セレナ! そこまで迷惑はかけられません!」

 「ううん、もう決めたから。大切な友達が困っているのに、駆け付けない訳にはいかないもの」

 思い直すよう訴えるも、セレナの意志は変わらず。右手に持っていたガイド用端末を下げると、代わりに2枚の紙を持ち上げて見せました。

 「私はカロスに戻るわ」

 ―――その手にあったのは、船の搭乗券と、ラティアス空港のチケットでした。
 ▼ 275 ピッピ@フラットコール 18/12/17 03:11:11 ID:8ilgNjc2 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 276 ヨルノズク@ドリームボール 18/12/18 02:45:25 ID:7l0oroQg [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 「もう発行しちゃった」

 ちょっぴり舌を出して、ウインクをしてみせるセレナ。先ほど手を動かしていたのは、このチケットを予約していたのだと理解しました。

 僕は―――僕は何と言えばいいのか、言葉もありませんでした。
 セレナの心遣いに、ただただ、感謝の気持ちが溢れて……。

 ……瞳が潤んでゆくのを感じました。

 ―――こんなにも、親身になってくれるなんて……。

 セレナにとって、コンテストへの出場は決してお遊びではない。自分の夢を叶える為の、大切なステップなのです。しかし、それを投げだしてでも、彼女は僕らのもとへ駆けつけると言うのです。


 “仲間”の絆を、感じずにはいられませんでした。


 「もう、シトロン。感動しすぎ」

 「だ、だって……」

 僕はもう、頭も上がらず……。

 恥ずかしくて、顔を手で覆い隠すしかありませんでした。
 ▼ 277 ムチュール@レッドカード 18/12/18 03:06:16 ID:7l0oroQg [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




 「……シトロン。ユリーカのやっている事も、サトシがした事も、両方とも間違ってる」

 ―――やや置いて、セレナが静かに語り始めました。

 「こんな事になったなんて、正直、今でも信じられないくらい。でも、私はシトロンの話を信じる。だから―――」

 目を塞いでいた手をどかし、画面の向こうの彼女を見やる。決意を湛えた相貌が、そこにありました。

 「―――絶対に止めさせましょう」

 「……………………はい」




 話はそこまでになりました。
 セレナは、すぐに出発しないと間に合わないという事で、そのまま通信を切りました。
 カロスへの到着時間などは、メッセージツールでおって伝えるとだけ言い残して。

 僕は、部屋の時計に目を向けました。とっくに朝の時間は過ぎていて、太陽がプリズムタワーの真上に来ている頃でした。驚くほど長く話し込んでしまっていたのです。

 僕はしばらく、大きな安堵感の余韻に浸っていました。セレナが最後に残した一言が、抱えていた疑問と不安を払拭してくれていました。

 ―――ユリーカのやっている事も、サトシがした事も、両方とも間違ってる―――

 僕はずっと、ユリーカの行為に応じるべきか否か、迷っていました。
 ユリーカとサトシの仲を、認めるべきか否か、迷っていました。

 けれども、セレナは間違っていると、断言してくれたのです。
 それが今の僕には、何よりも強い支えになってくれました。

 セレナに相談して良かったと、本当に思いました。


 ……ユリーカの状況を失恋と判断したのは、ちょっと予想外でしたけど。
 ▼ 278 ピカチュウ@すいせいのかけら 18/12/19 03:50:59 ID:vrYEUlKY NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
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 ▼ 279 オニドリル@ちからのハチマキ 18/12/19 22:47:08 ID:w4Ygk5TI NGネーム登録 NGID登録 報告
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 ▼ 280 ヌマクロー@ゴージャスボール 18/12/22 02:09:24 ID:J3fEzZlE [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

セレナとの話を終え―――

 僕は確かな進展を実感しつつも、そろそろ日常に戻らなければならないと考えていました。ジムの事を、シトロイドに任せきりにしています。一応はジムリーダーの代行が出来るとは言っても、シトロイドに出来ない仕事も勿論あります。僕がやらなくては、ミアレジムは正しく回りません。
 その前に、もう一度ユリーカの所へ行く事にしました。リビングを通った時、朝食が未だ手付かずのままだったのを見たのです。きっとまだ部屋から出ていないのだと思い、少し躊躇いつつも、注意をする事にしました。

 「ユリーカ……まだ起きてこないのかい?」

 妹の部屋の前で、ドアをノックして呼びかける。相も変わらず、中からは返事は返ってきませんでした。
 こんな時間まで部屋の中に閉じこもるのは、あまり関心しない。いくら―――もし仮に、セレナの言う通りだとして―――失恋で落ち込んでると言っても、栄養は取らないと体に毒です。間違いでなければ、ユリーカは昨日の晩から何も食べてないはずです。
 僕はじれったい気持ちを抑えて、冷静にセレナの言葉を思い返しました。突き放したり、機嫌を取るような事をする必要は無い。これまでと同じ、兄妹としての接し方をするようにと言っていました。

 「……ユリーカ、僕はそろそろジムの仕事をしに行かなくちゃいけない。朝ごはんはラップに包んで冷蔵庫に入れておいたから、起きたら必ず食べるんだよ」

 それだけを言い、僕は部屋の前から立ち去りました。
 これでいい。どの道無理に言っても、今のユリーカは聞く耳を持ってくれないでしょう。落ち着くまで待つしかない……と、自分に言い聞かせて。



 ……部屋の中まで確認しなかったのは、僕の落ち度です。



 間もなく僕は、異変に気付かされました。
 ポケモン達にご飯を与える時間になって、一匹がいない事に気付いたのです。


 その一匹とは、紛れもなくあの子―――


 ユリーカが最も大切にしている、デデンネです。
 ▼ 281 ゼクロム@ポフィンケース 18/12/22 02:10:30 ID:J3fEzZlE [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 「まさか……ユリーカが?」

 ミアレジムには、ポケモン達を休ませるための、専用の部屋を作ってあります。モンスターボールに入れたポケモン達を置いておく為の部屋です。
 僕のポケモンはみなそこで夜を過ごしますが、デデンネだけは例外で、普段はユリーカと一緒に寝るのが日常でした。しかし、昨日の夜は、ユリーカの部屋にデデンネはいなかった。

 ……僕をセックスに誘う為に、ユリーカはデデンネをポケモン専用部屋に預けていったはずでした。

 「シトロイドなら、知っているはず……」

 今日の朝は、ジムリーダー代行の役目を負ったシトロイドが、この部屋を訪れています。その時、デデンネのモンスターボールを見なかったでしょうか……?

 「ハイ。朝ニデデンネノモンスターボールガアルノヲ見カケマシタ」

 問い質して見れば、予想通り。確かに朝の時点では、デデンネのモンスターボールはここにあったようです。
 この部屋はポケモン泥棒対策として、キーコードを知る者しか入る事が出来ないようになっています。そのコードを知っているのは、僕と、シトロイドと、ユリーカの3人のみ。後は誰も入る事が出来ません。

 ……ユリーカはいつの間にか部屋から出て、デデンネのモンスターボールを回収したという事です。

 それだけなら、別段問題はありませんでした。ようやくユリーカが部屋から出た明確な証拠だったからです。
 しかし、虫の知らせと言いましょうか……妙な胸騒ぎを覚えた僕は、ユリーカの部屋に急行しました。
 そして僕はそこで―――


 ―――もぬけの殻となった部屋を目の当たりにしました。
 ▼ 283 キリキザン@イリマのノーマルZ 18/12/22 23:32:18 ID:4oOAIkbs NGネーム登録 NGID登録 報告
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 ▼ 284 ハギギシリ@リンドのみ 18/12/29 16:02:55 ID:vTog40.g NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
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 ▼ 285 マシェード@だいだいバッジ 18/12/31 18:36:29 ID:0u9suCyM NGネーム登録 NGID登録 報告
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 ▼ 286 ププリン@はいぶくろ 19/01/01 02:06:40 ID:w5kQb4qM NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 ―――こんなの異常だ……。

 ユリーカが、何も言わずに出かけるなどあり得ません。いつも、出掛ける時は必ず伝えるように言いつけてきたのです。
 だから、ユリーカがデデンネを連れて忽然と姿を消した事実に、僕は動揺を禁じ得ませんでした。

 今朝に頭をよぎった不安が、ここにきて再浮上してきました。もしかして本当に、家出をしてしまったのでは……?

 「……そんな事、ないですよね、ユリーカ……?」

 ぽつりと零した一言が、とても空しいと感じられました。

 プリズムタワーの管理室へ行き、数多ある防犯用監視カメラを通じてユリーカを探しましたが、影も形もありませんでした。
 職員に聞いても、ユリーカをタワー内で見かけた者は殆どおらず、ただ一人の目撃者によると、出入り口に続く通路を歩いていたと言います。

 ユリーカが外へ向かったのは、間違いないと見ていいでしょう。

 外へ向かっている所を見られたのは、ほぼ正午の時刻。セレナと話し込んでいる間に抜け出て行ったのでしょう。
 一度は部屋まで赴いたにもかかわらず、僕は3時間もの間、妹の不在に気付かなかったのです。

 自分の不甲斐なさに歯ぎしりする思いでしたが、心の中にはもう一つ、疑問の念が浮かび上がっていました。

 ―――どうして急にこんな行動を?

 ユリーカの考えが、よく分かりませんでした。塞ぎこんで閉じこもっていたかと思えば、黙って外出して……僕への当てつけなのでしょうか?
 単なる反抗期であれば、それほど心配する必要も無いのですが……。

 僕は何度もユリーカのポケギアに電話を入れました。部屋を確認した時、ポケギアは残っていなかった。今もユリーカの手元にあるはずでしたが、しかし一向に呼びかけに応じてくれませんでした。徹底的に無視されているのです。

 ―――探し出さなきゃ―――

 過保護かもしれないと思いつつ、こんな状況で不自然な行動を取る妹を放っておく事など出来ず、僕は連れ戻す事に決めました。

 「結局、今日一日ジムをシトロイドに任せきりにするしか無さそうですね……」
 ▼ 288 ヒメグマ@まるいおまもり 19/01/01 11:08:21 ID:X9YQxBgk NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
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 ▼ 289 ルクシオ@スピードパウダー 19/01/07 20:27:19 ID:T3Ss8jt2 NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
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 ▼ 290 ポッチャマ@しずくプレート 19/01/10 18:59:44 ID:7xL6udsY NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
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 ▼ 291 ネイティオ@コンペボール 19/01/11 00:47:55 ID:9elsHLIM [1/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

ユリーカの行き先について、心当たりのある場所は無い……かといって、広く複雑なミアレシティを闇雲に探したのでは、明日になっても見つかりっこありません。
 しかし、心配は無用。僕には、ユリーカを見つけ出すアテがありました。

 まさか、こんな場面で役に立つ事になるなんて、思いもしませんでしたが……。


 「今こそ、サイエンスが未来を切り開く時、ですね」


 それは僕がつい先日完成させたばかりの発明品でした。元々は、体温から生体を探知するマシンでしたが、僕はこれを更に改良させ、人々の役に立てる装置へと進化させました。
 ポケモンの出す特殊なパルスを広範囲で探知・解析する事により、そのポケモンの種類を特定し、個体単位で識別が出来るというナイスなマシンなのです!

 カロスリーグ時のフレア団の起こした騒動により、共に暮らすポケモンが行方不明になってしまった家庭は少なくありませんでした。大切な家族を失ってしまった苦しみは、とても言葉に出来ないほどです。彼らのポケモンをどうにか見つけられないか……そう思っていた所に、協会より装置の開発をして欲しいという依頼が舞い込んできたのです。開発費も援助してくれるとあって、僕はためらう事なく承諾したのでした。

 ―――過去に造った時は、そこの関係で、生体の特定までは出来ませんでしたからね……。

 そんな経緯から、僕は何日もかけてこの装置の発明に取り組み、一昨日にようやく完成させる事が出来ました。この装置が完成した時は思わず舞い上がるほど喜んだものです。しかし、完成の為に遅くまで残ってしまったばかりに、ユリーカの自慰の現場を見てしまう事になってしまったのですが……。

 ―――今度こそ、僕の役に立ってくださいね。

 僕はマシンのスイッチをオンにしました。探知対象はあくまでポケモンで、人間を探すのには使えませんが……あのポケモンを探せば、ユリーカの居場所も自ずと判明します。

 それは勿論、デデンネ―――
 ▼ 292 ラランテス@ブロムヘキシン 19/01/11 00:51:13 ID:9elsHLIM [2/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 コミカルな電子音を鳴らしながら、装置が起動する。プリズムタワーの中枢システムにアクセスし、ミアレシティの随所に設置された探知用アンテナを稼働させる。

 間もなく、ミアレシティ全土をカバーする探知システムが目覚めました。

 本当は、まだ完成の報せを昨日協会に報告したばかりで、使用の許可は下りてはいないのですが……今回ばかりは事情が事情。後で上手く誤魔化しておきましょう。

 装置の画面には、すぐさま大量のポケモンがリストになって表示されました。ミアレシティに住まう全てのポケモンが、種類も居場所も、この画面一つで確認できます。

 「……悪用されたら、きっと大変な事になりますね」

 パンドラの箱を開けたような気分をわずかに感じながら、僕は画面を操作する。詳細設定から、探知対象をでんきタイプに絞りました。更に探知条件に「登録済み」を指定する。こうする事で、モンスターボールに捕獲されていない野生のポケモン―――例えば下水道などに生息しているポケモン達―――を除外する事が出来ます。
 すると、リストから対象外の項目が消え、わずか数十匹のポケモンのみが残りました。この町で、人にゲットされて暮らしているでんきタイプのポケモンは、存外少ないという事です。リストにはそのポケモンの種類と保護済みかどうかが表示され、そして、画面内のマップに、黄色いマークでそのポケモンの居場所が示されていました。

 目当てのデデンネは———いました。プリズムタワーより北東、ノースサイドストリートから反応が見つかりました。ちょうどイベールアベニューの突き当りにある建物にいます。

 僕は疑問に首をかしげました。
 ユリーカはあんな所へ何をしに行ったのでしょう?

 予想もしていませんでした。ノースサイドストリートは、ユリーカが普段から行くような場所ではありません。ユリーカがよく行く場所としては、様々なお店が並ぶブランタンアベニューか、サロンやプラターヌ博士の研究所があるサウスサイドストリートが主です。北の方には、自分の記憶の限りでは、ユリーカの興味を引くものはなかったはずです。

 ———あの場所には何があったでしょうか……?

 思い出そうとして眉間にしわを寄せていた僕は、ふと、画面の中の気になるものに意識を奪われました。デデンネがいるとされる建物に、別のでんきタイプのポケモンもいると表示されているのです。そのポケモンの種類をリストから確認した僕は……

 ……全身に、電流の様な悪寒が走るのを覚えました。



 もう一匹のでんきタイプのポケモンの種類は―――ピカチュウでした。
 ▼ 293 カメックス@ポイズンメモリ 19/01/11 00:53:28 ID:9elsHLIM [3/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 コミカルな電子音を鳴らしながら、装置が起動する。プリズムタワーの中枢システムにアクセスし、ミアレシティの随所に設置された探知用アンテナを稼働させる。

 間もなく、ミアレシティ全土をカバーする探知システムが目覚めました。

 本当は、まだ完成の報せを昨日協会に報告したばかりで、使用の許可は下りてはいないのですが……今回ばかりは事情が事情。後で上手く誤魔化しておきましょう。

 装置の画面には、すぐさま大量のポケモンがリストになって表示されました。ミアレシティに住まう全てのポケモンが、種類も居場所も、この画面一つで確認できます。

 「……悪用されたら、きっと大変な事になりますね」

 パンドラの箱を開けたような気分をわずかに感じながら、僕は画面を操作する。詳細設定から、探知対象をでんきタイプに絞りました。更に探知条件に「登録済み」を指定する。こうする事で、モンスターボールに捕獲されていない野生のポケモン―――例えば下水道などに生息しているポケモン達―――を除外する事が出来ます。
 すると、リストから対象外の項目が消え、わずか数十匹のポケモンのみが残りました。この町で、人にゲットされて暮らしているでんきタイプのポケモンは、存外少ないという事です。リストにはそのポケモンの種類と保護済みかどうかが表示され、そして、画面内のマップに、黄色いマークでそのポケモンの居場所が示されていました。

 目当てのデデンネは―――いました。プリズムタワーより北東、ノースサイドストリートから反応が見つかりました。ちょうどイベールアベニューの突き当りにある建物にいます。

 僕は疑問に首をかしげました。
 ユリーカはあんな所へ何をしに行ったのでしょう?

 予想もしていませんでした。ノースサイドストリートは、ユリーカが普段から行くような場所ではありません。ユリーカがよく行く場所としては、様々なお店が並ぶブランタンアベニューか、サロンやプラターヌ博士の研究所があるサウスサイドストリートが主です。北の方には、自分の記憶の限りでは、ユリーカの興味を引くものはなかったはずです。

 ―――あの場所には何があったでしょうか……?

 思い出そうとして眉間にしわを寄せていた僕は、ふと、画面の中の気になるものに意識を奪われました。デデンネがいるとされる建物に、別のでんきタイプのポケモンもいると表示されているのです。そのポケモンの種類をリストから確認した僕は……

 ……全身に、電流の様な悪寒が走るのを覚えました。



 もう一匹のでんきタイプのポケモンの種類は―――ピカチュウでした。
 ▼ 294 クルミル@きれいなハネ 19/01/11 01:15:34 ID:/yvE9ct6 NGネーム登録 NGID登録 報告
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 ▼ 295 ドッコラー@オレンのみ 19/01/11 21:42:26 ID:3EJomx7c NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
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 ▼ 296 テラキオン@メトロノーム 19/01/17 00:19:01 ID:XKSYFLJk [1/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 ―――嘘だ……。

 僕は、目を疑わずにはいられませんでした。食い入るように、画面の表示を見つめます。
 間違いなく、デデンネと同じ場所に、ピカチュウがいると表示されていました。

 「いや、そんなハズはありません……偶然に決まっています……」

 そうです。そんな訳があるものですか。


 ―――サトシがもう来ているなんて、あり得ない!


 心臓が、どくどくと激しく脈打ち始めていました。嫌な予感が間欠泉のように湧き上がって、汗となって吹き出していきます。

 約束では、サトシが来るのは、まだ明後日のはず―――このピカチュウがサトシのピカチュウであるはずがありません。

 「きっと、たまたまピカチュウを連れたトレーナーがそこにいるだけです……」

 そう自分に言い聞かせて、僕は必死に焦燥を抑え込もうとしました。そしてその時、このマシンの備わるもう一つの機能を思い出しました。

 登録済みのポケモン―――つまり、人に飼われているポケモンは、その親トレーナーの情報がポケモン協会に登録されている。そしてその情報は、このマシンで参照できるのです。このマシンのシステムはポケモン協会の協力の元に造られている為、協会が有するトレーナー情報も、見る事が出来るのです。

 ―――このピカチュウの、親トレーナーの情報を見れば……。

 誰のピカチュウであるか、判明します。しかし、それは完全に個人情報を無断で覗く事になる。近年高まる個人情報の保護意識を考慮すれば、こればかりは出来心で手出しする事は許されません。トレーナー情報へのアクセスは協会に完全監視されているので、バレなきゃいいという話でもありません。

 「……直接行って、確かめるしかありません!」

 言うが早いか、僕は矢も盾もたまらず飛び出しました。イベールアベニューの通りに向かって、全速力で―――
 ▼ 297 メガエルレイド@クロスメール 19/01/17 00:19:39 ID:XKSYFLJk [2/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 違う、絶対に人違いだと、口に出しては唾を呑んで―――


 そんな言葉とは裏腹に、頭の中は嫌な推察が目まぐるしく飛び交っていました。


 デデンネとピカチュウがいる建物は何だったか? ―――グランド“ホテル”、シュールリッシュ。


 何故ユリーカは急に部屋を出たのか? ―――サトシはいつでもポケギアでユリーカを呼び出せる。


 セックスに飢えるユリーカが、サトシとホテルで密会する意味は? ―――そんな事は考えるまでもない。


 「違うと言って下さい…………ユリーカ…………!」


 全部思い過ごしであれと、願いました―――

 

日差しが傾いて、長い影を落とすイベールアベニューを抜けて、僕はグランドホテル・シュールリッシュにたどり着きました。肩で息をしながら、フロントの受付に飛び込みます。

 「す、すみません……こちらに、ユリーカ……このくらいの金髪の子が、来ませんでしたか?」

 手でユリーカの背丈を伝えると、受付の人はぴんと来たように目を瞬きました。

 「はい、確かに先ほどご来店されました。恐れ入りますが、ご関係は?」

 「僕の妹なんです。どの部屋に行ったか、教えて貰えませんか?」

 ―――――――――

 間もなく、僕は受付の人に言われた部屋の前まで来ました。ここに、ユリーカが来ているはずです。

 ―――受付の人が言っていた、“付き添いの少年”と一緒に―――
 ▼ 298 ハーデリア@クロスメール 19/01/17 01:15:03 ID:xDA.x6KQ NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
まともなセレナがssで見られるのなんか嬉しい
 ▼ 299 サメハダー@トポのみ 19/01/17 02:52:40 ID:XKSYFLJk [3/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 ……ここまで来たら、希望なんてありはしないですね……。

 ピカチュウの存在。付き添いの少年。これらが指し示す現実は、もう見えていました。間違いなく彼です。

 こんなの話が違う……これじゃあ、出し抜いてるようなものじゃないですか……。そんな恨み言が心の底で渦巻いていました。彼に対しても、ユリーカに対しても。

 そして―――僕はドアをノックする事も出来ず、立ち尽くしていました。部屋の中から聞こえる声が、僕の体を強張らせていたのです。

 「…………ぁ…………っ……ん…………あぁ…………っ…………!」

 「……そんな激しい声を出したら……外の誰かに聞こえちゃうぞ……」

 激しい運動に息を乱すかのような少女の声と、それを面白がるような少年の声……。


 二人が今何をしているのか、もう答えは出ていました。




 ―――悔しい。

 部屋の中から聞こえる、腰を打つ音と妹の喘ぎ声を聞いていて、次第にはらわたが煮えくり返るのを覚えました。歯ぎしりを禁じ得ないほどの、怒りの感情が渦巻いていきます。

 みんな、僕を騙してるかのようでした。水曜日に来ると言っていたサトシが、もうミアレシティに来ている。ユリーカは失恋で落ち込んでいると言っていたセレナの、全く現(うつつ)に沿わない言葉。

 僕と繋がりたいのだと言っていたユリーカの、裏切りの様な行為―――


 ―――結局、人なんて嘘ばかりのいい加減なもの……科学のように、理路整然としていないのです……。
 ▼ 300 ビークイン@アゴのカセキ 19/01/17 02:55:33 ID:XKSYFLJk [4/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 無性に腹が立ちました。今すぐジムに帰って、二度と皆の顔を見なくて済む装置でも作りたい衝動に駆られました。こんなにも嫌な気持ちにさせられたのは、生まれて初めての事です。

 ―――だったらもう、勝手にすればいいじゃないですか……。

 烈火のごとき怒りが、黒煙となって心を濁らせる。信頼を踏み躙られた屈辱が、僕の人としての道徳心を排してしまおうとするかのようでした。
 もうユリーカを気に掛けるのはやめて、好きにさせてしまおうじゃないですか。ヤリたいだけヤレばいい。さぞ気持ちいいでしょう。
 僕はそれをおかずにすればいい。後ろめたさなんか忘れて、ただ本能の欲求に従って……。






 「…………………………はぁ。それが出来たら、どんなに楽だったか」

 大きなため息をついて、悶々とする感情を吐き捨てる。ここで自棄になっては、何の為にここまで来たか分からなくなる。それこそ理路整然としない行動です。

 そう告げる理性が、少しばかり鬱陶しいと思いました。
 ▼ 301 メテノ@まがったスプーン 19/01/17 03:19:22 ID:mpmQgcoY NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 302 フラベベ@グッズケース 19/01/17 03:45:44 ID:vw/gyYrg NGネーム登録 NGID登録 報告
他の人が書いた部分もちゃんと拾ってる有能
 ▼ 303 エレキッド@ポイントマックス 19/01/17 20:09:59 ID:t1fowil. NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
あまりの黒さに泣けてきた…
 ▼ 304 ビードル@まるいおまもり 19/01/18 23:19:23 ID:dN02Y/cc NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
BGMにLemonとか似合いそう
 ▼ 305 モンメン@レッドカード 19/01/19 02:48:10 ID:rPB2ibhw NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
R18のシリアスってなんか読んでると辛くなってくるんだよな
恐い方なら大丈夫なんだが…
何でだろ

支援
 ▼ 306 クマシュン@おおきなねっこ 19/01/20 01:08:57 ID:oCYoSSuI NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 307 ゴビット@きのはこ 19/01/21 00:15:09 ID:BOFIsohs [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 ややわだかまりを残しつつも、僕は自分のやるべき事をはっきりと理解していました。数時間前に、セレナと交わした会話が脳裏に浮かび上がります。

 ―――ユリーカのやっている事も、サトシがした事も、両方とも間違ってる。だから―――絶対に止めましょう。

 セレナはそう言いました。そして、僕もその意見に全面的に同意しています。だから……たとえサトシとユリーカが合意の上で性行為をしているのだとしても、認める訳にはいきませんでした。

 本当なら、初めて二人のセックスを見たその日に、二人を止めるべきだったのでしょう。それが出来なかったから、今この現実があるのです。

 後悔しても、何も無い。過去は変えられません。変えるなら……“今”しかありません。

 あの時出来なかった、やるべきだった事を、“今”やるしかないのです。

 ―――行きますよ。

 たとえどんな展開が待っていても、もう立ち止まる訳にはいきません。迷いを捨てて、覚悟を決めて……。

 僕はドアノブに手をかけました。
 ▼ 308 パールル@シュカのみ 19/01/21 00:16:06 ID:BOFIsohs [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 「ユリーカ!!」

 ドアを勢いよく開き、部屋に踏み入る。ベージュのカーテンで四方を囲まれた暗く狭い空間を、天井の電球が淡く照らしていました。部屋には大きな薄型のテレビと、簡素な机と、大きなベッドがあり―――そしてその上で、サトシとユリーカが、一糸まとわぬ姿で一つに繋がっていました。

 一瞬、時が凍り付くのを感じました。僕の突然の乱入に、二人は虚を突かれたかのように固まったのです。
 そして僕は、分かってはいたものの、望まなかった現実が目に飛び込んできて、やはり愕然とせざるを得ませんでした。見飽きるほどに見てきたはずなのに、二人のセックスの現場を見て、やるせなさが込み上げてきました。

 「……お、お兄ちゃん……」

 静寂を破ったのは、ユリーカでした。サトシを背に、全裸で四つん這いの姿勢を取るユリーカは、瞳孔を大きく開き、窮地に立たされたような、絶望した表情を浮かべていました。
 僕は、眉をひそめ、鋭い目つきで、ユリーカを睨みつけました。

 「ユリーカ。これはどういう事ですか。一体何をしているんですか!」

 「ち、違うの……、お兄ちゃん……これは……」

 「何が違うと言うのですか!」

 僕の強い口調に、ユリーカは押し黙ってしまいました。何と言えばいいのか分からないかのように、手を口に当てる。瞳がうるうると揺れ、今にも泣き出しそうです。

 そんなにきつい叱責をするつもりではなかったのですが、腹の底でくすぶる怒りの感情が、知らずに僕の言葉を尖らせていました。


 そしてその時―――


 「おいおいシトロン」

 興奮気味の僕の耳に、忌まわしい声が突き刺さる。

 「何をそんなに怒ってるんだよ。別に、知ってた事だろ?」

 ユリーカの腰を掴み、自分の股間にあてがった姿勢のまま―――


 サトシが不敵な笑みを浮かべました。
 ▼ 310 レックウザ@あくのジュエル 19/01/21 02:45:39 ID:gtXg0E1c NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 311 バニリッチ@きいろのバンダナ 19/01/24 00:12:30 ID:Jne.zDyA [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 「久しぶりだな。元気だったか?」

 サトシが、他愛ない再会の言葉を投げかけてくる。至ってシンプルで、自然な態度で―――

 ―――ユリーカのマンコに、己のペニスを突っ込んだままで。

 僕を見つめながら、サトシは腰をぐりぐりと動かして、ユリーカの膣内を堪能する。分厚く太いイチモツの刺激に弄ばれて、ユリーカは顔を歪ませ、頬を紅潮させていく。

 「…ん……!……くっ……///」

 押し殺そうとするも、否応なく洩れる甘い声。快感が酸素を奪うかのように、荒く呼吸を乱す。何の模様もない壁のカーテンを見上げるユリーカの虚ろな眼には、淡い雫が浮かんでいました。

 涙が出るほど、気持ちいい―――そんな心の声が聞こえてきそうでした。


 僕は、見つめているだけでした……。

 サトシの言葉にも、何も返せませんでした……。

 ……何もしようとしていないのではありません。


 ―――虚無へと消え入りそうな理性を掴むのに必死で、身動きが出来なかったのです。
 ▼ 312 ニドリーナ@ローラースケート 19/01/24 00:13:06 ID:Jne.zDyA [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 僕の中に巣くう、怒れる獅子が暴れ出さないよう、全力で抑え込みながら……僕は努めて平静な声を絞り出しました。

 「……何を言ってるんですか? サトシ……」

 堪えてても、顎が震えて、歯がかちかちと音を鳴らしそうでした。

 「何って……久しぶりの再会の、普通の挨拶じゃん」

 「こんな状況で何を言ってるんだって聞いてるんですよ!!」

 咆哮が部屋中に響き渡り、開きっぱなしのドアから廊下にまで反響しました。自分でも驚くほどの大声に、僕は慌ててドアを閉めました。

 はぁ、はぁと息を漏らす。サトシを一直線に見据える。彼は少し目を丸くしただけで、さほど意に介していないような顔でした。

 理解できない。正気の沙汰じゃない。友人の妹をレイプしていながら、何食わぬ顔で挨拶など、どうかしてるとしか言えない。

 破天荒だの、常識破りだの、そんな聞こえのいい言葉で済まされる範疇を超えています。

 「今すぐユリーカを放してください! すぐにです!」

 「だから、何をそんなに怒って―――」

 「いい加減にしてください!!」

 今にもサトシに掴みかかりそうになる体を、ぐっと堪えて訴える。腕はわなわなと震え、握った拳は痛みさえ走るほどでした。

 ……とても共に旅をした仲間の再会とは思えない。この上ない険悪な空気が、二人の間に立ち込めていました。
 数秒の息苦しい沈黙。一触即発と呼べるほど緊迫した時の果てに、サトシはやれやれといった風に頭をかき、ユリーカの股からペニスを抜きました。
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