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ポケモンSMのストーリーをゼンリョクで書く 第6章 島巡りの終わり

 ▼ 1 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/03/31 20:16:43 ID:f6iI0rUs NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アローラ、皆さま。ガルーラJrと申します。
「ポケモンSMのストーリーをゼンリョクで書く」の最終章となります。また、以下の点を予めご了承ください。

1:登場人物
ゲーム編では例えば男主人公を選ぶと女主人公は出てきませんが、このSSでは両方のキャラクターをヨウ、ミヅキとして登場させます。

2:登場人物の手持ち
登場人物の手持ちは基本的にゲーム本編に準拠しますが、中には1匹か2匹入れ替えを行ったり、また、ゲーム本編で例えば最大5匹しか手持ちを持っていない人物には1匹追加をしたりしています。

3:形式
地の文を用いた形式で書かせていただきます。

第1章(SMゲーム本編に準拠したストーリー)はこちらです。

Part 1(プロローグ〜エーテルパラダイス突入)
https://pokemonbbs.com/post/read.cgi?no=1011593

Part 2(ポニ島〜エンディング)
https://pokemonbbs.com/post/read.cgi?no=1196044

第2章(UB捕獲作戦)はこちらです。
https://pokemonbbs.com/post/read.cgi?no=1227914

第3章(戦乱のアローラ)はこちらです。
https://pokemonbbs.com/post/read.cgi?no=1270113

第4章(リーリエの物語)
https://pokemonbbs.com/post/read.cgi?no=1302379

第5章(英雄の帰還)
https://pokemonbbs.com/post/read.cgi?no=1387373

いよいよ総決算ですので、気合入れて頑張ります。
 ▼ 435 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/07/13 06:20:03 ID:jfjk4Oq6 [1/2] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「ルガルガン、カウンター!」

「!!」

リーリエはしまったと思った。一気に試合の流れを握ろうとするあまり、攻撃を急いでしまった。ルガルガンはカウンターの一撃をヌオーにぶつける。ヌオーは吹き飛ばされ、バトル場の床の上に転がった。

「…ヌオー…。すみません…」

リーリエはヌオーをボールに戻し、次のポケモンをどうするか考える。そんな彼女を見ながらライチが口を開いた。

「これで厄介なヌオーは仕留めたわね…。リーリエ、私も簡単にはやられないわよ」

ライチが不敵な笑みを見せ、リーリエは気を引き締め直す。岩タイプは弱点が多く扱いの難しいタイプだが、ライチは岩タイプの使い手として非常に高い力量を備えている。それはセキエイリーグとのエキシビションマッチ、カリンとのバトルでも十二分に発揮されていた。

…ライチさんにはまだメガディアンシーもいるはず…、まだまだこれからです…

リーリエはそう考えると、次のボールを放った。
 ▼ 436 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/07/13 06:23:36 ID:jfjk4Oq6 [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
第48話はここまでです。
それではまた。
 ▼ 437 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/07/15 01:53:22 ID:6U6IKKIU [1/9] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
読んでくださっている皆様、いつもありがとうございます。
第49話ができましたので投稿します。
 ▼ 438 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/07/15 01:54:57 ID:6U6IKKIU [2/9] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
Episode 49 紡がれる言葉


「お嬢様、ヨウさんのところへたどり着けるといいですね」

「…そうだな…」

エーテルパラダイスの保護区にて、ビッケとグラジオが会話をしている。グラジオは保護区のポケモンに餌をやろうと進み出ていく。すると、保護区のポケモンたちが集まって餌をねだり始めた。

「ふふ…、少し待て。誰もやらないとはいってないだろう?」

グラジオは穏やかな口調でポケモンたちに餌を与え、そしてビッケのもとへ戻ってくる。

「…お嬢様ももう一人前のポケモントレーナーかぁ…。私も今からでもなってみようかしら?でも、今さらですかね…」

ビッケがそんなことを言うと、グラジオはふっと笑った。

「いいんじゃないか?始めるのにきっと遅いことなんてない。ビッケならポケモンに対する知識も豊富だし、いいトレーナーになれるだろう」

「ふふ、お世辞でも嬉しいです」

ビッケはそう言うと、グラジオは首を横に振った。

「お世辞なんかじゃないさ」

「…ありがとうございます…」

ビッケはそう言うと、ヨウとリーリエのことに言及する。

「…ヨウさんも大変でしたね。お嬢様と離ればなれになったことで心を弱らせ、その状態で無理をし続けて…」

「まあ、その結果、こともあろうに三人もの恋人を作るという暴挙をやってのけたがな。しかも母上も巻き込んでときたものだ」

グラジオは悪態をつくが、その言葉に怒りの感情は含まれていないようにビッケは感じていた。
 ▼ 439 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/07/15 01:55:40 ID:6U6IKKIU [3/9] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「坊っちゃま、あまり怒ってはいないようですね?」

「初めは怒りも湧いたけどな。でも、ビッケに言われたことがふと頭をよぎったんだ」

「私に言われたこと?」

グラジオはビッケがきょとんとしているので思わず笑い出しそうになった。

「ふふ、意外と言っている方は忘れているか?おまえがルカリオとギャラドスを俺に再会させてくれたときに言った言葉だ。その人間だけが持っていける愛がある…。もしかしたら、あいつもそうなのかもしれないと思ってな…。少なくともあいつは気持ちの上では誰かをないがしろにしようというつもりはないようだし、一旦様子見をしてやることにしたのさ」

「坊っちゃま…」

グラジオは穏やかな、それこそラナキラマウンテンでヨウとのバトルを終えたときのような表情を浮かべていた。

「…坊っちゃま…」

「…我ながらおかしなことを言っているとも思っているがな。おまえが俺に言ってくれたときは、こんなシチュエーションを想定してなどいなかっただろうから」

「まあ…、そうですね…。ふふっ」

「…あいつら、島巡りをして、今日までどんな言葉を二人で紡いできたんだろうな…」

「…言葉…、ですか?」

ビッケはグラジオが意外なところに着目していることに少し驚いたような顔をした。
 ▼ 440 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/07/15 01:56:20 ID:6U6IKKIU [4/9] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「…ああ。人と人が交わるとき、そこには言葉が交わされる。俺が父上から受け取ったモンスターボールでリオルとコイキングをゲットしたときや、ビッケから人は生まれる場所は選べないが、だからこそその者だけが受けられる愛があると言われたとき、俺はそこに確かな希望を抱いていた。あいつらだってきっと、あれだけ強く結びついたということは、俺とビッケのように希望を抱ける言葉を紡いできたんだろうと思ってな」

「…そうですね…。坊っちゃまを差し置いて世界一のトレーナーだとおっしゃるくらいですから」

グラジオはビッケの茶化すような言葉を聞いてくくっと笑った。

「そうだな…。リーリエの中ではあいつがよほど落ちぶれない限り、あいつが世界一のままだろう。その世界一のトレーナーが待つ場所までもう少し…。俺たちも応援してやろう」

「もちろんです、坊っちゃま」

ビッケもそんなグラジオを見ながら穏やかな笑みを浮かべている。グラジオは保護区のポケモンたちに再び目を向け、肩をすくめながら大きく息をついた。



「次はあなたです!頼みますよ、チルタリス!」

「チルッ!」

リーリエは今度はチルタリスを繰り出す。そして、リーリエはすかさずメガストーンを取り出した。

「チルタリス、メガシンカ!!」

「チル!!」

チルタリスはメガストーンの力を受け、メガチルタリスへと姿を変える。ライチとルガルガンは巨大な雲のような姿へと変貌したチルタリスに向かって身構える。

「チルタリス、竜の舞です!」

「ルガルガン、岩石封じ!」

チルタリスが竜の舞を踊ったところでルガルガンは岩石封じを使ってチルタリスの素早さを削ぐ。
 ▼ 441 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/07/15 01:56:55 ID:6U6IKKIU [5/9] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「くっ、簡単にはいきませんか…!」

「危ない…!そう簡単にはやらせないよ!」

ライチはリーリエの狙い、竜の舞の攻撃力と素早さがアップによる一気の押し切りをを妨害した。リーリエはここは仕方ないと打って出ることにする。

「チルタリス、地震!」

「ルガルガン、不意打ち!」

「ルガゥ!!」

チルタリスが地震を起こそうとしたところにルガルガンは不意打ちを見舞う。しかし、悪技であるそれはメガチルタリスへ大きなダメージとはならなかった。

「チルッ!!」

チルタリスは反撃に地震を起こし、ルガルガンが吹き飛ばされる。ライチは戦闘不能となったルガルガンを回収し、次のボールを構えた。

「やるわね。さすがはメガシンカのパワーといったところかしら」

ライチはそう言いながら次のポケモンを繰り出す。中から現れたのはメレシーだった。

「メレシーですか…。チルタリス、地震です!」

「チルッ!」

チルタリスはふたたび地震を起こす。メレシーは弱点を浸かれたがまだ耐えていた。そして、ライチはここから反撃の一手を仕掛けてきた。

「メレシー、トリックルーム!」

「キュイッ!」

メレシーはトリックルームで時空を歪めていく。そして、メレシーはそのままチルタリスへ攻撃を仕掛けてきた。
 ▼ 442 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/07/15 01:57:36 ID:6U6IKKIU [6/9] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「メレシー、ムーンフォース!」

「キュイッ!」

メレシーは空中にエネルギーを集中させ、それは一筋の光線となってチルタリスを飲み込む。チルタリスは弱点を突かれてバトル場の床に落下した。

「チルタリス!」

「…チルッ…」

チルタリスはメガシンカが解けており、これ以上の戦闘は不可能だった。リーリエはチルタリスを回収し、大きく息をついた。

「…チルタリス、ありがとう…。今はゆっくり休んでください…」

リーリエはトリックルームを張られたこの状況をどう打破するか考えを巡らせる。メレシーにはそれなりにダメージを与えている。トリックルーム下ではライチのポケモンたちの方が先制しやすくなるのは明白だったが、リーリエにはそれを覆せるポケモンがいた。

「キュワワー、頼みますよ!」

「キュワッ!」

リーリエが繰り出したのはキュワワーだった。ライチはここはキュワワーに少しでもダメージを与えておこうと攻撃を指示する。しかし、トリックルームの張られた状況でも先に動いたのはキュワワーだった。

「メレシー、ムーンフォース!」

「キュワワー、ギガドレイン!」

「キュワッ!」

素早さで勝るはずのキュワワーがトリックルームの下で先制する。ギガドレインによりメレシーは弱点を突かれ、ダメージが限界を超える。
 ▼ 443 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/07/15 01:59:08 ID:6U6IKKIU [7/9] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「…ヒーリングシフト…!」

ライチはキュワワーの特性を言い当てながらメレシーを回収する。この特性があれば回復技を使用する限りキュワワーが先制してくるため、ライチも戦い方を変えることにした。

「ギガイアス、頼むわよ!」

「ギガッ!」

ライチがメレシーに替わって繰り出したのはギガイアスだった。ギガイアスが戦場に降りるとそのままバトル場内に砂嵐が吹きすさぶ。

「砂起こし…!」

バンギラスと同じ特性だ。ギガイアスは天候を砂嵐にすることで自分に有利な場を作ることができる。そして…

「キュワワー、ギガドレイン!」

「キュワ!!」

キュワワーはギガドレインでギガイアスから体力を吸い取る。しかし、弱点を突いたはずなのにギガイアスはびくともしなかった。

「くっ、砂嵐の効果ですか…!」

「ふふ…」

岩タイプのポケモンは天候が砂嵐のときに特殊防御力がアップする。

「それくらいの攻撃ではギガイアスは倒せないわよ。さあ、いくわよ、ギガイアス!」

ライチはここでZクリスタルを取り出す。そして、マッスルポーズのような舞を踊り、その力を引き出した。
 ▼ 444 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/07/15 01:59:49 ID:6U6IKKIU [8/9] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「ワールズエンドフォール!!」

「ギーガッ!!!」

ギガイアスは巨大な岩塊を空中に形成し、キュワワーを押し潰す。キュワワーは倒れ、ライチはじわりじわりと自分が主導権を握りつつあることを確信していた。

「キュワワー…」

まずい…。もうメガチルタリスもやられてしまっている…!Z技は残っていますが、使えるのはファイアローのみ…。

リーリエは自分がライチの手持ちへの有効打を少しずつ失いつつあることを自覚していた。しかし、ライチを倒さなければ先には進めないのだ。ヨウの待つあの場所へ。
リーリエにこのバトルの勝敗への不安がよぎり始めたそのとき、あのときの彼の声が聞こえた。

…僕は大丈夫…。リーリエが強くなって帰ってくるのを、ずっと待ってるから…

あのときの彼の言葉、そしてカントーにいる自分のもとへ届いたアローラの皆からの写真と応援の手紙。

そうですよ…。あのとき彼が言ったこと…。今度は私が現実にする番です…。今、私はそれができるところにいる。手を伸ばせば届くところにいる。今必死に手を伸ばすことができないなら、私はただの大馬鹿野郎です…!

リーリエは次のボールを手に取り、ライチの残りの手持ちに考えを巡らせる。

もしセキエイリーグとのエキシビションと同じメンバーなら、ギガイアスのあとにいるのはジーランスとディアンシー…。トリックルームはそろそろ時間切れのはず…。ならば…!

「ファイアロー!もう一度お願いします!!」

「アロ!!」

リーリエは再びファイアローを繰り出した。ライチを下すため、リーリエと彼女のポケモンたちの猛攻撃が今始まろうとしていた。
 ▼ 445 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/07/15 02:00:22 ID:6U6IKKIU [9/9] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
第49話はここまでです。
次回、ライチ戦の決着です。
それではまた。
 ▼ 446 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/07/17 10:26:41 ID:krpIW4uc [1/18] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
読んでくださっている皆様、いつもありがとうございます。
第50話ができましたので投稿します。
 ▼ 447 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/07/17 10:27:10 ID:krpIW4uc [2/18] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
Episode 50 鎧


「アロ!」

ファイアローがギガイアスに向かって身構える。リーリエはヒコウZを取り出し、その力を引き出す舞を踊った。

「ファイアロー、ファイナルダイブクラッシュ!!」

ヒコウZの力をまとい、ファイアローはギガイアスへ突撃する。しかし、ギガイアスはファイアローの攻撃を耐えた。

「くっ、耐えられましたか…!」

「ギガイアス、ストーンエッジ!」

「ギガッ!」

ファイアローにギガイアスが放つ岩石の刃が命中する。ファイアローは撃墜され、リーリエは素早くファイアローをボールに戻した。

「ファイアロー…。お疲れ様」

リーリエの残る手持ちはキュウコンとバンギラス。そして、ここでトリックルームの効果が切れた。

「キュウコン、行きなさい!」

「コンッ!」

キュウコンが戦場に現れると砂嵐が止み、戦場には霰が降り注ぐ。ギガイアスにはそれなりにダメージが蓄積しているはず。ここは一気に攻め込むべきだ。

「キュウコン、吹雪!」

「コンッ!!」

キュウコンは強烈な吹雪を起こし、ギガイアスはその中に飲まれる。ギガイアスはついに倒れ、ライチのポケモンも残り二体となる。
 ▼ 448 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/07/17 10:27:38 ID:krpIW4uc [3/18] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「ギガイアス、よくやったわ。ジーランス、行くわよ!」

「ジーラ!」

「ジーランス…」

リーリエは思った通りの展開になったと口角を少し上げる。キュウコンに攻撃を指示した。

「フリーズドライ!」

ジーランスにフリーズドライが襲いかかる。ジーランスは大ダメージを負い、キュウコンが優位に立ったかに見えた。

「よし!行けますよ、キュウコン!」

リーリエはバトル場の床に転がったジーランスを見てライチを押しきれると考える。キュウコンもジーランスを倒したかと思い、少しだけ注意を緩めた。そのときだった。

「ジーランス、諸刃の頭突き!」

「ジーラ!!」

突如ジーランスがキュウコンめがけて突撃してきたのだ。キュウコンは咄嗟に交わそうとしたが、ジーランスの攻撃が体をかすめ、キュウコンは回転しながら床に落ちた。

「キュウコン!」

「いい攻撃だった。けど、ジーランスは一撃ではやられないよ!」

ライチはキュウコンがまだ戦闘不能とはなっていないことに気づいていた。

「ジーランス、まだとどめは刺しきってないわ!滝登り!」

「ジーラ!」

ジーランスは全身に水をまとい、キュウコンを吹き飛ばす。キュウコンはなんとか立ち上がろうとするが、脚に力が入らなかった。
 ▼ 449 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/07/17 10:28:39 ID:krpIW4uc [4/18] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「キュウコン…!」

「……コン……」

霰が降り注ぐ中、キュウコンとリーリエの目が合う。リーリエはキュウコンはこれ以上戦闘不能と判断し、ボールに戻そうとした。そのときだった。

「……?」

「……え……?」

霰の降り注ぐ戦場に突如オーロラが発生する。ライチは突如戦場の空が宝石のような輝きに染められたことに目を奪われていた。

「…オーロラベール…。キュウコン…、あなた…」

リーリエはバンギラスの入ったボールを力強く握る。キュウコンは最後の力を振り絞って最後のポケモンに繋ごうとしたのだ。

「…バンギラス、キュウコンが最後にチャンスを残してくれました…。あとはあなただけ…。頼みますよ!!」

「ギラァ!!」

オーロラの輝く戦場にバンギラスが降り立つ。バンギラスの咆哮とともに戦場はオーロラと砂嵐が入り交じる異質な状況へと変化する。

「…バンギラス…!」

ライチは最後の最後でリーリエらしからぬポケモンが出てきたことに少し驚いていた。

「へえ、バンギラスとは、あなたのイメージに反してゴツいポケモンを繰り出してくるわね…」

「…ライチさんがそれを言いますか?バンギラス、もう後はない…。でも、あなたなら勝算がある…。行きますよ!」

「ギラァ!」

バンギラスがジーランスへ咆哮を上げたところで、ライチはジーランスへ攻撃を指示した。
 ▼ 450 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/07/17 10:29:11 ID:krpIW4uc [5/18] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「ジーランス、滝登り!」

ジーランスは全身に水をまとって突撃してくる。だが、リーリエはオーロラベールを盾に攻撃を受け止めるよう指示した。

「バンギラス、攻撃を受け止めて!」

「ギラ!」

バンギラスはオーロラベールを盾にジーランスを受け止める。ジーランスはバンギラスに捕らえられ、バタバタと暴れ始めた。

「噛み砕く!」

バンギラスの牙がジーランスに突き立てられる。そして、バンギラスはジーランスを乱暴に振り回し、そのままバトル場の床に投げ捨てた。

「…………」

ジーランスはぴくりとも動かなくなり、ライチはジーランスをボールに回収する。ついにライチも最後のポケモン。オーロラベールによりタフさに磨きをかけたバンギラスと、自分のディアンシーとどちらが勝るのか。

「……リーリエ、あなたは私の最後のポケモンを知っているはず…。出し惜しみなしで行くわ」

ライチはそう言いながら最後のボールを放った。

「ディア!」

リーリエの予想通り、ディアンシーが現れる。そして、ライチはメガストーンを取り出した。

「ディアンシー、メガシンカ!」

ディアンシーがメガディアンシーへと姿を変える。オーロラと砂嵐の中、宝石を身にまとった妖精と鎧をまとった暴獣が対峙する。
 ▼ 451 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/07/17 10:29:39 ID:krpIW4uc [6/18] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「ディアンシー、相手はかなりタフよ。相性有利でも油断しないで!」

「バンギラス、ディアンシーを倒せば私たちの勝利です!」

バンギラスとディアンシーが互いを見つめ合い、闘争本能を昂らせる。先に動いたのはディアンシーの方だった。

「ディアンシー、ムーンフォース!」

バンギラス目掛けて光線が降り注ぐ。しかし、砂嵐による特殊防御力の向上とキュウコンが自分に残したバトンにより、バンギラスはびくともしなかった。

「バンギラス、ストーンエッジ!」

「ギラァ!!」

バンギラスの攻撃がディアンシーの腹部に命中する。ディアンシーがバトル場の床に仰向けに倒れ、腹部を押さえているところにバンギラスが迫る。

「…!ディアンシー、その場から離れて!」

ディアンシーは攻撃をもらった場所が悪かったのか、動くことができない。ライチは仕方なくディアンシーに攻撃を指示した。

「ディアンシー、バンギラスを寄せ付けないで!ダイヤストーム!!」

「…………!!」

ディアンシーはバンギラスへと掌を向け、ダイヤモンドの嵐をぶつける。バンギラスは咄嗟に攻撃を防御したが、ダイヤストームの威力に後ずさった。ディアンシーはこの隙に体勢を立て直す。だが、バンギラスもなりふり構わずに反撃をしてきた。

「大文字!!」

体勢を立て直したディアンシーに炎が放たれる。効果は今一つであるものの、バンギラスとリーリエの執念とも言うべき攻撃にライチもディアンシーも鬼気迫るものを感じていた。

…リーリエ……。初めて会ったときのあなたとはもちろん、カントーのエキシビションで会ったときのあなたとも、今のあなたは違う…。いや、違わないんだ。ヨウと出会って、憧れた彼の側に行きたくて、がむしゃらに走り続けてきたのよね…

「ディアンシー、ムーンフォース!!」

「ディア!!」

ディアンシーは再びムーンフォースでバンギラスの弱点を突こうとする。しかし、リーリエは構わずにバンギラスを突撃させた。
 ▼ 452 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/07/17 10:30:31 ID:krpIW4uc [7/18] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「バンギラス!ここで決めますよ!ディアンシーに向かって距離を詰めて!」

バンギラスは凄まじい勢いで突進してくる。ディアンシーは攻撃を放つが、バンギラスの勢いは止まらなかった。

「…………!!」

「アイアンヘッド!!」

バンギラスは強烈な頭突きをディアンシーにぶちかます。ディアンシーは吹き飛ばされ、床に再び転がった。

「ディアンシー…!!」

ディアンシーは起き上がろうとしているが、岩、フェアリータイプの共通弱点となる攻撃を受けては簡単には立ち上がれなかった。

「…………」

リーリエとバンギラスはそのままディアンシーがまだ向かってこないかと警戒している。しかし、ディアンシーはついに力尽き、メガシンカが解ける。この瞬間、リーリエとバンギラスの勝利が確定した。

「…やった…!やりましたよ!バンギラス!」

「ギラ!!」

バンギラスも歓喜の咆哮を上げる。そのとき、砂嵐が止み、バトル場の天井を覆っていたオーロラも消え去った。
 ▼ 453 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/07/17 10:31:18 ID:krpIW4uc [8/18] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「…一念岩をも通す…とでも言ったところかしら。お見事よ、リーリエ。素敵なチームね。ディアンシーもお疲れ様」

「ライチさん、ありがとうございます!」

バンギラスと抱き合うリーリエはライチに向かって笑顔をはじけさせる。ライチはその様子を見ながらふーっとため息をついた。

…ヨウ、ミヅキ、ハウ、そしてリーリエ……。あの島巡りに関わった子たちは特別な何かで繋がっている……。それは四天王の力よりも強く、この場所で引き合うんでしょうね…

「二人目突破おめでとう。今回はカヒリが体調不良で代理を立ててるけど、その人もリーリエにとっては思い入れのある人になるんじゃないかしら」

「……?」

ライチはそれ以上の言及は避け、最後にリーリエにエールを送る。

「さあ、残る四天王は二人。…でも、あなたなら、いえ、あなたたちなら突破しちゃいそうね。頑張って」

ライチはそう言ってリーリエの肩をぽんぽんと叩く。リーリエはライチに向かって一礼すると、ライチの部屋を出ていった。
 ▼ 454 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/07/17 10:31:56 ID:krpIW4uc [9/18] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
第50話はここまでです。
次回からハラ戦へと移ります。
それではまた。
 ▼ 455 ガバイト@ガオガエンZ 21/07/17 20:44:34 ID:bdKQQlv. NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 456 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/07/17 22:48:39 ID:krpIW4uc [10/18] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
読んでくださっている皆様、いつもありがとうございます。
第51話ができましたので投稿します。
 ▼ 457 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/07/17 22:50:08 ID:krpIW4uc [11/18] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
Episode 51 少女との出会い


四天王、ハラはリーリエとの出会いに思いを巡らせていた。突如ククイの助手として現れた謎の少女。しまキングとして様々なことを経験してきた彼だが、リーリエとの出会いは今でも鮮烈に覚えている。初めて出会った彼女は自分やハウにも心を開いていなかった。いや、心を開こうとはしているのだろうが、何かが足枷となってそれができないような印象を受けた。

「…その彼女が、今やリーグへの切符を手に入れ、我々に立ち向かってくる…。なるほど、現実は小説よりも奇なりとは言いますが、まさしくドラマチックな展開ですな…」

そして、ハラは自分の部屋の扉の向こうから光が差し込んできたことに気づく。ハラは気分が高揚してくるのを自覚していた。

「……ハラさん……」

「…待っておりましたぞ、リーリエ殿。手厚いもてなしはできませぬがな」

ハラはそう言いながらニヤリと笑う。リーリエはその様子を見て少し緊張を強めた。

「…君との出会った日のことを思い出しておりました…。突如ククイから君のことを紹介されたときには驚いたものですぞ」

「…そうですよね…。ハラさんには本当にお世話になりました」

「…いやいや。わしなんかよりもククイ、ミヅキ殿、ハウ、…それから、ヨウ殿の方がリーリエ殿にとっては良くしてくれた人物ではないですかな?」

「……それは……」

リーリエは確かにハラにも世話になっているのだが、それでもハラの言う通り、ククイ、ミヅキ、ハウ、そしてヨウとの思い出の方が脳内に鮮明に焼き付いていた。

「今は世辞などはよいですぞ。思い出は嘘をつかないものですな」

ハラはそう言いながらふーっと息を吐く。リーリエは自分の胸に手を当ててみる。ハラの言う通り、思い出は嘘をつかないものだった。
 ▼ 458 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/07/17 22:50:51 ID:krpIW4uc [12/18] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「…さて、リーリエ殿。ここに着くまで誰を倒してきたか、教えていただけますかな?」

ハラは突然、これまで倒してきた四天王のことを尋ねる。

「ここまではアセロラさんとライチさんを破りました」

「ほう、そうなるとわしは三番目ですか…。カヒリ殿が今回は体調不良で代理を立てておりますが、その人物は君にとっても深い関わりのある人物ですぞ。まあ、ヨウ殿が推薦したのですがな」

「…ライチさんも同じようなことをおっしゃっていました…。代理の方とは一体…?」

「ふふ、それはわしを倒してからのお楽しみですぞ」

ハラはそう言うと、ゆっくりと位置につく。リーリエもハラの静かな闘志と自分がここに来たことを喜ぶ気持ちを感じながら位置についた。

「では、始めましょうか。四天王、ハラ!押して参りますぞ!!」

ハラとリーリエは互いに一体目のポケモンを繰り出す。ハラはハリテヤマ、リーリエはチルタリスという対面になる。

「ほう、チルタリスですか…。バトルツリーではやられましたぞ…」

…あのチルタリスはメガシンカしてくる…。ならば…!

「ハリテヤマ、ヘビーボンバー!」

「チルタリス、交代です!ヌオー!」

「ヌオ!」

リーリエはハラの裏をかいた。チルタリスをヌオーに交代し、ヌオーはハリテヤマの攻撃を受ける。ヌオーには鋼技のヘビーボンバーは効果は今一つ。加えて、リーリエはハラへの対策としてあるアイテムをヌオーに持たせていた。
 ▼ 459 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/07/17 22:51:33 ID:krpIW4uc [13/18] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「ドスコイ……?」

ハラはハリテヤマがダメージを受けたことに気づく。

「…!ハリテヤマ……?」

「ゴツゴツメットですよ。接触技の多い格闘ポケモンたちには有効な持ち物のはずです」

リーリエはそう言ってニヤリと笑みを見せる。ハラはリーリエが自分たちのことを知った上で対策を立ててきていることに感心していた。

「…!ハリテヤマ、インファイト!」

「ドスコイ!」

ハリテヤマはヌオーへとラッシュをかける。しかし、ヌオーはその攻撃をも耐えていた。

「ヌオー、自己再生!!」

ヌオーはハリテヤマから受けたダメージを回復する。ハラはリーリエが自分を攻略するための城塞を用意してきたことに感心していた。

「…なるほど…。なにやらハラハラしてきましたぞ…!!」

ハラはなんだか自分が挑戦者になった気分だった。エーテル財団で様々なポケモンに触れて知識を深め、そしてカントーでの修行を経て戦う力を身につけた少女。彼女はタフで弱点も少ないヌオーの特性をよく理解した戦い方をしていた。

「ヌオー、地ならし!」

「ヌオ!」

ヌオーは地ならしでハリテヤマを攻撃し、素早さをダウンさせる。そして、ハリテヤマがよろめいたその瞬間を見逃さなかった。
 ▼ 460 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/07/17 22:52:06 ID:krpIW4uc [14/18] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「今です!アクアテール!!」

ヌオーの渾身の尾の一撃がハリテヤマを捉える。インファイトにより防御力の下がったハリテヤマには大ダメージとなり、ハリテヤマは崩れ落ちた。

「よし!まずは先制点です!」

リーリエはハラを相手に先制点を奪ったことで小さくガッツポーズを見せる。ヌオーもリーリエに合わせて小さく腕を振っている。どうやらハリテヤマを倒したことで勢いに乗っているらしい。顔は相変わらずのほほんとしたままであるが。

「…ここは仕方ないですかな…。ルカリオ、頼みますぞ!」

「クワンッ!!」

「ルカリオ…?ハラさんが…?」

バトルツリーでのジャラランガに続きリーリエ見たことのない戦力を投じてくるハラ。リーリエはハラならばもっと重量級のパワフルなポケモンを使ってくるというイメージがあったため、少し驚いていた。

「わしには似合いませんかな?一応格闘タイプですぞ!」

ハラは冗談めかした口調で笑みを浮かべる。リーリエは何やら嫌な予感がした。しまキングの最年長者であるハラ。様々な戦い方を知っている彼はここでも曲者ぶりを発揮してきた。

「ルカリオ、いきますぞ!」

ハラはそう言って虹色に輝く宝石を取り出した。リーリエは驚いていた。ハラまでこんな手に出てくるとは思っていなかったからだ。

「ルカリオ、メガシンカ!!」

「クワンヌッ!!」
 ▼ 461 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/07/17 22:52:28 ID:krpIW4uc [15/18] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ルカリオはメガルカリオへと姿を変える。グラジオもメガルカリオを連れているが、ハラのメガルカリオが同じような戦い方をするとは限らない。

…まずはメガルカリオの機動力を削ぐ!

リーリエは攻撃を決意した。

「ヌオー、地ならし!!」

だが、ルカリオは空中へジャンプすると、その両腕にエネルギーを溜め始めた。

「ルカリオ!気合い玉ですぞ!!」

「クワンッ!!」

ハラのメガルカリオが気合い玉を放つ。ヌオーはそのあまりの威力に吹き飛ばされ、バトル場の床に転がった。

「危ない危ない…。なんとか倒せましたな…」

どうやらハラのメガルカリオは特殊攻撃を主体としているらしい。ハラはふーっと額の汗をぬぐい、リーリエに対して身構え直す。リーリエはハラがフェアリータイプの多い自分への対策としてこのポケモンを連れてきたのだとすぐに理解した。しかも、通常物理技主体の格闘ポケモンの中に特殊攻撃を得意とするポケモンを混じらせることで簡単には攻撃を受けさせない。しまキングたちの最年長者はどこまでも食えない男だった。
 ▼ 462 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/07/17 22:58:03 ID:krpIW4uc [16/18] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
第51話はここまでです。
それではまた。
 ▼ 463 ミュウツー@おおきなねっこ 21/07/17 23:01:35 ID:krpIW4uc [17/18] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
流れ星銀ですか、この犬
 ▼ 464 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/07/17 23:03:25 ID:krpIW4uc [18/18] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
>>463
ごめんなさい、誤爆しました
 ▼ 465 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/07/18 18:10:00 ID:OocYhsRQ [1/18] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
読んでくださっている皆様、いつもありがとうございます。
第52話ができましたので投稿します。
 ▼ 466 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/07/18 18:10:23 ID:OocYhsRQ [2/18] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
Episode 52 対策


リーリエがハラとのバトルを始めたその頃
メレメレ島、ハウオリシティのマラサダショップにハウとミヅキがやってきていた。二人の話題はもちろんリーリエのリーグ挑戦に関することだ。

「この新製品のマラサダ、おいしいねー」

「ほんとだね!二種類のクリームが合わさってめっちゃ濃厚…」

ハウとミヅキは新製品のマラサダを食べながらコーヒーを飲む。そして、ミヅキはふーっとため息をついた。

「…あー、四天王代理でもいいからリーリエとバトルしたかったなぁ…」

ミヅキは自分が四天王代理に選ばれなかったことを残念がっていた。ハウも少しだけその気持ちはわかった。

「…おれもリーリエとチームを組んだことはあるけど、対戦相手としてバトルしたことはないから、代理に選ばれないかなー、とはとは思ってたけどねー」

「まあ、仕方ないか…。リーリエのリーグ挑戦が終わったら私も野良試合でいいから挑んでみよっかな…。ヨウの奴、リーリエに負けないよね?」

「…どうだろ…。リーリエは強いよー。じーちゃんとクチナシさんとのバトルのとき、相方がリーリエじゃなかったらやばかったと思うしねー」

ミヅキはハウからバトルツリーでハラ&クチナシのタッグにリーリエと共に挑んだことを聞いていた。ハラが奥の手としてジャラランガを繰り出してきたが、リーリエがメガチルタリスを使ってうまく切り抜けたのだと。

「…リーリエがヨウの所にたどり着いたとして、どっちが勝つんだろうね…」

「おれも気になるー。でも、あの二人はきっと、どんな結果になろうとあの場所で全力でぶつかり合えれば本望なんじゃないかなー」

ハウはそう言ってマラサダを食べ進める。ミヅキもショップの外をぼんやりと眺め、リーリエが勝ち上がり、ヨウのもとへたどり着くことを祈っていた。
 ▼ 467 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/07/18 18:10:52 ID:OocYhsRQ [3/18] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「よし!やりましたぞ、ルカリオ!」

「クワン!」

ハラはヌオーを下したメガルカリオに声をかける。メガルカリオ。特性、適応力により格闘技と鋼技の威力がアップする。リーリエはここはその両方に強く出られるポケモンで挑むことにした。

「ファイアロー、頼みますよ!」

「アロ!」

ファイアローが羽ばたき、火の粉が散る。ハラにとってこのファイアローは大きな問題だった。ルカリオを除く彼の手持ちは皆ファイアローの飛行技で弱点を突かれる。そして、ファイアローには特性、疾風の翼という強力な武器がある。

…ここは耐えられるか勝負ですな…

ハラは腹を括る。リーリエは基本的に自分に相性有利な手持ちが多いので、よりシビアな読みが試されていた。

「ファイアロー、行きますよ!」

リーリエはためらわずにヒコウZを取り出す。そして、その力をファイアローへと注いだ。

「ファイナルダイブクラッシュ!!」

ハラは交代させる様子はない。リーリエは交代させるのではないかと読んでいたためこれは意外だったが、これはこれでルカリオには大ダメージが確定だ。

「…クワンッ…!」

「…!?」

ファイナルローの突撃にルカリオは体をひねってクリーンヒットを避ける。ダメージはあったものの、リーリエが思っていたよりもそれは遥かに小さかった。

「…波動を読む力ですか…!だけど!!」

ファイアローが反転して再びルカリオを捉える。リーリエは追撃を指示するつもりでいたが、ここでルカリオは反撃を仕掛けてきた。
 ▼ 468 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/07/18 18:11:51 ID:OocYhsRQ [4/18] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「ファイアロー!追い込みますよ!」

「ルカリオ、反撃ですぞ!ストーンエッジ!!」

「クワン!」

ルカリオはストーンエッジを放ち、ファイアローを攻撃する。ファイアローはストーンエッジを受けて力尽き、バトル場の床に落ちる。

「ストーンエッジがありましたか…!」

リーリエはファイアローをボールに戻しながら次のボールを構える。そして、リーリエはバンギラスを繰り出した。

「ギラァ!!」

バンギラスが咆哮を上げながら現れ、バトル場には砂嵐が吹き荒れる。ハラはバンギラスを見て、ルカリオにもう一度気合い玉を指示した。

「ルカリオ、気合い玉ですぞ!」

「クワン!!」

ルカリオが再び気合い玉を放つ。バンギラスには格闘技が非常に有効だ。ハラはこのままバンギラスを倒せると思っていた。

「…ギラァ!!」

しかし、バンギラスは咆哮とともに左腕を振るった。なんと、バンギラスはその腕の一振りで気合い玉をはじき、弾道をそらしたのだった。

「なんと!!」

「砂嵐の下でのバンギラスを甘く見ないでください!大文字!!」

反撃の炎がルカリオを襲う。ルカリオ炎の中で崩れ落ち、バンギラスは力業でルカリオを突破した。
 ▼ 469 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/07/18 18:12:14 ID:OocYhsRQ [5/18] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「ギラァ!!」

バンギラスはメガルカリオを倒し、咆哮を上げる。その様子を見ながらハラは感心したようにため息を漏らした。

「ふー…。リーリエ殿、いいポケモンを連れていますな」

「どうしても力業が必要なときは頼りになります。本当に出会えてよかったと思っていますから…」

バンギラスはリーリエにそう言われ、少し照れたように体を掻いた。

「ここは頼みますぞ、オコリザル!」

「キキィ!」

ハラの次のポケモンはオコリザルだった。スピードに優れるオコリザルで一気にバンギラスを仕留めるつもりだろう。

「オコリザル、インファイトですぞ!」

「キイッ!!」

オコリザルはバンギラスの懐に飛び込み!突き蹴りのラッシュを仕掛ける。バンギラスが倒れると、リーリエはバンギラスを労いながら回収した。

「バンギラス、お疲れ様。…ここらで仕掛けるとしましょうか…」

リーリエはここで再びチルタリスのボールを握る。

「チルタリス、行きますよ!」

「チルッ!!」

チルタリスが空中を舞うと、リーリエはすぐさまメガストーンを取り出した。オコリザルは恐らくメガチルタリスの弱点を突ける技を覚えていない。ならば強引に竜の舞を積み、そのまま一気に後続を掃討しようとリーリエは考えていた。
 ▼ 470 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/07/18 18:13:25 ID:OocYhsRQ [6/18] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「メガシンカ!!」

チルタリスはメガストーンの力を受け、その姿を変化させる。ハラは入道雲のようなその姿と、そこから感じるパワーに額に汗を浮かべた。

「…おお…!これは…!」

「ハラさん、一気に行かせてもらいますよ!竜の舞!!」

チルタリスは竜の舞を踊ろうとする。これを許せばハラの陣営は壊滅的なダメージを受けることは避けられない。それをわかっていたハラにはさらなる対策があった。

「…確かにここはチャンスだと思うでしょうな…。だが…!」

ハラの顔が険しくなり、オコリザルもそれにつられるように表情を引き締める。

「オコリザル、命がけ!!」

「キイイイ!!」

今度はリーリエの表情が険しくなる番だった。オコリザルは自分の残りの体力全てと引き換えにチルタリスを道連れにする。リーリエはメガチルタリスを潰されたことでハラのポケモンたちを一気に掃討するのは難しくなった。

「…オコリザル、申し訳ないですな…。しかし、メガチルタリスを野放しにしておけば一気にやられかねない…。よくやってくれましたぞ…」

ハラはそう言いながらオコリザルをボールに戻す。そして、次のボールを構えた。

「…なかなか苦しい戦いを強いてきますな、リーリエ殿。わしの方が挑戦者となった気分ですぞ…」

ハラはそう言いながらニョロボンを繰り出してくる。ハラの手持ちは残り三体、リーリエの手持ちは残り二体。数の上ではハラの方が有利だが自分が挑戦者というその言葉通りハラは一切気を緩めない。リーリエも残るキュウコンとキュワワーで本気のハラを相手に戦わなければならないのだ。リーリエは唇をきゅッと結び、キュウコンを繰り出した。
 ▼ 471 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/07/18 18:13:47 ID:OocYhsRQ [7/18] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「コンッ!!」

キュウコンが現れると、先ほどまでの砂嵐が止み、部屋の温度が下がる。そして、霰が降り始めた。

「キュウコン、オーロラベール!!」

「コン!!」

キュウコンはオーロラベールを張る。これでハラのポケモンからのダメージを軽減しながら戦うことができる。だが、ハラはその老獪さをここでもいかんなく発揮してきた。

「ニョロボン、行きますぞ!」

ハラはエスパーZを取り出し、ニョロボンへその力を送る。

「ニョロボン、催眠術!!」

「くっ…!」

キュウコンへニョロボンの催眠術が命中する。キュウコンが睡魔に襲われているその隙に、ハラは一気にリーリエたちを仕留めるべく技を指示した。

「ニョロボン、腹太鼓!!」

「ニョロ!!」

ニョロボンは自分の腹をドンドンと太鼓のように打ち鳴らし、攻撃力を限界まで高める。そして、Z技の効果で素早さもアップしているため、そのままニョロボンは追撃を仕掛けてきた。

「ニョロボン、毒突き!!」

「ニョロ!!」

腹太鼓で攻撃力を限界まで高めた上での毒突き。キュウコンはオーロラベールがあると言えども耐えられなかった。リーリエは腹を括る。自分の旅はこのキュウコンと、そして残りの手持ちであるキュワワーと共に始まった。ここは旅立ちのポケモンを信じる他なかった。
 ▼ 472 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/07/18 18:14:29 ID:OocYhsRQ [8/18] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「キュワワー、最後はあなたに託しますよ!」

「キュワ!!」

霰の降り注ぐ中キュワワーが戦闘体勢を取る。ニョロボンは再び毒突きを放とうと身構えたが、キュワワーはニョロボンを上回る速度で攻撃に出た。

「ドレインキッス!!」

「キュワ!!」

「ニョッ…!?」

ニョロボンはがくりと崩れ落ちた。ハラはキュワワーとの対面にごくりと唾を飲み込んだ。

「…わしもここは腹を括らねばなりませんな…。ケケンカニ、頼みますぞ!」

「ケケン!!」

ハラはケケンカニを繰り出す。リーリエの腹は決まっていた。オーロラベールを盾にドレインキッスで粘り込みを図る。

「キュワワー、瞑想!!」

「キュッ!!」

キュワワーは瞑想で特殊攻撃力を高める。そして、ケケンカニはそこにアイスハンマーで襲いかかった。

「ケケンカニ、アイスハンマー!!」

「ケケン!!」

ケケンカニのパワーはすさまじく、キュワワーはオーロラベールの上からでもケケンカニに吹き飛ばされてしまう。

「キュワワー!」

「…キュワ!!」

しかし、キュワワーは根性で立ち上がると、ケケンカニへと襲いかかった。
 ▼ 473 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/07/18 18:15:03 ID:OocYhsRQ [9/18] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「ドレインキッス!!」

ケケンカニは体力を吸われて力尽きる。ハラも最後のポケモンとなり、二人の緊張感もこれ以上ないほどに高まっていた。

「カイリキー、頼みますぞ!」

「セイヤ!」

ハラの最後のポケモンはカイリキーだった。リーリエはカイリキーの姿を確認すると、すぐさまキュワワーに攻撃を指示する。

「ドレインキッス!!」

「キュワ!!」

キュワワーはカイリキーからドレインキッスで体力を奪う。かなりのダメージだ。恐らく次のドレインキッスは耐えられない。しかし、ハラとカイリキーはそれをわかった上での攻撃を仕掛けてきた。

「カイリキー、爆裂パンチ!!」

「…セイヤッ!!」

カイリキーの爆裂パンチが炸裂する。キュワワーへのダメージそのものは大きくはなかったが、キュワワーは混乱し、隙を晒すことになってしまった。

「キュワワー!次の攻撃を決めれば勝ちです!ドレインキッス!!」

「キュ……!」

しかし、キュワワーは混乱により攻撃に出ることができない。その隙にハラとカイリキーは追撃を仕掛けてきた。

「カイリキー、バレットパンチ!!」

カイリキーの拳がキュワワーを捉える。オーロラベールがあるとはいえ、効果は抜群であるこの技はキュワワーにはかなり効いていた。
 ▼ 474 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/07/18 18:15:45 ID:OocYhsRQ [10/18] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「キュッ…!!」

「…セイヤ…!」

カイリキーも驚いていた。オーロラベールがあるとはいえ、この小さなポケモンはまだ倒れずに自分を見据えている。見上げた根性だと称賛を送りたい気分だった。

「カイリキー、キュワワーも長くはもちませんぞ!バレットパンチ!!」

カイリキーは再びバレットパンチでキュワワーに迫る。そして、キュワワーもそれに合わせるかのように混乱する頭に渇を入れてカイリキーへと向かっていった。
バレットパンチか、ドレインキッスか。カイリキーのたくましい体とキュワワーの小さな体が接触する。その刹那を制したのは…

「……セ…イヤ……」

カイリキーがガクッと膝をつき、バトル場の床にうつ伏せに倒れる。ヒーリングシフトの効果でなんとかキュワワーが先制したのだ。

「あ、危なかった……」

リーリエはへなへなとバトル場の床に座り込む。ハラはその様子を見て大きく息をついた。

「…ふー…。あと一歩でしたが、なかなかそれを詰めさせない…。リーリエ殿、いいバトルでしたぞ」

ハラはカイリキーを回収すると、キュワワーとリーリエへ歩み寄っていく。そして、キュワワーの頬を指先で撫で、リーリエ手を反対の手で取り、立ち上がらせた。

「…わしも全力で、できる限りのことはした…。それでも突破してしまうのだから、天晴れですぞ」

「…ハラさん…」

「…さあ、リーリエ殿の夢にまた一歩近づいたはず…。わしも応援していますぞ」

「…はい!ありがとうございます!」

リーリエはハラへと満面の笑みを見せる。ハラもまだ霰の降り注ぐバトル場で息を白くさせながらも、心の中は彼女とのバトルによってもたらされた熱と彼女の夢を応援する温もりで満たされていた。
 ▼ 475 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/07/18 18:16:34 ID:OocYhsRQ [11/18] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
第52話はここまでです。
次回から四天王の最後の一人との戦いとなります。
それではまた。
 ▼ 476 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/07/18 21:19:35 ID:OocYhsRQ [12/18] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
読んでくださっている皆様、いつもありがとうございます。
第53話ができましたので投稿します。
 ▼ 477 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/07/18 21:20:21 ID:OocYhsRQ [13/18] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
Episode 53 代理


「…皆、よくやってくれました…」

リーリエはハラとの戦いを終え、エントランスにて手持ちの回復を行っていた。皆さすがに疲れが見え始めている。歴代のチャンピオンたちも恐らく今の自分と同じ試練をくぐり抜け、玉座にたどり着いたのだろう。

「…あと一息です。皆、申し訳ないですが、頑張ってください…」

リーリエはそう言いながら手持ちをボールに収める。もう一息入れたら最後の四天王の部屋へ向かおう。残る四天王はカヒリの代理の人物だ。果たして誰が待ち受けているのだろう。

「ライチさんもハラさんも、代理の人は私と面識のある人物らしいことを言っていた…。一体誰が…」

リーリエはライチとハラの言葉を思い出しながら最後の四天王に思いを巡らせる。濃厚なのはやはりハウかミヅキのどちらかではないかと考える。二人ともかつて玉座にいたトレーナーであり、非常に腕が立つ。

「…待っているのがハウさんであっても、ミヅキさんであっても…、私たちは勝ってみせます…」

リーリエは自分自身を奮い立たせ、最後の四天王の部屋の扉を見つめる。そして、その部屋へとゆっくりと歩を進めていった。



メレメレ島、ククイの研究所。ヨウの母はリーリエが今日の挑戦者であると知り、ククイの研究所を訪れていた。

「アローラ、ククイ博士」

「すみません、ククイくんは出かけて…、あら、ヨウのママさん…」

そこにはククイの姿はなく、代わりに彼の妻、バーネットが現れた。
 ▼ 478 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/07/18 21:21:19 ID:OocYhsRQ [14/18] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
メレメレ島、ククイの研究所。ヨウの母はリーリエが今日の挑戦者であると知り、ククイの研究所を訪れていた。

「アローラ、ククイ博士」

「すみません、ククイくんは出かけて…、あら、ヨウのママさん…」

そこにはククイの姿はなく、代わりに彼の妻、バーネットが現れた。

「バーネット博士…」

「せっかくいらしたんです。お茶でもいかがですか?」

バーネットも誰かと話したかったのだろうか。突然現れたヨウの母にも嫌な顔をせず、家に招き入れようとした。ヨウの母もこの際彼女でもよいと考え、お言葉に甘えることにした。

「…今日、リーリエがアローラリーグに挑戦してますね…」

バーネットは紅茶の入ったカップを差し出し、切り出した。ヨウの母は礼を述べながらカップを受け取ると、小さなため息を漏らした。

「…ええ、リーリエちゃんには是非チャンピオンの間までたどり着いてほしいですね。ヨウも楽しみに…、いえ、あの子はこの時をずーっと待っていましたから…」

「…ヨウが…。そうですよね。あの二人は恋仲にありますし…」

「…それだけではないと思います。リーリエちゃんはヨウの島巡りを特別にした人…。そして、あの子は自分の島巡りの証をカントーで修行していたリーリエちゃんに送っていました。きっと、ヨウの中では終わっていなかったんだと思いますし、心は決まっていたのでしょう。自分の島巡りはリーリエちゃんと一緒でしか終わらせることはできない…と」

バーネットはそれを聞き、お茶を一口口に含んで小さく喉を鳴らしながら飲み込む。なんだかロマンティックだなと感じた。
 ▼ 479 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/07/18 21:22:00 ID:OocYhsRQ [15/18] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「…リーリエも、ヨウくんに出会えてよかったと思いますよ。ママさん、私たちがリーリエに出会ったときのことをお話ししましょうか」

バーネットはそう言うと、自分とククイ、そしてリーリエの出会いについて話し始める。
リーリエは研究所近くの砂浜に呆然とした状態で座り込んでいた。大きなドラムバッグを大事そうに抱え、うっすらと涙を流しながら。ククイとバーネットはただならぬ様子のリーリエに声をかけた。

「…君、一人かい?」

「………」

リーリエは声をかけたククイの方へとゆっくり顔を向ける。自分がなぜここにいるのかもいまひとつわかっていないようだった。

「…はい……」

力のない声でたった一言、それだけを返したリーリエ。バーネットも心配になり、リーリエを家に一旦連れていこうと考えた。



「…リーリエは、ほしぐもちゃんと呼ばれる謎のポケモンを連れていた…。今はヨウくんが連れているんですよね?ソルガレオに姿を変えて…」

「…ええ、とても大切にしていますよ。リーリエちゃんとあの子の絆ですから…」

ヨウの母は紅茶の入ったカップをじっと見つめる。液面が揺れ、茶葉の屑が中で踊っていた。

「…ママさん、私がこんなことを言うのもおかしいかもしれませんが、ヨウには感謝しているんです。彼がいなければ今のリーリエはない…。彼に会えなければきっと、リーリエはどこか暗く、塞ぎこんだままだったと思いますから…」

バーネットの言葉をヨウの母は静かに聞いていた。バーネットもヨウがリーリエを救ったことに感謝していると聞き、ヨウの母はルザミーネの言葉を思い出した。
 ▼ 480 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/07/18 21:22:40 ID:OocYhsRQ [16/18] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「…ヨウのことを、英雄だと言った人がいるんです…」

「……?」

「…ルザミーネさん…。リーリエちゃんのお母さんです。ヨウがシンオウにいたときに彼女が私のもとにやってきて、ヨウに何があったのか全てを話してくれたんです。そして、ヨウはリーリエちゃんだけでなく自分たち家族を救ってくれた英雄だと言いました」

「…そうなんですか…。確かに、リーリエから見たヨウはそう見えていたかもしれませんね…」

「…でも、ヨウだって一人で英雄になったわけではないと思うんです」

バーネットはカップを置き、ヨウの母の言葉に耳を傾ける。

「ヨウは確かにリーリエちゃんのために戦った…。でも、その前にやっぱりククイ博士とバーネット博士、ハラさん、ハウくん、ミヅキちゃんがリーリエちゃんを支えていたんですよね…。そして、ヨウもリーリエちゃんだけじゃなくて、自分と共に戦ってくれる皆がいたから戦えたんだと思います。…そして、どん底にいたリーリエちゃんを最初に拾い上げて支えてくれたククイ博士やバーネット博士も、ヨウと同じくらい称賛されてもおかしくないと思っています」

「…ママさん…」

バーネットは自分たちがそんな風に言われるとはと少し目頭を熱くした。ヨウの母もバーネットの様子を見ながら再びカップを口に運ぶ。

「…ククイ博士はお出かけでしたね…。またポケモンの技の研究でフィールドワークにでも?」

ヨウの母がそう言うと、バーネットは笑いながら首を横に振る。そして、クスッと笑いを漏らした。
 ▼ 481 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/07/18 21:23:43 ID:OocYhsRQ [17/18] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「…いいえ…。今日はちょっと特別な場所に。…この点もヨウに感謝しなくてはいけませんね…。私も初め話を聞いたときは、自分のことのように嬉しかったですから…」

「…?」

ヨウの母がククイの行き先について見当がつかないという顔をしていると、バーネットはその場所について話し始める。

「……その場所は……」



アローラリーグ、カヒリの部屋。今日はここにはカヒリはいない。カヒリの代理として選ばれたトレーナーがリーリエを待ち受けている。

「…一体誰が待っているのでしょう…。あっ…!!」

その人物はリーリエに背を向けていた。リーリエは思わず涙をこぼした。ヨウが発案し、他の四天王たちも異を唱えなかったというその人物。リーリエにとっては身近すぎて見落としていた人物だった。

「…今回、カヒリさんの代理としてヨウが推薦してくれてね…。リーリエと戦えるって聞いて、迷うことなく推薦を受けたよ」

「…まさかあなただったなんて…」

「ふふ…。僕もまさかこの場所で四天王として君を待ち受ける日が来るとは思わなかったよ…。ヨウに感謝だな。こんな場を用意してくれたんだから…」

そこでリーリエを待ち受けていたのは、白と緑のキャップをかぶり、白衣を着た男性だった。

「…リーリエ、ここまでよく来たね。僕も自分のことのように嬉しいぜ」

「…私もです…。ククイ博士…」

ヨウもずいぶんと粋なことを考えたものだとリーリエは思った。確かに彼ならばこの場に立ったとしても何ら不思議ではない。四天王代理、そしてリーリエがチャンピオンの間にたどり着くための最後の壁は、リーリエが家を出てから自分の身の世話をしてくれた恩師だった。
 ▼ 482 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/07/18 21:24:14 ID:OocYhsRQ [18/18] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
第53話はここまでです。
次回からリーリエVSククイとなります。
それではまた。
 ▼ 483 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/07/19 20:32:19 ID:z36wMQLk [1/7] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
読んでくださっている皆様、いつもありがとうございます。
第54話ができましたので投稿します。
 ▼ 484 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/07/19 20:33:23 ID:z36wMQLk [2/7] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
Episode 54 恩師との激突


「…結構時間が経ったな…。多分、今四人目くらいか…」

ヨウはチャンピオンの間で時間を計りながら呟いた。リーリエがどの順で四天王と戦っているのかはわからなかったが、ヨウはカヒリの代理としてククイを推薦したことに少し意地悪をしたかもしれないと感じていた。

「…ヨウ、カヒリさんの代理にククイ博士を推薦しようなんてよく考えついたロトね」

ロトムがそう言うと、ヨウはふーっとため息をついた。

「…ククイ博士は家を出たリーリエを保護した人…。ククイ博士に保護されなかったら今のリーリエがあり得たかはわからない…。それに、博士も楽しみにしてたと思うんだ。リーリエがトレーナーとして帰ってくるのを」

「…リーリエ、平常心で戦えるロトかな?」

「…その点については、少し意地悪をしたかもしれないなって思ってるんだ。ククイ博士が相手だと、リーリエはもしかしたらしり込みしたり、反対に前のめりになりすぎたりするようなことがあるかも…って」

ヨウは杞憂だろうとは思っていたが、リーリエにククイと平常心で戦うというのはなかなか難しいのではないかと感じていた。自分は島巡りを通じてリーリエにとっての特別になった。しかし、リーリエにとってククイはその前から特別な存在だったはずなのだ。そのククイをリーリエが超えるべき壁として配置したのはリーリエの心を乱すのではないかと感じていた。

「…きっと大丈夫ロト。ちなみに、ククイ博士に断られたときは誰を考えてたロト?」

「まあ、やっぱりミヅキかハウになったかなと思う」

ヨウの答えを聞き、ロトムは笑った。

「なら、きっと相手がククイ博士でなくても大差ないロト!リーリエにとって特別な人がたくさん関わってるのがこのリーグロト!」

「…そうだね。リーリエならきっと大丈夫…」

ヨウはそのときが来ることを感じながら待つ。快晴の空から降り注ぐ日差しは挑戦者の上ってくる階段を照らし続けていた。
 ▼ 485 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/07/19 20:35:43 ID:z36wMQLk [3/7] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「…よくここまで来たね、リーリエ。自分のことのように嬉しいぜ」

「…私もです…。ククイ博士…」

四天王、カヒリの代理として立てられた人物、それはリーグの創始者であり、家を出て途方に暮れていた自分を拾い上げてくれた恩師だった。

「リーリエ、カントーでジムリーダーたちを破ったその力、僕は一切疑っていない。君とポケモンとの絆、戦術、力…、その全てを僕たちにぶつけてくれ」

ククイはそう言ってニッと笑う。その顔を見たリーリエは思わず目頭が熱くなった。

「…言われなくてもそのつもりです」

リーリエはそう言うと、ひとつ目のモンスターボールを構える。ククイもそれに合わせてひとつ目のボールを手に取った。

「いくぜ、ルガルガン!!」

「ルガウ!!」

「キュワワー、頼みますよ!」

「キュワッ!!」

まずはリーリエはキュワワー、ククイはルガルガンという対面になった。リーリエはククイとヨウのバトルを思い出していた。ククイはルガルガンでステルスロックを撒き、そこから攻撃を仕掛けてくる。初手にファイアローの挑発を使うことも考えたが、ルガルガンにはアクセルロックがあるため下手にファイアローを差し向けることはできなかった。
 ▼ 486 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/07/19 20:36:18 ID:z36wMQLk [4/7] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ここはステルスロックは覚悟して戦うしかない…

リーリエはククイが連れているであろうメンバーを予測し、この後の展開ををシミュレートする。ククイの手持ちはおそらく、ルガルガン、ウォーグル、ジバコイル、ジュナイパー、ガオガエン、アシレーヌ。この戦いを制すればヨウのもとへ、彼との誓いの場所へとたどり着くのだ。負けるわけにはいかなかった。

「キュワワー、ギガドレイン!!」

まずは特性、ヒーリングシフトをひっさげたキュワワーが先制する。ルガルガンの弱点を突くが、ルガルガンは一撃では倒れなかった。

「ふふ、一撃ではやられないぜ!ステルスロック!!」

「ルガウ!!」

ルガルガンはリーリエの読み通りステルスロックを撒いてきた。交代の度にダメージを受けることになるので苦しくはなるが、これだけで勝敗を決するものではないとリーリエは気を引き締め直す。

「キュワワー、もう一度ギガドレイン!!」

「キュワッ!!」

キュワワーはもう一度ギガドレインを決める。ルガルガンが倒れ、まずはリーリエが一本先取する形となった。

「よし!キュワワー、その調子です!」

「キュワッ!」

キュワワーは空中をくるくると回りながら鳴き声を上げる。ククイはキュワワーを見ながら次のポケモンを繰り出してきた。

「やるね、リーリエ。なら、このポケモンはどうかな?」

「ジュナッ!」

ククイの二番手はジュナイパーだった。キュワワーは草技による搦め手も得意としている。草タイプのジュナイパーはそれを受け付けないため、キュワワーへの相性は比較的よいものと思われた。
 ▼ 487 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/07/19 20:36:38 ID:z36wMQLk [5/7] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「…ジュナイパーですか…」

ジュナイパーはキュワワーを見つめる。キュワワーもジュナイパーの鋭い視線に怯むことはなかった。

「キュワワー、ドレインキッス!」

リーリエはキュワワーで削り合いを挑むことにする。キュワワーからジュナイパーへのダメージはそう大きくはないが、回復しながらダメージを蓄積させることでジュナイパーにもそれなりのダメージを与えられるはずだ。

「影縫い!」

「ジュナッ!」

リーリエの予想通り、ジュナイパーは影縫いを使う。キュワワーは攻撃を受けたものの、耐えられないダメージではない。これでジュナイパーが交代しない限り、リーリエの覚悟した通りの削り合いとなるものと思われた。

…ここまでは予想通り…。あとはどこまで削れるか…。しかし、ここは一端ダメージを増やそうとするのも手ですね…

リーリエはここはドレインキッスのダメージを増やそうと考えた。

「キュワワー、瞑想!!」

「キュワ…」

キュワワーは瞑想により特殊攻撃力をアップさせる。これでジュナイパーをある程度追い込めるものとリーリエは思っていたが。だが…
 ▼ 488 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/07/19 20:37:06 ID:z36wMQLk [6/7] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「ジュナイパー、呪い!」

「…え…?」

「ジュナ…」

ジュナイパーはリーリエが予想していなかった技を使ってくる。ジュナイパーは自らの体力と引き換えにキュワワーに呪いをかけてきたのだ。

「くっ、でもジュナイパーの体力は大きく削られたはず…!キュワワー、ドレインキッスです!」

「キュワッ!!」

キュワワーは再びジュナイパーへと迫る。だが、ここからポケモンの技の研究者たる者の本領発揮だった。

「ジュナイパー、守る!」

ジュナイパーはシールドを張り、キュワワーの攻撃を防御する。そして、ジュナイパーはわずかながら体力を回復したように見えた。

「…何か持っている…。食べ残しですか…!」

「ふふ。技の研究者たる者、いろんなバリエーションを試したくなるのさ。羽休め!」

「ドレインキッス!」

一撃目よりもドレインキッスのダメージは上がっているものの、やはりジュナイパーは倒れない。ジュナイパーは羽休めで体力を回復し、さらにキュワワーを呪いが蝕んでいく。

「…ベストなタイミングでベストな技を選べるポケモンとトレーナーは最強の組み合わせ…。さあリーリエ、君たちのベストを見せてくれ」

「……!」

削り合いはキュワワーの得意とするところと思っていたが、どうやらククイはキュワワーに真っ向勝負を挑んできたらしい。リーリエは壁として立ちはだかる恩師を険しい目で見つめていた。
 ▼ 489 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/07/19 20:39:19 ID:z36wMQLk [7/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
第54話はここまでです。
ククイ戦は3話使う予定です。
それではまた。
 ▼ 490 タタッコ@すごいキズぐすり 21/07/19 22:46:19 ID:WS2E3Its NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
しえん!
 ▼ 491 ペロリーム@かいふくポケット 21/07/20 09:04:36 ID:RYGY9w5. NGネーム登録 NGID登録 報告
呪羽ジュナイパーさんだ…。
7世代って感じで、凄い好きです…。

支援!
 ▼ 492 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/07/22 19:57:07 ID:1egcuFbE [1/7] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
読んでくださっている皆様、いつもありがとうございます。
第55話ができましたので投稿します。
 ▼ 493 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/07/22 19:57:49 ID:1egcuFbE [2/7] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
Episode 55 瀬戸際



「………」

アローラリーグのチャンピオンの間で、ヨウは風の音に耳を澄ませていた。もしチャレンジャーが途中で敗北した場合、チャンピオンの間にもその旨のアナウンスが入るようになっている。

…きっとリーリエはここへ来る…。今度こそ僕はリーリエを裏切っちゃだめだ…。心を強く持て…

ハラ、ライチ、アセロラ、そしてククイ。どれも一筋縄ではいかない相手のはずだが、リーリエは恐らく最後の一人にたどり着いている。リーリエは最後の壁を破るのか、それとも跳ね返されるのか。ヨウは前者であることを願うばかりであった。



「くっ…!」

「よし!こちらも一本だ!」

ジュナイパーとキュワワーの削り合いはジュナイパーに軍配が上がった。影縫いで交代を封じ、呪いをかけて削る。ククイのジュナイパーの思わぬ戦法にキュワワーは屈することになり、リーリエは力尽きたキュワワーをボールに戻した。

場にはステルスロックがある…。ファイアロー、チルタリス、キュウコンは大きなダメージを負う…。ヌオーはステルスロックではさほどダメージを受けませんが、ジュナイパーへの有効打はない…。ならば…!

「バンギラス、行ってください!」

「ギラァ!!」

リーリエはバンギラスを繰り出した。バンギラスへステルスロックが命中するが、バンギラスはその岩を乱暴に振り払った。今回、ククイのジュナイパーはバンギラスへ一気にダメージを与えられる技を持っていない。ククイは現れたバンギラスを見て少し顔を険しくした。
 ▼ 494 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/07/22 19:58:20 ID:1egcuFbE [3/7] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「…!」

バンギラスはジュナイパーを鋭い目で見据える。ククイはここはバンギラスに呪いをかけ、後続のためにダメージを蓄積させやうと考えた。

「ジュナイパー、呪い!!」

「ジュナッ!」

バンギラスは呪いを受けるが、リーリエは怯むことなく反撃を指示する。

「バンギラス、大文字!」

「ギラァ!」

ジュナイパーへ大の字の炎が命中し、ジュナイパーが崩れ落ちる。

「ジュナイパー、よく戦った。次は君だ!」

ククイはジュナイパーを左手に持ったボールに戻すと、右手で別のボールを投げた。

「しゃるなっ!!」

ククイが繰り出してきたのはアシレーヌだった。リーリエはバンギラスで戦えるだけ戦おうと攻撃を指示する。

「ストーンエッジ!!」

「ギラァ!!」

バンギラスが岩の刃をアシレーヌめがけて飛ばす。アシレーヌはストーンエッジの直撃をくらい、吹き飛んだ。

「…しゃ…しゃるっ…!」

バトル場の床に倒れたアシレーヌをバンギラスが見下ろす。ククイはリーリエのバンギラスのパワーに驚いていた。
 ▼ 495 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/07/22 19:59:21 ID:1egcuFbE [4/7] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「…すごいなリーリエ…。もう君は僕の助手をしてた頃の君とは違う…。なんだろうな…。嬉しいはずなのに、ライバルが一人増えたような怖さみたいなものも感じる…」

アシレーヌは前足を踏ん張らせて身を起こす。ククイはアシレーヌがまだ戦えることを確認すると、Zクリスタルを取り出した。

「…リーリエ、これは君と君のポケモンへの敬意だ。その力に対抗するには、こちらも力で行かせてもらう!」

「…!バンギラス、Z技が来ます!」

「…!」

バンギラスはアシレーヌを見据え、身構える。そして、ククイはZクリスタルの力を引き出す舞を踊った。

「…しゃああ…」

リーリエはアシレーヌの様子がおかしいことに気づく。この技はスーパーアクアトルネードではない。アシレーヌは歌うような声と共に巨大な水のバルーンを形成した。

「これは…?」

「…海神のシンフォニア」

ククイが技の名を口にすると、バルーンが弾けて激流となり、バンギラスを飲み込む。砂嵐の下で特殊防御力が向上しているといえども、その威力は驚異的であった。

「バンギラス!」

バンギラスはバトル場の隅まで押し流され、柵にぶつかる。バンギラスはなんとか身を起こしたが、ジュナイパーから受けた呪いのダメージがここで襲いかかった。

「…ギ…ッ……」

ズシンと音を立ててバンギラスの巨体が横たわる。リーリエはバンギラスを労いながらボールへと戻した。
 ▼ 496 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/07/22 19:59:48 ID:1egcuFbE [5/7] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「…バンギラス、よく戦いました…」

リーリエはアシレーヌの様子を見る。ストーンエッジによりかなりのダメージを与えたはずだ。ここは先手を取って一気にダメージを与えておくべきだろう。

「…ファイアロー、頼みますよ!」

「アロ!!」

リーリエの次のポケモンはファイアローだった。ステルスロックのダメージは大きいが、ここは素早くアシレーヌを仕留めてしまおうと考えてのことだった。

「……アシレーヌ、交代だ!」

「!!」

ククイは何を考えたのか、アシレーヌを温存することにしたらしい。そして、次に出てきたポケモンはリーリエが最も仕留めておきたいと思っていたポケモンだった。

「ジジッ…!」

「…!ジバコイル…!」

リーリエはここはファイアローで弱点を突き、大ダメージを与えておこうと考える。ジバコイルは素早いポケモンではないので、ダメージさえ稼いでおけばヌオーやチルタリスに覚えさせている地面技で倒せるはずだ。

「ファイアロー、フレアドライブです!」

「アロッ!!」

ファイアローは全身に炎をまとい、自身が燃え盛る巨大な火の玉と化す。
 ▼ 497 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/07/22 20:00:08 ID:1egcuFbE [6/7] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ククイ博士、この先の展開をどう読んだのかはわかりませんが、ファイアローにジバコイルを差し向けたのは悪手です!

「行きなさい、ファイアロー!!」

ファイアローのファイアドライブがジバコイルに命中する。ジバコイルはなんとか耐えたようだが、もはや虫の息と言っても差し支えなかった。そして、ファイアローはステルスロックのダメージ、フレアドライブの反動ダメージ、砂嵐のダメージが嵩み、この一撃が最後の攻撃となってしまった。しかし、リーリエにとってはそれでも構わなかった。

「…ファイアロー、よく戦いました」

リーリエはファイアローをボールへと戻す。これでククイの残りのポケモンを掃討しやすくなったはずだ。リーリエは自分が有利になったと信じて疑わなかった。次のククイの技の指示を聞くまでは。

「ジバコイル、眠る!」

「…!!?」

「ジ………」

なんと、ククイはジバコイルの体力を回復させたのだ。そして、ジバコイルはどこからともなくカゴの実を取り出して眠りから覚める。ファイアローの決死の特攻劇をこうもあっさり覆されてはリーリエにとってはたまったものではなかった。

「…そんな…!」

「ふふ…、もう少し慎重になるべきだったね、リーリエ」

ククイはリーリエの慌てた顔を見てニヤリと笑う。リーリエがククイを下し、ヨウの待つ場所へたどり着くにはまだまだ試練を乗り越えねばならないようだった。
 ▼ 498 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/07/22 20:00:42 ID:1egcuFbE [7/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
第55話はここまでです。
次回ククイ戦の決着です。
それではまた。
 ▼ 499 ジュラルドン@レンブのみ 21/07/22 21:11:16 ID:LxaMDfAw NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
しえん!
 ▼ 500 ハギギシリ@ジュナイパーZ 21/07/22 22:35:08 ID:yBU24YIM NGネーム登録 NGID登録 報告
もうすぐ完結頑張って!

支援
 ▼ 501 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/07/23 07:21:48 ID:YyLI6i6k [1/26] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
読んでくださっている皆様、いつもありがとうございます。
第56話ができましたので投稿します。
 ▼ 502 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/07/23 07:22:46 ID:YyLI6i6k [2/26] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
Episode 56 太陽の待つ場所


眠る…!まさかそんな技を覚えさせていたなんて…!

ククイはファイアローの攻撃を誘い、リーリエはそれに乗ってしまった。よくわからないタイミングでアシレーヌを交代させる。ファイアローのメインウエポンはフレアドライブやブレイブバードなど反動を伴う技が多いことはククイもよくわかっていたのだ。自身がポケモンの知識が豊富な方だと自負していたリーリエだったが、バトルや戦術面においてはやはりククイに軍配が上がるのだろうとリーリエは感じ始めていた。

…だめ…。うろたえては…。でも…

一番倒したかったポケモンを使われて裏をかかれたことはリーリエの精神を少なからず揺さぶっていた。ステルスロックがなければ交代しながらの戦いを展開して粘り込むことが可能だが、リーリエのポケモンたちは交代すればするほどダメージが蓄積してしまう。まるで詰め将棋のようなククイの戦い方にリーリエは崖っぷちに立たされたような気分になっていた。



「…結構時間が立つな…」

ヨウは緊張した面持ちで過ぎ去っていく時間に思いを馳せていた。

この時間なら恐らく最後の一人だと思うけど…、リーリエは誰と戦っているんだろう…。けど…ここにたどり着こうと必死で戦っているのは間違いない…

「………」

そのとき、ラナキラマウンテンを吹き抜ける風の音が変わった。そして、自身のこれまでの戦いと、彼女のこれまでの戦いに思いを馳せる。ここで、ヨウは彼女が聞いているわけでもないのにヨウは彼女への言葉を口にしたのだ。

「…前に進もうとしているときは、神様は見放さないものなんだ。リーリエ…」



「……!?」

リーリエは辺りをキョロキョロと見回す。ククイは先ほどまで自分とジバコイルを見据えていたリーリエが突然周囲の様子をうかがうような仕草を見せたため驚いていた。
 ▼ 503 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/07/23 07:23:29 ID:YyLI6i6k [3/26] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「…リーリエ?どうかしたかい?」

「……いえ……」

リーリエは深呼吸をして再びククイとジバコイルを見据える。

…今のは一体…?ヨウさんの声が聞こえたような…

リーリエは不思議な感覚を覚えていた。ジバコイルの思わぬ回復によりピンチを迎えつつあるときにヨウの声が聞こえるなんて。しかし、そのことでリーリエは落ち着きを取り戻しつつあった。

…そうです…。ヨウさんが待っている…。ククイ博士が相手でも、私は前に進まなくちゃいけない…。それに…

…きっと、前に進もうとしているときは、神様は見放さないものですよね。ヨウさん…



リーリエはここからの戦いの組み立てを考える。まずはこのポケモンから行くべきだろう。

「ヌオー、ここは頼みますよ!」

「ヌオ!」

リーリエが繰り出したのはヌオーだった。ジバコイルはヌオーへの有効打を備えているとは考えにくい。その予想はどうやら当たっていたようで、ククイはジバコイルを一端交代させることにする。

「ジバコイル、戻ってくれ!アシレーヌ、もう一度頼むぞ!」

ククイは再びアシレーヌを繰り出してくる。リーリエはアシレーヌがある技を使ってくるのではないかと脳裏をよぎった。予想が外れれば自分は一気に不利になるが、ここは賭けだ。
 ▼ 504 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/07/23 07:23:48 ID:YyLI6i6k [4/26] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「アシレーヌ、エナジーボール!」

「ヌオー、交代です!チルタリス!」

「チルッ!」

リーリエはアシレーヌのエナジーボールに合わせてチルタリスを繰り出す。ステルスロックのダメージは大きかったが、ドラゴン、飛行タイプのチルタリスに草技のダメージは微々たるものだった。

「…チルタリスか…。アシレーヌ、ムーンフォース!」

「しゃるな…!」

ククイとアシレーヌはチルタリスの弱点を突き、一気にダメージを与えようとする。だが、リーリエとチルタリスはここで気迫の踏み込みを見せた。

「チルタリス、恩返し!」

リーリエはメガストーンを突き出しながら叫んだ。チルタリスは光をまとって姿を変化させながらアシレーヌへと突っ込む。アシレーヌはそのまばゆい光に視界を遮られ、ムーンフォースの発動が一瞬遅れてしまう。

「チルッ!!」

チルタリスの渾身の一撃がアシレーヌを襲う。アシレーヌは倒れ伏し、ククイの残りの手持ちはあと3体となった。

「…メガストーンまで用意してたのか…!」

ククイは空中を舞うメガチルタリスを見ながら笑みを見せる。ククイはリーリエとのバトルを心から楽しんでいる。そう言わんばかりの表情を見せていた。

「ジバコイル、もう一度頼むぞ!」

「ジジッ!」

ククイは再びジバコイルを繰り出してくる。メガチルタリスはドラゴン、フェアリータイプ。鋼タイプのジバコイルなら有利に戦えると思ったのだろう。しかし、そうは問屋が卸さないとリーリエは攻撃を仕掛ける。
 ▼ 505 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/07/23 07:24:16 ID:YyLI6i6k [5/26] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「チルタリス、地震です!」

「チルッ!」

チルタリスは地面に降り立ち、衝撃波を発生させる。ジバコイルは衝撃波をもろに受けてしまい、吹き飛ばされる。これにはジバコイルはかなりのダメージを受けた。

「このまま押しきる…!チルタリス、恩返し!」

リーリエはジバコイルを一気に仕留めんとチルタリスへ追撃を指示する。しかし、ククイのジバコイルも応戦してくる。

「ジバコイル、ラスターカノン!」

「ジッ…!」

ジバコイルは白銀の光線を放つ。その威力たるや凄まじく、メガチルタリスは迎撃されて床に落ちた。

「…チルタリス!」

「…チル…ッ…」

「…大丈夫…。これ以上無理をしないで…」

リーリエはダメージが限界を超えたチルタリスをボールに戻す。そして、ヌオーを再び戦場へ送り込んだ。

「ヌオ!」

ヌオーはステルスロックが当たろうとも平気な顔をしていた。そして、ククイはここは打って出るべきだと考え、ジバコイルで最後の攻撃に出た。

「ジバコイル、ラスターカノン!」

ヌオーはメガチルタリスと同様に白銀の光線に飲まれるが、ヌオーはすぐに反撃してきた。

「地ならし!」

「ヌオ!」

電気、鋼タイプの共通弱点となる地面技。ジバコイルはその2撃目には耐えられなかった。
 ▼ 506 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/07/23 07:24:47 ID:YyLI6i6k [6/26] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「ヌオー、よくやってくれました!」

「ヌオ!」

これでククイの残りの手持ちはウォーグルとガオガエンのはず。どちらも物理技主体のアタッカーだろう。ヌオーで粘り込んで疲弊させることができるはずだ。

「ウォーグル、頼むぜ!」

「ウォーグ!」

ククイはウォーグルを繰り出してきた。やはり最後のポケモンはガオガエンと見て間違いなさそうだ。ウォーグルの攻撃は接触技が多いはずだ。ゴツゴツメットを持ったヌオーならばゴリゴリ体力を削っていける。そして、ヌオーには自己再生がある。リーリエはヌオーの有利を信じて疑わなかった。

「ウォーグル、ブレイブバード!!」

「ウォーグッ!!」

ウォーグルのブレイブバードがヌオーを捉える。凄まじい威力だが、まだ耐えられないことはないはずだ。しかし、ここでリーリエにとっての誤算が、ククイにとっては幸運な出来事が発生した。

「…ヌオ…!」

「…!?ヌオー…!?」

ヌオーがふらふらとしだし、そのまま倒れたのだ。どうやら急所を捉えられたらしかった。

「ヌオー…!そんな…!」

これでリーリエは一転して大ピンチとなる。リーリエに残されたのはキュウコン。ウォーグルは問題なく倒せるだろうが、最後に控えるガオガエンを倒せるか。
リーリエの額に汗が浮かぶ。ここで自分は敗れるのか。せっかくここまで来たのに。いや、違う。まだ自分たちは敗れたわけではない。最後まで戦い抜くのだ。自分が憧れたトレーナーたちのように。
 ▼ 507 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/07/23 07:25:13 ID:YyLI6i6k [7/26] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
…そうです…。負けられないんです…。たとえククイ博士が相手でも…!私の太陽の待つ場所はもう目の前にあるのだから…!!

「…キュウコン、あとはもうあなただけです!頼みますよ!!」

「コンッ!!」

リーリエは最後のポケモン、キュウコンを戦場へ送り込む。宙をを舞うウォーグルにはブレイブバードの反動とゴツゴツメットによりかなりのダメージが蓄積しているはず。まずはあの鳥を叩き落とす。キュウコンが戦場へ降りると、ステルスロックがキュウコンに襲いかかる。キュウコンはダメージを受けたが、それにより闘争本能が刺激されたのかウォーグルを鋭い目で見据えた。そして、戦場に霰が降り注ぐ。

「雪降らしか…。ウォーグル、ブレイブバードだ!」

「させません!吹雪!!」

ウォーグルがブレイブバードで突撃体勢を取ろうとしたそのとき、キュウコンの起こした特大の吹雪がウォーグルをなぎ払った。バトル場の床は雪で真っ白に染まり、ウォーグルはダメージが限界に達し、バトル場の床へ落下してくる。

「ウォーグル、よく戦った。ガオガエン、最後は頼むぜ!!」

「ガウア!」

思った通り、ククイの最後のポケモンはガオガエンだった。互いにあとはないが、炎タイプのガオガエンの方がタイプ相性的には優勢であった。

「キュウコン、吹雪!」

「コンッ!」

キュウコンは再び渾身の吹雪を放つ。しかし、ガオガエンは思わぬ技で防御体勢をとったのだ。

「ガオガエン、フレアドライブ!炎をまとって吹雪のダメージを軽減しろ!」

「ガウ!」

ガオガエンは全身に炎をまとい、その熱で吹雪の自分に迫る威力を弱める。また、その熱によりガオガエンの足下の雪が溶け、水へと変わっていた。
 ▼ 508 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/07/23 07:25:43 ID:YyLI6i6k [8/26] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「…!」

「そのまま突っ込め!」

「ガウオ!」

ガオガエンはそのままキュウコンめがけて突撃する。キュウコンは体をひねって直撃は避けたものの、かなりのダメージを負ってしまった。

「…コンッ…!」

「キュウコン…!」

フレアドライブが直撃しなかったためかガオガエンの反動ダメージも大したことはなかった。ガオガエンはキュウコンへと振り向き、再び攻撃の体勢を取る。

…次は恐らく直撃する…。なんとか手は…

リーリエはここでガオガエンの足下の雪が溶けたことを思い出す。一か八か、やってみる価値はあるはずだ。

「ガオガエン、フレアドライブだ!」

「キュウコン、フリーズドライ!!ガオガエンの足下を狙って!」

ククイはリーリエがなぜフリーズドライを指示したのかわからなかった。しかし、ガオガエンが突撃しようとしたそのとき、リーリエの狙いが明らかになる。

「ガッ!?」

ガオガエンが突如足を滑らせて転倒した。リーリエは溶けた雪を再び凍らせ、アイスバーンを作り出してガオガエンの突撃を防いだのだ。

「何!?」

「今ですキュウコン!ガオガエンへ飛びかかって!」

「コンッ!!」

キュウコンはガオガエンへと飛びかかる。しかし、ガオガエンはうつ伏せに倒れた状態から素早く仰向けになり、その太い腕でキュウコンを捕まえた。
 ▼ 509 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/07/23 07:26:01 ID:YyLI6i6k [9/26] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「ガウ…!」

「コ…ン…ッ…」

ガオガエンはキュウコンの首と右前足を掴んでいた。キュウコンとリーリエの奇策には一瞬驚いたが、自分は簡単にはやられない。ガオガエンはキュウコンをそう言わんばかりの目で見つめていた。

「よし、よく捕まえた!ガオガエン!」

ククイも手に汗を握って興奮気味にまくし立てる。しかし、その後、この状況にはおよそ似つかわしくない、静かな少女の声が響いた。

「…もう勝負はつきましたよ、ガオガエン…」

リーリエの声を聞き、ガオガエンはキュウコンを見つめる。キュウコンもこれで勝負あったと言わんばかりの目をしていた。

「…絶対零度」

キュウコンの全身から放たれる強烈な冷気。ガオガエンの視界はその瞬間真っ白に染まった。
 ▼ 510 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/07/23 07:27:00 ID:YyLI6i6k [10/26] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
第56話はここまでです。
次回から最終決戦、ヨウVSリーリエの開始です。
それではまた。
 ▼ 511 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/07/23 10:47:26 ID:YyLI6i6k [11/26] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
読んでくださっている皆様、いつもありがとうございます。
第57話ができましたので投稿します。
 ▼ 512 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/07/23 10:47:53 ID:YyLI6i6k [12/26] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
Episode 57 7つ目のボール


キュウコンの身体からガオガエンの手が離れる。ガオガエンは仰向けのまま力尽き、その手はぱたりとバトル場の床に落ちた。

「…やった…!」

リーリエは緊張から解き放たれ、その場に膝をつく。キュウコンの攻撃によってもたらされた雪の上に膝をついたが、その冷たさも気にならなかった。

「…リーリエ…」

ククイはガオガエンをボールに戻し、リーリエに声をかけた。

「…ククイ博士…。私…」

ヨウの待つ場所への道は開けた。それだけでリーリエは目に涙を浮かべる。だが、ククイはリーリエの手を取って立ち上がらせると、ぽんぽんとリーリエの両肩を叩いた。

「…本当に強くなったね…。ポケモンとの絆、力、戦いの組み立て、咄嗟の判断…。君なら強くなるとは思っていたけど、予想をはるかに超えていた…」

「博士…。私…」

リーリエはククイに言いたいことがたくさんあった。これまでの礼、そして、この場所で戦えたことの喜び、その他にもいろいろ。だが、言葉は出てこなかった。いろいろな感情がバトルを終えるとないまぜになって、体の随所を刺激した。

「…言葉が出ないなら、無理をしなくていい。君の気持ちはわかっているつもりだ」

ククイの目にも涙が浮かんでいることにリーリエは気づいていた。リーリエは思わずククイに抱きついた。抱きついたまま嗚咽を漏らしながら泣いた。ククイも感極まったのか、リーリエをそのたくましい腕で抱きしめる。そして、リーリエの背中を優しく撫でた。
二人はそのまましばらく抱き合い、感情の昂りが収まるまで涙を流し続けていた。
 ▼ 513 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/07/23 10:48:37 ID:YyLI6i6k [13/26] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「…落ち着いたかい?リーリエ…」

「…博士こそ…」

ククイはリーリエの気持ちが落ち着いたのを確認すると、リーリエの身体を離した。リーリエはそのまま手持ちの回復を始める。ククイはその様子を見ながら彼女が自分の助手をしていた頃を思い出していた。

「…感情が少々昂っていても、見事な手際だね、リーリエ」

ククイもそう言いながら自分の手持ちの回復を始める。ポケモンの治療の手際、また、その際にポケモンたちをなだめることについてリーリエは助手の頃から自分よりも長けているとククイは感じていた。

「ルガッ…!」

「あ、ごめん、ルガルガン。染みたかい?」

ククイがルガルガンに傷薬をスプレーしていると、リーリエがそばにやって来た。

「博士、私に代わってください」

リーリエはそう言うと、ルガルガンの肩を撫でで落ち着かせる。それから、オボンの実を一つ取り出し、ルガルガンに食べさせた。

「ここからスプレーすると落ち着いて受けてくれますよ」

リーリエはそう言いながらルガルガンに傷薬をスプレーする。ルガルガンは少し染みるのだろうが、先ほどよりも落ち着いた様子で治療を受けていた。ククイはその様子を見ながらリーリエに向かって思い出話を始めた。

「…本当、なんだかヨウたちと島巡りをしていたときを思い出すよ。リーリエ、よくヨウたちのポケモンの手当てをしていたもんね」

ククイの言葉に、リーリエは一瞬手を止める。手当てを受けていたルガルガンはリーリエに甘えるようにリーリエの手に顔を寄せた。
 ▼ 514 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/07/23 10:49:16 ID:YyLI6i6k [14/26] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「ヨウが僕とのエキシビジョンの時に言ってたんだ。自分の島巡りはリーリエと共にあった。最後にヨウのアシレーヌがZアンコールを仕掛けてきたけど、それもリーリエから教わったことだって言ってたよ」

「…ヨウさん…」

ククイはそう言うと、ルガルガンの治療を引き継ぐ。

「さあ、リーリエ。チャンピオンの間に行くといい。ヨウは首を長くして待っていたはずだ。君とあの場所で戦うその時を」

「はい…!」

リーリエはそう言うと、ククイの部屋を出て行く。そして、ククイは黙ってリーリエを見送り、その姿が見えなくなるとため息をついた。

「…本当の出会いなど、一生に何度あるだろう?けど、その出会いをしたから君はここにいる。…最後の戦いだ。頑張れよ…」



チャンピオンの間、チャレンジャーが敗れたという知らせは入っていない。ならばそろそろ来るだろう。ヨウが挑戦者が上ってくる階段に耳を澄ませていると、コツコツと足音が聞こえた。ヨウはそれが誰のものがすぐにわかった。そして、ヨウは自分の腰についているボールに入っているポケモンを一斉に解き放つ。アシレーヌ、シャンデラ、ハリテヤマ、アブリボン、トゲデマル、フライゴン。皆リーリエと共に特別な島巡りをくぐり抜けた自慢のメンバーだ。

「…皆さんを出していてよいのですか?」

チャンピオンの間、アローラで太陽と月に一番近い場所。そこにやってきた少女は美しい金髪を風になびかせながら尋ねてきた。
 ▼ 515 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/07/23 10:50:03 ID:YyLI6i6k [15/26] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「…いいんだ。皆、君がここに来るのをその目で見たがっていたから」

リーリエはヨウの連れているポケモンたちを見渡す。彼が自分と共に島巡りをしていたとき、そして初代チャンピオンに就任した時のメンバーだ。

「…皆さんも、お変わりないようですね」

「ああ、僕だけじゃない。彼らもこの時を首を長くして待っていたから…」

アシレーヌが、シャンデラが、ハリテヤマが、アブリボンが、トゲデマルが、フライゴンが、皆リーリエを歓迎するような眼差しを向けている。そして、リーリエがともに戦ってきた仲間とバトルをしたいと気持ちを昂らせているのがよく伝わってきた。
ヨウは玉座から立ち上がると、ゆっくりとリーリエに歩み寄る。この場所で彼女を姿を見るだけで涙がこぼれそうだったが、まだそれには早かった。

「リーリエ、実は、このバトルには特別ゲストを招いているんだ」

「…特別ゲスト?」

ヨウはゆっくりと頷くと、ポケットの中から7つ目のボールを取り出した。そして、バトル場の隅に向かってそれを投げる。中から現れたのはソルガレオ、ほしぐもちゃんだった。

「…ほしぐもちゃん…?」

リーリエはほしぐもちゃんを見て目を丸くする。特別ゲストということはバトルに参加させるために連れてきたわけではないのだろうが、ヨウがこの場でほしぐもちゃんを連れてきた意図とは何なのだろうか。

「特別に持ち込みを許可してもらった…。…実は、ずっと、頭の片隅では考えていたんだ。リーリエからほしぐもちゃんを託されたときからずっと…。あのとき、リーリエは自分にほしぐもちゃんと冒険したり、いろんなトレーナーとバトルをするための力がないことを理由に僕にほしぐもちゃんを託した。でも、リーリエは今やポケモンリーグでも勝負できるトレーナーになった」

「ヨウさん…、まさか…」

リーリエはなんとなくヨウの考えていることがわかってしまった。
 ▼ 516 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/07/23 10:50:36 ID:YyLI6i6k [16/26] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「…ポケモントレーナーはポケモンのおやと呼ばれる…。ほしぐもちゃんにとって、僕とリーリエ、どちらがおやの方が幸せなんだろう…ってね…。このバトルをほしぐもちゃんに見守ってもらって、ほしぐもちゃんに決めてもらおうと思う。リーリエが日輪の祭壇で、僕たちとほしぐもちゃんのバトルを見守ってくれた時のように」

「…!!」

リーリエも思わずほしぐもちゃんに目を向けた。ヨウの目が少し潤んでいるのはわかっていた。そして、自分の視界も一瞬ぼやけ、リーリエは息を飲んで足を踏ん張らせた。

「リーリエ、このバトルは僕にとって、リーリエと共に挑んだ島巡りの本当の終わりだ。そして、きっと新たな一歩を踏み出すひとつの区切り…。この座にいる者の台詞としてはふさわしくないと思うけど、アローラチャンピオンの立場なんか関係なく、一人の島巡り挑戦者として僕はリーリエに挑みたいんだ」

ヨウの願い、このバトルに賭ける思い、リーリエはそれを聞き、静かに息を吸い、そして吐き出す。ラナキラマウンテンの冷たい空気が肺を満たすのを感じると共に、リーリエは身体の奥から燃え盛る炎のような闘志が沸き上がってくるのを感じていた。

「…ヨウさん、私にとって、ヨウさんたちとの島巡りは夢のような日々でした。私はヨウさんに出会えてよかった…。ううん、幸せなんです。ヨウさんの思いに負けないくらいの思いで、私もヨウさんにぶつかります」

リーリエがそう言うと、リーリエの腰のボールも一斉に開く。キュウコンが、キュワワーが、ヌオーが、ファイアローが、チルタリスが、バンギラスがヨウのポケモンたちと対峙する。

「…君の仲間たちか…。すごいポケモンたちだな…」

ヨウは一目でリーリエの仲間たちがどれほどの力を持っているかを見抜く。決して楽な戦いではないだろう。ヨウは自分のポケモンたちを、ほしぐもちゃんを除いてボールに戻すと、位置についた。リーリエもそれに倣い、自分のポケモンたちを一旦ボールに収めて位置につく。そして、ヨウは再びほしぐもちゃんに目を向けた。
 ▼ 517 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/07/23 10:50:53 ID:YyLI6i6k [17/26] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「ほしぐもちゃん、このバトルをよく見ていてほしい。君のおやは君が選んでいい。それが僕じゃなくても恨みはしないから」

「…ラリオ…」

ほしぐもちゃんは心配そうな顔でヨウとリーリエを見つめる。日輪の祭壇で、自分がアローラの世界でリーリエたちと一緒にいたいという意思を見せた時、リーリエは瞬時にその思いを汲んでくれた。そして、その結果リーリエはヨウに自分を託してカントーへ旅立っていった。寂しさはもちろんあった。リーリエのもとへ行きたいと願ったこともあった。しかし、いざ自分がこのバトルを終えた後、どちらと一緒にいたいのか決めろと言われると、なぜか足がすくむような思いがした。

「…いくよ、リーリエ…」

「…はい…」

ヨウとリーリエは互いに一つ目のボールを構える。そして、互いに呼吸を合わせると、そのまま一つ目のボールを同時に放った。
 ▼ 518 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/07/23 10:56:25 ID:YyLI6i6k [18/26] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
第57話はここまでです。
恐らくあと5話ほどで完結すると思います。

全ての章の最終決戦はほしぐもちゃんが見守る中ヨウとリーリエが戦うというのは第一章を始めた時から考えていたことでしたが、このバトルにたどり着けたことを嬉しく思います。
読んでくださっている皆様が私が始めた当初から付き合いいただいているなら、2年もの間お付き合いいただいているのですよね…。本当にありがとうございます。
ここまで2年もの時間を要しましたが、最後まで、もう少しだけお付き合いいただければ幸いです。
どうか見届けてください。
それではまた。
 ▼ 519 ブイゼル@かわらずのいし 21/07/23 12:36:22 ID:sbHYVEcs NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援!

どっちが勝つか
 ▼ 520 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/07/23 21:28:56 ID:YyLI6i6k [19/26] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
読んでくださっている皆様、いつもありがとうございます。
第58話ができましたので投稿します。
 ▼ 521 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/07/23 21:29:23 ID:YyLI6i6k [20/26] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
Episode 58 島巡りの終わり



「…ラリオ…」

ほしぐもちゃんは対峙する二人を見て声を上げる。ヨウとリーリエ。どちらも自分にとって非常に大きな影響のあった、そしてとても強く慕っている人物だ。その二人がこれから自分の目の前で激突する。そして、その後自分はどちらと一緒にいるかを選ぶことになる。
ほしぐもちゃんはリーリエを見つめる。エーテルパラダイスで衰弱していた自分を連れ出し、外の世界を教えてくれた人物。
次にヨウを見つめる。トレーナーとして少女と自分のために戦い続け、自分の進化後は自分の世話をしてくれた人物。
どちらを選ぶにしても、このバトルは自分が見届けなければならないバトルだった。かつてリーリエが、自分とヨウたちのバトルを見届けなければならないバトルだと言ったときのように。

「アブリボン、頼むぞ!」

「キュウコン、頼みます!」

ヨウはアブリボン、リーリエはキュウコンという対面となる。キュウコンの特性、雪降らしにより霰が降り始めた。
ヨウにとっては彼女と共に挑んだ島巡りの終わりとして、リーリエにとっては彼との誓いを果たす場所として、勝利への渇望よりも深い想いを胸に二人は対峙している。

「アブリボン、ムーンフォース!」

「ブリッ!」

「オーロラベール!!」

アブリボンが光を集中させたそのとき、空中にオーロラが発生する。そして、ムーンフォースの光はオーロラの防護に阻まれ、威力が減衰した。
 ▼ 522 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/07/23 21:30:00 ID:YyLI6i6k [21/26] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「オーロラベールか…!」

「速攻に長けるアブリボンにとってはあまり使われたくない技でしょう?私だって強くなったんです。あなたの隣に立つために!キュウコン、交代です!」

リーリエはオーロラベールを張り終えると、そのままキュウコンをボールに戻す。そして、リーリエはバンギラスを戦場へ送り込んだ。

「ギラアッ!!」

今度は天候が霰から砂嵐に代わる。バンギラスは岩、悪タイプ。フェアリー技で弱点を突くことは可能だが、砂嵐下での特殊防御力アップは侮れない。おそらくアブリボンは返り討ちに遭うだろう。

「アブリボン、ここは一旦撤退だ。とんぼ返り!」

「ブリ!」

アブリボンはバンギラスに体当たりし、その反動で撤退する。そして、ヨウは砂嵐下でもダメージを受けないフライゴンを繰り出した。

「フリャッ!!」

「バンギラス、かみ砕く!!」

バンギラスは大口を開けて突撃してくる。フライゴンは素早く上空に逃れ、攻撃をかわした。

「フライゴン、おまえの力を見せてやれ!翅を羽ばたかせてバンギラスを幻惑しろ!」

ヨウの指示でフライゴンは翅を羽ばたかせ、特殊な羽音を発生させる。まるで女性の歌声のように心地よいようで、それを聞いていると感覚が歪められるような気分にもなる。

「これは…!」

リーリエはフライゴンの生態を思い出す。フライゴンは砂嵐の中で不思議な羽音を響かせて獲物を幻惑し、狩りをするという生態がある。ヨウはバンギラスの起こした砂嵐を逆手に取り、フライゴンが有利に戦えるように指示をしているのだ。
 ▼ 523 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/07/23 21:30:34 ID:YyLI6i6k [22/26] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「ギラ…!」

バンギラスはフライゴンの羽音に幻惑され、周囲をきょろきょろとせわしなく見回している。このまま戦わせるのは得策ではなさそうだ。幸い、オーロラベールは張れているので交代際に攻撃をされてもダメージは軽減できる。

「…ここは出し惜しみなしで行きますか…」

リーリエは交代を決意する。持てる力、戦術、知識の全てをここにつぎ込むことを。

「フライゴン、一気にバンギラスを仕留めろ!馬鹿力!!」

「フリャ!!」

フライゴンはバンギラスを仕留めようと馬鹿力を使ってきた。フライゴンが上空から襲い掛かろうとしたその時、リーリエはバンギラスを交代させた。

「バンギラス、交代!チルタリス、頼みますよ!!」

「チルッ!!」

砂嵐の中、チルタリスが現れる。フライゴンの馬鹿力はチルタリスに命中したが、飛行タイプのチルタリスには大したダメージではなかった。

「チルタリス…!」

ヨウはリーリエとアーカラ島のキャプテンたちのバトルを思い出していた。リーリエはチルタリスナイトを所持している。ドラゴン、フェアリータイプのメガチルタリスにフライゴンは分が悪い。

「仕方ない…。フライゴン、とんぼ返り!」

「フリャッ!!」

フライゴンはとんぼ返りでチルタリスの体力を削りながら撤退する。そして、ヨウはトゲデマルを繰り出した。

「マッキュ!!」

現れたトゲデマルを見て、リーリエはここで仕掛けるべく積み技を指示した。
 ▼ 524 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/07/23 21:30:56 ID:YyLI6i6k [23/26] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「チルタリス、竜の舞!」

「チル!」

…メガシンカを使ってこない…!?

ヨウはリーリエがメガシンカを使わなかったことに驚いていた。しかし、積み技を使われた以上トゲデマルを簡単には引っ込められなくなった。

「チルタリス、地震!!」

チルタリスはバトル場の床に降り立つと、そのまま地震を起こす。トゲデマルは弾き飛ばされ、床に転がったが特性、頑丈の効果で一撃では倒れない。

「くッ…!トゲデマル、ほっぺすりすり!」

「マキュッ!!」

今度はトゲデマルの反撃の番だった。チルタリスに帯電した頬を当て、身体を麻痺させる。これでチルタリスのスピードは落ち、かなり攻撃を決めやすくなったはずだ。ここでオーロラベールの効果が切れる。ヨウは恐らくリーリエはメガシンカを使ってこないと考えた。

「トゲデマル、びりびりちくちく!」

「マキュッ!!」

トゲデマルは帯電したとげを逆立て、チルタリスへ突撃する。そして、リーリエはここでヨウが予想だにしなかった行動に出た。

「チルタリス、交代です!キュウコン!!」

「コンッ!!」

再び姿を現したのはキュウコンだった。ヨウは予想していなかった交代に思わず舌打ちをする。

「マキュッ…!!」

降り注ぐ霰はトゲデマルの残り僅かな体力を奪う。トゲデマルが倒れ、リーリエが一本先取する形となった。
 ▼ 525 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/07/23 21:31:24 ID:YyLI6i6k [24/26] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「…リーリエ…」

ヨウはリーリエの本気を見て気を引き締め直す。かつて自分が守っていた彼女とは違うのだとわかっていたはずなのに、心のどこかで思い出がその考えを否定していた。しかし、リーリエの戦い方は自分をよく知り、そして自分に勝つための最善とは何かをよく知っているトレーナーの戦い方であった。

「…ヨウさんとの思い出は私にとってかけがえのないもの…。でも、だからこそ、私にとって乗り越えたいものになった…。ヨウさんのことを想う度に、この場所で誓いを果たそうという思いは強くなりました…。ヨウさん、私はあなたという太陽に導かれてここまでたどり着いた…。私があなたのような意志の強さや、困難に絶対に屈しない心を持てたかはわかりません。でも、あなたに挑める力だけは身につけたつもりです」

ヨウはリーリエの言葉を聞き、ゆっくりと首を横に振った。

「…僕はそんな大それたもんじゃないよ…。僕だってリーリエがいなかったらこの場所にたどり着くことはなかったかもしれないんだから…」

「そうでしょうか…?ヨウさんなら私がいなくても、きっと島巡りを達成していたと思いますよ」

リーリエは自分が一本先取しているというのにヨウの方が力が上であるかのように、謙遜の言葉を口にする。だが、ヨウにはわかっていた。リーリエの力はもう自分たちに匹敵するものになっていることを。だから、リーリエには自分の持てる全てをつぎ込まなけれが勝つことはできない。自分が島巡りで、UB捕獲作戦で、その後の情けない時期も含めて得たものを全てリーリエにぶつける。ヨウはそう考え、次のボールを構えた。

「ハリテヤマ、頼むぞ!」

「ドスコイ!」

ヨウの次のポケモンはハリテヤマ。リーリエはここはキュウコンで再びオーロラベールを張り、後続へのバトンとしようと考えた。
 ▼ 526 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/07/23 21:31:59 ID:YyLI6i6k [25/26] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「キュウコン、オーロラベール!!」

「コン…!」

空中で光のカーテンが揺らめこうとしたその瞬間、ヨウは技の発生を妨害した。

「させるなハリテヤマ!バレットパンチ!!」

「ドスコイ!!」

ハリテヤマのバレットパンチがキュウコンを捕える。氷、フェアリータイプの共通弱点の技を受けてはキュウコンは耐えられなかった。

「よし!一本取り返したぞ!」

「ドスコイ!」

リーリエは倒れたキュウコンを回収する。そして、ヨウが挑んだハラの大試練を思い出していた。

「…フェアリー対策というわけですか…」

「リーリエの手持ちにはフェアリータイプが多いからね…。僕のハリテヤマがバレットパンチを使うところはリーリエは見たことがなかったはず。裏をかかないとリーリエには勝てないだろうと思って覚えさせて来たんだ」

リーリエはふーっと息を吐く。リーリエはなんだか自分が世界一と称賛したトレーナーから賛辞を贈られたようで嬉しい気持ちになった。

「ヨウさん…。私、バトルをしていてこんなに嬉しいのは初めてです…。かつてバトルを嫌っていたのが不思議なくらい…」

「それも、きっとリーリエが新しい世界に勇気をもって飛び込んだ結果だよ」

ヨウは穏やかに笑っていた。リーリエはその顔を見てさらに嬉しくなり、次のボールを投げた。

「ファイアロー、行きますよ!!」

「アロ!!」

「…!ファイアローか…」

格闘タイプには相性の悪い飛行タイプ。ヨウはリーリエを倒すためにはここからが本番だと、帽子を一旦脱ぎ、額の汗を軽く拭ってまた被り直した。
 ▼ 527 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/07/23 21:41:44 ID:YyLI6i6k [26/26] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
第58話はここまでです。
私はSMのゲーム本編で1000回防衛したらリーリエと戦えるというガセネタを一時期本気で信じていました。
ガセネタだと知ったときの絶望と言ったらもう、筆舌に尽くしがたかったですね。

そんな思いもあってこの物語を書き始めましたが、そんなこんなで最終決戦までたどり着けました。ヨウとリーリエ、軍配がどちらに上がるのか、そしてほしぐもちゃんはどちらを選ぶのか。
最後までお付き合いいただければと思います。
それではまた。
 ▼ 528 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/07/24 17:59:34 ID:FChQYZts [1/7] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
読んでくださっている皆様、いつもありがとうございます。
第59話ができましたので投稿します。
 ▼ 529 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/07/24 18:01:53 ID:FChQYZts [2/7] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
Episode 59 果たされる誓い



ほしぐもちゃんは目を奪われていた。ヨウとリーリエ、二人の一進一退とも言うべきバトルに。そして、二人のポケモンが技を繰り出す度に声が漏れそうになった。自分もウルトラビーストをはじめさまざまなポケモンと戦ってきたつもりだったが、ヨウの島巡りを達成したときのメンバーとリーリエが新たに得た仲間たちの全力のぶつかり合いは視線を釘付けにした。そして今、自分が師として慕っていたハリテヤマとリーリエのファイアローが対峙していた。



「ファイアロー…」

ファイアローが羽ばたく度、火の粉が散る。降り注ぐ霰にオレンジの炎が混じり、その美しいコントラストにヨウは少しだけ目を奪われる。ヨウはハリテヤマなら食い下がれるのではないかと考えるが、リーリエと彼女のこれまでの戦い方を見るにあまり希望的観測を抱かない方がよさそうだと考えを改める。

…トゲデマルがやられている今、簡単には退けないか…

ヨウはこのままハリテヤマで戦うことにする。そして、ハリテヤマがじりっと床を踏みしめ、攻撃に出ようとしたそのとき、リーリエはZクリスタルを取り出した。

「ファイアロー、行きますよ!」

「アロ!」

「Z技!?」

リーリエは飛行Zを使い、攻撃をしかけてくる。

「ファイナルダイブクラッシュ!」

「アロ!!」

上空からファイアローがロケットのような勢いで突っ込んでくる。ハリテヤマはそれを正面から受けて止めようとした。大きな掌でファイアローの翼を受け止めるが、ハリテヤマは攻撃の勢いで後ずさる。ハリテヤマはバトル場の周囲の柵にまで持っていかれたが、そこで踏みとどまった。
 ▼ 530 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/07/24 18:02:27 ID:FChQYZts [3/7] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「…そんな…!」

これにはリーリエは驚いていた。ダメージが全くないとは思えなかったが、ファイアロー渾身のファイナルダイブクラッシュを受け止められるなんて。ハリテヤマはかなり追い込まれているはずだが、そのままファイアローを鋭い目でにらみつける。ファイアローは思わず背筋が凍り付くような感覚を覚え、ハリテヤマから距離を取ろうとした。

「ファイアロー!ハリテヤマから離れて!」

「アロッ…!」

ファイアローはハリテヤマを振りほどくと、そのまま一旦距離を取ろうとする。しかし、ハリテヤマは最後の根性を振り絞り、ファイアローを逃がさなかった。

「ハリテヤマ、岩石封じ!!」

ハリテヤマから離脱しようとしたファイアローの目の前に岩石の雨が降り注ぎ、ファイアローを飲み込んだ。ファイアローは地面に落下し、なんとか身を起こすが、体力はもう残りわずかだった。

「…ドスコイ…」

ここでハリテヤマの体力も精神力も尽き、そのまま前のめりに倒れ伏す。ヨウは本当にハリテヤマには頭が下がる思いだった。

「ハリテヤマ…。ありがとう…。おまえにはいつも無理をさせてるな…」

ハリテヤマはファイナルダイブクラッシュを受けた時点でダメージそのものは限界に達していたのだろう。しかし、それでも自分たちのチームの勝利のために最後の一押しを繰り出してくれたのだ。

ヨウは2体を失った時点でこれからの戦いの組み立てを考える。ハリテヤマ、トゲデマルを失った今リーリエに対して先手先手で攻撃を仕掛け、そのまま押し切るしかない。リーリエの残りの手持ちは5体だが、もはや虫の息と言って差し支えないファイアロー、そして麻痺して機動力を削がれたチルタリス、そしてバンギラス、ヌオー、キュワワー。キュワワーが少し厄介ではあるが、勝負はできるはずだ。
 ▼ 531 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/07/24 18:03:03 ID:FChQYZts [4/7] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「ここは頼むぞ、シャンデラ!」

「シャンッ!!」

ヨウの次のポケモンはシャンデラだった。シャンデラもリーリエとこの場所で戦うことを最も楽しみにしていた一人だった。

「シャンデラ、シャドーボール!!」

「シャンッ!」

リーリエは交代しなかった。シャンデラのシャドーボールはファイアローに命中し、ファイアローは力尽きる。

「…ファイアロー、よく戦ってくれました…」

リーリエは次のボールを構え、シャンデラを見つめた。シャンデラ。かつて彼がヒトモシ、そしてランプラーであった頃、リーリエは彼とともに戦ったことがある。かつて自身の力の無さを嘆いていた彼はどこか自分と重なり、彼のことはどこか他人事ではないように感じていた。その彼も今やヨウのポケモンの中で最大の特殊攻撃力を持つ大砲となった。

…セオリー通りに行くならバンギラスかチルタリス…。でも鬼火を使われるとその後が苦しい…。ヌオーもタイプ相性的にはいいですが、ヨウさんのことです…。エナジーボールがあるのでは…

リーリエはシャンデラへの対処に苦慮していた。ヨウの残りのポケモンはシャンデラを除くとアシレーヌ、アブリボン、フライゴンだ。リーリエはここは搦め手を使ってシャンデラを崩せないか試してみることにした。

「…キュワワー、ここは頼みますよ!」

「キュワ!」

リーリエが繰り出してきたのはキュワワーだった。シャンデラへの有効打があるとは思えなかったが、ヨウはだからこそ警戒を強めた。ヨウはトゲデマル、ハリテヤマと物理技主体の2体を先に倒されてしまったため、圧倒的な特殊防御力を持つバンギラスをどう倒すかが鍵になる。うまくフライゴンと対面させるか火傷を負わせるかができればよいが、リーリエは簡単にはそれを許さないだろう。
 ▼ 532 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/07/24 18:03:28 ID:FChQYZts [5/7] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「キュワワー、宿り木の種!」

「キュワ!」

キュワワーはシャンデラに宿り木の種を植え付ける。どうやらリーリエはキュワワーの搦め手でシャンデラの体力を削り、後続へ繋げるつもりのようだ。

「させない!大文字だ!!」

ヨウはキュワワーの粘り込みを許すまいと大文字を指示する。大の字の炎がキュワワーを飲み込むが、キュワワーは耐えていた。

「耐えるか…!」

ここでシャンデラの体力を宿り木の種が吸い取る。キュワワーは体力を回復し、これからの戦闘に備えた。そして、リーリエはさらなる粘り込みを図ろうとする。

「キュワワー、瞑想です!」

キュワワーは瞑想を使い、特殊攻撃力と特殊防御力をアップさせる。シャンデラがもう一度大文字を撃ち込むも、キュワワーはまだ崩れなかった。

「ドレインキッス!!」

「キュワッ!!」

キュワワーはさらにドレインキッスでシャンデラから体力を奪う。ヨウは予想外のキュワワーの粘り腰に、Z技で一気に倒してしまおうと考える。

「シャンデラ、これ以上キュワワーを粘らせるな!いくぞ!」

ヨウは赤いZクリスタル、炎Zを取り出し、燃え盛る炎のような舞を踊る。

「ダイナミックフルフレイム!!」

「シャンッ!!」

シャンデラから放たれた爆炎がキュワワーを飲み込む。キュワワーは崩れ落ち、リーリエはキュワワーをボールに回収し、労った。
 ▼ 533 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/07/24 18:04:09 ID:FChQYZts [6/7] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
「…キュワワー、よくやってくれました…。あなたのがんばり、無駄にはしません…」

リーリエは次のボールを構える。そして、リーリエは再びチルタリスを送り込んだ。
既に霰の止んだ空をチルタリスは元気よく舞っていた。

「チルタリス…。…!麻痺が解けている…!」

ヨウはチルタリスにトゲデマルが仕掛けたほっぺすりすりの効果が見られなかったため、驚いていた。

「特性、自然回復ですよ。あそこでメガシンカさせなかった理由がこれです」

リーリエはトゲデマルにチルタリスを差し向けたとき、なぜメガシンカを使わなかったのか種明かしをする。単純なパワーならメガシンカした方が強力になるが、メガチルタリスになると特性が変化し、状態異常から回復できなくなる。リーリエはあのとき、ヨウならトゲデマルで状態異常を狙ってくると踏んでいたのだ。

「さあ、チルタリス!ここからは思う存分行きますよ!メガシンカ!!」

リーリエはついにメガストーンを取り出す。チルタリスの体が変化し、入道雲のような巨大な翼を広げた。

「くっ…!シャンデラ、鬼火だ!!」

「させません!チルタリス、シャンデラに地震です!!」

チルタリスは素早くシャンデラへキックを見舞って叩き落とし、そのまま地震を発生させた。シャンデラはそのまま地震の衝撃を受けて倒れ、ヨウはシャンデラをボールに戻しながらメガチルタリスを見つめた。決着の時が、そして、自分とリーリエの誓いが果たされる時が近づいてきている。その時、勝つのはどちらなのか。そして、ほしぐもちゃんが選ぶのはどちらなのか。一瞬の気の緩みも許さないリーリエの戦い方にヨウは手に汗を握り、次のボールを掴んだ。
 ▼ 534 ガルーラJr◆D7AV4ilbZg 21/07/24 18:05:00 ID:FChQYZts [7/7] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
第59話はここまでです。
次回、ヨウVSリーリエの決着です。
それではまた。
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