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SS

【SS】空白の三年

 ▼ 1 RIVER◆zFLCCAWaiw 16/12/11 15:41:13 ID:eLoC8vmk NGネーム登録 NGID登録 報告

ポケモンリーグ本部

四天王二番手の部屋



……ここはポケモンリーグ本部、セキエイ高原。

今日も、高原に王者として君臨する四天王と
王者を打ち倒さんとするリーグ挑戦者による

熱く、壮絶な戦いが繰り広げられている ーーー



シバ「ウー!

………………はぁぁぁあああ?!?!」



ーーー はずだった。
 ▼ 213 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/02/23 22:02:33 ID:tMSwnwuY [1/11] NGネーム登録 NGID登録 報告
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

シバ「どこだ……?!」


まさに複雑な天然の迷路と形容されるに相応しい。

しかも噴火寸前とあってあちこちが溶け始めている。

早くしなければ。

カンナを助けるどころかこれでは犬死にだ。


シバ「……! あそこは!」


目に入ったのは、不自然に開けている一本の道。


シバ「あそこか……!」


前門の虎。後門の狼。両者の間に、俺。


シバ「いくぞ……!」


迷いなく、俺は一本道に踏み込んだ。
 ▼ 214 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/02/23 22:07:38 ID:tMSwnwuY [2/11] NGネーム登録 NGID登録 報告

その刹那。


ズズズズズ………。


シバ「退路が……」


今まさに走り抜けてきた場所が溶け崩れていく!


シバ「ウー! ハーッ!!」


走る。

溶岩の池を飛び越える。


走る。

くっきりと描かれた一本の線をひたすらに進む。


シバ「カンナァーー!!!」


そして思いっきり、咆哮した。
 ▼ 215 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/02/23 22:14:40 ID:tMSwnwuY [3/11] NGネーム登録 NGID登録 報告

シバ「ここかっ!!」


踏み込んだ先は、小さな部屋だった。

視界に飛び込んできたのは、何かを取り囲むようにして立つカンナとポケモンたち。

ポケモンたちは決死の形相で吹雪を放っている。

そしてカンナはこちらを振り返ることなく冷酷な声で一言発しただけだった。


カンナ「なんで、来たの?」


いや、訂正しよう。

冷酷な、というのとは違う。

今のカンナは……希望も、絶望さえもない。

虚無。虚ろな、心 ーーー


シバ「ほっとけなくてな」


ーーー だったら俺が、その支えとなってやる。
 ▼ 216 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/02/23 22:23:36 ID:tMSwnwuY [4/11] NGネーム登録 NGID登録 報告

カンナ「あなたに……何がわかるの?」


何がわかるか、だと?


シバ「知るかそんなもの」

カンナ「関係ないでしょう、なのに何故!」

シバ「ああ。全く無関係だ」


嘘を吐くことは、できない。

あくまで淡々と ーーー


カンナ「シバ……」

シバ「なんだ?」

カンナ「助けて……!」


ーーー 答えるつもりだったが、撤回。


シバ「当たり前だ!!!」
 ▼ 217 コロトック@バンギラスナイト 17/02/23 23:15:30 ID:q/z5dEQQ NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
ワンピースかな?
 ▼ 218 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/02/23 23:23:00 ID:tMSwnwuY [5/11] NGネーム登録 NGID登録 報告

やっと、素直になってくれたか。


シバ「サワムラー! エビワラー! イワーク!
……加勢しろ!」


エビワラーの気合パンチ、サワムラーの飛び膝蹴り、イワークの岩雪崩が同時にルビーにヒット。


シバ「……どうだ?!」


吹雪が吹きすさぶ中、部屋の壁はヌチャヌチャと音を立てて融けている地獄絵図。

その地獄の中心にあるのはあの不気味なルビーに他ならない。


カンナ「……あっ!」


どうやらあれをぶっ壊しさえすればいいらしい。

そう勘が告げていた。

どうやらその勘は当たっていたようなのだが……。

 ▼ 219 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/02/23 23:26:45 ID:tMSwnwuY [6/11] NGネーム登録 NGID登録 報告

ピキッ。

パキッ。


卵の殻にヒビが入ったような音と、シバのポケモンたちがうめき声をあげて崩れ落ちるのと。


パキキキキ…………。


カンナ「なんてこと……!」

シバ「なんだあれは?!」

カンナ「手遅れ、なのよ……」

シバ「最後まで諦めたら ーーー」


ピシャーーーン………。


シバ「ーーー ダメ……ぐあっ?!」

カンナ「………っ!!」


ついに、ルビーの外殻が砕け散った。
 ▼ 220 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/02/23 23:31:47 ID:tMSwnwuY [7/11] NGネーム登録 NGID登録 報告

ォォォオオオ……。


シバ「なんだ、この光っ……?!」


目を開けていられないどころか、ルビーの方を向くことさえかなわない。

それだけ強烈な熱と光がルビーから放たれていた。


カンナ「間に合わなかった……!」

シバ「だからなんだというのだ……!」


キュィィイイ………!


甲高い音が鳴り響いて、そして。

突如、不気味な沈黙が訪れた。
 ▼ 221 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/02/23 23:38:16 ID:tMSwnwuY [8/11] NGネーム登録 NGID登録 報告

そして、光も熱も、消え失せた。


シバ「…………?」

カンナ「シバ。私たちが今対峙していたのは、このナナシマの根源ともいえる存在……」

シバ「根源?」

カンナ「知ってるでしょう?
ナナシマは火山活動で生まれた島。
だから七日間という短期間でこれだけの広大な土地が出現した」


突如始まった、カンナの話。

俺は適度に相槌を打ちながら聴くより他なかった。


カンナ「このナナシマは若く、そして不安定。
だから、しばしば噴火はするし、その一方で恵みをもたらすことだってある」

カンナ「今回は……災厄の方よね。間違いなく。
だから、この火山を……延いてはナナシマを司るとも言えるあのルビーをなんとかする必要があった」

シバ「だったら、さっさと取り除けば」
 ▼ 222 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/02/23 23:43:27 ID:tMSwnwuY [9/11] NGネーム登録 NGID登録 報告

カンナ「今更何を言っても手遅れ……。
ご覧なさい……周りを」

シバ「周り……?」


俺はさっきの光のせいでまだしょぼつく目を擦りながら部屋を見渡す。

するとそこには ーーー


シバ「なっ、どうした、お前たち!
サワムラー! エビワラー! イワーク!」


ーーー 余りにも悲しい結末が待っていた。

シバのポケモンたち、カンナのポケモンたちは見るも無残な姿に成り果てていた。

原型を留めているかさえも怪しいほどまでに。


シバ「どうして……」

カンナ「大したポケモンたちね……。思わず嫉妬してしまうくらい」


嘲っているでもなければ、皮肉っているでもなく。
本心からの言葉だとわかる声色だった。
 ▼ 223 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/02/23 23:52:36 ID:tMSwnwuY [10/11] NGネーム登録 NGID登録 報告

シバ「何があった……?!」

カンナ「さっきの熱と光よ……彼らはあなたの前に立ちはだかることで身を挺してあなたを死の光から守ったようね」

シバ「そんな……バカな……っ!!
だが、あのルビーはもう消えた。
熱も光も無くなった。
じゃあ、もう問題は……?」


問題の元凶たるあの忌々しいルビーが消えたのだ。

もう何も心配することはない。

そう思っていたが、甘かったらしい。


カンナ「いいえ……ルビーは力を失い、はるか深くまで沈んでしまった……それこそ、二度と戻らないほどに」

シバ「と、なると?」

カンナ「沈んだルビーは地下のエネルギーを吸い上げてまた……いえ、さっきよりも力を増して……」


これ以上は説明不要だった。

重苦しい沈黙が漂う。
 ▼ 224 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/02/23 23:56:16 ID:tMSwnwuY [11/11] NGネーム登録 NGID登録 報告

わずか数十秒 ーーーさえも経っていないかもしれないーーー ほどのわずかな時間。その沈黙。

にも関わらず、俺には永遠にも感じられた。


カンナ「あははっ」


沈黙を破ったのは、カンナのあの独特の笑い声。


カンナ「こうなったら最後の手段を使うしかないわね。最後の望みに賭けてくれたあなたには感謝してる」


嫌な予感がする。カンナ、何をする気だ。


カンナ「ラプラス……まだ動ける?」


キュウウ……。


問いかけに対して弱々しい鳴き声で応えたラプラス。

ラプラスもまた死の光を浴びてしまっている。

残りの力も、もうほとんどないはずだ。
 ▼ 225 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/02/24 00:05:29 ID:hW1z1ELQ [1/3] NGネーム登録 NGID登録 報告

カンナ「よしよし、いい子ね……」


カンナの意図を察してか否か、ラプラスはゆっくりとシバの近くに這い寄ってくる。

俺がその頭を撫でてやると、ラプラスは気持ちよさそうな声をあげた。


カンナ「シバ。あなたにはすまなく思うと同時に、これ以上ないほど感謝しています」

シバ「カンナ……?」

カンナ「繰り返すけど、これはどうしても私がやり遂げなきゃいけないこと。流石にこれ以上の危険に付き合わせるわけには……いえ、もう既に付き合わせすぎた」


まさか。

ここは地下深くとはいえ、先ほどの光と熱によってあちこちが崩れ落ちて青空が覗いている箇所さえある。

そしてラプラスが近くに寄ってきていること。

加えてカンナの意味深な言葉。

その狙いを推し量るには、十分すぎる材料だった。


シバ「待て! まだ、俺には言いたいことが ーーー」

カンナ「ラプラス、ハイドロポンプ!!」
 ▼ 226 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/02/24 00:19:19 ID:hW1z1ELQ [2/3] NGネーム登録 NGID登録 報告

シバ「ーーー !!!」


言葉は水流に閉ざされ、カンナに届くことはない。

ハイドロポンプに飲み込まれて青空の下へ放り投げられるのを甘んじて受け入れることしかできない。


カンナ「さよなら……」


最後の最後に、聞こえないはずの声が聞こえたような気がした。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 ▼ 227 長かったナナシマ編終了◆zFLCCAWaiw 17/02/24 00:28:52 ID:hW1z1ELQ [3/3] NGネーム登録 NGID登録 報告


その日、ともしび山の大噴火によってナナシマは地図からその姿を消した。


火山活動によって生まれ、火山活動によって消ゆ、というなんともまあ皮肉な結末である。


その後も噴火は謎の連鎖を続け、グレンタウンをも飲み込む未曾有の事態となった。


しかし、この噴火は本来この程度で収まるものではなかったということを知るのは四天王シバを始めとするごく一握りの人間だけである…………。

 ▼ 228 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/02/24 12:57:32 ID:lZ.8bAXo [1/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ザザーン……ザザーン……。


波が何か硬いものに打ち付けられて砕け散る音。

それだけしか音らしい音は聞こえない。

しかしその音さえもどこか遠くから聞こえてくるような気がした。

ここは……どこだ?


シバ「んあ……?」


目を開けると、飛び込んできたのは白い天井。


シバ「むっ……?」


辺りを見渡せば、その部屋にはこれといった装飾品は無く、目立つ家具と言ってもテレビと机、そして自分が今横たわっているベッド。

窓から覗いているのは嘘のように青い空と海。


シバ「夢……だったのか?」
 ▼ 229 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/02/24 13:03:32 ID:lZ.8bAXo [2/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
自分が最後に見た、あの地獄絵図。

夢であってくれたらなら、それに越したことはない。

ないんだが ーーー


シバ「ボールが……」


ーーー 軽い。腰にずしっとくる重さが無い。

重さといっても質量的なことではない。

その重みは、命の重み。


シバ「…………くそっ!!」


モンスターボールは運良く取り上げられていない。

腰に括り付けてあるボールを次々に取り出したが ーーー


シバ「イワーク、サワムラー、エビワラーのボールが……空っぽだ……」


ーーー やはり、現実は無情なものだった。
 ▼ 230 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/02/24 13:08:29 ID:lZ.8bAXo [3/5] NGネーム登録 NGID登録 報告

シバ「…………」


現実を認めた刹那襲い来る、あの光景のフラッシュバック。

忘れたくとも ーーー忘れるつもりなど毛頭ないがーーー 忘れがたい、地獄。


シバ「俺は……またしても……!!」


時は違えど、場所は違えど。

失ってしまったことには変わりない。

覆水盆に返らず。


シバ「くっそぉぉおお!!!」


壁を殴りつけた。

痛みが来るはずなのに、来ない。

イワーク二体、エビワラー、サワムラー、
そしてカイリキー。

失ってしまったものは、余りにも大きかった。
 ▼ 231 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/02/24 13:14:11 ID:lZ.8bAXo [4/5] NGネーム登録 NGID登録 報告

トウキ「……」

シバ「俺は……俺は……!」


空のボール五つを前に、このやり場のない感情をどこにぶつければいいのかわからない。

余りに動揺していたせいで、部屋の扉が開いた音にさえ気づいていなかった。


トウキ「シバ!」


肩を掴まれて、ようやく気付いた。


シバ「トウキ……」


トウキには話していないことが多すぎる。

カンナの一連の行動の目的、そしてその結末。

だが、何から話せばいいんだ……?


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 ▼ 232 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/02/24 13:23:01 ID:lZ.8bAXo [5/5] NGネーム登録 NGID登録 報告

あいつしかいないはずの部屋から声が聞こえたから来てみれば。

やっぱ……そうなるよな。

聞きたいことはたくさんあるし、あの非常事態に一体何やってたんだと憤る気持ちも多分にある。

けど。


シバ「トウキ……」


相棒をほとんど全員失ったこいつを前にして、俺はこいつになんて声をかけてやればいい?


「「…………」」


俯いたままのシバを少しほっといてやる意味も込めて俺はシバから視線を外し、ベッドの端に座って窓の外に目をやる。

噴火の直後だとは思えない青空だ。

連絡がすぐに行ったことと、何故か想定 ーーーそれこそ見立てではカントー全土が消えるほどの規模だと言われていたそうだ ーーーよりも遥かに噴火が小規模だったのが幸いした。

もっとも、この事実はポケモンリーグ関係者しか知りえないことだが。
 ▼ 233 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/02/24 13:33:42 ID:LkLwYAdM NGネーム登録 NGID登録 報告

シバ「トウキ。何から話せばいい?」

トウキ「そうだな……」


何から話せばいい、と馬鹿正直に言われてもかえって面食らってしまう。

まあ、まずは ーーー


トウキ「なんで火山に向かったはずのお前がカントー沖ど真ん中でプカプカしてたんだ?」


ーーー これだろ。


シバ「カンナが、やってくれた……」

トウキ「カンナが?」

シバ「ああ……」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 ▼ 234 俺氏、ワタルの人◆GkK0XKlUf. 17/02/26 09:31:33 ID:wnW8pPrI NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 235 二次終わったぁぁああ◆zFLCCAWaiw 17/02/26 17:02:03 ID:.0f9jAnM [1/2] NGネーム登録 NGID登録 報告

シバ「……ってなことが、な」


どれだけの時間が経ったろう。

絞り出すように、一言ずつ噛みしめるように、俺はトウキに知る限りの全てを伝えた。

話終わった今になって思うのは、さっきの俺はどこか心の中でまだ整理がついていなかったんだな、ってことだ。


トウキ「そうか」


これもトウキの計算のうちなのか、ただ単に好奇心から聞いたのがたまたま功を奏したのか。

この際、そんなことはどうでもいいか。


シバ「これで……全部失っちまった……」


トウキに話す、という形で自分の頭の中を整理はできたが、じゃあすぐにその結果を受け入れることができるか、というのは全く別問題なのであって。


シバ「どーしたものか……」


我ながら間抜けな、間延びした声が滲み出す。
 ▼ 236 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/02/26 17:09:50 ID:.0f9jAnM [2/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
カイリキー。

一番大事な相棒にして一番頼れる切り札だった。

レッドのピカチュウの猛攻で負った傷はまだまだ癒えることはない。


イワーク。

師匠と喧嘩別れして、カントーに上陸した俺。

そんな俺の、カントーで最初の友人になってくれたのがニビシティジムリーダー、タケシ。

あいつへの感謝と友情の証に、俺は必ずイワークを手持ちに入れ、如何なる相手であろうとメンバーから外すことはしなかった。


サワムラー、エビワラー。

格闘道場で出会ったのが最初だったか。

出会った頃は喧嘩ばかりだったお前たちも、最後にはタッグで戦うくらいに信頼しあうようになっていたよな……。


シバ「っ……!」


今一度、空のモンスターボールを握りしめる。
 ▼ 237 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/03/01 02:43:23 ID:9DpeePqY [1/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
シバ「なあ、トウキよ……」


そうだ、もうやめだ。
悲しみに暮れるのはもう、これを境に終わりだ。

何をどう悔いようともう取り返しがつかない。
切り替えて、次に進むのみ……なんだが。


シバ「四天王の手持ちがバルキーだけとは、少々締まらないと思うんだが……どう思う?」


流石にバルキー二体の陣容で四天王を名乗るのははばかられるものがある。

かといってすぐに手持ちの都合がつくはずもない。

四天王の数合わせに加えて、更に厄介な問題を抱え込むハメになるとは思いもよらなかった。


シバ「…………トウキ?」


トウキは目を閉じたまま、何も答えずに静かに呼吸を繰り返している。

が、寝ているようではなさそうだ。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 ▼ 238 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/03/01 02:49:03 ID:9DpeePqY [2/4] NGネーム登録 NGID登録 報告

手持ちの問題。

やっと、先のことに目を向ける力が戻ったか。

力を取り戻した友の姿を喜ばしく思いつつも、「ついにこの時が来てしまったか」という思いでいた。

目を閉じて、静かに深呼吸をして。


シバ「…………トウキ?」


覚悟を、決める。


トウキ「手持ちのこと、俺から一つ提案がある」

シバ「提案、だと?」

トウキ「そうだ」


今の自分の全力を尽くした攻撃 ーーー全力無双激烈拳ーーー を体一つで相打ちに持ち込まれた時点で、遠からずこうなるのは決まっていた。

たまたま、このタイミングだっただけなんだ。


トウキ「ハリテヤマを、連れて行けよ」
 ▼ 239 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/03/01 03:12:05 ID:9DpeePqY [3/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
シバ「ハリテヤマを?」

トウキ「ああ。こいつは、お前にこそ相応しい」

シバ「相応しい、と言うと?」

トウキ「お前は俺の全力を体一つで受け切った。
本当、あれは見事だったよ。
俺とお前の本気の勝負は、お前が一勝一分で完全に勝ち越してる。
それに、この引き分けは俺にとってはほとんど負けに等しいんだよ」


師匠から受け継いだハリテヤマ。

それをシバに渡すこと。その意味。

俺はハリテヤマのボールを乗せた右手をシバに差し出しながら続けた。


トウキ「過去と決別するんだ、シバ。

お前も知っての通り、このハリテヤマはハラ師匠が後継者と認めた弟子に渡すポケモンだ。
あのいざこざのせいで俺が預かってたけど……。

今、ここで師匠の後継ぎを決めるとしたら、やっぱり俺よりお前の方がいいと思うんだ」


シバ「…………」


シバは魅せられたように俺の右手 ーーーハリテヤマのモンスターボールーーー から目を離さない。
 ▼ 240 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/03/01 03:18:50 ID:9DpeePqY [4/4] NGネーム登録 NGID登録 報告

トウキ「さあ、受け取れ!」

シバ「…………!」


その時、俺には全てがスローモーションになったように見えたんだ。

シバの右手が、ハリテヤマのモンスターボールを通じて俺の右手と重なって、そして離れて ーーー


シバ「過去と決別……か」


ーーー 受け渡しが、成立した。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 ▼ 241 ダストダス@ウルトラボール 17/03/03 02:24:14 ID:ph1pEoWM NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
なんか悲しいな……
支援です
 ▼ 242 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/03/03 06:23:10 ID:llwOrZ9Q [1/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
重い。

しかし、不快感を伴った重さとは違う。

思うに……この重さの正体は、
時間の重さなのだろう。


シバ「ふっ……」


自然と笑みがこぼれる。

師匠と同じポケモン ーーー勿論、同一個体ではないのだからその理屈は成り立たないのだが、
そこが理屈では割り切れないところーーー
を使うことを反射的に突っぱねてきた自分が。

今、こうして「ハリテヤマ」のボールを手にしているということ。


トウキ「師匠に、謝りに行けよ?」

シバ「ああ。そうだな」

 ▼ 243 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/03/03 06:29:20 ID:llwOrZ9Q [2/4] NGネーム登録 NGID登録 報告

長らく会っていない……いや思考から追いやっていた師匠の現在の姿に思いを巡らせる。

禿げたのか、白髪になったのか。

痩せたか、それとも肥えたか。


そんなことを取り留めもなく考えていると ーーー


シバ「そういえば、ここはどこだ?
クチバシティに向かう航路のようには見えないが」


ーーー 見知らぬ海原をこの船が走っていることに気がついた。

 ▼ 244 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/03/03 06:31:21 ID:llwOrZ9Q [3/4] NGネーム登録 NGID登録 報告

トウキ「どこ、と言われてもね……
この船はアサギに入港する予定だ」

シバ「アサギ……?」


アサギシティ。

ジョウト地方の港町だったと記憶していたが。


トウキ「例の噴火のせいで、あっちこっちの港が定数オーバーでパンクしてんだ。
それに……お前にとってはラッキーなのかもな」

シバ「ラッキー、だと?」


土地勘のないところに降ろされることのどの辺がラッキーなのやら。
トウキの意図がどうにも掴めない。

尋ねると、トウキはすらすらと言い出した。

 ▼ 245 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/03/03 06:35:15 ID:llwOrZ9Q [4/4] NGネーム登録 NGID登録 報告

トウキ「簡単。まず四天王探し。
ナナシマにいたところから察するに、もうカントーには目ぼしい人材はないんだろう?」

シバ「……図星だ」

トウキ「次にお前の手持ち。
ジョウトのサファリゾーンには外来種も多くいるからお前の知らない、新しい格闘タイプがいても何ら不思議じゃない」

シバ「な、なるほど……」


なるほど。

全く知らないところだからこそ、こんなにも希望的な見方もできるということか。


シバ「俺のまだ見ぬ、新しい格闘タイプか……」


ピンポンパンポーン……。


その刹那、船内放送が入った。

 ▼ 246 ルギア@しずくプレート 17/03/03 21:05:00 ID:lztD4kio NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
1ヶ月と8日ぶりに見てみたら、カンナとの再会、そして悲しい別れ・・・。
彼女が四天王から抜けたり、3年経っても姿を表さなかった理由、更にはナナシマが消滅した理由、どれも筋が通っていて読み応えがありました。
さて、シバもハリテヤマを譲り受け、他のポケ調達にジョウトのサファリゾーンへ・・・これはアレですか、あの・・・!
 ▼ 247 支援がある、それが幸せ◆zFLCCAWaiw 17/03/04 12:27:46 ID:rWVkHTvE [1/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
『本日はシーギャロップにご乗船頂き、
誠にありがとうございます。
まもなく、当船はアサギ港に到着致します……』


トウキ「おっ、もうすぐ着くみたいだぜ……
ってお前、腹は……」


ググゥ〜。

トウキが言ったそばから間抜けに鳴る腹の虫。


トウキ「死んだように眠っていたからな、仕方ない。
だけど、もうすぐ船は港に着くから船の食堂はもう閉まってしまう頃だし……」

シバ「ははは、なに、それなら問題ない。
上陸したら適当にその辺の飯屋でも探すとしよう」

トウキ「……そうか。なら、いいんだ」


時間の流れとは不思議なものだ。

そうこう話しているうちに、
船はアサギ港に到着した。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 ▼ 248 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/03/04 12:29:14 ID:rWVkHTvE [2/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
〜港の桟橋〜


トウキ「それじゃあな。
色々キツイだろうけど頑張れよ!
……俺にできることはもう、ないけどな」


それにしても、この僅かな時間の間にこうも人は変われるものなのか。

新しい……というよりは急激な変化自体をあれほど嫌っていたあいつが『その辺の飯屋で適当に』なんていう日が来るとは ーーー


シバ「ああ、ありがとな。
……それにしても腹が減った」


ーーー やっぱ撤回。人の本質なんてそう簡単に変わるものじゃなかった。

感動的な別れ……になんてなるわけもなく、旧友は飯を求めてそそくさと街の喧騒に消えた。


トウキ「次は……俺が勝つぜ」


そうつぶやいて俺は港町に背を向けた。

そんな俺を見送るかのように、のどかな汽笛の音が辺りいっぱいに鳴り響いた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 ▼ 249 ニャース@むしのジュエル 17/03/04 18:35:26 ID:rWVkHTvE [3/3] NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
いつも面白い
支援です
 ▼ 250 ゴルーグ@ほのおのジュエル 17/03/04 18:46:35 ID:KuzBkGx2 NGネーム登録 NGID登録 報告
>>249
ss書きスレで謝ってたしモバイルついてねぇしちょっと怪しいが今回はまぁ
 ▼ 251 ID被りとは驚いた◆zFLCCAWaiw 17/03/06 00:08:19 ID:pDmctKIA [1/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
一時間後、アサギ食堂



シバ「ふぅ〜ごちそうさん」


あー食った食った。

初めての場所で初めての店に入るってのも、中々悪くないもんだな。

今まで敬遠しがちだったが、見解を改めよう。

それにしても空腹の後のメシってのはやっぱ、こう来るものがあるよなぁ……。


釣り人「よーう、兄ちゃん!
お前さんよう食うなぁ〜はっはっは」


シバ「……失礼ながら、あなたは?」

 ▼ 252 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/03/06 00:11:31 ID:pDmctKIA [2/6] NGネーム登録 NGID登録 報告

釣り人「ま、メシが来るまではなんかそわそわしてたしメシが来たらノータイムでがっついてたしな……気づかなくても仕方ねぇ。

俺はこの店やってるしがない男よ。

久々にいい食いっぷりの"男"を見て、なんか嬉しくなっちまってな」


シバ「は、はぁ……」



返しに困るが、喜んでくれているのならそれでいいのだろう。

とはいえ、なぜか無駄に目を輝かせてこっちを見ている店長と目を合わせているのはなんとなく居心地が悪かったので俺は辺りを見回す。


すると。

 ▼ 253 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/03/06 00:13:52 ID:pDmctKIA [3/6] NGネーム登録 NGID登録 報告

シバ「なんだ、あれは……っ?!」


視界に飛び込んできたのは今にも崩れそうな白い塔。

俺の座っているカウンター席の反対側にその塔はそびえ立っていた。

そして見ている間にもその塔はほんの少し高くなった。

…………ん? 高くなった?


店長「……んでよぉ、こないだなんて折角沖まで出たのにボウズでなぁ〜」

シバ「は、はぁ……」

店長「どした、お前さん……ってああ、"アレ"か」


長々と一方的に話しかけてきた店長も、ようやく俺の視線の先にあるものに気づいたらしい。

 ▼ 254 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/03/06 00:15:17 ID:pDmctKIA [4/6] NGネーム登録 NGID登録 報告

シバ「ものすごい、ですね」

店長「だろ? ありゃあもう、ウチの名物みたいなもんよ」


また塔が高くなった。

そう。

その"塔"は食べ終わった皿を積み重ねていたのが圧倒的な高さとなってそびえ立っていたものだったのだ。

しかも、その塔は一本ではない。

数本に連なる皿の塔はその塔の建築者の姿さえすっかり覆い隠してしまっている。


シバ「一体、どんな豪傑が……」


段々、頭が冷静さを取り戻すにつれて湧き上がったのは好奇心。

どんな大男があの塔の向こう側にいるのやら。

否応にも想像がかき立てられる。
 ▼ 255 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/03/06 00:16:47 ID:pDmctKIA [5/6] NGネーム登録 NGID登録 報告

店長「豪傑、ねぇ。
豪傑って感じじゃねぇんだが……」

シバ「……?」

店長「まあ、いい。百聞は一見に如かずだ。
とにかく見てこいや」


どうにも店長の応答は要領を得ないものだったが、まだ見ぬ豪傑への好奇心の方が勝った。

深呼吸して、カウンター席の反対側。

塔の向こう側に回り込む。


シバ「そこの方。お食事中に申し訳ない。
俺は四天王のシバというものだ。不躾 ーーー」

???「ひゃ、ひゃいっ?!」

シバ「ーーー ながららららららららら?!」

 ▼ 256 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/03/06 00:18:52 ID:pDmctKIA [6/6] NGネーム登録 NGID登録 報告

緊張のあまり、目を閉じて一息で言い切ったのが不味かった。

返ってきた声が予想以上に高い音であることを訝しみつつ目を開けた刹那。


???「え、えっとですね、このお皿は私の前の人が……そ、それよりも四天王様がわ、私になんのご用ですかっ?!」


そこに居たのは、女性……それも少女といった方が近いであろう存在だったのだ!!


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 ▼ 257 ラグラージ@デボンスコープ 17/03/10 17:33:33 ID:kYDeJicE NGネーム登録 NGID登録 報告
 ▼ 258 ヌマクロー@ロメのみ 17/03/11 18:38:38 ID:qvopcxBc NGネーム登録 NGID登録 報告
>>255
アカギにしては「ら」が一つ多いな
 ▼ 259 パルキア@アイスメモリ 17/03/17 09:18:27 ID:fBhnWuI6 NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 260 オクタン@ながながこやし 17/03/17 13:02:26 ID:eN9ZOe72 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援です
 ▼ 261 ヨーテリー@きあいのハチマキ 17/03/19 21:22:22 ID:dTVj6MLA NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 262 超絶亀更新警報◆zFLCCAWaiw 17/03/20 20:34:50 ID:YSdvBZhQ [1/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
アサギの灯台


シバ「先ほどは申し訳なかった」

ミカン「いえ、もういいですよ……」

シバ「いや、それでは俺の面目がーーー」

ミカン「えっと……?」



ビビビビビッ!!


その刹那、シバの全身を軽い電流が駆け巡る。



シバ「ーーー 立たなっっ?!?!」

ミカン「ちょ、ちょっとアカリちゃん!?」


ミカンの視線の先には自分を放ったらかしにされている状況に不満を抱いたか、"フン"とでも言いたげな表情でそっぽを向くポケモンの影一つ。


その正体はアサギの灯台の主、デンリュウだ。
 ▼ 263 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/03/20 20:40:49 ID:YSdvBZhQ [2/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
シバ「げほっ、ごほっ……」


いい電撃、だ。

こいつはえらく効く……!


ミカン「大丈夫ですか?!」

シバ「ああ、問題ないさ……それにしてもそのデンリュウ、中々の力だな。君の手持ちなのか?」


半ばそうだろうと確信しつつ問いかけたが、ミカンの返答はそんな予想を根底から裏切るものだった。


ミカン「いえ、アカリちゃんは私のポケモンじゃないんです」

シバ「何……だとっ?!」


人の力に頼らずしてここまでの威力の電撃を放てるとは。

俺の見てきた世界はあまりに狭かったことをまたしても痛感する。


シバ「そういや、君のことは全然聞いてなかったな。
俺のことは今さら説明不要だろう?」
 ▼ 264 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/03/20 20:45:12 ID:YSdvBZhQ [3/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
少しの間を置いた後に、ミカンが口を開く。


ミカン「そうですね……私が使うのは岩タイプ ーーー」


岩タイプ。

タケシと同じタイプの使い手だったのか ーーー


ミカン「ーーー だったんですが、最近は"鋼タイプ"を主に使って……」


ーーー む?


シバ「今、なんと?!」


動揺で全身が震えるのがわかる。

だが、止められない。


ミカン「え、え? ですから、以前は岩タイプを」

シバ「そのちょっと後だ!」

ミカン「今は、鋼タイプを主に使って……」
 ▼ 265 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/03/20 20:54:34 ID:YSdvBZhQ [4/4] NGネーム登録 NGID登録 報告

やはり、俺の聞き間違いではなかったらしい。


シバ「鋼タイプ、だと……?」

ミカン「はい。最近判明した、新しいタイプです……とっても硬くて、強いんですよ? 本当なんですよ?」

シバ「まさか、新しいタイプが発見されていたとは………つくづく、ポケモンとは不思議なもんだな」

ミカン「旧種ではコイル系統、新種ではストライクやイワークの進化系が該当するそうです」

シバ「イワーク、だと?!」


ただでさえ頑丈な岩の体を有していたイワークが、その身を鋼と化すというのか。

考えただけでわくわく ーーー


ミカン「あ! イワークの二枚看板は四天王シバさんの代名詞でしたね! もしかしたら、進化のお手伝い……」


ーーー いや、できない。

彼女の言葉に悪意は一切ないのは明らかだ。

だが、生傷を抉られるのは、やはり辛い。
 ▼ 266 メガラティオス@もりのヨウカン 17/03/21 19:06:05 ID:naybIHXU NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
しし支援
 ▼ 267 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/03/26 00:25:31 ID:pmN6x/So NGネーム登録 NGID登録 報告
シバ「いや……いいんだ。気にしないでくれ」

ミカン「…………?」


ミカンからしても明らかに不自然な変化だったろうが、何かしらあるのだろうと察してくれたのだろう。

ミカンがそれ以降イワークについて触れてくることはなかった。


シバ「ああ、随分興味深い話に気を取られていたせいで忘れかけてしまっていた。
俺がジョウトに来た元々の目的はズバリ、四天王の欠員補充のためなんだ。
セキエイ高原の四天王にふさわしい人材なんて中々見つからなくてな……誰か、心当たりはないか?」


沈黙が続けば続くだけ場が気まずくなる。

そう判断した俺はとっさに話題を切り替えた。


ミカン「強くて優れている方、というならセンリさんが……」

シバ「! いるのか!!」

ミカン「でも、この間ホウエン地方に単身赴任の形で出向いてしまわれたので」

シバ「くっ、一足遅かったか……」


掴んだと思えば、また逃し。
 ▼ 268 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/03/28 07:24:01 ID:VhPX6Jb6 [1/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
ミカン「うーん、センリさんがダメとなると私にはもう思い当たる人は ーーー」


いない、だろうな。

まあこればかりは仕方がない。というかこういうことは本来リーグ上層部の仕事のはずなのだが、まあそれは今回不問に付すことにして。


ミカン「ーーー あ! 噂ですけどフスベシティに強いドラゴン使いがいる、って聞いたことが」


さて次はどの方向に…………?!


シバ「……ドラゴン使い、だと?」

ミカン「はい。そういえば、四天王のワタルさんはドラゴンタイプの使い手でしたね。
タイプ被りはまずいですか?」

シバ「いや……あいつはフスベシティ出身だ。
バリヤーやらを覚えた特殊なカイリューを持ってるのはその証拠の一つ」

ミカン「そうだったんですか!
……じゃあもしかして」

シバ「もしかするかもな」


シバ「……ワタル、あの日の一方的すぎる別れを俺はまだ納得してないぞ……」
 ▼ 269 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/03/28 07:33:45 ID:VhPX6Jb6 [2/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
『…………それじゃあな。

四天王の大将は今日で終わりだ。

いつか、またどこかで会おう………』


『その手を離せ…………!

カイリュー、破壊光線!!』



シバ「……必ず、話に応じてもらうぞ」

ミカン「? どうかしましたか?」


回想に耽ってしまい、つい目の前のミカンのことを失念していた。

そんな己が迂闊さに呆れつつも、ミカンの前ではあくまでなんでもないかのように振る舞う。


シバ「ああ、すまない。
少しぼーっとしてしまっていただけだ。

それで……フスベシティに行くにはここからどういけば近いんだ?」
 ▼ 270 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/03/28 07:51:49 ID:VhPX6Jb6 [3/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
ミカン「はい、ここからフスベシティに向かうには北東に進んでいく道が一番近いですね。

エンジュシティ、スリバチ山、チョウジタウン、氷の抜け道の順番で通ることになるはずです」


シバ「中々ハードな道のりになりそうだな」

ミカン「そうですね。スリバチ山と氷の抜け道はジョウト屈指の難関、天然の迷路ですから」

シバ「なんとか越えていくしかないわけだな」

ミカン「大幅に迂回すればそれらの難関を避けることはできますよ?」

シバ「……その場合、迂回するのとしないのでどれくらい距離に違いが出る?」


二倍程度ですむなら一考する余地はあるが ーーー


ミカン「二倍から三倍くらい、でしょうか」


ーーー やはり世の中そんなに甘くない。

しかし困った。

いずれの道を進むにしても実質ハリテヤマだけで突き進むのは厳しいものがある。
 ▼ 271 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/04/01 02:38:55 ID:C/Aru9t2 NGネーム登録 NGID登録 報告
となると必要になるのはズバリ、新戦力。

新たな格闘タイプでもいれば面白いのだが ーーー


ミカン「実は私、ちょっと北の方に用があって少し出かけるつもりなんです。一人というのも心細いと思っていたところで……。
えっと、その、もし迷惑でなかったら……」


ーーー ! それはありがたい話である。


シバ「そいつはありがたい。
実は、諸々の事情で今の俺の手持ちは四天王のそれとはかけ離れた陣容でな……。
いや、なんにせよ道連れがいるならありがたい。
こちらからも是非、お願いする」


ーーーーーーーーーーーーーーーーー

こうして俺とミカンはしばらく共に旅をすることとなった。
 ▼ 272 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/04/07 00:07:54 ID:xzQ0cL2M NGネーム登録 NGID登録 報告
タンバシティ


シバ「海……か」


ミカンの目的はこの町の薬屋だったらしく、ミカンはすぐに薬屋に行ってしまったため俺は暇を持て余して海を眺めていた。

ミカンに同行してここまできて。

なにがあったというわけでもなかったが、俺にしては珍しく誰かと共に歩むのは楽しいものだった。


シバ「だが、それももうここまでか」


日頃は暴風の中渦潮がうなりをあげているこの辺りの海も、今日は凪いで鏡のような海面を見せていた。

つまり、用が終われば船ですぐにアサギシティに戻ることになる。そしてその意味は……。


シバ「はは、俺らしくもないな」


自嘲気味に笑って浜に座り込んだ、その刹那。
 ▼ 273 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/04/12 03:20:30 ID:fIz8hSSY NGネーム登録 NGID登録 報告
???「ほーう、こやつがその……」

ミカン「はい、そうなんですけど……」


背後から耳に入った会話。

一方はミカンとして、他方は?


ミカン「すみません、薬屋で偶然会って、それでその、シバさんのことを話したら……」

シバ「いや、構わない。そんなことより」


目の前に立ちはだかるこの男は何なんだ。

中々鍛え上げられているようには見えるが、本気で強さを求めるにしては少々腹が目立つ。


???「はっはっは。セキエイ高原の四天王様にゃあこんな田舎の格闘家のことなぞ眼中になし、か!」


男は豪快に笑い、続けた。


???「ご存知ないなら自己紹介しよう。
わしはこの町のジムリーダーにしてジョウト地方最強の格闘タイプ使いのシジマだぁ!!」
 ▼ 274 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/04/13 17:49:45 ID:1g/0X28Q [1/7] NGネーム登録 NGID登録 報告

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


サファリゾーン


シバ「……ここは?」


あれからシジマに『いいところに連れて行ってやる』と言われてここに連れてこられたわけなのだが。

今、俺たちの目の前に見えるのはセキチクシティのサファリゾーンによく似た……というかほぼ同一のゲート。

俺は道場やトレーニング場の類を望んだのだが……。

ちなみにミカンは急ぎだからと薬の袋を抱えてアサギシティに戻って行ったため今は俺とシジマの二人。


いや、俺を身代わりにしただけかもしれないが。
 ▼ 275 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/04/13 17:51:30 ID:1g/0X28Q [2/7] NGネーム登録 NGID登録 報告

シジマ「サファリゾーンだ。
ここには珍しいポケモンが多く ーーー」


何を言い出すかと思えば。

俺が四天王だと知っているなら、俺が格闘タイプ一筋だということも知っているだろうに。


シバ「生憎、俺はそういうのには」


興味がない。
有り体に言えば時間の無駄だ。

そう判断し丁重にお断りして踵を返そうとした、その刹那。


シジマ「ーーー はー、夢のないやっちゃ。

んじゃあ、珍しい格闘タイプがいる、と言ったら?」


シバ「……?!」

 ▼ 276 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/04/13 17:52:40 ID:1g/0X28Q [3/7] NGネーム登録 NGID登録 報告

格闘タイプ、だと……?!

体は正直なもので、シジマの言葉に素直に反応してしまう。そしてそれを見逃すほどシジマは鈍い男ではなかった。


シジマ「よし、文句ないな。

そんじゃさっさと入った入った」


シバ「今の言葉、本当だろうな……
っておわぁぁあ!!」


強引にサファリゾーンに引きずり込まれてしまった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 ▼ 277 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/04/13 17:56:13 ID:1g/0X28Q [4/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
数時間後


シジマ「おお! あれはラッキー!
こんなところでお目にかかれるとは正にラッキー!ってわけだな、はっはっは!」

シバ「………………」


疲れた。

何時間連れ回すつもりだ。

半ば覚悟はしていたが、どうやら騙されたらしい。

出てくるのは草タイプ、水タイプ、ノーマルタイプばかり。時折地面タイプや毒タイプもいたが、格闘タイプなんぞはいくら歩き回っても見つかることはなかった。

シジマが俺の分の入場料まで払ってくれているのはありがた ーーー


シジマ「ほれほれ! ノズパズ!
餌はこっちじゃ、わっはっは!」


ーーー いや、撤回。

もはや思考する気力さえ失せてきた。

一分一秒が惜しいというのに……。
 ▼ 278 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/04/13 17:58:57 ID:1g/0X28Q [5/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
さらに数時間後


シジマ「あー楽しんだ楽しんだ!
で、どうだシバ! 珍しい格闘タイプは ーーー」


…………………………。

草むらに座り込んだまま動かない。 動けない。

俺の周囲をさっきから二匹のポケモンがちょこまかと動き回っているが、もうどうとでもなれ。


シジマ「ーーー やれやれ、だらしのない……。
ん? おお?」


やっと満足したらしい。 助かった。
そう思った刹那 ーーー



シジマ「シバ、お主捕まえなくてよいのか?


その、『珍しい格闘タイプ』を」


ーーー 爆弾発言がなされた。
 ▼ 279 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/04/13 18:21:02 ID:1g/0X28Q [6/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


アサギの灯台


ミカン「あはは……あの後そんなことが……」

シバ「全く感謝すべきなのか恨むべきなのか……」


事の顛末をだいたい話し終えたあたりでミカンはとうとう笑いを堪えきれなくなったようで。


結局、あの二匹はリオルというシンオウ地方原産のポケモンだった。

原産地のシンオウ地方でも中々見つからないポケモンらしく、珍しいポケモンとして知られているそうだ。

灯台に住んでいるデンリュウも薬のおかげですっかり元気になったと見えて、今はリオル二匹と仲良く戯れている。
 ▼ 280 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/04/13 23:55:19 ID:1g/0X28Q [7/7] NGネーム登録 NGID登録 報告

ミカン「感謝、ということでいいんじゃないでしょうか」

シバ「……そういうことにしよう」


あのまま収穫なしで帰るはめになろうものならどの技で締めてやろうかとまで一時は考えていたが、結果的には二匹もリオルが手に入ったことで俺は文句を言うに言えなくなってしまった。

とはいえ、それで腹の虫が収まるかといえばそう理屈では割り切れず、俺はやり場のない苛立ちを抱えていたのだ。
 ▼ 281 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/04/14 00:21:01 ID:dd8q0uBk [1/17] NGネーム登録 NGID登録 報告

シバ「なんにせよ、これで戦力の補強はひとまず解決した。おかげで道中の心配なくフスベシティを目指せる。

ありがとう」


ミカン「もう出発なさるんですね」

シバ「いつ次の挑戦者が現れるかわからない。
四天王の三人目が突破されたら残りは不在です、などとなったらポケモンリーグ創設以来の不祥事だ」

ミカン「それもそうですね。
それでは、お気をつけて」

シバ「ああ」


そういって俺は二つのボールに手をかけ、リオルたちに向ける。
 ▼ 282 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/04/14 00:22:00 ID:dd8q0uBk [2/17] NGネーム登録 NGID登録 報告

シバ「さあ、行くぞお前ら」

ミカン「…………あれ?」

シバ「何……?」


リターンレーザーはリオルの片方を捉えることには成功したのだが、もう一方のリオルはリターンレーザーをかわしてしまった。


シバ「お、おい! 出発だ。

早くボールに戻れ!」


そう言ってまたリオルにリターンレーザーを向けたが ーーー


ミカン「おかしいですね……」


ーーー リオルは上下左右、縦横無尽に動き回って一向にボールに戻ろうとしない。

そして、最後はデンリュウの陰に隠れてしまった。
 ▼ 283 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/04/14 00:22:45 ID:dd8q0uBk [3/17] NGネーム登録 NGID登録 報告

シバ「どういうことなんだ……?」

ミカン「アカリちゃん……?
シバさん、ちょっと待ってください。

一度ボールはしまって」


シバ「わ、わかった」


このまま追いかけっこを続けても埒があかないし、第一根本的な解決にならない。

仕方がないのでここはミカンの仲裁に任せることとした。


ミカン「〜〜〜〜〜〜?」

デンリュウ「〜〜〜〜〜〜!!」

リオル「………………」


小声で話しているためここからは何を話しているのかわからない。

いや、どのみち俺はデンリュウと意思疎通できないんだが。
 ▼ 284 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/04/14 00:24:04 ID:dd8q0uBk [4/17] NGネーム登録 NGID登録 報告

ミカン「はい……大体わかりました。シバさん」

シバ「何か、わかったか?」


ミカンが何となく言いづらそうにしているように見えるのは気のせいだろうか。


ミカン「一言で言うと……リオルはここ……というかアカリちゃんと離れなくないみたいなんです」

シバ「お、おう……」

ミカン「どうしたものでしょうか」


どうするも何も。

ポケモンがそう望むのだ。

戦いを望まないものを連れて行くことはできない。

故に、選択肢はなかった。


シバ「仕方ない。ポケモンがそれを望むのならばトレーナーはそれを後押しする以外にやることはないんだ」

ミカン「それで……本当にいいんですか?」

シバ「聞くな」
 ▼ 285 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/04/14 00:24:48 ID:dd8q0uBk [5/17] NGネーム登録 NGID登録 報告

ミカンの疑問……いや、俺の迷いを断ち切りつつ、ボールをリオルから見えるようにしてミカンに手渡した。


シバ「リオル」


そして俺はリオルの方を向く。

言葉が通じるのかはわからないが ーーー


シバ「元気でな」


ーーー せめて、気持ちだけは伝わってくれることを願おう。


そして、俺は灯台を、アサギシティを出てフスベシティへと向かった。

 ▼ 286 アサギシティ編終了◆zFLCCAWaiw 17/04/14 00:26:08 ID:dd8q0uBk [6/17] NGネーム登録 NGID登録 報告


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


この後、ミカンがイッシュ地方・ホドモエシティで開催されるPWT ーーーポケモン・ワールド・トーナメントーーー でルカリオをメンバーに加えているのはまた、別の話である。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 ▼ 287 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/04/14 01:18:08 ID:dd8q0uBk [7/17] NGネーム登録 NGID登録 報告
アサギシティでミカンとリオルと別れてからまた時は流れて ーーー


クルクルクルクル………ドンッ。


ーーー 気づけばリーグを飛び出してから間もなく三年が経とうとしていた。

時の流れとは不思議なものである。


クルクルクルクル………ドンッ。


シバ「全く、聞いていないぞ……」


クルクル………ドンッ。


そろそろ体が痛い。目が回る。


クルクルクルクル………ドンッ。


シバ「氷の抜け道……か」
 ▼ 288 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/04/14 01:19:09 ID:dd8q0uBk [8/17] NGネーム登録 NGID登録 報告
クルクルクルクルクルクルクルクル………


シバ「全く難儀な道……うおおおお?!」


ドンッッ!!


薄暗い洞窟でしかも床は凍りついていて。

そんな状況下でうっかり誰かにぶつかったとして、一体誰が責められようか。


???「何よ……ったた」

シバ「申し訳ない……」


???「怪我でもしたらどうしてくれるのよ、本当に……あー……もう。私、最近イライラしているの。

私はポケモントレーナーのカリン。

あなた、私とバトルなさい」


そう思っていた時期が、俺にもあった。
 ▼ 289 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/04/14 01:21:06 ID:dd8q0uBk [9/17] NGネーム登録 NGID登録 報告
カリン「ルールは一対一! それだけ」

シバ「ここで、なのか?」

カリン「あなたに拒否権はありません。
さあ始めましょう」


中々面倒な相手にぶつかってしまったらしい。

己の不運を心の中で嘆きつつ、俺はボールに手を伸ばす。


カリン「突然のバトルだし、これくらいはいいハンデでしょう。おいでなさい……ヘルガー!!」


その刹那彼女が繰り出したのは……真っ黒い四つ足のポケモン。

自然な表情で炎を吐いている辺り、炎タイプは確定だろう。

ならばここは ーーー


シバ「頼むぞ、ハリテヤマ!」


ーーー ハリテヤマで優位に立つのが定石だろう。
 ▼ 290 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/04/14 01:23:54 ID:dd8q0uBk [10/17] NGネーム登録 NGID登録 報告

カリン「ふん……ヘルガーに対して格闘タイプ。
王道とはいえ、ちょっとつまらないわね」

シバ「何……?」


妙に癪にさわる言い方だが、彼女の発言内容から察するに俺の方が相性では有利な選択をしたらしい。

それにしても、だ。

いきなりバトルを仕掛けたり先に手の内を晒したりとこのトレーナーは随分と腕に自信があるらしい。

その自信は本物か。はたまた張り子の虎か。


シバ「そういえばまだ名乗っていなかったな。
俺は……シバ。ポケモントレーナーのシバだ」


さすがに四天王とこちらから名乗るのは憚られる。
チャンピオンとは違い、四天王はあまりリーグの外を出歩くことをよしとされていないからだ。

もっとも、三年間カントーとジョウトをうろついているから今更ではあるのだが。


カリン「そう。シバ、ね……。どこかで聞いたことがあるような名前だけど、この際どうでもいいことよね。

さあ、始めましょう!!」
 ▼ 291 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/04/14 01:47:41 ID:dd8q0uBk [11/17] NGネーム登録 NGID登録 報告
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

シバvsカリン@氷の抜け道


カリン「火炎放射!」

シバ「ハリテヤマ、受け止めろ」


開幕はカリンの火炎放射だった。

追加効果の火傷が怖いが、それよりは下手に動き回って体勢を崩す方がまずい。

そう判断したのだが ーーー


シバ「何……っ?!」

カリン「続けて悪の波動!」


ーーー 俺の予想と裏腹に火炎放射はハリテヤマの横を掠めて壁に着弾し、周囲の氷を融かす。

そして間髪入れずに放たれた悪の波動が周辺の岩を粉々に砕く。
 ▼ 292 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/04/14 01:48:33 ID:dd8q0uBk [12/17] NGネーム登録 NGID登録 報告

シバ「何を狙っている……?」

カリン「あら、手を出さないのかしら?
だったら遠慮なく! 煉獄!!」

シバ「っ、煉獄だと?! ハリテヤマ、かわせ!」


煉獄。

当たれば確実に火傷を負わされる恐ろしい技だ。

これを食らうわけにはいかない……!


カリン「…………まあ、仕方ないわね」


ハリテヤマの必死の回避が功を奏し、煉獄は氷の床に着弾。

そしてそのまま煉獄は燃え広がって洞窟の内部の氷という氷を溶かしつくした。

氷が溶けて。これなら動きが取れる。
 ▼ 293 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/04/14 01:50:09 ID:dd8q0uBk [13/17] NGネーム登録 NGID登録 報告


これを待っていた!!



シバ「いまだ、突っ込め! インファイト!!」


ハリテヤマが巨躯に似合わぬ俊敏な動きでヘルガーに迫る。

辺りは氷の床が火炎放射や煉獄で融けたことで泥沼になっているが足腰を鍛え上げられているハリテヤマには関係の無い話だ。

この勝負、貰った ーーー


カリン「ヘルガー! 足元にヘドロ爆弾!」


ーーー そう確信した刹那。

ヘルガーが足元にヘドロ爆弾を炸裂させた。

完全な、罠だった。

 ▼ 294 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/04/14 01:50:44 ID:dd8q0uBk [14/17] NGネーム登録 NGID登録 報告

シバ「……! 止まれハリテヤマ!」


そしてヘドロ爆弾の残滓は氷が融けた水に溶け出して両者の周囲を覆う。

もしハリテヤマが迂闊に毒沼に踏み込めば毒状態になり、そうなればあとはヘルガーにひたすら逃げ回られてハリテヤマの体力が時間切れになるのは必至。


カリン「ふうん……中々鋭いのね」


ハリテヤマは毒沼の寸前で踏みとどまることに成功した。

とはいえこの毒沼がこっちに対する強烈な縛りとなったのは間違いない。

悪の波動で岩を粉砕されたために岩に登ってやり過ごすことも許されない。


カリン「後ろに回って火炎放射!」

シバ「ハリテヤマ、突っ張りで弾き飛ばせ!」


どうする。どう攻略する?!
 ▼ 295 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/04/14 18:55:22 ID:dd8q0uBk [15/17] NGネーム登録 NGID登録 報告
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


カリン「火炎放射」

シバ「受け止めろ!」

カリン「悪の波動」

シバ「ガードで受け流せ!」

カリン「ヘドロ爆弾!」

シバ「突っ張りで弾き飛ばせ!」


あれから局面は膠着。

周囲を飛び回り円を描くヘルガー。
その円の中央に立つハリテヤマ。

しかし着実にハリテヤマのダメージは蓄積されて。

その時、失望した口調でカリンがぽつりと呟いた。


カリン「少しはできるかと思ったのに……。

結局、あなたもその他有象無象と同列の存在でしかなかったのね」
 ▼ 296 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/04/14 18:56:52 ID:dd8q0uBk [16/17] NGネーム登録 NGID登録 報告
吐き捨てるように言われたならば。

罵るように糾弾されたならば。

そうだったならば、どれだけよかったか。

『有象無象』。

いや、この俺がそんなはずは。

……本当に?


カリン「一歩動けば毒の沼。
かと言って動かずにいれば嬲られるばかり。

……チェックメイトよ」


ダメだ。 負けたら、また何か失ってしまう。

何故かはわからないが、何か確信めいたものが俺の胸の中にあった。

もう負けたくない。 負けるわけにはいかない。

これ以上……俺の弱さのせいで大切なものを失うのは俺自身が許さない!!

 ▼ 297 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/04/14 18:59:12 ID:dd8q0uBk [17/17] NGネーム登録 NGID登録 報告
カリン「美しく散らせてあげる……。
ヘルガー、ハリテヤマの周囲に火炎放射!!」


ヘルガーが大口を開く。

その狙いはガス爆発による回避不可の一撃。

ここ一番で起死回生の打開策が、見えた!


シバ「ハリテヤマ……堪えろ!!」


俺がハリテヤマに指示を飛ばした刹那 ーーー



ズドォォォオオオ!!!!



カリン「勝負あった……わね」

ーーー 火炎放射がヘドロのガスに引火して大爆発を引き起こす。

果たして、俺の最後の指示はハリテヤマに届いてくれていたのか。


頼む……届いていてくれ!
 ▼ 298 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/04/15 09:58:26 ID:OrQ6PrP6 [1/15] NGネーム登録 NGID登録 報告
カリン「ふぅ。ヘルガー、戻 ーーー」

シバ「! まだだ……!」

カリン「ーーー っっ?!」


爆発の黒煙が薄れゆく中、その中央に悠然と立ち尽くす影を俺は見た。

ハリテヤマは、耐え抜いた!


シバ「起死、回生っ!!!」


そして体力がギリギリな今、起死回生の威力は最大になっている。

ハリテヤマの渾身の一撃が ーーー


ドンッ!!


シバ「やったか……?」

カリン「そんな……まさか……?!」


ーーー 炸裂した!!
 ▼ 299 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/04/15 10:00:34 ID:OrQ6PrP6 [2/15] NGネーム登録 NGID登録 報告
そして ーーー


シバ「ハリテヤマ!!」

カリン「……いい判断よ、あなたのおかげで首の皮一枚繋がったわ。ヘルガー」


ーーー 砂埃が晴れた時、そこにあったのは倒れ伏す二体の姿だった。


シバ「?!」

カリン「道連れ、よ。ヘルガーが強引に引き分けに持ち込んでくれたようね」


火炎放射、悪の波動、ヘドロ爆弾。
カリンがひた隠していた最後のカード。
それが道連れだったらしい。


シバ「……そういうことだったのか。
ありがとう、戻ってくれハリテヤマ」

カリン「戻って、ヘルガー」


両者戦闘不能になったため決着はつかず。
この勝負、引き分けだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 ▼ 300 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/04/15 10:30:24 ID:OrQ6PrP6 [3/15] NGネーム登録 NGID登録 報告
カリン「お見事、というべきかしら」

シバ「ふん……いいように振り回されてしまった。最後の最後でハリテヤマが粘ってくれた、それだけだ」

カリン「でも、あなたは私を破った」


どうやらカリンは納得がいっていないらしい。

もっとも、快心の勝利も清々しい敗北も中々味わえるものではないのだろうとは思うが。


シバ「……納得のいく戦いができることなどほとんどないんだろう。勝ったにせよ負けたにせよ、な。

ところで……ときに、カリンと言ったな?


四天王になるつもりは、ないか?」
 ▼ 301 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/04/15 10:30:56 ID:OrQ6PrP6 [4/15] NGネーム登録 NGID登録 報告

カリン「私が……四天王に?」


俺が四天王に勧誘した刹那、カリンが僅かに動揺して震える。


シバ「その高い戦略、ここぞというときに独断で行動できるポケモン。その素質は四天王たるに充分だと判断した。

これはセキエイ高原の四天王シバとして受け取ってもらって構わない」


カリン「…………」

シバ「それに……四天王とて常にチャレンジャーを迎え撃つわけではない。暇となれば今の戦いの決着をつけることもできよう」

カリン「…………!」

カリン「わかったわ。その話、受けようじゃない!」

シバ「ありがとう。四天王として、今後よろしく頼む」

カリン「ふん……任せなさい」
 ▼ 302 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/04/15 10:32:06 ID:OrQ6PrP6 [5/15] NGネーム登録 NGID登録 報告

こうして、ついに。ようやく。

四天王が揃った。

キョウ、イツキ、カリン、そしてシバ。

メンバーは様変わりしてしまったし、これまでのメンバーと比べると僅かに見劣りする面はあるかもしれないが。

次世代を牽引する四天王としては充分な役者が揃ったと言えよう。


シバ「セキエイ高原の場所は ーーー」

カリン「わかってるわよ。一人で先に行ってるわ」

シバ「ーーー そうか、なら問題ないな」

カリン「ふふ……いずれ挑むつもりだった場所に、こんな形で行くことになるなんて。面白いものよね」

シバ「ははは、違いない」
 ▼ 303 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/04/15 10:41:46 ID:OrQ6PrP6 [6/15] NGネーム登録 NGID登録 報告

一仕事終えて、和やかな空気になっていたその刹那 ーーー


???「近くの通行人から通報が入った。
氷の抜け道から爆発や汚染水が流出しているんだが、心当たりはないか?」


ーーー 強烈な威圧を放つ男が現れた。

場の空気が一転、ピリッと引き締まる。

洞窟の入り口付近に立つその男の姿は逆光でよく見えないが ーーー


シバ「質問……というよりは詰問か。
久しぶりだというのに愛想がないな」


ーーー その男が放つオーラ。

そして風にはためくそのマントを忘れたことはない。
 ▼ 304 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/04/15 10:42:46 ID:OrQ6PrP6 [7/15] NGネーム登録 NGID登録 報告

???「シバ……四天王たるものがこんなところで何をしているのか、少々お聞かせ願いたい」


はねたくせっ毛。堂々たる立ち姿。

そして、彼のトレードマークといえるマント。

逆光であろうと、間違いない。


シバ「俺からも、ぜひお聞かせ願いたい。

……里に逃げ帰って満足か」







シバ「答えろ…………ワタル」






ワタルだ。

 ▼ 305 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/04/15 11:00:27 ID:OrQ6PrP6 [8/15] NGネーム登録 NGID登録 報告

ワタル「随分、言うようになったじゃないか」


シバ「おかげさまで、な。 何をしていたかって?

どこかの誰かが四天王の仕事を放り出して遁走してしまったせいで俺は一人で四天王をかき集めていたんだ」


ワタル「……それはご苦労なことだ」

シバ「全く……お前は」

ワタル「それで? 集まったのか?」

シバ「ああ。たった今、四人目の四天王が決まったところだ」



何か、おかしい。

話しながら俺は明らかな違和感を抱いた。

俺の知るワタルはこんな挑発的な人物だったか?

こんな無機質な笑い方をする男だったか……?
 ▼ 306 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/04/15 11:01:20 ID:OrQ6PrP6 [9/15] NGネーム登録 NGID登録 報告

ワタル「ふん。そうか」


この応答にしたって、向こうからわざわざ出向いて質問してきたにも関わらずこちらの答えに対してほとんど興味のなさそうな返ししかしない。

なんだ?


ワタル「寄せ集め集団……か」


嘲笑とさえとれる口調。

さすがに黙っているわけにはいかなかった。


シバ「……言わせておけば。何が言いたい?」


ワタル「まだわからないのか。

お前は……いや、俺たちは余りにも未熟すぎた」

 ▼ 307 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/04/15 11:01:53 ID:OrQ6PrP6 [10/15] NGネーム登録 NGID登録 報告

己が未熟さ。

確かに、旅に出るまでの俺だったら頑なにそれを認めなかっただろう。

けれど ーーー


シバ「その通りだ……カントーを、ジョウトを、そしてナナシマを旅する中で俺はそれを嫌というほど……嫌と言っても尚味わう羽目になったよ」


ーーー 今なら、その言葉を素直に受け取れる。

ワタルも、レッドを前にして似たようなものを味わったのだろう。

だから、強さを求めて飛び立った。


ワタル「そうか」


もっとも、それを許すかどうかは全くの別問題だが。


ワタルの短い返答を最後に、重苦しい沈黙が場を支配する。
 ▼ 308 氷の抜け道編終了◆zFLCCAWaiw 17/04/15 11:20:56 ID:OrQ6PrP6 [11/15] NGネーム登録 NGID登録 報告
ワタル「それじゃあ」


唐突に告げられた別れ。

しかし納得するわけにはいかない。


シバ「待て。結局お前は何をしに来た?」

ワタル「氷の抜け道の確認とその原因の確認。仕事中だというのに少々おしゃべりが過ぎたな」

シバ「待て……! まだ話は……!」

ワタル「いずれ、またセキエイ高原に行く。今度は挑戦者として、だがな。

そして示そう。俺がこの三年間で何を学び、鍛えたのかを」


シバ「勝手なことを言うな!」

ワタル「君の認めた者たちと対決し……そして君たちを倒すことで俺は俺の正当性を示してみせる」

ワタル「じゃあな……シバ」


そしてその言葉を最後に、ワタルは踵を返し、フスベシティの喧騒に消えた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 ▼ 309 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/04/15 11:56:58 ID:OrQ6PrP6 [12/15] NGネーム登録 NGID登録 報告

ヒュウウウウ………


ブリザード吹きすさぶ中、俺は一歩、また一歩とシロガネ山を登っていく。

静かなる猛吹雪の中、俺の吐息と足音だけが奇妙に響く。


あれから、リーグに戻ってカリンを正式に四天王に登録。

その後トキワシティでグリーンとタケシからカイリキーとハガネールを託され、二人の協力によってバルキーたちはカポエラーとサワムラーに、リオルはルカリオに進化した。

ハガネール。

カポエラー。

サワムラー。

ルカリオ。

ハリテヤマ。

カイリキー。

ようやく新生メンバーたちが進化という一つのステップを乗り越え、また一回り強くなった。
 ▼ 310 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/04/15 11:57:58 ID:OrQ6PrP6 [13/15] NGネーム登録 NGID登録 報告

そして今、"あの男"がこの山の頂上にいるという情報をグリーンから貰い、ここまでやってきたのだ。

自身の足で各地を巡り、様々な人やものを見てきた今の俺は、"あの男"にどこまで肉薄できるのか。


シバ「負けるとわかっていても戦う……
トレーナーの、いや格闘家の性か」


今度はもう失わない。

レッドの猛攻に耐えうるだけのトレーニングはトキワシティで積んできたはずだ。

レッドとかつて肩を並べたグリーン相手にもそこそこ善戦できるようになった今ならば。

それなりの勝負はできるはずだ。

そう信じて。

 ▼ 311 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/04/15 11:59:08 ID:OrQ6PrP6 [14/15] NGネーム登録 NGID登録 報告

ヒュウウウウ!!!


頂上に近づくにつれて風が一段とその強さを増す。

ダメだ、ホワイトアウトだ。

思わず足が止まり、腕で顔を覆う。

……どれくらいそうしていただろうか。


ビュウウウウ………

ヒュオオオオオォォォ………

ォォォ…………



雪が止む。 風が弱まる。


シバ「助かった……!」

安堵して顔から腕を離し、前を見据えた、その刹那。

シバ「あれは……!」
 ▼ 312 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/04/15 11:59:50 ID:OrQ6PrP6 [15/15] NGネーム登録 NGID登録 報告








視界の果てに、俺は見た。





あの、赤い帽子を。






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