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ルリ「バレンタインの特別番組……ですか」

 ▼ 1 ちっど◆.jJQDDIcAM 24/01/31 03:36:24 ID:TMPkLu9U NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
マネージャー「そう。あなたが料理を研究してるってことで話が出てきてね……朝の番組で1週間の予定なの。」

ルリ「す、すごい……ですね」

マネージャー「今回は初心者の子に教えつつって内容なんだけど大丈夫?」

ルリ「は、はい。相手の人ってもう決まってたりしますか?」

マネージャー「今のところはキョウヘイさんなんだけど……」






ルリ「……え?今なんて……」

マネージャー「キョウヘイさんと一緒にやることになるかなって。」

ルリ「……。」




マネージャー「でもそうよね、あなたは知ってる人の方が安心できるか。やっぱりここはテンマくんを………」

ルリ「あっ……!」

マネージャー「?」

ルリ「そっその!キョウヘイく……さんで大丈夫です!というかお願いします!」

マネージャー「そう?それならいいんだけど。じゃあ話は通しておくので。」

ルリ「よ、よろしくお願いします……」







ルリ(ゆ、夢じゃないよね……?)
 ▼ 26 ちっど◆.jJQDDIcAM 24/02/14 03:49:55 ID:Rf8Ebpso [1/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

ルッコ「それではチョコレートを湯煎していきまーす!」

キョウヘイ「湯煎ってあの……お湯の中にボウルとか入れてその中でチョコレートを溶かすやつ……ですよね?」

ルッコ「そうです!こうするとチョコレートの美味しさを残して溶かすことができるんですよ。今回は絞り出すのに使うので生クリームも必要なんです。」


事前に用意してある刻んだ板チョコを内側のボウルに投入し、慣れた手付きでチョコレートをゆっくり混ぜていく。


ルッコ「湯煎はこうして……こんな風に混ぜて滑らかになるような……はいキョウヘイくんもやってみてください!」

キョウヘイ「よ、よし……頑張ります。」


打って変わってぎこちない手付きで黙々と混ぜる。

見ている側に一生懸命なのは伝わるのだが……


ルッコ(きょ、キョウヘイくん……大丈夫かな……)

ルッコ「ゆっくり……ゆっくりでいいんです。それで……あっ!」


ガコンッという音とともにキョウヘイの肘が近くにあったボウルにぶつかる。

中身は先程温めた生クリーム。


キョウヘイ「しまっ……」

ルッコ「危ないっ!」


すんでのところでルッコが押さえ、ひとまず惨事は回避できた。


キョウヘイ「ルッコちゃん……顔」

ルッコ「え……?あっ、こ、これ、クリームが……」

キョウヘイ「……ふふ」

ルッコ「……あはは」


そして周りを見てみるとルッコのポケモンたちが勢揃い。

ピンチの時には出てきてくれと頼んでいたからだろう。


ルッコ「あ……えっと」

ディレクター「そのまま続けちゃって大丈夫!後でいい感じにカットしておくから!」

キョウヘイ「すみません……」
 ▼ 27 レブー@ハネッコのはっぱ 24/02/14 09:06:06 ID:0vUolIIM NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 28 ーイーカ@けいけんアメXS 24/02/14 15:46:41 ID:AGXou6Eg NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 29 ちっど◆.jJQDDIcAM 24/02/14 19:23:13 ID:Rf8Ebpso [2/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
その後も少し危なっかしい場面はあったものの、ルッコが普段の経験を活かすことでどうにか最後まで凌ぐことに成功した。


ルッコ「なんと!今回のお菓子はポケモンも食べられちゃうんです!」

キョウヘイ「おお!」

ルッコ「それではみんなに出てきてもらって一緒に食べましょう!」

キョウヘイ「よーしダイケンキも出てこい!」

ルッコ「それでは〜?」

キョウヘイ・ルッコ「「いただきま〜す!!」」



ディレクター「……オッケー!いいねいいね、キョウヘイくんももう大分慣れてきたみたいで。」

キョウヘイ「ど、どうにか。」

ディレクター「とりあえず撮影は終了です!お疲れ様でした!」

キョウヘイ・ルッコ「「お疲れ様でした!」」
 ▼ 30 レクレー@かみなりのいし 24/02/14 20:00:35 ID:0c3cwwOo NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 31 ちっど◆.jJQDDIcAM 24/02/14 20:58:52 ID:Rf8Ebpso [3/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルッコ「あ、お菓子の方は皆さんでどうぞ!キョウヘイくんもね。」

キョウヘイ「あ……いいんですか?それじゃあいただきます……おいしい!」

ルッコ「それじゃあわたしも……」


今回作ったのは市販のプチケーキにチョコクリームを絞り、トッピングをしたもの。

それを袋に入ってる分全部作ったからプチカップケーキパーティというわけだ。


ルッコ(うーん……別に悪くはないけどわたしが普段使ってるチョコレートならもっとおいしくできるかな……まあどのポケモンが食べても大丈夫っていうのはこのチョコレートのいいところだけど……)

ルッコ「チラーミィはどう思……あれ?チラーミィ?」

ルッコ(珍しい……わたしが食べてるのに近くにいないなんて。どこに行っちゃったのかな。)

ルッコ「ねぇプリン、チラーミィ知らない?」

プリン「ぷり?ぷりゅ。」


プリンが指し示したのはキョウヘイのいる方向。

ディレクターと立ち話をしているキョウヘイの周りをうろうろしながら何かを待っているようだ。


ルッコ「……もしかして」
 ▼ 32 ちっど◆.jJQDDIcAM 24/02/14 21:11:03 ID:Rf8Ebpso [4/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ディレクター「……なるほどね。それなら……」

キョウヘイ「はい。まあ、できればでいいんですけど……」

ディレクター「ん?お、ルッコちゃん。どうしたの?」

キョウヘイ「え?ルッコちゃん?」


ルッコ「あっ……お、お話の途中にすみません、チラーミィがこっちに来ちゃって……ほら戻るよチラーミィ。」

チラーミィ「ミィ?」

ルッコ「……今はダメなの。また今度ね。」


小声でそう言って抱きかかえようとしたルリの手をするりと抜け、今度はキョウヘイの影に隠れる。

ルッコ「ちょ、ちょっとチラーミィ。」

ディレクター「ははは。チラーミィはキョウヘイくんに興味があるんじゃないのかい?遊んであげたら?」

キョウヘイ「そうですね。俺は全然大丈夫ですよルッコさん。」

ルッコ「あ、あはは……ありがとうございます。でも……ごめんね、戻ってチラーミィ。」


モンスターボールで半ば強制的に撤収させる。

自らの意思で出ることは可能だが、ルッコの場合、この行動はどうしてもの場合とポケモンたちに教えているのでしばらくは出てこない。


ルッコ「……失礼しました。」




ディレクター「……もしかしてキョウヘイくん、実はあんまり仲良くなれてない?」

キョウヘイ「はは……まあ、その、色々と……それにこれからですよ、これから。」
 ▼ 33 ちっど◆.jJQDDIcAM 24/02/14 23:09:56 ID:Rf8Ebpso [5/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
辺りがすっかり暗くなり、照明のついた観覧車の中、ルリは久しぶりにキョウヘイと向き合っていた。


キョウヘイ「ルリちゃんの方から連絡してくるなんて……大丈夫だったの?前に職場の人に怒られたからあまり連絡できないんじゃ……」

ルリ「あー……うん。なんとかね。」

ルリ(本当はちょっと危なかったけど……)

ルリ「そ、それより。この子も久しぶりに遊びたかったみたいで。出てきていいよチラーミィ。」


ポンッ

チラーミィ「チャミィ!」


出てきてすぐにルリの帽子を尻尾で掃除し、次にキョウヘイに飛びついて全身くまなくはたき掃除。

尻尾での掃除はチラーミィという種族にとって、気に入った相手への挨拶なのだ。


キョウヘイ「相変わらずくすぐったいね、これ……」

ルリ「ふふっ、それぐらい気に入ってるんじゃないかなあ。誰にでも懐くわけじゃないとはいっても家族にもそこまではしてなかったし。」

キョウヘイ「そうなの?……ありがとね、チラーミィ。」

チラーミィ「ミィ!」
 ▼ 34 ちっど◆.jJQDDIcAM 24/02/14 23:53:43 ID:Rf8Ebpso [6/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
掃除を終えたチラーミィはキョウヘイの膝や肩に乗ったり、撫でられたりして嬉しそうにしている。

それを見て安堵しつつ、ルリは自分もこの時間を楽しもうと口を開こうとするのだが……


ルリ(……どうしよう、最近の話の中に何一つ話せることがないよ)

ルリ(今お仕事の話をしたらわたしがルッコだってバレちゃうし……な、何か……)


ルリ「あ……」

キョウヘイ「?」

ルリ「え、えっと……」



ルリ「そっそろそろ、終わっちゃうね……あはは……」

キョウヘイ「……そうだね」



ルリ(……全然話せなかった。)

ルリ(いいなぁ。わたしもチラーミィみたいに言葉なんかなくったってキョウヘイと仲良くできたらいいのに。)
 ▼ 35 ちっど◆.jJQDDIcAM 24/02/14 23:54:05 ID:Rf8Ebpso [7/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
>>34
最後のセリフ
キョウヘイ→キョウヘイくん
 ▼ 36 ちっど◆.jJQDDIcAM 24/02/15 02:20:02 ID:IRNUswK2 [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
それから数日経った2回目の収録日。

今回の収録は特に危ない場面もなく、前回よりも番組に慣れた2人がスムーズに進行させていった。


キョウヘイ「ふー……今日も緊張した……」


収録後の通路で一人休むキョウヘイ。

そんな彼のところにルッコが駆け寄ってくる。


ルッコ「あ……キョウヘイくん!」

キョウヘイ「るr、ルッコちゃん……お疲れ。」

ルッコ「キョウヘイくんもお疲れ様。今回のビスケットサンドなんだけど……」

キョウヘイ「あー……結構美味しかったね。」

ルッコ「でもわたしとしてはまだ改良の余地があると思ってて……はい、これ」


そう言って取り出したのは小さめのタッパー。


キョウヘイ「……これは?」

ルッコ「一応改良版……スポンサーさんのお菓子を使ってるわけじゃないから番組には出せないんだけどね。」

キョウヘイ「へぇ〜……こ、これ、いいの?」

ルッコ「うん。よかったら食べてみてほしい……かな。」

ルッコ(仕事の状況的にルリとして話すのは難しいかもしれないけど、それならそれで今の状況を活かすべきだよね。)

ルッコ(……ルリとして仲良くなれないのはすごく残念だけど)


キョウヘイ「それじゃお言葉に甘えていただきま……」

ティロリロリンティロリロリン♪ティロリロリンティロリロリン♪

キョウヘイ「ら、ライブキャスター……」

ルッコ「わ、わたしのだ……ご、ごめん、またね!」

キョウヘイ「え?こ、これ……」

ルッコ「今度会ったときにできればタッパー返して〜!」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


ルッコ「ふぅ……せっかくいいところだったのに」

マネージャー「おやおやルッコちゃんじゃないですか。電話にも出ずどこに行ってたんですか?」

ルッコ「……すみませんでした」
 ▼ 37 ちっど◆.jJQDDIcAM 24/02/15 03:30:11 ID:IRNUswK2 [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルリ(キョウヘイくん……食べてくれたかなぁ。あの様子だとそうだと思いたいんだけど……)

ルリ(食べてもらって、その後感想を……できればおいしいって言ってもらえたら嬉しいよね。)

ルリ「……聞こうと思えば聞ける……けど」


ライブキャスターの時計は夜の9時を表示中。

一応、キョウヘイからたまに連絡が来る時間だ。


ルリ(ううん、感想を聞くのは……それはダメだよね。けど……)

ルリ(それはそれとしてキョウヘイくんとお話したい気分……なんだよね)

ルリ「どうしようかなぁ……あ、そうだ。出てきてプリン。」


ポンッ

プリン「ぷり?」

ルリ「……ここにキョウヘイくんに連絡するまであと一歩のライブキャスターがあるんだけど……プリンならどうする?」

プリン「……?」


プリンはルリを不思議そうな目で見つめた後、チラーミィの入っているボールを軽くつついた。


ルリ「あぁ……チラーミィはもう寝てるから。あなた、どちらかというと夜の方が元気でしょ?」

プリン「ぷりゅ。ぷり……」


ライブキャスターには触らず。

答えはNOということだ。


ルリ「だよね。早く寝なくちゃ。」


ルリ「まあ……」


ポチッ


ルリ「わたしは結局……こうしてかけちゃうんだけどね。余計に我慢できなくなっちゃった、あはは……」

プリン「ぷ……ぷり……?」
 ▼ 38 イタラン@コオリッポのうもう 24/02/15 10:31:19 ID:SEF6MidI NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
あっっっま
 ▼ 39 ちっど◆.jJQDDIcAM 24/02/16 03:38:48 ID:fIgkEKw6 [1/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ツーツーツー……


ルリ「……。」


ツーツーツー……


ルリ「……。」

ルリ「うーん……タイミングが悪かったみたい。」


ふぅ、とため息をついて発信をやめ、布団に潜り込む。


ルリ(そうだよね……本当は寝たほうがいいんだし、これでいいんだよね……)

ルリ「プリンもおやすみ……ボール置いておくから好きなところで戻ってね……」


そう言って目を閉じようとしたとき、ライブキャスターの画面が明るくなった。



ティロリロリンティロリロリン♪ ティロリロリンティロリロリン♪

ルリ「えっ!?わわっ……も、もしもし?」

キョウヘイ『あ……ごめんね、さっきは出られなくって。用事が終わってから出ようとしたら切れちゃって……』

ルリ「う、ううん……忙しかったみたいなのにごめんなさい。」

キョウヘイ『忙しかった……わけではなないんだけど。うん……』

ルリ「そ、そっか……」


画面を見ていると、ふとキョウヘイの後ろに置いてある紙袋に目が止まった。


ルリ(あれはたしか……そこそこ有名なお菓子のお店の……)

ルリ「ねぇキョウヘイくん、後ろの袋って……」

キョウヘイ『あ、ああこれ?こ、これは別になんでもないんだけど……』


露骨に慌て始め、袋を移動するキョウヘイ。

しかし慌ててはいても大分丁寧にしているように見える。



ルリ「……。」


ルリ(もしかして……もう誰かに早めのバレンタインの贈り物を貰ったのかな……)
 ▼ 40 ちっど◆.jJQDDIcAM 24/02/16 18:04:21 ID:fIgkEKw6 [2/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
そして翌日、3回目の収録日。

キョウヘイの方は昨日よりも更に手際よく調理を進めていく。

一方のルッコは……



ルッコ「それでは溶かしたチョコレートを型に入れていきましょう!……あっ」


型に注ぐはずだったチョコレートはトレーの方に絞り出された。

しかしここで止めるわけにもいかないので、何事もなかったかのように元の作業を進める。


ルッコ「……よしっ!こんな感じですね!キョウヘイくんもやってみてください!」

ルッコ(はぁ……こんな感じって言ってもちょっと失敗してるんだけどね、わたし……)


ルッコ(キョウヘイくん……大分落ち着いて作業できるようになってるなあ……今のわたしより全然いいんじゃ……)



キョウヘイ「……ルッコちゃん、セリフ」

ルッコ「あっ……は、はい!型に入れたら冷やしますが、その前にナッツやアラザンなんかのトッピングものせてしまいましょうね。」


ルッコ(うう……収録中は集中しないとダメなのに、わたしは何を……)
 ▼ 41 ちっど◆.jJQDDIcAM 24/02/16 18:22:02 ID:fIgkEKw6 [3/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルッコ(結局何箇所か取り直しになっちゃった……大体わたしが原因だし……)

ルッコ「はぁ……」


集中できていない原因はルッコ自身もなんとなくわかっている。

くだらないと言えばくだらない、けれど放っておけないことが原因というのは困ったものだ。


ルッコ(わたし……自分のバレンタインのこと、もっとちゃんと考えなきゃいけなかったなぁ)

ルッコ(普通に考えたらわたし以外にもキョウヘイくんにチョコを渡したいって人はいるだろうし、お店の方ももうバレンタイン用の商品は出してるんだし……)

ルッコ「でも……実際に先を越されると……」



ルッコ(ううん、ここで弱気になるんじゃなくて……今キョウヘイくんと1番関わる時間が多い同年代はわたしのはずだし、それを利用して……)

ルッコ(け、けど……それでいいのかな……だってキョウヘイくんにとってルリとルッコは別人で……)

ルッコ「うう……わかんない……」
 ▼ 42 ガカメックス@つららのプレート 24/02/16 19:35:36 ID:Hc/6YAog NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
ルッコ……
 ▼ 43 ちっど◆.jJQDDIcAM 24/02/17 01:18:08 ID:dW5MRYT2 [1/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
キョウヘイ「ん?あ、いたいた。おーいルッコちゃん。」

ルッコ「キョウヘイくん……どうしたの?」

キョウヘイ「えーっと、昨日のタッパーを返しに来たんだけど……はい」


そう言ってキョウヘイが手渡してきたのはおしゃれな紙袋。

そう、昨日見たあの紙袋だ。


ルッコ「……これって」

キョウヘイ「まあ、なんというか……お礼、かな?俺よりも料理のできる人に手作りで返せる感じもしなくってさ……はは」

キョウヘイ「すごくおいしかったです。ありがとう。」

ルッコ「う、うん……」


キョウヘイ「それじゃあまた。次の収録も一緒に頑張りましょう。」

ルッコ「ま、またね……あっ待って!」

キョウヘイ「?」

ルッコ「……ありがとう!」


咄嗟に絞り出した言葉にキョウヘイは微笑みで返し、足早に去っていく。

そんな彼をルッコもまた笑顔で見送るのだった。
 ▼ 44 ちっど◆.jJQDDIcAM 24/02/17 01:35:22 ID:dW5MRYT2 [2/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
キョウヘイの姿が見えなくなったところで背中を壁に預ける。


ルッコ「はー……」

ルッコ(そっか……そうだったんだね、貰ったんじゃなくてわたしに……)


ルッコ(というかキョウヘイくん……わたしのお菓子すごくおいしかったって言ってくれてたなぁ……)


思い出して熱くなる頬を手で冷やし、それでも収まらない分の感情を唇を噛み締めて抑え込む。




ルッコ「……よかった」


ルッコ(でもこの紙袋、どうしよう……バレずに楽屋に持ち込むのは無理だよね……)
 ▼ 45 ちっど◆.jJQDDIcAM 24/02/17 03:03:37 ID:dW5MRYT2 [3/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
就寝前、自室で1人紙袋を見つめるルリ。

手持ちのトゲチックにわざわざ預かってもらってまで持ち帰ってきた今日1番の収穫だ。


ルリ(マネージャーに見つかったら没収されちゃうかもしれなかったからね……食べ物のプレゼントが危ないのはわかるんだけど)

ルリ(……それで言ったらわたしも危ないことしちゃったなぁ)


ルリ(本当だったら家族で分けたいところだけど、お父さんに見つかると面倒だし、そもそも“ルッコ”に渡されたものだし……わたしとポケモンたちで独り占めするしかないかな。仕方ないよね。)





ルリ(これのお礼もルッコとして言わなきゃいけないんだよね……なんだかルッコの方でばっかり仲良くなってないかな?)

ルリ(……でも、今までたくさんお話して、観覧車にも乗ったんだから。まだ“ルリ”の方が好きであってほしいなぁ……)

部屋で遊ばせていたポケモンたちをボールに戻し、自分もベッドに寝転ぶ。



ポンッ!

チラーミィ「……チラ?」

プリン「ぷり……」


ルリ「……また心配させちゃった?大丈夫だよ、わたしは大丈夫……。あなたたちも早く寝なよ。」
 ▼ 46 ちっど◆.jJQDDIcAM 24/02/17 16:32:52 ID:dW5MRYT2 [4/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルリ「はぁ、はぁ……」


目が覚めたらスカイアローブリッジでランニング。

今日の収録は遅い時間なので朝食の後でもいいのだが、今回に関してはそうするべき理由があった。


ルリ(今日は貰ったお菓子食べるんだもの……運動はいつもより多めにしないと……)


スカイアローブリッジ自体ルリお気に入りのお散歩コースではあるが、この時間ならヤグルマの森の舗装されている道も走ることができる。

だからわざわざ空を飛ぶを使ってまでここに来たのだ。


ルリ(一時期封鎖されてたときは本当に困ったよ……朝のランニングに1番便利だったし、お散歩コースとしてもよく使ってたのに……)

ルリ(……それでライモンシティの辺りをよくお散歩してたから、キョウヘイくんとの出合いにつながったのはよかったんだけどね。)
 ▼ 47 ちっど◆.jJQDDIcAM 24/02/17 17:13:03 ID:dW5MRYT2 [5/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ランニングを終えて戻って来る途中、ゲートの中の自動販売機に目が止まった。


ルリ「……こんなところに自動販売機あったっけ?」


ルリ(うん……なかったよね、たぶん。ということは新しい自動販売機で、中身も新しかったりして……)


しかし並んでいるのはおいしいみず、ミックスオレオレ、サイコソーダ。

どこでも見かけるいつものラインナップだ。


ルリ(でも、新しい自動販売機になってお気に入りが消えても困るし……これはこれでいいのかな。)

ルリ(せっかくだしミックスオレでも買っていこうっと。)


ピッ

ガコンッ




アタリ!

ガコンッ


ルリ「……当たった」

ルリ(今キョウヘイくんがいたらなぁ……なんて、前も考えたことがあったっけ。)

ルリ(もしこれからも一緒に仕事をするようになったら……わけてあげられる日が来るのかな。)
 ▼ 48 ちっど◆.jJQDDIcAM 24/02/17 17:34:40 ID:dW5MRYT2 [6/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
昼食後、貰ったお菓子を開けつつ考える。

これからどうなっていくのか。



ルリ(これからもキョウヘイくんと一緒に仕事ができるなら……それはいいことだよね。もっとたくさん一緒にいられるわけだから。)

ルリ(だけどルリとして会える時間は減るよね……ルリとルッコが同じ人だってわかってるなら何も問題ないんだけど……)

ルリ(そうなるとやっぱりちゃんと説明したほうがいいのかな?そもそもわたしはどうして正体を隠してるんだっけ……?)


お菓子の箱を開けっ放しにしたまま目を瞑って思考を巡らす。


ルリ(そう……最初はわたしの物を預かってもらって、それで変なことに利用されないように芸能人ってことは隠してて……)

ルリ(それからはなんとなく続けてたのと……仲良くなってからは……)


ルリ「……どうしてだっけ」

ルリ(じゃあもう……いいのかな、別に。本当のことを言っても。それだと今まで必死だったのが笑えてくるなぁ……)

ルリ「ふふっ……」



ルリ「……あれっ、お菓子がもう少なく……」


振り返ると食べ終えたお菓子の袋を一箇所にまとめた山と手持ちのポケモンたち。

もう1度箱を見るとお菓子は一応各種1つづつ残されている。


ルリ「……。」

ルリ「今日はおやつ抜きだからね。決して勝手に食べられたことに怒っているとかじゃなく、単に食べ過ぎってだけだから……」
 ▼ 49 ちっど◆.jJQDDIcAM 24/02/18 22:15:30 ID:ZuMoLqFo [1/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


ルッコ「そして冷やしたものがこちらになります!」

キョウヘイ「これでトリュフチョコレートの完成ですね!」


4回目の収録のお題はトリュフチョコレート。

ルリの中で1、2を争うレベルで好きなチョコレートである。


ルッコ(だからこそわたしがよく作ってるレシピの方がおいしい気もするんだけど……)

キョウヘイ「うわ……今回のやつ特においしい……」

ルッコ(キョウヘイくんはああ言ってるんだし、わたしが負けず嫌いなだけなのかも……?)

キョウヘイ「ね、ルッコちゃん!トリュフって久々に食べたけど美味しいね!」

ルッコ「ふふ、そうだね……」



ルッコ(うーん、でもやっぱりこれを見るとわたしの作ったものの方がおいしいって言ってもらいたくなるなぁ……一応次の……最後の収録のときに渡すこともできるだろうけど……)

ルッコ「……キョウヘイくん」

キョウヘイ「?」

ルッコ「次の収録の日……終わったあと少し時間とかあるかな?」

キョウヘイ「あると思うけど……」

ルッコ「よかった……」

キョウヘイ「何かあったの?」

ルッコ「んー……ナイショ、かな。でも一応いいことだから。待っててね。」




ルッコ(うん……とりあえず時間は確保できたからとびっきりのを持っていこうっと。)

ルッコ(……でも、何か忘れているような)
 ▼ 50 ちっど◆.jJQDDIcAM 24/02/18 22:57:37 ID:ZuMoLqFo [2/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
最後の収録は明後日。

総まとめということで今までのレシピを振り返りつつお菓子パーティ……ということらしい。


ルリ(1日開くけどその分大変そうだね……わたしはともかくキョウヘイくんは……)

ルリ(……大丈夫だよね。もう割と慣れてきてたし。それよりも……)


台所に用意したのは帰りにアールナインで買ってきた材料たち。


ルリ(とっておきのトリュフ……今までのわたしのレシピじゃきっと足りない、だから……!)

ルリ妹「あ、おねーちゃんチョコレート作るのー?」

ルリ「うん。味見役、お願いできる?」

ルリ妹「うん!おにーちゃんも味見しよー!」

ルリ弟「いや僕は……作り途中のってたまにおいしくないの混じってるし」

ルリ「それは……ごめんね、仕方ないことなんだ。だからお願いね。」

ルリ弟「えー……わかったよ。はぁ……」

ルリ「……珍しく大人しいね。」

ルリ弟「だっていつも結局付き合わされるんだもん……」

ルリ「あはは……」
 ▼ 51 ちっど◆.jJQDDIcAM 24/02/18 23:06:55 ID:ZuMoLqFo [3/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
そして迎えた最後の収録日。

ルリの新たなるとっておきのトリュフは……



ルリ「うーん……やっぱり新しいのはやめようかな、間に合わなそうだし。」

ルリ弟「結局やめるの!?」

ルリ「ううん、バレンタインのときまでには間に合わせるよ。今回はちょっと事情が違うから。」

ルリ弟「地獄の日々が無駄になるかと思った……」

ルリ「ちょっと!地獄って何!?」

ルリ妹「そーよそーよ!おいしいもの食べられたじゃない!」

ルリ弟「もうチョコは飽きたよぉ!!!」



ルリ「……とにかくありがとうね、2人とも。」

ルリ妹「そういえばチラーミィには味見させなくてよかったの?」

ルリ「うーん、どちらかというと人間用のレシピだから……あとまあ、トリュフじゃないけどあの子たちはもうお菓子は十分食べたからね……あはは」

ルリ妹(目が怖い……)
 ▼ 52 ちっど◆.jJQDDIcAM 24/02/18 23:26:06 ID:ZuMoLqFo [4/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルッコ「バレンタイン特別企画!ルッコのスウィートクッキング〜!」

キョウヘイ「第5回ですね!」

ルッコ「この特別番組は今回で終わりなのですが、最後なのでお菓子パーティをしちゃいます!」

キョウヘイ「最後か……今まで色々作ってきましたね。」

ルッコ「そうですね。それでは今までのレシピを振り返ってみましょう!」


ディレクター「うん、オッケーだよ。少し時間を置いてから調理パートに入ってもらうからね。あ、今回はちょっとぐらいならアレンジしちゃって大丈夫だから。」

ルッコ「いいんですか!?」

キョウヘイ「……嬉しそうだね。」

ルッコ「うん……嬉しいよ。そっちの方が楽しいに決まってるもん!」

キョウヘイ「へへ……俺はあんまりできないと思うから、ルッコちゃんに色々任せちゃおうかな、なんて……」

ルッコ「うふふ……まかせて!」
 ▼ 53 ちっど◆.jJQDDIcAM 24/02/18 23:35:49 ID:ZuMoLqFo [5/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
キョウヘイ「はい、それでは実際に調理を……あれ、この紙は……?」

ルッコ「……一応、レシピ?参考にしてもらえるとありがたい……かな。」

ルッコ「それじゃあ調理していきましょう!」



そこからはルッコが短い時間で考えた即席お菓子パーティレシピを元に凄まじい速度で調理が行われ……キョウヘイはひたすら基礎の部分を作っていた……

かと思えば飾り付けを任されたりと、単に私利私欲のためだけでないプランでもあり。

とにかくそれを見ていた関係者は圧倒されるしかなかったという……



ルッコ「次はビスケットにこっちのクリームを塗るのお願いキョウヘイくん!」

キョウヘイ「う、うん!」



ディレクター(僕は一体何を撮っているんだったっけ……この番組ってこんな風だったかなあ?)
 ▼ 54 ちっど◆.jJQDDIcAM 24/02/18 23:46:20 ID:ZuMoLqFo [6/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルッコ「……ということで完成です!これでお菓子パーティを楽しみましょう!みんな出てきて!」

キョウヘイ「よし、俺のポケモンたちも!」

ルッコ「それではみなさんまたいつか!」

キョウヘイ・ルッコ「「またね〜!!!!」」



ディレクター「お、オッケー……です。お疲れ様でした!」

キョウヘイ・ルッコ「「お疲れ様でした!!」」


ルッコ「それじゃあいつも通りみなさんもどうぞ!」

キョウヘイ「はは……見てればなんとなくわかると思うんですけど今日のは一段とすごいので……」



スタッフやサポートしていたポケモンたちもみんな集まってお菓子を食べ始める。

ルッコは若干羽目を外し過ぎたことも忘れ、その光景を幸せそうに、誇らしげに見つめるのだった。


キョウヘイ「……あの」

ルッコ「?」

キョウヘイ「この後……だよね」

ルッコ「!あ、そうだった……うん、あとでね……」

ルッコ(ちょっと忘れかけてた……今回のトリュフは新レシピは間に合なかったけどそれでも十分おいしいはずだから……きっと大丈夫……)
 ▼ 55 ちっど◆.jJQDDIcAM 24/02/19 00:02:17 ID:XWfUZIy6 [1/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
収録後、どうにか理由をつけて楽屋から少し抜け出し、キョウヘイと合流したルッコ。

前にとある人に教えてもらった人気の少ないエリアで話すことを試みる。


ルッコ「……あの部屋かな」

キョウヘイ「……な、なんか電気ついてない?」

ルッコ「えっ?ほ、ほんとだ……少し待ってもらっていい?」

キョウヘイ「うん……」


しばらくすると電気が消え、見覚えのある後ろ姿が2人中から急ぎ足で出ていった。


ルッコ(今のってテンマくんとたしか……メイちゃんだったっけ。何してたんだろう……?)

キョウヘイ「い、行こうか?」

ルッコ「うん……大丈夫?声が震えてるような……」

キョウヘイ「え?あ、ああ……まあ」
 ▼ 56 ちっど◆.jJQDDIcAM 24/02/19 00:08:50 ID:XWfUZIy6 [2/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルッコ「ふぅ……とりあえずこれで大丈夫だね。」

キョウヘイ「うん。電気つける?」

ルッコ「あ、お願い。」



部屋が明るくなり、向かい合ったところで深呼吸。

ポーチの中に手を入れ、それなりにかわいくラッピングした小箱を取り出す。


ルッコ「……。」

ルッコ(あれ?これ……ちょっとかわいくラッピングしすぎてない?わたしは単にキョウヘイくんにおいしいトリュフを食べてもらいたかっただけで……)

ルッコ(これじゃ、まるで……)




ルッコ「……。」

ルッコ「お、お疲れ様でした、かな……?な、なのでこれをどうぞ……」

キョウヘイ「い、いいの……?」

ルッコ「う、うん。」

キョウヘイ「へへ……義理とはいえ今年の分が1つ増え……」

ルッコ「ばっ……!」

キョウヘイ「?」

ルッコ「バレンタインじゃ、ないです……」

キョウヘイ「……そ、そうなんだ」
 ▼ 57 ちっど◆.jJQDDIcAM 24/02/19 00:16:30 ID:XWfUZIy6 [3/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルッコ「これはその、わたしが……前にお菓子を渡したとき、つり合わないぐらいのお礼を貰っちゃったからというか」

ルッコ「どうせならトリュフもおいしいのを食べてみて欲しかったというか……あ、番組のがおいしかなかったわけじゃなくって……」

キョウヘイ「……ありがとう。つり合わないだなんてそんな……俺としてはあれでも足りないぐらいだったのに。」

ルッコ「ええっ!?でもあれ高かったしでしょ!?」

キョウヘイ「そんなことないよ。ルリちゃんにはいつも俺のほうが貰いすぎてるぐらいなんだから。」

ルッコ「そんなぁ……ふふ……」


ルッコ「……うん?今……」




キョウヘイ「……。」

キョウヘイ「ナ、ナンノコトデショウカ」



ルッコ「……いつから知ってたの?」

キョウヘイ「……確信したのは割と最近だよ」



ルッコ「じゃあ……疑い始めたのは?」

キョウヘイ「……頻繁に観覧車に乗る頃には」





ルッコ「……今はちょっと恥ずかしすぎるからまた今度お話しない?」

キョウヘイ「うん……その方がいいんじゃないかな。耳まで赤いし……」

ルッコ「言わないで……」
 ▼ 58 ちっど◆.jJQDDIcAM 24/02/19 01:03:10 ID:XWfUZIy6 [4/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



キョウヘイ「お待たせ。……相変わらず早いね。」

ルリ「あはは……そうかも。じゃあ、乗ろうよ。」


あのやりとりから数日、改めてゆっぬり話そうということで2人はいつもの観覧車に来ていた。


キョウヘイ「トリュフ……すごくおいしかった。ありがとう。」

ルリ「うん……よかった」


キョウヘイ「……。」

ルリ「……。」


ルリ(どうしよう……何から話せばいいんだろう……)


キョウヘイ「あ……俺、先にいいかな?」

ルリ「う、うん。」


キョウヘイ「あの、さ……」

キョウヘイ「とっとりあえず……ルリちゃんがルッコちゃんなんだよね?」

ルリ「……うん」

キョウヘイ「それは……俺が知っていても大丈夫なの?」

ルリ「それは大丈夫……だよ」


キョウヘイ「じゃあ、会えなくなったりとかは……」

ルリ「ないない!そんなことないよ!」

キョウヘイ「……ならよかった。それが一番心配だったからさ。」
 ▼ 59 ちっど◆.jJQDDIcAM 24/02/19 01:09:21 ID:XWfUZIy6 [5/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
キョウヘイ「ルリちゃん……自分ではポケドルってこと言ってなかったし、なるべく隠そうとしてるように見えたんだ。」

ルリ(それは確かにそうしてたね。)

キョウヘイ「けど……番組の話が出た辺りからかな。隠そうとしてるのか知らせようとしてるのかわからなくって……」

ルリ「う……そ、それは……」

キョウヘイ「俺の方もつられちゃってさ。途中から収録外だと敬語使わなくなっちゃったし。」

ルリ「……そうだったっけ?」

キョウヘイ「うん。一応知らないフリするつもりだったんだけどやっぱり無理だった。」

ルリ「そっか……それで最初の方」

キョウヘイ「まあ……確かにあれはそのことで迷ってたのもあるけど、単にルリちゃんと一緒で緊張しただけで……」

ルリ「ごめんなさい……もっと早くにちゃんと話しておくべきだったね。」

キョウヘイ「気にしないでよ。無闇に話すべきじゃないことなんだし。」

ルリ「うん……でも信頼できる人になら……キョウヘイくんになら大丈夫だと思う。今までわたしの正体のこと、やたらと言いふらしたりしてないんでしょ?」

キョウヘイ「そんなことしないよ!」

ルリ「ふふっ。ね、大丈夫でしょ。」

キョウヘイ「……へへ」
 ▼ 60 ちっど◆.jJQDDIcAM 24/02/19 01:18:40 ID:XWfUZIy6 [6/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
キョウヘイ「……実は俺の方も謝らなきゃいけないんだ。」

ルリ「え?」

キョウヘイ「今回の番組さ……俺がバレンタインのお菓子の作り方を学んでみたいとか先輩に言ったのがきっかけみたいなんだ。直接ではないみたいなんだけど……」

キョウヘイ「それでも結果的に君を困らせることになっちゃったし……ごめんなさい。」

ルリ「ううん、全然……わたしはキョウヘイくんと出演できて楽しかったし。バレるのだって時間の問題で……むしろ色々気にする必要がなくなってよかったよ。」

キョウヘイ「そっか。そうしたら俺もルッコちゃんの出てる番組のこととか気にせず話していいわけか。」

ルリ「もう、キョウヘイくんったら……」



外の景色に見える柱が一周の終わりが近いことを知らせる。

今日のような特別な日でも、その時間は等しいのだ。


ルリ「はぁ……もう終わっちゃう」

キョウヘイ「はは……そうだね、俺も残念だよ。」



















ルリ「……ねぇキョウヘイくん」


ルリ「こうやっていつも会うときのわたしと……ポケドルのわたし、あなたはどっちが好き?」

 ▼ 61 ちっど◆.jJQDDIcAM 24/02/19 01:33:04 ID:XWfUZIy6 [7/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
キョウヘイ「俺は……」






キョウヘイ「……どっちも」

キョウヘイ「たくさん話したり一緒に観覧車に乗ったりした笑顔の素敵なルリちゃんが好きだったけど……一緒に番組に出て、ポケドルとして頑張る君も改めて素敵だと思った、かな。」


ルリ「……そっか」

キョウヘイ「あ、もう降りないと。行こう!」


係員によって開けられる扉。

出遅れたルリの手をキョウヘイが咄嗟に繋ぎ、急いでゴンドラの外へ出る。


ルリ「ありがとう……」

キョウヘイ「どういたしまして。」

ルリ「それじゃあ、また……乗ろうね。」

キョウヘイ「うん。またね。」


名残惜しさから過ごし間を開け……ルリの方が出口に向かって歩き出す。


ルリ「あ……」

ルリ「……キョウヘイくん。」

キョウヘイ「?……ああ、まだ話してないことあった?」

ルリ「うん。……その、わたしも」

ルリ「わたしも……いつも相談にのってくれる、優しくて頼りになるキョウヘイくんのこと、大好きだから……」





ルリ「……またね」


キョウヘイ「……うん。またね。」
 ▼ 62 ちっど◆.jJQDDIcAM 24/02/19 01:47:06 ID:XWfUZIy6 [8/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
バレンタイン当日……




キョウヘイ「はぁ……」

ヒュウ「どうしたんだよキョウヘイ。チョコの心配か?」

キョウヘイ「うん……」

ヒュウ「オマエは去年に増して貰ってるだろ……」

キョウヘイ「そうじゃないんだ……」

ヒュウ「?チョコが心配なんじゃないのかよ」

キョウヘイ「数じゃなくてさ。1人の女の子から貰えるかどうかなんだ。」

ヒュウ「そりゃ……普段からの関わりによるんじゃねーの?」

キョウヘイ「……一応ね、俺のこと大好きだって言ってくれたんだ。」

ヒュウ「なら大丈夫だろ。」

キョウヘイ「でもそれをどういう意味で言ってたのかがわからないんだ。……俺もそのときに好きって言ったけどその意味も自分でわかってないし」

ヒュウ「それでも義理ぐらいは貰えるんじゃ……ん、なんだそれ。チョコか?」


キョウヘイ「俺の手作り……本命」

ヒュウ「オマエ……いつの間にお菓子作りなんてできるようになってたんだ!?」

キョウヘイ「その子に教えてもらったようなものだけどね。料理が上手なんだよ。」

キョウヘイ「今回はちゃんと自分の気持ち……伝えるつもりなんだ。だから貰えなくてもやりようはあるんだけど……」






ヒュウ「……それはそれとして、欲しいよな。」

キョウヘイ「……うん。」

ヒュウ「……頑張れよ。」

キョウヘイ「……ありがとう」
 ▼ 63 ちっど◆.jJQDDIcAM 24/02/19 01:58:38 ID:XWfUZIy6 [9/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ルリ妹「わーすごい!すっごい色々入ってる!」

ルリ「うふふ……」

ルリ妹「もしかして……おねーちゃんカレシいたの!?」

ルリ「う、うーん……そういうわけではないんだけど」

ルリ妹「じゃあ好きな人?」

ルリ「……うん。お父さんたちにはナイショね。」

ルリ妹「うん!……でも2つあるけど、これは?チラーミィの?」

ポンッ

チラーミィ「ミィ!」

ルリ「ごめんね、違うの。中身は後で同じの作ってあげるから。」

チラーミィ「ミィーッ!?」

ルリ妹「ありゃりゃ」



ルリ「……最初は1つでもいいかなって思ったんだけどね?でも……わたしのこと、2人分褒めてくれちゃったから。」

ルリ妹「……なるほど?」

ルリ「それに……一番伝えなきゃいけないことも伝えられてなかったから。今日は全部伝えなきゃいけないの。」



ルリ妹「おねーちゃんがそこまで言うなんて……ね、その人ってどんな人?」

ルリ「そうだね……一緒にいると不思議と落ち着く人で、だけどたまにドキドキもして……」

ルリ「仕事の日も、お休みの日も……いつも一緒にいられたら嬉しいなって思う人だよ。」






【SS】ルリ「バレンタインの特別番組……ですか」
 ▼ 64 チキギス@あさせのかいがら 24/02/19 01:59:50 ID:ZdRAWBxs NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
乙!
 ▼ 65 ちっど◆.jJQDDIcAM 24/02/19 02:04:22 ID:XWfUZIy6 [10/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
バレンタインを余裕で遅刻しての完結でした ルリちゃんが1人で考え込むシーンが多かったから地の文混ぜつつがいいかなと思ったけどやっぱり書きにくくって終盤はいつもの感じに戻っちゃいました 地の文は気合とモチベがないとなかなか難しいですね


【バレンタインSS】ルリ「……やっぱり、愛情を込めないチョコレートなんて作れそうにないね……あはは……」

https://pokemonbbs.com/sp/post/read.cgi?no=1865587
去年のバレンタインのやつです。よければ読んでみてくださいな
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