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【SS】空白の三年

 ▼ 1 RIVER◆zFLCCAWaiw 16/12/11 15:41:13 ID:eLoC8vmk NGネーム登録 NGID登録 報告

ポケモンリーグ本部

四天王二番手の部屋



……ここはポケモンリーグ本部、セキエイ高原。

今日も、高原に王者として君臨する四天王と
王者を打ち倒さんとするリーグ挑戦者による

熱く、壮絶な戦いが繰り広げられている ーーー



シバ「ウー!

………………はぁぁぁあああ?!?!」



ーーー はずだった。
 ▼ 113 RIVER◆zFLCCAWaiw 16/12/18 23:47:15 ID:VYDKm8JM [1/2] NGネーム登録 NGID登録 報告


イツキ「ーーー なるほど、そう。

四天王か……悪くないね」


シバ「 ! やはりお前も……」


イツキ「ご明察。僕もエスパーってわけさ」



考えが筒抜けになっているのなら
今更まだるっこしい前置きなど必要ない。

シバはそう判断し、大胆に切り出した。



シバ「……ならば話は早い。
到着早々ですまないが、実力を見せて欲しい」

 ▼ 114 RIVER◆zFLCCAWaiw 16/12/18 23:49:17 ID:VYDKm8JM [2/2] NGネーム登録 NGID登録 報告


イツキ「なるほどね。
……だけど、僕が目指すのはトレーナーの頂点!」


シバ「面白い……その野心こそ、
まさしく俺が求めているものだ」


イツキ「ゼロでなければ力は無限 ーーー」


シバ「イツキとやら……

俺たちのスーパーパワーを受けてみろ!」


イツキ「ーーー 負けるわけにはいかないんだ!」


シバ「……ウー! ハーッ!!」



二人がボールを手にする動作が
開戦の合図となる……!


 ▼ 115 ムウマ味◆.bjJoMeD0w 16/12/19 01:04:55 ID:bb9gIpcM NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援です。o(^-^)oワクワク
 ▼ 116 RIVER◆zFLCCAWaiw 16/12/19 13:56:22 ID:eWVf6jdA [1/6] NGネーム登録 NGID登録 報告

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


シバvsイツキ@格闘道場



イツキ「行っておいで、ネイティオ!」


シバ「行くぞ……イワーク!」


空手大王「シバのイワーク……

あれは"どっち"だ?!」



"どっち"なのか。

シバが誇るイワーク二本柱。

果たしてシバはそのうちのどちらを
この一戦に送り出したのか。

その答えを知るのはシバ、
ただ一人だけである……!
 ▼ 117 RIVER◆zFLCCAWaiw 16/12/19 13:57:55 ID:eWVf6jdA [2/6] NGネーム登録 NGID登録 報告


イツキ「ははっ! イワークとはね……
だが手加減は、なしさ!

ネイティオ、追い風!」


シバ「イワーク! 手始めは岩石封じだ!」


ナツメ「岩石封じ?!」


空手大王「 ! ……ってことは!」



岩石封じ。

中くらいの大きさの岩を大量に打つことで
大ダメージ、というよりは相手の行動範囲を
狭めたり速さを制限することに長けている技。


それを繰り出したということは ーーー


 ▼ 118 RIVER◆zFLCCAWaiw 16/12/19 13:58:55 ID:eWVf6jdA [3/6] NGネーム登録 NGID登録 報告


ナツメ「先発要員のイワークだったのね……」



ーーー このイワークは
タケシとバトルした時のイワークではない、
もう一体のイワークということになるのだ!



イツキ「その程度の岩技なんて……
どうということはない!

ネイティオ、追い風を利用して高度を上げろ!」


シバ「ふん……岩技対策はそう来たか……」

 ▼ 119 RIVER◆zFLCCAWaiw 16/12/19 14:00:07 ID:eWVf6jdA [4/6] NGネーム登録 NGID登録 報告


しかしイツキはたった今吹かせた
追い風を利用して鮮やかに岩石封じを全弾回避。



トゥートゥー♪



独特の鳴き声と存在感が場を支配する。



シバ「だったら今度はこれだ!

イワーク、相手を叩きつけろ!」


イツキ「甘いね……

足元にサイコキネシスを撃ち込め!」


ナツメ「これは……! まずいわね」


 ▼ 120 RIVER◆zFLCCAWaiw 16/12/19 14:02:32 ID:eWVf6jdA [5/6] NGネーム登録 NGID登録 報告


ピロロロ……ズガァァン!!



サイコキネシスがカウンターで決まり、
よろめきながら宙に浮かび上がるイワーク!



シバ「イワーク!!」



完全な失策……
いや、本来なら失策にならなかっただろう。

ところがここでは追い風の恩恵もあって、
あまりにもネイティオが早かったのだ。



イツキ「……ブレイブバード」


 ▼ 121 RIVER◆zFLCCAWaiw 16/12/19 14:05:34 ID:eWVf6jdA [6/6] NGネーム登録 NGID登録 報告
サイコキネシスで宙に持ち上げられたイワークへ
ネイティオが一直線に襲いかかる……!



ズゴォォォ…………。



空手大王「強い、なんて強さだ……」


ナツメ「……勝負あったわね」



追い風が、止んだ。



シバ「見事だ……」


イツキ「よくやったね、ネイティオ。
……勝ったからといって僕のやることは変わらない。

トレーナーの頂点に立つため、戦い続けるだけ」


イワーク、戦闘不能。
よって勝者、イツキ。
 ▼ 122 RIVER◆zFLCCAWaiw 16/12/20 14:56:10 ID:XNr.kCsw NGネーム登録 NGID登録 報告


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


イツキ「さて。これで僕の……」


シバ「ああ、わかってる」



一度深呼吸して。

シバは言葉を紡ぐ。

"四天王"たる者として。



シバ「……このシバ、
ポケモンリーグ本部の四天王として
ポケモントレーナー、イツキを
四天王たるに相応しい人物と認め、
これをセキエイ高原に迎え入れる!」


 ▼ 123 RIVER◆zFLCCAWaiw 16/12/21 12:07:41 ID:Iz4QRh/2 NGネーム登録 NGID登録 報告

イツキ「四天王、か……まあ、悪くない。

だけど! いつか、チャンピオンの座につくのは

……この僕、イツキだ!」



シバ「……楽しみにしている」



イツキ「それじゃあ、
セキエイ高原に先に行ってるとしよう!」



イツキの最後の言葉が言い終わるや否や ーーー



バチッ



ーーー 破裂音の一閃。

そしてそれと同時にイツキは姿を消した。

 ▼ 124 RIVER◆zFLCCAWaiw 16/12/22 09:30:38 ID:QoQrsxVg NGネーム登録 NGID登録 報告


シバ「! 本人がテレポートを使えるとは」


ナツメ「ふふっ。
どうやら気に入ってもらえたみたいね」


シバ「ああ、感謝している。

……お前がわざわざ名前を出すくらいだ、
手練れであることくらいは予想していた……」


ナツメ「ああ、もうこんな時間。
私は次の用があるから、これで失礼するわね」



時計を見て足早に立ち去ってしまうナツメ。

そして道場に残された漢二人。

 ▼ 125 RIVER◆zFLCCAWaiw 16/12/22 20:33:28 ID:MxMzj32. [1/4] NGネーム登録 NGID登録 報告


シバ「……礼は今度キッチリせねばな」


空手大王「これで、あと何人だ?」



空手大王の問いに対して
シバは右手の指を二本立てて答えた。



シバ「四天王はあと一人……
だが、チャンピオンを探さなくては……」


 ▼ 126 RIVER◆zFLCCAWaiw 16/12/22 20:35:21 ID:MxMzj32. [2/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
着実に集まってきたとはいえ、まだ足りない。

いや、四天王全員を確実に下せる実力を有する者
ーーー人はそれをチャンピオンと呼ぶーーー
をも見つけ出さなくてはならないのだから
道半ばどころの話ではないのだ。


空手大王「そうか。長い道のりだろうが……」


シバ「初心忘るべからず、そうだろ?」


空手大王「オスッ! そういうことよ!」



拳をシバに向けて突き出す空手大王。



空手大王「バルキーたちのこと、頼んだぜ」


シバ「ああ、任せとけ!」



シバと空手大王の拳が合わさり、
コツッと小さな音を響かせた。
 ▼ 127 RIVER◆zFLCCAWaiw 16/12/22 20:45:33 ID:MxMzj32. [3/4] NGネーム登録 NGID登録 報告

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


また時は流れて


クチバシティ



シバ「結局……カントーでは見つからなかったな」



ボォォォオオ〜〜



シバ「まあ、仕方ない。

できる限りのことはした、後悔はないさ……」



のどかな汽笛が鳴り響く。

海のギャロップもとい、
シーギャロップ号の出航合図だ。
 ▼ 128 RIVER◆zFLCCAWaiw 16/12/22 20:48:43 ID:MxMzj32. [4/4] NGネーム登録 NGID登録 報告


シバ「ひとまず四天王探しは終わりだ。
久しぶりにともしび温泉にでも行くとしよう」



そういうわけで、今はクチバシティからシーギャロップ号に乗り込んでナナシマへ向かっているのだ。



シバ「海風が心地よいな……」


ラプラスを追い抜いて。

ホエルコたちの群れを横切って。

岩礁にへばりついたヒトデマンたちを笑うように
水しぶきをあげて。

シーギャロップは海を駆ける。



ぼんやりと海を眺めているうちに
船は一の島に入港しようとしていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 ▼ 129 コドラ@はっきんだま 16/12/24 00:31:22 ID:J4N4Bxlw NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 130 RIVER◆zFLCCAWaiw 16/12/25 02:20:15 ID:U7C530PA NGネーム登録 NGID登録 報告
一の島



シバ「いつ来てもいいもんだ……
はは、それにしても全く変わらないよなここは」



ナナシマ。

カントーの南に位置する島々である。

火山の噴火によって七つの島が七日のうちに
生まれたのが"ナナシマ"の由来なのだそうだ。

現在でも未だ活発な火山活動によって年中温暖。
いつ来ても快適なのだ。



シバ「さて、と。

まずは風呂にしようか、
それとも怒りまんじゅうを先にしようか……」

 ▼ 131 RIVER◆zFLCCAWaiw 16/12/26 17:51:41 ID:fMo8PNvk NGネーム登録 NGID登録 報告
久しぶりの休暇。

第二の故郷と言ってもいいくらいに馴染んだ土地。

シバの心が浮き立つ。

その刹那 ーーー



???「おーっ! シバじゃん! ひっさしぶり!」


シバ「ん、誰……どわーっ?!」



ーーー シバは後ろから走って飛びついてきた男によって体勢を崩し、柔らかい地面に倒れこんだ。



シバ「痛てて……」

???「あ、すまんすまん」

 ▼ 132 RIVER◆zFLCCAWaiw 16/12/28 22:59:52 ID:s4t4nOWI NGネーム登録 NGID登録 報告

シバはその男から差し出された手を右手で掴み、左手で体についた土を払いのけながら立ち上がった。

しかし軽くはたいた程度では火山灰を主成分とするさらさらな土はそう簡単に落ちるはずもなく。



シバ「……やれやれ、これは風呂だな」



結局、シバは風呂を先にすることにした。



シバ「全く、親しき中にも礼儀ありというだろうが
……なあトウキ?」


トウキ「はは、悪かった悪かった」
 ▼ 133 メガハッサム@バトルレコーダー 16/12/30 20:28:47 ID:ASSgvkNw NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援です
 ▼ 134 RIVER◆zFLCCAWaiw 16/12/31 00:43:10 ID:Zgxxw6XY NGネーム登録 NGID登録 報告
シバ「ったく、お前は昔から……」



シバがやれやれと首を振った、その刹那。



シバ「げほっ、ごほごほっ!」


トウキ「ううーん、この風は思っていたよりも
ビッグウェー……ごほっ!」



つむじ風が砂埃を巻き上げて二人に襲いかかる。
そして、風がやんだ頃には……



トウキ「……これは、一風呂浴びてすっきりと」

シバ「……賛成だ」



……二人の逞しい肉体にはさらさらの砂が
衣のようにまとわりついていた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 ▼ 135 RIVER◆zFLCCAWaiw 16/12/31 14:01:59 ID:hMhLDtJE NGネーム登録 NGID登録 報告
ともしび温泉


ザザザザザ……


シバ「うー……」

トウキ「ハーッ! ってか?」

シバ「あれは俺なりに真面目にやってるんだ……
茶化すんじゃない」



先に体を洗い終えて浴槽に入っていたトウキの隣に座るシバ。

その勢いに耐えかねた露天風呂の湯が音を立てて流れ落ちる。



トウキ「……それで?」



水の流れ落ちる音も収まった頃、
脈絡もなくトウキが発した問い。



シバ「な、なんのことだ?」
 ▼ 136 メガニウム@フーディナイト 17/01/02 23:52:46 ID:XylJpY66 NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 137 キノココ@ソクノのみ 17/01/03 14:14:47 ID:p7UJJc.g NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 138 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/01/04 23:02:31 ID:OAePE3PM NGネーム登録 NGID登録 報告

トウキ「そりゃあな……色々噂は聞いてるんだぜ」

シバ「…………」

トウキ「随分、酷い有様だってな」

シバ「…………知っていたのか」

トウキ「まあ、な」



ドドドドド………


トウキはそれっきり黙り込んでしまい、二人だけの温泉には湯の流れ落ちる音だけがうるさいほど響く。

重苦しい沈黙。

修行時代にはこんなことはなかったのに。

いつでもなんでも言いたい放題言い合える間柄じゃなかったのか。



シバ「トウキ」


沈黙に耐えかねたシバが、空を仰いで口を開く。
 ▼ 139 ライコウ@あかいバンダナ 17/01/06 23:36:44 ID:9LLbO0Tg NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援です
 ▼ 140 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/01/08 00:45:10 ID:/Wpvaxdw [1/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
シバ「どうしてこうなっちまったんだろうな」

トウキ「……案外、脆かったのかもな」

シバ「脆い?」


シバは怪訝な表情を浮かべてみせたが、
確かに思い返せば思い当たるところがないとは言い切れなかった。


トウキ「負けることに対する恐れというか……
うーん、どう言ったら……あ、あれだ」


「「『ハラハラさせますぞ!』」」


シバ「ってことか? 要は」

トウキ「はは、完全にハモったね」

シバ「言われてみればな……師匠の教えを忘れて勝ちに執着しすぎていたし、その割にはどこか傲慢だった。そこは認めざるを得ない……」


どちらからともなく静かな笑いが湧き出す。

 ▼ 141 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/01/08 00:52:41 ID:/Wpvaxdw [2/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
しかし、そんな和やかな空気は ーーー


シバ「師匠……今は、どうしているのか……」

トウキ「おい、その話は……!」


ーーー シバの呟きで急変してしまう。


シバ「いや、いいんだ」

トウキ「どこもよくねぇだろ!」

シバ「もうその話は……」


トウキ「終わりだって? もう過去のことだって?

……じゃあなんでお前はオコリザルを使わない!
ニョロボンを使わない!

お前の手持ちにいるのは、師匠が使わない
格闘ポケモンばかりの癖に……!」


シバ「…………!!!」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
 ▼ 142 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/01/10 00:19:09 ID:fkQlfxqY NGネーム登録 NGID登録 報告
もう、あれから何年が経つだろう………

時間は、シバたちの修行時代にまで遡る。




ハラ「イライライライラ…………」



ガチャン……!


ここ数日、師匠の部屋から何かが割れるような甲高い音が断続的に続いている。



シバ「はぁ……師匠はいつになったら怒りを鎮めて下さるのか……」

トウキ「仕方ないな。よりにもよってレンブさんが師匠と喧嘩して出てっちゃったんだし」

シバ「強かったもんな、レンブさん。
本人も裏切るつもりじゃなかったんだろう……
だが結果としてはそうなってしまったか」
 ▼ 143 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/01/11 23:10:45 ID:INDk89eI NGネーム登録 NGID登録 報告


こういう時、弟子というものは得てして何が出来るでもなくただ怒りが収まってくれるのを待つしかないのだ。

"鬼のハラ"。

それが彼らの師事する男の二つ名である。



「「はぁ………」」



鳴り止まぬ破壊音が隣から響いてくるなか、二人の口から漏れるのはため息ばかり。

昨日より小さくなった月が彼らを妖しく照らし出していた。
 ▼ 144 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/01/17 15:58:00 ID:JqLbCkTo NGネーム登録 NGID登録 報告
次の日


「「…………は……?」」

ハラ「二度は、言いませんぞ?」


呆然とする二人。

途中師匠が何を言っていたのかよくわからなかったが、彼らが理解できた部分だけ拾い上げると、


ハラ『孫が生まれるから道場を畳む。
そこで後継者を決めなくてはいけないからお前たち二人で勝負して決めろ』


という内容のものだった。


シバ「わけがわからない……」


思わず口から漏れてしまった心の声は、ハラにばっちり聞き取られていた。


ハラ「不服なら、出ていけばいいだけですぞ……
レンブと同じように、ですな」


トウキ「……!!」
 ▼ 145 ヌマクロー@むげんのチケット 17/01/18 22:46:34 ID:i5a/Yj12 NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
更新来てた
支援デース
 ▼ 146 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/01/22 09:09:34 ID:OpKWm1Sw [1/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
その後も彼らは道場を畳もうとする師匠を説得し続けたが……


ハラ「…………………」


師匠は頑として譲らない。


トウキ「なぁ、シバ」

シバ「ん、なんだ?」

トウキ「仕方ない。やろう。勝負だ」


とうとう根負けしてしまったトウキがシバに勝負を持ちかけた。


ハラ「ほほうっ! それでこそ男ですぞトウキ!」

シバ「ったく都合いい時だけ反応してからに……
わかった。やるぞ」

ハラ「ルールは……」

トウキ「ポケモンを一体ずつ、そして同時に俺たち自身も勝負すること。ポケモンに指示を出すことは可能。
合ってますね?」

ハラ「ほっほ、その通りですぞ」
 ▼ 147 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/01/22 09:19:55 ID:OpKWm1Sw [2/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
もっとも、よほど実力差がない限りはポケモンに指示を出す余裕などないのだが。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

バトルフィールド


トウキ「頼むよ、ワンリキー!」

シバ「行くぞ、ゴーリキー!」


師匠の前でどちらが上なのかを示すこの大一番にトウキとシバが繰り出したのは互いの切り札。

シバの方が進化している分一見有利だが、実のところ両者の力にほとんど差はない。


シバ「さあ、トウキ ーー」

トウキ「さあ、シバ ーーー」

シバ「ーー 俺たちのパワーを受け止めてみろ ーー」

トウキ「ーーー 君の実力、見せてもらうよ!」


ハラ「大試練っっ!! はじめっ!!!」


シバ「ーー ウー! ハーッ!」
 ▼ 148 フェローチェ@あおいバンダナ 17/01/22 21:37:01 ID:jDQCCd4o NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援
 ▼ 149 バルキー@あなぬけのヒモ 17/01/23 13:29:20 ID:3/gfDrsM NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
セキエイリーグでの空白の3年間、そこで何があったのか。それをテーマにしたこのSS、とてもいいですね。
カンナ・キクコが抜けた理由やイツキ・キョウ・カリンが四天王に就任するまでの経緯等も、「確かにありそう」というものばかりで、
唯一残ったシバを視点に描かれてる点もいいです。
この先での、シバが格闘使いであるにも関わらず何故オコリザルやニョロボンではなくイワーク2体を使ってたのか、その点でもどう描かれるのか、これも気になる所です。
 ▼ 150 ウツボット@じゅうでんち 17/01/24 09:07:37 ID:XDJa.lwc NGネーム登録 NGID登録 報告
いいね
 ▼ 151 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/01/24 09:33:58 ID:vaAAXjEk [1/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
〜大試練〜 シバ&ゴーリキーvsトウキ&ワンリキー


トウキ「先手はもらったぁ!」


トウキたちが大地を蹴り、躍動する。
砂が舞い上がるが、その程度で動ずることはない。


トウキ「せやぁっ!!」

シバ「ふんっ!!」


柔のトウキ。剛のシバ。

トウキのしなるフリッカージャブがビシビシとシバの顔面を捉えたが、シバは落ち着いて追撃の右ストレートをブロックするのに成功。


トウキ「やべ……っ」


右ストレートが弾き飛ばされ、トウキの右脇腹 ーーー肝臓の真上ーーー がガラ空きになる。


シバ「はっ!」


そこにシバの左フックが一閃した……!
 ▼ 152 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/01/24 09:40:36 ID:vaAAXjEk [2/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
トウキ(くっ……間に合わない……!
しょうがない、一発貰ってやるか!)


せめてもの抵抗だと言わんばかりにトウキの腹筋が張り出すがブロックの反動をつけて放たれた左フックはとどまるところを知らない。


トウキ「ぐはっ……」


強烈なボディーブローが決まった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


シュン、ガッ、ゴッ、ガンッ!!


一方のゴーリキー対ワンリキーも白熱。

リーチを活かして中長距離から優位に立とうとするゴーリキーと接近戦で一気に決めたいワンリキー。


ハラ「爆裂パンチの応酬ですな……」


今はゴーリキーが優位な間合いを取っているが決定的な一撃は入っていない。
 ▼ 153 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/01/25 15:40:32 ID:x9bufOKs [1/4] NGネーム登録 NGID登録 報告

たまらずシバが指示を飛ばした ーー


シバ「ゴーリキー、ローキックで足元から ーーー」

トウキ「余所見……してていいのかっ?!」

シバ「ーーー ぐっ……!」


ーー その隙を見逃すトウキではない。

シバの左ストレートをヘッドスリップでかいくぐって懐を取り、スマッシュでシバの顎を跳ね上げた!


ハラ「!!」


シバ「なめん……なよ!!」


腰がぐらついたが、倒れはしない。
一旦、二人は距離をおいた。 その刹那 ーーー


ドサァッ……


ーーー シバの指示が功を奏したか、早くもトウキのワンリキーが崩れ落ちた。
 ▼ 154 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/01/25 15:48:00 ID:x9bufOKs [2/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
ハラ「ワンリキー、戦闘不能!
ゴーリキーの勝ちっ!!」


ハラがシバのゴーリキーの勝利を高らかに宣告したが、勝負はまだ終わらない。


ハラ「……全く聞こえていないようですな」


トウキがシバの周りを跳ねるように飛び回り始めた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


まずいな……。

トウキの一番得意なスタイルは足を使って相手と距離をとり、中長距離からフリッカージャブで崩すこと。

それを防ぐためには踏み込んでボディを狙うのが定石なんだがーーー


ビシッ。ビシッ。

鞭のようにしなるトウキの左腕がシバの出鼻をことごとく挫く。


ーーー 中々踏み込ませてはくれんな……!
 ▼ 155 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/01/25 15:59:15 ID:x9bufOKs [3/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
くそっ、速い!


仕方なくまた後退する。


左からはフリッカージャブ、左フック、左ストレート。

右からは右フック、クロスカウンター、スマッシュ、アッパー、ストレート。

それだけでは終わらない ーーー



トウキ「足元がお留守だぜ!」

シバ「うっ……!」


パンチに目を奪われていたシバのふくらはぎに強烈な足払いが決まった。



ーーー 外したときのリスクを警戒してまだあまり出してきてはいないが、蹴り技、投げ技までなんでもござれ。

これこそ、トウキの真骨頂。

"柔のトウキ"と呼ばれる所以なのである……!
 ▼ 156 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/01/25 16:14:51 ID:x9bufOKs [4/4] NGネーム登録 NGID登録 報告
ハラ「……いつまで持ちますかな……」


思わずハラが呟くが、やはり二人には届かない。

フリッカージャブ、フック、回し蹴り、返しのフック、接近してアッパー、跳ねあげられた上体に襲いかかるストレート、スマッシュ、ボディアッパー……。

右に、左に、前に、後ろに。

シバの体が面白いように揺らされる。



トウキ「必ず……勝つっ!!」



試合は、一方的な展開になった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 ▼ 157 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/01/30 12:49:35 ID:xQMTR552 NGネーム登録 NGID登録 報告
ハラ「zzzz……」


夜の帳は降りた。

新月の中、二人は星明かりだけを頼りに互いを探し、撃ち合う。

戦いが始まってから、何時間経ったろうか ーーー


シバ「はぁ……はぁ……」

トウキ(何故……何故まだ立ち上がる……?!)


ーーー シバがまたしても倒れ、そして立ち上がる。


トウキ(なんなんだ……何がこいつを……突き動かしてるんだ?!」

シバ「負けたくない、そんだけだ」

トウキ「なっ……?!」


トウキの心の声は途中から本当に声に出てしまっていたらしい。


トウキ(何回もベストショットを叩き込んだ……何回も倒した……手応えはあるのに……なんでだよ?!)
 ▼ 158 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/02/02 01:46:40 ID:ky0rgRzU [1/3] NGネーム登録 NGID登録 報告
トウキの拳に迷いが生じる。
迷いは、拳を鈍らせる。


シバ「……!」


トウキの動きが鈍っていることを本能的に感じ取ったシバの目がより一層不気味に光る。


そして、その迷いが ーーー



ゴッ………ドガッ………


トウキ「……シ……バ……」

シバ「……」


ドサッ……。



ーーー 二人の明暗を分けた。


 ▼ 159 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/02/02 01:54:07 ID:ky0rgRzU [2/3] NGネーム登録 NGID登録 報告

トウキの右ストレートをかいくぐったシバのカウンターがボディに突き刺さり、そしてそのあまりの衝撃に耐えかねてトウキの体が浮いた刹那一閃したシバの右足。


シバ「……ふぅ」


劇的な幕切れで、死闘が終わった。

気づけば空には星が瞬き、師は眠りの世界にいる。


シバ「勝った……」


見渡す限り二本の足で立っている人間は自分だけ。

ある意味孤独で、かつ平穏な世界。


シバ「はは……」


一切の損得勘定抜きで。

ただ、"勝ちたい"と念じて己を奮いたたせ。


シバ「…………嗚呼……」
 ▼ 160 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/02/02 01:58:58 ID:ky0rgRzU [3/3] NGネーム登録 NGID登録 報告

そして死闘が終わった今、彼の足を支えるものはなかった。

彼にしか聞こえない微かなうめき声と共にシバはふわりと地に崩れ落ちた。


煌めく星々。

さざなみ一つ立たない、不自然なまでに穏やかな海。

風が吹き抜けた後のフィールドには逞しき肉体の男が二人、地に体を横たえている。




明日のことなど知る由もなく。





 ▼ 161 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/02/03 12:13:48 ID:B/sv.T5Q [1/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ザザァー……ン


波が浜辺に打ち付け、飛沫がシバの顔に少しかかる。


シバ「んぁ……」


彼は目覚めた。


シバ「ぁぁ……」


しかし彼は起き上がらない……
いや、起き上がれないのだ。

あれだけの壮絶な戦いの後だ。
体が重くとも致し方無い。


トウキ「ああ……シバ」


その時、彼のすぐそばでトウキが目覚めた。
 ▼ 162 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/02/03 12:16:22 ID:B/sv.T5Q [2/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
拳を交えた二人に、多くの言葉はいらない。


シバ「勝たせて、もらったぜ」

トウキ「ああ、悔しいが……がふっ!!」


刹那、右の脇腹を抑えて悶絶するトウキ。


シバ「トウキ?!」


慌ててトウキのそばに這い寄ったが、
トウキは手でそれを制した。


トウキ「ああ、大丈夫。
せいぜい肋骨二、三本ってとこだ」


どうやらあの最後の一撃でトウキは肋骨をやられていたらしい。
 ▼ 163 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/02/03 12:19:11 ID:B/sv.T5Q [3/5] NGネーム登録 NGID登録 報告

トウキ「そういうお前だって……ひどい顔だよ」


そう。トウキのフリッカージャブで翻弄され続けていたシバもただで済んでいたはずはなく。

彼の顔も腫れ上がってぼこぼこになっていた。


「「あっははははは……!!」」


無性に笑いがこみあげた。

何故かは、わからない。

ただ、なんとなく笑えた。



???「おお、二人とも目覚めたようですな!」


「「師匠!!」」



その刹那、木陰から突如姿を現した師匠、ハラ。

和んでいた空気が、一気に引き締まる。
 ▼ 164 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/02/03 12:29:42 ID:B/sv.T5Q [4/5] NGネーム登録 NGID登録 報告
ハラ「二人とも、見事な戦いぶりでしたぞ」


「「…………はい」」


ハラ「ワンリキー対ゴーリキー。
ハンデがあったとはいえ負けは負け。
とはいえワンリキーの動きはゴーリキーとほぼ互角の内容でしたな」


トウキ「……ありがとうございます」


ハラ「そして二人の直接対決……
終始トウキがペースを握り、シバの得意なインファイトに持ち込ませなかったというのは大きく評価に値しますな」


ひたすらにトウキを絶賛するハラ。



……何かがおかしい。



この辺りから彼らの胸に違和感が生じた。
 ▼ 165 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/02/03 12:33:43 ID:B/sv.T5Q [5/5] NGネーム登録 NGID登録 報告

ハラ「何度も何度もダウンを奪い……しかし情に呑まれることなく戦い続けた、見事なものですぞ」


シバ「……?」


ハラ「内容で圧倒、そしてポケモン同士の対戦でも引けをとること無し!
よってこのハラの後継者としてふさわしいのは…………!」


ビシッ!!


そしてハラは右手をまっすぐに伸ばして一人の男を指し示し ーーー



ハラ「トウキ! トウキですぞ!!」


「「なっ……?!」」


ーーー 後継者の名を高らかに宣言した!

 ▼ 166 ピッピ@とくせいカプセル 17/02/03 16:25:26 ID:K5OIsNMA NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
マジかよ……
支援でーす
 ▼ 167 ガオガエン@いのちのたま 17/02/04 22:56:15 ID:r82Q0kHU NGネーム登録 NGID登録 報告
支援
 ▼ 168 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/02/07 16:26:29 ID:aeBXiFxo NGネーム登録 NGID登録 報告
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


トウキ「あの後、大変だったんだからな」


シバ「………………」


トウキ「お前の気持ちは確かにわかる。

結果だけ見ればこっちの惨敗だったしね。
だけど、怒って飛び出すことはないじゃないか……

しかも師匠に殴りかかって」


シバ「……もういい。
さっきもそう言っただろう」


トウキ「……!!」



その刹那、遂にトウキが立ち上がった。

あまりの勢いに湯が浴槽から大量に溢れ出す。
 ▼ 169 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/02/08 02:38:38 ID:zb.ySqOs [1/2] NGネーム登録 NGID登録 報告

トウキ「錆びたもんだな、お前も!

あれ以来一度も連絡はよこさない、
レンブさんでさえも一応は和解したってのによ!

……そしていつの間にやら四天王様か!

お前が良くてもこっちはたまったもんじゃないんだ!!

第一……! お前に負けた俺がぬけぬけと師匠の跡継ぎとなれるか?!

お前の身勝手もいい加減にしろっ!!!」



水のこぼれ落ちる音さえ聞こえなくなるほどの、激しく悲痛な慟哭。



トウキ「…………バトルしろよ」

シバ「何?」

 ▼ 170 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/02/08 02:40:15 ID:zb.ySqOs [2/2] NGネーム登録 NGID登録 報告

数秒 ーーーしかし二人にとっては永遠とも感じられる時間ーーー の静寂の後に、震える声でトウキが絞り出した言葉が、それだった。



ザパッ。


よし、と静かな掛け声とともにトウキが風呂から出る。



トウキ「二度は言わねぇ。
先に上がってフィールドで、待ってるからな」

シバ「…………」



振り向きざまに覗いたトウキの横顔は、シバが今まで見たことがないくらい冷たいものだった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 ▼ 171 ワルビアル@こおりのジュエル 17/02/10 19:22:52 ID:t4eYyCXU NGネーム登録 NGID登録 wf 報告
支援です
 ▼ 172 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/02/11 15:34:38 ID:MDh3yaCY [1/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
バトルフィールド


トウキ「…………来たか」

シバ「…………ああ」


フィールドの端と端で互いを見据える二人。


シバ「ルールは?」

トウキ「3対3。
ポケモン2体、そしてトレーナー自身で戦う。
……それでいいか?」

シバ「…………構わない」


話はついた。

各々懐のモンスターボールを二つ取り出す。

雰囲気はあの時と全く同じだ。

場所が違えど、時が違えど、勝利のみをひたすら渇望する意思を宿した二人の目は何も変わっていない。


トウキ「さあ……いくぜ!!」
 ▼ 173 企画参加で今後更新遅れます 17/02/11 15:42:12 ID:MDh3yaCY [2/2] NGネーム登録 NGID登録 報告
審判はいない。

二人だけのフィールド。

トウキの怒号と共に戦いが幕をあける!


トウキ「いくぞ、カイリキー! ハリテヤマ!」


シバ「俺たちのスーパーパワーを……!

エビワラー! サワムラー!」


掛け声と共にボールから飛び出す四体のポケモン。

その時、シバが何かに気づいたような声を上げた。


シバ「! そのカイリキーとハリテヤマは……!」

トウキ「その通り。あの時のワンリキーと、師匠から受け継いだハリテヤマだ!」


そう。トウキはシバの闘志を最大限引き出さんとあえてシバの闘争心を煽るような選出をしたのだ。

ここに、舞台と役者は、整った。
 ▼ 174 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/02/15 14:01:49 ID:zPQ8pzMs NGネーム登録 NGID登録 報告

トウキ「強くなった俺たちを見せてやる!
ハリテヤマ、突っ張り!」

シバ「来るぞ! サワムラー、回し蹴り! エビワラー、連続パンチでハリテヤマを止めろ!」


タテの陣形で攻め入るトウキに対し、ヨコの陣形で迎え撃つ選択をしたシバ。

さすがに二体がかりならハリテヤマもストップするだろう ーーー


バチン、バチン、ズドォン!


トウキ「カイリキー、落下地点に回り込め!」

シバ「な、なにっ?!」


ーーー ハリテヤマの突っ張りがサワムラーとエビワラーをまとめて吹っ飛ばしてしまう!


シバ「まずい、なんとか体制を……!」

トウキ「……地獄車ぁあ!!」


そして二体の落下地点で手ぐすね引いて待ち受けていたのはトウキのカイリキー!
 ▼ 175 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/02/17 15:35:12 ID:1qNPhohA [1/5] NGネーム登録 NGID登録 報告

シバ(何か……何か策は……?!)


ガガガガガガ!!!!


サワムラーとエビワラーは四本の腕でガッチリと捉えられてしまい、逃げ出す糸口さえ見つからない。

爆音と共に、地獄車が決まった。


トウキ「今のうちだ! ハリテヤマ、腹太鼓!
そして……俺も行くぞ!」


拘束されたままのサワムラーとエビワラー。

その一方、安全な場所で腹太鼓によるパワーアップを果たしてしまったハリテヤマ。


シバ「くっ……!」


シバが思わず拳を握りしめて目を閉じた、その刹那だった。


トウキ「忘れんなよ?」
 ▼ 176 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/02/17 15:41:31 ID:1qNPhohA [2/5] NGネーム登録 NGID登録 報告

ついさっきまでフィールドの反対側にいたはずのトウキがシバの目と鼻の先にまで接近していて ーーー


トウキ「ルールは……三対三、なんだからな」

シバ「がはっ……」


ーーー 静かなつぶやきと共に放たれた右ストレートがシバの顎に炸裂し、シバの目の奥に火花が散った。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


トウキ「カイリキー、地獄車を解除してそいつらを放り投げろ!
落下点に回って二体でバレットパンチだ!」


己の策がここまで綺麗にはまるとは。

シバから最初のダウンを奪ったことでどこか浮き足だっていた自身にも落ち着きが生まれ、心身、そして頭脳がよりシャープに動き出した。


さあ、どうするんだい? シバ。

このままじゃ、負けちまうぜ?
 ▼ 177 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/02/17 15:46:48 ID:1qNPhohA [3/5] NGネーム登録 NGID登録 報告

バババババババ…………


銃弾が炸裂するような破壊音 ーーーバレットパンチが炸裂した証ーーー を背に受けつつ、尻餅をつくような格好で倒れている強敵、シバを見下ろす。


シバ「ふん……ダウン一発でいい気になるなよ?」


そして立ち上がってくる。

その目に宿る光はさっきよりも、強く、眩しく。


トウキ「さあ、行くぜ……!」


飛び跳ねるようなステップワークを踏みつつ、左腕は力を抜いて自由に。

対するシバは両の手を顎につけて脇を絞る。


撃ち合いの、始まりだ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 ▼ 178 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/02/17 15:52:58 ID:1qNPhohA [4/5] NGネーム登録 NGID登録 報告

『ふん……ダウン一発でいい気になるなよ?』


全く……俺のどこにそんなセリフを吐ける余力があったのか。


ジャブ、ジャブ、左フック、右ストレート。

ブロック、ブロック、パリー、スウェーバック。


雨あられと降り注ぐトウキのパンチ。

大丈夫だ、クリーンヒットさえもらわなければ問題はない。


そしてシバの守りの固さに手を焼いたか、トウキが一度距離を置いてやり直しに入る。


…………かかったな!
これで指示を出すチャンスが生まれたぞ!


シバ「負けるなエビワラー! サワムラー!
……インファイト!!」


トウキ。ここまで散々やってくれたな。

今度は、こっちの番だ。
 ▼ 179 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/02/17 16:00:56 ID:1qNPhohA [5/5] NGネーム登録 NGID登録 報告

インファイトによってバレットパンチの弾幕から逃れることに成功したサワムラーとエビワラーはそれぞれカイリキー、ハリテヤマと相対する。


サワムラー対ハリテヤマ。

エビワラー対カイリキー。

そして、シバ対トウキ。

あたかも事前に示し合わせていたかのように彼らは互いの相手と向き合った。



こうなれば、もはや小細工などはない ーーー



シバ「エビワラー、サワムラー!」

トウキ「ハリテヤマ、カイリキー!」


「「インファイト!!!」」



ーーー 意地とパワーが火花を散らす死闘だ。
 ▼ 180 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/02/18 00:07:55 ID:bp8kcQr. [1/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ビュッ。


拳が空を切る音 ーーー


ゴッ………。


ーーー 拳が対象を捉えるときの鈍い音 ーーー


ガクッ。


ーーー そして、膝を屈する音。


全てが渾然一体となって奏でられる六重奏曲の時間はそう長くなかった。

 ▼ 181 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/02/18 00:10:54 ID:bp8kcQr. [2/8] NGネーム登録 NGID登録 報告
腹太鼓で著しく消耗していたハリテヤマ。

地獄車の反動が積み重なっていたカイリキー。

序盤のダメージとインファイトの連発によって防御力が下がりに下がっていたサワムラーとエビワラー。


ドサ……ドサッ。


カイリキーの爆裂パンチとエビワラーのインファイトが同時に互いを捉えた結果、たまらずどちらも崩れ落ちる。


カルテット。


ガクッ……。

ハリテヤマのヘビーボンバーに耐えかねたサワムラーがフィールドに膝をつく。


トリオ。


しかしサワムラーは最後の意地で飛び膝蹴りをハリテヤマの顔面に炸裂させた。

結果はまたしても相討ち。


デュエット。
 ▼ 182 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/02/18 00:28:49 ID:bp8kcQr. [3/8] NGネーム登録 NGID登録 報告

六重奏はあっという間に二重奏にまで数を減らしてしまい……




勝負の行方は、またしてもシバとトウキの一騎打ちに託された。




 ▼ 183 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/02/18 00:29:51 ID:bp8kcQr. [4/8] NGネーム登録 NGID登録 報告

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


互いの吐息と拳が空を切る音だけが支配するこの空間。

変だとか言われるかもしれないけど……
これが大好きなんだ。


ジャブから組み立てて、右フック。

ブロックをかいくぐって打ち上げるスマッシュは肩に阻まれる。

左右に揺さぶってから突き上げるアッパーは岩を削り出したごとく頑強な腹筋に受け止められた。


はは……さすがだ、シバ。

だけど……二度は負けられない。

継承者争いの時も、最後に負けたのはこっちだったんだ。


勝たせてもらうよ。

君のいない間、
専一に磨き続けたこの必殺の一撃で…………!

 ▼ 184 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/02/18 00:46:57 ID:bp8kcQr. [5/8] NGネーム登録 NGID登録 報告

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


なんだ……?

なんだ、この違和感は?


一通りのトウキの攻めは全身を駆使して弾き、防ぎ、受け止めた。

攻撃を受け切られたトウキが一旦下がってまた組み立て直そうとしている。

何度も繰り返してきた、いつも通りのシチュエーションのはずだというのに。

なんだ、何が違う?



トウキ「行くよ……
これが、君のいない間に磨き続けた必殺の……!」

 ▼ 185 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/02/18 00:48:07 ID:bp8kcQr. [6/8] NGネーム登録 NGID登録 報告

………そうか。

気づけば、俺はいつの間にかフィールドの隅ギリギリまで追い込まれてしまっていたのか。

片足は既にラインを割って場外に出ている。

しかし、もう片足はラインを割っていないからまだストップは入らない。

……もっとも、元より審判などいないのだが。


なんにせよ、だ。

どうやらトウキはここで勝負を賭けに来たらしい。

絶対に止めてやる。


深呼吸して、更に腰を落として、両腕は胸につけんばかりにガードを固める。

迎撃態勢は整った。


さあ、いつでもこい。
 ▼ 186 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/02/18 00:49:14 ID:bp8kcQr. [7/8] NGネーム登録 NGID登録 報告

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


トウキ「うおぉぉおお!!!」


自分の声なのに、どこかとても遠くから響いてくるような、そんな感覚。


トウキ「はっ! はっ! はぁっ!!」


対象から少し離れた位置で、
虚空に向かって次々に拳を繰り出す。

拳を突き出すたびに全身からエネルギーが溢れ出し、自分を包み込んでいくのがはっきりとわかる……!


シバ「な、なんだ……?!」


あれ、シバは見たことがないのか。

じゃあ教えてあげよう……!

 ▼ 187 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/02/18 00:50:47 ID:bp8kcQr. [8/8] NGネーム登録 NGID登録 報告


トウキ「シバ。これがアローラの格闘家に伝わる必殺の一撃。 その名も……


全力無双激烈拳だ!!!」




シバ「全力……無双……」



トウキ「受け止めろ、俺の全力っ……!!

はぁぁぁあああっ!!」



纏ったオーラはトウキの咆哮と同時に拳の形を取り
シバに向けて一直線に放たれる!!

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 ▼ 188 メガピジョット@すごそうないし 17/02/18 02:19:01 ID:jycTeJao NGネーム登録 NGID登録 報告
シバさんがハラさんに殴り掛かろうとしたという所は?個人的に言うと余り好きじゃ無いですね〜
師匠と言っているぐらい慕っている人の事を殴り掛かろうとするぐらい暴力的で非道な感じはシバさんには余り似合わ無いと思いまして………ごめんなさい( ; ; )飽くまで自分が勝手に思った事です。
 ▼ 189 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/02/20 20:43:32 ID:YgQN7B0w [1/7] NGネーム登録 NGID登録 報告

なんだあれは。

全力無双……なんとかと言ったか。
いや、それよりも今は!


ゴゴゴゴゴ……


トウキの放った全力無双激烈拳はゆっくりと、しかし確実にシバを射程に捉えて進む。


シバ「くっ……!」


シバを襲う、強烈なプレッシャー。

逃げ場がもはやないことは追い詰められているシバ自身が最もよくわかっていることだ。

となれば ーーー


シバ「だったら……! はぁぁぁあああっ!!」


ーーー 撃ち返す。

それがシバに残された唯一の選択肢だった。
 ▼ 190 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/02/20 20:48:38 ID:YgQN7B0w [2/7] NGネーム登録 NGID登録 報告

フィールドに轟く大音声。

シバの拳が激突したことにより、全力無双激烈拳はより一層その輝きを増す。


「「…………!!」」


両者の息は既に限界まで吐き出されていた。

こうなれば、後はどちらが先に倒れるかの勝負。

その時だった ーーー


トウキ「……ッ!」

シバ「……ァァアア!!」


ーーー シバの最後の叫びに呼応するがごとく全力無双激烈拳がシバの全身を飲み込み、爆散した!!
 ▼ 191 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/02/20 20:50:22 ID:YgQN7B0w [3/7] NGネーム登録 NGID登録 報告

全力を尽くした両者決死の攻防。

その結末は ーーー


トウキ「……はは……」

シバ「…………」


ドサドサッ。


ーーー 引き分け。

二人はほぼ同時に、フィールドに崩れ落ちた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 ▼ 192 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/02/20 20:56:01 ID:YgQN7B0w [4/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
数時間後、島の食堂


ガッガッガッガッ。


店主「いや〜よう食べるのう……」


呆れたように一人呟く食堂の店主。

彼の視線の先にあったのは、傷だらけ絆創膏だらけの身体で飯に食らいつくシバとトウキの姿だった。


ガガガガガ……。


二人の食べるスピードは衰えるどころか時間が経つにつれて加速している。


店主「若いって、ええのう……はっはっは」


店主はとうとう呆れを通り越してからっと笑い出した。


???「ごめんくださ……?!」


その時、暖簾をくぐって入ってきた女一人。
 ▼ 193 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/02/20 21:03:30 ID:YgQN7B0w [5/7] NGネーム登録 NGID登録 報告

店主「いらっしゃい! おう、あんたさんか!」

???「え、あ、はい」

店主「……?」


挙動不審な彼女の様子を訝しんだ店主は彼女の視線の先を探ったが、怪しいものはなにもなかった。


店主「なんじゃ、どうした?」

???「いえ……なんでもないです。
あ、注文はいつもので……」

店主「はい、かしこまりました。
少々お待ちください……」


何かがおかしい。
いつもの彼女とは明らかに何かが違う。


シバ「…………?!」


店主が釈然としない気持ちで厨房に戻るのとシバの箸が止まるのとが、ほとんど同時だった。
 ▼ 194 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/02/20 21:09:43 ID:YgQN7B0w [6/7] NGネーム登録 NGID登録 報告
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

トウキ「どうした、シバ?」


突如箸を持ったまま石化したように硬直しているシバに驚くトウキ。


シバ「嘘だろ……?」

トウキ「どうしたんだよ?」

シバ「あれ……まさか……」

トウキ「?! あれはっ?!」


シバが震える指で指した先を捉えたトウキは言葉を失った。

他ならぬシバが言うのだ。

間違っている道理がどこにあろう。

今、自分たちが目撃している人物の正体は。




謎の失踪を遂げた元四天王、カンナだ。
 ▼ 195 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/02/20 21:16:57 ID:YgQN7B0w [7/7] NGネーム登録 NGID登録 報告

シバ「とにかく、見つかったなら幸いだ。
なんとか交渉して連れ戻……」

トウキ「待て! はやまるな!」


今にも椅子を蹴って立ち上がりそうになっていたシバの両肩を掴んで椅子に押し戻す。

ったくこいつは思い立ったら一直線すぎるのが困るんだよ。


シバ「なんだ」


不機嫌な様子を隠そうともしないな。

事情が事情だ、表に出ろーってわけにもいかねぇし。

落ち着け、落ち着けよ俺。


トウキ「いいか? 気持ちはわかる。だけどな?
まずは落ち着こうぜ。
普通、いなくなったにはそれなりの理由ってもんがあるだろ?

お前なんか思い当たること、ないのか?」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 ▼ 196 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/02/22 15:26:40 ID:oeMK9tTM [1/2] NGネーム登録 NGID登録 報告

シバ「トウキ……だが……」


どうしてカンナがいなくなったか。

そんなこと、他ならぬ俺が一番知りたいんだよ。

考えてわかるなら、わざわざ探したりはしない。

いや、察しはついているつもりだ。

レッドやグリーンから一方的に負かされ、金を搾り取られる生活を続けたいとは誰も思わないだろう。


トウキ「落ち着いたか?」

シバ「…………ああ」


トウキ「まっ、今までわからんかったのに急に思い当たるなんて期待してねぇよ。

ただ、さっきのお前ちょっとヤバイ目してたからな。
だから止めたんだ」

 ▼ 197 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/02/22 15:27:27 ID:oeMK9tTM [2/2] NGネーム登録 NGID登録 報告

ったくこいつは。

……悔しいが、敵わんな。



シバ「ありがとう。おかげで少し頭を冷やせた」

トウキ「礼はいいから早く行ってこい。
間に合わなくなっても、知らねーぞ?」


これ以上、言葉は必要ない。

そう悟った俺は椅子から立ち上がり、食堂の奥のテーブル ーーーカンナがいるところーーー へ向かった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 ▼ 198 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/02/23 01:20:24 ID:tMSwnwuY [1/15] NGネーム登録 NGID登録 報告

シバ「…………久しぶり、だな」

カンナ「…………どうしてわかったのかしら」


全く噛み合っていない二人の会話。


シバ「それよりも、なぜだ?」

カンナ「ここが過疎化している理由、ご存知?」

シバ「どういう……?」


疑問文のぶつけ合い。

全く会話がかみ合わない。


シバ「それとお前が四天王を降りることに何か関係が……」

カンナ「残念ながら、大ありなの」


しかし皮肉にも二人の語気は初めから穏やかなまま。

この光景を端から見ても知り合い同士が世間話でもしているのか、くらいにしか考えないだろう。

 ▼ 199 メガピジョット@フライングメモリ 17/02/23 18:50:13 ID:tMSwnwuY [2/15] NGネーム登録 NGID登録 報告
カンナ「火山がね……」

シバ「火山?」

カンナ「ともしび山よ。
温泉が湧き出しているあの山」

シバ「ああ、そこか。さっきあそこの風呂に入ってきたところだ……心なしか熱かった気がしたが」

カンナ「わかってるじゃないの……」

シバ「何?」



話が ーーー



カンナ「ともしび山が、じき噴火するのよ」



ーーー ようやく ーーー


カンナ「それも、かつてないくらいの規模の」



ーーー 一本の線に繋がった。
 ▼ 200 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/02/23 18:55:11 ID:tMSwnwuY [3/15] NGネーム登録 NGID登録 報告
シバ「なにっ?!」


知らされた事実はあまりにも予想外で。
思わず立ち上がってしまう。

ともしび山の噴火。

カントーの地理を左右することさえある活火山。

そんな火山が未だかつてないほどの規模の大噴火を起こそうとしていると聞いて、どうして落ち着いていられるものか。


カンナ「リーグ上層部にも掛け合ったわよ……だけどあいつら、レッド君とグリーン君のことしか考えてなくて……呆れて私はリーグを出ることにしたの」

シバ「そんな、事情が……」


しかしやはり腑に落ちない。

どうして、相談してくれなかったんだ。


シバ「じゃあ、みんなの力で止めればいいだろ!
完全に止めるのは無理でも、被害を少しでも小さくできれば……」

カンナ「無理よ……これは私にしかできないこと」

シバ「なんだって?」
 ▼ 201 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/02/23 20:23:20 ID:tMSwnwuY [4/15] NGネーム登録 NGID登録 報告
謎が一つ解けてもまた別の謎が湧き出す。

どこまで行けば、光は差すのか。


カンナ「私にしか、止めることは……できない」

シバ「何を……」


カンナの声色にどこか悲壮感が漂っているのはどうやら俺の気のせいではなさそうだ。

カンナはまだ、何かを隠している。


カンナ「あと……そうね。二、三年くらい……
そっとしておいてくれないかしら。

そうしたら、きっと、私はリーグに戻るから」


シバ「……その時になったら、
全てを話してくれるか?」

カンナ「ええ、勿論。だから、今は……」


腑に落ちない。納得いかない。しっくりこない。
 ▼ 202 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/02/23 20:27:52 ID:tMSwnwuY [5/15] NGネーム登録 NGID登録 報告


その刹那だった ーーー


ゴゴゴゴゴ……………


ーーー どこからか、不気味な重低音が響く。


シバ「なんだ? この音は?」


店主「おーい、そこの若いの三人!
わかっとるだろ、早く逃げろ!!

…………ともしび山が噴火するぞー!!」


店主は三人にそう言い残すや否や大慌てで飛び出し、どこかに行ってしまった。


シバ「何、噴火?! となるとこの音は地鳴りか!
だが、さっきお前は……」

カンナ「なぜ……?!」


振り返ると、そこには硬直したままガタガタと震えているカンナの姿。
 ▼ 203 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/02/23 20:41:03 ID:tMSwnwuY [6/15] NGネーム登録 NGID登録 報告

シバ「どうした、噴火の前兆があったなら早く逃げねばならんだろ?!
どうした? 何がお前を苦しめてる?!」


カンナの震えが、止まった。


カンナ「黙って……」


先ほどとは打って変わって落ち着き払った、静かな声。

声色だけなら、さっきまでと同じ穏やかな声。


カンナ「港の場所はわかるでしょう?
シーギャロップもたまたまこっちに停泊してるし、噴火の前兆があったからナナシマ中の船は避難のために総動員されるはず。
行きなさい、シバ。

あなたはこっちに来てはいけない」


シバ「カン……ナ……?」


しかし、カンナの目は虚ろだった。

その気迫に押されたシバはそれを指摘することができない。
 ▼ 204 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/02/23 20:41:49 ID:tMSwnwuY [7/15] NGネーム登録 NGID登録 報告





カンナ「さよなら」




それだけ言い残して、カンナは食堂を出た。






 ▼ 205 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/02/23 20:46:56 ID:tMSwnwuY [8/15] NGネーム登録 NGID登録 報告
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

『ともしび山が噴火するぞー!!』


食堂の店主はそれだけ言い残してもうどこかに行ってしまった。

噴火か。

だったらさっさと逃げるに限る……んだけど。


この後に及んであの二人は何をしてるんだ?


カンナ「〜〜〜〜」


お、やっとカンナが店の外に出た。

話は終わったのか?


トウキ「おい、シバ。何してる。
さっさと逃げ ーーー」

シバ「さよなら、だと……?」

トウキ「ーーー はあ?」
 ▼ 206 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/02/23 20:51:48 ID:tMSwnwuY [9/15] NGネーム登録 NGID登録 報告
母親に置き去りにされた子供のような、生気のない目をしているシバ。

なんだ、フられたか。


トウキ「あーあー、フられてご愁傷様だ、愚痴なら後でたっぷり聞いてやるから ーーー」

シバ「違う」

トウキ「ーーー 早く……何?」


嫌な汗が頬を伝って床に落ちるのがわかる。

なんだ、この違和感は?


シバ「お前は港に行け。
俺はまだ……やることがある」

トウキ「…………何を、やるんだ?」


上ずった声で発された俺の問い。

その刹那、シバの目に力が戻った。


シバ「カンナを、止める!」
 ▼ 207 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/02/23 21:00:06 ID:tMSwnwuY [10/15] NGネーム登録 NGID登録 報告

トウキ「…………はっ?」


とうとうフられたショックで頭がやられたのか?


シバ「二言はない。俺は……ともしび山に行く」

トウキ「……何言ってる?」

シバ「今はナシだ。時間がない」

トウキ「お、おい?!」

シバ「然らばごめん!」


行ってしまった。



ゴゴゴゴゴ…………



トウキ「ともしび山? なんだって、今……」


地鳴りと俺の独り言だけが、不気味に反響する。
 ▼ 208 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/02/23 21:05:23 ID:tMSwnwuY [11/15] NGネーム登録 NGID登録 報告
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

私はともしび山を駆ける。


カンナ「どうして、こんなに早く……?」


いずれこうなるのはわかっていた。

己の身を賭してでも故郷を、ナナシマを守ること。

それが私の"役目"だから。

そのために今までの全てを積み重ねてきた。

氷タイプのエキスパートになったのも、その過程の一つでしかない。


カンナ「彼には、悪いことしちゃったかな……」


ほんの少し後悔しているところはあるけど、もう振り返ることは許されない。


カンナ「ルージュラ、念力で岩をどかして」


進む以外の選択肢は、残されていないから。
 ▼ 209 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/02/23 21:15:30 ID:tMSwnwuY [12/15] NGネーム登録 NGID登録 報告
下へ。

暑さがその猛威を増す。


カンナ「もうすぐ、ね……」


下へ。

気を抜くと体が焦げてしまいそう。


カンナ「上着は……いいわよね。
もう、私には、必要ないから」


下へ。

上着は脱ぎ捨て、尚下層へと進む。

そして ーーー


カンナ「ここ、ね……」


ーーー ともしび山の最下層、『言葉の間』。
カンナは、辿り着いた。
 ▼ 210 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/02/23 21:26:41 ID:tMSwnwuY [13/15] NGネーム登録 NGID登録 報告

カンナ「さて……と……」


小さく呟き、5つのモンスターボールを宙に放る。

ジュゴン、パルシェン、ヤドラン、ルージュラ。

そして、ラプラス。

どれも強力無比な自慢のポケモンたちだ。


カンナ「用意と覚悟は、いいわね?」


カンナの問いかけに対して各々は静かに頷く。

捕獲したり仲間にする時には、必ずカンナは"この時"が来ることを伝えた上で手持ちに加えてきた。

だから今更怖気付くことなど、ありえない。

カンナとポケモンたちは部屋の中央 ーーールビーを戴く石板ーーー を取り囲む。

このルビーこそが、ともしび山の力の源。

これを冷やすことで、噴火の規模は抑えられる。
 ▼ 211 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/02/23 21:32:13 ID:tMSwnwuY [14/15] NGネーム登録 NGID登録 報告

カンナ「ものごとには、意味がある……

存在には、意味がある……

生きることには、意味がある……」


噛みしめるように言葉を紡ぎ出す。

これは、私たちが今まさに取り囲んでいるこの石板に刻まれた言葉だ。


カンナ「夢を持て……」


私というものごと。存在。生きてきたこと。

その、意味……。


カンナ「力を、使え!!

ジュゴン、パルシェン、ヤドラン、ルージュラ、
……ラプラス!

全員、ルビーに向かって吹雪!!」


私の夢……半分叶ったけど、半分は……。
 ▼ 212 RIVER◆zFLCCAWaiw 17/02/23 21:53:08 ID:tMSwnwuY [15/15] NGネーム登録 NGID登録 報告
ポケモンたちが五体がかりで放つ吹雪の直撃を受け続けてもルビーの輝きは曇らない。

いや、それどころか ーーー


カンナ「そんな……っ!」


ーーー さらに妖しく赤黒い光を湛えて熱を発する。


カンナ「どうして?!」


輝きとともに熱量を増したルビーによって、吹雪が少しずつ、じりじりと押し返されていく。

ポケモンたちも、苦しげな表情。


カンナ「どうすれば……」


絶望。諦め。忍び寄る死の足音。

もはやこれまでか、そう思われた刹那 ーーー


???「カンナァーー!!!」


聞こえるはずのない声が、聞こえた。
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