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【SS】ポケモン不思議のダンジョン 花の盗賊団

 ▼ 1 1◆J44kAZeDOM 17/03/27 23:18:48 ID:qk0Nxw9k NGネーム登録 NGID登録 wf 報告







プロローグ






 ▼ 129 1◆J44kAZeDOM 17/04/01 19:03:42 ID:gSqSiRdA [1/51] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告







4章 疑惑のデンジュモク






 ▼ 130 1◆J44kAZeDOM 17/04/01 19:04:12 ID:gSqSiRdA [2/51] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
コスモッグが消えて数日。

探索は続いていたし、その成果は芳しい物ではなかったが、僕には既に、予定が入っていた。

ジジーロンに話を聞くのだ。

アジトを伝える訳にも行かず、勝手にあそこをリアライズの情報送り先に指定してしまったが、大丈夫だっただろうか。

不安ではあったが、僕は、ジジーロンの家へと向かった。

残念ながら、リアライズに対し顔割れしているミミッキュはあの家にもう行けない。

けれど、表世界の拠点なんて、彼の家ぐらいしかないのだ。仕方があるまい。

僕はそう自らを納得させ、彼の家へと歩みを進めた。
 ▼ 131 1◆J44kAZeDOM 17/04/01 19:04:55 ID:gSqSiRdA [3/51] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ジジーロン宅にて、ジジーロンは誰かと話していた。

ハッと身構えるのは、盗賊生活で身に付いた悲しい性。

その誰かは、「あっ、この子が依頼主ですか?」とジジーロンに問い掛ける。依頼なんてした記憶がない僕は、へ、と短く問い掛けた。


ジジーロン「イワンコ、彼はワシの友達で、探偵の……」

ジュナイパー「ジュナイパーです。よろしくお願いします」

イワンコ「探偵なんて雇った覚えないですけど……」

ジュナイパー「大丈夫。直接の依頼主はジジーロンだから。君のために、凄く割り引いたとはいえお金出してくれたんだよ」

イワンコ「え? あ、ありがとうございます!」

ジジーロン「構わんよ。して、ミミッキュはどこかの?」

イワンコ「ああ、あいつちょっと今日は忙しいらしくて。僕だけで来ました」

ジジーロン「そうか。よろしく伝えといてくれ」

イワンコ「はい」


その後ジジーロンは、ジュナイパーに僕との出会いを語った。

ジュナイパーは「なるほど、だからいいポケモンと断言してたのか……」なんて納得している。
 ▼ 132 1◆J44kAZeDOM 17/04/01 19:06:14 ID:gSqSiRdA [4/51] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ジュナイパー「記憶喪失。その鍵を握るのが、ウルトラビースト……」

イワンコ「はい」

ジュナイパー「君は、どこまで知ってるの?」

イワンコ「えっと……」


僕は、知っている事をすべて話した。

サーカス団エクリプスが侵略を食い止める鍵を握る事。

日食の時に彼らは攻め込んでくるという事実。

しかし、彼らは意外とフレンドリーであり、侵略者という風には到底見えないという感想。


ジュナイパー「ウツロイドが意外と優しそうだったんだ」

イワンコ「だけじゃない、フェローチェも気品系お姫様かっこバトル脳って感じだったけどいて不快じゃなかったし、敵意がある感じでもなかった」

ジュナイパー「……あの赤い奴、乱暴だったけど、今会ったらどうなんだろ……」
 ▼ 133 1◆J44kAZeDOM 17/04/01 19:07:40 ID:gSqSiRdA [5/51] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
イワンコ「赤い奴?」

ジュナイパー「ああ、そうか説明してなかった。僕は、元サーカス団エクリプスのメンバー」

イワンコ「え」

ジュナイパー「言葉にするとひとつの物語になるぐらいの複雑な事情があって僕は妻と一緒に抜ける決心をしたんだけど、

       まあそれは何もウルトラビーストに関係ないから割愛させてもらうね。

       一度、僕が入ってすぐの頃、エクリプスはウルトラビーストの接近を食い止めるために公演をしたんだ。

       でもその時は、エクリプスが鍵を握ってるなんて誰も知らなかった。

       大昔からの伝承が、廃れちゃってたんだよね。親友の提案でサーカスをしたのが正解だったんだけど」

イワンコ「はあ、それで?」

ジュナイパー「その時に、ウルトラビーストに関してそのミリスの街のポケモンから聞いてる最中、襲われたんだよ、真っ赤なウルトラビーストに」
 ▼ 134 1◆J44kAZeDOM 17/04/01 19:08:55 ID:gSqSiRdA [6/51] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
イワンコ「そのビーストの特徴は?」

ジュナイパー「えっと……口が針みたいに尖ってて、凄い筋肉質だった」


そのウルトラビーストとは、まだ出会っていない。残念ながら、まだ上手くつながってはくれないようだった。


ジュナイパー「まだ、モクローだったなぁ、あの頃は」


懐かしむように彼は目を閉じる。

僕にはわからないような経験を、彼はして来たのだろう。今は探偵をしているという。

どうしてその道を辿ったのか。

パーツが上手くかみ合わず、不可思議な絵だけを見せる未完成のジグソーパズル。それが彼だ。


ジュナイパー「エクリプスの居場所……と言うより、エクリプスに所属してる親友の居場所は特定済み。

        ウルトラビーストの狙いが侵略その他こちらに不利な物なら、いつでもとは言えないが、封印自体は可能だ」

イワンコ「はぁ……。あっ、でもそうなると、こっちに来たウルトラビーストたちは……」

ジュナイパー「強制送還って事になるだろうね」

イワンコ「……でも、それじゃ駄目。僕の友達の、コスモッグってポケモンが、実はウルトラビーストらしいんだ」
 ▼ 135 1◆J44kAZeDOM 17/04/01 19:09:41 ID:gSqSiRdA [7/51] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ジュナイパー「……友達、ウルトラビースト?」

イワンコ「そうなんだ。だから、ただ封印するだけじゃ……」


今さらながらに思ってしまう。

僕は、彼と特に親しくした訳ではないし、最後の方は緊迫した関係のまま別れてしまった。

共に過ごした時間は、2週間足らず。それでも彼は、僕の友達であり、仲間なのだ。


イワンコ「……だけど、侵略が狙いなら、それは封じないといけない。

     わかってます。そりゃ、そうだ」

ジュナイパー「ここで気になるのは……やっぱり君だ、イワンコ。

       君というイレギュラーな存在が、この件に関して何かしらの鍵を握っているのか。

       記憶の謎は、ウルトラビーストにどう絡むのか」


僕は頭を振った。わからない。
 ▼ 136 1◆J44kAZeDOM 17/04/01 19:10:31 ID:gSqSiRdA [8/51] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ジュナイパー「だよね。わかるはずがない。記憶がなくて、わからないからこそ、僕に依頼して来てるんだから」

イワンコ「……とにかく、僕らにできる事と言えば、探す事ぐらいだ」

ジュナイパー「その通り。僕がエクリプスの場所を特定してる間に、少しでも捜索できればいいんだけど」

イワンコ「……頑張ります」

ジュナイパー「ところで、僕“ら”?」

イワンコ「え? あっ」


一瞬動揺を見せてしまう。慌てて言い繕った。


イワンコ「ミミッキュですよ。今はいないけど」

ジュナイパー「……何か隠し事してるんじゃないか?

       ウルトラビーストの一種と互角にバトルする程の仲間がいるというのに、そっちに関して一切の言及がないって」

イワンコ「……ミミッキュ、バトルが凄い強いんです。ばけのかわを駆使して、相手の攻撃をかわすかわす」

ジュナイパー「そう」


ジュナイパーは、一瞬疑いの目をこちらに向けた……ような気がした。

探偵。その第六感は、やはり目を瞠る物があるらしい。前脚の下が、汗で滲む。
 ▼ 137 1◆J44kAZeDOM 17/04/01 19:11:11 ID:gSqSiRdA [9/51] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ジュナイパーが、ふっと笑う。


ジュナイパー「ま、そんな事はどうでもいいや。僕の依頼主はジジーロン。

        そのジジーロンが君をいいポケモンだっていうんだし、話してて悪いポケモンに見えないのは事実。

        協力させてもらうよ」


心の中で、ほっと息を吐く。まだまだ、彼に関しては、わからない事ばかり。

加えて、冷静に考えてみると、彼が持つ知識は、既に知っていた事ばかりだ。

それでも、ウルトラビーストと接触を持った事のあるポケモンの協力を得られたのは大きかった。

そして、サーカス団エクリプスとのコネ。それを持てたのは、幸運としか言いようがない。


イワンコ「ありがとうございます!」


僕は深く頭を下げて、礼を言った。
 ▼ 138 1◆J44kAZeDOM 17/04/01 19:11:55 ID:gSqSiRdA [10/51] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
それから、僕は忘れていた事実を思い出し、言う。


イワンコ「そうだ、ジジーロンさん。探検隊リアライズってここに来ました?」

ジジーロン「ああ、いや知らぬが」


まだ来ていないのだろうか。ジジーロンは、疑問をその顔に浮かべている。

そんな中、ジュナイパーが言葉を紡ぐ。


ジュナイパー「ああ、最近盗賊を追っているっていう、あの」


僕は思わずギクリと身を震わせ、それから何事もなかった風を装い、続ける。


イワンコ「ええ、あのです。協力してくれる事になってるんですけど、情報があればここにって事にしちゃったんです。

     事後承諾になって申し訳ないんですけど」

ジジーロン「ほう! 構わんよ。こんな老いぼれの所でよければ、いつでも使ってもらっても」
 ▼ 139 1◆J44kAZeDOM 17/04/01 19:12:43 ID:gSqSiRdA [11/51] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ジュナイパー「リアライズが協力してくれるんだ」

イワンコ「ええ、まあ」


一瞬嫌な予感がする。

けれど、僕はそれを掴めず終わる。


ジュナイパー「なるほど。僕、君たち、それからリアライズ。3者でそれぞれウルトラビーストを追う訳だ。了解」

イワンコ「では、そういう事で、これからよろしくお願いします」


そう言うと、僕はそそくさと逃げ帰った。

なぜか、これ以上あそこにいると、僕が今盗賊であるという事実がバレそうな気がして、怖かった。
 ▼ 140 1◆J44kAZeDOM 17/04/01 19:13:26 ID:gSqSiRdA [12/51] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
一抹の不安を抱いたまま、僕はアジトへの道を辿る。

コスモッグがいないか、と捜しはしてみるものの、まあ、無理だろう。

きっと、僕だけじゃ足りない。

気付けば、空は夕闇が広がっていて、僕の吐き出すため息は黒の中に溶けて行った。

上弦の月が辺りを照らす。月の力を手に入れるかもしれないというコスモッグは、今、何を思っているのだろう。

特別な臭いは感じない。

辺りには、植物の臭いが充満するのみ。ビースト独特のあの臭いは、残念ながら、存在していなかった。

とぼとぼと、僕はアジトに帰り着く。

その日も結局、コスモッグは見付からず、僕たちは陰鬱な雰囲気の中夕食を済ませた。

あれ以来、心なしか会話も少なくなったような気がする。

サニーゴとヒドイデすら、その捕食関係に覇気がない。

……もっとも、明るく食べられようが、暗かろうが、あまり見たい物ではないのだけれど。
 ▼ 141 1◆J44kAZeDOM 17/04/01 19:14:10 ID:gSqSiRdA [13/51] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ラランテス「あー! みんな、そんな暗くなったって仕方ないだろう?! 元気だしな!」


そうやって声をあげるラランテスに、ミミッキュが小さく反応する。


ミミッキュ「そうは言っても……全然見付からないしコスモッグ」

ラランテス「だから捜してるんだろう? 腹が減ってちゃ何もできないよ!」

バクガメス「ラランテスの言う通りだ。とにかくみんな、食え。それとイワンコ」

イワンコ「はい」


そろそろ水を向けられるだろうなと予測していた僕は、慌てる事なく答えた。


イワンコ「ウルトラビーストにまつわる物語を聞かせてくれ、ですよね。でも、駄目です。あなたが調べた以上の情報“は”ない」
 ▼ 142 1◆J44kAZeDOM 17/04/01 19:15:15 ID:gSqSiRdA [14/51] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
バクガメス「は、か」

イワンコ「はい。元エクリプスのメンバーで、現在は探偵をやっているジュナイパーと知り合いました。

     協力してくれるそうです。ウルトラビースト捜し。

     まず、ジュナイパーはサーカス団エクリプスの場所を探るそうです。

     と言っても、心当たりはあるらしいんですけど」

バクガメス「上出来だ。味方は多いに越した事ないからな」


怒鳴り声を聞かずに済んで、ほっと嘆息する。

そうしていると、ミミッキュが問い掛けて来た。


ミミッキュ「ねえ、そっちの方面から、ウルトラビースト、見付かりそう?」

イワンコ「わからない。今は、まだ」


どこかのタイミングでまた、ジジーロンの家に行かないといけない。

ジュナイパーと情報を共有するためにも。
 ▼ 143 1◆J44kAZeDOM 17/04/01 19:16:22 ID:gSqSiRdA [15/51] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
夕食を終わらせて、僕とミミッキュは床に就く。

それから空を見上げ、ため息を吐いた。


ミミッキュ「コスモッグ、どうしてるんだろ……」


空いたベッドに、未だ慣れない。

短期間とは言え、僕は、この3匹で一緒に寝ていた。ここに来てから、ずっと。


ミミッキュ「ねえイワンコ。あんたさ、コスモッグの事、なんか知ってんの?」


唐突な疑問符。僕は、え、と彼女を振り向く。

事情はすべて説明したはずだ。だとすると、彼女はそれ以上の何かを疑っているのだろうか。


ミミッキュ「ウツロイド見てあんた動揺してたけど……ねえ、ウルトラビーストなんでしょ? 記憶の手掛かり。

      だったら、イワンコの過去に何かある」

イワンコ「それはわかってる事だろ」

ミミッキュ「……だよね。けど、心配で。ねえ、あんたってさ――

      誰かと本気でつながりたいって思った事、ある?」
 ▼ 144 1◆J44kAZeDOM 17/04/01 19:17:24 ID:gSqSiRdA [16/51] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
イワンコ「え?」


小さな疑問符に、彼女は声をあげた。


ミミッキュ「あんた、思い出そうともせず、探してばっかりなんだもの! もっと、こう、思い出そうと必死になってよ!

      手掛かりがなくったって、考えられるでしょ?!

      ……あたしも、考えてるけど、全然だから……」

イワンコ「どうしたの急に――」

ミミッキュ「知らない」


そう言って、彼女はこちらに背を向けて眠りに就いた。

どうしたのだろう。僕だって、真剣に考えてるし、それは彼女もわかってるはずなのだけれど。
 ▼ 145 1◆J44kAZeDOM 17/04/01 19:19:16 ID:gSqSiRdA [17/51] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告







――誰かと本気でつながりたいって思った事、ある?






 ▼ 146 1◆J44kAZeDOM 17/04/01 19:19:56 ID:gSqSiRdA [18/51] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
目を覚まし、それから今日も、捜索を再開する。

昨日のケンカなどなかったかのように、ミミッキュは普通に話し掛けて来た。

きっと、不安定なんだ。コスモッグがいなくなって、彼女は、相当に堪えている。


ミミッキュ「イワンコ、今日も捜そう」

イワンコ「だな。でもちょっと、バクガメスさんに聞いてからにしないか?」

ミミッキュ「何かわかったかって? まあ、ずっと本読んで、ミリスの伝説に関して調べてはいるらしいけど」

イワンコ「うん。だから、その結果を聞きに、ね」

ミミッキュ「それもそっか。やっぱり、わかってる事は多ければ多い程いいしね」
 ▼ 147 1◆J44kAZeDOM 17/04/01 19:21:00 ID:gSqSiRdA [19/51] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
バクガメス「アルセウス」

イワンコ「はい?」


尋ねた所、帰って来たのはその単語だった。

どこかで聞き覚えがある――と思っていると、解説が始まった。


バクガメス「創造神だ。けれど、今はもう、この世にいないらしいな。伝説では」

ミミッキュ「どうして? 関係あるんですか?」

バクガメス「あるかどうかはわからない。けどな、ビーストたちの世界の成り立ちも、遡ればそこに辿り着くんじゃねえかと思って。

      ビンゴだ。関連は、ありそうだぞ」

イワンコ「なんですか、それって」

バクガメス「詳しい事はわからんから言わん。もう少し詰めるためにも、今日は俺もUBを捜す。

      記憶の謎も、消えたコスモッグの謎も、全部、カギを握るのはUBだからな」

ミミッキュ「教えてください、途中でもいいから」


ミミッキュが即座に切り返す。バクガメスは、チラとそちらを見やった。
 ▼ 148 1◆J44kAZeDOM 17/04/01 19:21:44 ID:gSqSiRdA [20/51] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
緊張が覆う。そして、バクガメスはふっと息を吐くと、言った。


バクガメス「駄目だ」

ミミッキュ「なんで?!」


バクガメスは、敬語にうるさい。それを知っていてなお、彼女はタメで迫る。

バクガメスは、顔をしかめた。


それから、何を思ったのか、彼は、ニヤリと笑う。


バクガメス「上に納得できなくてもキチンと抗える、そういうの、いいと思うぜ。

      ひとつ言うとするなら、お前らに余計なバイアスを植え付けたくない。それだけだ。

      ウルトラビーストは、敵なのか否か。先入観は、何も見せてはくれない。幻想だけだ。その先にあるのは」

イワンコ「何か、そんな過去が?」

バクガメス「それはタブーだ。イワンコ、もういいだろ。捜しに行け、コスモッグを」


僕の発言は、どうやら甘めには見てくれないらしい。
 ▼ 149 1◆J44kAZeDOM 17/04/01 19:22:30 ID:gSqSiRdA [21/51] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
イワンコ「せめて、捜すヒントだけでも教えてください」

バクガメス「……ない。お前らは接触してるだろうが、俺はゼロだ。むしろお前らに聞きたいぐらいだ」

イワンコ「そうですか。わかりました。行こ、ミミッキュ」

ミミッキュ「だね」


頷き合って、それから僕たちは、アジトを飛び出していった。
 ▼ 150 1◆J44kAZeDOM 17/04/01 19:23:18 ID:gSqSiRdA [22/51] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
僕たちは、森の外へと出張って行く。

ミミッキュは顔の表情を変えてしまった。自分の能力で布に顔を浮かび上がらせると言うが、なかなかにない能力だろう。

変装にはうってつけだが、残念な事に結局ミミッキュである事自体を隠せてはいない。

けれどまあ、しないよりはマシだろうか。

僕は嗅覚を頼りに辺りを探る。ウルトラビーストの臭いが紛れ込まないか。コスモッグの臭いは、残念ながら覚えていないけれど。

そして、もし見付けても、僕たちの実力じゃ撃退されて終わりだ。

だから、結局は助けを呼ばなければならない。


ミミッキュ「――ちょっと聞いて来てよ。一応、あたしはお尋ね者だからヤバいし」

イワンコ「うん」


その辺を歩いているポケモンに、僕は声を掛けた。

変わったポケモン見なかった? と。

返答は、芳しいものではなかった。

肩を落とし――落とす肩もないけれど――街を歩く。
 ▼ 151 1◆J44kAZeDOM 17/04/01 19:23:49 ID:gSqSiRdA [23/51] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
後から合流して来たミミッキュは、お尋ね者なのにも関わらずあまりおどおどしていない。


ミミッキュ「むしろ平然としてればいいの。ミミッキュ、珍しいけどいなくはないし」

イワンコ「個体違いね。それを演出するための顔か」

ミミッキュ「まあね。あんま意味ないけど――」


その瞬間、悲鳴が聞こえた。

僕はミミッキュと顔を見合わせ、それから頷く。

何かあったのだ。もしかすると。

僕はその家、いや、レストランに立ち入った。


イワンコ「どうかしましたか?!」
 ▼ 152 1◆J44kAZeDOM 17/04/01 19:24:33 ID:gSqSiRdA [24/51] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
コック「ああ、どうしよう……食料を無駄にした……ただでさえ盗賊に狙われてメシ不足だってのに……」


申し訳ない。


イワンコ「無駄にしたって?」

コック「電気が止まったんだよ急に! 調理中で、ちょっとの火加減のミスが命取りだってのに……」

イワンコ「それは……ご愁傷様です」


とは言ったものの、停電か。

期待外れだ。ウルトラビーストの手掛かりがあるかもしれないと思っていただけあり、僕は正直気落ちした。
 ▼ 153 1◆J44kAZeDOM 17/04/01 19:25:31 ID:gSqSiRdA [25/51] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
イワンコ「停電だって。まあ、すぐ収まるでしょ。なんたって、電気タイプのポケモンが非常時には頑張ってくれそうだし」


外に出て、僕は彼女にそう言ったけれど、ミミッキュは考え込んでしまう。

そのように見える、というレベルでしかないのだが、確かに彼女は考え込んでいた。


ミミッキュ「ねえ、発電って、どうやってやってるのかな」

イワンコ「え? そりゃ、ポケモンがやってんじゃねえの……ん?」


僕も遅ればせながら、違和感に気付く。

停電になんて、なるのだろうか。そう簡単にはなるはずがないだろう。

なにせ、自らの体を用いて発電しているのだ。純粋にバテるような欠陥システムは使われていないだろうし、だとすると……


イワンコ「発電所が襲われた」

ミミッキュ「そうなるよね。捜しに行こ、ボスかバクガメスさんを」
 ▼ 154 1◆J44kAZeDOM 17/04/01 19:26:04 ID:gSqSiRdA [26/51] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
幸いな事に、2匹はすぐ見付かった。

同時に行動していたのだ。

嗅覚を活かし、彼らの臭いを辿ると、当然ながらそこにいた。


イワンコ「停電らしいです。発電所が襲われたかもしれない。

     関係してるかはわからない。けど、あたる価値はありそうだと思いませんか」

バクガメス「……停電、電気が止まったのか」

ミミッキュ「急ぎましょう! 発電所、どこですか?!」

バクガメス「着いて来いラランテス!」

ラランテス「わぁってるよ! 行くよ!」


そう言って2匹は、僕たちを置いて駆け出した。

え、と慌てて追いかける。
 ▼ 155 1◆J44kAZeDOM 17/04/01 19:26:50 ID:gSqSiRdA [27/51] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
イワンコ「ちょっと待って――」

バクガメス「来るな! お前らには、危険過ぎる」

ミミッキュ「だけど! コスモッグの手掛かりがあるとしたら? あたしも行かせてください!」

ラランテス「わかったよ! けど、自分の安全を一番に考えるように!」

バクガメス「おい!」


ラランテスに向かって彼は怒鳴る。

何バカな事言っているのだ。2匹で充分だろう。

それに対し、ラランテスは言い返す。


ラランテス「そうかい? あたいには、2匹とも、なかなかのセンスがあるように見えるけどね。

      危機察知能力の高いイワンコ、ばけのかわで攻撃を受け止め、その間に逃げおおせられるミミッキュ。

      もちろんあたいには及ばないにせよ、危険から離してるだけじゃ、あんたの目的も達成されないだろう?」

バクガメス「こいつらは違うだろ! ……とにかく、危険だ」


今、なんて言った? 目的?
 ▼ 156 1◆J44kAZeDOM 17/04/01 19:27:31 ID:gSqSiRdA [28/51] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ラランテス「だーかーら! 危険に対抗する能力はあるって言ってんだよ!

      それに、あたいを誰だと思ってるんだい?」

バクガメス「あーはいはい。ボスの仰せのままに」

イワンコ「あの、目的って――」

バクガメス「……お前には関係ない話だ」


そう言って、彼は前を向いて歩き始める。

僕はミミッキュと顔を見合わせた。彼女も、疑問符を頭の上に浮かべている。


ラランテス「置いてくよ! あんたたち!」

イワ・ミミ「あっ、はい!」


慌てて後を追う。
 ▼ 157 1◆J44kAZeDOM 17/04/01 19:28:14 ID:gSqSiRdA [29/51] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
発電所は、森を離れた、街の北部にある。

道中、発電システムに関してバクガメスからの解説があった。


バクガメス「あそこには、電気タイプの野生が集まって来る何かがあんだ。

      それに目を付けたお偉いさんが、そこで発せられる電気を街全体へ供給するシステムを作った。

      蓄電も容易だ。どうやってんのか、てんでわかんねえが、すげぇ技術を持ったポケモンもいるってこった」

ミミッキュ「野生が集まる? ねえ、それってまさか……」

バクガメス「そのまさかだ。発電所は、不思議のダンジョンさ」


不思議のダンジョンを発電所にしてしまうその根性が尊敬ものだ。

けれど、そこが襲われたとするならば。


バクガメス「記述によると、電気を放つウルトラビーストがいるらしい。

      そいつのせいでショートしたか、あるいは電気を奪っているのか……。

      可能性は、ゼロじゃない。ゼロじゃない以上、行くべきだ」
 ▼ 158 1◆J44kAZeDOM 17/04/01 19:29:08 ID:gSqSiRdA [30/51] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
そして、発電所……もといダンジョンの入口に到着した。

ガルーラ像が置いてある他、一般ポケモン立ち入り禁止の札も掲げられている。


ラランテス「さ、準備が出来次第行くよ。それとイワンコ」

イワンコ「はい?」

ラランテス「あんたの鼻は一級品。リーダーを務めてくれ」

イワンコ「はい?!」

ラランテス「なぁに! あたいが命を懸けて護ってやるから、安心しな! 危機回避能力を期待してるだけさ!」


そう直截的に言われるとそれはそれで傷付く。

けれど、実際ウルトラビーストと互角に張り合えるのは、ラランテスぐらいなものだ。

バクガメスは、どうだろうか。

ミミッキュは恐らく厳しいはずだ。僕も無理。


イワンコ「わかりました。骨は拾ってくださいよ」

ラランテス「ありがとね」
 ▼ 159 1◆J44kAZeDOM 17/04/01 19:29:57 ID:gSqSiRdA [31/51] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミミッキュ「だ、大丈夫?」

イワンコ「ま、ボスの強さは知ってるし。言った事を翻すキャラでもないし」

バクガメス「無駄口を叩くな」


ダンジョンの中を進んで行く。

順番は、僕、ラランテス、ミミッキュ、バクガメス。

いざとなったら後ろからラランテスが敵に向けて攻撃をしてくれる事になっている。

僕はだから、敵の臭いを察知し、場所を入れ替わるだけでいい。

いいのだけれど、なんとも複雑である。

しかし、まあ僕は、ウルトラビーストも臭いで捜し当てられる……はずだ。

コスモッグは無理だったが、ウツロイドもフェローチェにも、似たような臭いを感じた。

今度の奴はどうなのか、それともウルトラビーストですらない何かなのか。

ラランテスが、また敵を倒した。

鮮やかなリーフブレードに、僕は何も言えなかった。
 ▼ 160 1◆J44kAZeDOM 17/04/01 19:30:58 ID:gSqSiRdA [32/51] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ラランテス「どうだい? ウルトラビーストがいる気配とか、感じないかい?」

イワンコ「どうでしょう……ない……あっ!」

ミミッキュ「どうしたのイワンコ?!」

イワンコ「ウルトラビーストの臭いだ……」

バクガメス「臭い、か。なんも変わってねえような気がするが……イワンコの嗅覚は大概のポケモンより優れてるってこった」

ミミッキュ「臭いなんて感じないのは、あたしもです」

イワンコ「じゃ、僕だけなのか……。近いっ!」


唐突に、その臭いが強まる。

気のせいか、ぱちぱちと何かが爆ぜる音もする。


ラランテス「のようだね。あたいもなんか、聞こえるよ」

バクガメス「最奥部。戦うにはちょうどいいじゃねえか」

ミミッキュ「イワンコ、下がって。攻撃を受けるのは、得意だから」

イワンコ「わかった」


女子に隠れるのもどうかとは思うけれど、事実僕は無防備だ。ここは大人しく、影から隙を狙った方がいい。
 ▼ 161 1◆J44kAZeDOM 17/04/01 19:32:34 ID:gSqSiRdA [33/51] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
バクガメス「出て来いウルトラビースト! お前はもう包囲されている!」


バクガメスが声を張り上げ、ビーストを挑発する。

僕とミミッキュは彼の後ろに控えつつ、その様子を窺っていた。

ラランテスが追随して叫ぶ。


ラランテス「電気を奪うなんて、許された事じゃないよ!」


――ちなみに、僕たちは盗賊である。断じて警察ではない。


影から何者かが姿を現す。

黒い、コードのような体に、白い金平糖のような形の何かが頭に付随したフォルム。

そして、件のあの臭い。間違いない、ウルトラビーストだ。
 ▼ 162 1◆J44kAZeDOM 17/04/01 19:33:24 ID:gSqSiRdA [34/51] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
???「ったく、なんすか。こんな大量に電気あるじゃん。

   ちょっとぐらい分けてくれたってバチは当たんないすよね」

バクガメス「ちょっとじゃないのが問題なんだ。てめぇ、どんだけ街の奴らに迷惑掛けたかわかってんのか?!」

ラランテス「コスモッグについても聞かせてもらうよ!」

???「コスモッグ……お前らっ!」


そいつは、5本のコードを大地に突き刺し、頭のあれから電気を放出した。

バクガメスの硬い甲羅がそれを辛うじて弾き、僕とミミッキュはそれに守られた。

被弾したラランテスはしかし、4匹の中から誰よりも早く立ち上がり、そして飛びかかった。
 ▼ 163 1◆J44kAZeDOM 17/04/01 19:34:25 ID:gSqSiRdA [35/51] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
???「なっ! 早っ!」

ラランテス「いきなり電撃は卑怯じゃないかい?!」


そう叫んで、ラランテスはその鎌でそいつに斬りかかる。

それはラランテスめがけて電気の攻撃を放出した。

ラランテスの顔が苦悶に歪み、けれどそのまま攻撃を決めた。


ラランテス「……上手いね。ダメージを逃がしやがった」


何があったのかはわからないが、そう言うからにはそうなのだろう。


バクガメス「援護するラランテス!」


バクガメスが放つ『かえんほうしゃ』は、確かにそいつに届く。が、いかんせん、バクガメスは鈍足が過ぎる。

そいつはコードを地面から引き抜くと、寸前で回避してみせた。

その隙を狙い、僕は駆け出す。ミミッキュも一緒だ。

そしてそのまま僕はふいうち、ミミッキュはかげうちを繰り出す。
 ▼ 164 1◆J44kAZeDOM 17/04/01 19:35:13 ID:gSqSiRdA [36/51] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
それを見たそいつはコードを地面に突き刺す。

僕たちは攻撃を決めると――コードが衝撃を吸収したのか、感覚はあまりなかった――慌てて戻って行く。

もともと、そういう技だ。ある程度の射程がある。

そのお陰で、電撃の攻撃は大打撃にならなかった。けれど、それでも深手は負った。


イワンコ「うぐっ!」

ミミッキュ「イワンコっ!」


ばけのかわが全ての攻撃を受け止めたお陰で、ミミッキュは無傷だ。ただ、頭部がだらしなくこてっと倒れている。

ラランテス、バクガメスはそいつを見据えていた。


バクガメス「くらえっ!」


彼の頭部へ向けた攻撃を、そいつは回避する。
 ▼ 165 1◆J44kAZeDOM 17/04/01 19:35:57 ID:gSqSiRdA [37/51] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ラランテス「それから敵は体を5本地面に突き刺しそこから電気を吸収そして――

 ???「うるさいっすねぇ!」

      放出。こいつの攻撃のトリガーは地面に体を突き差す事ででもそうしていると敵の攻撃を回避できないだからその抜き差しの速度をあげて対処するつまるところこいつの生命線はスピードと――

 バクガメス「こんにゃろ……」

      足だよバクガメス! 足を狙うんだっ! 足さえ止めればもう何も怖くない!」

バクガメス「おうよっ!」


炎が噴き出し、そいつがコードを抜いた、その瞬間に直撃した。

最後まで地面に残るのは、足だ。末端部は、確かに狙い目だろう。

1本の足が焼け焦げていた。


???「うぐうっ?!」
 ▼ 166 1◆J44kAZeDOM 17/04/01 19:36:48 ID:gSqSiRdA [38/51] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
イワンコ「今です!」

ラランテス「言われなくとも!」


僕が叫ぶ。ラランテスがそれに従い、跳んだ。

その鎌を振りかざし、1本に叩き付ける。地面と鎌で挟まれたその腕が、妙な音を立てる。


ラランテス「コスモッグに関して、聞かせてもらうよ」


???「どうやら形成不利っぽいっすね。しゃーなし。降参っす。

   コスモッグの何を知りたいんすか?」

ラランテス「あんたらウルトラビーストの狙いだよ。どうしてこっちに来た」

???「コスモッグじゃ……」

バクガメス「それもだ。答えろ」

???「えー! メシ食ってるとこに突撃されて、こんな扱いっすか?!」

バクガメス「そのメシの量が問題なんだ! 街中が電気切れで困ってるんだぞ!」

???「あー、それはすまんっす。もう、腹減って、腹減って。気付いたらここでこうやって贅沢に食べちまって」
 ▼ 167 1◆J44kAZeDOM 17/04/01 19:37:22 ID:gSqSiRdA [39/51] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
バクガメス「まずお前、種族はなんだ」

???→デンジュモク「デンジュモクっす。ウルトラビーストの」


どことなくチャラい彼の名は、デンジュモクらしい。

彼はコードの体をくねらせ、それからラランテスの鎌から抜け出した。


デンジュモク「あらよっと。とりあえず、電気は返します」

バクガメス「いや、この戦いで放出された分で充分だ。後は勝手に蓄えられるしな」

デンジュモク「そっすか。よかったー」


安堵した声を出したデンジュモクに対し、ラランテスが鋭く言い放った。


ラランテス「地面から吸い取った分を放ってただけでもかい?」


ギクッ! と目に見える程動揺したデンジュモク。

彼は大人しく、電気を放出して行った。
 ▼ 168 1◆J44kAZeDOM 17/04/01 19:37:55 ID:gSqSiRdA [40/51] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
デンジュモク「あー……どうすりゃいいんすか、俺のメシ……」

バクガメス「リンゴだ、食うか?」

デンジュモク「いや、電気が欲しいっす……」

バクガメス「ポケマメだ、食え」

デンジュモク「ん? ……それ、旨そうっすね」


ポケマメと言われたそれの臭いを嗅ぐと、それだけで気が遠くなりそうだった。

あまり強くはない臭いであるが、少し意識した途端余りのかぐわしさに興奮する。

口の中によだれが溜まっていたのを、慌てて飲み下した。

ポケマメ、いつかは食べてみたいものだ。


ミミッキュ「何あのおいしそうなマメ……」

イワンコ「ホントだよね……」

デンジュモク「うっまーーー! この世界こんなうめえもんがあるとか、アクジのおっさんにも教えたらねえと!」
 ▼ 169 1◆J44kAZeDOM 17/04/01 19:38:39 ID:gSqSiRdA [41/51] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ラランテス「アクジのおっさん?」

デンジュモク「ああ、ウルトラビーストは、8種類いて、今こっちには、1種を除いた7種各1匹が来てるんす。

       俺も、アクジのおっさんも、コスモッグもその内の1匹。アクジキングの事っすね」

イワンコ「ウツロイド、フェローチェ」

デンジュモク「ああ、そいつらもっす。後はカグヤさん、ツルギだな。

       正式名称、テッカグヤとカミツルギ。バカみたいにデカいのがカグヤ姉さん、そこに一緒にいる紙みたいに薄い剣がツルギっす。

       ほんっと、いつもいつもあいつらいちゃいちゃしやがって……」

バクガメス「それはいいんだ。お前らの目的はなんだ?」


バクガメスが、声色を変えて問う。デンジュモクは少し躊躇った後、こう言った。


デンジュモク「こんな旨いもんもらっちまって申し訳ないんすけど、それだけはダメっす。

       ここは、他のウルトラビーストの特徴を教えたって事で、手打ちにしてくれないっすか?」

ラランテス「どういう事だ――」

バクガメス「構わんよ」
 ▼ 170 1◆J44kAZeDOM 17/04/01 19:39:40 ID:gSqSiRdA [42/51] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
僕とミミッキュ、それからラランテス。

3匹揃って一斉に、バクガメスを見やる。


バクガメス「その代わり、もう少し細かな特徴を教えてくれ。お前の他のウルトラビーストが、何に心を惹かれるのか」

ラランテス「あんた! 何言ってんだい!」

バクガメス「俺の推測が間違ってなきゃ、これが一番だ。それと、デンジュモク。コスモッグ捜しに協力してくれ。

      この2つだ。これをお前が誠意をもってやってくれるなら、目的に関して聞くのは勘弁してやる」

デンジュモク「助かるっす。コスモッグ捜しは……フェローチェが必死こいて捜してるっすけど」

ラランテス「知ってるよ。とにかく、バクガメスの質問に答えな」

デンジュモク「わかったっすよ! だから脅さないで欲しいっす!」


鎌をチラつかせるラランテスに、僕は苦笑を浮かべた。
 ▼ 171 1◆J44kAZeDOM 17/04/01 19:40:14 ID:gSqSiRdA [43/51] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
コスモッグ:つかみどころのない少年。友達が欲しい

ウツロイド:楽しい事を求める天真爛漫な少女

フェローチェ:美を追求する戦闘脳お嬢様

デンジュモク:省略

テッカグヤ:巨体。両腕に竹のような噴射装置を持っている。何を求めるかは不明だが、カミツルギといられればそれでいいのではないか

カミツルギ:小さい。全身が刃物のようになっている。テッカグヤと以下略

アクジキング:何でも食べる黒い塊。満腹感を求める


デンジュモク「一応マッシブーン……まだこの世界には来てないビーストも説明しとくっす」


マッシブーン:力を追及する筋肉バカ


イワンコ「ちなみにあなたの欲しいものって?」

デンジュモク「……光、っすね。この世界、太陽と月が綺麗っす。元いた世界には、そんなのがないっすから」
 ▼ 172 1◆J44kAZeDOM 17/04/01 19:41:09 ID:gSqSiRdA [44/51] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミミッキュ「でも、コスモッグは将来、太陽か月の化身になるって……」

デンジュモク「ああ、でもあの2匹はあくまでも化身。初めて向こうに行った時にその力だけを受け入れただけっすから」


バクガメス「なるほどな。了解した。帰るぞ」


バクガメスは聞きたい事をすべて聞いたのか、振り返ろうともせずに歩き始め、それから言う。


バクガメス「腹減ったんなら、こっから西の方にあるエレキ平原にでもいったらどうだ?

      電気の野生がいっぱいいるし、困らねえぞ」

デンジュモク「あざーっす!」


と、この瞬間、ずっと歯噛みするような悔しげな顔を描き出していたミミッキュが言った。


ミミッキュ「ボス! これでいいんですか?!」
 ▼ 173 1◆J44kAZeDOM 17/04/01 19:41:59 ID:gSqSiRdA [45/51] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
しかし、ラランテスは、黙って頷く。


ラランテス「……バクガメスになんか考えがあるみたいだ」

ミミッキュ「ボス!」

ラランテス「あたいたちが考えても仕方ないよ、ミミッキュ。行くよ!」

ミミッキュ「−−っ」

イワンコ「……もう、約束したんだ、仕方ない」

ミミッキュ「コスモッグ……どこにいるのよ……」


嘆きは、空に溶けていく。彼女の声は、泣いていた。
 ▼ 174 1◆J44kAZeDOM 17/04/01 19:42:35 ID:gSqSiRdA [46/51] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
幕章

スマホで、さっきのひずみを必死で調べていた。

何か、あたしを変えてくれるものがあるはず。

その一心で、検索を続ける。

アインシュタインの相対性理論で出るひずみは恐らく、消えてしまうものではない。

何か、空の裂け目のような感じだったのだ。

空の裂け目、で検索を掛ける。

すると、ひとつのゲームの話が出て来た。


――ポケモン不思議のダンジョン、空の探検隊。


いや、関係はないだろう……そう思いはするけれど、どことなくフィクションめいた何かの方が正しい気がするのだ。

いきなり現れて、消えてしまうひずみ。現実に起こり得るとは、到底考えられない。

あたしの幻覚か、超自然的な何か。
 ▼ 175 1◆J44kAZeDOM 17/04/01 19:43:21 ID:gSqSiRdA [47/51] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
翌日、その疑念をぶつける相手を持たないあたしは、今日も存在を消す。

ただ、視線だけは岩根君を追っていた。

彼は、またこちらを窺っているようだ。

このもどかしい関係性に終止符を打ったのは、図書室での事だ。

声を掛けたのはあたし。無視されても構わなかった。

ただ、あたしを無視する事を強要するメイングループは、きっとここには来ないはず。

おしゃれなカフェで恋バナしたり、ゲーセン言って遊んだり。本を読むという現実逃避なんて、彼らには不要なのだ。
 ▼ 176 1◆J44kAZeDOM 17/04/01 19:43:57 ID:gSqSiRdA [48/51] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「ねえ、岩根君」

「……やっぱり、気付いてたんだ、久瀬」


彼は、ぶっきらぼうに本を閉ざすと、あたしを向き直る。


「……怖くないの? あたしと話してるのバレたら、あんたもハブだよ?」

「怖い? むしろ面白いぐらいだよ。人をけなさないと立てない弱さを観察するのはね」


彼は、立ち上がると、本をかばんにそっと入れた。


「とりあえず、場所を移そう。部室に来てよ」

「何部?」

「文芸同好会」
 ▼ 177 1◆J44kAZeDOM 17/04/01 19:44:34 ID:gSqSiRdA [49/51] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
部室で、あたしはずっと、黙りこくっていた。

話すという事が久しぶりだったのもあるけれど、彼も何も話さないのだ。

別に彼が好意を持ってくれているだなんて思っていない。

ないけれど、もう少し会話してくれるもんじゃなかろうか。


「何読んでるの?」

「ミステリー。この作者大好きでさ。この暗い雰囲気と、読後のカタルシスが半端ない」


タイトルをチラと見る。そして頭に叩き込んだ時。


「読む?」

「あ、いいの?」

「いいよ。その代わり、君が読んでる本見せてよ」

「わかった」
 ▼ 178 1◆J44kAZeDOM 17/04/01 19:45:10 ID:gSqSiRdA [50/51] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
あたしのお気に入り。どうにもならない運命を変えるため、フィクションのような世界へ旅立って行った少年の物語。

彼の最後の言葉が、どうしようもなく胸に響いたのだ。


「あー、なるほどね。作者は知ってるけどこれはスルーしてた」

「もったいない! ホント、感動もんだよこれ。ちょっと泣きかけたもん、普段泣かないけど」

「じゃあ、貸し借りって事でいい?」

「うん」


この本が、あたしのフィクション的世界観に対するハードルを大幅に下げていたのだ。

岩根君に貸した本の中の主人公は、自らの好きなゲームに少し似た世界を旅する事になる。

あたしは別にポケモンが好きな訳ではない。けれど、そんな事があったっておかしくない。

世界はいつだって、少し、不思議に出来ているのだから。
 ▼ 179 1◆J44kAZeDOM 17/04/01 19:46:08 ID:gSqSiRdA [51/51] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
……と思っていると、借りた本がまさにそう。S、Fを意識した物語だったのだ。

作者は、ドラ○もんが好きなのだろうか。

「ところでさ」とあたしは話を持ち掛ける。


「ポケモン、やってたりする?」

「いや……好きなの?」

「いや、別に。ただ、急に懐かしくなって」

「変なの。まあでも、好きな人なら、ひとり知ってる。ここの先輩、小林先輩が大好きだよ」

「へえ」


小林先輩。フルネームは、小林 久(ひさし)というらしい。

いずれ機会があれば、彼に尋ねてみたい。ポケモンにおいて、空の裂け目ってどんな感じですか?

そんなのを、あたし見たと思うんです。

バカにされるだろう。構わない。あたしはもう、慣れている。
 ▼ 180 マルス@ライトストーン 17/04/01 20:24:16 ID:V.2uToJo NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 181 1◆J44kAZeDOM 17/04/02 20:57:58 ID:nE37tYMA NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
サーカス団編 2章
http://pokemonbbs.com/post/read.cgi?no=563304&l=43-74

43から74です
 ▼ 182 イパム@こうらのカセキ 17/04/03 00:10:44 ID:7ZcS9xYA NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 183 1◆J44kAZeDOM 17/04/03 20:36:26 ID:WDT65Pwg [1/36] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告







5章 コスモッグの合流






 ▼ 184 1◆J44kAZeDOM 17/04/03 20:37:01 ID:WDT65Pwg [2/36] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
アジトへ帰還して、それから数日は、何も変わらない日常を過ごした。

ただひたすらにコスモッグを捜索し、他のウルトラビーストとの接触を図る。

その成果がでる事はなく、数日。

異変が起こった。
 ▼ 185 1◆J44kAZeDOM 17/04/03 20:37:44 ID:WDT65Pwg [3/36] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
まず初めに感じたのが、例の臭いだ。

僕は、ミミッキュにそれを伝え、警戒を促した。

他のメンバーたちの臭いも混ざっている。

そしてこれは……。


イワンコ「コスモッグ?」

ミミッキュ「え?」

イワンコ「コスモッグの臭いがするんだ」

ミミッキュ「嘘!」

イワンコ「ホントだ。急ごう!」
 ▼ 186 1◆J44kAZeDOM 17/04/03 20:38:38 ID:WDT65Pwg [4/36] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
急いでその臭いを辿る。

アジトへの道と重なるその道を辿ると、僕の嗅覚が間違っていない事がハッキリとわかる。

確かに、コスモッグはいる。

他の、1匹のウルトラビーストもいる。

恐らく、その場所はアジトだ。

僕たちのアジトに、コスモッグは帰って来ている。

僕はミミッキュを見る。

彼女の上半身に、笑みが浮かんでいた。
 ▼ 187 1◆J44kAZeDOM 17/04/03 20:39:22 ID:WDT65Pwg [5/36] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミミッキュ「ただいまおかえりコスモッグ!」

イワンコ「いるんだろ! コスモッグ!」

サニーゴ「2匹ともお帰り! そうよ、コスモッグが帰って来たの!」


僕はミミッキュと顔を見合わせ、頷く。


イワンコ「食堂にいるんだ」

サニーゴ「うん。来て!」


食堂に駆け込むと、その臭いが強くなる。


コスモッグ「イワンコ、ミミッキュ!」

ミミッキュ「コスモッグ、よかった……よかった……」


ミミッキュの下半身、点のような目から涙が零れる。


コスモッグ「泣かないでよミミッキュ。君に泣かれたら、僕も……」
 ▼ 188 1◆J44kAZeDOM 17/04/03 20:40:03 ID:WDT65Pwg [6/36] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
一方、僕は辺りを見回す。

臭いから、ウルトラビーストがいるのは間違いない。けれど。

誰が、そこにいる?

ウルトラビーストの、一体誰が?

この場にいるフラワーズのメンバーは、僕たちとコスモッグとサニーゴだけ。

他にいるのは……


イワンコ「あ、ウツロイド……」

ウツロイド「やっほー。久しぶりー、ミミッキュ、イワンコ」


ウツロイドか。

彼女は、まだ何がなんだかわからない内に出会ってしまった事もあり、詳しく何かを追及する事はできていないはずだ。
 ▼ 189 1◆J44kAZeDOM 17/04/03 20:41:29 ID:WDT65Pwg [7/36] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
彼女は笑うように体を震わせて言う。


ウツロイド「フェロちゃんからコスモッグ預かってさー、コスモッグがここに帰りたがってたからって」

コスモッグ「ホント。意外にみんな、こっちの事……っと」

ミミッキュ「どうかした?」

コスモッグ「ごめん、なんでもない。それより、急に消えちゃって、ごめんね。フェローチェから逃げたかったんだけどさ、まあ足はっやくて」

サニーゴ「あれは凄かったよねぇ。ボスと張り合ってた」

コスモッグ「……ボス、あれと張り合ってたのか……」

ウツロイド「足の速さでフェロちゃんとかー。凄いねーそのポケモン、会ってみたいなー」

イワンコ「まあ、ここに残ってれば会えるし。しばらく残ってれば? 俺たちに危害を加える事はないんだろ? コスモッグの対応からして」

コスモッグ「脅されてるだけかもよ?」

ウツロイド「やだなー、そんな事する訳ないってば。わかってるクセにー」

コスモッグ「冗談だよウツロイド」


知ってはいたが、まざまざと見せつけられた。コスモッグは、ウルトラビーストの一種だ。間違いない。

その上で、彼女らとではなく僕たちと共にいる事を選択した。それがコスモッグの答え、なのだろうか。
 ▼ 190 1◆J44kAZeDOM 17/04/03 20:43:19 ID:WDT65Pwg [8/36] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ウツロイド「そのフェロちゃんと張り合ったポケモンってのも気になるし、あたしもしばらくここにいるー」

サニーゴ「どうぞ。歓迎します。コスモッグの友達なんでしょう?」

コスモッグ「まあね」

イワンコ「あれから大変だったんだぞ? お前捜しの道中、デンジュモクともバトルする事になったり」

コスモッグ「デンジュモクと?!」

イワンコ「ボスとバクガメスさんが大人しくさせたけど」

コスモッグ「はー、2匹とも、やっぱ強いね」

ウツロイド「あたしとバトルした時、イワンコはすぐ倒れちゃったけどねー」

イワンコ「……悪かったな」

ウツロイド「あたしとバトルしたら、どっちが勝つのかなー」

サニーゴ「ううん……わかりませんね……」

ウツロイド「ま、バトルなんてメンドーだししないけど」


そう言って彼女は、笑うかのように体を揺らした。

コスモッグが呆れ顔でそれを見詰める。
 ▼ 191 1◆J44kAZeDOM 17/04/03 20:43:52 ID:WDT65Pwg [9/36] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
正直な話、聞きたい事は山ほどある。

けれど、何が彼女の琴線に触れるかわからない。

ラランテスもバクガメスもいない今、僕たちに攻撃されたら為す術も無いだろう。

今はじっとしておく。そして、2匹が戻って来たら、質問するのだ。

皮肉な事にというか、ウツロイドの疑問がそれで解決してしまう可能性もある。

もし2匹が歯も立たない程に強かったとしたら、僕はもう、諦めて泣くしかない。


ミミッキュ「どした? 考え込んで。記憶について?」

イワンコ「……まあ、そんなとこ」
 ▼ 192 1◆J44kAZeDOM 17/04/03 20:45:12 ID:WDT65Pwg [10/36] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
サニーゴがかいがいしく料理を作り、その間僕は、コスモッグと話していた。

ミミッキュはサニーゴを手伝っている。ウツロイドは散歩に行ってしまった。

まあ迷子になる程バカではないというコスモッグの言葉を信じ、僕はここにいる。


コスモッグ「それで、僕がいない間、ウルトラビーストと一悶着どころか二悶着ぐらいあったみたいだけど」

イワンコ「ああ。お前を捜す事になるのはわかるよな。

     そんな中、ボスとフェローチェが出くわして、高速バトル」

コスモッグ「それなんだけど、フェロモンにやられなかったの?」

イワンコ「フェロモン? そういや、サニーゴがなんか言ってたような……」

コスモッグ「イワンコ、まさか君も……」

イワンコ「うん、僕には効いてない」

コスモッグ「それでもボスの戦いを誉めてた。美しかったって。

      ……まさか張り合うレベルだとは思わなかったけど」


ハハッ、あれは……ポケモン基準でもおかしいらしい。
 ▼ 193 1◆J44kAZeDOM 17/04/03 20:45:43 ID:WDT65Pwg [11/36] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
コスモッグ「それで? デンジュモクとも? 必死こいて捜してたフェローチェはともかく、電気探してふらついてたらしいのに」

イワンコ「だからだよ。停電起こしたんだ。発電所の電気軒並み奪って」

コスモッグ「停……デンジュモク、マジっすか」

イワンコ「マジっす。まあ、彼からいろいろと情報は引き出したけど。

     具体的に言うと、各々のウルトラビーストが、何を望んでいるのか」

コスモッグ「……さっすがだ。バクガメスさん、正解に近付いてるよ」

イワンコ「そうなのか?」

コスモッグ「それ以上は、言えない。全員の取り決めだから。でも大丈夫。君たちは、正しい道を進んでる」

イワンコ「取り決め、ねぇ……」
 ▼ 194 1◆J44kAZeDOM 17/04/03 20:46:30 ID:WDT65Pwg [12/36] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
コスモッグ「まあでも、君たちの中にイワンコは入ってないかも。

      記憶の謎……ごめん、それは僕にもわからない。これはホント」

イワンコ「……まあ、それはいいよ。にしても、こんな話した事、あったっけ」

コスモッグ「ないね。忙しかったってのもあるだろうし、ウツロイドと君が出会ってから、いろいろあれだったから」

イワンコ「……よくわからない。どう考えればいいのか。太陽どころか月すらない闇夜を進んでるような感じだよ」

コスモッグ「太陽、月……」

イワンコ「そういやコスモッグ。どっちになりたいんだ? 太陽の化身か月の化身」

コスモッグ「うーん、どうだろ。考えてないんだよね」

イワンコ「へえ」

コスモッグ「そーいや、イワンコといえば、君も太陽と月の力をモロに受けて進化するって聞いたよ?」

イワンコ「……僕が?」

コスモッグ「うん。太陽、月。……難しいよね」


自分も、太陽と月に関係のある種族なのか。

コスモッグと同じか、むしろその下に付く存在なのかもしれない。
 ▼ 195 1◆J44kAZeDOM 17/04/03 20:47:24 ID:WDT65Pwg [13/36] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
イワンコ「……記憶に関して、ウツロイドに聞いてみるよ。

     他のウルトラビーストじゃ、ああ動揺はしなかった。

     ウツロイドが、カギを握ってるのは間違いない」

コスモッグ「だね。ウツロイド、何しでかすかわかんないとこあるからなぁ」


同感だ。無邪気さは、傍から見ると危うい。なまじ力が強い分、その感触は強まる。


コスモッグ「ウツロイド。神経毒を注入して、120%の力を引き出す代わりに半分操ってしまう。

      そんなウルトラビーストなんだ」

イワンコ「へえ……へぇ?!」


衝撃の事実に、僕は目を瞠る。コスモッグが、やっぱり知らなかったか、と呟いた。


コスモッグ「最近はそれも抑えられてるけど、昔はそれで、大惨事を起こした事もあるらしいんだ」

イワンコ「そう……なんだ」

コスモッグ「それが、関係してるのかもしれないね。君の過去に」

イワンコ「……かもね」
 ▼ 196 1◆J44kAZeDOM 17/04/03 20:48:17 ID:WDT65Pwg [14/36] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ヒドイデ「コスモッグが戻って来たってホントか?!」


唐突に現れて、声を掛けて来たヒドイデ。

コスモッグはニコっと笑って言った。


コスモッグ「黙っていなくなっちゃって、ごめんね」

ヒドイデ「ごめんじゃねえよ! 心配したんだぞ!」

コスモッグ「……ありがと、心配してくれて」


僕は何も言わず、ただそこに佇んでいた。

コスモッグが事情を説明する。フェローチェから逃げたけれど、結局掴まって、引き渡された。

どうして逃げたのかに関して言及はなしだ。ヒドイデは尋ねたが、それは言えないの一点張り。

ヒドイデは仕方ないとため息を吐いて、それから言った。


ヒドイデ「困った事あったら、言えよ? 黙って消えたりする前にさ。俺らみんな、力になるから」

コスモッグ「ありがとう!」
 ▼ 197 1◆J44kAZeDOM 17/04/03 20:49:28 ID:WDT65Pwg [15/36] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ヒドイデ「まー、あれだな。後はウルトラビーストの目的と記憶との謎だけだな」

イワンコ「うん。でも、肝心要のウツロイドが今このアジトに……いるかわかんないけど、少なくとも夜には来るから」

ヒドイデ「ああ?! それマジかよ! 俺、まだ1回も会った事ねぇからなウルトラビースト、こいつ以外。どんななんだ?」

イワンコ「見た目に共通点なんてほっとんどないよ。臭いは同じだけど僕しか嗅ぎ分けられないし」

ヒドイデ「ううむ、性格は?」

イワンコ「ウツロイドは無邪気だね」

コスモッグ「フェローチェは高貴、デンジュモクはチャラ男。テッカグヤはユーモラス、カミツルギは真面目、マッシブーンは筋肉バカで、アクジキングは腹ペコ」

ヒドイデ「ほう。そのアクジキングとやらも、サニーゴちゃんの料理ならきっとお気に召すだろ」

コスモッグ「お気に召しても足りないと思うよ。なんでも食べて、お腹が埋まらないんだから」

ヒドイデ「…………」

イワンコ「満腹かぁ」
 ▼ 198 1◆J44kAZeDOM 17/04/03 20:50:16 ID:WDT65Pwg [16/36] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
コスモッグ「実際、あるのかな。そんなアクジキングを満腹にさせられるような便利な食べ物」

ヒドイデ「さあ? でもまあ、そいつを満腹にさせる方法よりも、お前の記憶の鍵を握ってそうなウツロイドだろ」

イワンコ「ま、それもそっか」

コスモッグ「ふーん」

ヒドイデ「なんだよ。もしかして、お前アクジキングを満腹にさせる何かを見付けたいのか?」

コスモッグ「まあね。向こうでも割とお世話になったし」

イワンコ「まあ、余力があればだな。盗賊だと、大っぴらに活動できないのが辛いとこ」

ヒドイデ「バクガメスさんならなんか知ってるかもな。相談してみれば?」

コスモッグ「だね。そうしよ」
 ▼ 199 1◆J44kAZeDOM 17/04/03 20:51:12 ID:WDT65Pwg [17/36] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
そんな風に話していると、サニーゴが呼びに来た。


サニーゴ「ごはんできたよ! もうみんな揃ってる、急いで。それと……ヒド君、よかった」

ヒドイデ「ホントだよ。無事見付かってな」

コスモッグ「たは」

イワンコ「行こうぜ。冷めちまう」

コスモッグ「うん。ひっさしぶりだなぁ、サニーゴのごはん!」


僕たち4匹は、足取りも軽く食堂へ向かった。
 ▼ 200 1◆J44kAZeDOM 17/04/03 20:51:53 ID:WDT65Pwg [18/36] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ラランテスが、食べ始めようとしたみんなを遮る。


ラランテス「コスモッグ、お帰り。聞きたい事はいろいろあるけど、まずはたんと食べな!」

コスモッグ「はい!」

ラランテス「それからウツロイド、あんたもだよ! 話、聞かせてもらうからね!」

ウツロイド「はーい」

ラランテス「止めて悪かったね。じゃ、みんな……」

みんな「いただきまあす!」


活気がある。

心配事が減り、純粋に楽しめる、久々の食事だ。

コスモッグじゃなくても、久しぶり。
 ▼ 201 1◆J44kAZeDOM 17/04/03 20:52:36 ID:WDT65Pwg [19/36] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミミッキュ「うーん! やっぱみんな揃ってのごはんっておいしい!」

サニーゴ「だよね」

コスモッグ「なんだよー当てつけみたいにー」

ミミッキュ「当てつけてるもん」

コスモッグ「なんだとぉ?!」

ミミッキュ「ま、いいよ別に。帰って来てくれたし」


ワイワイガヤガヤと、着実に食事は減って行く。


イワンコ「ウツロイド、乗っかれてるか、このテンションに」

ウツロイド「うーん、まあ、コスモッグとの再開が大事っぽいしねー」

イワンコ「ま、そうだ。ウツロイド、でも遠慮する事はないぞ。お前なら、楽しめると思うわ」

ウツロイド「だろーねー。あたしも、そろそろ話そうと思ってたとこだし」

イワンコ「ん? 何を?」

ウツロイド「おしゃべりに何とかあるのー?」

イワンコ「あっ、はい」
 ▼ 202 1◆J44kAZeDOM 17/04/03 20:54:04 ID:WDT65Pwg [20/36] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ただのおしゃべりか。

ウルトラビーストのおしゃべりってどんなのか興味はあるが、考えてみればコスモッグと今まで普通に会話している時点であんまり僕たちの基準とズレたもんではないのだろう。

現に、コスモッグをきっかけに、躊躇う事なく彼女は会話の輪に加わって行った。


ミミッキュ「気が重いね。こんないい人を、問い詰めないといけないなんて」

イワンコ「ホントだよ。もっと違う出会いだったらよかったのに……」


お皿の上から全ての料理が消え去り、僕は頭を振った。


イワンコ「でも、探らないといけない。狙いもまだハッキリしてないし」

ミミッキュ「わかってるよ。だけど……ウツロイド見てると、どことなく安心するっていうか、なんだか、あたしの心の支えに近いというか」

イワンコ「ふぅん。僕は逆に、思いっきり心掻き乱されたけどな。ま、もう慣れたけど」

ミミッキュ「ま、それもこれも、ハッキリさせるのが、今なんだよ」

イワンコ「だな」


ウツロイドがコスモッグに習って、ごちそうさまー、なんて言っている。

おいしそうに体を揺らすと、ラランテスに向き直った。
 ▼ 203 1◆J44kAZeDOM 17/04/03 20:55:06 ID:WDT65Pwg [21/36] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ウツロイド「聞きたい事があるんでしょー? 無理な事もあるけど、できるだけ答えるよー」

コスモッグ「僕も、なるべく答えます」

バクガメス「ああ。場所を移そう。サニーゴ、片付けを頼む。ヒドイデも手伝ってやれ」

ヒドイデ「俺たちはいちゃ駄目なんすか?!」

バクガメス「駄目な訳じゃない。ただ、情報を何も全員で聞く必要もない。当事者と、思考担当、腕力担当がいれば充分だ。

      皿洗いだって、大事な仕事だ」

サニーゴ「ほら、ヒド君行こ? 私たちだけでゆっくりできるんだし」

ヒドイデ「それもそっか」

ミミッキュ「2匹も呼ぶべきです」

バクガメス「あのなぁ……」


……何も言うまい。

僕、ミミッキュ、ラランテス、バクガメス、それからコスモッグにウツロイド。6匹で、庭に出て行った。
 ▼ 204 1◆J44kAZeDOM 17/04/03 20:55:55 ID:WDT65Pwg [22/36] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
バクガメス「イワンコ、ミミッキュ。質問はお前らがしろ。俺が聞き取る。暴れ出すようならラランテスが止める。

      まあ俺の推測が正しけりゃ、そんな事まずねぇだろうが、念には念だ。お前らじゃ、ウツロイドには敵わないだろ」

ウツロイド「前勝っちゃったしねぇ」

ミミッキュ「わかりました。ボス、よろしくお願いします」

ラランテス「ま、任せときな。あたいの出番がない事を祈ってるよ」

イワンコ「ウツロイド。単刀直入に聞きます。人間って知ってますか?」

ウツロイド「ニンゲン……? って何?」

イワンコ「2足歩行で、体毛が全然なくて、力がない代わり文明を築き、頭脳で世界を支配してる種族。

     ここにはいない。だけど、僕にはその記憶がある」

ウツロイド「文明……」

コスモッグ「僕はわかんないよ。わかんない事わかってると思うけど」

ミミッキュ「だろうね。反応なしだったし。元はポケモンじゃないって伝えた時」

ウツロイド「あー! あれか!」

イワンコ「知ってるの?」

ウツロイド「うん。……あれは、忘れられないな」
 ▼ 205 1◆J44kAZeDOM 17/04/03 20:56:35 ID:WDT65Pwg [23/36] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
――

誰かを、殺した事、ある? あたしはあるよ。

絶対に忘れられない。あの出来事は。

――頬にかかる血の味。

――絞り出すようなうめき声。

彼女の目には、どこまでも、怯えが広がっていた。

あたしが、これをやった。そう思った瞬間、あたしの中で、何かのタガが外れたの。


――あたしは、絶対に忘れない。あの日、あの時、あの場所を。

――
 ▼ 206 1◆J44kAZeDOM 17/04/03 20:57:05 ID:WDT65Pwg [24/36] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
イワンコ「……え?」

ウツロイド「これが、ニンゲンにまつわるあたしの記憶だよー。これ以上でも、これ以下でもない」


訳も解からず立ち竦む。ウツロイドの語った、悲惨な物語。

僕の心の中を激しく揺さぶるかと思いきや、そうでもない。

ただ、どうしようもない恐怖が、軽く胸を去就した。


ミミッキュ「これって……」
 ▼ 207 1◆J44kAZeDOM 17/04/03 20:58:11 ID:WDT65Pwg [25/36] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
そんな最中、バクガメスが、唐突に叫んだ。


バクガメス「おいテメー、殺したってどういう事だ」

ウツロイド「え? 殺したってそのままだけどどうかしたのー?」

バクガメス「ぶっ殺すぞ、明確に答えろ」


バクガメスの静かな激昂に、ラランテスを除く4匹が困惑を浮かべる。

怒鳴る事は多々あった。それでも、沈黙の持つ不気味さは、いつもの比ではない。

殺害。許されない事なのは確か。けれど、どうしてバクガメスは、そこまで怒るのだ?


ウツロイド「あたし、もう誰かを殺したりとかしないもん」

バクガメス「もうとかそういう問題じゃねぇ。ふざけんな」

ラランテス「バクガメス」


鋭い制止の声が飛ぶ。


ラランテス「あんたはもう、警察やめたんだろ」
 ▼ 208 1◆J44kAZeDOM 17/04/03 20:59:15 ID:WDT65Pwg [26/36] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
警察? とバクガメスを見やった。

彼はそれ以上を拒むかのように腰を下ろす。

しんと静まり返った空気の中、ラランテスが明るく言った。


ラランテス「悪かったね。続けて」


僕は我に返り、ミミッキュをこづく。

ミミッキュも倒れたばけのかわを建て直し、それからウツロイドに向かって言った。


ミミッキュ「ウツロイド、あなたは、殺す以外に何もしてないの?」

イワンコ「ほら、誰かをポケモンにするとか」

ウツロイド「そんな力はあたしにもないよー。うーん、そーだねー、何かしたって程でもないかな。ただ、生きてただけー」

イワンコ「そっか。……じゃあなんで、僕は君を見て、あんな動揺してたんだ」

ウツロイド「さー。何かあったんじゃない? 記憶がないんでしょー」

イワンコ「まあね」
 ▼ 209 1◆J44kAZeDOM 17/04/03 20:59:54 ID:WDT65Pwg [27/36] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ウツロイドは、俺たちの方を見て、体を震わせた。


ウツロイド「自然に思い出せる時が、来ると思うよー」

イワンコ「やっぱり、何か知ってるのか?!」

ウツロイド「たぶんねー。でも、自信はないし、合ってたとしたらまだ、耐えられないと思うよー」

ミミッキュ「耐えられない……?」

イワンコ「それって……?」

ウツロイド「あたしが言えるのは、これだけだよー。他に何か気になる事ある?」

バクガメス「……お疲れ様。お前らはもういいよ。さっきはすまなかった。

      最後にひとついいか?」

ウツロイド「いいよー」
 ▼ 210 1◆J44kAZeDOM 17/04/03 21:00:29 ID:WDT65Pwg [28/36] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
バクガメスが訊いた質問は、予想外なものだった。


バクガメス「この世界のポケモン、好きか?」

ウツロイド「うーん、うん! みんな大好きだよー! ミニリュウと遊んだり、みんなと一緒にごはん食べたり」

バクガメス「そうか。ならいいんだ。ありがとう」

イワンコ「あ、ありがとう」

ミミッキュ「ありがとうございます」

ウツロイド「いいよー、そんな改まってお礼言わなくても。それじゃ、あたしはもう行くねー。

      コスモッグをよろしくー」


そう言うと、彼女は姿を消してしまった。

あっという間の出来事だった。


イワンコ「コスモッグ、ウツロイドはどこ行ったの?」

コスモッグ「さあ。ほんっと、天真爛漫な自由ビーストだからね」
 ▼ 211 1◆J44kAZeDOM 17/04/03 21:01:16 ID:WDT65Pwg [29/36] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミミッキュ「まあ、それはそうなんだけど……バクガメスさん、警察って何の事ですか?」

バクガメス「チッ」

コスモッグ「……セコイですよ、そういうの。僕たちに質問するんなら、教えてくれたっていいじゃないですか」


恩の売りっぱなしを嫌う。どこかで見た事あるような考え方だ。

バクガメスが、ううむと唸り声をあげる。


ラランテス「正論を黙殺する程愚かな♂じゃあないだろうね?」

バクガメス「ああもう! わかりましたよ!」


イライラと、しかし彼はこちらを向いて、言った。


バクガメス「俺の過去は、全員に関連がある。この盗賊団成立の由来だ。

      ラランテス、お前の過去にも、触れざるを得ないぞ」

ラランテス「わかってるさ。どこまで話すかは、あんたに任せるよ」
 ▼ 212 1◆J44kAZeDOM 17/04/03 21:02:22 ID:WDT65Pwg [30/36] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
幕章

翌日も、あたしは、文芸同好会の部室へと足を運んだ。

小林先輩とも、岩根君とも会いたい。

それに、あたしが貸した本を、どれだけ読んでくれたのかも気になる。

昨日岩根君から借りた本は、それなりに読み進めた。

自分を偽る事により、誰とでも親しくできる主人公。

彼女とある少年が、親しくなっていく。

その存在が、あたしとどことなく重なって見えて、心が震わされた。

まだ、全体の4分の1も読んでいない。けれど、掘り出し物を発掘したような感覚に、あたしの心は少し上向いた。


「どう? 僕の本」

「面白いよ。そっちは?」

「うん。迫って来るね。このリアリティは、さすがだよ」
 ▼ 213 1◆J44kAZeDOM 17/04/03 21:03:05 ID:WDT65Pwg [31/36] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「入部希望か?」


不意に後ろから声を掛けられて、ひっと短く悲鳴をあげる。

「あ、いやその……」としどろもどろになりながら答えようと焦ると、岩根君が言った。


「先輩、いきなり後ろから人に話し掛けるのやめてください。あの、彼女ですよ。ハブられてる」

「ああ……なるほどね」

「彼が小林先輩。なんか聞きたい事あるんじゃない?」


彼が。

あたしは振り向いた。
 ▼ 214 1◆J44kAZeDOM 17/04/03 21:03:49 ID:WDT65Pwg [32/36] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
どことなく、獣めいた風貌。まず抱いたのは、そんな感想だった。

改めて見返すと、メガネの奥の目はきりりと引き締まり、制服がうっとうしいと言わんばかりに首元を外していた。


「久瀬さんだっけ。どうかした?」

「ああ、いやその……バカバカしい事なんですけど、先輩ってポケモン好きですよね」

「うん? 好きだけど、なんで?」

「あたし、ちょっと、変なひずみを見かけまして」


慣れている。慣れているはず。

――そんなはずがないだろう。

やはり、孤立は怖い。孤立そのものというより、その道のりが、少しずつ回りが離れていくその感覚が怖い。
 ▼ 215 1◆J44kAZeDOM 17/04/03 21:04:43 ID:WDT65Pwg [33/36] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「ひずみ?」

「はい。空に現れたと思ったら、消えちゃって。それでいろいろ調べてたら、空の探検隊ってゲームがヒットして……」

「久瀬、何言ってんの?」と岩根君が呆れたように声を掛けて来る。

「ポケダン空、となると空の裂け目……いや、でもそれにもっと該当するのが、ポケモンにはあるよ。まあ、関係あるかはわかんないけど」

「ええっ?! マジにしちゃうんですか?!」


あたしも、正直同じ感想だ。もっと、鼻で笑われると思った。ただ、最初にヒットしたフィクションだったから、それに縋っただけ。

唖然として見詰めていると、彼は懐かしそうに目を細め、言った。


「世の中には、そんな奇跡が、あってもいい。でも、なんでポケモンだと思ったの?」

「最初に検索にヒットしたから……。なんだか、それが正解だって気がして」

「ハハ、なるほど。そりゃあいい。ところで、ポケモン知ってるの?」

「いや、ピカチュウとポッチャマぐらい……」

「典型的なポケモン知らない俺たち世代だな。……懐かしいな。っと」
 ▼ 216 1◆J44kAZeDOM 17/04/03 21:05:40 ID:WDT65Pwg [34/36] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
「で、先輩。もっと該当するのってなんですか?」とあたしが問うと、先輩はこう言った。

「去年発売された、ポケットモンスターサン、ムーン。そこに出てくる、ウルトラビーストっていうのが、ひずみから現れるんだ」


ウルトラビースト。聞いた事はない。


「ありがとうございます。とりあえず、調べてみます」

「うん。何があるかはわからないけど、まあ気が済むまで頑張れ。

ところで……入らない? 文芸に」

「あ……考えときます」
 ▼ 217 1◆J44kAZeDOM 17/04/03 21:06:28 ID:WDT65Pwg [35/36] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
帰宅して、とるものもとりあえずスマホへ直行。

そしてウルトラビーストに関して調べてみる。

その後、「サンムーン ひずみ」で画像検索を掛けると、そこに正解があった。


「これだ……」


あたしが見た、そのままの光景が、ゲームの中に再現されている。

どこかの祭壇のような場所に、主人公と思しき人が立って、それを眺めている画像。

震えるまま、あたしはそれに関して調べて行く。

ソルガレオ、ルナアーラ。それぞれが司る力と逆の時間に祭壇に行くと、それが開いている。

この場所に、なぜそれが現れたのか。納得のいく説明が付けられる気はしない。

けれど、それは、確かにある。あたしの中で、塗り潰せない程に膨らんだその確信は、あたしを窓に向かわせた。

もしかしたらまた。そんな、無謀な願いを込めて、あたしはその姿を捜す。


――信じられない事に、再びそこには、そのひずみがあった。
 ▼ 218 1◆J44kAZeDOM 17/04/03 21:07:00 ID:WDT65Pwg [36/36] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
慌てて外へ飛び出し、それめがけて歩を進める。

待って。消えないで。

あたしを変えてくれる、ウルトラビースト。

ひたすらに走った。息があがる。苦しい。けど走った。

あたしのヒーローが、そこにいる。そんな気がする。

ああ待って。消えないで。


――あたしは、その真下に辿り着く。
 ▼ 219 ュカイン@きいろいかけら 17/04/03 21:30:02 ID:qn4y8psE NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 220 クロッグ@ビスナのみ 17/04/04 17:20:34 ID:KyAcsGlg NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 221 1◆J44kAZeDOM 17/04/04 19:12:48 ID:GHkOfw2I [1/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告







6章 バクガメスの悔恨






 ▼ 222 1◆J44kAZeDOM 17/04/04 19:13:39 ID:GHkOfw2I [2/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
僕たちは一同に会し、彼の言葉を待った。

バクガメスは、ふうっと息を吐き出して、それから言った。


バクガメス「本当に悪いポケモンなんて、実はどこにもいない。どっかのギルドの親方のセリフだ」

――

俺は、確かに元警察だった。

将来を嘱望された、いわばエリートさ。ジバコイル保安官とは今でもたまーに呑みに行く。

そうさ。あいつは知ってるんだ。盗賊団フラワーズの活動を。知っていて、見逃してもらってる。

俺が考えた、理想が詰まってるからだ。警察じゃあ救えない奴を、俺が救う。そんな動機で、俺はここを作った。
 ▼ 223 1◆J44kAZeDOM 17/04/04 19:14:13 ID:GHkOfw2I [3/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミミッキュ「警察でも……救えない?」


ふん、警察ってのは、よくも悪くも権威主義だからな。

事件が起こる前には動けないし、起こったとしても、強者に靡(なび)いちまう。

多数の声を尊重するのは大事だ。けど、少数を黙殺するのは違う。

事件を解決する中で、そんな事を考えて来たよ。

親を誰かに殺され、生きていく術を失い、誰かから奪う以外に活路を見いだせなかった♂。

♀だからって虐げられ、♂をたぶらかす事にしか活路を見いだせなかった奴もいる。

そんな中で、一番大きかったのは、あるヌメルゴンとの出会いだ。
 ▼ 224 1◆J44kAZeDOM 17/04/04 19:14:56 ID:GHkOfw2I [4/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
――話は過去に遡る。

バクガメスの記憶の中で、黒いヴェールに包まれたもの。


ジバコイル「ヌメルゴン ヲ事情聴取シテ欲しいノデスガ」

バクガメス「ヌメルゴン? あの暗い沼地の傷害事件か。了解した」


俺は、ヌメルゴンの待つ牢屋へ向かった。

彼はそこで、うつむいていた。


バクガメス「おい、起きろ。事情聴取だ。全部、正直に話してくれ」

ヌメルゴン「ああ、はい。うん。僕、テールナーと約束したから、正直に話しますよ」

バクガメス「テールナーか。ああ……チームエンドレスだな。プクリンのギルド所属の」

ヌメルゴン「はい。あの中のテールナーも、いじめられてたらしくって」

バクガメス「あー、そういうのは聴取で語ってくれ。行くぞ」

ヌメルゴン「はい」
 ▼ 225 1◆J44kAZeDOM 17/04/04 19:15:27 ID:GHkOfw2I [5/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
彼は、本当に何ひとつ隠さなかった。

動機は、いじめに対する復讐。

進化して力を手に入れたのは、そのためだ。

エンドレスというチームのテールナーというメンバーが、いじめられて、それを庇ったポケモンに二次被害が及び、自殺した。

その話が、彼の胸に届いていた。

そして、俺は違和感を覚えた。

警察がやっている事って、なんなのだ。事情も鑑みず、やった事実だけで全てを判断する。

過程は、無視だ。所定の罪さえ償わせれば、仕事は終わる。

けれど、それでいいのか。否、いいはずがない。
 ▼ 226 1◆J44kAZeDOM 17/04/04 19:17:19 ID:GHkOfw2I [6/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
そこからは、速かった。

どうすればそういう辛い境遇のポケモンを救えるのか。

考えた結果がこれだ。そういうポケモンを集めて、力を付けよう。

ひとつひとつの声は小さいかもしれない。けれど、合わされば、その力はホエルオーを超える。

で、どこに集めるか。そんな風に考えている最中に、家出娘のカリキリと出会ったんだ。

彼女は、公園で巷で話題の不良を斬りまくっていた。

身のこなし、攻撃のキレ。素晴らしい才能だった。

けれど、立場上、過剰防衛を責めないといけなかったんだ。

んで、そう言ったんだ。したら、そいつはこう言った。


カリキリ「だって、このおっさんたち、あたしを襲おうとしてくるんだよ?! 倒さないと、やられちゃうもの!」

バクガメス「君みたいなちっちゃな♀がうろついてるのも問題だと思うよ。どうしたの?」

カリキリ「……お家の事は言わないでください。私は、家を追い出されました」
 ▼ 227 1◆J44kAZeDOM 17/04/04 19:17:57 ID:GHkOfw2I [7/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
歳に似合わない丁寧な言葉。けれど、初っ端のタメの方が本性なのは見てわかった。

もしかすると、良家の出なのかもしれない。

そう気付いて、俺は愕然としたね。

腕っぷしが強いから、追い出されたんじゃないか。そう訊いてみると、カリキリは泣き出した。

うわんうわん。ほんっと、喧しいったらありゃしなかったよ。


ラランテス「悪かったね!」


ま、俺ガキは嫌いだからな。

んでまあ、家に戻れないっつーから、一旦警察に行って、それから引き取ったんだ。

俺も倒されたらたまらんからな。

そして、ふと思ったんだ。

こいつを鍛えて、そのままその集団のリーダーにすればどうだろう。
 ▼ 228 1◆J44kAZeDOM 17/04/04 19:18:46 ID:GHkOfw2I [8/8] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
そんなたわいもない妄想が現実味を帯びて来たのが、ある事件解決のためにダンジョンに潜った時だ。

最奥部の宝物庫に逃げ込まれて、入るための仕掛けを起動させないといけなかった。

こいつ、勝手に付いて来やがって、実力は知ってたから強く止めてなかったんだけどよ。

だからつまり、俺とこいつがそこにいたんだ。

俺がその仕掛けの起動方法に頭を悩ませていると、こいつはまあ、いとも簡単に解き明かしてしまった訳だ。


カリキリ「レバーを右に回すとこの歯車は左右左右そしてロープが回って左右右左……ダメ!

     って事は、バクガメス、左だよ!」

バクガメス「なっ……」

カリキリ「回しちゃうよ! えい!」

バクガメス「あーっ! ミスってたらどうすんだ?!」

カリキリ「バクガメス、心配しないでいいよ。絶対行けるから!」


はたして、扉は開いた。
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