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SS

【ポケダン風味SS】天と地の旅物語

 ▼ 1 去ログのSSを修正します 17/03/21 15:43:55 ID:C7fs05E2 [1/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


太陽と月は輝きを増す


偽りの世界においても、天地は開ける──

 ▼ 2 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/21 15:44:36 ID:C7fs05E2 [2/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
〜イッシュ地方 とある民家〜


「おーい、ご飯だよ〜。いい加減降りて来れば〜?」


「うん、今いくよ。今行くから……ホントにさ」


と言いながらも母の呼びかけを無視し続ける俺は、実のところ、食事を摂る気にはなれなかった。



……理由は二つ。

とある事情でポケモントレーナーの道を諦めたことと、それがきっかけで友人とケンカ別れしたことだ。


俺「……ハァ」

俺の名前は……いや、名前なんてどうでもいいだろう。
しばらくは俺で通すことにする。

俺(ポカブ……なんで、なんで死んでしまったんだ……)


そう。相棒のポケモンが病死したのだ。
これではトレーナーの夢もへったくれもない。
 ▼ 3 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/21 15:45:34 ID:C7fs05E2 [3/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
イッシュ地方は実にトレーナーが多い。俺自身、トレーナーであることを誇りに思っていた。

そんな中でトレーナーじゃない俺は、これから、どう生きていけばいいのだろうか。

周りをトレーナーたちに囲まれながらも、今までの軌跡を完全に閉ざし、別の道を歩むことなどできるのだろうか?


……そりゃあこんな倦怠感にも、悩まされる。


俺(ホントに、どうすればいいんだ)



──その時、だった。



『『おい……おい……そこの、お前』』



俺「……!?」


自分に呼びかける、不穏な声が一つ。
 ▼ 4 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/21 15:46:10 ID:C7fs05E2 [4/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
『『現実が、そこまで嫌か……? “そちら”の世界では、生きづらいのか……?』』


俺「だから……誰だ!
おいっ、どこから喋ってるっ!?」

俺は、警戒心を剥き出しにさせていた。


『『私のことは気にするな。それより、今からいいところへと連れて行ってやる』』


俺「……は?」


『『お前はポケモンが大好きなようだ。だからこそ、そのように苦悩しているのだろう? とてもいいところだぞ……。何しろ……煩わしいトレーナーなど一人もいないのだからなっ!!』』


俺「だから……どういうことだっ、お前は誰なんだっ! おいっ、答えろぉっ!!」
 ▼ 5 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/21 15:46:47 ID:C7fs05E2 [5/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



シュン──



次の瞬間、部屋から俺の姿は……完全に消え去った。


………
……
 ▼ 6 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/21 15:47:31 ID:C7fs05E2 [6/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
〜???〜


ド ス ン ッ ! ! !


俺「あいてて……」

どうやら、遥か空中から落下したようだ。

俺(ここは……?)


見たこともない景色だ。ここはどこなんだ。
ここが、あいつの言っていた『いいところ』なのか?
そもそも、あいつは誰なんだ?

色々な疑問が沸き立つのだが。


俺(おや……)

近くに池がある。ちょうど、喉が乾いていたところだ。
とりあえず喉を潤し、これからのことを考えよう。

ゴクゴク。

俺(……ふぅ、旨い水だ)

ん…池に何かが映ってる。黄色いぞ、何だこれは。
 ▼ 7 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/21 15:48:03 ID:C7fs05E2 [7/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
俺「!」

俺が屈みこむとあろうことか、同時にその黄色い“なにか”も、俺と同じ動きを見せたのだ。

俺「!」

その時、見知らぬ影が二つばかり、俺の元に近づいてきた。

それは……。

俺「えっ、な、何だぁ……お前たちっ!?」


……俺の前に立ち塞がったのは、人間ではない。

俺が良く知っていて、そしてだからこそ、目の前で発語することなど有り得ぬ筈である……。


ズキズキン「何を驚いている? 貴様も我々と同じく、ポケモンではないか!!」


──ポケモンたちの姿であったのだ。


俺「えっ、俺もポケモン!?」

ウソッキー「ククク……全くもってその通り。なぁ……ピカチュウさんよぉっ!!」

俺「な、なにっ? 俺が、ピカチュウッ!?」
 ▼ 8 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/21 15:48:38 ID:C7fs05E2 [8/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
俺(……ホントだ、ピカチュウの姿になってる!)

……思い返せばあの黄色い影は確かにピカチュウのそれだ。しかし、どうして、なんでっ!?


──その時、だ。


「「な、なにやってるの君っ! は……早く逃げるのよぉっ!!」」ガシッ


俺改めピカチュウ「うわっ、な……何するんだよ!!」


……ダダッ。


突如、とあるポケモンが俺の元に駆け出し、俺の身体を掴み、その場より逃げ出したのだ。

ウソッキー「チッ、逃がすかっ! 獲物に逃げられたとなっちゃ、我ら“ATZ”の恥だ!! ズキズキン、奴等を追うぞっ!!」

ズキズキン「おうっ!!」
 ▼ 9 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/21 15:49:18 ID:C7fs05E2 [9/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
〜草原の地下道付近〜

ピカチュウ「ハァ、ハァ……お、お前…なんで俺を……。そ、それに……お前もポケモン、イーブイだ……。ど、どうなっているんだ……この世界は……」

イーブイ「えへへ、あなたも人間の世界からこっちに来たんでしょ? わかってるんだから!!」

ピカチュウ「……! ……よ、よかった、仲間がいたぁ……」

イーブイ「そう、私も人間。あなたもね。そしてこの世界は……あなたと同じように、ポケモンとなった人間が住むところなのよ」

ピカチュウ「な……なんだとぉっ!?」

イーブイ「ひとまずあの地下道へ隠れましょう。私が知っている限りの情報を……あなたに話すから」

………
……
 ▼ 10 ストダス@こうかくレンズ 17/03/21 15:50:26 ID:C7fs05E2 [10/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
イーブイも、俺と同じように不思議な声に導かれ、この世界へとやってきたのだと語った。

あの声の主が何者なのかはわからないが、この世界には同じようにポケモンへと変貌を遂げた人間たちが大勢やって来て、何もなかったこの世界に、独自の文化を築き上げた。


先程の輩は『ATZ』。
彼らもまた人間たちであるが、ほとんどがかつて人間世界で悪行の限りを尽くしていた、悪人の集団でもある。

あまり関わり合いになりたくない集団だということは、わかる。


…ハァ、関わり合いどころか、要らぬ因縁をつけられそうなのだが。
 ▼ 11 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/21 18:32:35 ID:duye2o82 [1/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
ウソッキー「待てぇっ、逃さんぞボケェッ!!」ダダッ

ズキズキン「そうだっ、ハラワタ喰ってやるわぁっ! 俺はモツが大好きでねぇっ!!」ダダッ

イーブイ「ぎゃあっ、話してたら来ちゃったじゃない!! は、早く逃げよっ!?」

ピカチュウ「……10分前ぐらいは、ダラダラできていたのになぁ……」


そして俺とイーブイは、地下道へと駆け込んだ。
 ▼ 12 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/21 18:33:12 ID:duye2o82 [2/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
〜地下道内部〜

ピカチュウ(……なんで、こんなことに)

イーブイ「ところでさ、ピカチュウ。“不思議のダンジョン”って、知ってる?」

ピカチュウ「……だんじょん?」

イーブイ「私たちだって生きている。お腹は空くし、怪我だってする。“不思議のダンジョン”には資源が至るところに落ちていて、ポケモンたちはそれぞれグループを作り、その資源を回収して生活しているの」

ピカチュウ「この地下道も、そうだって訳か?」

イーブイ「うん、話早いね。この世界には、その不思議のダンジョンがいたる所に存在しているの!」

ピカチュウ(……テンション、高いなぁ)

イーブイ「……でも」

ピカチュウ「でも?」

イーブイ「あのATZが資源を独占しようとしている。いたる所の不思議のダンジョンで、私たちのような弱いポケモンをカモにしているの。そして、来たばかりの私はまだグループを作れていない。だから……」

ピカチュウ(まさか)



イーブイ「「なにかの縁だと思って……お願い、ピカチュウ。私と……一緒にグループを作ってっ!!」」



ピカチュウ「!!?」
 ▼ 13 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/21 19:03:53 ID:duye2o82 [3/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
イーブイ「お願いっ!!」

ピカチュウ「いや、ちょっと待って! 俺はこの世界に来たばかりで、まだ右も左もわかっちゃいない。いきなりそんなことを言われても……」

イーブイ「……無理なのは、百も承知だからっ!」

イーブイ「それに、お前は女だろう!? 出会ったばかりのこんな男を……信用できるのかっ!?」

イーブイ「……大丈夫だよ。今話してみた感じでも、あなた、悪い人じゃない。心の優しい人。それはわかるよ」

ピカチュウ「!」

イーブイ「……やっぱごめんね、いきなりホントに、こんな話持ちかけたら。そりゃ……」


ピカチュウ(……)
 ▼ 14 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/21 19:04:23 ID:duye2o82 [4/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
〜数ヶ月前 トレーナーズスクール〜

友だち「元気出しなよ。そんなんじゃ、ポカブちゃんだって、浮かばれないよ……」

俺「うるさいな、ほっとけよ。お前はポケモンが死んでないから、そんなことが言えるんだ」

友だち「ち、違うよ! 私そんなこと、別に思って」

俺「……じゃあ黙れよ! 女の癖に、しゃしゃり出るなよ! 俺はお前のそういうところが、嫌いなんだよっ!!」


友だち「……!!」


------------------------

数ヶ月後、その友だちはとある街へと転校して行った。
後悔したところで、あんなことを言った時点で、遅かった。

……あの時の俺は、どうかしていた。
そして今また、俺は女子に冷たく当たっているんだと痛感した。


…………もう、繰り返したくない。
 ▼ 15 陰のあしゃま◆fAKf5EtjRk 17/03/21 19:06:13 ID:Mzk6ZUMI NGネーム登録 NGID登録 報告
なんか読んだことあると思ったら
支援
 ▼ 16 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/21 22:58:12 ID:C7fs05E2 [11/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

ピカチュウ(……)

イーブイ「え、どうしたの……?」

俺「……別に、なんでもない。よし、わかった、イーブイ。お前とグループを作る。そうすることにするよ」

イーブイ「……! やったあっ、ありがとう!!」

ピカチュウ「名前は、そうだな……。ま、あとから決めればいいか」

イーブイ(遂に、私も……グループをっ……!!)ウキウキ

ピカチュウ「……まぁ、詳しい話は後でな。それに、もうすぐ出口のようだし……」

イーブイ「あぁ、なんか、ドキドキしてきたよ!」ワクワク

ピカチュウ(……わかりやすい)
 ▼ 17 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/21 22:59:00 ID:C7fs05E2 [12/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
〜草原の地下道 出口〜

ピカチュウ「!」

ウソッキー「クックク……」

しかしそこには、ウソッキーが待ち構えていた。

ズキズキン「へへへ……」

そして背後からは、ズキズキンが迫る。

ウソッキー「うへへへ。挟み撃ち作戦、大成功だ」

ズキズキン「冥土の土産に教えといてやろう。俺様の異名は“悪司”。弱っちいポケモンをボコボコにするのが生きがいなのさ。ククク……この瞬間がたまらねぇぜ」

イーブイ「いきなり、万事休す!?」

ピカチュウ(……悪司……?)


──その時で、あった。
 ▼ 18 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/21 22:59:36 ID:C7fs05E2 [13/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ド ガ ッ ! !

ウソッキー「グ……グウゥ……」

ズキズキン「い…痛ってえっ! 貴様……何者だっ!!」


先程の方角からやって来たとあるポケモンが、二匹に奇襲を仕掛けたのだ。


「とにかく、そこを通してもらおう」

ウソッキー「ふ……ふざけるなよっ!! こんなことをして……ATZに歯向かって!!!」

イーブイ「こ、このポケモン……サザンドラだ。だけど、サザンドラっていかにも悪役っぽいポケモン……」

サザンドラ「見た目で判断するな。お前も殺されたいか?」

イーブイ「ひ……ひぇっ……」

ズキズキン「よ……よくもやってくれたなぁっ! これでも喰らえやぁっ!!」ビュッ

ズキズキンは、サザンドラに“とびひさげり”を見舞うが。

サザンドラ「……くだらない」ガシッ

ズキズキン「!!?」


サザンドラは飛びかかったズキズキンの脚を掴み、そのまま身体を地面に叩きつけた。
 ▼ 19 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/21 23:00:27 ID:C7fs05E2 [14/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ウソッキー「くそぉ……痛え……」

ズキズキン「ひとまず俺たちは逃げ去るが……お前らっ、覚えとけよっ!!」ダダッ

二匹は、そのまま反対方面へと逃げ去ってしまった。

ピカチュウ「てか俺、何もしてないんだけど……」

イーブイ「あ、ありがとう、サザンドラさん……」

サザンドラ「礼には及ばない。私もこの先に進みたかったからな。それに、ATZ……あの下らない存在を容認しているあやつを、私はなによりも許せないのだよ」

イーブイ「あやつ……?」

サザンドラ「……おっと、……つい、口が滑った。それでは、私は先に行く。もう、会うこともないだろうが……」

サザンドラ(……)

イーブイ「……?」

イーブイ(私のことを、チラッと見たような……?)

サザンドラ「……では、な」スタ、スタ


サザンドラは、先へと行ってしまった。


ピカチュウ「……不思議な奴だなぁ」

イーブイ「そうね。……それよりピカチュウ、見て。この先には、ポケモンたちのタウンが広がっているんだよっ!!」
 ▼ 20 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/21 23:01:10 ID:C7fs05E2 [15/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
〜ポケモンたちの町 アロガントタウン〜


草原が広がり、清き水が湧き出ている。
雲一つとてなき大空。立ち並ぶ露店。
中央の広場では、ポケモンたちが談笑を交わしている。


この世界は山脈に囲まれ、五つのエリアに分かれている。


中央には草木溢れ、タウンの存在するフレアグリン。
北西には砂漠広がるデザートサン。
北東には氷河に閉ざされたアイスロック。
南西には火山帯のマグマランド。

どのエリアも、不思議のダンジョン化が進んでいる。


そして、南東のアンホワイトにはATZのアジト……。『ブラックタワー』がそびえ立つのだ。
 ▼ 21 日はここまでです 17/03/21 23:02:02 ID:C7fs05E2 [16/17] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
肉屋「へいっ、らっしゃい! 名物のゴッド・ビフテキはいらんか〜?」

飴屋「金太郎飴はいらんかね〜。どこを切っても同じ顔の美味しい飴だよぉ〜」

クレープ屋「クレープだけじゃないよ〜。飲み物もセットでリーズナブルな価格だよ〜」

どの露店も、実に美味しそうな食べ物を揃えている。

ピカチュウ「……なんか、腹減ってきちゃったよ」

イーブイ「あ、だったら、知り合いの店があるんだ。そこに行こう。とっても美味しいんだ! 『ハリテヤマのちゃんこ鍋』って言うお店なんだけど……」

ピカチュウ「適材適所っていうが、その通りだな」
 ▼ 22 シマリ@でんきだま 17/03/21 23:24:04 ID:u/.I2OTg NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援です(=゚ω゚)ノ
 ▼ 23 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/21 23:30:40 ID:C7fs05E2 [17/17] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
今度は過去ログ落ちしないように頑張ります
 ▼ 24 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/22 00:04:41 ID:u9ZdYRK. [1/24] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
〜ハリテヤマのちゃんこ鍋〜

オクタン「あらぁぁん、いらっしゃいん……イーブイィ」

出てきたのはこの店の従業員、オクタンである。

イーブイ「あれ、おばさん。店の主人は今日はいらっしゃらないんですか?」

オクタン「あぁん、マスターは今ん、不思議のダンジョンにぃ資源を回収しに行っててねぇぇ……」

イーブイ「アハハ、マスターですか。なんかカフェみたいな感じですね。ちゃんこ屋なのに」

オクタン「ちゃんこだけじゃないんぅ。キムチ鍋、もつ鍋、すき焼き、しゃぶしゃぶ、何だってあるさぁぁん、好きなものを言っとくれぇん。あと……その子は誰なんだいぃぃ?」

ピカチュウ「あぁ、俺は最近、いや最近過ぎるな。ここに来た、まぁ新入りだよ」

イーブイ「ふ〜んぅぅ。あなたもあの声に導かれぇ、この世界にやってきたという訳ねぇぇん」

ピカチュウ「そういう訳だ。よろしく頼むぜ、ねっとり声のタコさんや」

イーブイ「ここの主人のハリテヤマはアロガントタウン一の実力者。彼がいるからこの町にはATZがうかつには近寄れなかったんだけど……いないと、不安だね」
 ▼ 25 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/22 00:05:31 ID:u9ZdYRK. [2/24] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
──しばらくして。


オクタン「はいっ、できたわぁぁんっ!!」ドドンッ

出されたのは、一食分に小分けされた鍋物。
煮込み具合、味付けもピカチュウ好みの味であった。

ピカチュウ「……アンタも、料理旨いんだな。俺もこんな料理の上手いお母さんが良かったよ」

イーブイ「ピカチュウのお母さん……ライチュウとか? アハハハ!」

ピカチュウ「バカに、するなよな」

オクタン「そうよ坊や、お母さんを馬鹿に馬鹿にするもんじゃないわぁぁぁぁんうぅぅぅぅ」

ピカチュウ「あ、あぁ……えぇ」

ピカチュウ(お母さん……今どうしてるんだろう。あの時のご飯、どんな味だったんだろう)
 ▼ 26 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/22 00:06:04 ID:u9ZdYRK. [3/24] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ピカチュウたちは食べ終わる。主人がいないにも関わらず、今日は客の入りが良いようだ。

フタチマル「フタフタ〜!」ジャババ

ピカチュウ「うわっ、なんだコイツっ!?」

オクタン「あぁ、その子はうちの清掃員のフタチマルよぉ」

フタチマル「よろしくでフタ!」

ガチャ。

ラフレシア「あれ、今日は主人は休みなのか? まぁいい、オクタン……今日も美味しい鍋を食べに来たよ」

ピカチュウ「うわっ、鼻が曲がる!!」

オクタン「その子はラフレシア。まぁ臭いけど、その中に熱い感情を秘めた子よぉぉぉん」

イーブイ「色々なポケモンたちがいるの、この世界にはね。ほとんど顔見せ程度の扱いになるかもしれないけど」

ピカチュウ「はえ〜……」

オクタン「しかし、それにしても遅いねぇ、あの人ん。もう帰って来ても良い頃合いなんだけどねぇぇん?」

フタチマル「フタフタ〜!」ジャババ

ラフレシア「あぁ……君の出す水は、やっぱり最高さ……」

フタチマルは、ラフレシアに水をあげている。

ピカチュウ「傍から見ると、なんか……凄いアレな光景だな、おい」
 ▼ 27 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/22 00:06:36 ID:u9ZdYRK. [4/24] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
〜宿屋 『DE☆素・カ〜ン』〜

ピカチュウ「……なんか凄え宿名だぞ、なぁ」

イーブイ「だ、大丈夫よ! ここの女将のデスカーンは少し変わり者で知られてるけど、悪くはないポケモンだし……あと格安だしね、ここは。それにピカチュウ、あなた、他に行くところもないんでしょう?」

ピカチュウ「それを言われると、辛いけどさぁ」

すると、女将のデスカーンが彼らを迎えてくれた。

デスカーン「アゲェェチス♪ ようこそ、お客人っ!!」

ピカチュウ「へっ……?」

イーブイ「あぁ、今のは『いらっしゃいませ』という挨拶だよ、ピカチュウ」

デスカーン「へぃっ、丁度部屋があいてやす! 大浴場にでも浸かり、今日の疲れをじっくり癒やしてくれよな! ゲーチス様に祝福あれっ!!」

ピカチュウ「おい、関わっちゃいけないタイプじゃないのかコイツは」

イーブイ「あ、安心して、本当に悪いポケモンじゃないんだから!! ただ、言動や行動とかが少し怪しいってだけで……」
 ▼ 28 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/22 00:07:06 ID:u9ZdYRK. [5/24] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
しばらく経ち、することのないピカチュウは、宿内をうろうろと彷徨き回っていた。

------------------------

〜漫画部屋〜

ピカチュウ「うぉっ、この世界にも漫画があるのか。しかも、人間の世界と同じものまであるぞ」

???「うん、どうした……兄ちゃん?」

ピカチュウに呼びかけたポケモンは、ゴーリキーだ。

ピカチュウ「いや、なんでもないさ。うん、アンタの読んでるものは……そうか、アンタもその漫画が好きなのか」

その漫画とは、キ○肉マンである。

ゴーリキー「ハハ。兄ちゃんも読んでるのか。今も尚ネットで連載しているってのに、その知名度は意外なまでに低い。世代もあるだろうが…哀しいことだ。だが、今やってるシリーズはとても面白いぞ。俺はリアルの世代じゃないが」

ピカチュウ「同じ漫画を愛する者がいて、嬉しいよ」


ピカチュウ(……おや、この本は)


漫画本の中に一つ、ATZに関する文献が混じっていた。
 ▼ 29 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/22 00:07:38 ID:u9ZdYRK. [6/24] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
Word:【ATZ】


それぞれの属性を司る18名のポケモンにより構成される過激派グループである。


先程のウソッキーは“岩”、ズキズキンは“悪”を司る。


最近急激にこの世界の各地に蔓延り、勢力を拡大しているのだが、その行動の裏には資源確保の他に……もっと大きな何かがあるのではないのかと疑われている。
 ▼ 30 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/22 00:08:14 ID:u9ZdYRK. [7/24] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ゴーリキー「なに、俺だって同士に会えたような気分で嬉しいよ。兄ちゃんとはまたいつか会いたいもんだな」

ピカチュウ「ハハハ、まぁ、ありがとう」

ピカチュウ(そろそろ夜も更けてきたな。風呂に入って、さっぱりするかな)

ピカチュウはカイリキーと別れ、大浴場へと向かう。

------------------------

〜大浴場〜

ピカチュウ(……あぁ〜……良い湯だ。てか俺以外誰もいないのな。貸し切りのようでなんだか気分が良い)


──その時である。


「「キャァ〜〜〜ッ!!?」」


ピカチュウ「!!?」


宿内に、悲鳴が響き渡った。


ピカチュウ(い、今のは……女湯の方向からだっ! そしてこの声は、イーブイのもの……い、一体何がっ!?)
 ▼ 31 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/22 00:08:44 ID:u9ZdYRK. [8/24] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
〜女湯〜

ピカチュウが駆けつけると、そこでは、イーブイがとあるポケモンに襲われていたのだ。

イーブイ「あっ、ピカチュウ…! た、助けて……!!」

ピカチュウ「お、おい……お前は誰だっ!?」

ブニャット「ケケケ。アタイはATZのメンバー。ノーマルタイプを冠する“無司”ブニャット様よ! 我が同胞が襲われたと聞いてなぁ。お礼参りに来てやったという訳さっ!!」

ピカチュウ「なんだと……? 言いがかりは大概にしろよ、俺たちが襲われた立場なんだぞっ!!」

ブニャット「そもそもお前、女湯に入ることになんの躊躇もなかったのか!? このド変態めっ!!」

ピカチュウ「そもそもポケモンは服を着ないだろっ!!」

ブニャット「じゃあダゲキとかお着替えピカチュウは一体何なんだっていうのさ!!」

イーブイ「あの、話を脱線させないで……」

ブニャット「とにかく覚悟するんだな! このノーマルタイプを司るブニャット様が……貴様を冥界へと送ってやるよっ!!」

ピカチュウ(くそっ、なんだってこんなことにぃっ……)


かくして、ピカチュウとブニャットの闘いが、少々締まらない形ではあるが幕を開いたのだ。
 ▼ 32 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/22 00:09:14 ID:u9ZdYRK. [9/24] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ピカチュウ「え、えっと……そうだ、ピカチュウと言えば……“10万ボルト”ォッ!!」

ブニャット「ほぅ……」

しかし、ピカチュウの攻撃は、イーブイの方へと向かってしまった。

イーブイ「き、きゃんっ!!」ビリビリッ

ピカチュウ「あ……ごめんっ、イーブイ!?」

ブニャット「ハーハハハッ! アンタ、戦いはど素人のようだ。そんなんでこのアタシを倒せるとでも思ったのかい? 
この……ド下等がぁっ!!」

ピカチュウ「な、なんだとぉっ!?」

イーブイ「い、いけないっ、ピカチュウ。それは敵の“ちょうはつ”…罠よっ! 素直に受け止めては駄目だっ!!」

ブニャット「そうさっ、アンタはこの高貴なるアタシには決して敵わないのさ! 例えアンタが何十匹いたとしてもねぇっ!!」

ピカチュウ「テメェッ、その言葉そっくり返してやる! さっきから無性に力も湧いてくるしなぁっ!!」

そして、ピカチュウはブニャットに攻撃を仕掛けるのだが……。

ピカチュウ「グ、グへェッ!?」ドガッ

ブニャットに攻撃は届かず、逆に自滅する破目となってしまう。

イーブイ「だから、それがアイツの狙い……“いばる”なのよぉっ!!」

ピカチュウ「グ……グウゥ……そうだったのか……。どおりで……頭が混乱してる訳だ……」
 ▼ 33 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/22 00:09:49 ID:u9ZdYRK. [10/24] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ブニャット「さて、そろそろ止めを刺すとするかねぇ……」

ピカチュウ「…! ま、待て……」

ブニャット「坊や、冥界への土産に覚えておくんだね。戦いに、待ったもクソもないんだよ……」


「「いや、待ってもらおうか、アンタ」」


ブニャット「!!?」


… ド ガ ッ ! !


ブニャット「グハラァッ……」

次の瞬間、素早い拳がブニャットに炸裂したのである。

イーブイ「え、な、なんなの?」

そしてピカチュウたちの前に、とあるポケモンが現れた。

ゴーリキー「やれやれ。悲鳴の元に駆けつけたら……。これはちと、厄介なことになってしまったかな」

ブニャット「き、貴様は……“闘司”カイリキー! よもや、我らATZを裏切るのかぁっ!?」

ピカチュウ「アンタ……」

イーブイ「え、こ……この人も敵なのおっ!? も……もうやだぁっ!!」
 ▼ 34 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/22 09:22:14 ID:u9ZdYRK. [11/24] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ゴーリキー「いや、心配するな譲ちゃん。俺は確かにATZだが、何となく暇で入っただけだし……それにもう、脱退を余儀なくされるだろう。コイツをやっつけてしまうことになるからな」

ブニャット「自惚れるなよ、闘司っ! 裏切り者は……排除するのみだっ!!」ガキガキィッ

イーブイ(……“みだれひっかき”っ!!)

だが。


……ワッシャ。


ブニャット「……!!」

イーブイ「す、凄い! アイツの攻撃を……素手で受け止めたっ!!」

ゴーリキー「いや、早まったと後悔してる。だって痛いもん……まぁ、これでお前に攻撃ができるがね」

ブニャット「あっ……あぁ……!!」



「「……リキリキリキリキリキリキィッ!!」」ドカドカ



彼は怒涛のパンチラッシュを、ブニャットに見舞ったのだ。
 ▼ 35 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/22 09:23:05 ID:u9ZdYRK. [12/24] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ブニャット「うげぇ〜っ!!」バッゴオ~ン

彼女の身体は宙に舞い壁に激突し、そのまま、気絶してしまったようだ。

イーブイ「あ、ありがとう……ゴーリキーさん」

ゴーリキー「礼には及ばない。それより、これからが大変だぞ。コイツをぶっ倒したことにより……これからATZは本気で俺たちを抹殺しに掛かるだろう」

ピカチュウ「おっ……おい! 俺『たち』って、もしかして、俺も入っているんじゃないだろうなぁっ!! な、何てことしてくれたんだぁっ、お前ッ!?」

ゴーリキー「助けてやっといてその言い草も酷いな。だから罪滅ぼしとして俺もお前たちと行動する。戦力が増えて困ることもないだろう?」

ピカチュウ「あ、あのさぁ……」


──その時。


オクタン「ちょっといいかしらぁん、各々がたぁん」

ピカチュウ「あ、オクタン……なんでここに?」

オクタン「ひとまず休業ってところでねぇん、ここで骨休み……私骨ないんだけどぉん……オホホホホホホホォン!!」

ピカチュウ「……」

オクタン「それで、皆さぁん、旅をするっていうのならぁん……『オルゴール』って、ご存知かしらぁぁんぅ?」

イーブイ「……オルゴール?」
 ▼ 36 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/22 09:24:29 ID:u9ZdYRK. [13/24] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ゴーリキー「ぁーぁ……ああ、知っている。最近なぜATZがここまで勢力を伸ばしているのか、お前たちは不思議に思わないのか?」

イーブイ「え、だから資源を独占しようとしているだけじゃないの?」

ゴーリキー「いや、奴らの目的……それを俺は知っている。そこのご婦人もご存知のようだが」

オクタン「ええ、ATZの真の目的、それは……元の世界へと、帰還することよぉぉぉんぅぅぅぅ」


ピカチュウ&イーブイ「!!?」


ーーー

ピカチュウ「どうして、そんなことを知ってるんだ?」

オクタン「その人は元ATZだからともかくとして、私が知っている訳は、まぁ……趣味が高じて、とある探偵に調査してもらったからだけどぉん……」

イーブイ「ガバガバなんだねATZ」

ゴーリキー「……ただ逃げるだけで、そんなつもりはなかったんだけどなぁ。言われたら仕方ない。『オルゴール』について、俺の知っていることを、お前たちに話すよ」

………
……
 ▼ 37 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/22 09:25:52 ID:u9ZdYRK. [14/24] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ATZはとあるダンジョンにて、古びた石碑を発見した。そこに示されていた文は次の通りだ。


《この世界に眠る5つのオルゴールを集めし者よ、暗黒の地にこれを捧げるべき。
さすれば、閉ざされし世界は再び開かれん》


ピカチュウ「なんかありきたりだなぁ〜……。いかにも『これ集めたら次進めますよ』っていうRPGのお約束みたいな」

ゴーリキー「あまり気にするな。それより、次のATZがどこから襲ってくるかわからない。それも気にしなければ、な」

イーブイ「なんか、大変な旅になりそうだね……。それ以外に、クリスタルの手がかりもなさそうだし」

ピカチュウ「まぁでも、元の世界には……帰りたいしなぁ、ゴーリキーに乗っかるしかない」

ゴーリキー「……とりあえず、今日は寝よう。さすがに連続で襲って来ることはないと願いたい」
 ▼ 38 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/22 11:29:27 ID:mZTLZoW2 [1/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
ゴーリキー「……“腹が減っては何とやら”と言うしな。腹ごしらえをしてから、旅に出掛けるとするか」

------------------------

〜翌日 ハリテヤマのちゃんこ屋〜

イーブイ「えぇっ!? ハリテヤマさん、まだ帰って来てないんですかぁっ!?」

オクタンは、浮かない顔をしていた。

オクタン「えぇ、近くの森に行ったっきり、まだ戻って来ないのぉん。あそこもダンジョン化しているしねぇん。ホント心配。危険だけど、私も向かおうかしらぁぁん」

イーブイ「なにか、あったのかなぁ……」


ガチャ。


フタチマル「こんにちはー、おばさん。今日はねぇ、凄いポケモンを連れてきたんだ!!」

ピカチュウ「唐突だな、おい」

オクタン「凄いポケモンぅん?」
 ▼ 39 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/22 12:05:28 ID:mZTLZoW2 [2/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
ドーブル「どうもです」

イーブイ「ん、このポケモンは……」

フタチマル「この人はドーブル。イラストレーターのドーブルだよ! 最近結構絵を描いててさ、ほら、僕の似顔絵も描いてもらったんだー!!」

ドーブル「大体は生活費のためですが」

ピカチュウ「なんか、掴みどころのない野郎だな」

ドーブル「私は女です」

------------------------

イーブイ「じゃあおばさん、私たちもその森へと行きます。ハリテヤマさんが心配ですからね」

オクタン「そうかいぃん? 助かるよ。よろしく頼むねぇ」

ゴーリキー「おいおい、今から旅立つってのに勝手に……まぁ、身体をほぐすには良いかもしれんな」

ドーブル(……彼らが行こうとしているのは、ネーミドリのダンジョン……大丈夫なのかしら)

出ていく三匹の姿を、ドーブルはどこか心配そうに見送っていた。
 ▼ 40 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/22 12:10:01 ID:mZTLZoW2 [3/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
〜ネーリドミの森〜

ゴーリキー「結局、なにも食べずに来ちゃったな」

ピカチュウ「あぁ。腹が減った……」


──しばらくして……。


イーブイ「ん? あ、あれっ、ハリテヤマさんじゃないっ?」

どうやらイーブイが、ハリテヤマを見つけたようだ。

ハリテヤマ「ん、んん……お、お前は……イーブイか……」

イーブイ「だ、大丈夫、ハリテヤマさん? しっかりして!!」

ハリテヤマは木片に足を挟まれてしまい、見動きが取れなかったのだ。

ハリテヤマ「いてて、俺としたことが……こんなドジを踏んでしまうとはな。周りのきのみで食いつないではいたが……とにかく助かった、ありがとう」

ピカチュウ「自然の恵みに感謝しなきゃな、おっさん」


ザッ……。


ゴーリキー「ん、なんだ……?」
 ▼ 41 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/22 17:39:30 ID:8sR2bjq. [1/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
シャンデラ「……」ザッ

一同「!」

ピカチュウたちの元へ、物陰より一匹のポケモンが現れた。

ピカチュウ「なっ、もしやATZっ!?」

シャンデラ「フフフ、その通り。私はゴーストを司る、“霊司”シャンデラよ。さて、弱りきったあなたたちは私に対抗する力など残ってはいない。そこで、私がこの森に火を放てば……あなたたちは、どうなると思う?」

イーブイ「え、ま、まさか……!!」ギュルル~

イーブイ「あ」

ゴーリキー「なにをぉ……腹が減っていようとも、女一匹に負ける俺ではないわっ! リキィッ!!」ドゴドゴ

ゴーリキーはシャンデラに対し、拳のラッシュを喰らわさんとするが……。


──スカッ。


ゴーリキー「!」

シャンデラ「空腹で思考能力も鈍っているようね。私はゴーストタイプ、あなたの格闘タイプの攻撃を無効化する!!」

ピカチュウ「……だったら、これでどうだっ!!」バババ


ピカチュウは、お得意の“10万ボルト”を放つのだが……。
 ▼ 42 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/22 17:41:15 ID:8sR2bjq. [2/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
シャンデラ「フン……」サッ

しかしシャンデラは、攻撃を容易く避ける。

シャンデラ「そんな弱りきっていて鈍っちい攻撃など、恐るるに足りない。容易に避けれる。さあ、喰らいなさい……シャドーボールッ!!」ビュウゥ

ピカチュウ「し、しまっ…!」


「危ないっ!!」ガシィッ


ピカチュウ「……!?」

突如、ピカチュウたちの前にとあるポケモンが立ち塞がる。

そのポケモンは、ピカチュウを掴み放り投げ、シャドーボールをまともに喰らってしまった。

ピカチュウ「イテテ……」

しかし、そのポケモンには……ダメージはない。

シャンデラ「お、お前は……?」


ドーブル「ノーマルタイプにゴーストタイプの攻撃は無効。もう奴を倒す算段は付きました。後は……私に任せて下さい!!」


イーブイ「ド、ドーブル!!?」
 ▼ 43 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/22 17:41:47 ID:8sR2bjq. [3/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
ドーブル「食べるものも食べずに出ていった皆さんのことが心配になり、私も後を追ってきたと言う訳です。そして……私もATZには、少なからず因縁がありますから」

シャンデラ「私も甘く見られたものね。貴方の見るからして貧弱極まりないその身体……肉弾戦はあまり得意ではなさそうだけれども?」

ピカチュウ「そ、そうだ! お前になにができるって言うんだっ!!」

ドーブル「だから口が悪いですね、あなた。確かに私は殴るだの蹴るだのそういった粗暴な戦闘は得意とはしませんが……。だったら、それはそれでまた相応の闘い方があるというものです。」

シャンデラ「粗暴で悪うございました。まぁいい……これでも喰らいなさぃっ!!」ボオォ

ドーブル「……危ない」ヒョイ

ドーブルはシャンデラの攻撃を避けつつ、間合いを取っていくのだが、それを、シャンデラはじわりじわりと追い詰めていく。

ピカチュウ「や、やっぱり駄目じゃないかっ、アイツ! 逃げることが策とでも言うのかぁっ!?」

ハリテヤマ「いや、アイツ……。逃げているというか、ATZをどこかに誘導しているような気がするぞ」

ピカチュウ「え?」

ゴーリキー(……言われてみれば、そうだ。なにか考えがあるというのか? アイツは)
 ▼ 44 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/22 21:08:20 ID:u9ZdYRK. [15/24] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ハリテヤマ「見ろ、アイツとATZが……どんどん森の離れへと遠下がっていくぞ」

------------------------

シャンデラ「フン。あいつらから引き離そうとし、わざわざこんな所まで私を誘き寄せたのかしら? まぁ良いわ。この先は行き止まり。つまり、貴女にもう逃げ場は無いと思いなさい」

ドーブル「……逃げ場がない? フフ…本当に追い詰められたのは、果たしてどちらなのか。それがわからぬようで、良くぞまぁ、“霊司”なぞ大層な異名を名乗っていたものです」

シャンデラ「なんだと? ……えぇぃ、なんだかわからんが喰らいなさいっ! かえん……ほうしゃあぁっ!!」ボオォ

ドーブル「……」

しかしドーブルは、その攻撃を避けようともしなかった。

シャンデラ「フッ……ようやく観念しおったかっ!!」

そして、かえんほうしゃがドーブルの身体にヒットした…。


ハズが。


ボシュウッ……。


シャンデラ「な……なんだぁっ!?」

ドーブルの身体に炎が届いたその刹那。
たちまちの内に、炎が消し飛んでしまったのだ。
 ▼ 45 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/22 21:08:58 ID:u9ZdYRK. [16/24] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
シャンデラ「ど、どう言うことだっ……!? ……! き、貴様、その……身に纏っているものはなんだっ!?」

ドーブル「……」スッ

シャンデラ「ふ、筆……!?」

ドーブルの画才は凄まじいものがある。
そう……描いたものを“具現化”する程度には。

炎が身に届く瞬間、彼女は“水”を描きそれを身に纏うことで、攻撃を無効化したのだ。


そして、彼女の作戦はここからである。


ドーブル「貴方の敗因は、周りを注意深く観察しなかったことに直結します。さあ、良く見てみなさい……」

シャンデラ「な……なんだこれは!?」

木の葉の露。それが次第に一箇所に集まっていく。
その場所とは……ドーブルの居る場所だ。

そう、露も彼女が事前に描いたものである。

ドーブル「貴様のような雑魚には端から用などありません。私の目指すのは、“アイツ”だけです」


シャンデラ「う、うおぉぉぉぉ〜っ!!?」ドドドドド


──怒涛の露の大群が、シャンデラに向かった。
 ▼ 46 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/22 22:50:53 ID:u9ZdYRK. [17/24] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
シャンデラ「……」ピクピク


“霊司”シャンデラ 〜撃破〜


------------------------

ドーブル「と、いう訳で倒してきました」

ピカチュウ「……あぁ。馬鹿にして、その……済まなかったな」

ドーブル「ウフフ。素直になればいいんですよ、素直に」

ピカチュウ(……なんか、ムカつく)

イーブイ「ひとまず、ハリテヤマさんを運んでタウンに帰ろう。私たちも、おなか……空いてるしね」ギュルル~


こうして腹ペコの一同は、一度、アロガントタウンへと帰還するのであった。
 ▼ 47 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/22 22:51:26 ID:u9ZdYRK. [18/24] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
〜ブラックタワー〜

ウソッキー「なんだと、霊司がやられた? ムムム……よし、じゃあ次はアイツらを差し向けろ。しかし、なんだって上は俺を参謀に置くのだ。こんな雑魚キャラっぽい俺より他がいるだろう……」

超司「まだ出すキャラが固まっていないからではありませんか?」

ウソッキー「メタ発言はやめろ、超司」

超司「いえいえ、フフフ……」

ウソッキー「お前には出動は発令されていない。おとなしく業務に当たれよ」

超司「はいはい……」ササッ

超司は、自部屋へと戻ったようだ。

ウソッキー(超司。あいつに限らず、ATZの面々はなにを考えているのかイマイチ良くわからない。……が、アイツはどこか俺たちATZのことも客観的に傍観しているような……。そんな、薄気味悪い感じすら受けるぜ)
 ▼ 48 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/22 22:53:14 ID:u9ZdYRK. [19/24] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
〜アロガントタウン〜

ゴーリキー「じゃあ、今までの話をまとめよう」

イーブイ「うん、前に話してた五つのオルゴール。そして、この世界のエリアもちょうど五つ。ATZは元の世界へと帰還するために、虱潰しにオルゴールを探していたという訳ね」

ゴーリキー「あんな悪人共を、再び元の世界に解き放つ訳にはいかない。……言っておくが、俺は悪人じゃないぞ」

ピカチュウ「そして、俺たちはまずデザートサンで、『砂のオルゴール』を探し出そうということだ。ATZに見つけ出されるその前に全てのオルゴールを回収し、人間世界へと帰還する。しかし、そう上手く行くのか……?」

ゴーリキー「わからないが、もうATZは俺たちを殺しにかかっているんだ。旅先でもいつどこから襲って来るか……。だから一刻も早く、オルゴールを見つけ出すんだ」

ピカチュウ「まぁ、どっち道イッシュには帰りたかったから、通りかかった船だが、仕方ないよな。よし……じゃあ」

サーナイト「うん」

ゴーリキー「では……」



一同「「「「行くぞ!!!!」」」」バァァン



こうして彼らの果てしない旅が、正に今、始まろうとしていた。
 ▼ 49 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/22 22:54:47 ID:u9ZdYRK. [20/24] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
>>48サーナイト→ドーブルの間違いです

Word:【菱山】

この世界は、菱山(ダイヤード・マウンテン)と呼ばれる山脈により、五つのエリアに区切られている。

デザートサンへ行くためには、菱山のトンネル内を進まなければならないのだ。

------------------------

〜菱山付近の休憩所 北西部〜

ピカチュウ「ちょっと……高くないか、ここの飲み物っ!?」

ゴーリキー「なんだお前、知らないのか? こういう所だからこその値段なんだ。足元を見てやがるからな」

菱山のトンネル内も、巨大な不思議のダンジョンである。


毒司「ククク、呑気なものよのぉ。この毒司があいつらを始末してやるからに。頼むぞ、地司」


地司「……」


 ▼ 50 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/22 22:55:32 ID:u9ZdYRK. [21/24] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ピカチュウ「ところでさ、お前。お前の言ってた因縁ってのは、一体何なんだ?」

ドーブル「ああ、まだ話してなかったですね。私と因縁があるのは“炎司”。“大炎の魔狐”の異名を持つ老獪な女です」

ピカチュウ「……どんな因縁があったんだ?」

ドーブル「……それはまだ言わないでおきましょう。とにかく私はソイツを討伐すべく、此度の旅へ参加致すことにしたのです」

ピカチュウ「……そうかい」

ゴーリキー「ま、何度も言ってるが、俺はあんまり帰りたくもなかったが。仕方ねぇしな」

イーブイ「わ、私はあんまり皆と違って力はないけど……足手まといにならないように、頑張るよ!!」キリッ

ピカチュウ(……)

イーブイ「ん。ピカチュウ、どうしたの?」
 ▼ 51 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/22 22:56:15 ID:u9ZdYRK. [22/24] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
〜数年前 イッシュ地方〜

俺「ポカブ、どうしたんだよ……! なんで……!!」

???「……フン、弱いから……そこのポケモンは苦しんでるんだ。今すぐポケモンセンターに運べば……あるいは助かるかもしれないな」

俺(くそっ……どうして……こんなことに……)


──俺は一人のポケモントレーナーに、敗北を期したのだ。


???「自分に負けはない……と思っていたのだろうが。現実はゲームのように、快進撃などありえぬのだ。覚えておけ、小僧……」

俺「ああ、覚えておくよっ! 絶対にお前のことなんて、忘れるもんかっ!!」

ポカブ『……』ゼェゼェ

………
……
 ▼ 52 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/22 22:56:46 ID:u9ZdYRK. [23/24] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ピカチュウ「いや……」

ピカチュウ(……アイツも、この世界に来ているのか? だとしたら……正直、怖い)

ゴーリキー「どうしたんだ? ピカチュウ」

ピカチュウ「あのさ、ゴーリキー。ATZ内で一番強いポケモンって……誰かいるか?」

ピカチュウ(あの強さなら、ATZに。もしかしたら、ボス格にも?)

ゴーリキー「……。俺は、もしかしたら“創蛙”。一番強いと言われている“水司”が、そうなのだろうと睨んでいる」

イーブイ「……そうあ?」

------------------------

Word:【創蛙】

ポケモンとなった住民の中でも、名実共に最強と謳われる一匹。しかし実際には彼のポケモン名も不明であり、創蛙も誰かが知れずに呼び始めた呼称でしかない。

実際に活動していたところを誰も見たことはなく、もはや出来の良い創作話とされている。
 ▼ 53 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/22 22:57:18 ID:u9ZdYRK. [24/24] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ピカチュウ「そんなポケモンが……」

ゴーリキー「まぁ、本当に奴がそうなのかはわからないからな。ただ水司がカエルのポケモンってだけだし」

イーブイ(水タイプのカエルポケモンっていったら……。いや、いっぱいいるしなぁ)

ドーブル「では、菱山トンネルを進みましょう。敵さんが出てこなければいいのですが……まぁ、来るでしょうね」

ピカチュウ「あれから結構特訓したからな。前のような体らくにはならないよ」

イーブイ「うん、頼りにしてるからねっ!!」

ピカチュウ(調子、いいなぁ)

ピカチュウ「あぁ、そうだ。チーム名なんだけど……。前ドーブルが言ってた、『E-4』にすることにしたよ」

ドーブル「えぇ、地(“E”arth)に降り立った四人のポケモンたち。ネーミング、安易でしょうか……?」

イーブイ「いや、うん、E-4! すごくいい名前だよ!! 覚えやすいし、ゴロがいいし!!」

ピカチュウ「……まぁ、イーブイがこの通り気に入ってるから、それも理由なんだけど……」

ゴーリキー「せっかく探検隊として赴くのに、名前がないとしっくり来ないしな。ワハハッ! ……じゃあ、皆さん方」

ピカチュウ「……行こうっ!!」


こうして一同は、菱山トンネルを突き進むのだ。
 ▼ 54 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/23 19:40:35 ID:KVlK4ohc [1/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
〜菱山トンネル 内部〜

イーブイ「私も実際に来るのは初めてなの。なにせ、皆と違って戦いも強くなかったしね……」

ドーブル「……やたら薄暗いですが……いえ、イーブイ。別に弱くたって、大丈夫なんですよ。それ相応の対応を、見いだせれば」パッ

ドーブルは発光剤を具現化し、身体に塗りたくった。

ピカチュウ「おおっ、これなら明るいし、先に進める!!」


ドーブル「ん……?」


ピカチュウ「おい、どうしたんだ?」

ドーブル「いえ、なにかチクッと痛みが……。虫でもなにかいたのでしょうか?」

イーブイ「私も。マッシブーンとかかな……?」

ピカチュウ「だったら死ぬぞそれ」

ゴーリキー「え、俺は特に気付かなかったが」

ピカチュウ「そうだよな……俺も、何にも感じなかったぞ」

毒司(フン。一匹鈍感な筋肉バカがいたようだな。そしてアイツは電気タイプ。“せいでんき”の特性があるから、触れるこの作戦は通じない。おい、地司、お前は先に行ってて例の事、やっててくれ)

地司(あぁ……)ザクッ

地司と呼ばれたポケモンは、地面へと潜り進んでいった。
 ▼ 55 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/23 19:41:57 ID:KVlK4ohc [2/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
──やがて

ピカチュウ「お、光が見える。出口だな。……しかし」


ヒュウゥ…。


砂、砂、砂。
一面に広がる砂景色。吹きすざむ砂嵐。

ゴーリキー「うおっ、砂嵐が強いな。ここを抜けると、町が見えるのか?」

ドーブル「いえ、まだです。ほら、目の前に海原が広がっているでしょう? この海を超えてこそ、デザートサンへと辿り着くのです」

ピカチュウ「かあぁ〜、まだ先に進むってのかぁ。でも、どうすんだ……船もないのに」

イーブイ「……なんか私。ちょっと、気分が悪くなってきたみたい……」

ピカチュウ「ん、大丈夫か?」

……しかし、他の面前も。

ゴーリキー「……ハァ、ハァ……」

ドーブル「……うぅぅ」

ピカチュウ「……おい、どうしたっていうんだ、皆! 俺は……なんともないってのにぃっ!!」
 ▼ 56 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/23 19:42:49 ID:KVlK4ohc [3/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
──ボコッ。


ピカチュウ「!?」

そしてピカチュウの前に、とある二匹のポケモンが現れる。

ピカチュウ「つっ……なんだぁ、お前らっ!!」

……スコルピと、サンドパンだ。

スコルピ「砂漠の蠍には気をつけな。俺は“毒司”スコルピ。光に出で刺し、闇に潜み好機を待つのよ」

サンドパン「……」

スコルピ「ああ、そいつは“地司”サンドパン。おっと、地司と呼ばれるのをコイツは嫌がってたな」

サンドパン「……俺は、人様に呼ばれることは嫌いなんだ。それが肩書であれ、なんであれでな……」

ピカチュウ「!」

ピカチュウ(……もしやとは、思うが)


ーーー数年前ーーー


俺『お前っ、バトルするんならよぉ、名前ぐらい聞かせろやっ!!』

???『……俺の名前など、これから負ける奴に名乗ってなんとなる。それに俺は、人様に名前を呼ばれることは嫌いなんだ……』
 ▼ 57 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/23 19:43:22 ID:KVlK4ohc [4/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
あの時負けたトレーナーに、言われたことと。
ポカブが死ぬ要因になった……トレーナーに──


ドーブル「……ピカチュウ」

その時、声も絶え絶えに、ドーブルが語りかける。

ドーブル「免疫を具現化し身体に取り込み難を逃れたのですが、満身創痍です。それより、こいつらから逃げましょう……1vs2は分が悪い……」

ピカチュウ「えっ、ど、どうやって……?」

ドーブル「こうするのです……えいっ!!」ボワン


ドーブルは、自身の背中に巨大な翼を具現化させた。


ピカチュウ「なぁ、おい……まさか……?」

ドーブル「そのまさかです。しっかり捕まっていて下さい」

ピカチュウ「だから、心の準備ってもんが……!」

ドーブル「知っちゃこっちゃありません」バサッ


ピカチュウ「「う、うわあぁ〜っ!!?」」


彼女はピカチュウたちを掴み、空中へと舞ったのだ。さ
 ▼ 58 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/23 19:43:59 ID:KVlK4ohc [5/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ドーブル「では、このままデザートサンへと向かいますっ!!」ビュウゥッ

ドーブルは、大きく翼を羽ばたかせ、更に加速した。

スコルピ「くそっ、あいつら、ここまで追い詰めたんだ。……逃がしてたまるかっ!!」

サンドパン「……待て」

スコルピ「地司!?」

サンドパン「現状奴等を追う術を我々は持たぬ。こうなったら、我々もデザートサンまで追うしかあるまいよ」

スコルピ「……地司、今日は珍しく良く喋るなぁ」

サンドパン「……」

サンドパン(あの、ピカチュウ……もしかして)


──ボコッ。


サンドパンたちもまた、デザートサンへと向かうのだ。
 ▼ 59 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/23 21:17:01 ID:KVlK4ohc [6/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
Word:【世界構成】


中央の島、フレアグリンには『菱山(ダイヤード・マウンテン)』が連なる。そして海を大きく四つに分断するのは『渦の十字(クロス・メイルシュトローム)』と呼ばれる渦潮地帯であり、これらの存在のため、五つの大陸は自由に交易ができない状態である。

フレアグリンの菱山からはみ出したエリア(角端地)に広がる海を渡り、砂漠、寒冷地、火山帯、荒地と、各々の大陸へと渡るのだ。


しかし現状、菱山から荒地のアンブラックへと渡ることは困難を極める。ATZにより封鎖されており、ATZ以外のポケモンは赴くことができないからだ。
 ▼ 60 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/23 21:17:46 ID:KVlK4ohc [7/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
〜デザートサン サンドバァの町〜


……ドサッ!!


ピカチュウ「…痛ってぇ! おい、お前、もう少し優しくおろせないのか!?」

ドーブル「そんなことを言っても……いられません。……グフッ!!」

ピカチュウ「お、おい、大丈夫か?」

ドーブル「私の具現化能力にも、限界があるのです……」

イーブイ(……)

ゴーリキー「ハァ、ハァ……」

ピカチュウ「大丈夫か、お前ら……。と、とりあえず、最寄りの診療所かなにかに、行こうか……」


ピカチュウたちは付近の診療所で治療を受け、一夜を過ごすことにした。

また聞き込みによると、この辺りにはとある遺跡があり、そこには誰一人立ち寄ったことはないのだという。


もしかしたらその場所に、『砂のオルゴール』が存在するのかもしれない。
 ▼ 61 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/23 22:37:15 ID:KVlK4ohc [8/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
〜翌日〜

ドーブル「もう私は大丈夫ですが、イーブイは衰弱しています。彼女は安静にさせて置いた方が良いと思います」

ピカチュウ「そうだな。その方がいい」

ゴーリキー「ちょっと、俺便所に行ってくるよ。少し待っててくれ」

------------------------

ゴーリキー「ふぅ……」

用を済ませたゴーリキーは、水を流そうとするのだが……。

ゴーリキー「あれ、流れねぇ。よく見たら、紙もないし……どうすればいいんだ」

これでは、外に出ることができない。


「ククク……」


その時、どこからともなく、ポケモンの声が響いた。

ゴーリキー「なっ、もしや……新手のATZかっ!? くそっ、こんな時に……」


「『こんな時』を狙ったのだ。裏切り者の格司よ、貴様は強い。だからこそ、一人になる機会を伺っていたのだよ」


ゴーリキー「まさか、お前は……鋼司!!」
 ▼ 62 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/23 22:37:50 ID:KVlK4ohc [9/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ヒードラン「ごぼぼっ、ごぼっ! 久しぶりだな、我は鋼を司る……ヒードランだっ!! 貴様の命、貰い受けるっ!!!」カサカサ

ゴーリキー「尻も拭かせてくれないか……。だが、トイレにお前か。お似合いじゃねぇか」

ヒードラン「ごぼぼっ、ごぼっ! 貴様の減らず口もここまでだっ!!」

ゴーリキー「……なんだと?」

ゴーリキーが、ふと疑問に感じたその刹那。

ヒードラン「さあ我の子どもたちよ……あいつを倒すのだっ!!」

……ポポポポッ!

ゴーリキー「うぉっ、なんだこれはっ!?」

ヒードランは、口から白い球体の“何か”を連射した。

ゴーリキー「ふん、その程度の攻撃が俺に通じるとでも……」


パ カ ッ 。


ゴーリキー「なっ……!?」


それは……卵であったのだ。
 ▼ 63 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/23 22:39:14 ID:KVlK4ohc [10/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
子ども1「こぽぽっ!」パカッ

子ども2「こぽぽぽっ!!」パカッ

子ども3「……こぽぽぽぉっ!!!」パカッ

ヒードラン「さあ、やれいっ!」

ゴーリキー「くっ、これはまずいぞ……。これでは、仲間を呼びにいけねぇっ!!」


ゴーリキー「「……だったら、俺が倒すっ!!」」ビシィッ


密室内での闘いが、幕を開けた。


ゴーリキー「リキィッ!」バコン

子ども「ごぼおぉっ!?」グチャア

ヒードラン「ごぼほぼっ、愚か者めぇっ! いくらそいつらを潰そうとも、親である我を倒さぬ限り……いくらでも増え続けるっ!!」ポポポポ

ゴーリキー「なるほど、親不孝ならず子不幸者だ」

ゴーリキー(『1匹居たら30匹いると思え』だったか? なんとやらは。くそっ、厄介だなおい……)
 ▼ 64 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/24 11:58:41 ID:K77Odi2c NGネーム登録 NGID登録 報告
ゴーリキー「しかし、そうも言ってられん……リキリキィッ!!」ドガドガ

プチッ、グチャアッ。

ヒードラン「ドラドラドラッ!」ポポポポ

子ども「こぽぽぽっ!!」パカッ

ゴーリキー(きりがねぇ……俺の体力が、その前に──)


ゴーリキー「リキィッ!」バゴッ


ヒードラン「ふははっ、どうしたぁっ!? 便器に攻撃に喰らわすとは……狙いが外れてるぞぉっ!!」

ゴーリキー(……)

ヒードランの言うとおり、便器に、ヒビが走る。

ヒードラン「さて、ここからは直々に我が止めを刺してやろう……光栄に思うがいい。マグマ…ストオォ〜……ムゥッ!!」ボオッ

ゴーリキー「!!」
 ▼ 65 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/25 00:32:24 ID:/4noB3GQ [1/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ゴーリキー「ア……アチいっ!!」

ヒードランが放ったストームのため、室内に火が回る。

ヒードラン「どうだっ!? 特性がもらいびの我は、この炎の中でも容易に耐えることができるっ!! これで……後はお前が焼死体となるのを待つだけだぁっ!!!」

ゴーリキー「……」

ヒードラン「な、なんだ……? お前……なぜそう平然としていられるのだっ!?」

ゴーリキー「……水をせき止めて置くぐらい、しなきゃなぁ。やるのなら徹底的にやるべきだった。完全にトイレ内の水を抜いておくぐらいになっ!!」

ヒードラン「な、なにを……」

ゴーリキー「さてと……リキリキィッ!!」バコバゴォン

ヒードラン「……!?」


なんとゴーリキーは、便器に向かって乱打を始めたのだ。


便器「イタイ」

次第に便器が崩れていき、そして……。

ヒードラン「そ、そうか、わかったぞ! お前の……その行動の真意がっ!!」

ゴーリキー「わかったところでもう遅いっ!!」プシュー

そしてトイレ内の全方位に、水が噴き出した。
 ▼ 66 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/25 00:33:17 ID:/4noB3GQ [2/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
シュウウウ…。


ヒードラン「あぁ……炎が消え去っていく……。便器を壊し、中に溜まっていた水で炎を消化するとは……お、己ぇ」カポッ

ヒードラン(ん……この感触、温もり………もしや!?)

ゴーリキーは、彼の顔に脱ぎたてホヤホヤのパンツを被せたのだ。

ゴーリキー「四足歩行というのは不便なものだ。なにせ、被させられたパンツでさえ自分で取ることもできないからな。これでお前の視界は塞がった」

ヒードラン「あ、あ……!!」

ゴーリキー「さて、俺はなぶり殺すのは性に合わねぇ。素早く片付けてやるから安心しな。命を粗末にした者の末路よ」

ヒードラン「ひっ……ゆ、許してくださぁ〜ぃっ!!」


ゴーリキー「リキ……リキリキリキリキィッ!!」バゴバゴ


ヒードラン「げぐわぁ〜っ!!?」
 ▼ 67 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/25 00:33:52 ID:/4noB3GQ [3/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ド ガ ァ ー … ン 。


子ども共々、ヒードランの身体は吹き飛んでしまった。


ヒードラン「……」ピクピク


“鋼司”ヒードラン撃破


------------------------

ドーブル「遅かったですね、ゴーリキー……きゃあ! どうして裸なんですかぁっ!?」

ゴーリキー「あ、あぁ……すまねぇが……。ちょっと、紙を貸してくれないかな……」
 ▼ 68 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/25 21:36:30 ID:4ZbtktuM [1/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
〜診療所内個室〜

ピカチュウ「じゃあな、イーブイ。俺たちはもう行くよ」

イーブイ「うん、わかった」

ピカチュウ「……」

イーブイ「……元気ないね、ピカチュウ。あのサンドパンのことを気にしてるの?」

ピカチュウ「……気づいてたのか、イーブイ。あのサンドパンと俺には、ちょいとばかり、因縁があるかもしれないんだ。再び戦うことになるかもと、少し……怖いんだ」

イーブイ「……ピカチュウ」

ピカチュウ「……そうだ、イーブイ。お前の本当の名前はなんて言うんだ? ……友だちとして、知っておきたくてな」

イーブイ「……私の、名前?」

ピカチュウ「ああ、お前の名前だ。人間の時の、本当のな」
 ▼ 69 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/25 21:37:07 ID:4ZbtktuM [2/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
イーブイ「……私の名前は、『依夢(イブ)』。変わってるでしょ?」

ピカチュウ「イブ……いや、可愛い名前だと思うぜ。凄くお前らしい感じがする。人間の時のお前の顔を見てみたかったぜ。きっと可愛いんだろうな」

イーブイ「ありがとう、ピカチュウ。このちょっと変わった名前で、昔ちょっとからかわれたこともあったんだけど……そうよね、もう昔の話よね」

ピカチュウ(あれ、イブって名前……どこかで、聞いたような……?)

イーブイ「あ、呼ぶときはこれからもイーブイでいいよ。本当の名前を呼ばれるのって……なんか恥ずかしいし」

ピカチュウ「あ、ああ、わかった」

ゴーリキー「お〜い、ピカチュウ、もう行くぞ〜。尻も拭けたしな。準備はバッチシだ」

ピカチュウ「じゃあな、イーブイ。俺たちはこれからオルゴールを探しに行って来る。お前はしっかりと休息を取ってくれよ」

イーブイ「うん……ピカチュウ。じゃあね」


バタン……。


こうしてピカチュウたちは、病室を後にする。
 ▼ 70 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/25 21:38:25 ID:4ZbtktuM [3/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
イーブイ「……」


イーブイ(このこと……話さなくてよかったのかな……)


彼女は、不可解に感じていた。
毒を喰らった他のポケモンたちと比べ、思った以上に身体に毒が回っていなかったのである。

イーブイ(んっ……あ、頭が……)

時折彼女の脳裏に映る光景がある。
それは、彼女自身の古い記憶なのであろうか。

ーーー


???「……イブさん。どうやら“例の男”までがこの世界にやってきたようです。まったく……“あのお方”はズボラなことで。では、貴女は別の、『対抗勢力』の──」


------------------------


イーブイ「……!」
 ▼ 71 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/25 21:39:18 ID:4ZbtktuM [4/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
〜その頃 アロガントタウンでは〜

「た、大変です…ハリテヤマさん!」

ハリテヤマ「……どうした?」

「この町にあるポケモンがやって来て、暴れてるんです!!」

ハリテヤマ「一体、誰だ?」

「なんでも、そのポケモンは……『創蛙』と名乗っていて……」

ハリテヤマ「……あの、伝説の──」

フタチマル「フタァ……!」ドサッ

ハリテヤマ「……! フタチマル、お前まで……」

フタチマル「ハリテヤマさん、早く逃げて下さい! 奴はあなたの『アレ』を狙っているようです! 直に……ここにもやって来ますっ!!」

ハリテヤマ「!?」


… … ガ シ ャ 〜 ン ッ ! !


その時、ちゃんこ屋の扉が壊され、とある一匹のポケモンが入り込んで来たのだ。
 ▼ 72 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/25 21:40:05 ID:4ZbtktuM [5/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
???「……」

ハリテヤマ「食事時だったって言うのに……まさか、ここのちゃんこが目的じゃないよな? それなら、いくらでも振舞ってやるのに。お代さえ払ってくれたらな」

???「……“創蛙”の名を、知っているでござるな?」

ハリテヤマ「知っているさ。伝説の存在。だが、お前が……そうなのか?」

“創蛙”「そう、そして拙者はATZの一員“水司”でもある。この下らない世界から脱出を図るため、“創蛙”として……。お主のその、『草のオルゴール』を貰い受ける!!」

ハリテヤマ(……)

ハリテヤマ「ちょっと待ってよ……。俺、こないだまで怪我しててさ。そんな物騒なこと言うなよ……。いや、本当に、勘弁してくれ──」シュッ


──隙を、狙った。
 ▼ 73 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/25 21:40:53 ID:4ZbtktuM [6/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
……ガガッ。

ハリテヤマ「!」


──ドシュッ!!


ハリテヤマ(なんだ……早い! コイツ……俺の身体に水の塊をぶつけ、動きを封じ込めた……!!)

“創蛙”「貴様のオルゴールは……既に頂いた」

ハリテヤマ「!?」

“創蛙”「さて、止めでござる」シュッ

ハリテヤマ「っ……!」


ゲホッ……。


------------------------

フタチマル「ハ……ハリテヤマさあぁぁぁ〜んっ!?」

フタチマルが気づいた時、“創蛙”の姿は既になかった。

ラフレシア「お、おいっ、手当を急げ! ハリテヤマさんはまだ息があるっ!!」

フタチマル「フ……フタッ!!」
 ▼ 74 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/26 00:15:12 ID:Ao2pqAgU [1/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
──デザートサン

ゴーリキー「さて、遺跡を目指そうか」

ドーブル「あなた方には少なからず免疫ができていますが……。油断は禁物です」

ピカチュウ「あぁ、気をつけるよ……」

三匹は遺跡を目指し、砂漠を進んで行く。


ーーー


──ダイヤード・マウンテン

サザンドラ「……」


ーーーー


──ブラックタワー

超司「えぇ、今度はあの一味です。果たしてあのゴーレム相手にどれ程やれるのか……見極めてきましょう」
 ▼ 75 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/26 11:54:41 ID:Bqm59Qc6 NGネーム登録 NGID登録 報告
〜ルイナ・リバー(川のダンジョン)〜

ドーブル「…この先に、遺跡があります」

ピカチュウ「だったらさ。また翼なり船なり具現化して渡れば良いんじゃないのか?」

ドーブル「それは、駄目なのです」

ピカチュウ「え?」

ドーブル「この川は神聖なものとされていて、そういう行為は神に反逆するのと同じことなのだそうです」

ゴーリキー「へぇ」

ドーブル「そして、この川の集落の民が、洗礼を受け川を渡る許可を持った船を所有しているのです。ただ、あの長老……」

ピカチュウ「どうした?」

ドーブル「少し……と言うか、中々の頑固者なのだそうです。果たして、得体の知れない私たちなぞに船を貸してくれるかどうか……」

ピカチュウ「得体の知れないとは酷いな。元トレーナー、画家崩れ、バカマッチョで話はつくだろ?」

ドーブル「……色々と、不安ですね」
 ▼ 76 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/26 11:55:28 ID:Ao2pqAgU [2/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ドーブル「画家と言うより、以前私は漫画を書いていました。漫画家だったのです」

ゴーリキー「ほう、どんな漫画だ?」

ドーブル「時差が全くなかったり、適当に回転していたら時間が逆行したり、電荷を帯びた物体が通り過ぎた個所が半永久的に帯電していたりしていました」

ゴーリキー「それキ○肉マンやないか」

ピカチュウ「言葉の意味はわからんが、とにかく凄いストーリーだと言うことはわかる」

ドーブル「そうです。私には常識的なストーリーを作る才能がありませんでした。そんな時、私はある女性と知り合ったのです」

ピカチュウ「ある女性?」

ドーブル「それこそ、ATZ“炎司”……マフォクシーです」

ピカチュウ「……ATZが?」

ドーブル「彼女は天才でした。私が作画を、そして彼女が原作を務め、漫画を執筆することになったのです」

ゴーリキー「無敵のコンビだな、正に」

ドーブル「えぇ、まさにその通りで、私たちの漫画はデビュー作一発で、賞を貰うことができたのです。『ナナホシー』名義でしばらく漫画家として活動していました」

ゴーリキー「……あ、あんたがあの、ナナホシーだったのか!?」

ドーブル「はい、そうです」
 ▼ 77 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/26 11:56:14 ID:Ao2pqAgU [3/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ピカチュウ「俺もナナホシーの漫画は知っている。だが、とある時期を機会に……その名前はめっきり聞かなくなってしまった」

ドーブル「──はい、その通りです」

ピカチュウ「できればだが、教えてほしいな。お前とそのマフォクシーの間に、一体何が起きたんだ?」

ドーブル「……」

ピカチュウ「……そっか、今は言いたくないという訳か。だったらごめんな、聞かないよ」

ドーブル「すみません……。またいずれ、お話する機会があるかもしれません」

ゴーリキー「おう、その時が楽しみだ!」

------------------------


──ルイナの集落


ゴーリキー「ここが、そのルイナ族の集う集落か」

ドーブル「ええ、では長老に会いに行きましょう」

ピカチュウ「しかし……どんな奴なんだろうな?」
 ▼ 78 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/26 11:59:40 ID:Ao2pqAgU [4/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
〜長老のテント〜

ドーブル「失礼します、長老殿。私共は旅を続ける身なのですが、この先の『砂漠遺跡』へと渡りたいのです。此度はあなた方の神船、『シャイニング号』をお借りしたく参った次第でございます」

シェイミ(娘)「私は長老殿の一人娘でございます。父上、この方々に船をお貸しになられては?」

シェイミ(長老)「いや、駄目だ! 船は断じて誰にも貸すわけにはいかぬっ!!」

シェイミ(娘)「父上……?」

シェイミ(長老)「さあ、お引き取り願おう」

ドーブル「……分かりました」

ピカチュウ「お、おい、良いのか!? ここまで来といて」

ドーブル「……仕方がありません」

------------------------

ピカチュウ「あのさ、本当にあのまま帰って良かったのか……?」

ドーブル「ご心配には及びません」

ピカチュウ「え?」

ドーブル「あの長老には、盗撮機付監視蝿を付けておきました。結構容量を喰いましたね」

ゴーリキー「某ハンター漫画じゃないんだからさ。でも、どうしてそんなことを……?」

ドーブル「彼がなせそこまで船を貸すのを拒むのか。それを知るためです」
 ▼ 79 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/26 12:03:55 ID:Ao2pqAgU [5/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
------------------------

ドーブル「……わかりました。あの長老がああまで船を貸すのを拒む理由が」

ゴーリキー「……おおっ。……スマン。少し寝てた……で、何なんだ?」

ドーブル「この録音レコーダーの内容を、聞いてください」


──ジ〜……。


娘の声《そうだったのですか……》

長老の声《あの遺跡に行って帰って来た者は一匹もおらぬ! じゃから、あえて船を貸さぬのじゃ!!》

ピカチュウ「!」

ドーブル「そういう訳だったんです」

ゴーリキー「参ったな、これじゃ素直に貸してくれるかどうかわからねぇ」

ピカチュウ「ち、ちょっと待ってくれ……」

ドーブル「なんです、ピカチュウ?」

ピカチュウ「考えてみれば、俺はここまで深い考えもなく付いて来ただけだ。そんな危険な思いをすることもねぇ。俺は……降りる!」

ゴーリキー「!?」
 ▼ 80 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/26 12:05:35 ID:Ao2pqAgU [6/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ピカチュウ「……じゃあな」タタッ

ピカチュウは、彼らの元を去って行ってしまった──

ゴーリキー「お、おい待て……」

ドーブル「……行かせてあげましょう」

ゴーリキー「!?」

ドーブル「ここからの旅路、確かに危険なものになること請け合いです。ならば、着いて来れないものは置いていくのみです」

ゴーリキー「ピカチュウ……」

------------------------

翌日。ドーブルたちは、川の辺りで野宿を続けていた。


──その時。


『『キ、キャァ〜ッ!!』』


ドーブル「……い、今の悲鳴は……」

ゴーリー「……長老の娘の声だ!!」ダダッ

ドーブルたちは、声の元へと駆けつけて行った。
……慌てていたのか、彼女は筆も持たずに、だ。
 ▼ 81 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/26 17:33:33 ID:Ao2pqAgU [7/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
------------------------

ズキズキン「ぎゃはははっ! 長老、おとなしくその船を渡しなっ!!」

ペリッパー「ペリペリ〜、俺は“飛司”……ペリッパー! このまま飛んで目的地に着くも良いのだが、それでは骨が折れる。さぁっ、痛い目に合いたくないなら渡せっ!!」

シェイミ(長老)「じゃから、ワシはお主らの身を案じておるのじゃっ! 断じて渡すわけにはいかぬっ!!」

ペリッパー「頑固なジジィだ! だったら、力尽くで奪うのみよっ!!」

その時。場にゴーリキーとドーブルが到着した。

ドーブル「……待てっ!」ザッ

ペリッパー「あぁんっ!? そうか、貴様らか……俺たちATZの邪魔をする輩はっ!!」

ズキズキン「あれ、あのピカチュウはいないのか?」

ドーブル「……」

ズキズキン「まぁいい、飛司……やれっ!!」

ペリッパー「ペリペリィ〜!!」

ドーブル「ふんっ、貴様らなど私の敵じゃ……あれ?」


……筆を忘れたことに、気づいたようだ。
 ▼ 82 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/26 21:12:43 ID:Ao2pqAgU [8/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ペリッパー「ペリペリ、貴様の具現化能力は愛用する筆でしか引き出せないということは調査済みよっ! 武器を忘れるとは情けない限りだ……これで貴様は単なる弱小ポケモンに成り下がる!! そして……喰らえっ!!」シュパッ

ゴーリキー「ぐふっ!!」

ドーブル「!」

攻撃を受けたゴーリキーが、よろめく。

ドーブル(し、しまった! 格闘タイプに飛行タイプの技、“エアスラッシュ”は抜群……!)

ペリッパー「ペリペリ〜!!」

ゴーリキー「くっ……この早口野郎が……」

ズキズキン「飛司、トドメの“ハイドロポンプ”だ!!」

ペリッパー「おうともさぁ〜!」カアァッ

そしてペリッパーは口を開け、ハイドロポンプの発射準備に入るのだ。

ドーブル「あ……あ…………」

ズキズキン「ククク、絶望に浸ったその表情……たまらないぜ。さぁ飛司、早いとこトドメを刺しな」

ゴーリキー(うぅ、さっきの攻撃で立ち上がることすらできねぇ。情けねぇ。ここで……俺たちの命運も尽きるのか……!?)


──万事休す、かに思えた。
 ▼ 83 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/26 21:13:40 ID:Ao2pqAgU [9/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
……だが。


《ガボッ。》


ペリッパー(!!?)

ゴーリキー「な、お前は……ピ、ピカチュウッ!!」

そう、ピカチュウであった。

ピカチュウ「ほら、筆返すぜっ」ヒョイ

ドーブル「フフフ、上手くいきましたね」

ゴーリキー「え? え? ……え?」

ピカチュウは、ペリッパーの口に具現化した巨大な洗濯バサミを投げつけ、彼の口を完全に封じたのだ。

ペリッパー「ペリグワ〜!」ボンッ

その結果、彼の口は暴発してしまう。

ピカチュウ「喰らぇ……10まん…………」

ズキズキン「ま、まずい……。水、飛行タイプに電気タイプの攻撃は……!!」

ピカチュウ「……ボルトォーーーッ!!!」バリィッ

ペリッパー「「ペ、ペリゴラァ〜〜ッ!!?」」
 ▼ 84 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/26 21:16:47 ID:Ao2pqAgU [10/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
……ドサッ!


焼け焦げたペリッパーは、地面に墜落してしまった。

ズキズキン「くっ、ここは退く──」ダダッ

ゴーリキー「逃がすか……リキィッ!!」ドゴォッ

ズキズキン「あぶ〜〜っ!!?」


〜“飛司”ペリッパー、“悪司”ペリッパー撃破〜


------------------------

ゴーリキー「なるほどね。離別したフリして、敵を倒す作戦だったと。敵を騙すにはまず味方から……と。ブツブツ」

ピカチュウ「俺が筆を使ったら、こんなイビツな洗濯バサミになってしまったよ。ドーブル、やっぱお前凄いな」

シェイミ(長老)「……お主たちの実力なら、遺跡からも生きて帰って来れるかもしれぬ。……船を貸そう。無事を祈っておるよ……」

ドーブル「ありがとうございます、長老殿」

こうしてピカチュウたちは、長老に船を貸し与えてもらったのだ。

ーーー

そして一同は川を渡り、遂に……『砂漠遺跡』の入り口へと辿り着く。
 ▼ 85 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/26 21:19:51 ID:Ao2pqAgU [11/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
〜砂漠遺跡〜

ピカチュウ「ここが…『砂のオルゴール』があるとされる遺跡……」

ゴーリキー「見るところ、だいぶ古い遺跡だな。敵さんは居なさそうだが……」

ドーブル「ええ、油断せずに行きましょう。長老の話によると、ここから生きて帰って来た者は居ないそうですし……」

ピカチュウ「おいおい、その話をぶり返すなよ。不安になってくるじゃないか。」

ドーブル「あら、ピカチュウ。あなた、怖い話は案外好きじゃないタチかしら」

ピカチュウ「やめろ、そうじゃない。俺はお化け屋敷とかでも、怖いんじゃなくて脅かされるのが嫌いなんだ」

ドーブル「フフ、屁理屈ですね」

ピカチュウ(……コイツ)

ゴーリキー「ハハハ!」


こんな調子で、ピカチュウたちは遺跡内を進んで行く。

やがて一同は、更に奥へと辿り着くのだが……。
 ▼ 86 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/26 21:21:10 ID:Ao2pqAgU [12/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
???「……うぅ」

ドーブル「あら、誰か倒れていますね」

ピカチュウ「……こ、こいつは……!!」


なんと、毒司であるスコルピが倒れていたのだ。


スコルピ「……なんだ、お前たちか。情けない姿を見られてしまったな……」

俺「おい、大丈夫かっ!? こ、こいつをここまでする奴なんて……そうだっ、トサ……サンドパンはッ!?」

スコルピ「……アイツなら更に奥に進んだ。無事かどうかは知らない……」

ピカチュウ(奴に奪われるかもしれない……オルゴールをっ!!)ダダッ

ドーブル「ピカチュウ……私たちも行きましょう!!」

ゴーリキー「お、おうっ!!」

ピカチュウたちは、更に奥へと進んで行った。

スコルピ(フフ、いいぞ……。皆、皆……“アイツ”にやられてしまえ……グフッ!!)バタッ

どうやらスコルピは、気絶してしまったようだ。
 ▼ 87 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/26 21:21:56 ID:Ao2pqAgU [13/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
〜砂漠遺跡 番人の間〜


ドーブル「こ、こいつは……!」

ゴーリキー「なんという、威圧感……!!」

ピカチュウ「…! トサ……いや、サンドパン……。コイツまでもが、奴にやられたと言うのか……」

サンドパン「うぅ……」


一同の前にそびえ立つ、そのポケモンは。



レジロック『『ざざざりさ……』』



──伝説のポケモン……レジロックだ。
 ▼ 88 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/26 21:26:11 ID:Ao2pqAgU [14/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
レジロック『レジィィ……』

ドーブル「この遺跡の、護り主という訳ですね……」

ゴーリキー「……マッハパン──」

レジロック『レジィ〜!』ビシュッ

ゴーリキー「!」

レジロックは、ゴーリキーに“でんじは”を放つ。

ゴーリキー(……思うように、身体が……!!)

ドーブル(コイツ、自身の素早さを補おうと……? “スケッチアート”ッ、壁を具現化っ!!)ピィィィッ


……パリィンッ。


ドーブル「つっ……!?」

レジロックはドーブルの創り出した壁を、いとも容易く破壊したのだ。

ピカチュウ「こっちだって素早さは負けてないぞっ! “でんこうせっか”っ!!!」シュッ

レジロック『……』
 ▼ 89 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/26 21:27:14 ID:Ao2pqAgU [15/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ガキィン──

レジロック『ざりざり……』

ピカチュウ「か、硬い……!?」

ピカチュウの攻撃を喰らっても、レジロックはビクともしないのだ。

ドーブル「具現化、まひなおしっ!!」シュワァ

ゴーリキー「お、おぉ……麻痺が治った。しかしコイツに、立ち向かうには、ハァ……」

ドーブル「……まずいですね。短期決戦に持ち込まねば」

ピカチュウ「ハァ、ハァ……」

三匹の体力も、限界に達していたのだ。


……だが。


ドーブル「…ピカチュウ、カイリキー、作戦を考えました。……これならいけると思います」ゴニョゴニョ

ゴーリキー「おおっ、それは良い作戦だ!」

ピカチュウ「よし……“10万ボルト”だっ!!」
 ▼ 90 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/26 21:29:54 ID:Ao2pqAgU [16/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
バリバリ……。


ピカチュウ「これで、少しは効いたはず……」

レジロック『レジィ〜!』

ピカチュウ「なっ……」

しかしレジロックは、攻撃をなんなく耐え抜く。

ゴーリキー「これだけしぶといとは……。さすがは、伝説のポケモンというだけは……」

ドーブル「……よしっ」シュシュシュ

ピカチュウ「ドーブル、時間は稼いだ……準備はできたか?」

ドーブル「はい、できました!!」ボワンッ

レジロック『ざざざり……?』


ドーブルは、スプリンクラーを描き出し、具現化したのだ。
 ▼ 91 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/26 21:34:00 ID:Ao2pqAgU [17/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ビショビショ……。

レジロック『レジィ……』

ピカチュウ「へへ、上手くいったな。タ○シ戦のやり方」

一同はスプリンクラーの水を、レジロックに浴びさせる。

ドーブル「濡れた岩なら、ご自慢の防御力も半減。ゴーリキー、今ですっ!!」

ゴーリキー「リキリキリキリキリキリキィッ!!」バゴバゴ

レジロック『レジィッッッ!?』

ドゴドゴォッ!!

ゴーリキーは、濡れた拳でレジロックの身体にラッシュをお見舞いした。

レジロック『……』


ドサァ……。


レジロックは倒れ、遂に、活動を停止したようだ。

ゴーリキー「やったぞ、勝利だぁっ!!」

ドーブル(ん……?)

だがドーブルは、気になる“なにか”を発見する。
 ▼ 92 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/26 21:34:35 ID:Ao2pqAgU [18/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ドーブル(001…?)

レジロックの身体には、そう数字が掘られていたのだ。

ピカチュウ「お、おい、こいつが落とした宝箱の中身……。これ、もしかして……!」

宝箱には、地面のオルゴールが入っていた……。

ピカチュウ「こいつが持っていたとはな……」

サンドパン「……うぅ」

ドーブル「……彼。サンドパンを連れて、一度タウンへと帰りましょう。なにか情報が聞き出せるかも……」

ゴーリキー「だが、思った以上に疲労が……。少し、休ませてくれないか……」


──その時であった。


「「ちょっと、お待ちを……」」ボワンッ


ピカチュウ「!」

突如ピカチュウたちの前に、一匹のポケモンが現れたのだ。

ゴーリキー「お、お前は……。“超司”、カラマネロ……!?」
 ▼ 93 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/26 21:35:42 ID:Ao2pqAgU [19/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ピカチュウ「こ、このカラマネロが……。“超司”……!?」

カラマネロ「カラカラ、なにもあなたがたに危害を加えようと訪れたわけではありませんよ」

ゴーリキー「では、なにをしに来たっ!!」

カラマネロ「お見事でした。よもや001号を倒すとは。個々の力は弱いですが、それを補って余りある団結力があなた方にはあるようです」

ゴーリキー「なにが……言いたいんだ……!?」

カラマネロ「カラカラ、決まっているじゃありませんか。弱りきったあなた方を、送り届けてさしあげるのですよ。光栄に思いなさい」

ドーブル「なっ……!?」

カラマネロ「いきますよ……カラカラッ!!」

ピカチュウ「!」


シュン──


カラマネロはテレパシーにより、ピカチュウたちをタウンへと転送したのである。
 ▼ 94 ーケオス@ダークボール 17/03/26 22:59:26 ID:Lfp9WPKA NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 95 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/27 21:43:51 ID:TBHGMm7w [1/10] NGネーム登録 NGID登録 報告
〜アロガントタウン〜


……ボテッ!!


ピカチュウ「あいたたた……」

ドーブル「な、なんだったのかしら、アイツ……」

ゴーリキー「わからん。あいつ……カラマネロはATZでも相当の変人だったからな。俺たちを舐め腐ってるような、そんな感じすら受けたし……」

ピカチュウ「とにかく、帰ってきたんだな…アロガントタウンに……。……お前もか」

イーブイ「あいたたた……」

ゴーリキー「……とりあえず、奴が心配だ。最寄りの病院へと送り届けて来るよ」

サンドパン「……」ハァ、ハァ

ドーブル「……ピカチュウ。私のことを話していないのにぶしつけですが、今度はあなたに聞かせてもらいたい。あなたとサンドパンには、一体どんな因縁が?」

ピカチュウ「……あぁ、話すよ──」

------------------------

ドーブル「そんなことが……」

ピカチュウ「でも、俺は奴にもう、恨みなどないよ。だって……」

ーーー
 ▼ 96 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/27 21:44:53 ID:TBHGMm7w [2/10] NGネーム登録 NGID登録 報告
俺とこのサンドパン……名前は『トサ』と言うんだが、俺は奴に挑み、話した通り、無残にも敗北を期した。

俺「ポカブ……しっかりしろ! ポカブ……」

……俺の相棒だったポカブは、死んだ。
それ程までに、奴と俺の実力差はあったんだ。

……でも。

お母さん「ねぇ。なんかお金と手紙が置いてあるんだけど。もしかしてこれ、アンタあてのじゃないの?」

俺「……!?」

奴の謝罪の言葉。10の力の俺を、100の力で倒してしまったことへの謝罪。それと医療代と慰謝料のお金。


……実のところ、悪かったのは俺だったんだ。無謀にも、格上に立ち向かっていった、俺が。

それなのに……。

その件でとある女友だちと喧嘩をしてしまうんだが、それはまた、後の話だ。
 ▼ 97 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/27 21:45:42 ID:TBHGMm7w [3/10] NGネーム登録 NGID登録 報告
──やがて。


「「号外〜、号外〜!」」


イーブイ「あら。これは、新聞記者のヌメルゴンが執筆してる新聞ね。号外だってさ。ふ〜ん、今日はお尋ね者の情報も出ているんだね。……えっ、これは……」


一大ニュースであった。


町の主、ハリテヤマの謎のポケモンの襲撃による負傷。

その“謎のポケモン”……お尋ね者“創蛙”。

そして、その仲間とされる……あのサザンドラ。
それらのポケモンの顔写真が、掲載されていたのだ。


イーブイ「あ、あのサザンドラさんが……!? 確かに、そんなことしそうな顔で、それでもってとっても怪しかったけど……」


──その時。


「いえ、間違いはありませんよ」


ピカチュウ「ん、あんたは……?」
 ▼ 98 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/27 21:46:37 ID:TBHGMm7w [4/10] NGネーム登録 NGID登録 報告
オノノクス「私は個人探偵。あの二匹の行方を遥か昔から追い求めてきたのです。オルゴールのことは既に調べが付いています。あの二人を元の世界へと返す訳には行きません」

ピカチュウ「アンタがオクタンの言ってた探偵だったのか。俺たちは次にアイスロックへと向かうつもりだ。そいつがいたら、捕まえてやるよ」

オノノクス「ありがとうございます……。いえ探偵といっても、全然成果の挙がらない無名なもので──」

イーブイ「見た目、こんなに強そうなのにね」

オノノクス「力があったとて、頭がついていかなければ、探偵という職業は難しいのですよ。今はまだ情報は微小なものですが、次にあった時には、ご協力できると思います」

ピカチュウ「そうか、ありがとう!」


やがて、オノノクスは町外れの方へ去って行った。


ピカチュウ「さて、シャイニング号でアイスロックへ渡ろうか。そのための準備を……」


サンドパン「……待て」


ピカチュウ&イーブイ「!!」


突然にも、サンドパンが二匹に声をかけたのだ。
 ▼ 99 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/27 21:47:08 ID:TBHGMm7w [5/10] NGネーム登録 NGID登録 報告
サンドパン「私も不本意ながら、元の世界へと帰還すべくATZに侵入していたのだ。罪滅ぼしとして、私もピカチュウたちと共に行く」

ピカチュウ(……)

サンドパン「痛めつけた上に、そんな私を救ってくれたお前。……私を殺そうとすれば、チャンスはあったハズなのに、お前は、そうはしなかった」

ピカチュウ「……恨んじゃいない。ポカブを死なせたのは、その後の手際が悪かった俺の責任だ」

サンドパン「……次の戦いでは、先の不甲斐なさを解消することを約束する。だから私を、仲間に──」

ピカチュウ「ああ、いいぜサンドパン! お前も俺たちの仲間だっ!!」

イーブイ「……ピカチュウ」

サンドパン「ありがとう。……そして、今一度言おう。……すまなかった……」


こうしてサンドパンが、ピカチュウたちの仲間に加わった。

……そして一同は、アイスロックへと向かうのだ。
 ▼ 100 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/27 21:47:45 ID:TBHGMm7w [6/10] NGネーム登録 NGID登録 報告
〜フレアグリン 北東部 寒冷地帯〜

イーブイ「うぅ、寒いね……」ブルブル

ドーブル「ここからはアイスロックへと続くことになるのだから、当然ですよ」

ゴーリキー「町はあるのか?」

ドーブル「えぇ、寒い場所を好むポケモンが集う町、『ブリザードライク』があるます。その町へと行きましょう」

ピカチュウ「俺、季節の中では冬が一番好きなんだ。なんていうのかな……一年の終わりって、ほら、冬だろ? 物悲しくなるんだ。雪は降って来るが年は終わる。過ぎ去るものと来訪するもの。……深い意味があるんじゃないかなって」

イーブイ「うん、私も冬は好きだよ。私には彼氏はいなかったけど……好きな人と冬景色を見ながら温泉にでも浸かれたら……どんなに幸せかなぁって。」

ゴーリキー「なんなら俺が彼氏になろうか? 嬢ちゃん」

イーブイ「アハハ、冗談はその筋肉だけにしてください」

ゴーリキー(……笑顔で拒否された)
 ▼ 101 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/27 21:48:42 ID:TBHGMm7w [7/10] NGネーム登録 NGID登録 報告
〜ブリザードライク〜

イーブイ「うわぁ。辺り一面……白、白、白っ! 雪が降り続いてるね。木々や屋根にも雪が積もってる!!」

ドーブル「屋根が三角屋根ですね。雪が振り続ける地域での、雪を屋根に残さないための知恵でしょうか」

イーブイ「あ、見て…雪だるまが作られてるよぉ! キャハハ、よく見たらユキノオーだ。かっわい〜っ!!」


だが、そう呑気に観光をしている場合でもなさそうだ。


住人「アイスロックの名物……町の外れの“雪生塔”でATZが暴れてるの。このままじゃ、崩れそうで怖いわ……」

住人「なんでも、『雪のオルゴール』とかなんとかを探してるらしい。ホント、迷惑だよ」


ゴーリキー「なるほどな。行くしか、ないよな……」

サンドパン「……あぁ」


かくして一同は、雪生塔へと向かうことになる。
 ▼ 102 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/27 21:49:40 ID:TBHGMm7w [8/10] NGネーム登録 NGID登録 報告
〜雪生塔 頂上〜

イーブイ「……あの顔面は!」

オニゴーリ「オニオニ……我は“氷司”オニゴーリでオニ! お前たちか……相手になるぞっ!!」

ドーブル「……なんか、語尾からして実に雑魚っぽいです。オニゴーリになるくらいなら、ユキメノコになりたい」

ピカチュウ「その発言は全国のオニゴーリファンを敵に回すぞ。アニメでの活躍で好きな人も多いだろうし」

オニゴーリ「……甘く見やがって」


サンドパン「……リージョンフォームッ、変形ッ!!」ボンッ


ピカチュウ「……おぉっ!」


周辺の雪を纏い、サンドパンは戦闘態勢に入った。


オニゴーリ「……我の実力、見せてやるっ!!」ヒュンッ
 ▼ 103 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/27 21:50:37 ID:TBHGMm7w [9/10] NGネーム登録 NGID登録 報告
サンドパン「つっ……」フラッ

オニゴーリの体当たりを、サンドパンは辛うじて避ける。

ドーブル「外見と口調から、少々油断をしていました。あの巨体で、なんという速さ……まるで、ドッチボールです」

オニゴーリ「ほら、ほら……ほらぁっ!!」ビュウンッ

サンドパン「……避けるばかりでは能がないか。こちらも攻撃あるのみ……“ブレイククロー”ッ!!」ガリッ

サンドパンは、自身の爪により、オニゴーリに対し攻撃を仕掛ける。

オニゴーリ「……ふんっ!」バリィッ


サンドパン「!!」


しかしなんと、オニゴーリの突進により、……彼の爪は、砕け散ってしまったのだ。
 ▼ 104 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/27 21:51:14 ID:TBHGMm7w [10/10] NGネーム登録 NGID登録 報告
オニゴーリ「どうした、ご自慢の爪が砕けたくらいで……もう降参かぁ!?」

サンドパン「……まだ、数有る中の一手が破かれたのみ。手札はまだ残っている……ニードルアーマーッ!!」ビィィィ

身体中の棘を強化し、そのまま回転を始める。

サンドパン「……ドッチボール対決、受けて立つ。 お前が凍てつく氷のボールなら…こちとら地の果て針地獄……ニードルボールだ!」グルンッ

オニゴーリ「面白い! 我に……球技で勝負を挑もうとはぁっ!!」グルルンッ


ズガアッ……!!


二匹の身体が、衝突し合う。

ゴーリキー「うおぉっ……なんという衝撃だっ……!!」ビリビリ

ドーブル「打ち勝ったのは、どっちなの……?」


ムクムク……。


サンドパン「う、うぅ……」

ピカチュウ「……サ、サンドパンッ!?」
 ▼ 105 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 05:25:34 ID:Ish0PJRg [1/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
オニゴーリ「……あ〜あ、期待外れだなぁ」


地に伏せていたのは、サンドパン。

立ち誇っているのは……オニゴーリだ。


オニゴーリ「爪も駄目、棘も駄目ときた。呆れるばかりだ。最早お前の前には勝利など存在しない。待っているのは、壮絶なる“敗北”のみだ。さぁ、観念し……我の技を喰らい昇天するが良かろう」

サンドパン「……」

イーブイ「交代しよっ、サンドパン! 私がこんな奴……やっつけてやるんだからっ!!」

サンドパン「……いや、それではやはり駄目なのだ」

ゴーリキー「サンドパン……なぜ、そんな意地を……?」

サンドパン「……お前たちは、“友だち”だからだ」

ピカチュウ「!」

サンドパン「デザートサンでは、お前たちに危害を加えてしまった。友だちとして……恥ずべき行為。その私がお前たちの仲間となり、この初めての戦い……。どうしても、ケリは俺自身の手で付けたいんだ」

ピカチュウ「しかし、この絶望的な状況……。もう“希望”なんて……!!」

オニゴーリ「もう良いだろう……終わらせよう……。れいとう……ビイィィ〜ムウゥゥッ!!!」ピキピキ


一同「!!」
 ▼ 106 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 14:11:57 ID:Ish0PJRg [2/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
サンドパン「……!」


ピキ、ピキィ……。


サンドパンの身体が、凍りついてしまった。

オニゴーリ「オニオ二、後はこの凍り付いた身体を踏み潰せば任務完了! 瞬時に凍り付いたもの程、脆いものはないからな、本当に呆気がない。少しは期待したのだが……損をしたわぁ!!」

ピカチュウ「もういい、俺がコイツを……」

イーブイ「いや、これはチャンス! ドーブル、サンドパンに…火を放つのよぉっ!!」

ドーブル「!」

ゴーリキー「な……なんだって!? 気でも狂ったのか、イーブイッ!! そんなことをしたら……サンドパンが焼け死んじまうぜっ!?」

イーブイ「大丈夫っ! サンドパン……あなたは確かにこう言った!! 私たちのことを……“友だち”だって!!」

オニゴーリ(なにを考えているのだ……この小娘は)
 ▼ 107 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 14:12:34 ID:Ish0PJRg [3/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
イーブイ「その“友だち”の手を借りることは、決して恥ずべきことなんかじゃないっ! “友だち”だからこそ、助け合って支え合って…ええぃ、上手く言えないけど、とにかく……私たちはあなたを助ける!!」

サンドパン(……)

オニゴーリ「ごちゃごちゃと、綺麗事をほざきおって……。コイツは踏み潰されて死ぬ、それで終わりだ! 小娘……現実を、この惨劇を……よぉ〜く見ておけっ!!」

イーブイ(つまり、こういうことなの……。ゴニョニョ……)

ピカチュウ……(そういうことかっ! なんか昔、そういう展開を漫画で読んだことがあるぞ)

オニゴーリ「仲間の冥福でも祈っているのか!? ……死ねえぇぇぇっ!!!」ゴォォォ

ドーブル「では、いきますよ……ふんっ!!」ボォォ


オニゴーリ「!」


ドーブルは炎を具現化し、凍ったサンドパンの身体に向け、火を放った。
 ▼ 108 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 14:13:14 ID:Ish0PJRg [4/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
オニゴーリ「も、もしや……!」

ドーブル「普通の炎攻撃や、刺々ボールはあなたには通用しないかもしれない。しかし、それが合わさったら……どうなる……?」

オニゴーリ「小娘、これが狙いで……!!」

イーブイ「私は、ただサンドパンやドーブルのことを信じていただけ。それだけよ。私は……何もしていないじゃない」

サンドパン「むんんんっ……」ボオォォ

サンドパンの氷が程良く溶け、彼女の身体に炎が渦巻いた。

ドーブル「奇しくも身に纏う氷のおかげで、あなたに炎のダメージはそれ程伝わってはいない。さぁ、サンドパン……今こそ“あなた自身”の手で、トドメを刺すのよっ!!」

サンドパン「……ありがとう、皆。本当に感謝する。オーバーヒートォ…ニードルゥゥ…ボールゥゥゥッ!!!」

オニゴーリ「う……うおぉぉぉぉぉぉっ!?」


ドゴォッ……。


鋭い棘と燃え盛る炎を纏ったその“ボール”は……。

邪悪なる大敵ATZに向け………。


渾身の一撃を込め、突撃した。
 ▼ 109 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 14:14:00 ID:Ish0PJRg [5/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
オニゴーリ「……」


サンドパン(決まった、か……?)


オニゴーリ「う、うおぉ……」



「「うおぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」」



ピキピキピキピキィ……。

パリイィィン………!!


オニゴーリの身体に亀裂が走り……。


ボコォンッ!


そのまま、少爆発を遂げた。


落下していくオニゴーリの氷の破片は、煌めき、淡く、幻想的なものであった。

しかし、それは地面に吸い込まれるや刹那、瞬時に溶け込んでいくのであった。
 ▼ 110 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 14:15:25 ID:Ish0PJRg [6/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
“氷司”オニゴーリ 〜撃破〜

------------------------

サンドパン「……逆転勝利と言ったところ、かな……」

イーブイ「サンドパン。あなたは、私たちの友だちだよ」

サンドパン「……あぁ、皆、本当にありがとう」


──その後ピカチュウたちは、町に戻り事情を話した。


住民「その『雪のオルゴール』のことなのですが……。もしかしたら、手掛かりはこの町のすぐ近くにあるかもしれません」

イーブイ「ほ、本当ですか!? ぜ、是非教えてくださいっ!!」

住民「この先の『氷塊遺跡』から生きて帰って来たものは、デザートサンの遺跡よろしく…やはり、誰も居ないのです。あの遺跡の最深部には、遺跡の護り主とも呼べる……鬼の様に強い存在が棲んでいるらしいのです」

ピカチュウ「あの、レジロックと同じ様な……」

住民「もしかしたら、あなたがたならば……。デザートサンの遺跡を突破し、今しがたあのオニゴーリを撃破した。そんなあなたがたならば、その存在をも突破できるやもしれませんね」

住民「あなたがたのおかげで、町に活気が漲りました。せめてものお礼です。お代は要りません。この町の宿に泊まって、英気を養ってください」


こうしてピカチュウたちは、ブリザードライクの宿へと宿泊することになったのだ。
 ▼ 111 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 14:16:18 ID:Ish0PJRg [7/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
〜夕食〜

ピカチュウ「……このボルシチ、冷めきってないか?」

ドーブル「そこが売りなんだそうですよ。『カチコチに冷えた身体に、キンキンに冷めた料理をプレゼント!』ってのがキャッチコピーだそうです」

ピカチュウ「この宿がガラガラな理由がわかるような気がするよ」

ゴーリキー「ぶぇっくしょん! はぁっくしょん!!」

イーブイ「どうしたの」

ゴーリキー「ここの大浴場、全部水風呂さぁ! こんなんじゃ温まる訳ねぇよ!!」

サンドパン「俺は地面タイプだから、水は嫌いだな」

ピカチュウ「ここの住民は寒さに弱いのか強いのかわからんくなってきた」

ゴーリキー「おい、もう寝ようぜ。ピカチュウ……一緒に枕投げしないか?」

ピカチュウ「お前は修学旅行の学生か」
 ▼ 112 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 14:16:55 ID:Ish0PJRg [8/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
〜男部屋〜

ゴーリキー「ほらほら、どうしたピカチュウゥ!!」ボィーン

ピカチュウ「ちょっ、おま…ずるいぞ……腕が四本あるなんてっ!!」

ゴーリキー「アシ○ラマンなんか六本あるんだぞ。それに比べたら安い安い。ほれほれぇっ!!」ボィーン

ピカチュウ「おい、痛えぞこの枕! あっ、てめぇ…石が入ってんじゃねぇかっ!!」ボィーン

ゴーリキー「おい、てめぇこそ……なんじゃこりゃあっ!? 鉄パイプじゃねぇか、鉄パイプ!! よぉ〜し、だったらこっちは──」ボィーン

ピカチュウ「うわっ、お前……なにを入れようとしてんだっ!?」

ゴーリキー「ハハハ、前に手に入れた、ヒードランの卵入りのカプセルボールさ。落としたら……地獄が待ってるぞぉ〜〜」ボィーン

ピカチュウ「ばか、やめろ、俺は虫が大嫌いなんだっ!!」

ゴーリキー「ハハ、可愛い可愛い。それにヒードランは虫じゃないさぁ〜〜」ボィーン

ピカチュウ「おい、ちょっと…落ちるって……マジヤバイって! う、うわあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」

………
……
 ▼ 113 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 14:17:29 ID:Ish0PJRg [9/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
〜女部屋〜

サンドパン「あの男部屋のノリにはついていけない。ここでやっかいさせてもらうことにする」

イーブイ(……問題、ないのかなぁ)

サンドパン「……今日は……ありがとうな」

イーブイ「え、なにが?」

サンドパン「アンタ、わざとなのか天然なのか理解しかねるな。今日のATZとの戦いだよ。俺はただ、あのピカチュウに報いたいという一心で、希望だけはいっちょ前に捨てることができなかった」

ドーブル「……あなたは、一人ではなにもできなかったのかもしれない。だけど、勝利を収めることができた。私たちが居たから。力を合わせて団結したから」

イーブイ「……あ、私も、ピカチュウのことが好きだよ」

サンドパン「……」

イーブイ「ピカチュウは、私を護ろうとしてくれる。こんな、どうしようもない私を。ポケモンが好きということぐらいしか取り柄のない、勉強も運動もからっきしなこの私を」

ドーブル「……ポケモンそのものに成り果てた今、思うことがあります。ポケモンという存在は、本来出会うことのない筈の人たちを、結びつけてくれる。対戦や交換だけではなく、今のようにも……」

イーブイ「すごいね……ポケモンって。私たちが居なくなった後も、もしかしてポケモンは生き続けるのかなぁ」
 ▼ 114 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 14:18:16 ID:Ish0PJRg [10/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ドーブル「始まりがあるからこそ、終わりもあります。いつかは、私たちの元からポケモンはいなくなるのかもしれませんね。だけど……」

イーブイ「?」

ドーブル「私たちは、まぁ……過程はともかく、ポケモンを通じてこうして知り合った訳です。友だちになれたのです。それは、恐らく永遠の形の一種と呼べるでしょう。」

イーブイ「なんか、難しい……」

ドーブル「私たちが朽ち果てた後も、歴史はそれを紡いでいく。私たちは、確かに存在していた。私がイラストを描くのも、その“生きた証”を残したいというのが……理由の一つなのかもしれません」

サンドパン「生きた証……か」

ドーブル「その“生きた証”を生み出す同士の一人に、かつてATZの“炎司”が居ました。『ナナホシー』……以前話しましたよね。彼女の目を覚まさせてやることも、私が今回の旅へと参加した目的の一つです」

サンドパン「俺は、皆と行動できて楽しい。目的はそれぞれ違うけれども、俺は罪滅ぼしのためだが……。皆……互いの目的を成就できるように、願おう。頑張っていこう」

ドーブル「さて、もう時間も時間です。男部屋の方はさっきカサカサとか言う音や悲鳴が聞こえてきましたが……気にしないでおきましょう。では、お休みなさい……」zzZ

イーブイ「はっやっ!」

サンドパン「俺も寝るか、あっ、言っておくが……。どうやら俺は、寝相がものすご〜〜〜っ…く、悪いみたいなんだ」

イーブイ「え」

サンドパン「安心しろ。寝相で尻を触ったりはしないよ。まぁ、くれぐれも注意しておくことだ。じゃあ、お休み」

イーブイ「え、え、ちょっと」

──パチ。

辺り一面が、闇に染まった。
 ▼ 115 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 14:18:58 ID:Ish0PJRg [11/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
〜翌日〜

ピカチュウ「おい、どうした……イーブイ。身体中、傷だらけじゃないか。目のクマも凄いことになってるし」

イーブイ「あ、あぁ……ちょっとね………」ゲッソリ

サンドパン「女にとって睡眠不足は敵と聞く。ちゃんと寝ないと、頭も働かないしな」

イーブイ(アンタのせいで眠れなかったんでしょうが!!)

ゴーリキー「さて、朝飯はバイキング形式のようだが……。もう冷えた飯など食いたくはないからな。さっさと遺跡に行くこととするか」

サンドパン「……」

ドーブル「……ええ、そうですね」

ピカチュウ「……あぁ、わかってるさ」


イーブイ(……皆の顔つきが、変わった…………)


そうだよね、怖いよね。

私は知らないけど、そのレジロックのようなポケモンと戦うことになるだなんてさ……。
 ▼ 116 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 14:19:33 ID:Ish0PJRg [12/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
〜氷塊遺跡〜

ゴーリキー「……割りと、近かったな」

ドーブル「見たところ、造られてから相当の年月が経っているようですね。壮観です、いたるところが冷気により凍りついていますし」

イーブイ(ソ〜ッ……)ペタッ

イーブイ「うわっ、冷たい……」

ドーブル「あまりむやみに触れない方が良いでしょう。低温やけどをしますよ」

ピカチュウ「この先に、『雪のオルゴール』が……。そして──」

ゴーリキー「“護り主”さんが、どっしりと待ち構えているという訳だ。挑み生きて帰って来た者は、居ないというな」

イーブイ「……」ゴクリ

サンドパン「あの時ばかりは不覚を取ったが……。今は、お前たちが居る。もう、負けるわけにはいかないな」

ピカチュウ「ああ、じゃあ……乗り込むぞっ!!」ダダッ


恐怖を乗り越え、一同は遺跡内へと侵入する。
 ▼ 117 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 14:20:13 ID:Ish0PJRg [13/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
──氷塊遺跡 内部


ドーブル(……妙、ですね)

ピカチュウ「どうしたんだ、ドーブル」

ドーブル「いや。なんでしょうか……なにか……。根本的な違和感を……感じませんか?」

イーブイ「いわかん?」

ピカチュウ「ぽんかんみたいなアクセントで言うなよ」

ゴーリキー「どういうことだ?」

ドーブル「恐らく、最深部には明確なる敵が潜んでいる筈なのです。それにしては、なんだか……。『殺気』とでも、言えば良いのでしょうか……。そういったものが、全く感じられないのです」

ピカチュウ「殺気、ね……」

ゴーリキー「殺気はさっきも微塵に感じなかったな」

ピカチュウ「ただでさえ寒いのに、そーいうのは止めた方が良いと思います」


そして、最深部へと到着した一同。

……その場で、衝撃的な光景を目にすることとなる。
 ▼ 118 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 14:20:59 ID:Ish0PJRg [14/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ーー最深部ーー


ゴーリキー「……なんだ? 誰かが、倒れているようだが」

イーブイ「胸騒ぎがする……行って……見ようっ!!」ダダッ


そして。


ピカチュウ「……これ………は──」

イーブイ「あ、あなたはっ……!!」


──最深部には、二匹のポケモンが居た。

一匹は、既に地に伏せているポケモン、『レジアイス』。


そして。


サザンドラ「……」



あの、サザンドラであった。
 ▼ 119 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 14:23:30 ID:Ish0PJRg [15/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
サザンドラ「…お前たちか……。最早、会うこともないと思っていたが……久しいな」

イーブイ「あ、あなた……タウンでハリテヤマさんを襲ったポケモンの……仲間……。わ、悪い奴なんでしょっ!? し……知っているのよぉっ!!」

サザンドラ「そう解釈するのは勝手だが。悪い奴か……フフ……。傍から見れば……確かに、“悪い奴”だな」


──その時。


カラマネロ「カラカラ」ボワンッ

一同「!!」

あのカラマネロが、またもや突如として現れた。

カラマネロ「おやおや、サザンドラさん……これはまた、お久しぶりですねぇ」

ピカチュウ「お、お前も来るだなんて。もうメチャクチャだ。しかしお前……知っているのか……? アイツのことを……」

カラマネロ「カラカラ…旧知の仲ですよ、本当にね。ねぇ……」

サザンドラ「揃いも揃い、変わらなさ過ぎること……この上ない。ねちっこいな、お前」

カラマネロ「始まりは、あなたと“あのお方”と、この私でしょう。そりゃあ……ここまでねちっこくもなれますねぇ」

イーブイ「な、なんのことを話してるの……?」

カラマネロ「直にわかりますよ。……えっと、イブさんでしたっけ」

イーブイ「!?」
 ▼ 120 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 14:24:16 ID:Ish0PJRg [16/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
な、なんで…。

私の、本名を……。


イーブイ(ピカチュウたち以外には、話していないはずなのに……)


カラマネロ「カラカラ……なにも、わからないでしょうね。それでいい、それでいいんです」

イーブイ「あなた、いや、あなたたち……一体、何者なの……?」

カラマネロ「さて。私がここに来訪した目的は、他でもありません」

イーブイ「しっ……質問に応えてよぉっ!!」

カラマネロ「……そのポケモンですよ。『氷塊遺跡』のゴーレムさん」


レジアイス『……』


ピカチュウ「こ、この……レジアイスのことか?」

カラマネロ「このゴーレムさんたちの維持管理が、“あのお方”に命じられた私の使命。いきますよ……カンラカラカラッ!!」ビビビビ

ドーブル「なっ……」


カラマネロは、レジアイスに対し、禍々しい光線を放ったのだ。
 ▼ 121 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 14:24:52 ID:Ish0PJRg [17/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
シュワアァァァァ…。


ピカチュウ(なんだ……?)


レジアイス『……き』

ゴーリキー「つっ……!」

レジアイス『じゃき』

サンドパン「ま、まさか………!?」


『『じゃきいぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!!!』』


一同「!!?」


ムク──


なんと、レジアイスは何事もなかったかのように平然と起き上がり……。

復活を、遂げたのだ。
 ▼ 122 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 14:25:47 ID:Ish0PJRg [18/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ゴーリキー「う、嘘だろ……コイツら……。復活、するのか………?」

ドーブル「じゃ、じゃあ……あの、レジロックも………?」

サンドパン「………!」

一同、戦慄。

カラマネロ「全く。ゴーレムさんたちが倒れる度に出張に現れなければならない、私の苦労をわかってほしいものですね。まぁそんなことは、あなたがたとこのサザンドラさんの例しかありませんが……では」ボワンッ

イーブイ「あ、ちょっと待ちなさいよ!!」

そう言い残し、カラマネロは消え去って行った。


レジアイス『レジィ〜ッ……』


サザンドラ「あぁ、全く………だ」

イーブイ「え……?」
 ▼ 123 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 14:26:22 ID:Ish0PJRg [19/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「お前たちと、こうして再び巡り会えたのだ。これも、なにかの“縁”だと思うことにしよう。……ハアァァァ──」


コオォォ……。


ゴーリキー「な、なんだ……? この、遺跡が……」

サンドパン「震えて、いるようだ……。凄い……気だ……」


『『レジィィィィィィィィ〜ッ!!!!』』


“敵”であると認識し、レジアイスはサザンドラへ襲いかかる。

サザンドラ「……あやつに魂を吹き込まれし、木偶人形よ。今一度、俺がキサマを打ち倒し……“使命”なるものから開放してやろう。仮初の休息だがな」


サザンドラ「「……ふんっ!!」」


ピカチュウ「!」



ド  ゴ  オ  ォ  ォ  ッ  …  !  !
 ▼ 124 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 14:26:54 ID:Ish0PJRg [20/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ピカチュウ「う、うおぉぉっ……!?」


ビリビリ……。


サザンドラの攻撃により生じた衝撃波が、一同を包み込んだ。

レジアイス『レ、レジィィィィィ〜ッ!!』


ドサァ……。


一同「……!」


一同は、絶句する。

……無理もない。


あれだけの苦戦を強いられたレジロックと、同等の強さを有するであろう、レジアイス。

それが……得体の知れぬポケモンの一撃により、呆気なく倒されたのだから。
 ▼ 125 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 16:40:41 ID:Ish0PJRg [21/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
サザンドラ「……くれてやる」

イーブイ「え……?」

サザンドラ「それだ、それ。奴を今しがた撃破した際……落下したのを、見ただろう?」

イーブイ「それってもしかして……この、宝、箱……?」

レジアイスは、倒された瞬間……レジロックと同様に、宝箱を落としていたのだ。

サザンドラ「お察しの通り……それには『雪のオルゴール』が入っている。そう、プログラムされているからな」

イーブイ(プログラム……?)

サンドパン「なぜ、俺たちに……?」

サザンドラ「言ったろう、なにかの“縁”だと。お前たちの実力では、コイツを倒すことすら手を焼くだろうからな。ほんの……“親切心”だ」

ゴーリキー「その“親切心”とやら……お前の仇とならぬが良いがな」

サザンドラ「減らず口だけは立派なようだ。その根性で、まぁ……これからの健闘を祈っている。……じゃあな」スタスタ

イーブイ「ま……待ってっ!!」

サザンドラ「……?」

イーブイ「そ、“それ”……あなたの、でしょう……?」
 ▼ 126 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 16:41:42 ID:Ish0PJRg [22/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
サザンドラは、とあるものを戦いの最中に落としていたのだ。


ピカチュウ「これは、未使用のモンスターボール……。しかし、ずいぶんと傷だらけな、ボロボロの状態だ。こんな古臭いものを……どうして……?」

サザンドラ「“古臭い”、か……確かにな。……だがな。この世界とこのボール、似ているとは思わないか?」

ゴーリキー「……?」

サザンドラ「古褪せた、ボールと世界。互いにポケモンを閉じ込め、あまりに良い気になり過ぎている。とは言っても、プラズマ団のように、モンスターボール自体を否定するつもりはない。……忌まわしきは、この偽りの世界だ」

イーブイ「……偽りの、世界……」

ピカチュウ「難しい話はよくわからないんだが……」

サザンドラ「まぁ……このモンスターボールは、俺が散々“あやつ”と呼称する、とある者との思い出の品なのだ。例え、ああまで変わり果ててしまっていてもな……“思い出”だけは、色褪せることなどない」

イーブイ「友だち、だったんですね……その人とは……」

サザンドラ「……トモダチ……」

イーブイ「友だちは、大切にしなきゃ駄目だと思います。例えば、ここに居る、ピカチュウ、ゴーリキー、ドーブル、サンドパンは、同じポケモン好きの……私のとても大切な友だちです。代わりなんて、絶対にいません」

ピカチュウ「イーブイ……」


サザンドラ(イブ……)


イーブイ「どうして、その友だちと……。その……喧嘩でも、してしまったのですか……?」
 ▼ 127 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 16:42:38 ID:Ish0PJRg [23/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
サザンドラ「喧嘩、か……似たようなものだがな。それにしても、俺としたことが……フフ、“落としもの”をしてしまうことになるとはな」

イーブイ「私も、落としものは沢山してきたよ。財布、携帯、トレーナーパス、モンスターボール……数々に渡り、色々ね」キリッ

ピカチュウ「流石に抜け過ぎだろ。しかも、そんなドヤ顔で言われても」

サザンドラ「そうだ、“落としもの”だ。……きっかけは、些細なことだったな。今にして思うと。“あの日”以来……“あやつ”は変わってしまった」

ドーブル「何か……色々複雑な事情がある様ですが」

サザンドラ「つい、色々と喋ってしまい格好は付かんが……これ以上の詮索はするな。……俺がこの世界に舞い降りたのは、“あやつ”に引導を渡すためなのだ」

ゴーリキー「……終わってしまった友情って奴なのかな」

サザンドラ「そう。最早……どんなに願っても、元に戻ることは叶わぬのだよ」

サンドパン「だから、引導を渡すのか。それは……かつて友だちだったものとしての、義務とでも言うべきことなのか……?」
 ▼ 128 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 16:44:04 ID:Ish0PJRg [24/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
サザンドラ「義務なのか、権利なのか……或いは、その両方なのか。それを知るには、月日が経ち過ぎた」

ピカチュウ「……」

サザンドラ「俺は既に、オルゴールは入手した。だから、もうここには用は無い。さて……今度こそ、行くとする」

イーブイ「サザンドラさん……。あなた、本当に……悪い人、いや……ポケモンなの……?」

サザンドラ「フフ。……相変わらず、おめでたい頭だ」

イーブイ「なっ……なにをぉっ!?」カアァッ

サザンドラ「……じゃあな」タタッ


そう言って、サザンドラは去って行った。


イーブイ「もう……頭きたっ! ピカチュウたち、戻りましょっ!!」プンスカ

ピカチュウ「……あ、あぁ」

ゴーリキー「あのサザンドラとやら。随分親切にしてくれたが……。案外、心優しい奴なのかもしれないな。不器用なだけで」

イーブイ「どこが心優しいのよ、あんな奴っ!!」

ドーブル「……」

ドーブル(レジロックの身体には、『001‐Regi』と。そして、今のレジアイスの身体には、『002‐Regi』と。そう、掘られていた……。カラマネロは、『ゴーレム』と呼んでいましたが……)

もしかして、この『ゴーレム』たちは……。あのカラマネロによって、造り出された存在……?
 ▼ 129 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 16:44:34 ID:Ish0PJRg [25/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
『雪のオルゴール』を思わぬ形で入手することになり、氷が溶けるが如く終わりを迎えた……アイスロックの旅路。


だが──


“サザンドラ”、“カラマネロ”、“ゴーレム”、“あやつ”……。

様々な謎は、解けずに残ることとなる。


果たしてピカチュウたちは、旅路を続ける中において、これらの謎を結び付けることができるのであろうか。


………
……
 ▼ 130 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 16:45:18 ID:Ish0PJRg [26/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アイスロックの旅を終えた一同は、タウンへと帰還する。


──アロガントタウン ハリテヤマのちゃんこ鍋


ピカチュウ「どうも」

オクタン「あら、いらっしゃいぃん。さっきぶ……いや、お久しぶりねぇん。何か大事な用事でもあったのかしらぁ?」

イーブイ「おばさん。ハリテヤマさんは……大丈夫なんですか……?」

オクタン「あぁ、あの人は上の階に居るわぁん。一時は心配したけど、大分容体も安定してきて……本当に良かったわぁあんぅぅ」

イーブイ「そ、そうなんですか。それを聞いて、安心しました!」

オクタン「それにしても……許せませんね。……“あのお方”を差し置いて、“ソウア”を名乗るだなんて……」

イーブイ「?」

オクタン「あ、いや……なんでもないわぁぁぁぁんっ!!」


ハリテヤマに事情を聞くために、ピカチュウたちは上の階へと上がることにした。
 ▼ 131 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 16:46:09 ID:Ish0PJRg [27/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
〜二階〜

イーブイ「ハリテヤマさん……大丈夫?」

ハリテヤマ「おう、小娘」

イーブイ「こ、小娘って言わないで!!」

ハリテヤマ「ハハ、元気そうだな」

ピカチュウ「それ俺たちのセリフだろ」

ハリテヤマ「ところで、お前たちも知っているだろう?」

ピカチュウ「あぁ、アンタがその“創蛙”とやらに襲われたことは、もう誰もが知っている。それより、一つ聞きたいことがある。アンタはなぜ……『オルゴール』を持っていたんだ?」

ハリテヤマ「なに、その答えは簡単だ。俺がネットオークションで競り落としたからだ。『苦天』と言うんだが」

ピカチュウ「色々怒られないか、それ」

ハリテヤマ「今でこそ、このような店を開いているが……。人間世界に居た頃は、俺は相撲取りだったんだ」

俺「四股名は何だったんだ?」

ハリテヤマ「……悪小龍だ」

イーブイ「完璧にヒールじゃないですか。プロレスみたいな」
 ▼ 132 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 16:47:01 ID:Ish0PJRg [28/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ハリテヤマ「そんな俺でさえ、“創蛙”の前には歯が立たなかったんだ。そしてあの“創蛙”は、カエルポケモンの容貌をしていた」

ピカチュウ「だから、“蛙”なのか。どこらへんが“創”なのかは、よくわからないが」

ピカチュウ(だが、一つ。腑に落ちないことがある。伝説の存在とまで謳われた、“創蛙”。その存在自体も少し疑わしいところもあるが……果たしてそんな大層な輩が、顔を見られると言うヘマをするだろうか?)

ハリテヤマ「……舐めていた。隙をつけば、容易く倒せるとばかり考えていたが……。奴の実力は、そんなものではビクともしないくらい、盤石なものだった」

イーブイ「ハリテヤマさんが、敵わないなんて……」

ハリテヤマ「凄いよ、“創蛙”は。流石は伝説上の存在と言うだけはある」

ピカチュウ(……)

ハリテヤマ「お前たちも……油断だけはするなよ。油断は、死に直結するからな」

イーブイ「ありがとう、ハリテヤマさん!」

ハリテヤマ「さて、モノは相談なのだが……。お前たちに一つ、頼みたいことがある」

ピカチュウ「なんだ?」

ハリテヤマ「『オルゴール』は奪われてしまったが……。俺が生きているということがもし奴に知れれば。口封じとか、そう言ったことのため……またいつ“創蛙”がここを襲撃するかわからん」

イーブイ「ひぇっ、またそのカエルさんが……。ここにやって来るかもしれないんですか?」

ハリテヤマ「そうなれば、今度こそ俺は……。自分自身も、住民も護りきることは難しいだろう。このポケモンタウンの壊滅の恐れだってある」

イーブイ「そ、そんな……」

ハリテヤマ「お前たちは今度は『マグマランド』に赴くのだろう。大変だと重々分かってはいるが……。お前たちの中から一匹……この町の“護衛”についてはもらえないか?」
 ▼ 133 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 16:47:58 ID:Ish0PJRg [29/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ピカチュウ「護衛、か。わかったぜ。だが……誰がこの町に残ろうか?」

イーブイ「そうだね……サンドパンはどうかな? アイスロックでは、ATZも倒したしね」

ハリテヤマ「それは心強いな。サンドパン、悪いが……このポケモンタウンに残ってくれ」

サンドパン「あぁ、わかった……。ピカチュウ、すまないな……俺はこの町に残ることにするよ。お前たちの無事を、心から祈っている」

ピカチュウ「頑張れよ、サンドパン」


こうして、サンドパンはアロガントタウンへと、単身残ることになった。
 ▼ 134 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 16:48:33 ID:Ish0PJRg [30/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
〜マグマランドの町 グツグツレスへの道〜

ピカチュウ「近くに火山も見えるな。噴火はしないだろうな?」

イーブイ「噴火怖い、雷怖い、雪崩怖い、津波怖い」ガクブル

ピカチュウ「自然現象全面的に駄目じゃないか。それにしても……なんて暑さなんだ、ここは……」

ゴーリキー「俺、サウナは大好きだが……。ここの気温は、その度を超えているな……」

ドーブル「気休めにしかなりませんが、これを具現化しましょう」ボンッ

ピカチュウ「……それは、なんだ?」

ドーブル「みずの○ごろもです。裏技で、二つ増やした覚えはありませんか?」

ピカチュウ「世代違うし。つか、ゲームが違うし」

バサッ…。

ゴーリキー「う〜ん、冷やっこい。これで、なんとか乗り越えられそうだ」

ドーブル「グツグツレスには、もう少しで辿り着きます。そこで、情報収集を行いましょう」


「「う、うわあぁぁぁぁぁぁぁぁ〜っ!!」」


一同「!」

その時一同は、けたたましいポケモンの悲鳴を聞く。
 ▼ 135 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 16:49:14 ID:Ish0PJRg [31/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
イーブイ「なにかが起こっている……。ピカチュウ、ゴーリキー、ドーブル……行こうっ!!」ダダッ

ピカチュウ「他のポケモンのことなんか、放っておけば良いと思うんだけどな……。まぁ、乗りかかった船ってこともあるかっ!!」ダダッ

一同が悲鳴の元へと駆けつけると、そこでは……。

ナエトル「ぐぅっ……」

グランブル「ハハッハーッ! どうした、もう……成すすべなしかぁっ!?」

ポケモンのナエトルが、グランブルに襲われていたのだ。

ゴーリキー「奴は……“妖司”ッ!!」

ドーブル「ATZの一匹ですか……。しかし、どうしてATZが我々とは無関係のポケモンを襲っているのでしょうか?」

グランブル「グラグラ、我とてこのようなか弱いポケモンを襲うのは律儀に反するのだが……」

イーブイ「じゃあ、なんで襲うのよっ!!」

グランブル「話は最後まで聞け……このマグマランドを探索中の我に対して、コイツがいきなり勝負を挑んで来てなぁっ! その心意気に免じて、我がこうして真っ向なタイマン勝負をしてやっているという訳なのだよっ!!」

ナエトル「ゼェ、ゼェ──」

ナエトルは、グロッキー状態だ。

ピカチュウ「仕方がない。俺が助けるか」

イーブイ「うん、それがいいと思……」ドクンッ

イーブイ(…え?)
 ▼ 136 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 16:49:55 ID:Ish0PJRg [32/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
──お前は、本当に、それでいいのか…?


彼女の心に、呼びかける声が一つ。


イーブイ(な……なんだと……。言う、の……?)


《考えてみろ。お前は他の仲間たちと違い……手段はどうであれ、未だに己の手で敵を倒してはいない。これは、チャンスだとは思わないか?》

イーブイ(チャンス……)

《そうだ、チャンスだ。ここでこのグランブルを倒し、お前の力を仲間たちに認めさせるのだ。……今こそ、秘めた力を開放させる時なのだ》

イーブイ(私の……。秘めた、力……)

《最終的にどうするかは、お前自身が決めることだ──》


──プツン。


イーブイ(……確かに、私は……。このままポケモンを倒さないでいたら、ピカチュウたちと一緒に旅を続ける権利なんて、ないのかもしれない)


ーーー


イーブイ(今こそ、私が……。私自身が、行動に出るべき……!!)
 ▼ 137 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 16:50:27 ID:Ish0PJRg [33/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
イーブイ「……待って!」

ピカチュウ「イ……イーブイ!?」

イーブイ「考えてみれば……私はまだ一回も、自分自身ではポケモンを倒すことは……できていなかった。だから、この子を助けるのは…私に任せてほしいの」

ピカチュウ「…そういうことか。だが、イーブイ……お前に、その……できるのか?」

ドーブル「……ピカチュウ」

ピカチュウ「ドーブル……?」

ドーブル「イーブイが、こう言っている。“友だち”が、こうして私たちに頼んでいる」

ゴーリキー「そうだな。“友だち”のことを信じることができるのが……。本当の、“友だち”って奴じゃないのかい?」

ピカチュウ「……ドーブル、ゴーリキー」

イーブイ「ピカチュウ……お願いっ!!」


ピカチュウ「……」


イーブイ「ピカチュウッ!!」
 ▼ 138 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 16:51:08 ID:Ish0PJRg [34/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ピカチュウ「……わかった。俺は、いや、俺たちは……お前のことを、信じるよ」

イーブイ「ピ……ピカチュウッ!!」


友だちに、認められた。

──それだけのことが、本当に嬉しかった。


イーブイ「コイツは、絶対に私が倒す! だから、皆は先にグラグラレスへと行ってっ!!」

ドーブル「……わかったわ、イーブイ。ソイツのことは、あなたに任せる。私たちは、安心してグラグラレスへと行く。無事に合流しましょう。無事にね!」

イーブイ「うん、皆! グラグラレスで、落ち合おうっ!!」


……ダダッ。


ピカチュウたちは、グラグラレスへと駆け出した。
 ▼ 139 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 16:51:47 ID:Ish0PJRg [35/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
グランブル「さっきから、我のことを差し置いて……。なにをほざいてやがったあっ!?」ドゴッ

イーブイ「ど、どごぐぇ〜!?」

まずは、グランブルの攻撃がイーブイに決まることとなる。

グランブル「ちなみに、我は女だっ! だから…ムカつくんだよぉっ!! お前のような、可愛いポケモンにはなぁっ!!!」ドガッ

イーブイ「えぇぇっ、女だったのぉ〜っ!? そんな……あの、貫禄のある顔してて……。声だって、その……とっても野太いのに……」

グランブル「お前……良い就職先が見つかったな。……我をとことん怒らせるという仕事になぁっ!!!」ボゴォッ

イーブイ「だがるぁ〜っ!?」

ナエトル「イ、イーブイさん……。だ、大丈夫ですか……?」

イーブイの顔は、幾多に渡る殴打によりボッコボコに腫れてしまっていた。
 ▼ 140 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 16:52:23 ID:Ish0PJRg [36/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
イーブイ「げふっ……こ、攻撃しなきゃ……。た……“たいあたり”っ!!」ドガッ

イーブイの攻撃が、グランブルに決まる。

……が。

グランブル「……こんな、ものか?」

イーブイ「!」

グランブル「本当の“たいあたり”ってのはな……。こう、やるんだ〜っ!!」ドゴォンッ

今度はグランブルの重い一撃が、イーブイを襲う。

イーブイ「が、はっ……。す、“すなかけ”……」ザザッ

グランブル「……目くらましか? ……フンッ!!」サララッ

イーブイ「あ、あぁ……」

グランブルは、砂を手で鷲掴み、脇へと追い払ってのけた。


……圧倒敵な戦力差。

勝機など、端から無きに等しかったのである。
 ▼ 141 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 16:53:37 ID:Ish0PJRg [37/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
グランブル「まだ、足りない…足りないなぁ。
その可愛い顔…とことんやってしまわぬと気が済まない。」

グランブルは、イーブイの片耳を掴み、持ち上げた。

イーブイ「は゛、離゛し゛て゛」


声も、絶え絶えであった。


グランブル「……おらぁっ!!」バシィッ

イーブイ「げふっ……!」

グランブルは、彼女を地面へと思い切り叩きつけた。

グランブル「ATZに逆らおうとすると、こうなるのだと言う実例を……お前でこしらえてやる。光栄に思え。少しでも、我に敵うとでも思ったか?」バシィッ

イーブイ「……や゛、や゛め゛て゛……」


聞く耳など、持つ筈がなかった。
 ▼ 142 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 16:54:21 ID:Ish0PJRg [38/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ドゴォ、バゴォ、ズゴォ……。


無情なる衝撃音が、響き渡る。


イーブイ(……)


最初はか細い悲鳴を上げていた彼女だったが……。
その内に、声すら出すことができなくなってしまう。


グランブル「……」バゴォッ


グランブルも、最早無言である。
それは、完全なる“作業”へと成り果ててしまっていた。


ナエトル「……イーブイさん……」


“死”を待つばかり。

この光景をもし誰かが見ていたのなら、誰もがそう思うだろう。



……しかし。
 ▼ 143 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 16:58:06 ID:Ish0PJRg [39/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告








“奇跡”は、起こった──








 ▼ 144 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 16:58:37 ID:Ish0PJRg [40/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
薄れ行く意識の中で、イーブイは思う。

イーブイ(大見得張ったけど……。やっぱり、私には…無理だったのかなぁ……)


──次の瞬間、だった。


ピカァ……。


グランブル「なっ……」

イーブイ「えっ……」


彼女の身体が、発光していたのである。


イーブイ(嘘……私の身体……。何が、起こっているの……?)


漆黒の絶望の先には、輝かしい希望が待っていた。

彼女は、そのまま……。

変化を………。


──遂げて行く…………!!!
 ▼ 145 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 17:02:37 ID:Ish0PJRg [41/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
パアァァァァァァッ!!!


グランブル「ぐ、ぐぉっ……。ま、眩しい……!!」


シュウウゥゥゥゥ……。


光は、消え去った。


グランブル「な、なんのコケ脅しを使ったのだ……。んっ……」


グランブル「「!!?」」


イーブイ?「……」


グランブル「お、お前……なんだっ!? その……“姿”はっ………!!?」
 ▼ 146 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 17:03:30 ID:Ish0PJRg [42/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ニンフィア(私……)


イーブイは、ニンフィアへと変貌を遂げたのであった。


グランブル「ま、まさか……進化、したとでも言うのか? そんなの、この世界では聞いたことがないぞっ!!」

ニンフィア「だったら、目の前のこの現実……。どう解釈するつもり……?」

グランブル「えぇいっ、余計なことはどうでもいいっ!! それより……うおぉぉ、死ねえぇっ!!!」


バシッ。


グランブル「……なにっ!?」


ニンフィアは、攻撃を容易く受け止めたのだ。


グランブル(さっきまで攻撃を受け続けるばかりだった、コイツが……)
 ▼ 147 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 17:04:15 ID:Ish0PJRg [43/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ニンフィア(わかる、グランブルの動きが──)


どう行動するのか。

私のどこを狙ってくるのか。

攻撃する際に、必ず口を閉じる癖も。


そして……。



私に、恐怖を抱いているということもッ!!



《そうだ、それでいいのだ……イブ》



ニンフィア(……!?)



《お前の秘めた力は、今ここに解き放たれた。もう理解できただろう。最早、奴はお前の敵ではない。さぁ……トドメを刺せ》
 ▼ 148 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 17:04:46 ID:Ish0PJRg [44/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ニンフィア「私が、トドメを……命を、奪う……」

《そうだ。“殺す”、のだ》

ニンフィア「……」

《どうした、“友だち”に……。認められたくは、ないのか……?》

ニンフィア「馴れ馴れしく、ピカチュウたちのことを……語らないでっ!!」

《そうムキになるな。さぁ、決断しろ……イブ!!》


グランブル「グラグラァ〜ッ!!!」ドドドド


グランブルは、ニンフィアに対し突撃を図ろうとする。

ニンフィア「だから、私の名前を……あなた如きが……呼ばないでよぉっ!!」

------------------------

ニンフィア(今こそ、力を──)
 ▼ 149 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 17:05:58 ID:Ish0PJRg [45/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
雄大、壮大、そして寛大なる月。


ニンフィア(この悪しきATZを倒すため……ピカチュウたちに、認められるため……。力をっ!!)


グランブル「グ……ラアァァァァ〜ッ!!」ザシュッ

グランブルは、ニンフィアに飛びかかった。

ニンフィア「……無駄だよ」ガシィッ

グランブル「!」


……それを彼女は、身体に纏うリボンで受け止める。


グランブル「ぐっ……は………離せっ!!」ジタバタ

ニンフィア「攻守逆転と言ったところかな。さて……“トドメ”──」キュイイン

グランブル「なっ、なんだぁっ!?」
 ▼ 150 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 17:06:28 ID:Ish0PJRg [46/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
コオォォォォ……。


グランブル(こ、これは……)


彼女の身体を、妖しげなオーラが包み込んでいく。


ニンフィア「私は、あなたに勝つ。ただそれだけ。それだけが……目的なの。じゃあ、行くよ…。ムーン……フォースウゥゥゥゥ〜ッ!!!」ゴゴオッ


グランブル「う……うわあぁぁぁぁぁぁぁぁ〜っ!!!」



グランブルに向け、妖々しい力が発射された。
 ▼ 151 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 17:07:03 ID:Ish0PJRg [47/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
グランブル「グラァ〜ッ!!」


ドサッ……。


ニンフィア「……か」


勝った……。


かくして、グランブルは倒れ込み……。
ニンフィアが、勝利を遂げた。


“超司”グランブル 〜撃破〜


------------------------

グランブル「グラグラ……。我としたことが、不覚を……取ってしまった……よう、だ……」

ニンフィア「……」

グランブル「さぁ、勝利者のご褒美だ。我に……トドメを刺すがいいだろう。さぁ……やれっ!!」

ニンフィア「……それは……できない」

グランブル「な、なんだと……!?」
 ▼ 152 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 17:11:45 ID:Ish0PJRg [48/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
グランブル「敗者に情けをかけるつもりか、お前っ!?」

ニンフィア「……そういうことじゃない」

グランブル「では、どうしてっ!?」

ニンフィア「……言ったでしょ。私は、あなたに“勝つ”ことだけが目的だって。だから……その先の余計なことはしたくないの」

グランブル「お前……」

ニンフィア「それに、私は思うの。女は顔じゃないって。そんなもの、自分勝手な価値観に過ぎない。正しく生きていれば、きっと……いつかは報われるよ」

グランブル「グラグラ……さっきと言ってること違うじゃねぇか。だがその言葉、身に染みるよ。気にいった、ぜ……」ドサッ

------------------------

ナエトル「た、助けてくださって……ありがとうございます。イーブイ、いや……ニンフィアさん」

ニンフィア「いいのよ、それより君は? なんで……ATZに挑もうなんて思ったの?」
 ▼ 153 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 17:12:37 ID:Ish0PJRg [49/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ナエトル「なぜ、僕がATZに挑もうと思ったか。それは、僕がATZ“草司”、ブリガロンの義兄弟だからです」

ニンフィア「義兄弟……?」

ナエトル「この世界に来た時、僕は孤独な独り者でした。そこを、あのブリガロンが世話を焼いてくれたのです。僕のことを気に入り、義兄弟の契りまで……わざわざ結んでくれました」

ニンフィア「恩人なのね。その“草司”とは」

ナエトル「しかし、そんなある時……。そのブリガロンは、僕の前から姿を忽然と消してしまったのです」

ニンフィア「姿を、消した」

ナエトル「はい。姿を消す際に、ブリガロンは僕に手紙を残しました。それがこれです。いつも持ち歩いています」ペラッ

ニンフィア「どれどれ──」

ーーー

《義兄弟 ナエトルよ
訳あって、私はATZなる集団へ潜り込もうと思う。お前とは、もう会うことはできぬかもしれぬ。せめてもの償いとして、お前が当分食っていけるだけの金は置いていく。だから……私のことは詮索しないでくれ。……では。
             義兄弟 ブリガロンより》
 ▼ 154 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 17:13:24 ID:Ish0PJRg [50/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ニンフィア「訳、ね……」

ナエトル「その後彼は、メキメキとATZ内で実力を現した。だが僕は、どうしてもその“訳”が知りたかった。再び彼に……会いたかった」

ニンフィア「だから、ATZを打ち負かし……アジトまで行こうとしたのね。……実力もない癖に」

ナエトル「そこを言われると、返す言葉もないです」

ニンフィア「……いいわ、ナエトル。あなたも、私に着いてきて」

ナエトル「い……いいんですかっ!?」

ニンフィア「ATZを倒すためには、仲間は少しでも多い方がいい。この先グラグラレスには、私の信用できる仲間たちが既に辿り着いているはず。道は、わかるわよね?」

ナエトル「は、はいっ! 案内します、こちらですっ!!」

こうして、ニンフィアとナエトルは、グラグラレスへと共に行くこととなった。

ニンフィア「……あれ、ナエトル………どこ〜?」

ナエトル「二、ニンフィアさん! そこじゃないです、こっちですよ〜!!」

ニンフィア「え、どこ〜?」グルグル

ナエトル「だから、こっちです! な、なんで南に向かってるんですか〜っ!? き、北ですよぉ〜っ!!」

ニンフィア「北って、どっちだっけ」

ナエトル(このポケモンに着いて行って……。本当に大丈夫なんだろうか)

少し不安になりながらも、ニンフィアとナエトルはグラグラレスの町へと辿り着いた。
 ▼ 155 ーパ@メダルボックス 17/03/28 18:22:23 ID:LgQ6PcL6 NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 156 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 19:35:17 ID:Ish0PJRg [51/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
〜グラグラレスの町〜

ニンフィア(な、なに…? 町の雰囲気が、なんだか…おかしい……?)

ピカチュウ「……! お、…お前は、その……“お前”、なのか……?」

ニンフィア「えぇ、私よピカチュウ。それより、この町でなにがあったの?」

ナエトル「……あのポケモンは」

ピカチュウ「見る方が早いだろう。……あれを見ろ」

ニンフィア「あっ、あれは……二匹のポケモンが、交戦してる……。一匹は、ドーブル。もう一匹は、え、マフォクシー? もしかして──」

ゴーリキー「やぁ、嬢ちゃん。無事に帰って来れたようだな。あぁそうだ。あれは“炎司”マフォクシー。“大炎の魔狐”の異名を持つ……恐るべき女だ」

ニンフィア(『ナナホシー』……昔は二人で一人だった。それが、今では……こうして対立してしまうことになるなんて……)

ドーブル「……久しぶりですね、マフォクシー」

マフォクシー「ゴホン。ふん、久しぶりと言われる筋合いもないな。さて、どちらだ? 先に裏切ったのは……」

ドーブル「あなたが金稼ぎに走り、粗雑な作品を量産するようになったからですよ」

ナエトル「あの有名なナナホシーに、そんな過去が……」

ドーブル「道を踏み外したかつての盟友を打ち倒すため……。奇遇なことにこの世界に来ていたあなたを知り。私は、ここで得た新たなる仲間たちと……ここまで、旅をして来たんだっ!!」

マフォクシー「そうだな。今こそ……決着を付ける時だ」
 ▼ 157 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 19:35:52 ID:Ish0PJRg [52/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
マフォクシー「…ふんっ!!」


ボオォォ…。


ゴーリキー「!」


マフォクシーは、二匹の周囲に炎を渦巻いた。


俺「こ、これでは……」

ニンフィア「私たちが援助をすることはできない……!!」

ドーブル「これで、私たち以外が邪魔たてすることは不可能…。あくまで、二匹のみの戦いに拘るわけですか。
せめてもの礼儀です。かつて、私たちの好んでいた…少年漫画風に申しましょう」


ーーー


ドーブル「『……受けて立ってやるっ!!』」


周囲に炎が燃え盛る中、二匹の戦いは始まった。
 ▼ 158 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 19:36:45 ID:Ish0PJRg [53/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ドーブル「…みずてっぽうっ!!」シュシュッ

マフォクシー「…ひのこっ!!」ボオォッ


ボシュウッ…。


二匹の攻撃が、相殺し合う。


ピカチュウ「まずは小手調べか」

ニンフィア「互いの力量を、確かめあってるようにも見えるね」

ドーブル「フフ、枝の炎を飛ばすとは……」

マフォクシー「お前こそ、筆を用いているではないか。今でも似た物同士なのだな、私たちは」

ドーブル「あぁ、だからこそ……私たちは、良いパートナーだったのかもしれませんね。できれば、過去形では言いたくなどなかったです」

マフォクシー「生き物は、過去には決して戻れないのだ。だからこそ、過去に固執し続けるお前が酷く滑稽に見える」

ドーブル「過去があるからこそ、現在があるのです。そんなことも忘れてしまったあなたは……とても醜く映りますね」


ドーブル「…フンッ!!」バゴォッ


ドーブルは岩を具現化し、マフォクシーに突き出した。
『ストーンエッジ』である。
 ▼ 159 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 19:37:20 ID:Ish0PJRg [54/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
マフォクシー「炎よ、我を包み込めっ!!」ボオォッ

ドーブル「!」


シュウゥ…。


マフォクシーの纏った炎は……岩を、蒸発させた。


マフォクシー「炎を自在に操るからこそ、“大炎の魔狐”なのだ」

ドーブル「肩書は、伊達ではないというわけですか。中々いいものですね。この追い詰められた感覚。“戦ってる”と言うべき感覚です」

マフォクシー「頭と口は、相変わらずよく回るようだ。さて、ならば……この攻撃には、どう対処する……?」


ボオォォ…。


ピカチュウ「うぉ、なんだあれはっ!?」

ニンフィア「狐の形をした、炎だね。なんか、見てて美しい……」

ゴーリキー「だが、その美しさの中には……。漆黒なる、殺意が潜んでいる……」

マフォクシー「この炎は、意志を持っていてな……。どこまでも、どこまでも……お前を追い詰める。喰らえっ!!」


炎狐『グルルゥワアァァッ!!』
 ▼ 160 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 19:38:14 ID:Ish0PJRg [55/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ニンフィア「ド、ドーブル…危ないっ!!」


ゴオォォ…。


『炎狐』が、ドーブルの身体を激しく包み込んだ。


ニンフィア「ドーブルッ!!?」


炎狐『ぐ、ぐるがあぁぁぁぁ〜っ!!』


ピカチュウ「な、なんだ……炎狐が、消え去って行くぞ……?」

ドーブル「あなたの目は、節穴ですか? 私は、『みずの○ごろも』を身に纏っていた。これは、いわば水の塊です。だから……炎狐は消滅したのですよ」

ピカチュウ「だから、ゲーム違うっての」

ドーブル「例えあなたが何度でも炎を生み出そうと、これがある限り……あなたは私には敵わない」

マフォクシー「……ガッカリ、だな」

ドーブル「なにが、です?」

マフォクシー「本当に節穴だったのは、どっちの方だったのか……それをお前は、思い知ることになるだろう。」


──その時で、あった。
 ▼ 161 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 19:39:45 ID:Ish0PJRg [56/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
炎狐『ぐるがあぁぁぁぁ〜っ!!』ボコォッ


ドーブル「!」


突如、地中より……もう一匹の炎狐が現れた。


ピカチュウ「馬鹿な! 炎狐は、確かに消滅したはずだっ!!」

ゴーリキー「まさか……。もしや……!!」

マフォクシー「私は、炎狐が一匹だと言った覚えはない。もう一匹密かに生み出し、地中に潜めておいたのだ」ボオォッ

ドーブル「し、しまっ…。」


ドーブル(……グウゥッ!!)


炎狐が、ドーブルの身体にモロに被弾した。


マフォクシー「かつての仲間として、敬意を払おう。ここまでの旅路、実にご苦労なことであった。仲間たちとは……大いに楽しめたか?」

ドーブル「……マフォクシー……いや、マコ(真子)。あなたは、悪夢に取り憑かれてしまった」

マフォクシー「……なにが、言いたい?」

ピカチュウ「マコ……。それが、本名か」
 ▼ 162 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 19:40:54 ID:Ish0PJRg [57/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ドーブル「マコ。あなたと漫画を描いていた頃のこと……覚えていますか?」

マフォクシー「フン。そんな昔のことなど……」

ドーブル「…最初は、上手くいかなかったですね。ストーリーを考えることも、絵を描くことも、ああまで難しいとは思わなかった」

マフォクシー「……」

ドーブル「原稿料だって折半で、食べることも難しかった。怒られましたね、色々と。『お前たちの漫画はメチャクチャだ!』とか。『君たち、このままだと打ち切りだよ』とか」

マフォクシー「──昔のこと、だ」

ドーブル「私は、今でも昨日のことのようにはっきり覚えていますよ。でも……あの頃が、一番楽しかったように思えます」

マフォクシー「……なぜ?」

ドーブル「あの頃……。試行錯誤していた頃……精一杯足掻いていた頃……模索していた頃……。あの頃が、一番自分たちの描きたいように描くことができましたからね」

マフォクシー「私にとっては、苦痛でしかなかった」

ドーブル「フフ、やっぱり忘れてないじゃないですか。嘘つきですね……ホントに」

マフォクシー「!」

ドーブル「話を続けましょうか。その後……デビュー作『闘将!炎狐女!!』が、見事にヒットすることになる。まぁ、最初の頃は順調でした。それなりの知名度も得て、生活も安定しましたしね」

ニンフィア「あー、知ってるよ。炎狐女。昔、古本屋で買いました。イッシュ各地を人助けの旅に周る……マフォクシーの話です」

ピカチュウ「新品で買え」
 ▼ 163 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 19:42:08 ID:Ish0PJRg [58/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ドーブル「そこからですよ、あなたが変わってしまったのは……。“ヒット”が“大ヒット”に変わり、“それなり”の知名度が“物凄い”知名度になってからの話です」

マフォクシー「私が、変わった……」

ドーブル「アニメ化。ゲーム化。映画化。一躍、私たちは時の人となった。ブームが廃れる気配も、全く見えてこなかった」

ニンフィア「凄かったよねー、あの時の人気は」

ドーブル「そう、あなたは“名声”に、溺れてしまった。明らかに、あなたには漫画を描くことに対するやる気が見られなくなってしまった。原作も、粗末なものになってしまった」

マフォクシー「……」

ドーブル「これではいけない、と思った。だから、私はあなたとコンビを解散したのです。しかし、あなたの目は……覚めることはなかった」

ニンフィア「ナナホシーが解散したのは……。そんな理由があったからなのね……」

マフォクシー「……だから、なんだと言うのだ。“金”は、人を狂わす。確かにその通りだ。だから……漫画描写でもそうだが、貧乏人は大抵聖人君子に描かれ、金持ちはいつも“ワルモノ”にされる」

ドーブル「漫画を描くことの面白さ。それを、もう一度あなたに知ってもらいたいのです」

マフォクシー「戯れ言を……。漫画家など、所詮は数ある中の職業の一つに過ぎない。漫画家になったのは、そう……“たまたま”だ」

ドーブル「…たまたまでしょうか。本当に……そうだったのでしょうか。」

マフォクシー「……お前の昔話に付き合ってやるのもここまでだ」


ボォォォ──


ゴーリキー「この技は……炎司の最終奥義……“だいもんじ”だ!!」
 ▼ 164 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 19:43:43 ID:Ish0PJRg [59/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
マフォクシー「さよならだ、ドーブル。来世があるとしたら…次は、異なる形で巡り会えればいいな」

ドーブル「私は……絵描きという仕事に誇りを持っています。あなたもそうだったはずです……“生きた証”を永遠に残そうという、同士としてですね」

マフォクシー「……さらばだ」

ドーブル(……マコ)


ボ オ ォ ォ ォ ォ … 。


マフォクシーのだいもんじが、ドーブルを包み込んだ。

ニンフィア「ド、ドーブル……。……ドーブルウゥゥゥゥ〜ッ!!!」

ゴーリキー「クッ……。俺たちが、不甲斐ないばかりに……」

マフォクシー「安らかに、眠れ──」

炎が、消失していく。

──だが。

マフォクシー「……!」

ピカチュウ「なっ……。ド、ドーブルの……」


跡地に、ドーブルの身体は存在しなかったのである。
 ▼ 165 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 19:44:26 ID:Ish0PJRg [60/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ドーブル「……フフ」


ドーブルは、生きていた。
……彼女の身体は、清廉潔白の如く透き通っていたのだ。


マフォクシー「お前自身が……。……“水”になることで…炎を耐え抜いた……。しかし、そんなこと、お前の技術では不可能だったハズだ!!」

ドーブル「私は、天に祈った。……自分の冥福ではなく、彼女の目が覚めることを。彼女の悪夢が、晴れることを。……その瞬間、私の身体は変幻していたのです」

ドーブル(そして、正真正銘この攻撃こそが、私の全てを傾けた総攻撃になるでしょう)

ピカチュウ「ドーブル……よかった……だが、なにをする気だ?」

ドーブル「…ふんっ!!」トピュッ


ドーブルは、巨大な水塊へと姿を変貌させた。


ドーブル「この攻撃……通用するともそうでなくとも……。これで、勝負が決まる……!!」

マフォクシー(ドーブル……)

マフォクシーは、自身の周囲に炎のバリアーを生み出す。

ドーブル「う、うおぉぉっ!!」バッ


そしてドーブルは空中に舞い、狙いを……マフォクシーに定めた。
 ▼ 166 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 19:45:04 ID:Ish0PJRg [61/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ドオォォ…。


ドーブルの身体は急加速し、その姿は一筋の光となる。


ピカチュウ「ド、ドーブル……。マフォクシーに突撃し、全てを終わらせるつもりだ……」

ゴーリキー「この勝負……。どちらが勝つんだあっ!?」



ボ ゴ オ ォ ォ ォ ォ ン … 。



炎と水。 

それらが、互いに衝突し合うのだ。


ピカチュウ「う、うわあぁぁぁっ!!」ドサァッ


その衝撃により、一同は吹き飛ばされてしまう。


ピカチュウ「うぅ……た、立っているのは……」


……立って、いたのは。
 ▼ 167 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 19:45:42 ID:Ish0PJRg [62/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
マフォクシー「……」

ニンフィア「マフォクシーが……立って……」


ドサァ…。


ニンフィア「……え?」


マフォクシーは、そのまま倒れ込んでしまった。


ドーブル「……」ハァ、ハァ


一方、ドーブルは重症を負いながらも……。
マフォクシーの前へと、立ち尽くしていた。


渦巻いていた炎は消えてしまっている。



ドーブルはどうやら、“勝利”、したのだ。
 ▼ 168 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 19:46:27 ID:Ish0PJRg [63/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
マフォクシー「……ルト」


ピカチュウ「る、ると……?」

ドーブル「マ、マコ……。今、確かに……私の、名前を……?」

マフォクシー「う、うわぁぁぁぁぁぁん! 自分、馬鹿だから…それで、ちょっと言葉知ってるから……。似合わない気取った口調なんて、しちゃったりして……!!」

ドーブル「……マコ!」

ピカチュウ「ハ、ハァ……。これが、コイツの本当の喋り方なのか……?」

マフォクシー「うん、私……わかってたのっ! 自分が名声とお金に溺れて……どんどん駄目になっていっちゃったって!! 好きだった漫画も、心から愛することができなくなっちゃったんだって!!!」

ドーブル「……あなた、本当は……」

マフォクシー「あなたからコンビ解消の話をされて、私……もうどうでもよくなっちゃった! でもって、この世界に来た後……ATZって言うおかしな集団に入って悪いこといっぱいすれば……自分のことを捨てられるって思ったのっ!!」

ゴーリキー「でも、実際は……そうではなかったと言うわけだな」

ドーブル「……悪行を心から楽しむことができるのは、それこそ一部の本当に性根の腐った、救いようのないどうしようもない輩だけです。大抵は、その後強烈な懺悔感に苛まれることになる」

マフォクシー「いつの間にか、“炎司”なんて呼ばれちゃってて……慕ってくれるポケモンたちも増えちゃって……。もう、引き返せなかったの……」

ドーブル「そう、あなたは優しすぎた。それが、あなた自身を苦しめることになったのでしょう」

ニンフィア「なぜ、マフォクシーさんはグラグラレスに来たの?」
 ▼ 169 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 19:46:59 ID:Ish0PJRg [64/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
マフォクシー「ATZの最高権力者……。“水司”にして…“創蛙”である、あのポケモンが……。『次にあのポケモンたちはマグマランドに向かう、因縁のあるお前が片付けろ』って言うから……」

俺「創蛙……」

マフォクシー「……そこで、私……少し“期待”してたの」

ニンフィア「期待……?」

マフォクシー「ルト。あなたなら、あなただったら……こんなダメダメな私を倒して終止符を打ってくれるって……。そして、そんな私を見事に打ち砕いてくれた……ルトの、バカバカァ〜ッ!!」ポコポコ

ドーブル「ちょっ、マコ……痛いっ………痛いって!!」

ピカチュウ「おいおい、負けた側に怒られてるぞ」

マフォクシー「私はもう……ATZを脱退する。真っ向な方法でこの世界から帰還を図る。……ルト、私……稼いだお金……一体何に使ってたと思う?」

ドーブル「え、な、なにって……」

マフォクシー「……漫画専門学校への、資金援助よ」

ドーブル「!」

マフォクシー「私はもう無理かもしれないけど、これからの漫画界……後進の育成のために、私が力になれたらって……」

ドーブル「い、いや、マコ。無理じゃない、無理じゃないんだ!!」

マフォクシー「え……?」
 ▼ 170 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 19:47:45 ID:Ish0PJRg [65/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ドーブル「その思いがあれば、まだ引き返せる……取り戻せるっ! マコ、また二人で…、『ナナホシー』…組まない? マコとルト、二人で一人なんだから……」

マフォクシー「ルト、あなた……。こんな私に、堕落した私に……もう一度、チャンスをくれるというの……?」

ニンフィア「私も、またナナホシーの漫画読みたいしね。読者として、応援してるよっ!!」

マフォクシー「み、皆……。こんなに酷いこと、したのに……本当に、ありがとう……」


“炎司”マフォクシー 〜和解〜
 ▼ 171 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 19:48:24 ID:Ish0PJRg [66/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「…ガッカリ、でござるな」


マフォクシー「!」


突如、一同の前に謎の声が響き渡る。


ピカチュウ「だ、誰だ……お前はっ!?」


「“炎司”ともあろうものが…かつての盟友に情けでもかけたつもりでござるか? そしてお前たち……今まで散々、我がATZの邪魔をしてくれたでござるな」


ゴーリキー「お、お前……。……もしやっ!!」


「そうだ、裏切り者の“闘司”君。同じく、たった今裏切り者に成り果てた“炎司”よ。……そうだ、拙者が──」



──“創蛙”、だ。
 ▼ 172 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 19:48:59 ID:Ish0PJRg [67/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
一同「!」


煙が上がり、そこより、とあるポケモンが姿を現した。


ニンフィア「こ、このポケモンは……ゲッコウガ! ええと、ポケモンタウンでハリテヤマさんを襲撃して……でもって、サザンドラの仲間で……。で、“水司”で“創蛙”なポケモンだっ!!」

ゲッコウガ「お前たちの前に姿を現すのは、これが初めてでござるな。……戦闘の基本は弱者から狙うべし。まずは……」シュタッ

ドーブル「ぐ、ぐぅっ……」

マフォクシー「!」

“創蛙”は、動けぬドーブルの身体を狙った。

マフォクシー「……だいもんじっ!!」ボオォッ

しかしマフォクシーのだいもんじが、“創蛙”の身体を包み込む。

ピカチュウ「おぉ、これは…決まったか?」


ポポポポン。


マフォクシー「!」

ゲッコウガ「“炎司”、貴様の実力はよく知っている。だが、貴様は炎……拙者は水だ。相性上不利なことも、よくわかるだろう?」

ゴーリキー「奴はあわを吐き出し、自身の周囲を防御したんだ! だから、だいもんじが消失したっ!!」
 ▼ 173 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 19:49:32 ID:Ish0PJRg [68/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ニンフィア「そんな……! たかがあわ如きが、なんて防御性能なの……!?」

ピカチュウ「これが、伝説に謳われた……。“創蛙”の実力って奴なのか……?」

ゲッコウガ「お主ら……何故拙者が“創蛙”と語られるかおわかりか?」

ピカチュウ「な、なんだと……?」

ニンフィア「なにかを“創”る、“蛙”だから……?」

ゲッコウガ「…まぁ、そんなところかな。では、とくとご覧に頂こう。この拙者の創作術…、水芸の嵐をっ!!」バシュシュ

ピカチュウ「うぉ、これは……!?」


“創蛙”は、水の手裏剣を生み出した。


ゲッコウガ「……ふんっ!!」ドシュシュシュッ

ピカチュウ「ぐ、くらあぁっ!?」

ニンフィア「きゃんっ……」

ゴーリキー「リキィッ!?」

ピカチュウたちは、“みずしゅりけん”をまともに喰らってしまうことになる。

ゲッコウガ「……他愛もない。まぁ、炎司……お主だけは咄嗟に防御したようでござるが」

マフォクシー「“創蛙”……たとえあなたがATZのボスであろうとも……。このポケモンたちには手出しはさせないっ!!」
 ▼ 174 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 19:50:06 ID:Ish0PJRg [69/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ゲッコウガ「フフ、炎司よ……お主は確かに強いが、それでも拙者は負ける気はしないでござるな。裏切り者の成敗は、ATZの首領の拙者が致そう……『毒舌』ッ!!」ベロ~ン

ニンフィア「…うわっ、汚いっ! 自分の舌を伸ばすなんて……」

ゲッコウガ「戦闘に“キタナイ”という言葉は存在しないでござるな。……さて、これでもうその戦闘は終わったわけでござるが」

ピカチュウ「は?」

マフォクシー「それは、どう……いう──」クラッ

ピカチュウ「お、おい、どうした……マフォクシー!?」


ドサッ…。


マフォクシーは、地面に倒れ込んでしまった。


ドーブル「マ、マコ……。あ、あなた…その“舌”、一体……なんなのですか……?」

ゲッコウガ「創蛙たるもの、忍者たるもの、毒の扱いにも長けていなくてはならない……この舌は、正真正銘の『毒舌』なのだ」

一同「!!?」

ゲッコウガ「拙者は体内に毒を秘めている。その毒は、あらゆる体内器官から放出することができることができるのでござるよ」

ニンフィア(おしっこする時大変そう)

“創蛙”は、毒を帯びた舌をマフォクシーに突き刺したのだ。
 ▼ 175 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 19:50:50 ID:Ish0PJRg [70/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ゴーリキー「……この“創蛙”の実力はATZの中でも一番だ。ドーブルが苦戦したマフォクシーをも、たった一撃で仕留めるとは!!」

ニンフィア「に、逃げるしか、ないの……?」

ピカチュウ「俺は、嫌だぜ。こんな奴から……逃げるなんてなぁっ!! ……“10万ボルト”ォッ!!」バリバリ

ゴーリキー「おぉっ、見事に“創蛙”にヒットッ! 奴は水タイプ。電気タイプの技は効果抜群──」

ゲッコウガ「……とでも、思ったのでござるか?」

ゴーリキー「なっ……!?」


“創蛙”は、ピンピンしていたのだ。


ピカチュウ「そ、そんな……馬鹿な……?」

ゲッコウガ「……忍法、分身の術。まぁ、『かげぶんしん』でござるな。今のは残像でござる。……ふんっ!!」ベロ~ン

ピカチュウ「おわっ……」


──絶体絶命、に思えたが。


ニンフィア「ピカチュウ……危ないっ!!」ババッ

ピカチュウ「二、ニンフィア……!?」
 ▼ 176 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 19:53:08 ID:Ish0PJRg [71/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ベチャッ……。


ニンフィアは、ピカチュウを庇って舌攻撃を代わりに受けたのだ。

ピカチュウ「ニンフィア…なんて馬鹿な真似をっ!!」

ゲッコウガ「まぁ、死ぬ順序が少々変わっただけで候。これで一匹撃破。次こそ仕留めるでござる」

………。

ニンフィア「……あれ?」

ピカチュウ「……え?」

ゲッコウガ「…………え゛? お、お主、なんで……。拙者の毒を喰らいながら、立っていられるのでござるかっ!?」

ニンフィア(…! 確か、デザートサンでも……)

そう。彼女は以前にも毒を喰らいながら、あまり身体に毒は回っていなかったのだ。

ゲッコウガ「お……お主、思い出したぞっ! “あの時”の!?」


……その時であった。


???「ピカチュウさんたち…助けに参りましたっ!!」

ピカチュウ「そ……その声はっ!?」
 ▼ 177 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 19:54:41 ID:Ish0PJRg [72/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
タウンで彼らが出会った、個人探偵のオノノクスであった。

オノノクス「私が来たからには、もう安心です。……そうですか。あなたが“創蛙”ですか。………そうですか」

ゲッコウガ「お主、何奴か……? ああそうでごさる。お主も見たでござろう。拙者は水を様々な形に創り変えることができる。……これこそ、拙者が“創蛙”なる証っ、所以っ!!」

オノノクス「……」

ニンフィア「オノノクスさん……助けに来てくれたんだね」

ゲッコウガ「お主、中々の実力者と見た。殺り合えば、苦戦は必須……でござるか。……良いでござろう。拙者はここを引き上げるでござる」ドロロンッ

“創蛙”は、煙を立てて消えていった。

ニンフィア(た、助かった……)

ゴーリキー「オノノクスさんよ、ありがとうな。あのままだと、俺たちは間違いなくやられていた」

オノノクス「いえいえ、礼には及びません。……それよりあなたたち……。あのサザンドラと、出会いましたか?」

ピカチュウ「……あぁ。あれから、アイスロックの遺跡で一度な。アイツ、レジアイスを倒して俺たちに『雪のオルゴール』をくれたんだ」

オノノクス「……そうですか。他に、変わったようなことは?」

ニンフィア「確か、古いモンスターボールを持ってたよ。なにか思い当たることでもあります?」

オノノクス「……。いえ、なにもありません。私の目的は、ただ一つ。“創蛙”とサザンドラを捕らえることです。……くそっ、“創蛙”を逃してしまうとは……」

ニンフィア「でも、オノノクスさんは私たちを助けてくれた。それだけでも、十分凄いよ」

オノノクス「ポケモンを助けることは、私の努めですから。……あなたたち、“火山”へと向かいなさい」
 ▼ 178 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 20:05:14 ID:Ish0PJRg [73/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ピカチュウ「火山?」

オノノクス「私の調査では、そこに『焔』のオルゴールがあるはずです。あなたがたは、『砂』『雪』と二つのオルゴールを入手している。『草』は“創蛙”、そして最後の一つ……」

ゴーリキー「『闇』のオルゴールだな。それは、既にATZが入手している。……苦天で競り落として」

ニンフィア「やっぱり苦天凄いね」

ゴーリキー「五つのオルゴールを“暗黒の地”に捧げるべき。さすれば、閉じられた世界は再び開かれん。それが、この世界に残る伝承──」

オノノクス「その暗黒の地と言うのは、恐らく、ATZの居住地である『アンホワイト』。しかし、そこに続くトンネル内には厳重に封印が施されており、一部の限られたATZ以外は通ることはできない」

ゴーリキー「しかし、今なら……」

マフォクシー「はい……私がいます。鍵を持っていますから、封印を解くことが、できます」

オノノクス「私は、このお嬢さん方を連れてタウンへと戻ります。残った皆さんは、火山へと向かってください、健闘を祈ります!」

ドーブル「み、皆……頑張って……」

ピカチュウ「恩に切る……それじゃあ」

ニンフィア「う、うん、ピカチュウ。……張り切っていきましょっ!!」

ピカチュウ「クイズ番組の司会みたいだな」

ゴーリキー「リキリキィッ! 火山に負けないぐらい、燃え上がって行こうぜっ!!」


ピカチュウたちはオルゴールを入手するため、火山へと向かうのだ。
 ▼ 179 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 20:05:56 ID:Ish0PJRg [74/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
〜道中〜

ニンフィア「『T-5』……オルゴールを集める旅も、思えば色々あったよねぇ。私、友だち少なかったから……こんなに友だちと一緒に活動できたの初めてのことだから……」

ピカチュウ「色々楽しかったな、そう言えば」

ニンフィア「前にドーブルが言ってたの。『始まりがあるから終わりがある』って」

ゴーリキー「筋トレだって延々と続けるわけにはいかないからな。人間世界に帰れたら、また一緒に集まれればいいな」

ナエトル(僕、空気)

ニンフィア「あ、いたんだ君」

ナエトル(喋らないだけで存在感ってここまで薄くなるものなんですね)


ピカチュウたち(+ナエトル)は、火山の頂上へと辿り着く。
 ▼ 180 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 20:06:54 ID:Ish0PJRg [75/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
〜火山 頂上〜

ピカチュウ「10まんボルトッ!!!」


レジスチル『スチ〜〜〜ッ!!!』ドサッ


長き戦いの末、ピカチュウたちは護り主を撃破した。


ピカチュウ「……遂に戦闘描写すら面倒臭くなったか」

ニンフィア「もう精神的に色々辛いのよ、きっと」

ゴーリキー「うん……? レジスチルの身体に、『003‐Regi』って掘られてるぞ。なんなんだ、これ」

ピカチュウ「俺たちの知っちゃこっちゃねぇな。さぁ、タウンに戻ろうか」

ナエトル「なぜかオルゴールを持つのは僕なんですね。……重い……」ズッシリ


こうして、ピカチュウたちはアロガントタウンへと帰還した。
 ▼ 181 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 20:08:47 ID:Ish0PJRg [76/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ニンフィアへの進化、マフォクシーとの和解、ブリガロンの義兄弟ナエトルの合流。

“創蛙”との対峙、オノノクスの助け。

──マグマランドでの旅路も、様々なことが起きた。



いよいよこの長き旅も、終盤に差し掛かろうとしている。

旅の果て……ピカチュウたちは一体なにを知るのだろうか。


………
……
 ▼ 182 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 20:09:45 ID:Ish0PJRg [77/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
〜ポケモンタウン〜

ピカチュウ「なあ、サンドパン。“創蛙”はここには来なかったのか?」

サンドパン「あぁ、来なかった。正直ここまで出番がないとわかっていれば、俺も行けばよかったよ」

ゴーリキー「ドーブルとマフォクシーは病院か。アンホワイトまでは行けそうもないかもな」

ニンフィア「ところで、あの、オノノクスさんは?」

サンドパン「あぁ、彼なら……。『ヤボ用ができました』とか言って彼女らを病院へ送り届けた後、単身どこかへ行ってしまったよ」

ゴーリキー「個人探偵さんは大変なんだな」

ニンフィア「そうだ。ハリテヤマさんはあの後どうなったかな。……ちょ〜っと、様子見に行こうか」


ピカチュウたちは道草気分で、ハリテヤマの店へと向かう。
 ▼ 183 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 20:10:30 ID:Ish0PJRg [78/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
〜ハリテヤマのちゃんこ鍋〜

ニンフィア「……今度はオクタンさんが?」

ハリテヤマ「あぁ。どこかへふらっと出かけたきり、戻って来ない。給料も渡し損ねてしまったよ」

ピカチュウ「なにが、あったんだろうな?」

ハリテヤマ「という訳で人手不足だ。もしよかったら」

サンドパン「いや、こっちもこっちで大変なんでな。すまないが、バイトにつくことはできない」

ハリテヤマ(……読まれた)

ニンフィア「でも、心配だね……」

ピカチュウ(……あのオクタン。この前)


『創蛙を──』


ピカチュウ(あの時だけ、口調が変だった気がするぞ。それに、よくわからないことを喋っていたような)

ニンフィア「じゃ、ピカチュウ。次は病院に行くよ。ドーブルたちの様子を見に行かなきゃっ!!」

ピカチュウ「あ、あぁ……」
 ▼ 184 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 20:11:28 ID:Ish0PJRg [79/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
〜ポケモンタウン 病院〜

ドーブル「遂に、アンブラックへと行くのですね」

ピカチュウ「残党狩り、だな。ATZとの決着を付けてやる」

ニンフィア「……お腹、お腹が……お腹がぁ、痛くなってきちゃった……」

ゴーリキー「大丈夫だ。お前は今朝から何も食ってない」

ニンフィア「そーいうこと女の子の前で言うの、でりかしーに欠けると思うなぁ」

ドーブル「ピカチュウたち。私とマコはこのような状態のため一緒に行くことはできませんが。……せめて、“これ”を持っていって下さい」

ピカチュウ「筆……。お前の大切なものなんだろ……いいのか?」

ドーブル「あなたたちだからこそ、預けられるのです。私以外でもこの筆は使えるはずです。……画力があれば」

ピカチュウ「まぁ、この前のような出来ぐらいなら」

そしてピカチュウは、筆を受け取った。

マフォクシー「私もこの鍵を預けます。これでアンブラックに続くダイヤード・マウンテン内の封印が解けるはずです」

ドーブル「私たちの持つ『砂』『雪』『焔』。ATZの所有する『草』『闇』のオルゴール」

ゴーリキー「勝った方が、全て揃えることができるというわけか。……面白い。俄然燃えてきたぜっ!!」
 ▼ 185 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 20:12:05 ID:Ish0PJRg [80/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
〜ブラック・タワー〜

一同の眼前にどっしりと構えるそのタワー。

かなり年季の入った建物なのだろう。歴史を物語る無数のヒビがそこには刻まれている。

黒塗りの、正にATZなる集団を象徴するかのような配色。

天に届くかとばかりに高く高く聳え立つ。


……ここに、残りのATZが待ち構えているのである。


ピカチュウ「……行くぞっ!!」


ダダッ……。


ピカチュウたちは、突入した。
 ▼ 186 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 20:13:45 ID:Ish0PJRg [81/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
《一階》 “龍司”ボーマンダ

     “雷司”サンダース

     “岩司”ウソッキー


《二階》 “虫司”カイロス


《三階》 “草司”ブリガロン
 ▼ 187 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 20:14:23 ID:Ish0PJRg [82/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
〜ブラックタワー 一階〜

ボーマンダ「んんwww 我は、“龍司”ボーマンダですぞwww 攻めて攻めて倒す以外ありえないwww」

サンダース「私は“雷司”サンダース。好きな食べ物は甘納豆だ。まぁ、勝負は甘くはしないがな」

ウソッキー「お前たち、デザートサン以来だな。じわりじわりと嬲り殺してやるよ」

ニンフィア「これはまぁ……個性豊かなポケモンさんたちがお揃いだね」

ゴーリキー「どうする? まさか三匹同時に相手をすることになるとは」

ピカチュウ「決まってる、こっちも三匹だ。各々相手をするしかしょうがないじゃないか」

ナエトル(あ。僕、戦力に含まれてないんだ……)
 ▼ 188 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 20:15:07 ID:Ish0PJRg [83/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
──その時。


???「おぉっと、アンタらの出る幕じゃないぜっ!!」


ドガッ。


ピカチュウ「!」

ボーマンダ「んんっ、痛いんですなwww
何奴ですかなwww」

サンダース「ATZに逆らおうとは。なんとも身の程知らずなポケモンたちよ」

ウソッキー「どうやら……。先に死にてぇのは、テメエたちらしいなぁっ!!」


ピカチュウ「お、お前……。いや、お前たちは……!!」
 ▼ 189 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 20:16:13 ID:Ish0PJRg [84/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
グランブル「ニンフィアよぉ、助けに来てやったぜっ!!」

ニンフィア「グ、グランブル!」

シェイミ(長老)「年寄りとて馬鹿にするなよ。奥義『シード・フレア』……見せてやるわいっ!!」

ゴーリキー「あの時の長老っ!」

ハリテヤマ「へへっ。お前たちばかり、いい目に合わせるかよっ!!」

デスカーン「宿に泊まってくれた客人に無礼は許さんぞっ! ゲーチス様に栄光あれっ!!」

フタチマル「そうでフタっ! ラフレシア、頑張るでフタッ!!」ジャババ~

ラフレシア「あぁ、今日も君の水は、最高さ……」

ハリテヤマ「こんな序盤から体力を消耗している場合ではないだろう? ここは俺たちが引き受けるから、お前たちは先へと進むんだっ!!」

ボーマンダ「んんwww」

サンダース「本気で……」

ウソッキー「俺たちに敵うと、思ってんのかぁっ!?」

グランブル「あぁ、敵うさ。少々敵を残し過ぎてしまったようだ。雑魚共の相手など、我らで十分っ!!」

ハリテヤマ「さあ、行けっ!!」

ニンフィア「本当に、ありがとうね皆ぁっ! じゃあ、私たち行くからねぇっ!!」ダダッ

ハリテヤマ「あぁ、フンドシをしっかり引き締めていけよっ!!」
 ▼ 190 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 20:17:51 ID:Ish0PJRg [85/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
〜ブラックタワー 二階〜

ピカチュウとサンドパンは二階に残り、他のポケモンたちが三階にてブリガロンの相手をすることになった。

カイロス「よくぞ来た。私は“虫司”カイロス。見ての通りの、クワガタポケモンだ」

サンドパン「しょうがない。虫司、お前を倒しここを通らせてもらうぞ」

カイロス「そう焦るな。まず言っておこう。……お前たちは、強い。まともにやりあえば、私に勝機はないだろう」

ピカチュウ「……なんだと?」

カイロス「だから……。『ム○キング』で、勝負をすることにしよう!」

ピカチュウ「ム……」

サンドパン「ム○キング……!!」

主に幼い男児を中心にヒットし、大ブームを巻き起こした…カブトムシやクワガタムシといった昆虫をじゃんけんで戦わせるアーケードゲームである。

ピカチュウ(ポケモンを知る以前、2005年辺りから約三年間ぐらいまで、本当によくハマっていた。正に生き甲斐だった。映画も見たし、漫画も集めた。一プレイ100円なんだが、10万円以上は注ぎ込んだかもしれない)

サンドパン「しかし、その後急速にブームは廃れ、ム○キングは姿を消してしまうことになる。今は、新ム○キングなるものが登場しているらしいが」

ピカチュウ「かつての思い出が一つ失われてしまうようで、本当に寂しかった。今でも気が向いたらやってるぜ。『グ○イテストチ○ンピオンへの道』ってゲームなんだが」

カイロス「なるほど、よく知っているではないか」

ピカチュウ「しかし、それはたかがゲームだ。そんな馬鹿馬鹿しい遊び、付き合ってやる必要が──」ガシャンッ

ピカチュウ「……な、なんだぁっ!?」
 ▼ 191 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 20:19:04 ID:Ish0PJRg [86/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
突如、ピカチュウたちの前に巨大な檻が降り注いだ。

カイロス「……わかるな? もう、これは『遊び』ではないのだ。れっきとした『戦闘』なのだよ」

ピカチュウ「そんなコケ脅しで俺たちをビビらせるつもりか? お前を殺した後、ここを出れば良いだけだ」

カイロス「それは、不可能なのだよ」

ピカチュウ「なに?」

カイロス「この檻は、私の『参った』という言葉に唯一反応して開かれるのだ。つまり、私を殺せば……」

サンドパン「私たちは、永久にこの檻に閉じ込められるということか。どこかのホ○ビみたいだが」

ピカチュウ「だったら、どうすればいいんだっ!!」

カイロス「わからん奴だな。だから、『ム○キング』で雌雄を決そうと言っているではないか」

ピカチュウ「……馬鹿げている……」

サンドパン「虫司め……。自分の得意なジャンルで俺たちを翻弄しようとしてやがる」

カイロス「この勝負で私が敗北すれば、この檻から出してやろう。さぁ、これを見ろ」ドンッ

ピカチュウ「こ、これは……。ム○キングの、機体……!!」
 ▼ 192 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 20:19:55 ID:Ish0PJRg [87/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
カイロス「お馬鹿な諸君にもわかりやすいように、少々改造を施してあるがな……さて、最初に誰が挑む? お好きなように決めていただいて結構だよ」

サンドパン「どうする、ピカチュウ?」

ピカチュウ「そうだな……じゃあ、じゃんけんで決めよう」

ジャーンケーン

ーーー

サンドパン「よし、俺だ。ちゃっちゃと片付けてやる」

ピカチュウ「……ちぇっ」

カイロス「…言ってくれるではないか。私が、果たして何年ム○キングをやってきたと思っている? 稼働当初から稼働終了まで、休日の全てをム○キングに費やしてきたのだぞ」

ピカチュウ「それはどうかと思うけどな……」

サンドパン「脅しと、そう受け取っていいのか?」

カイロス「自由に解釈してよろしい。さぁ、好きなカードを選ぶといい」
 ▼ 193 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 20:21:07 ID:Ish0PJRg [88/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ピカチュウ「ム○キングは虫カード一枚と技カード三枚を選びスキャンしてプレイするゲームだ。まぁ、詳しいことは(http://megalodon.jp/2016-0319-1340-30/www26.atwiki.jp/gcmatome/pages/861.html?pc_mode=1)を見てくれ」

サンドパン「丸投げだな」

ピカチュウ「ほっとけ」

サンドパン「虫か……。なんの虫を選ぼうか」

ピカチュウ「そうだな……俺の相棒はアクティオンゾウカブトだった。初めて当った強さ200だったから、凄い嬉しくてな」

サンドパン「なんだ、強さ200って?」

ピカチュウ「虫の強さは100、120、140、160、180、200と六つに分かれていて、強さ200が一番出にくいレアなカードなんだ」

サンドパン「なるほど、じゃあそのアクマオウゾウオカブートとやらを選ぼうか」

ピカチュウ「おい、名前が違うぞ」

カイロス「まぁ、私は全てのカードを所有しているからな。アクティオンか、いいだろう」

サンドパンは、アクティオンゾウカブトのカードを受け取った。
 ▼ 194 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 20:22:28 ID:Ish0PJRg [89/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
カイロス「次は、技カード三枚だ」

ピカチュウ「……ちょっと待て、サンドパン」

サンドパン「?」

カイロス「……作戦会議でもしようというのか?」

ピカチュウ「まぁ、そんなところだ。あと、頼みがあるんだが……」

カイロス「なんだ?」

ピカチュウ「俺たちがなんのカードを選んだか、アンタは見ないでくれ」

カイロス「……別に構わんが、画面を見ればどの技を選んだのかはわかってしまうのだぞ?」

サンドパン「おいピカチュウ、なにをしようと?」

ピカチュウ「いいか……」ゴニョゴニョ

カイロス「……?」

………
……
 ▼ 195 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 20:23:04 ID:Ish0PJRg [90/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
サンドパンのカード
 アクティオンゾウカブト(強さ200)

技 【グー】サマーソルトプレス(必殺技)

《相手を後方に弾き飛ばした後、相手に向かって迅速に突進して踏み台のようにして跳ね上がり、一回転後方宙返りしながら落下し、踏みつぶす》

  【チョキ】ブルロック

《相手の突進を肩をつかみながら横にまわりこんでかわし、そこから闘犬のようにはさみつけ振り回しながら締め付け投げすてる》

  【パー】ばいがえし

《相手に負けた後のじゃんけんで勝つと発動し、アカスジギンカメムシを呼んでこちらの攻撃後、毒ガスを見舞って貰う。こちらが連続で負ければ負けるほど毒ガスの威力は高まる。あいこになるとその後勝っても発動できない》

カイロスのカード
 ヘルクレスリッキーブルー(強さ200)


技 【グー】ガンガンスマッシュ

《相手をつかみあげて左右に叩きつける》

  【チョキ】クロスダイブ

《相手の攻撃をかわし横からはさみ上げ、左右に体をひねって振りかぶった後上空に投げ上げ、落ちてくるところを回転しながらダイブし、地面に押さえこみながら引きずる》

  【パー】アースクエイクスロー(必殺技)

《地面にねらいを定めてから、思いきりツノをたたきつけ、その衝撃で吹き飛んでこちらにきた相手をつかまえ遠くに投げ返す》
 ▼ 196 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 20:24:53 ID:Ish0PJRg [91/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ピカチュウ「こっちはグーが必殺技、相手はパーが必殺技、か。これは、少々厄介だな」

サンドパン「む、なにが厄介なんだ?」

ピカチュウ「必殺技はより多くのダメージを与えることができる。例えば互いに必殺技を繰り出そうとした際、じゃんけんの相性に打ち負けてるとどうなると思う?」

サンドパン「なるほど、そういうことか。相手の必殺技を喰らうわけにはいかないし、だからといい、こっちの必殺技も出したいわけだ」

カイロス「さぁ、この席に座れ」


《100円入れてね。カードがもらえるよ》


ピカチュウ「うっわ、懐かしい声」

カイロス「私が入れてやろう。カードは排出されないがな」


チャリン……。


カイロスは、硬貨を投入した。
 ▼ 197 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 20:25:29 ID:Ish0PJRg [92/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
《僕は森の妖精ポ○。僕らの森が大変なんだ! 皆、僕たちを助けて!!》


カイロス「対戦は、一匹対一匹だ。一匹が負けたらそこで終了だ」


《さあ、君のカードをスキャンしてね》


ピカチュウ「あぁ、覚えてる覚えてる。カードをスキャンするんだな。昔はこのやり方すらわからなかった」


スキャッ。


カイロス「さて、私もスキャンするとしよう」


スキャッ。


サンドパン「……」

サンドパン(『スキャッ』って擬音に、誰か突っ込まないのか……?)
 ▼ 198 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 20:26:28 ID:Ish0PJRg [93/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ポ○「ア○ー! 虫の改造なんてやめるんだっ!!」

ア○ー「フハハハ、ポ○め! 今日こそお前の命日だ!!」

ピカチュウ「この二人、五年間近くこんなことやり続けてたんだよな」


《すごいぞー、アクティオンゾウカブトだー。》パアァン

《すごいぞー、ヘルクレスリッキーブルーだー。》パアァン


サンドパン「なにが、どう『すごいぞー』なんだ?」

ピカチュウ「多分、強さ200が出るまで金銭を注ぎ込むなんてっていうことなんだろう」


そして、二人の勝負が始まる。


カイロス「10カウント内に、出す技を選べ」

《10……》

《9……》

サンドパン「よし、ぼちぼちいかせてもらおう」
 ▼ 199 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 20:27:08 ID:Ish0PJRg [94/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
《8……》

《7……》

カイロス「ああ、一つ言い忘れていた。互いの体力は、解りやすく『10』とした。通常の攻撃は『1』、攻撃技は『2』。必殺技はその2倍の『4』ダメージを被る」

《6……》

サンドパン「勝負の開始後に今更そんなことを言うのか。私の動揺を誘っているつもりか?」

カイロス「ハハ、まさか」

《5……》

《4……》

サンドパン(なにせ…奴の必殺技が『怖い』)

ピカチュウ(多分サンドパンは『グー』は出せない。カイロスが短期決戦を狙い、いきなり必殺技の『パー』を出してくるかもしれないしな。飽くまでそれは、可能性止まりだが)

ピカチュウ(となるとサンドパンが出すのは、『チョキ』か『パー』。どっちを出すのかな、サンドパンは)
 ▼ 200 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 20:27:44 ID:Ish0PJRg [95/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
サンドパン(俺が出すべきは……。奴も読めてはいるはずだ。俺が奴の『パー』を警戒していることは)

《3……》

サンドパン(ならば、ならばだが……奴は『パー』を『出さない』。いや、『『出せない』』。)

《2……》

サンドパン(となると、奴の残りは『グー』か『チョキ』。さすがに、こっちの必殺技の『グー』に負ける『チョキ』を出すとは考え難い)

サンドパン(ならば……)

《1……》

サンドパン(……これしかないっ!)


ポチッ。


そして、互いの出す技は選ばれた。

ピカチュウ「なるほど……『パー』を出したか。……なっ……」

サンドパン「……!」

カイロス「弱者が弱者なりに必死に知恵を巡らせたようだ。だが、所詮は……君の考えていることなど、私には丸わかりなのだよ」
 ▼ 201 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 20:28:42 ID:Ish0PJRg [96/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
カイロスは、『チョキ』を選んでいたのだ。


《ヘルクレス「ブオォォーッ……」ギリギリ》

クロスダイブが、アクティオンに炸裂する。

カイロス「大方、『グー』に負ける『チョキ』は出せまいと考えたのだろう。フフ、それは実に浅はかな考えだ」

サンドパン「……」

カイロス「君が私の『パー』を恐れて『グー』は出せないのなら、君は『チョキ』か『パー』しか出すことができないということになる」

サンドパン「ならば、お前が『チョキ』を選んでいたら、少なくともお前はあいこには持ち込めた。……私が『グー』を出せないと、踏んでいたのか」

カイロス「だって君、『石橋を叩いて渡る』タイプだろ? むしろ、叩き過ぎて壊してしまうような。そんな奴が、いきなり打ち負けている技を出すわけがない。私は、そう判断したのだ」

サンドパン「出だしで躓いたか、最悪だな。だが、まだ勝負は始まったばかりだ。図に乗るな」

カイロス「そうそう、始まったばかりだから……。気楽にいこうじゃないか。気楽にね」

【アクティオンの体力 8/10】
【ヘルクレスの体力 10/10】
 ▼ 202 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 20:29:22 ID:Ish0PJRg [97/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ピカチュウ「奴のヘルクレス……フルアタだな。ああ、フルアタとは、ポケモンでいうところの、技が全部攻撃技の構成のことだ」

サンドパン「ああ、奴は特殊技を一切入れていない。つまり……」

ピカチュウ「特殊技などに頼わなくとも、勝てる。そう慢心できるほど、読み合いに自信があるということか。手強い」

サンドパン「いや、案外……そこに付け入る隙があるのかもしれない」

ピカチュウ「?」

サンドパン「まぁ、そんな隙など、敵さんは出してくれないかもしれないがな」


そして、再びカウントが始まる。


《10……》

サンドパン(子供の発想だが、奴は『同じ手は再び使わないだろう』と考えているのではないだろうか)

カイロス(さぁ、悩め、藻掻け、苦しめ。果たして私の選ぶ手は、グーか、チョキか……パーか? たった三手の出し合いの単純なゲームですら、真剣勝負になり得るのだ。面白いだろう?)

《9……》

サンドパン「……私は、これだ」ポチッ
 ▼ 203 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 20:30:24 ID:Ish0PJRg [98/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
カイロス「今回は、選ぶのが早かったな」

サンドパン「余計なお世話だと言っておこうか。それより、貴様も早いところボタンを押したらどうだ」

カイロス「待て待て、じっくりと考えさせてはくれないか。あぁ、言っておくが手の動きを見るとかいったコスいことはしていないからな。安心してくれ」

サンドパン「そんなことをしていたら、真っ先に貴様の両手を圧し折る」

カイロス「ハハ、怖い怖い。では……私はこれだ」ポチッ


【サンドパン『パー』 『パー』カイロス】


ドゴォ……。


ピカチュウ「あいこ、か……。野郎、必殺技を出しやがった。グーを出していれば大打撃だった」

サンドパン「……私が必殺技を出すとでも、予測したのか?」

カイロス「必殺技を出していれば良し、こちらの必殺技に対しあいこを狙ってくるならそれでも良し。まぁ、狙いは……もっと“別”のところにあったわけだが」

サンドパン(別……?)
 ▼ 204 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 20:31:00 ID:Ish0PJRg [99/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
サンドパン(なるほど、“そういう”ことか。奴は、俺の性格を見極めていた。同じ手を二回続けて出す程の、狡猾な性格なのかどうか)

ピカチュウ(念には念を、ということか。つまり今のは捨ての一手。敢えて今は負けてもいい、そう判断したのだろう)

サンドパン(これで奴も考えるはずだ。また俺が続けてパーを出すのか、それとも……と)

ピカチュウ「……外野だが俄然燃えてきた。これがム○キングの醍醐味。読み合いに読み合いを重ね、それでも勝利するのはたったの一匹。あの頃を、思い出すな」

サンドパン(しかしこれは、たががじゃんけんのような……)

ピカチュウ(メラメラ)

カイロス「さて、次はどうするかね?」

【アクティオンの体力 7/10】
【ヘルクレスの体力 9/10】
 ▼ 205 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 20:32:39 ID:Ish0PJRg [100/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
サンドパン(奴は今、必殺技『パー』を出した。私が必殺技を出せないのをいいことにか?)

カイロス(私が『パー』を出したことを、どう受け止めるだろうか? 『グー』は出すべきではないという、牽制だと捉えるか?)

《10……》

サンドパン(私が警戒すると考えて、まさか……もう一度、『パー』は出してこないとは思うが……)

カイロス(相当迷っているらしい。私が『パー』を出すか、否か? 先刻のお前と同様のことをしてくるか、あえて?)

《9……》

《8……》

サンドパン(となると『グー』か『チョキ』。もう、受け身はやめることにする。このままでは埒が明かないからな。奴が『チョキ』を選ぶことを祈ろう)

カイロス(私の出すべき手は……)ポチッ

《7……》

サンドパン(『グー』を出す。そうだ、出すのだ。これは、『勇気』の『一撃』……!!)ポチッ
 ▼ 206 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 20:38:19 ID:Ish0PJRg [101/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
カイロス「……」ニヤッ

サンドパン(な、なんだ……笑った──?)

ピカチュウ「あっ……あぁっ!!」


【サンドパン『グー』 『パー』カイロス】


ピカチュウ「二匹とも、必殺技を……!!」


《やったぁー、ちょーひっさつわざだぁー》

ヘルクレス『グルルル……』ズガァン


超必殺技『アースクエイクスロー』を、まともに喰らってしまうこととなる。


サンドパン「クッ……」

カイロス「『自分と同じことをやることはないだろう』という甘い考え、加えて『必殺技を出したい』という焦り……。これらが合わさったことにより、このような結果を生み出してしまったのだ。お前自身が招いた現状だ」

ピカチュウ「アイツ……そこまで計算して……?」

【アクティオンの体力 3/10】
【ヘルクレスの体力 9/10】
 ▼ 207 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 20:38:57 ID:Ish0PJRg [102/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
カイロス「おやおや、さっきまでの余裕はどこに行ってしまったのかな? 冷や汗ダラダラ、表情もどことなく虚ろ……隠しても無駄だ。 君はこの私に『勝てないかも』と薄っすら考えている」

サンドパン「……言っていることがさっぱりわからない」

カイロス「そうだ、良いことを教えてあげよう。『勇気』の対義語は、『臆病』だ。君はこの私に、怯えてるんだよ」

サンドパン「勝負だと言うのに、よく喋る奴だ」

カイロス「勝負中に喋っては悪いか? むしろ、脳内が刺激され立ち回りも振る舞いも上手く行えるようになると思うがな。根拠はないが」

ピカチュウ「アイツの口を塞いだらどうなるかな」

サンドパン「多分、ケツからでも喋るんじゃないか? 根拠はないが」

サンドパン(さて……どうする)

《10……》

サンドパン(どうする……? ……どうする………?)


どうすれば、いい…?


カイロス(そう言えば、奴……。なぜだ……一つ、ほんの些細なことかもしれないが……『気にかかる』ことがある)
 ▼ 208 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 20:40:02 ID:Ish0PJRg [103/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
《9……》

カイロス「そうだ……。まだこのム○キングバトルで敗北した際のペナルティを、貴様らには言ってはいなかったな」

サンドパン「なに……?」

カイロス「ペナルティという言葉は難しかったかな? 解り易く言い直そう。……『罰ゲーム』だ」ポチッ

カイロスは、隠し持っていたリモコンのスイッチを押した。

……ジャララ。

サンドパン「!」

ピカチュウ「なっ、おい、これは……。どういうことだ虫野郎ッ!?」


サンドパンの両足が、床より這い上がってきた鎖により封じられたのだ。


カイロス「もし君が敗北したとして、素直に他と交代させると思うか? たかがゲーム、されどゲーム……負けたならば、それなりの罰が必要だと私は考えるんだ。よし、出てこい、お前たちっ!!」


『『グオオオォォーーッ!!!!』』ワササッ


ピカチュウ(え、な、なんだ……? あ、あれは、天井裏に今まで……潜んでいたというのか!?)


ピカチュウたちが目撃したのは、天井へと大量にしがみついている、虫ポケモンの集団であったのだ。
 ▼ 209 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 20:40:38 ID:Ish0PJRg [104/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
カイロス「この虫ポケモンたちは私の可愛いペットだ。数多の虫ポケモンを従え操る…それが私が“虫司”と称される所以なのだよ」

ピカチュウ「わかったぞ。貴様が俺たちに……“なに”をしようとしているのか!!」

虫ポケモンたち『あぁ〜、喰いてぇ、喰いてぇよぉ……。旨そうなポケモンが三匹も……バヒュヒュヒュヒュッ!!』

カイロス「この虫ポケモンたちは、『ポケモンの肉』しか受け付けぬように私が調教したのだ。加えて数日前から食事を抜かしてある。もう……『どういうことか』お察しかな?」

サンドパン「精神的動揺を誘っているつもりか? それは飽くまで私の敗北前提で話を進めている。……私は『勝』つつもりでいるからな」

カイロス「言い方は悪いが、この絶体絶命の状況で未だに希望を捨て切れずにいるのか? 対した根性だが、私には到底不可能なことに思えるがね」

サンドパン(……)

カイロス「さぁ、それでは手を選ぶがいい。一歩一歩破滅へと導く、“キボウ”の手をな」

《4……》

サンドパン(この鎖……並の力では千切れないな。もっとも、逃げるつもりはない。負けるつもりも。私がこの勝負に勝たなければ、私だけではない……ピカチュウにまで被害が及ぶ)

ピカチュウ(奴は、相手の思考を読み取ることにかけては天才的だ。長年ム○キングを遊んできたというのは伊達ではないか)

カイロス「考え込むのは良い。とても良いことだ。だが……カウントは刻一刻と迫っているぞぉ?」

サンドパン「集中が途切れてしまう。汚らわしい声でほざかないでくれないか」

《3……》

サンドパン(縛り付ける鎖、放たれる虫ポケモン)

カイロス「クッククク……」
 ▼ 210 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 20:41:32 ID:Ish0PJRg [105/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
カイロス(どうだぁ〜、地司。極限まで、相手を! 精神的に、追い詰めて追い詰めて……追い詰めて!! ……殺る。これが俺のやり方だ)


──ム○キングを長らくプレイしている内に、俺はある“快楽”を得るようになった。


カイロス(『やれるかも、勝てるかも!』と慢心している輩を、還付なきまでにズタボロにしてやることだ!!)


『あらら、失敗しちゃったか』→『あれ、なんで、どうして?』→『私、なにやってんだろ……』


人はたった一つ“失敗”をしたとしても、心に負った“キズ”は時間を経るにつれ回復するだろう。

だが、その失敗が立て続けに起こったとしたら?
キズが回復する暇も与えてもらえなかったとしたら?


その点、ム○キングは実に理想的なゲームだった。


カイロス(対戦相手の心と表情が崩れていく過程が……本当に楽しかった。人は心にどれだけのキズが蓄積すれば壊れるんだろうって、子どもの頃、それを自由研究の題材にしようとまで真剣に考えた程だ)

《2……》

カイロス(わかっている、お前は次に『グー』を出そうとしているな? まず『パー』は出さない。確信こそないが、長年積み重ねてきた“勘”がそう告げている。『必殺技を一回も成功させていない』という焦燥もあることだろうしな)

サンドパン「……」

カイロス「さぁ、これでゲームエンドだ」
 ▼ 211 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 20:42:46 ID:Ish0PJRg [106/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
《1……》

カイロス(あぁ、早くお前の絶望に浸った表情を見たい。ムラムラしてきた。よぉ〜し、押すぞぉ〜……『パー』を押すぞぉ〜っ!!)

サンドパン「おっと、手が滑った」ヒョイッ

カイロス「え」ビシャッ

サンドパンは、懐に忍ばせていた“なにか”入りの瓶を、カイロスに投げつけた。

カイロス「なっ、あ……甘い……。こ、これは……ハチミツウゥッ!?」

ピカチュウ「あ、この前ハリテヤマにもらったやつだ。スイーツ感覚で楽しめるコンセプトで考えた『ハチミツ鍋』が盛大にコケて、大量にハチミツが余ったからって」

虫ポケモンたち『ウオォッ、ハチミツのいい匂いだぁ〜。しかもこれは……ミツハニーが集めた極上品だな』


『『あぁっ、もう…我慢できねぇぇぇぇっ!!』』


虫ポケモンたちは、主人であるはずのカイロスの身体へと群がったのだ。


ピカチュウ「……うわぁ、悍ましい光景だ」

カイロス「え、お、おい、お前たち、…なぜ私に群がるっ!? も、戻れ……元の配置へと戻らんかぁっ!!」
 ▼ 212 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 20:43:38 ID:Ish0PJRg [107/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
《0……》

カイロス「あっ……」

カイロスがなにも押さぬまま、カウントは終了した。

ピカチュウ「あ、この場合って、ボタンを押さなかった時って、コンピューターが勝手に手を選ぶんだったっけ。確か……『相手側の手に負けるもの』が選ばれたよーな」

そして、サンドパンの選んだ手は、必殺技のグー……『サマーソルトプレス』だ。

カイロス「あ、あぁっ、あぁぁっ……。ま、待て……卑怯だ、インチキだ、策略だっ!!」

ピカチュウ「へぇ、じゃあ一つ聞くぜ。アンタの戦略は、たかがハチミツ一つで左右されるような脆いものなのか?」

カイロス「な、なにっ……」

ピカチュウ「サンドパンは言ったぜ、『手が滑った』と。それに、虫を用意したのはそちらさんだ。こちら側もウッカリしていたが、そちらさんの“過失”ということで許してくれ」

カイロス「ふ……ふざけるなっ!!」

ピカチュウ「段々と、硬い外殻が剥がれてきたようだな。薄ら汚いお前の本性が薄っすらと表れつつある。そして、俺は一つ気になることがあるんだ」

カイロス「な、なんだというんだ、それはっ!?」

ピカチュウ「さっき、お前の虫ポケモンたちがこう言っていた。“旨そうなポケモンが三匹も”と。……おかしいよな。俺たちは、『ニ匹』だぞ?」

カイロス「えっ?」

ピカチュウ「俺も随分前にクワガタを飼っていたんだ。すぐに死んじまったけどな。ある日そのクワガタに、指を噛まれたことがあったんだ。原因はなんだと思う?」

カイロス「ま、まさか……?」
 ▼ 213 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 20:44:33 ID:Ish0PJRg [108/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ピカチュウ「…ほんの少し餌をやることを忘れ、クワガタの気性が荒くなっていたからだ。大方、俺の指を餌だと思い込んでしまったんだろう」

カイロス「ってことは──」

サンドパン「この虫ポケモンたちは腹が減り過ぎて、主人すら喰っちまうかもってわけか」

ピカチュウ「お前、虫司とか名乗っておきながら……その実、現実で虫を飼ったことがないな? 虫が出てくるゲームだけ遊んで、それで虫そのものを解ったつもりでいたな?」

《やったー、ちょーひっさつわざだー》

カイロス「えっ、えっ……えっ?」

ピカチュウ「つまり、『現実とゲームをごっちゃにするなバカヤロウ』ってことなんだ」

カイロス「ばぎゃるあぁぁぁぁっ!!?」ズガァン

『サマーソルトプレス』が、ヘルクレスに炸裂した。

カイロス「えぇい、失せろ失せんかぁっ! 後で旨い餌をやるから、私の身体から離れんかぁっ!!」

『『グルルル……』』バササッ

ピカチュウ「人望……てか虫望ないな、お前」

カイロス「えぇい、こんなの認められるか……反則だっ! 虫ポケモンたちよ、今すぐコイツラに……」ペチャッ

カイロス「モゴッ……」

ピカチュウ「うるさいから、すごく粘度の高いガムテープで口を塞がせてもらった。あと、これも」ジャララッ

カイロス「うぉ、お、あぁっ、貴様ら……貴様らぁっ!?」
 ▼ 214 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 20:45:41 ID:Ish0PJRg [109/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ピカチュウは鎖でカイロスをがんじがらめにし、見動きを封じたのだ。

ピカチュウ「なんかボーッとしてたから、隙はたくさんあった。ドーブルの筆で鎖を創ったんだ。ドーブルのように上手く具現化はできないがな」

サンドパン「ただ、一つ封じていない箇所はある。……お前の『片腕』さ。勝負はまだ、続行できるだろう?そして、俺の鎖は既に解かせてもらった」

ピカチュウ「あ。あとこれは、ダメ押しって奴なのかな」

《カメムシ『やあ』》

ゲーム画面内に、カメムシが現れた。

《カメムシ『じゃ、いくよー』プゥゥッ》

カイロス「……!」

ピカチュウ「『ばいがえし』だ。さっきお前に痛いのを喰らったからな」

サンドパン「見動き取れず、頼りの虫には狙われ、俺たちの慈悲によってお前は生かされている。気分はどうだ? 殺してやっても良いが、ここから出れなくなるからな」

ピカチュウ「あと、1つ言っておく。俺たちは別に、こんなゲームなんて本当はどうでもいいんだ。純粋に100円払ってプレイする分ならこんなことはしない。ただ……今回の勝負の先には、俺たち共通の目的がある」

サンドパン「『おまえたちATZを倒して、本当の世界へと戻る。』そのためなら、俺たちは、『T-5』は……どんなことだってやるさ」

ピカチュウ「お前が持ちかけた勝負だ。せめてもの礼儀として、このム○キングバトルを形式だけでも終えてやる。……お前の敗北という形でだが」

【アクティオンの体力 3/10】
【ヘルクレスの体力 4/10】
 ▼ 215 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 20:46:20 ID:Ish0PJRg [110/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
カイロス(な、なにか押さなきゃ……)

《8……》

カイロス(カウントが終わる……終わったら敗北(まけ)る……。まけ……まけ………まけ………このわたしが…おれが)


うそだ……。

あろうことか、ム○キングで……ム○キングで………!?


カイロス(そ、そーだー、ひっさつわざだぁっ……。ひっさつわざさえ……だせば……かてる、かてるんだ……。うひゃひゃひゃ………ひゃっひゃーひゃぁっひゃっーっ!!)

カイロス「ぐびびっ、ぐびびびびっ」

ピカチュウ「……壊れたか。自分の大好きなゲームのせいで、ゲームではなく、自分の精神がな」

カイロス「もごごごご」ポチッ

サンドパン「それでもボタンを押すことは可能、と。見上げたゲーマー魂だ」

ピカチュウ「あぁ、できればブーム絶頂時に出会いたかったな。さぞかし良い好敵手になっただろうに」

カイロス(うひゃひゃ、さあっ、なにをだすんだっ!? こいつは、なにをだすんだあっっ!?)

------------------------

【サンドパン『パー』 『パー』カイロス】
 ▼ 216 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 20:46:58 ID:Ish0PJRg [111/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ピカチュウ「……あいこだぜ。だが、ヤバい。アクティオンの体力は…残り『2』。これでサンドパンは、一度足りともじゃんけんで負ける訳にはいかなくなった」

カイロス(かてるっ、かてるっ! あといっかいだ。たったいっかいでぇ……かてるんだあぁぁ〜っ!!)

【アクティオンの体力 2/10】
【ヘルクレスの体力 3/10】

サンドパン「……」ポチッ

カイロス(ずっと、きになってた。なんでださないんだろって、ずっ〜と。アイツ、なんで、なんで……)


なんで……『チョキ』をださないんだっ!?!?


サンドパン「……なんでだろうな」

カイロス(……!)

ピカチュウ「うん。てか、もういいか。こうすればいいんかな……それっ!」ボワアンッ

カイロス(え、な……なんだっ………!?)

ピカチュウが筆を用い施していた“細工”。
その化けの皮が剥がされたのだ。


《テントウムシ『アクティオンはん、ワイらが掩護しますさかい。存分にその力を奮って下せえ』》ワシャシャ


カイロス「!?」
 ▼ 217 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 20:47:35 ID:Ish0PJRg [112/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
カイロス(…アクティオンの傍らに、テントウムシ……。これは、これはっ……『あいこボーナス』ッ!?)


【チョキ】あいこボーナス

《あいこになるとこちらにナナホシテントウが一匹現れ、連続であいこになることで一匹ずつ増えていく。その後じゃんけんに勝つと、集まった分のナナホシテントウが攻撃に加わってくれる》


ピカチュウ「立ち直りの早さもピカイチ。凄いぜ、お前」

サンドパン「さぁ、選び放題だ。お前の大好きな『三択』だぞ?」

『あいこボーナス』は与えるハズのダメージ量に、直前のあいこの数の分もダメージが上乗せされる。

つまりは、このターンをサンドパンが制せば、与えられるダメージは『3』。あいこにならぬ限り、どちらが打ち勝とうとも勝敗は決するのだ。

カイロス(あの妙な筆でゲーム画面に細工を施し、テントウムシの存在をひた隠していた……! クロスダイブは特殊技はなしと安堵させるためのフェイク。だから、チョキを出すわけにはいかなかった……!!)

サンドパン「あぁ、せっかくだ。野球でも、こういうのはあるだろ? 私は今から、『押手予告』をする」

カイロス「!?」

サンドパン「私は次のターン……。『チョキ』を出す!」


カイロス「「!?!?!?」」
 ▼ 218 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 20:48:44 ID:Ish0PJRg [113/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
カイロス(チ…チョキを……? ……チョキをぉっ!?)

サンドパン「だから、俺はチョキを出すと言ったんだ。今まで『なんとなく』出していなかったしな、そろそろ押してみたくなったんだ」

ピカチュウ「そうだな、『なんとなく』チョキを押すんだよな。『なんとなく』、『なんとなく』……」

カイロス(ぬ、抜けぬけとぉ……)


サンドパンがチョキを選出しなかったのは、本来セットしていた技『あいこボーナス』を悟られぬためであった。

──『あいこボーナス』こそは単なる保険に過ぎない。

だが、敵の手を数多の経験を元に難なく予測するカイロス。
そのカイロスに対し予測外の手を隠し貫き、ここぞという局面で披露することが一筋の勝機に繋がるのではないのかと二匹は考え出した。

さて、ここに来てその作戦は、副次的な効果を生じさせる。


カイロス「コイツ、本当に、本当に……。チョキを出すのか!?」


サンドパンがチョキをこれまで出さなかったのは『あいこボーナス』のため。
……普通に考えればその通りである。


カイロス(だけど、コイツは……! いや、コイツらは……!!)

この瞬間をっ……俺がっっ、疑うのをっっっ!!!
このため、だけにっっっっ!!!?
 ▼ 219 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 20:49:44 ID:Ish0PJRg [114/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
普通に考えてコイツはチョキを出すわけがいやそれも作戦の内かもでもコイツなんか嘘は付かなさそうだしそんな見た目だしいや待て敵を容姿で判断するなどもってのほかだぞそれで痛い目に合った奴は大勢見てきたしくそあいこボーナスさえなければ一回喰らってもギリギリ耐えるおいなんで俺敵の技を受ける前提なんだてか俺追い詰められてるのかそんなまさかさっきさっきさっきさっきそうださっきたった一回必殺技を喰らったばっかりにこんなことに畜生そもそも俺本当に虫が好きなのかなんだよ虫司ってATZに入る時にあっ僕虫好きなんでム○キングやってたんであとカイロスなんで本当はヘラクロスとかがよかったけどハハハハなんて口走ったばっかりにこの虫ポケモンたちもてんで俺に懐かないしよお餌を抜いたら俺を血走った眼で睨んできたからもしやと思ったがまさか俺に襲いかかるなんてくそ脱線したさてコイツはなに出すんだミスったら負けるぞそんなのやだぞチョキかチョキ出すのか宣言通りチョキ出すのかいやここは綺麗に勝つために必殺技のグーか待てそんな裏を付いてパーなのかもなんだなんだなに押すんだ教えてくれ答えてくれうわうわうわうわ



カイロス(わあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!)


──ポチッ。

------------------------

【サンドパン『チョキ』 『パー』カイロス】

カイロス(あっ、あはっ……。あはははばばばば馬婆場嘛化碼BaVaBASヴァ♪)

サンドパン「だから、チョキを出すとあれ程言ったのに。人を信用できない奴は、気苦労が多いぞ?」

ピカチュウ「色々錯誤することが必ずしも良いわけじゃないな、アホが」


【アクティオンの体力 2/10】
【ヘルクレスの体力 0/10】


《遊んでくれてありがとう。
 またプレイしてね!!》


攻撃を受けたヘルクレスが倒れ、ム○キング勝負はサンドパン側の勝利で幕を下ろした。
 ▼ 220 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 20:50:39 ID:Ish0PJRg [115/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
カイロス「いてぇっ!」ビリリッ

サンドパン「ガムテープを剥がした。これで大好きなお喋りがまたいっぱいできるな」

カイロス「き、貴様らぁっ、こんな……こんなのインチキにインチキを塗り重ねた正にインチキ極まりないそんなドインチキコンビめぇぇぇっ!!」ガチャガチャ

サンドパン「おっと。俺たちお前と違って馬鹿の集まりだからさ。とっても大事なこと、忘れてしまったんだ」

カイロス「なんだ、それはっ!?」

ピカチュウ「この檻から脱出する手段さ。ここを出るには、どうしたら良いんだっけ?」

カイロス「ハハッハー、気が変わった。お前たちなんて、もうここから死ぬまで出さねぇよっ! てか出れねぇんだよぉ、俺が『参った』と言わない限り……テメェらは俺を殺すこともできねぇんだからなぁっ!!」


ガチャ。


一同「……」

カイロス「……」


ーーー


カイロス「あ。」
 ▼ 221 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 20:51:18 ID:Ish0PJRg [116/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ピカチュウ「さ、ここを出よう」スタタ

ニンフィア「そうだな、もう虫なんて見たくはない」スタタ

カイロス「ちょっ、ちょっと待った! 今の、今の、そ、そう、ノーカン、ノーカンだっ!! ノーカンッ……ノーカンッ……ノーカンッ……!!!」

サンドパン「こんな初歩的な誘導に引っ掛かること自体が驚きだが……。やっぱりバカだ、お前」

虫ポケモンたち『おいおい、コイツ負けちまったぞ』

虫ポケモン『やっぱ見限るべきかな、コイツ。餌は抜くし、馬鹿だし、勝負には負けるし……』

虫ポケモン『さて、腹が減ったな。とりあえず、コイツ…食べちゃおうか』


『『よし、食べちゃおう♪』』


カイロス「ボロロロロロロロロロロロウゥッ!?!?」


俺「良い感じに最後に鳴いたな。『なんとなく』って奴だ」
 ▼ 222 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 20:51:53 ID:Ish0PJRg [117/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
グチュドビャヌルズプビチドバババッ!!

カイロス「もろろあぁぁぁぁ〜っ!!」

ピカチュウ「大好きな虫だろ、た〜んと喰らいな。実際にお前を喰らうのはその虫たちだがな」

サンドパン「ピカチュウ、元の世界に戻ったら皆で新しいム○キングとやらをしないか? この一件でハマってしまったかもしれないんだ」

ピカチュウ「あぁ、近くに設置してあればいいな。俺の知ってる限りでは昔ロ○ソンにまで置いてあったぐらいだからな、大丈夫だろう」

サンドパン「さて……三階に向かおう」




先ほどカイロスの居た辺りでけたたましい断末魔が聞こえ、そしてドシャッとなにかが倒れ込む音が響いたが…もはや一同の知る由ではなかった。



“虫司”カイロス 〜撃破〜
 ▼ 223 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 20:56:37 ID:Ish0PJRg [118/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
〜ブラックタワー三階〜

ニンフィア(ピカチュウとサンドパン。大丈夫かなぁ)

ブリガロン「……さて……私は……“創蛙”から……『草』と『闇』のオルゴールを……預かっている……」

ゴーリキー「そう、つまりお前を倒せばオルゴールは全部揃うってわけだ。だからこそ、二階で変なクワガタの相手を同士に頼み、俺らはさっさとここに来た」

ブリガロン「……一つ……問いたい……。見たところ……お前は……オルゴールを……持っていない……な……?」

ゴーリキー「あ、あぁ、そうだが?」

ブリガロン「……そう……か……」

ゴーリキーが応じた、次の瞬間。


……シュッ。


ナエトル「!」

ゴーリキー(……え……なっ……えっ……? ブ、ブリガロンが……)


ブリガロンが彼らの前から、その姿を颯爽とくらまし。

…そして。


──タンッ。
 ▼ 224 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 20:59:10 ID:Ish0PJRg [119/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ゴーリキー「うっ」ドサァッ

ブリガロン「……」

ブリガロンはゴーリキーの背後へと回り。
そしてそのまま、彼に当て身を食らわしたのだ。

ゴーリキー「」ピクピク

ニンフィア「ゴーリキッ!?」

ナエトル「……!!」


巨体ながら、なんという速さっ!
加えてこの卓越した活殺術っ!!

無理だ……。
僕なんかじゃ……絶対に倒せないっ!!!


ブリガロン「……ナエトル」

ナエトル「ひっ……」

そ、そうだ、下からピカチュウさんたちが来たら……。
あ、あるいは……。

ブリガロン「……お前……頼る……のか?」

ナエトル「えっ……」
 ▼ 225 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 20:59:43 ID:Ish0PJRg [120/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ブリガロン「……私に……頼って……このポケモンたちにも……助けられて……お前は……お前自身は……どうなんだ……?」

ナエトル「僕……自身……」

ブリガロン「……お前……なにか……“最終手段”を……。……持って……いる……な……?」

ナエトル「!」

ブリガロン「……図星……だ……な。……では……それをなぜ……私に使わない……? ……いや……“使えない”……の……か……?」

ナエトル「い、いや、僕は──」

ブリガロン「……今の……たった一回……一連の私の動きを見て……。『勝てない』だとか……『無理だ』とか……。そう……考えてしまっている……だろう……?」

ナエトル「うぅ」

ブリガロン「……駄目元でも……いいん……だ。……私は……お前自身の……本気が……力が……見たい。……その……最終手段を……最後の砦として……私に……挑んでみろ……」

ナエトル「で、でも……!」


ビシュッ。


ナエトル「つっ……」

ブリガロンの素早い手刀が、ナエトルの頬をかすめた。

ブリガロン「わかるか……私が本気を出していれば……今……お前は……死んでいた。なにもしなくても……死ぬんだ……」

ナエトル「くぅっ………」
 ▼ 226 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 21:00:20 ID:Ish0PJRg [121/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ブリガロン「だったら……どうせなら……。あがいて……死ぬ方が……格好が……つくだろ……?」

ナエトル「でも、だって……どうせ、僕なんか……」


ブリガロン「「……ナエトルッ!!」」


ナエトル「!!」ビクッ

ブリガロン「……やってみるんだ……己自身で……己のやり方で……。無抵抗で殺されるのが……一番……男としてみっともない……。そこの助けは……待つな……自分で……切り拓け……」

ニンフィア(私、蚊帳の外。でも、黙ってた方が良さそう……)

ナエトル「ブリガロン……」

ブリガロン「さぁ……かかってくるんだ……ナエトルッ!!」


ナエトル「う……うおぉぉぉぉぉぉっ!!」ドッ


覚悟を決し、ナエトルは果敢にもブリガロンへと向かう。

ブリガロン「そうだ……それで……いいんだ……」

ナエトル「……ブリガロンッ、いくよっ! “いたみわけ”っ!!」ガガガガ
 ▼ 227 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 21:00:50 ID:Ish0PJRg [122/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
その様子を、ニンフィアが一匹見守る。

ニンフィア(ゴーリキー……泡吹いてるけど大丈夫かなぁ。“いたみわけ”……ナエトルとブリガロンには決定的な体力の差がある。そこをあの子は、逆に利用した)

ナエトル「まだまだだっ……すいへいぎりっ!!」スパパンッ

ブリガロン「ほう……」バッバッ

ナエトルの剣捌きをブリガロンは一つひとつ見極め、全てカットしていった。

ニンフィア(だけど、ナエトルは通常いたみわけもすいへいぎりも覚えないはず。どうしてあの子が……)

ブリガロン「……ナエトル……お前」

ナエトル「あぁ、ブリガロン。あなたには……二つ謝らなければならないことがある」

ニンフィア(……?)

ナエトル「僕はこの“手段”に踏み入ることを、恥ずかしながらあなたに活を入れられるまで躊躇してしまっていた。そしてもう一つ。僕はまた、頼ってしまった」

ブリガロン「……やはり……か……」

ナエトル「そうだよ、ブリガロン……。“これ”、さ」サッ


──ナエトルがブリガロンへと示したものとは。


ナエトル「……ゲフッ」

ニンフィア(プ……『プラズマリプレイ』ッ!!)
 ▼ 228 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 21:05:15 ID:Ish0PJRg [123/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
Word:【プラズマリプレイ】

現実世界において某会社が製造販売を行っている、コンピューターゲーム上の“改造ツール”である。

このようなツールは当然ながらゲーム元の許可を得てはいないが、流出数があまりにも多いため、半ば黙認せざるを得ない形となっている。

“改造コード”と呼称されるチートを用い、『所持金最大』や『キャラクターのステータス改竄』、『所有アイテム数の変更』といったことが手軽に行える。

その性質上、主に余暇時間をゲームに費やす小中学生に人気が高い。
 ▼ 229 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 21:05:49 ID:Ish0PJRg [124/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ナエトル「……フフッ、そうだよブリガロン。僕はこれを使って…ポケモンを、自分自身を改竄した」

ナエトル(また頼ってしまったけど…“自分自身”であなたを倒すには、借り物の力に頼る他になかったんだ……)

ブリガロン「……確かに。……お前の……既存の技は……私がお前に……教えたもの……だ……。だから……私の知らぬ技を……繰り出せば……戸惑う筈と……」

ナエトル「あぁ、そうさ」

ブリガロン「……ただ……一つ……致命的な欠点が……それには……あると……見た……」

ナエトル「……へへっ、凄いねブリガロン。お見通しか」


プラズマリプレイを用いた状態で活動を続けることにより、その身体には凄まじい負荷がかかる。

……100%オイシイ話など、あるわけがない。


ナエトル「……僕が身体に施したチートは、『身体能力の底上げ』と『通常会得しない技の習得』。これ以上は僕の身体が保たなく、今だってギリギリだ」

ブリガロン「ナエトル……」

ナエトル「まだまだいくよっ、ブリガロンッ!……次は、この技だっ!!」ポポッ

ニンフィア(……タネばくだん。放出した種を叩きつけ攻撃を行う草の技だ。でも、この技は)

ブリガロン(プラズマリプレイで会得した技ではない)

ナエトル「あぁ、タネばくだんはあなたが僕に最初に教えてくれた攻撃技だ。『だからこそ』、あなたはなんなくこの技に対して防御体制を図ることができる)

そう、『『“だから”こそ』』……!!
 ▼ 230 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 21:06:31 ID:Ish0PJRg [125/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ブリガロン「くどい……ぞ。ナエトル……。矢継ぎ早の攻撃で……私を……翻弄できる……とでも……?」ガッガッ

ナエトル「くどくなんてないんだ。全ては、“このため”の下準備」

ブリガロン「な……に……?」

ナエトル(このタネばくだんの目的は、一箇所の隙を生み出すためにあった。ブリガロン、僕はあなたの癖をよく知っている。その防御体制……実は腹部のガードが甘いんだ)


──だから。



ブリガロン(!)ヨロッ

ナエトル(腹に一発、タネばくだんを。でもあなたならば瞬時に立て直す。そう、あなたの行動をただ一つ……立て直すことのみに限定させられる!!)


正真正銘僕の全てを絞り尽くし、この一撃にかけてやる。身体能力はここまでしてもなお、僕の方が劣る。

ならばこの特大級の、あなたが未知の“最終手段”を以ってして、あなたを打ち倒してみせる!!


ブリガロン「ぐっ……」


ナエトル「ばくぅ……おんぱあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
 ▼ 231 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 21:07:10 ID:Ish0PJRg [126/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ド オ オ オ ォ ォ ォ ォ … 。


…ナエトルの放つ凄まじき音撃が、辺り一面に響き渡る。


ニンフィア「……えっ、まっ、待って! も、もしかして、私、吹き飛……やあぁぁっ!?」ビュウン


まず壁や床に亀裂が走り、そして周囲の物が成す術なく吹き飛ばされることとなる。


ナエトル(ブリガロン……。僕は、僕は……ただ、ただ……あなたをっ……)


……あなたをっっ……!!!!



ズ ゴ ガ ア ァ ァ ァ ァ … … 。
 ▼ 232 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 21:07:55 ID:Ish0PJRg [127/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
──やがて。


ゴ ツ ン ッ 。


ニンフィア「痛っ!?」

ニンフィア(……本当に、凄い衝撃だったけど……。ブ、ブリガロンは……後、あの子は……ナエトル……は………?)


「「ニンフィアさん…。」」


ニンフィア「え……」

ーーー

ニンフィア「……あ、ま、まさか……。まさか……?」

声の主がナエトルだと理解するには、彼女自身の頭の回らなさも合わさり、少々時間を有した。

……それ程までにその声は、か細く、掠れていたのだ。


ナエトル「…ハーッ。……ハーッ──」


“ばくおんぱ”に全精力を注ぎ込んだ結果。声は枯れ、頭の葉は窶れ、土の甲羅もヒビ割れた。
 ▼ 233 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 21:08:31 ID:Ish0PJRg [128/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ナエトル「……ケホッ…いいよ、ブリガロン……。なぜあなたがATZに入ったのか…なぜ僕を見放したのか…聞きたかったけど、もう……いいんだ……」

ブリガロン「……」シュッ

ナエトル(あぁ、ブリガロン……。最後にあなたと……)



……わかり合いたかった、なぁ……。


ド ス ッ 。


ナエトル「バグッ……」



──ドサッ。



ニンフィア「ナ、ナエトル…ナェ…ト…ル……? え、い、いや、やだ…そんなの……こ、この……最低、最低だっ、弟殺しぃっ!!!」

ブリガロン「……」ギリッ

ニンフィア「!」

……このままじゃ、私も殺されてしまう!

もしピカチュウたちが、ここに来なかったら……。
 ▼ 234 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 21:09:02 ID:Ish0PJRg [129/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ニンフィア(私が…私が…。)


ナエトル、ごめんね…。
だったら私がこのポケモンを倒さないと、オルゴールも奪われて……ここまでの旅が、皆の今までの苦労が……報われない……。


──その時。


「「弟を殺るとは、冷酷に徹したでござるな。しかも、自身の針で刺し殺すとは」」

ブリガロン「……“創蛙”……」

ニンフィア(そ…そうあっ!?)


ブリガロンの元に、あの“創蛙”が現れた。


ゲッコウガ「オルゴールは、どうしたでござるか?」

ブリガロン「…既に……コイツらから……奪った……」

ニンフィア(えっ……!?)

ブリガロン「……余計な……殺生は……したくはなくてな……。この女を……見逃してやっては……くれないか……?」

ゲッコウガ「それは追々考えるでござる。さて……これで五つの全てのオルゴールが揃い、後はこのアンホワイトの地へと捧げるのみ。さぁ……渡すでござる」

ブリガロン「……あぁ……今。……渡して……やる……」
 ▼ 235 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 21:09:39 ID:Ish0PJRg [130/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
──貴様に、引導をな。


……ザクッ。


ニンフィア「えっ。」

ゲッコウガ「ぬ……ぬばがぁぁあっあーあ゛ぁァッ!!! 草司…草司ィィ……お主ッ、血迷ったかぁッ!!?」

ブリガロン「もう……草司だの……ATZだの……。お前のこしらえたくだらない肩書きは……散々だ」

ブリガロンは反旗を翻し、“創蛙”の身体を刺したのだ。

ナエトル「う……うぅ……」

ニンフィア「あっ、ナエトル……あなた、無事なの……?」

ブリガロン「……私は……お前の疲労回復のツボを刺した……。だから……先ほどのダメージも…なんとか騙せるだろう……。ナエトル……今まで本当に……すまな…かった……」

ナエトル「ブリガロン……ありがとうと、そう言えばいいの? でも、よりによってなんで今……。僕を助けて……せっかく入ったATZを裏切るの……?」

ブリガロン「違うんだ……ナエトル……。私は……“このため”だけに……ATZに潜り込んだのだ……」

ナエトル「…それって、どういう……」

ブリガロン「……これ、だ」ポロッ

ニンフィア「あぁっ……これは、『草』のオルゴールッ!!」

ブリガロンは、“創蛙”からオルゴールを掠め取っていたのだ。
 ▼ 236 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 21:10:34 ID:Ish0PJRg [131/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ブリガロン「……ナエトル……話せば……長くなる。……案外短くなるかも……しれないが」

------------------------

ナエトル。お前と最初に出会った時、私はこう思ったのだ。
『なんと弱い存在だろうか』、と。

だが、そんなお前が……。

私の、この世界での、初めての『友だち』となるとは……あの頃は思いもしていなかった。

私は不器用だ。
これまで生き長らえてきた中で、十分理解している。


『『ねぇ、あのポケモン……なんか怖くない?』』

『『本当だな。顔も厳ついし殺気立ってるし……下手に近づいたら殺されるぞありゃあ……』』

ブリガロン『あの……』

『『ひぃっ! す……すみませんっ、殺さないで……犯さないでぇ〜っ!!』』

ブリガロン『……』

ただ、食料を買いに来ただけなのに……。
いつもよりにこやかにしていたつもりだったのに………。


やはり生き物は、まず見た目で他を判断するらしい。
 ▼ 237 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 21:11:08 ID:Ish0PJRg [132/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ブリガロン『ハァ……』


この世界に来てからどれだけ経ったのだろうか。

もっと愛嬌のあるポケモンになっていれば、少しはこの生活も変わっていたのだろうか。


ブリガロン(……)

そんなこんなで買った食べ物を、人目の付かない穴倉まで運び入れる。

今日はシチューにしよう。……それしか作れない。

ブリガロン『……ん?』

ナエトル『……あ』


そして、ナエトル……お前と出会ったんだ。


ナエトル『わぁっ、す、すみませんっ! 僕、ただ誰かいるのかな〜って、そんな興味本位でこの穴倉を覗いてただけでっ!!』

ブリガロン『むぅ』

ナエトル『だ、だから、食べ物を盗ろうとか、そ、そんな悪いことなんてっ、僕…なにも思ってなくてっ!! ……確かに、食べ物は摂りたいんですけど……』グウゥゥ

ナエトル『あ。』
 ▼ 238 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 21:11:39 ID:Ish0PJRg [133/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ブリガロン『……お前。……腹が……空いて……?』

ナエトル『……はひ、す、すみません、そうです……』

僕、この世界に来てから間もなく。
弱いからダンジョンでモノもお金も調達できなくて……どうしようもなくて……。

……正直、途方に暮れているんです……。

ブリガロン『……確かに……。その頭の葉も萎えてしまっている……な……』

ナエトル『すみません……だから僕、独りなんです。……初対面のポケモンさんについこんなことを打ち明けてしまったけど……困惑……しましたよね……?』

ブリガロン『……そうか、お前も……。独りなのか……』

ナエトル『は、はい……?』

ブリガロン『……私だって……お前と同じだ』

ーーー

人間の頃から途轍もない強面で、それでいて人見知り。少年時代も虐められることはなく、それどころか逆に虐められると周囲は怯えているように見えた。

専門の学校を卒業後、憧れていた鍼灸整体師の職に就いた時も、そのままの顔では患者が怯えてしまうだろうと忠告され、顔をサングラスやマスクで覆い隠した。

顔知れずだが、腕は確かだと結果的に名は売れた。
最初は整形も考えた……だが悟った。整形などしてしまったら、偽ってしまうことになると。

今まで共に付き合ってきた顔を、自分自身を偽り、そして偽りの顔で、これからの人生を育む。

……たったそれだけの、誰もが行っていることを。私の中の惚けた正義感とやらが、許さなかった。
 ▼ 240 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 21:12:48 ID:Ish0PJRg [134/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ブリガロン『い、いや……。やっぱり私は、その、ルーを買いに……』

ナエトル『さぁっ、行きましょうっ、ブリガロンさんっ! 貰いにっ、鍋をっっ、ちゃんこ屋からっっっ!!』ドスドス

ブリガロン『お、おい……。ちょっと……お前……』

こうして半ば無理やりに、私はそのちゃんこ屋に行くことになったのだ。

------------------------

──ガララッ。

オクタン『いらっしゃいぃん。……おや、えぇと、あぁそうだぁぁん……アンタ、ナエトルじゃないかぁぁん。この前無銭飲食したばっかりのぉぉぉん』

ナエトル『あ、あはは……。その、もう詫びの掃除も洗い物も終わったことですし……』

オクタン『で、なんだいぃぃん。今度こそウチの鍋料理を食べに来たってのかいぃぃぃぃん』

ナエトル『あ、いえ、実はですね……』

ナエトル(ブリガロンさん……どうしてそんな格好なんかしてるんですか?)

ブリガロン(ちょっと……事情……がな。しかし……鍋をタダで貰おうなど……虫が良すぎるだろう……)

オクタン『おや……アンタァン』

ブリガロン『うむ?』
 ▼ 241 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 21:13:29 ID:Ish0PJRg [135/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
オクタン『そうん、そこのサングラスにマスクのいで立ちのお、いかにも不審者っぽいアンタだよぉぉぉんぅぅ』

ナエトル『あ、このポケモンですか? えぇと、成り行き上なんですけど、このポケモン、ブリガロンさん……鍋料理をしようとしたんですけど……』

ブリガロン(も、もういい、ナエトル……。恥ずかしいから……鍋は他のところで……)

『あぁ、お客さんが来てるのかい。』ガチャッ

オクタン『おや、ネーリドミの探索はもう終わったのかいぃぃん?』

どうやら、店の主人のハリテヤマが帰って来たようだ。

ハリテヤマ『…最近は森で採れる物資も減っちまったよ。Aなんちゃらとかいう集団が、至るところのダンジョンにはばかってやがるもんでな』

ブリガロン『……ATZのこと……か』

ナエトル『え、えーてぃーぜっと?』

ブリガロン『…ポケモンのタイプごと……計18名のメンバーから成り立つならず者たちの集団だ……。詳しいことは俺もよく知らないが……ダンジョンの物資を独占したりと……あまり良い噂は聞かないな』

ハリテヤマ『ハハ、そこまで知っていれば十分だな。そして関係ないが様子を見るところ、鍋がほしいそうだ。ここに使い古しの鍋がある。……持って行け』

ブリガロン『あ、あぁ……。い、良いのか……そんな気前良く……』

ハリテヤマ『丁度この鍋は捨てようと思ってたしな。それに、鍋好きが増えるのはいいことだ』

ナエトル『あ、ありがとうございますっ!!』



オクタン(……)
 ▼ 242 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 21:14:05 ID:Ish0PJRg [136/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
〜スーパーマーケット 黄金屋ショップ〜

ブリガロン『……なぜ、お前まで同行するのだ』

ナエトル『ブリガロンさん、鍋とかしたことないでしょう? さっきの素振りでなんとなくわかりましたよ』

ブリガロン『……それが……どうしたと……』

ナエトル『だから、一緒に具材買いましょうっ! 僕、なんどもしたことありますしっ!!』

ブリガロン『確かに、したな……無銭飲食を』

ナエトル『あっ、いえっ! 僕あの時ホント来たばっかりで、鍋の匂いに誘われて……後からその……お金を持ってないんだってこと、気づいて……』

ブリガロン『…お前のことを一つ理解した。『抜けてる』、と……』

ナエトル『さ、色々買いましょうっ! 鍋って具材を選んでる時が一番楽しい気がしますっ!!』

ブリガロン『……お前が……代金を払ってくれるのか?』

ナエトル『あっ! い、あ、その、僕、お金、だから……なくて……』

ブリガロン『……まぁ、金はあるから……具材選びを手伝って貰おうか……』

ナエトル『はいっ、任せてくださいっ!! えぇと、シイタケ白菜モヤシに豆腐……そうだ、シメに鍋用の中華麺を……』
 ▼ 243 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 21:15:10 ID:Ish0PJRg [137/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ブリガロン『俺はどちらかというと、雑炊の方が良い……』

ナエトル『雑炊ですか……あんまりしないなぁ。じゃっ、間を取ってうどんはどうです?』

ブリガロン『……なんでそうなる』

ナエトル『えー、じゃあこの際全部ブチ込みますっ? 色んな味楽しめそう、炭水化物ばっかだけど』

ブリガロン『それはまぁ……買い物の締めにしておこう』

ナエトル『…あ、そうだ、この長ネギも……』

ブリガロン『すまないが……俺はネギが嫌いなんだ……』

ナエトル『あっ、そうなんですかっ!?』

ブリガロン『ネギも、タマネギも…特にタマネギだが……。味とかじゃなく……あの噛み締めた食感と後々まで残る風味。……こんな大の男が情けないが……ダメなんだ』

ナエトル『へぇ〜、意外だなぁ。……僕も嫌いなんですっ、ネギッ、大嫌いなんですっ!!』

ブリガロン『……え。じゃあどうして、ネギを……』

ナエトル『答えになってませんけど。ブリガロンさん、ネギをなんだか怪訝そうに見つめた気がしたから』

ブリガロン(……そう、見られていたのか。意識はしていなかったが……)

ブリガロン『……だ、だが。俺は……サングラスを……』

ナエトル『はい、だからちゃんとした確証もなくて、結局は“そんな気”止まりだったんです。だからちょっと、はっぱをかけたというか。エヘヘ……。草ポケモンだけに……』

ブリガロン『……参ったな……。まさか、考えを見透かされるとは……』
 ▼ 244 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 21:15:45 ID:Ish0PJRg [138/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ナエトル『何かが嫌いって、別に恥ずかしいことじゃないと思うんです。ネギ抜きの鍋、いいじゃないですか! サビ抜きの寿司、ピクルス抜きのハンバーガー、福神漬け無しのカレー。僕は大好きですっ!!』

ブリガロン『……ハハハ。確かに……ポケモンそれぞれ…そうなのかもな……』

ナエトル『あ、今笑った……ブリガロンさんっ!!』

ブリガロン『え……?』

ナエトル『ブリガロンさん、全然笑わないからさ。根暗なポケモンなのかな〜って、勝手に思っちゃってて。でも、笑えるんですね。しかも、とっても良い笑顔っ!!』

ブリガロン『笑う……』

ナエトル『ええ、笑ってますよ! そうだ……もうそのサングラスとマスク、取りましょう!!』

ブリガロン『な……。それはちょっと…恥ず──』

ナエトル『風邪も引いてないのに、目に障がいもないのに、そんな格好はやっぱ変ですから! 取りましょう、取っちゃいましょうっ!!』

ブリガロン『ま、待て……。そんな、強引に』


──ババッ。


そして俺は、素顔をナエトルに晒すことになる。
 ▼ 245 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 21:16:18 ID:Ish0PJRg [139/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ナエトル『あ。ブリガロンさん、あなたの顔……』

ブリガロン(……コイツも。俺の顔を見て、げんなりしたのだろうな)

ナエトル『……すごく、男前じゃないですか!』

ブリガロン『え。』

ナエトル『あ、気になります? はい、ここに手鏡ありますからっ!!』

ブリガロン『……』ジロッ


俺の、今の顔…。
…朗らかになっている…?


ブリガロン(今、笑ったからか……? 俺、こんな顔も…できたのか……?)

ナエトル『ど、どうしました……ヒビでも入ってましたか?』

ブリガロン『……なんでもないんだ……ナエトル』


俺は……もしかしたら少し。

ほんのちょっぴりだけど……変われる、か………?
 ▼ 246 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 21:16:48 ID:Ish0PJRg [140/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
──その僅か数秒後。


『『なんだぁ〜、オメェ。ふざけるんじゃないぜっ!!』』


店員『ひっ……』

ナエトル『な、なに……?』

客が店員に対し、いちゃもんをつけているようだ。

ウツドン『おいは菜食主義者で、ここの野菜の品質を大いに評価しているんだ。だからこのダイコンを買ったわけ。それがおい……この葉の部分に虫食いがあるじゃねーか!!』

ナエトル(そもそもウツドンって虫を食べるポケモンだったような。)

店員『す、すみませんお客様、今すぐお取替えます……』

ウツドン『いーや、おいは精神的に苦痛を負った。知ってるよな、ATZ。その恐ろしさも。……おいはATZの“草司”だぞぉ〜っ!?』

店員『A……ATZ。……あ、あの……有名な……!?』


ザワ・・・ ザワ・・・


ブリガロン『まずいぞ……客たちがざわついてる。……アイツを追い出さなければ、買い物もできない』
 ▼ 247 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 21:17:26 ID:Ish0PJRg [141/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ウツドン『ん? ……なんだぁ〜、オメーら!!』

そのATZのウツドンは、こちら側を睨みつけ怒声を浴びせかける。

ナエトル『え……? オメーらって……』

ウツドン『なにとぼけてるんだぁっ! オメーらだ、そこのオ・メ・ー・らっ!! オイに……ガンを飛ばしやがったなぁっ!!?』

ナエトル『なにっ……?』

ブリガロン(……先に仕掛けてきたという既成事実……正当防衛になるか……)

ウツドン『ちょうど良い……オメーら二匹共草ポケモンか。このダイコンの代わりにオメーらを喰ってやるから、覚悟しとぉやーーっ!!!』ドビュッ

ウツドンはこちら側に対し、口を拡げ襲いかかって来た。

ブリガロン『……ふぅ──』

ウツドン『まずはオメーからやぁっ! ……往生せいやぁっ!!』ドボシュ


──グシャッ。


ナエトル『わぁ……』

ウツドン『ながっ……オ……オ…メ……ェ………』


ブリガロンはウツドンの口腔内へ、巨大な針の盾をブチかましたのだ。
 ▼ 248 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 21:18:03 ID:Ish0PJRg [142/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ブリガロン『……ニードルガードは、なにも…防御だけに用いる技ではない……』

ウツドン『のぶがら……』フラッ


……ドドォン……。


ナエトル(あ、圧倒……的……。す、凄い……強いっ……!!)

周りのポケモン皆、言葉を失っていた。

ブリガロン『……さて、誰か……通報してくれ……。買い物を続けたいんだ』
↓返信


──その時。


『『おやおや、草司さん。ATZともあろう方が…なんという体たらくでしょうか』』


ブリガロン(!)


…ボワンッ。


ナエトル『なっ……なんだ……? お前っ!?』
 ▼ 249 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 21:18:39 ID:Ish0PJRg [143/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
カラマネロ『おっと、自己紹介が送れました。私はカラマネロ。ATZがひとり、“超司”と呼ばれるものでございます』

ウツドン『お、おぉっ、超司……良い所に……』

カラマネロ『…お黙りなさい、この……雑草風情が』

店員『……え? 身体が、勝手に──』

ウツドン『ちょっ、おい、ま、嘘だろ(ボビュッ


ウツドン『  ぐ  べ  』


ドシャッ。


ナエトル『なっ……』


店員の身体がぎこちなく動き出し、持っていた包丁で、ウツドンの身体を真っ二つとしたのだ。


客『『きゃ……きゃあ〜っ!!??』』

しんと静まり返っていた空間が、再び彩られた。

カラマネロ『敗者など、我が組織には不要。こう償う他に、仕様がないでしょう』

ナエトル『お、お前……。店員を操って……? ウツドンは、お前たちの仲間なのに……』
 ▼ 250 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 21:19:13 ID:Ish0PJRg [144/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
カラマネロ『……フフ、仲間、ですか……。本当に、便利ですよね』

ナエトル『……?』

カラマネロ『“ナカマ”、“トモダチ”、とかね。育った環境、培った性格、好きな俳優、嫌いな食べ物。個々によって全然違う癖して、そしてなぜかそんな者たちほど、そういった言葉で結束したがるのです』

ブリガロン『……確かにお前の言うことも一理ある。『友だちだから一緒にやろうぜ』とか……『仲間だろ、助けてくれよ』とか……その言葉の意味が安っぽいものになっているということは、否定はできない……』

カラマネロ『カラカラ、わかっているではありませんか。そう……私は私の所属組織においても、ナカマだからといって心を許した相手など誰一匹とていませんよ』

ブリガロン『……だから、制裁を加えることにも…躊躇はしない……か』

カラマネロ『……それより、そこの薄ら汚い死体の分。ATZ内に欠番が出てしまいましたねぇ』

ナエトル『な、なんだ……僕たちを恨んでいるのか!? 殺したのはお前自身だぞ!?』

カラマネロ『いや、そういう意味ではなく……。いますね、草ポケモン。新たな“草司”として適任が』チラッ

ナエトル『え、ま、まさか……!? でも、僕……弱』

カラマネロ『そう、あなたですっ!! そこの……イガグリニードルスキンヘッドさんっ!!』ビシッ

ナエトル『え。』

ブリガロン『……俺の、ことか……』
 ▼ 251 ュウ@メガバングル 17/03/28 21:19:16 ID:NpRDE51E NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ちょっと追いつかないからゆっくり更新しても大丈夫ですよ
 ▼ 252 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 21:19:45 ID:Ish0PJRg [145/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
カラマネロ『先程拝見したあなたの戦闘能力。その抜きん出た能力があれば、ATZ内においても相当の地位に登り詰めることが可能でしょう』

ブリガロン『俺は……自ら悪党に成り果てようと思わない』

カラマネロ『そうでしょうね。そうおっしゃられるかなとは思ってました。……ちょっと、失礼』カキカキ

ナエトル(なんだ……?)

カラマネロは懐から紙とペンを取り出し、なにかを書き始めたようだ。

カラマネロ『えぇと、こんな文面でいいかな。差し上げますよ。読み終わりましたら、ツルを折るなりケツを拭くなりなんなりとご自由に』サッ

ブリガロン『……』

ブリガロンは、カラマネロから文書を受け取った。

カラマネロ『では、私はこれで。警察なり救急隊員なり訪れるでしょうから。いいお返事を、期待しています。明記してある私のアドレスにメール下さいね』


──シュッ…。


カラマネロの姿が、たちどころに消え去った。


ブリガロン『……ナエトル。面倒ごとになる前に……ここを出よう。別の所で買い物し直しだ』

ナエトル『あっ、うん……』


ナエトル(今の手紙のこと、なにも、言ってくれない……)
 ▼ 253 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 21:20:16 ID:Ish0PJRg [146/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
……それから、ブリガロンと僕の共同生活が始まった。

“共存”だったのかもしれない、あるいは。


ナエトル『ブリガロンー、卵焼きできたよー』

ブリガロン『…凄いな、ナエトル。俺も……作ったのだが』

ナエトル『へぇ、スクランブルエッグだ! ……こんな緑っぽい料理だったっけ。』


僕はブリガロンに、知っている限りの知識を教え。


ナエトル『僕は……ナエトルだあぁぁっ!!』ビリリリ

ブリガロン『朝っぱらから……うるさいぞ。なにをやってるんだ?』

ナエトル『僕、弱いからさ。せめて、声を大きくして相手を威圧しようと』

ブリガロン『……今度、俺が色々技を教えてやる。そういえば、今日もタウンに新参がやって来た。女の子のイーブイだったのだが──』


彼からは、生き延びるための数々の体技を教わった。
 ▼ 254 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 21:20:52 ID:Ish0PJRg [147/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
〜ある日〜

ブリガロン『……ナエトル…お前は、まだまだ弱いな』

ナエトル『え……酷いよ、ブリガロン! 僕だって、あれからいっぱい力をつけたんだからさっ!!』

ブリガロン『わかってる、わかってるよ』

ナエトル(ゼッタイわかってない)

ブリガロン『……ナエトル。いつか、絶対に、還ろうな』

ナエトル『ん?』


僕の覚えてる限りでは、それがブリガロンとの最後の言葉。
その後、僕一匹となった家にあの手紙が残された。

──そして、今。


------------------------

ニンフィア「えっ……」

ブリガロン「……。悪手……だったと……」フラッ

ナエトル「ブリガロンッ!!」


ブリガロンが刺した“創蛙”は、人形であったのだ。
 ▼ 255 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 21:22:23 ID:Ish0PJRg [148/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
>>251
書き溜めを一気に投下しようとしたので、すみません


「「クッククックー。アテが……外れたでござるなぁ……」」


ニンフィア「……その馬鹿みたいな笑い声!?」

一同の周辺に、“創蛙”の声が響き渡った。

ゲッコウガ「……よもや拙者が忍者だということを……忘れたわけではあるまいな? 万一を想定し、忍法『みがわり』の術にて拙者の影武者を創り出しておったのだよ」

ブリガロン「……さすがは、“創”蛙。……つまり、“これ”は……そう……いう……」ドサッ


ブリガロンが盗み取ったのは、“創蛙”が創り出した偽の“毒”のオルゴールだったのである。結果、ブリガロンの体内へ毒が溶け込み侵入。

屈強なポケモンであれど、“内臓”まで鍛えることは不可能なのだ。


ゲッコウガ『……残すはお主らでござるな。早く、オルゴールをよこすでござるぅ……』

ナエトル『あわわ……』

ニンフィア「もう……ダメ、なの……?」


──その時。
 ▼ 256 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 21:42:36 ID:Ish0PJRg [149/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
──プシャアァァァァッ!!(ガンッ


ゲッコウガ『!?』


「「痛いっ!?」」


ニンフィア「そ、その声、は……」

階下より水しぶきが吹き上がり、床穴から三匹のポケモンを押し上げたのだ。

……約一匹、勢い余って天井に頭を打ち付けた。

ピカチュウ「や、やぁ……」フラフラ

サンドパン「水、嫌いなのに」

ドーブル「私も合流しました。万全とは行きませんが、戦陣に加わります」

ニンフィア「みんなっ!!」

ゴーリキー「全員集合したな、久しぶりに」

ニンフィア「あっ、起きてたんだ。……えっ」(/ω・\)チラッ


──ゴーリキーは、全裸体であった。
 ▼ 257 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 21:44:46 ID:Ish0PJRg [150/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ニンフィア「……なんで、脱いでる……の?」キョトン

ドーブル「一回見たことはあるので、今更どうこう言うつもりはないですが……」

別にゴーリキーは勇者ではないので、赤面はしなかった。

ゴーリキー「この脱いだパンツは、纏う者の力を抑制する能力を持つんだ。つまりは力を身体周辺へと留め置く。俺は奴(ブリガロン)にヤられる瞬間にパンツを脱ぎ放ち込められていた力を局地的に開放防御することにより気絶した振りをして機を伺っていたんだ」

ピカチュウ「長ったるいけど、つまりパンツで防御したと。まぁ、後は、フザケた“創蛙”を倒して万々歳ってことだ。ここまで来るの長かったんだからな。直に終わらせる!!」

ゲッコウガ「フ、フザケたとはどういうことでござるかっ!? 第一拙者が果たしてどこに潜んでいるのか、お主らにはわからないクセにッ!!」

ピカチュウ「……対策があるぞって顔してるけど。なんかしたのか? アンタ」

ブリガロン「……。う……あぁ、そうだ」

ゲッコウガ「?」

ブリガロンは針整体師。
職業柄、相手のツボを見図ることに長けている。

尚且つポケモン世界にて戦闘を繰り広げた経験から、治癒目的以外のツボだろうと計り知ることが可能となったのだ。

ブリガロン(“創蛙”は姑息で用心深い性格。そう離れた位置には奴はいない。……実際、いな“かった”)

ゲッコウガ「ぐ……ぐがぁばっ!?」バキャッ

ニンフィア「あ。」


“創蛙”が、天井を突き破り落下した。
 ▼ 258 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 22:50:30 ID:Ish0PJRg [151/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ゲッコウガ「なぜ……」

ブリガロン「お前……先ほど……身代りを解除する前……。舌で……俺のジュエルを……回収したよ……な。その時に……それ、だ……」

……ATZ内に信頼など無きことは、彼自身もまた良く理解していたのだ。
前任のATZメンバーを容赦なく切り捨てた、あの時から。

ゲッコウガ「……なるほど。身代りの動きを封じ込まれたら、拙者はジュエルを奪えなくなる。それで……この“紐付き”の針を我が舌へと差し込んだか」

ドーブル「その紐を辿って行けば、彼の位置が把握できるというわけですね。さぁ……ピカチュウ」

ピカチュウ「あぁ……この紐を手繰り寄せてやれば……」

ピカチュウ(……疑問が──)

ゲッコウガ「……フン」

ニンフィア「え?」

ゲッコウガ「だったらもうこんな舌。最早無用の長物でござるな。舌っ足らずになろうとも仕方がない。……フンゥウッ!!」ブチッ

ニンフィア「!?」

ゴーリキー「わっ…なんだぁっ!?」


“創蛙”は自身の舌を、あろうことか、噛み千切ってしまったのだ。
 ▼ 259 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 22:51:09 ID:Ish0PJRg [152/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ピカチュウ(確信に変わったぞ、疑問がな……ドーブル、あの鏡をッ!!)

ドーブル(えぇ、相変わらずゲームが違いますが……)

ゲッコウガ「クッククククー……」

ゲッコウガ(その舌を動かせ……同胞)

???(はぃいぃ……)


ピカチュウ「「……ラ○の鑑ッ!!」」ピカァッ


ゲッコウガ「!!?」


------------------------


「は……はわわわぁ……」


ゴーリキー「コ、コイツは驚いた──」


メタモン「ひぃぃ、す、すみませっへぇぇぇ〜〜んっ!!」


“創蛙”の正体は、複数のメタモンの集合体であったのだ。
 ▼ 260 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 22:52:08 ID:Ish0PJRg [153/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ニンフィア「ど、どういうこと……」

ピカチュウ「何がなんだかわからないって顔してるんで、全部説明してやる」

------------------------

『“創蛙”なんてヤツが、顔を見られるなんて』

あの時の疑問は、『奴が自由自在に姿を変えられるとしたら?』という疑問に発展した。

『ゲッコウガ』という偽りの姿に自分を変幻させ、手配書もその姿で固定させておけば、水面下での活動が、かえって行いやすくなる。

別のポケモンに姿を変えるだけでいいんだからな。“創”とは、お前の場合、そういう意味だった。

……後は変身を解く道具を具現化し、お前に浴びせることが、答え合わせ。

大方変身したアーボックかなんかを身体に忍ばせておけば、毒を創り出すことも可能。舌もそういうことだろう。

ーーー

オノノクス「よくぞ、そこまで辿り着きましたね」ザッ

ピカチュウ「……オノノクスさん」

下の階より、あのオノノクスが現れたのだ。

オノノクス「私とまったくもって一緒の解です。よもや“ソウア”の名を用いるとは。……ここまで、汚して下さるとは」

メタモン「……あわわわ」

ピカチュウ(名前を、汚す──?)
 ▼ 261 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 22:53:30 ID:Ish0PJRg [154/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
オノノクス「……“魂喰”ッ!!」シュゴォ

メタモン「あぐぁぐっ!?」


なんとオノノクスは、メタモンの身体を鷲掴み、そこよりメタモンの生気を吸い取っているのだ。


メタモン「ほわぁ……」ドサッ

ミイラ体となったメタモンが、崩れ落ちた。

ニンフィア「オノノクス……さん……?」

オノノクス「一つ、良いことを教えておきましょう」



オノノクス「「……私が、“創亜”だ」」



一同「!!?」


──その時。


「「久しぶりだな。“スノ”よ。俺のことを、覚えているか?」」

ピカチュウ「そ、その声はッ!?」
 ▼ 262 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 22:58:18 ID:Ish0PJRg [155/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
サザンドラ「……」

ニンフィア「サザンドラッ!?」

サザンドラ「貴様の所為だ。このインチキミイラと俺が仲間だという記事をでっち上げ、俺を追い込んだのはな」

オノノクス「……“サド”、遂に──ここまで」

ニンフィア「サドと……スノ。……!」


次の瞬間、ニンフィアの脳裏に、再びとある記憶がフラッシュバックする。


オノノクス「ここまで付き合ってくれたお前たちにも、この女が感じているエピソード。……語っておこうか」

ピカチュウ「どういう……こと……」

------------------------

………
……
 ▼ 263 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 22:59:46 ID:Ish0PJRg [156/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
〜数年前 イッシュ地方〜

サド(サザンドラ)『……ポケモンだけの、楽園を?』

スノ(オノノクス)『そうだ、相棒。真にポケモンが好きなトレーナーを、、ヴァーチャルの世界へと来迎する。そして、理想郷を創り上げるんだ』

サド『そんなことが、できるのか?』


このスノという男は、俺、サドの、トレーナーとして相棒だった男だ。

……しかし。とあるトレーナーに敗北し、ポケモンを失い、トレーナーであることを放棄した。
思えばそんなことがきっかけで、スノは変わってしまった。


スノ『空間研究所のとある研究員に、夢の狭間で用いているものを応用した技術を提供してもらえることになったんだ。管理者は俺だ。お前にも来てほしいのだ』

サド『……あ、あぁ』


要するに、人工的に創り出した空間に、希望者を募りポケモンへ転身してもらい、永住してもらう。
『ポケモンパラダイス』プロジェクトだ。

今思い返せば、下らないにも程があった。偽りの世界に人々を閉じ込め、なんとなる。後遺症として、元の世界の記憶も徐々に失われていくというのに。


……この時、コイツを止めることができなかったことが、俺の最大の罪だ。
 ▼ 264 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 23:00:26 ID:Ish0PJRg [157/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
〜旧アンホワイト(後のアロガントタウン)〜

サザンドラ『……』

俺はサザンドラとなりて、『パラダイス』に加わった。
しかし、そこで俺が見たものは。


ポケモンたち『おい、ここはどこなんだ!!』

ポケモンたち『気づいたら、この世界に──』

ポケモンたち『お前も、あの“声”を!?』


サザンドラ(話が、違うじゃないか……)


スノが管理者の権限を乱用し、あちらこちらのポケモントレーナーに呼びかけ、プロジェクトに勝手に引きずり込ませていた、おぞましき光景であった。

……そして。


ニンフィア『あ、スノさん……これは一体ッ!?』

サザンドラ『……お前まで……』


このニンフィアは、イブ。俺のイトコの女の子。

つまりは、俺の身内までもが、スノに────
 ▼ 265 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 23:01:32 ID:Ish0PJRg [158/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
※↑スノはサドの間違いです

俺は、イブと共に、スノの説得に向かった。


……しかし。


カラマネロ『カラカラカラ……サド。お久しぶりですねぇ』

サザンドラ『……ロネか?』

かつて俺、スノの幼なじみ、そして友だちであった男。
空間研究所の職員であり、金銭を使い込む不正を働き、研究界を永久追放された男。

サザンドラ『貴様が、スノに技術を提供した…』

カラマネロ『カラカラ、その通り。そしてスノさんは、もうあなたたちには会いたくないそうですよ……』

サザンドラ『!』

カラマネロ『だから、お引き取りを──。ねぇ、ゲッコウガさん。やっておしまいなさぃっ!!』

ゲッコウガ『あぁ、カラマネロ。我らアクトーズ、悪事のためならなんでもやるでござるっ!! ……毒舌ッ!!』

ニンフィア『えっ……』

サザンドラ『イブッ!!』


……そのアクトーズが、後のATZである。
 ▼ 266 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 23:02:16 ID:Ish0PJRg [159/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
………
……


カラマネロは、またもや悪の道に走ってしまっていたようだ。
俺は攻撃を受けたイブを抱え、逃げ帰ることしかできなかった。

…もっと、この世界で修行し、力をつけなくては。


イーブイ『……ケフッ!』


毒の攻撃を喰らった影響か、イブの身体はイーブイへと退化してしまっていた。

サザンドラ『大丈夫か……イブ……』

イブの看病を続けたが、彼女は2、3日、嘔吐や下痢を繰り返した。

だがその後、イブは回復を遂げる。
大方毒に対し……免疫がついたのだろう。

------------------------


《イブ……イブよ……》


イーブイ(な、なに……あの時の……声?)

私の脳内に、声が響き渡った。
 ▼ 267 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 23:05:53 ID:Ish0PJRg [160/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
《サザンドラにこれ以上迷惑をかけたくなければ、我々に協力しろ。この先、我らに相反する対抗勢力が生じた際に、お前の力が必要になる》

イーブイ『どういう……こと?』

《お前の記憶を消去し、その勢力に潜り込ませ、動向を伺うのだ。弱いお前は良い捨てゴマになるのだよ》

イーブイ『はっきり言うんだね……私が…弱いって……』


でも、もうこれ以上。
サザンドラに迷惑をかけたくない──


イーブイ『……』


私は導かれるように、その声の方へと向かう。


------------------------


サザンドラ(イブ……)


その後オノノクスは、個人探偵と肩書を名乗り、俺のことを追い込んでいった。

……対抗勢力とは、俺の他に、お前らのことだろう。
 ▼ 268 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 23:07:04 ID:Ish0PJRg [161/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
“創蛙”と呼ばれるのは、創り出し者だから。元々その名称は、“創亜”だったのだ。

この世界を破壊するために、偽りの太陽と月がこれ以上輝きを増さないために、俺はここで……スノとの決着をつけなければならないっ!!

------------------------


ピカチュウ(思い出した……イブ)

ニンフィア(……この、ピカチュウは──)


サザンドラ「お前との決着は、どこで──?」

オノノクス「あぁ、それについてはもう、用意はしている」

サザンドラ「……準備の、よろしいことだ」

オノノクス「……五つのオルゴールよ、天を開けッ!!」


コオォォ──


一同「!!」


オルゴールが音を奏でると、天井より、一筋の光が差し込んだ。


オノノクス「管理者の間、“零の世界”。お前との闘いの舞台に、ふさわしいだろう?」
 ▼ 269 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 23:08:25 ID:Ish0PJRg [162/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
オクタン「えぇ、正にその通りぃぃぃんぅ」ザッ

ピカチュウ「……オクタンッ!?」

オクタン「おっと、姿を解くことを忘れていました。そして口調も……。やはり演技というのは、難しいですねぇ」ボワンッ


カラマネロ「カラカラカラ……」


一同「!」


……オクタンは、変身していたカラマネロであったのだ。


カラマネロ「タウンの動向を伺うためとはいえ、あの贅肉バカを相手にするのは、しんどかったですよ」

ハリテヤマ「だ、誰が贅肉バカだぁっ!?」

ニンフィア(あ、来てたんだ……)

カラマネロ「では……おっと丁度いいですねぇ。この二匹で……カラカラカラッ!!」ヒュンッ

ニンフィア&サンドパン「!?」

ピカチュウ「……お前らッ!!?」


カラマネロの放出した謎の光が、ニンフィアとサンドパンの二匹を襲ったのだ。
 ▼ 270 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 23:10:22 ID:Ish0PJRg [163/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ニンフィア「っ……」

サンドパン「ぐぅ──」

カラマネロ「ピカチュウさん、あなたにも来てもらいますよ。あなたも『対抗勢力』だからだ。この方たちは、その人質です。念には念を……ね」

ピカチュウ(思い出したんだ! ニンフィアは……いや、イブは……)


ーーー


イブ『……じゃあね、また……会えたらいいね──』

俺『うるさい! お前なんかと、もう会うもんかッ!!』


------------------------


トサの一件においてポカブが死んだことでケンカ別れした、俺の友だちだったんだッ!!


ピカチュウ「イブッ、トサッ!!」

ニンフィア「……」ピュイィッ

ピカチュウ「!?」


ニンフィアは、ピカチュウに“ムーンフォース”を放った。
 ▼ 271 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 23:11:43 ID:Ish0PJRg [164/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
カラマネロ「そうそう。彼らには洗脳を施しましたよ。あのゴーレムたちを創り出したのも私。洗脳を施したのも私。お手の物ってわけでしてね」

ピカチュウ(レジロックのような……)

ナエトル「そうですピカチュウさん、ソイツの洗脳は前に一度目にしたことがあります! たかがマーケットの店員が、ATZメンバーを殺害する程までの力を手に入れたのです!!」

ブリガロン「う……うぅっ……」


カラマネロ「洗脳を解く手段は唯一。こやつらを倒すことですよ。さぁ……零の世界で待っています──」


ボワンッ……。


オノノクス、サザンドラ、カラマネロ、そしてニンフィアとサンドパンの姿が、消失した。


ピカチュウ「っ……こんなことに、なるだなんて……」

ゴーリキー「オノノクスが、真の“創蛙”。いや、“創亜”。この世界の管理者で、サザンドラの、かつての盟友……」

ドーブル「カラマネロが、オクタンだったとは。それにしても、やり方が汚すぎますっ!!」

ハリテヤマ「……ひとまず、アロガントタウンに戻ろうぜ。そこでなにか……対策を講じなければならない」

………
……
 ▼ 272 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 23:13:04 ID:Ish0PJRg [165/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
〜アロガントタウン ハリテヤマのちゃんこ鍋〜

ピカチュウ「……まず、俺が行く。サンドパンとニンフィアを助ける責務が、俺にはある!」

ドーブル「私も、ピカチュウたちに何度も救われた。ゴーリキー共々、着いて行く所存です」

ゴーリキー「右に同じ」

ハリテヤマ「オクタンの件、済まなかった……。俺はタウンを護ることにする。皆の健闘を、祈っているよ」

その他大勢「「頑張れよ、皆ッ!!」」


ピカチュウ「よし」

ゴーリキー「じゃあ」

ドーブル「えぇ……」



「「「また……行くぞっ!!!」」」バァァン



こうして三匹は、仲間を救うため、世界脱出のために、零の間へと向かうのだ。
 ▼ 273 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 23:14:32 ID:Ish0PJRg [166/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
〜アンホワイト 天空 零の世界〜

サザンドラ「フン……お前たちも来たのか。この何もなき、虚無の零の間へと」

ピカチュウ「サザンドラ──」

サザンドラ「俺は、オノノクスを何としてでも倒す。お前たちは、お前の仲間を救え!!」

ピカチュウ「激励の言葉、ありがとうな。アンタ、最後の最後に素直になったじゃないか。イブは必ず、俺が助ける!」

ゴーリキー(何としてでもとか、必ずとか、二人とも、どこか似てるんだよな)

ドーブル(フフ。同じ女の子を護ろうとした、二人の英雄ですものね)

サザンドラ「……任せたぞ、“トモダチ”よ」

ピカチュウ「あぁ、アンタもなっ!!」

ピカチュウ(待ってろよ、イブッ!!)

------------------------

そして、ピカチュウとサザンドラは各々二手に別れる。

……いよいよ、ピカチュウとカラマネロの対決だ。
 ▼ 274 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 23:15:23 ID:Ish0PJRg [167/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
〜零 如反ノ間〜

カラマネロ「カラカラカラカラ……よくぞ逃げずに、ここまで。……死にに、わざわざね。ククク……」

ピカチュウ「うるさいオカマイカッ! 二匹を返せや!!」

カラマネロ「さすがに1vs3は……今後こそ、骨が折れます。そうだ! こうしましょうっ!!」ビシュッ

ゴーリキー「ウォッ!?」

ドーブル「ひゃっ……」

ピカチュウ「!」

カラマネロは、二匹の足元の重量を増加させ、見動きを封じたのだ。

カラマネロ「“地”に這い付くばる姿……正に下等なる象徴! “天”に君臨し、管理を行う私たちと比較すれば、なんと愚に映ることかっ!!」

ピカチュウ「……天だの地だの、どうでもいいが。少なくとも、お前なんかが高貴な存在なわけがねぇ。ここまで続けた旅の目的は、お前のような奴をぶっ潰して、元の世界に戻るためなんだっ!!!」

カラマネロ「カラカラ、では行きますよっ!!」

ゴーリキー「み…皆……」ドサッ

ドーブル「が……頑張──」ドサッ

ピカチュウ(言われなくたって、やるさ! 俺がやらなきゃいけないんだっ!!)
 ▼ 275 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 23:16:27 ID:Ish0PJRg [168/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
カラマネロ「カラカラ、さぁ行くのです、我が下僕達! イブよッ、でんこうせっか!」

ニンフィア「……」シュッ

ピカチュウ(よけて……“でんじは”っ!!)

カラマネロ(ほう、痺れさせる作戦ですか。しかし……サンドパンッ!!)

サンドパン「ガァァッ!!」ビリイッ

ピカチュウ「トサ……!!」


……代わりに立ち塞がるのは、地面タイプのサンドパン。
“でんじは”は、効かない。

カラマネロ「サンドパン、続いて“じしん”ですっ!!」

サンドパン「……ぐぅほぉっ!!」グラグラ

ピカチュウ「!」


自身が避けるのは容易い。

だが──
 ▼ 276 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 23:17:12 ID:Ish0PJRg [169/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ニンフィア「っ……」

このままでは、ニンフィアも攻撃を喰らってしまう。

ピカチュウ「……イブ、捕まれッ!!」ガシィッ

ニンフィア「!」


ピカチュウはニンフィアを抱き抱え、空中に飛んだ。


ニンフィア「っ……ふぅ……!!」ガリガリッ

ピカチュウ「い、痛っ!?」

だが洗脳されたニンフィアは、必死に抵抗する。


カラマネロ「カラカラ、“元”味方を助けようとする行為。感心、そして漢として立派だと思いますが、自らの首を締めることにもなるのですよぉ?」


──グルル。


ピカチュウ「!」


ピカチュウの首に、ニンフィアのリボンが巻き付いた。
 ▼ 277 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 23:17:52 ID:Ish0PJRg [170/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ピカチュウ「ぐ……ぐふぅ……」ヨロッ

ピカチュウの意識が、遠のいていった。

ピカチュウ(リボンを切断したら、イブにダメージが……!!)


ピカチュウ「……“エレキボール”ッ!!!」ビュンッ


ピカチュウは、真逆の方向に攻撃を放つ。


カラマネロ「おやおや、悪あがきの一手でしょうか? サンドパン……ブレイククローッ!!」

サンドパン「……」ガリッ、ガリッ

ピカチュウ「げふっ……」


サンドパンの爪攻撃により、ピカチュウは呻き声をあげる。

仲間を殺せるわけがない。


……このままでは降参しか、手はないかに思えた。
 ▼ 278 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 23:18:48 ID:Ish0PJRg [171/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
カラマネロ「カラカラ、お縄で捕らえられた罪人さん。さぁ、トドメです」

ピカチュウ「……ツァ……」

ニンフィアのリボンに締められ、ピカチュウは必死に抵抗するが、リボンは解けない。

カラマネロ「“超司”奥義……“ばかぢから”ッ!!」


……ビュンッ!!


------------------------

………
……
 ▼ 279 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 23:19:45 ID:Ish0PJRg [172/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
カラマネロ(……!?)


──ビリリッ……。


その瞬間、カラマネロの身体に電撃が走る。


カラマネロ「カ、カラァ──」ドサッ


ピカチュウ「ハァ、ハァ……」

ピカチュウ(思った通りだ。カラマネロの動きを封じたから、二匹の洗脳が解けたッ!!)


カラマネロ(身体が……ま、まさか……コレはッ……)


……先程の“エレキボール”が、カラマネロの目の前へ落下していた。カラマネロは“ばかぢから”を繰り出したことにより、モロに身体が痺れてしまったのだ。
 ▼ 280 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 23:20:27 ID:Ish0PJRg [173/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
------------------------

ニンフィア「……ピカチュウ」

サンドパン「……すまなかった。思えば俺は、お前に辛い過去を味わらせてしまったってのに……」

ピカチュウ「トサ、お前に敗けて俺は相棒を失った。それが元で、イブ……お前とも袂を分かった。全ては俺が弱かったから。しかし俺はもう、失いたくはない」

サンドパン「イブはともかく、恨みがある俺など殺せばよかったのに……ピカチュウ、お前」

ピカチュウ「ポカブが喜ぶわけがないし、なにより、この卑劣なアホに良い顔をさせたくないんだ。すまんがイブ、リボンをちょいとばかり拝借しても構わないか?」

ニンフィア「いいよ、切っても生えてくるし!」

ピカチュウ「あ、そーいう……」

ーーー

カラマネロ「……決着が──」

カラマネロは、ニンフィアのリボンでがんじがらめにされてしまった。

ゴーリキー「なんだと?」

カラマネロ「先ほど決着が、付いたようです。しかし、どちらにしても、ククク……」


決着とは、どうやらオノノクスとサザンドラのことを指しているのだろう。

だがカラマネロは……不気味な笑みを、湛え続けているのだ。
 ▼ 281 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 23:21:32 ID:Ish0PJRg [174/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
〜数分前 零 創亜ノ間〜

サザンドラ「……この、モンスターボール。覚えているか?」

サザンドラは、あの、古ぼけたモンスターボールを取り出す。

オノノクス「あぁ、子どもの頃。トレーナーになろうとし、ポケモンも持っていないのに……無謀にも、野生ポケモンにボールを投げ……」

サザンドラ「見事失敗し、使用不能になったボールだ。思えば、これが我らの思い出。そしてトモダチの証。この世界に来た時に、持ち込んだのだよ」

オノノクス「……なぜ、そんなことを?」

サザンドラ「決まっている……」グシャッ

そしてサザンドラは、モンスターボールを握り潰した。

サザンドラ「管理者であるお前が死ねば、この世界の住民は『パラダイス』から開放される。淀んだ理想郷からな。このボールのように、お前も今、打ち砕いてやる」

オノノクス「……」

サザンドラ「もう一つ言おう。お前の相棒を殺したトレーナーは……」

オノノクス「フフ。実はお前だったというオチはないよな」

サザンドラ「……期待外れだが、そうではない。しかしお前、“知って”いたのか……?」

オノノクス「……仮に知っていたとして、俺は最早、引き返すことはできない。こうまで多くのポケモンを、巻き込んでしまったのだ。さぁ、始めるぞ──」

サザンドラ「あぁ……」

サザンドラ(……)
 ▼ 282 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 23:22:33 ID:Ish0PJRg [175/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
サザンドラ「……むんっ!!」ドゴォッ

オノノクス「……」サッ、サッ

サザンドラは、機敏なる攻撃をオノノクスに仕掛けるが、オノノクスはなんということなく交わしていく。

サザンドラ「キサマの攻撃をまともに受ければたまったものではない。屈強なるキサマの攻撃の突破策は──」

オノノクス「……りゅうの──」

サザンドラ「……“あくのはどう”っ!!」パパパパ

だがサザンドラは、悪に満ちたオーラを放つ。

オノノクス「グガルァ……」ヨロッ

サザンドラ「矢継ぎ早の攻撃? いやそうではない。それは浅はかな考えだ。さすれば」

オノノクス「……グロガァーーッ!!!」ドドドド

サザンドラ「“ちょうのまい”っ!!」ピババッ

オノノクス「グオォーッ!!!」ドガッ

サザンドラ「っ……」クラッ

オノノクスの体当たりをまともに喰ってしまうが、サザンドラ、舞うことにより身体能力の底上げに成功する。
 ▼ 283 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 23:23:35 ID:Ish0PJRg [176/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
オノノクス「……なるほど、プラズマリプレイを用いた戦法に出るとは。だがそれは諸刃の剣。命を削ってようやく辿り着けるのが、技の習得」

サザンドラ「キサマを倒すのに、命など惜しいか?」

オノノクス「ほう、そうか。ならば喰らえ……“アイアンテール”ッ!!」ビュゥッ

オノノクス、尾を硬質化させサザンドラに振り落とす。

サザンドラ(“そらをとぶ”)ビュンッ

オノノクス(……)

しかしサザンドラは、空を飛び攻撃を回避する。

サザンドラ「……ガァァァーーッ!!!」

オノノクス「!」


……そしてサザンドラの両手が、オノノクスにかぶり付く。


サザンドラ「……むうーんっ!!」ヒョィッ

サザンドラがオノノクスの身体をリフトアップし、空中へ放り投げた。

オノノクス「グガァ……」

サザンドラ「……“りゅうのはどう”っ!!!」

オノノクス「!!」
 ▼ 284 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 23:24:40 ID:Ish0PJRg [177/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
空中で見動きができないオノノクス。そのまま、サザンドラの攻撃が決まった。

サザンドラ「……そらを──」

オノノクス「グロガル……」ヒュンッ

サザンドラ「!」


オノノクスは身体をボール状に丸め込み、サザンドラに向かって突撃を開始したのだ。


サザンドラ「げほっ……!」

サザンドラ、吐血。

オノノクス「“創亜”奥義。魂喰ッ!!」ガブッ

サザンドラ「ぐ……ぐぉぉぉぉッ!!?」


なんとオノノクスはサザンドラの魂を、管理者の権限で多量に吸い取っていく。


サザンドラ「……」

オノノクス「これしきで、やられるのか!? 俺を止めるとは、なんだったのだ!!?」

サザンドラ(……あぁ、そうだな、スノ。お前は俺を、試しているのか?)
 ▼ 285 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 23:25:36 ID:Ish0PJRg [178/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
サザンドラ「……っ!!」ドバッ

オノノクス「!!?」


……サザンドラは、自身の右腕を切断し、オノノクスに投げつけた。


オノノクス「こしゃく──」

サザンドラ「コォォォ……」

オノノクス(……)


サザンドラはその間に、先の闘いにおいてレジアイスを倒した“ギガインパクト”の発射準備に入っていたのだ。

……痛みなどは、気にしてはいられなかった。



サザンドラ「ギガ……インパクトッ!!!」

オノノクス(魂の防壁ッ、発動)


……ド ゴ ォ ォ ォ ォ ッ ! ! !
 ▼ 286 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 23:26:35 ID:Ish0PJRg [179/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
シュウゥゥ……。


サザンドラ「……やはり、詰みとはいかなかったか──」

オノノクス「……」ハァ、ハァ


オノノクスの右上半身は、吹き飛んでこそはいるが、吸い取った魂を用いて、それを補っていたのだ。


──しかし。


サザンドラ「うっ──」


サザンドラの頭蓋骨も、カウンターの“ハサミギロチン”にてズタズタに破壊されていた。



……両者共に、満身創痍。
 ▼ 287 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 23:27:22 ID:Ish0PJRg [180/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
オノノクス「……ガァーーッ!!」ドゴォッ

サザンドラ「ぐぅ……」

オノノクス、牙を唸らせサザンドラの腹部に突撃。

サザンドラ「ゲブ……」

しかし、サザンドラの吐血は、計算してのものであった。

オノノクス「おぅ……!?」


血の、目潰しだ──


サザンドラ「同程度に、破壊してやる……」ガブッ

オノノクス「グォガァッ!!!」


残っていた手で、頭部とはいかなかったが、オノノクスの牙を粉砕した。


オノノクス「……グガルルルゥゥゥ……“ハサミギロチン”ッ!!」

サザンドラ「いよ……いよ……詰みと行こう。ゴホッ。……“りゅうせいぐん”ッ!!!」
 ▼ 288 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 23:28:04 ID:Ish0PJRg [181/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ヒュウゥゥゥ──


オノノクス「……ぁ」


サザンドラ「……。スノ──」


“りゅうせいぐん”が、両者共に襲いかかった。


サザンドラ(狙いを定める気力など、残っていない。互いに、これで……)


------------------------

………
……
 ▼ 289 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 23:28:49 ID:Ish0PJRg [182/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ーーー

『ちぇっ、捕まえれなかったなー』

『まぁ、こんなもんだろ。アララギ博士、ほらあのおっさんに頼み込んで、素直に貰いに行こうぜ』

『そうだなー』

『で、どっちがポケモンチャンピオンになれるか、勝負だからなっ!!』

『あぁ、わかったよ──』


『『……相棒』』


------------------------


サザンドラ(……)



ドゴォォォォォンッ!!!



創亜の間が、崩れ落ちた──
 ▼ 290 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 23:29:51 ID:Ish0PJRg [183/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
──現在

カラマネロ「カラ……カラ……結局……スノも使えなかったですねぇ。相打ちですか……」

ピカチュウ「なにっ……!?」

ニンフィア「世界が崩壊……しない。もしやあなた、スノから管理者の権限を……!?」

カラマネロ「えぇ。密かに……先程、移し替えて置いたのですよ……」

ニンフィア「スノの相棒を殺したトレーナーも、あなたが向かわせた、刺客……」

カラマネロ「えぇ。絶望した彼が取ろうとする行動。予測は……できていた。そして私は裏方として、この世界に君臨する! ……ハズだったのに……忌々しい」

ゴーリキー「かつての友をも、利用したのか……!!」

カラマネロ「今、この世界に鎮座する三匹のゴーレム。その力を吸収すれば、まだ──いける」キュイィンッ

ドーブル「あ、あなた……なにをッ!?」


── カ ァ ァ ァ ァ ッ 。


「「グルルルルゥ…………」」


一同「!!?」


カラマネロは、レジロックたちの力を取り込み、伝説のポケモン……レジギガスへと姿を変化させたのだ。
 ▼ 291 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 23:30:47 ID:Ish0PJRg [184/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
レジギガス『グオォォォォッ!!!』トゴォッ

カラマネロ改めレジギガスは、零の間の地中へと、拳を撃ち込んだ。

ピカチュウ「!!?」グラグラ

レジギガス『思い通りにならぬ世界など、壊れてしまえば良いのです! あなたたちも、道連れダッ!!』

------------------------


ーーアロガントタウンーー


住民1「な、何だぁ……地震かぁっ!?」

住民2「避難しろぉ、家が崩れるぞぉっ!!」

マフォクシー「……ルト……」

ブリガロン「これが……管理者の……力──」

ナエトル「ニ、ニンフィアさんたち……頑張ってぇ!!」

ーーー

ピカチュウ「野郎……」

ニンフィア「ピカチュウ、落ち着いて。いや、ピカチュウだけじゃない。『T-5』の皆、聞いて……」

ピカチュウ「……ニンフィア……」
 ▼ 292 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 23:31:41 ID:Ish0PJRg [185/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ニンフィア「アイツは激情し、暴走している。所詮は偽りの力。皆が一斉に攻撃を撃ち込めば、きっと倒せるッ!!」

ゴーリキー「アイツを倒せば、人間世界へ帰れる……」

サンドパン「記憶もおぼろげだが、イッシュに──」

ドーブル「確かに、今まで恐れなかったことなどなかった。でも今の『T-5』には、そんなもの……なにもありません!!」

ピカチュウ「わかったよ、ニンフィア。いやイブ。人間世界へ、戻ったとしてもッ、俺たちは一緒だ!!」


レジギガス『グルノァーッ!!!』ドッドド


そうこうしている内にレジギガスは、一同の元へと突撃を行おうとする。


ピカチュウ「じゃあ、行くぞっ……皆ッ!!」


皆「「「「おぉっ!!」」」」
 ▼ 293 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 23:32:14 ID:Ish0PJRg [186/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ニンフィア「ムーン…フォースゥゥッ!!!」パワァッ


ドーブル「スケッチアート……“だいもんじ”ッ!!!」ボオォッ


ゴーリキー「リキリキリキリキリキィィッ!!!」ドコドコッ


サンドパン「アイスロック・“ジャイロボール”ッ!!!」ゴガァンッ



ピカチュウ「ブラッドユニット……“ボルテッカー”ッ!!!」



──ビリッ、ビリィィッ!!!



レジギガス『レ……レジィィィィィィンッ!!?』


一同はレジギガスに対し、これまでの集大成、怒涛の攻撃をぶち込んだ。


………
……
 ▼ 294 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 23:32:55 ID:Ish0PJRg [187/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
〜アロガントタウン〜

住民「う……うぉぅ!!」シュンッ

住民「な、なんだ……これは、もしかして」シュンッ

住民「俺たち……元の世界に?」シュンッ


ポケモンたちの声が、次々と消え去って行く。


ブリガロン「アイツら……遂に……」シュンッ

ナエトル「やったんだ、遂に……ニンフィアさんたちが、アイツらを倒したんだぁっ!!」シュンッ

ハリテヤマ「……ハハハ、ようや……く──」シュンッ


そして。

タウンの光景も、次第にぼやけ……消滅を遂げていった。
 ▼ 295 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 23:33:27 ID:Ish0PJRg [188/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
俺たちは、かけがえのない友だちだ。



この世界が例え現実の空間ではなかったとしても。


元の世界へと帰還し、バラバラになったとしても。



ずっと、俺たち……『T-5』は不滅。




俺たちが生きている限り……繋がっているのだから──
 ▼ 296 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 23:34:00 ID:Ish0PJRg [189/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
チュンチュン─


お母さん「おーい、もう起きなさーい。スクール、遅れちゃうよー」


俺「えっ!」ガバッ

お母さん「アンタ、昨日ご飯も食べずにずっと寝てたのよ。起こすのもなんだと思って。歯磨き、しなさいよね」

俺「……」



……あれは全部。夢、だったのか?



俺(……あ)


──俺の首に、あのイブのリボンが巻き付いていた。
 ▼ 297 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 23:34:36 ID:Ish0PJRg [190/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
〜スクール〜

俺「あっ……」

イブ「……」

なんとイブが、転校先から戻って来たのだ。

俺「その……」

あの世界でずっと長く、共に行動していたというのに、なんだか気まずい。

イブ「……がと」ボソッ

俺「えっ」

イブ「色々と、ありがとう! これからもよろしくね!!」

俺「……あ、あぁ!」



その一言で、たった一言なのに、色々と救われた気がする。



関係ないが、帰りに一緒に新しいム○キングをしてきた。

小学生並みの感想だが、楽しかった。
 ▼ 298 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 23:35:11 ID:Ish0PJRg [191/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ゴーリキーは、ホウエンのジムにまで通い、己の筋肉を鍛え続けているらしい。
キ○肉マンに、憧れているんだとか。


ドーブルとマフォクシーの『ナナホシー』は、活動を再開し、少年ジャンクに掲載が決まる。
タイトルは、『マッスルメン2世』だ。俺も楽しみにしている。


サンドパンとは、再戦することに決まった。俺の相棒のポカブJr.と一緒に、恨みとか抜きに、今度こそ勝ってやるさ。


ハリテヤマは、なんと以前から近所にちゃんこ屋を構えていた。この前お母さんと食べに行った。美味しかったし、帰り際にお古の鍋を貰った。……正直、持て余している。


ナエトルは、ブリガロンと度々会っているらしい。最近は、ビーフストロガノフを作れるようになったとか。……スープ系が、多いんだな。俺らも、いつかは集まりたい。



……そんなこんだで、俺たちの日常は、今までどおり、いつものように、これからも過ぎ去って行くのである。
 ▼ 299 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 23:35:50 ID:Ish0PJRg [192/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
Word:【T-5】


偽りの天と地から多くのポケモンたちを開放した、伝説のポケモン探検隊。


全てが終わった今でも彼らは度々集まり、サドなる人物の墓参りへと訪れたり、ゲームや漫画で楽しんでいるらしい──
 ▼ 300 石の森◆Y0TXrTESFs 17/03/28 23:36:43 ID:Ish0PJRg [193/193] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
天と地の旅物語 ~完~


見返すと、修正の過程での脱字が多かったです
ここまで見ていただき、ありがとうございました
 ▼ 301 ラセクト@まるいおまもり 17/03/28 23:45:39 ID:qB7MSA1A NGネーム登録 NGID登録 報告
乙です
 ▼ 302 ルマイン@リバティチケット 17/03/29 00:17:12 ID:VH7cYJyU NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
乙です…!
 ▼ 303 QkRJTXcpFI 17/03/29 00:44:34 ID:1bWNgk/E NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
乙です
 ▼ 304 メックス@こおりのジュエル 17/04/15 21:15:44 ID:m7jaN2F2 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
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