【悪役SS】ミヅキ「つ、付き合ってください!」 グズマ「……は、はぁ?」【スレタイ詐欺】:ポケモンBBS(掲示板) 【悪役SS】ミヅキ「つ、付き合ってください!」 グズマ「……は、はぁ?」【スレタイ詐欺】:ポケモンBBS

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【悪役SS】ミヅキ「つ、付き合ってください!」 グズマ「……は、はぁ?」【スレタイ詐欺】

 ▼ 1 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/05/21 20:36:43 ID:ndZ4JDVA NGネーム登録 NGID登録 報告
クリスタルのような角張った紋様を描くガラスのドームは、夕陽が当たってキラキラと朱く輝いていた。

山の火口、つまりは空洞の中にポツリと建てられた半球は4本の鉄塔によって支えられていた。

端から下を覗いてうっかり落ちてしまえば助かりそうもないような高さだ。

半球にはこの高さへと至る長い長い階段が繋がっており、階段を登りきった目の前には背もたれにモンスターボールマークのついた王座があり。

また、床を横に走る一本の白線がそれらを明確に区切っていた。

そんな不思議な建造物に、一人の男がたどり着いた。

「はぁ……はぁ……なんなんだ……はぁ……突然、呼び出したり、しやがって……。俺様じゃ、なかったら……ゼェゼェ……いきなり、チャンピオンの間に……来いだなんて、言われても、出来ねえぞ」

長い長い階段を登りきって荒くなった息を整える時間も惜しい、とばかり俺はまくし立てる。

メラニンなんて一粒も存在しない白髪に、悪い目つきと、同じく悪い目つきを模した特徴的なサングラス。一見して30、いや、40代に思っても不思議ではないくたびれた顔だが、その実まだ20歳も前半である。

泣く子も更に泣き喚いて全速力で逃げ出すという自己評価を下している俺の眼光を受けてにへらっ、と笑っている少女が、その細身な体に対して大きすぎる王座に座っていた。

「やっ……やぁやぁ、よく来てくれたね、グズマくん!」

と、王座から立ち上がって腕を広げつつ鷹揚に言う。

「チャンピオンぶってんじゃねえよミヅキ。俺の方が年上だろ。……まあお前は実際チャンピオンだけどよ」

「べ、別にいいじゃないですか!」
 ▼ 40 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/05/22 20:23:08 ID:xUtY8BNU [1/14] NGネーム登録 NGID登録 報告
「……!!?」

再び喉が動いたが、口が開かなかったので声は出なかった。

「げげげんげ〜ん! げがががが!」

けらけらと笑うような声の方向へ眼球を動かすと、体を動かせない理由が分かった。

ゲンガーがサイコキネシスを発動していたのだ。

じっとゲンガーを見つめていると、ゲンガーは更に笑って――

ボフッ、と柔らかいものが顔に降ってきた。

「げんげげ〜んがが!」

遠くでぽひゅーん、というモンスターボールが発動する独特の音がした。

と同時に、体の拘束が解ける。
 ▼ 41 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/05/22 20:25:25 ID:xUtY8BNU [2/14] NGネーム登録 NGID登録 報告
「はぁ……はぁ……なんなんだ全く」

顔から布団を退けてモンスターボールを見やる。

もうモンスターボールはピクリとも動かなかった。

ポケモンたちの謎な行動はひとまず置いておき、さっさと寝ようと布団を戻して再びベッドに沈めた瞬間。



いや、特に変わったことがあったわけでは、ない。

ただ、布団の中が温かかっただけ。

なのに、それが、なんというか……グズマに包まれているような、そんな気持ちになって。

更に、このベッドの持ち主が今ここにいないことに気づいて。

グズマが遠くへ行ってしまった気がした。

薄闇の中で、床と同様ペンキで汚れたままの天井が滲んでぼやける。

つー、と顔の横を垂れていくのが少しくすぐったい。

鼻の位置まで布団を引き上げて、それからあたいはもう何もしなかった。

心に立ち込めていた暗雲がその色を濃くした。
 ▼ 42 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/05/22 20:40:51 ID:xUtY8BNU [3/14] NGネーム登録 NGID登録 報告
柔らかい日光がまぶた越しに目を直撃する。

目の前が真っ白になるその光量に、たまらず目は開けたものの脳はまだほとんど寝入った状態。

うとうとと心地よく微睡んでいた時だった。

ドタドタドタッ! と遠くで騒々しい音がした。

(なんなんだい、うるさいねぇ)

あたいは布団を深く被り直す。

トントントントントントン! と近くで騒々しい音がした。

ガバッと起き上がり、音源らしき扉へ向かって叫ぶ。

「あぁもう! 人が寝てるってのにうるさいよッ!」

「い、いるんすね? 入りますよ!?」

バタン! とこれまだ近くで騒音が響く。

うるさく入ってきたのは、昨日にしたっぱちゃんだった。

あたいの言うことなんか聞いていないくらいに尋常じゃない焦り具合を見て、あたいは訝しむ。
 ▼ 43 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/05/22 20:41:17 ID:xUtY8BNU [4/14] NGネーム登録 NGID登録 報告
「何をそんなに慌ててるんだ。何かあったのかい?」

「あ、あ、あったなんてもんじゃないっすよ!?」

気が動転している、なんて表現が生ぬるいくらいの焦りように、流石のあたいも意識を少し切り替えた。

「とりあえず落ち着きな。………………で、なんだって?」

やっと少し冷静になったのか、動きも止めたしたっぱちゃんはかなり深刻そうな顔で言う。

「あ、あのですね、ちょうど今さっきグズマさんが帰ってきたんすよ」

「へぇ、早かったね」

少し早いとは思ったものの、別にバトルツリーでバトルしていただけなのでそこまで不思議ではない。

……というか、あまり帰ってこないとミヅキとくっついてるんじゃないかなんて思ってしまうのでむしろ助かるのだが。

「はい、あの……そ、そしたら、グズマさんを追ってリザードンが飛んで来て」

――リザードン?

なんだか嫌な予感がした。
 ▼ 44 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/05/22 20:42:00 ID:xUtY8BNU [5/14] NGネーム登録 NGID登録 報告
「そこからミヅキが降りてきたんすよ!」

――やっぱりか。

別にあいつのことは嫌いではなかったはずなのに、今はその名前を聞くだけで嫌気が差す。

「で、それをあたいに言ってどうしようってんだい?」

「ひぃ……! に、睨まないでくださいよ……えっとですね、続きがありまして」

苛立っていたせいか少し視線がキツくなってしまったらしい。

びくびくしつつもしたっぱちゃんは続けた。

「あの……ミヅキがグズマさんを呼んだんです」





「『デート行きませんかー?』って」
 ▼ 45 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/05/22 20:42:27 ID:xUtY8BNU [6/14] NGネーム登録 NGID登録 報告
過去最速で身支度を終えたあたいは、ゲンガーのサイコキネシスで、文字通り飛んで向かった。

ミヅキとグズマは玄関前で何やら話し込んでいる。

「えー、ダメですか?」

「いや、ダメとは言っちゃいねえが……」

「じゃあ! デート行きません?」

「そのデートっつーのがな……?」

「じゃあお出かけで!」

「そういう問題じゃねえだろ……」

「じゃあなんでダメなんですか」

「…………あぁぁッ!! 分かったもういいッ! 行ってやんよ、これでいいか!?」

「やったぁ! ありがとうございます!」

「はぁ……」
 ▼ 46 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/05/22 20:46:06 ID:xUtY8BNU [7/14] NGネーム登録 NGID登録 報告
「それで、どこに行きます?」

「決めてねえのかよ……。どこでもいい、好きなとこ選べ」

「え〜……じゃあハウオリデパートで!」

「遠いじゃねえかよ」

「いいじゃないですか! デパート!」

「あぁ……はいはい」

「いいですか? ハウオリデパートですよ? ハウオリデパート!」

「分ーった分ーった。ハウオリデパートな。そんなデカイ声で言わなくても聞こえてるっつの」

「じゃあ、先行って待ってまーす!」

一方的に喋って、ミヅキはまたリザードンに乗ってメレメレ島の方角へ飛んで行った。

残されたグズマは困惑気味に頭に手をやっている。

「しゃーねーな……俺も行くか」

パァン、とモンスターボールからドンカラスを出し始めるグズマ。
 ▼ 47 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/05/22 20:55:10 ID:xUtY8BNU [8/14] NGネーム登録 NGID登録 報告
ここまで物陰から見ているだけだったあたいはここでついつい外に出た。

「……おい、グズマ!」

「あ? どうしたプルメリ」

「………………」

そう言えば、なんでわざわざ外に出たんだろうか。

特に何か言いたいことがあったわけではないのに。

「……………………」

黙りこくるあたいを訝しげな目でグズマは見る。

「どうした?」

その声は荒々しさに優しさが隠れるいつもの声。

あたいはとっさに答えた。

「…………なんでもない。ほら、行ってきなよ」

「……? あぁ」

グズマはあたいから目線を外すと、ドンカラスに乗ってリザードンが飛んで行った方向と同じ向きに飛んで行った。
 ▼ 48 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/05/22 20:55:30 ID:xUtY8BNU [9/14] NGネーム登録 NGID登録 報告
約半日、あたいはただそわそわと何もせずに無駄にした。

夜もかなり月が高くなった頃、ガチャ、とドア音を鳴らす。

それを意識が察知するよりも先に、あたいは玄関に飛び出していた。

「……グズマ!」

「あ? どうした」

何を急に、と問うように眉を釣り上げるグズマの腕には割と多めの紙袋が掛かっていた。

「……い、いや。……楽しんできたかい?」

「ん? あー…………まぁ、それなりにな」

「……っっ………………そうかい」

拳に力が入る。

爪が手のひらに食い込む。

「……あたいは部屋に戻るよ」

それを悟られないように、あたいはグズマの前から離れた。
 ▼ 49 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/05/22 20:57:38 ID:xUtY8BNU [10/14] NGネーム登録 NGID登録 報告
化粧を簡単に落として、ベッドに体を投げ出す。

もう、壁を殴るほどの気力も残っていなかった。

帰ってきた時の、グズマの満足感が出ている表情が脳裏に浮かぶ。

同時に、眼球が熱を帯びた。

嫉妬、羨望、敗北感、後悔、絶望。

色々な感情が頭の中でごちゃ混ぜになる。

頭の中で溢れて、それでも行き場をなくした感情のスープは、目から流れ出てくる。

変えてもらった枕がじっとりと湿っていくのが感じられる。

「……っ…………っぅ…………ぅっく……」

――なんであたいじゃないんだ。

――なんでミヅキなんだ。

――あたいが遅かったからダメなのか?

――ミヅキっていう相手が悪かったのか?

――それとも

――あたいだからダメなのか?
 ▼ 50 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/05/22 20:58:05 ID:xUtY8BNU [11/14] NGネーム登録 NGID登録 報告
なんで

 どうして

  なんで

   どうして

    なんで

     どうして

      なんで

       どうして

        なんで

         どうして

          なんで

           どうして

            なんで

             どうして

              なんで……
 ▼ 51 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/05/22 20:59:08 ID:xUtY8BNU [12/14] NGネーム登録 NGID登録 報告
空が白んできた。

結局、一睡もできていない。

太陽の光の前に為すすべもなく消えゆく星々を眺めていると、ラナキラの中腹に太陽がその姿を現した。

「…………起きるか」

涙はもう出ない。

一晩中で続けて、枯れてしまったから。

あたいの顔、今どうなってるんだろう。

きっと、泣き腫らして充血した目にクマまでつけて、酷い、醜い顔なのだろう。

とりあえず顔を洗うか、トボトボ廊下を歩いて階段を下る。

屋敷の構造的には、洗面台まで行くのに一旦玄関を通らなければならないのだが――

「…………ッ!!?」

玄関は無人ではなかった。
 ▼ 52 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/05/22 20:59:42 ID:xUtY8BNU [13/14] NGネーム登録 NGID登録 報告
グズマが1人で何かの支度をしているのだ。

どこに行くのだろうか、その様子を見ていると。

バサァ! と空気が激しく叩かれる音がした。

メラメラと燃える尻尾が見える。

「おまたせー!」

鈴のような声が羽の音に負けじと響く。

「……遅いな」

面倒臭そうな声で応じるグズマの横顔は、心なしか笑っているように見えた。

「もう準備できた?」

「あぁ。もう行けるが」

ハッと気づいた。
 ▼ 53 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/05/22 21:00:14 ID:xUtY8BNU [14/14] NGネーム登録 NGID登録 報告
ミヅキの口調が、昨日と比べて明らかに違う。

……というか、タメ口になっている。

しかも、グズマがそれを咎める風はない。

たった昨日1日で、果たして何があったのだろうか。

フラッ、とめまいに襲われた。

もう、会話を聞いてもいられなかった。

これ以上は立っていられない、と判断するしかない。

ゾンビのような足取りで、元来た道をフラフラと歩く。

階段でなんどもコケかけながら、なんとか部屋までたどり着き。

力尽きて死ぬように、ベッドへ倒れこむ。

そのままあたいは意識を失った。
 ▼ 54 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/05/23 19:12:34 ID:20o2edps [1/20] NGネーム登録 NGID登録 報告
「………………ん! …………さん!! ……姐さん!!!」

近くで叫び声が聞こえて、意識が強制的に呼び起こされる。

「っ……ん? なんだい突然」

ぼやけた視界が、数秒を経てやっと像を結んだ。

三度登場、したっぱちゃんだ。

今度こそ文句を言おうと口を開いた矢先、先を越された。

「だ、だ、大至急来てください!」

ほとんど意識が寝ているあたいの腕を引っ張って強引に立たせ、腕を握ったまま走り出すしたっぱちゃん。

寝起きで働かない頭でなんとかついていき、尋ねる。

「突然どうした?」

「どうもこうもないっすよ! 大事件です!」

「だからどんな?」

「見た方が早いっす!」
 ▼ 55 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/05/23 19:12:58 ID:20o2edps [2/20] NGネーム登録 NGID登録 報告
結局全貌が掴めないまま、連れていかれた先はテレビの前だった。

やっていたのはニュース番組。

丸半日寝ていた計算になるのだが、そんなことよりももっと大きな衝撃があたいを襲った。

『続いて、速報です。アローラチャンピオンミヅキさんの熱愛報道です! 相手は、あのスカル団のグズマとのことですが……何があったのでしょうか』

「お相手」ではなく「相手」、「グズマさん」ではなく「グズマ」、「何があったのでしょうか」まるで脅しか何かのせいでミヅキが仕方なくグズマといることを匂わせるような発言。

どう考えても、公共の番組では極大の失礼にあたるであろう。

しかし、マスコミの中にそれを咎めるものはいない。

むしろ、キャスターの方はただ原稿を読んでいるだけなのかもしれない分、撮影者に殺意が湧いた。

『街角の方々はこのこと、どう思っているんでしょうか。インタビューして見たいと思います」

画面が切り替わり、ハウオリデパート前の映像が映し出される。

最初のインタビューは、散々だった。
 ▼ 56 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/05/23 19:13:27 ID:20o2edps [3/20] NGネーム登録 NGID登録 報告
『何かの間違いか、じゃなかったら脅されてると信じたいですけどね! じゃなきゃあんなスカル団とかいうクズと一緒になんかいないでしょう?』

本来であれば絶対に放送してはいけないような、罵詈雑言。

しかし、それは誰に指摘されることもなく罷り通ってしまう。

何故なら、多数決が正義だから。

それがどんなにおかしなことでも、数に物を言わせれば通ってしまう、そんな社会だから。

『ミヅキちゃん可愛いもんねぇ。悪いやつに狙われて、かわいそうに」

どいつもこいつも、表面のことすらも知らないくせに…………ッ!

テレビを殴り飛ばしたい気分だった。

八つ当たりしても仕方ない、となんとか押さえ込み、あたいはしたっぱちゃんに言った。

「……消してくれ。不愉快だ」

「は、はいっっ!」

キャスター達による誹謗中傷が、プツリと切れて真っ暗な画面に変わる。

「グズマはどこにいる?」

「はいっ! え、えと、昼のニュースでこれ見たっきり部屋に籠っちゃってて」

それを聞いた瞬間、返事すらもせずにあたいは走り出していた。

外では、朝は降っていなかったのにザァァァァ、と大粒の雨がボロ屋敷の屋根を連打していた。
 ▼ 57 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/05/23 19:13:51 ID:20o2edps [4/20] NGネーム登録 NGID登録 報告
念のため救急箱を持ってグズマの部屋のドアの前に立つと、ガン! ガン! という強烈な打撃音が壁越しにも聞こえて来た。

「……おい、グズマ!」

半ば怒鳴るように呼びつけても、返事はない。

幸い鍵なんかはこのボロ屋敷にはないので、そのまま突入する。

目の前には、血だらけの壁と血だらけの拳のグズマがいた。

「……なんだよ。俺に用か」

ぶっきらぼうな物言いからは、そこはかとしれない悲壮感が漂っていた。

「……あぁ。あれ、見たんだよ」

グズマの顔が、怒りに歪んだ。

「……チッ」

ダン! とグズマが壁をまた思いっきり殴りつける。

血が派手に飛び散り、椅子に付着した。
 ▼ 58 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/05/23 19:14:24 ID:20o2edps [5/20] NGネーム登録 NGID登録 報告
「やめな!」

一昨日自分が同じことをやっていたのも忘れて、あたいは一喝する。

「……うるせえ」

「うるさくなんかないよ。ほら、手、出しな」

手の救急箱を見せてやると、グズマは案外素直に手を差し出してきた。

同じように包帯を巻かれた手で、今度はあたいが巻いてやる番。

丁寧に、丁寧に。

巻き終わって、グズマがボソッと小さな声を出した。

「……ありがとよ」

「ただのお返しだよ」

グズマが乱暴に椅子に座る。

他に座るところもないのであたいはベッドの端に腰をかけた。
 ▼ 59 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/05/23 19:14:58 ID:20o2edps [6/20] NGネーム登録 NGID登録 報告
重い沈黙が2人の間に横たわる。

走ってくるまでに話すことは色々考えていたはずなのに、いざこの状況になってみると喉から声が出なかった。

結局、先に口を開いたのはグズマだった。

「……なぁ。俺ってやっぱ悪者なのか?」

「…………いや、」

「なんで俺、こんな状況になってるんだろうな。ろくに外出も出来ずによぉ」

この言葉には、ある過去があった。

半年ほど前の、ウルトラビースト襲来事件。

黒幕は、それを呼び出した張本人の、エーテル財団代表、ルザミーネのはずだった。

なのに、帰ってみれば世間ではその補助に過ぎなかったスカル団が世界を危機に陥れた大悪人になっていたのだ。

当然そのボスであるグズマは世界中の敵となり、バトルの腕が認められているバトル施設以外では立ち入り禁止になっている、なんてのはザラなのだ。

今は極力世間に関わらないようにして、生活には支障をきたさないようになって来たのだが、それも今回で終わり。
 ▼ 60 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/05/23 19:15:28 ID:20o2edps [7/20] NGネーム登録 NGID登録 報告
「……おかしくねぇか。どれだけ努力しても認められない。悪い方だけはガンガン見つけられて叩かれてよ」

「…………」

「腐ってんだよ……どいつもこいつも!!」

叫び声は、ボロ屋敷の壁に吸収されて虚しく消える。

「やっぱり、俺はただの悪いやつ、悪役で、世間には要らない存在なんだろうな…………」

グズマの目は、何も映していなかった。

絶望の淵から落ちたような、そんな表情。

グズマの心は、空っぽだ。

むしろ、空を超えてマイナスのエネルギーが溜まって、溢れている。

だから、中和してやらなければいけない。
 ▼ 61 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/05/23 19:16:04 ID:20o2edps [8/20] NGネーム登録 NGID登録 報告
中和した上で、満たせるような、何か。

それは――なんだろうか。

いさめる、肯定する、そんな建前なんか人間不信に陥っているやつには効かない。

もっと大きい、それでいて絶対に嘘はないと証明できるようなもの。

それでいて、グズマの欲するものを、満たせるような、何か。

そんなものを、あたいが持ってるはずも――



――いや、一つだけ、あるじゃないか。



あたいがグズマを想う気持ちは、正真正銘、本物だ。
 ▼ 62 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/05/23 19:16:23 ID:20o2edps [9/20] NGネーム登録 NGID登録 報告
あとは、そのことを、絶対に嘘ではないとわかる方法で、伝えるだけ。

心臓の拍動が、急激に速くなった。

全身が石のように固まって、動かない。

それでも、口を無理やりこじ開けて、どうにかかすれ気味の声を出した。

「…………な、なぁ。……こんな時に、わ、悪いんだけど、さ」

「……なんだよ」

ドクッ、ドクッ

「……あ、あ、あたいは…………」

ドクッドクッ、ドクッドクッ

「…………………………グズマ、お前が……」

ドクッドクッドクッドクッドクッドクッドクッドクッ
 ▼ 63 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/05/23 19:16:44 ID:20o2edps [10/20] NGネーム登録 NGID登録 報告














「…………す……好きだ……っ!!」













 ▼ 64 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/05/23 19:17:14 ID:20o2edps [11/20] NGネーム登録 NGID登録 報告
グズマは、ただぽかんと口を開いていた。

その表情はただ一色、驚きだけ。

再び沈黙が場を支配する。

一日千秋という言葉が痛いほど身に染みるような体感時間を経て、それでも黙るグズマ。

半ば諦めたような気分になった。

そのせいで余裕ができたのだろうか。

ふと、ただ「好きだ」と言われても返答に困るんじゃないかと思い至った。

「……だからさ。もしグズマが良ければ……ミヅキとの恋人ごっこじゃなくて…………ほ、本当の恋人に……なって、くれないか」

グズマは開いていた口を閉じ、何かを思案するような素振りを見せた。

「…………そうか。……そういうことか」

しばらくして、グズマは1人納得した。

そして、その口が開かれる。
 ▼ 65 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/05/23 19:17:33 ID:20o2edps [12/20] NGネーム登録 NGID登録 報告
「………………多分、俺もだ」

「……はぁ?」

多分、って何?

というか今なんて言った!?

脳内にクエスチョンマークの嵐が吹き荒れる。

(待て待て待て、今なんて言った!?)

混乱の中で、グズマは付け足してこう言った。

「いや、最初に俺がお前に相談したのってよ。多分俺がお前を心の底から信頼してたからだろ? お前に話せばとりあえず安心できると思ったんだよ。それは、好きの一種にはならねえか?」

そんなことを真面目に言ってくるグズマに、あたいは――
 ▼ 66 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/05/23 19:18:03 ID:20o2edps [13/20] NGネーム登録 NGID登録 報告
「ふっ…………あははははは!」

――思わず笑ってしまった。

「なんだよ、なんかおかしいこと言ったかよ」

ふてくされた表情になるグズマを笑い混じりにたしなめる。

「いや? おかしくはないけどさ。なんか……グズマらしくていいって思っただけだよ」

グズマの言葉は、ロマンチックでもなんでもなかった。

けど、変にグズマが突然ロマンチックなこと言い始めても気持ち悪いしな。

「グズマらしいよ」

一旦笑いが収まってからそういうとグズマも笑った。

「はっ、そうか。ならいいけどよ」

2人して納得していた時だ。
 ▼ 67 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/05/23 19:18:19 ID:20o2edps [14/20] NGネーム登録 NGID登録 報告
バタン! と扉が騒音を立てて開く。

「「ミヅキ!?」」

「はーい! ミヅキでっす!」

パーン! と何かが弾けるような音がした。

同時に、視界にキラキラとした紐が縦に伸びた。

「おっめでとーございまーーす!!」

ミヅキが後ろ手に隠し持っていたクラッカーがなったのだ。

「…………どういうことだい?」

目を細めてミヅキに問うと、ミヅキはにかっと歯を見せて笑う。

「んー? 簡単だよ?」
 ▼ 68 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/05/23 19:18:41 ID:20o2edps [15/20] NGネーム登録 NGID登録 報告
「グズマさんへの告白、あれ嘘でーす!!」

「「……は、はぁーーー!!?」」



「説明しよっか?」

楽しそうにニコニコとこちらを窺うミヅキ。

「……あぁ。してもらおうか」

グズマが答えると、何故かミヅキはこちらを向いた。

「この前プルメリさん、リーグに来たよね?」

「……あぁ、行ったな」

「あの時、グズマさんの話出したらあからさまに表情が変わるから、まだくっついてないのか〜って思ったの」

「……よ、余計なお世話だよ」

「だから、ちょっと焚きつけようと思って、告白してみた」

悪戯をした子供のように悪びれもせず、ミヅキは言った。

「……そんなことなのかい?」

「うん!」
 ▼ 69 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/05/23 19:19:01 ID:20o2edps [16/20] NGネーム登録 NGID登録 報告
……泣いていた自分がバカみたいだ。

「……はぁ。今回は礼言っとくよ。ありがとう」

もう、怒る気力もなかった。

こくこく満足げに頷くミヅキに、今度はグズマが話しかけた。

「おい、スクープの件は大丈夫なのか」

言われてハッと思い出した。

あたいのせいでミヅキが批判を受けるのはどう考えても良くない。

「ん、それ? ありがと!」

ミヅキが意味の分からないことを言い出した。

「はぁ?」

「いやー、わたし、チャンピオン辞めたかったんですよねー。めんどくさいし? だから、それを口実にハウにチャンピオンあげました!」

さらっと重大なことを言ってのけるミヅキに、2人して唖然としてしまった。
 ▼ 70 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/05/23 19:19:19 ID:20o2edps [17/20] NGネーム登録 NGID登録 報告
「じゃあ、この後はどうするんだい?」

「カントーに戻ります! リーリエに会わないとなので」

一応その後も考えてもいたようで、少し安心した。

「……お前はチャンピオン降りて、それでいいのか?」

まだグズマは心配していた。

「さっきから言ってるじゃないですか。めんどくさかったんですよ。利用しちゃってすみません」

「……そうか。なら、良い」

一通り話が済んだと判断したのか、ミヅキはくるんとあたいたちに背中を向ける。

「じゃっ、お幸せに!」

ボールからフーディンを出してテレポートを使わせ、一瞬でミヅキはその場から消えた。
 ▼ 71 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/05/23 19:19:35 ID:20o2edps [18/20] NGネーム登録 NGID登録 報告
嵐のようなヤツが過ぎ去って、また部屋は雨が屋根を叩く音に満たされる。

「…………なぁ」

グズマが、口を開いた。

「俺、思ったぜ」

「……? 何を」

「…………」



「悪役で、良かった、ってな」



「……あぁ、ほんと、その通りだね」
 ▼ 72 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/05/23 19:19:53 ID:20o2edps [19/20] NGネーム登録 NGID登録 報告
さっきから降り続けている雨は、まだ止みそうもない。

現実は、小説みたいに都合よく情景描写はしてくれないらしい。

いや、もしかすると、この止まない雨が情景描写だったりするんだろうか。

そうだとしたら多分、これからもグズマやあたいたちは世間から悪者扱いされるんだろう。

でも、悪者のあたいたちからしてみれば、そうやって本当のことを知ろうともせずにただ叩くだけのやつらのほうが悪いやつであって。

結局世の中には本当の悪者なんていないか、みんなが悪者なんだろう。

勘違いしないでほしいが、「悪者」と「悪役」は違うのだ。

今回はグズマが世間の「悪役」だったからこそこうして上手くいった。

だったらどれだけ批判されようが、あたいはずっと「悪役」でいてやろう。



悪役で、本当に良かった。



 ▼ 73 羽真◆Ju6JKuHffQ 17/05/23 19:20:14 ID:20o2edps [20/20] NGネーム登録 NGID登録 報告
というわけでミヅグズに見せかけてのプルグズSSでした
いかがでしたか?
悪役SS企画へ向けてのSSってことで当初ミヅグズだったんですが、プルメリ姐さんいいなぁ、という経緯がありましてこんな感じになりました
今回一番悩んだのは圧倒的にスレタイですね
プルグズなんだけど最初はミヅキから始めたいっていう状況をどうするか考えた結果、スレタイに【スレタイ詐欺】を入れるということになってしまいました(?)
あと今回はプルメリさんもグズマさんもそういう人じゃないんであんまりにせんはっぴゃくにじゅうはちを入れられなかったのがね……
無理やり入れるのは違和感しかないのでやりませんでした

小話ですが、今日落とした分は3時間くらいぶっ通しで書ききったんですけど、そのデータまるまる吹っ飛びかけてマジで焦ったという事故がありました

なお、このSSは前述の通り悪役SS企画に参加しております(URLは以下)
http://pokemonbbs.com/sp/poke/read.cgi?no=590254

最後にこのSSとは関係ないですが、こちらを書くためバンギ×グレイシアの方かなり放置してしまいました
そちらを見て下さっていた方申し訳ないです
もう更新していきますのでご安心を

さてさて、今回はこの辺でお開きとなります
質問感想文句などなど、次レス以降になんでもどうぞ
答えるものは答えていきますので
それでは、また会う日まで!


フラれる描写難しかった……
 ▼ 74 ゲツケサル@タイマーボール 17/05/23 20:34:48 ID:KzUkDh.o NGネーム登録 NGID登録 報告
乙でした
企画の方も楽しみですわ〜
 ▼ 75 チャブル@こないれ 17/05/24 11:41:59 ID:x9EAMNj2 NGネーム登録 NGID登録 m 報告
乙でした
とても面白かったです
 ▼ 76 ガエルレイド@ハバンのみ 17/05/24 16:17:09 ID:5.zj/ZII NGネーム登録 NGID登録 m 報告
おつでした!!
すごく面白かったです!
 ▼ 77 ェイミ@いでんしのくさび 17/05/24 20:23:50 ID:RRqSCq06 NGネーム登録 NGID登録 報告
めちゃくちゃ面白かった
乙です
 ▼ 78 アルヒー@フェアリーZ 17/05/24 20:40:40 ID:VngcgfbA NGネーム登録 NGID登録 報告
お疲れ様です!
 ▼ 79 ィアルガ@みずのいし 17/05/25 19:12:31 ID:ggkMaGdo NGネーム登録 NGID登録 m 報告
お疲れ様です!
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