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【旅SS】女「ポケモン達とぶらり旅」

 ▼ 1 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/13 19:50:23 ID:WB.XOoew [1/22] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
『さぁてスタートラインにならぶはそうそうたる面々。皆様レースへの意気込みがうかがい知れるというものです』
 
 
 
女(初めて参加する私にもわかる。ここにいる人たちの覚悟は、生半可なものじゃない)
 
女(でも、私がそれに負けているか、と聞かれれば、違うと言える)
 
女(そうだ、この日のためにリサーチを重ねたのだから)
 
女(選手達のコンディション、例年の記録、あらゆる場面での立ち回り。果ては日常のなかのささいなクセまでをも調べあげた)
 
女(すこしたりとも研究を怠るようなマネはしなかった)
 
 
 
『今年は例年よりも参加人数が多く、白熱の戦いが予想されます!』

 

女(ライバルがいくら多かろうと関係ない。私は私の持てる限りを尽くし、この戦いに勝利する)
 
 
 
『みなさんお待ちかね、ポケモン水上レースは間もなくスタートですよー!』

『栄えあるアルトマーレグラスの優勝メダルは誰の手に?』

 
 
女(優勝賞品がなにかなんてことはどうだっていい。私の目的はそんなところにあるのではないのだから)
 
女(メダルやトロフィー、杯よりも重要なものが、このレースの果てにはある) 
 
 
 
 
ネイティ「ポゥ」

ネイティ「ポゥ」
 
ネイティ「ポゥ」
 
ネイティ「ポゥ」
 
ネイティ「ヨォー!」
 


───水しぶきを上げ、水上レース参加者たちが飛び出していく。
 
 

こわもての男「始まったな」

こわもての男「アルトマーレ、ポケモン水上レースが!」

 ▼ 2 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/13 19:51:35 ID:WB.XOoew [2/22] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
こわもての男「ボードに乗ったトレーナーをなみのりポケモンがリードで牽引し、最速を競う」
 
こわもての男「恒例行事とあなどるなかれ、この様子はケーブルテレビでも生中継されるほどの大きな祭りだ」
 
こわもての男「優勝者にはむこう1年の富と名声が約束され、敗者は酒の席の笑い話を手に入れるのみ」

観光客「いまいち、すごいのかわかりにくいわね」
 
こわもての男「わかるはずもないさ。トーシロが気安く踏み込めるほど、甘い世界じゃあないんだからな」
 
観光客「へぇ。あんた参加したことあんの?」
 
こわもての男「バカ言えオレはただのにぎやかしだ」
 
観光客「……」
 
こわもての男「毎年、優勝者を予測するトトカルチョも開催されてる」
 
こわもての男「今年は、優勝候補のロッシと他の選手でだいたい2:1ってとこだな」
 
観光客「勝負事があると、すーぐ賭け事始めるのは、どこの国もおんなじなのね」ヤレヤレ
 
女「行けぇエエエ、ロッシィ!!!」
 
こわもての男「」
 
観光客「」
 
女「蹴落とせ蹴飛ばせぶっこ抜けぇええええええ!!!」
 
 
───狙うは、一攫千金。
 
 
 

『優勝はゴンドラ船頭のロッシ!相棒はホエルコ!』
 
『通算優勝回数はこれで7回!ロッシ選手の名前は、アルトマーレポケモン水上レースの殿堂に刻まれます!』
 
 
ワーワーワーワー
 
キャーステキー!
 
ロッシー!!
 
イケボー!
 
ダイテー!
 
 

女「優勝予想なんて賭け事は、統計の応用にすぎません」
 
女「参加者の過去の成績を洗って1番、目≠フありそうな選手に突っ込む」
 
女「それだけで十分」ドヤァ
 ▼ 3 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/13 19:52:01 ID:WB.XOoew [3/22] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 

 
───調子に乗っていた。
 ▼ 4 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/13 19:53:20 ID:WB.XOoew [4/22] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アルトマーレ。
 
水に生かされ、水の中に死にゆく街。
 
自然多くのこる水の都。
 
 

女「予算が増えたのでお昼がごちそうになった」モキュモキュ
 
コータス「豪勢なごはんもいいけどさぁ。こんなことにお金使って大丈夫なのぉ?」
 
コータス「お昼でぜいたくするために下調べやってたわけじゃないでしょ?」
 
女「」クルッ
 
コータス「こぉー」
 
女「んー」
 
女「大丈夫。夕飯は普通のはずだから」
 
コータス「オイ」

ムクホーク「ぴぃぴぴ」ムスッ
 
女「む」
 
女「その様子は、私が賭けごとに興じたことがいまだにご納得でない?」
 
ムクホーク「ぴぃーっ」
 
女「やっぱりか」

女「どーせもうやらないよ、こんなこと」
 
女「下調べを徹底したとはいえ、ビギナーズラックなのも重々承知」
 
女「私はあぶくゼニを得ただけですっ」チュルル
 
ムクホーク「」ムスッ
 
女(旅の思い出がひとつ増えた、ですませてほしいとこなんだけどな……)
 
女(君のお昼だって、そのあぶくゼニから出てるんだよ?)ジト
 
ムクホーク「」ギンッ
 
女「いかくしないでよ」パクッ
 

 
───ムクホークから目をそらすついでに店の外───アーケードへと目を向けた。
 
吹きさらしで間近に見える人通りは、観光地とは思えないほどすっきりしている。
 
そんなゆったりとした空間だからか、かけっこをしている子どもなんかが目につく。
 
日差しが照りつけているが、水場が近いのであたりは涼しいし、自分の席は布地の屋根でほどよく日の光が遮られている。
 ▼ 5 ロストロトム@ラブラブボール 17/10/13 19:56:22 ID:/t860zL6 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 6 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/13 19:56:25 ID:WB.XOoew [5/22] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
快適だよな、と思いながら人の流れを眺めていると、子どもの1人がコケた。
 
すてん、とまぁきれいなフォームで。
 
 
 
女「あ」
 
 
 
───思わず声が出るのは、たおれる様をはじめからおわりまでバッチリ見おさめたからだし。
 
コケた拍子に、少女が持っていた風船を手放してしまったから、でもあった。
 
 
 
女「おー……」
 
 

───昇っていく風船を目で追いかける。
 
自由への渇望でもあったか、風船は無情にも高く高く飛び去っていく。

 

女「……」チラ
 
ムクホーク「ぴぃ?」
 
女「……あれ、頼める?」
 
ムクホーク「」ニィ
 
女「撃墜しろってことじゃないからね」
 

 
───挑発的な笑みをうかべた彼ににがわらいしながら釘を刺して、お願い。と目配せする。 

せっかく自由になれたところを申し訳ないが、あの風船には持ち主のところにご帰還いただこう。
 

 
ムクホーク「」バサッ
 
ムクホーク「」バサッバサッバサッ
 
ムクホーク「」パシッ
 
少女「あっ」
 
ムクホーク「」ヒュー……フワッ
 
ムクホーク「」ストン
 
ムクホーク「」ズイッ
 
少女「あ、ありがと」
 ▼ 7 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/13 19:57:52 ID:WB.XOoew [6/22] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ムクホーク「ぴぃぴぴるぴ」タンッ
 
ムクホーク「」スイーッ
 
女「おつかれさま、ありがと」ナデナデ
 
ムクホーク「」ナデラレ
 
少女「」マジマジ
 
女「」ニコッ
 
少女「!」
 
少女「」ペコリ
 
女「かわい。」
 
 
 
───一部始終を見ていた客と店員、なんとなくほっこり。
 
 
 
女「ん」
 
少女?「」ニコッ
 
少女?「」ペコリ
 
女(ふたごだ)
 
女(……そういえばアルトマーレには、同じ人に2回会ったら大切な誰かにもう一度会える≠ネんてジンクスがある、とか)パクッ

女「」
 
女(同じ顔、じゃだめかな。やっぱり)モグモグ
 



───お昼は、茄子ときのこのトマトソースパスタでしたとさ。
 
ピザもつけた。
 
 
 
 
ぎーこ、ぎーこ。 
 
 
女「」ボー
 
船頭「君、なんで空をじっと見てるんだい?」ギーコ
 
女「……なんだか不思議な感じで」
 
女「水の上なのに、見上げた空は建物に囲まれてるなんて」

女(たまに揺らめいて見えるような気がするのも風情がある)
 ▼ 8 リジオンの人◆QhqpxfPSAI 17/10/13 19:58:34 ID:Zz2ZZ5v. NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
お久しぶりです
支援です
 ▼ 9 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/13 19:59:31 ID:WB.XOoew [7/22] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
───水面に反射した日光が、建物の壁に投影されてゆらゆらしている様に、異界の日常を感じる。
 
ゴンドラがまったりと揺れるのもあいまって───
 

 
女(眠くなってきた) 
 
船頭「水の都だからこそ、だな」
 
船頭「川沿いに建物が多いからね」

船頭「しかし、あんまり上を見たことはなかったな……なるほど、お客さんはお目が高い」ニッ
 
女「座布団1枚」
 
船頭「チップくれよ」
 
女「どうぞ」チャリン
 
船頭「お客さん、アルトマーレは初めてかい?」
 
女「はい」
 
女「思ってたよりは人がいなくて、のどかでおだやかで……ずっといたいです」
 
船頭「居住希望かい。お薦めはするが、お客さんくらいの子どもが1人で住むのは大変だぜ」
 
女「水害、多いんでしたっけ」
 
船頭「ガキの時から慣れ親しんでるなら良いが、新参者にアルトマーレの暮らしはハードルが高いのさ」
 
女「じゃやーめた」
 
船頭「変わり身早いなぁー」
 
船頭「ここは地図を見てても迷う。同じような道や、枝分かれするところが多いからな」
 
船頭「特に、なれないうちに裏道でショートカット、なんて絶対したらダメだぞ」
 
女「はーい」
 
船頭「水路の流れをたどろうにも、水路から道が取り残されてしまう場所も多い」
 
船頭「まぁ、時間と心強いポケモンがいるなら、さまよう状態を楽しむのもオツなんだが」
 
女「私、一度来た街を再訪することがあんまりないんですよね」
 
女「ちょっと回数を要することはできないかも」
 
船頭「むう。そのクチか……」
 
船頭「アルトマーレは何度来てもあらたな発見のある街だ。また来てもらえると、おにーさん嬉しいなぁ」
 
船頭「できればまた指名してもらえると、なお嬉しいねぇ」
 
女「したたかですね」
 
船頭「当然さ、この街の人間ならな」
 ▼ 10 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/13 20:01:35 ID:WB.XOoew [8/22] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
船頭「おーし、そろそろつくよっと」
 
 
 
───博物館。

アルトマーレの史跡についての文献や、モニュメントが展示されているという。
 
アルトマーレと直接の関係はうすいが、化石の展示もある。
 
 
 
女「プテラ、カブトプス、オムスターか」
 
『はるか昔に絶滅したと思われていましたが、まれに野生のポケモンとして目撃されることがあり、現在も世界のどこかで生きつづけているのです』
 
『化石復元技術の進歩もあり、こんにち、彼らの生きる姿を目にするのは決して困難ではないでしょう』
 
女「夢のある話だよね」
 
女「だって、1度死んでしまったものを生き返らせることが出来るんだもん」
 
女「死んでしまった大切な人が帰ってくる」
 
女「きっとそれだけで、たくさん救われる人がいるよ」
 
コータス「こぉ〜?」
 
?「……残念だけど、化石復元は死者の再生とは違うんだよ」
 
女「え、そうなんですか」
 
?「復元で行っているのは、死して失われた体組織の再構成なんだ」
 
?「そして、再構成された肉体が、過去の記憶を保持しているケースはまったく確認されていない」
 
?「化石復元は蘇生というよりも誕生に近い。あたらしい命を得るのは、復元前と同じ遺伝子情報を持つ、まったく別の存在なんだよ」

女「……あの、あなたは?」
 
?「あぁ、藪から棒にごめんね、僕はここの職員だ」ピラッ
 
学芸員「老婆心で口をはさんでしまってすまない。見学の邪魔をしてしまったかな」
 
女「いえ、そんなことは。勘違いがわかってすっとしました」

学芸員「それならよかった」
 
女「でも、お兄さんの目はとても真剣でした」
 
学芸員「ん、そんなだった?」
 
女「はい。どうして、こんな風に口をはさんでくれたんでしょうか」
 
女「ちょっと気になります」
 
学芸員「……」ポリッ

女「教えてくれませんか?」
 ▼ 11 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/13 20:02:54 ID:WB.XOoew [9/22] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
学芸員「うーん……それは、ね」

学芸員「……それはきっと、僕自身がよみがえり≠ノ抵抗があるからなんだ」
 
女「抵抗が」
 
学芸員「死者がよみがえるというのは、うん。すごい技術だと思う。もし現実のものになったら、救われる人もきっといるだろうね」
 
学芸員「でも、僕はどうしても思ってしまうんだ。死んだ人を蘇生するのは、その人の生をおとしめてしまうこともあるんじゃないかって」
 
女「……なぜ?」
 
学芸員「死力を尽くす、とか、必死って言葉があるだろう。人はすべからく死ぬものであるから、ああいう言葉には、相応の重さがあるんだ」
 
学芸員「人はいずれ死ぬものだから、替えの利かない人生を懸命に生き抜く」
 
女「……そうですね」
 
学芸員「死力を尽くして、必死にがんばって、そうして死んでいった人を生き返らせたら、その努力は無意味になってしまわないだろうか?」
 
学芸員「死ぬから頑張ったのに、生きているうちが花だから咲くことに全力を尽くしたのに。その尽力はただの徒労になってしまうのでは、みたいな」
 
学芸員「……ちがうな」
 
女「ちがうっぽいですね」
 
学芸員「うん。考えてたニュアンスと違ってしまった」
 
女「でも、なんとなくおっしゃりたいことはわかりました」
 
学芸員「そっか、なら……いいかな」
 
学芸員(こんな考え、誰にも言ったことないのに……なんで説明しようと思ったんだろう)ムム
 
女「救われる≠ゥ」
 
 
 
───たとえば、とある洞窟で出会った老人。
 
そのとき、病気でもう長くないと言っていた。
 
もう1年以上も前のことだ。
 
今どうなっているかなど、考えるまでもないだろう。
 
しかし彼はあれで、人生に憂いはないように見えた。
 
幸せであったと胸を張って終えた人生。
 
生き返ってしまったら、まるでとんだ茶番ではないか。
 
周囲の人々だって困惑するだろう。

あの人が生き返るのはたしかに、むしろ救いがないように思える。
 
ならば、彼女≠ヘ?
 
閉ざされた世界から出たい、と願いながら、無意味に死んだあの娘は?
 ▼ 12 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/13 20:04:40 ID:WB.XOoew [10/22] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
もう1度だけチャンスが与えられたなら、きっと救われるのではないだろうか。
 
お父さんと一緒に、台無しになった人生をやり直すことができるのでは?
 


女(……そうか)
 
女(たくさん救われる人がいる、じゃない)
 
女(私は、あの子が救われるのに≠チて思ったんだ)
 
学芸員(……ああ、この目だ)
 
学芸員(この目は悲痛さに満ちている)
 
学芸員(人類の技術の発展。未来への展望に満ちた視点の言葉であったはずなのに)
 
学芸員(それを口にしたこの子にこそ、生き返ってほしいと焦がれる誰か≠ェいるんだ)
 
学芸員(僕はこの目を見てしまったから……)
 
学芸員「」
 
女「」
 
女「……それじゃあ、お兄さんは化石の復元には反対的なんですか?」
 
学芸員「あ、いや……」
 
学芸員「復元したポケモンの命にはこの星の太古の情報が眠っている」
 
学芸員「彼らの生きている姿を通して、僕たちは当時の世界を垣間見ることができる」
 
学芸員「化石ポケモンの復元に、僕はロマンを感じているよ」
 
女「そう……ですか」
 
学芸員「……展示の更新あるんだけど見る?」
 
女「ぜひ」



女「脱字の修正、新たに発見された記録と寄贈された絵画の追加」

女「昔話で怪物≠ニ称されていたものの正体についての知見、か」
 
女「これは……ほう」

学芸員(僕が思うのもアレだけど、この子、なかなか物好きだな)
 
女「そういえば、この街で守り神とされているポケモンについてなんですけど」
 
学芸員「ああ。ラティアスとラティオスだね」
 
女「実際として、いるんでしょうか」
 
学芸員「ストレートだね」
 ▼ 13 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/13 20:05:56 ID:WB.XOoew [11/22] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
学芸員「まぁぶっちゃけいるよね。ポケモンリーグの試合でつれてる選手とかいるし」
 
学芸員「ただ、僕は生で見たことないな」
 
女「……へぇ」
 
学芸員「え、そこでなんでしらけた顔になるのさ」
 
女「アルトマーレだったらバンバン見られるのかなぁ、みたいにちょっと期待してたので」
 
女「少しがっかりしました」シュン
 
学芸員「そ、そりゃあ、見られないこともないよ? ウワサなんかはけっこうあるからね」
 
女「ウワサ」
 
学芸員「子どもと遊んでいるところを見た、とか、おやつをもらいにきた、とか、家のベランダでくつろいでいた、とか可愛いもんだよ」
 
学芸員「まぁ、ここ最近だといきなりバトルをけしかけてきた、とか、低空飛行で人をおどかした、なんて話もあるけどね」
 
女「それは、ちょっと危ないというか……」
 
学芸員「すこぶる危ない話だとは思うよ」
 
学芸員「でも、守り神の彼らがそんなことするわけないさ。所詮うわさだよ」
 
女(うわさ、か)
 
学芸員「……おっと。それじゃ、僕はこれで」
 
学芸員「ゆっくりしていってね」テクテク
 
女「ありがとうございました」ペコリ

 
 
女「……なかなかお目にはかかれない、にしても」

女「この絵を描いた人は、きっと会っているんだろうな」
 

 
───絵画には、ブランコに乗った少年と一緒に遊ぶラティアスの姿が描かれている。
 
アルトマーレ出身アーティストからの寄贈品だそうだ。
 

 
女(生き生きしてる)









 ▼ 14 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/13 20:08:11 ID:WB.XOoew [12/22] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女「……でっか」
 

 
───博物館の聖堂にあるモニュメント。
 
数年前に補強工事が行われたらしく、数ヶ所にわたって固定具がはめられている。
 

 
『はるか昔、守り神からの智慧を授けられた先祖が建造したものといわれている。アルトマーレの防衛機構の要であったとされるが、動力源や用途は謎に包まれている。水路の閉鎖が主用途であるとした説もあるが、もっぱらのところ、皇族が祀っていたもので実際に使用されたわけではないという説が主流』
 
女「要するに、かざり?」
 
女(その割にはメカメカしいなぁ……)
 

 
───一度いぶかしむとどこまでも怪しく見えてくるもので、固定具なんかも「拘束具なのでは?」なんて思ってしまったりするんだから、思い込みというのはおそろしい。
 
組まれている足場も、カモフラージュなんじゃないの?とか。
 
 
 
女(考えすぎだよね)
 

 
───ジェラート食べて帰った。
 
どこに帰ったのかって?
 

 
女「ここだ」
 

 
───ペリッパーのクチバシ≠ニある。
 
アルトマーレ滞在中は、この宿に泊まる予定だった。



女「すみません」
 
女性「はぁーい」トテトテ
 
女性「いらっしゃいませぇ、本日は如何用でしょうか?」
 
女「宿泊の予約をしていた※※※※※です。確認おねがいします」
 
女性「チェックインですね、少々お待ちくださぁい」トテトテ
 
女「……お客さんはそこそこいそうな感じかな」クルッ
 ▼ 15 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/13 20:09:32 ID:WB.XOoew [13/22] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
デスカーン「」ぬっ

女「おあはっ!?」ビックゥ
 
デスカーン「で、すかん……?」
 
女「デスカーン……棺桶ポケモン、立派な棺桶のふりをして墓泥棒をこらしめる……純金でおおわれた体……ほんとだ」ドギマギ
 
?「すごいな……それ、ポケモン図鑑の説明文だよね。全部おぼえてるのかい?」
 
??「でも初めて見たような顔してるわ」
 
女「」ギョッ
 
女「…………………………………トレーナーの方ですか?」
 
?「ごめんね、ビックリさせてしまったみたいで。デスカーンも悪気はないはずなんだ」
 
女「あ……いえ、それは別にいいんですけど……」
 
サーナイト「ない、さーっないと」ムッ
 
デスカーン「ですかー、ですかー……」オロオロ
 
女(いつの間にか居たサーナイトにめっちゃにらまれている……)

??「この子、デスカーン君にぞっこんなの」
 
??「君が怖がったのを怒ってるみたいだわ。ごめんなさいね」

女(そうか。タマゴグループ同じだっけ……たしか、ふていけい)
 
女(それにしても珍しいカップルだよなぁ。ポケモンも、トレーナーも)
 
 

───おくさんは息をのむほどの美人だ。
 
その見目麗しさたるや、見た瞬間、同性なのにもかかわらずどきりとしたほどだ。
 
一方のだんなさんはというと、彼には逆の意味でどきりとした。

狡猾そうで鋭い顔立ちからの印象は近寄りがたい雰囲気しかないが、口を開いてみれば肩すかし。
 
穏和な物腰で優しげな口調である。なんだこれ。こんなギャップ人間いるんだすげー。
 
失礼ながらそんなことを思ってしまった。
 

 
女「……新婚旅行ですか?」
 
おくさん「やだ。わかる?わかっちゃう?」デレッ
 
女(雰囲気がなー……)



───サーナイトからデスカーンに向いているものとまったく同じだ。
 ▼ 16 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/13 20:10:55 ID:WB.XOoew [14/22] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
おくさん「おさななじみなんだけどね……もうこうなるまでが長かったんだからこの人ったらこの顔してゆーじゅーふだんだからさーそのくせ態度でわかるんだけどちゃんと言いたいとかいってでもなかなか言ってくれないからやきもきさせられるんだけどでもちゃんと最後はキメるから好き」
 
だんなさん「さーちゃんやめて」カァーッ
 
女「ゴチソーサマデース」
 
おねえさん「お客様ぁ、お待たせいたしましたぁ。客室までご案内しますねぇ」
 
おくさん「あら。じゃあまたね、君」ツヤツヤ
 
だんなさん「つきあわせてごめんね……」
 
女「はい、また」テクテク
 
女(……あれ≠ニまた、かぁ)
 
 
 
───この宿は夕飯の時間、宿泊客が同じ場所に集まり同じものを食べる、というシステムになっていた。

給食のようなもの、と考えればわかりやすいか。
 
 
 
女(ピンと来ない)
 
 

───何にせよ、さっきの夫婦とはいずれまた顔をあわせることが確定しているのだった。
 
しかして、夕飯の時間。
 
食堂に降りた彼女が最初に遭遇したのは、別の宿泊客だった。



?「うち、バイトさんが先に出てくる方にチイラのみ」
 
??「お前ほんと懲りないな、水上レースのトトカルチョで惨敗したんだろ、この賭けぐるい」
 
??「……それじゃ、わたしは宿屋さんな。夕飯のおかず1品」
 
女(鮫)
 
女(アダルトな雰囲気醸し出すこのおねえさん達は、片やギャンブラー)
 
女(片や水上レース参加者のようです)
 
ギャンブラー「ほんとだったらもっと金あったんだぞ」
 
ギャンブラー「それを、はぁ……」ズゥゥゥン
 
セーラー服「わたしだってあぁ……アルトマーレグラスのメダル……」ズゥゥゥン

女(セーラー服の方は船乗りさんなんだろうか。着なれた様子で本職っぽい)
 
女(もう一人はなんというかこう、いかにも賭け事に身を崩してる感じ)
 
女(2人とも、ちょっと見ただけでリザルトがうかがえる後ろ姿)
 ▼ 17 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/13 20:12:56 ID:WB.XOoew [15/22] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女(そしてこちらのスマホいじりをしている方は)チラリ
 
おとなりさん「……」ポチポチ
 
女(私の隣室に泊まっている男性)
 
女(チェックインから部屋を出るまでずっと、壁越しになにかの作業音が聞こえていた)

女(寝癖をまったく直さずにいるあたり、没頭して取り組んでいるんだろうけど)
 
女(何してるんだろう)
 
おとなりさん「ん」
 
宿屋さん「みなさん、お待たせしました。夕飯ができましたよ」
 
おねえさん「肉団子いっぱいですよぉー」ニハー
 
ギャンブラー「チッ」スッ
 
セーラー服「どーも♪」
 
女「」
 
女(てか、宿のスタッフさんはあの2人しかいないんだ……)
 
女(なら、お食事の仕組みがこうなのも当然か)
 
だんなさん「すみません、もう始まってますか?」ヌッ
 
宿屋さん「いいえ、これからです」ニッコリ
 
おくさん「あ」
 
おくさん「やっほー」フリフリ
 
女「」ペコリ
 
おねえさん「お客様がたー、ポケモンちゃんのごはんもありますからぁ、そちらのテラスに出してあげてくださぁい」
 
レパルダス「なぁん」
 
ビリリダマ「ジジジジ」



おくさん「サーナイト、デスカーン君つれてってあげて」
 
サーナイト「さぁ。さななないと」スイー
 
デスカーン「ですかん」



おとなりさん「いってきな」ポン
 
エレキブル「ぶっしゅるる」ノッシノッシ
 ▼ 18 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/13 20:13:51 ID:WB.XOoew [16/22] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ギャンブラー「出てこーい」ポポン
 
セーラー服「あらよっと」ブンッ
 
ニャース「みやあ」トテトテ
 
サイドン「シャアッイドン!」ノッシノッシ
 
サメハダー「シャッダァ!」ザプン
 

 
女「ほいっ、と」ポポポポポン
 
コータス「こぉ……」
 
ムクホーク「ぴぃーっ!」スイーッ
 
ドリュウズ「りゅうず!」
 
オノノクス「ふしゅう」ノビノビ
 
シザリガー「………じゃきっ」

 
女「」タッタッ
 
女「出ておいで」ポン
 
ラプラス「ぷらぁ♪」チャプン
 
女「相席だけど、なかよくね」
 
サメハダー「サッシャァ」
 
シザリガー「……おれは?」
 
女(君は歩けるでしょうが)ジトッ

「「「「「「「おぉー」」」」」」」
 
おくさん「あなた、大所帯なのね」ビックリ
 
女「え?」

だんなさん「すごいな……僕達はあんまりたくさん持てない方だったからうらやましいよ」
 
おくさん「1匹ずつでせいいっぱいだったものね」

女「ふたりとも旅をしていたんですか?」

だんなさん「うん、10歳になってから4年くらいかな」

おくさん「こう見えて、ジムバッジもけっこう集めたんだから」フフン
 
だんなさん「でも、結局リーグには1度も参加できなかったんだけどね」ハハハ
 
女「そうだったんですか……」
 
ギャンブラー「おっほ、オノノクスなんて初めて見た」ペタペタ
 ▼ 19 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/13 20:15:17 ID:WB.XOoew [17/22] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
オノノクス「??」
 
女「おわっ」
 
セーラー服「ごめん、あいつはバカなんだ。治らない方の」
 
女「えっ」
 
セーラー服「しかし君、いいトレーナーなんだな。みんなよく育てられてる」
 
女「ありがとうございます」ハニカミ
 
女「自慢の仲間なんです」
 
宿屋さん「みなさーん。座って座ってー!」
 
 

───にぎやかな夕食。
 
この日、※※※※※が一緒に食卓を囲んだ人数は、人生最多となった。
 ▼ 20 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/13 20:15:50 ID:WB.XOoew [18/22] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



2日目に続く。
 ▼ 21 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/13 20:20:30 ID:WB.XOoew [19/22] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「やっと見つけた」
 
男「?」
 
男「」クルックルリ
 
「こっちこっち」
 
男「????」
 
コータス「僕みたいなやつ知らない?」
 
男「えっ……しゃべってる?」
 
コータス「ねぇ。僕みたいなやつ知らない?」
 
男「え、えぇっ? お前みたいなやつ? ポケモン?」
 
コータス「あぁー、そうそれ。ポケモン」
 
コータス「僕みたいなやつ、いるんでしょ?」
 
男「し、知らないよ……」
 
コータス「あ、そう」ノソリノソリ
 
男「???????????」ボーゼン
 

 
コータス「ねぇねぇ」
 
トレーナー「!?」
 
コータス「僕みたいなポケモン知らない?」
 
トレーナー「しゃべってる……」
 
コータス「知らないの?」
 
トレーナー「し、知らねぇ。初めて見たな……」
 
コータス「あ、そう」ノソリノソリ
 
トレーナー(って、しゃべるポケモンとか、レアなんじゃないのか!?)
 
トレーナー「」キュル、キュルッ
 
トレーナー「行けっ!」
 
シャワーズ「しゃあわ!」ポンッ
 
トレーナー「ゲットするぞ! バブルこうせん!」
 
シャワーズ「しゃ、わぁーっ!!」ポポポポッ
 
コータス「おぶっ」 ベベベベベ
 
トレーナー「やっぱりほのおタイプか! いいぞシャワーズ!」
 ▼ 22 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/13 20:21:58 ID:WB.XOoew [20/22] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
コータス「こぉ」ボォ
 
コータス「───ぉあ」ボオオオオオオオ!!
 
トレーナー「あちちちっ!」
 
トレーナー「かえんほうしゃか!」
 
トレーナー「だけどこっちはみずタイプ! そんな攻撃効くもんか!」
 
コータス「」ボオオオオオオオ
 
トレーナー「」
 
コータス「」ボオオオオオオオ!!
 
 
 
 
 
 
トレーナー「───長くない?」
 
コータス「」ボフッ
 
コータス「……ふぅ」ノソリノソリ
 
シャワーズ「」死ーん
 
トレーナー「シャワーズ!!」
 
 
 
コータス「ねぇ」
 
少女「はひゃっ?!」
 
少女「」ク ル
 
コータス「僕みたいなポケモン、知らない?」
 
少女「ポケモン、が……しゃべった……?????」
 
コータス「知らないのぉ?」
 
少女「えっ。えっと、あ。見たことある」
 
少女「西の方に廃坑があるんだけど、たしかそこにいっぱいいた、かも」
 
コータス「西ってどっち?」
 
少女「え、えぇっ? 西って言ったらそのぅ……ええっと……」
 

 
「見つけたぞ!!」
 
少女「えぇ!?」ビクッ
 ▼ 23 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/13 20:23:06 ID:WB.XOoew [21/22] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
コータス「」クルリ
 
トレーナー「みんな、あいつだ!」
 
トレーナー「あいつが俺のシャワーズを!!」
 
「あれがしゃべるポケモンか!」
 
「俺がゲットしてやる」
 
「わたしのドククラゲで!」
 
「いけっ、ゴローン!!」
 
少女「な、なになになに!?」オドオド
 
トレーナー「おい、お前も見てないで手、かせよ!」
 
トレーナー「しゃべるポケモンなんて、なかなか手に入んないぞ!!」
 
少女「えぇ!?」
 
コータス「……」スッ
 
コータス「ふんっ!」ズドンッ!!
 
トレーナー「うおっ?」グラッ
 
「すげェパワー!ありゃ絶対強いぞ!」
 
コータス「〜…っ」ミシッ
 
コータス「もう、すこし……」バコンッ
 

ばきっ。
 
 
めきめきめきめきっ、みしみしっ、ごりっ!!
 
 
 
トレーナー「地面が、割れて……」
 
「うわぁあ!!ゴローーーン!!」
 
「うわっ、ああああ落ちるぅっ!!」
 
「いやぁぁああああ!!」ヒュウウウ
 
 
 
少女「」ガタガタガタガタ
 
コータス「で、西ってどっち?」
 ▼ 24 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/13 20:23:46 ID:WB.XOoew [22/22] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
少女「あっち!」
 
少女「ひっ……」ダッ
 
 



 
コータス「あっちか」
 
コータス「……しゃべんない方がいいのかなぁ」ノソリノソリ
 ▼ 25 ニラン@たんけんセット 17/10/13 23:58:10 ID:VGGzmKBo NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
待っていた
支援
 ▼ 26 テラ@ダークストーン 17/10/14 00:30:48 ID:jSWQHS2E NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
しえん(,,°^°,, * )です
 ▼ 27 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/16 21:32:04 ID:SnXzOk3Y [1/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女(あ、またこの夢だ)


 
───目がくらむほどの真っ白な世界。
 
光の差す方に向かって、彼女は歩いている。
 
足取りはしっかりとしていて、不安はあるが迷いはない。
 
しかし、ただひとつ確信しているのがこれだけ眩しい光に向かって歩いている自分の後ろには、取り返しのつかないほどに真っ黒の影が延びているんだろうな≠ニいうことだった。
 
取り返しのつかないほどに、という言い回しを選んでいる自分にイマイチ釈然としないのだが、そうとしか思えないのがうっすらと怖かった。
 
それでも歩を進めることに抵抗はなく、彼女は歩き続けた。
 
そんな恐怖すらも、胸に宿った希望に比べたらかすんでしまうようなものだったからだ。
 
この胸の奥で、炎のようにたぎる希望に比べれば。
 
 

女「」パチクリ
 
コータス「おはよー」

女「……おはよう」

コータス「最近、目覚めがいいねぇ」
 
女「うん、なんでだろうね」
 
コータス「手がかからなくなるのは助かるけどね。僕、手ぇないしさぁ」

 
 
───のそり、と顔を洗うために起き上がった。
 

 
 
寝癖を探して白髪を見つけて、げんなりとしてため息が出た。
 
よく見ると、全体的に髪の根元が色落ちしているように見える。
 
そろそろ染め直さなくては。
 
この状態だと、頭頂部が薄毛に見えることがあるのだ。
 
つくづく自分の髪が嫌になる。
 
と、鏡越しにそれとなくこちらを見ていたコータスに気付いた。
 
どことなく心配そうにしているように見えて、それが気にかかった彼女は、思わず訊いてしまっていた。
 
タイミングというのもあったのかもしれない。



女「……コータスって、いつからそんなだっけ」
 ▼ 28 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/16 21:34:16 ID:SnXzOk3Y [2/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
コータス「はい?」
 
女「なんかさ……」
 
女「前は面倒見がいいってだけだったけど……今は、もう少し優しくなった気がする」
 
コータス「なにか違うの?それ」
 
女「……わからない」
 
コータス「はぁ?」
 
女「前の方が、コータスはよくわからない子だったから」

女「でも、実際は違うのかも」 
 
女「あなたのことを理解できなかった私が、最近はいくらかわかるようになった……ってだけの話なのかも」
 
コータス「……なんでもいいけどさぁ」
 
コータス「寝る前に開店時間ちょうどに駆け込むぞ≠チてはしゃいでたのは君じゃなかった?」
 
女「そうだったっ!」アタフタ
 
 

───アルトマーレの一角にある宝石屋。

 
 
女「こんにちは!」
 
店主「おや、昨日の」
 
女「はい。あれ≠ワだ残ってますか?」
 
店主「残ってるもなにも……仕入れてからかれこれ5年になるからねぇ」
 
店主「昨日今日で唐突に売れやしないさ」テクテク
 
店主「」ガラ、コトッ
 
女「」ホッ
 
店主「しかし、お金は……」
 
女「用意しました」スッ
 
店主「おお。これは……、ではお預かりします」
 
店主「ひぃ、ふぅ、み、よ……」パチパチ

女「」ドキドキ
 
店主「確かに。しかしおじょうさん、君みたいな子どもには大金だったろうに。」

店主「どうやって用意したんだい」
 
女「それはその……1発当てた、とだけ」
 ▼ 29 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/16 21:35:44 ID:SnXzOk3Y [3/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
店主「ふむ」チラリ
 
女「」ニガワライ
 
店主「……かしこまりました」 スッ
 
店主「はい、どうぞ」
 
女「ありがとうございます」
 
店主「チャレンジ精神はいいが……未成年なのだからね、ほどほどに」
 
女「!」ギョッ
 
店主「大きなお世話だろうがね」ニガワライ
 
女「……ありがとうございます。大事にします」ペコリ
 

 
───キーストーンを手に入れた。
 
 
 

 
 
コータス「買えてよかったね」
 
女「うん」
 
コータス「でもさぁ、僕らのメンツにメガシンカするのっていないんでしょ?」
 
コータス「極力荷物を減らすタイプの君が、そんなもの買うなんて、珍しいこともあるもんだねぇ」
 
女「ん、それは……」
 

 
───たしかに、必要品であっても可能な限りパソコンに預けているほど、自分は手荷物を厳選するタイプだ。
 
土産物屋に寄っても、消えものしか買わないようにしているくらいである。
 
しかし、今回は違った。
 
なんとなく引かれるようなものを感じて入ってみた店───しかも、ふだんだったら絶対見向きもしない宝石屋───そのかたすみにちょこんと置いてあったそれを見た瞬間。
 
鳥肌が立った。
 
そこまでの巡り合わせに、運命的≠ニしか言いようのないものを感じたからだ。
 
店主に話を聞いて、それが確信に変わった。
 
これは、私を待っていた





 ▼ 30 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/16 21:38:42 ID:SnXzOk3Y [4/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
店主『5年前に仕入れたんだけれど、全然買い手がつかなくてね』

店主『この石を持ってきた人は価値をわかっていたようだったが……』
 
店主『わたしも実際の用途は最近知ったんだがね、ほら、話題になってただろう』
 
店主『知っている人もたびたび来たのだが……結局ね。この通りさ』
 
店主『宝石としての価値はない、にしても、買い取ってしまった以上捨てるわけにもいかなかったから』
 
店主『来月までこのままだったら、博物館にでも寄贈しようかと思っていたところさ』

 

女「運命を感じた」
 
コータス「その運命に、君のお財布事情は噛んでなかったみたいだけどねぇ」クククッ
 
女「い、いいんだよ、結果オーライでしょこういうのはっ」アセッ
 
女「それに、いつか見つかるかもしれないよ? コータスナイト、とか。ムクホークナイト、とか。メガシンカするポケモンとか仲間になるかも」
 
コータス「……いつか≠ヒぇ」
 
コータス「君の口から、そんな言葉が出てくるようになるとは思わなかったよ」ボソッ
 
女「……クリップが付いてるのがグッド」イソイソ
 
女「ポーチの内ポケにでも付けとこう」ホクホク
 
 
 
───旅立つときにもらったウエストポーチ。
 
かさばらず、それでいて物のおさまりがいい。
 
とても重宝している。
 
 
 
女「ってあれ? 何か言った?」
 
コータス「今日のお昼はどうするの?≠チて」
 
女「どうしよっか」



───昨日と同じ店に来た。
 
 
 
女「王道のカルボナーラをいただく」パク

女「嗚呼、なんて美味しいのかしら!」
 
女「これに比べたらレトルトのカルボナーラなんて……なんであんなドゥルドゥルなんだろ」
 
女「麺も嗚呼……嗚呼……いちいちおいしいっ」
 ▼ 31 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/16 21:40:13 ID:SnXzOk3Y [5/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
コータス(あー嗚呼あー嗚呼字面と音感がうっさいなー)モグモグ

女「山椒がいいアクセントになってる!ベーコンとソーセージのサイズがちょうどいい!おいしい大きさ!」
 
女「おいしいっ!///」
 
客1(……カルボナーラ食べよう)
 
客2(ボロネーゼの気分だったけどカルボナーラにしよう)
 
客3(カルボナーラ食べたくなってきた)
 
客4「(子ども舌ってのもかわいいもんだな)カルボナーラにするか」
 

 
───これには店員も半笑い。
 
 
 
女「さてさて、デザートはっと……」
 
女?「……」コトッ
 
女(さすがに軽めのにしないとな……ジェラートにしよう)
 
女?「??」
 
女「あ、見る?」
 
女「私決めたからどーぞ」
 
女?「〜!」フムフム

シザリガー「あり?」
 
ラプラス「(汗)」
 
女「」
 
女「………………」
 
女「…………ん?」

女「ん? んんん?」
 
 
 
───メニューを見たそうにしていたので、なんの気なく渡したのだが。
 
鏡にメニューを渡していたらしい、とか思ったら、そいつ≠ヘメニューを受け取って興味津々にページをめくっている。
 
顔つき、髪型から服装まで何もかも自分とまったく同じの人間が。
 
 
 
女「そっ……くり、ていうか……」

女?「〜♪」ニコニコ
 ▼ 32 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/16 21:42:40 ID:SnXzOk3Y [6/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女「私だ(滝汗)」ブワッ


 
───そっくりさんにはとりあえず注文したジェラートを与えて、彼女はポケモン図鑑を開いた。
 
このそっくりさんについて調べるためである。



女(最初はメタモンが化けてるのかと思ったけど……)

女「あなた、しっかりしてそうだもんね」

女?「〜?」ニコニコ

 
 
───器用にスプーンを持ってジェラートを食べている。
 
なぜか、ついてきたスプーンは器の横においたままなのだが。

そっくりさんはいつのまにかもう一本スプーンを持っていて、それを使って食べているのだ。

  
  
女(それにメタモンだったら、もっと間の抜けた雰囲気をかもし出してる)

図鑑『へんしん≠ヘ、メタモンだけが覚えるわざではありません』

図鑑『えかきポケモンドーブルは、スケッチという技を使うことで、へんしんができるようになります』

図鑑『また、特殊な手順を踏むことによって、へんしんを覚えるポケモンはいます』
 
図鑑『未発見のポケモンのなかにへんしん≠ナきるポケモンがいる可能性もあるでしょう』

女「へぇ……」チラ

女?「〜……///」パクパク

女(『備考……へんしんを使わなくとも、特性で他の姿に化けるポケモンはいます』)

女(『ばけぎつねポケモンのゾロアークは、特性イリュージョンによって五感を狂わせ、あたかもへんしんしているかのように見せるだけでなく……』)

女(『周囲の風景なども錯覚させることが可能です』)
 
女(『遠近感を狂わせたり、平衡感覚を狂わせ、彼らは人を騙すことがあるのです』)

女(『このように、外界の情報を操作して、自分の姿を変化させるポケモンも、多数いることでしょう』)

女「やっぱり、メタモン以外にも、人間のふりができるポケモンはたくさんいるんだね」

 
 
───目の前のそっくりさんにしても、実際にスプーンを使っているのではなく、そのように見せているだけなのかもしれない。
 
人間らしさの表現として。
 ▼ 33 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/16 21:43:54 ID:SnXzOk3Y [7/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女「ていうか……」
 
そっくりさん「?」ニコニコ

女(屈託のない笑顔でまじまじと見られると恥ずかしくなってくる)

女(しかも、自分の顔でだなんて)カァア
 
女「あの。私に変身するのはいいんだけど、せめて格好変えてくれないかな?」

女「ちょっと照れくさいから……」ソワソワ
 
そっくりさん「!」

そっくりさん「」コクン

そっくりさん「」クルッ

そっくりさん「」クルリ

女(周りを見回してる)

そっくりさん「」アハッ


 
───そっくりさんが見ていたのは、お向かいのブティックのショーウィンドウだった。


 
そっくりさん「」ユラッ

女「まさか」

そっくりさん「」パラパラパラパラ…

女「………ッ」


 
───間近で見ると見事なものだった。

そっくりさんが眼を閉じた直後、顔以外の箇所がミリ単位で反転するかのように変質していき、1秒と経たずに彼女は着替えを終わらせてしまったのだ。


 
女「……便利そう」


 
───そしてその格好は、ピンクのワンピースに、赤のパンプスというものになっていた。涼しげ。

ワンピースは、アクセントに白のフリルが縫い付けられており、パンプスにはかわいらしいリボンがついていた。

いつの間にか、こじゃれたイヤリングまで着けている。
 
キャスケットは気に入ったのか、かぶったままだ。

その上───
 ▼ 34 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/16 21:46:23 ID:SnXzOk3Y [8/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女(コンタクト外して、髪の色抜いてる……ッ!!)クワッ

女「な、なんでそんなかっこなの!?」カァア

そっくりさん「?」クビカシゲ

そっくりさん「」ニハー

女「恥ずかしい////」



───所作がかわいい、と思いかけて全力でブレーキを踏んだ。
 
自分で自分(の艶姿)をかわいいと表現してしまうのは、あまりにも背徳的だ。
 
同時に、これはヤバイ、という一言が頭のなかで弾幕をはる勢いでリフレインしていた。
 
なにせ、目の前に現在進行形で自分の黒歴史製造に励む刺客がいるのだ。
 
どうにか、どうにかせんとくん。
 
彼女はその思いに囚われていた。
 
結果、そっくりさんがジェラートを完食するのを待ったのち、逃げるように会計を済ませて、店を出たのだった。
 
 

女「ついてくる……」
 
そっくりさん「♪〜♪」ルンルン
 

 
───フリフリな装いに身を包んだ自分が、童女のようなふるまいで歩いている。
 
すさまじい心労がそこにあった。
 
不思議なもので、店の片隅で起きていたこんな珍事を、誰も気に止めていないようだった。
 
店で、と思い返して。
 
───私に変身するのはいいんだけど、せめて格好変えてくれないかな?───
 
恥ずかしさのあまり口走った内容には瓜二つ状態から離れてくれれば、あとは好きなようにしていいから≠ニいうニュアンスを含んでいたように思う。
 
そのニュアンスを正確に把握して、抜け道を通るようにこの服装にチェンジしたのなら、だいぶしっかり(ちゃっかり?)した知能である。
 
 
 
女(なまじ要求をひとつ通してしまってるだけに、それに重ねてもっと地味な格好にして≠ニも言いづらい)
 
 

───格好を変えてから上機嫌なのも、言いづらさに拍車をかけている。

だがしかし、だがしかし。
 
ストレッサーでしかない。
 ▼ 35 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/16 21:48:11 ID:SnXzOk3Y [9/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
というか、ここまでどれだけこの姿をさらした?

と思い返してしまったのが運の尽き。

久しく忘れていた諦めが、泥のように覆い被さってきたような気がした。
 
いろーんなひととすれちがったよなぁ。
 
なんかもう、いまさらかなぁー。
 
 

女「……まぁいーか」ガックシ

そっくりさん「?」ドシタノ?
 
女(ポケモンに化けられる、とか、こんな経験、そうそうないだろうし)
 
女「あなた、トレーナーはいるの?」
 
そっくりさん「」ウウン
 
女「アルトマーレには詳しい?」
 
そっくりさん「♪」コクンコクン
 
女「それじゃあ、あなたの好きなところを見せてくれるかな?」
 
そっくりさん「!」オッケー
 
女(ここはひとつ、観光ガイドをやってもらうとしよう)

女(もうそれくらいやってもらっチャオ!!)ヤケクッッソ
 
 

女「」テクテク
 
そっくりさん「〜♪」テッテッ
 
女(かれこれもう1時間。きまぐれに角を曲がったり、道を乗り換えたりしながら、路地を歩いている)

女(いったい、どこにつれていこうとしてるのやら)
 
そっくりさん「」ピタッ
 
そっくりさん「!」アレアレ
 
女「どれどれ?」
 
女(……洗濯物を干してる女の人?)
 
そっくりさん「」オーイ
 
おばさん「ん………おや、おんなじ顔」ピコーン
 
おばさん「ちょっと待っててー!」
 
女「……知り合い?」
 ▼ 36 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/16 21:49:23 ID:SnXzOk3Y [10/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 
そっくりさん「」ワクワク
 
おばさん「お待たせ」
 
おばさん「はい、どうぞ」
 
そっくりさん「♪〜♪」ウッヒョー
 
おばさん「おじょうちゃんも、どうぞ」
 
女「あ、ありがとうございます」ペコリ
 
おばさん「ま。どういたしまして」ニッコリ
 
おばさん「今日のお友だちはずいぶんお行儀のいい子なんだねぇ」
 
おばさん「気をつけてねぇ」チャオ〜
 
そっくりさん「」バイバーイ
 
女「……なして?」
 
 
 
かごいっぱい の マドレーヌ を てにいれた!
 
 
 
女「そしてまた散歩再開」
 
そっくりさん「」ルンルン
 
女「いったいどこに向かってうっまっ」モグッ
 
そっくりさん「」デショ?
 
女「魔性の味なのだわ……」モグモグ
 
そっくりさん「」アレアレ
 
女「ん、なに……だ、あれ……っ?」
 
コータス(どっかで見たことある)
 
女「地面に、縦一列にマスが描かれて……ときどき左右二つになってる……? 一定の法則にしたがって……ない? なに、これ?」
 
コータス(……おもしろいくらいに動揺してるからこのままほっといてみよう)
 
そっくりさん「」トウッ
 
 
ぴょんっぴょんっぱっ。ぴょんっぴょんっぱっ。
 
 
女「!」
 
女「マスがひとつのところでは片足。左右に並んでるところでは両足をつく。これを一定リズムで進行するゲーム……!!」
 ▼ 37 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/16 21:49:59 ID:SnXzOk3Y [11/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 

 
───けんけんぱともいう。
 ▼ 38 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/16 21:51:31 ID:SnXzOk3Y [12/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
そっくりさん「〜!」オイデオイデ
 
女「…………ほっ!」ピョンッ
 
 
ぐきっ。
 
 
女「ン゙ア゙ーーーーーーっ!!!!」ジタバタ
 
コータス「弱っわぁ……」
 

 
女「ちょっと休んだら治る」
 
女「私は若いから!!」フンガーッ
 
そっくりさん「(苦笑)」
 
女「……とうっ」ピョンッ
 
女「おあっ……へぁ……ほおっ」グラグラ
 
女「ていっ」トンッ
 
コータス「そこ両足」
 
女「くっそお!」クズレオチル
 
コータス「wwwwww」ケラケラケラ
 
女「」クルッ
 
コータス「」スンッ
 
女「」ジトー……
 
女「………ふんだ」ツーン
 
女「こうなりゃとことんやってやるかんな……」
 
 
 
───めらめらぼーぼー炎が燃え上がってしまったのであった。
 
30分後。
 
 
 
女「ふん、ふんっ、はっ! とお! やっ、はっ! てい、たあ、はっ!」

コータス(武道家かこの娘は)
 
女「どうだ!!」
 
コータス「最低限できただけだからね、それ」
 
そっくりさん「(困惑)」
 ▼ 39 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/16 21:53:44 ID:SnXzOk3Y [13/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
コータス(※※※※※ちゃんはときたまポケモンすら困惑させる)

コータス「次はけんけんぱって言いながらやるんだよぉ」
 
女「KEN・KEN・PA……?」
 
コータス「異国の料理みたいな言い方すんな。片足のとこでけん@シ足のとこでぱ≠セからねぇ。はいがんばれぇー」
 
女「けん、けん、けん=Aアッ」

コータス「えぇー……」
 
コータス「ゲームはさておき、運動がちょっとでも絡むとてんでダメなんだから……」ボソッ
 
そっくりさん「?」
 
コータス「そりゃそうだよぉ」
 
コータス「人間って新しいことに挑むときが一番楽しいもんだからねぇ」
 
コータス「……やっぱあの子もそうなんだな」

そっくりさん「???」
 
コータス「まぁねぇ。最近、ようやくマシになってきたんだ」

コータス「だってあの子は当たり前にいるこどもなんだからさぁ」
 
コータス「何するにも無感動じゃ、気持ちわるいよ」

コータス「それに、才能皆無でも練習すりゃ少しはマシになるもんだからねぇ」
 
そっくりさん「〜?」
 
コータス「無用な面倒をいっぱい負った分、より真っ当になってくれるなら万々歳だよ」
 
そっくりさん「」フリフリ
 
コータス「……そりゃあね」
 
 
 
女「けん、けん、ぱ。けん、けん、ぱ。けん、けん、けん、ぱ。けん、ぱ、けん、ぱ、けんけんけんぱ、ぱぱけんぱけんぱけんけんけんぱ」
 
女「けんぱぱぱぱけんぱぱけんけんけんけんぱけんぱけんけんぱぱぱぱぱぱけんけんぱけんけんぱんけんけんけ」
 
コータス「長い長い長い長い」
 
そっくりさん「」クスクス
 
 

女「このゲームたのしい!」プハー

コータス(長いコースだったなぁ……)
 
女「これ、ここから発展できそうだよね……両端からスタートしてじゃんけんで負けたらスタート地点から。相手のスタート地点に踏み込んだら勝ち、とか」
 
コータス「ある」
 ▼ 40 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/16 21:55:09 ID:SnXzOk3Y [14/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女「片足跳び固定で曲線型ルートの上を行くとか」

コータス「似たようなのある」
 
女「……コータスよく知ってるね」キョトン
 
コータス「ブロッケン現象だのイマジナリーフレンドだのを知ってるのにけんけんぱを知らないのはさすがにおかしい」
 
女「どんな感じのルールなの? 教えてよ」ウズウズ
 
コータス「バリバリの観光地に来て、なんでけんけんぱにハマってんのさぁ」グッタリ
 
そっくりさん「」アハハハハハ

女「腹抱えて笑ってんじゃん……ん?」
 
ハネッコ「ねっはー」
 
女「……ハネッコ?」

女の子A「おねーちゃんたち、ここで何してんの?」キョトン

女「君たち、このハネッコの?」
 
女の子A「そうだよ。で、何してんの?」
 
女「マスがひとつのところでは片足をついてけん=B左右に並んでるところでは両足をついてぱ=Bこれを一定リズムで進行するゲーム」
 
女の子B「おねえさん、けんけんぱするには老けすぎてない?」
 
女「始めるには遅すぎるなんて人生にはないんだよ。正しいより楽しいだよ」
 
女の子A「やらなかったことやってみよう。失敗も思い出≠チて?」
 
少年「人生とかけんけんぱで論じる題材じゃねえよ……なんだよ俺たちまだこどもだぜ」
 
少年「モラトリアム楽しんでる身空に、未来のにおいをただよわせないでくれよ」
 
そっくりさん「???」
 
女の子A「うわ、そっくり……あ、きのうの子か」
 
女の子B「今日のカッコすごいじゃん。なんで?」
 
女「い、いいじゃんそれは!」
 
コータス「こぉ……」
 
女「そ、それよりホラ、この子もけんけんぱ好きみたいだから!みんなでやろう!///」

女「おやつもあるよ!」
 
ガールズ「「ギブミーギブミー」」
 
男の子(装いがちがうけど顔立ちがおんなじ……あっ(察し)




 ▼ 41 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/16 21:56:19 ID:SnXzOk3Y [15/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
───けんけんぱをはじめ、かけっこやハネッコさかし、ゴーリおににソーナンスおに、といった初めての遊びをたくさんやった。
 
童心にかえって(おぼえている限り童心に満ちていた幼少期などないが)、外遊びに興じて、馴れない遊びにボロ負けしまくって。
 
もらいもののマドレーヌをふるまって。
 
くたくたになりながら、しかしさわやかな気持ちで子どもたちと別れた。


 
女「……つっ、かれた」トボトボ
 
そっくりさん「?」
 
女「いつも、あんな風に子どもと遊んでるの?」
 
そっくりさん「」コクン

コータス「おじさんと一緒にとびこみ遊びすることもあるって」
 
女「不穏なんだけど。そのおじさんただのダイバーなんだよね?」
 
女「普段着のままだったりしない?手すりの手前に靴そろえて脱いでたりしないよね?」

そっくりさん「」
 
女「……えっ」
 
そっくりさん「!」ピクッ
 
女「ど、どうしたの?」
 
そっくりさん「」アレアレ
 
女「どれどれ?」
 
女「……なんか飛んでったな」
 
女「そっち行ってみようか」
 
そっくりさん「」コクン
 
そっくりさん「」テッテッテ
 
女「……なぜだろう、心にすこし後味のよくないものが残るのは」

 
 
───行ってみた先には、殺風景な広場があった。人もあまりいない。

というか、ひとりとポケモン1匹しかいない。 
 
意外なことに、近くに水場は見当たらなかった。
 
 
 
女「アルトマーレにもこういうところはあるんだね」

女「あれ?」
 ▼ 42 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/16 21:59:46 ID:SnXzOk3Y [16/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
おとなりさん「」ゴソゴソ

女(となりの部屋の)
 
女(昨日夕飯の時にいたけど、あんまりしゃべらなかったんだよな……)
 
そっくりさん「」アハッ
 
そっくりさん「♪」テッテッテ
 
女「アッ」

 

おとなりさん「130度の時に3翼がちゃんと回ってないな……なんでだ? 重心殻の移動にちゃんと連動してるのは確認したのに……4翼だって対応してる……0Gプラマイ.35くらいまで遊ばせた方がいいか」ブツブツ
 
そっくりさん「???」ソワソワ
 
おとなりさん「……あれ? 君は」
 
女「こんにちは」
 
おとなりさん「えっ、そっち!?」
 
おとなりさん「あれ……宿ではひとりだったよね?」
 
女「」
 
女「妹です」

コータス「」
  
女「アルトマーレの学校で寮生活してるんで、会いに来てるんです」
 
おとなりさん「え? でも家族はいないってきのう言ってなかった?」
 
女(スマホいじいじしてる割に周りの話聞いてるタイプ)
 
女「いや、その……両親が亡くなったとき、別々に引き取られたので……」シュン

女「旅の道すがらですけど……会ってみたいな……って」フシメガチ
 
おとなりさん「! ごめんね。無神経に首をつっこんでしまった」

女「そんな。気にしないでください」
 
女「私もいまだにこんな似ているとは思わなくて……顔を見たとき少しぎょっとしたくらいです」
 
女「別に双子でもないのに……」
 
コータス(嘘を事実で和える高等テクニック……)ドンビキ

コータス(この子最近、息をはくように嘘つくときあるよなぁ。どこでそんなの覚えたんだろ)
 
女「それより、お兄さんはここで何を?」
 
おとなりさん「ああ。俺はここでドローンの調整をやってるんだよ」

おとなりさん「人もいなけりゃ水場もないし、木も植えてない。テスト飛行にはもってこいなんだ」
 ▼ 43 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/16 22:01:18 ID:SnXzOk3Y [17/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
そっくりさん「!」
 

 
───彼の前には、10センチ四方ほどの4脚4翼のドローンがあった。
 

 
女(あの子が見つけたのはこのドローンかな)
 
 
 
そっくりさん「」オホー
 
エレキブル「ぶるぁあ」
 
 
 
───ドローンをしげしげと見ている、と思ったら、いつの間にかはなれた場所にいたエレキブルにからんでいた。
 
腕に掴まってふりまわされている。
 
 
 
女(気移りが早い)
 
おとなりさん「エレキブル、やさしくな!」
 
女「これ、自作ですか?」
 
おとなりさん「そ。いちから作ってるんだ。こいつはここまで進めるのに1ヶ月くらいかかった」
 
女「これを1ヶ月……早いですね」
 
おとなりさん「お、よくわかったね。これはけっこう早くできた方なんだ」
 
おとなりさん「実はこいつの前にも作ってたんだ。そっちは合計で1年くらい使った」
 
女「それは完成したんですか?」
 
おとなりさん「うん。でも、誤操作で失くしちゃって」ヘヘヘ

女(辛い話)ガビーン
 
おとなりさん「たいあたりでやってたところも多かったから、ログも断片的にしか残してなかったんだ」

おとなりさん「いやぁ、まいったまいった」ヘラヘラ
 
女(見るからにハートが強い)
 
女「断片的なログと記憶をたよりに2号機をより早く組み上げるなんて……すごいですね」
 
おとなりさん「いやいや……こんなの全然だよ」
 
女「またまた」ニハ
 
おとなりさん「いやいや」ニマニマ
 
女(満更でもなさそうなのが好感もてる)
 ▼ 44 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/16 22:02:44 ID:SnXzOk3Y [18/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女「……でも、アルトマーレじゃ、地形的にドローンの製作は不向きじゃありませんか?」
 
女「実際紛失してるみたいですし……なんでここでやってるんですか?」
 
おとなりさん「うっ、それを言われるとこたえる」
 
おとなりさん「……まぁ、なりゆきみたいなもんだよ。そもそも俺、ここには病気療養で来たんだ」
 
女「病気」
 
おとなりさん「仕事で適応障害になっちゃってね。休職中」
 
女「技術系なんですか?」
 
おとなりさん「いいや、営業職だよ。ただのサラリーマン」
 
女「それじゃあドローンは……」
 
おとなりさん「ただの趣味。アルトマーレに来るまではずいぶんご無沙汰だったし」

女「趣味でこのクオリティって……やっぱりすごい」
 
おとなりさん「ありがとう。でもまだまだ無駄は多いと思うし、完成にはほど遠いよ」
 
おとなりさん「まだまだかかりそうだ」ニッ

女「」
  
女「……飛ぶところを見てもいいですか?」
 
おとなりさん「はいはい。ちょっと待ってね」
 













 




 ▼ 45 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/16 22:03:45 ID:SnXzOk3Y [19/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女(飛んでいるあいだ、脚部がプロペラ部のガードになるとか……理にかなってたなぁ)テクテク
 
そっくりさん「〜♪」スキップスキップランランラン
 
女「さすが元気だな……」
 
女「私はスキップができない」
 

 
───そっくりさんはエレキブルとじゃれたり、飛んでいくドローンを追いかけたりと、きまぐれに好き放題やっていた。
 
さすがポケモンは体力が違う。
 

 
女(あのエレキブル……常にドローンからは一定の距離をおいているみたいだった)
 
女(でんきタイプだから電磁波や静電気を気にしてのことなんだろうけど)
 
女(ボールに入ってもらわずに外に出していたのは、きっとそういうこと≠ネんだろうな)
 

 
───彼は、エレキブルを邪険に扱うようなことはしなかった。
 
ドローンに熱中しているのと負けず劣らず、あのエレキブルに愛着があるであろうことは、自然と理解できた。
 
それを考えていると、やはり。
 
 
 
女(ご無沙汰だったドローンに、わざわざ療養先で再燃した理由が気になる)
 
女(……けど、そこに突っ込むのはダメだよね)
 
女(適応障害の病気療養って言ってるくらいだし、デリケートな事情なのはわかりきってるんだから)
 
女(見境ない知的好奇心は悪徳だ)パチン
 
そっくりさん「?」ドシタノ?

女「いましめ」
 
女「そういえば、水場のあるとこに出たね」
 

 
───建物に面して川があるようなタイプの水路ではない。
 
道路沿いに川が流れている、という一般的な川≠ナある。
 

 
女「ここはゴンドラ……」チラッ
 
女「一隻だけいるね」
 
女「……あんまり観光向きな風景じゃないもんな」
 ▼ 46 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/16 22:04:55 ID:SnXzOk3Y [20/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女「一見風情が言えたことじゃないけど、民家が見える程度じゃね……」
 
女「あと目につくものっていったら、せいぜい男の子が流され男の子が流されてる!!!」ガバッ
 
 

男の子「がぼっ……あぶ……」バチャバチャ
 
 

女「超おぼれてる!!」ガーン
 
そっくりさん「」ヨッコラセッ
 
女「ばかばかばかミイラ取りがミイラになるステイステイステイ!」ガシッ
 
女「ラプラス!」ポンッ
 
ラプラス「らぁす?」ザブン
 
女「その子の支えになってあげて!」

ラプラス「ぷらら!」スイーッ
 
男の子「あぅ…………っば」ガシッ
 
女「」ホッ
 
そっくりさん「」ホッ
 
男の子「うおぼっ」ズルッ
 
女「あっ!」
 
ラプラス「?!」
 
女(すべって甲羅に上がりそこなった。水に体力奪われて消耗してるんだ)

そっくりさん「〜?」ドウスルノ?
 
女「大丈夫考えてる!」
  
女「ラプラス!水中に潜って、下からすくいあげるかんじで!」
 
ラプラス「ぷーらら!」ザブン
 
ラプラス「」ザバァン
 
男の子「おぅっへ!ごぼっごほっがはふ……」ゴホゴホ
 
ラプラス「」ホッ
 
女「岸につけて! 落とさないようにね!」ピポパ
 
女「あっ、もしもし……はい、子どもが川でおぼれてて……はい、はい……今、手持ちのポケモンで岸まで運びました。でも、だいぶ衰弱してるみたいで……はい、はい……」
 
そっくりさん「」キョトン
 ▼ 47 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/16 22:06:14 ID:SnXzOk3Y [21/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告





女「たすかったぁ〜……」グッタリ


コータス「なんで君が腰抜かしてるのさ」

女「イヤイヤイヤ、ここで助けそこなってたらもう……死んでた」
 
コータス「死にはしないでしょぉ」 
 
女「救急隊に運ばれていったし、もう私たちの出る幕はない……よね」
 
ラプラス「らぷらぁ?」
 
女「あとでおいしいのあげるね、ありがと」ナデナデ
 
そっくりさん「……」
 
そっくりさん「」ニッコリ
 
女「……もう日が暮れてきたな」ポシュン
 
女「私たち、もう帰ろうと思うんだけど、あなたはどうするの?」
 
そっくりさん「?」ドウシテ?
 
女(しかし、ほんとにボディランゲージがわかりやすいな……まるで書いてあるみたいだ)
 
女「トレーナーがいるわけじゃないんだよね」
 
女「帰るところあるの?」
 
そっくりさん「!」ナルホド
 
そっくりさん「♪」ダイジョブ
 
女「そっか」
 
女「それじゃ……」

 
 
───それにしても、いろいろなことがあった。
 
自分に化けたポケモンと一緒に遊んだり。
 
自分に化けたポケモンにジェラートをおごったり。
 
自分に化けたポケモンと散策したり。
 
化けられた羞恥心や、男の子の川流れといったアクシデントこそあれど、結果的にはトップランクで楽しい日だったかもしれない。

なんだか、このままわかれるのは惜しいな。

そう思ったが、しかし。
 ▼ 48 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/16 22:08:26 ID:SnXzOk3Y [22/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女(この子は好き勝手にアルトマーレを巡遊して、気まぐれに人間と遊んでるだけだ)
 
女(この自由がこの子のライフサイクルなんだから、それを私が縛るのはよくない)


 
 
 
───後ろ髪を引かれる思いはあったが冷静に思考。
 
そして心をフラットにする。
 
名残惜しさは振り払った。
 
バイバイ、と言おうとした。
 

 
そっくりさん「」ニギ
 
女「おわっ」ビクッ
 
そっくりさん「」ズイッ
 
女(近い)
 
 
 



そっくりさん「」パク、パク、パク、パク、パク
 
 



 
女「……え」
 
そっくりさん「」ニッコリ

そっくりさん「〜!」ダーッ
 
女「………………」
 













女「ま、た、あ、し、た……?」
 ▼ 49 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/16 22:09:53 ID:SnXzOk3Y [23/23] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



3日目に続く。
 ▼ 50 ツドン@ボイスチェッカー 17/10/16 22:12:57 ID:PrSvF92E NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
かこつです。
いつもながらとても面白いです。
 ▼ 51 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/19 16:05:46 ID:dMdxHyGk [1/11] NGネーム登録 NGID登録 報告
そっくりさん「〜!」モグモグ
 
セーラー服「妹さん、よく食べるね」
 
女「(苦笑い)」
 
 

───自分の姿に化けたポケモンと遊んだ翌日。
 
そっくりさんは早朝にやってきて、宿の朝食を遠慮なくいただいていた。
 

 
女(宿まで突き止められてるとは思わなかった) 
 
セーラー服「髪の色とかちがうけど、顔つきなんかほんとそっくりだよね」
 
セーラー服「これで双子じゃないんでしょ?」
 
女「ま、まぁ……」
 
セーラー服「ほら、ケチャップついてる」フキフキ
 
そっくりさん「」テレテレ
 
セーラー服「んー、かわいいやつ」ホホエミ
 
女(いとおしげにそっくりさんの食事をながめるセーラー服さんの横顔には、なぜか陰があるようにみえた)
 
女(何の事情があるのか、無神経に聞くことはできないけど、でも)
 
 
 
───いったい何が、と考えてしまうような雰囲気が、彼女の横顔にはあった。
 

 
女「そういえば、一緒にいたギャンブラーのお姉さんはどうしたんですか?」
 
セーラー服「夜ふかししてて、まだ寝てる」
 
女「なるほど」
 
セーラー服「君は、彼女のこと嫌い?」
 
女「えっ? いや……その……嫌いではないです」
 
女「ギャンブルも、たしなむ程度なら何も問題ないと思います」
 
セーラー服「あいつは賭け狂いなんだよなぁ」ハハハ

宿屋さん「失礼。コーヒーのおかわりをお持ちしましたよ」
 
セーラー服「そういえば宿屋さん、バイトの子どうしたの?」
 
宿屋さん「あぁ。あの子ならデートですよ」ニコニコ
 
宿屋さん「どうぞ」
 ▼ 52 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/19 16:08:56 ID:dMdxHyGk [2/11] NGネーム登録 NGID登録 報告
女「ありがとうございます」

宿屋さん「ゆっくりしていってくださいね」
 
そっくりさん「〜!」パァァ

女「すみません、突然おじゃましたのに……」
 
宿屋さん「いいんですよ。お客さんはお客さんですから」イソイソ
 
女「」ペコリ
 
セーラー服「宿屋さん、ほんといい人っていうか、おひとよしっていうか」ヤレヤレ
 
女「気持ちのいい人ですよね」
 
セーラー服「ふつうだったら、朝食前に従業員をデートに行かさないって……」
 
女「娘さんだからかわいいんじゃないですか?」
 
セーラー服「でも彼女、あくまでバイトの子だよ?」
 
女「ご家族じゃないんですね」
 
セーラー服「そんな風に思ってるところもあるんだろうけどね。宿屋さん、バツイチらしいから」
 
セーラー服「娘さんがいるって話だよ」
 
女(重ねてるとこもあるのかな)
 
セーラー服「バイトの子といえばほら、彼女、君の隣の部屋の彼といい仲らしいじゃん?」ニマニマ
 
女「え、じゃあ、あのお兄さんと?」
 
セーラー服「けっこうこんな風にデートとか行ってるし、わかるよ。暇があったら見ててみ」
 
女(おぼえとこう)
 
ギャンブラー「……おはよう」

セーラー服「おそいよ。てかひどい顔だな……夜遅くまでどこ行ってたのさ」
 
ギャンブラー「……そのへん」
 
女&セーラー服((テキトー言ってんな))
 
ギャンブラー「おなかすいた」









 ▼ 53 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/19 16:09:59 ID:dMdxHyGk [3/11] NGネーム登録 NGID登録 報告


女「朝食を終えて、今日も今日とてアルトマーレ散策に繰り出したのでした」

女「今度はどこにいくの?」
 
そっくりさん「〜♪」スキップスキップ
 
女「……聞いてねえし」ガクッ

女「……あ、ここの水路。あそこのと繋がってるのか」
 
女「じゃあ道のり的に……ふむ」
 
そっくりさん「!」アレ

女「?」
 
女「ベランダでコーヒー飲んでるおじさんと、エイパム?」
 
そっくりさん「」ニコニコ
 
女「?」
 
そっくりさん「」オホー
 
女(と思ったら川を流れていく笹舟を眺めてる)
 
子どもたち「うわーい!!」
 
女「うわっとと」
 
そっくりさん「」バイバーイ
 
女「………」
 
女(さっきからこんなのばっかだな)
 

 
───Y字路に当たったらどちらにしようかな≠ニテキトーに曲がり、人を見かけたらニコニコしながらそれを眺め、ときおり所作を真似する。
 
階段を軽やかに駆けあがって、手すりをすべり降りたり、なんてこともする。

道なりに進んでいた、と思いきや、道路沿いの塀に飛びついて、いいものを見つけた≠ニばかりにこちらの手を引いてくる。
 
ひいこらいいながら壁を乗り越えたら、当然のごとく人の家の庭で、きょとんとしている住人をよそにそっくりさんは駆け抜けていく。
 
必然、すみません、と頭を低くするのは自分で、ながらも後を追うことになる。
 
すれ違う人に彼女が手を振れば、それに気づいた人は笑顔で振り返してくるし、チャオ、と挨拶してくれる人までいる。
 
しかし、意外なことに彼女の突飛な行動にあっけにとられることこそあれど、怪訝な顔をする人は誰もいないのだ。
 
妙な空間に取り込まれたような気分だった。



 ▼ 54 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/19 16:11:04 ID:dMdxHyGk [4/11] NGネーム登録 NGID登録 報告
女「あなた、ホント何者?」
 
そっくりさん「!」アハッ
 
女「こんどは停止ですか………ん?」
 

 
───そっくりさんの見上げた先では、大工さんが作業をしている様子だった。
 
屋根の雨漏りでも直しているのだろうか。
 
手慣れた様子であぶなげもなく、なんの変哲もない、日常風景。
 
しかし、それを眺めるそっくりさんは、とても幸せそうな笑顔を浮かべている。
 
 
 
女(……あぁ、そうか)

女「あなたは、この街の人々がいとおしいんだね」
 
そっくりさん「?」クルリ

女「アルトマーレに住むみんなの暮らしが、あなたにとっての幸せなんだね」
 
そっくりさん「」コクン
 
そっくりさん「」テッテッテ
 
女「うわっいきなりどうしたの!?」
 
女「待ってよ!」タッタッ
 

 
 
 
 
女「……うわっここ」
 
女(いい景色)
 

 
───眼下に広がるアルトマーレの町並み。
 
隙間を縫うようにのびる水路の反射が、きらきらと景色をもり立てている。
 
手前の広場をはじめ、街の中を行き交う人々。
 
広い運河を悠々と流れていくゴンドラ。
 
空を飛んでいく鳥ポケモンたちや、屋根づたいに走っていく陸上ポケモンたち。
 
この風景にはきっと、彼女≠ェ愛しているもののすべてが息づいている。
 
そう思うと、胸の中を気持ちのいい風が吹き抜けていくようだった。
 ▼ 55 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/19 16:11:45 ID:dMdxHyGk [5/11] NGネーム登録 NGID登録 報告

 
 
 
そっくりさん「」クイクイ
 
女「どうしたの?」
 
そっくりさん「」アレアレ
 
女「???」ドレドレ
 
 

───そっくりさんが指差す広場の一角を見て、合点がいった彼女は失笑した。
 ▼ 56 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/19 16:13:11 ID:dMdxHyGk [6/11] NGネーム登録 NGID登録 報告
 
 
 
そっくりさん「」ペロペロ
 
女「こういう移動販売で売ってるアイス、おいしそうだもんね」
 
女(ほんと、ちゃっかりしてる)
 
シザリガー「ぺろぺろ」

女「君もねー」パク

 

───見知らぬ少年に、唐突に(それも熱く)バトルをしかけられたので、シザリガーに出撃してもらった。
 
クラブハンマーでかったるそうにラッタを殴り飛ばしている絵面が、妙にコミカルだった。
 
あっさり負けた少年は、不思議とあっさり引き下がり、どこかに駆けていった。
 
子どもなんて、どこでもあんな感じなのだろうか。

 
 
女(男の子ってもっと、負けず嫌いな生き物だと思ってたけどなぁ……)
 
女「……おいし。」 
 
そっくりさん「」ニマニマ
 
女「? なぁに?」
 
そっくりさん「〜」ナンデモナーイ
 
女「変な子」フフッ

「あ!やっほー!」
 
女「?」
 
女(あ。このカップルは)
 
だんなさん「こんにちは」ニコッ

そっくりさん「〜!」ピース
 
おくさん「ここのアイス、おいしいでしょ?」

女「はい。ほっぺたが落ちそうです」ニコリ
 
おくさん「わたしたち、2回目なの」
 
女(……おくさんの方、少し苦手なんだよな)



───夕飯のとき、初日も2日目も、彼女に会話のペースを握られっぱなしだった。
 
だんなさんが手綱を握っていなければ、まるでタネマシンガンのように絶えることなく話のネタが涌き出て止まらないのだろうな、と思うと、少し気疲れした。
 ▼ 57 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/19 16:14:28 ID:dMdxHyGk [7/11] NGネーム登録 NGID登録 報告
一方で、これだけ話していられるのもすごいな、と素直に感心もした。
 
スキンシップが過多なところも、決して嫌いではない。
 
ただ、いかんせん苦手意識が首をもたげてしまうのだった。 
 
 
 
おくさん「この子が話に聞いた妹さん=H」
 
女「は、はい」
 
おくさん「ほんっ、とそっくりね!」

おくさん「君もこういうかっこすればいいのに」
 
女「い、いや私はちょっとその……照れくさいっていうか……」
 
女「ここまで振り切れるほど自信がないので」アハハ
 
おくさん「きっとかわいいよ」
 
女「///」
 
おくさん(困ってるのかわいい)
 
おくさん「……旅の恥はかきすて≠チて言葉、どう思う?」
 
女「かいてもいいって思える恥なら、捨てていけますけど……でもだいたいの恥は覚えてるので、あとで思い出して悶えることも多いです」
 
おくさん「悶える恥は、たまたまかいてしまったの? それとも、捨てていこうって決めた恥?」
 
女「両方、ですけど……思い返してみると、たまたまかいてしまったのの方が多いです」
 
おくさん(素直に答えてくれる……いい子だなぁ)
 
おくさん「そっか……でも、それって、きっと今のうちにしかできないことのはずよ」
 
おくさん「恥をかくようなことって、わたしはもうできないもの」
 
おくさん「昔は屁でもなかったんだけどね。今はもう……ちょっとキツいかな」アハハ
  
女「キツいっておっしゃるほど、老けてないと思います」
 
おくさん「あー、スッゴく嬉しい。うん、だよね、わたしまだ25だし」フン
 
女(のせられやすいタイプ?)
 
おくさん「それを言ったら、やっぱり君もよ」

女「ッ」
 
 
 
───優しく肩を抱かれて、驚く、とともに。
 
くすぐったいような気持ちになってうつむいてしまう。
 ▼ 58 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/19 16:16:31 ID:dMdxHyGk [8/11] NGネーム登録 NGID登録 報告
おくさん「かわいいんだもん。だいたいの失敗なんて、笑って許してもらえるよ」
 
女(ひいき目だよ……それ)
 
 
 
───そう。

この女性はどうも、自分にかなり肩入れしてくれているところがある。
 
自分の経歴を洗いざらい話したわけではないから、同情されていたりだとか、そんなことはないはずなのだが。
 
いったい、どうして。
 
 
 
おくさん「あーん、もー!かわいいかわいいかわいいほんとかわいい!」

女「むぎゅう」
 
おくさん「2人まとめてうちの子にしたいぃー!」
 
そっくりさん「」ムギュウ
 
だんなさん「こらこら」ヒキハガシ
 
女「」プハー
  
おくさん「……そういえば君、ひょっとしてこっち≠フが素なの?」

 
 
───唐突に。

そっくりさんを指しながら、そう訊かれた。
 
 
 
女「……え?」
 
おくさん「ほら、君、コンタクトしてるし、髪も染めてるでしょ?」

女「!」
 
だんなさん「! ……さーちゃん」
 
おくさん「最初は妹さんの方が、おしゃれで目立つカッコしてるのから、白く染めてるのかなぁって思ったんだけど、違うみたいじゃない?」
 
おくさん「てことは、君の素顔がこっちなのかなーって」

女「」
 
おくさん「素材がスッゴくいいのに、全部殺しちゃってるんだなって思ったら、やっぱりもったいないなぁって」
 
だんなさん「さーちゃん!」
 
おくさん「」ビクッ
 ▼ 59 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/19 16:18:15 ID:dMdxHyGk [9/11] NGネーム登録 NGID登録 報告
だんなさん「わるいクセが出てる」
 
おくさん「あ……ごめんなさい」シュン


 
 
 
 
女「……えっと、す、すごい洞察力ですね!」
 
女「いつごろ気付いたんですか?」
 
女「なかなかバレないんですけど……びっくり!」アハハー
 
だんなさん「……ごめんね」
 
そっくりさん「?」






───あたりさわりのないお喋りを交わして、アイスに舌鼓を打ったのち、カップルと姉妹(偽)は別れた。 
 
 
 
だんなさん「さーちゃん、少し考えればわかるだろ」
 
だんなさん「あーやって黒一色にしてるってことは、コンプレックスにしてるってことだ」
 
おくさん「……うん、だよね」
 
おくさん「はしゃいじゃって失敗しちゃった……はぁ」ドヨーン
 
おくさん「こんなにかわいくなるのに、もったいないなぁ≠チて思ったら……つい」
 
だんなさん「わからんでもないけど……さーちゃんはいつも前のめりすぎだ」
 
おくさん「きらわれちゃったかなぁ」

だんなさん「……大丈夫だよ」
 
だんなさん「さとい子のようだし、きっと反省してるのは伝わったよ」
 
だんなさん「……びっくりしただろうに、フォローまでしてくれて。優しい子だよね」
 
おくさん「あぁー………もぉ」スコン
 
 
 

 

女(見境のない好奇心は悪徳、とか思った翌日にこれだからなぁ)
 
女(世知辛い)
 ▼ 60 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/19 16:20:27 ID:dMdxHyGk [10/11] NGネーム登録 NGID登録 報告
───苦手意識、ほんのり強化。

と思いきや。
 

 
女(でも、あれだけねこかわいがりされるってのも、悪くないなぁ)
 

 
───そう思う自分がいたのが不思議だった。
 
 
 
そっくりさん「」コッチコッチ
 
女「……なんだろ」テクテク
 
女(ここ、変)


───もうそろそろ昼も過ぎる、という頃合い。
 
アイスを食べたのち、午前中のようにいざなわれながら遊び歩いていた彼女は、いつのまにか妙な場所にいた。
 
道程を忘れないことに自信のある彼女にとって、いつの間にかここにいた≠ニいう感覚は、非常に気持ちの悪いものだった。
 
冷静にここまでの道のりを思い出そうとしても、思考にかすみがかかったような気分で、全く思い出せない。
 
見渡す限り、なんの変哲もない、アルトマーレの路地なのだが。

 
 
女(居心地悪いな……)
  

 
───バードバスで行水しているポッポ達の姿が、妙に幻想的に見える。
 
昨日一日遊んだからと気を許して、正体の知れないポケモンに誘われるまま、どこかもわからない場所に来てしまったのはさすがにうかつだったのでは。
 
そんな考えが首をもたげた。
 
以前、人当たりの良さそうな体で、ゴーストポケモンにあの世(めいた場所)につれていかれそうになったことがあるというのに。
 
 

女(でも、あのときとは違う)
 
女(今はひとりぼっちじゃない)



───ポケモン達が一緒にいてくれている。
 
危ないと感じたなら、とうに警告のためボールを揺らしているはず。
 
シザリガーなんかは勝手に出てくるだろう。

それに。
 ▼ 61 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/19 16:21:25 ID:dMdxHyGk [11/11] NGネーム登録 NGID登録 報告
 
 
 
女「私、あなたのこと疑いたくないもん」スタスタ
 
そっくりさん「!」
 

















 
 
───真っ暗闇。
 
何者かに手を引かれて進んでいる。
 ▼ 62 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/19 16:23:41 ID:WhyJnBBo [1/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
頭もぼんやりとして、考え事もままならない。
 
時間の感覚が溶けていきそうだ。
 
自分の手を引く者の姿は、闇のせいでまったく見えない。
 
手を握ったときは、指のか細さに少し驚いた。
 
わずかに残る危機意識が手の主のぞっとするような想像図を脳裏によぎらせるが、それはするりとほどけるようにして消えた。
 
だってこれ、あの子≠フ手だし。

温かいし。
 
だから、手を引かれるままに任せて、だまって歩いていく。

相手がポケモンでもたとえ視界ゼロでも、ごきげんなのはわかるんだな、と思って、暗闇のなか、顔をほころばせていた。
 
───どれだけ歩いた頃か。
 
唐突にぱっ、と、視界と頭がクリアになった。
 
 
 
女「う………わ───」
 
 

───暗順応してしまっていた目をゆっくり開けると。
 
そこには、アルトマーレのどんな観光ガイドにも載っていないような、静謐な庭園が広がっていた。
 
人の産み出す一切の喧騒がなく、風と水の流れる音と、自然のポケモン達の営みが産み出すのどかな環境音だけが、庭園を包んでいた。
 
神聖な場所だ、と。
 
直感的に悟った。
 
 
 
女「……私、場違いじゃないかな」
 
そっくりさん「」オイデオイデ
 

 
女「プールだ」
 
女「ここにつれてきたかったの?」
 
そっくりさん「」コクン
  
女「……ねぇ、私のポケモン達を出してもいいかな?」
 
女「ここの空気を吸わせてあげたいっていうか……」
 
そっくりさん「」コクン
 
女「ありがとう」
 ▼ 63 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/19 16:25:51 ID:WhyJnBBo [2/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女「」ポポポポポポン
 
そっくりさん「」ゴソゴソ
 
そっくりさん「!」ジャジャーン
 
女「サンドイッチ? どこでそんなの……………あ」

女(……あとで宿屋さんにお礼言わないと)
 
そっくりさん「」ハイドーゾ

女「ありがと」
 
そっくりさん「」ペタン
 
女「それじゃ、失礼して」ペタッ
 
 
 
───謎の庭園ピクニック。
  
コータス、オノノクスはひとかたまりになって木陰でうつらうつらとしている。
 
ラプラスはプールに浮かんで水面をちゃぷちゃぷと揺らし、目をつむっている。
 
眠っている、というより、庭園を包む音に聞き入っている、という感じ。知的。
 
ムクホークは風通しのいい場所なのか、人工の滝が流れる水場で風を受けて滑空。同じ高さを維持する、という訓練のようなことをしている。
 
シザリガーは風車のオブジェを眺めていて、ハサミでちょん、と触って止め、離して回転が勢いづいたらまた触って止め、という遊びをやっている。
 
お手をふれないでください、とか、普通の観光地だったら貼り紙がありそうだよな、と思った。
 
 
 
女「おいしいな……」ムゥ

ドリュウズ「りゅう」ハムハム
 
女「ごめんね、こんなおやつしかなくて」
 
ドリュウズ「ぐるるっ。どりゅどりゅ」
 
 

───お弁当がサンドイッチだけ、というのもなんだか寂しいので、小腹サポートなおやつの風呂敷を広げていたのだが、ドリュウズが目をつけて混ざりこんでいる。
 
ラインナップはいつものドライフルーツと塩アメに加えて、非常食の乾パンや、しるこサンドといったメンツ。
 
そっくりさんはあまり食べる機会のないものなのか、物珍しそうに口にしている。
 
それにしても、宿屋さんお手製のサンドイッチには遠く及ばない、と思うと先に食べてしまったのが悔やまれた。
 
パテに和えられていたマトマソースはじっくりと煮込まれたもので、強烈な辛味を和らげるためにノメルのみをすりおろして入れていたらしい。

味覚がまだまだ途上の身にはとてもちょうどいいピリッと感だった。

自分であんなおいしいものを作れるようになったなら、毎日がもう少し豊かになるのではないだろうか。
 ▼ 64 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/19 16:27:49 ID:WhyJnBBo [3/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
とか、そんなことを考えて、プールを眺めていたときだった。
 
既視感を覚えたのは。



女「??」
 
女(プールのそばに立ってる木……これって)
 
 

───まさか、と思いのぞきこむと、そこには枝から吊るされたブランコがあった。
 
 
 
女「……博物館の絵」

女「」スック
 
女「……」ギッ
 
 
 
───腰かけて、思う。
 
絵に描かれていた少年はいったい、どんな風に思ったのだろう。
 
こうやって庭園に足を踏み入れて、おごそかな空間に身を包まれて。
 
 

そっくりさん「」トンッ
 
女「うわっとっ」ユーラユーラ

女「どうしたの?」
 
そっくりさん「〜」フフン
 
女「わかんないよ」ユーラユーラ
 
 
 
───2人乗りで揺られながら、思考を戻す。
 
こんな風に<宴eィアスと遊んで。
 
あの少年は、どんな気持ちになったのだろう。
  
 

女(こんな時間が、ずっと続けばいいのに……)
 
 
 
───彼女は、そんな気持ちになった。
 ▼ 65 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/19 16:30:25 ID:WhyJnBBo [4/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



女(庭園からなかなか出られなくて、気付いたら結構遅くなってしまった)スタスタ
 
女(昨日と同じように、またあした、と口パクで告げられて別れた)
 
女(昨日と違って、ちゃんとまたね≠ニ返せてよかった)
 

 
───とっぷり日も暮れ、アルトマーレは闇に包まれている。
 
いささかの恐怖心はあるが、道のりはすっかり覚えたので、帰り道には難儀しないで済んでいた。
 
一昨日忠告してくれた船頭の男性には申し訳ないが、ショートカットも頻繁にしながらの帰路だった。
 

 
女(夕飯残ってるかな……あ、その前に宿屋さんにお礼言わなきゃ)
 
 
 
 
 
 
女「」ガチャ
 
一同「!」
 
女「遅くなりました。すみません、夕飯の時間」
 
 
 
───を過ぎてしまって、と言おうとして、言わせてもらえなかった。
 

 
おくさん「」ギュッ
 
女「んぐっ」

おくさん「よかった……無事で」
 
 
 
───抱き締められている。
 
なぜか玄関に集まっていたらしい宿屋さんとお客さんたち一同が、一斉に安堵の溜め息をつくのを耳にしながら、現状把握。
 
いや全然把握できない。なぜ全員集合しているのか。
 
 
 
おくさん「こんな遅い時間になっても戻らないから、みんな心配してたのよ!」

女(な、なんで半泣き?)
 ▼ 66 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/19 16:33:17 ID:WhyJnBBo [5/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女「え? いや、その……別に珍しいことじゃないですし……ポケモンたちもいますから」
 
女「あ。ひょっとして私が遅れたから夕飯まだ始められてなかったですか? すみません、そ」
 
だんなさん「そういうことじゃない」
 
女「……え?」

 
 
───穏和なものしか見たことがなかっただんなさんの表情は今、初めて見る険しいものになっていた。
 
 
 
だんなさん「君みたいな女の子が、何の音沙汰もなく夜遅くまで帰ってこない、なんて」
 
だんなさん「みんな心配で、いてもたってもいられなかったんだよ」

女「」
 
宿屋さん「……君は旅馴れして、夜遅い帰りにも馴れているのかもしれないが、それで感覚がマヒしちゃいけませんよ」
 
宿屋さん「もっと、自分を大事にしなさい」
 
女「」
 
 
 
───言葉が出てこなかった。
 
そんな風に心配されて───こんな風に叱られたことは、今まで一度もなかったからだ。
 
一時的に住まわせてもらっていた家では門限を当然のことのように守っていたし、ポケモンセンターに泊まるときジョーイさんはこちらの事情をいちいち関知しないことが多い。
 
多少遅くなっても、1日の職務の疲れからか、気だるげにしているだけだ。
 
いままで泊まった宿も、おおむねそんなかんじだった。
 
だから、旅に出て以来、こんなことは初めてで、どうすればいいのかわからなくて、困ってしまった。
 
 
 
セーラー服「とにかく、大事ないようでよかった」

ギャンブラー「これでやっと夕飯始められるわー。お腹、すいてるでしょ?」
 
おとなりさん「今日はカレーだそうだよ」

おねえさん「お料理出しますねぇ」

宿屋さん「ありがとう、助かるよ」
 
だんなさん「さ、ごはんだ。みんなで食べるのがここのきまりだからね。行こう」

女「……はい」
 
女「私のせいで、ごめんなさい」

おくさん「あなたが無事に帰ってきて、なによりよ」ニッコリ
 ▼ 67 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/19 16:34:15 ID:WhyJnBBo [6/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 
おくさん「行こ。みんな、あなたのこと……好きで待ってたんだから」ニッコリ
 
 
 

 
 
女「」ダキッ
 
おくさん「?」

おくさん「どうしたの?」
 
女「……ごめんなさい、心配かけて」女「ごめん……なさい」
 
おくさん「わかってくれればいいの」ギュ
 

 
───抱き止められていたのをいいことに、顔を見られたくなかった彼女はおくさんの胸に顔を埋めていた。

泣きそうになってしまった、ので。
 
 

 ▼ 68 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/19 16:34:39 ID:WhyJnBBo [7/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



4日目につづく。
 ▼ 69 ンジュモク@とくせいカプセル 17/10/19 18:09:29 ID:ASuaXGfU NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
かこつです。
 ▼ 70 ケニン@アイテムコール 17/10/19 18:35:10 ID:ld/4tpg6 NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
ほんと大好きだこの作品
 ▼ 71 ャオブー@こないれ 17/10/21 12:39:38 ID:KwG1QKzw NGネーム登録 NGID登録 報告
素敵 支援
 ▼ 72 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/22 00:19:58 ID:eh7BId2M [1/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
コータス「……なんか、薄暗いとこだなぁ」
 
コータス「でもあの女の子が言ってたの、ここっぽいしなぁ」
 
コータス「……行ってみよぉっと」ノソノソ
 
 
 
ゴルバット「キバッテイクゼェwww」
 
コータス「こっ」ガキンッ

ゴルバット「グエェエッ」ドシャッ
 
コータス「こんなんばっか」ノソノソ
 
コータス「ほんとにいるのかなぁ」クルリ
 
コータス♀「」
 
コータス♀「こ、こぉ!?」
 
コータス「……うわ」
 
コータス♀「こ、こぉ(あ、あなた、外から来たの?)」
 
コータス「そうだけど」
 
コータス♀「???」キョトン
 
コータス「……」
 
コータス(そういえば、人間以外と話すの初めてだ)
 
コータス「こほん、こふっ」
 
コータス「こぉあ(うん、外から来た)」
 
コータス♀「こ、ここぉ?こーたす!(ど、どうして? わざわざこんなところに!)」
 
コータス「ここぉ?(こんなところ=H)」
 
コータス♀「こぉあ!(説明してる時間なんてないわ! あいつが来ちゃう!)」
 
コータス♀「たす、たす!(あなたもこっちに来て! はやく!)」……ゴゴゴゴ
 
コータス「こ、こぉ……?(いや、無理だよそんなの。ちょっと待ってよ)」ノソノソ
 
コータス♀「!!!」
 
コータス(何で固まってんだ?)……ゴゴゴッ
 
コータス「……こぉ?」クルリ
 
 
 
イワーク「グゥウォオオオオ!」
 
コータス「」
 ▼ 73 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/22 00:22:17 ID:eh7BId2M [2/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
コータス「」クルッ
 
コータス♀「」ガタガタガタガタ
 
コータス(あ、こいつがここのボスなのか)クルリ
 
イワーク「」フスーッ
 
コータス「こぷっ……」プクゥ
 
コータス「こぉおおお!」ボオオオオオオオ!!
 
イワーク「!」ジュウウウウ
 
コータス♀「こぉ!(無茶よ!そいつに私たちの炎は効かないの!!)」
 
コータス(え?そうなの?)ボォォオオオオオオオ
 
コータス(前見たやつは、こうやってたら……)ボオオオオオオオ!!
 
 
 
コータス♀「!?」
 
イワーク「ウウォーッ!」ジュウウウウ
 
イワーク「ウオオン!!」スタコラサッサ
 
 
 
コータス「こふっ」
 
コータス「こぉたす(あんな風に逃げてったけど)」



コータス♀「こぉ……(なんて……こと)」
 
コータス「こーぉたす(君、ひとりなの?)」
 
コータス♀「こぉ…(いえ、奥に仲間がいるわ)」
 
コータス♀「たす(ありがとう。あいつを追い払ってくれて)」
 
コータス♀「こぉー!(あなたのこと、きっとみんな歓迎するわ!)」ニッコリ
 
コータス「」
 
コータス「」ポッ
 


コータス♀「みんな!」
 
コータス達「無事だったか!」
 
コータス達「そいつは誰だ?」
  
コータス「!」
 ▼ 74 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/22 00:25:33 ID:eh7BId2M [3/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
コータス(こいつら、みんな……僕の同族か)
 
コータス♀「彼があいつを追い払ってくれたの!」
 
コータス♀「私たち、もう怯えて暮らさなくていいのよ!」
 
コータス達「なんだって」
 
コータス達「ほんとうなのか?」
 
コータス達「そういえば、いつになく静かになっている……」

コータス「……」
 
コータス♀「ねぇあなた、どうしてきたの?」
 
コータス♀「あいつがいたせいで、ここには人間も近づかなかったのよ」
 
コータス♀「どうして、危険をかえりみず、ここまで?」
 
コータス「ここに、僕と同じようなやつ───ポケモンがいる、って聞いた」
 
コータス「だから来た」
 
コータス「本当にいたから、驚いてるよ。すこしだけ」
 
コータス♀「そう……ひとりぼっちだったのね」
 
コータス♀「でも、もう大丈夫よ」
 
コータス♀「私達はおんなじだもの。あなたはもう、ひとりじゃないわ!」
 
コータス「そう」
 
 
 
───1年ほどさまよって、ようやく、コータスは同族を見つけた。イワークを追い払ったという手土産があったおかげか、コータス達は彼を歓迎した。
 
余所者に対して、いささか警戒を見せていた者もいたが、じきに打ち解け、コータスはいつからともなく、このコロニーの一員として、すっかりなじむようになっていた。

元来、温厚な気質のコータスである。
 
同族たちにかこまれ、穏やかに、何のいさかいもなく、きままに、彼は過ごした。

ほんの少しのひとときを。
 




 
コータス達「人間が戻ってきた」
 
コータス達「俺たちを追い出そうとしているらしい」





 ▼ 75 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/22 00:27:32 ID:eh7BId2M [4/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



イシツブテ「らっしゃぁー!」スゴスゴ
 
抗夫「ほれーほれー、逃げろ逃げろー」
 
ゴーリキー「りっきりっき!」ブンッブンッ
 
コータス「」
 
抗夫「お前も逃げないと、ぶっとばしちゃうぞー」
 
ゴーリキー「」ブンッ
 
コータス「」ゴスッ
 
コータス「こぉ」ボォ
 
コータス「」ボオオオオオオオ!!
 
抗夫「おぉう?!」
 
ゴーリキー「」死ーん
 
抗夫「な、なんだこいつ!?」
 
コータス「ねぇ、なんで僕らのこと追っ払おうとしてんの?」
 
抗夫「な、なんだこいつ……」
 
コータス「ねぇってば」
 
抗夫「うるせぇな、こいつは……」ブンッ
 
「おい、待て」パシッ
 
抗夫「親方!」
 
親方「しゃべるポケモンか……今でもいたんだな」
 
親方(こういうのは力任せに追い払うと、ろくなことにならん)
 
コータス「で、なんで?」

親方「なにがだ?」
 
コータス「僕らを追っ払おうとしてるんだよね?」
 
コータス「人間はここから出てったって聞いたけど。」
 
親方「戻ることになったからだ」

親方「俺たちが出てかざるを得なかった原因───イワークがいなくなったことがわかったからな」
 
コータス「!」
 
親方「だが、戻ってきてみれば、ポケモンがやたらに増えている」
 
親方「これじゃあ作業に支障が出るってんで、追っ払ってんだ」
 ▼ 76 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/22 00:28:50 ID:eh7BId2M [5/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「おい、何をしている!」

親方「ん。いや、こいつは……」
 
コータス「なに、君」
 
若い男「なんだこのポケモン、しゃべってるのか?」

若い男「気持ちが悪い……さっさと追い払え」
 
親方「いや、しかしですねぇ」
 
若い男「おいお前らも! 手を止めてるんじゃあない!」
 
若い男「ここに俺が立ち会っていることの意味を、わからんわけじゃないだろう!」
 
若い男「こいつを早く、追い払え!」
 
抗夫たち「」チッ
 
抗夫たち「……ドテッコツ、たのむ」
 
ドテッコツ「でっ、とつ!」ノシッ
 
抗夫たち「ワンリキー」
  
コータス「こぉっ」ガキンッ
 
 
ひゅんっ。
 
 
若い男「」ヒュオッ
 
若い男「………え?」キョトン
 
親方(岩の塊を専務に向かってぶっぱなしやがった)ゾッ
 
コータス「君を黙らせたらぁ、みんな帰ってくれるの?」
 
若い男「??????」ブワッ
 
コータス「イワークだっけ」
 
コータス「あいつを追い払ったのは僕なんだけどぉ」
 
コータス「君たちがやって来るのはお門違いじゃない?」
 
コータス「言うこと聞きたくないやつに従って、わざわざやることなのぉ?」
 
若い男「」プツーン
 
若い男「ポケモンのくせに、人間のように口を利くんじゃない!」
 
若い男「気色悪いんだよ! おい、誰か! こいつをどうにかしろッ」ガシッ
 
親方(キレてやがる)

親方(なれない手つきでシャベルなんか掴んじまって……何するかわからんぞこの人)タジッ
 ▼ 77 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/22 00:32:38 ID:eh7BId2M [6/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
親方「専務さん!」
 
親方「こういうポケモンには手出ししない方がいい!」
 
親方「昔から、このテのけもの≠ノはかかわっちゃいけねぇって、相場が決まってんだ!」
 
若い男「もういい! お前らがやらないなら俺が……ッ」ブンッ
 
コータス「」ボオッ
 
親方「やべぇっ」
 
親方「お前ら、専務さん守れ!」
 
 
 
───人の言葉を話すようなポケモンに手を出すと、ろくなことにならない。

幼少期にそんな経験をしたことがあったのか、はたまた、親か誰かが彼にそう説いたからなのかはわからないが、男はそれを信じていた。
 
だから、目の前の喋るコータスに対して、いくらかの畏れを抱いていた、のだが。
 
周りの人間はそうではなかった。
 
親方、と呼ばれるだけあって、彼は周りの人間よりもふたまわりほど年齢が高く。
 
周りは当然、彼よりもずっと年若いので、コータスに対しての認識はずいぶんと違うものだった。
 
ポケモンがしゃべるなんて、気持ちが悪い
 
そう思っている抗夫たちは少なくなかった。
 
そして、彼らは親方の「専務さん守れ!」という指示に、実に素直に従った。
 
自分たちとそう歳の変わらない、いけすかない専務の言うことを聞くのは癪だったが、普段から世話になっている親方の言うことであれば、異存はない。
 
専務を守れ、というなら、この場合。
 
コータスを袋叩きにした方が手っ取り早いだろう。
 
と、みんなそう思ってしまったのだ。




ドテッコツ「てっこぉつ!!」ゴスッ
 
コータス「でッ」
 
ワンリキー「アチョォーゥ!」ベキッ
 
コータス「ん゙ッ」
 
ゴーリキー「リッキィ!!」ドゴッ
 
ニョロボン「ロッボン!!」バシャンッ
 
コータス「───」チリッ
 
親方「バカッ、やめろお前ら───」
 ▼ 78 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/22 00:35:52 ID:eh7BId2M [7/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 
 
 
 
コータス「───こぉ……」
 
コータス「ぉお!」ズドン!!
 

 
ばきっ、めきめきめきめきめきっ!!!!



親方「地面を割りやがった!!」
 
親方「言わんこっちゃねぇ!」
 
親方「お前ら逃げろ逃げろ逃げろ!!」ダッ
 
抗夫「あああああ!! 坑道が崩れる!!!」オタオタ
 
抗夫「うわああああ!!」スタコラ
 
若い男「ぎやああああ!!」ヘロヘロ
 
 
 
 
 
 
コータス「……ふぅ」
 
コータス「」ハッ
 
コータス「」クルリ
 
 


 
コータス達「「「「「「」」」」」」ガクガクブルブル
 



 
コータス「……みんな」
 
コータス達「「「「「!!」」」」」ビックゥ
 
コータス「あいつらは、帰っていったよ」 
 
コータス♀「」フルフル
 
コータス♀「あ、あああ、ありがとッ」ビクビク

 ▼ 79 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/22 00:38:00 ID:eh7BId2M [8/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 
 

















コータス「───僕は、ここにいないほうがいいねぇ」
 
コータス「みんなとは、違うみたいだしねぇ」ノソリノソリ
 
 






 
コータス「……あいつら、じきに戻ってくるだろうから、みんな、逃げるんだよ?」
 
コータス「……じゃあね」ノソリノソリ


 
───彼を呼び止めるコータスは、いなかった。

 ▼ 80 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/26 20:42:50 ID:h5Z8Zr3Y [1/21] NGネーム登録 NGID登録 報告
女「………」モグ
 
おくさん「………」モキュモキュ

女「」チラッ
 
おくさん「」チラッ
 
女&おくさん「」ニヘラ
 
だんなさん(愛想笑いが硬い)
 
女&おくさん(きまずい)
 
 

───昨夜のあと。
 
別に、口喧嘩をしたとか、誰かと険悪なムードになった、なんてこともなかったのだが。
 
不思議なもので、日をまたぐとお互いにきまずい雰囲気になっていた。

 
 
おくさん(思ったより甘えられてしまったのが、少しびっくりだったわ……)

おくさん(嫌われてないみたいで安心したけど)
 
おくさん(……どうしたものかしら)ムゥ

 
女(苦手、と思ってたのに、なんでか甘えてしまった……)
 
女(悪くなかった……むしろ安心した)
 
 
 
───気まずさってか、てれくささって感じぃ?
 
 
 
女(思い返してみると、ゆうべは申し訳ない気持ち7:嬉しさ3くらいだった)

女(3あったのが、自分でも不思議だ)
 
女(それだけみんなに心配されていたことが嬉しかった、んだよな……)





───そう思うくらいには、みなのことを好いているし。
 
このおくさんに好かれているのが、とても喜ばしいのだった。
 
とはいえ。



 ▼ 81 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/26 20:43:30 ID:h5Z8Zr3Y [2/21] NGネーム登録 NGID登録 報告
女(なにか言いたい……けど、出てこない)
 
おくさん(やっぱり……うーん……でも……)





───きまずいものはきまずい。
 ▼ 82 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/26 20:49:25 ID:h5Z8Zr3Y [3/21] NGネーム登録 NGID登録 報告
コータス「こぉ(ねえねえ)」
 
デスカーン「ですかん(どうしました)?」
 
コータス「こぉー(君んとこのふたり、なんか言いたそうにしてるけど、どうしたのさ)?」
 
デスカーン「でぇす(あぁ。ほら、ふたりとも、おたくのお嬢さんを気に入ってらっしゃいますから)」

デスカーン「でっすで。かあん(ふたりなりに少し考えてることもあるんです。ただ、やっぱり時期尚早かな、というのもあるみたいで)」
 
コータス「こぉー(どういうこと)?」
 
デスカーン「ですです(というのもですね)……」
 
 
 

女(朝食、食べ終えてしまった)
 
そっくりさん「」ヌッ
 
女「狙ったかのようなタイミング」ギョッ
 
そっくりさん「」イコーイコー
 
女「」チラッ
 
おくさん「ん」
 
おくさん「い、いってらっしゃい」ソワソワ
 
女「い、いってきます」ソワソワ
 






───ばしっ、ばきっ、と。
 
にぶい音を立ててぶつかり合うポケモンが2体。
 
翼はばたかせ、敵を見据え、肉薄し、撃ち抜けて、また睨みあう。
 
爪は皮膚をえぐり、振り抜いた翼は喉を打ち据え、勢いに任せたたいあたりは捨て身の一撃となって、相手の脳天を震わせる。
 
交錯するたびに、身を削るようにして繰り出される一撃は、そのひとつひとつが、重い。



女(今日は、そういう日≠ンたいだから、とは思ったけど)
 
 

───上空で繰り広げられるドッグファイトを、しかし苦い顔で見上げていた。
 
高所の彼に聞こえるよう、声を張り上げて指示をしながら、ここまでの戦績≠思い返す。
 ▼ 83 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/26 20:51:36 ID:h5Z8Zr3Y [4/21] NGネーム登録 NGID登録 報告
対かんこうきゃくの男性・バオッキー戦。
 
オノノクスの勝ち。
 
 
対たんぱんこぞう・ゴビット戦。
 
シザリガーの勝ち。
 

対ホープトレーナーの少年・ドレディア戦。
 
ドリュウズの勝ち。
 

対かんこうきゃくの女性・キュウコン戦。
 
コータスの勝ち。
 

対ふなのりの男・ローブシン戦。
 
ムクホークの勝ち。
 
 
対かんこうきゃくの女性・ヤドラン戦。
 
シザリガーの負け。
 

対スキンヘッドの男・プリン戦。
 
ドリュウズの負け。
 

対かんこうきゃくの女性・デデンネ戦。
 
オノノクスの勝ち。
 
 

女(宿を出て2時間足らずでこれだけバトルした)

女(どうしてこんなに挑まれるのか全然わからないけど、皆さん楽しそうにやってるから、私もそういう日≠セと割り切ってる)
 
 

───現在の相手・エリートトレーナーの青年とファイアロー。
 
相手が相手なので、ムクホークを繰り出し、空中戦と相成っている。
 
 
 
女(空中にいられる飛行タイプ相手に、まさか地に足つけた鈍足ポケモンをくり出す人もいまい)

女(ムクホーク……楽しそうだな)
 
 
 
───ムクホークの生き急ぎすぎたバトルスタイル上、旅の道中では積極的に繰り出さないということもあって、空中で殴り合う機会はなかなかない。
 ▼ 84 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/26 20:53:27 ID:h5Z8Zr3Y [5/21] NGネーム登録 NGID登録 報告
それだけに、今空を飛ぶムクホークはかなりアツくなっているように見える。
 
 
 
エリトレ「はがねのつばさ!」
 
女「もらってもいいけど一撃で落とせるほどじゃないからね!少し手前!」
 
エリトレ「?」
 

 
───意図のわからない指示に青年が疑問符を浮かべたその上空で、ファイアローとムクホークがまた交錯する。
 
硬質化したファイアローの翼は、ムクホークの胴をとらえていた。
 
が、ムクホークは勢いを止めず、そのままファイアローに肉薄。
 
横っつらをひっぱたく。
 

 
エリトレ(浅かったのか!)
 
エリトレ(クリーンヒットしたと思ったが、最大インパクトの少し手前で……)ハッ
 
エリトレ(手前≠チてそういうことか!?)
 
エリトレ「ファイアロー、体勢を立て直せ!ラッシュが来るぞ!」
 

 
───ファイアローとて、決まった、と一瞬は思ったものの、ムクホークの眼光にすぐさま気づいていた。
 
自分の攻撃は失敗していないが、成功もしていないことに。
 
しかし、その一瞬がこの展開の明暗をわけた。
 
続けざまに蹴りを3発入れられ、完全に体勢を崩したファイアローは退がるに退がれずなすがまま、インファイトをフルコースでもらうこととなってしまった。
 
顔に翼に腹に、蹴りとはたきとついばみをもらいながらしかし、ファイアローは折れない。

切れかけていたはがねのつばさを続行し、正面からはさむようにチョッピング。
 
防御を捨てていたムクホークはさすがに泡を食って手が止まる。
 
……が足は止まらない。顔を思いっきり蹴飛ばして距離を取った。



エリトレ(助かった)
 
エリトレ(効果はいまひとつだろうが、ファイアローには臨戦に使える技は採用してない。はがねのつばさだってせいぜいインファイトを少しとどめるのがせいいっぱい)
 
エリトレ(間合いを詰められている限りはあちらに軍配が上がってしまう)
 
エリトレ(だが、こうして距離をとればそうはいかない)
 
エリトレ(ブレイブバードにフレアドライブ、有効打はいくらでも……)
 ▼ 85 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/26 20:55:32 ID:h5Z8Zr3Y [6/21] NGネーム登録 NGID登録 報告
───そう、距離を取った分有効打になる技。
 
それを持っているのはファイアローに限った話ではない。
 
そして、間合いをとってにらみ合い。
 
そんな空気になっているものと、青年はほんの少し、たった少しだけ息をついて、仕切り直す策を考えていた。
 
ファイアローを蹴り飛ばしてそのまま、ブレイブバードの体勢をとったムクホークの姿を目に捉えながらも 。
 

 
エリトレ「ファイアロー!」
 
 
 
───息をつくヒマもないのか、と心のなかで毒づきながら相棒の名を呼ぶも、すでにムクホークはファイアローを勢いまかせにぶっとばしていた。
 
力なく放物線をえがいて落ちていくファイアローの姿を見、青年は顔を歪ませながら、モンスターボールを掲げた。
 
 

女「ぶえっ」ドサッ
 
そっくりさん「!?」
 
女「だい……じょうぶ」
 
ムクホーク「」死ーん
 
女「これは……引き分けだな……」シュポン
 
エリトレ「いいや、俺の敗けだよ」テクテク
 
女「え」

女「………でも、同時にノックアウトですよ」
 
エリトレ「ムクホークはブレバの反動で気絶したんだろ」
 
エリトレ「ファイアローの攻撃でじゃなく、だ」
 
エリトレ「なら、君の勝ちだ」

女「そう……ですか」

エリトレ「あぁ……悔しいな……君のような子どもに負けるなんて」ボソッ
 
エリトレ「俺なら勝てる、と思っていたんだが………」
 
女「……っ」
 
エリトレ「まったくこれだから……ポケモンバトルってのはやめられないよな」フフッ
 
女(あ、ヤっバイ人だ)
 


 ▼ 86 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/26 20:57:18 ID:h5Z8Zr3Y [7/21] NGネーム登録 NGID登録 報告



───エリートトレーナーとのバトルのあと、直近のポケモンセンターに立ち寄った。
 
さすがにこれ以上の連戦はこたえる。
 
 
 
女「どーしてこんなにバトルしてるんだろ………」ゲンナリ
 
コータス(そういう日って割りきったんじゃなかったの)
 
女「しんどいものはしんどい」ゴキュゴキュ
 
そっくりさん「」ゴキュゴキュ
 
女「ぷはぁ〜」
 
そっくりさん「」プハー
 
ギャンブラー「よいーっす」
 
女「あれっ」

女「どうしてここに?」
 
ギャンブラー「さっきの試合でちょっとね」ニコニコ
 
ギャンブラー「おかげさまで……エヘヘヘ」チャリーン
 
女(うわぁ)
 
ギャンブラー「てか、妹ちゃんはバトルしないんだね」
 
女「手持ちがいないみたいで。」
 
ギャンブラー「なら自分で戦わんとだね」アハハ
 
女(ギャグだよな?)
 
そっくりさん「」シュッシュッ
 
ギャンブラー「ノリいいんだー」ハハッ
 
女「あはははー」
 
ギャンブラー「そんじゃあ次はうちとやろうか」

女「はは……は?」
 
ギャンブラー「いやぁ、見てたらうちもなんかやりたくなってきちゃってさ」
 
ギャンブラー「今日めっちゃバトルしてるんだよね?」
 
女「いや、まぁ、その……今はポケモンたちを回復してるので、もう少し休憩を……」
 
ラッキー「らっきー!」
 
ジョーイ「お待たせしました」ガラガラ
 ▼ 87 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/26 21:01:10 ID:h5Z8Zr3Y [8/21] NGネーム登録 NGID登録 報告
女「あ」
 
ジョーイ「ポケモンたちはすっかり元気になりましたよ」
 
ギャンブラー「お、タイミングばっちり!」
 
ギャンブラー「ポケセン裏でいいよね!?」
 
女「……オネガイシマース」
 
そっくりさん「」ニコニコ



ギャンブラー「よぉし、ここで!」
 
女(確か、ギャンブラーさんが連れてたのは、ニャースとサイドンだったな)
 
女「」クルリ
 
女(……水場のないフィールド。そりゃあそうか)

 
 
───手持ちの情報はお互いに割れている。
 
ここでは、ラプラスは戦いづらい。
 
 
 
ギャンブラー「カモン!」
 
サイドン「ドッシェエイ!!」ドシン
 
女(でも、ラプラスじゃなくてもこの子なら……)
 
女「シザリガー!」ポン
 
シザリガー「ザリッ」ドンッ
 
ギャンブラー「だよね」

女(アクアジェットで機動力も確保できるし、何よりタイプ相性がいい)
 
ギャンブラー「こっちからいくよ!」
 
ギャンブラー「ロックブラスト!」
 
女「アクアジェットで避けて!」
 
シザリガー「シェシイッ」ドッ

女(相性有利でも、あっちの攻撃はいまひとつじゃないから、ヘタに食らってられない)
 
シザリガー「」シュンッ
 
ギャンブラー「かわすね!」

ギャンブラー「サイドン!打って撃って射ちまくれぇ!」
 ▼ 88 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/26 21:02:39 ID:h5Z8Zr3Y [9/21] NGネーム登録 NGID登録 報告
サイドン「」ドンッドンッドンッドンッ
 
シザリガー「」ザッ
 
女(ぎりぎりかわしてくれてる)
 
女(そのまま、少しずつ間合いを詰めて……)
 
シザリガー「じゃりっ!」パッ
 
女(入った!)
 
女「クラブハンマー!」

シザリガー「シェイッ!」ジャワッ…
 
ギャンブラー「つのドリル」
 
サイドン「」ギュリリリリリリ
 
シザリガー「!」
 
女「ッ……頬叩いて横っ飛び!」
 
シザリガー「!」パァンッ
 
シザリガー「」ザザザザッ
 
女「あっぶな……」
 

 
───一撃必殺わざ。
 
普段自分が使っていると使いにくい、当てづらい、などと思うが、いざ相手にやられると、万が一にももらってしまった場合の可能性を考えてしまってぞっとする。
 
強力なわざを相手に使われる、というのは脅威だ。
 


シザリガー「ざり……」ヨタッ
 
女「? シザリガー?」
 
女「!」
 
女(ハサミにかすったのか)
 

 
───右腕を重そうに構えている。
 
完全に方向転換できなかったか、あるいは。
 
 
 
女(サイドンが方向転換についてきた?)

ギャンブラー「」フフン
 ▼ 89 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/26 21:04:36 ID:h5Z8Zr3Y [10/21] NGネーム登録 NGID登録 報告
女「……シザリガー、まだやれる?」
 
シザリガー「……もち」
 
女「」コクン
 
女「アクアジェット!」
 
ギャンブラー「ロックブラスト!」
 
女(つのドリルにかち合わない背面……とはいかないまでも、側面に回り込めれば!)
 
シザリガー「シッザァ!」ダンッ
 
女「そこだ!」
 


ギャンブラー「」ニヤッ
 
ギャンブラー「メガホーン!」
 
女(効果抜群だけど、この位置ならどのみち食らわない!)
 
 
 
───シザリガーがクラブハンマーを振りかぶり。
 
サイドンがシザリガー向けてメガホーンを放つ。

右腕で。
 
 

シザリガー「ザリッ!?」
 
サイドン「シャッドン!!」ズドン
 
 
こうか は ばつぐんだ!
 

 
ギャンブラー「やぁーりぃっ!」パチンッ
 
 
 
女「なっ!?」
 
シザリガー「」死ーん

女「メガホーンをツノじゃなく、右手で……?」

ギャンブラー「うちのサイドン、手刀じゃないとメガホーンが撃てないんだ」アハハ
 
女「えぇ……」


 
───とはいえ、納得がいかないわけではない。
 ▼ 90 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/26 21:07:41 ID:h5Z8Zr3Y [11/21] NGネーム登録 NGID登録 報告
同じわざでも、個々のポケモンによって使い方が違うことは多いのだ。
 
短刀のようになって殴り合いに使われるいあいぎり。
 
遠隔だと思ったら殴りかかってきたはっぱカッター。
 
持続時間を伸ばし、リーチのある得物として機能するボーンラッシュ。
 
そういった、特殊なわざの使い方をするポケモンは、彼女も身に覚えがあった。
 
そもそも、アクアジェットだって機動性を高めるために使うわざではない。 
 
 
 
ギャンブラー「張った張ったの大博打はもちろん大好きなんだけど」
 
ギャンブラー「こういう風に、勝つべくして勝つよう立ち回るってのも、けっこー好きなんだよね」ヘヘッ
 
女(……たしかに)
 
女(ロックブラストで牽制、近付いてきたらつのドリルをちらつかせる)
 
女(警戒させて絶好のポイントに誘い込んでから、メガホーンで仕留める……)ハッ
 
女(それとなく、ラプラスを繰り出せない陸地のフィールドに来て、それでも私が相性有利のシザリガーを繰り出すことを見越した上での作戦)
 
女(ここまでずっと、ギャンブラーさんのてのひらの上だったんだ)クッ
 
ギャンブラー「」ドヤァ
 
女(……腹立つぅ)
 
女「……ありがとう、シザリガー」シュポン

ギャンブラー「サイドンまだ元気だけど、もう1回やる?」
 
女「お願いします」キッ
 
ギャンブラー「おっ、やる気ぃ」ニヤリ
 
女(今日は……そういう日=I)メラッ
 
女「ドリュウズ、君に決めた!」
 
ドリュウズ「ドッリュウズ!」ダンッ
 
女「つのドリル撃ってくるからね。気を付けて」
 
ドリュウズ「りゅう」コクン
 
ギャンブラー「ネタバレされちゃった」

ギャンブラー(ロックブラストもメガホーンもいまひとつのはがねタイプだから……)
  
ギャンブラー&女「「じしん!!」」
 
ギャンブラー「!」
 ▼ 91 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/26 21:10:34 ID:h5Z8Zr3Y [12/21] NGネーム登録 NGID登録 報告
ドリュウズ「ドッ!リュウズ!!」ズドン!!


サイドン「サイッ……ドオン!!」ドカン!!
 
 
 
───地面を駆け抜けたふたつの衝撃は真正面から衝突。
 
そのまま、お互いに雲散霧消した。
 
 
 
ギャンブラー「打ち消された!?」
 
女(打ち消しになるのか)

女「ドリュウズ! 走って!」
 
ギャンブラー「ロックブラスト!」
 
女「なるべくかわして! 当たるのは切り捨てて!」
 
ギャンブラー「それ、困るなっ!」
 
ドリュウズ「ドリュッ、ドリュッ!」ダッダッ
 
ギャンブラー(潜らずに走らせてるのは、じしんに対応できなくなるからか)
 
ギャンブラー「その分遅いけどね!」
 
女(じしんの撃ち合いになってたらドリュウズの方が速いぶん分があった)
 
女(でも、そうならなかったから、もうこれ≠ナいくしかない)
 
ドリュウズ「…ッ」ガッ
 
女「ドリュウズ……ッ」クッ
 
女(いや……今は勝負に集中!)
 
女(ドリュウズだって、前を見ているんだから!)
 
ギャンブラー「サイドン、じしん!」
 
女「つのドリル!!」
 
ギャンブラー「!?」ギョッ

ドリュウズ「!!!」ジャキンッ
 
ギャンブラー「サイドン退がれ!」
 
サイドン「ドウッ!」
 
ドリュウズ「ドリュウッ!」ギュルルルルルルル


ずどん!!
 ▼ 92 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/26 21:12:24 ID:h5Z8Zr3Y [13/21] NGネーム登録 NGID登録 報告
女(ハズレた!)

ドリュウズ「〜ッ!」ギャギャギャギャッ!!!
 
サイドン「サァイ……」
 
ギャンブラー「あ、あぶなかったッ……」
 
女「とびかかれッ!」
 
ドリュウズ「」パッ
 
ドリュウズ「リュウズ!」ダンッ

女「もう……1発!!」
 
ドリュウズ「!!!」ジャキンッ
 
ギャンブラー「なっ……ふざけんっな! じしん!」
 
サイドン「ドォン!!」ドカン!!
 
ギャンブラー「ッ……あ!?」
 
 

───自分で指示しておいて、間抜けさにハッとした。
 
 
 
ギャンブラー(今、浮いてる……!)
 
ドリュウズ「」ギュルルルルルルル!!
 
ギャンブラー「ころがれ!」
 

ギャアンッ!!
 
 
サイドン「どんっ…」ハラハラ
 
ギャンブラー(なんとか、かわしてる!)
 
ドリュウズ「〜!」ギュルルルルルルル
 
女「その、ままっ!!」
 
ドリュウズ「!!」
 
ドリュウズ「リュウウッ!」グルンッ
 
サイドン「!!!!」

ギャンブラー「メチャクチャかよッ!」

 ▼ 93 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/26 21:13:53 ID:h5Z8Zr3Y [14/21] NGネーム登録 NGID登録 報告
ギャンブラー「つのドリル!!」
 
サイドン「!!」ギュリリリリリリ

女「ぃぃぃいっけぇ!!」
 
ドリュウズ「ドォォオオッリュウ!!」ギュルルルルルルル!!!!
 

ガチンッ!!!!
 
 
ギャンブラー(なんつう音ッ)ギリッ
 
 

サイドン&ドリュウズ「」ギュルルルルルルルギャギャギャギャリギュリリギャギャギャ!!!!!!!!
 

 
女「〜………ッ!!!」カッ
 
 













 
女「つ」
 
 
女「ら」
 
 
女「ぬ」

 
女「け」
 
 
女「 ぇ」
 
 
女「 ッ」
 
 
女「!!」
 


ドリュウズ「!」ギラッ
 ▼ 94 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/26 21:15:46 ID:h5Z8Zr3Y [15/21] NGネーム登録 NGID登録 報告
ばこんっ!!!!!!
 
 


 
女「!」ハッ
 
ギャンブラー「あっ!!」
 
 
 





































 
サイドン「…………ッ」グラァ
 
ドリュウズ「……りゅうず」
 


サイドン「」バタン、キュー
 
 
いちげきひっさつ!! 
 ▼ 95 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/26 21:18:36 ID:h5Z8Zr3Y [16/21] NGネーム登録 NGID登録 報告
ギャンブラー「……………………はぁ」ガックシ
 
ギャンブラー「」シュポン
 
ギャンブラー「一撃必殺……好きなんだね」
 
女「」
 
女「…………はい」ドキドキ
 
女「勝つべくして勝つよう立ち回るのは、当然なんですけど」
 
女「……張った張ったの勝負も好きみたいです」
 
ギャンブラー「なぁんだ。ギャンブラーじゃん」ニヤッ
 
ギャンブラー「なりふりかまわない感じ、うち、好きよ」
 
ドリュウズ「どりゅ」イテテ
 
女「あっ」
 
女「ボロボロ」
 
ドリュウズ「りゅ、りゅうず。ドリュウ」
 
女「ゴメンね、無理させちゃった」シュン
 
女「ありがとう。ゆっくり休んでね」シュポン
 
ギャンブラー「」
 
ギャンブラー「……君、遠慮とか取り越し苦労で損するタイプでしょ」
 
女「え」
 
女「い、いや、そそそそそんなことは」
 
ギャンブラー「見境なくなんでもかんでもおぶろうとしないで、これだけ≠チてなにかに集中したほうがいいかもよぉ〜」
 
女「」

女「……はい、すごく、そう思います」
 
ギャンブラー「あの夫婦のこととかもさ」
 
女「うぐ」
 
ギャンブラー「好きなんでしょ?」
 
女「………///」

ギャンブラー「ふたりも、君のこと好きだろうし」
 
女「そんなこと……」
 
ギャンブラー「わかるに決まってんじゃん、あからさまだもんよー」

ギャンブラー「両思いなんだからさ、その気持ちに素直になっときゃいいんだよ」ニヘラ
 ▼ 96 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/26 21:20:52 ID:h5Z8Zr3Y [17/21] NGネーム登録 NGID登録 報告
ギャンブラー「君はそれが許される歳で、それを望まれているんだから」
 
女「?」
 
女(どうして……)
 
ギャンブラー「うーし。ポケセンにとんぼがえりだー。お茶しよお茶ー」
 
女「」
 
女(どうして今、表情が翳ったんだろう)
 
女(……この人が秘めてる気持ちが、どんなものなのか、誰に対してのものなのか、私にはわからないけれど)
 

 
───あんな、なにも考えていなさそうな爛漫な笑顔なのに。
 

 
女(この人は、その気持ちが許されるものじゃない、と思ってるってことなのかな)
 
ギャンブラー「……お、何あれ」
 
女「?」
 
女「あ、ドローンだ」ボソッ
 
ギャンブラー「アルトマーレでよくあんなもん飛ばせるよね」
 
ギャンブラー「なくしそう」
 
女「あれ、たぶん……」
 
ギャンブラー「え。彼、そんなことしてんだ」ビックリポン
 
女「はい、ここら辺で飛んでるのなんて、あれくらいですし」
 
女(こんなとこまで飛んでこれるくらい仕上がってきてるのか……)
 
ギャンブラー「へぇ、ドローン製作か。そんなことやってたとはねぇ」
 
ギャンブラー「宿の人、誰も知らないんじゃない?」

女「かもですね」

そっくりさん「」ヒョコッ
 
女「かまえってか」
 
そっくりさん「」コクンコクン
 
ギャンブラー「なかよしー」イェーイ
 
女「」アハハ
 
そっくりさん「」エヘヘー


 ▼ 97 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/26 21:22:25 ID:h5Z8Zr3Y [18/21] NGネーム登録 NGID登録 報告
 
 
 
───ひと休みしてから、すぐ宿に戻った。
 
早めに戻ったのは、昨日の一件もあるからだ。
 
あまり遅く帰るのもばつが悪い。
 
 
 
ギャンブラー「ただいまー」バタン!
 
女「戻りました」
 
おねえさん「あらまぁ、おかえりなさぁい」
 
女(バイトの)
 
おねえさん「今日は……良い子なんですねぇ」フフフ
 
女「うぐっ」
 
ギャンブラー「意外と言うよね」アッハッハ
 
ギャンブラー「……ほら、行ってきな」ポン
 
女「えっ」
 
ギャンブラー「ふたり、たぶん部屋でしょ」
 
女「いや、でも、その……」
 
ギャンブラー「いいからいいから」

ギャンブラー「思った通りにしてみな」
 

 

 
女「」
 
女「……どうしよう」
 

 
───部屋の前に来たものの、何をどうすればいいかわからず、ノックをしようとしては手を引っ込める、というようなことを繰り返していた。
 
 
 
女(話を……するのだとして、何を?)
 
女(どう切り出す?)
 
女(いきなりとか不自然だよね)
 
女(どうでもいいこと話しても実にならないし)
 ▼ 98 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/26 21:24:23 ID:h5Z8Zr3Y [19/21] NGネーム登録 NGID登録 報告
女(無駄な時間をとらせるのも……)
 

キィィ……
 
 
女「あ」
 
おくさん「」パチクリ
 
おくさん「」ニッコリ
 
おくさん「おかえり」

女「……た」グッ
 
女「ただいま、戻りました」
 
おくさん「かたいよー」フフッ
 
女「えっ、えっと、じゃ、その……」
 

 
女「ただいま」
 
おくさん「お茶、淹れてたの」
 
おくさん「のんでく?」
 
女「いただきます」
 
 
 
───部屋にお邪魔して、お茶をいただくかたわら。
 
話をした。
 
今日の話。
 
これまでの旅の話。
 
アルトマーレに来てからの話。
 
そして、これまでの自分の話を。
 
それを静かに聞いていたおくさんとだんなさんは、彼女の話が終わってから言った。
 
「話してくれて、ありがとう」
 
そして話してくれた。
 
自分たちの話を。
 
そして、※※※※※と出会って考えていたこと。
 
今、彼女の話を聞いて、その上で思っている、あることを。
 
彼女にとって、願ってもない申し出を。
 ▼ 99 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/26 21:25:37 ID:h5Z8Zr3Y [20/21] NGネーム登録 NGID登録 報告



5日目につづく。
 ▼ 100 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/10/26 21:38:44 ID:h5Z8Zr3Y [21/21] NGネーム登録 NGID登録 報告
過去スレのURLを貼り忘れていたのでここで貼ります。

つたない展開やらケアレスミスやら多々ありますが、ここまで読んでいただけたなら幸いです。


1本目【旅SS】女「コータス達とぶらり旅」
http://pokemonbbs.com/post/read.cgi?no=144905

2本目【旅SS】女「コータス達とぶらり旅〜!」
http://pokemonbbs.com/post/read.cgi?no=367023
 ▼ 101 ッフロン@ブリーのみ 17/10/26 21:41:56 ID:Y5oUHiRs NGネーム登録 NGID登録 報告
>>100
全部リアタイで読んでるよ( * ,,>ω<,,)b
投稿お疲れ様!!
 ▼ 102 メハダー@どくけしのみ 17/10/27 01:12:47 ID:wjS.GQdY NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
>>100
自分も一番最初から読ませてもらってます。
楽しみにしてますので今後も頑張ってください。
 ▼ 103 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/11/05 13:49:35 ID:868XwIos [1/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
おじいさん「」ペラリ
 
コータス「……zzz」
 
おじいさん「」ペラリ
 
コータス「……zzz」
 
おじいさん「」ペラリ
 
コータス「……zzz」
 

 
 
おじいさん「……ふむ」パタン
 
おじいさん「そろそろ朝御飯にしようか」
 
コータス「」ムクリ
 
コータス「こぉ」
 

 
───数年前から、コータスはこの老人と暮らしていた。
 
きっかけは記憶に残るほど大したことではなかったように思う。
 
「ウチ来る?」「いくいくー」くらいのものだ。
 
別に急ぐ旅でもなし、ゆったりとくつろぐことができるし、で、お世話になっていたのだが。
 
気づけば数年、老人とポケモンは一緒に暮らしていた。
 
老人は妻に先立たれて久しいらしく、たまに親族が様子を見に来るものの、基本的にひとり暮らしだ。
 
歳の割に元気なほうで、生活で必要なだいたいのことは自分でやっているし、没頭する趣味もある。
 
コータスもそれに付き合って、山を登ったりしたものだ。
 

 
おじいさん「この花はクラボの仲間らしい。人間では実を食べられないようだが、君はどうだい?」
 
 
 
───そんな風に話しかけてくるのだが、コータスはそれに答えたことはない。
 
人間と会話することのリスクを、彼はとっくの昔に学んでいたからだ。

ただ、すっぱい実だったらいいのになぁ≠ニ、聞かれたことについて考えを及ばせたりはする、のだが。
 


コータス「」モグモグ
 
コータス(家、広くなったな)
 ▼ 104 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/11/05 13:50:43 ID:868XwIos [2/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
───最近、老人は身辺整理と言って、家にあるものを引き払っている。
 
昔にコータスが見知っていた人の暮らしとはずいぶん様変わりしていたものの、それでも、こんなにものを減らしてしまって……と思ったりはする。
 
豊かになって物が増えると、自分が死んだ後のことを考えなくてはいけなくなるらしいから、人間というのは難儀な生き物だ。
 
身辺整理にかかりきりで、ここ最近は登山にも行っていない。

 
 
おじいさん「〜♪」
 

 
───階段を上っていく老人を見送りながら、考えてみる。
 

 
コータス(彼が死ぬのは僕よりもずっと早いだろうな)
 
コータス(片付けが終わって、彼が逝って……そしたら、どうしようかな)
 
コータス(モンスターボールとかいうヤツにも入ってないから、僕はいつでも出ていける)
 
コータス(また、旅に出るか)
 
老人「うわっ」ズルッ
 
コータス「あ」
 

 
どたっ、どん、ごきっ。
 
 
 
「お父さん、わたしー」ガチャリ
 
「お父さん……?」
 
「お父さん!!」ドタドタ
 
 













 
───肩と股関節周辺を骨折した彼は入院。
 
手術を受けて、なんとか事なきを得た。
 ▼ 105 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/11/05 13:51:51 ID:868XwIos [3/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「心配をかけてすまないねぇ」
 
 
 
───苦笑いでそんなことを言っていたのもつかの間。
 
その体はどんどん弱っていった。
 
傷が治るまで時間がかかり、その間に足腰の筋力が著しく衰えていくのだ。
 
衰弱は徐々に全身にいたり、言葉も弱々しくなっていく。
 
ほんの少し前まで、あんなに元気だったのに。
 
1年も経った頃には、すっかり寝たきりになってしまっていた。
 
そして、気管に少しもの≠ェ入っただけで、弱った呼吸器官はそれを押し返すことができず、肺炎に発展した。
 
呼吸器をつけて、次第に、会話の機会もなくなり、大事の頻度が増していく元同居人を、コータスはずっとそばで見守っていた。
 
 
 
老人「す──は──」
 
コータス「」ジー
 

 





























 
 
コータス「起きてんのか寝てんのか、わかんないねぇ」
 ▼ 106 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/11/05 13:55:42 ID:868XwIos [4/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
おじいさん「───」
 
コータス「君たちって、こういう死に方もするんだねぇ」
 

コータス「こんなにゆっくり死んでいくのを、ゆっくり見送ることになるなんてねぇ」
 

コータス「何があるか、わかんないもんだ」


コータス「───僕、昔は人間とよくしゃべってたんだぜ」
 

コータス「山に住んでてさ」
 

コータス「かみさま、とか、呼ばれてたんだよねぇ」
 

コータス「人間には友達もいたんだ」


コータス「あっという間に死んだけど、あの子が遊びに来るの……うっとうしかったなぁ」ホロリ

 
コータス「君と登った山はどれも、僕の住んでたところとは違ったけど」
 

コータス「なんだか、昔を思い出しちゃった」
 

おじいさん「────」
 

コータス「───君のご飯、好きだったよ」
 

コータス「それが食べられないのは、ちょっとだけ残念だけど」
 

おじいさん「──────」ポロ


コータス「じゃあね、ばいばい」
 

 






───老人の呼吸が止まった。
 ▼ 107 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/11/05 13:57:12 ID:868XwIos [5/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
彼の目元からこぼれた涙が、まぶたが薄く開いていたことからの生理現象なのか。
 
はたまた、最期にコータスの声を聞き取っていたからなのかは、わからなかった。
 
けれど、コータスは前回よりもすっきりとした気分でいた。

友人を見送って、最期に別れを告げることができたことはもちろん、ここ数年リスクがあるから≠ニ我慢していたことを実行できたのだから。




コータス「───いくか」
 ▼ 108 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/11/05 13:59:03 ID:868XwIos [6/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
───亡くなった老人の葬儀の後。
 
遺産相続についての整理が終わっていなかったということもあり、遺族はもめにもめた。
 
やれ、俺が子どものとき、親父は俺を放逐していた≠セのわたしが飼いたいとポケモンを連れてきたのに一蹴された≠セの、もめにもめすぎて、各々が胸にしまっていた不平不満の類いまでが取りざたされ始め、もはや会議などとっくの昔に忘れ去られ、ただの口論会の様相を呈していた。

引っ張りあいに押し付けあい。
 
登山具なんか誰が使う、とか。
 
一流企業の重役のくせに金を欲しがるのか、とか。
  
最期に飼っていたポケモンの面倒なんか見たくない、とか。
 

 
そんな遺族のみにくいいざこざが起きるよりもずっと前に、コータスはまた旅立っていた。
 
すっきりとした、いい気分で。
 ▼ 109 ンプジン@ハンサムチケット 17/11/05 15:00:23 ID:kXbW1sIU NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
いつも楽しみにしています。
 ▼ 110 ドゼルガ@ヘルガナイト 17/11/05 23:33:19 ID:KHpXWDbc NGネーム登録 NGID登録 報告
支援( ,,°^°,, * )
 ▼ 111 ッシード@ライブドレス 17/11/06 23:20:10 ID:4DbU5LKY NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 112 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/11/14 21:09:50 ID:DYiiEyI. [1/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
コータス「いつまで、ここにいるつもりなの?」
 
 

───昼過ぎ。
 
昨日ほどではなかったが、今日もそこそこにバトルを挑まれた。
 
そっくりさんやポケモン達とならんで、現在休憩中である。
 
ここまであまり触れ合っていなかったからか、そっくりさんはオノノクスやムクホークにじゃれついていた。

同じ顔の別人であるからか、ムクホークはあいまいな表情でなすがままになっている。
 
そんな穏やか(?)な空気のなか、コータスが唐突にそう訊ねてきたのだ。
   
 
 
女「……いつまでって?」
 
コータス「さすがに長すぎだよ。そろそろ、1週間経っちゃうよぉ?」
 
女「まだ5日だよ」
 
コータス「でも、今日立つ気はないでしょ?」
 
女「………」
 

 
───今日。
 
そっくりさんは宿に来なかった。
 
それでも、待ち合わせをしたわけでもないのに、宿を出てぶらぶらと街を散策していたらいつの間にか彼女≠ニ合流できていたのだから、不思議なものだ。
 
その後、いままでと同じように街を巡り、ウィンドウショッピングしたり、持ち物を見せたり、だとか。
 
……そんな、年相応のなんてことのない行楽をした。
 
そっくりさんは光り物に目がないらしいこともわかった。
 
生き物のさがなのだろうか。

それは、無用の長物と化していたものだったので、どうせなら、とすっぱり諦めて、あげてしまった。

もらいものではあったが、そっくりさんがご満悦だったので、彼女もいい気分でのプレゼントになった。

都合6回ほど、通りすがりにバトルもした。

しかし、宿にとった予約はもともと3泊4日。
  
本来であれば、昨日の段階でアルトマーレを去るはずだったのだ。

  
 
女「宿泊の延長手続き、あっさりしてるよね」
 
女(だからみんな、ここにいるの長いんだろうか)
 ▼ 113 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/11/14 21:11:55 ID:DYiiEyI. [2/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
コータス「どうするの?」
 
女「どうするの、って?」

コータス「旅をやめるのかって聞いてるんだよ」
 
女「な、なんでそういう話になるの」
 
コータス「だって昨日、あの夫婦と話してたじゃん」
 
コータス「サーナイトとデスカーンから事情も聞いたよ」
 
コータス「君、まんざらでもないんでしょ?」
 
女「……うん」
 
女「私がそうしたら、コータスはどうする?」
 
コータス「別にどうもしないけどぉ?」
 
コータス「いまさら、1人でも旅を続けるなんて言いやしないよ」

コータス「いい加減、旅をする元気も無くなってきたし」
 
女「……って、なんでそうしたら旅はやめる、みたいな話になってるの?」
 
コータス「そりゃそうでしょぉ」
 

 
コータス「あの2人に引き取ってもらう手続きが終わったら、すぐにでも旅に出るつもり、なんて言わないよねぇ?」

 
 
コータス「その言い分はメチャクチャだ。僕ですらわかるよ」

女「……でも、旅は続けたいの」
 
コータス「どうして?」
 
女「だって、ここまで旅をしてきたから……」
 
 
 
───いろんな人に出会ったから。
 
いろんな考え方を知ったから。
 
自分に与えられた機会に気付けたから。
 
ずっと諦めていたものを、諦めなくていいのかもしれない、とやっと実感することができたから。
 
あと、ほんの少しで、見つけられそうな何かがある気がするから。



コータス「でも、君がずっと焦がれていたものが、あっちのほうからやって来たんだよ」
 
コータス「それを不意にするの?」
 ▼ 114 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/11/14 21:14:35 ID:DYiiEyI. [3/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女「……意地の悪い言い方しないでよ」

女「どのみち、今日いっぱいは泊まることになってる」
 
女「ちゃんと考えるから」
 

 
───ちゃんと考える。
 
あの2人の娘になるか。
 
もう少しで見つかりそうな何か≠フために、旅を続けるか。

あるいはその両立はできまいか。
 
それに加えてもうひとつ。
 

 
女「いて」ピクッ
 
 
 
───手の甲の皮が少しだけむけて、血がにじんでいた。
 
この傷は、自分の過失によるものだ。
 
宿を出る前、こんな風に考えごとにふけっていたせいか、廊下の曲がり角で正面衝突を起こしてしまったのだ。
 
バイトのおねえさんと。
 
 
 
女『痛だっ』
 
おねえさん『あわわわわっ』ドテッ
 
女『あ、すみません! ケガとかないですか?』
 
おねえさん『ばたんきゅ〜』グルグル
 
女『目を回している……』

 
 
おねえさん『ごめんなさぁい、前方不注意でしたぁ……』
 
女『前方不注意』

女『いえ、私の方こそ前方不注意でした。すみません』
 
女『お怪我とか……』
 
おねえさん『ないですよぉ』ニコニコ
 
女『そうですか』

おねえさん『……ん? どうしたのかしら』
 ▼ 115 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/11/14 21:16:34 ID:DYiiEyI. [4/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
おねえさん『おでかけでしょ?』
 
おねえさん『いかないの?』

女『え?』
 
女『ほんとに大丈夫ですか?』
 
おねえさん『だいじょうぶって、言ってるじゃないですかぁ』コロコロ
 
おねえさん『変わった子』フフフ
 
女『』ニガワライ
 
 
 
 
 
 
女(変な人だった……)
 

 
───そんなことがあった、のだ。

バイトのおねえさんとは、あまり話せてはいない。
 
従業員だから当然ではあるのだが、いまいちそのひととなりが読めない。
 
隣室の男性に聞いたところによると。
 
 
 
『彼女、半年くらい前からここで働き始めたんだ』
 
『わたしはどんくさいから、その分がんばらないと≠チてよく言ってる』
 
『俺の趣味にも寛容的っていうか……むしろ関心もってくれてるくらいでさ』
 
『本当に素敵な人なんだよ』
 
 

女(ベタ惚れなのがよくわかった)
 
女「」チラリ
 
そっくりさん「」フカフカ
 
ムクホーク「〜……」モミクチャ
 
 

───ムクホークにちゅっちゅしているそっくりさんに目が向いていた。

彼女の今日の格好は初心に立ち返ったのか、出会ったときの姿だった。
 
要するに、鏡写し。
 
いまさら羞恥はない、のだが。
 ▼ 116 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/11/14 21:17:31 ID:DYiiEyI. [5/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女(格好だけじゃあきたらず、ちょくちょく私の物真似をしてくる)
 


───ほんのちょっとした所作を繰り返したりするので、ひょっとして、と思ったらそのとおりだった。

立ち止まったときに腕を左右に少し広げたりだとか。
 
辺りを見回すときに下くちびるを尖らせていたりとか。
 
小走りになるとき帽子とウエストポーチをおさえているところだとか。

細かすぎて最初はピンと来なかったがしかしなるほど、考えてみると自分はよくそんな風にしているかもしれない、と思った。
 

 
女「なんで物真似してるの?」
 
「」ニッコリ

女(意味なんかないか) 
   
 
 
───そっくりさんはいつもどおり。
 
とても自然な不思議ちゃん。
 
いつもどおりなそっくりさんにくらべて、しかし※※※※※はいささか不自然に過ぎた。
 
とはいえそれも無理からぬ話だった。
 
なにせ、今までなかったような巡り合わせがいっぺんに来ていたのだから。
 
どれも彼女にとっては至上の機会で、そのうえ。
 
パッと考える限りでは、その全部を総取るのはとても難しそうだったからだ。
 
彼女はここ数日、今までになく満たされた時間を過ごしているのと同じくらいに。
 
生まれて初めて、これからの人生を左右するほどの大きな悩みに直面していたのだった。
 
 
 
「?」パクパク
 
女(唐突な口パク)
 
 

───休憩を終了して数分後。
 
現在、ひとけのない水路脇の小道を歩いていたところ。
 
歩きながらも、考え事をしていた彼女に、そっくりさんが詰め寄ったのだった。
 
 
 
女「どうしたの?≠チて……どうもしないよ」
 ▼ 117 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/11/14 21:19:15 ID:DYiiEyI. [6/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「」ギュッ
 
女(手、握ってきた)
 
「」ジッ
 
女「………っ」
 
女(………見透かされてるんだな。さすがエスパータイプ)

女「…………うん」
 
「」ソレデ?
 
女「……おととい、アイス屋さんで会った夫婦がいたでしょ」
 
女「あの人たちがね、私を養子に迎えたいって」
 
「……」
 
女「私、親がいないんだ。一時保護者ならいるんだけど」
 
女「2人は私のことを、本気で心配して……かわいがってくれて……気にかけてくれてる」
 
女「それがすごく嬉しい」
 
女「……でも、2人はまだ若くて、まだ全然、これからの人たちで」
 
女「私、もうすぐ13になるからさ。やっぱりその……ティーンエイジャーが若い2人にって……きっと、重いだろうなって」
 
女「2人は絶対そんなこと言いはしないだろうけど………でも、事実としてそうなわけで。超負担かけるよね」
 
「」ソウナノ?
 
女「そりゃそうだよ。どう考えたって、そう」
 
女「………それに、2人の子どもになったら、たぶん、いつか再開する、とかはおいといて……旅をやめることになる」
 
女「私は……それがいやだ」


 
───それはあんまりにもメチャクチャな言い分だ───
 
 
 
女「わかってる。わかってるんだけど!」
 
女「……私ね。そう遠くない明日に、きっと自分は死ぬんだろうなって思ってた」
 
女「もしもその時、何かの途中だったら、ここで終わりたくないって思いながら、きっと、地獄のように苦しい思いで死んでいく」
 
女「だから、できる限り何も持たないようにしようって」
 
女「私が死ぬときはたったひとり、何も持たずに、楽しく暇潰しをしながら生きたな≠チて思いながら……って」
 
女「そんな風に考えてた」

女「……でも、もうそうなることはできない」
 ▼ 118 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/11/14 21:22:28 ID:DYiiEyI. [7/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女「私はこんなに仲間を得て───色んなものを手にしてしまっている。もうひとりで逝くことなんて、できない」
 
女「それに加えて、いつか、誰かさんに時間までもらっていた」
 
女「だから、今まで、大した目的もなくやってたことに、意味を見出だせるんじゃないかって……そう、思ったの」
 
女「今まで余生みたいなもの、ボーナスステージみたいなものだって思ってた期間が……そうじゃなくて」
 
女「私が、将来♂スかをするための準備期間なんじゃないか、って」
 
女「私がいつか、これ≠したいって───それ≠ノ全身全霊を捧げたいって思うような、何かを見つけるための時間をもらったんじゃないか───って」
 
女「旅をしていれば……自分のできることを精一杯にやっていれば、それが見つかるかもって、いつからか……」
 
女「自分のことを諦めないでいいかもしれないって、そう、思うようになったから」
 
女「旅を続けたいの」
 
女「色んな考え方をする人や、色んな場所で生きてるポケモンたちに会った」
 
女「まだ、まだ、まだ、まだ、たくさん、会ってみたい」
 
女「……だって、またこんなことがあるかもしれない」
 
「?」
 
女「ひょっとしたら、今までにもあったのかもしれない。私が間抜けだから見逃したりしただけで」
 
女「でも、今、こんな風にしてるみたいに」
 
女「こうして、あなたに出会ったみたいに、またステキなことに出会うかもしれない」
 
「………」
 
女「旅を続けたい。そして、あなたさえよかったら、私………あなたと」



ざざ……ん。
 
 

「?」クルッ
 
女「……ゴンドラ?」
 

 
───見覚えのあるゴンドラだった。
 
しかし、自分が利用したものではない。
 
たしか……見たのは3日前。
 



 
女(溺れてた男の子を助ける直前──)
 ▼ 119 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/11/14 21:23:57 ID:DYiiEyI. [8/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
船頭「いけ」ポン
 
?「ムッシャア!」バッ
 
女「───!!!」
 
女(何、このポケモン!?)
 
船頭「であいがしら」
 

 
───瞬間のことだった。
 
無防備な2人に迫る未知のポケモンと、それに割って入るように跳んできたシザリガー。
 
ボールから出っぱなしだったシザリガーは、水路でたゆたいながらついてきていたのだ。
 
このときは、からくもそれに救われた。
 
シザリガーの捨て身の防御のおかげで。
 
 
 
がつん!!
 
 
女「シザリガー!」
 


───こうかはばつぐんだ!
 
道路脇の壁に力なく叩きつけられるシザリガーの痛ましさに、思わず名を呼ぶ───も、ハッと我に返ってモンスターボールに手をかける。

 
 
女「オノノクス!」ポン
 
オノノクス「シュウバッ!」ドシン
 
 
 
───不意討ちしてきた敵が追撃に来ればひとたまりもない。
 
なんとなくみずタイプっぽい≠ニ暫定的に仮定し、オノノクスをくりだす。
 

 
船頭「……よし」

女「ダブルチョップ!」

船頭「ふいうち」
 
?「シャァアッ!」バッ
 
オノノクス「ッ……!」ゴッ
 
女(先手を取られた! でも軽め)
 ▼ 120 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/11/14 21:26:22 ID:DYiiEyI. [9/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
───ビジュアルからみずタイプっぽい、と思ったが、はがねらしさ、かくとうらしさ、むしらしさも感じる。
 
シザリガーを攻撃した技はこうかがばつぐんだった。
 
なら、むしかかくとう、が妥当なところだろうか。
 
考える。
 
考える。
 
どうしていきなり攻撃されている?
  
なぜあのゴンドラ?
 
このポケモンはなんだ?
 
そういった考えをなんとか頭のすみに追いやりながら────優先順位を整理しながら───追いやろうとしていて。
 
オノノクスが殴り付けた敵のポケモンが突然、ボールに戻った。


 
女「?!」
 
船頭「いけ」
 
メタグロス「メッタァ!」ドシン
 

 
───トレーナーのアクションはなかった。
 
なのになぜ、突然入れ替わった?
 
未知のとくせい?

未知のどうぐ?
 
もしくは未知のわざ?
 
いったいどんなポケモンだったんだ。
 
メタグロス、たしかホウエンチャンピオンも使っている。
 
じしんを撃てば抜群だが、しかしここでそれはまずい。
 
道路自体がそんなに広くないし、下手をすれば近所の家に被害が出てしまう。
 
今いるのは人目のない場所だが、壁一枚を隔てた向こうには家があって、そこに暮らす人がいる。
 
誰かの暮らしが息づいているのだ。
 
安直に強力なわざを撃つことはできない。
 
この男の正体は?
 
目的は?
 
と、そんな風に。
 ▼ 121 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/11/14 21:28:06 ID:DYiiEyI. [10/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
すみに追いやろうとした考えは、突然の事態への対応とぶつかり合って、頭のなかでメチャメチャにとっちらかってしまった。
 
現実時間にしておよそ2秒ほどの停止。
 
致命的だった。
 
 
 
船頭「コメットパンチ」
 
メタグロス「メッ───タァ!!!」
 
オノノクス「ガフッ……」
 
女「……!」
 
 
 
───殴り飛ばされたオノノクスは、その軌道上で頭が真っ白になっていた※※※※※を巻き込み、もつれるように水路に落ちた。
 

 
女「あがっ……ごぼっ」


───オノノクスがぶつかるときにうまくやってくれたおかげか、はたまたパニックによるものか、その時点では強烈な痛みなどはなかった。

しかし、彼にのしかかられるような形で川に落ちてしまった。
 
身動きできない。
 
ろくに息を吸う間もなかったこともある。
 
彼女の意識は、そう長くは持たないだろう。
 
途切れるまでのわずかな時間。
 
オノノクスの背中越しに見えた光景。
 
何かで打ち据えられたように全身をびくり、と震わせ倒れる自分≠フすがた。
 
そうか、あの男の目的は最初から……。
 
 
 
女(待っ………て………)

女(ラティ………ア………)



───ごぼ、と、水を大量に飲み込んだのを最後に、彼女の意識は水の底へと落ちていった。
 

 
 ▼ 122 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/11/14 21:29:16 ID:DYiiEyI. [11/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



つづく。
 ▼ 123 ケンカニ@ジュペッタナイト 17/11/14 22:45:37 ID:KBh/sv6M NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
待ってました!続きも楽しみにしてます
(,,°^°,,* )
 ▼ 124 ーケン@むげんのふえ 17/11/23 19:20:39 ID:01sfepNQ NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
あげ
 ▼ 125 ズゴロウ@スペシャルアップ 17/11/23 23:55:16 ID:eZKfmDZc NGネーム登録 NGID登録 報告
大支援
 ▼ 126 ルミル@ありふれたいし 17/11/28 10:59:28 ID:TlascxM2 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援です
 ▼ 127 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/11/30 15:29:48 ID:UOXsFT12 [1/6] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
たんぱんこぞう「ストライク! いあいぎり!」
 
ストライク「しやぁ!」
 
コータス「イテッ」
 
女「コータス、ストーンエッジ」
 
コータス「………ふわぁ」
 
ストライク「フワァ」
 
女「えっ」
 
ムックル「?」
 
たんぱんこぞう「なんだ、言うこと聞かねえんじゃん!」
 
たんぱんこぞう「ストライク!シザークロスだ!」
 
女「こうかはいまひとつ=vボソッ
 
女「コータス、かえんほうしゃ」
 
コータス「───こぉ」ボボッ
 
ストライク「」ワタワタ
 
たんぱんこぞう「ひ、ひのこじゃんか……」
 
たんぱんこぞう「いあいぎりだ!」
 
ストライク「ストラィ───?」フラッ
 
ストライク「」コテン
 
たんぱんこぞう「ストライク!? どうしたんだ?」
 
ストライク「zzz……」
 
たんぱんこぞう「ね、ねてる……なんで……?」
 
女「……」
 
女「コータス、かえんほうしゃ」
 
コータス「こぉー」ボボボボボボボボボボボボボボ
 
ストライク「」死ーん

女「」
 
ムックル「」ムッ






 
 ▼ 128 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/11/30 15:31:18 ID:UOXsFT12 [2/6] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
女「ここは……」
 
コータス「道がふたつに別れてるね」
 
女「右も左も、同じような道」ボソッ
 
女「看板もないから、運に任せるしかないのかな。それとも、他の人が通るのを待って聞いてみるか……」
 
女「方向的には、どっちも目的地にまっすぐすすんでるわけじゃなさそう。どっかで曲がってる……か」
 
コータス「どん詰まってるかもねぇ」ノソノソ
 
女「なんで、そっちに行くの?」
 
コータス「経験則〜」
 
女「」
 
女「行くしかないか」
 
 
 
女「」ボロッ
 
女「いつまでも目的の方向に向かわない……ハズレだこれ」
 
女「ここらで野宿の準備しよう」ハァ
 
コータス「〜」ノソノソ
 
ムックル「」ムッ
 

 
女「点かない……」
 
コータス「たかが火を起こすくらいで、なに手間取ってんのさぁ」
 
女「そんなこと言ったって、燃料チップが湿気ってるんだから……」
 
コータス「」ボッ
 
女「」ボンッ
 
コータス「これでいい?」
 
女「こふっ」マックロクロスケー
 
焚き火「」パチパチパチッ
 
女「………いいです」
 
ムックル「」ムカムカムカッ



 ▼ 129 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/11/30 15:33:08 ID:UOXsFT12 [3/6] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告

 
 
女「………zzz」
 

 
ムックル「」ベシッ
 
コータス「?」
 
ムックル「ぴぃ」
 
コータス「はぁ?ツラ貸せ=H」
 

 



コータス「なぁに? ぼく、眠いんだけどぉ」
 
ムックル「お前、黙って見ていりゃ何だ?」
 
ムックル「バトルは適当、というか今日なんかは陰湿ななぶり殺しみたいなことをしやがる」
 
ムックル「前はバトル始まった瞬間、指示も無視してストーンエッジぶっぱなしてやがったな」
 
コータス「勝ってんだからいいじゃん」
 
ムックル「分かれ道で根拠もなく道を選んだかと思いきや、間違ってたら悪びれる様子もねぇ」
 
ムックル「火を起こすときだって、無駄にデカイ炎であいつを黒焦げにしやがった」
 
コータス「調節しくじっただけだよぉ」
 
ムックル「火の粉出してたじゃねぇか」
 
ムックル「───お前らの旅に付き合いはじめてからそんなのばっかだ」
 
ムックル「あいつもお前に何か言うかと思ったが、全然だしよ」
 
コータス「……」
 
ムックル「何のつもりのあてこすりか知らねぇが、パートナーなんだったらそれ、やめろ」
 
ムックル「旅が続かねえぞ」
 
コータス「どうしようと僕の勝手でしょ」
 
ムックル「なに?」
 
コータス「僕は、この旅に付き合ってやってるだけだからさぁ」
 
コータス「別に、パートナーって感じじゃないし」
 
コータス「そういうのは、君がやればいいんじゃん?」

 ▼ 130 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/11/30 15:34:56 ID:UOXsFT12 [4/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ムックル「」ビキビキ
 
ムックル「知らねぇようだから教えてやるがな」
 
ムックル「俺ぁテメェのようなやつは気に入らねえんだよッ!」バッ
 
コータス「こー」ボォッ
 
ムックル「んぐっ……」
 
ムックル「ぐぅっ……このっ……」パタパタパタッ
 
コータス「こっ」ボォォオオ
 
ムックル「むぎゅう」ベシャ
 
 
 
コータス「大して強くもないのに、無理しない方がいいよ」
 
ムックル「」キッ 
 
ムックル「!!」バッ
 
コータス「」ガキンッ
 
ムックル「!!??!!」ゴッ
 
ムックル「」ベシャ
 
ムックル「」死ーん
 
コータス「〜♪」ノソノソ
 
 

───翌日。


 
ムックル「」ドン☆
 
コータス「………なに?」
 
ムックル「昨日の続きと行こうや」パタパタッ
 
コータス「」ガキンッ
 
ムックル「!!」ガッ
 
コータス「〜……」ヤレヤレ
 
ムックル「ピィイ!」バッ
 
コータス「!」
 
ムックル「その顔蜂の巣にしてくれるッ!!」ツツクッ
 ▼ 131 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/11/30 15:36:05 ID:UOXsFT12 [5/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
コータス「」ボッ
 
ムックル「ぶっ……」
 
コータス「」ボォォオオオオオオオオ
 
ムックル「〜…ッ」ポテッ
 
ムックル「」死ーん
 
コータス「」フゥ
 

 
ムックル「!!」バッ
 
コータス「は?」
 
ムックル「!!」ツンツンツンツンツン
 
コータス「痛ででででででで」
 
ムックル「ぴぃいいい!!」ベシッベシッ
 
コータス「」ムカッ
 
コータス「!!」ゴッ
 
ムックル「ぎゃふんっ」ゴチンッ
 
ムックル「ずつき……だとう……」死ーん
 
コータス「……何なの、こいつぅ」ゲンナリ
 

 
───ムックルの夜襲は連日に及んだ。
 
どうにもこうにもコータスの日中のふるまいが気に入らないらしく、夜になってはケンカをふっかけてくるのだ。
 
コータスからすれば大したことのない相手なのだが、なにしろしつこい。
 
彼の人生上、ここまでしつこく食い下がる敵には会ったことがなかった。
 
だいたいは1回殴ってしまえば尻尾を巻いて逃げ出すか、ノックアウトできてしまう。
 
それが2、3回は殴らないと気絶しない上、最近では必ずこちらに攻撃を通すようになってきた。
 
それも、飛び回れるのをいいことに数回は、つついたりはたいたりをくりだしてくる。
 
たいしたダメージではないが、うっとうしいことこの上ない。
 
そのうち諦めるだろう、と踏んでいたが、そうこうしているうちに、事態は(彼にとって)まさかの展開を迎えた。
 

 
女「コータスって、ちょっと自分勝手すぎると思うの」
 
コータス「」
 ▼ 132 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/11/30 15:39:39 ID:UOXsFT12 [6/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女「今までコータスと2人きりだったし、パートナーとしてあなたしか知らなかったからわかってなかったけど」
 
女「ムックルはだいたい言うこときくし、変なイタズラしないし、旅の妨げになるようなことしないし、バトルの時もまじめにやってる」
 
女「ていうか、最近毎朝ムックルボロボロだけど」
 
女「コータス、いじめたりしてないよね?」
 
コータス「はぁあ?」
 
女「あんまりコータスがふまじめすぎると、こっちも相応の対応するからね」ムスッ
 
コータス「えぇ……」
 
 
 
───自己中心的にふるまっていると、自然とそのむくいを受けることになるらしい。
 
コータスはすこしおとなになった。


コータス(この僕に、忠実なペットになれってか)ゲンナリ
 
 
 
───しもべのように、と協調的に、とは別のことなのだが、それを理解するのも、間をとれるようになるのも、もう少しだけ先のことになるのだった。
 
 



 
ムクバード「ぴぴるぴ(おら、今日もやんぞ)」
 
コータス「それでも君は来るんだねぇ」ケッ
 ▼ 133 キノオー@しろいビードロ 17/11/30 22:37:21 ID:74z4eT52 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
楽しみにしてました!
 ▼ 134 ルガモス@グラウンドメモリ 17/12/01 21:59:11 ID:/KdTbw0w NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
(支援…っ)
 ▼ 135 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/08 11:46:03 ID:8ehk2lp2 [1/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女「」
 

 
───見知らぬ天井を見上げていたのは、これで4回目だ。
 
ひどく、体が重い。
 

 
女「……なんで」
 
 
 
───こんな風にしているんだったか。
 
それを考えた瞬間、頭の中を閃光が弾けるように、意識が途絶える直前までの記憶が駆け抜けて。

力なく倒れる自分≠フ姿を思い出して。
  

 
女「……なにしてんだ」
 

 
───他の誰でもない。
 
自分に向けて吐き捨てた言葉だった。
 
 
 
目が覚めて10分ほどした頃だろうか。
 
ジョーイが彼女の元を訪れた。
 
ジュンサーをともなって。

体の状態を説明されたうえで、命に別状はないこと、今日いっぱいは安静にしているよう言い含められた。
 
10分だけですからね、と連れに釘を刺して、ジョーイは席を譲った。 
  
 
 
ジュンサー「こんにちは、はじめまして」
 
女「こんにちは」
 
ジュンサー「心苦しいかもしれないけど、あなたが溺れる前のことを、聞かせてもらえるかしら」
 
女「どうして」
 
女「いったい、何が」
 
ジュンサー「そうね、まずはことのあらましを説明しましょうか」
 
ジュンサー「あなたたちは、ポケモンハンターに襲われたのよ」
 
ジュンサー「奴はあなたを水路に突き落とし、ラティアスを捕まえ、そして連れ去った」
 ▼ 136 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/08 11:47:08 ID:8ehk2lp2 [2/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ジュンサー「現段階では、これだけ」
 
ジュンサー「これだけしか、わかっていないの」
 
ジュンサー「だから、あなたの証言がわたしたちにとっては頼みの綱」
 
ジュンサー「だから、教えて」
 
ジュンサー「あなたを襲ったハンターについて。その状況について」
 
ジュンサー「できるだけ、細かに」
 

 
───ジュンサーは、端的に、ゆっくりと、こちらが理解できるよう注意して言ってくれたようだった。
 
あの、ゴンドラ船頭の男。
 
あの男がハンターで、ラティアスを連れ去った。
 
それを聞いた瞬間、頭の中で散らかっていた情報がするするとまとまって。
 
自分に起きたことのいきさつを、彼女は理解するに至った。
 
そして、彼女は自分のおろかさを思い知った。



ジュンサー「……なるほどね」カチッ
 
ジュンサー「ありがとう。これで捜査に進展が望める」
 
ジュンサー「ゆっくり、休んでね」スック
 
女「……あの」
 
ジュンサー「?」
 
女「ラティアスのこと……知ってるんですか?」

ジュンサー「もちろん。アルトマーレの守り神だもの」
 
ジュンサー「みんな知っているわ」
 
ジュンサー「公然の秘密ってやつ」ウィンク
 
女「」
 
ジュンサー「だから、待ってて」
 
ジュンサー「ラティアスは、わたしたちが絶対に救い出してみせるから」
 
 
 
───ジュンサーは、口をきつくむすんで、足早に病室を出ていった。
 ▼ 137 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/08 11:51:02 ID:8ehk2lp2 [3/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
4日前。
 
溺れた少年を助けた時。
 
あのときから、異常は始まっていたのだ。
 
あの時近くにはゴンドラ船が一隻いた。
 
普通のゴンドラ船だったなら、普通の船頭であったなら、少年の一大事に気づき、たすけ船をよこしていたに決まっている。
 
だのに、少年を助けたのは自分とラプラスだけで。
 
救出が終わったとき、いたはずのゴンドラ船は、影も形もなくなっていた。
 
思うに、あれはほかならぬハンターの擬装船で、アルトマーレの景観にとけこんで自分達を見張っていたのだ。
 
間の悪いことに子どもが溺れているところにはちあわせてしまったものだから、慌てて別の水路に退散したのだろう。
 
そして、不自然だったことは他にもある。
 
ここ数日、やたらとバトルを挑まれたことだ。
 
最初はそういう日もあるか、と割り切っていたが、不自然だ、と思うに足る根拠はあった。
 
バトルした青年が言っていた言葉。
 
『俺なら勝てる、と思っていたんだが………』
 
その場ではなんとなく流してしまっていたが、考えてみれば、他の対戦相手にもそんなことを言っていた人がいた。
 
自分のことを誰かに聞いた、という様子の人が。
 
おそらく、ハンターの男が自分のことを吹聴して広めていたのだ。
 
凄腕のトレーナーがいる、とか適当なことを言いふらして、アルトマーレのトレーナー達を誘導した、という運びだろう。
 
なぜか?
 
決まっている。戦力分析のためだ。
 
ラティアスといつも一緒にいるトレーナーが、どの程度腕が立つのか
 
それを観察されていたのだ。
 
しかし、あの男の姿には、ゴンドラ船頭以外では見覚えがない。
 
ならば、どうやってこちらを監視していたのか?

バトルをしていたのは、ゴンドラが進入できるような水路沿いばかりではない。
 
中には、周囲を完全に建物で囲まれたエリアでのバトルもあった。
 
場所を問わず、対象を監視できるような手段。

この街では何度も見た。
 
ドローンだ。
 
すっかりおとなりさんのものだと思っていたドローンだが、自分の近くを飛んでいたのは、ハンターのものだったのだろう。
 ▼ 138 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/08 11:53:26 ID:8ehk2lp2 [4/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ドローンを使い、擬装船を使い、こちらの戦力分析を済ませたハンターは期を窺い、絶好のタイミングで襲撃をしかけてきたのだ。
 
能天気に数回バトルをして、疲労していた自分たちを。
 
予兆はあった。
 
不自然だ、と考えるに足る材料もあった。
 
だのに、まったく備えられず、予想すらできず、敵の予定通りに打ち負かされて、大事なものを奪われた。
 
ラティアスを、連れ去られてしまった。
 
満たされた日々にかまけて、普段当たり前にしていた警戒をおろそかにした。
 
なんて、役立たずで、おろかで、怠惰で、間抜けで、お花畑で、イタい奴なのだろう。

こんなにも、後悔と自己嫌悪にさいなまれたのは、生まれて初めてだった。
 
重い体が、能天気な自分自身が、このていたらくが。
 
憎たらしかった。
 
 
 
 
───再び、来客があった。
 
 
 
「こんにちは」ペコリ
 
女「こんにちは」

「私はボンゴレといいます」

女「博物館のガイドさん……ですよね」
 
ボンゴレ「ん、ご案内したことがありましたかな?」
 
女「いえ、でも前行ったとき、お見かけしたので」

ボンゴレ「そうでしたか。いかにも、普段は博物館のガイドと、ゴンドラ船の修理工をやっております」

ボンゴレ「……だが、今日ここに来た私の立場は、そうではないんだ」
 
ボンゴレ「私の一族は、アルトマーレでのラティアス達の保護区域の管理もしている」

女「保護区域……あの庭≠ナすか?」

ボンゴレ「ああ、君も入ったのだったね」
 
女「すみません、勝手に入ってしまって」
 
ボンゴレ「別にいいんだよ。あそこは秘密の園だが、ラティアスやラティオスが気に入った人間を連れてくることもある」
 
ボンゴレ「彼らの案内なしに、秘密の園にはいることはできないからね」

ボンゴレ「そこは、ラティアス達の良心に任せている。悪しきものが入り込むことなど、滅多にない」

女「」キョトン
 ▼ 139 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/08 11:55:43 ID:8ehk2lp2 [5/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ボンゴレ「つまり君は、お客様だ。気にしないでくれていいんじゃ」
 
女「……ありがとうございます」
 
ボンゴレ「では、本題に入らせてもらおうか」
 
ボンゴレ「私は、君に謝罪するために来た」

女「……………………………はい?」
 
 
 
───謝罪?
 
何のこと?
 
何についてのこと?
 
 
 
ボンゴレ「………いち観光客であり、街の事情に無関係の君を、トラブルに巻き込んでしまった」
 
ボンゴレ「トラブルの予防に、人事を尽くせていなかった我々の落ち度だ」

女「はい………?」
 
ボンゴレ「たいへん申し訳ない」
 
女「───」
 
女(なんで、頭下げて……しゃざい……謝罪?)
 
女「やめ、て……ください」
 
女「頭なんか、下げないで……」

ボンゴレ「君をあやうく、死なせてしまうところだった」

 

───何を言っている。 
 
 
  
ボンゴレ「管理者として、できるだけの償いはする」
 
女「だから、だから……ッ!」

ボンゴレ「私達は、君を傷つけ、不快な思いをさせてしまったことを、重く考えている」
 
ボンゴレ「これは我々の落ち度なのじゃ」
 
ボンゴレ「決して、決して、」
 
ボンゴレ「どうか、ラティアスやこの街を、恨まないでほ──」
 
女「私なんかに、頭を下げないでください!」
 ▼ 140 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/08 11:57:42 ID:8ehk2lp2 [6/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 
 
 
 

 
女「……違い、ます」 
 
女「違う……違う、違います、違うんです」

女「巻き込まれたとか、そんなんじゃ………私が好きで一緒にいたんです」

女「それが楽しかったから……楽しくて、楽しくて……一緒にいたのに」
 
女「一緒にいた私だから、できたはずのことだったのに、考えるのを怠ったから……ラティアスはっ」ボロボロ

女「誰も………誰もッ!」ヒグッ
 
女「悪くないんです……私が……私の、せい……」グスッ

女「ごめん……なさい」
 
女「私のせいで……ラティアス、が……っ」

ボンゴレ「」
 
ボンゴレ「……そうか、それは……すまなかった……てっきり私たちは」

ボンゴレ「……君は、ラティアスを好いてくれているのだね」
 
ボンゴレ「ありがとう」グッ…

 

───ラティアスやラティオスについての話。
 
アルトマーレと彼らの縁。
 
秘密の庭に安置されていたもの。
 
そんな、部外者になど話せないようなことを、ボンゴレ氏は不思議とあっさり語ってくれた。
 
ありがたく、そして、申し訳なくて、消えてしまいたかった。



女「……何を思い上がっていたんだろう」

女「ハンターが現れたとき、私なら、私なら守ることができるかもしれない、だなんて、あのとき、確かにそう思っていた」

女「とっくのとうに、敵の手のひらの上だったのに」
 
女「それで……………それで、このザマだ」

女(やっぱり、私なんかじゃ、ダメだ)

女(私なんかに、あの子は助けられない)

女(私、なんかに……)ジワ
 ▼ 141 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/08 11:58:57 ID:8ehk2lp2 [7/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
───一度は信じかけた自分自身は、やはり信じるに値しない、と思うしかなかった。

事実が、現実が、現状が、この様を物語っていた。
  
絶望して、無力さにうちひしがれて、力なく泣いた。

泣いて泣いて、泣き果てて。
 
涙を出し尽くした彼女が最初に思ったのは、宿に連絡しなければ≠セった。
 
 
 

























 
ムクホーク『………………』
 
ムクホーク『』ム カ
 ▼ 142 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/08 12:00:23 ID:8ehk2lp2 [8/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



女「ポケナビ、水没して壊れたから、電話」テク、テク…
 
女「公衆電話、探さなくちゃ」
 
女(丸一日部屋を空けてしまった)

女(宿代、もったいないなぁ)
 
女(そろそろ、チェックアウトしなきゃ)
 
女(これ以上、私がここにいても、なんにもならない)
 
女(どうしようもない)
 
女(どうしようもないことは……)
 
「わ」クワッ
 
女「?」
 
「わっ……うわっ……おか、おかおかおかっ」
 
女(小さい子にまでビビられるほど、ひどい顔をしているんだろうか)
 
少年「おかあさん!」
 
女(泣いて逃げられるまでフルコン……あれ)
 
女(この子、どっかで………)
 
 
 
少年「おかあさん! この姉ちゃん!」
 
少年「ラプラスの姉ちゃん!!!」
 
 
 
 
女「…あ」
 
 
 
───4日前、溺れていたところを助けた少年だった。
 ▼ 143 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/08 12:02:29 ID:8ehk2lp2 [9/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
母「その節は、本当にありがとうございました」ペコリ
 
女「いえ、私は、その………当然のことをしただけ…なので、そんな」
 
少年「ラプラスはいないの?」
 
女「え、う、いる」
 
 
 
───中庭に出て、ラプラスを見せてあげた。
 
 
 
少年「ありがとうラプラス、命の恩人感謝永遠に!」
 
ラプラス「(困惑)」
 
母「ごめんなさいね、あの子すっかり、ラプラスが好きになってしまって」
 
女「いえ、ラプラスも子どもは好きですし」
 
女「好きなだけかまってあげてください」
 
母「……あなた」
 
女「?」
 
母「何かあったの? 入院もそうだけど、目の腫れがひどいわ」
 
母「怪我だってしているんでしょう?」
 
女「」ヒタ
 

 
───頬を押さえていた。
 
右側の頬と、胸、そしてももに青アザがある。
 
オノノクスとぶつかったときのものだ。
 
胸部のアザはやや外側で、これがもっと中心に寄っていたらショック死していた可能性もあったらしい。
 
今回は運よくそういった即死に至るような事故にならず、骨折もなかった。
 
オノノクスの機転と、幸運の証。
 
そして、自分の不手際のむくい。
 
それはまだヒリヒリと痛み、心をさいなんでいた。
 
目の腫れは、溢れてしまった後悔の残滓だ。



女「ただの、自業自得……なので」
 
母「……どうか、元気を出して」
 ▼ 144 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/08 12:05:02 ID:8ehk2lp2 [10/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
母「あの子に笑ってあげてくださいな」
 
母「あなたたちは、私たちのヒーローなのよ?」
 
女「私は、そんな大した人間じゃありません」
 
女「居合わせただけ」
 
女「私がいなくても、誰かが助けてた」
 
女「たまたまなんです。たまたま助けられた」
 
女「水がもう少し浅かったら、ラプラスじゃ掬い上げられなかった」
 
女「シザリガーを行かせたら、力加減を失敗して大怪我をさせてしまうかもしれなかった」
 
女「たまたまあそこで居合わせたから、つれていたポケモンがあの状況に即してたから、私は彼を助けられた」
 
女「そもそも、私個人には………誰かを助けられる力なんて、ないですから」
 
母「だから何?」
 
女「?」
 
母「あの子を助けたのは、あなた」
 
母「他の誰でもない、あなた」
 
母「あなた以外の誰も、息子を助けてはくれなかった」
 
女「でも、あの場に居合わせていたなら、誰だって……」
 
母「ちがう」
 
母「だって、いたのがあなたじゃなかったら、息子は助けられなかったかもしれない」
 
母「息子は、当然のように′ゥ捨てられていたかもしれない」
 
母「いたのはあなた。あなただから、助かったの。あなたじゃなかったら、息子は助かってなかった」
 
女「」
 
母「そんな風に、自分を傷つけないで」

母「何があったのか知らないけれど、何が、あなたの心を折ってしまったのか、わたしにはわからないけれど」

母「どうかお願い」
 
母「胸を張って」
 
母「あなたは、立派よ」
 
 
 
───親子は帰っていった。
 
今日が退院日だったらしい。

それ以外に持ち合わせがなかったからだろう、ひどく申し訳なさそうに、えびせんと板チョコを残して。
 ▼ 145 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/08 12:07:09 ID:8ehk2lp2 [11/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
今度会ったらごちそうするから、と言って。
 
少年はそんな菓子類などまったく持っていなかった(し、彼女ももらおうだなんて思っていなかった)が、手作りのメッセージカードをくれた。

会えたら渡そう、と用意していたそうだ。
 
帽子をかぶった人間とラプラスの絵の下に、デカデカと『ありがとう ラプラスのねえちゃん』と書いてある。
 

 
女「……かさばる」
 
女(申し訳ないな……こんなもの、私には)

女「……あ」
 
女「電話」 
 
 
 

 
───公衆電話のある場所に来た。
 
宿に電話を、と受話器に手をかけてそのまま、固まった。
 
この状況をどう説明したらいいのだろう。
 
一緒にいたラティアスがハンターに連れ去られ、自分はその際に溺れて、今までベッドの上だった。
 
これを説明するためには、妹だと言っていた少女がポケモンだった、と真実を明かす必要がある。
 
つまり、自分がついた嘘の、謝罪をしなければならない。
 
それは同時に、自分が宿の人々との間にしていた線引きの告白ともなってしまう。
 
ラティアスのことを知った客たち、あるいは宿屋さんやバイトのおねえさんが、自身の利益のためにラティアスの害になるような何か≠するかもしれない。
 
はじめの頃に抱いていた、そういう悪意ある人間かもしれない=Aという警戒心の告白を。
 
それを、彼女は躊躇していた。
 
そうやって警戒していた人達と、この数日間で築いた信頼があるばかりに。
 
彼らからの信頼を───情を裏切るのが、怖かったのだ。
 
 
 
女「……自分のせい、なのにね」

コータス「」
 
女「こんなに苦しいのも、こんなに後悔してるのも、全部、全部……」
 
女「私が失敗したから」
 
女「私が、お門違いの考えで、間違った方を選んだから」
 
女「私なんかが……」ポンッ
 ▼ 146 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/08 12:09:31 ID:8ehk2lp2 [12/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女「───え」
 
ムクホーク「」バッ
 

ばっしぃい!!
 
 
女「───ッ」ドタッ
 
女「!????!??」
 

 
───ひっぱたかれた。
 
 
 
ムクホーク「ケーーーーンッ!!!」
 
女「」ボウゼン

コータス「何してんの? 立てるんでしょ?」

コータス「折れてるヒマ、あるの?」

女「ヒマ……て」
 
コータス「ラティアスのこと。このままでいいの?」
 
女「……ジュンサーさん達がもう探し始めてるよ」

女「私が動いても、足を引っ張るだけだよ」

女「警察はこの道のプロなんだから」

女「私なんか邪魔になるよ」

ムクホーク「ケーーーーンッ!!!」

ムクホーク「」ガツン

女「痛でっ」ズテッ

コータス「気持ちがわかる薬なんてなくても、わかるでしょ?」

コータス「いじけてんな。立て」

女「………」
 
女「……わかってるよ……こんな風にしてるのなんて、時間の無駄でしかないこと、くらい」ヨタ……ッ
 
女「でも、動けない……動けないんだ」
 
女「失敗するのが怖い。私が動いたせいで、もっと悪くなるんじゃないかって、もっと酷いことになるんじゃないかって、もっと、取り返しのつかないことになるんじゃないか………って」

女「……私には、そうなっても責任をとることができないから」

女「私の考えが、うまくいくだろう、なんて、能天気に………考えられない」
 ▼ 147 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/08 12:12:51 ID:8ehk2lp2 [13/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
コータス「……たしかに、君は考えすぎるせいで、空回りしちゃうこととか、しょっちゅうだよねぇ」
 

コータス「今はそれも最悪にぐるぐるしてるし」
 

女「ッ……」ズキッ
 

コータス「でも、君が思ったままにやったことってさぁ」

 
コータス「案外、うまくいったりしてるよ」
 

女「うまくいってるときを、自覚してないだけってこと……?」

 
コータス「ちがうよ」

 
コータス「君が、こうする方がいい、とか、こうするべきって、考えた時じゃなくて、こうしたい≠チて思った時のことさ」
 

コータス「たとえば、ほら」
 

コータス「飛んでった風船、女の子に返してあげたよね」


女「……この前の?」

 
コータス「そのときの。」

 







  
コータス「ラティアスは、あの時の君を気に入ったんだよ」


コータス「だから、次の日は君のところへ来たんだ」
 

女「───」
 
  



 


 ▼ 148 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/08 12:15:34 ID:8ehk2lp2 [14/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女「………………なん、で」
 
コータス「だって、あの子はそういう子でしょお」
 
女「そっ、そういうことじゃなくて……ッ」
 
女「なんで、コータスがそんなこと知ってるの?」
 
コータス「話したからねぇ」
 
女「えっ」

コータス「んで、さっきの溺れた子」
 
女「も?」
 
コータス「彼をとっさに助けにいった君を見たとき、ますます好きになっちゃった≠チて、それに」

コータス「このところの散歩は、君もあの子も楽しそうにしてたよねぇ」
 
コータス「心が通じてるのがわかって、嬉しかった≠チて」
 
コータス「そう言ってたよ」

女「」ポロッ
 
コータス「君がやったことは、多かれ少なかれ、誰かを救って、誰かの心に残ってるよ」

コータス「それは、君自身の救いになってるだろ」
 
女「」
 

 
───手書きのメッセージカード。
 
かさばる、などと呟いたが、もらったとき、本当は嬉しくてたまらなかった。
 
自分が何をやっているのかがわからない真っ暗闇のなかで、手を握ってもらえたような。
 
自分でも半信半疑だったことを、それでいいんだ≠ニ肯定してもらえたような。
 
救われたような、気がして。



コータス「それを忘れるなよ」
 
コータス「たった何回かの失敗で、かすんじゃうようなものじゃあないだろ」

女「……」コクン
  
コータス「それにさぁ」

コータス「そんな風に、下を向いて」

コータス「君は彼≠ノ、胸を張れるの?」

女「!!!!」
 ▼ 149 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/08 12:17:12 ID:8ehk2lp2 [15/15] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女「」カタカタカタカタ
 
女「」プルルルル
 
女「………あ、もし、もし」
 
 
 
───意を決してコールボタンを押した彼女はしかし、声の震えを隠せないでいた。
 
どんな風に覚悟を決めても、それでも、これから行う、自分がついた嘘の告白が、怖くて怖くてたまらなかったのだ。


 ▼ 150 ズレイド@いんせきのかけら 17/12/09 10:21:22 ID:6zK5H6Oo NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援です
 ▼ 151 ンド@きいろいバンダナ 17/12/09 12:14:57 ID:KibrHpls NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 152 キメノコ@あやしいおこう 17/12/09 20:49:25 ID:wGFeAKzk NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 153 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/10 19:09:24 ID:7q.AajNM [1/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
『はい、お電話ありがとうございます。宿屋ペリッパーのクチバシです』
 
 
『! ※※※※※さん!』
 
 
『無事だったんですね! ……え、お宿代……延長の分……?』
 
 
『そんなこと……! 気にしなくていいんですよ』
 
 
『君が無事だということがわかったんです。みんな喜びます』
 
 
『……はい。はい。えぇ、大変でしたね』
 
 
『大丈夫ですよ。案じこそすれ、君に怒っている方はいません』
 
 
『わたしも安心しました』
 
 
『……はい……おふたりに? ……はい、はい。かしこまりました。少々お待ちを』
 

 
 
 
 
『もしもし』

 
『※※※※※ちゃん?』
 
 
『……宿屋さんに聞いたわ、今、病院なんでしょう?』
 
 
『本当によかった……命あっての物種だもの』
 
 
『わたしたち、お迎えにいこうか? 妹さんは、大丈夫?』
 
 
『………どうかしたの?』
 
 
『……大丈夫、焦らないで』
 
 
『整理ができたら話すで、いいからね?』
 

 
女「……ごめんなさい」


女「私、嘘をついていました」
 ▼ 154 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/10 19:11:08 ID:7q.AajNM [2/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


 
女「あの子は、妹じゃないんです」
 
女「信じてもらえないかもしれないけど、あの子は、ラティアスで」
 
女「私に、化けて……ただけ」
 
女「私、は、ラティアスのこと、を言って、広めてしまったら……そのっ……あのっ……」
 
女「ラティアスが、トラブルに巻き込まれるかもしれない……っておもってっ……思い、ました」
 
女「だから、妹だ……って、嘘を」

女「みんなを、だまそうとか思ったんじゃ、ないんです……ただ、言わない方がいい、って、思って」
 
女「そう思って……嘘をつきました」
 
女「……ごめん、なさい」
 
 
 
『そっか……』
 
 
『不思議ね……なんだか、納得しちゃった』
 
 
『あの子がポケモンだった……うん』
 
 
『言われてみたらそうね』フフッ
 
 
『人見知り、とも、なにか違ったもの』
 
 
『すっかりだまされちゃった』
 
 
『……でも、だからって、あなたに失望とかがっかりなんてしないわ』

 
『あなたは、当たり前のことをしただけ』

  
『悪気がないことくらい、わかっているわ』
 
 
『ありがとう、本当のことを教えてくれて』
 

 
女「〜……っ」グスッ…ヒック…ズビ…
 ▼ 155 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/10 19:12:41 ID:7q.AajNM [3/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 

───自分たちを襲ったのが何者か。
 
どうして襲ってきたのか。
 
その結果、自分がどうなって。
 
ラティアスがどうなったのか。
 
すべて、語った。
 
その語り口に何を感じたのか。
 
返ってきたのは、問いだった。
 
 
 
『……警察に、任せるんだよね?』
 
女「……」

『君はこれからここに戻ってくる』
 
『それで、わたしたちと、警察の知らせを待つ』
 
『そう、だよね?』
 
『これはその連絡、なんだよね?』
 
女「……ッ」ギュッ

『相手は手強くてずる賢い、大人なんでしょ?』
 
『悪いやつだからって、君が責任を感じているからといったって』
 
『わたしたちは、いってこい、なんて言えない』
 
『言いたくないよ』
 
『だって、万が一、それで、君と会えなくなってしまったら』
 
『わたしたちは、言わなければよかったって、絶対、一生、後悔する』

『お願い』
 
『帰ってきて』
 

 
女「……だと、しても」
 
女「私は、あの子を助けたい」
 
女「あの子と一緒に、あなたたちのところに帰りたい」
 
女「私ひとりで、あなたたちのところに帰るのを、私の仲間たちは許してくれない」

女「私自身がそれを望んでいないのを、みんな……わかっているんです」
 ▼ 156 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/10 19:15:33 ID:7q.AajNM [4/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ムクホーク「」キッ

女「」
   
女「ありがとうございます」
 
女「ごめんなさい」
 
女「いってきます」
 
 
 
───返答を待たず、受話器を置く。
 
勢いにでも任せないと、そのまま受話器を握りっぱなしになってしまいそうだったからだ。
 
早く行かなければ、と、その思いだけに集中して、それ以外を頭から叩き出して、受話器を置こうとした。
 
通話が切れるまでの、そのわずかな一瞬。
 
その声は、受話器が耳から遠ざかっていても、はっきりと聞こえた。
 
 
 
「「いってらっしゃい」」
 
 
 
女「」ガチャン
 
女「………ッ」
 
女(ふたりとも、涙声だった)
 
女「……いこう」

ムクホーク「ぴぃ」
 
 
 
 
女(まだ、警察に話せていないことがある)

女(考え直して、検討した推測)
 
女(ハンターの潜伏場所)
 
女(その候補)

女(───いた!)
 

 
───警察署にやってきてすぐ、受付で呼び止められたので、自分の聴取をしたジュンサーの名前を出して通り抜けた。
 
所属を聞いて、そこに向かっている次第だったが、件のジュンサーはあっさりと見つかった。
 
 
 
女「ジュンサーさん!」
 ▼ 157 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/10 19:17:38 ID:7q.AajNM [5/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ジュンサー「あら、あなたは!」

ジュンサー「今日1日、絶対安静じゃなかったの?」
 
女「それは大丈夫です。回復しました」キッパリ
 
ジュンサー「そ、そう」
 
女「それで、実はまだ言っていないことがあって……」
 
ジュンサー「大丈夫よ。事件はもう解決したも同然だから」
 
女「え、それは……どういうことですか?」
 
ジュンサー「ハンターの足取りがつかめたの。目撃者から通報があってね」
 
ジュンサー「実動班がもう向かったから、じきにハンターは捕まるわ」
 
女「そう……ですか」
 
ジュンサー「わたしも実動班に参加したかったんだけど、残されてしまって」
 
ジュンサー「でも大丈夫よ。辛抱して待ちましょう?」
 
女(なんだ)
 
女(なんだ?)
 
女(ひっかかる……何が?)
 
女(何≠ェ、引っかかってる?)
 
女(……嫌な予感がする)
 
女「あの」
 
ジュンサー「なにかしら」
 
女「実動班が向かった場所って……」パタパタパタ
 
ジュンサー(アルトマーレの地図)
 
女「ここと、ここと、ここ」
 
女「……の、どれかですか?」
 
ジュンサー「……えっ」

ジュンサー「ど、どうしてそれを知っているの?」
 
ジュンサー「通報された場所とまったく同じ……あっ」ウグッ
 
ジュンサー(しまった)
 
女「実動班は分かれてこの3ヵ所に同時に向かった……そうですね」パタパタパタッ

ジュンサー「えぇ、そんなところね」
 
ジュンサー(ほんとはあともう2ヵ所ある……けれど、これを言うわけには)
 ▼ 158 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/10 19:18:51 ID:7q.AajNM [6/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女「」ダッ

ジュンサー「あっ、ちょっと!」
 
ジュンサー(まずい!)

ジュンサー(なぜこの子がハンターの潜伏場所を突き止めているのかわからないけれど、このままほうっておいたら)
 
ジュンサー(間違いなく、今指し示したどこかに行く!)

ジュンサー「待ちなさい!」ダッ
 
 
 
















 ▼ 159 ルマユ@ディフェンダー 17/12/10 22:19:25 ID:Z0yZQRcA NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 160 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/14 16:27:39 ID:cMixt.5s [1/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「……っぐ」
 
「うぅっ……」
 
 
 
───倒れ伏す仲間たち。

そばでは、それぞれのパートナーポケモン達まで、力なく横たわっている。
 
死屍累々。
 
自分もそのひとつ。
 
完全なる敗北だった。
 
 
 
(……どうして、こんなことに)
 

 
───ざらざらと吹き荒ぶ砂嵐。
 
力を振り絞って首を上げると、砂の幕の向こうに辛うじて見えるのは、この状況を作り上げた張本人たち。
 
よろいポケモン・バンギラス。
 
キバさそりポケモン・グライオン。
 
そして、その奥には、奴が立っているのだろう。
 
守り神・ラティアスを連れ去った、ポケモンハンターの男が。
 
 

(戦力が下がっているにしても、実動班の俺たちが、こんなに、一方的にやられるなんて……)
 
 
 
───グライオンの姿がかすんで視界から消える。
 
天候すなあらしの際に発揮される特性・すながくれ。
 
その特性を生かして死角をとり続け、グライオンはパートナーポケモンはおろか、警察官たちをも打ちのめしてしまった。

グライオンが十全に動けるよう、この場所≠砂嵐でおおってしまったのは、バンギラスの特性・すなおこしだ。
 
バンギラスはただのすなおこし要員にとどまらず、こちらがグライオンを注視出来なくなるほどの大暴れを見せた。
 
蹂躙に次ぐ蹂躙。
 
決して油断はしていなかったが、それでもなお、先を行かれ、敗北を喫した。
 

 
(くそっ……こんなはずじゃ……)
 
(俺たちが、ラティアスを救い出さなくて、誰が救い出すんだ)ギリッ
 ▼ 161 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/14 16:30:13 ID:cMixt.5s [2/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
───幼い頃、彼は守り神に助けられたことがあった。
 
いつか、その恩を返せるように、とひたむきに生きてきて、その果てがこれか。
 
情けなくて、悔しくて、涙がこぼれた。
 
 
 
(あのときの救いの手に、俺は報いることができないのか……ッ!)
 
 
 
───風の音が止む。
 
体に覆い被さる砂が、四肢の痛みにのしかかる。
 
逃げられてしまう、連れ去られてしまう。
 
みんなの大事にしているものが。
 
尊んでいるものが。
 
心の拠り所となっているものが。
 

 
「まて……まてよ……っ」
 
 
 
───砂でざらつく口は、がらがらに乾いたのどは、思った通りにしゃべってくれすらしない。
 
ハンターが立ち去ろうと、ポケモンをボールに戻そうとして───
 

 
「コータス! だいもんじ!!」
 

 
───大≠フ字の豪炎が、ハンターに迫る。
 

 
ハンター「バンギラス、盾になれ!!」
 
バンギラス「バッ……ギラス!!」バッ
 
グライオン「」ソソクサッ
 

ど、ぉん!!
 
 
ハンター「………」
 
(コータス……と、女の子……!?)
 
ハンター「……あのガキか」
 ▼ 162 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/14 16:33:13 ID:cMixt.5s [3/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 
女「どうしてここにいるんだ、って顔をしてますね」
 
ハンター「………」
 
女「……」
 
女「あなたが私達を監視してるのと同じ時間、私はずーっと、ラティアスと遊び回ってましたから」

女「水路も、裏道も、抜け道も、近道も、隠れるのに都合良さそうな建物も」

女「全部覚えてるんです」

ハンター「」ピクッ
 
(な、なに、得意気に語ってるんだ……)

女「どうしてあなたの居場所に目星をつけられたのか、不思議ですよね?」
 
ハンター「………」
 
女「あなたが私達を襲ったあのとき、私はオノノクスごと川に落とされた」
 
女「人情的に考えるならば、その近くをわざわざ通っていくとは考えにくい」
 
女「なら自然と、あなたはゴンドラを、私から逃げるように向けるはず……」
 
ハンター「ストーンエッジ」
 
グライオン「ッライォオン!」ガコンッ
 
バンギラス「ギラス!!」ガコンッ
 
 
がががちん!!
 
 
(あのコータス……バンギラスとグライオンのストーンエッジを、ストーンエッジで撃ち落とした……!)
 
女「……なら、そこから繋がる潜伏場所′きの建物をしぼりこめばいい」ニヤリ
 
女「ここみたいに、廃屋になっている舟屋なら、船の乗り降りもたやすい上、ゴンドラからすぐにボートに乗り換えて、そのまま逃げることができる」
 
女「おあつらえ向きですよね」
 
ハンター「」ムカ
 
(たとえ……場所がわかったからって、単身で乗り込んでくるなんて)
 
(どうして、そんなおろかなことを!)
 
(って、そうか! ラティアスと一緒にいたっていう女の子!)
 
(仇討ちに来て……しまった、のか!)
 
ハンター「バンギラス、グライオン。ストーンエッジでトレーナーごと……」

ムクホーク「ケーーーーンッ!!!」
 ▼ 163 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/14 16:35:09 ID:cMixt.5s [4/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
バンギラス「〜ッ!?」バキッ
  
ハンター「何っ!?」

ムクホーク「ぴいっ!」ゲシッ
 
バンギラス「ばおぉっ!」
 
ムクホーク「ぴぴるるる!」ゴッ
 
バンギラス「ーッ!」ヨタッ
 
(インファイト!!)
 
ハンター「おぼえねえくせに不意討ちとはやってくれる……」
 
ハンター「バンギラスなにしてる! そんなもんさっさと引き剥がせ!」
 
ハンター「グライオン! コータスをやれ!」
 
 
 
グライオン「グライオォン!!」バッ
 
コータス「ふわぁ」
 
 
 
バンギラス「バンッ、ギッ!!」ブンッブンッ
 
ムクホーク「ぴぴっ!」バサッバサッ
 
ハンター「かみくだけ!」
 
(あぶないっ!)
 
ムクホーク「」ギラッ
 
ムクホーク「!!!」ッッッッゴッ
 
バンギラス「むぎゅう」ミシッ
 

 
(な、なんとか、渡り合えている………)ホッ
 
(彼女、結果的には俺たちの助けになっているが……しかし、やはりどこかギリギリの綱渡りに見える)
 
(彼女が足止めできているうちに、応援が間に合えば……あるいは!)
 
 
 
───ここにハンターがいた以上、別れた他の班が訪れた目撃箇所は、ハズレ。
 
ならば、彼らがこちらの通信が途絶えていることに気づいて応援に来てくれる可能性がある。
 
情けないことだったが、少女の時間稼ぎが、彼にとって、頼みの綱だった。
 ▼ 164 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/14 16:37:41 ID:cMixt.5s [5/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
バンギラス「!!!」ガブッ
 
ムクホーク「ぴぃいいい!!」ゴスッバシッゲシゲシッ
 
(噛まれながら、ボコボコに殴り返している……)

ムクホーク「」ギンッ

バンギラス「っ……」タジッ
 
バンギラス「〜!!!」ギギギギ
 
ハンター「チ、いかくでブルっていやがるのか」
 
ハンター「グライオン! いつまでそっちに手間取って」
 
グライオン「ぐうすかぴぃ……」
 
ハンター「……この間抜けが」
 
(い、いつの間に眠らせたんだ……)
 
ハンター「バンギラス! ムクホークをくわえたままでいい! やつらのところに突っ込め!」
 
バンギラス「〜ッ!」ドシン、ドシン、ドシン…… 
 
(グライオンごと轢くつもりか!?)
 
女「」スッ
 
バンギラス「!!」ドシンドシンドシン
 

がしっ!!
 
 
バンギラス「!?」
 
オノノクス「バオォォン!!」
 
ハンター「オノノクス……3体目を出しやがったか」
 
ハンター「なら、こっちも……」スッ
 
女「」ポポン!
 
ドリュウズ「ッリュウズ!」
 
シザリガー「アィワズバァーック」ノッシッ
 

ハンター「……ふん」ポポポポン

サザンドラ「ォオオオオン!」
 
グソクムシャ「むむっしゃ!」
 
ヒヒダルマ「ワッシャオイ!!」
 
メタグロス「メッタァ!!」
 ▼ 165 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/14 16:39:08 ID:cMixt.5s [6/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女「これで、全部」ボソッ
 
(……まだ、こんなに持っていたのか……ッ)
 
(数を出して状況打開どころか、上回られてピンチになってるじゃないか!)
 
(クソッ、応援はまだか!!)
 
ハンター「お前ら、かかれ」
 
女「………」
 
 
 
女「」スゥ……
 
女「コータス、じわれ!!」
 
コータス「こぉっ!」 ズドン
 
ハンター「何っ!?」
 
ハンター「おまえら、下がれ!」
 
女「シザリガー、アクアジェットでムクホークを助けて!」
 
シザリガー「ザリィッ!」パァン!
 
バンギラス「ッ!」パッ
 
ハンター「チッ」
 
(じわれに気をとられて出遅れた!)
 
ムクホーク「ぴいっ!」バサバサッ
 
シザリガー「〜♪」ドヤァ
 
ハンター「グソクムシャ、シザリガーにであいがしらだ!」
 
女「食らってもいい! ハサミギロチン!」
 
グソクムシャ「」ギョッ
 
グソクムシャ「ムッシャッ!」スカッ
 
 
がちぃんっ!!
 
 
シザリガー「いでぇっ」ベシッ
 
(浅い)ホッ
 
ハンター「一撃技ばかり……ヤケクソしやがって」イラッ
 
女「ドリュウズ潜って! ムクホーク、サザンドラにブレイブバード!」
 
ハンター「りゅうのはどうでつぶせ!」
 ▼ 166 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/14 16:40:11 ID:cMixt.5s [7/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女「ギリ≠ナ!! ドリュウズ! つのドリル! コータス、エッジ! オノノクスは正面ハサミギロチン!」
 
バンギラス「!」ギョッ
 
オノノクス「」スカッ
 
 
がちんっ!
 
 

バンギラス「バン、ギッ……」タジッ
 
 
ドリュウズ「ドリューッ!」ギュリリリリリリ

ヒヒダルマ「しゃあい!?」ヒョイッ
  
ハンター「ヒヒダルマ! 足元からくるんだ! アームハンマーかまえとけ!」
 
女「コータス、シザリガー! メタグロスにだいもんじ! はたきおとす!」
 
女「ムクホークはヒヒダルマにインファイト! ドリュウズ! 合図したらつのドリル!」
 
ハンター「メタグロス、サイコキネシスで動き止めろ!」
 
メタグロス「メェッ……タッ」キィィィン
 
シザリガー「」ケロッ
 
シザリガー「シニサラッセャァ!!」バチコーン
 
メタグロス「※○△≦ッ!」
 
グライオン「……ぐらぁい?」ムクッ
 
ハンター「お前もはやくいけ!」
 
女「ドリュウズ、今!」 
 
ハンター「うおっ」
 
ヒヒダルマ「しゃお……」ボロッ
 
ムクホーク「」ガシッ
 
ドリュウズ「」ギュルルルルルル!!!
 

ばこんっ!!
 

ヒヒダルマ「だっ……るぅ……」バタッ
 
(連携して、つのドリルを当てにいった!)
 
ハンター「グソクムシャ…」
 
女「コータス、じわれ! オノノクスはサザンドラに! シザリガー、バンギラスにクラブハンマー!」
 ▼ 167 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/14 16:42:21 ID:cMixt.5s [8/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ハンター「メタグロス、オノノクスを……いや、シザリガーに、いやオノノクスにいけ!」
 
女「コータス、だいもんじ! ムクホーク! グソクムシャにブレイブバード!」
 
ハンター「サザンドラ! りゅうのはどうだ!」
 
女「ドリュウズ、バンギラスにアイアンヘッド! コータスそのまま燃して! シザリガーはハサミギロチン!」
 
ハンター「何してるグライオン! コータスを狙え! じしん!」
 
女「ドリュウズ、サザンドラをお願い、アイアンヘッド! ムクホーク、ブレバしたらそのままサザンドラにインファイト! シザリガー、はたきおとす! アクアジェットでグライオン叩いてそのままクラハン! オノノクス、ダブルチョップ!! コータス、サザンドラにストーンエッジ! ムクホーク! グライオンにすてみタックル! シザリガー、オノノクスに合流! ふたりともハサミギロチン! ドリュウズ! つのドリルし続けて! コータス、グライオンにだいもんじ! ムクホーク、離脱してメタグロスにインファイト!」
 
ハンター「……グライオンッ、サザンドラ……つばめがえし、じゃなくて、あくのはどう! メタグロスは……!」
 
(なんだ……なんだ……ッ?)
 
(何が起きてるんだ……???)
 
 
 
───どこからどう見ても手がつけられないくらいの乱戦。
 
ハンターも、そのポケモンも、状況に対応しきれなくなっている。
 
なのに、なんだ。
 
なんだ、あの少女は?
 
 
 
(指示が止まらない)
 
(ずっと、ずっと、指示をし続けている……?)
 
(こんなメチャクチャな状況で……この状況を、把握しているのか……?)
 
(いや、これは、もはや……) 
 

 
女「オノノクス、ダブルチョップ!」
 
オノノクス「」ドカッ、バキッ

グライオン「〜………」フラッ
 
 

ハンター「付き合いきれねぇ」ギリッ
 
ハンター「逃げるッ!!」ダッ
 

(あっ! モーターボートで逃げてしまう……!)
 
 
女「ポケモンを置いていくなんて……!」
 
ハンター「好きなだけバトルしていろっ!」
 ▼ 168 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/14 16:45:23 ID:cMixt.5s [9/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
───ハンターが飛び乗ったモーターボートは、まっすぐ飛び出す。



ハンター(補修の際邪魔だからとラティアスをゴンドラに残したままの上、レンタルのポケモンもおいてけぼり)
 
ハンター(8ヵ月粘ってこのザマとは、とんだ骨折り損だ)
 
ハンター(しかし、ここまでの騒ぎになっては、アルトマーレじゃもう仕事はできん。出るしかねぇ)
 
ハンター(さて、どこに高飛び……飛んで……)
 
ハンター「え………?」
 
 
 
───飛んでいた。

ボートもろとも、ふんわりと。
 
舟屋から飛び出したボートはそのまま、見えない何かに衝突してつんのめり、ひっくり返った。
 
勢いは止まず、ボートは宙を舞い───
 
ハンターはその際にボートから投げ出され、同じように飛んでいた。
 
永遠に続くかと思うほど減速した感覚で浮遊感をめいっぱいあじわったのち、ハンターとボートは向かいの舟屋までふっとび、石畳に叩きつけられた。
 
 
 
ハンター「がっ……」
 
ハンター(……………寒、い?????)
 
ラプラス「ぷらら……」プカプカ
 
 
 
女「……ふぅ」
 
女「時間稼ぎ、間に合った……」
 
女「ありがとう……ラプラス」
 
 
 
ジュンサー「水路の凍結、間に合ったのね」ホッ
 
おまわりさん「君、どうして……」

おまわりさん「署で、待機のはずじゃ……」
 
ジュンサー「彼女が強情でね……押し切られちゃったのよ」ヨッコラセッ

 
 


 ▼ 169 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/14 16:47:48 ID:cMixt.5s [10/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
───時間は少しさかのぼって。
 
ジュンサーを尻目に警察署を飛び出したものの、彼女は追いかけてきたジュンサーにあっさり捕まった。
 

 
ジュンサー「君が行って何になるっていうの! 警察に任せなさいっていってるでしょう!」 
 
女(やっぱり、逃げ切れないッ)
 
女(振り切ることができない以上、やっぱりこの人に協力してもらうしかない……けど)
 
女(何をするのに? どうやって?)
 

 
───ハンターの居場所の通報に、違和感を感じたものの、彼女はその理屈を説明できるほど、推測をまとめられていなかった。
 
辿り着くまでの道すがら考えよう、と思っていたが、こうなってはそうもいかない。
 

 
女(覚悟を決めなきゃ)
 
女(ここで、この人を納得させられるよう、考えをまとめる)
 
女(せめて、この人にとって一考の余地がある<激xルにしあげる!)
 
 
 
女「……さっきの通報の話、おかしいと思ったんです」
 
ジュンサー「おかしい?」
 
ジュンサー「わたしが嘘を言っている、とでも?」

女「違います、そうじゃなくて」
 
女「あのハンターは、とても慎重で、用意周到でした。私にストーキングがばれないように、自分はゴンドラ船頭になりきって、私が水路を離れたら、ドローンを使って死角から追跡するほどです」
 
女「事実、私は昨日まで、自分達が狙われていることに、まったく気づくことができませんでした」ギリッ
 
女「……だから、あんな通報があること自体がおかしい、と思ったんです」

女「私を水に沈めて、ラティアスを連れ去ったあの男が、浮かれて正体を露呈するなんて考えられません」

女「通りすがりの人がちらっと見ただけで怪しい≠ニ思うようなそぶりなんて、しないはずなんです」
 
ジュンサー「!」
 
ジュンサー「つまり、通報はハンターの自演、ということ?」
 
ジュンサー「目撃箇所を増やすことによって、突入してくるかもしれない戦力の分散を狙った……?」
 
ジュンサー「いえ、いえ。でも、違うわね」

女「」ドキッ
 
ジュンサー「それほどに用意周到ならば、そもそも警察が嗅ぎつける前に%ヲげようとするはず」
 ▼ 170 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/14 16:49:56 ID:cMixt.5s [11/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ジュンサー「わざわざ自分の居場所をしぼりこませるようなマネをするなんて、それこそありえないんじゃないかしら」

女「はい。だから、ハンターはそうせざるを得ないような状況になったんじゃないでしょうか」
 
女「警察が来るまでに逃げられそうにない、そんな状況に」
 
ジュンサー「それは少し、あなたの考えにとって都合がいい発想じゃないかしら」
 
女「はい、ですから、間違っている可能性もあります。ただその場合、そんなアクシデントもないハンターは、とっくに逃げているでしょうね」
 
ジュンサー「それは……あまり、考えたくない展開ね」
 
女「そして、同時にもっとひどい展開は、私の推測が現実のもので、戦力が分散した実動班が、ハンターと交戦することになってしまったら、ということです」
 
ジュンサー「実動班が、たかがハンターに負けるとでも?」
 
女「たかがじゃ、ありません。未知のポケモンと、メタグロスをつれたハンターです」
 
女「私の知らないそのポケモンは、シザリガーとオノノクスに痛手を負わせるほどのパワーと、タフさを持ち合わせていました」
 
ジュンサー「他にポケモンを持っていないかもしれない。分散しているとはいえ、実動班も数がいるわ」
 
ジュンサー「そもそも、たとえハンターにアクシデントが起きていなかったとして、それでも、わたしは私たちが遅れをとるとは思わない」
 
ジュンサー「彼らは間に合う」
 
ジュンサー「ラティアスを救い出す」
 
女「」
 
女(この人の思いは本物だ)
 
女(仲間を本当に信じてる)
 
女(自分の帰属する組織を、警察を信じてる)
 
女(私が私の仲間を信じているのと、おんなじように)



女「……私は、警察を疑っているわけじゃありません」
 
女「ハンターの手持ちがその2匹だけ、というのは、それこそ虫のいい展望ではないでしょうか」
 
女「もしも、メタグロスや、あの未知のポケモンのような、大型のポケモンをハンターが連れていたら」
 
ジュンサー「それでも、彼らは負けない」
 
女「分散した戦力で?」
 
ジュンサー「負け、ないわ」
 
女「……」
 
女(ごめんなさい)
 
女(今、この瞬間だけ、私はあなたを脅します)
 
女「少しだけでいいんです、考えてください」
 ▼ 171 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/14 16:54:01 ID:cMixt.5s [12/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ジュンサー「……」
 
女「あなたがここで、私を止めた場合の結末は3パターン」
 
女「1、警察の勝利。ハンターは捕まり、ラティアスも帰ってきて大団円」
 
女「2、警察の敗北。到着は間に合わず、ハンターに逃げられ、ラティアスが闇に消える」
 
女「3、警察の大敗北。戦力ダウンした状態でハンターと交戦したため、実動班も怪我人、ポケモンの負傷が出る」
 
ジュンサー「敗北のパターンを細かに挙げているだけね。あなたの推測ありきなところもあるわ」
 
ジュンサー「そんなに、わたしたちのことを信じられないのかしら」ムッ
 
女「そして、あなたが私とハンターの潜伏先に向かった場合のパターンも3つ」
 
女「1、警察の勝利。私たちの行動は無駄に終わる」
 
女「2、警察敗北。ハンターに逃げられ、警察に被害らしい被害は出ない。ラティアスは連れ去られる。私たちの行動は無駄に終わる」
 
女「3、警察大敗北──のところを、私たちが居合わせることによって軽減」
 
ジュンサー「……それは、つまり」
  
女「必要ならばジュンサーさんが応援を呼び、私たちふたりで、それが来るまでの時間稼ぎができる」
 
女「大方の結末に、私たちは必要ありません。徒労になるだけですし、こっそり帰ってくるだけ」
 
女「大人数を引き連れていけるほど、私の推測は確度の高い根拠を持っていません。徒労になった場合のリスクが大きいからです」
 
女「でも」
 
女「あなたひとりだけが付いてきてくれるという状況になったなら───私とジュンサーさんだけで、ハンターの元に行くことになったなら」
 
女「私たちの存在は、保険になるんです」
 
ジュンサー「!!」
 
ジュンサー「だとしても」
 
ジュンサー「私は仲間を信じる」
 
女「……ッ」ブルッ
 
女「……信じて行かない、のは、怠慢です」
 
ジュンサー「なんですって?」
 
女「私は、万が一の保険になるのなら、たとえ無駄だったとしても……行きます」フルフル
 
女「その無駄をしなかったばかりに、取り返しのつかない万が一が起きてしまったら、私は私を恨む」
 
女「信じることにかまけた、怠惰な自分を、一生恨む」

女「ジュンサーさんは、どうですか?」

ジュンサー「」タジッ
 
女「ジュンサーさんはそうなったら、しかたがなかった。こちらの手落ちだった≠チて」
 ▼ 172 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/14 16:55:52 ID:cMixt.5s [13/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女「納得するんですか」
 
女「自分の怠慢を、棚上げできますか?」
 
ジュンサー「……ッ」
 
ジュンサー(……嗚呼)
  
 
 
───彼女は気づいた。
 
この少女は、自分達を信用できない、と言っているのではない。
 
今、自分は真摯に問いかけられているのだ。
 
その選択をして、あなたは絶対に後悔しないのか?≠ニ。
 

 
ジュンサー(今、ここで立ち止まって、この子の言う万が一≠ェ起きたなら)
 
ジュンサー(わたしはきっと、この子を止めた自分を呪うだろうな)
 
  
 
女「お願いします、行かせてください」
 
女「もしこの推測がハズレだったなら、それはそれでいいんです。実動班のおまわりさんたちがハンターを捕まえていれば、それですべて解決なんです」
 
ジュンサー「……」

女「でも、もしそうならなかったら、それを考えたら、いても立ってもいられないんです」
 
女「お願いします」
 
女「私を行かせてください」
 
女「私ひとりで行かせられないならば、ジュンサーさんも一緒に来てください」
 
女「万が一の場合、すぐに応援を呼べるのは、ジュンサーさんにしかできません」
 
女「私が精一杯抵抗しても、きっと時間稼ぎが関の山だと思います」

女「だから、どうか……」ペコリ
 
女「行かせてください」
 
ジュンサー「……」フー










 ▼ 173 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/14 16:56:52 ID:cMixt.5s [14/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



ジュンサー「……3箇所、全部を回る気?」
 
女「いえ、その……」パタパタッ

女「まず、ここに行こうかと」
  
女「私は、ハンターがここにいるって考えています」ピトッ
 
ジュンサー「どうして?」
 
女「……………………………………………………………………………………」
 
女「───ごめんなさい」
 
女「これだけが、どうしても説明をつけられなくて」

女「ただ、間違いないって、思うんです」
 
女「ラティアスが、ここに、いる……って」

ジュンサー「」
 
ジュンサー「」ヤレヤレ
 
ジュンサー「わかったわ。行きましょう」

女「!!」
 
ジュンサー「警察の勝利を見届けに、ね」
 
女「ッ……ありがとうございます」ペコリ
 
ジュンサー「……おまわりさんは───正義の味方は、負けないんだから」スタスタ
 
 

 
───そうしてたどり着いた舟屋では。
 
警察が負けていた。

砂嵐が吹き荒れる廃屋で、おまわりさんは誰ひとりとして、立ち上がってはいなかった。 

目の前の事実に打ちのめされるも、絶望してはいられなかった。
 
隙をみて覗いた舟屋には、ゴンドラと並んでモーターボートがあった。
 
このままでは逃げられてしまう。
 
そう自分が頭を働かせ始めたとき、少女が口を開いた。
 
応援を呼んでほしい、私が先に時間を稼ぐ、と。
 
合点がいった。
 
彼女が時間稼ぎとなっている間に、自分が応援を呼べば、たとえ力及ばず敗北しても、続けて自分が出ていって時間を稼ぐことができる。
 ▼ 174 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/14 16:58:50 ID:cMixt.5s [15/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
だが、自分の中の矜持が、それを看過しなかった。
 
大人が───ましてやおまわりさんの自分が、子どもを囮にする、などと。
 
そのジュンサーにしかし、彼女は冷静に説明する。
 
一度負けた自分が、調子に乗った体で出ていけば、きっとハンターは油断するだろう、と。
 
ジュンサーさんが出ていけば、ハンターはすぐにでも逃げてしまうかもしれない、と。
 
しかし、と食い下がった自分に、少女はとっておきの策を告げた。
 
ラプラスのこおり技で水路を凍結させる、という策を。
 
その策が通ってしまえば、ハンターはもはや逃げることができなくなる。
 
ラプラスが頑張っている間はハンターの意識を自分から離させないよう立ち回る、と。
 
自分が手も足もでなくなったなら、そのとき、満を持して登場してください、と。
 
お願いされてしまった。
 
そしてその段取りを納得して、了承してしまった。

少女は砂嵐が晴れたタイミングを見計らって、舟屋に飛び込んでいった。
 
結局、自分に出番が回ってくることはなかった。
 
 
 
 
 
ジュンサー「遅くなって、ごめんなさい」
 
ジュンサー「みんな、来たわ」
 
 
 
───駆けつけたおまわりさんたちが、向かいの舟屋でのびているハンターの周りに集まっていく。
 
こちらの舟屋にも、別れていた実動班のメンバーが入ってきた。
 
サイレンの音がする。
 
じきに救急車も来るだろう。
 


ジュンサー(なさけない)
 
 
 
───事件解決、と安心してから真っ先に抱いたのは、その感情だった。
 
倒れ伏す仲間たちと、ひとり立ち向かう少女。
 
そして、終始舟屋の外から様子をうかがうだけだった自分。
 
今回の警察のはたらきなど、およそ誉められたようなものではない。
 ▼ 175 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/14 17:01:26 ID:cMixt.5s [16/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
悔しかった。
 
 
 
ジュンサー(あの時と、何ら変わりやしないじゃないか)



───自分がまだ学生だった頃、カントーのとある大手企業がポケモンマフィアに占拠される、という事件があった。
 
結果として、それが解決されたのは警察によってではなく、ひとりのポケモントレーナーの手によるものだったという。
 
あまつさえ、事態を警察が把握したのも、彼がその会社に単身で乗り込んだ後のことだったというから、当時はあきれたものだ。
 
国家の守り手が重篤な犯罪を察知できないどころか、ただのトレーナーに先を越され事件解決をかっさらわれるとは何事か、と。
 
その頃すでに警察官を目指していた彼女にとっては、決して、そんな甘い警察官になどなりはしない≠ニ息巻いたものだったのだが。
 
今のこの体たらくと言ったらどうだ。

旅のトレーナーが、自分たちよりもよっぽど実情を把握していて、事件を解決してしまう、などと。
 
当時、自分が見下していた、なさけない姿そのままではあるまいか。
 

 
ジュンサー(絶対、このままでなんてイヤ)
 
ジュンサー(必ず、絶対、頼れるおまわりさんになってやるんだから……)ギリッ



女「ラティアスっ!」ギギギッ
 
ラティアス「」グウ…スウ…
 
女「よかった……」ホッ
 

 
───ゴンドラの床下に、ラティアスは押し込まれるようにして横たえられていた。
 
オノノクスとひん曲げるようにして床板を開けたとき、すやすやと寝息を立てている姿を目にして、腰が抜けたようにへたりこんでしまった。
 
ラティアスはもちろん人間の姿ではなく、オリジナルの姿。
 
思えば、人の姿になっていないところを見るのは、これが初めてだった。
 
───ので、つい、見とれてしまった。
 
ガラス繊維のように透き通った毛並みと、ジェット機のような翼。
 
ポケモンでいながら、童女のそれを思わせるあどけない顔立ちで、細い腕には機能美を感じさせる独特の色気があった。
 


女(……何を血迷った考えをしてんだろ)


 ▼ 176 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/14 17:03:03 ID:cMixt.5s [17/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女「ラティアス、ラティアス」
 
ラティアス「」ノソリ
 
ラティアス「」パ チ パ チ
 
ラティアス「ひゅあん?」キョトン
 
女「ッ……!!」ブワッ
 
女「ラティアス!!」ダキッ
 
ラティアス「!?」
 
女「私……私ッ……ごめん、ごめんなさい……怖い思いさせて、ごめんね」
 
女「助けられて、よかった……」フルフル
 
ラティアス「」
 
ラティアス「〜……」ギュッ
 
女(よかった……)
 
女「よかった……」ギュッ
 
女(……ありがとう、おにいさん)
 

 
───そんな風に、自分を諦めないで───
 
 

女(そう言ってくれたあなたのおかげで、私は、この子を救うことができました)
 
女(あなたの言葉が、私の救いになりました)
 
女(これで、少しは、私も……)
 
女「ラティアス、あのね、私、あなたさえよければ……」



───閉じていた目を開いて、その視線の先にあったのは。
 
羽根の折れたドローンだった。
 
 
 
女(これ……ハンターが私たちを監視するのに使っていたやつか)
 
女(ブロック型のカメラユニットの上部に2層式プロペラがひとつ、下部に歩行用の足が2対……)
 
女「……」クワ
 
女「」バ
 ▼ 177 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/14 17:05:04 ID:cMixt.5s [18/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 

 
───思わず見ていたのは、水路をはさんで向かい。

さほど離れていない、ハンターの飛び込んだ舟屋だ。
 
ちょうど、おまわりさん達に肩を支えられて、ハンターは力なく歩いていこうとしているところだった。
 

 
ハンター「」ボソボソッ
 
女「……ッ」ゾワッ
 
女(今、なんて、言った……?)
 

 
───ぐったりとして、足取りもおぼつかないようだったが、朦朧とした意識で悪態をついたようだった。
 
ハンターは、こう言っているように見えた。
 
「ボートが壊れてなけりゃ、すぐに逃げられたのに」
 
と。
 
 
 
女「ありえない」
 

 
───アクシデントはどうやら本当にあったらしい。
 
ジュンサーにそう説明していたものの、すでに彼女は、その線は薄い、と思っていた。
 
やはり、ンターの慎重さ、用意周到さが、どうにも焼き付いていたからだ。
 
だから、あれほど慎重に徹していたハンターが、モーターボートのトラブルで逃げ遅れた、という事実に直面して。
 
ありえない、とつぶやいていた。
 
 
 
女(このドローン)バッ
 
女(見覚えがない……いや、違う、そうじゃない)
 
女(私が見ていたドローンは?)
 
女(そうだ、最初私は、あれを隣室のおにいさんのドローンの調整が進んでいるもの、と思った)
 
女(ハンターの襲撃から、それが勘違いで、あのドローンこそがハンターの斥候なんだと思った) 

女(でも、違った)
 
女(じゃあ、あのドローンは何? どう考えても、こちらを見ていた)
 ▼ 178 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/14 17:17:56 ID:cMixt.5s [19/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女(そもそも、モーターボートのトラブルはなぜ起こった。ハンターの不備じゃなければ何だ?)
 
女(何が起こした?)
 
女「そうだ、ハンターの潜伏先の通報も、まさか、別の?」ボソッ
 
女(別の───誰≠ゥが?)
 
女「!!!!!」ハッ
 
ラティアス「ひゅうん?」
 
女「ジュ、ジュンサーさん……ジュンサーさん!!」バッ
 
ジュンサー「?」クルッ
 
 
 
───もしかして≠ェ具体的な像を結んだその瞬間、彼女はここまで同行のジュンサーの名を叫んでいた。
 
そして、ジュンサーが振り向いたタイミングはちょうど、最後のパトカーが走り去っていったところだった。
 
 
 
───新たに浮かび上がってきた推測を話すと、ジュンサーは二つ返事で同行を承諾してくれた。
 
少し前に語った万が一≠ェ現実になった、という事実が効を奏したのかもしれない。
 
誰が、の見当がついて。
 
何のために、の見当はついていない。
 
だから、思いつく限りで最悪の展開に焦点を当てて、この結論に達した。
 
気分は最悪だった。
 
この結論が当たりだったら、もう一刻の猶予もない。
 
つまり、応援を呼んでいるひまはないし。
 
そして、なによりも、心の中でその結論を信じたくない、と叫ぶ自分自身の声が、延々と反響していたからだ。
 
ラティアスに道案内を頼み、一行は急ぎ向かった。
 
あの、秘密の庭に。














 ▼ 179 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/15 17:32:18 ID:WqZ3P8xk [1/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ラティアス「ひゅあん」
 
女「───はっ」
 
ジュンサー「あっ、出た……」
 
ジュンサー「!! あの噴水のところ!」
 
女「ッ………………そん、な」
 
女(どうか、どうか、間違っていてと何度も思った……なのに、なんで)
 
女「どうして……」
 
女「なんで……っ」
 
女「どうして、ですか……ッ」
 
女「なんで、こんなところにいるんですかッ!?」
 
 
 
「あなたこそ、なんで……ここにいるのかしら?」
 

 
───この6日間、この人と顔を合わせない日はなかった。
 
宿・ペリッパーのクチバシにチェックインしたとき、初めて会ったのが彼女だった。
 
食事の時間には必ず、料理を並べる手伝いをしていた。
 
つい昨日には、宿の廊下で正面衝突をした。
 
仕事の合間に交わしたわずかなやりとりの中で、変な人だ、と思いはしたものの。
 
そんな感情をさておいて、彼女をきっと好い人なんだろう≠ニ信じたかった自分がいたのだ。
 
だから、ここにいるのが予想していた通りだったとしても、その顔を見た瞬間なぜ≠ニ問いかけずにはいられなかった。
 
噴水の脇の影はふたつ。
 
影のひとつ、本来であれば、守り神の1柱とされるそのポケモン───尋常ならざる雰囲気をかもしだす、敵意に満ち満ちたラティオスに寄り添っていたのは、宿で働いていた女だった。
 
 

おねえさん「おかしいなぁ。なんで来ちゃったのかしら?」

おねえさん「ねぇー」
 
ラティオス「」ギンッ
 
女「」タジッ
 
女「……ハンターの居場所を通報して、時間稼ぎをしたかったのは、ほかならぬあなただったんですね」キッ
 
女「警察とハンターがすったもんだしてるうちに、ことを済ませようとした」
 
おねえさん「はぁい。せいかーい」スッ
 ▼ 180 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/15 17:34:30 ID:WqZ3P8xk [2/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ジュンサー「……宝石?」
 
女「こころのしずく=c…ッ」
 

 
───以前ここに来たとき、庭を散策した彼女は、それを見つけていた。
 
水がたたえられた深い杯の中、細身の陶器にはめこまれるようにして、宝石は鎮座していた。
 
あの気ままなラティアスが、神妙な表情で見つめていたこともあり、直感的にただの宝石ではない、と察して、その時はそれ以上近付かなかった。
 
だが、その事はどうしても気になってしまっていて、病院にいたとき訪ねてきた庭園の管理人を名乗るボンゴレ氏に、彼女は思わず訊ねてしまっていた。
 
あれはいったい何なのか。
 
 
 
ボンゴレ『あれは元々、はるか昔に、我らの先祖が守り神から授かったもの』
 
ボンゴレ『その内に、大きな力を秘めている。使い方を誤れば身を滅ぼす、非常に強大な力を』
 
ボンゴレ『我々一族は、先祖代々守り続けてきたが、数年前に、こころのしずくは失われてしまった』
 
ボンゴレ『今あるこころのしずくは、その時に起きた災いからアルトマーレを守り、命を散らしたとあるラティオスに授かったものだ』
 
ボンゴレ『その成り立ちゆえに、今は我々一族だけでなく、あらゆるラティオス、ラティアスが、大事に守っている』
 
ボンゴレ『以来、庭には守り神を伴っていなければ人間は入れなくなったほどだ』
 
 
 
───セキュリティレベルが上がった、という話だったが、まさか。
 
侵入者がそれをクリアしているとは。
 
しかも、こころのしずくをもう手に入れてしまっている。
 
しかし、それをさておいて何よりも、気になっていたことがあった。
 
 
 
女「私たちを、ドローンで監視していましたね」
 
おねえさん「ええ。時々ね?」
 
女「……あの人≠ヘ、今作っているものは完成までもう少しかかるって言っていました」

女「でも、私を監視していたドローンは、間違いなくあの人のものでした」
 
女「あなたが使っていたドローンは」
 
女「紛失した完成品=v
 
女「なくしたんじゃない……あなたが盗んだんだ」キッ
 
おねえさん「まぁ……そんなことまで気付いちゃったのねぇ」
 
女「ハンターをダシにしての時間稼ぎをかんがみるに、半年間の潜伏で手を回していたのは、それだけじゃない」
 ▼ 181 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/15 17:36:49 ID:WqZ3P8xk [3/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女「ハンターの潜伏先や移動手段、ストーキングの方法も、あなたは全部把握してたんじゃないですか?」
 
おねえさん「……」ニコニコ

女(この沈黙は肯定だ)
 
女「どうして、こんなことを?」
 
女「宿屋さんの信頼も、あの人の思いも踏みにじるようなことをして、ラティアスや警察の人を危険な目に遭わせて」
 
女「そこまでして、こころのしずくが欲しかったんですか?」

おねえさん「えぇ、そうよ」
 
女「」アゼン
 
おねえさん「そのためにぃ、アルトマーレくんだりに来たんだもの」
 
おねえさん「今更、そんなことでやめられるわけないでしょう?」
 
女「そんなこと=c…ッ?」ギリッ
 
女「あなたは知ってたはずだ」
 
女「あの人たちの思いも、それがどれだけ深いかも……ッ」

女「そんな大事な思いを踏みにじるようなことをして……なんとも思わないんですかッ?」
 
おねえさん「別にぃ?」
 
おねえさん「だって、私にとってはあたりまえのことだもの」
 
おねえさん「差し出される善意も、捧げられる好意も、私にとっては当然のものだもの」
 
おねえさん「富豪の娘が引き出しを開けたら、お金が入っているようなものよ」
 
おねえさん「使い減りしないお金なら、使えるだけ使うでしょう?」 
 
女「自制心はないんですか?」
 
おねえさん「自制心はあるわ」
 
おねえさん「利かせる必要がないだけ。無くて困ったことぉ、ないんですもの」フフッ
 
女「!!」プッツーン

女「……あなたがそうやって、おやつ感覚で他人の思いを食い物にしているのは、よくわかりました」
 
おねえさん「」フーム
 
女「なんでこんなことをしているのかなんて知らない」
 
女「知ったことじゃない」
  
女「あなたの自分勝手で、色んな人が、負う必要のない傷を負った」

女「その人たちの前に、あなたを引きずり出す」キッ
 
女「まず、こころのしずくを、返してもらう」
 ▼ 182 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/15 17:38:08 ID:WqZ3P8xk [4/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
おねえさん「はぁい、どーぞ」ホイッ
 
ラティオス「」パシッ
 
女「!?」
 
ラティオス「フオォォン……」ミチッ
 
おねえさん「悪いけど、あなた達につきあってるほど、ひまじゃないのよねぇ」
 
女「!!」ポポポポポポン!
 
ジュンサー「ガラガラ!」ポン!
 
ラティアス「ひゅあぁん!」キッ
 
おねえさん「まぁ、壮観ですねぇ」
 
おねえさん「でも、この子はとーっても強いのよ?」
 
おねえさん「そしてぇ、こころのしずくも手に入れた」
 
女「!」
 
女(こころのしずくは、強大な力を秘めている=c…!)
 
おねえさん「ラティオスの中でも、この子はキワモノよ」
 
おねえさん「強さだけを追求し続けて、勝利に渇望し続けて、闘争の中に身を置き続けた」
 
おねえさん「そしてこの子は今ぁ……無敵」ウットリ
 
ラティオス「!」ゴオッ
 
ジュンサー「ガラガラ!」
 

 
───ざわり、と背筋の凍るような風が駆け抜けた、と思った瞬間、ジュンサーの金切り声が聞こえた。
 
そして、膝を折るガラガラの姿が目に入った。
 

 
女「ムクホーク!」バッ
 
ムクホーク「ケーーーンッ!!!」バサッ
 
女(何≠されたのか、まったくわからなかった!)
 
女「コータス、あくび! ラプラス、れいとうビーム!」
 
コータス「ふわぁ…」
 
ラプラス「らぁぷ、らっ!!」キィィインッ
 
ラティオス「ーッ!」ゴォォッ
 
女(かすりもしない!)
 ▼ 183 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/15 17:39:14 ID:WqZ3P8xk [5/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
おねえさん「受けてあげるわけないじゃない、そんなもの」フフッ
 
女「コータス、ラプラス、引き続き狙って!」
 
女(ムクホークは……)
 

 
ムクホーク「───ッ」ビュオオオオ 

ラティオス「」ゴォォッ
 
ラティオス「」フッ
 
ラティオス「!」ボッ
 

 
───ムクホークは懸命に追いすがるが、ラティオスはさらに加速。
 
みるみる離されていく。
 


ジュンサー「雲を───引いてる」
 

 
ムクホーク「」キッ
 
ムクホーク「!!」バォッ
 
ラティオス「」ニイッ
 
 
 
女「ムクホーク! ダメ!」
 

 
───ブレイブバードをまとい、スピードを高めたムクホークを見た瞬間、ラティオスは反転。
 
恐ろしいブレーキングを見せながら両腕にオーラをまとう。
 
 
 
女「ドラゴンクロー──」
 
 
 
───すさまじい相対速度に乗せて、ラティオスはムクホークを撃ち据えた。
 
 
 
女「ムクホーク!!」
 
 
 
ムクホーク「───」
 ▼ 184 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/15 17:41:00 ID:WqZ3P8xk [6/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ラティアス「!!」ヒュゥッ
 
 
ばさり。
 
 
───きりもみしながら落ちてくるムクホークをキャッチしたのは、ラティアスだった。
 
 

女「」ホッ

ジュンサー「来るわよ!!」
 
女「ラティアス、りゅうのいぶきお願い!」
 

ラティアス「ひゅああああ───」ボボボボボ
 
ラティオス「」チッ
 
ラティオス「」アトズサリ
 
女「コータス、ストーンエッジ! ラプラス、れいとうビーム!」
 
ラティオス「ーッ!」スカッ、スカッ
 
 
ラティアス「」フワリ
 
ムクホーク「ぴぃ……ぴるる……」
 
ラティアス「ひゅうあん」コクン
 
女「ムクホーク、よかった……」
 
女(ハンターとのバトルで、ムクホークには遊撃手をやってもらっていた)
 
女(その分、スリップダメージも技の反動も多かった。みんなと比べ物にならないくらいに消耗してる)
 
女「休んでて」ダキッ
 
ムクホーク「……ぴぃ」
 

コータス「こぉっ」ガキンッ
 
ラティアス「」ボボボボボ
 
ラプラス「ぷらぁああッ」ビィィィィ
 
女(速い上に位置も高いから当たらない)

女(そして、こちらの間隙にそのスピードで接近、すれ違いざまにドラゴンクロー)
 
女(速さが乗ってるぶん、重い)
 
コータス「……っぐ」ギギギギッ

女「コータス!?」
 ▼ 185 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/15 17:42:06 ID:WqZ3P8xk [7/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
コータス「〜……!」ブンブンッ
 
コータス「こぉ」キッ
 
女「攻撃されたの!?」
 
女(そうか、エスパータイプ)
 
女(余裕を与えたら、距離があってもサイコキネシスで攻撃してくる)
 
女(それも重い。こころのしずくの力か……)
 
女(足を止めつつ、距離も詰めるなんて、私の手持ちじゃ誰もできない)
 
女「ドリュウズ、穴! 掘れる限り掘って!」
 
女「ラティアス。りゅうのいぶき続けて! ラティオス、結構イヤそうにしてる」
 
ジュンサー(あのラティオスと、なんとか渡り合っている)
 
ジュンサー(ハンターとのバトルといい、大したプレイメーカーだわ)
 
ガラガラ「ガゥラッ……」
 
ジュンサー「待ちなさい。もう少し、もう少しよ」ボソッ
 
ジュンサー(それにしても、あの女)
 
ジュンサー(ラティオスだけ戦わせて、自分は指示もなにもしていない)
 
ジュンサー(不気味ね……)


 
ラティオス「」キッ
 
ラプラス「くぅん……っ」ギギギギッ
 
ラティアス「ひゅあぁん!」ボボボボ
 
ラティオス「」バッ
 
ラティオス「しゅ、わーん!!」ギュンッ
 
 
女「なんで……」
 
女「なんで……!」
 
 
ラティオス「!!!」ニィッ
 
 
女「楽しそうにしてるんだ……ッ?」

女「」ハッ
 
女(学芸員のお兄さんが言ってた、危険な守り神のうわさ……!)
 
女(このラティオスのこと!?)
 ▼ 186 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/15 17:43:06 ID:WqZ3P8xk [8/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ドリュウズ「リュウズ!」ボコン
 
女(終わった!)
 
女「ありがとう」
 
女「」チラッ
 
コータス「」チラッ
 
オノノクス「」コクン



ラティオス「!!」ゴオッ
 

女「来た!」
 
女「コータス!」
 
ドリュウズ「どりゅっりゅっ……」オタオタ
 
コータス「〜…!!」プクゥゥ
 
女「だいもんじ!!」
 
コータス「こおおおおおお!!」 ボオオオオオオオ!!
 
 

ラティオス「!?」
 
 
 
───コータスが足元に向かって業火を吐いた、と思った直後。
 
シザリガーめがけ飛来していたラティオスの周囲の足元から、無数の火柱が上がった。
 
こうかはいまひとつ、とはいえ、突然のことにたじろぐラティオス。
 
 
 
おねえさん「ドリュウズの掘った穴……かぁ」スッ
 

 
───そして、火柱の向こうから顔を出したのは、オノノクスだった。
 
両手は手刀で、上段と中段にかまえている。
 

 
女(誘い込み、成功───から)
 
女「ダブルチョップ!───」
 
オノノクス「バオォン!!」
 
おねえさん「ふいうち」
 ▼ 187 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/15 17:45:06 ID:WqZ3P8xk [9/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
レパルダス「みゃあ、んっ!!」ガッ
 
オノノクス「ォオン!?」グラッ
 


───いつの間に繰り出されていたのか。
 
絶好のタイミング、とラティオスに飛びかかったオノノクスの不意をつき、レパルダスが横っ面を跳ね飛ばしていた。
 
体勢を崩されたオノノクスの二段攻撃は、1発がかするのみとなってしまった。


 
おねえさん「」ニィ
 
女「りゅうのはどう」
 
 
 
───難を逃れた、と一息ついたラティオスの横っ面を、不意の一撃が襲う。
 
たたらをふみながら、憎々しげに視線をやった先にいたのは、ラティアスだった。
 
 

ジュンサー(良いの入った!)
 
女(私の手持ちじゃ、ひとりでこんなラティオスを相手取れるのなんていない)
 
女(でも、みんなで連携すれば、なんとかできる!)
 
 
ラティオス「ッ…!!!!」ビキビキ
 
 
おねえさん「あーあ、怒らせちゃったぁ」ニヤニヤ

 
ラティオス「しゅっ」アーン

ラティオス「ワァォォォン!!!」ボンッ
 
 
ジュンサー「空に向かって……何か」
 
女「吐き、出した……」
 
 

───発射された光体はしゅるるる、と空を昇っていき。
 
花火のように弾けた。
 
 
 
女「りゅう……せいぐん!!!」ハッ
 
女「みんな! 逃げて───」
 ▼ 188 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/15 17:50:04 ID:WqZ3P8xk [10/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
どどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどζどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどとどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどぞどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどど!!!!!!!!!
 ▼ 189 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/15 17:51:21 ID:WqZ3P8xk [11/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
───りゅうせいぐんが降り注ぐ直前、彼女は何者かに掴まれ、後ろに引き倒された。
 
ころぶ、と衝撃を覚悟したが、彼女は思っていたよりもすべるように落下して、見覚えのない暗所で止まった。
 

 
女「熱ちっ……アチチチ」ワタワタ
 
女(ドリュウズの掘った穴……じゃあっ)
 
ドリュウズ「りゅう」
 
ラティアス「ひゅぅん……」
 
女「みんなは!?」
 
ドリュウズ「」フリフリ
 
 
 
───ムクホークは、穴に引き込まれる前から抱きかかえていた。
 
じっとしてくれている。
  
 
 
女「私と、君たちだけ……」
 
ドドドドド………
 
女(今まさに、りゅうせいぐんが降り注いでるのか)
 
女(みんな、どうか……私たちと同じように、逃げ延びていて)
 

 
────地面越しに伝わってくる断続的な衝撃。
 
みんなが逃げおおせている、と信じたい。
 
しかし、コータスやラプラスは機敏には動けない。
 
ジュンサーさんとガラガラも無事だろうか。
 
それを思うと気が気でなく、はやく、はやく終わってくれ、とじれったくてたまらなかった。
 
そのせいもあってか、りゅうせいぐんは永遠に続くかのように思われたが、実際の時間は10秒にも満たなかっただろう。
 
しかしそんなことを気に留めている余裕はなく、音が止むやいなや、彼女とドリュウズたちは穴を飛び出していた。
 
飛び出す、というよりは、這うように上がる、といった風合いになってしまったが。
 
 
 
女(こんの、ぐずな体ッ)
 
女「………出たっ」ガバッ
 
女「───」
 ▼ 190 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/15 17:52:32 ID:WqZ3P8xk [12/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
───周囲の様子を、と顔をあげて、彼女は絶句した。
 
目の前に、ラプラスが力なく横たわっていたからだ。
 

 
女「………ごめん」シュポン
 
女「 みんなは……」
 

 
───全員の状態確認は間もなく完了することとなる。
 
ジュンサーとガラガラが穴から顔を出し。
 
シザリガーも別の穴から顔を出し。
 
オノノクスは穴に入れなかったのか、地上で回避に専念していたようだ───満身創痍の体だが、なんとか立っている。
 
 
 

 
女「コータス───」
 
 
 
───きっと、動くことができなかったのだろう。
 
全身にりゅうせいぐんの衝撃を受けた痕跡があった。
 
立つのもやっとな状態で、しかし、か
のポケモンを見据えていた。
 
こころのしずく持つ、ラティオスを。
 
 
 
コータス「効いたよ……少しだけ、ねぇ……」ボソリ
 
女「負け惜しみ言ってる場合じゃないでしょ!!」
 

 
───ツッコミを入れて即、状況整理。
 
まだ戦闘可能なのはドリュウズとシザリガー、ラティアスだ。
 
コータスは言うまでもなく、オノノクス、ムクホークもせいぜいがあと一回殴りかかるのが関の山だろう。
 
ジュンサーとガラガラは何かを狙っている様子だが、なにせ手痛い初撃をもらってしまっている。
 
戦力に組み込んで考えるのは、やめておいた方がいいだろう。
 


女(タイプ相性的にも、シザリガーとドリュウズが対ラティオスの主軸になるのが現実的なライン……だけど)
 
女(ラティオスは飛行能力と機動性を生かしてヒット&アウェイで立ち回れる)
 ▼ 191 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/15 17:54:36 ID:WqZ3P8xk [13/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女(レパルダスも無視できない)
 
女「!」ハッ
 
女(いくらか機動力を確保できるシザリガーをラティアスと共同でラティオスに)
 
女(ドリュウズにはレパルダスを……いや)
 
女(機動力を確保できるからこそ、シザリガーにはレパルダスを……しかし、ドリュウズじゃ、ラティオスへの有効打がつのドリルの牽制くらいしか……)
 
女「………足り、ないッ」グッ
 
女(あとひとつ。あとひとつだけでいいんだ……何か、何か、何か……ッ!)
 
女(何か、もうひと押しになるものが、あれば───)
 
 
 
───あるよ。
 
 
 
女「!」
 
女「」クルッ
 
ラティアス「」
 
ラティアス「ひゅあぁん」コクン
 
女「………あるよ。やろう=H」
 
女「───そう、か」
 
 
 
───今、ラティアスとの間に感じている奇妙なつながり。
 
なぜ、ハンターの潜伏先3つの候補の中からひとつ、あの舟屋が本丸だ、と確信していたのか。
 
ここにラティアスがいる≠ニわかった理由。
 
きっと、そういうことだったのだ。
 
以前、プラターヌ博士からおみやげ代わりにもらったあの石。
 
自分には不要なものだと思ってその石をラティアスにあげたのは、実のところ、無意味ではなかった。

その行為は必要なことだったのだ。
 
コータスにお財布事情が絡んでいないみたい≠ニ言われた運命感はきっと、間違いではなかった。
 

 
女「そうだね。やろう、ラティアス」スッ
 
ラティアス「ひゅあああん!」キラーン
 
女「」バチバチバチッ
 ▼ 192 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/15 17:57:54 ID:WqZ3P8xk [14/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
おねえさん「!!」
 
おねえさん「させるわけないでしょう」
 
ラティオス「!!!」ゴォオッ
 
 
 
ジュンサー「今よ!!」
 
ガラガラ「ガッゥラァ!!」ブンッ
 
 
ガラガラは ふといホネをなげつけた!!
 
 
ラティオス「!!??!!」ガツンッ
 
ラティオス「しゅ、うぅ───」クラッ
 

 
おねえさん「レパルダス!」
 
レパルダス「ニャァオッ!」
 
ドリュウズ「ドッ、リュウズ!!」ズドン
 
レパルダス「ニ゙ャ゙オ゙ッ゙」ガツン

おねえさん「ッ、ラティオス!」
 
 
 
 
 
 
女「メガシンカ」
 
 

ラティアス「───」バォォォォン!!
 

 
Mラティアス「ヒュオォーーン!!」
 
 
 
ラティオス「シュオーッ!」
 
ジュンサー(ラティアスが、メガシンカした……)
 
 
 
女「ありがとう」
 

 
女「ラティアス───ラティオスをお願い」
 ▼ 193 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/15 18:00:01 ID:WqZ3P8xk [15/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
Mラティアス「ひゅおおん!」ボボボボボ
 
ラティオス「!!」ボオッ
 

 
───ラティアスの放ったりゅうのいぶきを紙一重でかわし、ドラゴンクローで斬りかかるラティオスだったが。
 
ラティアスは回避行動をとったラティオスに対応し、りゅうのいぶきの射線を変更。
 
回避の動きそのままにりゅうのいぶきに煽られ、ラティオスは押し戻されることになった。
 
 
 
ラティオス「しゅおお……ッ!」
 
ラティオス「おおおん!!」ドォォオ
 
 
 
───苦々しい表情でラティアスをにらみつけ、りゅうのはどうを放つラティオス。
 

 
女「りゅうのはどう」
 
Mラティアス「ひゅおおん!」ドォォォォ
 
 
 
───相撃つりゅうのはどうはぶつかりあい、意外にも、そのまま拮抗状態となった。
 
 
 
女(そうか、りゅうせいぐんの反動で、ラティオスは消耗してる)

 
 
───それに気づいて思い返してみれば、火柱への誘い込みや、れいとうビームやストーンエッジ、デバフ狙いのあくびといった弾幕の回避と、ラティオスにとってこの戦闘での緊張感はただならぬものだったはずだ。
 
スリップダメージも負っているだろうし、先ほどガラガラのなげつける≠ナ痛烈な一撃ももらってしまっている。
 
こころのしずくの火力補填があるとはいえ多勢に無勢、長期戦になればなるほど苦しくなるのはあちらの方だ。
 

 
 
女(おねえさんだって、一刻もはやく私たちを追い払って、この場を去りたいはず)

女(想定以上に私たちが食い下がっていることが、あちらにとって苦しいのなら)
 
女(やっぱり、今がチャンスだ)
 
女(ラティアスひとりでラティオスの対応は追い付く……それならば)
 
女「シザリガー、ドリュウズと一緒に、レパルダスを相手して」
 
女「ラティアスに近づけさせないで」

女「ラティオスは、ラティアスだけでじゅうぶん」
 ▼ 194 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/15 18:01:43 ID:WqZ3P8xk [16/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ラティオス「」プッツーン
 
ラティオス「しゅおぉぉおおん!!」
 

 
───この俺を、そいつひとりでじゅうぶん、だと?
 
雄叫びを上げ、りゅうせいぐんの構えを取るラティオスの姿に、その激情が見えた気がした。
 
こんなにもあっさりと乗ってくれるのなら、声を大にして挑発した意味もあったというものだ。
 
 
 
女「りゅうの───」
 
Mラティアス「ひゅおん!」ボボボボボ
 
 
 
───いぶき。
 
隙だらけになっていたラティオスはもろにそれを浴びて、しびれた。
 
しびれて、体が動きにくくなった。
 
それでも、意地で動いたか、ラティオスはその体勢を維持。
 
ただ眼前の敵───ラティアスだけに向けて、もてうる限りの全力で、りゅうせいぐんを放った。
 
 
 
女「りゅうの───」
 
Mラティアス「ひゅおおおおおん!!」ドォォォォオオオオ!!
 
 
 
───自分だけに向けられたりゅうせいぐんに対し、りゅうのはどうで迎え撃つラティアス。
 
辛うじて拮抗するもしかし、ぼろり、ぼろり、と、りゅうのはどうは勢いを殺され、少しずつ押し負けていく。
 

 
ラティオス「!!」ニィッ
 
Mラティアス「〜…ッ」
 
女「───強い」
 
 
 
───こんなに消耗して、麻痺で身体中言うことを聞かないはずなのに、それでもなお、これほどの大技で、こちらを圧倒してくるとは。
 
あの女が語った、ラティオスの強さへの執着≠ェ見せたきらめきは、どこか壮麗ですらあった。
 
ラティアスが押し負ける。
 ▼ 195 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/15 18:03:06 ID:WqZ3P8xk [17/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女「ラティアスだけじゃ───やっぱり、あなたには勝てない」
 
 
 
───悔しいが、悔しくてたまらないが、メガシンカしたところで、対応はできても超越することはできない。
 
ラティアスはそもそもバトルをするようなタイプではないからだ。
 
メガシンカの力がどれほどのものかはわからないが、実戦経験の差を完全に埋められるほど、虫のいいものではあるまい。
 
自分が掴んだ運命の巡り合わせ、その奇跡はここまでだ。
 
ここまで、つないでくれた。
 
 
 
女「勝った、と思ったその瞬間が最大の隙」
 

 
オノノクス「バォオオオン!!」バッ
 
ラティオス「!?」ギョッ
 
女「ダブルチョップ」
 
オノノクス「───!!」ブンッ
 
 
 
しかし オノノクスの こうげきは  はずれた!!
 
 
 
女「な───!!」



ラティオス「ーッ!」キッ
 
オノノクス「ガオッ……オンッ……」ビキッ
 
ラティオス「」ボッ
 

 
───満身創痍のオノノクスは、ダブルチョップを振り抜いたそのまま、動くことができなかった。
 
もう、手足が言うことを聞かないのだ。
 
このダブルチョップは正真正銘、最後の一撃だった。
 
それを、はずしてしまった。
 
ラティアスはりゅうせいぐんで吹き飛ばされ。
 
ドリュウズとシザリガーはレパルダスの牽制に徹している。
 
オノノクスは、ラティオスのドラゴンクローを食らうのを、待つばかりとなってしまった。
 ▼ 196 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/15 18:04:31 ID:WqZ3P8xk [18/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女「オノノクス───」ダッ
 
女「ゔっ」ズテッ

 
 
───足がもつれて、ころんだ。
 
なんで、と思うも足に力が入らない。
 
絶対安静、と言われたにも関わらず病院を抜け出した、そのツケだった。
 
彼女の貧弱な体力の、ほんとうの限界だった。 
 
 
 
女(なんで、こんなっ……こんなことで……!!)
 
女「誰か、オノノクスを───ッ」
 
 
 
ラティオス「ぐぎゅぅっ」メキッ
 
コータス「つ───ッ!」
 

 
───のしかかるようにして、コータスがラティオスに衝突していた。
 

 
女「!?」
 
 
 
ジュンサー(だいもんじを撃った反作用で、自分の体を吹っ飛ばした!)
 
 

コータス「ふんばりきかないからさぁ」
 
コータス「ザリ君の真似しちゃった───」ヘヘッ
 
 

───コータスにぶつかられたラティオスは、身をよじるようにしてコータスを突き落とした。
 
真下の水路めがけて。
 
アルトマーレの街を縫うようにして延びている大小様々な水の通り道。
 
この秘密の庭においても、それは例に漏れず存在していたのだ。 
 
ざぱぁん、と、大きな音を立てて、コータスは水路に落ちた。

じゅう、という音と、コータスが落ちた場所から立ち上る猛烈な水蒸気を見た瞬間、心が凍りついた。
 
あの昇っていくしろいけむりが、彼の命そのもののような気がして。
 ▼ 197 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/15 18:05:34 ID:WqZ3P8xk [19/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女「───────ムクホーク!!」
 
 
 
ばさっ。
 
 
 
女「ッ!!!!」
 
女「ブレイブバード!!」
 

 
ムクホーク「ケーーーーーンッ!!」
 
ラティオス「ーーーーーッ!!!!!!」メキィイイッ
 
 
 
───乾坤一擲。
 
ムクホークの最後の一撃はラティオスに突き刺さり、ラティオスはムクホークに押し付けられるようにして、地に落ちた。
 
コータスの産んだ隙は、ラティオスを打倒するに至った。
 
 
 
女「───シザリガー!!!」
 
女「コータスを!!! 助けてッッッッ!!!!」
 
 

───もはや金切り声に近い叫びを聞くやいなや、シザリガーは水路にアクアジェットで飛び込んでいた。
 
ドリュウズはまだレパルダスと取っ組み合っている。
 
それを確認した瞬間、真っ先に動いたのはジュンサーだった。
 
噴水の縁にたたずんでいた女に駆け寄り、押し倒す。
 

 
ジュンサー「窃盗、および、ポケモンの違法捕獲幇助、および、公務執行妨害の容疑で、逮捕します」
 
おねえさん「……」ハァー
 
おねえさん「……そうよね」ボソリ










ざぱん。
 ▼ 198 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/15 18:06:41 ID:WqZ3P8xk [20/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
シザリガー「ざり……」
 
女「コータス!」

女「コータス! コータス! コータス!!!」ユサユサ
 
女「起きてよ!! ねぇ、コータス、コータス!!」
 
コータス「」
 
女「冷たっ……息は………あ」
 
女(して……ない……?)
 
女「コ、コータス……こんなとき、に、ふふざけるのやめてよ」フルフル
 
女「どうせ、私のこ、こと、おどかそそ、うとしてるん、で、ししょ?」ガタガタ
 
女「ほら、はやく、ポ、ポケモンセンター、いか、なきゃ……」ガサ、ゴソゴソ
 
女「モンスターボール、入っ……て?」カタカタ
 
女「い、今さら、嫌だ、なんて、言わっ、ないよね……?」
 
女「ハイパーボールに入りたい、って、言ったの……コータスじゃん、ほら……」コツン
 
女「入っ……てよ………」
 
 
 
 
「あのさぁ」
 
「僕はぁ、ハイパーボールなら入ってやってもいい≠チて言っただけなんだけどぉ」
 
「※※※※※ちゃんともあろうものが、まさか、忘れたの?」
 
 
オノノクス「!?」
 
シザリガー「!?」

ムクホーク「ッ……」
  
ラティアス「!!」
 
女「」ビクッ
 
女「コータス!?」
 
コータス「」
 
女「……えっ」
 
 
 
女「や、やっぱり、まだ、ちゃんと意識あるんじゃない。もう、ほら……ボール、入ってよ」ワナワナ
 
女「今すぐ、ポケモンセンターに連れていくから……ほら、はやく……ッ」
 ▼ 199 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/15 18:08:16 ID:WqZ3P8xk [21/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「おちつけよ」
 
「あと、もう無理」
 
 
 
女「」
 
 
 
「ひょっとしたら、君は、こうなったのは私のせい、とか考えるかもしんないから、先に言っとくねぇ」
 
「僕がこうなったのは、僕がこうなるような生き方をしたからだ」

女「そんな、こと───」
  
「君は、僕を助ける方を見送って、僕のタスキを掴む方を選んだね」
 
「僕、君がそうするって信じてたよ」
 
女「」ツゥ…

「君は、なりふりかまわないくらいでちょうどいいんだよ」

「君が、僕らのことを大事に思ってるのは、とっくにわかってるしさぁ」
 
「……遅かれ早かれ、僕は逝く予定だった」
 
「それが今日だったってだけだよ」
 
女「……」ポロポロ
 
「僕は、僕のやりたいようにやった」
 
「信じたいものを信じた」
 
「それだけだよ」
 
女「……でもッ、でも……!!」
 
「いひひ……だよなぁ……君は、それでも、って、考えてしまう」
 
「どうにもならなかった、と諦めることが、もうできない」
 
「やったぜ」ヘヘッ
 
女「何、笑ってんの……ッ」
 
ラティアス「……!」ハッ
 
「君たちは、気を抜くとすぅぐ、満足する。今はコレでいい、今はコレがあるから幸せ。ずっとこのままでいい───って」

「ずぅっと、このままでなんていられないし、今あるものはいつか無くなるものなのにさぁ」

「無くなってから気付くんじゃ、遅いのにねぇ」
 
「だからさぁ、君が1歩踏み出したのを見ることができたあとでよかったよ」

「これで、思い残すことなく逝くことができる」
 ▼ 200 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/15 18:09:55 ID:WqZ3P8xk [22/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女「待って……待ってよ、まだ……」
 
「それじゃ、ばいばーい」
 
「止まらないでねぇ」
 
 
 
───声が聞こえなくなると同時に。
 
コータスが消えていた。
 
目の前にいたのに。
 
ぐったりとして、力なく倒れていたはずなのに。
 
影も形もなかった。
 
まるで、最初から何もなかったかのように。
 

 

女「」
 
女「」カチッ
 
女「出てきてよ」カチッ
 
女「出てきて」カチッ
 
女「ボールに入っただけなんでしょ? ねぇ」カチッカチッ
 
女「コータス!!」カチッカチッカチッカチッ…
 
女「笑えないしタチが悪いよ、やめてよ!!」バッ
 
女「ねぇいるんでしょ!? いつもみたいににやにや笑ってるんでしょ!? ねぇコータス! コータス!!」ヨタッ

女「うっ」ズテッ
 
シザリガー「……おき。」スッ

女「………おかしいじゃん」
 
女「おかしいじゃん……なんで、なんで今なの……」
 
女「いつかなら、明日でいいじゃん!」

女「何で今日なの!?」
 
女「もっとあとでいいじゃん……ッ。これからなのにッ。これから……これからが楽しいのにッ!」

女「これからって時だったのに……なのに、コータスがいないんじゃ……」


 
───私は、コータス達と旅して、おいしいもの食べて、ちょっと物珍しいことにでも遭遇できれば充分なんで───

───それが幸せなので───
 ▼ 201 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/15 18:11:26 ID:WqZ3P8xk [23/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女「コータスがいないんじゃ、何をしたって、何に挑んだって……何を得たって……満たされないよ」ボロボロ
 
女「私は……みんなでいるから、幸せだったのに……ッ」
 
女「みんながいるから、頑張っていこうって……決められたのにッ……」グズグズ

オノノクス「オォン」ズッ
 
ムクホーク「ぴぃ」

ドリュウズ「……りゅうず」
 
女「わかってる……」
 
女「動かなきゃいけないのに、立たなきゃいけないのに、止まっちゃいけないのに……でも、ごめん、わからない、こわい」

女「動けないの……そのくせ、これ、止まらない……なんで、なんで……ごめん……助けて」ボタボタ
 
シザリガー「ざり」ヨッコラセ
 

 
ジュンサー「来なさい」
 
おねえさん「」フラッ
 
おねえさん「───あーあ」ボソリ
 
おねえさん「あなたたちのせいで、ぜぇ……んぶ、オシャカになっちゃった」ボソリ
 

 
───女の呟きは、静まり返った庭によく響いて。
 
シザリガーに掬い上げられた彼女の耳にも届いた。
 
 
 
女「───お前が」メラッ
 
ドリュウズ「」ビクッ
 
女「お前がそれを言うな……ッ」
 
女「ぜんぶ知ってて、知ってたくせに誰にも言わないで放っておいたから」

女「そのせいで、みんな、みんな───傷ついて」
 
女「コータスが───ッ」
 
女「自己中心で動いたお前が、自分の失敗を他人のせいにするなッ」
 
女「全部めちゃくちゃにするようなことばかりして、丸く収まるようになんてちっともしなかったくせに」



 
 
おねえさん「……欲しかったんだもの」
 ▼ 202 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/15 18:12:17 ID:WqZ3P8xk [24/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女「すぐに手に入っても、力がなければ奪われる」
 
おねえさん「一方的に奪われないで済むような、力が」
 
おねえさん「ラティオスなら、それを手に入れられるって、思ったんだもの」
 
女「そんなもの……ッ。あなたがもらった温情に比べたら───」
 
おねえさん「すぐに手に入るようなものなんて、いらない」
 
女「!!!!!!!」ブツン
 
女「───」ギリッ

女「───っ」ダラリ
  
女(この人は───救いようがない)
 
女(きっと、どんな風に言葉を尽くしても、情を傾けても、思いやりをわけても、この人は)
 
女(それを当たり前としか思うことができない)
 
女「───かわいそうな人」
 

 
───富豪の娘は金を惜しいとは思わない、と、あの女はそんなことを言っていたか。
 
金を持つものは、その価値が、その重みが、大切さがわからない。
 
実感することができない。
 
満たされている者にはわからぬ価値。
 
悲しいことだったが、目の前の人間はまさにそうだ。
 
他人の思いの尊さが、きっと実感できないのだ。
 
そんな事実を、彼女は苦虫のように噛みしめるばかりだった。
 
そして、一行は帰りゆく。
 
大いなる1歩を踏み出しつつも、取り返しのつかない影を、背中に落として。



 ▼ 203 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/15 18:13:00 ID:WqZ3P8xk [25/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



つづく。
 ▼ 204 ゴラス@バンジのみ 17/12/15 20:07:22 ID:iTVL.7Gs NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
……。
 ▼ 205 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/15 21:38:48 ID:WqZ3P8xk [26/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



───バイトの女は、半年ほど前からアルトマーレで潜伏を開始した。
 
こころのしずくを手に入れるために。
 
ラティオスを連れ立って、一度は秘密の庭に入り込むも、管理者であるボンゴレ氏に接触され、無計画での奪取は断念。
 
そもそも、女と協力関係になるより以前、ラティオスが身ひとつでこころのしずくを持ち出そうとした前科があったところも大きい。
 
彼らは、アルトマーレに来訪した時点で、庭の管理者と他の守り神───ラティアスやラティオスに目をつけられていたのだ。
 
加えて、公にはなっていないが、過去にアルトマーレで起きたラティオスがらみの大事件のこともあり、アルトマーレのおまわりさんたちは、こと守り神に関わる事件への意識が非常に高くなっていた。
 
そんな状況でノコノコこころのしずくを盗みにいけば、管理者と守り神にあっさりとマークされ、警察のお縄につくことになるのは明白だった。
 
だから、機会を待った。
 
入れ替わり立ち替わりでアルトマーレを出入りする守り神たちが一番少なくなるタイミングと。
 
警察が、ほかならぬ守り神の案件に集中し、それ以外が手薄になるタイミングとを。
 
運のいいことに、アルトマーレには守り神の密漁を狙うハンターが潜り込んでいた。
 
ラティオスを使ってハンターの注意を引き滞在を長引かせるとともに、宿の客から手に入れたドローンを使い、彼女は機をうかがった。
 
ラティオスのフラストレーションを、夜中にバトルさせることで騙し騙し発散させつつ、自分は普段、懸命に日々を生きるけなげな若者に徹しつつ。
 
こころのしずくを手に入れる絶好の機会を、待ち続けた。
 
そうして迎えたのが、あの日だったのだ。
 
女とラティオスは行動を起こしたが、しかし。
 
あと1歩のところで及ばず、こころのしずくをその手に収めることは叶わなかった。
 
他ならぬ、利用した少女に、自らの行動を看破されてしまったために。
 

 
ジュンサー「あなたがいなかったら、私たちはあの女の行動に気づくこともできず、悪魔の誕生を許してしまうところだった」
 
ジュンサー「あなたの尽力のおかげで、私たちは大事なものを取りこぼさずにすんだ」
 
ジュンサー「ありがとう」
 
ジュンサー「だから、どうか、自分を責めないで」
 
女「……はい」
 
 
 
───昏倒したラティオスからもぎ取るようにして、ムクホークはこころのしずくを握りしめていた。

それをあの水槽に戻し、最終的にはことなきを得た。
 
そのために、色々なものを代償にして。
 
ムクホーク、オノノクス、ラプラス、シザリガー、ドリュウズの入院と、彼女自身は再入院。
 ▼ 206 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/15 21:41:10 ID:WqZ3P8xk [27/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
病院をぬけ出したことをジュンサーにもジョーイにもこっぴどくしかられた。
 
また、ハンターとの戦いで半壊させた舟屋の土地所有者からは賠償請求が来て。
 
ラティオスとの戦いで地面が穴だらけの焼け野原になった、秘密の庭の補修工費の請求も来た。
 
その被害総額はざっと見積もっても3000万円を下らない、と言われ、彼女は本当に目玉が飛び出そうになった。
 
が、幸い、今回の事件の功労者、ということでそのほとんどが免除。
 
彼女に請求された額は20万円ほどに収まった。
 
ボンゴレ氏も働きかけてくれた結果のことらしい。
 
とはいえギリギリびんぼー生活を送っていた彼女にとって痛手に変わりなく、そういった保険に加入もしていなかったため、結局は借金を背負うこととなってしまった。
 
そしてなにより、コータスを死なせてしまったこと。
 
借金を背負おうが、入院しようが、悪魔に魂を売ろうが、たとえどんな代償を誰に支払ったとしても、それだけはどうしようもなかった。
 
どうしようもない喪失だった。
 
ハンターはレンタルしていたポケモンもろとも厳重に拘束されている。
 
こころのしずくを盗み損なった女は逮捕され、ラティオスも厳戒体勢で監視されている。

こころのしずくも元の場所に安置されている。
  
ラティアスは無事で、今も隣にいる。
 
しかして、懸命に動いて守り抜いたものと、その過程で取りこぼしてしまったものは、果たして釣り合うのか。
 
彼女にはわからなかった。
 
 
 
 
おくさん「たった一日で、いろんなことがあったんだね」

女「……はい」
 
 
 
───再入院した翌日のことだった。
 
宿の夫婦がお見舞いに来た。
 
ふたりは※※※※※とラティアスが無事であったことをまず、なによりも喜んだ。
 
彼女としても、それが嬉しい限りではあったが、気楽に構えてはいられなかった。

なにせ、ふたりの制止をふりきって、事件の渦中に身を投じたのだ。
  
ことのあらましを、ふたりに説明する必要があった。
 
心苦しかったが、コータスのことも、バイトの女性の正体についても、彼女は語った。
 
彼女の件は驚くにとどまるも、コータスの死に関しては、ふたりとも絶句して、安易に言葉を紡げないようだった。

 ▼ 207 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/15 21:42:45 ID:WqZ3P8xk [28/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
だんなさん「───少し、整理してくるから、待っていてほしい」
 
 
 
───話を終えたのち、そう言い残して、一度ふたりは部屋を出ていった。
 
なんとなく、だが。
 
この前電話で話したときのように、自分が打ち明けようとしていることも、うすうす察しているのではないか、という気がする。
 
 
 
女「?」
 
ラティアス「〜……?」
 

 
───ラティアスは今、自分の姿に化けている。
 
そして、不安げな表情でこちらを見やっていた。
 
 
 
女(コータスがいれば……)
 
女(……いや、これくらいわかるだろ)
 
女「心配してくれてるんだね」
 
女「ありがとう。でも、大丈夫」
 
女「ちゃんと言えるから」
 
 
 
───ふたりが戻ってきた。



だんなさん「待たせたね」
 
女「おかえりなさい」
 
おくさん「……あなたは、これからどうしようと思ってるの?」
 
 
 
───単刀直入。
 
ならば自分も、まっすぐ答えねばなるまい。
 
 
 
女「」スゥ
 


女「……私は、旅を続けたいです」
 ▼ 208 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/15 21:44:42 ID:WqZ3P8xk [29/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女「私はようやく、旅をしていることに意味を見いだせるかもしれないって思った」
 
女「だから、旅を続けたいって思っていました」
 
女「でも、少し、変わった」
 
女「……言われたんです」
 
女「止まるな≠チて」
 
女「だから、私は旅を続けなくちゃならない」
 
女「意味を、見つけなければいけないんです」

女「ふたりの子どもになるのが嫌だってわけじゃないんです」
 
女「ただ、私がそうしたい、そうしなければならないっていうだけ」
 
おくさん「……」
 
おくさん「そんな風に言葉にできるほど、あなたはもう割り切れているの?」
 
おくさん「気持ちに、整理をつけられたの?」
 
女「それは……」
 
おくさん「だってあなたは、コータスを失ったばかりなんだよ」
 
おくさん「大切なポケモンだったんでしょう?」
 
おくさん「旅を続けること、反対するつもりなんてないけど……」
 
おくさん「それは、今すぐじゃなきゃだめ?」
 
おくさん「気持ちに整理がつくまで、わたしたちと暮らしたっていいんじゃないかな?」
 
女「〜…ッ!」ギュウッ
 

 
───落ち着くまででもいいから、と。
 
その提言に、溢れんばかりの優しさに、ひどく心を揺さぶられた。

そうしたかった。
 
家族を得て、たったひとときでも、安住の地を得て───
 
止まって、しまいたかった。
 
 
 
女「」ジワ…
 
女「きっと、そうした方が、私は安寧を得られる、のだと、思います」
 
女「気持ちに整理をつけて、歩き出すことができる」

おくさん「だったら!」
 ▼ 209 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/15 21:46:06 ID:WqZ3P8xk [30/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
おくさん「だったら!」
 
女「でも……っ」
 
女「私は、強くないから……ッ」
 
女「弱い人間だから……ッ」
 
女「ふたりと暮らす中に、幸せを見いだして、ふたりのいる世界に、自分の行きたい道を見つけてしまう」
 
女「そちらに歩き出してしまうかもしれない」
 
女「旅に、出られなくなる」
 
だんなさん「……今の君にとって、それは、逃げになってしまうのかい?」

女「はい」
 
女「一度この足を止めてしまったらきっと、私はもう、こちらに戻ってこられない」
 
女「コータスを裏切ることになる」
 
女「それが、嫌なんです……ッ!!」


 
 
おくさん「………そっか」ツゥ…
 
だんなさん「それが、君の覚悟なんだな」
 
女「……はい」キッ
 
だんなさん「……」
 
だんなさん「なら、気のすむまで、好きにすればいい」
 
だんなさん「ぼくらは、それを応援する」
 
女「……え」
 
だんなさん「さーちゃん」
 
おくさん「───うん」グシグシ
 
おくさん「あなたはきっとそう言うだろうなって、思ってた」
 
だんなさん「気のすむまでやって、それでも動けなくなったら、帰ってくるんだよ」
 
女「……私を、待ってくれるんですか」
 
女「ふたりの好意を、裏切るような真似をしてるのに……」
 
だんなさん「当然だろ」

だんなさん「家族なんだから」
 
女「」
 
だんなさん「家族の形なんて、その数だけ個性がある」
 ▼ 210 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/15 21:47:21 ID:WqZ3P8xk [31/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
だんなさん「独身男性と犬1匹とふたご、なんてのもいれば」
 
だんなさん「年に数えるほどしか帰ってこない放蕩息子のいるご家庭だってある」
 
だんなさん「僕たちは血が繋がってなくて、手続きを保留にしてて、かわいい娘を旅に出してる家族」
 
だんなさん「それだけのことさ」ニッ
 

 
おくさん「がんばってね」ニッコリ
 
女「───」ウルッ
 
女「はい……っ」
 
ラティアス「〜…」
 
 
 
 


































 
 
───アルトマーレを立つ日が来た。

別に今日でなければならない理由はないのだが、この辺りで踏ん切りをつけよう、とそう決めていたのだ。
 ▼ 211 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/15 21:49:16 ID:WqZ3P8xk [32/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女「ポケナビも直ったからね」
 

 
───すっかり元通りになったポケナビには、新しい連絡先が増えていた。
 
ふたりの電話番号だ。
 
「何かあったら電話してね」
 
「何もなくても、電話してほしい」
 
と、もらったアドレス。
 
ページを切り替えれば、写真もある。
 
出掛け前、宿のみんなと撮った写真。
 
ギャンブラーとセーラー服のふたり、手を繋いだ照れくさそうなツーショット。
 
宿屋さんの少しくたびれた笑顔の写真。
 
家族3人で、並んで撮った写真。
 
そして、ポケモンたちも交えて撮った集合写真。
 


女(おとなりさんは、バイトさんのところに面会に行っていて、会うことができなかった)
 
女(あの人の思いが、彼女の心に響いたらいいな……)
 
 
 
───少しくらい希望があるのでは、と思ってしまうのだ。
 
自分とラティアスがハンターに襲われた日。
 
水没した自分を助けてくれたのは、恐らく彼女だ。
 
あのとき通りに人通りはなく、あのままだったら、誰に気づかれることもないまま、間違いなく自分は溺死していただろう。
 
しかしどういうわけか、目を覚ましたのは病院のベッドの上だった。
 
考えられるのはひとつ。
 
警察が守り神が連れ去られた事実≠把握していたことからも、あの女が通報していたのは間違いない。
 
おおかた、怪しい男が女の子を川に突き落とし、ラティアスを連れ去った≠ニ通報したのち、間を置いてからハンターの居場所についての通報をしたのだ。
 
そして、あの女からすれば突き落とされた女の子≠フ情報を明かす必要はこれっぽっちもない。
 
どんなに頭を捻っても、それを付け加えたことに、合理性を感じられないのだ。
 
そして、自分が彼女をただの変な人、と思いたかった何よりの理由。
 
それは、彼女が朝の、おとなりさんとのデートから戻ってきたときに浮かべていた笑顔。
 
喜びをこらえられない、という様子のあの笑顔が、演技とは思えないことに、ほかならなかった。
 ▼ 212 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/15 21:51:11 ID:WqZ3P8xk [33/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女(───そういえば、どうして、今までかたくなに写真を撮らなかったんだろう)
 
女(データがかさばるから、と言って、ポケナビでの写真撮影すら渋ってた)
 
女「!」
 
女「」ゴソゴソ
 
女「……あった」
 
 
 
───いつか撮った写真。
 
データではなく、フィルムカメラで撮影し、現像して出してもらったものだ。
 
その時の手持ちみんなと写っている。
 
もちろんそこには、コータスもいて、適当なことを考えてそうな、はたまた何も考えていなさそうな顔をしている。
 
実は、ここからも消えてはいまいか、と不安になって、慌てて探したのだが、そんなことはなかったようで、安心した。

 
 
 
女(撮っておいてよかった)
 
ラティアス「ひゅあぁん?」
 
女「前に撮った写真なんだ」
 
女「……もっと、ちゃんと撮ればよかったな」ポツリ
 


───コータスが消えたことによって起きたイレギュラーがひとつ、あった。
 
他ならぬ、彼自身が入っていたハイパーボール。
 
それがまったく動かなくなったのだ。
 
開くことはおろか、パソコンのどうぐあずかりにも入れられず、投げても転がしてもうんともすんとも言わない。
 
システム上は、彼女のつれているポケモンは5匹と、正しい状態にはなっている。
 
つまるところ、持っていても何の意味もない、ハイパーボール型のストラップと化しているのだ。
 
 
 
女(コータス、わかっててやったのかな)



───たとえ旅路においては邪魔でしかない無用の長物であっても、それを手放すつもりはなかった。
 
もうすっかり、私は強欲なのだ。
 ▼ 213 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/15 21:52:39 ID:WqZ3P8xk [34/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女「」フゥ
 
ラティアス「……」
 

 
───大切そうに写真を手にしている彼女を見て、ラティアスは少し前に交わしたおしゃべりを思い出していた。
 
けんけんぱに夢中になっていた、あの日。
 
コータスとした、おしゃべり。
 
 
 
コータス『ゲームはさておき、運動がちょっとでも絡むとてんでダメなんだから……』ボソッ
 
ラティアス『でも、たのしそうだよ?』
 
コータス『そりゃそうだよぉ』
 
コータス『人間って新しいことに挑むときが一番楽しいもんだからねぇ』
 
コータス『……やっぱあの子もそうなんだな』

ラティアス『なんでそんなこと思うの? まるでそうじゃなかったみたいだね』
 
コータス『まぁねぇ。最近、ようやくマシになってきたんだ』

コータス『だってあの子は当たり前にいるこどもなんだからさぁ』
 
コータス『何するにも無感動じゃ、気持ちわるいよ』

コータス『それに、才能皆無でも練習すりゃ少しはマシになるからねぇ』
 
ラティアス『なかなかそうはならなかったんだ……よかったね』
 
コータス『無用な面倒をいっぱい負った分、より真っ当になってくれるなら万々歳だよ』
 
ラティアス『あなた達、みんな好き合ってるんだね。いいなぁ、しあわせね』フリフリ
 
コータス『……そりゃあね』

 
 
 
女「……ラティアス」
 
ラティアス「?」ハッ
 
女「私たちと一緒に来ない?」
 
ラティアス「」
 
ラティアス「」ニコッ
 
女「?」
 
ラティアス「」スッ
 
女「……あ、メガストーン」
 ▼ 214 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/15 21:54:28 ID:WqZ3P8xk [35/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ラティアス「〜…」ギュ
 
ラティアス「」パク、パク、パク、パク、パク

女「───よ、ろ、こ、ん、で」
 
ラティアス「」ダキッ
 
女「むぎゅう」
 
ラティアス「〜♪」スリスリ
 
女「あははっ」
 
女「ありがとう」ジワ
 
女「これからも、よろしくね」

女(アルトマーレ、こんなに長く居ることになるなんて思わなかったな) 
 
 
 
 
───色々なことがあった。
 
楽しいことも、恥ずかしいことも、嬉しいことも、悲しいことも。
 
自分が出来る限りのことをやったつもりではある。
 
最善を尽くして、真心を尽くして、そうしてここに立っている。
 
だとしても=B
 
納得のいっていないことがある。
 
整理のついていない気持ちがある。
 
もっとうまくやれたのではないか?と、問いかけてくる自分がいる。
 
だから、彼女は進むことにした。
 
止まらないで歩き続けよう、と決めた。
 
大事な恩人が───仲間が、死の間際に言い遺したのだ。
 
止まるな、と。
 
 
 
女(死にゆく者の遺す言葉は呪いにも等しい=j
 
女(でも、呪いだからってかまうもんか)
 
女(他の誰でもない、コータスの言葉なんだから)





 ▼ 215 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/15 21:56:12 ID:WqZ3P8xk [36/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告






 
女「───行こう」
 
ラティアス「〜?」
 
女「」クルッ
 
ラティアス「ひゅあぁん?」
 
女「そうしよっか」
 ▼ 216 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/15 21:57:25 ID:WqZ3P8xk [37/37] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



もう少しだけ続く。
 ▼ 217 ンファン@フラットコール 17/12/15 22:41:26 ID:2bqvXMY2 NGネーム登録 NGID登録 報告
超絶支援
 ▼ 218 ゴーム@ドクZ 17/12/15 23:09:45 ID:y41i4cZ2 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 219 ガギャラドス@つきのいし 17/12/16 05:20:32 ID:XQOfkG7U NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
こんな展開になるとは……。
支援です。
 ▼ 220 ガカメックス@キーのみ 17/12/16 05:59:53 ID:7qtfRXH2 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
おもしろいです( 〃▽〃)

支援です!
 ▼ 221 レキッド@パワーバンド 17/12/24 10:58:53 ID:HrLoetAA NGネーム登録 NGID登録 報告
あげ
 ▼ 222 ギギアル@ネットボール 17/12/31 11:58:13 ID:wyHEFgLQ NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 223 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/31 20:29:08 ID:hfsbgMA6 [1/30] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女「よっ、と」ガチャン
 
女「駐輪無料か」
 
女「でっ───かい建物」ホエェー

 
 
女「」ウィーン
 
女(ドームみたいな建物の中には、人がいーっぱい)
 
ロボット『』ポーン
 
ロボット『ようこそお越しくださいました』
 
ロボット『ここは、ポケモンセンターセントラル』
 
ロボット『これからのポケモンセンターを担っていく新しいジョーイ、ドクターの育成に力を注ぐ場所であるとともに』
 
ロボット『初心者トレーナー用ポケモンの養育、最先端医療研究を行う、ポケモンセンターの総本山』
 
ロボット『ポケモントレーナーの未来、その基盤を支える場所です』
 
ロボット『本日は、どのようなご用件でしょうか』ポン
 
女「見学に来ました」
 
ロボット『』ブブッ
 
ロボット『もう一度、お申し付けください』
 
女「」
 
女「け ん が く し た い で す」
 
ロボット『』ポン
 
ロボット『かしこまりました』
 
ロボット『入館証を発行します』ピピッ
 
ロボット『恐れ入りますが、コントロールパネルの指示にしたがって、必須項目の記入をお願いします』
 
女「」カキカキ
 
ロボット『クリア』
 
ロボット『見学のガイドとなるジョーイ、ドクターを呼び出します』
 
ロボット『なお、お客様のガイドは研修中のジョーイ、ドクターが担当する場合がございます』
 
ロボット『研修項目のひとつであるため、何卒ご理解くださいますよう、お願い申し上げます』
 
ロボット『当該ガイドが到着するまでの待ち時間、今回の見学に当たっての注意事項を説明させていただきます───』
 
 
 
女(オートメーション化が進んでるなぁ……さすがはポケモンセンターの総本山)
 ▼ 224 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/31 20:30:23 ID:hfsbgMA6 [2/30] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女「?」
 
女(ロボットの側頭部にパンフレットが)ペラリ
 
女(見学だけじゃなくて、一般向けに講習会やったり、外部の人も受けられるような講座を開いたりもしてるんだ)
 
女「大学っぽいな」
 
女(御三家譲渡もやってるのか)
 
女(でも、みんなそれ目的でここに来ることはあんまりなさそうだよな)
 

 
───各地方にはそれぞれ名物となっているような博士がいる。
 
トレーナー志望者のほとんどは、縁起を担いでその研究所に行くことが多いのだ。

それにしても。  
 
 

女「お客さんいっぱいだ」
 
女「ん?」
 
 
 
ポッチャマ「」オロオロ
 

 
女「……迷子かな」
 
女「」テクテク
 
女「こんにちは」シャガミコミ
 
ポッチャマ「ポチャ!?」ギョッ
 
女「トレーナーさんと、はぐれちゃったの?」
 
ポッチャマ「ポチャ……」オドオド
 
女「だいじょうぶ、取って食いやしないよ」ニッコリ
 
ポッチャマ「……」ジー
 
女「」ニッコリ
 
ポッチャマ「……」 
 
ポッチャマ「ちゃま」
 
女「うん」
 
女「じゃ、一緒に探してあげるね」
 ▼ 225 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/31 20:32:20 ID:hfsbgMA6 [3/30] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



ジョーイ「お待たせいたしました」

ニューラ「ニュラ、ニューラ」
 
ジョーイ「本日、ガイドをさせていただきます、キリネ、といいます」タドタド
 
キリネ「研修中なので至らない点もあるかと思いますが、今日1日、よろしくお願いします」ペコリ
 
女「はい、よろしくお願いします」ペコリ
 
女「それで早速で申し訳ないんですけど、このポッチャマ、トレーナーとはぐれてしまったみたいで」
 
女「この辺にはいないみたいなんですけど。トレーナーを探すことって、できますか?」
 
キリネ「え」
 
キリネ「えっと、その……申し訳ございません」
 
キリネ「普段だったら、館内アナウンスで呼び出しができるんですけど……」
 
キリネ「今、その設備がメンテナンス中で。」
 
女「あぁ……」
 
女「メンテナンスって、どれくらいかかります?」
 
キリネ「昼までには終わるはずなんですけど……」
 
女「ちなみに、迷子センターは……」
 
キリネ「ありますけど……ちょっと遠いですね」

キリネ「お客様のお手を煩わせるわけにはいきませんし、わたしどもの方で預かりますよ」ス
 
ポッチャマ「ポチャッ!?」ビクッ
 
キリネ「」
 
女(うおーう、きまずーい)
 
女「インフォメーション───あのロボットのところでは?」
 
キリネ「あのロボットは、受付業務担当なので、迷子預かりは……」
 
女「そ、そうですか」
 
女「……ちなみに、ここって、端から端までどれくらいかかるんですか?」

キリネ「全方向エレベーターを使って、5分ほど」

女「………………歩きで?」
 
キリネ「…………3時間ほど」
 
女(広ェ……)ゲンナリ
 ▼ 226 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/31 20:34:57 ID:hfsbgMA6 [4/30] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
キリネ「……?」
 
キリネ「????????」
 
 
 
女「アナウンスの予約とかって、できますか?」
 
キリネ「えっ、あ、はい!」
 
キリネ「予約……というか、メンテナンスが終わったらしてもらう、という感じでしたら、たぶん」
 
キリネ「内線してみますね」
 
 
 
女(ポッチャマのトレーナーはエントランスにはいそうにない)

女(1ヶ所でじっとしてるよりはまだ、アナウンスの時間まで連れて歩き回った方が、会える可能性高そうだな)
 
キリネ「お待たせしました」
 
キリネ「終わり次第アナウンスを、ということで、話が通りました」
 
キリネ「それまでは、その……」
 
女「はい、大丈夫です」ダキッ
 
ポッチャマ「ぽちゃ?」
 
女「探すついでに見学、でお願いします」

キリネ「」キョトン
 
キリネ「は、はい、わかりました」
 
キリネ「おそれいります」ペコリ
 
キリネ「では、こちらにどうぞ」
 
女「………ん?」
 
女(あれ? そういえばこのジョーイさん、見覚えがあるような………)

キリネ「……………あっ!」クルッ

女「……………あ」

女&キリネ「「あのときの」!!」

ニューラ「……ニュラ?」
 
 

───小綺麗なジョーイの制服と、色々成長したようすで、しばらくまったくわからなかった。
 
いつかの昔に、ポケナビを盗んだ少女だった。
 ▼ 227 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/31 20:36:09 ID:hfsbgMA6 [5/30] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「───見違えたね」
 
キリネ「お、おう、じゃなかった……はい」
 
キリネ「色々、ありましたから」
 
女「タメ口でいいよ。たぶんそんな歳離れてないし」
 
女「素の口調のが、あなたっぽい」ムフ
 
キリネ「は……お、う」
 
キリネ「あんたも……けっこう変わったな。なんか白いし」
 
女「イメチェンした」ハハッ
 
 
 
ムクホーク「ぴぃぴる(ああ、あん時の盗人どもか)」 
 
ムクホーク「ぴぴるるぴ(ずいぶん変わったじゃねえか、お前ら)」

ムクホーク「……ぴぃ(お前もマシなツラになってんな)」

ニューラ「ニューラ(そうか? 自分じゃわからん)」
 
ニューラ「にゅ(お前のトレーナーも、ずいぶん派手にイメチェンしたな)」
 
ニューラ「にゅう……(もっと暗い感じだったがよ)」

ムクホーク「ぴぃー(形から入るタイプなんだよ。あいつは)」
 


キリネ「……こういうこと、よくあるのか?」
 
女「こういうこと=H」
 
女「どこかであった人と、また会うとか?」
 
キリネ「そうそう」
 
女「いや───初めてだなぁ」
 
キリネ「そうか……そっか」
 
女「??」
 
 
 
女「ん、ここは……」
 
キリネ「あ、ああ。こほん」
 
キリネ「こちらの部屋では、研修生たちが講義を受けています」
 
キリネ「専門知識、技術の課程は一通り修了しているんですが、実際に現場で仕事をするにあたってのマナーや心構えを、あらためて勉強しているんです」
 
女「」
 ▼ 228 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/31 20:37:59 ID:hfsbgMA6 [6/30] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
キリネ「お医者さんは接客業ですからね」
 
女「」キョトン
 
キリネ「……単位に関わるんだよ」
 
女「マジメ」フフッ
 
キリネ「〜……//////」
 




 
キリネ「こちらでは、新薬の開発と、既存のおくすりの改良を目的とした研究を行っています」
 
キリネ「ここでは昨日治らなかった病が今日治るようになる───そんな革命が毎日起きているんですよ」
 
女「実用にいたるまでに、どれだけの試験を重ねているのでしょうか」ハーイ
 
女「また、その際の被験者は?」マガオ
 
キリネ「イヤミなマスコミ取材者みたいな聞き方しやがって」ジト
 
キリネ「……こほん」
 
キリネ「基本的に、おくすりの試験が実施されるのは、組成情報や主作用、そして副作用がどれだけの効果と幅───個人差、個体差と言ってもいいです───で現れるか、のカタログスペックを具体的に記したレポートを提出して、それが受理された場合だけです」
 
キリネ「この審査がとても厳正で、完成した試薬の70%はここでふるい落とされてしまいます」
 
キリネ「そうやってなんとか受理された試薬の治験は、人間用であれば協力者の募集をして」
 
キリネ「ポケモンであれば、対象の病気を発症している個体を確保した場合はそのポケモンに投与して経過を観察する、という運びです」
 
キリネ「親のいるポケモンの場合は、書類審査の段階で提出したものと同じ内容を、ポケモンの親に説明して、許可がもらえた場合のみ治験を行います」
 
キリネ「保護した野生ポケモンでも決して短絡的に試験を行ったりはしません」
 
キリネ「やはり、健康被害などのリスクがあるものですから、開発も試用も、慎重に、慎重に進めています」ニコ

女「ポケモン愛護団体から抗議が来たりすることはないのですか?」ツーン
 
キリネ(そのスタンス続けるのかよ)
 
キリネ「無視してます。彼らの主張はこちらの踏んでる過程を無視してますし。相手するだけ不毛なんで」
 
女「つよーい」
 
ポッチャマ「ちゃぁ〜♪」ハムハム
 
キリネ「……何食わせてんの」
 
女「フリーズドライのパパイヤ」
 
キリネ「お、おう」
 
キリネ「……あ、そうだこれ」ゴソゴソ
 
女「ジュース?」
 ▼ 229 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/31 20:40:08 ID:hfsbgMA6 [7/30] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
キリネ「試供品だよ」
 
キリネ「ポケモンと人間とを問わずに飲めるんだ」
 
キリネ「おくすりだけでなく、こういったものも作っています。ご賞味ください≠チて」
 
女「ふーん」チューチュー
 
女「あ、おいしい」
 
 



 
キリネ「こちらのホールは、会員制ではありますが、一般にも開放しています」
 
女(大きい体育館)
 
キリネ「見学に来ていただいたお客様も利用できますよ」
 
女「スポーツはからっきしなんだ……」アハハー
 
キリネ「バトルフィールドもあります」
 
女「おー」
 

 
イケーマタドガス!!
 
ミセテヤルゼ、オクノテ!
 
ドーブル、サイコブースト‼
 
 
 
女「やってるやってる」
 
キリネ「……あたしたちもどうよ?」クイッ

女「」キョトン
 
女「……うん、やろうかな」
 
  

女「」ムー
 
キリネ「何悩んでんだ?」
 
女「あ、うん。だいじょうぶ」
 
女「大したことじゃないよ」

女「……出ておいで」ポン
 
キリネ「おぉー」

キリネ(ムクホークでくるかと思った)
 ▼ 230 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/31 20:41:36 ID:hfsbgMA6 [8/30] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ニューラ「にゅう……」
 
キリネ(こいつもムクホークとやりたかったみたいだし)
 
オノノクス「フー……ッ」
 
キリネ(よく育てられて───ていうか)
 
キリネ(モチベ、普通のバトルのそれじゃないな)
 
キリネ(目ぇ据わってるし)
 
キリネ「こわもてなポケモン好きなのか?」
 
女「わりとね」アハハ
 
キリネ「そんじゃまぁ……」
 
キリネ「やろうか」キリッ
 
女「おうとも」
 
ニューラ「ニュウ!」
 
オノノクス「ォンッ」
 
女「アイアンテール!!」
 
キリネ「こごえるかぜ!」
 
ニューラ「!!」ヒョオオオオ
 
オノノクス「ォンッ…」ビュウウウ
 
女「距離あっても動けるタイプか」ボソッ
 
オノノクス「」ダッダッダッ
 
女「1段」
 
オノノクス「!!」キィィン
 
オノノクス「ノッ……ス!!」ブンッ
 
ニューラ「にゅう!」ヒョイッ
 
キリネ「だましうち」
 
ニューラ「」フッ
 
オノノクス「?」
 
ニューラ「───ニュ!」ゴッ
 
オノノクス「ッ…」キッ
 
オノノクス「オォンッ」ヒュンッ
 
キリネ「こおりのつぶて!!」
 ▼ 231 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/31 20:43:15 ID:hfsbgMA6 [9/30] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ニューラ「」タンッ
 
ニューラ「にゅう、ら!!」バババッ
 
オノノクス「……ッ」ビスッ
 
女「飛び退りながらつぶてとか、器用だね」
 
女「オノノクスが見失うくらい速いし」
 
キリネ「だろ?」ドヤッ
 
ニューラ「」ニィ
 
オノノクス「……」スッ
 
女「ダブルチョップ、構え」
 
オノノクス「ッ」フォンッ
 
女「だましうち警戒しつつ距離詰めて」
 
女「死角からくるよ=v

キリネ「」ニ
 
ニューラ「」フッ
 
オノノクス「」グッ
 
オノノクス「!!」ズンッ
 
ニューラ「にゅら……?」メキッ
 
ニューラ「〜ッ」タジッ
 
女「視線誘導とフェイント、ダッシュの緩急、それらの総合動作で相手の死角に入り込んで、強打を打ち込む」
 
女「オノノクスみたいな体格差がある相手だと、すごくやりやすいでしょ」

キリネ「」
 
キリネ「ウン」
 
オノノクス「」ガシッ
 
ニューラ「!?」
 
女「もう一発が残っております」
 
オノノクス「バオン!」ズガン!!
 
ニューラ「!!!」ドシャッ
 
ニューラ「にゅう!」ゲシッ
 
ニューラ「〜ッ!」タン、ヒュッ
 
女「退くのはやい……」
 ▼ 232 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/31 20:44:46 ID:hfsbgMA6 [10/30] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
オノノクス「」ギンッ
 
ニューラ「」タジッ
 
キリネ(オノノクスの圧が気になりがちだが)チラ
 
女「?」
 
キリネ(相性不利でなお平静でいるこいつも、けっこう不気味なんだよな)
 
キリネ(とはいえ、中距離からつぶてでネチネチやるのも性に合わないから)
 
キリネ「ニューラ、たたみかけるぞ!」
 
ニューラ「にゅあっ!!」ダッ
 
女「ダブルチョップ、かまえて」
 
オノノクス「」フォンッ
 
 
 
ポッチャマ「ぽちゃぁ……」ホワァ
 
 
 
───ダブルチョップをいつでも打ち出せる体勢に入るオノノクスに、ニューラが迫る。
 
だましうちを尽くしてオノノクスに攻撃を叩き込んでいく。
 
背後から、真正面から、と、死角か否かを問わず、手数で攻め立てる。
 
 
 
ニューラ「にゅあ!?」ガツンッ
 
オノノクス「バオンッ」ギッ
 
 
 
───対して、 駆け回るニューラを目で捉えた瞬間、オノノクスは片腕でその身を撃ち据えた。
 
体をくの字に折るニューラ。
 
しかし、そこから持ち直すのが早い。
 
2撃目を食らうよりも早く、オノノクスの間合いから飛び退いた。



女「こごえるかぜ、効いてる」
 

 
───実際、こごえるかぜのせいでオノノクスの動きはいくらか精細さを削がれている節がある。
 
ならば。
 ▼ 233 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/31 20:45:57 ID:hfsbgMA6 [11/30] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
キリネ「ニューラ、もう一回こごえるかぜ!」


 
───ニューラがこれをあまり得意技にしていないのはとっくに割れているだろうが、しかし、主に力を削ぐ方向性で使うには申し分ない。
 
オノノクスの動きがにぶる。


 
キリネ「もっと早くやっときゃよかったな……」 
 
キリネ「行くぞ」
 
ニューラ「にゅう!」ダッ
 
 
 
女「それじゃ、やってみようか」
 
女「アレ=v 
 
  
オノノクス「!!」ボッ
 
キリネ「!?」
 
ニューラ「!!」
 
 
 
───驚きのあまり、ニューラはその足を止めた。
 
トレーナーの掛け声の直後、オノノクスの姿は見るだけで危険だ≠ニ思わされるような異様となっていたのだ。
 
キバ、両腕、そして尻尾が淡い光をまとい、そのシルエットは巨大化していた。
 
まるで、足と胴以外の場所に鎧でも装着したかのようだった。
 
 
 
キリネ「まさかそれ、わざを全部……」
 
オノノクス「───ッ!!───ッ」ギチッ
 
女「───あ」
 
女「ごめん」
 
 
 




 
 
女「降参で」ニガワライ
 
キリネ「は?」
 ▼ 234 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/31 20:48:27 ID:hfsbgMA6 [12/30] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女「動けなくなっちゃったみたい」
 
キリネ「……えぇー」
 

 
 
女「ハサミギロチンと、ダブルチョップ、アイアンテールの同時発動を練習してるんだけど……」
 
女「なかなかうまくいかないね」
 
キリネ「〜……」ムゥ
 
キリネ「正直、形になってるだけでもすごいとは思うけどさ」
 
キリネ「体に悪そうだぞ、アレ」

女「うん、私もそう思う」シュン 
  
キリネ「あんなムチャクチャやるくらいなら大技覚えさせりゃいいじゃん」

キリネ「りゅうせいぐんとか、おぼえられるくらいなついてるだろそいつ」

女「………そう、なんだけど」

女「オノノクスね。前に、盛大に技をはずしちゃったことがあって」

女「その技も、それに所縁があるから避けてるんだけど」

女「その時からしばらく、スランプになっちゃって」
 
女「明けてからずっとこんな感じ」

女「発案はオノノクス、練習指導は私、て感じで、やってみてる」

キリネ「あんなずっと、追い詰められたような感じなのか?」
  
キリネ「張り詰めすぎるのは、危ないだろ」

女「うん」

女「無理を止めなきゃいけないのはわかってる、けど」

女「まだ、この子がやってるのは無茶≠フ範疇だと思うし」

女「がむしゃらにやることが、今はオノノクスに必要なんだと思ってる」
 
キリネ「───ほどほどにしろよ」
 
女「ありがとう」









 ▼ 235 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/31 20:50:10 ID:hfsbgMA6 [13/30] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ポッチャマ「」シュン
 
女(近場の迷子センターに寄ってみたけど、トレーナーはいなかった)
 
女(まったく見つからないまま、こんな時間になっちゃった)
 
女「昼……だけど」
 
女「館内アナウンス、まだ復旧してないみたいだね」
 
キリネ「そう……だな」
 
キリネ「悪い」シュン
 
女「そんな縮こまらないで」
 
女「メンテナンスしてるのはあなたじゃないんだし」
 
女「予定通りいかないなんてよくあることでしょ」
 
キリネ「……あぁ」
 
キリネ「すまねぇ」
 
女(さっきからこんな感じだな)
 
女(落ち込んでいる、というか、焦っている、というか)
 
女(ガイドはちゃんとしてて楽しかったけど)
 
女「お腹すいたね」
 
キリネ「ん、あぁ」
 
女「お昼にしようよ」
 
キリネ「ん、あぁ……っと」ソウダ
 
キリネ「食堂いこうぜ。なんか好きなもんおごってやるよ」
 
女「え?!」
 
女「そんな、悪いよ」
 
キリネ「いいから。おごらせろ」ムスッ
 
女「あ、ありがと」






キリネ「……」
 
女「」モグモグ
 
女?「」ハムハム
 
キリネ「おい、そいつって……」
 ▼ 236 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/31 20:51:27 ID:hfsbgMA6 [14/30] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女?「?」
 
女「私はこっちー」
 
キリネ「うおっ」
 
女「この子、人に化けるのが好きなんだ」
 
女「今日は私の日だね」ハハハ
 
キリネ「」
 
キリネ(ムクホーク、オノノクスに加え、ラプラスドリュウズシザリガー、と、人に化けてる……メタモンとかか?)

キリネ(大所帯なんだな、こいつ)
 
女「でも、ほんとにいいの? みんなの分まるまる出してもらっちゃったけど……」
 
キリネ「いいよ、大したもんじゃない」
 
キリネ「気にすんな」
 
女「う、うん」
 
ポッチャマ「」ホエー
 
ムクホーク「ぴぃるるぴぴ」
 
ポッチャマ「ポチャ?」
 
ムクホーク「ぴぃぴぴるる」
 
ポッチャマ「ぽちゃ……」ホワァ
 
女「なに話してるんだろ」
 
キリネ「そりゃ、お前の手持ちのことだろうよ」
 
キリネ「すげーよな。よくこんなに育てられてるもんだ」
 
女「うん、けっこう奇跡的に育てられてる」ハハッ
 
女「……あなたも、すごいよ」
 
女「ジョーイさんになるのなんて、並大抵の頑張りじゃできないことでしょ?」
 
キリネ「まだ研修生だよ。本物じゃない」
 
女「それでも。あと一歩じゃない」
 
キリネ「あr……いや、誉められるほどのことじゃないんだ」
 
キリネ「あたしひとりじゃ、ここまで来れなかっただろうしな」
 
キリネ「あたしを助けてくれたみんなのおかげなんだよ。こうしてられるのは」
 
キリネ「謙遜なんかじゃない、本当だ」

キリネ「あたしは、本当にろくでなしだったからさ」
 ▼ 237 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/31 20:52:38 ID:hfsbgMA6 [15/30] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女「そんな卑下しないでよ」
 
女「大事なのは昔より今でしょ?」
 
キリネ「そう、だけどさ……」 
 
女(印象も人当たりのよさも、本当に別人みたいだ)
 
女(胸部の破壊力もすごい)ムム…
 
キリネ「……」ウーン
 
女「どうしたの? 箸、止まってるよ」
 
女「そば、のびちゃう……」
 
キリネ「ポケナビを盗んだこと、謝ってなかったよな」
 
女「え……うん、そうだね」
 
キリネ「ごめんなさい」
 
女(しまった、思わず。)
 
女「気にしてないよ、昔のことだし」
 
キリネ「……悪い」
 
キリネ「気にしてるのは、あたしなんだ」
 
女「?」
 
キリネ「少し、説明させてくれないか」
 
女「うん、どうぞ」
 
キリネ「………………」フー…
 
 
キリネ「あんたに助けてもらったあの後」
 
 
キリネ「あんたみたいに旅をしようって思って、あたしは町を出た」
 
 
キリネ「でも、結局まともに続けることもできなくて、流れ着いた街で盗みを続けたんだ」
 
 
キリネ「場所が変わっただけで、あたしはなにも変わらなかった。そのくせ、世の中なんてそんなもんだって、達観したつもりになって世界を見てた」


キリネ「旅は俺に向いてない。肌に合わないことをやろうとしたのが間違いだった≠ニか考えててさ」ハハッ

 
キリネ「そんなあたしを気にかけて引き取ってくれた人達がいたんだ」
 
 
キリネ「奇特なやつらだって、いい根城ができた、都合のいい拠点を手に入れた、くらいにしか思わなかった」
 ▼ 238 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/31 20:54:39 ID:hfsbgMA6 [16/30] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
キリネ「この期に及んであたしはろくでなしだった。スリに加えて、財布から金を抜くとか、ケチな窃盗だとかを何回も繰り返した」

 
キリネ「何回も何回も、私を引き取ってくれた2人を裏切るようなことをした」

 
キリネ「それでも、何回も何回もあの人たちはあたしを叱って、許して、チャンスをくれた」

 
キリネ「根気強い人達だった。しつこいって何度も思った」
 
 
キリネ「うっとうしいって思ってた」
 
 
キリネ「そう思いながら、それなのに、悪いことばっかやってさ」
 
 
キリネ「でも、ちょっとずつ、そういうことができなくなってくんだ」

 
キリネ「あたしが捕まって、2人が迎えにくるたび、2人に顔を合わせられなくなってく」

 
キリネ「そうやって迎えにこられるのが、つらくなってくるんだよ。でも、あの人たちは絶対来るんだ」

 
キリネ「そうやって根気強く、あたしみたいなクズを受け入れて、ひたむきに向き合い続けてくれた」

 
キリネ「嬉しかった」

 
キリネ「嬉しくて、2人の真心に応えられないひねくれた自分が不甲斐なくて、情けなく感じるようになってた」

 
キリネ「生まれてはじめてだった。心のそこから他人に感謝したのは」

 
キリネ「あの人たちのおかげで、あたしは今、いくらかまともな人間になって、ここにいられてるんだ」

 
女「……よかったね」
 
 
女「いい人達に出会えて」


キリネ「でも、元はといえば、それもあんたのおかげだ」

 
キリネ「ポケナビを盗んだあたしを、あんたは助けてくれた」
 
 
キリネ「助ける価値もないクズを見逃して、ケガの治療費を恵んでくれた。思い返せば、助言だってしてくれてた」
 
 
キリネ「月日が経てば経つほど、あたしがこうしていられるのは、あんたのおかげなんだって実感が強くなって、それで……」
 ▼ 239 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/31 20:56:01 ID:hfsbgMA6 [17/30] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
キリネ「あの時、なんで言おうともしなかったんだろうっ……て」

 
キリネ「後悔が……、どんどん強くなっていくんだ」

 
キリネ「あの時のあたしは、あんたにどれだけの恩赦をもらっていたのか、全然わかってなかった」ボロボロ

 
キリネ「あんたが助けてくれたから、あたしは……」

 
 









キリネ「パパとママに出会えた」

 









 
キリネ「あなたに、ずっと言いたかった」






キリネ「ありがとう」

 
 











女「」

女「……そっか」
 ▼ 240 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/31 20:57:51 ID:hfsbgMA6 [18/30] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女「なんだか、安心した」
 
 
 
女?「」ニッコリ
 
女(なにわろてんねん)
 
女「なんて」
 
キリネ「……」ズビ
 
女「ほら、食べよう?」
 
キリネ「ああ……」コクン
 
 
 
───やはりそばは伸びていた。
 

 
キリネ「悪いな、なんかひとりで熱くなっちまって」グシグシ
 
女「いいっていいって。こっちもご飯おごってもらっちゃってるし」
 
女「後味悪かった思い出が払拭されて、いい気分だし?」
 
キリネ「……ありがとな」
 
女「ご両親は、どんな人たちなの?」
 
キリネ「絵本作家とおまわりさん」
 
女(……なんか、おまわりさんは何かと縁があるな)
 
キリネ「世界一の両親だよ」
 
キリネ「あんたは?」
 
キリネ「両親、どうなの?」
 
女「」キョトン
 
女「よく電話するよ。関係は良好です」
 
女「旅してること、すごく心配されるけど、超応援してもらってる」

女「世界一のお父さんとお母さん」

女「たまーに、弟に顔見せに帰ってあげなきゃいけないのがしがらみだけどねー」アハハ
 
キリネ「へぇー。弟さん、いくつ?」
 
女「5つ」
 
キリネ「生意気盛りじゃない?」
 
女「人懐っこいから、全然」
 ▼ 241 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/31 20:59:41 ID:hfsbgMA6 [19/30] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女「生まれたこのかたずっとかわいい」
 
キリネ「うわ、姉バカだ」
 
女「かわいいものはかわいいからしかたないね!」
 
キリネ「そうかよw」
 
キリネ「……そいつはよかった」フフッ
 
キリネ「こほん」
 
キリネ「こちらは、初心者用ポケモンの育成を行っている区画です」
 
女「ヒトカゲ、ヒノアラシ、アチャモ、ヒコザル、チャオブー、フォッコ……ほのおタイプばっかりだね」
 
キリネ「各部署がタイプごとに育てる方が、育て方も近いんで効率いいんだ」スッ
 
キリネ「ここのポケモンは、協調性やパートナーシップを重視して育てられています」

キリネ「初めて自分のポケモンをもらう人が、トレーナーとして自信を持つことができるように。相棒として、友達として、仲間として円滑にやっていけるように育てているんです」

女「?」

女「あのフォッコは?」

女(輪から離れて、黙々とトレーニング?をしてる)

キリネ「あぁ、あいつか」

キリネ「ああやって毎日ひたすらに、技の研鑽を続けてるんだ」

キリネ「協調性に欠ける、といってしまえばそれまでなんだけれど……実はあいつみたいなのは少なくないんだ」

キリネ「こうして、何十匹と一斉に育てていると、必ずああいうタイプの子が出てくる。突出した個性を持つがゆえに、孤立してしまう子はいる」

キリネ「グループからのいじめや迫害があるわけじゃない……必ずしも」
 
キリネ「彼も別に、馴れ合いを嫌っているわけじゃない」

キリネ「ただ、性質がどこかストイックなんだ。純粋な強さを追い求めているような───鋭利で、脆い」

キリネ「ソリの合うトレーナーと出会えることができたら、いいんだけど」

女「難しいよね」

キリネ「……わかるか」

女「駆け出しのトレーナーは、良くも悪くも未熟だからね」

女「あのフォッコみたいなストイックさは、彼らにとって自分の言うことを聞かない、不都合なポケモンとして捉えられてしまうかも」

キリネ「すっげ。ベテランの風格だな」

女「そんな」イヤイヤ

女「7年くらいだもん。まだまだ若輩者だよ」
 ▼ 242 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/31 21:01:53 ID:hfsbgMA6 [20/30] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 

 
ぴん ぽん ぱん ぽーん。
 
 
 
女「お」
 

『本日は、ポケモンセンターセントラルにお越しいただき、まことにありがとうございます』
 
『午前中から実施していた館内アナウンスのメンテナンスが完了しました』
 
『ご用命のありましたお客様には、大変なご迷惑をおかけしましたことを、お詫びさせていただきます』
 
『インフォメーションより、迷子のお知らせです』
 
『カナワタウンからお越しの───』
 

女「けっこうかかりそうだね」
 
キリネ「見学、いいのか?」
 
女「待つよ」ニコ
 
ポッチャマ「ちゃまっ」フンス
 
 
 
 
 
『続きまして、お知らせいたします。係員が、迷子のポッチャマを保護しております』
 
『心当たりのあるお客様は、第4迷子センターにお越しください』
 
 
 
 
女「……まだ来てないのかな」
 
女(というか、放送で係員が、と言っていたけれど)
 
女(ひょっとして、保護した段階で、近場の職員さんに任せてしまった方がよかったのでは)
 
ポッチャマ「ぽちゃま!」
 
ムクホーク「ぴいるる」
 
ポッチャマ「ぽっちゃ!」
 
女「……元気そうだからいっか」ボソッ
 
女?「」コツン
 
女「ん、どうしたの?」


 ▼ 243 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/31 21:02:56 ID:hfsbgMA6 [21/30] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「あ、いたぁ」


「さがしたんだよぉ」

 

女「」クルッ

 









 
コータス「……こぉ?」

 
 
女「コー……タス」

 
 
 



























 
女の子「ポッチャマ!」

ポッチャマ「ぽちゃあ!」ピョン
 ▼ 244 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/31 21:04:18 ID:hfsbgMA6 [22/30] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女の子「よかったぁー。やっと会えたよぉ」ホワホワーン
 
ポッチャマ「ちゃま! ぽっちゃ、ちゃまま!」ウキウキ
 
女の子「なんか、全然元気ねぇー」ホエー
 
女の子「コータス、スッゴい心配してたんだから」
 
コータス「こぉー!」プンスカ
 
 
 









































女「」
 
キリネ「よかったな、見つかって」
 
女「……あ、うん」
 
女「そう、だね」
 ▼ 245 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/31 21:06:40 ID:hfsbgMA6 [23/30] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女の子「ありがとう、ジョーイさん」
 
女の子「ポッチャマ見つけてくれたのねぇ」
 
キリネ「いいえ。わたしはお手伝いですから」ニッコリ
 
女(一瞬で猫被った)
 
キリネ「見つけたのは、こちらのお姉さんなんです」
 
女の子「そうなの?」
 
女「うん」
 
女の子「」ホエー

女の子「おねえちゃん、天使さんみたいだね」

女「」カァー
 
キリネ「ま」
 
女(浮世離れしてると言われたことはある)

女の子「ポッチャマが落ち着いてたのも、おねえちゃんのおかげなんだね」
 
女の子「ありがとう」ニー
 
女「君たちがまた会えたこと、私も嬉しいよ」
 
女の子「」フンス
 
女「」チラ
 
コータス「こっふ?」

女「……コータスのこと、好き?」

女の子「あんまり好きじゃないの」
 
女「あらっ」ズテッ
 
女の子「パパがくれたんだけど、言うこと聞かないし、とってもオラオラだし」

女の子「スッゴく強いんだけど、ほんっと振り回されっぱなし」

女「あははっ」

コータス「こーったす?」
 
女「ふふふっ」
 
女「ひどい言われようだね、君」ボロボロ

女の子「」

キリネ「」

女「……」グシグシ
 ▼ 246 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/31 21:09:25 ID:hfsbgMA6 [24/30] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
女「ポッチャマもそうだけど、コータスも大切にしてあげてね」ニコッ

女「その子もきっと、あなたのことを大切に思ってるよ」
 


───女の子と、少女は、別れた。
 
その後は何事もなく、文字通りトラブルや浮いた出来事もなく、ゆるゆる見学は進行し、つつがなく終わった。
 
 
 
キリネ「以上を持ちまして、ご案内の締めくくりとさせていただきます」
 
キリネ「本日はポケモンセンターセントラルへお越しいただき、まことにありがとうございました」
 
女「」パチパチパチ
 
キリネ「どーも」ニハ
 
女「素敵なガイドさんだった」
 
女「キリネは、きっといいジョーイさんになれるよ」
 
女「猫を被ったままでいられれば。」
 
キリネ「言うな」

女「ふふふ……」
 
女「よし」
 
キリネ「行くのか」
 
女「うん、行く」

女「今日は楽しかった。ありがとう、ジョーイさん」
 
キリネ「……」
 
キリネ「なぁ、教えてくれ」
 
キリネ「あんたは、なんで旅をしてるんだ?」
 
キリネ「どうして、旅を続けてる?」

女「どうして、って」

女「うーん……」
 
女(前にも、こんなこと聞かれたな)

女「……うん」
 


 
 
 ▼ 247 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/31 21:11:00 ID:hfsbgMA6 [25/30] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



「いろいろ理由はあるよ。動機もあるし、目的もある。信念もある。ほかにもたくさん」

「1番なのは、うーん……」
 
「やっぱり旅を続けたいから、かな」
 
「足を止めたくないから、旅をしてる」
 
キリネ「それ、なんか違うのか?」
 
「……同じだね」
 
キリネ「じゃあ、目的は何だよ」
 
「当面の目的としては……次のカロスリーグに挑戦しようと思ってる。ジムのある町を巡ってる」

「私は弱いから」

「強い人間になりたい」
 
「そのために、いろんな人、いろんなポケモンに出会って、見れるかぎりのものを見て、自分の知ってること、持ってるものを増やしたい」

「自分の幅を広げて、引き出しを増やすために、がんばってる」

「いつか、何にでもなれるように、今できることを、したいって思ったことを全部やるつもり」

「人生80年、それだけあれば、なりたいものだって、したいことだって、イヤでも見つかるだろうし」

「私は私の誇れる、私になりたい」

キリネ「……何言ってんのかわかんないけど、欲張りなんだな」フフッ

「うん」
 
キリネ「なぁ、アドレス、教えてくれないか」

「えー」

キリネ「な、なんだよ」

「いいよ」ニコ
 
キリネ「なんなんだよ」クフッ

「」ピポパ
 
「はい、これ」
 
キリネ「さんきゅ」ポチポチ
 
キリネ「カロスリーグ、優勝できたらいいな」
 
女「うん、がんばる」
 
キリネ「そしたらあたしも自慢できるしさ。友達がチャンピオンって」
 
女「調子いーんだ。さすがバッドガール」
 ▼ 248 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/31 21:11:49 ID:hfsbgMA6 [26/30] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
キリネ「やめて」
 
キリネ「いいじゃんかそれくらい」
 
キリネ「……そういえば、名前聞いてなかった」

「あれ、言ってなかったっけ」

「私の名前は───」

 
 

 























 
「よし、と」

「次はどこに行こうかな」
 ▼ 249 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/31 21:12:59 ID:hfsbgMA6 [27/30] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




とある女の子が、目的を持って旅をするようになるまで、という大筋は、これでおしまいです。
 
ここまで起きた、でも語られていない彼女の話や、これからの彼女の話は、またどこかで書くかもしれない、書かないかもしれない。
 
とりあえず、おしまい。
 ▼ 250 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/31 23:52:07 ID:hfsbgMA6 [28/30] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

「」ノソノソ
 
「あら」
 
「ん」
 
「はじめまして」

「……そうだねぇ」
 
「あなたは私のことを知らないだろうけど、私は知っているのよ?」
 
「いいや。僕も知ってるよ」
 
「そうなんだ、なんで?」
 
「僕が君を見たのは、あの子≠フ夢越しだ」
 
「しょっちゅう夢に出てくるんだから、いやでも覚えるよ」
 
「……そっか、あの子≠ヘまだ、私のことを忘れないでいるんだね」
 
「少し嬉しい」
 
「少し申し訳なさそうだねぇ」
 
「……うん」
 
「別に、もう気にすることもないんじゃなぁい?」
 
「あの子はあれで、好きにやってるだろうしぃ」
 
「……察してくれるうえに、慰めてくれるんだ」
 
「ほんと、不思議だね。あなた」
 
「そいつ……」
 
「チチチッ」
 
「うん、ずっと一緒」
 
「……だろうねぇ」
 
「あなた、まだまだ時間はあるでしょ? せっかくだから、もっとお話ししようよ」
 
「いいよぉ」ノソッ

「ていうか、付き添い以外でポケモンがここに来るのは初めて見たの。やっぱりあなたは特別なんだね」
 
「まぁ、だろうねぇ。僕はてっきり、無に落ちると思ったけど」
 
「……地獄じゃなくて?」
 
「うん、どっかに行くんじゃなくてぇ、消えるんだ」
 
「天命を全うできず」
 
「命の管理も仕損じて」
 ▼ 251 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/31 23:53:39 ID:hfsbgMA6 [29/30] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「波風立てながら浮世をさまよったあげく、気まぐれに子どもを助けて、その代償で死んだ」
 
「こんな間抜け、僕だったら消す」
 
「でも、愛らしいよ?」
 
「はぁ?」
 
「守りたいもの、つらぬきたい意思があって、そのために必死にあがいたけど結局果たせず、でも思わぬところで心のよりどころを見つけられて」
 
「案外悪くないやって思いながら死ぬの。……愛すべき隣人って感じじゃない? あなた」
 
「人間と僕を一緒にしないで欲しいなぁ」
 
「でも、あなたの晩年は人情にあふれたものだったわ」
 
「素敵な終生だったように思うなー」
 
「……まぁ、悪くないとは思ってるよ」
 
「僕にわかれを告げにきたあの子が、僕がもう長くないと告げた友達が、不思議と幸せそうだった理由がわかった」

「あんまり認めたくはないけれど僕はきっと、彼女のように、死にたくなっちゃったんだろうねぇ」
 
「」フフッ
 
「君は散々だったみたいだけれど」
 
「まぁね……あんまり思い出したい最期じゃないなぁ」
 
「でも、そんなに思い残すこともないのよ」
 
「ふーん」
 
「なにその興味なさげなカオ」
 
「うすうす予想はつくからさぁ」
 
「だって、あの子がああやって歩いていく姿をここから見てるだけで、なんだかほっとするんだもん」
 
「まぁね」
 
「きっとこれからもあの子はたくさん失敗するだろうし、落ち込むこともたくさんあるだろうけど」

「……でも、今のあの子なら歩き続けてくれる」
 
「それを助けるやつらもいる」
 
「頼もしい仲間がいっぱいだよねー。立ち上がるのに苦労しないよねー!」
 
「いいなぁ」
 
「そうやってなんだかんだ、ポケモン達とぶらり、旅をしながら生きていくの」
 
「そう思うとほら、なんかこう……希望がわいてくるでしょ?」

「……うん」
 
「……」
 ▼ 252 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 17/12/31 23:54:16 ID:hfsbgMA6 [30/30] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 

「がんばれ」

 
そのあと、ずっと、ずっと。
 
かれらは、大好きなあの子をずっと見守っていた。
 ▼ 253 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 18/01/02 17:55:21 ID:Cs4SkTP. NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
最終的な着地のしかたを整理したいのと、意図的に説明をぶん投げていた部分がやはりわかりづらかったかと思ったので、補足と解説をさせていただきます。


まず、時系列を想定して書いていたものについて。「←」がついてるのが、以前並べた時からの追加分。

コータス旅に出る
←コータス巡遊記
主人公卒業
コータスと主人公合流
←ムックルゲット
←ムックルとコータスのいさかい
ラプラスゲット
オノンドゲット
モグリューゲット
ヘイガニゲット

〜パーティーメンバー成熟後〜
ライモンシティ編
シャンデラ編
←ミアレシティ編
←アルトマーレ編
←サイクリングロード
←ポケセンセントラル




1スレ目>>920での主人公が自転車に乗れるようになった話の時系列は、アルトマーレ編の後です。ハイパーボールはコータスの入っていたもの。



キリネが登場するのは、1スレ目>>778の治安の悪い街の話。旅に出たキリネがどんな経緯でどんな場所に居着いたかについては、書きたかったのですがここの流れで語ることではない、と考え、http://pokemonbbs.com/post/read.cgi?no=631648で投稿しました。


キリネが登場する話を投稿した段階で、見違えた元不良少女と再会して、昔あった後味の悪い思い出を更新してすっきりする話≠書こう、と考えていました。

更生してから獲得した夢の1歩手前のところまで来ているキリネに対して、主人公はどのようになっているか、を考えた結果、具体的な目標を掲げているがまだ途上の身、とすることにしました。

時系列的にはアルトマーレ編の後、かつ大筋の終わり部分に置きました。



アルトマーレ編は、いつかやろうと初期からざっくり構想を考えていたストーリーに

登場人物を多めにして物語を展開させる

ここを主人公の一番の転機になる場所とする

伏線を大量にばらまいて全部ここで回収する

という課題を据えて書き出したものです。
 ▼ 254 ャラサブレイーター◆y9k2BHg7Kg 18/01/02 18:02:31 ID:NFLU/Hfg NGネーム登録 NGID登録 報告
コータスがこのような結末を迎えたのは、自分が見守っていたものを守り抜くことができなかった、という過去を、


もう少し人間のことをわかっていればいくらかマシな最期にできたかもしれない


と引きずっているところがある一方で


結局はこうなるものだったのだ


という納得もあるところだったのを、主人公に機会を与えたことで


救いをさしのべた責任を果たす


という目的を得て、それに殉じつつ、かつての彼の友達のように、すっきりと後腐れのない(とコータスが考える)最期を迎えたかったから、(コータスの自分勝手で)こうなることを選んだ、という運びのつもりです。



ラティアスが仲間となるかどうか、家族の獲得については


・仲間とならない、家族になる提案も断るルートであんなに欲しいと焦がれていたのにもう手にすることは叶わない。けれど、今後の自分の鍵になる精神を獲得した。手元に残るものはないかもしれないがなんとしても進む≠ニ、個人的に好きなハード寄りの結末にするか

・仲間となる、家族も得るルートで自分が獲得した精神の証となるものを得て、自分自身を追い込もうとしていたところを温情にも救われた。彼らに支えられながら、その後押しに応えるためになんとしても進む≠ニ、少し救いのある結末にするか


という二択で決めかねていました。

結局、ここまでさんざん恣意的にヒドい目に遭わせたので「いい加減少しは救いを」と後者にしました。



りゅうせいぐんについて。
なつき度を最大にしたドラゴンタイプポケモンだけがおぼえられる技。

トレーナーに最高になついたドラゴンポケモンだけ≠ェおぼえられる技。

ここだけを強調して書いたつもりです。

それをはっきり描写してしまうと、主人公の「だったらいいのに」が、「そうにちがいない」になり、悪役としてあからさまに半端になるな、と思ったので、匂わせる程度にしました。



女≠ニ統一して書いている主人公の本名は、コータスが名付けたものです。



ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
 ▼ 255 人◆ZZ9zuXJ0Gw 18/01/07 00:25:35 ID:qWVmyQ3. NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
更新、お疲れ様です

初めてこの掲示板に訪れた際
とあるミミロップとバシャーモのSSを見つけて以来
あなたの書く文章に魅了された者です

心理描写や細部まで作り込まれた設定、ストーリー
トレーナーとポケモン達の関係や距離感など
全部が大好きでした!

本当に、本当に素敵なお話をありがとう!
あなたの作るお話にまた出会う機会が訪れることを
心待ちにしています。(*,,°^°,,)
 ▼ 256 ルガレオ@カロスエンブレム 18/01/12 01:36:12 ID:SJ5iN0xE NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
完結記念 (*,,>ω<,,)b
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