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SS

レッド「メガシンカ……か……」ミヅキ「余っちゃった」

 ▼ 293 mTQB7XkZdk 18/09/12 20:39:43 ID:S6LEZz.E [1/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
リザードンは、激しくも美しく踊り……ついに、《りゅうのまい》を完成させた!

リザードンの【こうげき】と【すばやさ】のステータスが、上がる……!

「リザァァァァァッ……!」

極限まで戦意が満ちた黒竜は、眼前のメガヤンマを“獲物”として認識する。

獲物は狩人にとって、喰らい尽くすべき対象。

逃すことなく、骨の髄まで……!

……この破壊衝動は、カルムの引く引き金によって開放される!

「リザードン、《ニトロチャージ》」

「さあ……暴れて来いッ!」

「リザァッ!」

……その時。

「……ヤンマ……ッ?」

メガヤンマは、リザードンの姿を捉えることが……。


「リザァァァッ!!」


……出来なかった。
 ▼ 294 mTQB7XkZdk 18/09/12 20:40:21 ID:S6LEZz.E [2/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
「――ヤンマァァァッ!?」

その速度は、戦闘機にも勝る……!

一筋の黒い流星がメガヤンマを捉えた時、次の瞬間彼を襲ったのは凄絶なる焔の衝撃だった。

体がへし折れ、大きく吹き飛ばされるメガヤンマ。

やがて彼は背面の床に激突し、砂煙を撒き散らしながら地に陥没する。

その攻撃は、一瞬にして絶大。

更に《ニトロチャージ》の特殊効果が発動……リザードンの【すばやさ】が更に上がる。

「メガ……ヤンマ……!?」

ゴールドには最早、今の攻防を目視することすら叶わなかった。

リザードンがどのように動き、どのようにメガヤンマに攻撃を仕掛けたのかもまるで把握できていない。

リザードンはそんな困惑する彼をただ静かに見下ろすのみであったが……。

「……リザァ」

……この時リザードンは、確信を伴って勝ち誇ったのだった。

「ヤ……ヤン……マ……ッ!」

元々が虫である彼に“虫の息”なんて言葉を使うのはやや間違いがあるだろうが、今の彼の状態はまさにそんな感じであった。
 ▼ 295 mTQB7XkZdk 18/09/12 20:41:02 ID:S6LEZz.E [3/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
しかし致命的なダメージを受けてもなお、メガヤンマは何とか余力を振り絞って瓦礫を掻き分け起き上がる。

圧倒的な力の差を見せつけられたにも関わらず、メガヤンマは未だその闘志を絶やさないでいた。

「リザァ……」

対してリザードンの眼差しは、彼が持つ炎の属性とは対照的に実に冷ややかなモノである。

その冷酷な瞳に映るメガヤンマは彼にとっては単なる“獲物”でしかない。

先程までゲッコウガが苦戦していたハズの強敵をも遥かに凌駕する力をリザードンが手に入れた後の攻防は、まさに圧倒的であった。

このフィールドの強者の領域が、あっという間にアーゴヨンからリザードンのモノへと変わる……。

「もう一度だ……やれ、リザードンッ!」

「……リザァッ!」

……主に従い、リザードンはトドメの《ニトロチャージ》を発動。

黒き体に紅蓮のオーラを憑依させ、刹那、神速が如し超突進を……仕掛けた!

「リザァァッ!!」


「――ヤァァァマッ!!?」


――直撃!

「メ……メガヤンマァーッ!」
 ▼ 296 mTQB7XkZdk 18/09/12 20:42:34 ID:S6LEZz.E [4/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
ゴールドの叫びが、湧き上がる歓声に一筋の亀裂をもたらす。

しかしその呼び声は虚しく弾け散り……。

「ヤ……マ……ッ」

……火だるまになって転げ落ちたメガヤンマは、やがて完全にその力を失ってしまう。

火は燃え尽き、硝煙が漂い、残ったのは黒焦げの蜻蛉。

目を回し、【ひんし】の状態異常に陥ってしまう。

メガヤンマの戦いに今、ピリオドが打たれた。

よって……!

「……メガヤンマ、戦闘不能!」

……リザードンの勝利である!

「リザァ……!」

これぞ、圧倒的強者が織り成す蹂躙劇。

天下無双の蒼炎黒竜・メガリザードンX……主の勝利を確定させし王者!

何者も彼の覇道を阻むことは出来ないのか……!?
 ▼ 297 ランセル@ねらいのまと 18/09/13 19:17:53 ID:qXYoBwnQ NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援!
 ▼ 298 mTQB7XkZdk 18/09/13 21:22:42 ID:DA1YcTT. [1/12] NGネーム登録 NGID登録 報告
――ゲッコウガの意志を継いで参戦したメガリザードンXの活躍は、まさに快進撃と呼んで差し支えない程圧倒的なモノだった。

リザードンは、あれだけ素早かったメガヤンマの速度を一瞬にして追い抜き、たった二発の《ニトロチャージ》で彼を鎮める。

一方で、カルムとリザードンにリードを奪い返されてしまったゴールドは、リザードンのその無類の強さに思わず息を飲んでいたのだった。

「つ……強い……ッ!」

ゴールドはその彼の卓越した実力を前に、既に狼狽しかけている。

これが、カロスチャンピオンの本気なのか。

ゴールドは、カルム達がこの地方の覇者である“所以”を見せつけられた。

この絶対的な力を持つ竜王を前に、ゴールドは次にして最後のポケモンを誰にするのだろうか。

「……どうだ、オーダイル」

「お前から見てあのリザードンは……勝てる相手か」

ゴールドは、自身が今も連れ歩いているオーダイルに対してそんな問いを投げかけてみる。

するとオーダイルは……。

「……オウダッ!」

……まず、両拳を気合十分にぶつけ合った。

そして次に、ニヒルな笑みを浮かべ……。

……そして、最後には。
 ▼ 299 mTQB7XkZdk 18/09/13 21:23:16 ID:DA1YcTT. [2/12] NGネーム登録 NGID登録 報告
「オダァッ!」

威勢良く、自信満々の声を……高らかに張り上げた!

「……聞くまでも無かったか」

ゴールドは知っている。

彼ならば必ず、どんな強敵にも果敢に立ち向かい、そして勝利を収めてくれると。

ゴールドが率いる仲間達の中で最も白星が多いのは、ダントツでこのオーダイルだ。

かつてゴールドがジョウト地方やカントー地方を旅をしていた時でも、このオーダイルは何度も彼のピンチを救ってきた。

このオーダイルはゴールドの最大の相棒であり、最強の……“救世主”なのである。

「よしッ!」


「いけ! ……《オーダイル》ッ!」


ゴールドは人差し指を突き出し、彼に出陣を命じた。

そして満を持して登場するのは、大顎を携えし激流の猛者。

その強靭な牙で如何なるモノも噛み砕き、力ずくで縄張りを死守する。

更に牙だけでなく、後ろ足の筋肉もまた半端なく強い。

彼が一度地面を蹴ればそこは抉り返され、彼が駆け抜ければその大地には裂け目が出来上がる。
 ▼ 300 mTQB7XkZdk 18/09/13 21:24:38 ID:DA1YcTT. [3/12] NGネーム登録 NGID登録 報告
ジョウト地方御三家の一角……水の使い手の、《オーダイル》!

「オダァァイルッ!」

二足歩行のワニが、眼前に立つ黒竜に向かって威嚇の咆哮をあげた。

対する黒竜は、その静かなる強者の風格を崩す気配を全く見せない。

相まみえる双方の間に、早くも一触即発の空気が流れる……。

「……カルム」

「ゴールド君のオーダイルは、これまで彼が使ってきたどのポケモンとも比較にならないくらい強い」

「そのことは俺がその名に賭けて断言できる……気をつけろ」

……レッドは知っている。

ゴールドが使うオーダイルには、比類なき強さが秘められていることを。

何故なら彼もまた、かつて……あのオーダイルによって倒された者の一人だからだ。

ゴールドのパーティの中でも、あのオーダイルだけは飛び抜けた実力を有している。

レッドはあのオーダイルに、自分の最強だったハズの仲間達を撃破された。

あれから数年が経った今、オーダイルが更に腕を上げているとすれば……彼がこの戦場で巻き起こす活躍の程度は計り知れない。

「……相手がどんな奴だって、俺達は油断なんてしない」

「だが……その忠告は有り難く受け取っておくぜ。レッド」
 ▼ 301 mTQB7XkZdk 18/09/13 21:25:09 ID:DA1YcTT. [4/12] NGネーム登録 NGID登録 報告
カルムはレッドに礼を言った後、目線を再びオーダイルに移す。

確かに彼の言う通り、あのオーダイルからは明らかに別次元のオーラが漂っている。

一筋縄ではいかない感じが……プンプンしている……!

「……オーダイル、《りゅうのまい》!」

「オダァッ!」

ゴールドの先手は、カルムのリザードンの初手と同じく《りゅうのまい》。

使用ポケモンの【こうげき】と【すばやさ】を上昇させる、ドラゴンポケモン秘伝の奥義だ……!

「悪いが、パクって貰っては困るな……!」

「リザードン、《ドラゴンクロー》!」

対するカルムは、猿真似はするなとばかりに妨害の一手を講じる。

《りゅうのまい》はもたらす効果こそデカいが、反面、相手に見せる隙もまたデカい。

先程のリザードンのような規格外のパターンは例外として、普通は発動させるタイミングが重要となる技だ。

このように妨害されてしまうと、折角パワーアップを遂げてもその間に受けたダメージが致命的になってしまう場合が多い……。

……のだが。

「――ゴー君の邪魔はさせないよっ!」

「アーゴヨン、リザードンに《りゅうのはどう》!」
 ▼ 302 mTQB7XkZdk 18/09/13 21:25:46 ID:DA1YcTT. [5/12] NGネーム登録 NGID登録 報告
「ブォァァッ!」

……その妨害を更に妨害することによって、何の代償も伴わず《りゅうのまい》を完成させることが出来る。

これがダブルバトルの特色の一つだ……!

「……リザッ!?」

〔ドラゴン〕タイプの《りゅうのはどう》は、同じく〔ドラゴン〕タイプのメガリザードンXに対して効果抜群。

直撃を受ければ、いくらカルムのリザードンでもタダでは済まない。

リザードンは反射的に《りゅうのはどう》をかわし、事なきを得たが……結局、オーダイルの《りゅうのまい》を阻止することは出来なかった。

「――オダァァァァアアアッ!!」

吹き荒れる竜巻、風の流れにて迸る赤黒い稲妻。

オーダイルは〔ドラゴン〕のタイプこそ持ってはいないが、彼の内に秘められし竜の遺伝子が、彼にこの舞を踊らせる。

古の竜の極意……《りゅうのまい》が、ついに終結を迎えた……!

オーダイルの【こうげき】と【すばやさ】が、上がった!

「くっ……!」

苦渋のあまり言葉を詰まらせるカルム。

尤も、【こうげき】一段階、【すばやさ】に至っては三段階上昇しているリザードンに比べればステータス上昇値自体はオーダイルはリザードンに遅れを取っている。

だがそれでも、【こうげき】のステータスは肩を並べている以上、一撃一撃の重さは双方共に凄まじい。
 ▼ 303 mTQB7XkZdk 18/09/13 21:26:23 ID:DA1YcTT. [6/12] NGネーム登録 NGID登録 報告
リザードンの方が【すばやさ】が遥かに勝っているとはいえ、安心は決して出来ない。

先程のようにアーゴヨンが妨害をしてくるなら尚更だ。

「君の相手は俺達だ……アーゴヨンッ!」

「ピカァッ!」

アーゴヨンについては、レッドとピカチュウに任せる他ない。

今カルムとリザードンが最も注意を向けるべきは……このオーダイルだ!

「リザァ……!」

「オダァ……!」

二匹の戦いの火蓋が、今……切って落とされる!


「――リザァァァァァッ!!」

「――オダァァァァァァッ!!」


――吠えた両者の距離は一気に喰らい尽くされ。

黒と蒼の拳は交差する。

重なり合った衝撃に互いが怯むことは無い。
 ▼ 304 mTQB7XkZdk 18/09/13 21:26:53 ID:DA1YcTT. [7/12] NGネーム登録 NGID登録 報告
「リザァァッ……!」

「オダィル……ッ!」

二匹の攻撃力は同等……!

「……リザァァッ!」

次にリザードンが繰り出したのは、その鋭さを極めし竜の刃……《ドラゴンクロー》。

ここでメガリザードンXの特性《かたいツメ》が発動。

直接攻撃の技の威力が三割アップ……!

「リザァァァドッ!」

その速度は隼をも遥かに凌駕する。

電光石火の一撃は、誰の目から見ても不可避に思われた。

だが……。

「……ダァィル……!」

……オーダイルは、なんとこれを……かわしてしまった!

「リザッ……!!」

リザードンが振り下ろした竜爪が斬り裂いたのは虚空。

オーダイルはあの一瞬で、リザードンのすぐ側方にまで回避を遂げていた。
 ▼ 305 mTQB7XkZdk 18/09/13 21:27:51 ID:DA1YcTT. [8/12] NGネーム登録 NGID登録 報告
この時オーダイルが真価を発揮したのは、単純な速度ではなく、“五感”。

……つまりオーダイルは、己の野生的な“感覚”を駆使して、リザードンの速攻を避け切ったのだ。

敵を直接目で追うのではなく、心の目で感じ取る。

類稀なる才能と、人並み……いやポケ並みならぬ努力があってこそ成せる戦いの極意だ。

「オダァァイルッ!」

そして次の瞬間、オーダイルが放ったのは《アクアジェット》という技。

〔みず〕タイプの技で、相手よりも必ず先制して攻撃できる。

オーダイルは目にも止まらぬ動きで、水を纏った突進攻撃をリザードンに仕掛けた……!

「リ……ザァッ!」

リザードンはメガリザードンXにメガシンカしたことで〔ドラゴン〕タイプを得ている為、〔みず〕タイプの技は弱点では無くなっている。

しかしそれでも、彼を牽制する一手としては十分の威力を《アクアジェット》は持っていた。

そしてそこからオーダイルは更なるコンボを繋げる。

「オダァァイルッ!!」

次の攻撃は、滝を昇るが如く勢いで敵に猛烈な体当たりをする強力な技……《たきのぼり》だ!

そしてこの瞬間、オーダイルの特性《ちからずく》が発動……技の追加効果が無くなる代わりに、技の威力が三割アップ!
 ▼ 306 mTQB7XkZdk 18/09/13 21:28:32 ID:DA1YcTT. [9/12] NGネーム登録 NGID登録 報告
「……リザァァッ!」

しかしリザードンは飛翔して、その攻撃をギリギリのところでかわした。

「オダァイッ!」

だがオーダイルは次の瞬間、床が陥没してしまうくらいに地面を強く蹴り、垂直に跳躍した。

そしてなんとオーダイルは、空を飛ぶリザードンをその跳躍の力だけで追跡してみせる……!

……水流を纏いながら重力に逆らうその姿は、まさに“鯉の滝登り”。

翼を持たずして空中戦に参戦するイレギュラーに対し、リザードンはしかしそれを面白く思ったのか、ニヤリという不敵な笑みを浮かべた。

リザードンはオーダイルの《たきのぼり》に対し、今度は回避ではなく技で対抗する。

そんな温い水如き蒸発させてやる……とばかりにリザードンが次の瞬間その身に宿したのは、猛炎の闘気。

発動の度に使用者を加速させる〔ほのお〕タイプの必殺技……《ニトロチャージ》!

水と炎の相反する二属性が、鍔迫り合いを始める!

「……リザァッ!」

「オダァァッ……!」

だが、これも互角だ。

互いの渾身の突進がぶつかり合ったが、その衝撃によって散ったのは水飛沫と火の粉だけ。

ここで《ニトロチャージ》の効果発動……リザードンの【すばやさ】ランクがもう一段上がる。
 ▼ 307 mTQB7XkZdk 18/09/13 21:29:01 ID:DA1YcTT. [10/12] NGネーム登録 NGID登録 報告
だがこのオーダイルを前にしてそのステータスは最早飾りと同然。

今ここで本当に競われるのは、双方が持つ単純な“力”だ。

……やがて跳躍の力が限界に達したオーダイルは、残りの滞空時間を降下で過ごす。

それを追うリザードンは、次なる《ドラゴンクロー》の構えに移っていた。

やがてオーダイルが地に降り立った時、彼の眼前に迫っていたのは竜の鋭爪。

鮮烈なる蒼の輝きに満ちたその一撃は、オーダイルに直撃する……!

「……オダァッ!」

……だがオーダイルは寸前のところで腕を前方にクロスさせ、これをガードしてしまった。

威力は大幅に軽減され、オーダイルの体をほんの少し後ろに突き動かす程度に留まる。

ここまでの攻防は、一進一退の繰り返しといったところ。

互いのレベルは既に常軌を逸しているが、それでいて同格。

故に、想像を絶する凄まじい戦いであると同時に、均衡が保たれた戦闘でもある。

しかしその均衡に、この少年……ゴールドは。

「……流石ですね、カロスチャンピオン」


……異を唱える。
 ▼ 308 mTQB7XkZdk 18/09/13 21:29:31 ID:DA1YcTT. [11/12] NGネーム登録 NGID登録 報告
「だけど、僕達だって負けられません」

「僕もオーダイルも、勝つ為なら――」


「――何だってやるッ!」


……“一石”を、投じる!


「……オーダイル」

「《りゅうのまい》、《アクアジェット》……」


「……同時発動ッ!!」
 ▼ 309 mTQB7XkZdk 18/09/13 21:29:52 ID:DA1YcTT. [12/12] NGネーム登録 NGID登録 報告
……ゴールドのその指示が会場に響き渡った時。

カルムは一瞬、瞠目のあまり意識が飛んだ。

“同時発動”……この言葉の意味を理解するのに数秒かけ、カルムはようやく目の前の戦闘に意識を戻す。

自己強化技の《りゅうのまい》と、攻撃技の《アクアジェット》を同時にやれ……という意味で、ゴールドは先程の指示を出したのか。

カルムはそう仮定した瞬間……“不可能”だと思った。

一度に二つの技を行うポケモンなど、見たことが無い。

また、聞いたことも無い。

だから、あり得ない。

そう思い込んだ。

……だが、それは単なる“憶測”であったことを次の瞬間カルムは思い知らされることとなる。

ゴールドが打ち出したこの秘策は果たして、戦局をどのように変えてしまうのか……!
 ▼ 310 ロア@バコウのみ 18/09/14 11:31:50 ID:FJ.cm9l2 NGネーム登録 NGID登録 報告
ガルーラ「同時…だと…!?」
 ▼ 311 mTQB7XkZdk 18/09/14 23:30:21 ID:/0X2hclo [1/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
――『勝つ為なら何だってする』……そう言い放ったゴールドが繰り出した策は、カルムの度肝を抜く代物であった。

それは、《りゅうのまい》と《アクアジェット》……この二つの技を同時に使い、自己強化と攻撃を並行して行おうというモノ。

あまりにも無茶な作戦だ。

そんなの絶対に成功するハズがない……カルムは依然としてそう思っている訳だが、目の前の敵――オーダイルは、どうやら本気のようであった。

「――オダァァァイルッ!」

オーダイルはまず、竜の闘気をその身に宿して《りゅうのまい》の構えに入る。

この地点で普通ならば、発動者は舞以外の行動が制限されるハズだ。

だが次の場面で、オーダイルは……カルム達が想像だにしなかった“御業”を披露する。

「オダァァァッ!!」

オーダイルは赤黒い稲妻が迸るそのオーラを纏いながら雄叫びを上げて、今度はなんと……水流までも呼び寄せてしまった!

「何だと……ッ!?」

赤、黒、蒼の三種のエネルギーが、オーダイルを包み込んでいく。

その凄まじい光景に、カルムは驚きのあまり思わず歎声を上げてしまう。

こんなことがあって良いのだろうか。

オーダイルは本当に、《りゅうのまい》と《アクアジェット》を同時にやるつもりなのだ……!
 ▼ 312 mTQB7XkZdk 18/09/14 23:30:58 ID:/0X2hclo [2/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
「くっ……リザードン、奴のパワーアップを阻止するんだッ!」

「リザァァァァァッ!」

カルムは早急にこれを対処すべく、リザードンに妨害の司令を下す。

リザードンは彼の命令に呼応し、地を蹴って一気に加速した。

地面スレスレで滑空し、一瞬の速度でオーダイルに接近する……が、しかし。

「……リザッ!?」

リザードンがその鋭い爪を振り下ろしたその時には、既にオーダイルの姿は……消えていた。

斬り裂かれた虚空は微かにそよ風を起こすだけ。

逃げられた……リザードンの妨害は刹那にも勝る速攻だったが、完成したオーダイルの《アクアジェット》はそれすら更に上回ってしまったのだ。

そして程なくして、彼方から激流が流れる音がする。

リザードンがその方向に目線を向けるとそこには、禍々しい竜の波動と、透き通る美しさの水の波動の両方を纏って宙を猛進するオーダイルの姿があった。

混沌のエネルギーを宿して宙を翔けるオーダイルは、地上にいるリザードンにそのまま突進攻撃を仕掛ける。

リザードンはこれを迎え撃つべく、黒き瞳をギラリと見開いて、その迫力ある表情で《ドラゴンクロー》の構えに移った。

彼が使うそれは、自身の爪を蒼焔で研磨し、その殺傷能力を極限にまで高めて放つ……選ばれし強者のみが放てる至高の《ドラゴンクロー》。

オーダイルが“重ねがけ戦法”で攻めてくるなら、リザードンは一つの技を徹底的に極めて対抗する……!
 ▼ 313 mTQB7XkZdk 18/09/14 23:31:31 ID:/0X2hclo [3/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
「オダァッ!!」

「リザァァァッ!!」

リザードンの激情を乗せた《ドラゴンクロー》と、オーダイルの《りゅうのまい》の力が籠められた《アクアジェット》が、ついに……激突した!

瞬間、壮烈なる爆風が鋭い衝撃波を作り出し、フィールドに巨大な亀裂を刻み込む。

頑丈なハズの地形が、こうも簡単且つ無惨に破壊されてしまうなど、常軌を逸しているにも程がある。

この凄惨な光景は、まさに、二匹の強過ぎる力の証明だ。

そして、戦場をも大きく揺るがすその闘争に、観客席の熱気はとうに最高潮にまで達していた。

声援の嵐に巻き込まれながら、リザードンとオーダイルは今もなお壮絶かつ大迫力のバトルを繰り広げている……。

……だが。

「……リザッ……!」

……ここでほんの少しだけ、リザードンの表情がオーダイルよりも先に歪み始めた。

その理由は、互いの現在の【こうげき】ランクの違いにある。

と言うのも、《りゅうのまい》を二回にかけて発動した今のオーダイルの【こうげき】ランクは、現在二段階目。

対するリザードンの【こうげき】ランクは、一段階目。

つまり、現地点において単純な火力で上回っているのは実はオーダイルの方なのだ。
 ▼ 314 mTQB7XkZdk 18/09/14 23:32:05 ID:/0X2hclo [4/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
ランクは一つ違うだけでも、出す技の威力が大幅に増減する。

リザードンが若干劣勢に追いやられたのは、その違いが顕著に表れた結果だ。

「オッ……ダァ……!」

「リザッ……ァァッ!」

だがそれでも、双方共に疲労の色はもう完全に隠し切れていない。

互いの汗が、吹き荒れる熱風によって蒸発し、水蒸気が二匹の間で立ち込めている。

リザードンも、オーダイルも、意識は既に戦意の深淵にある。

謂わば……“ゾーン”に入っている状態なのだ。

今、二匹の間では時間がゆっくりと流れている。

まるで、精神と肉体が切り離されて、それぞれ違う時の中で動いているかのような感覚だ。

自我が追いつかない内に、体が技を次々と発動させていき、気付いた時には既に全身傷だらけ……それが、今の彼らの状態だ。

「……リザァァァァァッ!!」

「……オダァァァァアアアッ!!」

そんな二匹は、今一度交戦を再開する。

今の二匹の死闘に割って入れるポケモンなど、世界広しと言えど一匹とていやしない。

飛竜と水竜の熾烈を極めた一騎打ちは、それから更に続くこととなる……!
 ▼ 315 ロエッタ@つららのプレート 18/09/15 08:54:15 ID:7LHYJb/U NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
 ▼ 316 mTQB7XkZdk 18/09/15 23:09:17 ID:8YTA4OIQ [1/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
***

……リザードンとオーダイルが、その命を賭けて、戦いをより激化させていく一方で、レッドのピカチュウはミヅキのアーゴヨンに対し、完全に遅れを取っていた。

「ピカァ……ピッカァ……!」

ピカチュウの吐息は荒く、足は笑い、腕は震え……まさに満身創痍。

ゲームなどによくある“体力メーター”的なモノがもし現実にあったとしたならば、きっとピカチュウの現在のメーターの色は赤色――つまり、絶体絶命のピンチということである。

しかしピカチュウは、ボロボロになっているその小さな体に自ら鞭を打ち、無理矢理にでも足を突き動かしてアーゴヨンと戦う意志を示す。

「ブォォォ……」

対するアーゴヨンは、まるで諦めようとしないピカチュウの姿を見て、感嘆のあまりため息をつた。

次に彼は首を横に振り、己に立ち向かってくる相手に対して脱帽と同時に痛惜の念も覚える。

アローラ地方で《ウルトラビースト》と呼ばれ恐れられてきたアーゴヨンをここまで手こずらせたピカチュウの実力は、対戦相手であるアーゴヨンでさえ素直に認めざるを得ず、まさに疑いようが無い。

だが、それでも……アーゴヨンには遠く及ばない。

彼らが元々住んでいた次元が違っていたように、彼らの戦闘力の次元もまた、遥かに違っていた。

まして進化途中のポケモンであるピカチュウが相手ならば尚更、その違いはより著しく表れる。

力の差は歴然であり、現にピカチュウはアーゴヨンの力に追いつけていない。

最早勝負は決まったようなモノだ……いくら諦めない心を持っていようとも、この現実には逆らいようが無い。

ピカチュウの敗北は、既に確定しているも同然なのだ。
 ▼ 317 mTQB7XkZdk 18/09/15 23:09:54 ID:8YTA4OIQ [2/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
そんなピカチュウの毛並みを撫でるのは、遥か彼方から吹いてきた冷たいそよ風。

その風は同時に、ピカチュウの体に幾つも刻まれている傷跡に容赦なく刺激を入れる。

しかしそれでもピカチュウは、鋼の精神で持ち堪え、しっかりとアーゴヨンだけを見据えている。

一体何が、彼をあそこまで突き動かすのか。

「……ピカチュウ」

レッドはそんなピカチュウを心配し、ふと名前を呼んでみる。

するとピカチュウは、傷でボロボロな見た目とは裏腹に……これ以上無く良い笑顔で振り向いて。


「……ピッカァ!」


……そう、鳴いてみせた。

「……分かった」

……レッドの考えでは、もう、ピカチュウにこれ以上の無理はさせないつもりだ。

しかしだからといって、ここでピカチュウを下げるのもそれはそれで違う気がする。

では、どうするか。

ピカチュウの戦意を汲みつつ、ピカチュウにゆっくりと休んでもらう方法……。

……一つだけ、ある。
 ▼ 318 mTQB7XkZdk 18/09/15 23:10:36 ID:8YTA4OIQ [3/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
だがそれはピカチュウにとって捨て身の手段であり、実行したが最後、ピカチュウは力尽きて戦闘不能になる。

だが、アーゴヨンにこのまま技を決められるよりはその方がピカチュウは納得できるだろう。

無論、それはレッドのエゴではない。

ピカチュウもまた、レッドがその指示を出してくれることを密かに期待していた。

「ピッ……カァ……!」

この戦いにおいて自分がもう長くないことなど、ピカチュウはとうに理解している。

故にピカチュウは、ならばせめて少しでもレッドに報いる道を選びたいという一心であった。

そしてその為だったら……この身すら犠牲にできる。

その覚悟こそが、ピカチュウのレッドに対する絆の証明なのだ……!

「ピカチュウ……お前の全てを、奴にぶつけてこい」

「ピカッチュゥ……ッ!」

レッドには、ピカチュウを言葉で鼓舞することくらいしか出来なかったが。

それがピカチュウにとっては、何よりの“闘志の火種”だった。

そこにくべるのは“想い”という名の燃料。

ピカチュウの、レッドに対する想いが高まれば高まる程、よりその勢いは強くなる。

そして、その勢いが最大限にまで高まった時……。
 ▼ 319 mTQB7XkZdk 18/09/15 23:11:45 ID:8YTA4OIQ [4/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
「――ピカァァ……ッ!」


……最後に限界を超えるのは、“友情”の雷を纏った不滅の聖火だ!


「ピカチュウ……」

「……全力全開で、《ボルテッカー》だッ!」


「ピカァァァァッ!!」


ピカチュウは最後の力を振り絞り、玉砕覚悟の最終奥義――《ボルテッカー》を発動する!

ピカチュウの体内で眠っていた稲妻は、彼が上げた雄叫びと同時に一気に爆発し、凄絶なる黄金のオーラとなってピカチュウを包み込んでいく。

辺りに凄絶なる雷音を轟かせながら、ピカチュウの闘志はみるみる内に漲っていき、この一瞬だけではあるものの、彼は自らの臨界点を突破することができた。

今のピカチュウの姿はそう、例えるならば……極東の地の伝説において語り継がれし“雷神”。

己の残りの体力を全て擲って、この一撃――《ボルテッカー》に、命運を託す!

「……ブォォォ!」

そしてそれを迎え撃つは、異次元より来訪せし魔獣……アーゴヨン!

「……『避けて』なんて言っても聞かないよねっ」

アーゴヨンのトレーナーであるミヅキは、これは避けるのが最善策だと考えていた。
 ▼ 320 mTQB7XkZdk 18/09/15 23:12:37 ID:8YTA4OIQ [5/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
しかしそれは、アーゴヨンの望むところではない。

そしてミヅキは、そんなアーゴヨンに対して、回避を無理強いすることはなかった。

勿論、トレーナーとして勝つ為の指示を出すのは当然のことであり、時としてそれこそ無理強いしてでもそれを通さなくてはならないこともある。

だが、今この瞬間は……“その時”ではない。

何故なら、今という一瞬は、自分のポケモンにとって一生忘れることのできない、かけがえのない感覚を味わえる……またとない唯一の機会なのだから。

確実に勝てる道よりも、アーゴヨンが一番勝負を楽しめる道を選ぶ。

ミヅキは、アーゴヨンの意志を汲んだ。

彼女らもまた、その互いに通じ合っている心を武器にして、立ち向かってくるピカチュウに真正面から向き合う……!
 ▼ 321 mTQB7XkZdk 18/09/15 23:12:57 ID:8YTA4OIQ [6/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
「アーゴヨン……《りゅうのはどう》!」

「ブォォォァァァァッ!!」

アーゴヨンの口元――砲口に、昂ぶる竜のエネルギーが装填されていく。

紫色の粒が集まり、それはやがて巨大な砲丸となり……凄まじい激昂のオーラを帯びる。

竜の逆鱗に触れし勇者に、紫紺の波導が、今……放たれる!

「――ブォォォォォォォオオオオッ!!」

竜の叫びは、大気に波紋をもたらし。

龍の閃光は、軌道上に破滅の魔力を撃ち抜き。

ドラゴンの怒りは、金色の挑戦者に容赦なく……襲いかかる。

必殺――《りゅうのはどう》、炸裂!

今、電撃と竜光線……その二つの瞬きが満を持して交わる!

果たして勝つのは……どちらだ!?
 ▼ 322 ルホッグ@ミュウツナイトY 18/09/16 00:22:36 ID:3EKE29tY NGネーム登録 NGID登録 報告
おっきてる
支援
 ▼ 323 mTQB7XkZdk 18/09/16 23:40:05 ID:xvzcbvME [1/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
――ピカチュウとアーゴヨンの戦いは、いよいよクライマックスに突入する。

《ボルテッカー》と《りゅうのはどう》の猛然たる衝突……この撃ち合いを制した者が、この激闘の勝者となろう!

「……ピカァァァァァッ!!」

ピカチュウの眼前にて迫り来る、滅びの光芒。

しかし、ピカチュウの決死の突撃が揺らぐことは無い。

そのまま一直線の軌道を描いたまま、ピカチュウは空を貫いていく。

そして、ついに……!

「ピッ……カァ……ッ!」

……《ボルテッカー》と《りゅうのはどう》が、激突した!

金と紫の衝突は、混沌の爆発を巻き起こし、辺りに旋風を舞い上がらせる。

一陣の風が、トレーナー達の頬を掠めた。

その風は戦慄を運び、彼らの意識をあのピカチュウとアーゴヨンの鍔迫り合いに集中させる。

それは、見る者の鼓動を際限無く早めてしまう程に凄絶なる闘争だった。

雷電を纏いし者――ピカチュウは、アーゴヨンがその絶大な力を以て解き放った《りゅうのはどう》を突破すべく、限界まで電力を振り絞り。

紫毒を携えし者――アーゴヨンは、ピカチュウがその渾身の気合を込めて炸裂させた《ボルテッカー》を反射すべく、極限まで竜力を出し切る。
 ▼ 324 mTQB7XkZdk 18/09/16 23:40:56 ID:xvzcbvME [2/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
「ピカァァァチュゥゥゥゥッ!!」

「ブァァァブォァァァァァッ!!」

互いのポケモンがこんなにも死力を尽くして戦っている中で、その姿を見守りしレッドとミヅキは今……何を思うのか。

「……ピカチュウ」

――ピカチュウの名を零すレッドは、今のピカチュウの姿を心から誇りに思っていた。

レッドのピカチュウは、進化系である《ライチュウ》に進化することこそ、結局無かったが……。

……それは、ピカチュウ自身が選んだ道であった。

敢えて“進化”という手段を取ることなく、ピカチュウはレッドと共に“最強”をこれまで目指してきた。

そして今ここにある景色は、まさにその道の……“終点”、なのだろうか。

今のピカチュウは、まさに“世界最強のピカチュウ”と呼ぶに相応しい程の比類なき強さを得ている。

誰の目から見ても、彼より強いピカチュウが居るなどとは到底思えないだろう。

……だが、レッドはそれでも、あのピカチュウは今よりもっと……もっと強くなれると信じている。

ピカチュウがレッドの仲間になったあの時からずっと、その想いは変わりはしない。

レッドとピカチュウの不朽の絆は、この瞬間を以て更に進化を遂げるのだ。

そう……ここは、“終点”なんかじゃない。

今よりももっと……それこそ、“異次元”にまで届くくらいに、強くなる。
 ▼ 325 mTQB7XkZdk 18/09/16 23:41:57 ID:xvzcbvME [3/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
これからも……ずっと……!

「……負けるな、ピカチュウッ!」

「アーゴヨンにも、自分自身にも、そして……“未来”にも!」

「そして、これからも“限界”を超え続けてくれッ!」

「俺もお前と一緒に、お前の限界に挑み続けるッ!」

「だから――」


「――ずっと俺の側で……輝き続けてくれぇッ!!」


「――ピカッチュウウウウッ!!」


……共に!
 ▼ 326 mTQB7XkZdk 18/09/16 23:42:24 ID:xvzcbvME [4/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
「……アーゴヨン」

……一方で、ミヅキがその名を呼ぶのは、異次元の超獣――アーゴヨン。

かつてアローラを旅する少女であったミヅキと、異世界よりの来訪者であったアーゴヨンの邂逅は、ある日突然に訪れた。

その時はアーゴヨンはまだ《アーゴヨン》に進化する前であり、今よりももっと小さな姿であった。

まるで好奇心旺盛な子供のようだったかつての彼は、ミヅキと出会い、この世界で様々なモノを彼女と共に見てきた。

ミヅキと色々な“初めて”を経験し、何かを変える為、無我夢中で走ったあの日々が、今、ミヅキとアーゴヨンの心に蘇る。

あの時見つけた“夢の一欠片”を……今、ミヅキとアーゴヨンは力へと変える。

これからも、二人で色々なことを学び、知る為に……!

「……あなたがこの世界に来てから、私の毎日は凄く楽しいのっ!」

「アーゴヨン……! この世界で私と出逢ってくれて、本当にありがとう!」

「私……あなたのことが大好きだから――」


「――あなたには、私が……一生ついているからっ!」


「――ブォォォォゥゥウウウウッ!!」


……歩み続ける!
 ▼ 327 mTQB7XkZdk 18/09/16 23:43:07 ID:xvzcbvME [5/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
そして、稲妻と竜撃の鍔迫り合いに、今……終わりが訪れようとしていた!

黄金と紫紺に輝く閃光の果てに、勝利をもぎ取ったのは――

「ブォォォ……ッ!?」


「ピカァァァッチャァァァァッ!!」


――ピカチュウだった!

雷光を纏って疾走せしその勇者は、竜の波導を打ち破り、そしてアーゴヨンへと迫る!

超速で天を駆け抜け、その雷撃――《ボルテッカー》は、ついに……アーゴヨンに命中した!

「ブォォォァァァッ……!?」

「アーゴヨンッ!?」

ピカチュウの渾身の体当たりを受け、アーゴヨンは苦悶の表情を曝け出しながらその巨体を震撼させる。
 ▼ 328 mTQB7XkZdk 18/09/16 23:44:07 ID:xvzcbvME [6/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
対するピカチュウは、あらん限りの叫びと共に必死の思いでアーゴヨンにぶつかり続けた。

「ピカァ……ピカチュゥゥッ!!」

例えその身が張り裂けそうになっても、ピカチュウはこの電撃を止めようとはしなかった。

まだアーゴヨンは倒れてはいない。

ここで自分が先に反動で倒れてしまっては、自分の負けになる。

ピカチュウは、そう自分に言い聞かせ、弱音を吐きそうになっている自分の声帯に鞭を打ち、ただひたすら哮り続け、アーゴヨンに肉薄し続けた。

……だが。

「……ピカァァァ……!」

……ついに、ピカチュウの体力は限界――“零”に、達した。

アーゴヨンの忍耐の前にとうとう弾き返されたピカチュウは、その身体に黒い焦げ跡を幾つも残して、後方に吹き飛ばされる。

彼の決死の健闘は、果たして……虚しく砕け散ってしまうのか!?
 ▼ 329 クオング@ウイのみ 18/09/17 09:32:01 ID:ckQoqZes NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 330 ードラン@ねばりのかぎづめ 18/09/17 18:57:54 ID:.LGEizEk NGネーム登録 NGID登録 報告
 ▼ 331 ゴーム@ブロムヘキシン 18/09/17 23:55:35 ID:hbf.h6NE NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ちょっと中二病感がありすぎて逆にいい。
支援
 ▼ 332 mTQB7XkZdk 18/09/18 00:27:54 ID:MAgkjbKY [1/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
――《ボルテッカー》と《りゅうのはどう》の熾烈を極めた激突の末、その競り合いを見事制したのは……ピカチュウだった。

だが、その後ピカチュウはアーゴヨンに《ボルテッカー》を直撃させたにも関わらず、アーゴヨンを倒す前に《ボルテッカー》の反動ダメージによって体力がついに底をついてしまう。

《ボルテッカー》の反動の果てに力尽きたその姿は、誰の目から見ても“勇姿”として映った。

勿論、この少年……レッドにとっても。

「ピカチュウ……!」

レッドは、地に墜落せしピカチュウを受け止めるべく、フィールドを全速力で駆け抜ける。

レッドが差し伸べたその両腕に、やがてピカチュウが飛び込んできた。

レッドはピカチュウを、その手でがっちりと受け止める。

そして最後に、彼はピカチュウの顔をゆっくりと見下ろして……優しい笑顔を見せた。

「……よくやったな。 ピカチュウ」

「やっぱりお前は……俺の“最高の相棒”だ!」

「ピカァ……!」

……その言葉をピカチュウと交わした後、レッドは審判に一礼し、元の立ち位置に戻る。

瞬間、審判の口からピカチュウの戦闘不能を告げる言葉が響き渡った。

レッドはその言葉を確認するや否や、すぐにピカチュウに《かいふくのくすり》を使い、彼の体力を回復させる。

するとピカチュウは瞬く間に元気を取り戻し、再び元気な声で鳴いてみせた。
 ▼ 333 mTQB7XkZdk 18/09/18 00:28:27 ID:MAgkjbKY [2/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
「……あなたのピカちゃんは本当に凄かったよ」

「でも……私のアーゴヨンの方が一つ上手だったね」

対するミヅキは、余裕綽々の態度でレッドにそう言い放った。

だがレッドは、そんな彼女の牽制にも関わらず、その心を揺らがせることは無い。

寧ろ、彼は次の瞬間……笑ってみせた。

「……それはどうかな?」

「アーゴヨンの姿を、よく見てみると良い」

「え……?」

……ミヅキは、レッドに言われるがままに、アーゴヨンの姿を見てみる。

すると、彼の――アーゴヨンの体に、とある“異変”が起こっていたのが確認できた。

それは……。

「……ブォォォ……!」

……アーゴヨンの体に幾つも纏わりついている、この電流。

これは……【まひ】状態にアーゴヨンが陥っている確固たる証拠だ!

「……そんな……アーゴヨンッ!?」

「ブォォォ……!」
 ▼ 334 mTQB7XkZdk 18/09/18 00:29:01 ID:MAgkjbKY [3/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
全身を苛む【まひ】に、苦しむ様子を見せるアーゴヨン。

これは、ピカチュウが放った《ボルテッカー》に含まれる追加効果。

一割という低確率で、相手を……【まひ】させる!

「……これは、“奇跡”だ」

「俺のピカチュウの、“決して諦めない心”が引き寄せた……“運命”だ!」

「俺のピカチュウは、確かに君のアーゴヨンに……一矢報いてみせたぞッ!」

レッドはミヅキを指差し、そう勝ち誇ってみせた……!

電光雷轟の勇者――ピカチュウは、散り際に奇跡を残したのだった……!

……一方でミヅキは、真にこのアーゴヨン対ピカチュウの試合で勝利した側であるにも関わらず、これ以上ない敗北感をレッドに叩きつけられる結果に。

ミヅキは頬に汗を一筋垂らし、一歩だけだが後退る。

彼女はレッドの気迫に僅かながらも気圧されたのか、または、このアーゴヨンの【まひ】状態に対して戦局的に危機感を覚えているのか、それともその両方か、はたまた、それらとは全く異なる思考が巡っているのか。

だがミヅキは、“これだけ”は身を以て味わった。

やはりあのピカチュウは……半端な実力の持ち主では無かったのだと。

だからこそ、今になって彼女は思う。

ここで彼を倒せた事こそが、逆に……自分達にとって“奇跡”だったのかもしれない、と。
 ▼ 335 mTQB7XkZdk 18/09/18 00:29:25 ID:MAgkjbKY [4/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
「……認めるよっ」

「あなたのピカちゃんは、私の記憶の中で、“強敵”として何時までも永遠に残り続ける……」

「……でも、あなただって何時までも余韻に浸ってはいられないんじゃないかな?」

ミヅキはレッドの主張を認めたうえで、彼に対し早く次のポケモンを出すように言外にて促す。

レッドはそれに応え、既に用意していた一つのモンスターボールを手に構えた。

「……俺が次に出すポケモンも、君にとって“そういう存在”になることだろう」

「俺も、この大会でコイツを出す日を……心待ちにしていた」

「君に見せてやろう、ミヅキ」

「コイツが……俺の“切り札”だ」

レッドはそのポケモンに対し、無二の信頼を寄せていた。

レッドは、そのポケモンをこの世界最高峰の戦いで披露する時をずっと待ち望んでいた。

そしてその時は、ついに訪れる。

この天下分け目の熱戦に満を持して参戦するのは……レッド軍団における最強の戦士!

その名も……!

「君に……決めたッ!」


「《リザードン》ッ!」
 ▼ 336 mTQB7XkZdk 18/09/18 21:06:34 ID:H7GAOJYY [1/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
――不滅の炎を尾に宿し、紅蓮の鱗に身を包む灼熱の飛竜。

彼がレッドと共に刻んできた物語は、かけがえのない絆の詩でもある。

他の個体とは一線を画すその実力を裏付けているのは、彼がレッドに抱きしその熱烈な想い。

レッドが求めし勝利の為に、彼はこの戦場に降り立ち、未来永劫消えることの無い“戦慄”という名の業火を敵の記憶に焼き付ける。

猛れ、火よ。

太陽が如し灼焔の力を振りかざして。

日照りせし大地にて……返り咲け!

《リザードン》!

「――グォォォァァァァァッ!!」

……更に!

一族の頂点に達せしその竜は、新たなる絆の力によって、従来までの限界を超越した進化を、もう一度遂げる!

想いの……その先へ……!

「……《メガシンカ》ッ!」
 ▼ 337 mTQB7XkZdk 18/09/18 21:07:05 ID:H7GAOJYY [2/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
レッドの最愛の恋人――コルニが、レッドに心を込めて縫い合わせた、彼女の“恋歌の結晶”――《メガマフラー》が、今、レッドの首元でリザードンとの絆とリンクする。

瞬間、リザードンの全身が眩い極光に包まれた。

リザードンの内にて今も流れ続けている遺伝子の波動に、極限の衝撃が響き渡る。

そしてその光の果てでリザードンが習得したのは……業火を超えた獄焔の力。

緋色に煌めくその終焉の炎は、彼を見下ろしている天にもう一つの太陽を昇らせる。

その力の名は【ひでり】――彼の大地の化身《グラードン》も所持している強力な特性。

戦場に燦々と輝く太陽の光を差し込ませることによって、〔ほのお〕の威力を強め、〔みず〕の威力を弱める。

その恐るべき力の前では、大地の潤いは枯渇し、燃え盛る炎のみが天下を支配するのだ。

双璧を成す《メガリザードンX》が“闇を纏いし蒼焔の黒竜”ならば、彼は“光を宿せし緋焔の紅竜”。

“Y”の称号を与えられし、絶類抜群の天空の覇王……!

……《メガリザードンY》!


「――グガォォォォォォォォォッ!!」


……大地の裂け目で、焔が踊る。

光炎万丈の戦場を照りつけし彼の太陽は、あの澄み切った蒼天をも黒く焦がさんとしている。

メガリザードンYは、黒煙の向こう側からアーゴヨンを覗く。

己がまだ知り得ていない、未知の敵との遭遇を果たしたリザードンはしかし、動揺する様子を少しも見せず、依然として冷静な佇まいのまま陽炎の中で立ち続けていた。
 ▼ 338 mTQB7XkZdk 18/09/18 21:07:33 ID:H7GAOJYY [3/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
「……ブォォォ」

対してアーゴヨンは、灼熱地獄と化していく戦場で、【まひ】の状態異常を引きずりながらこれからの戦局を憂いている。

【まひ】にかかると、不定期のタイミングで強烈な痺れが襲うようになり、たまに動けなくなってしまう。

また、痺れにより速度も遅くなる。

つまり……【すばやさ】のステータスが著しく低下してしまうのだ。

言うまでもないが、この負の効果がもたらす影響は大きい。

【まひ】になった地点で、戦局的にはかなり不利な状況に立たされる。

そんな中で、万全のメガリザードンYを相手取るのはかなり苦しい展開だ。

《わるだくみ》により【とくこう】のステータスが二段階上がっているとはいえ、【まひ】のディス・アドバンテージを抱えている分アーゴヨンは劣勢であると言って良い。

「……まさか、決勝のコンビの切り札が両方共リザードンだったなんてね」

「紅と黒の“Wリザードン”……燃える展開だね〜!」

……しかし、そんなアーゴヨンのピンチでも、ミヅキのその溌剌極まるハートが冷え込むことは無かった。

寧ろ、先程のレッドとのやり取りを経て、今までよりも更にその熱さは高まっている。

熱くて、熱くて、熱すぎて……しまいには。

「……ええーいっ!」

……なんと、頭に被っていた赤いニット帽を、その場で脱いでしまった。
 ▼ 339 mTQB7XkZdk 18/09/18 21:08:17 ID:H7GAOJYY [4/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
「ミ、ミヅキさん!?」

普段は隠れていて見えないミヅキの黒髪の全貌が露わになったことで、横にいたゴールドは思わずドキッとしてしまう。

汗が滴るその黒髪は、艶が美しい光沢を放っており、その髪質が良いことを証明している。

ミヅキにその美しき黒髪は、ゴールドは勿論、レッドとカルムから見てもよく似合っており、ニット帽を外した今の姿なら、その魅力はより映える。

「アーゴヨン……ここが正念場だよ!」

「ブォォォォッ!!」

心機一転、新たに戦意を固めたミヅキに呼応し、アーゴヨンの闘志もまた復活を遂げる!

「……グォォォ」

ミヅキ達のその姿を、今初めて目の当たりにしたリザードンは、不敵な微笑みを浮かべた。

こんなにも純粋な挑戦者と対峙したのは、リザードンにとっても久しいことであり、それは嬉しくもあれば面白くもある。

リザードンもまた、ミヅキ達と同様に……燃えてきた!

「……やるぞ、リザードン!」

「グォォァァッ!!」

レッドとリザードンの進撃が、今、幕を上げる……!

「熱く燃え滾れ……《かえんほうしゃ》ッ!」

「グォォォッ!」
 ▼ 340 mTQB7XkZdk 18/09/18 21:08:40 ID:H7GAOJYY [5/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
開戦の雄叫びは、戦場を紅蓮の炎で焼き尽くす《かえんほうしゃ》。

リザードンの砲口から放たれし火炎の光線は、アーゴヨンに向かって一直線に伸びる。

「ゼンリョクで行くよ! ……《りゅうのはどう》っ!」

「ブォォォォォゥッ!!」

対するアーゴヨンは、逆鱗に触れられし竜が解き放つ煌めき――《りゅうのはどう》でこれを迎え撃つ。

赤と紫の流動が、今、一点で交わる……!

……その威力は、互角だった!

互いに相殺されたその技は交点で同時に爆発四散し、火炎と竜波の残骸を辺りに無惨に撒き散らす……!
 ▼ 341 メール@ふしぎのプレート 18/09/18 22:35:24 ID:pzZYu8Pw NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ミヅキはまだZ技使ってないよね?
支援
 ▼ 342 ednkiNQ3/2 18/09/20 00:12:44 ID:kAZUqkTo [1/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
――ついに始まりを告げた、リザードンとアーゴヨンの戦い。

そして互いが繰り出した初手の攻撃は、引き分けで終わった。

だが、ここまでは小手調べの戦い……次からが、本腰を入れた真の戦いなのである。

「まだまだっ! アーゴヨン、《ヘドロウェーブ》!」

「ブォォォァァァァァッ!!」

次なるアーゴヨンの一手は、劇毒の荒波――《ヘドロウェーブ》。

紫色に揺れるその波濤は、全てを腐食させる惨毒の大災害。

強烈極まりなき全体攻撃が、アーゴヨン以外の全てを襲う……!

「オダァッ」

「リザッ」

ゴールドのオーダイルとカルムのリザードンは、これを見切って難なくかわした。

そして、レッドのリザードンも……。

「かわせ! そして……《エアスラッシュ》!」

「グォォォッ!」

……これを回避させる手段に出る。

そしてそこからの攻撃をスムーズに繰り出せるように、攻撃技の指示も同時に行った。
 ▼ 343 mTQB7XkZdk 18/09/20 00:13:29 ID:kAZUqkTo [2/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
「グォォァァァッ!」

リザードンはまず、素早い飛行で波の射程圏外に脱出し……。

「グォゥゥゥゥッ!」

その滑空状態から流れるような動きで、翼で空を斬りつけ真空波を巻き起こす技――《エアスラッシュ》を放つ!

「ブォッ……!?」

ヘドロウェーブを出した直後の硬直によりこれを避けることが出来なかったアーゴヨンは、《エアスラッシュ》の直撃を受けてしまった。

「アーゴヨンっ!」

「ブォォォ……ッ!」

ミヅキの心配からの呼びかけに対し、アーゴヨンは気迫を込めて応える。

鋭い旋風を受けてもなお、アーゴヨンは怯まずに体勢を整えた。

「よし……アーゴヨン、リザードンに《りゅうのはどう》!」

「ブォッ……!」

そして今度はアーゴヨンの反撃……。

……かと思われた、その時だった。

「……ブオッ!!」

ここで【まひ】の持続効果――不定期のタイミングで動けなくなる効果が、発動してしまう!
 ▼ 344 mTQB7XkZdk 18/09/20 00:14:03 ID:kAZUqkTo [3/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
「そんな、アーゴヨンっ!」

「ブォォァァ……!」

ピカチュウが残した置き土産は、ここぞという時にアーゴヨンに致命的な隙を与えた……!

「サンキュー、ピカチュウ!」

「ピッカァ!」

誇らしげにフンスと鼻を鳴らすドヤ顔のピカチュウに、レッドは心からの感謝の言葉を贈った。

そしてレッドは、この決定的な攻撃のチャンスに、この技を叩き込む……!

「よし、リザードン!」

「《りゅうのはどう》を、お返ししてやれッ!」

「グォォォゥゥゥッ!」

……竜の血統に受け継がれし技――《りゅうのはどう》を使えるのは、アーゴヨンだけではない。

リザードンが放つ《りゅうのはどう》もまた、強力無比の大技。

レッドのピンチを、これまで何度も救ってきた。

そして今度の《りゅうのはどう》は、〔ドラゴン〕タイプのアーゴヨンにとって効果抜群の大打撃。

「――グォァァァァァァッ!!」

当たれば、致命傷は免れない!
 ▼ 345 mTQB7XkZdk 18/09/20 00:14:56 ID:kAZUqkTo [4/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
リザードンはこの一撃でアーゴヨンにトドメを刺すつもりで、その技を渾身の力で解き放った……!

「避けてっ! アーゴヨンっ!」

「ブォッ……ォォォ……ッ!」

ミヅキの必死の呼びかけに、しかしアーゴヨンは動きたくても動くことが出来ない。

まるで、死の危険が迫っていても金縛りに遭っているせいで逃れることのできない悪夢の中にいるかのように、アーゴヨンはこの【まひ】に打ち勝つことができないまま……。

……その一撃を。

「――ブォォァァァァァァッ!?」

……受けてしまった!
 ▼ 346 mTQB7XkZdk 18/09/20 00:15:17 ID:kAZUqkTo [5/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
「アーゴヨン……っ!」

滅竜光線――《りゅうのはどう》、炸裂!

技の直撃をモロに食らったアーゴヨンは、声帯が張り裂けそうなくらいに悲鳴をあげながら、地上に墜落する。

黒煙を吐きながら地にへばり付くアーゴヨン。

「ブオッ……ブォォァァ……ッ!」

ギリギリ耐えたようではあるものの、そのダメージは致命的であった。

一気に体力をすり減らされ、激痛に打ちひしがれるアーゴヨンは、震えながらも何とか飛行状態に再び体勢を整える。

だが、この満身創痍の体ではどの道、近い未来に彼は倒れるだろう。

アーゴヨンはそのことを既に予見している。

自らの力を過信するような真似はせず、ならばどうするべきかをアーゴヨンは冷静に考え始めた。

……それは、やはり……。

……あの絶体絶命のピンチに瀕していようとも諦めずに自分に立ち向かってきたあの小さな勇者に、倣うべきであろう。

「……ブォァァァァァッ!!」

諦めなければ奇跡が起きると言うのなら……。

……アーゴヨンもまた、それを信じてみることにした。

故にアーゴヨンは……不屈の精神で立ち上がってみせる!
 ▼ 347 mTQB7XkZdk 18/09/21 02:14:19 ID:sYgce3g6 [1/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
――効果抜群の《りゅうのはどう》を真正面から浴びせられたアーゴヨンは、そのデカ過ぎるダメージにも関わらず、堅忍不抜の心意気で起き上がってみせた。

「アーゴヨン……よぉしっ!」

ミヅキはそんなアーゴヨンの真摯な姿勢を目の当たりにして、自らの戦意もまた引き締め直すのであった。

これから始まるのは、アーゴヨンの……反逆劇である。

「ブォォォォォォォッ!!」

それは咆哮という名の鐘により……始まりを告げる!

「ブォォォォォァァァァァァッ!!」

アーゴヨンの反骨心は、やがて紫色の光線となりてリザードンに襲いかかる。

必殺《りゅうのはどう》が、全方の大気を焦がしながら突き進んでいく。

「グォォゥ」

しかしこれを軽い一瞥のみで見切ったリザードン。

素早くかつ短い動作で《りゅうのはどう》の射程圏外に出て、これを難なくやり過ごす。

「グォォォァァァッ!」

そして今度はリザードンが、しっぺ返しの《かえんほうしゃ》を吐き出した。

灼熱たる炎天下で放たれしその火炎は、一直線にアーゴヨンに向かっていく。
 ▼ 348 mTQB7XkZdk 18/09/21 02:16:11 ID:sYgce3g6 [2/4] NGネーム登録 NGID登録 報告

「ブォォォ……ッ!」

今も【まひ】に苛まれるアーゴヨンだが、彼はその痛みを……耐えた。

そして真上に飛翔し、《かえんほうしゃ》を回避してみせる。

【まひ】の効果で【すばやさ】が落ちているにも関わらず、今のアーゴヨンの動きは“俊敏”と呼んでも問題無いくらい速い。

火事場の馬鹿力というヤツだろうか。

逆境に陥れば陥る程、秘めたる力はその片鱗を覗かせていく。

戦いの中で続けられるは、限り無き成長……。

……成し遂げるべきは、限界への反抗。

一線の向こう側への片道切符を、ぎゅっと握り締めながら……。

「……グォォォォッ!」

……上空に舞うアーゴヨンに誘われるが如く、リザードンもまた飛翔して彼を追うのだった。

そして両者は、次から次へと互いの技を交互に披露していく。

《りゅうのはどう》、《かえんほうしゃ》、《ヘドロウェーブ》、《エアスラッシュ》……。

その一撃一撃が、受ければ致命傷となり得る超威力の大技。

そんなハイレベルな技の応酬が、彼らの闘志を更に空へと舞い上げる。

彼らの戦いの舞台は、ついに……雲までも突き抜けてしまった。
 ▼ 349 mTQB7XkZdk 18/09/21 02:16:39 ID:sYgce3g6 [3/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
「グォォォォッ……」

「ブォォォォォゥッ……」

観客どころか、それぞれのトレーナーの指示すら届かない――天空の白き平原。

大空を飛べる者しか辿り着くことのできないこの境地で、二匹は今も火花を散らしている。

……ふと気づけば、アーゴヨンの【まひ】は跡形もなく消えていた。

ミヅキに心配をかけまいと、アーゴヨンがこの痛みに抗い続けた結果、アーゴヨンはこの激痛を……克服してみせたのだ。

「グォォォォッ」

そのリザードンの笑みは、アーゴヨンのその根性への称賛によるものか、それとも、自らの戦意の高ぶりによるものか。

どちらにせよ、リザードンはこの戦いを心から楽しんでいた。

この胸を熱くときめかせるワクワクは、既に終点を通り過ぎている。

焦熱の想いは、やがて煉獄の力を生み出す。

リザードンは次の一撃を以て、アーゴヨンの健闘に終止符を打とうとしていた。

レッドの声がリザードンに届かない中、しかしこの状況でレッドが選ぶであろう技をリザードンは正確に感じ取る。

そして……その技を放った!
 ▼ 350 mTQB7XkZdk 18/09/21 02:17:01 ID:sYgce3g6 [4/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
「……グォォォォォォォォッ!!」

己の中に眠る“壁”を、その内なる業火で破壊し、焼き尽くす。

その燃え盛りし臨界点を超えるのは、己自身。

自分にとって最大の敵は、自分。

その敵に挑み、戦い続けた達人の炎使いのみが習得できる、極限火炎奥義。

全てを灰燼に帰せ……不朽の猛火よ。

その技の名は……《オーバーヒート》!
 ▼ 351 mTQB7XkZdk 18/09/21 21:17:20 ID:Mf8AMn/Y [1/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
――戦いの舞台は、大空へ。

熾烈な空中戦の果てに、完全なる一騎打ち状態となったリザードンとアーゴヨン。

リザードンはこの勝負の白星を掴み取る為、自身の最強の威力を誇る大技――《オーバーヒート》をぶちかましたのであった!

「……ブォォォォォゥッ!!」

対するアーゴヨンもまた、ミヅキが今も出しているであろう指示を直感により確認する。

研ぎ澄まされた五感が受け取ったその指示は、《ヘドロウェーブ》であった。

が、このままではリザードンの《オーバーヒート》を超えることはできない……アーゴヨンはそう確信していた。

ならばどうするのか……。

……それは。

「……ブォォォォォァァァァァァッ!!」

……あのミヅキの想像すらも、自分が超えるしかない。

《ヘドロウェーブ》最大出力……それを更に超越して解き放つ。

不可能を可能にしなければ、この戦いを制することはできない。

今見えているその壁を……壊さなくては。

何も得ることは……叶わないのだから。
 ▼ 352 mTQB7XkZdk 18/09/21 21:17:47 ID:Mf8AMn/Y [2/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
「ブォォォォォォォォッ!!」

ギリギリまで……《ヘドロウェーブ》のエネルギーを溜め……。

……そしてその莫大なる毒の力を……一点に凝縮させ……。

……圧縮し……一つの巨大な弾丸へと……変える!

この世界の“穢れ”を全て捩じ込み、その塊を、敵を滅殺する蠹毒の大砲へと昇華させたのがこの技。

これはもう《ヘドロウェーブ》ではない。

それすらも遥かに超えた威力の、〔どく〕タイプ最強奥義――《ダストシュート》!

「……ブォォォッ」

……だがこの時、アーゴヨンは思った。

仮にこれを普通に真正面から撃ったとして、あの飛竜の一撃に打ち勝てるのかと。

もし結果が否であった場合、自分は主に何を報いることができるのかと。

では、真に主に報いることのできる道は何だろうか。

そう考えた時、アーゴヨンはその《わるだくみ》により鍛えられた頭脳を一瞬の内に使い果たして、答えを導き出した。

それは……確実にこれをリザードンに当てる手段でもあった。

そしてアーゴヨンは、今……その答えを現実のモノにすべく、証明を開始する。
 ▼ 353 mTQB7XkZdk 18/09/21 21:18:20 ID:Mf8AMn/Y [3/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
先程のあの電気ネズミとの戦いでは、自分の意思を汲んでもらった。

今度は……自分がミヅキに報いる番。

「……ブォォァァッ!」

瞬間、アーゴヨンは至極の毒弾――《ダストシュート》を、咆哮と共に腕を振り下ろして発射した……!

……だが、その弾は、あたかも野球のカーブボールの如く曲折した軌道を描き、飛んでいく。

「……グォォァァァァァァッ!!」

対するリザードンもここで《オーバーヒート》を放ったが、その爆炎の行く手を《ダストシュート》は阻まず寧ろ絶妙に避け、リザードンのもとへと向かっていく。

「グォォォォッ……!」

この地点でリザードンは、アーゴヨンの思惑を察知した。

これは、自分とは真っ向勝負をせず、アーゴヨン自身が既に散る覚悟で、自分に大打撃を与えるというアーゴヨンの捨て身の手段。

この時リザードンは、単純な技の威力ではアーゴヨンよりも優っているという絶対の自信を持っていたが……知能に関しては完敗を喫したと、心からアーゴヨンを認めるのであった。

だが、リザードンはもう止まれない。

ならばせめて、この一撃でアーゴヨンを確実に葬り去る。

自分の全てを賭けて……!
 ▼ 354 mTQB7XkZdk 18/09/21 21:18:54 ID:Mf8AMn/Y [4/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
「グォォォォァァァァァァァッ!!」

リザードンは、自らが放つ《オーバーヒート》の火力を、極限を超えて引き出す!

その真紅の炎に自らもまた飲まれ、だけどその中でも“勝利”という唯一無二の目的地を見失わないように、懸命に力を振り絞る。

リザードンは叫び、その煉獄火炎に 活火激発せし己が弾をありったけ注ぎ込んだ……!

……そして。

「――ブォォォゥゥゥゥゥァァァァッ!!?」

アーゴヨンはついに、このリザードンの渾身の奥義を……モロに受けたのであった……!

「ブォォォォォッ!!?」

刹那、アーゴヨンの周囲を包み込むは、炎威の渦。

巻き込んだ者を一瞬にして黒く焦がし染める地獄の業火は、アーゴヨンの体を容赦なく漆黒に塗り潰していく。

火花の散る音とアーゴヨンの阿鼻叫喚が入り混じり、その光景はまさに純然たる“惨状”そのもの。

やがて全ての炎が天へと消え、黒煙がそこに立ち込め始めた時、アーゴヨンは……。

「……ブォォォ……」

……目を回して気絶し、その瀕死状態のまま……雲の中へと堕ち、リザードンの視界から姿を消すのであった。

「グガォゥ……」

そしてリザードンは、ついにあの強敵――アーゴヨンを撃破することに成功した訳なのだが……。

……次の瞬間には既に、アーゴヨンが散り際に放った《ダストシュート》が……迫っていたのだった。
 ▼ 355 mTQB7XkZdk 18/09/21 21:19:14 ID:Mf8AMn/Y [5/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
リザードンはこの瞬間になって初めて思う。

アレが当たる前にアーゴヨンが倒れるのを確認できたのは、自分にとってかなり運の良いことであると。

そのおかげでリザードンは……。

「……グォォォォッ……!」

……覚悟を決めることが、出来たのだから。

アーゴヨンが倒れてからコンマ数秒のインターバルを経て、《ダストシュート》は……リザードンに直撃する。

「――グガァァォォァァァァアアアッ!!?」

刹那、リザードンを襲ったのは、激甚たる猛毒の狂飆。

惨たらしい悲鳴をあげながら、リザードンは紫色の悪夢へと誘われる。

全身を苛烈にまさぐる劇毒の侵蝕。

リザードンは頭を抱えながら、苛まれし肉体と精神にひたすら痛み悶え続けた。

「グォォォッ!?」

「グガオッ!?」

「グワァァォォォッ!!?」

やがてリザードンは翼をはためかせることも忘れ、徐々に下降を始める。

そして、この瞬間を以て、ようやくこの天空の戦場から……彼の姿が消えたのであった……。
 ▼ 356 mTQB7XkZdk 18/09/22 23:17:39 ID:Ck8g3at2 [1/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
***

――白雲の上の世界でリザードンとアーゴヨンが繰り広げた戦いは、ついに終局を迎えた。

結果はリザードンの勝ちではあったが……彼もまた、アーゴヨンの《ダストシュート》を受けたことによって、決して無視できない深手を負わされてしまう。

猛毒に侵されたリザードンは、身悶えしながら落ちていき、やがてその天空の戦場を後にしたのであった……。

……その頃、地上にいるトレーナー達はここで、ようやく空から堕ちてきたアーゴヨンの姿を確認する。

「アーゴヨン……!」

長らくアーゴヨンの姿を見ていなかったミヅキは、その瞬間はひとまず安心したものの……。

……彼が黒煙を吐きながら既に倒されているという事実を認識した時、その表情はすぐに焦りへと変わった。

「アーゴヨンッ!?」

このままだとアーゴヨンは地に叩きつけられる。

ミヅキはすぐさま落下地点辺りまで足を進め、アーゴヨンのモンスターボールを構えた。

そして、アーゴヨンの地上との距離が差し迫ったタイミングで、ミヅキはモンスターボールのボタンを押す。

するとボールから、赤い光線がアーゴヨンに放たれ、彼を捕捉する。

アーゴヨンはその光に誘導されるように、体を収縮されながら無事にボールに戻されたのであった。

審判がアーゴヨンの戦闘不能を認める前ではあったが、明らかに彼が試合を続行できる状態では無かったのは、誰の目から見ても明白であった。
 ▼ 357 mTQB7XkZdk 18/09/22 23:21:06 ID:Ck8g3at2 [2/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
「アーゴヨン、戦闘不能!」

故に審判は、この地点でアーゴヨンに戦闘不能の処置を下すのであった。

審判のその判断にミヅキは、一切異論を出さず、コクリと頷いて定位置に戻る。

一方でレッドはこの時、リザードンの“完全勝利”を確信していた。

「流石リザードンだ……あのアーゴヨンをあそこまで叩きのめしてしまうとは」

地上にいた彼らからすれば、空の上で起こっていた激闘が如何なる内容のモノであったかなど知る由もない。

だが、相手よりも先に落ちてきたのがアーゴヨンで、しかもそのアーゴヨンがズタボロの状態で戦闘不能になっていたとなれば、勝負はリザードンの圧勝だったとレッドが迷いなく信じ込んでしまうのも無理はないだろう。

しかし、レッドのその歓喜もやがて、数秒後には……“ぬか喜び”であったことが判明する。

何故ならこれは、リザードンの“完全なる勝利”ではなく……。

……“難戦の果てにようやくもぎ取った勝利”……だったのだから。

そう。

リザードンは、“完全”ではなく、寧ろ山のように積み上がった“代償”を背負って、強敵――アーゴヨンを撃墜させたのである。

そして彼のトレーナーであるレッドは、その時の彼の奮闘ぶりを知らない。

それ故だろう。

次の瞬間、リザードンがようやく空から降りてきた時には……。
 ▼ 358 mTQB7XkZdk 18/09/22 23:21:39 ID:Ck8g3at2 [3/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
「リザー……」


「……ドッ……!?」


……レッドの心は、まるでハンマーで叩かれたガラスのように……粉々に打ち砕かれたのであった。 

「グガォォォォォ……!」

おどろおどろしい紫色の瘴気に蝕まれながら、リザードンはゆっくりと地上に下降してくる。

レッドは、リザードンのその異常な有り様に、動揺のあまり思わず目を奪われた。

その炎獣の悲鳴は、ただ聞いているだけでも、その苦しみが他者に移りそうなくらいに酷く生々しい。

それでもリザードンは何とか露命を繋いでいるようであるが、その形相は、まさに生き地獄の真っ只中といったところ。

体のそこかしこに血管が浮かび上がっている中、リザードンはひたすらに頭を抱えながら、その辛苦を極めし思いを叫んでいた。

「リザードンッ!」

「おい……リザードンッってば!」

「グォァァァァァァァッ!!」

レッドはリザードンに、懸命に声かけを行ったものの、その声はリザードンの慟哭によって悉くかき消されてしまう。

リザードンが【どく】の状態異常にかかってしまっていて、それを原因として苦しんでいることは、レッドの目から見ても一目瞭然であった。
 ▼ 359 mTQB7XkZdk 18/09/22 23:22:01 ID:Ck8g3at2 [4/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
そして、リザードンが現在進行形であげているこの喚声は、今のところ静まる目処が立たない。

レッドはこの時、自分の先程までの浮かれ様を心の底から恥じた。

もしこの場に《あなをほる》を覚えたディグダが居たなら、きっとレッドは即刻ディグダに命じて穴を掘らせ、そこに逃げ込んでいることだろう。

それくらい、レッドの心は今、自らへの失望の念によって充満している。

「……グォォ……ォォォ……!」

一方でリザードンは、何とかレッドの心配を振り払うべく、不撓不屈たる闘志を今ここに復活させようとして、ひた向きな思いでこの侵蝕に真っ向から立ち向かっていた。

そしてそんな自分との悪戦苦闘の末、リザードンは、自身の頭を押さえていたその手をやっとの思いでどかすことに成功し、目線も再び前方に向けてみせる。

未だに毒泡が彼の周りでブクブクしてはいるものの、体勢を整え直すことにはどうにか成功したのであった。

「……無理はしないでくれよ、リザードン」

「グォォ……ッ!」

……“無理”なら、とっくの前からし続けてしまっている。

だがリザードンは、哭声をあげ続ける自らの体に尚も負担をかけることを止めない。

彼はまだ、ここで果てるわけにはいかないのだから……。
 ▼ 360 mTQB7XkZdk 18/09/24 21:56:44 ID:sycUNEhA [1/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
――【どく】の状態異常に心身ともに苛まれるリザードン。

それでも何とか、この塗炭の苦しみにも彼は持ち堪えてみせるが……果たして、それもどこまで続くか。


「……私のアーゴヨンを倒しちゃうなんて、本当にあなたのポケモン達は強いんだねぇ」

かたやミヅキはというと、そのリザードンの凄まじいまでの胆力と力量に、悔しさを通り越して感心の言葉を漏らしてしまう。

彼女は一つため息を吐き、まずは二人のここまでの健闘を心から讃えた。

そして即時に、その表情を再び真剣なモノへと変える。

「……私も、この子が最後の砦だよ」

「ここまで追い詰められたのは……いつ以来だったかなぁ」

アローラ地方の初代チャンピオンは、この一瞬という時の間に、最後に自分が窮地に追いやられたワンシーンを記憶の底から引っ張り出そうとしてみる。

だが……その記憶すらも残念ながら霞んでしまうくらいに、この戦いは過去最高の壮絶具合に達しているのだ。

今のミヅキは、まさに剣が峰に立たされし者。

後ろを向けば絶海が広がる、孤島の断崖が如し光景が、今にも浮かび上がってくるようである。

「……“最後まで、ゼンリョク”」

「それが私のポリシー!」

「そして、最後に決めてくれるのはやっぱり“この子”だと、私は信じているよ!」

背水の陣にて、ミヅキはその手にボールを握りしめた。

彼女に残されたチャンスも、残すところ一度きり。

彼女はこのポケモンに……己がゼンリョクを受け継がせるのであった。

「もう一度、私に力を貸して……!」

「……ジュナイパー!」

――それは、再び戦場に舞い降りし影の翼。

彼が出現する時、標的は既に彼の瞳の中に閉じ込められている。

その冷徹な双眸で、彼は全ての獲物に正確無比の矢を放つ。

例え、その者が何キロ……何十キロと離れていようとも……。

……必ず、《ジュナイパー》は射抜いてみせる。

「……ジュナァ……」

再臨せしジュナイパーは、ピカチュウとの戦いによって既に手負いの身である。

しかしながら、今のレッドのリザードンよりは、ボールの中で休んでいた分、いくらかマシなコンディションとなっている。

〔くさ〕タイプのジュナイパーは〔ほのお〕タイプのリザードンに対し不利を取るが、それでも〔ゴースト〕タイプの技で攻めれば、ジュナイパーがリザードンに勝つ見込みは十分にある。

故にリザードンは、タイプ相性で有利であるジュナイパーが相手でも決して油断はできない。
 ▼ 361 mTQB7XkZdk 18/09/24 21:57:04 ID:sycUNEhA [2/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
ここが最後にして、最大の山場なのだ……!

「……ゴー君」

……と、ここでミヅキは、今もカルムのリザードンと戦うオーダイルに指示を出しているゴールドに対し、声をかける。

ゴールドは、出来る限り目の前の戦いから意識を反らさないように、取り敢えず一瞥のみでそれに反応した。

「今から私が、ジュナイパーに出来る限りの《Zパワー》を注ぎ込むから……」

「……少しの間だけ、ゴー君のオーダイル君に“時間稼ぎ”をして貰ってくれないかな?」

……ミヅキが出したその案は、このバトルを終結へと向かわせるだけの効力を秘めていた。

《Zパワー》は、《Zワザ》を出す為のエネルギー。

それを最大限にまで溜めて放つ為に、ミヅキはゴールドのオーダイルに時間を稼いでもらうよう、ゴールドに願った。

一方で、自分のポケモンが囮にされるということに、ほんの少しだけ表情に難色を示したゴールドであったが、一瞬の悩みの末、彼女のその妙案に……コクリと、首を縦に動かしたのであった。

「……オーダイル」

「俺達で……少しの間だけ、時間を稼ごう」

「オダッ!」

ゴールドのその頼みに、囮になる本人であるにも関わらず、オーダイルは即答で頷いた。

それがゴールドの決断であるならば、オーダイルは“今更”躊躇ったりしないのである。

このオーダイルは、ゴールドと共に今日まで数え切れない程の苦難を乗り越え、その度に無茶な作戦だって幾度となくやってのけた。

故に、自らが囮になることくらい、それが自分達が勝利する為に成功させるべき作戦だというならば、なんて事はない。

戦うポケモンにとって、“敗北”以上の屈辱など無いのだから……!

「……ありがとう」

「オダァッ!」

オーダイルはゴールドの礼を、今は弾き返す。

本当の礼は……自分達が勝利するその時まで、とっておくべきだろうから。

ゴールドはそんな彼の流儀に思わず苦笑するも、『だよな』と同調する。

こうして、お互いの意志は固まった。

後は……自分達が成すべきことに、ゼンリョクであたるのみ!
 ▼ 362 mTQB7XkZdk 18/09/26 17:53:18 ID:Jdz69wVI [1/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
***

……一方でカロス陣営のカルムは、アローラ代表の不穏な動きにいち早く気がついていた。

(……ミヅキのあの構え……まさか)

カルムは、自分が操りしリザードンに今も指示を出しながら、同時にミヅキが何やら見覚えのあるポージングを取っているのを確認する。

両手を前方に突き出した状態でクロスさせる、あのポーズ……アレは、アローラ代表対カントー・ジョウトの戦いでもミヅキが披露していたハズだと、カルムの中に眠りし記憶が必死に訴えかけた。

そう……アレは、《Zワザ》のポーズだ。

彼女が交差させた両手の、その交点に光が集まっている。

恐らく、今のところは《Zワザ》を撃つためのエネルギーを溜めているといったところだろう。

カルムは自らの推測をそう結論づけ、それを妨害するべきだと判断した。

《Zワザ》は、放たれれば一撃必殺の超奥義となりて自分達に襲いかかる。

そうなる前に、エネルギー充填を阻止しなければ、自分達の敗色はかなり濃厚になってしまうだろう。

よってカルムはここで、自分のリザードンに標的の変更を命じる。

「リザードン、ジュナイパーに《ニトロチャージ》!」

「リザァッ!」

オーダイルと交戦中だったリザードンの狙いは、急転換する。

目標をオーダイルからジュナイパーに改め、リザードンは疾風怒濤の炎の突進――《ニトロチャージ》で、ジュナイパーに向かって爆走した。

……だが。

「させませんよ! オーダイル、《アクアジェット》で追いつけ!」

「オダァァッ!」

そのカルムの計略は、オーダイルの水流を纏った全力疾走――《アクアジェット》によって阻まれてしまう。

リザードンの攻撃がジュナイパーに直撃するあと一歩のところで、オーダイルはリザードンのその一撃を相殺することに成功した。

水が炎に当てられたことで、水蒸気が大気にて離散する。

この時カルムは、『ゴールドはミヅキを守った』と認識した。

《Zワザ》の構えに入るミヅキと、それを守ろうととするゴールド……カルムは、二人の思惑を読み取る。

ゴールドのオーダイルが囮になることで、ミヅキがジュナイパーに《Zワザ》を撃つためのエネルギーを注ぎ込める時間を稼いでいるのだろう。

だが、彼女が《Zワザ》のポーズに移ってから既に数秒経っているにも関わらず、《Zワザ》は未だに発動していないところを見ると……彼女は、ギリギリまで、オーダイルの時間稼ぎが続く限り、力をジュナイパーに溜めさせようとしているのだろうか。

だとしたら、中々のチャレンジャーだと言える訳だが……逆に言うと、その一撃でこのバトルに決着を着ける気で居るのだろう。

もし、《Zワザ》が撃たれた場合、カルム達になす術はあるのか?

カルムは考える。
 ▼ 363 mTQB7XkZdk 18/09/26 17:53:41 ID:Jdz69wVI [2/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
今、レッドのリザードンは【どく】状態で、既に満身創痍。

そしてカルムのリザードンも、彼程では無いとはいえ手負いの身だ。

《Zワザ》の直撃を受ければ、“瀕死”は免れることができない。

では避けるか?

……いや、《Zワザ》の射程や弾速は未知数だ。

いざ放たれた時に、それが避けられる程遅いか、あるいは狭いかなんてことは判断のしようがなく、端から回避する算段で行った場合、もしもその《Zワザ》が避けられるような攻撃では無かった時、二匹のリザードンは何も出来ずにまとめてぶちのめされることとなる。

仮にそうなった場合……カルム達は、最後まで全力を出しきれないままやられることとなる。

そんなのは絶対に嫌だと、カルムはその未来を忌避した。

故に、避けるという選択肢は無い。

……ならば。

対抗するしか……手は残されていない。

しかし、普通の技では勿論《Zワザ》を打ち負かすことなど到底不可能。

あと、カルム達は地上にいた為知らないが、レッドのリザードンは天空でアーゴヨンに放った《オーバーヒート》の副作用で【とくこう】のランクが二段階下がってしまっている。

唯一頼りに出来るのは、カルムのリザードンだが……彼だけで《Zワザ》を突破出来るかと言われたら、微妙なところだろう。

以上の理由より、どう考えても、カロス陣営に《Zワザ》に勝る技を持っているポケモンなど存在しないことが分かる。

……尤も。

それはあくまで、“単騎で《Zワザ》に挑んだ場合”……の話であるが。

「……オーダイルが倒れれば、どの道奴は撃ってくる」

「逆に言うと、その直前が……迎撃態勢を整えることのできる最後のチャンスだ」

……カルムの熟考は、やがて完結へと至った。

「レッド!」

そして彼は、レッドに声をかける。

マフラーに首を包むその少年は、カロスチャンピオンの呼びかけに答えた。

彼が自身の頭脳を捻り倒した末に導き出したその方程式は、果たして“勝利”という名の解を得ることが出来るのであろうか。
 ▼ 364 ミツルギ@するどいキバ 18/09/27 18:55:14 ID:FFskGhHQ NGネーム登録 NGID登録 報告
支援!
 ▼ 365 ニャット@ちりょくのハネ 18/09/28 16:23:22 ID:/cocIq.. NGネーム登録 NGID登録 報告
支援っ!
 ▼ 366 mTQB7XkZdk 18/09/29 00:01:35 ID:ajvQDHgE [1/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
***

――この勝負に勝つ為に、何が出来るか……それをカルムは考え抜き、そしてとある“作戦”を編み出した。

「カルム……?」

「レッド。よく聞け」

「今から俺が言う作戦には、お前と、お前のリザードンの力が必要不可欠だ」

勝者のみが手にすることを許されるその杯に、カルムは少しでも近づくべく、レッドに協力を要請する。

「ミヅキは今、《Zワザ》を撃とうとしている」

「《Zワザ》に勝つ為には、俺とお前の“Wリザードン”の力を一つに合わせなければならない」

「《Zワザ》が“個の力”を極めているのならば……俺達は、そう」


「――“合体技”で、攻めていこう」


「そうすれば……勝てる見込みが、少しはあるっ!」

……全ての技の中で最強の威力を誇る《Zワザ》と互角に渡り合う為には、二匹の力を合わせた連携攻撃――“合体技”が有効であると、カルムは理論を展開する。

黒竜の使い手が持ちかけたその提案に、レッドは……一筋の希望を見出した。

それならば……イケるかもしれないと。

「俺達はまず、オーダイルを片付ける」

「幸い、お前のリザードンの【ひでり】のお陰で、俺のリザードンは有利だ」

「絶対に奴に勝ってみせる。だからお前は、リザードンに……出来る限りのパワーを溜めさせてくれ」

……レッドは、カルムのその言葉を……信じた。

「分かった」

「次の一撃に、俺のリザードンは全てを賭ける」

そして、そう誓った。

「頼りにしてるぜ……レッド、リザードン!」

こうして、カントーとカロスの二大王者は、今ここに“勝利への盟約”を結んだのであった。

そしてカルムは、再びゴールドの方へと目線を向ける。

その表情に浮かべるのは、何らかの確信を得た笑み。

次の瞬間、カルムは、『自分達が勝つ』という絶対的な自信を掲げながら、ジョウト地方を踏破せし少年に対して牽制の言葉をぶつけた。

「決着……着けようぜ」

眼光炯々として、蒼炎の猛獣使いはゴールドの心までもその視線で穿つ。

対するゴールドもまた、この波打つように暴れている己の鼓動に自ら今一度喝を入れ、乱れた拍を整える。

そして、こう言い返してみせた。
 ▼ 367 mTQB7XkZdk 18/09/29 00:03:21 ID:ajvQDHgE [2/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
「最後に勝つのは……僕たちですよ」

……メガリザードンX対オーダイル……この戦いは、今、最終局面へと突入する!

「リザードン、《ドラゴンクロー》で衝撃波を起こせ!」

「リザッ!」

カルムの指示に、蒼炎を宿せし暗黒の獣は呼応する。

彼は右の掌に竜のパワーを集約させ、紫色に輝くその爪を勢い良く振り下ろした。

するとその爪が描いた軌道が、鋭い空気の刃と化して、飛ぶ。

リザードンは俊敏に動くことによって、三連続でこの攻撃を繰り出すことに成功した。

合計三発……竜の力を得た真空波が、オーダイルに続々と殺到する。

「かわすんだ!」

「オダァ!」

対するゴールドの指示は、回避。

オーダイルは、《りゅうのまい》によって上昇した【すばやさ】を活かし、これらをかわしていく。

……だが。

「……オダァッ!?」

全ては避けきれなかった。

衝撃波の三発目が水獣の胸部を見事に捉え、命中する。

その波状の剣は、オーダイルの肉体に直撃した瞬間、離散し、消滅する。

残るのは、それが肉体に刻みこんだ痛烈なる切り傷だけ。

「オダッ……ァァッ!」

獰猛な生物として恐れられている彼でも、この深傷には、文字通り、胸が張り裂けるような激痛を禁じ得なかった。

「大丈夫か!?」

「オッ……オダァ!」

ゴールドの呼びかけに応え、膝をつきながらも懸命に辛抱するオーダイル。

例え肉体に耐え難き苦痛が降りかかろうとも、精神を強靭にすれば、まだ戦える。

オーダイルはそう自分に言い聞かせ、敢然と立ち上がってみせた。

「よし……反撃だ!」

「《アクアジェット》!」

「オダァィルッ!」

ゴールドはそのオーダイルの不屈の信念を頼りに、水の超速突進――《アクアジェット》を指令した。
 ▼ 368 mTQB7XkZdk 18/09/29 00:03:36 ID:ajvQDHgE [3/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
オーダイルの、水流を味方につけた一撃が、リザードンに猛烈な勢いで強襲する。

その速度は、並の肉眼で捉えられるようなモノではなく、まさに一瞬に等しい突撃。

リザードンはこれに反応することがまるで出来ないまま、直撃を受けた。

……だが。

「……リザァ」

……次の瞬間、リザードンが浮かべたのは、苦悶ではなく余裕の微笑み。

この《アクアジェット》は、リザードンにとって大した痛手とはならなかった。

レッドのリザードンの特性――【ひでり】の効果で、現在、フィールドは【はれ】の天候となっている。

この時、〔ほのお〕の威力は高まるが、〔みず〕の威力は低下してしまう。

その影響により、オーダイルの《アクアジェット》が与えるダメージは大幅に軽減されてしまったのだ。
 ▼ 369 ギルダー@だっしゅつボタン 18/09/29 10:32:59 ID:DPvoRN4w [1/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
やったぜ。
 ▼ 370 ンカラス@サイコシード 18/09/29 15:43:15 ID:B1DAFApg NGネーム登録 NGID登録 報告
しえーん
 ▼ 371 ロピウス@モーモーミルク 18/09/29 22:18:17 ID:DPvoRN4w [2/2] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
次の更新で決着つきそうか?
楽しみ
 ▼ 372 mTQB7XkZdk 18/09/30 00:23:44 ID:wkcoBjOo [1/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
***

――燦々と照る【はれ】の天候は、オーダイルにとって強過ぎる向かい風となり、彼の力を大きく弱体化させる。

それまではカルムのリザードンを幾度となく怯ませてきた《アクアジェット》も、この炎天下では最早、子供が撃つ水鉄砲同然。

その上、体力の消耗も著しく早く、時間が経過するにつれて、オーダイルの機動力はみるみるうちに低下していった。

そんなオーダイルに対して、逆に【はれ】の恩恵を存分に受けているリザードンは、まさに悠然たるその姿を得意気にオーダイルにこれみよがしに見せつけている。

「リザァ〜?」

「オダァ……!」

その炎竜の鼻をへし折るべく、オーダイルは何度も《アクアジェット》を繰り出しては、それらを全部当てていったのだが……。

「リザァ……」

……リザードンは、その全てを軽く受け流していた。

先程からリザードンは、オーダイルの攻撃がヒットする度に、まるで彼を挑発するかのような響きの鳴き声を出しており、オーダイルの戦意はそれに応じて昂ぶると同時に、荒ぶり始めてもいる。

攻撃が通用しないイライラが積もることで、リザードンへの行き過ぎた対抗意識が、彼の脳内を侵食し、彼を盲目にしていく。

やがて、その感情によって精神が完全に支配された時。

「――オダァァァァッ!」

……その者が行う攻撃は、単調になる。

「まずい……!」

実はゴールドは、さっきからずっとオーダイルに一時撤退することを呼びかけていた。

だがその声は、オーダイルには届かなかった。

そして今、オーダイルはこれ以上ない程の大きな隙を見せている。

天候による蒸し暑さと、リザードンの巧みな挑発……この二つが合わされば、怒りが沸点を超えるのに然程時間は要さない。

そのことを、カルムのリザードンは理解した上で、カルムの具体的な指示が無くともそうなるように仕向けた。

この時ゴールドは、改めて確信するのである。

あのリザードンは、戦闘のプロだと。

常に変わる戦局を一瞬にして見抜き、戦いの駆け引きを優位に進めていく術を熟知していると。

一体、どんな育成の仕方をしたらあんな嫌なヤツになるんだろう。

ゴールドは一度でも良いから、カルムにそう尋ねたい気持ちでいっぱいだった。

だが今はゴールドとて、そのカルムの育成技術に脱帽している場合ではない。

恐らく今のオーダイルにはもう、自分の声は届かないだろう。

一発あのリザードンから何らかの技を貰わない限りは、オーダイルは暴走を止めない。

なら、ゴールドの思考はこの地点で『次の場面をどうするか』というテーマに移行するべきだろう。
 ▼ 373 mTQB7XkZdk 18/09/30 00:24:48 ID:wkcoBjOo [2/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
取り敢えずゴールドは、この局面は静観することを選んだ。

「オダァァァァイルッ!!」

そして、激昂に心を囚われし猛獣――オーダイルは、リザードンに次なる《アクアジェット》を仕掛ける。

……この瞬間だった。

「……リザァ」

焦げた鱗の竜が、その微笑みを更に歪ませたのは。

「オダッ……!?」

リザードンのその企みの破顔に、オーダイルはここでようやく自らが掘り進めていた“墓穴”に気づき、瞠目しながらも冷静な思考回路を取り戻す。

だが、時すでに遅し。

《アクアジェット》によって加速し切ったその体は、もうブレーキが利かない。

そしてそのまま、前方で待ち構えていたリザードンの策略に……嵌ってしまうのであった。

「リザァ!」

リザードンはまず、突進してくるオーダイルを、僅かに体を横にずらすことでギリギリ回避し、

「リザザァッ!」

リザードンの真横をオーダイルが通り過ぎる直前で、彼はオーダイルの尻尾を……掴んだ!

「オダッ!?」

尾を拘束されたことで、オーダイルの《アクアジェット》の勢いは急激に抑制される。

彼が纏っていた水流のオーラは、やがて遅くなっていった《アクアジェット》の時速と共に消え去っていく。

とうとう、オーダイルの突進は完全に失速してしまった。

そして、身動きの取れなくなった彼を、リザードンはその腕を存分に振るって……回す!

「リザァァァァァァァッ!」

「オダァァィィッ!?」

ぐるぐる、回して回して……回しまくる!

「オーダイル……ッ!」

「よし、良いぞリザードン!」

このリザードンが魅せるパフォーマンス――“ジャイアントスイング”に、カルムは熱狂し、反対にゴールドは動揺の色を隠せない。

黒竜が旋回の速度を増す毎に、彼ら二匹の周囲に荒々しい竜巻がその勢力を強めていく。

塵芥を舞い上げながら、竜王が巻き起こす激烈なる颶風はやがて極限の速度にまで達するのであった。

そして。

「……リザァァッ!!」

遠心力を最大限にまで高めきったリザードンは、ハンマー投げの如く、オーダイルを彼方まで投げ飛ばす!
 ▼ 374 mTQB7XkZdk 18/09/30 00:26:10 ID:wkcoBjOo [3/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
「オダァァァァァァーーッ!!」

凄まじいスピードで、オーダイルは背面の壁に吸い寄せられる。

一瞬の内にその距離は縮まり、やがてオーダイルの体は壁に激突。

刹那、襲い来る衝撃が彼の肉体を好き放題に軋ませ、痛覚は何のお構いも無しに吠え叫ぶ。

「オダァッ……ァァァッ!」

直面する窮地を、オーダイルは倒れ込みながらも必死に威嚇して追い払おうとするが、それは依然としてオーダイルのもとに迫っている。

【はれ】の天候が、想像以上に彼の戦闘を妨げていた。

逆に、カルムのリザードンにとってアレは追い風である為、双方の戦力の差は最早歴然となっている。

はじめは互角だったのに、今となってはオーダイルが完全に劣勢だ。

このままだと、確実に負けてしまう……。

……そうオーダイルが、己の敗北を危惧し始めた、その時だった。

「……オダッ?」

オーダイルはふと、徐々に日差しが弱くなっていく空を不思議に思って、上方を見やる。

すると……【はれ】の天候が、徐々に元に戻っていくのが確認できた。

メガリザードンYが作り出した偽りの太陽は、唐突な点滅を皮切りにその光度を立ちどころに弱めていく。

炎天下は今、その栄光の幕を閉じた。

やがて天には、茜色の夕焼けが広がっていく。

あの太陽の影響で、先程までは異常なまでの日差しが地上を照らし尽くしていたが、それが消えた今、かの天穹が映すは真実の景色。

時刻はとうに夕暮れ。

逢魔が時に相応しい、黄昏の優しくも淡い光が、戦場を包み込む。

「……まだ諦めるなってことさ。オーダイル」

「……オダァッ!」

差した光明に希望を見出したゴールドとオーダイル。

「あちゃぁ、もうそんなに時間経ってたか……まぁ、それでもやることは変わらねえぜ」

「まだまだ全力全開でいけるよな? リザードン!」

「リザァァッ!」

一方でカルムとリザードンは、自分達の試合を優位に進めてくれていた味方を失ったことで若干名残り惜しそうにはしたものの、動転することなく、変わらない闘志を保ち続けている。

「さぁて……そろそろ、決めるとすっか!」

「ええ……お互い、時は満ちました」

カロス地方最強の実力を有するキングと、カントー並びにジョウトで偉業を達成したヒーローが、雌雄を決する時がきた。

両者共に力と叡智の限りを尽くしたこの決闘に、今、ピリオドが打たれる。
 ▼ 375 mTQB7XkZdk 18/09/30 00:26:53 ID:wkcoBjOo [4/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
この戦いを制した者が……それぞれのパートナーと最後の連携をすることができる。

その権利を掴み取ることが出来れば、それはまたとない好機となる。

ここだけは、絶対に譲ることが出来ないのだ。

勝者は唯一無二の存在。

その座を争ってきた二人の想いは、この瞬間にてその全てが次に放つ技につぎ込まれる。

何もかもを擲った、究極の大勝負……いよいよ、開幕!

「リザードン……」

「……《フレアドライブ》ッ!」

――それは、活火激発の暴走列車。

蒼炎のとばりに包まれた黒き飛竜は、自らの肉体を犠牲にして、筆舌に尽くし難い程に自身の覇気を大きく且つ激しいモノへと変えていく。

揺らめく糸遊が魅せるは、この世界で尚も第一線を駆け抜ける――絢爛たる暁闇の輝き。

彼は誇示する。

自分自身の実力の、他の追随を許さない所以を。

そして彼は信じる。

そんな自分をここまで使いこなしてみせる――卓越した采配能力を持つ己が主を。

この二つが、X――“クロス”する時。

炎の超絶奥義――《フレアドライブ》が、世界最高峰のこの舞台で、最も強い存在感を遺憾なく発揮しながら爆走する。

「オーダイル……《アクアブレイク》ッ!」

――それは、轟々と流れし奔流の如き水の力をその身に纏って放つ技。

響き渡りしせせらぎと共に、川の流れそのものになって突進攻撃を仕掛ける。

その水圧は凄まじく、まるで、流された者の命までも無慈悲に洗い流してしまう巨大な瀑布のよう。

鰐は己が有する力を洗いざらい出し切って、この最後の一撃――《アクアブレイク》を炸裂させるのであった。

そして、両者が誇る最強の技は……ついに激突する。

「リザァァァァッ!」

「オダァァァァァッ!」

両者が織りなす技の色合いは、どちらも蒼。

しかしその性質は対極。

全てを燃やし尽くす灼熱の炎と、全てを飲み込む激浪の雫。

【ひでり】の効力が無くなった今、タイプ相性的にはオーダイルの《アクアブレイク》に分がある。

だが、単純な技の威力で勝っているのはリザードンの《フレアドライブ》だ。
 ▼ 376 mTQB7XkZdk 18/09/30 00:28:36 ID:wkcoBjOo [5/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
この戦いは、今のところ五分五分の競り合い。

火が水を蒸発させ、水が火を鎮める……その絶え間なき応酬が、二匹の衝突をより鮮やかなものへとしていく。

「リザァァッ……ァァァッ!」

「オダァッ……オダッ! オダァッ!」

意気軒昂たる両者の極限の力比べ。

この命懸けの格闘に、二匹はかつて無いほどの鼓動の高鳴りを感じる。

天命に選ばれたかのように巡り逢い、ここまで激闘を繰り返してきた双方の間には、言葉では言い表せない不思議さを持った“友情”のようなモノが既に芽生えていた。

相手がより強大な力をつける度に、リザードンも、オーダイルも、喜んでいた。

この戦いを、心から楽しんでいた。

これぞポケモンバトルだと、胸を張って思えた。

「オダァァァァァイルッ!」

「リザッ……!?」

ここで若干、リザードンが圧されてしまう。

後方に少し追いやられ、踏ん張る足が床を陥没させる。

リザードンはこの時、オーダイルが放つ気迫に一瞬だけだが狼狽させられた。

自分が想像だにしない、他者が発揮する本気の――その強さを見せつけられた瞬間に得る感覚は、全身に身震いを起こさせる。

だが、同時に、その予想以上の本気に立ち会った者は……きっと、心のどこかでその事を嬉しくも思うのだ。

こんなにもコイツは、真剣に自分と向き合ってくれていたのか……と。

……そして。

その気持ちを、自分もまた同じくしていた場合は。

その興奮は……より強いモノとなる!

「……リザアァァァッ!」

『面白い』……この胸が躍る感覚を、リザードンはしかと自らの記憶に焼き付けた。

生半可なタトゥーなんかよりも、ずっと深く……。

「リザァァォォォォォゥゥゥッ!!」

……より熱く。

その身が焦げてしまうくらいに。

黒き“X”の烙印を、未来永劫消えないように……刻み込む!

「オダッ……!?」

「リザァァァァーーーッ!!」
 ▼ 377 mTQB7XkZdk 18/09/30 00:32:21 ID:wkcoBjOo [6/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
――灯滅せんとして、光を増す。

消えかかった炎は、今一度進化を超えて、閃光を解き放つ。

逆境の数だけ、戦いに身を置く者はより強くなれる。

その成長は……“無限大”。

リザードンの熱き思いの丈は、今、《フレアドライブ》に新たな力を与える……!

「リッザァァァァァァァァッ!!」

……灼熱が蒼の極みに達した時、その炎に龍が宿る。

その瞬間こそ、鱗に宿された怒りに触れし勇士に訪れし“裁きの刻”。

自我も計算も捨てて開放されるその力は、“七つの死に至る罪”の内が一つ――“憤怒”のそれである。

「……やれやれ」

「この戦いでは、理性を保っていられる《フレアドライブ》の方が実用的だと思ったから、それは忘れさせたんだがな」

「結局……そうなっちまうか」

忘却の海に沈みし激情の欠片よ、今ここに集結し、一振りの剣となりて敵を殲滅せよ。

この蒼き不滅の刃に与えられし名は――《げきりん》!

「ォ……」


「……オダァァァァァァァァァァァッ!!?」


……オーダイルは、その黒竜がぶちかました奥義の前に、最早対抗する手段を持っていなかった。

渾身の力で放った《アクアブレイク》だったが、これは見事に撃ち抜かれてしまう。

そして彼は、ゴールドの鼓膜さえ貫かんばかりの悲鳴をあげると同時に……。

「オ……ダ……」

吹き飛ばされ……墜落

「……ダ……」

程なくして……力尽きる。

「……オーダイル、戦闘不能!」

審判のその声は、遠慮も容赦も無く響き渡る。

一瞬、静まり返る会場。

だがその静寂は……すぐに打ち破られることとなる。

「……ォォォォォォオオオッ!!」

観客達が、歓声を、これでもかと言うくらいけたたましく轟かせた。

だが、そんな拍手喝采の嵐のさなか、その台風の目とも言える立ち位置にいるゴールドは、オーダイルのその地にひれ伏している姿を見て、立ち尽くすことしかできなかった……。
 ▼ 378 ィ@セシナのみ 18/09/30 20:06:26 ID:mV56oodc NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 379 ミロル@ぎんのはっぱ 18/10/01 16:55:02 ID:405Af6.E NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援!
 ▼ 380 mTQB7XkZdk 18/10/02 00:20:28 ID:BFw6EiIw [1/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
「……オーダイル……」

とうとう自分達は、負けてしまった。

あのカロスチャンピオンに、届かなかった。

ふと気づいてみると、ゴールドの額や背中には、びっしりと滝のような汗が流れ、そして染み込んでいた。

彼ら二匹の戦いが繰り広げられていた時に、自然と湧き上がっていたその熱狂の雫は、今、少年の熱くなっていた身体を急激に冷やしこむ。

震える目、揺れる視界。

戻らない時に想いを馳せそうになった自らの心に、しかし彼はブレーキをかけた。

バラバラになった心の欠片は、簡単には戻りそうにも無いが……今は、心の修復よりもまず先にするべきことがある。

それは……。


「……よくやったな」

「やっぱお前は、僕の一番の相棒だ」

「……オダッ」


……ここまでゼンリョクで戦い抜いてくれた、自分の盟友への……“感謝”。

こうして、そのゴールドの想いを無事に受け取ったオーダイルは、悔いを残すことなく、暫し意識を彼方に飛ばすことができる。

やがて訪れた睡魔に、オーダイルは抗う事なく……身を委ねたのであった。
 ▼ 381 mTQB7XkZdk 18/10/02 00:21:04 ID:BFw6EiIw [2/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
***

「……ありがとっ。ゴー君、オーダイル」

「おかげさまで……準備は万端だよ」

……カルムのリザードンが、見事にゴールドのオーダイルを撃破するのと同時に、ついにミヅキが、《Zワザ》の発動準備を完了させた。

彼女の《Zリング》がきらびやかに瞬きながら、ジュナイパーに《Zパワー》を余すことなく注ぎ終え、エネルギー充填率はマックスに到達。

そしてそのZの波動は、今、彼女の“舞い”によって……解き放たれる!

「私達のゼンリョクは……潰えないっ!」

「貫いて……」


「……《シ ャ ド ー ア ロ ー ズ ス ト ラ イ ク》ッ!!」


「……ジュナァ!」

最大規模のZパワーを抱えたジュナイパーが、技の発動と同時に天高く飛翔する。

やがて、そこから会場全体を見下ろせるくらいの高さに到達した彼は、次に翼を限界まで広げた。

すると、彼の周囲の虚空から、禍々しい黒色の矢が続々と出現していく。

そしてそれらの矢は、列をなしてジュナイパーを中心に回転する。

その回転の速度は急速に上昇していき、それに応じてジュナイパーを包む暗黒のオーラも増大していった。

「狙いは、カルムさんのリザードン君に定めたよ」

「彼さえ倒せれば、後はもう、レッドさんのボロボロのリザードン君だけだからね」

「……それでね、この技は超高威力なうえに、絶対に避けることのできない必中の攻撃なの」

「だから、逃げようとしても無駄なんだからねっ?」

ミヅキは、カロス代表の二人に、このタイミングでそう忠告する。

もしも、二人が始めからこれを避ける前提で動いていた場合、今頃は彼女のその言葉に慌てふためいていたことだろう。

やはり、あの時のカルムの判断は実に賢明だったのだ。

彼は、予測不可能な《Zワザ》の真価を甘い憶測で断定せず、堅実に迎撃の準備をすることを選択した。

彼が怠ることなく敷いておいたその伏線は、今、最後の希望となってこの窮地に光を差し込ませる。

「“逃げる道”なんてモンは、俺の方から断ち切ってやったさ」

「それに……君達のゼンリョクに打ち勝ってこそ、真の“最強”ってヤツだろう?」

超えること――それ即ち、“最強”への道。
 ▼ 382 mTQB7XkZdk 18/10/02 00:21:26 ID:BFw6EiIw [3/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
「……なるほど。あなた達は初めから私のジュナイパーと勝負する気だったんだねっ」

「その作戦に踏み切ったその勇気は、本当に凄いと思うよ」

「一発でその答えに行き着くなんて、よっぽど勘が働かないと無いと出来っこないことだから」

その道を最後まで駆け抜ける為には、実力や才能は勿論のこと、戦いの中で一瞬の直感を掴み取ることのできるセンスも必要になってくる。

カルムは、それをバッチリ持っていた。

ミヅキはそのことを改めて確認すると、決勝戦の相手が彼らであったことを、心から天に感謝する。

自分達の最高の舞台で、こんなに凄い人達と巡り逢えたこの奇跡……。

「でも、結局……」

ミヅキは、この二度と訪れない夢の瞬間で……。


「……勝つのは、私達なんだよね」


……“完璧なる勝利”を、収めたいのである!


「さぁ……行って!ジュナイパー!」

「ジュナッ!!」

ジュナイパーは、意を決して、カルムのリザードンに照準を定める。

幽魂の羽衣を纏って、自らの身体さえも矢へと変えて。


「……ジュナァァァァァァァッ!」


――彼女達の絆の力が、暗夜のZと共鳴する時、それは一条の黒き矢となる。

ジュナイパーのみが会得、そして使用することのできる、彼固有の《Zワザ》。

宵闇に光りし流星――《シャドーアローズストライク》。

常世と幽世を繋ぐきざはしは、今、その深緑の狙撃士の眼下に現出する。

彼はそれを辿りながら急降下し、蒼き獄炎の竜に向かって、疾風怒濤が如し全速力を惜しみなく発揮し尽くす。

その彗星に託された願いは……“栄光”!
 ▼ 383 グラージ@サイコシード 18/10/02 19:01:31 ID:4pJIJxOA NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
燃える…燃えるぞっ!
 ▼ 384 クリン@ルームキー 18/10/03 22:23:42 ID:xSB6jGbw NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
とうとう完結か…
 ▼ 385 mTQB7XkZdk 18/10/04 01:10:04 ID:pGwM5c0U [1/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
「リザードンッ!」

「リザァァッ!」

それに対抗するは、未だ逆鱗に触れられた怒りに囚われ、忘我の境地に精神を預けし暴竜――リザードン。

蒼炎を操る竜戦士は、鳴り止むことのない激昂の咆哮を轟かせながら、眼前に迫りしZワザ――《シャドーアローズストライク》に、真っ向から立ち向かった。

目には目を、突進には突進を。

黒と蒼の双閃は、正面衝突によって互いの底力を競い合う。

「ジュナァァァァァッ!!」

「リザァァッ……!?」

だが、その鍔迫り合いは互角では無い。

気迫も、威力も、何もかもが別の次元にある。

《Zワザ》は、一度撃てばその戦いでは二度と使うことの出来ない、まさに必殺の一撃。

儚いからこそ、その短き命は何よりも強い輝きを放つ。

いくらリザードンの《げきりん》が強力といえど、強さの単位が規格外な《シャドーアローズストライク》が相手では、あまりに分が悪い。

このままでは……リザードンは負ける。

だが……この瞬間こそが、カルムが最も待ち望んでいた絶好の好機。

切り札を解禁するなら……今しかない!

「……今だ」


「レッド、リザードンッ!」


この時の為だけにカルムが温存しておいた、カロス代表最後のカード。

この策は、戦況をまるごとひっくり返す起死回生の力を得るか。

「グォォォ……ッ!」

リザードンは、毒竜が残した置き土産に未だに苛まれながらも、この地点でかなり膨大な量のエネルギーを溜めていた。

だがその分、身体にかかる負担もまた大きい。

それこそ、“過剰”と呼ぶに相応しい程の甚大さだ。

恐らく、この一撃がリザードンがこの試合で撃てる最後の技となるであろう。

その彼の決死の思いを間近で見ていたレッドは、そのことを既に悟っていた。

今からリザードンが放つ技は、彼の技の中で最強の威力を誇る技――《オーバーヒート》。

レッドの目の前で燃え滾っているその焔は、前述の通り、十分過ぎるほどの火力を有している。

だがそれはあくまで、“一般的観点”から見た場合での話だ。
 ▼ 386 mTQB7XkZdk 18/10/04 01:10:48 ID:pGwM5c0U [2/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
これを、“レッドのリザードン”が放つ《オーバーヒート》という基準で見ると、その焔は……いささか、心許ない。

レッドはここで、リザードンの【とくこう】ランクが低減してしまっている事実を見抜く。

アーゴヨンと繰り広げたあの天空の戦いで、リザードンは一度《オーバーヒート》を使ってしまい、そのせいで、リザードンは満足に力を発揮することが出来ないのだと。

……尤も、それが分かったところで……。


「リザードン」

「お前なら、やれる」


……今更、何かを諦める訳でも無いのだが。

「……グォォォォォォッ!!」

能力が弱体化していようが、関係ない。

いつだって全身全霊を以て技を繰り出している以上、それがもたらす結果に不満を抱くこともない。

自分達が戦う理由は色々あって、どれが一番かと言われても絞れないが……この状況でなら、一つだけ特筆して書き記すことができる。

それは……『勝てるから』だ。

そう。

今この瞬間、リザードンに《オーバーヒート》を指示したのだって、それをすればリザードンが勝てるから、レッドはそうしたのだ。

『リザードンならやれる』……レッドのその言葉には、気休めやお世辞といった戯けた意味合いは全くもって含まれていない。

彼が常に胸に抱き続けている、真摯過ぎる真っ直ぐな信念……それしか、無い。

故にレッドは……もう一度、言う。

「……やれるさ、リザードン」

「お前なら!!」


「グォォォォォォッ!!」


そう信じて止まない二人がかけるラストスパート。

思うがままに、橙色で描く。

戦場という名のキャンパスに、世紀の名画が如く奮戦の景色を。

この世界の歴史に……名を刻め。

《オーバーヒート》……炸裂!
 ▼ 387 mTQB7XkZdk 18/10/04 01:11:22 ID:pGwM5c0U [3/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
***

(……やっぱり貴方達は凄いわね。お隣さん)

(私達がどんなに努力しても、どんなに工夫しても越えることのできなかった……最強のチャンピオン)

(私はそんな貴方が憎らしくもあったけど……それ以上に、大好きだった)

……黒竜の使い手にして、この地方の頂点に君臨する王者――カルムに、その想いを胸中にて零すのは、彼のかつての恋人だった少女――セレナ。

(今となっては終わってしまった関係だけど……やっぱり、貴方達が活躍する所は見ていて飽きないわ)

(見れば見る程、もう一度貴方に惹かれていくの……)

……その想いに、嘘はつけない。

(……もう、私に、貴方の横にいる資格はないけど)

(でも……この瞬間だけは……)

……見届けさせて欲しい。

そう願う彼女の眼差しを阻む者は、誰一人としていない。

ふと流れたその涙を、咎める者もいやしない。

視界が潤んでも、彼の最高の晴れ舞台はこの上なく彼女の記憶に焼き付けられる。

蒼きその輝きによって……。

「……カルム」

「頑張って……!」
 ▼ 388 mTQB7XkZdk 18/10/04 01:12:00 ID:pGwM5c0U [4/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
***

(……ミヅキさん)

(僕は貴女と出逢ってから、何かと貴女に振り回されてきましたね)

……この勝負に単騎で挑むアローラ初代チャンピオン――ミヅキの姿を隣で見つめながらそう心の声で話しているのは、カントーとジョウト地方の伝説にその名を残せし者――ゴールド。

(初めは、そんな貴女が少しだけ苦手だった)

(自分の感情を貴女の掌の上で転がされているような気がして……何となく、癪だった)

(でも……そんな日々を過ごしていく内に、それも悪くないかななんて、思えたりして)

(……ちょっと、変ですよね)

“ゴー君”なんて気の抜けたあだ名で呼ばれ、変に可愛がられ、からかわれながら彼女と共にここまで上り詰めてきたゴールド。

ミヅキと一緒に歩んできたこの数日間……ゴールドはそれを今振り返ってみて、ふと、“とある気持ち”が芽生えていることに気づいた。

(今では貴女にあだ名で呼ばれる度に、その、ドキドキしてしまうというか)

赤面と、早まる鼓動。

脈打つ度に、その心はより躍る。

ミヅキを想う毎に。

ミヅキを視界に入れる度に。

ゴールドは、まるで自分が自分じゃなくなってしまうような感覚を、無理矢理彼女に覚えさせられた。

この不可思議極まる心悸の亢進を、ゴールドは無意識の内にこう結論付ける。

そう、これは……。

「……好き、なのかな」

「貴女のことが」

……“恋”。

ゴールド自身は、その言葉をミヅキが聞こえないくらい小声で紡いだつもり……だったのだが。

ミヅキの口角はこの時、ほんの僅かにだが、確かに……吊り上がったのだった。
 ▼ 389 mTQB7XkZdk 18/10/04 01:12:32 ID:pGwM5c0U [5/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
***

(……レッド)

(やっぱりアナタは、いつだってアタシにとって憧れの存在だよ)

(とてつもなく純粋で、どこまでもポケモンのことが大好きで)

(それが時々子供っぽくも見えたけど……そんなアナタも愛おしくて)

(……アナタに告白された時は、本当に嬉しかったな)

……その恋歌を、レッドに向けて織り成すのは、カロス地方のジムリーダーの一人にして、メガシンカの継承者の少女――コルニ。

「レッド……!」

彼女は、少年の名を呼ぶ……ただそれだけで、胸が苦しくなるほど熱くなる。

自分自身でも御せない、心拍の早まり。

こんなにドキドキして、息も荒くなって……だけど、この恋慕は止められないし、止めたくない。

ずっと、永遠に続いてほしい。

例え冷める時が来るとしても、その度に息を吹き返して欲しい。

そう、何度でも。

レッドが諦めない限り。

コルニも……とことん諦めない。

「レッドぉ……っ!」

彼との思い出を、ふと振り返る。

自身のトレーナーとしての腕を高める為の武者修行に出た彼女が、その旅路の途中で巡り逢った、運命の人――レッド。

彼と共に時針を刻み、彼と共に日録を記してきたあの日々。

これから先も、それが途絶えてしまわないように……。

……コルニは、叫ぶ。

「……レッドーーッ!」


「大好きだよぉーーーっ!!」


誰よりも、大声で。

何者よりも、涙ぐんで。

一線を画したその恋情で。

彼への溢れ出る愛を……ありったけ。
 ▼ 390 mTQB7XkZdk 18/10/04 01:12:58 ID:pGwM5c0U [6/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
***

(……やっぱ、お前ら反則だわ)

(あん時は俺が、いつだってお前の先をいっていたハズなのによぉ)

(カントーチャンピオンの座も、ジムリーダーの仕事も、メガシンカも……俺が先回りして、お前よりも早く、全部手に入れてきた)

(だが、彼女と、世界最強の地位は……お前に先を越されちまったな)

……嫉妬のようなその言葉の数々を吐き捨てるのは、元カントー地方チャンピオンにして、現トキワシティジムリーダー――グリーン。

(お前の今の“目”……俺は誰よりも知っているぜ)

(俺がお前に今度こそ勝てそうだと思った時……俺は、お前のその“目”に何度も覆されてきた)

(今思い出しても腹が立ってくるぜ……チートかってんだよッ!)

グリーンは、かつてのレッドとの戦いにおいて、何度もその“目”を前にして逆転負けを喫してきた。

彼はその苦い惜敗の思い出を回想したことでむかっ腹が立ち、そのレッドの勝負強さを、ゲームにおける反則行為――“チート”に例えて非難する。

……だが、だからこそグリーンは“確信”していた。

誰よりもその屈辱を味わってきた彼からしてみれば、この試合がどのような結果に終わるのかは既に一目瞭然のこと。

自分自身――超絶強いこの俺様――でさえ、この局面ではどうにもできなかったのだ。

ミヅキとて、これに抗うことはできまい。

グリーンは、自分の力に絶対の自信がある。

故に、その力を幾度となく上回ってきたレッドの実力に関しては、自分の名に賭けて太鼓判を押すことができる。

そしてグリーンは、このバトルの結末を悟るのだった。

(喜べ、レッド)

(この勝負、お前の……)


(……“勝ち確”だ)


……レッドの最強のライバルは、誇りを胸にこの試合を見届ける。

最早、信じるとかそういう次元ではない。

彼にとって、レッドの勝利は……神が定めた“確定的未来”なのである。

これが、レッドと共に切磋琢磨してきた者が最後に行き着いた……“真理”であった。
 ▼ 391 mTQB7XkZdk 18/10/04 01:13:44 ID:pGwM5c0U [7/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
***

――願いは、それぞれのトレーナーのもとに。

茜の空より霧雨の如く降りかかる幾千の恐怖――《シャドーアローズストライク》と、王者の君臨せし地より反旗を翻すべく飛び上がった竜王の奮迅――《げきりん》は、依然として殺伐激越とした轟音で戦場を支配しながら、衝突による嵐を巻き起こしていた。

「リザァァァァァァッ!!」

「ジュナァァァーーッ!!」

矢が風を裂く音。

怒りが大気を割る音。

交錯せしその響を、しかし彼らが放つ雄叫びはそれらを圧倒的に凌駕して、人知を超えた激熱のビートを刻み、人々の記憶にこの一瞬という時を焼き付ける。

その焼印は、一生剥がれ落ちることはない。

全てが霞む程に、ポケモン達は……咲き誇ってみせる。

そして、その一度きりの晴れ舞台をより鮮やかに彩るのは、彼ら――トレーナーの仕事だ!

「……リザードン」

「あと少しで……“世界”に辿り着けるぞ」

「どうする?」

……《オーバーヒート》が撃たれる寸前、レッドはそんなことをリザードンに聞いていた。

その彼の、少し妙な問いに、リザードンは咆哮で返す。

音の波動に、レッドの髪は強烈に吹かれ、揺れまくった。

その一陣の風は、まるでレッドに『何が言いたい?』と問い返しているかのよう。

レッドはそれを感じ取り、次に出す言葉にはより強く意味を宿らせた。

「……お前を見てるとさ」

「超えてしまいそうなんだ……その“世界”すら」

「そしてその先に一体何があるのか……お前と一緒に確かめたくて」

「……お前は、行きたいか?」


「“世界”の先にある……そのまた別の世界へ」


……レッドは、既に“最強”じゃ飽きたらなくなっていた。

返り咲くだけじゃ、もう。

故にレッドはリザードンを、試した。

自分が求めるその世界へ、足を踏み入れる勇気はあるか……と。

だが、その合否は分かりきっている。

レッドがリザードンと……いや、ヒトカゲと逢ったあの日から。
 ▼ 392 mTQB7XkZdk 18/10/04 01:14:22 ID:pGwM5c0U [8/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
彼は……その少年と一緒に歩み、飛び、そして……超えてきたのだから。

「……グォォォゥッ!」

どこまでも行こう。

お前となら……やれる。

その双眸に、嘘偽りは……ない!

「……《オーバーヒート》じゃ、足りない」

「もっとやれる。そう、もっとだ」

「この一撃で……」


「……この世界に、別れを告げるぞ!」


少年と火竜……決して焦げ落ちることのないその絆は、次なる世界へ飛び込む。

この世界の手土産――“勝利”を、その手に握り締めて。

進化を超えた進化を……更に超えろ。

真価を発揮して……!

神火を……滾らせて!

「グォォォァァァァ……ッ!」

――橙色のその輝きは、やがてこの次元を揺るがす天地鳴動の爆発となる。

これによって抉り返され、引き裂かれた大陸より、悠久なる暗闇を覗かせし断崖が出現する。

そしてその深淵からは、まるで地球があげた悲鳴の如く、凄絶な地鳴りが解き放たれた。

天変地異が全てを蹂躙するさなか、一匹の竜は、称号を失ったその少年の生涯に、再び命の芽を吹かせる。

これから先、彼が過ごす日々が少しでも幸せなモノになるように。

竜――リザードンは。

少年――レッドに。

積み重ねてきた努力を、築き上げてきた絆を……惜しまず、躊躇わず、賭け、擲つ!

この瞬間こそ、リザードンの真骨頂。

……いや、それすらも超える。

そして、またそれも超える!

超えて、超えて……超えて!

やり過ぎ? でも構わない!

これが、リザードンの――
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