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ポケモンSMのストーリーをゼンリョクで書く 第5章 英雄の帰還

 ▼ 1 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/02/20 18:51:46 ID:zmuQFn2E [1/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アローラ、皆さま。ガルーラJrと申します。
「ポケモンSMのストーリーをゼンリョクで書く」の第5章となります。この章では一度アローラを去ったヨウが再び戻ってくるまでのストーリーが描かれます。また、以下の点を予めご了承ください。

1:登場人物
ゲーム編では例えば男主人公を選ぶと女主人公は出てきませんが、このSSでは両方のキャラクターをヨウ、ミヅキとして登場させます。

2:登場人物の手持ち
登場人物の手持ちは基本的にゲーム本編に準拠しますが、中には1匹か2匹入れ替えを行ったり、また、ゲーム本編で例えば最大5匹しか手持ちを持っていない人物には1匹追加をしたりしています。

3:形式
地の文を用いた形式で書かせていただきます。

第1章(SMゲーム本編に準拠したストーリー)はこちらです。

Part 1(プロローグ〜エーテルパラダイス突入)
https://pokemonbbs.com/post/read.cgi?no=1011593

Part 2(ポニ島〜エンディング)
https://pokemonbbs.com/post/read.cgi?no=1196044

第2章(UB捕獲作戦)はこちらです。
https://pokemonbbs.com/post/read.cgi?no=1227914

第3章(戦乱のアローラ)はこちらです。
https://pokemonbbs.com/post/read.cgi?no=1270113

第4章(リーリエの物語)
https://pokemonbbs.com/post/read.cgi?no=1302379

それでは、第5章もよろしくお願いいたします。
 ▼ 2 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/02/20 18:53:07 ID:zmuQFn2E [2/7] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
Episode 01 ルザミーネの帰還


アローラ地方、メレメレ島。空港に一人の女性が降り立った。美しい金髪に白い肌、とても二人の子がいるとは思えない絶世の美女。
ルザミーネが空港のゲートへ向かうと、そこには二人の人物が彼女を待ち受けていた。

「…母上…」

「…ルザミーネ様…」

そこにいたのはグラジオとビッケ。アローラへ帰ると連絡をしていたので迎えに来たのだ。

「…エーテルパラダイスには戻るつもりだったから、空港への迎えはいらなかったのに…。…いいえ、ありがとう、グラジオ、ビッケ」

ルザミーネはグラジオを優しく抱き締める。グラジオは久しぶりに感じた実母の温もりに思わず涙を流した。

「…いえ…。よくぞご無事で…。母上…」

ビッケもルザミーネを目を潤ませながら迎える。

「もうお体は大丈夫なのですか?」

「そうね…。まだ少し違和感があったり、うまく動かせなくなるときはたまにあるけど、概ねは問題ないわ」

ルザミーネはビッケに笑顔を見せる。それは彼女の夫がまだいた頃、ポケモンたちに惜しみのない愛情を注いでいた彼女の笑顔そのものだった。ここで、ルザミーネはヨウのことを尋ねた。

「…ヨウくんはアローラにいるのかしら?彼も私の恩人だし、直接お礼をと思っているのだけれど…」

ルザミーネがヨウの名を出したとき、グラジオが口をつぐんだのをルザミーネは見逃さなかった。どうやらミヅキが話したアローラを離れて別の地方にいるというのは本当らしい。
 ▼ 3 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/02/20 18:54:21 ID:zmuQFn2E [3/7] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「…あいつはアローラを出てトレーナー修行をし直しているそうです」

「…そう…。ねえ、グラジオ。彼の自宅はわかる?」

「え?ええ…」

「場所を教えてくれないかしら?」

ルザミーネに尋ねられ、グラジオはヨウの自宅に彼女を案内することにした。


ハウオリシティのはずれ、海を臨む住宅地の一角にヨウの家はあった。


「…あれがヨウの家です」

グラジオがヨウの家を指差すと、ルザミーネは口を開いた。

「…ありがとう、グラジオ。…ビッケ、グラジオ。先にエーテルパラダイスへ戻っていて。…私は彼のご家族から彼の行方を聞き出してみる」

ルザミーネはそう言うと、ヨウの家に向かっていった。


「はい…。あら…、あなたは…?」

ルザミーネがインターフォンを鳴らすと、やや日焼けした肌の女性が出てくる。恐らくヨウの母親かとルザミーネは察した。

「…突然お邪魔して申し訳ありません。私はルザミーネと申します。…グラジオとリーリエの母です」

その瞬間、ヨウの母親はぎょっとした。まさかリーリエの母親がこんな若々しい美女だとは思わなかったからだ。
 ▼ 4 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/02/20 18:55:30 ID:zmuQFn2E [4/7] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「…ヨウくんはいらっしゃいますか?」

彼女の口からヨウの名が出たとき、ヨウの母親は少し暗い表情を見せた。

「ヨウなら今はシンオウ地方でトレーナー修行をしていますよ。…チャンピオンの防衛戦に負けて、ゼロから自分を鍛え直したいと言って…」

「…そうですか…。申し訳ありませんでした。失礼させていただきます…」

ルザミーネが立ち去ろうとしたとき、ヨウの母親はルザミーネを引き止めた。

「…ルザミーネさん、少しお時間をいただけますか?」

「…はい…」

ルザミーネが断る理由はなかった。彼女は何か息子のことで思い悩んでいるのがなんとなくわかったからだ。その話を聞けば彼の足取りを追うのに役に立つかもしれない。

ヨウの母親はリビングにルザミーネを通すと、飲み物を薦めた。ルザミーネは礼を述べてそれを受け取り、ソファーに腰を下ろした。

「…ヨウが何をしていたのか、あなたには心当たりがあるのではないかと思いまして…。ヨウが心配なんです。あの子、思い詰めて抱え込むタイプみたいで、私には島巡りやその後で何があったのかを詳しく話してはくれなくて…」

「………」

ルザミーネは考えた。ヨウと自分たち家族の間にあったことを話すのは彼女にとってよいことなのか、と。しかし、ルザミーネは彼女に自分たちのことを話さないのは逃げであるように感じていた。一度は悪の道に堕ちた自分を引き戻し、そして家族を再び引き合わせてくれたのは間違いなく彼なのだから。

「…お母様、あなたにはショックな内容かもしれませんが、これからお話しすることは私たち家族にとって非常に重大な出来事です。…そして、ヨウくんは私たち家族にとって英雄以外の何者でもない…。私が非難を受けることは覚悟していますので、どうか最後まで聞いてください。私が知っていることを全てお話しします…」

ルザミーネは自分のしてきた非難を受けるべきことも含め、ヨウの母親に全てを話した。ウルトラホールの接続実験のこと、その後自分がグラジオやリーリエにどう接してきたのか、そして、ヨウがエーテルパラダイスやウルトラホールの向こうで自分の前に敵として立ちはだかり、最後にはリーリエやグラジオだけでなく自分をも救ってくれたこと。

ヨウの母親は初めは信じられないというような顔をしていた。当たり前だろう。そして、ルザミーネをヨウやリーリエを苦しめた諸悪の根源と知り、その眼差しは敵を見るようなものに変わった。
 ▼ 5 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/02/20 18:57:18 ID:zmuQFn2E [5/7] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「…あなたはそんなことを…」

「…私は愚かでした…。彼にお礼と…そして償いをしなければならないと思っています。私の残りの人生の全てを使っても」

ルザミーネの目から思わず涙がこぼれた。ルザミーネは泣く権利すらないと思っていたはずなのに、その涙が止まることはなかった。

「…ルザミーネさん…。あなたはヨウへお礼と償いをと言いましたね…。私はあなたを許す、許さないというような権利は持ち合わせていません…。ただ、あなたがヨウにどうやって償いをするのかは見届けさせていただくつもりです」

「…それはもちろんです…」

ルザミーネはこくりと頷いた。そして、ルザミーネはまずヨウのアローラでの足取りを追いたいと言った。それはリーリエとの約束でもあるからだ。すると、ヨウの母親は思わぬ手掛かりを口にした。

「…それにしても、あなたといいあのリラさんといい、全くモテる様子のなかったあの子がずいぶん美人に追われるようになったものですね…」

ヨウの母親が口にしたリラという名前。ミヅキが口にした国際警察の捜査官の名前と一緒だ。

「…すみません、そのリラさんというのは…?」

「ヨウがシンオウ地方に旅立った少し後にこの家を訪ねてきたんですよ。…ヨウが旅立ったことを知ったらショックを受けたような顔をしていましたが…」

「…そのリラさんがどちらにいらっしゃるのか、ご存じではありませんか?」

「…いえ…。あの人がヨウに何か…?ヨウがあの人とウルトラビーストと呼ばれるポケモンを捕まえて回っていたのは私も知っていますが…」

「…私は自分が倒れ、カントーに行くことになってから後のことはわかりませんが、なんとなく彼女がヨウくんの足取りを追う鍵だと思うんです」

ルザミーネはミヅキに聞いたことを伏せながら言った。ルザミーネはヨウの足取りを追うには重要となる人物が少なくとも3人いると考えていた。彼の家族、現チャンピオンのミヅキ、そしてヨウが浮気をしたというリラ。

「…お母様、甚だ勝手だとは承知していますが、私は彼の足取りを追いたいと思っています…。…リーリエのためにも…」

「…それは構いません…。ヨウがあなたに追われていることを知ったらどう思うかはわかりませんが…。ルザミーネさん、ヨウを追うつもりなら、私から一つ頼まれごとをしていただけますか?」

「…はい、何なりと」

ヨウの母親はルザミーネに言った。
 ▼ 6 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/02/20 18:58:15 ID:zmuQFn2E [6/7] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「ヨウを追うなら、あなたもシンオウ地方に行く可能性はありますか?」

「…はい。私が倒れた後、アローラで彼が何をしていたのかを可能な限り調べて、その後向かおうと思っています」

ヨウの母親はそれを聞くと、小さなため息をついた。

「……英雄…ですか…。我が子をそんな風に言われたら普通は誇らしいものなんでしょうけど、私は心配です。その英雄となったことで、あの子は抱えきれないものを背負い込み、苦しんでいるのではないかと思うと…」

ルザミーネは黙ってヨウの母親の話を聞いていた。

「…ルザミーネさん、本当のことを言うと、私はあの子がシンオウでトレーナー修行をしたいと言い出したとき、本音では反対でした。苦しかったら帰って来るようには言いましたが、きっとあの子はなかなか帰って来ないであろうことはなんとなく想像できていたんです…」

「…彼を…連れ帰ってきてほしい…と?」

「…本音を言えば。それは、本来は私の役目なのかもしれません。でも、あなたの話を聞いたら、私がシンオウ地方に行ったところであの子の心に踏み込むことができるのかが不安なんです。かつてあの子と敵対していたあなたをなぜ私は今信じられているのかはわかりません…。でも、人の心にはそれぞれの立場があるからこそ踏み込める領域があることもわかっているつもりです」

「…かつて敵対していた私だからこそ…ですか…」

ルザミーネはヨウの母親の願いをなんとなく理解できていた。それは純粋な母親が我が子を心配する気持ちから来ていることだからだ。

「…わかりました。お引き受けします」

ルザミーネはヨウの母親の前で首を力強く縦に振った。自分にできることは何でもするつもりだ。ヨウのために、リーリエのために、そして自分自身のために。

ルザミーネはヨウの家を後にし、空を見上げた。いつの間にこんなに時間が経っていたのだろう。見上げる空は一面の星々で彩られている。
ルザミーネは星空を見上げて誓いを新たにし、力強く一歩を踏み出した。
 ▼ 7 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/02/20 19:01:25 ID:zmuQFn2E [7/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
第1話はここまでです。
この章ではガンガンバトルをしていく…という感じにはならないかなと思っています。
もともと癖の強い話を書いているとは思っていますし、しかもハーレムエンドにするとあっては批判もあるかと思いますが、引き続きお付き合いいただければ幸いです。
それではまた。
 ▼ 8 ホウオウ@みずのジュエル 21/02/21 01:17:37 ID:e0hI3bi2 [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ヨウ母は息子が最終的に三股するのを知ったらどう思うんだろうね。
ハーレムエンドはやはり茨の道な気がする…
 ▼ 9 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/02/21 16:03:02 ID:Rnig.Nq6 [1/9] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
読んでくださっている皆様、いつもありがとうございます。
2話ができましたので投稿します。
 ▼ 10 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/02/21 16:03:31 ID:Rnig.Nq6 [2/9] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
Episode 02 過ちの残響


エーテルパラダイス内の屋敷でルザミーネは目を覚ました。久しぶりの自分のベッドはなんだか自分のものではないような気がして、ルザミーネは大きく背伸びをした。

「…ふう…」

ルザミーネはベッドから下りると、グラジオとビッケの待つ朝食の席へ向かった。

「おはようございます、母上」

「おはようございます、ルザミーネ様」

グラジオとビッケがそれぞれルザミーネに挨拶する。ルザミーネも二人に挨拶を返すと、朝食の席についた。

「…グラジオ、ビッケ、本当にありがとう。あなたたちのお陰でまたここへ戻ってくることができた…。本当に感謝しているわ」

「…いえ、道を誤った母上をくい止めたのはヨウですし、その後カントーで母上の治療に奮闘したのはリーリエです。俺は何も…」

ルザミーネはグラジオの言葉に小さく首を横に振る。

「そんなことないわ。あなたたちがエーテルパラダイスと財団を守ってくれたのでしょう?」

「…母上…」

「グラジオ、ビッケ、聞いてほしいことがあるの」

ルザミーネは意を決してグラジオとビッケに話すことにする。自分がこれからどうしようと考えているのかを。

「…私が犯した過ちの後始末をあなたたちがしてくれているのは本当にありがたいわ…。だからこそ、私は一区切りがついたら身を引かなければならないと思っている…」

「…母上…?」

グラジオはルザミーネの言葉の意味をすぐに理解した。
 ▼ 11 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/02/21 16:04:38 ID:Rnig.Nq6 [3/9] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「私は財団の代表から身を引くわ…。それくらいしないと示しがつかないし、私が財団に戻ってきたら納得しない職員も多いはず…。エーテルパラダイスの後始末がまだ残っているなら、それが一区切りつくまでは私が責任を負うべきでしょうけど、それにも納得できない職員が多いならすぐにでも代表の任を下りるつもりよ。…もちろんその後も私がエーテル財団に協力できることは何でもするわ」

それを聞いて、ビッケはルザミーネなき後のエーテル財団を誰がまとめていくのかと尋ねた。

「…ルザミーネ様…。代表の任を下りるとして、その後は誰が後継者になるのですか…?」

ビッケはグラジオをちらりと見る。グラジオは自分とともにエーテルパラダイスの後始末に当たり、代表代理としてよくやってきたと思う。あのザオボーですらグラジオのことはそれなりに評価している。しかし、グラジオは責任感が非常に強いこともあってか、かなり疲弊しているのも事実だった。正式に代表になったら彼が彼が潰れてしまうのではないかとビッケは危惧していた。

「…ビッケ…。新たな代表はあなたにお願いしたい」

ルザミーネはビッケに向かってそう言った。ビッケは目を丸くする。対するグラジオは少しホッとしたような顔をしていた。

「…なぜ私を…」

ビッケの質問にルザミーネは答える。

「…突然ごめんなさい、ビッケ…。グラジオは私のせいで過ちを犯した人間の息子と見られることもあるでしょう…。そう思わない人ももちろんいるでしょうけど、ここはやはり血縁関係で後継者を選ばない方がいいと思うのが一点。もう一点は、あなたがエーテルパラダイスの多くの職員に慕われていたのは私もよく知ってる。…それと、昨日戻ってから職員の名簿を少し見たのだけれど、私の一件があってから財団を離れた職員も多かったようね。…今残っている職員は、あなたがいたから残っている人も多いんじゃないかしら?」

ビッケはルザミーネの言わんとすることがなんとなくわかった。今のエーテル財団に必要なのはカリスマでもなんでもない。ただただ誠実に人とポケモンに寄り添い、共に歩むことができる人物。ルザミーネはそれが自分だと思っているのだ。

「…ルザミーネ様…。わかりました…」

ビッケは首を縦に振る。ルザミーネはそれを見て一安心できた。
 ▼ 12 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/02/21 16:05:17 ID:Rnig.Nq6 [4/9] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「…ありがとう、ビッケ…」

ルザミーネはその後グラジオに尋ねた。自分が開いてしまったウルトラホールから多くのビーストが現れたのではないかと思ったが、そのビーストたちはどうなったのかと気になったのだ。
グラジオはルザミーネが呼び寄せたビーストの一部がアローラに残存してしまい、その捕獲に国際警察のウルトラビースト対策チームが当たったことを話した。そして、その捕獲作戦にヨウが協力していたことも。ルザミーネはそれを聞き、その中にリラという人物がいなかったかと尋ねた。

「そのウルトラビースト対策チームの中に、リラという人はいなかったかしら?」

「いましたね。母上、一度ウルトラビーストフェスティバルの動画をご覧になったらいいと思います。そのリラさんも出場していたので」

ルザミーネはそう言われ、朝食を終えると自室の端末でウルトラビーストフェスティバルの動画を一度見てみることにした。


「…この人がリラさん…」

ルザミーネはグラジオの言った動画を見て、薄紫色の髪をしたスーツ姿の女性に注目する。ウルトラビーストのバトルの祭典、ウルトラビーストフェスティバル。ウルトラビーストを危険視する人々たちへ、彼らも普通のポケモンと同様に接することができると知らしめるために企画されたというこの大会。ヨウが一回戦で敗退したことも意外だったが、それ以上にこのリラという女性のバトルセンスにルザミーネは驚いていた。

この動画を興味深く見ていたルザミーネだったが、この動画には彼女にとって非常に有益な情報で溢れていた。

「…ミヅキさんに会わないといけないわね…」

ミヅキがこの大会に参加していたのをこの動画で確認できた。彼女は恐らく、ヨウとリラの関係をちょっと聞きかじった程度ではないのだろう。そう確信したルザミーネはすぐに立ち上がった。
 ▼ 13 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/02/21 16:06:32 ID:Rnig.Nq6 [5/9] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「…まさか私を訪ねてくるとは思いませんでしたよ」

「…突然ごめんなさいね、ミヅキさん…」

ミヅキは自宅にやってきたまさかの人物に警戒するような視線を向ける。それはそうだろう。彼女も自分が悪事に手を染めていたときにエーテルパラダイスに突入してきたメンバーの一人なのだから。

「…今さら私に用があるとは思えませんが…」

ミヅキはルザミーネを突き返すような目で見つめる。ルザミーネは小さくため息をつき、本題に入った。

「…行方を追っている人がいるの…。あなたがかつて最も憧れ、そして最も失望した人よ」

その言葉に、ミヅキは途端に不機嫌になる。しかし、ミヅキはルザミーネならばリーリエのあの男への心酔を解くことができるのではないかとも考えた。

「…いいでしょう。私の知っていることが何の役に立つのかはわかりませんけど、話すだけなら」

ルザミーネは小さくお辞儀をし、ミヅキの自宅に入っていった。

ミヅキの話した内容は概ね次の通りだ。ヨウはリーリエと恋仲になりながら離ればなれになった寂しさをいつも感じていた。しかし、そこにリラが現れ、彼はウルトラビーストの捕獲任務に共に当たるにつれ、彼女に少しずつ惹かれていったらしい。そして、ミヅキはヨウに忠告したそうだ。リラとの関係をすぐに断ち切ればリーリエにはそのことは言わない、と。だが、リラがウルトラビースト、カミツルギの捕獲任務の際に重傷を負いながらもヨウへの愛情を貫こうとしたことで、ヨウはリラへ情が移り彼女との関係を断てなくなった。

「…ルザミーネさん、ルザミーネさんはリーリエの幸せを願ってますよね?」

ミヅキはポツリとそう言った。ルザミーネが首を縦に振ると、ミヅキは続けた。

「…リーリエはまだあいつを信じてるみたいだけど、もうあいつとの関係は終わらせるべきです。そうじゃなきゃリーリエが不幸になる」

ミヅキは拳を震わせていた。きっと、ヨウの浮気に関わることを思い出すと彼への怒りが込み上げてくるのだろう。だが、ルザミーネは静かにミヅキに反論した。
 ▼ 14 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/02/21 16:07:30 ID:Rnig.Nq6 [6/9] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「…あなたの気持ちもわかるわ。リーリエのためを思っていることも。でも、リーリエの幸せはリーリエ自身が決めること。それは親でも、どんなに親しい友人でも決められないことよ」

「…じゃあどうしろって言うんですか!?」

ミヅキは思わず声を荒げてしまった。

「…私、ヨウくんを連れ戻しに行こうと思ってるの。その前に彼がアローラで何をしていたのかを知りたくて、私が倒れてからの彼の足取りを追っているところなの」

ルザミーネの言葉に、ミヅキは呆れたように言った。

「ヨウを連れ戻す?リーリエのためですか?やめた方がいいですよ。あんな奴を連れ戻そうなんて!」

「…そうかもしれない。でも、リーリエは彼に会いたがってる。それに、私にとっても彼は恩人であることに変わりはない」

「…まあ、勝手にしたらいいですよ」

ミヅキはついに吐き捨てるように言った。そして、手紙を一通ルザミーネの前に差し出した。

「…これは?」

「…ヨウがシンオウに行った次の日に届いた手紙です。…身勝手なことが書かれてますよ」

ルザミーネはヨウの手紙を受け取り、内容を読んでみることにした。


ミヅキへ

この手紙を読んでいるころには、僕はアローラを去っていると思います。ミヅキには心配をたくさんかけてごめんなさい。
ミヅキがリーリエに会えなくなった寂しさに負けた僕を立ち直らせようとしてくれていたのはわかっているつもりです。でも、僕は結局ミヅキの期待に応えることはできませんでした。
ほしぐもちゃんをネクロズマに奪われたとき、こんな弱い僕のためにミヅキは戦ってくれました。それが嬉しかったと同時に、自分が情けなくなりました。だからもう一度ゼロから自身を鍛え直したいと思っています。ミヅキに堂々と顔向けできるかはわからないけど、帰ってくるときにはもう少しマシな自分を見せられたらと思います。

ヨウ
 ▼ 15 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/02/21 16:08:40 ID:Rnig.Nq6 [7/9] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「…本当に身勝手ね…」

ルザミーネは言った。ミヅキはルザミーネが自分に同意したのかと思ったが、そうではなかった。

「…あなたはこんなに自分を卑下していい人間じゃないわ。あなたは立派に戦い続けたじゃない。リーリエのために、そしてリラさんのために」

ルザミーネはここでミヅキに尋ねた。

「…ミヅキさん、私、可能ならリラさんにも会いたいと思っているの。リラさんは国際警察にいるのよね?」

ミヅキは首を横に振った。

「…リラさんは国際警察を辞めてアローラにいますよ。ポニ島のしまクイーン、ハプゥちゃんを訪ねていったら会えると思います」

「…ミヅキさん、ありがとう」

ルザミーネが立ち上がると、ミヅキは最後に尋ねた。

「…ルザミーネさん、ひとつだけ答えてください」

「何かしら?」

ミヅキはおずおずとルザミーネに切り出した。

「…私はヨウがリラさんに浮気した以上、リーリエはヨウとの関係を断つべきだと思います。でも、リーリエがヨウのことを本気で好きになるのもわかるんです。リーリエの幸せは私が決めることじゃないということも理解はできますけど、そんな風に思うのは私の身勝手なんでしょうか?」

ルザミーネはしばし考え、口を開いた。
 ▼ 16 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/02/21 16:09:44 ID:Rnig.Nq6 [8/9] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「…私はかつて、子どもは親の言う通りにするのが幸せになる一番の近道だと考えていた…。今のあなたは、もしかしたらかつての私に近い精神状態になっているのかもしれないわ」

ミヅキはそう言われ、少しショックを受ける。かつてのルザミーネと今の自分が同じだなんて思いたくはなかった。

「…正義感や善意はときに厄介なものよ。それ以外のものを一切目に入らなくしてしまうこともある。…今の私にできることは、リーリエが自分の幸せは何かを見つめ直す場を整えてあげることだと思ってる…。その場を整えるにはヨウくんが不可欠なの」

ミヅキは黙ってルザミーネの言葉に耳を傾ける。確かにルザミーネの言う通りか。リーリエの幸せを判断するのはあくまでリーリエ自身だ。彼女がそれを判断するのにヨウが必要なのもその通りだろう。ミヅキはなんだか肩の荷が少し軽くなったような気がした。

「…ありがとう、ミヅキさん。あなたと話せてよかったわ」

ルザミーネがそう言って立ち去ろうとすると、ミヅキはルザミーネに言った。

「…いえ、私も話せてよかったです。ルザミーネさん、シンオウに行くなら気をつけて」

ルザミーネはミヅキが穏やかな顔をしていたことに少し目を丸くしながらも、彼女に穏やかな笑みを返した。次の目的地はポニ島。ルザミーネはポートエリアへ向かい、船に乗り込んでいった。
 ▼ 17 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/02/21 16:11:07 ID:Rnig.Nq6 [9/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
第2話はここまでです。
次回はリラとルザミーネの出会いを描き、その次くらいからシンオウ地方を舞台にしたお話にするつもりです。
それではまた。
 ▼ 18 メテノ@いでんしのくさび 21/02/21 23:14:22 ID:e0hI3bi2 [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
押し付けられた善意は悪意も同然って言うしね。
支援
 ▼ 19 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/02/24 19:27:55 ID:OojASpOs [1/7] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
読んでくださっている皆様、いつもありがとうございます。
3話ができましたので投稿します。
 ▼ 20 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/02/24 19:30:16 ID:OojASpOs [2/7] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
Episode 03 心の拠り所


ポニ島、バトルツリー。既に日は沈みつつあったが、ここでは、この場所を新たなバトルの名所とすべく工事が進められていた。工事に携わるメンバーの中に薄紫色の髪をした作業着を来た女性がいる。その女性はラティオスとフーディンに工事の資材を運搬させていた。ラティオスとフーディンは念力を使い、重い資材を持ち上げていた。

「…フーディン、ラティオス。そろそろ今日の作業は終わりだよ。今日もお疲れ様」

女性はラティオスとフーディンをボールへと戻し、労った。と、そこへ別の場所で作業をしていたポニ島のしまクイーン、ハプウがやってくる。

「リラ殿、疲れているところ悪いが、そなたに客人じゃぞ」

「…?」

リラはハプウの声に後ろを振り向く。リラはハプウが連れてきた客人を見てぎょっとした。

「…エーテル財団代表…、ルザミーネ…」

「…その肩書きもすぐに『元』になる予定よ。元国際警察、リラさん」

ルザミーネはリラを見つめる。
ルザミーネにそう言われ、リラはルザミーネが何の用で自分の前に現れたのかと警戒する。彼女がここにいるということは、ウツロイドの神経毒からある程度回復していると見て間違いない。彼女は今でもウルトラビーストに執着しているのだろうか。

「…ボクに何の御用ですか?」

身構えるリラを見て、ルザミーネはふっとため息をついた。

「…情報がほしいのよ。あなただけが知っている情報…」

「…情報…?」

「…あなたが命がけで愛を貫こうとした相手のことよ」

ルザミーネにそう言われ、リラは思わずボールを手に取った。この女はヨウの情報を得てどうするつもりなのか。まさかヨウへの復讐でも考えているのだろうか。もしそうなら、ヨウの情報をこの女に渡せるはずがない。
 ▼ 21 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/02/24 19:32:01 ID:OojASpOs [3/7] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「…彼をどうするつもりだ…?」

リラは戦意を剥き出しにしてルザミーネをにらみつける。ハプウは思わずリラを止めようとした。だが、リラは耳を貸さなかった。

「待て、リラ殿!」

「ハプウさん、この女は危険な人物です。この女が何をしたのかハプウさんは詳しくはご存じないと思いますが…。こいつにヨウの情報は渡せない…!」

「ヨウ…?」

ハプウはリラの口から出たヨウの名前に思わず反応する。リラはカビゴンを繰り出すが、その前にハプウのバンバドロが立ちはだかった。

「…ムヒン…」

「ハプウさん!?どうして…。この女はヨウと敵対していたんですよ?」

「…このご婦人のことならリーリエから一通りは聞いておる。ウルトラビーストとどう関わっていたのかも。リラ殿、ポケモンを戻すのじゃ。…今すぐにな」

ハプウはリラを牽制する。ルザミーネは手にかけていたボールを放し、リラも渋々ハプウに従った。他の作業員たちはリラの様様子に思わず注目したが、ハプウがリラを止めたのを見て緊張の糸をほぐした。

「…ヨウくんのことは私もある程度は知っている…。リラさん、あなたが彼とウルトラビースト捕獲の任務に携わっていたことも…。そのときのことを詳しく教えてほしいの」

「…そのときの話を聞いてどうするつもりですか?」

リラはまだルザミーネをにらみつけていたが、次のルザミーネの言葉はリラが思ってもいなかったことであった。

「私は彼をアローラに連れ戻したいと思っているの。娘の…そして自分自身のためにも」

「…ヨウを連れ戻す…?」

「…あなたも会いたいんじゃないかしら?」

リラはルザミーネの深い翡翠色の目を見つめる。そして、ゆっくりと口を開いた。

「…わかりました…」
 ▼ 22 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/02/24 19:34:04 ID:OojASpOs [4/7] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
リラとルザミーネはポニの険路で海を眺めていた。ハプウが二人きりにしてくれたことをルザミーネは感謝していた。ヨウがリラに浮気をしたことについて具体的に聞くことができる。潮風を受けながらルザミーネは話を切り出した。

「…リラさん、あなたに聞きたいのはヨウくんとの本当の関係…。あなたたちが単なる仕事仲間ではなかったというのは私も知ってるわ」

リラはそれを聞き、小さなため息をついた。

「…それを知っているなら、ボクのことが憎くて仕方ないんじゃないですか?…娘さんの恋人にちょっかいを出した女ですから」

リラはそう言ったが、ルザミーネは落ち着いていた。

「…憎んではいないわ。あなたも彼に救われた身なんでしょ?」

リラはルザミーネの言葉を聞き、しばしの沈黙の後、リラは質問を返した。

「………どこまで知ってるんですか?ルザミーネさんは」

「…ミヅキさんからヨウくんがリーリエと恋人になったのに、離ればなれになった寂しさからあなたになびいたことは聞いたわ」

「…それだけ…ですか?」

「それ以上は彼女の口からは話せなかったんでしょう。…あまりに生々しいから…」

「…どうせなら、その生々しい内容まで洗いざらいしゃべった方がいいですかね?ボクを殺したくなるかもしれませんけど」

「ええ、是非」

ルザミーネはリラに何を話されても動じないことは確信していた。リラはヨウとの出会いから記憶喪失の自分を彼が受け入れてくれたことから完全に心を許し、共に任務に当たるに連れてあろうことか自分が本気で恋をし、さらには弱った彼の心に付け入って身体を重ねたことまで話した。そして、ルザミーネはリラの話を聞いても動じなかった。

「あなたの娘さんの恋人をボクは奪い取ろうとした。いや、奪えないのはわかってたんです。ヨウのトレーナーとしての根底にあるのはリーリエさんとの島巡りだから。だから、ボクはリーリエさんが認めるなら彼女と自分を両方もらっちゃえばいいって言いました。それが彼を苦しめることは予想できたはずなのに…」

ルザミーネは悲しそうに目を伏せるリラをじっと見つめていた。不思議なことに彼女に対する怒りや憎悪は全く湧かなかった。
 ▼ 23 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/02/24 19:38:08 ID:OojASpOs [5/7] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「…そう…。やっぱりあなたも彼に救われた身…か…。なんとなく気持ちはわかるわ。不思議とあなたに対する怒りや憎しみは湧かないから安心して」

「…ヨウ…。元気にしてるかな…」

リラはポツリと呟いた。そして、ルザミーネはリラの身体のことが気になり尋ねた。

「…あなた、身体は大丈夫なの?彼の子を…」

「運がいいのか悪いのか、それはありませんでした」

リラは首を横に振る。その様子を見たルザミーネは少しだけホッとしていた。リラは言葉を続けた。

「…アローラに来て、ウルトラビーストの捕獲任務を進めていくにつれて、ボクにとってはヨウが心の拠り所になったんです。だからボクはボクを拾ってくれたハンサムさんのもとを離れてここにいる…。本当は、ヨウと一緒にいたかったからボクはここへ来たんだと思います。バトルツリーが完成したら、きっとヨウは一緒に喜んでくれるって思ってたから…」

リラもヨウがいないことで精神的にかなりのダメージを受けているようだ。ルザミーネは思った。このアローラには彼を必要としている人が多くいる。リーリエや彼の母のためだけではない。リラのためにも。

「…ルザミーネさん…、彼を連れ戻そうと思ってるって言いましたよね?それはやっぱりリーリエさんのため…?

リラに尋ねられ、ルザミーネは口を開いた。

「そうね…。それもあるけど、ひとつは私自身のため…。それと、結果としてはそれがあなたのためにもなるのかしら?」」

リラは伏せていた目をルザミーネに向ける。ルザミーネはかつて彼と敵対していたとは到底思えない穏やかな、しかし瞳の奥には深い決意を秘めた目をしていた。

「…話を聞けてよかったわ。やっぱりあの子はアローラに戻ってくるべき…。けど、これだけは約束して。私は彼を連れ戻す。彼が戻ってきたら、後はあなたとリーリエの問題よ。必ず彼と3人で決着をつけて」

「…はい…」

そのとき、自分はきっとヨウに近づくことはできなくなるのだろうなとリラは思っていた。それを思うと悲しくなったが、ヨウが深く傷ついたままでいるのはもっと悲しい。リラは心の中で、ヨウがアローラに戻ってきたらそれは自分と彼の関係が終わるときで、それは仕方ないのだと自分に言い聞かせた。

「…あなたがフラれるとは限らないわよ?残酷な結果がもたらされるのはリーリエの方かもしれないんだから。…それじゃあね、リラさん」

ルザミーネはそう言ってリラのもとを離れていった。リラはルザミーネの最後の言葉を反芻していた。なんだか、リーリエに残酷な結末が訪れるのもそれはそれで後味が悪い気がしていた。恋愛や個人の幸せとは本来身勝手なものなのかもしれないが、リラの脳裏に浮かんだのはあまりに虫のいい考えだった。

「…本当に二人もらっていいんだよ?ヨウはそれくらいのことをボクたちにしてくれたんだからさ…」

かつて冗談めかして言った言葉をリラは一度口にし、そして心の奥に引っ込めた。ルザミーネの姿は見えなくなり、リラは涙をこぼしていた。
 ▼ 24 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/02/24 19:39:01 ID:OojASpOs [6/7] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「…母上、どうか無理はなさらず」

「…ありがとう、グラジオ」

翌日、シンオウ地方へ向かう飛行機にルザミーネは乗ろうとしていた。見送りに来たグラジオは穏やかな笑みを浮かべていた。

「…こんなことを言うのはなんですが、やはりあいつはアローラに必要な人間だと俺も思います。母上が探しに来たと知ったらあいつは驚くでしょうね」

「…本当ね。ごめんなさい、グラジオ。財団のことで何かあったらいつでも連絡して」

「ええ、そうします。新しい代表と頑張りますよ」

グラジオはにかっと笑う。ルザミーネはグラジオに小さく手を振り、飛行機に乗り込んだ。そのとき、ヨウの母と話した内容が頭の中にフラッシュバックした。

「…かつて敵対していた私だからこそ…か…。やるしかないわね…」

ルザミーネは窓の外を見ていた。エンジンの音が大きくなり、窓から見える景色は空港のターミナル、雲、そして青空へと変わっていった。旅をするのは自分がグラジオやリーリエと同じくらいの年の頃、トレーナー修行をしていたとき以来だろうか。

「…必ず見つけてみせる…」

ルザミーネが小さく呟いたその言葉は彼女の胸の奥に決意の火として灯っていた。
 ▼ 25 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/02/24 19:39:43 ID:OojASpOs [7/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
第3話はここまでです。
次回から本格的にシンオウ編の開始となります。
それではまた。
 ▼ 26 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/02/25 20:50:54 ID:h6jEJ/CU [1/7] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
読んでくださっている皆様、いつもありがとうございます。
4話ができましたので投稿します。
 ▼ 27 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/02/25 20:51:53 ID:h6jEJ/CU [2/7] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
Episode 04 捜索開始


シンオウ地方、ナギサシティ。この街はシンオウリーグへの入り口となる都市である。シンオウ地方に降りたルザミーネはまずこの街を目指すことにした。

「…トレーナー修行をやり直す…。なら、ジムへの挑戦を彼もしているかしら?」

ルザミーネはナギサシティへ向かう列車の中でそう呟き、窓の外を見つめる。当たり前だが、冷涼なシンオウ地方は温暖なアローラとは全く異なる景色が広がっていた。しかし、元々はアローラの出身ではないルザミーネにとって、かえってこのような景色の方が懐かしく感じる部分もあった。

「…アローラに比べるとやっぱり寒いわね…。アローラに移ってからあっちの温暖な気候に慣れてしまったから、寒い地方が懐かしく感じるわ…」

ナギサシティを目指すのはヨウがトレーナー修行をしているならシンオウリーグに近いこの街を訪れているかもしれないと思ったからだ。それに、彼は一度アローラの玉座についた身だ。そんじょそこらのトレーナーではまず彼の相手にならないだろう。それならばリーグを目指そうとするトレーナーを相手に修行をしていてもおかしくはないだろう。

「もうすぐナギサシティです。もうすぐナギサシティです」

列車のアナウンスがナギサシティへ近づいたことを知らせる。ルザミーネは荷物を手に取り、列車を降りる準備をした。



「……強引だなおまえは……。今日は休みだが、別に街に出ようなんて思ってなかったのに…」

「別にいいじゃねえか。閉じこもって機械いじりしてるよりは健康的だろ」

二人の男性が並んで街を歩いている。一人は短い金髪のやや気だるそうな男性、もう一人は赤いアフロヘアが特徴的な男性であった。

「…おい、見てみろよ」

アフロヘアの男性が金髪の男性に声をかける。金髪の男性はアフロヘアの男性が指し示した方に視線を向けた。
 ▼ 28 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/02/25 20:53:06 ID:h6jEJ/CU [3/7] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「…おい、見てみろよ」

アフロヘアの男性が金髪の男性に声をかける。金髪の男性はアフロヘアの男性が指し示した方に視線を向けた。

「…おいおい…。あんなモデルみたいな美女この街にいたか?」

二人の男性の視線の先にいたのは長い金髪に深い翡翠色の目をした、スレンダーなモデル体型の美女。腰のベルトにモンスターボールがついているところを見ると、どうやら彼女もトレーナーらしい。

「…オーバ…。おまえまさか…」

「いやいやデンジ…。おまえこそ機械いじりをしてる間に玉の中身まで抜けちまったんじゃねえか?あんな美女見て声をかけねえとか、それこそあり得ねえよ」

赤いアフロヘアの男性、オーバはどうやら金髪のに声をかけようとしているらしい。金髪の気だるそうな男性、デンジはやれやれと首を横に振った。

「好きにしろ…。警察を呼ばれても俺は知らんぞ…って、もういなくなってる…」

デンジの忠告も聞かず、オーバはルザミーネのもとへ行ってしまった。デンジはとりあえず距離を置いてオーバを見守ることにした。

「はーい、そこの素敵なお姉さん」

オーバが声をかけると、金髪の美女はきょとんとした顔でオーバを見つめた。

「お姉さん…?私のことかしら?」

「そうですよ。いやー、あなたみたいな美しい方に巡り会えるとは、自分の幸運を神に感謝したいですね」

オーバは大袈裟な身振り手振りでその女性の美しさを讃える。だが、その女性はクスリと笑うと、オーバをあしらうように言った。

「ふふ、ありがとう。でも、私、これくらいの子どもが二人のいるのだけれど、それでもいいのかしら?」

女性はそう言うと、グラジオとリーリエの背くらいの高さに手をやり、オーバを驚かせる。

「えっ!?マジ!?」

「うふふ…。本気と書いてマジよ。ちなみに40歳を超えているのだけど…」

オーバは金髪の美女、ルザミーネの言葉にあんぐりと口を開ける。ルザミーネは驚くオーバを見て満足そうに笑った。
 ▼ 29 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/02/25 20:54:05 ID:h6jEJ/CU [4/7] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「ふふふ…。あなた強そうだし、私が子どもを産む前だったら考えたかもしれないわ。あ、そうだ…」

ルザミーネは端末を取り出し、オーバに写真を見せる。

「…この子を探しているのだけど、心当たりはないかしら?」

ルザミーネが見せたのは黒い長髪の少年、ヨウの写真だった。

「んー?もしかしてお姉さんのお子さん?はぐれちまったのか?」

「いえ…、そういうわけではないの。この子は私の恩人でね…。シンオウ地方にトレーナー修行に来ているということはわかってるの」

「おいオーバ、どうした?」

オーバの様子がただのナンパから変わったことで、デンジが二人の様子が気になり近づいてきた。

「トレーナー修行ねえ…。うーん…。ジムに挑戦してりゃあわかるかも…。なあデンジ。おまえ、この写真の坊主に心当たりとかあるか?」

デンジはルザミーネの端末の写真を見る。すると、少し表情を変えた。

「…この子は確か…、アローラリーグのチャンピオンじゃ…」

デンジがそう言うと、ルザミーネは食いついた。

「彼を知っているの?」

「…いや…。俺のジムには挑戦してきてない…。俺はただ動画で彼がチャンピオンになったときのバトルを見ただけで…」

「そう…」

ルザミーネは少しがっかりしたような顔をするが、ここでオーバが調子に乗り始める。
 ▼ 30 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/02/25 20:54:38 ID:h6jEJ/CU [5/7] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「まあ待っておくれよ、お姉さん。このシンオウ四天王の一人、オーバ様が一肌脱ごうじゃないか。俺の自慢の人脈、オーバネットワークを活かしてこの少年を探し出してみせましょう!」

デンジは呆れた顔でオーバを見つめる。確かにオーバは人付き合いがよく顔が広いが、この広いシンオウで人を一人見つけるのは至難の業だと思われた。

「四天王…?」

ルザミーネはオーバが四天王と名乗ったことに反応する。すると、オーバは自慢げに続けた。

「そう!こう見えて俺、四天王なの。ジムリーダーたちには顔が利くし、トレーナー修行をしてるんならこの坊主がジムに挑戦する可能性は高いよな?もしこの坊主が挑戦しに来たら俺に連絡するように言っとくよ。お姉さんの連絡先を教えてくれたら俺から情報を渡すぜ」

ルザミーネは悪くない話だと思った。そして、もう一人の金髪の男性も口振りからしてジムリーダーであることが推測できる。情報を得やすい状態にするに越したことはないだろう。

「そうね…。じゃあ、お願いしようかしら」

ルザミーネがそう言うと、オーバはうんうんと頷く。デンジはそれを見てやれやれとため息をついた。

「やれやれ…。調子のいい奴だ…」

デンジが呆れているところに、オーバはルザミーネにある提案をする。デンジが思いもしていなかった提案を。

「まあ、協力する見返りといってはなんだけど、お姉さんトレーナーなんだろ?俺たちと一戦バトルしてくんねえかなあ?」

ルザミーネはもちろん、デンジも驚いていた。
 ▼ 31 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/02/25 20:55:16 ID:h6jEJ/CU [6/7] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「あら…。でも、四天王とジムリーダーでしょ?私なんて赤子の手をひねるようにやられちゃうんじゃないかしら?」

「おいオーバ…。おまえ何を…」

デンジがオーバを止めようとするが、オーバはデンジの前に手を出して逆にデンジを制した。

「四天王やってると、なんとなくわかっちゃうんだよなあ…。匂いっていうのか…。お姉さん、かなり強いトレーナーでしょ?」

オーバはニヤリと笑う。その笑みにつられたのか、ルザミーネは一瞬獲物を見つけた獰猛な獣のような表情を見せた。

「まあ…、四天王にお誘いいただけるなんえなかなかないことだものね。じゃあ、お手柔らかにお願いするわ」

デンジはルザミーネの見せた顔に背筋が凍りつくような感覚を覚える。オーバは先ほどのルザミーネの顔に気づいていただろうか。

「…私、ルザミーネというの。よろしくね、オーバさん…と…」

「…俺はデンジ…。…よろしく…」

「デンジさんね。ふふ…」

デンジはルザミーネに底知れぬ恐ろしさを感じていた。四天王とバトルするというのに全く恐れを感じていないその振る舞い。オーバは彼女から強いトレーナーの匂いがすると言った。そして、それは彼が思っているよりももっと上のものなのではないかとデンジはなんとなく感じていた。
 ▼ 32 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/02/25 20:56:35 ID:h6jEJ/CU [7/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
第4話はここまでです。
やっぱりトレーナーは目が合ったらバトルでしょ!
ということで、シンオウ地方の第一ラウンドはオーバ&デンジVSルザミーネの戦いです。
それではまた。
 ▼ 33 フラエッテ@ミュウZ 21/02/25 21:03:24 ID:sdTkGh6Y NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
しぇん
 ▼ 34 サボネア@ヤチェのみ 21/02/26 00:05:39 ID:cPFciPo6 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
いきなり四天王とはたまげたなぁ…
支援
 ▼ 35 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/02/27 16:07:31 ID:mTh.//ls [1/8] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
読んでくださっている皆様、いつもありがとうございます。
5話ができましたので投稿します。
 ▼ 36 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/02/27 16:08:06 ID:mTh.//ls [2/8] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
Episode 05 オーバとデンジ


「そんじゃ、始めるとするか!お姉さん、フルバトルは大丈夫かい?」

「ええ。問題ないわ」

「よし、そんじゃ俺とデンジはそれぞれ3体ずつポケモンを使うぜ!互いに交代は自由!それでいいかい?」

「もちろん。さあ、始めましょう」

にこやかに笑うルザミーネだが、バトルに駆り出されたデンジは大きなため息をつく。

「なんだよデンジ。やる気出ねえのか?」

「…オーバ…。あのルザミーネって人をあんまり甘く見ないほうがいいぞ…」

「甘くなんて見てねえさ。いやー、あんな美女が相手だとわくわくするね。まずは俺から行かせてもらうぜ」

「………」

こりゃダメだとデンジはさらにため息をつく。そして、オーバとルザミーネはひとつ目のボールを構えた。

「先攻はお姉さんに譲るぜ!行くぞ、ハガネール!」

「グオォ!!」

「ムウマージ、頼むわよ!」

オーバの一体目はハガネール、対するルザミーネはムウマージを繰り出した。オーバはルザミーネのムウマージがよく鍛えられていることをすぐに見抜いたが、タイプ相性としては可もなく不可もなくといった相手だ。オーバはハガネールをこのまま戦わせることにした。

「よし、ハガネール、気合い入れていくぜ!」

ハガネールが身構えたその瞬間、ムウマージが動いた。

「ムウマージ、鬼火!」

「マージ!」

ムウマージはハガネールの頭上をとり、鬼火を振り撒く。これでハガネールの攻撃力が下がることになった。
 ▼ 37 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/02/27 16:08:47 ID:mTh.//ls [3/8] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「あらら、マジかい…。ハガネール、噛み砕く!」

「グォォ!!」

ハガネールはムウマージめがけて襲いかかるが、ムウマージはひょいひょいと軽快に空中を飛び回り、狙いを絞らせなかった。

「…!」

「おい、オーバ!この人予想以上だぞ!」

デンジはバトルが始まる前から直感していたが、これは自分達のタッグでも下手をすれば敗北があり得ると思った。

「ムウマージ、マジカルフレイム!!」

「マージ!」

ハガネールめがけてムウマージから火の玉が放たれる。ハガネールは弱点を突かれ、その巨体がのけぞった。

「よし、大分調子が戻っているわね…」

ルザミーネはムウマージの戦いぶりを見て安堵の息を漏らす。もう神経毒の影響はほとんどないと考えてよさそうだ。

「ハガネール!ストーンエッジ!」

今度はハガネールの攻撃はムウマージに命中した。だが、火傷によって攻撃力が下がっているため、ムウマージには十分耐えられるダメージだった。

「反撃よ!マジカルフレイム!」

ムウマージは再びマジカルフレイムを放つ。ハガネールはそれを受けてついにダウンした。

「よし!ムウマージ、よくやったわ」

「おい?あれオーバとデンジじゃないか?」

「あいつら組んでバトルしてんのか…。うわ、相手誰だよ?すげえ美人じゃん」

四天王とジムリーダーがタッグを組んで戦っているということもあり、このバトルは街の住人の目を嫌でも引いていた。そして、さらにルザミーネの美貌にも街の住人は釘付けになる。
 ▼ 38 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/02/27 16:10:11 ID:mTh.//ls [4/8] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「…ギャラリーが増えちまったな…」

オーバがぼやくと、デンジはボールを構えながら口を開いた。

「おまえが後先考えずにバトルを申し込むからだろう。次は俺が行く」

「お?デンジくん、エンジンがかかってきたか?」

「…まあ、そんなところだ…。ライチュウ、行け!」

「ライッ!!」

デンジはライチュウを繰り出す。アローラのライチュウとは違い、デンジのライチュウはサイコパワーで宙に浮いているということはない。

「ライチュウ、相手の機動力を削げ!電磁波!」

「ライッ!!」

ライチュウは電磁波を放ち、ムウマージの動きを鈍らせる。そして、すかさず追撃に出た。

「今だ!10万ボルト!」

「ラァイッ!!」

ライチュウは叫び声を上げ、強力な電撃を放つ。ムウマージは大きなダメージを置い、空中でふらついていた。

「ムウマージ…!ここは仲間たちに繋ぐわよ!挑発!!」

「マージ…!」

ムウマージは最後にライチュウを挑発する。これでライチュウは電磁波を使えなくなった。

「…10万ボルト!」

鋭い電光がムウマージを貫く。ムウマージは浮いていられなくなり、地面に落下した。これでオーバ&デンジが一本取り返す形となった。
 ▼ 39 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/02/27 16:10:49 ID:mTh.//ls [5/8] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「おお!さすがデンジ!」

「オーバ!負けんなよー!」

ギャラリーはオーバとデンジを囃し立てる。

「おう!俺たちが負けるかよ!」

オーバはギャラリーに向かって手を振って応えるが、デンジはルザミーネに集中していた。ムウマージは確かに倒した。しかし、この女性はまだまだ底を見せていないとデンジはわかっていた。その深い、ミステリアスな翡翠色の目はデンジに嫌な汗をかかせた。

「ドレディア、行きなさい」

「ディア!」

続いて出てきたのはドレディアだった。電気タイプのライチュウはドレディアへの有効打を持ち合わせていない。ここは交代させるべきだとデンジは考えた。

「オーバ、ここは交代する。次を頼む」

「おうよ!」

デンジはライチュウをボールに戻し、入れ替りにオーバはギャロップを繰り出した。

「ヒヒィン!!」

ギャロップがいななきを見せたその瞬間、ルザミーネは読んでいたと言わんばかりに口角をつり上げた。

「眠い粉」

ギャロップの頭上からキラキラと光る粉が舞い降りた。

「…!やっべ…!」

「…ヒッ…ン…っ…」

ギャロップは睡魔に襲われ決定的な隙を晒す。そのとき、ルザミーネ勝負を一気に決めるべくドレディアにある技を指示した。

「ドレディア、今よ!蝶の舞!!」

「ディア!」

ドレディアは蝶の舞を踊る。特殊攻撃力、特殊防御力、素早さを上げる強力な積み技である。
 ▼ 40 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/02/27 16:12:13 ID:mTh.//ls [6/8] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「花びらの舞!」

ドレディアは花びらの舞を踊り、花びらの渦にギャロップが飲み込まれる。効果は今一つとはいえ、かなり大きなダメージとなった。

「くっ…!強烈だな…!ギャロップ、大丈夫か!?」

「ヒヒン…っ…!」

ギャロップはなんとか耐えていたが、ドレディアの次の一撃は 耐えられそうになかった。

「ギャロップ!負けるな!ど根性で行くぞ!!フレアドライブ!!」

オーバが拳を振り上げて叫ぶと、ギャロップはふらつく身体に鞭を入れてドレディアに突っ込んだ。全身に炎をまとい、舞い散る花びらを焼き焦がしながらギャロップはドレディアに渾身の一撃を叩き込む。

「ドレディア!」

「やったか…っ…?」

ルザミーネが声を上げるが、ドレディアはギャロップの一撃を受けて地面に倒れ伏していた。そして、ギャロップもフレアドライブの反動で力尽きている。オーバはこれで次が最後のポケモンとなってしまった。

「くっ…、ギャロップ…。いや、よく戦った」

「…ドレディア、お疲れ様」

オーバとルザミーネは互いのポケモンをボールに戻す。オーバは驚いていた。この女性は四天王にも決してひけを取らないトレーナーであるということ、そして自分とデンジのタッグでも打ち崩すのは容易なことではないとまざまざと見せつけられて。

「オーバ、少し頭を冷やしていろ。ライチュウ、もう一度頼むぞ!」

「ライッ!!」

「ヘルガー、頼むわよ!」

「バウッ!!」

黒光りする宝石のような毛並み。デンジとオーバはルザミーネのヘルガーの美しい姿に思わず目を奪われる。
 ▼ 41 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/02/27 16:13:37 ID:mTh.//ls [7/8] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「うわお、ピッカピカだな…」

「それだけよく育てられてるってことだ。ライチュウ、猫だまし!!」

ライチュウは猫だましでヘルガーを怯ませる。ヘルガーが怯んだところでデンジはすかさず追撃を仕掛けようとした。

「よし、ライチュウ、10万ボルト!」

だが、ヘルガーはライチュウの追撃を許さなかった。

「ヘルガー、不意打ち!」

ヘルガーはライチュウに向かって飛びかかり、そのままライチュウを地面に押し倒す。

「悪の波動!」

ヘルガーはライチュウを押さえつけたまま悪の波動を至近距離で放つ。ライチュウは大ダメージを受けるが、そのままヘルガーを振りほどいた。

「ヘルガー、逃がさないで!」

再びヘルガーがライチュウへ迫ろうとしたそのとき、デンジはヘルガーに思わぬ一撃を仕掛けた。

「ライチュウ、草結び!」

「ライッ!!」

ヘルガーの右前足に草が絡まり、ヘルガーが転倒する。デンジとライチュウはその決定的な隙を逃がさなかった。

「今だ!10万ボルト!!」

「ラァイ!!」

ライチュウ渾身の10万ボルトがヘルガーを襲う。ヘルガーはその一撃に耐えられず、地面に倒れ伏した。

「よし!…危なかったな…」

デンジは思わず小さなガッツポーズを取る。まさに一進一退の攻防だった。ルザミーネはヘルガーをボールに戻し、次のボールを構える。さすがはジムリーダーと四天王。自分たちが調子よく攻めているようでも、なかなか流れを渡してはくれない。ライチュウのダメージは決して小さくはなかったが、それでもまだ闘志を燃やしている。ルザミーネはここからがこの二人を追い込むための本当の戦いだと気を引き締め直した。
 ▼ 42 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/02/27 16:14:14 ID:mTh.//ls [8/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
第5話はここまでです。
次回決着としたいと思います。
それではまた。
 ▼ 43 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/03/01 04:11:55 ID:4BDs7JXI [1/10] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
読んでくださっている皆様、いつもありがとうございます。
6話ができましたので投稿します。
 ▼ 44 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/03/01 04:12:15 ID:4BDs7JXI [2/10] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
Episode 06 決着 ルザミーネVSオーバ&デンジ


「…行きなさい、ピクシー!」

「ピクッ!」

ルザミーネの4番手はピクシー。デンジはそれを見て、ライチュウで可能な限りダメージを与えようと考える。

「ライチュウ、疲れてるだろうがやれるところまでやってくれ!」

「ライッ!!」

ライチュウは気合いを入れ直し、後ろ足で地面を踏みしめる。オーバはここまでのルザミーネの手持ちを見て、愛らしい見た目のポケモンが多いがどれもよく鍛えられ、非常に強力であることに舌を巻いていた。

「お姉さんのポケモン、見た目はかわいらしいのになかなかえぐい強さだな…。こりゃ引きこもりのデンジがマジになるのもわかるぜ」

「俺は引きこもりじゃないぞオーバ。失礼なことを言うな。ライチュウ、10万ボルト!」

「ライッ!!」

ライチュウの10万ボルトがピクシーに襲いかかる。だが、ピクシーはその攻撃を受けてもけろっとしており、凄まじいタフネスを見せつけた。

「あの攻撃でもものともしてねえ!」

「何者だ?あの人?」

シンオウ地方きっての実力者であるオーバとデンジを相手に一歩も引き下がらないルザミーネに街のギャラリーは驚きの声を上げる。

「何者かは俺たちの方が知りたいよ…!」

デンジが舌打ちを交えながらそう言うと、今度はピクシーが反撃の体勢を整えようとした。

「ピクシー、瞑想!」

「ピク…!」

ピクシーは精神を集中させ、特殊攻撃力と特殊防御力を強化する。デンジは次のライチュウの一撃でなんとかピクシーを倒せないかと賭けに出た。
 ▼ 45 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/03/01 04:12:43 ID:4BDs7JXI [3/10] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「くっ…!ライチュウ、ピクシーに組み付け!」

ライチュウはデンジの指示でピクシーに飛び付いた。ピクシーはライチュウを受け止め、がっぷりよつに組みつく。

「そのまま10万ボルト!」

ライチュウはピクシーに組ついたまま渾身の電撃を放つ。ゼロ距離からの一撃にピクシーは思わず後ずさりをしそうになったが、それでも倒れずに踏みとどまった。

「ピクシー、よく耐えたわ!月の光!」

ピクシーはそのまま淡い光を浴びて体力を回復する。賭けに失敗したデンジは苦い表情を浮かべる。

「ピクシー、ライチュウを振りほどいて!」

「ピクッ!!」

ピクシーはライチュウを振りほどき、一旦距離を取る。

「ムーンフォース!」

「ピクッ!」

ライチュウの頭上から強烈な光線が降り注ぐ。ライチュウは光に飲まれ、その中で力尽きた。

「くっ…」

デンジはライチュウでピクシーを倒せなかったことが自分たちにかなりの打撃となったと感じていた。

「ピクシー、よくやってくれたわ」

「ピクッ!」

ピクシーは深呼吸をしてオーバ&デンジの次のポケモンを待つ。これで自分達も残り3体。デンジはここで切り札を切ることにした。

「オーバ、あのピクシーをのさばらせておくわけにはいかない。俺は切り札を切るぞ…」

デンジが構えた次のボール。オーバは固唾を飲んでそれを見つめた。
 ▼ 46 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/03/01 04:13:02 ID:4BDs7JXI [4/10] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「頼むぞ、レントラー!」

「トラッ!」

デンジの投げたボールからレントラーが繰り出される。これがデンジの切り札。オーバはデンジが早々に切り札を切ったのを見て自分の最後の一体、自分の切り札へと語りかけた。

「…デンジは最後をおまえに託すつもりだろう…。相棒、最後の最後は俺たちで決めるぞ…」

「レントラー、ワイルドボルト!!」

「トラッ!!」

レントラーの全身に電光が走り、バチバチと凄まじい音を立てる。そして、レントラーはピクシーめがけて走り出した。自身へのダメージもいとわないその一撃はピクシーの体力を大きく削る。だが、ピクシーはそれすらも耐えしのいだ。

「まだ耐えるのか!?」

「ムーンフォース!」

今度は反撃のムーンフォースがレントラーを襲う。レントラーは吹き飛ばされ、うめき声を上げながら立ち上がった。

「…トラ…!」

「レントラー、苦しいだろうが頼む!ワイルドボルト!!」

再びレントラーはピクシーへ突撃する。今度こそピクシーは倒れ、レントラーは攻撃の反動でよろめきながらもなんとか立っていた。

「……」

ルザミーネはよろめくレントラーを見つめる。デンジのレントラーはピクシーを倒すために力を使い果たしたと言っていい。自分の残りの手持ちはキテルグマとミロカロス。レントラーは力の限り攻撃してくるだろう。ここはずるい戦い方をさせてもらうとしよう。

「…ミロカロス、いくわよ!」

「クォォーッ!」

ルザミーネの5体目はミロカロス。その虹色の美しい鱗に周囲のギャラリーも目を奪われ、突然の静寂が訪れる。
 ▼ 47 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/03/01 04:14:29 ID:4BDs7JXI [5/10] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「すげ…」

「綺麗…」

オーバすら目を奪われる中、デンジだけがバトルへの集中を切らさなかった。

「レントラー、ワイルドボルト!」

「トラッ!」

これが最後の攻撃だとデンジはわかっていた。もちろんルザミーネもわかっているだろう。これでどこまでダメージを与えられるか。

「クォッ…!!」

ミロカロスは弱点を突かれてよろめいたが、まだ倒れない。そして、反動ダメージで倒れるレントラーを尻目にルザミーネはある技を指示する。

「ミロカロス、自己再生!」

「クオォーッ!」

ミロカロスは自己再生で体力を回復する。それを見たギャラリーはオーバとデンジの敗北が濃厚になったと思い、ざわめきだした。

「おいおい…。これはマジでヤバイんじゃないか?デンジたち…」

ルザミーネも半ば勝利を確信しているようで、その顔には自信に満ちた笑みをたたえている。しかし、ミロカロスに自己再生で攻撃をやり過ごされることはデンジにとっては想定の範囲内だった。

「…想定通りだな。オクタン、頼むぞ!」

「タンッ!」

デンジの最後のポケモンはオクタンだった。そして、オクタンはルザミーネにとって意外な技を使ってきた。

「オクタン、チャージビームだ!」

「タン!」

オクタンはチャージビームを放ち、ミロカロスを攻撃する。そして、オクタンはチャージビームの効果により自身の特殊攻撃力をアップさせた。
 ▼ 48 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/03/01 04:15:25 ID:4BDs7JXI [6/10] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「くっ…!電気技を覚えているの?ミロカロス、自己再生!」

「クオォ…ッ…!」

ミロカロスは自己再生で粘るが、チャージビームで攻撃力を上げながら攻撃してくるオクタンはミロカロスにとって難敵であった。

「オクタン!ミロカロスにはおまえへの有効打はない!攻めていくぞ!もう一度チャージビーム!!」

オクタンは再びチャージビームを放つ。ミロカロスはまだ耐えるが、このままではジリ貧になるのは目に見えていた。

「くっ…!ミロカロス…!自己再生!」

1発目よりも重いオクタンの2発目がミロカロスに命中する。ミロカロスは耐えるが、さらに特殊攻撃力の増したオクタンの一撃はミロカロスと言えどかなりのダメージを負った。次の一撃は耐えられるかどうかの瀬戸際だろうか。

「粘っても無駄だ!オクタン、もう1発だ!」

「タンッ!」

オクタンは再びチャージビームを放つ。ミロカロスは再び弱点を突かれてよろめく。デンジはオクタンの勝ちを信じて疑わなかった。次のルザミーネの指示を聞くまでは。

「…ミロカロス、そろそろいいわよ。ミラーコート!!」

「!!」

「クォォーッ!!」

ミロカロスの全身が発光し、衝撃波がオクタンを吹き飛ばす。ルザミーネはにやりと笑っていた。

「オクタン…」

自身の与えたダメージを倍返しされ、オクタンは力尽きていた。ミロカロスの体力は残り少ないとはいえ、デンジはルザミーネの戦いぶりに思わず息を飲んだ。

「…オクタン、よく戦った…。オーバ、あとは頼む…」

デンジにそう言われ、オーバはデンジの肩をぽんぽんと叩いた。

「…任せとけよ。おまえたちの頑張り、無駄にはしないぜ…」

オーバはそう言うと一歩前に出て最後のボールを構える。そして、ルザミーネに向かって言った。
 ▼ 49 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/03/01 04:15:49 ID:4BDs7JXI [7/10] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「…お姉さん、まさか四天王にも匹敵するようなトレーナーだとは思わなかったなあ…。けど、俺たちも真剣勝負してるんでね…。簡単にはやられないぜ!ゴウカザル、あとはおまえだけだ!頼むぞ!!」

「キッキィ!!」

オーバも最後のポケモンを繰り出す。頭に炎を灯した軽快な身のこなしのポケモン。オーバの相棒、ゴウカザルだった。

「出たぁ!ゴウカザル!」

「オーバの切り札!」

ルザミーネはそれを聞き、このポケモンも一筋縄では倒せそうにないと悟る。しかし、ここは攻撃あるのみだった。

「ミロカロス、波乗り!!」

「クォォーッ!」

ミロカロスはゴウカザルを波に飲み込もうとする。だが、ゴウカザルはそれを許さなかった。

「ゴウカザル、雷パンチ!」

「キッキィ!」

ゴウカザルはジャンプし、ミロカロスの頭上を取る。そして、電光をまとった拳を落下のスピードを乗せてミロカロスに叩き込んだ。

「クォ…!」

ついにミロカロスが力尽き、ルザミーネも最後のポケモンとなる。ルザミーネはミロカロスをボールに戻し、最後のボールを構えた。

「お姉さんも最後のポケモンだな。ゴウカザル、このバトル、燃え尽きるまで戦うぜ!」

オーバがそう言うと、ゴウカザルは次のポケモンを倒せば自分達の勝ちだと気を引き締め直す。

「そうね…。でも、この子もそう簡単にはやられないわ。キテルグマ、頼むわよ!」

「クーッ!」

ルザミーネは最後のポケモン、キテルグマを繰り出す。それを見たオーバは速攻あるのみとゴウカザルに攻撃を指示した。
 ▼ 50 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/03/01 04:16:41 ID:4BDs7JXI [8/10] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「ゴウカザル、インファイト!」

ゴウカザルはキテルグマへ襲いかかり、突き蹴りのラッシュを仕掛ける。ノーマル、格闘タイプのキテルグマにとっては弱点となる攻撃だったが、キテルグマは攻撃を耐えた。いや、それどころかキテルグマはゴウカザルへと迫り、ゴウカザルをその太い両腕で抱き締めたのだ。

「キッ…!?」

「キテルグマ、そのまま捕まえていて!」

凄まじい力でキテルグマはゴウカザルを締め上げる。インファイトを耐えたばかりかまだそのような力を見せるキテルグマにオーバは思わず声を上げた。

「ゴウカザル!くっ…!フレアドライブだ!」

「今よ!投げて!」

ゴウカザルが全身に炎をまとってキテルグマを振りほどこうとしたそのとき、キテルグマはゴウカザルを地面に投げ飛ばした。

「ゴウカザル!」

「キッ…!」

ゴウカザルが全身に炎をまとったまま体勢を立て直そうとしたそのとき、キテルグマからのとどめの一撃が放たれた。

「キテルグマ、地震!!」

「クーッ!!」

キテルグマは地震を起こし、その衝撃波でゴウカザルを吹き飛ばす。インファイトで防御力の下がったところに弱点技を受け、ゴウカザルは力尽きた。オーバはそれを見てガクッと膝を折った。自分たちは本気で戦った。それこそ燃え尽きるまで。
 ▼ 51 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/03/01 04:17:16 ID:4BDs7JXI [9/10] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「…強え…。けど、燃え尽きたぜ…」

オーバはその体勢のままゴウカザルをボールに戻した。ギャラリーは一様に驚いていた。四天王とジムリーダーのタッグを相手に一歩も引かないどころか、勝利を収めたこの美女に。

「…オーバとデンジに勝っちまった…」

「何者だよ、あの人…」

ルザミーネはオーバの様子を見てキテルグマをボールに戻した。

「お疲れ様、キテルグマ。…ふぅ…。勝ててよかった…」

ルザミーネはため息を一つつき、そのままオーバに近づいていく。

「オーバさん、デンジさん、素晴らしいバトルをありがとう」

ルザミーネがそう言うと、燃え尽きたままのオーバをよそにデンジが口を開いた。

「いや、俺たちの方こそ。おいオーバ。そろそろ立ち上がれ。ポケモンセンターに行くぞ」

「ああ…」

デンジはオーバを引きずってポケモンセンターへ連れて行こうとする。ルザミーネはそれを見て口を開いた。

「私もついていっていいかしら?実は今日この街に来たばかりでどこに何があるのかもよくわからなくて…」

「もちろん。…人探しの件で話の続きもあるだろうしな」

「…ええ…」

デンジはオーバとルザミーネを伴い、ポケモンセンターへ向かう。ルザミーネはオーバの言ったネットワークにヨウがかかればいいがと思いながら二人の後についていった。
ルザミーネにとってはここからが本番である。リーリエのために、リラのために、そして自分自身のために。
 ▼ 52 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/03/01 04:21:05 ID:4BDs7JXI [10/10] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
第6話はここまでです。
多分この章は30〜40話くらいで終われるんじゃないかと思っています。
この章の最後でヨウとリーリエの再会を描いて最終章へ移るつもりでいます。
それではまた。
 ▼ 53 ハスボー@ナモのみ 21/03/01 06:46:05 ID:4f2I2d0Q NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
しえん
 ▼ 54 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/03/04 07:12:30 ID:sc1kv0zA [1/7] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
読んでくださっている皆様、いつもありがとうございます。
第7話ができましたので投稿します。
 ▼ 55 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/03/04 07:14:08 ID:sc1kv0zA [2/7] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
Episode 07 オーバネットワーク


オーバとデンジの強豪タッグを打ち破ったルザミーネはポケモンセンターのカフェスペースにいた。ルザミーネは紅茶を飲みながらオーバ、デンジと話していた。

「お姉さん強えなあ…。そんな強えんならマジで四天王とかなれるんじゃねえの?」

「ふふ。お世辞でも嬉しいわ、オーバさん」

ルザミーネがオーバにそう言うと、デンジが本題を切り出した。

「…ルザミーネさん、あなたはこのアローラチャンピオンだった少年を探しているんだよな?彼はあなたの恩人だと言っていたが…」

「…ええ…。そうよ…。本当に一生かけても返せないくらいのね…」

ルザミーネはそう言って目を伏せる。その様子を見て、オーバもデンジもルザミーネはかなり訳ありな人間だと感じていた。

「…無理に話せとは言わねえけど、訳ありみてえだな…」

「…ええ…。すごくね」

ルザミーネはそう言って紅茶を飲み進める。そして、その艶やかな唇から憂いを帯びたような吐息が漏れた。オーバは二児の母とは到底思えないその艶っぽさに思わず見いってしまった。

「まあ、このオーバ、協力するっつったからには二言はねえ。さっきの写真のデータもらってもいいか?それと、お姉さんの写真もあった方がいいんじゃねえかと思う。誰が探してるのか、写真の坊主にもよくわかるようにな」

「………」

ルザミーネは自分が探していることがヨウに知れたらどうなるだろうかと考えた。彼は恐らく非常に驚くだろう。かつて敵対していた相手が自分を探しにシンオウまで来ていると知れば。

「…ルザミーネさん、ひとつ言っとくが、彼を探すのにあなたの写真は必要ないはずだ。名前だけでも彼には伝わるんだろう?オーバがスケベ根性であなたの写真を撮りたいだけだ」

デンジは冷静にそう言った。確かにデンジの言う通りだろう。ヨウには自分の名前が伝われば誰が探しているのかわかるはずだ。彼が自分のことを忘れるはずがない。だが、一度ウツロイドの神経毒に倒れたところから回復したことをアピールし、かつそのお礼のために探していることが伝われば少しは会いやすくなるだろうか。ルザミーネはかつて敵対していた自分の目的もわからずに彼が会ってくれるとは思えなかった。
 ▼ 56 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/03/04 07:15:05 ID:sc1kv0zA [3/7] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「…そうね…。私の写真も載せてくれる?あと、彼にお礼をしたいから探していると伝えてくれると助かるわ」

「よっしゃ。わかった」

オーバはルザミーネの了解を得たところで自分の端末のカメラを起動する。そして、ルザミーネの写真を1枚撮った。

「よし。いいのが撮れた。坊主の写真のデータもバッチリだな。おいデンジ。手分けしてジムリーダーたちに連絡するぞ」

「は?俺もやるのか?」

オーバに突然連絡の手伝いをしろとを振られ、デンジは反発する。

「んだよ、連れないこと言うなって」

「…ったく…」

渋々デンジはオーバに従い、自身の端末を取り出す。その様子を見ていたルザミーネは突然クスクスと笑った。

「…あなたたち、本当に仲がいいのね」

「…腐れ縁なだけさ」

デンジは少しぶすっとした顔でそう言うが、ルザミーネは笑みを崩さなかった。

「…腐れ縁っていうほど、その根底には確かな友情があるものよ。ありがとう。あなたたちの協力を得られて本当によかったわ。…期待してるわよ、オーバネットワーク」

ルザミーネのその言葉を聞き、デンジはなぜかふてくされたような表情が少し和らいでいくのを感じていた。
 ▼ 57 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/03/04 07:18:16 ID:sc1kv0zA [4/7] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「初代アローラチャンピオンの少年がシンオウに来とるのか。挑戦が楽しみだな」

「だろ?トウガンさん」

オーバはミオシティのジムリーダー、トウガンと話していた。

「…今からトウガンさんの端末にも写真送るけどよ、そいつを探してる人がこりゃまたとんでもねえ美人なんだよ。その人の写真も送るぜ」

「ほう、そうなのか!それはその少年が羨ましい限りだな!どれどれ…」

トウガンはオーバから送られてきたヨウとルザミーネの写真を確認する。そして、ルザミーネの写真を見て思わず息を飲んだ。

「……………」

「…な?言葉を失っちまうくらいだろ?俺も初め見たときは驚いたよ」

「…オーバ、ミオシティにその少年が来たと言ってくれんか?」

「…ほう…。あんたも悪い人になったな、トウガンさん?」

「…本物を見てみたいじゃないか」

「気持ちはわかるぜ」

オーバはトウガンの下心を見通し、ニヤリと悪い笑みを浮かべていた。
 ▼ 58 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/03/04 07:20:05 ID:sc1kv0zA [5/7] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
対するデンジはクロガネジムのリーダー、ヒョウタに電話をかけていた。

「はい、ヒョウタです。…珍しいですね。デンジさんがかけてくるなんて」

「…オーバの奴に付き合わされてな。人探しをしてるんだ」

「人探し…?」

ヒョウタはデンジが突然思いがけないことを言ったので目を丸くする。

「ああ。…初代アローラチャンピオンの少年がシンオウ地方にトレーナー修行に来ているらしい。後でヒョウタの端末にも写真を送るよ」

ヒョウタはなぜオーバがヨウがシンオウに来ていると知っているのか疑問に思った。
ヨウがアローラチャンピオンに就任したときのバトルの動画は多くの人が視聴していた。オーバに近しい誰かがたまたまヨウを見かけ、彼に伝えたのだろうか。

「彼を探しているのは、オーバさんがバトルしてみたいからですか?」

ヒョウタが尋ねると、デンジはふーっと大きなため息をついた。

「いや…。彼を探してるっていう女性と偶然ナギサシティで会ってな。オーバの奴が調子に乗って人探しに協力するって言い出したんだ。まあ、こっちから積極的に何かする必要はない。彼がジムに挑戦してきたら俺かオーバに連絡をくれないか?」

「…はい…」

「ついでに彼を探してるっていう人の写真も送っておこう。…オーバが自分が撮りたかったから撮っただけなんだが、どうやら彼と浅くない因縁があるらしい。彼女は彼のことを恩人だと言っていた。彼にお礼をしたくて探しているそうだ」

「…そうですか…」

「…ったく、オーバが持ち込んでくる面倒ごとに付き合わされる身にもなってほしいもんだ。すまないな、ヒョウタ。それじゃあ」

「…ええ…」

デンジとの通信が切れると、ヒョウタの端末にヨウとルザミーネの写真が送られてくる。ヒョウタもヨウを探しているという人物がこんな美女だとは思わず、目を丸くする。そのときだった。
 ▼ 59 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/03/04 07:21:21 ID:sc1kv0zA [6/7] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「ヒョウタさん、ポケモンたちの食事、用意できましたよ」

先ほどのデンジとの電話の話題の中心人物、ヨウがヒョウタのもとへやってくる。ヨウはヒョウタのジムでポケモンの世話やジムの様々な雑用をしていた。ヒョウタは複雑な表情でヨウを見つめ、ヨウは何かあったのだろうかときょとんとした顔でヒョウタを見つめた。

「…ヨウくん、さっき別のジムのリーダーから電話がかかったんだが、君を探しに来ている人がいるらしい」

「…僕を…?」

ヨウはその人物は誰だろうかとアローラの人々の顔を思い浮かべる。一番可能性があるとすればハウだろうか。まさかリーリエということはないだろうし、ミヅキということはもっとあり得ない。

「…君にも何かしら理由があってシンオウにいるんだろうから、みだりに君がここにいるとは言いたくない。…君を探している人の写真も送られているし、君にも確認してほしいな。この人に君がここにいることが伝わってもいいものなのか。この人は君のことを恩人と言っていて、君にお礼をしたいそうだ」

ヒョウタはそう言うと、ヨウにデンジから送られてきた写真を見せる。どれどれと写真を見たヨウの様子が変わっていくのをヒョウタは目の当たりにした。ヒョウタから受け取った端末を持つ手は小刻みに震え、目は皿のように丸くなる。

「…え…?なんで…」

ヨウは自分を探しに来るとは到底思っていなかった人物の写真を見て言葉を失っていた。忘れたくても忘れられるはずがない、長い金髪に深い翡翠色の目の魔性の美女。アローラでの島巡りの道中、敵の親玉として自分たちの前に立ちはだかった女性。

……ルザミーネさん……?

ヨウはまるで彼の周囲だけ時が止まったかのように動けなくなる。彼は驚きのあまり、彼女の名を口に出すことができなかった。
 ▼ 60 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/03/04 07:22:33 ID:sc1kv0zA [7/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
第7話はここまでです。
次回はミオシティのトウガンの話にしようと思っています。
それではまた。
 ▼ 61 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/03/06 13:37:14 ID:4DZoiTng [1/8] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
読んでくださっている皆様、いつもありがとうございます。
第8話ができましたので投稿します。
 ▼ 62 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/03/06 13:37:48 ID:4DZoiTng [2/8] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
Episode 08 ミオジムリーダー トウガン


「…君の知っている人か…。その様子だと、この人が君を探していることにかなり驚いているみたいだね」

ヒョウタはヨウに声をかける。ヨウは黙ったままヒョウタに端末を返した。

「…聞いてもいいのかな?この人が何者なのか…。いや、この人は君に会わせるべき人なのか」

ヒョウタにじっと見つめられ、ヨウは返答に迷う。自分を探している人物は一番想定外の人物だったのだから。
ルザミーネ。リーリエの母親、そしてエーテル財団の代表、自分たちの島巡りのとき、悪の親玉として暗躍していた人物。彼女は自分にお礼をしたいと言っていたとのことだが、果たして会ってよいものなのか。今さら自分に危害を加えようとする理由は彼女にはないはずだが、万が一自分に復讐心でも持たれていたら…。

「…ヒョウタさん…。僕はヒョウタさんを信頼してます。トレーナー修行に来たと言いながらフラフラしてるだけだった僕を拾ってくれて、ジムでの仕事も与えてくれた。…この人…ルザミーネさんと僕の関係を話したいと思います」

「…わかった…。二人きりのほうがよさそうだね。他のジムトレーナーには少し外すと伝えておこう」

ヨウがぺこりと頭を下げると、ヒョウタはヨウと二人きりになるために他のトレーナーにジム仕事の指示をしに行った。


「かつて敵対していた人…?」

ヒョウタはヨウが開口一番に彼女は自分の敵であった人物だと聞いて口が塞がらなかった。

「彼女…ルザミーネさんは僕の…友達の母親です。驚くと思いますけど、40歳を超えているそうです。彼女はウルトラビーストという異世界のポケモンに夢中になっていました。そのウルトラビーストをアローラへ呼び寄せようと暗躍していて、それを僕と友達数人がかりで食い止めたんです。彼女はその後、ウルトラビーストから受けた毒のせいで一時期寝たきりになったはずなんですが、どうやら回復したようですね…」

「…友達の母親…。しかし、君が食い止めたということは、彼女は今でも君を敵視している可能性があるということか…」

「…それは多分ないとは思うんですが…」

ヨウはルザミーネが自分に敵意を持っているとは考えにくいと思ったが、確証は持てなかった。ヒョウタはヨウが確証を持てないことも見抜いていた。
 ▼ 63 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/03/06 13:38:47 ID:4DZoiTng [3/8] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「…確証はないんだろう?」

「…まあ…」

ヨウがそう言うと、ヒョウタはルザミーネへの情報提供は拒むことにしようと決めた。

「ヨウくん、君の安全には変えられない。この件については僕は少し様子を見るべきだと思う」

ヒョウタがそう言ったとき、突然ヒョウタの端末が着信を告げた。

「すまない、ちょっと電話に出るよ。…父さん?」

ヒョウタは電話の主が自分の父親だとわかるとすぐに電話に出た。

「父さん、どうしたんだい?」

ヒョウタは電話の向こうの父親に尋ねる。すると、電話口からヨウにも聞こえるほどの大声が聞こえた。

「グハハハハ!久しぶりだな、ヒョウタ!元気にやっとるか!?」

ヒョウタは思わず受話器を少し耳から離し、自分の声を拾いやすいようにマイクをつなぐ。

「まあね。父さんは相変わらずか。何か用があるんだろう?」

「…ああ…」

ヒョウタの父親は少し含みのあるような声を出すと、ヒョウタに切り出した。

「…オーバから電話がなかったか?初代アローラチャンピオンを探しているという…」

「オーバさんじゃないけど、デンジさんから同じ内容の電話があったよ」

ヒョウタがそう言うと、父親はふーっとため息をついた。
 ▼ 64 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/03/06 13:40:06 ID:4DZoiTng [4/8] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「そうか。彼はシンオウにトレーナー修行に来ているらしいから、ジムリーダーたちに声をかけたんだろうな…。ところでな、ヒョウタ。彼と思われる人物をミオシティで見かけたんだ。クロガネシティの方へ向かっていたようだが、ヒョウタは彼と思しき少年を見かけてないか?」

ヒョウタの頭には疑問符が湧いた。ヨウはセキエイリーグとアローラリーグの戦いの後、ずっとクロガネシティにいた。父親は人違いをしているのではないか?ヒョウタは父親が思い違いをしていると疑いながらも話を合わせた。

「いや…。クロガネシティには今のところは…」

「そうか。いや、それならいいんだ。じゃあな!」

ヒョウタの父親はそう言って電話を切った。ヒョウタは父親の態度が気になり、ヨウに尋ねた。

「…ヨウくん、ミオシティには行ったことはあるかい?」

「…ミオシティ?いえ…」

ヒョウタはそれを聞き、ふーっと大きなため息をついた。

「…僕の父が君に似た人物を見たと言っていた。だが、君がミオシティに行ったことがないなら完全な人違いだな…。まったく、早とちりして…。実は僕の父もジムリーダーでね。ミオシティでジムをやってるんだ」

「え?そうなんですか?」

ヨウはヒョウタの父もジムリーダーと知り、目を丸くする。

「ああ、ミオジムリーダー、トウガン。鋼タイプのポケモンのエキスパートさ」

父のことをそう話すヒョウタはどこか誇らしげに見えた。
 ▼ 65 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/03/06 13:42:34 ID:4DZoiTng [5/8] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
そしてその一方、ヒョウタの父親でミオジムのリーダーであるトウガンはルザミーネを一目見てみたいという欲望のために動き出していた。

「オーバ、ヒョウタにはとりあえず感づかれることはないだろう。もし彼がいなくても私の人違いだったということで済ませられるはずだ」

「…用意周到だな。まあ、ヒョウタや奥さんに嫌われて家庭がぶっ壊れたらたまんねえもんな」

トウガンがヒョウタに電話をした理由は、自分が情報提供をしたのは決してルザミーネへの下心からではないということを印象づけるためだった。

「…で?俺はお姉さんにトウガンさんがヨウくんをミオシティで見たと言ってると言えばいいのか?」

「ああ」

トウガンの返事にオーバはやれやれとため息をつく。

「…ったく…。今度昼飯奢ってくれよな。ああ、そうだ…」

「ん?」

トウガンはオーバが突然何かを思い出したような声を上げたため何だろうかと注意を向ける。

「この人、めちゃくちゃ強えトレーナーだぜ。俺とデンジがタッグを組んで挑んでみたら、見事にやられちまったよ」

トウガンはそれを聞き、様子が変わる。ルザミーネへの異性としての興味よりも、トレーナーとしての興味の方が勝ったのだ。

「…ほう…?」

「……スイッチが入ったみてえだな、トウガンさん。その方があんたらしいぜ。結果は後で教えてくれや」

オーバはそう言って電話を切り、ルザミーネに電話をかけた。

「オーバさん?ルザミーネよ」

ルザミーネが電話に出ると、オーバは少し後ろ髪を引かれる思いがしながらもルザミーネに嘘をつく。
 ▼ 66 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/03/06 13:44:41 ID:4DZoiTng [6/8] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「ミオジムのリーダー、トウガンさんから彼と思われる少年を見たと電話があったよ。一度行ってみて、話だけでも聞いてみたらどうだい?」

オーバがそう言うと、ルザミーネは明るい声を上げる。

「本当?わかったわ。行ってみる」

ルザミーネはそれだけ言うと電話を切ってしまった。その様子にオーバはルザミーネとヨウの関係とはどのようなものなのだろうかと気になってしまう。

「…恩人とはいえ、あんだけ追いかけられるっていうのは、命なのか、またはそれに等しい何かを守ってもらったんだろうな…。やれやれ、羨ましいねえ。あんなすげえ美女に追っかけられて。俺たちのチャンピオンは美人だけど手が掛かってしょうがねえ奴だってのに」

オーバはふーっと大きなため息を漏らす。その音は柔らかな風に紛れ、空へと消えていった。


ミオシティ。ここはかつて港湾都市として栄えていた街である。今は以前に比べればさびれてはきているものの、街としての規模はなかなかに大きかった。ルザミーネはさっそく今回の情報提供者、ミオジムのリーダー、トウガンに会いに行くことにする。と、その前にルザミーネにあることが頭をよぎった。

「…バトルになる可能性もあるかしら…」

ルザミーネは一度ポケモンセンターに行き、自身の手持ちを見直すことにする。ミオジムは鋼タイプのエキスパートジムである。もしバトルになるなら、鋼タイプに有利となるポケモンを多く連れておくべきだろう。

ミオジムに着いたルザミーネを迎えたのはジムリーダーのトウガン自身だった。
 ▼ 67 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/03/06 13:45:38 ID:4DZoiTng [7/8] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「はじめまして、ルザミーネと申します。あなたがトウガンさん…でよろしいでしょうか?情報を提供してくださるとのことで、感謝いたしますわ」

ルザミーネがそう挨拶するとトウガンはルザミーネに挨拶を返した。

「ミオジムのリーダー、トウガンです。こちらこそはじめまして。…初代アローラチャンピオンをお探しになっているそうですね?」

トウガンはルザミーネに話しかけながらその美貌にしばし見とれる。だが、すぐにこの人物がオーバとデンジを破ったトレーナーであることを思い出し、ルザミーネにバトルを持ちかけた。

「…情報は渡します。だが、その代わりと言ってはなんですが、私とバトルしていただきたい。…オーバとデンジのタッグを破ったその力、私も一トレーナーとして非常に興味がある」

トウガンはそう言ってニヤリと笑う。ルザミーネはそれを見てふっと小さなため息うをついた。

ああ、やっぱり予想通り…

ルザミーネは一度目を伏せ、それからトウガンを見据える。憂いを帯びたようなその仕草はなんとも言えない艶やかさであったが、その長い睫毛の裏では戦いへの炎が静かに灯る。そして、ルザミーネが目を見開いたとき、トウガンはその眼差しに思わずビリビリと痺れるような圧力を感じた。

「…ほう…」

トウガンは自分の口角が自然とつり上がるのを強く感じた。

「実力を疑っていたわけではないが、これは予想以上のようだ」

「…始めましょうか。私もかつてトレーナー修行をしていた頃に戻ったようで、なんだかわくわくしているんです」

ルザミーネはそう言ってさっそく一つ目のモンスターボールを構えた。
 ▼ 68 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/03/06 13:46:13 ID:4DZoiTng [8/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
第8話はここまでです。
次回はルザミーネVSトウガンとなります。
それではまた。
 ▼ 70 ズルッグ@ポケモンずかん 21/03/06 20:33:03 ID:sEjUnu0I NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
>>69
sageでmでしょうもない批判するとかキモいなあ

作者は気にせず続けてねー、支援してます
 ▼ 71 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/03/07 15:31:00 ID:Sb3A8TUs [1/19] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
読んでくださっている皆様、いつもありがとうございます。
第9話ができましたので投稿します。
 ▼ 72 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/03/07 15:31:27 ID:Sb3A8TUs [2/19] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
Episode 09 ルザミーネVSトウガン


ボールを構えたルザミーネを見てトウガンも一つ目のボールを構える。そして、バトルのルールをルザミーネに言った。

「ルールはシングルバトルの3対3としましょうか。シンオウ地方きっての強豪を倒したあなたが相手だ。私も本気で行かせてもらいましょう!」

トウガンはそう言ってボールを投げる。ルザミーネもそれに合わせてボールを投げた。

「ミミッ!」

「デプス!」

ルザミーネの投げたボールからはミミロップ、トウガンの投げたボールの中から現れたのはトリデプスが姿を現す。

「ほう…。ミミロップですか…」

トウガンはあごひげをいじりながらミミロップの様子をうかがう。綺麗な毛並みでよく手入れされており、かつ鍛えられているのがわかる。すると、ルザミーネは虹色の宝石を取り出した。

「ミミロップ、メガシンカ!」

ルザミーネは開幕からメガシンカを使う。ミミロップの姿が変化し、耳は所々を絞り、茶色とクリーム色の体毛が生えていた脚は黒く変化する。そして、ルザミーネはトウガンたちへの猛攻を開始した。

「ミミロップ、飛び蹴り!」

「ミミッ!」

ミミロップは瞬く間に空中を舞い、トリデプスへ強烈な一撃を見舞おうとする。トリデプスは岩、鋼の複合タイプ。その共通の弱点である格闘技は致命的なダメージとなるはずである。
ミミロップの飛び蹴りが決まるかと思われたそのとき、トウガンとトリデプスは痛烈な返しを仕掛けた。
 ▼ 73 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/03/07 15:32:02 ID:Sb3A8TUs [3/19] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「トリデプス、守る!」

「デプス!」

「!」

トリデプスはシールドを張ってミミロップの攻撃を防御する。ミミロップの飛び蹴りは防がれ、そのまま地面に激突してミミロップの方が手痛いダメージを受けることになった。

「…ミミッ…!」

「…さすがはジムリーダー…。一筋縄ではいきませんか…」

ルザミーネは次の一手を考える。トリデプスは防御面の能力には秀でているが、攻撃面はさほどでもない。補助技を主体とした戦い方を得意とするトリデプスにはこれが一番だろう。

「トリデプス、ステルスロック!」

トウガンはこの隙にステルスロックで自分に有利な場を整えようとした。だが、ルザミーネはそれを許さない。

「ミミロップ、アンコール!」

「!!」

今度はトウガンが揺さぶられる番となった。これでトリデプスは守るを使い続けなければならなくなった。トウガンは仕形なくここはトリデプスを交代させることにする。

「トリデプス、交代だ!ドータクン、頼むぞ!」

「ドーダ!」

トウガンの2番手はドータクンだった。ルザミーネもここはミミロップを一旦交代させることにする。

「ミミロップ、一旦もどって!ヘルガー、頼むわよ!」

「バウッ!!」

ルザミーネの2番手はヘルガー。そして、ルザミーネはヘルガーの一撃のもとにドータクンを沈めようとする。

「ヘルガー、大文字!!」

「バゥッ!!」

ヘルガーが大の字の炎をドータクンへ叩き込む。炎に包まれたドータクンはあえなく撃沈したかに思われた。
 ▼ 74 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/03/07 15:32:45 ID:Sb3A8TUs [4/19] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「よし、まずは一本…!」

「それはどうですかな?トリックルーム!」

「ドーダ!!」

「!」

ドータクンは炎を振り払い、時空を歪めていく。どうやら特性は耐熱であるらしい。トウガンの愛用する鋼タイプのポケモンたちは素早さの低い傾向にある。ここまでミミロップ、ヘルガーと素早さの高めのポケモンたちを使ってきたルザミーネにとっては痛手となる技であった。

「ドータクン、反撃だ!地震!!」

ドータクンは地震を起こしてヘルガーを仕留めようとする。しかし…

「ヘルガー、不意打ち!」

トリックルームの中、ルザミーネはドータクンに先制を許さなかった。ヘルガーの不意打ちを受け、ドータクンの技は発動することなく崩れ落ちる。ヘルガーはドータクンを落とし、得意気にうなり声を上げた。

「ヘルガー、よくやったわ。…ふぅ…」

ルザミーネはヘルガーがドータクンを倒したことで安堵の息を漏らす。しかし、ここからが本番だ。トウガンは果たして何を繰り出してくるか。

「素晴らしいですな。これはオーバたちがやられてしまうのも頷ける」

トウガンはそう言って次のボールを投げる。

「グオォッ!」

現れたのはボスゴドラだった。その咆哮はジム内の空気をビリビリと震わせる。トリックルームの下ではボスゴドラに先制を許してしまうだろう。ルザミーネはとりあえずヘルガーでボスゴドラに一撃を浴びせておくことにする。

「ヘルガー、不意打ちよ!」

「バウッ!」

ヘルガーの一撃を受けてもボスゴドラは予想通り止まらなかった。
 ▼ 75 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/03/07 15:33:25 ID:Sb3A8TUs [5/19] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「ボスゴドラ、ストーンエッジ!」

「グオォッ!」

反撃のストーンエッジが放たれ、ヘルガーが崩れ落ちる。これでルザミーネの残りは手負いのメガミミロップともう一体のポケモンとなった。

「ミミロップ、もう一度頼むわよ!」

「ミミッ!」

ルザミーネは再びメガミミロップを繰り出してくる。トウガンはそれを見てニヤリと笑った。

「ルザミーネさん、私も奥の手を出させてもらうとしましょう。ボスゴドラ、メガシンカ!!」

トウガンはルザミーネがミミロップをメガシンカさせたときと同様、虹色の宝石を取り出した。すると、ボスゴドラの体が変化し始め、分厚い鎧をまとった屈強な姿になった。

「…メガボスゴドラ…!」

「グオオォ!!」

メガシンカしたボスゴドラは咆哮を上げ、そしてフッと姿を消す。

「ミ…っ…?」

ミミロップがボスゴドラがどこへ消えたのかと探していると、トウガンは静かに技の指示を出した。

「ヘビーボンバー」

「ミミロップ、上!」

ミミロップがルザミーネの声に気づいた時にはもう遅かった。ミミロップはボスゴドラの体重を乗せた一撃を受け、なす術もなく崩れ落ちる。ルザミーネはミミロップをボールに戻し、最後のボールを手に取る。
 ▼ 76 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/03/07 15:34:02 ID:Sb3A8TUs [6/19] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「…最後はあなたに託すわ。頼むわよ、ニドクイン!」

「グルル…!」

ルザミーネの最後のポケモンはニドクイン。トウガンはニドクインにボスゴドラがやられることはないだろうとニヤリと笑みを浮かべる。すぐにその考えは甘かったと思い知らされることになるのだが。

「ボスゴドラ、ヘビーボンバーだ!」

「グオオォ!」

ボスゴドラはミミロップへ仕掛けたときと同様に空中からニドクインを押し潰そうとする。ルザミーネはこの一撃のダメージをできる限り抑えることが勝敗の分かれ目だと思っていた。

「ニドクイン!上から来るわ!ガードして!」

「グルッ…!」

ニドクインはなんとかガードするも、ボスゴドラの体重をかけた重い一撃はかなりのダメージとなった。

「くっ…!ニドクイン、大文字!!」

ニドクインは反撃の炎を浴びせ、ボスゴドラも大きなダメージを受ける。しかし、ボスゴドラは特性、フィルターにより効果は抜群の技を受けてもダメージを抑えることができるため、とどめを刺すには至らなかった。ここでトリックルームの効果が切れる。ルザミーネのポケモンが先制しやすくなるものの、トウガンにはまだノーダメージのトリデプスも控えている。ルザミーネにとってはここからが本番だった。

「ボスゴドラ、もう一度ヘビーボンバー!」

トウガンはメガボスゴドラのヘビーボンバーでニドクインを倒そうとする。しかし、ボスゴドラが地面を踏み切ろうとしたそのとき、その地面からボスゴドラへ痛烈な一撃を見舞われた。
 ▼ 77 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/03/07 15:34:42 ID:Sb3A8TUs [7/19] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「ニドクイン、大地の力!」

「グルォォ!」

ニドクインは咆哮とともに地面にエネルギーを送り込み、ボスゴドラの足下で弾けさせる。

「ボスゴドラ!!」

トウガンの叫びも空しく、ボスゴドラの巨体が轟音を立てて仰向けにひっくり返る。ボスゴドラはメガシンカが解け、そのまま動けなくなった。

「ボスゴドラを倒してしまいますか…。しかし、この勝負は私がもらう!トリデプス、決めてこい!」

「デプス!!」

トウガンの最後のポケモン、トリデプスが姿を現す。トウガンはニドクインが大地の力を覚えていることでこの勝負はもらったと思っていた。恐らくルザミーネのニドクインの特性は力ずく。技の追加効果が発動しなくなる代わりにダメージが増す。ルザミーネはニドクインの覚える豊富な技を強化し、相手を攻め立ててくるが、トリデプスにはそれを返す技がある。
メタルバースト。相手から受けたダメージを倍返しする技だ。加えてトリデプスは特性、頑丈によりノーダメージの状態なら確実に一発は耐えることができる。大地の力を誘い、メタルバーストでニドクインを仕留める。これがトウガンのプランだった。

さあ、大地の力を使え…

トウガンはルザミーネの攻撃の指示を待つ。ルザミーネの唇が動こうとしたそのとき、トウガンはトリデプスに向かって叫んだ。
 ▼ 78 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/03/07 15:35:26 ID:Sb3A8TUs [8/19] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「トリデプス、メタルバースト準備!」

「デプス!」

トリデプスはニドクインの攻撃に備え、足を踏ん張らせる。しかし、ルザミーネはトウガンの考えを読んでいた。

「ニドクイン、冷凍ビーム!」

「!!」

ニドクインの放った技は冷凍ビーム。トリデプスには効果は今一つ。トウガンは驚きのあまり声が出なかった。これではダメージを倍返ししても大したダメージにならない。

「くっ…!メタルバースト!」

「デプス!」

トリデプスはメタルバースト放つ。白銀の光がニドクインを飲み込み、ニドクインが後ずさりする。しかし、先ほど受けたダメージを倍返ししてもニドクインにとどめを刺すには至らなかった。

「…やっぱりメタルバーストを覚えていましたね」

「…読んでいたのですか…」

トウガンがそう言うと、ルザミーネは少し憂いを帯びたような笑みを見せた。

「…エーテル財団でいろいろなポケモンと触れ合ってきましたから。ニドクイン、大地の力」

ニドクインの最後の攻撃。トリデプスの足下でエネルギーが弾け、ついにトリデプスも倒れる。ニドクインはトリデプスが倒れたのを確認すると、緊張の糸が切れたようで、大きな息をついた。
 ▼ 79 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/03/07 15:35:49 ID:Sb3A8TUs [9/19] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「ニドクイン、お疲れ様。よく戦ったわ」

「…トリデプス、ご苦労だったな。…やれやれ、私もまだまだ甘いな」

トウガンはトリデプスをボールに戻し、大きく息をついた。

「…トウガンさん、戦っていただきありがとうございます」

ルザミーネがそう言うと、トウガンはなぜかおかしくなって大きな声で笑った。

「…くっ……グハハハハ!」

ルザミーネは突然トウガンが大声で笑い出したのであっけに取られる。ルザミーネの様子を見て、トウガンは深呼吸してから笑顔を見せた。

「いやいや、私の方こそ楽しかったですぞ!最後のメタルバーストは決まったと思ったんですがな!ルザミーネさん、あなたは強い!またバトルしていただきたいところではあるが、まずはあなたに彼の情報を渡さねばなりませんな!」

トウガンはルザミーネとの本気のバトルに満足したようだ。ルザミーネはホッとしてニドクインをボールに戻す。トウガンはルザミーネがニドクインをボールに戻すと、ルザミーネをポケモンセンターに誘った。

「とりあえずポケモンセンターに行きましょう。我々のポケモンを回復させねば。待ち時間の間、私の知っていることを話しましょう」

「わかりました。よろしくお願いします」

トウガンとルザミーネはジムを後にし、ポケモンセンターへと向かう。トウガンはルザミーネに嘘の情報を渡すことになるのだが、その情報が何の偶然か嘘ではなくなるなどこのときは思いもしなかった。
 ▼ 80 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/03/07 15:37:17 ID:Sb3A8TUs [10/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
第9話はここまでです。
次回はトウガンとともにルザミーネがクロガネシティを訪れるお話にしようと思います。
それではまた。
 ▼ 81 コダック@キョダイパウダー 21/03/07 17:02:48 ID:NEOsY3gc NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援!
 ▼ 82 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/03/07 21:41:57 ID:Sb3A8TUs [11/19] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
読んでくださっている皆様、いつもありがとうございます。
第10話ができましたので投稿します。
 ▼ 83 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/03/07 21:43:00 ID:Sb3A8TUs [12/19] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
Episode 10 嘘が本当になった日


トウガンとルザミーネはクロガネシティのポケモンセンターで手持ちを回復させる間、カフェスペースで話していた。トウガンからヨウと思われる少年を見たという情報を聞くためだ。

「クロガネシティの方へ向かった…」

「…ええ…。とはいえ、もしかしたら私の人違いかもしれない…。こんな情報で申し訳ないのですが」

「いいえ。何もないよりは全然よいので…」

ルザミーネはここでなぜヨウがミオジムに挑戦しなかったのだろうかと考える。彼の手持ちは自分も一度見ているが、ハリテヤマ、シャンデラ、フライゴンなど鋼タイプの相手を得意とするポケモンが多いはずなのに。

「…彼はミオジムには挑戦していないのですね?」

「ええ」

トウガンがそう言うと、ルザミーネは少し考えた。クロガネシティへ行ってみるべきか、それとも…。

「…行ってみますか?クロガネシティ」

トウガンはルザミーネに質問する。ルザミーネは他に手がかりもなさそうなので、一度クロガネシティに行くのも悪くはないかと考えていた。

「…そうですね。行ってみようと思います」

ルザミーネがそう言うと、トウガンはある提案をした。

「それなら私もご一緒しましょう。実は、クロガネシティのジムリーダーは私の息子でしてな。久しぶりに会ってみようと思いまして。それに、もし彼が私の息子に挑戦していたら、それはそれで大きな手がかりになる」

「…トウガンさん…。わかりました。よろしくお願いします」


その頃、シンオウリーグでは…。
 ▼ 84 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/03/07 21:44:30 ID:Sb3A8TUs [13/19] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「聞きましたよオーバ。あなたとデンジくんを破ったトレーナーがいるそうですね?」

シンオウリーグの建物内の廊下で長髪の眼鏡をかけた男性がオーバに話しかける。オーバはやれやれとため息をつきながら答えた。

「相変わらず耳が早えな、ゴヨウさん。書斎で本読んでばっかなのかと思いきや、どこにそんな情報源があるんだい?」

この眼鏡の男性はシンオウリーグ四天王の一人、ゴヨウ。どうやらルザミーネの話をどこからか聞きつけたようだ。

「私もトレーナーの端くれですからね。あなたとデンジくんがやられたとあっては、興味を示さないわけがないでしょう?」

「弔い合戦ならいらねえぜ?自分の雪辱は自分で晴らす」

オーバがそう言うと、ゴヨウはくくっと笑った。

「そんなつもりは毛頭ありませんよ。私がそんな人間に見えていましたか?」

「まさか。あんたが俺の雪辱を晴らそうなんて言い出したら、熱でもあんのかと疑うところさ。…で、そのトレーナーの情報がほしくて俺の所に来たのかい?」

「ええ、その通りです」

ゴヨウの眼鏡の奥の瞳が戦いに飢えているとギラついている。オーバはこの男、ゴヨウに少し苦手意識を抱いていた。非常に実力の高い、恐らくシンオウ地方ではチャンピオンのシロナに次ぐトレーナーであるが、何を考えているのか今一つ掴めない。ただ、この男は時折強いトレーナーとバトルすることへの飢えのようなものを見せることがあった。

「…ほら、これがそのトレーナーだ」

オーバはそう言ってルザミーネの写真を見せる。ゴヨウはそれを見て獲物を見つけたようにニヤリと笑った。

「…ほう…。この方が…」

と、そこに一人の女性の声が割り込んできた。

「あれ?オーバくんにゴヨウさん!何してるの?」

二人に声をかけてきたのは長い金髪に黒いコートを着た女性。シンオウチャンピオン、シロナだった。

「おや、シロナさん。ご機嫌麗しゅう」

ゴヨウが挨拶すると、シロナはオーバが自分の端末をゴヨウに見せていることに気づく。珍しいこともあるものだとシロナはオーバに質問した。
 ▼ 85 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/03/07 21:45:35 ID:Sb3A8TUs [14/19] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「オーバくん、ゴヨウさんに何を見せてたの?」

シロナはオーバの端末をのぞき込もうとするが、オーバはひょいっと端末の画面をひっくり返した。

「あ!何よ?私には見せられないってわけ?」

「あー、まあ、んなこたあねえけど…」

オーバがそう言うと、ゴヨウが口を開いた。

「彼とデンジくんのタッグを破ったトレーナーの写真を見せてもらっていたんです」

ゴヨウのこの発言にはシロナも興味を示した。

「え?本当?そんな強い人がいるの?」

「ええ。しかも女性でした。恐らく、彼は下心から彼女の写真を撮ったとあなたに思われたくなかったのでしょう」

ゴヨウがからかうように言うと、オーバはばつの悪そうな顔をした。

「まったく…。それなら堂々と見せた方がかえって疑われないわよ?…あら…?」

シロナはそう言ってオーバから端末を取り上げ、そのトレーナーの写真を見る。雪のような白い肌に艶やかな金髪、深い翡翠色の目の美女。シロナはこの女性をどこかで見たような気がしていた。

「…あれ…?この人…」

「お知り合いですか?」

ゴヨウに尋ねられ、シロナはふるふると首を横に振った。

「いえ…。そういうわけじゃないんだけど、どこかで見たような…」

「この人アローラから来たみたいだぜ。シロナもついこの前までアローラに行ってたよな?」

オーバから出たアローラという単語でシロナはこの女性の正体に感づいた。アローラで出会った少年、ハウから見せてもらった四人の少年少女の写真。その中の一人、リーリエとこの女性の雰囲気はどことなく似ていた。
 ▼ 86 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/03/07 21:46:47 ID:Sb3A8TUs [15/19] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「オーバくん、この人は…」

「ん?ルザミーネさんっていうんだけど、何でも初代アローラチャンピオンが今シンオウにトレーナー修行に来てるそうなんだよ。で、彼を探しに来たんだと。ほら、おまえがビールをガバガバ飲みながら観戦してたバトル、覚えてるだろ?」

「…う…。そのことはもういいでしょ!」

シロナもアローラリーグ創立のエキシビションマッチを見ていた一人だった。観戦中についつい興奮してビールが進んでしまい、試合の内容の半分以上は記憶から消えていたが。

「つぶれたおまえを介抱した俺とリョウとキクノ婆ちゃんの身にもなれ馬鹿」

シロナはとりあえずオーバの悪態は置いておき、オーバの知っていることを尋ねてみる。

「オーバくん、初代アローラチャンピオン、ヨウくんがシンオウに来てるって言ったわよね?それは確かなの?」

「ん?いや、俺はこの人から聞いただけだよ。ただ、この人は確信を持ってるみたいだった。とりあえず俺の人脈を使って、ジムリーダー連中にはもしヨウくんを見かけたら連絡してくれとは頼んでる」

「…そう…」

シロナは気になっていた。自分がアローラへ行ったときに出会った少年、ヨウ。彼は酷く疲れ、精神状態も不安定だった。その彼がシンオウに来ている。シロナはなぜかもう一度彼に会いたくなった。

「彼がどうかしたのか、シロナ?」

「いえ…。私も会ってみたいなと思っただけ…」

シロナはアローラで彼に会ったことは四天王たちには話していない。彼は恋人を裏切った自責の念から精神を壊していた。彼がシンオウに来たのは、精神状態が少しでもよくなったからなのだろうか。
 ▼ 87 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/03/07 21:47:57 ID:Sb3A8TUs [16/19] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「お?シロナも興味あんのか。おまえも好きだもんな。強いトレーナーとのバトル」

「ええ、まあ…」

と、そこに四天王がもう一人、穏やかな年配の女性が現れる。

「シロナちゃん、強いトレーナーに興味を示すのはいいけど、出掛けるならちゃんとお部屋の片付けをしてからにするのよ?」

まるで子どもをたしなめるような言葉でシロナに声をかけるのは地面使いのキクノ。四天王の中で最年長者である。キクノにそう言われてはシロナも黙るしかなかった。

「ほら、キクノ婆ちゃんもこう言ってるぞ。出掛けるのは自分の部屋を片付けてからな?…リョウに泣きつくのは無しだぞ。ついでに俺も今回は心を鬼にして手伝わないことにする」

オーバにそう言われ、シロナは大きなため息をつきながら自室に戻っていく。しかし、その裏でシロナは先ほど写真を見たルザミーネが何者なのかなんとなくわかっていた。

あの人がリーリエちゃんのお母さん…。ハウくんが話してくれた、ヨウくんとかつて敵対していた人…。

シロナはルザミーネの動向が気になり、キクノやオーバに見つからずにこっそりとリーグを抜け出せないかと考えていた。


ルザミーネとトウガンがバトルした翌日、二人はクロガネシティを訪れていた。

「あそこがクロガネジムです。息子に会うのは久しぶりだな。もしよければ息子ともバトルしてみてください。あいつもルザミーネさんのような強いトレーナーと戦ったらワンランク上に行けると思うんですよ」

トウガンはクロガネジムの建物を指差す。そして、クロガネジムのエントランスをルザミーネと共にくぐる。

「おや?トウガンさん?」

「おお、久しぶりだな」

トウガンはジムトレーナーの一人に声をかける。そして、ジムトレーナーはトウガンと一緒にいるルザミーネにしばし見とれた。

「ヒョウタは?」

トウガンに尋ねられ、ジムトレーナーははっと我に返った。
 ▼ 88 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/03/07 21:49:18 ID:Sb3A8TUs [17/19] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「ああ、今日は炭坑に行ってますよ」

と、そこにジムの奥の方から一人の少年の声がした。

「バトル場の掃除、終わりましたよー!」

「おお、サンキューな!」

ジムトレーナーが返事を返すと、ルザミーネはその聞き覚えのある声に思わず反応する。

「…!?今のは…」

「ああ、新入りです。とはいえ、手持ちはスボミーのみ。ポケモンバトルのほうは全然大したことはありません。まあ、よく働いてくれてますよ」

ジムトレーナーがそう言うと、ルザミーネは居ても立ってもいられずジムの奥へと進んでいく。

「あ!ちょっと!勝手に入らないでください!!」

ジムトレーナーはルザミーネを止めようとしたが、ルザミーネは構わずにジムのバトル場へと進んでいく。そして、ルザミーネがバトル場へ入ると、数人のトレーナーがバトル場の掃除を終えて休憩している場面に出くわす。掃除当番だったトレーナーたちは突然の来訪者に思わず視線を集中させた。そして、その中にいた一人の少年は一際目を丸くしていた。

「…ここにいたのね…」

ルザミーネはその少年に向かって歩を進めていく。深い翡翠色の目にはかつてのような敵意は感じられない。

「…まさか探しに来たのがあなただったなんて、夢にも思いませんでしたよ…。もう体の具合はいいんですか?」

「ええ、おかげさまで」

少年とルザミーネのただならぬ雰囲気にジムトレーナーたちが集まってきた。
 ▼ 89 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/03/07 21:49:55 ID:Sb3A8TUs [18/19] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「おい坊主。このお姉さんと知り合いなのか?紹介してくれよ?」

先輩のジムトレーナーに言われ、ヨウは小さなため息をつく。

「…この人はルザミーネさん。こう見えて僕と同じくらいの二人のお子さんがいます。ナンパしようとしても無駄だと思いますよ」

少年にそう言われ、ジムトレーナーは驚愕の表情を浮かべた。そして、今度はルザミーネがジムトレーナーにこの新入りの少年の素性を知っているのか確認した。

「…あなたたち、この人が誰なのか知ってるの?」

ジムトレーナーたちは一様にきょとんとした顔をする。ルザミーネは小さくため息をつき、少年の素性を話し始めた。

「…初代アローラチャンピオン、ヨウ。テレビや動画で見た人もいるんじゃないかしら?」

今度はジムトレーナーたちは一様にぎょっとした表情に変わった。

「あいつが初代アローラチャンピオン…?」

「いや、確かに似てるとは思ってたが…。でも、まさか本物なわけないよなって…」

ジムトレーナーたちがざわめく中、ヨウはルザミーネをじっと見つめる。ヨウとルザミーネ。かつて敵対し、戦った二人には周囲のざわめきさえも静寂のように聞こえていた。
 ▼ 90 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/03/07 21:53:59 ID:Sb3A8TUs [19/19] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
第10話はここまでです。
次回からルザミーネがヨウを立ち直らせるお話にシフトしていきます。
それではまた。
 ▼ 91 オムナイト@おおきなキノコ 21/03/07 22:04:45 ID:/B8YJ7QM NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援支援!!
 ▼ 92 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/03/08 21:40:19 ID:a642HYo. [1/9] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
読んでくださっている皆様、いつもありがとうございます。
第11話ができましたので投稿します。
 ▼ 93 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/03/08 21:41:40 ID:a642HYo. [2/9] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
Episode 11 逃亡者


「ふー、ただいま。…ん?」

クロガネ炭坑からジムに戻ってきたヒョウタはジム内の様子がおかしいことに気づく。何かあったのだろうかとジムのバトル場へ進んでいくと、父親の後ろ姿があった。

「父さん?なんだ、来てたのか。来るのはいいけど、事前に連絡してくれよ」

「すまんすまん…」

トウガンがヒョウタに謝ると、ヒョウタはジム内にいる金髪の女性を見てはっとする。彼女はヨウとただならぬ雰囲気で対峙していた。

「…ルザミーネさん…ですね?」

ヒョウタがルザミーネに声をかけると、ルザミーネはくるりとヒョウタの方を振り向いた。写真で見るよりも数段美しいその姿にヒョウタは一瞬たりとも見とれることはなかった。

「…はい。あなたは…」

「クロガネジムのリーダー、ヒョウタと申します。うちのジムトレーナーに何か御用でしょうか?」

ヒョウタのその言葉はルザミーネを牽制するようであった。ヨウはヒョウタが自分の安全を考えてルザミーネを牽制しているのだとわかっていた。ヨウはヒョウタにルザミーネは自分への敵意を持ってはいないと伝えた。

「ヒョウタさん、大丈夫です。この人は僕に危害を加えるつもりで来たわけじゃありません。…二人で話をさせていただいてもよろしいですか?」

ヨウはまっすぐな眼差しでヒョウタを見つめる。ヒョウタはヨウのこんな目を見たことがなかった。彼はいつも何かに怯え、逃げているような目をしており、とてもかつてアローラの覇者であったとは思えない目をしていた。その彼が今は力強いまっすぐな眼差しを、かつてアローラの覇者であったと納得させるに十分な力のこもった目でヒョウタを見つめている。そのような眼差しを向けられては、ヒョウタは首を縦に振るしかなかった。
 ▼ 94 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/03/08 21:43:06 ID:a642HYo. [3/9] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「…久しぶりね。少し背が伸びたようだけど、少し痩せたようにも見えるわ」

ルザミーネとヨウはクロガネ炭坑のある山に来ており、街を見下ろしていた。

「…そうですね。少しだけ。でも、ルザミーネさんが僕のことを探してたなんて、驚きましたよ。探しに来るとしても、ハウくらいだろうと思ってましたから」

穏やかな日差しの下でヨウはルザミーネに向かって言った。彼女は自分にお礼をしたいと言っているそうだが、果たして本当の目的は何なのだろうか。

「…僕にお礼を…と思っているそうですね?…正直、僕はルザミーネさんから欲しいものなんてありません。他に何か目的があるんでしょうか?」

ルザミーネはヨウに尋ねられ、小さくため息をついた。そして、ルザミーネはアローラで彼の足取りを追っていたことを話し始める。

「…あなたのお母様から、可能ならあなたを連れ戻してほしいと頼まれた。それと、あなたが島巡りを終えてから何をしていたのかも少し調べさせてもらった。…ミヅキさんと、リラさんにも会った。私の起こした事件の後始末もしてくれたのね。重ね重ねお礼を言うわ」

ヨウはミヅキとリラの名を聞き、うんざりしたようにため息をついた。

「…ミヅキもリラも僕のことを恨んでたでしょ?それに、ルザミーネさんだってリーリエのことを思えば、僕のことを憎んでも仕方ないはず…。僕は弱かったんです。リーリエと離ればなれになって、それを思い知らされた」

「…誰もそんなこと思ってないわ。ミヅキさんでも」

「…そうですか?ミヅキはワタルさんとのバトルの前に言ってたじゃないですか。僕のことを最も失望した人だって」

「…そんなことない。彼女は、本当はあなたに憧れてる」

「…もしそうなら、ミヅキもとんだお人好しだ。僕は臆病な逃亡者ですよ。リラの力になりたいと思ったら、結局彼女になびいてリーリエを傷つけて、ミヅキはその後の僕の情けない姿をたくさん見てきたはずなのに」

ルザミーネは吐き捨てるように言うヨウの腰についているモンスターボールを見つめる。今ついているボールは一つだけ。ルザミーネはそれについて尋ねた。
 ▼ 95 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/03/08 21:44:37 ID:a642HYo. [4/9] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「…あなた、今はポケモンは一体しか連れてないの?」

「…ええ…。修行に来たとか言っても、結局はふらふらしてるだけ…」

ヨウはそう言うとモンスターボールからスボミーを出した。

「スボ?」

「…今は手持ちはこのスボミーだけです。…本当はもっといろんなポケモンを捕まえてバトルしていくべきなんでしょうけど、なんかバトルしようとしても集中できないんです。…ごめんな、スボミー…」

ヨウは最後にスボミーへの謝罪を付け加えた。その言葉こそヨウの精神状態の異常さを表していた。

「島巡りをしていたときの手持ちはどうしたの?」

「…彼らは今はアローラにいます。…彼らにもう一度顔向けできるトレーナーになろうと思ってシンオウに来たはずなのに、こんなんじゃ愛想を尽かされちゃうな…」

ルザミーネは今のヨウを見ていられなかった。リラに浮気したとはいえ、かつての英雄が自責の念からここまで卑屈になっているとは思わなかった。
ルザミーネは思った。このままシンオウにいても、自らを追い込んでも彼の精神は回復することはない。

「…ヨウくん、そんな考え方はやめて」

ルザミーネの一言に、ヨウは首を横に振った。

「…じゃあ、どんな考え方をしたらいいんですか?僕みたいないい加減なトレーナーには、彼らはもったいないですよ」

「いい加減逃げるのはやめて。あなたは一番逃げてはいけないものから逃げてる」

ルザミーネの厳しい一言にヨウは思わず反発してしまった。

「一番逃げてはいけないもの…?…リーリエですか?」

ルザミーネは首を横に振る。

「…リラですか?」

ルザミーネは再び首を横に振る。

「…じゃあ、ミヅキ?」

ルザミーネはヨウを自分の方へ抱き寄せる。ルザミーネの甘い香りがヨウを包み込み、ヨウは動けなくなった。
 ▼ 96 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/03/08 21:45:23 ID:a642HYo. [5/9] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「…あなたの…幸せからよ。あなたが苦しみ続けても、それは誰のためにもならない。リーリエやリラさんはもちろん、ミヅキさんのためにも。思い出して。あなたが島巡りを通じて嬉しかったこと、幸せだったこと、心から喜べたことを」

「…僕の…幸せ……?」

ルザミーネの一言はヨウの心に突き刺さった。自分は幸せを望んでもよいのだろうか。

「…でも…僕は…」

「…あなたは私たち家族を救ってくれた。ウツロイドに夢中になっていた私を引き戻し、リーリエの笑顔を取り戻した。グラジオもあなたに救われている。そんなあなたが幸せになってはいけないなんて、その方がおかしいわ」

ルザミーネはヨウを抱く腕に力を込める。そして、そのままヨウに語りかけた。

「…あなたの幸せは何?リーリエのためとかリラさんのためとか、ミヅキさんのためとかは一切抜きにして」

ヨウはリーリエと一緒にいる自分を想像する。それは確かに幸せかもしれない。だが、もう一人、ヨウには守りたい人がいた。
ヨウの目に涙が溢れる。そして、ルザミーネはかつて敵対していた自分だからこそ踏み込める心の領域に踏み込んだ。

「…私はかつてあなたと敵対していた。あなたには申し訳ないと思っているし、感謝している。私は自分の幸せをあなたのおかげで取り戻すことができた。だからあなたにも自分の幸せに向き合ってほしいの。もちろんグラジオやリーリエの幸せも願っているけど、幸せは結局その人の心にしか決められないもの」

ヨウはそれを聞き、ルザミーネに尋ねた。

「…僕は…僕の幸せを追いかけてもいいのかな…?こんな情けない状態で、皆とまた向き合ってもいいのかな…?」

ルザミーネは嗚咽混じりに言葉を紡ぐヨウを抱き締めたまま言った。

「…それは、あなたがあなたの心に従って決めることよ」

最後の最後でルザミーネは厳しくも温かい言葉をヨウにかけた。確かにルザミーネの言う通りだった。自分は逃げていた。自分は幸せと思うことから目を背け、苦しみ続ければそれでいいのだと思っていた。それが誰のためにもならないことはわかっていたはずなのに。
ルザミーネはまた自分の幸せを求めるのかどうかは自分の心に従って決めることだと言った。どんなに情けなくみすぼらしい姿を晒そうとも、その決断は自分にしかできないことだ。
 ▼ 97 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/03/08 21:46:28 ID:a642HYo. [6/9] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「…ルザミーネさん…。リーリエが、かつてルザミーネさんはとても優しいお母さんだったって言ってました。…本当にその通りですね」

ヨウは涙をぬぐい、顔を上げる。こんな情けない自分をアローラにいる自分のポケモンたちはどう思うだろう。それは彼らと向き合ってみるまではわからない。もっと言えば、彼らがまた自分と戦うことに喜びを見出だしてくれるだろうか。彼らにも心がある。それもきっと、彼らが自分の心に従って決めることなのだろう。

「…まずはポケモンたちと向き合いましょうか」

ルザミーネはそう言ってヨウの体を放す。ヨウは柔らかな日差しの下で深呼吸をした。そして、ヨウは出しっぱなしにしていたスボミーに話しかける。

「…スボミー、今までごめんね。これからアローラの仲間たちともう一度向き合う。おまえもついてきてくれるかい?」

ヨウがそう言うと、スボミーは勢いよく頷いた。


ヨウはクロガネシティのポケモンセンターでアローラ地方のボックス管理者、マーレインと通信を繋いでいた。

「…お久しぶりです、マーレインさん」

「…ヨウくん…。無事だったか。よかった」

マーレインはヨウの姿に安堵の息を漏らす。そして、ヨウに用件を尋ねた。

「ポケモンの入れ替えかい?」

「…はい。アローラの皆とまた向き合わないといけないと思って…。…アシレーヌは…」

「…だいぶ回復している。ただ、彼女は君がまたアローラに帰ってくるまで君とは会わないつもりのようだ。モーンさんがなかなか手を焼いているよ」

「…そうですか…」

ヨウはとりあえずアローラに戻ってアシレーヌに向き合わなくてはと思った。だが、その前に共に島巡りをした他のポケモンたちに会うことにした。ヨウのもとにハリテヤマ、シャンデラ、アブリボン、トゲデマル、フライゴンのボールが送られる。ヨウはボールを受け取ると、ポケモンセンターの外に出てボールを開いた。
 ▼ 98 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/03/08 21:47:18 ID:a642HYo. [7/9] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「「「「「……………!!!!!」」」」

ボールから出た5匹は驚き、ヨウをまじまじと見つめた。ヨウは5匹に向かって口を開いた。

「…皆、こんなところに呼び出してごめん。一度皆から逃げた僕だ。どの面下げて…みたいに思われても仕方ないと思ってる」

5匹はヨウの言葉を黙って聞いている。そして、ヨウは皆にお願いをした。

「…これは僕から皆への、本当に身勝手なお願いだ。もう一度僕と共に戦ってくれないか?皆が僕と共にまた戦ってくれるかどうか、それは皆が皆の心に従って決めてほしい。皆がまた僕と戦うことに喜びを見出だしてくれるなら、僕にもう一度チャンスを与えてほしい」

ヨウはそう言い、共に島巡りを乗り越えた5匹に向かって頭を下げた。ハリテヤマたいは少し困惑しながらヨウの様子を見ていた。と、そこにアブリボンがヨウの頭を目掛けて体当たりをかました。

「ブリッ!」

「いてっ!?」

ヨウはアブリボンは自分を見放したのかと思ったが、アブリボンはそのままヨウの肩にとまった。

「…アブリボン…?」

「ブリッ!ブリ!!」

ロトムはいなかったが、ヨウにはアブリボンの言っていることがなんとなくわかった。ハリテヤマもシャンデラもトゲデマルもフライゴンも温かい眼差しを向けてくれている。

「…また一緒に戦ってやるから、これ以上ウジウジするなってことか…」

「ブリ!!」

アブリボンは一際大きな鳴き声を上げ、ヨウの肩から飛び立つ。ヨウはスボミーのボールを開き、アローラの仲間たちに紹介する。
 ▼ 99 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/03/08 21:47:52 ID:a642HYo. [8/9] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「スボミー、彼らがアローラで出会った仲間たちだ。本当はアシレーヌってポケモンもいるんだけど、彼女にはアローラに戻ってから紹介するよ」

「スボ!」

スボミーが挨拶をすると、ヨウのポケモンたちもスボミーを迎え入れる。その様子に、ヨウはほしぐもちゃんを迎えたときのことを思い出していた。

「…もういい?」

「…はい…」

ポケモンたちをボールに戻したそのとき、ルザミーネが姿を現した。どうやら建物の陰から見ていたらしい。そして、その後ろにはヒョウタもいた。

「…あれが君のアローラでの仲間たちか。…もう行くのかい?」

ヒョウタはヨウに尋ねる。ヨウはヒョウタへと頭を下げ、心からの感謝の念を述べた。

「…ヒョウタさん…。本当にお世話になりました…。この恩は一生忘れません…」

ヨウがそう言うと、ヒョウタはふっとため息をついた。

「…そうか…。それなら恩を着せるわけじゃないが、僕にも一生忘れられないようなものを残してもらいたいな」

ヒョウタの声の様子が変わり、ヨウは腰のボールの中の手持ちたちが武者震いをしたのを感じた。

「…せっかく遥々シンオウまで来たんだ。思い出のバトルくらいしていってもいいだろう?初代アローラチャンピオン?」

ヒョウタの眼鏡の奥の瞳が闘志に満ちている。そして、手持ちの武者震いに駆られるように闘志が心を満たしていくのを感じた。こんな感覚、いつ以来だろうか。

「…わかりました、ヒョウタさん。期待を裏切らないよう精一杯やらせていただきます」

ヨウのその答えにヒョウタはニヤリと笑った。
 ▼ 100 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/03/08 21:48:55 ID:a642HYo. [9/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
第11話はここまでです。
次回はヨウVSヒョウタとなります。
それではまた。
 ▼ 101 メラルバ@とくせいパッチ 21/03/08 21:52:57 ID:nNi2k62U NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
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