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【SS】 ガラルリーグ決勝! サトシVSマリィ!! <後編> 【建て直し】

 ▼ 1 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/08/28 01:23:44 ID:F0NkTd3Q NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

ガラルリーグ準決勝では、共に切磋琢磨してきたライバルであり親友であるゴウに勝利したサトシ。

迎えた決勝戦の相手は、マリィであった。

旅の途中で行ったバトルでは、これまでサトシが全勝しており、マリィは相当な特訓を重ね、この決勝戦に挑んでいた。


決勝は6対6のフルバトル。

マリィの的確な指示と状況把握により、序盤、サトシは大苦戦。

しかしサトシも、持ち前のバトルスタイルを発揮し、じわじわと応戦。


マリィはオーロンゲをキョダイマックスさせ一気に勝負を仕掛けるも、サトシはルカリオをダイマックスさせて対抗。

サトシの切り札はキョダイマックスピカチュウだと思い込んでいたマリィは、この進路変更に焦るも、キョダイマックスの力を信じてダイマックスルカリオに挑む。

激闘の末、キョダイマックスオーロンゲとダイマックスルカリオは相打ちとなり、ダイマックスバトルは引き分けと言う結果となった。


これでサトシの手持ちは残すところピカチュウのみとなるが、サトシとピカチュウの息の合ったバトルで詰め寄り、マリィのポケモンを残り1体にまで追い詰めることに成功。


そして今、最後の1体同士、本気のバトルが始まろうとしていた――。


 ▼ 48 ッチラゴン@ちかのかぎ 20/09/05 23:22:08 ID:tDYsEPUk NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
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 ▼ 49 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/09/07 03:15:32 ID:yvMYPWgE [1/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



   *   *   *  





スパイクタウン。

ジムチャレンジも順調に進んでいる私は、アニキへのチャレンジに合わせ、一旦自宅に戻っている。


相変わらずの寂れた田舎、スパイクタウン。

ガラルで唯一ダイマックス出来ないジムの町は、盛り上がりの面で考えれば、アラベスクタウンにも劣ってしまう。

ダイマックスに頼らないバトルを繰り広げるアニキは尊敬するけど、スパイクタウンの現状を考えると、不安は募るばかりだ。



 ネズ 「うたで だれかに エールを だなんて ホントは ムリだよ できないよ」 ブツブツ


アニキはと言うと、今夜のライブの最終調整中。

歌詞を呟きながら、ライブ直前まで声のトーンや歌の緩急を調整してるけど……。


 ネズ 「うたで だれかを しあわせに なんて おれには ムリだよ できないよ」 ブツブツ



 マリィ 「アニキ、今日は随分と調整に時間かけとるね」

 ネズ 「おぉ妹よ。ジムチャレンジ期間中は観客が増えるからね。調整は慎重になりますよ」

 マリィ 「大変ね相変わらず」
 ▼ 50 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/09/07 03:16:15 ID:yvMYPWgE [2/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


 *** 「たのもー!」



 ネズ 「神経をすり減らして調整している時に限って、チャレンジャーが現れる……。この現象に名を付けるとしたら、どんな言葉が相応しいでしょうか」

 マリィ 「そういうのいいから早く出てあげて」


シンガーソングライターって、どうして ことあるごとに洒落たことを言おうとするんだろう。

と言うより、今のチャレンジャーの声って、もしかして……?



 ネズ 「すいませんね。今夜のライブの準備があるので、今日のジムチャレンジは終了してるんですよ」

 サトシ 「そうなんですか」

 ユウリ 「サトシ、明日また来よっ」

 サトシ 「せっかく気合い入れて来たんだけどなぁ」

 ピカチュウ 「ぴぃか〜」

 飯担当 「今日はネズさんのライブを楽しみましょう。たまには休息も必要ですからね」

 ユウリ 「うんうん。逆に、ネズさんのライブの日に当たるって私たちラッキーだよ!」

 ネズ 「えぇえぇ。是非とも見てって下さい。明日のジムチャレンジ、約束しますよ」



 マリィ 「サトシ。いよいよスパイクタウンに来たっとね」



 サトシ 「えっ、マリィ?」

 ユウリ 「マリィちゃん! 久しぶりー会いたかったよー」

 ネズ 「どこかで見覚えがあると思いましたが、昔よく妹と遊んでた……」

 ユウリ 「はい、ユウリです!」

 ネズ 「これはこれは、あのユウリちゃんとはね。別嬪さんに成長しましたね」

 ユウリ 「えへへっ」

 ネズ 「マリィ、オレは会場の準備も確認してきますので、たまには友達同士で遊んどきなさい」


そう言うと、アニキはライブ会場へと歩いて行った。相変わらずの猫背で。


 ▼ 51 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/09/07 03:17:02 ID:yvMYPWgE [3/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



 サトシ 「マリィってネズさんと兄妹だったんだな」

 マリィ 「うん。あんま似てないけどね」

 ユウリ 「マリィちゃん。せっかくなんだから、久しぶりに昔を思い出しながら……」

 マリィ 「だから……、私には構わないでって言ってるじゃん!」

 ユウリ 「……分かった」

 サトシ 「おいマリィ……」

 ユウリ 「じゃあ私と飯担当くんはポケセンの宿泊手続きしてくるから、サトシはマリィちゃんの相手、お願いねっ」 ニヤニヤ

 サトシ 「えっ?」

 マリィ 「はぁっ!?」


 ユウリ 「じゃあ、また後でねー」

 飯担当 「僕たちのことは気にしなくて良いですからねー」



それだけ言うと、ユウリと もう1人の男は、サトシを残して颯爽と去って行った。



 サトシ 「なんだよユウリと飯担当のやつ」



ユウリ、私とサトシを2人きりにするためにワザと……!?

ってことはもしかして……、私がサトシのこと気にしてるの、ユウリにバレてる……!?
 ▼ 52 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/09/07 03:17:50 ID:yvMYPWgE [4/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 エール団1 「あっ……お前は いつぞやマリィ様を助けてくれた!」

 サトシ 「エール団……。そっか、エール団もスパイクタウン出身なんだもんな」

 エール団2 「あの時のことは本当に感謝してる。怪我は大丈夫か?」

 サトシ 「あぁ。もう跡すら残ってないぜ」

 エール団3 「それは良かった」

 エール団4 「サトシ……と言ったよな。マリィ様に会いに来たのか?」

 マリィ 「なっ……」

 エール団1 「おいおい、聞くのは野暮ってものだぜ。こんな田舎に来る理由、他にあるか?」

 エール団2 「しかも、マリィ様と2人きりで居るんだぞ。我らは邪魔だろう」

 エール団3 「こいつぁ失敬。2人の時間を邪魔して悪かったな」

 マリィ 「ちょっ……、アンタら勘違いしとるよ!」

 エール団4 「ではマリィ様、サトシ、お幸せに」

 エール団3 「お嬢の相手がお前なら、俺たちも文句は無いぜ」

 エール団2 「他の連中たちにも伝えないとな。マリィ様の邪魔をするなって」

 エール団1 「あぁ。さっそく手分けして連絡だ」


あぁもぉ、ややこしくなってきた!

エール団の奴ら、いくら私がサトシに助けられたからって、私がサトシのことを……。サトシのことを……///


 マリィ 「っ……! ごめんサトシ、あいつら勝手に……!」

 サトシ 「相変わらず賑やかな奴らだな」


ダメだ、外に居たら、色んな奴らから声をかけられる。サトシとの関係を聞かれることになる。

少なくともエール団ネットワークには、私が男と2人きりだって知られちゃった訳だし……。

かと言って私の部屋に招き入れるとなると、余計に噂が広まりそうだし……。


 マリィ 「っ……! サトシ、騒がしくなりそうだから、ちょいと ついてきて!」

 サトシ 「ん? あぁ……」



部屋に入れることは出来ないけど、まわりの目が届かない場所――。

実は、とっておきの場所がある。

 ▼ 53 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/09/07 03:18:39 ID:yvMYPWgE [5/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



 マリィ 「ここ、頭、気を付けて」

 サトシ 「廃墟ビル……? こんなとこ入って良いのか?」

 マリィ 「うん。私の隠れ家なの」


ここ寂れゆくスパイクタウンは、廃墟ビルが いくつか存在する。

私たちが入ってのは、そのうちの1つで、ジムから一番近いビル。無機質なコンクリ打ちっぱなしの7階建て。

壁にはヒビが走り、1階の窓ガラスは割れ、かつて煌めいていたネオンは くすんでいる。もう10年以上、手が付けられていない。

こういう廃墟は不良の溜まり場といったイメージがあるけど、ジムが近く、アニキの目が届きやすいってこともあり、特にトラブルは起こっていない。



薄暗い階段を登っていく。

目的地は、最上階、7階。その一番奥にある扉を開けると――。



 サトシ 「うおっ、すげぇ……!」

 ピカチュウ 「ぴっかぁ!」


床はグレーのタイル地、壁紙は白。大きな窓に下がるブラインドは黒。木目調のテーブルと本棚。黒い革張りのソファ。

そんなシックな内装に不釣り合いな、ブルーのソファベッド。地デジチューナーが付いた、小さなブラウン管のテレビ。型落ちした冷蔵庫と電子レンジ。

20畳くらいある この部屋は、小さい頃から使っている、私の隠れ家だ。


 マリィ 「良いでしょ、ここ」

 サトシ 「あぁ! 秘密基地みたいだな」

 マリィ 「そんな感じ。私の隠れ家なの。元は社長室だったみたいよ」


廃墟になる前は、このビル一棟、とある会社のものだった。

なので最上階の一番良い位置に社長室が設けられていて、廃墟となった今、有難く使わせて貰っている。
 ▼ 54 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/09/07 03:19:12 ID:yvMYPWgE [6/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 サトシ 「廃墟なのに、けっこう綺麗に保ってるんだな」

 マリィ 「うん。定期的に掃除してるけん。アニキもたまに使ってるしね」

 サトシ 「へぇ〜。冷蔵庫もあるってことは、ここで暮らせるな」

 マリィ 「電気と水道も通っとるからね」


アニキと協力して、ここ7階だけ、電気と水道を引いてある。

サトシの言うように“暮らせる”環境は整っている。隠れ家と言うより、家出した時の滞在先としての意味合いが大きかったりする。


 マリィ 「ここなら うるさい連中を気にしないで済むけん。適当に寛いでよ」


 モルペコ 「うらら〜」

 ピカチュウ 「ぴか?」

 モルペコ 「うらー」

 ピカチュウ 「ぴっかぁ!」


 サトシ 「ははっ。ピカチュウとモルペコ、いつの間にか仲良くなってたんだな」

 マリィ 「もう……。ジムチャレンジャー同士、真剣に戦うこともあるのに」

 サトシ 「良いじゃん。“昨日の敵は今日の友”って古い言葉があるだろ? バトルした後は みんな友達さ」

 ピカチュウ 「ぴかぁ♪」

 モルペコ 「うららー♪」

 マリィ 「ふふっ。そんな言葉、知らんけどね」


気が付くと私は、笑顔になっていた。

もともとそんなに笑うほうじゃないのに、サトシと居る時は、何故だか自然と笑顔になれる。

モルペコもサトシのこと気に入ってるみたいだし、ホント、サトシって、他人を惹きつける何かを持ってるんだろうな。
 ▼ 55 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/09/07 03:19:58 ID:yvMYPWgE [7/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


 ― ジャジャーン♪ ジャガジャガジャガーーーーン♪ ジャジャーン♪



 サトシ 「ん? ギターの音?」

 マリィ 「アニキがライブの調整しとるんよ。見なよ」


普段は閉めている黒いブラインドを開ける。

姿を現した、大きな窓。そこから広がるのは、私の お気に入りの光景だ。


 サトシ 「おぉ! ライブ会場の特等席じゃん!」

 マリィ 「そっ。ここなら人ごみ避けてライブ見れるんよ」


7階から見渡す、アニキのライブの特等席。

寂れたスパイクタウンの中で、唯一活気が溢れている様子を、誰にも邪魔されずに、ここから一望できる。


 サトシ 「って言うか……、このライブ会場、これバトルフィールド?」

 マリィ 「流石サトシ、目の付け所が良いね。ここスパイクジムはね、アニキのライブ会場も兼ねてるんよ」


金網に囲まれたバトルフィールド。

その背後に、ネオンで彩られたステージが設置されている。

スポットライトと、スピーカーと、アニキお気に入りのスタンドマイク。

ここスパイクジムは、スパイクタウンが誇る、ビッグエンターテイメントプレイスだ。


 サトシ 「へ〜。ガラルのジムも色々あるんだな」

 マリィ 「ライブ始まったらさ、ここで見させてあげる。私だけの特等席でねっ」

 サトシ 「サンキュー! マリィはネズさんのライブ、いつもこの特等席で見てるのか?」

 マリィ 「うん。下はガヤガヤしすぎて楽しめないし、私は1人が好きやけんね」

 サトシ 「1人が、好き……?」

 マリィ 「あっ、うん……」


しまった……、“1人が好き”だなんて、言うんじゃ無かった。


って言うより、そんなこと、わざわざ言うつもりなんて無かった。

なんでだろう。なんで私、サトシと一緒に居ると、素が出ちゃうんだろう……。
 ▼ 56 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/09/07 03:20:38 ID:yvMYPWgE [8/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 サトシ 「なぁマリィ。何か理由があるのか?」

 マリィ 「理由って……」

 サトシ 「オレ、マリィが優しい女の子だって知ってる。でも、ユウリにキツく当たったり、1人が好きだったり。オレ、気になっちゃうんだ」

 マリィ 「そんな、気にしないでええよ、私のことは」

 サトシ 「マリィはさ、本当に1人が好きなのか?」

 マリィ 「えっ?」

 サトシ 「だってマリィ、オレと話すとき、ずっと笑顔で居てくれるじゃん。とても1人が好きとは思えないんだ」
 
 マリィ 「私っ……、アンタと話すとき、そんな笑顔だった!?」

 サトシ 「ん? あぁ」

 マリィ 「あぅぅ……///」


嘘っ、私、そんな明らかな笑顔だったの!?

確かに私、サトシと一緒の時は自然と笑顔になれるとは思ってたけど、そんな、サトシに指摘されるほどの笑顔だったの!?

えぇぇ……、変じゃなかったよね!? 気持ち悪い笑い方じゃなかったよね!?



 サトシ 「だから、理由があるなら……って大丈夫か? なんか顔赤いぞ?」

 マリィ 「だっ、大丈夫! 心配なかっ!」

 サトシ 「そうか?」

 マリィ 「……はぁ。サトシ、私のこと気にしてくれるのは嬉しい。素直にありがとう」

 サトシ 「あぁ」


 マリィ 「でも……」

 ▼ 57 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/09/07 03:21:22 ID:yvMYPWgE [9/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


でも――。


たとえサトシにでも、言いたくなか。

本当は……、サトシと仲良くするのも、本当は、避けようと思っとるの。

人と仲良くなるのが怖いけん。誰かと深い関係になるのが怖いけん。



そう言おうとして、やめた。



こうしてサトシと2人で居ること自体、私にとって有り得ないことだった。

私の隠れ家、私だけの空間に、誰かを――ましてや男の子を招き入れるなんて、考えられないことだった。



 サトシ 「……ごめん。またオレ余計なこと聞いちゃったな」

 マリィ 「そんな、謝ることなかよ」

 サトシ 「けど、もしマリィが“何か理由があって”1人が好きで、それを悩んでるなら、力になってあげたくてさ」

 マリィ 「サトシ……」



  ― ジャジャーン♪ ジャガジャガジャガーーーーン♪



 サトシ 「お! またネズさん調整か?」



  ― 『うたで だれかを しあわせに なんて オレには ムリだよ できないよ』

  ― 『だって オレには かなしい いえない わすれさりたい かこ があるから』

  ― 『けれど ホントは きいてほしいし すくってほしい なやむオレの こころはブルー』

  ― 『だけど それでも うたうよ ささやかな うたを うたうだけだよ』



 サトシ 「ネズさんの歌……初めて聞いたけど、やっぱり上手いんだな!」

 マリイ 「アニキ……」
 ▼ 58 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/09/07 03:21:54 ID:yvMYPWgE [10/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



もぉ……、なんなのよアニキ。


まるで……、今の私の心の中を歌ってるみたいじゃんか。





サトシになら……、話して良いってことだよね?



サトシなら……、信頼して良いってことだよね?





私の過去の嫌な記憶を、サトシなら、しっかり聞いてくれるよね?



私を雁字搦めに縛りつけている記憶を、サトシなら、癒してくれるよね?



 ▼ 59 ガラティオス@すくすくこやし 20/09/07 08:57:09 ID:7gBE3IGk NGネーム登録 NGID登録 報告
ちょい役だけどマリィをからかう茶目っ気のあるユウリ好き。
サトシの天然で鈍感なのに他人に無頓着ではなく寄り添ってくれるっていう性格ってやっぱりいいなぁ。
 ▼ 60 ワムラー@まがったスプーン 20/09/07 19:44:43 ID:3uPQOoEs NGネーム登録 NGID登録 報告
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 ▼ 61 ャース@だいだいはなびら 20/09/08 04:31:47 ID:a9XMta9M NGネーム登録 NGID登録 報告
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 ▼ 62 ノセクト@メガアンクレット 20/09/10 06:12:56 ID:dujgfMhs NGネーム登録 NGID登録 報告
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サトマリは珍しいね
 ▼ 63 ガヤミラミ@きりのはこ 20/09/12 16:23:57 ID:fixcSuUc NGネーム登録 NGID登録 報告
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 ▼ 64 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/09/15 00:21:09 ID:6xwY0R1g [1/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


 マリィ 「ねぇ」

 サトシ 「ん?」

 マリィ 「誰にも言わないって、約束してくれる?」

 サトシ 「話してくれるのか? 勿論、誰にも言わないぜ」

 マリィ 「本当はね、誰かに話そうなんて、思ったことなかったの。でも、サトシになら……」

 サトシ 「オレで良ければ喜んで力になるよ」

 マリィ 「けど、迷惑じゃなかと?」

 サトシ 「気にすんなって。友達だろ?」

 マリィ 「……ふふっ、ありがと」


誰かに話したところで、なんの解決にもならないことは知っている。

誰かに話したところで、それは気休めにしかならないと分かってる。


でも、サトシになら。


少し前までは、サトシの傍に居ると、無性にドキドキして、ちょっと胸が苦しく感じていたのに。

今では、自分の素が出てしまうほど、自然と笑顔になってしまうほど、サトシと一緒に居ると心地良い。


そんな、サトシになら。


なにか別の答えが、見つかるかもしれない。





応接セットのソファに腰を下ろす。向かいのソファに、サトシが座る。

サトシは静かに、私が語り出すのを待ってくれている。優しい表情で。



 マリィ 「私、別にユウリが嫌いって訳じゃないの」

 サトシ 「そうなのか? なら……」

 マリィ 「怖いの」

 サトシ 「怖い? ユウリが?」

 マリィ 「そうじゃなくて。私……小さい頃にね、仲が良かった友達に、酷いこと言われたことがあって……」
 ▼ 65 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/09/15 00:21:32 ID:6xwY0R1g [2/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


   *



それは、私が7歳の頃だった。

それまで大人しくて泣き虫だった私は、アニキに貰ったモルペコと触れ合うにつれ、だんだん前向きな性格になり、友達も増えた。


7歳と言うと、まだポケモン取扱免許が交付されていないため、モルペコはアニキの“キープ”と言う扱いだ。

“キープ”とは言え、その歳でポケモンを持っている子は珍しく、友達は私のことを羨ましがっていた。



 サトシ 「オレの知り合いの子も、デデンネをキープしてたなぁ」

 マリィ 「デデンネ……、モルペコみたいなポケモンだよね」

 サトシ 「あぁ。“10歳になったらデデンネと旅に出る”って張り切ってたよ」

 マリィ 「サトシは知り合い多いとね」



私は、優越感に浸っていたのかもしれない。

友達は皆、モルペコのことを可愛いって言ってくれて、羨ましがってくれて。

モルペコを褒められて気分が良い私は、得意気にモルペコの特徴やワザを説明して。

……正直、ポケモンを持っていない子からしたら、ウザかったと思う。



 サトシ 「それは考えすぎじゃないか? マリィはネズさんの――ジムリーダーの妹なんだから、キープポケモンが居ても普通だろ?」

 マリィ 「そうだけど、友達もまだ7歳やけん、それを“普通”とは思わなかったはずよ」

 サトシ 「あぁー、確かにな。オレも7歳くらいの頃は、早く自分のポケモンが欲しいって思ってたし」

 マリィ 「ある意味“ズルい”って思われてたんよね、私って」
 ▼ 66 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/09/15 00:21:51 ID:6xwY0R1g [3/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ある日、友達3人とスパイクタウンの路地裏を探検していた時。

ちなみに友達って言うのは、みんな女の子。男の子の友達は居なかった。


そんな女の子だけでの探検の途中、薄暗い路地裏の先に、ガサガサと動く大きな影を見つけた。

野生のタチフサグマ。

食料を探してゴミ捨て場を漁っていたようで、そんな状況の野生ポケモンは、当然、気が立っていて。



 マリィ 「襲って来たの。私たちを」

 サトシ 「えっ!?」

 マリィ 「どうしょもなかったよ。7歳の女の子4人じゃ」



こんな時、普通ならモルペコでバトルを挑む状況だけど……、私はまだ、バトルできる年齢じゃない。

緊急事態だからバトルしても咎められることは無いけど、まだ7歳の私は、どんな風にバトルすれば良いのかが分からなかった。

当然、アニキからバトルを教わったこともない。


鋭い爪を振りかざして襲ってくるタチフサグマ。

友達は怯えて泣き出して。モルペコは突然のことに怯んで。


女の子だけで探検に出掛けたことを、酷く後悔した。

けど、探検に出掛けた根底には、“モルペコが居るから大丈夫”という、変な安心感があって。

バトルもしたことないのに、“ポケモンが一緒なら安全”という、根拠のない自信があって。



 マリィ 「だから私ね、庇ったのよ、皆を」

 サトシ 「庇った、って……、そんな無茶なことしたのか?」

 マリィ 「うん」

 ▼ 67 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/09/15 00:22:32 ID:6xwY0R1g [4/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
襲い掛かるタチフサグマの前に、私は立ち塞がった。友達とモルペコを守るために。

タチフサグマの攻撃は、もう止まらない。


鋭い爪を振り下ろす。


逃げたい気持ちは勿論あったけど、恐怖で体が動かなくて、どうしようもなく、私は目を瞑る。

目を瞑ったところで、逃げられる訳じゃないのに。攻撃が止まる訳じゃないのに。



頭を襲った激痛。


その衝撃で倒れた私。


地面を徐々に染めていく赤い液体。


体は震え、声は出ない。


泣き叫ぶ友達。


だんだん感じる寒気。


モルペコの雄叫び。


発光と衝撃。


遠ざかる足音。


泣き続ける友達。


どうしたんだ!? と大人の声。


駆け寄る足音。


酷い出血だ。すぐ病院に行くぞ! と大人の声。


抱き上げられた私。


心配そうなモルペコの声。


私の記憶は、そこで途切れた。
 ▼ 68 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/09/15 00:23:08 ID:6xwY0R1g [5/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 マリィ 「目が覚めたら、病院のベッドだった」

 サトシ 「その大人の人が助けてくれたんだな」

 マリィ 「うん。頭に包帯巻かれててね、酷い姿だったよ、その時の私。アニキなんて泣きじゃくってて、逆に私の涙は引っ込んじゃったもん」

 サトシ 「ははっ。ネズさんって妹想いなんだな」

 マリィ 「……でね。問題は、ここからなのよ」



タチフサグマに襲われて、私は頭を7針も縫う大怪我だったらしい。

モルペコが勇気を出してタチフサグマを攻撃したおかげで、それ以上の被害は無かった。友達の皆も、怪我なく無事だった。

友達が怪我してなくて、私は心から安堵した。そして、無茶だったけど私が体を張ったお陰で友達を守れて、嬉しかった。


……けど、そんな私の気持ちは、裏切られることになる。


 『うわぁ……、マリィ坊主になっちゃったの? 可哀想〜』

 『女の子なのにその髪型っ……、クククッ……』

 『笑っちゃダメだよ〜。でもハゲてると男の子みたい』


頭を縫う怪我となると、処置の邪魔になる髪の毛は、当然、剃られてしまう。女の子でも関係なしに。


私が助けたはずの友達3人は、そんな私の髪を見て、笑った。

髪を剃られるなんて女の子にとって悲しいことなのに、そんな私を、あの3人は笑ったのだ。



 サトシ 「酷すぎるだろ そいつら! マリィに助けられたって言うのに!」

 マリィ 「うん。かなりショックだったよ、そんな風に言われて」



今となっては分かる。あの3人は、当時ポケモンを持っていた私を、心のどこかで恨めしく思っていたらしい。


それから私は、あの3人とは会わなくなった。

それどころか、こんな髪じゃ、誰にも会いたくない。

しばらく私は、家に引き籠るような生活を続けることになる。モルペコが居るから、寂しくは無かった。



   *

 ▼ 69 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/09/15 00:24:55 ID:6xwY0R1g [6/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



 マリィ 「今の私の髪型さ、ここ……、剃り込んでるでしょ?」

 サトシ 「ん? あぁ」

 マリィ 「その時の名残って言うか……、ここだけね、髪、生えてくれないの。傷は治ったって言うのに」

 サトシ 「そうだったのか……」

 マリィ 「女の子らしく なかとよね、こんな髪型。でも私、こうするしかないんよ……」

 サトシ 「マリィ……」

 マリィ 「正直さ、サトシ、私と初めて会った時、変な髪型って思ったでしょ?」

 サトシ 「いや、変とは思わなかったぞ。珍しいとは思ったけど」

 マリィ 「そう……」

 サトシ 「マリィは……、その髪、嫌いか?」

 マリィ 「別に……、今となっては、嫌いって訳でも……」

 サトシ 「オレは好きだな」

 マリィ 「えっ……?」 ドキッ

 サトシ 「マリィ凄ぇよ! 自分を犠牲にしてまで、誰かを助けようとするなんて。ホント凄い!」

 マリィ 「そんな」

 サトシ 「今の話 聞いて、マリィってオレと似てるなって感じたよ」

 マリィ 「サトシと、私が……?」

 サトシ 「オレもさ、ポケモンのことになると、つい無茶しちまうんだ。……ピカチュウと初めて旅に出た日、オニスズメの群に襲われてさ。オレ、生身で群れに立ち向かったんだ。

いま思えば、すげぇ無茶してたよ、あの時のオレ。ピカチュウを助けるために」

 マリィ 「うん。群れに立ち向かうのは凄かね」

 サトシ 「だからオレ、マリィの気持ち分かる。モルペコと友達を助けたいって気持ち、すげぇ分かるよ」

 マリィ 「うん」

 サトシ 「ポケモンのために一生懸命になれる奴って、オレすげぇ好きだぜ!」

 マリィ 「っ……///」

 ▼ 70 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/09/15 00:25:47 ID:6xwY0R1g [7/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 サトシ 「マリィの行動は、胸を張って誇れるものだぜ。その髪も、勲章みたいなものじゃん」

 マリィ 「勲章……か」

 サトシ 「だから、もしマリィがその髪を嫌いって言うんなら、見方を変えてみると良いぜ。気にするな……とは、女の子に言うのは失礼かもしれないけどさ」

 マリィ 「……ふふっ。そうだよ。私これでも女の子やけん、気にするなーは無理かな」

 サトシ 「ははっ、だよな」

 マリィ 「けど、ちょっと勇気出たよ。サトシに、そう言う風に言って貰えて。ありがとね」

 サトシ 「そっか。良かった」



正直私は、この髪型を、仕方なく受け入れていた。

だって、生えてこないんだもん。こうするしかないんだもん。


けど、サトシに言われて、ちょっと考えが変わった。


これは勲章……、誰かのために、一生懸命になった証。

助けた友達とは もう疎遠になったけど、モルペコは、今でも私の隣に居る。

この髪は、モルペコを守って、モルペコと絆を深めた証だ。


それに……、この髪型、サトシは“好き”だって。

私のコンプレックスだった髪を、サトシは“好き”だって。


あぁ、だめ、ニヤけちゃダメよ、私。


嬉しいな、サトシに、私の行動を褒められて。認められて。

こんな気持ち、初めてだよ。


私、ますますサトシのこと……。




  ― コンコン



 ネズ 「入りますよ」



 マリィ 「アニキ!?」

 サトシ 「ネズさん!」
 ▼ 71 オー@マトマのみ 20/09/15 06:22:29 ID:U6/6TfAY NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
友人にこんな風に言われたらグレて人を信じられ無くなるのも頷けるしそんな時に裏表無く他者を思いやれるサトシに惹かれる気持ちも分かる。
後、キープというアニポケ要素のある単語が出たのは嬉しい。
 ▼ 72 ワパレス@きんのナナのみ 20/09/15 07:49:06 ID:mVSo0jnM NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
尊いわぁ
神スレ
 ▼ 73 スバーン@みどりのプレート 20/09/15 09:10:36 ID:7XY.0T5. NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
オリジナルと言いつつ原作のセリフとかけっこう拾ってて良いね
 ▼ 74 ケッチャ@エネコのしっぽ 20/09/15 20:08:42 ID:q06ERaQo NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ここのサトシのXY感
 ▼ 75 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/09/18 01:46:18 ID:m88IPB5Q [1/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


突然のアニキの登場に、私は思わず声を上げた。

確かにここは、私とアニキが使ってる隠れ家だけど、アニキついさっきまで、ライブの調整してたんじゃ……。


 ネズ 「お前は……、さっきのチャレンジャーですね」

 サトシ 「はい。マサラタウンのサトシです。こっちは相棒の……って、寝ちゃってるか」


気が付くと、ピカチュウとモルペコは隅のソファで眠っていた。

私とサトシの会話に気を遣ってくれてたのかな。だとしたら、退屈させちゃったこと謝らないとな。


 マリィ 「アニキ、ライブの調整は良いの? って言うか、なんで私がここに居るって……」

 ネズ 「電気点けてブラインド開けてれば分かりますよ」


あぁ、確かにその通りだ。

ここからライブ会場を見渡せるってことは、アニキからも、ここはよく見えるはずだし。


 ネズ 「マリィには申し訳ないが、2人の会話、少しだけ聞いてしまいましたよ」

 マリィ 「えっ!?」

 ネズ 「マリイよ。例のこと話せる友人を、やっと見つけたんですね」

 マリィ 「……うん」


アニキの聴覚は相変わらず凄い。

流石シンガーソングライター。歓声の中で細かな音程を聞き分けるくらいなら、私とサトシの会話を聞き取るくらい楽勝ね。


 ネズ 「サトシ……と言いましたね」

 サトシ 「はい」

 ネズ 「ここはマリィの隠れ家です。友達に裏切られたマリィが、モルペコやオレと、気兼ねなく過ごすための場所です」

 サトシ 「はい。マリィから聞きました」

 ネズ 「つまり、ですよ。ここに入れるのは、マリィが心から信頼している奴だけなのです」

 マリィ 「ちょっとアニキ!」
 ▼ 76 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/09/18 01:47:20 ID:m88IPB5Q [2/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
待ってよアニキ!

確かにサトシのことは信頼してるけど、そんな本人の前で言うことないじゃん!


 サトシ 「オレもマリィのこと信頼してますよ。何度かバトルしてる仲ですし、マリィすっごいポケモン想いですし」

 ネズ 「そうですか。ならサトシ、オレから少し、補足させて貰いますよ」

 サトシ 「補足?」

 マリィ 「アニキそんな勝手に……!」

 ネズ 「それならマリィ、自分で話しますか?」

 マリィ 「それは……」

 ネズ 「マリィ、お前は頑張りました。辛い経験を誰かに話すのは、けっこうな勇気がいることです」

 マリィ 「うん」

 ネズ 「お前がサトシを信頼するのであれば、オレもサトシを信頼します」

 マリィ 「……グスッ、ぅん、お願い」

 サトシ 「マリィ……?」

 マリィ 「うぐっ……グスッ、ごめんっ、サトシっ……」



気が付けば、私は涙を流していた。



なんとか平常心を保ってサトシと話してたつもりだったけど、今になって、涙が止まらない。

髪型を好きと言われて、行動を褒められて、その嬉しさが一時的に辛さを塗り隠してくれていたけど――。


本当は私、もう限界だったみたい。

自分の過去を誰かに話すことが、こんなに精神的に堪えるものだったなんて……。



 ▼ 77 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/09/18 01:48:28 ID:m88IPB5Q [3/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


 ネズ 「妹は小さい頃、泣き虫で、人付き合いが苦手でした」


涙を拭う私を余所に、アニキは話し始める。


 ネズ 「5歳の誕生日に、モルペコを捕まえてやりました。10歳まではキープポケモンで、それまでは遊び相手です」


モルペコは、アニキに貰ったポケモン。

人付き合いが苦手だった私に、遊び相手を、話し相手をくれた。


 ネズ 「モルペコと触れ合ううちに、マリィは随分と明るくなりましたよ。ポケモンパワーは素晴らしいですね」


実際私は、モルペコとの触れ合いのお陰で、明るくなれたと思う。

すぐ泣いちゃう癖も治ったし、人とも普通に接するようになったし。


 ネズ 「けど……マリィが7歳の時です。さっきマリィが話した一件が、再びマリィを人見知りにしました」


そんな中で起きたあの事件は、私にとって、大きなショックだった。

人付き合いが苦手だった頃の私に、逆戻りしちゃったんだから。


 ネズ 「怪我のせいで、髪の毛が生えなくなりました。女の子にとって、これはショッキングなことですよ」


髪の件が、追い打ちをかけた。

誰とも会いたくないと思うようになって、それはむしろ、逆戻りと言うより“悪化”だった。


 ネズ 「落ち着くまで……心の整理が付くまで、マリィを外に出そうとは思いませんでした。そんなマリィの相手をしてくれたモルペコには、随分と助かりましたよ。なにせオレは、ジムリーダーの仕事がありますからね」


ジムリーダーの仕事をしながらも、アニキはいつも、私のことを気にかけてくれていた。


 ネズ 「少しでもマリィに楽しんで貰おうと、この隠れ家を作ったんです。ライブ会場を望めれば、オレの眼が届きますからね」


この隠れ家は、私の心の拠り所だった。

モルペコと一緒に、テレビを見たり、ゲームをしたり。誰とも接することなくアニキのライブも見れて、居心地が良い。


 ネズ 「少しずつですが、マリィは落ち着きを取り戻していきました。……が、やはり友達から受けた仕打ちは大きなショックだったんですね。マリィは、あまり笑わなくなりました」

 ▼ 78 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/09/18 01:49:41 ID:m88IPB5Q [4/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


 サトシ 「えっ? マリィけっこう笑ってくれますよ?」

 マリィ 「ちょっ……///」

 ネズ 「マジですか? ほぉ……、マリィが他人に笑顔を見せるとは」


うぅっ……///

確かに私は、笑わなくなった。自分でも分かる。

でもサトシと話していると、何故だか笑顔が零れるのだ。



 ネズ 「そうした中、マリィが言ったんですよ。“バトルを教えて欲しい”って」


……そう。

このままじゃいけない、って思った私は、自分を変えるために、アニキにバトルの稽古を申し出た。


 ネズ 「オレは嬉しかったですよ。マリィが前向きになった証拠です。オレはジムリーダーとして、バトルの極意をマリィに教えました」


本当にアニキは、喜んでくれた。

“いつかジムリーダーの座を妹に譲って、シンガーソングライター一筋で活動したい”。何かの取材で、アニキが そんなこと言ってたのを思い出す。


 ネズ 「やはりオレの妹です。みるみるうちにバトルは上達して、トレーナーとしての才能を開花させたのです」


未来は どうなるか分からないけど、そんなアニキの願いを叶えるためにも、私は全力で特訓した。

エール団――、ジムトレーナーたちとのバトルでも、私が負けることは無かった。


 ネズ 「バトルで自信を付けたマリィは、日常でも自信を取り戻せました。なにせ、ガラルリーグに挑戦したいと言いだしたんですから。ポケモンパワーは最高ですね」


そんな私は、いつしか人見知りを克服していた。

トレーナーとしての実力が、日常生活にも良い影響を与えたらしい。本当、ポケモンの力って凄いと思う。


そうなれば私は、自分の力を、モルペコたちと特訓した成果を、試してみたくなった。

強いトレーナーが集まってトーナメントを繰り広げるガラルリーグは、その絶好の舞台だ。
 ▼ 79 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/09/18 01:50:33 ID:m88IPB5Q [5/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 ネズ 「髪のコンプレックスは、ファッションでカバーできます。剃り込みのツインテールと、パンク系ファッション。これを自然体と思わせれば良いのです」


髪のほうのショックは まだ あったけど、アニキが仕立ててくれたコーデのお陰で、忘れることが出来た。

パンク系なんて、昔の私じゃ考えられなかったけど、今となっては気に入っている。


 ネズ 「とは言っても、女の子の一人旅は危険です。本当なら止めたかったですよ、オレは」



 マリィ 「そうだったの?」

 ネズ 「当然ですよ! もし事件に巻き込まれでもしたらと考えたら、夜も眠れませんでしたよ」

 マリィ 「相変わらず過保護やけんね」



 ネズ 「で、ですよ。特に注意すべきは、男関係です。可愛いマリィの魅力に、男共は たかって来るでしょう」


やめてアニキ、恥ずかしい。

過保護とシスコンを拗らせすぎるのは考え物ね。


 ネズ 「だからオレは、“男の あしらい方”を教えました。強引に言い寄られても突っぱね返す極意です。エール団の奴らも練習相手になってくれましたしね」


男の あしらい方――。

そう聞くと良い顔は されないけど、女の子が一人旅するうえで、これはかなり重要なことだ。

特に、人見知りだった私にとっては。


実際、旅の途中で私に近寄って来る男が何人か居た。

下心ミエミエの奴も居たし、単に友達からって感じの奴も居たけど、私は全員、受け流した。アニキの極意のお陰だ。



 サトシ 「そう言えばマリィ、初めて会った時、エール団の奴らにもキツめに接してたっけ」

 マリィ 「エール団の男を顎で使う様子見せて、男が近寄りがたい雰囲気を作ってたの。アニキの極意よ」

 サトシ 「なるほど……」

 マリィ 「普段は仲良いから安心して」



エール団の奴らには感謝してる。

こんな私の保身のために、失礼な態度を受け入れてくれてるんだから。
 ▼ 80 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/09/18 01:51:36 ID:m88IPB5Q [6/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 ネズ 「言い方は悪いですが、“チャラい女は痴漢に遭いにくい”的なものです。パンク系のファッションは、髪と男、2つの問題を解決する策なんですよ」


それを聞いて、アニキは天才だなと思った。


 ネズ 「そしてマリィは、順調にジムを巡って、こうしてリーグ挑戦にあと一歩のところまで届きました。あれほど落ち込んでいたマリィがですよ。兄として、これほど嬉しいことはありません」



ジムリーダーの仕事と、ライブの仕事。アニキは普段から忙しい。

それなのに、私のために、私を安全に旅させるために、色々なことを考えて、色々なことを準備してくれて。

今の私があるのは、間違いなく、アニキのお陰だ。



 マリィ 「ありがとね、アニキ」

 ネズ 「礼を聞くのは、ガラルリーグが終わってからにしますよ」

 マリィ 「……うん。楽しみにしててね」



 サトシ 「マリィ……、苦労してきたんだな。そんな素振り、ちっとも感じなかった」

 マリィ 「うん。自分の弱さを他人に見せないように しとったからね」

 サトシ 「そっか。それでマリィは……」


 ネズ 「えぇ。要するにマリィは、人と親しくなることが怖いんです。また裏切られるんじゃないか、酷いことを言われるんじゃないかと」


 マリィ 「………」

 ネズ 「なのでマリイは、あえて周りの人間にキツく当たっていたのです。親しい関係を、作らないために……」

 ▼ 81 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/09/18 01:54:29 ID:m88IPB5Q [7/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
人見知りを克服して、人と普通に接することが出来るようになっても――。

それイコール、普通の人間関係を築けると言う訳では無い。


私の心の奥底には、今も、不安が宿っている。

親しくなった人が、何かをキカッケに、私を裏切るんじゃないかという、恐怖にも似た不安が。


あの時のようなショックを受けるのは、もうごめんだ。

また同じようなことがあったとしたら、今度こそ、私は立ち直れなくなってしまう。



だから私は――。



人と仲良くすることを、やめた。


必要以上に人と接することを、やめた。


一緒に笑い合える友達を作ることを、やめた。



そのためには、私に近寄りがたい雰囲気を醸し出す必要があった。



本来は切磋琢磨すべきジムチャレンジャーとの交流は、全て断った。

それでも話しかけて来る奴には、キツく当たって、遠ざけた。

エール団の奴らに協力して貰って、私は“キツイ女”だという印象を、まわりに与え続けてきた。


お陰で2つ目のジムバッジをゲットした頃には、私に話しかけて来るジムチャレンジャーは、誰も居なかった。





彼女――ユウリを除いては。




 ▼ 82 ガガブリアス@ポロックケース 20/09/18 06:05:48 ID:zDrU60X2 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
壁を作っても構わず手を伸ばしてくれるユウリとサトシは似た者同士なのかもしれんな。
 ▼ 83 レベース@ラムのみ 20/09/18 16:06:11 ID:ASLgFuLs NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
だんだんゲームのマリィに近づいてきたね
 ▼ 84 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/09/20 17:05:03 ID:rHo.941E [1/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


 サトシ 「じゃあマリィ、本当はユウリとは……」

 マリィ 「仲良くしたかったよ。ユウリ、すっごい良い子だもん」

 サトシ 「そっか……」


いくらキツく当たっても、ユウリは いつも、声を掛けてくれる。

いくら冷たく当たっても、ユウリは いつも、友達のように接してくれる。


 マリィ 「ユウリには、悪い事したと思ってる。本心でも無いのにっ……グスッ、ユウリのこと、グスッ、冷たく……」


本当は、感謝したいのに。

本当は、いっぱい お話ししたいのに。

けど私は、ユウリと仲良くなるのが怖くて、ずっと、ユウリに酷い態度を取って来てしまった。

そうするしかなかったとは言え、ユウリの優しさを、私はずっと、踏み躙って来てしまった。





自分の心を偽って。





 ▼ 85 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/09/20 17:05:33 ID:rHo.941E [2/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 サトシ 「酷い話だな。なんてマリィが……、こんなに優しい女の子が、そんな仕打ち受けなきゃいけないんだよ……!」



憤慨するサトシが、なんだか頼もしく見える。


私の辛い過去を話した唯一の他人、サトシ。


本当なら接することは無かった男の子。


なのに私は、いつの間にか、サトシに惹かれてて。

気が付けば、サトシの前でなら素の自分で居られるようになって。

でもサトシを前にすると、胸が高まって、心がじんわり暖かくなって、自然と笑顔が零れて来て。


 サトシ 「安心しろマリィ。オレは絶対に、絶対に! マリィを裏切ったりしない! ユウリだって同じさ!」

 マリィ 「……グスッ、うん!」


サトシの言葉に、嘘は無いと断言できる。

サトシの言葉なら、全面的に信頼できる。


その自信は どこから湧いてくるのかは、分からない。

サトシとは、このジムチャレンジで初めて出会って、遭遇するのも度々で、言葉を交わした回数だって決して多いとは言えない。

なのに私は、サトシのことなら、なんの疑いも無く信用できるのだ。
 ▼ 86 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/09/20 17:05:58 ID:rHo.941E [3/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 ネズ 「サトシ。お前は例外のようですね」

 サトシ 「えっ?」

 ネズ 「さっきも言いましたが、よほど信頼できる奴でない限り、マリィが ここに誰かを入れるなんて有り得ません。男なら尚更ですよ」

 サトシ 「……へへっ。なんだか嬉しいですね。オレなんかを信頼して貰えて」

 ネズ 「この旅で……、マリィと どんな出会いや触れ合いがあったのかは、あえて聞きません。けど、これだけは言わせてください」


サトシを真っ直ぐに見つめたアニキ。

猫背気味の姿勢を整えたその姿から、普段のネガティブな印象は消え去っている。





 ネズ 「ありがとう」





そしてアニキは、そう言った。





 ネズ 「妹に信頼される存在になってくれて、ありがとう」





アニキの妹に生まれて良かった――。



その瞬間、私は自然と、そう思った。

アニキが私のアニキであることを、心から嬉しく思った。神様に感謝した。


アニキは いつでも、私の味方で居てくれた。

アニキは常に、私のことを第一に考えていてくれた。ジムとライブで忙しいはずなのに。
 ▼ 87 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/09/20 17:06:39 ID:rHo.941E [4/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


 サトシ 「お礼を言われるようなことじゃないですよ」


そんなアニキに対して、サトシは自然と、そう答えた。


 サトシ 「オレだって、マリィのこと信頼しています。それに……、今の話を聞いて、オレの感覚は、間違いじゃ無かったんだって」

 ネズ 「……と言うと?」

 サトシ 「確かにマリィ、最初はオレにもキツかったです。ユウリにも、エール団の奴らにも。腹が立つくらい」

 ネズ 「そうしろと教えてしまった、オレの責任ですよ」

 サトシ 「でもそれ、演技だった訳ですよね。ネズさんが考えた、マリィを守るための」

 ネズ 「その通りです」

 サトシ 「前にオレ、マリィの特訓風景を隠れて見てたことがあったんです。マリィ、凄ぇ一生懸命で、ポケモン想いで。その時おかしいと思ったんです」

 ネズ 「おかしい?」

 サトシ 「こんなポケモン想いの子が、あんなに他人にキツく当たるのは、何かワケがあるんじゃないかって。マリィは本当は、優しい女の子なんじゃないかって」

 ネズ 「……なるほど」

 サトシ 「その通りでした。マリィと何度か会ううちに、マリィが優しい子だって分かりました。それで今日、キツイ性格も演技だって分かった……」

 ネズ 「サトシ……。お前は最初から、本当のマリィに気付いてたって訳ですか」

 サトシ 「そういうことに……、なりますね!」

 ネズ 「まったく、大した野郎ですね」


そう言ってアニキは笑みを浮かべると、サトシの肩に、ポンと手を置いた。


 サトシ 「ネズさん……?」


アニキ、嬉しいんだね。

私を――妹のことを信頼して、本心を見抜いてくれたサトシの存在が。

過保護でシスコンであるからこそ、自分の妹を褒めてくれたサトシのこと、気に入ったんだね。
 ▼ 88 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/09/20 17:08:49 ID:rHo.941E [5/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 ネズ 「オレはそろそろライブの準備に戻りますよ。サトシ、良かったら、今夜はマリィの話し相手になってやって下さい」

 マリィ 「ちょっとアニキっ……!?」

 ネズ 「一線を越えたらブチのめしますからね」

 マリィ 「アニキっ!」

 サトシ 「一線を越える……?」

 ネズ 「……ははっ。なるほど、その純粋さならマリィも惹かれるでしょうね。安心しました」

 サトシ 「?」

 マリィ 「っ〜〜///」

 ネズ 「遠慮は いりません。ゆっくり寛いでください。お前はマリィが認めたトレーナです。明日のバトル楽しみにしてますよ」



そう言うと、アニキは隠れ家を後にした。

ライブの曲を口ずさみながら、上機嫌で。



 サトシ 「ネズさん、マリィのこと大切にしてるんだな」

 マリィ 「うん。私の自慢のアニキよ」

 サトシ 「でもネズさん、“今夜はマリィの話し相手に”って、ここに泊まれって意味だよなぁ?」

 マリィ 「あっ、うん……」

 サトシ 「って言うか“一線を越える”ってどういう意味だ?」

 マリィ 「かっ、関係なかと! それはそのっ……、歌詞! アニキの歌の歌詞だから! 気にすることなかと!」

 サトシ 「おっ、おう。そうなのか」


アニキのバカたれ!

変なこと言い残して出て行くなんて無責任すぎ!

もしサトシが意味知ってたら、気まずくて仕方なかったじゃんよ!


 マリィ 「それにっ! サトシはユウリたちと旅してるんだから、戻らんと心配されるよ」

 サトシ 「そうだよな。ちょっと連絡してみるよ」


サトシ、そう言う意味じゃ無くて。遠まわしに遠慮して欲しいって気付いて。

サトシと2人きりでここに泊まるのは嫌じゃないし、どちらかと言えば嬉しいけど、私、ドキドキしすぎて おかしくなっちゃうよ。
 ▼ 89 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/09/20 18:52:31 ID:rHo.941E [6/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


 サトシ 「……ん?」


スマホを取り出したサトシは、画面を見て、動きを止める。


 マリィ 「どしたの?」

 サトシ 「いや、ユウリからメール入ってて……」





――――――――――



ネズさんのライブのせいで、ポケモンセンター満室だった Σ(゚Д゚)

スパイクタウンってホテル少なくて、私と飯担当君の2部屋しか取れなかったよぉ (;^ω^)

だからサトシはマリィちゃんの家に泊めて貰ってください ('◇')ゞ

明日の朝10時にスパイクジムに集合で!

マリィちゃんとの一時、楽しんで来てね (*ノωノ)



――――――――――





 サトシ 「……って訳だから、マリィ、ここに泊めて貰っても良いか?」

 マリィ 「あっ……うん。私は良かよ。サトシさえ良ければ、別に……///」


もぉ……!

アニキもユウリも、なんで私とサトシをくっ付けようとするのよぉ!

私がサトシのこと気にしてるって、そんなにバレバレなの……?
 ▼ 90 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/09/20 18:53:16 ID:rHo.941E [7/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 サトシ 「じゃあオレは このソファで寝るかな。さすが元社長室、余裕で寝れるソファだぜ」 ボフッ!


そんな私の葛藤なんて いざ知らず、サトシはソファにダイブした。


 マリィ 「……ふふっ」


アニキの言葉を借りれば、サトシは まさしく“純粋”だ。

だって、女の子と2人きりで一夜を過ごすんだよ? 普通の男なら、動揺なりドキマキなり、少しくらい心情の変化があるはずだ。

でもサトシには、一切そういうのを感じない。

私を変な目で見ていない、私を一人の友達として接してくれている、何よりの証拠だ。


 マリィ 「アニキのライブ、20時からやけん、それまで少し、お話ししよっか」

 サトシ 「そうだな。マリィと こうやって2人で話すのって、考えてみると まだ2回目? 3回目くらいだっけ?」

 マリィ 「覚えてなかとね。会うことはあっても、私、けっこう避けて来ちゃったし」

 サトシ 「でもさ。もう避ける必要ないんだよな?」

 マリィ 「……うん。サトシに聞いて貰ったお陰で、吹っ切れた」

 サトシ 「そっか。良かった」


サトシと2人きりの夜――、けど、緊張する必要は皆無だ。

サトシは私の友達、私の辛い過去を知った唯一の友達、素の私で居させてくれる友達。

ドキドキを完全に抑えることは多分無理だけど、変に意識する必要はない、信頼できる存在、それが彼――サトシ。



 マリィ 「ユウリには……、私から伝えるから」

 サトシ 「あぁ。それが良いよ」

 マリィ 「だからサトシ、ユウリに伝えんといてね。ユウリには、謝らなきゃいけないし」

 サトシ 「辛いと思うけど、頑張れよ」

 マリィ 「サトシに話せたけん、もう大丈夫よ」

 サトシ 「応援してるぜ」

 マリィ 「ふふっ。……私、さっきの話、詳しく聞きたいな」

 サトシ 「さっきの?」

 マリィ 「ほら。ピカチュウを助けるために、オニスズメの群に立ち向かったって、無茶なことした話よ」

 サトシ 「あぁ。あれはオレがマサラタウンを旅立った日でさ――」

 ▼ 91 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/09/20 18:53:58 ID:rHo.941E [8/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


それから私は、サトシの旅の話を、楽しく聞かせて貰った。


色んな地方を旅した話、そこから感じ取れる、サトシとピカチュウとの絆。


沢山の出会いと別れがあって、沢山の経験と感動があって。


サトシと言う存在に、私は ますます惹かれていって。





アニキのライブは、サトシと2人並んで、窓からの特等席で眺めた。ピカチュウとモルペコも一緒に。


普段は一人で聞いていた、アニキのライブ。

私は今日はじめて、友達と一緒に聞くことが出来た。


同じ音楽を、同じ空間で、同じ熱狂のなか、同じ感動を共有して。


それはそれは、楽しくて、刺激的で、素晴らしい一夜だった。





サトシとは、夜遅くまで語り合って。


お互いポケモン大好きだから、話題が尽きることは無くて。

寝るのが惜しいくらいだったけど、いつの間にか、2人して寝落ちていた。





   *   *   *  



 ▼ 92 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/09/20 18:54:36 ID:rHo.941E [9/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告





あの夜のことは、忘れることは無いと思う。

あれだけ楽しい一時は、人生で初めてだったかもしれない。


あの日、あの夜。


私は ますます、サトシに惹かれていった。


サトシと話して知ることが出来た、サトシの真っ直ぐな精神。

サトシと話して感じることが出来た、サトシのポケモン想いの姿。

サトシと過ごして読み取ることが出来た、サトシの優しくて純粋な心。

サトシと過ごして改めて実感することが出来た、サトシの信頼できる人柄。


誰かと話して楽しいと思えたのは、本当に、いつ以来だろう。

サトシが笑顔を見せるたびに、心に稲妻が走ったかのような、心地良い刺激。





そうして私は、理解する。





私は、サトシのことが、好きなんだと。





私は、サトシという優しく純粋な男の子に、恋をしているんだと。





それは、私にとって初めての恋。初めての経験。


この気持ちをサトシに伝えたいけど、でも。その伝え方さえ、私には分からなかったのだ。


 ▼ 93 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/09/20 18:56:04 ID:rHo.941E [10/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


結局その夜、私は何も出来なかった。

それが恋だと気付けたことは大きな一歩だけど、次の一歩を踏み出す勇気が、私には足りなかった。



だから。



私は決心したんだ。



この大舞台。



ガラルリーグ決勝戦。



ガラル中の注目が集まるこのステージで。



サトシに勝利して、自分の全てを出し切った最高の瞬間に。





私の気持ちを、サトシに伝えるんだと。





私が惹かれ、特別な想いを抱くサトシに、バトルで勝利して!





 告 白 す る ん だ と !





 ▼ 94 コガシラ@たいようのいし 20/09/20 19:43:55 ID:W/AQATbI NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
遂に最初のシチュエーションに繋がったか
 ▼ 95 カシャモ@のろいのおふだ 20/09/20 22:58:21 ID:IvDsGrsQ NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
いいぞ〜
 ▼ 96 ャオブー@ボブのかんづめ 20/09/21 09:56:19 ID:6K.IVLgA NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
こういうのホント好き
 ▼ 97 クフーン@パワーアンクル 20/09/22 11:19:45 ID:8joc/hO. NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 98 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/09/28 22:14:57 ID:8UTUmW8Q [1/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告





 実況 『モルペコの猛進止まらない! サトシ選手、打つ手ありませんっ!』


素早さが最高潮に達しているモルペコの、連続攻撃。

ピカチュウは“いちゃもん”の効果で、同じワザを連続で出すことが出来ない。

その縛りが、サトシの戦略の大きな足枷になっていることは確かだ。


 サトシ 「ピカチュウ! “エレキネット”でモルペコを止めるぞ!」

 ピカチュウ 「ぴぃっか!」


“エレキネット”。

電気を帯びた弾力のあるネットに、私とモルペコは、今まで何度も苦しめられてきた。

けど、苦しめられてきたからこそ、今日と言う舞台のために、対策はバッチリだ。


 マリィ 「そんなネット、今のモルペコの前には無意味やけん! “オーラぐるま”で突き破って!」

 モルペコ 「オララララッ……うらららぁ!」


 実況 『モルペコ、“エレキネット”を突き破ったぁ! 早い! 止まりません! そしてモルペコ、ここで“まんぷくもよう”に戻ったぁ!』



“オーラぐるま”。

モルペコの ほおぶくろで作り出した電気エネルギーを、ハムスターの回転車のような形で展開し、その中で走って回転を加えて発射する、モルペコにしか出来ないワザ。素早さを上げる追加効果もある。

そして、エネルギーを“発射”する攻撃とあって、モルペコの素早さ上昇は、ワザの威力にも直結する。


 マリィ 「そのままピカチュウに!」

 モルペコ 「うららっ!」

 サトシ 「“でんこうせっか”で避けろ!」

 ピカチュウ 「ぴかっ……」

 マリィ 「遅か!」


 実況 『“オーラぐるま”またしてもピカチュウに炸裂ぅ! ピカチュウ、とうとう膝をついたぁ!』
 ▼ 99 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/09/28 22:16:11 ID:8UTUmW8Q [2/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


“エレキネット”を突き破った“オーラぐるま”は、威力を落とすことなく、そのままピカチュウに直撃。

“はらぺこもよう”の状態で放っていたから、ワザは悪タイプ。ピカチュウに大きなダメージを与えたようだ。


 サトシ 「クッ……! まだ行けるかピカチュウ!?」

 ピカチュウ 「ぴかっ……!」



ピカチュウの体力は、もう残り僅か。



勝てる。



ううん、勝つ。勝たなきゃいけない。

私はサトシに勝つために、今日まで特訓を積んで来たんだから。


 マリィ 「モルペコを止めるのは無理とよ! モルペコ、ラストこれで決めるけん! “オーラぐるま”!」

 モルペコ 「うららぁぁぁぁぁ!」



モルペコたちとの特訓の結晶が、今日、いま、この大舞台。


私を助けてくれたサトシ。

私の頑張りを認めてくれたサトシ。

私の辛い過去を聞いて、慰めてくれたサトシ。

私の偽りの性格を見破って、本当の私で居ることに自信を持たせてくれたサトシ。


そんなサトシに、私は恋をして――。


モルペコたち みんなで優勝を掴み取る!

そしてその時、私はサトシに――!



 ▼ 100 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/09/28 22:16:56 ID:8UTUmW8Q [3/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



 ユウリ 「マリィちゃん、凄い気迫……」

 飯担当 「サトシに勝ちたいと言う気持ちが伝わってきますね。なにせマリィは、今までサトシに勝ったことが無いんですから」

 ユウリ 「決勝戦の最高の舞台で、サトシに勝つために……か」

 飯担当 「凄いですよ、マリィは。あのサトシのピカチュウを、これほどまで追い詰めてるんですから」

 ユウリ 「うん。ピカチュウ、もう辛そうだもん」

 飯担当 「このバトルの勝敗は……、賭ける想いの差、とでも言うべきでしょか。サトシのそれより、マリィの方が一歩、上回っていた……」

 ユウリ 「マリィちゃんってさ。サトシのこと、絶対好きだよね」

 飯担当 「えぇ。分かりやすいくらい」

 ユウリ 「サトシはバトル好きだからさ、バトルに勝って、サトシに振り向いて貰おうって考えだと思うの、マリィちゃん」

 飯担当 「有り得ますね。そしてそれが今、現実になろうとしている。マリィの想いが ようやく実ることに……」


 ユウリ 「……ううん。マリィちゃんには可哀想だけど、多分それは……グスッ、無理かな」


 飯担当 「えっ?」

 ユウリ 「私だって、マリィちゃんとサトシ……グスッ、結ばれて欲しい。マリィちゃんの想いっ……、ぅっ、グスッ、伝わって欲しいよ……」

 飯担当 「だから、それがいま、叶おうとしてるじゃないですか」

 ユウリ 「だからぁ……グスッ、それがっ、出来ないからっ……」

 飯担当 「どうしてですか」

 ユウリ 「だって……、グスッ、だってさ……、サトシっ、笑ってるんだもん!」



 ▼ 101 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/09/28 22:17:45 ID:8UTUmW8Q [4/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



 サトシ 「……へへっ」


笑った……!?

サトシ、この状況で笑うって……、この状況を覆す方法があるって言うの!?


 サトシ 「マリィの本気、受けて立つぜ! ピカチュウ! もう1発……、もう1発だけ耐えれるか!?」

 ピカチュウ 「びかぁ!」

 サトシ 「よしっ……、ギリギリまで引きつけろ!」

 ピカチュウ 「ぴぃか!」


 実況 『無謀だぁ! 無謀すぎる! ピカチュウ、“オーラぐるま”に立ち向かうつもりです!』


ううん、そんな方法、絶対に無い!

モルペコのスピードは最大だし、この勢いを持ってすれば、“10万ボルト”だって押し返せる。現にピカチュウ、モルペコに押されまくりだったもん。

いくらサトシのバトルセンスが凄いとは言え、この状況を覆すのは……不可能だよ!


 マリィ 「行っけぇぇぇぇぇ! モルペコぉぉぉぉぉ!」

 モルペコ 「うららららぁぁぁぁぁぁぁ!」


モルペコが発射した“オーラぐるま”。

“まんぷくもよう”だから電気ワザになるけど、ピカチュウの残りの体力を考えれば、十分すぎる程の威力だ。

これに立ち向かうなんて、サトシ、そんな無茶、通用しないよ!


 サトシ 「今だピカチュウ! “アイアンテール”を……地面に突きさせ!」

 ピカチュウ 「ぴかぁぁぁぁぁ……ちゅぴっか!」


 マリィ 「えっ……!?」


 ▼ 102 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/09/28 22:19:02 ID:8UTUmW8Q [5/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 実況 『おっとピカチュウ、“アイアンテール”を地面に突き刺したぞ!? そして……、ん? これは……!?』


“アイアンテール”。鋼のように硬化した尻尾を、ピカチュウは地面に突き刺した。

そしてピカチュウは……、地面に突き刺した尻尾を軸に、ゆらゆらと揺れている。その姿は“オタチ”のようだ。


 実況 『なぜサトシ選手、自らピカチュウを不安定な態勢に!? あぁっと、そんなピカチュウにモルペコの“オーラぐるま”が直撃っ……』


 サトシ 「耐えろピカチュウ! 受け流せっ!」

 ピカチュウ 「ぴぃぃっ……かぁ!」



 実況 『ななな、なんと!? ピカチュウ、“オーラぐるま”を上空に受け流した!? ピカチュウの尻尾が“ジャンプ台”の役割を果たしたと言うのか!?』



嘘っ……そんなことって有り得るの!?


いや、でも、これはある意味、理想的な受け流し方だ。

固い尻尾を地面に刺すと言うことは、尻尾の部分は強固だけど、ゆらゆら不安定な体は、衝撃を軽減、もしくは吸収することができる。

そして、実況が言ったように、ピカチュウの尻尾はジャンプ台の役割を果たして、“オーラぐるま”のエネルギーを上空に吹き飛ばしたのだ。


 サトシ 「ピカチュウ! 地面に“エレキネット”だ!」

 ピカチュウ 「ぴっ……かぁ!」

 マリィ 「クッ……、避けてモルペコ!」

 モルペコ 「うらっ!」


落ち着いて……、落ち着くのよ、マリィ。

不意を突かれたけど、モルペコの素早さはピカチュウより上。焦ることなんて無い!


 マリィ 「次が来るけん! 構えるよ!」

 モルペコ 「うららっ!」


避けた隙を狙われないために、モルペコには臨戦態勢を継続させる。

不意打ちで私とモルペコのペースを乱そうなんて考え、通用しないんだから!

 ▼ 103 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/09/28 22:20:09 ID:8UTUmW8Q [6/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 サトシ 「よしっ……、“でんこうせっか”の勢いを使ってジャンプ!」

 ピカチュウ 「ぴぃぃぃ……ぴっかぁ!」


 実況 『サトシ選手、モルペコには目もくれず、ピカチュウにジャンプの指示! 高く飛び上がります!』


なに……、なにをする気なの、サトシ!?

“エレキネット”を避けて隙が生まれた瞬間を狙うんじゃないの……!?


 サトシ 「“オーラぐるま”を“アイアンテール”で打ち付けろ! タイミングが大事だ! ピカチュウ、お前なら出来るっ!」

 ピカチュウ 「ぴぃぃぃかぁぁぁぁ……ちゅぴっかぁ!」





私は、サトシとピカチュウの、絶大なコンビネーションを目の当たりにした。





さっき上空に受け流した“オーラぐるま”のエネルギー。

それは、モルペコが発射した後は方向の制御が出来ず、重力に従って、放物線を描いて落下して来る。

その落下してきた“オーラぐるま”に、ピカチュウは“アイアンテール”を打ち当てたのだ。

発射した時のスピードは大きいけど、落下速度は大したことないから、正確に打ち当てることは可能だ。サトシとピカチュウなら。



 実況 『こんなワザの使い方が……! はっ! 打たれた“オーラぐるま”、モルペコに一直線です!』


 マリィ 「っ……! 避けるよモルペコ! ピカチュウの落下地点まで進んで!」

 モルペコ 「うらっ……」


サトシは凄い。普通じゃ思いつかないようなことを、平然と実行するんだから。

けど、意表を突くだけじゃ勝ったことには ならない。


モルペコは、ピカチュウが打ち付けた“オーラぐるま”を回避して、ピカチュウの落下地点へダッシュする。

ピカチュウが地面に下りて来たタイミングで“オーラぐるま”を放って、今度こそ勝負をつける!
 ▼ 104 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/09/28 22:21:24 ID:8UTUmW8Q [7/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 サトシ 「その場で“エレキネット”! その上に乗るんだ!」

 ピカチュウ 「ぴぃっかぁ!」


ピカチュウは“エレキネット”を繰り出すと、自らその上に乗って、“エレキネット”と一緒に落下して来る。

なるほどサトシ、“エレキネット”を防御壁にしようって魂胆ね。

けど無駄よ。モルペコが放つ“オーラぐるま”は、“エレキネット”なんて突き破って……。



 実況 『ん? おっ……おぁぁぁっと!? 先ほどピカチュウが打った“オーラぐるま”が、地面の“エレキネット”で跳ね返って……ピカチュウの元に!?』



 マリィ 「なっ!?」


 サトシ 「ピカチュウ、その“オーラぐるま”、受け止めろ!」

 ピカチュウ 「びぃぃぃぃがぁぁぁぁぁぁ!」



 実況 『受 け 止 め た !? ピカチュウ、跳ね返って来た“オーラぐるま”を、“エレキネット”を使って受け止めたぞ!? なんということでしょう!? こんな戦法、有り得るのでしょうかぁ!?』



 サトシ 「“アイアンテール”で打ち落とせ! 全力で! 狙いは真下に居るモルペコだ!」

 ピカチュウ 「ちゅびっがぁぁぁぁぁぁ!」



 マリィ 「おっ……“オーラぐるま”! “オーラぐるま”で相殺やけん!」

 モルペコ 「うららっ……!」



 ▼ 105 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/09/28 22:22:17 ID:8UTUmW8Q [8/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告




 飯担当 「ピカチュウが最初に放った“エレキネット”は、モルペコへの攻撃では無く、“オーラぐるま”のエネルギーを、再び上空に戻すため……」

 ユウリ 「凄いよね。“オーラぐるま”を“アイアンテール”で打ったと思ったら、それを“エレキネット”に当てて、バウンド? みたいにピカチュウの元に戻して」

 飯担当 「さらにそれを“エレキネット”で受け止めて、さらにさらに、“アイアンテール”で打ち落とすなんて」

 ユウリ 「まるで……、モルペコがピカチュウの真下に移動して来るのが、分かってたみたい」

 飯担当 「バトル経験豊富なサトシだからこそ、モルペコの動き……いや、マリィの指示を“読めた”んでしょうね。むしろ……」

 ユウリ 「マリィちゃんに“そう指示させるように”、誘った感じ?」

 飯担当 「はい。飛行タイプでない限り、ジャンプした落下地点を変えることは出来ません。普通なら、落下地点に先回りして、狙い撃ちしますよ」

 ユウリ 「打ち落とされた“オーラぐるま”と、今モルペコが発射した“オーラぐるま”、強いのってさ、やっぱり……」

 飯担当 「……はい。真上に発射したワザと言うのは、重力に逆らう分、どうしても威力が落ちてしまいます。対してピカチュウが撃ち落とした“オーラぐるま”は、落下速度が加わります」

 ユウリ 「……グスッ、そっか」

 飯担当 「前言撤回です。サトシの方が、“勝負に賭ける想い”、強かったみたいですね」

 ユウリ 「なんで私っ、グスッ、涙、出ちゃうんだろ。マリィちゃんは……グスッ、マリィちゃんは……」



 ▼ 106 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/09/28 22:23:38 ID:8UTUmW8Q [9/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



相殺なんて出来ないこと、最初から分かってた。


でも、私の指示は、これが精一杯。

最初にモルペコが発射した“オーラぐるま”が、打たれて、跳ね返って、打ち落とされるなんて、予想外にも程があるよ、サトシ。



 実況 『2つの“オーラぐるま”が衝突! しかしっ……あぁっ! やはり! 打ち落とされた“オーラぐるま”の方が押している!』



当然だ。

“打ち上げる”のと“打ち落とす”のじゃ、どっちが有利かなてん、誰だって分かるよ。


そしてピカチュウは――、今、フリーだ。

ピカチュウは、まだワザを放てる状況なのだ。



 サトシ 「“10万ボルト”だ! “オーラぐるま”ごと撃ち落とせぇぇぇ!!!」

 ピカチュウ 「びぃぃぃがぁぁぁぁぁ……ぢゅううううううぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!」



ピカチュウが打ち落とした“オーラぐるま”に、“10万ボルト”が撃ち落とされる。


2つの電気ワザは、混じり合い、共鳴し、大きな雷の集合体となり、威力を増して、落下速度を上げる。



モルペコが放った“オーラぐるま”は、いとも簡単に掻き消されて。



稲妻のように、地面に降り注いだ。



 モルペコ 「うらぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」


 マリィ 「モルペコっ……!?」


 ▼ 107 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/09/28 22:24:19 ID:8UTUmW8Q [10/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


黄色い閃光が、地面を駆け巡って。


落雷の轟音が、空間を突き破って。


有り溢れるエネルギーが、衝撃波となってフィールドを包み込んで。


耐え切れなくなったフィールドは、爆炎と砂埃を放出して。


地響き。


轟音のせいで一瞬聴覚が奪われて、モルペコの悲鳴すら、途中から分からなくなった。


フィールドに立ち込める砂埃に視界を奪われて、モルペコの姿さえ、確認できなくて。


必死で叫ぶ私の声は、モルペコに届くはずもない。


ただ、私には分かる。……いや、誰もが分かると思う。





決着は、ついたと――。





 ▼ 108 ラードン@やみのいし 20/09/28 22:44:04 ID:/QpAJS/g NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 109 ュカイン@やけたきのみ 20/09/29 07:07:23 ID:bW76nIbg NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
とうとうクライマックスか
 ▼ 110 オルブ@デンキZ 20/09/29 20:20:41 ID:XtFIyX1k NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
マリィ…
 ▼ 111 ジスチル@きかいのぶひん 20/10/01 22:07:39 ID:V9oImDKY NGネーム登録 NGID登録 報告
マリィ負けたのか…
 ▼ 112 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/10/03 01:48:52 ID:ES/cUkZ6 [1/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



フィールドに漂う砂埃が、徐々に晴れて行く。


電撃の轟音は止み、観客もバトルの顛末に注目して声を上げず。


恐ろしいほどの静寂。


一瞬が物凄く長く感じられ、砂埃が晴れつつある時間にさえ苛立ちを覚える。



そうして待つこと数十秒……、いや、たった数秒だったかもしれない。



焦げ、抉れ、崩れたフィールドに立っていたのは、ボロボロになったピカチュウだけ。



モルペコは――、私のモルペコは、フィールドに めり込むようにして、倒れていた。



 審判 『モルペコ、戦闘不能。ピカチュウの勝ち。よって勝者、サトシ選手!』




  ― ウオオオオオオォォォォォォォォォ!!!



 実況 『決まったぁぁぁ! 激しいバトルを制したのは、サトシ選手のピカチュウです!!!』



  ― ウオオオオオオォォォォォォォォォ!!!


 ▼ 113 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/10/03 01:49:56 ID:ES/cUkZ6 [2/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


 マリィ 「モルペコっ……モルペコぉ!!!」



溢れんばかりの歓声に、我に返った私は――。

決着宣言から少し遅れて、モルペコの元へ駆け寄った。



 マリィ 「モルペコっ……! 大丈夫と!?」

 モルペコ 「ぅ……らっ……」

 マリィ 「良かった……。頑張ったとね、モルペコ」 ギュッ

 モルペコ 「うらっ……グスッ」

 マリィ 「頑張った……、よぉ頑張ったよ、モルペコ。ありがとう」

 モルペコ 「っ……」

 マリィ 「悔しか。悔しかよ、私も。……でもなんだか、清々しい」



一度は勝利を確信した。

私は、私たちは、このバトルで全力を出しきったから。


でも、サトシの方が強かった。ただそれだけ。

私たちの特訓以上に、サトシも特訓を重ねて、この決勝戦に臨んでいた。ただそれだけ。


本気のバトル、全身全霊を賭けた、全力のバトル。

この清々しさは、私たちの全てをぶつけた、達成感と爽快感。


悔しいけど、このバトルを通じて実感した。



やっぱりサトシは、強かった――。


 ▼ 114 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/10/03 01:51:53 ID:ES/cUkZ6 [3/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



 サトシ 「マリィ!」

 マリィ 「サトシ……」


気が付けば、サトシの声。


顔を上げる。


モルペコを抱きかかえてフィールドに しゃがみこんでいる私に、サトシは手を差し伸べてくれていた。


 サトシ 「ありがとうマリィ。最高のバトルだった!」 ガシッ

 マリィ 「私もっ……、こんな熱いバトル、初めてやけん。とっても楽しかった!」 ガシッ


サトシの手を握ると、彼は私を引き起こす。

立ち上がり、彼と同じ目線に立ち、そして、溢れんばかりの拍手と歓声に気付いた。



  ― ウオオオオオオォォォォォォォォォ!!!


  ― 凄かったぞー!


  ― ピカチュウとモルペコのバトルとは思えない迫力だったー!


  ― 感動しましたー!


  ― 私もモルペコ育てたーい!



 サトシ 「……へへっ。聞こえるかマリィ。この歓声、全部オレとマリィに向けられてるんだぜ」

 マリィ 「凄か……。私たち、こんな凄いところでバトルしてたんね……」



360度、見渡す限りの大熱狂。

歓声は おさまることを知らず、拍手は止むことを知らず。


それほどまで、私たちのバトルは、この大勢の観客たちを感動させたのだ。
 ▼ 115 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/10/03 01:53:42 ID:ES/cUkZ6 [4/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 サトシ 「ありがとうございまーす! ほらマリィも」

 マリィ 「ぁっ……うん! みんなありがとー!」



 実況 『白熱のバトルを終えたサトシ選手とマリィ選手、手を取り合って歓声に応えます。これぞポケモンバトル! ポケモンを通じて、これだけの人々の心が一つになれる……、皆様、今一度、この若きトレーナーに惜しみない拍手を!』


  ― ウオオオオオオォォォォォォォォォ!!!


 実況 『ガラルリーグ決勝戦、ピカチュウVSモルペコ! これはガラルリーグの歴史に名を残すこと間違いありません! サトシ選手、マリィ選手、素晴らしいバトルをありがとう! ありがとう!!!』


  ― ウオオオオオオォォォォォォォォォ!!!


 実況 『そして見事優勝したサトシ選手は、チャンピオン・ダンデへの挑戦権を獲得です! 明日に控えたその大勝負、皆様どうぞご期待ください!!!』


  ― ウオオオオオオォォォォォォォォォ!!!




 マリィ 「そっか。サトシ、明日はダンデさんとバトルなんね」

 サトシ 「あぁ! ダンデさんに勝てば、ポケモンマスターに近付ける……!」

 マリィ 「ふふっ、サトシの夢やけんね、ポケモンマスター。頑張りぃ、応援しとるよ」

 サトシ 「サンキュー。マリィの応援、無駄にしないからな!」





     *     



 ▼ 116 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/10/03 01:55:48 ID:ES/cUkZ6 [5/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



選手控室――。



 マリィ 「はぁ……」



熱狂に包まれたスタジアム。

決着後も拍手は おさまらず、こうして控室に戻って来れたのは、あれから30分も経ってからだった。


優勝したサトシは、明日、ダンデさんとのスペシャルマッチに進む。

今頃サトシは報道陣に囲まれて忙しいんだろうな。

対して私は、形式的とも言える取材を少し受けて、すぐに自由になれた。優勝と準優勝、分かっては いるけど、その扱いの差は大きすぎる。


 マリィ 「負けちゃった……」


私は正直、勝つ気でいた。

サトシに勝つつもりで、今日まで特訓してきたんだ。

そして、サトシに勝って、私のこの想いを、伝えるつもりだった。


 マリィ 「グスッ、勝ちたかった……」


この想いは、サトシに勝って初めて伝えようと思っていた。

サトシへの勝利こそが、私が彼に告白する前提条件だった。


だってこれは、私の片思い。

初めて異性に恋をして、その伝え方も、愛情表現も、なにもかも分からない私。

例の事件で引き籠りがちだった私にとって、異性への告白なんて、想像すらしてこなかったことだ。


だからこそ、サトシに勝利することで、自分に自信を付けたかった。

片思いのサトシに告白する勇気を、奮い立たせたかった。

もしかしたらサトシに迷惑かもしれない――、そんな不安を振り払いたかった。


 マリィ 「グスッ、あと一歩、だったのにっ……」

 ▼ 117 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/10/03 01:57:52 ID:ES/cUkZ6 [6/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


 ― コンコン



 ネズ 「入りますよ」


 マリィ 「アニキっ……」 ゴシゴシ


突然のアニキの訪問に慌てて涙を拭う――けど、アニキには、全てお見通しのようだ。


 ネズ 「良いバトルでしたね。お疲れさんでした」

 マリィ 「うん。ありがと。……勝てなかったけどね」

 ネズ 「サトシのバトルは本物ですよ。恐らく、マリィとは経験値が違います」

 マリィ 「そうだよね。サトシ、何回もポケモンリーグに出て、準優勝までしてる実力者やけん」

 ネズ 「そんな彼と、互角に戦ったんです。ガラルリーグ決勝と言う大舞台で。十分に誇れることですよ」

 マリィ 「けどっ……! 勝てなきゃ……グスッ、意味なかとよ……」

 ネズ 「悔しさは人を成長させます。奮い立たせます。マリィ、お前は今日、一歩成長したんですよ」

 マリィ 「……アニキさ、気付いてるんでしょ?」

 ネズ 「はい?」

 マリィ 「私が、サトシのこと……、すき、だって……///」

 ネズ 「当然ですよ。お前が好きでない奴を、あの隠れ家に入れるはずがありませんからね」

 マリィ 「私ね、サトシに勝ったら、こっ、告白、しようって、前から考えとったの」

 ネズ 「ほぉ」

 マリィ 「けどっ……グスッ、負けちゃった……」

 ネズ 「負けたからと言って、告白してはダメと言う決まりは無いですよ」

 マリィ 「無理やけん……、私っ、勝って自分に自信を付けてっ……、じゃないと告白なんて……グスッ、とても無理やけん……」

 ネズ 「青春ですね。……オレの胸なら、貸してやりますよ」

 マリィ 「グスッ、アニキっ……」 ギュッ


 ▼ 118 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/10/03 01:58:46 ID:ES/cUkZ6 [7/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



私はしばらく、アニキに胸の中で、泣いた。


サトシへの告白が叶わなかった辛さ、悔しさ、悲しさ。


今まで感じたことの無いような感情が波のように押し寄せて、涙が止まらない。


あわよくば……あわよくば。

サトシが私の好意に気付いていて、サトシの方から私に告白してくれないか……。


そんな淡い期待を抱いて、でもそれは有り得ないことだと、すぐに理解して。

都合の良すぎる甘えに、自分自身で嫌になって。



私の恋は、これで終わりなんだ。


私の初恋は、あまりにも短かった。


そしてそれは、私自身の実力不足が原因で。





考えれば考えるほど、涙は止まらなかった。





 ▼ 119 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/10/03 02:01:38 ID:ES/cUkZ6 [8/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 ネズ 「こうしてお前を慰めるのは、久しぶりですね」

 マリィ 「アニキ……、私、スパイクタウンに帰るけん」

 ネズ 「サトシに さよなら せずにですか?」

 マリィ 「うん……」

 ネズ 「考え直しなさい、マリィ。お前のサトシへの気持ちは、そんなものなんですか」

 マリィ 「サトシと会うの……、辛か……」

 ネズ 「お前の気持ちは分かりますよ。けどサトシは、何も言わずにマリィが帰ってしまっては悲しみますよ」

 マリィ 「私の片思いやけん、サトシが悲しむことは なかとよ」

 ネズ 「そうではなく、人としての礼儀ですよ。サトシは お前が心を許した友達でしょうに」

 マリィ 「そうだけど……グスッ、無理やけん。サトシに会ったらっ、グスッ、私っ、揺らいじゃうからっ……」

 ネズ 「まったく。頑固なところは昔からですね」

 マリィ 「アニキ……」

 ネズ 「ならマリィ。オレの手伝いを頼みますよ。いや、手伝いなさい」

 マリィ 「手伝い?」

 ネズ 「明日のチャンピオン戦の後、オレは閉会式でライブすることになっています。お前に裏方を手伝って欲しいのです」

 マリィ 「……帰るな、ってことやけんね」

 ネズ 「そうです。いやマジで頼みますよ。これだけ大規模な会場でのライブは久々なもんで」

 マリィ 「……分かっとー」

 ネズ 「頼みますよ。……まぁアレです。一晩きちんと考えてみなさい。サトシとの関係、本当にそれで良いのか」

 マリィ 「っ……」

 ネズ 「サトシとダンデのバトルも、しっかり見ておくと良いですよ。実力者同士のバトルとなれば、何か得る物があるはずですからね」

 マリィ 「うん……」
 ▼ 120 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/10/03 02:03:02 ID:ES/cUkZ6 [9/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

正直言うと、私は このまま、スパイクタウンに帰りたかった。

サトシに負けてしまった以上、私は彼に告白することは出来ない。告白する勇気はない。

そんな状態でサトシに会うのは辛すぎるし、未練だけが残ってしまう。


でも、サトシは私の唯一の友達でもある。

私の辛い過去を理解して、慰めてくれた、唯一の存在でもある。

そんなサトシに何も言わずに立ち去るのは、確かに少し気が引けてしまう。



アニキの言う通り……、一晩、きちんと考えてみようかな……。



 ネズ 「オレは先にホテルに戻りますよ。お前は明日の夕方、閉会式までは自由です。好きにしてきなさい」

 マリィ 「アニキ……」

 ネズ 「なんですか?」

 マリィ 「ありがとね」

 ネズ 「……えぇ。しっかり悩んで、自分の答えを見つけなさいな」

 マリィ 「うん……」





     *





 ▼ 121 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/10/03 02:03:50 ID:ES/cUkZ6 [10/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



ホテル、ロンド・ロゼ。



チャレンジャーと関係者が宿泊する、シュートシティのホテル。

三ツ星ホテルとあって、館内の装飾、客室のインテリア、レストランの美味しさなど、どれを取っても一流だ。



 マリィ 「はぁ……」


 
私は、自分の部屋のベッドに横たわる。


テレビでは どのチャンネルも、さっきの決勝戦の様子が映し出されている。

当然そこには、私の姿も。


ダイマックスルカリオVSキョダイマックスオーロンゲの迫力あるバトル。

ピカチュウVSモルペコの、決勝戦とは思えないポケモン同士のぶつかり合い。


こうして第三者視点から見ると、私は、私たちは、凄まじいバトルを繰り広げたんだなと、今になって実感した。
 ▼ 122 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/10/03 02:05:12 ID:ES/cUkZ6 [11/11] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

映像がサトシのインタビューに切り替わり、私は思わず、テレビを消した。



サトシのことは好きだ。


私が初めて恋をした相手だ。


でも、その恋が実ることは無い――。



 マリィ 「自分の答え、か……」



一晩考えた所で、答えは見つかるのだろうか。



私は、サトシに勝つために、今日まで特訓してきた。

それは即ち、サトシにバトルで買って、想いを伝えるために、特訓してきたということだ。

旅立った当初は、自分のバトルがどこまで通用するのか試すだめだったけど、サトシに出会って、目標は変わっていた。


そんな私の旅の目的、特訓の目標は、今や、真っ白に燃え尽きてしまっている。



 マリィ 「私っ、どうしたいんだろう……」





   *





 ▼ 123 ルノーム@こうらのカセキ 20/10/03 12:29:42 ID:vTrsVsPw NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
バトルに負けたからって告白を諦めなくていいんやで
 ▼ 124 ビット@ポロックケース 20/10/04 12:46:43 ID:xLWUC00Q NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援よ
 ▼ 125 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/10/05 23:33:08 ID:U6JUaeno [1/12] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告





   *





 サトシ 『これに賭けるぞ! ピカチュウ! “キョダイバンライ”だ!』

 ピカチュウ 『ビガァァァァァァッ!!!』


 ダンデ 『お見せしよう……真のチャンピオンタイム! リザードン、“キョダイゴクエン”!』

 リザードン 『グォォォォォォォッ!!!』



サトシとダンデさんのバトルは、ついにクライマックスを迎え、私とモルペコは、部屋のテレビに釘付けになった。


無敗のチャンピオンを残り1体まで追い詰めたサトシは、やっぱり凄い。

そして、2人とも最後の1体同士、キョダイマックス同士の、勝負を賭けた ぶつかり合いだ。


ピカチュウの“キョダイバンライ”が、リザードンに直撃する。

そしてまた、リザードンの“キョダイゴクエン”も、ピカチュウに直撃する。


互角――では終わらなかった。


“キョダイゴクエン”は、リザードンのみが使いこなす、連続攻撃。

相手を焼き尽くさんとする火の鳥は、あたかも不死鳥“フェニックス”。


フェニックスはフィールドを滑空し、ピカチュウに突進する。

2回、3回、そして、大空に舞い上がり、急降下。動きの遅いキョダイマックスピカチュウが、これを避けることなんて不可能だ。


ピカチュウの脳天に、フェニックスが激突。

途端に衝撃波がフィールドを包み込んだかと思うと、大きな火柱が上がった。

その獄炎はピカチュウを呑みこみ、勢いを増し、焼き尽くす。


苦しそうな断末魔をあげたピカチュウは――。

その獄炎がおさまるとともに、キョダイマックスの姿が解除された。

元の姿に戻ったピカチュウに、もはや立ち上がる体力は残されていなかった。
 ▼ 126 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/10/05 23:33:57 ID:U6JUaeno [2/12] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


 審判 『ピカチュウ、戦闘不能! よって勝者、チャンピオン・ダンデ!』


  ― ウオオオオオオォォォォォォォォォ!!!


 実況 『決まったぁぁぁ! 無敗のチャンピオン、ダンデ! やはり強かったぁ!!!』


  ― ウオオオオオオォォォォォォォォォ!!!


 実況 『しかし! サトシ選手も粘りを見せた! リザードン以外のポケモンは全て戦闘不能。ここまでダンデを追い詰めたチャレンジャーは久しぶり……いえ、初めてのことではないでしょうか!? この大迫力のバトルを繰り広げた2人に、どうぞ皆様、惜しみない拍手を!!!』


  ― ウオオオオオオォォォォォォォォォ!!!





 ― プツン



 モルペコ 「うらっ?」

 マリィ 「やっぱダンデさんは強かね」


勝敗を見届けたところで、私はテレビを消した。


結局私は、サトシと顔を合わせるのが辛くて、こうしてテレビ観戦するしかなかった。

私に もう少し勇気があれば、直接、応援に行けたんだけどな。


 モルペコ 「うららっ! うらぁ!」

 マリィ 「どうしたん?」

 モルペコ 「うらっ! うららー」


モルペコは、私からテレビのリモコンを奪おうとする。

そっか、モルペコも分かってるよね。私がサトシのこと――。
 ▼ 127 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/10/05 23:34:32 ID:U6JUaeno [3/12] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 マリィ 「ごめんモルペコ。私まだ、心の整理、ついとらんの。サトシのインタビュー聞いちゃったら、私また、揺らいじゃう……」

 モルペコ 「うら……」

 マリィ 「一晩考えたけど……、やっぱり私、分からないな。どうすればいいのか」

 モルペコ 「うららっ! うーらっ!」

 マリィ 「告白は出来んけん。勝ったらって決めてたことだし。サトシの顔を見るのも辛か……」

 モルペコ 「うらぁ……」

 マリィ 「ホントは黙って帰るつもりだったけど……、それはダメだよね、やっぱり」

 モルペコ 「うら!」

 マリィ 「でも私っ、どんな顔してサトシに会えば良いんだろう……」



 ― コンコン



 ネズ 「入りますよ」



 マリィ 「アニキ……」

 ネズ 「良いバトルでしたね。感動しましたよ」

 マリィ 「うん。私も」

 ネズ 「閉会式は17時からです。マリィ、約束通りライブの裏方、手伝ってくださいね」

 マリィ 「分かっとーよ」

 ネズ 「……とは言っても、閉会式はチャレンジャー全員参加です。あらかた準備が出来たら、マリィは会場に行かねばなりませんからね」

 マリィ 「そっか。閉会式も参加しなくちゃいけないんだっけ」

 ネズ 「えぇ。閉会式前に帰られては困るんですよ。お前はジムリーダーの妹なんですからね」

 マリィ 「開会式に出なかったジムリーダーに言われてもね」

 ネズ 「とにかく。行きますよ、準備」

 マリィ 「うん。約束やけん、時間ギリギリまで手伝っちゃるよ」



 ▼ 128 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/10/05 23:35:02 ID:U6JUaeno [4/12] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



アニキのライブの準備は、楽譜の整理や配置図の確認と言った、とても簡単な作業だった。

それこそ、私がいなくても問題ないほどに。


この“手伝い”と言うのは、アニキが私を帰らせないようにするための口実であることを確信する。



 ネズ 「マリィ、そろそろ行きなさい」

 マリィ 「うん」

 ネズ 「オレとしては、きっちりサトシと話して欲しいですけどね」

 マリィ 「うん……、けど、やっぱり私、まだ気持ちの整理ついとらんよ……」

 ネズ 「別に告白しろと言ってる訳じゃないですよ。決勝戦を戦った相手に敬意を払い、普段通りに接すれば良いんです」

 マリィ 「普段通り……か。出来るかなぁ……」

 ネズ 「……まぁ、オレに出来るのはここまでです。あとはマリィ、お前次第ですよ」

 マリィ 「分かっちょる。……行ってくるね」

 ネズ 「えぇ。ガラルリーグの締めくくり、楽しんで来なさい」



アニキは優しく、私を送り出してくれた。


本当に、アニキには いつも助けられてばっかり。

何か……、アニキに恩返し出来ること、考えないとな。



 ▼ 129 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/10/05 23:35:45 ID:U6JUaeno [5/12] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



 マリィ (サトシと普段通りに……か)


会場――スタジアムに向かうまで、私は考える。


普段通りって簡単に言うけど、私にとっては高いハードルだ。

サトシに勝ったら告白するつもりだったのに、実際は負けてしまって、告白は叶わなくて。

失恋した訳じゃないけど、失恋したみたいな、私の心境。


早すぎた、初恋の終焉。


勿論、負けたから告白しちゃいけないなんてルールは無いけど、私の中で、ブレーキが かかっている。

“異性を好きになる”ということを知らなかった私が、初恋相手に気持ちを伝えるなんて、相当な勇気が必要だ。

その勇気の、自信の源こそ、“サトシに勝つこと”だったのに。



 マリィ (ダメだな……私。ぜんぜん整理つかないよ……)



一晩考えたけど、未だ私は、答えを導き出せていない。

そんな状態でサトシと接するなんて、やっぱり無理があった。





 マリィ (悲しいけど……、申し訳ないけど……、閉会式、サトシと会わないようにしないとな……)





 ▼ 130 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/10/05 23:36:59 ID:U6JUaeno [6/12] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



 司会 『お待たせいたしました。只今より、ガラルリーグ閉会式を行います。今年のガラルリーグプログラムも、とうとうラストです。しかし皆様! 最後まで盛り上がって行きましょう!』


  ― ウオオオオオオォォォォォォォォォ!!!


 司会 『まずは表彰式です。第3位のモブ選手、準優勝のマリィ選手、そして見事優勝を果たしたサト選手! どうぞ表彰台にお上がりください!』


  ― ウオオオオオオォォォォォォォォォ!!!



 サトシ 「表彰台……。何人ものチャレンジャーに勝ち抜いて、ガラルリーグでトップ3に入った証……。凄ぇよな、オレたち!」

 マリィ 「うっ、うん。凄かね……」



サトシと会わないようにって、考えたそばからガッツリ会っちゃったよ……。


そうだよね、表彰式があるんだから、どうしたってサトシと顔を合わせるよね。

アニキめ、知ってた はずなのに……。



 司会 『白熱のバトルを制したトップ3には、チャンピオン・ダンデより、トロフィーが贈呈されます!』


  ― ウオオオオオオォォォォォォォォォ!!!



ダンデさんから、銀色に輝く準優勝のトロフィーを受け取り、閉会式はスケジュール通りに進行してく。


隣に居るサトシが気になって気になって落ち着かないけど、ふと私は、この空間を見渡した。





表彰台の上から眺める景色は……、壮大だった。





大きな大きなスタジアム、沢山の観客たちからの視線と声援、注目を浴びて、私は表彰台に立っている。

チャレンジャーたちが凌ぎを削って目指していた舞台に、私は今、立っている。
 ▼ 131 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/10/05 23:37:40 ID:U6JUaeno [7/12] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


 マリィ (……凄かね)


ほんの数か月前までは、考えられないことだった。

あの事件のせいで引き籠りがちだった私が、こんな大舞台に立って、準優勝と言う栄光を手に入れるなんて。



 マリィ (あぁ……そっか)



そして、私は思う。

今の私があるのは、私を手厚くサポートしてくれたアニキと――。


私のことを助けてくれて、理解してくれて、慰めてくれた、サトシのお陰だと。

私に友達と触れ合う楽しさを教えてくれて、恋を経験させてくれて、私の目標となってくれた、サトシのお陰だと。



 マリィ (悩む必要なんて、始めっから無かったじゃん……)



私の初恋は実らなかったけど、私にとって、サトシは大切な存在であることに、間違いは無い。

サトシに伝えたいことは、好きと言う気持ちだけじゃない。むしろ、もっと重要なことだった。



 マリィ (サトシに伝えなきゃいけないのは……)





 “ あ り が と う ”。





感謝の気持ち、感謝の言葉。

恋心よりも美しい、恋心よりも大切な、私の本心だ。
 ▼ 132 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/10/05 23:39:05 ID:U6JUaeno [8/12] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



 司会 『それでは お三方、表彰台を下りる前に、皆さんに一言、お願い致します』


えっ……うそっ!?

ここでインタビューなんて聞いてないんだけど!?


 モブ 「えっと、3位と言う結果になったのは、僕を信じてついてきてくれたポケモン達の――」


係の人にマイクを手渡され、3位の人が話し始める。

どうしよう……、私、こういうの苦手やけん、どんなこと話せばいいの!?



 サトシ (マリィ!)

 マリィ (っ……サトシ?)

 サトシ (マリィは準優勝を勝ち取ったんだ。観客たちにとって、マリィは凄ぇ存在なんだ。今の気持ちを、堂々と話せば良いのさ)

 マリィ (今の気持ち……)





 モブ 「――以上です。ありがとうございました!」


  ― ウオオオオオオォォォォォォォォォ!!!


 司会 『モブ選手、ありがとうございました。続きまして、準優勝のマリィ選手! お願いします!』



静まり返るスタジアム。

観客が、選手たちが、スタッフたちが、みんなが私に注目する。

バックヤードで待機しているアニキも、客席に居るユウリも、そして、隣に居るサトシも。

私の肩に乗っている、大切なパートナー、モルペコも。



 …… はーっ、ふーっ。



 ▼ 133 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/10/05 23:40:25 ID:U6JUaeno [9/12] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


私はっ!

私は……、正直、準優勝できるなんて、思ってもいませんでした。

人付き合いが苦手でっ……、チャレンジャーの皆さんの中には! そのっ……、高圧的な態度を取ってしまった人も、けっこう居ると思います。

失礼なこと言ってしまった皆さん、ごめんなさい!


でも私っ……!

とっても楽しかったです!

こういう大規模なイベントに出るようなタイプじゃなかったけど……、とっても楽しかったです!


ポケモンたち、みんな全力でバトルしてくれて。

みんな、私の特訓に付き合ってくれて。

ポケモンの研究とかして、8つのジムバッジをゲットして。

私と、私のポケモン達で掴んだ準優勝って結果は、私にとって、かけがえのないものです。ねっ?

 ― うらら〜♪


でも、こんな私が準優勝まで辿り着くことが出来たのは、そのっ……、目標となるトレーナーが居たからです。

私は、彼に勝つことを目標に、ポケモン達と一緒に、今日まで特訓を重ねてきました。

彼が居なかったら、私には、準優勝なんて無理でした。

それどころか、8つのジムバッジを集めて、このガラルリーグに出場することだって、無理だったかもしれません。


だから、いま、この場で……!


人付き合いが苦手だった私に――。

何度もキツく当たって、避けようとしてきた私に――。

友達が居なかった私に、優しくしてくれて。励ましてくれて。


私に勇気をくれて!


ありがとう、サトシ。

サトシが居なかったら、今の私は無かったけん。

本当、ありがとーね、サトシ。


 ▼ 134 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/10/05 23:42:04 ID:U6JUaeno [10/12] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


なに言ってんだよマリィ。オレの方こそ、ありがとう。

 ― えっ?


ダンデさんには申し訳ないけど、決勝戦でのマリィとのバトル、オレがガラルに来て、一番 燃えたバトルだったぜ。

 ― サトシ……。


マリィとは、旅の途中で何度も会って、何度もバトルしてきた仲なんです。

マリィ本人が言った通り、人見知りとかあって、すっごい親しくしてきた……って訳じゃないですけど、少なくともオレは、マリィをライバルだと思って、特訓してきました。


昨日の決勝戦の、ルカリオとオーロンゲのバトル、凄ぇ熱くなりました!

あの2体、リオルとベロバーの頃からライバル意識持ってて、その決着を、決勝戦で、ダイマックスバトルで出来たのは、トレーナーとして最っ高に嬉しかったです!


ラストのピカチュウとモルペコのバトルだって。

決勝のラストバトルに相応しくないって思った人も居たかもしれませんが、この2匹は、オレとマリィの最高のパートナーなんです。

一番付き合いが長い、オレたちが一番信頼してるポケモンなんです。

最高のパートナー同士で、全力でぶつかり合って……。


そのっ……、オレあんまインタビュー慣れしてないから、あんまり上手いこと言い表せないけど……。

とにかく、最高の決勝戦でした!

ピカチュウは、オレの無茶な指示を聞いてくれたし。

マリィとモルペコは、そんなオレに、全力で挑んで来てくれたし。

本当に、こんなに楽しくて、熱く燃えたバトル、久しぶりでした!


バトルを見守っててくれた観客の皆さん!

決勝戦までバトルしてくれたチャレンジャーの皆さん!

スタッフや関係者の皆さん!

本当に、素晴らしい時間を、ありがとうございました!


それと……マリィ!

 ― ぁっ……はい!?


決勝戦、楽しかったぜ!

あんなに熱いバトルをありがとう。決勝でオレとバトルしてくれて……ありがとう!

 ▼ 135 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/10/05 23:42:48 ID:U6JUaeno [11/12] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



  ― ウオオオオオオォォォォォォォォォ!!!



 マリィ 「サトシっ……」

 サトシ 「ほら、観客たちにアピールだ!」 ギュッ

 マリィ 「っ……!?」

 サトシ 「モブ選手も」 ガシッ

 モブ 「はい!」



 サトシ 「皆さーん! 本当にっ……素晴らしいガラルリーグ! ありがとうございましたー!!!」

 モブ 「楽しかったです! ありがとうございましたー!」

 マリィ 「あっ、ありがとう、ありがとうございましたー!」



 司会 『表彰台のサトシ選手、マリィ選手、モブ選手。3人のチャレンジャーが手を取り合って、大きく手を振ってくれています! これぞポケモンを通じて生まれる友情! 皆様、ガラルリーグを大いに盛り上げてくれたこの3名に、惜しみない拍手と声援を!』


  ― ウオオオオオオォォォォォォォォォ!!!


 ▼ 136 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/10/05 23:43:44 ID:U6JUaeno [12/12] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


ねぇサトシ。


サトシってさ、ホント、素敵やけんね。

サトシのこと、ますます好きになっちゃうじゃん。


勝手に気まずくなって、勝手に避けようとしてた私がバカみたい。

サトシは純粋で、真っ直ぐで、他人の悪いとこより良いとこを見つけてくれる、とっても優しい人。

そんなサトシに遠慮する必要なんて、ぜんぜん無かったのに。


サトシは私のこと、ライバルって思ってくれて。

大切なパートナー同士で迎えた決勝戦も、最高だと言ってくれて。


こうやって、なんの躊躇いも無く手を握ってくれるような、純粋なサトシは――。

きっとまだ、恋になんて興味ないと思う。

ポケモン一筋で、ポケモンバトルに全力をかける、本当に純粋な男の子。



そんなサトに、私は、一人のトレーナーとして、認めてられて。



それで十分なんじゃないかな。


今のサトシと、今の私にとっては……ね。





 司会 『名残惜しいですが、そろそろお別れの時間です、フィナーレを飾るのは! スパイクタウン・ジムリーダーであり、シンガーソングライターでもある、ネズさんのスペシャルライブです! ネズさん、どうぞステージへ!」


  ― ウオオオオオオォォォォォォォォォ!!!





   *   




 ▼ 137 ッシー@ミックスオレ 20/10/06 16:13:56 ID:QH16g7Sw NGネーム登録 NGID登録 報告
良いね
 ▼ 138 イバニラ@けいけんアメS 20/10/06 18:42:09 ID:RVhsaFu6 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
やはりサトシは最後の最後で負けるという役割が似合う
 ▼ 139 ルーラ@ナナシのみ 20/10/09 22:59:23 ID:o89Y8m7g NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
最後の戦いですら主人公補正のかからない男
 ▼ 140 ーブシン@アクセサリーいれ 20/10/10 16:51:25 ID:9Zw2AoQQ NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
乙女なマリィ可愛い
 ▼ 141 ルタン@すいせいのかけら 20/10/11 16:48:20 ID:7ER.PxhM NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 142 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/10/21 23:14:42 ID:L6iUe7ss [1/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



   *





 ユウリ 「サトシー! マリィちゃーん!」



閉会式が終わって、選手用控室から外に出ると、ユウリが待ち構えていた。


 サトシ 「お待たせ。いやぁ、やっぱ緊張したな〜」

 ユウリ 「格好良かったよ、2人のスピーチ! 特にマリィちゃん、最後にサトシに“ありがとう”って。もう私、感動して泣いちゃったよ」

 マリィ 「ありがと。私、そういうの苦手だから恥ずかしかったけど……」

 ユウリ 「けど?」

 マリィ 「サトシの おかげ。あの時アドバイスくれなかったら、私、しどろもどろなスピーチになって、雰囲気壊しちゃってたよ」

 サトシ 「へへっ。マリィ、あんなに良いスピーチ出来るんだからさ、もっと自信持って良いんだぜ」

 マリィ 「……うん。ちょっとだけ、自信持てた、かな」

 ユウリ 「ふふっ。サトシとマリィちゃん、なんだか良い雰囲気だねっ」

 マリィ 「っ……しぇからしか!」

 サトシ 「ん?」

 ユウリ 「あははっ。ほらサトシ、準備出来てるから早く」

 サトシ 「おっ、そうだな」

 ユウリ 「マリィちゃんも一緒に来て!」

 マリィ 「一緒に? 何処へ?」

 ユウリ 「最後のカレーパーティー。向こうの公園で、飯担当君が準備してくれてるんだ」

 サトシ 「マリィも行こうぜ。最後くらい、皆と仲良く食事も良いんじゃないか?」

 マリィ 「うん。って言うか“最後”って?」

 ユウリ 「サトシ、明日カントーに帰るんだよ。あれっ……聞いてなかったの?」

 マリィ 「えっ……?」


それは、突然のことだった。

あまりにも突然過ぎて、頭が上手くまわらない。

そして、サトシとユウリに言われるがまま、私は そのカレーパーティーとやらに同席することになった。
 ▼ 143 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/10/21 23:15:41 ID:L6iUe7ss [2/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



 飯担当 「それでは……、サトシの優勝とマリィの準優勝を お祝いして、ささやか ながら、カレーパーティーを行いたいと思います!」

 ユウリ 「イェーイ!」

 サトシ 「美味そう……!」

 ピカチュウ 「ちゃぁ〜」


広々とした公園の一角で、レジャーシートを広げてのカレーパーティー。

大きな鍋には大量のカレーが作られていて、別皿には沢山のトッピング具材が用意されている。

あらびきヴルスト、とくせんリンゴ、ふといながねぎ、みずべのハーブ、フライもりあわせ、モーモーチーズ、レトルトバーグに、しんせんクリームも。


 ユウリ 「マリィちゃん、トッピング何にする?」

 マリィ 「ん、えっと……」

 サトシ 「オレ最初は“フライもりあわせ”!」

 飯担当 「さすがサトシ。胃にくるフライ系は最初に食べておくのがベストですね」

 マリィ 「じゃあ、私も“フライもりあわせ”で」

 ユウリ 「んー? マリィちゃん、サトシと お揃いで行くんだねー」

 マリィ 「しぇからしか。それよりサトシ、ホントに明日……、帰っちゃうの?」

 サトシ 「あぁ。元から そのつもりだったんだ」

 マリィ 「そうなんだ……」


サトシは明日、帰ってしまう――。


それは、やっぱり事実だった。

その事実が私に突き刺さって、色々な想いが頭の中を駆け巡って、そして思考が停止する。受け入れたくないと、私自身が訴えている。
 ▼ 144 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/10/21 23:22:41 ID:L6iUe7ss [3/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 ユウリ 「マリィちゃん、やっぱり……残念?」

 マリィ 「残念って言うか、急だから驚いてる」

 サトシ 「ごめん。ガラルリーグが終わったら すぐ帰らなきゃいけないって、マリィには言ってなかったよな」

 飯担当 「サトシは元々、ダイマックスの調査に来てたんですよ」

 マリィ 「調査?」

 サトシ 「オーキド博士の研究の手伝いでさ。マグノリア博士のところで、2週間くらい調査するつもりだったんだけど……」

 ユウリ 「ちょうどガラルリーグの時期だったから、出場しちゃったんだよね」

 サトシ 「あぁ。調査の報告とかしなくちゃいけないのに、オーキド博士に無理 言っちゃってさ」


そっか。

だからサトシ、ガラルリーグ終わって すぐに帰らなきゃいけないんだ。

仕方ないことだけどさ、こんなに急に、お別れになるなんて……。


 サトシ 「でも、あの時ユウリがマグノリア博士の研究所に来なかったら、ガラルリーグに出れなかったんだよな、オレ」

 ユウリ 「ふふっ。なんだか懐かしいね」

 サトシ 「あの時は驚いたぜ。“私を旅に連れてってくれるなら、ツテで推薦状をあげるよ”なんて言い出すんだもんなー」

 飯担当 「ユウリ、そんな誘い方だったんですね」

 ユウリ 「うん。ほら、私ってポケモンバトルは全然でしょ。でも旅するのは憧れてたんだ」

 飯担当 「とは言っても、初対面の男子の旅に同行するって、けっこう勇気いりますよね。……あ、別にサトシを貶してる訳じゃないですよ?」

 サトシ 「ははっ。分かってるよ」

 ユウリ 「マグノリア博士の知り合いなら安心かなーって。それに、ピカチュウの育て方を見れば、サトシがポケモン想いの良い人だって、すぐに分かっちゃったもんねー?」

 ピカチュウ 「ぴぃか♪」

 飯担当 「まぁ、そんな僕も、サトシの人柄に惹かれて、旅に同行したんですけどね」

 ユウリ 「サトシ、思った通り良い人だったもん。ビート君がジムチャレンジの資格を剥奪された時とかさ」

 飯担当 「えぇ。過ちを犯した彼に、寛容な心で接したサトシは、やっぱり流石だなと思いましたよ」

 サトシ 「へへっ、よせよ恥ずかしい。アイツがポケモンを信じる心は本物だったからさ。放っておけなかったんだよな」

 ピカチュウ 「ぴかぴか」
 ▼ 145 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/10/21 23:23:57 ID:L6iUe7ss [4/4] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


サトシたちは、旅の思い出話に花を咲かせている。



けど私は――。



度々サトシと出会うジム巡りの旅は、思い返せば、とても楽しいものだった。


最初の方こそ、他のチャレンジャーに威圧的な態度をとってたけど、サトシと出会って、サトシと触れ合って行くうちに、私自身、色々と改める部分が見えて来て。

他人と関わることに抵抗があった私を、良い方向へと導いてくれて。

私の辛い過去を、慰めてくれて。



サトシには、感謝しかない。



サトシは私の恩人であって、初恋の人。


その初恋も、決勝戦でサトシに負けちゃったことで、心の中に しまっておくことを決意した――つもりだった。

この恋の行方は、自分の中で きちんと区切りをつけた――つもりだったのに。


明日でサトシと お別れって思うと……、なんでだろう、胸が締め付けられるような感じ。


本当は、もっとサトシと一緒に居たかったのに。


なのに、なのに……。



  ユウリ (マリィちゃん……)



私は どこか上の空のまま、カレーパーティーの一時は、あっという間に幕を閉じてしまった。



 ▼ 146 メパト@いのちのたま 20/10/22 21:31:31 ID:BMREFeE6 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
更新来てた。優等生キャラじゃないユウリもいいね。
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 ▼ 147 トカゲ@ずぶといミント 20/10/23 08:33:19 ID:CC5Q2p2Y NGネーム登録 NGID登録 報告
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