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ルカリオ「……今までありがとう」ミミロップ「こちらこそ」

 ▼ 1 リムガン@きいろのバンダナ 18/06/01 22:04:59 ID:2k1QlQLE [1/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
蒼黒く澄み渡った夜空に浮かぶ月が煌々と光を放ち、辺り一面を青い光の底に沈ませていた。

そこに佇む二匹のポケモン。

淡く優しい光に照らされて木々が眠りへと誘われる中、彼らはお互いが向ける強い視線をそれぞれ真摯に受け止め、気を張り詰めさせている。

風も、森も、空も、彼らの事を認め察しているのだろうか、物音一つ立てる事無く静かにそこで二匹の事を見守っているようだ。

普段は周辺で日々を過ごしているであろう者達の姿は見当たらない。また、新たにこの場へ立ち入って静謐を乱そうとする者も現れない。

森閑と静まり返ったこの舞台で、ただ彼らだけが存在を赦されていた。

ルカリオ「……悪く、思わないでね」

ミミロップ「うん」

やがて彼は凛とした声を以って、四隣の寂寞を破った。そして目を閉じ僅かに腰を落としつつ、その身に纏わせている空気を更に色濃くしていく。

再び訪れる無音。しかしその次の瞬間には、彼の踏み鳴らした跫音が、周囲の木々に木霊して大気に満ちる。

強い、とても強い、足音だった。
 ▼ 2 ギアナ@スーパーボール 18/06/01 22:05:59 ID:2k1QlQLE [2/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
-半年前-



ミミロップ「WFCに出たい?」

ルカリオ「うん」

穏やかな日常の流れるいつもの昼下がり、ルカリオの嫁であるミミロップが少し驚いたような声を上げた。

その言葉をその通りに受け取ってもいいものかと思案しているのか、彼女は小首を傾げて次の言葉を待っている。

ルカリオ「ほら、俺たちってそれなりに鍛えてるじゃん。でも、ただ鍛えるだけじゃ面白くないかな〜なんて」

ミミロップ「あぁ、本気で言ってるのね」

ルカリオ「俺はいつでも本気だよ」

少し困ったような表情を浮かべる彼に対し、ミミロップは小さく息を吐き「ごめんごめん」と謝った。

ミミロップ「でも、世界大会って言うくらいだし、相当大変と思うけど」

ルカリオ「うん。だから、修行の旅に出ようと思って」

右の拳を握り、やる気を見せるルカリオ。しかし反対にミミロップは不機嫌そうな顔をして、少し冷ややかな視線を彼に送り始める。

だが、彼がそれに気づいて察してくれるのが待てないのか期待できないのか、彼女はすぐに不満を口にした。

ミミロップ「可愛い嫁を置いて、修行にねぇ?」

ルカリオ「あ、ち、ちがうよ! WFCは♂部門と♀部門があるだろう? 俺たちで、それぞれ優勝を目指さないかと思って! ミミロップちゃんだって足技なら自信あるでしょ?」

ミミロップ「あぁ、そういう事ね」

誤解を与えてしまったと早口で弁明するルカリオ。それを見て安心し、今度は彼の様子が笑えてきたのか、ミミロップは上機嫌に右手を口元に当てて上半身を軽く揺らす。その表情は先程までとは打って変わってとても満足そうだ。

ルカリオ「どうかな? かなり辛い旅になるとは思うけど……」

ミミロップ「いいよ。そういうの出てみたいと思ってはいたし。それに……」

ルカリオ「それに?」

私は貴方と一緒にいられるならそれでいいから、という言葉を彼女は頬を紅く染めながら呑み込んだ。

ミミロップ「うーん、なんでもない」

ルカリオ「ええっ、気になるよ。なんなの?」

ミミロップ「さ、そうと決まれば準備しましょ」

ルカリオ「ミミロップちゃ〜ん!」
 ▼ 3 ゲデマル@ホズのみ 18/06/01 22:06:47 ID:2k1QlQLE [3/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
WFCとは、World Fighting Championshipsの略で、いわゆる世界格闘大会のことである。

ここポケモン界では、ルカリオやミミロップのような者達が集い、己の肉体によるバトルを楽しむ大会が幾つか開催されている。数多く様々な種類の大会が開かれており、中でも彼ら格闘技を使う者達が最も注目する最大級の大会、それがこのWFCである。

簡単に言えば、格闘技を使う者のトップを決める大会。我こそはと思うポケモン達がこぞって参加を望む。

ルカリオ「えっと、一応だけど、ルールとか知ってる?」

ミミロップ「少しくらいは知ってるけど……説明してって言われると無理かも」

ルカリオ「まぁ簡単に言えば、肉弾戦のみで勝敗を決めるバトルだね。火とか電気とか、いわゆる他のタイプに当たる技は使えない」

ミミロップ「倒れたら負けなんだっけ?」

ルカリオ「うん。原則、どちらかが戦闘不能になるまで続ける。あと、武器の使用も禁止だね。判定が難しいけど、爪とか牙がメインになるような戦い方もアウト」

ミミロップ「まぁその辺は私には関係ないわね」

すらっと長い足をひと撫でしてみせるミミロップ。それを見てルカリオは両の手の甲を見せるようにし、苦笑いを浮かべる。

ルカリオ「問題なければ気にする事もないね。ただ、身体の構造上仕方ないポケモンもいるから、ね。俺は気をつけなきゃいけない部類だろうな……」

ミミロップ「にしても、えらく詳しいじゃない」

ルカリオ「ま、まぁ……」

競技のルールを、まるでマニュアルでも見ているようにすらすら話すルカリオ。前々から興味があったのだろう、参加にあたって必要な知識は全部取り込んでいるらしい。

ルカリオはミミロップと付き合い始めてからもトレーニングは続けていたが、彼女との時間を優先するためあらゆる機会を遠慮してきた。その分、今回の大会にかける思いは強いのかもしれない。

ミミロップ「だいたいのルールはわかったわ。それで、出場資格が必要なんでしょ?」

ルカリオ「うん。WFCに出るには、各地方の大会である程度の成績をおさめなきゃいけないんだ」

ミミロップ「ある程度は実力が認められている者同士でしか戦えないって事か。人間でいう、ジムバッヂとリーグみたいなものね」

ルカリオ「そんな感じだね」

各地方となると回るだけで骨の折れる旅だが、観光などしながら目的達成を目指すと考えれば楽しいものだ。二匹ともそう捉えているのか、過酷な旅になりそうだというのに笑顔さえ浮かべており、心持ちは軽そうに見える。

しかしルカリオはそれらとは別に心配事があるようで、すぐさま表情に真剣みを取り戻した。

ルカリオ「ここまで話しておいてなんだけど……ひとつ、訊いておく事があるんだ」
 ▼ 4 ワガノン@サンのみ 18/06/01 22:07:28 ID:2k1QlQLE [4/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルカリオはそれまで以上に真剣な目つきをして、ミミロップを見つめる。普段なら熱い視線にドキドキしながら彼の胸元に手を添えるミミロップだが、珍しく冗談を赦さない彼の視線に彼女も姿勢を正した。

ミミロップ「どんな話かしら?」

ルカリオ「俺らってさ、こういう緩やかな生活の中で生きてきたじゃん。でも、一歩自然の世界に出たら、きっと思ってもみないような事に沢山出会うと思う」

ミミロップ「そうね」

ルカリオ「自然の中で修行をするって、思ってる以上に大変で辛い事だと思う。勿論俺にも言える事だけど、その辺りは大丈夫そう?」

ミミロップ「思ってもみない事、か……」

ルカリオが言う言葉の意味、それはミミロップにもよくわかっていた。

彼女は人間の暮らしに近いところで生活してきた。つまりは、自然界の厳しさ、というものをあまり知らずに育ってきているということ。

今日食べる物が一切無いかもしれない困窮や、次の瞬間には襲われて殺されるかもしれないという恐怖、急激な天候の変化により一瞬で自然に牙を向かれる絶望など、少なくとも彼女は一度も味わった事が無い。

これから今の生活をひとまず置き外へ飛び出すという事は、そういった事態に少なからず直面する機会があるだろうという事。そしてその時、頼りになるのはお互いの存在だけかもしれないという事。

勿論、そういった事態を可及的避けるような巡り方もできるかもしれない。しかしルカリオはわざわざこの話をし、覚悟をミミロップに訊いている。これらに頓挫するようでは、優勝は難しいだろうと言っているのだ。

ミミロップ「大丈夫かって言われると、正直わかんない。でも、ルカリオとなら、やっていけそうな気がする」

ルカリオ「えへへ、ありがとう。俺もそういう気持ちでいるよ。何があっても、力を合わせて乗り越えていこう」

彼はぎゅっとミミロップの肩を抱いて反対の手で再び拳を作る。彼女はその意に応えるように、彼の拳に自分の拳をこつんと軽くぶつけた。




かくして、二匹の、WFC出場に向けての修行が幕を開けた。

これから様々なポケモンや事態に遭遇し困難に立ち向かう事となるのだが、このときの彼らはまだ、知る由もない。
 ▼ 5 フレシア@GBプレイヤー 18/06/01 22:08:34 ID:2k1QlQLE [5/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告







何故だ、何故こうなる。

こんな運命に、誰がした。

俺達はただ、何事も無い平穏な生活を望んでいただけだ。

高望みなんてしちゃいない、強い欲望だって持ち合わせていない。

だのに、どうして。

赦さない。

絶対に赦さない。

これは、逆襲だ。

非力な俺の、俺達をこんな風にしたお前達への……





 ▼ 6 ハッサム◆WMQOJecpdc 18/06/01 22:08:58 ID:LSrczcaE [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
シエンZ。良い…ルカミミ…
 ▼ 7 ベノム@6ごうしつのカギ 18/06/01 22:09:39 ID:2k1QlQLE [6/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


ルカリオ「おお、ここぞカントー!」

ミミロップ「ん〜、やっぱりなんていうか、空気が全然違うわね」

船に乗り久方ぶりにカントーの地を踏みしめた二匹。二匹はそれぞれ面識の無い頃にカントーの地を訪れた事があるようで、どちらも思い思いに風を感じている。

ここカントーは、WFCの出場資格となる『地方大会での成果』を最も出しやすい地として知られている。カントー大会は開催頻度が高く間口も広い事から、WFCを目指す者達にとっては登竜門のような扱いを受けているのだ。

二匹も奇を衒った行動は考えず、まずはカントー大会で実力を示すところから始めると決めていた。それとは別に、久方ぶりのカントーの空気を楽しみたかったというのもあるようだが。

ルカリオ「大会は一週間後だ。ちょっとスケジュールが立て込んでるけど、この回に参加しておかないとWFC開催日から逆算して他の大会が間に合わなくなる」

ミミロップ「えっ、そんなにWFCって近いの?」

ルカリオ「半年後だね」

ミミロップ「そんな無茶な……」

ルカリオ「勿論承知の上さ。けど、俺たちだって普段からトレーニングはしてる。バトルで言えば本当に強いやつらと渡り合ったりもしてるんだ」

ミミロップ「私はそんな戦ってないけど……まぁ、頑張るけどさ」

要は、WFC受付締め切りまでに一定の戦果をおさめれば、問題なく出場権を得る事ができる。ルカリオの計算だと、今から各地方の大会に参加していけばWFC受付締め切りに間に合うのだろう。

そして彼が言うように、彼らは何も日々を怠惰に過ごしているわけではない。大会を目前とした今、実際どこまで通用するかはさておき、日々の鍛錬を信じて残りの時間を調整にまわす考えなのだろう。その感触を、各地方の大会での成績で判断するようだ。

ルカリオ「修行場所はトキワの森で考えてるよ。基本的にどの地方でもトレーニングは森でやる」

ミミロップ「その辺は任せちゃうわね。色々下調べも済ませてるだろうし」

ルカリオ「ありがと。じゃあ、早速森に向かおうか。良さそうな場所見つけたら早速トレーニング開始だね」
 ▼ 8 マゾウ@タマゴけん 18/06/01 22:10:31 ID:2k1QlQLE [7/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
-トキワの森-


青々と生い茂る木々、鬱蒼とした獣道、どこか冷たい空気……カントー西部、ニビとトキワに挟まれた場所に位置するこのトキワの森は、全国の道が作られた森の中でも比較的薄暗く、人間たちにとっては観光やピクニックなどにあまり向かない場所だ。

反面、トレーナーやポケモンにとっては修行の場とされる事が多い。特に、カントー全土を回り終えリーグへと向かう者達が最後にこの森で調整を行っている事がよくあるらしい。

ルカリオ達はここを修行の場所に選んだわけだが、他の野生のポケモン達は勿論、そういったトレーナー達にも気をつけなければならない。相手によっては、どんなバトルを仕掛けられるかわかったものではないのだ。

ルカリオ「トキワの森とはいえやけに静かだな……ここってこんなだったっけ」

ミミロップ「うーん私はここ初めて来るからわからないけど、静かっていうか不気味よね」

森を歩く事数分、はやくも彼らは森の異変に気がついていた。

ルカリオ「静かな方がトレーニングするにはいいんだけど……ちょっと気がかりだね」

ミミロップ「でも、特に気になる音は聞こえてこないけど?」

ルカリオ「ふむ。ミミロップちゃんがそう言うなら大丈夫かな?」

ミミロップは長い耳を立て注意深く周囲の音を聞いているが、別段気になる音は入ってこないようだ。ルカリオも波動を使ってあちらこちらを探ってみるも、不審な反応は無い。

ルカリオ「もしかしたら人間が通ったのかもね。手練れのトレーナーか、あるいはポケモンハンターかもしれない」

ミミロップ「ハンターか……確かに、あの手の人間が通った後は、しばらくその道は行きたくないわね」

ルカリオ「でも辺りに人間の反応はないし、少なくとも去ってから少し時間が経ってるみたい。どうしよう、この辺はいい感じの岩場があるし、修行には向いてそうだけど」

ミミロップ「任せるわ。私的には良い感じの場所だと思う」

ルカリオ「じゃ、ここにしよう」

ルカリオは手近にモモンの実を用意しながら、あちらこちらを見回して寝床となる場所を探している。

やがて丁度良さそうな場所を見つけたのかルカリオはミミロップに手招きをし、近くの岩場に腰を落ち着かせた。
 ▼ 9 ゲチック@エスパージュエル 18/06/01 22:11:28 ID:2k1QlQLE [8/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



ルカリオ「カントー大会は参加人数が多いから、各ブロックに分けられる。ブロックの優勝者がそのまま優勝扱いだから、間口が広いって言われてるんだ」

ある程度周囲を警戒しつつ、彼は大会についての話を始めた。初日となるこの日はトレーニング場所が決まれば充分のようで、二匹が身体を動す様子はない。

ミミロップ「一度の大会で複数の優勝者が出るのね。なるほど」

ルカリオ「参加者が多いから、自分の実力もある程度は計れる。まずはこの大会で良い成績を残せるかが鍵だね」

ミミロップ「もしここで躓くようなら、そのまま帰還かしら?」

ルカリオ「そうしようと思ってる。だから、最低でもブロック準優勝はしないとね」

ミミロップ「うーん、だけどWFCで活躍が期待されるようなポケモンと当たっちゃったら?」

ルカリオ「その可能性もあるけど、ある程度以上の力を持ったポケモンはカントー大会にはあまり参加しないらしいよ。特にWFC経験者だと、出場資格も俺達より少なくて済むしね」

ミミロップ「そこまでいくと、WFC経験者はカントー大会参加禁止までありそうね」

ルカリオ「確かに、あるかも」

談笑とまではいかずとも、気を楽にして話し合う二匹。普段から鍛錬を積んでいるとはいえ、慣れない地で初めての大会に挑むのだ、緊張しないはずがない。何気ない会話でも、精神面を考えれば決して無駄な時間ではないのだ。

ルカリオ「今日はゆっくりするつもりだけど、明日からトレーニング開始予定だよ。メニューはその都度伝える」

ミミロップ「辛くて楽しい日々の始まりね。久々に、良い刺激になりそう」

ルカリオ「俺も今からわくわくしてる。なにせほとんど知らない地での修行だからね、何が起こるかわからない」

ミミロップ「まぁ、怪我だけはしないようにしないとね。ある程度なら治せない事もないけど……」

ルカリオ「そこは気をつけたいね。ただ、見知らぬポケモンと戦ったりするのも良い修行になるから、できるだけバトルは受けて立つつもりだよ」

ミミロップ「正攻法で来るとも限らないのに?」

ルカリオ「なに、そうならそうで、俺たちだって正攻法でやる必要はないんだ。俺は今までそうしてきた」

ルカリオはミミロップと出会うまでは、地元の森を中心に修行を行っていた。その時彼はサバイバルのような生活をしており、ともすれば死と隣り合わせの世界で生きてきたのである。

今となっては、大切な嫁の存在や大会参加という名分があるので当時ほど無茶はできないが、彼としてはその頃に近い形でトレーニングを行いたいと思っているようだ。
 ▼ 10 リヤード@おとどけもの 18/06/01 22:12:19 ID:2k1QlQLE [9/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルカリオ「夜は基本的に俺が気を配っておくから、ミミロップちゃんはしっかり寝ていいからね」

ミミロップ「そこまで任せっきりにするのは流石に気が引けるんだけど」

ルカリオ「それも俺の修行のうちだから大丈夫。俺の戦闘スタイルとも合致するし、ミミロップちゃんはそういう戦い方しないでしょ?」

ミミロップ「それはそうだけど……うーんじゃあ、お願いするわね? でも、無理はしないでね」

ルカリオ「へへ、わかってるよ。心配してくれてありがと」

ミミロップ「あん、もう」

ルカリオは彼女の気遣いに嬉しくなり、ミミロップの両手をぎゅっと握った。彼が彼女を連れて修行に出たのは、こうして気を落ち着ける場を作るためでもあるのかもしれない。

ミミロップ「ん……何か来る」

ルカリオ「マジか。早速だな……どの辺かわかる?」

ミミロップ「あっち、でもこれ速いっ!」

ルカリオ「ちっ!」

ミミロップが言葉を言い終えるや否や、ルカリオは彼女の方に飛び込んでその場から転がり退いた。

その僅か一秒後、先ほどまで彼が座っていた場所に一筋の雷が打ちつけられる。威力はそう大きくはないが、確実に彼を狙った一撃だった。

ルカリオ「早速お出ましか。今日くらいは休みたかったんだけどなぁ」

ミミロップ「電気タイプのポケモンかな? この精度、扱いに慣れてそうね」

地を転がりその勢いで立ち上がって臨戦態勢を取る。見据えるは森。まだ姿を確認する事はできないが、ルカリオの波動で存在を感じ取れる程に相手は近づいているようだ。

先ほどまで全く存在を感じ取れなかったというのに、もうすぐ近くまで敵が近づいている……相当に素早さの速いポケモンである事が予想される。

ルカリオ「移動速度が速いな……岩場に移動するよ」

ミミロップ「うん。これだけ移動が速いならどの方向から出てくるかわからないし、私は後ろで音を聞くわ」

付近の岩場に飛び上がり、二匹はお互いを背にして辺りの様子を注意深く窺った。
 ▼ 11 ッタ@ローラースケート 18/06/01 22:13:26 ID:2k1QlQLE [10/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
辺りの草木が揺れる。しかしそれはあくまでもごく自然な風による、いわば舞踏。普段なら安らぎをもたらしてくれるそれも、現状ではターゲットを捕捉する障害にしかならない。

しかし彼らはそれに惑わされる事なく、一歩も動かず冷静に敵の位置を探っている。普段からそれなりにでも鍛錬を積んでいるのは伊達ではないらしい。

ルカリオ「…………」

ミミロップ「……四時!」

ルカリオ「承知!!」

暫く沈黙を保っていた二匹だが、ミミロップがそう叫ぶや否やルカリオは拳に力を込め岩場から飛び出した。

バレットパンチ。

目にも留まらぬ速さで打撃を与え相手を威嚇する技だが、繰り出されるパンチは通常のものに比べ重く受け難い。

相当修行を積んでいなければ満足に速度も威力も出ない技だが、WFCに参加しようと思うだけあり、彼の繰り出すそれは双方共に申し分無いものだった。

彼女の示した方向に向けて彼は全力で技を繰り出す。

ルカリオ「ち、ミミロップちゃんそっち!」

ミミロップ「おっけー!」

果たしてルカリオのバレットパンチは空を切ってしまったが、続けざまにミミロップは相手が避けた先を予測して電光石火を繰り出した。

ごり、と相手の肉に打ち込む感触が彼女の手に残る。柔らかな感触、少なくとも相手は鎧などを身に纏ったポケモンではない事がわかる。となれば、思いっきり蹴り上げても怪我をする事はないだろう……そう判断したのか、次の瞬間には得意の足技を繰り出していた。

ミミロップ「ああんもう!」

しかし相手はそう易々と攻撃されてはくれないようで、自慢のメガトンキックは近くの茂みを蹴り上げただけだった。

ルカリオ「いや、ナイス判断だ!」

だが、彼女の大技を避けた相手の動きを彼は見逃さない。思わぬ彼女の連撃に驚いたのか相手は目で見てもわかる程度に低速で移動していた。

その隙をルカリオは逃さない。両手に力を込め、対象に向けて思いっきりぶつかっていく。

ルカリオ「くわんぬ!」

???「ぐえっ!」

今度ははっきりとした手ごたえ。ルカリオのインファイトをまともに受けた相手は岩場まで吹っ飛び、大きな音を立てて砕けた岩と共に地に落ちた。
 ▼ 12 ブト@くろいてっきゅう 18/06/01 22:14:14 ID:2k1QlQLE [11/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミミロップ「倒した?」

ルカリオ「たぶん」

ルカリオは相手が埋まっている崩れた岩場から視線を逸らさず答える。ミミロップは身体の砂埃を払い、小さく息を吐いて同じ方を見た。

岩場から何かが出てくる様子はない。ただ、ルカリオが波動で探った感触では、相手は確かに岩の下で生きている事がわかる。出てくるのを躊躇っているのか、受けた衝撃が想定よりも大きかったのか。

ルカリオ「しかし、近づかれるまで読み取れなかったという事は、相当素早いな。波動の圏外から一気にここまで詰め寄ってくるとは……」

ミミロップ「音を聞いた次の瞬間にはもう攻撃がきてたしね……」

一体何が彼らを襲ったのだろうか。相手を埋めている岩をどかしに向かおうかとも考えたが、その瞬間に狙われてはたまったものではないと思い暫く様子を見ることにした。

ミミロップ「……ねえ、今度は大勢やってくるんだけど」

ルカリオ「みたいだね……」

そうこうしているうちに、別な反応が彼らの元に飛び込んでくる。今度の相手は複数で、こちらに歩いてきているようだった。

ルカリオ「仲間が応援に来た、というわけでもなさそうだな」

ミミロップ「それにこの息遣い、四足の獣ね。大型のもいそう」

となると、何かの群れが獣道を闊歩しているに違いない。そう思った二匹は念のため岩場の上の方へ移動し、そちらの様子も窺う事にした。

待つ事数分、ちょうど敵対していた相手が埋まっている辺りにガーディの軍勢が歩いてやってきた。先頭には群れのボスらしきウィンディの姿もある。

彼らは歩みを止め、崩れた岩場の辺りでしきりににおいを嗅いでいる。見つかっては面倒だと思い、ルカリオとミミロップは息を潜め彼らの視界の届かない範囲までゆっくり移動した。

???「あー! くそ、やられた……思ったより強いやつらだったぜ」

程なくして、ガラガラと岩の崩れる音がした。同時に、そこに埋まっていたポケモンと思われる者が大声を上げる。

二匹は気配を殺しつつ、そっと下を覗き込んだ。
 ▼ 13 イケンキ@あおいバンダナ 18/06/01 22:14:15 ID:wawqM.DU [1/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
劇場版ポケットモンスター
ルカミミの逆襲
 ▼ 14 ローゼル@トロピカルメール 18/06/01 22:15:09 ID:2k1QlQLE [12/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
岩場から這い出てきたのは、サンダースだった。ウィンディはじめ、ガーディ達は出てきた彼を警戒するでもなく、出迎えているようだ。

ガーディ達は誰一匹として吼えたり威嚇したりする者はいない。つまりは、サンダースはこの群れの一員であるか、知り合いなのだろう。

ウィンディ「あまり、無差別に暴れるな。怪我でもしたらどうする」

サンダース「無差別でもねぇよ。ここはお前達の縄張りだろ? なら、不審な奴がいたら対処するのが筋じゃねーの?」

ウィンディ「それはそうだが、我々にははっきりした目的がある。それを第一に考えるべきではないのか、おまえ自身も」

サンダース「それは、そうだけど……」

どうやらここはガーディ達の縄張りらしかった。となると、この辺りでの修行は断念せざるを得ない。勿論彼らに隠れてトレーニングをする事はできるが、見つかってしまえば面倒な事になるのは明白だ。

この場は何とか何事も無くやり過ごしたいところだが、岩場から立ち去ろうにも麓を軍勢に埋められているこの状況ではヘタに動く事もできない。

ルカリオ「ん?」

ミミロップ「どうし……あれ、この音何?」

ふと、突然これまで感じなかった気配が現れた。麓の方に集中していて気づくのが遅れてしまったが、その相手はどうやら上空にいるようで……

ミミロップ「きゃっ、なにこいつ!」

ルカリオ「ふ、フライゴン!?」

フライゴン「ふりゃあああああ!!」

ルカリオ「ちっ!!」

気づいた時には既にフライゴンのドラゴンクローが目前に迫っていた。あまりに急だったため二匹は麓のガーディ達の事を考えず、寸での所で岩場から飛び降り避けた。

多少無様に転がり落ちたがしっかりと地面を見据え、問題なく着地する。ガーディ達の目は一瞬でも彼らに向くと思われたが、誰も彼も二匹の事などお構いなく、上空にやってきたフライゴンに視線を向けていた。
 ▼ 15 メラ@キーのみ 18/06/01 22:15:57 ID:2k1QlQLE [13/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ウィンディ「ヤツが出たぞ! 総員、落ち着いて行動するんだ。自らの命を最優先に、散れ!!」

思わぬ敵の登場に驚いたのかガーディ達は暫くフライゴンを見上げていたが、いち早く我にかえったウィンディの言葉ではじかれたように方々走り出す。

サンダース「ちっ……今はまだ、その時じゃない……」

ウィンディ「おい何してる、お前もはやく逃げろ!」

サンダース「わぁーってるよ……お?」

と、サンダースがそこでようやくルカリオ達に目を向けた。

サンダース「お前らかさっきやってくれたのは」

ルカリオ「そうだけど、非常事態じゃないのか? 悠長に話してる場合じゃなさそうだが……」

サンダース「そりゃそうだ。まぁ俺なら別に近づかれても逃げられるけどな」

素早さに定評のあるサンダース。彼ほどの動きを見せる者ならば、なるほどルカリオの波動圏外から一気に詰め寄ってくる事も充分可能だろうと今更ながらに思う。

ミミロップ「なんかあいつこっち向かってくるけど、どうする?」

サンダース「戦う気か? やめとけ、あいつはただのフライゴンじゃねぇぞ、普通じゃない。やるなら準備を整えてからにした方がいい」

ルカリオ「なんかわけありみたいだな……とりあえず退いておくか」

ミミロップ「わかったわ。それじゃ、走れーっ」

素早さに定評があるのはサンダースだけではない。ミミロップもルカリオも、彼ほどではないにしろ素早い動きを得意とするポケモンだ。逃げると決まれば、あっと言う間にフライゴンの視界から消えて見せた。

勿論、見えなくなったからといって油断はできない。ポケモンによっては、姿が見えなくなった相手でもしつこく探し出そうとする者もいる。

あのフライゴンがそういうタイプであるかどうかをルカリオたちは知らないが、ガーディ達やサンダースが暫く走るのを止めないので、彼らもそれに合わせて遠くまで逃げる事にした。
 ▼ 16 ターミー@エレベータのキー 18/06/01 22:16:58 ID:2k1QlQLE [14/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


鬱蒼とした獣道を走る。

それなりに大型のポケモンも通っているのか、まるで整備された道のように走りやすい。そんな道を彼らはやはり軽やかに走り抜けていく。

やがて大き目の洞窟が視界に映り、ガーディ達やサンダースはその入り口の方へと道をそれた。

ルカリオ「もう追ってこないみたいだね」

ミミロップ「音も聞こえないわ」

おそらく少し前の時点から追いかけてきていないのだろう。二匹は短く息を吐いてガーディ達の逃げ込んだ洞窟へと目を向ける。

ルカリオ「さて、新しく修行場所探さないとなぁ。折角良さそうな場所だったのに」

ミミロップ「いっその事あのポケモン達に頼んでみるのは? 逃げるの最優先だったからかもだけど、あんまり敵視されてる感じしないし」

ルカリオ「もう逃げ切ってるのに、こっちに来る様子もないしな……そうしてみるか」

自然界で他のポケモンと出会えば、敵対する事もあれば仲良くなる事もある。友好の輪を広げる機会があるのなら、是非とも活用しておきたいところ。ルカリオの持つ友人の多くとも、そうやって修行時代に絆を作ってきた。

ルカリオ「すまない、少し話をしたいのだが、リーダーはどちらか」

ただ、それでも最低限の警戒は必要だろうとルカリオは隙を見せないように洞窟の入り口に立った。ミミロップに至っては少し離れた所から様子を見ている。一緒に行くと彼女は言ったが、彼がそうさせたのだ。

ガーディ「お前、誰だ」

すぐにガーディが数匹寄って来て彼の前方に立ちはだかる。ルカリオは誤解を与えないよう両手を挙げて見せ、敵意がない事を伝える。勿論、急襲を受けても対象できる程度に身構えてはいるが。

ルカリオ「寝泊りとトレーニングに良さそうな場所を見つけたんだけど、どうもキミ達の縄張りの内みたいでね。できれば滞在許可をいただきたいんだけど」

ガーディ「滞在許可だぁ? そんなもん出せるわけないだろ!」

ガーディ「そうだそうだ! あっちの可愛い姉ちゃんだけならまだしも、なんでお前なんかに出さなきゃいけないんだ!」

集まってきたガーディがきゃんきゃんと吠え始める。想定はしていたが悪い雲行きにルカリオは眉をひそめずにはいられない。

だがそれも束の間、洞窟の奥からリーダーであるだろうウィンディがゆっくりと歩いてくるのが見えた。
 ▼ 17 チュール@グラスシード 18/06/01 22:17:50 ID:2k1QlQLE [15/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ウィンディ「お前達、後の話は私がする。奥へ退いておけ」

ウィンディにそう言われるとガーディ達は何の文句も言わず、すごすごと奥へと歩いて行った。非常に統率力の高い群れのようで、ルカリオは少し感心した。

ウィンディ「お前、あちらさんの♀も、結構な手練れのようだな」

ルカリオが話し始めるより先に、彼は静かにそう言った。

ルカリオ「自分達ではわからないけど、少なくとも弱いつもりはないな」

ウィンディ「サンダースをコテンパンにしたようだな。少なくとも、素人じゃない事はわかる」

ルカリオ「まぁ、二匹がかりだったし」

ウィンディ「それに、こうしている間も、いつでも戦闘に入れるよう密かに身構えているな。お前だけじゃない、向こうの彼女もだ」

群れのリーダーとしてそれなりの力があるのだろう、彼は目を閉じ大きく頷く。やはり見抜かれていたかと、ルカリオは身に纏う緊張感を若干だけ強める。

敵対か関心か、どちらとも取れるウィンディの言葉。今この瞬間から戦闘が始まってもおかしくはない。

しかし次の瞬間、驚く事にウィンディは前足を伏して頭を下げた。

ウィンディ「どうか、私達を救ってはくれないだろうか」

ルカリオ「え……どゆこと?」

思ってもみない事態に、ルカリオは素っ頓狂な声を上げてしまう。

ウィンディ「私達はこの界隈に縄張りを持っているのだが、見ただろう、先ほどのフライゴン。ヤツに縄張りを荒らされている。おかげで……もう何匹もの仲間が、犠牲になってしまった」

ウィンディは訥々と事情を話し始めた。急な頼みごとに少々困惑するルカリオだったが、無防備に、そして真剣に話を始めるウィンディを見て、最後まで話を聞いてみる事を決めた。

ウィンディ「ヤツは狡猾で怖ろしい。寝込みを襲われる事もあれば、群れからはぐれたものを狙う事もある。私達としては何とかヤツを倒し平穏を取り戻したいのだが……戦力が足りないのだ」

ルカリオ「サンダースも、賛同者って所か?」

横目でサンダースを見る。彼は退屈そうに伸びたり首を鳴らしたりを繰り返していた。

ウィンディ「目的を同じくした同胞、という所だ。彼も、ヤツに酷い目に遭わされた。愛するポケモンを、ヤツに奪われたのだ」

ルカリオ「そんな事が……」

それからも、所々に質問を挟みながらウィンディの話を聞いていく。悲痛そうに話す彼の様子からもわかる、中々に根の深そうな内容だった。
 ▼ 18 ティアス@いましめのツボ 18/06/01 22:19:10 ID:2k1QlQLE [16/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
今更ですが、今回は色んな意味でR18な展開が何度か出てきますのでご注意ください
 ▼ 19 ネコ@ヘビーボール 18/06/01 22:24:33 ID:wawqM.DU [2/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
フライゴン好きだけど今のところ悪役っぽい?でもすこ
支援
 ▼ 20 リンク@フライングメモリ 18/06/01 22:35:00 ID:Jdhgj2EE NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 21 ルッグ@ゴーストメモリ 18/06/01 22:59:13 ID:r83KvchQ NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
>>18
おけです
支援
 ▼ 22 ガカイロス@レンズケース 18/06/01 23:07:04 ID:LSrczcaE [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
シエンZ
 ▼ 23 テトプス@アイテムドロップ 18/06/01 23:26:25 ID:wawqM.DU [3/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
イッチに質問、
いつできるかは未定だけど、このssの絵描いてもいい?
 ▼ 24 カグース@ポイントアップ 18/06/01 23:31:52 ID:OCS5iyFc NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
仮面舞踏会の一組かな
 ▼ 25 ッチャマ@きんりょくのハネ 18/06/01 23:47:26 ID:UdKab6Kw NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルカミミ!そういうのもあるのか
支援
 ▼ 26 ョロモ@ファイトメモリ 18/06/02 07:27:14 ID:LHNGYuA2 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援だ
 ▼ 27 ガジュペッタ@しろぼんぐり 18/06/02 21:32:04 ID:wucpcl7k [1/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
>>23
こんな話のでよければ


訂正箇所
ウィンディ→ウインディ
以後気をつけます
 ▼ 28 ルマイン@りゅうのプレート 18/06/02 21:32:51 ID:wucpcl7k [2/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルカリオとウインディの話は、フライゴン討伐に協力してくれるのならどこを使ってもらってもかまわない、という所に落ち着いた。

その話を持ち帰り、ミミロップに話す。彼女は少し考えて、大会に支障が出ないレベルでなら良いんじゃないか、と答えた。

そして更に交渉を重ねた結果、大会までの間大怪我をしないで済む範囲での協力という所で妥協してもらった。ウインディ、中々話のわかる♂のようである。

具体的な話は次の日にと言う事で、ルカリオとミミロップは最初に目をつけていた辺りに戻り、焚き火を前にトレーニングの計画を立て始める。

ルカリオ「でも、滞在期間の間にフライゴンと戦わなかったらなんか悪いな」

ミミロップ「それは仕方ないでしょ。そういう話になってるんだし」

色々思案して心配を募らせているルカリオに対し、ミミロップは意外にもあっけらかんとしている。ルカリオは彼女を箱入りだと思っていたが、思った以上に強かそうな様子で複雑な笑みを浮かべた。

ミミロップ「でも、久しぶりにこういう経験したわ。何かから逃げるのなんて、何年ぶりかしら」

ルカリオ「普段はそういうこと全く無いからね。怖かった?」

ミミロップ「怖かった、って言ったら?」

ぎゅっ、とルカリオの横にぴったりくっつき、彼の胸にそっと手を触れるミミロップ。彼の身体が緊張し鼓動がはやくなっていくのを彼女は肌で感じた。

ルカリオ「え、えっとねミミロップちゃん。俺、実を言うと、ミミロップちゃんに来てもらったのにはもう一つ理由があるんだ」

ルカリオは胸に添えられた彼女の手を丁寧におろし、そのまま両手で握る。

ルカリオ「俺さ、ミミロップちゃんのこと、めっちゃくちゃ大好き。自制が全然きかないくらい好き、愛してる」

ミミロップ「ありがと。それで?」

ルカリオ「だからね。そんな大好きなミミロップちゃんがすぐ近くにいる状況で、例えばぎゅってするのを我慢する……これって俺にとって、どんな修行より辛い事なんだ」

ルカリオはどこか言いにくそうに少しずつ彼女に思いを訴える。しかし、ミミロップもよくできた♀、彼が言わんとしている事を何となく理解しつつも彼が言葉にするのをじっと待っている。

ルカリオ「こういう言い方するとあれかもだけど……ミミロップちゃんに対する愛を我慢する事で、精神力が物凄く鍛えられると思うんだよね」

ルカリオは両手に少し力を込める。彼の目は真剣そのものだ。
 ▼ 29 ガドーン@りゅうのプレート 18/06/02 21:33:36 ID:wucpcl7k [3/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミミロップ「そこまで考えてたか……ちょっと感服、かな」

ルカリオ「勝手な考えでごめんよ」

ミミロップ「そうね〜、だってそれ、私も同じ苦痛を強いられるわけだし? あー辛いなぁ」

ルカリオ「う〜、ごめんよ……で、でも、毎日じゃないから! 何日かに一回は、いっぱいいっぱい愛し合おう!」

拗ねるようにルカリオを横目で見つつも、どこか満足そうなミミロップ。彼の覚悟が伝わったのだろう、ほんの少しだけ寂しそうな表情を浮かべはしたが、彼女の方も握られている手に力を込めた。

ミミロップ「こんな辛すぎる試練、乗り越えられたらもう敵無しね?」

ルカリオ「も、勿論だよ! これより辛い事なんて、無い!」

ミミロップ「だ・け・ど……今日は、どうなのかしら?」

ルカリオ「う……」

すっとルカリオの顎を優しく撫でるミミロップ。妖艶な笑みを浮かべ濡れた目で彼を見つめている。ルカリオの心臓はどくどくと更に強く脈打ち始め、視線は彼女に釘付けになってしまう。

ルカリオ「え、えっと、今日は、今日は……今日は我慢しない日って事で!」

ミミロップ「きゃはっ、いきなりダメダメじゃん〜」

しゅばっとまるで漫画のそれのように勢い良く彼女に抱きつきキスの雨を降らすルカリオ。その様子からは自制心の欠片も見当たらない……成程、相当精神力が鍛えられそうな鍛錬である。完遂できれば、だが。

声「おーおー、おあついこって。お前らみたいなのをバカップルって言うのか?」

そんな彼らを眺める者、一匹。いつからそこにいたのか、岩場の上には誰かポケモンがいるようだった。

急に声をかけられ驚きこそしたもののルカリオもミミロップもお互いに距離をとることはせず、抱き合ったまま声のする方を見上げた。

ルカリオ「サンダースか……」

しかしそこにいるのが彼だとわかると、ルカリオはそっとミミロップに回していた手をおろし、彼の方に向き直る。
 ▼ 30 ーランド@アクアスーツ 18/06/02 21:34:25 ID:wucpcl7k [4/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
サンダース「あん? なんだよそれ、もしかして俺に遠慮してんのか?」

ルカリオ「あ、いや……」

図星をつかれてしまい、言葉に詰まるルカリオ。

彼は、ウインディから聞いていた話を思い出したのだ。その話を聞いていないミミロップは少し不思議そうにルカリオを見ている。

そんな彼女の動きを見てか、サンダースは更に言葉を続けた。

サンダース「他のやつらがイチャついてようが何してようが、俺には関係ないね。別に、見ててイラつくもんでもねぇよ」

ルカリオ「なら何故声をかけてきたんだ」

全く気にしないと言うのなら二匹の時間を邪魔して欲しくなかったとばかりに、ルカリオは少し語気を荒げてサンダースを睨む。

サンダース「俺は明日からの作戦の話をしにきたんだ。悪く思わないでくれ」

すとっ、とサンダースが岩場から地に降り、二匹の前に腰を下ろす。ルカリオはため息を吐きミミロップに『仕方が無い』と目配せして、彼の方へ向き座る。ミミロップはそれに頷き、同じように座した。

サンダース「明日、早速ヤツにふっかけるらしい。攻められる所まで攻めて、それでも敵いそうに無いなら縄張りを諦めて撤退するんだとよ」

ミミロップ「えらく急ね……てか、私達が来たから?」

サンダース「元々数にものを言わせられる状態なんだ、足りないのは圧倒的戦力。俺もあいつらも、フライゴンには相性が悪いからな。お前達の存在は大きい」

ルカリオ「確かに、俺たちなら冷凍パンチ辺りで有効打を与えられるが……勝算はあるのか?」

サンダース「どうだろうな。正直五分は率があると思う。ただ、ヤツは普通じゃない」

ミミロップ「それ逃げたときも言ってたけど、何が普通じゃないの?」

サンダース「身体能力もそうだが、性格が獰猛すぎるんだ。そうだな、言うなれば、理性を失った獣って感じだ」

ルカリオ「話が全く通じないのか?」

サンダース「ああ。そういう環境で育ったのかそもそも話す気がないのかは知らんが、ヤツは言葉を話さないし聞こうとしない」

意思の疎通ができない相手というのは、ただそれだけで恐怖を煽られる。しかも圧倒的な力差がある事を考えれば、彼らが味わってきた恐怖がどれ程大きいものか容易に想像できる。
 ▼ 31 ストダス@エスパージュエル 18/06/02 21:35:33 ID:wucpcl7k [5/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミミロップ「話はわかったわ。ただ、一個だけ質問してもいい?」

サンダース「なんだ」

ミミロップ「ルカリオと一体どういう話をしてたの? さっきの旦那の行動が物凄く不可解なんだけど」

手を腰に当てて不機嫌な表情を浮かべるミミロップ。サンダースを目にした時、ルカリオが彼女から手を離したのが気に入らないようだ。

サンダース「さっきの?」

ルカリオ「お前を見て俺がミミロップちゃんから手を離したからだと思う」

サンダース「それ、別に不可解じゃなくね? 誰かに見られてるってわかったら離れたりしないか普通」

ミミロップ「ごめんけど私達、あんたの言うバカップルだし? 誰かに見られてるくらいで離れたりしないから」

ミミロップも二匹の時間を邪魔された事に少々イラついているのだろう、容赦なくサンダースを強く睨みつけていた。

サンダース「鬼嫁かよ……はぁ、そこまでラブラブだと羨ましくもなる」

ルカリオ「ミミロップちゃんには話してなかったね……えっと」

サンダース「……自分で話すさ」

ルカリオの目配せを受け取り、彼は大きくため息を吐いた。

サンダース「種族も違うのにどうして俺がガーディ達と一緒にいるのかって思わなかったか? 目的が同じだからだ。俺は……愛する者を、奪われた」

ミミロップ「えっ……」

サンダース「なんだその、まぁ……あーくそ、お前ら見てたらなんかイライラするっていうより、悔しくなってくるなぁ……」

なんともいえない複雑な表情をしながら空を仰ぐサンダース。何かを考えているのだろうか、それから少しの間じっと夜空を見つめたまま押し黙ってしまう。

やがて彼は視線を目の前の二匹へ移し自嘲するように小さく息を吐き、前足でがりがりと咽喉元を掻いた。
 ▼ 32 ョロトノ@ソクノのみ 18/06/02 21:36:43 ID:wucpcl7k [6/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
サンダース「俺はさ、元々ある人間のポケモンだったんだよ。イーブイの頃からな。で、そこにいたもう一匹の♀イーブイととても仲が良かったんだ」

サンダースは前方を見つめながら話を始めた。だが、視線はルカリオ達を見ていない。きっと、彼の話す過去を見つめているのだろう。

サンダース「俺達は可愛がられて石もらって進化して、それぞれサンダースとシャワーズになった。毎日特訓をしてた甲斐もあって、俺達はエースみたいな感じで活躍してたんだ」

サンダース「その人間の住んでた所じゃ敵無しだったな。誰も俺たちには勝てなくて、鼻高々だった。その傍ら、俺はシャワーズの事が好きになっていってて、人間に隠れてこっそり愛を語ってた」

サンダース「嬉しい事に両思いでな、お前たちに負けないくらいラブラブだったんだぜ?」

そう言ってちょっと嬉しそうに笑うサンダース。それだけで、とても幸せだった事が窺える。

サンダース「だけどなぁ……俺達は住んでた土地を出て、旅に出ることになった。きっとどこまで通用するか、やってみたかったんだろうな」

サンダース「……挫折は早かったよ。世界は広い。見ず知らずの人間達と勝負をして、まぁだいたい負けてたな。なんていうか、経験(レベル)に差がありすぎた」

サンダース「俺達は負けた傷を寄り添う事で癒しながら、次は勝とうと鍛錬を積んだもんだ。だけど全然思うようにいかなくて……気がついたら俺たち、二匹で寄り添う時間の方が長くなってた。だけど、辛い事があっても、シャワーズといれば頑張れた。お互いの存在が、お互いを助け合ってたんだ」

サンダース「でも……そこからは、辛い出来事の連続だった」

サンダース「俺達はいつからか連れてもらえなくなって、不思議な空間に送られた。彼女とも離れ離れにされた……すごく寂しかったよ。毎日毎日、彼女に会いたいと思って情けない声出してた」

悲しい顔をして思い出を声に乗せるサンダース。彼の風貌や喋り方からして若干意外ではあったが、もし自分達が同じ目に遭ったらと思うと、とてもそれを言葉にはできなかった。

サンダース「そんなある日の事だ。俺は急に不思議な空間から引き出されて、久方ぶりに外に出してもらえた」

彼の瞳が強く揺らぐ。奥歯を噛み締め、怒りを露にしている。

サンダース「また活躍の場を与えてもらえるのかと思った。でも……俺が外に出て最初に見たのは……」

サンダース「ボロボロに傷ついたシャワーズの姿だった」
 ▼ 33 ラマネロ@きあいのハチマキ 18/06/02 21:37:40 ID:wucpcl7k [7/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミミロップ「それって……」

サンダース「ああ。あの野郎、腹癒せだかなんだか知らねぇが、シャワーズに暴力振るってやがったんだ」

ルカリオ「酷い……」

サンダース「人間による虐待ってやつだ。流石に俺はぶちキレておもいっきし放電してやった。そんでそいつが怯んだ隙に、彼女を連れてそこから逃げた」

サンダース「だけどまぁ、良かったと言うべきか多少は残念と言うべきか、その人間は追ってこなかったよ。弱くなった俺たちなんて、もうストレス解消の道具にしか見てなかったんだろう」

サンダース「それでも俺は彼女を乗せて、走って、走って……それでたどり着いたのが、この森だった」

ミミロップ「そこで、ガーディ達と?」

サンダース「森に迷い込んで数日経ってからだったけどな。シャワーズの傷が思ったよりも深刻で、手近な洞窟で傷が癒えるのを待った。そんなときだよ、ガーディ率いるウィンディが声をかけてきたのは」

サンダース「まぁ元々そこはあいつらの縄張りだったんで追いやられるかと思ったんだが……傷ついたシャワーズを見てか、そのままその洞窟を使わせてくれたんだ」

サンダース「それからシャワーズは順調に回復していったんだが……」

そこで彼は言葉を詰まらせる。聞かなくてもその後何が起きたかはわかる……だが、彼は少しずつ、言葉を選びながら話し始めた。

サンダース「静かな、朝だった。俺はいつものように、目を覚ましたんだけど……あいつの姿が、なくて」

サンダース「外へ探しに出たら、少し離れた所で、ウィンディ達が集まってて……」

サンダース「来るなと言われたんだけど、なんか、嫌な予感がして、振り切ってそこへ行ったら……」

サンダース「あいつ、死んでた。身体中ボロボロになって、あちこち引き裂かれて……死んじまってた……」

ミミロップ「そんな……」

ルカリオ「そんな酷いやられ方だったのか……」
 ▼ 34 ミロップ@きんのたま 18/06/02 21:38:44 ID:wucpcl7k [8/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
サンダース「俺は非力だ。人間の役にも立てず、愛する彼女を守る事もできず、ただ一匹こうしてのうのうと生きている事しかできない……無力なポケモンだ」

サンダース「これは、逆襲なんだ。仇を討って、あいつへの手向けにする。今の俺は、そのためだけに生きてるようなもんだ。だから」

ミミロップ「ううん、もういい、もういいよ、ごめん。私が無神経だった」

悲惨な彼の生き様に耐えられなかったらしく、ミミロップは涙していた。ルカリオも想像以上に酷な話にショックを受け、目を伏せて黙っている。

サンダース「なんだよ、なんで謝るんだよ。あと、泣くなよ、俺も泣きたくなるだろ……」

サンダースも堪えきれなくなって涙を流し始めた。

愛するものを失う悲しみは計り知れない。お互いの生きる為の支えになっていたのだからなお更だ。

世の中は、決して美しいものではない。人間とポケモンが寄り添って生きている一方で、ポケモンを乱暴に扱う人間もいれば、人間に害を成すポケモンもいる。

そういう事、頭では理解していても、いざ直面してみれば、話を聞いてみれば、酷く胸が痛む。やりきれないと、顔を伏せたくなる。

サンダース「お前達には感謝してるんだぜ。おかげで、上手くいけば復讐も終わる。やっと、俺達は解放されるんだ」

ルカリオ「……そうか」

復讐からは何も生まない、なんて言う者もいる。

しかし、実際に被害に遭った者は、一生ただ我慢して生きろというのか? やり場の無い気持ちは? 怒りは、悲しみは、無念は?

誰も、それに答えようとしない。答えられない。

サンダースの目が、そう語っていた。それに対し、ルカリオもミミロップも、やはり何も答える事ができない。

サンダース「すまん、空気悪くしちまったな。まぁ、明日はよろしく頼むぜ。どちらにせよ、俺達は戦うんだ」

サンダースはひょいと岩場に跳び上がり、ゆっくりと歩き出した。

ミミロップ「ねえ……あなたは、明日もし全部終わったら、どうするの?」

サンダース「んあ? 終わったら、か。そうだな……」

サンダース「また……来世であいつと出逢える事に、期待するかな」

サンダースはミミロップの方を向かずそう答え、トキワの闇に消えていく。それを追いかけるように強い風が木々をかき鳴らし、彼の足跡をかき消した。
 ▼ 35 ィアンシー@エルレイドナイト 18/06/02 21:40:10 ID:wucpcl7k [9/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



カントーへ上陸して初めて訪れた夜も深まり、辺り一体は水を打ったように静まり返っている。

ルカリオ達の家がある地方では定期的に吹く心地良い夜風も、ここトキワの森ではまるで何かに遠慮するようになりを潜めている。

この状況を一言で言い表すなら、不気味。

静けさが保たれた森というのは彼らにとって安らぎを感じる場になりうるものだが、この森はどうにも心が落ち着かず肌に合いそうにない。

そういった感情の機微も体調に関わり影響を及ぼしてくるわけだが、だからといって常に気を張り詰めているわけにもいかない。気持ちばかりが逸ってしまう事になり、身体はいずれついてこなくなる。休息は必要だ。

だが……

ルカリオ「……休ませてはもらえないか」

僅かにだが遠くの方で草むらが揺れた。それは自然の動きではなく、何か他の生物に起因するもの。ルカリオはそれを波動で読み取り、閉じている目を僅かに開いた。

敵か、通りすがりか。少なくともルカリオが感じる波動では、彼らに敵意は無い。だが、鉢合わせた瞬間牙を向かれる可能性は充分にある。

ルカリオはちらりとすぐ横で可愛く寝息を立てているミミロップを見てから、しっかり目を開き正面を向いた。

それと何者かが彼の前に姿を現したのは、ほぼ同時だった。

ガーディ「っ!」

ガーディ「うお、お、起きてたのか……」

ルカリオ「……なんだ、お前達か」

果たして、現れたのはガーディ二匹だった。例のウインディ率いる群れの誰かだろう、ルカリオの反応を見て戸惑っているようだ。

ルカリオ「作戦の話ならサンダースから聞いたぞ」

ガーディ「そ、そうか。まぁそれもなんだけど、一応見回りをしてるんだよ」

ガーディ「そうそう、ギブアンドテイクの関係とはいえ、君達は客人だしね」

ルカリオ「それはどうも」

容姿が似すぎてどっちが喋ってるんだかわからないな、なんて事を思いつつルカリオは大きくため息を吐いた。半睡とはいえ休息を邪魔されたのだから、不満の一つも覚えるというもの。
 ▼ 36 イパム@カプZ 18/06/02 21:41:26 ID:wucpcl7k [10/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ガーディ「そっちのお嬢さんは寝てるんだな」

ルカリオ「あ?」

ガーディ「お、怒るなよ。ちょっと訊いただけじゃんか」

ルカリオ「あ、いや、すまん。彼女には眠ってもらって、俺が周囲を警戒しつつ休んでるんだ」

ガーディ「そ、そうなのか。なら心配なかったな」

ガーディは二匹とも同じようにぺこりと頭を下げると、足早にもと来た道を帰って行った。

ルカリオ「はぁ……ありがたいんだか、迷惑なんだか……」

おそらくウインディの指示を受け、縄張りを見回る役割のガーディがいるのだろう。彼らが根城にしているであろう洞窟からは遠く離れているというのにご苦労な事だ、とルカリオはもう一度ため息を吐き、視線をミミロップの方に移す。

ミミロップ「ん、ふ……すぅ、すぅ……」

ルカリオ「……襲いたくなるな」

ガツン、と直後に自分の額を殴る。ちらりと見たミミロップの寝顔はとても可愛くて、今すぐにでも抱きしめてキスしたくなる。しかし、それに耐える事も今回の訓練のうちだ。

ルカリオは煩悩を追い出すように首を振り、彼女を起こしてしまわないようにゆっくりと頭を岩肌に預けた。

ルカリオ「……星が、綺麗だ」

見上げた空に、燦然と沢山の宝石が輝いていた。

どんなに森が不気味であろうとも、この空だけはどこにいても変わらない。地元で見る空も、カントーで見る空も、どちらも同じ表情を見せてくれている。

友人達は元気にしているだろうか、なんて、まだ一日しか経っていないにも関わらずそんな事を考えてしまう。思った以上に平穏な生活に染まりきっているらしい。

ルカリオは短く笑い、再び目を閉じた。
 ▼ 37 サイハナ@ライブドレス 18/06/03 02:06:37 ID:kSE27yTo NGネーム登録 NGID登録 報告
しえん
 ▼ 38 ッタ@じゃくてんほけん 18/06/03 06:44:39 ID:KDsbUkmk [1/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
>>27
ありがとう
そして支援
 ▼ 39 ツロイド@あかいくさり 18/06/03 07:30:22 ID:c9cDV5sA NGネーム登録 NGID登録 報告
しえーん!!!!
 ▼ 40 ニリッチ@はつでんしょパス 18/06/03 12:24:22 ID:KDsbUkmk [2/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
こんな絵で悪いんだけれど一応描けた 挿絵も描きたいぐらいだ

イッチいいSSをありがとう
支援!
 ▼ 41 ャロップ@ノーマルジュエル 18/06/03 14:18:26 ID:VC73lYEs NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
>>40
よか絵だ。
 ▼ 42 ツケラ@こだいのうでわ 18/06/03 23:08:27 ID:Y4C3zPpE [1/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
>>40
素敵な絵をありがとうございます
気が向いた時などにでも、また描いてくださるととても喜びます


訂正
>>17
×非常に統率力の高い群れのようで
○彼は非常に統率力の高いリーダーのようで

以後は訂正箇所あれば脳内補完してやってください
 ▼ 43 リバード@ホイップポップ 18/06/03 23:09:02 ID:Y4C3zPpE [2/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



翌日は明朝から大騒ぎだった。

近くへやってくる素早い反応に目を覚ましたルカリオは、目の前に降り立ったサンダースに状況が変わったから来てもらいたいと伝えられた。

まだ日は昇りきっていない。もう少し休んでおきたいと思っていたルカリオだが、彼の様子を見てただならぬ事態と察し、ミミロップを起こす。

WFCに出たいというルカリオの急な話に二つ返事で頷いた彼女であったが、成程きちんと修行の覚悟はできているようで、ルカリオが声をかけるとすぐに目を開いて起き上がった。

ルカリオ「緊急事態らしい。もしかしたら、すぐにでも戦闘に入るかもしれない」

ミミロップ「もう? こんな早くからご苦労様ねぇ」

ルカリオ「俺ももうちょっと寝てたかったんだけどね。まぁ仕方無いさ。じゃ、行くよ」

サンダースは彼らの会話が終わらないうちにもう走り出していた。

ルカリオはミミロップが完全に覚醒している事を確認すると、猛スピードでサンダースの後を追う。彼に続き、ミミロップも自慢の早足で彼の後ろに続いた。
 ▼ 44 ャルマー@ポロックキット 18/06/03 23:10:08 ID:Y4C3zPpE [3/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルカリオ「う……」

サンダースに追いついた頃、彼は何が起きたのかを察した。

漂う異臭、冷たい空気。ウインディを中心に集まる彼らの中心に、それはあった。

ウインディ「また、二匹の仲間が……くっ」

ミミロップ「えっ、それもしかして」

ルカリオ「あぁ、見ちゃだめだ」

中央を覗き込もうとするミミロップをルカリオが手で制する。ミミロップにも想像がつくのだろう、抵抗もせず彼の制止を甘んじて受け入れた。

サンダース「これは……食べたというより、玩んだって感じだな……」

ルカリオ「咽喉元を噛み付かれてそのまま、といったところか……被害に遭っているとは聞いたが、このような形とは……」

彼らが見つけたのはバラバラに引き裂かれたガーディの肉片だった。顔の部分がかろうじて残っているので判別できたが、彼らでなければそれがガーディの死体だとは誰もわからないだろう。それくらい損傷が激しい。

おそらく、ここでフライゴンと遭遇してしまったのだろう。出会ったが最期、フライゴンは有無を言わさず彼らを玩び、命を奪った。ただ淡々と、黙々と。

もしかしたら、彼らはルカリオ達のいた所まで見回りに来ていたガーディかもしれない。そう思うと、ルカリオは申し訳ない気持ちでいっぱいになった。

ルカリオ「(しかし……どこか違和感があるな。なんだ、何が気になる?)」

ウインディ「……やはり本日、ヤツと決着をつける。作戦は変更、このまま打って出るぞ」

ガーディ達「あおおおおおおん!!!」

ルカリオ「お、おい」

仲間を殺された事で完全に出来上がってしまったウインディ達。彼らが元々どういう作戦を立てていたか詳細はわからないが、この様子では見つけ次第小細工無しにぶつかっていくつもりなのだろう。

ルカリオ「大丈夫なのか?」

サンダース「元々作戦なんて崇高なモンねぇよ。堂々森を歩いてヤツを見つけたらかかる、それだけだ」

ルカリオ「そうなのか……」

ウインディの方を見ると、もうどこかへ向けて歩き始めていた。やはりこのままフライゴンを探すらしい。

サンダース「んじゃ、よろしく頼むぜ、用心棒さん?」

ルカリオ「……やれる事はやるさ」

急な展開に一抹どころではない不安を感じるルカリオ。サンダースがガーディ達の最後尾を歩いて行くのを少しの間見つめ、「行こう」とミミロップの手を引いて彼も歩き出した。
 ▼ 45 ンド@まひなおし 18/06/03 23:10:25 ID:0LL2.ydM NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
>>40
何だ、神か
 ▼ 46 ゼリア@カビゴンZ 18/06/03 23:11:23 ID:Y4C3zPpE [4/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



背の高い草の生い茂る草原の中を彼らは歩いていた。

隊列を成して縄張りを闊歩し、フライゴンをおびき寄せようというのだ。だが、彼らの復讐劇は思わぬ形で出鼻をくじかれる事となる。

突然の大雨、彼らは嵐に見舞われたのだ。

ウインディ「視界が悪い! 総員は必ず前を歩く者を見失うな!」

激しい雨に加え風も酷く、ごろごろと雷鳴も轟いている。真っ黒な雲に覆われて辺りは暗く、すぐ前さえ満足に見えない状態だ。

この嵐は彼らの復讐心を表しているのか、それとも……

ルカリオ「フライゴンは確か、羽ばたいて砂嵐を巻き起こすんだったな」

サンダース「普通は、ね。言ったろ、ヤツは普通じゃない。砂漠の精霊なんて全くの幻、言うなればヤツは……地を這う猛獣、って所かな」

雷が光る。

ほんの一瞬だけ、何かが視界の隅を駆けたような気がした。

ガーディ「わっ、あっ、うわあああああああ!!!」

ウインディ「何事だ!?」

ガーディ「わ、わかりません!」

雨風が酷い。

波動で探ろうにもこの状況では障害物が多すぎる。だが、両の目では嵐が酷く自分の周囲しかまともに確認できない。

ガーディ「あああああああああああっ!!!!」

がさっと一際大きな音が聞こえたと思うと、少し前で立ち止まっていたガーディが草むらの中に姿を消した。

ミミロップ「ひ、引き込まれてるの……?」

ここには、何かがいる。

大嵐の中、草むらにまぎれて、何かが彼らを狙っている。

ルカリオ「走れ!!」

状況をうまく飲み込めず立ち止まっていたウインディ達だったが、彼の言葉で我にかえりはじかれたように走り出した。
 ▼ 47 ルリル@マグマブースター 18/06/03 23:12:33 ID:Y4C3zPpE [5/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
サンダース「ちっ、列が乱れてやがる!」

ルカリオ「思わぬ攻撃に混乱してるんだ。まさかこれ、フライゴンの仕業だって言うんじゃないだろうな……」

サンダース「へへ、残念だが、おそらくそのまさかだよ」

視界の悪い中草原を駆け抜けるルカリオたち。こうしている間にもガーディが何匹か草むらに引きずりこまれ、姿を消していく。

ある時は後ろを走っていた者が、ある時は先頭付近を走っていた者が。まるで草原全体が意思を持って彼らを罠にかけているよう。

ルカリオ「!?」

ふと、彼のすぐ近くで大きな動きを見せる者が波動で読み取れた。

言葉を発する間も無い。ルカリオはミミロップを抱きかかえ、その場から大きく左の方へ跳ぶ。

次の瞬間、ガサガサと大きな音を立てて、先ほどまでルカリオ達がいた地点を何かが通り抜けて行った。

ミミロップ「な、なにこれ、ホラーじゃん……」

ルカリオ「これがフライゴンの仕業だってんなら、俺はもうフライゴンをフライゴンとして見れないな……」

砂漠の空を舞う竜と大雨の中草むらを泳ぐ怪物。もしフライゴンがこの両面を持ち合わせているとしたら、おそらく人間達も知らない新たな事実となるだろう。

ルカリオ「でも、妙だな……」

ルカリオには一つ気がかりな事があった。

これがフライゴンの仕業だとして、ヤツはガーディの軍勢を次々と襲い、おそらく命を奪っている。ただ、そのペースがあまりにも速すぎるのだ。

圧倒的力差があるとしても、ガーディだって襲い掛かられただけで死んだりはしないだろう。少なくとも抵抗したりもがいたりするはずで、結果絶命させられるにしても少しは時間がかかるはず。しかし、ヤツは一度襲い掛かったらすぐに次の得物をターゲットに定めているように思える。

それ程までに強靭な肉体を持っているのだろうか。飛び掛っただけで相手の骨肉を引き裂けるのだろうか。

サンダース「草むらを抜けるぞ!」

どれだけ走っただろうか、ようやく視界に森が見えてきた。森に入れば草むら地帯を抜けるため、視界は草原より開ける。ある程度は相手の姿を見据えながらの戦闘が期待できる。
 ▼ 48 ガバクーダ@ヨプのみ 18/06/03 23:13:37 ID:Y4C3zPpE [6/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ウインディ「!!」

だが、彼らの考えはあっさりと覆された。彼らの目の前に、とても大きな砂嵐が突如として現れたのだ。

砂嵐というと正確ではない。そこに巻き起こった竜巻は砂ではなく、泥や岩でできていた。質量の大きなものが巻き上げられ、風に舞う。それがどういう事態を引き起こすか、考えずとも目前の光景が映し出される事で嫌でもわかる。

ウインディ「戻れ! 飲み込まれたら即死だぞ!!」

おそらくフライゴンの作り出したであろう岩や泥の竜巻はあっという間に勢力を強め、周囲の木々をなぎ倒していく。退避に間に合わなかったガーディ達がそれに吸い込まれ、あっという間に見えなくなってしまう。

ルカリオ「化け物かよ……」

ミミロップ「規格外すぎでしょあれ」

思わぬ先回りに引き返す軍勢。だが……

ガーディ「うわあああああああああああ!!!!」

サンダース「またか!?」

再び草原を走り出したガーディがまたしても草むらに引き込まれて消えた。竜巻は依然として森と草原の境目を荒らし続けている。

ルカリオ「やはり複数いるのか……?」

サンダース「フライゴンが複数なんて聞いてねぇぞ……他のポケモンじゃねぇのか? ワルビアル辺りと組む事があるらしいじゃねぇか」

ルカリオ「わからん……だが、もうガーディ達は混乱して隊を成してない。ここで勝負するしかない」

ルカリオは拳に力を込めた。

サンダース「何を……」

ルカリオ「視界が悪ければ良くするまで! 覇ッ!!!」

ルカリオが地面に拳を叩きつける。そこから強い衝撃が発生し、周りに生えていた草が彼を中心に円形に吹き飛んでいった。

ミミロップ「なに、あれ……」

彼が可視範囲を広げてくれたその瞬間、黒い大きな影が更に奥の草むらへ入っていくのをミミロップは見た。相手がフライゴンであると認識しているからだろうか、何とも言えぬ気持ち悪さを感じた。
 ▼ 49 イル@スチールメモリ 18/06/03 23:14:24 ID:KDsbUkmk [3/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
しえーん
 ▼ 50 ーロット@エレクトロメモリ 18/06/03 23:15:21 ID:Y4C3zPpE [7/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
サンダース「やるなお前。それでどんどん地面の見える範囲を広げていくのか」

ルカリオ「いや、それもいいが時間がかかる。やってる間に全滅させられる可能性の方が高い」

ミミロップ「でもこの雨だし、ここだけ丸見えにしたんじゃ狙われちゃうわ」

ルカリオ「それでいい。そこを迎え撃つ」

サンダース「マジかよ……」

ルカリオは、いつ襲い掛かられても対応できるよう、手に冷気を込め始めている。ミミロップはルカリオの作戦を察し、彼と背中をくっつけ同じように手に冷気を集中させた。

ルカリオ「…………」

ガサガサと何かが草をかき分ける音が聞こえる。それは遠くから次第に近づいており、ついには彼らの周囲で一際大きく鳴り始める。

ミミロップ「……六時!」

ルカリオ「おっけ!!」

ルカリオは踵を返し、ミミロップはそのまま正面に、思いっきり冷凍パンチを打ち込んだ。

???「ぴぎゃあああああああああああ!!!」

大きな衝撃と共に強い冷気が何者かを襲う。ルカリオもミミロップも何かを殴った手ごたえは無かったが、発生した冷気が敵を捉えていたらしい、対象が醜く飛び上がった。

ルカリオ「見えた! インファ……」

ミミロップ「ダメ!!」

ルカリオ「うおっ!?」

大きな隙を見せた黒い影へ打ち込もうとしたルカリオだが、ミミロップに思いっきり地面へ引きずり落とされる。

コンマ数秒後、もう一つの黒い影がルカリオのいた空中を通り過ぎて行った。

ミミロップは森と草原の境目で巻き上がっていた竜巻が消えているのを見逃さなかったのだ。
 ▼ 51 援する男◆zoKrwsYAsI 18/06/03 23:20:06 ID:xHZplNYM NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
メガシエンネ
 ▼ 52 マシュン@ひかりのいし 18/06/03 23:23:27 ID:iSr.z7bo NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 53 ガメタグロス@サイキックメモリ 18/06/03 23:32:25 ID:Y4C3zPpE [8/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
サンダース「やっぱ複数いるのか……ちっ、厄介な!」

攻撃を繰り出せなかったルカリオの代わりにサンダースが二度蹴りを叩き込む。小さな身体でも結構な威力が出るらしい、対象は彼の攻撃をまともに受け、草原の中へ吹っ飛んだ。

しかしそれをもう一体が見逃すはずはない。攻撃後の隙を目掛けて草むらから飛び出し、襲い掛かる。

ウインディ「ぬうん!!!」

ドゴッと大きな鈍い音と共に、ウインディがサンダースに食いつこうとしている相手にぶつかった。体格はウインディの方が良いのだろうか、ウインディは押し負ける事無く相手を突き飛ばす。しかし衝撃は相当強いようで、彼も受身を取れないまま地に落ちた。

ルカリオ「油断するな、次が来るぞ!」

ウインディの容態を窺おうとするサンダースを言葉で制し、ルカリオは改めて手に冷気を込め始める。

ミミロップ「飛びつかれる前に凍らせないと無理よ」

ルカリオ「うん。でも、聞き分けての判断も限界がある。別な策を考えないと……」

サンダース「なら、一つ手があるぜ」

自分が突き飛ばした相手の落ちた方を見ながらサンダースは短く彼に言う。

サンダース「俺が囮になる。その隙に殺れ」

ルカリオ「しかし、おい!」

ルカリオが返事をするよりはやく、サンダースは大きく上空へ跳び出した。

ルカリオ「ちっ!!」

ミミロップ「合わせるしかないわね!」

サンダースの跳んだ方を見据え、ルカリオは冷凍パンチを繰り出す。彼に当たらないよう打ち込むのは至難の業だが、この状況、やるしかない。

ミミロップ「位置きついっての!」

対象が二体以上いない事を祈りつつ、ミミロップは下方から二度蹴りで地に落とされた相手向けて冷気を放つ。

跳び出そうとしていたのだろうか、地に落ちていた相手は身体を動かしたその瞬間、周囲の草と共に凍りついた。
 ▼ 54 ルビート@サメハダナイト 18/06/03 23:33:31 ID:Y4C3zPpE [9/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
サンダース「っぐ、うおお!!」

そしてサンダース目掛けて、もう一体の敵が跳び出して来る。それを予測し、何とか身体をひねってできる限り最大限の回避行動を取るサンダース。

ルカリオ「うし!」

しかし敵はサンダースにダメージを与える事ができない。

タイミングは完璧。ルカリオの放った冷凍パンチが相手に見事命中した。相手は空中で凍りつき、そのまま地面に投げ出される。

サンダース「うげっ」

後のことを考えていなかったのだろうか、サンダースは受身も取れず地に落ちた。

ルカリオ「急に無茶すんな、対応できなかったらどうしたんだよ」

サンダース「はっ、ちゃんとできてたじゃねぇか……信じてたぜ」

ルカリオ「微塵も信じてないくせに、よく言う」

サンダース「あれ? よくわかったな。波動ってやつでわかるのか」

ルカリオ「まぁ、あまりそういう方面で使いたくはないけどね」

サンダースの肩をぽんと叩き、ルカリオは敵が落ちた方を見た。

ウインディ「絶命はしていないようだが、見事に凍っている。さながら、氷タイプのような威力だな」

ルカリオ「鍛えてるからね」

実際、氷タイプの技を使う機会は多い。彼らが普段楽しんでいるバトルでも、氷を弱点とする相手は多く出てくるため日ごろから優先的に鍛錬を行っているのだ。

ミミロップ「どうするの? トドメ、さす?」

ウインディ「このまま氷を砕けば確実に絶命するだろう。我々としてはそれが目的だ、後は任せてくれ。客人に殺害まで頼むわけにはいかない」

そう言ってウインディは凍りついた相手……フライゴンの前に立つ。

ウインディ「うおおおおおお!!!」

そして氷の塊と化したフライゴン二体を踏みつけ、粉々に砕いてしまった。

相手はやはりフライゴンだった。どうやらルカリオ達は、フライゴンに対する認識を改めなければならないらしい。やけに色の黒い、おそらく変種ではないかと思われるようなフライゴンだった。
 ▼ 55 ガヘルガー@ラッカのみ 18/06/04 00:22:06 ID:4kng6Hu2 [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援支援支援!

追伸(今は時間無かったからアナログだけど明日辺りはデジタルに戻る)
 ▼ 56 ースト@きのみ 18/06/04 22:24:10 ID:9DnSfgwE [1/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


それからしばらくは、雨風と雷の音だけが辺りを支配していた。

勝鬨の声をあげてもよさそうなものだが、ウインディもガーディ達も、一言も話すものはいない。よく見れば、彼らは目を閉じていた。おそらく、亡くなってしまった仲間達に黙祷を捧げているのだろう。

ルカリオとミミロップはその様子をなんともいえない表情で眺めていた。

これが、自然。野生のポケモン達が、日々当たり前のように行っている、生存競争。狩るか狩られるかなんて言葉では伝わらない程生々しく、痛々しい。

自然の中で生きるという事は、常に死と隣り合わせの生活をしなければならないという事。今回は勝ちをもぎ取った彼らだが、数日後には別の脅威によって全滅させられているかもしれない。そんな世界。

ウインディ「……さあ、戻ろう。両名、ご協力感謝する。君達はもう我々の仲間だ。今回に限らず、またこの地を訪れる事があればいつでも歓迎しよう」

ウインディはルカリオとミミロップに頭を下げると、ゆっくりと元来た道を歩き始めた。ガーディ達もそれに倣い礼をして、ウィンディの後に続いていく。

ルカリオ「終わったか……」

サンダース「そうだな」

ルカリオ「……よかったのか?」

サンダース「何がだ?」

ルカリオ「いや、随分と恨みを募らせていたようだから、トドメはお前がさすつもりなのかと」

あれだけ辛い過去を話してくれたにも関わらず、サンダースは随分と乾いた様子だった。確かに彼も攻撃はしていたが、恨みを募らせていたにしては冷静すぎる気がしないでもない。

サンダース「ヤツのトドメにこだわりはしないさ。復讐を果たす事が目的だからな。これであいつらも、気が抜けて暫くは気楽にやれるだろ」

サンダースは最後に「おつかれさん」と二匹に声をかけ、もうほとんど見えなくなっているガーディ達の後を追いかけて行った。

ミミロップ「……なんか、変な感じ」

ルカリオ「ミミロップちゃんは特に、これまで体感してこなかった事だしね。野生のポケモン達は、毎日過酷な生活をしているもんさ……」

そう言いつつもルカリオは複雑な表情を浮かべて、サンダースが去って行った方を彼の姿が森の中へ消えていくまでじっと見ていた。
 ▼ 57 ースト@みずのいし 18/06/04 22:25:34 ID:9DnSfgwE [2/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



ミミロップ「頼まれ事も終わったし、いよいよ修行開始ね」

ルカリオ「そうだね……」

修行場所として目をつけていた所に戻ってきた二匹。ミミロップはトレーニングを始めようと奮起しているが、ルカリオはあまり乗り気ではないような雰囲気。

勿論、それに気づかないミミロップではない。

ミミロップ「……どうかしたの?」

ルカリオ「いや……なんていうか、変な感じなんだ」

ミミロップ「変なって、フライゴンのこと?」

倒した二体のフライゴンは一般的なものとは違い、身体が黒ずんでいた。変わった行動を取っていた事も考えれば、変異種だろうと思われる。

ルカリオ「それもなんだけど……なんていうか、違和感が残ったままっていうか」

ミミロップ「まだ倒しきってないかもしれないの?」

ルカリオ「うーん、それが違和感なのかなぁ……」

今回の件について、ルカリオは咽喉元に小骨が引っかかったような感覚をずっと引きずっていた。それが何でどういうものなのかは本人も特定できていないのだが、漠然と何かを感じている様子。

ただ、もしまだ脅威が去っていないとするならば彼らにそのことを話しておく必要がある。しかしその確証はどこにもなく、彼らとしてもいたずらにウインディ達を怯えさせたくはない。

彼らとの話は、一旦終わったのだ。これ以上何か起きたとしても、こちらから進んで協力しなければならない事はないだろう。フライゴンの脅威が去ったとしても、野生として生きていれば敵となるポケモンは他にも多く存在する。そこまでは元々の話に入っていないし、正直面倒見切れないというのが本音。

ミミロップ「あんまり心配なら、サンダースにだけ話してみたら? あの子なら適当に判断して、ウインディ達に話すなり自分の中にしまいこむなりするでしょ」

ルカリオ「そう、だね。そうするよ。行ってきていい?」

ミミロップ「何言ってんの。私も行くから」

ルカリオ「えへへ、ありがとう。じゃあその後から修行開始だね」
 ▼ 58 リテヤマ@ダイブボール 18/06/04 22:27:17 ID:9DnSfgwE [3/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



果たして、ルカリオの感じていた違和感は気のせいなどではなかった。

フライゴンと戦っているとき、今朝ガーディの遺体を見たとき、更には、昨日のうちから少しずつ彼は違和感を覚えていた。

ルカリオは、サンダースの所へやって来たとき、それらの答えを知ることになる。

サンダース「……ん? なんだお前達、修行とやらをするんじゃなかったのか」

少し時間をかけて探す事になったが、二匹は大雨がおさまる頃に彼を見つける事ができた。ウインディ達の縄張りから少しだけはずれた所のちょっと開けた場所に彼は、いや、「彼ら」はいた。

ルカリオ「お、おまえ……」

ミミロップ「ちょっと……」

サンダースはちょうど広場の真ん中辺りでルカリオたちに背を向けていた。もう雨は止んでいるというのに、彼は身体中ずぶ濡れになっている。

彼は、色違いのサンダースだっただろうか?

否、彼は立派な黄色と白の毛並みをしていたのを二匹ははっきり覚えている。それに、サンダースの色違いは薄緑っぽい色である事も知っている。

ではなぜ、今目の前にいるサンダースは赤い色をしているのだろう?

サンダース「雨がおさまっちまったからなぁ、降り続いてくれてたらよかったのに風ばっかり吹きやがる。たく、おかげさまで身体が汚たままだぜ」

ルカリオ「そ、それはもしかして、お前が……」

サンダース「うん? あぁこの山か?」

サンダースはルカリオが言わんとしている事を察し、目の前の山……ガーディ達の遺体を前足で蹴っ倒した。べちゃりと音を立て、一番前にあった遺体が地面に転がる。それは群れのリーダー、ウインディだった。

そして彼は、昨日の夜ルカリオたちと話していた時とそう変わらない様子で言葉を続けた。

サンダース「全部俺が殺したよ」
 ▼ 59 ガヘルガー@カビゴンZ 18/06/04 22:28:36 ID:9DnSfgwE [4/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
嵐の終わりを告げる、一際強い風が吹き抜ける。

もうこの状態が出来上がってある程度時間が経過しているのだろうか、その風に乗った異臭がルカリオ達の顔をしかめさせる。

サンダース「なんで、って顔してんなお前ら」

ミミロップ「なんでって、そりゃそう思うで……」

ルカリオ「いや……もとより、そういうことだった。そうだな?」

ルカリオはミミロップの言葉を遮るようにして、サンダースに問いかける。

サンダースは「ほう」と呟き、首や身体を振ってその場に座った。

ルカリオ「お前の復讐相手はフライゴンじゃなくて、ウインディ達だった……」

サンダース「よくわかったな。そうだよ、その通りだ」

ルカリオ「そうか……」

そうは言ったが、ルカリオは確信があって話したわけではない。ただ、この状況を見れば誰でも想像できる事ではあるが、ルカリオの感じていた違和感は今にして思えばこれに通じるものがあったのだ。

サンダースはフライゴン討伐にあまり興味を見せていなかった。そういう性格なのかとも思えたが、シャワーズの話をしているときの彼は悲しみと怒りに満ちていて、強い復讐心が感じられた。しかし、いざフライゴンとの戦いになってみると、執着がほとんど見られなかった。

それに、今朝ガーディの遺体を見た時に感じた違和感。フライゴンとの戦いを振り返れば、フライゴンは対象に飛び掛りその勢いで相手を殺しているようで、殺害相手を玩んだりはしていない。対象が少なければそういう事もあるのかもしれないが、おそらくは同じ狩猟方法だろう。

更に言えば、今朝見つかったガーディの遺体には噛み千切った痕も見られた。あれはそう、まさに小型の獣が力任せに噛み付いて引き千切ったような、そんな痕だった。

サンダース「もうわかるだろ? シャワーズを殺したのはフライゴンなんかじゃない……こいつらだったんだよ」

ミミロップ「うそ……」

サンダース「嘘じゃねぇよ。こいつらは本当に最低な連中だった。だから殺した」

ルカリオ「でも、お前達を助けてくれたんだろう? 何かの間違いって事は……」

サンダース「あー、わかんねぇだろうから手短に話しておいてやるか……」

サンダース「結論からすれば、俺たちはこいつらに助けられたんじゃねぇよ。一見そう思うえるし最初は俺もそう思ってたが、真実は違う。こいつらが俺みたいなやつに声をかけてる理由、それはな……」

サンダース「♀をレイプするためだよ」
 ▼ 60 シマリ@GBプレイヤー 18/06/04 22:30:25 ID:9DnSfgwE [5/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルカリオ「レイプ……だと?」

サンダース「ああ。だからお前達の事も割とすんなり受け入れた。そっちの嬢ちゃんを、いずれ襲うためにな。まぁ戦力的な問題も事実ありはしたんだが」

ミミロップ「そんな、まさか……」

サンダース「そのまさかだよ。嬢ちゃんは眠ってたから知らねぇと思うが、昨晩もヤツらはお前達の所に来てたんだぜ」

ルカリオ「……俺は会ったな」

確かに、昨日の夜にガーディが二匹ルカリオ達の所へやってきていた。彼の話によると、それはミミロップの様子を見にきていたのだという。

サンダース「つがいでいる場合、寝込みを襲われる。♀だけ連れてその場を離れ、違う場所で性的暴行を働く。散々玩んだ後は、殺して口封じさ」

ルカリオ「なら、昨日の夜俺が眠っていたら……」

サンダース「嬢ちゃん連れ出されてただろうな。今日の戦いぶりを見る限り、返り討ちだっただろうけど。まぁそいつらも、俺が殺しといてやった。それが今朝のやつだな」

言われてみれば、ガーディ達はどこか様子がおかしかったような気はする。何度もミミロップの事を気にしていたようだし、見回りと言ってやってきた時もルカリオが起きていたことに驚いていた。

サンダース「俺のときもそうだった……俺は眠ってたから気づかなかったけど、その間にあいつらはシャワーズを連れ出して、乱暴して……」

ミミロップ「で、でも、本当にそうかどうかは……」

サンダース「やつらが嬉々として話してるのを聞いたからな、間違いない。あいつら、♀がボロボロ涙を流して耐えようとしてる表情がイイんだと。そういう状態の♀を大勢で陵辱して、むさぼりつくすのが最高だって……ふざけんじゃねぇよ!!」

サンダースは怒りに任せて遺体を蹴り飛ばした。鈍い音が当たりに響く。

サンダース「あいつは、人間に酷い目に遭わされ、こいつらにも地獄を見させられ、最悪の状態で殺された。なんで、なんであいつだけこんな苦しまなきゃいけないんだ……」

サンダース「……だから、復讐してやったんだ。そんな事あいつは望んじゃいないかもしれない。けど、最低な事をしでかしたやつらがのうのうと生きていられるなんて、赦されることじゃない」

サンダースは怒りながら涙を流している。彼の目には当時の凄惨な光景が浮かんでいるのだろう。

サンダース「フライゴンに困ってたのは本当だったみたいだから、やつらを全滅させられる機会がくるまでは少しずつ殺してフライゴンのせいにしてやった。まぁ、フライゴンもヤツらを何匹か殺してたし、全く疑われる事はなかったな」

サンダース「フライゴン討伐の戦力不足は事実だったし、お前達が来てくれて助かったよ。おかげで、フライゴンを倒して安心しきってるやつらを一網打尽にできた。フライゴンの脅威がある間は、ヤツらも気ぃ張ってたからな」
 ▼ 61 ンタロス@ダークメモリ 18/06/04 22:31:27 ID:9DnSfgwE [6/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
サンダース「なんだよ、シケた面しやがって。元々お前達には関係の無い話なんだ、何を思おうが勝手だが、つまらねぇ説教は勘弁してくれよ?」

半分笑いながらサンダースは二匹を交互に見る。ルカリオもミミロップもサンダースを見ているが、複雑な表情を浮かべるばかりで口を開く様子はない。

サンダースは短く息を吐くと、それ以上は何も言わず踵を返して歩き始めた。そこで、ようやくルカリオが口を開く。

ルカリオ「……どこへ行くんだ?」

サンダース「どこへだって? そんなものは決まってるさ」

サンダースはぴたりと立ち止まり、首だけ振り返って笑った。

サンダース「来世だよ」

そして、二匹の反応も見ずに再び前を向き、ゆっくりと歩いて行った。

ルカリオ「…………」

ミミロップ「…………」

二匹は、彼を止めなかった。いや、止められなかった。

暫く金縛りに遭ったようにその場で立ち尽くし、サンダースがいなくなった後もじっと彼の歩いた跡を見つめていた。

一際強い風が吹き付ける。

その風はルカリオとミミロップにぶつかり背中を撫で、サンダースが残した足跡を消していった。
 ▼ 62 ングラー@きんのはっぱ 18/06/04 22:44:11 ID:4kng6Hu2 [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
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 ▼ 63 チャブル@ヒレのカセキ 18/06/05 01:40:12 ID:/25Uh6pE NGネーム登録 NGID登録 報告
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 ▼ 64 援する男◆zoKrwsYAsI 18/06/05 04:57:48 ID:2NZQm.Zc NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
メガシエンネ
 ▼ 65 ブカス@マゴのみ 18/06/05 22:21:02 ID:Qkm.h3Z. [1/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



その日は結局本格的なトレーニングは行わず、軽い運動だけで済ませた。食事を済ませた後もあまりお互いに喋る事はせず、就寝の時間となった。

覚悟していた事とはいえ、初っ端からこんな出来事に遭遇したのだ、無理もない。特にミミロップはショックを隠しきれない様子で、身体を動かしている間もどこか上の空だったように見えた。

野生達の摂理とわかってはいても、どうにもやりきれない部分がある。二匹は、いい感じに穏やかな暮らしに慣れてしまっているようだった。

ミミロップ「……ねえ」

ルカリオ「ん……まだ起きてたのか」

ミミロップ「うん。ちょっと、眠れなくて」

ぼんやりと小さな焚き火の相手をしていると、ミミロップが彼のすぐ隣まで来て腰を下ろした。

ルカリオ「ショックだった?」

ミミロップ「うん、まぁ……野生のポケモンと私達じゃ、やっぱり考え方がちょっと違うんだなぁって。そっちの方が、驚きだったかな」

ルカリオ「俺達は、言っても人間の持つ概念に近いところにいるからね。特に、人間特有の倫理的束縛ってやつに俺達は慣れてるんだ」

ミミロップ「法律とか、そういうやつ?」

ルカリオ「うん。相手を殺しちゃいけない、無闇に傷つけちゃいけない。俺達はそれを当たり前のように思ってるけど、野生の彼らにとってはちょっと違ってて、何かを守るために必要なら仕方がないんだよね」

ミミロップ「理屈はわかるんだけどなぁ……」

ルカリオ「人間達はそれを『理性』って呼んでるね。ただまぁ……俺達も、本当の自然の中で生まれたのなら、理性なんてものあんまり持ち合わせていなかったのかなぁ」

ルカリオは焚き火から夜空に視線を移す。嵐は去ったとはいえ、空にはまだ雲が幾つか浮かんでいて、満足に星は見えなかった。

ミミロップ「もう、ルカリオのにぶちん」

ルカリオ「えぇ?」

ミミロップ「こういう事態に直面するって事は最初からわかってたでしょ。そんなのにいちいち悩んでたらキリないっての」

ルカリオ「え、み、ミミロップちゃん?」

ミミロップ「♀が『ショックだった』とか言ったら、ねえわかるでしょ?」

ミミロップが豹変した……わけではなく、実際の所ミミロップは今回の出来事についてあまり動じていないようだった。驚きこそしていたが、割とあっけらかんとしている。案外♀の方が神経図太いのだ。
 ▼ 66 ラーミィ@とうめいなスズ 18/06/05 22:21:40 ID:Qkm.h3Z. [2/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルカリオ「み、ミミロップちゃ、あ、うあ」

ミミロップ「んふふ」

どさっとその場に押し倒され、情けない声を出すルカリオ。ミミロップはその様子を見て妖艶な笑みを浮かべ、ぺろりと舌なめずりした。

ミミロップ「昨日はおあずけだったからね、今日したっていいでしょ?」

ルカリオ「ま、まじ? さっき落ち込んでたのはもしかして……」

ミミロップ「演技とまではいかないけど、言う程ショックでもないわよ。最初は驚いたけど、すぐ慣れた」

ルカリオ「嘘だろ……♀怖い」

正直ルカリオはミミロップがどれだけ自然界の色々を正視できるか心配だったのだが、どうやら完全に杞憂らしい。もしかしてそうなのではと思う場面は既に幾つかあったが、これで確信した。

ミミロップは、ルカリオよりも心が強い。

ルカリオ「そ、そっちがその気なら俺も襲っちゃうぞ」

ミミロップ「ふふ、今日戦ってたルカリオ、かっこよかったよ?」

ルカリオ「えへへ、そ、そうかな///」

ミミロップ「ちょっろ」

一瞬でミミロップに絆されてしまい、あっと言う間に主導権を奪われてしまうルカリオ。なんとも情けない♂だが、これが彼らの「いつも」だ。

ミミロップ「それじゃ、まずは軽くヌきヌきしましょうね〜」

ルカリオ「うあう、い、いきなりそんな、っ」

ミミロップは身体をぴったりとルカリオに密着させ、左手で彼の性器を優しく握る。彼女に押し倒された時点で身体は期待していたのか、彼のそれは既に大きく主張を始めていた。

ミミロップ「修行する人やポケモンって禁欲するイメージあるけど、ルカリオは全然それに当てはまらないわよね」

ルカリオ「だ、だから今回はミミロップちゃんの隣で禁欲っていう荒療治を……」

ミミロップ「こんなにフルボッキさせて言っても説得力ないわよ」

ルカリオ「あひぃっ」

ミミロップがつんと尖端を軽くはじいただけで大きく反応してしまうルカリオ。身体の力は抜け、ミミロップに全身を預ける形になっている。
 ▼ 67 ヒダルマ@みずたまリボン 18/06/05 22:21:42 ID:GI1LsaZA NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 68 ガボスゴドラ@エレクトロメモリ 18/06/05 22:22:18 ID:Qkm.h3Z. [3/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミミロップ「まるで赤ちゃんね、ここ以外は。局所だけオトナなんだから」

ルカリオ「うう……」

ミミロップ「それで、どうしてほしい? このまま放置?」

ルカリオ「や、やだ。しごいて欲しい」

ミミロップ「何の臆面もなく言いきるわね……まぁいいわ。ほ〜ら、しこしこしこ〜♪」

ルカリオ「うああああっ」

ミミロップが左手を軽く上下させる。ルカリオはそれだけで呼吸が荒くなり、硬く勃起させたそれから沢山の我慢汁を垂れ流す。

ミミロップに寄りかかるように全身をあずけているため、彼女の甘く蠱惑的な匂いが彼の興奮を更に高めていく。

ミミロップ「すごい出てくる……一日我慢しただけで、もうこんなになっちゃうの?」

ルカリオ「き、気にしてないと大丈夫なんだけど、ミミロップちゃんをそういう風に意識するともうだめなんだ……」

とろんとした目でミミロップを見るルカリオ。ミミロップはそんな彼がなんだか可愛くなって、右手で彼の顔を寄せキスをする。ルカリオはそれが嬉しくて、自分の舌を彼女の口内に侵入させた。

ルカリオ「んっ、ちゅ、ちゅっ、んく、れろ、ちゅぷ」

ミミロップ「んふ、ちょ、はげひふひ、ちゅ、んちゅ」

突然の反撃に思わず左手の動きが止まってしまうが、負けてられないとばかりに彼女もルカリオの舌に自分の舌を絡め、唾液を送り込んでいく。

勿論左手の動きも再開し、びくびくと脈動するそれを優しく撫で上げる。

ミミロップ「んんんっ、ちゅ……」

ルカリオ「ちゅ……ふう」

やがてお互い見つめあったまま、ゆっくりと顔を少しだけ離す。二匹の口と口を唾液が繋ぎ、なんとも淫靡な光景を生み出している。

ルカリオは得意そうな顔をしていたが、それも一瞬の事。すぐに股間の強く甘い刺激を思い出し、快楽に顔をとろけさせた。
 ▼ 69 ナトーン@ファイトメモリ 18/06/05 22:22:59 ID:Qkm.h3Z. [4/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルカリオ「う、み、ミミロップちゃん、やばい、もう出そう」

ミミロップ「ええ、もう? はやくない?」

ルカリオ「そ、そんな事言ったってミミロップちゃんの手気持ちよすぎるよ」

ミミロップ「まぁ何回もしてるし慣れちゃったからね。ほらほら」

ルカリオ「っ、く、ぅあう」

優しく竿の部分を撫で上げ、尖端を少し強めに握る。ルカリオが一番好きな攻められ方だ。大抵は唾を垂らしてぬるぬるにしてしごくのだが、今回は彼の先走りが多量に噴出しているためそうせずとも既にベトベトになっている。

ミミロップがひと撫でするたびにルカリオのそれは大きく脈動し、同時に彼自身もびくっと反応を見せる。その様子をミミロップは満足そうに眺め、少しずつ手の動きを強く、早くしていく。

ルカリオ「う、うあ、あああ、ねえもう出していい? 出したいよぉ」

嵐の中どこに潜んでいるともわからないフライゴンを相手に立ち回っていた彼の姿などどこへやら。今では一匹の♀を前にして骨抜きにされている情けないルカリオしかそこにはいない。

涙目になって愛する彼女に射精の許可をねだる……彼のこんな姿を見る事ができるのは、ミミロップだけだろう。彼女はその事実に身体中をゾクゾクさせ、支配欲が満たされていく感覚に股を濡らし始めた。

ルカリオ「あ、あ、あ、もう、でる、でちゃう」

ミミロップ「おっと」

もう射精してしまう……そのほんのわずか手前で、ミミロップは彼の性器から手を離してしまった。

これから快楽の絶頂を味わおうという所でおあずけをくらってしまったルカリオは、とても困惑した表情で彼女を見る。ミミロップはそれに対し悪戯な笑みを返すばかりだ。

ルカリオ「ね、ねぇ、俺、しゃせーしたい、したい」

ミミロップ「どうしよっかなぁ」

ルカリオ「そ、そんなぁ」

どうやらミミロップのサディスティックな魂に火がつき始めたらしい、彼女はルカリオの顎を持ち上げてふうっと甘い息を吹きかけた。

ミミロップは、今日のカッコよかった彼と今の情けない彼を比較し、そのどちらもが自分のものなのだという充足感に酔い痴れている。そしてそんな彼をコントロールできるのは自分だけなのだとばかりに、彼女はルカリオの口をぺろりと舐めた。
 ▼ 70 ングマ@ドクZ 18/06/05 22:23:42 ID:Qkm.h3Z. [5/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミミロップ「お射精、したい?」

ルカリオ「したい!」

彼女の言葉に即返事をするルカリオ。彼の頭の中はもう彼女と射精の事でいっぱいなのだろう、体裁もプライドもあったものではない。

ミミロップ「しょうがないな〜。どこに出したい?」

ルカリオ「えっとね、今日はお顔にいっぱい出したいな」

ミミロップ「ふ〜ん、なんか生意気ね」

ルカリオ「え! あ、ご、ごめん。じゃあおま○こにする!」

ミミロップ「それもそれだと思うけど……ふふ、まぁいいわ」

ミミロップはだらしなく座るルカリオの股間に顔をうずめ、そそり立つ彼の逸物を舌で舐め始める。

ルカリオ「うひっ」

尖端を軽く舐めただけだというのにそれだけで彼は大きく反応し、先走りで彼女の頬をねっとりと汚す。ミミロップは垂れてきたそれをぺろりと舌で舐め取りちらりと彼を上目遣いに見上げると、またしても悪戯に笑みを零した。

そして彼の期待に満ちた表情を確認すると、いきなり強く彼のものに吸い付いた。

ルカリオ「うあああっ、そんな、急にだなんて、あ、あっ、あっ」

ミミロップ「じゅぶじゅぶくちゅ、っじゅぺろぺろ、はぐちゅ、っちゅじゅぶ、じゅるるる」

まるでバキュームに吸引されているような強い快感がルカリオを襲う。あまりの刺激に一瞬で射精しそうになるが、もう少しこの感覚を味わっていたいとなんとか我慢する。

かと思えば、舌の腹の部分で竿や尖端を焦らすように柔らかく舐められもどかしい刺激に切り替わってしまい、出すに出せなくなってしまう。全身の神経が性器に集中するような感覚に、ルカリオはもうアヘ顔を晒していた。

だが、そのうち我慢ならなくなってきたのか、ルカリオは両手をミミロップの頭に添え、少しずつ力を込めていく。

ミミロップ「んぶ、ひょ、ひょっほ!?」

ルカリオ「あああ、ミミロップちゃんごめん、俺もう我慢できない!」
 ▼ 71 シギバナ@バーゲンチケット 18/06/05 22:24:12 ID:Qkm.h3Z. [6/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミミロップの頭を手で押さえ、快楽に顔を緩ませつつ腰を振り始めるルカリオ。ミミロップは驚きこそすれど、抵抗する素振りは見せない。彼の好きにさせようと思ったのか、甘んじて彼の強引な行為を容認しているようだ。

しかし、自ら思うような刺激を受けにいったという事は、終わりが近いという事。ミミロップの口内を蹂躙し尽す間もなく、その時は訪れる。

ルカリオ「う、あ、あああああっ!!」

ミミロップ「んんっ!」

ドピュドピュドピュ!

耳まで音が聞こえてきそうなくらい勢いの良い射精を、彼女の咽喉元目掛けて行うルカリオ。射精は長く続き中々おさまる様子を見せず、性器を膨らませては大量の精液を吐き出し続けている。

やがて自分は彼女の顔にかけたかったのだと思い出し、精子が彼女の口内に納まりきらなくなった頃逸物を抜いて彼女の顔へ鈴口を向けた。

ミミロップ「ふぁ……」

もう勢いはほとんど無くなり射精は収まりつつあるものの、彼女の小さな顔を白く彩るには充分な量だった。

ルカリオは自分の手で尿道内に残った精子を外へ追いやり、彼女の頬でにじくるようにして出し切る。この瞬間だけは、彼が彼女を支配しているという充足感に浸る事ができた。

ミミロップ「ん、ぺろ……もう、流石に出しすぎ」

ルカリオ「ご、ごめん」

そう言いつつも口内に出された精子は全て飲み干したのだろうか、彼女の口から白い液体がこぼれてくる事は無い。顔にかけられたものも、ルカリオが白く化粧された彼女を見て満足するだけの時間を置いてから、指ですくって全部口の中に入れた。

ルカリオ「……これだけ出しておいてなんだけど、精子っておいしいの?」

ミミロップ「正直に言えば別にそこまでおいしいわけじゃないわよ」

ルカリオ「だ、だよね」

ミミロップ「だけどね、ルカリオのだから、貴方のだから、他の何よりもとびきり美味しくなるの。そういうものよ」

ルカリオ「えへへ///」
 ▼ 72 ククラゲ@ゼニガメじょうろ 18/06/05 22:24:50 ID:Qkm.h3Z. [7/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


ミミロップ「まだまだガッチガチみたいね」

ルカリオ「そりゃもう! 一度や二度の射精で萎えるほどヤワな愛じゃないよ!」

通常のルカリオ種がどれ程の性欲をもってどれ程の精子を出す事ができるかはわからないが、彼に関しては絶倫のそれと似た性質を持ち合わせているらしい。長い長い射精を、最低でも二回は行えるようだ。

ミミロップ「次は私の中に……ね?」

ルカリオ「はいよろこんで!」

ミミロップは立ち上がって岩場に背中を預け、そして右手で自分の性器を軽く開いて見せた。とろりと彼女の膣から透明な液体が漏れ出し、彼女の太ももを、乾いた地面を潤してゆく。

ルカリオ「ああ、勿体無いよ。地面にだって、ミミロップちゃんの愛液はあげたくない!」

ルカリオは慌てた様子で両手を彼女の股の下に出し、垂れてくる液体を受け止める。しかし彼女から溢れ出る液体はとどまる事を知らず、すぐに彼の手は愛液でいっぱいになった。

ルカリオ「ちょ、ミミロップちゃんだって期待しまくってるじゃん。ああ、こぼれちゃう、っく、んくんく」

自分の手に口をつけ一気に愛液を飲み干すルカリオ。それを見てミミロップは一層快感に身体をゾクゾクさせ、噴出する愛液の量を増やしてしまう。

ルカリオ「ああもう、受け止めきれないって! んちゅ、ちゅ、ちゅるるるるる」

ミミロップ「ひゃん!」

ルカリオは手を使う事を諦め、彼女の股間に顔をうずめて性器にしゃぶりついた。まるで水道に口をつけているような感覚、次々と流れてくる愛液を彼は息を荒くして飲み続ける。

ルカリオ「んちゅ、っく、ねえこれちょっとイってない? んっちゅ」

ミミロップ「ど、うなんだろ。んあっ、だけど、舐められてから、軽く出てる、かも」

ルカリオ「だよね、すげぇひくひくしてるし」

ミミロップ「ばか///」

ミミロップは股間から内腿にかけてをきゅっと収縮させては弛緩してを繰り返していた。どう見ても、♀がイっている時の動作。彼はそれを見るのが大好きなのだが、今は彼女の愛の証で咽喉を潤すのに精一杯だ。
 ▼ 73 ベノム@きのはこ 18/06/05 22:25:45 ID:Qkm.h3Z. [8/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルカリオ「キリないし、とりあえずいっちゃえ。んちゅ、ごく、ちゅううううっ」

ミミロップ「きゃふっ! そ、そこはぁ……」

ミミロップの性器を舐め回し、膣襞をちゅうちゅうと吸う。彼女は奥と入り口付近に弱点を持っているため、こうしてやるだけで足をがくがく震えさせるのだ。

ミミロップ「っ、ふぐっ、んああああっ!!」

きゅっとミミロップの膣が強く収縮し、勢いよく液体が飛び出してくる。ルカリオはそれを全て口の中におさめ、躊躇う事無く咽喉の向こう側へと送り込んでいった。

ルカリオ「っ、く……ふう、ミミロップちゃん派手にイっちゃったね」

ミミロップ「ふ、ふふ、やってくれるじゃない……」

ミミロップはいつまで経っても股間から離れようとしないルカリオを両手で引っぺがし、顔を上に向けさせた。

ミミロップ「私が言うのもなんだけど、顔中べったべたね」

ルカリオ「愛に満ち溢れてるよ」

ミミロップ「ばか/// じゃあ今度は、貴方の愛を私の中にたっぷり頂戴?」

ルカリオ「よしきた!」

ルカリオはもう我慢の限界とばかりにミミロップに抱きつき、ぐいぐいと身体を、性器をおしつける。その柔らかな感触に彼は熱い吐息を漏らし、舌なめずりする。

しかし、その感触を楽しんでいる余裕など彼には無い。ルカリオは自分の性器の根元を右手で持ち、彼女の性器へと押し当てて軽くキスをさせた。

彼の性器からはどろどろと先走りが溢れているのだが、それ以上に彼女の秘部はトロトロに仕上がっており、彼の男根が入ってくるのを今か今かと待ち望んでいる。

ルカリオ「はぁ、はぁ、いくよ……!」

待ちに待ったこの瞬間。彼は彼女の密壷に照準を定め、一気に腰を彼女に押し付けた。
 ▼ 74 ンブオー@ヤタピのみ 18/06/05 22:26:37 ID:Qkm.h3Z. [9/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミミロップ「っく、あ、入って、くるぅ……」

ルカリオ「う、ああ……」

ずるりと彼の性器は彼女の中へと簡単に入り込んでいった。幾つもの襞が複雑に絡み合い、その中を押し進んでいく感覚に彼は気を失いそうになる程の快感を覚える。

すべての神経が、感覚が性器の特に先端に集中しているような感覚。もうそこには自分と彼女の性器しか存在していないような、そんな錯覚さえ感じた。

ミミロップ「ふふ、これだけは、私、飽きないのよね、っ、あっ」

ルカリオ「へへ、そう言ってもらえると、すげぇ嬉しいよ。俺も、ミミロップちゃんのおま○こ大好き」

ぐっと最奥まで突き入れたところで、二匹は熱いキスを交わす。岩を背に立ったまましているからだろうか、いつもとは違うセックスに彼らの興奮もひとしおのようだ。

立ちながらのセックスは、彼らにとって少々特別な意味を持つ。というのも、この二匹の出会いというのが、信じられない事にルカリオの痴漢から始まっているのだ。

ルカリオはすぐ前にいたミミロップに痴漢行為を働いたところ、なんと彼女はそれを受け入れ、そのまま最後までしてしまった……というゲームの中でしかありえないような出会いを、この二匹はしていた。

だからだろう、立ちながら行うセックスはその時を彷彿とさせるためか今でも興奮が強いらしい。

ルカリオ「あっ、っぐ、ミミロップちゃんのおま○こ、サイコーだよ」

ミミロップ「んあっ、あんっ、好きぃ、ルカリオのおち○ちん、だいすきぃ」

ぐちゅぐちゅと淫猥な音があたりに響く。もしかしたらこの音を聞いている誰かがいるかもしれない、この様子を覗き見ている誰かがいるかもしれない。だが、完全に二匹の世界である、辺りを窺うより先に彼らは快楽をむさぼり始めた。

下から押し上げるようにして行うセックスは、肌を打ち付ける音はあまりせず無茶をしなければ動きも制限されるため、非常にもどかしい体位でもある。彼らは獣ではあるが、性行為に関しては乱暴にむさぼり合うよりも肌を密着させて愛を語らい合うようなものを好むようだ。

無論、そもそも性に貪欲な彼らだ、普段からどんな行為でも試したりハマったりしてはいるようだが。

ルカリオ「ああ、あああ、もうだめかも」

ミミロップ「んあっ、あっ、えっ、ちょ、はやくない?」

ルカリオ「そんなこと、いったってっ……」

ルカリオは遠慮しつつもどんどん腰の動きを速め、今にも欲望の塊を彼女の中に吐き出そうとしている。二匹は顔を真っ赤に染め、だらしなく口を開きながら甘い吐息を漏らして全身で快楽を味わっている。
 ▼ 75 リボーグ@ともだちてちょう 18/06/05 22:27:02 ID:Qkm.h3Z. [10/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルカリオ「だすよ、ミミロップちゃん、一番奥に、子宮のなかにっ!」

ミミロップ「だしてぇ、私の子宮の中、ルカリオの濃厚精子で孕ませてぇ!」

ルカリオ「っく、あ、あああああっ!!」

ミミロップ「あっ、あっ、あっ、ああああああんっ!!」

ルカリオが性器を奥の奥へ突き入れた瞬間、彼女の膣が一際強く彼の性器を締め付けた。その直後、彼の性器は大きく膨れ上がり、彼女の子宮めがけて大量の精子を吐き出す。

彼女はその間もきゅっきゅっと何度も性器を収縮させ、その度にぴゅくぴゅくと透明な液体を彼の下腹部に撒き散らしていた。

ルカリオ「ああ、あああ……」

ミミロップ「んふ……んっ、すごい、出てる」

長い長い射精。彼女の身体にぴったりと自分の身体をくっつけ、必死になって腰を押し付けているルカリオ。ミミロップはひとしきりイき終えると、頑張って射精している彼が可愛くなってぎゅっと彼を強く抱きしめた。
 ▼ 76 ォレトス@しめったいわ 18/06/05 22:27:46 ID:Qkm.h3Z. [11/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




ミミロップ「星が綺麗ねぇ」

ルカリオ「ああ。ここから見る星も、すごく綺麗だ」

行為が終わり、二匹は肩を並べて岩場のてっぺんに座り空を眺める。

日中の嵐などどこへやら、空は蒼黒く澄み渡り星達が光輝くための美しいステージとなっていた。

ミミロップ「……ねえ、もし私が、その、シャワーズみたいな目に遭ったら……どうする?」

ルカリオ「どうって……」

犯人を惨たらしく殺してやる、そう言いかけて彼は言葉を呑み込む。彼女が訊いているのはおそらく、そういう事ではない。

彼女は、サンダースの事を話しているのだ。復讐を終え自らの恨みを晴らした彼は、今どこで何をしているのだろう……答えは深く考えずとも、すぐに浮かんできた。

ルカリオ「俺は……わからない。ただ、ミミロップちゃんがいない世界なんてもう考えられないし……」

ミミロップ「そう、よね。ごめん」

意地悪な質問をしていると自分でもわかっているのだろう、ミミロップは小さく息を吐いてこてんと首を彼の肩にもたれさせた。

ミミロップ「でも、不思議よね」

ルカリオ「何が?」

ミミロップ「私達だって、出会う前はお互いの事なんて微塵も知らなかった。その頃は、お互いがいなければ〜なんて、当たり前だけど考える事すらなかったわけじゃない。それぞれが別々に生きる目的を持っててさ」

ルカリオ「まぁ」

ミミロップ「それが出会ってしまえば、いつの間にかお互い無しでは生きられなくなってしまって……」

ミミロップ「それってとても幸せな事なんだけど……同時に、お互いの弱みにもなるのかなって」

ルカリオ「…………」

幸せは、ただそれだけを手に入れる事はできない。手に入れた瞬間から、それを失う恐怖に怯えなければならなくなってしまう。

何かを手に入れるというのは、それを失う悲しみを同時に背負わなければならないのだ。幸せが大きければ大きいほど、失った時の悲しみも比例して大きくなる。
 ▼ 77 ブリアス@サイコソーダ 18/06/05 22:29:17 ID:Qkm.h3Z. [12/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルカリオ「……だけど、俺は死ぬために生きる、なんて考えたくない」

ミミロップ「どういうこと?」

ルカリオ「あ、いや……」

彼の中で色々と考えすぎて話が勝手に進んでしまったのだろう、彼の返事にミミロップは首を傾げている。

ルカリオ「そりゃミミロップちゃんがいなくなっちゃったら、死にたくなるよ。というか、そんな世界に未練なんてないし、自棄になる気持ちは痛いほどわかる。けど……」

ルカリオ「俺はそういうのに怯えて生きたくない。失うのが怖いから手に入れないとか、今のうちに受け入れる準備をしようとか、そういうの俺は嫌だなって」

ルカリオ「だから、ミミロップちゃんの質問には、うーん……わかんない、って答えるしかないかな」

ルカリオはそこまで話すと、ミミロップを見て困ったように笑った。月明かりに照らされた彼のその表情は、ミミロップには今までに無いくらいにカッコよく見えた。

ミミロップ「ふ〜ん」

ルカリオ「な、なんだよ」

ミミロップ「いやぁ、案外色んなこと考えてるんだなぁって。ふふ」

ルカリオ「お、俺だってそういう事考えたりするんだぞ!」

ミミロップ「なんか、初めてかも。私と出会う前はこういう環境で修行してたんだっていうやつ、はっきり感じられたの」

ルカリオ「え、今まで信じてなかったの!?」

ミミロップ「そうじゃないけど、ルカリオって結構腑抜けてるところあるじゃん。あんまりイメージと合わなかったし」

ルカリオ「ふ、ふぬけ……うぅ」

がっくりとうなだれるルカリオ。ミミロップはそれを悪戯な笑みを浮かべて、しかしどこか満足そうに眺めている。

ミミロップ「……ほんと、星が綺麗」

燦然と輝く星空。どんな嬉しい事があっても悲しい事があっても、この空は変わらず同じ顔を見せるのだろうと、そんな事を思うミミロップだった。

 ▼ 78 ラチーノ@タイマーボール 18/06/05 22:29:45 ID:Qkm.h3Z. [13/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告







何故だ、何故こうなる。

こんな運命に、誰がした。

俺達はただ、何事も無い平穏な生活を望んでいただけだ。

高望みなんてしちゃいない、強い欲望だって持ち合わせていない。

だのに、どうして。

赦さない。

絶対に赦さない。

これは、逆襲だ。

非力な俺の、俺達をこんな風にしたお前達への……




「お前達への?」

サンダース「えっ?」
 ▼ 79 ザリガー@せいしんのハネ 18/06/05 22:30:22 ID:Qkm.h3Z. [14/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
サンダース「あ、あれ?」

シャワーズ「わっ……きゅ、急に起きないでよ」

サンダース「…………?」

シャワーズ「あれれ、ねぼすけさんかな? おーい、サンちゃんもう朝ですよー?」

サンダース「ああ……」

シャワーズ「やっと起きたかな? すごいうなされてたけど、大丈夫?」

サンダース「うなされて?」

シャワーズ「うん。なんか、運命がどうとか、逆襲がどうとか」

サンダース「…………」

シャワーズ「物騒な夢見てるなぁって」

サンダース「……そう、だな」

シャワーズ「ふふ、怖い夢だったのかな? ぎゅーって、してあげよっか」

サンダース「い、いらねぇよ」

シャワーズ「ぎゅー♪」

サンダース「あ、こら、暑いだろはなれろよ!」

シャワーズ「やだよ〜」

サンダース「はは、たくもう……本当にお前ってやつは、お前って、やつは……」

シャワーズ「……泣いてるの?」

サンダース「っ、泣いてなんか、ねーよ……」

シャワーズ「泣きたい時は、思い切って泣いちゃっていいんだよ。その方が、きっとすっきりするし」

サンダース「うるせぇ、だから、泣いてねぇって、言ってんだろ」

シャワーズ「はいはい。ほーら、よしよし」

サンダース「うう、ううう……うわあああああん!!」
 ▼ 80 パルダス@つららのプレート 18/06/05 22:30:48 ID:Qkm.h3Z. [15/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
もしも神様なんてものが存在するのだとしたら、これは神様が見せてくれた幻なのかもしれない。

あるいは彼が望みに望んで作り上げた、幻想なのかもしれない。

素直になれないサンダースと、その横で柔らかく笑うシャワーズ。

この世界で幸せになれなかった彼らも、新しく向かう世界でなら、彼の言う来世でなら、幸せになれるのだろうか。

その先は、誰も知らない。




 ▼ 81 サイハナ@きんりょくのハネ 18/06/05 22:59:14 ID:Y0PgE/iQ [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
乙 です
 ▼ 82 ョロトノ@グラウンドメモリ 18/06/05 23:02:08 ID:Qkm.h3Z. [16/16] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
あ、なんかそれっぽく締めくくってますけどトキワの森の話が終わっただけでまだ続きます
 ▼ 83 シボン@ひかりのいし 18/06/05 23:07:01 ID:Y0PgE/iQ [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
じゃあ 支援

早とちりごめん
 ▼ 84 カグース@つかまえポン 18/06/05 23:53:17 ID:Z.0LLPbU NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 85 援する男◆zoKrwsYAsI 18/06/06 00:03:19 ID:TTQPr9cc [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
文章力やべえ(語彙力)
 ▼ 86 ナッキー@げんきのかけら 18/06/06 00:03:26 ID:2qFydAXE NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
一区切り乙
これからも支援!
 ▼ 87 ガボーマンダ@はかせのふくめん 18/06/06 00:16:33 ID:hombwzrU NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援支援支援
もうここに来るの日課
 ▼ 88 援する男◆zoKrwsYAsI 18/06/06 00:19:12 ID:TTQPr9cc [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
>>87
は?何これ好き
 ▼ 89 ーブシン@おうじゃのしるし 18/06/07 00:29:43 ID:M4Dp0eHs [1/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ポケモン格闘技カントー大会の二日前。

ルカリオとミミロップは大会の開催されるヤマブキシティ近郊へ向かうべく、7番道路の辺りを歩いていた。

整備された道を通る人間達に倣うならトキワの森を抜け一回りして5番道路からヤマブキへ向かうところだが、移動も修行の一環、彼らは敢えて険しい道を選び、歩く。

途中タマムシシティに立ち寄って小休止を挟んだものの、森から現地まで最短で向かう予定である。

初っ端から異種とも言えるフライゴン二体の討伐という異例のスタートを切る事となったが、基本的にトレーニングは順調そのもの。コンディション万全の状態で大会に臨む事ができそうだ。

しかし、そう易々と彼らはヤマブキまでたどり着かせてもらえないらしい。7番道路に差し掛かったあたりから、二匹は異変を感じていた。

ミミロップ「……ねえ、これ」

ルカリオ「ああ……異様な臭いがするな」

辺りを漂う異臭に、二匹は足を止めた。

ルカリオ「まずいな……ミミロップちゃん、ルートを変えよう」

ミミロップ「うん、そうしてもらえるとありがたいかも……なんか気分悪くなってきた」

ルカリオ「これは……毒ガスの類だな」

異臭こそすれど、具合が悪くなり始めているミミロップに対し彼は身体的な影響が何も無い。つまりは、毒に関係する臭いである事がわかる。

とはいえ彼も身体中が鋼でできているわけではないので、本当に全く毒が効かないというわけではない。中毒状態にならないのであって、即座に生命を脅かす神経毒ともなれば彼も耐えられないかもしれない。

今ここで流れている、おそらく毒ガスはそこまで酷いものではなさそうだが、無理にこのまま突っ切れば大会出場も危ぶまれる可能性がある。

ルカリオ「(これは……ポケモンの出す毒ともちょっと違いそうだな。一体、なんでこんな所で毒ガスが?)」
 ▼ 90 ネコロロ@ダークストーン 18/06/07 00:30:22 ID:M4Dp0eHs [2/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


7番道路を大きく迂回し、結局5番道路方面からヤマブキ入りした二匹。ヤマブキに着いた頃にはミミロップの調子も戻っており、特に後遺症も無さそうだった。

しかし、ヤマブキに着いた彼らを迎えたのは、未曾有の光景だった。

大会の開かれる予定である建物の周りで倒れている沢山のポケモン。その周りを、必死になって看病して回るラッキー達の姿。

倒れているのはおそらく、明後日に行われるカントー大会に出場するであろうポケモン達だろう。大会に参加するには、前日までの所でエントリーを済ませなければならないため事前にここを訪れる必要がある。

ラッキー「!」

と、この光景を見て唖然としている二匹を見つけ、一匹のラッキーが慌てた様子で近づいてきた。

ラッキー「だ、大丈夫ですか!? 具合が悪いとか、身体がしびれるとか、立っていられないとか、ないですか!?」

ルカリオ「え、ちょ」

ミミロップ「えぇ?」

一匹のラッキーが騒ぎ立てると、近くで丁度看病を終えたらしいラッキーが次々と寄ってくる。血相を変えて走ってくる彼女達は、鬼気迫るものがあった。

ルカリオ「こ、これはいったい?」

ハピナス「それが……」

彼らの身体を触診したりして落ち着かないラッキー達の代わりに、苦痛の表情を浮かべ歩いてきたハピナスが答えてくれた。

ハピナス「どうも彼らは毒を体内に取り込んでしまっているようで……多くの方は命に別状は無いのですが、意識混濁していたり、身体の痺れを訴えていたり、酷い状態なんです」

ルカリオ「毒だって?」
 ▼ 91 ーロット@せいなるはい 18/06/07 00:31:34 ID:M4Dp0eHs [3/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
聞いてすぐに、7番道路付近で感じた異臭のことが思い当たる。

ルカリオ「それはもしや、7番道路であった毒ガスの」

ハピナス「ご存知なんですか!?」

ルカリオ「知ってるというか、俺達はそちらの方面から来たんだけど、酷い異臭がしたから迂回してきたんだ。ミミロップちゃんがちょっと吸い込んじゃって」

ラッキー「それは大変! 診てみなきゃ!」

ミミロップ「え、きゃ!」

ラッキー達は二匹がかりでミミロップを抱え上げ、すぐ近くのテントに運んでいってしまう。ルカリオもあとを追いかけようと思ったが、ミミロップの具合を悪くさせた毒ガスの事が気がかりでもあるため、彼女達に任せる事にしてハピナスに向き直った。

ルカリオ「俺は鋼タイプも持ってるんで、多少の毒なら平気なんだ」

ハピナス「成程。ところで、大会参加の方ですか?」

ルカリオ「ああ、そのためのエントリーに来たんだけど……」

会場の方を見る。扉は硬く閉ざされており、大会エントリーどころではなさそうだ。

ハピナス「本日エントリーできなかった方は、特別に開催前なら当日でも有効になるそうです。その、こういう言い方はよくないかもしれませんが、今日倒れてしまった方々は私達が把握してますし……」

あくまで該当者のみの特別措置という事だろう。しかし、中には被害が大きい者もいるようで、大会参加がそもそも危ぶまれているポケモンもそれなりの数になりそうだ。

???「我々も困り果てているのだよ」

ハピナス「あ、副会長さん」

ルカリオ「ん?」

急に太い声がしたと思いハピナスの後方を見れば、そこにはWFC副会長であるローブシンの姿があった。
 ▼ 92 ノガッサ@においぶくろ 18/06/07 02:06:32 ID:y1/hgnH6 NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 93 援する男◆zoKrwsYAsI 18/06/07 19:41:55 ID:QmMP56/g [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
メガシエンネ
 ▼ 94 ゲキッス@はかせのてがみ 18/06/07 22:28:51 ID:oY8sS9KY NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援!
 ▼ 95 ッシブーン@ノーマルZ 18/06/07 22:35:15 ID:S7WzGY4Y NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援支援支援支援支援



支援
 ▼ 96 ルンゲル@きあいのハチマキ 18/06/07 23:19:39 ID:M4Dp0eHs [4/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルカリオ「副会長さんも来ていたのか」

ローブシン「大会当日は会長に代わって挨拶をする事になっていてね。久方ぶりのカントーだった事もあり早めに来ていたのだが……」

ローブシンはマットの上で苦しんでいる参加者達を見て辛そうな表情を浮かべた。

ルカリオ「酷い状況、だな……」

ローブシン「ああ。自然に起きた事なのか、我々関係者や参加者を狙っての事なのか、無差別に起こされたものなのか……」

ハピナス「そもそも出所が特定されていませんからね」

ルカリオ「さっきも言ったけど、俺達は7番道路で異臭を感じた。他の皆がどこで毒を受けたかは……」

ローブシン「それは有力な情報だ。案内してはもらえないだろうか、何かわかるかもしれん」

ローブシンはただでさえ厳つい顔を般若のごとく怒りで満たしている。並のポケモンならばこれを見ただけで逃げ出してしまうだろう。その表情からは、WFC副会長としての強い憤りを感じた。

ルカリオ「俺もこんな形で対戦相手が制限されるのは気に食わない。是非とも案内しよう」

彼の思いにルカリオは強く頷き、応える。

ルカリオ「の前に、ちょっと話をしてくるよ」

すぐにでも出発といきたい所ではあるが、そういうわけにもいかない。ルカリオは「すまない」と一声かけ、ミミロップの運ばれたテントへと向かった。
 ▼ 97 ンバル@しんかいのキバ 18/06/07 23:20:16 ID:M4Dp0eHs [5/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


特に毒ガスに関する異常は見られなかったミミロップにエントリーを任せ、ルカリオはローブシンやハピナスと共に7番道路の辺りへ向かった。

とはいえ、ルカリオ達が毒ガスを感じたのはタマムシ側から。彼らはヤマブキ側から現地へ向かっているが、今のところ毒ガスが立ち込めている様子は感じられない。

ルカリオ「7番道路へ差し掛かって割とすぐの事だったから、もしかしたらあちら側だけだったのかも」

ローブシン「ということは、タマムシ側から7番道路やその付近の林道を突っ切ってきた者達が被害に遭ったというわけか」

ルカリオ「あるいは、通っている最中に被害に遭ったか……」

ハピナス「でも、それにしては不自然です。あれだけ多くのポケモンが、同じような時間帯に同じ現象に遭うでしょうか? みんな様々な所からやって来るでしょうに」

ローブシン「それもそうだ……となれば、何者かが参加者達を狙って毒ガスを散布しているのかもしれん」

ルカリオ「なら犯人はまだ森の中に……?」

森を行く彼らの歩みは自然と早くなっていく。当然、毒ガス事件に犯人がいるのだとすればこの間も彼らは狙われる可能性があるのだが、誰一匹それを気にする者はいない。

周囲を見回しながらではあるが、可及的素早く現地へ辿り着こうと気持ちが逸る……彼らはいつからか走り出していた。

ルカリオ「おかしいな、何も無い……」

ローブシン「あぁ……ついに森を抜けてしまった」

ハピナス「はぁ、はぁ……さすがに、つらい」

盛大に息を乱すハピナスに軽く謝りつつ、7番道路と森の境目を宛も無く睨みつけるルカリオ。彼は確かにこの辺りで毒の気配を感じたのだが、風に流れてしまったのだろう、今では異臭どころか気になる臭いさえ皆無だ。

ルカリオ「自然に発生するとはあまり思えない。しかし、毒タイプのポケモンによる毒技とも違う気がするんだが……」

ハピナス「し、神経毒ですからね、おそらく、それも、濃度の高い……」

ローブシン「人工的な毒物という事か」

ルカリオ「犯人は人間……いや、それならば乱獲を行うなど他に目的があるはずだ。やはり、大会参加者を狙ったものとしか……」

あまり考えたく無い事ではあるが、大会参加者を狙っての事だとするならば、その目的は大会に参加させない事……つまりはライバルを減らすための工作である可能性がある。実際、この様子では参加するはずだったポケモンの幾らかはエントリーを断念せざるを得ないだろう。
 ▼ 98 スゴドラ@ポケじゃらし 18/06/07 23:21:47 ID:M4Dp0eHs [6/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ローブシン「……戻ろう。何も手がかりは無さそうだ」

睨みつけるように辺りを何度も見回していたローブシンだったが、何の気配も感じられなければ手がかりとなるもの一つも落ちていないとわかり、荒く息を吐きつける。

歩き出すローブシンとハピナス。ルカリオは最後にもう一度だけ森や道路を確認し、彼らの後を追いかけた。

ルカリオ「(うーん……)」

何者かが自分達を狙っているかもしれない……一度でもそう思ってしまえば、たとえ実際にはそうでないとしても、常日頃から辺りを警戒するなど気を配るようになる。そしてそれは存外神経をすり減らす行為であり、毒で直接的に被害を受けなくとも今後に少なからず支障をきたす事になってしまう。

しかし、これほどまでに大規模な毒ガス事件、一個人で行っているとは考え難い。もしもこれがポケモンによる犯行なのだとしたら、どこか組織的なものを感じずにはいられない。そして仮にそうだとするならば、個人単位で立ち向かうのは非常に困難だろう。

もっとも、ポケモン界ではWFCのような大会は様々開かれている。WFCは大きな大会であるとはいえ、数あるうちの一つでしかない。大会規模でいえば、格闘大会は他のタイプの大会に比べてマイナーな方だ。

だが、これまで他の大会でこのような事件が起きた例は、少なくともルカリオの耳には入っていない。となれば、格闘界に恨みのある者の犯行か、関係者や参加者による妨害行為か……勿論彼が知らないだけ、という可能性もあるが。

ルカリオ「(疑心暗鬼になっちゃだめだ……)」

事実がどこにあるかを彼らは一切わからないが、少しでも自分達に影響を及ぼすかもしれない可能性の存在に、なんともいえない奇妙な感覚を覚えるルカリオだった。
 ▼ 99 ーフィ@クサZ 18/06/07 23:22:31 ID:M4Dp0eHs [7/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



カントー格闘大会……WFCの登竜門たる大きな大会で、世界を目指す格闘使いがこぞって参加を望む。

毒ガス事件等の影響で今回の参加者はかなりの数減少することとなったが、関係者や参加者の強い希望、WFCまでにもう1回カントー大会が開催される事などを理由に、今回も執り行う事となった。

ルカリオたちにとって、公式では初めての格闘大会。これまでの鍛錬や経験を基に考えれば自信は溢れるほど持ち合わせているが、「初めて」は誰しも緊張するもの。彼らも例外に漏れず、各ブロック抽選が行われるまでは自らの鼓動がうるさく響いていた。

だが、いざ大会が始まりそれぞれのブロックでバトルが展開され始めると、彼らの目つきは即座に変わる。

身体を震わせるルカリオとミミロップ。

しかしそれはもう緊張によるものではなく、心の底からバトルを楽しもうという気持ちによるもの。彼らははやくも不安定な感情を吹き飛ばし、自分の番が来るのを今か今かと待ち望んでいる。

ルカリオは♂のAブロック、ミミロップは♀のCブロックでのエントリーだった。

組み合わせは全て公正にくじ引きで行われるわけだが、運が良いのか悪いのか、ルカリオは今大会優勝候補であるカイリキーと同じ組になっていた。一方ミミロップの方は優勝候補といった前情報から強烈な相手はいないものの、これまで幾つか大会を経験してきたような相手が数匹いる。

不安や心配こそ無い彼らだが、初めての大会で自分達が優勝あるいは準優勝まで辿り着けるかという未知への疑念はあった。

しかし、すべては杞憂に終わる事となる。

激戦に次ぐ激戦。彼らは自らの力を発揮し次々とコマを進め、ついには決勝戦の舞台まで上り詰めていた。

ルカリオの対戦相手は、やはり優勝候補のカイリキー。ミミロップの相手はゴウカザルと、双方苦戦必至の対決だった。
 ▼ 100 ントル@スチールメモリ 18/06/07 23:23:09 ID:M4Dp0eHs [8/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


審判「それではこれより、ルカリオ選手対カイリキー選手のバトルを執り行います。双方、礼」

ルカリオ「よろしく」

カイリキー「こちらこそよろしく」

相手を見据えながらの礼。人間でいうところの、剣道における試合前の礼のよう。

審判「では、それぞれ持ち場へ」

審判の言葉で、ルカリオは西側に、カイリキーは東側にそれぞれ移動する。

WFCのいわば予選となる各地方の大会では、基本的にそれぞれの大会独特のフィールドが展開される。

岩場、砂地、森などと様々あるが、カントー大会のフィールドは一番平坦なもの、荒野が選ばれている。フローリングなどの案もあったようだが、バトルは基本的に外で行うものという意見の基却下され、それでも最も障害の無いフィールドである荒野と決まったらしい。

副審「ルカリオ選手、失礼」

ルカリオ「はい」

それぞれが持ち場についたところで、ルカリオ側にいる副審がジェル状のものを彼の手の甲や胸の突起に塗りこんだ。こうする事で爪や突起などによる負傷や、突起による意図しない攻撃を防ぐ事ができる。

厳密に言えばこれを塗られると身体の感覚が若干だけ変わってしまう場合があるので、微々たるものではあるが不利な状態での戦闘となってしまう。しかしルカリオはこれまでのバトルの感触からそれによる不利は既に克服しているため、さしたる問題となる事は無さそうだ。

審判「では……始めっ!」

ルカリオ「うっしゃあ!」

カイリキー「さて、軽く捻ってやるとするか」
 ▼ 101 援する男◆zoKrwsYAsI 18/06/07 23:42:30 ID:QmMP56/g [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
メガシエンネ
 ▼ 103 モリ@ハーバーメール 18/06/08 23:11:00 ID:TUnMm29c [1/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
審判の合図と共に、カイリキー目掛けて飛び出すルカリオ。

速い。速すぎて観客の目に彼の姿は一切映らない。

次に多くのポケモン達が彼の姿を認識できたのは、ルカリオの繰り出すバレットパンチをカイリキーが手で受け止めている所だった。

ルカリオ「ちっ、流石にそう簡単にはいかないか」

カイリキー「かなりの速さ、重さだ。受け止めはしたが、かなり手が痛む」

その状態で双方全く動かず睨み合う。出方を窺っているのか相手の力量を測っているのか、どちらも自分から動く気配は無い。

その間数秒、いや数十秒にも及ぶ。

カイリキーは空いている腕があるにも関わらず、彼に攻撃を繰り出す様子はない。ルカリオとて左手がフリーだが、こちらもやはり何も仕掛けようとはしていない。

静まり返る会場。しかし大会を観戦しに来ているのはバトル経験のある者ばかりなのだろうか、全く動きの無い試合にざわめく様子は無い。

カイリキー「ぬうん!!」

ルカリオ「っ!」

試合を動かしたのはカイリキーだった。掴んでいたルカリオの腕を押し放し、直後に強烈なパンチを打ち込んでくる。

ルカリオ「あの間合いで打ってくるか……」

カイリキー「よく避けたな。当てる自信はあったんだが」

ばくれつパンチ。

強力な一撃で相手の脳を揺らし、一時的に混乱状態に陥れる技だ。しかしこの技は熟練者でも扱いが難しく読まれやすい攻撃であるため、今回のように見切られて避けられる事が多い。

ルカリオ「予備動作である程度は読めるさ」

カイリキー「成程、相当鍛錬していると見る」

とはいえ、カイリキーの繰り出したばくれつパンチの予備動作など0.5秒にも満たない動作だった。しかしその僅かな動きを読めるかどうかで、勝敗が大きく変わってくる。
 ▼ 104 ノムッチ@かみなりのいし 18/06/08 23:11:35 ID:TUnMm29c [2/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルカリオ「どんどんいくぞ!」

拳を突き出すルカリオ。

カイリキー「ぬっ!」

それを受け止めるカイリキー。

ルカリオ「まだまだ!」

パンチを受け止めている手めがけて蹴りを放つ。

カイリキー「甘いわ!!」

ルカリオ「ちっ!」

瞬時に手を離され空を切る脚。その僅かな隙目掛けて打ち込まれる強烈なメガトンパンチ。

しかし予測済みだったのだろう、ルカリオはカウンター気味にその腕目掛けて踵を振り下ろす。

ルカリオ「っ!」

カイリキー「ぐっ!」

激痛に顔をゆがませる二匹。両者痛み分け……どちらもそれ以上の攻撃を欲張る事無く、相手と距離を取った。
 ▼ 105 ンメル@ルカリオナイト 18/06/08 23:12:48 ID:TUnMm29c [3/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


余談だが、格闘大会では強力なエスパータイプのポケモンに副審をお願いしている。対戦相手の思考をエスパー技などで読んでいないか、姑息な戦い方をしようとしていないかなど、参加者が不正を働いていないかどうかの確認と防止を主に行ってもらっているのだ。

どこまでの読みなら不正に当たらないかなどはルールブックにて詳細に紹介がされている。例えば、相手の思考を読むのは反則だが、動きを予測したり予備動作や僅かな動きでの察知は許可されている。

故に、探っている暇があるかどうかは別にして、ルカリオの波動を使って相手の動きを読み取る行為は不正にならない。ただし相手の感情や思考を読み始めれば即座にアウト判定が下るが、そういうものを防止するのが副審の役目。妨害の念やフィールドを広げて、そもそも思考が読めないようにしているのだ。

ちなみに今大会ではその役目をミュウツーが担っている。

カイリキー「今度はこちらからゆくぞ!」

ルカリオ「ちっ、思ったより速い!」

さて、試合は大きく動き始めているようだ。

カイリキーは一気にルカリオとの距離をつめ、連続してパンチを繰り出し始める。

動き自体は読めているが、だからといって全てに対処できるとは限らない。ルカリオは全ての打撃を間一髪の所で避けていたが、やがて手でパンチを軽くいなさざるを得なくなってきた。それ程カイリキーの繰り出す連続パンチは素早く、正確だった。

一歩、また一歩と後ずさりしながらカイリキーの猛攻を受けるルカリオ。

ルカリオ「(このままじゃまずいな……)」

さすがの攻撃、優勝候補と言われるのも伊達ではない。おそらくカイリキーは大会もいくらか経験しているのだろう、戦い方というものをよくわかっている。

この勝負、どちらかが戦闘不能になるまでバトルを続ける必要があるわけだが、決着となるのは何もノックダウンだけではない。体力の消耗や肉体への強力なダメージなどによって立ち上がれなくなった時点でも敗北が確定する。

この連続パンチにしても、繰り出すより受ける方がより体力は消耗するうえダメージも大きい。仮にこの状態がずっと続いたとして、最後に立っているのはカイリキーだろう。全てを軽く避けきれるのであれば話は別だが、既にルカリオは手を出さなければ彼の攻撃を受けきれない状態だ。

そういう意味では、大会を経験していないルカリオは不利とも言えた。
 ▼ 106 クーダ@トレジャーメール 18/06/08 23:13:24 ID:TUnMm29c [4/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
しかし、それは同時にチャンスでもあった。

おそらく相手はルカリオが大会初参加である事を知っている。相手の情報は事前に調べておくのが、大会におけるバトルの定石だ。カイリキーも当然ルカリオの情報は探ったに違いない。

つまりは、カイリキーはルカリオが大会の戦い方というものを理解しきれていないと認識している可能性が高い。

となれば、そこには僅かにでも驕った部分が出てくるというもの。

ルカリオ「(……見えた)」

そして、彼はそれを見逃さなかった。

ルカリオ「覇っ!!」

カイリキーのパンチを紙一重の所でかわし、下方からの強烈なインファイト。四本の腕から繰り出される連続パンチの合間を縫っての攻撃ともなれば、否応にも速度重視で打ち込まなくてはならないため威力に期待はできないが、相手の意表をつくことを主に考えれば充分な一撃になった。

カイリキー「ぬっ!」

思わぬ一撃を腹部に受け、よろめくカイリキー。当然、その隙も逃さない。

ルカリオ「そおらっ!!」

初撃にバレットパンチ。

ルカリオ「まだまだ!」

カイリキーがバランスを崩したところへ、すかさずローキック。

ルカリオ「おらおらおらおらおら!!!」

続けて、連続してジャブを繰り返すように拳の雨を降らす。

ルカリオ「最後はっ!」

連続攻撃の終わりに、インファイトの構えを取る。

ルカリオ「覇っ!!」

しかし瞬時にカイリキーは体勢を立て直し、インファイトを受けきろうと腕を使ってガードの姿勢をとる。

だが……

カイリキー「う、後ろだと!?」

ルカリオ「くわんぬ!!」
 ▼ 107 ンプジン@カメックスナイト 18/06/08 23:14:20 ID:TUnMm29c [5/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ズトン、と重く鈍い音が会場に響く。

次の瞬間には、カイリキーは会場の隅の方まで吹っ飛んで倒れていた。

ルカリオ「なんとか通用してよかった……」

打ち込んだ衝撃が手に残るのだろう、ルカリオは両手をぷらぷらさせて痛みを誤魔化している。無理もない、インファイトの姿勢から瞬時に別な攻撃へと切り替え、無理な体勢から技を放ったのだから。

結論からいえば、彼がカイリキーに打ち込んだのは「しんそく」だった。

カイリキーの連続パンチは、大会経験の無いルカリオの体力消耗を狙ったものだった。つまりは、ダメージを期待して行うわけではない攻撃の数々。一撃が一撃が重くない分、受け流す事も容易である。

彼らの体格差を考えればカイリキーはどうしても上からパンチを打ち込む事になるので、腹部ががら空きになりやすい。また、対象の疲弊を狙う場合自らが先にバテては意味が無いため、カイリキーは四本の腕をフルに使う事で各腕への負担を軽減しようとしていた。

そこへ自分の方が経験があるという驕りが加わり、ルカリオにインファイトを打たせる隙ができてしまう。

思わぬ一撃でよろめいたカイリキーにルカリオは姿勢を整える隙を与えず先制攻撃。いよいよ体勢を立て直そうという所に、またしてもガラ空きの足にローキック。一瞬でも意識が足へ向いたと思われる瞬間に連続してパンチを打ち込み、ブラフを仕掛ける。

連続技から大技に繋げる動きはメジャーだが強力で、受ければ大ダメージは必至。となれば受けるなり避けるなりする必要があるわけだが、ルカリオはそこを逆手に取ったのだ。

わざと大技を出すそぶりを見せてからのしんそく。超高速で背後に回り、力いっぱいカイリキーに攻撃を打ち込んだ。

ルカリオ「立ち上がってくるか……?」

主審がカイリキーの様子を窺っている。彼はルカリオの攻撃をまともに受け、いまだ起き上がる様子はない。

沈黙する会場、構えを維持しつつ固唾を呑むルカリオ。

やがて状況を確認した主審が旗を真上に上げた。それを見て、周囲の副審も同じように旗を掲げる……ルカリオの優勝が決まった。
 ▼ 108 援する男◆zoKrwsYAsI 18/06/08 23:53:09 ID:1hLoK/iQ NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
メガシエンネ
 ▼ 109 ゲデマル◆ogt6qml3NU 18/06/09 01:01:00 ID:QkeO.zCQ NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
二、三日ほどこのスレに戻ってこれなかったから出血大サービスで支援!!!
 ▼ 110 ガース@ギャラドスナイト 18/06/09 01:04:09 ID:pnl2cjCk NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援すべ
 ▼ 111 ガネール@ゆきだま 18/06/09 02:15:43 ID:UMryAqFU NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 112 サキント@おはなのおこう 18/06/09 22:54:00 ID:4ATEWDkU [1/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


ルカリオ「ふーっ……なんとかなった」

ミミロップ「おつかれさま。最後のしんそく、カッコよかったよ」

ルカリオ「えへへ、そうかな」

選手控え室に戻り、安堵の息を漏らすルカリオ。ミミロップは彼の頬を指で小突いて労をねぎらった。

ミミロップ「次は私か……」

ルカリオ「緊張する?」

ミミロップ「ちょっとね。見れる限り相手の試合見てたけど、動きが速い」

ルカリオ「それに、ミミロップちゃんと違って彼女、ゴウカザルは拳がメインだよね。どう出るかで大きく勝敗が左右されそう」

素早い脚か素早い拳か。戦い方一つで有利にも不利にもなる組み合わせとなるため、お互いにどう出るかをどこまで見切れるかが鍵となりそうだ。

普段は強気なミミロップも流石に決勝戦ともなるとやや不安を覚えるのか、呼吸が僅かに乱れている。

しかし、彼女がルカリオの機微について気づかない事が無いのと同じく、彼もまたミミロップのそういった心の微妙な変化を見逃しはしない。

ルカリオ「いつも通りやれば大丈夫だよ。変に考えず、思いっきりやればさ」

ミミロップ「ふふ、そうね」

ぽんぽんとミミロップの頭を撫でるように触るルカリオ。ミミロップは彼の気遣いが嬉しくてそっと頭を預け、目を閉じて深呼吸する。

ミミロップ「……よし! それじゃ、行ってくるわね」

ルカリオ「おう!」

しばしの幸せを噛み締めた彼女は、意気込み新たに会場へ向かう。ルカリオは強く頷きその背中が見えなくなるまで見送った。
 ▼ 113 ヤシガメ@くろぼんぐり 18/06/09 22:54:55 ID:4ATEWDkU [2/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



今大会最終試合が行われるという事で、会場は試合を終えた選手達や観客達の熱気で埋め尽くされていた。

カントー大会は間口の広い大会という事もあり、ここヤマブキ会場の広さはかなりのもの。ここでは他にも様々な大会や行事が執り行われる事もあり、会場内だけでなく施設全体の設備もしっかりしている。選手控え室や観客席は勿論、ショッピングモールや宿泊施設まで兼ね備えられているという優れっぷり。

中でも一押しとされている場所が、会場を一望できるホテル、アルベルゴ・ヤマブキ。特にここのスイートルームからは、会場で行われる試合を最も見やすい位置から生で観戦し、寛げるという贅沢を堪能できる。

当然そういった部屋は費用が高くつくわけだが、余程の資産家を除けば、多くの場合はスポンサーなどからの招待による宿泊がほとんどである。

今日もまた、大会関係者からの招待に預かり、ここ一番のスイートにあるポケモンが宿泊していた。

バシャーモ「……今年は、存外豊作かもしれないわね」

窓際に設えられた豪華絢爛な席に座りカップに口をつけながら、決勝戦に臨む二匹のポケモンを眺める彼女。好みなのだろうか、最高級のスイートルームで寛いでいるにも関わらず、何故か嗜んでいるのは番茶である。

バシャーモ「この中からもしかしたら、WFC本戦に出場してくる子もいるかもしれない……ふふ、今から楽しみね」

すらりと伸びた美しい脚を組みなおすバシャーモ。♂の多くが思わず見惚れてしまうであろうその美脚、実はただ美しいだけではない。そこから繰り出される足技の数々は、一説によれば鉄をも砕くとも言われている。

彼女はWFCの常連にして、過去にWFCで優勝した経験もある実力者なのだ。

彼女は今回、いわゆる来賓としてこの大会に招待された。彼女は選手であると同時にホウエン支部の役員も勤めており、カントー大会を様子見するため招かれたのだ。

バシャーモ「そして、もしかしたら……」

番茶の注がれたコップをテーブルに置き、手を組んで目を細めるバシャーモ。奥歯を噛み締め、ぎりっと音を鳴らす。そして短く息を吐き、悲しいような期待をかけるような、そんな複雑な表情で改めて会場を見た。

バシャーモ「悪しき慣習を……壊してくれる誰かが、現れてくれるかもしれない……」

会場を見据える彼女。

最終戦の行われる荒野のフィールドでは、今ちょうど二匹のポケモンが礼を済ませたところだった。
 ▼ 114 ロリンガ@よごれたハンカチ 18/06/09 22:55:41 ID:4ATEWDkU [3/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



ミミロップ「っ、速い!」

右足を真横へ踏み出して身体の重心をずらし、腰をひねる。次の瞬間彼女の身体の僅か数ミリ横をゴウカザルの鉄拳が通り抜け、四隣の空間を震わせる。

ゴウカザルは続けざまに振り出した拳をミミロップの避けた方へ大きくなぎ払うも、その動きを予測していたミミロップはしゃがんでそれを更に避け相手の足目掛けて下段回転蹴りを放った。

その攻撃は空を切ってしまうが、ゴウカザルは跳び退く事でしか避けられなかったようで、一旦ミミロップと距離をとるハメになる。

ゴウカザル「アタイのスピードについてこれるって、中々やるじゃん。そうそういないよ」

ミミロップ「それはどうも」

お互いがけん制し、言葉を交わす。

どちらも、余裕があるわけではない。相手の出方を窺っているのだ。

ゴウカザル「でも、もっとスピードあげてくよっ!」

ミミロップ「っ!」

二匹はそれなりに離れていたが、一瞬でゴウカザルがミミロップの懐に滑り込んできた。

対応が間に合わずガードに徹するミミロップ。しかし次の瞬間には、ゴウカザルは全く別な角度から拳を突き出してきた。

彼女の得意技、マッハパンチである。

ルカリオがよく使うバレットパンチより一撃が軽い分、より速く打ち込みができる攻撃だ。ゴウカザルは今大会のどの試合でもこれを駆使し、相手を圧倒してきた。中には、開始直後にこの技を何度も使い数十秒で勝利をおさめた試合もあった。

ミミロップ「私だって負けてないわよ!」

ゴウカザル「なっ!」

追撃のマッハパンチをかわしつつ、ミミロップも別な角度からの攻撃を試みる。

速度には速度を。

ゴウカザルのマッハパンチに対し、ミミロップは電光石火で応戦した。
 ▼ 115 リリ@スピードパウダー 18/06/09 22:56:44 ID:4ATEWDkU [4/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
会場内に打撃のぶつかり合う音が響く。しかし、フィールドでは何度も砂埃が舞うばかりで戦闘を行っているポケモンの姿は見えない。

常人には可視できないレベルでの速度。彼女達ですら、お互いの姿をはっきりとは認識できていないだろう。むしろ認識されてしまうという事は、競り合いで負ける事を意味する。

ほとんどが感覚によるバトル。こうなるといかに一瞬で相手の動きを察知できるかにかかってくるのだが、この点に関してミミロップにはいささか利点があった。

ミミロップはどちらかといえば一撃の重さを重視する戦い方を好むのだが、ルカリオは速度を重視している。つまりミミロップはルカリオとのトレーニングを行う際、彼の速度に対応するような鍛錬を日々行う事ができるのだ。

これまでのゴウカザルの戦いぶりを見ていれば、速度戦となる事は必至。ミミロップは、まさに今、旦那とのトレーニングの成果を実践できる状況にあった。

ミミロップ「(厳密に言えばルカリオのバレットパンチよりも僅かに速い……けど!)」

電光石火とマッハパンチがぶつかる。その瞬間ミミロップは両手を相手に向けて伸ばし、彼女の身体を捕らえた。

ゴウカザル「っ!」

ミミロップ「遅いっ!」

予想外の攻撃に身を引こうとするゴウカザルだが、身体の重心を傾けようとする頃にはミミロップのスープレックスが綺麗に決まっていた。

しかしゴウカザルの引こうとする力が存外強かったからか、形としてはバッチリ技が決まっていても威力があまり出ていない。そのためゴウカザルにうまく受身を取られてしまい、ミミロップは追撃を諦め彼女からすぐに手を離す。

ゴウカザル「っぐ……よくも!」

果たしてその判断は正解で、ゴウカザルは投げられた勢いさえ利用して地を転がり、起き上がりざまミミロップにインファイトを打ち込んできた。

だが追撃を欲張らなかった事が功を奏し、ゴウカザルの攻撃は距離が足りず風圧でしかミミロップを攻撃できない。当然このチャンスを逃すはずもなく、ミミロップは電光石火でゴウカザルに近づき、得意の跳び蹴りを打ち込んだ。

ゴウカザル「まだまだぁ! っぐぅ……」

ミミロップ「っ!」

電光石火からの跳び蹴りともなれば相当な威力が期待される。ゴウカザルはこれを避けてやり過ごすと思われたが、驚く事に正面から受けにきた。

ガード体勢を取って受けたとはいえ、その衝撃は骨肉に強く響き、身体中を強い痛みが駆け巡るだろう。

しかし、それを代償に、ゴウカザルはミミロップの片足をつかむ事に成功した。
 ▼ 116 ンペルト@プレミアボール 18/06/09 22:57:35 ID:4ATEWDkU [5/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミミロップ「やばっ!」

ゴウカザル「えいやあああっ!!」

ミミロップを捕らえる事に成功したゴウカザルは彼女の足を両手で持ち、そのままぐるぐるとまわし始める。なんとか逃れようともがくもがっちり掴まれてしまって抜け出せず、遠心力も手伝って相手に攻撃を加える事も難しい。

地獄車からのジャイアントスイング。しかし、掴む足は片足のみである。勢いが強くなればなる程、ミミロップの脚に激痛が走る。だがこの体勢に持ち込まれてしまっては中々どうする事もできない。

ゴウカザル「そいやぁ!」

やがてゴウカザルは手を離し、ミミロップを会場の隅まですっ飛ばす。

物凄い勢いで会場の隅ギリギリまで投げ出され地面に激突したミミロップはあまりの痛みに起き上がる事も困難のようだ。

ミミロップ「……!」

それでもかろうじて上半身を起こした彼女の目に映ったのは、すぐ目の前で、ここまで跳んで来る勢いを乗せたインファイトを打ち込もうとしているゴウカザルの姿だった。

ドゴォン!

会場内に大きな音が鳴り響く。♂部門含めた今大会中で最も派手な音を立てた攻撃と言っても過言ではない。

そんな技が放たれ舞い上がった砂煙が、次第に晴れていく。主審が駆けつけ様子を窺い、副審が旗を持ってじっと判断の時を待っている。

やがて空中を踊っていた砂煙が休息を求め地へ帰り、観衆の目に表彰台へ上る人物の顔が記憶される。

ミミロップ「ふふ、うまく、いったみたい……」

大きな歓声。勝負を制したのは、なんとミミロップだった。
 ▼ 117 カブ@ねばりのかぎづめ 18/06/09 23:00:07 ID:4ATEWDkU [6/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




???「ええ、こちら――――よ。感度良好、通信、問題ないわ」




時をさかのぼる事数分、丁度ミミロップとゴウカザルがお互いの拳と脚をぶつけ合っている頃。

全国でも有数の鬱蒼地帯とされている森の奥地で草むらの中にしゃがみ、通信機器で誰かと会話をしながら何かを手に取っているポケモン一匹。

???「そうね……ええ、見事に。まぁ、弱点まではどうにもならないって事じゃないかしら、少なくとも現段階では」

そのポケモンは地面に転がっていた何かを手に取り、玩ぶように片手で投げては受け取りを繰り返している。

べちゃり、べちゃりとそのポケモンが何かを受け取る度にそれは少しずつ形を崩して地に落ちていき、やがて彼女の手からほとんど無くなってしまう。

辺りには酷い異臭が漂っているのだが、そのポケモンが顔をしかめる様子はない。それどころか地面に転がるそれを再び手に取り、臭いをかぎだす始末。それでも彼女は嫌な顔一つせず、むしろ不気味な笑みさえ浮かべている。

???「肉体は、だめね。強度的な意味じゃ何もかわらない。まぁ、最初からわかってたけど。ただ、不可解なのは……」

???「誰がフライゴンをここまで叩きのめしたか」

ぐしゃり、と彼女は手にしていたそれ……フライゴンの肉片を握りつぶした。圧縮され周囲に飛び散った血肉が彼女の身体を汚すが、それすらも全く気にする様子はない。

???「折角の研究を台無しにしてくれた誰かがいる……私達の邪魔をする、何者かがね」

彼女は押し寄せる苛立ちを隠そうともせず、怒りに任せ頬を引きつらせていた。

???「もう少し調査してフライゴンに施した研究の結果を……ええ、でも……そう。おーけーボス、今から帰るわ。はい、わかったから」

通信機の電源を落とし、大きくため息を吐く彼女。

名残惜しそうに肉片と化した黒いフライゴンを暫くの間じっと見つめていたが、もう一度大きなため息を吐いたかと思うと、彼女は物凄い速度でその場から去っていく。

後には静けさだけが取り残されるばかりであった。
 ▼ 118 クリン@おしえテレビ 18/06/10 02:45:11 ID:WTBwlsOY NGネーム登録 NGID登録 報告
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 ▼ 119 ルード@カビゴンZ 18/06/10 22:51:20 ID:qTvkzgRQ [1/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告






なんで、どうしてこんな事になるんだろう。

誰がこんな運命にしたんだろう。

もし力があったなら、誰にも負けない強さがあったなら……

弱い自分でなかったなら、こんな事にはならなかったのかもしれない。

それじゃあつまり、自分のせい?

誰かに虐げられて、逆らえなくて、言いなりになるしかない、そんな惨めな自分だから……?



力が欲しい。

誰かを守るための、大切なポケモンを守るための、力が欲しい。

力があれば、きっと、きっと……





 ▼ 120 ンヤンマ@モモンのみ 18/06/10 22:52:06 ID:qTvkzgRQ [2/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




ルカリオ「ブロック優勝とはいえ、まずは宣言通りだね」

ミミロップ「ふふ、幸先良いわね〜」

カントー大会でWFC参加資格へ繋がる成績を残し、ご満悦の中次なる地方へ向かう船の客席で談笑する二匹。

次の行き先はホウエン。二週間後にひかえたホウエン大会を目標に、トウカの森で調整を行う予定だ。

今大会でブロック優勝を果たせたとはいえ、新たに見えた課題も沢山ある。何せ初めての大会出場だったのだ、学ぶべき所や考えなくてはならない事が山のように出てきた。

次なるホウエン大会はカントーのように広く参加者を募集している大会ではないので、優勝者は各性別につき一匹ずつだ。大会はトーナメント方式で行われるが、参加者はだいぶ絞られた状態でスタートするためより強い相手と当たる可能性が高い。

つまりは、これまで以上に大会での戦い方というものを考えていかなければ、単純に実力では勝っていても勝負に負けてしまう可能性があるのだ。

ルカリオ「にしても、ミミロップちゃんの最後の試合、よくあれ決められたね」

ミミロップ「まぁ、ルカリオ相手にトレーニングしてるおかげかな」

ルカリオ「俺がされたらと思うとぞっとしたよ」

ミミロップ「ふふ、今度試してみようかな〜」

ルカリオ「……対策考えないと」

眉間にしわを寄せて思い悩むルカリオ。ミミロップはふふんと鼻を鳴らし、しかし頭の中では慢心する事なく対応策への対策を考え始めていた。

声「勢いを乗せたインファイトの打点を見極め自らの身体をそこよりも奥へずらし、カウンター気味にともえなげを決めた……かしら?」

ルカリオ「おん?」

ミミロップ「その声……バシャーモさん!?」

バシャーモ「こんにちは、どちらも優勝おめでとう」

急に声をかけてきたのは、なんとバシャーモだった。いでたちでわかる、WFC常連の彼女だ。
 ▼ 121 ラッタ@ポケトレ 18/06/10 22:52:57 ID:qTvkzgRQ [3/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
バシャーモ「でも、すごかったわね。貴女のすぐ後ろは観客席の壁だったし、ゴウカザルちゃん思いっきし壁にめり込んじゃってたわ」

ミミロップ「うん、大怪我にならなくてよかったわ……」

投げ飛ばされ起き上がりにインファイトを打ち込まれかけたミミロップ。あの時ミミロップは、ゴウカザルがインファイトを打ち込み始める地点を予測しそこよりも前に身体を滑り込ませ、彼女が踏み込みを行う脚や身体を掴んで後方へ投げ飛ばした。

勢いを乗せて突っ込んできたゴウカザルはおそらくミミロップの動きに気づいただろうが、その時にはもう自らの軌道修正を行える段階ではない。結果彼女はインファイトを打ち込まなかったものの、足をすくわれ投げ飛ばされてしまい壁に激突した。

そうして勝敗が決していたのだ。

ルカリオ「でも、いつからそれ狙ってたの?」

ミミロップ「あそこまで状況が整うとは思ってなかったけど、速度勝負の事を考えれば相手の勢いを利用しない手はないって思ってたわ」

バシャーモ「良い手ね。ここぞという時に決める事ができれば、相手はなすすべ無くなるわ」

ミミロップ「バシャーモさんにそう言ってもらえると嬉しいわね」

同じ足技を使う者として、自分より上位にいるバシャーモの事は尊敬しているのだろう、ミミロップが彼女に向ける視線に欽慕が見て取れる。

バシャーモ「貴方達は、次はホウエン大会に?」

ルカリオ「ああ。トウカの森で調整してからな」

バシャーモ「トウカの森……」

ルカリオの発言に言葉を詰まらせるバシャーモ。

ミミロップ「何か引っかかる事でもあるの?」

バシャーモ「え? ううん、そういうわけじゃないけどね。まぁ、私の故郷かなと思って」

そう言って誤魔化すように笑うバシャーモ。何か思うところがあるらしい事はルカリオ達にもわかったが、まだ初対面、その真意を問いただす事は躊躇われた。故郷という事は実家があるのかもしれない、そう思って呑み込むことにした。
 ▼ 122 クロッグ@シルフスコープ 18/06/10 22:53:44 ID:qTvkzgRQ [4/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
バシャーモ「貴方達は、夫婦?」

ルカリオ「そうだ」

ミミロップ「私達、夫婦で大会制覇狙ってるの。勿論、WFCもね」

バシャーモ「ふふ、そう。そういうの、楽しそうで良いわね」

羨ましそうに笑うバシャーモ。彼女は各地で活躍するポケモンだが、有名になった事で各メディアを中心に色々な噂が飛び交っている。その一つに、異性の影が全く見えない、というものがあった。

強さもさる事ながら、雑誌の表紙も務めた事があるくらい彼女は美人だ。それだけに、世間からは疑問の声も多々上がっている。

ミミロップ「バシャーモさんは、結婚とか考えてないの?」

バシャーモ「そうね……まぁ、そういうのは色々終わってから、かな?」

バシャーモは一瞬だけ悲しそうな表情を浮かべはしたが、すぐに笑みを作って「この話はおしまい」と手を叩く。

バシャーモ「でも、WFCへ来るのなら本当に楽しみ。貴女とは是非戦ってみたいわ」

ミミロップ「私もよ。自分の技がどこまで通用するか……今からわくわくするわ」

ルカリオ「ふむ」

握手を交わすミミロップとバシャーモ。まるでライバルのような関係を見せる二匹に、ルカリオは顎に手を当て関心する。

立場から考えれば現状対等とはいかないものの、彼女達はお互いを認め合える関係を築いていけそうに思える。ポケモンバトル界においてもライバルの存在は双方にとって非常にありがたいもので、いるかいないかで後に残せる結果が大きく異なってくる場合が多い。

ルカリオは、自分とは別にそういった存在ができた事を喜びつつ、自身にも必要となる時が遠からず来るかもしれないと少し考えをめぐらせた。今回のミミロップのようにそういった出会いもこの先あるかもしれないと思うと、また一つ楽しみが増えたと嬉しくなるルカリオだった。
 ▼ 123 ニプッチ@おおきなキノコ 18/06/11 06:36:06 ID:XWdMXR6c [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
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 ▼ 124 ーシィ@バクーダナイト 18/06/11 22:24:40 ID:dGvkJJZU [1/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



-トウカの森-

ホウエン地方、トウカシティとカナズミシティに挟まれた所に位置するこの森はトキワの森などと違い、木漏れ日が暖かく比較的明るい場所だ。人間が通る道として整備された箇所もそれなりに多く、自然が損なわれない範囲で人の手がよく加えられている。

また通り道としてだけでなくレジャー空間としてもそれなりに有名で、ポケモンバトルや森林浴などを楽しむ人間が多いらしい。トウカシティからカナズミシティまでの距離もそう遠くはなく危険も少ないため、人間には人気のスポットとなっているようだ。

しかし、それはあくまでも森の一部をさしての話である。実際にはシダケタウンやコトキタウンに至るまでが森林地帯となっていて、人間が足を踏み入れた事のないようなエリアも数多く存在するのだ。

当然、ルカリオ達が修行に使う場所は人間達がよく立ち入る場所では不都合なので、この奥地で行う事になる。人間がほとんど立ち入った事の無い森の奥で、彼らはまた新しい経験をすることになるだろう。

ミミロップ「本当にただの森って感じね。トキワに比べたら全然明るいし」

ルカリオ「鬱蒼とはしてないからね、まだ過ごしやすそう。ただ……」

足と止め、ぐるりと辺りを見回すルカリオ。

彼らは今比較的平坦な道を歩いているのだが、ここら一帯は特筆すべき障害物や地形の緩急に乏しく、お世辞にも修行を始められそうな場所とは言えない。大きな岩場などは見る影も無く、洞窟なども一切見当たらない。

ルカリオ「やっぱり移動日はトレーニングできそうにないね。今日は探すだけでも苦労しそう……」

ミミロップ「やるならやっぱり岩場がいいの?」

ルカリオ「その方がメニュー組みやすいってだけだけどね。まぁ、もう少し歩いてみよう」

ミミロップ「うん」
 ▼ 125 ンプク@デンキZ 18/06/11 22:25:16 ID:dGvkJJZU [2/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ガサガサと茂みをかき分けながら森の奥へと進んで行く二匹。彼らは今、カナシダトンネルとコトキタウンに挟まれた森のちょうど真ん中辺りを歩いていた。

どこまで行っても明るく青々とした木々の生い茂る森だが、彼らはこの様子に違和感を覚え始めていた。それは歩けば歩くほどに強くなり、ついにはミミロップがルカリオの手を掴む。

ミミロップ「なんで他のポケモンいないの?」

ルカリオ「それは俺も気になってる……」

彼らはトウカシティの辺りから森へ入り奥へ奥へと歩いて行ったわけだが、進めば進むほど周囲からポケモン達の気配が消え、今ではもう何の生物反応も感じられない。

遠くの音を聞き分けられるミミロップの耳や生物の機微を細かく感じ取れるルカリオの波動をもってしても、周囲にポケモンの存在を一切確認できないでいる。

しかしそんな状況とは正反対に、森は太陽の光を反射してキラキラと無邪気に輝いており、茂みの中や木の上から今にもポケモンが飛び出してきそうな光景を彼らに見せてくれている。

一つの景色の中に正反対のイメージが混在する事による、気味の悪さ。それを二匹は感じ取っていた。

ルカリオ「とはいえ、直接何か危害を加えられそうな気配もない。偶然か何かじゃないかな」

ミミロップ「だといいけど……」

それでも二匹はこれまで以上に辺りを警戒しながら歩く速度を若干速めつつ、修行に使えそうな場所を探した。

どれ程歩いただろうか、やがて視界が広く開けた場所にやってきた。だだっ広い草原地帯、傍を流れる広い川、更には奥に高低差のある岩場も確認できる。よく見れば洞窟もあるようで、まさにトレーニングにうってつけの場所だった。

ルカリオ「ふう……良い場所が見つかってよかった」

ミミロップ「そうね。でもここ、また誰かの縄張りだったりしない?」

ルカリオ「それはまぁ、あると思う……」

そこは、半円形に草原地帯が広がっていてその周りを岩場が取り囲んでおり、直線になっている部分は広く大きな川に面している。背の高い木はあまり生えておらず、草原も彼らの膝元辺りの高さのものしか見当たらない。

洞窟は川に近い所にあり、川から溢れた水がいくらか流れ込んでいるようだ。川は無闇に広いせいかあまり綺麗な水ではないようで、何で濁っているのか覗き込んでも底は見えそうにない。おそらく、かなりの深さだろう。
 ▼ 126 ンホロウ@たからぶくろ 18/06/11 22:25:45 ID:dGvkJJZU [3/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルカリオ「しかし、急に霧がすごいな……」

ミミロップ「ほんと。見えない事もないけど、だいぶ視界が悪いわね……」

来た道を振り返るも森林地帯は見通しがよさそうで、霧が辺りに立ち込めているのはこのエリアだけのようだ。

岩場の方から湧き水が川へ向けて滝となって落ちてきているため、水しぶきも一役買っているのだろう。特にルカリオは水気の多い場所をあまり好まないが、地理的にこれ以上良さそうな場所は見つかりそうにないと判断し、できるだけ川から離れた所に腰を落ち着ける事とした。

ミミロップ「ふふ、座ってたらまた誰か来たりして」

ルカリオ「うーん、どうだろう……もしかしたら、ここはフリーかもしれないぞ」

岩場の一角に座ってからも周囲を細かく見回しているルカリオが怪訝な声をあげる。そしてきょろきょろさせていた視線を足元に落としたとき、彼は「おっと」と短く呟き息を呑んだ。

ミミロップ「えっちょそれ……骨?」

ルカリオ「だね。何の骨かはわからないけど……白骨化してからあんまり時間経ってなさそうだ」

ミミロップ「なるほど。ここは危険地帯、って事ね」

ルカリオ「そうみたいだけど、何が危険なのかわからないのはな……」

ルカリオの足元にあったのは、おそらくポケモンの骨。ただその骨はまばらに散らばっており、五体満足のまま亡くなったわけではないとわかる。それぞれ別の生き物のものかもしれないが、少なくともルカリオが確認できた範囲には同一のポケモンのものと思われる腕や足の骨が胴体のそれとは離れた場所に落ちていた。

ただ、その他に気になるものはほとんど見当たらなかった。強いて言うなれば、骨の近くに何故か落ちているロープの切れ端くらいだ。

ミミロップ「身体ごと噛み千切られたか、何かの勢いでとんだか……どっちにしても、骨肉を引き裂けるくらい強い何かがいるって事ね」

ルカリオ「まぁ、単純に岩場の上から落ちてきただけかもしれない。何にせよ、相変わらず何の気配もしないのは不気味だ……」

草原地帯にも岩場周辺にも、何らかの生体反応が見られる様子はない。微生物や虫はそこらかしこに存在していると思われるが、少なくとも一定以上サイズのポケモンの骨肉を千切れそうな者の存在は感じられない。

ルカリオ「今はここにいないだけか、もしくは……」

ルカリオは顔を川の方に向ける。広く深い川の中に何かが潜んでいる可能性……流石に水の中ともなれば、聴覚でも波動でも感じ取る事は非常に難しくなる。
 ▼ 127 ラオラ@ヘラクロスナイト 18/06/11 22:26:14 ID:dGvkJJZU [4/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミミロップ「洞窟は?」

ルカリオ「溢れた水が入り込んでるくらいだし、ヘタしたら棲家になってるかもね。そうなると、入った途端に危害を加えられてもおかしくはない」

勿論、洞窟の中ともなれば音も波動も感じ取るのはたやすいだろう。しかし、洞窟の幅はそう広くなさそうだ。例えば、洞窟内を散策中に巨大なポケモンが後ろから急襲してきたとしたなら逃げ場は無い。そのまま呑み込まれて命を失う事になってしまうかもしれない。

ルカリオ「……上に行ってみようか」

今度は空を見上げるルカリオ。

岩場は結構な高さがあり、頂上辺りがどうなっているかこの場からは見えない。ただ、波動で感じ取った感触では、上の方はある程度平らになっているとわかる。生物反応こそないものの、何かこの場所について知る手がかりがあるかもしれない。

ミミロップ「登るしかないか……跳んでは流石に無理そうだしね」

ルカリオ「突き出た岩もあんまり無いし、落ちないようにゆっくりのぼろう」

岩肌に手をかけ、するすると登り始める二匹。普段の生活からしてほぼ垂直な壁や岩山を登る経験など全く無いわけだが、彼らはいとも容易くロッククライミングをやってのけた。

やがて数分もかからないうちに、岩場の頂上まで登りきってしまう。

ルカリオ「ここは……」

目の前に広がる光景に、二匹は息を呑んだ。

平らな大地、整えられた岩石の起伏、一定の間隔で引かれた白い線……そこはまるで、闘技場のようだった。

ミミロップ「ここってもしかして……」

ルカリオ「うん……それに、今でも使われてそうだね」

よく見れば引かれている線は石灰だった。雨が降れば流れてしまうようなものを使用しているという事は、地面が乾くたびに線を引きなおし、それなりの頻度でこの場を使っているという事。岩場の頂上に作られている事を考えると、文字通り後に引けない環境での試合が行われているのかもしれない。
 ▼ 128 ガクチート@ライトストーン 18/06/11 22:27:12 ID:dGvkJJZU [5/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
予想外の光景に二匹は目を輝かせ、ここでどんなバトルが行われているのだろうかと思いを馳せる。落ちてしまえば最低でも大怪我は免れないフィールドだ、落下対策はされているだろうとはいえ、相当な緊張感を必要とする戦闘が繰り広げられているに違いない。

しかしそれも束の間、闘技場を進んで反対側を覗き込んだルカリオは短く声を上げた。

ルカリオ「ミミロップちゃん、村がある」

ミミロップ「え、村?」

ルカリオ「まぁ村っていうと語弊があるかもだけど……誰か住んでそう」

手招きをするルカリオのもとへ急ぎ、ミミロップも岩場の反対側を覗き込んでみた。

ミミロップ「あれって、家?」

ルカリオ「みたいだね」

ここからでは満足に様子を窺うことはできないが、生い茂る木々の隙間から一軒屋と思われる建造物の屋根が見えた。その更に奥の方にも、木で作られた人工物が僅かに見える。

もしかしたら誰かが住んでいるのかもしれない。ただ、それがポケモンである保障はどこにもない。人間、それもハンターのような悪い人間が逗留している可能性も充分にあるのだ。

ルカリオ「無闇に行かない方がいいな。人間でも住んでたら大変だ」

声「人間って? あそこは僕のうちだよ」

ミミロップ「きゃ」

ルカリオ「!?」

急に後ろから声が聞こえ、二匹は身構えつつ慌てて振り返る。直後に攻撃がとんでくる事を覚悟したが、果たして身に危険は及んでおらず、声をかけてきたであろう誰かを確認する余裕ができた。

緑色の身体に赤いカバー、可愛らしい羽が特徴の砂の精霊。

ルカミミ「フライゴン!?」

フライゴン「え、あ、うん、僕の事知ってるの?」

相手が誰か判明したところで、再度構えなおす二匹。しかし、物々しい態度を取る二匹に対し、フライゴンは困惑したようにルカリオとミミロップを交互に見て両手をわたわたさせている。
 ▼ 129 マズン@ボーマンダナイト 18/06/11 22:27:13 ID:PSEEdGLg NGネーム登録 NGID登録 報告
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 ▼ 130 ニプッチ@マッハじてんしゃ 18/06/11 22:28:11 ID:dGvkJJZU [6/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルカリオ「……黒く、ないな」

ミミロップ「奇妙な感じもしないわね……」

フライゴン「黒だって? 料理を焦がす事はあっても、自分の身体は焦がしたりしないなぁ……」

ルカリオとミミロップは臨戦態勢をとっているというのに、フライゴンは一切それを気にする事無く、それどころか全身隙を晒してうんうんうなり始めた。

彼らがトキワの森で戦ったフライゴンとは似ても似つかない、本来のフライゴンの姿がそこにある。性格こそそれぞれ様々だが、今目の前にいる彼の姿は誰がどう見ても、ほとんどの人間やポケモンがその名を聞いて想像できる「フライゴン」そのものだ。

ルカリオ「別固体、だよな」

ミミロップ「まぁ、普通に考えてそうよね……」

思わず身構えてしまった二匹だが、彼のあまりに間抜けな姿に完全に毒気を抜かれてしまった。それも彼の作戦かと一瞬だけ思ったが、波動で感じ取った感触として彼に全く敵意がない事から、ルカリオは杞憂を反省した。

ルカリオ「いや、すまない。以前、色々あってね」

フライゴン「ふ〜ん。まぁ生きてれば色々あるよねぇ……それで、君達は僕の料理を食べにきてくれたの?」

ルカリオ「は、料理?」

フライゴン「あれ、違うんだ、残念……」

今度はがっくりとうなだれて見せるフライゴン。全く見えない話に、ルカリオ達はぽかんとする他無い。

ミミロップ「料理って?」

フライゴン「僕ね、そこの家で料理店やってるんだ!」

美しい羽音を立て、嬉しそうに話すフライゴン。ここまでほとんど生物反応を感じず不気味とさえ思って森を歩いてきただけに、陽気な彼の存在は一層異質に思えた。

しかし、敵意を感じないという事は、少なくとも悪いポケモンではないのだろう。もしかすると、この岩場を境に反対側はポケモン達で溢れているのかもしれない。
 ▼ 131 バニア@マゴのみ 18/06/11 22:29:45 ID:dGvkJJZU [7/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルカリオ「色々と訊きたい事があるんだが……」

フライゴン「あ、それね、僕も訊きたい。二匹は、どこから来たの?」

ミミロップ「どこって、遠い地方からだけど」

フライゴン「う〜んそれもだけど、そうじゃなくてさ。もしかして、もしかしてだけど、こっちの方から来たりとか、してないよね?」

そう言ってフライゴンは反対側を指差した。その崖の向こうは、ルカリオ達が歩いて辿り着いた場所。大きな川が傍に流れる、広い草原地帯だ。

ルカリオ「そこから来たよ」

フライゴン「え、う、うそ。ほんとに!? 大丈夫だった? 何も無かった?」

フライゴンの質問に答えた途端、彼は血相を変えてルカリオの両肩を掴んで揺らす。あまりの急変っぷりに、流石の二匹も困惑を隠せない。

ミミロップ「ねえ、どうしてそんなに慌ててるの?」

フライゴン「そりゃ慌てもするよ! だってあそこは、あそこは……!」

声「おい、フライゴン。こんな所で何をしている」

フライゴン「ひっ!」

ふと大きな気を感じ目を向けると、いつからそこにいたのか、バンギラスが二匹のメタングを連れて少し離れた所に立っている。

先ほどまでは気配を一切感じさせなかったというのに、声が聞こえたかと思えば直後には非常に強い威圧感が伝わってきた。

バンギラス「君達は……客人か」

ルカリオ「あー、えっと、ここを目指してやってきたわけじゃないんだけど……」

おそらくここは彼らの縄張りなのだろう。険悪なムードとなる前に、ルカリオは事情を説明しようと口を開いた。
 ▼ 132 イプ:ヌル@りゅうのウロコ 18/06/11 22:31:19 ID:dGvkJJZU [8/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
バンギラス「話はわかった。だが、川の方は我々の縄張りではない。修行だろうと何だろうと、好きにすればいい」

ルカリオ「そうか」

バンギラス「しかしこちら側は我々の縄張りだ。だが……そうだな、荒らしたりしないのであれば、歓迎しよう」

彼は意外にも肯定的な返答をくれた。ホウエンの温暖な気候がそうさせるのか、一般的に気性が荒いとされるバンギラスもここでは大人しいのかもしれない。

バンギラス「縄張りの主は俺だ。何かあるなら、話してくれればいい。くれぐれも住人達の日常を壊してくれるなよ?」

ルカリオ「それは勿論。俺達はただ修行ができればそれでいい」

バンギラス「そうか、ならば自由に出入りしてくれてかまわない。フライゴン」

フライゴン「は、はい!」

バンギラス「何か料理でも振舞って差し上げろ」

フライゴン「!!」

バンギラスはフライゴンの肩をぽんぽんと二度叩き、巨体を揺らして岩場を降りていった。よく見れば彼らの縄張り側には長い岩の階段があり、彼らはそこから上ってきたようだった。

バンギラス達が去った後をずっと眺めているフライゴン。その状態のまま動く様子がないので、ルカリオ達の方から話を進めることにした。

ルカリオ「えっと、じゃあ俺達はそこの下使わせてもらうから……」

フライゴン「え! あ、えっと、その……とりあえずうちに食べにきなよ! それがいいよ!」

フライゴンはルカリオの声にびくっと身体を震わせ、彼らの後ろへ回り込み背中をぐいぐい押し始める。ルカリオ達が川の方から来たと聞いてからというもの、フライゴンはずっと挙動不審だ。

一体彼は何をそこまで気にしているのだろう? 気になるところではあるが、落ち着いて話すためにも、ひとまずは彼の料理店とやらに足を運ぶ事にした。
 ▼ 133 リトドン@ライボルトナイト 18/06/11 23:01:01 ID:XWdMXR6c [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援!
 ▼ 134 ダンギル@あさせのかいがら 18/06/12 01:57:47 ID:BsjcfOIY NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 135 コロモリ@ドリームボール 18/06/12 16:40:39 ID:BgfwBMjI [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
めっちゃ面白い
支援
 ▼ 136 オル@キーのみ 18/06/12 22:29:39 ID:2Ny.QZrk [1/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
フライゴン「はい、おまちどー!」

木の実と牛肉のグリルステーキや新鮮な野菜サラダに加え、チキンパエリアや鶏肉の香草パイ包みといったお洒落な料理が所狭しと並び、テーブルを盛り上げていく。まるでパーティや飲み会でも開こうかという豪勢ぶりに、二匹は驚かずにはいられない。

ルカリオ「すごいな……」

想像をはるかに上回る豪華な饗膳に視線を奪われながら、口内を満たしていく唾液を咽喉の奥へと送り込む。ルカリオは彩り鮮やかなそれらから漂う香りに、今すぐにでもかぶりつきたい衝動に駆られていた。

フライゴン「デザートもあるし、遠慮なく食べてね」

ミミロップ「美味しそう! でもこんなに食べられるかしら……」

フライゴン「へへ、大丈夫、僕も食べるから」

粗方作り終えたのだろう、フライゴンは彼らの前の席に座る。調理中もそうであったが、こうして目を輝かせて目の前の料理を眺めている彼に挙動不審の影は一切見えない。

フライゴン「それじゃ、いただきまーす!」

フライゴンの合掌を合図に、二匹も彼の料理を食べ始めた。

ルカリオ「なんだこれ、めっちゃくちゃうまい」

ミミロップ「ほんと、おいしい!」

フライゴン「そう? ありがと!」

彼の料理はどれも言葉では言い表せない程美味なものだった。メニューこそ人間の作るそれらと似ているが、味付けはどれもポケモンの味覚に合うよう調整されているらしい、一口食べればどんどんと食が進み、舌鼓を打たずにはいられない。

話すなら、今だろうか。自分の作った料理を美味しそうにほお張るフライゴンは、とても上機嫌に見えた。

ルカリオ「それで、川のある方に何かあるのか?」

フライゴン「ぶふっ!」

ミミロップ「きゃ、ちょっともう!」

フライゴン「むぐぐ、ご、ごめん……」

随分とご機嫌だったフライゴンだが、話を持ち出すと様子を急変させる。楽しそうに笑っていた目が泳ぎ始め、若干だが呼吸も荒くなっていた。

あまり触れて欲しくない話題なのかもしれないと思いつつも、修行場所として選んでいる以上何か問題があるのなら知っておきたい。そう思い、ルカリオは二の句を次がず、彼の言葉を待つ。ミミロップもルカリオの様子を見て察し、黙ってフライゴンを見る。

フライゴンは噴き出してしまったものを紙でふき取り暫くはじっと押し黙っていたが、やがて意を決したように小さく息を吐き、コップの水を一気に飲み干した。
 ▼ 137 ーケン@やすらぎのすず 18/06/12 22:31:20 ID:2Ny.QZrk [2/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
西日がトウカの森を茜色に染めていく。柔らかく穏やかだった森の表情もどこへやら、黄昏時を迎える頃には郷愁を思わせる寂寥感が顔を覗かせていた。

フライゴンの料理店では、店内を照らす灯りが煌々と輝いている。大きな岩場が傍で幅を利かせている事もあり、彼らの住まう集落では一層早い時間から厚い闇が訪れるようだった。

長い沈黙に、やはり訊いてはまずかっただろうかとルカリオは言葉を挟もうとしたが、重なるようにフライゴンが重い口を開き言葉を紡ぎ始めた。

フライゴン「向こう側から来たっていうなら、奇妙な感じしたでしょ?」

それは、森の中にポケモンの気配が感じられなかった事を言っているのだろうか。返答を期待しているわけではなかったのだろう、フライゴンは彼らの返事を待たず言葉を続ける。

フライゴン「あの広場になってる草原、そしてあの広い川……あそこにはね、水竜様が棲んでるんだ」

ミミロップ「水竜様……?」

フライゴン「うん。とにかく大きくて、強くて……すごいんだ」

それを話すフライゴンの表情はお世辞にも明るいものとはいえない。様付けで呼ぶという事はそれなりに敬意を払うべき相手と思われるが、どうにもその様子は見られない。むしろ、その存在に怯えているのではないかとさえ思える。

フライゴン「どこから話したもんかな……うーん、ほら、この家といい料理といい一部のポケモン達といい、ここって全然野生的じゃないでしょ?」

ルカリオ「そうだな」

トキワの森で遭遇したものとは全く違う、どちらかといえばルカリオ達の普段の生活に似た環境がここにはある。この縄張りでは、少なくとも野生動物達の生存競争のような生々しい空気は今のところ感じられない。

とはいえ他のポケモン達の様子を見ていないため、あくまで現時点では、だが。

フライゴン「僕たち一部のポケモンはね、元は人間と生きてたポケモンなんだ。親となるトレーナーがいて、ってやつ」

ルカリオ「それはもしや……」

親トレーナーと聞いて、すぐにサンダースの事が思い浮かんだ。だが、ルカリオが目を細めたのと対照的に、フライゴンは困ったような笑みを浮かべていた。

フライゴン「捨てられたとかじゃないよ。僕達はね、ここでその人間と暮らしてた。でも……」

フライゴン「五年前くらいに、事故で死んじゃったんだ」

俯いて表情に影を落とすフライゴン。彼は、良い人間とめぐり合えていたようで、その分悲しみも大きいようだった。
 ▼ 138 ースター@ゴーゴーゴーグル 18/06/12 22:33:30 ID:2Ny.QZrk [3/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
人間とポケモン。この世界では、切っても切れない関係。人間はポケモンをパートナー、あるいは仲間として迎え入れ、ポケモンは親となった人間のために戦う。それが当たり前、それが世間の常識。

その関係を、主従と表す者もいれば友達と言う者もいる。お互いに言葉を交わす事はできずとも、双方の間には強い絆が生まれる。勿論、サンダースのように正反対の感情が生まれてしまう事も少なくは無いのかもしれないが。

良い出会いもあれば、悪い出会いもある。フライゴンは幸いにも、出会いそのものに悩まされる事はなかったようだ。

フライゴン「その名残で、僕達は人間みたいな生活をしてるんだよね。暫くここに棲んでたし。まぁ、元からここに住んでるポケモン達とは、今でもあんまり仲良くないけど……」

人間と生活を共にしたポケモンは野生のポケモンと相容れない事があると、ルカリオ達も聞いた事があった。日々の暮らしが全く異なる事から価値観の相違が生まれ、相手の思考が理解できなかったりそもそも毛嫌いしたりしてしまうのだとか。

フライゴンも例外に漏れないようだが、バンギラスとは言葉を交わしていたし、ここで生活する事ができているという事は少なくとも彼にとってそこまで深刻な問題ではないのかもしれない。そう納得し、ルカリオ達は言葉を挟まず彼の言葉の続きを待った。

フライゴン「それでね、水竜様の事なんだけど……水竜様っていうのは、僕達がつけた名前なんだよね。昔はそんなのいなかったんだけど、いつ頃からかあの川にいつくようになって、それで……」

フライゴン「近寄るポケモン達を、食い殺してしまうようになったんだ」

苦悶の表情を浮かべて話すフライゴン。トキワの森では生命を脅かす存在として畏怖されていたというのに、場所が変われば立場が逆転してしまい、ここでは生命の危機に怯えるか弱いポケモンでしかない。

当たり前のこと、最初からわかっていたこと。人間のそれに似た生活を送っているとはいえ、人の手を離れたポケモンはやはり野生的な脅威と戦っていかなければならないのだ。

そういえばと、ルカリオは思い出す。反対側に初めて辿り着いた時、彼らは白骨化したポケモンの遺体を見つけていた。今にして思えば、あれは水竜と呼ばれる何者かがそこにいたポケモンを襲った跡なのかもしれない。

ルカリオ「つまり、その水竜様とやらがいるから、あちら側は危なくて近寄れないと」

フライゴン「そういうこと。だから僕達も、あっち側には行かない事にしてる」

ミミロップ「それであの辺にはポケモンがいなかったのね……」

ルカリオ「みたいだね。でも、水竜にも出会わなかった」

フライゴン「眠ってたのかも。あいつは、ポケモンの気配がしたり物音がしたりすると姿を現すからね」

察するに、いわゆる化け物のような存在なのだろう。一体どんなポケモンなのだろうか。そもそも、ポケモンなのだろうか。姿を見た事が無い二匹にとって、全くぴんと来ない話だった。
 ▼ 139 ョロネコ@ふっかつそう 18/06/12 22:34:44 ID:2Ny.QZrk [4/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルカリオ「事情はまぁ、わかった」

ウインディ達の時は、縄張りの一部を修行場所として使わせてもらう事を条件に、彼らの脅威と戦った。しかし、今回はそういった話にはなっておらず、この集落の暮らしを脅かさないのであればそれだけで歓迎してもらえる状況。

困っているポケモン達を見過ごすのは気が引けるが、反面、自分達の目標から考えればできるだけ面倒ごとには首を突っ込まないようにしたいという本音もある。目に付いたもの全てに手を貸していてはキリがない。

ミミロップ「……変な訊き方かもだけど、その水竜様ってのには困ってるの?」

同じ事を考えているのだろう、ミミロップはルカリオよりも先に核心部分を尋ねた。

フライゴン「困って、か……」

一瞬だけ、フライゴンが何かを期待するようにルカリオ達を見た。

が、すぐに視線を落として目を閉じる。そして頭に浮かんだ何かを否定するように首を小さく二度、三度振り、再びルカリオ達の方を見た。

その表情は、驚くほどに冷静なものだった。

フライゴン「とにかく、あっちは危険って事が言いたかったんだ。修行するような場所なら『こっち側』にもたくさんあるし、あっちには近づかない方がいいよ」

フライゴンは話をそう締めくくると、「食べよ食べよ」と言って食事を再開する。

彼の態度からして何か話すのを諦めた事は明白だが、ルカリオもミミロップもそれを訊き出すには至らなかった。彼らには彼らの暮らしがある。安易に関わるのは本意ではない……そう思うことにした。
 ▼ 140 ノプス@ものしりメガネ 18/06/12 22:36:37 ID:2Ny.QZrk [5/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




ルカリオ達がフライゴンの料理店を出る頃には、辺りはすっかり真っ暗になっていた。

フライゴンはせめて今日くらいうちに泊まっていってと持ちかけてくれたが、こういう穏やかな暮らしから離れて修行をすると決めた以上、それに甘えるわけにはいかない。丁重にお断りを入れ、彼の言う「こっち側」の岩場へ向かう事にした。

ミミロップ「……皆、水竜に襲われたりしてるのかな」

ルカリオ「どうだろう。ただ、この辺りは荒らされた様子もないし、こっち側には来ないのかもしれない」

ミミロップ「あっちに行けないってだけかな? でも行かないといけない用事なんて無いだろうし、やっぱり何も無いのかも」

ルカリオ「だといいけど……」

それにしても、フライゴンの反応は常軌を逸していた。こっち側にいれば被害に遭う事が無いのなら、あそこまで過剰に反応する必要があるだろうか?

しかし、仮に何かあったからといって、関わり合いにならなければいけない道理は無い。すべては、自然界の中で起きること。そこに進んで手を入れるという事は、自然の掟を破る事と同義なのだ。

ルカリオ「この辺りは良い感じそうだね」

ミミロップ「トレーニングは明日から?」

ルカリオ「そうだね、今日は軽い運動だけにしよう。カントー大会での反省もあるし、その辺りを話し合うということで」

ミミロップ「そうね……その後は、激しい運動、しないの?」

ルカリオ「う……」

艶かしい視線を送ってくるミミロップ。ルカリオは慌てて視線を逸らすも、彼女とのあれこれを意識してしまい早速胸が高鳴り始めていた。

だが、それも束の間、二匹は突如感じた強い気配に神経を尖らせる事になる。
 ▼ 141 ワルン@ローラースケート 18/06/12 22:37:44 ID:2Ny.QZrk [6/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミミロップ「何これ……」

ルカリオ「わからない……でも、ちょっとヤバい感じする」

それは、何か生物の気配。ただその存在感があまりに強く、おどろおどろしい。

ミミロップ「ねえ、上なんか明るくない?」

ルカリオ「明るいね……炎か電気タイプでもいるのかな。それとも、戦ってる?」

ミミロップ「闘技場あったしね。どうする? 行ってみる?」

???「止めといた方がいいぞ」

様子を窺うべきかと考えていると、茂みの方から声がした。どうも、彼らは何かを考えていたり行おうとしている瞬間に声をかけられる事が多い。

ルカリオ「お前は……ジュカイン?」

ジュカイン「あれ、俺の事知ってるのか?」

ルカリオ「あ、いや、名前を知ってるってだけだ」

ジュカイン「そっか」

ガサガサと茂みをかき分けルカリオ達の前に姿を現したジュカインは短く返事をすると、岩場の頂上を睨みつけるように目を細めた。

ミミロップ「上で何が起きてるの?」

ジュカイン「お前らは……お客さんってやつか。なら、知らない方がいい」

ルカリオ「どういうことだ?」

ジュカイン「あのな、それを説明したら意味ないだろ」

それもそうだと、ルカリオは黙ってしまった。

しかし、これだけ強い気配を感じては、気にしないでいる方が難しい。ルカリオはミミロップに目で合図し彼女が頷いたのを確認すると、面倒ごとに巻き込まれるのを覚悟しつつジュカインに質問を重ねた。
 ▼ 142 フーライ@やみのいし 18/06/12 22:38:48 ID:2Ny.QZrk [7/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルカリオ「上で誰かが戦ってるのか?」

ジュカイン「知らない方がいいって言ったろ」

ミミロップ「こんな気配感じて気にするなって方が難しいわよ」

鋭い目をして思った事を素直にぶつけるミミロップ。気の強い♀に耐性がないのだろうか、それに対しジュカインは少したじろぎ、言葉を詰まらせた。

ジュカイン「し、知りたいのなら教えてやってもいいけど……たく、あいつみたいな目しやがって……俺は忠告したからな」

ジュカインは苦い顔をしてため息を吐き、ちょこんと岩場に腰を下ろす。見かけによらず、ちょっと臆病な性格のようだった。

ジュカイン「この大きな気配は……水竜様だよ。で、今上ではバトルしてるやつがいる」

ルカリオ「まさか水竜とバトルしてるのか?」

ジュカイン「あーあー、そうじゃない。水竜様はこの向こう側にいて、上でバトルしてるのは別のやつらだ。今日が、その日なんだ……」

ジュカインはちらちと上を見て、すぐにまた顔を伏せた。そして、ぎゅっと目を閉じて首を大きく横に振る。

ジュカイン「……落ちるのは、ライボルトだろうな」

ミミロップ「落ちる?」

ジュカイン「ああ……あの上から落ちるんだ」

ルカリオ「……それ、大怪我しないか?」

ジュカイン「それで済めば儲けモンさ」

ジュカインはハッと短く息を吐き捨て、怒りと苦痛が入り混じったような表情を浮かべる。

ジュカイン「落ちたら死ぬよ、水竜様に食われてね」
 ▼ 143 ニノコ@とけないこおり 18/06/12 22:45:00 ID:ELIgBp3. NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 144 イケンキ@フエンせんべい 18/06/12 23:16:02 ID:BgfwBMjI [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
俺の相棒のライボルトが…!
支援!
 ▼ 145 ジロック@フィラのみ 18/06/14 00:45:48 ID:0KRw7qFA [1/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルカリオ「どういうことだ?」

ジュカイン「だから食われるんだよ。反対側に落ちたら大怪我をして動けない。その隙に水竜様がやってきて、食われるんだ」

ミミロップ「えっと、落ちてきたポケモンを餌として狙ってるって事?」

ジュカイン「うーん、そうだけど、そうじゃないっていうか……狙わせてる、って言う方が正しいな……」

ジュカインはいよいよ辛い顔をして頭を抱えてしまった。

顔を見合わせるルカリオとミミロップ。わけがわからない、というより、浮かんできた想像があまりに残酷で言葉にしたくないといった様子だ。

だが、トキワの森でも精神の強さを見せてくれたミミロップ、今回もルカリオより先に話の核心をジュカインに尋ね始めた。

ミミロップ「つまり、バトルで負けたら落とされて、水竜に食べられるってこと?」

ジュカイン「……まぁ、そういうこと」

あまりにはっきりと話してくるミミロップに若干驚きつつ、ジュカインは顔を上げた。

ジュカイン「この辺はさ……高い岩に囲まれてるんだ。昔はそれこそ、外敵の侵入してこない楽園みたいな場所だった。けど、よそ者が入り込んできてからは、事情が変わってしまった」

ルカリオ「人間のことか?」

ジュカイン「いや……」

ジュカインは何かを思いとどまるように目を閉じる。が、すぐに意を決したように瞼を開き、ルカリオ達の方を向いてはっきりと言った。

ジュカイン「バンギラス達だよ」

ガラガラガラ ドシャッ!

唐突に、何かが転がり落ちる音が聞こえた。

ルカリオ「!」

ミミロップ「な、何?」

ジュカイン「ああ、あああ……あああああ……」
 ▼ 146 クロム@フーディナイト 18/06/14 00:46:34 ID:0KRw7qFA [2/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
何かが落ちたと思った次の瞬間、感じていた強い気配が一層存在感を増す。しかし、それ以上何も物音は聞こえず、ただただ静寂が辺りを支配している。

ジュカインは怯えたように身体を震わせ、両手で頭を抱えて蹲っている。上を見れば、先ほどまで明るかった岩場の頂上は暗闇に覆われていた。

ジュカインの話から考えれば、勝負に負けた誰か……おそらくライボルトが、岩場の反対側に落ちたのだろう。となれば、次に起こるのは……

ルカリオ「ん……何だ、この音?」

ミミロップ「気持ち悪い……」

まるで何かがずるずると地面を這いずり回るような音が、かすかにだが聞こえてきた。しかしそれは砂利や石が動く何かにこすれて出る音ではなく、強い粘性を持った何かを周囲に撒き散らしているような音。もしも巨大なナメクジが存在するとしたら、きっとこのような音を立てて歩みを進めるに違いない。

ぎゅっとルカリオに抱きつくミミロップ。聴覚の優れた彼女には、より一層その音が聞こえているに違いない。

ルカリオ「これが、水竜……?」

岩場のどこかに穴でも開いているのだろうか、奇妙な音は次第に大きくなっていき、耳をすまさずともはっきり聞き取れる程度にまでなった。それに比例し、感じる気配も強くなっていく。

波動の感覚でわかる、水竜様と呼ばれる奇妙な存在が、今ちょうどこの岩場を隔てた向こう側に、いる。

ルカリオ「あまり大きくはないようだが……」

ミミロップ「そうなの?」

ルカリオ「波動で読み取った限りでは、だけど……」

いつの間にか奇妙な音は止んでいる。ジュカインの話から考えれば、今まさに、水竜が反対側へ落ちたポケモンを捕食している最中なのかもしれない。叫び声などが聞こえない事を考えると、落ちてしまったポケモンはその衝撃で気絶、あるいは絶命してしまったのだろう。

比較的穏やかな生活を送る事ができる地域かと思っていた二匹だが、何て事は無い、ここでもやはり野生のポケモン達による独自の生存競争がありありと繰り広げられていた。
 ▼ 147 スブレロ@エレキブースター 18/06/14 00:47:57 ID:0KRw7qFA [3/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
数分が経過しただろうか、奇妙な音が再び鳴り響き、やがて聞こえなくなる。その間、誰一匹として言葉を発する者はいなかった。

ルカリオ達にとっては、突然の出来事。それも、バトルに負けたら水竜に食われて死ぬ、という非常に残酷なもの。どこか作為的なものを感じずにはいられない事態に、ルカリオは不快な表情を浮かべた。

ミミロップ「ねえ」

ジュカイン「…………なんだよ」

ミミロップ「これってつまり、生死をかけた戦いをこの上でやってるって事よね?」

ジュカイン「……そんな良いモンじゃねーよ」

ジュカインは両手を頭から離さず、顔だけ二匹に向けて答える。だが、次の瞬間彼は何かに気づき、勢いよく顔を上げた。

ジュカイン「わ、悪いけど俺が話せるのはこれだけだ。あとは自分で確かめるんだな」

ルカリオ「あ、おい……」

そして慌てた様子でこの場を去ってしまう。急にどうしたのかと思い辺りを見回してみると、丁度岩場の上から降りてくるポケモンが遠目で確認できた。

ルカリオ「メタグロスか……」

ふわりと空中を浮遊しながら森へ降りてくるメタグロス。彼はこちらに気がつくこと無く、地面付近まで降りてくると森の向こうへと姿を消していった。

おそらく、上で戦っていたのだろう。ジュカインの話から考えると、ライボルトとバトルし勝利したのがメタグロスらしい。

ミミロップ「なんか、変な感じになっちゃったね」

ルカリオ「ああ……なんというか、複雑というか……」

一口に野生といっても、その文化や生き方は様々だ。ここに住む彼らにとっておそらくこれは、彼らが倣ってきた文化なのだろう。文字通りの生死をかけた戦い……これもまた、ルカリオ達には馴染みの無いものだった。
 ▼ 148 ミロル@ゴーストメモリ 18/06/14 07:16:57 ID:BQHE5Hwk NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 149 バゴーラ@かいがらのすず 18/06/15 00:42:20 ID:7B1UG47M [1/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



ルカリオ「よし、良い感じ。その調子で、次はこう!」

空が瑠璃色に染まる夜明け前、小鳥達が美しい歌声を聞かせてくれるよりも早い時間から彼らはトレーニングを始めていた。

ミミロップ「ん、対応できてきたかも。じゃあお返しに、これ!」

トキワの時同様ルカリオが半睡状態で周囲を警戒しつつの休息だったが、特に何かが起きる様子も誰かが近づいてくる気配も無く、比較的ゆったりと夜の時間を過ごせた。

そのおかげか、二匹の調子はすこぶる良い。この日は速さと重さ、二匹がお互いの足りない部分を補い合っての訓練を主に行い、調整をかける予定らしい。

ルカリオ「よし……ちょっと休憩入れようか」

ミミロップ「そうね。だいぶ疲れたわ」

二匹とも構えを解き、岩場に腰を下ろす。

ルカリオはカウンター対策を、ミミロップは視覚外からの攻撃対策を、それぞれ主に行っている。お互い手の内を知り尽くした間柄とはいえ、苦手とする攻撃へ即座に対応するのは難しい。頭で理解できていても、その通り身体を動かせるかどうかは別問題だ。

現にこの早朝トレーニングだけでも、お互いがそれぞれの動きについていけない部分が幾つかあった。そしてそれは強豪ひしめく大会の中では弱点になりうる極めて重要な問題で、可及的早急な対処が必要だ。

ルカリオ「ミミロップちゃんは動きがちょっと単調だと思う。電光石火だけでも、相手に合わせるより超えていくくらいで良さそう」

ミミロップ「確かに、後手に回っちゃいがちなのよねぇ……速度勝負に持ち込まれた時の動きをもっと考えた方がいいわね」

ルカリオ「俺はどんなだった?」

ミミロップ「ルカリオはやっぱり攻撃が軽すぎるわ。特に、インファイトを軽く打ちすぎてると思う。だから、これっていうキメ技がないわよね」

ルカリオ「だよね。うーん、俺としてはインファイトを軽めに使っていきたいんだけど、そうするとここぞって時の大技がないよねやっぱり……」

お互い思った事を直に言い合い、噛み砕いて呑み込んでいく。

簡単な事のようで、その実とても難しい。だが愛という強く硬い絆で結ばれた二匹にそってそれは単なる日常のひとかけらでしかなく、多少厳しい物言いになろうとも負の感情は一切生まれない。

お互いを認め合い、信じ合っているからこそできる芸当だ。
 ▼ 150 ワシ@ブレイズカセット 18/06/15 00:42:52 ID:7B1UG47M [2/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




それから暫くお互いに悪い点を指摘し合い、調整を行っていく。二匹がトレーニングに一区切りをつけ食事の宛を探し始める頃には、太陽の光が空高くから森を暖かく包み込んでいた。

木の実でも探そうと森を歩く二匹。フライゴン達の住む辺りや水竜とやらが住む川とは正反対の方へ宛も無く向かっていると、ちょっとした洞窟になっている所の入り口にラグラージの姿を見つけた。

ルカリオ「あれは……」

バンギラスの縄張りに住んでいるポケモンだろうか、話しかけようとすると、それよりも先に後ろから誰かに声をかけられた。

ジュカイン「今は話しかけない方がいい」

ルカリオ「ん」

果たしてそれはジュカインだった。少し離れた所で自慢の尻尾を小さく揺らし、目を細めてラグラージの後姿を見つめている。

ルカリオ達がここへ来る前からいたのだろう、彼の周りにはかじった木の実のヘタがいくつか散らばっていた。

ミミロップ「知り合いなの?」

ジュカイン「まぁ、そんな感じ」

ジュカインはラグラージから視線を逸らさない。ラグラージはジュカインに見られていることを知っているのかいないのか、自身の後ろの事など一切気にする様子を見せず何かに没頭している。

何かに集中しているのなら邪魔するのも悪い、そう思いルカリオは代わりにジュカインに話しかけた。

ルカリオ「……ジュカインは、元からここに住んでたのか? それとも、人間と一緒にここへ?」

ジュカイン「人間と? あぁ、フライゴン達のことか……元からここに住んでるよ。俺も、向こうのあいつも」

ジュカインは顎でラグラージの方を差した。だが、やはりルカリオ達の方は向かない。

ジュカイン「お前達、フライゴンにも会ってるのか。まぁあいつが何を言ったのかは知らないが、今ここに住んでる中で人間と暮らしてたのはあいつとトロピウスくらいのもんだ。他はもう、みんな死んじまったよ」

ルカリオ「そうなのか……」

きっと、トレーナーが生きていた頃には沢山のポケモンが周りにいたのだろう。残された当時の仲間がもう一匹だけになった彼は、とても寂しい思いをしているのだろう。
 ▼ 151 ガアブソル@タンガのみ 18/06/15 00:43:28 ID:7B1UG47M [3/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ジュカイン「……お前達、あんまりフライゴンの言うこと、信用しない方がいいぞ」

ルカリオ「どういう意味だ?」

しかし、フライゴンについてジュカインは良い印象を持っているわけではないようだった。フライゴンも、元々ここに住んでいた者達とはあまり仲良く無いと言っていた事を、ルカリオは思い出す。

ジュカイン「人間は信用できない。別にあいつに恨みがあるわけじゃないけど、俺達と全く違う生き方をするやつらは考え方が違うだろう」

ならば自分達も信用されてないのか、という言葉をルカリオは呑み込んだ。

訊かずともわかる、当然信用されていないだろう。急に現れたよそ者を信じろという方が、無理がある。

ミミロップ「でも、悪そうなポケモンには見えないけど」

ジュカイン「どうかな。フライゴンはバンギラスとも仲が良いからね。そもそもあいつが、俺は嫌いだ」

ルカリオ「……昨日もバンギラスの事を言いかけてたな」

ジュカイン「…………忘れてくれ」

しまったとばかりにジュカインは頬を引きつらせて軽く舌打ちをした。

何か確執があるのだろうか、どうもジュカインは集落の長であるバンギラスの事が気に入らないらしい。バンギラスの事を話す彼の表情はお世辞にも晴れやかとは言えない。

彼はバンギラスの事を、よそ者、と言っていた。つまり、バンギラスも後からここへやってきたポケモンなのだろう。それを思えば、納得はできる。要は、ジュカインはよそ者があまり得意では無い、という事だ。

ジュカイン「……昨日の事、訊かないんだな」

ルカリオ「訊いてほしかったか?」

ジュカイン「ちっ、意地悪な言い方すんなよな。聞いて不快になるだろうから、俺は黙ってようと思ったんだぜ」

ルカリオ「あ、いや、すまない。ただまぁ……何が起きていたのかはわかった」

ジュカイン「そうか……まぁ、あの場にお前達がいた時点で、隠そうったって無理な話だよな」
 ▼ 152 ランテス@スチールメモリ 18/06/15 00:44:03 ID:7B1UG47M [4/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミミロップ「あれは……」

ふと、強めの風が吹き木々が演舞を披露する。すると彼らに遮られていた太陽の光が洞窟の方へ差し込み、ラグラージの前に置かれているそれを明るく照らした。

ルカリオ「骨か……」

ジュカイン「……そう。それも、生贄にされたやつらのな」

生贄という言葉をジュカインは使った。それが何を意味するのか、二匹は深く考えずともすぐに思い当たる。

昨晩岩場の上で行われていた、命をかけたバトル。水竜という畏怖された存在によって命を奪われた者の、現世に遺す数少ない存在証明。

ラグラージは、水竜の被害に遭ったポケモン達の骨を集めているようだ。

ジュカイン「不気味だろ? でも、悪く思わないでくれよな。あれでもあいつにとっちゃ、罪滅ぼしみたいなもんなんだ」

ルカリオ「罪滅ぼし?」

ジュカイン「っ……まぁ、そう、罪滅ぼし。これは俺達の、罪滅ぼしなんだ」

ジュカインは再びしまったというような顔をし咽喉を鳴らしたが、失言の撤回は難しいだろうと考えたのか大きく息を吐いてルカリオ達を見た。

ジュカイン「水竜様の話は、お前達知ってるみたいだししなくていいよな。昨日俺、当たり前のように話したけど、お前達訊き返してこなかったし……で本題だけど、この集落には掟があって、定期的に昨日みたいな事をしなくちゃいけないんだ」

ミミロップ「それって、生死をかけたバトル?」

ジュカイン「ああ。もうわかってると思うけど、この集落じゃ定期的に水竜様に命を捧げなけりゃいけないことになってるんだ。誰かが一匹、必ず犠牲になる」

ルカリオ「それで生贄か……」

人身御供、という今では廃れた言葉をルカリオは聞いた事があった。

自然であったり神格的なものに対して人身を捧げる事で、災害の発生防止を祈願するというもの。今となっては荒唐無稽でただただ愚かな行為であると一般的に認知されているが、この文化は形を変えて今でも残っている地域があるのだという。

特に、人やポケモンによって作為的に引き起こされる災害に対しては、物や命を以って発生を回避する事があるのだとか。この集落で行われている水竜への生贄も、おそらく何かの発生を防ぐために行われているのだろう。

ジュカイン「俺と、あいつはな、本来生贄になるはずだったやつを……こっそり逃がした事があるんだ」

ミミロップ「逃がした……?」

ジュカイン「ああ。詳しい事は話せないけどな。だから、他の死んでいったやつらに申し訳が立たなくて、骨を埋めて供養する事にしたんだ。俺も、別な形で色々やってる」

ルカリオ「そうだったのか」

彼の強い罪悪感がそうさせているのだろう、それを話すジュカインはとても辛そうな目をしている。

これまで見てきた、バトルで負けてしまったポケモン達のことを思い出しているのだろうか、ジュカインはルカリオ達を見ているようで、どこか遠い別の場所を眺めているようだった。
 ▼ 153 メイル@エレベータのカギ 18/06/15 03:14:28 ID:bZtIdn6I NGネーム登録 NGID登録 報告
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 ▼ 154 テラ@ピッピにんぎょう 18/06/15 21:24:44 ID:7B1UG47M [5/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ジュカイン「お前達は、よそ者だろ? なら、この件に関わらない方がいい」

ルカリオ「まぁ……俺達としても、正直関わるつもりはない。どんな事がそこで行われていようとも、本来外からやってきた者がそこに口出しなんてできるもんじゃないからな……」

ジュカイン「ああ、そうだ。それがいいよ」

生贄という残酷な文化が栄えているとはいえ、それはあくまでこの地に長らく伝わってきた風習であり、この地に住む者達の抱える問題だ。同じ親トレーナーの元で起きた事なら話が別だが、ここは自然、野生のポケモン達による独自の文化だからこそ、よそ者はそこに介入すべきではない。

基本的には、だが。

ジュカイン「それはそうと、お前達強そうだな。修行って言ってたし、何かしてるのか?」

ミミロップ「(あれ……?)」

ルカリオ「格闘技の大会があるんだけど、それに出るために特訓してるんだ」

ジュカイン「そんな大会があるのか、面白そうだなぁ。そういうの、出てみたいな」

それを言うジュカインの言葉は軽やかなものだが、表情は相変わらず辛く厳しいまま。面白そうと口にはしているものの、自分達には縁が無いものだと思い込んでいるようだ。

ミミロップ「……ここを出たりとかは、できないの?」

ミミロップの言葉に、ジュカインは視線を伏せる。

ジュカイン「やってやれない事は、きっとないんだろうな……だけど」

声「故郷なんだ」

ジュカインの言葉の続きを、別の誰かが重い声で引き継いだ。彼らの言う罪滅ぼしが一区切りついたのだろう、近くまでラグラージがやってきていた。

ラグラージ「ここはおいら達の生まれた場所、育った場所、思い出が沢山詰まった場所。だから、誰もここから出ることを選ばないんだよ」

ルカリオ「いつか、自分が生贄になるかもしれないのにか」

ラグラージ「ここで死ねるなら本望ってやつ。勿論進んで死にたいと思ってるポケモンはいないと思うけど、他のどこでもない、この地で起きる事なら仕方ないんだ」

ジュカイン「ふん、何が仕方ないだ……どいつもこいつも、この地のために死ねるならとか、それでこの地の平穏が続くなら、とか抜かしてやがる」

ラグラージ「そうだね。けど、彼らは本気だ。流れに逆らって見知らぬ地を彷徨うより、ここで死ぬ事を選ぶんだ」

ジュカイン「…………わかんねぇよ」
 ▼ 155 ブソル@エレベータのキー 18/06/15 21:25:18 ID:7B1UG47M [6/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ぽつ、と雨が降り始めた。

ルカリオはミミロップを抱き寄せ、近くの木の下へ移動する。ジュカインとラグラージは沈黙したまま、その場を動かない。

ジュカインは心なしかラグラージを睨んでいるようにも見える。おそらく同じ目的でここへ来ている二匹でも、考え方は少し違うのだろう。

ラグラージ「……おいらはもう帰るよ」

ジュカイン「……そうかい」

ラグラージの言葉にジュカインは表情を一切変えずぽつりと呟く。ラグラージは残念そうな顔をしてジュカインを見たが、すぐに顔を伏せ、そのまま森の奥へと歩いて行った。

ジュカイン「……俺達は、あいつの事が好きだったんだ」

ラグラージの姿が見えなくなるまで、なんとなく見送る二匹。その後ジュカインの方に視線を移すと、彼はぼんやりと空を見上げていた。

ミミロップ「あいつっていうのは……」

ジュカイン「懐かしいなぁ、今どこで何してるんだろうなぁ」

彼はルカリオ達に話しているわけではないようだった。やり場の無い思いを言葉にして、どこにいるともわからない相手に向けて話し掛けているようだった。

ジュカイン「もしもあの子が内気だったら……もしも俺達にもっと勇気があったら……」

彼の顔を、幾つもの水滴が滑り降りていく。雨だろうか、それとも彼の涙だろうか、彼の複雑な表情からではそれを判別する事はできそうになかった。
 ▼ 156 レセリア@とんでもこやし 18/06/15 21:26:18 ID:7B1UG47M [7/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




それからというもの雨は勢いを増し、ルカリオ達の予定を狂わせる。まさか土砂降りに見舞われるとは思っておらず、洞窟内や室内で行える簡単なトレーニングメニューを消化するにとどまってしまった。

それでもある程度はそれぞれの目標とする所の対策を考え動く事で、少しずつではあるが自身の弱点を克服できるようになっていた。少なくとも、一度仕掛けられた攻撃を再度まともに受けるなんて失態をおかさない程度には。

フライゴン「お疲れお疲れ。今日は軽めの食事にしてみたよ!」

ルカリオ「なんだかすまないな」

ミミロップ「食方面の体調管理が満足にできるなんて、本当にありがたいわね」

この日も夕飯はフライゴンの所でご馳走になる事となった。最初は遠慮していたのだが、彼がどうしてもと言うのでお言葉に甘える事にしたのだ。

料理店をしている事もあり、彼は料理を誰かに振舞うことに喜びを感じているようだった。人間といた時も、他のポケモン達にこうやって料理を披露していたのだろうか。料理を並べる彼の顔はただただ笑顔である。

ルカリオ「(人間か……)」

フライゴンの話では以前ここには人間が住んでいたらしい。この家もおそらくはその人間が作ったものなのだろう。

その人間がいる間も、生贄の風習はあったのだろうか、という疑問がふとルカリオの頭に浮かんできた。

ジュカインの言葉もある。ルカリオは、フライゴンやこの集落について色々と訊いてみたくなった。

ルカリオ「フライゴンは、ずっと前からここにいるんだったな」

フライゴン「ん〜? そうだよ。でも、僕たちは人間とここにやってきたから、よそ者って言えばよそ者なのかなぁ」

ルカリオ「ジュカインたちは、もっと前からいるんだよな」

フライゴン「ジュカインか……」

ルカリオ「うん?」

フライゴン「え?……あぁ、たぶんそうだと思うよ。僕が彼らと接点持つようになったのは親トレーナーが死んじゃってからだし、そもそもそんなに話とかしないからその辺よくわからないんだよね」

フライゴンは顎に人差し指を当てて大袈裟に考え込む動作をする。

フライゴンとしてもやはりジュカイン達とはやりにくいのだろうか、話し終えた後彼は静かに目を伏せた。
 ▼ 157 マンボウ@くろいヘドロ 18/06/15 21:27:26 ID:7B1UG47M [8/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルカリオ「変な事を訊くようだけど……その人間がいた頃も、水竜に生贄を捧げなきゃいけなかったのか?」

フライゴン「ん……生贄の事、誰かから聞いちゃったんだ」

ルカリオが「まぁ」と返事をしようと口を開くか開かないかの瞬間に、フライゴンは片手を前に突き出した。

フライゴン「あー、別に誰に聞いたとか言わなくていいよ。だって、うん、誰が話してもおかしくないだろうし……」

ミミロップ「誰が話してもおかしくないって、どういうこと? どっちかというと、話しにくそうにしてたけど……」

ルカリオ「気分の良い話じゃないからと、気を遣われてたみたいだった」

フライゴン「気をかぁ……うーんまぁ、それは確かにそうなんだろうね……でも、生贄って言い方するって事は、色々聞いたんだよねきっと……」

フライゴンは目を閉じて深く息を吐く。いつもの陽気な雰囲気が薄れていき、次に彼が言葉を発した時には物悲しい空気が場を支配し始めていた。

フライゴン「皆ね、表じゃここでの風習の事隠そうとするけど、本当は誰かに話したいんだよ。自分達が受けてる苦痛とか、理不尽とか、悲しみとか。だけどそれを話せるのはそれを感じなくて済んでる相手、外から来たポケモンしかいないんだ」

ルカリオ達が色々訊いたからかもしれないが、気を遣ったという割にジュカインは色んな話をしてくれた。ラグラージもジュカインの言葉を遮るでもなく、思っていることを言葉にしてくれた。そしてフライゴンも、ルカリオの問いに色々と答えてくれた。

人もポケモンも、辛いときにはそれを誰かに聞いてもらいたいと思うもの。そうしないでおこうと決めていても、本当は話したくて仕方が無い、そんな心情になるのかもしれない。

フライゴン「それで、質問の答えだけど……その頃は、生贄どころか、水竜様さえここにはいなかったよ」

ルカリオ「いなかった?」

フライゴン「うん。水竜様がここに現れたのは……三年前の、ある嵐の日だった」

フライゴンはルカリオたちから視線を逸らし、天井を見上げた。

フライゴン「思えばその嵐も水竜様の起こしたものだったのかもね……ある日水竜様が現れて、雨を降らせるようになった。その雨は三日三晩続いたんだけど、物凄い勢いでね。棲家はぐちゃぐちゃになって、沢山のポケモンが流された」

フライゴン「多くのポケモンが死んだんだ。僕達は水竜様の存在を恐れ、なんとか災害を起こさないでもらえるようお願いした……」

ルカリオ「それが生贄……」

ジュカインの話と合致する。この集落では、水竜に生贄を捧げると言う形で災害を回避しようとする風習が今も根強く残っているのだ。

フライゴン「そう、生贄」

フライゴンは辛そうな顔をルカリオ達に向け、頷いた。
 ▼ 158 ブネーク@ネストボール 18/06/15 21:29:11 ID:7B1UG47M [9/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミミロップ「でも……よく生贄を捧げるなんて事に決まったわね」

フライゴン「僕が言ったって言わないでほしいんだけど……決めたのはバンギラス達だよ」

そういえばジュカインもバンギラスの事を話していたと思い出す。

彼の話ではバンギラスは後からやってきたよそ者らしいが……急に外から来た者が生贄などというとんでもない提案を行い、しかもそれがまかり通るなんて、普通では考えられない。

もしかしてそこに何かあるのでは、なんて考えが脳裏を過ぎる。縄張りに入れてもらっておいてこういう事を考えるのは恩知らずと罵られそうだが、それとこれとは話が別である。

そして、ルカリオがそれを訊くより先に、やはりミミロップが口を開いた。

ミミロップ「じゃあバンギラスが全部仕組んだんじゃないの?」

それなりに濁して話そうと言葉を選んでいたルカリオだが、ミミロップはこうもはっきり物を言う。ある意味非常に心強いのだが、そのうち変な誤解など招かないかとルカリオは少し心配になった。

フライゴン「それは……どうなんだろう。僕からはなんとも言えないよ……」

ルカリオ「だとしたら酷い話だが……」

全ては初めから仕組まれていた、とでも言うのだろうか。もしこれが本当であるなら、この地に住まう者達はバンギラスによって完全に支配された事になる。状況を打開する提案がとんでもないものだったとはいえ、住民達からしたら多くの命を奪った天災を彼は止めた、いわば英雄なのだ。

しかしそれは単なる妄想に過ぎない。元々気性が荒く悪タイプを持ったポケモンとはいえ、イメージで悪者にされたのではたまったものではないだろう。理由についてもこれといって何か思い当たるわけでもない。二匹は勝手な妄言を反省した。

ミミロップ「でも、ここを出ようと思えば別に出られるわけでしょ? その、思い入れがあるとか色々あるのかもしれないけど」

フライゴン「どうなんだろ? 少なくとも僕は出ようと思わないな……」

ルカリオ「訊いていいのかわからないが……どうしてだ?」

フライゴンはやや陽気さを取り戻したように笑ってみせる。だがその笑みは、ルカリオ達には無理しているようにしか見えなかった。

フライゴン「僕は、弟や妹をここで待ってなきゃいけない。あの子達が帰ってきたとき僕がいなかったら、って思うとね」

ミミロップ「身内がいるのね。でも、ここにはいないわよね……」

フライゴン「……うん。ちょっとね、別な場所にいるんだ。僕は……彼女を守れなかったから。だから、今度こそは、弟達だけは……」

フライゴンは何かを誤魔化すように視線を迷わせ、最後に窓の方を向く。
 ▼ 159 ワシ@すくすくこやし 18/06/15 21:31:08 ID:7B1UG47M [10/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
フライゴン「雨が、強くなってきたね」

ルカリオ「ああ。おかげでトレーニングが進まなかった」

フライゴン「君達強そうだもんね……僕なんかより、ずっと。僕も、君達みたいに強かったら、力があれば……」

もう何度目だろうか、フライゴンは大きく息を吐いて顔を伏せた。

彼もジュカイン達のように、今も生きながらえている事に対して多少なりの罪悪感があるのだろう。

この集落は、多くのポケモン達の犠牲により成り立っていると言っていい。どういった方法で生贄が選ばれているかはわからないが、選ばれなかった者達は死んでいったポケモン達の屍の上に立っている。何も気にするな、という方が無理な話だ。

ルカリオ「俺達だってそんな力があるわけじゃないさ……それに、仲間を失う辛さなら、俺もわかる」

ミミロップ「うん……そうね」

フライゴン「……君達も、辛い事があったんだね」

ルカリオ「昔の話だけどね。俺なんかよりずっと強い修行仲間がいたんだけど、そいつはさ、『誰かを傷つけるために腕を磨いてるわけじゃない』とか言って身に着けた力を使おうとしなかった」

ルカリオ「どんなに危険な目に遭っても、沢山のポケモンに襲われても……最期まで力を振るわなかった。信念を貫いたんだ」

フライゴン「……死んじゃったの?」

ルカリオ「ああ……愛する者の青山を守るため、あいつはたった一匹で手も出さずに大衆と戦った。その時俺は、そこから退いていたんだ。あいつが残ってたなんて、気づかなかった……後悔してもしきれん」

ルカリオは右の拳を強く握る。彼の修行仲間は自らの信念に基づいて行動し、運命を全うした。彼がルカリオを恨んだりしている事は無いだろうが、それでもルカリオは自分が赦せないでいる。

ルカリオ「でも……だから、俺は俺の信念を貫く事にした。自分なりの目的を持って、修行したりして、ミミロップちゃんと愛し合って……少なくとも、自分に恥じないように生きる事にした」

フライゴン「自分に、恥じないように……?」

ルカリオ「あ、勿論好き勝手に生きるって意味じゃないぞ? 何かあっても、たとえそれで不幸な目に遭うとしても……自分が、本当に、それで正しいと思ったのならその道を選ぶって事だ」

ミミロップ「私が、ルカリオと一生添い遂げると決めたようにね!」

ルカリオ「えへへ、俺も同じ気持ち」

ぎゅっと肩を抱き合う二匹。フライゴンはそんな二匹を、なんとも言えない顔でじっと見ている。
 ▼ 160 ーメイル@ルビー 18/06/15 21:32:46 ID:7B1UG47M [11/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルカリオ「すまん、自分語りになってしまったな……」

フライゴン「あ、ううん、全然いいよ。お話聞けてよかった」

勿論、ルカリオとて「自分がそうだからお前も」などと言うつもりはない。フライゴンもそれをわかって聞いていたからか、それ以上何も言わなかった。

ミミロップ「あ、そうだ。トロピウスも、トレーナーと一緒にいたポケモンなんだって?」

フライゴン「ん、彼の事も聞いたんだ。そうだよ、トロピウス君も僕と一緒にここへ来たポケモンさ」

暗い話から、明るい話へ。辛い話ばかり続けていても仕方が無いと、ミミロップは話題を変える。

ルカリオ「トロピウスは、ここにはいないのか?」

フライゴン「うん。彼は森の中をいつも飛び回ってる。何せ、彼は甘い果物や木の実が大好きだからね」

一説によれば、トロピウスは甘い果物などを食べてばかりいたため咽喉元にその果物が生り始めたのだとか。なんとも不思議な生態である。

フライゴン「森を歩いていればそのうち会えると思うよ。会えたら、よろしく言っておいてくれると嬉しいな」

ミミロップ「あんまり会わないの?」

フライゴン「うん……彼は、一番トレーナーに懐いていたからね。死に別れたショックからまだ立ち直れないんだと思う……」

思い出の詰まった場所というのは、悲劇が起きればたちどころにその性質を変えてしまう。思い出が深ければ深い程、それを直視する事ができなくなってしまうのだ。

フライゴン「ご飯冷めちゃった。温められるものは温めなおしてくるね」

フライゴンは二匹から見てもわかるくらいの作り笑いを浮かべ、皿を適当に持ち厨房の方へ引っ込んでしまう。トロピウスの話で何かを思い出してしまったのだろうか、話題を変えるつもりが、結局彼を悲しませてしまった。
 ▼ 161 ンバス@ふしぎなアメ 18/06/15 22:25:24 ID:Cu12oWgs NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
そういや今日キツネとウサギの映画金ローでやってるな
 ▼ 162 エンジシ@パイルのみ 18/06/16 03:10:52 ID:0hnAteQo NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 163 シマリ@カロスエンブレム 18/06/16 05:16:49 ID:TDIMT46A NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 164 メックス@イトケのみ 18/06/16 23:18:55 ID:BbPArxj. [1/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




その夜は、強い雨が全く止む気配を見せないこともあり、二匹はフライゴンの提案を受け入れ店で一泊させてもらう事にした。

雨風を凌ぐ事も修行のうちではあるが、大会を前に体調を崩しては意味が無い。そう判断し、夕飯に引き続き彼の言葉に甘える事を決めた。

空いている部屋を使わせてもらい、早めに床に入る。しかし荒れた天気のせいかなかなか寝付けず、二匹はぼんやりと天井を見つめていた。

ミミロップ「雨、止まないわね」

ルカリオ「ああ」

ガタガタと雨風で窓が音を立てている。まるで嵐のような天気に、二匹は辟易せざるをえない。

ミミロップ「……ねえ、変な事言っていい?」

ルカリオ「変な事……なに?」

ミミロップ「ジュカインのことなんだけど……」

ルカリオ「えっ、あいつがなにさ」

彼女から突然他の♂の名前が出た事に少しムッとするルカリオ。これから焼餅を焼かねばならない話になるわけではないとわかってはいるが、ちょっとした事でも嫉妬心が芽生えて拗ねたような態度をとってしまう。

そんな彼の事をよく理解しているミミロップは小声で「ばかね」と呟き小さく笑みを零した。

ミミロップ「ほら、今日会った時、修行の話したでしょ?」

ルカリオ「したね」

ミミロップ「不思議だったんだけど、どうして彼は私達が修行してるって事知ってたのかしら。私達からは話してないわよね?」

ルカリオ「そういやそうだな……」

ジュカインとは、昨日の夜初めて会った。確かにルカリオ達は昨日あの場所を修行場所に選びそこで夜を明かしたわけだが、昨日は特別何かをしたわけではない。
 ▼ 165 ーナイト@しろいハーブ 18/06/16 23:20:02 ID:BbPArxj. [2/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルカリオ「今朝のを見かけたのかもしれない」

ミミロップ「確かにトレーニングはしてたけど、あれを見て修行って思う?」

ルカリオ「どうだろ……誰かに聞いたのかもね。誰かって言っても、フライゴンかバンギラスしかいないけど……」

ミミロップ「あんまり仲良さそうには見えないけど……まぁ、別に何でもいいんだけどさ」

ジュカインが修行の話を知っていたからといって何かがあるわけではない。ただ、自分達の知らない所で自分達に関する情報が出回っているのだとしたら、それはあまり気持ちの良い話ではない。

ルカリオ「急に現れたよそ者の話なんて、すぐに広まるんじゃない? 噂なんてそんなもんでしょ。特に、♀のミミロップちゃんならよくわかるんじゃない?」

ミミロップ「ま、まぁね」

♀の情報網は怖ろしい……これはどうやら、人間でもポケモンでも同じのようだ。自覚があるのか、ミミロップは焦ったように視線を泳がせる。

ミミロップ「でも……正直、どうする?」

ルカリオ「あー……まぁ、それは考えた方がいいよねやっぱり」

満足な食事ができる宛があるとはいえ、この集落は一般的な野生環境とはまた違った特殊な問題を抱えていて、どうにも過ごしづらい部分を二匹は正直感じている。

彼らの事情など一切かまわず修行を続ければよいのだが、周囲で起きる様々を無視し通す自信が彼らにはなかった。現に、ここへ来て既に複数のポケモンから風習についての話を聞いてしまっている。

純粋に大会のことだけを考えるのなら、この集落を離れ新たに修行場所を探した方が賢明だろう。少しでも気になる事が身近にあれば、それだけで集中力を乱してしまう恐れもある。

ルカリオ「……明日は今日やった調整の復習をしたいし、明後日ここを出ようか」

ミミロップ「うん、わかった」

漫画やゲームなんかの場合、こういう時はこの集落で起きる色々を解決したりするのだろう。しかし、彼らはそれらの主人公でもヒーローでもない。ここのポケモン達を放っておけないという意思も当然あるが、それを強制されるいわれは当然無い。

とはいえ、ここで彼らが去ったとしてそれを悪く言う者はいないだろう。二匹はあくまでよそ者で、ただの客人なのだから。
 ▼ 166 ンボラー@クリティカット 18/06/16 23:20:51 ID:BbPArxj. [3/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




バンギラス「嵐か……」

集落の最奥、大きな岩山の洞窟でバンギラスは流れる暗雲をじっと睨みつけていた。

降りしきる雨、止まない風音。これは紛れも無い嵐。そしてそれは、彼らにある出来事を彷彿とさせる。

バンギラス「今回は二件目が必要か……? どこまで貪欲な神だというのだ」

バンギラスは苛立ちを隠そうともせず、近くにあった岩の塊を握りつぶした。破片が八方に飛んでいき、がらがらと音を立てて転がっていく。

バンギラス「……フライゴンを呼んでこい。今すぐに、だ」

メタング「…………」

いつからそこにいたのか、バンギラスのすぐ後ろでメタングが頷く。彼は大雨の中濡れる事も厭わず、すぐに洞窟を出て指定された目的地へ向かった。

それを、難しい表情で見送るバンギラス。

バンギラス「生贄か……我ながら、残酷な制度を考え付いたものだ……」


 ▼ 167 マタナ@こだいのおまもり 18/06/17 22:41:39 ID:M4bQEk4U [1/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




翌日になっても天気が回復する事は無く、横殴りの雨が森全体を激しく襲う。

こんな環境の中外を出歩くものなど誰もいない。ルカリオ達とて流石にこの中で修行を行おうとは思わず、この日も不本意ながら休息日となってしまった。

だが、こんな雨の中、身体をびしょぬれに濡らしながら飛んでいる者、一匹。

フライゴン「はわあああああ!!」

彼は大急ぎで店内に滑り込み、床が濡れる事も厭わずその場に崩れ落ち、肩で息をした。

ルカリオ「いないと思ったら外に出てたのか……」

ミミロップ「無茶しすぎでしょ。そんなに急用だったの?」

フライゴン「え、ま、まぁ、そんな、ところ……」

息を切らしながらフライゴンはゴソゴソと何かを取り出した。

ミミロップ「木の実?」

フライゴン「う、うん。ちょっとお昼に、君達に特性のジュースを作ろうと思ってね」

ルカリオ「俺達のことなんて気にしてくれなくてもいいのに」

ミミロップ「そうよ、なにもこんな嵐の中出かけなくても」

フライゴン「へへ、まぁ、いいじゃん。さ、お昼作るね」

フライゴンは不適な笑みを浮かべて、よたよたと厨房へ歩いて行く。濡れているせいもあってか、足取りが覚束ない。

ミミロップ「……大丈夫かしら」

ルカリオ「具合悪くしてないといいけど……」

しかし、遠慮した所で彼は料理する事を止めないだろう。料理をする事は彼にとって日々の楽しみであり、生きがいなのだ。

フライゴン「よい、しょっと……」

器具によっては扱いになれていないものもあるのだろうか、フライゴンはたどたどしい手つきで木の実をミキサーにかけていく。グラニュー糖などで味を調整し、やがてコップ二杯分のジュースが出来上がった。
 ▼ 168 ワライド@ダイブボール 18/06/17 22:42:07 ID:M4bQEk4U [2/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
フライゴン「……できた」

ミキサーからコップにジュースを移し、それらを両手で持つフライゴン。身体は拭いたものの雨に濡れて寒気がするのだろうか、彼の肩や手が震えている。

ミミロップ「それは何の木の実のジュースなの?」

フライゴン「え!? あ、これはね、なんだっけ……甘いやつ。そう、甘いやつ」

ミミロップ「モモンとか?」

フライゴン「うんそう、そんな感じ。は、はいこれ」

ことん、と覚束ない手つきでテーブルに二つのコップを置くフライゴン。やはり具合が悪そうだ。

ルカリオ「なぁ、本当に俺達のことは気にしなくていいから、休んできなよ」

ミミロップ「それがいいと思う。さっきからフラフラよ?」

ルカリオ「弟や妹を待つんだろ? こんなとこで風邪なんて引いてる場合じゃないぞ」

フライゴン「あ……」

ミミロップ「そうそう。急に帰ってきた時に風邪なんてひいてたら、心配させちゃうわよ? だから、今は休んだ方がいいわ」

フライゴン「うん…………っ、そうする」

フライゴンはばつが悪そうに視線を伏せる。それから少しの間黙って地面を見つめていたが、小さく息を吐いたと思うと、彼は「ごめんね」と呟き、ゆっくりと踵を返して奥の部屋へ引っ込んだ。

ミミロップ「ほんとに大丈夫かしら」

ルカリオ「風邪程度で済めばいいが……何かあったら大変だ」

フライゴンを心配しつつ、作ってくれたジュースに口をつける二匹。

ミミロップ「あ、美味しいこれ」

ルカリオ「ほんとだ。甘さが丁度良い感じで、舌触りも……いい……」

ジュースが美味だと思った次の瞬間、彼らは身に異変を感じた。

ミミロップ「あれ、ルカリオ、どうし、たの……」

ルカリオ「これは……まさ、か……眠り…………」

ゴトン、とコップが床に落ちる音。続けて、ドサリと身体が倒れる音。そして……

フライゴン「…………」

奥の部屋のドアが開く。

フライゴン「っく、ぐす、ごめんね、ぐす、ごめんね……」

フライゴンは涙ながらに小さくそう呟き、床で眠ってしまったルカリオ達を肩に担いだ。
 ▼ 169 ガスピアー@エルレイドナイト 18/06/17 22:42:31 ID:M4bQEk4U [3/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




ラグラージ「ジュカイン……」

ジュカイン「……なんだ、お前か」

ラグラージ「この雨、もしかして……」

ジュカイン「……わかんねぇ。けど、この様子だと、また生贄が必要になるんじゃないかな」

ラグラージ「そう……」

ジュカイン「まるであの時みたいだ……このまま雨が強くなり続けたら、また……」

ラグラージ「……もう、誰が落ちるのか決まったのかな」

ジュカイン「知らねぇよ」

ラグラージ「でも……たぶん、ここに来てたポケモン達、だよね」

ジュカイン「……だろうな。前のときも、そうだったし」

ラグラージ「だけどあの子達は、関係ないのに……あんまりだよ」

ジュカイン「っ! んなことわかってるよ! でも、じゃあどうするんだよ。もうあの手は使えない。俺達には、どうする事もできない……」

ラグラージ「……おいら達は非力だ。悲劇が起きるとわかってても、どうにもできない」

ジュカイン「あいつら……悪いやつらじゃ、なさそうだった……でも……」

ジュカイン「怖いんだ……助けてやりたいけど、そんな事をしたら俺達だって殺される……あいつにも、もう会えなくなる……」

ラグラージ「うん……そうやって、今までずっとおいら達は震えてきたんだ……もう、今更だよ。けど」

ラグラージ「……こんなとき、バシャーモならどうしたかな」

 ▼ 170 ブカス@コンテストパス 18/06/17 22:43:17 ID:M4bQEk4U [4/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告





外は相変わらず雨風が強く吹き荒れており、ほんの目の前の景色さえまともに見る事ができない。

ただどういうわけか嵐を引き起こしている雨雲は高度が低く、多少の雨風や雷はあるものの、バトルフィールドとなっている岩場の頂上はほとんど影響を受けていなかった。

バンギラス「…………」

その頂上の一角に、彼は座していた。腕を組み目を閉じて、誰かが来るのをじっと待っている。

バンギラス「……随分とゆっくりだったな」

僅かも動く事なくその場に座り込んでいた彼だが、びしょぬれになってここまで上がってきた何者かの気配を感じ、立ち上がる。

彼が視線を向ければ、そこにはフライゴンの姿。

フライゴンは身体中に滴る雨の水を払う事さえせず、バンギラスに鋭い視線を向けている。その様子を見て状況を呑み込んだのか、バンギラスは大きなため息を吐いた。

バンギラス「……生贄はどうした」

フライゴン「……彼らは、関係ないポケモン達です」

バンギラス「そうだな。今更どうした。これまで何度もそういう事はあっただろう。それに、そうでもしなければ身内から犠牲が出る。お前がその対象になるかもしれないんだぞ?」

フライゴン「わかってます」

バンギラス「なら何故ヤツらを連れてこなかった? 全くわかっちゃいないではないか。もしお前が生贄に選ばれたなら、弟や妹はどうする。見捨てるのか?」

フライゴン「こんな僕じゃ、あわせる顔がないんだ。生贄を選ぶ手引きなんてしてる僕じゃ……」

バンギラス「生きるためだ。生きるために必要な事を、我々はしているに過ぎない。ある種の弱肉強食、それがここの掟だ。さあ、今すぐ生贄を、客人二匹を連れてくるんだ」

フライゴン「……もう、あんたの言いなりにはならない」

バンギラス「フライゴン」

フライゴン「ルカリオが言ってた。自分に恥じないように生きてるって。仲間を失っても、後悔してても、彼は前を向いて生きてる」

バンギラス「それは事情が違うからだ。彼とて、我々と同じ状況になれば同じ道を辿るさ」

フライゴン「僕はそうは思わない」
 ▼ 171 メノデス@ヘラクロスナイト 18/06/17 22:44:23 ID:M4bQEk4U [5/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
バンギラス「だったらどうしたと言うのだ。何にせよ、生贄は必要だ。できる事なら、身内からは出さないようにしたいと思うのは当然の事だろう」

なんで、どうしてこんな事になるんだろう。

誰がこんな運命にしたんだろう。

フライゴン「そもそも、生贄なんていない方がいいに決まってる」

バンギラス「あの日から三年も続けてきた事だ、今更バカを言うな!! 生贄が途絶えれば災厄が再び起きる、それくらいわかるだろう!!」

フライゴン「もし力があったなら、誰にも負けない強さがあったなら……」

弱い自分でなかったなら、こんな事にはならなかったのかもしれない。

バンギラス「耄碌したかフライゴン。確かに、そんな力があればそもそも問題は起きていない。本元を叩けば良い。だが現実はどうだ? 水竜にも災厄にも勝つことはできない。お前の言う通り、我々は弱者なのだ。弱いから、従うしかないのだ」

それじゃあつまり、自分のせい?

誰かに虐げられて、逆らえなくて、言いなりになるしかない、そんな惨めな自分だから……?

フライゴン「……力が欲しい」

バンギラス「お前には無理だ。チルタリスさえ救えなかったお前に、何ができる」

フライゴン「そうさ……僕は、守れなかった……だから、だから……」

誰かを守るための、大切なポケモンを守るための、力が欲しい。

バンギラス「……もういい。度重なる罪の意識で壊れてしまったか。お前は使い勝手がよかったのだが……仕方が無い」

フライゴン「力があれば、きっと、きっと……」

バンギラス「今回の生贄はお前だ、フライゴン。くだらない正義感と共に食われるがいい。力の無いお前に、非力なお前に、お似合いの最期だ」

バンギラスが太い腕を振り上げる。同時に雷鳴が轟き、バンギラスの冷徹な顔を映し出した。

震えが止まらない。もう自分は死ぬんだと思うと、呼吸をする事もままならない。だが身体は動いてくれない。ぼんやりと、バンギラスが持ち上げた腕を自分に向けて振り下ろす所を眺めている事しかできない。

だが、彼は言いたい事を言った。これまで胸のうちに秘めてきた事を、言葉にせず我慢してきた事を、彼はバンギラスにぶつけた。そうしたいと思ったから、これ以上自分に嘘を吐き続ける事はできないと思ったから。

フライゴン「僕は、僕は……!」

バンギラス「力のある者が勝つ。力があるから、上に立てる。力が無ければ……わかるな?」

バンギラスの繰り出す重い一撃が、フライゴン目掛けて放たれた。
 ▼ 172 ャモメ@ありふれたいし 18/06/17 22:45:45 ID:.GL.FWR2 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
バンギがいいやつであってほしい
支援
 ▼ 173 ラカッチ@グラスメモリ 18/06/17 23:40:23 ID:A4DEO50c NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 174 イコウオ@ちからのこな 18/06/17 23:53:38 ID:kUwkdA2s NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
(絵)力が欲しい

支援です
 ▼ 175 援する男◆zoKrwsYAsI 18/06/18 00:55:32 ID:3IOwVOTo NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
メガシエンネ
 ▼ 176 メテテ@アゴのカセキ 18/06/18 09:27:35 ID:MpaER45A NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 177 ソクムシャ@ツメのカセキ 18/06/18 10:01:26 ID:OmdUyL.s NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 178 ータス@ピーピーエイド 18/06/18 23:01:44 ID:QRU25TXk [1/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




――――話は三年前に遡る。



フライゴン「チルタリスさん! ほらこれ、美味しそうな木の実見つけたよ」

チルタリス「あらあら、また泥だらけになってきたの? そんなに汚れちゃって」

フライゴン「そっちはどうでもいいよ。それより、木の実木の実。何か作るよ!」

チルタリス「木の実は嬉しいけど、私としてはいつか怪我しないかって心配だわ」

ここはトウカの森の奥地、大きな岩場に囲まれた美しい草原地帯。柔らかい日差し、涼しいそよ風、元気良く走り回るポケモン達……誰が見ても平穏と思える光景が、そこにはあった。

フライゴンは親であったトレーナーを亡くし悲しみに暮れていたが、弟や妹の面倒を見なければならない事、♀のチルタリスと仲良くなった事などを支えに、新たな生活を始めようとしていた。

チルタリス「ねえ、私にかまわないで、もっと空を飛び回ってていいのよ?」

フライゴン「何言ってるの。僕がここを離れる時は、弟達の面倒を見る時だけだっていつも言ってるじゃん」

チルタリス「それは嬉しいけど……」

ひとつ心配事があるとすれば、チルタリスの事だった。

彼女は生まれつき身体が弱く、成長した今でも満足に動き回る事ができない。活動に必要な筋肉が衰えてしまう病気のようで、歩く事も飛ぶ事もできないわけではないが、すぐに身体が痛んでしまい暫く動けなくなってしまう。

フライゴンはそんな彼女の世話を献身的に行い、できるだけ長い時間傍にいるようにしていた。病気だとか不自由だとか、そういった苦難をものともしない、彼の純粋な愛がそこにはあった。

しかしチルタリスは、自分のせいで満足に空を飛ぶ事もできないフライゴンを心配していた。彼女も彼を好きでいる事は確かだが、現状に対して悲観する部分がある事も確かだった。
 ▼ 179 ラップ@きせきのタネ 18/06/18 23:02:10 ID:QRU25TXk [2/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



チルタリスは、この森で生まれ育ったポケモンだった。

人間と共にここへ来たこともあってか森のポケモン達となかなか仲良くなれず困っていたフライゴンにとって、彼女は恋人であると同時に、森と自分を繋ぐ架け橋のような存在だった。

ただ、だからといって森のポケモン達との距離が急速に縮まるわけではない。チルタリス以外では、たまに彼女の元へやってきて話をしているバシャーモくらいしか、話せる相手はできなかった。

むしろ、チルタリスと仲良くなれた事が奇跡のようなものだったのだ。

チルタリス「バシャーモは、誰かいいポケモンいないの?」

バシャーモ「うーん、私はそういうの全くないわ……それに、今はそれより強くなる事を考えたいの」

チルタリス「もう、そんな事ばっかり言ってたら『のうきん』ってやつになっちゃうよ?」

バシャーモ「私のことはいいの。それより、チルタリスはフライゴンとちゃんとうまくいってるの?」

チルタリス「うん……でも、ロクに動けない私じゃ、つまらないんじゃないかなって……」

バシャーモ「そんな事言ってるってバレたら、あの子すごく落ち込むわよ」

チルタリス「わかってる。わかってる、けどね……」

ジュカイン「バシャーモ! あっちに良い感じの花畑があったから行くぞ!」

ラグラージ「いやいや、こっちの木の実畑の方がいいってほんと」

ジュカイン「あ? お花サンのが良いに決まってんだろ?」

ラグラージ「は? お花畑は君の頭の中だけで充分だけど」

バシャーモ「うるさいのが来たわ」

チルタリス「ふふ、楽しそうじゃない。幼馴染、なんだっけ?」

バシャーモ「そう。ほんと、腐れ縁ってやんなっちゃうわ……」

バシャーモ「ほら喧嘩しない。間とって、岩場でトレーニングね。さ、行きましょ」

ジュカラグ「ええええええええ」

チルタリス「あはは……」

フライゴン「……何話してたの?」

チルタリス「あら、フライゴン、来てたの? 入ってくればよかったのに」
 ▼ 180 ルンゲル@おいしいシッポ 18/06/18 23:02:35 ID:QRU25TXk [3/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
フライゴン「うん……でも、僕あいつらに嫌われてるみたいだし」

チルタリス「あいつらって、ジュカイン達?」

フライゴン「そう。僕はよそ者だし、人間といたから……」

チルタリス「まぁ……その辺りの事はどうしても、ね。だけど、仲良くしてくれるといいんだけどなぁ」

フライゴン「うう、努力はしてみるよ……」

チルタリス「ふふ、そうね、お願いね」

フライゴン「わ、わ」

ぎゅっと身体を寄せるチルタリス。この時間が、二匹の幸せの時間。いつまでもこんな時が続けばいいのにと、願わずにはいられない大切な時間。

チルタリス「あ、雨が降ってきた」

フライゴン「ほんとだ。困ったな、向こうの洞窟いこっか」

チルタリス「うん」

チルタリスに肩を貸しゆっくり洞窟まで移動する。日中少し動いていたのだろうか、チルタリスは満足に歩く事ができないようだ。

チルタリス「ねえ……私、重くない? 邪魔じゃない?」

フライゴン「何言ってるの! 邪魔じゃないし、重くもない! そういうこと言わないで」

チルタリス「うん、ごめん……」

やがて二匹は洞窟の入り口にたどり着き、雨が入ってこない辺りに腰を下ろした。

チルタリス「最近雨が多いね」

フライゴン「恵みの雨っていうけど、僕は雨苦手だなぁ……」

チルタリス「私も、まぁあんまり得意ではないかな……得意って何って感じだけど」

フライゴン「だよね、あははっ」
 ▼ 181 マカジ@アイテムドロップ 18/06/18 23:02:59 ID:QRU25TXk [4/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
チルタリス「ねえ、フライゴンは、その……料理、続けないの?」

フライゴン「料理……」

フライゴンは人間と暮らしていた頃、人間の手伝いをよく行っていた。中でも料理の事になると彼は目の色を変え、他の色々を差し置いてでも一生懸命に取り組んだものだ。

いつしかそれが趣味になり、生きがいになり……だけど人間が死んでしまってからは、調理器具に見向きする事すらしなくなってしまった。悲しみが強く辛い思いが勝ってしまい、なかなか手をつけられなかった。

チルタリス「私は料理してた頃のフライゴンを知らないから……正直、フライゴンの作った料理食べてみたい」

フライゴン「チルタリスさん……」

チルタリス「辛いのに、ごめんね、我侭で」

フライゴン「ううん……でも、ちょっと時間が欲しい。まだ、僕の中で整理しきれてないんだ……」

チルタリス「ごめんね……」

フライゴン「あ、謝らないで。大丈夫、きっと大丈夫だから! チルタリスさんのためなら、俺、頑張れる!」

チルタリス「ありがとう」

フライゴン「へへ……それにしても、雨止まないね。移動した方がいいかも」

チルタリス「そうしたいけど、今日はもう、動けないかも……」

フライゴン「そっかぁ……うーん僕だけじゃ流石におぶっていけないしなぁ……何とか向こう側までいけたらいいんだけど」

チルタリスはこんな状態なので、棲家といえる場所がほとんどなかった。毎日安全そうな場所に移動しては、そこを寝床にする不安定な生活を送っている。

だからフライゴンは自分の家に彼女を招待し、できることならそこで一緒に暮らしたいと考えているのだが、どうにもこの高い岩場を越える事ができないため難儀している。

飛んで越える事ができれば一番いいのだが、彼女の状態ではあの高度まで到達する事がまず難しい。途中で力尽きようものなら、地面に向けてまっさかさまである。

大回りすれば岩場を飛び越えずとも反対側へ行く事はできるが、かなりの距離を移動しなければならない。この周辺は平和そのものだが、ここを離れればその限りではなく、どんな危険に晒されるか全く予想もつかないのだ。

チルタリス「無理しなくていいよ。雨はそのうち止むだろうし、体力が回復してきたら自分でもう少し高いところまで動くわ」

フライゴン「うん……」

チルタリス「それより、弟さんたちの所に行ってあげて? きっと寂しがってるわ」

フライゴン「……わかったよ。明日また、来るね」

チルタリス「晴れてたら、いつもの辺りにいるわね」

フライゴン「うん!」
 ▼ 182 ッコウガ@ルームキー 18/06/18 23:03:23 ID:QRU25TXk [5/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




バシャーモ「はっ! やっ! やあっ!」

フライゴンとチルタリスが岩場の洞窟で雨を凌いでいる頃、ホウエン御三家の三匹は岩場の頂上付近でトレーニングを行っていた。

とはいえ実際に身体を動かしているのはバシャーモだけで、ジュカインもラグラージも打ち込みを続けるバシャーモを眺めているだけだが。

ラグラージ「ねえ、もう帰ろうよ。雨強くなってきたよ」

バシャーモ「何言ってるの。この辺はまだ大丈夫だし、もうちょっと頑張れるわよ」

ジュカイン「そんな頑張ってどうすんのさ。お前、俺達より弱いじゃん」

バシャーモ「弱いからよ! 守られる自分は嫌なの」

ラグラージ「そうは言うけどねぇ……♀なんだし、それでいいと思うんだけど」

ジュカイン「そうだぜ。いざとなりゃ俺達が守ってやっからよ!」

バシャーモ「はぁー、紳士な幼馴染さんたちですこと。あんまりバカにしてると、そのうち見返してやるんだからね」

ジュカイン「そんな未来があるといいな」

ラグラージ「うんうん」

バシャーモ「こいつらはバカにしくさってからに……まぁいいわ。今日はそろそろ降りましょ」

ジュカイン「おっ、んじゃ俺んち来いよ。良い木の実が手に入ったんだ」

ラグラージ「ジュカインの家片付いてないしダメじゃん。うちは綺麗にしてるし、ゆっくりできるよ」

ジュカイン「あ?」

ラグラージ「お?」

バシャーモ「はいはい喧嘩しないの。なんでたびたび喧嘩始まるかなぁ」

ジュカラグ「(バシャーモ本気でそれ言ってるからなぁ……鈍感が相手は大変だ)」
 ▼ 183 ライゴン@ぎんのおうかん 18/06/18 23:03:44 ID:QRU25TXk [6/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




フライゴン「ビブラーバ、ナックラー、ご飯できたぞ」

家に帰れば、明るい家庭。妹のビブラーバと弟のナックラーがフライゴンの帰りを待っている。

いつもは木の実で済ませていた夕飯も、この日は久方ぶりに厨房へ入り、なんとか簡単なものを調理する事ができた。親トレーナーとの思い出が蘇り途中包丁を置く場面が何度もあったが、チルタリスの言葉を思い出し、なんとか作りきる事ができた。

ビブラーバ「え、お兄ちゃんご飯作ったの!?」

フライゴン「そうだけど、それがどうかした?」

ビブラーバ「だって……」

フライゴン「……僕も、前に進まなきゃいけないって思ったんだ。いつまでも、過去を見てばかりじゃダメなんだ」

ビブラーバ「はっはーん、お兄ちゃんチルタリスさんに言われたんだね?」

フライゴン「ばっ、違うって! これはだなぁ、僕自身が」

ビブラーバ「隠さなくていーのに。ね〜、ほら食べよ食べよ」

ナックラー「ねー! にーちゃ食べよ!」

フライゴン「たくもう……あーほら、零すなよ? 折角作ったんだから、綺麗に食べてくれよな」

ビブラーバ「いつかチルタリスさんも呼ばないとね〜」

フライゴン「その話はもういいってば!」

ナックラー「よぼ!」

フライゴン「ナックラーまで言わなくていいの!」

フライゴン「たく……」

フライゴン「(でも……近い将来、この家に来てもらいたい。なんとかあの岩場を越えることさえできれば、その時僕は、彼女にプロポーズ、するんだ……!)」
 ▼ 184 援する男◆zoKrwsYAsI 18/06/19 06:20:46 ID:yskcgGXI NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
メガシエンネ
 ▼ 185 ドラン♂@チルタリスナイト 18/06/19 06:44:43 ID:NA8E80KQ NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 186 ゲデマル@たつじんのおび 18/06/19 06:58:56 ID:CmLMId0U NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援!
 ▼ 187 ガライボルト@もりのヨウカン 18/06/20 00:28:57 ID:iPEk/qCk [1/12] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




バシャーモ「雨、やまないわねぇ」

ラグラージ「だね。流石のおいらも、この雨じゃ満足に外も歩けないよ」

ジュカイン「てか雨強くなりすぎじゃね? 嵐かよまったく……」

揉めた結果、三匹はバシャーモの棲家でこの日を過ごす事になった。

棲家と言っても雨風を凌げる簡単なものだが、ここは♀の、それも好意を抱いている幼馴染の家。そんな所で一日を過ごすとあっては、心臓の高鳴りが抑えきれない二匹。

しかしそんな二匹の事など意に介した様子も無く、バシャーモはいつも自分がしている通り、就寝スペースに座り外を眺めている。

ジュカイン「……なあ、バシャーモよう」

バシャーモ「なに?」

ジュカイン「守られる自分が嫌って言ってたけど、何でそんな事思うようになったんだ?」

ラグラージ「それ、おいらも気になる」

バシャーモ「自分の事は自分で何とかしたいから、かな?」

バシャーモ「ほら、私って結構口では色々言うじゃない。けど、いつも言うだけになっちゃうっていうかさ」

ジュカイン「そんなの気にしなくていいのに。文句言うやついたら俺がとっちめるぜ」

ラグラージ「そうだよ。無理して怪我でもしたら大変だ」

バシャーモ「心配はありがたいけど、もう決めたの。強くなって、そうね、あんた達がピンチになった時に助けてあげるわ」

ジュカイン「だっはっは、そりゃいいや、是非お願いするぜ」

ラグラージ「んふっ、ふふ、そうだね、お願いしたいね」

バシャーモ「あんたら本当に今に見てなさいよ……」
 ▼ 188 ラスル@おうじゃのしるし 18/06/20 00:29:45 ID:iPEk/qCk [2/12] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




強い雨が降る日ばかりが続いていたが、晴れた日を見計らってフライゴンはチルタリスを連れて岩場を乗り越えようと画策していた。

岩場の途中に休憩できるポイントを作ろうとしたり、下の方の岩場を切り崩して反対側へ穴を開けようとしてみたり、なんとか上まで担いで飛べないか考えてみたり。だがどれもうまくいかず、状況は難航するばかりだった。

チルタリス「ねえ、やっぱり越えるのは難しいと思うわ」

フライゴン「諦めちゃだめだ。頑張れば、きっとうまくいくさ」

チルタリス「どうしてそんなに色々してくれるの?」

フライゴン「それは……」

フライゴン「チルタリスさん、僕ね、チルタリスさんを僕の家に招待できたら、話したい事があるんだ」

チルタリス「話したい事? 何? 料理のこと?」

フライゴン「へへ、それはうちに来てからのお楽しみ! だからさ、なんとかこの岩、越えよう!」

チルタリス「そうね……そんな楽しみがあるなら、頑張って越えないとね」

フライゴン「うん!……あ、雨」

チルタリス「また雨……この所毎日降るわね」

フライゴン「今日くらいは晴れが続いて欲しかったんだけどなぁ……仕方ない、また洞窟に移動しよ」

チルタリス「ええ、そうし……きゃ!」

フライゴン「チルタリスさん!」

突然、数多の水滴を纏った強風が吹き荒れる。あまりの強さに立っていられなくなったチルタリスはバランスを崩し、岩肌に激突してしまった。

フライゴン「大丈夫!?」

チルタリス「な、なんとか。でも……」

先ほどの風を皮切りに、真っ黒な雲に覆われた空からは大量の水が吐き出され始めていた。同じような強い風も吹きだし、雷まで鳴り始める。先ほどまでは綺麗な晴れ空を見せてくれていたというのに、ものの数秒で嵐と化してしまった。

フライゴン「これはやばいかも……」

チルタリスをかばうように彼女の前に立ち、目を細めるフライゴン。あまりに強い横殴りの雨に、少し先も見えない状態だ。
 ▼ 189 レビィ@スーパーボール 18/06/20 00:30:25 ID:iPEk/qCk [3/12] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
チルタリス「この様子じゃ、あの洞窟にも水が入ってるかも……」

フライゴン「なんてこった……とりあえず、森の方に行こう。あっちならまだマシだと思うし」

チルタリス「うん……」

しかし、大荒れに荒れたこの天気の中を歩くのは非常に危険だ。当然雨風に晒された今の状態のままここにいるわけにもいかないのだが、すぐ先も見えない以上、少し足を取られただけでどうなるかわからず歩き出すだけでも勇気がいる。

フライゴン「ゆっくり行こう」

チルタリス「うん、頑張る」

一歩一歩、足元を確かめながらじっくり歩く。一瞬気を緩めるだけでも命取りとなる状況に、フライゴンもチルタリスも険しい顔を崩せない。

広々とした開放感のあるこの草原も、このときばかりは恨めしく思えた。

フライゴン「ちくしょう、どっちが森かわかんないよ……」

彼らは岩場付近にいたので現在地よりも後ろ側でない事は確かなのだが、草原のすぐ傍には大きな川があるため迂闊に突き進む事はできない。もしも川まで歩いてしまえば、この嵐で氾濫した川の水流に押し流されてしまうかもしれないのだ。

普段は穏やかな川の流れも、この様子では激流となり木や岩など様々なものを押し流しているに違いない。そんな中に巻き込まれてしまえば……助からないのは、自明の理だ。

チルタリス「うっ……いたた……」

フライゴン「だ、大丈夫?」

チルタリス「大丈夫、だけど……」

少しずつ歩いているとはいえ、強風吹き荒れる中を進んでいるのだ、何も無い所を歩くのとはわけが違う。ほんの数メートルしか歩いていなくとも、体力の消耗は何倍も激しい。

チルタリスは、座り込んでしまう事こそなかったが、両足はガクガクと震えており踏み出す一歩も非常に弱々しい。

それでも着実に、少しずつ前に進む二匹。しかし、事態はそんな二匹にとても厳しくなる一方だった。
 ▼ 190 スブレロ@ふしぎなおきもの 18/06/20 00:31:08 ID:iPEk/qCk [4/12] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
フライゴン「うぐっ!!」

チルタリス「ふ、フライゴン!?」

突如として現れた大木の破片に、フライゴンは足を傷つけられた。この強風、大きな木をもなぎ倒しその破片や枝を宙に舞わせているらしい。彼にぶつかったそれはちょっとした岩並の大きさがあり、いかに嵐が激しいかを物語っている。

チルタリス「血が……」

フライゴン「へーき、これくらいなんて事ないって」

飛んできた木は結構な勢いでフライゴンの足にぶつかったものの、大事には至っていないようだった。

ただ、これで新たな危険を認識せざるを得なくなる。森が近づけば近づく程、そこから飛んでくる障害物に気をつけなければならない。今回は足にぶつかった程度で済んだが、より硬いものが顔に飛んできたり、鋭利なものが身体を貫いたりと、命の関わる危険も充分考えられる。

フライゴン「もうちょっと、もうちょっとなんだ。森まで行けば、隠れられる所がいくつか……」

チルタリス「ううっ、っぐ……」

彼らは諦めなかった。

酷い嵐に見舞われようとも、生きるために必死に歩いた。

そして……

フライゴン「森だ!」

目を凝らして見れば、視線の先に多くの木々が猛風で揺らされている光景を確認できた。歩き始めておよそ一時間、なんとか辿り着けたらしい。

チルタリス「森に来ても、危ない事には、変わらないんじゃない?」

フライゴン「大丈夫。良い場所があるんだ、もう少し歩かなきゃだけど、ここまで来れば、そう遠くないから」

森が見えた事で改めて気合を入れなおすフライゴン。

しかし、彼らは気づいていなかった。

辿り着いたその場所は、確かに森の近くではあったのだが、同時に、氾濫した川のすぐ傍であった事に。
 ▼ 191 バルオン@フォーカスレンズ 18/06/20 00:31:45 ID:iPEk/qCk [5/12] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
チルタリス「えっ……?」

フライゴン「うわっ!!」

一瞬の出来事だった。

足元を何かに掬われたと思ったら、次の瞬間には視界が大きく揺らぎ激痛が身体全体を襲った。

突然の事態に彼はチルタリスを支える事はおろか、自分の足すら満足に動かす事ができない。ずっと寄り添っていた彼女の感触もなくなり、ただひたすら何かに身体中を打ち付けられている感覚だけを覚える。

自分が氾濫した川の水に流されたのだと気づいたのは、森の大木に全身を強く打ちつけられてその場に崩れ落ちた時だった。

フライゴン「痛い……う、くそ……」

何かの拍子に大きな波が来ただけだったのだろうか、それ以降氾濫による襲撃は無く、ようやく身体の自由がきくようになった。無論、転がってできた打ち身や切り傷が酷く痛み、起き上がることすら困難な状態ではあるが。

フライゴン「チルタリス、さん……」

だが、どれ程身体が痛もうと、彼は自分に鞭打って身体を動かす。

足がいう事を聞かずぬかるんだ地面に倒れても、腕に力が入らず起き上がろうとして身体が崩れても、彼は諦めず何度も立ち上がろうとした。

自分がこんな状態だ、身体が弱いチルタリスはもっと辛い目に遭ってるに違いない。フライゴンは自分の身体の事などより、彼女の心配だけをしていた。

フライゴン「チルタリスさん……!」

上手く立ち上がれないため、ぬかるみを這うようにして移動する。自慢の羽もぼろぼろになって動かず、尾も全く機能しない。それでも彼は、ありったけの力を使ってチルタリスを探した。

動き始めて数分、相変わらず一寸先すら雨で見えない状態ではあったが、フライゴンはなんとか彼女を見つける事ができた。

チルタリス「ふらい、ごん……」

フライゴン「チルタ……」

彼女を見つけられた事に安心するのも束の間、フライゴンはチルタリスの置かれた状況を目にして言葉を失った。
 ▼ 192 メパト@ドラゴンのホネ 18/06/20 00:32:16 ID:iPEk/qCk [6/12] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
チルタリスもフライゴン同様氾濫した川の激流に流され、森の大木の麓にぶつかったようだった。

しかし、不運にも彼女の被害はそれだけで終わらず、続けて流されてきた大きな木に挟まれ動けなくなってしまっていた。

フライゴン「チルタリスさん!」

フライゴンはなんとか大木を動かそうと手に力を入れるが、ビクともする様子はない。非常に大きく重い木である事は勿論、今のフライゴンの状態では小さな岩さえ持ち上げる力がもう無いのだ。

チルタリス「わたし、もう動けない……動けないよぉ……」

フライゴン「僕がなんとかするから! これさえ、この木さえ何とかできれば……!」

持ち上げようとしたり引っ張ったりするも、木は全く動いてくれない。それどころか、風に煽られミシミシと音を立ててチルタリスを押しつぶそうとしているようにさえ感じる。

フライゴン「この、この、うごけ、うごけよ!!」

出せる限りの力を込めて木を引っ張る。傷口から血が噴き出そうとも、激痛が走ろうとも、手を緩める事無く大木を動かそうと力を込める。

だが、どんなに彼が必死になろうと、木は動かない。

チルタリス「ねえ……フライゴン」

フライゴン「大丈夫、今なんとかするから。少しでも動かせたら、きっと何とかなるから」

チルタリス「聞いて、ほしいの……」

フライゴン「っ、今はいいよ! 後で、ゆっくり聞くから、だから」

彼女が何を言おうとしているのか、彼はそれを察してしまい、彼女の言葉を遮る。

だが、彼女はそれでも話す事をやめない。

チルタリス「こんな嵐じゃ、あなたの弟や妹が、きっと危ないわ……だから、ね? あの子達の所へ、行ってあげて……?」

フライゴン「この状況で何言ってるんだよ! この状況で、状況で……」
 ▼ 193 トツキ@ドラゴンZ 18/06/20 00:33:02 ID:iPEk/qCk [7/12] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
フライゴンは何をしても動いてくれない木を上から殴り始めた。無論、彼の殴打では木の皮が多少めくれるくらいのダメージしか与える事はできず、ヒビすら入れる事はできない。

チルタリス「もう、わかるでしょ……? だから、お願い……」

フライゴン「ううっ、っく、わかるかよ、そんなの……わかんない、わかんないよぉおおおお!!」

木を殴る。

木の皮がめくれ、傷ついた彼の手から流れる血で赤く染まる。

フライゴン「動けよ、動けよ!!!」

何かが折れる音がした。

彼は拳を握る事ができなくなった。

だがそれでも、彼は殴り続けた。

フライゴン「なんで動いてくれないんだよ! 動け、動け!! くそおおおおおおお!!!!」

どれだけ殴ろうとも、彼が何をしようとも、望む結果は得られない。

チルタリス「……私ね、フライゴン。身体が不自由で、毎日不便ばっかりしてて、思った事も、満足にできないような一生、だったけど……」

チルタリス「あなたと出会えて、同じ時を、過ごす事ができて、本当に、幸せだった……」

フライゴン「ううう、うううう……」

チルタリス「私なんかと、いつも、いてくれて……」

チルタリス「ありがとう、ございました」

フライゴン「っ、っぐ、ううう、うう、うああああああああああああああああああ!!!!!」
 ▼ 194 援する男◆zoKrwsYAsI 18/06/20 05:44:50 ID:VFt2PHIY NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
(´;ω;`)ブワッ
 ▼ 195 スキッパ@まんまるいし 18/06/20 06:43:38 ID:3q6QuEEk NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援(T-T)
 ▼ 196 犬ヘルガルガン◆Pk8seEFe8w 18/06/20 22:04:28 ID:iizETojo NGネーム登録 NGID登録 報告
しえん
 ▼ 197 ムナイト@かがやくいし 18/06/20 23:18:26 ID:iPEk/qCk [8/12] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




トウカの森を襲った大嵐は数時間もの間勢力を拡大し続け、多くのポケモン達の命を奪っていった。

雨風が穏やかになる頃には木々やポケモン達の残骸が森のあちこちに転がっており、その嵐がいかに凄惨なものであったかを物語っている。

特に広い草原地帯となっている辺りは、折れた木や飛ばされたポケモン達の遺体が集まり山になっていて見るも無残な状態。所々に生えていた木は飛んできたものにへし折られ、地面のほとんどが抉られてしまい草原など跡形もなくなっていた。

そんな元草原地帯の片隅には、ポケモンが二匹倒れている。そして、その彼らを見下ろす者がいた。

バンギラス「……まだ息があるのか」

大きな木に挟まれたチルタリスと、倒れた木の上で血まみれになり気絶しているフライゴン。

状況から考えて、チルタリスを助けようとしていたところ後ろから岩の塊などが飛んできてフライゴンに直撃したのだろう。バンギラスは眉間にしわを寄せ、大きくため息を吐いた。

チルタリス「ぅ、あ……?」

と、バンギラスの気配に気づいたのだろうか、チルタリスが僅かに目を開く。

バンギラス「そっちも、生きていたか……いや、虫の息、といった所か」

チルタリス「あ、なたは……」

バンギラス「俺か。俺は…………」

バンギラスは目を閉じ、少しの間考える仕草をする。もうチルタリスは助からないとわかっているのだろう、彼女を押しつぶしている大木を持ち上げようとする様子はない。

バンギラス「崩壊したこの地を、これから統べていく者だ」

チルタリス「そう、ですか……」

チルタリスは彼の言動に疑問を感じていないようだ。彼女も、自分がもうこれ以上生きられない事を覚悟しているのだろう。

チルタリス「でしたら……お願いが、あります……」

バンギラス「……なんだ」

チルタリス「そこで気絶してる彼を……フライゴンを……助けて、くれないでしょうか……」
 ▼ 198 ッキー@ハーバーメール 18/06/20 23:19:03 ID:iPEk/qCk [9/12] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
彼女の申し出に、バンギラスは頷いて答える。すると彼女は、とても安心したように笑みを浮かべた。それからゆっくりと瞳を閉じ、そっと後ろの木に身体を預ける。

バンギラス「……逝ったか」

バンギラスは彼女が亡くなるのを見届け、約束通りフライゴンを担いで歩き出す。

???「……その子、助けてあげるの? えらく献身的ねぇ」

バンギラス「……使えるものは使う。何か問題か?」

???「いいえ、特には」

ぐちゃぐちゃに崩壊した草原地帯に佇む一匹の♀ポケモン。バンギラスを待っていたのだろうか、彼がそこを通りかかるとすぐさま声をかけてきた。

???「ただ……これから残酷な事を始めようとする者が、誰かを助けるだなんておかしな話と思ってね?」

バンギラス「お前達には関係の無いことだ。俺は俺のやり方でそれを行う、それだけだ」

???「ま、ちゃんとやってくれるのならそれでかまわないけどね」

バンギラスに声をかけてきたポケモンは川の方を眺めて「ふふっ」と笑みを漏らす。バンギラスはそれを見て小さく舌打ちをした。

バンギラス「準備に取り掛かる。邪魔をするな」

???「はぁい。それじゃ、後は頼んだわね? 『あの子』のお世話も。ふふ」

彼女は意味深に笑い、バンギラスの背中をぽんぽんと叩く。そして彼に背を向け、雨の降る薄暗い森へと姿を消した。

バンギラス「……糞が」

バンギラスはその姿を最後まで見送る事なく、岩場の方へと歩みを進める。その表情は、とても険しいものだった。
 ▼ 199 ルノーム@ラムのみ 18/06/20 23:21:09 ID:iPEk/qCk [10/12] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




この日を境に、この近辺では『水竜様』が出没するようになり、大嵐を引き起こすようになった。そのたびに集落は荒れ、多くのポケモンが犠牲となった。

水竜が住み着いてから三ヶ月、誰もが災厄に怯えていた所を、バンギラスが『生贄を捧げる』という形で治める事になる。

当然、彼がこの残酷なやり方を言い出した時には大勢のポケモン達が反対をした。

そもそもここは元々集落と呼べるような場所ではなく、野生のポケモン達が気ままに暮らしているだけのただの森でしかなかった。自分に無関係とまでは言わないが、どうしてそこまでしなくてはならないのかと、多くのポケモンがバンギラスの提案に苦言を呈した。

しかし、五回目の大嵐が吹き荒れたとき、バンギラスは自身の提案を強行し、実際に嵐を止めて見せる。

すると、これまで生贄制度に反対していたポケモン達は手のひらを返し、彼のことを英雄と褒め称えた。生贄が『必要な犠牲』として、この森のポケモン達に受け入れられた瞬間だった。

フライゴンは最愛のポケモンを救えなかった事を悔やみ、長い間自棄になっていた。彼を利用しようと思っていたバンギラスもこれには手を焼いていたが、フライゴンはある日を境に突然バンギラスに協力的な態度を取るようになった。

そうして、バンギラスを中心とした集落がトウカの森の奥地に出来上がっていった。

ただ、それでも生贄に反対するポケモンはまだ残っていた。一時は彼らの説得を試みたバンギラスだったが、議論は平行線のまま交わる事が無いと悟ると、なんと反対派を生贄に仕立てる計画を立て始めた。

その中で、彼が一つの提案をする。それが、バトルを行い負けた者が生贄となる、というものだった。

しかしこのとき既に反対派の勢力は小さく、相手となるポケモンがバンギラス一匹のみだとしても勝ちを奪える可能性は皆無に等しかった。要するにこの提案は、表向き理屈を取り繕っただけのものであり、事実上これは反対派の処刑でしかなかったのだ。
 ▼ 200 ルキア@ポイズンメモリ 18/06/20 23:21:55 ID:iPEk/qCk [11/12] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




ジュカイン「バシャーモが次の生贄だと!?」

反対派は長らくこの森に住んでいる者達に多く、ジュカインたちもその派閥に属していた。中でも、曲がった事が嫌いでいつも思った事を口にしてしまう彼らの幼馴染、バシャーモはバンギラスのやり方を真っ向から否定していた。

当然、そのようなポケモンはバンギラス達にとって障害でしかなく、すぐにでも『対処』されてしまう対象だ。バシャーモは、バンギラスが集落の長を正式に務めるようになってからの、一番最初の生贄候補となってしまった。

ジュカイン「てめぇ、冗談言ってんじゃねーだろうな」

ラグラージ「こ、こんな冗談言うもんか! おいらだって、おいらだって気が動転してるんだ」

ジュカイン「ふざけんなよ……なんであいつが生贄なんかに……!」

ラグラージ「あ、ま、待ってよ!」

ジュカインは走り出した。ラグラージも少し遅れて後に続く。

もしかしてもう生贄を捧げる場所、岩場の頂上まで行ってしまったのではないか……そう思っていたが、意外にもバシャーモはまだ自分の棲家に腰を落ち着けていた。

彼女がまだそこにいたことに安堵する二匹。しかし彼らは、彼女の頑固さに怒号を飛ばすこととなる。

ジュカイン「よかった、まだここにいて。話は聞いた。なあ、一緒に逃げよう。これ以上ここにいたら殺されちまう」

ラグラージ「そうだよ。何もあんなやつらの言いなりになる必要なんかない」

バシャーモ「そうね……けど、他のポケモン達はどうするの? お世話になったポケモンも沢山いる、友達だって、知り合いだっているわ。彼らを、見捨てるの?」

ジュカイン「仕方じぇーじゃねえか! 死んじまったら元も子もないんだ。それくらいわかるだろ!」

バシャーモ「だけど、誰かが止めない限り、生贄制度は続いていくわ。仮にここで逃げたとしても、他の誰かが犠牲になるだけ……止めないと、意味が無いのよ」

ラグラージ「それはわかるよ。けど、それはおいら達にできる事じゃない。できる事なら、やればいいと思う。でも、そうじゃない事だって世の中には沢山あるんだ」

バシャーモ「だから諦めろって?」

ジュカイン「そうだよ! 無理なものは無理、それをどうにかなんてできこっこない!」

バシャーモ「できないかどうかは、やってみないとわからない。もしかしたら、別な道を見つける事ができるかもしれないでしょ?」

ラグラージ「それができてりゃ苦労しないんだって……」
 ▼ 201 ルノズク@よごれたハンカチ 18/06/20 23:22:51 ID:iPEk/qCk [12/12] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
バシャーモ「大丈夫よ。バンギラスだって説得に説得を重ねて生贄制度を通したんだから、その反対だってできるはず。彼だって苦しんでるんだと思うし、話せばなんとかなるわ」

ジュカイン「甘い、甘すぎるよ……そんな簡単に何とかできるのなら、最初から生贄なんて話にならないんだよ……生贄だけの話じゃない、嵐だってどうすりゃいいか俺達にはわからないんだ」

ラグラージ「お願いだよバシャーモ。あいつを止めるにしたって、チャンスを待ってその時が来たらやればいい」

バシャーモ「そうね、わかったわ」

ジュカイン「ほっ……」

ラグラージ「よかった……」

バシャーモ「それじゃ、まさにチャンスの今、止めてくるべきね。踏ん切りつけてくれてありがと」

ジュカイン「バシャ……お前!!」

バシャーモ「ごめん。でも、皆を見捨てる事はできないし、無理かもしれなくてもやれる事はやっておきたいの」

ジュカイン「命かけてまでやる事かよ!! ふざけんな、ふざけんな!」

ラグラージ「なんで……なんでバシャーモがそこまでしなきゃいけないんだよ……」

バシャーモ「他にやるポケモンがいないから……なら、私がやるしかないじゃない。口だけで済ますわけにはいかないしね」

ジュカイン「そんな理屈ねえよ!!」

バシャーモ「嵐が酷くなってきたわ……そろそろ行かなきゃ」

ラグラージ「……行かせない」

ジュカイン「ああ。こうなったら力ずくで……も……」

バシャーモの前に立ちはだかるジュカインとラグラージ。しかし、次の瞬間二匹は気を失い、倒れこんでしまう。

バシャーモ「……ありがと」

フライゴン「……僕は、お礼言われるような事してない」

バシャーモ「それでもよ。さ、バンギラスの所へ案内して」
 ▼ 202 ルビート@メガバングル 18/06/21 03:03:29 ID:d24oGBn2 NGネーム登録 NGID登録 報告
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 ▼ 203 ッタイシ@パワーウエイト 18/06/21 22:03:07 ID:TiKg73KU [1/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




突如として発生した大嵐は雨雲を呼び雷鳴を薄く轟かせ、平穏だったトウカの森を不気味に仕立て上げている。

生贄の祭壇とされている岩場からは森に襲い掛かるどす黒い災厄の塊ばかりがよく見え、彼らの故郷を闇の底へ沈めようとしていた。

頂上に設えられたバトルフィールドでは、既にバンギラスが目を閉じて対戦相手をじっと待っている。やがて彼の正面に立つべきポケモンが姿を現すと、彼は短く息を吐き、鋭い視線を彼女に向けた。

バンギラス「ほう、逃げずに来たか」

バシャーモ「当然。貴方の間違いを正すまで、私は諦めない」

バンギラス「間違い、か。ククク、相変わらず面白い事を言う」

バンギラスがゆっくりと腰を上げたかと思うと、次の瞬間彼はその巨体からは想像もつかない速さでバシャーモに詰め寄り、彼女の首を正面から掴んだ。

バシャーモ「っぐ、ふいうちなんて、ご挨拶ね……」

バンギラス「既に戦闘は始まっている、というだけの事だ。悠長に話を始めるお前が悪い」

バシャーモ「ふざけた事を、っぐぎぎ……」

バンギラスは顔色一つ変えず彼女の首を締め上げている手に力を込めていく。バシャーモはふりほどこうと両手で彼の腕を掴むも、力の差がありすぎて指一本引き剥がす事ができない。

バンギラス「生贄を捧げなければ嵐が起きる。嵐が起きてしまったなら、生贄を捧げなければおさまらない。これが、この地の新たな常識だ」

バシャーモ「もっと……ほか、に……方法が……」

バンギラス「まだ言うか……貴様一匹騒いだ所でどうにかなる問題でもないだろう。それとも何か、この俺にすら簡単に捻られるお前が、災厄を打ち砕こうとでも?」

バシャーモ「わたし、だけじゃなくて……ちからを、あわせれば、きっと……」

バンギラス「やれやれ。♀ポケモンは夢見がちで困る。なぁフライゴン、お前もそう思うだろう」

フライゴン「…………」

バンギラス「お前もお前で、相変わらずだんまりか。ふん、まぁいい」

バンギラスはバシャーモの首をつかんだまま彼女を持ち上げ、崖の淵に立つ。彼が手を離せば、バシャーモは数十メートルも離れた地面に向かってまっさかさまだ。
 ▼ 204 オスバメ@タマゴけん 18/06/21 22:03:31 ID:TiKg73KU [2/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
バンギラス「この下に落ちれば、水竜に食われ、生贄が成立する。もっとも、霧が深く雨雲に覆われた状態だ、ここからその様子を見る事はできないがな」

水竜は川に住み着いており、この下にポケモンが落ちてきた時陸へ上がってくる。そして動けなくなってしまった生贄をゆっくりと食していく。

彼が言うように、岩場の頂上からは霧や雲が邪魔をしているため生贄が食される瞬間どころか水竜がどのような生き物であるかさえ確認する事ができないが、その音が、悲鳴が、凄惨な光景を脳裏に想起させる。

バンギラス「ふむ……しかし、このまま落としたのではつまらないな。少しだけ、お前にチャンスをやろう」

何を思ったのか、バンギラスはバシャーモをバトルフィールドの方へと放り投げる。やっとの事で開放されたバシャーモは、地面に膝をつき首を撫でながら荒く呼吸を繰り返した。

バシャーモ「っ、く、どうして、他の方法を考えようとしないの……」

バンギラス「なんだ、折角チャンスをやったのにまたその話か。少しはバトルを楽しんだらどうだ」

バシャーモ「私は戦いに来たんじゃない。あなたを、説得しに来たの」

バンギラス「ははは! 笑わせてくれる。説得……ククク、その説得をしたければ、バトルに勝つことだ。勝てば説得するなり俺を突き落とすなりすればいい。ただそれだけの、簡単な事だ」

バシャーモ「私はあなたを突き落としたりはしない。誰も死ななくてすむ方法を探したいだけ」

バンギラス「いい加減学習したらどうだ。そもそも、そんな方法など何も無いだろう。それとも何か良い案でもあるのか? ん?」

バシャーモ「それは、これから…………」

バンギラスは挑発するように身を乗り出して彼女を見る。バシャーモはそれに対し、苦しげな表情を浮かべるほか無い。

そもそも彼女達反対派は、代案など持ち合わせていないのだ。とにかくまずは犠牲が出ないよう取り計らう、それが彼女達の当面の目的なのだから。

バンギラス「ご意見が無いようだが、バトルを再開してもよろしいかな?」

バシャーモ「代案は……確かに、無い。けど、それでも、それでも命だけは無闇に失われていいものじゃない」

バンギラス「その命にさえ目をつぶれば、何百という命が助かるのだ。いい加減大局を見極め、理解しろ」

バシャーモ「でも、犠牲になった者の命は救えてない! 一つでも救えなかったら、そんなの成功とはいえない! 犠牲の上に成り立つ世界なんて、世界なんて……」

バンギラス「あくまで目的は災厄を食い止める事だ、それを忘れるな。生贄は赦さない、でも代案は無い、災厄は止められない、そんな話が通ると思うか?」

バシャーモ「でも……それでも、っ!!」
 ▼ 205 リーザー@ほしのすな 18/06/21 22:03:52 ID:TiKg73KU [3/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




バシャーモがバンギラスに思いをぶつけている頃、目を覚ましたジュカインとラグラージは状況を理解し、生贄の祭壇へと急いでいた。

ラグラージ「ジュカイン、どうするの?」

ジュカイン「あいつを助ける。ただ……俺達が乗り込んだところで、何とかできるとも思えない。たぶん、三匹がかりでやったってバンギラスには勝てない……」

ラグラージ「じゃ、じゃあどうやって……」

ジュカイン「……うまくいくかはわからないけど、一つだけ方法がある」

ラグラージ「それは……?」

ジュカイン「生贄は、岩場の頂上から落とすんだろ? なら、下で待ち構えればいい」

ラグラージ「無理だよそんなの。あの高さからじゃ受け止める事なんてできないし、そもそも霧や雲がすごいんでしょ? どこから落ちてくるかもわからない」

ジュカイン「雲のすぐ下の辺りに、蔦でネットをはる。それなら受け止められるかもしれない。雲の下なら、バンギラス達に見つかることもないだろ」

ラグラージ「雲のすぐ下って……じゃあジュカインは、雲の下まで先回りして行くって事……?」

ジュカイン「助けるにはそれしかない」

ラグラージ「で、でも水竜がどんなやつかもわからないのに、雲の下になんていたら食べられちゃうんじゃ……」

ジュカイン「かもな……でも、やるしかない」

ラグラージ「でも……」

ジュカイン「お前もあいつが好きなら、わかるだろ? 俺は……たとえ自分が死ぬことになったとしても、あいつを助けたいんだ」

ラグラージ「……そうだね。おいらも同じ気持ちだ」

ジュカイン「それで、お前には受け止めて助けた後のバシャーモを頼みたい」

ラグラージ「どういうこと?」

ジュカイン「もしも俺がすぐに合流できないようなら、俺を待たずにあいつを森の外へ逃がしてくれ」

ラグラージ「それって……ううん、わかった。その役、任されたよ」

ジュカイン「ああ。まぁそれ以前に間に合うかどうか……頼む、まだ落ちてないでくれよ……?」
 ▼ 206 ータクン@あさせのかいがら 18/06/21 22:04:16 ID:TiKg73KU [4/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




バシャーモ「ぐぅ……」

バンギラス「生意気を言う割に、本当に何もできないのだな。哀れだ」

話を進めるためには、勝つしかない。だが、バシャーモの実力ではどう足掻いてもバンギラスを倒すどころか、彼に傷一つ負わせる事は難しい。

口だけのポケモンにはなりたくないと鍛錬を始めたバシャーモ。しかし、現実はこんなにも厳しい。日々それなりにトレーニングを重ねてきたつもりでも、バンギラス相手に手も足も出ない。攻撃一つ、当てられない。

バンギラス「しかし、ひとつ不思議に思う。お前、そこまでこの地域に、ここに住むポケモン達に思い入れがあるのか?」

バシャーモ「そう、ね……そんな感じ、かしら」

バンギラス「だが、お前が守ろうとしている者達のほとんどは、お前に味方などしない。むしろ、この地を救う仕組みに逆らい続けるお前を疎ましく思っているぞ」

バシャーモ「たとえ、皆からそう思われてても……私は、誰も犠牲にならない方法を探す」

バシャーモ「きっと何か、何か手があるはずだから!!」

バンギラス「ククク……」

バシャーモ「どうして笑うのよ……そんな方法無いと思ってるから? そんなの、考えてみないと、試してみないとわからない。未来は誰にもわからないわ」

バンギラス「ククク、ハハハハハハ!!」

バシャーモ「な、何なのよ……」

声高らかに笑ってみせるバンギラス。真剣に話をしているバシャーモの事をただ笑うにしては、あまりに大袈裟な嘲笑。

バンギラス「いや、失礼。粋がっている様があまりに滑稽でね。ククク、そうか、未来は誰にもわからないか。確かに、それはその通りだ。未来は、誰にも決める事などできない……」

バンギラス「普通はな」

雷が鳴る。

まるでバンギラスの言葉に呼応するように、一緒になってバシャーモを嘲り笑うように。

バシャーモ「!!」

バンギラス「ふん!」

霹靂がおさまろうかというその瞬間、バンギラスはバシャーモを殴りにかかる。彼の言葉の真意を考える暇も無く彼女はバンギラスの攻撃を正面に受け、地を転がった。
 ▼ 207 レキブル@ヒコウZ 18/06/21 22:04:35 ID:TiKg73KU [5/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




大嵐の中、森を走る二匹。

ジュカイン「くそ、雨で走り難い……」

ラグラージ「前がほとんど見えない……あの時と、同じだ」

ジュカイン「思い出したくもないな……あの時だって、俺達は死に掛けてるんだ」

ラグラージ「おいら達の家は流されちゃったね……あの時は、バシャーモの所に行ってて助かった。ある意味、彼女に助けられたね」

ジュカイン「ああ。だから今度は、俺達が助けなきゃ……」

ジュカイン「っぐあ!!」

ぬかるみに足をとられ、派手に転ぶジュカイン。自分が走る道どころかすぐ足元さえ見えない程に強い雨風だ、無理もない。

ラグラージ「ジュカイン!?」

ジュカイン「ってて……くっそ、転んでる場合じゃねぇのに……!」

身体を強く打ちつけ、傷が痛む。だが、それを我慢して何とか立ち上がり、再び走り出す。

ジュカイン「くそ、頼む、間に合ってくれ……!」

何度も転び、そのたびに怪我を負い、それでも彼らは走った。

大好きな幼馴染を助けるために、自らの命よりも大切なポケモンを守るために。
 ▼ 208 ラナクシ@どくバリ 18/06/21 22:04:57 ID:TiKg73KU [6/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




バシャーモ「ぅぐぁ……」

バンギラス「弱い、弱すぎる……弱すぎて話にならない。もっと俺を燃えさせろ、怒りをぶつけてみせろ」

バシャーモ「あああああっ!!」

地に這い蹲りバンギラスの巨体に踏まれ、顔を歪めるバシャーモ。メキメキと骨が悲鳴をあげ、襲い来る激痛が彼女の意識を闇の底へと送り込もうとしている。

バンギラス「……いい加減、飽きてきたな」

バシャーモ「うぐっ」

バンギラスは彼女を蹴り上げ、崖のほうへと追いやる。そして蹲る彼女の首を掴み、再び崖の前に立った。

バンギラス「さて……そろそろ終わりにしよう。そうだな、冥土の土産に、一つだけ良い事を教えておいてやる」

バシャーモ「ぅ、あ……」

バンギラスは薄気味悪い笑みを浮かべ、バシャーモをバカにしたように息を漏らす。

バンギラス「お前はこの地を、生贄以外の方法で救う手立てを探すと言ったが……それは不可能なのだ」

バシャーモ「そ、れは、やってみないと……」

バンギラス「違う違う。そもそも、違うのだ。ククク、よく考えてみろ。今回俺は、お前を生贄に選んだ。そして、『それから』嵐が起きた……」

バシャーモ「それが、どうした、の…」

バンギラス「わからないか? お前を生贄に決めてから、その後に嵐が吹き荒れたんだ……常識的に考えて、そんな都合のいい災厄の起き方があると思うか?」

バシャーモ「ま、まさ、か……」

バンギラス「ククク、その、まさか、だ。前提から違っているのだよ。災厄が起きるのを防ぐために生贄を選んでいるのではない」

バンギラス「生贄を作るために、災厄を起こしているのだよ」

バシャーモ「そ、んな……」
 ▼ 209 ンジャラ@パイルのみ 18/06/21 22:05:21 ID:TiKg73KU [7/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
バンギラス「尤も、水竜が自ら嵐を引き起こす事もあるが……何にせよ、この三ヶ月、随分と楽しませてもらった。特に、住人達が手のひらをかえした時など傑作だ。全て仕組まれた事だとも知らずに、やつらは犠牲をやむなしとしたんだ」

バンギラス「統率の取れていない土地を支配するにはどうすればいいか……順調に事が運びすぎて、ククク、毎日笑いが止まらない」

バシャーモ「ひどい……」

バシャーモの目から涙が零れ落ちる。

すべては、災厄に立ち向かうためにやって来たことだった。もう二度と三ヶ月前のような悲劇を繰り返さないために、これ以上一匹たりとも犠牲者を出さないようにするために、彼女は対策を考え生贄を否定し続けてきた。

だが、彼女達はバンギラスの手のひらの上で転がされているに過ぎなかった。彼女が何を考えようと、何を提案しようと、何を否定しようと、何一つとして変わらない。

どこかで、生贄をやむなしと考えるバンギラスの事を可哀想だと思っていた。彼は彼なりに、災厄に立ち向かうため尽力し、苦しんでいるのだと思っていた。

……彼女にとって、事実はあまりに残酷すぎた。

バンギラス「自分のしてきた事が全て意味の無いものだったとわかって、どうだ? 絶望したか? それとも、俺を倒せば解決すると期待が持てたか?」

バシャーモ「なんで、こんな、こと……」

バンギラス「支配と育成のためだ」

バンギラス「水竜という存在をこの地で育成する事が、俺のいわゆる仕事でね。そのためにこの地を支配させてもらった。災厄から救った英雄という立ち位置なら、ここを治めるポケモンとなっても不思議ではない」

バシャーモ「そんな、事のために、いのちを、犠牲に……」

バンギラス「俺にとっては充分すぎる理由だ。それに……最初の大嵐の時はまだしも、生贄に関しては、あくまで俺は対等な条件を明示している。何も、問答無用で生贄にするとは言っていない。ここは、そのために作られたフィールドなのだ」

バンギラス「戦って勝った者が生き残る、本来それは弱肉強食の生存競争だ。バカなお前でもわかるだろう、弱さが悪いのだ。弱いから、犠牲になる。弱いから、状況を受け入れる事しかできない」

バンギラス「俺の合図で水竜は、トリトドンは大嵐を引き起こす。不満があるなら、生贄を否定したいなら、俺を倒せばいい。そうすれば、少なくとも俺が災厄を引き起こす事は無くなるのだ」

バンギラス「俺を、殺してみろ」
 ▼ 210 ャルマー@おだんごしんじゅ 18/06/21 22:06:17 ID:TiKg73KU [8/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
バンギラス「……まぁ、どちらにせよお前には無理な話だ。力の無いお前にはどうにもできない、何も変えられない。恨むなら、非力な自身を恨め」

バシャーモ「っぐ、ぐうううう……」

怒りが際限なくわいてくる。絶対に赦せないと、涙が溢れて止まらない。

だが、彼女は自分の首を掴んでいるバンギラスの手を振りほどく事すらできない。諸悪の根源に、傷一つ負わせる事さえできない。

バンギラス「最後に事実がわかってよかったな? お前は、俺がこの地を正式に統治してからの、初めての生贄だ。いい記念になるだろう」

バシャーモ「っぐ、ああああああ!!!」

バンギラス「ククク、数々の無様な姿、楽しませてもらった。その絶望の顔も、最高の置き土産だ。弱き者に相応しい、惨めな最期だ。お前もそう思うだろう、フライゴン」

フライゴン「…………」

バンギラス「さて、そろそろお別れの時間だ。これからの生贄制度を定着させる礎となってくれ」

バンギラスが、首を絞めていた手を離す。

バシャーモは重力に逆らわず、崖の向こう側へ落ちていく。

彼女の目に映るのは、ただただ絶望。落ち行く彼女を嘲笑う、バンギラスの勝ち誇った顔。

悔しい。とても悔しい。あいつのせいで、あんなやつのせいで、沢山のポケモン達が苦しんだ。

でも、どうする事もできない。悔しいけど、誰もあいつに勝てやしない。だから自分達は、こうして死んでいくしかない。

不甲斐ないから、力が無いから、弱いから……

バンギラス「力のある者が勝つ! 力があるから、支配できる! 弱き者はひれ伏して、運命を受け入れていればいいのだ! クハハハハハ!!」

―――
――
 ▼ 211 ッタイシ@いんせきのかけら 18/06/21 22:06:33 ID:TiKg73KU [9/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルカリオ「うおらああああああああああああ!!!!」

バンギラス「ぐばぶべろぉおっ!!?」

巨体が岩に激突し、轟音を立てる……フライゴンを殺そうと手を振り上げたバンギラスは、次の瞬間とんできたインファイトに吹っ飛ばされていた。

誰かの声、誰かの気配。死を覚悟したフライゴンが恐る恐る目を開いたとき、彼はその光景に大きく口をあけた。

フライゴン「な、なんで……」

ルカリオ「ふう、すかっとした……ん? おう、さっきはよくもやってくれたな」

理解がなかなか追いつかなかった。彼は、自分が眠り粉入りのジュースを飲ませて店の地下に閉じ込めておいたはずだ。なのに、どうして今ここにいる?

フライゴンはまるで幽霊でも目撃したような顔をしてルカリオを指差している。

ルカリオ「起こしてくれたやつらがいるんだ。そいつらに、バンギラスの差し金だって聞いてね」

フライゴン「誰が……」

バンギラス「部外者風情が……」

フライゴンがルカリオに言葉を返そうかという時、バンギラスが崩れた岩を押しのけつつ起き上がってきた。

ルカリオ「細かい話は後だ。ただ、フライゴン、俺はお前を赦さない。ミミロップちゃんに触った罪は重いぞ!」

フライゴン「えぇ、そっちなの……」

バンギラス「ごちゃごちゃとやかましい! 貴様、俺を殴るとは、覚悟はできているのだろうな」

ルカリオ「お前こそ、よくも俺達を殺そうとしてくれたな。本当は無関係でいたかったけど、こうなったら話は別だ。全力でいかせてもらう」

ルカリオは腰を落とし、両手を構えて戦闘態勢に入る。

ルカリオ「さっきのだけじゃ殴り足りないんでね。悪く思うなよ」

バンギラス「自惚れるな。確かに、この集落の連中よりはやるようだが、力のある者の前には五十歩百歩でしかない」

ルカリオ「そうか。百歩お疲れさん」

バンギラス「ぬかせ!!!」
 ▼ 212 イコグマ@ズリのみ 18/06/21 22:40:09 ID:hquYMJH. NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 213 ースト@コスメポーチ 18/06/22 23:32:47 ID:PlyolPFU [1/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
バンギラスがルカリオ目掛けて飛び掛る。

バンギラスと聞いて想像できる動きから逸脱した速さ。そこから繰り出されるバンギラスのドラゴンクロー。

しかしルカリオはこれを易々とかわし、隙だらけとなったバンギラスの背中にバレットパンチを打ち込んだ。

バンギラス「小癪な!」

ルカリオ「ぬっ」

しかし耐久も優れているバンギラス、バレットパンチを受けただけでは倒れる事なく、そのまま半身を捻り二度目のドラゴンクローを後方目掛けて振り下ろす。

ルカリオ「あぶね」

ルカリオは手ごたえの薄さに追撃を諦め後方へ退いていたため、バンギラスの攻撃は空を切る。

しかし安心するのも束の間、バンギラスはすぐに踵を返し、再びルカリオ目掛けて飛び掛ってきた。

ルカリオ「うお!」

迫り来るバンギラス。ルカリオは無闇に彼の攻撃を受ける事をせず、その場から大きく飛び退いてバンギラスの出方を窺った。

バンギラス「姑息な。逃げてばかりでは勝てないぞ」

ルカリオ「俺達を生贄にするのに眠らせておいてそういうこと言うか?」

バンギラス「よそ者だからな。何も知らぬうちに死ねる方が幸せだろう」

ルカリオ「物凄くどうでもいい配慮だな……悪いけど俺、ミミロップちゃんとの愛を感じてる方が幸せだから」

バンギラス「ならば仲良く二匹で死ぬといい!」

バンギラスは急に構えたかと思うと、次の瞬間巨大な炎を作り上げルカリオに向けて放つ。

大の字に広がるそれをルカリオは横へ跳んで避け、カウンター気味に波動弾を撃ち込んだ。

バンギラス「なんだと!?」

直後に攻撃されるとは思わなかったのだろうか、バンギラスは波動弾を正面から受け、背中から地面に落ちる。
 ▼ 214 ッシブーン@ファイトメモリ 18/06/22 23:33:05 ID:PlyolPFU [2/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
フライゴン「す、すごい……」

フライゴンにとって、この集落のポケモンにとって、強さの権化であったバンギラス。その彼を圧倒する勢いで戦うルカリオ。

自分達が束になっても敵わないであろう相手を、ここまで簡単に攻撃し、しかもダメージを与えている光景はフライゴンにとって信じられないものだった。

バンギラス「く、この!」

バンギラスが炎を繰り出す。

ルカリオ「ふっ!」

ルカリオがそれを避け、攻撃する。

バンギラス「ぐぬぬ……」

ルカリオ「なんだ、粋がっているみたいだけど、この程度か。これならまだカントー大会で戦ったやつらの方が倍は強いな」

この地へは修行をしに来たと言っていたルカリオたち。なるほど、この光景を見ていれば彼らがただ身体を鍛えているだけではない事がよくわかる。

一撃一撃が速く正確で、威力も申し分無い。こんなにも強いポケモンがこの森の外にはいるのだと、フライゴンは涙ぐんだ。

フライゴン「あ!」

と、フライゴンはバトルフィールドの隅で何かが動いた事に気づく。よく見れば、端の方にはいつの間にかメタグロスが待機しており、背を向けたルカリオに何かしようとしていた。

しかし、フライゴンが声をあげた時にはもうメタグロスは攻撃態勢に入っており、メタルクローを放つため腕を振り上げていた。
 ▼ 215 マルス@エレクトロメモリ 18/06/22 23:33:31 ID:PlyolPFU [3/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミミロップ「サシで戦ってるんだから、邪魔しないでね?」

メタグロス「!!!」

果たしてメタグロスの攻撃は、ルカリオに放たれる事はなかった。フライゴンが察知するよりもはやく、ミミロップが炎のパンチでメタグロスをけん制したのだ。

ミミロップ「戦いたいのなら、私が相手になってあげる。私、これでも結構強いわよ?」

ぱしっ、と拳を手のひらにぶつけ、足でリズムを取るミミロップ。

彼女の力量を感じているのだろうか、メタグロスはたじろいで後ろへ下がっていく。

バンギラス「使えないやつめ……」

ルカリオ「やっぱり姑息なのお前じゃん」

ルカリオは後ろで動きがある事を察知してはいたが、一切そちらを気にする事はなかった。自分にはミミロップがついている。彼女を信じているからこそ、ルカリオはバンギラスから視線すら逸らさない。

バンギラス「どうやら、俺も腹を括らねばならんらしい……ここからは本気でいくぞ」

刹那、バンギラスを取り巻く空気が変化する。

ルカリオ「!?」

慢心を捨て宣言通り本気となったバンギラスは、ルカリオが知覚するよりも速く彼の間合いに詰め寄り、鋭い爪を突き立てた。

感じて動くのでは遅いと判断し、攻撃を予測しつつ間一髪の所でバンギラスの攻撃を避けるルカリオ。

だがバンギラスはルカリオの動きを想定していたのか、ルカリオの回避した位置も確認せず、空を切った手で掴んだ岩を投げとばす。

ルカリオ「なんと!」

相手を視認していないにも関わらず正確にとんできたそれを上半身の動きだけで避け、ルカリオは奥歯を噛み締めた。

ルカリオ「急に強くなりやがって……」

バンギラス「我々は任務遂行を第一として考えている。戦闘に興じるのは俺の好みによるものだが、全力を振るっては任務に差し支えるのでな、普段は力をおさえているのだよ」
 ▼ 216 ュリネ@しんじゅ 18/06/22 23:33:50 ID:PlyolPFU [4/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
バンギラスが爪を振るう。

それを後方へ退く事で避け、反撃を考えるルカリオ。

だがバンギラスの攻撃はそれだけで終わらず、後退するルカリオ目掛けて更なる追撃が襲い掛かる。

ルカリオが攻撃をかわしたと知覚するのは、バンギラスの研ぎ澄まされた感覚によるもの。

彼の動きはもはやバンギラスという生命体の限界を超越し、新たなる生態への扉を開こうとしていた。

ルカリオ「ぐっ!」

バンギラスの攻撃をかわしカウンターを決め込もうとするルカリオだが、その動きすら察知してしまうのか、バンギラスは一歩踏み込む事でルカリオの間合いを崩しにかかる。

結果ルカリオは半端に打ち込むことしかできず、バンギラスの強靭な肉体に受けきられてしまう。

バンギラス「……その体勢でもこの威力か、強いな」

ルカリオ「ちっ」

間合いを狂わされた事で中途半端な攻撃をせざるを得なかったルカリオ。びりびりと痺れる程の衝撃が拳に伝わり、鋭い得物で貫かれたような痛みが腕を走り抜けた。

バンギラス「なるほど、フライゴンが裏切ったワケも理解できる」

フライゴン「え……」

バンギラスは踏み出した足を引き、こきりと首を鳴らす。

バンギラス「ルカリオよ、お前は俺が経験した中でも、二番目に強いポケモンだと断定できる。生贄の、水竜に関する事実を知るフライゴンが反旗を翻す理由に充分なりうる強さだ」

フライゴン「ぼ、僕は……」

ルカリオ「……俺達を起こしてくれたやつらに、過去の話は聞かせてもらったよ」

バンギラス「そうか。ならば、どうする。俺を殺して、水竜を野放しにするか? 俺が死んでも、ヤツは気まぐれに嵐を引き起こすのだぞ?」

ルカリオ「だったら水竜も倒せばいいだろ」

バンギラス「何?」
 ▼ 217 ルビル@いましめのツボ 18/06/22 23:34:10 ID:PlyolPFU [5/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルカリオ「俺達は部外者だ。ここの掟だとか暗黙の了解だとか、そういうのは全くわからん」

ルカリオ「ただ、この身に降りかかった危機を振り払う事、恩をくれた相手にそれを返す事、俺達にできる事はそれだけだ」

ルカリオ「それがお前を倒す事だろうと水竜を倒す事だろうと、俺達からすれば同じ事だ。その結果どうなろうと、それは野生という自然環境の中で起きた摂理でしかない」

バンギラス「この俺に、水竜に勝てるとでも思っているのか」

ルカリオ「さあ? やってみなきゃわからないし、どれだけ強いのかもわからない。けど……」

ルカリオ「少なくとも、負けてやる気は無い」

フライゴン「!!」

何故だろう。

何故、彼はこんなにも自信に満ち溢れているのだろう。

一体彼のどこから、ここまで強気な発言が出てくるのだろう。

ルカリオは、水竜を目にした事さえないはずだ。災厄とまで言われている、いわば神のようなものを相手にしようとしていても、どうしてここまで胸を張れるのか……

フライゴン「それに比べて僕は……」

自分がひたすら惨めに思えた。

最愛のポケモンを失い、弟と妹を守るために多くの犠牲に目をつぶって、挙句半端に反旗を翻した自分。

自分に力が無いことは痛いくらいわかっている。だが、ルカリオはおそらく、同じように力が無くとも、同じように悲痛な境遇にあろうとも、きっと同じ事を言ったに違いない。

それは、心の強さ。

自分に恥じないよう生きると言っていた、彼らの芯の強さがそうさせているのだ。

バンギラス「……昔、お前のように口ばかり強い者がいた。尤も、そいつは実力も全く無かったから何一つ成し遂げる事ができず、失意のまま生贄となってしまったがな」

バンギラス「貴様の言い分はわかった。ならば俺は、全力でその意思を噛み千切ろう。俺にも俺の使命がある」

バンギラスが右手を前に、構えの姿勢をとった。
 ▼ 218 ールル@ハスボーじょうろ 18/06/22 23:34:35 ID:PlyolPFU [6/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
バンギラス「うおおお!!」

砂塵を舞わせ、地を蹴る。

唸り声を上げ、持てる全ての力を以って腕を振りぬく。

避けられてもなお攻撃を止めず、続けざまに連続して爪痕を大気に残す。

ルカリオ「はぁああああ!!」

繰り出される猛攻の合間を縫い、バレットパンチを打ち込む。

さながら動く山と言われるだけある、バンギラスの肉体には生半可な攻撃では足元を揺らがせる事すらできない。

だがそれでも、拳を突き出しダメージを蓄積させていく。

バンギラス「無闇に攻撃していると思うな!」

バンギラスが一歩後ろへ引いた。そして地面に対して両の手で拳を落とす。

ルカリオ「こ、これは!」

不審な動作に、ルカリオはその場から大きく跳び退く。

次の瞬間、地面が爆発した。

ルカリオ「大文字は火種を作るためか……」

バンギラス「ご名答。一つの攻撃が、次の攻撃を生むのだ」

ルカリオ「ちっ!」

再び、バンギラスが地を叩く。

それに呼応するようにあちこちで爆発が起き、岩が砕けて散った。

その岩もまた八方に転がり、ルカリオの動きを制限する枷となる。

ルカリオ「!!」

回避に専念しきれていなかったからだろう、転がり四散した小さな岩の塊に足を取られた。

視界が傾き、右足が想定していないステップを踏む。当然、バンギラスがその隙を逃すはずがない。

なんとか体勢を大きく崩す事無く立て直したルカリオの目に映ったのは、すぐ目の前でギガインパクトを打ち出そうとしているバンギラスの姿だった。
 ▼ 219 クティニ@きれいなハネ 18/06/22 23:34:57 ID:PlyolPFU [7/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
バンギラス「何!?」

ルカリオ「覇っ!!」

バンギラスの放つ強烈な一撃がルカリオに向けて炸裂した……フライゴンはそう思った。

一時はバンギラスを圧倒していたルカリオもついにやられてしまったかと表情を歪ませるフライゴンだったが、不意に肩を叩かれ、顔を上げる。

フライゴン「え……」

今度こそ自分は殺される……そう思った彼の目に映ったのは、手のひらを叩いて地に倒れたバンギラスを見下ろすルカリオの姿だった。

ルカリオ「ミミロップちゃんの真似、うまくいってよかった」

暫くバンギラスは起き上がってこれないとわかっているのだろう、ルカリオは表情を緩ませミミロップに向けて力強くサムズアップした。

フライゴン「ど、どうして……」

ミミロップ「バンギラスの勢いを利用したのよ。懐に潜り込んで背負い投げ」

ルカリオ「まぁ、無傷ってわけにはいかなかったけどね。肩めっちゃ痛い」

ギガインパクトが肩をかすめたのだろう、ルカリオは左手で右肩を撫でていた。

バンギラス「くく……世界は広い、とは、よく言ったものだ……負けを認めざるをえない、な……」

ルカリオ「目には目を、と言いたいところだけど、俺達は誰かに頼まれたわけでもないしここに居座る気も無い。だからこれ以上お前をどうこうするつもりはない」

ミミロップ「フライゴンは、どうしたいの?」

フライゴン「え……」

それぞれの目がフライゴンを向く。

フライゴン「僕は、僕は……」
 ▼ 220 ロボーシ@ハガネZ 18/06/22 23:35:14 ID:PlyolPFU [8/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
自分の言動が一貫していない事は、フライゴン自身が一番よくわかっていた。

恋人を失い自棄になり、家族を守るため悪に手を染め、無策に反旗を翻す。じゃあ結局何がしたいのかと言われれば、返答に詰まってしまうような、そんな体たらく。

弱いのは、単に力が無いせいではない。ただただ感情に振り回され、その場その場で視野を狭窄して思い込みで走ってしまう、そんな心の弱さばかりが彼と言うポケモンを作り上げている。

バンギラス「そいつに何を言っても無駄だ……真実を知った時でさえ、怒りをぶつける事も無くただ黙っていた……」

声「なら、俺達が代わりに答えてもいいか」

突然聞こえてきた声に振り向くと、岩場の階段をジュカインとラグラージが上がってきていた。

ラグラージ「!? 危ない!!」

バンギラス「隙を見せたな!!」

ルカリオ「なっ」

ジュカイン達に気を取られたその瞬間、バンギラスが巨体を起こしルカリオ目掛けて飛び掛る。

ジュカイン「うおおっ!!」

バンギラス「ぐぅ!?」

だが、いち早くそれに気づいたジュカインは電光石火でバンギラスに対応した。

ラグラージ「あっ……」

バンギラス「ぬ……」

ジュカインの電光石火はバンギラスの襲撃を食い止めただけでなく、彼の巨体を岩場の外まで弾き飛ばした。

思わぬポケモンからの反撃にバンギラスは攻撃を受け流す事もできず、先ほどまで足をつけていた地が遠ざかっていくのを目を見開いて眺めている。

自分がこれまで落としてきたポケモン達もこのような光景を目にして死んでいったのかと、柄にもなくそんな事を思った。
 ▼ 221 リープ@のこされたボール 18/06/23 02:01:53 ID:Tj6sENtU NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 222 リデプス@グランドコート 18/06/23 23:38:46 ID:qzYwS5Bo NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 223 ゲキッス@ヘラクロスナイト 18/06/24 00:27:57 ID:9WQ2cXRU [1/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルカリオ「助かった……が、あいつ落ちたぞ」

ジュカイン「い、いや、その、あんなにぶっ飛ばせると思わなくて……」

一斉に崖の所へ走り、下を覗き込む。

ラグラージ「く、雲が晴れてる……」

覗き込んだ先に見えるのは、地面に穴をあけて横たわるバンギラスの姿。

森を覆っていた雨雲も水竜が発生させた霧もどういうわけか綺麗に晴れていて、草原地帯や川の方までを見渡す事ができた。

ミミロップ「ん、あれは……」

それぞれの視線がバンギラスに集まる中、ミミロップは何かの音を耳にし、川の方へ目を向ける。

ルカリオ「何か出てくる……」

ジュカイン「あれが……水竜?」

ばしゃっと水しぶきを上げ、水竜……トリトドンが草原に姿を現す。

トリトドンは身体から吹き出る粘液を撒き散らし、ゆっくりと岩場の方へと這ってきた。

ラグラージ「……小さいね」

ルカリオ「ここへ初めて来た時、岩場越しに感じた気配もこれだった。トリトドンが水竜だったのか……」

ミミロップ「でも……色が、黒い」

ジュカイン「通常のやつとは色が全然違うな……」

フライゴン「…………」

黒い色をしたトリトドンは数分かけて岩場までやってくると、倒れているバンギラスの前で歩みを止める。

そしてバンギラスの方に首を伸ばし……
 ▼ 224 ラサリス@はかいのいでんし 18/06/24 00:28:17 ID:9WQ2cXRU [2/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
バンギラス「ぬうん!!」

べしゃ、とゼリーを壁にたたきつけたような音がした。

一瞬の出来事。上からその様子を窺っていた五匹はあっと息を呑む。

なんと、バンギラスはトリトドンが近づいてくるのをじっと待ち、彼が捕食を開始しようとした瞬間首を掴んで岩肌に投げつけたのだ。

壁に叩きつけられたトリトドンは衝撃に耐え切れず、身体中の穴という穴から体液を噴き出して潰れてしまった。

ジュカイン「お、おい……あいつ、水竜を、殺しちまったぞ……」

バンギラスの手からぼとぼととトリトドンだった肉片が零れ落ちていく。周囲に散ったそれらは悪臭を放ち、どれも動きを見せる様子はない。

バンギラス「どの道もう失敗だ。偶像も必要無かろう……」

水竜はバンギラスが連れてきたポケモン、トリトドンのこと。彼がトリトドンに命令する事で、トリトドンは雨を呼び嵐を引き起こしてきたらしい。

そのトリトドンが絶命した今、もう大嵐という災厄に怯える必要は無くなった。少なくとも、水竜による恐怖はたった今終了を迎えたのだ。

ラグラージ「終わった……のか」

ジュカイン「少なくとも、これでもう生贄なんて話は終わりだ……」

どさっとその場に崩れ落ちる二匹。これで大災害に悩まなくて済む生活を送る事ができるようになったと思うと、安心して全身の力が抜けていった。

バンギラス「……まだだ。まだ、やるべき事が残っている」

バンギラスは手に残っていた肉片を握りつぶし、空を仰ぐ。視線の先には、崖下を覗き込むルカリオ達の姿。

ルカリオ「あいつ、まだ戦う気か。こっちに来ようとしてるぞ」

ジュカイン「ま、マジかよ……」

ラグラージ「やっぱり、あいつを倒さないと終わらないのか……」

射抜くような視線で上を見るバンギラス。ルカリオ達に彼の詳細な表情や呟きは届かないが、波動からは明らかな敵対心が向けられている事がわかる。

バンギラス「こうなってしまっては終わりだ。ならば、少しでもヤツらを殺して計画を」

バキャッ ブチッ
 ▼ 225 ルキモノ@きれいなウロコ 18/06/24 00:28:36 ID:9WQ2cXRU [3/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
一瞬の出来事だった。

つい先ほどまで、バンギラスが敵対心をむき出しにして上空を睨みつけていると思った。

だが、彼の姿は1秒にも満たないうちに消えてなくなった。

ジュカイン「なぁ……さっきまで、あの長いの、あったっけ……」

ラグラージ「あ、あうあ……」

バンギラスの姿が消えてしまった代わりに、そこには別なものが横たわっていた。

よく見ればそれは横たわっているのではなく、川から伸びた何かが岩場に突き刺さっているような、そんな状態。

ミミロップ「なに、あれ……」

直感的に感じる気味の悪さに、ミミロップはルカリオに身体を寄せる。ルカリオは彼女をぎゅっと抱き寄せ「大丈夫」と声をかけ、崖下に伸びる長い何かを睨みつけた。

バキ グチャ ゴキッ

やがて、硬いものと一緒に水分を含んだ何かを噛み砕くような音が響いてくる。それに合わせて、長い何かの先端が上下に動いていた。

ルカリオ「もしかしてあれ、生き物か……」

誰も言葉にはしなかったが、状況から考えれば誰もが同じ回答に辿り着く。

バンギラスは、川から現れた何者かによって、一瞬で食い殺されてしまった。

フライゴン「…………ふふ」

と、それまでずっと黙っていたフライゴンが急に笑みを零す。

あまりに場違いな言動に、誰もが彼の方を向いて訝しげな顔をした。

フライゴン「やっと……やっと思った通りになった。はは、ここまで来るの長かったなぁ」

ルカリオ「フライゴン……?」

フライゴン「あぁ、ごめん。ワケわかんないよね。だって、これは僕しか知らない事だから」
 ▼ 226 ングマ@はっかのみ 18/06/24 00:28:55 ID:9WQ2cXRU [4/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ジュカイン「フライゴン、お前……あいつに、何しやがった……?」

フライゴン「僕は何もしてないよ……ただ、彼は『知らなかった』のさ」

ラグラージ「知らなかった……?」

フライゴン「そう。まぁ、知らないのは君達も同じだと思うけど……」

ジュカイン「どういう事だよ、説明しやがれ」

ジュカインがフライゴンに食って掛かる。フライゴンは抵抗するでもなくそれを受け入れ、勢いに押されるまま地面に倒れこんだ。

ルカリオ「落ち着け。敵対しようってわけじゃなさそうだ、話を聞こう」

ジュカイン「ちっ」

フライゴンはゆっくり上半身だけ起こしてしょんぼりしたように視線を伏せ、小さく息を吐いた。

フライゴン「さっきの見たでしょ。水竜様……いや、トリトドン」

ラグラージ「うん。初めて水竜を見た」

フライゴン「はは、水竜様か……まさか今の今まで誰にもバレないなんて思わなかった。あのポケモンの言うとおりだった……」

ジュカイン「バレないってのは……」

フライゴン「トリトドンは水竜様じゃないって事だよ」

フライゴン「だって、トリトドンだよ? トリトドンが、大嵐を呼んだりすると思う? 『水竜』なんて名前で呼ばれると思う?」

ジュカイン「それは……」

そういえばと、ルカリオは思い出す。

初めてフライゴンに会って食事を共にした時、フライゴンは水竜について「大きくて強い」と表現した。だが、それはトリトドンを差しての言葉としては不適切。つまりは、トリトドンではなく別の何か、本物の水竜に対して使っていた言葉だったのだ。
 ▼ 227 マンタ@プロテクター 18/06/24 00:29:22 ID:9WQ2cXRU [5/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
フライゴン「あれはね、本物の水竜様。巨大なギャラドスだよ。霧を、大嵐を引き起こすのは、あいつなんだ」

ジュカイン「ギャラドスが……?」

ミミロップ「でも、それだとどうしてバンギラスは知らなかったの? 彼が命令して、嵐を引き起こしてたんでしょ?」

フライゴン「そう思い込んでるだけだよ。実際は水竜様が、ギャラドスがバンギラスの言動に合わせて自分でやってた事なんだ。彼は自分がトリトドンにやらせてると、ずっと思い込んでたからね」

ジュカイン「ちょっと待てよ……じゃあ何か、バンギラスもトリトドンも死んだってのに、災厄問題は全く解決してないって事じゃねぇか……」

フライゴン「うん」

ジュカイン「うんじゃねぇよてめぇ! お前知っててなんで黙ってた。これまで何匹のポケモンが犠牲になったかわかってんのか!!」

フライゴン「ぐえっ」

フライゴンに馬乗りになり、彼の頬を殴打するジュカイン。慌ててラグラージが止めに入る。

フライゴン「いいんだ、僕が悪いから……」

ラグラージ「そんな事を言われても、何がなんだかわからないよ。おいらは君を殴りはしないけど、きちんと説明だけはして欲しい」

フライゴン「……そうだね」

フライゴンは殴られてできた傷口から漏れる血をぬぐう事さえせず、ぼんやりと曇り空を見上げた。

フライゴン「三年前、大嵐がこの森を襲った時……僕は最愛のポケモンを失った。僕はバンギラスに助けられて、彼の右腕になるよう言われた。でも……」

フライゴン「当時の僕は自棄になってたから、彼の言う事を何も聞かなかった。ただ家でふさぎこんでるだけだった」

フライゴン「そんなある日だったよ、彼女が、僕のもとを訪ねてきたのは」
 ▼ 228 ガガルーラ@フライングメモリ 18/06/24 00:29:45 ID:9WQ2cXRU [6/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ジュカイン「彼女……?」

フライゴン「名前は、知らない。全然知らないポケモンだった。そいつは僕に言ったんだ。『弟と妹を誘拐したから、無事に返してほしければいう事を聞け』って」

ルカリオ「それで弟も妹も家にいなかったのか……」

フライゴン「うん……だから僕は、弟と妹のために、バンギラスに協力する事にしたんだ……」

ジュカイン「だからってよぉ……他のポケモン、犠牲にしていいわけねぇだろ!」

フライゴン「……君たちにも、悪い事をしたよね。最初の生贄になってしまったのは、バシャーモだったから」

ジュカイン「あいつだけじゃない。嵐のたびに死んでいったポケモンがいるんだ、なのに、なのに……」

ラグラージ「わかるけど、おさえて。フライゴンがいなかったとしても、そうなる事は避けられなかったと思う」

フライゴンが実際に何をしていようともしていなくとも、バンギラスがいる限り生贄は行われ続けてきただろう。そもそもは、フライゴンも大嵐の犠牲者なのだ。

ルカリオ「でも、どうしてギャラドスが水竜だと知った?」

フライゴン「僕の所にきたポケモンが教えてくれた。バンギラスには、トリトドンが嵐を起こすと伝えてあるから、お前は真実を知りバンギラスを見張れって」

ミミロップ「見張る……?」

フライゴン「どうしてそんな事を言われたのか、今でもわからないよ。ただ、バンギラスの合図をトリトドンが見聞きして、それを秘密裏にギャラドスに伝えてるみたいだったから……でも、あいつが嵐を起こしていた事に変わりは無い。そう、三年前の、あの嵐もね」

彼らの悲劇の始まり。三年前の大嵐も、バンギラスが命じた事でトリトドン、そしてギャラドスが動いて起きたものだった。

フライゴン「つまり、チルタリスさんを殺したのは、あいつなんだ……だから僕はギャラドスの事を黙ったままでいて、いつかあいつを食い殺してもらおうと思った。それが今日、思った通りになったんだ」

ルカリオ「脅されつつも逆襲の機会を窺ってたというわけか……」

フライゴン「でもまぁ、ルカリオ達が来なければ僕は死んでた。もうそれでいいと思ったんだ」
 ▼ 229 ネコロロ@イナズマカセット 18/06/24 00:30:16 ID:9WQ2cXRU [7/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ジュカイン「ルカリオ達を巻き込めなかったって事か?」

フライゴン「それも、ある……けどね、僕にはもう、守るべきものが何もなくなっちゃったんだ」

ラグラージ「弟や妹はどうしたのさ。その子達を守るために、君は今まで耐えてきたんだろう?」

フライゴン「……二匹とも、たぶんもうここへは帰ってこないよ」

ジュカイン「なんでそう思うんだよ」

フライゴン「ねえルカリオ。君たちは、黒いフライゴンを見たんだろう?」

ルカリオ「ああ……」

黒いフライゴンといえば、トキワの森で戦った二匹のフライゴンが思い当たる。

大雨の中戦っていた事もあってはっきりとその姿を観察したわけではないが、通常種とは違う黒い色をした固体だった事は確かだ。

ミミロップ「え、まさかそれって……」

フライゴン「うん……たぶん、僕の弟と妹だよ」

ルカリオ「な……」

もしそれが事実だとするなら、ルカリオ達は彼の弟と妹を凍らせ間接的に殺した事になる。

状況を考えれば仕方が無いことだったとはいえ、二匹は申し訳なく思った。

ルカリオ「その、フライゴン。黒いフライゴンのことなんだが……」

ルカリオがそのことを話そうと前に出る。しかしフライゴンは首を横に振り、ルカリオの言葉を制した。まるで、ルカリオが言わんとしている事はわかっているとばかりに。

フライゴン「……確証は無い。けど、バンギラスが言ってた。ナックラーとビブラーバが実験に使われたって」

ミミロップ「実験……?」

フライゴン「ポケモンの生体実験をしてるポケモン達の組織があって、僕の弟と妹はそこに誘拐されたんだ……」

ジュカイン「おいおい、ポケモンがポケモンを実験材料に使うって……狂ってやがる」

ラグラージ「人間が人体実験をするようなものか……でも、そんな事が、ありえていいのか……」

極めて不快な話だが、そう考えればトキワで見たフライゴンに関して辻褄が合う。

色、気性、攻撃パターン、どれを取っても通常のフライゴンとは異なっているものばかりで、もしもそれらが生態を弄られた事によるものだとしたら……
 ▼ 230 ードル@くろおび 18/06/24 00:30:34 ID:9WQ2cXRU [8/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ジュカイン「……とにかく、今はこれからの事を考えた方がいい。正直、組織とか生体実験とか言われても、俺達にはどうしたらいいか……」

ラグラージ「そう、だね。ショックな話ばかりだけど、今日で色々と事情が変わっちゃったし」

バンギラスによる支配は終わった。だが、ギャラドスによる嵐の恐怖はまだ続く。こうなると生贄行為に本当に意味があったかどうかもわからないが、どちらにせよギャラドスの意思で引き起こされる嵐に関しては何か早急に対策をとらなければならない。

ジュカイン「何にしても、この向こうは立ち入り禁止のままだな……バンギラスを一瞬で食べちまうような化け物になんて、近づくのもゴメンだ……」

ラグラージ「どうにかするには、水竜、ギャラドスを倒すしか無い……それかやっぱり、ここを離れるしかないのかな……フライゴンは、どうするの?」

ラグラージはフライゴンを見る。

フライゴンは音も無く崖の方へ飛んでいき、崖の下を覗き込んだ。

フライゴン「……僕は、チルタリスさんの所へ行くよ」

ジュカイン「お前、それって……」

ルカリオ「っ!!」

ルカリオがフライゴンに跳びかかる。

しかし、ルカリオの手は空を切った。フライゴンは美しい翼を広げ、崖の下へ、ギャラドスの方へ向かって急降下していく。

ルカリオ「あいつ、死ぬ気だ!」

ラグラージ「で、でももう飛んで行っちゃったよ!」

ジュカイン「くそ、自棄になりやがって!!」

ミミロップ「追いかけるわよ!」

ルカリオ「おう!」
 ▼ 231 ーケオス@ルビー 18/06/24 00:31:00 ID:9WQ2cXRU [9/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
フライゴン「くそう、くそう!」

持てる限り最大限の力を駆使し、滑空する。

意味のない事をしているのは充分すぎるほどわかっている。

結局自分は誰も救えなかった。それどころか、周囲に踊らされて多くのポケモンを犠牲にしてしまった。

一矢でも報いる事ができれば、少しは贖罪となるだろうか。自らの命と引き換えに、一筋でも傷をつける事ができれば、あるいは……

フライゴン「チルタリスさん、ビブラーバ、ナックラー……僕は、本当に役立たずだ……だからせめて、最後くらい少しでも役に……!」

フライゴンの手に力が入る。降下する速度がどんどん増していく。

命をかけた、ドラゴンダイブ。

物凄い勢いで相手に突っ込んでいく事になるため、きちんと命中するかわからない。

仮に綺麗に決まったとしても、おそらくギャラドスは倒れないだろう。直後の反撃で、フライゴンは死んでしまうかもしれない。

それでも彼は、この攻撃に自分の全てを託した。

フライゴン「!!」

だが、現実はあまりに残酷だった。

バンギラスを捕食している途中、ギャラドスはフライゴンの気配に気づき顔を上げたのだ。

ギャラドスに正面から突っ込む形となってしまったフライゴン。ギャラドスの凶悪な牙が光って見える。

フライゴン「(ああ、僕は最後までこうなんだ……本当に何一つできない、何のとりえもない、つまらないポケモンなんだ……)」

もう軌道修正はできない。

ギャラドスは降下してくるフライゴンを丸呑みしようと大きく口を開けて待ち構えている。

フライゴン「僕は、僕は最後まで……」
 ▼ 232 ガデンリュウ@はがねのジュエル 18/06/24 00:31:41 ID:9WQ2cXRU [10/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


声「ブレイズキック!!」

ゴシャ、と鈍い音が響き、ギャラドスの巨体が岩場へ吹っ飛んだ。

フライゴン「えっ、わ、うわ!!」

ギャラドスに向かって突っ込んでいたフライゴンは勢いそのままにギャラドスの胴体へぶつかった。

ルカリオ「あれは……」

岩場から飛び出しフライゴンを追いかけていたルカリオとミミロップは目を凝らす。

そこには、つい先日言葉を交わしていた顔があった。

ミミロップ「バシャーモさん!」

バシャーモ「また会ったわね。でも、話は後!」

バシャーモはギャラドスを蹴っ飛ばした後一回転して地面に着地し、再び大きく跳躍する。

バシャーモ「積年の恨み……晴らしてくれる!!」

ギャラドスは岩場からゆらりと身体を持ち上げ突如現れた敵に対し威嚇するも、次の瞬間にはバシャーモの跳び膝蹴りが炸裂し、再び岩場へ崩れ落ちた。

無論、彼女の攻撃はそれだけにとどまらない。起き上がりかけるギャラドスに対し、次々と蹴りを浴びせている。

ジュカイン「おいおい、マジかよ、あいつ……」

ラグラージ「うん、帰ってきたんだ……バシャーモが」

フライゴンの身を案じていたジュカインとラグラージは岩場の上であんぐりと口をあけていた。

今、ギャラドスに猛攻を浴びせているのは、紛れも無く彼らの幼馴染のバシャーモ。三年前に何とか生贄から助け森を離れさせたというのに、再びこの地へ戻ってきた。

いつしか宣言していた通り、ピンチの時に救ってあげるという約束を携えて。
 ▼ 233 ッコアラ@ホノオZ 18/06/24 00:32:05 ID:9WQ2cXRU [11/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

そこからは彼女の独壇場だった。

水竜とはなんだったのか? 災厄とはこれ程までに呆気ないものだったのか?

攻撃に攻撃を重ね、バシャーモはあっという間にギャラドスを、この地を長らく脅かしてきた水竜を倒してしまった。

まさに、青天の霹靂。ルカリオ達が応戦するまでもなくギャラドスは地に倒れ、絶命した。

バシャーモ「ふう……」

ルカリオ「凄い、なんてもんじゃないな……」

ミミロップ「これが世界チャンプ……」

もう、ジュカイン達に守られていた頃のバシャーモはここにはいない。

圧倒的な力を前にミミロップは興奮し、こんな相手を倒さなければ世界の頂点には立てないのかと身震いした。

フライゴン「あ、あの……」

恐る恐ると言った様子でバシャーモに声をかけるフライゴン。

バンギラスの時に引き続き、死を覚悟していた所を救われ戸惑っているのだろう。おどおどした様子でゆっくりとバシャーモに近づいている。

フライゴン「あなたは……もしかして……」

フライゴンが話しにくそうにしているのは、それだけの理由ではないようだった。

彼はバンギラスによる生贄制度を、バシャーモが生贄となってしまった場面を見ている。

フライゴンは、バシャーモは死んでしまったと思っていた。しかし、実際は違う。ジュカイン達が命がけで彼女を助けていたのだから。

バシャーモ「……あなたを責めるつもりはないわ。ただ、言える事があるとしたら」

バシャーモ「今日からは、自分のために生きて。そして、できることなら……これからは、皆と仲良くしてくれると嬉しいかな」

フライゴン「あ……」

チルタリス『だけど、仲良くしてくれるといいんだけどなぁ』

フライゴン「うう、ううう……」

どうしてだろう、バシャーモの言葉と、いつだったかに話したチルタリスの言葉が重なった。
 ▼ 234 イガニ@ライブスーツ 18/06/24 00:32:28 ID:9WQ2cXRU [12/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ジュカイン「おーい!」

ラグラージ「バシャーモ!」

ジュカラグ「おかえり!」

見ればジュカインとラグラージが森の方から走ってきていた。階段を降りて裏から回ってきたのだろう、二匹とも息を切らせている。

バシャーモ「あら、二匹ともいたのね」

ジュカイン「ま、まぁ」

ラグラージ「い、いたよ」

ジュカインとラグラージはバシャーモの前までやってくると、気恥ずかしそうに頬をかいたり視線を泳がせたりしている。

二匹とも頬が赤いのは、走ってきたせいだけではないだろう。久しぶりに会う片思いの相手に、内心ドキドキしているに違いない。

バシャーモ「ただいま、二匹とも。ふふ、ちょっと世界一になってて遅くなったわ」

バシャーモは口に手をあてて小さく笑う。ジュカインとラグラージは、彼女の言葉にぽかんと口を開けた。

ジュカイン「せ、世界一?」

ラグラージ「どういうことなの……」

顔を見合わせる二匹。先ほどの戦いっぷりを考え次第にその意味を理解していき、ギギギと錆びた機械のようにバシャーモの方を向く。

バシャーモ「約束通りでしょ? ピンチの時に助けに来るって」

あっけに取られる二匹に、バシャーモは満足そうに笑った。

ルカリオ「その、なんだ。どっちかが上手くいったとしても、色々と大変だろうから、頑張れ」

ジュカラグ「…………」

ぽんぽんと二匹の肩を叩き同情するルカリオ。それに対しミミロップが少し厳しい視線を送っていた。
 ▼ 235 オップ@スペシャルアップ 18/06/24 00:33:23 ID:9WQ2cXRU [13/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告





フライゴン「もう行っちゃうのか……」

ルカリオ「大会までもう少しあるけど、調整に力を入れたいからね」

ミミロップ「今の状態じゃ、お祭り騒ぎに巻き込まれそうだしね……」

すべてが終わり、集落ではポケモン達が宴を開いていた。バンギラスや水竜による支配から開放され、皆心の底から笑い合っている。

ルカリオ達も是非と誘われたのだが、すぐ先にホウエン大会がひかえている身、気を抜いてばかりはいられないため丁重にお断りした。

フライゴン「僕ね、強くなる。料理だけじゃなくて、バトルでも活躍できるような、そんなポケモンになる」

ルカリオ「おう。なら、今度会った時はバトルだな」

フライゴン「へへ」

気恥ずかしそうに笑うフライゴン。諸々にある程度整理をつける事ができたのだろうか、その表情は以前よりも明るく感じられた。

フライゴン「あ、そうだ。修行をするなら、いい場所があるってバシャーモさんが言ってた」

ミミロップ「バシャーモさんが?」

フライゴン「うん。ここから少し戻って、カナシダトンネルの近くまで行った所にあるんだって」

ルカリオ「確かに丁度いい岩場がありそうだな。人間と出くわしそうなのが気になるが……」

フライゴン「あの辺りはシダケタウンの人しか使わないから大丈夫。シダケタウンの人は、無闇にポケモンを捕まえたりいじめたりしないから」

ミミロップ「比較的穏やかな町、って事かな?」

フライゴン「うーん町って言うのも気が引けるくらいの田舎だよ。自然の中にある村、って感じ」

それならばと、ルカリオは次の目的地をシダケタウン付近へ定める事にした。

ミミロップ「バシャーモさんは……暫く出てこれそうにないわね」

ルカリオ「だな……」

集落を救った英雄、それもこの森出身ともなれば、今頃引っ張りだこだろう。そうでなくとも、ジュカインとラグラージが彼女をめぐってひと悶着起こしてそうだ。

ミミロップ「また会う事になるしね……WFCで会えるよう、頑張らなくちゃ」
 ▼ 236 ースト@なんでもなおし 18/06/24 00:33:40 ID:9WQ2cXRU [14/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルカリオ「それじゃ、またここに来たら美味しいもの食べさせてくれな」

ミミロップ「今度は、普通のジュース出してね?」

フライゴン「あはは……うん、とびっきりのご馳走作る! だから、絶対また来てね!」

両手を振って見送ってくれるフライゴンに手で合図し、二匹は歩き出す。

暫く歩いたところでなんとなく振り返ってみると、どうやら見えなくなるまで見送ってくれるらしい、フライゴンはまだ二匹に向けて大きく手を振っていた。

ルカリオ「次会った時が楽しみだな」

ミミロップ「ええ、そうね」

自然と笑みがこぼれる。

大会が終わったあとまた訪れる場所が増えたと、意気込みを新たにする二匹だった。
 ▼ 237 リゴンZ@ピーピーエイダー 18/06/24 00:38:59 ID:9WQ2cXRU [15/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




メタング「…………」

嵐の止んだ岩場の頂上から、賑わい立つ森の光景を空中に浮遊しながら眺めているポケモンがいた。

主であったバンギラスを失い、メタングは今何を思うのだろう。あまりに無機質なその表情からは読み取れそうにない。

しかし、メタングにも帰る場所があるのだろうか。暫く森を見下ろしていたメタングだが、短く息を吐き、ゆっくりとその場を離れていく。

メタング「………………次ね」

メタングが去っていく。

鋼色から黒へと姿をかえ、岩場に足跡を残して。
 ▼ 238 フレシア@ひかりごけ 18/06/24 00:39:31 ID:9WQ2cXRU [16/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告






何故、どうしてこうなる。

こんな運命に誰がした。

私は何にも悪い事なんてしてない。

のんびり暮らして、平和に生きて、ただそれだけ。

毎日に不満なんてなかった。我侭は……少しだけ言ったけど。反抗したりする事はなかった。

とっても居心地がよかったから。向こうだって、そう思ってくれてたはず。

なのに……

どうして私は、一人ぼっちなの?

誰もいないこの場所で、いつまで待っていればいいの?

……また、あったかい紅茶が飲みたい。

だからお願い。はやく、はやく私を……




 ▼ 239 タモン@ボロのつりざお 18/06/24 00:39:57 ID:9WQ2cXRU [17/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




カナシダトンネルが近くなるにつれ、周囲に岩肌が目立ち始める。この辺りはトンネル開発中に崩れた岩や泥がそのままになっている所が多く、ある意味人工の岩場が出来上がっていた。

とはいえ、人間達も自然への配慮はそれなりに行っているらしく、ポケモン達にとって公害となりうるものは全て取り除いている。あくまで、岩などが転がっていても不自然ではない程度に放置されているのだ。

ルカリオ達は、一度はトンネルの外壁付近までやってきたが、人間との遭遇を避けるため再び森へ入っていく。

カナシダトンネルから遠ざかる事一時間、彼らはそれなりに修行に適していそうな場所を見つけ、腰を下ろす事にした。

ルカリオ「この辺りなら満足に身体を動かせそうだ」

ミミロップ「なんか色々ありすぎて結局満足にトレーニングできてないし……そろそろ本格的につめていかないと」

ルカリオ「そうだね。少なくとも、バシャーモさんを見てたら今の俺達じゃ世界はまだまだ遠いと痛感したよ」

ミミロップ「ほんとに……」

昔は口だけで弱虫だったというバシャーモ。

今ではWFCで優勝した経験を持つ、誰もが認める強力なポケモンだ。その実力は、巨大なギャラドスをあっさり倒してしまった事からもよくわかる。

そんな彼女も、今年のWFCには出場が決定している。たとえ他の全てに勝てたとしても、バシャーモに勝てなければWFCの制覇はできないのだ。

ルカリオ「今日はもう日が暮れだしてるし、ゆっくり休もう」

ミミロップの手をぎゅっと握って頷くルカリオ。

ミミロップ「ゆっくり休むの? ふ〜ん?」

ルカリオ「う……ど、どうしよっかな……」

頬を赤らめ視線を逸らすも、ミミロップは彼の顔を自分の方へ向かせる。妖艶な笑みを浮かべる彼女に、ルカリオの心臓はどきりと高鳴った。

ルカリオ「きょ、今日は解禁日って事で!」

ミミロップ「きゃん、もうやっぱり意思弱いんじゃないの〜? あ、んっ……」

ミミロップをぎゅっと抱きしめ、熱いキスを交わす。



クチート「…………」

そんな二匹の様子を、少し離れた茂みから一匹のポケモンがのぞいていた。
 ▼ 240 ジギガス@ニニクのみ 18/06/24 10:20:51 ID:Yk3sg7O. NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 241 ッカニン@スピードパウダー 18/06/24 10:55:06 ID:gS.MR50w NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 242 援する男◆zoKrwsYAsI 18/06/24 12:11:16 ID:e74MPJyY NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
メガシエンネ
 ▼ 243 シャマリ@ノワキのみ 18/06/24 12:45:20 ID:LZC.LNKg NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ガチの神作やん
支援
 ▼ 244 レイシア@ざいりょうぶくろ 18/06/26 02:20:31 ID:/rlculVM [1/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




夕暮れ時の森に小さく響く接吻の音。人やポケモンの目があまり届かないであろう岩場の影で、二匹のポケモンが愛の強さを誇示するように抱き合っている。

お互いに相手の肩へ両腕を回し、ただひたすらにキスを重ねるルカリオとミミロップ。ある時は強く、ある時はついばむように、それぞれの身体に愛の証を刻んでいく。

ほんの数日ではあるが、彼らは愛の語らいを我慢し精神を鍛えていた。それがどれ程辛いことであったか、彼らの熱烈で情熱的な口付けの嵐が物語っている。

ルカリオ「んっ、ちゅ、ちゅっ、ちゅーっ……もうキスが止まらないよ」

ミミロップ「んちゅ、ちゅるるっ……ぺろ。そうね、このまま夜が明けちゃうかも、んんっ」

ミミロップの言葉が終わらないうちに、ルカリオは再び彼女の口をふさぐ。

ふいうちのようなキスにミミロップの口角からとろりと唾液がこぼれるも、それさえ零しては勿体無いとばかりにルカリオはぺろりと舌を使って舐めとってしまう。

あまりに情熱的なルカリオにミミロップは更に表情を蕩けさせ、瞳を潤す。その妖艶さにルカリオは更に心を高鳴らせ、より強く彼女を求めた。

まさに相乗効果。彼らの愛は高まるばかりでとどまる事を知らない。

……だからだろう、すぐ近くまでポケモンが近づいている事に、中々気づく事ができなかった。

ミミロップ「んふ、っちゅ、ずっとキスしてるのもいいけど、そろそろ……あ」

ルカリオ「え、どうしたの?」

ミミロップが次の行為を求めようとルカリオから顔を離した時、愛の営みを邪魔する物音にようやく気がついた。

若干名残惜しそうにルカリオから視線をはずして音のする方を見ると、自分達が岩場の隅に置いていた荷物を漁っているポケモンが目に映る。

ミミロップ「また邪魔が入ったわね……」

ルカリオ「……そういう事か。夢中で気づかなかった」

ルカリオも状況を察し、愛の語らいを邪魔された事に苛立ちを覚えつつも、波動で相手のポケモンを探る。

こちらが気づいていないと思っているのか無防備に荷物を漁る小型のポケモン。ルカリオ達はそのポケモンに気づかれないように、お互い抱き合いながらじわりじわりと距離をつめていく。

やがて荷物を漁るポケモン、クチートのすぐ横までやってきたが、それでもクチートは彼らが近づいて来た事に気づかない。

ルカリオはミミロップに目配せし、彼女が頷いた事を確認すると、一気にクチートの正面に回って身柄を取り押さえる。それと同時に、ミミロップは横側からクチートの大顎を押さえにかかった。

クチート「わふ!」

押さえつけられるとは思ってもみなかったのだろうか、クチートは抵抗もできず荷物から引き剥がされ、されるがまま岩場に押さえ込まれた。
 ▼ 245 ルビート@ファイトメモリ 18/06/26 02:20:49 ID:/rlculVM [2/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルカリオ「あっさり捕まえられたな……」

ミミロップ「そうね……」

クチート「はなせ! こにょ! この!」

大顎を掴んでしまえば怖いものは何も無い。

クチートはじたばた抵抗するもルカリオ達との力差は激しく、逃げるどころか満足に動く事すらできない。

必死になって短い手足を上下させている姿を見れば誰もが可愛らしいと思えるのだろうが、愛嬌たっぷりの仕草で相手を騙すのがこのポケモンのやり口。ルカリオ達はそれを知っているからか、クチートが可愛らしく暴れても掴む手の力を緩める事は無い。

クチート「むー……」

やはり油断を狙っていたのだろうか、クチートは観念したように両手をだらりとさせ、ぶすっと頬を膨らませた。

ルカリオ「弁当を漁ってたのか」

ミミロップ「あー、折角もらったお弁当が……」

荷物の方へ目をやると、今日出がけにフライゴンが持たせてくれた弁当がぐちゃぐちゃになっていた。ただ、もう全部平らげた後だったようで、散乱しているのは弁当『箱』だったが。

ミミロップ「人のものを奪うなんて、そんなにおなかすいてたの?」

クチート「…………」

ミミロップが少々厳しい口調で問いかけるも、クチートはつーんとそっぽを向いて答えようとしない。

抵抗を止めた事も計算のうちかとルカリオはクチートの身体を押さえたままでいたが、戦意が全く無いことを波動で読み取ると、ゆっくりとクチートを開放する。

ルカリオ「一匹なのか?」

クチート「…………」

やはり何も答えない。自分だけで弁当を食べ切ってしまったところを見ると、群れからはぐれたか最初から一匹で暮らしているかだろう。

不貞腐れているのは罪悪感からか危機感からか。無言相手の押し問答を避けられそうにないと、ルカリオは大きくため息を吐いた。
 ▼ 246 ネコ@エスパージュエル 18/06/26 02:21:14 ID:/rlculVM [3/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
やれやれとミミロップに目配せをするルカリオ。ミミロップも、どうしようも無いとばかりに首を小さく横に振った。

ルカリオ「はぁ……」

ミミロップ「仕方ないわねぇ……」

ミミロップも大顎をおさえていた手を離す。

クチートは不思議そうな顔をして二匹を交互に見たが、すぐに踵を返し、慌てた様子で森の茂みに姿を消した。

ルカリオ「弁当が狙われるとは……自然の中にいるって事、つい忘れてしまうな」

ミミロップ「まだまだ修行が浅い証拠ね、私も気を引き締めないと」

離れた場所に物を放置すれば置き引きに遭うなんて、普段の生活の中でも当たり前のこと。増してやここは、人間達の生活から離れた自然界、とりわけ食料などが高確率で被害に遭うのは自明の理。

ミミロップ「ねえ、これ夕飯調達しないとって事よね?」

ルカリオ「そうなるね……図らずも身体を動かすハメになったか」

ミミロップ「ま、ゆっくりしてちゃダメって事よ。木の実探しに行きましょ」

ルカリオ「だね。よし、ちゃっちゃと集めるか」

夕飯を盗られてしまった事よりそういった危険性に目を向けきれていなかった事への反省が強いのだろう、ルカリオ達はクチートについて不満を漏らす事は無いようだ。

ルカリオ「そういやミミロップちゃんっていつも木の実持ってるよね」

ミミロップ「ヨプの実のこと?」

ルカリオ「そうそう。俺その実食べた事ないんだけど、美味しいの?」

ミミロップ「大会とか以外の時間は常に隠し持つようにしてるから今あるけど、食べてみる?」

ルカリオ「おっ、いいの? やった、一度は食べてみたかったんだよね」

ミミロップは赤い実を取り出し、ルカリオに渡す。

ミミロップは何故か両耳を抱いてクスクスと笑っている。ルカリオは、それに気づくべきだった。
 ▼ 247 ダリン@プラスパワー 18/06/26 02:21:32 ID:/rlculVM [4/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルカリオ「ひえ、なんだこれ、辛苦い!!」

ミミロップ「あははっ、やっぱり美味しくないわよね〜」

ルカリオは、吐き出すことこそなかったが、咀嚼をやめなんとか呑み込みひぃひぃ言っている。

ミミロップ「できれば私もあんまり食べたくないのよねそれ。戦う時に仕方なく、って感じ」

ルカリオ「格闘の技の威力が弱まるんだよね……ふへぇ、これこんな味してたんだ」

ミミロップ「効果を優先するためのものだしね。調理次第ではあるだろうけど」

ルカリオ「うぅ……こうなったらさっさと甘い木の実探して口直ししないと」

ミミロップ「ルカリオは甘いの好きよね〜、よしよし」

ルカリオ「子ども扱いするなー!」

賑やかに森を進む二匹。この辺りもフライゴン達がいた地区の影響を受けているからか、あまり野生のポケモンは見られない。

ポケモンの生息具合からも木の実が生る木の群生地を探れるのだが、この様子では期待薄である。地道に歩いて探すしかないようだ。

ルカリオ「はぁ……でも、ミミロップちゃんだって渋いのダメじゃん」

ミミロップ「え、その話蒸し返すの?」

ルカリオ「なんか悔しいから」

ミミロップ「まぁ可愛い」

ルカリオ「ってか俺が苦いの好きじゃないの知ってるくせに……」

ミミロップ「だからこそ反応が見てみたかったの」

ルカリオ「完全にドSのそれじゃん……」

ミミロップ「ごめんって、ほら拗ねないの」

声「だあああああうっせえ近所でいちゃいちゃすんな!!」

唐突に、茂みの向こうから声がした。
 ▼ 248 ガジュペッタ@グッズケース 18/06/26 02:21:57 ID:/rlculVM [5/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
駄弁りながらも用心して歩いていたため驚きこそしなかったが、声をかけられるとは思わなかったからか歩みを止め茂みを見る二匹。

相手の出方を窺う意味も込めて何も言わずに黙っていると、ガサガサと草木を掻き分ける音がし、コドラが姿を現した。

コドラ「ちったぁご近所様の迷惑も考えろってんだ!」

ルカリオ「す、すまん」

自然の中で生きていくのに近所迷惑も何もないだろうと二匹は思ったが、ここは素直に謝っておく。余計な火種を進んで作るわけにはいかない。

コドラ「見ねぇ顔だな、新入りか」

ルカリオ「あ、いや、通りがかっただけだ。荒らしたりするつもりはない」

両手を挙げて敵意がない事をアピールする。

コドラは訝しげに二匹を眺めていたが、ルカリオの言葉が信用できると思ったのか大きくため息を吐いた。

コドラ「なに、俺も怒鳴って悪かった。ちと、食い物を盗られてイライラしてたもんでな」

ルカリオ「まぁ、いいさ」

まるで自分達みたいだとミミロップは隠れて笑みを零す。もしかしたら、犯人は同じポケモンなのかもしれない。

コドラ「たくよぉ、今日はもう不貞寝だ不貞寝……」

コドラはもう一度大きくため息を吐くと、ゆっくりと茂みの中へ帰って行った。なんとなく、それを最後まで見送るルカリオとミミロップ。

ミミロップ「普通に話しておしまいなんて、野生も色々ねぇ」

ルカリオ「まぁポケモンの多くはそれなりに他種ともコミュニケーションとったりするしね」

自然の中で生きるのであれば、毎日が生きるか死ぬか。その生存競争は確かに間違ってはいないが、ポケモンの中には比較的温厚な者も多くいる。また、他の動物達と比べても知能が高いためそれなりに話し合う事も可能だ。

獰猛に喰らい合うだけが、ポケモンの野生ではない。

ルカリオ「コドラがいたって事は、近くに湧き水があるかもしれない。案外夕飯は近いかもね」

ミミロップ「だといいけど……いや、待って。水の音するわ、ほんの僅かだけど」

ルカリオ「お、そりゃいいね。案内してよ」

ミミロップ「あっちね」

二匹は先ほどのコドラに遭遇しないよう、近くの茂みに入っていく。

歩く事数百メートル程度。二匹は実の生る木が生い茂る、小さな池にやってきた。
 ▼ 249 チミル@カゴのみ 18/06/26 05:06:22 ID:MX4MO2SI NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 250 ギアナ@いんせきのかけら 18/06/27 22:49:23 ID:GFFwY6.k [1/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




その池は傍にある岩山から湧き出た水が溜まってできており、奥の方では細い川となって下流へと水を押し流している。もしかしたら、どこかで水竜の住んでいた川と合流し、海の方まで流れているのかもしれない。

池のある辺りはゴスの実やマゴの実といった甘い実の生る木々ばかりが並んでおり、その周辺を背の低い雑草が埋め尽くしている。

草木自体は煩雑に生えているため景観としてそう美しいものではないが、ポケモン達が一休みする分にはそれなりに整った水場であるといえそうだ。

ルカリオ「憩いの場みたいになってるのかな」

ミミロップ「かもね。その辺の岩が椅子代わりになるし、日中は沢山ポケモンがやってくるのかも」

ルカリオ「やっぱりホウエンは穏やかだな……ん?」

ミミロップ「え、どうかした?」

ルカリオ「待ってミミロップちゃん、池まで行かない方がいいかも」

ルカリオが急に足を止める。

ミミロップ「何か見つけたの?」

ルカリオ「うん、これ」

ルカリオは少し離れた地面を指差す。

そこには大きな木が一本倒れている。よく見れば、強い力で千切られたような跡があった。

ミミロップ「何かいるのね」

ルカリオ「今はいないみたいだけどね。これ切られた部分が腐蝕してる。おそらく、強い毒も使ったんじゃないかな」

ミミロップ「それって……」

二匹の脳裏をあるポケモンの姿が過ぎる。

ルカリオ「おそらく、ドラピオンだね」
 ▼ 251 ーシャン@メガバングル 18/06/27 22:50:02 ID:GFFwY6.k [2/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ドラピオンといえば、両腕の爪を使って何でもかんでもバラバラにしてしまう、非常に強い力の持ち主。しかも獰猛な性格を持つ傾向が強いドラピオンは、力を誇示するだけでなく、猛毒を使って相手を苦しめる。一説によれば、絶命させた相手に対しても毒を送り込むという執念深さを持つらしい。

ルカリオ「もしかしたら、ここはドラピオンの縄張りなのかもしれない。他にポケモンが見当たらないのは、そのあたりの事もあるかもね」

ミミロップ「なるほど。無闇に飛び込むのは危険か……折角木の実見つけたのになぁ」

すぐ先の池にあるゴスの実やマゴの実はどちらも甘くて美味しいため、多くのポケモン達が好んで食べる。それはルカリオ達も同じで、できれば今日の夕飯には目の前の甘い木の実を用意したい所である。

ルカリオ「ただ、ざっと感じる限りじゃ辺りには何もいないんだけど……」

ミミロップ「気配がないなら、さっと取ってきちゃう?」

ルカリオ「そうしたいけどな……ドラピオンは見かけによらず素早いから」

ミミロップ「でも近くにはいないんでしょ? サンダースじゃないんだし、仮に波動で検知できる範囲に入ってもここまですぐは来れないでしょ」

ルカリオ「そうだね。じゃあ俺は気配を探ってるから、ミミロップちゃん採取お願いしていい?」

ミミロップ「わかったわ。じゃあ、お願いね」

傍の茂みに立ち、周囲の波動を探る作業に入るルカリオ。ミミロップは両耳を立て、できるだけ物音を立てないよう木へ近づき、ぷちぷちと必要な分だけ木の実を採っていく。

ミミロップ「あ」

ルカリオ「ん、どうかし……おや」

クチート「げ」

いつの間にか、近くにクチートがいた。

ミミロップ「また会っ……」

クチート「っ!」

ルカリオ「あ、おい!」

ミミロップは声をかけようとしたが、クチートは彼女の言葉を聞くよりはやく、森の奥へと走って行ってしまった。

ミミロップ「行っちゃった……」

ルカリオ「ああ……」
 ▼ 252 ンダース@ラムのみ 18/06/27 22:50:40 ID:GFFwY6.k [3/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
再び遭遇するとは思わなかったのだろう、クチートはとても驚いた顔をしていた。もしかすると、今度こそ弁当を食べた罰を与えられると思ったのかもしれない。

しかしルカリオはそれ以上に気がかりな事があった。

ルカリオ「(波動で読み取れなかった……)」

ドラピオンを想定して周囲を探っていたとはいえ、ルカリオはクチートの出現を読み取れなかった。近づかれている事がわからなかったどころか、ミミロップが声をあげるまで存在に気づきもしなかった。

ルカリオ「幽霊、じゃないよな、弁当のとき俺つかんだし……」

ミミロップ「木の実採ってきたわよ。って、あれ、どうしたの考え込んで?」

ルカリオ「いや……クチートが来たのに全然気づかなかった」

ミミロップ「私も全然気づかなかったわね、音も無く出てきたし……もしかしてあの子、かなりのやり手とか?」

ルカリオ「うーんまぁここへ来たって事は木の実採りにきたのかもしれないし、もしそうなら気配を消しててもおかしくはないか」

今日初めてここを訪れたルカリオ達ならともかく、この辺りに生息しているであろうクチートであればドラピオンのことを考え狡猾に行動していてもおかしくはない。

ミミロップ「とりあえず木の実は採れたし、戻りましょうか」

ルカリオ「そうだね、戻って晩御飯だ」

ひょい、とゴスの実を一口つまみ、ヨプの実の口直しを今更行うルカリオ。ゴスの実は甘さの中にほんのりと苦味の混じった大人の味だが、この手の苦さは平気のようで、ルカリオは満足そうにそれを味わっている。

ミミロップはそれに対しやれやれと肩をすくめて見せたが、ルカリオが美味しそうに木の実を咀嚼するので自分もひとつゴスの実を口に入れた。

暮れなずむ夕焼けを背に二匹して歩くさまは、まるで買い物帰りの夫婦のようだった。
 ▼ 253 グカルゴ@けむりだま 18/06/27 22:51:22 ID:GFFwY6.k [4/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




修行場所として目をつけていた辺りに戻ってくると、ルカリオ達は新たなポケモンの登場に頭を悩ませる事になった。

丁度ルカリオとミミロップが熱いキスを交わしていた辺りに、一匹のポケモンが座り込んでいる。

今度は何事かと用心して近づく二匹。相手は背を向けているのだが、どうやらこちらに気づいていないようで振り向く事も無ければ後ろを気にする素振りも見せない。

ミミロップ「……あれ、ニンフィアよね」

ルカリオ「また珍しいポケモンがいるんだな……トレーナーが近くにいるのかな?」

ニンフィアはトレーナーとの関係性が進化に大きく関わっているとされるポケモンであるため、野生の状態で生息している事はほとんど無い。となれば、ニンフィアを見てまず人間が近くにいる可能性を考えるのは自然な事だ。

ポケモンにはいわゆる懐きによる進化の例が沢山報告されているのだが、ポケモンが懐いたからといってその人間が全うであるとは限らない。懐きはポケモンと人間の信頼の証ともいえるが、信頼にも色々な形があるのだ。

ミミロップ「ハンターがいるかもしれないわね。用心しないと……」

ポケモンハンターの手口として、無防備な状態のポケモンを配置する事でそれに気をとられているポケモンを捕まえる、というものがある。

今にして思えばクチートもその可能性があったのだが、ともあれニンフィアはそういう使われ方をする事が少なくないらしく、特に警戒心の薄そうな固体には注意した方がいいと聞いた事があった。

ルカリオはミミロップに目配せをし、そっと彼女から離れ、森の方へ意識を集中させた。辺りに人間がいないか確認するのだ。

ミミロップは周囲をルカリオに任せ、ニンフィアの背後へゆっくりと近づいていく。

ミミロップ「(ほんと、全然警戒しないわね……)」

やがてニンフィアのすぐ後ろまでやってきたミミロップだが、それでも後ろを向くどころか顔を上げる事すらしないニンフィアに違和感さえ覚えていた。

しかし、見る限り生身のポケモンであることは確かで、張りぼてであったりぬいぐるみの類であったりする事はなさそうだ。

ミミロップ「(捕まえちゃってもいいのかしら)」

ちらりと横目でルカリオを見るも、ルカリオの方も怪しい人物の影は見当たらないようで、腕を組んで首を傾げている。

とはいえ、先ほどはクチートの出現を事前に察知できなかった。今回も似たような事があっては困るので、二匹は最後まで警戒を怠らないよう周囲を探る事を止めない。

周囲に罠は見当たらない。となれば、ミミロップとしてはこれ以上警戒するものもなく、目の前の存在を捕まえにかかるのがベストと思われる。

ミミロップ「(こうしてても仕方ないしね。よし……)」

ミミロップは意を決し、そっとニンフィアに手を伸ばした。
 ▼ 254 オー@かわらのかけら 18/06/27 22:52:04 ID:GFFwY6.k [5/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ニンフィア「ふぁう!?」

手始めに触手のようなリボンを掴んで手前に引き、相手にのしかかるようにして身柄を取り押さえる。若干乱暴だが、うねうね動く触手を放置したままでは簡単に逆襲されてしまうので仕方が無い。

ミミロップ「食料ならないわよ。何しにきたの?」

ニンフィア「うぅ、く、苦しいです……」

リボンを片手でまとめて引っ張り、結び目のようになっている辺りをもう片方の手で締め上げる。普段ルカリオ相手にやりなれているからだろうか、ニンフィアを拘束するその手つきはとても手馴れたものだった。

ニンフィア「あ、あの、わ、たし、何もしてない……」

わたわたと前足をばたつかせ、苦悶の表情を浮かべるニンフィア。

クチート同様可愛らしい仕草を見せているが、クチートとは違い、ニンフィアは本当にもがき苦しんでいるようだ。

ミミロップ「ここはあなたの縄張りだったの?」

ニンフィア「なわ、ばり? わっ、わかりません、けど、ちょっと、休んでただけで……」

どんどん顔を青ざめさせていくニンフィア。これは本気で危ないと感じたミミロップは、リボンは掴んだまま締め上げていた手だけを緩めてやる。

この様子にルカリオもこちらまでやってきて、他に気配は無さそうだとミミロップに報告した。

ニンフィア「うっ、けほ、けほ……ひ、ひどいです……」

ミミロップ「ごめんね、何か仕掛けられたら困ると思って」

相手に戦意が無いことを確認すると、ミミロップは引っ張っていたリボンからも手を離す。しゅるしゅると勢い弱く、リボンはニンフィアの首元辺りをなで始めた。

ルカリオ「すまない。夕方頃食べ物を盗られてしまったもんだから、ちょっと疑心暗鬼気味になってしまっていてな」

ニンフィア「けほけほ、ぐすん、とても痛かったです……でも、それが野生、ですもんね……」

ハンターの手持ちを疑ったとは言えず、適当に濁して話す。涙目になって時折咳き込むニンフィアを見ていると、罪悪感がこみ上げてきた……なるほど、仮にここまでが演技だとするなら、気をとられてしまうポケモンは多いだろう。

しかし、今回はどうやら杞憂のようだ。周囲に人間の気配は無く、ニンフィアからは敵意の欠片も感じられない。
 ▼ 255 シャーナ@フライングメモリ 18/06/27 22:52:51 ID:GFFwY6.k [6/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルカリオ「実は俺達、この場所を修行場所として使おうと思ってるんだが……この辺りが棲家だったりする?」

お詫びにと、ゴスの実とマゴの実をわけながら話を聞いてみる。急襲された事については怒っていないようで、涙をぬぐってから彼女がルカリオ達を睨む事はなかった。

ニンフィア「い、いえ、私の寝泊りしてる所はもっとあっちの方です」

ミミロップ「なら、何か用事があってここに?」

ニンフィア「まぁ、用事は、あるんですけど……」

ニンフィアは曖昧に返事をして俯いてしまう。何かワケありな様子に、二匹は顔を見合わせた。

ルカリオ「誤解してしまったお詫びじゃないけど、手伝える事あれば聞くよ」

ミミロップ「そうそう。ここでしょんぼりしてても仕方ないでしょ?」

ニンフィア「で、でも、見ず知らずのポケモンにそこまでしていただくわけには……」

ルカリオ「話せない事情があるならあれだけど、別に俺達は気にしないぞ」

どの道この日はトレーニングを行わない事に決めていた。本来であれば二匹の時間を楽しみたいというのも本音ではあるが、見るからに事情を抱えていそうなポケモンを放置するのも気が引ける。

ニンフィア「実はですね……私、クチートを探してるんです」

つい先ほど見たポケモンの名前が出てきたことに驚く二匹。同一固体であるかの判断はつかないが、世間は狭いなどという言葉が脳裏を過ぎった。

ニンフィア「その方には多大な恩をいただきまして……その、複雑な事情があるんですけど、伝えないといけない事があって」

ミミロップ「お礼とか?」

ニンフィア「それもなんですけど……えっと、かなりプライベートな事なので、これ以上は……」

言葉を濁すニンフィア。詳細を聞きたいと強く思ったわけではないのだが、ニンフィアは終始辛そうな顔をして話をしている事が気がかりになり、ミミロップは少し踏み込んで訊いてみる事にする。

ミミロップ「何か悪い事でも起きてるの?」

ニンフィア「そ、それは……話すと、だいぶ長くなりますし……」

ルカリオ「今日は俺達もうする事ないし、そっちさえよければ別にかまわんさ」

水竜の時のように大規模なものについてはこちらから進んで関わる事は躊躇われるが、ポケモン単体による個別な話であれば、修行との兼ね合いを考え許容できる範囲でなら何かしてあげたいとは思う。

ただ、個別による話が実は大規模な問題に繋がっている、という事は往々にしてある。そうなると、大会を優先する以上協力するにも限界があるため、結局話を聞くだけになるという可能性もある。

この辺りの線引きについて、今後は態度をはっきりさせておかないといけないと思いつつ、今回は耳を傾けることにした。
 ▼ 256 ビィ@ジュカインナイト 18/06/27 22:53:37 ID:GFFwY6.k [7/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ニンフィア「どこから話せばいいのでしょう……私は、あるトレーナーのポケモンだったんですけど、同じ人間の所にクチートもいたんです」

ニンフィア「私はワケあって、ブースターと共にそのトレーナーの下を去ったんですけど……あ、ブースターも同じトレーナーのポケモンだったんですけどね」

ニンフィア「私とブースターは色々あって疎遠になってたんですけど、その仲を取り持ってくれたのがクチートだったんです」

頬を少し赤らめてニンフィアは語る。仲を取り持つというのは、ニンフィアの様子からしても恋慕的な意味で間違いないだろう。当時の状況などは彼女の話からはよくわからないが、クチートはいわゆる恋のキューピットとして一躍かっていたらしい。

しかし、弁当を漁っていたあのクチートがそういう立ち回りをする様はあまり想像がつかなかった。

ニンフィア「恩やお礼というのは、そのときの事です。でも、今私が話そうとしているのは……もっと、辛い話なんです」

幸せそうにしていた表情に影を落とし、短く息を吐くニンフィア。本題はここからのようだった。

ニンフィア「トレーナーの下を去った私達は、ある日この森でクチートに会ったんです。それが丁度この辺りでして……」

ニンフィア「一ヶ月くらい前かな、久しぶりに会って色々話をしてたんですけど……彼女が最後に言った話が、ずっと引っかかってて」

ニンフィア「あの子……トレーナーに、『ちょっとここで待ってて』って言われたみたいなんです」

ニンフィアの話に、ルカリオもミミロップも顔をしかめる。

「ちょっと待ってて」の言葉は、おそらくその通りの意味ではないだろう。

もしも今日会ったクチートがニンフィアの探しているクチートだとすると、一ヶ月はこの森でトレーナーを待っていることになる。それを踏まえれば、その言葉がどういう意味を持つのか想像に難しくない。

ニンフィア「クチートは今でも迎えが来ると信じてるんです。だけど、だけど……そんなのってあんまりじゃないですか……」

ミミロップ「それで探してるのね」

ニンフィア「はい。できればそれに納得してもらって、新しい生活を始めて欲しいです。このままじゃ、良くないと思うので……」
 ▼ 257 ーダイル@チルタリスナイト 18/06/28 00:12:21 ID:iX8AoplM NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
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 ▼ 258 ズレイド@シャラサブレ 18/06/28 02:22:11 ID:SVpEoMPs NGネーム登録 NGID登録 報告
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 ▼ 259 ラマネロ@そうこのかぎ 18/06/28 04:21:19 ID:kqrwsvgw [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
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 ▼ 260 援する男◆zoKrwsYAsI 18/06/28 17:10:37 ID:iAc.KA1g NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
メガシエンネ
 ▼ 261 トーボー@みずのジュエル 18/06/28 17:16:00 ID:kqrwsvgw [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
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 ▼ 262 ーシャドー@おまもりこばん 18/06/28 21:55:20 ID:iFG6CWb. [1/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
虐待を働いたトレーナーから逃げたサンダースの話を思い出す。どこの地方に行っても、ポケモンに酷い事をする人間はどうしても存在するらしい。

クチートもその被害に遭ったのだろう、クチートはトレーナーの言いつけを守り、ずっとこの地で待つ事を選んだ。

捕獲されたポケモンにとって、トレーナーの言う言葉は絶対。ポケモンによっては、親トレーナーが「待て」と言えば、それを解除してもらえるまでずっと待ち続ける者もいるのだ。

ルカリオ「酷いトレーナーはどこにでもいるな……」

ミミロップ「まったくだわ!」

怒りをあらわにする二匹。しかしニンフィアは少し様子が違うようで、悲しげな表情を浮かべるばかりだ。

ニンフィア「でも、私がいたときはそんな事する人間じゃなかった……それに、クチートはいわゆるエース的な存在だったし、トレーナーとも凄く仲がよかったんです。♀ですけど、好奇心旺盛だしバトルも好きなんですよ」

ルカリオ「それについては何ともな……ただ、苦楽を共にし一緒に成長してきた仲間を虐待した例もあるからな。人間は心変わりが激しい生き物だ」

すべての人間がポケモンにとって悪い心変わりをするわけでない事は、ルカリオも充分わかっている。ただどうしても、彼らポケモン側からしてみれば、「人間はどうしてこうも簡単に裏切ってくれるのか」という所に答えが行き着くのだ。

現に、トレーナーがポケモンを裏切る話はよく耳にするが、ポケモンがトレーナーを裏切る話は滅多に聞かない。

ミミロップ「とにかく、クチートには状況を理解してもらって、新しい生活を始めてもらいたいのね?」

ニンフィア「はい。私は恩がありますし、クチートにも他の幸せを見つけてほしいです」

クチートがトレーナーに従順であったなら、きっとトレーナーの言葉に自分から背く事はないだろう。最悪、死ぬまでここでトレーナーを待ち続けるかもしれない。

当然、捨てたポケモンの所へ戻ってくるトレーナーなどいない。クチートがどう思って何をしようとも、昔過ごしたような日々を再び送る事は、もうできないのだ。
 ▼ 263 ノヤコマ@ねばねばこやし 18/06/28 21:55:59 ID:iFG6CWb. [2/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルカリオ「よし。とりあえずクチートを探すか。実は俺達、今日クチートに二度も会ってるんだ」

ニンフィア「ええっ、ほんとですか!?」

ミミロップ「あなたの言う子かはわからないけどね。ここでも会ったし、池の方でも会ったわ」

経緯はどうあれ、まずはクチートを探す必要がある。改めて話す事で彼女がきちんと話を聞いて納得してくれるかはわからないが、話ができなければそもそも何も始まらない。

ルカリオ「でも俺達がいると逃げられるかもしれない」

ニンフィア「えっ、どうしてです?」

ミミロップ「えーっと、実は私達の荷物漁ってたからとっ捕まえたのよね……」

ニンフィア「……たぶん、私達が探してるクチートはその子で合ってます。昔から、トレーナーのバッグとかよく漁って木の実やら食べてましたから」

ルカリオ「そうなのか……」

今にして思えば、フライゴンの作ってくれた弁当は人間譲りの、いわば人間の作る料理。それを何の抵抗も無く食べていたという事は、なるほど人間の所で育ったポケモンといえるのかもしれない。

ミミロップ「ん……何この音」

ルカリオ「音? うおっ!?」

ふとミミロップが片耳を上げる。彼女の言葉にルカリオは気を集中させると、何かがこちらへ飛んでくるのがわかった。

慌ててその場から飛び退くルカリオ。その数秒後、彼が避けたところへ炎の塊が飛んできた。

ルカリオ「ぶねー、なんか俺狙われる率高くない?」

ミミロップ「日ごろの行いじゃない?」

ルカリオ「そ、それなら俺よりミミロップちゃんの方が……」

ミミロップ「あ?」

ルカリオ「なんでもないです」

二匹のやり取りにニンフィアは苦笑い。しかしすぐに炎の事を思い出し、彼らの前に立って出た。

ルカリオ「あ、おい危ないぞ」

ニンフィア「大丈夫。今の炎、旦那のですから」
 ▼ 264 ッチャマ@イワZ 18/06/28 21:57:00 ID:iFG6CWb. [3/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ニンフィアが茂みの方に向けて小さくリボンを動かす。すると少し時間を空け、薄暗い森の向こうから小型のポケモンが姿を現した。

ブースター「奥に引っ込んでいろと言っただろう」

ニンフィア「ううん、そうだけど、このポケモン達がここ使いたいって。クチート探すのも協力してくれるって!」

ブースターはじろりとルカリオ達を睨みつける。暫くそのまま黙っていたが、ルカリオ達に敵意がないとわかったのか大きく息を吐いて小さく頭を下げた。

ブースター「……見たところ、ただの野生って感じじゃないな」

ルカリオ「まぁ、それなりに鍛えてはいる」

ブースター「そうか……何かあっても大丈夫そうだな」

ミミロップ「何かって?」

ブースター「この辺りには、凶悪獰猛なポケモンが潜んでいる。俺達は、常にそいつの存在に怯えながら暮らしているんだ」

ブースターは目に力を込めながら奥歯を鳴らす。やはり、どこの地域にも生活を脅かす存在はいるものだ。

ルカリオ「ドラピオンか?」

ルカリオがそう答えると、ブースターは呆気にとられたような、驚いた表情を浮かべた。

ブースター「ヤツと出くわしたのか?」

ルカリオ「いや、あっちにあった池の方に、折れた木があってな。毒で腐蝕してたから、ドラピオンかなぁと」

ブースター「……驚いた。これが野生の力、というやつか」

いつ死んでもおかしくないような野生の世界で生きていれば、いかに自分の身を守れるかが重要になってくる。中でも、危険を察知する能力や知識は最優先で身に着ける必要があるもの。

ルカリオが推測したように、周囲にあるものからどのポケモンが潜んでいてどんな危険があるかを理解できるかどうかで、生存率はぐっと違ってくる。

とはいえ、ルカリオ達は野生のようなそうでないような微妙な立ち位置にいるポケモン。元々持つ知識について野生の力と褒められるのは、少々複雑なものがあった。

ブースター「クチート探し、よろしくお願いできるか」

やっと信用してくれたのだろう、ブースターはルカリオ達に向き直り、しっかりと頭を下げた。
 ▼ 265 ベルタル@レインボーパス 18/06/28 21:57:34 ID:iFG6CWb. [4/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
彼らへの協力は、今夜と明日いっぱいのみという所で話をつけた。フライゴン達の一件からまだ大会に向けての調整が満足に行えていないため、ある程度は鍛錬する時間が必要なのだ。

ブースターもニンフィアもそれで充分だと、二匹揃って頭を下げた。

ミミロップ「流石に真っ暗ね」

ルカリオ「まぁこれが当たり前だよね」

四匹は、ルカリオ達がクチートを見かけた池にまず行ってみる事にし、岩場を離れて森を歩く。

最近までフライゴンの家にいたからだろうか、夜になると灯りのある生活が思い出される。しかし、本来の自然に人工物など一切無い。夜に光が欲しければ、自分で火を起こすなどするしかないのだ。

ブースター「……お前達は、恋人同士なのか」

ルカリオ「恋人っていうか、夫婦だ」

ブースター「そうか」

ルカリオ「……なんだよ?」

ブースター「いや、とても仲が良さそうだから」

ミミロップ「そりゃね」

ルカリオのすぐ横で、ミミロップが誇らしげにふふんと鼻を鳴らした。ルカリオも嬉しくなってミミロップの手をぎゅっと握る。

ルカリオ「でも、お前達も仲良さそうに見えるけど」

ブースター「俺達は……まぁ、色々あった分、そこらのヤツらよりはな」

嬉しそうにも寂しそうにも聞こえる声色でブースターは呟く。ガサガサと茂みをかき分けながら先を歩く彼の表情は、ここからではわからない。

ミミロップ「クチートが仲を取り持ってくれたって聞いたけど」

ブースター「……話したのか」

ニンフィア「えっと、でもそれくらいしか言ってないよ」

ブースター「ならいいが……」

それっきり、ブースターは黙り込んでしまった。
 ▼ 266 ラクロス@ゴーゴーゴーグル 18/06/29 23:59:49 ID:ICXw82cw NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




真っ暗な森の中を、言葉も無く歩く。

どれ程歩いただろうか、もうすぐ池に着くかと思った辺りで、ブースターが歩みを止め月を見上げた。

今日の月は小さい。雨雲の残滓が所々に浮かんでいて月の光を遮っているため、余計にそう見えるのかもしれない。

ブースター「……俺とこいつは、イーブイの頃からの付き合いでな。昔から仲が良かったんだ」

ブースターは空を見上げたまま、話し始めた。

詳細まで話していないというニンフィアの言葉に安堵しつつも、内心では誰かに話したい気持ちがあるのだろう。

だが、淡い光に照らされた彼の表情は暗く、どこか寂しそうに見えた。

ブースター「何をするにもいつも一緒でな、その頃からお互いを意識してたもんだ。同じトレーナーの下でな」

ニンフィア「あの頃は本当に何も知らなかったね。けど、知らなかったからこそ、幸せでいられたのかも」

月を仰ぐブースターにそっと寄り添うニンフィア。ルカリオとミミロップも二匹並んで木に背を預け、同じように空を見上げた。

ブースター「ある日、進化の時が訪れた。俺はブースターに、こいつはニンフィアに進化したんだ」

ミミロップ「進化は、二匹とも望んだ形でしたの?」

ブースター「中々鋭い事を聞くな……進化先自体は、望んだとおりだったさ。ただ……その後の事までは、考えられなかったんだ」

ブースターは視線を地に落とし、小さく息を吐いた。

ブースター「俺達の主だった人間は、フェアリータイプや草タイプのポケモンをよく集めていた。ニンフィアはすぐに皆と打ち解けたが……俺は、そうはいかなかった。全く違うタイプ、それも相性から言って好まれないタイプだからな、進化した途端、皆から白い目で見られたよ」

ブースター「他のフェアリー仲間と楽しそうに話しているニンフィアを見てると……辛かった。今だから言うが、自分が辛いっていうより、ニンフィアがわざわざ俺の方に来て周囲から反感買われるって思う方が辛かったんだ」

ニンフィア「私はそんなのちっとも気にしなかったのに」

ブースター「あの時はそんなのわからなかったし、言われたって信じられなかったさ」
 ▼ 267 リトドン@みかづきのはね 18/06/30 00:00:22 ID:rQq.aGN. [1/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ブースター「まぁ、ニンフィアの気持ちがわからなくなったっていうのも確かにあったけどな……色々考えたさ。どうするのが一番いいのか。それで、俺は距離を置くことにしたんだ」

ニンフィア「あの時は、流石に傷ついたんだからね」

ブースター「悪かったって。もう水に流してくれよ」

ニンフィア「ブースターはね、私が他のポケモン達と仲良くしていられるように、自分から酷い事沢山私に言って嫌われようとしたの。酷いでしょ?」

ミミロップ「うん、酷い」

間髪いれずにミミロップは頷く。対してルカリオはブースターの気持ちを汲みながら話を聞いていたため、複雑な表情を浮かべるしかなかった。

ブースターも、こうもすぐさまニンフィア側に同意されるとは思わなかったからか、しょぼんと頭を下げてしまった。

ブースター「……とにかく、それで少しずつ俺達は疎遠になった。ニンフィアは他のポケモン達と仲良くできる、俺だけが我慢すればいい、そう思ってたんだけど」

ニンフィア「クチートがそんな私達に言ったのよね。『喧嘩したの?』って」

ブースター「無視したかったけど、あいつ一度気にしたらずっと付きまとってくるから……本当は話したくなかったんだけど、事細かく全部説明してやったんだ。そしたら、なんて言ったと思う?」

ルカリオ「仲を取り持ってくれたんだろ? それなら、『気にしすぎ』とか?」

ブースター「はは、これも今だから言うけど、そこまで考えて発言するようなヤツだったら、今の俺達は無いかもしれないな」

ミミロップ「じゃあ何て言ったの?」

ブースター「『アイス食べたい』」

ルカリオ「なんだそれ……」

ブースター「いやうん、普通に意味わからないよな。ただ、その日は暑くてな……俺の長い話を聞いて出てきた、素直な発言だったんだ」

ブースター「俺は余程思いつめてたからか、イラッとするよりも、なんだか必死に説明した自分がバカらしくなってな。俺はこんなに色々考えて融通して我慢してるのに、こいつは俺の話聞いてなんで何の疑問も無く思った事ただ口にできるんだって……」

ブースター「そう思ったら、自分ばっかりが我慢してる意味がわからなくなってね」

ニンフィア「それで駆け落ちする事にしたんだよね〜」
 ▼ 268 ガミュウツーX@チャーレムナイト 18/06/30 00:00:45 ID:rQq.aGN. [2/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ブースター「他にも色々あるにはあったが、大まかにはそんな所だ。俺が色々考え直す事ができたのは、クチートのおかげなんだ」

ブースターは目を閉じ、静かに笑う。

どうしようもないと思いつめた時、全く関係の無い何気ない言葉が救いとなる事はある。思いつめているという事は、ある考えにひたすら集中してしまっているということ。その状態から抜け出すには、内容に掠りもしない方面からの言葉がよく響いたりする。

ブースターはクチートのその言葉で我慢する事を止め、ニンフィアを連れて駆け落ちする事を選んだのだ。

ミミロップ「でも、トレーナーからは逃げてきたって事になるの?」

ニンフィア「そうなりますね」

ミミロップ「あ、今更だけど別に敬語で話してくれなくていいわよ? そういうの全く気にしないから」

ニンフィア「あはは、じゃあ、お言葉に甘えて……」

敬語で話すのは苦手なのだろうか、ミミロップの言葉に、ニンフィアは気の抜けた顔をした。

ブースター「まぁそういうわけだから、その時はトレーナーには申し訳ない事をしたと思ったが……俺達の恩人を捨てるようなやつだ、そういう気持ちも失せた」

ブースターは話し終るや否や、立ち上がる。そして話はもう終わりだとばかりに歩き始めた。

ニンフィア「人間って、本当によくわからない。最初は大切にしていても、急に必要としなくなる。変な生き物よね」

ルカリオ「そうだな……」

人間は、何故ポケモンと仲良くなるのだろう。

人間は、何故ポケモンと仲違いするのだろう。

それらは、一見平等な関係に見えて、その実人間による支配が強い。

人間はポケモンを支配できる。人間はポケモンを操れる。人間はポケモンを使い捨てできる。

もしもポケモンが人間に対して同じ事ができたとしたら、彼らは、世界は、いったいどうなっていただろう。
 ▼ 269 パルダス@じゃくてんほけん 18/06/30 00:01:18 ID:rQq.aGN. [3/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




岩場を離れて約二時間、四匹はゴスやマゴの木が立ち並ぶ池までやってきた。途中で話をしたり辺りが暗く用心して歩いたからだろう、夕方木の実を取りに来た時よりも随分と長い時間がかかった。

ルカリオ「ここが例の池だ」

ニンフィア「そこの池なら、よく木の実を取りにいくわ」

ミミロップ「え、でもここってドラピオンの縄張りじゃないの?」

ブースター「どうだろう……少なくとも俺はここでヤツを見た事はないな……」

ドラピオンはそもそも砂漠に多く生息するポケモンだ。このような森で縄張りを持つ事があるかどうかをルカリオ達は知らないが、どちらにせよ一度出現した事のある場所には再び現れる可能性が高い。

ドラピオンは傍を通りがかる者に襲い掛かる事が多く、一説によると自らの力を誇示しているのではないかとも言われているらしい。その説によれば、そこが元々の縄張りでなくとも自らの力を知らしめるまで一箇所に滞在する事があるのだとか。

ルカリオ「俺はあの辺で折られた木を見た。他に似たようなものは無いから、ここを拠点に暴れ始めている可能性がある」

ブースター「……そんな場所で俺達は木の実を採ってたってわけか」

野生化して暫くとはいえ、ブースターとニンフィアは、元は人間の所で育っていたポケモン。外の歩き方も知らなければ、危機回避の方法も知らない。

ルカリオ達から見てすら、彼らは非常に危うい存在だ。よく今まで無事に生きてこれたと、ルカリオ達は少し心配になった。

ルカリオ「隙を見せれば、次の瞬間には身体が真っ二つだ。これからはもっと用心した方がいい」

ブースター「肝に銘じる……」

ミミロップ「話してるとこ悪いんだけど、何か近づいてくるわ」

ニンフィア「えっ、何か聞こえる?」

ルカリオ「ミミロップちゃんは凄く耳がいいんだ。訓練してるから、集中すれば1キロ程度先の音なら聞き分けられるよ」

ミミロップ「ピクシー程じゃないけどね……ん、池の方に向かってる」

ルカリオ「身を潜めよう。音を立てないように」
 ▼ 270 マージョ@ヤチェのみ 18/06/30 00:02:07 ID:rQq.aGN. [4/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
静寂に包まれた夜の森。かすかな風が木々を揺らしサワサワと音を立てているが、ポケモンや虫の鳴き声などは一切聞こえてこない。

とても穏やかな時間。しかしその静謐を脅かす、乱暴に草木を掻き分ける音がすぐ傍まで近づいていた。

キラキラと淡い月の光を反射している池が静かに揺れる。その水面に、犯人の顔がゆらりと映った。

ルカリオ「やはりドラピオンか……思ったより大きいな」

ニンフィア「水飲んでる……?」

ブースター「こうしてじっくり見たのは初めてだが……迫力がある……」

ドラピオンはルカリオ達に背を向ける形で池に首を伸ばしていた。

しかし、油断はできない。ドラピオンの首は正反対の方を向く事ができるため、その状態でも急にこちらを向いてくる可能性は充分にある。

ミミロップ「今の目的はクチート探す事だし、いなくなるまで待つ?」

ルカリオ「それがいいな。無駄に戦う必要も無い」

ルカリオの言葉にそれぞれは息を殺し、ドラピオンが池から去るのを待つ。

余程咽喉が渇いていたのかドラピオンが顔を上げる気配は中々無い。ただ辺りに小さく水音が鳴り響く。

こういう時間は不思議と長く感じられるもので、実際には一分さえ経過していなくとも体感では五分くらい時が流れたのではないかと思えてしまう。

少し離れた所に潜んでいるとはいえ、何か鋭い音や大きな物音を立ててしまえば気づかれてしまうだろう。

パキ

ルカリオ「!」

枝を踏む音がした。

四匹は顔を見合わせるも、誰も動いてすらいないようだ。

続いてドラピオンを確認する。ドラピオンは物音に顔を上げてはいたが、ルカリオ達の潜んでいるほうは向いていなかった。

ミミロップ「あれって……」

ドラピオンの顔が向けられている方を見る。

彼らの視線の先、そこにはクチートの姿があった。
 ▼ 271 ママイコ@やすうりポン 18/06/30 00:14:06 ID:M2eIO6Mo NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
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 ▼ 272 ラカラ@ハートのウロコ 18/06/30 00:15:47 ID:IpHAoV9A NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
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 ▼ 273 ースター@ロックメモリ 18/06/30 10:03:43 ID:HUIkj3DM NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
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 ▼ 274 ンペルト@きいろのはなびら 18/06/30 14:37:26 ID:Og16ZW4I NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
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 ▼ 275 ガイアス@メタルコート 18/06/30 21:42:25 ID:rQq.aGN. [5/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ドラピオンは突然現れた相手に両腕を静かに上げ、威嚇の体勢に入っていた。

対してクチートは、戦う気が無いのか油断を誘うため欺いているのか、ドラピオンの方には目もくれずゴスの木へとよちよち歩いているばかり。

ルカリオ「……動かないな」

動かないとは、戦況の事。ドラピオンはクチートのふいうちを警戒しているのか、彼女が木の実を採り始め彼に背を向けてもなお跳びかかる様子はない。

近くを通っただけでその者に襲い掛かる獰猛さを持つのが、本来のドラピオン。彼の行動から察するに、もしやこの二匹は何度か刃を交えた事があるのではないか、とルカリオは推察する。

ニンフィア「あ、きゃ」

と、ドラピオンとクチートの様子を覗き込む際に体勢を崩したのだろう、ニンフィアが小さく声をあげ、ガサガサと音を立ててしまった。

その音に反応し、こちらを向くドラピオン。

見つかった、そう思い拳を構えるルカリオとミミロップ。しかし、彼らが攻撃に到る事はなかった。

なぜなら、それよりも先に、木の実を採っていたはずのクチートが隙を見せたドラピオンに飛び掛っていたのだから。

クチート「えやあっ!」

掛け声と共に大顎を振り回し、ドラピオンの腹部目掛けてアイアンヘッドを繰り出すクチート。急襲を受けたドラピオンは攻撃を受けきれず吹っ飛び、背中から地面に倒れる。

しかし、クチートの攻撃はそれで終わりではなかった。ドラピオンが起き上がるより先に彼の所へ走っていき、じゃれつき始めた。

ブースター「じゃれつく……怖い技だ」

ルカリオ「同感」

じゃれつくと言えば非常に可愛らしいイメージのある技だが、実際は言葉の持つ意味からは想像できない程凶悪な攻撃だ。相手に纏わりついてふざけたり甘えたりする……要するに、相手に対し妖精の力を込めた小攻撃を幾度となく繰り返し、一つの技とするのだ。

一人で行うリンチとも言えるかもしれない。それが、彼女達が行う「じゃれつく」である。

ブースター「『邪裂苦』と書こう」

ニンフィア「は?」

ブースターが暢気に地面に漢字を書いていたが、ニンフィアがすぐさま消していた。
 ▼ 276 ガバンギラス@ぎんいろのはね 18/06/30 21:43:06 ID:rQq.aGN. [6/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
散々クチートの攻撃を受けたドラピオンだが、彼女が疲れ出す頃合を見計らっていたのか、途中で腕を振り回し途端に形成を逆転させる。

身体の軽いクチートはそれであっさりと跳ね飛ばされ、近くの木に激突。衝撃で落ちてきた木の実の洗礼を受け、草むらに倒れ込んだ。

そして、今度はドラピオンが攻撃を仕掛ける番となった。カツカツと牙を鳴らし、口元を揺らめかせる。

ルカリオ「あいつ、炎の牙を覚えてるのか」

タイプ相性でいえば、どちらも耐性の高いポケモンであるためお互いに有効打を与える事は難しい。

ただ、両者を比べれば自身のタイプで攻撃を仕掛けていきやすいクチートの方が有利と言えるのだが、ドラピオンはクチートに対して圧倒的有利が取れる技を繰り出す事が可能だ。

本能的にそれを理解しているのか、ドラピオンは惜しげもなくクチートの苦手とする技を使っていく。

クチート「んう!」

目前に迫る炎の恐怖に、受身も気にせず横へ跳ぶクチート。地面を転がりなんとか攻撃を避けるも、続いて繰り出されていた毒づきを喰らってしまう。

爪から滲み出る毒こそ効きはしないものの、強固な鋏が彼女の肌を抉る。頑丈な身体のおかげで突き刺さる事はなさそうなのがせめてもの救いだろうか。

またしても吹っ飛ばされ、今度は岩に激突するクチート。最初は優勢だったものの、どうやら力量としてはドラピオンの方が上手のようだ。

ミミロップ「助けに行った方がいいわよね」

ルカリオ「俺とミミロップちゃんで行く。ブースター達は敵視されると今後がやり辛くなるだろうから、ここで隠れてて」

ブースター「で、でもそこまで頼むわけには……」

ルカリオ「その気が無いなら最初から探しになんて来ないさ」

地を蹴り、クチートへ更なる追撃を仕掛けようとしていたドラピオンの前に躍り出るルカリオ。続けてミミロップも軽やかにステップを踏みながら、ルカリオの横に並ぶ。

新たな敵の襲来にドラピオンはやや動揺したものの、すぐに目つきを鋭くさせ、クロスポイズンを放ってきた。
 ▼ 277 ャオブー@ガブリアスナイト 18/06/30 21:43:56 ID:rQq.aGN. [7/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルカリオ「ふん!」

ルカリオは上半身の動きだけでそれをかわし、伸ばされた腕を掴んでドラピオンに背を向ける。そしてそのまま力任せに前方へと放り投げた。

方向としてはクチートのいる方へ投げ飛ばしてしまったわけだが、その手前ではミミロップが右足を引いて待機している。ルカリオが背負い投げを決めると、ミミロップは待ってましたとばかりに右足を大きく振りぬいた。

ミミロップ「いったぁ……結構硬いわあいつ」

ルカリオ「そりゃそうだよ」

ルカリオに投げられ、野球のそれのようにミミロップに蹴っ飛ばされて森へ飛んでいくドラピオン。木の枝や葉を掻き分ける音がした後、どすんと地面に落ちる大きな音が辺りに響いた。

ニンフィア「すごい……」

ブースター「あいつらマジで強いのな……」

ものの数秒の出来事に、口をぽかんと開ける二匹。クチートはというと、驚きこそしてはいるものの、どういうつもりだと言わんばかりに鋭い視線をルカリオ達に向けていた。

ルカリオ「大丈夫か?」

クチート「…………」

ルカリオが手を差し出す。しかしクチートはその手をとらず、視線を僅かも逸らす事無く目の前まで来たルカリオを強く睨みつけている。

ミミロップ「別に助けたとかじゃないわよ。貴女に会いたいってポケモンがいるから、探してたの」

そう言ってブースター達の方へ顔を向けるミミロップ。しかしそれでもクチートは睨みつける事を止めない。

ルカリオ「えーっと、俺はいない方がいいんだろうか……」

ミミロップ「まぁ私達がいても仕方ないかもね」

クチートにしてみれば、ルカリオ達は盗んだ食料の持ち主という認識でしかない。ブースター達と話すにしても、部外者がいてはやりづらい事も色々とあるのだろう。

ルカリオとミミロップはブースター達に目配せをしてから歩き、クチートの横を通り過ぎた。
 ▼ 278 ュゴン@あおぼんぐり 18/06/30 21:45:09 ID:rQq.aGN. [8/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
クチート「……あいつは、私が倒す」

ぽつり、とクチートが呟く。振り返るも、クチートはルカリオ達に背を向けたままだった。

クチート「約束したから……」

ミミロップ「あっ」

クチートは立ち上がり、物凄い勢いで茂みの向こうへと走って行ってしまった。

ブースター「行っちまった……」

ニンフィア「やっぱり普段からドラピオンと戦ってたのね……」

ブースターとニンフィアはなんとなく追いかけるタイミングを失ってしまったようで、ルカリオ達の所にやってきた。

ミミロップ「やっぱりって?」

ニンフィア「さっき思い出したんだけど……まだクチートがトレーナーといた頃、仲間のポケモンから、クチートが大負けして帰ってきたっていう話を聞いた事があったの」

ルカリオ「ふむ。その相手がドラピオン、って事か」

ニンフィア「わからないけど、そうなのかも」

ブースター「もしそうだとしたら……あいつもしかして、迎えに来てくれないのはドラピオンを倒せないからとか思ってるんじゃ……」

ブースターの言葉に、ニンフィアは視線を落とす。それが正しいかはともかく、彼女の中でそれがしっくり来てしまったのだろう。

もしそうだとするなら、より悲しい事実が彼女を待ち受けていることになる。仮にドラピオンを倒す事ができたとしても、彼女のもとに迎えが来る事は無いのだから。

ニンフィア「……私、やっぱり話してくる!」

ブースター「あ、おい待てよ!」

いても立ってもいられなくなったのだろう、ニンフィアはクチートが去って行った方に向けて走り出した。

すぐさま後を追うブースター。

ルカリオ「俺達も行くか」

ミミロップ「そうね」

戦闘を終わらせたとはいえ、ドラピオンは致命傷を負ったわけではいないだろう。まだ周辺をうろついているかもしれない。

そうでなくとも、もしかしたらクチートはドラピオンの所へ再び戦いに行ってしまったかもしれない。そうであれば、ブースター達も巻き添えを喰らう可能性がある。

そう思うと無防備に走り出したブースター達が心配になり、二匹も後を追いかけることにした。
 ▼ 279 グノム@くろいてっきゅう 18/07/01 10:32:53 ID:7xIghA8c NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
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 ▼ 280 ミロップ@ミクルのみ 18/07/01 19:55:53 ID:7UHgRLPo NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
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 ▼ 281 ャーレム@モーモーミルク 18/07/01 23:18:56 ID:gogESOjE [1/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




真っ暗な森の中を小刻みに跳躍しながら走っていたルカリオ達だが、どうやらすぐ近くに獣道があったらしい、ものの数分で比較的平坦な道に辿り着いた。

どこまで走って行ったのだろうか、クチートの姿はまだ見えない。この暗闇の中、見通しがとても悪い森でクチートのような小さなポケモンを見つけるのは至難の業である。そもそも、こちらの方へ走って行ったというだけで、途中で道をそれたりしていないとも限らない。

ニンフィア「あ……」

しかし、幸運にもクチートはすぐに見つかった。

カナシダトンネルの方へ向かって獣道を進んだ先にある小さな横穴。その中で、彼女は可愛らしい寝息を立てて眠っていた。

ブースター「ここは……」

ルカリオ「棲家、みたいだな……」

クチートの棲家らしきその洞窟を見て、四匹は唖然とする。

洞窟自体はそう大きいものではないが、ルカリオ程度の背丈なら歩いて入れる高さがあって風通しはよさそうだ。

ただ、洞窟内部はお世辞にも綺麗な所とは言えず、崩れてきた岩石や枯れ草などがあちらこちらに固まっている状態。

野生という事であれば清潔感なんてものを気にする者の方が少ないだろう。しかし、クチートはトレーナーと共に育ってきたポケモン、このように薄汚れた場所を寝床にしているのは何とも意外だった。

ミミロップ「掃除する?」

ルカリオ「これが居心地良い、なんてことはないよなぁ……そうするか」

ニンフィア「人間的な考え方かもしれないけど、クチートも♀だもん、お家が汚いなんて可哀想だよ」

ブースター「ああ……しかし、何だってこんなところに……」

クチートは比較的汚れの少ない所を選んで、縮こまるようにして眠っている。四匹は彼女を起こさないようできるだけ物音を立てないようにして、洞窟内の大掃除を始めた。
 ▼ 282 ラミドロ@ニニクのみ 18/07/01 23:19:25 ID:gogESOjE [2/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


クチート「……?」

僅かな物音に、彼女は目を覚ました。薄っすらと瞼を開き、様子を窺う。

ニンフィア「あ、起きちゃった」

ブースター「お、すまんな邪魔してるぞ」

顔を上げれば、見た事のある顔。更に辺りを見回すと、つい最近見た顔も見つかる。

それにはとても驚いたようだが、何より彼女を困惑させたのは、洞窟内が綺麗になっている事だった。

ニンフィア「ここ、掃除したんだよ。すごく汚れてたから」

クチート「……そう」

しかし、ルカリオ達がいることも含め、驚きこそしたが関心は薄いようで、クチートはすぐに瞼を半分落とした。

ニンフィア「おなかすいてない? 木の実、採り損ねたでしょ」

クチート「べつにすい」

お約束というかなんというか。クチートが言葉を言い終わるより先に、彼女のお腹がくぅと鳴った。

ニンフィア「沢山採ってきたから大丈夫だよ」

どこから持ってきたのか、洞窟内には切り株のような形をした木が置いてあった。その上に、ゴスの実が沢山置いてある。

クチートはそれ以上何も言わず、木の上に乗っている木の実を一つ口に運んだ。

ニンフィア「最近どう? 疲れてない?」

クチート「べつに」

ニンフィア「ならいいけど。あんまり無茶したらだめだよ? 身体が強いって言っても、いつまでも同じ調子じゃいられないんだから」

ニンフィアも木の実を口にしながら、まるで母親が言うような事をクチートに言っている。

おそらくこれから少しずつ本題に入っていくのだろう。この場にいては邪魔になると思い、ルカリオとミミロップは静かに洞窟から退出した。
 ▼ 283 ラティナ@タイマーボール 18/07/01 23:20:17 ID:gogESOjE [3/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




ミミロップ「クチート、大丈夫かな」

ルカリオ「どうだろ……すぐ納得できるようなら、こうはなってないだろうからな……」

退出したもののそのままいなくなるのもと思い、外で月を見ながら待つ事にする二匹。

ミミロップ「人間とポケモン、色んな付き合い方があるのよね……」

ルカリオ「そうだな……」

WFCに出ると決めてからでさえ、既に三様の付き合いを見てきた。

人間に裏切られ恨み逃げ出したサンダース達、最後まで仲良くしていたであろうフライゴン達、そして、裏切られてもなお人間を信じ続けるクチート。

おそらくクチートは、親であったトレーナーととても仲が良かったのだろう。エースとして活躍していたとニンフィアが言っていたし、お互いに信じ合った仲だったと思われる。

それが突然、トレーナーは逃げるように去ってしまった。理由も何も告げず、ただそこで待っていろという残酷な命令を残して。

いっそのこと逃がしてくれれば、誰かに託してくれれば、その手の施設に預けてくれれば……方法は様々あるはずなのに、人間はそれを考えず選ばない事が往々にしてある。

ルカリオ「でも、人間と一緒にいることに幸せを感じているポケモンも沢山いる」

ミミロップ「色んな生き方があるからね。一概には言えないわ」

ふと、自分達が人間と暮らしていたらどうなっていただろうと思う。

今のように自由な生活はできなかっただろうが、もしかしたら今よりも多くの強いポケモンと戦ったり、ずっと厳しいトレーニングをしたり、そういった生活を送れていたかもしれない。

事実、それらに憧れ自ら進んで人間に捕まりに行くポケモンもいると聞く。その願いが叶うかどうかは捕まえた人間次第ではあるが、ポケモンにとってのある種の理想が人間と生きる事で見えてくるのだ。

ミミロップ「でも、私は今のままでいいかな。人間といても楽しそうだけど、少なくとも今は、私とルカリオの間に誰も入れたくない」

まるでルカリオの考えている事に答える形で話すミミロップ。それに対しルカリオは笑みを浮かべ、そっとミミロップの頭をなでた。

ルカリオ「俺もだよ。今が、いいんだ」

ミミロップ「ふふ」

クチートは、ニンフィアの話を聞いてどう答えるだろうか。彼女の言葉を受け入れ踏ん切りをつけるか、それでもここで待つ事を選ぶのか。

ルカリオ達とて、生きていく中で今後を左右する選択をしなければならなかった事はあった。クチートにとって、今がその時なのかもしれない。
 ▼ 284 ンキー@くろいヘドロ 18/07/01 23:21:06 ID:gogESOjE [4/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




それから暫くして、地を蹴る音をルカリオ達は耳にした。

何かあったかと洞窟を覗いてみると、丁度クチートがルカリオ達の目の前を通り過ぎて行った。

困った様子で走り去るクチートを見るニンフィア。どうやら、うまくいかなかったようだ。

ルカリオ「……納得してもらえなかったのか?」

ブースター「全く信じてもらえなかった……いつか迎えに来る、絶対来るって」

誰かに何を言われようとも、今でもトレーナーを信じているらしい。それ程、クチートはトレーナーに信頼を寄せいていたのだ。

ミミロップ「……実は捨てられたわけじゃないって事はないの?」

ニンフィア「それはないかな……」

ルカリオ「どうしてわかる?」

ニンフィア「それは……」

ニンフィアは視線を落として座り込んでしまう。心なしか、身体が震えているようにも見えた。

ブースター「……俺が話そう」

ブースターはニンフィアの隣に座り、大丈夫だと声をかけて身体を寄せる。

ブースター「あれはクチートから初めて話を聞いた後、一週間後くらいか、俺達三匹が話をしている時に人間に見つかって捕まりかけた事があるんだ」

ブースター「特にニンフィアは、野生にあまり生息していないポケモンだからな……それはもう執拗に狙われたんだ」

ミミロップ「怖い思いをしたのね……」

ニンフィア「うん……」

ブースター「俺達は必死に逃げたさ。でも、クチートのやつ小さいからすばしっこくはあるけど、歩幅の関係で距離は稼げない。追いかけてきた人間にボールを当てられてね」

ルカリオ「まさか……」

ブースター「いやいや、捕まってはないさ。けど……捕獲されかけたって事は、そういうことだろう?」
 ▼ 285 デッポウ@きあいのハチマキ 18/07/01 23:21:51 ID:gogESOjE [5/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
人間とポケモン、そしてモンスターボールとの関係について、ルカリオ達は聞いた事があった。

人間の所有するポケモンは、基本的には他人がモンスターボールを使って捕まえる事はできない。どういう仕組みになっているのかはわからないが、一度人の手に渡ったポケモンは逃がすなりしなければ捕獲する事は不可能になっている。

ただ親元から逃げるなどして遠くへ離れる事はできるらしいが、その場合も、野生の生活に戻ったからといって他の人間に捕獲される事は無い。

つまり、人間が投げたボールに当たって取り込まれかけたということは、そのポケモンは誰の所有するものでもないということ。クチートに、親はもういない事の証明になっている。

ルカリオ「分類上は野生化してるって事か……」

ブースター「勿論、その話もしたんだがな……」

走って出ていった所から察するに、ブースター達の話を聞いていられなくなって途中で飛び出したのだろう。あるいは、どうしてブースター達は意地悪を言うのかとさえ思っているかもしれない。

それ程彼女は親であったトレーナーを一途に信じ、慕ってきた。たとえ事実と耳にしようとも、納得などいくはずもないのだろう。

ニンフィア「整理する時間が必要なのかな……」

ブースター「それだけならいいんだが……ドラピオンに我武者羅に突っ込んでいないか心配だ……」

自棄を起こすとは少し違うが、ドラピオンを倒す事で迎えに来てもらえると信じているのなら、討伐を急ぐ事は充分に考えられる。

しかし、準備もロクにせず感情に頭の中を支配されているまま戦ったのでは、最悪殺されてしまいかねない。仮に実力が上回っていたとしても、感情が邪魔をして結果に繋げられない事も少なくは無い。

ブースター「……本当にやりきれない。あの人間も、せめて自らの手で逃がすなりしてくれればよかったってのに! わざわざどうして苦しめるような事を……」

ニンフィア「前に聞いたことある。人の手に慣れたポケモンは逃がしても暫くはついてきちゃうから、そうやってついてこさせないようにするんだって……所有している間は、いう事をきくから……」

ルカリオ「自分本位にも程があるな」

ミミロップ「そういう事するなら初めから捕まえなきゃいいのに!」

怒りをあらわにする四匹。だが、今は人間達に憤っている場合ではない。

ブースター「とりあえず、探すか。ドラピオンに喧嘩吹っかけてたら大変だ」

ルカリオ「俺たちも手伝うよ」

ブースター「いいのか……? 本当にすまない」

ルカリオ「明日いっぱいまでは協力するって約束したんだ、気にするな」
 ▼ 286 ランセル@にじいろのはね 18/07/03 01:23:22 ID:Z1QczB9w [1/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




それから四匹は夜が白み始めるまでクチートを探し回ったが、誰も彼女の姿を見つけることはできなかった。

二匹ずつに別れ手分けして探してみるも、クチートはおろかドラピオンさえ見当たらない。

ルカリオ「これ以上行くとフライゴン達の所に戻ってしまうな……」

ブースター「向こうに知り合いのフライゴンがいるのか?」

ルカリオ「あ、いや、まぁ色々あってね。たぶんあっちには行ってないと思う。色々あって誰も立ち入らないエリアになってたから」

ブースター「よくわからんが……あちら側が危険だって話は聞いた事があるな、そういえば」

まだあの川に水竜が住み着いていると思っているポケモンは多いだろう。そうでなくても、一度でも水竜の恐怖を覚えた事があるなら二度とあの辺りに近づこうとは思うまい。

もしクチートの狙いがドラピオンであれば、何のポケモンの気配も感じない場所など向かう意味が無いと思うはず。

ブースター「もう朝になっちまった……無事だといいんだが」

かれこれ探し始めてから数時間が経過している。仮にクチートが洞窟を飛び出した後ドラピオンに喧嘩を売っていたとしたら、既に決着はついているだろう。

ルカリオ「……ドラピオンとは、因縁の仲なのか?」

ブースター「俺も聞いた話だから詳しくはわからん。ただ、人間と共にこの森へ入ったとき、ドラピオンと戦ってボロ負けしたらしい。それからは、ドラピオンを倒すのがクチートと人間の目標になってたとか」

ルカリオ「それでドラピオンにこだわるのか」

信頼しているトレーナーとの共通認識ともなれば、クチートが大切に思うのもよくわかる。この森で待てと言われた理由を、ドラピオンを倒して来いと暗に命じられたと錯覚しても不思議ではないのかもしれない。

ブースター「ただ……俺達がいた頃でさえ、あの人間は強くなる事にこだわってた気はする。そういう片鱗は、確かにあった」

ルカリオ「ほう」

ブースター「フェアリーと聞くと温和なイメージがあるかもしれないが、ドラゴンを圧倒する力を持っているからな。あの人間はその辺りを強く意識していたと思う」

ルカリオ「強さに目が眩んでいった、という感じか。でも、クチートだってフェアリーだし、強いと思うんだが」

ブースター「相性だけの問題じゃなかったんだろうな……もしかしたら、もっと強いクチートを見つけてきたのかもしれない」

ルカリオ「なるほど……」

同じ種族のポケモンでも、それぞれの持つ潜在能力や得意分野は異なる。より強い固体を求めるあまり、時には強い絆で結ばれた相棒でさえ別な誰かに取って代えてしまう事があるという理屈は、間違いではない。

勝負の世界では、時として情は妨げになってしまう。この世界で生き抜くには、究極に言えば思い出や絆など必要ないのかもしれない。
 ▼ 287 ンペルト@タウンマップ 18/07/03 01:23:43 ID:Z1QczB9w [2/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ブースター「……嫌な風に聞こえるかもしれないが、お前たちも強さは追い求めてるんだろ?」

ルカリオ「そうだね。そのために日々鍛錬してるし、その成果を見せる場にも顔を出してる」

ブースター「じゃあ、さ。例えば……例えばだぞ? その、嫁さんと強さと、どっちとるって言われたら……」

ルカリオ「両方だな」

ルカリオはブースターの言葉が終わらないうちに答えを言い切った。

ブースター「いや、どっちか、だぞ?」

ルカリオ「両方だ」

ブースターは質問の意図を理解してもらおうとルカリオを見る。

ブースター「あ……」

だが、その瞬間彼は悟った。

こいつは、本気で言っている。

ルカリオは質問の意図を理解していないのではない。理解したうえで、ブースターの質問に含める期待を見越した上で、彼はそう答えているのだ。

ルカリオ「いや、すまん、的外れというか回答として成立してないというか、ズルい答え方だと自分でも思うよ。ううん、でも、そうだな……どうしてもどっちかって言われたら……」

ブースター「言われたら?」

ルカリオ「うーん、わからん!」

あまりに清々しいルカリオの言葉に、ブースターは思わずガクッとなった。

ルカリオ「まず、ミミロップちゃんは絶対とるだろ? じゃあ強くなる事諦めるのかって言われるとなぁ……」

ルカリオ「そういう状況になったとき、両方とれるように日々努力してるからさ。それでどうにもならないのなら、それは全部俺自身の責任だし。その時どうするかなんて、その時になってみなきゃわかんないかな」

ブースター「そういうもんか……」

ルカリオの回答を聞き、難しい顔をするブースター。そういう事を聞いてるんじゃないと思いつつも、それが「答え」なのだとも思えた。

できれば両方選びたい、だから両方選べるように頑張る。考えてみればそれは当たり前の話で、そもそもこういう選択を必要に迫られていない今考える事自体、ナンセンスなのだと言われている気がした。

ルカリオ「まぁブースターの言う状況になったとしたら……ミミロップちゃん選んで、それから強さ求める方法探すかなぁ? って、やっぱり質問の答えになってないなこれ」

ブースター「なんていうか……とりあえず嫁が大好きな事だけはわかった」

ルカリオ「うん……なんかごめん」
 ▼ 288 ンヤンマ@フォトアルバム 18/07/03 01:24:01 ID:Z1QczB9w [3/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ブースター「……俺達の親だった人間は、選択を迫られた末に、クチートのことを捨てると決めたのかな」

ルカリオ「状況もそれぞれだからね。理由はどうあれ、聞く限りだと最後にその決断はしたんじゃないかな」

ブースター「やっぱり、そうだよなぁ……」

ルカリオ「何か事情があったのかもしれないし、やっぱり悪意に満ちていたのかもしれない。部外者の俺が言うのもなんだけど、悪い方向にはできれば考えたくないんだけどな」

ブースター「……俺だって、本当は嫌いたくなんてないさ。言っても昔は世話になってるんだ。ただ、クチートを残酷に捨てた事が赦せないだけで」

昔はポケモン思いの良いトレーナーだったとしても、どこかで何かが切り替わり、考え方ががらっと変わってしまうのはよくある話だ。

考えが変わる事自体は、人間に限らずポケモンにもありえる事。問題なのは、そうなった際にそれからどういう行動をとっていくかである。そしてそこに、正解と呼べるものは、おそらく無い。

ブースター「別れ方さえ違えば、こんなことにはならなかったはずなのに……」

ルカリオ「残酷だけど、特に懐いていた一匹だから、そうやって捨てざるを得なかったのかもな……」

やりきれない、というのが正直な所だろう。だが、現実は現実として受け止めなければならない。誰が何を言おうと、真実が捻じ曲がる事など無いのだから。

ブースター「くそ……なんでこんなことになっちまったんだ……」

ルカリオ「あんまり深く考えない方がいいと思う。今は、クチートを探して話をする事を考えよう」

ブースター「そうだな……すまん、俺達の問題なのに……」

ルカリオ「かまわんさ……ん、何かいるぞ。この気配は……」

ルカリオが足を止める。彼の視線の先はただ木々が生い茂る景色が広がるのみだが、彼にはそこから何か生物の波動を感じ取れるのだろう。

ルカリオ「この感じ……ドラピオンか」

ブースター「!」

ルカリオはブースターの前に出て戦闘の構えをとる。それから程なくして、池で出会った例のドラピオンが茂みの中から姿を現した。
 ▼ 289 トベター@ネストボール 18/07/03 01:24:44 ID:Z1QczB9w [4/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




静かな森の池のほとりで、クチートは水面に映る自身の顔を恨めしそうに睨んでいた。

クチート「……私は、私」

水面に手を落とし、左右に滑らせる。

ばしゃばしゃという音と共に自身の姿が視界から消えてしまうが、みなもが穏やかになるにつれ、再び同じ顔がそこに現れる。

クチート「っ!!」

それが無性に腹立たしくなって、クチートは乱暴に水面を叩き始めた。

水が跳ねる。身体が濡れる。それでも水を叩き続ける。

やがて水の音の代わりに荒い息遣いが辺りで木霊するようになり、彼女はその場に座り込んだ。

クチート「……寂しい……紅茶が飲みたい……」

どうしてだろう、涙が滲んでくる。

悲しくなんてないはずなのに。泣かなきゃいけない事なんて、何もないはずなのに。

クチート「……私は、待ってる」

大好きなあの人に、待っていろと言われた。だから、クチートは待っている。ただ、それだけ。

クチート「もうちょっとしたら、迎えにきてくれる……」

だって、彼女は一度も約束を破った事なんてなかったから。

クチート「うう……っ、ひぐ、ぐすっ……」

捨てられたんじゃない。ちょっと用事が長引いてるだけ。

もうちょっとしたら走ってここにやってきて、「ごめんね」って言って抱き上げてくれる。

そうしておうちに帰って、あったかい紅茶を飲むんだ。

そしたら、またバトルの特訓をしたりするかもしれない。ドラピオンを倒すって約束した。

頑張ってトレーニングして、作戦を練って、また森に行って戦って……

クチート「ひぐっ、あど、どれぐらい、っぐ、待でば、いいの……」
 ▼ 290 ブカス@きんのはっぱ 18/07/03 01:25:14 ID:Z1QczB9w [5/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




『じゃあ、クチートは今日からウチのエース! 活躍、期待してるからね?』


『こうやってね、森を眺めながら紅茶を飲むの。そしたらすっごく落ち着くんだ。クチートも、一緒に飲む?』


『じゃーん! これ、ネックレスのプレゼント! これね、メガシンカっていうのに必要な石……のレプリカだけどね。いつか本物見つけて、私達の絆、メガシンカ目指そうね!』


『おふとん、ふかふかだねぇ……ふわ、ねみゅい……クチートもおいでぇ……ふふ、落ち着くねぇ』


『ドラピオン……すごく、強かった……悔しいよね、ごめんねクチート、私のせいだよね……でも、次こそは勝つよ。絶対勝とうね!』


『ブースターとニンフィア、いなくなっちゃった……折角戦力アップと思ったんだけどなぁ……クチートは、いなくならないでね……?』


『はぁ、はぁ、やったね、勝ったよ! この所負け続けてたけど、やっぱり勝つと嬉しいね!』


『うーん、そうするとここが難しいなぁ……うん? あぁ、ちょっとね、考え事……ところでさ、クチートって……ステロまける?』


『どうしよう……もうこれ以上は無理なのかな……でも、ここで諦めたくない、まだ走り続けてたいよ……ねえ、どうしよう? どうしたらいいと思う?』


『……なぁんだ、簡単な事じゃん。やっぱりそれしかないよね。わかってはいたんだ……そうしたら、解決するはずだってこと……』


『ねえクチート、ちょっと森の方にいこっか。うん? そうだね、きっと喜んでくれると思うよ……だから、ね?』





『ちょっとここで待っててくれる?』


 ▼ 291 ードラン@ポケじゃらし 18/07/03 07:49:49 ID:OgwUrTOI NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 292 ミロップ@むげんのチケット 18/07/03 07:53:29 ID:8CP.6QUc NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 293 レザード@ひかりごけ 18/07/04 00:58:39 ID:35TAOGSA [1/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




気がつけば、クチートは池のほとりに横たわっていた。どうやら、眠ってしまっていたらしい。

クチート「……?」

ふと、近くでなにやら激しい物音がする。そうだ、自分は物音に目を覚ましたのだと思い出す。

木の下を通って茂みを潜り、音のする方へ。

クチート「!」

池から少し離れた所では、ポケモン同士が戦っていた。

片や自分が倒すと決めたポケモン。片や先日目を盗んで弁当を盗んでやったポケモン。

そういえばその後も彼らは戦っていた。その時はルカリオ達があっさりと勝負を決めてしまっていたが、今回はどうやらそうもいかないようだ。

ルカリオ「こいつ……」

ドラピオン「シャアアアッ!!」

ドラピオンがルカリオに突進していき、シザークロスを放つ。

ルカリオは跳躍してそれを回避し、上空から容赦なく波動弾の雨を降らす。

巻き起こる砂塵。

それが晴れるよりはやく、ドラピオンは地を蹴りルカリオ目掛けて辻斬りを仕掛けた。

ルカリオ「くっ!」

身体をひねって攻撃をかわすルカリオ。しかしそれだけでは追撃を免れないと判断し、ドラピオンの伸びた腕めがけてもう一度波動弾を放った。

その反動を利用し、ドラピオンと距離を取る。腕へのダメージが想定以上だったのか、ドラピオンはそれ以上深追いしてこなかった。

ルカリオ「覇っ!!」

追撃が来ないという事は、体勢を立て直しているか様子見をしているという事。ならば満足にそれらを行えないうちに攻撃を仕掛けていけばいい。そう思い、ルカリオはインファイトを打ち込もうと間合いへ飛び込んでいく。

ルカリオ「ちっ!」

だがそれを予想していたのか、ドラピオンは真横に移動し攻撃を避ける。間合いを狂わされた事でルカリオはインファイトを諦め波動弾に切り替えようとするも、ドラピオンは想像以上に遠くまで距離を取っていてこれまた撃つに撃てなかった。

ルカリオ「(なんだこいつ……動きが妙だ)」
 ▼ 294 ウカザル@ヨロギのみ 18/07/04 00:59:05 ID:35TAOGSA [2/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルカリオはドラピオンの動きを不審に思い始めていた。

ドラピオンは、攻撃こそしてくるものの深追いは決してせず、その後はしばらく防戦一本となる。中でも回避行動は必要以上に行うようで、ルカリオのちょっとした攻撃に対しても大きく距離を取るなど大袈裟な反応を見せる事が多い。

ルカリオ「(追撃を警戒して? いや、それにしてもそこまで離れなくとも……)」

もしやと思い、ちらりと自分の立ち位置を確認する。

今ルカリオが立っているのは、森の少し開けた草原地帯。草原とはいえ生えている草は低く、足首が隠れる程度のものばかりで見通しは良い。

そういえば、戦闘を開始した時は木々が密集している辺りだった。それが、いつの間にか視界の開けたエリアまで移動してきている。

ルカリオ「そういうことか!!」

ふと感じた気配に、ルカリオは後方へ大きく跳ぶ。

次の瞬間、彼のいた場所に何かが飛来し、小さく爆ぜた。

ルカリオ「ちっ!」

着地して落ち着く間もなく、次の何かがルカリオ目掛けて撃ち込まれる。放たれたそれは植物を呑み込み、地面を薄黒く覆った。

ヘドロ爆弾。どうやら、視界の届かないどこかからルカリオのことを狙っているらしい。

ルカリオ「そこか!」

グライオン「ギッ!」

しかし、相手が悪かった。ルカリオは開いた二つの目で見えずとも、波動といういわば第三の目で相手を見る事ができる。それも圏内であれば視認できない範囲まで及ぶため、どこに隠れようとも位置を特定する事ができるのだ。

隠れている場所を特定され、撃ち込まれた波動弾を回避して現れたのはグライオンだった。化けサソリと牙サソリ、似たもの同士で手を組んでいるらしい。

身を晒す事になったグライオンはすぐさま別な木の影に飛び込んでいき、姿をくらます。その動きも波動で読み取れるのだが、今度は攻撃の狙いを定められないよう常に動き回っているようだ。

ルカリオ「うおっ!」

グライオンに気をとられている隙に、ドラピオンのミサイルバリが飛んできた。なんとかかわすも、今度はそこへグライオンのヘドロ爆弾が炸裂する。

連携された攻撃とはいえ避ける事自体はそう難しくないが、攻撃に転じる事が難しくなったのは確かだ。
 ▼ 295 ルマッカ@いかりまんじゅう 18/07/04 00:59:35 ID:35TAOGSA [3/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルカリオ「あれを使うか!」

ミサイルバリとヘドロ爆弾の猛攻をかわしつつ、ルカリオは置いておいた荷物の「棒」を手に取った。

勿論それはただの棒ではない。旅の間は荷物を引っ掛けるなど別な事に使われるのだが、戦闘に使うとなれば立派な武器になる。

友人のガラガラに工面してもらって譲り受けた、硬い硬い骨棍棒である。

ルカリオ「ふっ!!」

得物を手で回し、ミサイルバリを落としていく。

ドラピオンは新たなルカリオの対応に驚きハリの量を増やすも、ルカリオは正確にすべての攻撃を弾き飛ばしてしまう。

ブースター「す、すごい……」

その動きはまるで舞のよう。

ルカリオはまるで、骨棍棒という剣を使い、華麗に演舞を披露しているようだ。

ルカリオ「…………」

避ける攻撃が一つであれば、そう身体を動かす必要も無い。ルカリオはハリを骨ではじきつつヘドロ爆弾を最小限の動きで回避し、次の算段を考えた。

目を細めて意識を集中させる。

狙うは、ハリの雨が少なくなったライン。そこを見極める事ができれば、一気に攻撃を崩す事ができる。

ルカリオ「(……まるで、ガブリアスとやり合ってた頃みたいだ)」

幾重にも攻撃を重ねているドラピオンだが、いつまでもこの状態は続かない。次第にハリの勢いも緩くなっていき、疲れが見え始める。

当然その隙をルカリオは逃さない。

グライオンがヘドロ爆弾を撃ち込んだ直後の隙間を狙い、ドラピオンの放つミサイルバリの猛攻が一番薄くなった所へと得物を強く投げ飛ばした。

ルカリオ「……やったか?」

得物がめり込む音がした。

ミサイルバリの攻撃が止んでいる。少なくとも、ドラピオンの猛攻を阻止する事には成功したようだ。
 ▼ 296 ガボーマンダ@4ごうしつのカギ 18/07/04 01:00:02 ID:35TAOGSA [4/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルカリオ「しまった!」

果たして、ドラピオンは骨を腹部にめり込ませうなり声と共に倒れこんだ。

だが、敵は想像以上に行動を起こすのが早かった。

あるいは最初からそれを狙っていたのだろうか、ルカリオがドラピオンに攻撃を仕掛けるのとほとんど同じタイミングで、グライオンが茂みに隠れているブースターに尻尾を突きたてようと飛翔していた。

ブースター「うわああああ!」

ルカリオ「ちっ!」

自分が狙われると思っていなかったのだろうか、ブースターはグライオンが攻撃の目を自分に向けていると気づき大声を上げる。

しかしその頃にはもうグライオンは急降下を開始し、彼の鋭い尾がブースターのすぐ傍まで近づいていた。

ブースター「ぐえっ!!」

ルカリオ「ぐっ!!」

この距離では急降下するグライオンに攻撃を当てるのは難しい。そう判断したルカリオは神速でブースターを突き飛ばし、代わりに自分が攻撃を受けた。

グライオンの尾がルカリオの肩に突き刺さる。急所から外れているのが不幸中の幸いと言った所だが、状況は最悪、この状態、完全にグライオンの間合いだ。

ルカリオ「く、この、離せ!」

毒こそほとんど受け付けないルカリオの身体だが、グライオンの尾は彼の肉体に深く食い込み、そう簡単には剥がれそうにない。

対象に尾を突き立てたグライオンは、動きの鈍った相手に自慢の爪や牙で猛攻を仕掛ける。尾を引き抜かない限り、グライオンの間合いから逃れる事はできない。この状態では、グライオンのどんな攻撃も、避ける事ができないのだ。

最高のポジションを得たグライオンが選択する攻撃は、出来うる限り最大の大技。何をやっても命中が見込めるこの状態を活用しない筈がない。

ルカリオ「くっ、これは、まず……」

ニヤリと、グライオンが口角を吊り上げる。

そして両手の鋏を大きく開き、ルカリオの首筋へ刃を押し当てた。
 ▼ 297 ノガッサ@ロックメモリ 18/07/04 08:14:49 ID:3X9kEpkc NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
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 ▼ 298 ノンド@のこされたボール 18/07/04 08:16:57 ID:5Lv6VIoY NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
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 ▼ 299 ルッグ@カビゴンZ 18/07/05 08:02:07 ID:G.8gYTiw NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
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 ▼ 300 ーランス@サファイア 18/07/05 23:00:00 ID:28MUeZpg [1/20] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




瑠璃色の帳が静かに上がり、朝焼けによる暁の空がシダケタウンを柔らかく包み込んでいる。

田舎町の朝。穏やかな空気に満たされるこの場所では、明朝となるこの時間に人の動きは見られない。

自然の中に立ち並ぶ家々はまだどれも暗いままで、唯一この町に少々場違いなコンテスト会場の建物だけが淡くライトアップされている程度だ。

そんな光景を、少し離れた森の中からミミロップとニンフィアが眺めていた。

ニンフィア「……ここは変わらないわ。ずっとずっと、穏やかなまま」

ミミロップ「ホウエンは、そういう場所が多いわよね」

ニンフィア「ミミロップさんは、どこの出身なの?」

言われて、そういえば全く自分達の話をしていなかったと思い出す。色々と相手の話は聞いているというのに自分達の事を何も伝えていないこの状況に、ミミロップは苦笑いを浮かべた。

ミミロップ「私達はシンオウ出身なんだけど、仲の良い知り合いがホウエン出身なの。だから、色々と聞いた事があるのよ」

ニンフィア「そうだったんだ」

ミミロップ「里帰りについていって一回来たことはあるけど、今みたいに長い間いるのは初めてね」

ニンフィア「ここは気温もあったかいでしょ?」

ミミロップ「そうね。シンオウはどこにいても寒いから、余計にそう感じるわ」

ニンフィア「シンオウかぁ。一回行ってみたいな。まぁ、ホウエンですらロクに回った事はないんだけど……」

ニンフィアはどこか寂しげな目をしてシダケの町並みをぼんやり眺める。

ニンフィア「穏やかな地方、穏やかな町……私達は、ここで育ったの」

よく見れば、彼女の視線はある場所に向けられていた。

幾つか立ち並ぶ家のうちの一つ。森の木々がすぐ傍にある、表の白いポストが特徴的な家だった。
 ▼ 301 リーン@オレンのみ 18/07/05 23:00:36 ID:28MUeZpg [2/20] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミミロップ「……あの中に、例の人間がいるのね?」

ニンフィア「うん……まぁ、私はここを出てから一度も戻ってきてないから、もう引っ越してるかもしれないけどね」

ニンフィアのその言葉は、ミミロップには少し意外に聞こえた。

きっと、逃げてしまった罪悪感やクチートへの処遇に対する怒りが彼女をこの町から遠ざけていたのだろう。ただそれでも、一度くらいは親であったトレーナーがその後どうしているか様子を見に来た事があると思っていた。

ミミロップ「じゃあ、その人間のこと全く知らないのね?」

ニンフィア「うん……ここへ来ると昔の仲間にも会うかもしれないし、どんな顔して話せばいいのかわからなくて」

なるほど、ここへ来辛かったのは別な理由だった。

何の連絡も無しに突然いなくなったのだ、他の仲間がどう思っているか、どんな言葉を投げかけられるのか、それを知るのが怖いと思っても仕方ない。

ミミロップ「じゃああれから初めてなわけね……よかったの? ここまで来ちゃったけど」

ニンフィア「いつかは、見てみないといけないと思ってたから」

そう言ってニンフィアは一歩踏み出す。どうやら、家の近くまで行くらしい。

ニンフィア「ふう……」

森からすぐ近くにある、その人間の家。二匹が茂みから飛び出し目的地へ辿り着くまで、そう時間はかからない。

一匹で行くのではなく、事情を多少知る他のポケモンが一緒というのも、彼女の背中を押す理由となっているのだろう。一度も来ていないと言う割に、彼女の足取りはあまり重くはなさそうだった。

ニンフィア「あっ」

ミミロップ「誰か来るわね。とりあえず隠れましょ」

家の正面までやって来たあたりで玄関が開く。二匹は慌てて走り出し、庭の方へ。

去り際にミミロップは横目で出てきた人間を確認する。中から姿を現したのは、三十代くらいの女性だった。
 ▼ 302 ブソル@メタルコート 18/07/05 23:01:16 ID:28MUeZpg [3/20] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミミロップ「裏手に来ちゃったわね……」

そこはこの家の裏庭にあたる場所だった。ただ、庭とはいえすぐ近くが森という事もあるのか、敷地を区切る柵などは存在しないようだ。

ミミロップは辺りを警戒し見回しながら少しずつ歩くが、ニンフィアは裏手に来るなりどこかに向けて一直線に歩いた。

ニンフィア「懐かしいなぁ。こっちの庭には大きな木があって……そこでよく、戯れたりしてた」

ニンフィアは裏庭に生えている大きな木の下に座り、それを見上げている。その表情はどこか物悲しく、とても主だった人間を恨んでいるようには見えない。

彼女とて、主であった人間がクチートを捨てたなどと思いたくないのだろう。もしかしたら、真実をその目で確かめるのが怖くて、今までここへ来なかったのかもしれない。

ミミロップ「それにしても、広い家ねぇ……そこの部屋には誰もいないみたいだけど」

思い出に耽っているのか、ニンフィアは木を見上げたまま動く気配がない。

人間が近づいてきそうな音や気配がしないので、ミミロップは家の中を覗き込んでみる事にした。

裏庭から見る家はオープンテラスのようになっていて、透き通った広く大きい窓から家の中の様子がはっきり見える。そこは客間になっているのだろうか、畳が床に敷き詰められた部屋だった。

ミミロップ「物がほとんどなくて片付いた部屋ね……あら?」

室内にはテーブル一つしか置かれていないと思ったミミロップだったが、よく見てみれば部屋の端に別なものを見つける。

黒く大きな壇、丸い入れ物、両端に花。そして、中央には若い女性の写真が置かれていた。

ミミロップ「これってまさか……」

声「あら、ポケモン?」

ミミロップ「!」

突然後ろから声がした。

慌てて振り向くミミロップ。中の光景に集中していたため、足音に気づかなかった。

女「どうしてこんなところに……森から迷い込んできたのかしら」

ミミロップ「みみっ!」

ミミロップは女性が歩き出すより先にその場から跳び退き、ニンフィアを抱えて森まで走った。

逃げる必要は無かったのかもしれない。

見たところ無害そうな人間だった。人間と馴れ合うつもりは無いというのもあるが、それよりも彼女は部屋の中に見た光景について今は考えたかった。

ミミロップは、あれがどういうものか知っている。そしてそれが意味するところも、すぐに思い当たる。

もしも、彼女の考えている事が正しいとしたら……クチートは、もしかして……
 ▼ 303 バルオン@おおきなねっこ 18/07/05 23:01:40 ID:28MUeZpg [4/20] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



ニンフィア「び、びっくりした〜」

ミミロップ「警戒がおろそかになってたわ、ごめん」

森に入り、念のためそのまま走り続ける。町が見えなくなった辺りで足を止め、ニンフィアをそっと地面に下ろした。

ニンフィア「見つかっちゃった……大丈夫かな」

ミミロップ「追っては来ないみたいだし、大丈夫でしょ。元親って、あの人間……じゃないわよね」

ニンフィア「うん。あれは主だった人間のお母さんだよ」

ミミロップ「そう、やっぱり……」

ミミロップは静かに目を伏せた。

ニンフィア「……どうかしたの?」

ミミロップ「……仏壇、って知ってる?」

ニンフィア「え? う、うん、一応知ってはいるけど……」

ミミロップ「なら、話は早いわね……仏壇がね、あの家にもあったの」

ニンフィア「そ、そうなの? でも、仏壇なんてどこの家にもあるんじゃ……」

ニンフィア「え……ま、まさか……?」

ミミロップ「…………」

ミミロップが部屋の中で見たもの、それは仏壇だった。そしてそこに立てられている写真に写っていたのは、若い女の子の写真。

ミミロップ「……たぶん、貴女達の主だったトレーナーの、仏壇よ」
 ▼ 304 シギバナ@チーゴのみ 18/07/05 23:02:20 ID:28MUeZpg [5/20] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ニンフィア「そ、そんな……嘘でしょ……?」

ミミロップ「私にはそれが当人かどうかはわからない。けど、仏壇の写真に女の子が写ってたのは確かよ」

ニンフィア「じゃあ……あの人はもう、死んで……」

その場に崩れ落ちるニンフィア。ミミロップはそれを優しく抱きとめる。

ミミロップ「経緯も何もわからないけど……もしかしたら、クチートが他のトレーナーのボールを受け付けるようになったのは、主が亡くなったからじゃないかと思うの」

ニンフィア「…………」

ポケモンは、ひとたび人間にモンスターボールで捕獲されればその人間を親として受け入れることになる。その人間が生きている限り、そのポケモンはその人間のパートナーであり、誰も割って入る事のできない物理的な繋がりが生まれる。

親となるトレーナーが死去した場合、残されたポケモンは逃がす処理がされるか別な誰かに預けられる。きっと彼女のポケモンは受け取り手がいなかったのだろう、彼女が亡くなってしまい、皆外へ逃がされてしまったのだ。

ニンフィア「……じゃあ、クチートは、捨てられたわけじゃないって事?」

ミミロップ「それは、わからない。亡くなったのはその後のことかもしれないし……」

ニンフィア「そう、よね……」

ただはっきりしているのは、ニンフィア達の親トレーナーは既にこの世におらず、彼女の所持していたポケモンはおそらく野生へ返されたという事。たとえクチートはその前に捨てられていたとしても、もう怒りをぶつける相手はこの世にはいない。

ニンフィア「こんなの、あんまりだよ……捨てられたんじゃなくたって、やっぱり迎えにきてもらえない……どういう事情があったって、クチートはもうあの人間に会えない……」

ニンフィア「クチートが、可哀想だよ……うっ、ううう……」

誰が見ても捨てられたとわかるような状況でも、クチートはトレーナーを信じて待ち続けた。

たとえ捨てられていたとしたって、トレーナーに会いに行く事はできただろう。自分を置いてくれと甘える事も、捨てられたことの怒りをぶつける事も、いずれできるはずだった。

だけど、もうできない。

すべては、生きていればこそ。生きているから、どんな感情でもぶつける事ができる。
 ▼ 305 シャーモ@ゴスのみ 18/07/05 23:02:53 ID:28MUeZpg [6/20] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ニンフィア「……伝えなきゃ」

ゆっくりと立ち上がり、歩き出す。

たとえ捨てられたわけじゃなくても、クチートがあの場でトレーナーを待ち続ける意味はもうなくなってしまった。

ならばもう、前を向いて歩くしか道はない。今度こそそれを納得してもらわなくてはならない。

ミミロップ「……そのまま伝えるの?」

ニンフィア「信じては、くれないかもしれないけどね……」

だがそれでも、捨てられたと話していたこれまでとは事情がまるで違ってくる。

おそらくクチートは彼女の話を聞いて、親であったトレーナーの家へ向かうだろう。そしてそこで、真実を確かめるのだ。他でもない、彼女自身の目で。

ニンフィア「……無意味かもしれないけど、私もまだ完全にそう思ってるわけじゃない。私だって、仏壇の写真を自分で見たわけじゃないからね」

ミミロップ「……そうね」

それでも、ほぼ確実にそこに写っているのは彼女だろうとニンフィアもわかっている。

彼女はあの家の一人娘だった。さっきあの家で出くわしたのは、紛れも無く彼女の母親だった。それだけで、実物を見ずともミミロップの言う事が正しいとわかる。

あとは、信じたくないという気持ちだけ。どんなに整った状況を否定しようとも、実物をその目で見るまでは一縷の望みを残しておきたい。たとえそれが、どんなに無意味なものだとしても。

ニンフィア「きゃっ!」

声「いてぇ!?」

ニンフィアが茂みに入っていくと、何かを踏んづけバランスを崩す。慌ててミミロップが彼女の身体を支えるも、踏まれた何かが起き上がってきて、ニンフィアは大きくこけてしまった。
 ▼ 306 ヤコマ@ひこうのジュエル 18/07/05 23:03:31 ID:28MUeZpg [7/20] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
そこにいたのはコドラだった。大きな体の割りに小さな尻尾をぶんぶんと振り回し、あんぐりと大きく口を開けて唸っている。

コドラ「いってぇなぁ……誰だ俺の尻尾踏んだやつは」

のそのそと巨体を揺らし、二匹の前までやってくるコドラ。

そういえばこの辺りへ初めてきたときもコドラと出会ったなとミミロップは思い出した。

ニンフィア「そ、その、ごめんなさい。私、急いでて、はやくクチートに会わなきゃいけなくて……」

コドラ「だからって尻尾踏むやつがあるかよ! 折角寝てたってのによぉ……」

コドラは不機嫌に前足を踏み鳴らす。それを見たミミロップはニンフィアとコドラの間に割って入った。

ミミロップ「ごめんなさい、踏んだのは謝るわ」

コドラ「謝って何でもすむかっていうとそうじゃ……あ? お前どっかで……あぁ、この前会ったな」

ミミロップ「あら、やっぱり先日のあなたなの」

やはり、あの時会ったコドラは彼で間違いないらしい。顔見知りという程でもないが、一度は見た顔にコドラの表情も少し緩む。

コドラ「急いでるって言ってたけど……なんかワケありか?」

ミミロップ「ちょっと会いたいポケモンがいるのよ。あなた、クチート見なかった?」

コドラ「クチートだって……?」

コドラが急に神妙な顔つきになる。どこかで見かけた事があるのだろうか、彼は何かを思い出すように空を見上げた。

沈黙するコドラ。先を急ぎたいところではあるが、何かを知っていそうな彼に、ミミロップ達もその場を離れられない。

コドラ「……なぁ、俺さ、ちょっと前に大事なモン預かったんだ」

やがてコドラが彼女達の方を向いたと思うと、期待していたものとは違った言葉が返ってきた。
 ▼ 307 ツベイ@マゴのみ 18/07/05 23:04:01 ID:28MUeZpg [8/20] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ニンフィア「あ、あの」

コドラ「いや、すまん。クチートの居場所は知らないんだが、お前さんたちクチートを探してるなら渡したいモンがある」

そう言ってコドラは近くの茂みを漁り、何かを転がしてニンフィアの前に持ってきた。

ニンフィア「これは……」

コドラ「それが何なのか俺には全くわからん。ただ、俺はあるとき、これを人間に渡されたんだ」

コドラ「もしもこの森でクチートに会う事があれば、渡してやってくれって」

ニンフィア「!!」

ニンフィア「そ、それって、どんな人間でした? その人は今、どこに……」

コドラ「ど、どんなって……それは正直あんまり覚えてない。けど……」

ミミロップ「けど?」

コドラは何かを話そうとして、一瞬言葉を詰まらせる。しかしすぐに咳払いをして、再び二匹に向き直った。

コドラ「俺が町から少し離れた森を歩いてたときだ。人間の声が聞こえたんだ。そこに行ってみると、その人間がいた」

コドラ「そいつは俺を見るとな、迷わずそれを渡してきたんだよ。で、クチートに会ったら渡してくれと。それでその後、そいつは……」
 ▼ 308 キジカ@ちからのねっこ 18/07/05 23:04:38 ID:28MUeZpg [9/20] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告





ミミロップたちがそこへ辿り着いた時には、状況は最悪のものとなっていた。

地面に横たわるルカリオ。大木を背に蹲るクチート。そして今、ブースターがドラピオンとグライオンに岩場へと追い詰められていた。

状況を察し、出会いがしらに跳び膝蹴りをお見舞いするミミロップ。思わぬ攻撃にドラピオンは後方へ大きくすっ飛び、頭から地面に激突した。

何が起きたかわからず首をきょろきょろさせるグライオン。しかし状況を察する間もなく、続けざまにミミロップの放った冷凍パンチが顎の辺りにクリーンヒットした。

ミミロップ「ちょっとルカリオ大丈夫?」

ルカリオ「う、み、みろっぷ、ちゃ……」

ルカリオは地面でぐったりしているが、意識はあるようだ。ミミロップの登場に頬を緩ませ、できる限りの笑みを作っている。

ブースター「ごめん……俺をかばってルカリオは……」

ルカリオはブースターの代わりにグライオンの尾による攻撃を受けていた。

続けて、グライオンのハサミギロチンが炸裂。死を覚悟せねばならない攻撃を首筋に受ける所であったが、そこへクチートのアイアンヘッドがグライオンに打ち込まれ、なんとか助かったのだった。

だがそのクチートもルカリオもろともドラピオンとグライオンの猛攻を受け、体力も限界の所まできている。最後にはグライオンのアクロバットを腹部に受け、地面に蹲ってしまった。

ミミロップ「この状態じゃ満足に戦えそうにないわね。ここは私がやるから、ゆっくり休んでなさい」

ルカリオ「面目ない……」

ミミロップ「ふふ、こんなルカリオ久しぶりに見たわ……さて、うちの旦那を痛めつけてくれちゃって、覚悟できてるのかしら?」

バシンと拳を手のひらに打ち付けるミミロップ。見据える先では、ドラピオンが巨体を起こし、グライオンがその近くに飛んできていた。
 ▼ 309 ロカロス@ドラゴンジュエル 18/07/05 23:05:15 ID:28MUeZpg [10/20] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
地を蹴り、勢いを乗せて飛び膝蹴りを放つ。

俊敏なその動きにドラピオンは追いつけず、再び彼女の攻撃をまともに喰らう。

グライオン「キシャアア!」

だが攻撃直後の隙を狙って、グライオンが尾を突きたてようとミミロップ目掛けて飛んできた。

ミミロップ「甘い!」

しかしそれを読んでいたのだろう、ミミロップはグライオンの方を向く事無く上半身だけの動きでそれを避け、すれ違いざまにグライオンの尾を掴んで思いっきり投げ飛ばした。

起き上がろうとするドラピオンにそれが命中し、二匹揃って森の木陰まで吹っ飛んでいく。

ニンフィア「すごい……」

ブースター「ミミロップもすげぇ強いんだな……」

ミミロップの戦闘を見て唖然とする二匹。

ニンフィア「そ、そうだクチート!」

ふと、我に返るニンフィア。

ミミロップに見とれている場合ではない。ニンフィアはクチートが倒れている横まで駆け寄り、彼女をリボンでそっと起こした。

ニンフィア「クチート、大丈夫?」

クチート「う……にん、ふぃあ……」

ニンフィア「私がわかるのね、よかった」

クチートの傷は見た目ほど響いていないようで、途中から彼女は自分の力で上半身をゆっくりと起こした。

クチート「まだ……やれる」

ニンフィア「待って! そんな傷で動いたらダメよ。今行っても、やられるだけ」

クチート「うる、さい……わたし、だけじゃ無理だけど……約束、したから……やらなきゃ、だめ……」

クチートハよろよろと立ち上がり、ニンフィアを押しのけて歩き出す。だがニンフィアはそれを赦すまいと、彼女の身体にリボンを巻きつけた。
 ▼ 310 イコウオ@シールぶくろ 18/07/05 23:05:42 ID:28MUeZpg [11/20] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ニンフィア「クチート……話があるの」

クチート「わたしは、ない……!」

リボンを解こうと両手を動かすも、がっちりと身体に絡み付いて離れない。

ニンフィア「聞いて。私達の、親だったトレーナーの話よ」

クチート「聞きたくない、うるさい! 私は、私は捨てられてない! 待ってる、ずっと、待ってる!」

もう何度も聞かされて嫌になっているのだろう。クチートは癇癪を起こした子供のように暴れ始める。

ニンフィア「いい? クチート。貴女はね……」

ニンフィア「捨てられたんじゃなかったのよ」

クチート「え……」

ぴたりとクチートの動きが止まった。彼女の思わぬ言葉に、クチートはどういう事だとニンフィアを見る。

ニンフィア「貴女の言ってたことは、嘘じゃなかったのよ」

破裂音と共に、近くの地面が抉られる。グライオンが低空から連続斬りを放っているようで、その余波がニンフィア達の傍まできていた。

だが、ニンフィアは一切目を逸らさず、クチートを見て話を続ける。

ニンフィア「これを、貴女に渡すわ」

クチート「……これは」

ニンフィアは丸い小さな珠をクチートへ渡す。

それはコドラから預かった、彼女達の親トレーナーがコドラに託した、クチートナイトだった。

ニンフィア「私達の親はね……それを取りに行って、死んじゃったみたいなの」

クチート「!!!」
 ▼ 311 ージュラ@ミストシード 18/07/05 23:06:06 ID:28MUeZpg [12/20] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



『ちょっとここで待っててくれる?』


『さて……この崖の上に、あれがあるのを見たわ。ここを登れば……よい、しょ……』


『簡単な事だった。勝てないのなら、勝てるよう考えるだけ。クチートがもっと輝くには、メガシンカが必要だってわかってはいたんだ……』


『だけど……クチートとちゃんと絆ができてるか自信がなくて……今の今までかかっちゃったね。でも、もう大丈夫。クチートナイトが手に入れば、私達の絆なら、きっと……!』


『よ、し! やった、なんとか取れて……あっ、あああっ!!?』


『…………あ……どう、しよう……からだ、っぷ、うごか、ない……ごほっ、ごぼっ』


『ばちが、あたったのかなぁ……ずっと、信じてあげられなかったから、だから……』


『っぐ、ぐすっ……ごほっ、ずずっ……これ……渡さなきゃ……あ……?』


『そこのあなた……これを、この森で、クチートを見かけたら……渡して、あげてくれないかな……お願い、お願い……』


『……あはは……もう、だめみたい……ごめんね、クチート、みんな……ごめん……ね……』


 ▼ 312 ャヒート@きちょうなホネ 18/07/05 23:06:39 ID:28MUeZpg [13/20] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


クチート「うそだ……」

クチート「うそだうそだうそだうそだうそだ!!!」

クチート「うぞだ、ぐすっ、じんでなんが、うぞだ、うぞ……」

ニンフィア「私だって、嘘であってほしいよ……だけど、だけど……」

クチート「ぐすっ、ぐずっ、わあああああああああああああああああ!!!!!」

毎日毎日、いつか迎えに来てくれると信じてずっと待っていた。

大好きなトレーナー。いつも一緒で、どんな感情でも共有してきた。楽しい事も、辛い事も、悲しい事も、全部分け合って育ってきた。

戦うとき以外はいつものんびり暮らしていて、平和に生きていて、ただそれだけの生活だったけど……

とても居心地がよかった。その生活に、とても満足していた。

一生このまま幸せな時間が続くんだと、その時は信じて疑わなかった。

それなのに、それなのに……

何故、どうしてこうなる。

こんな運命に誰がした。

どうして私は、一人ぼっちなの?

誰もいないこの場所で、いつまで待っていればいいの?

……また、あったかい紅茶が飲みたい。

だからお願い。はやく、はやく私を……

クチート「むがえに……むがえにきでよおおおおおお!!!!」
 ▼ 313 リヤード@ヘルガナイト 18/07/05 23:06:59 ID:28MUeZpg [14/20] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告





『クチート、泣いちゃだめ!』





 ▼ 314 ニシズクモ@ルビー 18/07/05 23:07:34 ID:28MUeZpg [15/20] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
クチート「……!」

ふと、声が聞こえた気がした。

どこからだろう。クチートは反射的に、手に持ったクチートナイトを見た。

クチート「あ……」

クチートナイトは淡い光を放ち、キラキラと輝いていた。

昔、ネックレスのプレゼントをもらった事がある。いつか本物を見つけてドラピオンにリベンジしようと約束し、レプリカを飾ったクチートたち。

今ようやく、探していた本物が手の中にある。

クチート「でも、でも……」

だが、できない。彼女と約束したメガシンカは、もう叶わない。メガシンカするには、親となるトレーナーと心を通わせる必要があるが、その親はもういない。

ルカリオ「うぐっ!!」

ミミロップ「ルカリオ!」

いつの間にか、戦況が変化していた。

二匹相手に善戦し続けていたミミロップだが、このままでは勝ち目が無いと悟っただろうグライオンの次の手に足を止めることになった。

グライオンは倒れているルカリオに目をつけ、彼に攻撃を仕掛け始めたのだ。

そうなる事も想定してはいたものの、それよりはやく二匹を倒すつもりでいたミミロップは完全に対応が遅れてしまい、ルカリオを危険に晒す事となってしまった。

ミミロップ「こんの! 邪魔よ!!」

すぐさま対応しようにも、ドラピオンが邪魔をしてルカリオの所まで向かえない。まともに戦えば倒していけるだろうが、いやらしい事にドラピオンは行動を制限するような攻撃ばかりして、グライオンの行動をバックアップするように動いている。

しかしそれも僅かの時間。グライオンはルカリオをいたぶるだけいたぶって、彼の首筋めがけて、今度こそハサミギロチンを放とうと構え始めた。

グライオン「キシャアア!!」

そしてグライオンは鋏を大きく開き、刃の部分を鋭く光らせてルカリオの命を奪いにかかった。
 ▼ 315 ノセクト@オニゴーリナイト 18/07/05 23:08:10 ID:28MUeZpg [16/20] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
しかし、クチートは見た。

絶体絶命。数秒後にはもう自身の命が失われているかもしれないというこの状況に、ルカリオは一切恐怖していない。それどころか、痛みに片目を閉じながらも、ミミロップの方を向いて笑いかけていた。

ニンフィア「えっ?」

と、急にミミロップがその場に倒れた。

グライオン「キィ!?」

続けて硬い何かを殴る音。見れば、どういうわけかルカリオがグライオンにスカイアッパーを喰らわせていた。

クチート「ど、どうなって……」

ニンフィア「……いやしのねがい」

クチート「え?」

ニンフィア「ミミロップさんがいやしのねがいを使ってルカリオさんを元気にさせた……」

ドラピオンの攻撃をかいくぐって向かったのでは間に合わないと判断したミミロップは、癒しの願いを使う事で自身の力をルカリオに託した。

しかし、自身もドラピオンに狙われている。無防備に崩れ落ちたとなれば、たちまち繰り出される攻撃を防ぐ事もできず、最悪自分が死にかねない。

だがミミロップは迷わずその選択をした。彼女の瞳にも、迷いの色は一切無かったのだ。

ドラピオン「ギッ!!」

ルカリオ「させるかよ!!」

地に倒れたミミロップ目掛けてドラピオンが攻撃を仕掛けようとするも、上空から波動弾を撃ち込んで阻止する。

そして着地と同時に跳躍し、ミミロップのすぐ傍へ身を寄せた。
 ▼ 316 ケニン@とつげきチョッキ 18/07/05 23:08:39 ID:28MUeZpg [17/20] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルカリオ「癒しの願いは流石に無茶しすぎ」

ミミロップ「だって、それしか思いつかなかったから」

ルカリオはミミロップの頭をひと撫でし、ありがとうと声をかける。ミミロップは小さく笑みを作り、ゆっくりと頷いた。

ルカリオ「ミミロップちゃんを頼む」

ニンフィア「う、うん!」

そして、後ろに控えていたニンフィアにミミロップを託し、立ち上がる。

クチート「……笑ってた」

ルカリオ「うん?」

クチート「さっき、やられそうな時、笑ってた」

どう考えても、死を目前にした者の反応ではない。これから死ぬというのに、どうしてそんな顔ができたのだろう。

ルカリオ「あぁ、まぁ笑ったつもりはないんだけど……ミミロップちゃんなら何とかしてくれると思ってたからね」

クチート「でも、死ぬかもしれないのに……」

不思議そうな顔をするクチートが視界の端に映る。それに対してルカリオは小さく笑みを作ってみせた。

ルカリオ「俺は彼女を信じてる。それが俺とミミロップちゃんとの、絆なんだ」

クチート「絆……」


『私達の絆、メガシンカ目指そうね!』


クチート「!」
 ▼ 317 ジギガス@むしのジュエル 18/07/05 23:09:14 ID:28MUeZpg [18/20] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


それは、一瞬の出来事だった。

強烈な一発をお見舞いしてやろうと拳をあわせていたルカリオの横を、誰かが通り過ぎる。

軽やかに、だがそれでいて力強く。すぐ傍で話をしていたポケモンが、目の前の敵へ攻撃を仕掛けようと前に踏み出している。

その小さな身体に、二つの大きな顎を携えて。

メガクチート「もう私は負けない……約束したから。絆が、想いがここにあるから!!」

ドラピオン「!!」

その動きが、誰かの目に映っただろうか。

ルカリオの傍を歩いていたと思ったクチートは、次の瞬間にはドラピオンのすぐ近くまで駆け寄っており、攻撃の態勢に入っている。

自身の頭と二つの大顎を、鋼のように硬くして。

『クチート、アイアンヘッド!!』

メガクチート「はああああああああああっ!!!」

鈍い音が辺りに響く。

三つの頭によるアイアンヘッド。それを正面からまともに受けたドラピオンは、なすすべもなく空を舞った。

やがてクチートが着地した後、ドラピオンは背中から地面に激突。すっかり目を回して、戦闘不能の状態に陥っていた。

クチートは、やっと約束を果たす事ができたのだ。

ルカリオ「す、すげぇ……」

ブースター「なんだ今の、何が起きた……」

ニンフィア「っていうか……メガシンカしてる!?」

ニンフィアが大きな声をあげる。だが砂塵から姿を現したクチートは、いつもの姿のままだった。

クチート「わたし……ひとりぼっちじゃ、ないんだよね……?」

クチートはぼんやりと倒れたドラピオンを眺めながら涙を流す。

しかし目を閉じ涙を絞りきって、今度は笑顔で空を見上げた。

「わたしはずっと、あなたのエース、だから」
 ▼ 318 ゾノクサ@バグメモリ 18/07/05 23:09:48 ID:28MUeZpg [19/20] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


ルカリオ「さーて、残るはお前だけになったわけだが」

グライオン「!!」

グライオンに近づき、指を鳴らすルカリオ。

そこでようやく我に返ったらしい、グライオンは周囲をきょろきょろ見回した。

しかし、分が悪いと判断したのだろう、すぐに慌てて羽を広げ、素早く飛び去ってしまった。

ルカリオ「逃げたか……まぁもうここには来ないだろうな」

グライオンがどのようにしてドラピオンと手を組んだかはわからないが、こてんぱんにされそうになった所へわざわざ戻ってくるとも思えない。

ドラピオンもどうしてこの森に生息していたのかはわからないが、次に目が覚めた時には、違うところへ棲家を移すに違いない。

ルカリオ「さて、ミミロップちゃんの看病するか」

ルカリオはミミロップをお姫様抱っこして岩場の方へ向かう。元気の固まりを持っているので、半日もあればすっかり元気になるだろう。

クチート「……あの」

ルカリオ「……うん?」

そのまま去ろうとするルカリオを、クチートが呼び止めた。ルカリオは首だけで振り返り、次の言葉を待つ。

クチート「その……」

お礼を言おうとしているのだろうか、クチートは忙しなく視線を彷徨わせている。

クチート「おなかすいた……」

ずるっ、とその場にいた誰もが思わずずっこけてしまった。

ルカリオ「ミミロップちゃん落とすとこだったじゃないか……」

なんとか体勢を立て直すルカリオ。小さくため息をついて、クチートの所へ歩く。
 ▼ 319 フォクシー@ウルトラボール 18/07/05 23:10:15 ID:28MUeZpg [20/20] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルカリオ「クチート、それにブースターもニンフィアも。もし行く宛がないのなら、今度開かれるホウエン格闘大会で審判と副審をやってるポケモンを訪ねてみるといい。俺の親友達だ」

ルカリオ「ここを離れようと思うなら、まぁ宛の一つにでもしてみてくれ。訪ねたなら、俺達が元々住んでる所に案内してくれるから」

ブースター「この辺りに住んでるわけじゃないのか」

ニンフィア「そもそも出身もシンオウみたいよ?」

ブースター「それはまた寒そうなところだな……」

ルカリオ「じゃ、俺達はもう行くわ。修行に戻らなきゃいけないからね」

挨拶を交わし、今度こそ歩き出す。

クチート「…………ありがと」

ふと、クチートがそう呟いたのがかすかに聞こえた。

ルカリオ「(『アイス食べたい』に『おなかすいた』、か……言葉にしないだけで、本当は色々考えてるのかもしれないな)」

ルカリオは小さく笑みを零し、振り返る事無く歩き続ける。

もし地元に帰ったとき彼らがそこを訪ねていたら、その時は手合わせしてみるのもいいかもしれない。ルカリオはそんな事を思いつつ、その場を後にした。

ルカリオ「ホウエン大会……頑張るか!」

残り数日を調整に使い、いよいよ二つ目の大会となるルカリオたち。

彼らはこの大会で大きな壁にぶつかる事となるのだが、今の彼らには知る由もない。
 ▼ 320 ルヴァディ@ポフィンケース 18/07/06 07:00:03 ID:.D1AWyrg NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
シエンネ
 ▼ 321 ッタ@あなぬけのヒモ 18/07/06 16:33:40 ID:L52.MWGE NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 322 ガレックウザ@シルバースプレー 18/07/06 23:01:29 ID:8yN2EumU NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 323 ルガー@しめつけバンド 18/07/07 03:31:45 ID:Y6kkCfSA [1/12] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




トウカの森上空を蒼黒のレースがすっかり覆いつくし、月が主役の舞台が始まろうかという頃。

ルカリオは岩場で見つけた深めの洞窟に入り、中に誰もいない事を確認すると、ミミロップをそっと地面に下ろす。

ルカリオ「具合はどう?」

ミミロップ「おかげさまで。まぁ、しっかり動けるようになるのはもうちょっと先かな」

ルカリオ「まぁ、そうだよね」

癒しの願いを使ったポケモンは、代償としていわゆる戦闘不能状態に陥る。本来であればすぐにでも治療が必要になるわけだが、元気の塊をルカリオに使ってもらい難を逃れている。

戦闘不能状態と一口に言っても、すぐに緊急手術が必要な状態から、単に戦う気力が失われてしまった状態まで様々だ。癒しの願いによる戦闘不能状態は比較的軽度な部類のもので、特定のアイテムを使えば特別な治療なくしても回復が可能である。

ただ、アイテムを使ったからといってすぐに万全の状態に戻れるわけではない。個体や状態によって個人差は出るが、今回の彼女の場合であれば完全回復までおおよそ二時間といった所だ。

ルカリオ「…………」

ミミロップ「……? どうしたの?」

ルカリオ「あ、いや」

目を閉じて小さく呼吸を繰り返すミミロップ。しかしルカリオの視線を感じ、片目を開けて様子を窺う。

ルカリオは素っ気無い返事をしてお茶を濁すのだが、どこか落ち着きがないとミミロップはすぐ気づいた。

ミミロップ「ははーん、もしかしてこんな時に欲情してる?」

ルカリオ「そっ……んな事は、ないかなぁ? あはは」

ミミロップ「図星ね」

ミミロップがジト目を向けながら大きく息を吐く。ルカリオはばつが悪いような表情をしてこほんと咳払いをした。
 ▼ 324 ーフィ@もくたん 18/07/07 03:32:00 ID:Y6kkCfSA [2/12] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルカリオ「正直に言うけどさ、チャンスだと思うわけですよ」

ミミロップ「チャンス?」

ルカリオ「うん。だって俺、いつもリードされる側じゃん。たまには攻めてみたいなーって」

ルカリオは両手をわきわきさせながらじりじりとミミロップに近づいていく。どうやら本気のようだ。

ミミロップ「え、嘘でしょ? 私今具合悪いんだけど?」

ルカリオ「ちょっと身体が動かないだけで、あとは大丈夫でしょ? この前し損ねたし、たまってきてるんだよね」

ミミロップ「しゅ、修行はどうしたのよ。精神鍛えるんじゃなかったの?」

ルカリオ「たまに開放しなきゃ。我慢だけが鍛錬じゃないよ!」

ミミロップ「そんないい加減な、ひゃん!」

もう話をしているのももどかしくなったのか、ルカリオは狼のようにミミロップに飛び掛り、彼女の柔肌をぺたぺたと触り始めた。

ルカリオ「へへ、ミミロップちゃん動けないからどこ触っても反撃されないや」

ミミロップ「あっ、ん、もう、後で覚えてなさいよ……ひぅ」

ルカリオは横になっているミミロップを後ろから抱きしめ、その状態のまま両手でミミロップのあちこちをまさぐっている。

いい具合に引き締まった腕、柔らかい頬、むちむちした太もも、感触が癖になるおなか周り。

ミミロップ「ん……んは、あ……」

ルカリオ「あれあれ、ミミロップちゃん感じちゃってるのかな?」

ミミロップ「そりゃ、好きなポケモンに、触られてたら、んっ、興奮もするわよ」

ルカリオ「ミミロップちゃん……」

ミミロップ「あとお尻に勃起ち○こ当たってる」

ルカリオ「えへへ」
 ▼ 325 フレシア@ハーバーメール 18/07/07 03:32:16 ID:Y6kkCfSA [3/12] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルカリオ「でも、そろそろ他の所も触ってほしいよね」

ルカリオは敢えて胸や秘部には手をつけず、その周辺を撫でるように触っている。

触れるか触れないか微妙な所で毛を撫でてみたり、太ももの付け根辺りを指で軽く押さえてみたり。とてもいやらしい手つきが彼女の恍惚を高めてゆく。

ミミロップ「まるで、痴漢、んんっ、みたいね……」

ルカリオ「レイプされてるみたい?」

ミミロップ「まぁ、ある意味そう、かも、ああっ」

ミミロップは身体を何度もびくびくさせ、ぎゅっと目を閉じては開いてを繰り返している。

ルカリオはミミロップをそんな風に仕立てている事に何とも言えない征服感と幸福感を覚え、更に♂の象徴を大きくさせた。

ルカリオ「はぁ、はぁ、なんか俺の方が我慢できなくなってくる……」

ミミロップ「ひゃう!」

それまでもどかしい触り方しかしなかったルカリオだが、自分の逸物が我慢汁を吐き出すにつれ漏れ出る吐息も荒くなり、いよいよ我慢しきれずミミロップの胸部をぎゅっと揉みしだいた。

胸といっても人間のそれのように大きなふくらみがあるわけではないが、腹部にも似た癖になる手触りにルカリオはまさぐる手を止める事ができない。

それと同時に、腰をミミロップにぐいぐい押し付け透明な液体を彼女にぬりつけている。彼女は俺の大事なポケモンだと、マーキングするように。

ミミロップ「も、もう、んっ、そこばっか、触っちゃ、やぁ……」

ルカリオ「だって気持ちいんだもん……」

ミミロップのぷにぷにした手触りは彼がこれまで触ってきた何よりも気持ちのいいもので、彼はできる事なら永遠に死ぬまで触り続けていたいと本気で思っている。

愛おしい、本当に愛おしい存在。ルカリオは改めて、ミミロップという誰よりも大切な存在を全身に刻む。
 ▼ 326 ラカッチ@メトロノーム 18/07/07 03:32:44 ID:Y6kkCfSA [4/12] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルカリオ「ミミロップちゃ、こっち、むいて……んっ」

ミミロップ「んっ、ちゅ、ちゅっ」

ルカリオはミミロップを後ろから抱いたまま、熱いキスを交わす。

ミミロップがキスをするため首を上げる事で柔らかな胸部がぐっと持ち上がり、ルカリオの指を更に深い所まで押し込ませていく。

ルカリオの指に、ミミロップの肋骨の感触が伝わる。ルカリオは思わずそっと手を引こうとするが、ミミロップは離させまいとルカリオの両手を包み込むようにして自分の胸に押し付けた。

ルカリオ「んっ、ちゅ、ちゅっ、ちゅるるっ」

ミミロップ「んふ、ちゅっ、ちゅるるるっ、ちゅっ」

長いキスには終わりが見えない。

だが、このままではルカリオのそれから欲望の塊が噴き出してしまうのも時間の問題。この状態で射精するのもそれはそれで気持ちいいだろうが、できる事なら彼女の中におさめたいところ。

ルカリオ「んっ、ちゅ……はぁ、はぁ、いれちゃいたい、いいよね?」

ミミロップ「んちゅ……もう、はやすぎ」

逸物をミミロップの股に入れ、彼女の性器とこすり合わせるルカリオ。彼の先走りと彼女の愛液が混ざり合い、いやらしい音を立てながら性行為の準備を始めている。

そのうちルカリオは尖端をミミロップの双丘から密壷へと一気に滑り込ませ、ほんの数センチだけ挿入しながら男根で彼女の肉感を楽しんだ。

ルカリオ「うっ、あ、あ、やば、入れるだけで出ちゃいそう……」

ミミロップ「んふぅ、っ……ま、まだ出さないでよ?」

ゆっくりとルカリオの性器がミミロップの膣内へとおさまっていき、やがて見えなくなる。

柔らかく弾力のある肉壁を押し進めていく快感にルカリオは口をだらしなく開き、熱い吐息を漏らす。尖端から感じる肉棒がとけてしまうような感覚に、頭の中がぼんやりと幸福に満たされていく。
 ▼ 327 ーイーカ@オボンのみ 18/07/07 03:33:05 ID:Y6kkCfSA [5/12] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルカリオは自らの欲望の具現を、最奥まで押し込む。

ミミロップはそれを喜んで受け入れ、最大の愛をもって包み込む。

一つになった、ルカリオとミミロップ。二匹は何よりも強い幸せを身体中で感じ、再び口付けを行った。

ルカリオ「あ、ああ、すごい、すごいよミミロップちゃん!」

奥地の感触をじっくり味わった後、ゆっくりと逸物を引き抜いていく。膣壁と襞が肉棒にねっとりと絡みつき、動くたびに性器が敏感に反応する。

ミミロップ「んんっ、ああっ、あっ、あっ、おま○こ、もってかれそ……」

ずるりと膣の入り口まで逸物が引き抜かれ、ミミロップの性器がきゅんきゅんと収縮を繰り返す。そのたびに愛液が溢れ、とろりとルカリオの肉棒に垂れてくる。

体勢からして、二匹にその様子は見えない。だがルカリオは感覚でその状態を把握し、ミミロップの愛液がこぼれぬようすぐさま肉棒を再び密壷に押し込んだ。

ルカリオ「んっ、あ、あっ、すげぇ、やばい、これさいこぉ……」

ミミロップ「んっ、んふっ、あんっ、はぁ、はぁんっ、し、子宮に、キスされちゃってるぅ……」

ぶちゅぶちゅと下品な音を立てながら性器と性器が愛し合う。

身体を密着させて行うセックス。動きが制限される分強い刺激は得られないが、性器だけでなく身体全体で愛を感じながらの行為となるため、高揚感は通常の比ではない。

ルカリオはミミロップの身体をぎゅっと抱きしめ両手で胸や腹の感触を楽しみつつ、必死に腰を押し付けて彼女の全てを愉しんでいる。

ミミロップも両手を彼の手に沿えお尻をルカリオに押し付けるようにして、ただただ快楽をむさぼっていた。

ルカリオ「う、うあ、ねえ、出していい?」

ミミロップ「えっ、んっ、もう? る、ルカリオ、ちょっと早漏、すぎない?」

ルカリオ「う、うるさいな!」

照れ隠しだろうか。ルカリオは彼女の身体を弄ることをやめ、代わりにぎゅっと強く抱きしめてそれまで以上に激しく腰を動かし始めた。
 ▼ 328 ンノーン@カシブのみ 18/07/07 03:33:31 ID:Y6kkCfSA [6/12] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミミロップ「あっ、や、やっ、急に、はげし、くうっ」

ルカリオ「はぁ、はぁ、ミミロップちゃんもいっちゃえばいいんだ」

ゆったりねっとりしたセックスはいつの間にか獣のように激しいものへと変わり、二匹の快楽を絶頂へと導いていく。

ずぷりと奥まで差し込まれた肉棒がミミロップの子宮口をこじ開け、彼女の中に子種をたっぷりと放出しようと震えだした。

ミミロップはそれを受け入れるようにお尻をぎゅっとルカリオに押し付け、彼のものを更に奥へと送り込む。

ルカリオ「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」

ミミロップ「あっ、あはぁ、んあっ、んっ、んふ」

終わりが近い。

ルカリオは精子がこみ上げてくる感覚にだらしの無い声をあげ、スパートをかけるように更に強く腰を彼女へ打ちつけた。

ルカリオ「だ、だすよ、このまま膣内に!」

ミミロップ「う、うん、きて、ルカリオ精子、子宮に、赤ちゃんの部屋にたくさん出してぇ!」

ルカリオ「おお、おああっ!」

ミミロップ「んふううううっ!!!」

思いっきり腰を押し付け、肉棒を彼女の一番深い所まで挿入する。その尖端は子宮口を突破し、彼女の望みどおり子宮の中へ直接大量の精子を吐き出し始めた。

ルカリオ「あっ、あっ、ああっ、すげ、めっちゃ、でる」

ミミロップ「んんっ、あ、ああ……子宮の中、満たされて……」

きゅっとミミロップの膣が締まるたびに彼女は愛液を噴き出し、ルカリオの逸物を締め上げて精子を徹底的に搾り取る。彼女の膣の動きに合わせて、ルカリオはありったけの精子を彼女の中へと送り込んだ。
 ▼ 329 ラブ@かいのカセキ 18/07/07 03:33:48 ID:Y6kkCfSA [7/12] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



ミミロップ「はぁ……動けないのをいい事に、酷いんだから」

ルカリオ「ご、ごめん……」

行為が終わり、二匹は繋がったまま荒い呼吸を繰り返す。暫くは、それぞれが愛に満たされている感覚に酔い痴れているつもりのようだ。

ミミロップ「ふふ、でも結局いつもと同じね?」

ルカリオ「う、確かに……で、でも一応主導権俺だったよな?」

ミミロップ「必死に腰振るのが主導権握った事になるの〜?」

ルカリオ「うう……」

本当ならあまり動けないミミロップに対して色々と仕掛けていくつもりだったのかもしれないが、彼女に触れているうちに、我慢できずすぐ行為へと移ってしまった。

もしも彼が精神を鍛えていけば、同じ状況になったとしてもまた違う未来が見えて来るのかもしれない。

ミミロップ「でも……幸せだなー」

ルカリオ「ん、急にどうしたの?」

ミミロップは胸に回されたルカリオの手をぎゅっと握る。

ミミロップ「今日、ルカリオ死に掛けたでしょ? でも、こうしてお互い生きてて、愛を感じられてる」

ルカリオ「あぁ……まぁ、流石に今日は危なかったな……」

この日は二度もグライオンのハサミギロチンで首をちょん切られかけ、死を目前とした。結果として死ぬ事はなかったが、非常に危険な状態を二度も経験した事実は大きい。

そもそもそのような状況にもっていかれないためにも、まだまだ鍛錬が必要そうだ。

ミミロップ「怖かった?」

ルカリオ「まぁ……正直言うと、少しは怖かったよ」

ミミロップ「ふ〜ん、少しなんだ」

ルカリオはミミロップの手を持って、両手で恋人つなぎをする。

握るその手に力が込められている所をみると、本当に少しは死を覚悟したらしい、今生きている幸せをじっくりと噛み締めているようだ。
 ▼ 330 ラオラ@フォトアルバム 18/07/07 03:34:12 ID:Y6kkCfSA [8/12] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルカリオ「今みたいな幸せを今後感じられなくなるって思うと凄く怖いけど……あの時は、なんていうか凄く夢中だったし」

ミミロップ「余計な事じゃ勿論無いけど、そういう時って案外他の事考えてられないわよね」

ミミロップも握る手に力を込める。

ミミロップ「……やっぱり、生きてればこそ、なのかな」

ルカリオ「うん?」

ミミロップ「蒸し返すわけじゃないけど……ここではさ、大切なポケモンを失っても、皆前に進む事を選んだじゃない。勿論、サンダースのときとは状況が違うからあれだけど……」

ルカリオ「そうだな」

ミミロップ「彼らはきっと、大切なポケモンや人がいなくなってしまったらっていう問いに、答えを出したのよね」

ミミロップの言う「彼ら」とは、フライゴンとクチートの事。

フライゴンは大好きな恋人や弟妹を、クチートは大好きなトレーナーを、それぞれ失った。その悲しみはとても大きく、自らの人生に絶望する程のものだろう。

しかし、彼らはそれでも前を向いた。それでも生きる事を、選んだのだ。

ミミロップ「あ、別に自分達がどうこうって考えてるわけじゃないわよ?」

ルカリオ「うん」

ミミロップ「ただ、前を向くとしたら、フライゴンやクチートみたいになるのかなって。ちょっと思った」

ルカリオ「そうだろうな……けど、やっぱり考えたってわからないし、仕方ないよね」

それは、ルカリオが暗にブースターへ話していたこと。

そもそもそういう選択を必要に迫られていない者が、必要に迫られていない今考える事自体、ナンセンスなのだ。

ミミロップ「うん。だからこそ、今が幸せ、それでいいのかなって」

ミミロップも同意見なのだろう。彼女は思い浮かべていた事をかき消すように小さく息を吐き、甘えるように彼の広い胸に頭を預ける。そしてゆっくりと瞳を閉じた。

外から入り込んでくるそよ風が心地良い。今日は良い夢が見られるかもしれないと、ふとそんな事を思うミミロップだった。


 ▼ 331 ルミル@じゅうでんち 18/07/07 03:34:47 ID:Y6kkCfSA [9/12] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告









フライゴン「はい! 僕の特製料理、おまちどー!」

チルタリス「こんなにたくさん? どれも美味しそうね」

フライゴン「えへへ、ありがとう」

ビブラーバ「うわ、すっごい! こんな豪勢なの初めてじゃない?」

ナックラー「ごーせー!」

フライゴン「そ、そうかな? いつもこんな感じのような」

ビブラーバ「はっはーん。あれね、今日は大切なポケモンが来てるから、でしょ?」

チルタリス「え、そうなの?」

フライゴン「えっ、あ、そ、そそそれは」

チルタリス「それは?」

フライゴン「しょの……」

ビブラーバ「うわお兄ちゃん顔真っ赤」

ナックラー「まっかー!」

フライゴン「う、うるさい! ほらはやくご飯食べちゃいなさい!」

チルタリス「ふふ、賑やかでいいわね。素敵な時間だわ」

フライゴン「えへへ、そうかな。うるさいだけだよ」

チルタリス「それが、いいのよ。贅沢はいらない……ううん、それが最高の贅沢なの」

フライゴン「チルタリスさん……」

フライゴン「あ、あの……チルタリスさん、僕、僕……!」





 ▼ 332 ライゴン@みずたまリボン 18/07/07 03:35:04 ID:Y6kkCfSA [10/12] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告







クチート「はやく! はやく!」

「もう、そんなに急いでどうしたの? ちゃんとついて行ってるから、大丈夫よ」

クチート「こっち、こっち!」

「ほんと元気なんだから……はしゃいでるのはわかるけど、はぁ、ポケモンが何て言ってるかわかればいいのになぁ」

クチート「あれ? どっちだったかな……うーん、こっち!」

「あーあー、森の中まで行くの……? もー、遠いよぉ」

クチート「えっと、えっと、ゴスの木マゴの木……ここ!」

「わぁ……この森にこんなところあったんだ。木の実が沢山、池も綺麗……」

クチート「ここでね、私ね」

「この場所を見せたかったの?」

クチート「ちがう! ちがわないけど……ここでね、私」

「あっ、もしかしてあれかな? お昼寝かな?」

クチート「それもしたいけど……そうじゃなくて!」

「お昼寝でもない……? じゃあなんだろう、もう降参だよ〜」

クチート「メガシンカ! 私、ここでメガシンカした! メガシンカしたの!」

「でも……なんだかクチート、嬉しそう。ふふ、いい事あったのかな」

クチート「約束、ちゃんと果たした……だからね、私、もっと、私……!」




 ▼ 333 タモン@いんせきのかけら 18/07/07 03:35:24 ID:Y6kkCfSA [11/12] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告





彼らは、決して幸せとはいえないポケモン達だった。

辛く悲しい運命に揺り動かされ、玩ばれ、絶望の底へと放り投げられてしまった。

だけど彼らには、見えているのかもしれない。

今は亡き、彼らの傍にいてくれるはずの誰かが。

彼らには、聞こえているのかもしれない。

今は亡き、彼らの事を想ってくれている者の声が。



だから彼らは、前を向く。

いつかきっと、自分のこの想いが届くと信じて。
 ▼ 334 ブンネ@プラスパワー 18/07/07 03:35:46 ID:Y6kkCfSA [12/12] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告






フライゴン「僕、強くなる!」


クチート「私、強くなる!」






 ▼ 335 ワガノン@いでんしのくさび 18/07/07 10:22:58 ID:iX9MYcQI NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 336 ルビル@ふしぎなきのみ 18/07/08 00:04:32 ID:LqnM61CA NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
唐突なR-18で草
支援
 ▼ 337 ョロゾ@ほしのすな 18/07/08 01:50:14 ID:aRsMLGg2 [1/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 338 レユータン@たからぶくろ 18/07/08 06:07:40 ID:aRsMLGg2 [2/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
あげ
 ▼ 339 ーダイル@ハートスイーツ 18/07/08 22:23:05 ID:RrncxPmw [1/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




いよいよ迎えたホウエン大会。この大会は、参加登録を行ったポケモン達で予選を行い、決勝トーナメントに出場するポケモンを選出する所から始まる。間口の広いカントー大会とは異なり、各地方大会は基本的に予選を通過しなければそもそも優勝を争う試合が行えない。

ルカリオ達がまず感じたのは、会場の異質な空気。カントー大会の時とは違い、張り詰めた空気を身近にひしひしと感じる。

また、カントー大会では参加者が話に花を咲かせるなど会場全体が騒がしかったものだが、ホウエン大会ではほとんど誰もが言葉を発していない。それぞれ仲が悪いわけではなさそうだが、大会を前に集中しているポケモンがほとんどのようだ。

ルカリオ「(それにしても……)」

聞こえてくるのはそれぞれの息遣いくらい……とはいえ、ルカリオ達は何とも言えない気味の悪さを感じていた。

それとなく周囲を見回す事で、その正体が明らかになる。

ミミロップ「……周りが鬱陶しいわ」

ルカリオがそれを特定するより先に、ミミロップは苛立ちを言葉に乗せた。

感じるのは周囲からの視線。それも、侮蔑や嘲謔の意が込められているもの。はやい話が、馬鹿にしたような目で見られているのだ。

耳の良いミミロップには、そういった視線を向けているポケモン達が小声で何を話しているかよくわかる。

「ヒョロいのが来た」「チビがいるけどお膳立て試合でもあるのか?」「デート場所間違えてんぞあいつら」

誹謗中傷こそ無くとも、ルカリオ達を嘲笑する声や視線はいたる所から向けられている。

それだけルカリオ達の存在はこの会場に集まったポケモン達からしてみれば異質であり、格闘大会で活躍しに来た選手だとは思ってもらえないようだ。

ルカリオ「……控え室に行こう」

ミミロップ「うん」

後味の悪さを感じつつ、二匹は選手通用口を通って控え室へ。

まるで新しく引っ越した土地のバックストリートを初めて歩くときのような、万年初戦敗退の弱小と言われたチームが大会へ参加するような、そんな感覚。

公式な大会とはいえ、正々堂々戦う表舞台とは別に、こういったドロドロした裏舞台もやはり存在する。勿論、それらは一部のポケモン達によるもので、全てがそうとは言わないが。
 ▼ 340 ゲキッス@コインケース 18/07/08 22:23:47 ID:RrncxPmw [2/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



ミミロップ「あーもう、何よあいつらムカツク!」

大部屋の選手控え室の片隅で、ミミロップは乱暴に椅子に座って大きくため息を吐いた。

ルカリオ「まぁある程度は仕方ないよ。俺達、見た感じ屈強な肉体してるわけじゃないもん」

ミミロップ「そうだけど!」

こと格闘大会においては己の肉体を誇示する側面も少なからず持ち合わせているため、身体を鍛える事を重んじる者の一部は自身と他者を好んで比較するらしい。中には、相手を見下したり嘲笑する者も存在する。

ただ、こういった試合の外での出来事については、運営側は関与しない事がほとんど。彼らとて試合では正々堂々戦うので、ある意味、精神的な勝負が既に始まっているともいえるのだ。なんなら、相手の気をかき乱す作戦、ともいえるのかもしれない。

当然、フェアプレー精神においてそのように泥臭い言動は褒められたものではないが。

ルカリオ「それより、予選のデモやるみたいだよ。モニター見てよ?」

ミミロップ「はぁ。そうね、落ち着くことにするわ」

ミミロップはもう一度大きく息を吐いて、ルカリオと共に控え室のモニターを見る。

ちょうど予選デモが行われる所のようで、主審のエルレイドと副審代表のサーナイトの姿が映っていた。

ルカリオ「は、あいつ審査委員長かよ」

ミミロップ「エル君も出世したね〜」

これから大会予選についての話をするのだろう、司会に名前を呼ばれたエルレイドが画面中央のマイクの所まで手足の動きを同じくしながら歩いてきた。

このエルレイドはルカリオ達の親友で、今回大会の審判を行うためにこの地へやってきたらしい。ちなみに、画面の端で苦笑いしているサーナイトはエルレイドの姉で、こちらも二匹がよく知るポケモンだ。

エルレイド『え、えー、ただいまより、ホウエン格闘大会の予選を始めたいと、お、思います』

審判資格を持っているとはいえ代表して挨拶をするのは始めてらしい、画面を通してさえ緊張ふりがよくわかる。

エルレイド『今回の予選内容は……これです!』

エルレイドがさっと身を横へずらし、後ろの方を手で示す。

そこにはなにやら、測定器のような大掛かりな機械が幾つか置かれていた。
 ▼ 341 ロピウス@ミミロップナイト 18/07/08 22:24:22 ID:RrncxPmw [3/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
エルレイド『えーっと、では内容詳細を、本大会名誉会員であるバシャーモさんに、実演を兼ねて説明していただきます。では、お願いします』

バシャーモ『任されたわ』

エルレイドが後ろを向き、中央の機械の前で立っているバシャーモに話を引き継ぐ。

バシャーモはなにやら機械を操作した後カメラの方を向いて、愛想よく笑みを浮かべた。

バシャーモ『予選で行っていただく競技、それは……』

バシャーモ『パンチ力キック力測定よ!!』

バァーンとドラが鳴る。そういう演出もきちんと考えられているようだ。

ルカリオ「パンチ力にキック力か」

モニターの外では多くのポケモン達がざわめきを見せていた。

というのも、大会予選といえば本戦と同じようにバトルをするスタイルが通例。今回のようにあくまで技術のみの、それも一部分を抜き出しての選抜は極めて珍しい。

ミミロップ「皆驚いてるみたいだけど、こういうことあんまりないの?」

ルカリオ「まぁ珍しいね。地方大会の予選は該当地方の大会運営と名誉会員が決める事になってるんだけど、機材の準備や手間がかかる事を考えて、たいていの場合は本戦と同じ内容にする事がほとんどだから」

ルカリオ「それに今回のこれは純粋に力を示す戦い……速度や戦略で力差を補う戦法を主としてるポケモンは不利になる」

ミミロップ「みんな予選の内容は今初めて知らされるんでしょ? 不公平って言われたりしないの?」

ルカリオ「それは大丈夫。ホウエンではホウエンの、シンオウではシンオウのやり方がある。ここで力の戦いになってても、シンオウじゃ例えば戦略の勝負になるかもしれないし」

ミミロップ「まぁ地方の特徴みたいなもんと思えばいいのか」

ルカリオ「そういうこと」
 ▼ 342 イアント@トライパス 18/07/08 22:25:07 ID:RrncxPmw [4/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
バシャーモ『ルールはいたってシンプルよ。持ち上がってくるこのマットに、パンチやキックを打ち込んでくれればOK。そしたら測定機に数値が表示されるわ』

エルレイド『実演してみてもらいましょう。バシャーモさん、お願いします』

バシャーモ『わかったわ』

エルレイドが機械を操作すると、長さ50cm程の丸太のようなマットが縦に持ち上がった。この的に打ち込みを行うとマットが後ろに倒れ、その衝撃を数値化するらしい。

人間達の方にも同じような機械が存在し、パンチングマシーンなどと呼ばれ親しまれているようだ。

バシャーモ『えいやっ!!』

ドゴォン!!

バシャーモが正面から蹴りを放つ。そのキックはマットにクリーンヒットし、大きな音を立てて後方へ強く倒れこんだ。

エルレイド『えーただいまの記録……794ptですね。うーん普通に大会新記録だこりゃ……』

歓声がわき上がる。モニターを通じてもよくわかるほど大きな歓声だ。控え室からも感嘆する声が各所で漏れた。

ちなみにこの測定機におけるパンチ力の標準は330ptで、キック力は500ptとなっている。測定機の種類によって標準数値は様々だが、今大会で使用されているモデルに関して言えば、鍛えている者でも標準を越える事は簡単ではない。

なお通常は『kg』を使って表される事が多いパンチ力キック力だが、ここで使用されている筐体は本大会用に調整し作り直されているため、単位は『pt』である。計算式も一般的なものとは若干異なっているらしい。

バシャーモ『このように、数値が表示されるわ。簡単に言えば、この数値の高い者が勝ち。競技は一匹につき2回ずつ挑戦できて、数値の高い方が記録となるわね』

エルレイド『えーっと、あと簡単にルールを説明しておくと……測定を行う際は定められた枠からはみ出ない事、攻撃後筐体に寄りかからないこと、他者への妨害行為は禁止、それくらいで大丈夫かな?』

サーナイト『あなたが訊いてどうするのよ……』

エルレイド『そ、それくらいです!』

そこで映像はぷっつりと切られてしまう。

ルカリオ「あいつの方が大丈夫かよ……」

なんとも心もとない審判長だった。

アナウンス『間もなく予選が行われます。各選手は会場にて組み分けを行っていただき、該当する会場へ向かってください』

ルカリオ「よし、じゃあ頑張るか」

ミミロップ「ええ。こんな所で負けてられないわ!」
 ▼ 343 ガヤンマ@マグマブースター 18/07/08 22:25:53 ID:RrncxPmw [5/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




ホウエン大会の行われる会場はカントーのヤマブキ会場より広くはないが、今回の予選で使われる機材を設置するような仕組みが各所に施されているという特徴がある。大会で使用する様々な機材やギミックがあちらこちらに設けられているのだ。

ちなみに、この会場のバトルフィールドは森。森と言ってもジャングルのようになっているわけではなく、地面が背の低い草原になっていて巨木がフィールドの隅の方に何本か生えているくらいのもので、戦闘の邪魔や利点になる程の障害物となっているわけではない。競技はあくまでも、純粋な肉体のぶつかり合いであるためだ。

ともあれ、まずは予選。ルカリオは♂のCグループ一番手というカードになった。

サーナイト「ルカリオ選手、一回目」

ルカリオ「はい」

名前を呼ばれ、前に出る。途端、周囲から失笑の声が小さく漏れた。

「おっ、最初はあのヒョロいガキか。予選がバトルじゃなくてよかったな」

「怪我しないうちに帰るんだぞ〜」

「デートに支障が出るもんな、がっはっh」

ドゴォーン!!

「ひっ」

会場に一際大きな音が鳴り響く。

サーナイト「ルカリオ選手、記録、412pt」

「!!??」

サーナイトが白旗を確認し、記録を読み上げる。

瞬間、それまでざわついていたCグループのポケモン達が一気に静かになった。

「よ、412……? なんだあれ、測定機壊れてんじゃねぇの……?」

「い、いや、あれだよ。きっと今回のは仕様が違って……」

サーナイト「ニドキング選手、一回目」

ニドキング「っ! は、はい」
 ▼ 344 ロベルト@アイテムコール 18/07/08 22:26:39 ID:RrncxPmw [6/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
名前を呼ばれ、ニドキングが前に出る。

ニドキング「な……」

筐体前まで歩く際ルカリオとすれ違うわけだが、その時ニドキングは、横を通ったルカリオが予選前に見た彼とはまるで別人のように思えた。

己を鍛えている者ならわかる、そのポケモンを取り巻く気の強さを。少なくとも、彼とすれ違う事でニドキングにはわかった。ルカリオは、ただの色男じゃない。

ニドキング「うおらっ!!」

ドゴォーン!

爪にジェルを塗り、ニドキングがマットへ打ち込む。

サーナイト「ニドキング選手、記録、382pt」

ニドキング「なん、だと……」

ざわめく周囲。予選のみに関して言えばグループ一位通過も期待される彼の数値を見て、機械の仕様が違うなどといった妄想は露と消えた。

渾身の力を込めてパンチを打ったニドキング。しかしその記録は、標準記録こそ大きく上回ったもののルカリオには遠く及ばない。

これが限界か、あるいはルカリオとすれ違った時から彼の気迫におされてしまっていたか。

サーナイト「アバゴーラ選手、一回目」

アバゴーラ「は、はい」

その後次々と強力なポケモン達によるパンチ力測定が行われたが、誰一匹として、ルカリオの記録を抜くことはできなかった。

続く二回目もルカリオは400pt越えの記録を打ち出し、完全に周囲を圧倒してしまう。結果Cグループパンチ力の一位に輝いたのはルカリオで、これには嘲笑していたポケモン達も口をぽかんと開けて押し黙るしかなかった。
 ▼ 345 ルチャイ@サイコシード 18/07/08 23:21:50 ID:aRsMLGg2 [3/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
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 ▼ 346 ッタイシ@マグマのしるし 18/07/08 23:26:30 ID:dyyM.Bgg NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
本当にすごい
いつも見ています
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 ▼ 347 ックル@ミストシード 18/07/09 08:01:44 ID:fPaALO4M [1/2] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
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 ▼ 348 ママ@ルガルガンZ 18/07/09 21:16:01 ID:wGmcjWyY NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
シエンネ
 ▼ 349 レユータン@レベルボール 18/07/09 22:26:10 ID:hny24LRg NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
楽しみになって読んでいます
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 ▼ 350 ネコ@やまぶきのミツ 18/07/09 22:36:14 ID:fPaALO4M [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
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 ▼ 351 トベター@まんたんのくすり 18/07/10 00:33:20 ID:d0cAHbLw [1/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
続くキック力測定では一位にこそならなかったものの二位という好記録を出し、ルカリオは総合一位となって悠々と予選を突破した。

ミミロップの方はといえば、苦手なパンチ力測定で四位と厳しい滑り出しとなったものの、得意のキック力では余裕の一位を獲得。総合的な結果としてはずば抜けたキック力がパンチ力の数値を補い、グループ総合一位で予選を勝ち抜いた。

試合前とは打って変わって番狂わせとなったホウエン大会予選。しかし、この予想外の結果は何もルカリオ達に限った話ではなかった。

♂部門でも♀部門でも、規格外の力を持った小型ポケモンが予選を勝ち抜き決勝トーナメントへと駒を進めている。これには屈強な肉体を持ったポケモン達は、いったい彼らのどこにそんな力があるのだろうかと、唖然とするほかない。

ミミロップ「やっぱり殴るの苦手だわ」

ルカリオ「俺も蹴るのはね……」

ミミロップ「でも、やっぱりバシャーモさん凄いわ。デモの記録、結局誰も抜けなかったし」

そう言うミミロップの記録は698pt。この数値はグループ内のみならず♂含めた誰よりも高かったわけだが、それでもバシャーもには遠く及ばない。

ルカリオ「あれが世界、って事だね……WFCに行けば、あのクラスのポケモンと戦う事になる」

名誉会員としてホウエン大会の運営を手伝っているとはいえ、WFCになればバシャーモもいち選手でしかない。これから順調に勝ち進んでいけば、いずれバシャーモと戦う事になる日も来るだろう。

WFCではパンチ力やキック力を競う予選などが行われるわけではないが、数々の戦果を挙げてきたポケモン達のぶつかり合い、何か一つでも劣っているところがあればたちどころに負けてしまう可能性は充分にある。

ルカリオ「ともあれ、今は決勝トーナメントだ。今回も優勝狙うよ」

ミミロップ「そうね。二つ目の優勝は大きい。ここで結果を出せるかどうか……」

やがて全ての予選試合が終了し、決勝へ勝ち進んだ者達の名前が発表される。ルカリオは三試合目、ミミロップは四試合目に名があがっていた。

ホウエン大会は♂部門♀部門各一組ずつ試合が行われるわけだが、時間の都合もあり♂と♀の試合は同時に行われる。それぞれ違う時間帯での試合となるため、お互いの試合を見る事ができそうだ。

決勝トーナメントは一時間の休憩を挟んだ後、行われる。そのためルカリオ達は一度控え室へ戻る事にした。

なお、決勝トーナメントへと駒を進めた選手達には個別の控え室が与えられるため、各自落ち着いて体調を整えるなり試合をモニタで見るなりできる。勝ち進む事で、待遇が変わってくるようだ。
 ▼ 352 ガアブソル@スピードボール 18/07/10 00:33:44 ID:d0cAHbLw [2/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




ミミロップ「……情報どれくらい集めた?」

ルカリオ「まだあんまり。ミミロップちゃんは?」

ミミロップ「皆が話してるのを盗み聞きした程度だけど……気になる相手は何匹かいるわね」

専用の控え室へやってきて、椅子に腰掛ける二匹。個室という事もあり周囲の目を気にせず休めるというのはとてもありがたい事だと、二匹はゆっくり息を吐いた。

しかし、のんびりしている暇は無い。ここから先も勝ち進むために、決勝トーナメントへ進出したポケモン達の情報をできるだけ集めておかなければならない。

ルカリオ「誰が気になる?」

ミミロップ「こっちで言えば、一番はコジョンドかな。予選グループ一位通過で、しかも全参加者で考えても一位」

ルカリオ「コジョンドか……」

コジョンドといえば、素早い攻撃が得意なポケモンだ。WFCや地方格闘大会では得意の体毛による攻撃は禁止されているが、素の力の方も申し分ないようで、大会での活躍が見込める。予選首位通過という事もあり、一気に優勝候補と噂されるようになっていた。

ミミロップ「あとは、ニャオニクス。そっちにもいるでしょ? 姉弟らしいわよ」

ルカリオ「いるね。Aグループ予選一位通過してた」

ミミロップ「強さもだけど、そもそもこの大会に参加してるのが意外なのよね」

ルカリオ「エスパータイプだもんな……」

格闘大会と銘打ってはいるが、自らのタイプに格闘が入っていなければいけないわけではない。しかしニャオニクスは、タイプ的な問題もさることながら、体格が小さくお世辞にも身体のぶつかり合いにむいているとは言えないポケモンである。

だが、彼らはきっちり予選を通過してきた。10tトラックをサイコパワーで持ち上げるというニャオニクスだが、もしかしたらここに参加している彼らは、素手でそれをやってのける力がある……なんてこともあるのかもしれない。

ルカリオ「……予選を見ててひとつ気づいた事があるんだ」

ミミロップ「どんな事?」
 ▼ 353 ビシラス@わすれもの 18/07/10 00:34:01 ID:d0cAHbLw [3/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルカリオ「まず、予選で計ったパンチ力キック力だけど……これって一見純粋に力を比べているようで、実はそうとも言い切れない部分があるんだよね」

ミミロップ「へぇ?」

ルカリオ「あの機械に表示される数値はたぶん、一番重要なのは勿論力がどれだけあるかだろうけど、おそらくそれだけじゃない」

ミミロップ「それって当たり所とかって事?」

ルカリオ「当たり所もそうだね」

ルカリオは右手で拳を作り、じっと見つめる。

ルカリオ「まぁもう予選は通過したから、測定機で高い数値を出すためのパンチの仕方とかは置いとくよ。俺が注目してたのは、それぞれの殴り方蹴り方だ」

ルカリオ「おそらく、今大会で用意された機械は専用に用意された筐体だろうね」

ミミロップ「つまり、それ用に予習は出来なかったって事よね?」

ルカリオ「うん。要するに、普段の自分の殴り方蹴り方で予選に臨んだポケモンが多いと思うんだ。だから、普段戦うときのクセや意識してる事が、測定する時に出てると思うんだよね」

ルカリオは個室に設置してあったホワイトボードの前に立ち、ペンを取る。

ルカリオ「例えば、うちのグループにいたニドキング。彼のパンチ力の記録は、一回目が382ptで二回目が391pt」

ミミロップ「ルカリオと比べればそんなそんなだったのね」

ルカリオ「キック力は負けたけどね。ただパンチにしたって純粋な力じゃニドキングの方が上だろうから、腕相撲なんかしたら勝てるかわからない。勝敗を分けたのはおそらく、当たり所と力を抜くタイミング」

ミミロップ「当てた場所が悪かったの?」

ルカリオ「測定の話なら、結論から言うとそうなるね。ただおそらく、彼の場合は力が強すぎるから全力を出すと自分でも制御が難しいんだと思う」

ルカリオ「力を入れすぎると正確性に欠ける事を自分でわかってるから、無意識レベルである程度力を抜いて打ち込むんだ。もしかしたら、そういう練習を日ごろからしてるのかも」
 ▼ 354 メパト@ヤチェのみ 18/07/10 00:34:17 ID:m.lwsgwk NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
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 ▼ 355 ンシカイオーガ@ルビー 18/07/10 00:34:23 ID:d0cAHbLw [4/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルカリオ「次に、力を抜くタイミング。強力な割に数値が伸びないのは、パンチを最後まで振り切らないからだと思う」

ミミロップ「途中で手引っ込めちゃうの?」

ルカリオ「おそらくね。きちんと最後まで振り切れば、最低でも400ptは越えてきたと思う。当たり所の事があるから、どこまで伸びるかはわからないけどね」

ルカリオ「この事からわかるのは、ニドキングはパンチを最後まで振り切らない事で素早く次に攻撃を繋げる事を意識してるんじゃないかって事。あの巨体から想像もつくとおり、おそらく素早い動きは苦手なんだと思う」

ルカリオ「パワータイプって事でとにかく一撃を重くする事を考える選手もいるけど、ニドキングとしてはそれより、ある程度の重さでいいからできるだけ多く攻撃を繰り出したいと思ってるんだろうね」

ミミロップ「はぁ、そこまで考え観察してたのね……」

ルカリオ「可能な限り情報を収集しておきたいからね。ただ、確実な情報ってわけじゃないから、気にしすぎた挙句間違ってて痛い目みた、何てことにはならないようにしたいけど」

ルカリオはそこまで話して「あはは」と苦笑いした。

ルカリオ「ミミロップちゃんは何か注意して見てた事ある?」

ミミロップ「そうねぇ、私が見てたのは、測定時の呼吸とか気の整え方かな」

ミミロップ「気と肉体は一心同体。整えるまでの時間や呼吸の深さ、わかりやすいと癖が出るポケモンもいるわね。そういうの予め見ておけば、試合の時にも攻撃を見切る目安になるから」

ルカリオ「気になるって言ってたコジョンドの動きは見れた?」

ミミロップ「コジョンドは見れなかったけど、ニャオニクスなら。彼女手足も小さいからどうするんだろうって思ってたけど……あれは速度にものを言わせてるわ」

ルカリオ「速さで力を出してるのか」

ミミロップ「そう。精神統一も怖ろしい程速いし、乱れた呼吸もすぐに整う。たぶん、体力も物凄いと思うわ」

ミミロップ「それに何と言っても殴る瞬間が恐ろしかった……構えてから打ち込むまでの動きがまるで見えないの」

ルカリオ「いったいどんな鍛え方してるんだ……」
 ▼ 356 ゴーム@アクセサリーいれ 18/07/10 00:35:42 ID:d0cAHbLw [5/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミミロップ「予選は動かない的を狙って攻撃するからあれだけど、実際の試合じゃ相手も動くからね。ある程度は状況に瞬時に対応する力も無いといけない。その面で言えば、ニャオニクスはずば抜けてそう」

ルカリオ「その様子じゃ弟の方のニャオニクスもその辺り注意しないとな……」

ミミロップ「そっちは意外とパワータイプかもよ?」

ルカリオ「ありえるからあれだけど、もしそうなら屈強な♂ポケモン達に同情するぞ……」

二匹の推察は続く。

予選終了から本戦にかけての一時間は、こういった情報整理に使われる事がほとんど。いかに相手を研究し予習できるかで、勝敗の行方が左右される事も少なくは無い。

ルカリオ「そろそろ一回戦目か……誰が勝つかはわからないけど、よーく見てないとね」

ミミロップ「ただでさえアウェーな感じだし、ギャフンと言わせてやりましょ」

だいぶ根に持っているらしい、ミミロップはふんと鼻息を鳴らしていた。

それを見てルカリオは苦笑いを浮かべるも、同じ気持ちを持っているのだろう、モニターに向き直り火蓋が切られた試合を真剣な眼差しで眺めた。

ホウエン大会本戦は、予選を勝ち抜いたベスト8がトーナメント方式で優勝を争う。4回試合を行った後準決勝が開催され、3位決定戦、決勝戦と続く。

大勢の観衆に見守られる中開催された、第一回戦。

♂部門西側、ニドキング。パンチ力391pt、キック力613pt(Cグループ第二位)
VS
♂部門東側、ドサイドン。パンチ力415pt、キック力605pt(Aグループ第一位)

いきなり屈強な♂ポケモン同士の激闘が繰り広げられる展開となり、会場の空気も重みを増していく。

力比べになる試合とも思われたが、ルカリオの睨んでいた通り、ニドキングは軽やかな動きに重点を置いた攻撃を繰り出しドサイドンを圧倒。そのまま勢いでドサイドンを押し切り、ベスト4へ進出。

♀部門西側、コジョンド。パンチ力473pt、キック力624pt(Bグループ第一位)
VS
♀部門東側、フローゼル。パンチ力396pt、キック力547pt(Aグループ第二位)

♀ポケモンの第一試合は体格の小さなポケモン達による戦いとなった。

注目すべきはコジョンドの予選突破力。パンチ力の数値は♂さえおさえ、堂々の第一位。総合で見ても♂♀合わせて一位という、非常に怖ろしい結果をたたき出している。

しかし、勝負ともなれば予選で出した数値などただの目安に過ぎない……とは、誰が言った事だろうか。試合開始直後、コジョンドがフローゼルの懐に入ったと思った次の瞬間、フローゼルは空高く殴り上げられ、そのまま戦闘不能に。戦闘が開始してから、わずか5秒程の出来事だった。

一試合目から波乱を見せる、今回のホウエン格闘大会。先の見えぬ戦いに、選手も観客もみな昂る気持ちを抑えられずにいる。
 ▼ 357 援する男◆zoKrwsYAsI 18/07/10 00:40:53 ID:kBzA0p3U NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
メガシエンネ
クチート編泣く
 ▼ 358 ダツボミ@アンノーンノート 18/07/10 02:00:04 ID:VYlo69Gg NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 359 クリン@ダウジングマシン 18/07/11 22:25:01 ID:u22U807Y [1/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




続く第二試合目。

♂部門西側、カメックス。パンチ力423pt、キック力596pt(Dグループ第二位)
        VS
♂部門東側、ニャオニクス(弟)。パンチ力438pt、キック力588pt(Bグループ第一位)

今大会かなりの注目を集める事となったニャオニクス姉弟の弟とパワータイプのカメックスのバトル。

素早い動きを得意とするだろうと思われたニャオニクスだが、彼は試合開始後ほとんど動きを見せず、痺れを切らしたカメックスが先制を取るという意外なスタートを見せた。だが、カメックスがメガトンパンチを繰り出したその瞬間、ニャオニクスはそれを最低限の動きでかわし、カウンター気味にアッパーをかます。

なんと、それだけで試合は終了。予選で見せていた通り、彼はニャオニクスという種族からは到底考えられない力を発揮し、一撃でカメックスを戦闘不能に追い込んでしまった。

♀部門西側、ニャオニクス(姉)。パンチ力460pt、キック力577pt(Cグループ第一位)
       VS
♀部門東側、ノクタス。パンチ力405pt、キック力587pt(Dグループ第二位)

♂部門で驚きの勝利を見せたニャオニクス弟。対して姉はといえば、弟とは全く違う戦闘スタイルで相手を圧倒。

自慢のトゲが封じられているとはいえこのノクタスは素早い上に重みのある攻撃が定評の固体だったが、あまりにも素早いニャオニクスの動きに全くついていけず、背後を取られ、奥に生えている木まですっ飛ばされてしまう。

予選で♂♀合わせて最も数値の高かったニャオニクス姉のパンチは非常に強力で、それからノクタスが起き上がってくる事はなかった。

二試合目はニャオニクス姉弟が圧倒的な戦闘力を見せる試合となり、観客席からも動揺の声が聞こえてくる。小柄で、しかもこういった大会に出場するとは思えないようなポケモンが、どちらもたった一度の攻撃で相手を沈めてしまったのだから無理もない。
 ▼ 360 ネコロロ@ハッサムナイト 18/07/11 22:25:24 ID:u22U807Y [2/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
会場がざわめきに支配される中での、第三試合。

♂部門西側、ルカリオ。パンチ力412pt、キック力611pt(Aグループ第一位)
       VS
♂部門東側、エンブオー。パンチ力401pt、キック力603pt(Dグループ第二位)

迎えたルカリオの試合。重量系のエンブオーに対し、ルカリオは持ち前の速度で翻弄。エンブオーの猛攻をかいくぐり、連続して技を打ち込んでいく。

やがてエンブオーが隙を見せ始めたところへラッシュを仕掛け圧倒し、ルカリオはベスト4進出を決める。

♀部門西側、ガルーラ。パンチ力442pt、キック力583pt(Cグループ第二位)
       VS
♀部門東側、キノガッサ。パンチ力438pt、キック力547pt(Bグループ第二位)

強力な攻撃を仕掛けるガルーラに対し、軽やかなフットワークを生かした攻撃を繰り出すキノガッサが終始優勢。

一時、ガルーラの攻撃をまともに受け一度は地面に倒れこんだキノガッサだったが、体勢を立て直しお得意の伸び縮みする腕でばくれつパンチを決め、準決勝にコマを進めた。

ベスト8最終試合の、第四試合。

♂部門西側、ザングース。パンチ力406pt、キック力597pt(Aグループ第二位)
       VS
♂部門東側、ハリテヤマ。パンチ力432pt、キック力580pt(Bグループ第二位)

今回の大会では小柄なポケモンが次々と勝利をおさめていく空気の中、ハリテヤマはザングースの仕掛ける素早い連続攻撃をものともせず、ハリテ攻撃でザングースを気絶させ勝利。

♀部門西側、ミミロップ。パンチ力384pt、キック力698pt(Aグループ第一位)
       VS
♀部門東側、ニドクイン。パンチ力410pt、キック力587pt(Dグループ第一位)

審判や選手に姉弟がいる中、こちらは両者夫婦での参加。鬼嫁同士の強烈なバトルを制したのは、ミミロップ。

パワータイプのニドクイン相手に真っ向から力比べを挑み、足技で圧倒してみせた。一撃KOによる試合が多い中、両者の攻撃がぶつかり合う見ごたえのある試合となった。
 ▼ 361 ーランド@コイン 18/07/11 22:25:50 ID:u22U807Y [3/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




ルカリオ「いよいよ準決勝か……」

ミミロップ「ここまでは何とかなったけど……ここからよね」

二匹して、準決勝での対戦一覧ボードを眺める。

ルカリオは準決勝第二試合。対戦相手はハリテヤマ。ミミロップも同じく第二試合目で、対するはキノガッサ。

ミミロップ「ここで勝てなきゃWFCの資格にならないのよね?」

ルカリオ「うん。出場資格として見てもらえるのは優勝か準優勝のみ。三位は表彰台にはのぼれるけど、WFCの出場資格として認められないね」

ミミロップ「一位か二位って結構厳しいわよね……まぁそうやって大会の質を高めてるんだろうけど」

ルカリオ「その分、一度でもWFCに出場すれば次から参加資格が軽くなるからね。だから、まずはとにかくWFC出場までを目指すポケモンが多いんだ」

ミミロップ「みんなそういう戦い方してるのよくわかるわ」

単純な力比べであれば、おそらくどのポケモン達も我武者羅にただ力をぶつけ合うような戦い方を選んでいるだろう。しかし、この大会は力の強さを測る大会ではない。

勝つことこそ、目的。勝てなければ、次に繋げる事ができないのだ。

ミミロップ「っていうかルカリオ、何気に蹴り♂で二位じゃない。全体でも四位だし」

ルカリオ「そうなんだよね。だけどパンチの方は♂で五位。全体だと九位だよ……こっちの方が辛く響く」

勿論、パンチ力やキック力があるからといって試合に勝てるわけではない。しかしそうは言っても、単純な力の強さもそのポケモンを表す指標のひとつにはなるため、良い数値を残すに越した事はない。

ただ、こういった結果からも、今後どのように修行をしていくべきか方針が見えてくる。やはりルカリオは、持ち前の速さを生かしつつも攻撃に重みを持たせていく事を考えなければならないようだ。

ルカリオ「今回はお互いの試合見れないね」

ミミロップ「どっちも二試合目だしね、まぁ仕方ないわ。それもだけど、一試合目は特に注目して見たいわね」

ルカリオ「特にって言うと、♀の方? コジョンドとニャオニクスか……」

どちらも予選からバトルまで、驚きの結果を見せたポケモン。相当ハイレベルな戦いが予想されるこの試合、両者はどのように戦い、どんな結果となるのだろうか。

二匹がモニターを見上げる。今ちょうど、準決勝の試合が始まった。
 ▼ 362 ャランゴ@ぼうごパット 18/07/11 22:26:10 ID:u22U807Y [4/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



まずは♂部門の準決勝、一試合目。

圧倒的なカウンターでカメックスを打ち破ったニャオニクスだが、ニドキングの多彩な連続攻撃にはてこずっているようだった。

ニドキングがメガトンパンチを放つ。それに対しニャオニクスは腕をすり抜けてカウンター気味の攻撃を狙うも、ニドキングはすぐに腕を引っ込めて次の攻撃へと移ってしまう。結果それぞれの間合いが微妙に変化し、ニャオニクスはカウンターを諦め退かざるをえなくなる。

おそらくニドキングはそれを狙っているのだろう、後出しが得意らしいニャオニクスに反撃の隙を与えない戦法でバトルを進めている。主導権は完全にニドキングが握っていた。

しかし、ニャオニクスもおされてばかりではない。次第にニドキングの動きに合わせて攻撃を仕掛けるようになり、僅かな隙をついて強烈なパンチをお見舞いする。

一度でも攻撃を受ければ体勢が崩されるとわかっているのだろう、ニャオニクスの動きが変わった事に気づいたニドキングは攻撃の手を止め、今度は回避に専念する。

攻防のはっきりした試合。それぞれが相手の動きにうまく合わせて身をかわし、隙を見て攻撃を仕掛けていく。ある意味、本来の格闘大会の形がここにはあった。

勝敗を分けたのは、たった一つの判断。

姿勢を低くしたニャオニクスを見て攻撃を予測し回避へ回ろうとしたニドキング。しかしそれはニャオニクスのブラフ。彼は正面には跳ばず上空へ跳び上がり、横へ回避したニドキングに強烈な攻撃をお見舞い。攻撃をワンテンポ遅らせる事で回避行動を取った相手へ正確に攻撃を叩き込むという、ニャオニクスの冷静な判断が勝利を掴んだ。

♀部門は、コジョンド対ニャオニクス姉。

試合開始早々、目に映らない程素早い動きでニャオニクスがコジョンドに攻撃を仕掛ける。反対にコジョンドは一切動きを見せず、正面からニャオニクスの攻撃を受けようとしていた。

スピードを乗せたニャオニクスのパンチ。しかしコジョンドは右手の体毛でそれを易々と受けてしまう。

正面からの攻撃は効き目が薄いと判断したニャオニクスはすぐさま手を引き、またしても素早い動きでフィールドを駆け回る。

コジョンドはそれに対しやはり全く動きを見せる様子はなく、ただ静かに試合開始時に立っていた位置で両手をだらりとさせていた。

挑発しているのだろうか。しかしニャオニクスは一切気にする事無く、様々な角度から連続して攻撃を仕掛けていく。

しかし、どの攻撃もコジョンドに通じる事は無かった。コジョンドは全ての攻撃を両手の体毛だけであっさりと受け切ってしまい、ついにはニャオニクスの腕を掴んで引き寄せ、そのまま地面に倒してしまう。

それから二匹は全く動きを見せずにいたが、やがてニャオニクスが降参を宣言した事で試合は終了。決勝に駒を進めたのはコジョンドとなった。
 ▼ 363 シコ@エネコのしっぽ 18/07/11 22:26:29 ID:u22U807Y [5/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




準決勝第二試合、ルカリオ対ハリテヤマ。

名前を呼ばれ、前に出る。WFC出場資格がかかったこの試合、何が何でも勝つ必要がある。

ルカリオ「よし、やるぞ!」

ハリテヤマ「頑張りますぞ!」

体調はきっちり整えている。相手の分析も、できる限りは行った。あとは、自分の技や力がどこまで通用するか次第だ。

サーナイト「では、はじめ!」

ルカリオ「はっ!」

開始の合図と共に、挨拶代わりのバレットパンチを正面から繰り出す。

これに対しハリテヤマは二歩ほど後ろに下がる事で攻撃を避けきってしまう。

しかしルカリオは元々バレットパンチをきちんと当てようとは思っておらず、ハリテヤマが動きを見せた頃には次の攻撃へと移るべく更に一歩踏み出していた。

バレットパンチに対応しようとした相手へ、ワンテンポ速いインファイト。素早い動きを得意とするルカリオならではのコンボ技だ。

ルカリオ「なっ」

ルカリオはハリテヤマが回避行動を取ると予測してインファイトを打ち込んだ。しかし、そのインファイトは空を切る事になる。

ハリテヤマ「貴殿は、我が耐久、あるいはパワータイプのポケモンだと思いましたな?」

ルカリオ「う、後ろか!?」

ハリテヤマの声を聞き、瞬時に前へ飛び出す。果たしてその判断は正解で、いつの間にかルカリオの後ろへと回り込んでいたハリテヤマが先ほどまでルカリオがいた地点に右手を突き出していた。

そこから更に前へ跳び、充分に距離を取ったところで振り返る。ハリテヤマは余裕にも両手を叩き合わせ、大きく息を吐いていた。
 ▼ 364 ニャット@モコシのみ 18/07/11 22:26:44 ID:u22U807Y [6/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
予想さえしなかったハリテヤマの動き。しかし、彼の予選の様子から考えれば納得できない話ではない。

ハリテヤマはその容姿から予想できるように、パワータイプのポケモンと言える。その力はおそらく格闘タイプのポケモンの中でも群を抜いているだろう。

だが、彼が予選で出した数値はそう高いものではなかった。彼もニドキング同様、力よりも俊敏さに重点を置いた戦い方を好むようだ。

ハリテヤマ「様子を見ているのですかな? ならばこちらから参りますぞ!」

ルカリオ「うぐっ!」

正面からハリテヤマの攻撃を受けるルカリオ。彼の突き出した右手をなんとか左手で受け止めるも、突き刺すような痛みに襲われる。力の方も申し分ないらしい。

そのまま連続攻撃に繋げられると思い後ろへ退こうとするルカリオだが、読まれていたのだろうか、ハリテヤマは更に前進しその体勢のままインファイトを打ち込んできた。

ルカリオ「あぶねー……」

ハリテヤマが前に踏み出した段階で瞬時に横へ転がり、攻撃を避けたルカリオ。なんとか攻撃をかわしたものの、読みきれない相手の動きに目を細める。

ハリテヤマ「貴殿、我をスピードタイプのポケモンと思いましたな?」

ルカリオ「(なんだよいちいち)」

いちいちうるさいやつだな、とルカリオは苛立ちを覚える。

ハリテヤマ「隙アリ、ですな!」

ルカリオ「ちっ!!」

だがその瞬間、ハリテヤマが猛スピードでルカリオの方へ突っ込んできた。

ルカリオ「イラつかせるのも作戦のうちってか? 案外セコい事するんだな!」

ハリテヤマ「むおっ!?」

ハリテヤマの攻撃を大きく避け、その続きに神速をお見舞いする。思わぬ反撃だったのかハリテヤマは攻撃を避けきる事ができず、そのまま後方へ吹っ飛んでいった。

そして、この好機を逃すルカリオではない。
 ▼ 365 ルタンク@ルカリオナイト 18/07/11 22:27:01 ID:u22U807Y [7/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ハリテヤマが起き上がるよりはやく、追撃を与えていく。

インファイトを中心に連続して攻撃を与えるルカリオ。ハリテヤマは回避を諦め防御に徹するも、ルカリオの猛攻を受けきれず大きくダメージを蓄積させてしまう。

ルカリオ「おらおらおらおら!」

ハリテヤマ「むおおおおお!!!」

執拗に攻撃を繰り返す事で行動する隙を一切与えない。どうやらハリテヤマにはその戦法がかなり有効のようで、ルカリオ相手に手も足も出なくなってしまっている。

やがてハリテヤマは抵抗を止め、ぐったりとその場に倒れてしまった。

様子を見に行く審判のサーナイト。暫く倒れたハリテヤマを見ていたが、程なくして彼女は顔を上げた。

サーナイト「勝者、ルカリオ選手」

西側の旗が上がり、ルカリオの決勝戦進出が決まる。

ルカリオ「何とかなったか……」

時間にしてみればそう長く続いた戦いではなかったが、ルカリオにとっては課題の残る試合となった。

今回はルカリオが猛攻を仕掛け勝利を収める事ができたが、ひとつ違っていれば自分がそれを受け負けていたかもしれない。

今回試合の明暗を分けたのは、ハリテヤマがルカリオの神速を読みきれなかったこと。回避行動の時点から神速で対応していたのならハリテヤマも読む事ができただろうが、回避した直後に神速によるカウンターがくるとは思わなかったようだ。

試合のレベルが上がってくれば、力や素早さが強いだけでは勝負に勝てなくなる。テンポや間合いが狂うことで生まれるほんの僅かな隙を見抜きチャンスとできるかどうかが、雌雄を決する鍵となってくるのだ。

ハリテヤマ「むぅ……良い試合でしたぞ。感謝いたします」

ルカリオ「こちらこそ」

強豪ハリテヤマをくだし、決勝戦はニャオニクスとの対戦。

格闘大会の、それも♂部門の決勝戦がルカリオVSニャオニクスなど、誰が予想できただろうか。
 ▼ 366 ンシカイオーガ@ホロキャスター 18/07/11 22:27:17 ID:u22U807Y [8/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




一方同じ頃、もう一つの会場ではミミロップとキノガッサが拳と脚を激しくぶつかり合わせていた。

ミミロップ「えいやっ!!」

キノガッサ「まだまだ!!」

距離を取っては激しくぶつかり合う。二匹の戦いは基本的にこれの繰り返しだった。

小細工なしの、真っ向からのぶつかり合い。どちらも純粋に力比べを楽しんでいるようだが、少しでも違った動きを見せたなら、状況は急転するだろう。そして二匹とも、どこかでそれを狙っている。

キノガッサが跳ぶ。ミミロップも合わせて跳ぶ。

キノガッサが拳を突き出す。ミミロップが脚を振り上げる。

拳と脚では脚の方が力は強く威力も出るが、その分隙も生まれやすい。ぶつかった瞬間すぐさま離れることでその隙を極力埋めるようにはしているが、直後に追撃がとんでくれば攻撃次第では対応が遅れる事になってしまう。

特にキノガッサはマッハパンチを得意とするポケモン。ミミロップは試合開始からずっとそれを警戒しているのだが、何度か拳と脚をぶつけ合ってもキノガッサはいまだにその技を繰り出そうとはしない。

ミミロップ「(ここぞって時に決めてくるのかしら……)」

早業なら、ミミロップにも電光石火がある。しかしたびたびルカリオに指摘されている通り、彼女の早業は動きが単調になりがちで後手に回る傾向があるため、おそらく電光石火ではキノガッサのマッハパンチに対応しきれないだろう。

そうなれば、技の繰り出すタイミングで先を取りにいくしかない。お互いがただぶつかり合っているだけのこの状況、仕掛けるタイミングはいくらでもある。

ミミロップ「(いや、それも作戦のうち……?)」

しかし、安易にそう考えるのも危ういかもしれない。

キノガッサはマッハパンチのほかに、カウンターも得意としている。つまりここでマッハパンチを警戒して相手の上を行こうとすると、その動きを読まれていればたちまちカウンターの餌食となってしまう。

圧倒的に素早い動きができるのなら、それでも対応できるだろう。しかしミミロップは単純な速度でキノガッサを上回る自信がない。

ミミロップ「(厄介だわ……)」
 ▼ 367 ラルバ@ゴツゴツメット 18/07/11 22:27:34 ID:u22U807Y [9/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
そうこうしているうちに、何度目になるだろうか、再びキノガッサがパンチを打って出た。やはり同じように脚で対抗しにいくミミロップ。

しかし、今回試合がついに動きを見せた。

ミミロップ「っ、動いた!?」

キノガッサ「ファイッ!!」

拳と脚がぶつかる、そう思われた次の瞬間、キノガッサは自らの立ち位置を僅かにずらした。これにより拳と脚はぶつかり合う事無く、お互いのすぐ横を通り抜けていくことになる。

だがキノガッサはそのまま右手を内側に抉りこみ、伸びきったミミロップの脚目掛けてばくれつパンチをお見舞いした。

ミミロップ「っ!!!」

僅かに遅れてミミロップも攻撃の向きを調整するも、ふくらはぎの辺りとぶつかり合い、結果押し負けてしまった。

深追いはせず、再び距離を取る両者。

対応が早かったこともあり致命傷には至らなかったが、当たり所が悪く右足を痛めてしまったミミロップ。僅かな差に対応する場合、威力が弱くとも正確性に長ける拳攻撃の方が分があるかもしれない。

キノガッサ「ぼんやりしてると負かしちゃうよ!」

ミミロップ「うっ!!」

少しでも試合が動くタイミングを図っていたのだろうか、キノガッサはそれまでよりも高速でミミロップにぶつかっていく。

攻撃をぶつけようと脚を出す暇も無い。これがキノガッサのマッハパンチ、彼女の持ち味である『速さ』。

受けることも難しいと判断したミミロップは瞬時に電光石火で回避を試みる。しかしそれも読んでいたのだろう、キノガッサの打ち込みは甘くとどまり、すぐに体勢を整えミミロップの動きに合わせて次の攻撃を繰り出した。

咄嗟に手でガードするミミロップ。爪をジェルで覆っているとはいえキノガッサのばくれつパンチは強く、その衝撃は骨まで響く。これがキノガッサのばくれつパンチ、彼女の持ち味である『パワー』。

対抗して攻撃を重ねようと試みるも、キノガッサはすっと攻撃の手を引いてしまい、ミミロップが攻撃する番になれば既に手足の届かない位置まで離れてしまっている。

ミミロップ「(まずいわね……)」

充分すぎる程の速度とパワー。その両方を兼ね備えておきながらも深追いせず繊細に攻撃を仕掛けてくるキノガッサに、ミミロップはかつて無い程の苦戦を強いられていた。
 ▼ 368 ルトロス@クイックボール 18/07/11 22:27:53 ID:u22U807Y [10/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
しかし、ミミロップはある事に気づく。

ミミロップ「(もしかしたら……試す価値はありそうね)」

意を決し、拳を強く握る。

しかしその頃には、再びキノガッサのマッハパンチが目前に迫っていた。

ミミロップ「この!」

キノガッサ「ふん!」

咄嗟に、マッハパンチに合わせて電光石火を繰り出す。

キノガッサ「えっ!?」

ミミロップ「えいやっ!!」

ぶつかり合った直後再びキノガッサが距離を取ろうとパンチもそこそこに離れようとした瞬間、ミミロップの跳び膝蹴りが炸裂。不意をつかれたキノガッサは、彼女の攻撃をまともに受けはるか後方へと吹っ飛んだ。

主審のエルレイドが状態を確認し、西側に旗を掲げる。

この瞬間、ミミロップの決勝進出が決定した。

ミミロップ「ふぅ……危なかったわ」

短く息を吐き、張り詰めていた気を緩ませる。

キノガッサ「うう……見切られて、いたのね」

ミミロップ「予想でしかなかったけどね……でも正直、一歩違えば危なかったわ」

戦闘中、キノガッサはどこまでも様子見に徹しているようだった。

彼女にしてみれば、予選のキック力で断トツトップの記録を打ち出したミミロップの足技を警戒せずにはいられない。そこでミミロップをパワータイプと仮定し、速度で押しつつジワジワ攻める形を取る事にした。

しかしそれに気づいたミミロップは、彼女が後ろへ引くタイミングに追撃を加える事でそのスタイルを崩しにかかる。まるでルカリオがするような、スピードタイプによく見られる動き。これを予測しきれなかったキノガッサは、彼女の策にやられてしまったのだった。
 ▼ 369 ルガルド@いしょうトランク 18/07/11 22:28:10 ID:u22U807Y [11/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




控え室へ戻ろうと廊下を歩くミミロップ。しかし途中で彼女は、思ってもみない人物に呼び止められた。

ニャオニクス姉「決勝出場おめでとう」

ミミロップ「貴女は……ありがと」

ミミロップの事を待っていたのだろうか、ニャオニクス姉弟は彼女が通りがかるのを見て壁から背を離す。

話し掛けてきたのは姉の方で、弟はあさっての方をじっと見つめるばかりだ。

ニャオニクス姉「決勝はあの♀ね……」

ミミロップ「コジョンドね、相当手ごわそう。それで、貴女は? 対策でも教えに来てくれたの?」

ニャオニクス姉「……ある意味、そうとも言うわ」

大会中彼女達が喋る所をほとんど見なかった事もあり警戒しつつそう訊いたのだが、彼女からの返事は意外にもそれに肯定的なものだった。

よく見れば、姉の方はコジョンドに負けて悔しいといったような表情ではなく、考えている事を話してもいいものかどうか考えているような顔をしていた。

ニャオニクス姉「……あれは、相当危険よ」

ミミロップ「……どういう意味?」

やがて彼女が言葉を紡ぐ。その表情は依然険しいままだ。

ニャオニクス姉「強いのは確かに強い。けど、それ以上に……」

ニャオニクスはそこで一度言葉を詰まらせた。それから暫く言葉を選ぶように目を伏せていたが、見かねた弟に腕をつつかれ、ミミロップに向き直る。

ニャオニクス姉「彼女の目は怖ろしい。普通のポケモンにできるような目じゃない……気をつけた方がいいわ」

ミミロップ「それはどういう……あ」

ミミロップが詳細を尋ねようとするも、それより先に姉のニャオニクスは走り去ってしまう。

ぽかんと見送るミミロップに対し、残された弟はやれやれとため息を吐いた。

ニャオニクス弟「お姉ちゃんのことはさておくとして、僕は決勝負けませんから」

そして、弟のニャオニクスも姉を追いかけ去って行く。

ミミロップ「どういうことなの……」

忠告のようなそうでないような、よくわからない言葉を残され困惑するミミロップ。

しかし彼女は、後の決勝戦でニャオニクスの言葉を思い知る事になる。
 ▼ 370 ンバーン@とけないこおり 18/07/13 03:26:18 ID:.IxYNRvc [1/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ホウエン格闘大会もついに大詰め。三位決定戦の結果は、♂部門はハリテヤマ、♀部門はニャオニクスの勝利となった。

そして、残すは決勝戦。

容姿的判断から完全アウェーな状況で始まったこの大会、勝ち残ったのはなんと嘲笑を受けていた面子ばかり。小柄なポケモン達が、今に見てろと言わんばかりの実力を見せつけてくれた。

♂部門は、ルカリオVSニャオニクス弟。♀部門は、ミミロップVSコジョンド。

決勝戦はミミロップ達の方から行われ、ルカリオ達の戦いが終了した後表彰式となる。果たして、表彰台の頂上に上り詰めるのはどのポケモンなのか。

ミミロップ「(ニャオニクス……どういうつもりだったのかしら)」

各選手が並んでフィールドを見つめる中、ミミロップはニャオニクスに言われた言葉を思い出していた。

コジョンドは、危険。

危険とはどういう意味か。それほどまでにコジョンドの攻撃は怖ろしく強いものなのか、それとも彼女の発する気に戦慄を覚えたのだろうか。

コジョンドを見る。

彼女は何を考えているのか、無表情にただフィールドの草木を眺めている。強力なポケモンであることは予選やバトルを見てよくわかったが、とても『危険』という言葉を覚える相手には見えない。

ミミロップ「(戦ってみればわかるか……)」

そう、これは格闘大会。語るなら、己の肉体で語るしかない。ならば、語ってもらおう、その危険とやらを。

エルレイド「では、ただいまより決勝戦を行います! ミミロップ選手、コジョンド選手、持ち場へ」

ミミロップ「はい」

コジョンド「…………」

それぞれが自分の立ち位置へ向かう。

ミミロップ「(こうして見ても普通ね……戦い方としては、ニャオニクス戦ではほとんど動きを見せなかったし、カウンターを警戒するべきか)」

正面に見据えるコジョンドはやはり無表情。発している気にも、取り立てて不審な点は見当たらない。

エルレイド「では……はじめ!」
 ▼ 371 ルホッグ@みずのいし 18/07/13 03:26:34 ID:.IxYNRvc [2/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミミロップ「くるか……?」

カウンターを警戒する意味も込め、ミミロップは開始早々動く事はせずコジョンドの出方を窺った。

コジョンド「…………」

しかしコジョンドは試合が始まる前と同じで特に表情を変える様子もなく、ただただそこに立っている。

だが、ニャオニクスはそんな彼女に攻撃を仕掛け、カウンターを取られてしまった。その試合を見ているだけに、迂闊に手を出す事ができない。

ミミロップ「それなら……」

カウンターが怖いのなら、打たせなければいい。そう思い、ミミロップは電光石火で彼女の背後を取り、下段からの回し蹴りを仕掛ける。

体毛が長いとはいえその部分に骨肉は無いため、立ったままでは完全に攻撃を受けきることはできないだろう。ニャオニクスの時は、実際には体毛の裏にある腕で相手の攻撃を防いでいたに違いない。

コジョンド「……ふふ」

コジョンドはそれに対し、ふわりと軽い跳躍をもってかわしてみせた。

しかし、ただ上に跳んだだけである。特に何か反撃を仕掛けてくる様子もなければ、更に距離を取るなど次の動作に入るようにも見えない。どう考えても無防備で、隙だらけ。

得体の知れない何かを感じつつも、このチャンスを逃すわけにはいかない。ミミロップは立ち上がらず腕を地につけ、下段から脚を上空へ突き出した。

コジョンド「…………」

ミミロップの右足がコジョンドの左腕に直撃。そのまま身体ごとコジョンドを蹴りぬき、その肉体を上空へと弾き飛ばす。

ミミロップ「なんなの……?」

この間、僅か数秒程度の出来事だが、観客からしてみればミミロップが素早い動きでコジョンドに攻撃を加え、うまく戦闘を進めているように見える。

しかしミミロップは全く手ごたえを感じない状況に、小首をかしげずにはいられない。

こうもあっさりと蹴られてくれた事に警戒を覚え、それ以上の深追いはせず少し距離を取って様子を見ることにした。

コジョンドは上空で体勢を整え、だがやはり攻撃に転じるでもなく、優雅に着地する。そして再び、攻撃を誘うように両手をだらりと下にたらし、無表情でミミロップを見た。
 ▼ 372 ガミュウツーY@ブレイズカセット 18/07/13 03:27:00 ID:.IxYNRvc [3/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミミロップ「何を考えて……!」

カウンターは怖いが、攻撃を仕掛けない事には何も始まらない。ミミロップはお望み通りとばかりにコジョンドの間合いまで一気に駆け寄り、攻撃を仕掛ける。

軽いジャブから入り、連続して蹴り、回し蹴りを入れ、電光石火の速度を乗せ跳び膝蹴り。

コジョンドはその猛攻を腕と体毛で防ぎ、あるいはぎりぎりで回避する。致命傷を受けまいとしているのかコジョンドはカウンターさえ仕掛ける様子もなく、ただただ防御と回避に専念している。

ミミロップはカウンターさえ仕掛ける暇も与えない程の猛攻を仕掛け、コジョンドを圧倒していく。

誰の目にも、この状況ではミミロップが押していると感じるだろう。しかし、攻撃を行えば行うほど、ミミロップは自分が押されているような気がしてならない。

現に、かなりの手数で攻撃を仕掛けているにも関わらず、コジョンドにはダメージがほとんど入っていない。加えて、ミミロップは攻撃を仕掛けるため体力を消耗しているが、コジョンドは全ての防御や回避を最低限の動きで行っているため、おそらくほとんど体力の消費は無いだろう。

ミミロップ「(このまま疲れるの待とうっての……?)」

そうはさせまいと、ミミロップは左足を強く踏み出し、大きく右足を振りかぶる。防御をも打ち破る威力の、メガトンキックだ。

至近距離からの大技にコジョンドは避ける事ができず、両手でそれを受け止める事になる。だがミミロップの攻撃があまりに強く、コジョンドは勢いに負けそのまま会場の隅まですっ飛ばされてしまった。

ミミロップ「やった……?」

コジョンド「ふふ」

ミミロップ「な……」

コジョンドの笑い声が聞こえた。そう思うや否や、ミミロップはコジョンドに地面へ組み伏せられていた。

何が起きたかさっぱりわからない。自分はメガトンキックを打った。コジョンドは吹っ飛んだ。声が聞こえ、地に組み伏せられた。本当に、ただそれだけ。

格闘大会では、身代わりや影分身などの技の使用は認められていない。つまり、会場の隅まで蹴っ飛ばされたコジョンドとその直後ミミロップを組み伏せたコジョンドは、紛れも無く同じ固体。

なお、大会では映像やスローモーションによる反則判定も常に行われているため、エルレイド達審判が何も言わないという事は、コジョンドは不正を一切行っていないということだ。

つまり彼女は、音も無く誰の目にも映らない速度で、離れているミミロップの背後を取ったという事になる。
 ▼ 373 ングース@ミアレガレット 18/07/13 03:27:20 ID:.IxYNRvc [4/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
コジョンド「貴女、とても美味しそう」

ミミロップ「な、なにを……」

逃れようとするも、いったいどんな力で押さえつけられているのだろう、身体のどの部分も全く動かない。

コジョンドは妖艶な笑みを浮かべ、もがくミミロップを眺めて愉しんでいるようにも見える。

猛攻を仕掛けていたミミロップを逆転し、今度はコジョンドが優位に立っている。そんな光景に観客は盛り上がりを見せるが、ミミロップは想像をはるかに越えるコジョンドの動きに得体の知れない恐怖を感じ始めている。

これが、ニャオニクスの言っていた言葉の意味なのだろうか。

コジョンド「貴女はまだまだ美味しくなれる。今は可愛い稚魚でも、これからどんどん成長して大きな魚になっていくわ。そしたら……」

コジョンド「私に食べさせてね?」

ミミロップ「あ、ちょ……」

コジョンドは顔を寄せ、小さく口を開ける。そのまま何をするかと思えば、ミミロップの口をぺろりと舐め、熱いキスをしてみせた。

全く意味のわからない行為。コジョンドは再び妖艶な笑みを浮かべ、ミミロップの頬をそっとなでた。

コジョンド「じゃあ、私はそろそろ帰るわね。もっと遊んであげたいけど、戻らないといけないから」

そう言って立ち上がり、ミミロップに背を向け歩き出す。そして主審のエルレイドを呼び、一言二言話した後、彼女はフィールドから出て行ってしまった。

エルレイド「え、えーっと……コジョンド選手が辞退を宣言されたため、決勝戦はミミロップ選手の勝利となります……」

どよめく会場。

一瞬で立場を逆転させミミロップを圧倒したかと思えば、組み伏せた彼女にキスをし、決勝戦途中退場を宣言。全くもって、彼女の言動の意味を理解する事ができない。

エルレイドも何がなんだかわからないようで、副審のサーナイト達を集めてなにやら話をしていた。
 ▼ 374 ボネア@ローラースケート 18/07/13 03:27:42 ID:.IxYNRvc [5/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
サーナイト「コジョンド選手の辞退は本人の宣言による正式なものです。協議の結果、ミミロップ選手を不戦勝とし、優勝といたします。また、二位の座も辞退されるとの事で、二位と三位に関しては繰り上げ受賞と致します」

エルレイドの代わりに姉のサーナイトがマイクを取って、状況を説明してくれる。

彼女の説明を聞いて、静まり返る会場。あまりに不可思議な展開に、ブーイングすら聞こえてこない。

エルレイド「え、えっと、かなり意外な展開になりましたが……これにて♀部門は終了。続いて、♂部門の決勝戦を行いたいと思います」

サーナイト「ミミロップ選手、あちらでお待ちください。優勝おめでと」

ミミロップ「う、うん……」

サーナイトに促され、フィールドを後にするミミロップ。何がなんだかわからないとは、まさにこの事か。

ただ、一つはっきりさせられた事もある。

ミミロップ「(あのまま試合を続けていたら、きっと私は……)」

音も無く離れた位置から距離をつめ、ミミロップを組み伏せ、抵抗すら満足に行わせなかった。

コジョンドの実力はおそらくここに集まった者の誰よりも強い。そして、彼女相手に手も足もでないような現状では、WFC優勝など夢のまた夢である。

とにかくミミロップは、優勝こそしたものの、勝負では完全に敗北していた。

ルカリオ「大丈夫?」

ミミロップ「うん、別に大丈夫だけど……」

フィールド外まで戻ってきたミミロップに声をかけるルカリオ。様子のおかしい試合に、ルカリオは心配を募らせているようだ。

ルカリオ「コジョンド、只者じゃなさそうだね」

ミミロップ「うん。正直、普通に戦ってたら負けてた」

ルカリオも彼女の実力を見抜いていたのだろう。誰もいなくなった東側フィールドを見つめ、目を細くした。

彼女とは、またいずれ戦う事になるかもしれない。その時は負けることのないようにと、ミミロップは意気込みを新たにするのだった。
 ▼ 375 ガプテラ@さざなみのおこう 18/07/13 03:28:03 ID:.IxYNRvc [6/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




ホウエン大会最終戦でもある♂部門決勝戦。

ここまで順調に勝ち抜いてきたルカリオに対するは、ニャオニクス弟。

姉とは違いあまり喋る事がないようで、初期位置までやって来ても気合を入れるでもなく落ち着き払っている。

コジョンドのように冷静なのだろうか。試合開始後どのような動きを見せてくるか、予測できる行動パターンをいくつもシミュレーションしながら、ルカリオは開始の合図を待った。

エルレイド「それでは最終試合、決勝戦……はじめ!」

ルカリオ「はっ!!」

ニャオニクス「!!」

試合開始と同時に、バレットパンチで突っ込んでいく。

カウンターを警戒しつつ様子見すると踏んでいたのだろうか、ニャオニクスはルカリオの速攻に驚き回避が間に合わず、ガードで対応した。

ルカリオ「まだまだ!」

手ごたえを感じ、ガードしている腕目掛けて蹴りを入れる。その反動ですぐ後ろへ宙返りして跳び退き、着地と同時にインファイトを繰り出した。

ニャオニクス「ぐぅ……」

無論それで終わりではない。インファイトをガードする事に集中しただろうニャオニクスの足元を回し蹴りで崩し、更にバレットパンチを打ち込んでいく。

攻撃に更に攻撃を重ね、反撃どころか回避の暇さえ与えない。ルカリオお得意のスピードを乗せた連続攻撃が、開始早々炸裂した。

ルカリオ「(このまま押しきってやる!)」

足元を崩した事でガードさえおろそかになったニャオニクスは、ルカリオの猛攻をまともに受ける事となってしまった。

ルカリオはチャンスとばかりに、一発で彼を吹っ飛ばそうとはせず、できる限りその場に止めてダメージを蓄積させていく。

ルカリオ「これで、とどめだ!」

最後の仕上げに、強烈なインファイトをお見舞いする。踏み込みも深く、体勢も最高の状態で技を放つ事ができそうだ。

敢えて速攻をかける作戦がうまくいったと、ルカリオは満足そうに、精一杯拳を打ち込んだ。
 ▼ 376 ガサメハダー@ものしりメガネ 18/07/13 03:28:19 ID:.IxYNRvc [7/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ニャオニクス「……甘いですね」

ルカリオ「なに!?」

渾身のインファイトを放った……そう思った刹那、伸ばした腕が引っ張られる。そして世界が反転し、気がつけばルカリオは地面に強く叩きつけられていた。

ルカリオ「ぐお……」

ニャオニクス「回避も赦さぬ速攻、良いですね。でも、僕の敵ではないみたいです」

ルカリオ「な、なにを」

ニャオニクスの次の攻撃をかわそうと横に転がるも、かわした先で強烈なボディーブローをその身に受ける。

溜飲がこみ上げてくるのを何とか耐えるも、その頃には次の攻撃がルカリオの肩や脚に加わっており、激痛に顔をゆがめる事になる。

その状態から起き上がる事も転がる事もできず、雨のように降らされるニャオニクスの拳を身体を縮込ませる事で防ぐしかない。

ニャオニクスの猛攻は止まらない。先ほどとは完全に立場が逆転し、ルカリオは上から殴り続けるニャオニクスに手も足も出なくなってしまった。

ニャオニクス「先ほどあなたは『とどめ』、と言いましたね。残念ですが、本当の『とどめ』はこれです」

ルカリオ「な……」

ニャオニクス「お疲れ様でした」

ニャオニクスが可愛らしい右手を振り上げる。

試合開始から、わずか三分程度。ルカリオはその瞳に、完全敗北の絶望を見る事となってしまった。
 ▼ 377 ココ@ぼんぐりケース 18/07/13 03:28:39 ID:.IxYNRvc [8/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告





ミミロップ「ルカリオ、はいお茶」

ルカリオ「ん……あぁ、ありがと」

ミミロップがコップを二つ持ち、ルカリオの所へやって来る。

ルカリオはそれを横目で確認して返事はしたものの、コップを受け取ろうと手を出す事はしなかった。

彼はすぐに視線を空へ戻し、ただぼんやりと雲が流れ行く景色を眺めている。

今日の天気は晴れ。だが強い光を放つ太陽は、分厚い雲に覆われて、どこか不機嫌そうに切れ間から顔を覗かせていた。

ミミロップ「……気にしてない、わけないわよね」

ルカリオ「…………」

ミミロップの問いに、ルカリオは答えない。しかしその沈黙こそ、肯定に他ならなかった。

最愛の嫁相手に維持張っても仕方が無い。そう思ったのか、ルカリオは短く息を吐いた。

ルカリオ「……油断したわけじゃなかった」

それからも暫く間を開け、ようやくそれだけぽつりと呟く。

ミミロップ「最初の攻撃、全然効いてなかったの?」

ルカリオ「どうだろうな……全くって事はないと思うけど、もしかしたらほとんどダメージ無かったのかも」

自分の惨めな姿を思い出してか、ルカリオは大きく息を吐いた。
 ▼ 378 スモウム@たいようのふえ 18/07/13 03:28:54 ID:.IxYNRvc [9/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ホウエン大会決勝戦。ルカリオはニャオニクス相手に、試合開始直後から猛攻を仕掛け有利にバトルを進めていた。

しかし渾身のインファイトを打ち込んだ際カウンターを決められ、そこから一方的に攻撃されそのまま負けてしまった。

様々な出来事に巻き込まれながらもここまで順調にやってきたルカリオにとって、今回の敗北は大きいようだった。

ミミロップ「でも、WFC出場資格は満たしてるんだから良しとしとかない?」

ルカリオ「……わかってるよ」

負けたことは勿論ショックではあるが、それよりも今後の事を考えていくべきだ。

ルカリオ「……明日から、俺が昔やってた修行を一からやろうと思う」

実はルカリオ、ただぼんやりと空を眺めていただけではなく、次に向かうシンオウ地方でどのような修行をするか考えていた。

シンオウ地方はルカリオ達の生まれ故郷。まだルカリオがミミロップと出会う前、彼はシンオウ地方である修行をずっと行っていた。

ルカリオ「シンオウでは俺が思う場所をめぐる事になるけど、いい?」

ミミロップ「勿論。私だって、こう見えてコジョンドに実質負けたのショックなんだから」

思えば、ミミロップはルカリオとほぼ同じ負け方をしている。夫婦揃って同じ課題を追いかけることになりそうだ。

ルカリオ「そうだよね……よし! じゃあ気合入れなおして、シンオウ大会は優勝するよ」

ミミロップ「そうね! 頑張りましょ」

意気込み新たに、シンオウ大会での勝利を誓う二匹。次にニャオニクスやコジョンドと戦うときはもう負けないようにと、敗北を糧にするべく前を向いた。
 ▼ 379 マコブシ@きよめのおこう 18/07/13 03:29:10 ID:.IxYNRvc [10/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告







何故だ、何故こんなことになるんだ。

こんな運命に、誰がした。

どうして彼女がこんな目に遭わなきゃいけないんだ。

僕では、僕達では、どうにもならなかったのか。どうしても彼女を救う事はできなかったのか。



彼女は、僕達は、平和な生活を望むことすら、それを願う事すら赦されなかったというのか。

彼女はただ、ここに住む者達が穏やかに暮らしていけるよう祈っただけだ。

僕達はただ、そんな彼女を守り続けていただけだ。


もし、それが罪だと言うのなら、悪だと言うのなら……僕は剣を取ろう。

この剣で、彼女を守ると誓ったこの刃に懸けて、お前達の善を全て駆逐しよう。

それが、僕の正義となる。







 ▼ 380 ンド@ホズのみ 18/07/13 03:29:35 ID:.IxYNRvc [11/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



ハクタイの森。そこは昼間であってもどこか物寂しい空気の流れる不気味な場所で、心なしか流れる風も一層冷たく感じられる。

この森は全体を通して人通りが非常に少なく、人の手が加えられていない自然の形そのままの場所が多い。存在する人工物といえば、もう何年も無人のまま放置された洋館くらいのものだ。

またこの辺りは冬でなくとも気温が低く、雪がちらつく事も珍しくない。また、森の奥へ入れば入るほど日の光を覆う木々は多く密集していき霧も深くなるため、不用意に入り込めば二度と出られないなんて事にもなりかねない。

こんな場所に人間は立ち入らない。こんな場所だからこそ、ポケモン達は好んで住み着く傾向にある。

ルカリオ「懐かしいな……」

生まれ故郷であるシンオウへ里帰りした彼らは、寄り道をせず真っ直ぐこの森にやってきた。

ここは昔、ルカリオが自分を磨いていた頃、よく修行を行っていた場所だ。ミミロップと暮らすようになってからここへ来たことはなかったが、景色も空気も当時のまま変わっていないらしい。

薄明るい草原を抜け、霧のたち込める森を歩き、辿り着いたのは岩場の上にできた丘。それなりに高さのある丘で、ここからならハクタイシティの一部やソノオタウンが見渡せる。

ミミロップ「ここが、ルカリオがずっと修行に使ってた場所?」

ルカリオ「4箇所ほどあるんだけどね。でもここが、一番使ってたかな」

ルカリオは丘に一本だけ生える大きな木を見上げた。

ミミロップも一緒になってその木を見上げる。その木はとても高く、青々と葉を生い茂らせている。

ルカリオ「今日はここで一夜を明かそう。明日になったら、修行の内容を説明するね」

ミミロップ「わかったわ」

木の麓には何を象ったのかのかよくわからない大きな石像のようなものが幾つか転がっている。中にはそれらが重なって雨宿りができるようなスペースができている所もあるらしく、どうやら夜はそこで眠る事になるようだ。

ルカリオ「あれ?」

寝床を確認しようと、ルカリオがそのスペースを覗き込む。

リーフィア「Zzz……」

そこには既に、先客がいた。
 ▼ 381 ラガラ@ちからのねっこ 18/07/13 03:49:11 ID:WtaM77xY NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 382 ヌギダマ@サイコシード 18/07/14 06:32:51 ID:3JSAaZoM NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
必ずブイズが絡んでくるの嬉し
シエンネ
 ▼ 383 ガボーマンダ@きょかしょう 18/07/15 03:24:05 ID:v63gfhEk NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 384 ルケニオン@つきのふえ 18/07/15 07:28:40 ID:YbJ.xxRo NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 385 ーリキー@クリティカッター 18/07/15 22:45:43 ID:7nkYEORk [1/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミミロップ「どうかした?」

ルカリオ「あ、いや……」

石像の隙間を覗き込んだまま固まるルカリオを不思議に思い、ミミロップも今夜寝床にする予定の場所までやってきた。

ミミロップ「あら、先客がいたのね」

ルカリオ「うん。まぁ寝床にできそうな場所は幾つかあるけど……」

そう言って周囲を見回すも、一匹が雨を凌ぐには充分なスペースこそ各所にあるものの、二匹が寄り添える程の空間ができているのはリーフィアの眠っているそこだけのようだ。

この場所にこだわるわけではないが、他を当たるとなるとまた良い場所を見つけるのに時間を取られてしまう。今日は鍛錬を行わないとはいえ、今後の見通しを話したり夕飯を探したりする事に時間をかけたいところ。

ミミロップ「起きるの待つか、別々に寝るしかないわね」

ルカリオ「まぁ、それも修行の一環とは思うけど……」

ルカリオが心配しているのはいちゃいちゃできない事ではなく、ミミロップの身に何かあった時すぐ駆けつけられるかどうか。この周辺は、大小さまざまな石像が無造作に転がっているため死角が多く、半睡状態では様子をうかがいにくいのだ。

ミミロップ「心配してくれるのは嬉しいけど、私だって自分の身くらい時分で守るわよ」

ルカリオ「まぁ、そうなんだけどさ」

たとえ伴侶がどれだけ強くとも、自分の嫁は自分が守りたいと思うのが♂というもの。それに加え、普段からできる限り嫁を楽させてあげたいと思うのが、ルカリオという♂だ。

ルカリオ「まぁ、とりあえず辺りを見て回ろう。木の実探さなきゃいけないのは変わらないし」

ミミロップ「そうね、また後で考える事にしましょ」

二匹が傍で少しやかましくしても、よほど疲れているのだろうか、リーフィアは一行に起きる気配がない。

リーフィア「んふ……姫は、僕がまもる……」

寝言だろうか。良い夢を見ているのなら、起こすのも気が引ける。そう思い、二匹は足早にその場を去ることにした。
 ▼ 386 ランテス@ウイのみ 18/07/15 22:46:37 ID:7nkYEORk [2/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



丘の周辺はそれなりに草原が広がっていて、森の中でも見通しの良い場所だ。しかし背の低い植物ばかりかといえばそういういわけでもなく、ぽつりぽつりと実のなる木が各所に生えていて、一部のポケモン達は遊び場としても活用しているようだ。

ルカリオ「ミミロップちゃん、あの木に登るよ」

ミミロップ「え、なんで木登り?」

ルカリオ「いいからいいから」

ルカリオはミミロップの手を引き、草原の中でも一番大きな木まで走る。そして木の麓まで辿り着くと、彼女を先導するようにするすると木のてっぺん付近まで登っていった。

珍しく有無を言わさないルカリオに首を傾げつつも、ミミロップも彼の後を追って木を登る。

ミミロップ「ここに何があるの?」

ルカリオ「ほら、見て」

ミミロップ「見るって何を……わ、すごい綺麗」

丘の上に聳え立つ大きな樫の木。その最頂部からはハクタイの森をぐるりと見回せ、自然の美しさをありありと楽しむ事ができた。

太陽の光に照らされて青々と光る木々、そよ風に踊りさわさわと優しい音を立てる草原、見ているだけで凍えそうな白銀の世界……

シンオウの地とは、我らが故郷とは、これ程までに素晴らしいものだっただろうか。息を呑むほど美しい大自然の魅力がそこにありありと広がっていた。

ルカリオ「ほら、見える? あの枯れ木が並ぶ辺りも修行する場所。それで、あっちの雪が見える所や、反対側の広い泉のところもそうだよ」

ミミロップ「四箇所あるって言ってたわねそういえば」

ルカリオ「うん。そこはそれぞれ、精神力、速さ、回避って感じで修行のテーマが決まってるんだ」

ミミロップ「最初にいたところは?」

ルカリオ「あの丘は攻撃。今もだけど、俺は攻撃に重みが足りないから、そこで一番修行してたんだ」

ミミロップ「なるほど」

先日のホウエン大会での反省を踏まえ、それぞれの修行場所を回りいちから鍛えなおそうと提案するルカリオ。もとより旅の途中で基礎を見直すつもりではあったため、ホウエン大会での敗北は良い機会でもあったのだ。

ミミロップ「特に厳しいトレーニングになりそうね……ん、あれは何かしら」

ルカリオ「あれって?」

ミミロップ「丘の上の方、ほらあそこ。何か遺跡みたいなのがあるけど」

ミミロップが指差すほうを眺める。草原地帯の一角、半分崩れかかった建物がそこにあった。
 ▼ 387 ギア@ヘビーボール 18/07/15 22:47:06 ID:7nkYEORk [3/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルカリオ「なんだろうあれ。俺がここ使ってた頃には無かったけど……」

ミミロップ「えぇ? だってあれ、相当古そうよ? 所々崩れてるし」

ルカリオ「うーん、そうみたいだけど……」

腑に落ちないといったようにルカリオは頭をかく。ここで修行していたのは昔の事とはいえ、何十年も前の話というわけではない。遺跡に見えるような建物だ、年季の入った様子からしてルカリオの思い違いである可能性は高いだろう。

だが、ルカリオはどうも納得できないようで、顎に手を当てうんうんうなっている。

ミミロップ「気になるなら、行ってみる? そう遠くないし、外観見るくらいなら別に何もないでしょ」

ルカリオ「そうだね。途中生えてる木から木の実を回収しながらそこまで行こう」

言うがはやいか、ルカリオはぱっと枝から手を離し、そつなく地に降り立った。そしてすぐに走り出す。

ミミロップ「あんもう、なんで躍起になってるのよ」

それを追いかけるミミロップ。覚えが無い事がそんなに気に入らなかったのだろうか、途中で木の実を拾おうと言っていたにも関わらず結局遺跡のような所へたどり着くまで一度も寄り道をする事はなかった。
 ▼ 388 ャスパー@ラティオスナイト 18/07/15 22:48:06 ID:7nkYEORk [4/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




ルカリオ「ボロボロだここ」

遺跡のような建物に着いたルカリオは首を上げ、辺りをぐるりと見回した。

建物は岩で出来ており、あちらこちらが欠けている。場所によっては天井から全て崩れてしまっており、どんな部屋があったのか何に使われていたのか、そういった事は全く推測できない。

また、外壁だけでなく内部にも草木や蔦が蔓延しており、もう何年も誰の手も入れられていない事がわかる。

まさに、遺跡と呼ぶに相応しい、そうでなくとも跡地と言って差し支えない建物。こんな人工物が人間の立ち入らぬ森の奥に存在している、それに違和感を覚えずにはいられない。

ミミロップ「もう、走るの速いっての……」

少し遅れて、ミミロップも遺跡の前に到着する。疲れた様子は一切見られないが、彼女は大きく息を一つ吐いた。

ルカリオ「やっぱり俺、こんな建物知らない」

ミミロップ「そうは言ってもここにあるんだから仕方ないじゃない」

ルカリオ「それはそうなんだけど……」

ここまできても、ルカリオはどこか不満そうにしている。

ミミロップ「なら、どうしてそう思うの?」

ミミロップは自分の記憶に固執する彼を一蹴するのではなく、真摯に向き合う事を選んだ。

もとよりミミロップは、ルカリオがいい加減な事を言ったり不確かな事にこだわったりするポケモンではないと知っている。ルカリオがここまで気にするという事は、そこに引っかかる確かな何かがあるのだと、彼女は理解していた。

ルカリオ「あの丘からこの草原まではさ、俺が当時ガブリアスに教えてもらった修行場所なんだ」

ミミロップ「前に話してたわね。詳しくは聞いてないけど、その当時に案内されたとかそういうこと?」

ルカリオ「それも勿論そうだし、こういう建物があるなら教えてくれてるはずなんだ」

ミミロップ「敢えて言わなかったとかは?」

ルカリオ「それはまぁ、あるかもだけど……ポケモン達が勝手に作った木の家さえいちいち話してくれてたんだ、こんな大きなもの教えてくれない理由がわからん」

そう言ってルカリオは両手をあげて見せる。
 ▼ 389 シャーナ@たつじんのおび 18/07/15 22:49:41 ID:7nkYEORk [5/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミミロップ「わざと言わなかったのなら理由があるはずだけど……中に何かあるとか?」

ルカリオ「入ってみようか。といっても、半分壊れてるから屋内って気はしないけど」

立ち話をしていても仕方がない。二匹は壊れた壁の隙間から建物の内部へと進入する。

忍び入った場所は特に何も置かれていない、石造りの壁に囲まれた十五畳程度の空間だった。室内に人が住んでいた形跡は無く、それどころか電機などの設備などもロクに備わっていないようだ。

辺りに何もない事を確認し、部屋の出入り口らしき隙間から次の空間へ移動する。廊下だったのだろうか、出た先は左右を壁に囲われた真っ直ぐな道だった。

どちらに何があるともわからない。とりあえず右へ進む事にする。

ミミロップ「ふふ、本当に何も無いなら寝泊りするのに丁度よさそうな場所よね」

ルカリオ「自然と違って人工物は何が残ってるかわからないんだ、罠なんかがあるかもしれない」

そう言いつつも気が逸っているのだろう、ルカリオが進める歩みの速度は速い。

崩れているところがあるとはいえ、屋内に入れば光は制限される。生物の気配は今の所していないが、何か珍妙な仕掛けでもあればそれこそ何が起きるかわからない。

ミミロップ「もう」

少々気が立っているらしいルカリオの代わりに、ミミロップが辺りを警戒しながら進む事にした。

ルカリオ「どこに続いてるんだ……」

ミミロップ「不思議な空間ねぇ」

最初は瓦礫や草木ばかりが地面に転がっていたが、次第にそれもなくなり、ついには草ひとつ生えていないエリアまでやって来る。

この辺りは建物が崩れていないせいで暗くて足元がほとんど見えず、頼りになるものがお互いの存在と波動しかない。

可視できるのは、数十メートルほど進んだ先に見える光だけ。まるで洞窟の中を進んでいるようだ。

ルカリオ「何かの通り道なのかな?」

ミミロップ「そうかもね。この向こうに何かあって、そのための施設みたいな?」

やがて二匹は暗い空間を抜け、光に照らされた所までやって来る。急に明るくなった事で二匹は思わず目を細め、片手で目頭を覆った。

ルカリオ「ここは……」

ミミロップ「綺麗……」

二匹がたどり着いた先、そこは祭壇のような場所だった。
 ▼ 390 リアドス@リゾチウム 18/07/15 22:51:33 ID:7nkYEORk [6/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
空間の中央に台座のようなものがあり、その周辺にはにレンガのような岩石が規則的に並べられている。ルカリオ達のいる所からはこれまた岩でできた階段が台座前まで伸びており、その両端には丘でも見た何を象っているのかさっぱりわからない石造が立っていた。

壊れているからか元からそういう作りなのか天井には半分程屋根が無く、降り注ぐ日差しが辺り一帯を美しく照らしている。そのせいかこの空間には草木が多く茂っており、台座にも沢山の蔦が伸びていた。

人工物に自然が侵食していると、どこか風化したような印象を覚える。しかしそれでいてこの場所は不思議にも美しさを感じさせてくれる。

そのどこか神秘的な光景に、二匹はしばらく動き出す事ができなかった。

ミミロップ「ん、あれなんだろ」

先に我へとかえったミミロップが台座の方を指差す。

見ればそこには何かが垂直に刺さっており、太陽の光を受けてか淡く輝いている。

ルカリオ「あれは……剣?」

石段をのぼり、台座の前へ。そこには緑色をした剣が、まるでファンタジー映画やゲームのそれのように突き刺さっていた。

ミミロップ「何の剣かしら……引っこ抜いてみる?」

ルカリオ「え、いいのかな。こうして刺してあるって事は祀ってあるのかもしれないし」

建物こそ半壊してしまっているが、おそらく専用の部屋として作られ台座まで設えられている所を見れば、ここが特別な場所である事は素人目にもわかる。

そう思えば神秘的な空気も納得ができた。

ミミロップ「でもこういうのって、選ばれし者とかじゃないと抜けないわよね」

ルカリオ「今日始めてここに来た俺達がそんな存在なわけはないけど……」

ミミロップにそう言われ、気になり始めたのだろう。ルカリオは右手をわきわきとさせ、台座に刺さっている剣と見比べた。

できないだろうと言われては、やってみなくちゃわからないなどと考えてしまう、ルカリオの単純なところ。勿論ミミロップはそれをわかっているので、冗談半分で彼に引き抜くようけしかけているのだ。

ミミロップ「あらあら、抜きたくて仕方ないって感じね」

ルカリオ「煽ったのミミロップちゃんじゃん。ちょっとやってみる」

ミミロップ「何かあったらどうするの?」

ルカリオ「これだけ放置されてるようなとこだもん、大丈夫だよきっと」

そう言ってルカリオは台座の前に立ち、柄の部分を両手で握る。そしてじっくり一呼吸置いた後、思いっきり力を込めて両手を上に引き上げた。
 ▼ 391 リバード@サイキックメモリ 18/07/15 23:51:00 ID:fqP.foVI NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 392 ロスター@メンタルハーブ 18/07/16 02:49:27 ID:o7HIljrI NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 393 ドリーノ@マッハじてんしゃ 18/07/17 01:30:14 ID:4MdI3OWs [1/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミミロップ「待って!」

ルカリオ「どうしたん……何か変な気配がするね」

ルカリオが剣を引っこ抜こうとしたまさにその瞬間、射抜くような視線が彼ら二匹を襲った。

何の物音もさせず今の今まで気配も漂わせないまま彼らに近づいてきた何者か。あるいは最初からこの部屋のどこかにいたのだろうか、急に主張を始めたその視線の主はどうも近くにいるようだった。

剣から手を離し、波動で周囲を探るルカリオ。果たして、その主はすぐに見つかった。

ルカリオ「上か!!」

上を向き何かがいることを確認した瞬間、彼はその場から跳び退いてミミロップの所へ。次の瞬間、彼が立っていた所に、上にいた何者かが襲来してきた。

ミミロップ「なにこいつ……クリムガン?」

クリムガン「クゥリムガンナッ!!!」

ルカリオ「また言葉の通じないタイプのポケモンか……色は黒くないみたいだけど」

これまで見てきた特殊な固体、フライゴンやトリトドンのような色をしているわけではないが、見るからに凶暴そうなクリムガン。心なしか通常の種よりも身体が大きいようにも見える。

ルカリオ「まぁ、仲良くはなれそうにないな」

ミミロップ「これってあれよね。宝を守る魔物みたいな」

ルカリオ「わかる。って、暢気に話してる場合じゃなさそうだ」

クリムガンは姿勢を低くし突進の体勢に入っている。戦いは避けられそうにないと判断し、ルカリオとミミロップはパンパンとお互い手を叩き合った。

クリムガン「ガァッ!!」

クリムガンが顔面から突っ込んでくる。ルカリオは右へミミロップは左へ、それぞれ跳躍してそれを避けた。

クリムガンは顔から岩の壁に突っ込んでいく。その衝撃に耐え切れず外壁の一部が損壊し、がらがらと崩れ落ちてきた。

ルカリオ「クリムガンの顔は岩より硬いんだっけか」

ルカリオが呟くのとほぼ同時に、クリムガンが瓦礫となった岩壁から顔を上げる。

壁に穴を空けても全くダメージを受けていなさそうなクリムガン。とても硬い顔と鋭い爪が彼の武器であり、それらにやられれば流石のルカリオ達でも手負いとなる事は間違いないだろう。

ルカリオ「剣を守る魔物だかなんだかわからないけど、トレーニングの手始めにいっちょ叩かせてもらうぜ!」

振り向こうとするクリムガンに向けて、速攻のバレットパンチ。硬いという顔を避け肉体や羽に攻撃を仕掛けていく。
 ▼ 394 ーナンス@こだいのおうかん 18/07/17 01:30:45 ID:4MdI3OWs [2/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルカリオ「いってぇ!!」

だが、彼の攻撃でクリムガンにダメージが通ることはなかった。クリムガンは全身が思った以上に硬く、バレットパンチではどうも威力が足りないようだ。

ミミロップ「硬いのなら蹴りたくないなぁ」

跳び膝蹴りでは脚を傷めると判断したミミロップは、電光石火で勢いを乗せて足の裏でクリムガンを蹴っ飛ばす事にした。

これに対しクリムガンは避ける事を一切せず、ミミロップの蹴りに吹っ飛び、建物の壁を突き抜けて外へ放り出されてしまう。

ルカリオ「やったか?」

ミミロップ「いや、蹴っ飛ばしただけで手ごたえも何もあったもんじゃないわ」

屋根の上にのぼり、クリムガンを探す。クリムガンは地面を抉りながらしばらく転がっていたが、その身体に大きな傷は見当たらない。

ミミロップ「あいつかたすぎじゃない?」

ルカリオ「皮膚が異常に硬いんだろうな。ちょっとやそっとの攻撃じゃ通用しなさそうだ」

かといって強力な攻撃を繰り出す事も躊躇われる。仮にその攻撃が通用したとしても、手や足を傷つけてしまっては今後に支障が出てしまう。それはできれば避けたいところだ。

ルカリオ「どこかに弱点があるかもしれない。そこを思いっきり叩けば崩す事ができるかもしれないね」

ミミロップ「って言ってもどこにあるのやら……あら?」

ルカリオ「え、もう見つけたの?」

ミミロップ「いや、どうだろ。羽の付け根の辺り、なんだかとっても柔らかそう」

遠目からでは断定する事はできないが、羽が動くたび付け根の肉が一緒に動いている様子を見る事ができた。筋肉と皮が動いている様子を見れば、皮膚や肉質が他よりも柔らかいだろうと予想できる。

弱点を探すため注意深く観察したとはいえ、よくそこに着目したなとルカリオは感心した。

ルカリオ「よし、じゃあそこ狙うか」

ミミロップ「私がひきつけるから、叩くの任せたわね」

ルカリオ「ガッテン!」
 ▼ 395 サイドン@スターのみ 18/07/17 01:31:07 ID:4MdI3OWs [3/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
遺跡から大分離れた所でようやくクリムガンは停止し、ゆっくりと起き上がって雄叫びをあげる。

ルカリオ達は彼の咆哮など気にする様子もなく屋根から飛び降り、素早くクリムガンの間合いまで近づいた。

ミミロップ「ほらほら、相手してあげるわ!」

電光石火でクリムガンの顔やら胴体を叩き、挑発する。そのどれも全くクリムガンにはダメージが通っていないが、彼の気を引くことには成功したようで、クリムガンはミミロップ目掛けて鋭い爪を振り上げた。

大降りのドラゴンクローを避け、少しずつ後ろに下がるミミロップ。その間にルカリオはクリムガンの背をとり、羽が下がるタイミングを見計らっていた。

ミミロップ「かかっておいで!」

クリムガンと少し距離を取り、手招きして攻撃を誘う。挑発がきいているのかそれを見たクリムガンは姿勢を低くし、再び突進の体勢に入った。

ルカリオ「いまだ!」

姿勢と共に羽を深く下げたクリムガン。丸見えになった羽の付け根に、ルカリオは思いっきりインファイトをお見舞いした。

クリムガン「グギャァ!!」

確かな手ごたえ。ミミロップの推測通りクリムガンのそこは他に比べてとても柔らかく、思いっきり殴っても手を傷つける事はなかった。

思わぬ一撃をその身に受け、クリムガンは再び吹っ飛んでいく。ミミロップはルカリオがインファイトを打った瞬間真上に跳びあがり、視線を下に向けて地を転がるクリムガンを見送った。

再び草原を転がっていくクリムガン。やがて大きな木にぶつかり、その場に崩れ落ちる。更に、衝撃に耐え切れず木が折れてしまい、クリムガンの頭に直撃した。

ルカリオ「今度はやったみたいだな」

ミミロップ「うまくいったわね」

こつん、と拳を合わせる二匹。クリムガンは暫くの間目を回していたが、やがて我に返ると物凄い勢いで飛び去っていった。

その背を見送る二匹。彼の姿が見えなくなると、ルカリオはやれやれといった風に両手をあげて見せた。

ルカリオ「じゃ、さっきのとこ戻るよ」

ミミロップ「え、やっぱりあれ引き抜くの?」

ルカリオ「ここまできたんだもん、折角だしね。まぁ、まずかったら戻したらいいし」

半壊した天井から、再び祭壇へ。

ルカリオ「よし……!」

周囲にもう何もいない事を確認した後、ルカリオは今度こそ刺さっている剣を引っこ抜いた。
 ▼ 396 リゴン@つららのプレート 18/07/17 01:33:07 ID:4MdI3OWs [4/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告







『この祈りが……私の祈りが、聞こえていますか……』


                    『もしも、私の祈りが聞こえているのなら……』



                      『お逃げなさい』



『この森を離れ、海を渡り、ヤツの目が届かない所まで……』

              『あなた達だけでも、どうか、逃げて……』






 ▼ 397 クロム@メダルボックス 18/07/17 01:33:49 ID:4MdI3OWs [5/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


―――――――――――
    ―――― ・…―――   ――――――……・…―――

「それでも私は……この地が、この森が……ずっと平穏と共に在るよう、願うわ!」

――――――― ―――・――――  …――――
  ……―――・―――…  ― ―――       ・――――……・―――

「っ、情けない、ねぇ……この俺様が、まさか死を見る事になっちまうとはなぁ……」

         ・・―――――  ―――  ………―――――――
  ――…―――  …・…・  ―――――・――

「私のこの力が役に立てるのなら、それは本望というものです……私の命、この力の全て、あなたに捧げます……」

     …――――  …―――――  ・  ―――――  ………・・・――――――
―・―…―・  ――――――           …―――・

「あはは、もう、だめみたい……でも、このまま、死んでやるもんか……私の力、思い知らせてやる……」

―・・…――――― ……………――――――     ・ ―――…―――
            ・・・・――――……――――・・・・

「僕が、っ、く……僕が、姫を守るんだ!!!」

――――――――   ―――――――
…………  …………
・・・ ・・・


 ▼ 398 ーホー@きいろいかけら 18/07/17 01:34:15 ID:4MdI3OWs [6/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルカリオ「っ!!」

ミミロップ「ど、どうしたの?」

ルカリオ「え……あ、いや」

気がつけばルカリオは引っこ抜いた剣を手にしたまま、台座に反対の手をついていた。

ミミロップは、急にどうしたのかととても心配そうな様子で彼の肩に両手を添えている。

ルカリオは「大丈夫だ」と言って台座から手を離し、彼女の手の甲に重ねる。それでひとまずは安心かと、ミミロップは小さく息を吐いた。

ルカリオ「……誰かの声が聞こえた」

ミミロップ「え?」

ルカリオ「俺にもよくわからないんだけど……急に誰かの声が聞こえて、それから色んなポケモンの声が流れてきた」

ルカリオは手にした剣を持ち上げ、眺める。

ルカリオ「たぶん、この剣が俺に語りかけてきた」

ミミロップ「え、えーっと……」

急にファンタジーな事を言い出す夫に頬をかくミミロップだが、彼が波動でそういった思念を読み取ったりできる事は彼女も知っている。もしかしてそういう事なのかと思いなおし、一緒に剣を眺めた。

ルカリオ「思いが強いと、物に記憶の欠片が残るんだ。時間の花って知ってる?」

ミミロップ「ルカリオみたいに波動を使える者が過去を見れる花よね?」

ルカリオ「うん。それに似た力を、この剣に感じる……もしかして、それと同じなのかもしれない」

ミミロップ「……緑色なのって、本当に植物だからって事?」

ルカリオ「たぶん。これは、植物の剣なんだ」

剣を一振りしてみるルカリオ。

鋭く風を切る音が聞こえる。植物でできているかもしれないとはいえ、普通に剣として使っても申し分なさそうな代物だ。きっとある程度の物であれば斬ってしまうことも可能だろう。

しかし、かなり古いものだからだろうか、剣を取った時に流れてきた声はもう聞こえない。波動を使ってみても、反応は全く無い。もしかしたら、ルカリオに聞かせたのを最後に、記憶を伝える能力が尽きてしまったのかもしれない。

ミミロップ「何が聞こえたかわからないけど、もしかしたら、この遺跡で起きた出来事だったのかもね」

ルカリオ「かもね。これは元に返しておいた方がいいかな。俺が持ってていいもんじゃなさそうだ」

台座に向き合い、剣を両手で持つ。

???「待って!」

そのときだった。後ろから聞こえた大きな声が、ルカリオの動作をとめさせた。
 ▼ 399 ニドリル@インドメタシン 18/07/17 11:49:27 ID:7IGgss1Y NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
時間の花ってルカリオの映画か懐かしい
 ▼ 400 ママ@ネストボール 18/07/17 22:38:11 ID:4NE.O/PI NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
いつも見てます。
支援
 ▼ 401 ーゴート@あかいビードロ 18/07/18 01:15:05 ID:jtUQEJSY [1/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
リーフィア「その剣……抜けたの?」

振り向けば、リーフィアがとても驚いた顔をして立っていた。

丘で眠っていた固体かもしれない。葉の部分が若干寝癖がついたように折れてしまっている。

ルカリオ「あー、やっぱり抜いたらまずかったか」

ミミロップ「けしかけておいてあれだけど、まぁ置いてあるもの勝手にいじったらダメよね」

リーフィアは信じられないものを見るような目でルカリオを見ている。その様子を見てルカリオは、本当にまずい事をしたと額を押さえた。

ルカリオ「本当にすまない。とりあえず、元の場所に戻すから」

リーフィア「あ、ま、待って!!」

ルカリオが剣を刺そうとすると、リーフィアは物凄い勢いで彼の所まで走ってきた。

リーフィア「その剣、元に戻さないで」

ルカリオ「えっ」

引っこ抜いてしまった事を咎められると思っていたが、リーフィアが口にしたのは正反対の言葉だった。

リーフィア「抜いてくれてありがとう……って言うとちょっと違うんだけど」

リーフィアは姿勢をただし、咳払いをしてルカリオをしっかりと見据える。

リーフィア「魔物を倒して剣を引き抜いたという事は、あなたにはそれだけの力があるという事。お願いがある。どうか僕を……」

リーフィア「弟子にしてください」

ルカリオ「ええっ?」
 ▼ 402 ケッチャ@きのはこ 18/07/18 01:15:27 ID:jtUQEJSY [2/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
思ってもみなかったリーフィアの言葉に、ルカリオは驚きを隠せない。

リーフィアはといえば、真剣な眼差しでルカリオを見るばかり。どうも、何かを隠していたり騙そうと企んでいたりはしていないようだ。

仮に巧妙に隠していても、波動を読み取ればはっきりわかる。念のためそれとなく探りを入れてみるも、彼の波動は真っ直ぐだった。

ルカリオ「え、えっと、とりあえずだな……すまん、弟子は取らない。というか、俺自身今はそんな場合じゃないっていうのが、正直なところだ」

リーフィア「そう、ですか……」

ホウエン大会では見事に負けてしまった。ルカリオとしては、誰かを師と仰ぐ事こそあれど、誰かを教える立場になどなれるはずも無いと思っている。

事実、彼は今次の大会で優勝するため自身を鍛える事に精一杯で、ミミロップ以外の他のポケモンに稽古などつけている余裕は全くないのだ。

ミミロップ「というか、私達が戦ってたの見てたの?」

リーフィア「途中からだけど……あんな硬いポケモンを倒しちゃうなんて、すごいなって」

ルカリオ「見てたなら、わかるだろう? クリムガンは俺とミミロップちゃんの二匹で倒したんだ、俺だけの力じゃないよ」

ルカリオはミミロップの肩を抱き、協力して倒した事をアピールする。しかしリーフィアはそれに対し首をゆっくり振ってみせた。

リーフィア「それは確かにそうだけど、違うんだよ。その剣を手にする条件に、何匹がかりで倒したかなんて関係ないんだ」

リーフィアはしみじみとそう語るが、ルカリオ達は全く見えない話に首を傾げるばかりだ。

ルカリオ「よくわからないが、俺はこの剣をどうこうするつもりはないし、弟子をとるつもりもない。悪いけど、他をあたってくれよ」

ルカリオが首を横に振るも、リーフィアは引く気はないようで諦めず食い下がってくる。

リーフィア「僕、その剣を抜くためにずっとここで修行してるんだ。けど、クリムガンを倒す事ができなくて、僕は剣を手にする事ができなかった……」

ミミロップ「いや、そうは言うけどあんた剣なんて持てないじゃない」

ルカリオ「いて」

手に入れるという意味で話したのだろうが、よほど気になったのだろう、ミミロップはルカリオをビシと手で叩いてツッコミを入れた。

なんで自分が叩かれるんだとルカリオは苦笑い。つられてリーフィアも苦笑いを浮かべたが、すぐに表情を戻し、一呼吸置いてから話を続ける。

リーフィア「……実はその剣、元は僕のものなんだ」
 ▼ 403 クロズマ@きかいのぶひん 18/07/18 01:15:46 ID:jtUQEJSY [3/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルカリオ「そうだったのか。なら、返すよ」

リーフィア「ありがとう。けど、今の僕にはそれを持つ資格がないんだ……」

リーフィアは小さく息を吐き、視線を落とす。

ミミロップ「資格って、もしかして貴方には引っこ抜けなかったってこと?」

リーフィア「うん。その剣は、植物でできてるんだけど、手にする者を選ぶんだ」

ルカリオ「だが、元々お前のものなのだろう? ならどうして抜けないなんて事になるんだ」

リーフィア「それは……話すととても長くなるから……」

そう言うリーフィアに、ルカリオとミミロップは顔を見合わせる。

この状況、何か大きな出来事が彼の口から語られるのではないか。

勿論、もし彼が困っているのだとしたら、助けてあげたい。しかし、本当に正直な所を言ってしまえば、次のシンオウ大会では優勝をもぎ取っておきたいところ。それを確実なものとするためには、自身の修行に集中して打ち込む必要がある。

はやい話が、他のポケモンのいざこざに付き合っている場合ではない。本当に本気で優勝を狙うのなら、何を差し置いてでも自らの目標達成に向けて励むべきなのだ。

しかし、自然の中で修行をするにあたって、自分達に降りかかる様々な出来事に関してそれを避けるようではWFCで優勝などできやしないと彼らは話していた。自分達の思い描く修行だけでなく、自然の中で起きる様々な出来事も糧にして自らの力とする、そういう旅にすると言っていた。

ミミロップを見るルカリオ。彼女も旅立ちの朝をきちんと覚えているようで、小さく二度程頷いた。

ルカリオ「まぁその、なんだ、師匠にはなってやれないが、力になれることもあるかもしれん」

ミミロップ「話してみたら、楽になるかもよ? 話してもいい内容なら、だけど」

リーフィア「ありがと……じゃあ、ちょっとだけ、お話させてくれるかな」

リーフィアの言葉に「もちろん」と返し、二匹は祭壇の石段に座る。それに倣い、リーフィアもちょこんとその場に足をそろえて座り込んだ。
 ▼ 404 チリス@ギャラドスナイト 18/07/18 01:16:08 ID:jtUQEJSY [4/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
リーフィア「僕は……元々その剣を使ってたんだけど、色々あって力を失っちゃって、剣を扱えなくなったんだ」

ミミロップ「資格がないって言ってたわね」

リーフィア「うん。その剣は、勿論剣として使うんだけど、普段はただの植物として持ち主にくっついてるんだよ」

ルカリオ「それはまた面妖な……」

手に持った剣を改めて眺めてみる。色こそ緑に輝いているものの、柄の部分から剣先までまごうことなき剣にしか見えない。

リーフィア「リーフブレードって知ってる? 僕の場合、その剣がそうなんだ」

ルカリオ「草で剣を作って攻撃するあれか。なるほど、そういう事なら納得だ」

それは自然の力で剣を象り相手を斬りつけて攻撃する、草タイプが得意とする技だ。リーフィアにとってこの剣がそれだというのなら、これは彼のものどころか、そもそも彼が作り出したものだという事になる。

ミミロップ「えっと、つまり察するに、その剣はリーフィアが作り出したものではあるけど、何か他の力が加わるなりしてしまったから持てなくなったってこと?」

リーフィア「まぁ、ある意味そういうことなんだよね……僕のこの剣は、ここに住み着いた魔物に、クリムガンによって封じ込められてしまった……クリムガンを退く事ができなければ、その剣を取り戻す事はできなかったんだ」

ルカリオ「なるほど、そういう事情があったのか」

ミミロップ「じゃあ、私達がクリムガンを倒したからこの剣は引っこ抜けたってわけね」

リーフィア「うん。けど、あのクリムガンは普通のクリムガンよりも身体が硬い。だから、倒すには強い力がないとダメだったんだ」

聞けば、強力な一撃を弱点部位に狂い無くお見舞いしなければ、彼は倒れる事無く延々と剣を引き抜こうとした者に襲いかかってくるらしい。

剣を引き抜こうとするまで敵意も気配も感じなかったのは、侵入者が何を目的としているか判明していなかったからのようだ。

リーフィア「だから僕は剣を取り戻すためにこの辺りで修行して、倒す機会を窺ってたんだけど……」

ルカリオ「……すまん」

リーフィア「ううん、謝らないで。中々勝てなかった僕が未熟なだけだから」

リーフィアはそう言って力なく笑う。しかし直後には居住まいを正し、ルカリオに向けて頭を下げた。

リーフィア「僕は弱いポケモンだ。けど、力をつけなくちゃいけない、強くならなきゃいけないワケがある。だから、弟子にしてほしいんだ」
 ▼ 405 ロモリ@もりのヨウカン 18/07/18 01:16:53 ID:jtUQEJSY [5/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルカリオ「本来であればクリムガンはリーフィアが倒し、剣を取り戻すはずだった、って事か……うーん、どうしたものか」

剣を引き抜いてしまっている以上、これをリーフィアに返せばこの話は終わる。しかし、リーフィアが言っているのはおそらくそういう事ではなく、むしろルカリオに弟子入りして成長を認めてもらえるまで剣は預けておきたい、という事だろう。

ルカリオ「弟子って言われてもなぁ、俺そういう関係どっちかっていうと苦手だし」

リーフィア「そこをなんとか!」

ミミロップ「ならさ、間とって、一緒に修行するっていうのは?」

腕を組むルカリオに、ミミロップが指を立てる。ルカリオはなるほどと手を打ち、その案はどうかとばかりにリーフィアを見た。

リーフィア「そうしてもらえると凄く助かる。というか、そうしてほしい」

ルカリオ「わかった。ただ、俺達は俺達の事情がある。だから合わせることはできないかもしれないけど、それでもいいか?」

リーフィア「勿論。こっちがお願いしてるんだし、こっちが合わせるようにする」

ルカリオ「なら問題は無い。修行は向こうの丘で、明日と明後日の二日間行う予定だ。さっき寝てたよね」

リーフィア「あれ、見られてたんだ。全然気づかなかったな……修行し疲れてたからなぁ」

やはり、最初に見た固体で間違いないようだ。

それにしても、まさかリーフィアもあの場で修行をしていたとは思いもしなかったルカリオ。仮に彼の話を完全に断っていたとしても、修行場所が重なっていれば同じ未来になっていたかもしれない。

ルカリオ「そうと決まれば、早速行動だ。俺達は夕飯を探してから丘へ戻る」

リーフィア「僕は、今日は自分なりの修行をするから、うるさかったら言ってね」

ルカリオ「なに、全然かまわないさ」

そう返すと、リーフィアは嬉しそうに笑う。屈託の無い笑顔が、とても印象的だ。

ルカリオ「とりあえず剣は返すぞ」

リーフィア「あ……そう、だね。たぶん今受け取っても武器として使えないだろうけど、修行して使えるようにしてみせる」

意気込み新たに、ふんと息を吐くリーフィア。

リーフィア「じゃあ、またあとで!」

やる気がみなぎっているのだろう、一足先に修行すると言って、丘へ走って行ってしまった。

ルカリオ「(そういえばあの剣の持ち主がリーフィアなら、聞こえた声や記憶は、リーフィアの……?)」

考えかけて、すぐに首を振る。誰しもそれぞれ色んな事情を抱えて生きているものだ、詮索はするまいと、聞こえた声については何も訊かない事にした。
 ▼ 406 ガミュウツーX@イバンのみ 18/07/18 02:24:47 ID:8TCIu8gw NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
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 ▼ 407 ブルモ@あおいかけら 18/07/18 23:10:23 ID:f/7YaUOQ NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
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 ▼ 408 ラルバ@ぼんぐりケース 18/07/19 03:12:14 ID:4GF2Kdgk NGネーム登録 NGID登録 報告
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 ▼ 409 クシー@ねばりのかぎづめ 18/07/19 03:17:19 ID:4iLI9ujA NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
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 ▼ 410 チム@エフェクトガード 18/07/20 00:42:51 ID:4sx2jKlo [1/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




ルカリオ「しかし……ここは変わらないな。あの遺跡以外は」

草原の真ん中に寝そべり、流れ行く雲を眺めながらルカリオがぽつりと呟く。

ミミロップ「昔も、こうやって空を眺めてたりしてたの?」

ミミロップも隣に寝転がり、同じように空を眺めている。

ルカリオ「そうだね、修行の合間にはよくこうして空を見てたかな」

ミミロップ「ふぅん」

そう言う彼の表情は、ミミロップが普段見ているものとは少しだけ違って見えた。

まだ自分も知らない顔を彼は持っているのだと思うと若干寂しい気持ちになるが、それを話している今こうして同じ場所で同じ空を見上げているということは、また一つ彼について知る事ができたということ。むしろ、その事に喜びを感じているミミロップ。

ラブラブとはいえ二匹はまだまだ新婚ほやほや。雰囲気こそあれど、出会ってからの日数を考えれば熟年夫婦にはまだまだ遠い。

ルカリオ「ミミロップちゃんは、こういう所で修行とかしたことないんだよね」

ミミロップ「そうねぇ、私はずっと街の方で育って、その中でトレーニングしてたくらいかなぁ」

ミミロップにも、ルカリオの知らない顔がまだまだ存在する。

修行の旅が終わったら今度はミミロップが育ってきた場所へ行ってみるのもいいな、とルカリオは思った。

ルカリオ「なんていうか、平和だなぁ」

ミミロップ「平和ねぇ」

そよ風が優しく頬を撫でていく。

森の澄んだ空気に癒されて、このままここで眠ってしまいそうだ。

ミミロップ「……ルカリオ?」

ルカリオ「……Zzz」

会話が途絶えたと思ったら、隣から規則的な呼吸が聞こえてきた。

これまで色んな出来事に遭遇してきた二匹だが、そんな日々を送りつつもルカリオは毎日半睡しかしていない。流石に疲れがたまっているのだろう、おそらく本人は眠る気などなかっただろうが、穏やかな空気に包まれているうちに自然と夢の世界へと旅立っていった。

ミミロップ「ふふ、かわいい寝顔」

ルカリオの頭をそっとなでるミミロップ。たまにはゆっくり寝かせてあげようと、彼女は上半身を起こす事にした。
 ▼ 411 ガヤンマ@ハートのウロコ 18/07/20 00:43:17 ID:4sx2jKlo [2/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




夜になると、ルカリオは丘の木の下で遅い夕飯をとりながらトレーニングの説明を始める。一眠りしたからだろう、彼の表情はいつにも増してすっきりだ。

ルカリオ「ここでは主に、攻撃に関する鍛錬を行う事になる。ただここでやるのは、攻撃力を上げることじゃなくて、元々持ってる力をきちんと出し切るためのトレーニングだ」

そう言ってルカリオは人形のようなものを手に取る。夕飯の前に、どこから持ってきたのかルカリオが用意していたものだ。

ルカリオ「これはいわゆる『身代わり人形』だ。ただ、ちょっとやそっとの攻撃じゃ消えないように作ってあるけどね」

ミミロップ「それを的にするってこと?」

ルカリオ「うん。最終的には、これの破壊を目指すんだ」

リーフィア「破壊って、壊せばそれでOKなの?」

ルカリオ「そうだな。まぁ、壊す事ができれば、の話だけど」

ルカリオは身代わり人形をリーフィアの前に置き、試しにどうぞとばかりに片手を前に出す。

リーフィア「じゃあ遠慮なく……それ!」

リーフィアは立ち上がり、例の剣の元の姿だろう大きな葉を取り出して全身を震わせる。すると葉や花がその葉の周りに集まってきて、あれよあれよと言う間に剣の形となっていく。

彼は自分の身長くらいありそうなそれを蔓を使って大きく振り回し、身代わり人形に斬りかかった。

リーフィア「ええっ、全然斬れない……」

ルカリオ「そのように作ってるからね」

人形は草の刃で斬りつけられても傷ひとつつかず、ただその場にころんと転がるだけだった。

ミミロップ「どうなってるのこれ?」

ミミロップは人形を持ち上げ、様々な角度から眺めて見てみる。しかし、特に不審な点は見当たらない。

ルカリオ「俺も細かい事はわからないんだけど、それを破壊するには正確かつ強力な一撃を放つ必要があるんだ」
 ▼ 412 ニガメ@ハバンのみ 18/07/20 00:43:32 ID:4sx2jKlo [3/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルカリオ「簡単に言えば、『威力』『当たり所』『タイミング』この三つが綺麗に重なったとき、破壊できる仕組みになってるわけ」

ミミロップ「渾身の一撃を繰り出せって事ね」

ルカリオ「うん。もっと言えば、それくらいの攻撃を常に出せるように調整する狙いかな」

リーフィア「ほえー、なんかすごいな」

ルカリオは同じ人形をもう二つ取り出し、三つの人形をそれぞれ目の前に置く。

ルカリオ「明日明後日に、これを破壊するための修行をする。当たり所とタイミングに関してはトレーニングする専用の場所があるから、そこでやるよ」

リーフィア「もしかしてそれ、岩場のところ?」

ルカリオ「そうだけど、それっぽい場所見つけたのか? まだ当時の跡が残ってるのかな……」

しみじみと昔を思い出すルカリオ。彼はガブリアスのもと、ここで長らくトレーニングに励んでいた。良い思い出なのだろう、当時を振り返る彼は上機嫌だ。

リーフィア「このトレーニングは、その、二日間しかしないんだよね?」

ルカリオ「そうだね。他にも俺達は、あと三つ違う種類のトレーニングをする。その後に大事な予定を控えてるから、いずれも二日ずつくらいで考えてるかな」

シンオウ大会までまだ日があるとはいえ、移動時間や最終調整の事を考えれば各々の修行にあまり時間をかけてはいられない。特に今回はトレーニングに移動を伴う事が多いため、できる限り無駄な動きは避けたいというのが本音だ。

ルカリオ「最初にも言ったけど、俺達は俺達の都合で動くから……すまんな」

リーフィア「ううん、こっちが我侭言ってるんだし、謝らないで。でも、そっか。なら、二日でマスターしなきゃなのか……」

そう言って視線を下げるリーフィア。やる気は満ち溢れているのだろうが、どこか切羽詰ったような表情だ。

ミミロップ「……強くならなきゃいけない理由があるって言ってたわね」

ルカリオ「何か特別な事情でもあるのか?」

もしかしたらリーフィアも、草技大会みたいなものに参加しようとしているのかもしれない、そう思う二匹。しかし彼の口から出てきたのは、やはりというと失礼だろうか、かなり深刻な話だった。

リーフィア「僕は姫を、グレイシアを助けたい。彼女を、ダークライから救いたいんだ!」
 ▼ 413 ンテイ@バグメモリ 18/07/20 00:43:50 ID:4sx2jKlo [4/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
思ってもみなかったポケモンの名前に、顔を見合わせる二匹。

ダークライといえば、人間達が言う所の『幻のポケモン』だ。滅多に見る事ができないポケモンである事に加え、その強さは半端なものではないと聞く。

通常伝説や幻のポケモンは人前に姿を滅多に現す事は無い。それがポケモン同士であっても、誰かと遭遇する事を嫌う者もいるとか。

彼らの知り合いにも伝説のポケモンはいるが、彼らも例外に漏れない。話でもしに会いに行こうとも、おそらく姿を見る事さえ難しいだろう。

しかし、ダークライといえば悪夢を見せる事で有名だ。その事から好戦的に捉えられる事もあるが、実際には身を守るためやむなくであったり、縄張りに他者を入れないためであったりと、戦うためというよりも保身的な意味での行動だとも言われている。

ルカリオ「ダークライに捕まってるのか」

リーフィア「うん……けど、ダークライは強すぎて、今の僕達じゃ勝てないんだ」

幻のポケモンに牙をむく事自体間違っていると言いたい所だが、仲間を助けたいという気持ちはよくわかる。仮にミミロップが捕らえられたとしたら、ルカリオは誰が相手になろうとも全力で彼女を取り返しに行くだろう。

ルカリオ「策はあるのか?」

リーフィア「他の仲間を呼び戻して修行して、皆で戦うつもり」

ミミロップ「皆って?」

リーフィア「グレイシアを守ってた仲間だよ。僕のほかには、ムウマージ、トゲキッス、マニューラの三匹」

リーフィアはそう言って、遠くに広がる森をじっと眺める。その視線の先に、彼の仲間がいるのだろうか。

リーフィア「とにかく、まずは自分が強くならなきゃいけない。だから、トレーニング頑張る」

ルカリオ「そうか。この人形は幾つかあるから、うまく壊せたら言ってくれ。五つは余裕があるから、その分なら渡せる」

リーフィア「うん、ありがとう」

リーフィアはぺこりとお辞儀をし、「明日に備えて寝るよ」と言って石像の隙間に身体を寄せた。ルカリオ達のことを考えてか、彼が昼に寝ていた一番広い場所は空けてくれている。

ルカリオ「俺たちも寝るか」

ミミロップ「そうね。明日から頑張らなきゃ」

焚き火を消し、石像の下で横になるミミロップ。ルカリオは胡坐をかいて彼女の頭を膝と腿に乗せ、半睡の体勢に入った。

そよ風で一輪の花が揺れている。彼らが静かな寝息をたて始めるまで、そう時間はかからなかった。
 ▼ 414 ャヒート@きれいなハネ 18/07/20 00:44:18 ID:4sx2jKlo [5/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告






リーフィア『ねえ……何してるの?』

グレイシア『なにって、見てわからない? 花の冠を作っているの』

リーフィア『冠……』

グレイシア『何かしら、その不思議なものを見る目は』

リーフィア『う、ううん、なんでも』

ムウマージ『それはね姫、きっとリーフィアはこう言いたいのよ。あの冷血高貴な姫が草なんかで冠を作るだなんて! って』

グレイシア『へぇ?』

リーフィア『お、思ってない! そんな事思ってるわけないじゃん! もームウマージやめてよ!』

ムウマージ『にゃはは、代弁代弁』

リーフィア『だから違うって!』

グレイシア『ふふ、わかってるわ。彼女のブラックジョークはいつもの事でしょう?』

ムウマージ『そうそう』

リーフィア『そうだけど……』

マニューラ『はぁ……うるさいやつらだ。折角広い場所に来たというのに、身体を動かさないでどうする』

リーフィア『いやいや、草原に来たら寝転がってのんびりしたいよ』

マニューラ『やれやれ。温室育ちは言う事が違うな』

トゲキッス『誰しもそれぞれ、得意な事が違うのですよ。マニューラさんは戦う事、リーフィアさんはのんびりすることです』

リーフィア『うーん弁護してくれてるような、そうでないような……』

ムウマージ『そう言うキッスは?』

トゲキッス『私は寝ます』

マニューラ『どいつもこいつも……』

ムウマージ『あ、どこ行くの? おしっこ?』

マニューラ『身体を動かしてくるんだよ! お前はもう少し♀としての自覚をだな』

グレイシア『ふふ……賑やかねぇ』


 ▼ 415 クレー@あおぼんぐり 18/07/20 00:44:38 ID:4sx2jKlo [6/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


ルカリオ「…………」

ごく自然に、半睡から目覚める。しかし今回はいつもと様子が違っていた。

普段はたとえ不審な気配が近づいていなくとも、なんとなく周囲の空気を感じながら眠っている。しかし先ほどは、何か気配を感じれば目は覚めただろうが、珍しく周囲の何をも感じる事無く暫くの時間を過ごしていた。

やはり故郷であるシンオウの地は、他のどことも違い無意識にも安心させてくれる何かがあるのだろうか。無防備を晒した事に自分で呆れため息を吐きつつも、ルカリオは柔らかく笑みを浮かべる。

ふと視線を下げれば、可愛らしく寝息をたてている最愛の嫁の姿。彼女も、久方ぶりに踏みしめる故郷の大地に気を緩めているのだろうか、いつもより穏やかに眠っている気がした。

ルカリオ「……変な夢見てたな」

そして、彼は先ほど見ていた夢を思い返していた。

旅の仲間だろうか、五匹のポケモンが仲良くこの草原にやってきて談笑している、そんな夢。

ルカリオ「ん……お前が見せていたのか」

ふと前を見れば、見覚えのある花。そこには、時間の花が一輪静かに咲いていた。

ルカリオ「リーフィアの言っていた、仲間達……」

とても仲の良さそうな五匹だった。めいめいかなり独特な性格をしているようだが、それぞれ仲間と共に過ごす時間を楽しんでいるように感じられた。

おそらくこの花が見せた草原での光景は、幾つもある思い出のひとかけらだ。こんな時間が他にも沢山あるのだろう。

だが……リーフィアは今、一匹だ。思い出と全く同じ場所にいるのに、今は彼しかこの地の風を感じる事ができない。

ルカリオ「この幸せそうな時間を、ダークライが奪ったって事なのか……?」

そういえば、草の剣を引き抜いた時に聞いた声は、どれも悲痛なものだったような気がする。グレイシアを連れ去られ、仲間達ともバラバラになってしまったと、そういうことなのだろうか。

そしてリーフィアは今、何らかの理由により離れてしまった仲間達を集め、ダークライからグレイシアを取り返そうとしている。

ルカリオ「この森でも、色んな事が起きてるんだな……」

少し離れた所で眠るリーフィアを見る。ここからでは彼の表情は見えないが、小さな身体を縮こまらせて眠るその姿は、どこか寂しく映った。
 ▼ 416 ンターン@ウルトラネクロZ 18/07/20 06:40:46 ID:RWhEpNXQ NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
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 ▼ 417 ットレイ@ディフェンダー 18/07/21 02:44:54 ID:9BPQx/eE [1/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




トレーニング初日。ルカリオは日が昇る少し前から、修行に使う身代わり人形などを準備し始めていた。

やや遅れてミミロップも起き、彼の準備を手伝う。ルカリオは全部自分ですると言ったが、もう目が覚めてしまったとミミロップは彼の断りに断りを重ねた。

やがてリーフィアが目を覚まし、ルカリオ達の所へ慌てて駆けていく。ちょうど、太陽が森の木々の隙間から顔を出す頃だった。

ルカリオ「俺はこの岩場で『当たり所』を鍛えた。ここの岩は面白い性質を持ってて、ある部分からの衝撃にとても弱いんだ」

岩場へ集合し、トレーニングの説明を行うルカリオ。

草原を、遺跡とは反対方向へ進んだ先にあるちょっとした岩場。そこの一部分の岩を手に取り、ミミロップ達に見せる。

ミミロップ「なんか青っぽい色ねこの岩」

ルカリオ「うん。実はこれガブリアスがどうにかしてトレーニング用に作った岩なんだ。違うところから攻撃しても、昨日の身代わり人形みたいにほとんどダメージ与えられない不思議な岩だ」

リーフィア「すごい、そんなもの作れるんだ……」

ルカリオ「あのポケモンはまぁ変態だからな。で、ここでの達成目標は、この岩の塊を殴るなりして一発で壊せるようになる事だ」

ルカリオはひょいと岩を投げ、僅かに腰を落とす。

ルカリオ「それ」

ぱきゃ、と小気味良い音が響き、岩が見事真っ二つに割れた。

ミミロップ「へぇ、さすがやるじゃない」

ルカリオ「だいぶ修行積んだからね、ここで」

その当時も、ここでのトレーニングに一番時間を費やしたと彼は言う。彼がどれだけ速く動いても正確に攻撃ができるのは、このトレーニングによるものなのだ。

ルカリオ「勿論、岩によって破壊できる当たり所は違うからね。形状や状態からそれを判断するんだ」
 ▼ 418 ニータ@バトルレコーダー 18/07/21 02:45:14 ID:9BPQx/eE [2/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



各々が岩を破壊するトレーニングを行う中、ルカリオは岩山の頂上までのぼり、改めてハクタイの草原地帯を見回していた。

ここは、彼がよく知る場所。それなのに、どういうわけか彼が思う雰囲気とどこか違った感覚が僅かにだがつきまとう。

ルカリオ「草の剣、か……」

やはり、一番の違和感は例の遺跡。どう思い返しても、彼の記憶の中にあのような建物は影も形も無かった。

もしやここは、自分の知る場所とよく似ただけの、全く違う場所なのではないか……そんな事さえ考えてしまう。

ルカリオ「……ばかばかしい」

ため息を吐いて、考え始めてしまった事を片隅へ追いやる。

どうも、ここ最近小さな事が気になる傾向にあるらしい。決勝戦とはいえ、負けた事が響いているのだろうか。

無意識というものは思っているより厄介で、ポケモンも人間も自分で気にしていないと思っていても体調にはダイレクトに影響したりするものだ。かくいうルカリオも、気持ちを切り替えたつもりでも、心のどこかで負けを引きずってしまっている部分があるのかもしれない。

ルカリオ「ここも案外高いんだな」

この岩場からも、これからルカリオ達が修行を行う予定の場所が一望できた。ハクタイの森のそれぞれ北西、北東、南西に存在する彼の修行場所。この草原は、それらのちょうど中心の辺りに位置している。

ルカリオ「あれは……氷塊?」

ぼんやりと今後の予定を考えながらそれらを見渡していたら、森の奥の方に気になるものを見つけた。

ハクタイの森は人間が道を書き記した地図で見るよりもっと広く、実際にはエイチ湖やキッサキシティに至るまで広がっている。一部ではキッサキの森やエイチの森なんて呼ばれ方をしているらしいが、ここに住むポケモン達の多くはまとめてハクタイの森という認識だ。

年中雪が積もるキッサキシティにも面しているため、ハクタイの森の北部は同じように雪で覆われている。こうして遠くから眺めると一面真っ白に見えるのだが、森の一部に一際目立つ塊が見える。ここからでもわかるくらいだ、かなり大きなものだろう。

ルカリオ「人間はどんどん新しいものを作っていくな……良いのやら悪いのやら」

おそらく人間が客寄せだかなんだかのために作ったに違いない。ルカリオはそう思い、ため息を吐いた。
 ▼ 419 ガガルーラ@たんけんこころえ 18/07/21 02:45:34 ID:9BPQx/eE [3/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




一日目の修行はそれぞれ順調のまま終わらせる事ができた。

ミミロップは呑み込みがはやく、今日一日だけで既に三体もの身代わり人形を壊す事に成功した。リーフィアはまだ身代わり人形に挑んではいないが、幾つもの岩を破壊するなど好調な滑り出しを見せている。

この日困ったのは、食料の事だった。それぞれトレーニングに集中して打ち込んでいたため気がつけば夕飯時で、昼食もとっていなければ夕飯の確保もできていない。

仕方がないので昨晩と同じ木の実を採ろうと草原の高い木の所へ向かったが、彼らが修行をしている間に他のポケモン達が食べてしまったのだろうか、青々と葉ばかりが茂るのみだった。

リーフィア「森の方に行くしかなさそうだね。ナナの実なら、近くになってる所知ってるよ」

ルカリオ「そこへ行こう。案内してくれるか」

リーフィア「もちろん」

ミミロップ「食事の事忘れるなんてねぇ……久しぶりに集中したらこれだもの、自分で嫌になるわ」

やはりシンオウという故郷は空気が合うのだろう、ルカリオもミミロップも久方ぶりに集中した修行を行う事ができたようだ。

密度としても申し分なく、ルカリオなどは二日間かけて達成を予定していた目標を既にクリアしてしまっている。ただ、どんな状況でも安定して威力を出す事はルカリオにとって一番の課題。想定以上にこなせたからと慢心せず、更なる目標を設定し邁進を続ける所存だ。

ミミロップ「こっちの方も静かなのね」

ルカリオ「俺がいた頃と変わってなければ、この辺りは大人しいポケモンばかりが住んでるからね。争いなんて珍しかったもんだ」

夜も近づくハクタイの森では、木々を踊らせる優しい風の音くらいしか聞こえてこない。狩りをする音も、縄張りを主張する声も、森を歩く彼らの耳に届く事はない。

なにしろ、とても耳の良いミミロップがそう言うくらいだ、本当にこの森は平和そのものなのだろう。

リーフィア「今のこの辺りは、ね。たぶん、ハクタイの森で一番穏やかなエリアだと思う」

随分と含みのある言い方をするリーフィア。ダークライの事もあるのだろう、彼の言葉からはどこか焦燥感さえ感じ取れる。
 ▼ 420 ュナイパー@カゴのみ 18/07/21 02:45:57 ID:9BPQx/eE [4/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


やがて彼らはナナの実の生る木までたどり着き、大きく息を吐いた。とりあえず、今日の夕飯はこれで確保された。

ルカリオ「相変わらず硬い木の実だな」

リーフィア「あはは、剥くのにちょっとコツがいるよね」

ミミロップ「ふふ、甘苦い味だけど、ルカリオ大丈夫なの?」

ルカリオ「これくらいなら大丈夫だい!」

ミミロップ「あーんする?」

ルカリオ「子供あつかいしないでってば!」

このままでは本当にされかねないと、ルカリオはそさくさと皮を剥きひょいと口の中へナナの実を放り込んだ。

周りに誰もいなければ甘えるところだが、知り合って間もないリーフィアを前にバカップルを披露するのは気が引ける。実際にせずとも、やり取りの時点で手遅れではあるのだが。

リーフィア「仲良いんだねぇ……」

ルカリオ「そりゃね、夫婦だし」

リーフィア「良いなぁそういうの」

ミミロップ「助けに行くっていうグレイシアは恋人なの?」

リーフィア「ふぐっ!? ごほ、けほけほ、ふへっ」

ミミロップの言葉にリーフィアは目を大きく見開き、口に入れていたものを危うく吐き出してしまいそうになる。

ミミロップ「あ、えっと、ごめん。変な事訊いたかしら」

リーフィア「う、ううん、別に変じゃないけど……ちょっとびっくりしただけ」

なんとか吐き出さずに済んだ木の実を呑み込み、小さく息を吐く。

リーフィア「……恋人じゃ、ないよ。彼女は姫で、僕は騎士なんだ」

少し芝居がかったように言う彼の頬は心なしか少し紅く染まっているように見える。特別な関係でなくとも、それなりの感情を持ち合わせてはいるようだ。
 ▼ 421 ガゲンガー@むしよけスプレー 18/07/21 03:08:36 ID:XaIQH8jQ NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
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 ▼ 422 ッサム@かいのカセキ 18/07/22 02:28:30 ID:HyRw8x/g [1/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルカリオ「姫は捕まってるって言ってたけど、どこにいるんだ?」

リーフィア「……キッサキシティの近くだよ。そこに、グレイシアもダークライもいる。ギリギリ雪の届かないくらいの所」

少し辛そうな顔をするリーフィア。本当ならすぐにでも助けに行きたいのだろう。しかし、今の状態で向かっても返り討ちにあう事を彼は自分で理解している。だから、まだ行かない、まだ行けない。

ミミロップ「その、仲間達も同じ場所に?」

リーフィア「ううん、他の皆はそれぞれ違う場所で眠ってる」

ルカリオ「眠ってる?」

リーフィア「うん……」

???「そう、深い眠りについてるのサ」

ルカリオ「!?」

ミミロップ「誰!?」

急に後ろから声がした。

ルカリオ「なん……」

ミミロップ「うっ……」

リーフィア「う、あ……」

振り向くも、彼らは誰が声をかけてきたのか確認する事はできなかった。

襲い掛かる強烈な眠気。ルカリオ達が後ろを見た頃には既に、そのポケモンの『術』にかかってしまっていた。

???「うわぁ、やっぱりダークライ様のダークホールはすごいや。さ、今のうちに運ぼ運ぼ」

ルカリオ「(だれ、だ……)」

誰かが薄気味悪く笑う声がする。しかしその声さえ最後まで耳にする事はできず、ルカリオ達は意識を手放した。
 ▼ 423 バルオン@ゴスのみ 18/07/22 02:28:58 ID:HyRw8x/g [2/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告






『どうした! お前の攻撃はその程度か! この俺に、少しでも傷を負わせてみろ!!』

ルカリオ『っく!! えやああっ!!』

『ぬるいわ!! そんなヒョロヒョロパンチで何ができる! 誰も倒せない、誰も守れないぞ!!』

ルカリオ『うおおおおお!!!』

『お前に足りないのは、見抜く力だ! 集中しろ、お前にも見えるはずだ、一撃で致命傷を取れるその点が!』

『本気を出せ!! 己の限界を超えてみせろ!!』





ルカリオ「!!」

目が覚める。

反射的に上半身を起こし周囲を見回すと、自分の全く知らない景色が広がっていた。

ルカリオ「懐かしい夢を見ていた気がするな……」

はっきりとは覚えていないが、この地で修行をしていた頃の夢だったような気がする。

ルカリオ「……それより、現状か」

一旦夢の事は忘れよう。強く息を吐き、状況を整理しにかかる。

ここは、彼の知らない場所。森の中で急に襲われ眠らされた後、この部屋にルカリオは放り込まれたらしい。

ざっと見る限り、出入り口のようなものは見当たらない。ミミロップやリーフィアの姿も見当たらない。ルカリオは、一匹でこの部屋に閉じ込められているようだ。

敵が近づいていたことに全く気づいていなかった。不甲斐ない自分に、額を押さえずにはいられない。

ルカリオ「ここは……例の遺跡、か?」

真四角に切り出した石や岩を重ね並べて作ったような部屋。使われている壁の素材などは、先日外で見たそれらに似ているような気がした。

しかし似ても似つかぬのは、草原で見たそれのように崩れている様子はなく、今も何かの目的で日常的に使われているのではないかと思えるくらいに綺麗な事。

どれくらい眠っていたのかはわからないが、そう遠くへは運ばれていないだろう。ハクタイの森に、こんな建物があったのは驚きだと、ルカリオは両手をあげてみせた。
 ▼ 424 レイドル@メカニカルメール 18/07/22 02:29:39 ID:HyRw8x/g [3/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルカリオ「ミミロップちゃんたちと合流しなきゃ……出口はどこだ」

注意深く辺りを見回す。

四方を壁に囲まれていて、家具や家電は勿論、人工的なものは何一つ置かれていない。そればかりか、地面には草が生え石が転がっており、屋内といえども人間の家のそれとは違う作りのようだ。

上を見る。

天井も壁と同じく四角い石を並べ立てたようなつくりになっているが、壁に使われているものとは違い、それぞれのブロックが小さい。薄っすらと何かの模様も見て取れる。

ルカリオ「本当に何も無いな……」

表現するなら、ただの広い部屋。それ以外に形容しようが無いくらい、無機質な部屋。

しかし、この場所へ閉じ込められたということは、どこかに通れる隙間があるという事。隠し扉から押し込まれようと、天井から放り込まれようと、入る事ができるのなら出る事もできるはずだ。

ルカリオ「おや」

と、壁の一部に小さなくぼみができている事に気がづいた。否、近寄ってよく見てみれば、それは穴だった。

何かあっては困ると波動で周囲を探ってみるも、罠が仕掛けられている様子はない。ルカリオは穴の向こうを覗き見てみることにした。

ルカリオ「ミミロップちゃん!!」

穴の向こうに見えるのもまた、ルカリオがいま閉じ込められているような部屋だった。そしてその中央に、愛妻ミミロップが横たわっているのが見える。

ルカリオ「ミミロップちゃん! 起きて、ミミロップちゃん!」

叫んでみるも、ミミロップが目を覚ます様子はない。もしかしたら、そもそも声が届いていないのかもしれない。

ルカリオ「困ったな……」

なんとかして最低でも隣の部屋に行きたいが、出入り口となっていそうな所は未だ見つけられていない。これでは彼女を助けるどころか、自分さえここから脱出できない。

ルカリオ「いっそ壊してみるか……」

拳に力を込める。

道が無いなら、切り開けば良い。壁を壊すなど非道に値するが、状況が状況だ、仕方が無い。

ルカリオ「覇っ!!」

ルカリオは小さな穴のあいた壁に向けて、力いっぱいインファイトを繰り出した。
 ▼ 425 メハダー@ホノオZ 18/07/22 02:30:04 ID:HyRw8x/g [4/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルカリオ「いってぇええええ」

思いっきり壁を殴ったが、相当硬い素材で出来ているようで、崩れる事はおろか少しも欠ける事さえなかった。

ルカリオ「壊すのは無理かぁ」

もう何度か強烈な攻撃を加えれば、あるいは壊せるのかもしれない。しかし最終的に壊れてくれるとも限らないうえ、この硬さだ、先に拳がやられてしまうかもしれない。

やはり、どこか出入り口になっている所を探し出す方が得策だ。

ルカリオ「うーん……」

腕を組んで考え込んでしまうルカリオ。

彼は、身体能力こそ長けてはいるものの、案外こういう状況に弱い。以前、友人のエルレイドやサーナイトと未開の地を探検した際、ルカリオだけはぐれてしまいその場から動けなくなってしまった事がある。

ミミロップにしてもそうだが、彼らはどちらかといえば考えるより先ず動くタイプだ。こういった状況の中では、彼らの持ち味は発揮し難い。

ルカリオ「……ん?」

困り果てていたルカリオだが、彼の長考は意外な形で終わりを見る事になる。

ルカリオ「なんだこの音……?」

まるで何かを操作し動かしているような物音。聞こえ始めは小さな音だったが、こちらへ近づいてきているのか次第に大きくなっていく。

ルカリオ「上かっ!!」

思って飛び退くのとほぼ同時のタイミングで、天井の一部が大きな音をたてて崩れ落ちる。そしてそこから、図体の大きなポケモンが姿を現した。

ゴルーグ「――――――」

どすんとこれまた大きな音をたて、床に降り立つそのポケモン。

身構えるルカリオだが、動きが鈍いのか降り立った姿勢のままぴくりとも動かない。

ルカリオ「な、なんだ……?」

ゴルーグ「――――排除、スル」

もしやこのポケモンもここへ閉じ込められたのでは、と思っていたら、急に姿勢を正し両腕を上げてルカリオを威嚇し始める。

ルカリオ「マジかよ」

この逃げ場の無い石造りの部屋の中、ルカリオはゴルーグと一戦交えなければならないようだった。
 ▼ 426 ツドン@こだわりメガネ 18/07/22 08:57:46 ID:u9P6d78s NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ゴーストタイプだから攻撃できないけどルカリオはどうするのか
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 ▼ 427 マゲロゲ@まんたんのくすり 18/07/23 02:01:48 ID:AFhcZNag [1/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ゴルーグ「排除スル!!」

ルカリオ「うおっ」

どうするかと考えている間に、ゴルーグがルカリオ目掛けて突進してきた。

とりあえず跳んでかわす。ゴルーグはルカリオにかわされた事もかまわず、壁に突っ込んでいった。

ゴルーグ「邪魔者、排除、スル」

かなりの勢いで突っ込んだため壁にめり込んでしまっていたが、本人にダメージは全く無いようで、何事も無かったように後ろを振り返る。

そのまま壁を壊してくれないかと期待したが、流石にそこまで上手くはいってくれないらしい。

ルカリオ「ゴルーグは確かゴースト……できれば戦いは避けたいが……」

格闘技を多く持つルカリオはゴルーグに対して相性があまりよろしくない。属性を伴う攻撃を行えばダメージを与える事はできそうだが、ジリ貧になる事は避けられないと思われる。

かといって、交渉が通じる相手とも思えない。となれば、逃げるのが一番の得策だ。

ルカリオ「天井が壊れてくれたが……」

ゴルーグの動きがわかる範囲で上を見る。

ゴルーグの登場で天井が崩れて新たな道が開けはしたが、見えるのは壁ばかりで、ここからではどこかに繋がっている様子を確認する事はできない。

そこから逃げるとなると、壁をのぼりながら出口を目指す事になる。果たしてゴルーグがそれをただ眺めるだけに止めてくれるだろうか。

ルカリオ「せめて動きを止めなきゃな……」

考えている間に、再びゴルーグが突進してきた。

今度は右側に跳んでそれを避ける。ゴルーグは先ほどと同じように、ルカリオをすり抜けて反対側の壁にぶつかった。

ルカリオ「この隙か? でもすぐこっち向くしなぁ……」

有効打となりそうなのは冷凍パンチの冷気くらいのもの。うまく凍らせる事ができれば良いが、何せ大きな相手だ、鍛えているとはいえ凍結に期待するのは分が悪すぎる。
 ▼ 428 ンドロス@はつでんしょパス 18/07/23 02:02:06 ID:AFhcZNag [2/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルカリオ「となれば……」

ルカリオが動く。ゴルーグは突進しようと身構えていたが、急に対象が目の前から消えてしまったため困惑して動きを止めた。

ルカリオ「こっちだ!」

ゴルーグのすぐ後ろで声を張り上げるルカリオ。ゴルーグはその声に振り向き、もう一度突進の体勢をとる。

だが、その頃には既にルカリオの姿は無い。

ルカリオ「こっちだって」

今度は左側から声がする。

そちらを向くも、やはりルカリオの姿は無い。

次は右から、後ろから、前から……

四方八方からかけられる声にゴルーグは対応が追いつかず、身を構える事も忘れきょろきょろとルカリオの姿を自分から探し始めた。

ルカリオ「(作戦通り)」

しかし、その頃にはもう、ルカリオはゴルーグが登場する際に壊した天井の向こうまでのぼっていた。

撹乱し、少しでものぼっている事に気づくのを遅らせる事にしたのだ。

結果見事作戦は成功し、ついにルカリオが壁をのぼりきるまでの所でゴルーグが彼の姿を発見する事は無かった。

ルカリオ「はぁ……長い壁だった。どこから飛び降りてきやがったんだよ全く……」

辺りを見回す。最初に閉じ込められていた所と似た無機質な部屋のようだが、ここには出入り口と思われる扉が部屋の奥にあった。

更によく見ると、何かの仕掛けを動かせそうなレバーや、どこから繋がっているのか壁から伸びたホースのような管がある。

ルカリオ「ははぁ、ありゃ拷問部屋だったのかな」

これは水攻めに使う装置かもしれない、とルカリオは考える。天井の一部がここでの操作で開くようになっていたのだろうが、ゴルーグはそれを壊して部屋まで降りてきてしまったようだ。

誘拐犯に、ルカリオ達を殺してしまうよう頼まれたのだろうか。だとしたら、のんびりしてはいられない。

ルカリオ「ミミロップちゃんと合流しなきゃ」

とりあえずホースに穴を開けて使い物にならなくしておき、ルカリオは波動で辺りを探りつつ足早に部屋を出た。
 ▼ 429 クシオ@トレジャーメール 18/07/23 02:02:32 ID:AFhcZNag [3/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


ルカリオ「ん?」

出た先は廊下のような通路になっていた。相変わらず壁は岩で埋め尽くされていて、酷く圧迫感を感じる。

ふと、部屋から出たルカリオは、すっと何かが前を通っていく気配を感じた。

見れば、彼のすぐ前をグレイシアが歩いている。

ルカリオ「えっ、あれって……」

ルカリオが声をかけようと彼女の方を向く。グレイシアはルカリオに気づいているのかいないのか、後ろを気にする事無く早足に廊下を進んで行く。

ルカリオ「誘拐されてたんじゃないのか……?」

目を凝らして彼女を見る。

すぐに、彼女がそこに実在しているわけではない事がわかった。

ルカリオ「時間の花……」

見回すと、どういうわけか廊下の片隅にそれがぽつんと咲いているのを見つける。

ルカリオ「グレイシアはここに来た事があるのか……」

もしかしたら、ここで捕まったのかもしれない。となると、自分達はもしや本丸に連れてこられたのではとルカリオは考えた。

そんな彼の横を、今度は何匹ものゴルーグが走ってすり抜けていく。

どうやらグレイシアを追いかけているらしい。

ルカリオ「……追ってみるか」

一刻もはやくミミロップと合流したい所ではあるが、リーフィアの一件に関わっている以上、彼女の向かう先も気になるところ。

もしかしたら、彼女の所在に関する何かを見る事ができるかもしれない。そこから何か手がかりを得る事ができれば、彼女の捜索に役立つだろう。
 ▼ 430 マヨール@プラスパワー 18/07/23 02:02:48 ID:AFhcZNag [4/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルカリオ「長いな……」

無機質な廊下を、ひたすら小走りに進む。

誰かが設置したのかあるいは最初から生えていたのか、うまい具合に時間の花が点々と咲いているためグレイシアの姿が消える事はない。

走ってはいるが動きが緩慢なゴルーグたちを追い抜き、その先を行くグレイシアまで追いつく。走る事無く早歩きにとどめているのは、向かう先に何があるかわからないからだろうか。

ルカリオ「となると、グレイシアはここに来るの初めてってこと、か?」

だとするとこの光景は既に捕まった後のもので、これから脱出しようとしているのかもしれない。ゴルーグの軍勢が追いかけているところを見ると、バレてしまったようだが。

ルカリオ「にしても、静かだ……」

記憶の光景の話だけではない。今ルカリオが歩く現実も、自らの足音を除けば物音ひとつ聞こえてこない静かな環境だ。

捕まって軟禁されたとはいえ、ここは敵地。見張りもいなければ、辺りをうろつくポケモンも見当たらない。

ゴルーグこそ襲ってきたが、そのゴルーグさえ室内に落ちてきた固体しか今の所姿を見ていない。

ルカリオ「ん……光が見える」

どれ程歩いただろうか、ようやく変化の無い廊下の光景に終わりが見えた。

記憶の中のグレイシアは走り出し、光の先へと飛び込んでいく。ルカリオは波動を使って用心しながら、ゆっくりとグレイシアの後に続いた。

ルカリオ「うお!」

辿り着いたそこは、テラスだった。

どういうわけかこの部分だけ岩とは違った素材で作られているようで、どこか高貴な身分の者が朝日に照らされ小鳥と戯れているような光景が似合う場所。

しかし、彼が驚いたのはテラスの造りではなかった。

その更に先の光景。テラスから覗く辺りの景色は、ただただ断崖絶壁。このテラスは建物から突き出る形で、崖の中腹付近に設えられていた。

つまりは、今彼らがいる建物は、崖の中に造られたものだったのだ。
 ▼ 431 クロッグ@ウルトラボール 18/07/23 02:03:04 ID:AFhcZNag [5/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルカリオ「なんだよこの意味不明な場所は……」

ここがハクタイの森だというのなら、いったいどこにこんな崖が存在していただろう。少なくともルカリオの記憶の中に、こんな場所は存在しない。

ルカリオ「いったい何の施設なんだ……」

顎に手を当て、考え込むルカリオ。しかし、すぐにそれは中断された。

グレイシア『……もう、来たのね』

ルカリオの頭の中に、記憶の声が響く。

見れば、グレイシアが廊下の方をきつく睨みつけていた。

意外とはやく追いついたらしい、ゴルーグが何匹も狭いテラスに押し寄せ始めている。

???『もう逃げ場は無い。観念したまえ』

何者かが、ゴルーグの集団の合間から姿を現す。言葉も発さず並んでいたゴルーグ達が、やってきた誰かのために道を空けていた。

ルカリオ「ダークライか……」

ダークライ『この私に手荒な真似をさせるつもりかな?』

グレイシア『ふん。おあいにく様、私は捕まるつもりなど無いわ』

酷く冷たい目でグレイシアを見下ろすダークライ。その威圧に押され、グレイシアは一歩、また一歩と後ずさっていく。

ダークライ『やれやれ、困った姫様だ』

ダークライは肩をすくめため息を吐いた後、グレイシアに右手を伸ばす。

グレイシア『ち、近寄らないで! 私を捕まえても、秘宝のありかははかないわよ』

ダークライ『なに、口で話していただかなくとも、直接脳に尋ねればいい。ふっ、下の口、というのも面白そうだな?』

グレイシア『この外道……』

ぎりっとグレイシアが歯を噛み鳴らす。彼女の表情を見て、ダークライは心底満足そうだ。
 ▼ 432 ーパ@あやしいおこう 18/07/23 02:03:23 ID:AFhcZNag [6/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ダークライ『さて、問答を長引かせるつもりは無い。大人しく眠れ』

グレイシア『っ!!』

ダークライが伸ばした右手を開く。

ダークホール。彼のそれを見た者は例外なく深い眠りに就いてしまい、場合によっては二度と目を覚まさないという。

ルカリオ「なっ!?」

ダークライ『おやおや』

しかし、グレイシアが眠ることは無かった。

なぜなら彼女は、ダークライに技をかけられるより速く、その身をテラスより後方へ躍らせていたのだから。

ダークライ『飛び降りたか……まぁいい、他にも手がかりはある。まぁ、念のため崖下に死体を探しに行かせるか』

テラスから崖を覗き込むダークライ。ルカリオも釣られて見てみるも、飛び降りた先に時間の花がなければ彼女のその後を見る事はできない。あくまで、花がその場で捉えられる光景しか読み取る事はできないのだ。

暫くして、ダークライやゴルーグたちの姿も消える。どうやら、記録されているのはここまでのようだった。

ルカリオ「まさか飛び降りるとは……」

何か考えがあったのだろうか、それとも覚悟が決まっていたのだろうか、彼女は迷う事無く飛び降りたように見えた。

テラスから地面は見えない。たとえ策があろうとも、これほどの高さから飛び降りるには途轍もない勇気が必要だ。むしろ、先ほどのグレイシアの様子から考えれば、覚悟が決まっていたと考える方が自然だろう。

だが、もしそういう事ならば、グレイシアは……

声「こんなところに侵入者が逃げ込んでいたか!」

ルカリオ「!!」

急に後ろから声が聞こえた。

ルカリオ「え……?」

続いて背中に衝撃。

バレてしまったか……そう思う頃には、彼の身体は宙に浮いてしまっていた。

先ほどまで自分が立っていたテラスが視線の先に見え、どんどん遠ざかっていく。

こういうものを、走馬灯と言うのだろうか。ルカリオの脳裏に、ミミロップと過ごした楽しい時間がとめどなく流れた。
 ▼ 433 ニータ@うつしかがみ 18/07/23 03:16:21 ID:LBMUXDX6 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
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 ▼ 434 ロカロス@きれいなぬけがら 18/07/23 14:53:58 ID:Qsrs1nXA NGネーム登録 NGID登録 報告
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 ▼ 435 ーケン@ざいりょうぶくろ 18/07/25 01:42:55 ID:tzNsQ1m2 [1/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




ミミロップ「…………」

薄暗い部屋の中を、手がかりが無いか目だけで探す。

起き上がってあちらこちらを見て回りたいところではあるが、実はミミロップ、両手に手錠のようなものが、脚には枷が取り付けられ鎖で繋がれており、動く事はおろか満足に立ち上がることさえ出来ない状態。

急に眠らされ無機質な部屋に軟禁され、仕舞いにはこの「手厚い」歓迎である。流石の彼女もこれには辟易とし、大きく息を吐いた。

しかし、嘆いていても状況が改善する事はない。動けないなら動けないなりに、現状を打開する方法を探るべきだ。

ミミロップ「……出口らしき所は無いか」

ごろりと転がり、反対側を向く。だが、どこを向いても同じ光景が広がるばかりで、彼女が期待するものは何一つとして見つけられることは無い。

ミミロップ「枷鬱陶しいなぁ」

様子を窺いながら手足を適当に動かしてみるも、壊れてくれる様子はない。もっとも、手錠も足枷も金属製のものでできているようで、そう簡単に壊れるはずもない。

ミミロップ「縛る方は好きなんだけどなー」

ごくたまにルカリオとのエッチで似たようなプレイをする事があるのだが、ドがつく程のSである彼女にとって束縛されるというのは非常に不快なものらしい。

Sなあの子は実はM、みたいな属性は、彼女には無縁のようだ。

それはそうと、縛った縛られたの話になれば、情事的な内容が浮かんでくるというもの。しかし誘拐犯はそういった事に興味が無いのだろうか、幸いミミロップが乱暴される事は無かったようだ。

ミミロップ「あ」

何も見つけられずため息と共に地面を転がっていると、ふと天井の模様が何かの絵になっている事に気づく。

ミミロップ「何の絵かしら……」

目を凝らして見れば、どうやらポケモンの絵が描かれた壁画のようになっている事がわかった。
 ▼ 436 ククラゲ@ゴーストメモリ 18/07/25 01:43:17 ID:tzNsQ1m2 [2/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
数匹のポケモンが何かに立ち向かっている様子、立ち向かっていたポケモン達が散り散りになっていく様子、二匹のポケモンが仲を引き裂かれている様子、一匹のポケモンが空を見上げる様子、そのポケモンが散ったポケモン達を集めている様子、一匹のポケモンが何かを拾い上げている様子、そして再び何かに立ち向かっている様子……

壁画のようなそれらはまるで絵本のように隣り合った絵と話が繋がっているようで、よく見れば最後の絵は最初の絵と繋がっていた。

ミミロップ「昔の出来事でも描いてあるのかしら……にしても、最初と最後が繋がってるなんて、立ち向かう相手に勝てなかったのかしら」

その様子は、さながらウロボロス。

もしもこれが過去の出来事を描いたものであるとしたら、この絵に込められた意味は「歴史は繰り返される」といったところだろうか。

しかし実際には、全く同じ地点へ回帰する事は無い。たとえ導き出される結果が変わらずとも、回を重ねるごとに必ず何かが変化していく。人もポケモンも等しく時の回廊を歩み続けている以上、変わらないものなど何も無いのだ。

ミミロップ「難しい事考えるの無理だわ。後でサーナイトさんにここ紹介して考察してもらお」

暫く天井とにらめっこをして疲れたとばかりに、ミミロップは再び大きく息を吐いた。

ミミロップ「……何回ため息吐いてんだ私は」

だが、仕方が無い。この状況、脱出できる取っ掛かりが見つからない限りは、どうする事もできないのだから。

ミミロップ「ちょっとぉ、王子様はまだ来てくれないの? 遅くない?」

声「これはこれは、捕らわれの姫君は王道の脱出劇をお好みか」

ミミロップ「は? 誰?」

しょうもない呟きに返事があり、少しだけ驚くミミロップ。

だが、王子様とは勿論、愛する夫ルカリオの事である。彼を呼ぶ声に返事された事を不快に思い、荒っぽい言葉を相手に向けた。

ダーテング「全く、元気なお嬢さんだ」

ばさばさと何かが羽ばたく音が聞こえたと思うと、ゆっくりと目の前にダーテングがその手の葉を揺らして舞い降りてきた。
 ▼ 437 イキング@ポイントカード 18/07/25 01:43:37 ID:tzNsQ1m2 [3/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミミロップ「うわっ変なの来たわ」

ダーテング「……君は立場というものをわきまえていないようだな」

ダーテングが姿を現し、開口一番そう言い放つミミロップ。こんな反応をされるとは思わなかったのか、ダーテングは苦い顔を隠しきれない。

ミミロップ「立場も何も、まず意味がわからないんだけど? どうして私達は捕まえられたわけ?」

ダーテング「どうして、か。それは君達が彼と一緒にいたから、というほか無いな」

ミミロップ「彼って、リーフィアのこと?」

ダーテング「そうだ」

ミミロップの言葉に、強く頷くダーテング。とりあえずダーテングが誘拐犯という事で間違いは無いようだ。

ダーテング「我々は彼とは少し因縁があってね。いい加減、断ち切ろうかと思っているのだよ」

ミミロップ「それは当事者同士でご勝手にお願いしたいわ」

ダーテング「中々そうも行かぬ。君達が彼から秘宝の在り処を教えられているかもしれないからな」

ミミロップ「秘宝?」

急に出てきた聞きなれない単語に、思わず言葉をオウム返しするミミロップ。実際、リーフィアの口から秘宝の話はおろか、その単語さえ出てきていない。

ダーテング「我々はその秘宝を探していてね、聞いたのなら教えてもらいたいのだ」

ミミロップ「いや、何も聞いてないんだけど。言いがかりはやめてもらいたいわ」

ダーテング「そうすぐ吐くとも思っちゃいないさ。話さないのなら、身体に聞くまでよ」

ダーテングは、どこから取り出したのか、自分の身体よりも長いムチをしならせ地面に打ち付けて見せる。

ミミロップ「この下種野郎……」

いよいよ危機感を覚えてきたのか、ミミロップは彼の言動に歯をぎりりと噛み鳴らす。

ムチに打たれるくらいで心が折れたりはしないだろうが、手足の自由が奪われたこの状態だ、辱めを受けてしまうのは目に見えている。当然、そんな事をしていいのは最愛の夫ルカリオだけで、他人の、それも見ず知らずのポケモンにそんな事をされるわけにはいかない。
 ▼ 438 ガバクーダ@プテラナイト 18/07/25 01:44:02 ID:tzNsQ1m2 [4/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミミロップ「ちょっと、ふざけんじゃないわよ」

ダーテング「おやおや、もう吐く気になったのか?」

ミミロップ「だから知らないって言ってんでしょ耳腐ってんの?」

ダーテング「なんと言葉遣いの悪い娘だ……」

もう一度、威嚇の意味を込めてダーテングはムチを打ちつける。

それに恐れるミミロップではないが、ルカリオのため身の貞操を保ちたい彼女にとってこれはかなりの危機だ。

独り身であれば、涙を呑んで耐え忍ぶ事もできるかもしれない。しかし、その身が自分だけのものではなくなっている以上、僅かな穢れも赦してはならないのだ。

ダーテング「さあ、秘宝の在り処を話すんだ」

ミミロップ「ほんとに知らないって!」

ダーテング「そんなにコレで叩かれたいか!!」

ミミロップ「!」

ダーテングがついにムチを強くしならせミミロップ目掛けて打ち付けにかかる。

ダーテング「!?」

だが、ムチがミミロップの柔らかな肉体を傷つける事は無かった。

ムチが振り下ろされたその瞬間、ミミロップは両腕を地につけ脚を伸ばし、なんと枷の鎖を利用してムチを絡めとったのだ。

その状態でミミロップは強く脚を引く。思ってもみなかった反撃にダーテングはムチに手を引っ張られ、地面とキスをするハメになった。

ミミロップ「ふん、ある程度でも脚を動かせるようにしてたのが敗因ね」

枷で鎖に繋がれているとはいえ、鎖の長さの分だけは脚を動かす事ができる。ミミロップはダーテングに気づかれないように僅かずつ後ろへ下がり、鎖の可動範囲をできるだけ広くしていた。

このような反撃を想定していないのだろう、彼女につけられた枷の鎖はそれなりの長さがあり、身体だけならある程度自由に動かす事ができる。
 ▼ 439 コザル@あかぼんぐり 18/07/25 01:45:23 ID:tzNsQ1m2 [5/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ダーテング「く、なんてやつ……ぐおっ!?」

むくりとダーテングが起き上がる。しかしミミロップの反撃はそれで終わりではない。

絡めとったムチを、まるで手に持って操っているように、今度は彼女がダーテング目掛けて打ち付ける。しかも柄の方を打つ形となるので、当たればストレートに痛みが響くだろう。

ミミロップ「あーやっぱりムチは打つに限るわ」

絡んだムチが離れないよう調整しながら、器用にも枷の鎖を使って形成を逆転してしまうミミロップ。これでは彼女の自由を拘束するはずの道具も、むしろ彼女の武器として役立ってしまっている。

規格外な彼女の反撃にダーテングは目を白黒させ、何度も鞭打たれながらも彼女の攻撃範囲から逃れようと無様に走り回った。

ダーテング「く、くそ、縛られてるくせになんてポケモンだ……」

ミミロップ「伊達に鍛えてないわよ」

できる範囲で得意げにファイティングポーズをとるミミロップ。

攻めているはずが手足を縛られた状態のポケモンに攻められている現状。これ以上ミミロップは前に出る事ができないというのに、ダーテングは思わず一歩後ずさる。

ダーテング「ぐぬぬ、思わぬ強さ……しかし、ここで失敗するわけには……」

ダーテングが何やらぶつくさ呟いている。とても無防備な様を晒しているわけだが、これ以上近づく事ができないのでミミロップはそれをイライラしながら眺めている事しかできない。

ダーテング「これでは他のやつらにまた馬鹿にされてしまう。だが……」

ミミロップ「ああもううっさいわ!」

ダーテング「ふげぇっ!?」

堪忍袋の緒が切れたミミロップは、鎖に巻きつけていたムチを振り回し反動をつけてダーテング目掛けてすっ飛ばす。それは見事ダーテングの頭に命中、彼はそのまま目を回して倒れてしまった。

ミミロップ「あー鬱陶しかった……あら?」

倒れたダーテングを見てみると、何やら鍵らしきものが彼から少し離れた所に落ちていた。きっと彼が倒れた際、転がり落ちたのだろう。もしかしたら手錠や枷の鍵かもしれない。

ミミロップ「でもここからじゃ届きそうにないわね……」

鍵まであと数十センチというところで、鎖の長さが限界を迎えてしまう。あともう少し長くあってくれればという、非常にもどかしい状況となってしまっていた。
 ▼ 440 ルトス@かえんだま 18/07/25 01:48:36 ID:tzNsQ1m2 [6/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
再度辺りを見回す。

しかし無機質な部屋で見つけられるのは倒れたダーテングと彼にぶつけたムチくらいで、そのどちらも今の状態では身体のどの部分も届きそうにない。

ミミロップ「何か技とか使ってとれないかな……格闘系は届かないし、特殊系の技はほとんど覚えてないしなぁ……」

彼女はルカリオに出会う前から肉体を駆使する技ばかり鍛えており、冷凍ビームや10万ボルトのような技について考える事さえほとんどしてこなかった。

そういった技は一生使う事が無いと思っていたようで、使い方は勿論、何をどうすればいいのかさえわからない。

ミミロップ「……いっこだけあるにはあるけど」

しかし、そんな彼女にも一つだけ、きちんと使える特殊タイプの技があった。

ルカリオに教えてもらった、水の波動。自分にも使える波動がないかルカリオに尋ねたところ、これなら覚えられるのではないかと紹介してもらったのだ。

ミミロップ「うまくいくかはわからないけど……やってみるしかないわね」

神経を集中させ、水のイメージを強く思い浮かべる。ルカリオが言うには、イメージが自分の攻撃の波長と重なった時に気を開放させる事ができれば良いとのこと。

慣れているルカリオとは違い数えるほどしか試した事が無いミミロップにとって水の波動を打ち出す事は、困難を極めると思われた。

ミミロップ「……えいっ!」

ぱちんと何かが弾ける音がする。それと同時に強い衝撃が彼女の前に巻き起こり、水分を伴って強く爆ぜた。

その衝撃は鍵を吹き飛ばし、壁に当たって大きく跳ね返る。

ミミロップ「やった、うまくいったわ」

丁度足元に転がってきた鍵を拾い上げ、上手くやれたと笑顔ではしゃぐミミロップ。しかし同時に、折角ルカリオに教えてもらったのに満足に練習していなかった事を反省したのだった。
 ▼ 441 ノセクト@イワZ 18/07/25 02:58:34 ID:.2YY53Fw NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 442 ミッキュ@エルレイドナイト 18/07/26 23:23:34 ID:jjQAC/16 [1/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミミロップ「どこにルカリオいるのかしら……」

ダーテングが天井から現れた事を思い出し、彼が入ってきたであろう穴を見つけ脱出する。別室に辿り着くまでかなり壁をのぼる事になり、行き着いた部屋でまたまた彼女は大きなため息を吐いた。

おそらくルカリオも同じような部屋で同じように閉じ込められているだろうと、部屋を出て似た場所を探す事にする。

果たしてその部屋はすぐ隣に見つかり、中へ入って様子を窺ってみるも、破壊された設備を見てルカリオは既に脱出したのではと彼女は考えた。

ミミロップ「すぐ隣にいるって考えなかったのかなぁ」

外へ出たであろうルカリオが次に自分の所へ来たわけではないらしい事に不満を覚えるミミロップ。しかしここで苛立ちを募らせても仕方が無いので、何か事情があるのだろうと割り切る事にする。

ミミロップ「どこか別の場所に行ったか、そもそもここじゃなかったか……」

部屋の外に出て、何か変わった様子が無いか辺りを見回す。

すぐに、壁際に咲いた特徴的な花が目に止まった。

ミミロップ「これは時間の花……?」

つい最近話題に出た事もあり、それについてすぐに思い出す事ができた。

しかし、ミミロップは波動が使えるわけではないのでこの花が持つ記憶を覗き見る事はできない。ただ、時間の花があるということは、おそらくルカリオはこれの映し出す過去を見たはずだ。

ミミロップ「この花を辿ればいるかな?」

よく見れば、時間の花はある程度の間隔をあけて廊下のあちこちに咲いている。ここからでは廊下の終わりは見えないが、もしかしたらずっと先まで花が咲いているのかもしれない。

ミミロップ「行ってみましょ」

考えても仕方が無い。思うよりまず行動と、ミミロップは時間の花を辿って廊下を小走りに進んでいった。
 ▼ 443 イパム@きあいのハチマキ 18/07/26 23:24:09 ID:jjQAC/16 [2/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



現れたのは、大地の終焉。

そう言うとかなり大袈裟だが、底の見えない断崖絶壁を前にミミロップは素直にそう感じた。

時間の花を追って辿り着いたのは、これまでの内装とは雰囲気が異なるテラス。それも、すぐ向こうは崖になっていて、飛び越えてしまえば空を泳ぐハメになるだろう危険な場所。

ミミロップ「……で、うちの旦那はここで何してるのかしらね」

そんな危ないテラスの片隅に、ルカリオが倒れていた。脱出の際に怪我したのだろうか、身体のあちこちに擦り傷が目立つ。

触ってみればあったかい。脈も正常のようで、気絶しているというより眠っているといった方が近いかもしれない。

ミミロップ「普通王子様のキスで目覚めない? 逆かっての」

ミミロップは小さくため息を吐き、眠るルカリオにそっと口付けをする。

ルカリオ「……!」

ミミロップ「あ、起きた」

数秒ほどキスした所で、ルカリオの目が大きく見開かれた。

ミミロップ「おはよ」

ルカリオ「あ……え?」

ルカリオは目を丸くして辺りを見回し、やがてミミロップに焦点を合わせる。

ルカリオ「夢?」

ミミロップ「えっ?」

そしてどういうわけかミミロップの腹部に手を伸ばし、もにゅもにゅと揉み始めた。

ミミロップ「目覚めて最初にセクハラって、ないわ〜」

ルカリオに触られるのは嫌ではないが、それよりも状況を説明してほしいところ。ミミロップはそっと彼の手をとり、両手でぎゅっと握った。
 ▼ 444 リン@もえぎいろのたま 18/07/26 23:24:37 ID:jjQAC/16 [3/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルカリオ「……生きてるのか」

ミミロップ「はぁ?」

まだ状況が呑み込めていないらしい、ルカリオは握られた自分の手を見つめ、そう呟いた。

ルカリオ「俺、さっきそこから落とされたんだ」

ミミロップ「え、やばくない? 何とか戻ってこれたんだ?」

ルカリオ「あ、いや……」

ルカリオはどうにも煮え切らない返事をして、考え込んでしまう。

ミミロップは不思議そうにルカリオを見つめる。おそらく何か不可解な事があったのだろうと、彼女は彼の言葉を待つ事にした。

ルカリオは「ふむ」と呟き暫く首を捻っていたが、これ以上ミミロップに心配をかけたくないと思い体験した事を

そのまま喋る事にした。

ルカリオ「実は俺、捕まった部屋から出た後時間の花の記憶を追ってここまできたんだ。それで見るのに夢中になって、後ろから誰かに押されて……」

ミミロップ「それで、ここから落ちた……でも、ちゃんとここにいるじゃない。幽霊じゃないんだし」

ミミロップはルカリオの身体をぽんぽんと叩く。

ミミロップ「時間の花が見せた記憶と重なったんじゃない? それで、落ちたと勘違いして気絶しちゃったとか」

ルカリオ「うーん、そうなのかなぁ……」

ルカリオは腑に落ちないといった様子だが、自分がここに実在している以上、実際に落ちたわけではないのだろう。ルカリオの勘違いか、あるいは……

ルカリオ「まぁ、とにかくお互い無事でよかった。リーフィアを探しに行こう」

おそらく、考えて答えが出るような事ではないだろう。こうしている間にも敵に見つかる可能性がある以上、ここで時間を浪費するのは得策ではない。
 ▼ 445 マワリ@ルビー 18/07/26 23:25:20 ID:jjQAC/16 [4/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




ミミロップ「リーフィアも近くの部屋に閉じ込められてるのかしら」

ルカリオ「わからないけど、思い当たるところはそこしかないし見てみよう」

長い廊下を戻り、ルカリオ達が閉じ込められていた部屋の辺りへ。

ルカリオ「本当にここは誰も出てこないな……ゴルーグに出会ったっきりだ」

ミミロップ「私はダーテングが出てきたわね……とっちめたけど」

ルカリオ「マジか。俺は分が悪そうだったから逃げてきた」

相変わらず敵と言える敵も全く出てこず、警戒しているのも馬鹿らしくなってくる。二匹はあまり身構えず最低限の警戒を行うのみにし、できるだけ精神的負担をかけないよう行動することにした。

ルカリオ「隣の部屋、設備が壊されてる」

ミミロップ「それ私も見たけど、ルカリオが壊したんじゃないの?」

ルカリオ「あぁ俺も壊したけど、俺はこの部屋じゃなかった。てことは、リーフィアも既に部屋は出たのかな」

ミミロップ「じゃあ廊下を反対側に進んだのね。追いかけましょ」

ルカリオ「手がかりも無いし、そうしてみようか」

二匹は最後にもう一度部屋の中を見回し、何も無いことを確認して部屋を出た。

今度は廊下を反対側に向かって走る。

やはり敵と思われる何とも出会う事無く廊下を進みきったが、今度はテラスではなく、ちょっとした広間にやってくる。

特に何も置かれていないただ広いだけの部屋で、ここにも敵は誰もいないようだった。

ルカリオ「軟禁する気があるのか無いのかわからないな」

ミミロップ「あの中に閉じ込めておけば、見張りとかいらないと思ってるんじゃない? 実際天井から出るの結構大変だったし」

この場所がどういう意図で作られたかはわからないが、とにかく誰もいないのは好都合だ。二匹はリーフィアの所在を気にしつつ、奥に見える階段の方へと走った。
 ▼ 446 ドリーナ@シーヤのみ 18/07/26 23:26:13 ID:jjQAC/16 [5/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



ルカリオ「ん……なんだここ」

ミミロップ「……町?」

階段を上りきる二匹。また断崖絶壁のテラスにでも到着するのではないかと内心うんざりしている節もあったのだが、辿り着いたのは意外や意外、ポケモン達がそれなりに整った暮らしをしていそうな集落だった。

あちこちに建てられたポケモン達の棲家、何かに使われているのだろう公共施設のような場所、様々な木の実や果物が置かれている出店、整備された獣道……

ここは本当に、野生のポケモン達が思い思いに暮らすハクタイの森なのだろうか?

どこか知らない場所へ連れて来られてしまった感覚。場の環境に完全に取り残されている二匹は、ただ呆然と目の前に広がる景色を眺めている事しかできない。

???「あ、二匹とも、無事だったんだね」

ルカリオ「ん……」

ふと、後ろから声をかけられ、我に返る。振り向けば、そこにはリーフィアが息を切らせながら立っていた。

リーフィア「ここまで来ればもう大丈夫。流石に、ダーテング達も町中で騒動を起こす程馬鹿じゃないよ」

ルカリオ「お、おう?」

ミミロップ「えーっと……」

状況が呑み込めていない二匹に対し、リーフィアは大きく息を吐いて落ち着きを取り戻し始めている。

ルカリオ「すまん、実を言うと、俺達には何がなんだかわからない。ここは、どこなんだ? 牢獄みたいな所から出たと思ったら、急に町中なんだが……」

リーフィア「あれ、この辺りのこと全然知らないんだ?」

ルカリオ「いや……まぁ」

ハクタイの森についてであれば、それなりに知っているつもりではいたルカリオ。事実、彼は修行の一環で森をぐるりと一周走ったりするなどのトレーニングも行っていた。このように目立つ場所があれば、気づかないわけがなかったはずだ。

ルカリオ「ここはハクタイの森、なんだよな?」

リーフィア「うん、そうだよ」

彼の返事に、ルカリオは更に眉をひそませる。
 ▼ 447 ラティナ@エネコのシッポ 18/07/26 23:26:51 ID:jjQAC/16 [6/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
リーフィア「えっと、ここは森の泉だよ。森の北西にある大きな泉、知らない?」

知らないも何も、そこはルカリオが以前主に回避のトレーニングを行っていた場所だ。ガブリアスと共にその場所で修行を行った頃、泉周辺にこのような集落ができている様子など微塵もなかった。

これはどういうことだと、ルカリオは考える。

見ず知らずの遺跡が見つかったかと思えば、今度は見ず知らずの集落が彼の知らない間に出来ている。

彼が修行を終えこの森を離れた後にできたというのなら納得もできるが、どちらも彼が去ってからの数年で出来上がるようなものではない。遺跡は勿論、この集落でさえここまで発展するにはかなりの時間を要するだろう。

しかし、彼の中であれこれと考えても仕方が無い。ルカリオは素直に事情を説明する事にした。

ルカリオ「泉は、俺が修行に使ってた場所なんだ。でもその当時、こんな集落ここにはなかった」

リーフィア「そうなんだ? 僕もいつここができたのかは知らないけど、そんなに古い歴史があるわけじゃないのは確かだから、君が離れた後でできたのかもね」

ルカリオ「それにしては発展がはやくないか? こんな賑わい、数年でできるもんじゃなさそうだが……」

リーフィア「……それについては、今ここを治めているポケモンの手腕、じゃないかな」

そう言って、リーフィアは町の奥、泉に水が流れてくる川の辺りを眺める。

この町は大きな泉を取り囲むように広がっており、最北部には一際大きな建物がある。まるで人間の住むそれのように、立派な棲家だ。

その更に奥には滝があり、ルカリオは以前そこで修行をしていた。ここから見る限り、泉や滝の様子はルカリオが修行をしていた頃と全く変わっていない。

ミミロップ「まぁ、上に立つ者が優れていれば、っていうのはあるわよね」

ルカリオ「それは……まぁ、そうか」

それは例えば、人間とポケモンの関係も同じ。同じポケモンを育てていても、人間の育て方一つで強さは全く変わってくる。

リーフィア「ここはね、エンペルトの支配を受けた町なんだ。彼のおかげでこの町は大きく発展し、栄華を極めてきた」

ミミロップ「へぇ、凄いポケモンなのね」

リーフィア「……どうだろうね」

素直に感想を漏らすミミロップに対し、リーフィアは表情に影を落とす。
 ▼ 448 レフワン@コンテストパス 18/07/26 23:27:24 ID:jjQAC/16 [7/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルカリオ「なんだ、不満でもあるのか?」

リーフィア「そりゃね……エンペルトは、ダークライの息がかかったポケモンだから」

ミミロップ「あぁ、そういう……」

ダークライはリーフィアにとって、グレイシアをさらった極悪ポケモン。そのダークライと志を共にするとなれば、どれだけこの町のために尽くしていようとエンペルトはリーフィアにとって敵という事になる。

リーフィア「でも、何もそれは僕に限った話じゃないよ。エンペルトはね、裏じゃ汚いこと沢山してるんだ」

ミミロップ「汚いことって、略奪とか?」

リーフィア「それもあるね。他にも、いろいろ、たくさん」

目を細め、歯をかみ締めるリーフィア。余程辛い事があったのだろう、エンペルトについて語るリーフィアの表情はとても険しい。

だが、ルカリオもミミロップも、あまり彼に共感する事はできなかった。

事情を知らないというのが一番の理由ではあるが、それ以前に、こんなまるで人間達のそれのような話が野生のポケモン達の間に生まれているという事にあまり納得ができない。

野生のポケモンが食欲と生殖本能だけで生きているとまではいわないが、栄華だの略奪だの、野生のポケモンが作り上げるだろう文化とはかけ離れているような気がしてならない。支配といえば、せいぜいバンギラスの行っていた統率程度という認識なのだ。

ミミロップ「はぁ。戸惑ってても仕方ないわ、話を先に進めましょ」

ルカリオ「そうだね」

切り替えていくしかない。これも、外に出て遭遇する様々な出来事の一つと考えるしかないと二匹は不可思議な話を呑み込む事にした。

ルカリオ「しかし、泉まで来たって事は丘からだいぶ離れたな」

リーフィア「そうだね……僕としては、ここにも仲間がいるから好都合だけど」

ミミロップ「ここには誰がいるの?」

リーフィア「ここにはね、トゲキッスがいるんだ」
 ▼ 449 エルコ@サファイア 18/07/28 00:09:40 ID:3ZsQ4ajw [1/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




泉の南西部にある酒場のようなところへやって来た。無論、人間達のそれのようにしっかりした建物やテーブルにスツールなどがあるわけではないが、大きな木や岩を利用して作られたその場所は薄暗く落ち着いた雰囲気を上手にかもし出している。

時にはここで大騒ぎする事もあるのだろうか、奥のほうには大勢で楽しめるようなスペースも用意されており、いつでも団体客を呼び込める体制になっているらしい。

どこぞの地方ではポケモンが経営する落ち着いた酒場らしき場所があるようだが、それにしても世間は広いと思わざるを得ない。

ルカリオ達は沢山並んでいるテーブル席の一角に腰を下ろし、すぐに対応しに来たポケモンにパイルジュースを注文した。

ルカリオ「今更なんだが、リーフィアは顔が知れてるんじゃないのか?」

リーフィア「ふぇ?」

ルカリオ「いや、エンペルトは敵なんだろ? なら、敵対するポケモンの支配してる町なんかに堂々といたら、すぐに捕まるんじゃないかと思うんだが」

リーフィア「あぁ、それはたぶん大丈夫だよ」

リーフィアはお通しとして出てきた小さな木の実を口に入れ、がりがりと噛む。

リーフィア「僕の顔を知ってるのは、ダークライとダーテングだけ。ダーテングだって僕が丘でクリムガンに戦いを挑むまで顔を知らなかったしね」

ミミロップ「どういうことなの? 状況がさっぱりなんだけど」

リーフィア「うーん……じゃあ、全部説明しちゃってもいい? 大事な予定をひかえてるって言ってたけど」

ルカリオ「それはそうなんだが、ここまで巻き込まれてしまったら逆に何も知らない方が困る。わが身に降りかかる火の粉くらいは払いたいからな」

リーフィア「うん、ごめんね」

ルカリオ「気にするな」

結局ガッツリと関わる事になってしまったルカリオたちだが、これまでにしても全く時間を無駄に使ったというわけではない。誰かとの戦いになれば修行の成果を見る事もできる。

リーフィア「じゃあ、話させてください」

リーフィアはそう言って慇懃に頭を下げた。
 ▼ 450 ンジャラ@トウガのみ 18/07/28 00:10:15 ID:3ZsQ4ajw [2/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
リーフィア「僕は、僕達は……平和な毎日を過ごしてた。この森の奥で、グレイシアを姫として、ここみたいに広い町じゃないけど町を作って皆で暮らしてた」

リーフィア「だけどあるときダークライがそこにやってきて、グレイシアを誘拐したんだ。姫の護衛を勤めてた僕達は必死に戦ったけど勝てなくて……皆バラバラにされちゃった」

リーフィア「僕たちは力を使い果たしてしまって、皆深い眠りに就いてしまった。それから、僕の仲間達が眠る場所には見張り番をするポケモンが配置されたんだ」

ルカリオ「それが、エンペルト?」

リーフィア「うん、彼もそう。僕のいた丘にはダーテング、ムウマージのいる枯れ木の森にはヨノワール、マニューラのいる雪原にはツンベアー。でもね、彼らってそれぞれ仲が良いわけじゃないみたい」

ミミロップ「お互いにコミュニケーションとらないって事?」

リーフィア「おそらくね。どちらかというと、誰がダークライの右腕に相応しいか競ってる。だから、手柄は絶対に分け合わない。たとえダーテングに僕の顔が割れてても、他の見張り番にそれを漏らす事はしないと思う」

ミミロップ「そういえば何かぶつくさ言ってたわ」

リーフィア「えっダーテングに会ったの?」

ミミロップ「なんか拷問しに来たわよ?」

ルカリオ「はぁああ!? ぶっ殺してやるぞそいつ」

ミミロップ「落ち着いて、返り討ちにしたってば。何もされてない」

ルカリオ「なら、まぁいいけど……」

ミミロップ「それはそうと、秘宝がどうこうって言ってたわ。その話を聞いてるかどうかとか」

リーフィア「あー……実は、それがダークライの目的なんだ。あいつは、グレイシアが持ってる秘宝を探してる。その秘宝には、クレセリアの力が込められてるんだ」

ダークライの悪夢はクレセリアの力で打ち負かす事ができるという。ダークライは自分の脅威となるものを排除しようと、彼女達を襲ったのだろうか。

一通り話し終えたリーフィアは、つい先ほど届いていたパイルジュースを一気に飲み干す。そして、居住まいを正してルカリオ達を見た。

リーフィア「僕は強くならなくちゃいけない。だから、稽古をつけてほしいんだ」
 ▼ 451 ンタロス@グラウンドメモリ 18/07/28 00:10:59 ID:3ZsQ4ajw [3/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルカリオ「……ずっと、というわけにはいかない。俺達にも俺達の事情がある。それまでの所でもかまわないのなら、協力できると思う」

リーフィア「ほ、ほんと!?」

ルカリオ「ああ。それに、なんだ。リーフィアに関係なく、最低でもダーテングはぶっ飛ばしておくつもりだからな」

リーフィア「あはは……」

ミミロップのことになると周りが見えなくなるくらい感情的になるルカリオ。ありがたい事ではあるが流石に過剰だとばかりに、ミミロップはやれやれと両手を挙げた。

ルカリオ「それで、ここにはトゲキッスがいるんだったか。何をしたらいい?」

リーフィア「え、そこまで協力してくれるの?」

ミミロップ「ここまできたらもうその方がはやいわよ。どの道ここの修行場所はエンペルトどうにかしないと使えそうにないでしょ?」

ルカリオ「実はそうなんだ。俺が修行してた場所っていうのがあの滝の所だから」

リーフィア「おそらくエンペルトの自室になっちゃってるね……」

修行場所が敵地と重なっているのだから仕方が無い。他の場所で同様の鍛錬を行う事も可能だが、当時の勘を取り戻すためにも、使い慣れた場所でのトレーニングが好まれる。

リーフィア「エンペルトをどうにかしてくれるのなら……まずは彼に会うところから始めないとかな」

ミミロップ「こっちから行っても会ってくれないって事?」

リーフィア「うん。彼は滅多に人前に姿を現さないからね」

統率力があり、慎重派。同じ支配力に秀でたトウカの森のバンギラスとも、その性質は全く異なるようだ。

ルカリオ「なら、どうする? 奇襲でもかけるか?」

リーフィア「それもいいけど、やるとしたらエンペルトだけを相手にしたい。ポッタイシやポッチャマの軍勢を相手にすると辛いと思うから。結構な数いるからね」

ミミロップ「まぁ無防備に一匹でいるわけないわよね。何か手があるの?」

リーフィア「うん。彼と二匹になれる環境を作ればいい。そうなるには、彼に気に入ってもらう必要がある」
 ▼ 452 ズモー@たんけんセット 18/07/28 00:11:46 ID:3ZsQ4ajw [4/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルカリオ「どうやって? そもそも人前に出てこないんだろ?」

リーフィア「最初は直接でなくていいんだよ。間接的に近づけばいいんだ」

そう言ってリーフィアは店の一角へと視線を移す。彼の視線の先を追えば、そこには店員募集の紙が貼られていた。

リーフィア「ここはエンペルトの息がかかったお店なんだ。噂では、彼は数日に一度この店に顔を出すっていわれてる」

ミミロップ「えらく詳しいわね」

リーフィア「この町にはたまに来るからね。それに、町のポケモン達にとってもエンペルトは見ることさえ珍しい存在。彼についての噂が飛び交うのはそう不思議な事じゃないよ」

優れた能力を持っていながらその身を人前に晒さないとなれば、確かに噂の的になる事は充分ありえる話だ。容姿や功績など、彼についての伝説や侮蔑がある事ない事日々飛び交っているのだろう。

そういうものかとルカリオはミミロップを見る。ミミロップは納得したとばかりに頷いていた。

ミミロップ「それで、店員になれってこと?」

リーフィア「それで彼が来た時に何か功績をあげる事ができれば、たぶん呼ばれる事になると思う。チャンスはその時だよ」

ルカリオ「成程な。しかし、そうすぐに来る保障があるのか?」

リーフィア「無い。けど、確率を高める事はできるかも」

今度は店の外を眺めるリーフィア。

リーフィア「彼がこの店に来るのは、この店で深夜に行われる『裏祭』が開かれる時だけらしいんだ」

ルカリオ「裏祭?」

リーフィア「内容は僕も知らないんだけど、どうもこの店にあるものが運ばれてくるみたい。僕は裏オークションじゃないかって思ってるんだけど」

ミミロップ「要は裏イベントが発生するのね。それも、とびきりヤバいやつ」

リーフィア「たぶんだけどね。その開催条件さえわかれば、ある程度は開催日を絞り込めるし、なんなら早められるかもしれない」
 ▼ 453 ラガラ@ズリのみ 18/07/28 00:12:16 ID:3ZsQ4ajw [5/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルカリオ「となると、先ずは何が開催されてるかを知るところから始めるのか」

リーフィア「それなんだけど……お店の内部から探る方法と、店員の外出を尾行する方法がある。ただ、そういうことに長けた仲間がいるんだけど、彼女はまだ眠ったままなんだ」

ミミロップ「そのポケモンなら簡単に探れるって事?」

リーフィア「うん。なんてったって彼女は幽霊だからね。壁抜けできるし、姿は消せるし」

ルカリオ「ムウマージか? それ、彼女を先に起こしに行く方が良さそうだな……」

何かをするために他の何かを先に行う。今回の場合ムウマージ無しにもやってやれない事はないのだろうが、聞く限り結果的にかかる時間は彼女を迎えた方が早いのだろう。

ルカリオ「そのムウマージはどこにいるんだ? 枯れ木の森と言っていたが……」

実はルカリオ、先ほどから嫌な予感がしていた。

嫌な予感というと、少し違うかもしれない。ただ、「避けられない」や「運命」という単語が脳裏をちらついている、そんな状態。

リーフィア「ムウマージが眠るのは枯れ木の森の、大岩があるところだよ」

ルカリオ「そうか……」

果たして、ルカリオの予感は的中していた。

ムウマージが眠るというその場所は、ルカリオが修行に使っていた場所だったのだ。この調子でいけば、雪原の修行場所にはマニューラが眠っている事が予想される。

偶然の一致だろうか、リーフィアの仲間が眠る場所とルカリオが昔修行していた場所がことごとく重なっていた。

ミミロップ「枯れ木の森は遠いの?」

ルカリオ「いや、ここからならそう遠いわけじゃないかな。最初の丘から見て北側だから、ここからなら丘に戻るくらいの距離だ」

リーフィア「あ、そこは知ってるんだ」

ルカリオ「まぁ……そこも修行してた場所だからな」
 ▼ 454 ンフィア@こおりのいし 18/07/28 00:13:04 ID:3ZsQ4ajw [6/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



会計を済ませ、外に出る。

辺りは酒場に入る前よりも肌寒くなっており、見れば主張を激しくしていた太陽は少しずつ森の向こうへと旅立っていた。

ミミロップ「とりあえずじゃあ、枯れ木の森に行くのね?」

リーフィア「うん。もう少しだけここで情報収集してみるつもりだけど、今の所酒場でしかエンペルトの目撃情報がないからね」

ルカリオ「情報を持ってそうなやつとかいないのか?」

リーフィア「何匹かいるにはいるけど……」

リーフィアはうーんと唸って少しの間考えていたが、時間を浪費するわけにはいかないとばかりに首を振り、とてとてと歩き始める。

そして少し歩いたところで立ち止まり、森の外の方を眺めた。

リーフィア「町外れに、ちょっと変わったポケモンがいるんだ。彼女なら、何か知ってるかもしれない」

ミミロップ「情報屋さんでもいるの?」

リーフィア「ううん、こう言うのもなんだけど、凄く変わり者な♀。ただ、色んな事を知ってるんだ」

リーフィアは複雑な笑みを浮かべ、またとてとて歩き始める。今度は泉沿いに立つ少し大きな木の前で立ち止まる。

リーフィア「ここへ毎日やってくるアイテム売りがいるんだけど、彼も何か知ってるかも。例の酒場にも出入りしてるっぽいし」

ルカリオ「アイテム売り……うーむ」

次々と、野生のポケモン達の営みとは思えない単語が飛び出してくる。もしかしたらここは、元々人間が住んでいた場所なのかもしれない。

リーフィア「で、最後はあそこ」

リーフィアは泉の奥に立つ一際大きな棲家を見上げた。

ルカリオ「あそこって、エンペルトの家じゃないのか?」

リーフィア「そうだよ。あそこに出入りしてるポケモンがいるんだけど、そのポケモンが何か知ってるかもしれない」

リーフィアの言い方からして、おそらくエンペルトが個人的な理由で家に入れているポケモンという事なのだろう。そのようなポケモンが内部事情をあっさり教えてくれるかははなはだ疑問だが。
 ▼ 455 ノヤコマ@デボンスコープ 18/07/28 00:13:34 ID:3ZsQ4ajw [7/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルカリオ「三通りあるのなら、分かれた方が早そうだな。訊くだけなら特に危険な事にはならないだろう? そういうのもやばかったりするのか?」

リーフィア「うーんどうだろ……ただ、少なくとも町外れの偏屈な♀は何するかわからないし、色んな意味で危ないかも……」

ルカリオ「ならそこは俺が行こう。町の外にも出る事になるし」

ミミロップ「まさか相手が♀だからじゃないでしょうね?」

ルカリオ「ちがうよ、くる、しい……」

きゅっとルカリオの首を絞め、鬼嫁っぷりを見せるミミロップ。半分は冗談なのだが、もう半分は本気でやっているのだから怖ろしい。

リーフィア「じゃあ、僕はどうしようかな」

ミミロップ「私はどっちでもいいわよ? やりやすい方選んでくれたらそれで」

リーフィア「どちらも町中で接触する事になるからそう危ない事にはならないと思うけど……」

ミミロップ「ならエンペルト邸に出入りしてるっていうポケモンと接触してみるわ」

リーフィア「じゃああ僕はアイテム売りだね、それでお願いします。明日の昼にまた集合して、枯れ木の森に向かう予定でいいかな?」

ミミロップ「おっけー」

ルカリオ「問題ない。なら、また明日の昼に」

ルカリオは姿勢を低くし、拳を前に突き出す。ミミロップもそれに合わせ、手を差し出した。

リーフィア「?」

二匹してリーフィアを見る。リーフィアはなんだかわからないといった様子で二匹の事を見ていた。

ルカリオ「円陣、というやつだ。まぁ健闘を祈るためにな」

リーフィア「えへへ、そういう事か。それじゃ、失礼して」

リーフィアの前足が重なる。それを確認し、ルカリオは「よし!」と気合を入れた。
 ▼ 456 ローン@ゴーストメモリ 18/07/29 01:53:21 ID:Q//MBao6 NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 457 チム@メガバングル 18/07/29 06:57:54 ID:PIqwXqPc NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 458 チゴラス@じゃくてんほけん 18/07/31 02:56:31 ID:IpVM05uI [1/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




エンペルトが統治しているという町から一歩出てみれば、何という事はない、そこにはルカリオのよく知る静かなハクタイの森の光景があった。

もう夜が近いこともあり、風が草木を撫でる音や時々野山を駆け巡るポケモンの足音くらいしか聞こえてこない。

静かで落ち着いた森。だからこそルカリオが好んでよく来た場所。

ルカリオ「この方が落ち着くな……」

勿論、栄えている事に不満を抱えているわけではない。ただ、自分の思い描く光景が知らない間にガラリと変わってしまうのは、想像している以上に複雑な心境になるものだ。

ルカリオ「……あれが町外れの」

自分のよく知る景色に安心感を抱きつつ歩いていると、案外すぐに目的地へ辿り着いた。町外れとはいえ、そう遠く離れているわけではないらしい。

変わり者の♀ポケモンの棲家、という言葉は呑み込んでおいた。いつどこで誰に聞かれているかわからない。

声「ウチに何かご用事?」

ルカリオ「!?」

言葉を呑み込んだのはそう深く考えての事ではなかったが、結果的に正解だったようだ。いつの間に近づかれたのかすぐ後ろから声をかけられ、慌てて跳び退く事になってしまった。

ルカリオ「ユキメノコ……?」

ユキメノコ「あら、ウチの名前ご存知なん? ルカリオに知り合いなんて、おらへんのやけどねぇ」

そう言うユキメノコもルカリオの名前を呼んでいるが、話が長くなるのは困るので黙っておく事にする。ついでに、妙な喋り方についても何も言わず話を進める事にした。

ルカリオ「えっと……急にあれなんだが、実はちょっと訊きたい事があるんだ」

ユキメノコ「へぇ、ウチに? ほんまに不躾やねぇ、まだ知り合ってもないのに」

ルカリオ「確かにその通りなんだが、町の方であんたが物知りだと聞いてな」

嘘ではないが、こちらの意図は伏せてそれらしい事を話しておく。

しかしそう言って彼女のもとを訪ねてくるポケモンは多いのだろうか、ユキメノコは短く息を吐いて表情を曇らせてしまった。
 ▼ 459 イキング@せんせいのツメ 18/07/31 02:56:46 ID:IpVM05uI [2/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ユキメノコ「ウチね、皆の便利屋さんやないんよ。ただちょっとばかり色んな事情に詳しいだけで。町の外に住んでるんも、できるだけ周りと関わらんようにするためなん、わからへんかなぁ」

ユキメノコは着物のような腕で口元を隠し、厳しい視線をルカリオに送っている。

彼女の威圧に身震いするルカリオ。心なしか周囲の気温も下がってきているような気さえする。

ルカリオ「そこを何とかお願いできないだろうか。そもそも俺はあの町のポケモンじゃないから、あの町について全然知らないんだ」

隙を晒さない程度に、深く頭を下げる。

ユキメノコは暫くそんなルカリオをじっと見つめていたが、誠意が伝わったのか、少しだけ表情を緩めてくれた。

ユキメノコ「あんたよう見ると、結構エエ♂やねぇ。こないなポケモンに頭下げさせとったら、ウチ、バチあたるかもしれへん」

そう言ってルカリオの方をとんとんと叩く。

ルカリオ「じゃあ……」

ユキメノコ「条件つけましょ」

ルカリオ「条件?」

ユキメノコ「ウチにも決め事っちゅうもんがあります。ウチから話聞きたかったら、ここからちょっと離れた所にある小屋から、イバンの実を採ってきてもらいましょ」

ユキメノコはどこか楽しそうにその場でくるりと一回転して見せる。ふわりと漂う冷気のせいで、更に気温が下がった気がした。

ルカリオ「イバンの木なんて生えてるのか」

ユキメノコ「ええ。その小屋は不思議なとこでね、普通では見つからへんような木や草がよう生えとるんよ」

不思議な場所もあったもんだとルカリオは関心した。しかし直後に、これは無茶を言って門前払いしているだけなのでは、とも思えてくる。出来ない事やあり得ない事を頼むという事はすなわち、取り合う気は無いという事。

ルカリオ「えっと……その場所や木の実は、本当にあるんだよな?」

ユキメノコ「ウチの話を聞きに来たのに、ウチの言う事が信じられへんの? おかしなポケモンやねぇ」

それはそうだと、ルカリオはぐうの音も出なくなってしまった。
 ▼ 460 ャオニクス@6ごうしつのカギ 18/07/31 02:57:10 ID:IpVM05uI [3/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ユキメノコ「他の場所から来たっていうんなら、可哀想やからひとつだけええもんあげるわ」

ユキメノコは棲家に入っていき、奥の方から一枚の紙切れを取り出す。そしてルカリオの前まで戻ってくると、不敵な笑みを浮かべてそれを彼に渡した。

ユキメノコ「ほな、木の実が採れたらまたおいで」

そう言い残し、ユキメノコは姿を消してしまう。家の中に戻ったのではなく、文字通り姿を消してしまった。

ルカリオ「うーむ……」

変わったポケモンとまでは思わなかったが、つかみどころが無く一筋縄ではいかない相手なのだろうと、ルカリオは腕を組んだ。

渡された紙を見てみる。彼女が書いたのだろうか、そこには達筆でこう書かれていた。

『漆黒の闇夜、灯篭の印頼りにするべし。旅路にて定められし物集め、然るべき御前に捧げよ』

ルカリオ「……これ俺じゃ無理系?」

書いてある内容はわかるがそれの意味する所はわかりかねる、といった具合だ。おそらくは木の実までの道筋が記されているか、木の実を持ち帰る為に行う何かがヒントとして書かれているのだろう。

ルカリオ「灯篭って、そんなのまずあるのか」

きょろきょろと辺りを見回す。

すぐに見つけられるのは、ユキメノコの棲家とその前に仰々しく置かれている岩。その周辺には森が広がっているのだが、更に見回してみると、ユキメノコの家から更に傾斜を上った先、小高い丘の頂上辺りに灯篭らしきものが見える。目印さえ見つける事に苦労すると思われたが、意外にもすぐに見つかってくれた。

とりあえず先に進む事はできそうだと、ルカリオは安堵の息を吐いて歩き始めた。
 ▼ 461 ラスル@ホエルコじょうろ 18/07/31 02:57:34 ID:IpVM05uI [4/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




ルカリオ「なんかすげぇ暗くなってきたな……」

一匹で森に入ってから思った以上に時間が経過してしまったのだろうか、目印となる灯篭の所に辿り着いた頃には辺りはすっかり暗くなり、自分のすぐ周りさえよく見えない程になっていた。

波動である程度周囲を探れるとはいえ、視界が悪すぎる中を歩くのは危険だ。ユキメノコに話を聞くためとはいえこんな所で怪我でもしたらたまったものではない。

ルカリオ「次の灯篭までは遠いな……」

灯篭を辿っていけば目的地まで着きそうだが、ここから次の灯篭が設置してある所までは結構な距離があった。そこへ辿り着くまでの道のりは完全に闇の中で、地面に穴が空いていても気づかず足を踏み外してしまう事だろう。

ルカリオ「明りになるものがあればいいんだが……」

灯篭は石でできており、そこには火が灯っている。となれば、その場しのぎではあるが、木の枝などをたいまつ代わりに使うしかない。

ただそれもそう長くは持たないうえ、落としでもしたら山火事を招く恐れがある。そんな事になってしまえば修行どころではなくなってしまうかもしれない。

ルカリオ「慎重に行かないとか……何か良い手があるといいんだがなぁ」

ユキメノコがわざわざ手がかりを書き記してくれたという事は、きっと何かやり方というものがあるのだろう。おおよその心配をする事なく目的地まで辿り着く事ができる、何かが。それを見つける事ができなければ、彼は真っ暗闇の中、離れた所にある灯篭目指して怖々歩かなければならない。

しかし、考える事はあまり得意では無いが観察力や洞察力には優れたルカリオ。暗くて視界が悪いとはいえ、自身の近くに時間の花が咲いているのをすぐに見つける。

ルカリオ「まさかこれがヒントだったりして……そんなうまい話は流石にないか」

そうは言っても多少は期待をかけつつ、波動を使って花の記憶を探っていく。

ぼんやりと映し出される過去の光景。灯篭の灯りに照らされたそれは、暗闇の中でも充分眺める事ができた。
 ▼ 462 ングマ@ダークメモリ 18/07/31 02:58:02 ID:IpVM05uI [5/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告





ムウマージ『で、姫的にはどっち狙いなの?』

グレイシア『どっち狙いって、急に何の話?』

ムウマージ『またまたとぼけちゃって、好きな♂の話よ。ほら、今は私達しかいないんだから素直にはいちゃいなよ』

グレイシア『な、何言ってるのよ急に。好きも何も無いわ、二匹とも大切な仲間よ』

ムウマージ『はぁ、本当に姫は真面目腐ってるわねぇ』

グレイシア『貴女は頭の中がエンターテイメントすぎるのよ』

ムウマージ『ありがとう』

グレイシア『はぁ。テンプレート返すのも面倒だわ……』

ムウマージ『まぁリーフィア狙いなのはわかってるけどね。キッスからマニューラ奪おうとするような子じゃないの知ってるし』

グレイシア『キッスから? なにそれ、初耳よ? 私の事より、トゲキッスがマニューラに気がある事が驚きよ』

ムウマージ『まぁキッスはそういうの隠すの上手だからね。彼女、おそらくこの前の一件でマニューラのこと見直したんじゃないかな』

グレイシア『この前のって、ピジョットに襲われたときの?』

ムウマージ『たぶんだけどねぇ。まぁ私の勘は当たるから問題ない』

グレイシア『確かに活躍はしてくれてたけど、へぇそうなんだ』

ムウマージ『まぁこれだけずっと一緒にいればお互い意識くらいはするよね』

グレイシア『ムウマージは、浮いた話とか何もないの?』

ムウマージ『私はほら、特殊だから。そういうのは別にね?』

グレイシア『じー』

ムウマージ『あーもう私の事はいいんだってば。ほら先進むわよ。そんな風に見てると、置いてくからね。毒沼にはまって死んじゃってもしらないわよ』

グレイシア『そんなのあるの……あのポケモンも怖ろしい所へ物を取りに行かせるのね』

ムウマージ『幽霊ってだいたいそんなもんよ』

グレイシア『そういうのは貴女だけだと思ってたわ……』





 ▼ 463 ガディアンシー@するどいくちばし 18/07/31 02:58:23 ID:IpVM05uI [6/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


ルカリオ「……毒沼があるらしい事しかわからなかったな」

花の記憶は期待していた通りグレイシア達の過去を映し出してはくれたが、現状を打破できるようなものではないようだった。

ルカリオ「それによく考えたらこれ、波動使えなきゃ過去を見る事はできないしな……」

ユキメノコがヒントとして時間の花を設置したとは思えない。リーフィアにとっての手がかりを見つける事ができたとはいえ、変わらない状況に額を押さえるルカリオ。

しかし、頭を悩ませていても時間ばかりが過ぎてゆくだけである。考えても仕方が無いと、彼は波動を使いつつ足を踏み出してみる事にした。

ルカリオ「くそう、まるで肝試しだぜ……」

周囲に気を配りながら、ゆっくりと歩みを進めるルカリオ。

彼は進路に立ちはだかる木や岩に目を細めながら、元々住んでいる所で他のポケモン達と肝試しを行った事を思い出していた。

まだミミロップと結婚していない頃のこと。彼はミミロップにいいところを見せようと張り切って参加してみせたが、結果として彼女に笑われる事となってしまった。

彼は霊を恐れる事こそなかったが、お化け役の連中が仕掛けた落とし穴に気づかず綺麗にはまってしまい、情けない声をあげてしまったのだ。

流石にその時は罠を仕掛けた友人を怒ったが、ミミロップには暫くその時に出た声について弄られることになってしまった。

勿論それも今となっては良い思い出なのだが、それ以来ルカリオは肝試しと言われると落とし穴を警戒するようになった。無論、特殊なケースとわかってはいるが、彼の中でそれなりにトラウマになった出来事だった。

ルカリオ「毒沼にだけは絶対はまらないからな……」

思い出して複雑な気持ちになってきたのだろう、ルカリオはわざわざ誰に言うでもなくそう声に出し、特に地面に向けて強く探りを入れた。
 ▼ 464 ブライカ@ちいさなキノコ 18/07/31 15:20:41 ID:uaioTCM. NGネーム登録 NGID登録 報告
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 ▼ 465 ートロトム@あついいわ 18/08/03 03:22:57 ID:TkSMTShw [1/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
やがて遠くに見えていた灯篭の所まで辿り着く。明るくても歩きにくそうな獣道をこの暗闇の中歩いたわけだが、特に目立った危険もなく、想像よりもはやいペースで二つ目の道しるべまでやって来れた。

ルカリオ「……何か置いてあるな」

二つ目の灯篭も最初のものと同じつくりになっているのだが、そのすぐ下の地面にはビンのようなものが置かれていた。

ビンを置く台のようなものもあり枠にはまる形でそれは置かれているので、ポイ捨てなどによって投棄されたものではないとわかる。

ルカリオ「何でこんなものが……罠、ではなさそうだけど」

明らかに誰かが設置したもの。となれば、目印であれ罠であれ、このビンのようなものには何らかの意味があるのだろう。

こんな暗闇の中木の実を採りに行かせるくらいなのだから、これを設置したのはおそらくユキメノコだ。ただ、もしこれを設置したのが人間である場合、非常に厄介な事態が予想される。その場合は大方罠として設えられているため、不用意に手にとるなどすると捕まってしまう可能性がある。

ここはハクタイの森の、それも普通の人間なら立ち寄らないような奥地であるため罠として設置されている可能性は低いが、用心するに越した事はない。「たられば」を語る未来は、できれば遠慮願いたいもの。

ルカリオ「しかし、気になるな。このまま気づかぬふりをしていいものか……」

ユキメノコがこれを置いている場合、何の意味もないとは考えにくい。木の実を採る際ビンの中身が必要になってくるか、あるいはビンそのものが何かを行うための鍵となっている可能性もある。

ルカリオ「……取ってみるか」

考えた末、ルカリオはそれに手を伸ばす。

ルカリオ「ただのビンだな……中身は、水か?」

ビンを傾け、中に入っている液体をじょぼじょぼと地面に落としてみる。特に、地に生える草がとけたりといった化学反応が起きる様子はない。

ルカリオ「ん……他にも何かあるな」

ビンに注目していて気づかなかったが、近くには他に花と線香が置かれていた。

ルカリオ「線香って……しかもこれ造花だ」

全く意味がわからない。どこかにこれらを置く場所でもあるのだろうか。それともこの灯篭が墓石のような役割を果たしているのだろうか。ルカリオは頭を悩ませた。
 ▼ 466 ガネール@でかいきんのたま 18/08/03 03:23:15 ID:TkSMTShw [2/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




一方その頃、ミミロップはエンペルト邸に出入りしているポケモンがいないか、彼の棲家付近からそれとなく観察を行っていた。

町一番の豪邸という事もあり、彼の棲家はさながら人間が暮らす家のよう。しかも、表には大きな泉を臨み、裏手には大きな滝があるという、水ポケモンにとって喜ばしい環境だ。

出入りしているポケモンは、リーフィアの話ではエンペルトが個人的に呼び込んでいるポケモンらしい。つまりは、表向きそのポケモンは正面から堂々とこの棲家に入れるわけではない事が予想される。

となれば、そのポケモンが出入りする場所は裏手かあるいは隠された入り口など。ミミロップは、見張りを行っているポッタイシ達に見つからない範囲で四方からそれらを探してみているが、なかなか見つかる様子はない。

ミミロップ「呼び込んでいるのが水ポケモンだとしたら、もしかして水中とか……?」

これだけ周囲を水に囲まれていれば特有の出入り口などが存在してもおかしくはないのだが、見張りを行っているポケモンもまた水タイプ、水中は当然見張りを行う範囲の内であり彼らを欺く場所として適していない。

ミミロップ「そこらかしこに見張りがいるから、チャンスがあるとしたら交代の時とか……案外一部と繋がってるって可能性もあるわね」

流石に、一部の見張りが手引きしているとなると、接触するチャンスは例のポケモンがエンペルトの棲家を離れた時しかない。そんな好機が本当に訪れるかどうかも疑問だ。

しかし、彼女の心配をよそに、そのポケモンはあっさりと姿を現してくれた。

深夜を迎える頃だろうか、見張りのポッタイシ達が一時的にどこかへ歩き去ってしまい、それから程なくしてあるポケモンが堂々とエンペルトの棲家を訪ねて来た。

ミミロップ「ミロカロス……こんなに堂々と? ていうか見張りはどこ行ったのかしら」

慣れているのだろう、ミロカロスは辺りを気にする素振りもなく、エンペルトの棲家へと入っていく。

思わぬ登場の仕方に呆気にとられて声をかけられなかったため後をつけてみようかとも考えたが、単身生身で敵地に乗り込むなど危険極まりないとすぐに思い直し、ミロカロスが外へ出てくるのを待つ事にした。
 ▼ 467 クリン@1ごうしつのカギ 18/08/03 03:23:30 ID:TkSMTShw [3/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
それから待つ事数十分、ミロカロスは何やら難しい表情を浮かべて棲家から出てきた。

相変わらず見張りは誰もいない。ミロカロスもやはり周囲を気にする様子はなく、棲家の前で少しだけ考え事をするように俯いた後、目の前の泉へゆっくりと身体を沈ませ始めた。

ミミロップ「やば、水の中行かれたら困るわ」

幸い泉の水は綺麗に透き通っておりミロカロスに水の中を行かれても目で後を追うことはできる。ただ、おそらくミロカロスが水中を泳ぐ速度の方がミミロップが地上を走るよりも速いだろう。

ミミロップ「あ、あのー!」

ミロカロス「……?」

今にもミロカロスが頭を水中にもぐらせ泳ぎだそうかというその瞬間、ミミロップは彼女に向けて大声を張り上げた。

ミロカロス「私ですか?」

ミミロップ「そう、貴女。そうよ」

ミロカロス「何かご用事ですか?」

ミミロップ「えーっと、そう用事なのよ」

ミミロップ「(どういう話から始めていいかさっぱり考えてなかったわ)」

とりあえず見失う事は無くなった。しかし、一難去ってまた一難。ミミロップは次に繰り出す言葉が思いかばず、頬をかきながら明後日の方へと視線を彷徨わせるばかりとなってしまう。

ミロカロス「……貴女ももしかして、あいつに近づこうとしているの?」

ミミロップ「あいつ?」

ミロカロス「エンペルトよ」

どう話したものかと考えあぐねていたが、向こうからそれらしい話題を振ってきてくれた。ここは何も知らないフリをして内情を探っていこうと、ミミロップは耳を傾ける。

ミロカロス「見たところ貴女、随分と可愛らしいポケモンね」

ミミロップ「え、あ、それはどうも。貴女は、その、美しいわよ?」

よくわからない世辞に世辞を返すミミロップ。あははと微妙な笑みを浮かべるミミロップだが、ミロカロスの表情は随分と深刻そうなものだった。
 ▼ 468 ンパッパ@ぎんのおうかん 18/08/03 03:23:45 ID:TkSMTShw [4/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミロカロス「もしかして、もう誰か買われてしまったの?」

ミミロップ「買われる?」

ミロカロス「あら、違ったの?」

話が見えない。彼女は、一体何について話しているのだろう? ミミロップは訝しむ様子が表情に出ないよう、やや上目遣いにミロカロスを見た。

ミミロップ「それって、地下でのこと?」

完全なるブラフ。

しかしミロカロスは自分が話していることについてミミロップも知っている、あるいは同じ境遇にいると思っているらしい。故にもしそれが、例の酒場の地下でエンペルトが行っている事に関係しているのなら、これで話が繋がるはずだ。

ミロカロス「……そうね、やっぱり貴女も被害に遭ってるのね」

釣れた、水ポケモンなだけに……なんて、口が裂けてもいえない。

彼女の口から「被害」という言葉が出た。つまりは、ミロカロスはエンペルトが地下で行っている何かについて良い印象は無いという事。

これを頼りに、はったりに少しずつ真実を織り交ぜていく。

ミミロップ「裏祭、また次も開かれるみたいね……」

ミロカロス「ええ……明日の夜って聞いたわ」

早速有力な情報が出てきた。大手を振ってルカリオ達と会う事ができそうだと、ミミロップは心の中で強く頷く。

ミミロップ「貴女は……その、被害に遭ってる、のよね?」

ミロカロス「そうね……私の場合は、身代わりになったから」

ミミロップ「身代わりに……」

上手い具合に話を進められているが、当然ミロカロスの話はエンペルトの行っている何かが前提となっているため、ミミロップは彼女の言葉を聞くたび忙しなく頭の中で状況を類推しなければならない。しかも、間違った返答を行えば相手に不信感を抱かせることになってしまう。
 ▼ 469 マシュ@マグマブースター 18/08/03 03:24:10 ID:TkSMTShw [5/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミロカロス「……そろそろポッタイシ達が帰ってくるわね」

ミミロップ「そういえば、どうして一時的に見張りがいなくなるの?」

ミロカロス「私にもわからない……けど、この時間帯なら見張りがいなくなるからってエンペルトに教えられたわ」

ミミロップ「そうなんだ」

ミロカロスを招き入れるために、ポッタイシ達に離れるよう指示を出しているのだろうか。

ともあれ、これ以上ここで話し込んでいる時間は無いらしい。ミロカロスは「貴女も大変だろうけど頑張って」と言い残し、泳いで行ってしまった。

ミミロップ「……私も戻るか」

目的のポケモンに接触し話を聞けたので、もうこれ以上ここにいる意味は無い。何か他の情報を探る事ができるかもしれないが、それよりもルカリオ達と合流して報告をしておきたい。

ミミロップ「もう五分もしたら見張りが戻ってくるし、はやく行こ」

ミミロップ「……あれ?」

ミミロップは妙な違和感を覚え、歩き出そうとしていた足を止める。

いま、自分は何を言った?

自分の頭の中で導き出したとは思えない言葉。話しているのも考えているのも、確かにミミロップ、自分だというのに。

見張りが戻るまで、あと五分。どうして、五分とわかる?

ミミロップ「…………あ」

ふと、急に視界が揺らぐ。

まるで激しい眩暈でも起こしたように、世界が反転する。

このままだと倒れてしまう……そう思った次の瞬間、自分が倒れたことさえ認識しないうちに、ミミロップは意識を手放した。








ミミロップ「……?」

そして彼女は、目を覚ました。
 ▼ 470 オガエン@やわらかいすな 18/08/03 03:24:41 ID:TkSMTShw [6/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
声「あ、やっと起きたか」

すぐ近くから誰かの声がする。

聞いたことのある声。つい最近も耳にした声。

覚醒しきらない頭でぼんやりと声の主を思い浮かべる。回らない頭でも、そのポケモンの名前ははっきりと思い出せた。

ミミロップ「……エルレイド?」

エルレイド「そうだよ。今ここにはいないけど、姉さんも来てる」

ゆっくりと首を動かす。すぐに、よく知る顔、友人の姿を確認する事ができた。

そこで初めて気がつく。自分は今、柔らかい葉のベッドで横になっていることに。

ミミロップ「……あれ?」

だんだんと意識が覚醒していき、今自分が置かれている状況を認識し始める。しかし、それが理解できてくると、途端にわけがわからなくなる。

自分はさっきまで、エンペルト邸の前でミロカロスと話をしていた。でも、気がつけば違う場所にいてエルレイドが近くにいる……導き出される答えは、一つしかない。

ミミロップ「……夢オチ?」

エルレイド「え?」

ミミロップ「あ、いや、ごめんなんでもない」

エルレイド「そう……?」

エルレイドは心配そうにミミロップを覗き込む。彼にそういうつもりがないのはわかっているが、なんとなく寝起きを覗き込まれるのは少し不愉快に感じ、ミミロップは視線を僅かに鋭くする。エルレイドは、誤解しないでくれとばかりに一歩後ろへ下がり、両手を振って小さく息を吐いた。
 ▼ 471 ラブ@みどりのかけら 18/08/03 03:24:58 ID:TkSMTShw [7/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミミロップ「で、なんであんたがいるの? というか……ここ、どこ?」

きょろきょろと辺りを見回す。どうやらどこかの洞窟らしい、周りは白っぽい岩に囲まれておりほんの少しだけ息苦しさを感じる。

ミミロップ「あ、ルカリオ」

そしてエルレイドがいる所とは反対の方を見ると、愛する旦那、ルカリオが自分と同じように葉のベッドの上で眠っているのを確認できた。

エルレイド「ここはハクタイの森だよ。昔、ルカリオが修行してた丘」

ミミロップ「は?」

エルレイド「どう話したもんかな……ホウエン大会あったじゃん? 俺と姉さんはさ、リオ達が心配だったんだよ。二匹とも決勝じゃ手も足もでないくらいコテンパンにされちゃってさ、自信なくしたんじゃないかって」

エルレイド「それで、クチート達を送り届けた後に、リオ達のあとを追いかけてきたわけ。次の行き先がシンオウなのは聞いてたし、それなら前に修行してたハクタイの森かなって」

エルレイド「でも驚いたぜ? どこらへんいるかなと思って探しに来たら、木の下で二匹仲良く眠ってるんだもんなぁ」

ミミロップ「……木の下で寝てた?」

エルレイドの言う事が事実なら、ルカリオとミミロップはハクタイの森の丘に来て眠ったという事になる。そして、リーフィアと出会ったりダーテングに捕まったりミロカロスと話をしたりする「夢」を見た……

ミミロップ「いい感じに私達やばくない?」

エルレイド「やばいかはわからないけど……まぁ特にリオは珍しいなって思ったよ。無防備に寝てるんだもん、慌てて近場の洞窟に運んだよ。この辺で凶暴なポケモンが出るとはあんまり思えないけど、念のため」

ミミロップ「それは悪い事したわね……はぁ。自分たちでも気づかないうちに疲れきってたのかしら」

ようやく状況は理解できたが、違和感は残る。いくら生まれ故郷の慣れた空気の中とはいえ、自分はまだしもルカリオが周囲も気にせず眠ってしまうだろうか。

ルカリオを見る。彼はまだすやすやと眠っており、目を覚ます気配は無さそうだ。
 ▼ 472 マコブシ@げんきのかけら 18/08/03 03:25:13 ID:TkSMTShw [8/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミミロップ「でも、なぁーんだぁ……はぁ」

色んな感情がない交ぜになり、ため息を吐かずにはいられない。

エルレイド「どうかしたの?」

ミミロップ「うん? いやさ、私ね、ルカリオとここで修行しようとしたらリーフィアに会った、って夢見たのよ」

エルレイド「夢?」

ミミロップ「うん。それで草の剣引っこ抜いたりダーテングぶっ飛ばしたり人間の住む町みたいな所行ったりした」

エルレイド「なんだその夢」

ミミロップ「今にして思えばちょっと異質だわ。まぁでも、夢ってそんなもんだし?」

現実では起こりえない事や過去現在が混在するような世界を見る事ができる、それが夢。しかも夢の中で感じた事や思った事などは、目が覚めるまではまるで本当に起きた出来事のように感じられる。

今回見た夢も、かなりリアルなものだった。まるで本当に自分とルカリオがリーフィアと共に彼の仲間を集めに行く旅に出ている気分になった。

声「あら、目が覚めたのね」

ミミロップ「うん?」

聞こえた声に、その方を見る。エルレイドの姉、サーナイトが入り口の方からこちらへ歩いてきていた。

ミミロップ「助けられたわね。なんでか眠っちゃってたみたい」

サーナイト「驚いたわよ。木の下で二匹仲良く眠ってるんだから」

さすが姉弟、二匹とも同じような物言いである。

ミミロップ「でも、いつ眠っちゃったかわからないのよねぇ……それだけ疲れてたのかもだけど」

サーナイト「そうね……でも、眠らされたわけじゃないのでしょう?」

ミミロップ「たぶん。いつ寝ちゃったのか正直わからないけど、不審なポケモンや人間は見てすらいないし」

先ほどまでの出来事が夢だとなると、リーフィアを見つけた段階から既に夢だったという事になる。となれば眠ってしまったのはそれ以前、この丘をルカリオに紹介してもらう辺りかそれより更に前の話だ。
 ▼ 473 シボン@ほのおのジュエル 18/08/03 03:25:30 ID:TkSMTShw [9/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミミロップ「あ」

サーナイト「どうしたの?」

ミミロップ「ちょっと確かめたい事があるんだけど」

そう言って立ち上がるミミロップ。それにあわせて、サーナイトがミミロップのすぐ傍にやって来る。

そして、やはり彼女達がただ疲れて眠っただけとは考え難いのか、サーナイトはミミロップが内容を話す前に行動をし始めないよう彼女の腕を掴んだ。

そんなサーナイトの意図を察してか、ミミロップは大丈夫とサーナイトの手にもう片方の手を重ねる。

ミミロップ「この丘のどこかに、遺跡みたいな建物ってある?」

サーナイト「遺跡?」

エルレイド「遺跡……いや、見た事無いな」

サーナイト「この辺りはあまり来ないけど、二匹を探してた時に見回った限りでは見てないわ」

やっぱりか、とミミロップは息を吐く。

ルカリオがこの場所をミミロップに紹介したとき、彼は丘の上にある遺跡の存在に酷く違和感を覚えているようだった。記憶違いじゃないかとミミロップは小さく笑っていたが、やはり彼の記憶は正しかった。遺跡はあくまで夢の中だけの、架空の建造物だったのだ。

ミミロップ「……あれ?」

だが、そうなると一つ不思議な事がある。

それは、ルカリオの認識だ。ミミロップはルカリオがこの場所に遺跡などある筈が無いと思っている事など、全く知らない。そもそもこの場所さえロクに知らないミミロップが、この場所についてルカリオがどれだけの事を知っているかなどわかるわけがない。

つまり、そのときのルカリオの反応は、全てミミロップが夢の中で妄想した事になる。

どんな事でも起こりうるのが夢と言われればそれまでだが、それにしても再現性が高い。愛ゆえに彼の言動なら夢の中でさえ何でもお見通し言えば納得できない話ではないが、若干の気味悪さは残る。

サーナイト「とにかく、まだ安静にしてて。今、何か食べるもの用意するから」

ミミロップ「あ、うん……」

サーナイトはやんわりとミミロップを葉のベッドに座らせ、彼女が安心できるよう優しい笑みを浮かべてみせた。
 ▼ 474 オラント@サメハダナイト 18/08/03 03:25:56 ID:TkSMTShw [10/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミミロップ「ルカリオはまだ起きないのかしら……」

上半身だけ起こして、ルカリオを見る。

ルカリオはなんだか難しそうな顔をして眠っており、あまり安眠できているようには見えない。時折「うぅん」と小さく唸るところを見ると、いわゆる夢見が悪いという状態なのかもしれない。

ミミロップ「こっちはどんな夢を見てるのかしら」

そっとルカリオの頬を撫で、笑みを浮かべるミミロップ。なんとなくそれを見ているのは悪い気がして、エルレイドは少し離れて違う方を向いた。

ミミロップ「私も夢見が良かったわけじゃないけど……」

夢という事もあり、もう今となってはあまり思い出す事ができない。時間が経つにつれ、少しずつ少しずつ内容を忘れてしまっていく。ただ、とても不思議な夢だった、という曖昧な印象だけが頭の中に残り続ける。

ミミロップ「あー……」

そういえば、とミミロップはひとつ気になる事を思い出した。

夢の中で、ルカリオはシンオウでの修行や修行場所についてミミロップに予定を話してくれていた。そのうち丘で実行するものについては既に修行を完了させており、その感覚もある程度は覚えている。

無論、ミミロップはルカリオが実際にどんなトレーニングを予定しているのかはわからないが、もしかして内容が全く同じものであればいよいよもって自分の夢は予知夢という事にならないだろうか。そんな事をミミロップはぼんやりと考え始めた。

ミミロップ「たく、はやく起きなさいよね」

愛おしそうに彼の寝顔を眺め、小さく笑う。

あり得ない話と思いつつも、もしルカリオが行う予定のトレーニングに近いものを言い当てる事ができれば、彼はきっと驚くに違いない。そう期待しだすと、はやく起きてくれないかと気持ちが逸り始める。

そういえば、どれくらいルカリオの驚いた顔を見ていないだろう。

お互いに知り合って間もない頃は、それぞれの生活の違いや昔話によく表情をコロコロ変えたものだ。だが、お互いに色んな事を知り尽くしてしまうと、特に驚きという刺激が日常から姿を消していく。

勿論それくらいで揺らぐ彼らの絆ではないが、こうして考えてみると抜け落ちそうになっている感情がある事に気づき、なんだか少し寂しい気持ちになるのも事実だ。

ミミロップ「ん……」

いつまでも眠っているルカリオを眺めていたからだろうか、さっきまで眠っていたというのに、瞼がとろんと落ちてくる。

なんでまた眠く……そう思うのも束の間、次の瞬間には、ミミロップはこてんとルカリオのすぐ横に転がり、可愛らしい寝息を立て始める。








ミミロップ「…………は?」

そして、再び目を覚ました。どことも知らない、誰かの棲家の中で。
 ▼ 475 テノ@ぼうけんノート 18/08/03 16:17:11 ID:tmpsEaMs NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
やっと展開し始めるか?
 ▼ 476 ガボーマンダ@グラスシード 18/08/03 17:35:16 ID:Pjgk1fXg NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援ー
 ▼ 477 ゴラス@ピーピーリカバー 18/08/05 23:36:30 ID:tBQYJnwU [1/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
鳩が豆鉄砲を食ったようとは、こういう時に使うのだろうか。ミミロップはそれ以上何も言葉にできず、ぽかんと口を開けて目の前に広がる光景をぼんやりと眺める事しかできない。

ルカリオがいる、リーフィアがいる、そして何故かユキメノコがいる。

これは、前回見ていた夢の続きなのだろうか。確かに、二度寝をした時などに最初に見ていた夢の続きをうまい具合に見る事ができるときはある。これは、つまりそういう事なのだろうか。

ルカリオ「……? ミミロップちゃん、どうかした?」

ミミロップ「ふぇ?」

ルカリオ「あ、いや、なんかぼんやりしてたから」

ミミロップ「えっと、ううん、大丈夫よ何でも無い」

ルカリオ「そう? ならいいけど」

いつものように、ルカリオはミミロップのちょっとした変化にちゃんと気づいて対応してくれる。常にじっと見つめていなくとも、お互いの調子くらいは空気でわかる。

よく出来た旦那、よく出来たポケモン。

しかし、だからこそ疑問に思う。

ミミロップ「(ルカリオは……本当に、ルカリオなの?)」

それは愚問であり、それでいて当然の疑問。

ミミロップの夢の中なのだから、そこに登場するルカリオはミミロップがイメージするルカリオに他ならない。彼女の愛するルカリオが、彼女の頭の中を通ってそのまま夢に出てきているだけだ。

しかし、だからといって夢に出てくる彼のことを操るなどする事はできない。頭の中を覗く事もできなければ、次にどういう行動を取るか言い当てる事も難しい。

夢は記憶といえども、彼女の知るルカリオ以外のルカリオが登場しないとも限らないのではないか……そんな事を考えてしまう。

ミミロップ「(まぁ夢なら何でもいいんだけどさ)」

仮に、ルカリオが急に突拍子も無い行動に出たとしても、それはあくまで架空の出来事、絵空事。現実のルカリオとは一切関係が無いことである。
 ▼ 478 ガバンギラス@エネコのシッポ 18/08/05 23:37:07 ID:tBQYJnwU [2/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ユキメノコ「行くんやったら、早い方がええよ」

リーフィア「うん、そうします。もう出発かな」

一体どこへ行くのだろうかと考えたところで、再び疑問がわきあがってくる。

夢の中だというのに、どうしてこうも自分ははっきり考える事ができるのだろう。

ミミロップ「(明晰夢ってやつ?)」

明晰夢とは、自分で夢であると自覚しながら見ている夢の事。これを見る人やポケモンの中にはしばしばその後の展開や状況を思う通りに変化させられる事ができる者もいるという。

ミミロップ「(じゃあもしかして、私が思った事って実現したりするのかしら)」

ちょっと悪い顔をして、ルカリオの方を見るミミロップ。申し訳なさよりも興味が打ち勝って、彼女はルカリオに向かって「転んで!」と強く念じてみた。

ルカリオ「じゃあ今から枯れ木の森へ行こう。出発だ」

ミミロップ「…………」

ルカリオがフラグになるようなセリフを話す……が、彼は歩き出しても転ぶ様子は無い。

ミミロップ「(なんだ、そういう感じのじゃないのか……)」

自分で考え行動できるとはいえ、思った通りの未来を創り出す事ができるわけではないらしい。ミミロップは残念そうに小さく息を吐いた。

ミミロップ「(……ま、夢ならなるようになるわね)」

棲家を出て、森を北へと歩き始める。ユキメノコはそんな彼らを暫くの間見送っていた。

ミミロップ「……今の誰?」

ルカリオ「えっ?」

ユキメノコの棲家から離れ彼女が見えなくなったあたりで、ミミロップはルカリオに耳打ちした。
 ▼ 479 グマッグ@つりざお 18/08/05 23:37:40 ID:tBQYJnwU [3/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルカリオ「誰って、ユキメノコのこと?」

ミミロップ「うん」

ルカリオ「えーっと……詳しく教えて欲しいって意味、だよね?」

ルカリオは怪訝な顔をしてミミロップを見る。ただ、彼女の事を気遣ってだろう、それでも前を歩くリーフィアには気づかれないよう歩みは止めない。

ミミロップ「えっと、そうね。うん、そういうこと」

ルカリオ「だよね。急にどうしたのかと思った」

ほっと安堵の息を吐くルカリオ。

彼のその反応を見て、ミミロップはある事を確信した。

これは夢の続きではあるが、ゲームのそれのように次に再開する場所は前回途切れた場所、というわけではないらしい。

同じ例えで言うならば、自分がセーブしてプレイを止めている間に誰か他の人がもう少し先まで進めてセーブしてしまい、その続きを再び自分がやり始めた。そんなイメージ。

つまりは、先ほどユキメノコと話していたのも、彼女の存在をこの時点のミミロップが知っているらしいことも、前回ミミロップが目を覚ましてから再び眠るまでの間に夢の中の時間が進んだ事で、そこに行き着くまでの過程を見る事ができなかったという事。

簡単に言えば、起きている間に話が進んでしまったと、そういう事のようだ。

これに限らず、今まで起きてきた不思議な事や不可解な出来事は、「夢だから」の一言で片付ける事ができる。そう思えば、むしろ納得できる部分の方が多いかもしれない。

ミミロップ「(厄介な夢ねぇ……)」

まるで、自分の本当の世界とは別に世界線が存在していて、そこを行き来しているような感覚。慣れてみれば面白いのかもしれないが、夢の中でまで疲れるのはご勘弁願いたいというのが本音である。

ミミロップ「(ま、夢ならそれを楽しめばいっか)」

それでも、不可解な事や納得できない状況は幾つもある。しかし、これが本当に夢であるのならば、何も気負う必要は無い。極論、この世界で息絶えようとも、実際に自分が死ぬわけではないのだから。
 ▼ 480 ンパッパ@クチートナイト 18/08/05 23:38:18 ID:tBQYJnwU [4/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
枯れ木の森。そこはハクタイの森の中でも群を抜いて異質な場所であり、おそらく人間は誰一人として足を踏み入れた事のない場所。

その名からわかる通り、青々と木々が生い茂る森の中心部とは裏腹に、存在するどの木に至ってもたった一枚の葉すら目にする事ができない暗黒の地。

しかし地面は誰かが掃除して回っているのか地球が肌を見せており、枯れ枝の賑わいなど皆無、至って綺麗なものである。

ルカリオ「ここにムウマージが眠ってるのか……」

ミミロップ「ねえ、ダークライに負けて眠ったっていうのは聞いたけど、要はダークライに封印されたってこと?」

ここへは来慣れているのだろうか、枯れ木の森に着いてからもリーフィアは森を歩くときとほとんど変わらないペースで歩き続けている。

リーフィア「……実を言うと、そうじゃないんだよね」

そして、ミミロップの問いに答える時でさえ、ペースを落としはしたものの歩みを止める事はない。仲間がすぐ近くにいる事で、気持ちが逸っているのだろうか。

リーフィア「僕たちは……皆でダークライに立ち向かった。だけど全然刃が立たなくて、だから最終手段を使ったんだ」

ルカリオ「最終手段?」

リーフィア「うん……僕の剣に、皆の魂を込めたんだ」

そこでようやく、リーフィアは立ち止まった。

ルカリオたちからリーフィアの表情は見えない。ただ彼は、じっと真っ直ぐ前を向いている。

リーフィア「それで皆は力を使い果たしちゃったから、眠ってるんだ」

ミミロップ「なんていうか、すごい事できるのね……」

ルカリオ「ファンタジーの世界みたいだ。どういう仕組みになってるんだか」

リーフィア「そうだね……でも、知りたければ訊いてみるといいよ」

ルカリオ「どういう事だ?」

リーフィア「その術を使ったのはね、ムウマージなんだ」

リーフィアはちらりとルカリオ達を見て、再び視線を前へ向ける。彼の視線の先には、場違いなほど大きな岩が枯れ木たちのど真ん中に鎮座していた。
 ▼ 481 ャランゴ@きあいのタスキ 18/08/09 01:53:15 ID:mrj6omGI [1/52] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告




謎の大岩まで行ってみれば、何という事はない、ムウマージはすぐに見つける事ができた。

力を使い果たして眠ってしまったというのだから封印でもされたようになっているのかとルカリオ達は思っていたが、実際は岩の麓に作られた祠の中ですやすや眠っているだけだった。

想像とあまりにかけ離れた光景。思わず二匹はがくっと肩を落とす。

ルカリオ「……で、どうやって起こすんだ? まさか揺らしただけで起きたりはしないだろう?」

ムウマージ「ゆするだけで起きるかもしれないよ?」

ルカリオ「!?」

ミミロップ「きゃっ!」

リーフィア「でたああああ!!」

ムウマージ「幽霊冥利に尽きるけど、なんか嬉しくないわね」

どうしたものかと頭を悩ませる間もなく、眠っているはずのご本人が急に起き上がってきた。

ムウマージ「やぁリーフィア、久しぶりね。おねーさんの力でも借りたくなったかな?」

リーフィア「久しぶり……ムウマージは相変わらずだね」

ムウマージ「まぁ、私は私だし?」

偏見ではないが、このムウマージは幽霊なのにとても明るい性格をしているようだ。

リーフィアの話では、彼女は力を使い果たして眠ってしまったということだが、もう力は回復して元気になったのだろうか。

ルカリオ「早速本題で申し訳ないんだが……」

この手のタイプは放っておくと延々と話を続けてしまう。ルカリオはそれを阻止するためにも、少々強引に話を進めにかかる。

リーフィア「実はね……」

切り出すタイミングを窺っていたのだろうか、リーフィアは助け舟が出たとばかりに本題を話し始めた。
 ▼ 482 ージュラ@ガブリアスナイト 18/08/09 01:53:42 ID:mrj6omGI [2/52] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
再びダークライと戦う事、グレイシアを救い出す事、また危険な目に遭う事、訥々と話すリーフィアにムウマージはひとつひとつ頷きながら黙って話を聞いていた。

ムウマージ「話はわかったわ」

リーフィア「協力、してくれる?」

ムウマージ「それは勿論。姫のためリーフィアのため、だもんね」

リーフィア「ぼ、僕は別に……」

頬を赤らめそっぽ向くリーフィア。ムウマージは悪戯な笑みを浮かべて満足そうに彼を見ていたが、やがてふぅとため息を吐いて表情を一転させる。

ムウマージ「行きたいのは山々なんだけど、今私ここを離れられないのよねぇ」

ミミロップ「何か事情があるの?」

ムウマージ「うんにゃ。ヨノワールがいるんだけどさ、あいつが私の事縛ってんのね。あ、縛ってるってエロい意味じゃないよ?」

ミミロップ「わかってるわよ」

ルカリオ「(そういう意味の事を少し考えたけど、いつも俺が縛られる側だ……)」

リーフィア「(縛るのとえっちなのって、どう関係があるんだろう?)」

それぞれが思い思いの想像をしているようだ。一匹ほど、そういう単語に慣れすぎているせいで普通に流せている者もいるが。

ムウマージ「それから開放してもらえたら、自由に動き回れるようになるわ」

ミミロップ「どうすればいいの?」

ムウマージ「枯れ木の森のどこかで、ヨノワールがくろいまなざしを使ってる。それを妨害してくれたらなんとかなるわ」

ルカリオ「黒い眼差しか。だが、邪魔した所で再びかけられたら……」

ムウマージ「いちど解けたらもう大丈夫。眼差し返しするわ」

ミミロップ「なにその技……」
 ▼ 483 リンリキ@まひなおしのみ 18/08/09 01:54:17 ID:mrj6omGI [3/52] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告




大岩を離れ、ヨノワールを探しに歩く三匹。

枯れ木の森はそれなりに面積はあるのだがハクタイの森全体から見ればほんの一部に過ぎず、森を歩き慣れている彼らにしてみればそう広く感じる所ではない。

故に辺りを一周もすればすぐに見つかる、そう思っていたのだが、事態はそこまで優しいものではなかった。

リーフィア「ここは無理そう……そっちはどう?」

ルカリオ「俺の方も難しそうだな……上手く物陰を移動しないと厳しい」

ミミロップ「こっちはそもそもその物陰がなかったわ」

大岩から離れた三匹は、効率を考え手分けしてヨノワールを探す事にした。

が、数分もしないうちに、三匹とも大岩の所まで走って戻ってくる事になる。一体どうしたのかと話し合うと、みな理由は同じだった。

ルカリオ「岩の裏手に、こんなにゴルーグがいるとは思わなかった」

ミミロップ「ほんと。表側には全くいないだけに、思わずここまで引き返しちゃったわ」

枯れ木の森は、大岩を挟んで反対側はまるで別世界。枯れ木が並んでいる様子に違いはないが、見張りのためかゴルーグがあちらこちらを歩き回っていた。それも、一匹や二匹どころの数ではない。おそらく見つかれば、たちどころに他のゴルーグ達が集まってきて侵入者を排除しにかかるのだろう。

タイプ相性で言えば、リーフィアは有利に戦える。だが、それはあくまでも一対一を想定しての戦闘であり、多数を相手にした場合話は変わってくる。

となると、できるだけ戦闘を避けるため見つからないよう隠密行動を取りつつヨノワールの居所を探るしかない。

ミミロップ「せめてヨノワールの位置がわかればいいんだけどね」

リーフィア「思い当たる節ないなぁ……」

普通の森であれば、特徴的な何かを見つける事はできたかもしれない。しかしここは枯れ木の森、何から何までほとんど同じような光景にしか見えない。その分比較的見通しは良好なのだが、広く見えるその範囲にヨノワールがいそうな場所が全く見当たらないのだ。
 ▼ 484 ロアーク@くろいビードロ 18/08/09 01:54:48 ID:mrj6omGI [4/52] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ルカリオ「とりあえず、あの一番大きな石像の所へ行ってみよう」

ミミロップ「そうね。瓦礫や枯れ木の陰をうまく進めばバレないように辿り着けそう」

リーフィア「自信ないなぁ……」

眺めていてわかったのだが、ゴルーグ達はまるで機械のように同じルートを歩き、同じ方向へ目を向けている。つまり、相手の動きを覚えてしまえばその合間を縫って移動する事ができそうだ。

その大きな石像までは、ゴルーグ達が作ったのか枯れ木の生えていない道が大岩付近から三本伸びていて、その道の合間を枯れ木林が埋めている。基本的にゴルーグ達はその道をぐるぐる歩き回って見張りを行っているようだが、中には枯れ木林の中をうろついている個体もいる。

彼らの動きは見る限り緩慢で追いかけられても走れば逃げられそうに思えるが、どこにどんなパワーを隠し持っているかわからないので用心するに越した事はない。ひとたび侵入者を見つけたなら、急変して猛スピードで迫ってくるかもしれないのだ。

ルカリオ「一番見張りが少ないのは右側の道だな……枯れ木林を歩いてるやつも、見た感じいない」

リーフィア「じゃあ、そこを歩くんだね」

ルカリオ「ああ。ただ、歩いてくるゴルーグをやり過ごすために途中で木の陰へ避難しなきゃいけない。その時にうまく動けるかはちょっと心配だ」

例えば誰かと隠れる木がかぶってしまったら、例えば丁度良さそうな木が目に留まらなかったら、考えられる可能性は幾つもある。しかし更に、それら全てを想定しながら動いていれば反対に行動が遅れてしまうかもしれない。

ルカリオ「まぁ話してても仕方ない。見つかったら、全力でここまで逃げてこよう」

ミミロップ「どこかで諦めてくれればいいんだけどね、追いかけるの」

リーフィア「どうだろうね……こっち側は見張りに来ないし、ここを境にしてそうではあるけど」

ルカリオ「よし、じゃあ次の見張りが通り過ぎたら行くぞ」

大岩の陰から反対側の様子を窺う。ちょうど、一体のゴルーグが巨体を揺らし彼らが隠れている岩の裏を通り過ぎたところだった。
 ▼ 485 カグース@ラッカのみ 18/08/09 01:55:24 ID:mrj6omGI [5/52] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告



枯れ木林の獣道を、音を立てない程度にできるだけ足早に歩く。

ゴルーグ達の可視範囲はそこまで広くはないようで、十メートル以上も離れていればこちら側を向いていても気づかれないようだった。

ただ、遠目にとはいえ動き回る物体があれば気になって近づいて来るだろう。遠くにいるゴルーグがこちらを向いている時は、あまり動かない方が賢明かもしれない。

ルカリオ「しかし、いい感じに石像が転がってて助かるな」

ミミロップ「ほんと。何があったかわからないけど、これがこんな風に役立つとは思わなかったわ」

枯れ木の森にも、丘で見たような謎の石像が幾つも転がっている。きちんと立っているものもあれば倒れていたり崩れてしまっていたりするものもあるが、どれもゴルーグの目から隠れるために非常に役立っている。

しかし、とルカリオは思う。この石像は、一体何のために作られたのだろう。何のためにハクタイの森の各地に設置されたのだろう。そして、誰がこれらを作ったのだろう。どこか別な場所で見た事があるような気もするが……

考えたところで答えなど出るはずもないが、ルカリオはずっとこのことを疑問に思っていた。

リーフィア「案外すんなり行けそうだね」

ルカリオ「隠れられる場所が多くて助かるな。ただ、向かう先にヨノワールがいるとは限らない」

ミミロップ「移動を繰り返す事になるかもしれないわね……暫く気が抜けないわ」

とはいえ、想像していたよりもうまく移動ができている事で、多少なり余裕が出てくる。最初は自分達がゴルーグに見つかるであろう範囲程度にしか気を配れなかったが、徐々に目を向ける範囲は広がり、遠くのゴルーグの動きまで考慮できるようになってきた。

ミミロップ「……ねえ、見張りの薄い所と厚いところがない?」

ルカリオ「見張りが多いところは俺も思ってたけど、手薄な所もあるのか」

リーフィア「普通に考えれば手厚い所に何かありそうだよね」

まだ最初の目的地に到着していない状態ではあるが、歩いているうちに別な場所が気になった。その場所は道なりに進めばいずれ辿り着く事はできるが、ちょうど現在地から考えると枯れ木林を突っ切れば真っ直ぐ最短でいけそうだ。

ミミロップ「あ、真ん中になんかそれっぽいのいる」

ルカリオ「ん……やったねミミロップちゃん、あれヨノワールだ」
 ▼ 486 エトル@ひみつのコハク 18/08/09 01:56:04 ID:mrj6omGI [6/52] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
そう時間がかからないうちに目的のポケモンを発見する事ができた。

しかし、そこはゴルーグ達の見張りが手厚い場所。しかもよく見れば、ヨノワールの周囲には移動しないタイプ、彼を護衛するようにヨノワールのすぐ近くに立つゴルーグもいる。

この状態でヨノワールに黒い眼差しを中断させるとなると、彼の気を引くと同時に周囲のゴルーグ達の注意も引きつける事になってしまう。

ルカリオ「どうするか……開放だけを考えてひと暴れするか、どこか別な場所で騒ぎを起こして気を引くか……」

ミミロップ「他で騒いだ方がいいだろうけど、反応するのはゴルーグだけとかありそうね」

ルカリオ「だよねぇ。でも直接邪魔をするとなると、その後逃げ切れるかが問題だ。そもそも、大岩の向こうまで追ってこないっていうのは、確定した話じゃないんだろ?」

リーフィア「うん。あっち側に見張りがいないってだけで、普通に考えればどこまでも追いかけてきそうだよね」

ゴルーグはそう素早さの速いポケモンではない。しかし、マッハの速度で空を飛ぶ事ができるとも言われている。彼らの原動力となっている謎のエネルギーが関係しているようだが、その実態はまだ誰にも知られていないのだ。

頭を悩ませるルカリオ。対して、ミミロップはあっけらかんとした表情でルカリオの肩を叩く。

ミミロップ「別にやってみてから考えてもいいんじゃない?」

ルカリオ「マジか。えらく挑戦的だね」

ミミロップ「だってここで時間ばっかりとっても仕方ないし」

リーフィア「頼もしいなぁ」

ルカリオ「まぁ、ミミロップちゃんはグイグイいくタイプだからね」

それにしてもとルカリオは感心する。捕まればどんな目に遭うかもわからないのに、敵地の真ん中でとにかく突っ込もうなんて提案普通できない。

しかし、それも当然である。ミミロップにとってこれは、この世界は夢なのだから。少なくとも彼女は、そう思っているのだから。

ルカリオ「よし。じゃあこっそり近くまで行って、急襲しよう。石像が周りにあるから、裏側から回り込むよ」

ミミロップ「それでいきましょ」

リーフィア「どきどきしてきた……うまくいくかな」
 ▼ 487 チミル@タイマーボール 18/08/09 01:56:50 ID:mrj6omGI [7/52] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告



ゴルーグ達の目を盗み、ヨノワールが鎮座するすぐ後方までやってきた三匹。いま、横たわる大きな石像を挟んだ向こう側で、ヨノワールが黒い眼差しをムウマージに浴びせ続けている。

ヨノワールの周囲には、この石像の裏側含め多くのゴルーグが固定で配置されていると思ったが、意外にも彼の近辺を警護するゴルーグは彼の両サイドに立つ二匹だけ。他の固体は見回りに当てられているようで、こんなにも近くまで寄っているというのに見つかる気配はない。

あまりにするりと辿り着けたものだから罠とも考えたが、タイミングを見計らうために数分程度石像の裏に潜んでいても何かが起こる気配はない。

ルカリオ「俺じゃヨノワールに有効打を与える事はできない。ミミロップちゃんも、こんな状況でメガシンカは無理でしょ」

ミミロップ「できないと思うわ。まぁそもそも人間いないと本来出来ない事だし」

と言いつつも、ミミロップは内心、夢だから念じればできるのではと考えていた。しかし、こうして話している間にメガシンカの事を考えても自分の身に変化が起きる様子は一切無い。

考え行動できても、思った通りに事が運ぶわけではない。今回の事で、ミミロップはそう確信した。

リーフィア「リーフブレードとかでも大丈夫かな……」

ルカリオ「要は一時的にでも黒い眼差しを中断させる事ができればいいんだろ? ヨノワールを動じさせればこっちのもんだし」

ミミロップ「一度解ければ大丈夫って言ってたしね。奇襲でも動じなかったら、できる攻撃全部当てていきましょ」

ルカリオ達とて、ダメージを与える事ができる技が無いわけではない。中でも冷凍パンチ辺りであれば、拳はすかされてしまうものの、冷気のダメージはきちんと入る。増してや普段から集中して鍛えている技でもあるため、強力とは言わずともある程度の威力は期待できる。

ルカリオ「じゃあ、せーので跳び出すぞ」

ミミロップ「せーの、で一呼吸置くの?」

ルカリオ「それは割とどっちでもいいよ……」

どうしてそんなに余裕なのかと、ルカリオは首をかしげた。
 ▼ 488 イリーフ@おいしいシッポ 18/08/09 01:57:23 ID:mrj6omGI [8/52] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ルカリオ「いくぞ……せーの」

石像の上まで一気に跳び上がり、そこからヨノワール目掛けて攻撃を仕掛ける。

まず、リーフィアのリーフブレード。例の草の剣が形を成し、リーフィアの蔓によってヨノワールを斬り付けにかかる。

突如現れた敵に、ヨノワールのすぐ横にいたゴルーグ二匹が即座に反応。リーフィアのリーフブレードが炸裂するより先に動きを見せたが、その直後にはルカリオのけん制により彼らは迎撃を行動に起こす事ができなかった。

ヨノワール「…………」

リーフィア「っ!!」

リーフブレードがヨノワールに直撃する。

しかしヨノワールはその場から全く動かず、集中を途切れさせる様子は無い。ダメージもほとんど入っていないようだ。

ルカリオ「だめか?」

ミミロップ「ならとことん打ち込んでやりましょ」

ルカリオとミミロップは横に並び、拳をそろえて冷凍パンチを繰り出す。

ヨノワール「…………」

ルカリオ「これもダメか!」

やはりヨノワールは動じない。まるで頑丈に出来た置物のように、ただ彼らの攻撃を受けるのみである。

ルカリオ「あんまりやった事ないけど……これならどうだ!」

ヨノワール「!」

シャドークロー。

ゴーストタイプの攻撃は、同類のゴーストタイプに対して効果が期待できる。だがゴーストタイプというかなり特殊な技となるため、その扱いは群を抜いて難しい。

しかし、ルカリオ程度のそれでも充分だったのだろうか、ヨノワールは一瞬だけ身体を震わせた。

ルカリオ「やったか?」

しかし、ヨノワールはそれ以上反応を見せない。体勢もそのままに、攻撃を仕掛けたルカリオの方を見ることさえない。

ミミロップ「やっぱりダメか」

声「そうでもないわよ?」
 ▼ 489 ガラティオス@ナゾのみ 18/08/09 01:57:54 ID:mrj6omGI [9/52] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
次の瞬間、その場にいたヨノワールが石像の方へ大きく吹っ飛ぶ。実態をあらわにしていたのだろう、ヨノワールは石像を砕きながら枯れ木の森を転がった。

何事かと顔を上げると、いつの間に来ていたのか、ムウマージが嬉しそうにからからと笑っている。

ムウマージ「超絶美少女、参上☆」

リーフィア「何とかなったんだ!」

ルカリオ「みたいだな。しかし、何だ今の、シャドーボールか?」

ムウマージ「いや、ゴーストダイブ。諸々の恨み込めておもいっきしぶつかってやった」

リーフィア「それは痛そう……」

しかし、よほど恨みが強かったのだろうか、ヨノワールは吹っ飛んだっきり復帰してくる様子がない。

ミミロップ「話し込んでる場合じゃないんじゃない? ゴルーグ、沢山来るわよ」

ムウマージ「ちょ、どこにこんな潜んでたのよ馬鹿じゃないの」

騒動に気づいたのか、周囲を見れば枯れ木の森を巡回していたおそらく全てのゴルーグが集まってきていた。その数、ゆうに二十匹はいる。

ムウマージ「これは相手したくないわ……逃げる!」

ルカリオ「え、マジかよ!」

ぴゅーっと音がしそうなくらい素早い動きで、ムウマージは飛び去ってしまう。

リーフィア「ま、待ってよ!」

ミミロップ「まぁこの数相手にするのは骨が折れるわよね」

まさか早速逃げるとは思わなかったが、すぐ彼女の後を追いかける形でルカリオ達もその場から走り去る。

ミミロップ「当たり前だけど、追ってくるわ」

ルカリオ「追いつかれないように逃げるしかない!」

逃げる事だけを考え、とにかく全力で枯れ木の森を走り抜ける。

枯れ木の獣道、ムウマージが眠っていた大岩、更にはその先も越え、ハクタイの森の丘辺りまで後ろも振り返らず一目散に戻ってきた。
 ▼ 490 ゲデマル@アブソルナイト 18/08/09 01:58:23 ID:mrj6omGI [10/52] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ムウマージ「いやぁ、スリリングだったねぇ」

リーフィア「スリリング、だったねじゃ、ないよ……急に逃げるなんて、びっくりするじゃんか」

ムウマージ「あの数は相手にするの面倒でしょ。不意をつかれたら負けるかもしれないし」

リーフィア「そうだけど……」

息を切らせながら非難の視線を向けるリーフィア。しかしムウマージはあっけらかんとしていて、悪びれる様子も無い。

きっと普段からこんな感じなのだろう、「まったくもう」と息を吐いたリーフィアは、それ以上何も言わなかった。

ミミロップ「何にしても、これで一匹目ね」

リーフィア「うん。それに、ムウマージがいれば内緒話も聞けるしね」

ムウマージ「え、何の話? おねーさんに教えて」

ルカリオ「実はだな…………」

ふと、ルカリオは急に眩暈を覚えた。

頭がぼんやりとして目の前の世界が揺らぎ、目を開いていられなくなってくる。

ルカリオ「なん、だ……これ……」

ルカリオは立っていられなくなり、目を閉じその場に崩れ落ちる。

ミミロップ「えっ、ちょ!」

彼が地に倒れるよりはやく、ミミロップが彼の身体を支えた。ルカリオはぐったりとミミロップに身体を預け、少しも動く気配がない。

ミミロップ「あれ……なんで、ルカリオも……?」

直感する。これは、体調を悪くして倒れたわけではないと。

きっとルカリオは、ミミロップ自身がそうであったのと同じく、夢から目が覚め現実世界へ戻っていったのだと、彼女は疑いも無くそう思った。

しかし、ここはミミロップの夢の中のはず。ならばどうして、ルカリオにも同じ事が起きるのだろうか。自分の体験がはやくも夢の中に設定として反映されたという事なのだろうか。

緩やかに胸を上下させるルカリオを見て、ミミロップは心配そうに頭をなでた。
 ▼ 491 ャロップ@オレンジメール 18/08/09 01:58:58 ID:mrj6omGI [11/52] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告




ルカリオ「うおっ!?」

エルレイド「うわぁ! な、なんだよ、起きたのか……」

ルカリオ「…………は?」

飛び起きる。

ぼんやりしていた頭が次第に覚醒していき、ゆっくりと周囲の状況を認識していく。

柔らかな葉のベッド、少々息苦しい洞窟、何故かそこにいる親友……ルカリオは暫く状況が呑み込めず、怪訝な顔をエルレイドに向けた。

エルレイド「起き抜けにあれだけど、もしかしてリオも状況わかってない?」

ルカリオ「…………」

エルレイドの言っている事が全くわからない。

自分は先ほどまで、ゴルーグたちから逃げて丘まで走ったはず。なのに、気づけば全く違う場所に移動している。

ルカリオ「あ、ミミロップちゃん」

そして、すぐ隣には愛する妻、ミミロップが自分と同じように葉の上のベッドで横になっているのを確認できた。

ルカリオ「……どうなってんだ?」

エルレイド「やっぱりリオもか……あのな、実を言うと」

エルレイドは二度目の説明を開始する。

自分達がここへ来た経緯、丘の木の下で仲良く眠る二匹を見つけたこと、二匹をここへ運んで姉と共に暫く様子を見ていること。

全て話し終えてもルカリオはピンと来ていない様子だったが、少し考えてある程度整理はできたのだろう、首をかしげながらエルレイドに言った。

ルカリオ「いい感じに俺達やばくない?」

エルレイド「夫婦で同じ事言うのな」

辿り着く結論は同じ。修行をしようとハクタイの森の大地を踏みしめ、その場所の象徴でもある大きな木の下でおそらく疲れて眠ってしまった。そして彼は、今の今まで長い夢を見ていたと。

ルカリオ「マジかよ……」

これまでの出来事が夢であった事も驚きだが、彼にとっては、無防備に眠ってしまった事がとてもショックのようだ。

ミミロップを守るため、そして修行の一環として、彼はこの旅の間は半睡を貫こうとしていただけに自己嫌悪感が強い。自身に立てた誓いを、こうも早い段階で破る事になってしまったのだ。
 ▼ 492 オップ@きょかしょう 18/08/09 01:59:30 ID:mrj6omGI [12/52] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
エルレイド「まぁ、疲れてたらそういう事もあるさ。気負いすぎてるのもあるだろ」

ルカリオ「……そうだな」

はっきり言葉にはしなかったが、エルレイドはホウエン大会での敗北について話しているのだとすぐにわかった。

ルカリオの性格上、自分を負かした相手と次に拳を交える際に絶対負けないよう自身を鍛え追い込む事は目に見えている。ミミロップが一緒にいるとはいえ、多少無茶な修行内容でも意地でやってしまいそうだと、エルレイドは見抜いているのだ。

エルレイド「ミミロップも起きてたけど、さっきまた眠っちゃった」

ルカリオ「そうなのか……俺もだけど、そんなに眠かったのかな……」

エルレイド「まぁ自分でもわからないうちに凄く疲れるっていうのはあるしな。いま、姉さんが食事の用意してくれてるから」

ルカリオ「サーナイトさんもいるのか。なんか申し訳ないな……」

エルレイド「困ったときはお互い様。ま、とにかく今は身体を休めるこった」

ルカリオ「ああ、ありがとうエル」

エルレイドはルカリオのお礼に片手を挙げて応えた。

ルカリオ「(しかし……まさか夢とは)」

不思議な事は沢山あった。自分の知らない遺跡がある事や、崖から落ちたはずなのに何ともなかった事、泉の傍に大規模な集落ができていた事など、ハクタイの森がハクタイの森で無くなってしまったような違和感を沢山感じていた。

夢ならば、すべてに納得がいく。不可解な出来事も不思議な出来事も当たり前のように発生する、それが夢というもの。

ルカリオ「なぁ……丘の上に遺跡なんてないよな?」

エルレイド「……お前らマジ仲良いっつーか、そういうの通り越して前世でも来世でも一緒になるんじゃねぇの?」

ルカリオ「どういう意味だよ。で、遺跡とかないよな?」

エルレイド「俺は見た事ないし、リオ達を探してるときにも見てない。つか、お前ら同じ夢でも見てるの? 全く同じ事ミミロップにも訊かれたぞ?」

ルカリオ「え?」

状況を納得しかけていたルカリオは、エルレイドの言葉に再び怪訝な表情を浮かべる事となった。
 ▼ 493 ースト@じゃくてんほけん 18/08/09 01:59:57 ID:mrj6omGI [13/52] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
エルレイド「そこまで仲良いともう尊敬までするわ」

ルカリオ「そ、そうか……」

他の誰かと同じ夢を見る事があると耳にした事はある。しかし、この状況、このタイミング、これは全くの偶然なのだろうか。

ルカリオ「ミミロップちゃん起こすか? いやでもなぁ……」

ミミロップを見る。すやすやと可愛らしい寝息を立てて眠る彼女を起こすのはなんだか気が引けた。

ルカリオ「う……」

穏やかに眠る彼女を見ているからだろうか、ルカリオは急に強烈な睡魔に襲われた。

エルレイド「そうだ、なんか食べたい木の実とかあれば……って、また寝たのかよ」

少し目を離した間に、ルカリオはまた葉のベッドに横たわり眠ってしまっていた。

やれやれと息を吐くエルレイド。こうも眠ってばかりでは心配も募るというものだが、穏やかに寝息を立てている様子を見ていると危機感も薄れていくというもの。

サーナイト「エル、ちょっと大変な事になってるかもしれない」

しかし、それは木の実を持って戻ってきた姉によって覆される。

エルレイド「あ、姉さんお帰り。大変な事って?」

サーナイト「微量だけど、催眠術の反応を感じたの。結論から言って、二匹とも疲れて寝たんじゃなくて、誰かに眠らされた可能性があるわ」

エルレイド「え、まじ? それでこんなに寝るのか。リオも今起きてたけど、また眠っちゃったんだよ」

サーナイト「ルカリオ君も? それはちょっと危ないかもしれないわね……」

エルレイド「まだ催眠術が続いてるって事?」

サーナイト「わからないけど、その可能性があるわ。それに、この感じ……催眠術程度じゃない、もっと強力な何かが絡んでるかも。このままだと危険かもしれないわ」

エルレイド「そんなまさか……」

ルカリオとミミロップを見る。どちらの表情も落ち着いた寝顔をしていて、とても危険が及んでいるようには見えない。

ルカリオ達は日々身体や精神を鍛えている。そう簡単に誰かの術に陥るなんて事はないはずだが、そんな彼らの行動を制限したとなると、余程の脅威が周辺に潜んでいることになる。
 ▼ 494 マナッツ@メダルボックス 18/08/09 02:00:25 ID:mrj6omGI [14/52] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
サーナイト「もうちょっと調べた方がよさそうね……エル、ここをお願いできる?」

エルレイド「わかったけど、どうするの?」

サーナイト「丘の辺りをもう少し調べてみるわ。何か手がかりがあるかもしれない」

エルレイド「気をつけてね。襲われたりとかしたら、俺嫌だからな」

サーナイト「ふふ、ありがと。大丈夫、少しでも危険を感じたら引くから」

サーナイトはエルレイドの額に軽くキスをし、柔らかな笑顔を残して洞窟を出て行った。

エルレイド「いったい何が起きてるんだ……」

そういえば、二匹は同じ夢を見ているようだった。もしかしたら、眠らされている事に関係しているのかもしれない。

しかし、ただ眠らせてそれ以降特に何かが起きる様子も無い。眠らせたすぐ後にエルレイド達が彼らを移動させた事で、予定していた何かを起こせなかったのだろうか。

エルレイド「俺も調べたいけど、無防備なこいつらを残しては行けないしな……」

それに、もしも眠らされているのだとしたら、無理に起こすと危険が及ぶかもしれない。単純な催眠であれば問題はなさそうだが、何かの術や技と併合してかけられているとしたら、最悪彼らの体調を著しく悪くしてしまうかもしれない。

エルレイド「次に起きてきた時はもうちょっと詳しい話訊いてみるか……」

ミミロップもルカリオも、エルレイドが彼らをここへ運んでからそう時間が経たないうちに一旦目を覚ました。だからといって次もすぐ目を覚ますとは限らないが、彼らをここで見守る事しかできそうにないエルレイドはそれに期待することにした。
 ▼ 495 ククラゲ@くっつきバリ 18/08/09 02:00:55 ID:mrj6omGI [15/52] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告





ルカリオ「ん……」

目を覚ます。眠ったはずなのに、すぐに瞼が開く。

ルカリオ「ここは……」

リーフィア「それじゃあ、手はずどおりに」

ムウマージ「おねーさんに任せなさい。でもそのためには、ルカリオ君、頑張ってくれたまえ」

ルカリオ「……は?」

ムウマージ「ずるーっ。いや、は? じゃなくてさ……流石のムウマージさんもその返事にはびっくりよ」

気がつけば、急に話しかけられていた。

当然何の事だかわからず、首を傾げる。それ以前に、状況が全くわからない。

自分は睡魔に勝てず眠ったはず。しかし気がつけば、いつの間にか泉の集落にいて、リーフィアたちと話をしている。

ルカリオ「(あれ……これって夢なんじゃなかったっけ?)」

もしかして夢の続きではないか、そう思うルカリオはとても難しい顔をしている。

ミミロップ「…………」

それを見て、何かを感じ取るミミロップ。彼女はもしやと思い、ルカリオにそっと耳打ちした。

ミミロップ「これから酒場の地下で行われる夜祭に行くのよ。ムウマージがこっそり内情を探ってきてくれるから、その間私達はできるだけ見張りの注意を引くの」

ルカリオ「なるほど」

ミミロップが助け舟を出してくれた事で、状況を理解する。流石は我が妻と、ルカリオは感心した。

リーフィア「本当は店員にでもなれたらよかったんだけどね、そこまで時間かけてられないから」

ムウマージ「まぁ私がいるんだからいいじゃん。じゃ、そろそろ突入するわよ」
 ▼ 496 ルー@トポのみ 18/08/09 02:01:30 ID:mrj6omGI [16/52] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告



酒場はその時間帯、店を閉めているようだった。

一見して、閉店後誰もいない建物に見える。しかしそれはフェイクであり、地下では何か怪しいイベントが執り行われているらしい。

店の裏口から明かりが漏れていて、そこには見張りのポケモンが一匹。おそらくそこから中へ入れば地下の会場に向かえるのだろう。

ルカリオ「じゃあちょっとやってくるわ」

ルカリオが見張りのポケモンに近づき、何やら話をし始める。見張りのポケモンは怪訝な顔をしてルカリオの話を聞いており、裏口の前から退く気配は無い。

しかし、彼の気さえ引く事ができれば問題ない。ムウマージは壁をすり抜けて、中へ入っていくのだから。

リーフィア「……うまくいったみたいだね」

ミミロップ「そうね。で、私達はこれからどうすれば?」

リーフィア「ムウマージの情報待ちだけど、他にも何か情報を探れるかもしれないから店内に入ってみるつもり」

ミミロップ「じゃあ私は旦那を迎えに行ってくるわ」

ミミロップはルカリオの所へ行き、べたべたとバカップルのように甘え始める。見張りのポケモンはルカリオ達のやり取りにうんざりしたようで、二匹を追いやるように手を大きく振った。

ルカリオ「うまく入れたか?」

リーフィア「うん、ばっちり。ムウマージを待つ間に情報を探るよ」

ルカリオ「わかった、行こう」

店の表へ回る二匹。誰もいないと思われた店内に、一匹のポケモンの姿があった。

ミミロップ「あれ、ミロカロス?」

ミロカロス「あなたは、あの時の……」
 ▼ 497 ーベム@バンギラスナイト 18/08/09 02:02:03 ID:mrj6omGI [17/52] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ミロカロス「今日の裏祭、様子を見にきたの?」

ミミロップ「まぁ、そんな感じ」

ミロカロス「そう……今日は特別みたいだものね。エンペルトも高揚してるみたい」

ミミロップ「エンペルトも……」

地下の様子はまだわからないが、どうやらエンペルトがここへ来ているのは確かのようだった。

リーフィア「あの……もしかして、トゲキッスについて何か知ってたりしません?」

単刀直入に話を切り出すリーフィア。それに対しミロカロスはすぐに反応を見せる。

ミロカロス「トゲキッス? それってもしかして……」

ムウマージ「大変たいへーん! キッスだけど、裏祭のオークションに流されちゃうみたい! はやく助けに行かないと!」

リーフィア「うわああ!!」

ミロカロス「セリフを奪われたわ」

急に地面からぬっと顔を出したムウマージに驚きすっ転ぶリーフィア。狙ってやったわけではなさそうだが、リーフィアの反応にムウマージはどこか満足そうだ。

ルカリオ「それで、トゲキッスは地下にいるのか?」

ムウマージ「いや、まだ滝の所みたい。これから運び出されるんだと思う」

ミロカロス「彼女を連れ出したいのね……なら、良い事を教えてあげる」

ミミロップ「なに?」

ミロカロス「エンペルトの棲家は、一部が水浸しになってるの。そこに侵入者が入ると、見張りのポッタイシ達にバレてしまうわ」

ルカリオ「罠って事か」

ミロカロス「罠というより、自分達以外の何者かが水に入れば否応にもわかるって仕組ね。縄張りの水場ってそんな感じなの」

ミミロップ「ルカリオに他の♀のにおいがついてたらすぐにわかるのと同じね」

ルカリオ「待って、俺なんもしてない」

慌てて両手と首を振るルカリオ。そんな事はわかっているとばかりに、ミミロップは悪戯な笑みを浮かべてみせた。

リーフィア「訊いておいてなんだけど、ミロカロスはどうして色々教えてくれるの?」

ミロカロス「……私にとっても、エンペルトは敵だから」
 ▼ 498 ヒダルマ@ドラゴンジュエル 18/08/09 02:02:30 ID:mrj6omGI [18/52] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告




エンペルト邸の周辺には見張りのポッタイシは一匹もいなかった。もしや棲家の中にいるのかと思い警戒しながら敷地内に足を踏み入れたが、どこにも敵の姿は無い。どうやら、裏祭のために出払っているようだ。

ミミロップ「でもここ、水だらけね」

リーフィア「足の踏み場あんまりないね」

ムウマージ「まぁ私には全く関係ない話だけどね」

軽やかに宙を舞うムウマージ。こういう時、ゴーストタイプや飛行タイプが羨ましくなる。

ルカリオ「しかし、これミロカロスに情報もらってなければ普通に水溜り踏んでるな」

まさか水が罠になっているなどとは誰も思わない。おそらく踏んだ所で罠が何か反応を見せるわけではないだろう。知らず知らずのうちに罠を踏み続け、気がつけば集まった敵に囲まれてしまう、なんてことになるのだと思われる。

ミミロップ「滝の音が聞こえるわ。たぶん、この向こうね」

滝全体を覆うようにして棲家が作られているため、外部からは音は聞こえど滝そのものを見る事はできない。

その滝がある場所はエンペルトの部屋になっているらしいが、思っていたよりも簡単にそこまで辿り着く事ができた。

リーフィア「あ、トゲキッス!」

トゲキッス「え? その声、リーフィアさんですか?」

エンペルトの部屋へ侵入し、滝つぼの方まで行かないうちに一行は声をかけられた。

ムウマージ「おーキッス久しぶり。起きてたんだねぇ」

トゲキッス「小うるさい幽霊も一緒なのですね。えっと」

ムウマージ「マニューラならごめんけどまだいない。これから行くところ。だよね?」

リーフィア「もちろん!」

トゲキッス「そうでしたか」
 ▼ 499 ラージェス@きょかしょう 18/08/09 02:02:57 ID:mrj6omGI [19/52] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
トゲキッス「こちらの方達は?」

リーフィア「あ、えっとね」

リーフィアが事情を説明する。トゲキッスもムウマージと同じように彼の説明を頷きながら黙って最後まで聞き、快諾の返事をくれた。

トゲキッス「そうと決まれば早速行動です。こんなしょうもない場所、早く出て行きましょう」

ルカリオ「しょ、しょうもない……」

見かけや喋り方によらず辛辣なトゲキッスにたじろぐルカリオ。ミミロップといいトゲキッスといい、自分の周りには気の強い♀ばかりだと苦笑いを浮かべた。

リーフィア「でも、すぐに出られるの? 何かされたりしてない?」

トゲキッス「特に何も。強いて言うなら、エンペルトに今日はここから出るなと言われていますが」

ムウマージ「あのペンギン、やってる事は屑だけど扱いは紳士みたいね。普通これから売りさばこうってポケモンを野放しにはしないわ」

トゲキッス「あの方は縛られたり巻きつかれたりするのが好きなようですから、束縛はされてもするのは得意じゃないのでは?」

ミミロップ「へぇ」

それを聞いてミミロップは得意げに笑ってルカリオを見る。それに対しルカリオは思わず視線をよそへ逸らした。

ムウマージ「ま、それならさっさと逃げましょ。見つかったら面倒よ」

そさくさとエンペルトの棲家を後にする一行。枯れ木の森の時の様に他のポケモンに追い回される事もなければ、何か罠にかかった様子も無くすんなりと泉の集落を離れる事ができた。
 ▼ 500 フキムシ@バグメモリ 18/08/09 02:03:48 ID:mrj6omGI [20/52] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告





雪がちらつくハクタイの森の北側を歩くルカリオたち。

森の北東部は奥まで行けば年中積雪が見られるほどの寒冷地で、常に肌を刺すような寒さに見舞われている。場所によっては道を歩く事さえ困難となっており、人間は愚か、野生のポケモン達ですらこのあたりに足を踏み入れる者は少ない。

だが彼らの仲間であるマニューラは、好んでこの辺りの雪原にやってきては己の身体を鍛えていたという。そのストイックな性格を買われ、彼はグレイシアの護衛に抜擢される。以後はリーフィア達と共にグレイシアを守り続けていたという話だ。

トゲキッス「ここも懐かしいですね。以前は、この辺りにも小さな町があったのですよ」

トゲキッスが誰に話すでもなくそう呟く。

彼女の視線の先には雪原が寂しく広がるだけで、彼女の言葉を裏付けるような何かが見えるわけではない。

見れば、彼女はとても寂しそうな目をしていた。きっと、ここでの思い出が彼女の中によみがえっているのだろう、宙を浮遊する彼女の移動速度が僅かに遅くなった気がした。

ムウマージ「マニューラはどの辺りにいるのかな」

リーフィア「どこだろう、それっぽい場所があると思うんだけど……」

トゲキッス「おそらく、大きな岩場の下です。彼は以前、あの場所を気に入ってましたから」

リーフィアやムウマージはまるで初耳だとばかりにトゲキッスを見た。

そういえばとルカリオは思い出す。ユキメノコに木の実を採って来いと言われた際に見た時間の花の記憶に、トゲキッスはマニューラを好きだという話があった。

ミミロップ「……ねえ、ルカリオ」

ルカリオ「うん?」

前を行くリーフィア達に少しだけ遅れて歩くルカリオとミミロップ。

ミミロップはリーフィア達に聞こえない程度の声で、前を向いて歩きながらルカリオに話しかける。

気になっていたこと。ここは夢の中の世界で、だけど自分と同じ現象が相方にも起きているのではないかと感じていること。

もしミミロップの想像が的中しているのだとしたら、これはただの夢ではなく、何か意味がある事なのかもしれない。それを確かめるためにも、ルカリオにお互いの状況を確認し合う必要がある。

ミミロップ「もしかしてと思うんだけど……」

リーフィア「わ、わ!!」

しかし彼女がルカリオに話しかけた途端、リーフィアが突然大きな声をあげた。
 ▼ 501 ーディン@おいしいみず 18/08/09 02:04:15 ID:mrj6omGI [21/52] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
リーフィアの見ているほうに目をやる。

雪原に立つ大きな石像が倒れ、大量の雪がリーフィアたち目掛けて雪崩れて来る所だった。

ルカリオ「ちょ、やばくねこれ」

トゲキッス「乗れるだけ私に乗ってください!」

ムウマージ「え、私も誰か連れるの? しょうがないにゃあ」

ルカリオとリーフィアはトゲキッスに乗り、ミミロップはムウマージにつかまって空へ飛び上がる。その数十秒後、彼らが歩いていた地点を雪崩が通り過ぎ、足跡を白一色でかき消した。

ムウマージ「いやぁ、危ないところでしたなぁ」

トゲキッス「雪崩がくるなんて……奥で何かが起きているのかもしれません」

ミミロップ「ここには何がいるんだっけ?」

リーフィア「マニューラの所にはツンベアーがいると思うけど……」

飛びながら雪崩が発生したであろう地点を眺める。目を凝らしてよく見てみれば、そこではポケモンが二匹、爪を交えて戦っていた。

トゲキッス「いましたね、どちらも」

リーフィア「戦ってるのか……加勢しにいかなきゃ!」

トゲキッス「いえ、あの様子……勝利をおさめたようです」

白く大きなポケモンが雪原に大きな跡を残す。それを見届けたマニューラは両手をぽんぽんとはたき、やれやれとばかりに片手を額にあてた。

ムウマージ「相変わらずねぇあの子も。ま、さっさと行ってあげましょ」

トゲキッス「ですね。事情を説明しなければなりません」
 ▼ 502 ベルタル@ねらいのまと 18/08/09 02:04:35 ID:mrj6omGI [22/52] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ツンベアーを倒し終えたマニューラに接触し、状況を説明するリーフィアたち。

マニューラは彼らの登場にとても驚いていたが、リーフィアから話を聞くなりふんと鼻を鳴らし、当然だと頷いた。

リーフィア「でも……これで、護衛の皆が揃ったね!」

ムウマージ「あとは姫だけねぇ」

トゲキッス「まさか、またこうして集まる事になるとは思いませんでした」

マニューラ「そうだな……あ? でも以前にも似たような事があった気が……」

リーフィア「え?」

と、リーフィアの身体が光り始める。よく見れば光っているのは彼ではなく、彼の持つ草の剣だった。

リーフィア「わ、わ、なにこれ」

草の剣は彼の身体から離れ、光を放ちながら宙に浮かぶ。

やがてそれは更に強くまばゆい光を周囲に広げ、ついにはルカリオたち全員をその中に包み込んだ。
 ▼ 503 リーザー@ずがいのカセキ 18/08/09 02:04:57 ID:mrj6omGI [23/52] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告




―――――――

リーフィア『姫!』

グレイシア『……あら、リーフィア。どうしたの? 随分と息を切らしているみたいだけど』

リーフィア『どうしたのじゃないよ。今日はバトルの訓練をする予定でしょ? マニューラずっと待ってるよ』

グレイシア『そうだったかしら。すっかり忘れてたわ』

リーフィア『ひなたぼっこも大事だけど、自分の身は自分で守れるようにならなきゃ』

グレイシア『それはわかってるのだけれど、ほら見て? こんなにも霜柱が綺麗』

リーフィア『はぁ……僕が言えたことでもないけど、姫はもうちょっと姫としての自覚を持ってほしいなぁ』

ムウマージ『おーい姫、あそぼ!』

リーフィア『ああもう、ややこしいのが来ちゃった』

グレイシア『遊びたいのも山々だけれど、これからお稽古なの』

ムウマージ『稽古? そんなんリーフィアにやらせりゃいいじゃん』

リーフィア『ダメだよそんなの。僕も勿論やるけど、姫だって自分で戦ったりして……』

ムウマージ『姫の事はリーフィアが守るんでしょ? 姫を守る騎士として』

リーフィア『えっ!? そ、それはその、勿論そうだけど、えっと』

ムウマージ『よし今よ! 逃げろー!』

グレイシア『ふふっ』

リーフィア『あ、こら待て!!』

―――――――
 ▼ 504 ッピ@キズぐすり 18/08/09 02:05:20 ID:mrj6omGI [24/52] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告





―――――――

マニューラ『それが、例の秘宝か』

グレイシア『ええ。うちに代々伝わってる、クレセリアの力が込められたものよ』

トゲキッス『クレセリアといえば、ダークライの力を退くと言われてます。これを持てば、生涯悪夢に悩まされる心配はないとか』

マニューラ『お守りみたいなものか? まぁ、悪くないな』

トゲキッス『マニューラは意外とこの手の物に信心深いですね』

マニューラ『火の無いところに煙は立たないじゃないが、何か特筆すべき謂れがあってこその物だからな』

トゲキッス『そうですか』

グレイシア『トゲキッスは、そういうものはあまり信じない?』

トゲキッス『どちらでもない、という所です。気まぐれに信じる事もありますし、全く見向きもしない事もしばしば』

マニューラ『相変わらず乾いてんな』

トゲキッス『はっきりしないのは嫌いですから』

グレイシア『ふふ、相変わらずね』

マニューラ『俺は時々こいつが怖くなる……』

トゲキッス『褒め言葉として受け取っておきます』

グレイシア『でも、ピジョットが襲ってきた時はえらく取り乱してたわね?』

トゲキッス『そ、それは忘れてください!』

マニューラ『でもあれは危なかったろ。俺が何とかできたからよかったものの』

トゲキッス『そうですね……ふふ』

マニューラ『なんで笑うんだよ』

――――――
 ▼ 505 テッコツ@あついいわ 18/08/09 02:05:53 ID:mrj6omGI [25/52] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告





――――――

リーフィア『ハクタイの森を回る旅を始めてはや三日……意外と大変なんだね』

マニューラ『言ってもそれなりに広いからな。集落だって俺達が住んでいる所以外に幾つもある』

ムウマージ『全部見て回る必要ある〜? お姉さんもう疲れてきたんだけど』

トゲキッス『幽霊なのに疲れるのですね』

グレイシア『……できるだけ、色んな世界を見てみたいの。本当は森を出て、色んな地方を旅するのも良いと思うのだけれど』

リーフィア『楽しそうだけど、この地を離れるのは……ね』

グレイシア『わかってます。言ってみただけよ』

ムウマージ『で、ずっと気になってたんだけど、この石像は何なの? 丘に沢山置いてあるけど』

グレイシア『詳しい事は私にもわからないわ。ただ、ご先祖様の時代にこの辺りに広がっていたシンオウ神話に関係しているとか』

トゲキッス『それはもしかして、パルキアやディアルガの話ですか?』

グレイシア『どうかしら。石像が何を模しているかはわからないけれど、それぞれの神話をもとに広い建物や石像が作られたみたい』

マニューラ『こんな大層なもの作るなんてご苦労なこった。まるで人間の所業だぜ』

ムウマージ『あれあれ、信仰深いマニューラ君もこういうのはダメな感じ?』

マニューラ『歴史あるものは好きだが、これじゃ森が侵食されてるみたいで気に入らない』

リーフィア『確かにね。別の場所には遺跡もあるみたいだし、森が森でなくなっていってるのはなんだか寂しい』

グレイシア『もう廃れているのが幸いと言えるかもしれないわ。その当時は、この地を狙って様々なポケモンが襲来したとも言われているし』

トゲキッス『瓦礫となった遺産に要があるポケモンなんていないと思います』

リーフィア『だよね……時代はいつか風化する。物は勿論、ポケモン達の想いでさえも、いつかは忘れられてしまうのかな……』

――――――
 ▼ 506 ガラティアス@しろいビードロ 18/08/09 02:06:14 ID:mrj6omGI [26/52] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告





――――――

トゲキッス『この泉は綺麗ですね。私、とてもこの場所を気に入りました』

リーフィア『水が透き通ってる。こんなに綺麗なの見るの初めて』

グレイシア『あっちには滝もあるわ。ハクタイの森にも、こんなに綺麗な場所があるのね』

マニューラ『この辺りは人間も入ってこない奥地だからな。野生のポケモン達にとっても憩いの場なんだろう』

リーフィア『冷たくて美味しい! ほら、姫も飲んでみなよ』

ムウマージ『リーフィアは食べたり飲んだりがほんとに好きよね』

リーフィア『う、うるさいな! 健康的でいいでしょ!』

グレイシア『あらほんと、すごく美味しいわ』

トゲキッス『水の綺麗な所には文明が生まれます。でも、ここには何もありません……昔の方々は水に興味が無かったのでしょうか』

マニューラ『確かに、こういう場所にこそシンオウ神話なんてものが語り継がれていてもおかしくないのにな』

グレイシア『パルキアは確か、水の力も強く持っていたと聞いてるわ。もしかしたら、この場所には他の何者も寄せ付けなかったのかも』

ムウマージ『それ、もう本人降臨してるパターンじゃん』

マニューラ『しかし、パルキアといえば空間を支配すると言われているポケモン。宇宙創成に関わったと伝わっているが、そんなポケモンがただの森の泉に気をかけるか?』

トゲキッス『神の気まぐれという言葉もありますし、可能性が無いわけではないと思いますよ』

リーフィア『うーん、難しい話は僕にはわからないや。この場所が素敵って事がわかれば、それでいいよ』

トゲキッス『ですね。ふふ、時々ここへ来て行水でもしましょうか』

グレイシア『貴女がそこまで気に入るのも珍しいわね』

―――――――
 ▼ 507 チニン@ぎんのおうかん 18/08/09 02:06:45 ID:mrj6omGI [27/52] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告





―――――――

マニューラ『ここは……すごく異質だな。どうして木が枯れているんだ』

グレイシア『一説によると、この場所には遥か遠い地方のポケモンが襲来し、その影響と言われているわね』

トゲキッス『遠い地方……どこでしょう』

グレイシア『詳細は全くわからないけれど、生気を吸い取る事ができるポケモンがいるとか』

リーフィア『物凄く怖ろしいポケモンだね……そんなのいたら勝てっこないよ』

グレイシア『あくまで一説よ。異常気象のせいかもしれないし、自然災害かもしれない。確かな話ではない以上、そこに真実があるかはわからないわ』

マニューラ『だからこそ面白いってのもあるが……そういう話は、できれば良い話であってほしいもんだ』

トゲキッス『マニューラはその辺り乙女チックというか、悪い事は嫌いなのですね』

マニューラ『良い事だけを考えて生きていきたいからな』

グレイシア『言い切るわねぇ……』

リーフィア『でも、プラス思考の方がいいよね! 僕はいつも悪いほうに色々考えちゃうからなぁ』

マニューラ『別にそれが悪いってわけじゃない。ただ、悪い事ばかり考えてると疲れるんだよ俺は』

トゲキッス『おおむね同意します』

グレイシア『まぁ、私もそうね。できれば悪い事なんて考えたくもないもの』

リーフィア『うう、四面楚歌……』

グレイシア『ところでムウマージは珍しく黙ってるけど、どうしたの?』

ムウマージ『こ……』

グレイシア『こ?』

ムウマージ『この場所、やばくない? 私めっちゃ好きだわぁ』

四匹『…………』

――――――
 ▼ 508 メラ@ボスゴドラナイト 18/08/09 02:07:06 ID:mrj6omGI [28/52] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告





――――――

ムウマージ『さむい。しぬ』

マニューラ『この程度の寒さで堪えてるようじゃ雪国でやっていけないぞ』

ムウマージ『やっていかないし、いいです』

トゲキッス『寒いのは確かですね……でも、私はまだ我慢できそうです』

グレイシア『私はもとより平気』

リーフィア『うーん僕もちょっと辛いかも……氷には弱いし』

マニューラ『なら、精神を鍛える良いトレーニングにもなりそうだ。丁度いいから、ここで一日やっていかないか』

ムウマージ『一匹でやって、どうぞ』

リーフィア『うーん、流石に僕も遠慮したい……』

トゲキッス『一日いるのは嫌です』

グレイシア『トレーニングに一日は私も……』

マニューラ『えらい言われようだな……ふん、別にかまわん。俺はここを修行場所にする』

リーフィア『え、ここに残るの?』

マニューラ『いや、今の旅が終わってからにする』

トゲキッス『そうしてください』

グレイシア『でも、流石にこの辺りにはポケモンがあまりいないわね。氷タイプくらいしかいないんじゃないかしら』

ムウマージ『そりゃそうでしょ。しんじゃう』

リーフィア『ムウマージって寒さにとても弱いんだね。メモしとこ』

――――――
 ▼ 509 リーザー@トライパス 18/08/09 02:07:27 ID:mrj6omGI [29/52] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告






――――――

グレイシア『っ……ど、どうしてダークライが……』

マニューラ『きっとクレセリアの秘宝を狙ってやってきたんだ。ヤツの力を大きく制限する代物だからな』

トゲキッス『でもこの勢い、ヘタをすれば森全体を覆いかねません』

リーフィア『戦うしか、ないのかな』

ムウマージ『だけどまだ見つかってないし、今ならまだどうにか……』

ダークライ『…………』

リーフィア『そ、そんな! もう見つかったなんて!』

マニューラ『グレイシア逃げろ! ここは俺が預かる!!』

ダークライ『!!』

トゲキッス『一匹でカッコつけないでくださいまし。私も参戦します』

ムウマージ『もう、しょうがないにゃぁ』

リーフィア『僕だって戦うぞ! こういう時のためにずっと鍛えてきたんだ!』

グレイシア『みんなが戦うのに自分だけ逃げられないわ!』

ムウマージ『大丈夫、みんなここで散ろうなんて思ってないさね。適当に切り上げて逃げるから、先に行って!』

グレイシア『でも!』

マニューラ『いいから、頼む。その方が俺達だってやりやすいんだ』

リーフィア『姫危ない!』

グレイシア『きゃ!』

リーフィア『へへ……なんとか防げたよ。鍛えててよかった』

グレイシア『で、でも……血が……』

リーフィア『これくらいなんてことないよ。ほら、僕たちの思いを無駄にしないで?』

グレイシア『……!』

――――――
 ▼ 510 ククラゲ@タウリン 18/08/09 02:07:56 ID:mrj6omGI [30/52] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告


――――――

マニューラ『っ、く……なんて強さだ、こちとら四匹で戦ってるってのにまるで歯が立たねぇ』

トゲキッス『規格外とはこういう事を言うのですね……なんだか、意識が朦朧としてきました』

ムウマージ『ふふ、まだ、オネンネには早いんじゃない? あんまり時間、稼げてないわよ?』

リーフィア『姫、ちゃんと逃げる事ができたかな……』

ダークライ『……無駄だ。この森は私の縄張りとなる。それは覆らない。大人しくそれに従え、者達よ』

ムウマージ『おあいにく様、ホイホイ誰かの言いなりになるほどアホな子じゃないからね? 私みたいな美女を口説きたけりゃもっとシャレた話してくれないとさ』

ダークライ『減らず口を……』

ムウマージ『っぐ、ああああ!!!』

トゲキッス『ムウマージ! っ、この!』

マニューラ『そらっ、離しやがれ!!』

ダークライ『無駄だと言うに』

トゲキッス『ああああっ!!!』

マニューラ『うおおおっ!!!』

リーフィア『みんな!』

ダークライ『さて……残るは貴様だけだが、どうする?』

リーフィア『どうもこうもない! お前なんかにこの森を支配させてたまるか!』

ダークライ『向かってくるか、それもよかろう。だが……』

リーフィア『うわああああっ!!!』

ダークライ『弱い、弱すぎる……クレセリアの力を感じるから身構えていれば、拍子抜け、こうも易々と制圧が可能とは』

リーフィア『う、ぐ……ま、待て……』

ダークライ『ククク、私は姫とやらを追わせていただく。あの秘宝をこの地に置かれては困るのでな』

――――――
 ▼ 511 ノヤコマ@カイロスナイト 18/08/09 02:08:28 ID:mrj6omGI [31/52] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告



――――――

ムウマージ『……愉快な、仲間達……生きてる?』

マニューラ『ふん……なんとか、な』

トゲキッス『しぶといことに、まだ、死んではいません……』

リーフィア『う、うう……む、ムウマージは、大丈夫?』

ムウマージ『あはは、もう、だめみたい……でも、このまま、死んでやるもんか……私の力、思い知らせてやる……』

トゲキッス『あら……何か、良い案でもあるのですか……?』

ムウマージ『そうねー……世紀末の美少女から、素敵な素敵な、ご提案……いかが?』

マニューラ『どうせ、ロクでもない提案、なんだろうが……』

ムウマージ『そだねー、私さ、力を引き出すとか、誰かに与えるとか、得意じゃん……? だから、それをしようと、思う』

リーフィア『は、初耳、だよ……』

ムウマージ『いま初めて、言ったからね……だけど、確かな、話……死ぬ前に、やっとかない?』

マニューラ『はは……死ぬ前に、か……っ、情けない、ねぇ……この俺様が、まさか死を見る事になっちまうとはなぁ……』

トゲキッス『いつまでも、平和なままで、いたかったの、ですけどね……』

ムウマージ『そうね……でも、なってしまったものは、仕方ない……じゃあ、リー君……』

リーフィア『な……なに……?』

ムウマージ『君に力を、託します』

トゲキッス『ふふ……私のこの力が役に立てるのなら、それは本望というものです……私の命、この力の全て、あなたに捧げます……』

リーフィア『え、ぼ、ぼく……?』

マニューラ『お前は、姫の、騎士だろう……? しっかりおつとめ、果たしてこい……』

ムウマージ『それじゃー……あとは、よろしくっ……!』

――――――
 ▼ 512 キノオー@つきのいし 18/08/09 02:08:55 ID:mrj6omGI [32/52] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告



――――――

ダークライ『もう諦めたらどうだ。助ける者は誰もいない、自身もボロボロ、どうにもならん』

グレイシア『そうね……でも、私は、諦めない』

ダークライ『やれやれ。遺跡での追いかけっこはいささか楽しかったが……もうよかろう。この森は終焉を迎えるのだ。そして、我が領地となる。受け入れ、秘宝を渡せ』

グレイシア『お断りするわ……たとえあなたの支配を受ける未来であろうとも、それでも私は……この地が、この森が……ずっと平穏と共に在るよう、願うわ!』

ダークライ『腑抜けた事を。何もできないお前達に、私の何を阻止できる? どれ程の抵抗を見せる事ができる?』

グレイシア『少なくとも、あなたの思い通りにはさせない。どんな未来が訪れようとも、私はあなたを否定する』

ダークライ『これは……自らを氷漬けに……? どうあっても秘宝は奪わせないというわけか……ククク、なるほど面白い。だが、それもいつまで持つか……』

リーフィア『ダークライっ!!』

ダークライ『ん……これはこれは、先ほどの。丁度今、自ら氷漬けとなった姫を砕こうとしているところだ』

リーフィア『氷漬けに……っ、させない!』

ダークライ『随分と威勢がいいようだ……ほう、さっきとはまるで違った力を感じる。だが、それで私が倒せるかな?』

リーフィア『それは、正直わからない……だけど、それでも僕はやるんだ! 僕が、っ、く……僕が、姫を守るんだ!!!』

――――――
 ▼ 513 ノクラゲ@びっくりこやし 18/08/09 02:09:15 ID:mrj6omGI [33/52] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告






そして僕は、草の剣を持ってダークライに斬りかかりました。

だけど、僕の力では、皆の力を込めたこの剣では……ダークライを倒す事はできませんでした。

彼を倒すにはあまりに力が足りなくて……つきつけられた絶望を前に、どうする事もできなくて……

ムウマージの呪いの力で命が尽きる事はありませんでしたが、力を失った僕達は、深い眠りに就くことになりました。



あれから、どれくらいの年月が経ったのでしょう。

姫はまだ、氷の中でダークライから秘宝を守り続けているのでしょうか。

僕は彼女を助けるため、再びダークライの所へ向かいます。

時を同じくして目を覚ました仲間達と共に。

この旅を手助けしてくれる、そこのあなたと共に。





 ▼ 514 ドシシ@ホノオZ 18/08/09 02:09:51 ID:mrj6omGI [34/52] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告


ルカリオ「っ!!」

ミミロップ「!!」

目を覚ます。

ルカリオは同じように上半身を起こしたミミロップを、ミミロップはそんなルカリオを見る。

エルレイド「あ、お前ら起き……」

ルカリオ「ミミロップちゃん、これやっぱり……」

ミミロップ「ええ。そのようね」

どちらもお互いに頷き、相手の言わんとしている事を察する。言葉にして確認するまでもない。

自分達は、眠っている間に夢の中で自我を保ったまま行動している。今までそれは自分の夢の中の出来事だと思っていたが、それは少し違っていた。

この夢は彼らの夢ではなく、おそらくはリーフィアの夢。どういうわけか、ルカリオとミミロップはその夢の中に迷い込み、彼の夢を体験しているらしいのだ。

どうして他の誰かの夢の中に入り込んでいるのかはわからない。しかし、その夢の中で思うようにリアルな行動が取れる事から、これはただの夢ではないとわかる。何らかの力をもって誰かがルカリオ達をリーフィアの夢の中へ送り込んでいる、おそらくはそう言うことなのだろう。

そして、そんな事ができる存在と考えれば、自ずと答えは見えてくる。

ルカリオ「……急に眠るなんて、おかしいと思ってたんだ。けど、そう考えれば納得がいく」

ミミロップ「理由はわからないけど、きっとそういう事なのよねこれ」

二匹の脳裏に、あるポケモンの姿が映る。

ダークライ。人間やポケモンを眠らせ悪夢を見せる事のできるポケモン。

おそらくは、彼がルカリオ達を眠らせてリーフィアの夢の中へと意識を送り込んでいるのだろう。ダークライが絡んでいる事に確証は無いが、このような芸当、普通のポケモンにはできると思えない。
 ▼ 515 ディアン@しゅんぱつのハネ 18/08/09 02:10:25 ID:mrj6omGI [35/52] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルカリオ「もし予想が当たっているとしたら……どこかにリーフィアもいるはずだ」

ミミロップ「そう遠くは無いはずよね。もしかして、あの丘?」

ルカリオ「可能性は充分あるな。行ってみよう」

ミミロップ「ええ」

立ち上がり、走り出す。

エルレイド「えっちょ、急に起きて走ってどこいくんだよ!!」

突然の事にエルレイドは混乱し、急に走り出した彼らを止めることもできず、仕方が無いので彼らのあとを追いかけた。




ミミロップ「あれがリーフィアの夢という事は、リーフィアはダークライに悪夢を見せられてるって事よね?」

ルカリオ「たぶんね。あの夢が何を表しているのかはわからないけど、きっとリーフィアにとって辛い出来事なんだと思う」

ミミロップ「出てくる皆や関係は案外当たらずとも遠からずって感じなのかもね……」

何を悪夢と感じるかは、それぞれによって違ってくる。例えば一般的に不幸な出来事が起きたとしても、それがその人物あるいはポケモンにとって最悪の出来事であるとは限らない。

同じ不幸でも、至上の不幸と考える者もいれば、他のある不幸の方が辛いと感じる者もいる。

それは、それぞれの思考や経験に基づくもの。つまり、リーフィアの見る悪夢とは、彼の体験してきた事や思い考える事がベースに構築されたものという事。

ルカリオ「何にせよ、リーフィアを見つける事ができればダークライも探せる。近くにいるはずなんだ」

ミミロップ「大本をぶっ飛ばせば、彼の悪夢も終わるのかな?」

ルカリオ「たぶん……とにかく、行ってみるしかない」

洞窟を出て森を抜け、夢の中でリーフィアと最初に出会った丘へ。

ルカリオ「う、っ……」

ミミロップ「え、こ、こんな時に……」

エルレイド「はぁ、はぁ、ちょ、こんな所でまた寝るのか!?」

目的の場所まであともう少しというところで、強烈な睡魔が二匹を襲う。あまりに強いそれに二匹は立っている事ができず、片膝をついた。

なんとかそのまま踏みとどまろうと全身に力を入れ歯を食いしばるも、抵抗空しく二匹はその場に横たわる事となった。
 ▼ 516 ジョッチ@パワーウエイト 18/08/09 22:52:51 ID:mrj6omGI [36/52] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告




目を覚ませば、そこはどことも言えない薄暗い空間だった。

辺りに、森の木々や丘は存在しない。まるで宇宙空間にでも放り出されてしまったような、そんな感覚。

ルカリオ「ここは……これもリーフィアの夢なのか……?」

よく見れば、遠くの方でリーフィア達が戦っている。相手はやはり、ダークライのようだ。

そして、彼らの後ろには大きな氷の塊。その中心には、グレイシアが祈るような体勢で氷漬けになっていた。

ミミロップ「もうそんなとこまで話が進んじゃったの?」

ルカリオ「俺達が起きてる間にも話が進むみたいだしね……いまいち基準がわからないけど」

四対一だというのに、リーフィア達は苦戦を強いられているようだ。やはり幻のポケモンと言われるだけある、ダークライの力は強い。

ミミロップ「加勢しに行く?」

ルカリオ「いや……ちょっと待って」

ふとルカリオは考える。

おそらくこれは、リーフィアが見ている悪夢だ。悪夢と言うからには、本人にとって気分の悪い夢のはず。

確かに自分が片想いしているグレイシアがさらわれてしまっているというこの状況は彼にとって喜ばしくないものではあるが、一見してそれくらいしか彼を悩ますものがあるように思えない。

勿論、その事が彼を一番苦しめているのだろう。しかし、彼はそれに立ち向かい、今こうして諸悪の根源と戦っている。もし彼がダークライに打ち勝つ事ができたのなら、それは悪夢に勝ったといえるのだろうか。ダークライに勝った事さえ、彼の夢の中での出来事だと言うのに。

何かがかみ合わない。何かが引っかかる。この違和感の正体は、何なのだろう。

ミミロップ「あっ、なんかやばそうよ」

ルカリオ「とりあえず俺達も戦うか……行くよ」

ミミロップ「ええ」
 ▼ 517 トシゲッコウガ@タポルのみ 18/08/09 22:53:13 ID:mrj6omGI [37/52] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告



リーフィア「う、く……強い……」

ダークライ「それで仕舞いか。毎度毎度、懲りないものだ」

ムウマージ「諦めの悪さにも定評があるわけようちら。残念だったわね!」

ダークライ「ククク、ならば何度でも潰すまでよ」

マニューラ「いいのかい? そのうち勝っちまうぜ、俺ら」

トゲキッス「そう負けてばかりもいられません。着実に、対策を重ねて勝つ算段をつけています」

ダークライ「ならば見せてみよ。その対策とやらさえ、私の力でねじ伏せてくれる」

ルカリオ達がリーフィア達の所へ辿り着いた時には、戦いは最終局面を迎えているようだった。

ボロボロになったリーフィア達。しかし彼らの瞳は闘志に燃えており、強大な力を持つダークライに一歩も譲らない。

ダークライの繰り出す攻撃に対しても、完全に防ぐ事はできずとも、上手く立ち回る事でダメージを分散させている。

苦戦している事に変わりはないようだが、この状況、ルカリオ達が手出ししなくとも彼らは乗り越えていけるのかもしれない。

ミミロップ「どうしたのルカリオ?」

ルカリオ「あ、いや……」

どうしてだろう、彼らの戦いを見ていると、自分達が蚊帳の外にいるように思えてならない。それは例えるならば、人間が遊ぶゲームのように、自分達は画面の外から戦う彼らを見ているような感覚。

彼らの元へ向かえば同じように戦う事はできるのだろうが、そうする事は自分達にとって意味のある事ではないように思えた。

理由も理屈も、全く説明する事はできない。しかし彼は、この戦いに強い意味があるわけではない事を感じている。それも、自発的にそう思うのではなく、彼の持つ波動に何かがそう働きかけてきている気がするのだ。
 ▼ 518 クライ@しんぴのしずく 18/08/09 22:53:31 ID:mrj6omGI [38/52] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ミミロップ「あ、あれ見て」

ルカリオ「ん?」

と、ミミロップが大きな氷塊の方を指差す。

見れば、何やら白い物体が揺ら揺らと空から落ちてきていた。

ルカリオ「あれは……」

この夢の中でも何度か目にし、波動を読み取ってきたもの。時間の花がふわりと氷塊の裏側へと風に流れて泳いでいく。

ルカリオ「追いかけよう」

ミミロップ「わかったわ」

ルカリオ達はリーフィア達の戦いを横目に、氷の裏側へと走る。

どうしてだろうか、そう遠く離れているわけでもないというのに、誰一匹としてルカリオ達を気にかける者はいなかった。

ルカリオ「あった……」

氷塊の裏手に回ると、すぐに時間の花を見つける事ができた。

これが、いったいどんな光景を見せてくれるのだろうか。この局面、普通に考えればこんな事をしている場合ではないが、ルカリオにはこれがダークライと対峙する以上に必要な事だと思った。

時間の花に触れ、波動を送り込む。花はすぐに白く光を放ち、ルカリオ達に語りかけた。
 ▼ 519 トム@うみなりのスズ 18/08/09 22:53:48 ID:mrj6omGI [39/52] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告



「この祈りが……私の祈りが、聞こえていますか……」

「もしも、私の祈りが聞こえているのなら……」

「お逃げなさい」

「この森を離れ、海を渡り、ヤツの目が届かない所まで……」

「あなた達だけでも、どうか、逃げて……」

「夢に迷い込んできた者達よ、次に目を覚ました時には、どうか……」

眩い光の中で。

白一色に染まりきった世界の中で。

一匹のポケモンが懸命に語り掛けていた。

ルカリオ「……その言葉、俺達に向けられたものだったんだな」

グレイシア「ええ……そうよ」

光の花がグレイシアの姿へと形を変えていく。

先ほどまで氷の中で祈りを捧げていた彼女は、ルカリオの波動に反応し、いま彼らの前に姿を現した。

ミミロップ「どういうこと?」

グレイシア「ここは……リーフィアの夢の中。ダークライに見せられている、悪夢の中なの」

ルカリオ「俺達をここに呼び込んでいるのは、やはりダークライなのか?」

グレイシア「そうね……半分、正解」

ミミロップ「半分?」

グレイシア「そう、半分」
 ▼ 520 ヤコマ@きょかしょう 18/08/09 22:54:06 ID:mrj6omGI [40/52] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
グレイシア「この世界は、彼が望んでできた世界なの。勿論ベースは悪夢だから、何でも都合良くはできていないけれど」

ルカリオ「望んでって、まさか……」

グレイシア「ええ……」

グレイシア「ここは、この夢の世界は、リーフィアが望んでできた悪夢なの」

悪夢を望むとは、どういう事なのだろう。怪訝な顔をするルカリオ達に、グレイシアは話を続ける。

グレイシア「現実の世界で、私は、私達は……もう死んでいるのよ」

ルカリオ「マジか……」

私たちとは、おそらくムウマージ達も含めてのことだろう。グレイシアだけでなく、彼の仲間たちはみな現実では既に亡くなってしまっているのだ。

グレイシア「それを受け入れられない彼は、夢の中で生きることにした……悲惨な現実を捨て、優しい幻を選んだの」

グレイシア「全てが思い通りにはならないけど、彼が見てきたもの、体験してきたこと、そういうものがこの世界には反映されているわ。だから、この次はあなた達と経験した何かが反映されるかもしれない」

ミミロップ「え、次って?」

グレイシア「この悪夢には、あなた達みたいに迷い込んできたポケモンが何匹かいるの。ひとつ前は、ガブリアスだったかしら」

ルカリオ「それで修行場所が……」

ルカリオの修行場所を紹介、提供してくれたのはガブリアスだ。その彼がこの夢に入り込んでいたということは、きっとリーフィアを鍛えるのにそれらの場所を使ったのだろう。それが彼の中に設定として生き、世界を構築する材料の一つとなった。

グレイシア「とはいえ、半分はダークライの力でもってる世界よ。だからこうして、私がリーフィアの意思とは関係なく、あなたたちと話す事もできる」

現実には、グレイシアは既に亡くなっている。夢の中とはいえ、こうして話をできるのはダークライのおかげらしい。きっと、リーフィアもこうやって夢の中で仲間達と話す事を目的としているのだろう。
 ▼ 521 ニガメ@あおいビードロ 18/08/09 22:54:22 ID:mrj6omGI [41/52] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
グレイシア「巻き込んでしまって、ごめんなさい」

ルカリオ「それはまぁ……でも、どうしてダークライはリーフィアに協力するんだ? 一般ポケモンにここまで手を貸すとはあまり思えないんだが……」

グレイシア「気まぐれじゃないかしら。リーフィアには悪いけど、飽きられたら一瞬で世界は崩れるでしょうね」

なんとも危うく脆い世界。しかし、そんなものにすがり付いてでも、リーフィアは現実を捨て幻想に生きたいと願った。それも、大切なものを失った者がとる手段の一つなのかもしれない。

ミミロップ「グレイシアはリーフィアのこと、どう思ってるの? ヤツ、とも言ってたけど……」

グレイシア「そうね……大切な仲間、かしら。ただ、彼の事をヤツと呼んだのは、何も知らない迷い込んできた誰かに向けての言葉だからよ。彼の事を親身そうに呼んでたら、何事かと興味を持つポケモンも出てくるでしょう?」

グレイシアは少し遠い目をしてそう答える。彼女の瞳が僅かに揺れているように見えたのは気のせいだったろうか。

ルカリオ「……事情はわかった。俺達は、どうすればいい?」

グレイシア「ここまで辿り着いたから、もう次からこの世界に引き込まれる事はないわ。言ってみれば、ここは最終局面。リーフィア達はダークライを倒し、一区切りついてしまうもの」

ミミロップ「それってゲームクリア、みたいな?」

グレイシア「あなたの言うゲームクリアとやらがどういうものかはわからないけれど……ダークライを倒せば、世界は再びリセットされる。次にまた誰かをこの世界に引き込むまでは、それぞれまた眠りに就くことになるの。リーフィア自身もね」

ルカリオ「それで、新たに迷い込んできたポケモンに起こされるのを待つのか」

グレイシア「ええ。リーフィアはそれを、何度でも何度でも繰り返す……」

声「そうだよ。だってそれが、それこそが、僕の永遠の目的だからね」

後ろから彼の声が聞こえた。

振り向けば、リーフィアがゆっくりとこちらに向かって歩いて来ている。

やがて彼はルカリオ達のすぐ近くで足を止め、無邪気そうな笑顔を彼らに向けた。
 ▼ 522 ソクムシ@ハイパーボール 18/08/09 22:54:38 ID:mrj6omGI [42/52] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
リーフィア「やあ姫、久しぶり」

グレイシア「……そうね」

リーフィアはとても嬉しそうにグレイシアに声をかけるが、彼女は悲しそうな目をするばかりだ。

リーフィア「僕はね……寂しかったんだ。たった一匹になっちゃって、だけど死ぬ勇気も持てなくて……毎日毎日、ずっと一匹で泣いてた」

リーフィア「だけどある日、ダークライの悪夢の事を知った。僕は彼を探し出して、この世界を作ってくれるよう頼み込んだんだ」

ルカリオ「よく聞いてもらえたな」

リーフィア「僕もちょっとびっくりしたけどね。彼は暇してるみたいだったし、なにより僕が悪夢を見ている間は彼にエネルギーを送り込む事になるからさ」

ダークライの特性はナイトメア。悪夢を見ている者から体力を少しずつ奪っていくという、非常に怖ろしいものだ。中にはそれに耐え切れず命を落とす者もいるという。

グレイシア「ナイトメアに耐えられるほど、あなたの精神は強かったのね」

リーフィア「皆とまた楽しく過ごしたいって気持ちは誰にも負けないよ。僕にはもう、それくらいしか残ってない。たぶん、目が覚めた途端に僕は死ぬと思う」

彼の原動力は、この夢の中でのみ得られるもの。悲しい現実に引き戻されてしまえば、彼は希望を失いたちどころに精神が弱体化していく。ナイトメアによって蝕まれた彼の精神では、その現実に耐える事などできないだろう。

リーフィア「だけど、ここまで辿り着いたのはルカリオ達が初めてだよ。まさか、時間の花なんて都合のいいものがあるなんて思いもしなかった。ダークライの気まぐれかなぁ?」

リーフィア「何にしても、今回の冒険はこれでおしまい。僕はまた次の主人公を待つ事にするよ」

力なく笑うリーフィア。それに対し、誰も何も言う事ができない。

本当にそれでいいのかと尋ねた所で、彼は曇り一つなく「勿論」と答えるだろう。彼の心に、迷いの文字は一切見られない。
 ▼ 523 ロリンガ@くろいビードロ 18/08/09 22:54:54 ID:mrj6omGI [43/52] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
リーフィア「さて……君達はもう、自然と起きるのを待つだけだけど……それじゃちょっと、つまらないよね?」

ルカリオ「……何が言いたい」

途端、リーフィアを取り巻く空気が急変する。

今まで感じなかった彼の強烈な威圧に、ルカリオとミミロップは視線を厳しくし身構えた。

リーフィア「一応、夢の主人公は僕じゃなくて迷い込んできたポケモンなんだ。物語の最後には、大ボスと戦うのが通例だろう?」

ルカリオ「リーフィア……?」

リーフィア「一番身近な仲間がラスボスだったって、よくある展開だよね……最後に少し、僕の夢に付き合ってよ!」

ルカリオ「ちっ!!」

リーフィアは全身から何枚もの葉を出現させ、ルカリオ達目掛けて撃ち込んできた。

それらを転がって避ける二匹。

リーフィア「遅いよ!!」

ルカリオ「うおっ!」

得物と得物のぶつかる音が響く。

地面を転がったルカリオ目掛けてリーフィアは例の剣、リーフブレードを振った。回避直後の事で足の動きが間に合わず、ルカリオは背負っていた骨棍棒で応戦する。

リーフィア「へぇ、骨なのに剣で斬れないなんてすごいや」

ルカリオ「おまえ……こんな強かったのか……」

リーフィア「ラスボスだもん、強くなきゃつまらないでしょ?」

リーフィアは身体から草の鞭を出し、その先にもう一本リーフブレードを握る。得物を手で持っているルカリオと違い、リーフィアは肉体の一部を使わずとも武器を使用する事ができる。
 ▼ 524 ルトロス@ねばねばこやし 18/08/09 22:55:09 ID:mrj6omGI [44/52] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ルカリオ「くそ!」

リーフィア「うっ!」

骨棍棒でリーフブレードを押し返し、蔓を叩いて剣を落とす。その衝撃が想像以上だったのか、リーフィアはもう一本のリーフブレードを振る事ができず、その場で怯んだ。

ミミロップ「二対一でもいいってこと? なら遠慮なくやるわよ!」

怯んだ隙を狙い、ミミロップは炎のパンチを繰り出した。

素早い動き。彼女の放つそれは正確にリーフィアの身体を捉え、残酷にも彼の葉や蔓を焼いていく。

ミミロップ「やった?」

リーフィア「それはこれからかな」

ミミロップ「きゃっ!」

勢いを増した炎がリーフィアの身体をも焼いたと思った次の瞬間、ミミロップはリーフィアに電光石火で突き飛ばされる。

ルカリオ「みがわりか……」

リーフィア「そうだよ。二対一じゃ隙を狙われちゃうからね、ちゃんと対策しないと」

ミミロップ「厄介ね……」

リーフィア「さ、まだまだいくよ!」

リーフィアは全身から再び葉を舞い上がらせ、更に同時に蔓に剣を持つ。それも、四方に得物を出現させて。

ルカリオ「させるか!」

リーフィア「ふっ!」

リーフィアが剣を振ろうとするより速く、ルカリオは彼にぶつかっていく。骨棍棒を振り回し、前側に構える二本の剣を狙うが、そもそもリーフィアは剣を振り出そうとはしていなかった。

リーフィア「間合いに飛び込んできてくれてありがとう!」

二本の剣でルカリオの骨棍棒を受けるリーフィア。それと同時に後方の二本を合わせ、軽やかにステップを踏んだ。

ルカリオの骨棍棒が押し負け始める。全体重を込めて押し込んでも、ぐいぐいと押し戻される。リーフィアは攻撃を受けつつ、剣の舞で攻撃力を上げていた。
 ▼ 525 ベルタル@においぶくろ 18/08/09 22:55:27 ID:mrj6omGI [45/52] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ミミロップ「っ、邪魔よこの!」

そのルカリオに加勢しようと飛び込んでいくも、幾多もの葉っぱカッターがミミロップの進行を妨げる。リーフィアはミミロップを見据えているわけではないため正確性を欠いた攻撃ではあるが、彼女の行動を制限するには充分だ。

炎のパンチで葉を焼くも、遠くのものまで消し炭にできる程の威力は無い。ジリ貧になるどころか、手数は圧倒的にリーフィアの方が上なので前に進むことも難しい。

ミミロップ「!!」

できるだけ葉の動きを見切りつつ焼いていたミミロップだが、一際速く重量感をもって飛んでくる葉を見て攻撃をやめる。そして、他の葉に身体が傷つく事をも厭わずに真横へ身体を滑り込ませた。

直後、ミミロップがいた場所で小規模な爆発が起きる。

タネ爆弾。どうやらリーフィアは、幾つかの葉にランダムでタネ爆弾を仕込んでいるようだった。

ミミロップ「これじゃ無闇に焼けないわね……」

当然、爆弾を焼けば即座に爆発してしまう。場合によっては爆弾の威力を強めてしまいかねないため、自身の周囲で無闇に炎技を出すわけにはいかなくなる。これでは、炎のパンチを封じられたも同然だ。

だが、あいも変わらずミミロップ目掛けて多数の葉っぱカッターは飛ばされる。それも次第に数を増やし、タネ爆弾が仕込まれているものも比例して多くなっていく。

ルカリオは骨棍棒で果敢にリーフブレードに立ち向かっているが、得物の数で言えば一対四。それもリーフィアは蔓を使って得物を操作しているため、骨棍棒とリーフブレードがぶつかり合う瞬間を見計らい微弱だが攻撃を繰り出す事ができる。

リーフィアはルカリオに対して有効打となるタイプの技を持ち合わせていないが、少しずつでも彼の体力を削っていけるこの状況、優位に立っている事は明らかだ。

ルカリオ「くっ……」

リーフィア「そろそろ疲れてきたんじゃない?」

致命傷こそ与えられないものの、骨棍棒は受けきられその隙に攻撃され、ルカリオの表情には焦りの色が見え始めている。

なんとかリーフブレードだけでもどうにかしたい所だが、ひとつ剣を落とさせた所ですぐさま残りの三本で反撃されてしまう。打ち破るなら、四本全てを同時に落とすしかない。
 ▼ 526 ャーレム@ロメのみ 18/08/09 22:55:44 ID:mrj6omGI [46/52] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
波動で後方の動きを読み取る。ミミロップは葉っぱカッターとタネ爆弾に苦戦しているようで、応援の期待は中々できそうにない。

ルカリオ「だったら俺が行くまで!」

リーフィア「!」

ルカリオはリーフィアを攻撃する事を諦め、一気に跳躍してミミロップの所へ退く。そして骨棍棒を振り回し、タネ爆弾のついた葉をリーフィアの所へ打ち返した。

リーフィア「ひえっ!」

ただ葉を防いでいるだけではないと気づき、その場から飛び退くリーフィア。勿論、その隙をルカリオは逃さない。

ルカリオ「くわんぬ!」

リーフィア「うげっ!!」

リーフィアが着地した地点を予測し、電光石火で近づいてからのインファイト。スピードが乗った渾身の一撃だ。

防ぐすべもなくリーフィアは彼のインファイトをまともに受け、ごろごろと地面を転がっていく。それに合わせ打ち込まれ続けていた葉が止み、彼はというと剣を四本とも落としてしまっていた。

ミミロップ「次々いくわよ!」

ルカリオ「おう!」

倒れこんだリーフィア目掛けて飛び込んでいくミミロップ。ルカリオもそれに続き、強く地を蹴った。

リーフィア「わ、わ! ごめん! ごめんよぅ!」

物凄い勢いで飛び掛ってくる二匹を見て、リーフィアは涙を流し前足をわたわたとさせる。

ルカリオ「な、なんだよ……」

ミミロップ「ルカリオだめ!」

ルカリオ「え?」

リーフィア「へへ、隙あり!」

ルカリオ「ぬっ!?」

先にリーフィアの所まで辿り着いたルカリオは彼の様子を見て攻撃を中断させてしまい、リーフィアに手厚い攻撃を受けてしまった。

嘘泣き。泣いたフリをして相手の油断を誘う技だ。
 ▼ 527 キカブリ@おおきなしんじゅ 18/08/09 22:56:02 ID:mrj6omGI [47/52] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
リーフィア「最後まで油断したらだめだよ!」

ルカリオ「中々ズルい事してくれるじゃないか」

リーフィア「ここは僕の夢の中だからね、そもそもが僕のわがままなんだ」

ルカリオ「なるほど、な!」

リーフィア「ふぇっ!?」

攻撃を喰らったまま地を転がるルカリオではない。地に足をつけ踏みとどまり、お返しとばかりに電光石火でリーフィアをすっ飛ばす。

リーフィア「いたた……やっぱり強いや。前に来た鮫もそうだったけど、僕なんかよりずっと強い」

ルカリオ「どうだろうな。お前は別に弱いわけじゃないじゃないか」

リーフィア「いや。僕は……弱いんだ。だからこうして、夢の中にまで逃げ込んで……」

辛い事があったとき、どうするかなんて人やポケモンそれぞれ。

復讐を誓う者、自棄になりかけた者、それでも前を向く者、人の数だけポケモンの数だけやり方は存在する。その中の一つとして、夢の中で生きることを選んだのがリーフィアだ。

ルカリオに、リーフィアのことをどうこう言うつもりはない。それが良いとも悪いともわからないうえ、そもそも他者のそれに干渉すべきでないと思っているからだ。

ルカリオ「今まで何をしてきたかとか、今の状況がどうだとか、そんな事どうでもいいじゃないか」

リーフィア「え?」

ルカリオ「今、俺達は戦ってる。勝つか負けるか、ただそれだけだ。勝てば強い、負ければ弱い。それで充分さ」

リーフィア「……そう、だね!」

真っ直ぐにルカリオを見据えるリーフィア。ルカリオはインファイトの構えを取り、リーフィアが姿勢を整えるのを待っている。

ミミロップ「まぁた私は蚊帳の外? ♂同士お熱いことで」

その横で、ミミロップがやれやれと両手をあげていた。
 ▼ 528 ノワール@しろいビードロ 18/08/09 22:56:23 ID:mrj6omGI [48/52] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
リーフィア「じゃあ……行くよ! 僕のゼンリョク!」

リーフィアの身体を強力なエネルギーが覆う。

あふれ出す闘志。波動を使って読み取るまでもない、リーフィアはこの技に全てをかけているようだ。

ルカリオ「なら俺もゼンリョクで迎え撃つ!」

両手を広げ、全身を震わせる。神経を集中させ、次に放つ一撃に、持てる全ての力を込める準備を整えた。

リーフィア「これが僕のゼンリョク!! ブルームシャインエクストラ!!」

ルカリオ「Z技とは見事っ!!」

リーフィアは巨大な草の剣を出現させ、それを背に猛突進を開始。

リーフブレードZとしての、ブルームシャインエクストラ。彼の、自分の信念を乗せた最大の攻撃。

これに対し、ルカリオは波動を込めたインファイトを放つ。通常のインファイトに波動の力が加わる事で、その威力は何倍にも膨れ上がる。

リーフィア「うおおおおお!!!」

ルカリオ「はぁあああああ!!!」

闘志と闘志が激しくぶつかり合い、大きな音を立てる。

最大の攻撃を相手にぶつけ、各々は相手を通り過ぎ立ち止まった。

沈黙が流れる。両者、僅かたりとも動く事は無い。どちらも振り向く事さえせず、攻撃を放った姿勢のままじっとするのみだ。

ルカリオ「…………」

リーフィア「……う、ぁ」

どさり、とリーフィアの身体が力なく倒れた。

直後、ルカリオも地に片膝をついて荒く呼吸を繰り返す。

勝負はついたようだった。
 ▼ 529 ガボーマンダ@ゼニガメじょうろ 18/08/09 22:56:43 ID:mrj6omGI [49/52] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
リーフィア「あはは……負けちゃった。でも、そりゃそうだよねぇ。ボスはいずれ倒されるもんさ」

ルカリオ「お前のゼンリョク、受け止めさせてもらった……はは、ミミロップちゃん手貸して、立てそうにないや」

ミミロップ「はいはい」

ミミロップに手を引かれ、立ち上がるルカリオ。振り向けば、リーフィアは地面に横になったまま薄暗い空を見上げていた。

いつの間に来ていたのだろう、その傍にはグレイシアの姿もある。

リーフィア「姫……僕、僕ね、もう……」

グレイシア「何も言わなくていいわ。あなたの言いたい事は、わかってるから」

リーフィア「そっか……へへ、なら嬉しいや」

グレイシア「ばか」

ゆっくりと、グレイシアはリーフィアの額を前足で撫でる。リーフィアは目を閉じて心地良さそうに柔らかな笑みを浮かべた。

グレイシア「……そろそろ、戻る事になると思うわ。目を覚ましても、ここでの事は気にしないでいてくれていいから」

ルカリオ「……リーフィアは、どうなるんだ?」

グレイシア「わからない……ダークライの気まぐれが終わるまで、きっと同じ事を繰り返すわ。彼にはもう、そうする事しかできないもの」

ルカリオ「そうか……」

ふと、瞼の辺りに違和感を覚え始める。

目の前の視界がぼやけていき、全身から力が少しずつ抜けていく。

グレイシア「ありがとう……」

意識が遠のき、やがて失われてしまう。

最後に、グレイシアがそう呟いたのをルカリオ達は聞いた気がした。
 ▼ 530 ズゴロウ@よごれたハンカチ 18/08/09 22:57:01 ID:mrj6omGI [50/52] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告




ルカリオ「…………」

ミミロップ「…………」

エルレイド「……んお、起きたよ姉さん」

サーナイト「良かった……二匹とも、私達がわかる?」

視界が開け、親友達の姿が目に映る。

上半身を起こしてみれば、ハクタイの森の美しい景色が広がっていた。

ルカリオ「エル、サーナイトさん……」

サーナイト「意識も無事みたいね。身体に異常はないし、大丈夫って事で良さそう」

エルレイド「よかったぁ……でも、また眠ったりは……」

ミミロップ「もうしないと思うわ」

そう断言するミミロップに、エルレイドとサーナイトは顔を見合わせる。

ルカリオ「……俺達、実はな」

これまでの経緯をエルレイド達に話す。まるで信じられない話ではあるが、最後には二匹ともそうだったのかと頷いた。

サーナイト「……そういえば、丘の所でお墓を見つけたの。それって、もしかして」

ルカリオ「まじ? ちょっと、案内してくれないか」

サーナイト「もちろんよ」
 ▼ 531 マンタ@そうこのカギ 18/08/09 22:57:18 ID:mrj6omGI [51/52] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ハクタイの森の中でもほとんど木の無い草原地帯、それがこの丘。かなり見通しの良い場所で、見渡す限りの広く開けた景色は圧巻の一言。

ルカリオ「石像も遺跡も、何もないんだな」

ぽつりぽつりと実の生る木が各所に生えてはいるものの、草原には基本的に何の目立つ物も見当たらない。

当たり前のこと。ルカリオ自身が、修行していた頃に見ていた光景と全く同じ。

だけど、どうしてだろう。この当たり前の光景が、彼の目にはなんだか少しだけ寂しく映る。

サーナイト「この辺りに……あったわ、ここよ」

ルカリオ「ん」

サーナイトが案内したその場所は、一番最初にルカリオ達がリーフィアを見つけた場所だった。

周囲に石像などはないが、少し大きめの岩が三つほど転がっていて、その隙間に小さなスペースができている。その場所に、これまた小さなお墓のようなものが四つひっそりと作られていた。

サーナイト「あら?」

と、サーナイトがそこで何かを見つける。

彼女の視線を追ってみれば、小さなお墓たちの後ろにアクセサリーのような何かが置かれていた。

ミミロップ「これ……」

ルカリオ「うん」

よく見ればそれは、植物でできている小さな剣だった。

ルカリオ「あいつ、もしかして……」

ミミロップ「どうなのかしら……」

穏やかな風が丘に吹き抜け、ルカリオ達の頬を撫でて通り過ぎていく。

その風に草の剣がかさかさと小さく揺れ、四つのお墓にそっと寄り添った。
 ▼ 532 クーン@オーキドのてがみ 18/08/09 22:58:51 ID:mrj6omGI [52/52] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告








なぜ、どうしてこうなるの?

こんな運命に、誰がしたっていうの?

贅沢をしたいなんてただの一度も思った事なんてなかった。

それどころか、普通の暮らしだってできなければできないなりに生きようと思っていた。

けど、それすら私達には赦されなかった。

私達が、いったい何をしたっていうの? どんな悪い事をしたっていうの?


私にはわからない。誰も教えてなんてくれない。

だから、全部呑み込むしかない。運命に従うしかない。

だけど、そうやって何もかも失ってしまった私は、この先何のために生きていけばいいの?

こんなんじゃ私、もう生きてるのが辛いよ……







 ▼ 533 ーベム@たべのこし 18/08/10 03:47:51 ID:f4Q6WAzg NGネーム登録 NGID登録 報告
次は誰が出るんだろ
支援
 ▼ 534 プ・テテフ@メンタルハーブ 18/08/10 23:14:25 ID:y7R.ge7M [1/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




ラフレシア「調子はどう?」

木々の隙間から差し込んでくる眩い光。ラフレシアがそれを遮っていた植物のカーテンを開いた事で、彼女は半開きになっている目を更に細める事になった。

この日は突き抜けるような晴天で、空に浮かぶ太陽は嬉しそうにその身を燦々と輝かせている。静かな森を吹き抜ける風も、木々の葉を躍らせ一層快晴の様子を賑わせていた。

少し遠くに流れる穏やかな川のせせらぎが耳に優しく響く。きっと、今日も沢山の魚達が遊泳を楽しんでいるのだろう。

変わらない太陽、変わらない風、変わらない水の音。自分の周りの何もかもがあの頃とほとんど変わらない。

ラフレシア「今日辺り、ちょっとその辺散歩でもしてみない?」

だけど、一つだけ、変わってしまったものがある。

ラフレシア「ねえ、聞いてる?」

絶対に変わって欲しくなかったもの。それだけはそのままでいて欲しかったもの。

ラフレシア「……朝ごはん、ここに置いとくね」

彼女にとって、何よりも大切だったもの。他の何を差し置いてでも、守りたかったもの。

ラフレシア「また、お昼頃に来るから」

だけど、変わってしまった。彼女の気持ちに関係なく、それは失われてしまった。

ライチュウ「…………」

それ以来、彼女の時間は止まったまま。

もう何ヶ月も、あの時のまま。

 ▼ 535 ーディン@ミアレガレット 18/08/10 23:14:50 ID:y7R.ge7M [2/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




ハクタイの森を、出口に向けて歩くルカリオとミミロップ。

彼らは森での修行を一通り終え、残った時間で調整をしつつ大会の開かれる町へ向けて出発を始めていた。

大会までまだ日に余裕はあるのだが、何が起きるかわからないという事で、できるだけ会場に近い所で最終調整を行うという話になったのだ。

とはいえ、道中行う調整のほとんどはハクタイの森で行う。出口へ向かっているといっても、現時点では、単に森の中を町に近い所まで移動しようという事だ。

ルカリオ「やっぱり静かでいいなこの辺は」

ミミロップ「そう? 私はなんか薄気味悪い印象だけど」

ルカリオ「まぁ、それがハクタイの森だから……」

談笑しながらゆっくりと獣道を行く二匹。

エルレイドとサーナイトは一足先に大会の会場へと向かう必要があるようで、明け方に丘を出発してしまった。少しくらい修行に付き合ってもらいたかったのだが、大会の運営関係で仕事があるようだから仕方が無い。

ミミロップ「今日はどの辺でやるの?」

ルカリオ「シンオウ大会のフィールドは水辺だからね。できれば川に近い所でやりたいと思ってる」

ミミロップ「慣れるためってことね」

とはいえ、大会で使用される水の量は川などに比べれば微々たるもの。強い流れも無く、イメージで言えば足元に大きな浅い水溜りができている程度のものでしかない。小さな岩がいくらか転がっているため平坦な地というわけではないが、苔生しているわけでもなくフィールドに足を取られるなどという事はほとんど無いだろう。

ホウエン大会の時と同じ、障害物としての役割ではなくあくまで他の大会との差別化を図る程度の意味合いしか持ち合わせていないのだ。

ミミロップ「でも、蹴る事考えたらしぶきが邪魔になるかもね」

ルカリオ「意図的に水を目にかけるとかするのは反則だけど、足技を使う際に飛沫がかかるのは仕方が無いことだからね」

ハクタイの森の東部を、水の音やにおいを頼りに歩く。

丘を出発して小一時間。幸いにもそう長く歩かないうちに、広い水辺が存在する川まで辿り着く事ができた。
 ▼ 536 ブト@フレンドボール 18/08/10 23:15:08 ID:y7R.ge7M [3/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルカリオ「寝られそうな岩場もあるし、実の生る木もある。それに、ん〜、久しぶりの川沿いだね」

川といえばトウカの森にあった大きな川が思い出されるが、この川はそれなりの広さを誇ってはいるものの流れは穏やかで深さも底が見える程度しかない。川の周りに関してはそれなりに見晴らしもよく、大会のフィールドを想定してのトレーニングも問題なく行えそうだ。

ミミロップ「ねえ、あの木の実って珍しくない?」

ルカリオ「ん? そうだね、あれはカイスの実だ。柔らかくてとっても甘いやつだよ。こんな所に生えてるんだなぁ」

水の感触を足で確かめながら、ルカリオは早速準備運動を開始する。ミミロップはというと、やる気がないわけではなさそうだが、ルカリオに続いて身体を動かす気配は無い。

ルカリオ「あれ、何か気になる事でもある?」

ミミロップ「気になる事、あるわよ? ねぇ、わかるでしょ?」

ルカリオ「え、ちょ、ま、まじ?」

ミミロップは大きな岩に背中を預け、濡れた目でルカリオを見る。

夢の中だったとはいえ、彼らは意識的に言えばハグさえ満足にしないまま何日も過ごしてきた。実際にはハクタイの森に来てからまだ五日しか経っていないのだが、彼女としてはご無沙汰で寂しいらしい。

ルカリオ「う〜ん、俺もそろそろとは思ってるけど……」

一瞬で虜となってしまわないように、ルカリオは視線を泳がせながら言いよどむ。

ミミロップに対する愛を我慢する事も修行の一環と銘打って旅に出た手前、そう何度も欲に溺れるわけにはいかない。勿論制限をつけるというだけでそれを解除する日もあるのだが、いかんせんミミロップに誘われると断りきれない自分がいて自己嫌悪する気持ちが少しだけだが存在する。

ミミロップ「もう結構我慢したよ?」

ルカリオ「そ、それはそうなんだけど……」

どれだけ間をあけるかなど明確な線引きをしていないせいもあり、どこまでを修行と考えるかも彼のさじ加減一つ。ただそれだけに、欲に溺れるか我慢しすぎるか、判断が極端になる可能性も充分にある。

ルカリオ「……今日は、いいかな?」

ミミロップ「そうこなくっちゃ」

欲に負けたわけではない。前回愛し合ってからの日数を考えてそう決めたのだと、そうルカリオは自分に言い聞かせ、物凄いスピードでミミロップの元へと駆け寄った。
 ▼ 537 イキング@れいかいのぬの 18/08/10 23:15:26 ID:y7R.ge7M [4/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルカリオ「ん、ちゅ……確かに、こうして抱き合ってみると、久しぶりのような気がする」

ミミロップ「でしょ? 夢の中で実体験してたんだから、体感としては結構時間経ってるのよね。んちゅっ」

大きな岩を背に、ぎゅっと抱き合う二匹。視線を絡ませ、お互いの愛を確かめ合うように何度も何度もキスを重ねる。

最初は啄むようにお互いを確認しながらのキスだったが、次第に我慢がきかなくなっていき、激しく相手を求めるような情熱的なキスへと変わっていく。

それぞれの唾液が混ざり合い、くちゅくちゅと卑猥な音を立てて口角から流れ落ちていく。ルカリオはそれさえ勿体無いとばかりにミミロップの顎の辺りから垂れた唾液を舐めとり、そのまま自分の舌ごと彼女の口の中へ押し込んだ。

ルカリオ「んっちゅ、ちゅっちゅ、ん、ミミロップちゃんの唾液、すごく甘いよ、はむっちゅ」

ミミロップ「んちゅ、っ、もう、味なんてついてないでしょ、んちゅっ、ちゅちゅるっ」

舌を絡め合う濃厚なキス。二匹は、息をするのももどかしいとばかりに激しく相手を求め、官能を爆発的に高めていく。

もうキスだけでは足りない……先に我慢が限界を迎えたのはミミロップだった。彼女はルカリオの背に回していた右手を彼の股間へと伸ばし、主張を激しくしているそれを優しく包み込む。

ルカリオ「んちゅふっ、あへぇ……」

急な攻撃を受けたルカリオは、なんとも情けない声をあげて身体を震わせる。

抱きしめ合う事で彼の勃起した性器は彼女の柔らかな肉体に触れてぴゅくぴゅくと透明な液体を吐き出し続けていたが、彼女の手や指が這い回る事でもどかしい刺激が加わり、今にも射精してしまいそうなくらいビクビクと脈打ち始める。

随分とたまっているのだろう、普段であれば次の段階まで精の放出を我慢するのだが、今日このときはもう頭の中が射精することでいっぱいになっていた。

ミミロップ「んちゅっ……ふふ、もう出したいって顔してる」

ルカリオ「ふぁ、ああ、うん、なんかもう、やばい」

ミミロップ「そうか〜。じゃあ、一度ぴゅっぴゅしちゃいましょうね〜」

ルカリオ「ふぁああああ」
 ▼ 538 ニノコ@たてのカセキ 18/08/10 23:15:44 ID:y7R.ge7M [5/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミミロップは、瞳を潤ませだらしなく舌を出して感じているルカリオを満足そうに眺めながら、右手で彼の性器を揉み始める。

時には強く、時には優しく。性器全体を揉み解すように華奢な指を上下させ、ルカリオが一層敏感な反応を見せる部分を探っていく。

とはいえ、ルカリオの身体を知り尽くしたミミロップにとって、彼が一番感じるポイントなど既に把握済み。これは、ここから更に甘美な行為が始まる事を知らせるための儀式なのだ。

ルカリオ「う、あ、あ、ミミロップ、ちゃ」

ミミロップ「もどかしい? もう射精したい?」

ルカリオ「したい、したいしたいしたい」

射精できないギリギリの刺激を与えられ続け、ルカリオは早くもミミロップの射精管理を受け入れる状態になってしまった。

深く愛し合っているとはいえ、ルカリオの扱いになれているだけある、開始早々ルカリオを支配下に置いてしまうドSなミミロップ。ルカリオの服従が完了した事で、彼女は満足げにルカリオの頬を左手で撫でた。

ミミロップ「それじゃあ、いっぱい出してね〜」

ルカリオ「うう、うあああ!」

彼女が言葉を言い終えるかどうかという所で、ぎゅっとルカリオが一番感じる場所に刺激を与える。ルカリオがびくんと身体を跳ねさせる様子に舌なめずりし、ミミロップは彼の性器を強めにしごきあげた。

弱い部分に強力な刺激が加わる事で、自分では抑えきれない射精衝動に駆られ始める。大量の精子が陰茎にこみ上げてくるのがよくわかり、今にも爆発してしまいそうだ。

ミミロップ「そーれ☆」

ルカリオ「あああああああっ!!」

尖端付近を一本の指でぐっとおさえ、残りの指で陰茎を根元の方に引っ張る。すると我慢の限界を迎えたルカリオの性器から、欲望の塊が大量に射出され、ミミロップの腹部を白く染め上げた。
 ▼ 539 ーディ@ペアチケット 18/08/10 23:16:01 ID:y7R.ge7M [6/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミミロップ「沢山射精せたわね〜、んちゅっ、ぺろ、んっ、んく、んふ、すごい濃いの出てる」

ミミロップはお腹に出された精液を全て掬い取り、迷う事無く口の中へ入れていく。そしてまるでワインでも味わうように口内で転がしたあと、その全てを一気に咽喉の奥へと送り込んだ。

ルカリオ「そんなにドロドロしてる?」

ミミロップ「してるわ。ルカリオの、すごくえっちなおち○ぽ汁、とってもとっても濃いの出てたよ?」

ルカリオ「そ、その表情反則だって!」

射精して少し萎え始めていた性器が、効果音が聞こえてきそうなくらい急速に復活を見せる。

普段からドSな彼女の涙目上目遣いは、ルカリオの理性を粉砕するのに充分すぎる威力を発揮するようだ。

ルカリオ「しよう、セックス。ミミロップちゃんの中にいれたい」

ミミロップ「あんもう、理性の欠片も無いわねこの犬は」

ルカリオ「ふひぃ」

ばちんと太ももを叩かれるルカリオ。この状態、それさえ性的快楽へと変換され、男根をぴくんと大きく跳ねさせてしまう。

ルカリオ「ね、ねぇ、ミミロップちゃん、俺、今日動いていい?」

ミミロップ「動いていいって、いつも立てなくなるまで腰振ってるでしょ?」

ルカリオ「それはそうなんだけど、えっと……とにかく任せて!」

ミミロップ「きゃっ」

ルカリオはゆっくりと自分の性器を彼女の密壷に押し込んでいく。それにあわせて彼女の右足を持って股を開かせ、そのまま上へと持ち上げてしまう。

ミミロップは片足を上げた状態でのセックスを余儀なくされる事となった。
 ▼ 540 ンプラー@メタグロスナイト 18/08/10 23:16:19 ID:y7R.ge7M [7/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミミロップ「んっ、ああっ、この角度、すごくイイ……」

ルカリオ「俺も、これ、めっちゃ腰振れて、やばい、っ」

持ち上げたミミロップの足にキスしながら、ルカリオは我武者羅に腰を振り始めた。

じゅぷじゅぷと淫猥な音が辺りに鳴り響く。幸いにもこの辺りに他のポケモンの影は無いが、そう見晴らしが悪いわけでもない川辺での性行為、かなりスリリングなものがある。

その興奮も彼らの官能を高めているのか、いつもよりそれぞれの性器が敏感になっているように感じられる。動くたび性器がこすれあうたび、二匹は甘い声を漏らし快感に溺れていってしまう。

ミミロップ「ん、る、ルカリオの、すごく、きゅん、んはっ、おっきいよぉ、あはぁ、はぁ、あふっ」

ルカリオ「う、ん、はぁ、っく、はぁ、ああ、頭の中、まっしろに、なる」

性器の尖端を入り口まで引き戻し、一気に突き入れる。ぱちんと肌と肌がぶつかって音を立て、二匹の身体がぴくんと跳ねる。

ルカリオは自分の性器に纏わりつく襞や膣壁を押し広げる感覚に熱い吐息を漏らし、腰を限界まで彼女に押し付けて一番深い所をじっくりと味わった。

今度はすぐには引き抜かず、一番奥まで性器を押し込んだままぐりぐりと上下左右、あるいはグラインドするように何度も動かし、膣内の感触を楽しみ始める。

流石のミミロップも自分の指さえ届かない所をこうも刺激されたのでは漏れ出る甘美な声を抑える事ができず、彼の少々乱暴な攻めを甘んじて受け入れている。

ルカリオ「はぁ、はぁ、これやべ、刺激強すぎる」

ミミロップ「んっ、あんんっ、んふ、ちょ、そこ、ああっ、すごい」

普段あまり楽しまない体位という事もあり、快楽もひとしお。ルカリオが腰を打ち付ける度にミミロップは身体を震わせ、淫靡な液体で彼の性器を包み込む。ルカリオの性器が動くたび押し出されたそれは彼女の太ももを伝って流され、太陽の光に照らされきらきらと光っていた。

ルカリオ「あっ、やばい、もう、でそう」

ミミロップ「毎度ながら、入れてからはやくない?」

早漏と言われようと、ルカリオは射精への欲望をこれ以上我慢できそうにない。彼にしてみれば、それだけ彼女の性器が気持ち良いという事だ。
 ▼ 541 コン@かいのカセキ 18/08/10 23:16:35 ID:y7R.ge7M [8/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルカリオ「あっ、あっ、出る、射精ちゃう、膣内に出すよ、いいよね?」

ミミロップ「他にどこ出すの、ほら、また濃いの沢山出しちゃいなさい? んっ、ああっ」

ミミロップは、せめてもの威厳をと、彼の頬を両手で挟んで撫でる。

ミミロップにとってセックスにおける上下関係やSMの関係は重要なものだが、ルカリオにとっては快楽を味付ける調味料のようなものでしかない。現に、最初は自分が攻める事に少しこだわっていたが、今となっては快楽を貪ろうと腰を振るのみだ。

だからこそ、彼女は彼を気に入っている。だからこそ、彼は彼女に身を任せる。

二匹の関係は、それぞれが無意識レベルで考える部分ですら正確にマッチしているのだ。

ルカリオ「う、うあ、うあああああっ! せーし、でるううう!!」

ミミロップ「射精して、たくさん、私の膣内に、特濃ルカリオ精子で孕ませてぇええ!!」

ガクガクと大きく腰を振っていたルカリオだが、訪れるその瞬間に合わせ、腰を強く彼女に打ちつけた。そして、彼の性器からこれまた大量の濃い精液が彼女の膣内に容赦なく吐き出される。

ルカリオの精子は瞬く間にミミロップの膣内を満たしていき、ルカリオの性器が栓となっているおかげで彼女のお腹がぽっこりと膨らんでしまった。

それだけ、彼は大量の精子を彼女の膣内に吐き出した。これ程の量、避妊していなければ危険日でなくとも妊娠確実である。

ルカリオ「う、うあ、うああ……すごかった、ふへぇ」

射精してもなお硬さを保つルカリオの性器。彼は射精の余韻を楽しみながら小刻みに腰を振り続け、できる限りの快感を貪っていた。

ミミロップ「す、すごく、おなかが膨れたわね……想像以上に、違和感、あるわ」

まるで卵ができたように膨らんだお腹をひと撫でしてみるミミロップ。これだけの量を吐き出させてやったという支配感とこんなにも沢山の愛で満たされているという充足感に、彼女は酔い痴れている。

ミミロップ「でも……これで終わりじゃないわよね?」

ルカリオ「ごくり……」

くすりとこれまた妖艶な笑みをルカリオに向けるミミロップ。それだけで賢者タイムなど遥か彼方へ吹っ飛んでしまう。

ミミロップ「次は、覚悟なさいね?」

ミミロップはルカリオの手を掴み、あげられていた右足をゆっくりと地におろす。そして彼を、岩の傾斜になっている所へ仰向けに寝かせた。
 ▼ 542 ワーク@ゆきだま 18/08/10 23:16:50 ID:y7R.ge7M [9/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルカリオ「おっ、あっ、ああっ、み、ミミロップ、ちゃぁあん!!」

ミミロップ「んっ、ふふ、どう、かしら、んっ、あっ、きもちい?」

うめき声にも似た情けない声をあげながら、何度もこくこくと頷いてみせるルカリオ。ミミロップはその様子を満足そうに見下ろし、全身を駆け巡るゾクゾクした快感に口角を僅かに吊り上げた。

いわゆる騎乗位。いま彼は、斜めに寝かされ上からひたすら愛する彼女に犯されている状態だ。

二匹の手と手はどちらも「恋人つなぎ」でがっちり掴まれている。性器だけでなく、他の部分でもしっかりと繋がる事でよりお互いの愛の強さを確信し合えるのだ。

ルカリオ「うっ、ううっ、うあっ、あはぁ」

寝転がっている体勢とはいえ足は地についているため、無闇に動かせばバランスを崩してしまう。そのため快楽に全身から力が抜けていくも、最低でも立つ力だけは残しておかなければならない。それの、なんと辛いことか。騎乗位が始まって数分も経っていないが、既にルカリオの両足はガクガク震えていた。

勿論、ミミロップはその様子さえ把握している。

ドSな彼女は、ただ快楽だけを与えるのではなく、多少なり苦痛を伴うようにセックスを行う。ただ快感に溺れるだけでなく、苦痛も入り混じった複雑な表情をするルカリオを見るのが彼女の嗜好なのだ。

まさにドS、まさに女王様。愛する旦那ルカリオを相手に彼女は、どこまでも充足感を高められる。

ミミロップ「あっ、やっおあり、これも深いわぁ、んんっ、んっく」

ルカリオ「う、うう、やばい、やばいよ、もう出ちゃうよ」

ミミロップ「だから速いっての〜、もう! そんなに射精したいなら、かまわずしちゃいなさい!」

ルカリオ「ふぁい!」

浅いところで上下させていた腰を、お互いの肌が密着するところまで落とす。ルカリオの性器が完全にミミロップの膣内におさまり、奥の深いところを強く突いた。

途端、我慢してもしきれない衝動がルカリオを襲い、彼は抵抗する間もなく再び射精を開始した。

長い長い射精。ただ物理的な刺激を受けただけのものとは違う、脳が解けてしまう程の甘く焦がれる情愛と快楽を伴った射精。

びゅくびゅくと何度も性器を脈動させては欲望の塊を彼女の奥へと放出し、ルカリオは目を回したようにぐったりと顔を横たえた。
 ▼ 543 ソハチ@ズリのみ 18/08/10 23:17:13 ID:y7R.ge7M [10/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミミロップ「まだ終わらないからね?」

ルカリオ「ふぇええ!?」

ミミロップ「私まだイってないから。最後まで付き合いなさい」

ルカリオ「くぅわんぬぅ……うう!!」

射精を終えたばかりの敏感になった性器に再び襞が絡みつき、絶妙な刺激となって襲いかかる。この状態、それだけでは足りない事をミミロップはよくわかっているので、顔をゆっくりとルカリオの顔に近づけ、優しく、甘くキスをした。

すると、どうだろう。ルカリオの性器は二度の射精を経たにも関わらず、再びむくむくと元気を取り戻していく。絶倫とまではいかないが、もともと射精回数には(本人の中で)定評があるルカリオ、官能さえ高まればまだまだ行為に及ぶ事は可能だ。

ミミロップ「限界まで搾り取ってあげる」

ルカリオ「ま、まじ……?」

ミミロップ「ま・じ」

ルカリオ「わおおおおん!!」

嬉しいのやら恐ろしいのやら。結局その後、三回も射精を重ねさせられ、暫く起き上がる事ができない程しっぽりと搾り取られたルカリオだった。
 ▼ 544 ーランス@みどりのバンダナ 18/08/10 23:18:08 ID:y7R.ge7M [11/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




丸く大きな太陽が西の方へと旅を進め、辺りの空を紅く染め上げていた。

気づけば、もう夕方。真昼間からおっぱじめてしまった行為、夢中になって何時間も経過してしまったらしい。

二匹は随分と満足したようだが、疲労感と若干の倦怠感が襲ってきてしばらくトレーニングはできそうにない。定期的に性行為をするにしても、その後の事は今後きちんと考えていきたいと二匹は後悔をやや残したのだった。

ルカリオ「たしか、カイスの実があったよね。ちょっとあれ食べよ」

ミミロップ「そうね……ちょっと夕飯終わるまでは休憩にしましょ」

盛りのついた獣のようにとは、よく言ったものかもしれない。二匹は大きく息を吐き、重い腰を上げてカイスの生る木までゆっくりと歩いて行った。

ルカリオ「ん?」

ミミロップ「あ、誰かいるわね」

カイスの木まであと少しという所で、先客がいることに気がついた。

気配を消していたわけではなさそうだが、あまりに敵意の欠片も無いものだから二匹とも近くに来るまで気がつかなかった。

ミミロップ「実を食べてるわね」

ルカリオ「食べてるね。それも、一心不乱に」

足を止め、カイスの実を貪り食べているポケモンをじっと眺める。

赤い頬、くりっとした目、黄色いコート、稲妻尻尾がトレードマークの……

ピカチュウ「もぐもぐ、がつがつ……ぴか?」

ちょっと身体の小さめなピカチュウが、袋につめたオボンの実を持って、カイスの実をかじっていた。
 ▼ 545 ネボー@ねらいのまと 18/08/12 01:29:32 ID:iwmEM6mY [1/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルカリオ「ピカチュウって、珍しいな。ここに住んでるのかな?」

ミミロップ「どうだろ? ハクタイの森にピカチュウがいるなんて聞いたことないけど……」

カントー辺りから移住してきたのだろうか、ピカチュウは近くでルカリオとミミロップに見られていることにも気づかず、ただひたすらにカイスの実を食べている。

カイスの実は、大きなものであれば50センチを超える固体も存在するらしい。今ピカチュウが食べているものでも20センチ程の大きさがあり、なるほど彼のような小柄なポケモンが食べきろうと思えば必死になるのも頷ける。

ルカリオ「声かける?」

ミミロップ「え、別に野生だし、そういうの気にしなくてもよくない?」

ルカリオ「それもそうか」

ルカリオ達は普段、人間に近い所で生活している。ご近所さんや近くを通りがかるポケモンには挨拶をするのだが、三つの地方を渡り歩いてもなお、その考え方や癖はなりを潜める事はないようだ。

まだまだその辺り緊張感が足りないと反省しつつ、ルカリオ達はピカチュウの近くまで行き、カイスの実を選別し始めた。

ルカリオ「おっ、これとか丁度いい大きさだね。みずみずしいし、とても甘そう」

ミミロップ「それくらいなら食べきれるかな? 大きすぎても困るし……あんまり大きすぎると中身スカスカとかあるの?」

ルカリオ「どうだろ。ためしにおっきいやつ持って帰ってみる?」

ミミロップ「ちょっと興味あるし、いっこだけそうしてみましょ」

ピカチュウ「!!」

ガサ、とピカチュウが持っていた袋を地に落とす。

ルカリオ達がカイス実をいくつか選び採取したところで、ようやく彼らの存在に気づいたようだ。

ピカチュウ「あ、あの、その、ぼく……ごめんなさい!」

そしてルカリオ達は、どういうわけか勢いよく謝られてしまった。
 ▼ 546 リゴン2@ねらいのまと 18/08/12 01:29:50 ID:iwmEM6mY [2/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




ピカチュウ「あはは、ぼくの早とちりだったんだ……」

ぺこぺこと頭を下げるピカチュウをなだめ、とにかく謝られるいわれはないと話すルカリオ。やはりピカチュウの勘違いのようで、彼はてへへと頭をかいて苦笑いを浮かべた。

ピカチュウ「この辺りは縄張りになってるし、君達を新しい見回りかと思っちゃって……木の実とか勝手に採ったから怒られるかなって思ったんだ」

ルカリオ「ここは誰かの縄張りなのか……」

ミミロップ「まぁすごく良い場所だしね」

一見して他に何のポケモンの気配も感じられないが、誰かの縄張りという事であれば立ち去るなり交渉するなりしなければならなくなる。不必要に争いを起こすわけにはいかない。

ルカリオ「誰の縄張りとかわかるか?」

ピカチュウ「えっとね……ボスゴドラとヘルガーだよ」

ルカリオ「マジかよ」

それを聞いてルカリオは目を細める。

ミミロップ「何か厄介な事でもあるの? まぁ、どっちも強そうではあるけど」

ルカリオ「厄介というか……ボスゴドラは山まるまるを縄張りとする事が多いんだ。毎日自分の縄張りを歩き回って、余所者は見つけ次第排除しにかかる」

ミミロップ「範囲が広いって事ね」

ルカリオ「そうだね。でも、ハクタイの森に縄張りを作ったって事は、山まで持たずある程度の範囲に止めてるんだと思うけどね。でなけりゃ、こんな所にそもそも来ないはずだし」

一部は山になっている所があるとはいえ、ハクタイの森はボスゴドラが好んで縄張りとするような土地ではない。そもそも、この地方にボスゴドラがいること自体珍しく、ボスゴドラ自身も縄張り取りに苦労したのではないかと思われる。
 ▼ 547 チュル@あまいミツ 18/08/12 01:30:08 ID:iwmEM6mY [3/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルカリオ「ヘルガーは群れで行動するからね。襲われたらひとたまりもないよ」

ミミロップ「ウインディの時とはわけが違う?」

ルカリオ「わからないけど、ヘルガーの方が攻撃的じゃないかな? もしかしたらボスゴドラとヘルガーの群れで縄張り争いをしてるのかも」

ミミロップ「それは遭遇したくないわね……」

その両者がぶつかり合っているとしたら、近くで眺めているのも危ないくらいに壮絶な戦いとなっているだろう。そうでなくとも、互いに牽制状態であるならば、近寄らぬが吉。何気ない行動が引き金となり、戦いが始まってしまう恐れがある。

そう思えば、こうして縄張りの中で木の実を食べる行為さえ危険だろう。見つかれば、すぐさま戦闘を仕掛けられる可能性が高い。食料については生命の維持に直結する極めて重要な問題であるため、縄張り保持者は他の諸々を差し置いてでも対処に当たる場合がほとんどなのだ。

ルカリオ「ピカチュウは、こんな所で木の実を食べてて大丈夫なのか?」

ピカチュウ「あ、うん。この辺りは縄張りとしても微妙な位置だからかわかんないけど、ほとんど誰も来ないんだ」

ミミロップ「どうしてかしら、すごく良い場所なのに」

ピカチュウ「あんまり合わないから、かな? どっちもこんな穏やかな場所にいそうなポケモンじゃないし」

ルカリオ「それは確かにそうだが……」

しかし、例えばボスゴドラに関して言えば、進化前のコドラは水辺をよく好むポケモンで綺麗な湧き水の近くに巣を作るという特徴があるため、この場所がボスゴドラにとって好みの場所ではないというのは、些か疑問に思える。

進化してがらりと性格や好みが変わるポケモンもいるだろうが、大抵の場合は個人の趣味嗜好などはそう変化しないものだ。

ルカリオ「(まぁ、ピカチュウのこの暢気具合を見れば、本当なのかもしれんな)」

失礼な事を思うようだが、どう足掻いてもボスゴドラやヘルガーとまともに戦う事さえできそうにないピカチュウが危機感をそれほど覚えていない様子を見れば、彼の言う事もあながち間違いではないのかもしれない。

さらに言えば、見回した限り、彼らが得物を食い散らかしたり縄張りを主張するような傷跡をつけたりしている様子は無い。人間が清掃活動を行ったのではないかと思えるくらいに、ただ美しい自然が広がるのみである。
 ▼ 548 ロスター@みどりのバンダナ 18/08/12 01:30:27 ID:iwmEM6mY [4/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ピカチュウ「二匹は、この辺に住んでるの?」

ルカリオ「いや、生まれはシンオウだけど、棲家は全然違う地方にある。今はまぁ、旅行みたいなもんだ」

ミミロップ「そうそう。ちょっと特殊な旅行だけどね」

ミミロップはルカリオの腕に手を回し、ぎゅっと抱きついてみせる。WFCに出るための修行の旅とはいえ、これは新婚旅行でもあるのだ。

ピカチュウ「へ〜、そうなんだ。仲良さそうだし、羨ましいなぁ」

仲睦まじくしているルカリオ達の様子を見てピカチュウの方が照れてしまったのだろう、ピカチュウは両手をもじもじさせながら少し頬を赤くして笑っている。

べったり仲が良い割に周囲からこういった反応を見せられる事が少ないルカリオとミミロップは、ピカチュウの反応に嬉しいのやら恥ずかしいのやら複雑な感情を覚える事になった。

ルカリオ「んと、その袋はなんだ?」

慣れない状況に微妙な居心地の悪さを感じたのだろう、ルカリオは話題を逸らしにかかった。

ピカチュウ「これ? これはね、オボンの実」

ミミロップ「随分とたくさん入ってるみたいだけど……」

ピカチュウ「うん。でも、まだまだだよ。集めきるには、まだまだ」

ピカチュウは袋の中を覗き込み、難しい顔をして首を横に振る。

ルカリオ「いくつ集めるつもりなんだ?」

ピカチュウ「えっとね、百個!」

ミミロップ「百個も?」

ルカリオ「そりゃすごい」

木の実は、種類によれば一つの木に沢山の実をつけるものもある。ものによっては、状態は様々あれど、一本の木で百などゆうに越すくらい実を生らせる場合もあるとか。

オボンの実も一つの木にそれなりの数を実らせるが、オボンはオレンの木の派生と言う事もあり、自生しているものを発見するのは難しい。しかも、ポケモンだけでなく人間も好んで実を採るため、木が見つかっても満足に実がなっているとは限らない。

そういう意味での希少性から言えば、運が良くない限り、百個のオボンを集めるのはかなり難しいだろう。
 ▼ 549 カマル@ライドギア 18/08/12 01:30:53 ID:iwmEM6mY [5/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルカリオ「実を幾つか持ってるって事は、オボンの木はあるのか」

ピカチュウ「ううん……あるにはあるんだけど、ね」

ピカチュウは言葉を詰まらせ、苦笑い。どういう事かと尋ねるより先に、ピカチュウの言葉を思い出し、何となく予想がついた。

ルカリオ「その木のある場所にこそ、ボスゴドラやヘルガーがいるのか」

ピカチュウ「うん……そういうこと」

縄張りについてボスゴドラやヘルガーがいることをよく知っているのは、そういう理由があるらしい。おそらく、何度かオボンの実を採りに行こうとそこへ向かうも、満足に回収できず襲われては逃げる事を繰り返しているのだろう。

その過程で、危険な場所や安全な場所を見極めていったに違いない。だからカイスの実を齧るピカチュウは、こんなにも無防備だったのだ。

ミミロップ「でも、どうして百個も実を集めてるの?」

ピカチュウ「それは……」

ピカチュウは視線を伏せた。

話しにくいことなのだろうか。だが、無理に話さなくてもとミミロップが言葉を挟もうとするも、ピカチュウはそれより先に自身の事情について訥々と話し始めた。

ピカチュウ「ぼくにはね……お姉ちゃんがいるんだ。お姉ちゃんね、崖から落ちちゃって、ずっと元気をなくしてるんだ」

ルカリオ「怪我してるのか」

ピカチュウ「うん。まぁ骨が折れたりまではしてないんだけどね」

ミミロップ「大変だったのね……」

ピカチュウ「あはは、ありがと。それで、ぼく、お姉ちゃんに元気になってほしいから、お姉ちゃんが大好きなオボンの実を集めて持って行ってあげたいんだ」

ピカチュウはオボンの実が入った袋をぎゅっと抱きしめる。とても姉思いなのだろう、その様子から彼の想いがよくよく伝わった。
 ▼ 550 ッキー@ナナのみ 18/08/12 01:31:16 ID:iwmEM6mY [6/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルカリオ「そのオボンの木があるところに案内してくれないか?」

ピカチュウ「えっ!? で、でも、そこにはボスゴドラが……」

思ってもみない提案に、ピカチュウは驚いて顔をあげる。そして、もしかして手伝ってくれるのかという期待に満ちた表情でルカリオを見た。

ルカリオ「ちょっとワケあって俺たちこの辺の場所を数日使いたいんだ。その話をしに行きたい」

ミミロップ「そのついでに木の実ももらえばいいし。まぁ、話の通じる相手ならだけど」

ピカチュウ「あ、えっと……たぶんそれは……」

概ね期待通りの言葉が返ってきたことに喜ぶも、彼らの目的を聞き言葉を詰まらせるピカチュウ。どうやら、話してどうにかなるタイプの相手ではないらしい。

どうしたものかと考えるルカリオ。目的を考えれば予想される面倒の芽は摘んでおきたいところだが、可能性を見出せないのであれば仕方が無い、見つかって襲われる可能性を考慮しつつ修行をするか他に場所を探すかしなければならない。

ミミロップ「ねえ、気になるんだけど、そのオボンの木の所にいつもボスゴドラやヘルガーがいるわけじゃないでしょ?」

ピカチュウ「うーん、それはぼくにもわからないけど……少なくともぼくが実を取りに行った時は、いつもどっちかがいたから……」

ルカリオ「案外そのオボンの木を気に入ってるのかもね。そこからあまり動かないのなら、俺達にとっては好都合だけど……」

ボスゴドラの習性を考えればそう楽観してもいられないが、拠点を定めそこから遠征する形で見回りを行っているのなら、いくらでもやりようはある。ヘルガーにしても、行動はほとんど群れで行うため大きな動きがあればすぐにわかりそうなものだ。

ルカリオ「まぁ、何にしてもちょっと様子を見て来よう。それからどうするか考えよ」

ミミロップ「それもそうね。なるようにしかならないんだし、考えるよりまず行動しましょ」

ピカチュウ「ぼ、ぼくも行くの?」

ルカリオ「そうじゃないと場所がわからん……」

怯えた表情を浮かべるピカチュウ。しかし、オボンの実を集められるチャンスを逃したくないという思いからか、彼は意を決したように頷き、オボンの実が入った袋をまたきゅっと握った。
 ▼ 551 ンプク@くろいヘドロ 18/08/12 01:31:39 ID:iwmEM6mY [7/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




その場所は小高い丘の上にあった。先日ルカリオ達が修行していた丘程の高さは無いが、なるほどこの場所からなら森の一部をよく見渡す事ができる。きっと彼らの縄張りはこの丘から見渡せる範囲にあるのだろう、そう思えばここを拠点とする意味もよくわかるというもの。

他に違いを挙げるとするなら、この丘には実の生る木が多く自生しているようで、ざっと見回すだけでも五、六種類の木をあちらこちらで見つける事ができる。中には、いつぞやに食べて痛い目を見たヨプの実の木もあった。

ルカリオ「ざっと見た感じ、ボスゴドラもヘルガーもいないようだが……」

丘からの見通しは良くとも、多数の木が生えているため丘自体の見通しはそう良いものではない。適当に歩いていれば、大木の陰から縄張りの主がぬっと姿を現すなんて事もあるかもしれない。

しかし、ルカリオには波動の力がある。おおよそ目が届く範囲であれば、この丘の生物反応程度であれば簡単に察知する事ができる。

つまりは、ボスゴドラもヘルガーも今は不在にしているという事。

ミミロップ「オボンの木はどこ?」

ピカチュウ「えっと、あの頂上辺りだよ。ほら、一本だけぽつんと立ってるやつ」

ピカチュウが指差す方を見る。周囲の木々から離れて立っている様子を見れば、実の採取が難しい事は容易に想像できた。

ルカリオ「ありゃゴソゴソしてたらすぐバレるな……でも今はいないみたいだし、採ってくるか?」

ピカチュウ「できればそうしたい……」

ミミロップ「なら行きましょ。鬼のいぬ間に、ってやつよ」

それでも周囲を警戒しながら丘を歩いていくルカリオ達。このまま実を回収できればピカチュウの目標は達成できるかと思っていたが、事態はそう易いものではなかった。

ミミロップ「待って。何か音がする」

ルカリオ「どんな音?」

ミミロップ「うーん、これは……地面を抉る音?」

ルカリオ「え、それって」

ルカリオが言葉を紡ごうとしたそのとき、地響きと共に丘の一部が盛り上がっていく様子が窺えた。土はどんどん高さを増し、やがては二メートルほどの山になる。

何事かと目を凝らしてみる三匹。程なくして土の山が崩れ、中から縄張りの主が姿を現した。
 ▼ 552 プ・ブルル@ピーピーエイド 18/08/12 01:31:57 ID:iwmEM6mY [8/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルカリオ「あぶね、向こうまで歩くところだった」

ミミロップ「あれ、地面掘ってる音だったのね」

突然地面から姿を現したボスゴドラ。岩盤でも埋まっているのだろうか、外に出てきた彼はごりごりと大きな顎を動かし何かを味わっているように見える。

ピカチュウ「あっ、言い忘れてたけど、この丘の裏手は岩山みたいになってるんだ。だから、ボスゴドラはそこでよく鉄を探してる」

ルカリオ「そもそも餌場なのかここは」

となれば、見つけた鉄を食べているのだろう。ボスゴドラは巨体を震わせ、身体にまとわりついた土をぼとぼとと地に落としている。

しかし、丘が崩れないよう配慮しているのだろうか、彼が出現した地点以外に地面が掘り返された様子は無い。掘る場所を決めているか、今回は止む無い事情でもあったのかもしれない。

ミミロップ「にしてもあのボスゴドラ……」

ルカリオ「すごく大きいな……」

一般的にボスゴドラの身長は二メートル前後とされているが、丘に出現した固体はそれ以上、ゆうに三メートルはあるかという巨体だ。

角は長く、その身体には遠目に見てもわかるほどの大きな傷が見て取れる。どうやら歴戦の固体らしい、その戦闘力は相当なものだろう。

しかし、ルカリオ達はひとつ、別な事が気になっていた。

それは、ボスゴドラの色である。彼は、以前見たフライゴンやトリトドンのように、全身が黒いのだ。

元々ボスゴドラは黒色の身体をしているが、この固体は鋼の部位に至るまでが黒っぽく色づいている。その配色たるや、ヘタをすれば予めボスゴドラだと教えられていなければ何のポケモンなのか判別できないだろう。

ミミロップ「あれってもしかして……」

ルカリオ「うん……これは、ちょっと困ったね」

ピカチュウ「えっ……?」

ルカリオ達の想像が正しければ、彼に交渉を持ちかけるのは無謀そのもの。この時点で、ルカリオ達は場所を移すか隠れながらの修行を余儀なくされてしまった。
 ▼ 553 ントラー@アイスメモリ 18/08/13 15:52:49 ID:f0M2g33Q NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 554 ダリン@きれいなハネ 18/08/14 03:28:51 ID:Ks.k9QR2 [1/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ボスゴドラを見て少しばかり苦い顔をするルカリオとミミロップ。先ほどまでとは違い急に歩みが止まる二匹に、ピカチュウは心配そうな顔をする。

ピカチュウ「やっぱり、難しそう?」

ルカリオ「どうだろう……少なくとも、話が通じないだろう事はわかった」

ピカチュウ「やっぱりお話できないよね……」

ルカリオ「あれは、ちょっと特殊な固体かもしれなくてな……」

フライゴンの言葉を思い出す。

ポケモンがポケモンを実験材料に使う。その固体の特徴として、身体が黒い事が挙げられる。

ただ、目の前にいるボスゴドラが実験を施された固体かどうかはわからない。例えば変異種であったりと、元々そういう固体として生まれてきただけかもしれない。

ミミロップ「話し掛けてみる?」

ルカリオ「それが確実だけど……」

たとえ相手がどんな固体であろうとも、話が通じる相手でなければその後の展開はほぼ同じだ。となれば、どういう相手であるか考えるより、最悪の場合を想定して逃げる算段を予めつけておくべきだろう。

ルカリオは自分の立ち位置や丘をくだる経路を見定め、よしよしと頷いた。

ルカリオ「俺達は話しに行くよ。ピカチュウはどうするんだ?」

ピカチュウ「えっと、赦しがもらえるなら木の実を採りたいけど……」

ミミロップ「そういえば今まで訊いてみたりはしなかったの?」

ピカチュウ「えっ? うんと、いつも怖くて、見かけたら逃げるばっかりだったから……」

ピカチュウは視線を落としたあと、困ったように笑ってみせた。

ルカリオ「まぁとにかく、あとはなるようにしかならない。逃げる準備だけはしておいてね」

ルカリオはミミロップとピカチュウが頷いたのを確認すると、ボスゴドラに向かってゆっくりと歩き出した。
 ▼ 555 ーディ@マトマのみ 18/08/14 03:29:13 ID:Ks.k9QR2 [2/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
丘の頂上付近で、ボスゴドラはただひたすらに鉄を噛み砕く事に夢中になっているようで、ルカリオ達が近くまで歩いて来ても気づく様子はない。

このままオボンの木まで歩いてやり過ごす事ができそうなくらい相手はこちらに無関心なのだが、油断はできない。傍を通りかかった瞬間、目の色を変える可能性は充分ある。

急な対処を要する事態はできれば避けたい。ルカリオは、やや離れた位置から彼に声をかけることにした。

ルカリオ「すまない。ちょっと話がしたいんだが、いいだろうか」

片手を挙げ、気さくな雰囲気を演出しつつ声をかける。

しかし、聞こえていないのか自分が声をかけられていると思っていないのか、ボスゴドラはルカリオ達の方を向く素振りを一切見せない。

ルカリオ「ボスゴドラ、お前に話してるんだが……」

ボスゴドラ「ゴドラルウアァ!!」

ルカリオが更に近づき腕に触れようとしたその瞬間、ボスゴドラは雄たけびをあげ両手をぶるぶると振るわせ始めた。

ただならぬ雰囲気に思わずルカリオは伸ばしていた手を引っ込め、そのまま拳を握って戦闘態勢をとる。

ボスゴドラ「ドララァ……」

空に向かい声を張り上げたボスゴドラはゆっくりとルカリオ達の方を向く。しかしその視線は声をかけたルカリオではなく、その少し後ろにひかえていたミミロップを捉えていた。

ミミロップ「ちょなによ!」

自分が見られるとは思いもしなかったミミロップは警戒心を丸出しにし、ボスゴドラを睨み返す。

ボスゴドラ「グガァ!!」

ルカリオ「これは話が通じる相手じゃないな。とりあえず、逃げるぞ!」

ミミロップ「もー!」

ピカチュウ「ひええ!」

ミミロップの対応について気に食わなかったのかそもそも意に介さなかったのか、ボスゴドラは再び雄たけびをあげ、ルカリオ達に向かって来る。

ボスゴドラはどすどすと地面を踏みしめ、地ならしをするように彼らの方へ走り出した。
 ▼ 556 ョロトノ@てんかいのふえ 18/08/14 03:29:31 ID:Ks.k9QR2 [3/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


ミミロップ「なんか急に素早くなってない!?」

ルカリオ「そうだね……」

ボスゴドラは元々そう素早さの速いタイプのポケモンではない。しかし後を追いかけてくるボスゴドラはどんどん走る速度を上げてきており、油断してしまえばすぐにでも追いつかれてしまいそうだ。

ルカリオ「こりゃ結構走らなきゃいけないな……」

ミミロップ「良い運動になって何よりよ、まったく……あれ?」

ルカリオ「うん? どうかした?」

ミミロップ「ピカチュウは?」

ルカリオ「え」

走りながら、周りを見回す。

すぐ横を一緒に走っていると思っていたが、いつの間にかルカリオとミミロップの二匹だけになってしまっている。

ルカリオ「もしかして途中で道をそれたのかも」

ミミロップ「はぐれちゃったか……でもボスゴドラ、こっち来てるし大丈夫かな?」

ルカリオ「だといいけど……」

もう一度、念入りに周囲を見回してピカチュウの姿を探す。しかし、彼の姿はおろか黄色っぽい何かさえ見当たらない。

ルカリオ「とにかく川の所まで逃げよう」

ミミロップ「そうね。撒いちゃいましょ」

ぐっと走る速度を急激に上げる。いくらボスゴドラの足が速いと言っても逃げるはルカリオとミミロップ、あっと言う間に彼の可視範囲から逃れてみせた。
 ▼ 557 アームド@とくせいカプセル 18/08/14 03:29:55 ID:Ks.k9QR2 [4/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




川まで戻ってくる頃には、途中で諦めてくれたのだろう、もうボスゴドラが追ってくる気配はなかった。

やれやれと川辺の岩に腰を下ろし、小さく息を吐くルカリオ。ミミロップは戻るついでに採ってきていた小さめのカイスの実をはいとルカリオに渡した。

ルカリオ「ありがと。しかし、ピカチュウは大丈夫なんだろうか」

ミミロップ「逃げてる間も全然姿見なかったしね……」

シャクシャクと実を齧りながら近場を見回す。

ミミロップ「あ、いたわ」

ルカリオ「ほんとだ。無事でよかった」

彼の身を案じて暫く、ピカチュウがおそるおそるといった様子で茂みから姿を現した。

ルカリオ「無事だったんだな」

ピカチュウ「あ! う、うん、なんとかね……」

ミミロップ「どこからはぐれてたの? 丘の時点で?」

ピカチュウ「うん……無我夢中で走ってたらいつの間にか自分だけになってて……」

ただ彼にとっては幸いな事に、ボスゴドラはルカリオ達を追いかけて行った。おかげでピカチュウは、辺りを注意深く観察しながらではあったが、自分のペースでここまで戻る事ができた。

ルカリオ「しかし、話ができそうにないとなると俺達も油断してられないな」

ピカチュウ「二匹は、ここで何をするの?」

ルカリオ「俺達は修行してるんだ。だから、トレーニングに使える丁度良い場所を探してるんだ」

ピカチュウ「へぇ、すごいんだ……」

ピカチュウはルカリオの言う事に感心しつつも、どこか思いつめたような表情を浮かべている。

ピカチュウ「あ……」

自分でそのことに気づいたのだろう、ピカチュウは短く声をあげ、ぱっと作り笑いを浮かべる。だが、それでも誤魔化せなかったと思ったのだろう、ピカチュウはううんと小さく唸ってみせた。
 ▼ 558 タフリー@かおるキノコ 18/08/14 03:30:18 ID:Ks.k9QR2 [5/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ピカチュウ「僕ね、とっても貧乏で、とっても弱いんだ。だから、強いポケモンとか見ると、すごいなって思う」

ルカリオ「まぁ……俺達が強いかはさておき、ピカチュウといったら電撃がすごいって話じゃないか」

ミミロップ「そうそう。10万ボルトとか、得意技なんでしょ?」

そう言う二匹に、ピカチュウは更に困った顔をした。

ピカチュウ「ぼくね、その、苦手なんだ。10万ボルトっていうけど、たぶん1万ボルトも出ないと思う……」

しょんぼりと下を向いてしまうピカチュウ。

戦闘力は生まれもっての才能や日々の努力によって、同種であっても大きく異なってくる。ポケモンは戦う事を本能で理解している生き物とはいえ、中にはその意思が弱い者だっている。

例えば、今はもう亡くなってしまったが、ルカリオの友人ストライクの恋人であったラランテスなどは戦いを一切好まず、得意であるはずの草技ですらロクに繰り出せなかった。

ミミロップ「まぁ強さが全てじゃないわよ」

ピカチュウ「……そうでもないよ」

慰めようと声をかけるミミロップだが、ピカチュウは意外にも少々強く彼女の言葉を否定する。

ピカチュウ「お姉ちゃんが怪我をしたって言ったでしょ? あれ、他のポケモンにやられて怪我しちゃったんだ」

ルカリオ「なるほど……」

ミミロップ「誰にやられたの?」

ピカチュウ「それがね、ヘルガーなの」

ピカチュウは身体を震わせ、地面を強く睨みつけた。

ルカリオ「それは、この縄張りを指揮してるっていう群れの事か?」

ピカチュウ「うん……右目の上に傷があるやつがリーダーなんだ」

ミミロップ「ヘルガーの方も凶暴そうね」

ルカリオ「俺達を見つけ次第襲い掛かってくるかもね」

黒色のボスゴドラと、ライチュウに怪我をさせたヘルガー。どちらにしても、修行がしたいから場所を使わせてくれなどと話せる相手ではなさそうだ。
 ▼ 559 ャラランガ@ピントレンズ 18/08/14 03:31:00 ID:Ks.k9QR2 [6/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルカリオ「まぁ元気出せよ。そういう事なら、さっさとオボンの実集めて届けるぞ」

ミミロップ「そうそう。他にも木はあるかもしれないし、こっそり行けばあの丘の実も採れるかもしれないしね」

ぽんぽんとピカチュウの身体を優しく叩くルカリオ。ミミロップも隣でうんうん頷いてピカチュウを励ましている。

ピカチュウ「ありがとう……」

彼らの言葉が嬉しかったのだろう、ピカチュウは目に涙を浮かべてにっこりと笑ってみせた。

ピカチュウ「でも……どうして二匹は、見ず知らずのぼくなんかに協力してくれるの?」

ルカリオ「どうしてって言われてもな……成り行きと言うか、ついでというか」

ミミロップ「正直に言うけど、完全な善意で言ってるってわけでもないのよね。例えばボスゴドラに隠れて木の実を採りに行くのだって、修行の一環になるわけだし」

勿論彼らが言う事も事実ではあるが、困っているポケモンを放ってはおけないという気持ちも確かにある。彼らの旅の目的から考えればどうしても融通が利かない時や自分達の事情を優先したい時はあるが、できることなら誰かの助けになるよう行動していきたいと思う気持ちも本物だ。

ピカチュウ「ほんとにすごいなぁ……ぼくたち、今まで生きることに精一杯だったから、他のポケモンの事なんて考える事もできなかったよ」

ルカリオ「事情はそれぞれ違うんだし、だからどうという事はないさ」

ミミロップ「その分私達は、普段は結構気楽な生活してるわけだしね」

ルカリオ達と違い、ピカチュウたちは野生という過酷な運命の中を日々生きている。

こうして当たり前のようにルカリオとミミロップ、二匹でいると忘れてしまいがちだが、野生を生きるポケモン達は毎日が死と隣り合わせ。ひとつ間違えれば大怪我をしてしまうし、その日食べるものさえ手に入らない事もある。もしかしたら、僅かなミスが死に直結してしまうかもしれない。

ルカリオ達が生きる日常にもそのような危険はそこらかしこに潜んではいるが、野生の彼らに比べればそれらが起きる確率は格段に低く、そもそも心配する必要さえない場合もある。

ルカリオ「でも、どうしてオボンなんだ? 好みとはいえ、他の実じゃダメなのか?」

ピカチュウ「オボンがいい。他の実もよく食べてたけど、お姉ちゃんはオボンの実が一番好きなんだ。それに……」

ミミロップ「それに?」

ピカチュウは少し照れくさそうにして、オボンの実が入った袋をきゅっと閉めた。
 ▼ 560 ニータ@たいようのふえ 18/08/14 03:31:18 ID:Ks.k9QR2 [7/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ピカチュウ「ぼくね、お腹がすいてどうしようもないって時、いつもお姉ちゃんにオボンの実をもらってたんだ」

ピカチュウ「お姉ちゃん、オボンの実だけはどこかに隠し持ってるみたいで、ぼくがおなかすいたってぐずったときはそれを出してくれるんだよ」

嬉しそうなピカチュウの笑顔。大好きな姉に木の実を分けてもらえる嬉しさやお腹がすいたとゴネる自分の恥ずかしさなどがない交ぜになって、きっと複雑な思いでいるに違いない。

ピカチュウ「オボンの実を分けるときは、いつもはんぶんこなんだ。っても、綺麗には割れないんだけどさ。でもお姉ちゃんね、いっつも大きい方を僕にくれるの」

ミミロップ「弟思いのお姉さんなのね」

ルカリオ「俺の友達にも似たような姉弟いるわ。そう思うと、なんか情景がよく思い浮かぶ」

先にシンオウ大会の会場へ行ってしまったサーナイトとエルレイド。彼女達もきっと同じ状況になればこのピカチュウ姉弟と同じようなエピソードができるに違いないと、ルカリオは小さく笑った。

ピカチュウ「だからね、今度はぼくがお姉ちゃんにオボンの実を分けてあげたいんだ」

ミミロップ「素敵な話ね。でも、どうして百個なの?」

ピカチュウ「え、えっとね? 笑わないでほしいんだけど、その……」

ピカチュウはふぅっと少々荒めに息を吐き、恥ずかしそうに赤いほっぺを更に濃く染めた。

ピカチュウ「ぼくがね、今まで『おなかすいて我慢できない!』って、ゴネた数……」

ルカリオ「なるほど……でも、別に笑うような事じゃない」

ミミロップ「そうよ。むしろ数えてた事に驚きだわ」

ピカチュウ「うぅ……とにかくね! そういう事だから、百個集めるまでは届けない事にしてるんだ」

ぎゅっと袋を握り締めるピカチュウ。小さく纏まって彼の手にすっぽりおさまる所を見れば、まだまだ目標数まで遠いとわかる。

ルカリオ「よし! じゃあ、作戦を立てるぞ」

ピカチュウ「えっ、作戦?」

ミミロップ「また急ねぇ」

ルカリオ「こういうのは速い方がいいんだ。俺に考えがある」
 ▼ 561 ラードン@ミュウZ 18/08/14 03:31:45 ID:Ks.k9QR2 [8/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


ルカリオの話はこうだ。

簡単に言えば、ボスゴドラをオボンの木から遠ざけて気を逸らせている間に実を回収する。非常にシンプルな作戦だが、その分無駄が無く心配事も少ない。

ルカリオ「ひきつける役は俺がやる。ミミロップちゃんとピカチュウはその隙に木まで走って、できるだけ沢山の実を回収するんだ」

ミミロップ「私はその間、他の脅威が近づいてこないか見てればいいのね」

ルカリオ「そういうこと」

ピカチュウ「うわ〜っ、そこまでしてもらうの、なんだか申し訳ないくらいだ……」

ルカリオ「言ったろ? 俺達は修行の一環としてこれをやるんだ、良い機会をくれてありがとうとさえ思ってるさ」

実際、特異種とも言えるボスゴドラを相手にするのは大変だろう。正面から戦うにしろ回避を主とするにしろ、良いトレーニングとなる事に違いは無い。ミミロップにしても、辺りを警戒する事は集中力や観察力の強化に繋がる。

状況を利用して、自らのトレーニングとする……ここまで旅をしてきて、彼らが学んできた事だ。

ミミロップ「他の脅威って言っても、ヘルガーとかの事よね?」

ルカリオ「まぁ縄張りって事だし、おおよそはね。ただ、あれだけ実のなってる木があるんだ、他のポケモンがやってきててもおかしくはない」

ピカチュウ「うう、き、気をつけなきゃ……」

自分で弱いと言っていたくらいだ、ピカチュウは起こりうる危険を想像して身震いをしてしまっている。

しかし、流石のルカリオとミミロップもそれに対して「自分達がいるから大丈夫」とは言えない。彼らの実力云々以前に、何が起きるか全くわからない状況にいい加減な約束などできないからだ。

ピカチュウ「でも、うん、お姉ちゃんのためだもんね、ぼく頑張るよ!」

意気込みを新たにするピカチュウ。その姿を見ていると、純粋な姉に対する感謝と尊敬の念が見て取れる。

ミミロップ「……色んな姉弟がいるわねぇ」

ルカリオ「……まぁ」

知り合いの姉弟が悪いというわけでは決してないのだが、色んな意味で苦労の多い姉弟であるため、ピカチュウを見ているとなんだか新鮮に見えるのだった。
 ▼ 562 ブトプス@コインケース 18/08/14 03:33:03 ID:GPfoR09k NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 563 ドリーノ@ふねのチケット 18/08/15 02:56:23 ID:4VaYvPi2 NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 564 ネボー@クイックボール 18/08/16 03:01:11 ID:eACQzezk [1/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




川辺から再び丘の上へ。

幸か不幸か、辺りは少しずつ暗くなってきており、視認による対象の捕捉は困難なものとなり始めている。無論それはルカリオ達も同じだが、ルカリオには波動が、ミミロップには優れた聴覚があるため、自分達以外の何者かが近づいてくればすぐにわかる。

丘は緩やかに風が木々を揺らす程度の物音しか聞こえず、誰かポケモンが辺りをうろついている様子は無い。ボスゴドラやヘルガーが夜行性かどうかはわからないが、彼らでさえ今はこの丘に姿を見せていないようだ。

ルカリオ「静かだね。でも、油断はできないよ。どこに相手が潜んでいるかわからない」

ミミロップ「たとえ眠ってても、私達が来たことで目を覚ますかもしれないしね」

ピカチュウ「うう、怖いなぁ……」

ヘルガーはともかく、ボスゴドラほどの巨体となれば仮に岩などに擬態していたとしても非常に目立つためすぐに気づく事ができるだろう。薄い草原と木々しかない丘に大きな岩がぽつんとあれば、誰だって首を傾げるというものだ。

ミミロップ「ヘルガーって群れでいるわよね?」

ルカリオ「そうだろうけど、獲物を探しに個人行動をしているかもしれない。見つかればすぐに仲間を呼ばれて大変な事になるかもしれないよ」

ミミロップ「それもそうか……じっと伏せられたりしたら見逃してしまいそうね」

ルカリオ「うん。俺もできる限り波動で探るつもりだけど、もしボスゴドラをひきつける事になればヘルガー探しは役に立たないと思ってね」

ベストな状況としては、オボンの木まで誰とも遭遇せず木の実の回収が行える段階まで持っていけること。勿論そのまま最後まで誰にも見つからず目的を達成できればいいが、最悪見つかっても回収が済んでいればあとは逃げるだけでいい。

ピカチュウ「物音とか、立てちゃだめだよね……」

ルカリオ「難しいと思うが、最低限にとどめておきたいな」

ピカチュウ「うう、が、頑張る」

何かが近づいてくればミミロップがその音を聞き分け、危険が及ぶ可能性を察知できる。しかし、それは相手も同じ。こちらが立てた物音に、物陰から飛び掛る機会を窺い始めるかもしれない。

一見して誰もいないとても静かな丘だが、どこに危険が潜んでいるかはルカリオにもわからない。全ての波動を狂い無く察知できるルカリオなど、波動の勇者くらいのものだ。
 ▼ 565 ャビー@あくのジュエル 18/08/16 03:01:46 ID:eACQzezk [2/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルカリオ「オボンの木まで500メートルってとこか……全力で走ればすぐに辿り着ける距離だが」

ミミロップ「足音も立てずにって思うと、地味に遠いわね」

いま、ルカリオ達は丁度オボンの木を正面に見ている。彼らのいる地点は背の低い木が多く茂る地帯となっていて、匍匐状態になれば近くを歩く敵に見つかることはないであろう程度に見通しの悪い場所。ここから数歩出ていけば、周囲に隠れられる所などほとんどない草原地帯に出る。

例えばボスゴドラが頂上付近にいて彼だけを気にすればよいのであれば、ぽつぽつと立っている木々の裏を渡り歩けば、気づかれずに近づくことも簡単だ。

だが、仮にその状況の中を歩く事になったとしても、ヘルガーの目は誤魔化せない。彼らはきっと、獲物を探してあちらこちらを歩き回っているはずだ。どこにいるとも限らない相手を警戒するというのは、非常に骨が折れる。

ピカチュウ「ね、ねえ、もし見つかっても、謝ったら赦してくれたりとか……」

怖気づいてきたのだろう、ピカチュウは恐怖をかき消そうとルカリオにすがるような目をしてみせる。

ルカリオ「無いだろうな」

しかし、ルカリオは彼の期待には応えない。ここで嘘や気休めを話したところで、実際に最悪の状況へと足を踏み入れてしまったなら、ひとしおの絶望を味わう事になる。そうなれば、臆病な彼の事だ、その場から一歩も動けなくなってしまうかもしれない。

そういった事態を未然に防ぐためにも、まだ何も起きていない今のうちに恐怖を慣らせておき僅かだけでも覚悟を決めさせておく必要がある。その僅かな差で、生きるか死ぬかの明暗が分かれてしまう事も往々にしてあるのだ。

ルカリオ「ヘルガーの群れが、人間を襲った話を聞いた事がある。原因や理由はわからないが、その人間は持っていたポケモンごと食い殺されてしまったらしい」

ピカチュウ「う、うぇ……」

ミミロップ「それって、密猟に手を出したハンターとかそういう系?」

ルカリオ「いや……言葉にするのも残酷、って言えばわかるかな。とにかく、そういう相手」

つまりは、そんな状況に陥るとは思えないような人間が被害者となったのだ。考えられる中で最も惨いと想像できる人間が、どういうわけか襲われてしまった。

ピカチュウにもその意図が伝わったのだろう、顔を真っ青にして言葉を失っている。
 ▼ 566 ルトロス@まんまるいし 18/08/16 03:02:13 ID:eACQzezk [3/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルカリオ「普段のんびりした暮らしをしてる俺達が言うのもなんだけど、場合によっちゃそれくらい怖い相手なんだ」

ミミロップ「平和ボケしてるけど、よくよく考えたら、そうよね。そういう中に、今はいるのよね……」

色んなポケモンと出会い、色んな物語の中で何度も思ってきたこと。こうして言葉にする事はできても、実際に彼らが野生の厳しさを本能的な部分から理解するのは中々難しい。

ピカチュウの顔を青くさせたルカリオとてそういう話を見聞きしたという程度で、実際にそんな場面に直面したとききちんとした対処ができるとは限らないのだ。

ルカリオ「さ、そろそろ出るよ。少なくとも周囲に生物反応は無い。あそこの、ズリの木の裏まで音を立てないよう極力急いで走る」

ピカチュウ「が、がんばる」

ミミロップ「私が先に行って様子を見てくるわ。適当にあとに続いてきて」

ミミロップは言い終わるや否や、すっと茂みから身を乗り出し、本当に音も立てず目的の場所まで軽やかに走って行った。

ピカチュウ「すごい、ほんとに音しなかった」

ルカリオ「次はピカチュウだ。君の後ろを俺が行くから、何かあればフォローする」

ピカチュウ「う、うん、ありがとう」

ピカチュウはごくりと唾を飲み込み、ミミロップの待つ木の裏を見据える。

ピカチュウ「よし」

短く呼吸を繰り返し息を整え、彼も茂みを跳び出した。

ルカリオ「特に気になる気配も無し。俺も出る……!?」

ふと、急に何かの気配を感じるルカリオ。慌てて波動を使いつつ、周囲を見回す。

少し離れたズリの木の下で心配そうにこちらを見るミミロップ、彼女とルカリオのちょうど中間辺りをおそるおそる走るピカチュウ、他に視認できる生命体は何も無い。それどころか、彼の波動でも周囲にポケモンらしき反応を確かめる事ができない。

だが、確かに彼は感じている。何かの気配を、彼らをじっと見つめる何者かの視線を。
 ▼ 567 グトリオ@きれいなぬけがら 18/08/16 03:02:54 ID:eACQzezk [4/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミミロップ「……?」

ルカリオの様子に気づいたミミロップは僅かに首をかしげ、直後には立派な両耳を立て、周囲の音を注意深く聞く。

流れる風の音、それが木々を揺らす音、それ以外は何も聞こえない。明るい間に見たボスゴドラのように地面からやって来る可能性も考慮しそちらにも耳を傾けてみるが、特に気になる音は聞こえてこない。

ピカチュウはもうミミロップのすぐ目の前までやってきている。だが、ルカリオは何かに警戒しているようで茂みから身を乗り出す様子すらない。

怖いと言っていたピカチュウを試しているのだろうか? 否、オボンの実を回収できればもう丘に来る事もないだろうこの状況下、彼はいちいちそんな事をする♂ではない。

となれば、考えられる可能性は限られてくる。

ミミロップ「近くにヘルガーがいるのね……」

ミミロップにその気配はまだ感じられない。となれば、ルカリオにしか感じられないくらい巧妙に気配を隠しているか、距離としてルカリオの方が近くにいるかのどちらかだ。

ピカチュウ「はぁ、はぁ」

ピカチュウはなんとかミミロップの所へ何事も無く来れたようで、ズリの木にすがりついて息を切らせている。

ミミロップは彼を尻目に、自分のすぐ近くに重点を置いて気配と物音を探る……やはり何も感じられない、何も聞こえない。

しかし、ルカリオにしかわからない何かが、すぐ近くに脅威となって現れていることだけは確かだ。ミミロップはルカリオの警戒を頼りに、どこから攻撃が来ても対処できるよう静かに身構えた。

ピカチュウ「あ、あれ? どうし」

ミミロップ「静かに。何かが近くにいるわ」

ピカチュウ「!」

彼女の言葉に、ピカチュウは両手で自分の口を覆う。そして辺りをきょろきょろ見回すも、彼の目にもポケモンはおろか何の生物も確認する事ができない。

ミミロップ「(来るとしたら、森の方か……)」

さわさわと風が草の海を波立たせている。風は丘から森に向けて吹いているため、もしかしたら自分達のにおいが風に乗って森に潜む何者かに届いたのかもしれない。
 ▼ 568 ルビル@イワZ 18/08/16 03:03:25 ID:eACQzezk [5/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

ルカリオ「あの様子、ミミロップちゃんも気づいたかな……」

ミミロップが身構えたのを見て、ルカリオは警戒を更に強めた。

相変わらず彼を射抜くような視線を肌に感じ、居心地の悪さを感じるルカリオ。しかし、相手は一切動く様子がなく、そもそも位置を特定できていないためこちらから仕掛けていくのは難しい。

ルカリオ「(俺が動いたところを狙うつもりか? なら、その時に迎え撃つしか……)」

その場その場で対処するしかない。そう思って一歩前に出かけたルカリオだったが、ある事に気がつき、出した足をすぐに引っ込めた。

ルカリオ「(……そういう事か。よし!)」

ばっ、と勢いよく茂みから跳び出すルカリオ。そして、ミミロップ達が待つズリの木とは全く違う方向に向かって大きく跳躍した。

ピカチュウ「ええっ!?」

ミミロップ「待って。あれは……」

ミミロップは、ルカリオが跳び出した際に見せた右手のサインを見逃さなかった。

手の甲を突き出し、棘を強調。このまま作戦は計画通り続行、という事だった。

ミミロップ「オボンの木まで走るわよ。急いで!」

ピカチュウ「え、ええ!? うん!」

草の絨毯が敷き詰められた丘を、頂上のオボンの木目掛けて走り出す。軽やかに跳躍しつつ草原を駆けるミミロップのその姿は、さながら森の聖獣のよう。

ピカチュウも遅れをとらぬよう、できる限り急ぎ足かつ忍び足で彼女のあとを追った。
 ▼ 569 ロッパフ@はつでんしょキー 18/08/16 03:03:56 ID:eACQzezk [6/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




広い草原を思いっきり駆け巡る。

暫く走り続け、ミミロップ達が見えなくなった辺りでルカリオは再び大きく跳躍し、離れた地点へと着地。そしてまた、すぐに全力で走り始めた。

これを何度も繰り返す。ミミロップ達からそれなりに離れた場所まで走りはするが、完全には遠ざからない。

ルカリオ「(そろそろか……)」

闇雲に走っているようで、実はきちんと走る順路を考えている。ルカリオはちらりと横目で周囲を確認した後、正面に見える大きな樫の木まで一気に跳んだ。

ルカリオ「そぉら、お出ましだ!」

着地と同時に、四方へ向けて波動弾。

そのうち三つは地面に着弾。しかし残る一つは……

ヘルガー「うげっ!」

ルカリオ「やはりいたか。まだまだ!」

再び四方へ波動弾を放つ。そして、今度は手応えを感じるより先に、もう一セット波動弾を撃ち込む。

ルカリオ「来たか!」

ガッ、と硬いものがぶつかる音。

ルカリオは背に持っていた骨棍棒を手に、急襲してきた相手、ヘルガーのだましうちを防いだ。

ヘルガー「ちっ……中々やるようだな」

続けざまに火炎放射などで攻撃してくるかとも思われたが、意外にもヘルガーは爪をおさめ、ルカリオと距離を取る。

その後、次から次へと彼の周りに他のヘルガー達が集まってきた。

ルカリオ「これはこれは。思ったよりも大勢で迎えてくれたんだな」

ヘルガー「我々は群れで行動するものでね。相手が一体だろうと百体だろうと、常に同じ数で相手をするのだよ」

一回り大きな身体、大きく反り返った角、そして右目の上にある傷……なるほどルカリオに爪を向けてきた彼がこの群れのリーダーらしい。まだ手を出すなと指示したのだろう、彼の周りに集まるヘルガーは唸り声をあげるばかりで動き出そうとする者は一匹もいない。
 ▼ 570 ラベベ@ほしのすな 18/08/16 03:04:31 ID:eACQzezk [7/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルカリオ「ちょっと相談があるんだが、させてもらえたりするだろうか」

ヘルガー「かまわんよ。まぁ、出せる答えは『No』以外に無いがな」

ルカリオ「供物を献上する、という提案でも?」

ヘルガー「必要ない。貴様がこれから供物になるのだからな」

ルカリオ「なるほど、理に適ってる」

ヘルガー「そうだろう?」

ルカリオ「っ!!」

再びヘルガーの爪攻撃が炸裂。ルカリオは先ほどと同じように骨棍棒で彼の攻撃を受けた。

ヘルガー「少しはやるようだな。貴様、只者ではないな?」

ルカリオ「その辺の、どこにでもいるルカリオさ。ただ、ちょっとばかし鍛えてはいるけどね」

ギリギリと両前足で骨棍棒を押さえ込むヘルガー。今度は譲る気などないのだろう、足に込める力を少しずつ強めていく。

ヘルガー「ふむ……貴様、狙っているな」

ルカリオ「さて……なんのことやら」

ヘルガー「とぼけても無駄だ。我々の奇襲を見抜いたのだ、こうして俺に火炎放射をさせる隙を見せるとは思えん」

ルカリオ「まぁ、そりゃそうだよな」

話は戦闘前にさかのぼる。

ルカリオはヘルガーの視線に気づき、敢えて大きな物音を立てて茂みから跳び出して姿をさらした。この時点で既に、ルカリオはヘルガーに「かぎわけ」られており位置を把握されていた。

しかし、ヘルガーたちは攻撃を仕掛けてこない。ルカリオはそれを、仕掛けてこないのではなく、まだ仕掛けられる位置にいないのだと判断。それでも見つかっていることに変わりは無い。そこで、敢えて射程圏内に跳び込んでいく事で相手の出方を窺う。

だが、草原を走り出してもなおヘルガー達は攻撃を仕掛けてくる様子は無かった。つまりは、積極的に攻撃を行う姿勢を見せる気はないという事。となれば、ヘルガーの狙いはかなり絞られてくる。

自分は見つかっているのだと相手に認識させてはいるが、攻撃する意思まではないと思わせる。だまし討ちの常套手段だ。
 ▼ 571 ズクモ@しゅんぱつのハネ 18/08/16 03:05:06 ID:eACQzezk [8/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ヘルガー「ククッ、実に見事。だが……戦況を見極めることに長けているのは、お前だけではない。俺にもある程度はわかるさ。例えばそう、こうしている今にも、貴様は俺の攻撃を見切ろうとしている」

ルカリオ「さて、どうかな」

ヘルガー「ふん、まぁ答えなくてもいいさ」

ヘルガーは体勢を変えないまま、後ろ足で地面を軽くかき鳴らす。

すると今まで後ろで待機していた他のヘルガー達が唸りを強くし、その口に赤黒い炎をちらつかせ始めた。

ルカリオ「おいおい一匹相手に酷くないか? 『袋叩き』かよ」

ヘルガー「悪いな、それが俺達のやり方だ。貴様も野生として生きているなら、わかるだろう?」

お生憎様俺にはわかりかねる、と答えようと思ったが今にもヘルガー達の総攻撃に遭いそうなこの状況、ルカリオは言葉を紡ぐ代わりに神速でその場から姿を消してみせた。

ヘルガー「ふむ、素早いな。俺達では到底追いつけなさそうだ」

ルカリオ「鍛えてるって言ったろ? それにしても、いちいち会話を挟んでくるとは、随分と余裕こいてくれてるな」

ヘルガー達から少し離れた地点に着地するルカリオ。着地点を見抜かれて攻撃されるかとも思ったが、彼のもとにとんできたのは攻撃ではなく余裕綽々としたヘルガーの言葉だった。

ヘルガー「数にものを言わせ、じりじりと獲物を追い詰める。これが俺達のやり方なのでな」

ルカリオ「悪趣味だな……だが、そうやって多くのポケモンを狩ってきたわけだ」

ヘルガー「そういう事だ。俺達の陣形にかかれば、ほとんどのポケモンが抜け出せない。まぁ、先日には電気鼠共を始末し損ねたがな。本当に弱い連中だったから遊んでやったんだが、崖の下に落ちられたのでは手が出せなくてな」

ルカリオ「……そうか」

それはおそらく、ピカチュウ姉弟のことだろう。ヘルガー達から逃れる事はできたが、姉の方は怪我を負ってしまった。ただの怪我で済んだらしいことは非常に運が良かったといえよう。
 ▼ 572 ラーミィ@タラプのみ 18/08/16 03:05:36 ID:eACQzezk [9/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ヘルガー「見ただろう、この木の実畑を。こうして木の実目当てに寄ってくるポケモンを狙って狩りをしているのだ」

ルカリオ「なるほど、賢いな」

ヘルガーの余裕ぶりに乗るフリをして時間を稼ぐルカリオ。

もうミミロップたちは木の実を採り終えただろうか。横目で丘の頂上付近をちらりと眺める。

ヘルガー「……相方が気になるか?」

ルカリオ「そりゃ気になるさ。愛する妻だからな」

ヘルガー「ククッ、そうか、それはよかった。これから仲良く夫婦でオネンネなのだから。まぁ、食べる時くらいは横に二体並べてやるよ」

ルカリオ「ほぉ、それはありがたい。だが……場合によっちゃ彼女、俺より強いぜ?」

ヘルガー「……ほう?」

ヘルガーの目つきが若干鋭くなる。

ヘルガー「!?」

突如、ルカリオとヘルガーの間に何かが飛んで来て地面にぶつかり、跳ねる。それは、おそらくミミロップの攻撃を食らい丘の上からここまで吹っ飛ばされてきた、手下のヘルガーだった。

ルカリオ「ね」

ヘルガー「……遊んでばかりもいられぬか」

ヘルガーは姿勢をやや低くし、ルカリオを一層強く睨みつける。それに倣い、他のヘルガー達も戦闘態勢を取り始めた。

ルカリオ「(やっぱり上にもヘルガーはいたか。でも、ミミロップちゃんが戦い始めたって事は、もう大丈夫かな?)」

なんとか彼女と合流したい所だが、この状況、戦闘を離脱する事さえ困難を極める事が予想される。ヘルガー達の余裕ぶりは、いわば自信の表れ。その態度が示す程度には実力があると、彼の雰囲気から読み取れた。

こうなれば、突破するにはリーダーを叩くしかない。これほどまでに統率された群れだ、指令を出す主が乱れたなら併せて隊列も乱れるだろう。

ヘルガー「かかれ!!」

ルカリオ「!!」

リーダーの号令と共に、今度は真正面から何匹ものヘルガーがルカリオ目掛けて飛び掛ってきた。
 ▼ 573 イアント@ヘルガナイト 18/08/16 03:06:10 ID:eACQzezk [10/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




ルカリオと時を前後し、ミミロップとピカチュウはオボンの木まで一目散に走っていた。

パワー重視とはいえ元々速度には定評のあるミミロップ、ものの数秒で木の下まで到達。遅れる事十数秒、ピカチュウも問題なくオボンの木まで辿り着く事ができた。

しかし、問題はそこからだった。

木の実を集めようとピカチュウが木に登り始めた辺りで、ミミロップは周囲に多数の気配を感じる。木を背に耳を立てると、先ほどとはまるで違い、隠す気など一切感じられない獣達の唸り声が彼女の耳に届いた。

ミミロップ「正面からやり合おうっての? だったら、さっさとかかってきなさいな!」

ミミロップが周囲に向けて挑発を投げかける。

すると、出てくるは出てくるは、口元に炎を携えたヘルガーが五匹、六匹……ざっと数えただけで、九匹も姿を現した。

ミミロップ「集団でか弱い私を襲おうっていうの? だけど、お生憎様、そう簡単にはやられてあげないからね!」

ヘルガー「!」

ごすっと鈍い音をたて、彼女の一番近くにいたヘルガーが強力なとび蹴りを受け、地面を抉りながら草原を滑り落ちていった。

ヘルガー「てめぇ……やりやがったな!」

それを戦闘開始の合図にと、残る八匹のヘルガーが一斉にミミロップ目掛けて襲い掛かってくる。

ミミロップ「遅いわ!」

ミミロップは余裕にもするするとヘルガー達の間をすり抜け、電光石火で次々とヘルガーに攻撃を与えていく。彼女に殴られ蹴られた個体は宙を舞い、身体から地に落ちた。

ヘルガー「ちっ……めちゃくちゃ強いじゃねぇか、話が違うぞ……」

飛び掛りながらも一番後ろで様子を見つつ攻撃をひかえていた固体が、短く唸り声を上げる。一筋縄ではいかないと判断したのだろう、無事に残った仲間が彼のもとへ集まった。

ヘルガー「誰だよこの前のピカチュウみたいに雑魚だって言ったやつ」

ヘルガー「しらねぇよ。俺だって、あいつらみたいだって聞いたからこの役引き受けたんだ」

ミミロップ「ピカチュウ?」

そういえばとミミロップは思い出す。ピカチュウの姉はヘルガーにやられたのだと。
 ▼ 574 ガピジョット@こうらのカセキ 18/08/16 03:06:44 ID:eACQzezk [11/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ヘルガー「こっ、この前戦ったのがピカチュウ達だったんだ。ものすげぇ弱いピカチュウ」

ヘルガー「そうそう。電気タイプだからちょっと警戒してたんだが、あいつの電撃全くきかねぇでやんの。今思い出しても、笑えるな」

ミミロップ「へぇ……」

ちらりと一瞬だけ木の上の方に視線を送る。必死に木の実を採っていたはずのピカチュウは、彼らの言葉に悔しさがこみ上げてきたのか、袋をぎゅっと握り締めわなわなと震えていた。

ヘルガー「いるよなぁ、餌になるだけの雑魚。ま、そういう存在がいるおかげで俺らは生きていけるんだけどさ」

ヘルガー「弱肉強食、いい言葉だよな。雑魚は雑魚らしく、俺らに食われてりゃいいん……」

ピカチュウ「うわああああああ!!!」

どうでもいい事を喋るのが好きなのだろう、ヘルガー達はミミロップのことも忘れ口々にピカチュウの悪口を言い始める。

それに耐えかねたピカチュウは怒りのあまり、木の上で叫び声をあげながら放電した。

ヘルガー「な、なんだ? 電撃!?」

ヘルガー「落ち着け! 一瞬だ、それもたいしたことなさそうだ……電気ショックか?」

しかし、悲しい事に、ピカチュウの怒りの声ですら、彼らに届く事さえない。それほど彼の電撃はか細く、炎タイプの敵に「全くきかない」と言わせてしまうほどに弱い。

ミミロップ「ピカチュウ……」

きっと彼は泣いているだろう。自分があまりにも弱かったせいで、姉を守れず怪我をさせてしまった。彼は自分の弱さを馬鹿にされることで、自分が姉を傷つけたように感じてしまう。

ヘルガー「急に何なのかわからねぇが……とにかく、あんたには死んでもらうぜ」

自分達の役割を思い出したらしい、ヘルガー達は姿勢を低くして戦闘態勢をとり始める。

ヘルガー「うおらあああっ!!」

ミミロップ「ふっ!!」

ヘルガー「ぐげぇ!?」

鋭い牙を光らせミミロップに跳びかかるヘルガー。しかし彼はミミロップに噛み付くどころか、逆にカウンターとしてとび膝蹴りを食らわされてしまった。強力な一撃をもらい、ヘルガーは遠く草原の彼方まで吹っ飛んでいく。

渾身の一撃を放ったミミロップは、すとっと軽やかに着地。そして長い耳をばさっとかき上げ、残ったヘルガーたちを睨みつける。

ミミロップ「私、そうやって弱い事を馬鹿にするの嫌いだから」
 ▼ 575 チュル@ゴーストジュエル 18/08/16 12:48:44 ID:f.K6p2d. NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援ぬ
 ▼ 576 メール@ミックスオレ 18/08/16 20:58:18 ID:LqtsW6jI NGネーム登録 NGID登録 報告
しえ
 ▼ 577 ママイコ@かわらのかけら 18/08/16 21:23:19 ID:mLfwgHJU NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
しえん
 ▼ 578 キノオー@イナズマカセット 18/08/17 02:46:20 ID:fDI2kddY [1/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




幾重にも撃ち込まれる炎の雨の中を駆け巡るルカリオ。ヘルガー達は逃げるルカリオに容赦なく様々な攻撃を次々に仕掛けていく。

さすが統率の取れたヘルガー達の攻撃、的確にルカリオの動きに合わせ攻撃を放っており、僅かでも手違いを起こせばたちまち彼らの餌となってしまいかねない。

ヘルガー「逃げてばかりではどうにもならんぞ。もう少し足掻いてみせろ」

リーダーのヘルガーがルカリオを挑発する。ルカリオは、それが罠であろうとそうでなかろうと、もう彼の言葉に乗るつもりはない。ルカリオの目的は、丘の上からヘルガーがこちらに吹っ飛ばされた時点で達成したようなものだから。

ヘルガー「しかし……あちらの様子がおかしいな。やはり早めにケリをつけるか」

先ほど丘の上から手下のヘルガーが吹っ飛んできてから、続けざまに二匹三匹と丘から転がり落ちるヘルガーを見た。もしかしなくとも、ミミロップが彼らを蹴っ飛ばしたのだ。

ヘルガー達の予測では、ルカリオの方が本丸と踏んでいた。その分こちらの戦力を手厚くしていたのだが、結果としてミミロップの実力を見誤っていたという事になる。このままいけば、ミミロップがルカリオの所へ加勢にくるのは時間の問題だろう。

ヘルガー「総員! 隊列を!」

ルカリオ「なんだ?」

リーダーの掛け声で、攻撃を重ねていたヘルガー達が一斉にルカリオの周りを走り、取り囲む。ルカリオは包囲されてしまわぬよう跳んでそこから抜け出そうとするも、ヘルガー達は攻撃を止め徹底してルカリオを囲う事に専念し始めたため中々逃れられない。

ヘルガー「悪いが、これで決めさせてもらう……灼熱の地獄に、もがき苦しむがいい!」

リーダーのヘルガーが大きな炎をルカリオ目掛けて放射する。ルカリオを取り囲んでいるヘルガー達はそれに合わせ、周りからリーダーの炎を補助するように炎を吹きかけた。

ルカリオ「こ、これは……!」

煉獄。激しい炎で相手を包み込み、灼熱の内に閉じ込め灰とする技。一度煉獄に取り込まれてしまえば、たとえ水タイプのポケモンであろうとも激しい炎に身を焼かれ、たちまち全身を大火傷してしまう。そして、ほとんどの場合はそのまま焼死してしまうのだ。

煉獄に捕まらぬよう草原を駆け抜けるルカリオ。しかしヘルガー達の隊列は確実にルカリオを取り囲み、彼を追う炎は草木を焼きながら着実にルカリオの身を包もうと勢力を増していく。

ルカリオ「これはまずいな……ふっ!!」

周囲を取り囲まれてしまってはなすすべもない。反撃を考えていたルカリオだが、攻撃を繰り出す算段がつけられず、やむなく神速で状況打開を図る。

ヘルガー「なんだと!?」

神速は、本来攻撃技。極端に素早く動く事で相手に先制でき、攻撃の威力にその速度を乗せる事を目的としている。つまりは攻撃のために素早く動くため、攻撃のコントロール等を考えれば最高速度で動くわけにはいかない。

しかし攻撃面を一切考えないのであれば、自分が動ける限りの最大速度で行動が可能なので、攻撃技としての神速を遥かに上回る速度を出す事が可能だ。

神速も、ルカリオが重点的にトレーニングを行っている技の一つ。彼が速度だけを考え本気で動けば、目に映らないレベルでの移動が可能となる。
 ▼ 579 カリオ@きれいなウロコ 18/08/17 02:46:44 ID:fDI2kddY [2/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




ルカリオ「こりゃすげぇや」

神速でヘルガー達の前から姿を消したルカリオは、ミミロップ達のいる丘の頂上に来た。そこでルカリオは、目の前に広がる光景に口笛を鳴らす。

そこにはミミロップと、木の実を採り終えたのだろうぱんぱんになった袋を持ったピカチュウ、そして横たわって全く動かない数匹のヘルガーがルカリオの帰りを待っていた。

ルカリオ「全部やっちゃったの?」

ミミロップ「いやいや、殺してはいないわよ」

ピカチュウ「みんな蹴られて動かなくなっちゃった」

ルカリオ「そうか……」

我が嫁ながら怖ろしいと、ルカリオは軽く身震いした。こんなとんでもない威力を出す脚を昼間にはぺろぺろと性的に舐め回していたと思うと、感慨深いものを感じずにはいられない。

ルカリオ「さて、回収が終わったなら逃げるぞ。リーダー達が追ってくる」

ミミロップ「お姉さんはどこにいるの?」

ピカチュウ「えっとね、もう暗いし、それにちょっと遠いし、川原まで戻ってから説明するよ」

ピカチュウの言葉にルカリオ達は頷き、草原を見渡してヘルガーが襲って来ないだろうルートを模索する。

ミミロップ「……ねえ、ボスゴドラのこと忘れてない?」

ルカリオ「そういや全然だな……でも、どこにも見当たらない。波動にも引っかからないよ」

ミミロップ「いないならまぁ、いいんだけど」

周囲にボスゴドラの気配を感じないとはいえ、一抹の不安は残る。何しろ黒いボスゴドラだ、どんな規格外の特性を持ち合わせているかわからない。

ルカリオ「とにかく、今はここから離れることだけ考えよう。ルート決まったし、急ごう」

言い終わるや否や、ルカリオは森の方へ向かって丘を駆け下りた。
 ▼ 580 ジュマル@どくのジュエル 18/08/17 02:47:15 ID:fDI2kddY [3/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告





三匹が無事に川まで戻った頃には、辺りはすっかり夜の闇に包まれていた。

灯りも何も無い川原。お互いを視認する事さえ難しい程暗くなってはいるが、ヘルガー達のことを考え、火をともすなどする事は避けている。

三匹はカイスの木の下で草木にまぎれながら、オボンの実を届ける計画を立てていた。この場所より川べりにある大岩の方が隠れるには良いのだが、そこはルカリオとミミロップが昼間「いたした」場所、においも跡ももうわからないだろうとはいえピカチュウを連れてくるのは気が引けた。

ピカチュウ「お姉ちゃんはたぶん、川の上流にある岩場で休んでると思う」

ルカリオ「たぶん?」

ピカチュウ「うん。だってぼく、目が覚めて木の実を採りに行ったのがそこからだから」

根城にしていた場所という事だろうか。上流となると綺麗な水が流れる場所であるため、そこもまた他のポケモンの縄張りである可能性がある。

ルカリオ「そこはヘルガー達の縄張りにはなってないのか?」

ピカチュウ「どうだろ……けど、ぼくたちが襲われたのは全然違う場所だったから」

ミミロップ「今更だけど、怪我して動けない間にお姉さんに危険が及ぶ事はなさそうなのね?」

ピカチュウ「無いとは言い切れないけど……ラフレシアさんがいてくれてるから、大丈夫だと思う」

新たなポケモンの登場に、二匹は「ほう」と頷く。他に仲間がいるからこそ、ピカチュウは安心して木の実を探しに出る事ができたのかもしれない。

ルカリオ「よし。なら、夜が明けたら早速向かうぞ。俺が見張りをするから、二匹ともゆっくり寝てね」

ピカチュウ「ええっ、それは悪いよ……」

ミミロップ「いいのよ。それもルカリオの修行のうちなんだから」

ピカチュウ「そうなの? なら、お言葉に甘えようかな……」

あたりに散らばる木の葉を布団に、ピカチュウはごろりと草の上で横になった。

丸く可愛らしい胸部がゆっくりと規則的に上下する。寝つきは悪くないようで、程なくしてこれまた可愛らしい寝息が二匹の耳に届いた。
 ▼ 581 メパト@1ごうしつのカギ 18/08/17 02:47:54 ID:fDI2kddY [4/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


ぐっと身体を伸ばし、ミミロップも柔らかい草の上に身体を横たわらせる。ルカリオはカイスの木を背に、胡坐をかいて夜空を見上げた。

月も星も、分厚い雲に覆われて、一切その姿を見せてくれない。夜に訪れる彼らのステージは、今日は休演を余儀なくされてしまったようだ。

半睡を取る前にはこうして空の模様を楽しむのが彼の日課だったが、緞帳が下りているのならば仕方が無い、静かに目を閉じ身体を安めにかかる。

ミミロップ「……ねえ」

ルカリオ「うん?」

耳に届く愛しい声。暫く風による木の葉と木々のコーラスを耳にしていたルカリオは、自分のすぐ隣にミミロップが腰をおろした事に気づいた。

ルカリオ「眠れないの?」

ミミロップ「ううん、そういうわけじゃないんだけどさ……」

言葉を濁すミミロップ。彼女の手がルカリオの左手に伸び、ゆっくりと重なった。

ルカリオ「何か相談?」

ミミロップ「まぁ、そんなとこ」

普段であれば、夜の遊戯のお誘いである事も考えられる。しかし彼女の状態や声色から、いつもとは少し違った話がしたいのだろうとルカリオは気づく。

ルカリオは姿勢を正し、自分の左手に重なる彼女の右手を反対の手で優しくなでた。

ミミロップ「ルカリオは今回の旅、WFCに出るための修行なのよね?」

ルカリオ「そうだね。勿論、新婚旅行としての意味も大いにあるよ」

ミミロップ「うん。それは、勿論なんだけど」

何かを言いにくそうにしているミミロップ。普段とは違う様子にルカリオは若干心配を募らせるが、急いて事情を聞きだそうとはしない。あくまで彼女が自発的に言葉に乗せるのを待っている。

いつもの様子、それがルカリオの聞き方。今ここに、自分の愛する旦那がちゃんといるんだという当たり前の事実に、ミミロップは安堵の息を漏らした。
 ▼ 582 サナン@なぞのすいしょう 18/08/17 02:48:38 ID:fDI2kddY [5/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミミロップ「旅に出るときにさ、自然の中で修行をするのは想像以上に大変って言ってたでしょ?」

ルカリオ「うん」

ミミロップ「まだ三箇所しか地方を歩いてないけど、それでも色んな出会いがあって、色んなポケモンを見てきたわよね」

ルカリオ「そうだね」

どこの世界でも、人やポケモンの生き方は千差万別。中でも野生として生きる環境はとりわけ厳しく、人間に近い所で暮らしているミミロップ達には想像さえできないようなものも多く存在する。

事実彼女達は、同じ「生きる」事に対してでさえ様々な考え方があるのだとここまで旅をしてきた中で思い知らされた。

考え方も、覚悟も、言動一つ一つでさえも、何一つとして同じものはなかった。

当たり前のこと。どこの世界で生きていようと、変わらない事実。だが、一つ違った環境の中でそれを思い知る事で、彼女の中で何かが変わろうとしていた。

ミミロップ「ルカリオは、その、ここまで色々経験してきて、何か変わった事とかってある?」

ルカリオ「変わった事か……うーん、自覚できる範囲では、無いかなぁ。ミミロップちゃんはあるの?」

ミミロップ「そう言われると答えは同じなんだけどさ……なんていうか、言葉にするの難しいけど、変わってしまいそうっていうか……」

ルカリオ「あぁ……」

なるほど、とルカリオは理解する。

きっと彼女は、様々な生き様に触れていくことで自分が今持っている考え方が変わってしまうのではないかと思っているのだ。そして、それが良い事なのか悪い事なのかわからない。もしかして悪い事なのではないか、と危惧さえしているのかもしれない。

ルカリオ「前にも言ったけど、そういうのって考えてたってわかんないんだよね。今はこう思ってるけど、十年後、一年後、一ヵ月後……もしかしたら次の日の朝には、全く考え方が変わってるかもしれない」

ミミロップ「うん」

ルカリオ「変わることで、それがどういう結果を生むかさえわからないんだ。良い事なのか悪い事なのか、それさえ今の自分にはわからない。まぁ、だからこそ怖くはなるんだけど」
 ▼ 583 ビルドン@ながながこやし 18/08/17 02:49:10 ID:fDI2kddY [6/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミミロップ「何かを知ることで、それまでとは違った見方をするようになるかもしれないわよね」

ルカリオ「まぁね……ミミロップちゃん、もしかして変わろうとしてる何かを自覚しかけてる?」

ミミロップ「うん。というか、そうする事を迷ってさえいるわ」

ルカリオ「おおう……」

ミミロップの悩みは、ルカリオの想像よりも少し先に進んだ地点でのもののようだった。思うより突っ込んだ話になりそうで、ルカリオは少し姿勢を前のめらせる。

ルカリオ「それは何、って訊いてもいい?」

ミミロップ「勿論。けど、その前にひとつ訊いてもいい?」

ルカリオ「なに?」

ミミロップ「ルカリオは……私に隠し事、してる?」

ルカリオ「えっ」

思ってもみない問いかけに、ルカリオは思わずミミロップの顔を見た。

月明かりに照らされずとも、すぐ近くにある彼女の表情はよく見える。からかったりする様子は無い、真剣そのものだ。

この前彼女のケーキを食べてしまって慌てて買いに行った、というような些細な話でない事は明白。ルカリオは彼女の思いに応えるため、一度深く深呼吸をする。

ルカリオ「隠し事と言うと、俺としてはちょっと違うって言いたい。けど、ミミロップちゃんに話してない事はあるよ」

ミミロップ「そう……それって、昔の事とか?」

ルカリオ「うん。例えば一匹で修行してた頃の細かい事とか、それよりもっと昔の色々とか」

言ってみれば、当たり前の話。熟年の夫婦でさえわざわざに話し合ったりしないだろう事。ルカリオのそれは、人としてポケモンとして、特に違和感がない程度のものでしかない。
 ▼ 584 ダリン@フィラのみ 18/08/17 02:49:50 ID:fDI2kddY [7/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルカリオ「訊くって事は、ミミロップちゃんもあるって事だよね?」

ミミロップ「うん、ある。けど……わざわざ話す事じゃないって言われれば、確かにそうなのかも」

ルカリオの右手に乗せた左手をぎゅっと握るミミロップ。

ミミロップ「……出会ってきた多くのポケモン達はさ、みんな正直だった。自分の生き方に、考え方に、誰もが正直だった」

ミミロップ「私達だって別に嘘で塗り固めた生き方をしてるわけじゃない。幾つもの紛れも無い真実と共に毎日過ごしてるわけだし、例えば、私がルカリオを愛してる事なんて他の何よりも事実よ」

ルカリオ「ありがとう。ってか、なんか難しい事言うね……」

ミミロップ「なんか頭に浮かんできたのよ」

勿論、ミミロップを馬鹿にしているわけではない。普段の彼女からはあまり想像できないような言葉遣いに、それほど真剣な話なのだとルカリオは頷いた。

ミミロップ「隠し事と言うとちょっと違うかもしれないけど……ルカリオに言ってない、私の中で結構重要な話が一つだけある。でもそれは、本当なら自分以外の誰にも話さないで、墓まで持っていこうと思ってた話なの」

ルカリオ「そんな話があるのか……」

それはルカリオにとって、ショックではないと言うと嘘になる。

彼らは夫婦として、愛し合う者同士として、清く真っ白な交際を続けてきた。ただおそらく、彼女の言う「話していない重要な何か」は、彼らの愛に直接陰を落とすようなものではないのだろう。

それでもミミロップが言いにくそうにしているのは、ルカリオがどう思うかではなく、話してしまうことで自分の中の何かが完全に変わってしまうのではないかという危惧なのかもしれない。

ミミロップ「私の中で、その話をルカリオにする方向へと向かってる。本当は話してしまう方がすっきりするんだけど、そうする事で、私は」

ミミロップ「あっ」

ぎゅっとルカリオがミミロップを抱きしめた。

辛そうに話す彼女を見ていられなくなったのだろう。彼女の身体を優しく抱き寄せ、そっと頭を撫でる。

ルカリオ「今はいいよ、それで。それでいいんだ」

ミミロップ「ルカリオ……うん」

それ以上、二匹の間に言葉はいらない。ルカリオの優しさを十二分に感じたミミロップは、そのまま瞳を閉じ、素直に彼に甘える事にした。

ずっと存在をひた隠しにしていた月がいつの間にか表舞台に登場し、そんな二匹の姿を淡い光で寂然と包み込んでいた。
 ▼ 585 ラカラ@ギンガだんのカギ 18/08/18 01:43:34 ID:.pEwi2Hc NGネーム登録 NGID登録 報告
シエンネ
 ▼ 586 ウオウ@バグメモリ 18/08/21 14:12:11 ID:GEXEgy9A NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 587 ロンダ@チイラのみ 18/08/23 01:14:57 ID:WUjY9cqw [1/22] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




朝になり、ぼんやりと瑠璃色の世界がルカリオ達を迎える。

夜中まで吹いていたそよ風も凪ぎ、辺り一帯は静けさに包み込まれている。ポケモンの鳴き声さえも全く聞こえてこない。

ヘルガー達も、この辺りはやはり縄張りの外なのかあれから姿を見せることは無かった。それどころか、ルカリオが片目を開ける事もなく、夜は静かに白んでいった。

ルカリオ「ん……あいつもう起きてるのか」

ルカリオが半睡から目を覚ますと、川べりでピカチュウが上流の方を眺めているのが見えた。

オボンの実を届けるのが待ち遠しいのだろう、実がいっぱいに詰まった袋をぎゅっと抱きしめている。

ミミロップ「……あら、もう朝かしら」

ルカリオ「ん、ミミロップちゃんおはよう。そろそろ出発する時間かな」

ミミロップは目をこすりながら小さく可愛らしい欠伸をした。

いつも見張りをルカリオに任せてぐっすり眠っているとはいえ、明け方が近づくとすぐ目を覚ませるよう睡眠を調整しているため、寝起きもすんなりだ。

ルカリオ「ピカチュウはもう準備できてるみたい。俺達もあっちへ向かおう」

ミミロップ「あら、早いのね。待ち遠しいのかしら」

準備といっても、何かわざわざに用意しなければならないものがあるわけでもない。ルカリオ達は手近に小さなカイスの実を一つずつだけ用意して、ピカチュウの所へ向かった。

ピカチュウ「……あ、起きたんだ」

ルカリオ「ああ。早いな、起きたのに全然気がつかなかった」

ピカチュウ「あはは……僕も気がついたら目が覚めてて、それで、ちょっとね」

頬をぽりぽりとかいて恥ずかしそうにはにかむピカチュウ。その様子にルカリオは、少しだけ違和感を覚えた。

ルカリオ「(マジでピカチュウが起きたの気づかなかったな……俺、思ってた以上に眠っちゃったのか?)」

自分では周囲に気を配りつつ半睡だけしているつもりだったが、夜明けが近い頃に一度深い眠りに就いてしまったのだろうか。先日のダークライの事もあり、少しだけ自分が心配になった。

ピカチュウ「じゃあ、案内するね」

ルカリオが考えをまとめ終えるよりはやく、ピカチュウはそう言って川原をぴょこぴょこと歩き始める。

ルカリオ「(もっと気を張るとするか……)」

違和感の正体に何かはっきりした答えを出す事ができたわけではないが、今はそれについて長考している場合ではない。とりあえず考える事は止めにして、ピカチュウのあとを歩く事にした。
 ▼ 588 ロモリ@こだいのどうか 18/08/23 01:15:19 ID:WUjY9cqw [2/22] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告




上流への道は意外にも緩やかな坂道ばかりが続いていて、険しい岩山や迂回を余儀なくされるような障害物は無かった。

地面がならされた獣道と言うわけでもなかったが、それでも川沿いに歩いていけば難なく辿り着くらしいのだから苦労が少なくて助かる。もっとも、修行の一環としてはかなり物足りないものとなってしまったが。

ピカチュウ「ぼくね、いつもお姉ちゃんの横にくっついてたんだ」

ルカリオ達の先頭を歩くピカチュウは、終始上機嫌だった。

大事そうにオボンの実が詰まった袋を抱いて、嬉しそうに姉との思い出を語る。時々振り向いた時にしか彼の表情を窺い知る事は出来ないが、どの瞬間も彼の顔は幸せに満ちていた。

ピカチュウ「ぼく、結構わがままなんだけど、お姉ちゃんはいつも文句一つ言わずにぼくの言う事聞いてくれたりするんだよ?」

ルカリオ「だから、お礼をね」

ピカチュウ「うん。ぼくも、いつまでも甘えてばかりじゃいられないからね。大好きなお姉ちゃんに、恩返ししなきゃ。オボンの実いっぱい渡して、ありがとうって伝えるんだ!」

そこまで話して、ピカチュウは急に立ち止まりこちらを向く。

ピカチュウ「い、今の、大好きっていうのは内緒だよ? 恥ずかしいし……」

ルカリオ「わかってるよ」

ミミロップ「ふふ、かわいい」

頬を赤くしていそいそと前を向くピカチュウ。恥ずかしさを誤魔化すためだろう、改めて進めたその歩みは、先ほどまでよりも少しだけ速くなっていた。

ピカチュウ「ぼくたち、とても貧乏だけど、毎日がとっても楽しいよ。毎日お姉ちゃんと一緒に少ないごはん食べて、森の中を走り回って、疲れたねって草の上に寝転がって……」

彼の言う貧乏とは、満足に食事ができるわけではない事をさしているのだろう。きっと、木の実ですらそう多く口にする事ができない環境の中を彼らは生きている。彼は自分が愚図った数の木の実を集めると言っていたが、たまにはおなかいっぱい食事ができるようにという思いも込められているに違いない。
 ▼ 589 イプ:ヌル@きんのいれば 18/08/23 01:15:38 ID:WUjY9cqw [3/22] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ピカチュウ「ぼくたちは、いつも二匹。だけど、一緒にいれば寂しくないんだ。まぁ、お姉ちゃんがお嫁さんにいっちゃったら、仕方ないけど……」

妙に人間臭い事を話す。だが、その人間臭い関係を築いているルカリオ達にとって、それは頷く事も首を横に振る事もできない微妙な問題だ。

例えば、今のルカリオとミミロップの中にもう一匹誰かが入ってくるとしたら、どうだろう。親族であれ親友であれ、歓迎こそすれどいつも一緒となれば不満も募るはずだ。

野生のポケモンとはいえ、姉弟のように深い関係にもなればそういった複雑な問題も考える。いっそ意思を持たぬ獣のように生きる事ができれば、ある意味では楽なのかもしれない。

ピカチュウ「でも、それまではぼくがお姉ちゃんをしっかり見てないとね!」

ミミロップ「ふふ、面倒見てもらってばっかりじゃないの?」

ピカチュウ「こ、これからはぼくがみるの!」

ルカリオ「そうだぞ、♂の甲斐性見せてやらなきゃな」

ミミロップ「甲斐性ねぇ、へぇ、ふ〜ん」

ルカリオ「う、な、なんだよ……」

ピカチュウ「あはは。なんていうか、二匹はすごく楽しそうだね。お姉ちゃんも、そういう♂にめぐり合えたらいいな」

またしてもストレートに関係を羨ましがられ、柄にも無く恥ずかしさに口ごもってしまう。ある意味、ピカチュウの方がルカリオ達よりも上手(うわて)なのかもしれない。

ピカチュウ「それまでは、お姉ちゃんの笑顔を守る事が、ぼくの役割。お姉ちゃんには、いつも笑っていてもらいたいよ」

ルカリオ「だな。笑顔が一番だ」

ピカチュウ「うん! ぼく、お姉ちゃんの笑った顔が一番すき!」

ミミロップ「でも、こんなに木の実をプレゼントしたら嬉しくて泣いちゃうかもよ?」

ピカチュウ「もー! そういうのはいいの! 意地悪言わないで!」

ミミロップ「ごめんごめん」
 ▼ 590 ャスパー@ドラゴンメモリ 18/08/23 01:15:56 ID:WUjY9cqw [4/22] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告



どれくらい歩いただろう、やがて川は次第に細くなっていき、ついには終わりがやってきた。

少し大きめの岩山から小さな滝が流れており、その麓にはこれまた小さな池ができている。これまで横目に見ていた川は、ここから始まるようだ。

ミミロップ「どの辺り?」

ピカチュウ「えっとね、うんと……あの辺!」

ピカチュウが池から少し離れた岩場を指差す。よく見れば、そこには小さな穴が空いていて、中に誰かいるのが見えた。

ピカチュウ「お姉ちゃんいるみたい……ふぅ、なんだか緊張する……」

ルカリオ「そんな深く考えなくても大丈夫じゃないか? ほら、袋もっててやるから、深呼吸して」

ピカチュウ「う、うん、ありがと……すーっ、ふぅ……」

何度か深呼吸を繰り返しているうちに落ち着きを取り戻したのだろう、ピカチュウは覚悟を決めたようにうんと頷くと、一歩一歩確かめるようにして姉の待つ洞窟へと歩き出して行った。

ルカリオ「袋忘れてるぞ、って、だいぶテンパってるな」

ミミロップ「大丈夫かしら」

ピカチュウ「二匹も一緒についてきてよ! 手伝ってくれたって、紹介したいからさ!」

ルカリオ「あはは、いこっか」

ミミロップ「そうね」

そんなに叫んだら姉に聞こえてしまうのではないか、そう思い苦笑いを浮かべるルカリオ達。手伝ったというほど大層な話でもないような気はするが、彼の言葉に従い、少しだけお邪魔することにした。

茂みをかき分け何本もの大きな木を通り過ぎて、ピカチュウの姉の待つ洞窟へ。

堪えきれなくなったのだろう、入り口が正面に見えた辺りで、ピカチュウは走り出した。
 ▼ 591 リリ@ノメルのみ 18/08/23 01:16:19 ID:WUjY9cqw [5/22] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告


ピカチュウのあとを追い、走る二匹。少し遅れて、彼らも洞窟に入る。

ライチュウ「……あら」

そこにはピカチュウの姉、ライチュウが草や葉の敷き詰められた地面に座っていた。

大好きだという姉に抱きつきでもしているピカチュウの姿があるかと思ったが、ピカチュウは彼女のすぐ前でじっと立っていた。

ライチュウはルカリオ達が洞窟に入ってくると、気だるそうに少しだけ顔を動かし、薄い視線を彼らに向ける。

虚ろな目、ぼんやりとした表情、彼女が正常な様子でない事はすぐにわかった。

ルカリオ「あ、その……すまない、突然お邪魔して」

ミミロップ「私達、別に怪しい者じゃないのよ。えっとその、付き添いみたいなもんで」

不審者に思われ警戒されているようには見えないが、それでも一応弁明程はしておく。こういう時に慌てて物申せば余計に怪しいというものだが、ライチュウは彼らにそもそも興味が無いのか特に反応を示す事はなかった。

ルカリオ「俺達、ピカチュウがオボンの実を集める手伝いをしてたんだ。それで、これ。頑張って集めたんだよ。な?」

ルカリオは木の実の入った袋を前に掲げながら、ピカチュウに問いかける。しかし、彼は全く反応を示す様子が無く、こちらを振り向く事さえしない。

ライチュウ「えっ……? ピカ、チュウ……?」

代わりに、ライチュウがルカリオの言葉に返答する。

ライチュウ「…っぐ、ひぐ……うう……」

ルカリオ「えっ、ちょ」

そして、どういうわけかライチュウは涙を流し始めた。あまりに唐突な出来事に、ルカリオはどうしたものかとうろたえてしまう。
 ▼ 592 タグロス@メタグロスナイト 18/08/23 01:16:43 ID:WUjY9cqw [6/22] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ミミロップ「気に障る事だったら、ごめんなさい。その、偶然出会って、流れで手伝う事になっただけなの」

ライチュウ「う、ぐすっ、うん、うん、そう、なのね……うん……そんな、事が……」

ライチュウは泣き止まない。

これにはミミロップもどうしていいかわからず、何と声をかけていいものかわからなくなってしまった。

ライチュウ「っぐ、すん、すん……ごめんなさい、突然泣き出しちゃって……意味、わからないわよね」

ライチュウは涙をぬぐいながら、こみ上げる嗚咽を堪え、ルカリオ達の方を向いた。

ルカリオ「……え?」

そこで、彼は気づいた。

ライチュウは、ルカリオとミミロップを見ている。訪れた客人を前にこれ以上醜態を晒さぬよう涙を堪え、彼らと言葉を交わそうとしている。

だけど、いるはずなのだ。

ライチュウと、ルカリオとミミロップの間には。

ライチュウの事をとても慕っているはずの彼が。ライチュウを、姉として大好きだとはにかんで話していた、ピカチュウが。

気づいていないのだろうか? しかし、徒に無視しているようには見えない。

ルカリオ「(まさか……見えて、いないのか……?)」

ライチュウ「その、折角持って来てくれたんだし、それ、あなたたちも是非食べていって頂戴ね?」

ルカリオ「あ、いや、その……」

おかしい。

何故、彼女は目の前の存在に気がつかない。

こんなにも近くにいるというのに、最愛であるはずの弟がすぐ傍にいるというのに、どうして彼女の瞳に彼が映らない。

ルカリオ「そんな馬鹿な……」

答えなんて、深く考えずとも嫌というほど頭に浮かんでくる。

だが、認められない。そんな事実、認めるわけにはいかない。
 ▼ 593 ラップ@たいりょくのハネ 18/08/23 01:16:58 ID:WUjY9cqw [7/22] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
その場に立ち尽くすルカリオとミミロップ。急に押し黙ってしまった彼らを不思議に思ったのだろう、ライチュウはゆっくりと起き上がり、彼らの方へと歩いてきた。

ミミロップ「あっ……」

もう、誤魔化せない。

どれだけ浮かんできた答えを否定しようとも、それを見てしまえば認めるしかなくなってしまう。

ライチュウ「弟の思いを汲み取ってくれて、ありがとう」

ライチュウは、すぐ前に立っているはずのピカチュウの身体をすり抜け、ルカリオからオボンの実が入った袋を受け取った。

ライチュウ「ふふ……いつの間にあの子、貴方達に出会ってたのかしら。いっつも私の傍にべったりだったのに」

袋をぎゅっと抱きしめ、涙を浮かべながら愛情に満ちた微笑で中に入っているオボンの実を眺めるライチュウ。暫くは袋を抱いたまま嬉しそうに何かを考えていたが、やがて木の実をテーブルに並べるべく洞窟の奥へと戻っていく。

再び、今もずっとそこに立っている、ピカチュウの身体をすり抜けて。

ライチュウ「あの子……弟はね、弱虫で、泣き虫で、だけど元気いっぱいだったの。でも、私達は貧乏だから……あんまりご飯、食べさせてあげられなかった」

知っている。それは、ピカチュウから聞いた話だ。

ライチュウ「あの子がおなかすいたーって、泣き出した時はいつも、オボンの実をあげてたのよ……それを覚えててくれたのね……ふふ、こんなに沢山……」

オボンの実の数は、自分が愚図って食べ物をねだった回数だと聞いた。他でもない、本人から聞いた。

ライチュウ「わたし、が……もっと、頑張ってあげられたら、よかったん、だけど……」

当時の事を思い出しているのだろう、涙を浮かべながらオボンの実を木のテーブルに並べるライチュウ。

ルカリオとミミロップは何と言う事もできず、ただただその光景を見ていることしかできない。
 ▼ 594 ョロネコ@ポケモンのふえ 18/08/23 01:17:17 ID:WUjY9cqw [8/22] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ピカチュウは、いまどんな顔をしてこれを見ているのだろうか。

すぐそこにいるはずの自分。だけど、全く認識さえしてもらえない自分。

ルカリオ達に彼の姿は見えても、肝心の大好きな姉には存在を気づいてさえもらえない。

すぐ傍にいるのに、触れる事さえ叶わない。思いを言葉にして伝えることさえ、叶わない。

ライチュウ「……いつも、思うの。なぜ、どうしてこうなるの? って……誰がこんな運命になんてしたのか、って……」

ライチュウ「贅沢したいなんて思った事もないのに、ただ普通に生きたかっただけなのに……それさえ、私達には赦されないのって……」

ライチュウ「ふふ……ごめんなさいね。さあ、折角だから、ただ実を並べただけだけど、食べていって?」

涙をぬぐい、テーブルに並んだ木の実を指差すライチュウ。テーブルには木の実が三つずつ、葉の上に乗せて三箇所に置かれていた。

話してもいいものか、二匹は決めかねていた。

今ここにそのピカチュウがいると、伝えてしまった方がいいのではないか。たとえ見えなくとも、存在に気づく事ができなくとも、確かに彼はここにいると、そう話した方がいいのではないか。

だがおそらく、それを話したところでライチュウは彼を認識する事はできないだろう。それどころか、不謹慎な事を話す酷い連中だとルカリオ達を追い出すかもしれない。

ならば、彼の思いはどうなる?

大好きな姉に恩返しがしたいと、沢山のオボンの実を集めたピカチュウ。

確かに、木の実は彼女に届いた。だが、それは他でもない、彼の手から渡されるべきだった。

だけど、それはできない。だって彼は、おそらく……

ピカチュウ「……!」

ルカリオ「あ、おい!」

状況に耐えかねたのだろう、ピカチュウは洞窟をとび出した。

ルカリオ「ミミロップちゃんごめん、ここお願い」

ミミロップ「う、うん、わかったわ」

少し遅れて、ルカリオも洞窟を出る。もう、彼の姿は森の向こうまで遠ざかってしまっていた。
 ▼ 595 インディ@カゴのみ 18/08/23 01:17:35 ID:WUjY9cqw [9/22] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告




ピカチュウを追いかけ、池の方までやってくる。

そのままピカチュウはどこかへ消えてしまうのではないかと心配したが、幸いにも彼は池の前で空を見上げながら立っているのを見つける事ができた。

ただ、ルカリオはなんと声をかけてよいのかわからず手を出しかけては引っ込める事を繰り返していたが、そうしているうちにピカチュウの方から彼に言葉がとんできた。

ピカチュウ「……ぼくね、ほんとはいつも必死だったんだ」

彼はルカリオの方を向くことなく、空を見上げたまま話し始める。

ピカチュウ「わがままばっかりで、お姉ちゃんを困らせてばかりいたけど、それでも必死だった。生きることに、毎日を精一杯楽しむことに」

ピカチュウ「お姉ちゃんがいれば、ぼくはなんだって乗り越えられると思ってた。どんなに貧しくても住む場所が寂しくても、お姉ちゃんさえいればそれでいいって思ってた」

ピカチュウ「だから……あのときも、必死だった」

ピカチュウ「木の陰で疲れて休んでるとき、ヘルガー達が襲ってきて、ぼくたちは崖の方に追い詰められて……」

ピカチュウ「お姉ちゃんね、すごく弱い僕よりも弱いんだ。だから、彼らを相手にぼくたちは本当に何にもできなくて、ただ逃げる事しかできなくて……」

ピカチュウ「……最後まで追い詰められたとき、ぼくたちは飛び降りることを選んだ。あいつらに食べられるなんて、そんなの絶対に嫌だった」

ピカチュウ「でも、飛び降りてから、思ったんだ。ぼくは、結局お姉ちゃんを守ることができないの? って」

ピカチュウ「だからぼく、頑張ったんだ。こんな所で終わってなんかやるもんかって。だからお姉ちゃんは軽い怪我ですんだ…………ぼくは、木の実を集めに行く事が、できた」

ピカチュウ「お姉ちゃん怪我しちゃったから、木の実もってってあげようって……必死に木の実採って、ルカリオ達に出会って……」

ピカチュウ「……ねえ、ルカリオ」

ピカチュウが振り向く。

ピカチュウ「ぼく、ここにいるよね? ちゃんと、いるんだよね? ねえ、ねえ……」

ルカリオ「それは……」

ピカチュウ「なのに、どうして? どうして、ぼくは、お姉ちゃんは……ぼく、ここにいちゃいけない子なの? ぼぐ、っぐ、は……」
 ▼ 596 ルトス@エレキシード 18/08/23 01:17:51 ID:WUjY9cqw [10/22] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
嗚咽が彼の口から漏れる。

ぼろぼろと、大粒の涙がこぼれては消えていく。

そうだ、彼は確かにここにいる。だが、おそらく彼の事はルカリオとミミロップにしか見えていない。

それは、ルカリオの波動によるもの。彼の波動が、ピカチュウの思念をここに映し出しているに過ぎない。彼や、彼と深い繋がりを持つものにしか、ピカチュウの姿は見えていない。

ルカリオ「ピカチュウ、戻ろう。俺達には、確かにお前が見えてるんだ、お前は確かにここにいる。思いは伝わるさ」

ピカチュウ「そんなの、でも、でも……」

ルカリオ「きっと思いは届く。そうでなきゃ、何でお前はこうやってここにいるんだ? どうして俺達には見える?」

ピカチュウ「っぐ、ひっく……そう、だよね……」

ルカリオ「そうだ。戻って、ライチュウに思いを伝え……」

声「きゃーっ!!」

ルカリオがピカチュウの肩に触れようとしたそのとき、後方からライチュウと思われるポケモンの悲鳴が聞こえてきた。

ルカリオ「おい、今の」

ピカチュウ「っ!!」

ルカリオが彼に声をかけようとする頃には、ピカチュウは洞窟に向けて猛スピードで駆け出していた。

ルカリオ「この波動……ヘルガーか!」

ルカリオもピカチュウのあとを追い、地を蹴る。

ルカリオ「なんだこれ……いつの間に!」

洞窟へ近づくにつれ、草木の焦げた臭いがはなにつくようになる。

独特な臭い。もしかしなくとも、ヘルガーが炎を振りまきライチュウ達を襲っているのだ。
 ▼ 597 アルヒー@きよめのおふだ 18/08/23 01:18:13 ID:WUjY9cqw [11/22] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告




ルカリオ「ミミロップちゃん!」

洞窟まで戻ってくると、そこには数多くのヘルガーがライチュウとミミロップを取り囲むようにして立っていた。

ルカリオが来るのも想定済みだったのだろう、ルカリオが声を張り上げて振り向いたヘルガーはものの数匹。残りのヘルガーは中央にいるリーダー含め、ライチュウとミミロップから視線をはずさずにいた。

ルカリオ「ちっ、こいつら……」

戦わずともわかる。今ルカリオの方を向いているヘルガー達は正面から戦うつもりなど無く、ただリーダー達がライチュウ達を倒す時間稼ぎをしようとしている。

だが、それがわかったからといって、的確な対処ができるとは限らない。おそらく手下のヘルガー達は、ルカリオがライチュウ達の所に近づけぬよういやらしい攻撃ばかり仕掛けてくるはずだ。

ヘルガー「どうした? かかってこいよ」

ヘルガー「へへ、この前のお礼してやらねぇとな」

ルカリオ「…………」

じりじりとルカリオに距離をつめてくるヘルガーたち。正面から向かってくる固体は三体だけだが、波動でわかる、近くの茂みにも隠れてルカリオを狙っている固体が二匹いる。

ルカリオ「(五匹か、ちとつらいな……)」

挑発する割に全く飛び掛ってこようとしないヘルガー達。しかし、ヘタに相手の間合いへ突っ込んでいけばルカリオといえども焼かれてしまうかもしれない。

無闇に動く事はできないが、このまま時間を無駄に費やすわけにはいかない。こうしている間にも、リーダーのヘルガー達がライチュウ達に攻撃を仕掛けてしまうかもしれない。

ルカリオは目でミミロップに合図を送るも、彼女もどう対応するべきか決めかねているのだろう、小さく首を横に振った。
 ▼ 598 ッキー@スピアナイト 18/08/23 01:18:32 ID:WUjY9cqw [12/22] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ヘルガー「さて、ウサギのお嬢さん。そのネズミを引き渡してもらおうか。実は、我々は君達とやり合うつもりはないのだよ」

リーダーのヘルガーが一歩前に出る。彼は不敵な笑みを浮かべてミミロップを軽く睨みつけた。

それで怯むミミロップではないが、状況を考えれば強気に出るわけにもいかない。

彼女達は、洞窟で話をしていた不意をつかれ、急襲を受けた。初動が遅れてしまったため、彼女を守りつつこの状況に持ってくるしか方法はなかったのだ。

ミミロップ「引き渡して、どうするつもり? 彼女にでもするの?」

ヘルガー「ふはは、面白い事を言う。決まっているだろう、食べるのだよ。我々も餌に少々困っていてね、丁度いいところに獲物がいたと思い出したのだ」

ミミロップ「へぇ、でも残念だったわね、私達がいて。お食事は他をあたった方がいいんじゃないかしら?」

ヘルガー「お嬢さん、状況を見てものを言いたまえ。君の相方でさえ、我々の陣形にたじろいでいるではないか。この状況、俺が合図すればすぐさまお前達はこんがり肉だ」

ミミロップ「上手に焼けました〜、って? そう簡単にいくかしら」

ヘルガー「ああ、いくとも。君達は多少強いようだが、足手まといを抱えていては実力も満足に出せまい」

ヘルガー達はライチュウを見てにやにやと笑っている。彼女達を崖に追い詰めた時の事を思い出しているのだろうか、哀れな者を見る目をしている。

ミミロップ「足手まといしかいない連中がよく言うわ」

ヘルガー「そうか、そうだな、うんうん」

ミミロップ「ちっ」

この状況、ルカリオとは反対に、ミミロップが相手を挑発してなんとか時間を稼いでいる。だが、それはリーダーのヘルガーも承知の上だろう。

彼らは、楽しんでいるのだ。狩りを、集団で少数をねじ伏せる事ができる、この状況を。

しかし、ミミロップはそこまでわかっているからこそ、敢えて強気な態度に出る。もとより、弱気になってしまえば相手の思う壺だ。

かといって状況を打開できる策があるわけではない。強気を装う事でヘルガー達を楽しませ時間を稼ぐ事しか、今の彼女にはできそうに無い。

ミミロップ「(さて、ほんとにどうしようかしら……)」

隣ではライチュウが怯えて身体中を震わせている。この様子、全くバトルができる状態ではない。

正直な事を言えば、自分一匹であれば取り囲まれたこの状況でもひっくり返す事ができるだろう。ただ、誰かを守りながらとなると話は全く変わってくる。
 ▼ 599 アル@ゆきだま 18/08/23 01:18:48 ID:WUjY9cqw [13/22] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ヘルガー「お嬢さんよ、どうしてそのネズミをかばう。俺達は、そいつを渡せばお前達に危害は加えないと言っているのだぞ?」

ミミロップ「弱いものいじめ嫌いって言ったでしょ。あぁ、あんたには言ってなかったっけ」

ヘルガー「ふむ。くだらない正義感だな。実にくだらない。ぬるま湯で育ってきたガキみたいだ」

ヘルガー達から失笑が漏れる。ミミロップは不快感を隠そうともせず、再び強く舌打ちをした。

ヘルガー「いいか、お嬢さん。世の中とは、常に弱肉強食なのだ。そこにいる木の実を齧るしか脳のないようなネズミ共は、我々の餌となる運命なのだよ。生まれた時からな」

ヘルガーの言葉に、悔しそうに歯を鳴らすライチュウ。

だが、その事実に何も言い返せない。彼女が悔しいと思っているのはヘルガー達に悪口を言われた事ではなく、そんな事を言われてしまう自分に対してだ。

悔しさに涙がこぼれる。

それを見て、一層ヘルガー達が笑い声を上げる。

ミミロップ「あんたら……」

その様子にミミロップは強く拳を握るも、それ以上の事はできない。無闇に飛び掛れば、たちまちライチュウは彼らの餌食となってしまう。やってみれば何とか守りきる事はできるかもしれないが、あまりに分が悪い賭けだ。

ライチュウ「う……うぅ……悔しい、よぉ……」

嗚咽と共に言葉が漏れる。

ヘルガー達にさえ届かないくらいにか細く、ひ弱な嘆き。

パリパリと電撃が彼女の頬を走りぬける。しかしそれは、ミミロップにもわかる、放電したとしてもコラッタ一匹満足に痺れさせる事ができない程か弱い攻撃にしかならない。

ヘルガー「惨めなもんだ。抵抗も空しく、ただ強き者の肉となるのみ。餌となる事を除けば、何のために生きているのかまるでわからないな」

ミミロップ「生きる理由なんてポケモンそれぞれでしょ、頭わいてんの?」

ヘルガー「これはこれは、お嬢さんを怒らせてしまったようだ。だが、俺は事実を言ったまでだ。それなりに強いとはいえ、お嬢さんもやはり木の実しか食べた事ないようなぬるま湯ポケモンか」
 ▼ 600 モネギ@スペシャルアップ 18/08/23 01:19:06 ID:WUjY9cqw [14/22] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ヘルガー「毎日木の実ばかり食べてあちこち走り回って、ただそれだけの毎日だろう? なんともくだらない。哀れだ、無価値だ、生きている意味など何もn」

「ピイィィイイイカアアアアァァアアア!!!!」

ヘルガー「いぎやぁがぐああぁつ!!!???」

一瞬の出来事だった。

ヘルガー達が嘲笑を浮かべてライチュウを罵っているまさにその時、彼らの脳天に大きな大きな雷が落ちた。

刹那にして、阿鼻叫喚。

雷を落とされたヘルガー達は激しい電撃と衝撃にのた打ち回り地に倒れ、ついには誰一匹として動かなくなってしまった。

ライチュウを見るミミロップ。しかし、ライチュウも何が起きたのか全くわかっていない様子だ。

ミミロップ「……ピカチュウ?」

ライチュウ「えっ……?」

いつからそこにいたのだろう。

倒れているヘルガー達の真ん中辺りに、小さな電気ネズミが立っていた。

ルカリオ「ミミロップちゃん」

ミミロップ「うん……」

ルカリオもミミロップの所へ戻り、彼を見る。

ピカチュウはびりびりと大気に電流を纏わせ、肩で息をしながら空を見上げていた。

暫くそのまま動きを見せなかったが、やがて大きく息を吐くと同時に下を向き、こちらを振り返る。

彼は、涙を流して笑っていた。
 ▼ 601 ンチュラ@サイコシード 18/08/23 01:19:24 ID:WUjY9cqw [15/22] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ミミロップ「なんだ、全然弱くなんてないじゃない」

ルカリオ「むしろ無茶苦茶強いんじゃないか、いまの」

普段の彼はとても弱い存在だったかもしれない。だが、彼の奥底にはこんなにも強力な雷を呼び寄せる程の強い力があったのだ。

馬鹿にされ続けてきた仕返しができた。彼は、やっと汚名を雪ぐ事ができたのだ。

だが、その表情にもすぐに影を落としてしまう。

そんな彼の功績を彼女に伝える事はできないから。すぐ近くにいる小さな存在に、気づいてもらう事ができないから。

ライチュウ「助かった、のね……」

ミミロップ「そうね……」

ライチュウ「よかった……すごく、怖かった……」

へたりとその場に座り込んでしまうライチュウ。死を覚悟していたのだろう、腰が抜けてしまってしばらく立てそうにない。

ライチュウ「その……助けてくれて、ありがとう」

ミミロップ「あ、いや……」

お礼を言うライチュウに、ミミロップは言葉を返せない。

確かに彼女はライチュウを守ろうと行動していたが、ヘルガー達を倒したのは彼女でもルカリオでもない。

だが、それを話したところで彼女は信じるだろうか。見えない、声も聞こえない、そんな相手の存在を信じられるだろうか。
 ▼ 602 スキッパ@ドラゴンメモリ 18/08/23 01:19:43 ID:WUjY9cqw [16/22] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ライチュウ「でも、不思議ね……あなた達といると、どうしてだかピカチュウが一緒にいるように感じるわ」

ルカリオ「ライチュウ……」

ライチュウ「いるはずないのにね。あの子は私をかばって死んじゃって、私だけが生き残っちゃって……ほんと、どうして私だけ生き残っちゃったんだろう……」

ライチュウ「あの子の笑顔にいつも癒されてた……おなかすいたって、半べそかきながら手を引くあの子がとても可愛かった……」

ライチュウ「いつもお姉さんぶってたけど、本当は私、あの子に頼りっきりだったの……あの子がいるから、がんばれた。でももう、いないのよね……私一匹で、生きていかなきゃいけないのよね……」

ライチュウ「がんばら、なきゃ……でも、でも……っ、ひぐっ……ほんとはわたし、寂しいよ……ぐすっ、ぐすっ」

ころん、と何かがライチュウの手に乗っかった。

ライチュウ「ふぇ……?」

涙をぬぐい、それを見る。

それは、半分に割れた、オボンの実だった。

ライチュウ「あ……れ、これ……え……?」

ピカチュウが半分に割れたオボンの実を持っている。そのもう半分、歪に割れた大きい方の実を、ライチュウの手に渡したのだ。

ライチュウ「これ……オボン……どうして……」

ピカチュウ『お姉ちゃん、泣いちゃだめだよ』

木の実を見つめるライチュウにピカチュウが話しかける。でも、ライチュウには聞こえない。

ライチュウ「ピカ、チュウ……?」

だけど、伝わった。

いまここに、もう会えるはずのなかった弟がいるのだろうと、彼女にはわかった。
 ▼ 603 イアント@スピードボール 18/08/23 01:20:01 ID:WUjY9cqw [17/22] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ライチュウ「ピカチュウ! ピカチュウ、いるの!?」

ピカチュウ『いるよ、お姉ちゃん。お姉ちゃんのすぐ前に、ぼくは、いるよ』

ライチュウ「いるなら返事して! ねえ、お願いだから、返事……」

ピカチュウ『あはは……ぼくの声、聞こえないみたいだね……でも大丈夫。ぼくは、お姉ちゃんの声が聞こえてるから……』

ピカチュウは自分が持っていた小さい方のオボンの実を地面に置く。

ライチュウ「ピカチュウ……あはは、ほんとに、いるんだね……」

ピカチュウ『ほんとに、いるんだよ』

ライチュウ「あ、あのね、ピカチュウ、私、私ね、ピカチュウに、いっぱいいっぱい、言わなきゃいけない事があるの」

ピカチュウ『ぼくも、お姉ちゃんに、たくさん、たーくさん、言わなきゃいけない事あるよ』

ライチュウ「私……ほんとはすごく寂しがりやなの。いつもお姉さんぶってたけど、ほんとはね、ダメな子なんだよ」

ピカチュウ『あはは……でも、それはぼくも同じ。ぼくのわがまま、いつも聞いてくれるお姉ちゃん。お姉ちゃんがいなきゃ、ぼくだめなんだ』

ライチュウ「お姉ちゃんお姉ちゃん甘えてきてたけど、ほんとは私の方が甘えてたの。ぎゅってしてるだけで、すごく落ち着くの」

ピカチュウ『ぼくもだよ、お姉ちゃん』

ライチュウ「ほんとは私がしっかりしなきゃいけないのに……あの時も、私がピカチュウを助けてあげなきゃいけなかったのに……」

ピカチュウ『違うよお姉ちゃん。ぼくは、お姉ちゃんを守る事ができて、とても誇らしいんだ。だからね、いいんだよ』

ライチュウ「ずっと謝りたかったの……ごめんなさいって。それと、ありがとうって……」

ピカチュウ『それは、ぼくのほう……っ、お姉ちゃんに、いつも、ぐすっ、迷惑ばっかり、かけて、たから……』
 ▼ 604 ーパ@グラスメモリ 18/08/23 01:20:18 ID:WUjY9cqw [18/22] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ライチュウ「ううっ、ぐすっ、その時だけじゃ、なくて、もっと、色んなときも、ありがとうって、ぐすっ、もっともっと、言えば、ぐすっ、よかったのに……」

ピカチュウ『うん……うん、ぐすっ、ぼくも、お礼、いいたかった……ずっと、ぐすっ、ずっと……』

ライチュウ「ぐすっ、ぐずっ、ピカチュウは、こんな、こんな私を、ぐすっ、ゆるして、くれる、かなぁ……」

ピカチュウ『そんなの、当たり前だよ、ずずっ、ぐすっ、ぼくだって、お姉ちゃ、ゆるじで、ぐれるが……』

ライチュウ「ぐすっ、あはは、なみだ、止まらないや……ごめんねって、ありがとうって、ぐすっ、言ってる、だけなのに……」

ピカチュウ『ぐすっ、ずっ、うん、もう、顔ぐちゃぐちゃ、だね、ぐすっ』

ライチュウ「でも……ぐすっ、だめ、だよね……泣いてばかり、いたら、心配されちゃう……えがお……そう、笑顔に、ならなきゃ」

ピカチュウ『うん、うん、ぼく、お姉ちゃんの笑った顔、だいすき、だよ』

ライチュウ「ぐすっ、ぐす……えへへ、私、ちゃんと笑えてるかな……?」

ピカチュウ『あはは、なみだ、すごいけど、ぐすっ、でも笑ってる』

ライチュウ「あのね、私ね……ピカチュウが、笑うとこ、すごく、すごく、好きなんだよ……?」

ライチュウ「ピカチュウも、いま、笑ってる、かなぁ?」

ピカチュウ『!』

ピカチュウ『うん…………ぼくも、笑ってるよ!』

ライチュウ「あ……ピカチュウ!」

ピカチュウ「おねえ、ちゃん……?」
 ▼ 605 ンギラス@おはなのおこう 18/08/23 01:20:42 ID:WUjY9cqw [19/22] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ライチュウ「あ、ああ……ピカチュウ、ほんとに、ふふ……」

ピカチュウ「ぼくが、見えるの……? ほんとうに?」

ライチュウ「ピカチュウ……やっぱり、笑顔がいちばん、かわいいね」

ピカチュウ「おねえちゃん……うっ、ううう、ぐすっ、お姉ちゃんだって、笑顔が、いちばん、可愛いよ」

ライチュウ「ふふ、ふふふ……」

ピカチュウ「あはは……」

ピカチュウ「……ねえ、お姉ちゃん。ぼくね、ほんとうの、ほんとうにね? ぼく、ぼく……」




お姉ちゃんの弟で、本当によかったよ




ライチュウ「っ、うっ、ううう、ぐすっ、ぐすっ、私も、私だって、ピカチュウの、お姉ちゃんでいられて、本当によかった……!」

ライチュウ「ほんとに、ほんとに……ありがとう、ピカチュウ……」
 ▼ 606 ガリザードンX@きのはこ 18/08/23 01:21:07 ID:WUjY9cqw [20/22] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告





暖かな木漏れ日が差し込む明るい木々の間を、二匹で走り抜ける事が好きだった。

沢山沢山走った後に、途中で見つけた木の実を二匹で食べる事が好きだった。

木の実はいつも、はんぶんこ。

小さい方が、お姉ちゃん。大きい方が、ぼく。

ぼくはね、いつも我がままばかり言ってたから、きっとお姉ちゃんの何倍も木の実を食べたと思う。

でもね、お姉ちゃん。

ぼくね、これでもね、ずっとずっと、その事を悪いなって思ってたんだよ?

いつかぼくがお姉ちゃんに頼らなくても木の実を集める事ができるようになったら、その時はお姉ちゃんに大きい方を渡してあげたかった。

そしたらね、たぶん、たぶんだけど、お姉ちゃんきっと喜んでくれると思ったんだ。

だから、ね?

こっちの小さい方の実は、ぼくがもらっていくね。

お姉ちゃんと、はんぶんこ。

小さい方が、ぼく。大きい方が、お姉ちゃん。

やっとこれで、恩返しができたかなぁ。全然足りないよって怒られるかなぁ。

お姉ちゃん。ぼくの、大好きなお姉ちゃん。

今まで本当に、ありがとう。

小さい方の木の実、空の向こうで大事に大事に食べるよ。




 ▼ 607 ャタピー@カプZ 18/08/23 01:21:35 ID:WUjY9cqw [21/22] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告





その日は星が闇夜の舞台で輝きを見せる、静かな夜になった。

落ち着きを取り戻したライチュウはルカリオ達を洞窟に誘い、ささやかなオボンパーティを開いた。

オボンの実を食べながら、ライチュウの思い出話を聞くルカリオ達。袋いっぱいに詰まっていたオボンの実も、夜が深まる頃にはすっかり空になってしまった。

彼女の中で色々と整理がついたのだろう、パクパクとオボンをほお張る彼女の思い出話はとどまる事を知らず、ライチュウは実はとてもお喋りなポケモンだったのかと感心さえ覚える。

それでもおそらく、ルカリオ達を前にかなり無理をしているのだろう。楽しそうに話をするふとした合間に、どこか寂しげな表情を何度も浮かべていた。

だが、それでも彼女は話を続けた。前を向くために、数々の思い出たちを、悲しい物語にしてしまわないために。



ライチュウ「ごめんね、長話につき合わせちゃって」

ルカリオ「いやいや、良い話をありがとう」

ミミロップ「そうそう。とっても楽しかったわ」

ライチュウ「そう言ってもらえると嬉しいな。えへへ」

屈託無く笑うライチュウ。その表情は、さすが姉弟、ピカチュウがはにかんだ顔の面影が見える。

ライチュウ「二匹は、これからどこに行くの?」

ルカリオ「とりあえずハクタイシティまで行くつもり。その合間に、もうちょっと修行していくけど」

ライチュウ「大変ねぇ……私も、トレーニングとか頑張った方がいいのかな」

ミミロップ「まぁこういう環境で過ごすわけだし、必要かもしれないわね」

ライチュウにもルカリオ達が普段住んでいる所を紹介しようと思ったが、少し考えてそれは止めておく事にした。

ここは、ピカチュウと過ごした思い出の場所。きっと彼女は首を縦には振らないだろう。

思い出に縛られると言う人やポケモンもいると思うが、思い出を大切にすると言う事だってできる。ライチュウにとってこの場所や思い出たちは、紛れも無く大切にするものなのだ。

ルカリオ「よし、じゃあそろそろ行くよ」

ライチュウ「うん。また、よかったら遊びにきてね。歓迎する」

ミミロップ「是非また来るわ。その時が今から楽しみね」

ライチュウに手を振って別れを告げる。また訪れる場所が増えたと、ルカリオ達はくすりと息を漏らした。
 ▼ 608 ネッコ@においぶくろ 18/08/23 21:06:43 ID:WUjY9cqw [22/22] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



だいぶ長くなってきたので簡単に中間まとめ

プロローグ  >>1>>4


カントー章  >>5>>117

サンダース編 >>5>>80
カントー大会 >>89>>117


ホウエン章  >>119>>378

フライゴン編 >>119>>237>>332>>334
クチート編  >>238>>334
ホウエン大会 >>339>>378


シンオウ章  >>379

リーフィア編 >>379>>531
ライチュウ編 >>532>>607


次の話はこれまで以上に色んな意味でR18色が強い話になるので、お読みくださっている方おられたらご注意ください
 ▼ 609 ルキー@しんかのきせき 18/08/23 21:17:55 ID:gTJ6b.xc NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
シエンネ
 ▼ 610 ココ@つきのふえ 18/08/23 23:41:25 ID:waVAkkbM NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
とんでもねぇ力作だぁ...
支援
 ▼ 611 ェローチェ@バーゲンチケット 18/08/23 23:48:38 ID:Vp/IT/U6 NGネーム登録 NGID登録 報告
次はどんなに心をえぐられるやら…
心から支援
 ▼ 612 レフワン@イトケのみ 18/08/24 05:52:18 ID:PB9cbZ36 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ポケモン出る前のポエム?かっけえよな
 ▼ 613 リゴン2@ミクルのみ 18/08/26 20:55:28 ID:3yrg7s7I NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
メガシエン
 ▼ 614 ズクモ@ふねのチケット 18/08/28 00:45:18 ID:ig0khNCo [1/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

淡く優しい光に包まれたハクタイの森を、ハクタイシティの方に向かって歩くルカリオとミミロップ。

大会まで日が近づいてきたとはいえ、まだ会場付近へ向かうには少し早い。この日は夕方までに良い修行場所を見つける事が目標だ。

夜通しライチュウの思い出話を聞いていた二匹だったが、明け方に一度近くの岩場で仮眠を取ったため問題無く普段の調子に戻せそうだった。

色々な出来事に出くわすとはいえ、ここまで順調にトレーニングを重ねる事ができている。それについては、ルカリオはそれなりに満足しているようだが、一つだけ気になる事があった。

ルカリオ「……大丈夫?」

ミミロップ「……うん?」

ルカリオ「いや、何か気にしてるみたいだから」

どうも、仮眠を取った辺りからミミロップの様子がおかしい。調子が悪いようには見えないが、森を歩く彼女はどこか上の空。何かについて考えをめぐらせているように思える。

伊達に長い時間近くで彼女を見てきていない、話しにくい事があるのだろうとルカリオは察した。

ルカリオ「……この前、話しかけてた話?」

ミミロップ「……うん」

それは、ピカチュウがライチュウのいる洞窟へ向かう前の夜の事。

彼女はその話を、ルカリオには話さず墓まで持っていくつもりだと言っていた。だが同時に、彼女はこれまでの経験に少なからず影響を受け、その話をしておきたいという思いが芽生えてきているとも言っていた。

おそらく、ライチュウやピカチュウを見て、彼女の中でまた一つ大きな変化が起きたのだろう。心の奥に秘めているその話を、するべきかもしれないという変化が。

ルカリオ「……あっちの岩陰に行こう。天気も崩れそうだし、今日はそこで寝泊りかな」

ミミロップ「うん、ありがとう」

ルカリオは彼女の肩を抱き、共に岩場まで歩く。

岩場の小さな洞窟に入ったまさにその時、夕立のような強い雨がハクタイの森を襲い始めた。
 ▼ 615 プ・ブルル@バンジのみ 18/08/28 00:45:41 ID:ig0khNCo [2/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



ルカリオ「うわぁ、すげぇ雨。間に合ってよかった」

ミミロップ「危うくずぶぬれになるところだったわね」

ルカリオ「びしょびしょになったミミロップちゃん……ごくり」

ミミロップ「うわぁ……」

少しナーバスになっていたミミロップを元気付けるためだろう、ルカリオはいつも以上にふざけて見せる。その気遣いが嬉しくて、ミミロップは彼の冗談に乗ることでルカリオにお礼を言った。

ミミロップ「……話してない事があるって、そう言ってたじゃない」

ルカリオ「うん」

ミミロップ「あれね、私が……まだ、今住んでる所に来る前の話。まだ私が……今みたいに、自分の力に自信なんて持ってなかった頃……」

洞窟の外に視線をやるミミロップ。

遠い過去を思い出しているのだろう、彼女は暫くそのまま何も言わずにただ地を叩きつける幾多もの雨粒を見つめていた。

ルカリオは、何も言わずに彼女が話し始めるのを待つ。彼女には彼女のタイミングがあるのだろう、急かすものではない。

ミミロップ「……あのときも、こんな風にすごい雨が降ってたわ」

ミミロップはルカリオの方を見ず、真っ黒に染まった空を仰ぎながら話の続きを始める。

ミミロップ「ルカリオは……ポケモン、食べた事ある?」

ルカリオ「え……」

ミミロップ「私はね……あるわ」

雷が鳴る。

ミミロップの全身が一瞬、強い光の影となって真っ黒に見える。

ミミロップ「どうにかしたかったけど、どうしようもなかった……その時、私は思ったの」
 ▼ 616 ノムッチ@ひみつのコハク 18/08/28 00:45:58 ID:ig0khNCo [3/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告





何故、どうしてこうなるの?

こんな運命に、誰がしたっていうの?

彼女に、雪が本当に白い事を実際に見せてあげたかった。

彼女に、雪が本当に冷たい事を感じさせてあげたかった。

全てを諦めかけていた彼女に、頑張って生きようと思いなおした彼女に、私はお礼がしたかった。

ただ、生きたい。普通に生きたい。本当にそれだけだったのに……


ポケモンの一生なんて、本当に不公平だ。

だけど、いくら恵まれなかったといったって、こんな仕打ちってないよ……


でも、もう泣かない。貴女との約束、無駄にしない。

ただ、貴女は忘れてと言ったけど、その約束だけは守れないわ。

いつかね、故郷に戻って、本物の雪を見せてあげる。

これは、私からの約束よ?




 ▼ 617 ギギシリ@いかずちプレート 18/08/31 01:51:17 ID:GGnUToKc [1/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




それは、何年前だっただろう、夏の暑い日の事だった。

気がつけばミミロップは、薄暗い森の中に倒れていた。

どことも知らない森。開いた瞳に映るのは見た事も無い光景ばかり。

ミミロップ「う、いたた……」

ズキンと肩の辺りに鋭い痛みが走り、反射的にその部分を手で押さえる。いつもと変わらない肌、特に傷ができているわけではないようだ。

ミミロップ「……攻撃されたんだった」

おぼろげにだが、思い出す。自分がどうして全く覚えの無い場所に寝ていたのか、自分の身に何が起きたのか。

ミミロップ「この様子じゃ完全に置いてかれたか……はぁ」

大きく息を吐くミミロップ。そして片手で額をおさえ、力なく首を横に振った。

ミミロップは、ある群れの中で行動していた。群れと言っても特別思い入れのあるような集団ではなく、ただ各々が外敵から身を守りやすくするためだけに形成されたようなものだが。

ミミロップはある街の近くで木の実を採っていた際、その群れからはぐれてしまった。少し探せば見つかるだろうと思っていたのだが、動き出そうとしたその矢先、彼女は鋭い痛みを感じ急な睡魔に襲われて地面に倒れてしまった。

そして、気がつけば全く知らない森の中。どうやらミミロップは誰かに麻酔を打ち込まれ、眠っている間にこの森へ運ばれたようだった。肩に走る鋭い痛みは麻酔を打ち込まれた際のものだろう。

何にせよ、彼女はこの森に単身放り出されてしまった。捕まえたはいいが必要無くなったのか思っていたポケモンと違ったのか、理由はわからないが、とにかく彼女は野生のままこの地に寝かされていた。

ミミロップ「困ったわね、どうしよう……」

群れからはぐれた事は彼女にとってそれ程重要な事ではなかったが、知らない地に投げ出されたこの状況には辟易とするしかなかった。

どこが比較的安全な場所か、実の採れる木はどこに生えているのか、何かあった時に隠れられる場所はあるのか、色々な事を一から考えなければならない。そしてそれは、彼女にとってそれなりに苦痛を伴う作業だった。

というのも、この時のミミロップはまだ自身を鍛える事などあまりしていない、ただのんびり生きてきただけのポケモンだったのだから。
 ▼ 618 ソッキー@ようせいジュエル 18/08/31 01:51:53 ID:GGnUToKc [2/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
とはいえ、野生のポケモンとして生きる上で必要な知識はある程度身についている。考えるより先ず動くという性格も幸いし、ミミロップは頭を痛めつつも状況にそう悲観する事無く次の行動に出る事ができた。

ミミロップ「この辺はなんていうか……不思議な森ね」

辺りを見回し、違和感を覚える。

何が、と訊かれれば返答に困ってしまうような、そんな程度の違和感。

一見何の変哲も無い森に見えはするのだが、ミミロップはこの光景に得体の知れない気味の悪さを感じていた。

ミミロップ「うーん……なんか気持ち悪いわねぇ」

もしかしたら、自分がここへ放されたのには意味があるのかもしれない。現時点では完全なる邪推だが、あれこれ考えても仕方が無いと判断し、彼女は状況についてそう思うことにした。

ただ勿論、その意味とやらに副うつもりはない。ミミロップは持ち前のポジティブさを武器に、ふんと鼻を鳴らしてみせた。

ミミロップ「歩けばいずれ出口に出るわよね」

とりあえず、歩き出す。

どんな森も草原も、歩けばいずれ違う景色が広がる。同じ道をぐるぐる歩くハメにならない限りは、どんな森でも出口に辿り着く。

果たして辿り着いたその先が自分の知っているどこかであるかはわからないが、とにかく薄気味悪いと感じているこの森に長居する意味は無い。

ミミロップ「……他にポケモンはいないのかしら」

もしやと、彼女は自分が感じている違和感の正体を予想する。

風が木々を揺らす音や自分が地面を踏みしめる音は鮮明に聞こえてくるが、他の生物の息遣いなどが一切聞こえてこない。

風景として見ればとても綺麗な森、誰かポケモンが急に飛び出してきてもおかしくはない光景だが、その気配は一切感じられない。彼女の自慢の耳にも、他のポケモンが生活していそうな物音は聞こえてこない。

ミミロップ「もしかして人間の管理する森? だとしたらちょっと困るわね……」

人間がポケモンを放し飼いにするような土地を所有している、という話を彼女は聞いた事があった。そのような土地には決まったポケモンしか生息しておらず、場所によっては広大な土地にも関わらず住んでいるポケモンが数匹しかいない、なんて事もあるらしい。

しかし、もしそうだとしたなら、より気をつけて周囲を観察する必要がある。そういった施設には少なからず、ポケモン達が逃げ出してしまわないように何か仕掛けを施してある場合が多いのだ。
 ▼ 619 ジョン@ノワキのみ 18/08/31 01:52:28 ID:GGnUToKc [3/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
だが、彼女のそれは杞憂なのか、どれだけ注意深く周囲を観察しても不審な何かを見つける事はできなかった。

例えば目の前にある、大きな木。

何の木かはわからないが、それはどこから見ても自然に生えているそれそのものだ。植え替えられた様子も無ければ、ポケモンを捕らえるような仕掛けも見当たらない。

例えば今踏みしめている、大地。

茶色い土と雑草で埋め尽くされた地面にも、落とし穴や枷など罠らしきものは何も見つからない。不自然に掘り返された跡も無ければ、埋め立てられた跡も無い。

それでもと見上げた、青い空。

青く澄み渡る空に、真っ白な雲が幾つか浮かんでいる。その雲の隙間から時折太陽が顔を覗かせ、彼女を、この森を、まばゆく照らしている。

ただ、自分が知らない土地というだけ。ただ、他にポケモンが見当たらないだけ。

人工物が辺りに見当たらないとはいえ覚えた違和感が拭い去られる事は無かったが、とりあえずすぐさま何か危険を回避しなければならない状態にあるわけではないようだった。

ミミロップ「……ハクタイシティ辺りに行きたいわね」

危険が無さそうだと判断できたとはいえ、それならばと見慣れない地で暮らそうとは思わない。とにかく彼女は、ここを出ようと歩みを再開した。

ミミロップ「ハクタイかぁ……」

ただ、口をついて出たハクタイシティも、そう見知った場所というわけではない。

ミミロルの多くはハクタイの森に棲家を作ると言われているが、彼女の出身はハクタイ周辺ではなかった。

彼女ははぐれてしまった群れの一つ前に属していた群れが別な場所を移動している時に生まれたため、ハクタイの地を知らずに育った。群れの多くがハクタイの森出身という事で何度かハクタイシティ近辺へ立ち寄った事があり、それで多少は知った土地というだけなのだ。

それでも、今いる名前も知らないような地より何倍もマシだと思っているのだろう、ハクタイシティやその周辺を想像する彼女の歩みは次第にはやくなっていく。

ミミロップ「!」

歩き始めて数分、ふと自分の足音とは違う、誰か別の何者かが地を踏みしめた音を彼女は聞いた。
 ▼ 620 ズパス@きれいなウロコ 18/08/31 01:53:03 ID:GGnUToKc [4/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
いつからそこにいたのだろう、いつから見られていたのだろう。

音のした方へ視線をやると、小高い丘になっている所から、一匹のアブソルが自分のことをじっと見つめていたのが見えた。

思わずぎょっとするミミロップ。まだ戦闘経験の浅いこの時の彼女に、咄嗟に構える事など難しい。一歩後退り、ほとんど無防備に相手の出方を窺う程度で精一杯だ。

アブソルがどういうポケモンなのか、それさえ彼女はまだ知らない。襲われたらどう対処したらいいか、全力で走ったとして逃げ切る事はできるのだろうか、そういった事ばかり頭に浮かんでくる。

ミミロップ「…………」

アブソル「…………」

しかし、アブソルはミミロップを見つめるばかりで襲って来る様子は無い。

もしやアブソルは囮のようなもので、今こうしている間にも他のポケモンや人間がミミロップを狙って近づいているかもしれない。そう思ったミミロップは、アブソルから視線を逸らさず、少しずつ幹の太い木へと距離をつめていく。

やがて木に手が触れる所まで近づくと、素早い動きで反対側へ回り、アブソルの視線から逃れた。そして、木の上や周囲をざっと見回す。

他に何かが潜んでいる様子は無い。ならばと、彼女は木の幹からそっと顔を出し、アブソルの様子を窺ってみる。

ミミロップ「あれ、いない?」

アブソル「いるわ」

ミミロップ「きゃああああ!!」

いつの間に回りこまれていたのだろうか、ミミロップがアブソルのいた場所へ視線を向けるよりはやく、アブソルはミミロップのすぐ傍まで近づいて来ていた。

ミミロップ「あ、ああっ!」

一目散に走り出そうとするミミロップ。しかし、露出した大きな木の根に躓き、その身が地面に投げ出されてしまう。

ミミロップ「いたた……」

地に打ち痛む身体に鞭打って、起き上がるミミロップ。そんな彼女に、アブソルはゆっくりと近づいていった。
 ▼ 621 クタス@プテラナイト 18/08/31 01:53:27 ID:GGnUToKc [5/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アブソル「……待って。取って食べようってわけじゃないわ」

ミミロップ「……?」

立ち上がるミミロップのすぐ前に立ち、落ち着いた表情で話しかけるアブソル。

動作こそ俊敏だが敵意の欠片も見せない彼女に、ミミロップは怪訝な表情を浮かべた。

ミミロップ「敵じゃ、ないの?」

アブソル「少なくとも私はそのつもり」

アブソルは前足を揃え、座り込む。彼女なりに、敵意がない事を表しているようだ。

だが、それも含めて罠かもしれない。ミミロップは多少気を緩めはしたものの、最低限警戒はしておく事にした。

ミミロップ「あなたは、誰? それに、どういうつもり?」

アブソル「私はアブソル。どういうつもりと言われても、きっと貴女と同じよ」

ミミロップ「同じ……?」

言葉の意図をわかりかねるといった具合に、ミミロップは小首を傾げて見せる。

アブソル「貴女、ここへ連れてこられたのでしょ?」

ミミロップ「!」

アブソル「その反応、やっぱりそうなのね。私も、そうなの」

ふう、と小さく息を吐くアブソル。

つまりは、アブソルもミミロップと同じように眠らされるなどして、知らないうちにこの場所へ連れてこられたというわけらしい。

同じ境遇のポケモンがいたのかと安心感を覚える反面、やはり自分は誰かに連れてこられたのだと改めて険しい表情を浮かべる事となった。
 ▼ 622 ズクモ@こだわりメガネ 18/08/31 01:54:10 ID:GGnUToKc [6/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミミロップ「私はミミロップ。ねえ、この状況について、何か知ってるの?」

何か知っているのなら、是非とも教えておいていただきたい。ただ、彼女が信用に値するポケモンかどうかまだわからない。もし彼女が敵であるのなら、適当な事を教え込まれてしまう可能性がある。

そもそも、どうしてアブソルはミミロップが同じ境遇だとわかったのだろうか。ミミロップを野生のポケモンとして捉えても不思議ではないはず。ミミロップも同じ境遇だと判断する材料が、きっと何かあるに違いない。

アブソル「そうね……少なくともここには、野生のポケモンはほとんどいないって事くらい」

ミミロップ「……やっぱりそうなのね」

ミミロップの違和感は果たして的を射ていた。

しかし、野生のポケモンがいないとなると、ますますこの森は人間が管理している場所である可能性が高まる。何かの目的に使うため、野生のポケモンを追い払っている事さえ考えられる。

そうなると、初見からアブソルがミミロップを自分と同じ境遇のポケモンだと判断しても不思議ではない。敵である可能性も考えられただろうが、怯えるミミロップを見て確信したのだろう。

アブソル「でも、生物が全くいないってわけじゃないみたいよ?」

ミミロップ「どういう事?」

アブソル「木がなぎ倒されていたり、爪痕が残されていたり、明らかに他の何かがいる様子はあるの」

ミミロップ「そう……」

あまり穏やかではない話。きっとアブソルは、この地で目を覚ましてから辺りをある程度見て回ったのだろう、それなりの情報を入手しているようだ。

遠くを見つめ、目を細めるアブソル。何かを思い出しているのだろうか、彼女はそのまま暫く沈黙してしまった。

ミミロップ「あなたは、どこに住んでたの?」

急に黙られてしまい、どうしていいかわからなくなったミミロップ。このままでは居心地が悪いと思い、別な話題で沈黙を破る事にした。

アブソル「私は、ヒワマキシティの辺り。自然の綺麗なところよ。そこで水浴びをして少し休んでいたら、気がついたらここにいたの」

ミミロップ「ひ、ひまわき?」

当時の彼女には聞いたことの無い場所だった。120番道路の辺りについて話しているのだが、シンオウの一部でしか生活した事がなかったミミロップにそれが伝わるはずも無い。

アブソル「あなたは?」

ミミロップ「え、私はハクタイシティの辺り」

アブソル「……聞いたことない場所ね」

それも当然。二匹にはわからない話ではあるが、それぞれ別な地方から連れてこられている。全く違う遠い場所から、彼女達はどういうわけか集められているのだ。
 ▼ 623 ブネーク@いわのジュエル 18/08/31 01:54:45 ID:GGnUToKc [7/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アブソル「お互い、違うところから連れてこられたのね。人間に捕まったわけでもなさそうだし、何が目的かしら」

アブソルは視線を伏せ、また小さくため息を吐く。どうも、本当にミミロップのことを警戒すらしていないようだ。

ミミロップ「(怪しいっちゃ怪しいけど……)」

アブソルはそれなりにミミロップに対して友好的に接している。だが、最低限とはいえ彼女に疑いの目を向けているミミロップは、アブソルの一挙一動をどうしても気にしてしまう。

できれば彼女を疑いたくなどない。だがこの状況、油断した途端アブソルが急に牙をむいてきても不思議ではない。たとえ実際に境遇が同じだったとしても、彼女が敵ではない保障などどこにもないのだ。

ミミロップ「……貴女はどうして私が敵じゃないってわかったの? 急に貴女を襲う可能性だって考えられたはず」

アブソルの顔色を窺いつつ、踏み込んだ質問をしていく。急襲されても逃げられるように、右足は既に外側へ開いている。

アブソル「正直、半信半疑だったわ。ただ、木を薙ぎ倒すのはともかく、貴女に大きな爪痕を木に残すことはできないと思ったから」

ミミロップ「なるほど」

確かにそれは理に適っている。ミミロップの反応に対して「やはりそうか」と発言した事も、きちんと整合性が取れている。

ただ、そうなると今度は彼女が敵ではないという証拠が欲しい。少なくとも彼女には、大きな爪痕を木々に残すなんて芸当は朝飯前だろう。大木を薙ぎ倒す事も、彼女のカマイタチならば容易く行える。

アブソル「貴女、私が敵じゃないかって、そう思ってるわね?」

ミミロップ「あ……」

どうやって真意を調べようかと考えているうちに、彼女の方からストレートに話をされてしまった。

無論、敵であるからこそのこの言動、と考える事もできるが、そうなると疑うだけキリがない。ミミロップは観念して、素直に思っている事を話してみる事にした。
 ▼ 624 ンキー@きいろいバンダナ 18/08/31 01:55:30 ID:GGnUToKc [8/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミミロップ「そりゃ、急に声かけられて同じだねって言われたら、不審に思うじゃない」

アブソル「……そうよね」

アブソルは寂しそうな目をして、ゆっくりと空を仰いだ。

アブソル「信じてくれとは言わないわ。けど……私に敵意は無い。たとえ貴女が私をここへ連れてきた犯人だとしても、強く何かを思うことはないわ」

ミミロップ「どうして?」

アブソル「私には、あまり記憶が無いからよ」

アブソルは首を持ち上げたまま、横目にミミロップを見る。その表情は、とても悲しそうなものだった。

アブソル「だから、ヒワマキシティの近くに住んでいたといっても、生まれ故郷というわけじゃないかもしれない。私は、自分がどこで生まれてどこで育ってきたか、わからないの」

ミミロップ「そう、なの……」

とても嘘を吐いているようには見えない。

ミミロップに相手の心を読む力など全く無いが、少なくとも彼女の様子や表情を見る限りミミロップを騙そうとしているとは思えない。

ミミロップ「(アブソルか……)」

少し考えた末、ミミロップは決断した。

ミミロップ「……わかったわ。貴女を信じる。疑ってごめんなさい」

アブソル「ううん、貴女の気持ちはよくわかる。仕方が無い事よ」

疑いが全く無くなったといえば、嘘になる。ただ、ミミロップとしても、彼女が敵であるという心配や警戒よりは、一緒に行動できる仲間ができた事に対する安心感の方が強かった。

アブソルも心細かったのだろう、ミミロップの言葉に安堵し表情を綻ばせた。
 ▼ 625 ージュラ@ヤミラミナイト 18/08/31 23:41:55 ID:GGnUToKc [9/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
お互い、とりあえずの協力関係が結べた事で、今後の話を始めていく。他に雑談など、している暇はない。

アブソル「私が目を覚ましたのはこの辺りだけど、起きてから少し辺りを見回ったの。それで、倒れた木や爪痕を見つけたわ」

ミミロップ「待って。それじゃあ何かがいた形跡っていうのは、この近くにあるって事よね?」

アブソル「まぁ……けど、何の気配も無いし近くに誰かはいないと思う」

とはいえ、この近辺に何かが生息しているらしいとわかった以上、堂々と道を歩くわけにもいかなくなった。

この森がどれ程の面積を誇るかはわからないが、木を薙ぎ倒したり大きな爪痕を残すような何かに遭遇する可能性はそう低くはないだろう。出会ってしまわないようにするため、物音にさえ気をつけて移動しなければならない。

ミミロップ「出口はありそう?」

アブソル「わからないわ。でも、室内ではなさそうだし、歩いていけばいずれどこかに出ると思う」

考えている事はミミロップと同じだった。この状況、それが最善の選択なのかもしれない。

アブソル「問題は、どの方向に歩くかね」

ミミロップ「何か指針になるものとかないの?」

アブソル「直感だけど、あっちの方角は森の出口が近そう」

アブソルが視線を向けた方向は、ミミロップが歩いてきた方角だった。

ミミロップ「逆に歩いてきちゃってたのか……まぁいいわ。そうと決まれば、行きましょ」

アブソル「そうね、話して時間を潰しても勿体無いし」
 ▼ 626 ンデツンデ@やけどなおし 18/08/31 23:42:38 ID:GGnUToKc [10/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




明るい森の中を、二匹並んで歩く。

森の中にはほとんど人間の手が入っていないようで、草がより分けられた跡も無ければ木の枝が切られたりしている様子も無い。

獣道すらできていない所を見ると、本当にこの森にはポケモンさえ住んでいないのだとわかる。

ミミロップ「ほんと、なんで私達こんなとこに連れてこられたのかしら」

アブソル「……もしかしたら、実験なのかもしれない」

ミミロップ「え……じ、実験?」

急にシリアスな話が始まる。ミミロップは思わずアブソルの顔を見た。

アブソル「私ね、眠らされたとき、少しだけ聞いたの。人間の言葉。誰かがいやらしく笑いながら、話をしてるのを」

ミミロップ「ど、どんな……?」

アブソル「はっきりとは聞き取れてないけど……『実験』とか『観察』って聞こえたの」

ミミロップ「実験と観察……」

言葉にしてみれば、聞きなれた言葉、違和感を覚えるようなものではない。だが、現状を考えればとても不吉な言葉である事は確かだ。

ミミロップ「それって、この森に私達を放して観察する、みたいな?」

アブソル「わからないわ。けど、映像を撮影して送る『カメラ』っていう機械を人間は持ってるんだけど、そういうものも見当たらない」

辺りをぐるりと見回すアブソル。つられてミミロップも木々や上空を見回してみるも、やはり人間が仕掛けたと思われるものは何一つとして見当たらない。

アブソル「もしかしたら道中何かの事故で、私達を手放さないといけなくなったのかもしれないわね」

ミミロップ「まぁ、そういう感じだといいけど……」

理由がどうであれ、この森が人間とどう関係があるかは気になるところだ。逃がされたというのならここがどれだけ故郷から離れていてもそう思い悩む事は無いが、人間の支配下に及ぶとなれば今後の行動をよく考えていかなければならない。

繰り返しになるが、ミミロップは先の事を一から考えるのが苦手なのだ。
 ▼ 627 チミル@マゴのみ 18/08/31 23:43:18 ID:GGnUToKc [11/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アブソル「……待って」

再び道無き森を、できるだけ音を立てないように歩く。

どれ程進んだだろう、あれだけ森を明るく照らしていた太陽が西の空へと身を傾け始めた頃、アブソルは何かを目にし急に歩みを止めた。

ミミロップ「どうしたの?」

アブソル「……あれ」

アブソルはミミロップに視線を移す事無く、ある一点を見つめている。

彼女の視線の先、大きな木と木の間、そこには何かが横たわっていた。

ミミロップ「あれは……ひっ!」

目を凝らしてよく見てみると、それが何かわかる。それに気づいたミミロップは思わず小さく悲鳴をあげた。

アブソル「何かの死骸……息絶えて、どれくらいかしら」

慌てて視線を逸らしたミミロップに対し、アブソルは表情一つ変える事無く横たわる何かの死骸を見つめている。

そういう光景を見慣れているのだろうか。彼女の落ち着きっぷりに、ミミロップは感心さえ覚えた。

アブソル「もう原型を留めてなさそうだけど、あれはおそらくポケモンよ」

ミミロップ「えっ……そ、それってつまり……」

アブソル「どうかしらね。でも、その可能性は出てきたわ」

嫌な予感がする。

その先の答えを、ミミロップは耳にしたくないと思った。

ミミロップ「……ここには何かがいて、私達はその餌にされたって事?」

だが、黙っていても話は先に進まない。ミミロップは持ち前の気の強さを最大限活用し、勇気を振り絞って予感を言葉にした。
 ▼ 628 フキムシ@たつじんのおび 18/08/31 23:43:55 ID:GGnUToKc [12/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アブソル「……蠱毒、って知ってる?」

ミミロップ「こどく?」

アブソル「ええ。百虫を同じ容器に入れて共食いさせて、生き残ったものを神霊とするの。この神霊を祀って、毒を採取するのよ。その毒は与えた人間から財を奪い死に至らしめる、と言われているわ」

蠱毒の話は始めて聞いたが、勘の良いミミロップはそれで彼女が何を言いたいのかわかってしまった。

つまりは、この森が蠱毒で言う所の容器のようなもので、ミミロップたちはそこへ放り込まれた百虫というわけだ。

ミミロップ「ま、待って……じゃあ、あれって、同じ境遇に陥った誰かがやったってこと?」

アブソル「かもしれない、というだけよ。とりあえず、様子を見に行きましょ」

ミミロップ「えっ、ちょ」

アブソルはミミロップの言葉を待たず、死骸の横たわる木の近くまで注意深く歩いて行く。ミミロップは辺りを警戒しつつ、足音をたてないように彼女のあとを追った。

死骸となってしまったポケモンを襲った誰かはもうこの辺りにいないのだろうか、辺りには何のポケモンの気配も感じない。木々も空も、至って静かなものである。

アブソル「これは……酷いわね」

ミミロップ「う、っく……」

死骸を見て、絶句する。

それはある小型のポケモンだった。原型を留めていないため何のポケモンかはわからなかったが、とにかく酷い有様だ。

顔は骨ごとぐしゃぐしゃに砕かれ、身体は大きく引き裂かれて中の臓物が飛び出してしまっている。四足のポケモンだったのだろう、死骸の周りには三つ、付け根の辺りから切断された足がごろりと転がっていた。

腐臭が酷い。血肉や臓物の異臭が辺りに漂い、顔をしかめずにはいられない。油断すれば、嘔吐さえしてしまいそうだ。
 ▼ 629 ークライ@たんちき 18/08/31 23:44:32 ID:GGnUToKc [13/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アブソル「ここまでする必要、あったのかしら……」

どういう理由があれば、ここまで残酷で陰惨な殺し方をしてしまうのだろう。たとえ蠱毒のような状況に陥ったとしても、ここまでする必要は無いはずだ。

アブソル「何にしても、これは危険ね……急いでここを出ないと」

ミミロップ「こ、こんなことするやつが近くにいると思ったら、さすがに、怖くなるわね。木を倒したり、爪痕残したりした、そいつかしら?」

アブソル「おそらくは」

最低でも、その何かに出会う事があってはならない。出会えば最後、このポケモンのように無残な姿となってこの世に別れを告げなければならなくなってしまう。

ミミロップ「こんなことできるの、大型のポケモンよね?」

アブソル「どうかしら。中型でも、隙をつけば可能かも。エスパーなら、手を使わずとも相手の身体を引き千切れるかもしれない」

ミミロップ「そ、そんな事できるの……」

アブソル「できるかも、っていうだけよ」

可能性はいくらでも考えられる。

それにそもそも、ここに潜んでいるであろう何者かがポケモンではない可能性も充分に存在する。見た事も聞いた事も無いような、おぞましい姿をした何者かがこの森にはいるのかもしれない。

アブソル「行くわよ。長居してたら、見つかるかもしれない」

ミミロップ「そうね……」

二匹は、亡骸となってしまったポケモンの横を通り過ぎ、どこともわからない出口目指して歩き始めた。
 ▼ 630 ガアブソル@ロメのみ 18/09/01 01:53:40 ID:1syYeUFE NGネーム登録 NGID登録 報告
既に不穏……
支援
 ▼ 631 クジキング@ピッピにんぎょう 18/09/02 14:16:59 ID:8wKMgoXs NGネーム登録 NGID登録 報告
サンダース編以来久々に見たけどすんごいなこれ

試合、野戦、エロ、グロ……
いったい>>1は何者なんだ
 ▼ 632 ギアナ@おいしいシッポ 18/09/03 00:57:39 ID:U0oM.WKk [1/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




落ち着いて休めそうな空間を見つけた頃には、辺りはすっかり夜の闇に覆われてしまっていた。

夜は視界が悪く急襲された場合対応が遅れてしまいかねないので、無闇に歩かず体力を温存する事にした。急いで外へ出たいと逸る気持ちは充分すぎる程持ち合わせているが、それも生きていればこそ。何かあってからでは遅いのだ。

目をつけた場所は、大きな木のうろになっている所だった。

長年かけてそうなったのだろうか、うろの部分は広く、アブソルとミミロップが並んで寝る事もできそうだ。また、中は思ったよりも綺麗で泥や腐葉が溜まっている事も無い。ポケモンだけでなくほかの生物もいないのだろうか、小さな虫さえ辺りには見当たらなかった。

アブソル「なかなか良い場所が見つかったわね」

ミミロップ「そうね……でも、こういう場所こそ危なくない?」

アブソル「ここで休むポケモンを狙って、って事?」

ミミロップ「うん」

この場所は辺りの木々や葉に隠れているためそう周囲から見つかりやすい場所とは思えないが、予めここに誰かが来る事を期待して待ち伏せしている何者かがいるかもしれない。

となると、まんまとこの場所で眠りに就いてしまった日には、そのまま永眠してしまう事になりかねない。

アブソル「片方が見張るしかないわね」

ミミロップ「どっちかが起きてて、どっちかは寝るって事?」

アブソル「それがいいと思う。休むのも大事よ」

ミミロップ「まぁ」

それはミミロップもわかっている。ただ、彼女はまだアブソルを信用しきれていない。

しかしそれはあくまでも、可能性を考えた場合の話。ミミロップとしては、できるだけアブソルのことを信じ力を合わせてここを脱出したいと思っている。

ミミロップ「(アブソル……ここが山、よね)」

ここまでアブソルにはミミロップを襲う機会が何度もあったはずだが、一向にそれをしない所を見れば彼女には本当に敵意など無いのかもしれない。

ならば、最悪自らの命をかける事となるが、彼女の提案を受け入れるしかない。仮に突っぱねて睡眠をとらずにいたとしても、彼女が敵であったとしていずれフラフラになった所を狙われておしまいだ。

与えられた選択肢は、多いようでその実とても少ない。
 ▼ 633 ーシャン@TMVパス 18/09/03 00:58:10 ID:U0oM.WKk [2/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アブソル「……まだ、信じてくれない?」

ミミロップ「ううん、ごめん。どうしても考えてしまうの」

アブソル「仕方ないわよね……いいわ。それなら、先に見張りを頼めるかしら」

意外な提案。彼女は身を挺して無防備をさらす事で、ミミロップの信用を獲得する事にしたようだ。

ミミロップ「……わかったわ。なら、それでいきましょう」

ここで彼女の提案を受けなければ、二匹の関係はずっと歪なままになる。そう思ったミミロップは、大人しく彼女の提案を呑む事にした。

無論、交代した後、アブソルが急変してミミロップを襲う事も可能性としては考えられる。相手を騙すにはまず無防備をさらして信用させる、というのはよくある話だ。

しかし、そういう事を考えるのは、もうやめた。

考えてもキリが無いのは勿論だが、こうまでしてくれる彼女をこれ以上疑いたくはなかったのだ。

もしもアブソルが敵でいずれ襲い掛かってくるのなら、それはそれで考えよう。そうミミロップは思って頷いた。

ミミロップ「三時間くらいで起こすわね」

アブソル「そうね、朝は早い方がいいし、三時間ずつでいきましょう」

勿論正確な時間を計る事ができるわけではないが、おおよその感覚で交代の時間を見積もる。

アブソルはミミロップに背を向け、木のうろへと跳び乗った。そして、身体を丸め静かに目を閉じる。

ミミロップ「もう寝たの?」

返事は無い。ほんの数秒で彼女は夢の世界へと旅立ったようだ。

ミミロップ「随分と寝つきがいいわね……あら?」

ふと、彼女の前足の爪が罅割れていることに気がつく。

ボロボロになっているわけではないようだが、縦に一本筋が入ったようになっている。よく見れば、幾つかの爪にそれと同じような罅があった。
 ▼ 634 ラップ@するどいくちばし 18/09/03 00:58:42 ID:U0oM.WKk [3/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミミロップ「もしかして、私と会うまでの所で何かあった……?」

あるいは、過去に受けた傷なのかもしれない。交代の際に聞いてみようか、ミミロップはそう思ってとりあえずは気にしない事にした。

ミミロップ「ふぅ……」

大木を背に、空を見上げる。

大きな月と、沢山の星。この空は、シンオウで見上げた空とそう変わらない顔を見せてくれている。

視線を落とせば、知らない森。全く同じ景色を見ているはずなのに、どうしようもなく不安がこみ上げてくる。ともすれば、泣き出してしまいそうにさえなる。

ここは、どこなのだろう?

今更ながら、至極当然の疑問が彼女の頭の中を闊歩した。

ミミロップ「……えっ?」

ふと、どこか遠くの方で草をかき分ける音が聞こえた。

ほんの一度だけ、それも一瞬。ただ、彼女の耳でやっと聞き取れる程度の音だ、この場所からはかなり離れていると思われる。

ミミロップはうろまで音も無く跳び上がり、アブソルを起こさないよう身を縮めて辺りの様子を窺う。

ミミロップ「!」

かさり、と再び物音が聞こえた。それも、先ほどよりも近い場所で。

まだ、何の気配も感じられない。

聞こえた音の大きさを考えれば、まだここからは遠い。そもそも、こちらに近づいてきているとも限らない。

ミミロップは、仮に近くを通りかかったとしても黙ってこのままやり過ごせるようにと、今のうちから姿勢を整えておいた。
 ▼ 635 テッコツ@ラグラージナイト 18/09/03 00:59:11 ID:U0oM.WKk [4/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
がさがさと、草木を揺らす音が近づいてくる。

アブソル「……?」

眠っているアブソルを起こし反応させてしまうほど、その音は近くまでやってきていた。

いま、おそらく、ちょうどこの木の裏辺り。そこに、何者かがいる。

アブソル「…………」

ミミロップ「…………」

物音に目を覚まし、一瞬で状況を理解したのだろう、アブソルはミミロップに目配せした。それに対し、ミミロップは小さく頷いて返事をする。

アブソルは音が鳴らないよう小さく首を下に向け、視線を右下の方へ向ける。きっと、その辺りから何者かが姿を現すと踏んでいるのだろう、アブソルはすぐに対応できるよう呼吸を整えた。

ミミロップはアブソルの視線の先を気にしつつも、反対側を警戒する。そもそも、相手が一匹であるとは限らない。

アブソル「…………」

ミミロップ「…………」

その状態のまま、数分が経過する。

あれから物音は聞こえてこない。木の裏に感じた気配も、いつの間にやらすっかり消えてしまっている。

だが、油断はできない。気配を感じないのは、相手が気配を消したからかもしれない。ここで地面へ降りたなら、その瞬間に襲われてしまうかもしれない。

たらりと汗が額から頬に流れてくる。

しかし、それをぬぐう事さえ今はできない。少しでも手を動かしてしまえば、その拍子に何かにぶつけて音を立ててしまうかもしれない。なので、頬がむずむずするこの感覚はなんとか耐えるしかない。

ほんの数分が何時間にも感じられる。これほどまでに緊張した時間を過ごすのは、いつ以来だろう。そんな事が頭の中を過ぎって、すぐに消えた。
 ▼ 636 ヤシガメ@Zリング 18/09/03 00:59:36 ID:U0oM.WKk [5/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アブソル「……もう何もいないみたいね」

状況に区切りをつけるため、アブソルが小さなため息と共に緊張を吐き出した。

ミミロップ「なんだったのかしら。近くまで来てたわよね」

ミミロップは汗が通った頬の辺りをカリカリとかき、顔をしかめてむずむずと鼻を動かしている。

アブソル「すぐ後ろまで来てたような気がする……けど、いつの間にかいなくなってたわ」

ミミロップ「急に気配消えたしね。もしかして、ゴーストタイプだったのかな?」

アブソル「それなら木を貫通してくると思うわ。でも、そういう感じも無かった」

よくわからない状況。相手は、何か生物がいると気づいて近づいたはいいがミミロップ達を見つけるには至らなかったと、そういう事なのだろうか。

ミミロップ「何にしても、いきなり来たわね……」

ぐっと両手を上に突き出し、身体を伸ばす。

何が相手となっていたかはわからないが、場合によっては出会いそれすなわち死を意味する、といった事も充分ありえる。昼間に見た、無残に引き裂かれたポケモンのように自分がなってしまうかもしれない。

アブソル「でも、よく気づいてくれたわね。助かったわ」

ミミロップ「いやいや、アブソル自分で起きてきたじゃない」

アブソル「実は、何となくミミロップが上まであがってきたのを感じてたの」

ミミロップ「あら。結果オーライとはいえ、ごめんなさいね」

アブソルは気配を感じ取る事に関して得意のようだ。耳の良いミミロップとあわせれば、辺りを警戒する際お互いにこれ以上無く頼れる相手かもしれない。

アブソル「起きちゃったし、交代する?」

ミミロップ「まだはやいと思うけど。たぶん一時間くらいしか経ってないわよ」

アブソル「でも、今ので目が覚めちゃったわ」
 ▼ 637 ャース@Zパワーリング 18/09/03 01:00:21 ID:U0oM.WKk [6/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


結局、アブソルと見張りを交代することにして、ミミロップはそのまま眠る事にした。

アブソルが地面に降りたのを確認し、うろの中で横になるミミロップ。夜は気温が下がり吹き付ける風は少し冷たく感じるが、うろの中まで風が訪ねて来る事はほとんどなく、眠るのに丁度良い暖かさを保っていた。

ミミロップ「(私達、助かるのかしら……)」

睡魔は襲ってくるが、とても眠る気にはなれない。

これまで野生環境で生きてきたとはいえ、群れの中でしか彼女は生活した事が無い。このように、どことも知らない地に放り出され、何ともわからない外敵に怯えなければならないような状況は初めてだ。

いくら性格が意地っ張りで強気でも、本音を言えば不安を強く感じている。頭ではしっかりしなければとわかっていても、いつ死んでしまってもおかしくないこの状況に、どうしても手足が震えてしまうのだ。

ミミロップ「(私にも、信頼できる心強いパートナーでもいたらなぁ……)」

なんとなく、群れの中にいたニドラン夫婦を思い出し、小さくため息を吐く。

まだ彼女は信頼できるような♂との出会いが無く、心傾くような相手を見かけてさえいない。情熱的なアプローチを仕掛けられた事は何度もあったが、毎度毎度丁重にお断りしてきた。誰だって、好みでない相手と結ばれようなどとは思わない。

しかし、群れの中にいれば、近くを歩くポケモンに「ツレ」が出来ていくのを見る事は珍しい話ではない。実際、はぐれてしまった群れでは、ミミロップの知る限りでも多くのカップルが結ばれては群れを離れていった。

実際ミミロップは数年後運命的な出会いを果たすわけだが、この当時はそのような出来事が自分に起きるなど夢にも思っていない。ただただ、周りが羨ましいようなそうでないような、複雑な気分だった。

ミミロップ「(はぁ……寝よ)」

つまらない事に時間を浪費してしまった。ミミロップは再び小さくため息を吐き、寝返りをうった。

目を閉じる前に、なんとなくアブソルの様子を眺めてみる。

アブソルは律儀にも姿勢を正して周囲を注意深く観察しており、風で木の葉が揺れる音にさえ小さいながらも反応を見せては息を吐いていた。

やはり、彼女は信用に値するポケモンなのだろう。少なくとも、自分を襲うような存在ではない。ミミロップはアブソルに疑いの目を向け続けていた事を反省し、静かに瞼を閉じた。
 ▼ 638 シデ@ソクノのみ 18/09/05 01:30:51 ID:vYOYu3.k [1/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

――――――
――――
――

ミミロップ「……ちょっと休憩挟むわね」

ルカリオ「うん……」

小さく息を吐くミミロップ。その肩を抱き寄せてみれば、彼女は少し震えていた。

ルカリオ「でも……ミミロップちゃん、そんな経験してたんだね。全く知らなかった」

ミミロップ「まぁ、話してないからね……前にも言ってたように、誰にも話さず墓まで持っていくつもりだったし」

ミミロップは、困窮した経験も死を間近に感じた経験もした事が無いと言っていた。

何故、彼女は過去について何も話さなかったのだろう。単に「話す必要が無かったから」というわけではなさそうだ。

ルカリオ「ミミロップちゃん……」

ミミロップ「ん……」

ルカリオは彼女の頭をひと撫でし、肩を抱き寄せる手に力を込めた。

ルカリオ「(通りで肝っ玉強いわけだよ)」

単に気が強いというだけでなくそういった経験があるというのなら、これまでの彼女の言動に納得がいく。

ルカリオは彼女が過去を話さなかったことについて、落胆する様子も無ければ、彼女を責めようともしない。ただただ、彼女の悲痛であろう経験に胸を痛め、少しでも彼女の支えになろうとその身を抱きしめるばかりだ。

ミミロップ「それで……夜が明けて、私達はまた歩き出したの」

再び、彼女の話が始まる。

ルカリオは彼女を抱いたまま、静かに耳を傾けた。
 ▼ 639 ガガルーラ@ライトストーン 18/09/05 01:31:12 ID:vYOYu3.k [2/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




明け方の森は鬱蒼としていてお世辞にも美しい光景とはいえない有様だった。

夜中に吹き付けていた風も凪いでおり、辺りからは何の生物の声も聞こえない。それどころか、草をかきわける音も、大空へ羽ばたく音も、何一つとして聞こえてこない。ミミロップの耳に入らないのだ、少なくともこの周辺に動くものは何も存在しない事がわかる。

アブソルも、この森の様子に強い違和感を覚えているのだろう、険しい表情を浮かべながら辺りを注意深く観察している。

アブソル「……不気味ね」

ミミロップ「本当に。なんで何もいないのかしら」

ただ、この状況に何とも言い難い気持ち悪さがこみ上げてはくるものの、見方を変えれば、先を急ぐには悪くない状況とも言える。

他に何もいないのであれば、道中何らかの脅威と出会う事も無いだろう。二匹は、危なげなく森を歩いて行く事ができる。

ミミロップ「昨日いた何かは、遠くに行っちゃったのかしら」

アブソル「何の気配もしないところをみると、そうだと思うわ。音も聞こえないのでしょう?」

ミミロップ「うん。気になる音どころか、今は風も吹いてないから、私達の足音しか聞こえない」

アブソル「やっぱり、人間が管理している森なのかしら……」

ミミロップ「どっちにしたって襲われる心配しなくていいならそれに越した事は……あら?」

アブソル「どうし……あれは」

足早に歩いていた二匹はあるものを見つけ、足を止める。

アブソル「とうとう、あったわね……人工物」

二匹が視線を向ける先、そこには五十センチほどの高さの柵があった。木でできたもののようで、特に仕掛けが施してあるようには見えない。

よく見れば、柵は森を区切っているわけではなく、直径十メートルほどの草原地帯をぐるりと取り囲んでいた。
 ▼ 640 リンリキ@とうめいなスズ 18/09/05 01:31:33 ID:vYOYu3.k [3/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミミロップ「柵の中に何かいるわけでもなさそうね……これ、何のためにあるのかしら?」

アブソル「さあ……電流が流れてるわけでもなさそうだし、機械的なものが仕掛けてあるようにも見えないわね……」

更に言えば、取り囲っている草原地帯にも何かがあるようには見えない。そこには何の生物もおらず、何か物が置かれているわけでもなさそうだ。

また、草原といっても柵に取り囲まれたそこにはほんの数センチ程度の草しか生えておらず、所々に地面が見えている。一見して、特に柵で取り囲う意味があるようには思えない場所だ。

アブソル「……待って。だけどここ、におうわね」

ミミロップ「におうって、何が?」

アブソル「これは……血と、なにかしら……」

近づいて見てみれば、所々が黒ずんでいるとわかる。きっとそれらは乾いた血なのだろう、アブソルは顔をしかめ目を細めている。

ミミロップは聴覚こそ優れているものの、嗅覚については並程度のものしか持ち合わせていない。近づけば血のような臭いがするとわかっても、アブソルのように敏感にそれらを感じ取る事はできない。

アブソルは、血以外の何かの臭いもすると言っている。ただ彼女の表情から察するに、血と同じくあまり良いものの臭いとは思えないのだろう。

アブソル「ここで何かがあった事は確かね。でも、相変わらず何の気配もしないけど……」

ミミロップ「でも、臭いが残ってるって事は、そんなに時間経ってないって事よね……?」

アブソル「どうかしらね。草や地面にしみこんでいれば、ある程度は残るから……それでも、最大でも数日前ではあると思う」

ミミロップ「血が出るって、つまりそういう事よね……」

ここで何が起きていたのか、想像は難しくない。ただひとつ不可解なのは、血肉はともかく、骨さえ残されていないこと。それを不審に思っているのか、アブソルは注意深く柵で囲まれた草原地帯を観察している。

しかし、何の手がかりも得られないのだろう、程なくして彼女は息を吐いて小さく首を横に振った。

アブソル「……何にしても、ここに立ち入る理由はないわ。迂回して行きましょう」

無闇に中へ入って罠にでもかかったらたまったものではない。アブソルはこれ以上の観察を諦め、柵に沿ってゆっくり歩き始めた。
 ▼ 641 ルンゲル@よごれたハンカチ 18/09/05 18:09:17 ID:eus6TGxM NGネーム登録 NGID登録 報告
シエンネ
 ▼ 642 ルリア@アブソルナイト 18/09/05 21:06:57 ID:3QHwlmok NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
やっと追いついた
単純におもしろい
 ▼ 643 ロピウス@ラティオスナイト 18/09/07 06:15:08 ID:aB9kQLYY NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 644 バコイル@たいりょくのハネ 18/09/08 01:05:13 ID:FQS2rPqw [1/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




人工物が見つかったことで、この森に対する見方も変わってくる。何と言う事もないただの森であることを期待していたが、いくらかは人の手が入っている事がわかってしまった。

柵というものの性質から言っても、人間が管理を行っている土地である可能性が高い。この事実に、二匹は不安を更に募らせる。

しかし、森の様子ばかり気にしているわけにもいかない。これまで以上に周囲を警戒しながら森を歩く二匹に、避けては通れない深刻な問題が襲い掛かる。

ミミロップ「……おなかすいた」

アブソル「……そうね」

可愛らしいおなかをきゅるきゅると鳴らすミミロップ。アブソルも、腹の音こそ聞こえてこないものの、空腹に苛立ちを募らせ始めていた。

ミミロップが森で目を覚ましてから既に半日以上が経過している。普段であれば採取した木の実を食べて腹を満たしていた夜も、この状況では何も口にできず、唾を飲み込む事で空腹を紛らわせる状態が続いていた。

ウサギは草食ではあるが、口にする事で中毒を引き起こしてしまうものも多い。タンポポやクローバーなどを好んで食べる一方、ワラビやクサノオウといった野草は禁物なのだ。

果たしてこの森にそのような野草が存在するかといえば、幸か不幸か食料になりそうなものも中毒を引き起こしそうなものも見当たらない。目にするのは、毒となるか食料となるか食べてみなければわからないような、名前も知らない野草ばかり。

この状況、もし中毒症状を引き起こすものを食べてしまえば、助かる見込みは無いかもしれない。それも、体調を著しく崩してそのまま死に至る可能性もある。食べられるかどうかわからないものを口にするには、そういった覚悟をしなければならない。だがこの時の彼女には、その覚悟も中毒への耐性もほとんど無かった。

アブソル「だけど……この辺りには、木の実がないわ」

足を止め、ぐるりと辺りを見回すアブソル。ミミロップも同じようにあちらこちら眺めてみるも、実の生っていそうな木はどこにも生えていない。

いつ外へ出られるかもわからないこの状況、外敵から身を守る事だけでなく、飢えを凌いでいく事も考えていかなければならない。

しかし、状況は全くもって優しくない。この森に、彼女達が口にしても大丈夫と断定できるようなものは全く見当たらない。

アブソル「どこか、実の生る木の方へ行かないといけないわね……」

ミミロップ「でもそれって、今歩いてる方向からそれたりしない?」

アブソル「わからないわ……けど、周りの木を見るに、少なくともこの辺りは食べられるものを見つけられそうにないわね」

ミミロップ「そんな……」
 ▼ 645 ンドパン@ぼうごパット 18/09/08 01:06:05 ID:FQS2rPqw [2/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
仮に今自分達が向かっている方向に出口があったとしても、そこへ辿り着くまで空腹を我慢できるかはわからない。特にミミロップのようなポケモンは定期的に食事を採らなければ腸内活動が弱まり、数日のうちに死に至ってしまう。

幸い彼女はミミロップ種の中でも身体が強い個体ではあるが、それでも二日程度が限度だろう。そう思えば、そろそろ何かを口に入れておきたいところである。

アブソル「生えてる木の見た目から考えれば、あっちの方になら何か実の生る木があるかもしれないわ」

アブソルの指す先は、今ミミロップ達が歩いて向かっている方角とは違っていた。彼女の指し示す方へと向かうなら、正面を右の方へそれていく事になる。

ミミロップ「元々どこへ向かってるかもわからないし、そっち行きましょ」

アブソル「そうね。出来るだけ助かる確率の高い動きをしないといけないし」

どこが出口かも、そこへ辿り着くのにどれくらいの時間がかかるかも、彼女達にはわからない。もし何日もかかるような道のりを歩いているとしたら、食べられない事それすなわち生きて外に出られない事を意味する。

そうでなくとも空腹は集中力の欠如を招き、正常な思考を狂わせてしまう。もしそんな状態で何かに襲われてしまえば、満足に走ることさえできず殺されてしまうかもしれない。

最悪は、周囲に茂っている草木の葉を食べるしかない。餓死するならば一か八かに賭ける方を選ぶつもりだが、今はまだその時ではないと彼女達は腹に力を込めた。

ミミロップ「クローバーでも生えてればなぁ……」

アブソル「クローバーって、シロツメクサ? あれを食べるの?」

ミミロップ「うん。割と美味しいわよ」

アブソル「そう……あまり想像もつかないわ」

アブソルは不思議そうな表情を浮かべ、視線を少し上に向けている。決してミミロップを馬鹿にしているわけではなく、単に自分がそれを食べる所が想像できないのだろう。

ミミロップ「アブソルは、肉食なの?」

アブソル「牧草なら食べるわ。でも、クローバーは、ううん、ちょっと、わからないわ……」

アブソルは、失った記憶の中にもしかしたら食べた経験があるかもしれないという思いからか、言葉の最後を濁して話した。

仮に食べた事があったとしても、その味も食感も覚えていない。ミミロップの言葉に是非食べてみたいという思いがこみ上げてくるが、残念な事にこの森ではまだシロツメクサの姿を見かけない。
 ▼ 646 ンジャラ@イーブイZ 18/09/08 01:06:53 ID:FQS2rPqw [3/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アブソル「……ねえ、ハクタイ、だったかしら。そこって、あったかいの? 寒いの?」

失っている記憶を引き出そうとするのは辛いからか、アブソルは話題を変えた。

ミミロップ「寒いわね。すぐ北に豪雪地帯があるし」

アブソル「雪が降るの?」

ミミロップ「それはもう、物凄い降るわよ」

アブソル「そうなの……雪、かぁ」

アブソルは空を見上げてぽつりと呟いた。心なしか、彼女を取り巻く雰囲気が少し和らいだ気がした。

ミミロップ「アブソルの住んでる所はあったかいの? えっと、ひまわき?」

アブソル「ヒワマキ、ね」

間違えられる事が多いのだろうか、アブソルは念を押すように訂正を入れた。

アブソル「ヒワマキの辺りはずっと温暖な気候ね。冬になると寒くはなるけど、雪なんて滅多に見ない……ううん、私は一度も見た事がないわ」

ミミロップ「そっちはあったかいのかぁ。ずっと寒いところに住んでるから、なんだか羨ましいわ」

アブソル「ふふ、それは私も同じ。あったかいって言うと聞こえはいいけど、湿度も高めだし、夏なんて地獄よ。私こそ、ミミロップが羨ましいわ」

記憶があまり無いといってもここ一年程度の事は覚えているのだろう、彼女は自分の住んでいる辺りについてどこか楽しそうに話をする。

あまり遠出などする事がないのだろうか、アブソルはミミロップの話に随分と興味を示していた。

アブソル「それに……暑くても何も無いけど、寒いと雪が降るじゃない」

ミミロップ「まぁ、それが嫌だったりするけどね」

アブソル「そうなの? でも、私にしてみれば、なんだか不思議。だって、雪って真っ白でふわふわで冷たくて、触ると解けて消えちゃうんでしょ? 信じられない。とっても神秘的だわ」

ミミロップ「うーん、それは幻想かなー」

現実を知るものと知らないものの間でよく起きる、理解や認知の乖離。他愛ない会話ではあるが、こうも一つの物事に対して見解が違う様子は、当事者として感じていても面白いものだ。
 ▼ 647 ーブル@ダートじてんしゃ 18/09/08 01:07:44 ID:FQS2rPqw [4/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アブソル「ねえ、ひとつお願いしてもいいかしら」

ミミロップ「え、急にどうしたの?」

お願い、などと思ってもみない言葉に思わずミミロップは歩みを止め、素っ頓狂な返事をしてしまう。

アブソル「大層な話じゃないんだけど、その……」

アブソルも足を止め、振り返る。だが彼女は俯いていて、少し言葉を詰まらせている。

アブソル「生きてここを出る事ができたなら、その時は……」

アブソル「私に雪を、見せてくれない?」

彼女にしてみれば、随分と勇気を出した発言だったのだろう。それを言うアブソルの頬は少し赤みがかっていた。

ミミロップ「それは別にかまわないというか、私が降らせてるわけじゃないというか……シンオウに来るって事?」

アブソル「あ、ハクタイってシンオウなんだ」

ミミロップ「そうよ」

アブソル「じゃあ、そこに私を連れて行ってくれないかしら」

ミミロップ「勿論いいわよ。でも、わざわざ寒いところに来るなんて、物好きねぇ」

アブソル「とても興味があるから」

アブソルは心底嬉しそうな顔をして、安堵の息を吐く。こんなお願いでも、断られたらどうしようと心配していたようだった。

そんな彼女を見て、ミミロップは認識を改める。

ミミロップ「(どこか冷たいポケモンなのかなって思ってたけど……こんな表情もするのね)」

ミミロップから見れば冷静でどこかばっさりしたタイプのポケモンのように映っていたアブソルだが、何という事もない、アブソルも内心は不安で仕方なかったようだ。

こんな他愛ないやり取りにさえ、心落ち着かせ表情を緩ませる。ミミロップは誤解していた事を反省した。
 ▼ 648 シャマリ@ていこうのハネ 18/09/08 23:14:30 ID:vyS63Szc NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
このスレももう3ヶ月か…
シエンネ
 ▼ 649 ッコラー@くさのジュエル 18/09/09 14:06:52 ID:EphYQnyc NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 650 ラティナ@せいしんのハネ 18/09/11 01:17:40 ID:SkMISLiw [1/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ちょっとした会話でもお互い元気付けられたようで、二匹の足取りは先ほどまでに比べて格段に軽やかになっていた。

話をする事で、それぞれが感じていた相手との溝もある程度埋めることができたのだろう。人間もポケモンも、コミュニケーションを取る事でお互いを理解し合えるのだ。

当たり前の事、だけど中々簡単にはできない事。その関門を一つ乗り越えた事で、ミミロップとアブソルの距離はぐっと縮まっていった。

アブソル「……あれは、何かしら」

ミミロップ「あれって?」

暫く調子よく歩いていた二匹だが、アブソルが何かを見つけた事で歩みが止まる。

彼女の視線の先、そこは岩場になっている場所だった。

ミミロップ「岩場が、どうかしたの? 気になる事でもある?」

アブソル「ううん、そこじゃなくて……」

よく見れば、アブソルは岩場の方を向いてはいるが、正確にはその手前の地面を見つめていた。

何があるのだろうとミミロップは目を凝らす。

ミミロップ「……何か落ちてる?」

アブソル「みたいね。自然のものじゃないような気がするわ」

周囲を見回しつつ、慎重に近づいていく。柵という人工物が既に見つかっている以上、罠が仕掛けられている可能性も充分考えられる。

もしかしたら、落ちているものに近づいた瞬間網を投げられるかもしれない。もしかしたら、そこへ辿り着く前に落とし穴にはまるかもしれない。もしかしたら、次の瞬間には何かに襲われるかもしれない。

様々な可能性を考えながら、二匹は落ちているそれのもとまで歩いた。

ミミロップ「これ……なに?」

アブソル「白い珠、かしら……」

しかし幸いにも、二匹がそこへ辿り着いて落ちているものを眺めても何かが起きる様子は無い。罠も無ければ何かの気配もしない、本当にただ何かがそこに落ちているだけのようだ。
 ▼ 651 マナッツ@キーのみ 18/09/11 01:18:00 ID:SkMISLiw [2/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
そこに落ちていたのは、丸くて白い玉だった。玉と言っても綺麗な球体ではなく所々歪になっている部分があり、そのおかげで転がらず一点に留まっていられるようだ。

大きさは大体人間の拳一つ分程度と、それなりのサイズを誇っている。見るからに、自然の中でできたものとは思えない代物。

ミミロップ「ボールみたいな?」

アブソル「でもこれ、柔らかそうよ」

ミミロップ「木の棒でつついてみようかしら」

アブソル「気をつけてね」

ミミロップは手近に落ちていた枝を用意し、白い玉に向ける。念のためアブソルは少し下がり、何が起きても対応できるよう戦闘態勢を整えた。

ミミロップ「……崩れるわ、これ。それに……なんだろ、甘い匂いがする」

アブソル「甘い、匂い……」

ミミロップが枝を動かすたびに幾つもの欠片が地面に転がり、匂いを放つ。崩れた玉本体を見ても中まで真っ白で、何かが仕込まれている様子は無い。

ミミロップ「ねえ……これ、もしかして、食べ物って事はない?」

甘い香りに空腹を思い出してしまったミミロップは、こみ上げる涎をごくりと飲み込んだ。

アブソル「だめ、待って……うう、どうして、頭が痛い……」

ミミロップ「えっ? ちょ、ど、どうしたの? 大丈夫?」

しかし、アブソルはそれどころではないようだった。顔をしかめ、前足を折り地に伏してしまっている。迫り来る痛みを必死に耐えているようだ。

甘い匂いが苦手なのだろうか、そう思ったミミロップは口内にたまってきた唾液を一気に飲み込み、アブソルを抱えて離れた茂みまで歩いた。
 ▼ 652 イティオ@イーブイZ 18/09/11 01:18:27 ID:SkMISLiw [3/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミミロップ「大丈夫?」

アブソル「ええ、ちょっと、マシになったわ……」

ふぅふぅと辛そうに呼吸を繰り返すアブソル。彼女を地面に降ろすと、そのまま崩れるように倒れてしまった。

アブソル「ご、ごめんなさい、なんだか、頭が痛むの……何か、思い出そうとしてるのかも……」

ミミロップ「えぇ? 思い出すって、昔の事?」

アブソル「わから、ないわ……とにかく頭が変な感じなの……」

こんな時に、記憶が蘇ろうとしているのだろうか。アブソルは額に汗をびっしり浮かべ、とても苦しそうに顔を歪ませている。

だがミミロップにはどうする事もできず、ただただ心配を募らせるばかりだ。

アブソル「…………」

しかし、そんな状況もそう長くは続かなかった。やがてアブソルは荒い息を整えきり、完全に落ち着いた頃ゆっくりと瞼を開いた。

ミミロップ「大丈夫?」

アブソル「ええ、なんとか……」

ミミロップの言葉に小さく笑顔を見せ、立ち上がる。その際少しだけ身体がふらついたが、ミミロップが支えるよりはやく、彼女は体勢を整えて見せた。

アブソル「……断片的にだけど、何かを思い出したの」

ミミロップ「何かを? やっぱり記憶が蘇ってたのね?」

アブソルの身に何があったのか回復直後に尋ねるのは酷だろうと思っていたが、それについてアブソルの方から話を始めてくれた。

もう頭痛は治まったのだろう、ミミロップを見る彼女の目つきはとてもしっかりとしていた。
 ▼ 653 ヤシガメ@どくのジュエル 18/09/11 01:18:45 ID:SkMISLiw [4/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アブソル「こんなことを言うと、信じてもらえないかもしれない……けど、さっきの、白い玉について思い出したみたいなの」

ミミロップ「えっ?」

彼女の言葉に、思わず聞き返すミミロップ。何かを思い出したというのだからてっきり過去を思い出したのかと思っていたが、そうではないらしい。

アブソル「あの玉は……食べたらダメ」

ミミロップ「……食べ物じゃないって事?」

アブソル「そうじゃないけど……毒物みたいなもので、食べると、身体に変化が……」

???「あー!」

アブソル「!?」

ミミロップ「!!」

突然後方から誰かの大声が聞こえた。

アブソルの話に集中していたミミロップは完全に周囲に対する警戒がおろそかになっており、すぐ近くまで誰かが近づいてきている事に全く気がつかなかった。

それはアブソルも同じようで、すぐさま表情を厳しく一転させ、姿勢を低くして声の聞こえた方を睨みつける。

ミミロップ「敵……?」

アブソル「わからない。罠かもしれない」

これまで、自分達以外の何者かが生息している形跡こそ見てきたものの、実際にその姿を目にする事はなかった。それだけに、こうもあからさまに存在をアピールされたのでは余計に警戒心も強まるというもの。

二匹は声のした方へ近寄る事はせず、じっと茂みの陰に隠れて相手の出方を窺うことにした。
 ▼ 654 ーランド@ライブスーツ 18/09/11 01:19:02 ID:SkMISLiw [5/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
???「ここにも転がってたか。回収しておこう」

暫く身を潜めていると、再び同じ方向から声が聞こえてくる。

だが、次に聞こえてきた声は最初に叫び声をあげた者とは違うポケモンのもののようだった。

アブソル「茂みの隙間から様子が見えるわ。あれは……グラエナと、エネコロロね」

ミミロップ「グラエナとエネコロロ?」

ミミロップも茂みの陰から相手の様子を窺ってみる。そこにいたのは、当時のミミロップがほとんど知らなかったポケモン達だった。

グラエナとエネコロロは地面に落ちている白い玉を見て何かを話している。持ち帰るだの今食べるだの、白い玉をどうするか考えているようだ。

ミミロップ「……食べようとしてるけど」

アブソル「でも、あれは……あっ」

言いかけて、息を呑む。

急にグラエナがこちらの方に視線を向けてきたのだ。

ここに潜んでいる事がバレてしまったのだろうか。グラエナはこちらをじっと見つめたまま動こうとしない。二匹も、見つかっていない可能性がある以上、ヘタに動く事ができない。

そのまま暫くグラエナはミミロップ達が隠れている茂みを見つめていたが、エネコロロがグラエナの身体を前足でつついた事で、彼はミミロップ達に背を向ける。

なんとか見つからずに済んだかと、二匹は心の中でため息を着いた。

だが……

エネコロロ「そこに誰かいるの?」

緊張を緩めかけた二匹は、再び全身を強張らせることになった。

音をたてないよう隙間から様子を窺ってみれば、今度はエネコロロがミミロップ達の隠れている方をじっと見つめていた。
 ▼ 655 シレーヌ@しんかいのウロコ 18/09/11 01:19:25 ID:SkMISLiw [6/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
グラエナ「おい、やっぱりまずいって。敵だったらどうするんだよ」

エネコロロ「でも、でも、味方かもしれないよ? 仲間だったら、もっと心強くなるもん!」

グラエナ「そんなに甘いもんかね……」

グラエナが少しずつ緊張感を身に纏わせているのが気配でわかる。対して、エネコロロはそんなグラエナの身体を前足でちょいちょいと叩き、暢気にうーうー唸っている。

どうにも、敵には見えない。

彼らの会話から考えれば、もしかしたら同じ境遇のポケモンなのかもしれない。そう思ってアブソルを見ると、彼女も同じ事を思ったのか、アブソルとちょうど視線がかち合った。

エネコロロ「警戒してるのかな……それとも気のせい?」

グラエナ「わからん。さっきは気配がした気がしたんだけど、今は全くしないしな」

エネコロロ「うーんそういうの私にはわかんないや。ねえ、行ってみない?」

グラエナ「お前はどうしてそうも緊張感が無いんだ。オノノクスだったらどうするんだよ」

エネコロロ「あんな所に、あんなおっきいポケモンいるかなぁ?」

彼らの会話の中に、ポケモンの名前が出てきた。

もしかしたら、木を薙ぎ倒したり爪痕を残したりしているポケモンのことを言っているのかもしれない。ただ、やはりこの当時のミミロップはオノノクスと聞いてピンとくるものが無く「そんなやついるんだ」くらいの認識だったが、そのポケモンのことを知っているのだろう、アブソルはさらに表情を強張らせていた。

グラエナ「ん、また気配がするぞ。でも、確かにこれはオノノクスの気配じゃないな」

オノノクスと聞いて緊張を増してしまったせいだろう、アブソルの気配がグラエナに感じ取られてしまった。しまったとばかりに気配を消しにかかるが、もう遅い。なんとか気を落ち着ける頃には、グラエナとエネコロロは茂みのすぐ近くまで歩いてきていた。

こうなっては仕方が無い。アブソルはミミロップに目配せをし、ぐっと姿勢を低くした。
 ▼ 656 リデプス@マッハじてんしゃ 18/09/11 01:19:48 ID:SkMISLiw [7/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アブソル「ふっ!!」

グラエナ「な、なんだ!?」

エネコロロ「ひゃう!?」

一瞬の出来事。

グラエナとエネコロロが茂みの前に立ちまさにその奥を覗き込もうとした刹那、アブソルは茂みから飛び出しエネコロロの背後を取って彼女を地面に押さえつけた。エネコロロは抵抗する間も無く地面に転がされ、頭を踏まれ地面とキスをする。

突然のこの事態に、グラエナはただぽかんとアブソルの動きを眺める事しかできなかった。

ただそれはミミロップも同じようなもので、彼女がここまで相手を圧倒するとは思っておらず驚いた顔をしてアブソルを見ている。

アブソル「動かないで。動いたら、わかるわよね?」

ミミロップ「……マジ?」

そして、とても怖ろしい事を言う。

エネコロロはただアブソルにされるがままで、とても状況を覆せそうに無い。急な出来事に気が動転しているのか、足をばたつかせる素振りさえ見せないでいる。

いわば、無抵抗状態。そんなエネコロロを、アブソルは容赦なく踏みつけている。

この状況にはグラエナも手が出せないらしく、歯を噛み締めてアブソルを威嚇するに留まっていた。

グラエナ「やっぱり敵だったか……くそ、小型のポケモンまで敵に回るってのかよ」

アブソル「……それは、どういう意味?」

グラエナ「なんだよ今度は……どうもこうも、お前達が俺達をハメたんだろうが。こんなところ連れてきやがって、一体何が目的だ!」

今にも飛びかかろうという勢いでグラエナが吼える。アブソルは彼の威嚇をものともしていないようだが、彼の言葉には反応を見せ、怪訝な表情を浮かべ始めた。

ミミロップ「ねえ、やっぱりこれ……」

アブソル「……そうね」

ここまでくれば、もうわかる。やはり、彼らも同じ境遇のポケモンらしい。
 ▼ 657 ロア@パワーレンズ 18/09/11 01:20:15 ID:SkMISLiw [8/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アブソル「……あなたも、エネコロロもこの森に連れてこられたの?」

グラエナ「お前達がそうしたんだろうが。ロクな人間のポケモンじゃねぇな!」

ミミロップは黙って視線で話しかける。アブソルはそれに対して、小さく頷いて答えた。

ミミロップ「待って。その話が本当なら……私達は、敵じゃないわ」

グラエナ「なんだって?」

アブソル「……私達も、同じなの」

グラエナ「なに? 同じっていうのは……」

ミミロップ「捕まって、この森に放り込まれたのよ。眠らされるとかしてね」

グラエナ「お前達も……? なら、同士なのか?」

同士、というと少し違うかもしれない。だが、細かい事はこの際どうでもいいとばかりに、アブソルは「そのようね」と大きく息を吐いた。

アブソルを威嚇していたグラエナの表情も次第に怪訝なものに変わっていき、最後には同じように大きく息を吐いてその場に座り込んでしまった。

グラエナ「なんだ……なら、よかった。俺達二匹じゃ、心細いところだったんだ……」

ミミロップ「私達以外にも、同じ境遇のポケモンがいるなんてね」

もしかしたら、まだまだそういったポケモンがこの森のどこかにいるのかもしれない。相変わらず彼女達をここへ連れてきた何者かの目的はわからないが、まだまだどこかに仲間がいると思うと、少しは気が楽になった。

エネコロロ「あ、あの、放してもらえると……」

アブソル「あら、ごめんなさい」

状況がひと段落した所で、ようやく開放されるエネコロロ。砂がいくらか口の中に入ってしまったのだろう、彼女は皆に背を向け、地面に何度も唾を吐いた。

仕方が無かったとはいえ、それを見て気の毒に思うミミロップだった。
 ▼ 658 ンムー@ぼうごパッド 18/09/12 01:08:39 ID:KRzwIoA. NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 659 イル@あかいくさり 18/09/12 22:40:04 ID:8pNc83mQ NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
続きはよ
 ▼ 660 マンタ@ジュカインナイト 18/09/13 06:49:14 ID:7kIEhdP. NGネーム登録 NGID登録 報告
>>659
せかさんでもええんやで
 ▼ 661 ガヤドラン@あかいいと 18/09/16 01:37:45 ID:b9yQf8nQ [1/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




お互いが敵では無いとわかり、それぞれが安堵の息を漏らす。

グラエナとエネコロロはミミロップ達が知らない情報を幾つか持っているようで、共に強力して森の外を目指すため、どこか陰になっている所で腰をすえて話をする事となった。

ミミロップ「雨ね……」

アブソル「間に合ってよかったわ。濡れると寒いし」

四匹が近くの岩場にできた大き目のくぼみに落ち着いた頃、それを見計らっていたように雨が降り出した。彼らの足取りを消してくれそうな、少し強い雨だった。

アブソル「それで、オノノクスがどうとか言ってたけど……」

グラエナ「あぁ……お互い、今後一番気をつけなきゃいけない話だな」

ふーっ、と長い息を吐き、グラエナは眉間にしわを寄せる。

グラエナ「……俺は、目が覚めたらこの森の中だった。散々彷徨って、エネコロロと会って、一緒に出口を探してた時だ」

グラエナ「お前達もそうだろうけど、腹減ったんだよ。我慢できないんだけど、どこにも獲物や木の実なんて見当たらない。歩けど歩けど見た事も無い植物ばっかりで、他の生物だっていやしない」

アブソル「同じね。まぁ、同じ場所にいるから当たり前だけど」

グラエナ「あぁ。でも、俺達は見つけたんだ。木の実の生ってる場所を」

ミミロップ「えっ、木の実あるんだ」

彼の話に、希望がわいてくる。

最悪このまま飢え死にする未来さえ脳裏にちらつき始めていたミミロップだが、彼の言う事が本当なら生きてここを出られる確率が高まるというもの。

だが、事態はそう易しいものではないらしい。

グラエナ「……そこに、あいつが、オノノクスがいたんだよ」

アブソル「そういうことなのね……」

きっと、グラエナたちは折角見つけた木の実を泣く泣く諦める事になってしまったのだろう。それを話す彼はギリギリと歯を鳴らし目を細めている。
 ▼ 662 ラマネロ@スペシャルガード 18/09/16 01:38:29 ID:b9yQf8nQ [2/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
オノノクスといえば、ドラゴンの中でも比較的気性が穏やかとされるポケモンだ。ただ、縄張りを荒らす者には頑丈な牙で襲い掛かり、相手の身を引き裂いてしまう程の凶暴さを見せる。

今回おそらく、木の実のある辺りがオノノクスの縄張りとなっているのだろう。つまりは、腹を満たすならオノノクスの目を盗んで木の実を採ってくるか、オノノクスを倒してしまうしかない。話が通じる相手ならまだやりようはあるかもしれないが、グラエナの口ぶりからして説得は不可能と思われる。

アブソル「その場所は、ここから遠いの?」

グラエナ「まぁ待てよ。木の実の話も大事だが、実はもっと良いものを俺達は見つけたんだ」

そう言ってグラエナはエネコロロの方を見る。エネコロロは、自分の出番が来たとばかりにびしっと右前足を前に出し、反対の前足で何かを前に転がす。

ミミロップ「それ、さっき転がってた白い玉……」

グラエナ「ん、なんだお前達もこれ見つけてたのか。いいよなこれ。甘いし、おなかも膨れる」

エネコロロ「お菓子みたいよね。ふふ、私これだぁいすき」

表情を緩ませ白い玉を見るグラエナとエネコロロ。

ミミロップは困惑を隠しきれず、アブソルの方を見る。アブソルは、自分の記憶に自身がなくなってしまったのか、言葉もなく俯いてしまった。

グラエナ「どういうわけかこの玉、森のあちこちにあるみたいなんだ。おかげで飢える事は無いってもんよ」

ミミロップ「で、でもそれ、自然に出来たものじゃないでしょう? もしかしたら、人間が作ったのかも……」

グラエナ「仮にそうだとしても、こいつのおかげで俺達は死なずに済んでるんだ。身体に影響があるわけでもねぇしな」

グラエナはくるりと回って、自分の身が健康体である事をアピールする。だが直後にはやや挑戦的にミミロップを眺め、不適な笑みを浮かべる。

グラエナ「別に信じなくてもいいんだぜ。食い扶持が増えないなら、俺とこいつで腹を満たすだけだ」

そしてエネコロロから玉を奪い、四分の一程の大きさに割ってそれを口に入れた。

漂う甘い香り。グラエナは玉の欠片をしっかり味わうように口の中で転がし、腹が満たせる事の幸福とともに欠片を噛み締めた。

匂いに耐えかねたようで、エネコロロも白い玉にかぶりつく。彼女もまた、とても幸せそうに可愛らしい小さな口をもぐもぐと動かした。
 ▼ 663 ズマオウ@ニニクのみ 18/09/16 01:39:08 ID:b9yQf8nQ [3/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
断片的にでも思い出しかけた記憶が気がかりなのだろう、アブソルは食事をする二匹を見つめるばかりで玉に手を出そうとはしない。

ミミロップは、手を出したいのは山々なのだが、アブソルの言う事も無視できず彼女と玉を交互に見るばかりだ。

グラエナ「……一応、お前達のはここに残しておく。けど、朝までに食べなかったら、俺達の朝飯にするからな」

グラエナは半分になった白い玉を、来るときに持ってきていた大き目の葉に乗せてミミロップの前に持ってくる。

グラエナ「…………」

ミミロップ「……なに?」

グラエナ「あ、いや……」

ミミロップがどうするか見守っていたのだろうか、グラエナは玉を置いた後暫くミミロップのことをじっと見つめていた。

グラエナ「どの道この雨じゃ外を歩くのは大変だ。止むまで待とうと思うが、いいか?」

アブソル「……そうね。外に出られるようになったら、木の実の場所を教えて頂戴」

グラエナ「おうよ」

グラエナは腹が膨れて気分が良いのか、今までで一番陽気な声を出した。

エネコロロ「あっ、待ってよぅ」

そして、エネコロロと一緒に窪みの奥で眠る体勢を取る。

アブソル「……私達も休みましょう」

ミミロップ「そうね」

まだ聞きたいことはあるのだが、エネコロロに至ってはもう寝息を立て始めているのだから、仕方が無い。アブソルは「やれやれ」と小さく息を吐き、外の景色へ目を向ける。

ミミロップ「……寝ないの?」

アブソル「雨とはいえ、見張りが必要でしょう?」

ミミロップ「じゃあ私がするわ。結局昨日は私の方が長く寝てたし」

アブソル「そう? それじゃあお願いするわね」

表には出さないが、だいぶ疲れているのだろう。アブソルはすんなりとミミロップの申し出を受け入れ、彼女の近くに腰をおろした。
 ▼ 664 ルミーゼ@やみのいし 18/09/16 01:40:02 ID:b9yQf8nQ [4/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


雨が降り続いている。

強い雨とはいえ、視界を覆い尽くしてしまうような悪天候ではない。遠くの方までは見えないが、何者かが姿を現しても皆を起こして逃げ出す時間があるだろう程には、周囲の景色を見渡す事ができた。

ミミロップ「みんな、どうしてるかな……」

ぽつりと、声にするつもりのない言葉が口をついて出る。

彼女に、当時所属していた群れへの思い入れはほとんど無い。ただ、それでも寝食を共にしてきた者達だ、こうして時々思いを馳せることはある。

特に仲の良かった者がいたわけでもない、毎日話す相手がいたわけでもない。きっと、ミミロップがいなくなったからといって、探してくれる者などいないだろう。

それでも、ミミロップにとってその群れは「居場所」だった。

それぞれがお互いを利用しあっているだけの希薄な関係性しか持たない群れであっても、確かにそこはミミロップの「帰る場所」だった。

こうして遠く離れてしまえば、もうその群れを見つけるのは難しい。こうなってしまえば、ミミロップは帰る家を失った者と何も変わらない。

これが「寂しい」という感情なのかと、地を打つ雨の音を聞きながらミミロップは小さく息を吐いた。

ミミロップ「(じゃあ今の私にとって、ここが、アブソルたちのいるこの空間が、居場所……?)」

考えかけて、すぐに首を振る。

なんとなくだが、わかる。仮にこの四匹で森の外へ出られたとしても、その後行動を共にする事はないだろう。ただ、アブソルには雪を見せると約束した。彼女とは、もう少しだけ長い付き合いになるのかもしれない。

ミミロップ「(長い付き合い、ね……)」

生まれてこの方、ミミロップは特別仲の良い友人などを作った事が無かった。

いつ何が起きてしまうかわからない野生の群れの中で育った彼女には、今後どれ程の付き合いを続けられるかわからないような誰かとそういう関係になろうと思えなかった。

だが、そんなドライな関係を維持する群れの中からも、カップルとなって群れを離れる者達もいる。それを考えると、自分がこれからどうして行くべきなのか悩まずにはいられない。
 ▼ 665 ラベベ@こぶしのプレート 18/09/16 01:41:15 ID:b9yQf8nQ [5/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


「…ぇ……っと…」

ミミロップ「えっ?」

ふと、どこかから声が聞こえた。

ぼんやり考え事に耽っていたミミロップははっと顔を上げ、耳をぴんと立てる。気配を消し、できるだけ動きを見せないように周囲を視線だけで探っていく。

エネコロロ「にゃはは、だめだよぉ、みんな、起きちゃうよ?」

声の主はエネコロロだった。

なんだ、と思い耳を下ろし両手で抱く。

寝言だろうか。そう思って振り向いたミミロップは、目に映った光景に言葉を失った。

エネコロロ「あっ、あんっ、んちゅ、こっ、こんな、ところでぇ……」

グラエナ「ぺろ、いいだろ、大丈夫だよ、暗くて見えないって、っく、ちゅ、ぺろ」

グラエナとエネコロロは起きていた。そして、じゃれあっていた。

だが、ミミロップにはわかった。そのじゃれあいは「大人のじゃれあい」である事が。

ミミロップ「(あ、あれって、えっち……してるの……?)」

確かに、グラエナの言う通り暗くて彼らの行為をはっきりと見る事は難しい。だが、荒い息にエネコロロの甘えた声と、聴覚からの情報だけでも彼らが何をしているかなど丸わかりだ。

アブソルを見る。彼女は、よほど疲れていたのか、すぐ近くで愛の営みが行われているというのに目を覚ます気配は無さそうだ。

ミミロップ「(ど、どうしよう)」

こういう時は、見て見ぬふりをするのが一番だろう。そう思うが、薄っすらと見える二匹の行為から目が離せないでいる。

二匹は暫くお互いをぺろぺろと舐めあっていたが、やがてグラエナはこれ以上待ち切れないといった風にエネコロロに覆いかぶさった。

犬も猫も、雄が雌に後ろから重なって交尾を行う事がほとんど。

猫の場合雄の性器に棘があるため雌にとって交尾は苦痛を伴うが、今回はグラエナが相手、挿入が行われてもエネコロロが痛がる様子は無い。

それでも性器のサイズなど犬と猫では様々違う筈だが、行為は今回が初めてではないのか、エネコロロから漏れるのは甘い蕩けた声ばかりだ。
 ▼ 666 ードル@アゴのカセキ 18/09/18 01:15:57 ID:uUFw/7Do NGネーム登録 NGID登録 報告
シエンネ
 ▼ 667 ダイトス@ヤドランナイト 18/09/20 01:14:19 ID:.lHoa/wg NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 668 ドリーノ@はかいのいでんし 18/10/06 01:50:35 ID:rVjU9WBY [1/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
エネコロロ「あっ、あっ、ん、ふぅ、ふ、深いよぉ……あんっ、あんっ」

嬌声が聞こえる。

グラエナ「へへ、今日も具合良いじゃねぇか」

ぐちゅぐちゅと卑猥な水音が響く。

ミミロップ「(うう、こんなの見せられたら……)」

流石にこれで股を濡らす程淫乱なミミロップではないが、彼らを見ていて行為の声を聞いていて、正常な気分を保つ事は難しい。

頬を紅く染め、無意識にも息を潜める。だが彼女の耳には、聞こえてくる喜悦の音色と同じほど、早鐘を打つ心臓の鼓動がうるさいくらいに響いていた。

胸が熱い。意識が蕩揺する。身体が、下半身が、股の奥が、あまり覚えの無い感覚を徐々に募らせていく。

この時のミミロップにとって性という概念はまだ知識程度のもので、実体験は勿論無く、行為を目にしたのもこれが初めてだ。暗くてよく見えないとはいえ、初めて目の当たりにした性行為に何ともいえない不思議な感覚を味わっている。

ミミロップ「!!!」

急に何かが彼女の足に触れた。

思わず声をあげそうになった所を、何とか我慢する。咄嗟に両手を口に当てる事ができたのは、まだ性の経験が浅かったおかげだろう。

ともあれ、一体何が彼女の足をなでたのか。ミミロップは恐る恐る感触のあった左足へ視線を送る。

アブソル「…………」

いつの間に起きていたのだろう、彼女に触れたのはアブソルだった。

目が合うと、アブソルは小さく首を横に振って見せた。

言葉にしなくても、彼女の意図はミミロップに伝わる。グラエナたちの行為を、見て見ぬふりをしろというのだ。
 ▼ 669 クタス@アブソルナイト 18/10/06 01:51:02 ID:rVjU9WBY [2/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミミロップとしても、彼らの行為はできれば見なかった事にしてしまいたい。ただ、彼らから目を逸らしたとしても、意識をしないというのは難しい話だ。

欲情とまではいかないものの、ミミロップは彼らの行為を見て聞く事で複雑な感情を抱いてしまっている。早い話が、既に頭の中が悶々とし始めていてそう簡単に意識まで逸らす事ができないのだ。

だが、よく見ればそれはアブソルも同じようで、彼女も同じように顔を赤らめて大きく呼吸を繰り返している。

ミミロップ「(なんだ、私だけってわけじゃないんだ……)」

それがミミロップには何だかおかしくて、彼女には悪いがおかげで少々落ち着く事ができた。

ミミロップはアブソルの方に向き直り、彼女の前足に両手を重ねて頷く。

ミミロップ「…………」

アブソル「…………」

アブソルは話が通じて安心したのか、煩悩を追い払うように首を軽く振ると、地面に伏して目を閉じた。

なんとなく、そんな彼女を暫く眺めるミミロップ。

彼女も自分と同じなのだと思うことで、ますます親近感がわいてくる。最初は、突然現れて怪しいやつだとさえ思っていたが、今では信じてみてもいいかもしれないと感じ始めていた。

ミミロップ「(私は、どうしたいのかしら……)」

落ち着けた途端、考えていた事の続きが彼女の脳裏に蘇える。 

ここを無事に出られたとして、次はどこへ行けばいいのだろう? 群れからはぐれてしまった今、この森も森の外も自分にとっては特に何も変わらないのではないか?

居場所は無い、行く宛も無い。毎日飢えを凌ぎながら生きて、ただそれだけ。そんな自分の生涯に、どれ程の価値があるのだろう?

ミミロップ「(……雨が止んできたわね)」

答えなど出ない。出るはずもない。

そもそも、こんな事を考えた経験さえ今までほとんど無い。普段の自分なら「柄じゃない」と言って鼻で笑うだろう。

こんな事を考えてしまうくらい、自分は今追い詰められているのだろうか。実感が無い。無いからこそ、得体の知れない恐怖を感じる。

未来に対する漠然とした不安。一度気にしてしまえば、もう止まらない。

ミミロップ「(寂しい、って、いやだな……)」

どことも知らない森を眺める。雨はもう小降りになっていたが、まだ暫く止む事はなさそうだった。
 ▼ 670 マシュン@メンバーズカード 18/10/06 01:51:24 ID:rVjU9WBY [3/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




雨が上がり問題なく外を出歩けると判断できたのは、休眠を取り始めてから約四時間後のことだった。

真っ黒な雲に覆われていたせいで時間の感覚が失われていたが、彼らが別の地へと旅立っていくとすぐさま太陽が顔を覗かせる。

休眠前にグラエナが「朝までに食べなければ」と口にしていたが、休眠から目覚めるまでのところでという意味で話していたのだろう。何という事はない、実際にはまだ昼を少し過ぎた辺りだった。

グラエナ「ふわぁ……なんだか疲れたぜ」

エネコロロ「そうだねぇ……」

二匹して並んで欠伸をしている。ミミロップもアブソルも同じ事を考え目を細くしているが、気づいていないと思っているのかそもそも興味が無いのか、彼女達の視線に焦る様子は無い。

アブソルはそんな彼らに合わせようと思ってかそれ以上の反応は見せず、ぼんやりと森の向こうを眺め始めた。

ミミロップ「木の実のあるところはどっちなの?」

結局ミミロップもアブソルも例の白い玉を食べる事はなかった。いつまでも手をつけようとしない彼女達にため息を吐き、グラエナはエネコロロと玉を分け合った。

しかし、そろそろ身体も限界を迎える。空腹感は紛れる事があっても、体調ばかりはどうにもならない。食べなければ栄養は回らないし、そうなれば満足に身体を動かす事ができなくなってくる。

グラエナ「あっちの方だ。ちょっと歩く事になるけど、そう遠くはない」

アブソル「それはつまり、オノノクスの縄張りもここから近い、ということね」

グラエナ「あ、ま、まぁそうだけど……」

そこまで気が回らなかったのだろうか、グラエナはアブソルの言葉に焦りを見せた。

エネコロロ「色んな木の実が生ってたわ。モモンの実だってあったと思う」

ミミロップ「それは是非とも食べたいわね……」

想像しただけで涎が口内を満たしていく。

だが、それで腹は膨れない。ミミロップはたまった涎を一気に飲み込み、小さく息を吐いた。
 ▼ 671 ートロトム@フライングメモリ 18/10/06 01:51:45 ID:rVjU9WBY [4/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




グラエナ「……ここからは気配を消して、ゆっくり行くからな」

実の生る木がたくさんあるという辺りに向けて歩く一行。十五分程歩いたところで、先頭を歩いているグラエナが後ろを振り返った。

アブソル「とりあえず、まだ何の気配も感じないわ」

グラエナ「まだそういうのわかるほど近くじゃないってこった。あいつは気配を隠したりしないからな」

ミミロップ「オノノクスって、そんなに大きいの?」

グラエナ「いや……人間よりちょっと大きいってくらいだ」

それは何とも意外な話だった。エネコロロの口ぶりから、オノノクスは巨大なポケモンなのだと勘違いしていた。

アブソル「でも、油断できないわよ。私達から考えれば充分大きなポケモンだし、とにかく力がすごく強いから」

グラエナ「……お前、会ったことあるのか?」

アブソル「……無いと思うわ」

少なくとも今の記憶では、と彼女は口の中で自分にだけそう付け足した。

彼女の言葉を不審に思ったのだろうか、グラエナは少し怪訝な表情を浮かべる。だがすぐに前を向きそれから言葉も無く歩き始めた所を見ると、そこまで気にはならなかったのかもしれない。

エネコロロ「あのね、オノノクスが牙を振りかざしてきたら、逃げた方がいいよ」

アブソル「あいつの牙は鉄をも斬ると言われてるわね。咬むというより、牙で切断してる感じよね?」

エネコロロ「うん。逃げる時にちょっとだけ見たんだけど、大きな木がすっぱり切られたの」

ミミロップ「そんなにやばいの……」

想像しただけで身体が震え上がる。そんな威力を誇る牙だ、自分達にそれが向けられたら、攻撃が当たってしまったら……考えるだけで足が重くなる。

グラエナ「おい、そろそろ静かにしろ。縄張りに入る」

グラエナは立ち止まって鼻を利かせながら、注意深く周囲を見回し始める。

どうやら、オノノクスが幅を利かせる危険地帯に足を踏み入れたようだった。
 ▼ 672 フレシア@キーストーン 18/10/06 06:37:43 ID:YfjEaG1. NGネーム登録 NGID登録 報告
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 ▼ 673 クフーン@かおるキノコ 18/10/10 01:54:24 ID:i65A57eA [1/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




再び、雨が降り出した。

幸いにも視界を覆いつくしてしまうような豪雨ではなかったが、彼らの可視範囲を制限するには充分だった。

グラエナ「ちっ……これじゃあいつどこで出くわすかわかんねぇ……」

歩みを止め、悪態をついてみせるグラエナ。

良くも悪くも、雨が降ればお互いに気配を感じ取る事が難しくなる。オノノクスは堂々と森の中を闊歩しているらしいが、もしも気配を隠し侵入者を仕留めようと狙っていたら……そう思うと、前に進む事さえ怖くなる。

アブソル「背の高い草に紛れて行きましょ」

ミミロップ「そうね。揺れるけど、この雨じゃほとんどわからないかも」

エネコロロ「うう、寒いよぅ……」

獣道から少しそれて歩く四匹。

足音も草を掻き分ける音も地を打つ雨が存在を潜ませてくれるが、それでも物音に気を遣わずにはいられない。

ミミロップ「…………」

ミミロップにとっては、群れで行動していた頃とあまり変わらない移動。大勢で拠点を移すとはいえ周囲に気を配りつつ行動する、これは野生として生きる以上普段から行っている当たり前の事。

だが、状況はその当時と比べて段違いに危うい。

なるべく敵がいないと思われる場所めがけて移動する群れに対して、今自分達は凶暴なポケモンの縄張りに進んで足を踏み入れている。いわば敵地に乗り込んでいくようなもの、緊張しないわけがない。

嫌な汗が額を、首元を流れていく。

野生の中で過ごしていれば毎日が死と隣り合わせだが、今回ほどまで緊張した事があっただろうか。自ら望んで死地へ赴くなど、想像する事があっただろうか。

ミミロップは全身を強張らせつつもできるだけ音を立てないようにと神経を最大限に尖らせ、大きく呼吸をしながらゆっくりと大地を踏みしめ歩いた。
 ▼ 674 モネギ@ロックカプセル 18/10/10 01:55:05 ID:i65A57eA [2/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
どれ程歩いただろうか、体感にして数キロは進んだように感じるも実際にはほんの数十メートル程度である。

だが、確実に目的地へ近づいている。雨が降り始めてから数十分後、やがてグラエナが歩みを止め草の隙間から奥を覗き込んだ。

グラエナ「見えるか? あれが木の実畑だ。雨のせいで見にくいけど、色んな木の実があるんだ」

彼の言葉に、それぞれ横に並んで隙間から様子を窺う。

視界に映ったのは、やや開けた地にぽつぽつと生えている実の生る木々。今四匹が隠れているような背の高い植物は周りに存在せず見通しが良いため、敵を見つけやすくもあり反対に見つかりやすくもある。

とりあえず、見渡した限りオノノクスの姿は無い。それでも気になって仕方が無いのだろう、アブソルは実の生る木を眺めることもせず、視線をあちらこちらに彷徨わせていた。

エネコロロ「うう、おなかすいた……ねえ、行っちゃだめかな?」

グラエナ「忘れたのか、ここへ初めて来たときオノノクスに襲われて死ぬ所だったのを。安易に出ていったりして、見つかったら今度こそ死ぬかもしれないんだぞ」

エネコロロ「そ、そうだけど……」

グラエナは鋭い目つきをしてエネコロロがいるであろう方を向く。当然その表情は野草に覆われエネコロロには見えないが、彼女は彼の言葉にしゅんと下を向いた。

アブソル「ねえ……むこうに、何かあるわ。右の方、一番大きな木の横辺り」

ミミロップ「あ、ほんと……あれは、なに?」

グラエナ「何かが倒れてるように見える……ポケモンか?」

エネコロロ「えっ、じゃあ急いで助けなきゃ。オノノクスに見つかったら大変」

アブソル「待って。なんだか様子がおかしいわ……もう生きてないのかも」

エネコロロ「え……」

木の麓にあるそれは、一見して獣のようなポケモンが地に伏せているようだった。だが、そう強い雨ではないとはいえ、その者がいる場所では雨風は凌げない。大きな木の下とはいえ、幹が長すぎて雨宿りには適していないのだ。現に、その何者かは全身を雨に打たれ濡れそぼちながら身を投げ出している。

水ポケモンでもない限り、そんな場所に好んで居座る事はないだろう。雨に濡れれば体温低下は免れない。
 ▼ 675 ムスター@クサZ 18/10/10 01:55:53 ID:i65A57eA [3/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
まさかオノノクスの仕掛けた罠ではないだろうが、念のため暫く様子を見る事にする。

五分、十分と木の下を重点的に眺める四匹。しかし、オノノクスはおろか、何の気配を感じる事もない。伏していると思われる何者かも、動きだす様子は無い。

やはり、アブソルの言うとおり、あれが生物だとしたら既に息は無いのだろうか。

グラエナ「……俺が見てこよう。最悪、オノノクスが出たら囮になる」

エネコロロ「えっ、そんなのダメだよ。危なくない方法、探そう?」

グラエナ「しかし……」

アブソル「見つけた私が言うのもなんだけど、あそこで倒れているのが何であれ、関わるべきじゃないと思うわ。木の実の採取を優先させましょう」

アブソルはきっぱりとそう言い放つ。

もしあそこで倒れているのが自分達と同じ境遇に陥っているポケモンだとしたら、彼若しくは彼女も助けてやりたい。そして、一緒に森を出たい。

だが、綺麗事ばかり言っていられないのも事実だ。もし倒れているポケモンに気をとられオノノクスの接近に気づく事ができなければ、そのポケモンを助ける事でオノノクスに襲われてしまったら……背に腹はかえられない。

アブソル「……とりあえずオノノクスの気配は無いわ。そうね……モモンの木はどれ?」

グラエナ「モモンはわからん。ただ、ここから見て正面にあるのがマゴの実だ」

ミミロップ「それはいいわね。甘い木の実大好き」

エネコロロ「私も!」

グラエナ「俺はザロクが好きだから、もう少し奥へ行く」

アブソル「大丈夫なの?」

グラエナ「なに、奥って言ってもマゴの三つ向こうの木ってくらいだ。そんなに変わらないさ」

四匹はそれぞれ自分が目的とする木を見つめる。

もうすぐ、もう少しで、やっとお腹を満たす事ができる。好みの実を近くに、溢れんばかりの涎が口内へ流れ込んでいく。ミミロップなどは、その可愛らしいお腹をくぅっと鳴かせていた。
 ▼ 676 グザグマ@ひかりのいし 18/10/10 01:56:30 ID:i65A57eA [4/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
グラエナ「よし……行くぞ!」

グラエナが草むらから飛び出す。

続けてミミロップ達も勢いよく地を蹴り、目的の木まで一斉に走り出した。

エネコロロ「わぁ、実がたくさん! えへへ、やったやった!」

ミミロップ「ちょっと、大声出しちゃだめよ。オノノクスが来ちゃうかもしれない」

エネコロロ「大丈夫だって。周りに、ぜーんぜん誰もいないわ」

辺りを警戒しつつ木の実を採取していく四匹。エネコロロの言うとおり、近くにはオノノクスどころか何の生物の姿も見当たらない。

これだけ警戒して注意深くここまで来たというのに、これではなんとも拍子抜けだ。結果論でしかないが、ここまで気を張り詰めて歩く事もなかったのでは、とさえ思えてくる。

ミミロップ「はぁあ……美味しい。生き返るわぁ」

エネコロロ「やっぱり木の実は格別ね! 空腹だから特に」

持ち帰るだけでなく、その場でも木の実を食べ始めるミミロップとエネコロロ。

アブソル「ちょっと、食事してる場合じゃないわよ。必要な分だけとって、すぐに引き上げないと」

ミミロップ「でも、オノノクスいないし、来る気配もなさそうなんでしょ?」

アブソル「それは、そうだけど……」

くぅ、とアブソルのお腹が鳴る。

エネコロロ「ほら、アブソルもおなかすいてるんじゃん! 我慢してないで、今のうちに食べちゃおうよ!」

暢気な顔をしてアブソルの前に木の実を置くエネコロロ。ミミロップも彼女に同調し、アブソルが実を食べる事に期待している。

グラエナは奥まで行ったきり戻らない。どちらにせよ彼が戻るまでここから無闇に離れるわけにはいかない……そう思ってアブソルはゆっくりと首を下げる。

アブソル「……?」

だが彼女は実を口にしなかった。食べるより先に、何かが彼女の気を引いた。
 ▼ 677 ドラン♀@ロックメモリ 18/10/10 01:57:11 ID:i65A57eA [5/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミミロップ「どうしたの?」

アブソル「ねえ……何かが倒れてたのって、あの木の下よね?」

ミミロップ「え? あぁ……たぶんそうだと思うけど……」

アブソルは実を食べることさえ忘れ、その木の方を見ている。様子がおかしい彼女を不思議に思い、ミミロップも彼女の視線を追った。

ミミロップ「……いない?」

アブソル「ええ……いないわ」

エネコロロ「えっ!?」

アブソル「静かに……なにか、おかしい」

異様な何かを感じ取り、アブソルはぐっと姿勢を低くする。

まさかと思い、ミミロップも集められるだけ木の実を集め、すぐにでも逃げられるよう体勢を整えた。

エネコロロ「ねえ、もしかして、オノノクス……」

アブソル「しっ。言葉を発しないで」

アブソルは最大限に気を張り詰め、辺りに探りを入れる。

三匹が動きを止めたことで、作為的な物音は一切聞こえなくなった。ただ、雨の奏でる旋律が耳に響くのみ。

ミミロップ「も、もう逃げた方がよくない?」

エネコロロ「で、でもグラエナが……」

アブソル「一旦草むらまで戻りたいところだけど……呼びに行くしかないわね」

アブソルは辺りを警戒したまま、少しずつ後退りを始める。ミミロップはアブソルの死角をフォローすべく、彼女とは反対の方へ気を配った。
 ▼ 678 ンプラー@はねのカセキ 18/10/12 02:51:31 ID:nu1Y2nwU [1/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
グラエナが言っていたザロクの木があるらしい場所まで来ても、彼の姿は見当たらなかった。

彼が言っていたとおりマゴの木から三つほど木を通り過ぎたところにザロクの木はあったが、そこには誰もいないばかりか木の実を採った形跡さえ確認できない。

アブソル「これは……どういうこと?」

エネコロロ「も、もしかして、何かに出くわしてここから離れたんじゃ……」

ミミロップ「囮になってくれてるって事!?」

エネコロロ「わ、わからないけど……」

アブソル「この雨よ、多少の物音なら気づかなくても不思議じゃないわ……」

ぽたりぽたりとミミロップの顎から水滴が落ちた。雨のせいだけではない、嫌な汗が額から幾つも滑り落ちている。

ミミロップ「と、とにかくグラエナを探さないと」

アブソル「そうね……ただ、右も左もわからない森の中で、闇雲に歩き回るのは危険よ。まずは草むらまで戻って策を考えないと」

エネコロロ「そ、そんな事してる間にグラエナがどうにかなっちゃったら……」

アブソル「気持ちはわかるけど、今の私達はまさに次の瞬間にどうにかなるかもしれない状態なの。彼の身は心配だけど、私達まで危険な状態でいるわけにはいかないわ」

エネコロロ「うう……」

納得、はしていないだろうが、アブソルの言う事もわかるのだろう、エネコロロはそれっきり黙りこんでしまった。

ミミロップ「とりあえず、来た道を戻るのね」

アブソル「そうしたいけど……」

アブソルは少し顔を上げ、つい先ほどまで自分達が潜んでいた草むらを眺める。だが……

アブソル「雨が霧状になってきてる……しかも勢いが強いわ。草むらが見えない」

ミミロップ「……真っ直ぐ進めば大丈夫、よね?」

ミミロップはこみ上げる不安を隠し切れず、アブソルの肩を触る。しかし、アブソルはそれに対して何も答えない、答えられない。
 ▼ 679 マザラシ@くろいヘドロ 18/10/12 02:52:07 ID:nu1Y2nwU [2/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
エネコロロ「と、とにかく、歩こ?」

アブソル「そうね、はやく安全な場所に避難しましょ」

ミミロップ「う、うん」

ゆっくりと音を立てないように、来た道を引き返す。だが、視界が悪く本当に草むらに向かって歩いているのか全くわからない。

まるで意思をもって彼女達を困らせているかのような霧雨。気がつけば、すぐ前の地面さえ薄っすらとしか見えなくなっている。

アブソル「……ねえ、草むらってこっちよね?」

ミミロップ「えっ、ちょ、ちょっと、不安になるようなこと言わないでよ……」

アブソル「だ、だって……」

アブソルは途中で言葉を飲み込んでしまう。

だが、彼女が語らずともわかる。三匹は、周囲を見回して警戒しながらとはいえ少しずつ草むらに向けて歩いているつもりだが、一向に辿り着かない。

ゆっくり進んでいるにしても、少なくとも体感ではそれなりの距離を歩いている。真っ直ぐ草むらまで向かえているとしたら、最低でも木の実畑は抜けているはずなのだ。

エネコロロ「も、もしかして迷ったんじゃ……」

アブソル「歩く方向を間違えてるのかも……」

ミミロップ「そ、そんな……」

あまりに深い霧に、真っ直ぐ歩いているつもりでも少しずつそれてしまっているのかもしれない。

ただ、すぐ近くにはまだ実の生る木が並んでいる。木の実畑がどれ程の広さを誇っているのかわからないが、元いた場所からそう遠くまで歩いてしまったわけではないだろう。

アブソル「……嘘でしょ」

エネコロロ「えっ?」

急に、アブソルが立ち止まる。彼女は目の前に立つ木を見ていた。

ミミロップ「これって……」

それを見たミミロップも理解する。そこに立っているのは、グラエナが実を集めているはずのザロクの木だった。
 ▼ 680 ベルタル@しめつけバンド 18/10/12 02:52:42 ID:nu1Y2nwU [3/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミミロップ「真っ直ぐ歩いてたはずよね。どうして……」

アブソル「わからないわ。だけど、この霧だもの、ぐるぐる回ってしまった可能性も充分ある」

エネコロロ「真っ直ぐ歩いてたと思うけどなぁ……」

三匹は首を傾げるが、現にここへ戻ってきてしまったのだ、彼女達が何を考えようともこれが現実。

アブソル「……今度は、縦に並んで歩きましょ」

ミミロップ「そうね、それなら真っ直ぐじゃなくなっても気づけるかも」

エネコロロ「わ、わたしどこを歩けば……」

アブソル「先頭を歩くわ」

ミミロップ「じゃあ、最後尾歩くから、真ん中歩いて」

エネコロロ「あ、ありがと!」

再び、歩き出す。

雨は霧状になっているとはいえ、身体を、毛を濡らして体温低下を招く。彼女達の身体は既に冷え切ってしまい、寒さに震えずにはいられなくなっていた。

容赦のない自然の脅威。食事ができたのは幸いだったろう、もしも何も食べられないままこの状況を迎えていれば、アブソルとミミロップは死んでいたに違いない。

アブソル「あ……」

と、何かを見つけたらしくアブソルは歩みを止めた。

ミミロップ「どうしたの?」

アブソル「あれ……木の下の……」

見れば、彼女の視線の先には大きな木が立っていた。その麓に、何か大きなものが転がっている。

ミミロップ「あ、もしかして草むらから見てた……ひっ!」

エネコロロ「えっ、ど、どうしたの……きゃっ!!」

目を凝らして見つめたそれは、木の下に横たわっていた何者かだった。

結論から言えば、それは四足の獣ポケモンだった。木の下で、強い霧雨に全身を濡らしながら、そのポケモンは地面に寝転がっている。

その身体には、頭が無かった。
 ▼ 681 トモシ@クラボのみ 18/10/20 00:43:24 ID:.4PAai0. [1/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミミロップ「なによ、あれ……」

アブソル「落ち着いて、ただの屍よ」

エネコロロ「た、ただの、って……」

ミミロップ「全然ただのじゃない……」

アブソルはそう言うが、首から上がごっそり無くなっている様子を見て冷静でいられるわけがない。

なんとかこみ上げてくる悲鳴を呑み込むことには成功したが、身体が全く動かなくなってしまった。

アブソル「落ち着かなきゃいけないけど、聞いて。あの様子、死んでからそう時間が経ってないわ。もう噴き出してはいないけど、まだ血が流れてる……もしかしたら、あれをやった誰かが近くにいるのかもしれない」

ミミロップ「ちっ、ち、近くに、って、それじゃあ……」

ぎぎぎ、と音が鳴りそうなくらいぎこちなくミミロップはアブソルを見る。アブソルは、彼女に目を合わせて静かに頷いた。

アブソル「ええ、急いで逃げるしかないわ」

ミミロップ「…………」

エネコロロ「…………」

二匹「きゃあああああ!!」

アブソル「あっ、ばか!!」

顔を見合わせていたミミロップとエネコロロは、堪えきれなくなったらしい、悲鳴をあげて走り出してしまった。

アブソル「視界が悪いってのに……っ!!」

仕方が無いとばかりに、アブソルも駆け出す。

異常なまでの濃霧に、先に走った二匹の姿さえ見えないが、とにかく前に向かって全力で走った。
 ▼ 682 サイドン@ハガネールナイト 18/10/20 00:44:04 ID:HWhA9ooY NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
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 ▼ 683 アルヒー@モンスターボール 18/10/20 00:44:14 ID:.4PAai0. [2/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




ミミロップ「はぁ、はぁ、はぁ……」

可能な限りの全速力で木の実畑を駆け抜けたミミロップ。どこまで走ってきただろうか、もと来た道にあった背の高い草むらはどこにも見当たらず、辺りには見覚えの無い植物ばかりが立ち並んでいる。

もう、オノノクスの縄張りからは離れられたのだろうか。振り返るも、濃霧に覆われて走って来た道さえ見えない。

ミミロップ「どうしよう、はぐれちゃった……」

やはりと言うべきか、近くにはアブソルの姿もエネコロロの姿も無い。無我夢中で走ってきた結果、ミミロップは彼女達とはぐれてしまった。

群れから離れてしまった時の事を思い出す。それでもアブソルたちはそれなりにより所となっていたのだろう、群れからはぐれた時よりも寂しい思いがこみ上げてきた。

ミミロップ「とにかく、探さないと……」

正直、来た道を戻る気にはなれない。だが、このまま彼女達を探さず今後自分一匹で森を歩きまわろうとも思わない、思いたくない。

とりあえず、何とか気を落ち着けようと深呼吸を繰り返す。

次第に普段のペースまでおさまってゆく心拍。ただ彼女の視線だけは、落ち着こうと努力している間も忙しなくあちらこちらへ向けられ警戒していた。

ミミロップ「ふぅ……」

そして、落ち着いてきた頃、考える。

濃霧から逃れられていないということは、そう遠くまで走ってきたわけではないということ。この霧が森全体を覆っているならば話は別だが、おそらくこの霧は木の実畑一帯を襲ったものだろう。となれば、アブソルもエネコロロもまだ近くにいると予想できる。

そうなると、考えられる選択肢も自然と絞られていく。一か八か来た道を戻ってみるか、周囲の物音に気を配りつつこの辺りで隠れて待機するか。

自分としては真っ直ぐ走ってきたつもりだ。だが、おそらくそれは一緒に走り始めたエネコロロも同じだろう。そして、アブソルはそんな自分達を追いかけてきたに違いない。そう思えば、ここで待機するという選択肢もそう後ろ向きというものでもない。

ただ問題は、待機することを選んだ場合、近くを通りかかってくれなければ相手はどんどん離れていってしまうおそれがある。無論それはミミロップが動いた場合でも同じ事ではあるが、その状況を考えてなお何もせずただ待っているだけというのも気が逸るばかりだろう。

ミミロップ「うう、どうしよう、できれば戻りたくないけど……」

ただ、相手も同じ事を考えてじっとしている可能性はある。そう思いミミロップは、震える身体にぐっと力を入れ、勇気を振り絞ってきた道を戻ることにした。
 ▼ 684 ムッソ@ありふれたいし 18/10/20 00:45:08 ID:.4PAai0. [3/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



視界の悪い森の中を歩く。

もうすっかり雨は止んでいるが、立ち込める濃霧はその勢いを衰えさせる事無くただひたすらに辺りを覆いつくしている。

シンオウも、このような霧がよく発生する地方だ。ミミロップも群れの中で行動していた時代に、濃霧に襲われロクに行動ができなかった経験がある。その時は「きりばらい」できるポケモンが群れの中にいたため、少なくとも自分達の進路に立ちふさがる霧については取り除く事ができた。

それでも、濃霧に悩まされて行動を制限された事は片手で数える程しか無く、「きりばらい」なんて技に対して特別な感情を抱くことは無かった。霧に遭遇して技を使用してもらった時も、誰も彼もその時にお礼を言う程度で、使用者をヒーローのように扱ったりはしなかった。

それが今、こうして深い霧の中を行動しなければならないとなると、どうだろう。あの時に技を使ってくれたポケモンが思い出され、そのありがたみを嫌と言うほど噛み締めることになる。今ここに彼がいたなら、どんなに心強いことか。

ミミロップ「…………」

彼女の歩みは極端に遅い。

視界が悪い事も勿論だが、それ以上に、オノノクスの存在が気になって仕方が無い。

彼女はオノノクスを知らない。それなりに大きなポケモンらしいが、姿形がわからないとなると具体的にどういった点に気をつけて警戒すればいいかわからない。

じゃり、と足が地に着く音さえ他の誰かに聞かれているのではないかと心配になってくる。少し大きく踏み出してしまった時などは、必要以上に辺りをきょろきょろと見回してしまう。

おさまっていたはずの鼓動も再び早鐘を打つようになり、その音もまた彼女を強く焦らせた。

ミミロップ「……?」

ふと、自分が出す音ではない何か別な音が彼女の耳に飛び込んできた気がした。

足を止め、耳を澄ます……だが、勘違いだったのか、再び音が聞こえてくることはない。静けさだけが、霧に包まれた森一帯を支配するばかりだ。
 ▼ 685 ノガッサ@ロックカプセル 18/10/20 00:45:44 ID:.4PAai0. [4/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
疑心暗鬼に支配されるミミロップ。

今の彼女には、風が木の葉を揺らす音さえ自分を狙う獰猛なポケモンが近づく音に聞こえてしまう。

ミミロップ「……今の、なに?」

思わず声が漏れ、はっとして両手で口をふさぐ。

首を動かすことさえためらわれ、目だけをぐるぐるとあちらこちらに動かして様子を窺う。

気のせいか……そう判断できたのは、物理的に口を閉じてから約五分後のことだった。

いよいよ、実際には鳴っていない音さえ聞こえるような気がしてきている。このままではいけないとわかってはいても、身体がいうことを聞いてくれない。

ミミロップ「……やっぱり何か聞こえる」

こうなってくると反対に何もかもが幻のようにさえ思えるのだが、それでも彼女は正気を失わなかった。

やはり気のせいなどではない。確かに何か、うめき声のようなものがかすかにだが彼女の耳に届いたのだ。

両耳を立て、今一度その音を聞こうと集中するミミロップ。周囲への警戒を怠るわけにはいかないため目を閉じて注力する事はできないが、できうる限りの神経を耳へ集中させた。

ミミロップ「これは……声?」

まさかと思い、声のする方へ視線を向ける。濃霧に阻まれここからでは何も見えないが、この先に誰かがいるのだろうか。

聞こえた声は、弱々しいうめき声のようなものだった。少なくとも、オノノクスのような捕食者側が出すものではない。獲物をおびき寄せるために仕掛けていない限りは。

そうなると、声の主はアブソルかエネコロロ、もしくはグラエナのうちの誰かかもしれない。

聞こえた声の様子を思い出す。声質から考えれば、アブソルかエネコロロに絞られた。

ミミロップ「まさか怪我をして動けないとか……」

心配が募りだす。

彼女の足は自然と歩みを始め、これまでとは打って変わって素早いペースで森を進んでいった。本人は自覚していないが、ゆっくりと歩くことと比較してもそう大きな足音はしなかった。
 ▼ 686 ルノーム@ねばねばこやし 18/10/20 00:46:23 ID:.4PAai0. [5/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



ミミロップ「あれは……アブソル!」

果たして、彼女が足取り速く向かった先、大きな木の下にはアブソルの姿があった。

やはり霧が邪魔をしてあまり周囲の様子はわからないが、彼女達が走って逃げた時よりも晴れてきたようで目先一メートル程度なら見通す事ができる。

アブソルは、血を流して座り込んでいた。

ミミロップ「大丈夫? まさか、オノノクスに襲われて……」

急いで彼女の元へ駆け寄るミミロップ。

アブソル「来たらダメ!!」

ミミロップ「え……?」

だが、アブソルは近寄ろうとするミミロップに怒号にも似た声を飛ばす。

あまりの声に、ミミロップは足を止めた。その直後……

???「グルゥラァアアアアア!!」

ミミロップ「きゃっ!!」

突如、何者かがミミロップとアブソルの間に割って入る。

砕ける地面、弾ける岩石。

目で確認せずともわかる。もしミミロップがアブソルの静止を無視して近づいていたならば、今頃ミミロップの身体は臓物を噴き出し真っ二つに引き裂かれていただろう。

ミミロップ「あ、ああ……」

足が震え、すとんと無防備に尻餅をつくミミロップ。だが幸運にも、すぐに次の攻撃が飛んでくることはなかった。

ミミロップ「お、オノノクス……?」

その可愛らしい瞳に、薄緑色の巨体が映る。

鋭い爪、巨大な牙、太い尾、そしてなにより、視線だけで対象を怯ませてしまいかねない程の鋭い眼光を携えた黒い瞳。

彼女達が恐れていた捕食者が今、ミミロップの目の前に姿を現した。
 ▼ 687 カリオの相棒 18/10/20 06:55:23 ID:rqQExrtE NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
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 ▼ 688 ワガノン@みずのジュエル 18/10/23 22:50:06 ID:fLmkp8Ok NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援だで
早く続きみたい
 ▼ 689 マシュン@インドメタシン 18/10/26 05:37:03 ID:jtmcKEe2 NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 690 ンニュート@アブソルナイト 18/11/05 23:10:24 ID:x/7YtUNE [1/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミミロップ「あ、ああ、たすけ……」

恐怖に怯える言葉すら、最後まで紡ぐ事ができない。

足は奮え腰は抜け、ミミロップはその場から動く事もできずただ目の前で唸り声を上げている怪物を見ているばかり。

もう自分の一生はここで終わってしまうのか……攻撃されたら、食べられたら痛いだろうな、もっともっとやりたいこと沢山あったのにな、様々な思考が脳裏を過ぎって消えていく。

状況を打開しようなど、考えることさえできない。

オノノクス「グガァゥ……」

一歩、また一歩、オノノクスがじわりじわりと距離を縮めてくる。

どうせなら一思いに殺してくれればとも思ったが、それさえ彼は赦してくれないようだ。

ミミロップ「っ、く、はっ、ふっ……」

もう呼吸すらままならない。あまりの恐怖に、過呼吸を起こし始めている。

だが彼はおかまいなしにミミロップとの距離を縮め、やがて目の前で足を止める。

オノノクス「…………」

ミミロップ「……?」

静止。

ミミロップのすぐ前で彼女を見下ろすオノノクスは、その状態のまま沈黙した。

もしかして、敵視されているわけではないのだろうか……淡い期待がふわりと浮かび、ミミロップの表情を僅かに弛緩させる。

かすかにだが、オノノクスが笑った気がした。
 ▼ 691 ノンド@エドマのみ 18/11/05 23:10:39 ID:x/7YtUNE [2/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ドスン

ミミロップ「いぎゃああああああああ!!!」

耳を劈くような悲鳴。

オノノクスが見逃してくれたのではと安堵しかけていたそのとき、彼女の華奢な足を、オノノクスの巨大な足が踏み潰した。

ミシミシと嫌な音が聞こえ、気が狂いそうなほどの激痛が彼女を襲う。

ミミロップにオノノクスの様子を、自分の足が今どうなっているかを確認する余裕など無い。むしろその光景を瞳に映すことで、より鮮明に痛みを感じてしまうかもしれない。

ミミロップ「あっ、あがっ、っぐぃ、いぎっ」

悲鳴をあげ続けたせいで早くも声がかれてくる。もはや彼女は、言葉にならない声を涙や涎と共に垂れ流し、少しでも痛みから意識を逸らそうとすることしかできない。

だがその間もオノノクスは体重をかけてミミロップの足を踏み続ける。彼は、この状況を楽しんでいるようだった。

アブソル「っ、ぐ、ミミロップから、離れ、なさい……!」

オノノクス「……?」

サイコカッターがオノノクスの背中に直撃する。

血を流して倒れていたアブソルは何とかミミロップを助けようと歯を食いしばって技を繰り出していた。

だが、悲しいかな、彼女の攻撃は全くオノノクスには効いていない。彼の気を一瞬だけ逸らすことはできたが、ダメージを与えることはおろか、ミミロップに対する攻撃をやめさせる事さえできなかった。

ミミロップ「あ……ぅあ……痛い、よぉ……」

もう限界だ……そう思い意識を手放そうとした瞬間、オノノクスは足を上げ彼女を解放した。

それで激痛が和らぐわけではないが、骨肉が押しつぶされていく感覚からは逃れる事ができた。ただ、やはり彼女にそれを確認する余裕は無い。ミミロップは涙と唾液で顔をぐちゃぐちゃにしながら、必死に痛みに耐えている。

オノノクスはそれを見て、薄気味悪い笑みを浮かべる。そして、ひとしきりそれを堪能した後、ミミロップの反対の足を同様に潰そうと再び足を上げた。
 ▼ 692 ォッコ@セシナのみ 18/11/05 23:10:58 ID:x/7YtUNE [3/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アブソル「っ、さ、させない……!」

アブソルは痛みを堪え立ち上がり、血が噴き出すのもお構いなしにミミロップの所へ駆け寄る。

アブソルが動いた所でたいした事は何もできないと鼻で笑っているのだろうか。オノノクスはそれを阻止せず地に足をおろし、にやにやと獲物を甚振るような目で彼女達を見つめていた。

アブソルは彼の様子にかまうことなく、どうにかミミロップをうつ伏せにさせて自分の背に乗せる。再び、彼女の肩から血が少し噴き出した。

アブソル「手だけでも、つかまってて……」

ミミロップは返事をする事ができない。ただ、彼女の言葉は理解したようで、両手で彼女の胴に抱きついた。

アブソル「っ!!」

足に力を込める。これまで以上に多くの血を流したが、歯を食いしばり、オノノクスから逃げようと一歩踏み出した。

足取りは決して速くない。オノノクスが大またで歩けばそれだけで追いつかれてしまうペースでしか、アブソルは歩けない。

ここまで来ると、もう逃げるという行為に意味は無いのかもしれない。だがそれでも、彼女は諦めたくなかった。記憶を失っていても生きたいという意思と、そんな自分と仲良くしてくれたミミロップを守りたいという一心が彼女を突き動かしている。

アブソル「っ、く、はぁ、はぁ、ぐうっ……」

そうやって、どれ程歩いただろうか。

後ろからは何の音も聞こえてこない。それどころか近くに来ている気配もなければ、攻撃を仕掛けられている様子も全く無い。

何故か諦めてくれたのだろうか。気にはなるが、振り返る勇気は無い。

アブソル「……ねぇ、ミミロップ、私、ね、思い出したことが、あるの」

震えながら息も絶え絶えに、アブソルはミミロップに話しかけた。

だが、返事は無い。どうやらミミロップは痛みに耐え切れず気絶してしまったようだ。

それでも、アブソルは話を続けた。もしかしたら、彼女が気絶していることをわかっているからこそ話し始めたのかもしれない。

アブソル「ここは、私達の、おかれた、この状況は……全部、仕組まれた、こと、なの……ここは、この場所は……」

???「へぇ、もうそこまで思い出しちゃったんだ」

アブソル「!?」

何かの気配。声のする方へ視線を向けると、いつからそこにいたのかスリーパーが一匹、木の幹に手をついて立っていた。
 ▼ 693 インディ@シールぶくろ 18/11/05 23:11:18 ID:x/7YtUNE [4/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アブソル「あ、あなたは……」

スリーパー「おや、おいらの事まで思い出したのか? ふむ、それは計算外だ……ただ、もしそうであるなら、あの事も思い出したんだろう?」

アブソル「あのこと……?」

ずるりとミミロップが背から滑り落ちそうになるのを何とかバランスを取ってこらえ、スリーパーに向けている視線を細くする。

実を言えば、アブソルはすべてを思い出したわけではなかった。端的に言えば、この状況は仕組まれてできたもの、という事だけしかわからない。誰が何のためにといった、肝心な部分は何一つわからないままだ。

しかし、この口ぶり、スリーパーがこの件に深く関わっている事は明らか。アブソルが記憶を失っている事も知っている辺り、元凶である可能性さえ高そうだ。

無防備にも両手を広げてやれやれといった風に首を振るスリーパー。アブソルは彼から一瞬たりとも目を逸らさず、彼の一挙一動に気を配っている。

アブソル「何か知ってるのね……教えなさい!」

スリーパー「なんだ、そこは覚えてないんだ」

落胆したような表情を浮かべ、大袈裟にがっくりと肩を落とすスリーパー。その様子はまるで道化師のよう。

スリーパー「おいら的には一番大事なとこなんだけどなぁ……そうだなぁ、うーん、どう話したもんか……」

今度は顎に手をあて、うんうん唸り始めた。はじめは何かされるのではと警戒していたアブソルだが、彼の動作を見ているうちに、恐怖と平行して苛立ちが募り始める。

どこか人を馬鹿にしたような態度。この状況を楽しんでいるのだろうか、ちらちらとアブソルの方を見ては口角を吊り上げている。

アブソル「いいから話しなさい!」

中々進まない話に、苛立ちを言葉に乗せるアブソル。しかしスリーパーはそれを見て再び嫌味な笑みを見せるばかり。

だが、何度も同じやり取りを繰り返す気はないのだろう、スリーパーは急に顔を無表情にも似たものに一転させ、組んでいた腕を解く。

スリーパー「おまえ、自分たちの立場わかってないだろ」

アブソル「!」

スリーパーはアブソルの前まで瞬時に移動し、右手でアブソルの肩を強く掴んだ。
 ▼ 694 イクン@コンテストパス 18/11/05 23:11:35 ID:x/7YtUNE [5/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アブソル「うぐ、ああああっ!!」

そこは、オノノクスにつけられた大きな傷があるところ。スリーパーが強く肩を掴むことで、少しずつふさがってきていた傷口が一気に開いた。

激しい痛みに苦しみ悶えるアブソル。スリーパーは噴き出した血飛沫をその身に浴び、気持ち悪いくらい満面の笑みを浮かべる。

スリーパー「いいねいいねいいね!! その表情、とってもそそるよ!! でもねでもね! おいら、君みたいな仔はそんなに好みじゃないんだよね!! もっとこう、幼い感じのがさぁ!!」

アブソル「ああああああ!!!」

スリーパーはアブソルの肩をつかんだままがくがくと彼女の身体を揺らす。その度に彼の指が傷口に食い込み、より多くの血が飛散する。

それを見て、更にスリーパーは笑う。狂ったように、笑う。

スリーパー「おや?」

アブソルが激しく揺らされた衝撃で、彼女の背に乗っていたミミロップが地に落ちた。気絶してしまっている彼女はそれでも起きる事はなく、ただスリーパーの気を引いた。

スリーパー「そうかそうか、今回の道連れはこの仔だったのか。うーん、可愛いね、可愛いね! 幼くはないけどなぁ、でもかわいくて、なんかエロいね!!」

スリーパーはアブソルから手を放し、地面にずり落ちたミミロップの前に立つ。

アブソル「な、なにを……」

スリーパー「おっ、この仔は足がやられてるのかぁ。オノノクスに潰されたんだねきっと。ぐってやったら目を覚ますかな?」

アブソル「や、め……」

スリーパー「ほいっ」

ミミロップ「っ!!!??」

悲鳴にならない声が周囲に木霊する。スリーパーはアブソルが言葉を紡ぐよりはやく、ミミロップの足の傷に指を突っ込んでいた。

スリーパー「ほほっ、こりゃそそるわ、そそりますわ。とってもイイ顔しなさる」

何が起きているか全くわからず、ただ襲い掛かる激痛に目を白黒させるミミロップ。もうこれが痛みであることさえわからなくなっているのかもしれない。
 ▼ 695 ネコロロ@チャーレムナイト 18/11/05 23:11:51 ID:x/7YtUNE [6/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
それから暫く、スリーパーは彼女達の傷口を抉っては観閲に酔い痴れていた。

なすすべもなく、ただただ彼に玩ばれるアブソルとミミロップ。もういっそ死なせてくれと嘆願してしまう程の苦しみに、彼女達の精神は壊れかけていた。

アブソル「…………」

しかし、彼女はまだ諦めてはいなかった。

享楽に恍惚としている彼の隙を、彼女は見逃さなかった。

アブソル「……っ!!!」

スリーパー「っ、な、なにを」

鈍い音が大気に満ちる。

彼女のものとは違う、別なポケモンのそれが彼女の視界を赤一色に染め上げる。

スリーパーの咽喉元に突き刺さるアブソルの鋭い牙。恨み辛みが強く込められた、彼女の攻撃。その威力は、彼のそこから噴き出す夥しい量の血が物語っている。

彼の両手がアブソルの首を、傷口を強く掴んだ。

これまでとは比べ物にならない程強烈な痛みが彼女を襲う。

だがそれでも、彼女はつきたてた牙を引き抜く事はない。それどころか尚も強く牙を食い込ませていく。

深く、より深く。

肉が千切れ、骨の砕ける音がする。口内を、彼の血が満たしていく。

力を込める程、彼の肉に食い込んでいく牙。それに比例して彼の生命が薄れていくのが、よくわかる。

アブソル「…………」

スリーパー「…………」

やがて、彼は彼女の首や肩を掴んでいた手をだらりとさせ、彼女によりかかるようにして倒れ込む。

だがそれでも……それでもなお、彼女は牙に力を込め続けた。やがて彼の骨肉が最後の悲鳴をあげ、残された胴体が夥しい量の赤い雨を降らせる。

そこでようやく、彼女は口を閉じる事となった。
 ▼ 696 クロッグ@もりのヨウカン 18/11/05 23:12:14 ID:x/7YtUNE [7/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アブソル「う……」

力を使いすぎたせいか、アブソルはそのまま地面に倒れてしまう。

かろうじて意識を保てていたミミロップは、その始終を目にしていた。短い付き合いではあるが、その中で一度も見た事が無い、アブソルの血も凍るような表情。しかし、その瞳の奥には確かな炎が宿っているのもわかった。

彼女は、生きることを選んだ。

終わりの見えない地獄に未来を放棄しかけていたミミロップは、そんな彼女をとても美しいと思った。

彼女を前に、ミミロップは痛みさえ忘れ自分を恥じた。そして、感謝した。

ミミロップ「私、だって……やらなきゃ……」

もう何度もアブソルには助けられた。ミミロップは片足を引きずりながらも何とかアブソルを背負い、岩陰に非難しようと歩き始める。

片足で飛び跳ねるようにしながらの移動。アブソルはおろか自分の砕けた足さえまともに引き連れる事はできていない。

地を蹴るたび、地に足がつくたび、気が狂うような激痛が走る。それでも彼女は、一歩一歩、確実に前へ進もうと歯を食いしばった。

ミミロップ「…………」

スリーパーの生首が視界に映る。

心なしか、その表情は死してもなお狂気の笑みを浮かべているように見えた。
 ▼ 697 ンガー@シールいれ 18/11/05 23:12:36 ID:x/7YtUNE [8/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


アブソル「う……あ、りが…と……」

岩場に着き、アブソルをできる限りそっと地面に下ろす。彼女が地に落ち着いた事を確認するや否や、ミミロップはその隣に倒れ込むようにして転がった。

ミミロップ「……アブソルが、あんなに、強いと思わなかった」

アブソル「強い……ううん、それは違うと、思う」

ミミロップ「強い、よ……私、もう、諦めてた、もん」

アブソル「ううん、私は、事情を知ってるから、できたの……」

ここまで来たはいいが、状況が好転したわけではない。

彼女達の負った傷からはとめどなく血が流れ出ており、事故修復もままならないだろう。二匹ともあまりに多くの血を流しすぎていて、言葉どころか思考もまともに回らない。

状況は依然として最悪。たとえ生きる想いを奮い立たせたところで、身体がそれについてくるとは限らない。

アブソル「ねえ……聞いて、くれる?」

だがそれでも、アブソルはミミロップに思い出したことを伝えようと口を開く。

ミミロップも、彼女の言葉を聞こうと薄れる意識をなんとか保ち耳を澄ませる。

もうミミロップに、アブソルへの不信感はない。あるのは信頼と、言葉では伝えきれない程大きな恩義だ。

アブソル「ここで、この森、では、ね……ある、実験が、行われているの……」

彼女は、少しずつ話し始める。

この森で何が起きているのか、彼女たちはどうして連れて来られたのか。そして、どうすれば助かる事ができるのか……
 ▼ 698 ョロゾ@クオのみ 18/11/05 23:12:55 ID:x/7YtUNE [9/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



――――――
――――
――

ルカリオ「なんかもう聞いてるだけで辛い……」

ミミロップ「まぁね……私も、普段は思い出さないようにしてる。忘れる努力もしてるし」

ルカリオ「辛かったろうね……でも、いっこ言えるのは」

ミミロップ「言えるのは?」

ルカリオ「そいつら生きてたら俺がぶっ殺す。絶対に赦さねぇ!!」

ミミロップ「あらあら、怖い怖い」

口元に手を当て短く笑うミミロップ。勿論ルカリオは冗談で言ってるわけではないのだが、彼の真っ直ぐな気持ちが嬉しくて、ミミロップはとても幸せな気持ちになった。

ルカリオ「……サンダースの気持ちがわかったきがするよ」

ミミロップ「そうね……私の場合はルカリオとまだ出会ってない頃の話だけど、シャワーズがどれだけ絶望したかはわかる気がする」

ルカリオ「ほんとに……ああああああああ!!」

ルカリオは頭をがりがりとかきむしった後、急にミミロップの足元に跪いた。

彼の思わぬ行動にミミロップはきょとんと首を傾げる。しかしそれも束の間、ルカリオはミミロップの足を優しく触り、ぺろぺろと舐め始めた。

ミミロップ「えっ、ちょ、なに」

ルカリオ「っちゅ、ミミロップちゃんの足をそんな風にしたのが赦せない。んちゅ、ちゅ、ぺろ」

ミミロップ「ちょ、あは、くすぐったいって、もう、それに、ふふ、傷治ってるわよ」

足を引くことはないが、彼の舌使いが絶妙で身体をくねらせるミミロップ。

きっと彼は悔しいに違いない。どんな話を聞いてもそれは過去のこと、今の彼にはどうする事もできないのだ。

それが歯がゆくて悔しくて、彼はそんな行動に出たのだろう。自分のやり場の無い想いを、彼女への愛情と服従に変えて。
 ▼ 699 ガサーナイト@どくけしのみ 18/11/05 23:13:10 ID:x/7YtUNE [10/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルカリオ「でも……こんなに足綺麗だよね。そんな傷、跡くらい残ってそうだけど……」

ひとしきり足を舐め回したルカリオはその姿勢のままじっと彼女の両足を見つめる。

ミミロップ「それは、もう少し話した時にわかるわ。ここからがまた……大変だったのよ」

ルカリオ「そっか……辛くなったら、いつでも話すの止めていいからね」

ミミロップ「ううん、ここまで来たら話さない方が辛くなると思うわ」

ルカリオ「大丈夫そうならいいんだけど……今は俺がついてるから」

立ち上がり、彼女をぎゅっと抱きしめる。ミミロップは暫く彼のぬくもりに甘え、そっと目を閉じた。

あれだけ鳴り響いていた雷はもうどこかへなりを潜めたようで、しとしとと降り続ける雨が木の葉を揺らす音色だけが奏でられていた。

直感だが、ルカリオにはわかる。

彼女の話はもう佳境。そして、最も辛い出来事が待ち受けているのだろう。

目を細め、彼女を抱きしめる手に力がこもる。彼女は、そんなルカリオの優しさを汲み取ったのだろう、彼の腕の中に一層自身を潜り込ませた。

ミミロップ「……じゃあ、話すわね」

ルカリオ「うん」

ルカリオは彼女を腕の中におさめたまま、ゆっくりとその場に腰を降ろす。そして自分の前にミミロップを抱きかかえ、彼女の話を待った。

ミミロップはルカリオの胸に背を預け、小さく深呼吸。そして、少しずつ話し始めた。

雲の切れ間から太陽が姿を見せる。だが雨はその勢いを衰えさせることはなく、変わらず地面を濡らし続けていた。
 ▼ 700 ラチーノ@アゴのカセキ 18/11/06 00:10:08 ID:v7ioiD8E NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
毎回続き気になるところできるなあ
 ▼ 701 ンゲラー@サンのみ 18/11/06 03:33:28 ID:FDUskmfo NGネーム登録 NGID登録 報告
お、きてた
支援
 ▼ 702 ドシシ@まひなおしのみ 18/11/07 01:45:07 ID:Eih2fyJw [1/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




アブソル「この森は……ある目的で作られたと聞いているわ。だから、他のポケモンはおろか、特定のポケモン以外の生物がほとんどいないの……」

乱れた息を整えつつ、アブソルは語り始める。

傷が治りかけているのか感覚が麻痺しているのか、彼女はもう痛みに言葉を失うことはないようだった。

アブソル「あいつらは、ここに、無防備なポケモンを連れてくる……そして、何も持たせず、森の中に放り出すの」

ミミロップ「確かに、そんな、感じだった……」

ミミロップは激痛に表情を歪ませながらも、彼女の話を聞き届けようと歯を食いしばって意識を保っている。

何より、話に傾注すれば痛みも少しは忘れられるような気がした。

アブソル「スリーパー、見たでしょう? それに、オノノクスも……彼らは、この森で行われて、いる、実験の執行側……」

ミミロップ「実験、って、いったい、何を……」

アブソルは静かに目を閉じる。

顔色が悪いのは、きっと血を流しすぎたせいだけではないだろう。

もしかしたら、ミミロップもそれを聞いて気分が悪くなるかもしれない。だがそれでも、ミミロップは黙って続きを促した。話そうとしてくれている彼女の気持ちを汲むだけでなく、生きるにしても死ぬにしてもこのまま何も知らずにはいたくないと思ったのだ。

アブソル「嗜虐的快楽を含む、生殖行為の強制……簡単に言えば、ここは、人間達でいう『育て屋』の敷地内、なの」

ミミロップ「育て屋……」

道中で見た、人工的な柵を思い出す。あれはおそらく、育て屋の施設の一部として何かに使われているものなのだろう。

この時点ではその手の知識に乏しいミミロップにはぴんと来ない内容であったが、「育て屋」というものは聞いた事があった。

ポケモンを預かり、育てる施設。時に、敷地内で仲良くなったポケモン同士の卵ができる事もあるらしい。

ありていに言えば、繁殖行為を行いやすい場でもあるということ。ただ、それをここでは、非道徳的な嗜好を含んで繰り広げられているらしい。
 ▼ 703 クロズマ@ガオガエンZ 18/11/07 01:45:25 ID:Eih2fyJw [2/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アブソル「何も知らずに、放り込まれたポケモンは、ここで、様々な辱めを受けることに、なるの……だいたい最初は、右も左もわからないポケモンを見て、衰弱する様子を楽しんで見てる……」

ミミロップ「でも……監視されてる様子は、なかったけど」

アブソル「その辺りはよくわからない……常に監視、してるわけじゃない、のかも……」

どうやら、彼女はこの件に関して全て知っているというわけではないらしい。

というかそもそも、アブソルはどこまでこの話を知っているのだろう? そして、どうして知っているのだろう?

幾つか疑問が浮かんではきたが、話がそれていくことを恐れ、ミミロップはとりあえず最後まで耳を傾けることにした。

アブソル「この規模よ、ポケモンだけで、行ってるわけじゃないわ……人間も、絡んでるはず」

ミミロップ「じゃあ……オノノクスや、スリーパーは、誰かのポケモンって、こと?」

アブソル「そうね……これは推測になる、けど……その人間が、この事業を始めて、その人間のポケモンが、連れ込まれたポケモンに乱暴、してるんだと思う」

育て屋では普通、トレーナーから直接ポケモンを預かり、目の届く範囲での飼育や管理が行われている。しかしこの森はおそらく非公式のものなのだろう、どこかから連れ去ってきたポケモンに乱暴を働き、卵を作らせているのだという。

これはアブソルもミミロップも知らないことではあるが、一部人間達によるポケモンへの嗜虐行為はポケモン協会でも大きな問題となっている。警察組織と協力して事態にあたってはいるのだが、取り締まりも難しくそういった犯罪行為は年々増え続けているのだ。

彼らの犯罪はポケモンの密猟などに留まらない。人間の中には、歪んだ性愛を持った者が一定数いるらしく、ポケモン達の性行為や性的暴行の現場映像が高値で取引される事もあるという。そういった嗜好を満たすため、莫大な金銭を取得するため、非公式でそれらを行う場所が作られているのだ。

その一つが、この森、この育て屋。

そう思えば、オノノクスがミミロップ達にトドメをささなかった理由も察しがつく。スリーパーの現れたタイミングといい、全てはアブソルの言う通り「仕組まれていた」のだろう。
 ▼ 704 オッキー@ていこうのハネ 18/11/07 01:45:47 ID:Eih2fyJw [3/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミミロップ「……でも、どうしてアブソルは、そんな事を知ってるの……?」

アブソル「それは……」

アブソルは再び辛そうな表情を浮かべ、視線を地に落とす。

だがすぐ意を決したように顔をあげ、真っ直ぐにミミロップを見た。

アブソル「おそらく私も……その人間の、ポケモンだからよ……」

ミミロップ「!!」

一瞬にして血の気が引く。

急に周囲が真っ暗になったような感覚。やっと彼女を信じる事ができたというのに、彼女から告げられた事実はそれを一気に突き崩すようなものだったのだから無理もない。

だが、自分でも不思議なくらい、ミミロップは冷静だった。

自らが傷つくのも厭わずオノノクスから必死にかばってくれたアブソル。死ぬより辛い地獄を味わわせてくれたスリーパーを殺害したアブソル。そして、敵視されてしまいかねない事実にも関わらずありていに話してくれたアブソル。

彼女はきっと、ミミロップを騙そうとして今まで一緒にいたわけではない。そこには何か事情があるのだと、ミミロップにはそう思えてならなかった。

ミミロップ「……何か、あるのよね」

アブソル「私を、信じてくれるの?」

ミミロップ「……全部話して。まずは、それからよ」

アブソル「そう、ね……わかったわ」

縋りつくような目でミミロップを見るアブソル。それでも隙は見せないようにと牽制しつつも、ミミロップは疑いの眼差しを彼女に向ける事はなかった。

それだけで嬉しかったのだろう。アブソルの表情はこれまでと一変し、だいぶ穏やかなものになった。
 ▼ 705 ルシアン@エレベータのカギ 18/11/07 01:46:04 ID:Eih2fyJw [4/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アブソル「私は……記憶を失って、いる……でもそれは、失ったんじゃなくて、あいつに……スリーパーに、奪われていたの」

ミミロップ「奪われて……」

アブソル「ええ……金縛りの応用とか、言ってた気がするわ。私の記憶を封じこめて、連れ込まれたポケモン達と同じ立場で動かしたかったみたい……」

ミミロップ「え、それって……」

嫌な想像が脳裏を過ぎる。それはすぐに真実として、彼女の口から話されることとなった。

アブソル「……私も、同じってこと。彼らの嗜虐の対象……何度も乱暴されて、痛めつけられて、そんな記憶を、思い出したわ……」

ぽたりと彼女の瞳から涙が零れ落ちた。

彼女は、こんな辛いことを何度も何度も繰り返し行わされてきた。記憶が奪われているとはいえ、身体にはその恐怖や痛みが染み込んでいるだろう。そんな状況、考えただけでも苦しくなる。

アブソル「私のことは、もういいの……それより、聞いて」

もういいなんて言わないでと彼女に詰め寄るより先に、アブソルはミミロップをじっと見つめた。

強い意志を持った瞳。彼女の思いに、ミミロップは言葉を呑み込むしかなかった。

アブソル「この森は、孤島になってはいるけど、本土と陸続きになってる道があるの……そこからなら、ここを、出る事ができる……」

ミミロップ「それは、どこにあるの?」

アブソル「はっきりとは思い出せないけど……ここからなら、結構、近い……海の方に向けて、歩けば、大丈夫よ」

ミミロップ「なら、すぐにそこへ、向かいましょ」

アブソル「そうね……ミミロップなら、だい」

ミミロップ「あなたも連れていく」

今度は、アブソルの言葉をミミロップが遮った。

ミミロップ「雪、見たいって言ってたでしょ?」

ミミロップの瞳にも、アブソルが決めた覚悟と決意が強く込められている。それを見てアブソルは、小さく笑みを浮かべ、やはり言葉を呑み込むしかなかった。
 ▼ 706 ニリュウ@ポイントマックス 18/11/07 01:46:24 ID:Eih2fyJw [5/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
丁度そのとき、遠くの方から大きな物音が聞こえた。

木をなぎ倒すような音。もしかしたら、オノノクスが動き始めたのかもしれない。

アブソル「あんまり時間、なさそうね……」

ミミロップ「この怪我だし、動けるうちに、動いた方がいいわね……」

おそらくは脱出経路となる方へと目を向ける。

まだ痛む片足を引きずりながら立ち上がり、短く息を吐いて気合を入れなおした。

逃げ遅れること、それはすなわち死を意味する。

一度は生きることを諦めた彼女も、今は未来への希望をしっかりとその胸に抱いていた。何より、アブソルに雪を見せに行く、その一心で彼女は立ち上がる事ができた。

ミミロップ「…………」

ただ、気がかりな事が無いわけではない。グラエナとエネコロロはあれからどうしているのか、今どこにいるのか。少なくともオノノクスの餌食にはなっていないようだったが、こうしている間も彼らは危機にさらされている可能性がある。

しかし、後戻りはできない。

手負いになっていないうちであれば彼らを探す事もできたが、正直なところ、この状態では自分たちの身を守って逃げることで精一杯だ。

アブソル「仕方ないわ……誰も、それを責めることはないはずよ……」

ミミロップの考えている事を察したのだろう、アブソルはやや自虐的にフォローを入れる。自分が言うのもなんだけど、という言葉は胸の奥にしまいこんでおいた。

ミミロップ「……そうね」

現状、生きるためには仕方の無い事。それでもミミロップは、心の中で何度もごめんなさいと謝った。

アブソル「この岩場から、北東に進めば、海が見えると思う……海に着いたら、本土が見えるほうへ」

ミミロップ「わかったわ。それじゃ……行きましょ」

二匹が岩場を後にする。

ゆっくりと、だが確実に、彼女たちは新しい未来へと歩みを進めていた。
 ▼ 707 ゲチック@マトマのみ 18/11/07 22:20:02 ID:5pyQf83k NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
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 ▼ 708 ーピッグ@きいろのバンダナ 18/11/09 23:24:57 ID:G70Ax0k. [1/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




森の中を、できる限り急いで進むポケモン二匹。

落ち着き始めたはずの雨は再びその存在を強く主張し始め、ひたすらに彼女達の体力を奪っていく。

霧もろとも奪ってくれたのは、幸か不幸か。少なくとも、彼女達が進むべき道を見失う事はなさそうだ。

アブソル「この向こうに、大きな門があるの……」

ミミロップ「門……っていうと、出入り口?」

アブソル「そう。育て屋の主要施設から、森に入るための……だから、そこは迂回して、進むわ」

彼女が言うには、スリーパーやオノノクスのようなポケモンはまだまだ多く存在するらしい。それらの中には一定の地で見張りの役を請け負ったポケモンもいるのだろう、その周辺に近づくのは危険極まりない。

できるだけ獣道になっているようなところを避けて歩いてはいるが、この辺りは背の高い草むらが少なく遠目にも見渡せてしまう場所、できるだけ他のポケモンがいそうな場所には近づかないでおきたい。

アブソル「伏せて」

ミミロップ「!」

突然、アブソルは倒れこむようにして草むらに身を屈ませる。

ミミロップもそれに合わせて地面へ尻餅をつくように腰を降ろし、息を潜めた。

アブソル「エテボース……複数いるわね」

ミミロップ「あれが、見張りのポケモン?」

アブソル「私の記憶が、正しければね……」

雨のおかげで足音や草木を掻き分ける音は誤魔化せそうだが、視界が悪いとはいえ近づかれたら即アウト。嗜虐的な性的欲求に貪欲な者複数に捕まりなどしてしまえば、その先には地獄しか待っていないだろう。

入り口が近くなるにつれ、見張りの数も多くなっていると予想される。反対に言えば、敵の数が目に見えて増えていれば、それは出口に近づいているということ。
 ▼ 709 クガメス@バグメモリ 18/11/09 23:25:31 ID:G70Ax0k. [2/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アブソル「傷さえなければ……」

アブソルは悔しそうに唇を噛む。

二匹ともそれなりに歩けるまで回復したとはいえ、敵に追いかけられればすぐに捕まってしまうだろう。仮に走ることまで可能だったとしても、あまりの激痛に程なくして倒れ込んでしまうに違いない。

となれば、敵に見つからない事がそもそもマスト。見つかれば、その時点で全てが終了してしまうと言っていい。

ミミロップ「経路はここしかない、のよね?」

アブソル「無い事もないけど……だいぶ大回りになるわ」

そうは言うものの、見つからず島を出る必要がある以上、可及的安全なルートを選ぶべきである。大回りと言いはしたがアブソルもそこを進むしかないと思っているようで、彼女は出口とは違う方へと視線を向けた。

アブソル「この向こう……岩場の陰になっているところを抜けて川を越えた先まで行けば、別方面から出口に辿り着けるわ」

ミミロップ「そこは、見張りがいないの?」

アブソル「険しい岩場だもの、そこを通ることは誰も想定してないの。というか、道って言える道は皆無だから」

それはつまり、普通に歩いて通れるような経路ではないということだろう。ただ、見つからないように逃げられる道としては最適かもしれないが、彼女たちは手負い、そもそもそんな道を進む事ができるかどうか怪しい。

アブソル「……見つからずに出口へ逃げるには、そこしかないわ」

進めなければどちらにせよ終焉を見る事になる、と彼女は視線に力を込めた。

思わず唾を呑み込むミミロップ。しかし覚悟は既にできているようで、すぐさま頷き応えてみせた。

アブソル「こっちよ」

ミミロップの意思を確認したことで、アブソルはゆっくりと立ち上がり、遠くに見えたエテボース達の様子を確認しつつできるだけ音を立てないように歩き始めた。
 ▼ 710 リジオン@ライブスーツ 18/11/09 23:25:59 ID:G70Ax0k. [3/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




ミミロップ「すごい場所……」

アブソルが先導する道は薄暗いうえ地面がぬかるんでおり、朽木などの障害物が沢山あった。

しかも彼女達がこれから歩く道は結構な上り坂で、岩山のようになっている所を歩かなければならない。しかもその道幅は数十センチ程度しかなく、場所によっては足場が崩れかかっている所もある。

無論、登っている最中に足を滑らせればかなりの高さから身を投げることとなってしまう。もしそうなれば、最低でも複雑骨折は免れないだろう。そうでなくとも、岩場からは尖った岩石が突き出ている部分もあり、地面へ叩きつけられずともそこへ串刺しになってしまうかもしれない。

周囲を警戒し逃げるだけでなく、重症を負った状態で足取りにも最大限気を配る必要がある。

また、岩山の麓には猛毒を持った植物が多々生えているらしく、歩く事ができないとのこと。逃げるには、命がけでこの険しい道を進まなければならない。

アブソル「転んだら、相当運が良くない限り死を見る事になるわ。気をつけて、でもできるだけ速く進むの」

ミミロップ「うう、できるかな……」

崖の途中にできた道を通るも同然だ、怖くないわけがない。

それでも、非常に不安だがやるしかない。できなければ、地獄を迎え入れる事になる。

アブソル「一箇所だけ、危ないところがあるの」

ミミロップ「危ないっていうのは……」

アブソル「……敵に見つかりやすい場所のことよ」

アブソルは傾斜を見上げる。その表情はかなり険しい。

アブソル「この岩場を登りきった辺りに、ちょっとした広場になってる所があるの」

ミミロップ「広場……そこにも見張りがいる、ってこと?」

アブソル「見張りはいない……けどその場所は、その……行為を行う場所、なの」

アブソルははっきりと口にしなかったが、要するにその広場は雌に暴行を加えるために設けられた場所ということ。こんな実験をしているくらいだ、そこでは連日強制的な種づけが行われているに違いない。

アブソル「私達は、その広場の裏を通らなければいけない……途中広場から丸見えの所もあるから、見つかってしまう可能性があるの」

ミミロップ「そんな……」

一箇所だけとはいえ、やはり危険を冒さなければ出口まで辿り着く事はできないらしい。だが彼女達に用意された選択肢はそう多くない。こんな道でも、比べてみれば最善の経路なのだ。
 ▼ 711 ガヘルガー@はつでんしょパス 18/11/09 23:26:16 ID:G70Ax0k. [4/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アブソル「じゃあ、歩くわね……」

ミミロップ「うん……」

襲い来る激しい痛みになんとか耐えつつ、ぬかるんだ急勾配を歩き始める二匹。

何度も足を取られそうになりながらも、ゆっくりじっくりと一歩一歩踏み出していく。

ミミロップ「っ、と……」

集中して歩いていれば、いつの間にか結構な高さまで進んでいる。ふと後を振り返れば、一目見ただけで「足を踏み外せば死ぬ」とわかるくらいに険しい道。あまりの恐ろしさに、思わず足を止めてしまう。

だが、長らくじっとすることも赦されない。雨が降れば降るほど足元に泥が流れ、岩石は滑りやすくなる。雨に流された木の枝や小石などが上から転がってくるかもしれない。

アブソル「……下を見たら、振り向いたらだめ。歩けなくなるわよ」

ミミロップ「うっ、うん……」

からん、と足に当たった小石が落ちていく。

その後岩肌や地を打つ音が聞こえなかったのは、雨音のせいだけではないだろう。一度でも足を踏み外してしまえば、自分の身がどうなってしまうのか……想像に難しくない。

ミミロップ「うぅ、こわい……」

足が、手が、身体中が震えて止まらない。足を止めるわけにはいかないが、慌てて踏み出せばこの状態、すぐにでも滑って落ちてしまうだろう。増してやミミロップは片足に重症を負っているため、一歩一歩が本当に命懸けだ。鋭い痛みが走り反射的に思わぬステップを踏んでしまうなどすれば……

アブソル「……大丈夫?」

ミミロップ「大丈夫じゃ、ないかも……」

前を向く余裕すらない。だがアブソルの声から、彼女との距離が少し離れているのがわかる。仕方が無い事とはいえ、それにさえ焦りを感じてしまうミミロップ。

焦れば焦るほど身体は震え、前に踏み出す勇気が出なくなる。胸の鼓動ばかりがうるさく聞こえ、次第に呼吸も深く激しくなっていく。

それでも何とか前に進もうと、ミミロップは足を踏み出した。
 ▼ 712 ビヨン@ゲンガナイト 18/11/09 23:26:42 ID:G70Ax0k. [5/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



アブソル「嘘でしょ……」

生きようと懸命に歩く二匹。しかし、そんな彼女達に天は笑いかけてなどくれない。

ミミロップ「ど、どうしたの……?」

アブソル「道が、無いの……」

ミミロップ「え……」

アブソルが足を止めたことで、ミミロップは彼女に追いついた。そして自分がしっかり地に足をつけている事を確認し、ゆっくりと前を向く。

ミミロップ「そ、そんな!」

そして、アブソルが足を止めた理由を彼女は理解した。

この雨のせいかいつからかそうなっているのか、彼女達のすぐ前に本来あるはずの道は、崩れ落ちてしまったようで存在していなかった。

ただ、全て崩れ落ちたというわけではなく、ほんの1メートルほど道が途切れている状態。ここを跳び越える事ができたなら、また険しい道を歩き頂上を目指す事ができそうだ。

普段の彼女達なら、このくらい何という事も無しに跳び越える事ができるだろう。だが、彼女達のコンディション、この悪天候、そして何より焦燥感と恐怖、今の彼女達にこの状況はあまりに酷だ。

アブソル「……行くしか、ないわ」

ミミロップ「こ、こんなの無理よ……だって、私足こんなだし、地面滑るし、高いし……」

アブソル「考えちゃダメ。今の状況なんて考えずに、いつもやってるみたいに、跳ぶの」

ミミロップ「無理よぉ……」

涙をぼろぼろ零すミミロップ。こんな足場でなければ、座り込んでしまっていることだろう。

生きるために逃げ延びると決めたとはいえ、想定していなかった恐怖に震えを止める事ができない。
 ▼ 713 シギダネ@きぼんぐり 18/11/09 23:27:05 ID:G70Ax0k. [6/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミミロップの中で、今更にして「なんで、どうして」と理不尽への不満が募り始めている。こうなれば悪循環でしかなく、時間が経てば経つほど彼女の跳ぶ勇気はなりを潜めていってしまう。

それを感じたのだろうか、アブソルは首だけで振り返り、ミミロップをじっと見つめた。

アブソル「……私が跳ぶから、見てて。向こうへ渡ったら、貴女が跳んだのを受け止める」

自分も同じ恐怖を感じているだろうに、アブソルはミミロップを勇気付けるため、身体の震えを武者震いに変えた。

足に傷を負っていないとはいえ、彼女は四足、ミミロップよりも大きく跳ぶ必要がある。また、跳ぶことはできても、彼女の傷口は前足の付け根、前足を大きく広げれば激しい痛みが彼女を襲うだろう。そうなればきちんと着地できないかもしれない。

それでも、跳ぶしかない。アブソルはミミロップよりも先に覚悟を決め、前を向いた。

ミミロップ「とぶの……?」

アブソル「跳ぶわ……大丈夫、私達なら、跳べる」

アブソルは足を曲げ、ゆっくりと身を屈めた。

静寂。

アブソルはその姿勢のまま、何も言わず一切動かない。

雨の降る音だけが、辺りを支配する。ミミロップは、ただ黙って彼女を見ていることしかできない。

そうして、どれだけの時間が経過しただろうか。実際には一分も経ってはいないだろうが、ミミロップにはその時間が何十分にも感じられた。

アブソル「…………!」

そこからは、一瞬の出来事だった。

アブソルは素早く身体を起こし、歯を食いしばり前足を広げ、後ろ足で地面を蹴った。

肩から吹き出た血が辺りに舞う。だが次の瞬間には、彼女は危惧していた着地も成功させ、向こう岸へと辿り着いていた。

アブソル「……ミミロップ、跳んで!」

傷が痛むだろうに、アブソルは器用に反対側を向く。そしてしっかりと、ミミロップを見据えた。
 ▼ 714 ポポタス@イワZ 18/11/09 23:27:28 ID:G70Ax0k. [7/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミミロップ「わ、わたし……」

アブソル「大丈夫。貴女なら、跳べる」

そう言ってはくれるものの、なかなか身体中の震えがおさまってくれない。

確かにこの程度の距離であれば、普段の彼女なら簡単に飛び越える事ができるだろう。しかしこの状況、失敗したときの事を考えてしまい、跳ぶ勇気が出ない。

ミミロップ「っ!?」

ずるり、と岩肌についていた右手が滑り、空を切った。

危うくバランスを崩しそうになるところを必死にこらえ、何とか体勢を整える。

ミミロップ「ふーっ、ふーっ、ふーっ……」

死ぬかとも思えた事態に、呼吸が荒くなる。鼓動がうるさいくらい早鐘を打ち、頭の中が混乱し始めてしまう。

アブソル「大丈夫よ、さっきのことは忘れて、大丈夫だから」

ミミロップ「っ、う、っく、うう……」

それでも何とか前を向き、着地点を、アブソルを見た。

ミミロップ「跳べる、跳べる、跳べる……」

無理にでも呼吸を整えながら、右手を岩から離し、跳躍の体勢に入る。

片足に深手を負っているとはいえ、もう地に足をつけるくらいのことはできる。地を蹴る際に幾らかそちらの足にも力を入れる必要があるが、その時の痛みを耐え切れば問題なく向こう岸へ辿り着く事ができるはずだ。

ミミロップ「っ!!」

足に力を込める。

が、彼女はどこまで不運を呼び寄せるのだろうか、丁度その瞬間、空が強く光り雷鳴を轟かせた。

ミミロップ「っ、あ……」

雷に気をとられ、満足に地を蹴る事ができずぬかるみに滑ってしまう。

その結果……ミミロップは向こう岸まで跳ぶ事ができず、その身を空へ投げ出してしまった。
 ▼ 715 ウカザル@フィラのみ 18/11/10 00:03:22 ID:W7sIpQZ. [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
クソ支援
 ▼ 716 リーラ@アンノーンノート 18/11/10 00:10:28 ID:W7sIpQZ. [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ガチ支援
 ▼ 717 バメ@ちかのカギ 18/11/10 22:22:32 ID:dhzgTw92 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ちえん
 ▼ 718 ゲデマル@カゴのみ 18/11/11 00:07:04 ID:74yod4f. NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ほんま支援
 ▼ 719 ガレックウザ@トウガのみ 18/11/12 01:28:46 ID:o8YwhaPo [1/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


世界が揺れる。目の前の景色が、アブソルの姿がゆっくりと上へスライドしていく。きゅっと胸が締め付けられ、次の瞬間には側頭部へ血が一気に上っていくのがわかる。

不思議なもので、一瞬の出来事にも関わらず、ミミロップは「あぁ、もう自分は死んでしまうんだ」とぼんやりと理解していた。

アブソル「っ!!」

ミミロップ「!!」

全てを諦めてしまいかけたその刹那、突然肩が強く痛んだ。

左腕が引っ張られる感覚、はっとして見上げればアブソルが身を乗り出し、前足でミミロップの腕を掴んでいた。

アブソル「よかっ、た、間に合った……」

ミミロップ「あ、アブソル!」

ミミロップの喫驚に、アブソルは笑みを浮かべて応えてみせた。

彼女は後ろ足に力を入れて踏ん張り、前足でミミロップを引っ張りあげようとしている。しかしその度に彼女の肩から大量の血が噴き出し、雨に混じってミミロップへ降り注ぐ。

血が噴き出すたび苦痛に歪むアブソルの表情は、見ているだけで痛々しい。

ミミロップ「ねえ、もう、いいよ……このままじゃ、アブソルまで落ちちゃう……」

アブソル「そうね……でも、私だけ助かるくらいなら、私も一緒に、落ちるわ……」

ミミロップ「でも……」

彼女の気持ちは痛いくらい伝わってくるが、今アブソルは後ろ足と腹部だけで足場にしがみついている状態、このままでは共に空を舞うのも時間の問題だろう。現に彼女の身体は少しずつ前方に滑ってきており、状況は悪くなる一方だ。

アブソル「っ、ぐ……なんとか、引き上げて……」

後ろ足に力を入れる。だが、身体は前にずり落ちていくばかりで思うように動いてはくれない。

ミミロップもなんとか助かろうと岩壁に手を伸ばしてみたり足を引っ掛けられないか試したみたりするものの、全てうまくいかない。

そればかりか、彼女が少し動くたびにアブソルの身体も合わせて揺れ、一層状況を悪化させてしまう。

ミミロップ「もう……いいよ、ほんとに……こんなの、こんなの……」

――――自分が落ちてしまえば、彼女は助かるだろうか。

ミミロップの脳裏をそんな言葉が過ぎる。

爪を彼女の前足につきたてれば、思わず離してしまうのではないか。そうしたら、彼女はもろとも死なずに済むのではないか……

ミミロップ「…………」

だらりと揺れる手で、拳を握る。爪の感触を確かめ、ゆっくりと指を開いていく。

そして……
 ▼ 720 トベトン@しろいハーブ 18/11/12 01:29:14 ID:o8YwhaPo [2/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アブソル「っ!!」

ミミロップ「あ……」

アブソルの前足に突き刺さる、ミミロップの爪。

瞬間、アブソルの前足にこもる力が緩んで……

再び、強く、強くミミロップの腕を掴んだ。

ミミロップ「……どう、して」

アブソル「雪、見せてくれるんでしょ? 私、これでもとても楽しみにしてるんだから」

ミミロップ「そんなこと……」

顔を上げ、はっとする。

自分の血と雨に濡れたアブソルは見ているだけでとても痛々しく弱々しいが、彼女の目だけは違う。

ミミロップは彼女のあまりに真っ直ぐな瞳に、顔を伏せる。だが、すぐに再び顔を上げ、大きく頷いて見せた。

それを見て、小さく笑うアブソル。再び目にしたミミロップの瞳にも、彼女と同じ強い光がこもっていた。

ミミロップ「言っとくけど……めっちゃくちゃ寒いから」

つき立てた傷を包むように、降ろした腕を持ち上げ、アブソルの前足に掴まる。

アブソル「鬼火くらい、使えるようにならないとかな?」

そのぬくもりを受け、ミミロップの腕を掴む前足に一層力がこもる。

少しずつ、少しずつ彼女達の身体が後方へ、足場の上へ寄っていく。

一歩一歩、バランスを崩さぬよう細心の注意を払いながら、その身を安置していく。

彼女達の強い意志に打ち抜かれたのだろうか、あれほど降りしきっていた雨がようやく止んできて、雲の切れ間から太陽が僅かに顔を出した。

アブソル「いくわよ……っ!!」

渾身の力で、ミミロップを救い上げる。

ミミロップの身体が、ついに足場の上へ姿を現した。
 ▼ 721 ィ@りゅうのキバ 18/11/12 01:29:34 ID:o8YwhaPo [3/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アブソル「はぁ、はぁ、はぁ……」

ミミロップ「はぁ、はぁ……ありがとう。ほんと、しぶといわね私達」

アブソル「そう、ね、ふふっ」

肩で息をしながら笑いあう二匹。

いつの間にか雨雲は風に流され薄れていき、表に出てきた太陽がそんな二匹をまばゆく照らす。その光は、生存の喜びを祝福しているようだった。

アブソル「……さ、行きましょうか。まだ、これからが本番よ」

ミミロップ「そうね」

立ち上がり、歩き始める。

どうしてだろうか、あれほど怖かった崖の細い道も、今ではすいすいと歩くことができそうだ。

それはアブソルも同じのようで、実際これまでよりもかなり速いペースで山頂への道を進んでいた。

ミミロップ「(足、もう平気そうね……)」

相変わらず、地に足をつければ激痛が走る。だが、これまでと比べれば随分と痛みは弱くなったうえ、もう引きずらずともなんとか歩く事ができる。

単に感覚が麻痺しただけかもしれない。そもそも、痛みが激しかっただけで骨まで砕けていたわけではないのかもしれない。

ただ、実際のところどうであろうと、今彼女はそれなりに歩く事ができている。生きるために、前へ進む事ができている。

ミミロップ「……やっぱり、最初はハクタイシティかな」

アブソル「うん?」

ミミロップ「ううん、なんでもない」

足を止めるアブソルを見て、小さく微笑みミミロップ。

その向こうに、今回の脱走劇で一番の鬼門だという山頂が、いよいよ見えてきた。
 ▼ 722 イケンキ@ぼうごパット 18/11/12 01:29:54 ID:o8YwhaPo [4/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



アブソルの話では、山頂まで登るとそこにはぽっかりと空き地が広がっているらしい。彼女達が歩いている道は岩山の陰になっていて反対側からは見えない状態だったが、道は一度山頂へ辿り着いてしまう。そこから少し歩けば、地上へと伸びる狭い足場を通る事ができる。

距離にして、おおよそ百メートル程度。この間広場の隅っこを、そこにいるかもしれない誰かに見つからないよう通り抜けなければならない。無論、見つかれば追い回され、捕まれば地獄である。

アブソル「今は何がいるかわからない……でも、通るのは本当に端っこだし、下山ルートに入るまでの短い間だから……」

ミミロップ「誰もいないといいけど……」

アブソル「まぁ……いると思うわ」

先ほどまではありがたかった晴れ空も、こうなってくると恨めしくさえ感じる。雨天であれば、その広場には誰も来ていなかったかもしれない。

ただ、その広場に集まるポケモンは、性行為を目的としているらしい。つまりは、そのような必要がなければわざわざに立ち寄るような場所ではないのかもしれない。

ミミロップ「……何か聞こえる」

もしかして誰もいないのでは……そんな淡い期待を、彼女の優れた聴覚が断ち切った。

アブソル「……嬌声?」

ミミロップ「きょうせいって、その、えっちな声、よね?……でも、そんな気がする」

ミミロップが耳にしたのは、甘く蕩けた♀の鳴き声。おそらく広場では誰かと誰かが性行為を愉しんでいるのだろう、広場を抜ける際に見つかってしまう可能性が出てきてしまった。

アブソル「とにかく、様子を見てみましょう」

ミミロップ「そうね……」

もう、二匹とも山頂直前まで来ている。すぐ目の前に見える広場の地面から覗き込めば、そこに誰がいるかわかる事だろう。

アブソル「私が見るわ。物音を立てないようにね」

ミミロップ「う、うん」

ゆっくりとアブソルは山頂へ近づき、岩陰から広場の様子を確認する。

アブソル「あれって……!」

そして、彼女はそこで、衝撃的な場面を目撃した。
 ▼ 723 イーガ@カクトウZ 18/11/12 18:24:22 ID:mO1szQzw NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 724 チエナ@こうてつプレート 18/11/14 00:28:16 ID:f9pgfUQU [1/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
広場では今まさに、雌雄による淫楽が繰り広げられていた。

交錯する嬌声、響き渡る甘美の音色。まだ雨があがって間もないというのに、彼らの行為はずっと以前から行われていたと思わせる程蕩けきっているように感じられる。

アブソル「…………」

いやに情熱的な愛情表現に、アブソルは彼らを覗き込んだ姿勢のまま固まってしまった。

その様子を不審に思うミミロップ。彼女がアブソルの背中にぽんと手を乗せたことで、アブソルは我にかえり、そさくさと岩肌の裏に顔を引っ込めた。

ミミロップ「ねえ、誰かいたの? 通るの、無理そう?」

アブソル「えっと、たぶん、無理ではないけど……」

返ってきた言葉は意外にも好感触のもの。しかし、それを話すアブソルの表情はとても曇っている。

ミミロップ「……何を、見たの?」

アブソル「……性行為をする、♂と♀を見たわ」

元々山頂の広場はそういう目的で作られていると聞いた。同じ事を聞いて驚くミミロップではない、彼女は黙って続きを促した。

アブソル「その……一匹の♀に、複数の♂が群がってたの」

ミミロップ「それって……」

簡単に言えば、複数による陵辱、輪姦が行われているという事なのだろう。

かなりショッキングな話ではあるが、これもアブソルの口からおおよそを聞いた話だ。しかし、こうなってくると、どうしてアブソルがこんな顔をしているのか、想像がついてくるというもの。

ミミロップはその理由に気づいたようで、恐る恐る自分から話を進めてみることにした。

ミミロップ「……まさか、一匹の♀、って……エネコロロ?」

アブソルは、言葉も無くゆっくりと頷いた。
 ▼ 725 コン@たてのカセキ 18/11/14 00:28:49 ID:f9pgfUQU [2/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



エネコロロ「ふにゃああぁあぁあ……にゅふ、んくっ、ん、んむぅ、ぷあ、あっ、あっ、あっ、んきゅうう」

エネコロロの甘い声が周囲に木霊する。

昂揚した様子で♂ポケモンの肉棒を陰部でくわえ込むその姿は、誰がどう見ても淫猥としか表現できそうにない……彼女は、性行為を愉しんでいるように見える。

彼女を貪っているのは自らの欲望を押し込み何度も腰を振っている者だけに留まらず、彼女の顔や口元に性器を押し付けている者や、腹部にこすり付けている者、更には耳の穴に押し込もうとしている者までいる。

もう何度も射精されたのだろう、自慢の毛並みも精液が絡まり所々毛玉となっている。首元などはあまりに大量の精液を流し込まれたせいか元の毛の色がわからない程穢されていた。

だがそれでも彼女から漏れる吐息は甘美なものばかりで、悲痛な叫び声は一切聞こえてこない。

♂ポケモン「さあ、エネコロロちゃんおちんちんちゅっちゅしましょうね〜」

エネコロロ「っぶぅ、んちゅ、じゅぶ、じゅぶぶ、っく、んふっ、んふぉあ……」

嬌声が止んだと思われれば、次に聞こえてくるのは何かをしゃぶる音。水気を含んだ吐息が艶かしい。

エネコロロは♂ポケモンの巨大な逸物を銜えさせられ、だが嫌がる素振りも見せず舌を使って必死に舐め回していく。尖端を、裏筋を、唾液を馴染ませ感じるポイントを探っていく。

♂ポケモン「うっ、だ、射精すぞ!」

エネコロロ「んちゅ、んふぅっ、んぶぐっ」

そして訪れる射精。彼女の口内へ陰茎を押し込んでから、僅か数十秒のことだった。

早漏なのか彼女の舌使いが上手すぎるのか、♂ポケモンは我慢することもできず彼女の口の中に大量の精液を注ぎ込む。吐き出させないようにするためか彼は性器をより深い所まで押し込み、何度も何度も身体を震わせた。

巨大な逸物と吐き出された精液によって口内が埋め尽くされていく。エネコロロはもう溜め込めないとばかりに、静かに咽喉を動かし始めた。

だが、どれだけ飲み込んでも精液が無くなる事はない。容赦なく次々と放出される精子に、休む暇など与えてはもらえない。

♂ポケモン「こっちが留守になってるぞおらぁ!」

エネコロロ「んぐふっ」

急に激しく腰を打ち付けられ、思わず膣をきゅんと収縮させるエネコロロ。

それが気持ちよかったのか、彼女の下の口を犯していた彼はにやりと口角を吊り上げる。そして先ほどと同じように、陰茎を尖端ぎりぎりまで引き抜いて、そこから一気に奥まで押し込んだ。

脳天まで突き抜ける程の快感に、エネコロロは目を白黒させ、精子を飲む事も忘れ膣をきゅうきゅう締め付ける。次に密壷が緩んだときには、思うように力が入らず彼女の秘部からは薄黄色の液体がちょろちょろと漏れ始めた。
 ▼ 726 ゲチック@きよめのおこう 18/11/14 00:29:09 ID:f9pgfUQU [3/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



アブソル「っ……」

その場に崩れ落ちるアブソル。頭が痛むのか、彼女は眉間に皺を寄せ、短い呼吸を繰り返した。

ミミロップ「大丈夫……?」

アブソル「うん、ごめんなさい……ちょっと、色々、思い出しちゃって……」

ミミロップ「いろいろ、って……」

今度は、過呼吸を起こすのではないかというくらい大きく胸を上下させるアブソル。ただ、痛みは一過性のものだったのか、呼吸が整ってきた頃には落ち着きを取り戻していた。

アブソル「私も……あんな目に、何度も遭っていたの……」

ミミロップ「そんな……」

アブソル「記憶を奪われ森に放り込まれて……散々、犯されたの……」

言葉を失うミミロップ。こういう時、なんと声をかけていいものかわからない。

そんな彼女を見てか、アブソルは苦しみながらも笑みを浮かべてみせる。

アブソル「いいのよ、私はもう……慣れた、から」

ミミロップ「そんなこと……」

アブソル「それより……あの様子だと、エネコロロはもう、堕ちてるわね……」

ミミロップ「おちて……?」

アブソル「エネコロロ、元からああいう事が好きだったと思う?」

聞かれて、グラエナとの行為を思い出す。

だがあの行為は、グラエナとエネコロロの愛の営みだったように思う。それは彼との性交渉だからこそ成立するものであって、このように複数の♂に嬲られることと同義にはできまい。

となると、陵辱が続いたせいで嫌悪が快楽へと変わってしまったか、何か特別な理由があったのか。ミミロップが答えるより先に、アブソルは言葉の続きを話し始める。

アブソル「あれはたぶん、白い玉の影響よ……彼女達、口にしていたでしょう?」

ミミロップ「甘い匂いのしたやつ……?」

アブソル「そう……あれは、催淫剤なの。それも、かなり強力な……食べてしまえば、身体の疼きが止まらなくなるわ」

まだ記憶を取り戻していないうちから、食べない方がいいと言っていたアブソル。空腹にも関わらず食べられそうなものを拒否した彼女の、その判断は正しかったのだ。
 ▼ 727 クシー@ネコブのみ 18/11/14 00:29:39 ID:f9pgfUQU [4/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アブソル「あの玉を食べ続けたエネコロロは、性的快楽に脳を支配されていって……堕ちたの」

ミミロップ「…………」

何度か、ミミロップもあの玉を食べようと考えた。

餓死も見えていたあの時、甘い匂いに誘われ涎が垂れそうになった時……もしあの玉を口にしていたら、今広場で陵辱を受けていたのは自分だったかもしれない。そう思うと、背筋が凍るどころではない、得体の知れないレベルの恐怖が彼女を襲う。

この森に食料となりそうな植物が無いのも、自分達の他に生物が見当たらないのも、全ては空腹の状態を招かせるため。そして、森中にばら撒いた白い玉を、催淫剤を食べさせるため。

彼らは森に放り込まれたポケモンの様子を覗いて楽しむだけでなく、陵辱へつなげる道筋を立てて待ち構えていたのだ。

アブソル「ああなったら、残念だけど、もう彼女は戻ってこれない……何度も性欲の捌け口にされて、何度も孕まされて、そして最後には……」

ミミロップ「もういい、もういいよ……」

彼女の言葉を遮って首を横に振るミミロップ。その目尻からは涙が零れている。

陰惨な事実を耳にしたくないからというわけではない。そんな状態にアブソルが何度も陥っていたこと、それを全て思い出してしまってもなお自分に事実を話そうとしてくれていること、それを考えると胸が痛くなったからだ。これまでずっと痛み続けてきた彼女に、辛かった出来事を話させる事などできるはずもない。

アブソル「……正直に言うわ。エネコロロは、助けてあげたいけど、あの様子ではもう無理よ」

ミミロップ「……やっぱり、無理なのね」

アブソル「連れ出せば、きっと彼女は騒ぎ出す。そして、ここへ戻ろうとする。隠密行動が絶対の私達には……連れ出せないの」

胸が痛む。

ほんの僅かな時間だったとはいえ、彼女とは行動を共にしていた。見ず知らずの相手ならまだしも、少しでも関わった者であれば多少の情はわくというもの。

しかし、悲しいが、共倒れになっては困る。自分達としても、連れ出した者を守りきる自信などあるはずもない。胸が苦しくなるが、状況を考えれば仕方の無い話だ。
 ▼ 728 ユルド@ピーピーリカバー 18/11/14 00:30:01 ID:f9pgfUQU [5/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アブソル「そろそろ行くわよ……行為に夢中なら、気づかれずに行けると思うわ」

ミミロップ「うん……」

それでも何度も心の中でエネコロロに謝りつつ、ミミロップも前を向く。

この位置から広場の向こう側は見えない。状況を見回すには、一度広場に顔を出さなければならないため、ここから飛び出してしまえば咄嗟の判断が必要になってくる。

アブソルが言うには、この斜面を登りきれば広場の隅っこに出るらしい。そこを真っ直ぐ突っ切れば、下山する道に辿り着けるとのこと。

その間に性行為をしているポケモン達が何かの拍子でこちらを見ない事を祈りつつ、可及的静かに通り抜けなければならない。

アブソル「だいぶ離れてはいるけど、草木も無いし、こっちを向かれたらそれで終わり。こんな道だもの、慌てて降りれば足を滑らせる事は目に見えてるわ」

ミミロップ「大丈夫かな……」

アブソル「祈るしかないわね」

大分癒えてきたとはいえ、ミミロップもアブソルも手負いの状態。走ることはおろか、物音を立てずに移動することさえ難しいかもしれない。

アブソル「準備はいい? もう、行くわよ」

ミミロップ「うん……」

先頭はアブソルが歩いてくれるようだ。道を見失う事はなさそうだが、それでも見つかってしまった時の事を考えると落ち着いてはいられない。

アブソル「……今よ」

広場の様子を窺っていたアブソルは、小さな掛け声と共に広場の隅へと身体を乗り出した。それに続き、ミミロップも山を登りきる。

ミミロップ「あ……」

ふと広場の方を見れば、エネコロロが甘い声を漏らしながら複数の♂の欲望を全身で受け止めていた。

足を止めそうになり、慌てて首を振る。今は見つからないよう向こう側にたどり着くことだけを考えなくてはと、心を鬼にして、次の一歩を踏み出した。
 ▼ 729 ョンチー@ガルーラナイト 18/11/14 00:30:34 ID:f9pgfUQU [6/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
一歩、また一歩と歩みを重ねていく二匹。誰かそのうちこちらの方を向くのではないかと気が気ではない。

特に、♂が精を放った後などは注意が必要だ。性行為に夢中になっている時は周囲のことなど気にも留めないだろうが、一旦区切りついてしまえばその瞬間から切り替わるのが♂。

プロラクチンの働きにより♂にはいわゆる賢者タイムが訪れるわけだが、俗説によれば♂は性行為後すぐに周囲が警戒できるようこのホルモンが分泌されると言われている。

そのため、賢者タイムを迎えた♂が周囲を見回し、ミミロップ達を見つけてしまうという可能性も充分考えられる。

ミミロップにそういった知識はないため細かい事はわからないが、アブソルはこの点について一番の心配を募らせていた。

何せ、連中は惜しむ事無く欲望をターゲットにぶつけている。そういう体質なのか彼らは一回の機会に何度も射精を行う事ができるため、その度に見つかってしまう可能性があるのだ。

エネコロロ「あうぅ、う、う、ふ、ふかいよぉ……」

♂ポケモン「まだまだ感度良好だな、この淫乱猫が!」

エネコロロ「んひぃぃぃいい」

途切れる事無く聞こえてくる、淫楽の声。まだ、気づかれている様子はなさそうだ。

足取りは遅いものの、特に危なげなく歩く事ができている二匹。この調子なら、誰かに見つかる事もなくなんとか下山できそうな隘路まで辿り着く事ができるのではないだろうか。

声「おい、お前ら」

しかし、事態はそう優しいものではない。突然後ろから声をかけられ、心臓が止まるかと思うほど驚くことになった。
 ▼ 730 ツボット@やすうりポン 18/11/14 20:34:12 ID:WxqAAJGE NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
しえん
 ▼ 731 サキント@タウンマップ 18/11/17 00:14:58 ID:Ab1g0QxA NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 732 アームド@クラボのみ 18/11/18 18:41:47 ID:jbYAf.W2 NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
続きが楽しみです
 ▼ 733 ハコモリ@いいつりざお 18/11/21 16:40:00 ID:pf9kUKs2 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 734 ンムー@やけたきのみ 18/11/24 00:00:47 ID:ercwXntA NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援!
 ▼ 735 ブキジカ@エスパーZ 18/11/24 03:16:03 ID:nrJsn/RY [1/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


動きを止める二匹。暫くその状態のまま固まってしまい、振り向くことさえできない。

見つかってしまったのか、もう助からないのか、これから散々なことをされてしまうのか……色んな思いがほんの数秒の間にぐるぐると何度も頭の中で木霊する。

???「騒ぐんじゃない。とにかく、前へ進め」

張り詰めた声で前進を促される。

人間で言う所の、銃を突きつけられ歩けと命令されるような感覚。ミミロップもアブソルもその声に逆らうことができず、言われた通り静かに歩き出す。

全身が恐怖に震え声をあげてしまいそうになるのを何とか我慢し、二匹は少しずつ広場を抜けていく。

まるで死刑台への道を歩かされているような気分。二匹とも、これからどうなってしまうのかと気が気ではない。こういう時に限って、長く感じられた道のりがとても短く感じてしまう。

広場の隅っこを通り抜ければ、そこで自分たちは捕まるのだろう。殺されてしまうのか、その場で犯されてしまうのか、どこかへ連れて行かれ輪姦(まわ)されてしまうのか……

やがて岩場の下山路まで辿り着いた頃、後ろにいる声の主はどんと軽くミミロップの背中を押した。

ミミロップ「きゃっ」

アブソルにさえ聞こえるかどうかわからない程か細い声が漏れる。そして反射的に、ミミロップは後ろを振り向いた。

ミミロップ「あ、あなたは!」

グラエナ「よう、お前ら無事だったのか」

アブソル「え……? グラエナ?……あなたも、無事に逃げてたのね」

果たして、そこに立っていたのはグラエナだった。

彼も島を出るために逃走経路を考えてこの道を選んだのだろう、いつの間にかミミロップ達に追いついてきたらしい。

彼の登場に安堵する二匹。この状況、若干隠密行動が難しくなるも、気持ちの上では一匹でも多く仲間がいる方が安心できる。

グラエナ「再会を祝うのはもうちょい後だ。とりあえず、この岩山を降りるぞ」
 ▼ 736 ロアーク@ライブスーツ 18/11/24 03:16:55 ID:nrJsn/RY [2/19] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告



登るときはあれほど苦労した岩山も、下山に苦労する事はほとんどなかった。

天候が回復したこともあるが、それ以上に、下山路は道幅もそれなりに広く落下する危険もあまりなさそうだったため、順調に麓まで降りる事ができた。

毒草に覆われ険しい足場しか存在しないこの周辺には育て屋連中も近寄らないのだろう、辺りに見張りなど他のポケモンの姿は見当たらない。

グラエナ「この辺なら大丈夫か……」

アブソル「そうね。ここまで来れば毒草も少ないし、ちょっと落ち着けそう」

ミミロップ「ふぅ……やっと、休めるのね……」

張り詰めていた空気が少しずつ緩んでいく。

一刻も早くこの島を出たいところではあるが、負傷した状態で足場の悪い道を歩き続けたのだ、多少は休息を取らなければ結果として逃亡に時間がかかってしまうことだろう。

グラエナ「さて……早速本題だが、島を出る道は知ってるのか?」

アブソル「おぼろげだけど、私が知ってるわ」

グラエナ「ほう」

グラエナにも事情をかいつまんで話す。アブソルの境遇にグラエナも驚きの表情を浮かべていたが、最後には「辛かったんだな」と何度も小さく頷いていた。

ミミロップ「グラエナは、どうしてたの?」

グラエナ「俺は……あの時、俺だけ少し奥の木の実を採りに行ったとき、実はオノノクスの気配を感じてたんだ」

ミミロップ「やっぱりそうだったの」

グラエナ「ああ。あのままだと遭遇しそうだったんで、さりげなくやつを誘導することにした。最初はうまくいってたんだけど、霧が深すぎて途中で迷ってな……まぁ木の実は逃したが、玉が残ってたから空腹はなんとかなった。おかげで、ここまで逃げて来れたってわけだ」

あの時はミミロップ達も立ちこめる霧のせいでそれぞれがはぐれてしまった。エネコロロとははぐれ、オノノクスと遭遇し大怪我を負わされてしまった。

アブソル「お互い逃げ切れてよかったけど、その……」

アブソルは言葉を途中で濁してしまう。

三匹はなんとかこうして集まることができたが、エネコロロは相手の罠にかかってしまい助け出す事も難しい。彼女と仲良くしていたグラエナには特に辛い事実だろう。そう思うと、その先を言葉にするのは躊躇われた。
 ▼ 737 マカジ@ヒコウZ 18/11/24 03:17:25 ID:nrJsn/RY [3/19] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
グラエナ「……とにかく、島を出よう。道を案内してくれ」

アブソル「……そうね」

後ろ髪を引かれるような思いはあれど、もう自分たちを優先することしか彼女達にはできない。無事逃げ延びるためには、後戻りなど赦されない。

もう一度、心の中で謝るミミロップ。アブソルもそうしていたのだろう、ミミロップが顔を上げたタイミングでアブソルは今後について話し始めた。

アブソル「経路としては、ここを突っ切って行けば川に出るわ。それを海に向けて辿れば、本土と島を結ぶ浅瀬に出られるはずよ」

グラエナ「敵はいないのか?」

アブソル「私の記憶通りであればだけど、海の方に出るまで誰もいないはず」

ミミロップ「川にも誰もいない?」

アブソル「探しに来てたらわからないけど……こっちの方面は基本的に誰もいないし、罠もないはずよ」

グラエナ「とにかく、行ってみないとわからねぇな。先頭歩いて様子を見るから、何か気づいたことあれば教えてくれ」

アブソル「助かるわ」

流石は♂といったところだろうか。彼は意気込みを新たに、しっかりとした足取りで彼女達の前を歩き始めた。

アブソル「なんとか、なりそうね」

ミミロップ「うん。グラエナと合流できてよかった」

現状、これほど心強い味方はいない。ミミロップとアブソルは前を歩いてくれるグラエナに感謝して、その代わり周囲の物音や気配に集中することにした。
 ▼ 738 ルチャイ@かおるキノコ 18/11/24 03:17:57 ID:nrJsn/RY [4/19] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告




鬱蒼とした森を歩く三匹。

やはりこの辺りには誰も立ち寄らないのか、他のポケモンの気配さえ感じることはない。育て屋連中としても、森全体を敷地内としているわけではないのかもしれない。

ミミロップ「寒いわね……」

アブソル「そうね……」

両手で自分を抱くようにして歩くミミロップ。

いつからか再び降り出した小雨が、まるで彼女達をこの森から逃がすまいと敵対しているようにさえ思えてならない。

本来であれば天の恵みと言える、雨。この雨を、彼女たちは何度恨めしいと思ったことだろう。

アブソル「……川が見えてこないわね」

グラエナ「……そうだな」

岩山を降りてから、随分と歩いた気がする。

もうかれこれ一時間は森を彷徨っているのではないだろうか。アブソルの記憶では、岩山から川まではそう遠くないはずだった。

ミミロップ「まさか……迷ってる?」

誰もが思い始めていたことを口にするミミロップ。

そしてそれに対する答えはなく、答えないことこそ肯定の意に他ならない。

何より、ミミロップは耳が良い。もし川が近くにあるならばせせらぎの音が聞こえてくるはずだ、少なくとも目的としている地点に近づけていない事は確かだった。

ミミロップ「(……あれ?)」

ふと、違和感を覚え、立ち止まる。

アブソル「……? どうしたの?」

ミミロップ「あ、いや……」

自分でも、何が引っかかったのかよくわからず言葉にできない。

ただ漠然と、何か変だ、とそう思った。
 ▼ 739 ラキオン@デルダマ 18/11/24 03:18:34 ID:nrJsn/RY [5/19] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
グラエナ「……変わった場所に出たぞ」

と、先頭をずんずん歩いていたグラエナが立ち止まる。

ミミロップ「え、ここって……」

何事かと見てみれば、見覚えのある光景が彼女達の目に飛び込んできた。

それは、白い柵。彼女達が出口を求めて彷徨い始めた頃に見つけた、違和感だらけの人工物。草原地帯を取り囲んでいる様子、雨に濡れてもなお漂う血と何かの臭い、彼女達が一度通った場所に違いないようだ。

アブソル「嘘でしょ……」

つまりは、戻ってきてしまったということ。

海の方に向けて歩いているはずが、いつの間にか再び森の奥の方へと歩いていたのだ。

アブソル「戻らなきゃ……」

グラエナ「おい待てって。引き返すつもりか?」

アブソル「ここは森の奥の方だもの、完全に道を間違ってるわ」

グラエナ「間違ってるったって、引き返しても仕方ないと思うぞ」

アブソルがそう訴えかけるも、グラエナは怪訝な表情を浮かべるばかり。

彼の言うように、来た道を戻ったとして岩山の麓まで辿り着くとは限らない。ここから更に迷ってしまう可能性も充分に考えられる。川を目指して歩いていたつもりがここまで来てしまったのだ、引き返しているつもりがより奥の方へと歩いてしまうかもしれない。

ミミロップ「…………」

試しに後ろを振り返ってみるミミロップ。

彼女の視界には鬱蒼とした森が広がるばかりで、どの辺りからここまで歩いてきたか全くわからない。そもそも道無き道を歩いてきている以上、どこをどう歩けば真っ直ぐ歩いたことになるのかさえ定かではないのだ。

仮に引き返すことにしたとして、ならば今視界に映っているどの木の横を通って来たのかと訊かれても正確な返答をする事はできない。
 ▼ 740 タッコ@ギンガだんのカギ 18/11/24 03:19:11 ID:nrJsn/RY [6/19] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
アブソル「だけどここが川の近くじゃない事は確かよ」

グラエナ「だからって無闇に歩くのはだな」

アブソルとグラエナは意見が対立してしまったようで、ミミロップをよそに言い合いが始まっている。

戻ろうにも戻る事ができるかわからない状況。ミミロップはどちらの意見に加担する事もできず、ただおろおろと二匹のやり取りに困った表情を浮かべるばかり。

ミミロップ「(あの時、どっちに行ったっけ……)」

ミミロップ達がここへ初めて来たとき、柵の中へは入らず迂回して進むことにした。そこから少し歩いて白い玉を見つけた岩場に辿り着き、そこでグラエナたちと出会った。

ミミロップ「(それって、もしかして……)」

嫌な予感が徐々に現実味を帯びて実体化していくのを感じる。

もし、玉を見つけた岩場の裏側がさっき通った険しい岩山だとしたら、彼女たちは岩山を挟んでぐるりと一回りしただけということになる。

ミミロップ「(……?)」

しかし、その結論に至りかけるも、ミミロップは小首をかしげることになった。

仮に岩山の周りをぐるぐる回っているとしても、この岩山はかなり高く広い。一回りするだけでも相当歩かなければならないはずで、結果として同じ場所に戻ってしまったとはいえ、それは何か外的要因を理由に強いられた事ではない。

早い話が、この場所はそもそも海に続く川の近くだったというだけの話。そう思えば、この場所はそもそも森の奥などではないのかもしれない。

では、ミミロップが覚えた違和感の正体は何なのだろう?

ミミロップ「(何があったんだっけ……)」

柵を見つけ、警戒して迂回し、岩場に辿り着き、白い玉を見つけ、グラエナ達と出会い、休息をとり、木の実畑に向けて歩き出し……

ミミロップ「あっ」

そのとき、くぅ、とミミロップの可愛らしいお腹が鳴った。

頬を赤らめアブソルとグラエナを見るも、彼女達はまだ言い合いを続けていてミミロップの恥じらいなど気づきもしていない様子。

いらぬ心配をしたことでなんだかより恥ずかしくなり、ミミロップはぎゅっと自分のお腹を両手で抱いた。
 ▼ 741 ンダース@いいキズぐすり 18/11/24 03:20:06 ID:nrJsn/RY [7/19] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
木の実畑でつまみ食いしたとはいえ、あの時集めた木の実は全て落としてしまった。そのとき以来何も口にしていないため、寒さに加え再び空腹が彼女を襲い始めている。この調子では、出口に辿り着く前に餓死してしまうかもしれない。

そうなると、何か食料を探す必要がある。何かといっても木の実か白い玉くらいしか食べられそうなものはなく、玉は有害である事がわかったため空腹を満たすならもう一度オノノクスがいるであろう木の実畑まで行かなければならない。

ミミロップ「(行くしかないか……提案しようかな?)」

鳴き声を発するほど、自分のお腹はすいている。一度は食料の確保を行わなければ、怪我が回復しようとも満足に走ることはできないかもしれない。

更に考えれば、玉を食べていたグラエナはまだしも、つまみ食いすらしていないアブソルはいよいよ空腹に耐えられなくなってきているのではないだろうか。

ミミロップ「(……あれ?)」

ふと、何かが再び引っかかった。

近い。先ほど感じていた違和感より強いものを感じる。

ミミロップ「(玉を……食べていた?)」

点が線になる感覚。そこではっきりと、彼女は違和感の正体を感じ取った。

ミミロップとアブソルは空腹に耐えながらも、木の実畑まで何も口にする事はなかった。しかし、グラエナとエネコロロは森で見つけた白い玉を食べることで空腹を幾らか満たしていた。

しかし、その玉は有害なもの。催淫剤がふんだんに含まれていて、口に入れれば淫楽に溺れずにはいられなくなってしまう。

だからあの時、岩場で休息を取っていた際、グラエナとエネコロロは性行為に耽っていたのだ。今にして思えば彼らの行動は理性的なものではなく、催淫剤によって誘発されていたものだったとわかる。

ならばなぜ、玉を食べ続けていたグラエナは、今こうして平気な顔をしていられるのだろう?

アブソルは、あの玉を食べ続ければ脳が侵食され性的快楽のことしか考えられなくなってしまうと言っていた。となると、エネコロロと同じようにグラエナも症状がかなり進行しているはずだ。

効力は直後のみなのか? 一度でも発散してしまえば治まるのか? 輪姦されていたエネコロロはその際により多くの玉を食べさせられていたのか? そもそも♀にしか効果が無いものなのか?

わからない。だが少なくとも、ここにいるグラエナは至って正常、迫り来る淫楽の波に耐えているようには見えない。

ミミロップ「…………」

色んな思考がぐるぐると頭の中を駆け巡る。

ミミロップは深呼吸をして気を落ち着けた後、まだ言い合いをしている二匹を……険しい顔をして反論しているグラエナを見た。
 ▼ 742 ネッコ@ねばねばこやし 18/11/24 03:20:35 ID:nrJsn/RY [8/19] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
状況はわからない。だが、確かめなくてはならない。

自分の勝手な思い込みかもしれない、的外れな違和感かもしれない。だがそれでもと、ミミロップは口を開いた。

ミミロップ「ねえ」

アブソル「うん?」

グラエナ「なんだよ」

ミミロップ「私、おなかすいちゃった……」

アブソル「それは、私もだけど……でも、食べるものなんて何もないわ」

グラエナ「お前らなぁ……素直にこれ食べろよ。餓死は免れるぞ」

ころん、とどこから出したのかグラエナは玉の欠片を地面に転がした。

疑惑が確信に変わっていく。

ミミロップ「……それは食べたくない」

グラエナ「はぁ? この状況でそんな事言ってる場合か? 死ぬかもしれないんだぞ」

ミミロップ「だってそれ、毒だし」

グラエナ「毒だって? 何でそうなるんだよ。じゃあこれ食べてる俺はなんで生きてるんだよ」

苛立ちを隠しきれず、グラエナはぐるぐる唸りながらミミロップに反論する。その表情に気圧されそうになりながらも、ここが正念場とミミロップはぐっと堪え、グラエナを睨み返した。

アブソル「……それ、ずっと食べてるって言ったわね」

グラエナ「あ? そりゃな、オノノクスの所へ行くなんてごめんだし」

アブソル「そう……」

そして、アブソルも違和感に気づいたようだ。

♂には効かないのかもしれない、本当にただ何も知らないだけかもしれない。色々疑問は残れど、この状況、彼への疑念がぬぐいきれないものとなった。

アブソル「あなたはその玉を、私達に食べさせたいの?」
 ▼ 743 ターミー@ドリのみ 18/11/24 03:21:03 ID:nrJsn/RY [9/19] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
雷鳴が轟く。

稲光を背に受け、グラエナの表情がはっきりと照らされる。

グラエナ「…………」

彼の口角は、不自然な程大きくつりあがっていた。

グラエナ「疲れた」

アブソル「は? きゃっ!!」

ミミロップ「!」

べしゃっと音を立て、アブソルが地に転がる。

グラエナ「あー疲れた疲れた。やっぱ疲れるわぁ、こういうの」

アブソル「あっ、ぐ、や、やめて……」

グラエナ「本当に小賢しい、気持ち悪い、虫唾が走る、汚らしいだけの下等生物が!!」

グラエナはアブソルを強く押し倒し、前足で身体を殴打し始めた。無抵抗に倒れこむアブソルへ何度も何度も前足をぶつけ、痛々しい傷を残していく。

ミミロップ「やめなさい!」

グラエナ「うるさい!!」

止めに入るも、大きく振り上げた彼の右前足に顔を殴られ、ミミロップも地面に倒れてしまう。

ミミロップ「え……?」

すぐに立ち上がる事ができずせめてと彼を睨みつけるも、そこに映るあまりにおぞましい光景にミミロップは言葉を失ってしまった。

アブソルにのしかかり、罵詈雑言と共に彼女の身体や顔を何度も殴打するグラエナ。

彼は二本足で立っていて、頭からは真っ赤な毛が生え地面にまで伸びていた。
 ▼ 744 ルバット@ゴールドスプレー 18/11/24 03:21:49 ID:nrJsn/RY [10/19] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ミミロップ「ぐ、グラエナ……?」

グラエナ?「はぁ? まだあたしがあんな屑犬だと思ってるわけ? おい糞兎、お前から淫獣共の肉便器にしてやろうか」

アブソル「あぐっ」

突如本性を表したグラエナではない何者かはアブソルの角を持ち地面へ叩きつける。そして彼女に興味を失ったように立ち上がり、尻餅をつくミミロップの前にやってきた。

グラエナ?「二足歩行するし、あんたは幅広い層に高く売れるかもねぇ。ちょっと股開いてみなよ」

ミミロップ「あっ、や、やめ」

ミミロップの両足を掴み、開脚させにかかる何者か。開かせまいと抵抗はするものの、怪我をした足には力がほとんど入らないうえ、相手の力はかなり強い。

抵抗は不可能と判断した彼女は、右手で泥水を掬い上げ相手の顔めがけてぶつけてやった。

言葉も無くそれを顔面で受け止める相手。しかし思わぬ反撃だったのか両手の動きを止め、心底不機嫌そうな顔をしてミミロップを睨みつけた。

グラエナ?「あーあしらけたしらけた。あたしこういう♀大嫌いだわ。空気くらい読めよ、な!!」

ミミロップ「っ、か、は……」

相手のポケモンは掴んでいた足を放り、今度は腹部に強烈な一撃をお見舞いする。

すっぱいものがこみ上げてくる感覚に顔をしかめるミミロップ。堪えきれずそれを口外へぶちまけてしまい、ぽろぽろと涙がこぼれてきた。

それを見て再び口角を吊り上げる何者か。ミミロップが苦しんでいる様子を見る事ができたからだろうか、先ほどまでは苛立ちを露にしていた表情も、今では満足そうに笑みが浮かんでいる。

グラエナ?「ふう……たまにはあたしが遊ぶのもいいと思ったけど、やっぱり退屈だわぁ。もういいや、さっさとレイプされてしまいなさい」

何者かはアブソルとミミロップの片足を持ち、柵の中へ引きずり込んでいく。

グラエナ?「あんた達と合流したのも、ここに連れてきたかったからなのよ。ほんとは最初会った時に玉食べさせてつれて来たかったけど……泳がせるのも面白いと思ってね?」

アブソル「ああああああ!!!!」

相手のポケモンは何でもないような顔をしてアブソルを地面に放り投げ、右後足に乗ってじわりじわりと体重をかけていく。

やがて重さに耐えられなくなった足の骨が悲鳴をあげ、鈍い音と共に可動域を大きく超えて曲がってしまった。
 ▼ 745 デンネ@ハバンのみ 18/11/24 03:22:29 ID:nrJsn/RY [11/19] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
グラエナ?「おなかすいたでしょう? 力が出ないでしょう? 白い玉も、オノノクスのいる木の実畑も、全部誘導できるように設置してるのよ? 人間もポケモンも、食べないと死ぬからね。本能には逆らえないからね」

何者かは彼女達の手足を、地面に生えている草で縛り付けていく。丈夫な草なのか専用に作られたものなのか簡単に解けることはなさそうで、完全に身動きを封じられてしまった。

グラエナ?「ふう。これで目的の一部は達成したし……れじゃ、後は無様に慰み者になっててね」

アブソル「こ、この、化け狐……」

グラエナ?「へぇ……あたしの事知ってたんだ。会った事は無いはずなんだけどねぇ……ふん!」

アブソル「っぐぎぎっ!!」

立ち去る素振りを見せていた何者かは急に踵を返し、流れるような動作でアブソルの左後足を折り曲げ、勢いに任せて骨を折る。

アブソルはまだ何かを言いたいようだったが、あまりの激痛に声が出なくなり白目を向いてしまった。

グラエナ?「どの道あんたは今回で『苗床』よ。大人しく夜空の星でも数えてなさい」

そして、今度こそ歩き出し、去って行く。ミミロップはそれを、恐怖しながらただ見ていることしかできなかった。

強い雨が二匹の身体を激しく打ち付ける。

大怪我を負わされ、地面に縛り付けられ、ただいつ来るともわからない♂の集団に怯えながら死を待つだけの時間。

もう、自分たちに残された時間は長くない。地獄を見るまで、もしかしたら生命が終焉を迎えるまで、もう幾許も無いのかもしれない。

アブソル「…………ミミロップ」

だけど、どうしてだろう。彼女は、アブソルは、力強くミミロップの名前を呼んだ。

アブソル「シンオウは……とても、寒いのよ、ね……」

ミミロップ「……そうね。初めて来るなら、すごく、すごく驚くと思う」

アブソル「ふふ……そっか……」

彼女はまだ、こんな状況でも、シンオウの地に立つことを夢見ているのか。生きることに希望の炎を燃やし、まだ見ぬ未来へ期待を膨らませているのか。

だが、それは少しだけ違っていた。
 ▼ 746 バゴーラ@まがったスプーン 18/11/24 03:23:11 ID:nrJsn/RY [12/19] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
アブソル「……動かないで、ね」

ミミロップ「えっ……?」

鋭い音が鳴り響く。

アブソルの繰り出したサイコカッターが、ミミロップを束縛していた草を切り裂いた。

身体の自由が利くようになり、すぐさまアブソルの所へ駆け寄る。そして彼女を縛り付けている草を解きにかかった。

アブソル「ねえ……お願いが、あるの」

ミミロップ「なに……?」

どんな風に結び付けられているのだろうか、アブソルを縛る草は硬く、雨に濡れるミミロップの手では解けそうにない。

アブソル「私を……シンオウに、連れてって」

ミミロップ「なに言ってるの。最初からそういう約束になってたでしょ、何を今更……」

アブソル「ううん、違う、違うの。そうじゃない」

ミミロップ「違うって、何が……」

アブソルは痛みに頬を痙攣させながらも、両の目でしっかりとミミロップを見た。

アブソル「私はもう、逃げられない……後足は動かないし、血も沢山流しすぎてる……意識だって、もう、薄れてきてる……」

ミミロップ「何言ってんのよ。歩けないなら、私がおぶってでも連れていくから、だから」

そのとき、森のどこかで何かの鳴き声が響いた。この雨でも聞こえるくらいだ、そう遠くからというわけでもないだろう。

アブソル「ここから海までは、まだまだ遠い……敵のいる近くを、通ったりも、しないといけなくなるわ……」

ミミロップ「そうだけど、今までもそうだったじゃない」

アブソル「もう、時間がないの……ここからは、できるだけ万全の状態でしか、逃げることなんて、できない、っぐ、ごほっ、ごほっ……」

アブソルの口から赤いものが吐き出される。殴打された時に内臓が破裂したのかもしれない。
 ▼ 747 パー@スターのみ 18/11/24 03:23:51 ID:nrJsn/RY [13/19] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
アブソル「わかるでしょ……? ここから、逃げ延びるには……もう、あなただけで、行くしかないの……」

ミミロップ「そんなの……そんなのダメ! シンオウ行くんでしょ? 雪、見てみたいんでしょ? だったら、だったら……ああもう、解けてよ! なんで解けないのよ、解けてよ!!」

あまりに硬く結ばれている草の枷。結び目を探し解くのを諦めた彼女は、指や爪で何度も草を掻き毟る。

皮が切れ、爪がはがれても、彼女は手を止めない。

アブソル「シンオウには……行くつもり、よ……ほんの数日前にできた夢だけど、雪はまぁ、もう見れなくても仕方ないけど……それでも、そうしたいと強く、思ったもの……」

ミミロップ「意味わかんないよ……行くなら、一緒に逃げなきゃ……逃げ」

アブソル「ねえ、ミミロップ……お腹、すいてるでしょ?」

ミミロップの言葉を遮って、アブソルは彼女に声をかけた。そして、より強く、ミミロップをしっかり見つめる。

想いを視線に乗せるように、自らの意思を認めてくれと頼み込むように。強く、強く。

彼女が何を言おうとしているか察するミミロップ。途端に、顔が青ざめていくのが自分でもわかる。

ミミロップ「……い、いや、そんなのだめ、一緒に、隣で一緒じゃないと」

アブソル「自分で、わかるの……私は、もうすぐ……死んでしまう……だから」

ミミロップ「だったら私も、私もここで、一緒に……」

ぽろぽろと、水滴がアブソルの身体に零れ落ちる。

冷たい雨とは違う、温かい涙。アブソルは自分のために泣いてくれる彼女に柔らかな笑みを浮かべ、そして再び強い視線を彼女に向ける。

アブソル「短い間だったけど……こんな変な場所で、変な出会いからだったけど……私、あなたに会えて、本当に良かった……ありがとう」

ミミロップ「うっ、ううう……」

アブソル「だから、お願い。雪の事までは、忘れてくれてもかまわないから……私を、シンオウに、連れてって……」
 ▼ 748 ジョッチ@きちょうなホネ 18/11/24 03:24:17 ID:nrJsn/RY [14/19] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告





それからすぐに、アブソルは眠ってしまったわ。

さっきまで話してたのに、それがまるで全部嘘だったみたいに、アブソルは動かなくなってしまった……




何故、どうしてこうなるの?

こんな運命に、誰がしたっていうの?

彼女に、雪が本当に白い事を実際に見せてあげたかった。

彼女に、雪が本当に冷たい事を感じさせてあげたかった。

全てを諦めかけていた彼女に、頑張って生きようと思いなおした彼女に、私はお礼がしたかった。

ただ、生きたい。普通に生きたい。本当にそれだけだったのに……


ポケモンの一生なんて、本当に不公平だ。

だけど、いくら恵まれなかったといったって、こんな仕打ちってないよ……


でも、もう泣かない。貴女との約束、無駄にしない。

ただ、貴女は忘れてと言ったけど、その約束だけは守れないわ。

いつかね、故郷に戻って、本物の雪を見せてあげる。

これは、私からの約束よ?
 ▼ 749 メイル@リピートボール 18/11/24 03:25:04 ID:nrJsn/RY [15/19] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告




――――――――
―――――
―――

ミミロップ「……彼女の肉を食べたおかげで、私は元気を取り戻したわ。足はまだ痛んだけど、逃げるには充分なほど回復できたの」

ルカリオ「それで、ポケモンを食べたことあるって……」

ミミロップ「うん……森を抜けて川を下って海に出て……必死に、逃げて逃げて……それでね。浅瀬を逃げてる途中で、本土の方から人間がやってきたの」

ルカリオ「えっ」

思わぬ登場人物にルカリオは表情を強張らせる。

だがミミロップはくすりと笑ってみせ、ルカリオの手に自分の手を重ねた。

ミミロップ「その人間は……よくわからないけど、良い人間だったの。エンブオー一匹連れて海を渡ってて、私は彼女に保護された……」

ルカリオ「なんだ、良かった」

ミミロップ「その後本土のポケモンセンターに預けられて、治療に専念したわ。一ヶ月くらい入院してたんじゃないかしら」

ルカリオ「それで足が治ってるのか」

野生のポケモンにとっては複雑な話でもあるが、やはり専門の人間による治療が一番効果的だ。自然治癒ではどうにもならない怪我であっても、ポケモンセンターなら治療ができるかもしれない。少なくともミミロップの怪我については、人間のおかげで完治したといえよう。

ミミロップ「後で知ったことなんだけど、私を助けてくれた人間がその島の育て屋を壊滅させてくれたみたい。なんでも、エンブオー一匹であそこにいたポケモン全部倒しちゃったみたいよ?」

ルカリオ「とんでもないコンビがいたもんだな……」

ミミロップ「まぁ、退院した後は逃がしてもらえたからその先どうなったのかはわからないけど……」

ルカリオ「復讐、とは違うけど、カタはついた感じか」

ミミロップ「そうね」

ミミロップにしてみれば、複雑な思いを抱かずにはいられない。

その人間がもう少し早く来てくれていれば、復讐を自分の手で行う事ができれば、そもそももっと自分に力があったなら……

ミミロップ「その後私は真っ先にシンオウに帰ったの。それで、雪を見に行った……ハクタイでもよかったけど、どうせだからキッサキシティに行ったわ」

ルカリオ「おお、雪を見るには一番良い場所だ」

ミミロップ「うん。そこのね、小さな丘の上で、じーっと、雪を見たわ。じっと、じーっと……」
 ▼ 750 ガアブソル@ヒコウZ 18/11/24 03:25:35 ID:nrJsn/RY [16/19] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告





アブソル『わぁ……本当にすごい雪ね……思ってたより寒いし、冷たいし、ふわっふわ』

ミミロップ『ふわふわかなぁ。踏んだら潰れるのは確かだけど』

アブソル『それに、やっぱり不思議。雪って触ると解けてしまうのに、どうしてこんなに積もるのかしら』

ミミロップ『寒いからでしょ?』

アブソル『そうだけど、ひとつひとつはこんなに小さいのに、解ける前に積もるって事でしょ?』

ミミロップ『そう、なのかな?』

アブソル『沢山積もったらこんなに白くなるのね……寝転がったらどうなるのかしら、えいっ』

ミミロップ『あ、ちょ』

アブソル『冷たいー! こっ、これ思った以上に、冷たいし、寒く、なる……』

ミミロップ『当たり前でしょ……はぁ、あなたって思った以上にはしゃいだりするのね。意外だわ』

アブソル『私だって、それなりにこういう感情を持ち合わせてはいるわ。ただ、あまり出す機会がないだけで……』

ミミロップ『ふふっ、そうなの。でも……私がホウエンに行ったら、同じような反応するのかも』

アブソル『あっちは温暖な気候だから、そう驚くことはないと思うけど』

ミミロップ『暑い暑い唸ってるかもよ?』

アブソル『あー、それは、うん、あるのかもしれないわね』

ミミロップ『む、そう返されると意地でも我慢したくなるわねぇ……ふふ』

アブソル『ふふ、その時が楽しみね』

ミミロップ『そうね〜。ほんとに、本当に……』




 ▼ 751 ッスグマ@ニニクのみ 18/11/24 03:26:00 ID:nrJsn/RY [17/19] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告




もしかしたら、辿り着いていたかもしれない未来。

アブソルと共に、それぞれの故郷で自然を肌に感じ、お互いに感覚の違いを言って笑い合う。

そんな、なんでもない日常の、ほんの小さな幸せを噛み締める時間。


だけど、もし赦されるのなら、少しだけでも願いを叶えてもらえるのなら……

夢ででもかまわない。

こんな穏やかな日を、アブソルと共に過ごしたい。

何かに怯える必要も無い世界で、ただ当たり前の事に驚いたり、笑ったり、悩んだり。

そんな当たり前の日常を、あなたと共に味わいたい。


あれからね、私、強くなったの。

修行して身体を鍛えて、どんな事があっても負けないように、もう二度とあんなことにならないように、毎日必死に頑張ったの。私の中で見てきたから、知ってるでしょう?

あの時は守られてばかりの私だったけど……もしまた、夢の中でも会う事ができればそのときは……



 ▼ 752 ネネ@きのみ 18/11/24 03:27:02 ID:nrJsn/RY [18/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




ミミロップ「……あ、雪」

ルカリオ「うお、いつの間に……」

小ぶりになっていた雨はいつの間にか雪へと姿を変え、ハクタイの森を白く彩り始めていた。

日も暮れ気温が下がってきたのだろう、暖をとる段取りを始めた方がいいかもしれない。

ミミロップ「さ、長くなっちゃったわね。聞いてくれてありがと。だいぶ、気が楽になったわ」

ルカリオ「それならよかったけど……無理しちゃだめだよ?」

ミミロップ「大丈夫だって。今はもうあの時とは違うし、それになにより、ルカリオがいるでしょ?」

ルカリオ「おう! 何があったって、俺が何とかしてみせるぜ」

ミミロップ「ふふっ、まぁまぁ、心強いこと」

ルカリオ「なんで笑うかな〜」

ひとしきり談笑した後、彼らは薪に火をつけ夜を明かす準備をした。

やっと雨風を凌げる程度のそう広くない岩陰であるため、小さな焚き火でも問題なく夜を過ごす事ができそうだ。

そもそも彼らはシンオウ出身。寒い地での夜の過ごし方に困る事はないだろう。

ルカリオ「じゃあ、いつものように俺は半睡してるから」

ミミロップ「うん。ありがと」

ルカリオには、色々と訊きたい事や言いたい事もあるだろう。だが彼は何も言わず、いつも通り眠る支度をした。ミミロップは、今日ばかりは素直に甘えることにし、彼の腕の中で目を閉じる。

長い話で疲れたせいもあるだろう、ミミロップの意識はすぐにぼんやりとし始めた。

と、風も無いのに焚き火の炎がゆらりと揺れる。

『ふふ、ほんとに寒い……鬼火なら、少しは足しになるかしら?』

薄れゆく意識の中、ミミロップはそんな声を聞いた気がした。

いつからか降り出した雪はもう薄っすらと地面や木々に白い化粧を施し始めていたが、不思議と寒いと思うことはなく、むしろ暖かな心地に包まれて眠る事ができた。
 ▼ 753 バメ@エレクトロメモリ 18/11/24 16:42:55 ID:vRnYLQKU [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
もしかしてこれ書いた人だったりする?違ったらスルーして
http://pokemonbbs.com/sp/poke/read.cgi?no=824351
私怨
 ▼ 754 ーナンス@うみなりのスズ 18/11/24 19:53:52 ID:nrJsn/RY [19/19] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
>>753
私が書いたやつです
 ▼ 755 トウモリ@プラスパワー 18/11/24 23:35:31 ID:vRnYLQKU [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
イェーイ!当たったぜ!
あと余計な世話かもしれないけどトリつけた方がいいんでない?
 ▼ 756 ゲキ@プラスパワー 18/11/25 20:20:24 ID:1uE2A13M NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
>>755
余計なお世話だなんてとんでもない。ありがとうございます。

こだわっているわけではありませんが、私の中では必要性を特に感じていないのでつけておりません。
つける理由ができたときでいいかなと。
 ▼ 757 ロッパフ@リニアパス 18/11/26 03:18:02 ID:C78QxAuc [1/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



白く薄い霧がハクタイの森を包み込み、何とも幻想的な朝が彼らの前に姿を現す。

昨晩降った雪は積もる事無く静かに姿を消していったようだ。もしかしたら、昔を思い出したミミロップのために神様が降らせてくれたのかもしれない。そんな小さな奇跡くらい、あってもいいだろう。

さて、この森では早朝でも多くのポケモン達が日々の生活を忙しくしているのだが、ルカリオ達が一夜を過ごした近辺では物音はおろか、草木のざわめきさえ聞こえてこない。まるで自分たちだけがこの場所に存在することを赦されているような、そんな感覚。

ルカリオ「……?」

その妙な状況を感じ取ったのだろう、ルカリオは半睡から覚醒し、片目を開いて辺りの様子を窺った。

太陽が昇り始めているというのに薄暗い周囲。心なしか昨晩より気温が低いように感じられる。そして何より、立ち込める薄い霧が彼の気を引く。

ルカリオ「……マジか。まいったな」

普段の森ではあまり見られない光景、とても不気味で歪な状態。しかし彼には、現状への心当たりがあるようだった。

ルカリオ「ミミロップちゃん、起きて」

ミミロップ「……う、ん?」

昨日は話し疲れたのだろう、いつもと比べて目覚めの反応がやや鈍い。

だが、ルカリオの予想が正しければ、この状況、厄介な事態に巻き込まれつつある。ルカリオは申し訳ないと思いつつもミミロップの両肩を優しく掴み、しっかり起きるよう軽く揺らしてやる。

ルカリオ「ちょっとまずいことになったかも」

ミミロップ「まずいことって……?」

過去を思い出したせいで夢見が悪かったのだろうか、ミミロップはルカリオに言葉を返すもまだ寝惚け眼だ。

そんな彼女の表情にルカリオは思わず心臓を高鳴らせるも、首を振って煩悩をなんとか追いやり、ミミロップの目をしっかりと見る。

ルカリオ「霧だよ。ハクタイの森東部で、霧に囲まれた」

ミミロップ「霧……霧!?」

ミミロップは彼の言葉に周囲の不審な状態を感じ始めると、顔色を一変させルカリオを見る。ルカリオはそれに、頷いて答えて見せた。

ルカリオ「どうも、森の洋館が近いみたい」
 ▼ 758 ルビアル@メタグロスナイト 18/11/26 03:18:22 ID:C78QxAuc [2/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告





何故だ、何故こうなる。

こんな運命に、誰がしたんだ。

こんなつもりじゃ、こんなはずじゃなかったんだ。

俺はただ、真相が知りたかっただけだ。

本当にただそれだけだったのに、どうして、どうしてこんなことに……

もしかして、これが「ヤツ」の望んだことだったのか?

だとしたら、そのために、あいつは、あいつは……


でも、わかってる。

こんなことを続けても、どうにもならないこと。それであいつが戻ってくるわけじゃないこと。

それに、こんなやり方、きっと他の連中に迷惑がかかる。それは、本当に、申し訳ない……

それでも俺は、何かをせずにはいられないんだ。


できることなら、もう一度だけ、もう一度だけでいい。

あいつと一緒に、この森を歩きたいなぁ……





 ▼ 759 クラビス@ホエルコじょうろ 18/11/26 03:18:47 ID:C78QxAuc [3/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




薄っすらと霧の残る明け方の森を歩くルカリオとミミロップ。

できればミミロップに無理をさせたくないルカリオだが、状況に心中で舌を打ちながらも、彼女を守るようにして先頭を進み、移動を急ぐ。

ミミロップは怯えた様子を見せているわけではないが、昨晩の話で過去を思い出した事もあるのだろう、いつもより警戒を強くして足を踏み出している。

ルカリオ「ミミロップちゃん、大丈夫?」

ミミロップ「今のところは」

何より、この状況が彼女をそうさせていた。ルカリオはそれを察し、できるだけ彼女の体調の変化にすぐ気づけるようこまめに様子を確認している。

ルカリオ「くそ、やっぱり霧が濃くなってきやがった……」

薄かった霧も、彼らが歩みを進めるごとに深くなっていく。気がつけば、すぐ目の前さえ満足に見る事ができない程に濃く広がっていた。

ミミロップ「これってやっぱり……」

ルカリオ「ああ……洋館に誘われてしまったみたいだ」

ぎりっと歯を鳴らすルカリオ。

『ハクタイの森の洋館では、不思議な事が起きる』

シンオウ出身者ならおおよそ誰もが噂程度にでも知っている話。人間達の間では少し違う話として流れているようだが、ポケモン達の間ではこのように伝わっている事が多い。

時期によって起きる事が様々異なっているらしいのだが、その多くは淫楽関係のものだとルカリオは聞いている。ミミロップもその認識でいるらしく、過去の経験も相俟って、警戒心を強くせざるを得ないようだ。

ルカリオ「大丈夫、俺がついてる。絶対に俺が守るから」

ミミロップ「うん、ありがとう」

ぎゅっとルカリオの腕を抱くミミロップ。警戒を解くことまではしないが、彼のぬくもりを肌で感じ、気持ちはかなり落ち着いた。

ルカリオ「あ……」

できれば巻き込まれたくない……そう思う二匹の望みも空しく、彼らは噂になっている洋館に辿り着いてしまう。

深い霧に包まれ淡い朝日に照らされたその建物は、ただ見ているだけでも吸い込まれて自我を失ってしまいそうな程に不気味で恐怖を駆り立てるものだった。
 ▼ 760 ザンドラ@フリーズカセット 18/11/26 07:21:06 ID:5yxAOMs. NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 761 トベター@ファイトメモリ 18/11/28 00:31:53 ID:Cffs/zxA [1/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




ハクタイの森のどこかに建っているという、無人の洋館。人間達にとってはホラースポットであり、幽霊が出ると噂されている怖ろしい場所。しかしその正体の多くはゴーストポケモン達によるもので、人間の見ている恐怖はポケモン達にとっては取るに足らないものである事がほとんど。

だが、そのポケモン達でさえ恐怖に身を震えさせる何かがこの洋館では起きると言われている。

例えばある者は幻覚に惑わされ自ら命を絶ち、ある者は享楽の限りを尽くし気を狂わせ、ある者は怨念にとり憑かれ永遠に生死を彷徨う……内容は様々あれど、どれも洒落にならないものばかり。

そんな不思議な現象が起きるハクタイの森の洋館だが、誘われる時には必ず薄い霧に包まれるのだという。そのまま歩き続けていると霧が深くなっていき、どこをどう歩いても洋館に辿り着いてしまうらしい。

ルカリオ「できれば避けて通りたいけど……」

ミミロップ「またここに戻ってきちゃうのよね……」

噂通り霧に包まれ洋館へ辿り着いてしまったルカリオ達は、関わらないようにと洋館の前から移動してみるのだが、どういうわけかどこに向かって歩いても同じ場所に戻ってきてしまう。

各所で耳にしていた話と同様の現象に冷や汗を垂らす二匹だが、内心実はそう恐怖しているわけではない。というのも、彼らの住んでいる町にはゴーストタイプのポケモンも多く存在し、彼らと交流があるおかげでこの手の恐怖にはある程度慣れているのだ。

繰り返しになるが、森の洋館で起きる様々な現象はポケモンによるものと噂されている。相手がポケモンであれば、ルカリオ達が恐怖する事は何も無い。話が通じる相手ではない事もあるだろうが、ポケモン同士であれば会話がなくともバトルで決着できる。

ただ、問題があるとすれば……

ミミロップ「これ、中に入って元凶倒さないと抜け出せないってやつ?」

ルカリオ「たぶん……」

大会までまだ日があるとはいえ、もうそろそろトレーニング以外の事に時間を割きたくないというのが正直なところ。一筋縄ではいかないであろう事態に、苦い顔をするしかない。
 ▼ 762 ゲツケサル@ラッカのみ 18/11/28 00:32:14 ID:Cffs/zxA [2/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルカリオ「(……なんかむずむずする)」

この現象を引き起こしているポケモンと戦うのなら、さっさと洋館に入っていけばいい。そう思うのだが、それとは別に、ある感情がじわりじわりとルカリオの中でわきあがってきて、その存在を彼に知らしめつつあった。そしてそれはあっと言う間に彼の思考を侵蝕していき、今度は理性を奪いにかかっている。

ミミロップ「? どうしたの?」

ルカリオ「っ、な、なんでもないよ……」

笑って誤魔化すルカリオ。

だかそれを言う彼の頬はほんのり紅く高揚しており、心なしか吐息も熱く扇情的だ。表情もどこか悩ましく蕩けていて、一部を除いた身体中から力が僅かに抜けている。唯一力の抜けていない部分は反対に存在を強く主張しており、ぴくぴくと苦しそうに小さく跳ねていた。

何より、すぐ隣にいる最愛の妻ミミロップを見ると、どうしようもないくらいに気持ちが昂ってしまう……早い話が、彼は発情してしまっていた。

ミミロップ「何でもないようには見えないけど……」

ルカリオ「あっ、だ、だめ、触っちゃ」

ミミロップ「きゃっ!?」

不審な動きを見せるルカリオを心配し、ミミロップは彼の身体に身を寄せる。すると、ただそれだけでルカリオはびゅくびゅくと夥しい量の精を彼女の身体にぶちまけてしまった。

ルカリオ「ご、ごごごめん、俺も何がなんだかわからなくて……」

ミミロップ「…………」

いきなり精子の雨を浴びせられ、呆然とするミミロップ。この状況でこんなこと、流石に怒られるかと思ったが、先ほどまで冷静だった彼女の様子にも変化が見られた。

身体にかかった精子を手で掬い取り、恍惚とした表情でそれを眺めている……触発されてしまったようだ。
 ▼ 763 レセリア@チーゴのみ 18/11/28 00:32:45 ID:Cffs/zxA [3/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミミロップ「んちゅ、ぺろ……こんな状況だけど、でも……」

指についた精子を丁寧に舐め取り、濡れた目でルカリオを見る。

妖艶淫靡なその光景に、ルカリオは思わず生唾を呑み込んだ。

ルカリオ「で、でもこんなところ、誰が見てるかわからないよ……」

口ではそう言うものの、身体は行為を否定しない。ルカリオは両手をミミロップの背中に回し、抑え切れない感情を爆発させるように強く抱きしめる。

そもそも、先に欲望を爆発させてしまったのはルカリオの方だ。彼が何を言った所で説得力など皆無、増してやそのせいで同じように欲情し始めてしまった彼女を享楽無くして落ち着かせるなどできるはずもない。

ミミロップ「ふふ、まだ硬いね」

ルカリオ「んあっ」

ミミロップの指が、精を放出してもなお主張を続ける彼の肉棒に優しく触れる。それだけでルカリオは全身を震わせ、恍惚に甘い吐息を漏らした。

その反応がとても悦ばしく、ミミロップは得意げにぺろりと舌なめずりをして彼の逸物を握りゆっくりと上下させていく。

ルカリオのそれは精子と先走りでぬるぬるになっており、少し手を動かされるだけでもどかしい刺激に襲われる。ルカリオはそんな微弱な快感に悩ましげな表情を浮かべ、顎を上げて口をぱくぱくさせた。

時折、早く強い刺激が欲しいとばかりにミミロップを見るも、彼女は悪戯な笑みを浮かべるだけで願う通りにはしてくれない。

まるで、女王様とそのしもべ。修行に出てからはあまり行ってこなかった、普段の彼らが家でよく行う主従プレイ。ドSなミミロップとドMなルカリオの、狂おしい愛の形が今ここに展開されている。
 ▼ 764 ャオブー@バコウのみ 18/11/28 00:33:02 ID:Cffs/zxA [4/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミミロップ「どうしてほしい?」

ルカリオ「お、おちんちん、しごいて欲しいでしゅ……」

ミミロップ「ふふ……なら、もっとおねだりしてみなさい?」

ルカリオ「おちんちん、もっと弄ってくだしゃい、お願いしまふ!」

ミミロップ「どうしようかなぁ……」

くにくにと指先で淡い刺激だけを与え続けるミミロップ。彼女に触れられる度に逸物はぴくんと反応して見せるが、あまりに弱い刺激しか与えてもらえないため射精はおろか快感に身を委ねることさえ叶わない。かといって、自分から腰を突き出したり、彼女を取り押さえて快楽を貪ることはできない。

それはまるで、訓練された犬のよう。

ルカリオという忠犬は、ミミロップという主人に逆らう事などできるはずもないのだ。

ミミロップ「じゃあ、三回まわってワンって言ったら」

ルカリオ「わん!」

ルカリオはミミロップが言い終わるより早く、その場でぐるぐる回って声高らかにそう叫んだ。

あまりの忠誠ぶりに流石のミミロップも僅かに驚く。

この様子、友人達に見られたらなんと思われるだろうか。とても情けない姿であることは間違いないのだが、それだけこの二匹の世界は深く尊いというもの、生ぬるい関係では成しえない何かを感じさせる。良し悪しは別にして。

ミミロップ「まだ私が喋ってる最中なのに、悪い仔ね」

ルカリオ「はうっ」

ミミロップ「そんな仔は、どうしようかしら?」

ミミロップはルカリオの顎に手を当て、不機嫌そうに厳しい視線を投げかける。

ルカリオは主の機嫌を損ねてしまったと視線を彷徨わせ、くぅんと本物の犬のように短く悲鳴をあげた。
 ▼ 765 ンバドロ@たつじんのおび 18/11/28 00:33:24 ID:Cffs/zxA [5/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミミロップ「ん……」

ルカリオ「ふぇ……」

しかし、こんな関係を築いていながらも、ミミロップは完全な女王様になれるタイプではない。

ルカリオの事をいじめればいじめる程股は熱くなり、とろとろと淫らな液体を垂らしていく。それが太ももを伝って流れ落ちる頃には、彼をいじめている方とは反対の手で自分の割れ目をくちゅくちゅと触り始めてしまうのだ。

二匹とも、本質はあくまで淫乱。性行為の際にプレイとして構築する関係も即席のものでしかなく、最終的には自身の快楽を優先させてしまう。動物的と言われればそれまでだが、それが彼らの性の形なのだ。

ルカリオ「ミミロップちゃん、めっちゃお汁垂れてる……」

ミミロップ「そんな所見て、本当に悪い仔ね!」

ルカリオ「あおぉん!」

我慢がきかなくなりそうな所をルカリオに指摘され、思わず彼の肉棒をぎゅっと握る。それで一瞬浮かんだ彼の得意げな表情はリセットされたが、かといって自身の疼きが治まるわけではない。

自らも気持ちよくなりたいとはいえ、最低でも主導権は渡すつもりなどない。ミミロップは厳しい表情を崩す事無く、彼の逸物から手を離し、両手を広げた。

ルカリオ「う、わっ」

ミミロップ「な・ま・い・き」

ぺろりと舌で口元をなぞるミミロップ。

自らの淫乱ぶりを隠すよりむしろ見せつけてやろうと決め、ルカリオを押して地面に尻餅をつかせる。そして彼を地面に完全に押し倒し、ゆっくりと顔の上にまたがった。
 ▼ 766 ナップ@どくけし 18/11/28 00:33:45 ID:Cffs/zxA [6/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
すぐ目の前に、愛する妻の性器が見える。それも愛液でどろどろに濡れそぼっていて、ルカリオの頬に、鼻に、たらりと水滴が垂れ落ちてくる。時折きゅっと割れ目が締まり、押し出された愛液がいっそう彼の顔を淫らに汚していく。

普段は体毛に覆われぴっちり閉じているそこも今は蕩けて緩んでおり、ひくひくといやらしく動いている様子は淫靡そのもの。これまで幾度となく行為を重ねて見慣れているとはいえ、この光景には恍惚とした表情を浮かべる他ない。

ルカリオ「すごい、すごいよ……ミミロップちゃん」

ミミロップ「ふふ、そう?」

あまりにも淫猥な光景に、ルカリオの理性は爆発寸前。彼の逸物は今にも射精してしまいそうなくらい大きく膨れ上がり、すぐにでもこの淫らな穴へ、その奥に広がる秘密の花園へ種を植え付けにいきたいと、強く強く主張する。

ミミロップ「とりあえず、舐めて」

ルカリオ「んむっ!」

ルカリオが恍惚としているのも束の間、ミミロップは彼の上あごを押し上げ、ぐっしょりと濡れた秘部を押し付け始める。それも、ただ押し付けるだけではない。彼の口で自慰行為をするように、敏感なところをこすり付けるようにして小刻みに動かしている。

状況がそうさせるのだろうか、ミミロップももう我慢ができなくなってきたようだ。自分が彼のご主人であるという設定も忘れ、愛する夫の口を使って気持ちよくなる事に集中し始めている。

だが、こうなってくるとルカリオもただされるがままではない。彼女の割れ目が接触するや否や、キスをするように口を強く押し付け、流れてくる淫らな液体を少しでも多く味わおうと大きく吸い上げる。

大好物の味に表情を蕩けさせるルカリオ。だがそれだけでは飽き足らず、より彼女の愛を貪ろうと舌を使って陰唇や尿道口を舐め回し、彼女が感じる手助けをし始めた。

ミミロップ「んっ、んあっ、ひゃう!」

ルカリオ「んちゅ、ぺろれろ、じゅるっ、ちゅるるるっ」

舐めれば舐めるほどミミロップの陰部からは愛液が噴き出し、ルカリオをミミロップ色に染めていく。もうルカリオはミミロップの愛を受け止める事と自身の欲望を爆発させることしか頭にない。
 ▼ 767 ャヒート@エフェクトガード 18/11/28 00:34:08 ID:Cffs/zxA [7/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミミロップ「んふ、ふぁああああっ、イっ、く……!」

耐え切れず、ミミロップが潮を吹く。より多くの液体がルカリオの口内へ流れ込んでいくも、彼は待ってましたとばかりにすぐさま飲み干してしまう。そして休む間も無く、彼の舌攻めが再開する。

そんな事を、もう何度繰り返しただろう。ルカリオの顔はミミロップの愛液でびしょ濡れになり、ミミロップは足に力が入らないほど何度も膣を痙攣させた。

ルカリオ「もう、いいだろ?」

ミミロップ「うん、して」

だがそれでも、彼らにはまだやりたい事がある。

極限まで我慢を強いられ大きく膨らんだルカリオの男根、極限までイき尽くし彼専用に仕上がったミミロップの膣内。

いま繋がったら、どうなってしまうのだろう……答えなどわかりきっている。わかりきっているからこそ、もうすぐ迎える最上の恍惚に気が狂いそうなくらい期待がかかる。

ルカリオ「じゃあ、いくよ……っぐ、ふぁあ、あうあっ」

ミミロップ「んあ、は、はいって、くるぅううんっ」

身体をずらし、ミミロップの割れ目に陰茎を押し込むルカリオ。

まだ、人間で言うところの、亀頭部分が膣内へ入り込んだだけ。だがただそれだけで、その尖端からは大量の白い液体が彼女の膣内へと吐き出された。

普段から一度の行為で何回も射精するルカリオ。今回はまだ始まりに一度出しただけだ、無理もない。

ルカリオ「おあああああ、これ、やっばい……」

ミミロップ「んふうううう」

無論、それで終わるルカリオではない。彼は射精を行いつつ腰を更に押し上げ、硬さの全く衰えない自身の象徴を彼女の奥深くへと埋め込んでいく。

そんな彼の逸物が奥まで届くのが待ち切れないのだろう、ルカリオに挿入を任せつつもミミロップは少しずつ腰を落とし、より深いところへと彼のものを誘い込む。

射精を伴わせながらの挿入。敏感になる性器に甘く強い刺激が加わることで、ルカリオは射精を止める事ができない。

同様に、彼の肉棒が入り込んでくる感覚、そして愛する彼の精液という何よりも強い媚薬に、ミミロップは膣の収縮を止められない。

まさに相乗効果。一度始まってしまえば、お互いがイき合って快楽に溺れ続ける。もはや、ルカリオの精が尽きるまで行為は終わらない。
 ▼ 768 ャランゴ@ドラゴンメモリ 18/11/28 00:34:25 ID:Cffs/zxA [8/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルカリオ「うっ、うっ、うああ、はっ、はっはっ、っく、はぁ」

ミミロップ「んんっ、あんっ、あっ、あはぁ、んふぅ」

霧が立ち込める中、お互いの愛をぶつけ合う二匹。彼らの悦楽の音だけが、この界隈を支配する。

箍が外れたように何度も腰を突き出すルカリオ。それに合わせて腰を上下させるミミロップ。

もう一生、永遠にこのままでもいい。二匹だけの世界で、誰にも邪魔されないこの場所で、死ぬまでこうして繋がっていよう……そんな甘言が二匹の脳裏を通りかかる。

ルカリオ「!!」

ミミロップ「きゃっ」

突然、ルカリオはミミロップの手を引いて抱き寄せた。

倒れこむようにして彼の胸に身体を預けるミミロップ。瞬間、ルカリオの逸物からより多くの精液がミミロップの子宮目掛けて発射される。

一定の間隔で何度も吐き出される精子。ルカリオは腰の動きを止め、ただ愛の結晶を届けることに専念している。

その様子にミミロップも大人しく身体を落ち着かせ、彼の愛を搾り取って受け止める事に集中した。

ルカリオ「…………」

ミミロップ「…………」

やがて、長い長い射精が終わり、激しかった性行為の余韻が彼らを包む。

繋がったまま、ぎゅっと抱き合う二匹。本来であれば最も尊い時間として流れに身を委ねるのだが、今回はルカリオもミミロップも息を整えるや否やその身に緊張を纏わせ始める。

そして訪れる、沈黙。

愛の語らいが終わりを迎えたこの場に、響く音など何も無い。

だからこそ、確信する。ルカリオは充分に周囲を警戒した後、ミミロップにしか聞こえない程度の小さな声で呟いた。

ルカリオ「……やられた。噂通りだ」
 ▼ 769 ガミミロップ@つきのいし 18/12/01 19:03:14 ID:LLXgYqcw NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
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 ▼ 770 オラント@かいのカセキ 18/12/03 02:08:41 ID:TjTE0sb6 NGネーム登録 NGID登録 報告
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 ▼ 771 チャブル@ふしぎなきのみ 18/12/05 01:31:39 ID:QOt6kYFQ [1/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
夫婦揃って快楽に溺れかけてから数分。警戒して辺りを窺うも何かが襲ってくるような様子はなく、誰かに見張られていたり、行為を覗き見されていたような気配もない。

広がるは、無音の世界。

自分たちの吐息や心臓の鼓動しか耳に届くものはなく、まるで異世界にでも連れてこられてしまったようにさえ錯覚する。いや、実際既に誘われてしまっているのかもしれない。

ルカリオ「……誰もいそうにないな」

このままじっとしていても仕方が無い。ルカリオはミミロップの手を握り、洋館を見上げる。中へ入ってこの現象を引き起こした原因を討とうと考え、意を決して傷だらけの扉に手をかけた。

ミミロップ「暗く……ない?」

ルカリオ「電気が通ってるのか……? いや、しかしここは廃墟のはず……」

ぎぎぎと扉が軋む音を耳にし玄関を潜り抜けると、そこは想像とは全く異なる世界。

床には立派な絨毯が敷かれていて、各所にはポケモンの石像や絵画が飾られている。エントランスを進んだ先には左右に大きな階段があり、その奥には大きく立派な窓が少し見えた。

あちらこちらにスポットライトや電気スタンドが設置され、天井にはシャンデリアまである。掃除が行き届いているのだろう、エントランスはそれらに照らされきらきらと輝いていた。

森の奥にひっそりと佇む廃屋に入ったのだから真っ暗でボロボロの内装が広がっていると想像していたが、実際には驚くことに、館内は今も人が住んでいると断言できる程に明るく綺麗だった。

ルカリオ「なんだここ……」

ミミロップ「まさか、今でも誰か住んでるの……?」

ぽかんとする二匹。ボロボロの外観からは想像さえできない光景が広がっていたのだから、無理もない。
 ▼ 772 ーゴヨン@ふしぎなアメ 18/12/05 01:31:57 ID:QOt6kYFQ [2/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
しかし、すぐにこれは幻覚の類ではないかと気づく。

外観と内装のギャップ云々以前に、そもそもこれだけ明るければ少しでも光が外に漏れているはずだ。増してや、この洋館の窓は一見して大きいものが多く、この状態、外から中の様子がわからなかったなど考えられない。

つまり、これは何者かが作り出した世界、ルカリオとミミロップに見せている幻影。現実であって、そうでないもの。

しかし、既に敵の術中にとらわれてしまっているならば、この幻覚から抜け出すのは容易ではないだろう。場合によっては、幻覚の中で術者を探し出して中断させる必要がある。ただ逃れるだけであれば幾分は楽であるが、状況から考えるにそれは叶わなさそうだ。

ミミロップ「とりあえず……襲われたりはしないわね」

ルカリオ「今の所危険はなさそう、かな? まぁ霧に包まれた時点でアウトなのかもだけど」

もしかしたら眠らされるなりしていて、今ここに居る自分たちは自分たちであってそうでない不安定な存在なのかもしれない。例えばリーフィアの時のように、自分たちは夢の中にいるのかもしれない。

何にせよ、こうなってしまったのだ、二匹はとにかくこの奇妙な世界から抜け出すために行動する必要がある。

ルカリオ「とりあえず、見て回るか。何かいるかもしれないし」

ミミロップ「外には出てみないの? もしかして、そのまま出ていけるかもよ?」

ルカリオ「そう簡単にいくといいけど……」

首だけで振り返り、入ってきた玄関扉を見る。

ミミロップ「開けてみましょ」

ルカリオ「あっ、うん」

何か起きる可能性もあるのではないかと考え始めていたルカリオだが、ミミロップは彼の心配をよそにすぐさま扉を開けにかかった。
 ▼ 773 レキブル@もえぎいろのたま 18/12/05 01:32:20 ID:QOt6kYFQ [3/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
壮麗な見た目とは裏腹に、重く錆び付いた音を立てて扉が開く。途端感じる肌寒さ、室内に入り込んでくる白い霧、広がる薄気味悪い森の光景……どうやらルカリオの心配は杞憂のようだった。

ミミロップ「どうする? 出ていく?」

ルカリオ「でも、どこを歩いても洋館の前に戻ってきちゃったよね」

ミミロップ「そういえばそうか……」

言うなれば、洋館とその周辺の森まで全てが幻想。森を歩き続けても元の世界へ戻る事ができないのなら、行き先はやはり洋館の中ということになる。

ルカリオ「……やっぱり中で手がかりを探そう」

ミミロップ「それしかないか……なんか、変な感じだから気持ち悪いのよね」

ルカリオ「まぁ、中には誰もいなかったしね」

トウカの森でも感じた、正反対のイメージが混在することによる気味の悪さ。

煌びやかな室内であるにも関わらず、そこにはポケモンの姿も人間の姿も見当たらない。特に、生活が感じられる景色に命あるものがいないという光景は、ミミロップにとって「頭の中がもぞもぞする」ものだった。

ルカリオ「俺がいるから、大丈夫だよ」

ミミロップ「今日はえらく心配してくれるわね? でも、ふふ、ありがと」

ミミロップの心境を察し、手をぎゅっと握るルカリオ。

昨晩聞いた彼女の過去を考えると、今は片時でも彼女を離したくない、そんな気持ちになっているのだろう。今は隣に自分がいる、もう辛い思いなんて絶対にさせないと、そう言うように彼は彼女を抱き寄せた。

ミミロップ「じゃあ、一部屋ずつ見ていきましょうか」

ルカリオ「そうだね。左から順に歩いていくよ」

やはり幻覚を見せている何者かを探そうと、もう一度玄関の重い扉を開けて中へ入る二匹。

そんな彼らを、真っ暗な森の向こうから何者かがじっと覗き見ていた。
 ▼ 774 イボルト@ピッピにんぎょう 18/12/05 01:32:43 ID:QOt6kYFQ [4/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



ルカリオ「さて……洋館に戻ってきたわけだが」

再度洋館に入ればまた違った光景が広がっているかもしれないとも思ったが、最初に入ってきたときと同じ内装が見えるのみだった。

術者は近くにいて常時何かを仕掛けている、というわけではないらしい。

ミミロップ「左っていうと早速階段になるけど……」

ルカリオ「エントランスには何もいないし、不審な点も見当たらないしな……」

玄関を潜り抜けて見える範囲に部屋は一つしかない。一見して、階段の前を通り過ぎた真正面だけだ。

見えないだけで部屋はあるのかもしれない。隠し扉みたいなものがあるのかもしれない。いくらでも可能性は考えられるが、とりあえず二匹は今見えているところから探索を開始することにした。

正面に見える、大きなドア……食堂である。

ミミロップ「ん」

ルカリオ「どうかした?」

忙しなく辺りを見回しながら、ぎゅっと手を繋いで食堂のドアへ近づく。正面に立ちさあドアを開けようかというとき、ミミロップは左右を見回して小さく首を傾げていた。

ミミロップ「これ、石像? 銅像? わかんないけど、片方しかないのね」

ルカリオ「ほんとだ。なんでだろ、壊れちゃったのかな?」

何とも暢気なことを考えているルカリオだが、予想が正しいのであればここは幻想の中、たとえ壊れたのだとしても一瞬で元に戻すことさえ容易いだろう。

ルカリオ達は気づいていないが、この洋館の内装は左右対称に作られている。オブジェの配置も、階段の位置も、絵画の内容や設置場所も、部屋の数や場所も、全てシンメトリー。つまり、ミミロップの抱いた疑問は、彼女達が思っている以上に不自然なものなのだ。

ルカリオ「何か意味があるのかも……」

ミミロップ「ここを抜け出すヒントとか?」

ルカリオ「まさかそんな、ゲームじゃないんだし……」

そう言いつつも気がかりなのか、ルカリオはぽつんと一つだけ設置された像をまじまじと眺めている。
 ▼ 775 ジーロン@タマゴふかポン 18/12/05 01:33:04 ID:QOt6kYFQ [5/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミミロップ「あ」

ルカリオ「え、なに? 何か見つけた?」

ミミロップ「ううん、像っていえば、まだ私達が付き合いたてくらいの頃に帰り道で見た像を思い出して」

ルカリオ「……それ、記念日の夜の話?」

ミミロップ「そうそう」

ミミロップは当時を思い出してか嬉しそうにくすくす笑っている。対してルカリオは、なんだかあまり面白く無さそうな表情を浮かべていた。それもそのはず、その話はルカリオにとって恥ずかしい話でしかないからだ。

彼らが付き合い始めて一ヶ月、その記念にと一日中デートをした日の帰り道でそれは起きた。

どこかで性的な夜を過ごそうとも話していたが、外食を済ませ草原で手を繋いでぼんやりと空を見上げていたら、今日はこのまま穏やかに過ごすのもいいかもしれないという所に落ち着いた。そしてそれから、すっかり日も暮れ月明かりだけが頼りになった町外れを、彼らは家に向かって歩いていた。

ルカリオの両手にはその日ショッピングで購入した荷物。ミミロップの両手には帰りがけに買ったケーキの箱。周りには彼ら以外誰もおらず、二匹の幸せそうな話し声ばかりが周囲の音を支配している。

調子よく歩いていた二匹だったが、突然ルカリオの前に大きな石像が現れ……否、現れたのではない。知らず知らずのうちに、彼が石像に向かって歩いていただけだった。

ミミロップ「話に夢中で周り見てなかったのよね」

ルカリオ「だってあれ、あんな所に石像あるなんて気づかないじゃん。誰だって驚くよ」

ミミロップ「声に出して笑ったわ、ふふ、今思い出してもおかしい」

ルカリオ「くそう……」

ただ驚いただけではない。ルカリオは思わぬ事態に持っていた荷物を放り投げ、盛大にすっ転んでしまったのだ。
 ▼ 776 ルビル@よごれたハンカチ 18/12/05 01:33:21 ID:QOt6kYFQ [6/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルカリオ「でも、ケーキ持ってるの俺じゃなくてよかったよ」

ミミロップ「まぁコップは割れたけどね」

ルカリオ「そ、そうだけどさ……」

先ほどまで感じていた緊張感などどこへやら。彼らにかかれば、ひとたびのろけが始まれば幻覚など気にもならないのかもしれない。

しかし、だからこそ気づく。これは、幻覚ともまた少し違った現象なのだと。彼らの意識に働きかけているのであれば、この思い出し笑いで壮麗な洋館の景色は消えてなくなるはずだ。

ルカリオ「も、もういいでしょその話は。さ、中に入るよ」

ミミロップ「えーまだ色々あるでしょ、ルカリオ驚きシリーズ」

ルカリオ「そんなシリーズいらないよ……ほら、行くよ!」

ミミロップ「ふふっ、はいはい」

今となっては確かに楽しい思い出の一つではあるが、自分の恥ずかしい話はできれば思い出したくないもの。ルカリオは複雑な気持ちを誤魔化すように、そさくさと食堂の扉を開けた。

だが、その話でだいぶ気が楽になったのも事実。得体の知れない状況に内心感じていた恐怖も薄れ、ミミロップはそんな自分の心境を読み取り気を遣ってくれたのだと思うと、今度は愛しさがぐっとこみ上げてきた。

だから彼は、ぎゅっと彼女を抱きしめた。

ミミロップ「えっちょ、急にどうしたの」

ルカリオ「いや、その、うん……ねえ?」

ミミロップ「ねえって言われても……まぁいいけど。じゃあ私も、ぎゅー」

見ず知らずの洋館で抱き合う二匹。こんな状況ではあるものの、彼らは今日も問題なく幸せらしい。

だから彼らは気づかなかった。中途半端に開いた扉の向こう、食堂の奥の方を何かが通って行ったことに。
 ▼ 777 ルガー@コイン 18/12/05 16:54:17 ID:iqssmYyE NGネーム登録 NGID登録 報告
シエンネ
 ▼ 778 ンタロス@のこされたボール 18/12/05 17:59:38 ID:5uwABXeI NGネーム登録 NGID登録 報告
ベルが出てきたってことはプラズマ団か?あれは
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 ▼ 779 ツドン@みずのジュエル 18/12/09 21:48:20 ID:tyrEqNhs [1/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




エントランス最奥にある大きなドアの向こうには、やはり荘厳な風景が広がっていた。

豪華絢爛な椅子や長机、大きな絵画、各所に置かれた美しい観葉植物……どれをとっても高級品と思われるものばかりで、この洋館には相当なお金持ちが住んでいると想像できる。これらを取り揃えるのに一体どれくらいのお金を稼がなければならないのだろう、ルカリオ達には想像も難しい。

尤も、ここは幻想の中、どんなに高級な品物であっても一瞬のうちに再現する事ができるはず。それどころかそもそも、モデルとなるものさえ存在しないのかもしれない。

ルカリオ「ここは……食堂?」

ミミロップ「そうみたいね。テーブルクロスかかってるし、蝋燭立てみたいなのもあるわ」

まるで今にも、テーブルにつけばカロスのコース料理が出てきそうな雰囲気。あまりにも場違いな空気に、二匹は少々息を詰まらせている。困窮した暮らしを送っているわけではないが、豪華な生活など雲の上なのだ。

とはいえ、相変わらず人の気配もポケモンの気配もしない。居慣れない空気にたじろぐのも僅かな時間のこと、すぐに不気味さや奇妙さがそれらを食い尽くしてしまう。

ルカリオ「ぱっと見何もなさそうだけど……」

ミミロップ「誰もいないし、ここははずれ?」

ルカリオ「術者を見つけないとだし、そうっぽいね」

自力で逃げる事ができないとすれば、ここから脱出する方法はただひとつ、幻想を仕掛けている何者かを討つなりするしかない。となれば、誰の気配もしない場所は、迷路でいうところの行き止まりみたいなもの。立ち止まっていても時間を浪費するだけである。

この手の術にかかっている間は、長居すればするほど危険度が高まる。できるだけ早急に対処したいところ。

ルカリオ「ううっ……なんか寒くない?」

ミミロップ「そう? いつものシンオウの気候って感じだけど」

ルカリオ「なんか身の毛がよだつというか、頭の先まで震えるというか……」

ミミロップ「もしかして怖いの?」

ルカリオ「んなっ……こ、怖くなんてないぞ! ただ、なんか変な感じがするんだ」

ミミロップ「あーらあら、顔赤くしちゃって」

ルカリオ「うぅ……」

怖いというのも確かに嘘ではないのだが、ルカリオが感じているものは恐怖のそれとはまた別な感情。彼は波動を読み取る事ができる分、他のポケモンよりも感覚が敏感なのだ。

勿論ミミロップはそれをわかっていて、冗談半分に彼をからかっている。これも、雰囲気に呑まれてしまわないようにという、彼女なりの配慮だ。
 ▼ 780 オップ@フィラのみ 18/12/09 21:48:55 ID:tyrEqNhs [2/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルカリオ「とにかく、次の部屋に行ってみよう」

ミミロップ「次は二階だっけ?」

いつの間にか閉まっていた出入り口のドアノブに手をかけるルカリオ。しかし、彼の手はそこで止まることになる。

ミミロップ「あれ、どうしたの?」

ルカリオ「……開かない」

ミミロップ「ええっ!?」

食堂のドアノブは握って下げるとボルト部分が引っ込み、そのまま押すなり引くなりするとドアが開く、よくあるタイプのもの。

いまルカリオはそのドアノブを下げようとしているのだが、どういうわけかがっちり固まっているようで全く動いてくれない。

ルカリオ「鍵がかかったのか……? 誰か外にいるのかな」

ミミロップ「でもこれ、鍵穴みたいなのないわよ? つまみも無さそうだし」

おおよそのドアはサムターンと呼ばれるつまみをひねってデッドボルトを押し出すことで、ドアを開かなくする。ドアをロックしてもドアノブを下げることができるものとできないものがあるが、どうやらこのドアは後者らしい。

ミミロップ「壊す?」

ルカリオ「あんまり物を壊したくはないけど、仕方ないね」

ミミロップ「そうよね」

ドアノブから手を離し、身構える。対象を最大効率で破壊できるよう神経を集中させていく。

ルカミミ「覇っ!!」

二匹のタイミングは完璧。ぴったり揃った二匹の脚と拳が、ドアの一部に炸裂した。
 ▼ 781 ジュマル@ミクルのみ 18/12/09 21:49:27 ID:tyrEqNhs [3/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルカリオ「……全く効いてない」

ミミロップ「罅ひとつ入ってないわね……」

二匹とも、全力ではないものの厚手のドア程度なら破壊しても有り余るくらいの攻撃を叩き込んだつもりだった。しかし、この有様である。

ルカリオ「でも、全く痛くない。普通のドアじゃなさそうだ」

ミミロップ「こういうのも全部幻覚や幻想だからってこと?」

ルカリオ「たぶんね。俺達には鍵がかかったドアに見えてるだけで、実際には全く違う何かを殴ったり蹴ったりしてるのかも」

自分の拳を見つめるルカリオ。そこに何の傷跡も汚れもついていないところを見ると、殴った感触さえ幻なのかもしれない。

ルカリオ「仕方ない、ここでどうにかするしかなさそうだ」

ミミロップ「どうにかって言っても……どうするの?」

ルカリオ「……さあ?」

最悪、単に閉じ込められただけで外へ出るための仕掛けなど全くないのかもしれない。術者がここではない別な場所にいるとすれば、ルカリオ達は永遠にここから出られない可能性もある。無論、そのような可能性など考えたくもないが。

ルカリオ「とにかく、手がかりを探そう。何か見つかるかもしれない」

ミミロップ「そうね。じっとしてても仕方ないし」

再び食堂をぐるりと見回してみる。

お金持ちの住む家というものが普通どのようになっているのか二匹にはわからないが、見たところ違和感を覚えるような所は何も無い。庶民的な生活しか知らないために、気づけないのかもしれないが。
 ▼ 782 メルゴン@ミュウツナイトX 18/12/09 21:50:33 ID:tyrEqNhs [4/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ドアを離れ、食堂を探索すべく歩き始める。

ミミロップ「あれ、これって……」

すると程なくして、ミミロップが足を止めて目を凝らす。

ルカリオ「う、これは、血だ」

ミミロップ「やっぱりそうよね」

彼女が見つけたのは、床に敷かれたカーペットに広がる赤い模様。既に乾ききっているため赤と言ってもかなり黒ずんだ色で、触らずとも固体化していることは見てよくわかる。

ここで誰かが怪我でもしたのだろうか。カーペットを染める赤の色はそれなりに広く、例えばナイフで指を切ってしまったという程度ではなさそうだ。

ミミロップ「ここで誰か死んだりしたのかな」

ルカリオ「ええっ、まさかそんな……ねえ?」

そういう話は否定したい。だが、現実はひたすら残酷かもしれない。

ただ、カーペットに血液がこびりついているこの状態のみから真実を知ることはできそうにない。

ミミロップ「でも、こういう洋館ってそういう事件的な事が起きてそうじゃない?」

ルカリオ「そんなの、ドラマやゲームの見すぎだよ」

ミミロップ「でもこの血の量よ? もしかしてこういうの解いていく必要があるのかもよ?」

ルカリオ「そんなまさか……」

流石にそれはと少々呆れるルカリオ。しかし、そんな彼を笑うような現実が直後に待っていた。

やれやれと顔を上げたルカリオの視線の先、何も置かれていなかったはずのテーブルに一冊の手記のようなものが出現していた。
 ▼ 783 ドラン♂@レンズケース 18/12/09 21:51:07 ID:tyrEqNhs [5/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルカリオ「……こんなの、さっきなかったよね?」

ミミロップ「たぶん……でも、見落としてただけかもよ?」

ルカリオ「そうかなぁ……」

強い不信感を覚えつつも、この手記を手に取らなければ先へ進むことはできないと、何故かそんな気がしてくる。

理屈ではない。不思議と、そう思えてならないのだ。

ルカリオ「……何が書いてあるんだろ」

ミミロップ「え、あけてみるの?」

ルカリオ「こんな状況だし、あるものは確認していかないとね」

ミミロップ「急に勇敢になったわね」

ルカリオ「腹括ったの」

実際は大して心持ちが変わったというわけではないのだが、いい加減嫁に惨めな姿を晒し続けるわけにもいかない。新たな展開にルカリオは気合を入れなおし、状況を打開すべく強く息を吐いた。

ルカリオ「……あれ、ほとんど真っ白だな」

ミミロップ「なんだ、何も書いてないのね」

ルカリオ「そうみたい……いや、最初らへんのページに何か書いてある」

罫線すらない真っ白な手記。その一ページ目には、意味深な言葉が書き綴られていた。



『先輩もついにやられてしまった。残ったのは、俺だけ? じゃあ一体、誰が犯人なんだ? ありえない、こんなことは認められない。俺は何もやってない。ありえない、ありえない、ありえ』
 ▼ 784 ローゼル@きいろのバンダナ 18/12/09 21:51:43 ID:tyrEqNhs [6/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルカリオ「…………」

ミミロップ「…………」

誰かの残した言葉だろうか、そこに書かれていたものは理解が難しいものだった。

ルカリオ「誰かの日記か何か、かな?」

ミミロップ「わかんない。けど……この血と、何か関係があるのかも」

ルカリオ「他のページには何も書かれてないみたい……」

ぺらぺらとページをめくって見せるルカリオ。手がかりを期待するも、彼の言葉通り、ひたすらに真っ白なページばかりが彼らの目に飛び込んでくるだけだ。

たったこれだけのよくわからない内容を書きとめる理由とはいったい何なのだろう。この文字列に何か意味があるのではないか? この部屋のどこかにこの言葉が当てはまる何かがあるのではないか? 色々考えてみるも、全くぴんと来ない。

ルカリオ「とりあえずこれを考えるのは置いといて、もっと色々探してみよ」

ミミロップ「そうね。ん〜……あら、向こうにも部屋があるわ」

再びぐるりと辺りを見回したミミロップは、食堂の西側に比較的小さなドアがあるのを見つける。小さいといっても玄関や食堂の出入り口に比べればというだけで、一般家庭にあるようなドアの倍程の大きさはあるが。

ルカリオ「お手柄だね。向こうから別な場所に行けるかもしれない」

そもそも鍵がかかっていて開かないかもしれない。破壊しようとしても、傷一つつかないかもしれない。

だが不思議と、そのドアからは難なく別な部屋へ行く事ができるような気がした。

ルカリオ「お、開いたぞ」

ドアノブに手をかけ、移動が可能か確認する。果たしてドアは、彼らの期待通り開いてくれた。
 ▼ 785 ノセクト@こだいのせきぞう 18/12/09 21:52:22 ID:tyrEqNhs [7/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




開いたドアの向こう、そこは調理室だった。

入ってすぐのところに細長い調理台が三つ並んでいて、奥の方には大型冷蔵庫と大型冷凍庫がそれぞれ一つずつ、その隣に調理器やシンクがある。分別に厳しかったのだろうか、シンクの横にはゴミ箱と思われる青い大きなポリバケツが沢山設置されていた。

食堂の広さの割に小ぢんまりとした調理スペース。あれだけ広い長机に料理を出すとなると調理場も結構な施設でなければ厳しいと思われるが、とてもではないがここはそれが満足にまかなえるようには見えない。

そんな部屋に入ってきたルカリオ達だが、ドアを開けて中入ると同時に耳を立てることとなる。

ルカリオ「……何の音だ?」

ミミロップ「これ、水の音?」

はっとして、シンクの方に視線を向ける。

蛇口からは、どういうわけか結構な勢いで水が流されていた。

ルカリオ「何で水が……」

ミミロップ「止める?」

ルカリオ「そうだね、なんかこの音がしてるのも気味悪いし……」

恐る恐るシンクへ近づく二匹。部屋の中が明るいのは幸いだが、何の気配もしない明るい洋館でどういうわけか水が出しっぱなしになっているというのも随分と奇妙な光景である。

ルカリオ「……普通に止まったな」

シンクの前に立ち、身構えながら蛇口をひねる。すると水は次第に勢いを失っていき、最後には蛇口がきゅっと音を立てて閉まった。それで、水は全く流れなくなった。

ミミロップ「なんていうか……流石にちょっと怖いわね」

ルカリオ「得体の知れない恐怖っていうのかな。こういう、意味がわからない系俺苦手だよ」

二匹にしてみれば、幽霊や怪物が出てくる事に恐怖は感じない。ただ、理由も根拠もわからないような、ただただ奇怪な現象ばかりが起きるという状況には気味の悪さを感じる。
 ▼ 786 ーボ@タンガのみ 18/12/09 21:52:51 ID:tyrEqNhs [8/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミミロップ「シンクに何かあるわけでもなさそうね」

ルカリオ「あったらあったで嫌だけどね」

綺麗な銀色のシンク。新品同様にも見えるそれは、天井から降り注ぐ白いライトを反射してキラキラと輝いている。

もしここに何かあったとしたならば……誰かの生首でも置かれていたのだろうか。

ルカリオ「(ううん、なんでそんな方向に考えちゃうんだ俺)」

ぶんぶんと首を横に振るルカリオ。ミミロップも似たような事を想像したからか、彼女はルカリオのそれに首を傾げることはなかった。

ルカリオ「ここにも手がかりは無さそうかな?」

ミミロップ「たぶん、無いとおも」

ゴトン

ルカリオ「…………」

ミミロップ「…………」

食堂へ戻ろうと二匹がシンクに背を向けたその瞬間、後方から物音がした。

振り返ることを躊躇う二匹。ただ、生物的な何かが後ろに出現したような気配は感じない。

ルカリオ「っ!」

ミミロップ「!」

まるで示し合わせたように、二匹は同時に振り返る。

ルカリオ「……何もいないな」

ミミロップ「今の、どこから聞こえたのかしら」

シンクや調理器具の辺りを見回すも、先ほど見ていた状態から何かが変化したようには思えない。となると、物音がした場所は彼らがまだ見ていない部分ということになる。その場所とは……

ルカリオ「……バケツの中か、冷蔵庫の中か」
 ▼ 787 メルゴン@まひなおし 18/12/09 21:53:28 ID:tyrEqNhs [9/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ここに設置されている冷蔵庫や冷凍庫は業務用のそれくらい大きなもので、かなりの量のものを収納する事ができるだろう。ポリバケツもひとつひとつがそれなりに大きく、ルカリオくらいであればすっぽりと入っても蓋は閉まると思われる。

ミミロップ「……開けるの?」

ルカリオ「どうしよう……正直迷ってる。さっきから波動で探ってみてるけど、何も感じないんだ」

通常であれば、冷蔵庫の壁やバケツ程度なら波動で中身を探る事ができる。しかしここは幻想の中、ルカリオの能力も思うように通用してくれない。

仕方がないので、ルカリオは恐る恐る大型冷蔵庫に近づき耳を寄せて気配を窺う。

ルカリオ「何も聞こえない」

ミミロップ「思い切ってあけてみましょ」

ルカリオ「うえ、まじ?」

ミミロップ「ここでまごついてても仕方ないでしょ」

ルカリオ「あっ」

慎重に慎重を重ねているルカリオをよそに、ミミロップは思い切って冷蔵庫の取っ手を掴む。

ミミロップ「えいっ」

そして一呼吸置くことさえせず、一気に扉を開け放った。

ルカリオ「…………空か」

果たして、冷蔵庫の中は空だった。それどころか、冷気が漏れ出てくることもない。どうやら、そもそも電源が入っていないらしい。

そしてそれは冷凍庫も同じで、やはり容赦なくミミロップはその扉を開け放ってみたが、中に何かが潜んでいる様子も物が置かれていることも無い。

ミミロップ「ってことは、バケツ?」

ルカリオ「そうなるけど……」

シンク横のポリバケツを見る。数えてみればそれらは全部で六つあり、丁寧に縦横そろえて設置されていた。
 ▼ 788 ーバーン@クオのみ 18/12/09 21:54:06 ID:tyrEqNhs [10/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルカリオ「待って。中にポケモンがいたら、急に飛び出してくるかも」

肝が据わったミミロップのことだ、またぽんぽんと蓋を開けるのではと思い、ルカリオは彼女が動くより先に制止の言葉を投げる。彼女の気の強さに救われる場面は多いが、この状況、ずっとその調子では正直ついていける自信がない。

ミミロップ「開けるのやめとく?」

ルカリオ「う、うーん……」

できれば、何も聞かなかったことにしてこの場を去りたい。だが、それではおそらくこの洋館を出ることはできないだろう。自由に行動できるように見えて、その実選択肢はほとんどない。

ルカリオ「今度は俺が開けるよ」

ミミロップ「六つとも?」

ルカリオ「うん。あけるのは一個ずつだけど」

なんとなく足音をしのばせ、ゆっくりとバケツの前まで移動するルカリオ。

ルカリオ「うわっ!」

足の裏に冷たい感触。

液体を踏む感触に、思わずその場から飛び退くルカリオ。見れば、バケツの回りは水浸しになっていた。

ミミロップ「水だらけね……全然気づかなかった」

ルカリオ「俺も……水道流しっぱなしになってたからかな」

栓はされていなかったためシンクに水は溜まっていなかったが、しぶきがシンクを飛び越え床を濡らしていたのだろう。かなり長い時間水が流れていたのか、床は水溜りができるくらいに濡れていた。

ルカリオ「よし、手前からあけてくよ……」

水溜りを踏まないようにして、ルカリオはバケツの前に立つ。

彼が言ったように、開けた途端何かが飛び出してくるかもしれない。あるいは、想像もしたくないようなものが詰め込まれているかもしれない。

ルカリオは何が起きてもすぐさま対応できるよう体勢を整え、ゆっくりと一つ目のバケツの蓋に手をかける。
 ▼ 789 ガヘルガー@ぼうごパット 18/12/09 21:54:51 ID:tyrEqNhs [11/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルカリオ「……空だ」

果たして、彼が新たに行動を起こす事はなかった。

バケツの中にはゴミ袋すらなく、ただただがらんとしているのみ。衛生面は特にしっかりしているようで、バケツには汚れのひとつさえ見当たらない。

ミミロップ「あと五つね……」

ルカリオ「うん……」

短く息を吐き、改めて気合を入れなおす。そしてすぐにルカリオは二つ目のバケツに手を伸ばした。

ルカリオ「……これも空」

ミミロップの方を見て首を横に振るルカリオ。ミミロップはそれに対し首を傾げてみせる。

ルカリオ「あと四つ……」

ルカリオも多少は状況に慣れてきたのだろう、それからすぐに三つ目四つ目とバケツの蓋を次々に開けていった。

ルカリオ「五つ目も空か……」

ミミロップ「ってことは、そこに何か入ってるのね」

最後に残ったバケツを見る。

綺麗に並べられたうちの、左奥にあるバケツ。どのバケツも全く同じデザインのものだが、不思議と残ったバケツだけは違って見えた。

ルカリオ「あけるぞ……」

もしかしたらこの中にも何も入っていないのかもしれない。だが、彼らは確かに何かが落ちるような音を聞いた。他に物が入ってそうな場所が見当たらない以上、何かがあるとしたらもう最後に残ったバケツの中しかない。

相変わらず、波動で探っても中の様子は窺えない。少なくとも、何者かが中に潜んでいて蓋が開いた瞬間襲い掛かろうとしている、というようには思えない。

かといって、幻想であれば急に何かを出現させることなど造作も無いだろう。考えるだけ、時間の無駄なのかもしれない。

ルカリオ「……よし!」

唾を飲み、蓋の取っ手を握る。そして短く息を吐き、勢いよく蓋を持ち上げた。
 ▼ 790 キジカ@ハンサムチケット 18/12/13 21:21:02 ID:5ZAQKdRI NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 791 リバード@こないれ 18/12/18 04:32:42 ID:edSM6X7Y NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 792 ンドパン@あおぞらプレート 18/12/19 02:21:07 ID:xn5MqP5I [1/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルカリオ「…………?」

静まり返る空間。蓋を開けてすぐ臨戦態勢を整えるも、何かがバケツから出てくる様子は無い。

とりあえず急襲されることはなかった。ルカリオはミミロップを見て頷いた後、恐る恐るバケツの中を覗き込む。

するとそこには……

ルカリオ「……小瓶?」

他のバケツ同様、中にはゴミ袋一枚さえ入っていなかった。ただ、一つだけ他のものとは違い、中には手のひらサイズの瓶が転がっていた。

ミミロップ「その瓶、中身が入ってるわね」

ミミロップもバケツを覗き込み、それを確認する。

ルカリオ「ん……何か書いてある」

瓶にラベルが貼ってある。手にとって見てみると、そこには「毒消し」と書かれていた。

ルカリオ「解毒剤か……なんでこんなところに」

ミミロップ「間違えて捨てちゃったとか?」

ルカリオ「なら、やっぱりここには誰か住んでるのか……」

幻想の中の住人か、あるいは術者か。どちらにせよ、消耗品が見つかった以上、ここには誰かがいるという期待が持てた。

ルカリオ「あっ」

ミミロップ「あ、ごめん」

ルカリオが振り返るのと同時に、ミミロップはバケツの中をもう一度覗こうと身を乗り出した。

二匹がぶつかり、床に手記が落ちる。

ルカリオ「わわ、濡れちゃう」

慌てて手記を拾い上げるルカリオ。手記は丁度水が広がっていない所へ落ちたようで、ほんの僅かも濡れていなかった。

ミミロップ「……あれ?」

ルカリオ「ん、どうかした?」

ミミロップ「その手記……なんか書いてること増えてない?」

丁度開かれたページを見て、ミミロップが首を傾げる。

ルカリオ「え、そんなまさか……」

言われて、確認する。

すると確かに、食堂で見たよくわからない文章に加え、違うページに新しく別な文章が浮かび上がっていた。
 ▼ 793 ガルガン@ナナシのみ 18/12/19 02:21:42 ID:xn5MqP5I [2/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
『何故だ、何故………に毒……が…る?……まさか……前の…件を……ているのか……』


ルカリオ「……わからん」

ミミロップ「今回にいたっては所々かすれて読めないしね」

何か新しい手がかりになるかと期待したが、空振りに終わる。それどころか、どうして何も無かったページに新たな文字が浮かび上がってきたのかという疑問が増えた。

ルカリオ「やっぱりミミロップちゃんの言うように、謎解きみたいなことしなきゃなのかな……」

ミミロップ「まぁ状況としては整ってるわよね。食堂の血といい意味深な手記といい、ここで何かあったのは間違いなさそう」

しつこいようだが、ここはおそらく幻想の中。だとしても、いや、だからこそ、食堂の血や手記、毒消しなどは幻想として再現されるべきもので、それらには何らかの意味が含まれているはずだ。意味があるのなら、それがここを脱出する鍵になる可能性も否定できない。

ルカリオ「でも、これだけじゃ何にもわかんないよね」

ミミロップ「まぁ、そうなんだけどさ」

二匹して首を傾げ、頭を悩ませる。

と……

カラン……カラン……

突然、どこかから鉄製の何かが床や壁にぶつかる音が聞こえてきた。

ルカリオ「……気のせいじゃないよね?」

ミミロップ「嫌と言うほどはっきり聞こえてるわ」

急な展開に、二匹は思わず顔を見合わせる。

カラン……カラン……

突如として聞こえ始めた謎の物音は一度や二度で鳴り止まず、何度も何度も定期的に不気味な音を響かせている。

まるで鉄パイプのようなものを引きずる音。もしかすると、誰かが洋館のどこかで鉄製の何かを動かしているのかもしれない。

ルカリオ「どの辺から聞こえてきてるかわかる?」

ミミロップ「あんまり正確にはわからないけど……あっちね」

ミミロップは難しそうな顔をして食堂の方の天井を見上げる。音源はどうやら、洋館二階の東側のようだった。
 ▼ 794 ーベム@デボンのにもつ 18/12/19 02:22:21 ID:xn5MqP5I [3/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



厨房を出て、食堂の出入り口まで戻る。

物音のする方へと向かいたいのは山々だが、食堂の出入り口は硬く閉ざされている。先ずは食堂から出る事を考えなければならないが……

ルカリオ「あれ、開いてる」

ドアノブを掴んでガンガン押してみようとするルカリオだったが、手をかけるとノブが下がり、押せばドアが当たり前のように開いてくれた。

当然、あれからルカリオ達はドアに触れることはおろか、ドア周辺に近寄ってすらいない。となれば、鍵をかけた何者かが今度は鍵を開けていったと考えられる。

ミミロップ「遊ばれてるわね」

ルカリオ「相手がいれば、だけどね」

依然として、波動で探れる範囲には何の生物反応も感じられない。いつ開錠されたかはわからないが、何者かが近づいていたにも関わらず全く感知できなかったとも思えない。途中水音や物音に気をとられていたとはいえ、洋館に入ってからは常に緊張を身に纏わせ、周囲の変化にはいつもより敏感になっているというのに。

ルカリオ「とにかく、先へ進もう。道が開けたということは、物音のする方へ行けって事かもしれない」

ミミロップ「誘導されてるみたいでちょっと嫌だけど……状況的に仕方ないわね」

ドアを開けてエントランスへ出る。心なしか、二匹を迎えた空気は初めてここを訪れた時よりも冷たいように思えた。

そして相変わらず、何の気配も感じられない。それでも二匹は念には念を入れ、注意深く周囲を目視しながら東側の階段へ近づいた。

カラン……カラン……

階段を上る直前に、再び金属のこすれる音が聞こえる。先ほど厨房で聞いたものよりも大きい。

ルカリオ「階段を上った先から聞こえるな……」

ミミロップ「でも、だいぶ音が反射してる。たぶんどこかの部屋の中よ」

いつ襲われても対応できるように、気を配りながらゆっくり段を踏みしめていく。

まるで自ら死地へ赴こうとしているような、そんな感覚さえ覚えながら、二匹はゆっくりと階段を上りきった。
 ▼ 795 ンキー@おおきなキノコ 18/12/19 02:23:16 ID:xn5MqP5I [4/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


さっきまで規則的に聞こえていた物音はいつの間にか止んでおり、静けさだけが辺りを支配し尽くしている。それからは、どれだけ耳を澄ませても金属のこすれる音は聞こえてこない。

もしかして、自分達が二階へ上がってくるのを待っていたのだろうか……そんな事さえ思えてしまう。

ミミロップ「前に部屋があるわね」

ルカリオ「ああ。ドアもちょっと開いてる」

階段を上りきると、広い廊下が垂直に交わった。真正面には大きな窓があり、真っ暗な夜の森の景色を映し出している。もう夜になってしまったのか、外の景色さえも幻想や幻覚によるものなのか、何にせよ窓の外を眺めても何も手がかりは見つかりそうにない。

彼らの言う部屋は、その大きな窓のすぐ隣にあった。その部屋は電気がついていないらしい、ドアが開いているものの中の様子は真っ暗でほとんど何も見えない。

ルカリオ「ん……ミミロップちゃん、見て」

ミミロップ「どうしたの?」

ドアを開け放とうとしたルカリオはある事に気づき、手を止める。

ルカリオ「このドア、鍵が二重についてる。しかもこれ、外側からしかかけられないみたい」

ミミロップ「外側から?」

そのドアは廊下側にサムターンや鍵穴があり、内側にはロックを開錠できる仕組みが一切見られない。また、通常ドアは人間達の掟として外開きになっている事がほとんどだが、この部屋のドアは逆、部屋の内側に向けてドアを押す形になっている。

どうしてそのような作りになっているのか、用途は様々考えられるが、目的は一つしか浮かばない。部屋に何かを閉じ込めて出られないようにするために、こうなっているのだろう。

ルカリオ「きな臭くなってきたな……」

ミミロップ「何を閉じ込めておく必要があったのかしらね」

ルカリオ「中を見てみればわかるかもしれない」

視線を真っ暗な部屋の中へ向け、ドアを開け放つ。廊下から差し込む光に照らされ、中の様子が少しばかり窺い知れた。
 ▼ 796 ニスズメ@じしゃく 18/12/19 02:23:52 ID:xn5MqP5I [5/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
部屋に入り、眉をひそめる。

豪華絢爛だったエントランスや食堂と違い、この部屋は薄汚く埃臭かった。

ミミロップ「うわっ、なにここ……」

ルカリオ「なんていうか……すごいね」

薄っすらと見える部屋の壁は黒く汚れており、所々に亀裂が入っている。壁紙もあちらこちらが剥げ散らかしていて、もう何年も手入れされていないであろうことが素人目にもわかってしまう。

また、家具や荷物がたくさん置かれているのかとても窮屈な感じがした。それもそのはず、この部屋には本がぎゅうづめにされた書架が各所に設置されているのだから。

目が慣れてきたことで、ルカリオ達はそれを視認する。思ったよりも狭い部屋に所狭しと置かれた書架に、二匹は更に息苦しさを覚えた。

ルカリオ「なんか、思ってたのと違うね」

ミミロップ「うん。私てっきり牢屋みたいなところかと思った」

見たところ、ここは書斎だった。しかし、どうして書斎のドアは外側からしか鍵がかけられないのだろう。そういう作りにしなければならない理由が、何かあったのだろうか。妙なつくりのドアと書斎、全く繋がるものがない。

ルカリオ「俺、ちょっと奥まで見てくるから、ドアお願いしていい?」

ミミロップ「わかったわ」

ミミロップにドアを預け、ルカリオは慎重に部屋の中へ足を踏み入れる。

狭い部屋だ、奥まで行ってみるといってもミミロップの視界からルカリオが消えることはない。薄暗いため奥まで行けばはっきりと姿を確認する事は難しくなるが、それでも彼のシルエットが動く様子はよくわかった。

ルカリオは足音をさせないよう忍び足で書架と書架の間を歩き、辺りを見回している。時折何かを見つけたように背伸びしたり、本棚を覗き込んだり、何かを探すような動きをするルカリオを見るのはどこか楽しい。こんな状況にも関わらず、ミミロップは思わず口元に片手をあてた。

ミミロップ「あれ?」

と、横に並ぶ書架の間を移動するほんの一瞬だけ、彼の姿が見えなくなる。書架の高さは彼の身長よりも高いため、書架の向こう側を移動すればそれは当然のこと。

だが、その間を移動する時間など1秒にも満たない。それどころか、両手を振っていれば書架の両端から彼の両手が見えるためその姿を見失うことさえないはずだ。

しかし、ルカリオは消えてしまった。

ほんの一瞬、書架の向こうへ入っていったきり、全く姿が見えなくなった。
 ▼ 797 マカジ@りゅうのキバ 18/12/20 01:11:28 ID:R5iscJr. [1/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミミロップ「ちょ、ちょっと、ルカリオ?」

思ってもみない事態に、ミミロップは不安そうな声を出す。

彼の名を呼ぶも、返事はない。

こんな狭い部屋だ、どの辺りにいるとしても小さな声で充分届くはず。だが、彼女の言葉に対する反応は何もない。

ミミロップ「嘘でしょ……どうなってるのよ」

姿が見えない、呼んでも返事がない。となれば、考えられることは一つ。ルカリオは、どういうわけかこの部屋から姿を消してしまったということ。

ミミロップ「どうしよう……」

自分も書架へ駆け寄りたくとも、ドアから離れるわけにはいかない。離れた途端ドアが閉まり、食堂の時のように鍵をかけられてしまうかもしれない。

それでも、ルカリオが見つかるのなら彼女はそれでいいと思っている。だがこの状況、おそらくドアを離れたところでルカリオを見つける事はできないだろう。確証があるわけではないが、そう思う。

とはいえ、このままじっとしていても事態は好転してくれないだろう。いつ戻るかわからない彼を何もせずただ待つのも、辛いものがある。

どちらを選んでも、悪い未来しか見えない。ならば、どちらを選ぶべきか……彼女の中で、答えは既に決まっていた。

ミミロップ「ルカリオ、ドア離すわよ」

ミミロップはドアを支えていた手を離し、躊躇う事無く薄暗い部屋の中へとその身を滑り込ませていく。

まだ、ドアは閉まらない。閉まってしまえばおそらく出られなくなるばかりか、足元さえ見えない真っ暗闇に覆われることになるだろう。電気のスイッチも一緒に探してはいるが、見当たらない。

仕方が無いので、このままルカリオが消えてしまった書架の向こう側へ近づいていく。まだ、ドアは閉まらない。
 ▼ 798 クケイル@ひみつのカギ 18/12/20 01:11:56 ID:R5iscJr. [2/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




ルカリオ「……何もなさそうだな」

書架の裏側を覗き込み、深くため息を吐く。

緊張しているというわけではないが、視界が悪い中どことも知らない場所をどこにいるのかそもそも存在するかどうかさえわからない何かを警戒するのだ、そう易々と気を抜くことはできない。

ルカリオ「どの棚も本も埃がすごいな……動かしたりなんかしたら咽喉やられそうだ」

それはつまり、ここに置かれている物はしばらく動かされた形跡がないという事。こんな場所で、本当に金属を引きずるような音を鳴らしていたのだろうか。

ルカリオ「床にもそれらしき跡は見当たらない……」

こうなってくると、あの時聞いた物音は本当に実在したのだろうかと疑いたくもなってくる。無論、自分だけでなく愛する妻も一緒に聞いているのだから疑う余地もないのだが。

ただ、幻想の中でなら何も無い所で突然物音を鳴らすことなど朝飯前というやつだ。例えば、今まさにルカリオの耳元で物音を鳴らす事も可能であるはず。それを思えば、物音がした形跡の無い事など取るに足らない問題なのかもしれない。

ルカリオ「……一旦戻るか。特に何もなさそうだし」

もう一度辺りを見回して特に気になる所は無いと頷き、出入り口へと歩いて行く。

距離にしてほんの十数メートル程度。埃だらけの書架を抜けた先に、エントランスからの光に照らされた彼女の影が見える。

痺れを切らしたのかミミロップはドアから少し離れ部屋に入ってきていた。そしてルカリオが戻ってきたのを確認するや否や、彼の元へ飛び込むようにして駆けてきた。

ルカリオ「わっ、ど、どうしたの?」

ミミロップ「どうって、無事に戻ってきたからお出迎えしたの」

ルカリオ「う、うん、ありがと」

ほんの数分離れただけでも寂しかったのだろうか、ミミロップはルカリオの背中に手を回してぎゅっと抱きついた。
 ▼ 799 ングラー@4ごうしつのカギ 18/12/20 01:12:26 ID:R5iscJr. [3/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミミロップ「何もなかったでしょ?」

ルカリオ「え? うん、埃だらけの本棚があるだけで、そもそも誰かが入った形跡すらなかったよ」

甘えてくるミミロップの頭を撫でながら、ルカリオは出入り口に目をやる。

ドアは開きっぱなしになっていて、隙間から入り込んだ光が抱き合うルカリオ達を優しく照らす。それが覗き見されているように思えて、なんだか少し恥ずかしかった。

ミミロップ「ねえルカリオ……」

ルカリオ「うん、なに? わっ」

不意に名前を呼ばれ、視線を彼女へ戻そうとする。しかしそれより先に頬を両手でつかまれ、強制的に彼女の顔を向くようぐいっと引っ張られた。

急にどうしたのだと驚くルカリオ。そんな彼に向ける彼女の目は、いつもより水分を含んでいるように見える。

ミミロップ「キス、して?」

ルカリオ「えっ」

どこかで期待していた言葉に、思わず顔を紅くするルカリオ。これまで数え切れないくらい口付けを交わしてきた二匹だが、面と向かって言われるといまだに照れてしまうのがルカリオの可愛いところ。

ミミロップ「ね?」

どぎまぎしながら頬を染める彼をよそに、ミミロップは目を閉じほんの少し顎をあげた。

軽く咳払いをし、小さく息を吐くルカリオ。一旦彼女から少し離れ体勢を整え、彼女の両肩に両手を添える。そして少しずつ身を寄せ、彼女の顔に自分の顔を近づけていく。

やがてルカリオの視界いっぱいがミミロップの顔に覆われて……彼は彼女の口元を通り越し、耳元までそっと近づいて言った。

ルカリオ「誰だ、お前」
 ▼ 800 ックウザ@リゾチウム 18/12/20 01:12:48 ID:R5iscJr. [4/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
凄みを利かせた重い言葉。ルカリオはミミロップからその身を離し、臨戦態勢をとり始める。

ミミロップ「えっ?」

突然のルカリオの言葉に戸惑いを隠せないといった仕草を見せるミミロップ。だがルカリオは目を細め、彼女を睨むばかりだ。

ミミロップ「きゅ、急にどうしちゃったの?」

ルカリオ「臭い芝居はいらん。ミミロップちゃんのフリしやがって、覚悟できてんだろうな」

ミミロップ「…………」

拳に力を入れるルカリオ。その様子を見てか、ミミロップ……否、ミミロップの姿をした何者かは口角を吊り上げ大きく息を吐いた。

ミミロップ?「……とう」

ルカリオ「……?」

ミミロップ?「おめでとおおおおおおおおう!! 大正解、大正解! いやぁ、すごいわねあんた、あたしの変身術をこんなにも早く見破るなんて、意外だわぁ」

突然態度を豹変させる何者か。中身は全く違うとわかっていても、容姿はミミロップのそれであるためルカリオは不快感を隠せない。

ルカリオ「何者だ? お前がこの洋館の幻想を作り出しているのか」

ミミロップ?「幻想? あぁ、この薄汚い事件の再現? やぁねぇ、こんなレベル低いのあたしじゃないわよ。それをさせてるだけ」

ルカリオ「させてる……?」

腹部に手を当て、げらげらと大笑いする何者か。嫁のミミロップならあり得ない言動に、ルカリオは更に苛立ちを募らせていく。

ルカリオ「何でもいいが、いい加減その姿をするのは止めろ」

ミミロップ?「あら、あなたの大好きな姿でしょう? なら別にいいじゃないの、その方が目の保養にもなるってもんでしょうに」

ルカリオ「悪いけどミミロップちゃんのことなら何でもわかる。だから、いくら姿を似せたところで全く別の誰かだってすぐにわかるんだ。だから、ただただ気持ち悪いだけだ」

ミミロップ?「はぁ、はぁ、そうですかそうですか。なんというか、ええ、強い愛で結ばれた的な? ふはっ、あたしが一番嫌いなやつだわ」

それまで大笑いしていた何者かはルカリオの言葉に表情を一転させ、冷たい視線を彼に向ける。そして次の瞬間、ルカリオの目の前の空間が歪み、そこから誰かが姿を現した。

ゾロアーク「どうも〜ゾロアークちゃんで〜す」
 ▼ 801 ングース@ゴツゴツメット 18/12/21 10:12:25 ID:sKUgAL6Q NGネーム登録 NGID登録 報告
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ゾロアーク……
 ▼ 802 ンナ@ガブリアスナイト 18/12/22 02:48:33 ID:z.8cwOsM [1/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
幻術の使い手ゾロアーク。

ゾロアークの作り出す幻はどんな者でも騙す事ができると言われ、彼らにかかれば対象の現実と幻想の境目を有耶無耶にして精神を破壊する事も可能だという。

ただ、ゾロアークという種族は個体によってその力の使い道が様々で、悪意を持って悪戯をするために使う者もいれば、ただ外敵から身を守るためだけに使う者もいる。今ルカリオと対峙している固体は、どうやら前者のようだ。

ゾロアーク「初めまして、じゃないわね。あんたの事は以前に見てるわ」

ルカリオ「なんだと……?」

彼女の言葉に、過去を思い返してみる。

しかし、仮に遭遇していたとしてもおそらくゾロアークの姿として出会ってはいないだろう、どれだけ考えても思い当たる節は無い。

ゾロアーク「あら、そっちはわからないの。愛する彼女のことだけかしら、あたしのイリュージョンを見破れるのは」

ルカリオ「ミミロップちゃんのことなら何でもわかるって言っただろ」

ゾロアーク「のろけんなや吐きそうになるわ」

にやにやと笑っていたと思えば、一瞬で冷たい表情を浮かべる。情緒不安定なのかルカリオを惑わすためにわざとそうしているのか、変化に忙しい。

ゾロアーク「ま、あたしたちの邪魔するわけじゃないっていうなら、別にあんたたちに興味なんてないけどさ」

ルカリオ「邪魔も何も、そもそも関わろうって予定は無い」

ゾロアーク「バンギラスは殺してくれたのに?」

それはトウカの森の事を言っているのだろうか。誰かに化けてそれを見ていたのか、後で話を聞いたのか。ともあれ、このゾロアークはあの件に何か関わりがあったようだ。

ルカリオ「……俺達じゃない」

ゾロアーク「そうかしら。まぁ、それも私には興味の無い話なんだけど」

厳密に言えばルカリオ達が殺したわけではないのだが、ばっちり関わってしまってはいる。興味無いと言ってはいるが、彼女達にしてみれば同じことなのかもしれない。
 ▼ 803 ルシアン@ボーマンダナイト 18/12/22 02:49:20 ID:z.8cwOsM [2/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルカリオ「……俺達に興味無いっていうなら、ひとつ話したい」

ゾロアーク「あら、何かしら?」

ルカリオ「俺達は格闘大会に出るため各地を回ってるだけだ。お前達が何をしているかは知らないが、関わる気もなければ興味だって全く無い」

ゾロアーク「まぁ、そうでしょうね」

ルカリオ「ああ。だから、ここはお互いに剣を納めて背を向けないか?」

できれば無駄な戦いはしたくない。ゾロアークたちがルカリオたちの目標を妨げるようならば話は別だが、様子を窺う限り少なくとも彼女はルカリオ達に好き好んで何か仕掛けようとしているわけではなさそうだ。

以前に多少関わってしまっていたとしても、今後はお互い見向きしないということでこの場をおさめようとルカリオは考えた。

ゾロアーク「……まぁ、正直なところあんた達の存在は邪魔になりつつあるのよ」

ルカリオ「邪魔に、だと……?」

不穏な言葉に、緊張の色を濃くするルカリオ。

ゾロアーク「だからこそ、関わらないのであればこちらとしてもやりやすい所ではある。実際、ボスゴドラに危害は加えられていない。まぁ出会わなかっただけなのかもしれないけど? 報告じゃ近くを通ったらしいと聞いてるからねぇ」

ルカリオ「ボスゴドラだって……?」

ボスゴドラといえば、つい最近その姿を見た。ピカチュウと共に木の実を探したあの丘の上、それも、全身を漆黒の色に染め上げた個体だ。

もしその個体の事を言っているのだとしたら、ある仮説が出来上がる。ゾロアークの言葉、そしてフライゴンが話してくれたこと、全てを一つの線に繋げてみるなら、怖ろしい事実が浮かび上がってくる。

今、目の前にいるゾロアークは、ポケモンの生体実験を行っているという組織のポケモンなのではないか。

ルカリオ「(それに、ゾロアークってもしかして……)」

更に、思い当たるものがある。ミミロップから聞いた話に、見た目と中身が違うポケモンの話があった。もしかしたら、このゾロアークこそが、ミミロップ達に地獄のような日々を味わわせたポケモンなのではないか。
 ▼ 804 シレーヌ@フィラのみ 18/12/22 02:49:52 ID:z.8cwOsM [3/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
もしそうであれば、ルカリオはゾロアークを赦すことはできない。愛する妻を酷い目に遭わせたポケモンだ、殺しても殺しきれない、そういう思いがこみ上げてくる。

だが、確証は無い。それを確かめる事が悪手であることも、充分わかっている。

ルカリオ「(落ち着け、俺……)」

隙を見せない程度に大きく呼吸するルカリオ。

わからないなら、わからないままでいい。今彼が優先すべき未来は、愛妻と共に無事この洋館を出ること。そのために、妙な勘繰りは止め、大人しく引き下がること。

ゾロアーク「まぁ少なくとも、私は興味無いから。いいわ、その話乗ってあげる」

ルカリオ「……助かる」

意外とすんなりルカリオの提案を呑み込んだゾロアーク。そうやって隙を誘っているのではないかとも思えたが、とりあえず素直に彼女の同意を受け取っておく。

ただ、彼女は「私は」と言った。それはつまり、彼女ではない他の組織の連中による接触については感知するところではない、というようにも聞こえる。

無論現状ではこのゾロアークがフライゴンの言っていた怪しい組織の一員であることさえ定かではないが、その可能性を考慮して今後動いても損はないだろう。というかむしろ、それについてくらいしか思い当たる節もないためそれ以上は気をつけようがない。

ゾロアーク「あぁ、そうそう。この洋館だけど、ひとつ良い事を教えておいてあげる」

ルカリオ「……なんだ」

ゾロアーク「ふふ、いちいち警戒しちゃって、カワイイ」

にやりと鋭い笑みを浮かべてルカリオを嘲笑するゾロアーク。今の笑みをあまり不快に思わないのは、彼女の幻術のせいかもしれない。

ゾロアーク「あなた達を迷い込ませているポケモンはね、未練があるの。強い強い未練よ。ここを出るには、その未練を晴らしてあげる必要があるの」
 ▼ 805 ードラ@リニアパス 18/12/22 02:50:19 ID:z.8cwOsM [4/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルカリオ「と言われても、俺達にはさっぱり何が未練なのかわからないし、そもそもそいつがどこにいるのかもわからない」

ゾロアーク「ふふ、そうね、そこはあたしが面白くなるよう中々会えないようにしてるもの。迷い込んできたのがあなた達でなければ、もっと状況を楽しんでいたわ」

なんとも悪趣味なポケモンだ。だが、相互不干渉という事で話が纏まったことを考えると、結果として彼女に目をつけられていて良かったのかもしれない。つけられていなければ、今も洋館内部をぐるぐる歩き回っていたかもしれない。

ルカリオ「……で、そいつはどこにいる」

ゾロアーク「関わらないって約束しちゃったし、そうねぇ、すぐにでも会わせてあげようかしらねぇ」

どこか状況を楽しむように彼女は顎に手をあて、にやにやと笑いながらルカリオに視線を投げる。

あからさまな挑発。勿論そんなものに乗っかってしまうルカリオではない。彼はゾロアークの視線を受け流しつつ、機嫌を損ねぬよう落ち着いて言葉を続ける。

ルカリオ「頼む。そいつを何とかしたら、すぐにでも出ていくから」

ゾロアーク「まぁ、あんた達をとどめておくより新たな来客を待つ方がいいかしら。また、表でやってたみたいに盛られても困るし」

ルカリオ「っ!」

誰もいないと思っていたが、どうやらゾロアークには見られていたようだ。恥ずかしい思いと、ミミロップと同性とはいえ愛する嫁の淫らな姿が自分以外の者の目に晒されてしまった事実に激しい怒りを覚える。

おそらく、この洋館に関する淫楽の噂はゾロアークの仕業によるものだろう。どの程度覗かれていたのかはわからないが、これには牙をむき出しにするしかない。

ゾロアーク「唸っちゃって、あんたっていちいちカワイイわねぇ。むしろ気に入ってきたかも」

ルカリオ「そいつはどうも。まぁ、誰に気に入られようと俺はミミロップちゃんしか見ないけどね」

ゾロアーク「まぁまぁ、はぁはぁ、秒でふられちゃったわ。くっそどうでもいいけども」

またのろけはやめろと言って睨まれると思い身構えていたが、どうやらゾロアークは上機嫌のようでやれやれと両手を持ち上げるだけだった。

ゾロアーク「ま、教えといてやるか。あんた達を洋館へおびき寄せたポケモンと、その目的を」
 ▼ 806 ツベイ@すいせいのかけら 18/12/24 16:42:38 ID:pVK2lIIM NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
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 ▼ 807 クロー@つりざお 18/12/24 23:23:40 ID:fliM28gI NGネーム登録 NGID登録 報告
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 ▼ 808 ャノビー@ねっこのカセキ 18/12/28 19:52:56 ID:UrdIZAus NGネーム登録 NGID登録 報告
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 ▼ 809 リル@エレクトロメモリ 18/12/29 07:41:11 ID:vhvYEM2I NGネーム登録 NGID登録 報告
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 ▼ 810 シャマリ@ちからのハチマキ 18/12/31 00:18:45 ID:L3hcfcpk [1/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ゾロアーク「ヤツ……ゴーストがいるのは、二階の右端の部屋。ふふ、殺人事件があった場所よ」

ルカリオ「殺人事件?」

それはまた物騒な話が出てきたと、ルカリオは眉間に皺を寄せる。

ゾロアーク「ええ。この洋館は、謎が多いの。噂では、心中事件があったとか殺人事件があったとか、まぁ色々人間達の中で噂になってるわね、ただ、ゴーストが持っている未練はその事件についてじゃなくて、それよりもっと後で起きた事件についてよ」

ルカリオ「また何か起きた、ってことか?」

ゾロアーク「まぁ、そうなるわね。というか、昔の事件を調査しにきた警察の手持ちが、そのゴーストなの」

未だに謎の多く残る、この未解決の事件を捜査しに来たのだろうか。しかし、その警察の手持ちが未練を残してこの地に留まっているとくれば、何があったか想像に難くない。

ルカリオ「再捜査で殺されたのは、その警察官ってことか」

ゾロアーク「そういうこと。でもただの殺人事件じゃなかったのよね。非常に不可解で、ありえない事件だった」

ルカリオ「ありえない事件……」

ふと、食堂で見つけた手記のことを思い出す。この手記の持ち主はもしかしてその警察官で、浮かび上がってくる文字は彼が書き記したものなのではないか。

そして、ゴーストの未練を晴らす事が、ここ洋館からの脱出に直結する。つまり、ミミロップの言っていたことはあながち間違いではなかったということだ。

ゴーストはおそらく、事件の真相が知りたいのだろう。何がどうなっているかわからないまま事件が起き、主は巻き込まれて被害者となってしまった。事件を解決することで、彼の未練は消えていく。

ルカリオ「……だけど、それは過去の話じゃないか。今の俺たちがどうにか知ることなんてできるのか」

ゾロアーク「馬鹿ね。だから、あたしがいるんじゃない」

ゾロアークは両手を広げて挑発的に笑う。

彼女がゴーストの持つ記憶を幻想化し、迷い込んできた者の目に幻覚として具現化する。この幻覚を見ていくことで、事件の真相を読み解く事ができるかもしれないという話だろう。

ならばこの状況はゾロアークの悪戯というより、彼女の優しさのようなものなのではないか。そう思えば、このゾロアーク、そう悪いやつではないのかもしれない。
 ▼ 811 ンジャラ@きょうせいギプス 18/12/31 00:19:11 ID:L3hcfcpk [2/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ゾロアーク「ま、詳しくは本人に聞きなさいな。なんなら幻想の中を歩いて手がかりを探してもいいし?」

ルカリオ「お前は真相を知らないのか?」

ゾロアーク「はぁ? あたしはただゴーストの未練を利用して幻想を作り出しているだけ。それにポケモンや人間を迷い込ませているだけよ」

それは、無理矢理ではあるが事件を解決できそうな誰かを探している、とも聞く事ができる。そういうことなのだろうと問うたところで彼女が頷くとは思えないが。

ルカリオ「(いや、それよりも、だ)」

彼女が良心的に幻想を作っているかはさておき、ゴーストの未練を晴らすヒントになる事はできるだけ知っておきたい。もし幻想を作り出しているゾロアークにしかわからないような事実があるのなら、事件解決に役立てたいところ。

ルカリオ「どういう事件だったんだ?」

ゾロアーク「いや、だからそれは本人に訊きなさいってば」

ルカリオ「それは勿論なんだが、お前が知ってる事もヒントになるかと思ってな」

ゾロアーク「はぁ、そうですか。まぁまぁ、確かにあたしなりの? 推理じゃないけど、思う所がないわけでもないですけどねぇ、はい」

もったいぶっているのかゾロアークはにやにやと下品な笑みを浮かべながら、ルカリオを品定めするようにじろりと見回す。ここまで長らく話しておいて品定めも何もあったものではないのだが、彼女の言動はどうにも理解が難しそうだ。

ゾロアーク「あたしも答えは知らないのよ? ただ、どういう事件があってどういう状況だったかを知ってるだけで。もっと言えば、ゴーストが見たり聞いたりしたものしか再現できないからねぇ」

ルカリオ「それでもかまわない。一から話さなくてもいいから、見解だけでも教えてくれればと思う」

ゾロアーク「仕方ないわねぇ……」

そういう話をするのは嫌いではないのだろうか。ゾロアークは上機嫌に腕を組み、ポーズを決めてルカリオを見た。

ゾロアーク「はっきり言って、これは不可能犯罪。だけど、確実に人間の手によって引き起こされたもの。そう、あたしは思うね」
 ▼ 812 ラベベ@ナゾのみ 18/12/31 00:19:41 ID:L3hcfcpk [3/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルカリオ「つまりそれは……」

ポケモンにしかできない殺害方法であったり、超常現象的な何かが原因となったりしているわけではない、ということだろうか。それを尋ねるより先に、ゾロアークはこれでお仕舞いとばかりに右手を前に出し、左右にスライドさせた。

ゾロアーク「あたしからはそれだけ。じゃ、一応あんたの言う事呑んであげるから、さっさと解決するなりしてここを出て頂戴ね」

ゾロアークは一瞬だけ厳しい視線をルカリオに向け、再び不気味な笑みを浮かべて踵を返す。そしてルカリオの言葉も待たずに歩き出し、やがて書架の暗闇に消えていった。

追いかけても、きっと彼女を見つけることさえできないだろう。もしかしたら、さっきの彼女の姿さえ幻想だったのかもしれない。

ルカリオ「……で、俺はどうしたら」

声「あ、ルカリオ!」

と、突然後ろから声をかけられる。

振り向けば、そこには世界一大切な者の姿。

ルカリオ「ミミロップちゃん」

ミミロップ「もう、急に消えちゃうからどうしたのかと思ったわよ!」

両手を腰にあて、怒りをあらわにするミミロップ。ぷっくりと頬を膨らませる様子も可愛らしい。

ルカリオ「ごめんごめん。俺は大丈夫だから」

ミミロップ「ならいいけど……」

ルカリオはミミロップを抱き寄せ、優しく抱きしめる。

ああ、これだ。この感触、匂い、ぬくもり、どれをとっても自分が愛してやまない存在に間違いない。ルカリオはそれを確信し、抱きしめる手に力を込めた。
 ▼ 813 ノノクス@しろいハーブ 18/12/31 00:20:01 ID:L3hcfcpk [4/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




ルカリオ「……というわけらしい」

そのままずっと抱き合っていたいのも山々だが、状況を解決する事が先決、名残を惜しみながらもルカリオはミミロップから手を離し、ゾロアークに会った事を話した。

現時点ではここを出る事が最優先……ではあるのだが、彼女に隠し事をしたくないという一心で、ルカリオはゾロアークが組織の一員である可能性や、もしかしたらミミロップやアブソルを酷い目に遭わせたポケモンかもしれない事も話した。

それを聞いて、最初は驚きと怒りに目を見開いていたミミロップだが、さすがもう以前の彼女ではない、すぐに落ち着きを取り戻し短く息を吐いて気持ちを切り替えた。

色々と思う所はあるだろうが、今優先すべきは彼女に対する憎しみを募らせることではない。ミミロップは長い耳をかき上げた。

ミミロップ「てことは、そのゴーストを探し出して事件の推理を聞かせてあげたらいいのね」

ルカリオ「たぶん。正解を言わないと出られないのか推理だけでも大丈夫なのかはわからないけど、とにかくゴーストに会って話をしないとね」

ミミロップ「でも聞いた感じじゃ、ゴーストに会う前に事件について調べておく必要がありそうだけど」

ルカリオ「まぁ……そうするより仕方ないか」

人間達の間で起きた事件についてポケモンが思案をめぐらせるというのもおかしな話ではある。本来であれば関わる事を遠慮したい案件ではあるが、状況が状況だ、仕方が無い。

ミミロップ「サーナイトさんいたらなぁ」

ルカリオ「俺たちじゃちょっと頭脳が足りないかもね……」

何とかやってみようと決めたはいいものの、彼らは頭より身体を使う方が得意。本当に推理らしい推理を思いつくかさえ怪しいものだ。

ルカリオ「あ」

ミミロップ「どうしたの?」

ルカリオ「手記が……」

また何かの条件を満たしたのだろう、ルカリオの持つ手記に新たな一文が追加されていた。
 ▼ 814 ニスズメ@ほしのかけら 18/12/31 00:20:25 ID:L3hcfcpk [5/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

『おかしい、ありえない。この部屋は外側からしか鍵がかけられず、中から扉を空ける事は不可能。つまり、ここから出ていけるわけがない。だが、この部屋の鍵は事件の起きた部屋で見つかった。まるで意味がわからない』


ルカリオ「ふむ」

ミミロップ「意味がわからないのは私達だっての」

どうやらこの部屋でも何かが起きたようだが、新たに浮かび上がってきた文字からそれを読み取ることは難しそうだった。

ルカリオ「で、次はどこへ……」

バタン!

ルカミミ「!」

狙いすましたように、物音が聞こえてくる。どこかのドアが強く閉まったような音だ。

ルカリオ「うまい具合に案内されてるって感じだね」

ミミロップ「これ、ゾロアークがやってるの? 私達にさっさと出てって欲しいならこういう面倒なことしなきゃいいのに」

ルカリオ「ほんとにね」

それでもやはり幾らかは迷い込んだポケモンの動きを見て楽しみたいのだろうか、そう簡単にゴーストの所へたどり着かせてはもらえないようだ。

ルカリオ「今の音は、どっち?」

ミミロップ「今の私達から見て丁度三時の方向ね」

ルカリオ「奥の部屋か」

部屋のドアを開け、三時の方を見る。正確に言えば右側には壁しかないわけだが、その向こうは広い部屋か廊下にでもなっているのだろう。とりあえず、ここから音源は見えそうにない。

ルカリオ「……でも、何が起きるかわからないからね。あのゾロアーク、すごく気まぐれっぽかったから」

ミミロップ「好きじゃないタイプだわ。って、聞かれてるかしら?」

ルカリオ「あはは、どうだろうね」

聞かれていないのか、聞かれていても流してくれているのか、彼女の言葉に状況が変化する様子はなかった。
 ▼ 815 リル@ロメのみ 18/12/31 00:20:58 ID:L3hcfcpk [6/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



部屋を出て音のする方に向かえば、大きなドアに辿り着く。そのドアを押し開けて中へ入ると、広い廊下と垂直に交わった。

廊下はそれなりの長さを誇っているが見通しは良く一直線であるため、端から端まで動かずとも見渡せる。丁度正面に一つ部屋があり、これを中央に、左右に二つずつ部屋が見える。部屋の位置まで完全なシンメトリー、この光景にはどこか不気味なものさえ感じてしまう。

ルカリオ「どの部屋かな?」

ミミロップ「音がしたのは一番右の部屋だと思うわ」

ミミロップが言うのだから間違いないだろう。ルカリオはミミロップの手をぎゅっと握り、少し先導するように歩き出す。

正面の部屋、その隣の部屋と通り過ぎて行く。どちらの部屋もドアが閉まっていて中の様子を見る事はできなかった。

そして、何も起きないまま一番奥の部屋の前に立つ。

ルカリオ「このドアが閉まったのか」

ミミロップ「実際に閉まったかはわからないけどね」

それでも物音がしたのはこの場所だ。誘導されているのだとしたら、次の目的地はここで間違いないだろう。

ルカリオ「……あけるよ?」

ミミロップ「うん……」

そっとドアに触れる。事件当時を再現しているのだろうか、相変わらず豪華絢爛な周囲とは異なり、この部屋のドアは錆びてぼろぼろだった。

ルカリオ「……開いたな」

ミミロップ「鍵とかかかってなかったわね……」

ぎぎぎと軋む音が想像以上に大きく響く。それに二匹は驚きこそしなかったが、思わずぐっと身構えた。

ミミロップ「……真っ暗ね」

ルカリオ「また暗いのか……やだなぁ」

ドアを開けた分廊下の明かりが室内を照らすのみで、どんな部屋なのか何が置いてあるのかまるでわからない。
 ▼ 816 ガラティアス@モンスターボール 18/12/31 00:21:35 ID:L3hcfcpk [7/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルカリオは波動で探りを入れてみるも、特に気になるものは感じない。ミミロップも耳を立てて物音に集中するが、何の音も聞こえず静かなものだ。

ミミロップ「あれ、それ光ってない?」

ルカリオ「え、ほんとだ」

それというのは、ルカリオの持つ手記のこと。もしかして内容が更新されているのかもしれない、少しの期待を胸に、ルカリオは手記を開いた。


『部屋の中で彼女に待機してもらい、部屋の前で俺はゴーストと警備をした。窓には鍵をかけてもらい、このドアは二重ロック。ゴーストには黒い眼差しを応用してもらい、ゴーストタイプでも部屋の中に入れないように仕掛けをしてもらった。だが、彼女は殺されてしまった。犯人は誰も侵入などできるはずも無い部屋に入り、彼女を殺し、忽然と姿を消してしまった。この洋館では、本当にありえない現象が起きるというのか……』


ルカリオ「なんか核心みたいなのきたけど」

ミミロップ「でも、文面からしてゴーストの主が殺されたわけじゃないみたいね。むしろ、誰かを守ってた?」

ルカリオ「そうっぽいね。てことは、ここでの話はあんまり関係ないのかな?」

ミミロップ「でも、こうして幻覚を見せられてるって事は、これも解かなきゃいけないんじゃないの?」

ルカリオ「まじかよ」

おそらくは、ここで起きたらしい事件の真相がゴーストの主の死の真相に絡んでくるのだろう。主を死なせた人物とここで起きた事件の犯人は、同じなのかもしれない。

ルカリオ「これ以上は何も書かれてない」

ミミロップ「部屋の中を見てみるしかないか……」

二匹して、視線を室内に戻す。

ミミロップ「あ」

するとその瞬間、部屋の中がぱっと明るくなった。

ルカリオ「なーんか、遊ばれてるなぁ」

最初は不気味な状況に恐怖さえ感じていたルカリオだが、ゾロアークの仕業とわかってしまえばなんということはない、次々起きる怪奇現象にただただ苛立ちが募るばかりである。
 ▼ 817 プリン@おこづかいポン 19/01/03 22:52:51 ID:l0A2Gi2w NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 818 ーマルド@ぎんのはっぱ 19/01/22 03:07:58 ID:092AMjsE NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 819 ガルガン@エスパーZ 19/02/01 22:20:37 ID:jT0M9Uiw NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 820 ードラ@あかいバンダナ 19/02/08 18:35:42 ID:UGMsbXbI [1/5] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ミミロップ「入る?」

ルカリオ「まぁ……そうしないと話が進まないんだろうな」

入った途端ドアが閉まってまた閉じ込められる、なんて事も考えられる。さっさと出て行けと言う割にきっちりしかけ染みたことを順々に起こしているのだ、きっとそれくらい当たり前のようにしてくるだろう。考えの読めない相手に、二匹は辟易とするばかりだ。

ミミロップ「またドア見張る?」

ルカリオ「ううん、一緒に行こう。何かあるとしたら、どうせさっきみたいに強制的に連れられる」

ミミロップ「もう同じことか」

言うが早いかドアを開けきり、明るくなった室内へ。

部屋の中は、事件当時を再現しているのか、書斎のような部屋と同じく内装がぼろぼろだった。壁紙ははげ物は散乱し床は塵や埃にまみれ、酷い有様である。事件が起きた当時でさえ、この洋館が無人となってから数年が経過しているのだ、仕方が無い事ではあるのだが。

ただ、その当時は誰かがここを使っていたのだろう、部屋の中央は比較的ゴミが少なく、物を動かした跡も見える。

ルカリオ「手記の内容から考えれば、ここで誰かが被害に遭ったんだよね」

ミミロップ「入れないはずの部屋に侵入した犯人に殺された、ってやつね」

ルカリオ「入る事も出る事も不可能な状況、か……」

ざっと部屋の中を見回してみる。ぼろぼろの内装が見えるだけで、特に変わった点は見当たらない。

ミミロップ「えっと、窓は鍵かかってるのよね。で、このドアにも二重ロックがしてあって、ドアの前にはゴーストの主がいたと」

ルカリオ「そのゴーストがポケモンさえ部屋に入れないように術を施してたらしいから、完全に密室だね」

ミミロップ「で、部屋の中でかくまわれてた? よくわかんないけど、その人は何故かやられちゃったと……何か感じたりしない? 残留思念的な」

ルカリオ「やってみるけど、ここ自体が幻想の中だしなぁ。実際にその場に立ってればまだわかったかもだけど」

たぶん無理だろうと思いつつも、目を閉じ神経を集中させ波動で周囲を探ってみる。が、やはり何も得られないようで、ルカリオは目を開くなり肩をすくめてみせた。
 ▼ 821 ラーチ@きょかしょう 19/02/08 18:36:15 ID:UGMsbXbI [2/5] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ルカリオ「カラクリもなさそうだし、誰かが隠れられる場所もないか……うーん、状況はわかったけど、それでどうしたらいいんだ」

ミミロップ「確認できたらもう次でいいんじゃないの? これ以上何もないでしょ。手記は?」

ルカリオ「ん、追記があるかも」

手記を開く。予想通り、そこには新たな文がいつの間にやらつづられていた。


『同時に起きた書斎での殺人。書斎には鍵がかけられており、その鍵はこの部屋から見つかった。つまり、書斎に出入りするには、密室となったこの部屋から鍵を持ち出し、再びここへ戻さなくてはならない。そんなことできるわけがない。テレポートの応用ならできるのだろうか、しかしポケモンの気配は一切しなかった。技を使った跡も見られなかった』


ミミロップ「さっきの、あの変な部屋でも何かあったのね。でも、同時に起きたうえに部屋の鍵がこの部屋にあったのか……」

ルカリオ「鍵を使って開閉するのに同時って、無理じゃない? 多少のズレはあるのかな」

ミミロップ「ぜーんぜんわかんないわ」

当時どのような状況だったのか、手記に書かれている事がどの程度正確なのか、何一つわからない。ただわかるのは、この部屋でも書斎でも密室殺人が起きていて、いわゆる不可能犯罪であるらしいことだけ。

カツーン

ルカリオ「……また音か」

ミミロップ「今度はあっち……中央の部屋かしら」

部屋から顔を出し、廊下の向こうを指差すミミロップ。同じようにルカリオも廊下を覗き込み、前に突き出されたミミロップの指を手ごと握って、来た時と同じように廊下を歩き始めた。

今度は廊下の各所にも視線をやり、何か不審な点がないか探してみる。無論、何が不審で何がそうでないか、彼らにわかるとは限らないのだが。
 ▼ 822 ォレトス@ソクノのみ 19/02/08 18:36:36 ID:UGMsbXbI [3/5] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
廊下中央、ちょうどこの廊下へ入ってきたドアの真正面の部屋から物音が聞こえてきたらしい。その部屋を前に、二匹は顔を見合わせる。

ルカリオ「あけるよ」

ミミロップ「うん」

ドアに手を沿え、力を込める。

ドアはやはり軋む音を響かせ、ゆっくりとその身を部屋の中へと滑り込ませていった。

ミミロップ「今度は最初から明るいわ」

ルカリオ「ここでは事件とか起きなかったのかな?」

そこは、どうやら寝室のようだった。これまたシンメトリーのように、部屋の左右に窓や本棚、ベッドなどが置かれている。違っているものといえば、ゴミ箱が一つしかないことくらいだ。

そして、この部屋も同様にぼろぼろだった。どうしてエントランスや廊下は煌びやかなのに、部屋の中だけは風化しているのか……ゴーストが何を訴えたいかが、いまいち把握できない。

ミミロップ「手記は?」

ルカリオ「ん……なんか、やばそうな感じだ」

そこに浮かび上がった文字を見て、ルカリオは眉をひそめる。


『終わりだ、全てが終わりだ。主人は殺されてしまった。何者かに。この洋館で起きた、事件の犯人に。でも、ありえない。だって誰も残ってない。みんなみんな、殺されてしまった。じゃあ誰が主人を殺したんだ? 誰か知ってるなら教えてくれ。誰でもいい、俺に何が起きたのか、真相を教えてくれ……』


ミミロップ「真っ赤な字……これ、ゴーストかな?」

ルカリオ「たぶんね。おそらく、主人が死んでしまって、残された彼が最後だけ書き記したんじゃないかな」

血を思わせるような、真っ赤な字。ゴーストが何でこれを書いたかはわからないが、この文字から彼の悲痛さがよくよくうかがい知れる。
 ▼ 823 ナップ@ウッディメール 19/02/08 18:36:54 ID:UGMsbXbI [4/5] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
声「……君達が、事件の真相を解いてくれるのかい?」

ルカリオ「!?」

ミミロップ「きゃっ」

急に後ろから声がした。

慌てて飛び退き振り向けば、いつの間にそこにいたのか、ゴーストがぽつんと浮いていた。彼が手記に出てきた、そして最後の文章を書き連ねたゴーストなのだろうか。

ルカリオ「……お前が知りたがってるのは、真犯人か?」

ゴースト「おぉ、その手記、読んでくれたんだね。よかった、よかった」

ミミロップ「読んだも何も、強制的にそうするようになってたみたいなもんだけどね」

おそるおそるゴーストの出方を窺うルカリオに対し、ミミロップはやれやれといった風に両手を挙げている。何が起きてもこの感じ、彼女の肝っ玉には感心すら覚える。

ゴースト「それなら、教えてくれ。誰が主人を殺したんだ……」

ルカリオ「まぁ待て。俺たちは確かに手記に書かれている文字を見たが、正直何がなんだかわからない。説明できる事があれば、教えてくれないか」

ゴースト「……そうかい」

ルカリオ「頼む。協力したいのは山々なんだが、情報が少なすぎる」

ゴースト「……仕方ないな」

ルカリオの言葉にゴーストは一瞬途轍もなく怖ろしい顔をしたように見えたが、彼が納得して話を始めてくれる頃にはそれは見る影もなかった。

ゴースト「俺と俺の主人は、ハクタイシティの警察署で働いてたんだ。っても俺たちは窓際刑事みたいなもんで、捜査はいつも主人とその先輩としかしなかったけどな。それで、ある日から俺たちは、この洋館で起きた事件について調べることになったんだ」
 ▼ 824 ガスピアー@かえんだま 19/02/08 18:38:32 ID:UGMsbXbI [5/5] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告


そもそも事の発端は、ハクタイシティ郊外で起きた事故にあった。

当時珍しく出動を要請された俺の主人は、世話になってる先輩刑事と共に現場へ急行。現場は森のすぐ近くで、辺りは日中でも人気(ひとけ)が全く無い場所だった。

近くには木に衝突し、正面がボコボコになった車があった。どうも、運転を誤って木にぶつかり、その衝撃で外へ放り出されてしまったらしい。ただ、衝突した時点で即死だった。

その事件はそれらしい何かが見つかったわけでもなかったから、事故として処理されたんだ。一応関係者を洗い出して事情聴取もしたんだけど、事件性が薄いからか誰も彼もすぐに解放されたんだよ。

それからも何かが起きるわけでもなく、その事件はそれで終了。捜査もほとんどされないままに、すっかり過去の事件となってしまった。

だけど……ある日のことだった。

その事故について、ある情報が寄せられた。それは、あれは事故ではなく殺人だったというものだった。

とはいえ、事故発生当時はうちの主人はじめ警察達がきっちり捜査した。車に細工された形跡はなかったし、被害者が例えば睡眠薬を飲まされていたような事もなかった。曖昧な捜査をしたせいじゃなくて、きちんと捜査がされたうえで事件性は薄いと判断されたんだ。

ただ、その情報には気がかりな事が記載されていた。それは、誰もが首を傾げるような、この事故と何の関連性があるかわからないような、そんな内容だった。

『一週間後、森の洋館で真実が暴露される。この情報は関係者に送られている。真実が知りたければ、またはそれを止めたければ、現地へ赴くべし』

勿論、警察はこんな情報鵜呑みにしない。ただ、うちの主人とその上司は念のためにということで、洋館へ向かうことになった。

そして、事件は起きてしまった。
 ▼ 825 ミロル@サイコシード 19/02/09 17:35:04 ID:tABc37Qg NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 826 獣先輩の後輩のデデンネ 19/02/10 02:18:41 ID:g5gARlLM [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援するしかない
 ▼ 827 獣先輩の後輩のデデンネ 19/02/10 14:59:24 ID:g5gARlLM [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
というか、作者が今まで書いたssのurl教えてくれ、誰でもいいから
 ▼ 828 サルミ◆tgqAAlSPpw 19/02/17 01:43:07 ID:RYu6GSD6 [1/8] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
>>827
ご興味くださりありがとうございます。
宣伝するのも忍びないので、僭越ながら数点ほどだけ。

ゼクロム「月が綺麗だな」レシラム「…………」
https://pokemonbbs.com/poke/read.cgi?no=811768&l=1-

ミミロップ「安価でエッチのマンネリ化を解消したい」
https://pokemonbbs.com/poke/read.cgi?no=812371&l=1-

不思議な仮面舞踏会
https://pokemonbbs.com/poke/read.cgi?no=824351&l=1-

あとはツイッターに纏めているので、もしよかったらそちらを覗いてくださるとありがたいです。
 ▼ 829 ワンテ@サンのみ 19/02/17 01:43:52 ID:RYu6GSD6 [2/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
俺たちが洋館に来たとき、既に関係者たちはそこに集まっていた。

被害者の友人であったエリートトレーナーの男、被害者とネットで知り合ったというオカルトマニアの女、雑誌記者をしているという男、全く別な理由でここへ来たというガールスカウト、このときはいなかったんだけど後で洋館に来た謎のジェントルマン。そしてもしものためにジョーイさんを一人連れてきて、主人と上司も合わせて計8人の人間がこの洋館に集まった。

このうちエリートトレーナーとオカルトマニアについては事故当時も事情聴取を行ってたから顔見知りだったけど、記者はどこで話を聞きつけたのか、何故か最初から集合してた。ジェントルマンは道に迷ったらしく、その日の夜に洋館を訪れたんだ。ガールスカウトについては最後まで理由がよくわからなかったけど、なんか探し物をしてるとか言ってた。

集められた総勢は何かが起きる事を警戒するも、いつまでたっても何も起きないし誰も来ない。悪戯にしては事情を知りすぎているということで確実に何かはあるんだろうという話になったけど、日が暮れても夜を迎えても、洋館で何かが起きることはなかった。

自分の目的がなかなか達せられないのかガールスカウトは洋館を離れなかったし、そうこうしているうちにジェントルマンが洋館を訪ねてきた。それでも、洋館で何かが起きる気配は一切しなかった。

ただ、俺の目から見ても、エリートトレーナーとオカルトマニアは怪しかった。事件は事故として処理されているにも関わらず彼らはここに集まり、悪戯だという可能性を排除してここに残り続けている。彼らを疑うわけではないが警察も知らない事情を知っているようだったから、主人と上司は事件について知ってる事をお互い話そうと提案した。

状況が状況だからか、彼らは当時話さなかった事情を説明してくれた。どうしてあの時言わなかったんだと問い詰める事もできたけど、この時はそれよりも状況をどうにかする方を優先させたくて、主人たちはただ彼らの話を静かに聞いた。

しかしわかったのは、事情聴取当時聞いていたよりも彼らは事故被害者と深い関係にあったという話ばかりで、事件に結びつきそうな何かは全く無かった。勿論、彼らがもし事件に深く関わっていた場合それを隠している、という可能性はあったけど。

その中でひとつ、気になる話があった。それは、事故被害者がこの洋館に関係していたらしいというもの。この話は記者の男が主人達の話に横槍を入れる形でされたものだったけど、非常に興味深い内容だったから一旦事情聴取を取りやめて、皆でそいつの話を聞くことにしたんだ。
 ▼ 830 ルメタル@ヒコウZ 19/02/17 01:44:07 ID:RYu6GSD6 [3/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
事故被害者はそもそも、善人ではなかった。いわゆる「お宝」を求めて各地を点々とする、いわばトレジャーハンター。しかしその実態は、目的のものを手に入れるためには盗みも厭わない、非道な心の持ち主だったらしい。

その彼はこの森の洋館に目をつけ、暫くの間ハクタイシティに滞在していた。ハクタイシティには『この洋館ではその昔事件が起きたため今では無人となっている』という誰もが知っている話が存在する。これについては様々な憶測や噂が飛び交っているが、中には「洋館のどこかに財宝が眠っている」などという、いかにも彼が飛びつきそうな案件も噂されていた。

記者の男が言うには、彼はその手がかりかもしくは現物を見つけたのではないか、とのこと。そして、もし彼が死ぬこととなってしまった事件が事故ではなく殺人だとするのなら、動機はこの案件に深い関わりがあるのではないか。そう彼は推理した。

いかにもそれらしい話。というか、主人含めここに来た面々を集めたのは記者の彼ではないのかとさえ思えた。どこから今日この日ここへ集まるという話を聞きつけたのかと尋ねると、彼は不気味な笑みを浮かべ、「そいつぁ教えられませんなぁ、いくら警察と言えども、俺にも守秘義務ってモンがある」と情報の出所を秘匿した。

話はそこで終わり、再び沈黙の時間が訪れた。どうしたものかと考えていた主人達だったけど……ついに、それが起きてしまったんだ。

主人たちは全員洋館で一番広い食堂に集まってたんだけど、気がつけば数人がその部屋から姿を消していた。エリートトレーナー、オカルトマニア、そしてガールスカウト。この三人は知らない間に食堂を抜け出し、どこかへ行っているようだった。

何が起きるかわからないのにと苛立ちを隠さずにため息を吐く上司の後に続き、ジョーイさんを食堂に残し、主人は彼らを探すことにした。

そして、主人たちは発見した。

二階の廊下、その右側の隅で、エリートトレーナーが無残な姿で殺害されているのを。
 ▼ 831 ルガー@しずくプレート 19/02/17 01:44:31 ID:RYu6GSD6 [4/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
状況に困惑していると、すぐ近くの部屋からオカルトマニアが出てきた。二人の視線が彼女に集中し、それに気づいた彼女は慌てた素振りを見せる。その様子から主人たちは彼女がエリートトレーナーを殺害したのだと思い、彼女の身柄を確保しに向かう。だが……

結論から言えば、オカルトマニアは彼を殺した犯人ではなさそうだった。主人達に詰め寄られても抵抗一つせず、その後の会話で初めて、すぐ近くでエリートトレーナーが殺害されていることを知って叫び声を上げた。

過呼吸を起こしそうになる彼女をなんとかなだめ、状況を確認する。彼女は、エリートトレーナーと共に辺りの散策を行っていた。彼女は霊的な何かを求めて、エリートトレーナーは記者が言っていた財宝を探すため、彼女たちはそれぞれ別々に部屋を探ることにして、途中から別行動を取ったという。

簡潔に彼女の話から状況を整理すると、二人は散策を行うため食堂を抜け出し、二階の部屋を探るべく別々に行動していた。そして彼女がこの部屋に入っている間に、この部屋の前で、彼は殺されてしまった。彼女は部屋から出るまで、主人達に問い詰められるまで、彼が殺されていることに気がつかなかった。

物音も無く静かな夜。この場で殺害されたのなら、何らかの音や彼の声をオカルトマニアが聞かないはずがない。だが、彼の殺され方はいわゆる猟奇的なもので、辺りには彼の血肉が飛び散っていた。こんな彼を運ぼうものなら、廊下中に血の跡がついていてもおかしくないのだが、どこにもそんな跡は見当たらない。

こうなると彼女が彼を殺害したと考えるのが妥当だが、彼女の反応はとても演技には見えなかった。それは、俺から見ても本当にそう思った。

仮に彼女が犯人ではないとすれば、食堂にいた面々はともかく、ガールスカウトが怪しいと思うのが自然だ。オカルトマニアを除けば、現時点でガールスカウトの所在だけが確認できずアリバイを立証できない。

そんな主人達の考えを裏付けるかのように、ガールスカウトはそれから姿を現さなくなった。オカルトマニアを連れ食堂へ戻り、全員に事情を説明する。誰もが主人達の話に驚き、恐怖した。

すぐにここを出たいのは山々だが、時刻は深夜に差し掛かっている。ハクタイの森、それもこの洋館付近は視界がとても悪く、方向感覚も狂いやすい。町が近くにあることは確かなのだが、今外に出れば真っ暗な森を彷徨うことになるのは火を見るより明らかだった。

少なくとも、この洋館にはエリートトレーナーを殺した犯人がいる。その人物と共に、もしかして殺されるかもしれないという恐怖を抱きながら朝を待つか、死を覚悟しつつ夜の森を彷徨うか、彼らは選択を迫られた。

数分の話し合いの末、結論が出る。ほぼ満場一致で、ここで朝を待つ、という答えだった。
 ▼ 832 リキテル@ぎんのおうかん 19/02/17 01:44:50 ID:RYu6GSD6 [5/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
たいがい、こういう状況下では「一つの部屋に集まり、そこを動かない」という取り決めがなされるも、ほとんどの場合は誰かが外に出てしまうか、停電が起きるなどして外に出ざるを得なくなってしまう。

主人達の場合も例外に漏れず、しばらくは食堂で誰も一歩も外へ出る事無く過ごしていたのだが、夜中の2時を迎える頃にはオカルトマニアを別な部屋へ移す事になった。

彼女は食堂に戻ってからずっと何かに怯えた様子で身体を縮こまらせていた。何事かと尋ねると、彼女は何度も話すのを躊躇いつつ、事情を説明してくれた。

彼女が部屋を散策しているとき、彼女宛の手紙を見つけたらしい。そこには彼女が犯した罪が書き連ねられ、「次はお前だ」と脅しをかけられていた。どうして彼女がこんなものを真に受けるのか、それは彼女の犯した罪というのが、例の事故についてだったからだった。事故ではなく殺人、彼女はその犯人だった。

エリートトレーナーの死を受け、このままでは殺されてしまうと思った彼女は主人達に助けを求める。全員が一緒にいるこの場では何かの拍子に殺されてしまうかもしれないと泣き出したため、彼女一人を別な部屋で隔離することにした。

この洋館で、その当時でも鍵が鍵として機能する部屋は二つしかなかった。二階の右奥の部屋と、エントランスから右側の階段をのぼってすぐの書斎。ただ、書斎は既に鍵がかけられていて入れなかったため、オカルトマニアには二階廊下右奥の部屋で待機してもらうことにした。その部屋の前で見張りを行ったのが、主人と俺だ。

上司は食堂に戻り他の全員を見張ることになり、部屋にはオカルトマニアが一人、その部屋の前には俺と主人だけとなった。無論、部屋の中に誰かがいないか念入りに確認したし、隠し通路等存在しない事も確かめた。部屋の窓は鍵をかけ、ドアは二重でロックし完全な密室にした。それでもと念には念を入れ、俺は黒い眼差しを応用して、この部屋に出入りする者がいればすぐにわかる仕掛けを施した。

この状態であれば、オカルトマニアに手は出せない。物理的に、この部屋へ入る事は不可能だ。仮にゴーストタイプのポケモンが進入しても俺がすぐに反応できる。俺はバトルはそう強くないけど、こういう能力には人一倍長けている。たとえ伝説のポケモンがその身を忍ばせたとしても、俺なら気づく自信がある。

万全の体制。一応オカルトマニアにも疑いの目は向けているので、彼女が急に出てきて襲ってくる可能性もきちんと考慮してある。誰かに襲われたとしても応戦するくらいの心得は当然あるし、上司が食堂で他の面々を見張ってくれている今なら、彼女以外に襲ってくると考えられるのはガールスカウトか外部犯しかいない。余程の事が無い限り、襲われて負けるようなことはないだろう。

この状況下なら、無事に朝を迎えられる。そう、俺は確信していた。

だけど……
 ▼ 833 ンホロウ@きんのいれば 19/02/17 01:45:10 ID:RYu6GSD6 [6/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
突然、オカルトマニアの声がした。

「なんなの、あなた……どこから入ってきたの!?」と、叫んでいた。

驚いて部屋の方を見る主人と俺。だって、そんなはずはない。これだけ厳重な態勢を整えたにも関わらず、中に誰かが侵入できるはずなどない。

ドアを叩いて彼女を呼ぶも、彼女は反応しない。それどころか、目の前にいるであろう何者かに対して怯えた様子で言葉を続けている。ドアを開けようとするも、開かない。鍵をかけているのだから当然だ。

そして彼女が「嘘でしょ、待って、お願いだから、まっ……」と何かを懇願した直後……

パァン!

乾いた銃声が、周囲に木霊した。

俺を見る主人。俺は黙って身体を横に振る。だって、ありえない。この部屋に何者かが出入りする気配など一切なかった。部屋の中を見回った時、誰一人誰一匹存在しなかった。なのに、どうして部屋の中に誰かがいる? ありえない。

銃声を聞いて上司が他の全員を連れて俺たちの所へやってくる。そして何とかドアをぶち破り、状況を確認した。

部屋では、オカルトマニアが床に倒れて死んでいた。辺り一面を、血に染めて。

上司が現場を荒らさないよう慎重に近づき、状態を確認する。続けてジョーイさんを呼び診断をしてもらった……やはり、彼女は死んでいた。俺と主人は部屋の中におかしな部分が無いか見て回る。だが、部屋に隠れられるような場所は無く、誰の姿も見当たらない。

オカルトマニアを殺した犯人は、まるで霧のようにこの部屋に侵入し、彼女を殺害し、そして霧散した。

どれだけ辺りを探っても、何一つ出てこない。それどころか調べれば調べるほどこの部屋の密室性は完璧で、不可能犯罪への肯定を深めてしまうばかり。

ともあれこの状況、犯人はガールスカウトか外部犯でしかありえない。俺たちは彼女を探すべく全員一緒に洋館内を探し回ることにした。
 ▼ 834 ローニャ@こうてつプレート 19/02/17 01:45:27 ID:RYu6GSD6 [7/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
果たして、彼女は見つかった。

だが、これも……ありえなかった。

彼女が見つかったのは、もう一つ鍵がかけられる部屋だという書斎だった。ただこの部屋の鍵は不思議な作りで、部屋の外からしか鍵をかける事ができない。内側にはツマミがなく、室内からは鍵に一切干渉する事ができない仕組みだった。

そんな部屋で、ガールスカウトは見つかった。それも、変わり果てた姿で。

彼女もエリートトレーナー同様、残酷な殺され方をしていた。死後どれくらい経過しているか正確なところはわからなかったけど、おそらくはオカルトマニアが殺された時刻と同じくらいであると判断された。

つまり、どういうわけかこの部屋に閉じ込められていたガールスカウトは、別の部屋でかくまわれていたオカルトマニアと、おおよそ同じ頃に殺されたということ。

しかし、状況は更に困難を極める。ガールスカウトが殺されていた部屋の鍵だが、ありえない事に、オカルトマニアが殺された部屋で見つかった。

書斎を密室にするには、ガールスカウトを殺害した後部屋に鍵をかけなければならない。だがその頃にはもう俺と主人はオカルトマニアをかくまっている部屋の前で警備をしている。つまり犯人は、ガールスカウトを殺害し部屋を密室にした後、鍵ごと霧となってオカルトマニアのいる部屋へ侵入し、鍵を置いてオカルトマニアを殺害、そして再び霧となってどこかへ消えた……

仮に、俺が霧状となったポケモンを見逃していたとしよう。ならば犯行は成立するように見えるが、鍵の存在がその可能性を否定する。いくら犯人が霧になれたとしても、鍵は霧になれない。なんとかしてなったとしても、元には戻れない。また、クレッフィやメタモンを手持ちに加えているトレーナーはいない。

だから、不可能なのだ。絶対に不可能なことを、犯人はやってみせた。

いったいこの洋館で何が起きているのか。例の事故と思われた事件と、その昔この洋館で起きた事件と、何か関係があるのだろうか。

わからない。何も、わからない。
 ▼ 835 ケッチャ@シルバースプレー 19/02/17 01:45:48 ID:RYu6GSD6 [8/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


ゴースト「……それからは、本当に急な出来事だらけだった」

ルカリオ「急?」

ゴースト「ああ。いよいよってことで全員で食堂に集まり、絶対にそこから動かないと誓い、朝を待つ事にした。俺たちポケモンはみんなボールに戻され、人間たちはそれぞれ一定の距離を保ったまま無言で時を過ごす事になった。そして……」

ゴーストが目を閉じ、大きく息を吐く。辛い過去を思い出しているのだ、表情も険しくなる。

ゴースト「朝、気がつけば……皆、死んでた。唯一、どういうわけか主人だけが生き残っていた」

ミミロップ「それが、手記に書いてあった……」

ゴースト「うん……だけどこの後、主人も何者かに殺されてしまった。呆然としているところを、後ろから……」

ルカリオ「ちょうど殺害されようとしていた時に目を覚ました、という所か」

ゴースト「おそらくね……俺はボールの中からそれを見てた。犯人の方は見えなかったけど、主人が撃たれて殺されたのはよく、見え……」

言葉にするのも辛いのだろう。ゴーストは言葉の終わりを曖昧に濁す。

ルカリオ「辛いことを思い出させてすまない。でも、ありがとう。おかげで状況はわかった」

ゴースト「……犯人、わかった?」

ルカリオ「いや……現時点では全くわからん」

ミミロップ「でも、何とかなるわ。ここまで情報があれば、ルカリオなら探る事ができる」

ゴースト「探る?」

ルカリオ「ああ。俺、波動が使えるんだ。だから、残留思念とかそういうものを読み取る事ができるんだ」

ゴースト「ほ、ほんとに!? なら、頼む、是非頼む! 俺は、俺は……」

主人を守る事ができなかったから。だから、せめて真実を知り、そして贖罪がしたい。

彼は、涙ながらにそう呟いた。その言葉は、遠い所にいる主人に向けられているようだった。

ゴースト「お願いだ、この事件を、この謎を……解き明かしてくれ!」
 ▼ 836 ガイアス@リザードナイトY 19/02/18 00:22:45 ID:VWy63BrA NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 837 レフワン@かたいいし 19/02/20 04:22:02 ID:MfTU8CHc NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 838 レッグル@スチールメモリ 19/02/26 22:11:57 ID:P92AJmOw NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 839 ーミラー@こううんのおこう 19/02/28 10:59:30 ID:BahwyghE NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 840 ーフィア@ふっかつそう 19/03/04 12:57:53 ID:pjgsm7U2 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
しえ
 ▼ 841 スボー@ハガネZ 19/03/10 21:47:14 ID:bRxEz.3k NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 842 ビゴン@つりざお 19/03/11 00:56:16 ID:gfIEWas. NGネーム登録 NGID登録 報告
失踪は勘弁してくれよ…?
 ▼ 843 チュー@どくのジュエル 19/03/11 01:28:54 ID:Xx8.0iog NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
しえ
 ▼ 844 サルミ◆tgqAAlSPpw 19/03/11 10:35:35 ID:vtx.9RrI [1/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
このSSを読んでくださっている方、もしおられたらありがとうございます。
執筆者のエサルミです。

突然ではございますが、私はこのスレの更新をここで終える事を決めました。


といいますのも、どういうわけかこのスレや私に対して嫌がらせや悪意を向けられる事が何度かあり、いい加減嫌になったからです。
私が嫌がるスレを立てる前後にこのスレにコメントを残していかれるので、確実な悪意と受け止めております。


私が嫌な顔するのを狙っているのでしょうか、このスレに脅威を感じ印象操作をしようとしているのでしょうか、はたまたBBSから追い出したいのでしょうか。理由はさっぱりわかりませんが、私やこのスレ(内容や設定)が気に入らないことは確かでしょう。だからといって嫌がらせをしていい理由にはなりませんが。

このSSを読んでどういう感想を抱こうと、それは個人の勝手ですので勿論問題はありません。好みはそれぞれですし、時には気に入らない事もあるでしょう。特にこの話は良くも悪くもそれぞれの立ち位置がはっきりしているので、読者様の思う形ではない設定が出てきてもおかしくありません。
しかしそれを理由に嫌がらせを行ったり印象操作をしようとするのは、はっきり言って不愉快です。そう思わせる事も目的なのでしょうけども。

繰り返しますが、私が嫌な思いをするスレを立てる前か後にこのスレにコメントを残すなどしているため、このスレを意識して立てた事は明らかで、悪い内容なら当然それは悪意にしかなりません。
すべてが同一人物によるものかどうかはわかりませんが、手口が似ていることから、いくつかは同じ人がやったことなのでしょう。


「そんな小さな事で」とか「そういうの見なきゃいい」とお思いかもしれません。しかし、私はミミロップやルカリオ、ルカミミ(カップリング)をはじめ、作品に登場する全てのポケモンが大好きです。特にミミロップについては本当に好きですので、悪意のあるスレやコメントには人一倍傷つきます。ましてや、それを自身に向けられているとなると、本当に嫌な気持ちになります。普通の人には小さな事でも、私にとっては物凄く大きなことなのです。
物語の性質上、ポケモンによって扱いに差があるのは確かです。しかし基として私は全てのポケモンが大好きですし、設定に差があれどそれはこのSS内でのみの話、他のスレに越境してこれをにおわせるコメントを残したりしませんし、ましてやSS以外で関連する新規スレを立てる事もありません。なぜなら、あくまでそれらは私の頭の中やこのスレの中だけのものであって、他の方のスレに越境していったり、わざわざ新スレを立てて言わなきゃいけない事ではないとわかっているからです。
 ▼ 845 サルミ◆tgqAAlSPpw 19/03/11 10:36:03 ID:vtx.9RrI [2/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
私は、趣味として楽しみながらポケモンのSSを書いています。無論、このような多くの人の目にとまる場所へ投稿しているのですから当然見ていただける可能性があることは承知の上ではありますが、度重なる嫌がらせを受け嫌な思いをしてまでBBSを利用しようとは思いません。

もしかしてこのSSの更新を待ってくださる方がおられたら、申し訳ないと思います。
BBSという環境や、親しくしてくださった方々、夏の企画に協力してくださった方々のことを思うと非常に申し訳ないです。
しかし、いい加減私も我慢しきれません。嫌がらせに屈するようで癪ではありますが、自身の創作活動や精神の安定を考え、結論としてこのスレの更新はこれで終わりたいと思います。

なお、このSS含めこれまで書いてきたSSを別な場所で公開、更新しております(BBS管理人様了解済み)
もしこの話の続きが読みたい等思ってくださる方がおられたら、ツイッターの方に遊びにきてください。URLを載せております。


長々と書きましたが、そういう事情でこのスレはここでおしまいとさせていただきます。中途半端なところで中断することになり、申しわけございません。
ご支援くださった皆様、イラストを描いてくださった皆様、応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。
 ▼ 846 バルオン@おいしいみず 19/03/11 10:42:55 ID:pTGY3jHg NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
お疲れさまでした
 ▼ 847 トツキ@スーパーボール 19/03/11 10:51:38 ID:VdoMecnY NGネーム登録 NGID登録 報告
件のコメントというのが自分のものかは分かりませんし、SSの休止について私がとやかく言うことなどできませんが、
もし支援のつもりの自分のコメントが傷付けてしまっていたなら申し訳ありませんでした
これからも貴方の活動を応援しております
 ▼ 848 サルミ◆tgqAAlSPpw 19/03/11 12:33:18 ID:vtx.9RrI [3/4] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
これまで極力返答などのレスはひかえてきましたが、読んでくださっていた方に誤解されると嫌なので、いただいたコメントにはご返信しておきます

>>846
ありがとうございます。そのお言葉だけでも、とても嬉しいし励みになります

>>847
支援コメントが迷惑なんてとんでもない。そのお言葉で頑張ってこれたのです、ありがとうございます。

問題としているのは、私のスレやその内容にアンチなスレなどを立てているのにわざわざこのスレに現れる行為などについてです。アンチみたいな内容のスレ立てちゃうくらいなのにわざわざこのスレに来るのは、嫌がらせ以外に理由が見当たらなくて
気にしないようにはしていましたが、何度かそういう事があると耐え切れなくなりました
 ▼ 849 ルキモノ@けむりだま 19/03/11 13:02:14 ID:C5XcKtzY NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
嫌がらせに耐えながらの更新、大変だったと思います
今までお疲れ様でした
 ▼ 850 サルミ◆tgqAAlSPpw 19/03/11 23:59:58 ID:vtx.9RrI [4/4] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
>>849
ありがとうございます。そう言っていただけると救われた気持ちになります。
常に何かをされていたわけではないので続けてこれましたが、間が空いていても何度もされると自己防衛したくなってしまいます。
心苦しいところはありますが、やっぱり楽しく書き続けたいので。
 ▼ 851 クロズマ@はかせのてがみ 19/04/24 09:35:13 ID:9KmYz.6o NGネーム登録 NGID登録 報告
えっ?
このページは検索エンジン向けの機能制限版の旧ページです。
下URLから閲覧下さい。
https://pokemonbbs.com/post/read.cgi?no=832156
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