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【バレンタインSS】スリーパー「恐怖のヒト喰い村」

 ▼ 1 トラポット◆Pcf6Vw29GM 20/02/14 20:30:15 ID:suwUd9i6 [1/39] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
少女「ねぇスリーパー、今日何の日か知ってる?」

スリーパー「あー……煮干しの日?」

少女「違う!」

スリーパー「ふんどしの日」

少女「もう!わざと言ってるでしょ! スリーパー、今日はバレンタインよ!わたしこの日をずっと楽しみにしてたの!
欲しいでしょ、チョコ?」

スリーパー「……あのさあ」

少女「何?」

スリーパー「今遭難中だからな?」
 ▼ 19 トラポット◆Pcf6Vw29GM 20/02/14 20:38:17 ID:suwUd9i6 [2/39] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
重心を低く。地面を蹴り出して一気に距離を詰める。

そこで初めて笑顔が消え、何かをこっちに投げてきた。それを避ける。

懐に入り込んだ。腕に力を込める。


スリーパー「サイコ
 ▼ 21 トラポット◆Pcf6Vw29GM 20/02/14 20:39:21 ID:suwUd9i6 [4/39] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

        「……ー!」

       「……ーパー!」

      「スリーパー!」





スリーパー「!?」
 ▼ 22 トラポット◆Pcf6Vw29GM 20/02/14 20:39:54 ID:suwUd9i6 [5/39] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
スリーパー「あ……何だ……?」

少女「やっと気がついた。もう!どうなるかと思った。わたしがわかる?」

スリーパー「わかる」

少女「あなたの名前は?」

スリーパー「スリーパー」

少女「わたしの本名は?」

スリーパー「サクラじゃなくてワスレナ……俺は一体……」


後ろで、カタカタと音が聞こえた。

振り向くと、それはダークボールだ。何か入っているが、あれはゲットされる動きじゃない。すぐに出てくるハズだ。


スリーパー「あれは?」

少女「後で説明するわ。とにかく逃げましょう」
 ▼ 23 トラポット◆Pcf6Vw29GM 20/02/14 20:40:10 ID:suwUd9i6 [6/39] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
主人について走り出す。

あんなに明るかった村は真っ暗だ。しかも、家々がみな崩れている。

まるで、最初から廃墟だったかのように──


スリーパー「なんだこれ……!」

少女「初めからこうだったわ。でもわたしたち気づかなかった!催眠術をかけられていたから!」


その時、ヤカンが沸いた時のような甲高い音が、後方で鳴り響いた。音は複数。

走りながら、思わず後ろに視線を向けた。

朽ちた木材の崩れ跡に、いつの間にか赤で頭を覆った村人たちがいた。
甲高い悲鳴を上げながら、こっちに向かって走って来ている。
 ▼ 24 トラポット◆Pcf6Vw29GM 20/02/14 20:40:26 ID:suwUd9i6 [7/39] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
人間なわけがない!


スリーパー「クソっ!」

少女「わっ!」


速すぎる。人間が走って逃げ切れるスピードじゃない!

主人を抱えて再び走るが、逃げ切れるか。
 ▼ 25 トラポット◆Pcf6Vw29GM 20/02/14 20:40:54 ID:suwUd9i6 [8/39] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
少女「ダメね、村から出る前に追い付かれる」

スリーパー「攻撃すれば時間は稼げねえか!?」

少女「攻撃が効くかどうかも、村を出たら安全かもわからないわ。でも……」


辺りを見回した後、続ける。


少女「アレが現れたのは、わたしたちがこの広場に出てから。ってことは、目……があるかはわからないけど、『見』ないとこっちがわからないんじゃ?」

スリーパー「じゃ、一旦隠れるか?」

少女「ええ!けむりだまを投げるから、あそこの建物の影に!」


アンダースローで弧を描いたけむりだまから、白い煙が広がった。
 ▼ 26 トラポット◆Pcf6Vw29GM 20/02/14 20:41:24 ID:suwUd9i6 [9/39] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
スリーパー「ハア、ハア……」

少女「一応は逃げ切れたみたいね」

スリーパー「いつ見つかるか、わからないけどな……」

少女「状況を整理するわ。スリーパー、あなたこの村に入るとき何か違和感がなかった?」

スリーパー「違和感……? あっ」


スリーパー『いや……なんか入りたくねえんだよ。エスパーの感だけど』

──その時、何か後ろが気になって振り向いた。

スリーパー((……?気のせいか))


スリーパー「何か……後ろに何かいた気がするんだよな。その後お前が走っていって……」

少女「わたしはあなたが『ここは暗いし危ないからさっさと村に行こう』って言うからついていったの」

スリーパー「……」

少女「……やっぱりあの時ね」
 ▼ 27 トラポット◆Pcf6Vw29GM 20/02/14 20:41:41 ID:suwUd9i6 [10/39] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
少女「この村に入った時から、いや入る前から催眠術はかかっていて……お互いに誘われて村に入り、廃墟を宿だと思って泊まって……」

少女「そして、あなたがボールから出されたタイミングで、『わたしに違和感を感じる』ような催眠術がかけられたのね」

スリーパー「あれか。本当に危なかった……あと少しでお前を殺すところだったよ」

スリーパー「しかし、一体誰なんだ? そんな催眠術をかけた奴は」

少女「一瞬だけ見たの。すごく暗くて見にくかったけど……」

少女「多分、カラマネロ」
 ▼ 28 トラポット◆Pcf6Vw29GM 20/02/14 20:41:59 ID:suwUd9i6 [11/39] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


カラマネロ   ぎゃくてんポケモン

ポケモンで 一番 強力な 催眠術を 使う。相手を 意のままに 操ってしまうのだ。(カロス図鑑)


少女「あなたにとっては穏やかじゃない存在ね」

スリーパー「……俺の唯一の個性、催眠術なんだがな……」

スリーパー「というか、お前よく催眠術が解けたな!? 俺でもかかったままだったぞ」

少女「わたし、催眠術にかかりにくい体質なのよね。誰かさんがずっとかけてたからもう慣れちゃった」

スリーパー「誤解を招く言い方はよせ」
 ▼ 29 トラポット◆Pcf6Vw29GM 20/02/14 20:42:15 ID:suwUd9i6 [12/39] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
少女「それと、ラジオよ。ニュースの日にちが違ってた」

スリーパー「いや、でも催眠術ってそういう違和感も消すようにかけるハズだぞ? 俺も聞いてたけど気にならなかった」

少女「………………だって」
 ▼ 30 トラポット◆Pcf6Vw29GM 20/02/14 20:42:32 ID:suwUd9i6 [13/39] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
鞄から取り出されたのは、きれいな包装紙の──


スリーパー「えっ」

少女「バレンタインでもなきゃ、こんなもの持ってるわけないじゃない」


────チョコレート。


スリーパー「お前……もう用意してたのか……?」
 ▼ 31 トラポット◆Pcf6Vw29GM 20/02/14 20:42:49 ID:suwUd9i6 [14/39] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
……ん? ということは。


スリーパー「もしかして、冒頭の会話って、チョコを渡す導入だったのか?」

少女「…………そうだけど?」
 ▼ 32 トラポット◆Pcf6Vw29GM 20/02/14 20:43:11 ID:suwUd9i6 [15/39] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

スリーパー「あー…………」


スリーパー『……甘いもん好きじゃねえんだよ。チョコはいらねえ』


スリーパー「……あの言い方はないな。悪かった」

少女「別に気にしてないわ」

スリーパー(めちゃくちゃ気にしてんじゃんか……)
 ▼ 33 トラポット◆Pcf6Vw29GM 20/02/14 20:43:28 ID:suwUd9i6 [16/39] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
少女「いいから、これからどうするか考えましょ」

スリーパー「お、おう。……しかし、カラマネロが原因だとして、目的は何だ? あのままいけば俺はお前を殺してたぞ」

少女「……多分ね、わたしたちが体験したのは、あれはカラマネロの記憶ね」

少女「催眠術が解けた時、本来の記憶が少し見えたの。結構最近……数年前ね」

スリーパー「本来の記憶?」

少女「わたしたちと同じ状況だったわ。カラマネロは自分のトレーナーを殺したのよ」
 ▼ 34 トラポット◆Pcf6Vw29GM 20/02/14 20:43:43 ID:suwUd9i6 [17/39] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
スリーパー「自分のトレーナーを殺した……」

スリーパー「それで、俺も同じようにしようと? 意味が分からん」

少女「鈍いわね。だから、相手がチョコを持ってるかもしれないのにいらねえとか言っちゃうのよ」

スリーパー「ごめんて」
 ▼ 35 トラポット◆Pcf6Vw29GM 20/02/14 20:44:04 ID:suwUd9i6 [18/39] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

少女「……理由はどうだっていいの。ともかく、カラマネロはあなたにわたしを殺させようとした」

少女「催眠術が解けてたから、あなたの背後の暗闇に何かいるのが見えて……ポケモンであることに賭けて、ボールに入れたの」

少女「当然ゲットできるなんて思ってないわ。でも不意をついて一旦催眠術をリセットさせることに成功したの」


……そう言えば、こいつはめちゃくちゃ頭が良いんだった。忘れがちだが。


スリーパー「……逃げるにしても、どう逃げるかだな」

少女「村人もどきの数が多すぎるわ。一か八か攻撃してみましょ。蹴散らせるかも」
 ▼ 36 トラポット◆Pcf6Vw29GM 20/02/14 20:44:30 ID:suwUd9i6 [19/39] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

そう言って、彼女は鞄の中のわざマシンを確認し始めた。


スリーパー「……落ち着いてるよな、お前は」

少女「そう?」

スリーパー「そうだよ。悲鳴一つあげやしねえ。完全なホラー案件だってのに」

少女「どんな状況でもパニクれないってのも困りものよ?」

スリーパー「嫌味か?天才め」
 ▼ 37 トラポット◆Pcf6Vw29GM 20/02/14 20:44:52 ID:suwUd9i6 [20/39] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
少女「それに……いざという時はあなたがいるし」

スリーパー「へ」

少女「あなたがボールに入ってていない時は、結構焦ってたのよ?わたし」

少女「今までいろんなピンチがあったけど、結局一番頼りになるのはスリーパーね。だから、あなたが側にいれば落ち着いていられるの」

スリーパー「えっあっああ……そうかよ」
 ▼ 38 トラポット◆Pcf6Vw29GM 20/02/14 20:45:14 ID:suwUd9i6 [21/39] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
少女「まあ、鈍いし女心はわかってないし鈍いけどね」

スリーパー「おい鈍い2回言ったろお前」

少女「ほんと、大変なのよ? あなたはわたしの気持ち全然わかってくれないし」

少女「もう、いつになったら通じるのかしらね」

スリーパー「………………」

スリーパー「…………お前も」

少女「?」


腕を引いた。


スリーパー「大概だからな」





 ▼ 39 トラポット◆Pcf6Vw29GM 20/02/14 20:45:43 ID:suwUd9i6 [22/39] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告







少女「……唇かと思った」

スリーパー「なわけないだろ!」

スリーパー「で、もう準備は済んだのか?」

少女「え、ええ!ばっちり! あとはこのわざマシンで……」

「「じぶらでひるそびヴぁわざどにむり?」」

少女「ッ!」

スリーパー「ゲッ……!」


いつの間にか、村人もどきに囲まれている。


「「どばこれふぃじびねぞ?」」

「「ほがぢきぴれろがでゃびみでべ?」」


喋っている?
が、言葉は支離滅裂だ。赤いコーンのような、その物体の奥に、人間の頭は無いのかもしれない。
 ▼ 40 トラポット◆Pcf6Vw29GM 20/02/14 20:45:59 ID:suwUd9i6 [23/39] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
少女「スリーパー!」

スリーパー「……っああ!」


わざマシンから既に技は読み取れてる。さあ、効け!


スリーパー「『マジカルシャイン』!」


白い光が辺りを飲み込んだ。

鳴き声が消えたと思って村人もどきを見れば、そこには頭を覆っていた被り物と服だけが落ちている。


スリーパー「効いたのか……!?」

少女「そう思いたいわね、早く行きましょう!」
 ▼ 41 トラポット◆Pcf6Vw29GM 20/02/14 20:46:20 ID:suwUd9i6 [24/39] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
村人もどきが全て俺たちのもとに集まっていたのか、広場に出ても何も現れなかった。

周囲に警戒しながら出口へと進む。

空には月が出ていた。半分ほど雲に隠れている。

なぜだか、あれが全部隠れたらマズい気がした。


──後方に寒気、


スリーパー「伏せろ!」

少女「!」

スリーパー「『マジカルシャイン』!」


放たれた光は暗闇を一瞬白に染めた。

そうして、こちらも目が眩んでいる、その隙間を縫って。


少女「スリーパー、『サイコカッター』!」

スリーパー「っ」


俺たちを狙ったシャドーボールと、サイコカッターの刃がぶつかって、派手な爆発を引き起こす。

爆風の向こうに、『それ』は、いた。
 ▼ 42 トラポット◆Pcf6Vw29GM 20/02/14 20:46:36 ID:suwUd9i6 [25/39] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
スリーパー「カラマネロ……!?」

少女「大きい……!」


カラマネロは図鑑に載っているそのサイズの、優に5倍はあった。
怨念があそこまでカラマネロを大きくしたのか、催眠術で自分を大きく見せているのかはわからない。

たなびく触手は、水中の髪のようだった。
 ▼ 43 トラポット◆Pcf6Vw29GM 20/02/14 20:47:25 ID:suwUd9i6 [26/39] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
カラマネロ「「ヨコセ……」」

スリーパー「『マジカルシャイン』!」


光はカラマネロを飲み込む。確かに当たった、でも効いている様子はない。


カラマネロ「「ヨコセェェェエエエエ!!」」

スリーパー「っマズい!」

少女「あっ!」


ばかぢから。巨大な触手が今いた地面を抉り取っていった。スピードもパワーも驚異的だ。主人を抱えて飛び退くので精一杯だった。
 ▼ 44 トラポット◆Pcf6Vw29GM 20/02/14 20:47:48 ID:suwUd9i6 [27/39] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
スリーパー(これは倒せねえ……どうにか逃げられるか?)

少女「……ちょっといい」

スリーパー「おい、危ねえぞ!」


なにを思ったのか、こいつはカラマネロの前に立った。


少女「あなたの記憶、見たわ。……この村、もともとヤバい場所だったのね」


──追体験させられたカラマネロの記憶は昔のものではなく、ほんの数年前のものだった。

何があったのかは誰も知らない。でも確かに、この村に迷い込んだカラマネロのトレーナーは何かおぞましいものに変わってしまった。それをカラマネロは殺したのだった。


スリーパー(……もしあの時のあいつへの違和感が本物だったら)


ゾッとした。俺は偽物だと思って攻撃しようとしたが、殺した結果本人で、もう戻って来ないのだとしたら──きっと、狂っただろう。
 ▼ 45 トラポット◆Pcf6Vw29GM 20/02/14 20:48:06 ID:suwUd9i6 [28/39] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
少女「村をめちゃくちゃに壊したのはあなたね?
あの建物、崩れてからそう何十年も経ったものじゃなかったから……」

少女「そして誰もいなくなって……一人だったところに、同じ催眠術使いのエスパーが現れた」

少女「自分と同じ体験をさせて孤立させれば、一緒になってくれると思ったんでしょう?」

スリーパー「えっ」

少女「わかるわよ。あなたの性別も何が好きなのかも知らないけど、男前だものね。欲しくもなるわ」


その場でカラマネロの触手だけが、ゆらゆらと揺れ動いていた。
 ▼ 46 トラポット◆Pcf6Vw29GM 20/02/14 20:48:43 ID:suwUd9i6 [29/39] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

少女「でもダメね。あなた、彼のこと何も知らないんだから」

少女「彼はね、すごく鈍いし素っ気ないし、気を遣ったつもりで大事なことはその時言わないような男よ」

スリーパー「おい」

少女「こんな──回りくどい方法で、何か伝わると思った?」

少女「好きは伝えなきゃなんの意味も無い。それこそバレンタインにチョコを渡すぐらいしないと!」

少女「臆病な方法で人から奪おうとしたあなたは、土俵にすら立てていないのよ!」


カラマネロ「「…………!」」
 ▼ 47 トラポット◆Pcf6Vw29GM 20/02/14 20:49:03 ID:suwUd9i6 [30/39] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
激昂。揺れていた触手が一点に狙いを定め、ミサイルのように降り注ぐ。


カラマネロ『────!!』

スリーパー「危ないッ!」

少女「大丈夫」


主人のいる場所で土煙があがる。だが、彼女は立ったまま、傷すらついていない。


少女「さすがに肝が冷えたけど……これ、実体じゃないわ」

スリーパー「肝が冷えたのはこっちのセリフだよ!」

スリーパー「って、実体が無いのかコイツ」


ふと暗くなり見上げると、月のほとんどが雲に隠れていた。
 ▼ 48 トラポット◆Pcf6Vw29GM 20/02/14 20:49:26 ID:suwUd9i6 [31/39] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
少女「スリーパー、軽くでいいわ。わたしに『めざましビンタ』当ててくれない?」

スリーパー「はァ!? なんで」

少女「いいから! その後自分にもビンタしてね」

スリーパー「……」

スリーパー「わかった。いくぞ?」


できるだけ加減して当てた直後、自分は思いっきり叩いた。揺れる視界で、カラマネロと目があった気がした。












    あ トス コし ダッ タ のニ








 ▼ 49 トラポット◆Pcf6Vw29GM 20/02/14 20:49:45 ID:suwUd9i6 [32/39] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



俺たちが目を覚ましたのは、ポケモンセンターの中だった。

見つけてくれた人によると、街の近くの道路から少し離れた草地に二人とも倒れていたらしい。

日付は2/14、村では一日過ごしたハズだったが……


少女「あの村にいるうちにバレンタインが終わらなくて良かったじゃない!」


ということで、もうそこに関しては考えないことにした。
 ▼ 50 トラポット◆Pcf6Vw29GM 20/02/14 20:50:19 ID:suwUd9i6 [33/39] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ちなみに、3年ほど前、この近辺でカラマネロを連れた青年が行方不明になった事件があったらしい。


そして──「クチナワ村」という村は、70年前に採石場の事故で、村ごと土砂に埋もれたそうだ。

今はもう山なんて無く、ただ草地があるのみ。

あのカラマネロは、まだあの場所に一人いるんだろうか。


少し哀れに思ったが、そういえばあいつは俺に主人を殺させようとしたんだった。同情の余地は無い。

そして次の目的地は、お祓いのできる寺か神社で満場一致となった。
 ▼ 51 トラポット◆Pcf6Vw29GM 20/02/14 20:50:39 ID:suwUd9i6 [34/39] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

数日後のこと。
オーブンのタイマーのなる音と、チョコレートの匂いが部屋に広がっていた。


少女「焼けた!」

スリーパー「いい匂いだな……何作ったんだ?」

少女「カップケーキよ。甘いの苦手って言うから砂糖控えめにしたの」


あのチョコレートは、カラマネロの攻撃を避けたときに落としてしまったらしい。あれだけがこっちの世界には戻って来なかったのだ。
 ▼ 52 トラポット◆Pcf6Vw29GM 20/02/14 20:50:57 ID:suwUd9i6 [35/39] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
少女「あのチョコはもったいなかったけど、作り直せて良かったわ。味どう?」

スリーパー「……美味いよ。ありがとう」

少女「…………」

少女「……確かにね、わたしもあなたを鈍いと言ったけど、伝わりにくいことを言ったなとは思ったの」

スリーパー「……最初の会話か?」

少女「そ! だからこれからは、わたしももっとストレートに想いを口にすることにしたの!」

スリーパー「……それは良い……ことなのか……?」

少女「良いことよ。これであなたもとぼけられない」

スリーパー「…………お茶ある?」

少女「そこにあるじゃない」
 ▼ 53 トラポット◆Pcf6Vw29GM 20/02/14 20:51:13 ID:suwUd9i6 [36/39] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
少女「あ、そういえばスリーパー……キスする場所に意味があるって知ってる? 額が祝福とか」

スリーパー「知らん」

少女「……ほんとに? ほんとに知らないの?」

スリーパー「知らん。俺がそういうのに興味ありそうに見えるか?」

少女「うーん……確かにそうだけど……」

スリーパー「ご馳走さん。ちょっと外出る。運動がてら夕飯買ってくるわ」

少女「う、うん……」
 ▼ 54 トラポット◆Pcf6Vw29GM 20/02/14 20:51:40 ID:suwUd9i6 [37/39] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


少女「……」

少女(……あの時)

少女(…………腕だったの)

少女(本当に、本当に知らなかったの? 確かにそういうの興味なさそうだから偶然ってこともあるけど!)

少女(だって、腕へのキスの意味って…………)
 ▼ 55 トラポット◆Pcf6Vw29GM 20/02/14 20:52:11 ID:suwUd9i6 [38/39] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
スリーパー「……」

スリーパー「……自分に関してはネガティブなやつ」

スリーパー(我ながらあの時は変なテンションだった)

スリーパー(絶対言ってやらねえ。なぜなら俺は、鈍い男だからな)


辿り着いたスーパーでは、売れ残ったチョコが安売りになっていた。

俺はそれには目もくれず、適当に夕飯を揃えた後、帰りに本屋に寄ることにした。

                   完
 ▼ 56 トラポット◆Pcf6Vw29GM 20/02/14 20:52:52 ID:suwUd9i6 [39/39] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
読んでくれてありがとう!
バレンタインSS企画→https://pokemonbbs.com/sp/poke/read.cgi?no=1140087
に参加しているので、よければぜひ一票お願いします

知らなくても読めるけど、一応前作です
https://pokemonbbs.com/sp/poke/read.cgi?no=962002
ちなみに「サクラ」は前の名前、「ワスレナ」が本当の名前です
 ▼ 57 コッチ@おはなのおこう 20/02/17 14:25:27 ID:Jt0AAacM NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
こういうボス的ポケモンと戦うSSすこ
 ▼ 58 ノアラシ@ナナシのみ 20/02/20 02:36:05 ID:3RvM6IRU NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
前作も読んでいたぞ
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