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【SS】 新月の夢、満月の夢

 ▼ 1 州街道◆IVIG1YNTZ6 18/12/17 01:11:11 ID:5E8QOU8g [1/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告





僕は、バトルが嫌いだ。




 ▼ 2 州街道◆IVIG1YNTZ6 18/12/17 01:12:00 ID:5E8QOU8g [2/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
夕暮れの田んぼ道。

僕は ご主人と歩いていた。

黒い影は大きく伸びて、もうすぐ太陽は沈んでしまう。

僕の足取りは重かった。



 アユミ 「元気だしなよイーブイ」

 イーブイ 「ぶぃ……」



僕はイーブイ。



僕は、バトルが嫌いだ。




 ▼ 4 州街道◆IVIG1YNTZ6 18/12/17 01:13:00 ID:5E8QOU8g [3/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 アユミ 「確かに、今日のバトルも嫌な感じだったけどさ。私はイーブイが悪いなんて、これっぽっちも思ってないよ?」

 イーブイ 「いぶぅ……」

 アユミ 「大丈夫だよ。私はイーブイとバトルするの楽しいし、まわりからどう思われたって、イーブイは私の大切なパートナーだもん」

 イーブイ 「いぶ……」

 アユミ 「だから……そんな顔しないで。ねっ?」


彼女はアユミ、僕のご主人。

アユミは僕を抱き上げると、ギュッと優しく抱きしめてくれた。


 イーブイ 「いぶぃ……」


そんなアユミの温もりに、僕は体を預ける。

嫌なことがあっても、こうやってギュッてして貰えると、とっても安心できる。


 アユミ 「ふふっ。今日の夕ご飯、なにかな〜」

 イーブイ 「ぶぃ……」



だから僕は、アユミの優しさが、いつしか辛くなっていた。

僕のせいで、僕のバトルのせいで、アユミは まわりから、仲間外れにされてるから……。


 ▼ 5 州街道◆IVIG1YNTZ6 18/12/17 01:14:00 ID:5E8QOU8g [4/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告





 『おい、アユミいるぞ』

 『無視無視。アユミとバトルしたってつまんねーしな』

 『イーブイ以外でバトルしてくれれば、まだ楽しめるんだけどね〜』


アユミのクラスメートは、そんな感じで、彼女のことを避けている。

別に いじめられてるって訳じゃないけど、誰一人、バトルしてくれる子は居ない。

バトルする機会なんて、たまたま目と目が合った野良試合くらいだ。



 『そこの君! オレとポケモンバトルだ! 嫌とは言わせないぜ!』



誰かとバトルするとき、アユミは すっごく嬉しそうな顔をする。

たとえ相手が年上の男の子でも、アユミは真っ直ぐ勝負に挑む。

ついさっきの話だ。


 アユミ 『よーし。行くよイーブイ!』

 イーブイ 『ぶい……』


僕は相手の子のポケモンと対面する――けど、本音を言えば、僕はバトルなんてしたくない。


結果は見えてるんだ。

つまらない。

アユミに申し訳ない。
 ▼ 6 州街道◆IVIG1YNTZ6 18/12/17 01:14:31 ID:5E8QOU8g [5/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

案の定、すぐに勝負は付いた。

相手の子は、つまらなそうな、不機嫌そうな顔をしている。



 『おいお前、アユミとバトルしたのか?』

 『あぁ。たった今ね。酷いバトルだった』

 『あいつとバトルしちゃダメだ。とてもじゃねーけど、バトルになんねーからな』

 『そうみたいだね。知ってればバトルなんて挑まなかったよ』

 『時間の無駄だったな。今度はオレたちとバトルしようぜ』

 『よし! 気分転換に良いバトルしようぜ!』




 ▼ 7 州街道◆IVIG1YNTZ6 18/12/17 01:15:03 ID:5E8QOU8g [6/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
そうやって、アユミとバトルする相手は、どんどん減ってきている。

僕とアユミの噂は、学校を中心に広まってるから、近所でバトルをすることは稀になってきた。


僕は、アユミのことが大好きだ。


そんなことがあっても、僕を大切にしてくれる。

アユミ本人も、酷いことを言われて、仲間外れにされて、辛いはずなのに。

そんな素振りは一切見せずに、僕に優しくしてくれる。


でも、アユミはバトルが好きだって、僕は知っている。

本当は もっとバトルしたいって、僕は分かっている。


僕のせいで、アユミは満足にバトルできないし、肩身の狭い思いをしている。

僕は、それが一番辛かった。




 ▼ 8 州街道◆IVIG1YNTZ6 18/12/17 01:15:40 ID:5E8QOU8g [7/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


夜――。


自分の部屋のベッドで、静かに寝息を立てているアユミ。

僕は彼女に気付かれないよう、そっとベランダの扉を開けて、外に出た。


夜風が体に突き刺さる。

フサフサの毛があっても、肌寒さを感じるほどだ。

今日は新月、夜空は暗い。


 イーブイ 「ダメだな、僕……」


誰にでもなく、僕は呟いた。


 イーブイ 「バトルなんて、もう したくない……」


でも、アユミはバトルが好きで、たまに始まる野良試合を楽しみにしている。

野良試合するために、近所から離れた場所に行くくらいだもん。


 イーブイ 「どうすればいいんだよ……」


矛盾。

バトルしたくないけど、アユミのために、バトルはしたい。


 イーブイ 「グスッ、誰か……、教えてよ……」

 ▼ 9 州街道◆IVIG1YNTZ6 18/12/17 01:16:20 ID:5E8QOU8g [8/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 *** 「話、聞いてやろうか?」

 イーブイ 「えっ!?」


突然僕は、誰かに声を掛けられた。

ビックリして顔を上げると、ベランダの柵に真っ黒いポケモンが、器用に立っていた。

真っ黒いけど……、頭は白く揺らいでいて、首には赤いマフラーのようなもの。初めて見るポケモンだった。


 イーブイ 「えっと……」

 ダークライ 「俺はダークライ。格好つけてる訳じゃないが、新月の使者さ」

 イーブイ 「僕は、イーブイです……」

 ダークライ 「なに泣いてんだ。トレーナーから大切にされて、恵まれてんじゃないのか?」

 イーブイ 「確かに僕、アユミから大切にされてます」

 ダークライ 「アユミ? お前のトレーナーか」

 イーブイ 「はい。でも、大切にされてるから、辛いんです……」

 ダークライ 「分からんな。詳しく話してみろよ。夜は長いぞ」

 イーブイ 「はい……」


僕は、ダークライと名乗るポケモンに、全てを打ち明けた。

バトルが嫌いで、僕のバトルは詰まらないって、クラスメートから仲間外れにされて、けど、アユミは僕を責めないで、でも、アユミは本当はバトルが好きで……。


ぶつけどころのない僕の悲しみと葛藤を、初対面だって言うのに、ダークライは真剣に聞いてくれた。
 ▼ 10 州街道◆IVIG1YNTZ6 18/12/17 01:17:00 ID:5E8QOU8g [9/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


 ダークライ 「なるほどね。飼いポケには飼いポケの苦労があるんだな」

 イーブイ 「………」

 ダークライ 「けどよ。アユミは お前のこと励ましてくれてるんだろ。なのに そんな しょげた顔ってのは、アユミに悪いんじゃないか?」

 イーブイ 「それは分かってます。でも、作り笑顔する気にもなれなくて……」

 ダークライ 「重症だな」

 イーブイ 「僕のせいで、アユミ、毎日が詰まらないと思うんです。僕のバトルのせいで……」

 ダークライ 「野生の俺には詳しいことは分からんけどよ、たとえバトルがダメでも、自分のポケモンが元気で笑顔で居てくれるのが、トレーナーにとって幸せなんじゃないのか?」

 イーブイ 「それは……」

 ダークライ 「悲しいかな、俺たちの言葉は、ニンゲンには通じない。お前がそんなんだと、意図しない気持ちの すれ違いが起こるかもしれないぞ」

 イーブイ 「でも、僕……」


ダークライの言うことは、一理ある。

僕の言葉がアユミに伝わらない以上、僕が何故こんなに気持ちが沈んでるのか、アユミが知る術は無い。

もしそれを、例えば、“嫌われてる”とか、全然違う理由で捉えられたりしたら……。
 ▼ 11 州街道◆IVIG1YNTZ6 18/12/17 01:18:00 ID:5E8QOU8g [10/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 ダークライ 「なぁ、お前、“明晰夢(めいせきむ)”って知ってるか?」

 イーブイ 「めいせきむ?」

 ダークライ 「簡単に言うと、夢の中で、自由に動けるんだ。自分の意思で、まるで現実世界のようにな」

 イーブイ 「へぇ〜」

 ダークライ 「お前、バトルが嫌いなんだよな」

 イーブイ 「はい」

 ダークライ 「夢の中で、お前の思い描くバトル、してみたくないか?」

 イーブイ 「夢の中で……?」

 ダークライ 「そうだ。バトルが嫌いなら、好きになればいい。好きになるには、自分の好みのバトルを作り出せばいい。作り出すんだよ、夢の中で」

 イーブイ 「そんなことが……」

 ダークライ 「気休めかもしれないがな。夢の中で楽しく過ごせれば、現実も変わると思わないか?」

 イーブイ 「夢の中だけでも、不安を取り除くってこと……ですか?」

 ダークライ 「そうだ。そうすれば、現実も変わる。気分も変わる。作り笑顔も出来るようになる。アユミに心配かけない。良い話だろ?」

 イーブイ 「はい……確かに。でも、そんな都合よく、明晰夢なんて見れるんですか?」

 ダークライ 「見れるんだよ。俺の力を使えばな」
 ▼ 12 州街道◆IVIG1YNTZ6 18/12/17 01:19:30 ID:5E8QOU8g [11/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 イーブイ 「えっ?」

 ダークライ 「俺は、他者に夢を見せる力がある。どうだ? 俺がお前のこと、助けてやろうか?」

 イーブイ 「本当ですか……?」

 ダークライ 「あぁ。野生なんて暇な毎日だからな。お前を助けることくらい、なんてことない」

 イーブイ 「お願いします! 僕、変わりたい。これ以上、アユミに心配かけたくないんです!」

 ダークライ 「決まりだな。じゃあ寝床に戻りな。これから先、お前が寝たら明晰夢を見れるようにしてやるよ」

 イーブイ 「はい! ありがとうダークライさん!」

 ダークライ 「いいってことよ。じゃあ、おやすみよ」



それだけ言うと、ダークライは、音も無く消えて行った。


 ▼ 13 州街道◆IVIG1YNTZ6 18/12/17 01:21:20 ID:5E8QOU8g [12/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

僕は急いでベッドに潜り込んで、目を閉じる。


明晰夢――、夢の中で、自由に動ける。

夢の中で、自分の思い描く楽しいバトルをする。バトル嫌いな僕でも楽しめる、夢の中のバトル。


そうさ。

夢の中だけでも、楽しまないと。

辛い現実のバトルを跳ね返すくらい、楽しまないと。



そして、アユミに笑顔を向けないと。



期待に胸が膨らんで、むしろ目は冴えるような感じだけど、次の瞬間、急激な睡魔に襲われて、意識が遠のいて行った。



あぁ、眠りに落ちる。




夢の中で、僕は……、どんな……。




 ▼ 14 州街道◆IVIG1YNTZ6 18/12/17 01:22:01 ID:5E8QOU8g [13/13] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告







 ダークライ 「ふっふっふっ。おやすみよ、坊や」






 ▼ 15 ーナイト@ジャポのみ 18/12/17 01:46:51 ID:v1K2z/OQ NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 16 ガフシギバナ@ねらいのまと 18/12/17 12:40:33 ID:fIQoMaDM NGネーム登録 NGID登録 報告
超支援
 ▼ 17 ヒダルマ@ぼうごパット 18/12/17 15:38:30 ID:/bUIfF5Q NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 18 州街道◆IVIG1YNTZ6 18/12/19 23:17:00 ID:uadgxpRw [1/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



 ― ― ―  ◇  ― ― ―  ◇  ― ― ―  ◇  ― ― ―





気が付くと、朝になっていた。

ダークライとの話、果たして本当なのだろうか。

そもそも、ダークライと話したこと自体、もしかしたら夢なのかもしれない。

要するに、僕は半信半疑だった。


 アユミ 「おはよう。お寝坊さんのイーブイ」

 イーブイ 「いぶっ?」

 アユミ 「もうすぐ学校の時間だよ。ボールに入る前に朝ごはん食べちゃってね」


僕は、用意されていたポケモンフーズを食べる。

アユミが学校に居る間、僕は――って言うか、生徒たちのポケモンは、みんなボールに入っている。

トラブル防止なのか、僕たちポケモンが自由になれるのは、放課後になってからだ。


 アユミ 「それじゃあ、学校が終わったら遊ぼうね!」

 イーブイ 「いぶっ!」


 ▼ 19 チリス@アクアカセット 18/12/19 23:17:22 ID:rXWMIgk6 NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 20 州街道◆IVIG1YNTZ6 18/12/19 23:17:30 ID:uadgxpRw [2/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
そうして迎えた放課後。

アユミは校庭で僕をボールから出してくれた。


 アユミ 「さ! 今日もバトルにチャレンジだよ!」

 イーブイ 「ぶい」


あぁ、僕、バトル嫌いなのに。

夢の中のバトルがどんなものか、まだ体験していないのに。

でも、バトルを楽しもうとキラキラした笑顔のアユミを見ると、嫌と言えなくなってしまう。


 アユミ 「アイちゃん! バトルの相手、お願いできる?」

 アイ 「えぇ、いいわよ。出て来てヤミカラス」

 ヤミカラス 「やみぃ〜」

 アユミ 「行くよイーブイ!」

 イーブイ 「ぶい!」


アイちゃん……、アユミの同学年の友達だ。

相棒はヤミカラス。



僕はアユミの期待に応えようと全力で臨んだけど、結果的にそのバトルは、終始、僕たちが不利な状況で終わった。


 ▼ 21 州街道◆IVIG1YNTZ6 18/12/19 23:18:00 ID:uadgxpRw [3/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
やっぱり空を飛べるポケモンが相手だと、特殊ワザを持っていないと辛い。

なんとか“スピードスター”で宙を舞うヤミカラスに攻撃を入れたけど、空からの奇襲に、僕は耐え切ることが出来なかった。



 アユミ 「あ〜ぁ、負けちゃったね」

 イーブイ 「いぶ……」

 アユミ 「ふふっ。大丈夫だよ、これから強くなれば!」

 イーブイ 「ぶい?」

 アユミ 「いっぱいトレーニングして、一緒に強くなろうよ。はじめから強い人なんて居ないんだからさ!」

 イーブイ 「いぶぶい!」


負けちゃったけど、僕の気持ちは前向きだ。

大好きなアユミと一緒にトレーニングして、大好きなアユミのために、僕は強くなる。そんな目標が出来たことが、僕は嬉しかった。



その夜は、なんとなく、普段より早く寝つくことが出来た。

疲れてたのかな?

それとも、明晰夢への期待なのかな?




 ▼ 22 州街道◆IVIG1YNTZ6 18/12/19 23:18:30 ID:uadgxpRw [4/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



 ― ― ―  ◆  ― ― ―  ◆  ― ― ―  ◆  ― ― ―





気が付くと、朝になっていた。

ダークライとの話、果たして本当なのだろうか。

そもそも、ダークライと話したこと自体、もしかしたら夢なのかもしれない。

要するに、僕は半信半疑だった。


 アユミ 「おはよう。お寝坊さんのイーブイ」

 イーブイ 「いぶっ?」

 アユミ 「もうすぐ学校の時間だよ。ボールに入る前に朝ごはん食べちゃってね」


僕は、用意されていたポケモンフーズを食べる。

アユミが学校に居る間、僕は――って言うか、生徒たちのポケモンは、みんなボールに入っている。

トラブル防止なのか、僕たちポケモンが自由になれるのは、放課後になってからだ。


 アユミ 「それじゃあ、学校が終わったら遊ぼうね!」

 イーブイ 「いぶっ!」


 ▼ 23 州街道◆IVIG1YNTZ6 18/12/19 23:19:01 ID:uadgxpRw [5/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
そうして迎えた放課後。

アユミは校庭で僕をボールから出してくれた。


 アユミ 「今日は西の草原に行ってみようか。知らない人とバトルできるかもしれないからね」

 イーブイ 「ぶい!」


あぁ、僕、バトル嫌いなのに。

でも、バトルを楽しもうとキラキラした笑顔のアユミを見ると、嫌と言えなくなってしまう。

それに、夢の中では僕の好きなようにバトルできるという期待からか、普段のバトル前とは違って、憂鬱さは少なかった。


僕はアユミに抱かれて、学校から西にある、自然豊かな草原へと向かった。





 アユミ 「……あ、さっそく男の子のトレーナーさん発見!」

 *** 「オレのこと?」

 アユミ 「うん! ねぇねぇ、ポケモンバトルしようよ!」

 *** 「いいぜ! オレはゲンタ! 相棒は……行ってこいカビゴン!」
 ▼ 24 州街道◆IVIG1YNTZ6 18/12/19 23:19:30 ID:uadgxpRw [6/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ゲンタと名乗った男の子が放ったボールから、カビゴンが飛び出した。

その巨体を収納できるモンスターボールの技術に感動するほどに、カビゴンは大きい。カビゴンから見れば、僕なんか木の実みたいなものだろう。


 アユミ 「頑張ろうねイーブイ!」

 イーブイ 「ぶい!」


うん、頑張る。

なんだか今は、本気でバトルに挑める気分なんだ。


 ゲンタ 「行かせて貰うぜ! カビゴン、“ころがる”だ!」

 アユミ 「うわっ……避けてイーブイ!」

 イーブイ 「ぶい!」


カビゴンは、巨体と言うか丸い体を活かし、僕めがけて勢いよく転がり始めた。

それは さながら落石のように、轟音を立てて迫りくる。


 ゲンタ 「まだまだ! オレのカビゴンの“ころがる”は無敵だぜ!」
 ▼ 25 州街道◆IVIG1YNTZ6 18/12/19 23:20:01 ID:uadgxpRw [7/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
横にジャンプして回避したものの、カビゴンは旋回して、再び僕に向かってくる。

“ころがる”は だんだんと威力が上がるワザ。カビゴンのその巨体から発せられる運動エネルギーも相まって、長期戦になれば手が付けられなくなってしまう。

いや、小さな僕にとっては、既に厄介な領域に達してしまっている。


 アユミ 「長期戦は不利だね……」


アユミも同じことを考えていたらしい。

ならば、取る手段は一つ。カビゴンの動きを鈍らせること。


 ゲンタ 「長期戦? 一気に終わらせてやるよ! カビゴン、次は当てるぞ! オレたちのパワー見せつけてやれ!」


カビゴンは土煙を上げながら、さらにスピードを増して転回し、僕に猛進して来る。

あんなのに当たったら ひとたまりも無いけど、普通に考えて、それを止める術は無い。



普通に考えたら――、ね。



 アユミ 「行くよイーブイ! “びりびりエレキ”!」

 イーブイ 「ぶぅぅぅぅい!」
 ▼ 26 州街道◆IVIG1YNTZ6 18/12/19 23:20:30 ID:uadgxpRw [8/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 ゲンタ 「なにっ!?」


僕は神経を集中させて、迫りくるカビゴンの軌道上、真正面に、電気の球体を発生させる。

そしてそれを、破裂させた。

飛び散った電撃がカビゴンを包み込んだかと思えば、直後、転がるスピードが弱まって、僕に衝突する寸前で、完全に停止した。


 ゲンタ 「なんだよ今のワザ……!? どうしたんだよカビゴン!?」


カビゴンが動かなくなった理由は、マヒしたからだ。

“びりびりエレキ”は、相手を100%マヒさせる、僕とアユミの必殺技だ。


 アユミ 「いいよイーブイ! それじゃあ一気に決めるよ!」

 イーブイ 「ぶい!」


カビゴンのような巨体でも、動きが鈍ければ怖くない。

“ころがる”の継続効果も途切れているし、男の子もカビゴンも困惑している、今がまさにチャンスだ。


 アユミ 「いくよ! “ブイブイブレイク”!」

 イーブイ 「ぶっぶぃ!」
 ▼ 27 州街道◆IVIG1YNTZ6 18/12/19 23:21:01 ID:uadgxpRw [9/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
僕は その場で一回転してアユミと向き合う。アユミは僕にサインを出す。

僕とアユミが信頼し合っている証拠が、今から繰り出す、“ブイブイブレイク”。


 イーブイ 「ぶぅぅぅぅぅい!!!」


全速力で駆け出して、突進の要領でカビゴンに突っ込んだ。

突進だけれど、風を切って突き進む僕の回りにはエネルギーが集中して、カビゴンと衝突するのと同時に、それを解放する。

さながら大爆発のような威力を生み出し、大ダメージを叩きつけるのだ。反動無しで。


 ゲンタ 「カビゴン……嘘だろっ!?」


この一撃で、カビゴンは目を回していた。

これが、僕のバトル。僕とアユミのバトル。

僕とアユミの信頼関係が生み出した、僕たちだけの、必殺技なんだ。


 アユミ 「やったねイーブイ!」

 イーブイ 「ぶぶぶぃ!」
 ▼ 28 州街道◆IVIG1YNTZ6 18/12/19 23:21:31 ID:uadgxpRw [10/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
あぁ、こうやってバトルに勝って喜んだの、久しぶりな気がする。

僕をこんな気持ちにさせてくれた明晰夢、ダークライさんには、感謝してもしきれないよ。



 ゲンタ 「オレのカビゴンを倒すなんて、女なのにすげーな!」

 アユミ 「ありがとう。私とイーブイの仲の良さが、強さの秘訣なんだ。ねー」

 イーブイ 「ぶい!」

 ゲンタ 「電気ワザ使うイーブイなんて初めて見たぜ。またバトルしてくれよな」

 アユミ 「うん。またね!」


アユミ、すっごい嬉しそうだ。

そうだよね。今までクラスメートたちから仲間外れにされてたんだもん。

こうやってバトル後のコミュニケーションを取るのも久々だし、笑顔のアユミを見ていると、僕も嬉しかった。


 ▼ 29 州街道◆IVIG1YNTZ6 18/12/19 23:22:00 ID:uadgxpRw [11/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 アユミ 「こっちのエリアは、まだバトルしてくれる人、たくさん居そうだね」

 イーブイ 「いぶっ!」


バトルを終えた僕たちは、勝利の余韻に浸りながら、家へと向かっている。

久々に楽しいバトルが出来て、アユミの足取りは軽い。時折スキップが混じることからも、アユミの嬉しさが伝わってくる。


 アユミ 「また こっちのエリアに来てみようね。もっと色んな人とバトルしたいもん」

 イーブイ 「ぶぶぃ!」


バトル嫌いな僕も、今日は楽しかった。

嫌な気持ちでバトルに挑むより、楽しもうって気持ちで挑む方が、やっぱり気が楽だ。

こうして気持ち良く勝てたのも大きいし、なにより、こんなに嬉しそうなアユミを見れたことが、一番の収穫だ。



まるで、夢みたいだ。


ちょっと疲れを感じるけど、今日みたいな気持ちが、ずっと続くと良いな。




 ▼ 30 州街道◆IVIG1YNTZ6 18/12/20 00:16:00 ID:8tackD8I [1/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



 ― ― ―  ◇  ― ― ―  ◇  ― ― ―  ◇  ― ― ―





気が付くと、朝になっていた。


まだ余韻が残っている。

気持ちの良いバトル、嬉しい勝利、アユミの笑顔。

それらを思いだすと、今日も1日頑張るぞって気持ちになれる。


いつものように、ご飯を食べて、僕とアユミは学校へと向かった。


 ▼ 31 州街道◆IVIG1YNTZ6 18/12/20 00:16:30 ID:8tackD8I [2/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
その放課後、僕はボールの外に出るのを楽しみにしていた。


 アユミ 「出て来てイーブイ」

 イーブイ 「いっぶい!」

 アユミ 「今日もバトルの特訓だよ!」

 イーブイ 「ぶいっ!」


今までは重い気持ちで挑んでいたバトルも、夢のおかげで、前向きな気持ちで挑めるようになった。

勝敗なんて関係ない。アユミと一つになってバトルできることが、なにより楽しいって思えるようになったから。



 アユミ 「ランちゃん、バトルどう?」

 ラン 「バトル……うん、たまにはバトルしよっか! じゃあ出て来て、ニドリーナ!」


クラスメートのランちゃん。相棒はニドリーナ。

1進化ポケモンってことで、確実に僕よりパワーがある。
 ▼ 32 州街道◆IVIG1YNTZ6 18/12/20 00:17:00 ID:8tackD8I [3/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 アユミ 「こっちから行くよ! “でんこうせっか”!」

 イーブイ 「ぶぃ!」

 ラン 「ふふっ、いいのかな〜。受けてニドリーナ!」

 アユミ 「えっ?」


ニドリーナは回避を取らず、僕の攻撃が直撃した。

砂煙を上げながら校庭の端の方へ飛ばされたけど、ダメージは大きくない。


 ラン 「大丈夫だったみたいね」


僕を まじまじと眺めながら発したランちゃんの言葉に違和感。

ニドリーナの心配と言うより、僕の心配をしているような……?


 アユミ 「……そうだ! “どくのトゲ”!」

 ラン 「当たり。直接攻撃は危ないわよ〜」

 アユミ 「だったら……“スピードスター”!」

 ラン 「避けて!」


そうだ、ニドリーナの特性は“どくのトゲ”。迂闊に攻撃したら毒を喰らってしまう。


ハッとした瞬間、もうニドリーナは目の前には居ない。

気付けば僕の すぐ横に迫っていた。
 ▼ 33 州街道◆IVIG1YNTZ6 18/12/20 00:17:30 ID:8tackD8I [4/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 ラン 「“にどげり”よ!」

 アユミ 「っ……! “すなかけ”で防いで!」

 イーブイ 「ぶい!」


けど、黙ってやられるなんてゴメンだ。

僕は咄嗟に砂を巻きあげて、ニドリーナの視界を奪う。

“にどげり”が僕に当たることは無かったけど、特性によって行動を大きく制限されてしまった。


 ラン 「“どくばり”!」

 アユミ 「“スピードスター”!」


2つの飛び攻撃が、僕とニドリーナの間で衝突する。

力の押し合いだ。特殊ワザで力の押し合いって言うのは変かもしれないけど、いま僕は、“どくばり”に負けじと星を飛ばしている。


 アユミ 「頑張れイーブイ!」

 ラン 「押し通すわよニドリーナ!」


僕も相手のニドリーナも、全力で ぶつかり合う。

が、最初に音を上げたのは、この空間だった。
 ▼ 34 州街道◆IVIG1YNTZ6 18/12/20 00:18:01 ID:8tackD8I [5/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 アユミ 「あっ!?」

 ラン 「クッ……!」


ぶつかり合う2つのワザのエネルギーが破裂、あたりは白煙と砂埃に包み込まれる。

けど、これはチャンスでもある。


 イーブイ 「ぶいぶぃぃっ!」

 アユミ 「イーブイ……うん、お願いイーブイ!」


僕のアピールを、アユミは逃さなかった。

僕は無事であること、まだ攻撃態勢であること、ニドリーナの位置を把握してるっていうこと。

視界が奪われる前の状況から、僕はニドリーナの位置を予測して、大きくジャンプした。

このチャンスで一気に勝負を決めるには、至近距離から攻撃を撃つしかない。


 アユミ 「“スピードスター”!」


ジャンプからの降下、落下スピードを味方に付けて、僕は“スピードスター”の構えに入る。

砂埃の向こうにニドリーナの影を確認し、僕は攻撃の直撃を確信した。


このまま行けば……!

 ▼ 35 州街道◆IVIG1YNTZ6 18/12/20 00:18:30 ID:8tackD8I [6/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 ラン 「今よ! “にどげり”!」


けど、そんな僕の期待は見事に崩れ去った。

僕がニドリーナを捉えていたように、ニドリーナも僕を捉えていたようで。僕の方が逆に、ニドリーナから至近距離で攻撃を受けてしまった。


“にどげり”、格闘タイプのワザ、効果は抜群。


 アユミ 「あぁっ……イーブイ!?」

 ラン 「これで決めるわよ! もう1回“にどげり”!」


飛ばされた僕の落下地点に、ニドリーナは素早く移動していた。

そして、落下中で どうすることも出来ない僕に、再び、“にどげり”が直撃した。


これで決着が ついてしまった。


 ▼ 36 州街道◆IVIG1YNTZ6 18/12/20 00:19:00 ID:8tackD8I [7/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



 アユミ 「よく頑張ったね、イーブイ」

 イーブイ 「いぶ……」

 アユミ 「惜しかったなぁ。動きは良かったのに、ニドリーナの方が一枚上手だったってことか」

 イーブイ 「いぶ、いぶぶい!」

 アユミ 「ふふっ。そうだよね、次は勝たないと! 一緒に もっと特訓だよ!」

 イーブイ 「ぶい!」


ニドリーナとのバトルで、僕は なんとなく、バトルの流れ、切り返しの術を掴んだような気がする。

相手の裏をかく行動が如何に重要か、相手の意表を突くことでどれだけ有利に立てるか、学びの大きいバトルだった。


僕は確実に、アユミと一緒に成長している。

負けは成長の一歩。負けて学ぶこともある。


僕とアユミは、負けても前向きな気持ちで、むしろ、次のバトルが楽しみな気分で。

こんな感覚を覚えたの、久しぶりな気がする。



そしてその夜も僕は、気持ち良く眠りにつくことが来た。




 ▼ 37 州街道◆IVIG1YNTZ6 18/12/20 00:19:30 ID:8tackD8I [8/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



 ― ― ―  ◆  ― ― ―  ◆  ― ― ―  ◆  ― ― ―





気が付くと、朝になっていた。


まだ余韻が残っている。

負けを経験しても、それを糧に、さらに強くなろうって思える気持ち。


バトル嫌いだなんて、もう言わない。

だって今日は、バトルに勝つ気で いるんだもん。


 ▼ 38 州街道◆IVIG1YNTZ6 18/12/20 00:20:00 ID:8tackD8I [9/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


学校が終わって、待ちに待った放課後。


 アユミ 「出て来てイーブイ」

 イーブイ 「いっぶい!」

 アユミ 「今日も西の草原に行くよ。バトル相手、探さないとね!」

 イーブイ 「いぶい!」


勝利を追求することは良いことなんだと、じわりじわりと感じ始めていた。

その過程が違えば、気持ちは全く変わって来る。

例え勝つことが当然だとしても、それだって一歩ずつ成長しているんだ。





 *** 「あの、良かったら僕とバトルしませんか?」

 アユミ 「えっ……私と?」

 *** 「はい。あ、僕はミツヒコって言います」

 アユミ 「私はアユミ。じゃあじゃあ、さっそくバトルしようよ!」

 ミツヒコ 「のぞむところです! 行ってくださいオドシシ!」

 アユミ 「行くよイーブイ!」

 イーブイ 「ぶぶい!」
 ▼ 39 州街道◆IVIG1YNTZ6 18/12/20 00:20:30 ID:8tackD8I [10/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
早速の野良試合。

向こうから声をかけてくれたのは、本当に久しぶり。バトルを申し込まれた時のアユミの嬉しそうな表情に、思わず僕も口元が緩んでしまう。

けど、バトルモードに切り替えないと。

相手はオドシシ。ノーマルタイプだけど、エスパーワザに要注意だ。


 ミツヒコ 「まずは“たいあたり”です!」

 アユミ 「“でんこうせっか”で向かい打つよ!」

 イーブイ 「ぶぃ!」


比較的大きなオドシシと、僕は正面からぶつかり合う。勿論、角を避けて。

“でんこうせっか”のスピードが加勢して、体格差の割に互角に衝突できたけど、それを連続で防げるほど、体格差は甘くない。


 ミツヒコ 「なら……“しねんのずつき”です!」


相手もそれを分かってか、威力が上のワザを指示してきた。最初の“たいあたり”は、僕のパワーを試してたんだと思う。

いいよ、なら僕たちだって、本気で行くんだから。


 イーブイ 「いぶいぶい!」

 アユミ 「うん。エスパーワザには……“わるわるゾーン”!」

 イーブイ 「ぶっぶぅぅぅ!」
 ▼ 40 州街道◆IVIG1YNTZ6 18/12/20 00:21:01 ID:8tackD8I [11/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
神経を集中させる。

僕を中心に みるみるうちに漆黒の闇が広がって、オドシシの周囲を包み込む。

困惑しているオドシシの足元から、一筋の光が貫いた。

バチバチと悪タイプのエネルギーが飛び散りながら、オドシシを締め上げるように襲う それは、僕とアユミの必殺技だ。


 ミツヒコ 「えぇっ!? なんですか今のワザ!?」

 アユミ 「エスパーにはエスパーでお返しだよ! “どばどばオーラ”!」

 イーブイ 「いぃぃぃぃっぶ!」


相手の驚きに、アユミは反応しない。一気に畳みかける気だ。

勿論、僕だって同じつもり。


神経を集中させてエスパーのエネルギーを念じると、僕を中心とした紫色の球体が出現する。

それが破裂するかのように四方八方に拡散し、具現化した紫色の波動が、容赦なくオドシシに降り注いだ。


 ミツヒコ 「なっ……オドシシ!?」
 ▼ 41 州街道◆IVIG1YNTZ6 18/12/20 00:21:30 ID:8tackD8I [12/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
当然これで、オドシシはダウンしていた。

僕とアユミの必殺技にかかれば、どんなポケモンが相手だって怖くない。どんなポケモンが相手だって、蹴散らして見せる。

アユミとの信頼が生み出した必殺技だもん。負ける訳がないんだよ。


 ミツヒコ 「凄い……、そんなワザを使うイーブイ、初めて見ましたよ」

 アユミ 「ふふっ、ありがとう」

 ミツヒコ 「僕も まだまだ修行が足りませんね。またお願いします」

 アユミ 「うん。私たちも、もっとトレーニングして待ってるからね!」



アユミは とっても活き活きとしていた。

男の子相手でも決して動じない、バトルに信念を持ったアユミ。

そんなアユミと一緒に過ごすことで、僕は、僕たちは、数々の必殺技を編み出したんだ。



けど――。


 ▼ 42 州街道◆IVIG1YNTZ6 18/12/20 00:22:00 ID:8tackD8I [13/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 アユミ 「どうしたのイーブイ?」

 イーブイ 「いぶ……」


何故だろう。すっごく疲れちゃった。

カビゴンとバトルした後も疲れを感じたけど、今日は それ以上。今すぐにでも眠りたいほど、僕は酷く疲れていた。


 アユミ 「疲れちゃった? ボールに入ってる?」

 イーブイ 「ぶぃ」


僕はアユミの言葉に頷いて、ボールに収納された。

歩く必要もなければ、まわりを気にする必要も無い。アユミと一緒に居る時間が減るのは残念だけど、こうでもしないと、何だか本当に体が辛くてダメだった。


なんで、こんなに、疲れるんだろう……。



夢の……せい、なの……?




 ▼ 43 州街道◆IVIG1YNTZ6 18/12/20 00:22:30 ID:8tackD8I [14/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告





それからも、僕とアユミは、バトルに打ち込んだ。



現実でも、夢の中でも、僕はバトルに打ち込んだ。




放課後、クラスメートとのバトルでは、動き、立ち位置、ワザのタイミングを意識して。

体格差やタイプ相性から、なかなか勝つことは出来ないけど、それも大事な経験だ。

経験を積めば、必ずその努力は報われる。アユミと一緒に、僕は少しずつでも、強くなりたい。

バトルが嫌いだなんて、もう思わない。明晰夢のおかげで、僕の気持ちは格段に前向きになってきている。



その一方、僕は必殺技の特訓も手を抜かない。

西の草原で出会う隣の学区の子を相手に、アユミと編み出す必殺技で、僕たちはバトルで負け無しだ。

必殺技は、炎、水、電気、悪、エスパー、それに、氷、草、フェアリーも、様々なタイプを使いこなせるようになった。

そして一番は、僕の渾身の“ブイブイブレイク”。アユミが名付けてくれた必殺技だ。

明晰夢のおかげで、僕はバトルに勝つ爽快感、気持ち良さを、心行くまで堪能できた。
 ▼ 44 州街道◆IVIG1YNTZ6 18/12/20 00:23:00 ID:8tackD8I [15/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


一方で。


バトル後の疲れは、日に日に大きくなっていった。

自慢の必殺技を使った後、異様とも言える疲れが出て来て、急激な睡魔に襲われて、気付けば朝まで眠ってしまう。

かと言って、眠っても体調が戻る訳でもない。

今まで こんなこと、一度も無かったのに。





そうして10日が過ぎた頃。



僕の体は、限界に達した。




 ▼ 45 ガリザードンY@ゴーストメモリ 18/12/20 07:49:14 ID:fBjspgIg NGネーム登録 NGID登録 報告
レッツゴーピカブイの必殺技はイーブイの夢だったのか
支援
 ▼ 46 州街道◆IVIG1YNTZ6 18/12/21 00:11:00 ID:ndEo7yxc [1/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



 ― ― ―  ■  ― ― ―  ■  ― ― ―  ■  ― ― ―





イーブイが、倒れた。





 アユミ 「ジョーイさん、お願いします! イーブイを……グスッ、イーブイを助けてあげて下さい!」

 ジョーイ 「落ち着いてアユミちゃん。大丈夫。私たちを信じて」

 アユミ 「はいっ……」


 ▼ 47 州街道◆IVIG1YNTZ6 18/12/21 00:11:30 ID:ndEo7yxc [2/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


西の草原で、今日も私とイーブイは、バトルに勝利した。

最近のイーブイ、すっごく頑張ってくれている。ワザのキレも出てきたし、バトル中の表情も良いし。

倒れる前兆なんて、全く無かったのに。


バトルの後、イーブイは、本当に突然、倒れた。


呼吸は しているし、バトル中に大きなダメージを受けた訳でもない。


そう言えばイーブイ、最近バトルのあと、疲れて寝ちゃうことが多かった。

それが関係しているの?

今までの疲れが溜まって、耐えられなくなっちゃったの?


分からない。とにかく今は、ジョーイさんを信じるしかない。


イーブイ、もし辛かったのなら、早く言ってくれれば良かったのに……。

 ▼ 48 州街道◆IVIG1YNTZ6 18/12/21 00:12:00 ID:ndEo7yxc [3/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


2時間くらい経ったかな。

とても長い時間、私はオペ室の前で待っていた。


オペ室の扉が開いて、ベッドに寝たままのイーブイと、ラッキーと、ジョーイさんが現れる。

イーブイに駆け寄りたいところだけど、落ち着かないと。まずは落ち着かないと。

そう思い、ゆっくりベッドに歩み寄ったところ、イーブイは眠っているようだった。規則的にお腹が動き、耳が揺れている。


 アユミ 「ジョーイさん、イーブイは……」

 ジョーイ 「病室で話すわ。聞きたいこともあるから」

 アユミ 「……分かりました」



パッと見、イーブイは大丈夫そうだ。


でも――、なんでジョーイさんは、大丈夫って言ってくれなかったんだろう。




 ▼ 49 州街道◆IVIG1YNTZ6 18/12/21 00:12:30 ID:ndEo7yxc [4/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
病室は、イーブイだけの個室だった。

ラッキーも退室して、今ここに居るのは、私とイーブイ、そして、ジョーイさんだけ。


 ジョーイ 「早速だけど、最近、なにかイーブイの体調でおかしなことは無かった?」

 アユミ 「えっと、さっきも考えてたんですけど……、すぐ眠るようになったんです」

 ジョーイ 「すぐ眠る……」

 アユミ 「10日くらい前……だったかな。バトルの後、眠そうな感じで」

 ジョーイ 「詳しく教えて」

 アユミ 「はい……」



10日前――。

その時は、バトルの後に眠そうになっただけで、ちゃんと家に帰ってから眠った。


でも翌日からイーブイは、バトルが終わって、家に帰る前に眠ることが多くなった。

でも夜9時くらいに目が覚めて、ちゃんとご飯を食べて、そのあとまた眠って、朝は ちゃんと起きて。


けど、4日、5日と経つにつれて、イーブイが目を覚ます時間は遅くなっていった。

0時を過ぎることもあって、当然、私は もう寝ちゃってるから、ポケモンフーズを用意しておいてあげた。


それが7日、8日経つと、ポケモンフーズを食べた形跡が無くなった。

つまり、イーブイは朝まで目を覚まさなかったってことだ。

お腹が空くのか、その分、朝ごはんは しっかり食べてたけど、食生活のバランスが崩れるのは、あまり良いことでは無い。


そして今日、イーブイは、倒れてしまった。
 ▼ 50 州街道◆IVIG1YNTZ6 18/12/21 00:13:00 ID:ndEo7yxc [5/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 ジョーイ 「つまり、だんだん眠っている時間が長くなった。そういうことね」

 アユミ 「はい……。あのっ、やっぱりそれが関係してるんですか?」

 ジョーイ 「イーブイの体力はね、見た目じゃ分からないけど、すっごく消耗しているの」

 アユミ 「えっ!? だって、普通にバトルして、今まで負けたこと無かったんですよ!? 体力が消耗って……、まさかイーブイ、グスッ、今まで無理して……」

 ジョーイ 「違うの。大丈夫。アユミちゃんが悪い訳じゃないわ」

 アユミ 「じゃあ……、どうして……」

 ジョーイ 「イーブイはね、夢を見ているの」

 アユミ 「夢……ですか?」

 ジョーイ 「えぇ。脳波を見る限り、眠っている間、ずっとよ」

 アユミ 「……今も、ですか?」

 ジョーイ 「恐らくね」

 アユミ 「え……待って下さい。眠っているせいで、体力が消耗してる、ってことですか?」

 ジョーイ 「その通りよ」

 アユミ 「そんなの……有り得るんですか? 眠るのは1日の疲れを取るためで……あ、ジョーイさんを疑ってる訳じゃなくて、そのっ」

 ジョーイ 「落ち着いて聞いて。アユミちゃんのイーブイは……、ダークライって言うポケモンに、襲われてるの」

 アユミ 「ダークライ? 襲われてる……?」
 ▼ 51 州街道◆IVIG1YNTZ6 18/12/21 00:13:30 ID:ndEo7yxc [6/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
私は、ジョーイさんの言葉の意味が分からなかった。

ダークライって言うポケモンは初耳だし、とても襲われてるようには見えない。

だって、今までずっと一緒に居たけど、何かに襲われたとか、そんなの絶対なかったもん。


 ジョーイ 「ダークライはね、人やポケモンを、深い眠りに誘う力を持ってるの」

 アユミ 「はい……」

 ジョーイ 「時には悪夢を見せることがあって、でもそれは、自分の身を守るため、縄張りから追い出すためだって言われているわ」

 アユミ 「えっと……、じゃあイーブイは、知らないうちにダークライの縄張りに入っちゃったってこと……ですか?」


いや、自分で言ったものの、それは違う。

だって、今日までイーブイが一人で行動したことは無かったし、だとすれば、私もダークライによって眠りに誘われているはずだ。


 ジョーイ 「実は……、落ち着いて聞いてね。ダークライには、“ナイトメア”って力があるの」

 アユミ 「ナイトメア?」

 ジョーイ 「眠っている相手から、エネルギーを奪うワザよ」

 アユミ 「えっ……」

 ジョーイ 「イーブイの体力が消耗してる理由はね、ダークライに、エネルギーを奪われているからなの」
 ▼ 52 州街道◆IVIG1YNTZ6 18/12/21 00:14:00 ID:ndEo7yxc [7/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
突然のことに、私の頭は混乱するばかりだ。


ダークライ?

ナイトメア?

エネルギーを奪われる?


そんな現実離れしたこと急に言われたって、分からないよ、私。


 ジョーイ 「医療報告でも、統計を取り始めてから数件しか確認されていない、稀なことよ」

 アユミ 「稀なことって……」

 ジョーイ 「イーブイは、ダークライに眠らされて、エネルギーを奪われてるの。ダークライに魅入られてしまったんだと思うわ……」


魅入られたって……。

要するに、ダークライのエネルギー補給に、イーブイが巻き込まれたってこと?

そんなっ、そんな勝手な理由で、イーブイが?
 ▼ 53 州街道◆IVIG1YNTZ6 18/12/21 00:14:30 ID:ndEo7yxc [8/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 アユミ 「そんなのダメ! ジョーイさん、イーブイを起こせば良いんですよね? イーブイが起きれば、エネルギーは奪われないんですよね!?」

 ジョーイ 「待って。そんな簡単な話じゃないの!」

 アユミ 「どういうことですか!?」

 ジョーイ 「イーブイの眠りは、ダークライが支配してるのよ。無理矢理起こしてダークライの機嫌を損ねたら、なにが起こるか分からないの」

 アユミ 「そんなっ……」

 ジョーイ 「ダークライは珍しいポケモンでね、まだ詳しい生態が分かっていないの。下手なことは出来ないわ……」

 アユミ 「じゃあ……、このままイーブイは、ダークライにエネルギーを奪われ続けるしか……グスッ、ないんですか……?」


イーブイのエネルギー、体力は、有限だ。限りあるものだ。

今までずっと、ダークライに体力を奪われて、そして今日、イーブイは倒れた。

普通に考えれば、イーブイの体力が限界に近付いている証拠だった。


 ジョーイ 「点滴で栄養補給を行います」

 アユミ 「それで大丈夫なんですか?」

 ジョーイ 「……ごめんなさい。確証は持てないの」


そうだよ。点滴は、物を食べれないときに栄養を取るものだもん。

ナイトメアってワザ(?)で体力を奪われてるのに、点滴なんかで追いつく訳が無いよ。
 ▼ 54 州街道◆IVIG1YNTZ6 18/12/21 00:15:00 ID:ndEo7yxc [9/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 アユミ 「グスッ、なにか……、なにかイーブイを助ける方法は無いんですか!?」

 ジョーイ 「……ダークライに直接お願いする。現実的とは言えないけど、そうするしかないわ」

 アユミ 「ダークライを探しだせばいいんですね?」

 ジョーイ 「えぇ。それでダークライに、イーブイを眠りから覚めるようにお願いする……、けど、何処にいるか分からないダークライ相手に……」

 アユミ 「探します! 私っ、ダークライを探します! だからっ……グスッ、だから! イーブイを助けてくだざいっ!」

 ジョーイ 「出来る限りのことは するつもりよ。待ってて。ダークライの画像、出してあげるから」





ジョーイさんからダークライの画像を貰って、私はポケモンセンターを飛び出した。


ダークライを探すため。


ダークライに、イーブイを目覚めさせて貰うため。

 ▼ 55 州街道◆IVIG1YNTZ6 18/12/21 00:15:32 ID:ndEo7yxc [10/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


 アユミ 「ダークライさん……、ダークライさん!?」


ダークライは、イーブイを眠らせて、エネルギーを吸い取っている。

ってことは、少なくとも、イーブイが見える範囲、もしくは、ダークライの力が及ぶ範囲に居るはずだ。


 アユミ 「ダークライさん! お願い出て来てっ! ダークライさん!」



私は無我夢中でダークライを探した。



転んで膝を擦りむいても。


叫び続けて喉が枯れても。


パパとママが心配しても。


学校を休んでも。


私は必死になってダークライを探した。

 ▼ 56 州街道◆IVIG1YNTZ6 18/12/21 00:16:00 ID:ndEo7yxc [11/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告







けど――、5日経っても、ダークライは見つからなかった。





そしてその5日間、イーブイは、一度も目を覚ますことは無かった。






 ▼ 57 リーザー@かなめいし 18/12/21 00:50:27 ID:XLAwj0I. NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
やばくなってきたな…支援
 ▼ 58 ンギラス@はっかのみ 18/12/21 15:25:13 ID:sKUgAL6Q NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 59 州街道◆IVIG1YNTZ6 18/12/21 23:54:30 ID:ndEo7yxc [12/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



 ― ― ―  ▼  ― ― ―  ▼  ― ― ―  ▼  ― ― ―





満月の深夜。

誰も立ち入れないポケモンセンターの屋上に、一匹の黒いポケモンが佇んでいた。


 ダークライ 「ふぅ。コイツの夢のエネルギー、独特な味だな」


灯台下暗し、とはよく言ったもので、ダークライは、イーブイのすぐ傍に居たのだ。

ナイトメアによって、眠っているイーブイのエネルギーを吸い取りながら。


5日間も目を覚まさないイーブイ。

5日間もエネルギーを吸い取り続けるダークライ。


もはやダークライは、イーブイに寄生しているようなものだった。
 ▼ 60 州街道◆IVIG1YNTZ6 18/12/21 23:55:00 ID:ndEo7yxc [13/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


 *** 「探しましたよ。まったく、また貴方は罪の無いポケモンに悪夢を見せて」

 ダークライ 「お、久しぶりだなセリア」

 クレセリア 「気安く呼ばないでください」

 ダークライ 「今日は満月だったな」

 クレセリア 「貴方、今すぐイーブイを解放してあげないさい。トレーナーの少女も可哀想ですよ」

 ダークライ 「けっ。いつもいつも、俺の食事を邪魔しやがって」

 クレセリア 「貴方の食事で他人を不幸にする訳にはいきません。貴方ほどの力の持ち主なら、普通に生きていけるはずですよ」

 ダークライ 「セリアには分かんねーよ。新月――漆黒の世界の番人の気持ちなんざ。“新月の使者”なんて洒落た名前付けられたって、嬉しくもなんともねーっての」

 クレセリア 「満月の使者として、罪の無いポケモンを救うのが私の役目です」

 ダークライ 「けどよ。これはイーブイの望みでもあるんだぜ?」

 クレセリア 「なにを とぼけたことを」

 ダークライ 「そのイーブイはよ、バトルが嫌いだって、嘆いてたんだ。だったら夢の中で、自分の好きなようにバトルすれば良いって言ってやったんだ」

 クレセリア 「ほぉ」

 ダークライ 「嬉しそうだったぜ。悪夢を見せてるつもりは ねぇよ」

 クレセリア 「見ている夢はイーブイの望みかもしれませんが、このままエネルギーを奪い続けたら、イーブイの命にかかわります。それが“悪夢”と言うものです」

 ダークライ 「俺だって死活問題だ」

 クレセリア 「そうやって いつもいつも。なんど私が、貴方の悪夢を打ち払ったと思ってるのですか」

 ダークライ 「6回だっけか? いい加減に鬱陶しいわ。ひょっとしてセリア、俺に気があんのか?」

 クレセリア 「調子に乗らないでください。とにかく、そのイーブイは私が……」

 ダークライ 「まぁ待てって」
 ▼ 61 州街道◆IVIG1YNTZ6 18/12/21 23:55:30 ID:ndEo7yxc [14/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 クレセリア 「時間稼ぎのつもりですか?」

 ダークライ 「ちげーよ。さっきも言ったが、俺はイーブイに、悪夢なんざ見せてねぇよ。この夢は、こいつの望みなんだからな」

 クレセリア 「なにが言いたいんです?」

 ダークライ 「セリアは、“悪夢を打ち消して吉夢を見せる”力を持ってるんだろ。いまイーブイが見てる夢は、こいつの望み――“吉夢”だ」

 クレセリア 「それはっ……」

 ダークライ 「セリアにイーブイは助けられないってことだよ」

 クレセリア 「なっ、なら……! イーブイを目覚めさせなさい。貴方が眠らせたんです。貴方が起こすしかありません」

 ダークライ 「無理だな」

 クレセリア 「ふざけないでください」

 ダークライ 「いや、マジで。今やイーブイは、夢と現実の区別が付かない状況だ。きっと夢を現実と思い込んでる。夢の中の自分を本物と思い込んでる。そんな状態で無理矢理 目覚めさせたら……、知らねーぞ、どうなるか」

 クレセリア 「貴方……、なんてことを……!」

 ダークライ 「俺だって こんなの初パターンだ。笑っちまうぜ。悪夢を見せるはずの俺が、吉夢を見せてるんだからな。道理で夢の味も独特な訳だよ」

 クレセリア 「貴方には責任感が無いのですか!? トレーナーの少女……、イーブイを助けるために、必死で貴方を探してるんですよ!」

 ダークライ 「あの子も気の毒だ。自分のポケモンが、バトルで思い悩んでるってのに、それが伝わらなくてよ」

 クレセリア 「他人事のように……」
 ▼ 62 州街道◆IVIG1YNTZ6 18/12/21 23:56:00 ID:ndEo7yxc [15/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 ダークライ 「まぁ、責任感云々は、確かに引っ掛かりがある。俺だって驚いてるんだからよ、吉夢を見せちまって」

 クレセリア 「予想外の展開、ということですか」

 ダークライ 「あぁ。ついでに、俺を“さん付け”で呼んでくれる女の子に、悪い気はしねぇ。個人的には、助けてやりてぇ」

 クレセリア 「……本心のようですね」

 ダークライ 「あぁ。そんで、イーブイを助ける方法があるとすれば、セリア。お前の力が必要だ」

 クレセリア 「私の?」

 ダークライ 「あの女の子を眠らせて、お前の力で、イーブイの夢の中に送るんだ」

 クレセリア 「……なるほど。私が少女を夢の中に導いて、少女自身がイーブイに“これは夢だ”と自覚させるのですね」

 ダークライ 「おうよ。トレーナーにしか出来ない役目だ」

 クレセリア 「分かりました。やりましょう」

 ダークライ 「イーブイを助けられるかは、女の子に掛かってる。俺には どうしようも出来ねぇ」

 クレセリア 「少女を信じましょう。ちょうど、イーブイを隣で見守ってますね」

 ダークライ 「お、帰って来てたのか。なら好都合だな」

 クレセリア 「イーブイの夢に神経を集中させます。少女を眠らせて下さい」

 ダークライ 「あいよ。……初めてだな、セリアとの共同作業」

 クレセリア 「馬鹿なこと言わないでください」

 ダークライ 「新月の夢と、満月の夢――か。上手く行くと良いがな」




 ▼ 63 州街道◆IVIG1YNTZ6 18/12/21 23:57:00 ID:ndEo7yxc [16/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



 ― ― ―  ■  ― ― ―  ■  ― ― ―  ■  ― ― ―





病室に戻った私は、イーブイを そっと撫でた。


ダークライは未だ見つからない。

イーブイは、目に見えて痩せ細っている。


嫌だよ、イーブイ。もっと一緒に居たいよ。


早くダークライを見つけないと。

でも、どこを探しても居ないんだもん。

諦めるつもりは無いけど、私には……グスッ、もう私には、どうすることも……。
 ▼ 64 州街道◆IVIG1YNTZ6 18/12/21 23:58:00 ID:ndEo7yxc [17/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



 アユミ 「ぅっ……?」



その瞬間、私は急激な睡魔に襲われた。





その理由を考える間もなく。





数秒のうちに、私の意識は途切れてしまった。






 ▼ 65 ティアス@とくせいカプセル 18/12/22 20:19:31 ID:mKpEkIUI NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 66 州街道◆IVIG1YNTZ6 18/12/24 02:07:01 ID:6HV2hXyc [1/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告





 アユミ 「んっ……あれ? 私……」


気が付くと私は、誰も居ない教室に立っていた。

さっきまで、イーブイの病室に居たのに。急に眠くなって、意識が途切れて……。


 アユミ 「ってことは、ここ、夢の中?」


夢の中なのに、私は自由に動ける。そして、考えることが出来る。夢であることを自覚している。

そういうの、確か明晰夢(めいせきむ)って言うんだよね。

枕の下に本を入れて寝る〜とか、誰しも考えたことがあるアレだ。
 ▼ 67 州街道◆IVIG1YNTZ6 18/12/24 02:07:30 ID:6HV2hXyc [2/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


  『頑張ってイーブイ! “スピードスター”!』

  『いぶいっ!』



 アユミ 「えっ!?」



窓の外から聞こえる、2つの声。

私は慌てて外を見る。ここは3階の教室だったみたいで、校庭を見渡せた。


その校庭の左側、生徒たちがポケモンバトルに使っている区画で、今まさに、ポケモンバトルが行われている。

多くのギャラリーが囲む中心、バトルの主は……、私とイーブイだった。


 アユミ 「夢の中の私と……イーブイ!?」


たとえ夢の中だと分かっていても、第三者視点から見る自分の姿と言うのは、どこか不気味な感じがする。

それより、イーブイだ。夢の中のイーブイは、無事だった。

今すぐイーブイの元に駆け寄って、異変に気付けなかったことを謝りたい。

けど、夢の私と一緒にバトルしている状況では、そうする訳にもいかない。

しばらくは、バトルを見守るしかなかった。



が――。

 ▼ 68 州街道◆IVIG1YNTZ6 18/12/24 02:08:00 ID:6HV2hXyc [3/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


 『イーブイっ……まだ行ける!?』

 『ぶぃぃっ……!』


夢の私と夢のイーブイは、相手に押されっぱなしだった。

小さなイーブイが立ち向かうには、バトル相手のポケモンは大きすぎる。

それになにより……。


 アユミ 「どうして……、必殺技を使わないの?」


私とイーブイが使いこなす、8タイプの必殺技と、イーブイ渾身の“ブイブイブレイク”。

夢の中の私とイーブイは、それを全く繰り出そうとしない。

必殺技さえ打てば、一気に有利に立てるのに。



 アユミ 「あっ……イーブイっ!」


相手の攻撃に弾き飛ばされ、イーブイは体を木に強打して、その場で うずくまってしまった。

見ていて痛々しい。

今まで負け知らずの私にとって、そのイーブイの姿は、あまりにも悲惨なものだった。
 ▼ 69 州街道◆IVIG1YNTZ6 18/12/24 02:08:30 ID:6HV2hXyc [4/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 『イーブイっ!』


夢の私がイーブイに駆け寄り、手を差し伸べようとする。

けど夢のイーブイは、それを振り払うように起き上がる。


 『まだ……行けるの?』

 『ぶいっ!』

 『……うん! イーブイの気持ち、応援するよ!』


ボロボロになって、傷だらけになって。

それでも目の輝きは失わず、相手に挑み続けるイーブイ。


 アユミ 「グスッ……、なんでっ、そんなに……」


気が付くと、私は涙を流していた。


あんなに一生懸命バトルに挑むイーブイを、私は初めて見たから。

夢の中の私とイーブイは、それでも必殺技を使わない。

そんな不利な状況でも、自分よりも大きな相手に、怯えること無く、決して諦めないで……。


 アユミ 「頑張って……グスッ、頑張って! イーブイっ!」
 ▼ 70 州街道◆IVIG1YNTZ6 18/12/24 02:09:00 ID:6HV2hXyc [5/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
窓から身を乗り出し、私は叫ぶ。

けど、その声は夢の私のイーブイには聞こえない。聞こえていない。



 『構えて、イーブイ!』

 『いぶっ!』



あぁ、相手が突っ込んでくる。

あんな巨体が ぶつかったら、今度こそダウンしてしまう。


ねぇ、夢の中の私。

使ってよ、必殺技。このままじゃイーブイが負けちゃう。



ねぇ!


使ってよ!


必殺技を!
 ▼ 71 州街道◆IVIG1YNTZ6 18/12/24 02:10:00 ID:6HV2hXyc [6/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 『行くよイーブイ! “とっておき”!』

 『いぶぅぅぅぅぅ……ぶぶぅぅぃぃっ!』



負けを覚悟したその時。

闘志が漲るイーブイの瞳の前に、大きな、大きな“星”が作り出されていく。

ほのかにピンク色の その“星”は、まるで、イーブイの想いが結晶となったみたいに、明るく、眩しく輝いている。


そして――。

イーブイが、“星”を打ち出した。


“星”は、風切るエネルギーを巻き起こしながら砂埃を立て、一直線に、相手を呑みこんだ。



 ― 破裂。



“星”が破裂した。

イーブイの“星”が、大きなエネルギーを放出して、相手を弾き飛ばした。


破裂した“星”の余波が、衝撃波となって轟く。

校庭の木々が ざわざわと揺れる。

窓ガラスがピリピリと振動する。



そんな衝撃が収まった時、バトル相手のポケモンは、目を回して地に伏せていた。

 ▼ 72 州街道◆IVIG1YNTZ6 18/12/24 02:12:00 ID:6HV2hXyc [7/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 『やった……やったぁぁぁぁぁ!』

 『いぶ! いぶぶぅぅぅい!』


夢の私は、ボロボロのイーブイを抱き上げて、満面の笑みで勝利を喜んだ。

夢のイーブイもまた、手足を ばたつかせ、尻尾を振って、耳をぴょこぴょこさせて、体全体で嬉しさを表現していた。

バトルを見守っていたギャラリーの中には、クラスメートたちも居る。みんな笑顔で拍手して、勝利を祝福してくれた。





 アユミ 「勝った……。勝てたんだ……イーブイっ!」


そして私もまた、喜びに満ち溢れていた。

必殺技を使わないで、イーブイの努力、イーブイ本来の力で、勝利を手にしたんだ。

ある意味での縛りプレイでも、イーブイは見事、勝利を おさめたんだ。

 ▼ 73 州街道◆IVIG1YNTZ6 18/12/24 02:12:30 ID:6HV2hXyc [8/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


 アユミ 「……あれっ?」


勝利の喜びに浸り、ふと校庭に目を戻すと、そこには誰も居なかった。

今の今まで居たはずの、夢の中の私。夢の中のイーブイ。対戦相手。下校途中の生徒たち。

その全てが、一瞬のうちに消えてしまい、校庭は不気味なほど静まり返っていた。


 アユミ 「どういうこと……」


おかしい。

だって、これは明晰夢。私の考えがある程度、夢の中に反映されるはずだ。

もっとも、夢の私とイーブイが必殺技を使わなかった時点で、そんな明晰夢の仕様なんてアテにならないけれど。

それでも私は、こんな不気味な光景を望んでいない。

夕暮れ迫る無人の校庭は、校舎の大きな影が黒く染め、まるで神隠しに遭ったんじゃないかと錯覚するような光景だ。





 『ねぇ』




 ▼ 74 州街道◆IVIG1YNTZ6 18/12/24 02:13:00 ID:6HV2hXyc [9/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 アユミ 「ひっ!?」


不意に背後から声を掛けられて、私は背筋が凍る。

けど、その声は聞き覚えがある。と言うより、普段から聞いている声だった。


 『見てた? イーブイのバトル』

 アユミ 「あなたは……、夢の中の、私……」


声の主は、夢の中の私だった。

当然だが、体型も、服装も、声も、全て私と同じ。もう一人の私。

そんなクローンとも言える存在が、私に話しかけている。傍から見れば不気味だろうけど、不思議と恐怖心は生まれなかった。


 『イーブイ、頑張ってたでしょ』

 アユミ 「うん。すっごく。私、泣いちゃったもん」

 『ふふっ。嬉しかったもんね、不利な状況だったのに、勝利を掴んで』

 アユミ 「ねぇ、ここは……、夢の中だよね?」

 『そうだよ』

 アユミ 「夢の中なのに、自由に動ける……、明晰夢ってやつだと思うけど、私は いったい、なんで明晰夢を見てるの? なんで夢の私と向き合ってるの?」

 『う〜ん、ちょっと勘違いしてるみたいだね』

 アユミ 「勘違い?」

 『ここはね、貴方の夢の中じゃないんだよ』

 アユミ 「えっ? だって私、ついさっきまでイーブイのベッドに居て、そしたら急に睡魔が襲って来て……」

 『貴方が眠ってるのは事実。だけど、ここは……、ここはね、イーブイの夢の中、なんだ』
 ▼ 75 州街道◆IVIG1YNTZ6 18/12/24 02:13:31 ID:6HV2hXyc [10/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
私は混乱する。


 アユミ 「イーブイの?」

 『うん。イーブイの、夢の中』


自由に動け、考えることが出来るのに、ここは私の夢じゃなくて、イーブイの夢。

確かに私はイーブイの横で眠りに落ちたけど、それだけでイーブイの夢の中に入りこむなんて……。


 『ここはね、イーブイの夢の世界……、つまり、イーブイの理想の世界なんだ』

 アユミ 「イーブイの……理想の?」


理想と聞くも、パッと見る限り、現実世界と変わりは無い。

普段の学校、普段の教室、普段の校庭。

空も、風も、空気も、音も、なにもかもが、現実世界と同じ。
 ▼ 76 州街道◆IVIG1YNTZ6 18/12/24 02:14:30 ID:6HV2hXyc [11/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 アユミ 「どこが違うって言うの? 理想もなにも、現実と同じじゃ……」

 『違うのはね、イーブイ自身なの』

 アユミ 「えっ、イーブイが?」

 『あと一応、私もかな』

 アユミ 「ちょっと待ってよ。イーブイと私が現実と違うって……?」

 『ヒントはね、さっきのバトル』

 アユミ 「バトル……」

 『私、イーブイには、助かって貰いたい』

 アユミ 「助かるって……」

 『“本物の私”、イーブイを、起こしてあげて。夢と現実の区別が付かなくなっちゃったイーブイを、現実の世界に、戻してあげてよ』

 アユミ 「そっか……」


夢の中の私も、現実のイーブイが危ないことは、分かっているらしい。

多分、ダークライさんに眠らされて、エネルギーを吸い取られていることも。

夢の中の私は、イーブイの夢の中でしか生きられない存在。そんな“彼女”は、自分の存在が消えてしまってでも、イーブイが助かって欲しいと願っている。



私は……、彼女は、イーブイが大好きなんだ。



 『そろそろイーブイが来るよ。じゃあ、よろしくね、私』

 アユミ 「……うん。任せて。“2人”でイーブイを助けようね!」

 『ふふふっ』



彼女は、微笑むと同時に、スーッと消えていった。

 ▼ 77 州街道◆IVIG1YNTZ6 18/12/24 02:15:00 ID:6HV2hXyc [12/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
私は、彼女が今まで立っていた場所に重なって、目を閉じる。


分かったよ、私。

全部分かったよ、私。


さっきのバトルを見て、イーブイが何を理想としているのか。

現実世界に、イーブイが何を求めているのか。


もしかしたら私は、今まで、自己満足で過ごしてきたのかもしれない。

パートナーのイーブイとの絆、信頼関係は、上っ面なものだったのかもしれない。

今までのバトルが負け無しで嬉しかったのは、私だけだったのかもしれない。

イーブイが居るから、私、仲間外れにされても耐えてこれたって言うのに。


耐えてこれた?


イーブイは、私のことも心配してくれてたんだね。

私とイーブイの理想の姿……、この夢が、まさしくイーブイの思い描く生活なんだよね。




目を開けると――。



そこには、イーブイが居た。


 ▼ 78 州街道◆IVIG1YNTZ6 18/12/24 02:15:30 ID:6HV2hXyc [13/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



 ― ― ―  ◇  ― ― ―  ◇  ― ― ―  ◇  ― ― ―





 『行くよイーブイ! “とっておき”!』

 『いぶぅぅぅぅぅ……ぶぶぅぅぃぃっ!』



これで勝負を付ける。

僕は目の前に、大きな“星”を作り出す。

今までの特訓の成果を見せるために。今までのバトルの経験を形にするために。そして、一緒に頑張って来た、アユミのために。


そうして打ち出した“星”は、僕自身も驚くほどの威力を生み出した。


風切るエネルギーを巻き起こしながら砂埃を立て、一直線に、相手を呑みこんで――、



そして、破裂。


相手は吹き飛ばされ、破裂した“星”の余波が、衝撃波となって轟く。

校庭の木々が ざわざわと揺れる。

窓ガラスがピリピリと振動する。



そんな衝撃が収まった時、バトル相手のポケモンは、目を回して地に伏せていた。

 ▼ 79 州街道◆IVIG1YNTZ6 18/12/24 02:16:30 ID:6HV2hXyc [14/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 アユミ 「やった……やったぁぁぁぁぁ!

 イーブイ 「いぶ! いぶぶぅぅぅい!」



勝った……勝ったんだ!

僕たち、勝ったんだ!



アユミは僕を抱き上げて、満面の笑みで勝利を喜んだ。

僕もまた、手足を ばたつかせ、尻尾を振って、耳をぴょこぴょこさせて、体全体で嬉しさをアユミに伝えた。


勝ったんだよ、僕。

必殺技なんか使わなくたって、勝てたんだよ、僕。

今までの努力、やっと報われたんだよね、アユミ!





喜びに浸っていた次の瞬間。僕の目の前が真っ暗になった。





突然のことに戸惑ったけど、視界は すぐに晴れて、気付くと僕は教室の中にいた。

モンスターボールの中から見ていた、アユミがクラスメートたちと勉強していた教室だ。



そして僕の目の前には、アユミが立っていた。


 ▼ 80 州街道◆IVIG1YNTZ6 18/12/24 02:17:00 ID:6HV2hXyc [15/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


僕とアユミは、無言で見つめ合っている。

どうして無言なのかは、僕にも分からない。

おさまらない勝利の嬉しさから、アユミに抱き付きたい気持ちは確かにあるけど、何故だか頭が そうさせない。


その無言の時間は、一瞬だったかもしれないし、数十秒、数分、続いていたかもしれない。


沈黙の中、アユミはフワリと微笑むと、口を開いた。



 アユミ 『ねぇ、イーブイ』

 イーブイ 「ぶい?」

 アユミ 『バトル、凄かったよ。格好良かった。逞しかった』

 イーブイ 「ぶぶぃ〜」

 アユミ 『必殺技を使わないで、イーブイの力だけで勝ったの、初めてだよね』

 イーブイ 「いぶぃ!」

 アユミ 『ふふっ。偉いよイーブイ。今までずっと……、ずっと、グスッ、特訓、してきたんだね?』

 イーブイ 「いぶっ? いぶぃ……?」
 ▼ 81 州街道◆IVIG1YNTZ6 18/12/24 02:17:30 ID:6HV2hXyc [16/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
突然、アユミは涙を流した。

本当に突然。

嬉し涙って訳じゃなさそうだけど……、涙を流す理由なんてなにも無いのに。


 アユミ 『ねぇイーブイ。落ち着いて、聞いてくれる?』

 イーブイ 「ぶぃ……」


涙を拭って、アユミは言葉を続ける。

ゆっくりと、しっかりと、覚悟を決めたかのように。


 アユミ 『ここはね……違うの』


違う?


 アユミ 『ここは……、この世界は、貴方が居るべき世界じゃないの』


この世界?

どういうこと?


 アユミ 『ここは……、イーブイが作り出した、夢の中なんだよ』


ここが……、夢の中?
 ▼ 82 州街道◆IVIG1YNTZ6 18/12/24 02:18:00 ID:6HV2hXyc [17/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 アユミ 『ごめんねイーブイ。私、イーブイの気持ち、ずっと気付かなかった』


どうしたのアユミ?


 アユミ 『私、“イーブイとの信頼の証”だからって、今までずっと、必殺技ばっかり使ってた』


なに言ってるのアユミ?


 アユミ 『でもイーブイは、ちょっと違ったんだよね』


どういうことなのアユミ?


 アユミ 『イーブイは……、“普通にバトルして”、勝ちたかったんだよね』


あっ……。


 アユミ 『この世界はね、イーブイの夢の中。イーブイの理想の世界なんだって』


あぁっ……。
 ▼ 83 州街道◆IVIG1YNTZ6 18/12/24 02:18:30 ID:6HV2hXyc [18/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 アユミ 『現実でさ……、いっつも私たち、必殺技で勝っちゃって。色んなタイプの必殺技があるから、勝つのは当然だよね。でもそのせいで、クラスメートたちみんな、“お前とのバトルは詰まらない”って』


やめて……。


 アユミ 『言ってみればさ、チートだよ、私たちのバトルって。みんなが私とバトルしてくれないの、当たり前だよ』


やめてよ……。


 アユミ 『だからイーブイは、さっきみたいな“普通のバトル”で、勝利を味わいたかったんだよね。いっぱい特訓して、いっぱい努力して』


違う、違うよ……。


 アユミ 『イーブイはね、現実では、ずっと眠ってるんだよ。ずっと……、2週間くらい。そのあいだイーブイは ずっと、夢の世界で、特訓してきたんだよね。それで今日、やっと勝利を掴んだんだよね』


そんなの……違う。


 アユミ 『必殺技を使わない世界……、イーブイの理想。それと、夢の私、クラスメートとバトルしてたよね。ギャラリーも いっぱいで。それもイーブイの理想なんだよね』


違う……もうやめてよ。


 アユミ 『イーブイ優しいね。夢の世界の私、みんなと仲良しだった。現実の私のこと、心配してくれてたんだよね』


違う……、違うんだよぉぉぉぉぉぉぉ!!!
 ▼ 84 州街道◆IVIG1YNTZ6 18/12/24 02:19:00 ID:6HV2hXyc [19/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 アユミ 『えっ……イーブイ!?』



これは夢なんかじゃない!

これが現実なんだ!

アユミと一緒に特訓して!

アユミと一緒に強くなって!

アユミと一緒に色んな経験して!

それで今日! 念願の勝利を掴んだんだ!

僕の力で!

僕とアユミの絆で!

これは夢じゃない!

これは夢なんかじゃないんだ!



 アユミ 『イーブイ……グスッ、イーブイっ!!!』



アユミが、怒鳴った。

いつもの優しいアユミからは想像できないような、厳しい口調。

でもアユミは、泣いていた。
 ▼ 85 州街道◆IVIG1YNTZ6 18/12/24 02:19:30 ID:6HV2hXyc [20/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 アユミ 『ごめんねっ……、ごめんねイーブイ。グスッ、私っ、イーブイのこと、全然わかってなかった……』


アユミ……。


 アユミ 『でも私っ、イーブイのこと大好き。それだけは、自信を持って言えるっ』


アユミ……。


 アユミ 『これは夢……、夢なの。イーブイが見てる、夢なの』


アユミ……。


 アユミ 『私ね、現実世界から来たアユミなんだ。夢の中の私に頼まれたの。イーブイを助けてほしいって』


グスッ、アユミ……。


 アユミ 『このまま眠り続けたら、イーブイは死んじゃうの。イーブイが死んじゃったら、グスッ、私っ……、私! そんなの絶対に嫌だっ!!!』
 ▼ 86 州街道◆IVIG1YNTZ6 18/12/24 02:20:00 ID:6HV2hXyc [21/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
溢れる涙が空間を舞い、僕はアユミに抱きしめられていた。


夢。

理想。

僕が思い描く世界。

みんなと仲良しなアユミ。

必殺技に頼らないバトル。



分かってたはずなんだよ、これは“夢”だって。



でも……いつからだろう。

この夢が現実だったら良いな、って思い始めて。

アユミと一緒に特訓して、アユミと一緒に楽しく過ごせる この夢が、あまりにも居心地が良くて。

気が付いたら、この世界こそ現実だって信じ込んでる僕が居て。
 ▼ 87 州街道◆IVIG1YNTZ6 18/12/24 02:20:30 ID:6HV2hXyc [22/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 アユミ 『私っ、ずっと……、ずっと、イーブイと一緒に居たい』


うん。僕もだよ、アユミ。


 アユミ 『必殺技、もう頼らない。イーブイと一緒に……、一緒に、努力していきたい』


うん。特別な力なんかより、その方が ずっと良い。


 アユミ 『だから……グスッ、だからっ!』



アユミは目を閉じると、額を、僕の額と、ぴったりと重ねた。


あぁ、アユミの想いが伝わってくる。

僕のことを心配してくれて、僕のことを大切にしてくれて、僕のことが大好きだって。


きっと僕の想いも、いま、アユミに伝わってるよね。

アユミは僕の自慢のご主人で、アユミの幸せを願って、アユミのことが大好きだよって。



僕とアユミの涙が、零れ落ちる。
 ▼ 88 州街道◆IVIG1YNTZ6 18/12/24 02:21:00 ID:6HV2hXyc [23/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告







 アユミ 『一緒に……帰ろう、イーブイ』







僕の意識は、そこで途切れた。






 ▼ 89 州街道◆IVIG1YNTZ6 18/12/24 02:21:30 ID:6HV2hXyc [24/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告







 ダークライ 「終わったな」

 クレセリア 「もう大丈夫ですね」

 ダークライ 「新月の夢と、満月の夢。こんなこと初めてだぜ」

 クレセリア 「私と貴方の夢が共鳴した、一つの奇跡ですね」

 ダークライ 「ふん。悪い気は しねーな」

 クレセリア 「自分から原因を作っておいて、まったく……」






 ▼ 90 州街道◆IVIG1YNTZ6 18/12/24 02:22:00 ID:6HV2hXyc [25/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



 ― ― ―  ■  ― ― ―  ■  ― ― ―  ■  ― ― ―





 アユミ 「んっ……」



あれ、私……、眠っちゃってたみたい。



夢を見た。


イーブイの夢。


イーブイの本当の気持ち。


イーブイの思い描く世界。



私は、イーブイと約束したんだ。
 ▼ 91 州街道◆IVIG1YNTZ6 18/12/24 02:22:22 ID:6HV2hXyc [26/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

ベッドの上で、点滴と呼吸器が繋がれている、痩せ細ったイーブイ。


でも、もう大丈夫だよね?



 イーブイ 「……ぃぶ」



ほらね、イーブイ、目を覚ました。目を覚ましてくれた。



 アユミ 「グスッ……、イーブイ」

 イーブイ 「ぶぃ……」


呼吸器のせいでハッキリ聞こえなかったけど、確かにイーブイは、応えてくれた。

あぁ、もう大丈夫。もう大丈夫なんだ。





 アユミ 「おかえりなさい、イーブイ」




 ▼ 92 州街道◆IVIG1YNTZ6 18/12/24 02:23:00 ID:6HV2hXyc [27/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



それからイーブイは、みるみるうちに回復していった。


ご飯を いっぱい食べて。

少しずつ体を動かす練習をして。

ワザの練習も やってみたり。



そしてイーブイが目を覚ましてから、10日。


ついに退院の日を迎えた。


完全回復、後遺症無し。

ワザのキレも今まで通りで、今すぐにでもバトルできるコンディション……、とまでは言い過ぎか。

ジョーイさんも驚くほど、イーブイは短期間で元気になってくれた。



私とイーブイの今まで通りの日常が、ようやく戻って来た瞬間だった。


 ▼ 93 州街道◆IVIG1YNTZ6 18/12/24 02:23:30 ID:6HV2hXyc [28/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告





 イーブイ 「いっぶ、いっぶいぶぶ〜〜〜い♪」

 アユミ 「ふふっ。ねぇイーブイ」


病院からの帰り道。

ご機嫌な様子で元気よく歩くイーブイに、私は声を掛ける。


 イーブイ 「ぶい?」

 アユミ 「私ね。たとえクラスの皆から仲間外れにされても、イーブイが一緒だから大丈夫だよ」

 イーブイ 「ぶぶぃ……」

 アユミ 「うん。今さら皆が、私を受け入れてくれるとは思ってないよ。“必殺技使わないから仲良くして〜”なんて言ったら、それこそ反感買っちゃうもんね」

 イーブイ 「ぶぃ……」

 アユミ 「ありがとうイーブイ。私のこと、心配してくれて。でも大丈夫だよ。イーブイと一緒ってことが、なによりも幸せだって、私、分かったから」

 イーブイ 「いっぶぃ!」

 アユミ 「ふふふっ」


そう。

イーブイの理想は、私が皆と仲良くなることも含まれていたけど、そればっかりは、簡単には いかない。

一度できあがった関係って言うのは、簡単には修復されない。

私とイーブイが必殺技で無双してきた事実は、簡単には消え去ってくれないのだ。
 ▼ 94 州街道◆IVIG1YNTZ6 18/12/24 02:24:00 ID:6HV2hXyc [29/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 アユミ 「森の方、行ってみよっか。木の実ずっと食べてないもんね?」

 イーブイ 「いぶぅ〜♪」


ポケモンセンターの食事は、健康面、栄養バランスは最高だけど、お世辞にも美味しいとは言えない……らしい。

人間の病院と一緒なんだね。

退院したんだから、甘い木の実を心ゆくまで食べさせてあげないと。


モモンかナナの実が見つかると良いけど――。

そう思いながら草木を掻き分けて進んで行くと、少し開けた場所に、人影を見つけた。





 *** 「ジャンプだ! その体勢から“10万ボルト”!」

 ピカチュウ 「ぴっか!」



そこに居たのは、私と同い年くらいの男の子と、ピカチュウだった。

見たことないってことは、私とは違う学校の子だ。


そんな彼らは、バトルの特訓中と思われる。

邪魔しちゃ悪いし、そのまま この場を立ち去ろうと背を向けた瞬間、聞き慣れない言葉が彼から飛び出した。
 ▼ 95 州街道◆IVIG1YNTZ6 18/12/24 02:24:30 ID:6HV2hXyc [30/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 *** 「よし! 次は“ざぶざぶサーフ”だ!」

 ピカチュウ 「ぴかぴかぁぁぁ!」



私は慌てて振り返る。


そして、目の当たりにする。


ピカチュウが……、電気タイプのピカチュウが、水を操るワザを繰り出している光景を。


厳密に言うと、それは水ではない。

観察した限りでは、放出した電気をピカチュウが器用に操って、波の形をした電気の帯を滞留させ、それを打ち出した――、そんな感じかな。



 アユミ 「凄い……凄い凄い!」


 *** 「えっ……誰だ!?」
 ▼ 96 州街道◆IVIG1YNTZ6 18/12/24 02:25:00 ID:6HV2hXyc [31/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
とにかく私は興奮した。

男の子とピカチュウに見つかることを恐れずに、思わず声を上げた。


だって、ピカチュウが水タイプのワザを使ったんだよ!?

私のイーブイと同じ……、イーブイみたいな必殺技を、使いこなしてるんだよ!?


 アユミ 「あのっ、隠れてた訳じゃないの。私、アユミって言います」

 *** 「オレはカケル。同じ学校……じゃないよな」

 アユミ 「それよりそれより! 今のピカチュウのワザ! それ凄いよ! 凄すぎるよ!」

 カケル 「あぁ、サンキューな。そんな興奮して凄いって言ってくれたの、お前が初めてかも」

 アユミ 「なんで? 凄いことだよすっごく!」

 カケル 「けど、まわりは そうは思わないんだ。バトル相手からは、“チートワザじゃ勝てっこない”って嫌味言われるし」


あぁ、なんでカケル君、こんな人目につかない場所で特訓してたのか、分かった気がした。

少し表情を曇らせて呟いたカケル君の気持ち、私、すっごく分かるもん。
 ▼ 97 州街道◆IVIG1YNTZ6 18/12/24 02:25:30 ID:6HV2hXyc [32/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 アユミ 「そっか……。同じなんだね、私と」

 カケル 「えっ!?」

 アユミ 「私のイーブイもね、使えるんだ。違うタイプの、必殺技」


 イーブイ 「ぶいぶぃぃ」

 ピカチュウ 「ぴぃかぁ?」

 イーブイ 「いぶぶぃ〜」

 ピカチュウ 「ぴっか! ぴかぴっかぁ!」


ふふっ。

イーブイも きっと、私と同じこと、ピカチュウに訴えてるんだね。

イーブイにとっても、必殺技を使いこなすポケモンに出会ったの、これが初めてだもんね。


 カケル 「アユミ……って言ったな」

 アユミ 「うん」

 カケル 「バトルしてくれよ! オレとピカチュウの必殺技、イーブイの必殺技で受けてくれよ!」
 ▼ 98 州街道◆IVIG1YNTZ6 18/12/24 02:26:00 ID:6HV2hXyc [33/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
そう言ったカケル君は、すっごく活き活きとしていた。

カケル君も、私と同じ悩みを抱えてたんだね。

まわりの皆から仲間外れにされて、ピカチュウだけが心を許せる友達で。


本当に私と、同じなんだ。


 アユミ 「ごめんね、今日は無理なんだ」

 カケル 「そうか……」

 アユミ 「イーブイ、退院したばっかりなの。一応今日は、安静にしたいなって」

 カケル 「なんか病気でもしたのか?」

 アユミ 「ちょっとね。……だから、また会おうよ! それまでにイーブイの体調を万全にするからさ!」

 カケル 「おう! 約束だぞ?」

 アユミ 「うん! じゃあ、連絡先教えてよ。バトル出来るようになったら、すぐ連絡するから!」

 カケル 「よっしゃ。じゃあオレのアドレスは……」






 ▼ 99 州街道◆IVIG1YNTZ6 18/12/24 02:26:30 ID:6HV2hXyc [34/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


夜――。


自分の部屋でイーブイと一緒に眠るのは、なんだか久しぶりだ。

こんな平和な日常がどれだけ尊いものか、今なら身に沁みて分かる。


 アユミ 「ふふっ。早速カケル君から LINE 来てるよ」

 イーブイ 「いぶ?」

 アユミ 「ピカチュウのスタンプで“よろしくね”って」

 イーブイ 「ぶぃ〜」

 アユミ 「嬉しいね。私たちと同じ境遇の友達ができて」

 イーブイ 「ぶい!」

 アユミ 「よ〜し、明日から特訓だよ! カケル君をガッカリさせないように、今まで以上に強力な必殺技を鍛えるんだから! ……あ、必殺技ばっかりに頼る訳じゃないからね?」

 イーブイ 「ぶぶぶぃ!」


さっきのピカチュウのワザを見る限り、カケル君とピカチュウの必殺技は強力だ。

私とイーブイで、まともに立ち向かえるかどうか……。


だから努力するんだ。

イーブイと一緒に特訓して、一緒に頑張って、一緒に強くなるんだ。



 アユミ 「イーブイ。これからも、よろしくねっ」

 イーブイ 「いぶぶ〜ぃ♪」





   ― 完 ―


 ▼ 100 州街道◆IVIG1YNTZ6 18/12/24 02:27:00 ID:6HV2hXyc [35/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



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そんな微笑ましい雰囲気の、アユミとイーブイの部屋。

その屋根の上に、2つの影が、静かに空を見上げていた。


 ダークライ 「まったく。イーブイが目を覚まして10日も経つってのに、セリアは心配性だな」

 クレセリア 「お互い様じゃないですか? わざわざ彼女の家の屋根で様子を伺っているなんて」

 ダークライ 「あの2人、もう心配いらねーな」

 クレセリア 「えぇ。2人の絆、信頼関係を信じた私たちが、正しかったようですね」

 ダークライ 「俺はお前の力を信じてたよ。サンキューな。あいつらを助けてやって」

 クレセリア 「柄でもないことを。……悪夢とは、なんなんでしょうね」

 ダークライ 「俺が悪夢だと思った夢は、イーブイにとって、吉夢だった――。他人の夢なんざ分からねぇよ、俺にだって」

 クレセリア 「そうですか……」

 ダークライ 「なんだよ」

 クレセリア 「私が見せる吉夢も、人によっては悪夢になってしまうのかと考えると、少し心配になりまして」

 ダークライ 「お人好しだなセリアは」

 クレセリア 「私は本気で考えてるんです」
 ▼ 101 州街道◆IVIG1YNTZ6 18/12/24 02:27:30 ID:6HV2hXyc [36/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
雲の切れ目から、月が顔を覗かせる。

静かに降り注ぐ柔らかな明かりが、2匹を優しく照らした。


 ダークライ 「……綺麗な三日月だな」

 クレセリア 「あれは二十六夜の月です。三日月とは欠けが反対でしょう」

 ダークライ 「お前のこと言ったんだよ。三日月の化身さんよ」

 クレセリア 「なっ……///」

 ダークライ 「へへっ。まぁ悩め。思いきり悩め。答えが出たら聞いてやるよ」

 クレセリア 「っ……次またナイトメアで誰かを苦しめるようなことがあれば、必ず止めに行きますからね!」

 ダークライ 「へへっ。楽しみにしてるぜ」





   ― 終 ―


 ▼ 102 州街道◆IVIG1YNTZ6 18/12/24 02:30:30 ID:6HV2hXyc [37/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


以上で完結です。

最期までお読みいただき、ありがとうございました。



当SSは、こちらの企画に【応援枠】として参加しています。
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 ▼ 103 西ノ女 for EST◆Ms3gHxMZzM 18/12/24 03:39:42 ID:d3t2VMoA NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
おつ
 ▼ 104 ダック@ゴージャスボール 18/12/24 04:16:44 ID:O/Zw3.Uw NGネーム登録 NGID登録 報告
乙!
 ▼ 105 ガユキノオー@コイン 18/12/24 05:28:33 ID:tu3MVd0E NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
乙です!
 ▼ 106 ガディアンシー@むしのジュエル 18/12/24 11:20:05 ID:PVik.ND. NGネーム登録 NGID登録 報告
乙!
ちょっとイーブイの相棒ワザ封印してくる
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