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【SS】みとじの声 〜再三の破滅〜

 ▼ 1 去作のリメイクです 18/07/15 22:45:38 ID:rwjcpKh. NGネーム登録 NGID登録 報告



──みとじの“声”には姿なき

『要石』にその身を潜めて……



 ▼ 50 石の森◆Y0TXrTESFs 18/07/21 12:56:03 ID:DiWchIk6 [1/34] NGネーム登録 NGID登録 報告
──そして現在 シダケタウン


ヒデオ「……ハツネッ! 大丈夫かっ? なにかされなかったか!?」ダダッ

妹の姿を発見した刹那、僕の瞳からは大粒の涙がこぼれ落ち、鼻腔からも大量の鼻水が溢れていた。

ハツネ「えっ、なに、なに? なんなのホントに。恥ずかしいよ…」

ヒデオ「……グスッ……。あの先生、今どこだっ!?」

ハツネ「えっ……? いや、でも先生、骨休めやら肉休めやらで、さっきどっか行っちゃって……」

ヒデオ「先生……イヤ、アイツは、恐らく……」

ハツネ「?」

当然ながら妹は、大丈夫かこの人といった眼差しでこちらを見つめている。

ヒデオ「……話は後だ。まずは……“これ”を見てくれ!」

ハツネ「……なに、これ……」

………
……
 ▼ 51 石の森◆Y0TXrTESFs 18/07/21 12:56:29 ID:DiWchIk6 [2/34] NGネーム登録 NGID登録 報告
《ハツネへ》

この前は色々と悪いこと聞いてゴメンな。
ポケナビなんか高くて買えなかったから、このぬいぐるみでどうかカンベンしてほしい。

……カラカラのぬいぐるみだぞ。これだって高かったんだ。


オレとお前はなんか似てるんだ。右腕も、性格もそう。
だからちょっかい出したくなるというか。気にかけたくなるというか。


あっ、変な意味には捉えるなよ。


ストーンバッジもな、本当はお前に自慢したくてツツジさんにもらったんだ。お前、驚くかな〜って。
あの人モノにちょろいから。


また遊ぼう、いずれシダケに行くかもしれない。
その時は、かき氷おごってやるよ。

ヒデオなんかより、もっと、豪勢にだぞ!!

                    《トモノリより》
 ▼ 52 石の森◆Y0TXrTESFs 18/07/21 12:57:31 ID:DiWchIk6 [3/34] NGネーム登録 NGID登録 報告
ハツネ「……これ、トモノリの……?」

ヒデオ「ぬいぐるみにメッセージカードが付属してたんだ。きっとお前に渡そうとして持っていたのだろう(半ばプロポーズみたいなもんだが)」

ハツネ「……でも、だったら、トモノリは…?」

ヒデオ「……これは、カナシダトンネルに落ちていたんだ。……あと、……“これ”、も」

ハツネ「……それって……」


──あろうことか、先生の名刺だ。


ヒデオ「トモノリのツチニンがトンネル内で殺されていた。そして現場には、この名刺が。薄暗く、落としたことに気が付かなかったと考えられる」

ハツネ「えっ、えっ……?」

ヒデオ「……つまり、奴がツチニンを殺し、トモノリをどこかに連れ去ったとしか考えられない! もう少し、僕が早く来ていれば……ッ!!」

ハツネ「……ウソ……先生が……。えっ……あの、先生……が…?」


僕は激昂し、妹は混乱していた。

あの時互いに、少しばかり頭を冷やす必要があったのかもしれない。
 ▼ 53 石の森◆Y0TXrTESFs 18/07/21 12:58:37 ID:DiWchIk6 [4/34] NGネーム登録 NGID登録 報告
その後、僕らはまずカナズミ中をくまなく捜索した。しかし、先生とトモノリの姿は見つからなかった。

ハツネには来るなと行ったが、トモノリのことを気にかけてか、着いて来てしまった。


……そして、次にトウカの森を探すことになる。


ヒデオ「……ここにいないとなれば、トウカ辺りかな?」

ハツネ「うん……。……えっ、あっ、ヒデオッ、ヒデオッ!!」

ヒデオ「なんだ…? ……あっ…………」


──『森の霊園』への道が、開かれていた。


つまり、木が生えていないということは、誰かが“いあいぎり”を使ってからそう時間は経っていない。


ヒデオ「ハツネ、お前は」

ハツネ「……アタシも行くっ!!」

ヒデオ「……そうだよな、そう言うよな……」

ヒデオ(なにが起きるかわからない。“最悪”の展開なら。念のために……“して”おこうか──)


──ヌプッ。
 ▼ 54 石の森◆Y0TXrTESFs 18/07/21 12:59:05 ID:DiWchIk6 [5/34] NGネーム登録 NGID登録 報告
〜森の霊園〜


墓標の中心に、誰かがいる。

僕らは悟られないように、木陰に身を隠すのだ。


ハツネ(ねっ……だ、誰かいるよ……?)

ヒデオ(ビンゴだ! 多分先生とトモノリ……。なぜあの人がトモノリを攻撃したのかはわからないけど。助けないと……)


「……君で、“何人目”だろうか…
 生憎だけど、君はここで眠るが良い。良い所だよ、ここは」


ヒデオ(先生の声! なんだ……なんのことを話してるんだ?)


先生「実はね、君も確かに捨て難いけどね、もっと良いかなって思った子がいるんだ。それに僕、一度に二体作るのは、あまり好きじゃないし」

マルノーム『……』


ハツネ(マルノーム……。先生のポケモン……? なんでポケモンなんかに、あの人、話しかけてるの……?)
 ▼ 55 石の森◆Y0TXrTESFs 18/07/21 12:59:24 ID:DiWchIk6 [6/34] NGネーム登録 NGID登録 報告
先生「マルノーム、吐き出せ」

マルノーム『……。ゲエェェエエ〜〜ッ!!』ボトッボトッ

ヒデオ「!!!」


──吐き出されたのは、あろうことに…“人骨”だった。


先生「まさか、“君”だったとはねぇ……。なんの因果か…あの時右腕を治した君を、私がこうして殺すことになるなんてね。えっと確か……。
……『トモノリ』君……だっけか……?」


ヒデオ(……トモノリッ!!? そんなっ、ウソだっっ!!!!)

ハツネ(……え? “あれ”って、“あれ”がトモノリ……えっ、そ、あっ……? ……な、泣かない……もんっ、でも、ト……モノリ……!!)


無理もない。ポケモンと人間ではワケが違う!
ハツネは……泣き出した……。


先生「んっ……! 誰だっ……?」

ヒデオ「し、しまった……!!」
 ▼ 56 石の森◆Y0TXrTESFs 18/07/21 12:59:50 ID:DiWchIk6 [7/34] NGネーム登録 NGID登録 報告
先生「……ふんっ!!」


──ブンッ。


ヒデオ(っ……! なっ……あれは、“ふといホネ”っ!!)

奴は太い骨を、僕ら目掛けて投げつけたのだ!

ヒデオ「“ほねブーメラン”だっ、避けないとっ!!」

ハツネ「えっ、う……うんっ(シュッ


……ドボッッ!


ハツネ「がっ……」クラッ

ヒデオ「あっ!」

木陰から、僕らは姿を乗り出す。

先生「……! ククッ、君ら、だったか……」


……ブーメランは、ハツネの腹部に命中してしまったのだ。
 ▼ 57 石の森◆Y0TXrTESFs 18/07/21 13:00:34 ID:DiWchIk6 [8/34] NGネーム登録 NGID登録 報告
ハツネ「んぅっ……。……はぁっ、えふっ……」ドサッ

倒れ込み、額から冷や汗を流し、力なくハツネは喘ぎ声を漏らす。

ヒデオ「ハツネッ、だ、大丈夫か!?」

先生「……内臓……恐らくは腸辺りを打ち付けた筈だ。今、とても気持ち悪い感覚が続いていることだろうが。でも、君らがこんな姑息なことするから……いけないんだよ?」

ヒデオ「なにが姑息だっ! お前の方が、よっぽど……。その人骨は、誰のものなんだっ!?」

先生「……わからないかなぁ〜……。だから、トモノリ君だよ。彼の成れの果てさ。“これ”を見ても、わからないかなぁ?」ヒョイッ

“先生”は、ゴナゴナとなっている人骨からなにかを拾い上げる。

ヒデオ「……これ? …金色……の骨……あぁっ!?」


──義骨。


非情な現実を、僕たちはようやく実感することになった。


ヒデオ(……トモノリは……殺されたっ! ……しかも、僕らが信頼していたっ、コイツにっっ!!)
 ▼ 58 石の森◆Y0TXrTESFs 18/07/21 13:04:18 ID:DiWchIk6 [9/34] NGネーム登録 NGID登録 報告
先生「……彼がね、トンネル内ですれ違ったんだ。そして、よりによって僕は“これ”を落としてしまった」


──“これ”とは、骨壷だ。


先生「あぁ、これはね、別の“誰か”の骨なんだ。私が以前ちょいと殺した、誰かのね」

ヒデオ(! コイツ、他にも……)

先生「でも、ここに運ぶ途中、彼……トモノリ君にこれを見られてしまった。壺だけならまだ良かった。……よりによって、“中身”まで、こぼれてしまって……見られて、しまったから……」

ヒデオ「殺した……というのか! そんな身勝手な理由で……しかも……殺人行為を繰り返して!!」

先生「あぁ、実際に殺しているのはコイツだよ。……コイツにいつも呑み込ませているんだ。トモノリ君も頭を砕いた時は、まだ“生きては”いたからね」

マルノーム『マル〜!』

先生「で、マルノームをボールに戻して、運ぶ。そして私は、殺人を楽しんでるわけじゃあない」

ヒデオ「ポケモンにまで自身の犯罪を手伝わせているだなんてっ、お前は全然優しい人なんかじゃなかったんだ! この……殺人鬼がっ!!」

失い、裏切られ、僕の感情は今までにないくらいに、高まってしまっていた。

先生「……そうカリカリするな、しがない塾帰り君よ。ならば私の経歴を、少しばかり君たちに聞かせてあげよう」

………
……
 ▼ 59 石の森◆Y0TXrTESFs 18/07/21 13:04:45 ID:DiWchIk6 [10/34] NGネーム登録 NGID登録 報告
私は大学を卒業後、医局に属した。そして、アローラ地方のとあるクリニックに勤めたんだ。

というか、阿呆な教授に飛ばされたんだ。
まぁ、それに対しては特に不満はなかったね。

なぜなら、アローラは良いところだったからさ。
……アローラ程、医療費をボッタくれる地方もない。旅行客なんてのは良いカモだった。

私『……はぁ』

しかし、それでも、私の心は満たされなかった。

トモノリ『ありがとう、お医者さん! おまけに、こんな石までくれてさっ!!』

私『ちょっとしたサービスですよ。もう会うこともないでしょうが……お大事にね』

患者の前で、上っ面の表情を浮かべ、偽の性格を演じ。
ただ、“良い医師”であろうとした。

……今思い返せば、その行為ですら。

私(……今の子の、レントゲン写真……これか。うっ、うぅっ……)

患者のレントゲン写真を“オカズ”とし、自慰行為を行うことが、私の日課となっていった。

いつしか私の心に、“悪魔”が棲み着いていた。

私(見たい……見たいぃ……。骨をっ、人のっ、骨をっっ……)

どんな人間にも、どんな生き物にも、必ず骨はあるのだと。
考えるだけで、イきり立って静まらなかった。
 ▼ 60 石の森◆Y0TXrTESFs 18/07/21 13:05:07 ID:DiWchIk6 [11/34] NGネーム登録 NGID登録 報告
私『うっ、あっ、出る……。……おぉっ、おぉおぉっっ……』ズゥプッ


私の“悪魔”は、日々進化していく。
その進化具合は、ポケモンの骨を体穴へ出し入れするまでには発展してしまった。

……が。


記者『こんにちは、アローラ・ウィークの者です!! 先生、あなた……この“写真”見られたら……? 困りますよ……ねぇ……?』

……行為に及ぶ私の写真が、盗撮されていたのだ。

私『……』


──そしてその日、私は、“一線”を超えてしまった。
 ▼ 61 石の森◆Y0TXrTESFs 18/07/21 13:05:36 ID:DiWchIk6 [12/34] NGネーム登録 NGID登録 報告
私『ハァ、ハァ……』

横たわる死体の存在感。さすがに動揺したよ。
息遣いだって、それに準じたものだった。

私『ハァ……。……フッ、ククッ…ハァ……』

だが、その息遣いは。
段々と、意味の違うものへと変化していった。


──私は欲情していたのだ。
『この死体の骨を見てみたい』、と。


そして、マルノームに死体を呑み込ませ、骨を吐き出させた……。

……結局あの写真のネガが裏ルートへと既に流出していたようで、スキャンダルに陥る前に自主退職。
整形手術を自身に施し、海外の田舎町に移り住んだ。

シダケもとても良い所さ。そして僕も良い医者として。
これまで通り、偽の自分を演じ続けた。

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先生「なぁ、ヒデオ……くんぅぅ……。クックククククク」

ヒデオ「……うっ……。うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあっああ゛あ゛っ!!」ダッ

僕はすっかり頭に血に上り、妹の身を省みることも忘れ、奴に突っかかって行った。
 ▼ 62 イゼル@すごそうないし 18/07/21 13:21:54 ID:Sp5oXER2 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 63 石の森◆Y0TXrTESFs 18/07/21 13:30:37 ID:DiWchIk6 [13/34] NGネーム登録 NGID登録 報告
──バギャッ!!


ヒデオ「……べふっ……?」


攻撃を被ったのは僕の方であり、殴られた僕は宙を舞い、思い切り地面に身体を打ち付けてしまった。


先生「白状しよう。私は過去アローラにおいて立派な医師でありながら、ゴロツキの集団『スカル団』に属していたことがあったのだ」

ヒデオ「……」

元スカル団員「……ちょいとばかり、スカルの名の冠するイメージとはかけ離れており、直に脱退したのだが。その際に強制的に磨かされた戦闘技術が、こうして役に立とうとは思いもしなかったよ……」

ハツネ「お兄……ちゃん……? 大丈夫……痛く、ゲホッ! …血、とか……大丈夫……?」

ヒデオ(妹に……心配されるだなんて……!)

元スカル団員「さて、見られた以上は、君らを殺さなければならないか……。……だがハツネちゃんよ。私は心優しいから、殺すのは……君だけにしといてやろう」

ヒデオ「なっ……!?」

元スカル団員「私はヒデオ君、君のことが気に入った! ……一生私の診療所の地下室で暮らすことになるが…しかし妹の命と引き換えに、君は死なずに済むのだよ?」

ヒデオ(クソッ…このままじゃっ……!!)
 ▼ 64 石の森◆Y0TXrTESFs 18/07/21 13:31:24 ID:DiWchIk6 [14/34] NGネーム登録 NGID登録 報告
元スカル団員「……幾多の経験で、コツは掴んだんだ。……骨を、掴む。ククッ、ククッ……。さぁ……拝ませるのだ、君の……骨を……ただ、見たいだけなんだ……」


──ザッ、ザッ……。


ハツネ「やだ、やだっ、来ないで……やだ……。やめてっ、そんな…マンガとかの、セカイだけだって……。アタマ……おかしい……この人………」

妹は、女の子座りのままカタカタと震えている。

僕はというと……殴られた衝撃で全身に力が入らなく、情けないことに依然うつ伏せ状態のままだ。
辛うじて視線の先を妹の方へと追いやることしかできない。

……つまり、守れない。

ヒデオ(ダメだ。助けなんて期待できないし、畜生ッ……。僕がコイツを守らなくちゃあいけなかったのに……)


それでも、守るんだ。
まだ、なにか、スベは残っているハズなんだ。


ヒデオ(……! ……ごめん、本当に…ごめん、ハツネ。もう、こうするしか……“こうする”、しか………)

ヒデオ「……ま、待って……先生」

元スカル団員「……? ほう、死にゆく妹に対し、手向けの言葉でも掛けるつもりかい?」
 ▼ 65 石の森◆Y0TXrTESFs 18/07/21 13:31:55 ID:DiWchIk6 [15/34] NGネーム登録 NGID登録 報告
ヒデオ「……。
……僕が、代わりに殺される。僕が……新しい、先生の“標本”になるよ」


ハツネ「……えっ……」


よく見えないが、ハツネの表情が強張ったようだ。


元スカル団員「ほう……。……まあ、私としたらだね、ただ、上物の生骨が見れたら、それでいいわけだが……」

ヒデオ「だったら、別に僕でも構わない筈だよね。……兄として、色々と僕は不甲斐なかったし。だから最期ぐらいは……いい格好を、さ…させてもらいたい。……ただ、それだけな…んだ……」

悔しいことに、僕の声は少し震えてしまっている。

ヒデオ「……だから、ちょっとだけだ。ちょっとだけ、妹と話をさせてもらいたい……。文字通り、後生の頼みなんだ……」

ヒデオ(……片手が動かせるまでは回復してきた。これなら、なんとか……)

こっそりと、僕は妹に“それ”を見せる。

ハツネ(……これって、ポケナビ……!?)
 ▼ 66 石の森◆Y0TXrTESFs 18/07/21 13:32:11 ID:DiWchIk6 [16/34] NGネーム登録 NGID登録 報告
ヒデオ(ここに来る直前、もしものためにと僕が体内に仕込んだんだ。大丈夫、袋に包んであるから。汚れているが、壊れてはいない。
その想定以上のことになったけど……。これをお前も、同じように隠しておくんだ)

ハツネ(な、なんで……?)

ヒデオ(……お前はまずは手厚く軟禁されることだろう。その時にトイレなりの理由を付けて電波の届く個室に行き、それでお母さんに無音で連絡を取れ)

ハツネ(ヒデオ……)

ヒデオ(…正直穴だらけの作戦だが、今の僕には、このぐらいしかしてやれない。本当に、ごめんな……)


──最期まで、こんな。
頼りない…お兄ちゃんで……。


ハツネ「やだ……」

ヒデオ(え……?)

ハツネ「……死んじゃやだっ、ヒデオッ……。ねぇ……死んじゃやだってばっ、ねぇっ……!!」

ヒデオ「ハツネ!?」
 ▼ 67 石の森◆Y0TXrTESFs 18/07/21 13:32:28 ID:DiWchIk6 [17/34] NGネーム登録 NGID登録 報告
ハツネ「だって、ヒデオ死んだら……アタシ、一人になる……。ヒデオがいたから、アタシ、今まで生きてこられたんだよ……!?」

元スカル団員「……ん?」

ヒデオ(大丈夫……ポケナビのことは気づかれていない)

ヒデオ「こんな兄一人ぐらい死んでもお前ならやれる。先生の元で、やっていけるさ」

ハツネ「ちがうもんっ!
だってっ、だって……お兄ちゃん……ヒデオしかいないじゃん……。……代わりなんて……いない……じゃん……」

ヒデオ(!)

ハツネ「ねっ……お兄ちゃん……一緒にさ、家に、帰ろうよ……。……帰りたいよぉぉっ……」ポロポロ

遂に上唇を噛み締め、幼い身体全体をワナワナと震わせ、僕に突っ伏し、泣きじゃくってしまった。

ヒデオ(まずい……今の内容……)

元スカル団員「なぁっ、おい……。君らもしかして、私に内緒でなにか画策」


ヒデオ「「……ふざけるんじゃないぞっっ!!」」


元スカル団員「!?」
 ▼ 68 石の森◆Y0TXrTESFs 18/07/21 13:32:45 ID:DiWchIk6 [18/34] NGネーム登録 NGID登録 報告
ヒデオ「お前が変なこと言うから……。先生がっ、不信感を持ってしまったじゃないかっ!! オマエッ、このチビナスがっ、ダボケッ!!」ポコッ

ハツネ「けほっ……」


──妹の身体を、殴りつける。


ヒデオ「お前のせいだっ……お前のせいだっ……!! こんなんだから、僕が死ぬハメになるんだっ!! ……これから一人で、侘びて生き続けるんだっ!!」ポコポコッ

元スカル団員「……」

ハツネ「痛いっ……。痛いよっ、ヒデオっっ……!」

ヒデオ「うるさいっ、うるさいっ! このっ、このっ!!」ポコココココッ

ハツネ「うぅっ……。……うえぇぇぇええ〜〜んっ……」


──執拗に、殴り続けた。
 ▼ 69 石の森◆Y0TXrTESFs 18/07/21 13:33:13 ID:DiWchIk6 [19/34] NGネーム登録 NGID登録 報告
………
……


ハツネ「……お兄ちゃん……」

ヒデオ「あぁっ!?」

僕はというと、ハツネの身体にのしかかっている。

ハツネ「……アタシ、わかった……。ヒデオ、アタシ……ゼッタイ……」

ヒデオ「……ゼッタイに許さないだっ!? ……僕だって、お前が死ぬまで許してたまるもんかっ!!」


ハツネ(あ、りが……と…。
…ヒ……デ…オ…………)


ヒデオ(……ハツネ)



──ハツネは、気を失ったようだ。
 ▼ 70 石の森◆Y0TXrTESFs 18/07/21 13:33:31 ID:DiWchIk6 [20/34] NGネーム登録 NGID登録 報告
元スカル団員「ヒデオ君、そこまでする必要……?」

ヒデオ「わからず屋には、こういうことでもしなきゃわからないんです。お見苦しいところをお見せして、すみません」

ヒデオ(……これで)

身体にのしかかった際、どさくさに紛れて妹の下着内にポケナビをねじ入れた。

悪いことをした、最低だ。女の子に手を上げるだなんて。
しかも、兄が妹に対してだ。


……でも、目には目をだ。
狂気には狂気で対抗しないと、こんな奴を騙すことなんて、まるっきり不可能だったんだ。

ヒデオ「……可愛がってやってください。僕にはできなかったから……」


この策が失敗に終わろうとも、もしかしたらこの先生が僕に免じてハツネを優しく……。

……そうじゃなかったら、ハツネ。
向こう側で謝るよ。あっちで好きなだけ罵ってくれ。


元スカル団員「それじゃ……なるべく痛くないようにするよ。さぁ、マルノーム……」

ヒデオ(ハツネが見ていなくて、本当によかった。できれば、“ゼッタイ”生きてくれ……)



──まさに、その時、だった……。
 ▼ 71 石の森◆Y0TXrTESFs 18/07/21 13:33:49 ID:DiWchIk6 [21/34] NGネーム登録 NGID登録 報告
テッカニン「ミ ー ンww ミ ー ンww ミ ー ンww」ブウゥンッ


元スカル団員「…ふん」


一匹のテッカニンが、この男の元へ接近した。

……そして。


テッカニン「アッ……ww」ポトッ


男に追突し、そのまま落下したのだ。


元スカル団員「……そうだ、ヒデオ君。死ぬ前に一つ、ちょっとした私見をレクチャーしてやろう。……私たち上級生物と“こいつら”下等生物の歴然たる違い……さぁ、何だかわかるかね?」

ヒデオ「……どういうことですか……?」

元スカル団員「それを踏まえた上で、君は上級生物としての誇りを今一度認識しながら逝けるのだ。光栄だろう? ……つまりだ……」



 ク シ ャ ッ 。
 ▼ 72 石の森◆Y0TXrTESFs 18/07/21 13:34:08 ID:DiWchIk6 [22/34] NGネーム登録 NGID登録 報告
ヒデオ「!」


男はテッカニンの身体を、一気に踏み潰した。


元スカル団員「……ちょいと踏めばこの通り。脆い。なぜか? ……単純明確だ……コイツに“骨”がないからだ!!」

ヒデオ(……)

元スカル団員「骨さえあれば、同じ踏み潰され方でももうちょいと原型は残る。……構造? 理性? 外見? 言語? 我々人間が好き勝手に決め腐った枠組みは、幾多に渡り存在し得る……」


元スカル団員「「要するに大切なのは、骨だっ! 骨を有す人間は即ち生命ヒエラルキーの頂点! 唯一無二の存在!! つまりぃっ、奇跡ぃっ。我々はっ、俺はっ、そう…そうなのだ……奇跡ぃなのっだっぁあっっ!!!」」


ヒデオ(コイツ、想像以上だ)

元スカル団員「骨のあるポケモンはまだ見どころがあるだろう。だから骨があるというものなのだ。……だがっ、それ以下のっ、コイツのようなポケモン……下衆と呼ぶのもっおこまがしいぃぃいぃッ!!!!」

ヒデオ(目の焦点がおかしい……ヨダレ垂らしながら熱弁してる、完全に、自分に酔ってる……。そしてこれが、コイツのドス黒い本性っ!……ヤバい……やっぱり……。ハツネ、殺されるんじゃ………)
 ▼ 73 石の森◆Y0TXrTESFs 18/07/21 13:34:24 ID:DiWchIk6 [23/34] NGネーム登録 NGID登録 報告
元スカル団員「……さて……」シャキィッ

ヒデオ「っ……」

男、ナイフを取り出す。

元スカル団員「初めてだよ。……これを使うのは。気が変わってね。君……今さ、怪訝な顔しただろ?」

ヒデオ(しまった)

元スカル団員「だからね……だから、だ…ズタズタに、ぶっ殺っおぅしぅっぅてやるううっつっ!!なぜなら、私の見解にケチをつける行為そのものが、神に反するそれとっ……、同様ぅでぇあるからだあぁぁぁっ!!」

ヒデオ(……ああ)

元スカル団員「そして、やはりそこのメスガキも殺す! 父母友人その他大勢……貴様と関係する者共も皆同罪っ!! 我を崇めよ! 我を賛美せよ! ……我のために命を捧げよ! ちっぽけな貴様の唯一の存在意義はそれ以外にあらず……ゴバァアアッ!!」ダダッ

手にナイフを握りしめ、半狂乱な体たらくで僕の方へと向かって来る。

ヒデオ(お母さん、お父さん、今までありがとう……)


一足先にさようなら、ハツネ。

生まれ変わったら、またお前と兄妹になれるかなぁ。
 ▼ 74 石の森◆Y0TXrTESFs 18/07/21 13:34:46 ID:DiWchIk6 [24/34] NGネーム登録 NGID登録 報告
《  3  2  …  》


ヒデオ「……!!?」


その瞬間、“みとじ(三十二)の声”が、響き渡った。


元スカル団員「どうした?」

ヒデオ(……そうか! コイツがテッカニンを踏み潰したから……殺したから……。そして今、“32”と……つまりはっ!!)


『『……オォオォオオォォオオ……』』


ヒデオ「あっ、要石が……反応してるぞっ!!」


『『みづもの魂、ここに集いし。
  さすれば我…長年の封印から今こそ解き放たれん』』


元スカル団員「え……っ、……おっ……い、なんだこれは……?」


──要石が震えだし、やがて禍々しい色素を持つ集合体が、モワモワと亀裂内より姿を現したのだ!
 ▼ 75 石の森◆Y0TXrTESFs 18/07/21 13:35:07 ID:DiWchIk6 [25/34] NGネーム登録 NGID登録 報告
ヒデオ「……あ、あぁ……」


僕はそれ以上、その“集合体”を見ることはしなかった。

……いや、できなかった。
あまりの恐怖で、僕は無様にも失神してしまったのだから。

------------------------


『『汝、我の代わりとなるか?』』


元スカル団員「お、おいっ、お前、だから……。なんなんだよっ!?」


『『代わりになるか、と訊いておるのに……』』


元スカル団員「な、なんか言ってるのか!? 聞こえない…お、おいっ、私をどうする(


『『承諾したとみなすぞ。……では』』シュッ


元スカル団員「わ……わあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!?」
 ▼ 76 石の森◆Y0TXrTESFs 18/07/21 13:35:25 ID:DiWchIk6 [26/34] NGネーム登録 NGID登録 報告
………
……



『『……やっと、開放されるのだ。逝ける、のだ……』』


──最初に要石に封じ込まれた魂は、罪人のものであった。


魂は、要石にとある条件を汲まれた。

『みとじの清き魂を御身に取り込め。さすれば貴公の汚れた魂はいくらか浄化され、あの世に旅立つことはできるであろう』、と。

ただ、それには薄汚れた“代わり”の魂も別に必要だった。


…最初の魂はとうに成仏を果たしていた。
しかし、その後も代わりとなった魂も、同様に“声”を数え続け、己の開放の瞬間をただ待ち侘びていたのだ。


……何百年、要石が創られてから、その繰り返しであった。


『『では、次は貴様が“声”の主だ。礼を言う。では……』』


何代目からわからないが、その魂も、静かに天へと登って行き、そして……。

……消えて、いった……。
 ▼ 77 石の森◆Y0TXrTESFs 18/07/21 13:35:46 ID:DiWchIk6 [27/34] NGネーム登録 NGID登録 報告
──あれから、数週間が経った。


気絶していた僕たちはその後カナズミ警察に発見保護され、経緯を全て話すことになる。


先生の地下室からは20個程の“壺”が発見され、先のホウエン異常気象後、最悪の事件となった。
DNA鑑定の結果、旅行客や浮浪者、家出中の少年少女を中心に殺害していたらしい。

当の本人の所在もわからず、先生は全地方手配の大量殺人鬼となり、その名が広がった。


トシノリの家族は彼の葬儀後、行方知れずとなった。
恐らくは別の地方に引っ越しただけ……そう信じたい。


僕たちやツツジさんはトモノリの墓を参り、供え物をした。その中にはストーンバッジも含まれていた。


恐らくは、僕ら以外に参る人はいないだろうから……。
 ▼ 78 石の森◆Y0TXrTESFs 18/07/21 13:36:08 ID:DiWchIk6 [28/34] NGネーム登録 NGID登録 報告
──さらに日は過ぎ。


そんな大事件も、いつしか世間の注目は薄れ、塞ぎ込んでいた僕ら兄妹も、段々と元気を取り戻していった。
 ▼ 79 石の森◆Y0TXrTESFs 18/07/21 13:36:31 ID:DiWchIk6 [29/34] NGネーム登録 NGID登録 報告
〜キンセツキッチン〜

ハツネ「うん、やっぱ、ミックスサイコロメ、すごくおいしいよ!」

ヒデオ「……おいしい。元がおいしいし。でも、なんでまた、かき氷何杯も食べてるんだ。……もう秋なのに」

ハツネ「うん、この前食べれなかったしー。……あと、ヒデオのおごりだしっ!!」

ヒデオ(あの時のお兄ちゃん呼びは何だったんだ?)

ヒデオ「……もう夕方かぁ。正直眠い。それに、食べた後じゃ余計に」

ハツネ「……それさ! ヒデオが『おつかれむーど』を共有したってこと!? だから眠くなったんじゃ、すごいよ、ヒデオ!!」

ヒデオ(……名前、つけちゃったのか)

ハツネ「いっぱい疲れて、いっぱい寝てさ、また明日もがんばろっ! 生きてるってさ、そういうことだと思うの」

ヒデオ「……あ、そういえば……」

ハツネ「ん?」

ヒデオ「生きてる云々で思い出したけど。“要石”……どこ行ったのかな……」
 ▼ 80 石の森◆Y0TXrTESFs 18/07/21 13:36:51 ID:DiWchIk6 [30/34] NGネーム登録 NGID登録 報告
ハツネ「えー、あの石? どーでもいいじゃん! ツツジさんが欲しがってたんだっけ? なんか汚かったし、忘れようよ……あんな石なんてさ」

ヒデオ「……うん」


……確かに。

要石の経緯云々は、僕の想像を遥かに凌駕しているのかもしれない。

それに元はシンオウで発見される石。
なぜホウエンの森に落ちていたのかもよくわからないし。


ヒデオ「……そうだな。もう、深く考えてるのは止めにしたよ」

ハツネ「そう、そう! それにヒデオはさ、いつも考え過ぎるからよくないの! ほら、そんなしかめっ面してないで、笑って笑って!!」

ヒデオ「えっ、あ、そう……。こ、こう?」ニカッ

ハツネ「アハハ、気持ち悪い〜! やっぱ、何事もさ、慣れが必要だよ」

………
……
 ▼ 81 石の森◆Y0TXrTESFs 18/07/21 13:37:09 ID:DiWchIk6 [31/34] NGネーム登録 NGID登録 報告
〜トウカの森〜

「お、おいっ、早く逃げろ!
追いつかれるぞっ!!」

「な、なんで……こんな森に、こんなデカイマルノームがいるんだよおぉっ!! ゼッタイ野生じゃないだろ、あんなバケモノッ!!!」


『『グチャガァッアァァァッ!!』』ドドドド


「ひ……ひいぃぃぃぃぃぃいっ!!!?」

「ご、ごめんなさいっ! ごめんなさいっ!
こ、この森でこの前、お仲間のポケモン踏んじゃったから……怒ってるる……るんですか!? だとしたら、謝りますから、だから、助け」


『『グガァァアーッ!!!!』』ドドッドドドド


「やだ、死にたくない……。
や……やあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」



──ゴクンッ。
 ▼ 82 石の森◆Y0TXrTESFs 18/07/21 13:37:24 ID:DiWchIk6 [32/34] NGネーム登録 NGID登録 報告










《  1  …  》









 ▼ 83 石の森◆Y0TXrTESFs 18/07/21 13:37:46 ID:DiWchIk6 [33/34] NGネーム登録 NGID登録 報告
“声”は決して途切れない


…この世に『生命』ある限り──


………
……



みとじの声 ~完~
 ▼ 84 りがとうございました 18/07/21 13:38:16 ID:DiWchIk6 [34/34] NGネーム登録 NGID登録 報告
リメイク元の作品は、元々三部作として書いた内のニ作品目でした
宣伝ですが、よろしければ合わせてどうぞ

一作品目(http://pokemonbbs.com/post/read.cgi?no=331950
三作品目(http://pokemonbbs.com/post/read.cgi?no=544296


ここまで閲覧して下さり、ありがとうございました!
 ▼ 85 ィアルガ@サンのみ 18/07/21 14:31:39 ID:fXrMdEwc NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
お疲れ
リメイク元の見てたけどやっぱり楽しめた
 ▼ 86 ルヴァディ@くろいヘドロ 18/07/21 15:18:10 ID:6bB.d3XY NGネーム登録 NGID登録 wf 報告



初めて見たけど面白かった
 ▼ 87 ビシラス@キトサン 18/07/22 22:41:43 ID:0N9EgDKM NGネーム登録 NGID登録 報告
 ▼ 88 ルシアン@やけたきのみ 18/07/22 22:46:49 ID:psIIghJE NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
お疲れさま
 ▼ 89 シマリ@フシギバナイト 18/08/03 15:23:53 ID:Rn3wEGsQ NGネーム登録 NGID登録 [s] 報告
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