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SS

【悪役SS】白プラズマ団したっぱ「おおお、おじさん!?」ツタージャ「おじさん」

 ▼ 1 匹の羊◆QsVrxuaWuk 17/05/28 17:31:11 ID:A1C1nCCM [1/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
モンスターボールが落ちていた

赤く濁った透明が鈍く光を照り返している

俺はそれに近づき、手に取って中を確認した

ポケモンが捕まっている

まったく……なんて無責任なトレーナーだ……

捕まえたポケモンを落とし忘れていくなんて

……解放してやろう

俺はボールからポケモンを逃がし

「もう捕まるなよ」

とだけ言った

それが俺の仕事である
 ▼ 2 ゲハント@ポケトレ 17/05/28 17:31:50 ID:8jlwc9U6 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 3 匹の羊◆QsVrxuaWuk 17/05/28 17:36:26 ID:A1C1nCCM [2/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
プラズマ団……

身勝手なトレーナーから哀れなポケモンたちを解放する

ポケモンを守る想いのもとに……

怪しげな宗教……

……だと思わないことも無いが待遇が手厚いので悪くはない

俺はこの仕事で食いつないでいるのだから

悪の組織だとか嫌な奴らだとか言われようが俺はこの仕事が気に入っている

このご時世じゃろくな仕事も見つからないのだ

情けない話である……
 ▼ 4 匹の羊◆QsVrxuaWuk 17/05/28 17:39:22 ID:A1C1nCCM [3/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ふと目を上げて前を見る

先ほど解放したポケモンがまだ目の前にいた

逃げようともせず突っ立ったまま

尖った花と鋭い赤い瞳をこちらにじっと向けている

若草色の、ツタージャと言われるポケモンだった

「どうした?さっさと行け」

ボーっとしているような目に俺はそう言った

ツタージャはキョロキョロと辺りを見回した後

「行くってどこへ?」

と尋ねてきた

尋ねて……

……

喋った

ポケモンがシャベッタ
 ▼ 5 グ忘れた羊◆QsVrxuaWuk 17/05/28 17:44:05 ID:A1C1nCCM [4/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
驚いて口を開けたが言葉が出ない

ただ声にならない声が引っかかりながら喉を抜け出るだけ

いやいや、落ち着け……空耳かもしれない

そうだきっと空耳だ……そんなN様のようなこと……

「おじさん、どうしたの?」

混乱した頭を落ちつけようとしていた矢先に

またツタ―ジャが声をかけてきた

「お、おじっ……いや……え?」

すっとんきょうな声を上げてしまった

テレパシーでもない……だれかの腹話術でもなさそうだ……

本当に目の前のポケモンが口を利いているのだろうか
 ▼ 6 うしよう◆QsVrxuaWuk 17/05/28 17:54:14 ID:A1C1nCCM [5/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
もしかして俺がポケモンの言葉を身に着けたのだろうか

まさか……ついに俺にもN様のような力が……?

N様というのはプラズマ団に特別な扱いを受けている青年のことだ、一応ボスということになっている

ポケモンとの会話ができるという不思議な力を持ち、「王」として崇められている

本当か同課は知らない、俺は半分ペテンじゃないかと疑っている

「お、お前……人の言葉が話せるのか?」

口を震わせて俺はそう聞いた

「人の言葉……?ボクが何か変なこと言った?」

ツタージャはキョトンとしたように首を傾げた

変なことを言ったか?

ツタージャは自分が普通にしていると思っているのか?

ならやはり俺がポケモンと話せるようになったのだろうか……
 ▼ 7 ってしまった◆QsVrxuaWuk 17/05/28 17:59:10 ID:A1C1nCCM [6/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
確認してみるか……

「出てこいミルホッグ」

ポケモンを解放するなどと言いながら俺はポケモンを持っている

人からポケモンを解放するべくN様から与えられたものだ

「ミルホッグ、俺に何か話してみてくれ」

ボールから出てきた相棒に俺はそう言った」


「お前の言葉が分かるかもしれないんだ」

ポケモンは人の言葉が理解はできるのだ、その逆もあり得るのかもしれない

「ギュギュ グウウグウ!(おいおい わかるわけないだろ!)」

しかし、俺に聞こえたミルホッグの声はいつもと変わらないものだった
 ▼ 8 気平気 17/05/28 18:01:53 ID:tLq0MIYI NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 9 匹の羊◆QsVrxuaWuk 17/05/28 18:03:09 ID:A1C1nCCM [7/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
タグ変更していただきました。管理人さんありがとうございます。
お手を煩わせてしまいすみませんでした。
読者の皆様もお見苦しくしてしまい申し訳ありません。
 ▼ 10 匹の羊◆QsVrxuaWuk 17/05/28 18:06:10 ID:A1C1nCCM [8/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「分からんな……」

「ギュギュ グウウグウ!(おいおい どういうつもりだよ!)」

「ミルホッグ、すまん戻っていいぞ……」

「ギュギュ グウウグウ!(おいおい かってにおわったよ!)」


やはり言葉は交わせなかった

あいつの気持ちも俺には解らないのだ

「おじさん……大丈夫?」

またツタージャが話しかけてきた

俺の頭は再び混乱を始めた
 ▼ 11 匹の羊◆QsVrxuaWuk 17/05/28 18:09:08 ID:A1C1nCCM [9/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
こいつは一体なんなんだ?

どうして人の言葉を話すんだ?

それとも俺がおかしいのか?

急に現れた人の言葉を話すツタ―ジャ……

俺は興味をひかれていた

「な……なあ」

「なに?」

「お前は何者なんだ?」

喋るポケモンが道端に落ちていたのだ

一体なぜそうなったのか

どんな生い立ちで言葉を話すようになったのか

関わってしまった以上知りたいと思うのは至極当然のことだ
 ▼ 12 匹の羊◆QsVrxuaWuk 17/05/28 18:13:41 ID:A1C1nCCM [10/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「何者……?んー……よく分かんない」

「分からない?どこから来たとか、誰に捕まっていたとかは?」

ツタージャは首を傾げたまま

「えーと……よく思い出せないや……」

少し考えてそう言った

「じゃ、じゃあなんでお前は喋れるんだ?」

俺の尋ねに対し、鋭い目をさらに細めてツタージャは

「さっきからなんなの?人の言葉をしゃべるとか、ポケモンの言葉が分かるとか。おじさん、僕が喋るのがそんなに変?」

と尋ね返してきた
 ▼ 13 匹の羊◆QsVrxuaWuk 17/05/28 18:18:37 ID:A1C1nCCM [11/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「変って……そりゃあお前、ポケモンが喋るなんて……」

いや待てよ……

人は理解できないものが目の前に現れたとき、自分の常識を疑うことを忘れてただ驚くだけだ

もしかしたら、ポケモンが喋るのはごくありえることで、俺の方が無知なだけかもしれない……

「う……む……誰か話の分かるやつに……」

考えあぐねて誰かに相談しようかと思っていたそのとき

道の向こうから人影が現れた

ベージュ色の帽子と制服

黒のレザーシューズが青緑色のボーイッシュな短髪を運んで来る

「げ……」

ジュンサーだ
 ▼ 14 ンチャム@ビビリだま 17/05/28 18:22:02 ID:xZyp9jNI NGネーム登録 NGID登録 報告
シャベッタァァ
 ▼ 15 ギアル@しめったいわ 17/05/28 18:32:30 ID:3BBLsO1U NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
これってなあに好き
支援
 ▼ 16 匹の羊◆QsVrxuaWuk 17/05/28 19:16:50 ID:A1C1nCCM [12/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
俺の仕事を取り締まると言って度々邪魔をしてくる厄介な存在だ

そしてなぜかツタージャは俺が嘆くのと同時に俺の足の後ろに隠れた

「ん?……なんだどうした?」

ツタージャは問いかけに応えずに足の後ろでジュンサーを見つめていた

歩いて近づいて来た相手は少し離れた位置に立ち止まった

「あなたですね!先ほどポケモンと話し込んでいる不審な男がいると通報が入りました」

「はぁ?なんでそれぐらいで通報されなくちゃならないんだ?」

「それにその恰好!例の怪しげな宗教団体ですね?事情聴取しますからご同行をお願いします」

「おいおいおいちょっと待てよ!俺は変でも怪しいやつでもないぞ!変なのはこのツタージャだ!」

そう言った途端ツタージャに睨まれたような気がした

「ツタージャ?この子のどこが変なんですか?」

俺は仕方なく足の後ろを覗き込んでくるジュンサーに事の次第を説明した
 ▼ 17 匹の羊◆QsVrxuaWuk 17/05/28 19:30:09 ID:A1C1nCCM [13/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ジュンサーは信じられないと俺の話を一笑した

やはりポケモンが話すのは当たり前のことではなく、このツタ―ジャの方が不可思議なものなのだ

「この子が喋る?そんな話を信じろって言うんですか?」

「本当だって、なあツタージャ。なんか言ってやってくれよ」

ジュンサーを説き伏せたいのもあったが、俺はこのツタ―ジャが言葉を話すという事実を誰でもいいから伝えたかった

しかしツタージャは黙ったままそっぽを向いてしまった

「何も言わないじゃないですか?」

「お、おいどうしたんだよツタージャ。さっきみたいに喋ってくれよ」

何が気に入らないのかツタージャは鼻をフイと明後日の方向に向けていた
 ▼ 18 匹の羊◆QsVrxuaWuk 17/05/28 19:45:01 ID:A1C1nCCM [14/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「やっぱりおかしい人ですね」

「ち、違うこいつは確かに……」

「はいはい供述は署で聞きます。ご同行を」

「くっ……かくなる上は……」

逃げる……!!

俺はジュンサーに背を向けて走り出した

ツタージャは足にしがみついてきていた

「ああ!待ちなさーい!」

道を逸れ

町を駆け抜け

草むらを横切り

俺はとにかく走り続けた
 ▼ 19 匹の羊◆QsVrxuaWuk 17/05/28 20:03:59 ID:A1C1nCCM [15/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
しばらく行くとどうやら追っては撒けたらしい

「ふう、本当に逃げ切れるものなんだな……」

おかしな話だ、俺は罪を犯すような行動はしていなかったはずだ

少なくともあのジュンサーの前で……

ツタージャをボールから逃がしたことをあのジュンサーは言っていなかった

それに誰かに見られていたような気もしなかったのに……

「どうするか……」

今はとにかくこの足に張り付いているポケモンが問題だ

本部に行けば話せる奴がいるだろう

俺はこのままプラズマ団の本部を目指すことにした
 ▼ 20 ラエッテ@じしゃく 17/05/28 20:07:27 ID:TOecQopk NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 21 ぉこれいと◆LXxCOdRdLk 17/05/28 20:11:33 ID:PNXGjesg [1/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 22 レイハナ@パワーアンクル 17/05/28 20:11:56 ID:PNXGjesg [2/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
>>21
コテミスった
ごめん
 ▼ 23 匹の羊◆QsVrxuaWuk 17/05/29 18:30:58 ID:buYgcIyQ [1/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
「なあお前……なんで黙ってたんだ?」

俺はまだ拗ねた顔をしているツタージャにそう訪ねた

「なんか嫌だったから」

「なんかって……お前……そもそもなんで喋れるんだ?」

ツタージャの瞳に一瞬不安な色が見えた気がした

「ねぇおじさん、人の言葉を喋るってやっぱり変なの……?」

「そりゃあ……」

ツタージャにまっすぐ見据えられていることに気づき

俺は言葉を飲み込んだ

「……変……変ってほどでも……ないんじゃないか……?」

「ほんとに?」

「ん……多少……珍しいって……くらい……だろ……?」

それでもツタージャはまだ気が悪いような目をしていた

俺の足に掴まったまま
 ▼ 24 ミカラス@たまむしプレート 17/05/29 19:07:10 ID:TnCzh7VI NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 25 匹の羊◆QsVrxuaWuk 17/05/29 19:43:32 ID:buYgcIyQ [2/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
「いつまでそうしてるつもりだ……?」

如何せん歩きづらいので俺はそう聞いた

「……ボクこのままおじさんに着いてっていい?」

「……はぁ!?」

違う、俺が聞きたいのはそっちじゃない

がしかしまたこいつは……

「着いてくって……お前……行く場所ないのか?」

「ないよ?」

「誰か訪ねる宛は?」

「ないよ?だいたい、おじさんがボクを逃がしたんじゃないの?おじさんはボクを困らせるために逃がしたの?」

「ち、違う……俺はポケモンをトレーナーから解放するために……」

……だいたい、ポケモンをあんな所に忘れていったんだ

ろくな奴じゃないはず……

「お前……トレーナーは……?」
 ▼ 26 匹の羊◆QsVrxuaWuk 17/05/29 22:58:10 ID:pFvQ2uXc [1/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「さあ、よくわかんない」

また……

キョトンとした顔でツタージャは言った

「なっ……お前……さっきから知らぬ存ぜぬと……」

やはり変である

人の言葉をも喋るポケモンにしては無知が過ぎる

「お前は一体何なんだ?どこから来て何がしたいんだ?どうして人の言葉を話す?なぜ俺に付いてくる……?」

俺は疑問を次から次へツタージャに投げつけた

「……その質問のほとんどはわかんない」

「わかんないって……お前もしかして……」

「……うん、だってボク……ボールから出てきてからのことしか覚えてないから」

「記憶が無い……ってことか」

やはりなるべく早急に誰かに相談する必要がありそうだ……
 ▼ 27 ネボー@コインケース 17/05/29 22:58:45 ID:rUz81a9U NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 28 匹の羊◆QsVrxuaWuk 17/05/29 23:08:45 ID:pFvQ2uXc [2/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「しかしなぁ……」

ここでまた頭を抱えるべき事態が俺の前に立ち塞がった

俺が行こうとしている場所はプラズマ団の本拠地だ

人とポケモンを遠ざけるべく活動する集団の基地の中にポケモンを連れ込むなど言語道断である

このツタ―ジャであればあるいは団で引き取れはするだろうが……

「うーん……」

「おじさん?」

「……なあツタージャ、俺がこれから行く場所には頼りになる組織がある」

「うん」

「そこに行けば恐らくお前のことが分かるかもしれない……来るか……?」

「うん、おじさんが行くなら付いてく」

懐かれたのだろうか……?

人の言葉を話せどやはりポケモン……素直で健気な子どものようだ
 ▼ 29 匹の羊◆QsVrxuaWuk 17/05/29 23:23:21 ID:pFvQ2uXc [3/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
まだ……このツタ―ジャは謎ばかりだ

歩きながら俺はいろいろツタ―ジャと話をした

ポケモンとの会話は不思議な感覚だった

このツタ―ジャはどうやら思いつくままに行動しているらしい

人間とは違う、ポケモンのように本能のままに動いているというのだ

ジュンサーの問いかけを無視したわけも、俺に付いて来ようとしたわけも分からないと言う

言葉では表せないのだろう

それから俺は

「たぶん……着いたら俺とは別々になると思うがそれでいいか?」

とツタージャに聞いた

「それは……ちょっとやだ」

と返事が返ってきた

「そうは言ってもな……たぶん強制的にお前は連れていかれるぞ?……俺にはその組織以外にお前を連れて行ける場所が無いんだ」

そう言うとツタージャは黙ってしまった
 ▼ 30 匹の羊◆QsVrxuaWuk 17/05/29 23:32:53 ID:pFvQ2uXc [4/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
言葉を操るツタージャなら組織の学者連中が放っておかないだろう

ツタージャが黙っていてもポケモンの私有がばれてしまえば団からの追放は免れないだろう

俺は本部に住み込んでいる

行き場は無いのだ

しばらく無言で歩き続けた

そして

俺たちの目の前についに本部への入り口が現れた

本部は地下にある

それもポケモンリーグの……

組織の力は表に見せているよりずっと強大なのだ

本部の実態だって大きすぎて俺にもよく分からないほどだ

ツタージャは何も言ってくれない

喋れるということが知られなければ追い出されてしまうことは伝えてあるが……

俺はいつもより気を締めて扉を開いた
 ▼ 31 ジーロン@めざめいし 17/05/29 23:49:28 ID:YE.x0dH2 NGネーム登録 NGID登録 報告
ツタージャがオスなのかメスなのか

それが問題だ
 ▼ 32 匹の羊◆QsVrxuaWuk 17/05/29 23:58:20 ID:pFvQ2uXc [5/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
俺はまるで城のような本部を歩き回り

上役に直接事の次第を話した

ツタージャは多少不機嫌であったが協力的だった

本人がどことなく嫌々なにでなるべく内密にしておきたかったが

ツタージャの噂は瞬く間に団内に広まって行った

最終的にツタージャはN様の前に通された

俺はあれほどまでに近くでN様を見たことがなかったが、ツタージャとN様とだけで話すというので早々に退室させられてしまった

希望した団員には一人に一部屋自室が与えられている

やっていることは限りなくブラックだが企業としてはホワイトである

俺はしばらくもやもやとした気持ちのまま自室でじっと待っていた

知り合いの団員も集まって話を聞きに来たりしたが喋るツタージャがいないと知ると少し話を聞いただけで行ってしまった

俺は一人自室で考えに更けていた

ツタージャはどうなるのだろうか……

俺はこれからどうなるのだろうか……

やはりツタ―ジャを連れてきたのは間違いだったのだろうか……
 ▼ 33 匹の羊◆QsVrxuaWuk 17/05/30 00:05:11 ID:/y3Z9qtM [1/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
俺の部屋は静かだった

当事者だというのに事態が分からないことが歯がゆかった

少し時間がゆったり流れているような気がした

静寂の中で部屋の扉をたたく音が響いた

反射的に俺は起き上がり扉を開けた

数人男が立っていた

そのなかにはN様もいた

そして

「おじさん!」

ツタージャが元気そうに飛び出してきた

俺はなんとなく安心したような気持ちになって思わず小さなため息をついてしまった
 ▼ 34 匹の羊◆QsVrxuaWuk 17/05/30 00:23:24 ID:/y3Z9qtM [2/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ハッとして俺は前を向いた

目の前にいるのは上役ばかりだ

「こ、これは……わざわざお越しいただき申し訳ありません……」

姿勢を正し、緊張してぎこちなくなった声を出した

上役たちのうちの一人が身を乗り出し、話を始めようとした

それを少し引いて後ろで見ていたN様が遮った

「やはり僕から話そう」

落ち着いた低い声とは対照的に早口な言葉だった

前に出たN様はしばらく話し続けた

「話すことができるんだねそのツタージャ、僕もポケモンと会話ができるけど自ら言葉をしゃべるポケモンなんて初めてだよ」

「その子にはどうも不思議な力があるみたいなんだ、ポケモンと人の意思の疎通というのはやはり神秘的なもなんだよ」

「その子が言うにはどうやら君と出会う前のことはよく覚えていないらしい。そこで我々プラズマ団は、よろしいその子を保護しようと思うんだ」

「もちろん神聖に珍しいポケモンだから大切にしようと思う。そこで君はどうやらこの子にとても懐かれているらしい。だから君にはこの子の世話係をお願いしたいんだ」

「この子を連れてきた君を称賛すると同時に、是非この不思議なトモダチを見守ってあげてほしい。頼めるかな?」
 ▼ 35 ラズマ団したっぱ◆ejZ6cRApW2 17/05/30 00:24:51 ID:WYxoPFIM NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 36 匹の羊◆QsVrxuaWuk 17/05/30 00:36:11 ID:/y3Z9qtM [3/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
お……おお……

これは……思わぬ昇進なのではないか……?

「は、はい!ぜひ喜んで!」

願ってもないことだ

俺は二つ返事で請け負った

「そうかい、嬉しいよ」

そういってN様は今度はツタージャの方を向いた

「良かったね、この人は君と一緒にいてくれるって」

「うん、ありがとうおじさん」

こちらを向いてそう言うツタ―ジャに俺は少しだけ気恥ずかしさを感じた

「お、おう」

だが望む結果がほとんど叶ったのだ、素直に喜ぶべきだろう

「よろしくなツタージャ」

「うん!」
 ▼ 37 匹の羊◆QsVrxuaWuk 17/05/30 00:49:15 ID:/y3Z9qtM [4/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ツタージャが返事をした後N様はさっと踵を返した

「さて、話がまとまって良かった。プラズマ団も力を上げて君のことを調べてみるよ。僕からもよろしくねツタージャ」

「うん、よろしく」

それだけ言うとN様はサッと部屋から立ち去ってしまった

「あ、ありがとうございました!」

俺は慌てお辞儀した

そのとき一瞬N様の横顔に陰りが見えた気がした

顔を上げた後の扉にはもうN様の姿はなかった

別の男たちも

「後日また詳しくお話にあがります。今日はこれで」

と言って去ってしまった

残ったのは俺とツタージャだけであった

「まさかこんなにすんなり行くとはな……」

このツタ―ジャがどんな特別な扱いを受けるのかと思えば意外とあっさりしたものだ

こうして俺は喋るツタージャの世話係となった
 ▼ 38 匹の羊◆QsVrxuaWuk 17/05/30 17:51:09 ID:L6hocGsE [1/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
だが俺はあくまで『世話係』だ『トレーナー』ではない

珍しいポケモンに懐かれている体のいい見張り

ツタージャと出会ってからもうしばらく時間が経っていた

「ねえおじさん、ここはどういう所なの?」

ツタージャがそう聞いてきた

やはり話すポケモンとは奇妙なものだ

だが俺には一つツタージャに言いたいことがあった

今後のツタージャとの関係の上でも大事なことである

「なあ……なんで『おじさん』なんだ?……俺そんなに老けてるか……?」

「え?何となく。それでここはどういう所なの?おじさん」

「え、えーとさ……おじさんって呼ぶのやめない……?俺にも一応名前が……」

「うん、分かったよおじさん。それでおじさんはここで何をしてるの?」

……

なかなか愉快な奴であった……
 ▼ 39 匹の羊◆QsVrxuaWuk 17/05/30 18:31:23 ID:L6hocGsE [2/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
俺はツタージャと色々な話をした

やっぱりこのツタージャは不思議なやつだった

人の言葉以外のことは何も覚えていないらしい

部屋はとても静かだった

頭は様々なことを考えさせた

明日からどんな生活が始まるのか

『世話係』として何をすべきか

プラズマ団として何をすべきか……

人とポケモンの関わりは……

俺は……このツタージャとどうなるのが正解なのだろうか……

何か……取り留めもなく……不気味なような子気味のいいような不思議な気がした
 ▼ 40 匹の羊◆QsVrxuaWuk 17/05/30 20:36:00 ID:L6hocGsE [3/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
他愛のない話、大事な話

過去の話、これからの話

ツタージャはやはり不思議だった

人の言葉以外のものは本当に覚えていないのだ

1人と1匹のお喋りを、邪魔するものはいなかった

喋り疲れてその日は終わった

次の日もその次の日もツタージャとの暮らしは続いた

団の調査は進んでいるのか滞っているのかよく分からなかった

静かな部屋には誰の介入もなされないようであった

ツタージャと暮らす『仕事』を俺は着々と続けていった

そうしてさらに月日は流れた
 ▼ 41 匹の羊◆QsVrxuaWuk 17/05/30 20:57:41 ID:/y3Z9qtM [5/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
何も起きない暮らしがこのまま永遠に続くように思えた

何も無いことを望んでいる自分もいれば

何かが起きることを期待する自分もいた

「おじさん、いつまでこうしてるの?」

「さあな……」

「ボクはここにいるだけでいいの?」

「さあな……」

あまりに何も起きない……

単調で退屈な時間だ

しかし事態は知らないところ進展しているようだった
 ▼ 42 匹の羊◆QsVrxuaWuk 17/05/30 21:05:03 ID:/y3Z9qtM [6/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ある日ある噂を聞いた

凄腕のトレーナーが現れ、プラズマ団を脅かしているらしい

「物騒になってきたみたいだな……」

「大丈夫なの……?」

ここ最近プラズマ団はいっそう過激になっているらしい

弾圧しようとする動きも徐々に力を増しているようだ

俺は世話役という立場に甘んじて直接活動を行うということをしなくなっていた

「……たぶんな」

静かな部屋は何も起きない徒労をいっそう強調するだけだった

まもなくしてプラズマ団はたった1人のトレーナーを脅威と認めた

信じられないような話だが

世の中には信じられないことがいくつも起こるのだ

緊張状態がしばらく続いていた
 ▼ 43 ォッシュロトム@スピアナイト 17/05/31 14:33:43 ID:uNT/PsOI NGネーム登録 NGID登録 報告
その日

静かだった部屋が一変して騒がしくなった

何も起きなかった日常が変貌した

それは他のプラズマ団員たちも同様であった

その日

N様はチャンピオンアデクに挑戦し、勝利した

プラズマ団の頂点がイッシュ地方の頂点に降臨したのだ

そして、轟音と衝撃と栄光と共に

城が地上に出現した

ポケモンリーグを囲うようにそびえ立ち

プラズマ団の強大さとその荘厳な存在を象徴しているようだった

団は歓喜に沸いた

プラズマ団の理想がついに真実となり

我々の夢が野望がかなうのである
 ▼ 44 匹の羊◆QsVrxuaWuk 17/05/31 21:16:10 ID:e0P0njvg [1/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
俺は喧騒から離れて自分の部屋にいた

なによりツタージャがここがいいと言ったのだから付いていなくてはいけない

「これからどうなるんだろうな……」

「プラズマ団って人からポケモンを解放する集団なんでしょ?この調子で解放し続けたら解放するポケモンもいなくなっちゃうんじゃない?」

「……そうだな、そうなったら商売あがったりだ」

ツタージャの感想は無邪気な子どものようだった

地上に出たせいか部屋はいつもより明るかった

薄黒い壁も今は淡い白に塗られていた

遠い喧騒は低く静かに響いて聞こえて来ていた

この気持ちの静寂は

終わった後のあっけなさからなのか

それとも嵐の前の静けさというものか

これからのことはあまり考えたくなかった
 ▼ 45 匹の羊◆QsVrxuaWuk 17/05/31 21:55:17 ID:e0P0njvg [2/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
あわただしい足音と

断続的なくぐもった低い音

静けさは徐々に騒がしさに変って行った

「なんだ……?」

巨大な城が不気味に揺れているような気がした

「おじさん……」

ツタージャが不安そうにこちらを見たとき

警報が 騒がしさを割いて響いた



やってきたのは一人のトレーナーだった

プラズマ団の本拠地に

たった一人

そんな馬鹿な
 ▼ 46 匹の羊◆QsVrxuaWuk 17/05/31 22:39:44 ID:e0P0njvg [3/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
警報が喋りたてる

警戒せよと

件のトレーナーであると

相手はたった一人のはずである

しかし、この城はこれまで一度も攻撃を受けたことがない

不安が実体をもった恐怖に変わっていくようだった

警報も地鳴りのような低い音も鳴りやむ気配がなかった


ツタージャの不安げな瞳に見つめられ

俺は今どうすべきかを考えた

ツタージャを連れて非難するべきか

だが行く宛なんて無い

団を信じ、N様を信じてこの場に残るべきか

ツタージャのことだってまだよくわかっていない

だがこちらはどうしようもできない
 ▼ 47 匹の羊◆QsVrxuaWuk 17/05/31 22:51:23 ID:e0P0njvg [4/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「おじさん!どういうこと?この音は何なの?怖いよ?」

ツタージャが不安な声でそう言ってきた

「大丈夫だ……プラズマ団がやられるわけがない」

「本当……?」

「ああ、きっと……大丈夫だ」

俺はこの部屋に待機することにした

ツタ―ジャに大丈夫だと声を掛けながら

騒がしさが取り払われるのを待った


やがてしばらくするとピタリと警報がやんだ

続いて地鳴りのような音もゆっくりしなくなっていった

最後に静寂が訪れた

これまでに感じたことがないような静けさだった
 ▼ 48 匹の羊◆QsVrxuaWuk 17/05/31 23:15:32 ID:e0P0njvg [5/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
どうなったのだろうか

部屋はシンと静まり返って俺の問いに答える音は無かった

いつものそれとは別の不気味さが漂っていた

「おじさん……」

我慢するにはつらい時間が ゆっくり流れていった

物音一つ、少しの気配もしなかった

もどかしく、歯がゆくて俺は痺れを切らした

「……少し、見てくる」

「ボクも行くよ」

「ダメだお前は付いてくるな」

危ないからと俺はツタージャに説き伏せた

「ちょっと見てくるだけだ」

「やだ!ボクもおじさんと一緒に行くよ!」

しかしツタージャは頑固であった
 ▼ 49 匹の羊◆QsVrxuaWuk 17/05/31 23:39:37 ID:e0P0njvg [6/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
扉の後ろの回廊はやはり静かであった

この城の最深部をめざそう

もしトレーナーが潜んでいるなら危険だが

望みのあるだれかがいるとすればそこだろう……

誰もいない廊下を進んでいく

暗い角を曲がり階段を上がる

上の階に上ると微かに人の気配がした

そして いくつか目の角を曲がったとき

俺はようやく他の人間に巡り会えた

それは 思いもよらない相手だった
 ▼ 50 ルンゲル@わすれもの 17/05/31 23:41:08 ID:lnRFzwzg NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 51 リキザン@ミュウZ 17/05/31 23:48:45 ID:khUFAqdo NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 52 匹の羊◆QsVrxuaWuk 17/05/31 23:59:32 ID:e0P0njvg [7/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
俺はそいつを見て、足を引いてしまった

「まだ残党がいるんですか?」

青緑色の短髪とベージュの帽子と制服

「あれ?あなたは……」

黒いレザーシューズのそいつは目を細めて俺とツタージャを見た

「あ……やっと……ようやく見つけましたよ!」

「げぇ……っ……」

あの時のジュンサー……!

「そのツタージャ、今度こそ返していただきます!」

「ちょ、ちょっと待て!なんでお前がここにいるんだ……?侵入者は一人のはずだ……?」

「もちろん、私一人です!さぁあなたも早くお縄につきなさい!」

突如現れたのはいつかのジュンサーだった

俺の頭の中をさまざまな思考が巡り始めた
 ▼ 53 匹の羊◆QsVrxuaWuk 17/06/01 00:21:36 ID:Od/N2Ey6 [1/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
こいつが……こいつが例の凄腕トレーナー!?

一介のジュンサーごときが!?

それから……

「お、お前今……ツタ―ジャを返せって言ったか?どういうことだ……?」

「……そうですね、もうごまかせないでしょうから言いますが、そのツタージャはもともとこちらのポケモンです!ここで会ったが百年目!連れ戻させてもらいます!」

「なっ……?!」

なんだと……!?

「そのツタージャが人の言葉を話すことはもう言い逃れできないでしょう」

「な……なんで知ってる……!?」

「そのツタージャの存在は極秘中の極秘でした……ただあの日……ふとした不手際で……まるでボールが意思を持ったかのようにどこかへ行ってしまったのです」

巡らせた思考が追い付かなくなってきた

「なるべく穏便に済ませたかったのですが生憎あなたには逃げられてしまいました。それからはずっと、プラズマ団に連れ去られたということだけを手掛かりに探していたのです」
 ▼ 54 ジョフー@トポのみ 17/06/01 00:28:14 ID:Tc1mie0c NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 55 ンペルト@きんのたま 17/06/01 00:31:28 ID:H90Rsj8. NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 56 匹の羊◆QsVrxuaWuk 17/06/01 00:49:08 ID:Od/N2Ey6 [2/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「そ、そんなこと……俺に言っていいのかよ……だいたい言う意味も無いだろ……」

「問題ありません、あなたはこれから逮捕されて牢屋に入りますから。それに私が話を聞いてほしいのはツタージャの方です」

急にジュンサーに見据えられてツタ―ジャは身を固めた

「なにしろ喋るポケモンですからね、利便性は計り知れません。そんなポケモンを悪しき者の手に渡してはなりません!」

「そんなこと言って……今の今までほっぽっているじゃないか……正義のジュンサーも大したことないな……」

俺は何を言っているのだ……

少なくともこの女はたった一人でプラズマ団を壊滅させた手練れだ……

今までは拠点の場所が分からなかっただけだろう……

それが分かった途端いとも簡単に……

「そうですね……少しおしゃべりが過ぎました……ツタ―ジャは早急に保護させてもらいます!行きなさい!コバルオン!」

コバルオン?!伝説に語られるポケモンの一匹じゃないか!

「……化け物め」

「コバルオン!やってしまいなさい!」

「おじさん!!」

ツタ―ジャの声が回廊にこだました
 ▼ 57 匹の羊◆QsVrxuaWuk 17/06/01 01:11:03 ID:Od/N2Ey6 [3/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「レシラム!じんつうりき!!」


背後から掛け声がした


次の瞬間目の前に迫ったコバルオンが後ろへのけぞっていた

「N様!?」

現れたのは 緑の髪の青年と

真実の伝説ポケモン レシラムだった

「まだいたんですか、それがあなた達の切り札ですね?」

ジュンサーは伝説のポケモンにも臆さずそう言った

「そう、このポケモンはレシラム僕の求める真実に呼応して僕に力を貸してくれる。元チャンピオンを打ち破れたのもこのレシラムのおかげだ」

「レシラム!伝説のポケモンですね!その強大な力を悪に明け渡すとは残念です!」

「正直驚いてるよ、チャンピオンアデクを倒した後にもっとずっと強いあなたが現れるなんて」

すさまじかった、両者側からもとてつもないエネルギーが感じられるようで、とても話に介入できたものではなかった
 ▼ 58 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/06/02 00:47:24 ID:Tv3l1Ea6 NGネーム登録 NGID登録 報告
この作者すき、支援
 ▼ 59 クケイル@ぼんぐりケース 17/06/02 00:49:03 ID:jZb5OKTs NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 60 匹の羊◆QsVrxuaWuk 17/06/03 01:04:57 ID:GERlseOk [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「君、例のツタ―ジャの世話役だね?」

ふいにN様に声をかけられた

「えっ、は、はい!」

「悪いね、長い間放っていおいてしまったみたいで」

「いい、いえっ!そんな……」

N様の口から出てきたのは謝罪だった

こんな戦闘の中でもこの余裕なのはさすがである が

「そのツタージャは返していただきます!コバルオン!せいなるつるぎ!」

「あっ、危ない!」

「レシラム!りゅうのはどう!」

相手もやはり手練れだった

ジュンサーはまた一つ手にボールを持っていた

「誰が相手でも負けはしません!行きなさい!テラキオン!」

バトルはさらに凄まじさを増していった
 ▼ 61 ティオス@カムラのみ 17/06/03 21:43:42 ID:vGuL.kCE NGネーム登録 NGID登録 報告
「さあ!ツタージャは返してもらいます!あなたたちに持たせておけばきっと悪用されてしまいますからね」

「悪用?私利私欲にポケモンを使っているのはそっちじゃないか。僕達はポケモンたちの為にポケモンの力を借りるんだ」

「人とポケモンを引き裂くのがポケモンのため?それこそ非道な行いです!人とポケモンの絆を絶ち切るなんて酷いことです!」

「絆なんて人がポケモンに見せるまやかしでしかない!人間に依存するだけではポケモンは幸せになれないんだ!」

「そんなことはありません!人とポケモンは互いに協力しあって歩んで行くパートナーです!」

「じゃあなぜ人はポケモンを支配するんだ?ボールに捕らわれ、命令に従わせられるポケモンが可哀想じゃないか!」

「すべてのポケモンが可哀想な訳じゃありません!人と共に幸せに暮らすポケモンだってたくさんいます!あなた達がやっていることはその幸せを壊すことに他なりません!」

「幸せ……?直接聞いたわけでもないのに勝手なことを言わないでほしいね!どうせそんなのは綺麗事だ!ポケモンの気持ちがあなたに分かるか?」

「確かにポケモンは気持ちを言葉にして伝えてはくれません。ですが気持ちを汲み取り分かり合うことはできます!そうやって人とポケモンは支え合うんです!それに……」

「そんなにポケモン気持ちが知りたいのなら直接聞いてみましょう!」

ジュンサーはそう言ってツタージャの方を向いた

ツタージャは二人の話を聞いて目を回したようにしていた

「!?……っ……えっ?」

「あなたは人と共に歩むことと人からの解放、どっちを選ぶ?」

いきなりの話しかけに戸惑うツタージャに侵入者はそう問いかけてきた
 ▼ 62 ワムラー@ハートのウロコ 17/06/03 21:45:24 ID:p3/.qPnM NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 63 ッタイシ@たからぶくろ 17/06/03 21:47:14 ID:m.IcwfYo NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 64 匹の羊◆QsVrxuaWuk 17/06/03 22:48:03 ID:GERlseOk [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「ボク……」

ツタ―ジャは立ち尽くしたまま考えているようだった

虚ろに映る赤い瞳は微かにつらさを訴えているようだった

「ボクは……」

戦闘はしばし止んでいた

N様までもが興味深いようにツタージャを見ていた

「ツタージャ……?おい、大丈夫か……?あいつの質問なんて答えなくていいぞ……?」

ツタ―ジャは少し怯えているようだった

それでも潤んだ瞳をこちらに向けて

「ボクは……おじさんと一緒にいたい……!」

そうツタージャは言った

「悪用とか絆とか私利私欲とか信頼なんて知らない……ボクはただ、おじさんと一緒がいい……」

率直で純粋な意見だった

ただ本能的に、自分の感じたままをツタ―ジャは言ったのだ

しかしその返答はその場を穏やかに収めてくれるものではなかった
 ▼ 65 匹の羊◆QsVrxuaWuk 17/06/04 00:06:47 ID:m.tdKzkA [1/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「やはり元凶でしたか……あなたがツタ―ジャをたぶらかしたのですね?」

ジュンサーがゆっくりとこちらを見てきた

「え……っ……ええっ?」

ツタ―ジャは図らずも俺と居たいと言ってくれた


しかしそれは


ジュンサーがツタ―ジャを連れ戻すことにも


N様のポケモンを解放しようとする考えにも反したことだった


「ポケモンが……自ら人間に従うことを選ぶのか……?」

我がプラズマ団の王は茫然としてツタージャを見つめていた

「違う……それは僕の求める真実じゃない……」

俺は肩身が狭くなっていくような気がした
 ▼ 66 匹の羊◆QsVrxuaWuk 17/06/04 01:07:56 ID:m.tdKzkA [2/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「コバルオン!ツタ―ジャを助けなさい!テラキオン!レシラムにストーンエッジ!」

伝説の三剣士のうちの一匹がこちらえ向かって来……

「たっ!?」

間一髪飛び退いてコバルオンの突進は避けたが

「おじさん!」

間をコバルオンに遮られ、ツタ―ジャと分断されてしまった

まずい……!

「レシラム……!はかいこうせん!!」

レシラムの口から閃光が迸る

「おわぁぁ!」

伝説のポケモンが放った衝撃派はテラキオンの攻撃も廊下の壁も何も吹き飛ばした

ツタ―ジャの体も風にさらわれ、宙を舞っていた

「ツタージャ!」

 ▼ 67 匹の羊◆QsVrxuaWuk 17/06/04 02:08:14 ID:m.tdKzkA [3/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ツタ―ジャの体は何とか受け止めることができた

けれどすぐに、こちらも体勢を立て直したコバルオンの追撃に襲われた

「ケホッ……むちゃくちゃしますね!でもそれではしばらく動けないでしょう!」

まずいまずいまずい……!

勢いをつけてコバルオンが向かってくる。壊されたガレキが襲ってくる

「み、ミルホッグ!ほのおのパンチ!」

「ギュ!グウグ……!?」

久々に俺は相棒をボールから出した

「ギュ!グウ!」

それでも相棒は変わらぬキレで燃える拳を敵に振るった

しかし、技の相性は良いとは言え完全に防戦一方だった
 ▼ 68 匹の羊◆QsVrxuaWuk 17/06/04 15:36:25 ID:m.tdKzkA [4/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
レシラムは静かに動かなかった

「テラキオン!もう一度ストーンエッジ!」

テラキオンは前足で床を強く踏みつけた

岩の柱が レシラムに向かって行く

純白の体に鋭い岩の先端が衝撃とともに突き刺さる

岩とガレキの砕けた白煙が上がる

辺りは煙に包まれた

「ミルホッグ 気をつけろ!」

視界は真っ白で何も見えない

「グギュウ!」

押しつぶしたような悲鳴が聞こえた

「ミルホッグ!!」

煙の白はさらに濃くなっていた

ガレキの埃だけではない、湿って生温い水蒸気のような煙も混じっているようだ
 ▼ 69 匹の羊◆QsVrxuaWuk 17/06/04 16:30:53 ID:m.tdKzkA [5/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「くそっ!大丈夫かミルホッグ!!」

空気はますます水気を含み、徐々に暖かくなっているようだった

腕の中ではツタ―ジャが緊張したように体を強張らせていた


熱気が迫ってきた

「熱っ……」

熱風が煙を晴らした

視界が開け、うずくまるミルホッグと奥を向くコバルオンの視線の先に

テラキオンとジュンサーに睨まれながら、熱気を放っているレシラムが見えた

正確にはレシラムの頭上の巨大な火球が熱気を放っているようだった

「クロスフレイム」

業火が空から降ってきた

凄まじい熱気と衝撃、そしてまた白い煙が起こった

しかし、熱気はすぐにかき消えてしまった

いつの間にか 雨が降っていたようだ

熱を孕んだ白煙は レシラムの熱気と空からの降雨で立ち込めていたのだ
 ▼ 70 匹の羊◆QsVrxuaWuk 17/06/04 17:23:28 ID:m.tdKzkA [6/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
それでもクロスフレイムはテラキオンに直撃し、テラキオンをひん死状態にまで追い込んだ

「くっ……とんでもないエネルギーですね……、しかしこの雨……これではもう満足に炎は放てないでしょう!」

雨は徐々に激しくなり、熱を奪っていく

「コバルオン!」

響くように鈍く重い音がした

レシラムはそれきり沈黙してしまった


「さて」

ピシャリと黒い靴で水を蹴り

ジュンサーがまたこちらを向いた

「う……」

「なぜツタ―ジャがあなたと共にいることを望んだかは分かりませんが、あなたちのことです、良からぬことをしてツタ―ジャをたぶらかしでもしたのでしょう」

一歩ずつ、雨をはじきながら歩み寄ってくる

「しかし……レシラムの力は少し弱くなっていたようです、そのツタージャの言葉がNの真実を曲げ、その真実に手を貸すレシラムの力までも弱めてしまったのでしょう」

「じ、じゃあなんだ?!俺のせいでこうなったとでも言いたいのか!?」

「はい、ですから是非お礼をしたいので、一緒に来てはもらえませんか?」
 ▼ 71 匹の羊◆QsVrxuaWuk 17/06/04 19:09:37 ID:m.tdKzkA [7/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「は?」

「ですから、一緒に来ていただきたいのです。その子はあなたに随分懐いているようですし、それにその方がこちらの手間も省けますから」

俺はそのふざけたような提案にどう応えれば良いのか分からなかった

「ツタージャがあなたと一緒にいたいなら、あなたに来ていただければ済む話なんです。悪い話ではないでしょう?もうプラズマ団は終わりなのですから」

「な……なんだよそれ……、お前らにとってこいつがなんだって言うんだよ……!」

「……そうですね。……残念ですがそれは言えません」

「ふざけるな……!一体なんなんだお前は!そんな訳の分からない場所なんかに付いていけるか!」

「……では、ツタージャに聞きましょう。私たちと一緒に来てくれませんか?」

突然問いかけられてツタージャは身体をピクッと反応させた

「……ボクは」

「……おじさんと一緒がいい」

さっきと同じことをツタ―ジャは言った

怯えてしまっているようだった
 ▼ 72 匹の羊◆QsVrxuaWuk 17/06/04 21:00:58 ID:m.tdKzkA [8/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「困りましたね……やはり一番はあなたに来てもらうことなんですが」

確かに付いていくことは良い判断かもしれなかった

プラズマ団の王は敗れ、現在俺は無職だ

しかし

「……俺を連れて行くなら、なぜそんなにツタ―ジャを連れ戻したいのか教えろ……俺もツタ―ジャも何も知らない。……何をされるかも分からない」

「何をするか?あなたには何もしませんよ、ただツタージャとつつましく暮らしていただくだけです」

「つつましく暮らさせるためだけに連れて行こうとするわけないだろ!」

「なぜ行きたくないのです?まだあなたに行き場があるんですか?まだどこかにツタ―ジャを連れて行くんですか?」

雨は一層強くなり、雲は暗く黒く頭上を覆っていた

「……あなたが行きたくない理由はもしかしてツタージャですか?」

「ああ……そうだ……お前なんかにツタ―ジャを連れていかれてたまるか!」

「ポケモンのため……ですか……プラズマ団はもう無いというのに、あなたはそんな幻想に取りつかれているんですか?」

「幻想?ふざけるな!ポケモンのための何が悪い!」

「いいえ、素晴らしい思念だと思います。ですがそれではあなたが一方的に不憫ですよ。私たちは私たちのためにポケモンの力を借り、その恩をポケモンたちに返すのです。人とポケモンは平等です!」


真っ暗になった空からは雷鳴が聞こえてきていた
 ▼ 73 匹の羊◆QsVrxuaWuk 17/06/04 22:07:25 ID:m.tdKzkA [9/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「それに、さっきからあなたの言動は矛盾しているように思えますよ」

「……なんだと?」

「だって、ツタージャはあなたについて行くと言っているんですから。あなたがこちらへ来ないのは、ツタージャのためではなくあなたが嫌だからなのではないですか?」

「……違う!お前らにツタ―ジャを好きなようにさせたら、ツタージャの身に何が起こるかわかったもんじゃない!良からぬことを企んでいるのはそっちなんじゃないか!?」

「あなたは『人がポケモンを酷いように支配している』という考えに囚われ過ぎているんです!」

雨音と雷鳴と 叫ぶ声が大きくなっていく

「ならお前は何のためにツタ―ジャを執拗に狙う?なぜその目的を隠す!言ってみろ!」

「我々のためです!人のためにポケモンに力を貸してもらうのです!」

「具体的に言えってんだ!力を貸すとはどういう意味だ!それが言えないのならば話にもならん!」

雷鳴が轟く、雷光が雲を縫い地上に降る

「……そうですか……なるべく偽らずあなたにも協力していただきたかったのですが……しかたありませんね」

力ずくだというようにジュンサーはこちらに向き直ってそう言った

「……っ……絶対に……ツタ―ジャは渡さん!」

そのとき

青い稲妻が 眩しく輝いて落ちてきた
 ▼ 74 匹の羊◆QsVrxuaWuk 17/06/04 23:50:38 ID:m.tdKzkA [10/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
声が聞こえた


『それが……お前の理想か』


「理想……?」


(おじさん!)


「……俺の理想……なのか?」


『理想だ……特別なのはツタージャだ……乖離するのだ……誤想した胸懐を……』


「な……んだ……どういうことだ……考えを改めろってことか……?」


『嚮導するのだ……お前自身の……新たな理想を……』


「なん……なんだ……」


(おじさん!おじさんっ!)
 ▼ 75 匹の羊◆QsVrxuaWuk 17/06/05 00:56:42 ID:9rqlL5wY NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「ゼクロム……っ」

黒雲から青雷とともに黒いポケモンが降りてきた

「……どういうことですか……ストーンも無しに。呼び出した……というよりは自発的に現れたのでしょうか」

伝説のポケモンは俺の前に降り立ち、ジュンサーの方を向いた

「なるほど……理想の伝説ポケモンまでが邪魔をするのですね……」

「なんで……なんでゼクロムが……」

訳が解らなかった俺の問いに、久しい声が答えた

「……君の理想に……応えたんだ」

「……?! N様!」

「大丈夫……少し考えていただけだ……人とポケモンの関係を……」

「なんだ……まだいたんですか」

「君と君のツタ―ジャは……どうやら僕の思うものともあのジュンサーが思うものとも違う関係にあるみたいだ……」

「……?」

「君たちの理想は君たちだからこそ考えられたものなのかもしれないね……」
 ▼ 76 マタマ@メガリング 17/06/05 11:19:49 ID:EVfOdF/k NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
おもろ
 ▼ 77 匹の羊◆QsVrxuaWuk 17/06/06 00:54:05 ID:DacyKP.6 [1/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「僕の真実はまだ変わってない……今もまだポケモンを救いたいと思っているさ……ポケモンはトモダチだからね」

雨がゆっくりと収まってきていた

「でも僕は……人とポケモンの繋がりというものをふと考えてしまった」

「だから、君とツタージャのことを観察させてもらうことにしたんだ」

「もしかして、この人間と会話のできる不思議なポケモンは 新しい考えをもたらしてくれるのではないかと思ったからね」

本来プラズマ団に自分のためにポケモンを持ち込むのはご法度だ

レシラムに認められたトレーナーは一体何を思ったのだろうか

「さて、どうやら君は君なりの答えを見つけられたようだ。ツタ―ジャと過ごした少しの間、君には何が見えたのか教えてくれないか?」

少し色の薄くなった雲がコロコロと響く音を立てる

黒い理想のポケモンが共鳴するように青い光を放ち

低く小さく唸るような音を起こした
 ▼ 78 匹の羊◆QsVrxuaWuk 17/06/06 01:45:08 ID:DacyKP.6 [2/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「……つまり、ツタージャと暮らしたあなたの得られた答えはポケモンとの共生と絆でしょう?なら話は早いです、人とポケモンは支え合って……」

ジュンサーはやはり伝説のポケモンを前にしても引かないようだった

俺は押し黙っていられなかった

「……ちがう」

「何が違うというのです?ポケモンと共にいたあなたが描く理想はポケモンと協力して生きていくことではないのですか?」

「違う……人とポケモンの関係は支え合いじゃない……!お前の言う強制のような利用のし合いとは違うんだ……!」

ゼクロムがキッと相手を見据えた

「同じ目標を掲げ、同じ理想に向かって共に歩んでいくこと……それがポケモンと人とのあるべき姿だ」

「機械的に、形式的に利用し、それに対する成果をただ与えるだけじゃないんだ……お互いを思い、お互いに想われることこそが本当の人とポケモンの関係だ」

「あなたは私たちがポケモンを想っていないと言いたいのですか?」

「そうだ……少なくともお前はポケモンに想われちゃいない……ただ認められて強くなってしまっただけだ……」

「そんなことはありません!私たちはお互いに信じ合えています!」

「いいや違う!お前もポケモンのことを想ってはいない!ツタ―ジャが!なんでお前に付かないか分かるか!?こいつのことを考えていないからだ!結局自分のエゴを満たしたいだけなんだ!」

「あなたは何が言いたいんですか!私たちにこれ以上何を求むと言うのです!あなたの理想はつまりどういうことなんですか?」


「俺の理想は……こいつと……ツタ―ジャと一緒にいてやることだ!!」
 ▼ 79 匹の羊◆QsVrxuaWuk 17/06/06 22:58:34 ID:DacyKP.6 [3/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ツタ―ジャの瞳が明るい赤色を帯びた

口を縦に長い楕円に開き、驚いたような満足したようなそんな顔をしていた

「先ほどあなたはエゴと言いました……たしかにここからはエゴかもしれません……もはや話し合いは無駄でしょうね」

そう言うとジュンサーは両の手に二つボールを構えた

「力づくでも、ツタージャは返してもらいます。そうしなくてはいけないのです!」

緑と青、『正義』はジュンサーに付いた

理想を無理強いしようとすればやはりそれは『悪』になるのだろうか

青雷が鳴動した

崩壊した城が唸る

正義が間を詰める、空を見上げて俺は叫んだ

「……クロスサンダー!!」

凄まじいエネルギーにゼクロムが包まれる

「せいなるつるぎ!!」

また、正義が振りかざされた

それは白かったり緑だったり青かったり黒だったりした
 ▼ 80 匹の羊◆QsVrxuaWuk 17/06/07 00:29:40 ID:3Lxn8g4Y [1/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ゼクロムを包んだ青い光の玉は強大だった

それと呼応するように青白い稲妻がいくつも空から降り落ちた

黒雲さえ吹き飛ばし、青天井が顔を覗かせた


腕の中で勝負を見守っていたツタ―ジャが口を開いた

「おじさん……?」

晴れ渡る、崩れゆく

その晴れた日のもとに立つ剣士は誰もいなかった


雷雲は過去っていく

黒雲と共にいつの間にかゼクロムは去っていたのかもしれなかった
 ▼ 81 匹の羊◆QsVrxuaWuk 17/06/07 01:27:12 ID:3Lxn8g4Y [2/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
白く明るくなった視界に目を細めながら俺はこう言った

「N様……プラズマ団はこれからどうなるんでしょう……?」

緑の髪の青年もゆっくりとした口調で答えた

「そうだね……僕はまだ僕の考えを真実だと信じている……でもどうやら新しい考え方もしてみなくちゃいけないらしい……」

水溜まりが光を照り返している

「プラズマ団は、そして僕は……きっと新しくなるよ。だから君の理想、ポケモンと思想を共有するという考え方にも力を貸してもらいたいんだ……」

真昼の太陽は少しづつ赤みを増しながら西へと傾いていく

「……は、はい!自分で……良いのであれば!」

青空は澄んでいる

「君のツタ―ジャは幸せだろうね……君のような人間を選ぶことができたのだから」

ツタ―ジャが顔を上げる

「ボクは……おじさんと一緒にいられるの?これからも……?」

「……ああ、ずっとな」

澄み渡り晴れ渡る快晴が、赤い瞳を潤み輝かせていた
 ▼ 82 匹の羊◆QsVrxuaWuk 17/06/07 01:30:59 ID:3Lxn8g4Y [3/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
終わります



完成が遅れてお待たせしてしまい大変申し訳ないです
すみませんでした

誤字脱字とゲーチス様のいらっしゃらないプラズマ団にお付き合いいただき
ありがとうございました
 ▼ 83 ルビアル@ビビリだま 17/06/08 10:26:38 ID:/TbH.9p. NGネーム登録 NGID登録 報告
 ▼ 84 ゴジムシ@ハーバーメール 17/06/10 00:02:24 ID:3zB2YvPs NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

ありがとうございました
 ▼ 85 リジオンの人◆QhqpxfPSAI 17/06/10 21:43:59 ID:f5PeRn6w NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
シリアス部門受賞おめです!
今から読ませていただきますね〜
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