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【SS】フライゴン「……死にたい」

 ▼ 1 1◆v1GnTfaqxg 17/05/19 12:32:47 ID:wWCfD3C2 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告

あるアパートの一室に、一匹の若いフライゴンが住んでいた。

そのフライゴンはゴミだらけの部屋の中、ただ布団にくるまって何をするでもなく、酷く怯えた様な顔をしていた……


その時……


ピンポーン……ピンポーン……ピピピピピンポーン……


呼び鈴の音が鳴った瞬間、反射的にフライゴンは布団を頭から被ってガタガタと震えだす……
 ▼ 114 1◆v1GnTfaqxg 17/05/20 21:58:16 ID:KC8x1P8c [1/28] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
  
アシレーヌはガオガエンからカードを引いて……揃ったカードを捨てると、手持ちのカードが無くなった。


アシレーヌ「はい! 私もあがり! ガオガエンの負け!」

ガオガエン「くっ……」

フライゴン「(おいおい……なんでまた負けるんだよ……)」


フライゴンの思った通り、ガオガエンの顔はだんだんと引きつっていき……立ち上がると、口から炎を漏らしながら叫んだ。


ガオガエン「だぁーっ!! 全部燃やしてやる!! そうすりゃこの部屋が綺麗になるっ!!」


すかさずアシレーヌがガオガエンを羽交い締めにした。


アシレーヌ「だからダメよ! そんな事したらこのアパートが灰になっちゃう!」


フライゴン「(だから嫌だったんだよ……)」

 ▼ 115 1◆v1GnTfaqxg 17/05/20 22:01:08 ID:KC8x1P8c [2/28] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告



その時……


ガチャ!


ドアが開き、ジュナイパーが帰ってきた。


ジュナイパー「……」


ガオガエン「お! 帰ってきたか!」


ガオガエンはジュナイパーの方へ歩いていった……


フライゴン「た、助かった……」

 ▼ 116 1◆v1GnTfaqxg 17/05/20 22:04:58 ID:KC8x1P8c [3/28] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告


ガオガエンはマスクを付けると首を鳴らした。


ガオガエン「よし、始めるぞ」

アシレーヌ「おーっ!」

ジュナイパー「……」

フライゴン「一匹でやるって言ってるのに……」


ガオガエンはゴミ袋を広げ、次々とゴミを袋に詰め込んでいく……


ガオガエン「これもいらん、あれもいらん……ほんと、ゴミだらけだな……ゴミ屋敷か? ここは……」

フライゴン「あーっ! ちょっとストップ!!」


フライゴンがガオガエンの腕を掴んだ。

 ▼ 117 1◆v1GnTfaqxg 17/05/20 22:11:00 ID:KC8x1P8c [4/28] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告

ガオガエン「あ? 何だ?」

フライゴン「それは捨てないでくれ!」


ガオガエンの手にはインクの切れたボールペンが握られていた……


ガオガエン「どっからどう見てもゴミだろ……これ」


フライゴンはガオガエンからボールペンを受け取った。


フライゴン「これは……昔、父さんが使っていたボールペンなんだ……なんとなく捨てられなくて……」


ガオガエン「でも、お前は両親の事を恨んでいるんじゃ……」


フライゴンはボールペンを横によけた……


フライゴン「どうしてだろう……いざ言われてみると……まだ、覚悟が決まらないって言うか……」

 ▼ 118 1◆v1GnTfaqxg 17/05/20 22:15:51 ID:KC8x1P8c [5/28] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告

ガオガエン「……ま、そこまで言うなら……でも、時には吹っ切る事も大事だぜ?」


ガオガエンはまた、ゴミをゴミ袋に詰めていく……


ガオガエン「吹っ切った事で見えてくる世界ってのもまた、面白いもんだ」

フライゴン「あーっ!! ちょっと! それも捨てないでくれ!!!」


ガオガエン「もーっ! なんだよ!!」


 ▼ 119 1◆v1GnTfaqxg 17/05/20 22:19:18 ID:KC8x1P8c [6/28] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告

フライゴンとガオガエンは揉めている……


アシレーヌ「これじゃあ夜までかかりそうね!」


二匹を見て笑っているアシレーヌの隣に座るジュナイパーは、ゴミの山に何かを見つけた。


ジュナイパー「……?」


ジュナイパーは近くに落ちていた本を手に取った……

それは、フライゴンが小学生の頃の卒業アルバムだった……


ジュナイパー「……」


ジュナイパーはパラパラとページをめくった……


ジュナイパー「!!」

 ▼ 120 1◆v1GnTfaqxg 17/05/20 22:21:11 ID:KC8x1P8c [7/28] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告


アシレーヌ「ん? どうかした? ジュナイパー」


ジュナイパーはそっとアルバムを閉じて、元の場所に戻した……



ジュナイパー「……いや、何でもない……」



アシレーヌ「そう? 顔色悪いけど……」




 ▼ 121 1◆v1GnTfaqxg 17/05/20 22:26:48 ID:KC8x1P8c [8/28] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告


その時……


ピンポーン……


ガオガエン「ん? 客だぞ? フライゴン」

フライゴン「誰だよ……こんな時に……」


フライゴンが玄関を開けると……そこにいたのは……



フライゴン♀「久しぶりね……ナックラー……いや、フライゴン……」

ドラピオン「大きくなったな……母さんにそっくりだ……」



フライゴンは目を見開き、その場に尻餅をついた。


フライゴン「か、母さん!? 父さん!?」


 ▼ 122 1◆v1GnTfaqxg 17/05/20 22:30:43 ID:KC8x1P8c [9/28] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告

ガオガエン「へ? 母さんに父さんだと?」

アシレーヌ「あの二匹が?」

ジュナイパー「……」


ドラピオン「とりあえず上がらせて貰えないか?」

フライゴン「え、あ……今は……」


フライゴンの両親はフライゴンを押しのけて勝手に部屋に上がった。


フライゴン♀「とりあえずお邪魔するわよ……って何これ」


フライゴンの両親の目の前にはゴミだらけの部屋が……

 ▼ 123 1◆v1GnTfaqxg 17/05/20 22:33:33 ID:KC8x1P8c [10/28] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告

ドラピオン「おいおいフライゴン……どう言う事だ? それに……」


部屋の中には両親の知らない三匹のポケモン……


ドラピオン「誰なんだ? この老いぼれ軍団は……」


ガオガエン「なっ!? 老いぼれだとぉ!?」

アシレーヌ「まぁまぁ……」

ジュナイパー「……」


フライゴン「三匹は知り合いで、部屋の掃除を手伝って貰ってたんだ」


ドラピオン「ほー……そうだったのか」

 ▼ 124 1◆v1GnTfaqxg 17/05/20 22:36:41 ID:KC8x1P8c [11/28] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告

フライゴン♀「ま、その話は置いといて……今日はちょっと話があってね……」


フライゴン「話?」


フライゴン♀「聞いたわよ? 借金全額返済したんだって?」


フライゴン「え!? あ……ま、まぁ……」


ガオガエン「どっからその話を……?」

アシレーヌ「さぁ?」

ジュナイパー「……」

 ▼ 125 1◆v1GnTfaqxg 17/05/20 22:42:57 ID:KC8x1P8c [12/28] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告

フライゴン♀「それで、提案があるんだけど……」

ドラピオン「また、三匹で生活しないか? ってな」


フライゴン「!!」

ガオガエン「なっ!?」

アシレーヌ「まぁ……」

ジュナイパー「……」


ドラピオン「どうなんだ? フライゴン」


ガオガエンがフライゴンの両親に歩み寄り、怒鳴りつけた。

ガオガエン「何を今更!! こいつがどれだけ苦労したかも知らずに!!」

ドラピオン「あんたには聞いてないんだよ! 老いぼれは引っ込んでろ!!」

ガオガエン「なんだとぉ!?」


ガオガエンと両親が揉めているが、その声はフライゴンには届いていなかった……

フライゴン「(……俺は……俺はどうすれば……)」
 ▼ 126 1◆v1GnTfaqxg 17/05/20 22:45:28 ID:KC8x1P8c [13/28] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告





俺の目の前にいるのは……確かに父さんに母さん…… 



でも、昔の父さんや母さんとは……似ているけれど、やっぱり違う……



何が違うのかはよくわからないけど……でも、違うんだ……






 ▼ 127 1◆v1GnTfaqxg 17/05/20 22:48:47 ID:KC8x1P8c [14/28] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
気がつくと、フライゴンの母親とガオガエンが取っ組み合いをしている……


フライゴン♀「ねぇ! フライゴン! あんたはどうなのよ!!」

フライゴン「え……」

ガオガエン「お前も言ってやれ!!」

フライゴン「お、俺は……えっと……俺は……」


その時、フライゴンの母親が床に転がっていたあのボールペンを踏んづけた……


バキッ!


フライゴン「!」

フライゴン「あ! あれは……」
 ▼ 128 1◆v1GnTfaqxg 17/05/20 22:51:01 ID:KC8x1P8c [15/28] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告

フライゴン♀「痛っ! ちょっと! 何か踏んづけたんだけど!?」


ドラピオン「なんだ? ボールペン? しかも空っぽだし……こんな物捨てろよ……」


ドラピオンは近くにあったゴミ袋に割れたボールペンを乱暴に突っ込んだ……



フライゴン「……」



フライゴンの脳裏にいつかの記憶が蘇った……



 ▼ 129 1◆v1GnTfaqxg 17/05/20 22:54:36 ID:KC8x1P8c [16/28] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告





ドラピオン「ほら、前にナックラーが欲しがってた仕事用のボールペン。空っぽだけど……本当にこんなのが欲しいのか?」


ナックラー「うん! このボールペンかっこいいし……それに……」


ナックラーはボールペンを自分の筆箱に入れた。


ナックラー「こうすればいつでも父さんがそばにいるみたいだよ!」


ドラピオン「そっか! それじゃ、そのボールペンを大切にしてくれよ!」


ナックラー「うん!」


フライゴン♀「良かったわね! ナックラー!」



 ▼ 130 1◆v1GnTfaqxg 17/05/20 22:58:42 ID:KC8x1P8c [17/28] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告



フライゴンの目に涙が浮かんだ……


フライゴン「わかってた……」


二匹は取っ組み合いをやめた。


ガオガエン「フライゴン……」

フライゴン♀「?」

ドラピオン「どうした?」


フライゴン「わかってたのに……もう、俺には父さんも母さんもいないって……わかってたのに……」


フライゴンはゴミ袋に入ったあのボールペンを見つめた……


フライゴン「それでもそのペンを持ち続けていたのは……いつかまた、笑って三匹で暮らせるって信じてたから……」

 ▼ 131 1◆v1GnTfaqxg 17/05/20 23:01:43 ID:KC8x1P8c [18/28] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告


ドラピオン「! じゃあ、また俺達と……」


フライゴン「いや、もうあなた達は家族なんかじゃない!! 俺の大切な父さんや母さんはもういないんだ!!」


フライゴン♀「!!」


フライゴンはポロポロと涙をこぼしながら……その場に崩れ落ちた……


フライゴン「俺は……あなた達がいなくても生きていくって決めたんだ……だから……出てって下さい……」
 ▼ 132 1◆v1GnTfaqxg 17/05/20 23:05:33 ID:KC8x1P8c [19/28] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告


フライゴンの口からその言葉が出た途端……両親はまた、あの日と同じ、一瞬で知らないポケモンに変わってしまった……


フライゴン♀「ちっ……」

ドラピオン「なら、こんな場所に用はないな……あばよ、糞ガキ」




二匹は玄関から出て行った……





 ▼ 133 1◆v1GnTfaqxg 17/05/20 23:09:38 ID:KC8x1P8c [20/28] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告

フライゴン「さよなら……父さん……母さん……」


アシレーヌ「フライゴン君……」

ガオガエン「……これが、お前の答えか……」

ジュナイパー「……」


フライゴンは涙を拭うと伸びをした……


フライゴン「ああ、吹っ切れた……すごくすっきりした……」


フライゴンは立ち上がると、近くにあったゴミ袋を拾い上げた。


フライゴン「さぁ、続きをやろう……今なら沢山捨てれそうだ」



そのフライゴンの顔には……ただの一つの曇りも無かった……

 ▼ 134 1◆v1GnTfaqxg 17/05/20 23:11:18 ID:KC8x1P8c [21/28] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告


ガオガエンとアシレーヌは顔を見合わせ笑った。


ガオガエン「俺的に言わせると……最高の答えだな!!」


アシレーヌ「ほら、ジュナイパーも掃除を手伝って!」


ジュナイパー「……」


四匹は掃除を再開した……



 ▼ 135 1◆v1GnTfaqxg 17/05/20 23:26:07 ID:KC8x1P8c [22/28] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告


その頃、フライゴンの両親はアパートを後にしようとしていた……
 

フライゴン♀「ちっ……突然全額返済したって聞いたから、宝くじの一つでも当てたのかと思ってたけど……見当違いだったのかしら?」


ドラピオン「けっ……あんな奴と一緒に暮らすなんて、こっちからごめんだぜ」


歩いていく二匹の背後から声がした……



?「……どないやったんや?」



ドラピオン「!……その声は……」



二匹が振り返ると……アパートの塀にザングースがもたれかかっていた。

 ▼ 136 1◆v1GnTfaqxg 17/05/20 23:29:38 ID:KC8x1P8c [23/28] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告

フライゴン♀「断られたよ……せっかく金でもせびろうかと思ってたんだけどね……」


ザングース「そりゃそうやろうな……今のあいつなら断るやろ」


ドラピオン「あいつに一体何があったんだ?」


ザングースはタバコを咥えると、ライターで火をつけた……


ザングース「お前らに教える気はないで? 住所教えただけでも感謝しーや?」


ドラピオン「……うるせーな」
 ▼ 137 1◆v1GnTfaqxg 17/05/20 23:33:16 ID:KC8x1P8c [24/28] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告

ザングースは二匹を馬鹿にした様な目で見つめた……


ザングース「昔っから変わらんな、お前ら二匹は……何も変わらんクズ夫婦や……」


フライゴン♀「っ!」

ドラピオン「言わせておけば!!」


ドラピオンがザングースの胸元を掴み上げた。


ザングース「お前ら二匹はクズのわいもびっくりするくらいのどクズや……」


ドラピオン「てめぇ!!」

 ▼ 138 1◆v1GnTfaqxg 17/05/20 23:39:25 ID:KC8x1P8c [25/28] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告


ドラピオンに胸元を掴まれて宙ぶらりんのザングースはニヤニヤしている……


ザングース「ま、最後に一つだけ言わせてくれや……」


ドラピオン「……?」


ザングース「あいつに……フライゴンにこれ以上手ぇ出すな……次手ぇ出したらそん時はわいの仲間がお前ら二匹を……」


ザングースの鋭い目が二匹を睨みつけた……


ドラピオン「っ!……ちっ!」


ドラピオンの手が緩み、ザングースは自由になった。


フライゴン♀「言われなくても二度と会うもんか!!」


二匹は早足でその場を去った……

 ▼ 139 1◆v1GnTfaqxg 17/05/20 23:44:21 ID:KC8x1P8c [26/28] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告


ザングースは二匹の背を眺めながら煙を吐き出した……


ザングース「けっ……ザコが……」


近くの車の影からひょこひょことズルズキンが現れた。


ズルズキン「兄貴ぃ……なんでフライゴンの奴を庇うんすか?」


ザングースはタバコを咥えて歩き出した……


ザングース「さぁな、わいもわからへん……」


ザングースはまた、煙を吐き出しながら空を見上げた……

美しい青空に眩しい太陽が輝いている……


ザングース「……ただ、何となく……あいつがどこまで立て直せるかを見てみたくなったんや……」

 ▼ 140 1◆v1GnTfaqxg 17/05/20 23:48:38 ID:KC8x1P8c [27/28] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告

ザングースはカバンからポケット灰皿を取り出し、その中に吸い殻を突っ込んだ……


ザングース「今日は……やり直すのにぴったりな天気やな……」


ズルズキン「……兄貴も……やり直してみますか?」


ザングース「……いや、やり直すには遅すぎるわ……」


ザングースは一瞬思い詰めた様な顔をしたが……



ザングース「……こんなの柄にもないな! よっしゃ! 今からどっかに飯食いに行こか!」

ズルズキン「はい兄貴ぃ!」


晴れ空の下、二匹は仲良く街に向かって歩き出した……
 ▼ 141 1◆v1GnTfaqxg 17/05/20 23:53:39 ID:KC8x1P8c [28/28] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告


そんなこんなでもう夜……

フライゴンの部屋……


四匹の目の前には……ゴミ一つ無い部屋が広がっていた……


ガオガエン「ふぅ……じじぃにやらせる仕事じゃねぇぞ? これ」

アシレーヌ「疲れたけど……達成感がすごいわ!」

ジュナイパー「……」


フライゴン「こんなに広かったなんて……びっくりした……」


彼らの前に広がる部屋にはもう、数時間前のゴミ屋敷の面影は無い。


 ▼ 142 1◆v1GnTfaqxg 17/05/21 00:00:50 ID:XAvVcG5s [1/60] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告


ガオガエン「おーっし! 掃除祝いだ! 酒持って来い! 酒!」

アシレーヌ「だめよ! あなた飲んだら暴れるじゃない!!」

ジュナイパー「……」


フライゴン「でも、せっかく今日は色々手伝って貰ったんだ。近くのコンビニに買い出しに行ってくるよ」


アシレーヌ「いいわよ! そんなに気にしなくても!」

ガオガエン「いや、ここは買ってきて貰おうぜ!」


ガオガエンは財布から一万円札を取り出してフライゴンに握らせた。


フライゴン「それじゃ、適当に買ってくるから」

フライゴンは玄関を開け、夜の闇に消えた……
 ▼ 143 1◆v1GnTfaqxg 17/05/21 00:05:50 ID:XAvVcG5s [2/60] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告

部屋には三匹が残された……


ガオガエンは頭を抑えながらその場に座り込んだ……


ガオガエン「……はぁ……頭がクラクラする……」


アシレーヌ「無理しすぎなんじゃない? ガオガエン……」


ジュナイパー「……」


ガオガエンは息を切らせ、その大きな手のひらを見つめた……
 ▼ 144 1◆v1GnTfaqxg 17/05/21 00:08:15 ID:XAvVcG5s [3/60] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告

ガオガエン「せっかくこんな面白い奴に会えたってのに……体が悲鳴をあげてやがる……」


アシレーヌ「そりゃそうよ……だってあなたは……」


ガオガエン「うるせぇ……けど、今日はこれ以上は無理かもな……」


アシレーヌ「じゃあ私が残るから……ジュナイパー、ガオガエンを送ってあげて?」


ジュナイパー「……行こう、ガオガエン」


ジュナイパーがガオガエンを支えながら歩き出した。


ガオガエン「すまねぇな……ジュナイパー」


 ▼ 145 1◆v1GnTfaqxg 17/05/21 00:10:02 ID:XAvVcG5s [4/60] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告

ガオガエンは数歩歩いて……立ち止まった……


ガオガエン「アシレーヌ」


アシレーヌ「……なぁに?」


ガオガエン「明日はお前……用事があるんだってな」


アシレーヌ「うん、少しね」


ガオガエン「そうか……じゃあ、先に言っておく……」





ありがとな




 ▼ 146 1◆v1GnTfaqxg 17/05/21 00:12:15 ID:XAvVcG5s [5/60] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告


アシレーヌはその言葉に驚いた表情を見せたが……すぐに笑って返した。



アシレーヌ「どういたしまして……」



ガオガエンとジュナイパーも玄関を開けて、その先の闇に消えた……



残されたアシレーヌは窓の外に広がる夜空を眺めて呟いた……



アシレーヌ「ガオガエン、こちらこそありがとね」


 ▼ 147 1◆v1GnTfaqxg 17/05/21 00:16:43 ID:XAvVcG5s [6/60] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告


数分後、二匹と入れ違いにフライゴンが帰ってきた……



フライゴン「おまたせ……ってあれ? アシレーヌさんだけ?」


フライゴンがアシレーヌの隣に座った。


アシレーヌ「二匹はちょっと用事があって先に帰ったの」


フライゴン「そっか……せっかく色々買ってきたのに……」


アシレーヌ「まぁ、あたしでよければ相手してあげるから! ほら、準備しよ!」


フライゴン「うん」


二匹は買ってきた食べ物を机に並べだした……
 ▼ 148 1◆v1GnTfaqxg 17/05/21 00:20:00 ID:XAvVcG5s [7/60] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告


その頃、ガオガエンとジュナイパーは二匹でフラフラと夜の道を歩いていた……



ガオガエンは月を見つめながら呟いた……


ガオガエン「……今日は月が綺麗だな、ジュナイパー」


ジュナイパー「……そうだな」


ガオガエン「それにしても、ここまでよく頑張ってくれたぜ……この体もよぉ……」


ガオガエンは右腕をさすった……


ジュナイパー「……」
 ▼ 149 1◆v1GnTfaqxg 17/05/21 00:24:04 ID:XAvVcG5s [8/60] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ガオガエン「ただ、あと1日だけもってくれよ……あいつと……あと少しだけ……もう少しだけ……」


ジュナイパー「……」


ガオガエン「ジュナイパー、お前もありがとな……」


ジュナイパー「……」


ガオガエン「それじゃ、早く帰ろうぜ……」


ジュナイパー「……あぁ」




月明かりと小さな街灯が照らす、薄暗い道を歩く二匹……


その会話を自販機の裏に隠れて聞いていた白い影が聞いていた……


ザングース「じじぃ……」


続く
 ▼ 150 1◆v1GnTfaqxg 17/05/21 00:25:33 ID:XAvVcG5s [9/60] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
第三話おしまい

二話更新はやっぱり疲れるので、明日は一話更新の予定です


では
 ▼ 151 ィグダ@アクロママシーン 17/05/21 00:41:08 ID:FjTbMjrM NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援です
 ▼ 152 ナギラス@レンブのみ 17/05/21 00:51:52 ID:GIH5oTgU [1/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 153 ョロネコ@ディフェンダー 17/05/21 01:04:42 ID:Nj0nqRCc NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
気になる支援
 ▼ 154 1◆v1GnTfaqxg 17/05/21 07:06:42 ID:XAvVcG5s [10/60] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告




……うぅ…………頭が痛い……




昨日、飲み過ぎたせいかな……?




とりあえず起きなきゃ……



 ▼ 155 1◆v1GnTfaqxg 17/05/21 07:10:10 ID:XAvVcG5s [11/60] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告

フライゴンがくしゃくしゃの布団の上で目を覚ますと……目の前でアシレーヌが静かに寝息をたてていた……


アシレーヌ「すぅ……すぅ……」


フライゴン「……え?」


フライゴンは自分の頬をつねってみたが……これは夢ではないらしい……


アシレーヌの腕はがっちりとフライゴンを抱きしめていて離そうとしない……


フライゴン「え? え?」









フライゴン「えええええええええーーーーー!!!??!?!?」
 ▼ 156 1◆v1GnTfaqxg 17/05/21 07:11:27 ID:XAvVcG5s [12/60] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告










第四話  じじぃの夢、じじぃの願い








 ▼ 157 1◆v1GnTfaqxg 17/05/21 07:14:53 ID:XAvVcG5s [13/60] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告

アシレーヌ「ふぁぁ……あ、おはよ、フライゴン君」


アシレーヌは伸びをすると微笑んだ。


フライゴン「な、ななななんで!? なんで俺がアシレーヌさんと!?」


アシレーヌ「あら? 何も覚えてないの? まぁ、あれだけ飲んだら仕方ないわね……」


アシレーヌは少し顔を赤くした……


フライゴン「う……えっと……なんかすみません……」


アシレーヌ「謝らなくてもいいわよ! 昨日は楽しかったし!」


フライゴン「(お、俺は一体何を……)」


 ▼ 158 1◆v1GnTfaqxg 17/05/21 07:19:55 ID:XAvVcG5s [14/60] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告


アシレーヌは体を起こすと玄関へ向かった……


フライゴン「 アシレーヌさん……どこに」


アシレーヌ「今日は近所のお友達とお茶会なの!」


フライゴン「そうなんだ……」


アシレーヌ「じゃあ、いってきまーす!」


フライゴン「い、いってらっしゃい……」


 ▼ 159 1◆v1GnTfaqxg 17/05/21 07:22:49 ID:XAvVcG5s [15/60] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告


玄関が閉まったと思ったら……すぐに開いた。


フライゴン「あれ? 忘れ物ですか?」


アシレーヌ「いえ……一つだけあなたに伝えなきゃいけない事が……」


フライゴン「え?」


アシレーヌはフライゴンに背を向けた……



アシレーヌ「いつもの家で……ガオガエンがあなたの事を待ってると思うの……」



フライゴン「え?……わ、わかりました」




 ▼ 160 1◆v1GnTfaqxg 17/05/21 07:26:40 ID:XAvVcG5s [16/60] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告

アシレーヌ「それじゃあ今度こそ、いってきまーす!」


アシレーヌは振り返ると、いつもの笑顔を見せた……


フライゴン「いってらっしゃい……」


アシレーヌは玄関の向こうに消えた。



フライゴン「……まだ頭が痛いけど……行くか」


フライゴンは立ち上がると、カバンを肩に掛けて玄関を出た……


 ▼ 161 1◆v1GnTfaqxg 17/05/21 07:29:50 ID:XAvVcG5s [17/60] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告


外へ出ると、フライゴンはいつもの道を歩いていく……



フライゴン「今日もいい天気だな……」



青空の下、フライゴンは大きく伸びした。



フライゴン「(あの三匹に会ってから俺、結構変わったよな……)」



風が吹き、フライゴンの頬を撫でる……



フライゴン「なんだかあの日、自殺しようとしていたのも嘘みたいだ……」



 ▼ 162 1◆v1GnTfaqxg 17/05/21 07:35:04 ID:XAvVcG5s [18/60] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告


気がつくと、目の前にはいつもの家……



フライゴン「着いた……」


フライゴンは呼び鈴を鳴らした……


ピンポーン……


すぐにガラス戸が開き、ガオガエンが出てきた。


ガオガエン「誰だ? ってお前か!」


フライゴン「どうも」


ガオガエン「ま、あがってけ!」



ガオガエンはフライゴンの背を無理矢理押して家に上げた……
 ▼ 163 1◆v1GnTfaqxg 17/05/21 07:40:12 ID:XAvVcG5s [19/60] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告


ガオガエン「昼になっても来ないから……今日は来ないのかと思ったぞ?」


フライゴン「ごめん、昨日飲み過ぎて……」


ガオガエン「ま、そう言う経験も大切だもんな! 仕方ねぇな!」



いつもの畳敷きの部屋に入ると、フライゴンは部屋を見渡したが……ジュナイパーの姿が無かった。


フライゴン「あれ? あのジュナイパーってポケモンは?」


ガオガエン「今日はジュナイパーは来ねぇよ。アシレーヌはお茶会だっけか?」


フライゴン「そう聞いたけど……」


ガオガエン「じゃ、今日は二匹きりって訳だな!」


フライゴン「あ……うん……(機嫌を損ねないようにしないと……この家が灰になるかも……)」

 ▼ 164 1◆v1GnTfaqxg 17/05/21 07:48:42 ID:XAvVcG5s [20/60] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告


ガオガエン「そうだ! お前とやろうと思って新しいゲーム買ってきたんだよ!」


フライゴン「?」


ガオガエンは隣の部屋から大きな箱を持ってきた。


ガオガエン「ほら、これ! 今話題のニンテンドーなんたらかんたらって言う新しいゲーム機だぞ! 一つあれば二匹でできるらしいからやろうぜ!」


フライゴン(なんたらかんたらって……スイッチの方が短くて言いやすいだろ……)

 ▼ 165 1◆v1GnTfaqxg 17/05/21 07:53:27 ID:XAvVcG5s [21/60] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告

ガオガエンは箱から本体を取り出すと、ブラウン管テレビにケーブルを接続しようとした……


ガオガエン「あれ? 刺さる穴がないぞ?」

フライゴン「テレビが古すぎてHDMIの端子がないみたいだな……」


ガオガエン「……仕方ない! ちっちゃい画面でやるか!」


ガオガエンはタブレットに取り付けられたら小さなコントローラーを外そうとした……


バキッ!


ガオガエン「あ」

フライゴン「あ」


ガオガエンはゲーム機を箱ごと隣の部屋にぶん投げた。


ガオガエン「ふ、不良品だったみたいだな! がは、がはは!!」


フライゴン「(もったいない……)」
 ▼ 166 1◆v1GnTfaqxg 17/05/21 07:58:57 ID:XAvVcG5s [22/60] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告

その時、フライゴンの腹が鳴った……

ぐうぅぅぅぅ……


ガオガエン「お! お前、腹が減ったのか?」


フライゴン「まぁ……朝ご飯も食べてないし……」

ガオガエン「そうか! じゃあラーメン作ってやるよ!」


フライゴン「え? ラーメン?」


ガオガエン「そうだ! 俺は昔、ラーメン屋だったんだ!」


フライゴン「(あ、そう言えば……)」


 ▼ 167 1◆v1GnTfaqxg 17/05/21 08:01:07 ID:XAvVcG5s [23/60] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告




二日前……


フライゴン「だ、大丈夫って言うより……借金を肩代わりしてくれたのか?」


ガオガエン「気にするな! 貯金はそこそこあるからな!」


アシレーヌ「ガオガエンは若い頃にラーメン屋で一発当ててるからお金の心配はいらないわよ!」


ジュナイパー「……」





 ▼ 168 1◆v1GnTfaqxg 17/05/21 08:03:59 ID:XAvVcG5s [24/60] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告



フライゴン「(そう言えば……そんな事言ってたっけ……)」


ガオガエン「ま、そこで待っててくれ」


フライゴン「うん」



ガオガエンは腕をブンブン振り回しながらキッチンへ向かった……





 ▼ 169 1◆v1GnTfaqxg 17/05/21 08:13:31 ID:XAvVcG5s [25/60] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告



ガオガエンがキッチンに向かって数分後……



何やらおいしそうな匂いがしてきた……


ぐうぅぅぅぅ……


フライゴンは先程から鳴り続けている腹をさすった……


フライゴン「まだかな……」



 ▼ 170 1◆v1GnTfaqxg 17/05/21 08:17:01 ID:XAvVcG5s [26/60] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告


そして、さらに数分たって……ついに、ガオガエンがどんぶり片手に部屋に入ってきた。


ガオガエン「醤油ラーメンおまち……ってな!」


フライゴン「やっとか……長かった……」


ガオガエンがフライゴンの前にどんぶりを置いた。


どんぶりからあがる湯気がフライゴンの鼻に入り、食欲を誘う……


ガオガエン「ほら、のびる前に食え!」


フライゴン「うん、いただきます!」
 ▼ 171 1◆v1GnTfaqxg 17/05/21 08:22:28 ID:XAvVcG5s [27/60] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告



フライゴンは勢い良く麺を啜った……


すると、なんとも言えない味が口の中いっぱいに広がった……


油の味しかしないスープ……


こしのないべちゃべちゃの麺……


まずい、まずすぎる……!









 ▼ 172 1◆v1GnTfaqxg 17/05/21 08:25:04 ID:XAvVcG5s [28/60] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告

フライゴン「ぶふぉあ!!」


突然フライゴンはむせて、鼻から麺を垂らしながらその痛みに悶え出した……


ガオガエン「どうだ? まずいだろ?」


フライゴン「な!? ま、まずいってわかっててたべさせたのかよ!! げほっ!!」


フライゴンはむせ続けている……




 ▼ 173 1◆v1GnTfaqxg 17/05/21 08:30:45 ID:XAvVcG5s [29/60] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告

ガオガエン「まぁな!」


フライゴン「まぁな! じゃねぇよ!! ラーメン屋で一発当てたんじゃねぇのかよ!!」


ガオガエンはその言葉に少し、悲しそうな顔をした……


ガオガエン「……なぁ……少しじじぃの昔話に付き合ってくれないか?」


フライゴン「……?」


 ▼ 174 1◆v1GnTfaqxg 17/05/21 08:41:42 ID:XAvVcG5s [30/60] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告

ガオガエンは寝転がると……天井を見上げながら語り出した……


ガオガエン「若い頃の俺の夢……それは、世界一のラーメン屋になる事だった……」


フライゴン「世界一のラーメン屋?」


ガオガエン「ああ……だから青春の全てを犠牲にして、若いころからずっと、近所で評判のラーメン屋でバイトをしながら修行を重ねてきたんだ……」


フライゴン「どれくらいバイトを?」


ガオガエン「どれくらいだろうな……やっと店を建てる金が貯まった頃にはもう、おっさんになっていたよ……」

 ▼ 175 1◆v1GnTfaqxg 17/05/21 08:48:06 ID:XAvVcG5s [31/60] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告

ガオガエン「そして、ついに自分のラーメン屋を建てたって訳だが……最初は新しい店って事もあってそこそこ盛り上がってたってのに、すぐに客が全く来ない日が続くようになったんだ……」


フライゴン「それって……ラーメンがまずいからじゃ……」


ガオガエン「そうなんだよ……当時の俺はそれに気がついていなかった……でも、突然その波はやってきた……」


フライゴン「波?」


ガオガエン「ある日、ふらりとやってきた学生が、激マズラーメン屋ってネットに投稿したらしくてな……そこから急激に話題になって、テレビや雑誌まで取材に来る始末……それからは、怖いもの見たさに客が毎日行列を作った……」


フライゴン「こんなラーメンに行列!?」


ガオガエン「ああ……しかも、中にはこのまずさが癖になったリピーターまでいた……」

 ▼ 176 1◆v1GnTfaqxg 17/05/21 08:52:23 ID:XAvVcG5s [32/60] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告


フライゴン「とんでもない話だな……」


ガオガエンは体を起こして座り直した。


ガオガエン「と、言う訳で……俺はある意味世界一のラーメン屋になった……ある意味夢を叶えたんだ……」


フライゴン「あれ? でも……ガオガエンは夢を諦めたって……」






 ▼ 177 1◆v1GnTfaqxg 17/05/21 08:53:46 ID:XAvVcG5s [33/60] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告






あの日……



ガオガエン「ああ、まだ話してなかったか……俺達三匹はな、『夢を諦めた者の会』の仲間なんだ」


フライゴン「夢を……諦めた?」






 ▼ 178 1◆v1GnTfaqxg 17/05/21 09:01:09 ID:XAvVcG5s [34/60] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告
ガオガエン「そうだ。俺は、世界一の(まずい)ラーメン屋になった。中途半端な結果に俺自身が認めてないだけで、ある意味俺は夢を叶えている……あいつらにはずっと嘘をついてたようなもんだ……」

フライゴン「……」


ガオガエン「なぁ、フライゴン」

フライゴン「?」


ガオガエン「世界ってのは何が起こるかわからねぇ……こんなにまずいラーメンが他のうまいラーメンよりも流行っちまう様な世の中だ……だからよぉ……お前も諦めないで、夢に向かって突っ走って欲しいんだよ」

フライゴン「夢……」

ガオガエン「俺は……お前なら、俺と違って中途半端じゃなくて、思い描いた夢を100%実現できる様な気がするんだ……いや、出来る!」

フライゴン「俺には……そんな事……」

ガオガエン「出来るって言ってるだろ? 信じろ!……そして……」


ガオガエンがフライゴンの両肩を掴んだ。



ガオガエン「信じさせてくれ」



 ▼ 179 1◆v1GnTfaqxg 17/05/21 09:04:46 ID:XAvVcG5s [35/60] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告

フライゴン「……」


ガオガエン「へっ……言いたい事はそれだけだ……これをお前に伝える事が出来て良かった……」


その時、呼び鈴が鳴った……


ピンポーン……


ガオガエン「お、来たみたいだな」


ガオガエンが玄関の方へ歩いて行き……ピザの箱持って帰ってきた。


ガオガエン「ほら、昼飯にピザ頼んでたんだ! 口直しに一緒に食おうぜ!」


フライゴン「……うん」



 ▼ 180 1◆v1GnTfaqxg 17/05/21 09:07:55 ID:XAvVcG5s [36/60] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告






なんだか、今日のガオガエンの様子は……いつもと違った気がした……




なんて言うか……まるで、俺の事を送り出してくれてるかの様な……




でも、その笑顔だけはいつも通り、豪快で……頼もしかった……




そんなこんなで……気がつくと、夜になっていた……




 ▼ 181 1◆v1GnTfaqxg 17/05/21 09:09:34 ID:XAvVcG5s [37/60] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告


フライゴン「もう夜か……」


ガオガエン「今日は俺の遊び相手をしてくれてありがとな」


フライゴン「なんでそんなに改まって……?」


ガオガエンは照れくさそうに笑った。


ガオガエン「いや、なんでもねーよ」


フライゴン「……?」
 ▼ 182 1◆v1GnTfaqxg 17/05/21 09:12:27 ID:XAvVcG5s [38/60] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告


ガオガエンは縁側に広がる暗闇を眺めた……


ガオガエン「そろそろ……帰らないのか?」


フライゴン「今日はどうしようかな……」


ガオガエン「帰らないのか?」


フライゴン「……帰ってほしいのか?」


ガオガエンは少し寂しそうな顔をした……


フライゴン「寂しいならもう少しだけ……」


ガオガエン「寂しくなんかねぇよ! ほら! 帰れ帰れ!」


フライゴン「え?」


ガオガエンは玄関までフライゴンを押していった……
 ▼ 183 1◆v1GnTfaqxg 17/05/21 09:16:05 ID:XAvVcG5s [39/60] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告


玄関……


フライゴン「今日はピザとまずいラーメンごちそうさまでした」


ガオガエン「まずいラーメンは余計だ!」


フライゴン「ふふ……」

ガオガエン「へへっ!」

二匹は顔を見合わせて笑った。


ガオガエン「じゃ、気をつけて帰れよ」


フライゴン「わかってる……じゃあ、また明日……」


ガオガエン「また明日……」


フライゴンはしばらくフライゴンの消えた暗闇を見つめて立ち尽くしていた……

 ▼ 184 1◆v1GnTfaqxg 17/05/21 09:18:57 ID:XAvVcG5s [40/60] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告


ガオガエン「また明日……か……」


そう呟いたガオガエンが玄関のガラス戸を閉めようとしたその時……


?「全部伝える事はできたんか?」

ガオガエン「誰だ……?」


 ▼ 185 1◆v1GnTfaqxg 17/05/21 09:21:36 ID:XAvVcG5s [41/60] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告


暗い庭の茂みからザングースが現れた……


ガオガエン「っ!……お前は……」


ザングース「じいさん、酒は好きか?」


ガオガエン「……好きだ」


ザングースはニヤリとすると、背負ったカバンから大きな一升瓶を取り出した……


ザングース「いい酒があるんや……一杯やろうや……」


ガオガエン「けっ……気が利くじゃねぇか……」


 ▼ 186 1◆v1GnTfaqxg 17/05/21 09:26:11 ID:XAvVcG5s [42/60] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告

空に上った大きな満月だけが照らす、薄暗い縁側……

二匹は並んで座り、酒を呑んでいた……



ザングース「じいさん……」

ガオガエン「……なんだ?」


ザングース「昨日隠れてじいさんの話を聞いとったんやが……じいさん、先が長くないらしいな……」

ガオガエン「盗み聞きしてたのか……やっぱりお前はクズだな……」


ザングース「うっさいわ……んで、じいさん……フライゴンとこんな別れでええんか?」


ガオガエンは空高く昇った大きな満月を見つめた……


ガオガエン「……いいんだ……あいつには全てを伝えたつもりだ……」


ザングース「……」
 ▼ 187 1◆v1GnTfaqxg 17/05/21 09:31:45 ID:XAvVcG5s [43/60] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告

ガオガエンは酒を啜った……


ガオガエン「別に……長生きしたかった訳じゃなかった……だからあの日、手術を断った……」



静かな夜の風が二匹の間を吹き抜けた……



ガオガエン「あの時は満足していた……長生きなんてしたくもないし、病院のベッドで寝転がってる位なら、アシレーヌやジュナイパーと一緒にいた方が楽しいって思ってたからな……」


ガオガエン「でも、今の俺は違う……」


ザングース「あいつの事が気になるんやろ?」



ガオガエン「ああ……俺はあいつが……フライゴンがしっかりやれるか心配なんだよ……俺が支えてやらねぇと……俺がいねぇとあいつは……」

 ▼ 188 1◆v1GnTfaqxg 17/05/21 09:34:12 ID:XAvVcG5s [44/60] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告


ザングース「心配性だな、じいさん……」


ザングースはガオガエンの肩に手を置いた……


ザングース「そんなに心配せんでも、あいつはやってける。それに、じいさんがおらんくなってもわいがあいつの事を見といたるから……」


ガオガエンはまた、月を見つけながら呟いた……



ガオガエン「……頼んだぞ」

ザングース「おう、任しとき」

 ▼ 189 1◆v1GnTfaqxg 17/05/21 09:37:37 ID:XAvVcG5s [45/60] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告

その時、ガオガエンの手から酒の入った杯が落ちた……


パリン……


杯は庭に転がり落ちて割れた……



ガオガエン「……どうしてだ? 今日の月は……丸くないな……グニャグニャしてやがる……」


ザングース「……そうか……じいさんにはそう見えるか……」


ザングースはガオガエンに酒の入った瓶を持たせた。


ザングース「残りは向こうに行ってから呑むとええわ……」


ザングースは立ち上がると、黙って歩き出し……暗闇に消えた。



 ▼ 190 ソクムシャ@ぎんのおうかん 17/05/21 09:38:22 ID:N8TsuwZ6 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 191 1◆v1GnTfaqxg 17/05/21 09:40:20 ID:XAvVcG5s [46/60] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告


その頃、アシレーヌは小さな明かりが照らす夜の小道で一匹たたずんでいた……


アシレーヌ「……」


アシレーヌは空を見上げた……


大きな月と……その周りに小さな星々がきらめいている……


アシレーヌ「ガオガエン……またね……」


アシレーヌは目に浮かんだ涙を拭った……

 ▼ 192 1◆v1GnTfaqxg 17/05/21 09:43:53 ID:XAvVcG5s [47/60] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告

同じ頃、とある公園のベンチ……一匹のポケモンが月明かりの下、小説を読んでいた……



ジュナイパー「……」


ジュナイパーは読み終えた小説を閉じると空を見上げた……


大きな満月がジュナイパーの瞳に映りこむ……


ジュナイパー「……もう、行ってしまったのか?」



他に誰もいない公園……ジュナイパーは立ち上がるとゆっくりと、暗い夜道を歩き出した……
 ▼ 193 1◆v1GnTfaqxg 17/05/21 09:45:55 ID:XAvVcG5s [48/60] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告



その頃、フライゴンはアパートの階段を登っていた……


フライゴン「……ん?」


フライゴンはふと、空を見上げた……


フライゴン「……」


フライゴンは視線を前に戻し、また一方ずつ、階段を登っていった……
 ▼ 194 1◆v1GnTfaqxg 17/05/21 09:49:34 ID:XAvVcG5s [49/60] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告


月明かりが照らす縁側……


ガオガエン「……」


ガオガエンは近くの柱にふらりともたれかかった……


ガオガエン「……アシレーヌ……ジュナイパー……それに、フライゴン……」


ガオガエンはふっと笑うと……力無く腕を下ろし、まぶたを閉じた……


ガオガエン「……」




いつも通りの夜の町の片隅で……一つの命が……



続く
 ▼ 195 1◆v1GnTfaqxg 17/05/21 09:51:39 ID:XAvVcG5s [50/60] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
第四話 おしまい

やっぱりいけそうなんで多分夜にもう一話書きます。


では
 ▼ 196 シマリ@ノーマルZ 17/05/21 09:54:11 ID:.68QatAk NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援

ガオガエンのラーメン屋ってこれか
http://pokemonbbs.com/post/read.cgi?no=538560
 ▼ 197 ャローダ@くろいヘドロ 17/05/21 10:04:47 ID:qQ8TL1E2 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 198 ョロゾ@トライパス 17/05/21 10:05:36 ID:zy7L64U. NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
この人工作もできてSSも書けるなんて……
支援です
 ▼ 199 ゲツケサル@かたいいし 17/05/21 10:09:48 ID:LRaxZYZc NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
冒頭が東京テディベアっぽいな
支援
 ▼ 200 バメ@しんぴのしずく 17/05/21 11:05:07 ID:DfMfcudA NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
(・大・)<泣いた
支援
 ▼ 201 ニューラ@くろいヘドロ 17/05/21 11:49:08 ID:xGqSHkcE NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
なんかザングースしかり過去作キャラを彷彿とさせるな
支援
 ▼ 202 タフリー@エレキシード 17/05/21 12:24:50 ID:ke7eN.EI NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
やはりあのスレの作者だったか
ガオガエンが大山当てて色々だから前作のアイツが結婚した頃かな?
 ▼ 203 ザリガー@だっしゅつボタン 17/05/21 14:02:17 ID:GIH5oTgU [2/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 204 1◆v1GnTfaqxg 17/05/21 21:33:04 ID:XAvVcG5s [51/60] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告


あれから数日たった日の夕方……


夕日の照らすあの部屋……三匹はコタツを囲んでいた……


フライゴン「……」


フライゴンはあれからずっと元気がない……


ジュナイパー「……」


ジュナイパーも先ほどから何度も小説を開くが……すぐに閉じて、読むことをやめてしまう……


アシレーヌ「……寂しくなっちゃったね」

フライゴン「……うん」

ジュナイパー「……」


あれから数日間、三匹はガオガエンの葬式や火葬などを済ませてクタクタになっていた……
 ▼ 205 1◆v1GnTfaqxg 17/05/21 21:34:16 ID:XAvVcG5s [52/60] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告










第五話  残された者、それぞれの思い








 ▼ 206 1◆v1GnTfaqxg 17/05/21 21:36:32 ID:XAvVcG5s [53/60] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告


アシレーヌ「お葬式も火葬も終わって……これで、やる事は全部終わったのよね」


ジュナイパー「……」

ジュナイパーが頷いた。


部屋の中にあったガオガエンの私物は、殆どダンボール箱に詰め込まれている……

 ▼ 207 1◆v1GnTfaqxg 17/05/21 21:39:42 ID:XAvVcG5s [54/60] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告

フライゴン「……俺が早く気づいていれば……もっと一緒にいれたのに……」


フライゴンの目から涙が溢れた……


アシレーヌ「フライゴン君……」

ジュナイパー「……」


その時、ジュナイパーが立ち上がり、隣の部屋に入っていった……


アシレーヌ「?」


すぐに帰ってきたジュナイパーの手には……白い封筒が掴まれていた。



 ▼ 208 1◆v1GnTfaqxg 17/05/21 21:43:17 ID:XAvVcG5s [55/60] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告


アシレーヌ「ジュナイパー、それは?」


ジュナイパーはフライゴンの隣に座ると、その封筒をフライゴンに差し出した……


フライゴン「……?」


フライゴンが涙を拭い、その封筒を見ると……そこには『遺書』と書かれていた。


フライゴン「遺書……」



フライゴンはジュナイパーからその封筒を受け取ると、中に入った遺書を取り出した……



 ▼ 209 1◆v1GnTfaqxg 17/05/21 21:47:02 ID:XAvVcG5s [56/60] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告


遺書


先は長くないってわかっているから、今のうちに遺書って物を書いておこうと思う。

その方が色々と楽だって言うもんな!


フライゴンはともかく……アシレーヌとジュナイパーには伝える事は先に全部伝えてある……つもりだ。

俺が死ぬ時は……なんか恥ずかしいから一匹にしてくれ……とか、まぁ色々……


だから、この遺書にはフライゴンに伝えるべき事を書いておく。
 ▼ 210 1◆v1GnTfaqxg 17/05/21 21:52:10 ID:XAvVcG5s [57/60] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告

まずはあの家の事。

お前達がいつも集まってるあの家なんだけど……あれ、実は俺の家なんだ。


アシレーヌもジュナイパーも、俺と同じで先は長くねぇんだよなぁ……


どうせ俺には家族なんていねぇしよ……良かったら、お前が貰ってくれ。


ボロい家だけど、今のアパートよりは広いだろ?


あと、金も欲しい物も好きなだけ貰ってくれ。


金は隣の部屋の金庫にしまってある……

あと少しは貯金してあったはずだから……お前の夢の実現にでも役立ててくれ。



あ、鍵はさしっぱなしにしておくからな!  
 ▼ 211 1◆v1GnTfaqxg 17/05/21 21:55:01 ID:XAvVcG5s [58/60] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告

……まぁ、これくらいでいいだろ。久しぶりに字を沢山書いて疲れてきたし……


あ、それと最後に一つだけ……


フライゴン、お前まさか泣いてないよな?


出会いがあるから別れがあるんだぜ?


お前は俺と出会った時点でこうなるって決まってたんだよ。



だから、泣くんじゃねぇよ……





 ▼ 212 1◆v1GnTfaqxg 17/05/21 21:57:46 ID:XAvVcG5s [59/60] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告

おい! アシレーヌ! ジュナイパーも! お前らもだぞ! 泣いてないだろうな?


俺はしんみりとしたのがあんまり好きじゃねぇんだよ! 付き合い長いからその位わかるだろ!



だから……最後の最後くらい、笑って送ってくれ……

そしたら俺も、笑って向こうに行けるから……



じゃあな、フライゴン、アシレーヌ、ジュナイパー……

お前達と会えて本当に楽しかったぜ!   


ガオガエン
 ▼ 213 1◆v1GnTfaqxg 17/05/21 22:00:46 ID:XAvVcG5s [60/60] NGネーム登録 NGID登録 [s] wf 報告


フライゴンは涙を腕で拭った。


フライゴン「別に……泣いてなんかないし……」

アシレーヌ「本当、ガオガエンったら……」

ジュナイパー「……あいつらしいな」





フライゴン「えっ!? 今、ジュナイパーが喋った!?」

ジュナイパー「!?」

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