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SS

【小説っぽい】今ある幸せ【SS】

 ▼ 1 カ◆Ibi/.BQaas 16/06/08 00:41:54 ID:srOkhxK2 [1/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
注意、小説っぽい、長い

まずこの場を借りて、少し前の自演騒動について謝罪します。すいませんでした。
友人に好評だったので、少し調子に乗ってました。リア友にSSがばれたのは恥ずかしかったですが。
また、もう、このようなことはしないと、勝手ながらここに表明させていただきます


1個目
http://pokemonbbs.com/sp/poke/read.cgi?no=315707#end
2個目
http://pokemonbbs.com/sp/poke/read.cgi?no=316805#rescount40
3個目
http://pokemonbbs.com/sp/poke/read.cgi?no=319077#rescount40

本編は次レスから。
 ▼ 5 カ◆Ibi/.BQaas 16/06/08 00:48:52 ID:srOkhxK2 [2/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「まぁニンフィアは絶対にお前にだけは渡さんけどな。ニンフィアも気をつけろよ。こいつ、顔は良くても超メス癖荒いから。それだけは、もう病的でさ。」

ニンフィアは恐縮した様子で言う。

「何言ってるの。私の具合が悪そうだったから心配してくれたんだよ。」

「具合悪いって……お前、どうかしたのか ?」

「聞かないでよ。もう !」

悪い、とサンダースはバツの悪そうな顔を作る。

「てか、具合悪いなら何で出歩いてるんだよ。危ないだろ。」

「ちょっと木の実きらせてたから……」

今度はニンフィアがバツが悪そうになる。

「全く、そんなの俺がとってきてやったのに」

ぼやくサンダースに、お兄ちゃんは目利きが無いんだもん、と取りつく島は無い。
 ▼ 6 カ◆Ibi/.BQaas 16/06/08 00:49:48 ID:srOkhxK2 [3/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 なんか、完全に俺、取り残されてるな。無理矢理入り込む。

「そんな事より、ダイジョーブなの ?何なら送ろうか。」

「アホ、俺がいるから大丈夫だよ。」

じゃあな、そう言い残しサンダース等は去っていく。

 親友の妹となると、迂闊に手を出せないな。

これからの事を考えながら、俺は帰路についた。
 ▼ 7 カ◆Ibi/.BQaas 16/06/08 00:52:05 ID:srOkhxK2 [4/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
〈ニンフィア〉

 今日は朝から調子が悪い。1日を寝て過ごしていると、木の実がなかった事を思い出した。

 夜、お兄ちゃんが帰ってくるのに合わせて取りに行くか。
微睡んだ思考でそう決め、夜を待った。

 そろそろお兄ちゃんが帰る頃かな。籠を持って木の実を取りに行く。

 ある程度木の実が集まったところで少し休憩していると、恐い顔をした黒いポケモンが話しかけてきた。

「君、大丈夫 ?」

このポケモン、もしかしてお兄ちゃんがたまに話すヘルガーってポケモンだったかな ?

顔を見ながら思案していると、後ろからお兄ちゃんが近づいてくるのが目に入った。

「何、妹ナンパしてんだよ」

ヘルガーが一瞬だけ驚いた素振りを見せる。

「え ?妹 ?」

「ふーん、でもこんな可愛い子に話しかけない方が失礼だろ ?……てかお前妹いたのか。」

 『可愛い』そんな事、言われたの初めてだな。顔が赤くなるのが自覚できた。

 でも、なんか心がこもってない、空虚な印象をヘルガーの声から受ける。
 ▼ 8 カ◆Ibi/.BQaas 16/06/08 00:53:29 ID:srOkhxK2 [5/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 比較的、派手では無い私はあまりオスに話しかけられない。

他に、もっと目立つ派手なメスがいるからだ。
そもそもあまり外出をしないが。

 オスに対して耐性の無い私は、少しその言葉を間に受けた。

とりあえず、挨拶をする。

「いつも兄がお世話になっております。妹のニンフィアです。」

「いや、そんな事なくて、むしろ俺の方がサンダースにはいつも世話になってるから。」

「本当ですか ?」

「本当本当。」

「何だよヘルガー、今日は嫌に持ち上げるな。」

「まぁニンフィアは絶対にお前にだけは渡さんけどな。ニンフィアも気をつけろよ。こいつ、顔は良くても超メス癖荒いから。それだけは、もう病的でさ。」
 ▼ 9 カ◆Ibi/.BQaas 16/06/08 00:55:27 ID:srOkhxK2 [6/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 そっか、メスに慣れているから私に可愛いって言ったのか。実際には社交辞令みたいなものだ。

少し落胆する。

「何言ってるの。私の具合が悪そうだったから心配してくれたんだよ。」

「具合悪いって……お前、どうかしたのか ?」

「聞かないでよ。もう !」

そんな会話の後、帰り際にヘルガーが

「そんな事より、ダイジョーブなの ?何なら送ろうか。」

などと言っていたが、お兄ちゃんが突っ撥ね住処へ向かった。



一旦終わりです。明日終わらせます。
両視点物なので少しグダグダになると思いますが、御容赦下さい。
 ▼ 10 ニョニョ@マグマスーツ 16/06/08 06:55:51 ID:i1za7DuA NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
毎回のごとく注意書きいらなくね?
長いとか書いてるけど大抵30から40レスで終わってるじゃん。
あと一旦終わりとかもいらないような気がする。
 ▼ 11 ネコロロ@チルタリスナイト 16/06/08 07:51:16 ID:yxBQ3Gy6 NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 12 ルタリス@つららのプレート 16/06/08 15:29:06 ID:iClRL6GU NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
自演はやめてくださいね(小声)
内容はだいぶ良いから、正直もったいないです
支援
 ▼ 13 カ◆Ibi/.BQaas 16/06/08 17:00:21 ID:srOkhxK2 [7/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
〈ヘルガー〉


 サンダースの住処は知っている。

普段はあまり出向く事は無いが、ニンフィアに会いに行く口実として、そこに向かう事にした。

 ただニンフィアに会ってすぐでは下心が丸見えなので、数日後だ。

「サンダース〜いるかぁ ?」

 返事は無い。

無駄足かと思いつつ出直そうとすると、ニンフィアが出てきた。

「あ、ヘルガー……さん ? すいません。お兄ちゃん、今水を汲みに行ってていないんです。えーと、中で待ちます ?」

 ラッキーだが、いきなりサンダースに言わずに会うのはあまり良く無いかもな。

2,3回出向いてからなら良かったんだが。
 ▼ 14 カ◆Ibi/.BQaas 16/06/08 17:01:17 ID:srOkhxK2 [8/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 まぁ、どの道このチャンスは逃すわけにはいかない。お言葉に甘えよう。

「んじゃそうさせてもらおうか、ありがとう。」

「いえ、あの、もう少ししたら帰ってくると思うので。」

ニンフィアが奥へ行こうとする。

引き止める為に話しかける。

「なら、それまで少し話そうよ。ただ待つのも何だしさ。」

「は、はい。」

 話しているとサンダースが帰ってきた。

「ただいま、って何でお前が居るんだよ。」

「いいだろ、別に。気にすんなよ。」適当に流す。

「全く、前も言ったがニンフィアは渡さないからな。」

それからサンダースも交えてニンフィアと暫く話してから帰る。

「じゃ、またね」

 気にはなるが、今すぐ手を出すには、『親友の妹』というのはリスクが勝ちすぎる。

もどかしい気分だった。
 ▼ 15 カ◆Ibi/.BQaas 16/06/08 17:02:36 ID:srOkhxK2 [9/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 それから足繁くニンフィアのところへ通って、それが浸透してきた頃。それとなく仕掛ける。

「ニンフィアちゃんってホント可愛いよね。」

 ニンフィアの顔が少し朱に染まる。

「ありがとうございます。でもお世辞は止めて、そんな事、他の友達には言われませんし。」

「いやいやホント、可愛いと思うよ。」

 ニンフィアがわざとらしく話題を転じる。

「ところで、ヘルガーさんって、いつも何か暗いというか……あ、根暗って意味じゃなくてですね。その、声が、何か諦めてるというか、失望を感じるというか……すいません、急に詩的なこと。忘れて下さい。」

 不意打ちだった。

疑問による問いかけではなく、確認のようなその言葉に俺は絶句した。
 ▼ 16 カ◆Ibi/.BQaas 16/06/08 17:03:24 ID:srOkhxK2 [10/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 俺は自己評価によく『失望』を使う。

刹那的に生きる自分に。何事にも執着できない自分に。そして、そんな自分と簡単に関係を持つメスに。

 俺の深層にあるその感情に気付いたメスに、産まれて初めての『運命』を感じた。

俺にはこのメスしかない、このメスを逃してはいけない、と。

「私、ヘルガーさんのそんなとこに惹かれているのかもしれません。」
 ▼ 17 カ◆Ibi/.BQaas 16/06/08 17:05:01 ID:srOkhxK2 [11/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
〈ニンフィア〉


「サンダース〜いるかぁ ?」

 間延びした声。少し前に聞いた気がする。

 私は出るべきかどうか迷い、出ることにした。

 名前を本人からちゃんと聞いてなかった為、少し自信がないが、確かヘルガーだと言っていた気がする。

「あ、ヘルガー……さん ? すいません。お兄ちゃん、今水を汲みに行ってていないんです。えーと、中で待ちます ?」

 ヘルガーさんが少し気不味い表情を作り、すぐ戻る。

「んじゃそうさせてもらおうか、ありがとう。」

「いえ、あの、もう少ししたら帰ってくると思うので。」

 ヘルガーさんも、私と2匹じゃ気不味いのかな、と思い奥に戻ろうとする。

「なら、それまで少し話そうよ。ただ待つのも何だしさ。」

引き止めるような声に、静止する。

「は、はい。」
 ▼ 18 カ◆Ibi/.BQaas 16/06/08 17:05:57 ID:srOkhxK2 [12/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 ヘルガーが話し始める。

やはり、ヘルガーの声には熱がこもってない。

漠然と、どこか虚しそうな声と表情。口調だけ明るい声がそれを一層目立たせる。

 何故だろうか、少し気になる。

「ただいま、って何でお前が居るんだよ。」

 お兄ちゃんが帰ってきた。

「いいだろ、別に。気にすんなよ。」

「全く、前も言ったがニンフィアは渡さないからな。」

 暫く雑談して、ヘルガーが立ち上がる。

「じゃ、またね。」

 あれ ? お兄ちゃんに用事があったんじゃないのかな。まぁいいか。

 そんな事を考えていたら挨拶を返さなかったことに気づき、失礼だったかな、と反省した。
 ▼ 19 カ◆Ibi/.BQaas 16/06/08 17:07:32 ID:srOkhxK2 [13/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 それから暫く定期的に、ヘルガーがやってくるようになった。

特に用事はないようで、雑談をして、夜になると、お兄ちゃんと一緒にいつもの場所へ出かける。

 毎晩よく話すことがあるな、と半ば呆れながら、日常の中にヘルガーが組み込まれていった。

 いつものようにヘルガーが住処にやってきた。

今日は、お兄ちゃんは外出している。

最近はお兄ちゃんがいなくても特に気不味い表情は見せず、私と話しながら待っている。

「ニンフィアちゃんってホント可愛いよね。」

 前触れもなく急に言われ、顔が赤くなる。たまに言われるが、まだ慣れない。

「ありがとうございます。でもお世辞は止めて、そんな事、他の友達には言われませんし。」

「いやいやホント、可愛いと思うよ。」

 このままではのぼせてしまう。

話題を変える為、いつも抱いていた疑問を投げかける。

「ところで、ヘルガーさんって、いつも何か暗いというか……あ、根暗って意味じゃなくてですね。その、何か諦めてるというか、失望を感じるというか……すいません、急に詩的なこと。忘れて下さい。」

「私、ヘルガーさんのそんなとこに惹かれているのかもしれません。」

 言い終わって、最後の言葉が意味することに気付き、また体温が上がった。
 ▼ 20 カ◆Ibi/.BQaas 16/06/08 17:09:17 ID:srOkhxK2 [14/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
〈ヘルガー〉


 その言葉で決心した。

シスコンの兄なんて関係ない。ニンフィアに告白する。

俺はニンフィアにどうしようもなく惹かれていた。

 数日後、敢えてサンダースがいる前で、想いを告げる。

「あのさ、ニンフィアちゃん。俺と付き合わない?」

 沈黙が流れる。

緊張で喉が乾き、心臓が脈打つ。初めての体験だ。

 何でキンチョーしてんだ俺。

 サンダースが隣で目を瞬かせ、その後付いた溜息が、やけに大きく聞こえた。

「本気ですか。」

 沈黙を破ったその問いかけに、即答する。

「うん。」

 再び沈黙、実際には短い時間であろう時間が、長く感じる。
 ▼ 21 カ◆Ibi/.BQaas 16/06/08 17:10:02 ID:srOkhxK2 [15/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「うーん。」

「ごめんなさい。」

あぁやっぱり。

「別にいいよ。でも諦めないから。」

 自己暗示に近い決意表明だ。

 それからは、他のメスとの関係は断った。

惜しくはない。やっと夢中になれる、執着出来るメスを見つけたんだ。

ニンフィアに比べると他のメスなんて無価値だ。
 ▼ 22 カ◆Ibi/.BQaas 16/06/08 17:10:51 ID:srOkhxK2 [16/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 サンダースの家には、それからも1年くらい定期的に通っている。

 大変なのは、ニンフィアに本気だと分かってもらうことだった。

「初めて運命を感じた。」だとか、「君は特別だ。」だとか、思い返すと、なんて薄い台詞だろう。

それでも、その言葉以外、思い浮かばなかった。

 最終的に、ニンフィアは

「私だけを見てくれて、大事にしてくれるなら。」と、婉曲的に、浮気しないなら、という条件でokをもらった。

 当然、と応え俺達は晴れて番となった。



……なのに

今、俺の隣で気持ち良さげな寝息を立てているのは、レパルダスというメスだ。

 何で、こんなことになっているんだ。
 ▼ 23 カ◆Ibi/.BQaas 16/06/08 17:12:49 ID:srOkhxK2 [17/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
〈ニンフィア〉


 ヘルガーさんが、お兄ちゃんの前で告白してきた。

「あのさ、ニンフィアちゃん。俺と付き合わない?」

 頭の中で思考が巡る。何故お兄ちゃんの隣で ?

 あぁ、からかわれているのか。お兄ちゃんを見遣ると、呆れたような表情。

予測に確信が帯びる。

「本気ですか。」

「うん。」

 即答だった。

「うーん。」

「ごめんなさい。」

 誘いを断る。間に受けるべきではないだろう。

「別にいいよ。でも諦めないから。」

 『別にいいよ』やっぱり、本気ではなかったのか。
 ▼ 24 カ◆Ibi/.BQaas 16/06/08 17:13:27 ID:srOkhxK2 [18/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 それから数ヶ月後、お兄ちゃんが、

「あいつ、最近柄にもなくメスと会ってないんだよな。」とこぼしていた。

 私にも、まだ想いを告げてくる。

本気だったのか。だとしたら、なんて不器用なのだろう。

 私は、ヘルガーの告白を受けることにした。
 ▼ 25 カ◆Ibi/.BQaas 16/06/08 17:14:10 ID:srOkhxK2 [19/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
〈ヘルガー〉


 ニンフィアと付き合い初めてからは、毎日が楽しかった。

やはり、ニンフィアは俺の運命のメスだと疑いもなく確信していた。

 なのに、何で俺の隣でレパルダスが寝ているんだ ?

 気付いたらそうなっていた。

というか、一応そうなった過程は覚えているが、成り行きに任せていたらこうなった。
 ▼ 26 カ◆Ibi/.BQaas 16/06/08 17:14:42 ID:srOkhxK2 [20/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 勿論、今でもニンフィアの事は好きだし、あれ以上のメスはいないと思っている。

レパルダスにニンフィアの事は隠すつもりは無いし、レパルダスがそれに気づいたら、そのまま別れるつもりでいた。

 だから、一時の関係だと思い、レパルダスの『番になろう』という提案も相手を喜ばす為のサービスとして、適当に頷いていた。

 でも、それが何故かばれずに、ニンフィアと番でありながら、レパルダスとも番になろうとしていた。

 このままではマズイ。何とかせねば。
 ▼ 27 カ◆Ibi/.BQaas 16/06/08 17:15:24 ID:srOkhxK2 [21/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 話をする為、レパルダスを起こす。

「おい ! 起きろ。」

「んあ、ヘルガー。おはよ。」微睡んだ声でレパルダスが答える。

「ちょっと話s「ヘルガー、居る ?」

 げ、この声は。

その聞き慣れた声を聞き間違えるハズも無いのに、間違えだと願い、声の方に目を遣る。

 やはり、今一番来てほしく無い、最愛の相手がこっちを見てる。

「何時まで寝てるの。気持ちいい天気だし、散歩行かない ?」
 ▼ 28 カ◆Ibi/.BQaas 16/06/08 17:15:53 ID:srOkhxK2 [22/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
レパルダスに気づいたようだ。

「誰 ?」

 終わった。

 端的で簡潔な問いかけに対し、逃げるように思考が停止した。

 そこからの展開は記憶に残ってない。

ただ、もう2匹はいなくなっていて、俺は1匹だった。
 ▼ 29 カ◆Ibi/.BQaas 16/06/08 17:16:52 ID:srOkhxK2 [23/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
〈ニンフィア〉


 辺りが仄暗い頃、起きて朝食を摂る。

 日が昇り始めて、お兄ちゃんを起こしてから、天気が良いのでヘルガーを散歩に誘おうと思い、ヘルガーの住処に向かう。

 同棲はしてない。ヘルガーの住処に住むと、お兄ちゃんが心配だし、ヘルガーが住み込みに来るとなると、お兄ちゃんと仲がいいとはいえ、ヘルガーも義兄との同棲は気不味いようだ。

 住処が見えた。

「ヘルガー、居る ?」

 番になってしばらくしたら、もう『ヘルガーさん』ではなく『ヘルガー』になっていた。

「何時まで寝てるの。気持ちいい天気だし、散歩行かない ?」

 ヘルガーの隣で誰か寝ている。
 ▼ 30 カ◆Ibi/.BQaas 16/06/08 17:17:26 ID:srOkhxK2 [24/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「誰 ?」

 茫然自失の様子で返事は無い。

 それで、悟った。

やっぱり、私は遊ばれていたんだ。馬鹿みたい。

 頭が真っ白になった。

「お幸せに。」最大限に皮肉を込めた声を残し、立ち去る。

 悔しさと、悲しみが起因である、目から流れるものを止める手段はなかった。
 ▼ 31 カ◆Ibi/.BQaas 16/06/08 17:18:08 ID:srOkhxK2 [25/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
〈ヘルガー〉


 頭の中でニンフィアとの時間を繰り返しリピートしていた。

もう取り戻せない、自ら手放した、かけがえの無い時間。

 後悔が渦巻く。馬鹿か、俺は。

 ニンフィアと付き合う前も二股は何度かしていた。

番にならず、ただ夜を刹那に過ごす軽い関係。

だからバレる前に付き合いは解消されていたし、別にばれても良かった。
 ▼ 32 カ◆Ibi/.BQaas 16/06/08 17:19:07 ID:srOkhxK2 [26/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 でも、今回は番となるメスがいる状態だ。

それまでのように隠し通せるわけが無い。

 数日無気力で過ごしていると、サンダースが訪ねてきた。

「お前、最近姿を見せないな。それにニンフィアも元気が無いんだが。なんかあったのか ?」

 ……サンダースに言ってなかったのか。

 「いや、知らない。」

 咄嗟に嘘をつく。

これ以上状況を悪くしない為の嘘は、問題を大きくして先延ばしにしているだけだ。

「知らないってなぁお前、番になったんだろ。」

サンダースの呆れたような非難も、耳を通るだけ。

「とにかく、ニンフィアと何かあったなら、ちゃんと話しあえよ」

 サンダースが去っていく。
 ▼ 33 カ◆Ibi/.BQaas 16/06/08 17:20:09 ID:srOkhxK2 [27/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 次の日、またサンダースがやってきた。

昨日に比べ、明らかに怒りの感情が読み取れる。

「おい、お前、浮気したのか ?」

 単刀直入の問いかけ。言い訳は無理だろう。

「ああ」

「昨日は知らないって言ってたよな。」

 逃げたい。この状況から。

絶対に戻れないのに、ニンフィアの元へ戻りたい、逃げ込みたい。

 きっとニンフィアなら許してくれる。と、何の根拠もない、身勝手で浅はかな、どうしようも無い願望。

「ニンフィア……タマゴができてるらしいぞ。多分、1匹で育てるつもりだろうな。」


 ハッとする。

「それ、本当か ?」

 タマゴ。場違いな喜びが心を包む。自分で、それを味わう権利を放棄したにも関わらず。

 無意識に俺は走り出していた。

「おいっ !どこ行くんだよっ。」
 ▼ 34 カ◆Ibi/.BQaas 16/06/08 17:21:04 ID:srOkhxK2 [28/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 ニンフィアの住処が見えた。

「ニンフィア !」

 彼女の目が見開かれる。

「すまない。いや、ごめんなさい。今度はもう間違えない。一生お前を大切にする。だから、やり直さないか ?一緒にタマゴ、育てよう。」

 何故、こうも薄い言葉しかでないのだろう。

俺は、必死に言葉を紡ぐ。

「俺には、お前が必要なんだ。」


 ニンフィアが少し微笑み、応える。

「分かってるよ。」
 ▼ 35 カ◆Ibi/.BQaas 16/06/08 17:22:02 ID:srOkhxK2 [29/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 後ろで足音が聞こえた。

サンダースが追いついたのだろう。あいつの方が速いはずなのに。

「おい、ヘルガー。……。」

サンダースが近づいてくる。

「サンダース。あ」

「流石に電撃はやめてやる。」

 サンダースが後ろを向く。

 刹那、視界をサンダースの後両足に覆われた。

強い衝撃が走る。痛いのに、どこか心地よい。

その1発で、俺は許されたかのような気分になった。


―ありがとう、サンダース


「もう、悲しませるなよ。」

「あぁ、分かってる。」

 初めて、満たされたような気がした。
 ▼ 36 カ◆Ibi/.BQaas 16/06/08 17:22:53 ID:srOkhxK2 [30/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
〈ニンフィア〉


 しばらく住処に篭っていると。お兄ちゃんが心配して尋ねてきた。

「なぁ、ヘルガーと何かあったのか。」

 頭の中で、あの光景が蘇る。

「なにも無いよ。」明るく言ったつもりだが、どうだろうか。

 お兄ちゃんもそれ以上の詮索はせず

「何かあったなら、ちゃんと話し合えよ。」と言い残して外出した。

 部屋が無いので、1匹になるには外に行くしか無い。気を遣ってくれたのだろう。

 無気力に食事を用意していると、生理がまだ来てないことに気がついた。
 ▼ 37 カ◆Ibi/.BQaas 16/06/08 17:24:02 ID:srOkhxK2 [31/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 もしかしたら。

 気分転換の意味も込めて外出し、オンバットに診てもらうことにした。

 結果は予想通りだ。

その喜びを分かつ相手がいないことで、哀しみが混じった複雑な気分に陥る。

 でも、1匹で頑張るしかない。タマゴを認識したことで、少し前向きになれた。

 住処に戻ると、お兄ちゃんにこの事を伝える。……ヘルガーのことも。

タマゴもできたし隠すことはできないだろう。

「そうか、よかったな。おめでとう。ちょっと兄ちゃん、出てくるな。」

 どこに行くかは明らかだったが、止めることも、追いかけることもしなかった。
 ▼ 38 カ◆Ibi/.BQaas 16/06/08 17:25:15 ID:srOkhxK2 [32/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 それより、これからどうしよう。

1匹で育てようにも、経験が無い。

迷惑かけたく無いけど、お兄ちゃんに手伝ってもらうしか無いかな。

などと、思案していると
「ニンフィア !」

 この声は、ヘルガー ?

もう、戻らないはずの相手の登場に驚く。

「すまない。いや、ごめんなさい。今度はもう間違えない。一生お前を大切にする。だから、やり直さないか ?一緒にタマゴ、育てよう。」

 普通なら信用できない、ありきたりで軽い言葉。

でも、私には解る。彼が、心からそう思っていることが。

 許したくなる自分が悔しい。

「俺には、お前が必要なんだ。」

 涙を悟られないように、微笑む。

「分かってるよ。」


 あなたのこと、好きになってしまったのだから。
 ▼ 39 カ◆Ibi/.BQaas 16/06/08 17:25:50 ID:srOkhxK2 [33/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 遅れて、お兄ちゃんがやって来た。

「おい、ヘルガー。……。」

 こちらの様子で、和解を感じ取ったようだ。

「サンダース。あ」

発音されかけた言葉の続き、ありがとう……かな ?

「流石に電撃はやめてやる。」

 サンダースがヘルガーに後ろ蹴りを繰り出す。

「もう、悲しませるなよ。」

彼は穏やかな、酷い顔で言う。

「あぁ、分かってる。」
 ▼ 40 カ◆Ibi/.BQaas 16/06/08 17:26:21 ID:srOkhxK2 [34/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
〈ヘルガー〉


 それから数日後、グラエナとかいうオスと並んで歩いているレパルダスを見つけた。

言えた義理では無いが、現金な奴だ。

 俺は呆れつつ、今ある幸せを、噛み締めた。

―fin
 ▼ 41 カ◆Ibi/.BQaas 16/06/08 17:31:46 ID:srOkhxK2 [35/35] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
終わりです。
今回は起承転結をかなり意識して書いてみました。
二視点なので、心理表現がクドイかもしれません。

返信タイム
>>10
レス数は確かに短いですね。
ただじっくり読むと2,30分位かかるので、『ショートストーリー』としては長いと判断して、注意書きをしています。原稿はルーズリーフ裏表4枚くらいですね。
次からは書かないほうがいいですかね?
>>11
支援どーも。
>>12
自演については、二度としません。
お褒めの言葉感謝です。
 ▼ 42 スブレロ@かえんだま 16/06/08 17:53:58 ID:4mET1KUg NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
返信とか支援に反応とかやめたほうがいいと思う
 ▼ 43 ノアラシ@ホイップポップ 16/06/09 00:16:44 ID:fl9gyfsQ NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
いつの間にか完結してた安定のクオリティ
 ▼ 44 イドン@がんせきプレート 16/06/09 18:27:28 ID:l8YGzfm. NGネーム登録 NGID登録 報告
じっくり読んでも2.30分もかからないけど…
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