▼  |  全表示464   | <<    前    | 次100 >> |  履歴   |   スレを履歴ページに追加  | 個人設定 |   ▼   
                  スレ一覧                  
SS

【SS】ママ「ほら、早く起きなさい!」【リメイク】

 ▼ 1 AYr1xkow/g 17/08/18 09:07:23 ID:z1am0BAU [1/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
こんにちは。私はスリジエ。みんなからはポケモン博士と呼ばれているわ。今日は私のネット講座を受けてくれてありがとう。楽しい時間にしましょうね。

ポケットモンスター、縮めてポケモン。この世界には、そんな不思議な生き物がたくさんいます。私たち人間は、彼らポケモンと共に生きています。一緒に遊んだり、力を合わせて仕事をしたり、そして時にはポケモン同士を戦わせてバトルをしたり……。そうやって私たちはポケモンと絆を深め合っているの。そんな彼らをよく知るために、私は研究をしています。

さて、ではそうね、今日の講座を受けてくれたあなたにも軽く自己紹介してもらおうかしら。えーっと、写真を見せてもらってもいいかしら?

ありがとう!ふんふん。あら、どこか見覚えのある顔だわ。お名前はなんていうの?

パロレくんっていうのね!素敵な名前ね。

それにしても、パロレくん……?あ!思い出したわ!

あなた、アキニレくんの弟くんね!なんだ!びっくりしちゃった。

知ってるとは思うけれど、アキニレくんは私のお手伝いをしてくれているのよ。今はちょうど出かけているけど、明日の朝早くに、出張から帰ってくるはずだわ。

……パロレくん!きっとあなたなら強いトレーナーになれるわ。そんな気がするの。ポケモンとの絆を深めて、思う存分楽しんでね!

さあ、ポケットモンスターの世界へ!
 ▼ 2 AYr1xkow/g 17/08/18 09:09:38 ID:z1am0BAU [2/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
「ほら、早く起きなさい!」

扉の向こうから声が聞こえる。しかし、部屋のベッドで寝ている少年の耳には届いていない。

ここはアモル地方の北部に位置するヴァイスタウン。これといって目立つものもない、小さくのどかな町だ。どこからともなく、ポッポやヤヤコマの鳴き声が聞こえてくる。

少年、パロレは自室のベッドでぐっすりと眠っていた。落ち着いた茶色の髪に茶色の瞳の、至って普通の少年。どこにでもいる十三歳の少年だ。

昨日はアモル地方に住むポケモン博士、スリジエのネット講座を受けていた。予約が始まってもすぐに受付終了してしまうほど人気な講座を、今回やっと初めて予約ができたのだ。嬉しすぎて夜遅くまで質問ばかりしてしまったために、今日はいつもより遅くまで眠っているのだ。

やがて、扉が軋む音がし、何者かが部屋に入ってきた。母親のニャスパーだ。大方、いくら呼んでも降りてこない息子を起こすために母親が寄越してきたのだろう。

ニャスパーは扉の僅かな隙間から部屋に入りこむと、パロレのベッドの上によじ登り、鳴き声を上げながらパロレの上にどんと倒れこんだ。

「んん……」

パロレがもぞもぞと動く。ニャスパーはパロレの顔を覗きこんだ。

「あと五分……」

「にゃー!」

パロレがそう言って再び眠りの中に入ろうとした瞬間、ニャスパーは大声を上げてパロレの上を跳ねる。

「うわーっ、もう分かったよ起きるってば」

パロレは嫌そうな声を上げて布団をひっくり返した。弾みでニャスパーがベッドから落ちる。

「なんか今日、テンション高くないか……?」

欠伸を噛み殺しながらそう言ってニャスパーを見つめる。パロレはそれから昨日のネット講座のことを思い出した。アキニレが今日の早朝に出張から帰るとスリジエは言っていたはずだ。

「そうか、今日は兄さんが久しぶりに帰ってくるんだった」

パロレはそう呟くと、ニャスパーに「分かったよ、起きるよ」と言って軽く頭を撫でてやる。ニャスパーは気持ちよさそうな鳴き声を上げた。そしてパロレはやっとベッドから離れた。
 ▼ 3 ガギャラドス@きりのはこ 17/08/18 09:24:10 ID:jqDVxmSA [1/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
キターーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
オープニング追加されてるーーーーーーーーーーー!!!
名作リメイク支援
 ▼ 4 AYr1xkow/g 17/08/18 09:34:53 ID:z1am0BAU [3/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
ニャスパーと共に階下に降りる。ニャスパーは母親の前まで向かうと、自慢げに鼻を鳴らした。ちゃんと起こしてきたよ、とでも言いたげだ。

「ふわぁあ……おはよう」

パロレは欠伸をしながら挨拶をした。母親はキッチンでパロレの朝食を準備しているところだった。ちらりとパロレの顔を見て「おはよう、お寝坊さん」と声をかけてくる。

「そんな寝坊してな……あ」

パロレは、リビングのテーブルでコーヒーを飲んでいる兄を見つけて立ち止まった。

「おはよう、おかえり兄さん」

「ただいまパロレ」

アキニレは、パロレよりももっと濃い茶色の髪の、がっちりとした体格をした青年だ。アキニレとは少し歳が離れている。パロレはアキニレの様子をどこか怪訝な様子で見つめていたと思えば、

「兄さん、また焼けた?」

「今回の出張は南国のアローラ地方だったからな!……にしても、お前すごい寝癖だな」

アキニレはパロレを見て言う。パロレは顔をしかめて頭を掻きむしった。

「アローラ地方って、アモル地方とは違う姿をしてるポケモンもいるらしいわよ。さっきアキニレが楽しそうに話してたわ」

母親がそう言いながらリビングにやってきて、テーブルにトーストを置く。パロレは椅子に座った。

「ああ、すごかったよ。ベトベトンなんか、すごいカラフルなんだ。初めて見た時は驚いたよ!」

アキニレが目を輝かせ、早口でまくしたてる。アキニレはスリジエの手伝いをしながら、個人的にもポケモンの生態について研究しているのだ。見た目はいかにもスポーツマンらしい容姿をしているのに、意外とオタク気質であるということをパロレはよく知っている。
 ▼ 5 AYr1xkow/g 17/08/18 09:35:50 ID:z1am0BAU [4/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
パロレが朝食を食べていると、アキニレが思い出したように口を開いた。

「そうだパロレ、お前に大事な話があるんだ」

「え、何?」

パロレが思わず手を止める。アキニレの顔は明るい。

「スリジエ博士がお前にポケモンをくれるってさ!8年前、俺にくれたように」

アキニレが言う。パロレの瞳が、驚きで大きくなった。

「まあ!」

母親が嬉しそうな声を上げる。

パロレは驚いて声も出なかった。昨夜、ようやくスリジエのネット講座を受けることができたというのに、なんと今日は本物に会い、更にはポケモンを貰えると言うのだ。パロレは兄の存在に心から感謝した。

「やった!」

そんなパロレの様子を見て、アキニレは楽しそうに笑っている。

「ポケモンは3匹いるんだ。他の子にもぜひ貰ってほしいな。……そうだ、クオレちゃんはどうだろう」

アキニレが考えながら言う。クオレは隣の家に住んでいる、パロレの幼馴染の女の子だ。

「パロレ、誘ってみたらどうだ?」
 ▼ 6 テラ@クロスメール 17/08/18 09:37:25 ID:jqDVxmSA [2/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
関係ない話だが
私が初めてBBSに書き込んだ言葉は「支援」
そしてこれの元スレが私が初めて書き込んだスレッドなのだ

オリジナル大好きの俺にはどストライク。支援
 ▼ 7 ブキジカ@フシギバナイト 17/08/18 17:56:31 ID:cUPI/.lc NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
>>6
くっさ
 ▼ 8 AYr1xkow/g 17/08/18 20:31:14 ID:QLXaGb1M [1/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
朝食を食べ終えたパロレは、着替えを済ませると家を出た。アキニレの提案通り、クオレを誘ってみようと思ったからだ。

クオレの家は、本当にすぐ隣にある。歩いて15秒もかからない。パロレはクオレの家の玄関のチャイムを鳴らした。

「はーい。パロレくんかしら?」

インターホン越しに声が聞こえる。クオレの母親の声だ。こんな小さなヴァイスタウンでは、家を訪ねてくる人なんてたかが知れている。パロレは「はい!」と元気よく挨拶を返した。

その後、すぐに扉が開く。クオレの母親が出てきて、パロレを見てニッコリと笑った。

「おはよう。クオレなら二階の部屋にいるわ」

「おはようございます。ありがとうございます!」

パロレは礼を言うと、急いで二階にあるクオレの部屋へと向かった。クオレは机に置いてあるパソコンの画面を見つめ、一心不乱に何かを探しているようだった。パロレには分かる。彼女もスリジエのネット講座の予約を成功させるのに必死なのだ。

「クオレ、おはよう」

「あ、パロレおはよう。んー……、また予約終了だぁ……」

そう言って落ちこむクオレの目は、未だ画面に釘付けになっていた。パロレはクオレの元に大股で近付き、腰に手を当てて胸を張り、自慢げに口を開いた。

「ぼく、昨日講座受けたよ!」

「ええっ!?いいなぁー」

クオレは悔しそうな声を出した。

「それでね」

パロレは話を切り出した。ここからが本題なのだ。クオレが身を乗り出す。

「ぼく、スリジエ博士にポケモン貰えることになったんだ!」

「ええっ!」

クオレがまたも驚く。それから顎に手を当て、

「すごーい!そっかぁ。お兄さんが博士の手伝いをしてると、そういう機会があるんだねぇ」

そう言って、少し羨ましそうにパロレを見上げた。パロレはにんまりと笑って続ける。

「それでね!ポケモンは3匹いるんだって。クオレも一緒にポケモン貰いに行こうよ!」

パロレの言葉に、クオレの顔はパッと輝いた。

「えっ?わたしも?いいの!?」

パロレはうんうんと何度も頷く。嬉しいことは、共有した方がいい。それに、アキニレに言われたのだから間違いはないはずだ。

「やった!行くよ行く!」

クオレは嬉しそうに声を上げた。
 ▼ 9 AYr1xkow/g 17/08/18 20:50:20 ID:QLXaGb1M [2/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
クオレと共に、アキニレに連れられてヴァイスタウンを出る。ヴァイスタウンの南にある1番道路は、東西に長く広がっている。1番道路の東側はくさむらが少なく、避けて歩けるようになっている。ここを進んでいけば、オーロシティへと行けるのだ。

「二人はまだポケモンを持ってないからな。くさむらに入るとポケモンが飛び出してくるから、避けて歩くんだぞー」

「はーい!」

クオレは元気よく返事した。一方、パロレは悪戯っぽく兄に声をかけた。

「兄さん、代わりにバトルしてくれないの?」

「そりゃもしもの時は戦うけどな?」

アキニレはそう言って地面を踏みしめた。ジャリ、と砂の音がする。

アキニレは八年前、今のパロレと同い年の時に同じようにスリジエからポケモンを貰って旅に出ていった。ポケモンに関する知識も豊富な兄はそれなりにバトルの実力もあるのだろうとパロレは思っているが、本当のところは知らない。パロレは、アキニレがバトルしているところを見たことがないのだ。

「おっ、オーロシティが見えてきたぞ」

アキニレが声を上げた。

オーロシティは、アモル地方で二番目に大きな都市。ファッション関係の産業が盛んな都市だ。ショッピング目当ての観光客で溢れている近代的な街で、オーロティラミスというスイーツが名物だ。

「オーロシティ!わたしもたまにショッピングしに行きます!……高級店は入ったことはないけど……」

クオレが言う。

「ああ、そうさ」

アキニレは笑顔でそう言うと大きく頷いた。

「スリジエ博士の研究所はここにある」

アキニレの言葉に、パロレとクオレはワクワクをこらえきれない様子で目を見合わせた。
 ▼ 10 AYr1xkow/g 17/08/18 22:04:25 ID:QLXaGb1M [3/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
>>9
修正

クオレと共に、アキニレに連れられてヴァイスタウンを出る。ヴァイスタウンの南にある1番道路は、東西に長く広がっている。1番道路の西側はくさむらが少なく、避けて歩けるようになっている。ここを進んでいけば、オーロシティへと行けるのだ。
 ▼ 11 AYr1xkow/g 17/08/18 22:05:46 ID:QLXaGb1M [4/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
三人はオーロシティにたどりついた。

「ここを道なりに行けば、研究所に着くよ」

アキニレがそう言って進んでいく。

「相変わらずデカい街だなー」

パロレが呟くと、クオレが反応した。

「ホテルとかブティックとかいっぱいあるよね!高級な街、って感じ!」

クオレの言葉に、アキニレは振り返り、

「好きに見回るのはまた後でな。とりあえず、研究所に行くよ」

「はーい!」

パロレとクオレは声を合わせて返事した。

やがて、スリジエの研究所が見えてきた。研究所と聞くと無機質な建物が頭に浮かぶかもしれないが、ここの研究所は違う。建物の造形は街の外観に合わせてあり、一見するとゴージャスな一戸建てといったようにさえ見える。

研究所の中に入る。中も綺麗で、清潔感のある様子だ。アキニレは受付の女性に話しかけた。

「おはようございます、ちょっと久しぶりです」

「お久しぶりです。例の弟くんですか?」

女性は首を伸ばして、アキニレの後ろでそわそわしているパロレを見た。

「ええ、そのお友達にも来てもらいました」

「いいですね。予約してましたっけ?」

女性はそう言いながらペラペラと目の前の書類をめくる。

「えっと、男の子の予約はありますね。これでしょうか?」

女性が言うと、アキニレは首を捻りながら、

「いやー、予約はしてないですね。博士に直々に頼まれたので」

「そうですか。ではこの子はまた別の子ですね」

女性はそう言って時計をちらりと見る。

「この子も予約時間そろそろなので、もうすぐで来ると思いますよ」

「おっと、じゃあできるだけ早く終わらせます」

アキニレは女性にそう言ってから二人の方を振り向いた。

「よし、二人とも。博士がいるのは三階だ、ついておいで」
 ▼ 12 ケニン@エネコのシッポ 17/08/19 00:12:43 ID:1PvdFB3A NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 13 AYr1xkow/g 17/08/19 13:16:50 ID:RYnIAxYA [1/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
研究所のエレベーターに乗りこむ。アキニレが慣れた手つきで三階のボタンを押すのを眺めながらパロレは口を開いた。

「予約ってなんのこと?」

「ん?ああ、博士は忙しいからね。会いたい時は予約しなくちゃダメなんだ」

アキニレはそう言って、二人の顔を見てにやりと笑う。

「君たちは別だよ。今回は特別だからね」

「えへ……やった!」

クオレがそう言って、茶色の長い髪を手櫛で梳き始めた。パロレが怪訝な表情でクオレを見つめる。クオレはそんなパロレに囁いた。

「緊張してきちゃった。もっとちゃんとした格好してくればよかったよ……!」

その声はアキニレにももちろん届いていたようだ。アキニレが大きな笑い声を上げた。

「ははは!そんなに緊張しなくても大丈夫だよ。博士はすごく優しいから」

アキニレがそう言ったところで、エレベーターが止まる。パロレはクオレとまた顔を見合わせ、ごくりと唾を飲んだ。

緊張する。でも、ワクワクが止まらない。

「さ、行きな」

エレベーターのドアが開く。アキニレが開くボタンを押したままにして、二人を中へと促した。
 ▼ 14 AYr1xkow/g 17/08/19 13:30:27 ID:RYnIAxYA [2/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
パロレとクオレが三階へと入った途端、向こうから何か小さい生き物が走ってきた。もちろん、ポケモンだ。水色の体のそのポケモンは大きな口を開けて鳴き声を上げながらこちらへと近づいてくる。おおあごポケモンのワニノコだ。

「ワニワニー!」

「わぁ……ポケモンだぁ……!」

クオレが目を輝かせた。

アキニレは、足を止めてワニノコを撫でているパロレとクオレを微笑ましく見つめながら通りすぎていった。そして、奥で机に向かってパソコンに文字を打ちこんでいる女性の前まで進む。

「おはようございます、スリジエ博士」

そう、彼女がスリジエ博士だ。スリジエは画面から視線を外し、アキニレの顔を見上げる。

「おはようアキニレくん。おかえりなさい、アローラはどうだった?」

「最高でした!」

アキニレは満面の笑みで答えた。

「そう!良かったわ」

「ええ。そして今日は、弟とその友達を連れてきました」

「仕事が早くて助かるわ」

スリジエはそう言ってクスクス笑う。

「あのー、博士。この後すぐ予約があるみたいなんで、急いだ方がいいですかね?」

アキニレが少し焦った顔で尋ねた。しかし、スリジエは首を横に振る。

「いいえ、大丈夫よ。そのことは気にしないで」

「あ、そうなんですか?分かりました」

アキニレは目を丸くして若干拍子抜けしているようだった。でもまあ、気にしなくていいと言われたのならいいのだろう。アキニレは、パロレとクオレに声をかけた。

「おーい二人とも!こっちにおいで!」
 ▼ 15 AYr1xkow/g 17/08/19 13:50:01 ID:RYnIAxYA [3/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
パロレは研究所の奥へと向かった。クオレがワニノコを抱いて横を歩いている。やがて二人は、スリジエとアキニレの前までやってきた。

「こんにちはっ!クオレと言います!」

クオレが挨拶をする。クオレの胸に抱かれていたワニノコがジャンプして降りると、スリジエの足元まで駆けていった。スリジエは微笑んだ。

「よろしくね、クオレちゃん。それからパロレくんも。昨日ぶりね」

「はい。よろしくお願いします!」

「昨日ぶり?」

アキニレが首を傾げた。

「実はね、パロレくんは昨日私のネット講座を受けてくれたの」

「ああ!そうだったんですね!」

アキニレは納得した様子でそう言った。

「今日はいきなり呼んじゃってごめんなさいね」

「いえいえ!博士にお会いできるって聞いて緊張したけど……ポケモンをいただけるなんて、ワクワクしっぱなし!って感じです!」

スリジエの言葉に、クオレが目をキラキラと輝かせて答えた。そんな様子に、スリジエは嬉しそうに笑う。

「うふふ、元気いっぱいで素敵ね。それじゃあ、早速ポケモンたちを見せてあげる!」

スリジエがそう言うと、ワニノコが元気に鳴き声を上げる。

「ワニッ!」

「あなたは私のポケモンでしょ」
 ▼ 16 ヤップ@こだわりメガネ 17/08/19 13:51:31 ID:PjYjRmBw [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
幸せ
 ▼ 17 ッタイシ@きれいなウロコ 17/08/19 13:52:14 ID:PjYjRmBw [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
>>16
ミス
支援
 ▼ 18 AYr1xkow/g 17/08/19 14:07:16 ID:RYnIAxYA [4/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
スリジエは机の引き出しから三個のモンスターボールを取り出した。そして、それぞれ中に入っているポケモンをボールから出し始めた。

「まずはこの子ね」

そう言って繰り出したのは、緑色のポケモンだ。小さくてスリムな体躯に、気の強そうな瞳が可愛らしい。

「この子はくさへびポケモンのツタージャ。イッシュ地方から連れてきたの」

「ツタ?」

ツタージャは小さく鳴き声を上げてから、近くにいたクオレを見上げた。

「可愛い!」

クオレが高い声を上げる。

「お次はこの子」

スリジエがそう言って繰り出したのは、赤みがかったオレンジ色の体毛をしたポケモンだった。尻尾の先には小さい炎が燃えている。

「とかげポケモンのヒトカゲよ。この子はカントー地方の子ね」

「カゲカゲッ!」

ヒトカゲは鳴き声を上げてジャンプし、小さい足をバタバタと動かした。

「元気いっぱいだ」

パロレがそうコメントする。

「最後はこの子ね」

次に出てきたのは、水色の体をしたポケモンだ。小さな嘴が可愛らしい。

「この子はペンギンポケモンのポッチャマ。この子は、シンオウ地方出身ね」

「チャマ!」

スリジエは、元気に鳴き声を上げて床を突っつき始めたポッチャマの頭を撫でた。

「さあ、好きな子を選んでいいわよ!」

スリジエの言葉に、クオレは困った顔をして両頬に手を当てた。

「えぇー、どうしよう!みんな可愛くて決められないよー!」

「うーん……どうしよう……!」

パロレも考えこんで、唸り声を上げた。
 ▼ 19 ーマンダ@ライブキャスター 17/08/20 00:27:55 ID:w73Ttvtw NGネーム登録 NGID登録 報告
女博士好き
支援
 ▼ 20 AYr1xkow/g 17/08/20 02:29:41 ID:/S2bPvLA [1/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
パロレはしばらく三匹を前に悩んでいた。すると、ふとヒトカゲと目が合った。ヒトカゲは先程まで状況がよく分からずキョロキョロと落ち着きなく周りを見渡していたのに、パロレから目を離そうとしない……。

瞬間、パロレは口を開いていた。

「ぼく、決めました。この子、ヒトカゲにします!」

パロレはそう言って、ヒトカゲを抱き上げた。

「え!パロレ決めるの早いー!」

クオレが慌てて声を上げる。スリジエはパロレとヒトカゲを見てニッコリと笑った。

「ヒトカゲをよろしくね、パロレくん!」

「はい!」

パロレが返事をする。クオレはもう少し迷っているようだった。唇を噛み締めて二匹を交互に見やっている。

「えっとー、えっとー……、わたし、この子!ツタージャにします!」

どうやら決心がついたようだ。クオレはツタージャを胸に抱きかかえた。ツタージャも嬉しそうだ。

「うん!決まってよかった。クオレちゃんも、ツタージャをよろしくね」

「はい!大切にします!」

「いい返事だわ」

スリジエはそう言うと、机の前の椅子に腰かけた。スリジエのたっぷりとした紫色の長い髪が揺れる。スリジエはパロレとクオレに言い聞かせるように語り始めた。

「私はね、人間とポケモンの間に生まれる絆について研究しているの。きっと絆があった方がポケモンって強くなれるのよ」

スリジエは緑色の瞳を閉じて呟くように繰り返した。

「懐いたり、仲良くなったりすることで進化するポケモンもいるし……絆を深めることでメガシンカして強くなる子もいる……」

「メガシンカ、聞いたことあるけどあまりよく知らないなぁ」

クオレが言うと、スリジエは小さく笑った。

「ふふ、その話はまた今度、機会があればしましょうね」

スリジエはそれから真面目な様子で続ける。

「あなたたちにポケモンをあげたのは、実は少しだけ協力してほしいからっていうのもあるの。絆を深めて強くなっていくその過程を、ぜひ私にも見せてくれるかしら?」

スリジエが問う。

「はい!」

「わたしに出来ることなら何でもします!」

二人は迷うことなくそう答えた。
 ▼ 21 AYr1xkow/g 17/08/20 02:48:30 ID:/S2bPvLA [2/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ふと、エレベーターの扉が開いた。一同の視線がエレベーターの方に向く。中にいたのは、パロレと同じくらいの年齢の男の子だった。

「失礼いたします。予約していたユーリと申します」

男の子は丁寧な口調で言い、しっかりと頭を下げた。金髪に碧眼。育ちの良さそうな少年だ。

スリジエはユーリと名乗った少年に「こっちにいらっしゃい」と手招きした。ユーリは「はい」と返事して、こちらへ歩いてくる。パロレとクオレは少し後ろに下がった。

「ユーリくん。今日は来てくれてありがとう」

スリジエが言う。ユーリは一瞬パロレたちを気にするようにちらりと見たが、すぐにスリジエの方に向き直った。

「こちらこそ、お時間を割いていただきありがとうございます」

「いいのよ。それで、一体どんな用件で来たのかしら?」

スリジエの問いに、ユーリは数秒間黙りこんでいた。それから、鼻から小さく息を吐き、

「強くなるためにはどうすればいいのかを教えていただきたくて、ここに来ました」

予想外の言葉に、パロレたちは目を見開いた。

「それは……難しい問題ね」

スリジエも顎に手を当てて考えこんだ様子で言う。

「ああ。……でも、見たところ君はトレーナーじゃないようだけど、なぜそんなことを?」

アキニレがユーリの腰の辺りを見つめながら言う。そこにはモンスターボールはひとつもない。

「まず知識をつけてから無駄なく行動したいと思ったのです」

ユーリは強い口調で言った。

「なるほどね。確かに知識は必要だわ」

スリジエはそう言ってから、意味ありげな目線でユーリを見つめた。

「でもね、経験が一番よ。あなたが無駄だと思うことも、きっと無駄じゃないから」

ユーリは納得しかねるという表情をしている。

「試してみたらどうかしら」

スリジエはそう言いながら立ち上がり、ポッチャマを抱きかかえる。それから、複雑な顔をして黙っているユーリにポッチャマを差し出した。
 ▼ 22 AYr1xkow/g 17/08/20 03:00:30 ID:/S2bPvLA [3/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「チャマ!」

ポッチャマが鳴き声を上げる。ユーリは状況がよく飲みこめていないようだ。

「実践してみたら?この子と一緒に」

スリジエのその言葉で、ユーリはようやくスリジエの意図を理解したようだ。ユーリは慌てて首を激しく横に振った。

「ええ!?いやそんな……!いきなり悪いです!」

申し訳なさそうに言うユーリに対し、スリジエは大らかに笑っている。

「いいのいいの。三匹ともパートナーを見つけてほしかったからちょうどいいわ!せっかくだから、三人とも仲良く頑張ってね」

スリジエは特に焦ることもなくユーリに対応している。もしかしたら、ポケモンを持っていない少年が研究所に来ることを知っていたからこそ、今日パロレたちを連れてくるようアキニレに言ったのかもしれない。

「あの……はい。ありがとうございます」

ユーリは遠慮することを諦め、礼を述べた。それからパロレとクオレに向き直る。

「お二人も、ちょうどポケモンを貰ったところだったんですね。どうぞよろしくお願いします」

「うん。ぼくはパロレ。よろしくね」

「わたしはクオレ!よろしくねー!」

パロレとクオレも答える。その様子を見ていたアキニレは、

「よし!じゃあ、次は俺の番だな。三人とも、俺についてきてくれ」

そう言ってエレベーターに向かって歩き出した。
 ▼ 23 AYr1xkow/g 17/08/20 03:20:26 ID:/S2bPvLA [4/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
エレベーターに入り、一同は今度は二階へと向かった。二階にはいくつものデスクが並んでいる。スリジエの手伝いをしているアキニレや、助手たちが研究に使っている部屋だ。アキニレが自分のデスクまで歩いていくのを、三人は部屋を見渡しながらついていった。

アキニレが立ち止まった。パロレはふと机の上を見た。若干散らかっている。それから、写真立てが目に入った。三人の子供が写っている。一番右にいるのは、パロレの同じくらいの年齢の時のアキニレだった。

「俺は博士の手伝いをしつつ、自分でもポケモンの生態について研究してるんだ。君たちには俺の手伝いもしてもらおうかな」

アキニレはそう言いながらゴソゴソと引き出しを漁った。

「ほれ」

お目当てのものが見つかったようだ。アキニレが出したのはコンパクトな機械だった。機械の大部分が画面になっている。

「こいつはポケモン図鑑」

アキニレはそう言って、三個のポケモン図鑑をそれぞれパロレたちに渡す。それから、空のモンスターボールもいくつか渡してくれた。

「捕まえたポケモンを自動で登録していってくれるハイテクな図鑑さ!このアモル地方にいるポケモンをどんどん見つけていって、俺にたまに見せてくれると嬉しいな」

「頑張ります!」

クオレが言う。

「オレまで貰ってしまった……なんだかすみません」

ユーリはまたもや申し訳なさそうに言った。

「気にしない気にしない!……ま、経費で落ちるから俺は損はしない……けど、君たち!大切にしてくれよ!」

アキニレの言葉に、三人は力強く頷いた。

「でも兄さん、なんでここでお手伝いしてるの?兄さんの専門分野ってちょっと違うよね」

パロレがふと疑問に思ったことを口にした。アキニレはああ、と声を上げる。

「そりゃ、縁があったからっていうのが大きいけどな。でも、面白くないか?博士は、トレーナーと一緒にいるポケモンについて研究してる。対する俺は、野生のポケモンの生態について研究してるのさ」

アキニレは机の上をざっと眺めた。たくさんのファイルがある。アキニレが研究したポケモンに関する情報がたくさん書きこまれたレポートが挟んであるのだろう。

「ポケモンを、別の視点からも見ることができるじゃないか。トレーナーといると変わってしまう部分、変わらない部分。それも見えてくる。最高の職場だよ」

アキニレは本当に楽しそうだった。自分の好きなことができるのはいいことだ。バトルについてはどう思っているのだろうか。パロレはそう思った。

「とっても素敵だと思います!わたし、ポケモン図鑑を作るの、頑張りますね!」

クオレが気合の入った声音で言った。
このページは検索エンジン向けページです。
閲覧&書き込みは下URLよりお願いします。
https://pokemonbbs.com/post/read.cgi?no=656366
(ブックマークはこちらのページをお願いします)
  ▲  |  全表示464   | <<    前    | 次100 >> |  履歴   |   スレを履歴ページに追加  | 個人設定 |  ▲      
                  スレ一覧                  
荒らしや削除されたレスには反応しないでください。
書込エラーが毎回起きる方はこちらからID発行申請をお願いします。(リンク先は初回訪問云々ありますがこの部分は無視して下さい)

. 書き込み前に、利用規約を確認して下さい。
レス番のリンクをクリックで返信が出来ます。
その他にも色々な機能があるので詳しくは、掲示板の機能を確認して下さい。
荒らしや煽りはスルーして下さい。荒らしに反応している人も荒らし同様対処します。




面白いスレはネタ投稿お願いします!

(消えた画像の復旧依頼は、お問い合わせからお願いします。)
スレ名とURLをコピー(クリックした時点でコピーされます。)
新着レス▼