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【R-18】こんな時期だし、ゲーム主人公のイチャエロSS書いてく【完結編】

 ▼ 1 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/12/02 01:03:13 ID:gRBAl3og [1/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

【R-18】新学期だし、ゲーム主人公のイチャエロSS書いてく
https://pokemonbbs.com/post/read.cgi?no=965262


上記SSの続編です。

以下、簡単な あらずし。

 ▼ 25 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/12/02 22:38:20 ID:gRBAl3og [2/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告





 ユウリ 「グスッ……、マサルのバカっ……」



テントの中で、涙が溢れ出る。

マサルを叩いた右手がヒリヒリと痛む。叩かれたマサルは、もっと痛かったと思う。


 ユウリ 「なんでっ……グスッ、マサルっ、私の気持ちっ……、ぜんぜん知らないでっ……」


マサルが私のことを心配してくれているのは分かる。

でも、あんな言い方は酷いよ。チャンピオンになったこと自慢してるとか、そんなの絶対に有り得ないのに。


むしろ私は――。



 ユウリ 「マサルにっ……グスッ、認めてっ、欲しかった、だけなのにっ……」



旅に出る前――。


私とマサル、ホップは、ご近所さんと言うこともあり、3人で よく遊ぶ仲だった。

ただ、やっぱり私は、マサルとホップに女の子扱いされてしまう。

嫌じゃないけど、それがなんだか悔しくて。マサルが私に気を遣ってくれるのは、私が女の子だからなのかなって。


ジムチャレンジも、一緒に巡ろうと誘われていた。女の子の一人旅は危ないから。

その気持ちは嬉しいけど、私だって1人のトレーナー、いつまでも守って貰う必要は無いと証明したくて、強引に一人旅をしてきた。


そうして掴んだチャンピオンと言う立場。


もう私は弱い女の子じゃないってことを、マサルに認めて貰いたかった。

一人前のトレーナーとして、マサルと対等な関係になって、マサルに振り向いて貰いたかった。



 ユウリ 「なのにっ……グスッ、なんで、マサルっ……」

 ▼ 26 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/12/02 22:39:52 ID:gRBAl3og [3/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

マサルに酷いこと言われて、言い返してしまった私も、大人げなかったと思う。

パンツを見られた恥ずかしさが あったとは言え、マサルのことを叩いてしまったのは、最低だと思う。


それに――。


 ユウリ 「マサルのことっ……、全然嫌いじゃないのにっ……グスッ、大好きなのにっ……」



“大嫌い”。


自分の口からマサルに そう言ってしまったことを、私は酷く後悔している。

マサルに意識して貰うために、今まで頑張って来たというのに、その一言で、今までの苦労が台無しになってしまった。


 ユウリ 「んっ……グスッ、ヒック……グスッ、うぅぅっ……」


マサルのことを、私は好き。

無防備な姿だって、マサルの前だから見せてきたのに。

パンツを見られちゃったのは恥ずかしかったけど、それでもマサルは私のことを意識してくれない。



 ユウリ 「グスッ、マサルっ……」

  ― クチュッ



虚しさ、寂しさ、悔しさ。

色々な想いが渦巻いて、気付けば私は、自分の秘部に手を伸ばしていた。
 ▼ 27 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/12/02 22:41:14 ID:gRBAl3og [4/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


 ユウリ 「んっ……、ぁっ、んくっ……///」 クチュクチュ


ダメだよ私。

テントの外にマサルが居るのに。そんな声だしたらバレちゃうのに。


でも……、止まらない。


 ユウリ 「ふっ……んぁっ、んっ……///」 クチュクチュ


なんで……。

言い争った後なのに。嫌いって言った後なのに。


ダメ……、止まらない。


ワンピースのボタンを外す。ブラをずらす。

固く突起している乳首を、自分自身で撫で、摘まみ、責める。


 ユウリ 「やっ……、ぁぁっ、んくっ……///」 クリクリクチュクチュ


パンツの上から撫でているアソコが、じんわりと湿ってくる。

シャワーを浴びた後なのに、私のアソコ、もう こんなに濡れちゃって……。


 ユウリ 「マサルっ……グスッ、マサルぅ……///」 クリクリクチュクチュ


マサルに触られることを想像して、一人エッチ。

とんでもなく虚しいことのはずなのに、その手を止めることが出来ない。


私は、マサルにエッチなことされるのを、いつの間にか望んでいた。

一緒に遊んでいるうちに、ホップじゃなくてマサルを好きになって、マサルの気を引こうと、自分なりにアプローチしてきたのに。

でもマサルは、全然気付いてくれなくて、いつまでも私を、弱い女の子扱いして。

マサルの優しさ、気遣いは嬉しいけど、でもそれは、“私だから”じゃなくて、“女の子だから”。私に対するものじゃなく、女の子に対するもの。
 ▼ 28 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/12/02 22:47:06 ID:gRBAl3og [5/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 ユウリ 「ぁっ……くっ、んっ、ダメッ、マサルっ……///」 クリクリクチュクチュ


私、こんなにマサルのこと、想ってるのに。

マサルのこと想像しながら一人エッチするほど、マサルのこと好きなのに。

大嫌い、なんて、嘘なのに……!


 ユウリ 「はふっ、ふーっ、んぁっ……っ〜///」 クリクリクチュクチュ


マサルに見られた白いパンツは、どんどん湿り気を増していく。

こんな姿、もしマサルに見られたら……。私が1人エッチしてるところ、マサルに見られちゃったら……。



 ユウリ 「マサルっ……ぅぅあっ、だめっ、ふっ、ふーっ、いっ……んくっ!」

  ― ビクン! ビクッ……ビクビクッ……!



声を押し殺して、私は絶頂した。

マサルのことを考えながら、マサルにエッチなことされる妄想しながら、私はイッてしまった。



 ユウリ 「はぁっ、はぁっ……はぁっ……」 ビクッ



虚しいけど、気持ち良い。

気持ち良いけど、虚しい。



そんな矛盾した感情が、私の中でグルグルと渦を巻き――。



気付けば私は、眠りに落ちていた。





 ▼ 29 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/12/03 22:34:12 ID:azq2Itvg [1/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



翌朝は、早くに目が覚めた。



正直言うと、こんな気持ちで調査なんて やりたくなかった。

けどこれは、チャンピオンとしての仕事。仕事を放り出すことは許されない。


 ユウリ (1日調査に打ち込めば……、少しは気持ちも切り替わるかな……)


マサルを起こさないように、そっとテントから出る。

そして、今日1日はマサルと会わないように、エリアを変えて、ハシノマ原っぱ へと向かった。





 ユウリ 「はぁ……」

 インテレオン 「めそ〜」

 ユウリ 「ごめんねインテレオン、溜め息ばっかりで」


ハシノマ原っぱの調査を始めて、気付けば私は、溜め息ばかり付いていた。

マサルに あんな酷いこと言われたショックと、マサルのことを大嫌いと言ってしまったことの後悔。


 ユウリ 「私……、マサルと仲直りできるのかな……」

 インテレオン 「めそ……」


仕事だと言うのに、なかなか身が入らない。

私はチャンピオンと言う責任ある立場なんだから、私情を持ちだしたらダメなのに。


 ユウリ 「マサルと2人でキャンプ……、楽しみにしてたんだけどな……」


道ゆくポケモンたちの様子は、目では追っているけど、どうにもボーっとしてしまうせいで、深く確認することが出来ない。

インテレオンが目を光らせてくれているお陰で、傷付いたポケモンの見落としは ないはずだけど……。
 ▼ 30 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/12/03 22:36:01 ID:azq2Itvg [2/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


 ユウリ 「……ぁ」


気付くと、私の目の前には川が流れていた。


 ユウリ 「あちゃ……、いつの間に……」


ボーっとしていたせいで、いつの間にかハシノマ原っぱを抜けて、エンジンリバーサイドに来てしまっていたようだ。

それは即ち、エンジンシティ東の橋に気付かなかったことになる。危なっかしいほど、私はボーっとしていたようだ、


 ユウリ 「ダメだな、私。これじゃダンデさんにも申し訳ないよ……」


そうして戻ろうと思った、その時。


 インテレオン 「……めそ!」

 ユウリ 「どうしたの?」


インテレオンが川の先を指さしたかと思うと、その方向に走り出す。


 ユウリ 「あっ……待って!」



慌てて追いかけると、そこには――。

甘い香りを放つ、赤色を薄くしたような汁が、地面に広がっていた。



 ユウリ 「これ……、血、じゃないよね」

 インテレオン 「めっそ!」


そしてその汁は、点々と川沿いに伝っている。

まるで――、攻撃を受けて傷を負ったポケモンが、何者かに連れ去られたかのように。


 ユウリ 「……行くよ!」

 インテレオン 「めそぉ!」


この汁は、カジッチュのものである可能性が高い。

カジッチュと言えば、リンゴを住処として、進化するまでの間、その果肉を食べて成長するポケモンだ。

とすると、この汁はリンゴの果汁で、カジッチュ自身が深刻な傷を負っていることは無い――と信じたい。
 ▼ 31 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/12/03 22:37:53 ID:azq2Itvg [3/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 ユウリ 「はぁっ、はぁっ、インテレオンはさっ、どう思う?」

 インテレオン 「めっ?」

 ユウリ 「カジッチュはっ、関係ないって可能性、どれくらいあると思う?」


あわよくば、私の勘違いであって欲しい。

単純に、実っていたリンゴを食べた野生ポケモンが、住処に持ち帰る途中で、汁を垂らしてしまった――。

そんな おっちょこちょいな 野生ポケモンの仕業であって欲しい。


 インテレオン 「………」 スッ

 ユウリ 「そっか……」


けど、インテレオンは首を横に振った。

ポケモンにしか分からない何かを、感じ取ったんだと思う。

じゃなかったら、冷静なインテレオンが突然走り出すようなことは無いはずだ。


 ユウリ 「この事件の何かが分かるかもしれないね。気を付けて行くよインテレオン!」

 インテレオン 「めそぉ!」

 ユウリ 「スマホロトム、録画の準備、お願いね!」

 スマホロトム 「オマカセ ロトー」


スマホロトムを準備して、いつ真相に辿り着いても良いように。

インテレオンは戦闘準備、私も走りながら周囲を注視する。


ガラル新チャンピオンとして、この事件は、私が解決しなくちゃいけないんだ!




 ▼ 32 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/12/03 22:39:24 ID:azq2Itvg [4/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



汁を辿って行くと、目の前に高い崖が迫って来た。



 ユウリ 「行き止まり……」


けど、汁は崖の袂にある茂みの中へと続いている。

あの茂みの中にカジッチュが居る――。そして、カジッチュを襲った犯人も――。


 ユウリ 「準備は良いね?」

 インテレオン 「めそ」


茂みまで、あと50メートルってところ。

足音を立てないように、少しずつ距離を詰めていく。



40メートル。



30メートル。



20メートル。





 『グシャァァァァァァァァッ!!!』





 ユウリ 「っ!」 ビクッ!

 インテレオン 「めっそ!」 バッ!


インテレオンが私を守るように、一歩前に出る。

次の瞬間、茂みから飛び出して来たのは――。


 グソクムシャ 「シャァァァァッ!」


白銀に輝く体が美しい、立派なグソクムシャだった。
 ▼ 33 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/12/03 22:41:10 ID:azq2Itvg [5/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 ユウリ 「見るからにレベル高そう……。こんな高個体、ワイルドエリアに住んでるんだ……!」


 グソクムシャ 「グシャッ!」


どうやらグソクムシャは、私たちを敵と認識しているようだ。

体長2メートルを超す巨体が水を纏って突進してくれば、たいていのトレーナーは怖気づいて逃げ出すと思う。


 ユウリ 「凄い“アクアブレイク”……! インテレオン、“エアスラッシュ”で向かい打つよ!」

 インテレオン 「めそぉ!」


けど、私たちは逃げ出すなんて有り得ない。

事件の解決もそうだけど、私はガラルチャンピオン。野生ポケモン相手でも、売られたバトルは受けて立つ!


 グソクムシャ 「ムシャッ……!」


“エアスラッシュ”は効果抜群。

グソクムシャの勢いは弱まって、“アクアブレイク”は不発に終わる。


 ユウリ 「連続で“エアスラッシュ”よ!」

 インテレオン 「めっそぉ!」


 グソクムシャ 「グッ……」


無数の空気の刃がグソクムシャを襲う。

レベルが高くても、グソクムシャの素早さは高が知れている。距離を取って一気に畳みかけるのが最善だ。


 グソクムシャ 「グッ……シャァァァァァッ!」


けどグソクムシャは粘る。

雄叫びを上げたかと思うと、自慢の鋭い爪を振りかざし、“エアスラッシュ”の雨を強引に突き進む。

これは“きりさく”もしくは“シザークロス”。なら……。
 ▼ 34 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/12/03 22:45:47 ID:azq2Itvg [6/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 ユウリ 「引きつけて!」

 インテレオン 「めそ……」


インテレオンに迫りくるグソクムシャ。

大きな爪を振りかざして、大きな足音を立てて、インテレオンの倍以上の重さのグソクムシャが、すぐ目の前まで。


 ユウリ 「“ふいうち”!」

 インテレオン 「めそっ!」


 グソクムシャ 「ムシャッ……!?」


グソクムシャの攻撃を受け流す、まさに不意打ち。

見事に決まって、よろめくグソクムシャの巨体。


 ユウリ 「終わらせるよ! 連続で“エアスラッシュ”!」

 インテレオン 「めっそぉ!」


ガラ空きの背中に、“エアスラッシュ”の集中砲火。

グソクムシャは防御は高いけど、特防は そこまででもない。

一方、インテレオンは特攻が優秀。メッソンの時から一緒に特訓してきた私のインテレオンなら尚更。


 グソクムシャ 「ッ……」


とうとうグソクムシャは倒れた。


けど、次の瞬間。



 『クマァァァァァァ!』

 『クゥゥゥゥゥゥゥ!』

 『グママァァァァァ!』


 ▼ 35 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/12/03 22:48:04 ID:azq2Itvg [7/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 ユウリ 「今度はキテルグマ……、しかも3匹!?」

 インテレオン 「めそ!」


3匹のキテルグマもまた、私たちを敵と認識して、襲い掛かって来る。


 ユウリ 「1匹ずつ行くよ! “ねらいうち”!」



おかしい……。


最初に茂みに近付いてグソクムシャが襲って来たのは、あの茂みにグソクムシャの住処があるから――、そう考えるのが自然。

けど、さらにキテルグマが襲ってくるのは、説明が付かない。しかも3匹。


 ユウリ 「足元に“エアスラッシュ”! 寄せ付けないで!」


そもそも あの茂みは、ポケモンが4匹も住処を作れるような大きさじゃない。

なら餌の保管場所? グソクムシャとキテルグマの貯蔵庫みたいなもの?


 ユウリ 「距離を取って“ねらいうち”!」


……いや、グソクムシャとキテルグマが共生関係を持っているなんて聞いたことが無い。

それに、お互い強いポケモンだ。餌を共用する必要なんて無いし、それこそ、縄張り争いしてもおかしくないはずなのに。


 ユウリ 「左から来るよ! ジャンプで かわして!」


グソクムシャとキテルグマが、私たちを茂みから遠ざけようとする理由――。

分からない。

分からないからこそ、何か秘密があるのかもしれない!


 ユウリ 「頑張ってインテレオン! もう1回“ねらいうち”!」

 インテレオン 「めそっ!」





 ▼ 36 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/12/03 22:49:43 ID:azq2Itvg [8/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



 キテルグマ1 「」

 キテルグマ2 「」

 キテルグマ3 「」



 ユウリ 「……ふぅ。ありがとうインテレオン。頑張ったね」

 インテレオン 「めそぉ……」


キテルグマ3匹に勝利した。

けど、3匹同時に相手するのは流石のインテレオンにもハードだったようで、息が上がっている。


 ユウリ 「このキテルグマたちも、かなりレベル高かったね」

 インテレオン 「めっそ」

 ユウリ 「もう襲ってきそうなポケモンは……居ないね。やっと茂みを調べられる!」


そうして茂みに近付いてみる。

あんなに高個体のグソクムシャとキテルグマが守っていた茂みに、いったい何があるんだろう。

住処か、餌場か、考えたくはないけど――狩ったカジッチュの保管場所なのか。


 ユウリ 「ここに……、カジッチュの秘密が」

 インテレオン 「めそ」


それほど大きくない茂み、高さは私の身長より低いし、幅だって10メートルも無いんじゃないかな。奥は高い崖になっている分、奥行だってそんなに。

入ってみなきゃ分からない……か。



私たちは覚悟を決めて、茂みに足を踏み入れた。



 ▼ 37 マゲタケ@ドラゴンメモリ 20/12/03 22:53:41 ID:mN1AM5ok NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ガラル編来たか
支援
 ▼ 38 ールー@メガリング 20/12/03 22:57:00 ID:VNPwdjc. NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
あっ、ここかぁ!
 ▼ 39 ツドン@イワZ 20/12/04 00:12:58 ID:67q2w0Ww NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 40 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/12/04 22:06:00 ID:b4HEINjo [1/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



 ユウリ 「誰も居ない……」


けれど、茂みの中には何の気配も無かった。

ポケモンが住んでいるような形跡も無ければ、餌場のような雰囲気も無い。ただの茂み。

高い崖を見上げても、そこに住処のようなものは確認できない。


 ユウリ 「じゃあ、グソクムシャとキテルグマは……?」

 インテレオン 「めそ!」


インテレオンが指さしたところに、例の汁が溜まっている。

そして、その正面に――。


 ユウリ 「洞窟……!?」

 インテレオン 「めそ!」


高い崖に開いた横穴。

腰を低くしないと入れない小さな洞窟が、そこにあった。

覗いてみると、遠くに光が見える。向こう側に出口があるらしい。


 ユウリ 「何処かに繋がってる……。これ、秘密の入口ってこと?」

 インテレオン 「めっそ」

 ユウリ 「じゃあ! グソクムシャとキテルグマは、この入口に人を寄せ付けないようにしてたんだ!」


あんな高個体のグソクムシャとキテルグマが居る所に、わざわざ近寄ろうとするトレーナーは居ない。

ゲットしようにも、4匹同時に襲い掛かってきたら、まず諦めるだろう。


 ユウリ 「でも、野生ポケモンが協力して入口を守る理由って……」


もしかすると、ワイルドエリアでしか見ることのできない、ポケモンの共生関係が築かれているのかも――。


 ユウリ 「……違う。それじゃあカジッチュの説明が付かない! 行ってみるよインテレオン!」

 インテレオン 「めそめっそ!」


私は中腰になって。インテレオンはハイハイするような体勢で。その洞窟に入り、光が漏れる出口へと向かった。

幸い、野生ポケモンと遭遇することは無かった。
 ▼ 41 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/12/04 22:08:19 ID:b4HEINjo [2/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告





洞窟を抜ける。



洞窟出口のまわりには木々が立ち並んでいて、その先には、これまた高い崖に囲まれた、開けた空間があった。


 ユウリ 「なに……あれ?」

 インテレオン 「めそ……?」


木々に身を隠しながら、その空間を覗き込む。

高い崖に囲まれた、窪地のような場所。

そこには、明らかに不自然なプレハブ小屋が建てられていた。


 ユウリ (こんな所に誰かいるの?)

 インテレオン (めそぉ)


私たちは、思わず声のトーンを落とす。

さらにまわりを見回すと、プレハブ小屋の奥に、木々が整然と立ち並んでいた。

その木、全てに、大きめの黄色い木の実が。


 ユウリ (オボンの実だ。あんなに いっぱい)


オボンの実と言えば、ポケモンの体力を大きく回復する、優秀な効果を持つ木の実だ。

バトル中にHPが少なくなると、ポケモン自ら食べて体力を回復できることから、各方面で需要は高い。

一方、栽培は簡単では無く、自然界に自生するオボンは少ない。その少ないオボンを野生ポケモンも好んで食べるため、需要と供給のバランスが悪い木の実の代表例だ。

そういったことから、オボンは贈呈用にも人気が高く、高級品は高値で取引されている。
 ▼ 42 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/12/04 22:10:46 ID:b4HEINjo [3/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 ユウリ (そうだカジッチュは……)

 インテレオン (めそっ!)


インテレオンは、点々と垂れている汁を指さし、そのままプレハブ小屋に視線を送る。

なるほど、この汁はプレハブ小屋に続いている。と言うことは、あの小屋の中にカジッチュが。


 ユウリ (なんとかして確認しないと。スマホロトム、録画準備お願いね)

 スマホロトム (ジュンビ バンタン ロトー)


木々に身を隠しながら、高い崖沿いにプレハブ小屋に近付いて行く。


――と、その時だ。



 「まったく! こんな傷付ける必要ないってあれほど言ったでしょ!」

 「申し訳ありません。しかし、まとまった数を捕まえるには、どうしても……」

 「週刊誌に嗅ぎつけられてること忘れたの!?」

 「それは……」



女の人の怒鳴り声と、男の人の声。


 ユウリ (傷付ける? まさかカジッチュを!?)

 インテレオン (めっそ……!)



そんな嫌な予感がした直後、プレハブ小屋の扉が開いた。


声の主と思われる人物が出て来て、私は思わず目を疑った。

 ▼ 43 ンヤンマ@さみしがりミント 20/12/04 22:11:15 ID:ka5Ylbfg NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
高級オボンの伏線回収来る!?
 ▼ 44 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/12/04 22:14:14 ID:b4HEINjo [4/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 オリーヴ 「とにかく! 安定して栽培を続けるためにも、もう少し気を遣って貰うわよ」

 男社員1 「分かりました」

 男社員2 「カジッチュの採取は完了しましたが……」

 オリーヴ 「ご苦労さま。回復させて、元の場所に戻すのよ」

 女社員1 「逃げてしまった個体は……」

 オリーヴ 「放っておきなさい。下手に探しに出て、ここがバレたら元も子もないわ」



 ユウリ (オリーヴさん……? なんで……、社会奉仕活動してたはずじゃ……)

 インテレオン (めそぉ……)



待って、頭が追いつかない。


オリーヴさんと、社員風の人の会話の内容から、カジッチュが居るのは間違いない。


安定して栽培?

この、たくさん実ってるオボンのこと?


カジッチュの採取? 回復?

カジッチュを傷付けて、カジッチュの何かを採取したってこと? 傷つけたから回復させたってこと?


逃げた個体? 放っておく?

回復させる前に逃げたカジッチュが居るってこと?


 ユウリ (それって……)


整理して、一つの仮説が立つ。


ここのオボンを栽培するために、カジッチュを傷付ける必要があった。

カジッチュの成分か何かが、オボンの生育に良い影響を与えてるのかもしれない。

傷付けたカジッチュは回復させるけど、回復の前に逃げ出した個体も居る。

最近ワイルドエリアで不自然に傷付いたカジッチュが見つかったのは、ここから逃げ出したカジッチュだった。



この事件の黒幕は、こんな場所で密かにオボン栽培している、オリーヴさんだった――。


 ▼ 45 ョロモ@まんぷくおこう 20/12/04 22:16:52 ID:pONsnzqY NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
伏線回収やべえ
支援
 ▼ 46 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/12/04 22:17:18 ID:b4HEINjo [5/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



 ユウリ (嘘だよね、そんなの……)



けど、それなら辻褄が合う。


グソクムシャとキテルグマが襲って来たのは、ここの存在を知られないため。

きっとあのグソクムシャたちは、オリーヴさんか、社員っぽい人のポケモンなんだと思う。


カジッチュを傷付けてオボンを栽培するなんて、そんなの違法に決まってるのに……。



 ユウリ (違法……そう言えば! スマホロトム、先週くらいのニュース、オボンのニュース見れる? あ、録画は続けたままで)

 スマホロトム (ネットニュース ヲ ケンサクチュウ …… ガイトウ キジ ヲ ヒョウジスル ロト!)





――――――――――――――――――――


【ニュース】 高級オボン販売会社、違法栽培報道を否定

贈答用など高級オボンの実を販売する「ダクマフルーツ」が、木の実を違法栽培している疑いがあると週刊誌が報じた件について、事実無根だとするコメントを発表した。
週刊誌によると、同社が販売する主力商品「無農薬栽培オボンの実<贈答用一級品>」から、微量の農薬成分が検出された。
この農薬を週刊誌側が調べたところ、一般流通している「むしよけスプレー」などとは異なる成分であることが分かり、「ダクマフルーツ」が特殊な農薬を使ってオボンの実を栽培している疑いがあると言う。
現時点で、このオボンの実に関する健康被害は確認されていないが、事実であれば、景品表示法違反などの罪に問われることになる。
これに対してダクマフルーツ広報は、「週刊誌の情報は事実無根であり、誤った印象を顧客に与えかねず、誠に遺憾である。必要に応じて法的措置を検討したい」とコメントした。


――――――――――――――――――――


 ▼ 47 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/12/04 22:20:35 ID:b4HEINjo [6/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

これだ。

これに違いない。



こんな場所で、ポケモンの見張りまでつけて、カジッチュを使ってオボンを栽培している――。

その事実は、まさしく このニュースの内容、そのものだった。


 ユウリ (オリーヴさん、さっき週刊誌が どうどか言ってたし、間違いない!)
 
 インテレオン (めそぉ……!)


とにかく、早く このことを知らせないと。


流石に私1人で乗り込むなんてマネは出来ない。

ポケモン保護協会にも連絡して、きっちりした態勢で臨まないと。



 ユウリ (行くよインテレオン。一旦キャンプに戻って……)



  落ちてた木の枝 「パキッ」



 ▼ 48 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/12/04 22:31:12 ID:b4HEINjo [7/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告





スマホロトムは、「Siri」のようなものだと思って下さい。

「Siri(シリ)」とは、iOS、iPadOS、macOS、watchOS、tvOS、HomePod向けのAIアシスタント。自然言語処理を用いて、質問に答える、推薦、Webサービスの利用などを行う。


すなわち、スマホロトムはロトムとして自由に動くことはできますが、自らの考えを人語で喋れるわけではありません。




 ▼ 49 マゲタケ@かおるキノコ 20/12/04 23:57:23 ID:rjBohP5w NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
紫煙
 ▼ 50 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/12/05 22:06:17 ID:JGccCGWk [1/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


 オリーヴ 「っ……誰!?」

 男社員1 「侵入者か!?」



 ユウリ (やっちゃった!? スマホロトム隠れて! 録画したままで!)

 スマホロトム (リョウカイ ロトー!)


スマホロトムは、私から離れた茂みの中に身を隠した。

手のひらサイズのスマホロトムなら、バレないはず……!



 男社員2 「出てこいケンホロウ! あの木のあたりに“かぜおこし”!」

 ケンホロウ 「ホロー!」


 ユウリ 「っ……! お願いインテレオン! “ねらいうち”!」

 インテレオン 「めそっ!」


こうなってしまうと、身を隠してる場合じゃない。

インテレオンの“ねらいうち”はケンホロウに直撃、攻撃を不発にさせる。


 男社員2 「なっ……チャンピオン!?」

 女社員1 「チャンピオンにバレちゃったの!?」

 男社員1 「どうしてこの場所が!?」

 オリーヴ 「……あらあら」


 ユウリ 「カジッチュの汁を辿って来たのよ! 貴方たち、いったい何をしてるの!? オボンを違法栽培ってニュースの犯人、貴方たちなの!?」


 オリーヴ 「その通り――って言ったら、どうするつもりかしら?」

 ユウリ 「オリーヴさん……、どうしてっ!?」


認めたくない事実に驚いていると。


 インテレオン 「めっ……」 バタッ


突然、インテレオンが倒れた。
 ▼ 51 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/12/05 22:07:40 ID:JGccCGWk [2/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 ユウリ 「えっ!? どうしたのインテレオン!? インテレオン!?」

 インテレオン 「zzz……」

 ユウリ 「眠ってる……?」


 オリーヴ 「私たちが、何の対策もしてないとでも思った?」

 バリヤード 「バリッバリー!」

 ユウリ 「バリヤード……ってことは“さいみんじゅつ”!?」

 男社員1 「デンチュラ、あの女を ひっ捕らえろ!」

 デンチュラ 「チュラッ!」 シャッ

 ユウリ 「あっ!?」


インテレオンが倒れたことに意識が持って行かれたせいで。

いつの間にか繰り出されていたデンチュラが糸を吐きだしたことに、反応しきれなかった。


 ユウリ 「っぁぁっ!? あああぁぁぁぁぁっ!?」 バチバチバチッ!


 男社員1 「どうだ? 電気を帯びたデンチュラの糸は。痺れて動けないだろ」

 ユウリ 「ぁっ、ぅっ……」 バチバチッ


デンチュラの放った糸は、私の両腕を巻き込んで、腰まわりに巻き付いた。

ネバネバして取れそうにないし、だんだん体、痺れて……。


 オリーヴ 「よくやったわね」

 男社員1 「はい。カジッチュの傷の件は許して貰えますよね?」

 オリーヴ 「まぁ良いわ。それより……」



倒れた私の元に、オリーヴさんが近づいてくる。

なんなの……、どういうことなの、オリーヴさん……?
 ▼ 52 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/12/05 22:09:54 ID:JGccCGWk [3/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 オリーヴ 「久しぶりね、新チャンピオン」

 ユウリ 「どっ……して? オリーヴさんっ、社会、奉仕……、鉱山でっ……」

 オリーヴ 「えぇそうよ。私はブラックナイトの一件以来、鉱山で社会奉仕活動に励んでいたわ」

 ユウリ 「っ……」

 オリーヴ 「貴方には、一応感謝してるわ。委員長の暴走を止めて、ガラルをムゲンダイナから守ったんだから」

 ユウリ (ダメっ……、痺れて、声を出すのも辛い……)

 オリーヴ 「けどね。委員長は逮捕された。私はご存知の通り、執行猶予中の身よ」

 ユウリ (そう。オリーヴさんは、ローズさんの本当の目的を知らずに協力してた。だから執行猶予判決になった)

 オリーヴ 「委員長が逮捕されて、マクロコスモス社は どうなったと思う? 株価の大暴落で、酷い損害が出てるのよ」

 ユウリ (ニュースで見たような気がする。当然だよね、社長が逮捕ってなれば)

 オリーヴ 「副社長である私も、執行猶予とは言え犯罪者。今のマクロコスモスは、使えない重役が代表を務めてるわ」

 ユウリ (そっか。オリーヴさん、会社の経営に参加できてないんだ……)

 オリーブ 「けど! その重役がホント使えないのよ。バブルで入社して、苦労も知らずに年功序列で成りあがってきた典型的な老害よ! オリーブキレそう!」

 ユウリ (えぇ……)

 オリーヴ 「そんな老害じゃ、マクロコスモスの立て直しなんて不可能よ。事実、損害は膨らむ一方。当然よね。今までどれだけ委員長と私が苦労してきたと思ってるのかしら」

 ユウリ (ローズさん、あんなことしちゃったけど、経営者としての手腕は凄かったもんね。勿論、オリーヴさんも)

 オリーヴ 「今は不動産の売却で繋いでるけど、その資金も そのうち底をつくわ。マクロコスモス本社だったローズタワー、バトルタワーになったでしょ。天下のマクロコスモス社も今は賃貸ビルよ。情けない」

 ユウリ (ローズタワーがバトルタワーになった理由、そういうことだったんだ……)


 オリーヴ 「……で、貴方、知りたいのよね、ここのこと」

 ユウリ 「っ……!」


そう、私が知りたいのは、オリーヴさんの近況じゃない。

ここで何をしているのか。カジッチュに何をしたのか。違法栽培は本当なのか。
 ▼ 53 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/12/05 22:16:27 ID:JGccCGWk [4/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


 男社員1 「その前に、インテレオンを大人しくさせて貰うぜ」

 ユウリ 「ぁっ……なにっ……?」


男の人は私からモンスターボールを奪うと、インテレオンをボールに戻した。

そして、ボールを変な箱の中に入れる。


 男社員1 「この箱はな、ボール管理システムとの通信を遮断するんだ。お前のインテレオンはボールから出れないぜ」

 女社員1 「ボールは……1つだけね。ってことはインテレオンだけで乗り込んで来たのね」

 男社員2 「チッ……。チャンピオンだからって、随分と余裕ぶっこいてんだな」

 ユウリ 「ちっ……がぅっ……」

 男社員1 「へへっ。痺れて辛いよなー。1人で乗り込んで来たことを後悔するんだな」



あぁ……、マサルの言った通りだ。


私、インテレオンが一緒だからって、突っ走っちゃった。

私一人じゃ、なにもできないのに……。

マサルの言う通り、一緒に行動するべきだったな……。
 ▼ 54 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/12/05 22:19:06 ID:JGccCGWk [5/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 オリーヴ 「貴方さっき、オボン違法栽培のニュースのこと言ったわよね? お察しの通りよ」

 ユウリ 「くっ……!」

 オリーヴ 「無能な重役がね、私に泣きついてきたのよ。このままじゃマクロコスモスは危ない、なんとかしてくれって。ホント、情けない老害よ」

 ユウリ 「………」

 オリーヴ 「けど、私はマクロコスモスの経営に手を出せない。そこで私は、“ダクマフルーツ”って会社を立ち上げたのよ。あぁ、代表は私じゃないわよ当然」

 ユウリ (ダクマフルーツ、ニュースで出てた会社……)

 オリーヴ 「元々はね、“マクロコスモス・フルーツ”って新部門を立ち上げる予定で準備してたんだけど、委員長の逮捕で白紙になったのよ。その計画を、私が新会社として引き継いだってワケ」

 ユウリ 「………」

 オリーヴ 「バトルで需要の高いオボンの実を安定的に生産できれば、莫大な利益になるでしょ。でも、商売ってそれだけじゃダメなの。付加価値を付けないと」

 ユウリ (付加価値……、ブランド……)

 オリーヴ 「そこで売り出したのが、“無農薬栽培オボンの実<贈答用一級品>”。バトル需要は もとより、贈答用として幅広い層にヒットしたわ」

 ユウリ (うん。私も貰ったことあるもん)

 オリーヴ 「ダクマフルーツは、全株式をマクロコスモスが保有してるの。ダクマフルーツが儲かれば、マクロコスモスも儲かる。間接的に私がマクロコスモスの経営に介入してるのよ」

 ユウリ (株式とか よく分からないけど……、オリーヴさんはオボンの栽培で、マクロコスモスを助けてるってことね)

 オリーヴ 「けど、安定的な栽培にはコストがかかるわ。無農薬なら当然。けどあの老害! 出資額を渋ってるのよ! オリーブキレそう!」

 ユウリ (出資額……? そっか。マクロコスモスは、助けて貰ってるのに、お金は出そうとしないんだ)

 オリーヴ 「ここで週刊誌の話に繋がるのよ。“特殊な農薬を使って、オボンを違法栽培してる”って疑惑にね」

 ユウリ 「!」

 オリーヴ 「まず、私たちは農薬は使ってないわ」

 ユウリ (農薬を使ってない……、なら、記事に書いてあった、検出された成分って……?)

 オリーヴ 「けど……、作っちゃったのよ。農薬と同じように、害虫を寄せ付けない成分を持つ薬剤をね」

 ユウリ 「作っ……た?」

 オリーヴ 「ポケモンの自己免疫機能を応用したのよ。まぁ簡単に言うと、ポケモンの細胞の一部を採取して、それで新しい薬剤を作ったってことね」

 ユウリ 「ポケモンのっ……さいぼぅ、それっ……!」

 オリーヴ 「その薬剤のお陰で、無農薬栽培の手間とコストを大幅に削減できたわ。それに、農薬じゃないから景品表示法にも抵触しない……。このオボン栽培は大成功ってわけよ」

 ユウリ 「そん、なのっ……」

 オリーヴ 「傷付いたカジッチュは、細胞を採取した個体よ。大人しくしていれば回復させたのに、逃げ出しちゃうんだもの。逃げ出した個体の回復まで面倒見きれないわ」

 ユウリ 「そんなのっ……、酷ぃっ……!」
 ▼ 55 レディア@おおきなしんじゅ 20/12/05 22:19:11 ID:oQrINzvU NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援 続きが気になる
 ▼ 56 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/12/05 22:21:15 ID:JGccCGWk [6/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 男社員1 「商売には犠牲が付き物だぜ、お嬢ちゃん」

 女社員1 「けどオリーヴ様は、犠牲が最小限になるように、きちんと回復させていた。最低限の仁義は通してるのよ」

 男社員2 「いやぁ、オリーヴ様は凄いですよ。ポケモンの自己免疫機能から、農薬っぽいものを作り出すなんて」

 女社員2 「えぇ。しかもポケモン由来だから、ポケモンに害はない。農薬なんかより優れたものよ」

 男社員1 「まぁ、道のりは長かったけどな。かなりの種類のポケモンの細胞を採取して、研究したからな」

 女社員1 「カジッチュと、キノココと、パラスと……、何種類かの細胞や胞子を調合して完成させたのよね。草タイプのポケモンが多かったかしら」


社員の人たちは、得意気に言葉を続ける。

傷付いたカジッチュがワイルドエリアで見つかったのは、農薬代わりの薬剤を作る過程で、傷付けたから――。


傷付いたタネボーやアマカジもワイルドエリアで確認されてたけど、その数は僅か。

きっと、そういったポケモンでは薬剤を作れなかったから、早いうちに捕獲を中断したんだと思う。


そして、今の社員の言い方だと、カジッチュ以外にも、薬剤を作るために傷つけられたポケモンが居ることになる。

キノココやパラス、ガラルには生息していないポケモンだけど、まさか、他の地方にまで捕獲に行ったってこと……?


 ユウリ 「酷っ……すぎるっ! なんでっ、そんなっ……」

 オリーヴ 「なんで――ねぇ。マクロコスモス社の存続のためよ」

 ユウリ 「そっな、会社のっ、ためにっ……、ポケモン、たちをっ……」

 オリーヴ 「会社のため―――ちょっと違うわ」

 ユウリ 「ちがぅ……?」


 オリーヴ 「委員長が出所した時、戻る場所が無かったら辛いでしょ」


 ユウリ 「っ……!」


 オリーヴ 「委員長が立ち上げた、マクロコスモスという大企業。それを守ることが、秘書であり副社長であった私の使命なのよ!」


オリーヴさん、この人は……。


 オリーヴ 「委員長は私の研究を評価し、私を認めてくれた。今度は私が委員長を救う番なのよ!」


今でもローズさんのこと、信頼してるんだ。

ブラックナイトで危ない目に遭ったって言うのに、ローズさんを救いたい一心で、こんなこと……!
 ▼ 57 クリュー@カビチュウ 20/12/05 22:30:40 ID:upLAWbXU NGネーム登録 NGID登録 報告
わりとここら辺は難しい問題だよな
ポケモンバトルだって歪んだ見方をすれば信頼っていう言葉を盾にして自己満足と見せ物にしてるだけだし
逆にオリーヴがやってることも倫理的には非難されることかもしれないけど、現実世界だとこれよりエグいことも研究の一環として認められてるし……


そんなことはおいといて。
支援です
 ▼ 58 ビィ@ゴーストメモリ 20/12/05 23:58:26 ID:T.boJfyE NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
話が濃くなってきたぞ!支援
 ▼ 59 タマロ@りゅうのプレート 20/12/06 08:19:33 ID:FfqIqkeg NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 60 シギダネ@ルームキー 20/12/06 21:45:56 ID:dO3ATDZU NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 61 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/12/07 01:51:05 ID:QNwsm.rA [1/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


 オリーヴ 「お喋りし過ぎたわね。とにかく! 私は この事業を続けなければならないの。チャンピオンであっても、邪魔はさせないわ!」

 男社員1 「どうしまか? 始末します?」

 オリーヴ 「物騒なこと言うんじゃないわよ! だいたい貴方がカジッチュを乱暴に捕まえなければ、バレることは無かったのよ!」

 男社員1 「申し訳ありません……」

 女社員1 「とりあえず、逃げる心配は無いですね」

 女社員2 「そうね。電気の糸で縛ってるし……、当分の間、会社の どこかに監禁ね」

 女社員1 「まぁ安心してよ。傷付けようとか考えてないし、きちんと ご飯も用意するから」

 オリーヴ 「ひとまず誰か1人、見張っておきなさい。午後の便で、収穫したオボンと一緒に本社に連れて行くわよ」


どうしよう……、このままじゃ私、監禁されちゃう。

事件の真相を掴んだって言うのに、それを伝えられないまま……!


 ユウリ 「んっ……く! んんっ……!」 ギチギチ


必死に もがいて みたけど、糸が解ける気配はない。

それどころか、ネバネバしているせいで、余計に体に まとわりついてくる。それに、体の痺れも……。


 オリーヴ 「さぁ、収穫するわよ! 集まりなさい!」


オリーヴさんが声を上げると。


 カイリキー 「リッキー!」

 ゴーリキー 「ゴリッ!」

 キテルグマ 「グマー!」


オボンの木々の奥の方から、ポケモンたちが現れた。

そして慣れた手つきでオボンを収穫し、丁寧にカゴに詰めていく。


 ▼ 62 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/12/07 01:54:01 ID:QNwsm.rA [2/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


 女社員1 「凄いでしょ、あのポケモンたち」


見張り役の女の社員が、私に声をかけてきた。


 女社員1 「無農薬栽培オボンの実<贈答用一級品>、野生ポケモンにも良さが分かるのね。何個か あげたら、私たちを手伝ってくれるのよ。悪い言い方すれば“買収”ね」


そうか……、美味しいオボンで野生ポケモンを仲間にしてたんだ。

洞窟の外で襲ってきたグソクムシャとキテルグマも、オボンで買収された協力者、ってことか。


 女社員1 「オリーヴ様はね、元々は研究者なだけあって、計画は完璧なのよ。アイツのミスさえ無ければね」


そう言って彼女は、収穫を手伝ってる男の社員を睨みつける。

オリーヴさんを慕ってるメンバーなんだろうけど、社員同士の関係は決して良いとは言えないみたいだ。


 女社員1 「まぁ、アンタは しばらく表には出れないでしょうけど、行方不明扱いにならないように、オリーヴ様が手回しすると思うわ。助けは期待しないことね」

 ユウリ 「………」


マズい。このままじゃ本格的にマズいよ。

オリーブさんが動き出す前に、なんとか現状を知らせないと。


打開策は……ロトム!


 ユウリ 「っ……!」


私は痺れる体を強引に動かして、ロトムが隠れている茂みに顔を向ける。



 スマホロトム (!)



ロトム、気付いてくれた!


 ユウリ 「………」 ザザッ、コクッ


そして、顔の動きとアイコンタクトで、ロトムに意思を伝えた。


“ここから出て、マサルに伝えて。私は大丈夫だから”


 ▼ 63 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/12/07 01:55:53 ID:QNwsm.rA [3/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


 スマホロトム (……!) コクッ



ロトムは頷くと、洞窟の方へ飛んで行った。

ひとまずこれで、私が捕まっちゃったことと、今までのオリーヴさんの話を、マサルに伝えることが出来る。

いくらオリーヴさんの手回しがあると言っても、バッチリ動画に映っていれば、断然こっちが有利に……。



 女社員1 「……ねぇ、聞いてるの? ってか何を見て……ちょっ!? スマホロトム!? 待ちなさい!」


うそっ……、目線でバレるなんて……!


 女社員1 「ケンホロウ! ロトムを追いなさい! 洞窟よ!」

 ケンホロウ 「ホロッ!」 バサッ


 ユウリ 「っ……、急ぃでっロトム! 逃げてぇっ!」


 女社員1 「こいつ! デンチュラ、糸! 追加して!」

 デンチュラ 「チュラッ!」 バシュッ


 ユウリ 「ぁがっ!? やああぁぁぁぁぁっ!?」 バチバチバチバチッ!


デンチュラの糸が、さらに私に絡みつく。

腰回りだけだったものが、両足をギュッとキツく拘束して、私の体は完全に動けなくなってしまった。

それに加えて、全身がビリビリと痺れて、だんだん意識が遠のいていく。



 ユウリ 「ぅぐっ、ふーっ、ふーっ、ふーっ……」



ダメ、耐えて私。気を失っちゃダメ。


こうなっちゃった以上、少しでも多くオリーヴさんたちの会話を聞いて、情報を集めておかないと……。

でもっ、からだっ、すっごい痺れて……。



 オリーヴ 「ちょっと、なんの騒ぎかしら」


 ▼ 64 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/12/07 01:57:22 ID:QNwsm.rA [4/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

オリーヴさんたちも、収穫の手を止めて集まって来た。

どうしよう……、私っ、動けないのにっ……。


 女社員1 「オリーヴ様……申し訳ございません! こいつ、スマホロトムで隠し撮りしてたみたいで……」

 男社員1 「隠し撮りだと!? ロトムは!?」

 女社員1 「ケンホロウに追わせてます」

 男社員2 「なにやってんだよ真面目に見張ってろ!」

 女社員1 「仕方ないでしょ! こいつ、最初からスマホロトムを隠してたんだから!」

 女社員2 「けど、さっき話してたことが映像でバラされたら……!」


 オリーヴ 「はい。静かにして」


力強い口調でオリーヴさんは言った。

そして表情を変えないまま、倒れている私のことを見下ろし、口を開く。


 オリーヴ 「ナメた真似してくれたわね、新チャンピオン」

 ユウリ 「んっ……」

 オリーヴ 「それで勝ったつもりかしら?」

 ユウリ 「おとっ、なしく……、自首……、して……」


必死で声を絞り出す。

けど、オリーヴさんに焦る様子は全く無い。

私を見下ろしたまま腰を下ろすと、私の顎に右手でクイッと触れて、恐ろしく冷たい表情で、言った。


 オリーヴ 「私を誰だと思ってるのかしら」

 ユウリ 「っ……!」 ゾクッ

 オリーヴ 「元マクロコスモス副社長。警察やマスコミを黙らせることくらい、簡単なのよ?」

 ▼ 65 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/12/07 01:58:52 ID:QNwsm.rA [5/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 ユウリ 「ぅっ……」

 オリーヴ 「あの週刊誌の記事も……続報、見たことある?」


そう言えば、見ていない。

週刊誌なら必ず続報を出すはずなのに。さっき見たニュースサイトも、関連記事の情報が一切なかったし。


 オリーヴ 「……ふふっ。理解したかしら?」


オリーヴさんは、執行猶予中の身とは言え、まだまだ影響力があるってことだ。

疑惑の報道を押さえ込んで、警察に捜査をさせないほどの、強力な影響力が……。





 ケンホロウ 「ホロォ……」



 女社員1 「あっ……、おかえりケンホロウ! ちょっ……スマホロトムは!?」

 ケンホロウ 「………」

 男社員1 「チッ! 逃げられたのか!」

 男社員2 「なにやってるんだ役立たずが!」

 オリーヴ 「ポケモンに八つ当たりしないの! 小さくて すばしっこいスマホロトムを捕まえるなんて簡単じゃないわ。気にしなくていいのよ」

 ケンホロウ 「ホロッ……」

 女社員2 「でもオリーヴ様、逃がしたままでは流石に……」

 オリーヴ 「勿論、このままには させないわ」


するとオリーヴさんは、私の顔を覗き込む。

背筋が凍るほど、冷酷な笑みを浮かべながら。


 オリーヴ 「言いなさい」


 ユウリ 「っ……」

 オリーヴ 「スマホロトム、何処に逃がしたのかしら?」

 ▼ 66 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/12/07 02:01:12 ID:QNwsm.rA [6/6] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

言わないよ、絶対に。

言ったらマサルも危ない目に遭わされちゃう。絶対に言わない。



 オリーヴ 「痺れて喋れない? それとも……言うつもりは無いってことかしら?」



私はマサルを信じる。

たとえ警察やマスコミを頼れなくても、マサルなら、きっと何か突破口を見つけてくれるはずだ。



 オリーヴ 「……そう。分かったわ。私たちに刃向うってことね」



慎重で、計画性があって、私よりもホップよりも大人だったマサルなら、きっと大丈夫だ。

ポケモン保護協会や、ソニアさんとホップが所属するポケモン博士学会、顔が広いダンデさん――、あらゆる方向から、何か解決策を導き出してくれるはずだ。



 オリーヴ 「……はぁ。残念ね。貴方たち、私は収穫作業を進めるから、この子からスマホロトムの居場所を聞き出しなさい」



それだけ言うと、オリーヴさんはオボンの木々の方へ戻って行った。


残された社員2人は、動けない私を、冷たい笑みを浮かべながら見下ろしている。


 女社員1 「馬鹿ねアンタ。チャンピオンだからって正義ぶっちゃって」

 男社員1 「へへっ。俺らをナメた罰だ。たっぷり可愛がってやるぜ」

 ユウリ 「くっ……」



大丈夫……大丈夫。きっとマサルが助けてくれる。

それまで少しだけ……、少しだけ、私が耐えれば良いんだから……!





   *



 ▼ 67 ケッチャ@かぼそいホネ 20/12/07 07:17:09 ID:GUFYBufY NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 68 フレシア@ジガルデキューブ 20/12/07 07:19:51 ID:w1CwVZC6 [1/2] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
やったー
ユウリいじめだぁムクムクムク
 ▼ 69 ルメタル@くろいメガネ 20/12/07 21:25:32 ID:w1CwVZC6 [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
バブルに年功序列・・・
ガラル=日本?
 ▼ 70 ケッチャ@リニアパス 20/12/08 02:16:06 ID:hov6Z3BQ NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 71 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/12/09 00:20:04 ID:S/KspAUg [1/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



   *





 マサル 「……朝か」



鳥ポケモンたちの囀りで、オレは目を覚ました。


昨日のことは、寝起きの頭でも鮮明に思い出す。


ワンピースが強風で捲れて、初めて目にした、ユウリの白いパンツ。

言い争いの末、涙ながらに、絞り出すような声で、オレの頬を叩いたユウリの姿。


 マサル 「はぁ……」


きちんとユウリに謝りたい。

そう思ってテントの外に出るも、ユウリのテントに彼女の靴は無かった。もう調査に出掛けていると言うことだ。


 マサル (そうだよな。ユウリはチャンピオンとしての仕事なんだもんな)


正直、あんなことがあったのだから、帰っても おかしくない。

けど、この調査はユウリの正式な仕事だから、途中で投げ出すわけにはいかない。

そしてオレ自身も、そんなユウリから手伝いを依頼されてる訳だから、ここで投げ出すわけにはいかないのだ。


 マサル 「出てこいエースバーン」

 エースバン 「えーば!」

 マサル 「今日も調査、よろしくな。ユウリに謝るのは……、帰って来てからだ」

 エースバン 「えば」
 ▼ 72 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/12/09 00:21:57 ID:S/KspAUg [2/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

広大なワイルドエリア。


そこに生息するカジッチュが、不自然な傷を負っている事象が確認されている。

カジッチュ以外にも、草タイプのポケモンを中心に、同じように傷つけられている個体が発見されているけど、その数はごく僅か。

カジッチュを狙った犯行だというのは明白だけど、その原因は未だ分かっていない。

人間によるものなのか、それとも、野生ポケモンによるものなのか。


 マサル (ユウリ、どんな気持ちで調査してるんだろうな……)


カジッチュの平均的な体長は20センチ。

草むらに隠れていれば見つけるのは困難で、果たしてこの調査が どれくらい続くのか分からない。


それなのに、オレは昨日、ユウリと言い争ってしまった。

ユウリに悪気は無いはずなのに、オレの勝手な焦りと思い込みで、ユウリに酷いことを……。


 マサル 「……くそっ!」

 エースバン 「えばっ?」

 マサル 「ぁっ……ごめん」

 エースバン 「えば。えーば」

 マサル 「言っちまったことは、今さら無かったことには出来ないよな。ユウリの あんな表情、初めて見た……」


オレの脳裏に、昨日のユウリの姿がフラッシュバックする。

笑顔が似合う、無邪気で元気がトレードマークのユウリが見せた、あんなに悲しそうな表情。

その原因は、他でもない、オレにある。


 マサル 「オレ……、ユウリと仲直りできるかな……」

 エースバン 「えば……」


仕事だと言うのに、なかなか身が入らない。

オレはチャンピオン・ユウリに任された立場なんだから、私情を持ちだす訳には いかないのに。


 マサル 「ユウリと2人でキャンプ……、けっこう楽しみにしてたんだけどな……」


道ゆくポケモンたちの様子は、目では追っているけど、どうにもボーっとしてしまうせいで、深く確認することが出来ない。

エースバーンが目を光らせてくれているお陰で、傷付いたポケモンの見落としは ないはずだけど……。
 ▼ 73 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/12/09 00:23:37 ID:S/KspAUg [3/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



 マサル 「休憩するか」

 エースバン 「えばっ!」


しばらく調査したのち、オレとエースバーンは、早めの昼休憩を取ることにした。

あまりにも身が入らなさ過ぎて、早いうちに気持ちをリセットさせたかった。


 マサル 「頼むエースバーン。小っちゃく“かえんボール”」

 エースバン 「えんば!」 シュボッ


小さな小石が炎を纏い、地面に転がる。

予め切っておいたフランスパンを枝に刺して その火にかければ、“魚の塩焼き”の要領で、お手軽トーストの完成だ。


 マサル 「ほい、エースバーンの分。マーガリン置いとくぞ」

 エースバン 「えば♪」



そうして2人で昼食を取っていると。



 マサル 「ん?」


 キルリア 「………」 ジー


1匹のキルリアが、岩陰から こちらの様子を伺っていることに気付いた。
 

 マサル (野生……だよな。自分から人前に出て来るなんて珍しい)


進化前のラルトスは、人前には滅多に姿を現さない。当然キルリアも同様で、野生ともなれば尚更だ。

けれど、ラルトスもキルリアも、人の心を敏感に感じ取る能力を持っている。


 マサル 「おいで。パン食べるか?」


 キルリア 「………」 コクッ


試しに呼びかけてみると、意外にも、キルリアは近寄って来た。

野生なら警戒心を持てと言いたいが、逆に、自分は警戒されていないと考えると、悪い気は
しなかった。
 ▼ 74 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/12/09 00:25:28 ID:S/KspAUg [4/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 マサル 「ほら」

 キルリア 「………」 モグモグ

 マサル 「美味いか?」

 キルリア 「る〜♪」

 マサル 「ははっ。可愛いな、お前」

 キルリア 「きるるっ♪」

 エースバン 「えば」 ムスッ

 マサル 「なに嫉妬してんだよ」

 エースバン 「」 プイッ


キルリアは、小さな口でパンを美味しそうに食べている。

野生ポケモンとなれば、パンは初めて口にするはずだ。よほど気に入ったんだろうな。



 マサル 「なぁ、キルリア」

 キルリア 「るー?」

 マサル 「オレのこと、警戒しないのか?

 キルリア 「きる?」

 マサル 「食べ物と好奇心が勝ったのかもしれないけどさ。あんま人間の前に出てくるのは良くないぞ。オレみたいに……、ダメな人間も居るんだからさ」

 キルリア 「きるるっ」

 マサル 「……オレさ。友達に――女の子に、酷いこと言っちゃったんだ。その子は何にも悪くないのに。オレの勝手な焦りとイラつきで」

 キルリア 「きる……」

 マサル 「泣きながら……、オレのこと“大嫌い”って。当然だよ。あんなこと言ったんだから」

 キルリア 「………」

 マサル 「本当にオレっ……、馬鹿なことしちまったんだ。ユウリは大切な友達なのに……。この調査にも、わざわざ誘ってくれたって言うのにっ……」


なんでオレ、野生のキルリアに、こんなこと話してるんだろう。


懺悔のつもりなのか……、けど、こんなことしたって、ユウリを傷付けた事実は消えたりしない。

そう考えると、だんだん涙がこみ上げて来て……。
 ▼ 75 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/12/09 00:27:49 ID:S/KspAUg [5/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 キルリア 「るー」 ギュッ

 マサル 「キルリア……?」

 キルリア 「………」 ギューーー

 マサル 「……ありがとな」 ギュッ


こいつ、温かい……。


キルリアは確か“感情ポケモン”と呼ばれる分類で、頭のツノで他人の感情を感じ取ることが出来る。

楽しい感情や嬉しい感情を感じ取ると踊り出すと言われているほど、前向きな感情を好むポケモンだ。


そんなキルリアが、こんなオレの前に現れるなんて。

前向きとは程遠い感情のオレこのとを、こうやって慰めてくれるなんて……。



 マサル 「ありがとうキルリア。オレ、ちゃんとユウリに謝る。少なくとも、誠意は見せないとな」

 キルリア 「きるるっ」

 マサル 「ごめんな、愚痴みたいになっちゃって。野生なんだから、人間には気を付けろよ」

 キルリア 「るー?」

 マサル 「……よし。エースバーン、そろそろ行こう」

 エースバン 「……えば!」


残りのトーストを紅茶で流し込んで、調査再開だ。

少しでも事件の手掛かりを見つけることが、今オレが出来る、ユウリへの唯一の罪滅ぼしだ。


 マサル 「じゃあなキルリア」

 エースバン 「えんばー!」



 キルリア 「るー……」




 ▼ 76 ョロボン@きいろビードロ 20/12/09 00:29:19 ID:x5igtGSk NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ゲットフラグたったな
 ▼ 77 ュシュプ@ヤチェのみ 20/12/09 21:21:35 ID:frfMi8ys NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 78 リゴン2@ポケモンボックス 20/12/11 12:23:37 ID:AdwA6NHw NGネーム登録 NGID登録 報告
支援!
 ▼ 79 ラパルト@アクアスーツ 20/12/11 12:43:18 ID:aWggSgGs NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
電気責めえち
 ▼ 80 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/12/12 02:34:09 ID:KDsQ7LWU [1/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告





 マサル 「とは言ってもなぁ……」


キルリアとの触れ合いで、オレは少しだけ落ち着くことが出来た。

ユウリに謝る手土産に、少しでも事件の手掛かりを見つけようと、あれから念入りに調査を続けているけど――。


 マサル 「やっぱり簡単には見つからないよなぁ」

 エースバン 「えばー」


ワイルドエリアは、広すぎる。

そもそも、簡単に手掛かりが見つかるようであれば、わざわざチャンピオンに調査依頼が入ることは無い。

当然それは分かっては いたけど、頭のどこかで、まぁなんとかなる――という楽観的な考えがあった。


 マサル 「ちゃんとユウリと仲直りしないと、いつまで経っても終わらないぞ」

 エースバン 「えばえーば」


今のような心境では、調査に身が入らず、効率が悪すぎる。

ユウリに謝って仲直りすることが、今現在、なによりも重要なことかもしれない。


 マサル 「ユウリのことだから、謝れば許してくれると思うんだ」

 エースバン 「えーば?」

 マサル 「けど、今まで通りの関係に戻る、ってのは厳しいかもな……。あんな酷いこと言われて、壁を作らない方がおかしいし」

 エースバン 「えばぁ……」

 マサル 「……ってダメだダメだ! 気持ちを切り替えないと」


ユウリも謝ることは、今は一旦考えないでおこう。

とにかく、調査の進展になるような手掛かりの発見に全力を尽くそう。


そう思った直後だった。



 「ロトーーーーーー!!!」


 ▼ 81 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/12/12 02:36:00 ID:KDsQ7LWU [2/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


 マサル 「ん? ロトム……こんな所に野生か?」


突然聞こえた、ロトムの鳴き声。

声が聞こえた方を振り向くと、ロトムではなく、スマホロトムがオレの元に急接近してきた。


 マサル 「うおっ!?」 ビクッ


思わず身構えたけど、スマホロトムであれば、襲われる心配は無い。


 スマホロトム 「ユウリ カラ エイゾウ ロト! ユウリ カラ エイゾウ ロト!」

 マサル 「ユウリから映像……? おまえユウリのスマホロトムか!」

 スマホロトム 「ユウリ カラ エイゾウ ロト! ユウリ カラ エイゾウ ロト!」

 マサル 「分かった分かった! ちゃんと見るから落ち着けって」



ロトムは しきりに映像があることをアピールしてくる。


スマホロトムとは、スマホの機能をロトムが制御している。すなわち、“ロトム自らの意思で”映像をアピールしている訳では無い。

つまり、ユウリがロトムに“オレに映像を見せてくれ”と頼んだってことだ。


 マサル 「オッケー ロトム。その映像を再生してくれ」

 スマホロトム 「リョウカイ ロトー!」

 ▼ 82 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/12/12 02:37:23 ID:KDsQ7LWU [3/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

ユウリからの映像――、いったい何が映ってるんだろう。



いや、なんとなく想像は出来る。



この映像は多分、ユウリからオレ宛てのメッセージだ。

昨日のことがあって、きっとユウリは、オレと直接話したくないんだと思う。当然のことだ。

だから、映像をロトムに託して――、要するに、ビデオレターのようなものだ。



“こんなギスギスした関係では、一緒に調査を進めることは出来ない。もう帰ってくれ”



恐らく、そんな内容だと思う。

わざわざ映像で伝えるってことは、これしか考えられない。



あわよくば――、

“昨日は叩いてごめんなさい。直接謝る勇気が無くて、映像で勘弁して下さい”

みたいな内容を期待したけど、流石にそれは都合が良すぎる。いやむしろ、オレの方が謝罪を映像で送るべきだ。



 マサル (覚悟しないとな……)



もし予想通り、オレを帰らせるような内容だったら――。


素直に従うしかない。オレが全部悪いんだから当然だ。

その時は、謝罪の映像を録画して、ロトムに送って貰おう。ユウリに誠意を見せるには、それが唯一の手段だ。
 ▼ 83 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/12/12 02:38:33 ID:KDsQ7LWU [4/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



映像が再生される。


……が、何か様子がおかしい。


茂みの中から、まるで隠し撮りのような映像が再生される。

茂みの間から見えるのは、プレハブ小屋と、黄色い実のなる木の群生。あれは多分、オボンの実だ。


 マサル 「なんだこれ……?」

 エースバン 「えんば?」
 


  ― ユウリ 『なんとかして確認しないと。スマホロトム、録画準備お願いね』

  ― スマホロトム 『ジュンビ バンタン ロトー』



 マサル 「ユウリの声……。なんなんだこの映像……?」


予想だにしない映像に、オレは混乱する。

ただ少なくとも、オレに向けたメッセージじゃないことは明らかだ。



  ― 『まったく! こんな傷付ける必要ないってあれほど言ったでしょ!』

  ― 『申し訳ありません。しかし、まとまった数を捕まえるには、どうしても……』

  ― 『週刊誌に嗅ぎつけられてること忘れたの!?』

  ― 『それは……』



プレハブ小屋の中から聞こえる、女の人の怒鳴り声と、男の人の声。

傷付ける……? 週刊誌……?



  ― ユウリ 『傷付ける? まさかカジッチュを!?』

  ― インテレオン 『めっそ……!』



カジッチュ?

ユウリ、なんでここでカジッチュの話題になるんだ?
 ▼ 84 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/12/12 02:39:43 ID:KDsQ7LWU [5/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 マサル 「もしかしてユウリ、傷付いたカジッチュの原因を突き止めたって言うことか!?」

 エースバン 「えばばっ!」



オレとエースバーンは映像に釘付けになる。


ユウリが突き止め、隠し撮りしたと思われる映像は、衝撃の事実の連続だった。



 マサル 「オリーヴさん……!」


マクロコスモスの副社長……いや、元・副社長で、ブラックナイトの事件で逮捕、起訴され、執行猶予中の身となっている、オリーヴさん。

彼女と その仲間が、カジッチュを傷付けていたのだ。



  ― オリーヴ 『っ……誰!?』

  ― 男社員1 『侵入者か!?』

  ― ユウリ 『やっちゃった!? スマホロトム隠れて! 録画したままで!』

  ― スマホロトム 『リョウカイ ロトー!』



ドジ踏んだユウリは、オリーヴさんたちに気付かれてしまい。



  ― ユウリ 『っぁぁっ!? あああぁぁぁぁぁっ!?』 バチバチバチッ!

  ― 男社員1 『どうだ? 電気を帯びたデンチュラの糸は。痺れて動けないだろ』

  ― ユウリ 『ぁっ、ぅっ……』 バチバチッ



不意打ちでインテレオンは眠らされ、ユウリはデンチュラの糸で拘束されてしまう。



  ― オリーヴ 『貴方さっき、オボン違法栽培のニュースのこと言ったわよね? お察しの通りよ』

  ― ユウリ 『くっ……!』

 ▼ 85 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/12/12 02:40:44 ID:KDsQ7LWU [6/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

オリーヴさんは、最近話題になった、高級オボンの違法栽培に絡んでいた。



  ― オリーヴ 『ポケモンの自己免疫機能を応用したのよ。まぁ簡単に言うと、ポケモンの細胞の一部を採取して、それで新しい薬剤を作ったってことね』

  ― ユウリ 『ポケモンのっ……さいぼぅ、それっ……!』

  ― オリーヴ 『その薬剤のお陰で、無農薬栽培の手間とコストを大幅に削減できたわ。それに、農薬じゃないから景品表示法にも抵触しない……。このオボン栽培は大成功ってわけよ』

  ― ユウリ 『そん、なのっ……』

  ― オリーヴ 『傷付いたカジッチュは、細胞を採取した個体よ。大人しくしていれば回復させたのに、逃げ出しちゃうんだもの。逃げ出した個体の回復まで面倒見きれないわ』

  ― ユウリ 『そんなのっ……、酷ぃっ……!』



カジッチュたち、ポケモンの細胞を採取して作った、農薬のような効果を持つ薬剤。

それを使って違法にオボンを栽培していた。傷付けたカジッチュたちは、逃げたらそのまま放置して。



  ― オリーヴ 『委員長が出所した時、戻る場所が無かったら辛いでしょ』

  ― オリーヴ 『委員長が立ち上げた、マクロコスモスという大企業。それを守ることが、秘書であり副社長であった私の使命なのよ!』

  ― オリーヴ 『委員長は私の研究を評価し、私を認めてくれた。今度は私が委員長を救う番なのよ!』



そして、そんなことする理由は、マクロコスモスを守るため。ローズ委員長を救うため。

オリーヴさんは、今でも慕っているローズ委員長のために、こんな違法栽培に手を染めていたのだ。



 マサル 「ユウリ……、オリーヴさんに捕まったのに、この事実をオレに知らせるために映像を……!」

 エースバン 「えばっ……!」

 マサル 「すぐ助けに行かないと! カジッチュの件の犯人も分かったんだ! ポケモン保護協会や警察に連絡して……」
 ▼ 86 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/12/12 02:42:59 ID:KDsQ7LWU [7/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
けれど、どうやら そんな悠長なことをしている場合では無いようだ。



  ― オリーヴ 『お喋りし過ぎたわね。とにかく! 私は この事業を続けなければならないの。チャンピオンであっても、邪魔はさせないわ!』

  ― 男社員1 『どうしまか? 始末します?』

  ― オリーヴ 『物騒なこと言うんじゃないわよ! だいたい貴方がカジッチュを乱暴に捕まえなければ、バレることは無かったのよ!』

  ― 男社員1 『申し訳ありません……』

  ― オリーヴ 『ひとまず誰か1人、見張っておきなさい。午後の便で、収穫したオボンと一緒に本社に連れて行くわよ』



 マサル 「マズい! ユウリの身が危ないぞ!?」

 エースバン 「えばっ! えーば! えばばっ!」



すると映像の中で、キテルグマやカイリキーといったポケモンたちが、オボンの身を手際よく収穫し始める。

違法栽培の高級オボン、オリーヴさん率いる人間は少数だけど、ポケモンに手伝わせることによって、安定的な生産を実現しているようだ、


そうこうしていると、映像の中のユウリと目が合った。

実際オレと目が合った訳では無く、恐らく、スマホロトムにアイコンタクトを送ったのだろう。

その首の動きと目線から、ユウリは このタイミングでロトムに対し、オレに映像を届けるように指示したのだ。



  ― 女社員1 『ちょっ!? スマホロトム!? 待ちなさい! ケンホロウ! ロトムを追いなさい! 洞窟よ!』

  ― ケンホロウ 『ホロッ!』 バサッ



映像がユウリたちから外れ、洞窟に向かいだした時、スマホロトムの存在がバレてしまったようだ。

ロトムが洞窟に入り、映像が真っ暗になる。何も映っては いないが――。



  ― ユウリ 『っ……、急ぃでっロトム! 逃げてぇっ!』

  ― 女社員1 『こいつ! デンチュラ、糸! 追加して!』

  ― デンチュラ 『チュラッ!』 バシュッ

  ― ユウリ 『ぁがっ!? やああぁぁぁぁぁっ!?』 バチバチバチバチッ



ハッキリと聞こえた、ユウリの悲鳴。

映像は、そこで終わっていた。
 ▼ 87 トーボー@パワフルハーブ 20/12/12 18:36:04 ID:nxNcomE2 NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
マサルどうする!?
 ▼ 88 ッシード@エネコのしっぽ 20/12/12 18:38:03 ID:jrm2/SD. NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
最初から読んだけどマサル悪くないよな?
 ▼ 89 イプ:ヌル@トポのみ 20/12/12 21:46:42 ID:CuuUtxYg NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
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 ▼ 90 ーテリー@ディフェンダー 20/12/13 20:13:23 ID:UxP2EIdo NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
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 ▼ 91 ォッシュロトム@リザードナイトY 20/12/15 00:24:55 ID:feaILZKs NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 92 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/12/16 00:01:36 ID:E7SAJbF. [1/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



 マサル 「ユウリが……! ユウリが危ない!」

 エースバン 「えばっ……!」


映像のラスト、ロトムが逃げたことに対して、あの女……オリーヴの仲間は、ユウリを痛めつけていた。

そして、ロトムが こうしてオレに映像を届けたってことは、ケンホロウの追跡は失敗に終わっている。


 マサル 「ロトム! ユウリの所へ案内してくれ!」

 スマホロトム 「リョウカイ ロト!」


そして、あのオボンは違法栽培。

それら事実から考えれば、あいつらは血眼になって、ロトムの行方を捜すはずだ。

それはつまり、ロトムが映像を届けた人物――、オレを捜すことになる。


 マサル 「急がないと! オレへの追っ手を心配するより、ユウリの方がヤバい!」

 エースバン 「えばばっ!」


映像を見る限り、オレの名前は出ていない。

ということは、オリーヴたちはユウリに、映像を届けた人物が誰なのかを聞きだすはずだ。

けどユウリのことだから、素直に教える訳が無い。


 マサル 「急いでくれロトム!」

 スマホロトム 「ワカッテル ロト!」


なら、どうなるか――。


力ずくで、聞きだすはずだ。

ユウリに危害を加えて――それこそ、拷問のように。



 マサル 「くそっ! 無事で居てくれよユウリ!」


 ▼ 93 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/12/16 00:02:08 ID:E7SAJbF. [2/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



ロトムの案内を追って行く。


ユウリが調査しているはずの巨人の鏡池エリアではなく、ハシノマ原っぱエリアへと向かう。


エンジンシティ東の大橋を潜って、エンジンリバーサイドに到達。


川が見えてくると、ロトムは進路を左に取り、川沿いに高い崖の方へと進んで行く。



 マサル 「ユウリ、こんな方まで来てたのか」

 エースバン 「えばぁ」

 マサル 「巨人の鏡池を調査してたはずなのに……、何か大きな発見があったんだろうな」

 エースバン 「えばっ」





高い崖の麓に辿り着く。


そこには、倒れているグソクムシャとキテルグマ3匹が。

見るからにレベルが高そうな個体だけど、戦闘不能状態で、起きる気配はない。


 マサル 「……見張りのポケモン、って訳か」


おそらく、ユウリが倒したんだろう。

インテレオンしか連れていないはずなのに、4匹を一編に相手するなんて。



 マサル (やっぱりユウリ、チャンピオンなんだな……)



オレの実力は、ユウリには遠く及ばないけど――。


オレには、ロトムの映像のおかげで、相手の手の内を知っていると言う強みがある。

ユウリみたいに、不意打ちでピンチに陥ることは避けられるはずだ。
 ▼ 94 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/12/16 00:02:47 ID:E7SAJbF. [3/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 スマホロトム 「ロト!」


ロトムは、高い崖に空いた穴の存在をアピールしている。


 マサル 「……なるほど。茂みに隠れた小さな洞窟か。あんな強そうな見張りポケモンが居れば、見つかる心配はゼロだな」


この洞窟を抜けた先に、ユウリが――。

この洞窟を抜けた先で、オリーヴたちはオボンを違法栽培している――。


 マサル 「ロトム、おまえは先に、マグノリア研究所に行っててくれ」

 スマホロトム 「ロトト?」

 マサル 「一緒に行ったら、おまえが狙われちまう。ホップの元に居れば安全だからな」

 スマホロトム 「リョウカイ ロト」



ロトムは素直に、ホップの元へと向かって行った。

スマホロトムだけで長距離移動はシュールだけど、ロトムなら きっと大丈夫なはずだ。



 マサル 「準備は良いな、エースバーン」

 エースバン 「えんばぁ!」

 マサル 「よしっ、行くぞ!」



オレとエースバーンは、洞窟に足を踏み入れる。



遠くに見える明かり、その先にユウリが居る。悪事を働くオリーヴが居る。



暗がりの中を、一歩一歩、慎重に進んで行った。



 ▼ 95 リキリ@タイマーボール 20/12/16 00:44:15 ID:anmAGFzw NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 96 タシラガ@ひみつのコハク 20/12/18 22:09:01 ID:nIfwI2C6 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 97 クシオ@アゴのカセキ 20/12/20 17:09:54 ID:IW4MjicQ NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 98 ャルマー@オッカのみ 20/12/21 00:20:20 ID:VrggA.x6 NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 99 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/12/21 00:59:15 ID:x/REky/A [1/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



間もなく洞窟の出口。

外からの明かりがギリギリ差し込まない位置で、オレとエースバーンは最終確認。


 マサル 「ロトムの映像から分かる範囲で、“さいみんじゅつ”持ちの不意打ち用バリヤードと、ケンホロウが居る」

 エースバン 「えば」

 マサル 「オボンの収穫を手伝ってるのは、キテルグマとカイリキー、あとゴーリキーだ。映ってないだけで、他にも居るかもしれない」

 エースバン 「えばぁ」

 マサル 「けど、ほとんどはオボンの収穫に駆り出されてると思うから、先手必勝で奇襲をかけるぞ。で、インテレオンのボールを取り返して、このラムの実を食べさせる」

 エースバン 「えんば」

 マサル 「ラム持ってて良かったぜ。インテレオンが起きたら、2匹で一気に片付けるぞ。インテレオンのことならオレでも分かるからな」

 エースバン 「えばえば!」

 マサル 「あとは……、ユウリの場所を確認しておきたいな」


そっと、外の光景を覗く。

が、やはりこの位置からだと、木々に阻まれて上手く確認できない。

ロトムの映像の情報から、洞窟出口は木々と茂み、その奥に開けた空間とプレハブ小屋、そのさらに奥にオボンが実る木々が生い茂っている――ということは分かる。


 マサル 「行くぞエースバーン。出たらすぐ茂みに隠れよう」

 エースバン 「えばっ!」





姿勢を低くして、オレとエースバーンは洞窟の外に出た。


そして、すぐそばの茂みに身を隠し、場の状況を確認する。

開けた空間とプレハブ、その奥に広がるオボンの木々。映像通りの光景だ。



肝心のユウリは――。



デンチュラの糸に拘束され、プレハブ小屋の手前にある木に、吊るされていた。


 ▼ 100 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/12/21 01:00:41 ID:x/REky/A [2/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



   *





 ユウリ 「はぁっ、はぁっ、はぁっ……っく、ぅぅっ……」


 男社員 「デンチュラの電気、辛いだろ? そろそろ吐いたらどうだ?」

 女社員 「私たちもね、こんな手荒なこと したくないのよ?」

 ユウリ 「わたしはっ……、そんな脅しっ、負けないっ……」

 男社員 「そうか。デンチュラ、軽〜く“でんじは”追加」

 デンチュラ 「ちゅらっ!」


 ユウリ 「ぃっ……あっ!? ああぁぁぁぁぁぁっ!」 バチバチバチッ


 女社員 「ふふっ。辛いでしょ? 吊るされて抵抗も出来ない。さっさと吐いちゃった方が賢明よ?」

 男社員 「手加減してやってるんだぜ? さっさと吐かないと、もっと辛くなるぞ?」


 ユウリ 「ぅぐっ、グスッ、ふーっ、ふーっ、ふーっ……」 ビリビリビリ


 男社員 「意識を保つのに精一杯、ってとこか」

 女社員 「涙流しちゃって。可愛いわね」

 男社員 「ほら、言えよ、そろそろ」


 ユウリ 「ぜったぃっ、いわないっ……、あなたたち、こそっ、はやく、じしゅ……」


 男社員 「デンチュラ、やれ」

 デンチュラ 「ちゅーらっ!」


 ユウリ 「んぐっ、ぁっ、あ゙あ゙あ゙ぁぁぁっ……!?」 バチバチバチッ





   *



 ▼ 101 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/12/21 01:02:12 ID:x/REky/A [3/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



 マサル (ユウリっ……!)


ユウリは、デンチュラの電気に苦しめられていた。

糸で拘束されて、木に吊るされて。動けない状態で、ひたすら電気責めを受けていた。


 マサル (オレなんかのために……!)


ユウリ、オレのこと引っ叩いたじゃん。

ユウリ、オレにパンツ見られて焦ってたじゃん。

ユウリ、オレのこと……、大嫌いって言ったじゃん。


 マサル (なんでオレなんかのために……、そんな仕打ち受けてるんだよ!?)


あんな辛そうな顔して……。

ロトムはオレの所に行った――、それだけ喋れば、そんなボロボロになること無いのに。

ユウリは女の子なのに……、なんでそんなに我慢するんだよ! オレなんかのために!



 マサル 「行くぞエースバーン」

 エースバン 「えば!」



ユウリは、強い。

あんなに酷い仕打ちを受けてるのに、あんなに辛い拷問を受けてるのに、オレのことは一切 喋らないで、耐えている。

喧嘩したはずなのに、ユウリはオレのこと、守ろうとしてくれている。



 マサル 「バリヤードに“かえんボール”!」

 エースバン 「えばっ……ばん!」



ならオレも、ユウリを守らなきゃいけない。

男であるオレが、ユウリを守らなきゃいけないんだ!


 ▼ 102 ッソン@いわのジュエル 20/12/21 02:07:38 ID:NG56VBNc NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
続き来てた
いいぞマサル
 ▼ 103 ガリザードンY@ミュウZ 20/12/21 02:29:16 ID:ySzYJXAQ NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
>>100
もう抜ける
 ▼ 104 ンヂムシ@ぼうけんノート 20/12/21 03:19:00 ID:hUUkO04w NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
マサルは何かとハブられること多いし幸せになれ
 ▼ 105 ジョフー@ヒウンアイス 20/12/23 21:59:10 ID:vltQ.6.Q NGネーム登録 NGID登録 報告
かっこええわ
 ▼ 106 メンカ@ずぶといミント 20/12/23 22:19:58 ID:zJvEm7lQ NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
マサル頑張ってくれ
 ▼ 107 ルー@スピアナイト 20/12/23 22:20:35 ID:TvCwW2QE NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
支援するぜ!
 ▼ 108 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/12/24 03:12:22 ID:ZbGwnKhk [1/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



 バリヤード 「バリバリィィィッ!?」


 男社員 「なっ!? なにごとだ!?」

 女社員 「炎ワザ!?」



“かえんボール”はバリヤードに直撃。

効果抜群かつ、完璧な不意打ちが成功。エースバーンの攻撃力も相まって、この一撃で仕留めることが出来た。



 マサル 「ユウリを返してもらうぞ!」

 エースバン 「えんば! えばばぁ!」


 男社員 「仲間が来たか」

 女社員 「ってことは、アンタがロトムの映像持ってるってことね!」


 ユウリ 「まさ……る……? きちゃっ……だめっ……」


 マサル 「待ってろユウリ! すぐ助けるからな!」


 男社員 「テメェ、オレらに刃向ってタダで済むと思ってんのか?」

 女社員 「映像を見たってことは、オリーヴ様の計画、知っちゃったってことよね」

 男社員 「ならコイツも捕まえて監禁だな」

 女社員 「当然。せっかく軌道に乗って来たマクロコスモスの立て直し、邪魔させないわよ!」


 マサル 「会社のためなら犯罪も許されるって言うのか? ふざけるなっ!」

 エースバン 「えばん!」

 マサル 「オボンを違法栽培して! カジッチュたちポケモンを傷付けて! ユウリを痛めつけて! それが会社のためだぁ? 馬鹿にするな!!!」


 男社員 「ガキに何が分かる!? ローズ社長が逮捕されて、マクロコスモスの株価は大暴落だ! 給料もボーナスもカット! やってられっか!」

 女社員 「そこで立ちあがったのがオリーヴ様よ。高級オボン事業は大成功。マクロコスモスも息を吹き返し始めたわ。見てよ、このオボンの森を!」


プレハブ小屋の奥に広がる、オボンが実る木々。

黄色い大きなオボンの実は、ここからでも分かるくらい、色艶が良い。
 ▼ 109 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/12/24 03:15:08 ID:ZbGwnKhk [2/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 女社員 「ワイルドエリアの崖の裏……、手つかずの地を整備して作ったオボンの森。凄いと思わない?」

 マサル 「違法なことに凄いもクソもあるか!」

 男社員 「お喋りは終わりだ。男なら手加減いらねぇな」

 女社員 「ここを見られたからには、帰す訳には いかないわよ! 行ってケンホロウ!」

 男社員 「デンチュラ……は待機だ。出てこいサイドン!」

 ケンホロウ 「ホロォ!」

 サイドン 「ドサィ!」



とうとうバトルが始まる。

オボンの森は相当広いようで、収穫を手伝っているキテルグマやカイリキー、そしてオリーヴには気付かれていない。


 マサル 「やるぞ、エースバーン!」

 エースバン 「ぇばん!」


催眠術を使うバリヤードを倒してしまった今、不意打ちを気にする必要は無い。

2対1、不利では あるけど、オレだってガラルリーグでベスト4まで勝ち進んだトレーナーだ。

ユウリには及ばずとも、こんな奴らに負けるになんて、さらさら無い!


 女社員 「ケンホロウ“でんこうせっか”!」

 マサル 「こっちも“でんこうせっか”だ!」

 エースバン 「ばん!」


ケンホロウとエースバーンが瞬足で ぶつかり合う。まさに電光石火。


 ケンホロウ 「ホロッ……」

 女社員 「うそっ……押し負け!?」


同じワザ同士でも、当然、鍛え方で威力は変わる。

特に“でんこうせっか”の場合、初速が重要だ。その点、足腰を鍛えているエースバーンが有利になる。


 マサル 「“かえんボール”!」

 エースバン 「えばっ……ばん!」
 ▼ 110 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/12/24 03:15:59 ID:ZbGwnKhk [3/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
エースバーンは小石を蹴り上げ、炎を込める。

たちまち小石は火炎弾に様変わりし、その弾丸をケンホロウに向かって蹴り飛ばす。

“でんこうせっか”の競り合いに負けてバランスを崩していたケンホロウに、“かえんボール”は直撃した。


 女社員 「あぁっ……」

 マサル 「よしっ!」


 男社員 「サイドン“とっしん”だ!」

 サイドン 「サァイ!」


 マサル 「来るぞ! ジャンプして かわせ!」

 エースバン 「えばっ!」


背後から迫りくるサイドンを、エースバーンは大きくジャンプして回避。


 マサル 「そのまま“アイアンヘッド”! まずはケンホロウだ!」

 エースバン 「えばっ……ばぁぁぁん!」


エースバーンは空中で一回転すると、ケンホロウに狙いを定めて急降下。


 女社員 「“エアスラッシュ”で防いで!」

 マサル 「遅いぜ!」


“かえんボール”の立て直しに時間がかかっていたケンホロウが、攻撃に転じる隙は無かった。

エースバーンの強固な額、鋼の額が、上空からの勢いのまま直撃。

ケンホロウは地面に叩きつけられる。
 ▼ 111 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/12/24 03:17:08 ID:ZbGwnKhk [4/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 女社員 「クッ……! こいつ強い!」

 男社員 「もういい引っ込んでろ! オレがやる! “ロックブラスト”打ち込んでやれ!」

 サイドン 「サァァァドォォォン!」


地面に着地したエースバーンめがけ、サイドンは岩石を連続発射する。


 マサル 「よけろ! “でんこうせっか”!」

 エースバン 「えばぁ!」


その岩石を、エースバーンは“でんこうせっか”のスピードを活かして次々と回避する。

そして、徐々にサイドンとの距離を縮める。


 男社員 「早い……! サイドン、奴の動きを止めろ! “じしん”で……」

 女社員 「ストップ! ここで“じしん”なんて使ったら高級オボンに被害でるでしょ!?」

 男社員 「っ……確かに!」



おっと……?

あいつら、環境のせいで自ら不利に陥ってる感じか?

確かにここで“じしん”を起こせば、せっかく良い感じに実ったオボンが落ちちまう。高級品に傷を付ける訳には いかないよな。


 マサル 「今だエースバーン! “アイアンヘッド”!」

 エースバン 「えばっ……ばぁぁぁん!」


その隙を突いて、エースバーンの“アイアンヘッド”がサイドンに直撃。

“でんこうせっか”でスピードが乗っている状態での効果抜群ワザは、いくら防御が高いサイドンであれど、大きなダメージとなる。


 男社員 「あっ……、サイドン!?」


サイドンの巨体は揺らぎ、地面に倒れ込む。

このチャンスを逃さない。


 マサル 「立たせるな! もう1発“アイアンヘッド”!」

 エースバン 「えばっ!」
 ▼ 112 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/12/24 03:19:05 ID:ZbGwnKhk [5/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


 女社員 「“エアスラッシュ”で止めて!」

 ケンホロウ 「ホロォォッ!」


 マサル 「チッ……! よけろエースバーン!」


“アイアンヘッド”がサイドンに直撃しようとした時、ケンホロウの“エアスラッシュ”がエースバーンの攻撃軌道に交わる。

空気の刃はエースバーンとサイドンの間を吹き抜け、茂みの草を切り裂いた。


 男社員 「立てサイドン! “ロックブラスト”!」

 サイドン 「サッドォォォォン!」


サイドンは再度、岩石を連続発射する。

“とっしん”などの直接攻撃ワザでは、素早さに勝てないエースバーンに当てるのは難しいと判断したのだろう。


 女社員 「飛んでケンホロウ! 上空から“エアスラッシュ”よ!」

 ケンホロウ 「ホロッ!」


そしてケンホロウは空へと羽ばたき、サイドンとは逆の方向から“エアスラッシュ”を放つ。

弾丸と空気の刃に挟まれる形となったエースバーン。けど、焦りは禁物だ。


 マサル 「“でんこうせっか”でケンホロウの真下に!」

 エースバン 「えんば!」


エースバーンは“でんこうせっか”のスピードで“エアスラッシュ”を回避するとともに、ケンホロウの真下に移動する。

空気の刃は虚しく地面を抉るが、岩石の弾丸は勢い衰えずエースバーンに向かってくる。


 マサル 「見せてやれ! “ブレイズキック”!」

 エースバン 「えばん! ばぁぁぁっ!」


エースバーンは一瞬だけ“貯め”の行動を取ると、力強く地面を蹴り上げる。

エースバーンの鍛え上げた足腰から放つジャンプは、空中のケンホロウを容易く捉え、同時に、“ロックブラスト”の岩石軍はエースバーンの下を虚しく通過した。


そして、蹴り上げた足には炎が宿り、これほど高くジャンプするとは思わなかったであろう驚いた表情のケンホロウに、“ブレイズキック”が直撃した。
 ▼ 113 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/12/24 03:20:58 ID:ZbGwnKhk [6/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 ケンホロウ 「ホロッ……」

 女社員 「ぅっ……ケンホロウ!?」


 男社員 「ガキの分際で……! サイドン! エースバーンの落下地点に急げ! “ドリルライナー”!」

 サイドン 「ドッサァァァァァ!」


ケンホロウは これで戦闘不能になるだろう。

見事な“ブレイズキック”を決めたエースバーンは、重力に従って地面に向かう。その落下地点には、ドリルを鈍く光らせるサイドンが先回りしていた。

“ドリルライナー”。地面タイプの大ワザを受けるのは避けたい。


 マサル 「“かえんボール”! 撃ち落とせ!」

 エースバン 「えばっ……ばん!」


自由落下中でも、エースバーンは器用に小石を取り出し、炎を込める。

そして宙返りするように、火炎弾と化した石を、サイドン目がけ蹴り落とした。目標は……ドリル!


 サイドン 「サドッ……!?」


サイドンのドリルは、岩石をも貫通させる威力を持つ最大の武器だが、その分デリケートでもある。

いま、落下して来るエースバーンの体に“ドリルライナー”を撃ち込もうとしていたサイドンは、炎を纏った固い岩石が急に現れ、焦りが生まれる。

“かえんボール”は容易く粉砕されたものの、サイドンは本能的にドリルを庇う。


 マサル 「“アイアンヘッド”!」

 エースバン 「えばっ……ばぁぁぁん!」


その一瞬の隙を狙ってたんだぜ?


ドリルを避けた、サイドンの脳天に、エースバーンの鋼の額が直撃した。

落下速度がプラスされた、エースバーン渾身の一撃。効果は抜群だ。


 サイドン 「ドッ……サッ……」

 男社員 「おっ……、おいサイドン!?」


“アイアンヘッド”の直撃を受けたサイドンは、数歩後ろに よろけた かと思うと、そのままグラリと体勢を崩す。

砂埃を立てて倒れ、そのまま動かなくなった。戦闘不能だ。
 ▼ 114 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/12/24 03:22:24 ID:ZbGwnKhk [7/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 マサル 「よしっ! よくやったぞエースバーン!」

 エースバン 「えばぁ! えばっ!」


 男社員 「こいつ……!」

 女社員 「ちょっと……、2対1なのにっ!?」


 マサル 「さぁ! これ以上は無駄だ! ユウリを解放しろ!」


2人の社員のポケモンは、確かに鍛えられている。体を見れば分かる。

けど、指示するトレーナーが未熟なら、いくらポケモンが強くても、その力を引き出すことは出来ないのだ。


 男社員 「クッ……! 出てこいキリキザン!」

 キリキザン 「キザッ!」


出てきたのはキリキザン。

腕と頭の刃を鈍く光らせ、鋭い眼光でエースバーンを睨みつける。


 マサル 「お前らなんかに、オレたちは負けない!」

 エースバン 「えばぁ!」

 男社員 「……ふん。果たして勝てるかな?」

 マサル 「なにっ?」


確かにキリキザンは、サイドンより小回りが利くし、素早さもある。

少しは苦戦するかもしれないけど、炎タイプのエースバーンが断然有利。隙を作って一気に攻め込み、畳みこむ。


 マサル (けどっ……)


けど――、こいつの余裕そうな表情は、いったい何なんだ?

キリキザンも動く気配はないし、攻撃を指示する雰囲気でもない。

エースバーンの攻撃を起点に、カウンター的な攻撃を仕掛けてくる気か? となると“リベンジ”でも覚えてるのか?

なら距離を取って“かえんボール”を主軸に……。





 ― メキッ!


 ▼ 115 ーシャドー@きんりょくのハネ 20/12/24 20:19:18 ID:4pxoEhPg NGネーム登録 NGID登録 報告
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 ▼ 116 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/12/25 02:13:30 ID:6UKo6whQ [1/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



 マサル 「ぅぐっ!?」



脇腹に激痛が走る。

一瞬 意識が飛んで、気付けばオレの体は、地面に横たわっていた。


 マサル 「っ……」


何が起きたのか分からない。


目を開けると、今までオレが立っていた場所には、腕を ぶんぶん回しているキテルグマの姿が。

そうか、オレ、あいつに やられたのか。


エースバーンが心配そうに駆け寄って来る。

が、その背後から水流の塊が迫っている。あれは……、グソクムシャの“アクアブレイク”!?

ヤバい。「よけろ!」と叫ぼうとしたものの、痛みで声が出なかった。



 ― ドシャッ!



 エースバン 「えばぁぁっ……!?」


エースバーンの背後から、“アクアブレイク”が直撃。

完全なる不意打ち、しかも効果抜群ワザ。エースバーンは成す術なく弾き飛ばされる。


 マサル 「エースバーンっ……!」


攻撃は終わらない。

キテルグマが足踏みし始めたかと思いきや、その巨体でエースバーンに突っ込んだ。“とっしん”だ。


 エースバン 「ぇばっ……!」


鈍い音とともに、エースバーンは宙を舞う。

そして、崖の岩場に打ち付けられ、力なく倒れ込んでしまった。
 ▼ 117 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/12/25 02:15:30 ID:6UKo6whQ [2/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 男社員 「トドメだ! キリキザン“アイアンヘッド”!」

 キリキザン 「キザッシュ!」


そこへさらに、今まで動きを見せなかった男社員が動く。

キリキザンは俊敏に走り出し、鋼に染まった固い額で、エースバーンに突撃した。


 マサル 「っ……、やめろぉっ!」


オレの叫びも虚しく。



 ― ゴキッ!



 エースバン 「っ……」


乾いた音が響き、エースバーンは声にならない叫びを上げる。

防御行動を取っていない、不意打ちのように続いた3つの攻撃。いくらエースバーンでも、これに耐えることは出来なかった。

とうとうエースバーンは、動かなくなってしまった。


 マサル 「くそっ……、戻れ、エースバーン」


オレは痛みを堪えてボールを取り出し、なんとかエースバーンをボールに収めた。

これで、これ以上エースバーンが痛めつけられるのは回避できたけど……。



 男社員 「フンッ。情けねぇ姿だな」

 女社員 「ホント。ケンホロウとサイドンに勝てたからって、油断しすぎじゃない?」



2人の社員が、オレを冷たく見下ろす。


確かに、その通りだ。

勝てると思った。この2人のバトルセンスでは、オレの方が圧倒的に有利だと思った。
 ▼ 118 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/12/25 02:18:48 ID:6UKo6whQ [3/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


 男社員 「そのグソクムシャとキテルグマも、オボンで買収した協力者だ」

 女社員 「美味しい高級オボンを定期的に渡す代わりに、ここの見張りを頼んだの。鍛えられた野生は心強いわ」


グソクムシャとキテルグマ――、洞窟の入口で倒れてた個体だ。


ということは、こいつら、あの時ホントは意識があったってことだ。

キテルグマは3匹いたはずだから、残りの2匹は入口に残って見張りを続けてるんだろう。

このグソクムシャとキテルグマは、オレを油断させるために戦闘不能のフリをして、時間をずらして、こいつらに加勢に来たってことか。


野生のクセに、なんて知能を持ってやがるんだ……!


 男社員 「さて。覚悟は出来てんだろうな?」

 女社員 「ポケモンを出さないってことは、1匹しか連れてないんでしょ? よくそれで乗り込んで来たわね」

 男社員 「その お嬢ちゃんと一緒か。随分とナメてくれてるなぁ最近のガキは!」

 マサル 「クッ……!」


……ダメだ、体が痛んで上手く動けない。

当然か。怪力自慢のキテルグマに、脇腹を殴られたんだから。


情けないだろ、オレ。

ユウリを助けに威勢よく乗り込んだって言うのに、これじゃぁミイラ取りがミイラじゃんかよ。


ユウリの姿を見ると、どうやら気を失っているようで、木に吊るされたまま、ピクリとも動かない。

オレが来るまでの間、逃げたロトムのことを吐かせようと、ずっと電撃に耐えていたんだ。とっくに限界を迎えていたはずだ。


オレなんかのために……。


ユウリを助けることすら出来なかった、こんな最低なオレなんかのために!

 ▼ 119 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/12/25 02:21:56 ID:6UKo6whQ [4/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

 女社員 「早いとこオリーヴ様に伝えないとね」

 男社員 「それもあるが……、お前、ロトムを出せ」

 マサル 「……知らねぇな」

 男社員 「ふざけんな! 助けに来たってことは、ロトムの映像を見たってことだろ!?」

 マサル 「ここには居ねぇよ」


ロトムは、マグノリア研究所のホップの元へ向かわせている。

ここに居ないのは事実だし、そのことを こいつらに教える気も無い。


 男社員 「そうか。テメェも あの女と同じ目に遭いたいってことだな?」

 マサル 「くっ……!」



情けないことに、今のオレには、ロトムの映像を見たホップが動いてくれることを期待することしか出来ない。

ユウリがオレに対して そうしたのと、同じように。



 男社員 「来いデンチュラ!」

 デンチュラ 「チュラッ!」

 男社員 「知ってるか? デンチュラの腹の毛が刺さると、三日三晩も全身が痺れるんだぜ?」

 マサル (図鑑の説明で見た気がする)

 男社員 「その お嬢ちゃんには軽〜い電磁波で痛めつけてやったけど……、男のテメェに遠慮は要らねぇな」

 マサル 「………」


 男社員 「最後のチャンスだ。ロトムは何処だ?」


 マサル 「……オレたちはお前らなんかに屈しない! やるなら やれよ!」

 男社員 「……はぁ」

 女社員 「可愛くないわね。せっかく助かるチャンスをあげたって言うのに」

 男社員 「なら望み通り苦しませてやるよ! デンチュラ! 腹の毛を飛ばせ!」

 デンチュラ 「チュラッチュ!」
 ▼ 120 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/12/25 02:23:04 ID:6UKo6whQ [5/5] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

デンチュラが一歩前に出る。

腹の針……、あれに刺されたら、三日三晩、痺れに苦しむことになる。


 マサル 「っ……!」


けど、死ぬ訳じゃない。

ユウリだって、今まで苦しんでたんだ。オレのせいで。



なら、これは罰だ。



ユウリに酷いこと言って傷付けて、ユウリを一人で乗り込ませることになったのは、オレのせい。

これまでユウリが苦しんだ分、オレも苦しまなきゃ許されない。



ホップが助けに来ることを信じて……、甘んじて受けてやろうじゃないか。










 「きるるるぅぅぅぅぅ〜♪」










 ▼ 121 ッキー@ハーバーメール 20/12/25 16:37:56 ID:QAF.Yw7M NGネーム登録 NGID登録 報告
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キルリア来たか
 ▼ 122 ローン@ぐんぐんこやし 20/12/26 06:29:01 ID:o3qUUpuA NGネーム登録 NGID登録 報告
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 ▼ 123 チート@りゅうのウロコ 20/12/26 22:14:58 ID:LbAkGNUw NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
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 ▼ 124 州街道◆IVIG1YNTZ6 20/12/26 22:44:33 ID:/mi6HCqY NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

覚悟を決めた、その時。

美しくも可愛げのある声が、オレたちの空間に響き渡った。



 デンチュラ 「チュラッ……!?」

 男社員 「うわっ……!?」

 女社員 「なにっ!?」



これでデンチュラの攻撃は不発に。

今のは“チャームボイス”? それに、この声は……!


 マサル 「キルリア!?」

 キルリア 「るるっ!」


オレの前に現れたのは、1匹のキルリアだった。

さっきパンをあげた、好奇心旺盛と見られる、あのキルリアだ。


 マサル 「おまえ……、ついて来てたのか?」

 キルリア 「きるりっ」

 マサル 「ダメだ……逃げろ!」


 男社員 「横槍入れやがって! デンチュラ“10万ボルト”!」

 デンチュラ 「チュララァ!」


デンチュラは雄叫びを上げると、すぐさま電気を作り出し、放出した。

“10万ボルト”の電撃は、バチバチと音を立てながら一直線にキルリアに向かう。


 キルリア 「るーっ!」 カッ


一方のキルリアは、その場でクルクルと舞ったかと思えば、次の瞬間、目を見開き、虹色の光線を繰り出す。

念波を具現化させ不思議な光りを操るエスパーワザ、“サイケこうせん”。





2つの攻撃が、ぶつかり合う――が。

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